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内視鏡的大腸ポリープ切除術でS状結腸穿孔を来したケース

消化器最終判決判例時報 1656号117-129頁概要56歳男性、腹痛の精査目的で施行された注腸検査で、S状結腸に直径2cm大のポリープが発見された。患者の同意を得たうえで大腸内視鏡検査を施行し、問題のポリープを4回に分けてピースミールに切除した(病理結果はグループIII)。同日鎮痛薬と止血剤を処方されて帰宅したが、翌日になって腹痛、悪寒、吐き気、腹満感が出現し救急車で来院。腹部は板状硬であり、グリセリン浣腸を行ったが反応便はなく、腹部X線写真では大量の腹腔内遊離ガスが確認された。緊急開腹手術ではポリープ切除部位にピンホール大の穿孔がみつかった。詳細な経過患者情報既往症として2回にわたる膿胸手術歴のある56歳男性。時々腹痛があり、薬局で購入した漢方胃腸薬を服用していた経過1990年11月1日未明から継続していた腹痛を主訴として受診。急性胃腸炎もしくは便秘による腹痛と診断したが、がんの可能性を考慮して注腸検査を予定した。11月7日注腸検査でS状結腸に直径2cmの粗大結節状ポリープがみつかり、がん化している疑いもあるため、大腸内視鏡によりポリープを切除することを説明し、承諾を得た。11月9日13:15大腸内視鏡検査を施行し、S状結腸のポリープを4回に分けてピースミールに切除(病理結果はグループIII)。担当医師はジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)坐薬と止血剤を処方し、「大量の出血や坐薬を使っても軽減しない痛みがある時には来院するように」という説明とともに帰宅を指示した。検査後目の前がくらくらするためしばらく病院内で休息をとったのち、自転車を押して約50分後に帰宅した。11月10日通常通りの仕事に就く。15:00腹痛が出現し、吐き気、悪寒、腹満感も加わった。17:32救急車で来院。腹部は板状硬、グリセリン浣腸を行ったが反応便なし。さらに腹部X線写真を撮影したところ、腹部全体に及ぶほど大量の遊離腹腔ガスが確認され、ポリペクトミーをした部位の穿孔が強く疑われた。21:09緊急開腹手術開始。腹腔をあける際に電気メスの火花による小爆発あり。開腹すると腹膜翻転部より約15cmのS状結腸にピンホール大の穿孔があり、その周辺部は浮腫と電気焼灼による色調の変化がみられた。S状結腸の部分的切除と腹腔内洗浄を行い、ペンローズドレーンを2本留置して手術を終了した(結果的にがんはなし)。当事者の主張患者側(原告)の主張1.穿孔の原因担当医師の経験、技術が未熟なため腸管壁を深く傷つけ、手術のときかその翌日の浣腸時にS状結腸が穿孔した2.説明義務違反ポリープ切除術に際し、大腸内視鏡による検査の説明を受けただけで、ポリープ摘出術の説明までは受けておらず同意もしていない病院側(被告)の主張1.穿孔の原因ポリープ摘出術はスネアーに通電してポリープを焼灼するもので、局所の組織が比較的弱くなることは避けられず、腸内ガスの滞留しやすい患者の場合には実施個所に穿孔が生じることがあり得る。本件では開腹手術の際に電気メスの花火でガスの小爆発が生じたように慢性の便秘症であり、穿孔の原因は患者の素因によるものである2.説明義務違反大腸内視鏡検査でみつかったポリープはすべて摘出することが原則であり、検査実施前にもそのような説明は行った。大腸内視鏡の実施に同意していることはポリープ摘出手術にも同意していることを意味する裁判所の判断1. 穿孔の原因ポリープ摘出術の際の穿孔は、スネアーが深くかかりすぎて正常粘膜を巻き込んだ場合や、スネアーをかける位置が腸壁粘膜に近すぎる場合のように、術者の手技に密接に関連している。そして、手術後24時間以内に手術部位に穿孔が生じ腹膜炎を発症しているのであるから、穿孔はポリープ摘出手術に起因することは明らかである。2. 説明義務違反ポリペクトミーにあたっては、術中のみならず術後も穿孔の起こる危険性を十分認識し、当日患者を帰宅させる場合には、手術の内容、食事内容、生活上の注意をして万全の注意を払うべきである。にもかかわらず担当医師は出血や軽減しない痛みがある時には来院するように指示しただけであったため、患者は術後の患者としては危険な生活を送って穿孔を招来したものであるから、説明義務違反がある。原告側合計2,243万円の請求に対し、177万円の判決考察大腸内視鏡検査で発生する腸管穿孔は、はたしてやむを得ない不可抗力(=誰が担当しても不可避的に発生するもの)なのでしょうか、それとも術者の技術に大きく依存する人為的なものなのでしょうか。もちろん、ケースバイケースでその発生原因は異なるでしょうけれども、多くの場合は術者の技量に密接に関連したものであると思われるし、事実裁判例はもちろんのこと、訴訟にまでは発展せずに示談解決した場合でも医師が謝罪しているケースが圧倒的に多いため、もはや不可抗力という考え方には馴染まなくなってきていると思います。1. 大腸内視鏡挿入時に穿孔を来す場合近年はスコープの性能向上や術者の技量向上、そして、検査数の増加に伴って、多くのケースでは数分で盲腸まで挿入できるようになったと思います。ただし、頑固な便秘のケースや開腹手術の既往があるケースなどでは挿入に難渋することがあり、検査が長時間に及ぶと術者の集中力もとぎれがちで、患者さんの苦痛も増大してきます。このような状況になっても意地になって検査を続行すると、腸管に無理な力が加わって不幸にして穿孔に至るケースがあるように思います。とくに腸管の屈曲部で視野が十分に確保されず、ブラインドでスコープを進めざるを得ない場合などには穿孔の危険性が増大すると思います。このような時、途中で検査を中止するのは担当医にとってどちらかというと屈辱的なことにもなりうるし、もし挿入できなかった部位にがんがあったりすると検査することの意義が失われてしまうので、なんとか目的を達成しようとむきになる気持ちも十分に理解できます。しかし、ひとたび穿孔に至ると、その後の多くの時間を事後処理に当てなければならないのは明白ですので、挿入困難なケースではほかの医師に交代するか、もしくは途中で引き上げる勇気を持つのが大切ではないかと思います。2. ポリープ切除に伴う穿孔大腸の壁は意外に薄く、ちょっとしたことでも穿孔に至る可能性を秘めているのは周知のことだと思います。ポリープ切除時に穿孔に至る原因として、スネアーを深くかけすぎて筋層まで巻き込んだり、通電時間を長くし過ぎたり、視野が十分確保できない状況でポリープ切除を強行したりなど、術者が注意を払うことによって避けられる要素もかなりあると思います。このうちスネアーを筋層まで巻き込んだ場合には、まるで硬いゴムをカットするような感触になることがありますので、「おかしいな」と思ったら途中で通電を中止し、もう一度スネアーの位置が適切かどうか確認する必要があると思います。また裁判外のケースをみていると、意外に多いのがホットバイオプシーに伴う穿孔です。そのなかでもポリープ切除部位とは離れた部分の穿孔、つまり鉗子の位置をよく確認しないまま通電することによって、予期せぬところが過剰に通電され穿孔に至ることがありますので、やはり基本的な手技は忠実に守らなければなりません。このように、大腸内視鏡検査においてはなるべく穿孔を回避するよう慎重な態度で臨む必要があります。それでも不幸にして穿孔に至った場合には、きちんとその経過や理由を患者さんに説明したうえで謝意をあらわすべきではないでしょうか。一部の施設では、穿孔を経験した若い先生に対し先輩の医師から、「このようなことはよくあるよ、これで君もようやく一人前だな」とおそらく励ます意味の言葉をかけることがあるやに聞きます。しかし、患者側の立場では到底許容されない考え方だと思いますし、最近では「不可抗力」という判断が首肯されにくいのは前述したとおりです。日本消化器内視鏡学会偶発症委員会が発表した統計(日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol.42:308-313, 2000)大・小腸スコープ総検査数258万7,689件のうち、偶発症数1,047件、頻度にして0.04%その中で大腸スコープによる偶発症は935件■内訳穿孔568件(60.7%)出血192件(20.5%)死亡21件(頻度0.00081%:上部消化管スコープの2倍、側視型十二指腸スコープの1/10)このように大腸内視鏡に伴う偶発症は発生頻度からみればごくわずかではありますが、ひとたび遭遇するととても厄介な問題に発展する可能性がありますので、検査に際しては細心の注意が必要だと思います。消化器

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偽膜性大腸炎を診断できずに死亡に至ったケース

消化器最終判決判例時報 1654号102-111頁概要高血圧性小脳出血を発症した65歳男性、糖尿病、腎障害、および軽度の肝障害がみられていた。発症4日目に局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術を施行し、抗菌薬としてセフォタキシムナトリウム(商品名:クラフォラン)、ピペラシリンナトリウム(同:ペントシリン)を開始した。術後2日目から下痢が始まり、術後4日目から次第に頻度が増加し、38℃台の発熱と白血球増多、CRP上昇など、炎症所見が顕著となった。術後6日目にはDICが疑われる状態で、腎不全、呼吸・循環不全となり、術後12日目に死亡した。解剖の結果、空腸から直腸にかけて著しい偽膜性大腸炎の所見が得られた。詳細な経過患者情報65歳男性経過1991年3月2日11:00頃法事の最中に眩暈と嘔吐を来して歩行不能となり、近医を経てA総合病院脳神経外科に搬送され、頭部CTスキャンで右小脳出血(血腫の大きさは3.8×2.5×2.0cm)と診断された。意識清明であったが言語障害があり、脳圧降下薬の投与、高血圧の管理を中心とした保存的治療が行われた。3月6日若干の意識障害、右上肢の運動失調がみられたため、局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術が行われた。術後感染防止のため、第3世代セフェム(クラフォラン®)、広域ペニシリン(ペントシリン®)の静注投与が行われた。3月8日焦げ茶色の下痢と発熱。腰椎穿刺では髄膜炎が否定された。3月9日白血球15,000、CRP 0.5。3月10日下痢が5回あり、ロペラミド(同:ロペミン)投与(以後も継続された)。3月11日下痢が3回、白血球42,300、CRP 3.9。敗血症を疑い、γグロブリン追加。胸部X線写真異常なし、血液培養陰性。3月12日下痢が3回、チェーンストークス様呼吸出現。3月13日下痢が2回、血圧低下、腎機能低下、人工呼吸器装着、播種性血管内凝固症候群を疑い、メシル酸ガベキサート(同:エフオーワイ)開始。抗菌薬をアンピシリン(同:ビクシリン)、第3世代セフェム・セフタジジム(同:モダシン)、ミノサイクリン(同:ミノマイシン)に変更。以後徐々に尿量が減少して腎不全が進行し、感染や血圧低下などの全身状態悪化から人工透析もできないままであった。3月18日死亡。死体解剖の結果、空腸から直腸にかけて、著しい偽膜性大腸炎の所見が得られ、また、エンドトキシン血症の関与を示唆する肝臓小葉中心性新鮮壊死、著しい急性肝炎、下部尿管ネフローシス(ショック腎)が認められたため、偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、細菌が血中に侵入し、その産生するエンドトキシンによる敗血症が惹起されエンドトキシンショックとなって急性循環不全が引き起こされた結果の死亡と判断された。当事者の主張患者側(原告)の主張小脳出血は保存的に様子をみても血腫の自然吸収が期待できる症状であり、手術の適応がなかったのに手術を実施した。1.死因クラフォラン®およびペントシリン®を中心として、このほかにビクシリン®、モダシン®、ミノマイシン®などの抗菌薬を投与されたことによって偽膜性大腸炎を発症し、その症状が増悪して死亡したものである2.偽膜性大腸炎について3月10~13日頃までには抗菌薬に起因する偽膜性大腸炎を疑い、確定診断ができなくても原因と疑われる抗菌薬を中止し、偽膜性大腸炎に効果があるバンコマイシン®を投与すべきであったのに怠った。さらに偽膜性大腸炎には禁忌とされているロペミン®(腸管蠕動抑制剤)を投与し続けた病院側(被告)の主張高血圧性小脳出血の手術適応は、一般的には血腫の最大経が3cm以上とされており、最大経が3.8cmの小脳出血で、保存的加療を行ううちに軽い意識障害および脳幹症状が発現し、脳ヘルニアへの急速な移行が懸念されたため、手術適応はあったというべきである。1.死因初診時から高血圧性腎症、糖尿病性腎症、感染によるショックなどの基礎疾患を有し、これにより腎不全が進行して死亡した。偽膜性大腸炎の起炎菌Clostridium difficileの産生する毒素はエンテロトキシンおよびサイトトキシンであるから、本件でみられたエンドトキシン血症は、偽膜性大腸炎に起因するとは考えがたい。むしろエンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌が腸管壁を通過し、糖尿病、肝障害などの基礎疾患により免疫機能が低下していたため、敗血症を発症し、多臓器不全に至ったものと考えられる2.偽膜性大腸炎について偽膜性大腸炎による症状は、腹痛、頻回の下痢(1日30回にも及ぶ下痢がみられることがある)、発熱、腸管麻痺による腹部膨満などであり、検査所見では白血球増加、電解質異常(とくに低カリウム血症)、低蛋白血症などを来す。本件の下痢は腐敗性下痢である可能性や、解熱薬の坐薬の影響が考えられた。本件の下痢は回数的にみて頻回とまではいえない。また、腹痛や腹部膨満はなく、血清カリウム値はむしろ上昇しており、白血球やCRPから炎症所見が著明であったので肺炎や敗血症は疑われたものの、偽膜性大腸炎を疑うことは困難であった裁判所の判断1. 死因本件ではClostridium difficileの存否を確認するための検査は行われていないが、抗菌薬以外に偽膜性大腸炎を発生させ得る具体的原因は窺われず、また、偽膜性大腸炎はClostridium difficileを起炎菌とする場合がきわめて多いため、本件で発症した偽膜性大腸炎は抗菌薬が原因と推認するのが合理的である。そして、Clostridium difficileにより発生した偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、腸管から血中にグラム陰性菌が侵入し、その産生するエンドトキシンにより敗血症が惹起され、ショック状態となって急性循環不全により死亡したものと推認することができる。2. 偽膜性大腸炎について一般的に医師にはさまざまな疾病の発生の可能性を考慮して治療に従事すべき医療専門家としての高度の注意義務があるのであって、本件の下痢の状況や白血球数などの炎症反応所見の推移は、かなり強く偽膜性大腸炎の発生を疑わせるものであると評価するのが相当である。病院側の主張する事実は、いずれも偽膜性大腸炎が発生していたことを疑いにくくする事情ではあるが、ロペミン®により下痢の回数がおさえられていた可能性を考慮して下痢の症状を観察するべきであった。そのため、3月11日から翌12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であり、その時点でバンコマイシン®の投与を開始し、かつロペミン®の投与を中止すれば、偽膜性大腸炎を軽快させることが可能であり、エンドトキシンショック状態に陥ることを未然に回避できた蓋然性が高い。2. 手術適応について高血圧性小脳出血を手術するべきであったかどうかの判断は示されなかった。原告側合計3,700万円の請求に対し、2,354万円の判決考察このケースは、脳外科手術後にみられた「下痢」に対し、かなり難しい判断を要求していると思います。判決文を読んでみると、頻回の下痢症状がみられたならばただちに(少なくとも下痢とひどい炎症所見がみられた翌日には)偽膜性大腸炎を疑い、確定診断のために大腸内視鏡検査などができないのならば、それまでの抗菌薬や止痢薬は中止してバンコマイシン®を投与せよ、という極端な結論となっています。もちろん、一般論として偽膜性大腸炎をまったく鑑別診断に挙げることができなかった点は問題なしとはいえませんが、日常臨床で抗菌薬を使用した場合、「下痢」というのはしばしばみられる合併症の一つであり、その場合程度がひどいと(たとえ偽膜性大腸炎を起こしていなくても)頻回の水様便になることはしばしば経験されます。そして、術後2日目にはじめて下痢が出現し、術後4日目から下痢が頻回になったという状況からみて、最初のうちは単純な抗菌薬の副作用による下痢と考え、止痢薬を投与するのはごく一般的かつ常識的な措置であったと思います。その上、術後に発熱をみた場合には腸以外の感染症、とくに脳外科の手術後であったので髄膜炎や肺炎、尿路感染症などをまず疑うのが普通でしょう。そのため、担当医師は術後2日目には腰椎穿刺による髄液検査を行っていますし(結果は髄膜炎なし)、胸部X線写真や血液検査も頻回に調べていますので、一般的な注意義務は果たしているのではないかと思います。ところが判決では、「頻回の下痢が始まった翌日の3月11日から3月12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であった」と断定しています。はたして、脳外科の手術後4日目に、頻回に下痢がみられたから即座に偽膜性大腸炎を疑い、発熱が続いていてもそれまでの抗菌薬をすべて中止して、バンコマイシン®だけを投与することができるのでしょうか。この時期はやはり脳外科術後の髄膜炎がもっとも心配されるので、そう簡単には抗菌薬を止めるわけにはいかないと考えるのがむしろ脳外科的常識ではないかと思います。実際のところ、脳外科手術後に偽膜性大腸炎がみられるのは比較的まれであり、それよりも髄膜炎とか肺炎の発症率の方が、はるかに高いのではないかと思います。にもかかわらず、まれな病態である偽膜性大腸炎を最初から重視するのは、少々危険な考え方ではないかという気までします。あくまでも推測ですが、脳外科の専門医であれば偽膜性大腸炎よりも髄膜炎、肺炎の方をまず心配するでしょうし、一方で消化器内科の専門医であればどちらかというと偽膜性大腸炎の可能性をすぐに考えるのではないかと思います。以上のように、本件は偽膜性大腸炎のことをまったく念頭に置かなかったために医療過誤とされてしまいましたが、今後はこの判例の考え方が裁判上のスタンダードとなる可能性が高いため、頻回の下痢と発熱、著しい炎症所見をみたならば、必ず偽膜性大腸炎のことを念頭に置いて検査を進め、便培養(嫌気性培養も含む)を行うことそして、事情が許すならば大腸内視鏡検査を行って確定診断をつけておくこと通常の抗菌薬を中止するのがためらわれたり、バンコマイシン®を投与したくないのであれば、その理由をきちんとカルテに記載することというような予防策を講じないと、医師側のミスと判断されてしまうことになると思います。なお本件でもう一つ気になることは、本件では手術直後から予防的な抗菌薬として、2種類もの抗菌薬が使用されている点です。クラフォラン®、ペントシリン®はともに髄液移行の良い抗菌薬ですので、その選択には問題ありません。しかし、手術時には明らかな感染症は確認されていないようなので、なぜ予防的な抗菌薬を1剤ではなくあえて2剤にしたのでしょうか。これについてはいろいろとご意見があろうかと思いますが、ことに本件のようなケースを知ると、抗菌薬の使用は必要最小限にするべきではないかと思います。消化器

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第25回 診断の見落とし!? チーム医療の落とし穴

■今回のテーマのポイント1.血液疾患で、一番訴訟が多い疾患は悪性リンパ腫であり、争点としては、診断の遅れが多い2.ただし、非特異的な原発巣を持つ悪性リンパ腫の診断が困難であることについて、裁判所は理解を示している3.今後、チーム医療が推進される中で、複数の専門科にまたがる領域の責任の所在を明らかにしていく必要がある■事件のサマリ原告患者Xの家族被告Y病院およびA医師争点診断の遅れ、見落とし結果原告一部勝訴、約550万円の損害賠償(結審)事件の概要73歳男性(X)。Xは、平成9年5月頃から下腹部に重苦しい痛みを訴えるようになり、他病院で検査を受けるなどしていましたが、腹痛の原因は特定できませんでした。そして、同年8月頃から、食欲不振も出現するようになり、約3ヵ月間で6kgの体重減少をみとめました。そのため、Xは、同年9月12日、精査加療目的にてY病院に入院しました(主治医A医師)。9月25日に撮影した腹部CTを読影した放射線科のB医師は、「仙骨前面に接し、辺縁明瞭で整な1 × 2cmの薄く染まる固まりを認め、内部は均一な染まり方で、硬化や脂肪の染まり方は認めない。MRIにて精査してください」とし、後腹膜腫瘤であり、悪性疾患を除外する必要があると診断しました。しかし、Xの腹痛は徐々に改善してきたこと、Xが自営している業務が忙しく退院を希望したことから、診断がつかないまま、10月5日に退院となり、外来にて検査を継続することとなりました。Xに右尿管結石が疑われたことから、Y病院の泌尿器科医より依頼を受け、10月9日に撮影した骨盤CTを読影した放射線科医師のC医師は、「スキャンの範囲内の尿管に一致するような明らかな放射線不透過の部分は指摘できず、DIP(点滴注入腎盂造影法検査)で指摘されている尿管の狭窄部に明らかな塊状の病変や壁肥厚は認めず、通過は保たれており、明らかなリンパ節腫大は認めない」として、正常範囲内であると診断しました。また、同月20日に撮影した腹部MRIを読影したC医師は、「上部直腸からS状結腸にかけて約10cmにわたる全周性の著明な壁肥厚、内腔に液体の貯留を認め、がんを否定できず、注腸及び大腸ファイバーでの精査が必要です。腫瘤マーカーをチェックしてください。総腸骨動脈分岐部やや右側に径1.5cmの腫大リンパ節が疑われます」として、直腸の壁肥厚(要精査)、リンパ節腫大と診断しました。主治医であるA医師は、腹痛も持続しており、貧血も出現していることから入院を勧めたものの、Xは拒否しました。11月26日、注腸造影検査を行ったところ、「回腸末端部に憩室が数個認められるが、直腸ないし回腸末端まで通過は良好で、その他に問題はない」とのことでしたが、翌平成10年1月12日に大腸内視鏡検査の予約をしました。ところが、平成10年1月9日、Xの腹痛は増悪し、黒色便を認めたことから、Y病院外来を受診。腹痛が強かったため、Xは入院を希望しましたが、Y病院がベッド満床のためZ病院へ紹介入院することとなりました。Z病院に入院した午後5時頃、さらに腹痛が増強したため、腹部CTを撮影したところ、消化管穿孔を認め、同日、緊急手術が行われることとなりました。そして、切除された小腸および大腸の病理組織検査の結果、悪性リンパ腫と診断されました。その後、Xに対し、化学療法が開始されましたが、同年4月23日午前11時30分、小腸原発の悪性リンパ腫により死亡しました。後日、振り返って9月25日の腹部CT、10月9日の骨盤CTを見たところ、小腸またはS状結腸に最大径約5cmとなる壁の異常な肥厚が認められました(9月25日腹部CTにてB医師が指摘したものとは別の腫瘤影)。これに対し、Xの遺族は、9月25日の腹部CTまたは10月9日の骨盤CTにおいて見落としをした結果、悪性リンパ腫の診断が遅れたとして、Y病院および主治医であったA医師に対し、約4,060万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決1. 9月25日腹部CT(1)放射線科医B医師の責任:有責「平成9年9月25日に施行されたコンピューター断層撮影(CT)の画像のみでは、異常な肥厚が認められる腸管の部位がS状結腸なのか小腸なのかも明らかでなく、具体的に回腸原発の悪性リンパ腫の疑いを指摘することは困難である。しかし、上記のとおり、この画像が示す腸管壁の異常な肥厚は、大腸又は小腸の著明な炎症性病変又は腸管の悪性腫瘍の可能性を示すものであり、悪性腫瘍であればXに重篤な結果がもたらされるおそれがあること、当時のXの臨床症状が、悪性リンパ腫を含む悪性腫瘍としても矛盾しない所見であったこと、コンピューター断層撮影(CT)の直前にXの腹部に腫瘤様のものが触知されていたことなどをも考え併せれば、同コンピューター断層撮影(CT)を行った被告病院の医師らは、平成9年9月25日当時、悪性リンパ腫を含めた悪性腫瘍又は炎症性病変の可能性を考えて、速やかに確定診断に至るべく、必要な検査に着手するなどの措置を執るべき注意義務を負担していたというべきである。・・・(中略)・・・同コンピューター断層撮影(CT)所見においてこの腫瘤状陰影につき指摘せず、必要な検査、具体的には注腸検査又は大腸内視鏡検査の施行も勧告しなかったものと認められる。したがって、B医師は、Xの悪性腫瘍又は炎症性病変の可能性につき、速やかに確定診断に至るべく、必要な措置を執るべき上記注意義務に違反したと認められる」(2)主治医A医師の責任:有責「被告A医師は、上記コンピューター断層撮影(CT)画像を慎重に確認せず、B医師の所見のみに従い、上記最大径5センチメートルの腫瘤状陰影が著明な炎症性病変又は腸管の悪性腫瘍の可能性を示しており、Xに重篤な結果がもたらされるおそれがあることに思い至らなかったものと考えられ、上記注意義務に違反したものと認められる」2. 10月9日骨盤CT(1)放射線科医C医師の責任: 無責「確かに、証拠によれば、同骨盤腔コンピューター断層撮影(CT)画像上、同年9月25日施行の腹部コンピューター断層撮影(CT)上の最大径5センチメートルの腫瘤状陰影と同一のものであると思われる腫瘤状陰影が描出されていることが認められる。しかし、上記認定のとおり、C医師は、被告病院泌尿器科から、Xの右尿管における石及びリンパ節腫大の有無の精査の依頼を受けて、上記コンピューター断層撮影(CT)を施行し、尿管の狭窄部に明らかな塊状の病変及び壁肥厚や明らかなリンパ節腫大は認められないとして、正常範囲内であると診断したのであり、被告病院泌尿器科から依頼を受けた放射線科医師として、その依頼の趣旨に従い、主にXの尿管等につき診断したのであるから、上記骨盤腔コンピューター断層撮影(CT)上の腫瘤状陰影について何ら指摘しなかったとしても、C医師の診療行為が不法行為を構成するものとはいえない」(2)主治医A医師の責任:無責「上記のとおり、平成9年10月9日に施行された骨盤腔コンピューター断層撮影(CT)は、C医師が、被告病院泌尿器科から依頼されて行ったものであり、証拠によれば、被告病院内科の診療録上には、同骨盤腔コンピューター断層撮影(CT)に関する記載はないと認められるから、被告A医師が、当時、この検査結果を具体的に認識していたのか否かも明らかではなく、この時点における被告A医師の新たな注意義務違反は認められない」(*判決文中、下線などは筆者による加筆)(大阪地判平成15年12月18日判タ1183号265頁)ポイント解説■血液疾患の訴訟の現状今回は、血液疾患です。血液疾患で最も訴訟となっているのは悪性リンパ腫です(表1)。原告勝訴率が高かったにもかかわらず平成16年から約8年間判決が途絶えているのが特徴的といえます。その理由として、悪性リンパ腫は、専門性が非常に高く、医療の進歩によりずいぶんと改善しているものの、生命予後が悪いことから、患者が死亡しているにもかかわらず、認容額が低く(平均680万円)なってしまうため、弁護士として着手しづらいことが一因として考えられます(表2)。本事例においても、過失は認められたものの、「仮に上記不法行為がなくXに対する検査が順調に進んで平成10年1月10日より前に化学療法が開始された場合には、Xに対する化学療法が奏効して救命又は延命できた可能性があることは否定できないものの、化学療法が奏効して救命又は延命できたことまで、確信を持ち得る程の高い蓋然性で立証できたとはいえない」とされ、死亡との間の因果関係は否定されました。その結果、第4回で解説した「相当程度の可能性」のみが認められ、550万円の認容額にとどまることとなりました。悪性リンパ腫の訴訟において、最も多く争われているのが診断の遅れです(表2)。特に非特異的な原発巣を持つ悪性リンパ腫の診断が遅れた場合に争われる傾向があります。ただ、その一方で、非特異的な原発巣である場合には、当然、診断が困難であることから、過失が認められにくくなっており、原告勝訴率は低くなっています。裁判所は妥当な判断をしているといえそうです。■信頼の原則第21回で解説したように、チーム医療においては、それぞれの専門領域については、各専門家が責任を負うこととなり、原則として他の職種が連帯責任を負うことはありません。これを法的にいうと「信頼の原則」*といいます。*「行為者は、第三者が適切な行動に出ることを信頼することが不相当な事情がない場合には、それを前提として適切な行為をすれば足り、その信頼が裏切られた結果として損害が生じたとしても、過失責任を問われることはない」という原則本件では、賛否はともかく、結果として、9月25日の腹部CTにおいて、放射線科医が病変を見落としています。仮に放射線科医に過失があったとしても、そのレポートを信頼した主治医(A医師)にまで責任は及ぶのでしょうか。第21回に解説したとおり、薬剤師による処方箋の確認は、薬剤師法上求められていることから、信頼の原則が適用されません。一方、まったくの専門外の領域について紹介受診してもらい、専門科の医師より回答がきた場合、原則として、その回答を信頼することは許容されると考えられています。例えば、糖尿病の患者の網膜症について眼科医に紹介し、問題がない旨の回答を得られた以上、振り返って眼底写真を見れば網膜剥離が認められていたとしても、眼科医に責任があるか否かはともかく、紹介した内科医に責任はないと考えられています。しかし、胸部X線写真やCT、MRIといった放射線科医でなくてもある程度の読影が求められても不当ではない領域について、どこまで信頼の原則が適用されるか。すなわち、自ら責任を持って確認しなければならないかとなると微妙な問題となります。残念ながら本件では、A医師の代理人弁護士が信頼の原則を主張していなかったため、CTの読影について、信頼の原則が働くか否かの司法判断は得られませんでした。ただ、10月9日の骨盤CTにつき、A医師には責任が認められなかったことから、少なくとも、他科によって独自に行われた検査結果までを確認する義務はないとはいえそうです。今後、チーム医療が推進されるに当たり、複数の専門家にまたがる領域において誰に責任の所在があるのか、司法判断が待たれるところといえます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)大阪地判平成15年12月18日判タ1183号265頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

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大腸がんスクリーニング、遠位大腸がん死亡リスクを減少/BMJ

 S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニング検査は、いずれも遠位大腸がんによる死亡リスクを大幅に減少することが、ドイツ・がん研究センターのHermann Brenner氏らが行ったメタ解析で確認された。また、大腸内視鏡検査については、近位大腸がんの死亡リスク減少効果があることも明らかになった。  両検査の大腸がん発生リスク低下との関連は、1992年以降に観察研究では報告されていた。またS状結腸鏡検査によるスクリーニングが、全体および遠位大腸がんの発生および死亡リスクの低下と関連することは、2009年以降、4件の無作為化試験が報告されていた。しかし、両検査を比較しての付加的価値については、無作為化試験が少なく、不明であった。BMJ誌オンライン版2014年4月9日号掲載の報告より。S状結腸鏡検査、遠位大腸がん死亡率は46%減少 研究グループは、S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニングに関する試験結果について、PubMedとEmbase、Web of Scienceを活用して検索し、メタ解析を行った。 S状結腸鏡検査による大腸がんスクリーニングについては、4件の無作為化試験と10件の観察試験について分析した。その結果、遠位大腸がんについては一貫してスクリーニングによる罹患率と死亡率の減少がみられた。割り付けした群ごとの分析(intention-to-screen解析)では、遠位大腸がん罹患率減少率は31%(95%信頼区間:26~37)で、同死亡率減少率は46%(同:33~57)だった。無作為化試験について、試験の実施計画に合った対象集団についての分析(per protocol解析)では、それぞれの減少率は64%(同:50~74)と66%(同:38~81)だった。大腸内視鏡検査、大腸がん死亡率は68%減少 大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニングについては、6件の観察試験について分析を行った。その結果、遠位大腸がんについて、罹患率と死亡率のさらに大幅な減少が認められた。そのうえ、近位大腸がんによる死亡率についても減少がみられた。大腸がん罹患率と死亡率は、大腸内視鏡検査によってそれぞれ69%(同:23~88)、68%(同:57~77)減少した。 観察試験について比較したところ、近位大腸がんによる死亡リスクは、大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニングのほうが、S状結腸鏡検査に比べ減少効果があることがわかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「今回得られた付加的価値について、高コスト、不快感、合併症率、必要許容量、またコンプライアンスの違い(可能な限り)といった観点でさらに調べる必要がある」とまとめている。

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腺腫検出率1%上昇で中間期大腸がんリスク3%低下/NEJM

 腺腫の検出率と、中間期大腸がん、進行期の中間期がん、致死的な中間期がんのリスクとの間には逆相関の関連がみられることが判明した。米国・カイザーパーマネンテ社のDouglas A. Corley氏らが、消化器専門医136人が行った大腸内視鏡検査31万4,872件について分析した結果、報告した。大腸内視鏡検査は、大腸がん検出のプライマリまたはフォローアップスクリーニングとして一般に行われている。また最近では、医師が行うスクリーニング大腸内視鏡検査での1つ以上の腺腫の検出率が、質の評価の指標として推奨されるようになっていた。しかし、この検出率とその後の大腸がん(中間期がん)や死亡のリスクとの関連については、ほとんど分析がされていなかったという。NEJM誌2014年4月3日号掲載の報告より。消化器専門医136人、31万4,872件、腺腫検出率7.4~52.5%のデータを分析 研究グループは、統合医療サービス組織の北カリフォルニア・カイザーパーマネンテの加入者データ(17施設で年間約330万人が医療サービスを受けている)を用いて、腺腫検出率と検査から6ヵ月~10年後に診断された大腸がんリスクおよびがん関連死との関連を評価した。 寄与リスクの推定値はCox回帰分析法を用いて、患者の人口統計学的特性、大腸内視鏡検査の適応、併存疾患について補正後、算出した。 評価には、消化器専門医136人により行われた大腸内視鏡検査31万4,872件のデータが含まれた。それらの腺腫検出率は7.4~52.5%にわたった。検出率最高五分位範囲群の中間期がんリスクは、同最低位群の0.52倍 追跡期間中に、中間期大腸腺がん712例(うち255例が進行期がん)と、中間期大腸がんからの死亡147例が特定された。腺腫検出率の五分位範囲でみた補正前中間期がんリスクは、最低位群から順に、検出率7.35~19.05%群9.8件/1万人・年、19.06~23.85%群8.6、23.86~28.40%群8.0、28.41~33.50%群7.0、33.51~52.51%群4.8だった。 検出率最高五分位範囲(33.51~52.51%)群の患者と、最低五分位範囲(7.35~19.05%)を比較した、全中間期がんの補正後ハザード比は0.52(95%信頼区間[CI]:0.39~0.69)、進行期中間期がんは同0.43(同:0.29~0.64)、致死的中間期がんは同0.38(同:0.22~0.65)だった。腺腫検出率1.0%上昇につき、3.0%のがんリスク低下が認められた(ハザード比:0.97、95%CI:0.96~0.98)。

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大腸がん手術後の患者さんへの説明

手術のあと大腸がんの手術を受けられた方へ編著:東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学 助教 石黒 めぐみ氏監修:東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学 教授 杉原 健一氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.あなたの受けた手術手術を行った日手術で切除した範囲年月日術式名(受けた手術の名称)きずお腹の創Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.2病理検査の結果深達度□□□□□□大腸癌取扱い規約【第8版】←粘膜大腸(断面)←粘膜下層Tis(粘膜まで)T1(粘膜下層まで)T2(固有筋層まで)T3(漿膜下層まで)T4a(漿膜に露出)T4b(ほかの臓器に浸潤)←固有筋層←漿膜下層←漿膜リンパ節リンパ節転移□ なし□ あり ➡個(□N1 □N2 □N3)以上の結果を総合するとあなたの大腸がんの病理学的進行度(ステージ)はほかの臓器への転移0□ 術前の検査では認めていません□ ほかの臓器への転移が疑われます➡(臓器)ⅠⅡⅢaⅢbⅣと診断されます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.3【参考】大腸がんの進行度(ステージ)ステージ0粘膜・がんが粘膜の中にとどまっているステージⅠ・がんが粘膜下層あるいは固有筋層までにとどまっている・リンパ節転移がないステージⅡ粘膜下層固有筋層・がんが固有筋層を超えている・リンパ節転移がない漿膜下層漿膜・リンパ節転移があるステージⅢステージⅣⅢa:リンパ節転移が1~3個Ⅲb:リンパ節転移が4個以上・ほかの臓器への転移や腹膜播種がある肝転移Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.リンパ節転移肺転移早期がん進行がん腹膜播種4今後の治療について☑:あなたに当てはまるもの① 大腸がんの「再発」とは?② 大腸がん手術後の定期検査③ 術後補助化学療法④ 一時的人工肛門の閉鎖⑤その他のがんの検診についてCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.5①大腸がんの「再発」とは?a)大腸がんの「再発」とは?・手術でがんをすべて取りきったと思っても一定の割合で再発が起こります。大腸から離れた場所に❝飛び火❞した目に見えない大きさのがん徐々に増えてきて画像に写る大きさのしこりになったもの1cmくらい手術前手術後Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.再発6①大腸がんの「再発」とは?b)大腸がんの再発率・手術のときのステージが進んでいるほど再発する確率(再発率)は高くなります。(%)5030.8%43.240再発率302010013.3%3.7%2.712.124.3結腸がん直腸がん16.75.7ステージⅠステージⅡステージⅢ大腸癌研究会・プロジェクト研究 1991~1996年症例大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.7【参考】大腸がんの5年生存率(%)10094.091.68084.877.760.0604018.8200ステージ0ステージⅠステージⅡ ステージⅢa ステージⅢb ステージⅣ大腸癌研究会・大腸癌全国登録 2000~2004年症例大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.8①大腸がんの「再発」とは?c)大腸がんの主な再発形式・大腸がんの再発には、以下のようなものがあります。遠隔再発ほかの臓器に再発・肝再発腹膜再発吻合部再発(腹膜播種)お腹の中(腹腔内)に種をまいたように散らばって再発腸をつなぎ合わせた部分に再発局所再発・肺再発もともとがんがあった周囲に再発・その他:脳や骨などCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.9②大腸がん手術後の定期検査a)定期検査はなぜ必要?・大腸がんの再発は、手術で取りきれれば治る可能性があります。・再発が起こっていないかどうかをチェックするために手術後には定期的な検査が大切です。・手術のあと、5年間は定期検査を行います。大腸がんの再発のうち、96%が手術後5年以内に起こります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.10②大腸がん手術後の定期検査b)定期検査のスケジュール(例)・以下のようなスケジュールに従って定期検査を行います。※ステージや患者さんのからだの状態によって多少異なります。1年2年問診・診察3ヵ月ごと直腸指診【直腸がん】3ヵ月ごと4年5年6ヵ月ごと腫瘍マーカー3年胸部・腹部CT6ヵ月ごと6ヵ月ごと骨盤CT【直腸がん】6ヵ月ごと6ヵ月ごと大腸内視鏡検査1~2年ごと大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.11③術後補助化学療法a)術後補助化学療法とは?・からだの中に残っているかもしれない見えないがん細胞を攻撃し、再発を防ぐ あるいは 再発を遅らせることを目的として、手術のあとに行う抗がん剤治療のことを「術後補助化学療法」といいます。【術後補助化学療法の対象となる患者さん】・ステージⅢの患者さん・ステージⅡのうち再発する危険性が高いと思われる患者さん・原則として術後1~2ヵ月を目安に開始し、6ヵ月行います。・通常は2~3週おきの外来通院で治療します。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.12③術後補助化学療法b)術後補助化学療法で使用されるレジメン・大腸がんの術後補助化学療法で使用されるレジメンには、以下のようなものがあります。※レジメンとは、使用する薬剤とその組み合わせ、投与する量やスケジュールなど治療の「レシピ」のようなものです。レジメン剤型投与方法投与スケジュール・5-FU+LV療法注射薬2時間かけて点滴週1回×6回その後2週間休む・UFT+LV療法飲み薬内服(1日3回)4週間内服その後1週間休む・カペシタビン療法飲み薬内服(1日2回)2週間内服その後1週間休む・FOLFOX療法注射薬48時間かけて点滴2週間おき・CapeOX療法飲み薬+注射薬点滴は約2時間カペシタビンは内服(1日2回)点滴+2週間内服その後1週間休むCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.13④一時的人工肛門の閉鎖・今回の手術では、以下のような目的で、一時的な人工肛門を造設しました。□腸のつなぎ目を安静に保ち、縫合不全*を予防するため。□ 術後、縫合不全*が起こったため。*縫合不全:腸のつなぎ目がほころびること・腸のつなぎ目が落ち着いたころを見計らって人工肛門を閉鎖する(もとに戻す)手術を行います。・1~2時間程度の手術です。・今回の手術と同様、全身麻酔で行います。・おおよその入院期間:日程度・手術を行う時期の目安:年お腹の壁(腹壁)月ころCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.口側の腸管皮膚筋層腹膜肛門側の腸管14⑤その他のがんの検診についてa)ほかの臓器のがんの検診について・大腸がんにかかったあとも、ほかの臓器のがんにかかる可能性があります。※大腸がん手術後の患者さんがほかの臓器のがんにかかる頻度は1~5%と報告されています。・大腸がんの手術後には、再発のチェックを目的とした定期検査を行いますが、ほかの臓器のがんの検査としては必ずしも十分ではありません。・自治体などで実施されるがん検診は、積極的に受けましょう。大腸がん手術後の定期検査では見つかりにくいがん・胃がん・食道がん・乳がん・子宮がん・前立腺がん大腸がん手術後の定期検査で見つかりやすいがん・肺がんCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.・肝臓がん15⑤その他のがんの検診についてb)別の大腸がんができる可能性があります・大腸がんの手術を受けたあとも、大腸の別の部分に別の大腸がん/大腸ポリープができる可能性があります。※大腸がん手術後の患者さんで、大腸の別の部分に別の大腸がんができる頻度は1~3%と報告されています。これは一般集団に比べておよそ1.5倍高い頻度です。・5年間の「手術後の定期検査」が終了したあとも、2~3年に1回の大腸内視鏡検査を受けることが勧められます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.16退院後の生活について① 退院後の食生活② 退院後の日常生活③ 退院後の仕事復帰④ 退院後のスポーツやレジャーCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.17①退院後の食生活・原則として食事の内容に制限はありません。・「ゆっくり、よく噛んで、腹八分目」を心がけましょう。【食事のとり方の基本】➊ 規則正しく食事をとりましょう。➋ ゆっくり、よくかんで食べましょう。➌ 一度にたくさん食べすぎないようにしましょう。➍ バランスよく、消化の良いものを中心にとりましょう。➎ 水分をしっかりとりましょう。➏ アルコールはほどほどに。➐ 腸閉塞のサインを知っておきましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.詳しくは24ページ18【参考】一度にたくさん食べ過ぎるとよくない食品・原則として食事の内容に制限はありません。・ただし、以下のような消化されにくい食べ物を一度にたくさん食べると、つまったり流れにくくなったりして、腸閉塞を起こすことがあります。詳しくは24ページ食べ方や調理法を工夫して適量を食べるようにしましょうこんぶ・わかめなどの海藻類ごぼう・れんこんなど繊維質の根菜類きのこ類こんにゃく・よく噛む・こまかく刻む(繊維と垂直に切る)・やわらかく煮込む などまめ類Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.19②退院後の日常生活・退院後2ヵ月ほどはあまり無理をしないほうがよいですが自分の体力の回復に合わせて、徐々に行動範囲を広げていきましょう。・適度に体を動かしましょう。きずおとなしくして創を大事にしていたからといって、きず創の治りやがんの治りがよいわけではありません。適度な運動は体力や筋力を回復させ、胃腸の活動を活発にします。血行をよくし、手術の傷跡の治りもよくします。・まずは散歩や、軽い家事などがよいでしょう。疲れ具合に応じて、出かける時間や距離、作業の量や程度を増やしたりしてみましょう。病院への通院もよいリハビリになります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.20③退院後の仕事復帰・デスクワーク中心の仕事であれば、手術後1ヵ月程度・からだを動かす仕事であれば、手術後2~3ヵ月程度が復帰の目安です。・軽めの仕事から徐々に始めていくのがよいでしょう。いきなりもとの仕事の内容・量を目指すのではなく、時短勤務や、一時的に仕事の内容を変更すること(外回り→内勤)なども考慮しましょう。・ご家族や職場の人たちのサポートが心身ともに大切です。ひとりで悩まずに、周りの人たちと協力して、手術後の回復期を乗り切りましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.21④退院後のスポーツやレジャー・体を鍛え上げるような激しい運動をする必要はありません。自分の体力に合わせて、好きな運動を生活に取り入れて楽しみましょう。・お腹に力が入るような運動は、手術後2~3ヵ月は控えましょう。腹筋運動、重いものを持ち上げる、ゴルフ、相撲、柔道など。腹壁瘢痕ヘルニアの原因になることがあります。詳しくは25ページ2~3ヵ月は…・もちろん旅行だって楽しめます。とくに制限はありません。はじめのうちはあまり無理のない範囲で楽しみましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.22今後起こりうる手術の影響☑:あなたに当てはまるもの① 腸閉塞(イレウス)② 腹壁瘢痕ヘルニア③ 排便習慣の変化□【結腸がん】□【直腸がん】□【人工肛門】④ 排尿機能障害【直腸がん】⑤ 性機能障害【直腸がん】Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.23①腸閉塞(イレウス)・お腹の手術を受けた後は、癒着などにより、何らかのきっかけで便の通りが突然悪くなることがあります。これを「腸閉塞(イレウス)」といいます。便やガス(おなら)の出が悪くなり、お腹が張ったり、お腹が痛くなったり、嘔吐したりします。・軽い場合は食事をしばらくお休みすれば改善します。それで改善しない場合は、鼻から管を入れて腸の内容物を吸い出したり、手術が必要になる場合もあります。軽いお腹の張りを感じても、便やガス(おなら)が出ている場合は、食事の量を減らして様子を見てください。強い腹痛、嘔吐、排便・排ガスがない などがある場合は、飲食はせずに、ただちに病院に連絡してください。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.24②腹壁瘢痕ヘルニア・お腹の壁(腹筋)を縫い合わせた部分のうち、筋肉に弱いところがあると、そこから腸がお腹の外に脱出することがあります。これを「腹壁瘢痕ヘルニア」といいます。皮膚筋層腹膜小腸・大腸きずお腹に力を入れたり長時間立っていたりすると、お腹の創の付近がポコッと盛り上がり、押すとペコペコします。あおむけに寝たり、お腹の力を抜くことによって、簡単に腸がお腹の中に戻る場合は、日常生活に支障がなければ、治療を急ぐ必要はありません。脱出した腸がねじれて血行が悪くなったりした場合には、強い痛みが起こります。この場合はただちに手術が必要ですので、すぐに病院に連絡してください。・腹壁瘢痕ヘルニアを予防するため、✔ 手術後2~3ヵ月は、腹圧のかかる作業は避けてください。腹筋運動、重いものを持ち上げる、ゴルフ、相撲、柔道など。✔ 太りすぎないように気を付けてください。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.25③排便習慣の変化【結腸がん】・結腸がんの手術では、日常生活に支障が出るような変化はほとんどありません。手術後2~3ヵ月は、やや便通が落ち着かないと感じることもあると思います。時間の経過とともに、少しずつ落ち着いてくるのが一般的です。規則正しい食生活が大切です。とくに朝食はきちんととりましょう。散歩などの適度な運動も効果的です。・便秘・下痢が続くなど、便通にお悩みのときは主治医に相談してください。便を柔らかくする薬や下痢止めなど、いろいろなお薬で改善する場合があります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.26③排便習慣の変化【直腸がん】・直腸がんの手術では、肛門が残っても、直腸の大部分が切り取られているので、十分に便をためられないために、以下のような排便習慣の変化が見られます。・便の回数が増える・残便感がある・便意をがまんできない・寝ている間やお腹に力を入れたときに便やガスが漏れてしまう※程度には個人差があります。・半年~1年くらいの経過で、徐々に改善してきます。・排便のパターンをつかんで、上手に付き合っていきましょう。対策・夜間や外出時の漏れが心配な場合は、生理用品や尿取りパットを使う。(トイレットペーパーはお尻が荒れてしまうので避ける!)・外出直前の食事は避ける。・駅や外出先では、あらかじめトイレの場所を確認しておく。・シャワートイレがおすすめ(携帯用のものもあります)。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.27③排便習慣の変化【人工肛門】・人工肛門に関する悩みやトラブルがあるときは、「ストーマ外来」で専門の医師・看護師に相談してみましょう。【ストーマ外来のリスト】「日本創傷・オストミー・失禁管理学会」ホームページhttp://www.etwoc.org/stoma.html・人工肛門・人工膀胱をもつ患者さんの会もあります。「日本オストミー協会」ホームページ http://www.joa-net.org/日常生活に役立つさまざまな情報が得られます。・永久人工肛門になった患者さんでは、「直腸膀胱機能障害」(通常は4級)として身体障害者手帳を取得できます。・装具の給付、税の控除などのサービスを受けることができます。・患者さん自身(またはご家族)による申請が必要です。・申請以降に助成が開始されるので、早めに申請の手続きを。・詳しくは、市区町村の福祉担当窓口や、病院の社会福祉士(ソーシャルワーカー)に問い合わせてみましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.28④排尿機能障害【直腸がん】・手術操作による一時的な自律神経のダメージや、がんを取りきるために一部の自律神経を切除したことにより排尿機能に障害が出ることがあります。尿道括約筋対策膀胱● 膀胱のセンサーの障害・尿意がよくわからない・膀胱に尿がたまりすぎてあふれる● 膀胱が収縮する機能の障害・膀胱の壁が固くなって伸びが悪い→あまり尿をためられずにあふれてしまう・押し出す力が弱く、“残尿”が増える・尿意がなくても、一定の時間ごとにトイレに行く。・男性の小用も座ってゆっくりと。・排尿時に下腹部を圧迫する(手で押す+前かがみ)。・症状に応じたお薬で症状が改善する場合があります。・自己導尿(自分で尿道に管を入れて尿を出す)Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.泌尿器科の医師に相談29⑤性機能障害【直腸がん】・手術操作による一時的な自律神経のダメージや、がんを取りきるために一部の自律神経を切除したことにより性機能に障害が出ることがあります。下大静脈腹部大動脈上下腹神経叢下腹神経骨盤神経叢(下下腹神経叢)骨盤内臓神経(勃起神経)直腸への神経枝膀胱への神経枝【男性の場合】・勃起障害・射精障害※女性の場合の性機能への影響はよくわかっていません。・手術の影響による症状です。恥ずかしがらずに主治医に相談しましょう。対策・お薬で改善する場合があります。・専門の医師への相談もできます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.泌尿器科の医師に相談30

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大腸内視鏡検診の是非と日本のがん検診(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(143)より-

大腸がん検診として、便潜血によるスクリーニング法は、確立されている。一方、内視鏡による検診として、S状結腸内視鏡検診は、5つのRCT(ランダム化比較試験)のメタアナリシスにより、大腸がんの罹患率、死亡率を減少させることの有効性が示されている1)。しかし、全大腸内視鏡の検診の有効性に関してはまだ証明されていないところである。 今回の研究は、コホート研究の結果であるが、全大腸内視鏡検診群は、大腸がん発生率、死亡率を共に減少させ、また、S状結腸内視鏡検診群と比べて、近位大腸がんによる死亡をより減少させる結果が得られた。対象がランダム化されていないこと、医療従事者のみを対象としていること、コントロール群が便潜血法による検診群でないことなどから、この結果は、すぐに一般臨床に応用できるまでのエビデンスではないが、全大腸内視鏡検診の有用性を初めて証明した研究としては注目に値すると思われる。米国では、現在大腸がん検診として、便潜血、S状結腸内視鏡、大腸内視鏡検診が推奨されているが(http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/uspscolo.htm)(日本は便潜血のみ)、今回の結果は、この推奨の後押しとなる結果であったと思われる。 現在、全大腸内視鏡検診の有用性を検証するために、便潜血による検診法と全大腸内視鏡検診を比較したランダム化比較試験が、米国・欧州で2つ行われており、結果が期待されるところである。 振り返ってわが国の現状を考えると、日本で最も発症数が多い胃がん検診に関しては、これまでランダム化比較試験は行われたことはない。胃がん検診として推奨されているバリウム検診に関しても、実際には、ケースコントロール研究の結果でしかない。胃内視鏡検査の方が精度が高く、人間ドックや職場検診などで、多く用いられているのであるが、残念ながら、胃内視鏡検査が検診として有効であるかどうか検証されたことはない。ランダム化比較試験を遂行していくのは大変なことではあるが、国民にとって本当に利益のあることなのか、科学的に検証するということは大切な作業であると思う。勝俣 範之先生のブログはこちら

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大腸内視鏡検査はがん発生と死亡率をどのくらい低下させるか/NEJM

 下部消化管内視鏡(大腸内視鏡、S状結腸鏡)検査と、遠位・近位別の大腸がん発生との関連および死亡率との関連を検討した結果が、米国・ダナファーバーがん研究所のReiko Nishihara氏らにより報告された。大腸内視鏡検査およびS状結腸鏡検査が、大腸がん発生の予防に寄与することは知られるが、その効果の大きさや、実施頻度との関連について、とくに近位大腸がんに関しては明らかでなかった。NEJM誌2013年9月19日号掲載の報告より。8万8,902人のうち、大腸がん発生1,815例、大腸がんによる死亡474例 研究グループは、米国女性看護師健康調査(12万1,700人参加、1976年登録時30~55歳)と医療従事者追跡調査(5万1,529人、1986年登録時40~75歳)の参加者について、下部消化管内視鏡検査(1988年から2008年に2年ごとに実施)の実施と、大腸がん発生率(2010年6月まで)および大腸がん死亡率(2012年6月まで)の関連を調べた。 観察期間対象の22年間に8万8,902人(うち男性3万1,736人)が追跡を受けた。そのうち大腸がんの発生は1,815例(うち男性714例)、大腸がんによる死亡は474例が記録された。近位大腸がん死亡の低下に大腸内視鏡は寄与、S状結腸鏡は寄与せず 複合コホートの解析の結果、内視鏡検査を受けなかった群と比較した大腸がん発生多変量ハザード比(HR)は、内視鏡検査を受けた群のうち、ポリープを切除した群は0.57(95%信頼区間[CI]:0.45~0.72)、S状結腸鏡検査が陰性だった群は0.60(同:0.53~0.68)、大腸内視鏡検査結果が陰性であった群は0.44(同:0.38~0.52)だった。 また、近位大腸がん発生の低下と関連していたのは、大腸内視鏡検査陰性群(HR:0.73)であった(ポリープ切除群のHR:0.83、S状結腸鏡検査陰性群のHR:0.92)。 大腸がんによる死亡について、スクリーニングを行わなかった群と比べて、スクリーニングS状結腸鏡検査群(HR:0.59)、スクリーニング大腸内視鏡群(同:0.32)では死亡率の低下が観察された。 ただし近位大腸がんによる死亡については、スクリーニング大腸内視鏡群では低下が認められたが(HR:0.47)、スクリーニングS状結腸鏡群では低下がみられなかった(同:1.04)。遠位大腸がんによる死亡については両群で低下が認められた(同:0.18、0.31)。 大腸内視鏡検査後5年以内に大腸がんと診断された人は、同検査後5年以上で大腸がんと診断された人または大腸内視鏡検査未実施で大腸がんと診断された人と比較して、CpGアイランドメチル化形質(CIMP)(多変量オッズ比:2.19、95%信頼区間:1.14~4.21)、マイクロサテライト不安定性(同:2.10、1.10~4.02)を示す傾向が強かった。

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大腸用カプセル内視鏡が承認取得~こわくない、恥ずかしくない大腸検査~

 大腸がん検診で便潜血検査が陽性となり要精密検査とされても、大腸内視鏡検査を受診しない人は4割以上に上る。その理由としては「自覚症状がないから」が最も多いが、「痛くてつらそう」「恥ずかしい」という理由も多いという。こうした状況のなか、2013年7月、ギブン・イメージング株式会社の大腸用カプセル内視鏡「PillCam® COLON 2カプセル内視鏡システム」が、審査期間10ヵ月というスピードで承認された。これにより、大腸内視鏡検査をさまざまな理由で受けられない人たちの精密検査のオプションとして提供されることになった。今後、保険適用が認められれば検査数が大幅に増加することが予想される。   ここでは、8月21日に開催されたギブン・イメージング株式会社主催のプレスセミナーから、大腸がん早期発見における大腸用カプセル内視鏡の可能性と今後の展望についてレポートする。精密検査の受診率アップに期待 わが国では、近年、大腸がんの死亡者数が増大し続けており、女性のがん死亡の原因では第1位である。また、がん罹患率についても、2020年までには男女を合わせた日本人における第1位になると予測されている。しかしながら、わが国の大腸がん検診受診率は2007年で約25%と低い。さらに、受診したとしても、精密検査が必要な人における精密検査受診率は57.9%(2012年日本消化器がん検診学会集計)と4割以上が受診していない。この現状を、日本カプセル内視鏡学会理事長の寺野 彰氏(学校法人獨協学園理事長/獨協医科大学名誉学長)は、大きな問題だと指摘した。 インターネットによるアンケート調査によると、大腸内視鏡検査を受けない理由としては「自覚症状がないから」が最も多いが、「痛くてつらそうだから」「恥ずかしいから」(とくに女性)といった受容性の問題も多い。そこで、低侵襲で受容性が高いカプセル内視鏡が、肉体的・精神的に大腸内視鏡検査ができない人や受診を避けてしまう人、地方で大腸内視鏡検査を受けにくい人などに利用されることによって、精密検査受診率のアップにつながり、ひいては大腸がんの早期発見・早期治療に大きく貢献する、と寺野氏は期待する。読影する医師や技師の教育が急務 一方、寺野氏は、カプセル内視鏡検査では多大な画像を読影する必要があるため、医師と技師との協力が重要と指摘した。また寺野氏は、今後、カプセル内視鏡検査が病院のPRとなることが予想されるため、読影できる医師や技師がいない病院でも検査が行われることを危惧している。そのような状況を避けるため、日本カプセル内視鏡学会では、2012年にカプセル内視鏡認定医制度、2013年にカプセル内視鏡読影支援技師制度を施行し、カプセル内視鏡に関する研究教育を行っているという。 また、読影には1時間程度かかるため、今後普及に伴って、検査・読影する医師や技師が不足することが考えられる。その対策として、PillCam® COLON 2カプセル内視鏡システムの治験を行った田中信治氏(広島大学病院内視鏡診療科教授)は、大腸カプセル内視鏡読影センターを整備し、一線を離れて家庭に入っている女性医師などの潜在能力を有効活用していくことが重要で、役割分担によって大腸がん診療の効率化が可能である、と今後の展望を語った。■「PillCam® COLON 2カプセル内視鏡システム」の承認された使用目的・適用対象【使用目的】本品は、大腸内視鏡検査を必要とするが、当該検査が施行困難な場合に、大腸疾患の診断を行うために、大腸粘膜の撮像を行い、画像を提供することを目的とする。【適用対象(患者)】1.大腸疾患が既知又は疑われる患者に使用すること。2.次の患者への使用には注意すること。[安全性が確認されていないため] -妊婦 -18歳未満の患者 -重篤な消化管憩室疾患の患者

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“医者の不養生”は本当?「もっと早く受診すればよかった…」そんな経験、ありますか?

今回の「医師1,000人に聞きました」は“医師自身の健康管理”。“医者の不養生”なんてことわざがありますが、その“口先ばかりで実行が伴わないこと”という解釈を読むとなんだか解せない…なんて方も多いのでは。先生方は、健康診断・人間ドック、毎回欠かさず受けますか?受けない先生、それはなぜですか?自分自身が患者になってみて、感じたことは?患者さんにかかりっきりになっているうちに医師のほうが手遅れになってしまった…なんて笑えない話も飛び出す今回の調査、寄せられたコメントも必見です!コメントはこちら結果概要約7割が健康診断・人間ドックを『必ず受ける』、一方で『毎回受けない』医師が1割以上存在全体の68.7%が『毎回必ず受けている』と回答。『受けないことがある』医師は19.3%、『毎回受けない』 医師は12.0%存在。世代間で大きな差は見られなかったものの、『毎回受けない』とした人の比率は年代が上がると共に漸増し、30代以下で10.6%のところ、60代以上では13.8%となった。働き盛りの40代「忙しくて」、60代以上「開業して交代要員がいない」健康診断・人間ドックを受けない(ことがある)医師に理由を尋ねたところ、最も多かったのは『忙しいから』で64.9%、働き盛りの40代では72.7%に上った。一方、若年層に比べ開業医の比率が高まる60代以上では、『院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえないから』が28.6%に上ったのと同時に『自分の健康状態は自分でわかっていると思うから』が21.4%。“受けたいのに都合がつけられない”医師と、“受けないと決めている”医師が他の世代に比して明確に表れるという結果となった。2割近くの医師に 『もっと早く受診すれば…』と後悔した経験あり自身が具合を悪くした際、『もっと早く受診すれば良かった』と感じた経験がある医師は全体の17.6%。40代では20.3%となった。遅れた理由としては、健康診断と同様『忙しかったから』が69.9%と最も多かったが、次いで多い回答が『受診するほどの症状ではないと思ったから』で27.8%。「知り合いの先生が“まだ大丈夫”“と過信し、忙しさも重なり受診をのばした結果、手遅れになった」など、ある程度自分で判断がつくことから招いてしまった事態、また「健康診断は受けるが、そこで引っかかっても、多忙のため受診できない」など、結果として”医者の不養生”になってしまうことを嘆く声も寄せられた。立場特有の“受診への不安”、受診して患者の気持ちを実感受診を躊躇する理由としてコメント中に複数挙がったのが、「身内の医者には診てもらいにくい」「オーダリングシステムを使える立場の人なら病名・処方が簡単にわかってしまう」など、プライバシーの漏えいを懸念する声が挙がった。また「自分の専門領域の検査を受ける場合は、結果がわかれば先が見えるから怖い」と医師ならではの不安感のほか、自身の検査や入院により「人間ドックの再検査を受けた際、病名告知前に患者さんがどれほど心配しているか実感した」「同室患者のいびきがこんなに心身に影響するのか、と」など、患者の立場・気持ちを実感したというコメントも見られた。設問詳細各種がん検診の推進、ワクチンの早期接種の推奨など、早期発見および予防が謳われるようになった昨今、先生方も普段患者さんに「早めの受診を」と呼びかけていらっしゃるかと思います。そこで先生にお尋ねします。Q1.健康診断(人間ドック含む)について当てはまるものをお選び下さい。毎回必ず受けている受けないことがある毎回受けない(Q1で「受けないことがある」「毎回受けない」を選んだ方のみ)Q2.健康診断(人間ドック含む)を受けない理由について、当てはまるものを全てお選び下さい。(複数回答可)面倒だから忙しいから院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえないからその気になればいつでも検査できると思うから自分の健康状態は自分でわかっていると思うから健康診断・人間ドックには意味が無いと思うから知りたくない、怖いからその他(                 )Q3.ご自身が心身の具合を悪くした際、結果として「もっと早く受診すればよかった」と感じた経験はありますか。あるない(Q3で「ある」とした方のみ)Q4.その時に受診しなかった、受診が遅れた理由で当てはまるものをお選び下さい。(複数回答可)面倒だったから忙しかったから院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえなかったから受診するほどの症状ではないと思ったから自覚症状がなかったから知りたくなかった、怖かったからその他(                  )Q5.コメントをお願いします。(ご自身の体調管理、受診・治療へのハードル、健康診断・人間ドックに対して思うこと、ご自身が患者の立場となった際に感じたこと、ご自身や周囲の先生方が体調を崩した際のエピソードなど、どういったことでも結構です)2013年3月15日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「医療を提供しているとその限界も見え、自分が病気になったときは“寿命がきた”と判断して医療を受けたくない、という気持ちが強くなった。」(40代,内科,一般病院)「思ってもみない結果が出ると人間は動揺するものであることがよくわかった」(50代,放射線科,一般病院)「健康管理は重要だと思うが、他の医療機関を受診するのはハードルが高い」(50代,外科,診療所・クリニック)「検診などを受ける時間もなく、症状にあわせて友人医師に内服処方を出してもらい済ませる事が多い。」(40代,救急医療科,一般)「人間ドックの再検査を受けて、病名告知前に患者さんがどのくらい病気について心配しているか実感した」(40代,内科,一般病院)「健診に対する価値観、病気に対する価値観はそれぞれであり、強要されるものでは決してない。また、結果の還元が十分にできているのかという疑問がある。どこまで踏み込んで検査すべきなのか、逆に不足していないのかなど、検討すべき余地はたくさんある。」(40代,内科,診療所・クリニック)「39歳の時に体調を崩して1-2か月仕事ができなかった。病院勤務だったのである程度は収入があったが、それでも生活費を切りつめる必要があった。現在開業しており、同様な事態が起こると不安に思うことがある。」(40代,皮膚科,診療所・クリニック)「身近な先生で、症状が出ているのに“まだ大丈夫”と過信してしまい、忙しいこととも重なり受診をのばした結果手遅れになったケースがあり、自分も注意が必要と思います」(60代以上,内科,一般病院)「他に医師がおらず、薬を飲みながらの診療は正直つらかった。」(40代,消化器科,一般病院)「頸椎椎間板ヘルニアで手術をすることになったが、上肢の症状の時に受診をしていれば 経過がもっと良かったと思われる。」(40代,整形外科,診療所・クリニック)「症状があっても進行性でない場合は職務を優先することが多い。自己判断は必ずしも正しくないことを認識しなくてはいけないと反省している。」(60代以上,循環器科,一般)「健康診断をしなかったツケで、今年網膜剥離になることがわかっている。”医者の命”の目であるため、後悔している。」(60代以上,内科,診療所・クリニック)「年齢の近い先輩医師が大腸がんとなり、大腸内視鏡を含めた侵襲的な検査も定期的に施行しなければと思ってはいるが、時間的な余裕のなさから受けられないことが日々ストレスとなっている。」(50代,内科,一般病院)「身体が資本と改めて感じた。検査、治療にかかる時間を捻出するのが大変困難であった」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「自分で受けて初めて、検査の苦しさがわかる」(40代,小児科,一般病院)「検診の際は強制で休みにするくらいでないと受診率は上がらないと思う。」(40代,内科,一般病院)「曜日や時間帯から、実際に医療機関を受診できるタイミングが限られている」(50代,内科,一般病院)「問題意識から具体的な受診行動にうつす際のギャップは、意外と大きいなと思った。」(50代,内科,診療所・クリニック)「(院内の)知り合いに診てもらうことになるので受診を躊躇することがあります。」(40代,血液内科,大学病院)「バリウム検査がこんなにきついとは思っていなかった。」(30代以下,外科,大学病院)「肺がんが末期の状態で見つかった現役の医者がいた。」(50代,内科,診療所・クリニック)「疾病を発見するというよりも、安心のために受けるべきだと思う。患者の立場を経験できるのは貴重なこと」(40代,内科,一般病院)「やっぱり医師の言うことにはなかなか逆らいにくいというか、聞きたいことが聞きにくかったりする」(30代以下,整形外科,一般病院)「胃カメラはつらい」(50代,整形外科,一般病院)「糖尿病の母が血糖コントロールを悪くし、半年後の定期健診で膵癌が見つかり、それが死因となりました。受診をしなければいけませんが、こんな経験をしていても、自分は別と思ってしまうのですよね・・・。」(40代,内科,診療所・クリニック)「自分の専門科(の疾患)の時どうしたらいいかわからない。」(50代,外科,一般病院)「職場の義務で健康診断は毎回受けていますが、日常業務が多忙なため、精密検査が必要となってもなかなか平日昼間に受診するのは大変と思います。」(30代以下,呼吸器科,一般病院)「健康診断と保険診療を同時にできれば、健診受診率もあがるのではないかと思います。」(30代以下,産業医,診療所・クリニック)「入院患者になってみてわかったのは、何もなければそっとしておいて欲しいということだ。 遠くから暖かく見守ってもらえれば十分。元気な人(医療者含む)を相手にするのは結構疲れる。 医療とは単なるサービス業ではないと実感した。」(40代,内科,診療所・クリニック)「健康診断が学術的に有効と認められるものなのか、疑問に思うことがある。」(30代以下,循環器科,一般病院)「検診の有用性はほんとうにあるのだろうか? やるなら胃カメラやバリウム検査は必須にする必要があると思う」(30代以下,救急医療科,大学病院)「実際に患者になって、大学病院では患者を待たせるのが当たり前としているところに気づいた。」(30代以下,皮膚科,大学病院)「自分で確認できる部分は年一回はチェックしてますが、内視鏡など他院でしてもらわないとダメな検査はどうしても先送りにしてしまいます。自営業のつらいところです・・・」(40代,内科,診療所・クリニック)「常に早期発見を心がけて検診を受けていても、やはり漏れ落ちはある。症状が出てからでも早期受診することで軽症で済むことも自身で経験すると、患者に対する説明も説得力が増した。」(50代,放射線科,一般病院)「自分で検査してます。 内視鏡も自分自身で挿入して検査します。得意技です。」(50代,内科,診療所・クリニック)「気合で仕事する文化が根付いており、気軽に休めるほどの人員が確保されていないため、病気になってからでないと体のメンテナンスができない。」(30代以下,小児科,大学病院)「人間ドックを受診して、クレアチニンが高値であることが判明し、CKDであることがわかりました。クレアチニンが検査に導入されたから分かったことで、検査項目の見直しが必要であると思いました。」(60代以上,内科,一般病院)「胃カメラを初めて受けたが緊張した。」(30代以下,内科,診療所・クリニック)「常勤の頃は必ず受診していましたが、結婚して非常勤になるとなかなかチャンスがありません。 常勤ではない女性医師がもっと受診しやすくするシステムがあるといいと思います。」(30代以下,皮膚科,診療所・クリニック)「人間ドックを 日曜日や休日、または平日午後からも受けられる施設を増やしてほしい。」(40代,内科,診療所・クリニック)「1日人間ドックに入る時間的余裕がない」(30代以下,救急医療科,一般病院)「仕事が忙しくて体調を崩すが仕事のため受診できないという悪循環にはまります。」(30代以下,循環器科,一般病院)「人間ドックの項目に簡易スパイログラフィー(肺年齢)やBNP値を入れて、もっとハイリスク集団を効率よく抽出する努力をした方が良い。」(30代以下,外科,大学病院)「健康診断や人間ドックを受けていると全ての疾患が早期発見できると思っている人も多いようだが、それらで引っかかるのは一部の疾患だと考えてもらいたい。また、1年の間でも一気に進行する癌もあり、健康診断や人間ドックは有用ではあるが万能ではないことを周知してほしい。」(30代以下,その他,一般病院)「自分ばかりでなく家族が病気になり医療機関の世話になったときには、患者の気持ち、心配、不安を実感することができる」(60代以上,循環器科,大学病院)「職場で健診を受けられることはありがたいが、何か異常があった場合はすぐに院内に知れ渡ってしまいそうという不安もある」(30代以下,外科,一般病院)「入院中はいろんなスタッフが頻繁に入室してくるのでリラックスできなかった。」(40代,小児科,一般病院)「検診では心配している疾患(例えば前立腺など)を網羅していないため、受ける意欲を欠いた。」(60代以上,外科,一般)「病気になっても休暇が取りにくく、周囲に迷惑をかけるので、健康診断は必ず受けるようにしている。 勤務医の時は自分がいなくても代わりはいるが、開業すると休診にせざるを得ず、大変な思いをした。」(50代,形成外科,診療所・クリニック)「自分の専門領域の検査を受ける場合は緊張します。結果がわかると先が見えるから、こわい気がします。」(60代以上,脳神経外科,一般病院)「歯科への受診はついつい遅れがちになります。総合病院系で歯科のある所だとちょっと相談、とかもできますが、個人病院では歯科がないのがほとんどですし、仕事を休んでまで受診する程ではないとか、週末に改めて歯科医院に行くのも面倒だったりして受診が遅くなる事が多いです。」(50代,内科,介護老人保健施設)「医師が少ない科であるため、一人が倒れると膨大な業務が残りの医師にきて処置しきれないことがあった。」(60代以上,呼吸器科,一般病院)「十二指腸潰瘍で入院した時は、患者はなんと弱いものかと実感した」(50代,精神・神経科,診療所・クリニック)「知人が急な入院になったときに、診療所を仲間でバックアップしました。忙しくて、また代わりを頼んで診察を受ける時間がなかったとのことでした。」(50代,内科,診療所・クリニック)「客観的な判断が鈍るのか専門医への受診が遅れがち、特に65歳以上はその傾向が強い。 開業医は時に自費で薬剤を購入し、それでだましだましの治療をしているケースがある。」(50代,内科,診療所・クリニック)「血液検査などはしやすいが、昨年初めて大腸ファイバーをしてポリープが見つかった。出来れば人間ドックを毎年受け、胃カメラなども継続したいが、忙しく難しいのが現状です。」(30代以下,整形外科,一般病院)「自分の勤務する病院に受診希望の科があれば ふつうはそこを受診します。しかし大学の医局人事であちこちに勤務した経験上、自分の家族の受診も含めて、プライバシー・個人情報はほぼ守られないと感じています。現在の勤務先も、オーダリングシステムを使える立場の人ならだれでも、個人情報を入手でき、病名や処方など簡単にわかります。もっとアナログな点をいえば、“看護師の口に戸は立てられない”です。」(40代,小児科,一般病院)「全身倦怠感が強く、微熱が出た時に原因がわからず、呼吸器症状がほとんど無かったが胸部X線検査を行なって、肺炎になっていた時は驚いた。マイコプラズマ肺炎だったが、熱が低いわりに症状が強く出るのだなと解った。」(40代,内科,診療所・クリニック)「指を骨折したが、職員がどのように受診すればよいかわからず、ためらってしまったため受診が遅れてしまった」(30代以下,精神・神経科,大学病院)「先ごろ、入院しました。主治医をはじめスタッフの方々に大変よくしていただき、感謝の限りです。 自分も患者さんにとって、頼りがいがあり、感謝される医師でいなければいけないという気持ちを新たにしました。」(60代以上,整形外科,一般病院)「なかなか休暇をとって、人間ドックにかかれないのが悩み。 人間ドック休暇みたいな制度が有るといいんだけど。」(50代,内科,診療所・クリニック)「便潜血陽性のため、昨年初めて大腸ファイバー検査を受けた。結果は良性のポリープだったが、勇気がいることであった。」(50代,内科,診療所・クリニック)「健康は自己責任である。もっと早く受診すればよかったではなくて、そこまで健康に注意しなかった運命。といって検診をこまめに受ける人はただ単に責任転嫁したいだけ。病気というのはある程度遺伝子上で決められた運命です。治療を受けて長生きできるのも運命。受けられずに命が閉じるのも運命でしょう。」(30代以下,外科,大学病院)「単純レントゲン(肺)で異常を指摘され、CTを行うまで心配した。」(50代,整形外科,診療所・クリニック)「健康診断で引っかかっても、勤め先だと精密検査を受けにくい。」(40代,消化器科,一般病院)「患者には早期発見が大事という割に、自分は病気を見つけたくない矛盾があります。」(40代,泌尿器科,一般病院)「血圧が高め、少しぐらいなら、と放っておいたらかなりの高血圧に。自覚症状がないと甘く見がち」(50代,内科,一般病院)「医科のものは意識しているのですが、歯科が盲点でした。つい面倒で行かずにいたら、ある日突然歯がポロッと欠け、慌てて受診。既にかなり進行した齲歯でした。他にも齲歯多数とのことで、今も通院が続いています。」(40代,外科,一般病院)「胃カメラは想像以上に苦痛であった。」(50代,整形外科,一般病院)「入院して患者さんの気持ちが判ったので、応対に気をつけるようになった。」(60代以上,産婦人科,診療所・クリニック)「重度感染症で入院した際、食事の重要性と同室のいびきがこんなにも心身に影響するのかと実感しました。特に六人部屋、八人部屋というのは、本当に忍耐の日々でありました。入院設備は昭和の時代から全く変化がないように思えます。そろそろ、入院設備へも目を向けるべきかなと思います。」(40代,小児科,診療所・クリニック)「実際に健康診断がきっかけで癌が見つかったDrもいるので他人ごとではないと思ってます。」(40代,産婦人科,大学病院)「患者さんには偉そうに言うのに自分の健康管理は不十分。昨年目の手術をして、自己管理の大切さと医療者のありがたさを痛感した」(50代,小児科,大学病院)「症状から自己診断してしまい、結果的に回復が遅れた。受診に時間を要することが一番の理由」(60代以上,その他,一般)「評判のいい開業医のところへ特定健診に行って、細やかな診察や説明など、患者さんに人気のある理由を目の当たりにしたのは、医療人としても良い経験となった。 気軽にできる“患者体験“になるような気がする。」(40代,麻酔科,診療所・クリニック)「前立腺がん、右腎盂癌が検診で見つかった」(60代以上,内科,診療所・クリニック)「なかなか健康診断を受ける時間がない。知り合いの外科医はPSA測定をご自分で測定し、次第に上昇し、あり得ない数値になっても放置し、病状が進行して血尿が出て、初めて相談を受けました。」(60代以上,泌尿器科,診療所・クリニック)「健康なので患者さんの気持ちがわからないのではないかと心配です。」(30代以下,血液内科,大学病院)「過去に、業務に支障がない外傷で勤務していた所、気付かれてストップがかかったことがありました。医師不足のため代わりがいない状況では患者の診療が優先され、受診にはハードルが高く感じます。その分、職場健診は義務であり、権利と考え毎年受けています。」(50代,内科,一般病院)「開業していると急には休診にはできないので、なかなか他の医療機関を受診できない。自分の専門分野であれば自分自身で投薬(治療)せざるを得ない。」(40代,内科,診療所・クリニック)「外来や当直の時に、嘔吐下痢症だったり発熱してしんどかったときは、因果な商売だなぁと思いました。」(30代以下,神経内科,一般病院)「自分はまだ30代だが、同年代で生命に関わる患者を診察する機会も多いため、健康に気をつけるよう心掛けています。」(30代以下,産婦人科,一般病院)「患者になって以後、(身体より)仕事を優先することの愚かさを、実臨床の場で啓蒙するようになった」(50代,外科,一般病院)「まず自分で診断治療しようとしてしまう。こんな症状なんかで受診するのかとの思いから専門医に相談するのが遅れたり、あるいは他院で検査を受けるのが気恥ずかしかったりして受診が遅れる。」(40代,内科,診療所・クリニック)「健康診断は職場で強制的に受けさせられるから問題ないのですが、体調を崩したときも仕事を抜けて受診することが、病院で働いていても困難だと思うことが多いです。」(30代以下,麻酔科,一般病院)

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大腸3D-CT検査(CTC)vs. 内視鏡検査、CTCは内視鏡検査に代わりうる:SIGGAR/Lancet

 大腸がんの診断法として注目される大腸3D-CT検査(CT Colonography:CTC)について、大腸内視鏡検査との比較が、英国・Imperial College LondonのWendy Atkin氏らによる多施設共同無作為化試験SIGGARにて行われた。大腸内視鏡検査は大腸がんが疑われる症例を検討する診断法としてはゴールドスタンダードとなっている。一方で、CTCは、代替となりうる、より侵襲性の低い検査法であるが、検査後の診断確定のための追加の検査が必須となっている。しかしこのことが、CTCが内視鏡検査に代わりうる可能性を証明する重要な要素であるとして、実践されているCTC+追加検査と内視鏡単独検査の大腸がんまたは≧10mmポリープの診断精度について比較を行った。Lancet誌オンライン版2013年2月14日号掲載より。診断確定のための追加検査の割合を主要アウトカムに比較 SIGGARでは、臨床での症候性大腸がんの診断を想定し、2つの実践的な多施設共同無作為化試験(CTC vs. バリウム注腸、CTC vs. 内視鏡検査)が行われた。 Atkin氏らの試験では、大腸がんと大きめのポリープの検出能についてCTC+追加検査と内視鏡検査を比較することを目的とした。 試験は、英国内21病院から症候性の大腸がんが疑われる患者を集めて行われた。医師から大腸内視鏡検査が指示・紹介された55歳以上の患者1,610例を適格患者とし、コンピュータで無作為に2対1の割合(内視鏡群1,072例、CTC群538例)に割り付け検査結果を解析した。 主要アウトカムは、追加検査の割合とし、intention to treatにより評価した。CTC後の紹介率を低く抑えるためのガイドラインが必要か 解析には、了解が得られなかった30例を除外した、内視鏡群1,047例、CTC群533例が組み込まれた。 追加検査を受けたのは、CTC群160例(30.0%)に対し、内視鏡群は86例(8.2%)であった(相対リスク:3.65、95%信頼区間:2.87~4.65、p<0.0001)。 追加検査を受けたCTC群のうち半数以上は、<10mmポリープ(49例)や検査が不十分などの理由(28例)での実施であった。また、がんや≧10mmポリープの適中率は、CTC群(61%)は低かった(内視鏡群92%)。 試験コホート内での両群のがんや≧10mmポリープの検出能は、いずれも11%であった。 3年間のフォローアップ中の見逃し率は、CTC群は3.4%(29例のうち1例)であったが、内視鏡群はなかった(55例のうち)。 これらの結果からAtkin氏は、「CTC後の紹介率を低く抑えるためのガイドラインが必要である」と述べるとともに、「しかしながら、CTCはより多くの患者に対して内視鏡検査と同程度の感度を有する、より侵襲性の低い検査として内視鏡検査に代わりうる選択肢である」と結論した。

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インスリン療法中の2型糖尿病患者は厳格な大腸がんスクリーニングが必要

 2型糖尿病患者では、内因性高インスリン血症に起因する大腸腺腫および大腸がんのリスクが高い。外因性のインスリン療法はより高い大腸がん発生率と関連している。今回、ペンシルバニア大学のPatricia Wong氏らは、大腸内視鏡検査を実施した50~80歳の2型糖尿病患者における横断研究を行い、2型糖尿病患者における慢性的なインスリン療法が大腸腺腫のリスクを増加させ、また投与期間が長いほどオッズ比が増加したことを報告した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2012年8月9日号に掲載。 本研究では、内視鏡検査で腺腫を有していた患者をケース、腺腫のない患者をコントロールとし、オッズ比(OR)および関連する信頼区間(CI)は多変量ロジスティック回帰分析により計算された。 主な結果は以下のとおり。・インスリンを12ヵ月以上投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者(n=196)は、コントロールの患者と比較して、インスリン暴露によるオッズ比の有意な増加は認められなかった。しかし、インスリンを18ヵ月以上(OR 1.6、95%CI:1.1~2.5)、24ヵ月以上(OR 1.7、95%CI:1.1~2.6)、36ヵ月以上(OR 2.0、95%CI:1.2~3.4)投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者でインスリン曝露によるオッズ比が有意に増加した(トレンド検定p=0.05)。・病期が進行した腺腫を有する2型糖尿病患者の間で、インスリンの暴露における同様の傾向が見られた。・腺腫の位置については、インスリン療法の影響を受けなかった。 これらの結果から、著者らは、インスリン療法を受けている糖尿病患者は、より厳格な大腸がんスクリーニングが必要だろうと述べている。

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大腸内視鏡的ポリープ切除、大腸がん死亡を長期に予防

大腸腺腫性ポリープの内視鏡的切除は、長期的に大腸がんによる死亡を予防し得ることが示された。米国・マウントサイナイ医療センターのAnn G. Zauber氏らが、全米ポリープ研究(National Polyp Study;NPS)の被験者を23年にわたり前向きに追跡し、内視鏡的ポリープ切除が大腸がん死亡に与える長期的な影響について解析した結果による。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。NPS参加者を23年間前向きに追跡研究グループは、1980~1990年の間に、NPS参加医療施設で初回大腸内視鏡検査を受け、ポリープ(腺腫性と非腺腫性)が認められたすべての患者を解析の対象とした。死亡の確認と死因の判定はNational Death Indexに基づいて行われ、フォローアップは23年間に及んだ。解析は、腺腫性ポリープを除去した患者の大腸がん死亡率について、一般集団における大腸がん発生率に基づく期待死亡率[SEER(Surveillance Epidemiology and End Results)プログラムで推定]、および非腺腫性ポリープ患者(内部対照群)の観察から推定された大腸がん死亡率と比較した。内視鏡的ポリープ切除で大腸がん死亡率は53%低下本研究への参加期間中に腺腫を除去したのは2,602例で、そのうち中央値15.8年後に、1,246例は何らかの原因によって死亡しており、大腸がんで死亡したのは12例だった。一方、一般集団の大腸がんによる死亡は推定25.4で、大腸内視鏡的ポリープ切除による発生率ベースの標準化死亡指数は0.47(95%信頼区間:0.26~0.80)であり、死亡率の53%低下が示唆された。ポリープ切除後の当初10年間の大腸がん死亡率は、腺腫性ポリープ患者と非腺腫性ポリープ患者とで同程度だった(相対リスク:1.2、95%信頼区間:0.1~10.6)。(朝田哲明:医療ライター)

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大腸がんスクリーニングとしての内視鏡検査vs.FIT:中間報告

大腸がんは世界的にみると3番目に頻度の高いがんであり、2番目に主要ながん関連死の原因である。いくつかの研究で、大腸がんスクリーニングは、平均的リスク集団では効果的で費用対効果に優れていることが示され、スクリーニング戦略として推奨されるのは、検便検査と組織検査の2つのカテゴリーに集約されている。そうした中、スペイン・ウニベルシタリオ・デ・カナリア病院のEnrique Quintero氏らは、便免疫化学検査(FIT)が、他のスクリーニング戦略より有効でコストもかさまない可能性が示唆されたことを受け、内視鏡検査に非劣性であると仮定し無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。5万3,000例余りを10年間追跡研究グループは、症状のない50~69歳の成人を対象とした無作為化対照試験で、1回の大腸内視鏡検査を実施された被験者(2万6,703例)と、2年ごとにFITを実施された被験者(2万6,599例)について、10年後の大腸がんによる死亡を主要評価項目として比較を行った。本報告は中間報告で、基線スクリーニングの終了時点における参加率、診断所見、重大な合併症の発生率が示された。研究結果は、intention-to-screenを受けた集団とas-screenedを受けた集団それぞれの分析が示された。大腸がんの発見率は両群で同程度結果、参加率は、FIT群のほうが内視鏡群より高かった(34.2%対24.6%、P

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腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率や必要検査数、男女間で格差

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率は、同年齢層でみるといずれも男性で高率であり、検診で1人の疾病を検出するための必要検査数(NNS)も性別によって異なることが明らかにされた。オーストリア胃腸・肝臓学会のMonika Ferlitsch氏らが、約4万4,000人について行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率はいずれも男性が女性の約2倍研究グループは、2007~2010年に、全オーストリアの大腸内視鏡検査によるスクリーニング・プログラムを受けた4万4,350人について解析を行い、腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率とNNSについて、男女の年齢層別における格差を調べた。被験者は、女性が51.0%、年齢中央値は女性60.7歳、男性60.6歳だった。結果、腺腫が検出されたのは全体の19.7%(8,743人)、進行腺腫は6.3%(2,781人)、大腸がんは1.1%(491人)だった。NNSは、腺腫5.1、進行腺腫15.9、大腸がん90.9だった。男女別にみた、腺腫の有病率は男性24.9%、女性14.8%(補正前オッズ比:1.9、p<0.001)、進行線種は同8.0%、4.7%(同:1.8、p<0.001)、大腸がんは同1.5%、0.7%(同:2.1、p<0.001)であり、いずれも男性で高率だった。進行腺腫有病率と必要検査数、45~49歳男性と55~59歳女性で同等年齢別では、男性50~54歳の進行腺腫有病率は5.0%に対し、同年齢層の女性では2.9%と低く、必要検査数も男性20に対し女性34だった(いずれも補正後p=0.001)。一方で、同有病率について男性45~49歳(3.8%)と、それより高齢層の女性55~59歳(3.9%)とで同等であることが認められ、同年齢層比較では、必要検査数も同等だった(男性:26.1、女性26)(p=0.99)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

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低用量アスピリン、大腸がんリスクを長期に抑制

低用量アスピリン(75~300mg/日)の5年以上の服用により、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に有意に低下することが、イギリス・オックスフォード大学臨床神経学のPeter M Rothwell氏らの検討で明らかとなった。高用量アスピリン(≧500mg/日)は大腸がんの発症率を長期的に抑制することが示されているが、出血リスクが高いため予防に用いるには問題がある。一方、低用量アスピリンの長期的な大腸がんの抑制効果は明確ではないという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。5つの無作為化試験を20年間追跡後、個々の患者データをプール解析研究グループは、大腸がんの発症率および死亡率に及ぼすアスピリンの用量、投与期間、腫瘍の部位について検討を行った。5つの無作為化試験を解析の対象とした。すなわち、血管イベントの一次予防においてアスピリンと対照を比較した2つの無作為化試験(Thrombosis Prevention Trial、British Doctors Aspirin Trial)と、二次予防において同様の比較を行った2つの試験(Swedish Aspirin Low Dose Trial、UK-TIA Aspirin Trial)、さらにアスピリンの2種類の用量を比較した1つの試験(Dutch TIA Aspirin Trial)である。これらの試験を20年間追跡し、試験終了後に個々の患者データのプール解析を行って、アスピリンが大腸がんのリスクに及ぼす影響を評価した。低用量5年投与により、20年間の発症・死亡リスクが有意に低下4つの対照比較試験(平均治療期間6.0年)では、追跡期間中央値18.3年における大腸がんの発症率は2.8%(391/14,033例)であった。部位別には、アスピリンは、20年間で結腸がんの発症リスクを24%有意に低減し(発症率のハザード比:0.76、95%信頼区間:0.60~0.96、p=0.02)、死亡リスクを35%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.65、95%信頼区間:0.48~0.88、p=0.005)が、直腸がんについては有意な差を認めなかった(発症率のハザード比:0.90、95%信頼区間:0.63~1.30、p=0.58、死亡率のハザード比:0.80、95%信頼区間0.50~1.28、p=0.35)。結腸の部位別の解析では、アスピリンは近位結腸がんの発症リスクを55%有意に低減し(発症率のハザード比:0.45、95%信頼区間:0.28~0.74、p=0.001)、死亡リスクを66%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.34、0.18~0.66、p=0.001)が、遠位結腸がんについては有意差はみられず(発症率のハザード比:1.10、95%信頼区間:0.73~1.64、p=0.66、死亡率のハザード比:1.21、95%信頼区間0.66~2.24、p=0.54)、両部位間のリスクの差は有意であった(発症率の差:p=0.04、死亡率の差:p=0.01)。ところが、投与期間が5年以上の場合に限ると、遠位結腸がん(発症率のハザード比:0.35、95%信頼区間:0.20~0.63、p<0.0001、死亡率のハザード比:0.24、95%信頼区間0.11~0.52、p<0.0001)だけでなく、近位結腸がんでもリスク低減効果が認められた(発症率のハザード比:0.58、95%信頼区間:0.36~0.92、p=0.02、死亡率のハザード比:0.47、95%信頼区間0.26~0.87、p=0.01)。アスピリンの用量を75mg/日以上に増量しても、それ以上のベネフィットの上昇はみられず、75~300mg/日の5年投与による20年間の致死的な大腸がんリスクの絶対減少率は1.76%(95%信頼区間:0.61~2.91、p=0.001)であった。一方、Dutch TIA trialの長期追跡の結果では、致死的な大腸がんのリスクは283mg/日に比べ30mg/日で高い傾向が認められた(オッズ比:2.02、95%信頼区間0.70~6.05、p=0.15)。著者は、「アスピリン75mg/日以上を5年以上服用すると、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に抑制された。ベネフィットが最も大きかったのは、S状結腸鏡や大腸内視鏡によるスクリーニングの予防効果が低い近位結腸の腫瘍であった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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大腸内視鏡検査では、腺腫病変発見率が大切

大腸がんスクリーニングで内視鏡検査が広く行われているが、がんや腺腫様ポリープ(良性前悪性腫瘍または腺腫)の見落とし(低率だがわずかではない)に対する懸念は払拭されていない。ポーランド・Maria Sklodowska-Curie記念がんセンター・研究所のMichal F. Kaminski氏らは、有効なスクリーニングの鍵になると示唆されるが、妥当性について検証されていない腺腫病変の発見率と盲腸到達率について、評価を行った。結果、腺腫発見率が、大腸がんリスクの独立した予測因子であることが確認されたという。NEJM誌2010年5月13日号掲載より。内視鏡検査専門医186人が関わった45,026例のデータを評価Kaminski氏らは、内視鏡検査専門医は186人から、2000~2004年に大腸がんスクリーニングプログラムを受けた45,026例のデータを集め、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価を行った。スクリーニング実施時からその後の定期サーベイランス実施時の間に発見された大腸腺がんを「中間期がん」と定義し、スクリーニング時の腺腫発見率および盲腸到達率と、中間期がんリスクとの関連を評価した。腺腫発見率と中間期がんリスクに有意な関連確認被験者は平均年齢55.1歳、中央値52.1ヵ月追跡、総計18万8,788人・年のデータが解析された。同期間に確認された中間期がんは、42個だった。分析の結果、腺腫発見率と中間期がんリスクとの関連は、有意な関連が認められた(P=0.008)。一方、盲腸到達率と中間期がんリスクとの関連は、有意ではなかった(P=0.50)。腺腫発見率20%以上と比べて、各発見率のハザード比はそれぞれ、発見率15.0~19.9%は10.94(95%信頼区間:1.37~87.01)、11~14.9%は10.75(同:1.36~85.06)、11%未満は12.50(同:1.51~103.43)だった(すべてP=0.02)。(医療ライター:武藤まき)

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カプセル内視鏡、病変検出の力量は?

大腸ポリープと大腸がんの検出について、カプセル内視鏡と光学大腸内視鏡との比較検討が、ベルギーのブリュッセル自由大学Erasme大学病院胃腸病部門のAndre Van Gossum氏らによって行われた。カプセル内視鏡は、ほとんどの患者の大腸粘膜の検出を可能とするが、大腸内視鏡と比べて、病変検出の感度は劣ると報告している。NEJM誌2009年7月16日号より。光学大腸内視鏡とで、ポリープ・進行腺腫・がんの検出力を比較本研究は、大腸疾患が確認されている患者および疑われる患者を対象とした前向き多施設共同研究。患者は、検査前処置の後、大腸清浄度(不良、普通、良、優良)が4段階で評価された。また、ポリープ、進行腺腫、がんの病変検出に関して、カプセル内視鏡の感度と特異度を算出し検討された。感度は、6mm以上ポリープ64%、進行腺腫73%、大腸がん74%検討されたのは、328例(平均年齢58.6歳)だった。カプセル内視鏡は、飲み込んでから10時間以内に排出された。バッテリー切れになる前に92.8%が排出された。大腸内視鏡と比べ、カプセル内視鏡の6mm以上ポリープ検出の感度は、64%(95%信頼区間:59~72)、特異度は84%(同:81~87)であった。進行腺腫検出に関しては、感度73%(同:61~83)、特異度79%(同:77~81)だった。大腸がんに関しては、大腸内視鏡で検出した19例のうち、カプセル内視鏡で検出できたのは14例だった(感度74%、95%信頼区間:52~88)。カプセル内視鏡の病変検出感度は、清浄度が不良・普通の人に比べて、良・優良の人で高かった。軽症・中等症の有害事象が26例(7.9%)で報告され、大部分は検査試料に関係することだった。(武藤まき:医療ライター)

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CTコロノグラフィーによるハイリスク群への大腸がん検診、陰性適中率96.3%

コンピュータ断層(CT)コロノグラフィーによるハイリスク群に対する大腸がん検診について、その陰性適中率は96.3%と高いことがわかった。一方、陽性適中率は、61.9%だった。平均的大腸がんリスクの集団に対する、CTコロノグラフィーによるスクリーニングは認められてきているが、ハイリスク集団については、その精度について情報が不足していたという。イタリアInstitute for Cancer Research and TreatmentのDaniele Regge氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年6月17日号で発表した。6mm以上の腫瘍に関する感度85.3%、特異度87.8%Regge氏らは、2004~2007年にかけて、イタリア11ヵ所の医療機関で検査を受けた、計937人について分析を行った。被験者は、一親等に進行がんの家族歴、本人に大腸腺腫の病歴、または便潜血検査で陽性のいずれかの、ハイリスク集団だった。研究グル-プは被験者に対し、CTコロノグラフィーと大腸内視鏡検査の両方を、同じ日に行った。その結果、CTコロノグラフィーによる検診で、6mm以上の腫瘍を検出できたのは、177人中151人だった(感度85.3%、95%信頼区間:79.0~90.0)。逆に腫瘍のない人を陰性と正しく判断したのは、760人中667人だった(特異度87.8%、85.2~90.0)。便潜血検査陽性グループでは陰性適中率は84.9%と低率また、陽性適中率は61.9%(95%信頼区間:55.4~68.0)で、陰性適中率は96.3%(94.6~97.5)だった。ただし、ハイリスク群のうち便潜血検査で陽性だったグループについては、陰性適中率は84.9%(76.2~91.3)と有意に低率だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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