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子供がコロナで入院すると子供も親も精神衛生に影響/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連するスティグマは、抑うつ、不安、孤独感などの心身の苦痛を引き起こすことが世界的な問題となっている。しかし、COVID-19のスティグマと、それに関連する子供や親のメンタルヘルスへの影響を調査した研究はほとんどないのが現状である。 国立成育医療研究センター総合診療部の飯島 弘之氏らの研究グループは、COVID-19に感染した子供とその親に対して、COVID-19に関わるスティグマ(患者に対する「差別」や「偏見」)と、メンタルヘルスへの影響について調査を実施した。その結果、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親は、1ヵ月後もメンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。本研究結果は、Pediatrics International誌2024年1~12月号に掲載された。COVID-19に感染した親子は1ヵ月後も精神衛生に影響 対象は2021年11月~2022年10月までにCOVID-19に感染し、国立成育医療研究センターに入院した4~17歳の子供および0~17歳の子供の親。COVID-19に関わるスティグマとメンタルヘルス(抑うつ、不安、孤独感)に関する質問票調査を実施した。 対象者は47例の子供と111例の親で、そのうち入院中の調査では子供43例(91%)と親109例(98%)が質問票に回答し、1ヵ月後の追跡調査では、それぞれ38例(81%)と105例(95%)が回答した。 スティグマについては、隠ぺいスティグマ(ここでは覆い隠すことによって偏見や差別を回避しようとするスティグマのことを指す)と回避スティグマ(ここでは個人や集団が感染を回避しようとするスティグマのことを指す)についてそれぞれに、主観的スティグマと推定スティグマを確認するアプローチを採用した。メンタルヘルスを評価する質問として、抑うつ、不安、孤独について調査した。 主な結果は以下のとおり。【スティグマの保有】・入院中の調査では、COVID-19に感染した子供の79%、親の68%が高スティグマに該当し、1ヵ月後の調査でも、子供の66%、親の64%が高スティグマに該当していた。・推定スティグマの方が、主観的スティグマよりも、高スティグマグループの割合が高くなっていた。【メンタルヘルスへの影響】・子供の抑うつと孤独感、親の抑うつと不安は、いずれも、入院中と比べ、1ヵ月後の追跡調査で有意に低下していた。しかし、次のとおり、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親においては、1ヵ月後においても、メンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。(1)子供のスティグマと孤独感・抑うつとの関係・子供の主観的スティグマは、入院中の孤独感(平均差[MD]:2.32、95%信頼区間[CI]:0.11~4.52)と1ヵ月後の追跡調査での抑うつ(MD:2.44、95%CI:0.40~4.48)と関連していた。・推定スティグマは、メンタルヘルスとの間に有意な関係はみられなかった。(2)親のスティグマと抑うつ・不安・孤独感との関係・親の推定スティグマは、1ヵ月後の追跡調査で抑うつ、不安、孤独感と関連していた(MD:2.24[95%CI:0.58~3.89]、1.68[0.11~3.25]、1.15[0.08~2.21])。・主観的スティグマとメンタルヘルスとの間に有意な関係はみられなかった。 研究グループは、これらの調査結果から、「COVID-19に関連するスティグマは、退院後1ヵ月以上にわたって精神衛生に影響を及ぼし続けること、スティグマが精神衛生に与える影響は子供と親で異なることが示された」と結論付けている。

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日本人の牛乳・乳製品の摂取と不眠症との関連

 労働安全衛生総合研究所の佐藤 ゆき氏らは、日本人における牛乳や乳製品の習慣的な摂取と不眠症との関連を調査した。Nutrition and Health誌オンライン版2024年9月25日号の報告。 東日本で20〜74歳の6万633人(男性:2万2,721人、女性:3万7,912人)を対象に、コホート研究データを用いた横断的研究を実施した。牛乳、乳製品の摂取、睡眠状況、その他の生活習慣に関するデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。牛乳、乳製品に関する質問は、全乳、低脂肪牛乳、チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料を含め、摂取頻度(週1回未満、週1〜2回、週3〜6回、1日1回以上)を評価した。睡眠状況の評価には、アテネ不眠症尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ロジスティック回帰分析では、不眠症の調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)は、全乳摂取が1日1回以上の場合、週1回未満と比較し、統計学的に有意に低いことが示唆された(OR:0.91、95%CI:0.86〜0.96、p=0.001)。・女性では、同様の結果が認められたが(OR:0.90、95%CI:0.85〜0.97、p=0.002)、男性では認められなかった。・対照的に、乳酸菌飲料が週3〜6回の場合、週1回未満と比較し、不眠症のORが高かった。【全体】OR:1.20、95%CI:1.11〜1.29、p<0.001【男性】OR:1.36、95%CI:1.19〜1.55、p<0.001【女性】OR:1.13、95%CI:1.03〜1.24、p=0.009 著者らは「日本人を対象としたこの横断研究では、不眠症でない人ほど全乳を頻繁に摂取する傾向が見られた」と結論付けている。

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がん患者における気持ちのつらさガイドライン 2024年版

がん患者の精神心理的苦痛の緩和に関する、本邦初の指針現在のがん医療では、がんの診断や治療の過程で患者に生じる精神心理的苦痛の緩和も重要な課題とされている。本ガイドラインでは、そのような「気持ちのつらさ」の緩和に関する9件の臨床疑問を設定し、推奨と解説を提示した。総論の章ではがん患者における気持ちのつらさの定義や疫学、評価法、薬物療法・非薬物療法などに関する知見を包括的に解説した。明日からの臨床に役立つことを目指した、充実した内容の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するがん患者における気持ちのつらさガイドライン 2024年版定価3,850円(税込)判型B5判頁数356頁発行2024年9月編集日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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10月25日開催『第6回ヘルスケアベンチャー大賞』最終審査会【ご案内】

 2024年10月25日(金)に『第6回ヘルスケアベンチャー大賞』最終審査会が開催される。「アンチエイジングからイノベーションを!」をテーマに、アンチエイジングに資するヘルスケア分野のビジネスプランやアイデアを企業から募集。その中から書類審査を経て、見事に選ばれたファイナリスト5社がヘルスケアベンチャー大賞の獲得を目指し、最終ピッチを行う。そのほか、中村 雅也氏(慶應義塾大学医学部整形外科学教室)による特別講演や、イベント後には、最終審査会を終えたばかりのファイナリストとの交流の場として懇親会などが設けられる。 最終審査会には事前登録をすれば無料で参加可能で、申し込みは10月24日(木)まで。 開催概要は以下のとおり。開催日時:10月25日(金)15:00~17:00(懇親会 17:00~18:00)開催形式:会場開催とWEBのハイブリッド参加方法:無料(事前参加登録制)会場:日本橋ライフサイエンスハブ   (東京都中央区日本橋室町1-5-5 室町ちばぎん三井ビルディング8階)申込締切:10月24日(木)参加登録はこちら【プログラム】1.開会のあいさつ2.本日の進行についての説明3.ファイナリストによるプレゼンテーション <ファイナリスト 5社>※五十音順 株式会社Genics 「全自動歯ブラシによる口腔および全身の健康維持支援事業」 株式会社CCHサウンド 「軟骨伝導による高齢者が生き生きと活躍するための窓口の実現と認知症の予防」 tantore株式会社 「舌筋トレーニング向けシート状グミ「tantore sheet」の開発で無呼吸症候群と誤嚥性肺炎の予防」 株式会社レナートサイエンス 「人工脂肪を活用した乳房再建・豊胸の実現」 株式会社Rhelixa 「日本人の遺伝的背景に適合する第2世代エピジェネティック・クロックを利用した生物学的年齢評価および抗老化ソリューション開発事業[エピクロック(R)事業]」4.特別講演「私たちが目指す近未来の医療・介護・ヘルスケアとは」  中村 雅也氏(慶應義塾大学医学部整形外科学教室)5.審査結果発表と各賞表彰式6.総評【主催】日本抗加齢協会【共催】日本抗加齢医学会【後援】厚生労働省 経済産業省 日本医師会 三井不動産 LINK-J 読売新聞 「第6回ヘルスケアベンチャー大賞」ホームページはこちら【同日開催「AgeTechX DEMO DAY 2024」】 AgeTechXは、生活者発想でシニアビジネスを創造していく「博報堂シニアビジネスフォース」と、シリコンバレーと日本を拠点にしているベンチャーキャピタルであるスクラムベンチャーズの関連会社、スクラムスタジオが立ち上げたグローバル事業共創プログラム。 本プログラムを通じ、「健康・長寿・人生100年時代」をテーマとしたエイジング課題を、テクノロジーで解決するサービス・アプリケーションの社会実装を目指す。 DEMO DAYでは、5ヵ月間の成果披露も含めた事業のプレゼンテーションを実施予定で、「第6回ヘルスケアベンチャー大賞」と併せて登録が可能である。参加登録はこちら開催日時:10月25日(金)12:30~14:20開催形式:会場開催とWEBのハイブリッド参加方法:無料(事前参加登録制)会場:日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区日本橋室町1-5-5 室町ちばぎん三井ビルディング8階)申込締切:10月24日(木)【お問い合わせ先】 ヘルスケアベンチャー大賞事務局 E-mail:healthcare-v@anti-aging.gr.jp TEL:03-5651-7503 ※審査に関するお問い合わせには応じられません。 AgeTechX運営事務局 E-mail:agetechx@scrum.vc

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統合失調症の多剤併用から単剤療法への切り替えによる副作用への影響〜SwAP試験II

 オランダ・マーストリヒト大学のMushde Shakir氏らは、統合失調症入院患者における抗精神病薬多剤併用療法から単剤療法への切り替えが、各種副作用にどのような影響を及ぼすかを調査した。Schizophrenia Research誌2024年12月号の報告。 対象となる副作用には、精神症状、自律神経症状、性機能障害、代謝系副作用、運動機能障害を含めた。オランダの精神科病院2施設の慢性期入院患者136例を対象に、9ヵ月間の並行ランダム化オープンラベル臨床試験を実施した。対象患者は、併用継続群または切り替え群のいずれかにランダムに割り付けた。切り替え群は、第1世代または第2世代抗精神病薬のいずれかを中止する3ヵ月間の漸減期間を設けた後、単剤療法を実施した。評価は、ベースライン時およびフォローアップ3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に実施した。精神学的、神経学的、自律神経学的、性機能関連副作用の評価には、UKU副作用評価尺度を用い、運動機能障害の測定には、St. Hans評価尺度を用いた。各代謝パラメーターも収集した。 主な結果は以下のとおり。・併用継続群では、性欲にわずかな低下が認められた以外、副作用は時間経過とともにおおむね安定していた。・対照的に、切り替え群では、精神学的および自律神経学的症状が有意に軽減し、アカシジア、パーキンソン症状、ジスキネジアの改善が認められた。・切り替え群では、ジストニア、知覚異常、てんかん、性的症状に変化は認められなかった。・さらに、切り替え群では、BMIおよび体重も有意な減少が認められた。 著者らは「長期入院患者では、多剤併用療法から単剤療法へ切り替えることにより、運動機能障害や代謝系副作用など、さまざまな副作用の重症度軽減が期待できる」と結論付けている。

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メトホルミンがlong COVIDのリスクを軽減する可能性

 2型糖尿病の治療に広く使用されている経口血糖降下薬のメトホルミンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の症状の遷延、いわゆるlong COVIDのリスクを軽減することを裏付ける、新たなデータが報告された。米ミネソタ大学のCarolyn Bramante氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に9月17日掲載された。 Long COVIDは、慢性疲労、息切れ、ブレインフォグ(頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態)などの症状を呈し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後、数週から数カ月続くこともある。現在、米国内で数百万人がこの状態に苦しめられていると考えられている。 一方、昨年発表された研究から、SARS-CoV-2感染後すぐにメトホルミンが処方された過体重または肥満のCOVID-19患者は、long COVIDのリスクが41%低いことが示されていた。今回報告された論文の上席著者であるBramante氏は、「メトホルミンは世界中で入手可能であり、低コストで安全性が確立しているため、long COVIDの予防に有効だとしたら、COVID-19の外来治療に臨床的メリットをもたらす」と述べている。 今回の研究は、2型糖尿病治療のためにメトホルミンが処方されている人でも、昨年報告された研究結果と同様の効果が得られるのかを調べることを目的として、米国立衛生研究所(NIH)の資金提供により実施された。同大学のSteven G. Johnson氏らにより、血糖管理目的でメトホルミンが処方されている約7万6,000人の米国人糖尿病患者のデータが収集され、同薬が処方されていない1万3,000人以上の糖尿病患者のデータと、long COVIDのリスクが比較された。 Johnson氏らは解析の結果、メトホルミンが処方されていた糖尿病患者は、COVID-19罹患後6カ月以内のlong COVID発症または死亡のリスクが最大21%低いことを見いだした(ハザード比0.79〔95%信頼区間0.71〜0.88〕)。研究グループは、「これらのデータは、メトホルミンの処方がSARS-CoV-2感染後の良好な転帰と関連していることを示す、他の観察研究の結果と一致している」と述べている。 では、メトホルミンは、どのようにしてCOVID-19症状の遷延を防ぐのだろうか? NIHによると、「研究者らは現時点で、メトホルミンがCOVID-19の長期化をどのように防ぐのかを明らかにしていない。しかし、炎症を軽減したり、ウイルスレベルを下げたり、疾患関連タンパク質の形成を抑制するといった、いくつかのメカニズムが存在する可能性を推測している」という。

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激しい興奮を伴うせん妄への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第86回

激しい興奮を伴うせん妄への対応緩和ケアの実践で常に遭遇するせん妄ですが、とくに激しい興奮を伴うときは非常に大変です。今回は訪問看護師さんからご質問いただきました。今日の質問在宅で終末期患者をケアしていると、時々、非常に強い興奮を伴ったせん妄を経験します。患者さんは怒りとともに、殴りかかろうとするくらいの興奮です。こんな時、どうすれば良いのでしょうか。見ている家族もつらそうで、少しでもできることがないかと思います。強い興奮を伴うせん妄は、本当に大変ですよね。私も経験がありますし、なかなか難しい対応を強いられたことも多くあります。点滴を引きちぎり、手当たり次第にモノを投げようとするなど、本当に手が付けられないような状況もありました…。このような状況でわれわれに何ができるのでしょうか。まず大前提として、せん妄の対応は原因となっている「身体疾患の改善」と環境などの「非薬物療法」の検討が必要となります。とはいえ、緩和ケアの実践では終末期状態の方が多く、身体状況は不可逆なことが多いですよね。なので、なかなか根本解決が難しいのが苦しいところではあります。さて、そういった基本的なことを理解し、実践している前提で、今回の質問のような非常に激しい興奮を伴うせん妄にはどのように対応するのでしょうか?共通見解やエビデンスに乏しい分野ですが、私の対応例をご紹介します。まず、このような状況では、本人と周囲の人の安全確保を優先しましょう。その観点から、身体拘束をせざるを得ない、という判断も必要になります。身体拘束はもちろん好ましいことではないものの、本人が暴れてベッドから落ちて骨折する、周囲の人がけがをする、などのことも許容されません。ここはジレンマを抱えながらの実践になると思います。もちろん、身体拘束が必要なくなったらすぐに解除することは大前提です。このような興奮状態の場合、そのままでの投薬は現実的に困難です。よって、人手を集め、身体拘束などで安全を確保したうえで、薬剤の投与を検討します。基本的にはハロペリドールなどの抗精神病薬を用いて、効果を評価しながらベンゾジアゼピン系薬を用います。具体的にはハロペリドールを0.5mg投与し、そのうえでミダゾラムなどをゆっくり投与します。ミダゾラムは半減期が2時間程度と短く、好んで使用する専門家が多いと思います。また、ベンゾジアゼピン系薬には拮抗作用を持ったフルマゼニルがあることも重要な点ですので、覚えておきましょう。ベンゾジアゼピンによる鎮静が過剰になった場合にも、半減期の短さと拮抗薬の存在が強みになります。一方、せん妄への処方としては、抗精神病薬以外は適応外使用になりますので、ここはよく理解して使用する必要があります。適応外使用であっても使用禁忌というわけではないですし、患者負担が増えることもありません。ただ、有害事象の発現時などには、その使用判断の妥当性は問われることを理解しておく必要があるでしょう。ベンゾジアゼピン以外の選択肢として、クロルプロマジンを使う時もあります。クロルプロマジンは内服だけでなく、筋肉注射可能な注射薬もあり、せん妄の時には重宝します。これらの鎮静作用の強い薬剤の注意点は、先に述べた適応外使用となることに加え、これらの鎮静作用自体がせん妄の悪化要因になり得ることです。それもあって鎮静効果が遷延せず、かつ作用時間が短いベンゾジアゼピンであるミダゾラムを優先して使用している方が多いのでしょう。最後に、改めてせん妄を診る時は、治癒可能な原因を見逃さないことが大切です。とくに、経過中に生じた新たな興奮を伴うせん妄は、脱水や新規薬剤など新たな要因が関与していることも多いので、対応しながら再評価する必要があります。今回のTips今回のTips興奮を伴うせん妄には、場合に応じて身体抑制と鎮静作用の強い薬剤を使用し、原因を改めて検討、評価する。日本総合病院精神医学会せん妄指針改訂班編. せん妄の臨床指針 せん妄の治療指針 第2版.星和書店;2015.

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産業医で独立するなら会社は必要?法人化のメリット&デメリット【実践!産業医のしごと】

産業医として独立を検討する際、個人事業主として活動を続けるか、法人を設立して事業を行うか、悩むことがあるでしょう。将来的に事業として大きくすることを目指すのであれば法人化が必要ですが、そこまではまだ考えていない、という方も多いと思います。今回は、個人事業主と法人化を比較し、気になる法人化のメリットとデメリットを解説します。産業医活動の税務上の扱い企業との産業医契約では、個人または法人のどちらで結ぶかによって税務上の取り扱いが変わります。個人事業主として契約を結ぶ場合、産業医報酬は原則として給与として扱われます1)。産業医が企業に対して定期的な業務を提供し、労働時間や業務内容が一定程度決められているためで、給与収入として取り扱われると、事業所得として申告することは難しくなります。法人を設立するメリット個人事業主が法人化するメリットには、信頼性の向上、節税の可能性、責任の有限性が挙げられます。1)信頼性の向上一般的には、法人化により法的に認知され、責任が明確になります。法人格を持つ企業は法律に基づいて活動し、責任も明確に区分されます。医師という職業は一般的に信頼性が高い仕事なので実感は少ないかもしれませんが、法人化により企業から見ても法的に保証された存在になり、信頼性が高まると考えます。2)節税の可能性個人が法人化することで、次のようなメリットがあります。税率が低くなる可能性法人税は所得税よりも一定の税率で課税されるため、収入が高い場合は税負担が軽減される可能性があります。いわゆる「マイクロ法人」の場合、利益が数百万円以下であれば法人税率が低く、税金の負担を抑えられる場合があります。たとえば、資本金1億円以下の法人の場合、年間利益が800万円以下であれば、法人税率は15%であり、800万円を超える所得への法人税率は23.2%です。これに対し、個人は累進課税のため所得税率は最高で45%にも達します。法人を設立することで、事業所得として収入を扱うことが可能になるため、税制上のメリットが得られるでしょう。経費を広く計上できる法人を設立することで、経費として計上できる範囲が広がります。事務所の家賃や設備投資、通信費、出張費など、ビジネスに関連するさまざまな支出が法人の経費として認められるため、結果的に課税所得を減らすことができます。個人で給与所得を得ている場合は、給与所得控除額を給与等の収入金額から差し引かれますが、給与所得控除額の上限額は195万円です。それ以上に経費がかかる場合は、法人のほうが税金上は有利となる可能性があります。節税の選択肢が増える法人にすることで、所得を分散させるなどの節税手段が取れる場合があります。たとえば、自分の報酬を一定の範囲内に抑え、法人に利益を留保することで税負担を分散することが可能です。3)責任の有限性一般的には、個人事業主として事業を行って経営が悪化した際には、従業員への未払い給与や、金融機関からの借入金、未納の税金などはすべて個人の負債となります。法人の場合は個人保証による借り入れを除くと、出資金の範囲内の有限責任となります。産業医の業務に限定した場合では、契約先の企業や従業員から訴えられる可能性があります。この場合、個人であっても法人であっても、自らが代表である限りはその責任は同等であると考えます。法人化のデメリットは?一方、法人を設立することには、次のようなデメリットもあります。1)設立・維持費用法人を設立するためには、登録免許税や公証人の手数料など、設立費用がかかります。さらに、法人を維持するためには会計帳簿の作成や税務申告のために税理士を雇う必要があり、これに関連する費用を考慮することが必要です。2)社会保険料の負担増加法人にした場合、代表者として給与を受け取る際には社会保険の加入が義務付けられます。個人事業主では国民健康保険と国民年金で済むものが、法人化すると健康保険や厚生年金の事業主の負担すべき社会保険料が増加することになります。法人代表として受け取る給与が高額であればさらに負担が大きくなるため、この点も慎重に検討する必要があります。収入の規模や今後の展開によって選択産業医としての独立に際して、法人化するべきかどうかは、収入の規模や今後の仕事の展開によって異なります。もし、産業医としての報酬が増加する見込みがあり、税負担を抑えたい場合には、法人化を検討する価値があります。一方で、収入がまだ限定的であり、法人設立や維持にかかるコストを賄う余裕がない場合には、個人事業主として活動を続けるほうが合理的かもしれません。いずれの選択肢を取るにせよ、産業医としての独立は大きな一歩です。個人や法人化のメリットとデメリットを十分に理解し、自らにとって最適な道を選びましょう。参考1)産業医の報酬/国税庁

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食事の質や睡眠時間が抑うつ症状に及ぼす影響

 不健康な食生活や不健康な睡眠時間を含むライフスタイルは、うつ病の修正可能なリスク因子として広く知られている。中国・四川大学のYue Du氏らは、食事の質、睡眠時間、抑うつ症状との関連およびこれらの複合的な影響を調査するため、本研究を実施した。BMC Public Health誌2024年9月27日号の報告。 対象は、2007〜14年のNHANESデータから抽出された20歳以上の成人1万9,134人。不健康な食生活は、Healthy Eating Index-2015の平均スコア60パーセンタイル未満、不健康な睡眠時間は、夜間の睡眠時間が7時間未満または9時間以上とした。対象者をライフスタイル別に4群に分類した。分析には、関連変数をコントロールする重み付け多変量ロジスティック回帰を用いた。さらに、ロバスト性を評価し、潜在的な高リスク群を特定するため、層別化分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体のうつ病有病率は8.44%。・健康的な睡眠時間の基準を満たした人は56.58%、健康的な食生活の基準を満たした人は24.83%であった。・不健康な食生活および不健康な睡眠時間は、抑うつ症状と正の相関が認められた。【不健康な食生活】オッズ比(OR):1.40、95%信頼区間(CI):1.18〜1.67、p<0.001【不健康な睡眠時間】OR:1.94、95%CI:1.63〜2.31、p<0.001・健康的な食生活と睡眠時間の基準を満たした人と比較し、いずれかまたは両方が不健康な人は、抑うつ症状と有意な関連が認められた。【不健康な食生活+健康的な睡眠時間】OR:1.60、95%CI:1.20〜2.13、p=0.002【健康的な食生活+不健康な睡眠時間】OR:2.50、95%CI:1.64〜3.80、p<0.001【不健康な食生活+不健康な睡眠時間】OR:2.91、95%CI:2.16〜3.92、p<0.001・層別分析では、女性、中年、大学卒業以上の学歴、推奨される身体活動レベルを満たしていない人は、不健康な食生活+不健康な睡眠時間により、抑うつ症状に対する感受性が上昇することが示唆された。 著者らは「不健康な食生活と不健康な睡眠時間の人、とくに女性、中年、大学卒業以上の学歴、推奨される身体活動レベルを満たしていない人は、抑うつ症状を呈しやすいことが示唆された」と結論付けている。

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週末の寝溜め、認知機能障害リスクを上げる?下げる?

 高齢者を対象とした横断研究で、週末のキャッチアップ睡眠で認知機能障害リスクが70%以上低下する可能性が示唆された。台湾・National Taiwan Normal UniversityのChi Hsiao氏らがSleep Breath誌2024年10月号で報告した。 本研究は、2020年9月~2022年12月に台湾・台北市の医療センターにおいて65歳以上で自立歩行が可能な参加者を登録し、自己申告による睡眠日誌と加速度計を用いて連続7日間の睡眠関連データを記録・測定した。週末キャッチアップ睡眠は、週末の平均睡眠時間から平日の平均睡眠時間を引いた時間とし、認知機能障害リスクはミニメンタルステート検査(MMSE)で評価した。週末キャッチアップ睡眠とMMSEスコアとの関連について二項ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・計215人(女性:53.0%、80.5±7.1歳、認知機能障害リスク:11.6%)を対象とした。・性別、教育レベル、中~高強度の身体活動、加速度計の総装着時間で調整したモデルにおいて、睡眠日誌(オッズ比[OR]:0.26、95%信頼区間[CI]:0.09~0.69、p=0.007)と加速度計データ(OR:0.27、95%CI:0.10~0.70、p=0.007)から、キャッチアップ睡眠が認知機能障害リスクを73~74%低下させる可能性が示された。 著者らは「この結果から、週末のキャッチアップ睡眠と認知機能障害のリスク低下が関連することが示唆された」としている。

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体重増加が抗精神病薬の継続に及ぼす影響〜メタ解析

 抗精神病薬のアドヒアランス不良や服薬中止は、統合失調症スペクトラム障害を含む精神疾患患者にとって、重要な臨床上の問題である。抗精神病薬誘発性体重増加は、アドヒアランス不良のリスク因子であると報告されているが、抗精神病薬誘発性体重増加とアドヒアランス不良や服薬中止との関連を調査したシステマティックレビューは、これまでなかった。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのRiddhita De氏らは、これらの関連性を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年9月17日号の報告。 重度の精神疾患患者におけるアドヒアランス不良、治療中止、他剤への切り替え、抗精神病薬誘発性体重増加による治療中止について調査したすべての研究を、MEDLINE、EMBASE、PsychINFO、CINAHL、CENTRALデータベースなどよりシステマティックに検索した。該当研究のメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析のために、2つの研究カテゴリーを特定した。・カテゴリー1には、BMIクラス/自己申告による体重増加の程度ごとに、抗精神病薬のアドヒアランスまたは治療中止を比較した3件の研究を含めた。・過体重または肥満、抗精神病薬使用に関連した体重増加を報告した患者は、抗精神病薬治療中の標準体重の患者または抗精神病薬誘発性体重増加を報告しない患者と比較し、抗精神病薬のアドヒアランス不良のオッズ比(OR)上昇が認められた(OR:2.37、95%CI:1.51〜3.73、p=0.0002)。・カテゴリー2には、各抗精神病薬間で副作用として報告された体重増加に関連した治療中止を比較した14件の研究を含めた。・オランザピンは、体重増加リスクの低い他の抗精神病薬と比較し、アドヒアランス不良または治療中止の可能性が、3.32倍(95%CI:2.32〜4.74、p<0.00001)に増加した。・同様に、体重増加リスクが中程度の抗精神病薬(パリペリドン、リスペリドン、クエチアピン)は、体重増加リスクが低い抗精神病薬(ハロペリドール、アリピプラゾール)と比較し、アドヒアランス不良または治療中止の可能性が、2.25倍(95%CI:1.31〜3.87、p=0.003)に増加した。・定性的なサマリーにおいても、これらの知見が確認された。 著者らは「抗精神病薬誘発性体重増加は、服薬アドヒアランス不良や治療中止に影響を及ぼし、体重増加リスクの高い薬剤は、服薬アドヒアランス不良や治療中止と関連していることが示唆された。これらの結果を確認するためにも、追加試験が必要である」と結論付けている。

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認知症者の災害避難、被災地支援の経験から振り返る【外来で役立つ!認知症Topics】第22回

石破新総理が「防災庁」を提唱高齢化が進む英国で、2018年に孤独担当大臣(Minister for Loneliness)という制度ができた。当時それを聞いた時、さすが現実主義の国だと感心した。わが国では、石破 茂新内閣総理大臣の新機軸の1つに、2026年発足を目指す「防災庁」があるそうだ。災害大国といわれるわが国では、大災害は毎年のように起こるだけに、なるほどと納得できる。東日本大震災での避難所支援の経験認知症者の災害避難に関して筆者が知る限り、広く注目されるようになったのは、2011年東日本大震災からではなかろうか。その後多くの人の印象に強く残るのは2016年の熊本地震、そして2024年元日の能登半島地震であろう。しかもこの能登半島は、2024年9月には大雨にも見舞われ、その復興が容易でない悲惨な現状に、国民の皆が胸を痛めるところだ。筆者自身は、東日本大震災があった2011年3月11日には筑波にいた。激しい地震を初めて経験した後には、認知症者の災害避難に関わるさまざまな体験をした。原発事故のあった福島県下の精神科病院の入院患者さんを、筑波大学附属病院で引き受けることから始まった。数日後には、対象を数人ずつのグループに分け、茨城県庁を介して県内のいくつかの精神科病院にさらに転入院してもらった。続いて県内外の被災地における避難所等の訪問活動に忙殺される日々に移った。その後の2つの大地震を経て、今では全国的に避難所の環境整備が進み、質も向上したといわれる。ところが3.11の当時は、とてもとてもという状況であった。何より驚いたのは、避難所は学校の体育館などに家族単位で雑魚寝するしかない集合体状態であり、プライバシーなどは皆無という環境であった。まだまだ寒い時期なのに、体育館の板の上に布団や座布団が敷かれているだけだった。気晴らしはTVかラジオくらい。数日ならなんとか我慢もできようが、普通の人は1週間も我慢できない。避難所での認知症者の状況認知症の人たちの実態、それが周囲に与える影響は大変だった。被害が大きかった茨城県北部と福島県への支援に入ったのだが、避難所を訪問した際に、認知症のある人は一目でわかった。多くの人が集まっている避難所の中でも、言動がきわめて目立つのである。一言で言えば、「騒ぐ、周りに迷惑をかけてしまう」のである。しかし、当事者にしてみたら、未知の慌ただしい環境にいきなり連れてこられているのである。これでは認知症の人は、容易に不安、さらにパニックに陥ってしまう。もちろん、睡眠・覚醒リズムは乱れる。とくに夜間の多動・大声・トイレ通いは周囲への迷惑ぶりが際立つ。こうしたことが重なって、多くの認知症の人は2日とその避難所にはいられなくなってしまう。今なら後述する福祉避難所の理由を考えるはずだが、当時はその情報も数も少なかった。だからこうした方々は主として県内の精神科病院に緊急入院してもらわざるを得なかった。避難所でのトイレ事情トイレの問題だが、避難所は非常事態対応だから、普通にはその数が足りない。けれども利用者は多いから、いつも満員、長蛇の列ができてしまう。断水になっていなければよいのだが、断水のため水洗便所が使えない。すると、便器から排泄物があふれ出す。実際、便流しには予想以上に多くの水が必要である。「大」レバーは6~7L、「小」で4~6Lとされる。筑波大学附属病院では、断水が続いている間は、池、プール、噴水から便流し用に水を汲んでくる人もいたが、これでは焼け石に水であった。後日、石巻市の精神科病院を訪ねたことがある。ここで震災初期のさまざまな苦労談をうかがったのだが、排泄物の処理で一番役に立ったのは、ビニール袋への排泄で、これを近くに掘った穴に捨ててくるという対応法だったそうだ。認知症避難者、受け入れの課題さて一般の人との共同生活が難しい認知症避難者(高齢者や障害のある方など)のために、「福祉避難所」がある。2022年現在、全国に1万弱の福祉避難所があると聞く。今回2024年の能登半島地震においては、能登地方の4市町では、地震前に、高齢者施設や障害者支援施設など39ヵ所の施設と協定が結ばれ、福祉避難所に指定されていたが、2月7日時点で開設できたのは15ヵ所だったそうだ1)。伝え聞くところでは、一般市民の避難への対応さえ間に合わない自治体の担当者が、認知症の方々をこうした福祉避難所で手厚く保護するのは、とてもとてもという現状のようだ。避難所に関する新しい課題として、ペット同伴の是非がある。高齢者、とくに独居の方では、ペットは人間同様に家族だ。ほかの避難者のことも考えて、「動物居住区を作ってそこにいてもらいましょう」だけでは済まないようだ。また9月の能登豪雨においては、おそらく元日の地震時の避難体験からか、認知症の人がいる家族の中には、避難所に避難しようとしない人もいるとNHKでは報道されている2)。今日では、全国レベルで避難所の態勢作り、準備は確かに進んでいるようだ。しかし認知症者のように、従来の避難所では受け入れ困難な人、そしてペット動物などにどう対応するかなど、きめ細かい対応が求められている。参考1)NHKニュース. 命をつなぐ「福祉避難所」 避難者受け入れられない施設相次ぐ(2024年2月11日)2)NHKニュース. 能登大雨 孤立地区の住民がヘリコプターで避難【26日】(2024年9月26日)

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第234回 「院長以下に障がい者の人権(尊厳)を守る意識が極めて薄弱であった」 大牟田病院事件の提言書で思い出したノンフィクションの傑作「ルポ・精神病棟」

複数の男性職員が筋ジストロフィーなどの入院患者に対して性的、身体的、心理的虐待を行うこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球盛り上がっていますね。この連休は、日本のプロ野球のクライマックスシリーズ(CS)と、MLBのロサンゼルス・ドジャースのポストシーズンの試合観戦(テレビ)でほぼつぶれました。前回のこの連載では「パドレス、このまま上まで行くかも」と書きましたが、残念ながらドジャースに負けてしまいました。それにしても、対パドレス戦でドジャースが劣勢に立った時、大谷 翔平選手が「あと2勝すればいい」と淡々と話していたのが印象的でした。大谷選手の古巣の日本ハムファイターズもその言葉通り、劣勢から2連勝してCSのファイナルステージに駒を進めました。何事も諦めたり、弱音を吐いたりするのは良くないということですね。勉強になりました。さて、今回は独立行政法人国立病院機構 大牟田病院(福岡県大牟田市)で起こった患者虐待事件について書きます。複数の男性職員が、筋ジストロフィーなどの入院患者に対して性的虐待、身体的虐待、心理的虐待などさまざまな虐待を行っていたこの事件、病院が設置した第三者委員会は10月1日、「病院全体として、院長以下に障がい者の人権(尊厳)を守る意識が極めて薄弱であった」とする調査結果をまとめた提言書1)を公表しました。福岡県警は不同意わいせつや暴行の疑いで、職員1人と元職員2人を書類送検この事件が新聞・テレビなどによる報道で発覚したのは2024年5月でした。当時の西日本新聞などの報道によれば、2023年12月に女性患者から「男性介護士に下半身を触られた」という訴えがあったのをきっかけに、同病院が障害者虐待防止法に基づき各患者の居住自治体などに通報、調査が開始されました。その結果、看護師や介護士の男性職員5人が2021年ごろから、男女11人の入院患者に虐待を繰り返していた疑いが判明したとのことです。被害者はいずれも筋ジストロフィーや重症心身障害の患者で、うち7人が性的虐待、4人が心理的・身体的虐待でした。その後、病院は2024年7月までに、12人の患者が虐待被害を受けた疑いがあるとして福岡県内外の計8自治体に通報。調査の結果、5自治体で性的虐待6件、身体的虐待4件、心理的虐待4件が認定されました。一方、2自治体は虐待との判断に至らず、1自治体は「虐待ではない」と判断しました。9月11日、福岡県警はこの問題で、障害があり抵抗できない患者の体を触ったり、頭を叩いたりしたとして、不同意わいせつや暴行の疑いで、職員1人(64歳・男性看護師)と元職員2人(51歳・無職男性、64歳・他施設の男性介護職員)を書類送検しています。虐待を近くで目撃した職員がいたにもかかわらず虐待行為だという認識がなかった第三者委員会が公表した提言書は、調査した7件のうち4件を虐待と認定、残る3件も人権侵害の疑いがあるとしました。すべての事案について虐待を近くで目撃した職員がいたにもかかわらず、虐待行為という認識がなく、通報されていませんでした。「言ってもきちんと処理されるとは思えない」という雰囲気が職場にあり、「仲間を売るようなことをする人がいる」という言葉も交わされていた、としています。障害者総合支援法の療養介護病棟については、「障害福祉サービス事業所としての倫理観や理念が現実の運営において欠如していた」と指摘。「管理・監督責任者として院長があたることになっているものの、形骸化して名目上のものになっていて、実質的に管理・監督がなされていなかった」としています。さらに、病院全体の責任のほか、関係職員らに対する処分についても言及、「(いずれの案件も)当該職員のみならず、その上司を含めて各事案に応じた適正な懲戒処分がなされていなかった(ていない)。この懲戒手続きについては大牟田病院を統括する国立病院機構九州グループが主導すべきであるが、その指導・監督責任が果たされていない」と上部組織の対応も厳しく批判しています。前身は結核専門の国立療養所、性格・機能の異なる2つの病院が一つの組織として運営最初にこのニュースを聞いた時、「なぜ、急性期医療を提供している国立病院機構の医療機関で虐待が?」と疑問に思ったのですが、同病院の前身が結核専門の国立療養所で、1975年に重症心身障害棟を開設、77年に国立大牟田病院となった、という経緯を知ってなんとなく腑に落ちました。同病院の現在の病床数は402床で、その内訳は一般病床120床、神経難病100床、筋ジストロフィー80床、重症心身障害者80床、結核20床、感染症2床となっています。呼吸器内科・脳神経内科などは地域住民に対して一般診療を行う一方、神経難病、筋ジストロフィーなどの入院患者を九州全域から受け入れ、専門的な医療・介護を提供しています。前者と後者では医療内容は異なり、スタッフに求められる技術・能力もまったく違います。つまり、性格・機能の異なる2つの病院が一つの組織として運営されていたわけです。提言書を読む限り、後者の病棟は閉鎖的で院長の目が届かない(あるいは院長でさえアンタッチャブルな)状況にあったようです。虐待を虐待とも感じず、報告も行わない看護師や介護士たち。おそらくそうした組織風土は最近できあがったものではなく、長年に渡って形づくられてきたのでしょう。提言書によれば、大牟田病院では2014年にも虐待事案が発生しており、その後に研修会が開かれ、「障害者虐待防止対応規定」も改訂されていたとのことです。第三者委員会は、10年前の教訓がまったく生かされていなかった点も問題視しています。看護師ら5人が逮捕・書類送検された滝山病院事件それにしても、この大牟田病院の事件といい、2023年に大きな問題となった東京都八王子市の滝山病院の事件といい、どうして病院や老人施設、障害者施設などで看護師や介護士による虐待事件が次々と明らかになるのでしょう。2023年2月、入院患者への暴行事件が発覚した東京・八王子市の精神科病院、滝山病院の事件は、看護師ら5人が逮捕・書類送検され略式命令で罰金刑が確定しています。NHKが2023年6月に放送したETV特集「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」では、同病院の看護師が患者を罵倒したり威嚇したりする様子や、患者の人権をないがしろにした院長や看護部長の会話を記録した動画が放送され、大きな衝撃を与えました。2023年12月に公表された第三者委員会の報告書は、「現場はモラルハザードというべき状況」とし、病院経営陣の怠慢さや無責任な体制を指摘しています。同年12月18日付の朝日新聞によれば、第三者委員会の委員長を務めた伊井 和彦弁護士は、「責任は病院の経営者、トップにあると言わざるを得ない」とした上で、「異常に高い非常勤率が、患者への責任感を低下させた」と指摘しています。同記事は、滝山病院の非常勤職員は給料が高かったことから、「他の病院とかけ持ちする看護師もいるという。暴行事件で刑事責任に問われた5人は、夜勤中の非常勤看護師だった」と書くとともに、そのことが「相互に干渉しようとしない無関心な状況をつくった」という伊井弁護士の言葉を紹介しています。虐待行為を行う看護師や介護士など職員の資質だけでなく組織をマネジメントする側にも大きな問題こうした事件、もちろん、虐待行為を行う看護師や介護士など職員の資質に問題があるのは当然ですが、組織をマネジメントする側にも大きな問題があると言えそうです。滝山病院のように非常勤中心の組織はチームとしての意識が希薄になりがちで、職員個々の人間性がそのまま患者・入所者などに向けられてしまいます。そこをマネジメントするのが看護師長や院長の役割ですが、放ったらかしにすれば暴走する職員が出てきます。さらに、チームが機能不全になると、虐待などの不正行為を見たらそれを報告し、ルールに則って罰する、という当たり前の組織運営も行われにくくなります。まして、院長など管理者の目が届かないとなれば、そこはもう“治外法権”で悪がはびこる温床となります。報道によれば大牟田病院の入院患者の証言として、「職員と患者との間で上下関係があった」「怖くて拒否できなかった」といった声もあったそうです。「ルポ・精神病棟」の出版から50年経っても似たような虐待が続いている滝山病院と大牟田病院の事件報道を読んで、私は半世紀前、1973年に出版された医療ノンフィクションの傑作、「ルポ・精神病棟」(朝日新聞社刊)を思い出しました。朝日新聞の記者だった大熊 一夫氏が、アルコール患者を装って精神病院に潜入、電気ショックを使った患者虐待や、薬漬け、拘束の実態を克明に記したルポです。3週間入院する計画が生命の危険を感じるほどの処遇や医療処置を受けた結果12日目に音を上げ、妻の助力で病院から脱出する経緯はホラー小説のようです。同書はその後の日本の精神科医療の改革に大きな影響を与えたと言われています。同書の出版から50年以上を経ても、精神病院に限らず、社会から隔離された障害者医療や高齢者医療の現場では、似たような虐待が続いているというのは一体どういうことでしょう。「人間の尊厳」「患者の人権」と医療者は軽々しく口にしますが、日本の医療・介護の世界ではまだ完全に浸透し切っていないのかもしれません。医療・介護者への教育にも問題がありそうです。書籍の「ルポ・精神病棟」は文庫版ももう絶版ですが、kindle版が出ており、電子書籍で読めます。興味のある方はぜひご一読ください。参考1)当院職員による入院患者さまへの虐待事案に係る第三者委員会による提言書の公表について

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ADHDの薬物関連心血管疾患による世界的負担〜WHO薬物安全性データ分析

 注意欠如多動症(ADHD)の治療薬は、心血管系に対する交感神経刺激作用を有していることが知られているが、包括的な世界的データを用いた評価は、あまり行われていない。韓国・慶熙大学校のHanseul Cho氏らは、世界的な医薬品安全性監視データを用いて、ADHD治療薬と心血管疾患との関連を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年8月30日号の報告。 分析には、1967〜2023年のWHO国際医薬品安全性監視データーベースからのレポート1億3,125万5,418件を用いた。各薬剤と特定の心血管疾患との関連を評価するため、報告オッズ比(ROR)およびinformation component(IC)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD治療薬に関連する報告14万6,489件のうち、心血管疾患は1万3,344件であった。・ADHD治療薬に関連する累積報告数は、2010年以降、とくに成人において増加が認められた。・ADHD治療薬は、全体的に心血管疾患リスクの上昇と関連がみられ(ROR:1.60、95%信頼区間:1.58〜1.63、IC:0.63、IC0.25:0.60)、この関連性は、男性よりも女性において強く関連していた。・特定の心血管疾患では、すべての薬剤において、トルサード・ド・ポアント/QT延長、心筋症、心筋梗塞のリスク上昇と関連が認められた。・心不全、脳卒中、心臓死/ショックとの関連が認められた薬剤は、アンフェタミンのみであった。・リスデキサンフェタミンは、アンフェタミンと比較し、心血管疾患との関連性が弱かった。・メチルフェニデートは、心血管疾患との関連性が最も低かった。・アトモキセチンは、トルサード・ド・ポアント/QT延長との関連性が2番目に高かった。 著者らは「心血管疾患とADHD治療薬との関連は、さまざまであり、アンフェタミンはリスクが高いものの、リスデキサンフェタミンおよびメチルフェニデートは、安全性が良好であることが示唆された」と結論付けている。

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高齢患者の痛みに抗うつ薬は有効か

 医師は、高齢者の身体の痛みを和らげるために抗うつ薬を処方することがあるが、新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより、この治療法を支持する十分なエビデンスはほとんどないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)公衆衛生学部および筋骨格健康研究所のChristina Abdel Shaheed氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Clinical Pharmacology」に9月12日掲載された。 多くの国において、高齢者に対する抗うつ薬の最も一般的な適応は痛みである。今回の研究でAbdel Shaheed氏らは、65歳以上の高齢者を対象に、痛みの治療薬としての抗うつ薬の有効性と安全性について他の代替治療と比較したランダム化比較試験のエビデンスの評価を行った。 13種類の論文データベースを用いて、2024年2月1日までに発表された関連文献を検索したところ、適格条件を満たしたRCTはわずか15件(対象者の総計1,369人)であることが判明した。最もよく用いられていた抗うつ薬はデュロキセチンとアミトリプチリンで、それぞれ6件のRCTで検討されていた。治療効果は、変形性膝関節症による痛みに対して検討したRCT(6件)が最も多く、これらのRCTからは、短期間(0~2週間)の抗うつ薬による治療では統計学的に有意な痛みの軽減効果を得られないことが示されていた。ただし、デュロキセチンを中期的(6週間以上12カ月未満)に服用することで、非常にわずかながらも有意な痛みの軽減効果が認められた。一方、約半数(15件中7件)の研究で、転倒やめまい、傷害などの有害事象による試験参加者の離脱率は、抗うつ薬治療群の方が対照群よりも高いことが報告されていた。 こうした結果を受けてAbdel Shaheed氏は、「これらの抗うつ薬は、効果に関する十分なエビデンスがないにもかかわらず、患者の痛みを和らげるために処方され続けている」と強調する。 研究グループによると、標準的な国際ガイドラインは、概して慢性疼痛に対する抗うつ薬の使用を支持しているものの、そのガイドラインが根拠としているデータは高齢患者を対象としたものではないという。論文の筆頭著者であるシドニー大学公衆衛生学部のSujita Narayan氏は、「このようなガイドラインがあるために、医師が誤った判断をしている可能性がある」と指摘する。同氏は、「もし、私が時間に追われている臨床医だとするなら、ガイドラインを参照する場合には、慢性疼痛の管理に関する重要なポイントだけを拾い読みするだろう。そのポイントの中に、抗うつ薬の使用を勧める内容も含まれているということだ」と説明する。 Narayan氏はまた、抗うつ薬の服用を中止する傾向についても、「抗うつ薬の離脱症状は、オピオイドの離脱症状と同じくらいひどいことがある」と指摘する。同氏は、「抗うつ薬の服用をやめようと考えている人は、やめる前に主治医に相談し、必要に応じて減薬計画を立てることを勧める」と述べている。 Narayan氏は、「変形性膝関節症の痛みを軽減するためにデュロキセチンを使用している、または使用を検討している臨床医や高齢患者に対するメッセージは明確だ。薬を一定期間服用すれば効果が現れる可能性はあるが、その効果は小さい可能性があり、リスクとの比較検討が必要だということだ」と話している。

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半減期が短く持ち越し効果が少ない不眠症治療薬「クービビック錠25mg/50mg」【最新!DI情報】第25回

半減期が短く持ち越し効果が少ない不眠症治療薬「クービビック錠25mg/50mg」今回は、オレキシン受容体拮抗薬「ダリドレキサント塩酸塩(商品名:クービビック錠25mg/50mg、製造販売元:ネクセラファーマジャパン)」を紹介します。本剤は新規のデュアルオレキシン受容体拮抗薬であり、不眠症患者の過剰な覚醒状態を抑制し、睡眠状態へと移行させることが期待されています。<効能・効果>不眠症の適応で2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはダリドレキサントとして1日1回50mgを就寝直前に経口投与します。患者の状態に応じて1日1回25mgを投与することもできます。入眠効果の発現が遅れる恐れがあるため、本剤の食事と同時または食直後の服用は避けます。<安全性>副作用には、傾眠(3%以上)、頭痛、頭部不快感、倦怠感、疲労、悪夢(いずれも1~3%未満)、浮動性めまい、睡眠時麻痺、悪心(いずれも1%未満)、幻覚、異常な夢、睡眠時随伴症(夢遊症、ねごとなど)、過敏症(発疹、蕁麻疹など)(いずれも頻度不明)があります。本剤は主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝されるため、CYP3Aを強く阻害するイトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、セリチニブ、エンシトレルビルフマル酸を投与中の患者には禁忌です。また、中程度のCYP3A阻害作用を持つジルチアゼム、ベラパミル、エリスロマイシン、フルコナゾールなどは併用注意です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰に働いている覚醒システムを抑制して、より自然に近い睡眠を促します。2.必ず寝る直前に服用してください。3.アルコールと一緒に服用しないでください。4.食事と同時または食事の直後には、服用しないでください。5.他の睡眠薬と一緒に服用しないでください。<ここがポイント!>不眠症は罹患頻度の高い睡眠障害の1つです。不眠は、眠気や倦怠感による生産性の低下や、概日リズム障害による不登校やうつ病の発症などを引き起こすため、公衆衛生上の問題となっています。オレキシンは、覚醒と睡眠の調整に深く関わっている神経ペプチドであり、オレキシンがオレキシン受容体に作用すると覚醒が維持されます。オレキシン受容体のサブタイプであるオレキシン受容体タイプ1(OX1R)とオレキシン受容体タイプ2(OX2R)を阻害すると、脳の覚醒促進領域の活動が低下します。ダリドレキサント塩酸塩は、OX1RおよびOX2Rの活性化を阻害する新規のデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)であり、不眠症患者の過剰な覚醒状態を抑制し、睡眠状態へと移行させることが期待されます。ダリドレキサント塩酸塩は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬にみられる依存や耐性、反跳性不眠が少なく、高齢に対してせん妄の発現の心配もありません。なお、日本ではDORAとしてスボレキサントおよびレンボレキサントが発売されていますが、ダリドレキサント塩酸塩は他のDORAと比較して半減期が6.5時間程度(非高齢者)と短く、翌日への眠気の持ち越しが少ないと考えられます。日本人不眠症患者を対象とした国内第III相試験(ID-078A304試験)において、総睡眠時間(sTST)のベースラインからの変化量について、本剤50mg群とプラセボ群との差は、4週時に20.30分(95%信頼区間[CI]:11.39~29.20)であり、プラセボ群と比較して50mg群で有意にsTSTを延長しました(p<0.001、線形混合モデル)。同様に、4週時における睡眠潜時(sLSO)のベースラインからの変化量の本剤50mg群とプラセボ群との差は-10.66分(95%CI:-15.78~-5.54)であり、プラセボ群と比較して50mg群で有意にsLSOを短縮しました(p<0.001、線形混合モデル)。

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映画「路上のソリスト」(その1)【それが幸せ?なんで保護されたくないの?(ホームレスの心理)】Part 1

今回のキーワード統合失調症認知機能低下ホームレス支援施設自然化合理主義自然主義ホームレスと聞いて、皆さんはどんなイメージを持っていますか? 気の毒、そしてやはり衛生上や臭いの問題でしょうか? そんな彼らのなかに、支援施設を勧められても望まない人や、いったん施設に入ってもしばらくしてまた路上に戻ってくる人がいます。なぜでしょうか? つまり、なぜ保護されたくないのでしょうか? はたして、ホームレスを続けることは幸せなのでしょうか?今回は、映画「路上のソリスト」を取り上げます。この映画は、実話に基づいており、ホームレスの生き様や助けようとする主人公の葛藤には、リアリティがあります。この映画を通して、ホームレスの心理に迫ってみましょう。なんでホームレスになるの?舞台は大都会のロサンゼルス。大手新聞の人気コラムニストのロペスは、ネタ探しのためにたまたま通りかかった殺風景な公園で、みすぼらしくて風変りな身なりの中年男性に釘付けになります。彼は、弦が2本しかない壊れたバイオリンを巧みに奏でていたのでした。そして、そばにはガラクタの荷物を大量に積んだカートがあり、明らかにホームレスなのでした。興味を抱いたロペスは彼に話しかけます。彼の名前はナサニエル。かつてジュリアード音楽院に通っていたことを聞き出します。なぜ彼は権威ある名門校にいたのに、今は路上で暮らしているのでしょうか?ロペスは、ナサニエルの物語をコラムの連載記事にしようと思い立ち、彼への密着取材を始めます。しかし、ナサニエルの話は、唐突でまとまりなく一方的です。姉の連絡先がわかり、ロペスが電話してわかったことは、彼は若い頃に頭の中で聞こえてくる声に悩まされ、その音楽院を中退し、家では母親に毒を盛られたと言い張り、その後に家出をして行方不明になっていたということでした。つまり、彼は統合失調症を発症しており、幻聴、被害妄想、滅裂によって、社会生活が送れなくなり、長い間ホームレスになっていたのでした。実際に、精神科医によるホームレスの調査研究によると、うつ病40%、統合失調症15%、アルコール依存症15%で、彼らの多くに精神障害があります1)。また、知的水準においては、彼らの約30%が知的障害(IQが70未満)です2)。境界知能についての割合は明らかにされていませんが、正規分布において知的障害の約3倍が境界知能(IQが70以上85未満)であることから、彼らのほとんどが知的障害か境界知能であることが推測できます。つまり、ホームレスになってしまう原因は、もともと健常知能(IQが85以上)ではないことに加えて精神障害を発症することで、認知機能が低下して社会生活が困難になってしまうからです。次のページへ >>

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映画「路上のソリスト」(その1)【それが幸せ?なんで保護されたくないの?(ホームレスの心理)】Part 2

じゃあなんで保護されたくないの?ロペスは「路上に寝るなと私が言っても彼はここにいたいと言う。自分で選んだのだからと。その意思を尊重するべきだろうか。あるいは強制的にでも定住させてしまったほうが、この荒んだ掃きだめに捨ておくよりは、よほど人道的なのではないだろうか」と自問自答し、悩みます。実際に、ホームレスへのアンケート調査によると、ホームレスの40%が「今のままでいい」と回答しています3)。アンケートに応じなかった人も考慮すると、この割合はもっと多いことが示唆されます。なぜなんでしょうか?ここから、ロペスとナサニエルのやり取りを通して、ホームレスが保護を拒む精神医学的な原因を主に3つ挙げてみましょう。(1)自由がなくなるからロペスは、ナサニエルに「いいところがあるんだ。お金の心配はいらない」と切り出し、統合失調症の治療のための入院同意書らしきものを渡します。すると、ナサニエルは「僕は統合失調症じゃない! どこにも行かない。行きたいところは自分で決める。施設なんか死んでも行かない」「僕は大人だぞ。自分で自分のことはできる。あんたなんかの助けはいらない」と言い、怒り出します。原作によると、彼は入院したことがあり、入院生活で自由が制限されることを嫌と言うほど知っていたのでした4)。1つ目の原因は、認知機能の低下によって被害的になり、自由がなくなるのがストレスだからです。確かに、保護されれば食べ物、着る物、住む場所には困りません。しかし、同時に管理もされるため、どう生活するかの取り決めにある程度従う義務が発生します。とくに、日本のホームレス支援施設は、狭い相部屋による集団生活が基本で、食事や消灯の時刻なども厳しく決まっており、飲酒は禁止されています。また、彼のように強制的に入院させられた経験がある場合はなおさらです。もはや、社会が信用できないのです。逆に言えば、彼は、たとえ路上生活によって不自由であっても、自分で決める自由の方を重んじています。自由を得るために、路上生活をする責任に納得しています。もちろん、食べ物にどうしても困る時は、ホームレス支援センターに行って食事を施してもらいます。施しを受けることについても、あくまで自分で決めることに意味があるわけです。なお、日本におけるホームレスの場合は、認知機能の低下によって罪業的になり、「申し訳ない」「迷惑をかけたくない」と思い込んで保護を拒む人もいます2)。また、生活保護の申請に当たり、扶養義務のある家族に連絡が行ってしまうことを避けたいと考えているケースも見受けられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「路上のソリスト」(その1)【それが幸せ?なんで保護されたくないの?(ホームレスの心理)】Part 3

(2)清潔にしなければならないからロペスは、なかば強引にナサニエルを支援のアパートに連れていきます。そして、その部屋を「本当に清潔だよ」と好意的に案内します。しかし、ガラクタの汚い大荷物を手放せずに持ち込んだナサニエルは、戸惑うばかりなのでした。原作によると、彼は尿意を催した時にはトイレを探さずに、大都会のロサンゼルスでありながら、近くの茂みで立ちションをしていました4)。2つ目の原因は、認知機能の低下によって汚さや臭さを気にしなくなり、清潔にしなければならなくなるのが逆にストレスだからです。確かに、提供されたアパートは清潔です。しかし、同時にそれは借り物であるため、持ち込んだ持ち物や寝床(部屋)も清潔にする義務が発生します。逆に言えば、彼は、汚くて臭い持ち物や路上の寝床の方が、きれいにしなくていいため、むしろ馴染んでしまっています。これは、自然の中で自然体でありのままに生きる、自然化と呼ばれています。ただし、施しとして食べ物を得るためには、人の行き来が多い大都市にいる必要があります。とくに、日本では自動販売機のゴミ箱からアルミ缶を回収して日銭を稼ぐホームレスが多いです。だから、自然体を望みながら、人里離れた山奥ではなく真逆の都会に居続けるというギャップが生まれるのです。これは、ホームレスにとって路上が「ホーム」になるという逆説を起こしています。(3)先々のことを考えなければならないからロペスは、ナサニエルのためにアパートだけでなく、演奏の専属教師も手配します。演奏活動によって社会復帰を計画していたのでした。ロペスは「これはチャンスなんだ。棒に振るのか?」と迫るのですが、ナサニエルは「今のままでいい」と断ります。そして、路上で寝床に就く時は、大きなドブネズミの前で、「世界が安らかでありますように」と唱え、世界の平和を素朴に願うのでした。3つ目の原因は、認知機能の低下によって先々の見通しを立てられなくなり、先々のことを考えなければならなくなるのがストレスだからです。確かに、ロペスや教師の言う通りに演奏すれば、注目されお金も入ってくるでしょう。しかし、その契約のためにはその瞬間その瞬間でいろいろ我慢する義務が発生します。逆に言えば、彼は、ただその瞬間を生きており、自分のために演奏したいだけなのです。これは、合理主義とは真逆の価値観です。先ほどの自然化にちなんで、自然主義と言えるでしょう。ちなみに、この心理は、日本においてホームレスを施設に入所させて生活保護費を受け取らせても、すぐにパチンコなどのギャンブルやアルコールに使い込んで路上に舞い戻ってしまう現象を説明することができます。1)東京都の一地区におけるホームレスの精神疾患有病率:森川すいめいほか、日本公衆衛生雑誌、20112)漂流老人ホームレス社会p.22、p.147:森川すいめい、朝日文庫新刊、20153)ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果について:厚生労働省、20214)路上のソリストp.200、p.372:スティーヴ・ロペス、祥伝社、2009<< 前のページへ

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不安症に対するベンゾジアゼピン使用、気分障害や物質使用障害の長期リスクと関連

 ベンゾジアゼピン(BZD)は、不安症に広く用いられる薬剤であるが、メンタルヘルスへの長期的な影響、とくに慢性的なBZD使用とその後の気分障害や物質使用障害(SUD)との潜在的な関連性は、あまりよくわかっていない。米国・ワシントン大学のChing-Fang Sun氏らは、不安症に対するベンゾジアゼピン使用と、その後の気分障害やSUDリスクとの関連を明らかにするため、5年間にわたるレトロスペクティブコホート研究を実施した。Drug and Alcohol Dependence Reports誌2024年9月号の報告。 リアルタイムの電子医療記録ネットワークであるTriNetXデータベースを用いて、5年間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、18〜65歳の不安症(ICD-10-CM:F40-48)患者。BZD群(BZD処方:12回以上)とマッチした非BZD群の抽出には、傾向スコアマッチングを用いた。アウトカムは、うつ病、双極症、SUDの診断とした。診断およびBZD使用後の5年間の生存確率を評価するため、カプランマイヤー分析を用いた。log-rank検定により、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・7万6,137例を特定し、マッチングを行った。・BZD群は、非BZD群と比較し、次の診断リスクが有意に高かった。【うつ病】HR:2.64、95%CI:2.59〜2.68【双極症】HR:4.39、95%CI:4.15〜4.64【全般的なSUD】HR:3.00、95%CI:2.92〜3.08【アルコール使用障害】HR:3.38、95%CI:3.20〜3.57【覚醒剤使用障害】HR:3.24、95%CI:2.95〜3.55【大麻使用障害】HR:2.93、95%CI:2.75〜3.11【吸入剤使用障害】HR:4.14、95%CI:3.38〜5.06【ニコチン使用障害】HR:2.72、95%CI:2.63〜2.81 著者らは「BZD使用とさまざまな気分障害やSUD診断リスクの増加との間には、懸念すべき関連性が示唆された」と結論付けている。

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