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喘息への活用に期待、『アレルゲン免疫療法の手引き2025』

 アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキを原因とする季節性アレルギー性鼻炎と、ダニなどが原因の通年性アレルギー性鼻炎に大別される。本邦では2014年頃からアレルゲン免疫療法(以下、AIT)の手軽な手法である舌下免疫療法(以下、SLIT)が臨床導入されたが、近年のエビデンス蓄積により、ダニアレルゲンによって症状が出現しているアトピー型喘息へのダニSLITの有効性が示されているという。2025年6月には日本アレルギー学会より『アレルゲン免疫療法の手引き2025』が発刊され、最新の知見に基づき、治療の意義や位置付けが刷新されたことから、今回、本書の作成委員長を務めた永田 真氏(埼玉医科大学呼吸器内科 教授/埼玉医科大学病院アレルギーセンター センター長)にAITの基礎と推奨される患者像などについて話を聞いた。アレルゲン免疫療法の意義  以前に日本では“減感作療法”とも呼ばれたAITは、「アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに曝露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療」と定義付けられ、アレルギー疾患の根本的な体質改善を期待できる唯一の治療法である。本邦オリジナルの手法である皮下免疫療法(SCIT)は諸外国と比べ格段に普及が遅れていた。しかし2014年に舌下免疫療法(SLIT)が承認され、スギ花粉症を中心にその普及が始まった。 『アレルゲン免疫療法の手引き』の2022年版*からの主な改訂ポイントについて、永田氏は「『喘息予防・管理ガイドライン 2024』および『鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版』との整合性を図り、最新の臨床知見を反映した。とくにこれまでの理念を覆す免疫病態や、またAITの新規の効果が近年明らかになってきたため、新たに判明した作用をブラッシュアップしている。たとえば、ダニSLITが喘息患者の呼吸機能を改善させ長期的に維持させ得ることや、重症患者(喘息併存)への生物学的製剤(抗IgE抗体オマリズマブや抗IL-4受容体α鎖抗体デュピルマブなど)との併用効果に関するエビデンスなどを盛り込んだ。さらに、現段階での適応拡大はないが、アトピー性皮膚炎に対しても部分的に効果があることも報告されている。さらに、スギアレルゲンによる治療がヒノキアレルギーに対しても一定の効果を示す可能性が指摘されている」など、治療標的の広がりについても言及した。また、医療経済的な観点として、AITによる医療費抑制効果が確認されていることにも触れた。*2013年に「スギ」「ダニ」別の指針として発刊されていた前身の出版物を統合・刷新したもの AITの機序についてはいわゆる脱感作現象の寄与は極めて限られ、したがって“減感作療法”という呼称は科学的に誤っている。実際には生体にとって有益な免疫応答を能動的に誘導することの寄与が大きいと判明している。同氏は喘息患者において、「AITが気道上皮細胞のインターフェロン産生能力を高め、ウイルス感染に対する抵抗性を増強する作用が報告されている。これは、感染を契機とした増悪を抑制する効果を意味する」と、その免疫学的メリットを強調した。小児期からの介入と喘息発症予防 AITの適応は、IgE依存性アレルギーであることが正確に診断されたダニアレルギーまたはスギ花粉症患者で、とくに重要なことは全身的・包括的な効果を期待して行われる点である。施行にあたっては、「アレルゲン免疫療法に精通した医師」が条件であり、とくにSCITは効果が高いものの、アナフィラキシーあるいは喘息増悪(発作)などに対する迅速な対応が可能な施設においてのみ実施される。 AITの普及状況について、「成人のスギ花粉症治療でのSLITの応用が活発な一方、通年性鼻炎や喘息に影響をもたらすダニアレルギーへの介入は欧米に比べ依然として不十分」と同氏は指摘した。とくに小児においては、小児喘息の多くが難治化のリスクを抱える中、AITの追加が予後改善に寄与することが確認され、『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』にも5歳以上に対するダニ免疫療法の重要性が示されている。「小児期からの介入は、将来的な喘息の新規発症を予防し、すでに発症済みの小児喘息の改善も期待することができる」と同氏はコメントした。 アレルギー性鼻炎の鑑別疾患としては、非アレルギー性・非感染性の鼻粘膜過敏症(血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎、また鼻かぜ[急性鼻炎]など)が挙げられる。このほかの注意点として、同氏は「海外では喘息でダニSLITが適応となる一方で、日本の場合には“適応がない”点は留意したいが、日本人の約8割の喘息患者はアレルギー性鼻炎も併発している」と喘息患者は治療対象となる場合が多い点を指摘した。<処方医が診療時に注意するべきポイント>・リスク管理:アナフィラキシーリスク評価と迅速な対応ができること・禁忌/慎重投与:「自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する」「%FEV1(1秒量)が70%未満、または不安定な喘息患者」「全身性ステロイド薬の連用や抗がん剤の使用」に関する状況確認・SLITに関する歯科連携: 腔内の傷や炎症、抜歯などの予定は吸収率や局所反応に影響するため、休薬を含めた指導を実施・環境整備:ダニアレルギーの場合、ダニの繁殖を防ぐため、床のフローリング化やこまめな清掃など、また喘息ではとくに完全禁煙を指導治療中断後の再開は?ほかのアレルゲンへの適応は? AITの治療期間について、世界保健機関(WHO)は3~5年を推奨しているが、さらなる長期継続も許容される。患者が中断してしまった場合やいったん中止後に再発した場合の再開基準について、永田氏は次のような見解(私見)を述べた。「スギSLITの場合、投与開始から3年が経過していれば、免疫寛容の誘導が進んでいる時期。一時的に中断しても2年は効果が持続すると判明しているが、中止後の再発に伴う再開に際しては『改めて最低3年』を目標に仕切り直すことを推奨する。」 なお、ほかのアレルゲンへのAITの展開については、ハチ毒でのSCIT、食物アレルゲンでの経口免疫療法、一部の薬剤(NSAIDs、抗酸菌薬など)に対する脱感作療法が存在する。ピーナッツなどの食物アレルギーに対する経口・経皮免疫療法は研究が進んでいるが、現時点で本邦での承認予定はない。そのため、最新の手引きではこれらについての詳細な解説は見送られている。

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添付文書改訂:フォシーガ適応に慢性心不全/フルティフォームに小児用量/メマリー副作用に徐脈性不整脈/ネオーラル内用液適応に川崎病【下平博士のDIノート】第62回

フォシーガ:SGLT2阻害薬で初の心不全適応<対象薬剤>ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<改訂年月>2020年11月(予定)<改訂項目>[追加]効能・効果慢性心不全。ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬は、近年、心血管予後や腎予後の改善に関する報告が次々となされています。本剤は、20ヵ国410施設で左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象に実施した無作為化二重盲検第III相試験「DAPA-HF試験」の探索的解析結果において、推奨治療への追加が、糖尿病の有無にかかわらず心血管死または心不全増悪のリスクをプラセボと比較して有意に低下させたことが示されました。今回の改訂により、わが国で初めての心不全適応を持つSGLT2阻害薬となります。作用機序は不明ですが、製造販売元のアストラゼネカは、体液量調節を介した血行動態に対する作用などが心不全の改善に寄与する可能性に言及しています。本剤は、HFrEF患者であれば、糖尿病合併の有無によらず、標準治療に併用して使用することができます。なお、左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していません。参考アストラゼネカのSGLT2阻害剤フォシーガ、DAPA-HF試験サブ解析で心不全悪化または心血管死の発現率の低下を示すフルティフォーム:新たに小児適応が追加<対象薬剤>フルチカゾンプロピオン酸エステル・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬(商品名:フルティフォーム50エアゾール56吸入用/120吸入用、製造販売元:杏林製薬)<改訂年月>2020年6月<改訂項目>[追加]用法および用量小児:通常、小児には、フルティフォーム50エアゾール(フルチカゾンプロピオン酸エステルとして50μgおよびホルモテロールフマル酸塩水和物として5μg)を1回2吸入、1日2回投与する。<Shimo's eyes>本剤は、ステロイド吸入薬(ICS)フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルタイド)と、長時間作用型β2刺激薬(LABA)ホルモテロールフマル酸塩(同:オーキシス)の配合吸入薬です。小児適応のある吸入薬は成人と比べるとまだ少ないですが、今回の改訂により小児気管支喘息の新たな治療選択肢が増えました。なお、高用量製剤(フルティフォーム125)には小児への適応がないので注意しましょう。小児は1回2吸入、1日2回の投与となっており、それ以上の増量はできません。また、5歳未満の小児では臨床試験が未実施のため注意喚起がされています。ボンベをうまく押せない場合は吸入補助器具(フルプッシュ)、吸気の同調が難しい場合にはスペーサーを用いるなど、適正に使用できるようにしっかりサポートしましょう。参考杏林製薬 添付文書改訂のお知らせメマリー:重大な副作用に徐脈性不整脈が追加<対象薬剤>メマンチン塩酸塩製剤(製品名:メマリー錠・OD錠 5mg/10mg/20mg、製造販売元:第一三共)メマンチン塩酸塩ドライシロップ(同:メマリードライシロップ2%、製造販売元:第一三共)<改訂年月>2020年6月<改訂項目>[新設]重大な副作用不整脈(頻度不明):完全房室ブロック、高度な洞徐脈などの徐脈性不整脈が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。<Shimo's eyes>国内で本剤との関連性が否定できない重篤な徐脈性不整脈関連の報告が集積したことから、「重大な副作用」の項に「完全房室ブロック、高度な洞徐脈などの徐脈性不整脈」が追記されました。めまい、気を失う、立ちくらみ、脈が遅くなる、息切れ、脈が飛ぶというような症状が現れていないかどうかの聞き取りが重要です。速やかな投与中止が求められる副作用ですので、異常が見られた場合はすぐに処方医に報告・相談しましょう。参考PMDA メマンチン塩酸塩の「使用上の注意」の改訂について第一三共 使用上の注意改訂のお知らせネオーラル内用液:効能・効果に川崎病の急性期が追加<対象薬剤>シクロスポリン製剤(製品名:ネオーラル内用液10%、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<改訂年月>2020年2月<改訂項目>[追加]効能または効果川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)[追加]用法および用量〈川崎病の急性期〉通常、シクロスポリンとして1日量5mg/kgを1日2回に分けて原則5日間経口投与する。<Shimo's eyes>川崎病は、主に乳幼児が罹患する原因不明の血管炎症候群です。冠動脈が侵襲されることによる冠動脈病変(CAL)の合併が知られており、CALは突然死や心筋梗塞を引き起こすことがあります。急性期の標準治療として、静注用免疫グロブリン(IVIG)の単回静脈内投与とアスピリンの経口投与の併用療法が行われます。しかし、約20%の患児は十分な効果を得られず、CAL合併のリスクが高くなることが指摘されています。そこで、川崎病の過剰な炎症反応を免疫抑制薬で制御することで、CALの進行を抑制できるのではないかという考えから、本剤の国内第III相医師主導治験が行われました。その結果、CALの合併割合が、標準治療群の31.0%(27例/87例)に対し、本剤併用群では14.0%(12例/86例)と有意に低下したため、川崎病のIVIG不応例またはIVIG不応予測例には、従来の標準治療に本剤を併用できることになりました。なお、発病後7日以内に投与を開始することが望ましいとされています。参考ノバルティス ファーマ 添付文書改訂のお知らせ

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アレルギー総合ガイドライン2019が発行、アレルギーとアナフィラキシーを網羅

 アレルギー疾患罹患率はとくに先進国で増加し、いまや日本人の約50%が何らかのアレルギー症状を有しているといわれる。代表的なアレルギー疾患に関する12の最新ガイドラインの内容を1冊にまとめた「アレルギー総合ガイドライン」の改訂版が、3年ぶりに発行された。アレルギー総合ガイドライン2019は診療科を超えて横断的に出現し、急性増悪のリスクもはらむアレルギー疾患に対して、標準的な臨床的対応を円滑に行うことができるよう、実用性を重視した構成となっている。「喘息予防・管理ガイドライン2018」「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)」「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」「重症薬疹の診断基準」「接触皮膚炎診療ガイドライン」「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016」「アナフィラキシーガイドライン」 ここでは、とくに2018年に改訂されたばかりの下記5冊のガイドラインについて、主な改訂内容を紹介する。 「喘息予防・管理ガイドライン2018」では、問診・聴診・身体所見の項目が新たに追加されたほか、治療においては長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の使用推奨範囲が拡大され、抗IL-5抗体、抗IL-5Rα抗体、気管支熱形成術が追加されている。さらに、2019年3月には、12歳以上の難治性喘息に抗IL-4Rα抗体製剤デュピルマブが保険適用になっている。これを受けてアレルギー総合ガイドライン2019では、成人喘息の治療ステップの中に追加され、小児喘息における位置づけについても、解説が追加されている。 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」は、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインと、厚生労働省研究班および日本アレルギー学会の診療ガイドラインの初の統合版。ステロイド外用薬の使い方などに関して、新たな知見(原則として2015年12月末まで)が反映されている。 「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」は2011年以来7年ぶりの改訂版。2018年に発表された国際ガイドラインと、病型分類や重症度評価などで整合性をとる形に改訂されている。 「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」は、「栄養食事指導」「経口免疫療法」について新たに章立てする形で詳細な記述が追加された。また、ヒスタミン遊離試験のキットの発売中止、牛乳アレルゲン除去調製粉乳の微量元素添加の終了、アナフィラキシー治療の際のアドレナリンの併用禁忌の解除などが反映されている。 「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」では、加硫促進剤が主要なアレルゲンで、非ラテックス製手袋でも報告されている「化学物質による遅発型アレルギーである接触皮膚炎」についての記述を追加。最新のラテックスフリーの製品や加硫促進剤フリーゴム手袋の一覧が収載された。 そのほか、「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016」については、刊行後に判明した最新エビデンスを加えた内容が、アレルギー総合ガイドライン2019に掲載されている。■「食物アレルギー」関連記事メロンアレルギーの主要アレルゲンを確認非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

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肺炎・気管支喘息で入院した乳児が低酸素血症となって死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1761号107-114頁概要2日前からの高熱、呼吸困難を主訴として近医から紹介された2歳7ヵ月の男児。肺炎および気管支喘息の診断で午前中に小児科入院となった。入院時の医師はネブライザー、輸液、抗菌薬、気管支拡張薬、ステロイドなどの指示を出し、入院後は診察することなく定時に帰宅した。ところが、夜間も呼吸状態は改善せず、翌日早朝に呼吸停止状態で発見された。当直医らによってただちに救急蘇生が行われ、気管支内視鏡で気管分岐部に貯留した鼻くそ様の粘調痰をとりのぞいたが低酸素脳症に陥り、9ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報気管支喘息やアトピーなどアレルギー性疾患の既往のない2歳7ヵ月男児。4歳年上の姉には気管支喘息の既往歴があった経過1995年1月24日38℃の発熱。1月25日発熱は40℃となり、喘鳴も出現したため近医小児科受診して投薬を受ける。1月26日早朝から息苦しさを訴えたため救急車で近医へ搬送。四肢末梢と顔面にチアノーゼを認め、β刺激薬プロカテロール(商品名:メプチン)の吸入を受けたのち総合病院小児科に転送。10:10総合病院(小児科常勤医師4名)に入院時にはチアノーゼ消失、咽頭発赤、陥没気味の呼吸、わずかな喘鳴を認めた。胸部X線写真:右肺門部から右下肺野にかけて浸潤影血液検査:脱水症状、CRP 14.7、喉にブドウ球菌の付着以上の所見から、咽頭炎、肺炎、気管支喘息と診断し、輸液(150mL/hr)、解熱薬アセトアミノフェン(同:アンヒバ坐薬)、メフェナム(同:ポンタールシロップ)、抗菌薬フルモキセフ(同:フルマリン)、アミノフィリン静注、ネブライザーメプチン®、気道分泌促進薬ブロムヘキシン(同:ビソルボン)、内服テレブタリン(同:ブリカニール)、アンブロキソール(同:ムコソルバン)、クロルフェニラミンマレイン(同:ポララミン)を指示した(容態急変まで血液ガス、経皮酸素飽和度は1回も測定せず)。10:30体温39.5℃、陥没気味の呼吸(40回/分)、喘鳴あり。11:15喘鳴強く呼吸苦あり、ステロイドのヒドロコルチゾン(同:サクシゾン)100mg静注。14:00体温36.7℃、肩呼吸(50回/分)、喘鳴あり。16:30担当医師は看護師から「喉頭部から喘鳴が聞こえる」という上申を受けたが、患児を診察することなく17:00に帰宅。19:30喉頭部の喘鳴と肩呼吸(50回/分)、夕食を飲み込めず吐き出し、内服薬も服用できず、吸入も嫌がってできない。22:00体温38.3℃、アンヒバ®坐薬使用。1月17日02:20体温38.1℃、陥没気味の呼吸(52回/分)、喘鳴あり。サクシゾン®100mg静注。06:30体温37.1℃、陥没気味の呼吸、咳あり。07:20ネブライザー吸入を行おうとしたが嫌がり、機器を手ではねつけた直後に全身チアノーゼが出現。07:30患児を処置室に移動し、ただちに酸素吸入を行う。07:40呼吸停止。07:55小児科医師が到着し気管内挿管を試みたが、喉頭部がみえにくくなかなか挿管できず。マスクによる換気を行いつつ麻酔科医師を応援を要請。08:10ようやく気管内挿管完了(呼吸停止後30分)、この時喉頭部には異常を認めなかった。ただちにICUに移動して集中治療が行われたが、低酸素脳症による四肢麻痺、重度意識障害となる。10:00気管支鏡で観察したところ、気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた。10月26日約9ヵ月後に低酸素脳症により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張肺炎、気管支喘息と診断して入院し各種治療が始まった後も、頻呼吸、肩呼吸、陥没呼吸、体動、喘鳴がみられ呼吸障害は増強していたのだから、気管支喘息治療のガイドラインに沿ってイソプレテレノールの持続吸入を追加したり気管内挿管の準備をするべきであったのに、入院時の担当医師は入院後一度も病室を訪れることなく、午後5:00過ぎに帰宅して適切な指示を出さなかった。夜間帯の当直医師、看護師も、適切な病状観察、病態把握、適切な治療を怠ったため、呼吸不全に陥った。病院側(被告)の主張小児科病棟は主治医制ではなく3名の小児科医による輪番制がとられ、入院時の担当医師は肺炎、気管支喘息の患者に対し適切な治療を行って、起坐呼吸やチアノーゼ、呼吸音の減弱や意識障害もないことを確認し、同日の病棟担当医であった医師へきちんと申し送りをして帰宅した。その後も呼吸不全を予測させるような徴候はなかったので、入院翌日の午前7:00過ぎに突発的に呼吸不全に陥ったのはやむを得ない病態であった。裁判所の判断入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息の診断を下してそれに沿った注射・投薬の指示を出しているので、ほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたことになる。そのため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった。ところが、入院後一度も病室を訪れず、経皮酸素飽和度を測定することもなく、ガイドラインに沿った治療のグレードアップや呼吸停止に至る前の気管内挿管の機会を逸し、容態急変から死亡に至った。患者側1億545万円の請求に対し6,950万円の判決考察1. 呼吸停止の原因について裁判では呼吸停止の原因として、「肺炎や気管支喘息に起因する気道閉塞によって、肺におけるガス交換が不十分となり呼吸不全に陥った」と判断しています。そのため、小児気管支喘息のガイドラインを引用して、「イソプロテレノールの持続吸入をしなかったのはけしからん、気道確保を準備しなかったのは過失だ」という判断へとつながりました。ところが経過をよくみると、容態急変後の気管支鏡検査で「気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた」ため、気管支喘息の重積発作というよりも、粘調痰による気道閉塞がもっとも疑われます。しかも、当直医が気管内挿管に手間取り、麻酔科医をコールして何とか気管内挿管できたのは呼吸停止から30分も経過してからでした。要するに、痰がつまった状態を放置して気道確保が遅れたことが致命的になったのではないかと思われます。裁判ではなぜかこの点を重視しておらず、定時の勤務が終了し午後5:00過ぎに帰宅していた入院時の担当医師が(帰宅後も)適切な指示を出さなかった点をことさら問題としました。2. 主治医制をとるべきか当時この病院では部長医師を含む小児科医4名が常駐し、夜間・休日の当直は部長以外の医師3名で輪番制をとっていたということです。昨今の情勢を考えると、小児医療を取り巻く状況は大変厳しいために、おそらく4名の小児科医でもてんてこ舞いの状況ではなかったかと推測されます。入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息と診断した乳児に対し、血管確保のうえで輸液、抗菌薬、アミノフィリン持続点滴を行い、ネブライザー、各種内服を指示するなど、中~大発作を想定した気管支喘息に対する処置は行っています。それでも呼吸状態が安定しなかったので、ステロイドのワンショット静注を2回くり返しました。通常であれば、その後は回復に向かうはずなのですが、今回の患児は内服薬を嫌がってこぼしたり、ネブライザーの吸入をさせようとしてもうまくできなかったりなど、医師が想定した治療計画の一部は実施されませんでした。そして、当直帯は輪番制をとっていることもあって、入院時にきちんとした指示さえ出しておけば、後は当番の病棟担当医がみてくれるはずだ、という認識であったと思われます。そのため、11:00過ぎの入院から17:00過ぎに帰宅するまで6時間もありながら(当然その間は外来業務を行っていたと思いますが)一度も病室に赴くことなく、看護師から簡単な報告を受けただけで帰宅し、自分の目で治療効果を確かめなかったことになります。もし、帰宅前に患者を診察し、呼吸音を聴診したり経皮酸素飽和度を測るなどの配慮をしていれば、「予想以上に粘調痰がたまっているので危ないぞ」という考えに至ったのかも知れません。ところが、本件では血液ガス検査は行われず、急性呼吸不全の徴候を早期に捉えることができませんでした。そして、裁判でも、「入院時の担当医師はほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった」という、耳が痛くなるような判決が下りました。ここで問題となるのが、主治医制をとるべきかどうかという点です。今回の総合病院のように、医師個人への負担が大きくならないようにグループで患者をみる施設もありますが、その弊害としてもっとも厄介なのが無責任体制に陥りやすいということです。本件でも、裁判では問題視されなかった輪番の小児科当直医師が容態急変前に患者をみるべきであったのに、申し送りが不十分なこともあってほとんど関心を示さず、いよいよ呼吸停止となってからあわてて駆けつけました。つまり、入院時の担当医師は「5:00以降はやっと業務から解放されるので早く帰宅しよう」と考えていたでしょうし、当直医師は「容態急変するかも知れないなんて一切聞いてない。入院時の医師は何を考えているんだ」と、まるで責任のなすりつけのような状況ではなかったかと思われます。そのことで損をするのは患者に他なりませんから、輪番制をとるにしても主治医を明確にしておくことが望まれます。ましてや、「輪番制であったことを考慮しても、(入院指示を出した医師が)患者の治療について第一に責任を負う」という厳しい判決がおりていますので、間接的ではありますが裁判所から「主治医制をとるべきである」という見解が示されたと同じではないかと思います。小児科

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Dr.中野のこどものみかたNEO

第1回「小児気管支喘息最前線 ! 」第2回「使ってみよう ! こどもに漢方」第3回「ワクチン(1) Hib,肺炎球菌」第4回「ワクチン(2) 子宮頸癌の予防ワクチンとHPV」 第1回「小児気管支喘息最前線 ! 」他科領域で“最も難しい”、“なるべくなら回避したい”とされる小児科。小児の特異性は成人を診ることが多い医師にはどうしても判断しにくいものです。このシリーズでは、一般内科医の「診断はどうすれば良いのか?」「治療薬の処方は?」などの疑問に小児科専門医が答えるQ&A形式でわかりやすくお伝えしていきます。新米ママでもある馬杉先生が臨床現場の生の声をぶつけます。2008 年に改訂されたガイドラインを基軸に、現在の小児・乳児の気管支喘息の診断や治療、そして保護者への具体的な指導内容とその方法を徹底的に解説します。医師のみならず薬剤師や看護師など、小児と保護者に接する機会のある全ての医療従事者にご覧いただける内容です。第2回「使ってみよう ! こどもに漢方」最近では一般の医師でも漢方を処方したり、西洋薬と併用使用したりするケースが増えてきましたが、逆に情報通の保護者から漢方処方を依頼されることもあるのではないでしょうか。夜泣きや疳の虫、引きつけなど小さなこどもに多くみられる特有の症状。病気とはいえないがママ達には大変なストレス ! 漢方はそんな症状にズバリ著効することが多々あるのです。もちろん、嘔吐や下痢、発熱、くしゃみ鼻水といった一般的な症候によく効く漢方薬もあります。比較的小児に用い易い漢方処方を取り上げ、症例に沿って紹介します。大流行したノロウイルス感染症に効果のある「五散」のほか、「抑肝散」の母子同服という裏ワザ、そして服薬指導も行います。苦手意識をもたずに先ずは実践してみてください。第3回「ワクチン(1) Hib,肺炎球菌」Hib(インフルエンザ菌b型)と肺炎球菌(7価混合型)の2 種のワクチンについて学習します。Hib も肺炎球菌も、細菌性髄膜炎や中耳炎、肺炎、ときには菌血症といった非常に深刻な感染症を引き起こす菌。こどもが保育園などに通い始めると1年あまりで保菌率が飛躍的に上昇します。そのため家族に高齢者がいれば飛沫感染で影響を及ぼすこともあります。これらのワクチンは、世界的には非常にポピュラーでありWHO でも定期接種が勧められていながら日本では認知度も接種率も低かったのですが、2011 年度から公費助成での接種が始まりました。公衆衛生や集団免疫の観点からも、小児科医だけでなく全ての医師と医療従事者がきちんと知っておく必要がありますので、この機会に是非ワクチンの知識を身につけてください !第4回「ワクチン(2) 子宮頸癌の予防ワクチンとHPV」第4回は小児疾患ではなく、子宮頸がんとそのワクチンについて学習します。近年急増傾向にあり、特に20 代から30 代女性の罹患と発症が問題となっています。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染症によって引き起こされ、日本では成人女性の実に4 割以上がHPV に感染しているという驚くべき感染症です。タイプによっては予後が非常に悪く発症後の死亡率も高いため「Mother killer」と呼ばれています。にも関わらず日本では定期検診受診率が低くワクチンに関しても浸透しておらず、医師を含む医療従事者の間でさえ認知度が高いとはいえませんでした。しかし、2009 年12月から一般の医療機関でワクチン接種が可能となり、国と市町村の公費助成がはじまったため、婦人科以外で問合せを受ける可能性もあります。ワクチンで予防可能ながんをよく知り、その重要性を患者さんに啓蒙できるようになることが、これからの医療には求められるのではないでしょうか。

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喘息治療配合剤「アドエア」、小児の気管支喘息とCOPDの適応追加 

グラクソ・スミスクライン株式会社は、1月21日付で喘息治療配合剤「アドエア」(一般名:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル)について、小児気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応追加の承認、さらに剤型追加としてエアゾール剤の製造販売承認を取得したと発表した。小児の気管支喘息については、迅速審査品目として審査されたもの。また、COPDの適応は、吸入ステロイド薬を有効成分とする薬剤として国内で初めての承認。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2009_01/P1000520.html

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