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統合失調症の遺伝的リスク~併発する他疾患との関連性

 統合失調症は、重度の身体的および精神医学的な症状を伴う深刻な精神疾患である。併発する健康被害が遺伝的リスクにより発生するのか、統合失調症の影響で発生しているかは、よくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、この課題に対し統合失調症の遺伝的リスクからアプローチを試みるため、英国バイオバンクより統合失調症と診断されていない40万6,929例を対象に、健康関連問題に対する統合失調症ポリジーンリスクスコア(PRS)の影響について調査を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年11月19日号の報告。 各診断は、プライマリケアおよび入院患者の医療記録、がんや死亡に関連する情報を含む健康データを用いて判断した。統合失調症のPRSを生成し、線形回帰とロジスティック回帰を用いて、一般的な健康状態、ICD10における16の主要分類および603疾患との関連をテストした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症PRSの高さは、全体的な健康評価の低下、入院診断の増加、特殊な疾患の増加との有意な関連が認められた。・ICD10の4つの主要分類との有意な関連が認められた。 ●正の関連:呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、妊娠・分娩・産褥 ●負の関連:筋骨格系の疾患・31の表現型は、統合失調症PRSとの有意な関連が認められ、19の新たな所見については、いくつかの筋骨格系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、静脈瘤、下垂体機能亢進、その他の末梢神経障害との関連が認められた。 著者らは「これらの発見は、統合失調症の遺伝的リスクの多面的な影響に関する情報を提供し、統合失調症と併発するいくつかの疾患がどのように発生するかを考える上で役立つであろう。統合失調症の病態生理学におけるホルモン調節の遺伝的基礎や免疫機構との関連を含めた今後の研究により、統合失調症とその併存疾患の根底にある生物学的機構を解明できる可能性がある」としている。

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原因はSAD?毎年秋から体調を崩す患者さん【知って得する!?医療略語】第3回

第3回 原因はSAD?毎年秋から体調を崩す患者さん季節の変化で気持ちが落ち込むことがあるって本当ですか?コム太君、そうなんです。近年、知られるようになってきましたが、「季節性感情障害(SAD)」という疾患概念があります。とくに日照時間が減り、寒くなる秋~冬に多い印象です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】SAD【日本語】季節性感情障害・季節性気分障害【英字】seasonal affective disorder【分野】精神神経【診療科】精神科・内科・心療内科【関連】冬季うつ病・夏季うつ病実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。本シリーズでは皆様のお役に立つかもしれない医療略語をご紹介します。今回は『SAD』です。「だるい」「眠れない」「気力が出ない」「気が滅入る」「不安で仕方ない」ことを主訴に内科を受診される患者さんは少なくありません。各種検査をしても異常がなく、症状を一元的に説明できない不定愁訴の患者さんの中には、詳しくお話を伺うと、実は毎年、秋頃から体調が悪くなり始めることが分かります。症状出現が早い人は、夏の終わり頃から症状を自覚し始めます。そして、年末年始をピークに、春に近づくにつれて、知らず知らずのうちに症状が軽快していることが少なくありません。そんな患者さんにはSADの可能性があります。ご本人も季節的な気分障害を認識していないことが多く、冬季を過ぎると症状が改善する可能性をお伝えすると、それだけで安心される方も少なくありません。このSADですが、Rosenthal氏らが、以下の4項目を満たす疾患と定義しています1)。(1)RDC診断基準による大感情障害を有する(2)少なくとも2年以上連続して秋冬に発症し、春夏に寛解するうつ状態(3)他の精神障害を有さない(4)明確な心理・社会的要因を有しない外来レベルだけではなく、救急受診患者数を季節で検証した研究でも、冬季に増加する傾向が報告されています2)。SADの原因は、日照時間の減少、日照時間減少によるビタミンD低下、セロトニンへの影響、気温の低下など、諸説あります。ただ、臨床現場において、SADの概念があることを明確に認識しておくことは、患者さんへの症状推移の予測や治療方針の決定、病状説明に役立つかもしれません。1)Wehr TA, et al. Am J Psychiatry. 1989;146:829-839.2)大槻 秀樹ほか. 日本救急医学会. 2009;20:763-771.

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第91回 年末年始急展開の3事件、「アデュカヌマブ」「三重大汚職」「町立半田病院サイバー攻撃」のその後を読み解く

第6波到来、デルタ株とは異なる対策必要にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。国内の新型コロナウイルスの新規感染者は1月8日、9日と連続で8,000人を超え、感染第6波が本格的に到来しました。9日からは沖縄県、山口県、広島県で「まん延防止等重点措置」が適用されています。これまでに、オミクロン株はデルタ型より感染力が強い一方で、肺まで達して重症化するリスクは低いことなどがわかってきました。しかし、感染力が格段に強いため、感染拡大のスピードも早く、国内外で医療機関のみならずさまざまな社会インフラへの影響が出始めています。本連載でも繰り返し書いてきたように、「空気感染」をしているとしか考えられない事例も増えているようです。感染拡大が先行して進んだ沖縄の状況について、1月7日付の朝日新聞は「デルタ株とは別の病気」というタイトルで沖縄県の専門家会議の議論を紹介、座長である藤田 次郎・琉球大学教授が以下のコメントをしています。「国の基準はデルタ株を前提として作られているが、臨床医の感覚では別の病気。インフルエンザなら薬を飲めば熱が下がって数日で職場復帰できるが、コロナは休む期間が長い。このため、社会インフラに与える影響が大きい」。日本では、第5波を教訓に、病床確保など第6波に備えた対策を取ってきたはずですが、それはあくまでもデルタ株の感染を踏まえての対策だったと言えます。その病態を大きく変化させたオミクロン株には、さまざまな対策や規制の抜本的な見直しが必要だと言えそうです。岸田 文雄首相は1月11日、水際対策の2月末までの現状骨格維持や、ワクチンの大規模接種会場の再開設などを表明しましたが、いずれも従来の路線の延長であり、新機軸はありません。第5波の時のように、対策が後手後手にならなければいいのですが……。アデュカヌマブ承認、日本では結論持ち越しさて今回は、このコラムで昨年取り上げたいくつかの話題が、年末年始で急展開を迎えていましたので、まとめておさらいしておきたいと思います。まずはアルツハイマー型認知症の治療薬「アデュカヌマブ」です。2021年12月22日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会には、アデュカヌマブ(商品名:アデュヘルム、バイオジェン ・ジャパン)の承認について、「現時点で得られたデータから、本剤の有効性を明確に判断することは困難であり、今後実施される適切なデザインの臨床試験の成績等に基づき有効性及び安全性について再検討し、その結果に応じて再度審議する必要がある」と、結論を持ち越しました。主な議論の内容として、「申請の根拠とされた2つの 国際共同第III相試験の結果に一貫性がない」「脳内アミロイドβプラーク低下の臨床的意義が確立していない」「本剤の投与によって、脳の浮腫や出血などがみられる」などが挙げられています。アデュカヌマブについては、米国のFDA(食品医薬品局)が承認した2021年6月、本連載の「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」「第63回 後編」でも詳しく書きました。日本の結論持ち越し決定が出る直前の12月17日、欧州のEMA(欧州医薬品庁)は承認しないよう勧告を行っており、厚労省の判断が注目されていました。結局日本は米国と欧州の中間的な結論を選択、米国で行われている第IV相試験の結果や今後実施予定とされる新たな臨床試験の結果次第、ということになったわけです。ちなみに、「臨床的意義が確立していない」と言われた脳内アミロイドβプラークを低下させる薬剤としては、同じくバイオジェン社がlecanemab、イーライリリー社がdonanemabの開発を進めており、いずれも2022 年にFDA から迅速承認を得られる可能性がある、とされています。今年も認知症薬の承認を巡って、医療界だけでなく、世間や株価が大騒ぎしそうです。三重大病院汚職事件、残るは元教授の公判のみ次は、三重大付属病院の臨床麻酔部の医師らが、小野薬品工業、日本光電工業の社員と起こした汚職事件です。津地裁は12月28日、医療機器の納入で業者に便宜を図った見返りに、上司の元教授が代表を務める団体に200万円の賄賂を提供させたとして、第三者供賄罪に問われた三重大病院元講師(47)に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年2月)の判決を言い渡しました。この事件については、2020年9月に「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」で取り上げて以降、幾度も書いてきました。この事件で逮捕・起訴された三重大病院臨床麻酔部の元医師3人、小野薬品工業の社員2人、日本光電工業の社員3人の計8人のうち、これまでに7人の公判が津地裁で開かれ、いずれも執行猶予付の有罪判決が出ています。残るは一連の事件の首謀者とされる元教授の公判ですが、年明けにも開かれる予定です。なお、元教授は保釈を請求し、昨年11月に保釈を認める決定が出ています。この事件については、小野薬品工業が昨年8月に外部調査委員会の報告書を公開、事件について「MRにとってグレーゾーンの中で起きた事件であると言っても過言ではない」と指摘、奨学寄付金と取引誘引との関係については業界全体で検討すべき課題だ、と提言しています。一体何が問題だったのか、元教授の判決を待って本連載でも改めて考えてみたいと思います。町立半田病院、電子カルテのサーバーが復旧最後は徳島県つるぎ町の町立半田病院で2021年10月末に起こったランサムウエアによる病院システムへのサイバー攻撃の事件です。同病院ではこの攻撃で患者約8万5,000人分の電子カルテが閲覧できなくなっていましたが、年末にサーバーが全面復旧、2022年1月4日から約2ヵ月ぶりに全13診療科で通常診療が再開しました。この連載では、「第86回 世界で猛威を振るうランサムウエア、徳島の町立病院を襲う」で同事件を取り上げ、「同病院は11月26日に会見を開き、身代金は支払わず電子カルテのシステムを一からつくり直す、と表明しました」と書きました。結局、復旧を依頼した外部のセキュリティー会社から戻ってきたサーバーでカルテを閲覧できることが確認できたため、システムを一から再構築する必要はなくなった、とのことです。徳島新聞などの報道では、病院は復旧の具体的な方法などについては、「今後のセキュリティー対策に関わるので公表しない」とのことです。また、当面は安全対策として、メンテナンスなどに必要な外部との接続は行わず、専門家らでつくる有識者会議に諮った上で接続を試みるとしています。さらに、バックアップの方法やVPN(仮想プラベートネットワーク)の構築方法なども有識者会議に検討してもらうそうです。12月29日付の読売新聞は、この事件に関連し「『身代金』ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も」と題する記事を掲載しています。それによれば、同紙の取材によって2016年以降、国内の少なくとも11病院がランサムウエアによる被害を受けていたことがわかったそうです。救急搬送の受け入れや手術の停止、外来診療の制限などの被害が出ており、医療機関が攻撃対象になるケースは増加傾向にある、とのことです。なお、同じく読売新聞の報道によれば、厚労省は2021年度中にも医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針を策定する予定で、電子カルテなどのバックアップデータについては病院のネットワークから切り離して保管することなどを盛り込む方針とのことです。今年は診療所・病院の区別なく、あらゆる医療機関がサイバー攻撃の対策に本腰を入れる必要がありそうです。

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正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴

 正常な老化と認知症による認知機能の変化に関してその根底にあるメカニズムを解明するためには、脳ネットワークの空間的関係とそのレジリエンスのメカニズムを理解する必要がある。藤田医科大学の渡辺 宏久氏らは、正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴について報告を行った。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年11月22日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・異種感覚統合(multisensory integration)やデフォルト・モード・ネットワークなどの脳のハブ領域は、ネットワーク内およびネットワーク間の伝達において重要であり、老化の過程においても良好に維持され、これは代謝プロセスにおいても重要な役割を担っている。・一方、これらの脳のハブ領域は、アルツハイマー病などの神経変性認知症の病変に影響を及ぼす部位である。・聴覚、視覚、感覚運動のネットワークなどに問題が生じた一次情報処理ネットワークは、異種感覚統合ネットワークの過活動や認知症を引き起こす病理学的タンパク質の蓄積につながる可能性がある。・細胞レベルでは、脳のハブ領域には多数のシナプスが含まれており、大量のエネルギーが必要となる。・これらの領域では、ATP関連の遺伝子発現が多くみられ、PETで示されているように高いグルコース代謝が認められる。・重要なのは、ATP産生の中心にあるミトコンドリアの数とその機能が、10年ごとに約8%減少するということである。・認知症患者は、多くの場合大量のATPを必要とするユビキチン・プロテアソームおよびオートファジー・リソソームシステムの機能障害を有している。・エネルギーの供給が低いにもかかわらず需要が高い場合には、疾患リスクが上昇する可能性がある。・エネルギーの供給と需要のバランスが悪いと、病的なタンパク質の蓄積を誘発し、認知症発症に重大な影響を及ぼす可能性がある。・脳のハブ領域における認知症リスクの脆弱性は、このエネルギーバランスの不均衡により説明可能であると考えられる。

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日本の入院患者における向精神薬使用と転倒リスク~症例対照研究

 これまでのいくつかの研究において、転倒のリスク因子の1つとして向精神薬の使用が挙げられている。しかし、これまでの研究では、管理データベースより取得したデータを用いる、向精神薬の使用から転倒や転落までの時間間隔に関する情報が欠如しているなど、いくつかの制限が含まれていた。東京医科大学の森下 千尋氏らは、カルテより収集した信頼できるデータを用いて、入院患者における向精神薬の使用と転倒や転落との関連について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年12月8日号の報告。 カルテから抽出したデータに基づき、東京医科大学病院に入院している患者を対象に、年齢、性別、入院部門をマッチさせた新規使用者デザイン(new -user design)の症例対照研究を実施した。アウトカムは、転倒・転落の発生率とした。抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬の4つのクラスの向精神薬の使用について、転倒経験患者254例と転倒経験のない対照患者254例の間で比較を行った。転倒や転落とこれら向精神薬の使用との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・単変量分析では、すべてのクラスの向精神薬使用と転倒リスクとの間に統計学的に有意な関連が認められた。・年齢、性別、入院部門、BMI、入院時の転倒リスク評価スコア、他の向精神薬使用などの潜在的な交絡因子で構築された多変量ロジスティック回帰分析では、睡眠薬の使用と転倒リスクとの関連は、有意なままであった。 著者らは「入院患者において睡眠薬の使用は、転倒や転落の危険因子であることが示唆された。転倒や転落の発生率の低減させるためには、睡眠薬の使用を可能な限り控えることが重要であろう」としている。

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抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。 カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・過去6ヵ月間でソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した患者は、ミラベグロンを使用した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。 ●ソリフェナシンのOR:1.24(95%信頼区間[CI]:1.08~1.43) ●darifenacinのOR:1.30(95%CI:1.08~1.56)・診断前6ヵ月~1年間でソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した患者は、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症率の上昇との関連が認められた。 ●ソリフェナシンのOR:1.34(95%CI:1.11~1.60) ●darifenacinのOR:1.49(95%CI:1.19~1.86) ●トルテロジンのOR:1.21(95%CI:1.02~1.45) ●フェソテロジンのOR:1.39(95%CI:1.14~1.71)・オキシブチニンまたはtrospiumでは、影響が認められなかった。この原因として、プロトパシーバイアスが考えられる。・本研究の限界として、アウトカムの誤分類や健康関連データベース使用による交絡因子の影響が挙げられる。 著者らは「診断6ヵ月前にソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した高齢者、診断前年にソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した高齢者では、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。OAB患者の治療に際して、慎重な薬剤選択が求められる」としている。

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うつ病患者にみられる併存疾患~ネットワークメタ解析

 うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。 本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者は、平均4つの併存疾患を有しており、84.4%で1つ以上の併存疾患が認められた。・うつ病を対象とした併存疾患ネットワークは、対照群よりも複雑であった(839 vs. 369)。・うつ病患者の併存疾患ネットワーク内には、複雑ではあるが明確なコミュニティが発見された。その最大のコミュニティは、脳血管疾患、慢性虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症が含まれた。・性別特有の疾患は、中枢神経性疾患であった。また、男女ともに心血管疾患が主要な中枢性疾患であった。・併存疾患ネットワークの主要な疾患は、うつ病患者が高齢になるほど、疾患重症度が高まった。・なお、観察された相互関連の因果関係は特定できなかった。 著者らは「併存疾患のパターンを評価するための縦断的な医療データセットへのネットワーク解析の適用は、従来の臨床研究のアプローチを補完するうえで役立つであろう。本調査結果により、うつ病関連の併存疾患についての理解が向上し、うつ病の統合管理が強化されることが望まれる」としている。

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 1

今回のキーワード「人育て」(人材育成)足場作り(スカフォルディング)仕掛け(ギミック)お手本(モデリング)ルール作り(オペラント条件づけ)理由づけ(合理性)お目付役(客観性)ほどほど度(介入レベル)前回(続編・その2)では、映画「そして父になる」を通して、子育ての正解とは、厳し過ぎず、自由過ぎず、ほどほどに子育てをする、つまり非認知能力をまず育んだ上で、認知能力を自ら高めることを促す、自律的な子育てであることが分かりました。そして、その根拠を、行動遺伝学による研究と進化心理学による解釈から導きました。それでは、実際に、どう「ほどほどに」子育てをすればいいのでしょうか?核家族化、少子化、一人親、ワンオペなど、現代の家庭環境が急激に変化し続ける最中、私たちは、本来の「ほどほどに」という子育てのあり方を見失ってしまいそうです。この答えを探るために、今回(続編・その3)は、引き続き、この映画を取り上げます。前回にご説明した、良い能力を促し悪い「能力」を抑えるという2つの家庭環境の機能を踏まえて、自律的に子どもを育てるスキルをご紹介します。さらに、そこから「人育て」(人材育成)のヒントを一緒に考えてみましょう。なお、この記事の中の家庭環境の機能とは、発達心理学の家族機能のいわゆる父性に当たります。母性と父性による家族機能の詳細については、関連記事1をご覧ください。どう認知能力を自ら高めることを促す?-良い能力を促す取り組み1つ目の家庭環境の機能とは、言語理解を主とする認知能力を促すことでした。その2では、この機能を、現代社会に望ましいながらも癖になりにくい(嗜癖性が弱い)能力を促進する文化的な「アゴニスト」(刺激薬)であるとご説明しました。それでは、この良い能力をどう促しましょうか? ここから、大きく3つの取り組みを挙げてみましょう。(1)足場作り映画のラストシーン。野々宮家の慶多が父親の良多に「スパイダーマンってクモだって知ってた?」と尋ねます。良多は「ううん、初めて知った」と優しく答えます。子どもの取り違え騒動を経て、彼が変わったのが見て取れるシーンです。一般的な知識なので、おそらく彼は知っていたでしょう。でも知らないと敢えて答えたのです。一方で、かつての良多だったら、「もちろん知ってるよ。クモってのはな・・・」と授業が始まったでしょう。1つ目の取り組みは、足場作りです(スカフォルディング)。足場とは、もともと建物を作る時の作業のために簡易的に組まれた足を置ける板などのスペースです。この足場と同じように、子どもが何か新しいことを知ろうとしたり、少し難しいことにチャレンジしようとするときに、その動機を高める親の関わりです。ここで、一方的にどんどん教え込んだり、先回りして教えてしまったら、その2でご説明した厳格な家庭環境になります。逆にまったく教えなかったら、その2でご説明した放任的な家庭環境になります。そうではなくて、「ほどほどに」教えるのです。たとえば、 幼児はよく「なんで?」と質問します。この時に、すぐに答えを言わないことです。そして、必ずしもきちんと答えないことです。分からないふりをして、「なんでだろう」「なんでだと思う?」と質問に質問で返します。ヒントをさりげなく言ったり、わざと間違えてツッコませることもします。また、子どもが学校から帰った時に、「今日は何を勉強した?」と聞かないことです。代わりに、「今日は何を質問した?」と聞くのです。「何が気になった?」「何をもっと知りたいと思った?」でもいいでしょう。これは、答えを見つけるのではなく、疑問を見つける働きかけです。結果よりもプロセスに重きを置く自発性(非認知能力)が育まれるでしょう。なお、良い結果を褒めたり、ご褒美をあげることは、さらに動機を高めると信じている親は多いです。しかし、ここには、ある落とし穴があります。実際の心理実験において、まず、絵を描くのが好きな子どもたちを、上手に描いたら賞状をあげるグループと何もしないグループに分けます、そして、絵を描かせます。すると、賞状をもらったグループの子どもは、何もしなかったグループの子どもよりも、その後にただ絵を描く時に、その時間が短くなったという結果が出ています。ご褒美がなければもうやらないと心変わりしていった訳です。つまり、何かをする楽しさやおもしろさ(内発的動機づけ)が、報酬(外発的動機づけ)によって削がれてしまう訳です(アンダーマイニング現象)。このことから、子どもが楽しんで何かをしている時は、出来栄え(結果)だけを極端に褒めたり、ご褒美を毎回あげたりするのは望ましくないことが分かります。そうされた子どもは、出来栄えを褒められることやご褒美をもらうことばかりにとらわれてしまうからです。出来栄えを褒めたりご褒美をあげるのは時々(ほどほど)にして、まずは「頑張ってるね」とその頑張り(プロセス)を褒めたり、「楽しいね」と共感することが良いでしょう。褒めるスキルの詳細については、関連記事2をご覧ください。似たように、子どもが本好きだからと言って、本をどんどん買い与えたり、読み聞かせをしつこくやると、本のありがたみや読み聞かせを聞く喜びが削がれたり、言いなりになりたくないという反抗の心理を煽るリスクがあります(心理的リアクタンス)。やはり、もったいぶるくらい(ほどほど)が効果的でしょう。また、子どもへの声かけとして「宿題は?」「勉強しなさい」と頻繁にプレッシャーをかけることは、今からやろうとしたり、やりたいと思っていた子どもの気持ちを削いでしまうリスクがあります。反抗期だととくにです。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。好きで仕事に入れ込んでいるだけなのに、報酬が上乗せされたり、報酬ばかりをチラつかす職場環境は、逆に報酬がなければやらないという考え方に部下を仕向けてしまうリスクがあります。また、さらに教えてあげようと好意的に迫ってくる上司がいる職場は、部下から煙たく思われてしまいます。報酬や指導は適度に(ほどほどに)して、本人の成長やチームプレイ(人間関係)も評価することが効果的でしょう。ほどほどであることは、育つ側だけでなく、育てる側もストレスを減らし、自分の仕事に専念できるでしょう。次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 2

(2)仕掛け野々宮家には、ピアノ・ギターなどの楽器や最新の英語の音声教材が置かれ、壁に地図が貼られています。もちろん、本もたくさんあります。そんな野々宮家で暮らすようになった琉晴は、ピアノに興味を持ち、メチャクチャながらも、鍵盤を弾き続けるシーンがありました。2つ目の取り組みは、仕掛けです(ギミック)。仕掛けとは、もともと釣りや手品のように、ある目的のために巧みに工夫されて仕組まれたものです。この仕掛けと同じように、子どもが興味を抱きやってみたくなったり、逆に葛藤を抱き考えさせる親の関わりです。ここで、無理やり押し付けたり、やらせようと叱ってしまったら、やはり厳格な家庭環境になります。逆に、何もしなかったら(何もなかったら)、やはり放任的な家庭環境になります。そうではなくて、「ほどほどに」仕向けるのです。たとえば、幼児はよく「やりたいやりたい」と言います。この時、危ないことでなければなるべくやらせてみることです。料理や家事をしている時に、敢えて鼻歌を歌いながら楽しくやれば、お手伝いを仕向けることもできます。もちろん、そのために手間と時間がかかっても、ちゃんとできていなくて後で親がやり直すことになっても、自発性(非認知能力)を高めるために、敢えてやらせるのです。お手伝いは、社会経験の第一歩です。敢えてできそうな頼み事をしても良いでしょう。ここで注意点は、「ちゃんとできていない」とダメ出ししないことです。そうではなくて、「助かる」「うれしい」「ありがとう」に加えて、「〇〇ちゃんが手伝ってくれた料理はおいしいなあ」「〇〇くんがしてくれたお掃除で気持ちが良いなあ」とぼそっと(ほどほどに)言い、お手伝いを通して役に立っている感覚としての自発性を育むのです。一方で、幼児はよくけんかをします。兄弟や友達とけんかが始まると、または始まりそうになると、親としてはトラブルを起こしたくないので、つい先回りして引き離したくなります。しかし、ここも我慢です。ある程度、小競り合いになるまで泳がせて見届けます。そして、手が出たり、ケガになりそうになった時に、介入します。まったくほったらかしにする訳ではありません。この点で、野々宮家のように子どものけがに神経質にならないほうが良いでしょう。子どもは、実際の集団遊びの中、とくに葛藤場面でセルフコントロール(非認知能力)を高めています。そもそも、けんかをしなければ、仲直りの仕方が学べないです。つまり、何かトラブルが起きそうなピンチにこそ、そこに学びのチャンスがあるのです。習いごとも仕掛けの1つとしては使えます。ただし、習いごとの目的は、学習成果ではなく、学習態度であると割り切ることです。まずは、楽しんでやり続けることができるかを一番とすることです。逆に言えば、ガチガチに管理して、できるだけ多くやらせたり、無理やりにやらせないことです。無理やりやらされている限り、自分で考えて行動するという自発性は育まれません。習いごとはあくまで子どもが望んだ場合のオプションであり、豊かな発達のための刺激の1つに過ぎません。経済的な事情があれば無理してやらせることではないでしょう。お金をかけなくても、親ができることはほかにもたくさんあります。逆に言えば、「習いごとを続けろ」「勉強をしろ」と叱り飛ばすことに、ほとんど意味はなくなります。それどころか、これは、教育虐待のリスクがあることをその1ですでにご説明しました。実際の動物実験において、犬に電気ショック(罰)を与え続けると、最初は逃げるのに、やがて逃げられないことが分かると、逃げるのをあきらめてしまい、その後に逃げられる状況になっても、逃げなくなることが分かっています。同じように、人間の心理実験において、もともと解決できない問題を解かされた学生は、その後に簡単な問題を与えられても取り組もうとしなくなることが分かっています。つまり、無理難題を強いられること(外発的動機づけ)によって、自分は問題を解決することにおいて無力であると学習してしまい、やる気(内発的動機づけ)が削がれてしまう訳です(学習性無力感)。たとえば、ピアノ演奏会のシーン。慶多は練習の通りに本番でうまく弾けず、うまく弾いているほかの子に「上手だね」と感心して言います。そんな慶多に父親の良多は「悔しくないのか? もっと上手に弾きたいと思わなければ続けてても意味ないぞ」と叱ります。すると、慶多は顔をこわばらせて萎縮するばかりなのでした。この状況への効果的な仕掛けは、叱るのは必要最低限(ほどほど)にして、「うまい子もいるねえ」「でも慶多も練習頑張ったよね」「今日の演奏会は楽しかったね」と言うことです。すると、次の演奏会に向けて自らもっと練習に励むでしょう。もしも慶多が悔しがっているのなら、「悔しいね」「でもパパとママは慶多が練習してきたのをずっと見てきたよ」と言えば、自分で自分を慰めるセルフコンパッション(セルフコントロール)を高めることができるしょう。叱るスキルの詳細については、関連記事3をご覧ください。なお、日本ならではの裏メッセージ(ダブルバインド)の文化には注意が必要です。たとえば、「心配ねえ」「駄目ねえ」「無理よ」という声かけです。これは、奮起させる効果がある一方、自尊心や自信をなくさせて、やる気を削ぐリスクがあります。やはり奮起させる声かけはほどほどにして、「うまく行くよ」「大丈夫だよ」「あと少し」という受容的な声かけを織り交ぜるのが良いでしょう。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。部下にダメ出ししたり叱咤激励をするのはほどほどにして、まずは部下がやる気を高める職場環境を整えることに重きを置くことが効果的でしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 3

(3)お手本自宅で電気屋を営む斎木家の父親・雄大は、慶多の目の前で、やって来る客から週末に草野球を一緒にやろうと誘われます。雄大は、冗談交じりに断っていましたが、まるで友達のように楽しそうにしゃべっています。3つ目の取り組みは、お手本です(モデリング)。お手本とは、何かを習う時に模範となるものです。このお手本と同じように、子どもにやって欲しいことをまず自分たちが目の前で実践するという親の関わりです。ここで、実践していないのにやって欲しいことを強いてしまったら、厳格な家庭環境になります。逆に、お手本になることを意識しなかったら、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、さりげなく(ほどほどに)その背中を見せるのです。お手本(モデリング)は、発達心理学的には、模倣学習と言い換えられます。これは、琉晴が雄大と同じようにストローを噛んだり、慶多が良多と同じように首を傾けるポーズをするように、親などの身近な人のしぐさや行動の真似をついしてしまうことです。人類ならではの学習能力であり、社会脳が進化した約300万年前以降に生まれた古い能力です。つまり、約10万年前に生まれた言語的コミュニケーションによる学習よりも、この模倣という非言語的コミュニケーションによる学習のほうがより古く、より嗜癖性が強い点で、より効果的であることが分かります。一言で言えば、子どもは親の言うことを聞くとは限りませんが真似はするということです。たとえば、友達と仲良くすることについてです。口で言うよりも効果的なのは、まず親が夫婦で仲良くしている姿を子どもに見せることです。夫婦げんかをしても、その後の仲直りを目の前で見せることです。謝ることについても、まず親が子どもについ悪いことをしてしまったら、ラストシーンの良多のように素直に謝る姿勢を見せることです。逆に、かつての野々宮家のように、夫婦でギスギスしていたり、一方がもう一方の言いなりになっていたり、陰でお互いがお互いの悪口を子どもに吹き込んでいるとどうでしょうか? 友達を大切にしなさいと口先だけで言っても、何の説得力もありません。また、習いごとや勉強することについてです。口で言うよりも効果的なのは、まず親がピアノを楽しく弾いていたり、本をよく読んだり熱心に調べ物をしていることです。実際に職場に子どもを連れて行って、働いている姿を少しでも見せることです。夫婦でニュースの話題で盛り上がって意見を言い合ったり、仕事がうまく行った喜びや夢を語り合っている姿を子どもに見せることです。逆に、親がその習いごとをやった経験がなかったり、一緒にやっていなかったらどうでしょうか? 斎木家のように父親が家で昼間からごろごろしていたり、野々宮家のように仕事があまりにも忙しくてほとんど家にいなかったらどうでしょうか? 習いごとで悔しがれ、勉強しろ、夢を持てと口先だけで言っても、何の説得力もありません。なお、日本ならではの謙遜の文化には注意が必要です。たとえば、ご近所さんや知り合いから「お宅のお子さんはしっかりしてますねえ」と言われた時です。その言葉がお世辞であっても本音であっても、謙遜の文化の文脈では、渋い表情で「いえいえ、そんなことないです」と返答するのが礼儀になります。しかし、この返答を目の前で聞いた子どもはどう思うでしょうか? 子どもは謙遜の文化をよく分からず、混乱して「実は自分が駄目なんだ」と自信を失ってしまうリスクがあります。お手本(モデリング)を意識した正解の返答は、笑顔で「そう思っていただき嬉しいです」「励みにします」「ありがとうございます」です。そして、子どもには、「〇〇さんにそう言われて嬉しいね」「もっと頑張りたくなってきたね」です。もしもつい謙遜してしまったら、またはどうしても謙遜しなければならなかったら、その後は素直に子どもに謝り、事情を説明すればいいだけです。これは、謙遜の文化についての心理教育をするチャンスになります。身内の中での冗談交じりのダメ出しも注意が必要です。たとえば「パパみたいになっちゃ駄目だよ」「ママはバカだな」などです。これらは、大人同士では「実はそうじゃない」という文脈を共有していますが、子どもはこの裏メッセージ(ダブルバインド)をよく分かっていません。鵜呑みにしたり、そのまま友達に使ってしまうリスクがあります。お手本(モデリング)を意識した代わりのセリフは、「パパはそんなことするの駄目だよ」「ママはそんなバカなことしないで」と、主体を人ではなく、行動に置き換えるのが良いでしょう。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。上司がしんどそうにしていたり、職場の愚痴を言ってばかりだと、どうでしょうか? いくら部下に頑張れ、自分の将来を考えろと口先だけで言っても、何の説得力もありません。上司はまず、余計なことは言わず、生き生きと仕事している背中を見せて、仕事の夢を語ることが効果的でしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 4

素行の悪さと嗜好品へのハマりやすさをどう抑える?-悪い「能力」を抑える取り組み2つ目の家庭環境の機能とは、素行の悪さ(反社会的行動)と嗜好品へのハマりやすさ(物質依存)を抑えることでした。その2では、この機能を、現代社会に望ましくないながらも癖になりやすい(嗜癖性が強い)「能力」を抑制する文化的な「アンタゴニスト」(遮断薬)であるとご説明しました。それでは、この悪い「能力」をどう抑えましょうか? ここから、大きく3つの取り組みを挙げてみましょう。(1)ルール作り良多は、琉晴が野々宮家で暮らし始める初日に、流晴に野々宮家のルールのリストを紙にして渡します。そして、琉晴に「ストローは噛まない。英語の練習を毎日する。トイレは座ってする。お風呂は一人で静かに入る。テレビゲームは1日30分。パパとママと呼ぶこと」と読ませるのです。1つ目の取り組みは、ルール作りです(オペラント条件づけ)。これは、家庭内での決まりごとをはっきりさせて、やって良いことと悪いことを意識させる親の取り組みです。ここで大事なのはルールのペナルティです。ペナルティが厳し過ぎると、厳格な家庭環境になります。逆に、ルールもペナルティもはっきりしていなくて、斉木家のゆかりのようにそのつど気分に任せて怒鳴ったり叩いてしまったら、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、適度に(ほどほどに)ペナルティを設けるのです。たとえば、素行についてです。叩く、押す・蹴る・物を投げるなどの危険行為や、大声を上げる・地団太を踏むなどの迷惑行為が見られたときは、どうしましょうか? ここで注意点は、体罰はどんな状況でも不適切です。その訳は、いくら子どもが悪いからと言って、親が体罰をしてしまったら、相手が悪い時は暴力(体罰)をして良いという悪いお手本を子どもが模倣学習してしまうからです。だからこそ、体罰禁止法ができたのです。しかし、親も人間です。つい叱った勢いで手が出てしまったら、後で謝れば良いのです。これが、良いお手本になります。素行の悪さに対して効果的なのは、まずタイムアウト(行動制限)です。自宅にいる時は、自分の部屋など決まった場所に入ることです。時間は5分程度、または落ち着いたら出てきて良いとすることです。程度が重くない場合は、イエローカード(2回目の警告でタイムアウト)、スリーノックアウト(3回目の警告でタイムアウト)の方式を取り入れ、警告することで落ち着くことを促すこともできるでしょう。なお、外にいる時は、タイムアウトが使えません。代わりに、3つの対処法があります。1つ目は、なるべく周りに人が少ない場所に移動して、一緒に遠くを見ることです。2つ目は、ゆっくり一緒に10まで数えます。3つ目は、飲み物を一杯ゆっくり飲ませることです。これは、アンガーマネジメントの取り組みです。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。職場のストレスの多くは、上司のパワ-ハラスメント、部下の怠慢、同僚のいじめなどの人間関係です。これらの問題点を具体的に示し、そのペナルティを設けることが効果的でしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 5

(2)理由づけ野々宮家のルールのリストを一方的に読まされた琉晴は、納得が行きません。良多から「なんででも」「そのうち分かるようになる」といくら言われても、「なんで?」と良多に繰り返し聞き続けます。2つ目の取り組みは、理由づけです(合理性)。これは、ルールとそのペナルティがなぜ必要かを子どもにある程度納得させる親の取り組みです。ここで、野々宮家のようにこのルールが一方的過ぎると、厳格な家庭環境になります。逆に、ルールもペナルティもなく、斉木家のようにやってはいけないことを黙認していると、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、ある程度(ほどほどに)ルールの理由を納得させるのです。たとえば、先ほどの危険行為についてです。そうすると相手はどんな気持ちになるかを考えてもらうために、逆にそうされると自分はどういう気持ちになるか考えるよう促すことです。また、迷惑行為について、幼児がよく理解できない場合は、「みんなが守っているルールだから」と伝えることができます。嗜好品やテレビゲームについてはどうでしょうか? これらに対して効果的なのは、理由づけをして制限することです。たとえば、嗜好品の栄養バランスの問題、テレビゲームによる悪影響です。そのため、親もある程度勉強してその有害性を具体的な根拠として調べておく必要があります。さらに、制限する時に、代わりのものを用意することが効果的です。そうすることで、子どもの不満を減らすことができます。たとえば、嗜好品の代わりに、果物です。テレビゲームの代わりに、親子でトランプ・将棋などの卓上ゲームやスポーツをすることです。つまり、親も制限に対して、ある程度コミットする必要があるということです。お店で「欲しい欲しい」「買って買って」と急におねだりされた時はどうでしょうか? ただ一方的に駄目と言うのではなく、「今日はこのお菓子(またはおもちゃ)を買いに来た訳ではないから」「そのお金はないから」と理由を伝え、その必要性や予算を考えさせることです。親がその時の気分で買ってあげたり買わなかったりするのでなく、「もともと決めていないものは買わない」という家族のルールを親も子どもも守る必要があることを伝えることです。それでも、子どもが駄々をこねるのであれば、先ほどのアンガーマネジメントの取り組みを行います。一方で、親が買っても良いと判断したとしても、すぐにそのまま買い与えないことです。「そこまで言うなら、じゃあ来週に来た時に買おう」と約束するのです。これを繰り返せば、子どもは駄々をこねてもすぐに買ってもらえないことを学習し、駄々をこねなくなります。これは、セルフコントロールを高め、衝動買いの癖を減らすでしょう。また、ルールが守れていたら、毎日カレンダーに一緒にシールを貼り、シールが〇個たまったら、ご褒美をあげるのも効果的です(トークンエコノミー)。そのご褒美は、親が選んだプレゼントでも良いですし、家族で外食をすることでも良いでしょう。さらに、これを発展させた、お小遣いルールも、文字と数字を理解するようになる5歳から効果的です。図1は、完全にルールが守れると、1日15円(月450円になります。もちろん、それぞれの項目やその金額を変更したり、トークン方式(換金方式)から現金方式に変更したり、お小遣いからルールのペナルティとして差し引く罰金制にするなど、年齢やその子の性格に合わせたオリジナルのお小遣いルールを作ることができます。なお、この注意点は、その項目を、習いごとや勉強などの良い能力を促すことにはあまりしないことです。その訳は、そうしてしまうと、先ほどご説明したように、やりたい気持ちが削がれる心理(アンダーマイニング現象)が出てくる可能性があるからです。するとしても、あいさつのし忘れや宿題のやり残しなど習慣化できていないものに限定して、やはり内容はなるべく悪い「能力」を抑えることに特化することです。また、年齢が低い場合、その項目数は2、3つに限定することです。その訳は、項目が多過ぎると、1つ1つの項目への意識が薄まるからです。まずは、その時の最優先の問題を項目とすることです。そして、そのルールが習慣化したら、いったんそれを項目から外して、次の問題を新たに項目に入れれば良いです。さらに、ルールが自発的に守れているなら、ルール化しないことです。その訳は、その1でもご説明しましたが、親が子どもの行動をコントロールし過ぎると、逆に子どもは自分で自分の行動をコントロールしなくなることが実際の研究で分かっているからです。よって、年齢が上がっていけば、項目を、禁止行為から家の仕事(お手伝い給料制)にシフトしていくことができるでしょう。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。先ほどの人間関係の問題の実際のケースを紹介して、そのルールを課す根拠をはっきりさせることが効果的です。そして、問題が起きないのが当たり前とせず、問題が起きなかったことを敢えて全員に毎回、見える形にして知らせることです。これは、その後に問題が起きることを事前に抑止する効果があるでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 6

(3)お目付け役良多が、新しい父親として琉晴に家族のルールを座って説明している間、新しい母親になるみどりは、離れたところで立って荷物の片付けをしながら聞いているだけで、琉晴に背を向け、何も言いません。あたかも良多が独りよがりに話を進めているように見えます。3つ目の取り組みは、お目付け役です(客観性)。これは、普段の行動に目を付ける(監視する)役職のように、いろいろな関係者の目を家庭に入れる親の取り組みです。ここで、野々宮家のように独断で細かいルールを押し付けると、厳格な家庭環境になります。逆に、斎木家のようにルールがはっきりせず、気まぐれで体罰があるだけだと、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、民主的に(ほどほどに)ルールを作るのです。たとえば、家族会議です。少なくとも、両親がいるなら、両親が揃ってそのルールを伝えることです。さらに、祖父母・叔父叔母などの親族やママ友などを立会人として同席させることです。もしも、一人親で立ち会える親族やママ友もいない場合は、地域の保健師に立ち会いをお願いすることもできます。心療内科・精神科で心理カウンセラーが対応することもできます。このように、なるべく多くの目(お目付役)を、子どもに向けるようにすることで、子どもにルールを守らせる良い意味でのプレッシャーをかけることができます。また、お小遣いルールだけでなく、家族のルールも書面化することです。そして、そもそものルールを作る理由として、家族の目標(ビジョン)を掲げることです。たとえば、ルールの理由として「自分で生きていける大人になるため」「家族で仲良くするため」「家族で助け合うため」などです。そうすることで、ルールを守る直接の理由だけでなく、そもそもルールが存在する意味を理解させることができます。とくに、「家族で助け合う」というビジョンを掲げておくと、先ほどご紹介したお手伝い給料制において、「お金がもらえないならお手伝いはしない」という発想になるのを未然に防ぐこともできるでしょう。さらに、年齢が上がれば、家族会議で、子どもにお小遣いアップやペナルティ変更を提案させることもできます。そして、その理由や根拠を示してもらうこともできます。これは、自分自身へのお目付役(客観性)になることであり、自分の行動に自覚(責任)を持たせ、子どもを大人扱いしていく取り組みでもあります。こうして、単に親(社会)が作ったルールに従うだけの認知能力ではなく、自分で考えて自分で自分(そして社会)のルールを作っていきたいと思う非認知能力が高まるでしょう。子どもが納得した形でルールが決まると、家族会議の参加者全員が署名(承認)を入れる儀式も効果的です。この取り組みは、ものごとは話し合いによって決めるというお手本を見せることにもなります。まさに民主主義の基本であり、民主主義型という自律的な子育てを下支えするものでしょう。なお、子どもを客観視させるスキルの詳細については、関連記事4をご覧ください。もっと言えば、このお目付役の取り組みは、ルールを課される側の子どもだけでなく、ルールを課す側の親にも効果があります。複数の目が家族のルールに向けられることによって、とくに良多のように、一人の親が暴走して、独りよがりなルールを一方的につくり、教育虐待を招くリスクを避けることができます。たとえば、それは、受験勉強のために「反抗禁止」「恋愛禁止」などの過剰なルールを設けることです。「ブラック校則」ならぬ、「ブラック家庭ルール」です。これは、明らかにやり過ぎであり、子どもの権利への侵害の恐れがあります。なぜなら、思春期の子どもが、反抗するかしないか、恋愛するかしないかは本人が決めることであり、本人の権利だからです。この点で、妻(または夫)が夫(または妻)に「私の子育てに口出ししないで」と当たり前のように言うのは、かなり危うさがあります。これは、夫婦の一方だけに決定権がある状況を子どもに見せることであり、夫婦関係(人間関係)のあり方の悪いお手本となります。子どもが、友達関係においていじめ加害者になったり、いじめ黙認者になる危うさもあるでしょう。ちなみに、受験勉強のために子どもの人権をないがしろにする親の関わりは、もはや過激思想と同じくらい合理主義的でも個人主義的でもないです。これは、教育虐待のリスクがあるばかりか、統合失調症を発症させる心理社会的ストレスのリスクがあることをその2ですでにご説明しました。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。先ほどの人間関係の問題の実際のケースを紹介して、そのルールを職場の全員に考えてもらい、ペナルティを決めてもらうことです。これは、同調の心理を促し、ルール遵守の心理を高める効果があるでしょう。なお、同調させるスキルの詳細については、関連記事5をご覧ください。表4に示しているように、良い能力を促す取り組みも悪い「能力」を抑える取り組みについても、年齢が上がっていくにつれて、ほどほど度(介入レベル)を弱いものにシフトさせていくことが効果的です。なぜなら、それが大人扱いをしていくことであるからです。そして、それが、親に言われて生きて行くのではなく、親に言われなくても自分で生きていける大人にさせることであるからです。なお、最初にご説明した「足場作り」で、子育てを建築工事に例えました。さらに、愛着(親に愛着を持つ「能力」)は土台、非認知能力は柱、そして認知能力は外壁に例えることができます。早期英才教育をするということは、支える柱がしっかりしていないのに、親が外壁だけ無理やり作らせているようなものです。そんな家は、環境変化(心理社会的ストレス)という地震などの災害にとても脆弱でしょう。非認知能力という柱は、太ければ太いほど、子どものメンタルという家をより丈夫でしなやかにするでしょう。そんな家が、また次の世代で、同じように丈夫でしなやかな家を造ることができるでしょう。サブタイトル“Like father, like son”とは?ラストシーンで、慶多と琉晴を中心に、野々宮家と斎木家のみんなが、笑い合って、1つの家の中に入っていく様子は、感動的です。慶多と琉晴のために、2つの真逆の家庭環境が融合し中和して、「ほどほど」の家庭環境が生まれた象徴的なシーンです。サブタイトルであり、海外向けのタイトルでもある”Like father, like son”とは、「この親にしてこの子あり」「親が親なら子も子」という意味です。それは、子育てを通して、親の認知能力も非認知能力も試されているニュアンスがあるように思えてきます。結局、子育ての正解とは、認知能力を高めることそのものではなく、子どもが人生を楽しみ幸せを感じるトータルな「能力」を育むことではないでしょうか? そして、その「幸せ」はその子どもそれぞれであり、本人が決めることであることを私たちがよく理解した時、子育ての正解は「正解がない」または「正解がたくさんある」という逆説的な正解に納得できるのではないでしょうか? そして、子育てをもっと賢く楽しめるのではないでしょうか?1)非認知能力を伸ばすコツ:中山芳一、東京書籍、20202)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学:森口佑介、講談社現代新書、20193)子どもにおこづかいをあげよう:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事Mother(後編)【家族機能】ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】3年B組金八先生(前編)【令和の金八先生になるには? 子どもにも大人にも使える!(叱るスキル)】Part 1ドラえもん【子どものメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】3年B組金八先生(続編)【令和の金八先生になるには?わがままにさせない!(同調させるスキル)】Part 1

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認知症の急速な進行に関する原因調査

 急速進行性認知症(RPD)は、1~2年以内に急速な認知機能低下が認められ認知症を発症する臨床症候群である。RPDの評価に関する進歩は著しく、その有病率は時間とともに変化する可能性がある。ギリシャ・Attikon University HospitalのPetros Stamatelos氏らは、RPD診断の近年の進歩を考慮し、以前の結果と比較したRPD原因となる疾患の頻度を推定した。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌2021年10~12月号の報告。 5年間でRPDの疑いによりAttikon University Hospitalに紹介された患者47例を対象に、医療記録をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・最も頻度の高い原因は、神経変性疾患(38%)であり、次いでプリオン病(19%)、自己免疫性脳炎(17%)であった。・自己免疫性脳炎の頻度は、以前の結果よりも増加していたが、他の2次的原因については有意な減少が認められた。・認知症発症までの平均期間は、神経変性疾患で9ヵ月、非神経変性疾患で5ヵ月であった。・すべての患者における主な臨床所見は、記憶障害(66%)、行動と感情の障害(48%)であった。 著者らは「神経変性疾患は、RPDの最も一般的な原因であり、非神経変性疾患よりも進行スピードは遅いようである。新たな診断方法の誕生により、自己免疫性脳炎の診断が可能となった。RPDの原因疾患の発見率が増加することにより、これまで一般的であった2次的原因は、1次的原因として診断されるようになっていると考えられる」としている。

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普遍的なうつ病予防~メタ解析レビュー

 うつ病は、心身に影響を及ぼす、非常に蔓延している、しばしば慢性的に経過、治療困難、認知機能や社会的および経済的負荷が非常に大きいといった特徴を有する疾患である。がんなどの非感染性疾患では、治療ではなく予防に焦点が置かれるようになっていることを考えると、うつ病予防は、優先すべき公衆衛生上の課題であろう。オーストリア・ディーキン大学のErin Hoare氏らは、うつ病に対する普遍的に提供される予防的介入についてのメタ解析文献の包括的なシステマティックレビューを実施した。Journal of Psychiatric Research誌2021年12月号の報告。 2021年3月18日にEBSCOHostを介してアクセスした各データベース(Allied and Complementary Medicine Database、CINAHL Complete、Global Health、Health Source: Nursing/Academic Edition、MEDLINE Complete、APA PsychArticles)より検索を行った。検索キーワードは、うつ病、予防、トライアルスタディデザインとした。2人独立したレビュアーが文献スクリーニングを実施し、3人目が不一致性を是正した。適格基準は、うつ病予防(うつ病発症率の低下)に対する普遍的な介入研究を調査したメタ解析とした。 主な結果は以下のとおり。・心理的介入に関するメタ解析6件、学校ベースのメタ解析2件、eHealthに関するメタ解析1件を包括的レビューに含めた。・特定されたすべての調査結果の質は高く、とくに1件は非常に高いものであった。・うつ病予防に対する身体活動の影響を調査した以前のメタ解析レビューは、8件のメタ解析に含まれていた。・予防的介入が成功する主な因子は、学校、地域社会、職場環境で提供される心理社会的介入の利用であった。・学校ベースおよびeHealthによる介入は、うつ病予防に対し一定程度の有用性が認められた。・身体活動は、うつ病予防に効果的であることが、メタ解析より示唆された。・普遍的な予防を一貫して定義することはできなかった。 著者らは「納得度の高いエビデンスによる推奨事項が広まる前に、うつ病予防に対する適切に設定されたランダム化比較試験を実施する必要がある」としている。

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片頭痛に対する抗CGRP抗体の有効性と忍容性

 反復性および慢性片頭痛の予防には、いくつかの薬剤が利用可能である。どの治療を、どのタイミングで選択するかを決定することは簡単ではなく、一般的な有効性、忍容性、重篤な有害事象の可能性、併存疾患、コストなどさまざまな因子に基づいて検討される。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFenne Vandervorst氏らは、新たに片頭痛予防の選択肢の1つとして加わったカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体に対するモノクローナル抗体の有効性、忍容性について検討を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年10月25日号の報告。 新規片頭痛予防薬である抗CGRPモノクローナル抗体に関するランダム化プラセボ対照試験のエビデンスを収集した。これら薬剤の反復性および慢性片頭痛の予防に対する有効性、有効性に対するロバスト性について、評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗CGRPモノクローナル抗体は、これまで使用されていた予防薬と同等以上の効果が認められた。・抗CGRPモノクローナル抗体の有効性に対するロバスト性は、各薬剤において多くの患者を含むいくつかのランダム化比較試験により実証されている。・抗CGRPモノクローナル抗体は、優れた忍容性および長期的な安全性データが示され、副作用プロファイルに対しこれまでの治療薬よりも良好な結果が得られており、片頭痛予防に新たな付加価値をもたらすものと考えられる。 著者らは「ヘルスケアの政策立案者は、片頭痛予防に抗CGRPモノクローナル抗体を推奨するうえで、これらのデータのほか、より長期的の安全性やコストに関する追加データを用いてバランスをとっていくことが重要である」としている。

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オメガ3サプリメントにうつ病予防効果はあるのか?/JAMA

 米国の50歳以上のうつ病リスクを有する集団において、海洋由来オメガ3脂肪酸(オメガ3)サプリメントの長期投与によりプラセボと比較し、うつ病または抑うつ症状の新規発症や再発リスクがわずかではあるが統計学的に有意に増加した一方で、気分スコアには差がないという複雑な結果となった。米国・マサチューセッツ総合病院のOlivia I. Okereke氏らが「VITAL-DEP試験」の結果を報告した。 オメガ3サプリメントは、うつ病の治療に用いられているが、一般成人のうつ病予防効果は不明であった。著者は、「今回の知見は、一般成人においてうつ病予防にオメガ3サプリメントの使用は支持されないことを示している」と結論づけている。なお、本研究は、米国の成人(男性50歳以上、女性55歳以上)2万5,871人を対象に、ビタミンD3とオメガ3脂肪酸の心血管疾患およびがんの一次予防効果を評価する無作為化臨床試験「VITAL試験」の補助的な試験で、ビタミンD3の結果はすでに報告されている。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。うつ病イベントのリスクと、長期の気分スコアの変化を評価 研究グループは、2011年11月~2014年3月の期間に、うつ病の新規発症リスクを有する(うつ病の既往歴がない)1万6,657例と、うつ病の再発リスクがある(うつ病の既往歴はあるが、過去2年間は治療を受けていない)1,696例を、2×2ファクトリアルデザインにより、オメガ3群(エイコサペンタエン酸465mg、ドコサヘキサエン酸375mgを含む魚油1g/日)、ビタミンD3群(2,000IU/日)、オメガ3+ビタミンD3群、またはプラセボ群に無作為に割り付け、2017年12月31日まで投与した。 主要評価項目は、うつ病イベント(うつ病または臨床的に重要な抑うつ症状)のリスク(初発例と再発例の合計)、ならびに気分スコアの変化とした。うつ病イベントは、うつ病の診断、治療(投薬またはカウンセリング)、または定期的なアンケートでの臨床的に重要な抑うつ症状存在(8項目の患者の健康に関する質問票[PHQ-8]抑うつ尺度スコア≧10)の新規自己申告とした。また、気分スコアの変化はPHQ-8を用いて年6回のアンケートで確認し(範囲0~24、スコアが高いほど症状が重度)、臨床的に意義のある最小変化量は0.5点とした。オメガ3群、うつ病イベントリスクがハザード比1.13と有意に高い 1万8,353例(平均年齢67.5[SD 7.1]歳、女性49.2%)が無作為化され(オメガ3群9,171例、プラセボ群9,182例)、90.3%が試験を完遂した(試験終了時の生存者の93.5%)。治療期間中央値は5.3年であった。 オメガ3とビタミンDの交互作用検定の結果、交互作用は認められなかった(交互作用のp=0.14)。うつ病イベントのリスクは、オメガ3群(651件、13.9/1,000人年)がプラセボ群(583件、12.3/1,000人年)より有意に高かった(ハザード比 [HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.01~1.26、p=0.03)。PHQ-8スコア変化量の平均差は0.03点(95%CI:-0.01~0.07、p=0.19)で、長期的な気分スコアの変化においてはオメガ3群とプラセボ群で有意差は認められなかった。 重篤または主な有害事象の発現率は、オメガ3群vs.プラセボ群で主要心血管イベント2.7% vs.2.9%、全死因死亡3.3% vs.3.1%、自殺0.02% vs.0.01%、消化管出血2.6% vs.2.7%、あざになりやすい24.8% vs.25.1%、胃不快感/胃痛35.2% vs.35.1%であった。

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第93回 サイケデリック薬による精神疾患治療の開発が去年大いに前進

いわゆる麻薬の類・サイケデリック薬のものの見方を変えさせる作用が精神疾患の治療に役立つのではないかと期待されてきましたが、その効果を示した説得力のある試験はここ最近までほとんどありませんでした1)。しかし昨春2021年5月に発表された第III相試験でエクスタシーとして知られるMDMAの心的外傷後ストレス障害(PTSD)治療効果が示され、サイケデリック薬による精神疾患治療の開発は昨年大いに前進しました。俳優の沢尻エリカ氏や押尾学氏の事件で広く報じられたMDMAは主に神経のシナプス前セロトニン輸送体への結合を介してセロトニン放出を誘発します2)。MDMAは恐怖記憶の解消を促して社交的な振る舞いを支えること等が動物実験で示されています。また、合計105人が参加した6つのプラセボ対照第II相試験をまとめて解析したところMDMAを利用した治療を受けた患者の半数超(54.2%)がPTSD診断基準を脱していました3)。そして去年発表された第III相試験では42人のうち7割近い28人(67%)がMDMA投与込みの治療でPTSD診断基準を脱していました2)。プラセボ投与群37人でのその割合はMDMA使用群の半分以下の32%(12人)でした。非常に有望な結果ですがその効果の判定には注意が必要なようです。MDMAの明確な向精神作用は患者の期待感に影響を及ぼすかもしれず、そういう期待感を治療の一部として受け入れるとするなら効果の評価を根本的に見直す必要があるだろうとの見解をトロント大学の精神/神経専門家は最近のNature Medicine誌に寄稿しています1,4)。ともあれMDMAやその他のサイケデリック薬によるうつ病、不安症、依存などの精神疾患治療の検討は企業でも研究機関でも盛んになっています。2ヵ月ほど前の昨年11月初めには、マジックマッシュルームの成分として有名なサイロシビン(シロシビン;psilocybin)のうつ病治療効果が被験者数233人の無作為化試験で示されたことを英国ロンドンの企業COMPASS Pathwaysが発表しています5)。同社はさらに大規模な試験を計画しています。また、PTSDへのMDMAのもう1つの第III相試験が進行中であり、開発を担う非営利組織Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(MAPS)は来年2023年にその治療が米国FDA承認に漕ぎ着けることを目指しています6)。参考1)A psychedelic PTSD remedy / Science2)Mitchell JM, et al. Nat Med. 2021 Jun;27:1025-1033.3)Mithoefer MC,et al.. Psychopharmacology.2019 Sep;236:2735-2745.4)Burke MJ, et al. Nat Med. 2021 Oct;27:1687-1688.5)COMPASS Pathways announces positive topline results from groundbreaking phase IIb trial of investigational COMP360 psilocybin therapy for treatment-resistant depression / globenewswire6)MAPS’ Phase 3 Trial of MDMA-Assisted Therapy for PTSD Achieves Successful Results for Patients with Severe, Chronic PTSD / MAP

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今後25年間の日本における認知症有病率の予測

 敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、富山県認知症高齢者実態調査の認知症有病率データと人口予測データを用いて、日本における認知症有病率の将来予測を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月26日号の報告。 まず、1985、90、96、2001、14年の富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いて、性別・年齢別の認知症推定将来有病率を算出した。次に、2020~45年の47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口に性別年齢を掛け合わせ、合計することで認知症患者数を算出した。認知症の推定将来有病率は、算出された認知症患者数を47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口で除することで算出した。また、2020~45年の47都道府県それぞれの認知症推定将来有病率は、日本地図上に表示し、4段階で色分けした。 主な結果は以下のとおり。・2020年の認知症推定将来有病率は、いずれの都道府県においても20%未満であったが、2025年には地方を中心とした5県で20%以上になると予測された。【2025年に認知症推定将来有病率が20%以上になると予測される5県】長野県:20.5%、島根県:20.5%、高知県:20.3%、富山県:20.0%、山口県:20.0%・2030年には日本全国で20%以上になり、2035年までに42都道府県が25%以上になると予想された。【2035年に認知症推定将来有病率が25%未満である予測される5都県】 沖縄県:23.1%、東京都:23.4%、愛知県:24.7%、埼玉県:24.8%、神奈川県:24.8%・2045年には、東京都(24.7%)を除くすべての道府県で認知症推定将来有病率が25%以上になり、その内12県は30%以上になると予測された。【2045年に認知症推定将来有病率が30%以上になると予測される12県】 秋田県:31.7%、宮崎県:30.9%、鹿児島県:30.8%、山形県:30.7%、長崎県:30.6%、福島県:30.5%、熊本県:30.3%、島根県:30.3%、大分県:30.2%、青森県:30.1%鳥取県:30.1%、高知県:30.0% 著者らは「今後25年間で、日本における65歳以上の認知症有病率は、大都市圏を含むほぼすべての都道府県において25%以上になることが予測された」としている。

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精神疾患患者のCOVID-19感染による入院、死亡リスク

 統合失調症、双極性障害、うつ病を含む重度の精神疾患を有する人は、身体的健康においても、一般集団と比較し、大きな格差を抱えている。この格差の程度は明らかとなっていないが、新たなエビデンスでは、重度の精神疾患患者はCOVID-19による感染や死亡リスクが高いことが示唆されている。英国・マンチェスター大学のLamiece Hassan氏らは、UKバイオバンクのコホート研究データを用いて、重度の精神疾患患者におけるCOVID-19関連の感染、入院、死亡率を調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年12月7日号の報告。 UKバイオバンクから抽出した44万7,296例(統合失調症:1,925例、双極性障害:1,483例、うつ病:4万1,448例、重度の精神疾患でない対照群:40万2,440例)を対象とし、医療および死亡に関する記録とリンクさせた。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、診断とCOVID-19関連アウトカムとの違いを調査した。また、社会人口統計学的要因および併存疾患で調整した場合においても検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・調整前の分析では、重度の精神疾患患者は、対照群と比較しCOVID-19関連の死亡リスクのオッズ比が高かった。また、重度の精神疾患患者は、COVID-19関連の感染、入院リスクも高かった。【死亡リスクのオッズ比(OR)】 ●統合失調症:4.84(95%信頼区間[CI]:3.00~7.34) ●双極性障害:3.76(95%CI:2.00~6.35) ●うつ病:1.99(95%CI:1.69~2.33)【感染リスクのOR】 ●統合失調症:1.61(95%CI:1.32~1.96) ●双極性障害:1.48(95%CI:1.16~1.85) ●うつ病:1.47(95%CI:1.40~1.54)【入院リスクのOR】 ●統合失調症:3.47(95%CI:2.47~4.72) ●双極性障害:3.31(95%CI:2.22~4.73) ●うつ病:2.08(95%CI:1.89~2.29)・調整後の分析では、死亡リスクと入院リスクのORは、重度の精神疾患患者において有意に高いままであったが、感染リスクのORは、うつ病のみ有意に高いままであった。 著者らは「統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患患者では、COVID-19関連の感染、入院、死亡リスクが上昇することが示唆された。この違いが既存の人口統計学的要因や併存疾患によって説明できるのは、一部分であった。そのため、重度の精神疾患患者に対しては、優先的にワクチン接種や予防措置を講じる必要がある」としている。

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