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米アルツハイマー病協会が新たな診療ガイドラインを作成

 アルツハイマー病(AD)の専門家グループが、新たに包括的な診療ガイドラインを作成し、家庭医や脳専門医がADおよびAD関連疾患(ADRD)を最も効果的に検出する方法を提示した。この新ガイドラインは、「Alzheimer’s & Dementia」に12月23日掲載された。 このガイドラインでは、次に挙げる3つの一般的な基準に従い脳の健康状態を評価することを推奨している。それは、1)患者の全体的な認知障害のレベル、2)記憶、推論、言語、気分などに関わる特定の症状の有無、3)症状を引き起こしている可能性のある脳疾患の有無。 本ガイドラインの筆頭著者である、米アルツハイマー病協会および米ハーバード大学医学大学院神経学分野のAlireza Atri氏は、「これらの診断領域は、ADをはじめとする認知症に関する新たな研究成果が得られるたびに、新しい検査方法をガイドラインに組み込むことができるよう、意図的に広く定義されている」と話す。また同氏は、「本ガイドラインは、米国初の学際的なガイドラインとして広範な臨床状況で利用できるように設計されており、高品質で個別化された診断プロセスを体系的にまとめた包括的な基盤を提供する。このプロセスには特定の検査が組み込まれており、分野の進展に応じて更新することが可能だ」と説明する。さらに、「新しいツールやバイオマーカーが十分に検証され、実臨床で使用されるようになれば、本ガイドラインも、細部で部分的な修正が必要になるだろう」と付け加えている。 ADをはじめとする認知症の研究は着実に進展しているが、認知機能低下の診断に関する現在のガイドラインは20年以上も前に作られたものだと専門家は指摘する。さらに、これらのガイドラインは神経学や認知症の専門医を対象としたものであり、脳の健康に不安のある患者を診察する家庭医に対する指針は示されていなかった。こうした現状を踏まえて、アルツハイマー病協会は今回のガイドライン作成に当たり、脳の健康の評価プロセスを刷新するために、プライマリケア医や専門医など、複数の医療分野の専門家から成るワーキンググループを招集した。 新ガイドラインの上席著者でアルツハイマー病協会の最高科学責任者であるMaria Carrillo氏は、「新ガイドラインは、記憶に関する訴えを評価する際の指針を医師に提供する重要なものだ。記憶の問題の根底にはさまざまな原因が関与している可能性がある。そのため、そのような訴えの評価は、ADを早期かつ正確に診断するための出発点となる。さらに、このガイドラインは、記憶障害の一因となる可能性のある他の根本的な原因に関する情報を臨床医に提供する」とアルツハイマー病協会のニュースリリースの中で述べている。 脳の健康状態の総合的な評価には、次のようなことが含まれている。・記憶力と思考力のテスト・年齢、認知症の家族歴、高血圧、喫煙などのリスク因子の評価・認知機能の低下を反映している可能性のある日常生活の症状の評価・MRIまたはCTによる脳の検査、およびその他の臨床検査 ワーキンググループによれば、新しい検査やスキャンは、開発され次第、このフレームワークに追加される可能性があるという。本ガイドラインの共著者である米マサチューセッツ総合病院前頭側頭葉疾患ユニットのBradford Dickerson氏は、「このガイドラインは、従来のガイドラインの範囲を拡大し、診断プロセス全体にわたる推奨事項を臨床医に提供する」と述べる。同氏はまた、「われわれは医療専門家に対して、認知症評価の目標についての自分の考えが患者と一致しているかを確認することから始めることを推奨している。そのためには通常、プロセスの具体的な手順について患者に説明し、理解を得るための話し合いが必要になる。その後、症状や検査に関する情報の取得に必要な手順を概説し、患者に合わせたさまざまな診断テストを行い、診断開示プロセスに関するベストプラクティスをまとめると良い」と話している。

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日本における片頭痛診療の現状、今求められることとは

 日本では、片頭痛を治療する医療機関および医師の専門分野における実際の治療パターンに関する調査は十分に行われていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、日本の片頭痛患者の実際の臨床診療および治療パターンを医療機関や医師の専門分野別に評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。PLoS One誌2024年12月19日号の報告。 2018年1月〜2023年6月のJMDC Incより匿名化された片頭痛患者のレセプトデータを収集した。片頭痛を治療する医療機関および医師の専門分野別に患者の特性や治療パターンを評価した。 主な内容は以下のとおり。・対象は、片頭痛患者23万1,156例(平均年齢:38.8±11.8歳、女性の割合:65.3%)。・クリニックで初回処方を受けた患者は81.8%、画像検査を行った患者は42.5%、初回診断時に一般内科を受診した患者は44.4%、脳神経外科を受診した患者は25.9%。・画像検査の実施率は、専門医のいるクリニックで59.4%、専門医のいる病院で59.1%、専門医のいない病院で32.9%、専門医のいないクリニックで26.9%。・全体として、急性期治療を受けた患者は95.6%、予防治療を受けた患者は21.8%。・専門医のいる施設といない施設を比較すると、専門医のいる施設ではトリプタンの処方頻度が高く(67.9% vs.44.9%)、アセトアミノフェンおよびNSAIDsの処方頻度が低かった(52.4% vs.69.2%)。・予防治療の頻度は、専門医がいる施設(27.4%)のほうがいない施設(15.7%)より高く、医療機関の種類を問わず年々増加していた。 著者らは「日本の片頭痛患者のうち、初回診断時に専門医のいる施設を受診した患者は半数のみであり、専門医は非専門医よりも、片頭痛特有の薬剤および予防薬を使用する傾向が高かった」とし「片頭痛患者に対し専門医受診の必要性を広め、専門医と非専門医の医療連携を強化することが求められる」と結論付けている。

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高齢患者の抗菌薬使用は認知機能に影響するか

 高齢患者の抗菌薬の使用は認知機能の低下とは関連しないことが、新たな研究で明らかにされた。論文の上席著者である米ハーバード大学医学大学院のAndrew Chan氏は、「高齢患者は抗菌薬を処方されることが多く、また、認知機能低下のリスクも高いことを考えると、これらの薬の使用について安心感を与える研究結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「Neurology」に12月18日掲載された。 研究グループは、人間の腸内には何兆個もの微生物が存在し、その中には認知機能を高めるものもあれば低下させるものもあると説明する。また、過去の研究では、抗菌薬を使用すると、腸内細菌叢のバランスが崩れる可能性のあることが示されているという。Chan氏は、「腸内細菌叢は、全体的な健康の維持だけでなく、おそらくは認知機能の維持にも重要とされている。そのため、抗菌薬が脳に長期的な悪影響を及ぼす可能性が懸念されている」と話す。 今回の研究でChan氏らは、低用量アスピリンの毎日の使用が健康に与える影響を検証する臨床試験のデータを用いて、抗菌薬の使用と認知機能との関連を検討した。対象は、最初の2年間の追跡期間中に認知症を発症しなかった70歳以上の健康なオーストラリア人高齢者1万3,571人(平均年齢75.0歳、女性54.3%)。Anatomical Therapeutic Chemical(ATC)コードを基に、対象者の追跡期間中における抗菌薬の使用を特定したところ、約63%が2年間に少なくとも1回は抗菌薬を使用していた。 2年間の追跡調査終了後、対象者は中央値で4.7年間追跡された。その間に、461人が認知症を発症し、2,576人が認知機能障害はあるが認知症ではない状態を指すCIND(cognitive impairment, no dementia)と診断されていた。社会人口統計学的特徴やライフスタイル因子、認知症の家族歴、試験開始時の認知機能、認知機能に影響を与えることが知られている薬剤の使用を考慮して解析した結果、抗菌薬使用者では非使用者に比べて、認知症リスク(ハザード比1.03、95%信頼区間0.84〜1.25)やCINDリスク(同1.02、0.94〜1.11)の有意な上昇や認知機能スコアの有意な低下は認められなかった。また、抗菌薬の累積使用頻度、長期使用、特定の抗菌薬クラス(β-ラクタム系、テトラサイクリン系、サルファ剤など)や、リスク因子に基づき分類されたサブグループにおいても、抗菌薬の使用と認知機能との間に有意な関連は認められなかった。 このような結果が示されたとはいえ、Chan氏および付随論評の著者である米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のWenjie Cai氏とAlden Gross氏は、「さらなる研究で、抗菌薬の使用と認知機能低下との間に関連性はないことを確かめる必要がある」と述べている。Chan氏は、今回の研究の限界点として、対象者の追跡期間が短期間であった点を挙げ、より長期間の研究を実施して、抗菌薬の使用が長期的に脳の健康に悪影響を及ぼさないことを確認する必要があるとしている。 また、Cai氏らは、「この研究は処方箋の記録に依存しているため、対象者の実際の抗菌薬の使用状況を正確に追跡することはできなかった」ことを別の限界点として挙げている。その上で同氏らは、今後の研究では、抗菌薬の正確な投与量と使用期間を記録し、潜在的な用量反応関係を調査すること、また、異なるクラスの抗菌薬とその相互作用が認知機能に与える影響を調査することの必要性を強調している。

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出産後の抜け毛の量が育児中の不安に独立して関連

 出産後に抜け毛が多い女性は不安が強く、交絡因子を調整後にも独立した関連のあることが明らかになった。東京科学大学病院周産・女性診療科の廣瀬明日香氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に10月27日掲載された。 個人差があるものの、出産後女性の多くが抜け毛を経験し、一部の女性は帽子やかつらを使用したり外出を控えたりすることがあって、メンタルヘルスに影響が生じる可能性も考えられる。産後の脱毛症の罹患率などの詳細は不明ながら、廣瀬氏らが以前行った調査では、育児中女性の91.8%が「抜け毛が増えた」と回答し、73.1%がそれに関連する不安やストレスを感じていることが明らかにされている。今回の研究では、その調査データをより詳しく解析し、産後脱毛と育児中のメンタルヘルスとの関連を検討した。 2021年6月~2022年4月に東京医科歯科大学病院(現在は東京科学大学病院)と東京都立大塚病院で出産した女性1,579人に対して、出産後10~18カ月時点にオンライン調査への回答協力を依頼。回答を得られた中から、多胎妊娠や出産以前に脱毛症の既往のあった女性を除外した331人を解析対象とした。なお、季節による脱毛量の変化を考慮し、回答依頼は8カ月の間隔をおいて2回実施された。 主な調査項目は、産後の脱毛量の質問(全くない/少し/かなり/非常に多いの四者択一)と、Whooleyの質問票、2項目の全般性不安障害質問票(GAD-2)、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)、およびアテネ不眠尺度(AIS)によるメンタルヘルス状態の評価。解析対象者の主な特徴は、出産時年齢が34.5±4.5歳で、経産婦が27.2%、経腟分娩65.8%であり、脱毛量は「全くない」8.2%、「少し」30.8%、「かなり」46.5%、「非常に多い」14.5%だった。 メンタルヘルス状態については、Whooleyの質問票の「気分が落ち込む」に33.5%、「何をしても楽しくない」に22.4%、GAD-2の「緊張や不安、神経過敏を感じる」に28.7%、「心配をコントロールできない」に16.6%が「はい」と回答していた。EPDSは、総合スコアが30点満点中6.5点、不安とうつのサブスケールはそれぞれ9点満点中2.9点、3.7点であり、AISは24点満点中6.8点だった。また、脱毛が「全くない」と回答した人以外に脱毛関連の不安やストレスを質問したところ、「全くない」が26.9%、「少し」が47.2%、「かなり」が18.9%、「非常に強い」が7.0%だった。 脱毛量とメンタルヘルス関連指標との関係性を単変量解析で検討した結果、脱毛量が「非常に多い」群では「全くない」群に比べて、GAD-2の「緊張や不安、神経過敏を感じる」の該当者が有意に多かった(オッズ比〔OR〕4.47〔95%信頼区間1.34~14.93〕、P=0.01)。また有意水準未満ながら、脱毛量が「非常に多い」群はGAD-2の「心配をコントロールできない」(OR4.17〔同0.86~20.26〕、P=0.08)の該当者が多く、EPDSの評価に基づく不安が強い傾向が見られた(係数1.06〔-0.14~2.25〕、P=0.08)。 上記の解析で有意な関連の見られたGAD-2の「緊張や不安、神経過敏を感じる」を従属変数とし、出産時年齢、分娩方法、不妊治療、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、出生時体重、授乳状況、および脱毛量などを独立変数とするロジスティック回帰分析を行ったところ、脱毛量が「非常に多い」こと(調整オッズ比〔aOR〕4.86〔1.21~19.53〕、P=0.026)と、不眠症状(AISが1高いごとにaOR1.26〔1.17~1.35〕、P<0.001)が、それぞれ独立した正の関連因子として抽出された。なお、経産婦であることは、有意な保護的因子として示された(aOR0.53〔0.36~0.80〕、P=0.002)。 著者らは本研究を、「育児中の女性における産後の抜け毛とメンタルヘルスとの関連を示した初のエビデンスである」とした上で、「産後の脱毛量の多さは、GAD-2で評価した不安と独立した関連が認められる」と結論付けている。なお、脱毛を経験した女性がより積極的に回答した可能性があることによる選択バイアスの存在や、横断研究のため因果関係は不明といった限界点とともに、「産後の不安が強い女性ほど、脱毛量をより多く感じやすい可能性もある」との考察が加えられている。

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新しい認知症観と疫学(解説:岡村毅氏)

 「新しい認知症観」という言葉がキーワードになっている。昨年12月に閣議決定された「認知症施策推進基本計画」には、お役所とは思えない情熱的な表現がちりばめられている。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ……「新しい認知症観」とは、認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも、一人一人が個人としてできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方…… 認知症の人を含めた国民一人一人が「新しい認知症観」に立ち……共生社会を創り上げていく…… 認知症の人が……最期まで自分らしく暮らせるよう……認知症の人の尊厳を保持できるようにすることが重要……―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― このような熱い思いで国の方針を考えている人がいることに胸が熱くなる。なぜ「新しい認知症観」かというと、認知症ほど、概念が変化しているものはないからだ。近年では「疾病ですらない」というやや極端な意見もある。 私の理解する歴史的変遷を簡単に述べよう。(1)昔の人は認知症になる前に死んでしまったので、多くの人にとって認知症は興味の対象ではなかった。(2)豊かな社会が到来し、認知症の人が増え始めた。人々はパニックになり、「痴呆」と呼び、酷い扱いを受けた。(3)これに対して「認知症は病気である、本人の落ち度でなったわけじゃない、病院で優しく保護しよう」という医学モデルの啓蒙が行われた。病院や施設での「保護」もまた排除であった。(4)認知症は病気であるならば、予防できるはずだ、根絶できるはずだという牧歌的な認知症観が日本でまったりと続いた。(5)スコットランドで認知症の当事者が声を上げ、本人なしに決めないでほしい、という主張が徐々に広まり、認知症国家戦略が世界各地で策定された。(6)日本でも多くの勇気ある当事者が声を上げた。彼らは一様に「自分は認知症と診断されたとき情報を集めたら、数年で何もわからなくなると書いてあって絶望した。しかしいろいろ工夫して楽しく生きているし、仲間と出会って、認知症と共に普通の生活を続けることもできるのだとわかった」と述べている。(7)アルツハイマー型認知症の神経病理学の研究が粛々と進み、プレクリニカル期に介入することで、進行を大幅に遅らせる時代がもうすぐ来そうだ。 認知症観の変革が速すぎて、専門家のはずの私もめまいがしそうだ。高齢化のトップランナーである日本ではなく、スコットランドで21世紀初頭に改革が起きた。しかし認知症基本法も成立し、日本の社会もものすごい勢いで変わっている。素直に政府を評価するべきだろう。 さて、熱く盛り上がったところで、この論文を読んでみよう。非常にがっかりする人も多いのではないか。65歳で診断された人の余命は、男性は5.7年、女性は8年である。85歳だと男性は2.2年、女性は4.5年である。またおよそ3.3年で施設に入所すると淡々と書いてある。これでは、日本の勇気ある当事者の皆さんが戦った、「認知症と診断されたら早期に何もできなくなる」というナラティブそのものではないか。 注意しなければならないのは、これは過去の縦断研究のシステマティックレビューであり、これが正しいとは限らないということだ(逆に間違っていると決めつけてもだめだ)。喜んだり悲しんだりするようなことではなく、過去の知見の集積がこうなっているということだ。 コロンブスがアメリカ大陸を「発見」する前にシステマティックレビュー的なことをしたら、おそらく「大西洋を西のほうに行くと滝がある」と書かれていることだろう。 たとえば、東京都健康長寿医療センターの高島平フィールドから出た論文では、地域の認知症の人のうち、病院で診断を受けていた人は半数以下であった。また、専門医であれば気が付いているはずだが、認知症と診断しても、その後ほとんど変わらない人もそれなりにいる。ただし、今後アミロイドペットなどにより、アルツハイマー型認知症の診断が正確にできるようになると、状況は変わるかもしれない。 予後は、認知症の人を支える社会の仕組みにも大いに影響を受けるだろう。国民皆保険、介護保険制度という世界で最も手厚い制度を擁するわが国で、診断後に数年で亡くなるということはありえない。実際にこのシステマティックレビューでもアジアのデータでは欧米より長生きだそうだ。 私は臨床医であり、同時にコミュニティで社会医学的研究をしている。両方知っている者として少し語らせてもらうならば、「医療から見える人はやはりニーズがあり、それなりの症状がある人が多く、いわば重たいケースが多い」「コミュニティには定義上は認知症になりそうだが楽しく生活している人もいて、こういう人は医療や研究には縁のない人生を歩みそうだから、現在の知見は重たい人に多少引っ張られているようには見える」と考えている。とはいえ、これはあくまで印象である。 認知症観は大きく変革している。疫学はどうしても過去にデザインされたものであり、過去にデータ測定されたものだ。遅れるのは仕方がないだろう。 臨床において大事なことは自分の頭で考えること、患者さんから学ぶこと、そして論文もしっかり読むことだ。いろいろと考えさせられる論文である。

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グルタミン酸調整薬evenamideは治療抵抗性統合失調症の新たな選択肢となるのか〜国際第III相臨床試験

 グルタミン酸調整薬evenamideは、治療効果不十分または治療抵抗性の統合失調症に対する併用薬として、現在第III相臨床試験が行われている。スイス・Anand Pharma ConsultingのRavi Anand氏らは、第2世代抗精神病薬で治療効果不十分な慢性期統合失調症患者を対象に、evenamide併用療法の有効性、安全性、忍容性を評価するため、国際第III相臨床試験を実施した。Neuropharmacology誌2025年3月号の報告。 対象は、第2世代抗精神病薬の安定した用量で2年以上治療を行っているが、依然として症状が残存する(PANSS:70〜85、CGI-S:4〜6、主な症状:陽性症状)18歳以上の慢性期統合失調症外来患者(DSM-V基準)。経口evenamide(30mg1日2回)併用療法による有効性、安全性、忍容性を評価するため、4週間のプロスペクティブランダム化二重盲検プラセボ対象試験を実施した。対象患者は、21日間のスクリーニング期間終了後、evenamide群またはプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、PANSS合計スコア(毎週評価)のベースラインからの変化とし、主要エンドポイントは4週時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者291例のうち、11例(3.8%)は早期中止に至った。・evenamide併用療法は、すべての有効性アウトカムにおいて、プラセボよりも統計学的に有意な改善が認められた(29日目のPANSS合計スコアの絶対差:2.5、p<0.05、Cohen's d effect size=0.33)。・臨床的に意味のあるベネフィットとの関連も認められ、忍容性も良好であった。 著者らは「第2世代抗精神病薬で治療効果が不十分な慢性期統合失調症患者に対するevenamide併用療法の有効性および臨床的に意味のあるベネフィットが認められたことは、新たな治療パラダイムとなりうる可能性を示唆している」と結論付けている。

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緑茶に認知症予防効果?~65歳以上の日本人約9千人の脳を解析

 緑茶の摂取が認知症の予防につながる可能性が報告された。柴田 修太郎氏(金沢大学医薬保健学総合研究科 脳神経内科学)らの研究グループは、認知症のない65歳以上の日本人を対象として、緑茶およびコーヒーの摂取量と脳MRIの関係を検討した。その結果、緑茶の摂取量が多いほど、脳白質病変容積が小さい傾向にあった。一方、コーヒーには脳MRIの解析結果との関連はみられなかった。本研究結果は、npj Science of Food誌2025年1月7日号に掲載された。 健康長寿社会の実現を目指し、65歳以上の1万人超を対象として実施されている認知症コホート研究「JPSC-AD研究」の参加者のうち、認知症がなく脳MRIデータを取得できた8,766人を対象として、本研究を実施した。対象者を緑茶、コーヒーの1日当たりの摂取量(200mL以下、201~400mL、401~600mL、601mL以上)で分類し、脳白質病変、海馬、全脳の容積との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・多変量解析の結果、緑茶の摂取量が多いほど脳白質病変容積が小さい傾向にあった(p for trend=0.007)。・緑茶の摂取量と海馬、全脳の容積には関連がみられず、コーヒーの摂取量は脳白質病変、海馬、全脳の容積のいずれとも関連がみられなかった。・抑うつを有する集団、APOEε4アレルを有する集団では、緑茶の摂取量と脳白質病変の関連はみられなかった。 本研究結果について、著者らは緑茶にはエピガロカテキンガレートが含まれており、抗酸化作用や血圧低下作用などにより、脳白質病変が縮小した可能性があると考察している。また、脳白質病変は血管性認知症やアルツハイマー型認知症と密接な関係があることから、緑茶の摂取が認知症予防に役立つ可能性があるとまとめている。

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自傷行為に関する誤った認識が少なくない

 自傷行為に関する人々の認識を調査した結果が報告された。固定観念を持つ人が少なくないこと、自傷行為を行う人に適切に対応できる自信があると答えた人ほど、かえってその傾向が強いことなどが明らかにされている。お茶の水女子大学生活科学部心理学科の高橋哲氏らの研究であり、詳細は「PCN Reports」に11月5日掲載された。 青少年の6人に1人が自傷行為の経験を有するというデータがある。自傷行為自体は自殺を意図しない行為であり、用いられる方法や予期する結果や機能などの点で自殺と区別して考えられるものの、同時に、既往者はその後の人生で自殺を試みるリスクが高いとする報告があり早期の介入が重要とされる。しかし、自傷行為に関する誤った認識が人々の間で広くいきわたっているとされ、一例を挙げると、自傷行為は単に他者からの注目を集めたいがために行われるといったものがある。このような誤解は偏見を助長し、当事者がサポートを求める妨げとなる可能性がある。高橋氏らは、自傷行為に関する人々の認識を把握するとともにその認識に関連する要因を検討するため、webを用いた横断研究を実施した。 この研究は、2023年12月に、オンライン調査会社のパネル登録者を対象に実施された。教示を十分に読んでいないなど回答に際して十分な注意を払っていない者を除外した上で、20~60歳代(10歳ごと)の男女、計10カテゴリーの有効回答数が各200件に達するまで回答を受け付け、合計2,000人を解析対象とした。調査内容は、主に先行研究の結果に基づいてリスト化された、自傷行為に関してよく聞かれることのある14項目の誤解や信念を掲げ、それらに対する同意の程度を1~6点(全くあてはまらない~よくあてはまる)のリッカート尺度で回答してもらうというもの。解析に際しては、1~3点を非同意、4~6点を同意とした。 解析対象者の主な特徴は、平均年齢が44.6±14.3歳、既婚者52.0%、子どもありが38.7%で、13.5%は家族や知人に自傷行為を繰り返している人がおり、5.3%は対人援助職(医師、看護師、教師、心理士、カウンセラーなど)としての勤務経験があり、9.1%は自傷行為を行う人がいたら適切に対応できる自信があると回答した。 14項目の誤解・信念への同意率は、21.0~68.7%の範囲だった。同意率が高い項目は、「自傷行為の経験を友人や知人に打ち明ける未成年者は非常に少ない(68.7%)」、「リストカットをはじめとする自傷行為は、自殺未遂の一形態である(68.3%)」、「自傷行為の大半はリストカットである(51.4%)」、「自傷行為は、精神疾患を患っている人の行為である(48.9%)」、「自傷行為はまわりの注目を集めるために行われる(40.8%)」などだった。 それぞれの誤解・信念を従属変数、性別、年齢層、および、家族や知人に自傷行為を繰り返している人の有無、対人援助職経験の有無、自傷行為を行う人への対応能力の自信の有無などを独立変数とするロジスティック回帰分析を施行。その結果、男性は「自傷行為は、めったにみられない現象である」への同意が女性より多く(調整オッズ比〔aOR〕1.45〔95%信頼区間1.17~1.79〕)、一方で女性は「自傷行為はもっぱら刺激を求めて行われる」(男性のaORが0.77〔同0.62~0.96〕)を含む複数の誤解・信念への同意が男性より多かった。 年齢層との関連を見ると、若年層は「自傷行為はもっぱら刺激を求めて行われる」と捉える傾向が認められた(20~29歳を基準として他の年齢層はaOR0.25~0.59で有意)。また、対人援助職経験を有することは、「自傷行為はまわりの注目を集めるために行われる」の同意と関連していた(aOR1.62〔1.07~2.46〕)。 このほか、自傷行為を行う人へ適切に対応する自信があると回答した人は、誤解にむしろ同意する傾向が強かった(14項目中10項目に関連)。この点について著者らは、自己能力の過大評価により複雑な現象を単純化して解釈しやすくなることなどが関与している可能性を指摘し、「偏った認識に基づく善意のサポートが当事者には逆効果になり得る」と注意を喚起。論文の結論は、「本研究により自傷行為の予防介入に関する新たな知見を得られた。自傷行為に関する固定観念を持つことや早急な解釈の一般化を避けること、および研究者からの正確な情報の発信が、この社会課題の解決と当事者のサポートに不可欠である」と述べられている。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その1)【なんで精神科病院に入院しなきゃいけないの?なんで閉じ込められたり縛られたりするの?(強制入院)】Part 1

今回のキーワード医療保護入院措置入院行動制限身体拘束隔離通信制限皆さんは、強制入院と聞くと何をイメージしますか? ちょっと怖いイメージでしょうか? それでは、なぜ強制的に入院させられるのでしょうか? さらに、なぜ病室に閉じ込められたり縛られたりするのでしょうか?今回は、強制入院をテーマに、映画「クワイエットルームにようこそ」を取り上げます。この映画は、精神科病院での入院生活の日常をポップでコミカルに描きながらも、実はさりげなく強制入院のあり方への疑問も投げかけています。まずは、医療監修の視点も加えて、ツッコミを入れながら解説してみましょう。なんで強制的に入院させられるの?主人公は明日香。28歳のフリーライター。ある時、目が覚めると、知らない白い部屋で自分が縛られていることに気付きます。そして、遠くで女性の叫び声が聞こえてきます。いきなり、ホラーな展開です。彼女はわけがわからず、不安におののきます。しばらくして看護師がやってきて、そこが精神科病院の閉鎖病棟であり、彼女は強制入院をさせられ、身体拘束をされていると聞かされます。まず、なぜ彼女は強制的に入院させられているのでしょうか? その理由(要件)を大きく3つ挙げてみましょう1)。(1)自他への不利益が差し迫っている明日香は、担当看護師から「アルコールと睡眠薬の過剰摂取によって昏睡状態になっているところを、同居人の方に発見されて、ここに来たんです」と聞かされます。1つ目の理由は、自他への不利益が差し迫っていることです。このような自分を傷つけること(自傷)のほかに、暴力など他人を傷つけること(他害)、摂食や排泄などの身辺自立が困難であること(自立不全)が挙げられます。(2)精神障害がある明日香は、酔った勢いで「私はひどい女」「私には価値なんかないんだから」と泣き叫び、同居人宅の2階から飛び降りようとしていました。また、救急病院で胃洗浄をされている時、「死なせてください」と言っていました。その後、意識が戻ったところで、担当看護師から「希死念慮にとらわれた気分変調症の疑いがあるって聞きましたけど。簡単に言えば、自殺願望ですね」と説明されます。2つ目の理由は、精神障害があることです。気分変調症は、うつ病や双極性障害と同じ気分障害の1つです。このほかに、統合失調症や認知症などが挙げられます。逆に言えば、ただの酔っ払い、ハンガーストライキ、純粋な犯罪など合理的な理由がある場合は、精神障害によるものではないため、強制入院の対象にはなりません。(3)判断能力が著しく低い明日香は、救急病院で胃洗浄の処置を受けますが、ベッドの空きがなかったために、意識が戻る前に精神科病院に転院となります。これは、かなりレアケースです。本来は、意識が戻ったところで、医師(多くは精神科医)が判断能力を評価し、精神科病院への転院が必要か判断します。3つ目の理由は、判断能力が著しく低いことです。これは自他に不利益となっている自覚がないことであり、明日香のような意識障害のほかに、認知機能障害、病識欠如が挙げられます。逆に言えば、自覚できて入院に同意している場合は、任意入院となり、強制入院にはなりません。また、たとえばリストカット(自傷)をするのはすっきりするだけのためと自覚して常習的にやっている場合(情緒不安定性パーソナリティ障害)や、悪酔いから覚めて我に返り謝罪や反省の弁を述べている場合(アルコール依存症)は、判断能力が保たれているため、外来通院は勧められますが、強制入院の対象にはなりません。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その1)【なんで精神科病院に入院しなきゃいけないの?なんで閉じ込められたり縛られたりするの?(強制入院)】Part 2

どうやって強制的に入院させるの?それでは、どうやって強制的に入院させるのでしょうか? そのルート(法的根拠)を大きく2つ挙げてみましょう。(1)家族等の同意による入院―医療保護入院明日香は、担当看護師から「同居人の許可はとっています」「担当医と保護者の同意がないと、退院はできません」「あなたの意思でなく、保護者と医師の判断による入院です」との説明を受けます。1つ目のルートは、家族等の同意による入院です(医療保護入院)。これは、入院が必要と精神科医(精神保健指定医)が判断し、家族が同意すれば可能になります。なお、「同居人」「保護者」は、明日香と3年同棲中の鉄雄になっていました。3年以上同棲していれば、確かに一般的には内縁の夫の扱いにはなります。しかし、医療保護入院の同意者は、婚姻をした法律的な夫か血縁関係のある家族である必要があるため、実は鉄雄の同意は無効です。明日香の母親なら、絶縁していましたが、有効になります。(2)都道府県知事の措置による入院-措置入院もう1つのルートは、都道府県知事の措置(行政処分)による入院です(措置入院)。これは、知事から診察命令を受けた精神科医(精神保健指定医2名)が、自傷か他害のおそれがあるために入院が必要と判断すれば可能になります。なお、行政処分であるため、警察に保護されるなどして行政的な手続きを経る必要もあります。明日香の場合は、精神科病院に直接転院してしまったために、自傷はあったものの、警察に保護されることなく、措置診察(措置入院の判断のための診察)は行われませんでした。なんで閉じ込められたり縛られたりするの?明日香は、両手と両足と胴体の5点を白いベルトで縛られ、ベッドに体を固定されていました。病室(保護室)に閉じ込められることは隔離、体を縛られることは身体拘束と呼ばれます。どちらも行動制限であり、人権侵害に当たります。それなのになぜ可能なのでしょうか?明日香の様子を窓から覗いていた患者は、「クワイエットルームにようこそ」「保護室のこと。私たちはそう呼んでるの。人に迷惑をかけたり、自分の命を粗末にする人を閉じ込めておくところ」とあとで教えてくれます。また別の患者が椅子を振り上げてナースステーションの窓ガラス(強化ガラス)を叩き割ろうとするなど暴れている様子を見て、「クワイエット行きだな」と言っていました。医学的に言えば、隔離拘束の理由(要件)は、自傷、他害、多動不穏、身体合併症が挙げられます。なお、多動不穏とは、自傷他害レベルではないですが、落ち着かず病棟生活が難しい状態です。身体合併症とは、点滴や酸素吸入をしている場合、それらを抜いたり外したりするのを予防するための安全管理上の理由があります。そのほかの制限として、危険物などの持ち物制限が挙げられます。映画では喫煙のためのライターがナースステーションの窓口に置かれており、ライターの持参は禁止されていました。現在は、そもそも喫煙が病院で全面禁止されているため、映画のように病棟内に喫煙所やライターがあることはありえません。ちなみに、明日香が入院していた病棟は女子病棟となっていますが、現在多くの病棟は男女混合病棟に変わっています。また、通信制限も挙げられます。基本的に携帯電話の持ち込みは禁止されています。映画のように、公衆電話の設置が義務付けられ、どんな理由でも手紙を出す権利は制限されませんが、不便ではあります。1)「精神科救急医療ガイドライン」P8-P10:日本精神科救急学会、2022<< 前のページへ

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PTSDの薬物療法、ブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法が有望〜第III相臨床試験

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、新たな薬物治療の選択肢が求められている。米国・アラバマ大学バーミンガム校のLori L. Davis氏らは、PTSDに対するブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の有効性、安全性、忍容性を検討するため、第III相二重盲検ランダム化比較試験を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年12月18日号の報告。ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法でPTSD症状の有意な改善 2019年10月〜2023年8月に米国の臨床試験施設86施設で実施された。PTSD成人外来患者を対象に、ブレクスピプラゾール(可変用量:2〜3mg/日)+セルトラリン(150mg/日)併用療法とセルトラリン(150mg/日)+プラセボ治療との比較を行った。1週間のプラセボ導入期間後に11週間の二重盲検ランダム化実薬対照並行群間期間(21日間のフォローアップ調査)を設けた。主要アウトカムは、ランダム化後(1週目)から10週目までのClinician-Administered PTSD Scale for DSM-5(CAPS-5)合計スコア(20のPTSD症状の重症度を測定)の変化とした。安全性評価には、有害事象を含めた。 PTSDに対するブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の有効性を検討した主な結果は以下のとおり。・1,327例の適格性を評価し、878例がスクリーニングに失敗したため、416例(平均年齢:37.4±11.9歳、女性:310例[74.5%])をランダム化した。・試験完了率は、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群で64.0%(214例中137例)、セルトラリン+プラセボ群で55.9%(202例中113例)であった。・10週目のCAPS-5合計スコアは、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群でセルトラリン+プラセボ群よりも統計学的に有意な改善が認められた(最小二乗平均[LSM]平均差:−5.59、95%CI:−8.79〜−2.38、p<0.001)。【ブレクスピプラゾール+セルトラリン群:148例】ランダム化時の平均:38.4±7.2、LSM変化:−19.2±1.2【セルトラリン+プラセボ群:134例】ランダム化時の平均:38.7±7.8、LSM変化:−13.6±1.2・すべての主な副次的エンドポイントおよびその他の有効性エンドポイントの達成も確認された。・ブレクスピプラゾール+セルトラリン群(205例)において治療中に5%以上で発生した有害事象は、悪心12.2%(25例)、疲労6.8%(14例)、体重増加5.9%(12例)、傾眠5.4%(11例)であった。・上記有害事象のセルトラリン+プラセボ群(196例)の発生率は、悪心11.7%(23例)、疲労4.1%(8例)、体重増加1.5%(3例)、傾眠2.6%(5例)であった。・有害事象による治療中止率は、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群で3.9%(8例)、セルトラリン+プラセボ群で10.2%(20例)であった。 著者らは「ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法は、セルトラリン+プラセボと比較し、PTSD症状の有意な改善が認められ、PTSDの新たな治療法になりうる可能性が示唆された。ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の忍容性は良好であり、安全性プロファイルはブレクスピプラゾールの既存の適応症におけるものと同様であった」と結論付けている。

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血圧の経時的変動は高齢者の認知機能に悪影響を及ぼす

 血圧の管理は、心臓の健康のためだけでなく、加齢に伴い低下する頭脳の明晰さを保つ上でも重要であるようだ。時間の経過に伴い血圧が大きく変動していた高齢者は、思考力や記憶力が低下する可能性の高いことが、新たな研究で明らかになった。米ラッシュ大学のAnisa Dhana氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に12月11日掲載された。Dhana氏は、「これらの結果は、血圧の変動が高血圧自体の悪影響を超えて認知障害のリスク因子であることを示唆している」と述べている。 この研究では、白人と黒人を対象に実施されたシカゴ健康と加齢プロジェクト(1993〜2012年)への65歳以上の参加者4,770人(平均年齢71.3歳、女性62.9%、黒人66.0%)を対象に、経時的な血圧変動と認知機能との関連が検討された。試験参加者は、3年ごとに18年間にわたって血圧測定を受けていた。収縮期血圧と拡張期血圧は、前回の測定値との差の絶対値を全て合計し、それを測定回数から1を引いた数(n−1)で割って算出した。認知機能は、標準化された認知テストで評価して総合スコアを算出し、zスコアとして表した。 収縮期血圧の変動幅の平均値は、黒人で17.7mmHg、白人で16.0mmHgであった。解析の結果、収縮期血圧および拡張期血圧の変動幅が大きいほど、追跡終了時の認知機能の低下が大きいことが示された。収縮期血圧の変動幅が小さい(第1三分位)群と比較して、変動幅が大きい(第3三分位)群では認知機能のzスコアが0.074低かった(β=−0.074、95%信頼区間−0.131〜−0.018)。これは脳年齢に換算すると、約1.8歳の加齢に相当するという。血圧の変動と認知機能との関連を人種別に検討すると、有意な関連が認められたのは黒人のみであり、収縮期血圧の変動幅の第1三分位群では第3三分位群と比較すると認知機能のzスコアが0.115低く、これは脳年齢で2.8歳の加齢に相当すると推定された。これに対し、降圧薬による血圧コントロールを行っている人では、追跡終了時に認知機能に低下は認められなかった。 以上のような結果が示されたものの、Dhana氏は、「この研究は観察研究であり、血圧と認知機能との間に直接的な因果関係があることを明らかにしたわけではない。この点に留意することは重要だ」と話している。 Dhana氏は、「高齢者の血圧を定期的に測定して、その経時的な変化をモニタリングするべきだ。それにより、血圧の変動が大きく認知機能に問題が生じる可能性のある人を特定でき、それを軽減するための対策を講じることが可能になる。それが、認知機能の問題を予防または遅延させるのに役立つ可能性がある」と話している。さらに同氏は、「高齢化社会とアルツハイマー病の蔓延に対応して、高齢者の認知機能の低下を遅らせる予防戦略を特定することが、公衆衛生上の優先事項となっている。血圧とその変動の管理は、そのような予防戦略において、修正可能で重要なリスク因子として浮上しつつある」と話している。

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MCI温故知新:「知情意」のほころび【外来で役立つ!認知症Topics】第25回

MCIとは「軽度の認知症」か?認知症の臨床現場における「あるある誤解」の一つに「MCIとは軽度の認知症か?」があるもしれない。確かにMCI(Mild Cognitive Impairment)とは「軽度認知障害」と訳されているから、その字面からしてそう思われても仕方がない。またMCIになるとMRI画像に海馬萎縮が現れてアルツハイマー病の診断がなされると思っている人も少なくない。実際には、この時期の海馬は多くの場合は萎縮しておらず、局所脳血流(rCBF)はむしろ増加していることもあるのだが。早期診断への壁:受診の遅れと心理的バイアス近年MCIが注目される最大の理由は、抗アミロイドβ抗体薬を皮切りに、今後の承認が期待される疾患修飾薬(Disease Modifying Drugs)のターゲットがこれだからだろう。ところがこうした治療適齢期に医療機関を受診する人が少ないのである。これに関して、最初の認知症の気付きから医療機関受診までに平均で4年を要するというLancet誌のレビューがある1)。経験的には、本人、家族共に、診断されるのが怖いのはわかる。心理学用語で「確証バイアス」と言われるように、人は自分に都合の良い情報を集める性癖がある。たとえば、「年を取ればこんなもの」「家系に認知症はいない」「かかりつけ医が『あなたはうつだから、大丈夫』と言った」などである。逆にネガティビティバイアスといって悪いイメージが強く残っていると恐怖が強すぎて、他のプラスの情報をすっかり忘れ去ることもある。悪いイメージとは、たとえば、頭部外傷や大腿骨頸部骨折、また重症肺炎などの合併症が重なり急速に死に至ったアルツハイマー病の患者さんといった、特別に不運なケースを身近に経験したような場合である。つまりアルツハイマー病と診断された時、そうした極端な例が心を占めて、一般的なアルツハイマー病の経過を説明しても耳を貸さない人もいる。さて新薬の恩恵にあずかるには、MCIの時期に的確にそれに気付かなくてはならない。以下に述べるように、MCIと診断される頃には、実は行動や感情面でも変化が表れているのだが、MCIとは記憶の障害であり、それはMMSEや長谷川式の記憶項目などの失点として現れると思い込んでいる人が多い。MCIの概念の歴史的変遷MCIというとRonald C. Petersen氏らの定義2)有名だが、実はこの用語は彼のオリジナルではない。というのは、このMCIという術語を用いて複数の学者がそれぞれに異なる定義をしているのである。歴史的にみて、このMCIの始まりは、1991年にBarry Reisberg氏らがアルツハイマー病のステージ判定のために彼らが開発したFAST尺度でStage3を意味する表現としてMCIを用いたことにある3)。次に、Michael Zaudig氏らが現在も抗アルツハイマー病薬の効果判定でもよく使われるClinical Dementia Rating(CDR):0.5に相当するとされる別のMCIを提唱した4)。この2つは行動などを含めて生活機能全般に注目して認知症の前駆期を捉えようとしている。一方で、現在最も注目されているMCIは1996年にPetersen氏らによって定義されたものだが、これは記憶障害に重点の置かれた診断基準であった。行動・感情面の評価が重要にこのようなMCIの概念の歴史からもわかるように、認知症の前駆・初期症状は記憶などの認知機能障害ばかりではない。たとえば近年では、道具的ADL(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)の失敗が始まる時期はMCI期に重なるという指摘がある。具体的には料理、掃除、移動、洗濯、金銭管理などであり、日常生活動作(ADL)よりも複雑で神経心理学的能力が求められるものである。それだけに認知機能の衰退が始まるとIADLの障害は露呈しやすいのも納得できる。そこで「IADL障害は認知症発症に先立つのでMCIの診断でこれを考慮すべき」とまとめられている5)。また、客観的に観察される日常的な行動面での変化も病初期から認められやすい。認知症の前駆期やMCI期にみられる特有の行動症状として、近年ではMild Behavioral Impairment(MBI)の概念やその定義が提唱され、多くの質問項目も作成されている6)。その内容は、意欲低下、情緒不安定、衝動の制御困難、社会的に不適切な言動、知覚・思考の異常という5つのカテゴリーになっている。自身の臨床の場を思い出してみると、何でも面倒臭くなって長年の習慣が廃れる高齢者は枚挙にいとまない。また些細なことで怒り炸裂の「怒りん坊」になる人はとくに男性で多い。そうした方々に見られる言動を仔細に思い出してみると、確かにこの5つのカテゴリーのすべてに該当する何らかの問題がありそうだとも思えてくる。ところで、人の精神活動を「知情意」とまとめる言葉がある。MCI に関して言えば、この3つの中で「知」ばかりが重んじられていたのだが、最初期のMCIの概念やMBIの考え方に代表されるように、実は「情意」の異常も初期から見られるということだ。さて、これからの認知症の治療におけるキーワードであるMCI。多くの人々にこれに気付いてもらうためには、認知機能のみならずIADL、客観的な行動、そして情意という点にも心を向けていただけるような医療的な指導が必要になると思う。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e479-e488.2)Petersen RC, et al. Mild cognitive impairment: clinical characterization and outcome. Arch Neurol. 1999;56:303-308.3)Reisberg B, et al. Clinical Stages of Alzheimer’s disease. In:de Leon MJ, editor. The Encyclopedia of Visual Medicine Series, An atlas of Alzheimer’s disease. Pearl River (NY):Parthenon;1999.p.11-20.4)Zaudig M. A new systematic method of measurement and diagnosis of "mild cognitive impairment" and dementia according to ICD-10 and DSM-III-R criteria. Int Psychogeriatr. 1992;4 Suppl 2:203-219.5)Nygard L. Instrumental activities of daily living: a stepping-stone towards Alzheimer's disease diagnosis in subjects with mild cognitive impairment? Acta Neurol Scand Suppl. 2003;179:42-46.6)Ismail Z, et al. The Mild Behavioral Impairment Checklist (MBI-C): A Rating Scale for Neuropsychiatric Symptoms in Pre-Dementia Populations. J Alzheimers Dis. 2017;56:929-938.

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アルコール飲み放題が飲酒問題に及ぼす影響はどの程度か

 国立国際医療研究センターの若林 真美氏らは、レストランやバーでのアルコール飲み放題と問題のあるアルコール消費パターンとの関連を調査した。BMJ Open誌2024年12月3日号の報告。 COVID-19パンデミック中の2022年2月の日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査研究プロジェクト(JASTIS研究)のデータを用いて、横断的研究を実施した。問題のあるアルコール消費パターンは、アルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)で特定した。飲酒対象者1万9,585人(男性の割合:55%、平均年齢:48.3歳)をAUDITスコアに基づき、問題のない飲酒(AUDITスコア:0〜7)、問題のある飲酒(同:8以上)、危険な飲酒(同:8〜14)、アルコール依存症疑い(同:15以上)の4つに分類した。AUDITの設問3で2以上のスコアの場合、過度な飲酒と判断される。説明変数は、COVID-19パンデミック中の過去12ヵ月間(2021年2月〜2022年2月)における定額制のアルコール飲み放題の利用歴とした。定額制飲み放題の利用と問題のある飲酒または過度な飲酒、危険な飲酒またはアルコール依存症疑いとの関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19パンデミック中に定額制のアルコール飲み放題を利用した人は、利用していない人と比較し、問題のある飲酒(多変量バイナリーロジスティック回帰による調整オッズ比:4.64、95%信頼区間[CI]:4.24〜5.07)および過度な飲酒(同:3.65、95%CI:3.33〜4.00)である可能性が高かった。・定額制のアルコール飲み放題を利用した人は、危険な飲酒(多項ロジスティック回帰による調整相対リスク比:3.40、95%CI:3.06〜3.77)およびアルコール依存症疑い(同:8.58、95%CI:7.51〜9.80)との関連が認められた。 著者らは「全体として、定額制のアルコール飲み放題は、危険な飲酒やアルコール依存症疑いを含む、過度な飲酒や問題のある飲酒と関連していることが明らかとなった」と結論付けている。

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若年者の健康問題、自閉症がトップ10にランクイン

 2021年の世界での自閉スペクトラム症(以下、自閉症)の患者数は約6200万人に上ったことが、新たな研究で明らかにされた。米ワシントン大学健康指標評価研究所のDamian Santomauro氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Psychiatry」に12月19日掲載された。 この研究は、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study;GBD)2021に基づき、自閉症の有病率と健康負担(障害調整生存年〔DALY〕)の最新の世界的な推定値を提示したもの。有病率の推定では、受動的な患者の発見に依存した研究を除外し、新たなシステマティックレビューに基づきデータを更新した。また、障害による重み付けの推定方法も修正された。最終的に、33カ国における自閉症の有病率に関する105件の研究データが統合された。 解析の結果、2021年には世界で約6180万人の人が自閉症であると推定された。これは、127人に1人が自閉症であることを意味するという。世界の年齢調整有病率(10万人当たり)は788.3人で、男性では1,064.7人、女性では508.1人と推定された。自閉症による健康負担は1150万DALYsと推定された。これは、10万人当たり147.6DALYs(年齢調整済)に相当する。地理的枠組み別に見ると、年齢調整済DALY率は、東南アジア・東アジア・オセアニアで10万人当たり126.5DALYsと最も低く、高所得地域で204.1DALYsと最も高かった。またDALY率は年齢とともに減少する傾向が見られ、5歳未満の子どもでは10万人当たり169.2DALYs、20歳未満では163.4DALYs、20歳以上では137.7DALYsと推定された。ただし、こうした健康負担は生涯を通じて認められた。さらに、20歳未満の若年者では、自閉症が非致死的な健康負担のトップ10にランクインすることも確認された。 研究グループは、「これらの数字は、人生の早い段階で自閉症を診断し、生涯を通じて役立つ治療を受けられるようにすることがいかに重要であるかを示している」と述べている。また、「自閉症の子どもや若者のニーズだけでなく、研究やサービス提供の対象として考慮されないことが多い成人のニーズにも対処することが不可欠だ」としている。 ただし、本研究で推定された自閉症の有病率は、米疾病対策センター(CDC)の推定(36人に1人)よりはるかに高い。この点について研究グループは、「この高い有病率は、臨床および教育記録の症例ノートのレビューにより個人が自閉症の診断基準を満たしている可能性が高いかどうかを判断したものであり、集団診断調査で行われるような自閉症の臨床的評価により判断されたものではない。そのため、自閉症の有病率は過大評価されている可能性がある」と述べている。 研究グループは、「世界的な自閉症の健康負担に対処するには、早期発見プログラムへのリソースを優先させる必要がある。特に、ケア、介護者のサポート、および自閉症者の生涯にわたり変化するニーズに合わせたサービスへのアクセスが限られている成人や低・中所得国の人を対象に、診断ツールを改善することが重要だ」とワシントン大学のニュースリリースで結論付けている。

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自分時間、回復効果が高い過ごし方は?

 「Me Time(ミータイム;自分のための時間)」の過ごし方として、森の奥深くを1人でハイキングするのと喫茶店でカフェラテを飲みながら読書するのとでは、どちらの方がより回復効果が高いだろうか? その答えは意外なことに、周囲に人がいる環境でコーヒーと良書を片手に自分自身と向き合うのがベストであることを示唆する研究結果が明らかになった。完全に1人きりになって過ごす張り詰めた体験は、社会的つながりをある程度維持した状態で過ごすMe Timeほど、その人のウェルビーイングに良い影響をもたらすわけではないことが示されたという。米オレゴン州立大学コミュニケーション学分野のMorgan Quinn Ross氏と米オハイオ州立大学コミュニケーション学分野のScott Campbell氏によるこの研究の詳細は、「PLOS One」に12月5日掲載された。 Ross氏はオレゴン州立大学のニュースリリースの中で、「完全に1人きりにはならない方が、エネルギーを回復し、他者とのつながりを維持しやすいことが分かった」と述べ、「ほぼいつでもクリック一つで社会とつながることができる今の世の中では、社会的相互作用とさまざまなタイプの孤独とのバランスの取り方を知っておく必要がある」と付け加えている。 Ross氏らはこの研究で、888人(平均年齢61.9歳、男性359人)を対象にメンタルヘルスや、1人きりになるときと他者と関わるときの嗜好について調査を行った。具体的には、その人のMe Timeが人やテクノロジーによって妨げられ、1人の時間がより社会的性質を帯びる条件を調べた。その結果、携帯電話でゲームをしたり、1人で映画を見に行ったりするような、完全に1人きりにはならない過ごし方は、砂漠での孤独なドライブや人里離れた山小屋での執筆活動よりも利点のあることが明らかになった。 Ross氏らは、「Communicate Bond Belongと呼ばれる一般的な理論では、Me Timeは一種のトレードオフであると考えられてきた」と述べている。すなわち、この理論によると、他者との関係性は社会的相互作用によって築かれるが、それには社会的エネルギー、つまりその人が社会的相互作用に使う能力が消耗される。反対に、1人きりで過ごすと社会的エネルギーは回復するが、その代償として関係性が失われる。 しかし、今回の研究ではそれほど単純ではないことが示された。Ross氏は、「われわれの研究では、1人きりでいることが、実は社会的相互作用と表裏の関係にあるわけではないことが示唆された」と話す。同氏は、「強い社会的相互作用は他者とのつながりをもたらすが、エネルギーを消耗する。一方、強い孤独はエネルギーと他者とのつながりの両方を失わせる。1人きりでいることは、社会的相互作用で使われるエネルギーを回復させる単純な方法として機能するわけではないようだ」との見方を示している。 興味深いことに、こうした結果は外交的な人と内向的な人の両方に当てはまることが分かったという。ただし、完全に1人きりになることがエネルギーの回復やつながりの維持に役立つと考える人にとっては、社会とのつながりにどれだけエネルギーを注いでいるかにかかわらず、完全な孤独が有益となる場合もある。 Ross氏は、「もしあなたが、孤独に対して肯定的な考えを持っている、つまり、孤独になることはエネルギー回復の手段であり、人々とはその後でもつながることができると分かっているのであれば、孤独を選択することは、おそらくあなたの心の状態を良くするだろう。しかし、人と話したくないという理由から社会的相互作用に対して否定的な考えを持ち、孤独になることを選ぶと、おそらく心の状態が悪化するだろう」と結論付けている。

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統合失調症に対するルラシドン投与量は80mg/日へ増量すべきか

 慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、統合失調症患者に対するルラシドンの投与量を40mg/日から80mg/日に増量した場合の有効性および安全性を評価するため、本検討を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2025年1、2月号の報告。 対象は、6週間のルラシドン二重盲検プラセボ対照試験を完了し、その後12週間の非盲検延長試験に移行した統合失調症患者。二重盲検期間中に、ルラシドン群(40mg/日)またはプラセボ群に割り当てられた患者には、延長試験期間中にルラシドン40mg/日投与を行った。臨床医による判断に基づきルラシドン80mg/日への増量を可能とした。有効性アウトカムには、ルラシドン80mg/日の治療開始から終了までの陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの変化を含めた。安全性アウトカムは、新たに発生した有害事象の発現率とした。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団287例のうち、ルラシドンの投与量を40mg/日から80mg/日へ増量した患者は153例であった。・両群において、PANSS合計スコアの有意な減少が認められた(すべてp≦0.001)。・PANSS合計スコアが20%以上減少した患者の割合は、ルラシドン群で35.9%、プラセボ群で40.0%であった。・ルラシドン80mg/日での治療期間中における新たな有害事象の発現率は、ルラシドン群で47.4%、プラセボ群で48.0%であった。 著者らは「対照群がなく、盲検化されていないため、結果は慎重に解釈する必要がある」としながらも「統合失調症患者に対するルラシドン40mg/日から80mg/日への増量は、効果的かつ忍容性も良好であることが示唆された」と結論付けている。

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認知症診断後の余命と施設入所までの期間~メタ解析/BMJ

 認知症と診断された人々の平均余命は、男性では5.7(診断時65歳)~2.2年(診断時85歳)であり、女性は同年齢で8.0~4.5年であった。また、余命の約3分の1はナーシングホームで過ごしており、半数以上の人が認知症の診断後5年以内でナーシングホームに移っていた。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのChiara C. Bruck氏らが、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究を対象に、認知症の人々のナーシングホーム入所および死亡までの期間に関するエビデンスを要約し、予後指標を探ることを目的として実施したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「このシステマティックレビューでは、認知症診断後の予後は、患者、疾患、研究の特性に大きく依存していた。これらの知見から、個別化された予後情報とケアプランを提供できる可能性が示唆された。今後の研究では、診断時の患者を対象として、個別的要因、社会的要因、疾患ステージ、併存疾患を考慮し、生存だけでなく関連する機能的アウトカム指標を評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2025年1月8日号掲載の報告。適格研究261件を対象にシステマティックレビューおよびメタ解析 研究グループは、2024年7月4日までにMedline、Embase、Web of Science、Cochrane、Google Scholarへ登録された文献を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。適格条件は、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究で、被験者が150例未満、急性期病院入院中に募集が行われた研究、または追跡調査期間が1年未満の研究は除外した。 検索により論文1万9,307本が特定され、適格研究261件を対象に含んだ。生存に関する報告が235件(555万3,960例)、ナーシングホーム入所に関する報告が79件(35万2,990例)であった。診断後余命中央値は4.8年、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長い 診断後余命中央値は4.8年(四分位範囲[IQR]:4.0~6.0、66研究)で、全体的な5年生存率は51%であった。すでに認知症と診断されている人々を対象とした53研究では、診断後余命中央値は3.1年(IQR:2.4~5.6)であった。 余命中央値は年齢に強く依存していることが見受けられ、研究開始時の年齢が高いほど短かった。診断後平均余命は、男性では5.7年(診断時65歳)から2.2年(診断時85歳)にわたっており、女性の場合は同年齢で8.0年から4.5年にわたっていた。全体的に女性の診断後平均余命は男性よりも短かった(平均差:4.1年、95%信頼区間[CI]:2.1~6.1)。これは女性のほうが診断時の年齢が高いことに起因していた。 診断後余命中央値は、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長く、アルツハイマー病では認知症の他のタイプと比べて1.4年長かった。また、2000年以前の研究と比較して、現在のクリニックベースの研究では余命が延長していたが(傾向のp=0.02)、地域ベースの研究ではそのような傾向はみられなかった。 総合すると、余命に関する不均一性の51%は、報告された臨床特性と研究方法のばらつきによるものであった。 ナーシングホーム入所までの期間中央値は、3.3年(IQR:1.9~4.0)であった。診断から1年以内に入所した人は13%で、5年後には57%まで増加していた。ただし、入所率の評価の際に競合死亡リスクを適切に考慮していた研究はわずかであった。

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自閉スペクトラム症と歯ぎしりとの関連〜エコチル調査

 自閉スペクトラム症(ASD)患者では、咀嚼筋の不随意運動による歯ぎしりがしばしばみられる。歯ぎしりは睡眠障害とも関連しており、乳児の睡眠時間が、歯ぎしりの発症に関連しているかは、よくわかっていない。東北福祉大学の土谷 昌広氏らは、新生児期の短時間睡眠と歯ぎしりとの関連を評価するため、調査を行った。PLOS ONE誌2024年12月6日号の報告。 全国的な出生コホート研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(JECS)」より、8万3,720人のデータを用いて、検討を行った。母親と子どもに関連するいくつかの変数を調整したロジスティック回帰分析を用いて、多重代入法を行った。新生児期の短時間睡眠と母親が報告したASDの子どもの歯ぎしりの有病率との関連を評価した。 主な内容は以下のとおり。・ASDの有病率は1.2%、歯ぎしりの有病率は7.2%。・共変量で調整した後、ASD患者における歯ぎしりの有病率増加のオッズ比は1.59(95%信頼区間[CI]:1.31〜1.94)であった。・生後1ヵ月の新生児期における短時間睡眠は、ASD患者の歯ぎしりの有病率増加と有意な関連が認められた。 著者らは「ASD児に頻繁にみられる歯ぎしりの発生率増加は、とくに新生児期における短時間睡眠と関連していることが示唆された。ASD患者の歯ぎしりの発症をより理解することは、口腔疾患の予防にも有用であろう」としている。

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日本初、認知症診療支援のための神経心理検査用プログラム発売

 大塚製薬とアイ・ブレインサイエンスは、認知症の診療支援のための神経心理検査用プログラム(商品名:ミレボ)について、2025年1月1日付で認知症領域のSaMD(Software as a Medical Device、プログラム医療機器)として初めて保険適用を取得し、1月14日より販売を開始した。 ミレボは、アイトラッキング(視線計測)技術を用いて行う神経心理検査用プログラムである。タブレット端末にインストールしたアプリ「ミレボ」を用いることにより、約3分で簡便に検査を行い、客観的な検査結果を得ることができる。また、画面に表示される質問に沿って被検者が正解の箇所を見つめることにより、データが自動的にスコア化され、定量的かつ検査者の知識や経験に依存せず客観的に評価することが可能になる。 なお、従来の認知機能検査は、患者の心理的負担(緊張、焦り、落胆、怒りなど自尊心を傷付け心理的ストレスを招きやすい)、医療者負担(時間的制約、専門スタッフの在籍)、検査者間変動(採点のバラツキ)などが課題になっているが、本プログラムはこれらを解決し、認知症の早期発見の一助になるものとして期待される。

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