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日本における第2世代抗精神病薬誘発性ジストニア〜JADER分析

 名古屋大学のTakumi Ebina氏らは、さまざまな第2世代抗精神病薬(SGA)のジストニアリスクを比較し、性別による影響および発生までの期間、その結果との関連を調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2025年1月21日号の報告。 2004年4月〜2023年11月の日本における医薬品副作用データベース(JADER)のデータを分析した。クロザピンを除く経口SGAに関連する症例を抽出した。オッズ比を用いてSGAと性別との関連を評価した。ジストニア発生までの期間中央値および四分位範囲(IQR)を分析した。ジストニア発生までの期間とアウトカム(回復、改善、未回復/残存)との関連性の評価には、ROC曲線分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・経口SGAに関連するジストニアの報告は9,837件抽出された。・ルラシドンは、他のSGA(リスペリドン、アリピプラゾール、クエチアピン、オランザピン)よりもジストニアの報告割合が有意に高かった。・アリピプラゾールに関連するジストニアの報告割合は、パリペリドンおよびリスペリドンよりも低かったが、クエチアピンおよびオランザピンよりも高かった。・女性は、男性よりもジストニアの報告割合が有意に高かった。・経口SGA誘発性ジストニア症例148例における、発生までの期間中央値は125日(IQR:19.75〜453.25)。・アウトカム別の分析では、アウトカムが良好であった患者は、不良であった患者と比較し、ジストニア発生までの期間がより短かった。・ROC曲線分析では、アウトカムを鑑別するための閾値は91.5日、感度は71.7%、特異度は69.9%であることが示唆された。 著者らは「SGAによるジストニアのリスクは、SGA間および性別で異なる可能性があり、SGA誘発性ジストニアは、遅発的に発生するケースが多い」と結論付けている。

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飲食店メニューのカロリー表示は摂食障害の患者にとって有害

 飲食店のメニューに、来客の健康に配慮してカロリーが表示されていることがあるが、そのような情報は摂食障害の患者にとってはかえって有害ではないかとする論文が、「BMJ Public Health」に1月29日掲載された。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のTom Jewell氏らが行ったシステマティックレビューに基づく検討の結果であり、摂食障害患者の場合、カロリー表示を見ることが非健康的な信念の強化や飲食店の利用を避けるという行動につながり得るという。 世界的な肥満人口増大への対策の一つとして、飲食店メニューへの含有カロリー併記を義務化する国が増えている。これは当然ながら、食べ過ぎを防ぐための情報として提供されるものだが、一方で摂食障害の患者に対してこうした施策が悪影響を及ぼす懸念も指摘されている。Jewell氏らはこの点について、システマティックレビューを行った。 この研究では、システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠して、MEDLINE、Embase、APA PsycINFO、Web of Science、CINAHLほか計8件の文献データベースを用いた査読済み論文、および、Google ScholarとPsyArXivを用いた査読前論文を検索した。2人の研究者が独立してスクリーニング等を行い、最終的に16件(研究対象者数は合計8,074人)の研究報告を抽出した。 論文の上席著者であるJewell氏は、それらの報告に基づくメタ統合(質的検討)の結果として、「摂食障害のある人々が、カロリー表示を推進するという施策の蚊帳の外に置かれていることに、不満を抱いていることが浮き彫りにされた」と総括している。そして、肥満の蔓延によって、政策立案者が摂食障害患者への影響という点に、全く配慮せずに物事を推し進めている現状の問題を指摘。「公衆衛生政策としては本来、カロリー表示のプラスの側面とマイナスの側面のバランスを取ることが極めて重要だ」と述べている。 この研究で明らかになったカロリー表示のマイナスの側面として、例えば、摂食障害患者はメニューに併記されているカロリー表示を特に重視する傾向が認められ、その情報を無視することは困難であることが示された。ある研究の参加者は、「表示を見ることで、カロリーを過剰に意識するようになる。自分の体が膨らんでいく様子が頭に浮かび、不快に感じる」と語っていた。 別の研究では、カロリー表示のために、仲間同士の会話がダイエットの話題になってしまうことへの不快感を訴える患者が報告されていた。「同席している人たちに、カロリーの話はやめてほしいと頼まなければならず、気まずい雰囲気になってしまう。そして、私は食事に誘われなくなっていく」と回答した患者もいた。また、「カロリー表示のために疾患の回復が確実に遅くなった。今では家庭内での食事しか安心できない」と話す患者の報告もあった。 論文の筆頭著者であるKCLのNora Trompeter氏は、「政策立案の際、通常は肥満人口の削減に有効かどうかという点に焦点が当てられるが、採択しようとしている政策が摂食障害を持つ人々に、意図しない害を及ぼしている可能性を念頭に置くことも重要である。カロリー表示が摂食障害患者に与える影響をより深く理解するために、さらなる研究が求められる」と述べている。

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 1

皆さんは、宗教上の理由で、輸血を拒む人をどう思いますか? 輸血自体にウイルス感染症などのリスクもあるため、たとえ輸血しなければ死んでしまうとしても、最終的には患者の自己決定権が優先されます。しかし、親が自分の子供への輸血を拒んでいる場合はどうでしょうか? そして、輸血しなければ死んでしまう場合はどうでしょうか?今回は、医療ネグレクトをテーマに、かつてのテレビドラマ「説得」を取り上げます。このドラマは、実際の事件をドラマ化しており、そのやり取りにはリアリティがあります。そして、この輸血拒否に対しての学会の対応ガイドラインと2023年までに出された厚労省の指針もご紹介します。さらに、輸血をどうするかという医療倫理としてだけでなく、子供にはどうするかという「子育て倫理」としても一緒に考えてみましょう。なんで輸血がだめなの?主人公は荒木。脱サラして小さな書店を妻と一緒に営んでいます。3人の子供にも恵まれ、ごく普通の家庭生活を送っていました。そんななか、ある日、2番目の子供の健が交通事故に遭います。荒木夫妻は医師から複雑骨折をして出血多量であるため、輸血して手術をすれば助かると言われます。ところが、荒木夫妻は輸血を頑なに拒みます。荒木は「宗教上の問題です」「私たちの宗教は輸血を禁じているんです」と説明します。代わる代わるに医師たちが説得を試みるのですが、荒木夫妻は一貫して「輸血しないで手術してください」と懇願するのです。別室での待機中、荒木夫妻は聖書の教えを唱え始めます。「あらゆる肉なるものの魂は、その血であり、魂がその内にあるから、いかなる肉なるものの血も食べてはならない。すべて、それを食べるものは断たれる」と。そして、妻が「私たちは委ねたんじゃない。あなたも私も健も、神の教えに従うって。それでいいって」と言います。荒木が「だけど、健にもしものことがあったら?」と戸惑っていると、妻は「わかってくれると思う、あの子は」と言い切ります。そしてとうとう救急車で運ばれてから数時間後、健は、目の前に輸血の点滴が準備されている手術台の上で、輸血されることのないまま、手術されることのないまま、息を引き取ります。荒木夫妻が悲しみに暮れていると、中学生の長女が駆けつけてきて、「健ちゃんかわいそうよ。大丈夫よ。健ちゃんは天国に行って必ず復活するんだもの。永遠の命を授かるんだもの」とたしなめるのでした。輸血拒否の論理は、血=命である。肉を食べることはできるが、その血は地に注いで神に返さなければならない。血を食べてしまうと、神から見放されてしまい、死んで天国に行けなくなるということです。そして、輸血も血を食べることになり禁じられます。ただし、自己血輸血や、主要成分ではないアルブミンや免疫グロブリンは受け入れる信者もいて、解釈が分かれています1)。それにしても、苦悩しながらも自分の子供の命よりも信仰を優先する言動には、あまりにも不合理に思われます。一方で、説得する医師の1人は「人間は信仰のためには死にもするし、殺しもするんです。今世界中で宗教上の違いから、どれだけの紛争や戦争が起こっているか」と述べ、理解を示そうとします。このセリフから、信仰とはそもそも不合理なものであり、それを文化的に受け入れられているかどうかの問題であることがわかります。そして、文化的に受け入れられない場合、精神医学的には妄想と呼ばれます。つまり、信仰と妄想は紙一重であり、表裏一体であることもわかります。実際の画像研究においても、信仰(宗教体験)と妄想状態(統合失調症)は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています2)。なお、信仰と妄想の類似性の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 2

輸血禁止の教えに子供はどうすればいいの?荒木夫妻は、以前に健が宿題の読書感想文を家で音読していた時のことを回想します。健は「…王子はお父さんをとても尊敬していたのです。僕も王子のようにお父さんの言うことをよく聞いて、信仰の道にがんばりたいと思います」と誇らしげに締めくくっていました。また、事故が起きる3週間前にも、母親が「交通事故起こしても、輸血してあげられないんだから」「本当に気を付けてね」と念押ししていました。健は「うん、いいよ」と軽く言っていました。これらのやり取りをもとに、荒木夫妻は、自分たちだけでなく、健も輸血を拒否する意思を持っていると考えていました。最後の最後で医師たちが健に直接確認しようと、「生きたいだろ?」と大声で呼びかけます。しかし、時すでに遅く、彼は返事をしません。そこに立ち会っていた荒木は、あとで「健は生きたいって。生きたいって言ったんだ。おれにはわかった」と打ち明けます。実際の事件では、その男の子は、医師から「輸血してもらうようにお父さんに言いなさい」と呼びかけられると、「死にたくない。生きたい」と訴えていました。当然ながら、小学5年生の子供が、いくら信仰心があるからといって、そのために死を選ぶことは考えにくいです。彼が信仰の道に頑張ると宣言し、輸血禁止に同意していたのは、そうでもしなければその家で生きていけないと思っていたからでした。つまり、子供には、最初から選択肢などないのでした。彼の言動は単純で、教えに沿った発言をしたら親が喜ぶから、ただそうしているだけでしょう。逆に、教えに少しでも疑問を抱いたことを口走ればどうなるでしょうか?ドラマでは描かれていませんでしたが、実際には、親から「お前はサタンだ」と激怒され、むち打ち(これも教えの1つ)が行われます1)。明らかに、親が宗教を子供に強要しています。これは、宗教的虐待と呼ばれています。また、このような親に育てられた子供は、「宗教2世」「カルト2世」と呼ばれています。なお、一般的な子供虐待の詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 3

輸血拒否に医療はどうすればいいの?健が死んで1ヵ月後、担当していた医師が、荒木に再会し、言います。「心臓外科が専門なんですが、手術しても社会に復帰できない子がたくさんいるんです。宗教的に言えば、神がそういうふうにつくったとしか…それを手術して、神の意思に反してるんじゃないかって気がする時も。そう言いながらも、やはり今手術しないと死んでしまうと言えば、やはり…あの直後、うちの病院では、今後(子供には)承諾が取れなくても、医師の判断で輸血をするという決定をしました」と。実際に、2008年に日本輸血・細胞治療学会と日本小児科学会は合同でガイドラインを出しました。そして、2022年と2023年に厚労省は、このガイドラインを踏まえて、宗教的虐待と医療ネグレクトに関する指針を出しました3,4)。なお、医療ネグレクトとは、医師が必要と判断した医療を親が子供に受けさせないことです。このガイドラインでは、年齢を3つの時期に区切り、場合分けをしています。まず、18歳以上は当然ながら、本人の意思が尊重されます。逆に、14歳以下は、拒否が親や本人にあったとしても、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。注目すべきは、15歳から17歳の年齢です。本人と親がどちらも拒否した場合のみ、輸血は不可になります。たとえば、長女は「教えを守れば天国に行ける」と確信していたので、中3で15歳になっているとすると、彼女に輸血することはできません。逆に、どちらかしか拒否しなかった場合は、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。なお、15歳で分けている理由は、15歳が民法で遺言の効力が生まれる年齢と定められているからです。また、知的障害などによって医療に関する判断能力がない場合は、14歳以下と同じく、輸血は可能になります。さらに、輸血を含めて治療が親によって阻害される場合は、児童相談所に虐待通告し、児童相談所で一時保護のうえ、家庭裁判所による親権停止の審判を受けて、治療を行うことができます。緊急性がある場合は、審判確定までの間に権利を保護する暫定的な処分(保全処分)を申し立てることで、すぐに効力が発生する措置がとられます。実際に、2021年に親権停止が認められたのは107件で、医療ネグレクトが原因とされるものは21件でした1)。また、輸血拒否をする教団(「エホバの証人」)の広報によると、2017年から2022年の5年間で、親権停止などの法的措置がとられたのは13件でした1)。「説得」とは?このドラマは、親の信仰によって子供の命が救えなくなるという、宗教と医療の衝突を生々しく描いていました。そして、信仰とは、妄想と同じく不合理で訂正不能であるため、いくら理屈をこねたり情に訴えたりして説得しようとしても、納得が得られないものであることもわかりました。学会のガイドラインや厚労省の指針のおかげで、親の信仰によって子供の命が救えなくなることはなくなりました。しかし、まだ問題が残っています。それは、命にかかわる急性疾患とは違い、すぐに命にかかわらない慢性疾患や、担当した医師が言っていたように手術しても必ずしも治るとは限らない疾患についてです。たとえば、実際に、子供が精神的に不調でも親が偏見やいわゆる根性論から児童精神科を受診させないケースは、時々見受けられます。このような場合は、司法が親権停止の判断を出すのが難しくなります。つまり、どこまでが医療ネグレクトでどこまでが親の裁量とするかという線引きの問題がまだ残っています。これは、医療を含む子育て全般にも言えることです。この線引きのために、信仰を押し付けるのはもっての外ですが、経験則や自分の思い入れ、思い込みではなく、アカデミックな視点が必要です。それは何より、子供の不利益にならないようにするためだからです。これからは、医療だけでなく、子育てにも倫理観が必要な時代になってきます。これは、医療倫理を超えて、子育てのあり方にも広がる「子育て倫理」と呼べるでしょう。なお、今回は治療をさせない親がテーマでしたが、逆に治療をさせすぎる親については、関連記事3をご覧ください。1)宗教と子供p.106、p.118、p.122、pp.124-125、pp.149-153:毎日新聞取材班編、明石書店、20242)宗教の起源p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20233)宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A:厚生労働省子供家庭局長通知、20224)宗教の信仰等を背景とする医療ネグレクトが疑われる事案への対応について:厚生労働省子供家庭局長、2023虐待についての関連記事教育虐待そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】教育ネグレクト映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1<< 前のページへ■関連記事映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1Mother(続編)【虐待】映画「ラン」(前編)【なんで子供を病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 1

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精神科再入院に対する各抗うつ薬の影響比較

 うつ病患者は、健康状態が悪化することが少なくない。さらに、複数の入院を経験した患者は、予後不良である傾向が高まる。うつ病に対する第1選択治療は、依然として抗うつ薬治療であるが、各抗うつ薬が精神科再入院リスクに及ぼす影響を評価したデータは、限られている。米国・ラトガース大学のHannah Mei氏らは、精神科入院うつ病患者における退院時の抗うつ薬選択と再入院率との関連を評価した。Cureus誌2024年12月22日号の報告。 対象は、抗うつ薬治療により退院した成人うつ病患者。対象患者の精神科再入院率を評価するため、単一施設レトロスペクティブカルテベースレビューを実施した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療による30日間の精神科再入院率の比較とした。副次的アウトカムには、抗うつ薬治療による6ヵ月および1年間の精神科再入院率を含めた。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値を算出し、各抗うつ薬治療により退院した患者とそれ以外の抗うつ薬で治療した患者における再入院のORを比較した。 主な結果は以下のとおり。・この研究で用いられていた抗うつ薬は、bupropion、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、ミルタザピン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン。・退院時にセルトラリンで治療されていた患者は、他の抗うつ薬または複数の抗うつ薬を併用していた患者と比較し、30日以内の精神科再入院リスクが約4分の1であった(OR:0.228、95%CI:0.053〜0.978、p<0.05)。・退院時に抗うつ薬を併用していた患者は、単剤治療していた患者と比較し、再入院リスクが高かった(OR:4.517、95%CI:1.581〜12.908、p<0.05)。 著者らは「精神科入院うつ病患者に対する抗うつ薬の選択は、症状の再発や再入院リスクに影響を及ぼす可能性があり、慎重に検討する必要があることが示唆された。うつ病患者の精神科再入院リスクに及ぼす可能性のある他の因子を評価するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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認知症リスク因子のニューフェイス【外来で役立つ!認知症Topics】第26回

Lancetが報告した修正可能な14のリスク因子世界的な医学雑誌Lancetは、2017年から認知症のリスク因子について最先端のデータを発表してきた。第2報告は2020年、そして最新報告は2024年に発表された1)。これら3回の報告の内容は少しずつ変化してきた。なお、示された結果は、この作業部会が継続的に最新の報告などを吟味してその結果をまとめたものである。それだけに古典的なリスク因子、たとえば運動不足、教育不足、飲酒や喫煙といったもの以外に、いわばニューフェイスが現れてきた。そのようなものとして最も有名なのは2017年の発表2)でデビューした「中年期からの難聴」だろう。また、大気汚染、最新の報告では視力低下と低密度リポタンパク質(LDL;Low Density Lipoprotein)コレステロールの高値が加わった。そして2024年の報告にある14のリスク因子のすべてに対応できたら、認知症発症は45%抑制できるとされる。画像を拡大する本稿では、こうしたリスク因子がなぜ悪いのかに注目してみる。古典リスク因子として、まず若年期の教育不足。これは基本的な神経回路の成長が十分なされないということだろう。中年期のリスク因子については、頭部外傷と難聴以外は、脳血管に悪影響を及ぼすとまとめられるだろう。頭部外傷に関しては、ボクサー脳などさまざまなスポーツ外傷や交通事故による後年の害が知られてきた。外傷から10年以上も後に、認知症が発症してくるとされる。また老年期のうつ、社会的交流の乏しさについては、社会的な存在である人間がそれらしい活動を失うということかもしれない。運動不足については、神経細胞や脳血管の新生につながらないことが大きいのだろう。さらに糖尿病では、インスリンとアミロイドβの両方を分解するインスリン分解酵素が注目されてきた。大気汚染比較的新しいリスク因子の大気汚染については、PM2.5(PM;Particulate Matter)が注目されている。これは大気中を浮遊する径2.5ミクロン以下の微粒子であり、従来は呼吸器系や循環器系への悪影響が注目された。これは脳にも悪影響を及ぼすとされる。また近年では大気汚染は、地球の温暖化や緑地の減少などと相乗的な悪循環を形成するといわれる。中年期からの難聴さて2017年にいわば衝撃のデビューをした「中年期からの難聴」だが、この発表中の全リスク因子のうちで最も影響が大きいと報告された。2024年の報告でも影響力7%とやはり最強である。このような難聴がなぜリスク因子になるかについての考え方は、以下のようにまとめられている3)。(1)蝸牛とその上行経路(難聴)および海馬など側頭葉内側(認知症)のいずれもアルツハイマー病病理で侵される。(2)難聴による音刺激の欠乏が1次聴覚野と海馬の形態変化をもたらし認知予備能を減らすことで準備状態を作る。(3)本来記憶などの認知機能に費やすべき知的エネルギーを、難聴者は聴覚理解に回す必要がある。(4)聴覚的理解用のエネルギー増加がシナプスに悪影響する。より単純ながら、聴覚刺激が入らないことは、たとえば社会交流をしても脳に対する重要な刺激が届かないことになるという考えもある。高LDLコレステロール2024年には新たなリスク因子についても報告された1)。まず生化学的な知見として、中年期からの「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールの高値である。これは以前から脳動脈硬化の促進因子として有名であった。つまり動脈を詰まらせ、柔軟性を低下させる堆積物であるプラークの構築に寄与するため悪玉と呼ばれる。このLDLコレステロールが100以上、また「善玉コレステロール」といわれるHDL(High Density Lipoprotein)コレステロールのレベルが40以下の場合、アルツハイマー病(AD)発症の可能性が増加するとされる。AD発症のリスクを高めるだけでなく、「悪玉コレステロール」は脳の一般的な認知機能を損なうこともわかっている。またLDLコレステロール値が高いと、そうでない人に比べて記憶に障害がありがちで、脳動脈がアテローム性動脈硬化症を発症して脳卒中のリスクを高める。さらにLDLコレステロール値が高くなることで、脳内の血流が減少し、白質の密度が低下する状態につながる可能性もある。視力低下次に老年期の視力低下である。その原因では、白内障と糖尿病性網膜症が重視され、緑内障と加齢性黄斑変性症は関連しないとされる。英国では200万人が視力低下していると推定される。加齢とともに視力障害は多くなるだけに、視力障害を持つ人々のほぼ80%は65歳以上である。視力低下の程度と認知症のリスクは相関する。もっともこれは未矯正・未治療の視力喪失者には当てはまり、矯正・治療すればリスクは高まらない。たとえば、白内障の手術をした人は、しない人に比べて認知症になる可能性が30%低いとした報告もある。ところで、ヒトの情報の80%は目から入る、それに対して耳からは20%以下だといわれる。だから筆者には、視力喪失がリスク因子とされたのが遅いとも思われるのだが、聴覚と視覚が認知症という大脳の変化にもたらす影響は、それぞれが持つ情報量とは別なのかもしれない。参考1)Livingstone G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. 2017;390:2673-2734.3)Ray M, et al. Dementia and hearing loss: A narrative review. Maturitas. 2019;128:64-69.

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統合失調症の疾患経過に発症年齢が及ぼす影響

 中国・天津大学のQingling Hao氏らは、慢性期統合失調症患者の初回入院年齢に影響を及ぼす因子、とくに臨床的特徴および血清パラメータに焦点を当て、検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2025年1月21日号の報告。 対象は、中国の精神科病院17施設より募集した慢性期統合失調症患者1,271例。初回入院年齢を含む人口統計学的データおよび臨床データを収集した。精神症状、未治療期間、各血清パラメータの評価を行った。これらの因子と初回入院年齢との関連を調査するため、統計分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・初回入院年齢の平均は、28.07±9.993歳。・独身および精神疾患の家族歴を有する患者では、入院時の年齢がより若年であった。・自殺念慮および自殺行動のある患者では、そうでない患者と比較し、入院年齢がより若年であった。・回帰分析では、早期入院年齢の重要なリスク因子として婚姻状況(独身)、精神疾患の家族歴、自殺念慮または自殺行動が特定された。・一方、未治療期間、総タンパク質、LDL値は初回入院年齢と正の相関が認められ、抗精神病薬の投与量およびアルブミン値は負の相関が認められた。 著者らは「本調査により、慢性期統合失調症患者の初回入院と関連する重要な因子が特定された」とし「統合失調症患者の治療アウトカムを改善するためにも、高リスク患者に対する早期介入および適切なサポートの重要性が示唆された」としている。

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有給休暇取得率の高い診療科は?/医師1,000人アンケート

 有給休暇は一定の条件を満たしたすべての労働者に付与されるもので、医師も例外ではない。しかし、緊急性の高い患者のケアや医師不足などにより、医師の労働環境は有給休暇が取得しやすい状況ではないケースも多いと考えられる。今回CareNet.comでは会員医師約1,000人を対象に、有給休暇の取得状況や2024年4月の働き方改革の影響などについてアンケートを実施した(2025年1月23~24日実施)。2024年度の平均有給休暇取得日数は7.6日 2024年度の有給休暇の取得日数(予定含む)は、平均で7.6日、最も多かったのは5~9日(40.7%)との回答で、7.5%の医師は0日と回答した。厚生労働省による「令和6年就労条件総合調査」1)では、調査対象の全産業における平均取得日数は11.0日と報告されており、医師の取得日数は全体平均と比較して少ないことがうかがえる。 平均取得日数を年代別にみると、20代(7.0日)と30代(6.9日)でやや少ない傾向がみられたものの、40~60代では8.0~8.2日で、年代による大きな差はみられなかった。診療科別にみると、10日以上と回答した医師がリハビリテーション科、精神科で50%以上を占めた一方、呼吸器外科、血液内科では20%以下に留まった。平均有給休暇取得率が最も高かったのは皮膚科で71.8% 全体の平均有給休暇取得率(取得日数/付与日数)は59.3%で、上述の厚生労働省調査では65.3%であり、医師の取得率は6%低い結果となった。年代別にみると40代が最も高く(61.3%)、60代が最も低かった(56.6%)。診療科別にみると、皮膚科(71.8%)、リハビリテーション科、精神科(ともに67.2%)などで高かった一方、総合診療科、救急科、呼吸器外科、血液内科では50%を下回った。 有給休暇の最長連続取得日数について聞いた結果、2~4日との回答が39.9%と最も多く、連続取得なしとの回答も36.0%を占めた。自由記述欄では、「土日に絡めて取得したがる者が増え、争奪戦になっている」「内科管理があるため、なかなか長期間とりにくい」「いまだに長期休暇を取得できない体制だし、雰囲気もある」などの声が寄せられた。医師の働き方改革による影響、半数が「変化なし」3割は「取得しやすくなった」 2024年4月の医師の働き方改革施行以降、有給休暇取得状況に変化はあったかどうかを聞いた結果(複数回答)、54.9%が「変化なし」と回答した一方、29.1%は「有給休暇が取得しやすくなった」と回答した。また、「勤務間インターバル確保や代償休息のための有給休暇消化が発生するようになった」(8.9%)、「有給休暇取得者が増加し希望日に取れない/取りにくくなった」(4.6%)、「実働のある有給休暇消化が発生するようになった」(3.9%)などの回答もみられた。 自由記述欄では、「気兼ねなく取得できる環境になってきた」など状況の改善を示唆するコメントがあった一方、「宿日直許可制度が始まってから、休めない当直なのに休んでいる扱いとなり、有給も取りづらい」「働き方改革の影響で給料が減るため、それを補うため有給休暇を利用して他院にパートに行かなければならなくなった」といった声も聞かれている。 このほか、地方別にみた平均有給休暇取得率、有給休暇の主な過ごし方などのアンケート結果の詳細を以下のページにて公開している。『医師の有給休暇取得事情』

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認知症リスクが高い抗コリン薬はどれ?

 これまでの研究により、抗コリン薬の長期投与は、認知機能低下や認知症発症と関連することが報告されているが、個々の薬剤によってそのリスクには差がある可能性がある。今回、過活動膀胱治療に用いられるさまざまな抗コリン薬と高齢者の認知症リスクを調べた結果、オキシブチニン、ソリフェナシン、トルテロジンが認知症の増加と関連していたことを、英国・ノッティンガム大学のBarbara Iyen氏らが明らかにした。BMJ Medicine誌2024年11月12日号掲載の報告。 研究グループは、2006年1月1日~2022年2月16日に英国のClinical Practice Research Datalink GOLDデータベースに登録された一般診療所954施設の電子健康記録を用いてネステッドケースコントロール研究を実施した。対象は研究期間中に初めて認知症の診断を受けた、および/または認知症治療薬が処方された55歳以上の17万742例(認知症群)で、年齢、性別、臨床状態、期間を基に認知症ではない80万4,385例(対照群)をマッチングさせた。 認知症の診断/処方の3~16年前(対照群は同等の日付)に過活動膀胱の治療に使用された抗コリン薬(darifenacin、フェソテロジン、フラボキサート、オキシブチニン、プロピベリン、ソリフェナシン、トルテロジン、trospium)と抗コリン薬ではない選択的β3アドレナリン受容体作動薬ミラベグロンについて、それぞれの累積投与量を標準化1日投与量の合計(total standardized daily dose:TSDD)として算出し、それらと関連する認知症発症のオッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●両群ともに年齢中央値は83歳、女性は63%であった。●過活動膀胱の治療として抗コリン薬を使用していたのは、認知症群17万742例のうち1万5,418例(9.0%)、対照群80万4,385例のうち6万3,369例(7.9%)であった。多く処方されていた薬剤はオキシブチニン(認知症群4.7%、対照群4.1%)、トルテロジン(4.1%、3.5%)、ソリフェナシン(2.8%、2.4%)であった。●抗コリン薬の使用に関連する認知症の調整ORは1.18(95%信頼区間[CI]:1.16~1.20)であった。男性(調整OR:1.22、95%CI:1.18~1.26)のほうが女性(調整OR:1.16、95%CI:1.13~1.19)よりも高かった。●認知症のリスクは、オキシブチニン、ソリフェナシン、トルテロジンの使用によって増大した。TSDD 0(非投与)と比較した場合の調整ORは以下のとおり。 【オキシブチニン】 ・TSDD 1~90の調整OR:1.04(95%CI:1.01~1.07) ・TSDD 91~365の調整OR:1.14(95%CI:1.07~1.21) ・TSDD 366~1,095の調整OR:1.31(95%CI:1.21~1.42) ・TSDD 1,095超の調整OR:1.28(95%CI:1.15~1.43) 【ソリフェナシン】 ・TSDD 1~90の調整OR:1.02(95%CI:0.97~1.08) ・TSDD 91~365の調整OR:1.11(95%CI:1.04~1.19) ・TSDD 366~1,095の調整OR:1.18(95%CI:1.09~1.27) ・TSDD 1,095超の調整OR:1.29(95%CI:1.19~1.39) 【トルテロジン】 ・TSDD 1~90の調整OR:1.05(95%CI:1.01~1.09) ・TSDD 91~365の調整OR:1.15(95%CI:1.08~1.22) ・TSDD 366~1,095の調整OR:1.27(95%CI:1.19~1.37) ・TSDD 1,095超の調整OR:1.25(95%CI:1.17~1.34)●darifenacin、フェソテロジン、フラボキサート、プロピベリン、trospiumの使用による認知症リスクの有意な増大は認められなかった。●ミラベグロンと認知症との関連性はTSDDカテゴリーによって異なった。これは、ミラベグロンを処方された患者の86.2%が以前に抗コリン薬を使用していたことや、TSDD 1,095超の患者が少なかったことが原因と考えられた。 研究グループは「高齢者の過活動膀胱の治療に使用されるさまざまな抗コリン薬のうち、オキシブチニン、ソリフェナシン、トルテロジンが高齢者の認知症の増加と関連していることが明らかになった。これらの結果は、長期的なリスクとその影響を臨床医が考慮し、認知症リスクがより低い可能性のある治療薬を検討する必要性を強調している」とまとめた。

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MCI高齢者に対するVR介入の有効性〜メタ解析

 アルツハイマー病は、根治不能な疾患であるが、軽度認知障害(MCI)の段階で仮想現実(VR)を用いた介入を行うことで、認知症の進行を遅らせる可能性がある。中国・上海交通大学のQin Yang氏らは、MCI高齢者におけるVRの有効性を明らかにするため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Medical Internet Research誌2025年1月10日号の報告。 2023年12月30日までに公表された研究をWeb of Science、PubMed、Embase、Ovidよりシステマティックに検索した。対象研究は、55歳以上のMCI高齢者の認知機能、気分、QOL、体力に対するVRベース介入を自己報告で評価したRCT。調査されたアウトカムには、一般的な認知機能、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスなどを含めた。2人の独立した担当者により、特定された論文と関連レビューの検索結果およびリファレンスリストをスクリーニングした。介入の構成要素と使用された実施および行動変化の手法に関するデータを抽出した。適格基準を満たした場合に、メタ解析、バイアスリスク感度分析、サブグループ解析を実施し、潜在的なモデレーターを調査した。エビデンスの質の評価には、GRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・18研究、MCI高齢者722例を分析に含めた。・VR介入は、VR認知トレーニング、VR身体トレーニング、VR認知運動デュアルタスクトレーニングがさまざまな没入レベルで行われていた。・VR介入により、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能の有意な改善が認められた。【記憶力】標準化平均差(SMD):0.2、95%信頼区間(CI):0.02〜0.38【注意力/情報処理速度】SMD:0.25、95%CI:0.06〜0.45【実行機能】SMD:0.22、95%CI:0.02〜0.42・セラピストによる介入のないVR介入でも、記憶力だけでなく注意力/情報処理速度の改善が認められた。・VR認知トレーニングにより、MCI高齢者の注意力/情報処理速度の有意な改善が認められた(SMD:0.31、95%CI:0.05〜0.58)。・没入型VRは、注意力/情報処理速度(SMD:0.25、95%CI:0.01〜0.50)および実行機能(SMD:0.25、95%CI:0.00〜0.50)の改善に対し有意な影響を示した。・一般的な認知機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスに対するVR介入効果は、非常に小さかった。・GRADEアプローチに基づくエビデンスの質は多様であり、特定の認知機能評価に対しては中程度、その他の評価では低であった。 著者らは「MCI高齢者に対するVR介入は、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能の改善に有効であることが示唆された。エビデンスの質は中程度〜低であったことから、これらの結果を確認し、新たな健康関連アウトカムについても検討するうえで、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

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日本における精神科入院に対する向精神薬頓服処方モニタリングプログラムの有用性

 向精神薬の頓服処方は、精神疾患に対する通常の薬物療法に加えて、興奮や不眠などの症状に対し、必要に応じて使用される。しかし、向精神薬頓服処方の有効性は、関連するエビデンスの質が低く、多剤併用につながる懸念がある。北里大学の斉藤 善貴氏らは、精神科入院患者を対象に向精神薬頓服処方モニタリングプログラムを導入し、プログラム実施前後の処方の変化をレトロスペクティブに調査した。BMC Psychiatry誌2025年1月17日号の報告。 対象は、2021年7月〜2023年6月の精神科入院患者389例。向精神薬頓服処方モニタリングプログラムは、2022年7月に実施した。対象患者を、モニタリング群および非モニタリング群(対照群)に分類した。人工統計学的データ(年齢、性別、診断)、入院前および退院時の定期処方、入院前および退院時の向精神薬頓服処方、入院中の向精神病薬頓服処方数を両群間で比較した。向精神薬処方に関するデータは、向精神薬のカテゴリ別に集計した。ボンフェローニ補正多重比較法を用いて、有意水準5%を0.00167に設定した。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬頓服処方率は、モニタリング群で9.3%であり、対照群(28.1%)と比較し有意に低かった。・入院中に向精神薬頓服処方を行った患者の割合は、モニタリング群で29.8%であり、対照群(64.5%)よりも有意に低かった。・対照群では、入院前後の定期処方された向精神薬の薬剤数に有意な変化が認められなかった。・しかし、モニタリング群では、入院前の定期処方された向精神薬も薬剤数2.47±1.90から退院時には1.87±1.24へと有意な減少が認められた。 著者らは「向精神薬頓服処方モニタリングプログラムは、定期処方を含む向精神薬の多剤併用リスクを軽減させる可能性が示唆された。向精神薬の頓服処方を最適化し、多剤併用からの脱却を目指すためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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10代の若者が自殺に向かう理由―未遂者対象解析

 10代の若者が自殺行動に至る理由やその手段などの特徴が明らかになった。日本医科大学付属病院精神神経科の成重竜一郎氏らの研究の結果であり、詳細は「BMC Psychiatry」に11月6日掲載された。学校や家庭の問題、および自閉スペクトラム症が、この世代の自殺リスクを押し上げている可能性があるという。 国内の自殺者数は近年減少傾向にあるが、10代の若者の自殺者数は変化が乏しく、依然としてこの世代の死因のトップを占めている。10代の自殺は他の世代とは異なる特徴を持つことが海外から報告されている。しかし日本人のデータは少なく詳細が不明。これを背景として成重氏らは、2010~2021年に同院救命救急センターに収容され、救命し得た症例を対象とする詳細な解析を行った。自殺企図の原因・動機や精神疾患の有無などは、2人以上の経験豊富な精神科医の討議により推定・診断した。 上記期間の自殺未遂による患者数は860人だった。このうち、10代の自殺未遂の特徴を探るという意図から、最も近い世代である20代の自殺未遂者を比較対照群とした。各群の患者数は、10代が59人(全体の6.9%)、20代が216人(同25.1%)だった。 まず、10代と20代の合計275人の全体としての特徴を見ると、女性が68.7%と多く、精神科の受診歴ありが74.2%、自傷行為の既往ありが61.8%だった。自殺行動の手段としては過量服薬が67.3%、高所からの飛び降りが17.8%などであり、認められた精神疾患・発達特性は、気分障害23.6%、パーソナリティー障害21.5%、適応障害17.1%、統合失調症と他の精神病性障害12.0%、自閉スペクトラム症9.8%などだった。 これらを10代と20代で比較した場合、性別の分布や自傷行為の既往には有意差がなかったが、精神科の受診歴は20代に多く(10代62.7%対20代77.3%)、高所からの飛び降りによる自殺企図(同順に28.8%対14.8%)や自閉スペクトラム症(28.8%対4.6%)は10代に多いといった有意差が認められた。 自殺企図の原因・動機については、学校の問題(40.7%対4.6%)、家庭の問題(39.0%対16.7%)、家庭の問題のうちの親子関係(30.5%対8.8%)などは10代が有意に多く、一方、恋愛上の問題(5.1%対32.4%)、仕事上の問題(3.4%対20.8%)、経済的な問題(0.0%対12.0%)は20代が有意に多かった。 次に、先行研究において10代の自殺に関連が深いと報告されている事柄を説明変数とするロジスティック回帰分析にて、10代の自殺企図に関連のある因子を検討。その結果、学校の問題(オッズ比〔OR〕14.338〔95%信頼区間5.557~36.998〕)、自閉スペクトラム症(OR7.297〔同2.541~20.956〕)、家庭の問題(OR2.860〔1.355~6.038〕)という三つの因子がそれぞれ独立して自殺企図に関連していることが示された。 著者らは、本研究が都心部の単一施設のデータに基づく解析であるため、日本の他の地域とは傾向が異なる可能性があることなどを留意点として挙げた上で、「10代の若者は、ある程度自分で環境を変えることのできる成人と比べ、学校や家庭などの容易に変え難い環境で発生する困難から逃れることができず、その葛藤が自殺企図につながる可能性を示唆している。10代の自殺防止対策には、これらの要因を考慮することが重要である」と述べている。 なお、学校や家庭の問題以外に、自閉スペクトラム症が10代の自殺企図に関連しているという結果については、「自分を取り巻く状況を変えることが難しい場合に、代替策として自身の特性を抑え込み、周囲に適応しようとする『社会的カモフラージュ』を強いられることで、精神的な負担がさらに増大しやすくなるためではないか」との考察が加えられている。

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重度精神疾患患者における第2世代抗精神病薬の心代謝プロファイルの安全性比較

 重度の精神疾患のマネジメントにおけるアリピプラゾールの心代謝への安全性および有効性の比較に関するエビデンスは限られており、その結果は一貫していない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlvin Richards-Belle氏らは、他の第2世代抗精神病薬と比較したアリピプラゾールの心代謝プロファイルおよび有効性を調査した。PLoS Medicine誌2025年1月23日号の報告。 英国・プライマリケアにおけるアリピプラゾールとオランザピン、クエチアピン、リスペリドンを直接比較した観察エミュレーションを実施した。データは、Clinical Practice Research Datalinkより抽出した。対象は、2005〜17年に新たに抗精神病薬を使用した重度の精神疾患(双極症、統合失調症、その他の非器質性精神病)成人患者。2019年までの2年間、フォローアップを行った。主要アウトカムは、1年後の総コレステロール値(心代謝安全性)とした。主な副次的アウトカムは、精神科入院(有効性)とした。その他のアウトカムには、体重、血圧、すべての原因による治療中止、死亡率などを含めた。分析では、人口統計、診断、併用薬、心血管代謝パラメータなどのベースライン交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は2万6,537例。その内訳は、アリピプラゾール群3,573例、オランザピン群8,554例、クエチアピン群8,289例、リスペリドン群6,121例。・年齢中央値は53歳(四分位範囲:42〜67)、女性の割合は55.4%、白人の割合は82.3%、統合失調症の割合は18.0%。・アリピプラゾール群における1年後の総コレステロール値は、オランザピン群(調整平均[aMD]:−0.03、95%信頼区間[CI]:−0.09〜0.02、p=0.261)、クエチアピン群(aMD:−0.03、95%CI:−0.09〜0.03、p=0.324)、リスペリドン群(aMD:−0.01、95%CI:−0.08〜0.05、p=0.707)と同等であった。・体重や血圧などの他の心代謝パラメータは、とくにオランザピン群と比較し、アリピプラゾール群のアウトカムが良好であることが示唆された。・入院歴で調整した後、アリピプラゾール群の精神科入院率は、オランザピン群(調整ハザード比[aHR]:0.91、95%CI:0.82〜1.01、p=0.078)、クエチアピン群(aHR:0.94、95%CI:0.85〜1.04、p=0.230)、リスペリドン群(aHR:1.01、95%CI:0.91〜1.12、p=0.854)と同等であった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対するアリピプラゾール治療は、他の第2世代抗精神病薬と比較し、1年後の総コレステロール値は同等であったが、体重や血圧などの他の心代謝パラメータは良好であり、有効性の違いも認められなかった」とし「本結果は、新規の重度精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択時において、臨床意思決定の根拠となるであろう」と結論付けている。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 1

今回のキーワード生活保護世帯分離法の下の平等直系家族病精神障害者の自立医療費の削減措置入院精神医療審査会前々回(その3)では、医療保護入院が廃止できない諸悪の根源が扶養義務であることを突き止めました。そして、前回(その4)では、扶養義務をはじめ、私たちが家族のつながりにとらわれ人権意識が乏しい根っこの原因を、地政学の視点から解き明かしました。そして、それを「直系家族病」(文化結合症候群)と名付けました。ということは、医療保護入院を廃止するためには、その前に「直系家族病」の主病巣である扶養義務にメスを入れる必要があります。はたしてそれは可能でしょうか?今回(その5)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を踏まえて、扶養義務の縮小が現実的になってきているわけをご説明します。そして、扶養義務を法的に縮小することは、医療保護入院の廃止だけでなく、「直系家族病」そのものの根治治療にもなりうる可能性をご説明します。さらに、医療保護入院が廃止されることによるベネフィットとリスク対策をまとめてみましょう。扶養義務の縮小が現実的になってきているわけは?主人公の明日香は、母親と絶縁しており、3年間ほぼ連絡を取っていませんでした。ラストシーンで彼女は同棲していた鉄雄と別れますが、その後に仕事が見つからないために、生活保護を申請したらどうなるでしょうか? その3で国による扶養圧力が強化されたとご説明しましたが、母親に扶養が可能かの通知が行くのでしょうか?答えは、家族関係がうまくいっていない場合は、原則的に通知は行きません。この根拠は、参議院厚生労働委員会附帯決議(2013年)において「家族関係の悪化を来したりすることがないよう、十分配慮すること」とされているからです1)。それでは、明日香が父親の急死をきっかけに、母親と電話やメールで連絡し合う仲にまで戻り復縁したとしたら、どうでしょうか? すると、母親に通知が行くことになるわけですが、母親がその通知に返信しなかったら、母親に罰則はあるのでしょうか?答えは、返信しなくても罰則はありません。この根拠は、厚生労働省社会・援護局長の国会答弁(2013年)において、「回答義務や回答がされない場合の罰則を科すことはいたしておりません」と答弁してるからです1)。さらに、返信しないということは、扶養を拒否しているわけであり、それでも罰則がないので、実は家族が扶養を拒否できることを意味します1)。それでは、明日香が実家に帰り、母親と同居するようになったら、どうでしょうか?答えは、同居している場合に限り、母親に扶養義務(生活保持義務)が生じるため、生活保護は申請できなくなります。逆に言えば、別居(世帯分離)さえしていれば、家族は扶養義務を課されることはありません。ちなみに、立場が逆転して、明日香の母親が生活保護を申請する場合もまったく同じです。もちろん、2人が同居(世帯同一)していても、2人揃ってなら申請できます。これが、現在の生活保護法の運用の原則になっています。つまり、現在、国による扶養圧力の話はあくまで見せかけで、扶養義務が実質的にあるのは、配偶者、父母(未成年の子に対する)に縮小されています。まさに核家族の家族構成で、家族システムがもともと核家族である欧米諸国と同じような扶養義務になってきています1)。唯一違う点は、成人した子供や親などに対して、欧米では同居していても扶養義務はないのに対して、日本では同居していたら扶養義務はあることです。しかし、実際の日本の民法上の扶養義務者(絶対的扶養義務者)の範囲は、明治民法から変わらず、配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹、子、孫、ひ孫と幅広く明記され、まさに直系家族の家族構成のままになっています。しかも驚いたことに、「特別な事情があるときは」という条件付きで、おじ、おば、甥、姪など3親等内の親族(相対的扶養義務者)まで含まれており、形式的にはとんでもなく広いです。確かに、戦後しばらくまでは、すぐ近くに住む親族が一緒に農作業をするなど、日常的にも経済的にも助け合うこと(扶養)は、ごく自然でした。生活保護法はまだできたばかりで、社会保障は行き届いていませんでした。しかし、核家族と一人暮らしが圧倒的な多数派となり、社会保障が充実している現在の社会構造では、血縁関係だけを理由に扶養義務を課し続けるのは不自然になっています。これは、血縁関係があるだけで殺人の刑罰が重くなる尊属殺人にも重なります。これは、かつて違憲判決が出ました。また、加害者と血縁関係があるだけで犯罪被害者給付金が減額されることにも重なります。これは、現在裁判中ですが、同じように違憲判決が出るでしょう。扶養義務にしても尊属殺人にしても犯罪被害者給付金にしても、血縁関係を特別視するのは、現在の社会構造では法の下の平等にはならなくなっています。もちろん、家族の絆や血縁関係を重んじること自体は、倫理的に推奨すべきことではあります。しかし、法的に強制すべきことではないというのが現代の価値観です。あとは、法改正を待つだけですが、国民の6割が賛成している選択的夫婦別姓(これもまた核家族による価値観)が法改正されず、なかなか違憲判決も出ないのと同じように、扶養義務の縮小もまだ時間がかかりそうです。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 2

扶養義務が法的に縮小されると何が良いの?扶養義務は実質的には縮小されていることがわかりました。それでは、その実情に合わせて、法的にも扶養義務が縮小されると、どんなベネフィットがあるでしょうか?まず、やっと家族は扶養義務の呪縛から解放されます。これまで法的には扶養義務があることで、結果的に「親に扶養義務があると思い込む→それなら同居する→扶養義務が生じる」という誘導が起きていました。国による扶養圧力もまさにこの流れの強化を狙っていたでしょう。このトラップに気付き、「別居すれば扶養義務がないことを知る→別居する→扶養義務が生じない」という逆の流れをそれぞれの家族がつくり、扶養しない新しい文化をつくる必要があります。こうすることで、もはや義務感から親は子供と同居しなくなります。成人したら家を出ていけと堂々と言えます。すると、子供は親の扶養を当てにできなくなるため、モラルハザードとして生まれていたひきこもりは当然減るでしょう。さらに、自立するために学校に行く必要があると考えるようになり、不登校も減るでしょう。また、義務感から病気の家族や老親の介護をしなくなります。障害年金や介護サービスなどの社会保障に任せ、家族が抱え込む介護問題も減るでしょう。同じように、成人した子供にたとえ精神障害があっても、実家暮らしの選択肢を与えず、一人暮らしやグループホームを選ばせることができます。これは、本人の心理的自立を促すだけでなく、親は心理的に支援するだけの存在という線引きができます。すると、入院するかどうかについては、提案することはしても、最終的には本人の意思を尊重するでしょう。そもそも同居していないので親は直接的に困ることはなく、わざわざ入院費(3ヵ月で少なくとも10数万円程度)を払いたくないでしょう。しかも、その2でも触れたように、強制入院ビジネスとあいまって、1回同意したら撤回できないとされため、延々と入院費を払わされるおそれもあります。こうして、医療保護入院に同意も反対もしない家族が増えるでしょう。これは、意思表示をしない権利を選んだだけであり、何の後ろめたさも引け目も感じる必要はないです。こうして、医療保護入院は廃止するかどうかの前に、利用されなくなり廃れていくことが見込めます。これは、扶養義務が形式的には広範なのに実質的には縮小されているのと同じ構図です。実は、すでにそのほころびが見え始めています。なぜなら、その1でご説明した市町村長同意がそもそも拡大されたのも、核家族化によって明日香のように家族がいても疎遠なために家族同意の意思表示が示されないケースが増えているからでした。以上より、扶養義務の法的な縮小は、日本のさまざまな社会問題を引き起こす「直系家族病」への根治治療になるでしょう。逆に、もともとのリスクを踏まえて、それでも成人した子供、病気の家族、老親と同居して扶養したい人だけがそれを選択すればいいだけの話になります。選択的夫婦別姓と同じように、「選択的扶養」です。医療保護入院が廃止されると何が良いの?扶養義務が法的に縮小されることによって、医療保護入院は廃れていく運命にあることがわかりました。それでは、最終的に医療保護入院が廃止されると、どんなベネフィットがあるのでしょうか?大きく3つ挙げてみましょう。(1)人権侵害が改善される1つ目は、当然ながら人権侵害が改善されることです。これは、国連の改善勧告を受け入れた形になります。(2)精神障害者の自立が促進される2つ目は、やっと精神障害者の自立が促進されることです。先ほど触れた不登校やひきこもりが減っていくことが見込まれるのと同じように、精神障害者はもはや家族から扶養され保護される対象ではなく、お互いに精神的に自立した大人の関係、対等の関係を築くことができます。これは、親子関係においても、夫婦関係においても言えることです。(3)医療費が大幅に削減できる3つ目は、ついに医療費の大幅な削減ができることです。1回の入院(3ヵ月)で、患者(家族)の自己負担は約10数万円とご説明しましたが、これは高額医療費負担制度を利用しているからです。公的負担は1人あたり約300万円(1日あたり3.3万円)です。ここから入院患者13万人の医療費を単純計算すると、3.3万円×365日×13万人=1.5兆円というとんでもない額になります。この多くが、もともと不要な強制入院ビジネスに流れていたわけです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 3

医療保護入院が廃止されると何が困るの? その対策は?医療保護入院が廃止されることによって、人権侵害が改善され、精神障害者の自立が促進され、医療費が大幅に削減できることがわかりました。一方で、そうすることで、どんなリスクがあるのでしょうか? そして、どんな対策を講じることができるでしょうか?大きく3つ挙げてみましょう。(1)急性期の患者に治療介入ができなくなる1つ目は、これまで医療保護入院をしていた急性期の患者への治療介入ができなくなると懸念されることです。確かにそのとおりです。そうならないようにするための対策として、措置入院に新たに「急性期症状による自立不全」という要件を追加することができます。措置入院なので、家族同意はなくなり、利害関係のない精神科医(精神保健指定医)2名による判断になり公正になります。ちなみに、これはヨーロッパをはじめとする諸外国に近いやり方です2)。ただし、医療保護入院の患者がいなくなった分、その穴埋めとして、今度は措置入院の患者が長く入院させられる可能性が懸念されます。この対策として、人権擁護の具体的な判断基準や入院期間の期限を明文化する必要があります。そのためにまずは、精神保健福祉法第1条の文言は以下のように、さらに変える必要があります。現在:「…精神障害者の権利の擁護を図りつつ、その医療及び保護を行い、…」↓廃止後:「…精神障害者の権利を擁護して、その医療を行い、…」この変更で最も重要なポイントは、「保護」という言葉を削除することです。保護という言葉は、この言葉の名のもとに、子供扱いして自由を制限するパターナリズム(父権主義)の象徴であり、医療保護入院を担保するためのキーワードであったからです。また、「権利を擁護して」とシンプルに表記せずに「権利の擁護を図りつつ」などと回りくどく表記していたのは、医療保護入院と人権擁護がそもそも矛盾するために、それを避けて、表向きに両立させるためであったこともうかがえます。そして、この変更を踏まえて、精神医療審査会は基本的に精神保健指定医1名と司法関係者(弁護士など)1名による聞き取り調査にすることです。これが、可能な理由として、医療保護入院が廃止されたことで強制入院の患者数は激減しているからです。そして、精神科医も余っているからです。また、異職種の専門家の2人体制にして、同業者の馴れ合いを防ぐ必要もあります。(2)身辺自立が難しい慢性期の患者の行き場がなくなる2つ目は、もともと医療保護入院をしていた患者の中で、摂食や排泄などの身辺自立が難しい慢性期の患者の行き場がなくなると懸念されることです。確かに、そう思う保守的な人はいるでしょう。そうならないようにするための対策として、まずは本人の同意による任意入院に切り替えることです。また、精神科病院をグループホーム(共同生活援助)に機能変更することです。なお、それでも最終的に精神科病院の大半はダウンサイジングや閉院することを迫られるでしょう。その流れをつくるためにも、医療保護入院はいきなり廃止させるのではなく、徐々に廃れさせる必要があります。精神科病院はすでに一定の役割を終えており、社会構造の変化として、仕方のないことです。そして、人権侵害を招く強制入院ビジネスはこれ以上あってはならないことです。(3)地域社会の治安が不安定になる3つ目は、もともと医療保護入院をしていた患者の多くが地域に戻ってくることで、地域社会の治安が不安定になると懸念されることです。確かに、そう思う保守的な人はいるでしょう。そうならないようにするための対策として、浮いた医療費によって、訪問医療、訪問看護、訪問介護(ヘルパー)などにより人数や時間をかけて、地域社会でのサポート体制を欧州諸国のレベルまでに拡充させることができます。「クワイエットルームにようこそ」から「クワイエットルールにさようなら」へラストシーンで、明日香は退院して病院の外を出て、初めて病院の外観を知ります。そして、救急車のサイレンが近づき、先に退院した同室の患者がまた戻ってきたのを見てしまいます。明日香が自由を手に入れたことを俯瞰して噛みしめている様子をうまく描いています。彼女は「クワイエットルーム」(精神科病院への入院)という体験を経て自己成長しました。同時に、日本の社会も、権威主義から自由と平等の価値観(民主主義)へと自己成長しつつあります。その過渡期であるからこそ、さまざまな社会問題が浮き彫りになっているとも言えます。この映画は、それを象徴しているように見えてきます。まさに、「クワイエットルームにようこそ」(権威主義)から、「クワイエットルームにさようなら」(民主主義)です。私たちの多くが、権威に抵抗して自由になる明日香に感動するのも、鎌倉時代から続いた直系家族(権威主義)よりも、原始の時代に続いていた核家族(民主主義)の方が圧倒的に長く、その文化進化に適応した遺伝子進化がまだ残っているからでしょう。遺伝子進化が何万世代も繰り返してちょっとずつ変化するのに対して、文化進化は情報化などの技術革新などによって数世代の間でも大きく変化します。これを踏まえると、精神科病院の関係者は利害関係があるため限界はありますが、精神科病院に直接関わらない医療関係者をはじめ一般の人たちが、この情報化社会で、扶養義務、医療保護入院についてどんどん発信していくことで、より良い社会を目指すことができるのではないでしょうか?一昔前は、がん告知を本人ではなく家族だけにしていました。今ではまったく考えられません。それと同じことが今起きています。「家族の同意で強制入院できるなんて…そんなこと今ではまったく考えられません」と言える未来がすぐ近くに来ているように思われます。1)「生活保護と扶養義務」p.30、p.41、p.99、p.108:近畿弁護士会連合会編、民事法研究会、20142)「医療保護入院」p.40、p76:精神医療、批評社、2020<< 前のページへ

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統合失調症の新治療戦略、マイクロバイオーム治療に関するメタ解析

 統合失調症は、慢性的な精神疾患であり、さまざまな症状が認められる疾患である。その症状は、大きく陽性症状、陰性症状、認知機能に分類される。統合失調症の病因は多因子性であり、遺伝的、神経生物学的、環境的因子が複雑かつ相互に関与しており、神経生物学的因子は、さまざまな神経伝達物質システムの異常と関連していると考えられる。この多因子性の病因および神経生物学的因子により、症状や臨床所見が多種多様となる。現在の抗精神病薬による治療は、依然として課題に直面しており、新たな治療法が求められている。最近の研究では、統合失調症患者と健康対照者における腸内マイクロバイオームの違いが明らかになっており、統合失調症と胃腸の健康に複雑な関連があると報告され、マイクロバイオームを標的とした介入が、臨床症状の改善に寄与する可能性が示唆されている。ブラジル・サンパウロ大学のLucas Hassib氏らは、薬物療法中の統合失調症患者の臨床アウトカムに対するマイクロバイオーム治療の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Brain,Behavior, & Immunity-Health誌2024年12月11日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・81件の研究より、バイアスリスクの低い7件のランダム化比較試験、2件の非盲検試験を含む9件の研究(417例)をメタ解析に含めた。・全体的な複合エフェクトサイズでは、マイクロバイオーム治療後の臨床症状の有意な改善が示されたが(Hedges'g=0.48、95%信頼区間:0.09〜0.88、p=0.004、I2=62.35%)、エフェクトサイズは小さく、研究の異質性は中程度であった。・臨床研究および前臨床研究において、とくにラクトバチルス属とビフィズス菌属によるマイクロバイオーム治療は、神経、免疫、代謝経路に作用し、脳腸軸を介して統合失調症の症状に効果的な影響をもたらす可能性が示唆されている。 著者らは「統合失調症の主要または補助的な治療におけるマイクロバイオーム治療の可能性を明らかにするためには、大規模かつ高品質な試験が求められる」としている。

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ADHDと診断された人の寿命は短い?

 注意欠如・多動症(ADHD)の成人は、同年代のADHDではない人と比べて平均寿命が男性で平均6.8年、女性で8.6年短いと推定されることが、新たな研究で示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)加齢・臨床心理学分野のJoshua Stott氏らによるこの研究結果は、「The British Journal of Psychiatry」に1月23日掲載された。Stott氏は、「これは大きな数字であり、憂慮すべき状況だ」とNew York Times紙に語っている。 世界でのADHDの有病率は2.8%と推定されている。Stott氏は、ADHDの人は、衝動的な行動を取りがちで、時間や健康をうまく管理できない傾向が強く、それがよりリスクの高い選択につながっている可能性があると説明する。New York Times紙は、このような困難が、ADHDの人での事故率や慢性疾患の罹患率の高さに関連していると報じている。 これらのことは、過去の研究でも裏付けられている。2022年のメタアナリシスでは、ADHDの人は、事故や自殺などの「不自然死」で死亡する可能性が一般人口よりも3倍近く高いことが示されている。また、2019年の研究では、ADHDの関連因子である喫煙、飲酒、睡眠不足、低収入が寿命の短縮と関連することが指摘されている。しかし、これまで、死亡データを基にADHDの人の寿命がADHDではない人と比べてどの程度短縮し得るのかを調査した研究は実施されていなかった。 Stott氏らは今回、2000年から2019年にかけて英国の792カ所の一般診療所から収集されたプライマリケアのデータを用いて、ADHDの人の寿命がどの程度短縮するのかを調べた。対象は、ADHDの診断を有する18歳以上の成人3万39人(ADHD群)と、年齢、性別、診療所を一致させた対照群30万390人であった。 その結果、ADHD群では、一般的な身体的および精神的な健康状態に関する診断が、対照群よりも多いことが明らかになった。また、ADHD群の寿命は、対照群と比べて男性で6.78年(95%信頼区間4.50~9.11)、女性で8.64年(同6.55~10.91)短いことも示された。ただし、本研究ではADHD群での具体的な死因は特定されていない。 研究グループは、ADHDの人が短命である原因には、喫煙や不十分な治療などの修正可能な要因が関係している可能性が高いと推測し、そのような治療や支援におけるアンメットニーズを法的措置によって改善する必要があるとしている。その具体例として、ADHDの人に多く見られる身体的および精神的健康問題への認識を高める取り組みの推進や、精神的な支援へのアクセスや禁煙支援サービスを適切なタイミングで利用できる環境整備の重要性を説いている。 Stott氏は、「ADHDの人には多くの強みがあり、適切な支援と治療を受けることで成長を期待できる。しかし、実情は支援を欠いていることが多く、生活の中でストレスになるようなことや社会的排除を経験することも多い。こうしたことが、彼らの健康や自尊心に悪影響を与えている可能性がある」と話している。

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