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大腸内視鏡検査はがん発生と死亡率をどのくらい低下させるか/NEJM

 下部消化管内視鏡(大腸内視鏡、S状結腸鏡)検査と、遠位・近位別の大腸がん発生との関連および死亡率との関連を検討した結果が、米国・ダナファーバーがん研究所のReiko Nishihara氏らにより報告された。大腸内視鏡検査およびS状結腸鏡検査が、大腸がん発生の予防に寄与することは知られるが、その効果の大きさや、実施頻度との関連について、とくに近位大腸がんに関しては明らかでなかった。NEJM誌2013年9月19日号掲載の報告より。8万8,902人のうち、大腸がん発生1,815例、大腸がんによる死亡474例 研究グループは、米国女性看護師健康調査(12万1,700人参加、1976年登録時30~55歳)と医療従事者追跡調査(5万1,529人、1986年登録時40~75歳)の参加者について、下部消化管内視鏡検査(1988年から2008年に2年ごとに実施)の実施と、大腸がん発生率(2010年6月まで)および大腸がん死亡率(2012年6月まで)の関連を調べた。 観察期間対象の22年間に8万8,902人(うち男性3万1,736人)が追跡を受けた。そのうち大腸がんの発生は1,815例(うち男性714例)、大腸がんによる死亡は474例が記録された。近位大腸がん死亡の低下に大腸内視鏡は寄与、S状結腸鏡は寄与せず 複合コホートの解析の結果、内視鏡検査を受けなかった群と比較した大腸がん発生多変量ハザード比(HR)は、内視鏡検査を受けた群のうち、ポリープを切除した群は0.57(95%信頼区間[CI]:0.45~0.72)、S状結腸鏡検査が陰性だった群は0.60(同:0.53~0.68)、大腸内視鏡検査結果が陰性であった群は0.44(同:0.38~0.52)だった。 また、近位大腸がん発生の低下と関連していたのは、大腸内視鏡検査陰性群(HR:0.73)であった(ポリープ切除群のHR:0.83、S状結腸鏡検査陰性群のHR:0.92)。 大腸がんによる死亡について、スクリーニングを行わなかった群と比べて、スクリーニングS状結腸鏡検査群(HR:0.59)、スクリーニング大腸内視鏡群(同:0.32)では死亡率の低下が観察された。 ただし近位大腸がんによる死亡については、スクリーニング大腸内視鏡群では低下が認められたが(HR:0.47)、スクリーニングS状結腸鏡群では低下がみられなかった(同:1.04)。遠位大腸がんによる死亡については両群で低下が認められた(同:0.18、0.31)。 大腸内視鏡検査後5年以内に大腸がんと診断された人は、同検査後5年以上で大腸がんと診断された人または大腸内視鏡検査未実施で大腸がんと診断された人と比較して、CpGアイランドメチル化形質(CIMP)(多変量オッズ比:2.19、95%信頼区間:1.14~4.21)、マイクロサテライト不安定性(同:2.10、1.10~4.02)を示す傾向が強かった。

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大腸用カプセル内視鏡が承認取得~こわくない、恥ずかしくない大腸検査~

 大腸がん検診で便潜血検査が陽性となり要精密検査とされても、大腸内視鏡検査を受診しない人は4割以上に上る。その理由としては「自覚症状がないから」が最も多いが、「痛くてつらそう」「恥ずかしい」という理由も多いという。こうした状況のなか、2013年7月、ギブン・イメージング株式会社の大腸用カプセル内視鏡「PillCam® COLON 2カプセル内視鏡システム」が、審査期間10ヵ月というスピードで承認された。これにより、大腸内視鏡検査をさまざまな理由で受けられない人たちの精密検査のオプションとして提供されることになった。今後、保険適用が認められれば検査数が大幅に増加することが予想される。   ここでは、8月21日に開催されたギブン・イメージング株式会社主催のプレスセミナーから、大腸がん早期発見における大腸用カプセル内視鏡の可能性と今後の展望についてレポートする。精密検査の受診率アップに期待 わが国では、近年、大腸がんの死亡者数が増大し続けており、女性のがん死亡の原因では第1位である。また、がん罹患率についても、2020年までには男女を合わせた日本人における第1位になると予測されている。しかしながら、わが国の大腸がん検診受診率は2007年で約25%と低い。さらに、受診したとしても、精密検査が必要な人における精密検査受診率は57.9%(2012年日本消化器がん検診学会集計)と4割以上が受診していない。この現状を、日本カプセル内視鏡学会理事長の寺野 彰氏(学校法人獨協学園理事長/獨協医科大学名誉学長)は、大きな問題だと指摘した。 インターネットによるアンケート調査によると、大腸内視鏡検査を受けない理由としては「自覚症状がないから」が最も多いが、「痛くてつらそうだから」「恥ずかしいから」(とくに女性)といった受容性の問題も多い。そこで、低侵襲で受容性が高いカプセル内視鏡が、肉体的・精神的に大腸内視鏡検査ができない人や受診を避けてしまう人、地方で大腸内視鏡検査を受けにくい人などに利用されることによって、精密検査受診率のアップにつながり、ひいては大腸がんの早期発見・早期治療に大きく貢献する、と寺野氏は期待する。読影する医師や技師の教育が急務 一方、寺野氏は、カプセル内視鏡検査では多大な画像を読影する必要があるため、医師と技師との協力が重要と指摘した。また寺野氏は、今後、カプセル内視鏡検査が病院のPRとなることが予想されるため、読影できる医師や技師がいない病院でも検査が行われることを危惧している。そのような状況を避けるため、日本カプセル内視鏡学会では、2012年にカプセル内視鏡認定医制度、2013年にカプセル内視鏡読影支援技師制度を施行し、カプセル内視鏡に関する研究教育を行っているという。 また、読影には1時間程度かかるため、今後普及に伴って、検査・読影する医師や技師が不足することが考えられる。その対策として、PillCam® COLON 2カプセル内視鏡システムの治験を行った田中信治氏(広島大学病院内視鏡診療科教授)は、大腸カプセル内視鏡読影センターを整備し、一線を離れて家庭に入っている女性医師などの潜在能力を有効活用していくことが重要で、役割分担によって大腸がん診療の効率化が可能である、と今後の展望を語った。■「PillCam® COLON 2カプセル内視鏡システム」の承認された使用目的・適用対象【使用目的】本品は、大腸内視鏡検査を必要とするが、当該検査が施行困難な場合に、大腸疾患の診断を行うために、大腸粘膜の撮像を行い、画像を提供することを目的とする。【適用対象(患者)】1.大腸疾患が既知又は疑われる患者に使用すること。2.次の患者への使用には注意すること。[安全性が確認されていないため] -妊婦 -18歳未満の患者 -重篤な消化管憩室疾患の患者

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“医者の不養生”は本当?「もっと早く受診すればよかった…」そんな経験、ありますか?

今回の「医師1,000人に聞きました」は“医師自身の健康管理”。“医者の不養生”なんてことわざがありますが、その“口先ばかりで実行が伴わないこと”という解釈を読むとなんだか解せない…なんて方も多いのでは。先生方は、健康診断・人間ドック、毎回欠かさず受けますか?受けない先生、それはなぜですか?自分自身が患者になってみて、感じたことは?患者さんにかかりっきりになっているうちに医師のほうが手遅れになってしまった…なんて笑えない話も飛び出す今回の調査、寄せられたコメントも必見です!コメントはこちら結果概要約7割が健康診断・人間ドックを『必ず受ける』、一方で『毎回受けない』医師が1割以上存在全体の68.7%が『毎回必ず受けている』と回答。『受けないことがある』医師は19.3%、『毎回受けない』 医師は12.0%存在。世代間で大きな差は見られなかったものの、『毎回受けない』とした人の比率は年代が上がると共に漸増し、30代以下で10.6%のところ、60代以上では13.8%となった。働き盛りの40代「忙しくて」、60代以上「開業して交代要員がいない」健康診断・人間ドックを受けない(ことがある)医師に理由を尋ねたところ、最も多かったのは『忙しいから』で64.9%、働き盛りの40代では72.7%に上った。一方、若年層に比べ開業医の比率が高まる60代以上では、『院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえないから』が28.6%に上ったのと同時に『自分の健康状態は自分でわかっていると思うから』が21.4%。“受けたいのに都合がつけられない”医師と、“受けないと決めている”医師が他の世代に比して明確に表れるという結果となった。2割近くの医師に 『もっと早く受診すれば…』と後悔した経験あり自身が具合を悪くした際、『もっと早く受診すれば良かった』と感じた経験がある医師は全体の17.6%。40代では20.3%となった。遅れた理由としては、健康診断と同様『忙しかったから』が69.9%と最も多かったが、次いで多い回答が『受診するほどの症状ではないと思ったから』で27.8%。「知り合いの先生が“まだ大丈夫”“と過信し、忙しさも重なり受診をのばした結果、手遅れになった」など、ある程度自分で判断がつくことから招いてしまった事態、また「健康診断は受けるが、そこで引っかかっても、多忙のため受診できない」など、結果として”医者の不養生”になってしまうことを嘆く声も寄せられた。立場特有の“受診への不安”、受診して患者の気持ちを実感受診を躊躇する理由としてコメント中に複数挙がったのが、「身内の医者には診てもらいにくい」「オーダリングシステムを使える立場の人なら病名・処方が簡単にわかってしまう」など、プライバシーの漏えいを懸念する声が挙がった。また「自分の専門領域の検査を受ける場合は、結果がわかれば先が見えるから怖い」と医師ならではの不安感のほか、自身の検査や入院により「人間ドックの再検査を受けた際、病名告知前に患者さんがどれほど心配しているか実感した」「同室患者のいびきがこんなに心身に影響するのか、と」など、患者の立場・気持ちを実感したというコメントも見られた。設問詳細各種がん検診の推進、ワクチンの早期接種の推奨など、早期発見および予防が謳われるようになった昨今、先生方も普段患者さんに「早めの受診を」と呼びかけていらっしゃるかと思います。そこで先生にお尋ねします。Q1.健康診断(人間ドック含む)について当てはまるものをお選び下さい。毎回必ず受けている受けないことがある毎回受けない(Q1で「受けないことがある」「毎回受けない」を選んだ方のみ)Q2.健康診断(人間ドック含む)を受けない理由について、当てはまるものを全てお選び下さい。(複数回答可)面倒だから忙しいから院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえないからその気になればいつでも検査できると思うから自分の健康状態は自分でわかっていると思うから健康診断・人間ドックには意味が無いと思うから知りたくない、怖いからその他(                 )Q3.ご自身が心身の具合を悪くした際、結果として「もっと早く受診すればよかった」と感じた経験はありますか。あるない(Q3で「ある」とした方のみ)Q4.その時に受診しなかった、受診が遅れた理由で当てはまるものをお選び下さい。(複数回答可)面倒だったから忙しかったから院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえなかったから受診するほどの症状ではないと思ったから自覚症状がなかったから知りたくなかった、怖かったからその他(                  )Q5.コメントをお願いします。(ご自身の体調管理、受診・治療へのハードル、健康診断・人間ドックに対して思うこと、ご自身が患者の立場となった際に感じたこと、ご自身や周囲の先生方が体調を崩した際のエピソードなど、どういったことでも結構です)2013年3月15日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「医療を提供しているとその限界も見え、自分が病気になったときは“寿命がきた”と判断して医療を受けたくない、という気持ちが強くなった。」(40代,内科,一般病院)「思ってもみない結果が出ると人間は動揺するものであることがよくわかった」(50代,放射線科,一般病院)「健康管理は重要だと思うが、他の医療機関を受診するのはハードルが高い」(50代,外科,診療所・クリニック)「検診などを受ける時間もなく、症状にあわせて友人医師に内服処方を出してもらい済ませる事が多い。」(40代,救急医療科,一般)「人間ドックの再検査を受けて、病名告知前に患者さんがどのくらい病気について心配しているか実感した」(40代,内科,一般病院)「健診に対する価値観、病気に対する価値観はそれぞれであり、強要されるものでは決してない。また、結果の還元が十分にできているのかという疑問がある。どこまで踏み込んで検査すべきなのか、逆に不足していないのかなど、検討すべき余地はたくさんある。」(40代,内科,診療所・クリニック)「39歳の時に体調を崩して1-2か月仕事ができなかった。病院勤務だったのである程度は収入があったが、それでも生活費を切りつめる必要があった。現在開業しており、同様な事態が起こると不安に思うことがある。」(40代,皮膚科,診療所・クリニック)「身近な先生で、症状が出ているのに“まだ大丈夫”と過信してしまい、忙しいこととも重なり受診をのばした結果手遅れになったケースがあり、自分も注意が必要と思います」(60代以上,内科,一般病院)「他に医師がおらず、薬を飲みながらの診療は正直つらかった。」(40代,消化器科,一般病院)「頸椎椎間板ヘルニアで手術をすることになったが、上肢の症状の時に受診をしていれば 経過がもっと良かったと思われる。」(40代,整形外科,診療所・クリニック)「症状があっても進行性でない場合は職務を優先することが多い。自己判断は必ずしも正しくないことを認識しなくてはいけないと反省している。」(60代以上,循環器科,一般)「健康診断をしなかったツケで、今年網膜剥離になることがわかっている。”医者の命”の目であるため、後悔している。」(60代以上,内科,診療所・クリニック)「年齢の近い先輩医師が大腸がんとなり、大腸内視鏡を含めた侵襲的な検査も定期的に施行しなければと思ってはいるが、時間的な余裕のなさから受けられないことが日々ストレスとなっている。」(50代,内科,一般病院)「身体が資本と改めて感じた。検査、治療にかかる時間を捻出するのが大変困難であった」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「自分で受けて初めて、検査の苦しさがわかる」(40代,小児科,一般病院)「検診の際は強制で休みにするくらいでないと受診率は上がらないと思う。」(40代,内科,一般病院)「曜日や時間帯から、実際に医療機関を受診できるタイミングが限られている」(50代,内科,一般病院)「問題意識から具体的な受診行動にうつす際のギャップは、意外と大きいなと思った。」(50代,内科,診療所・クリニック)「(院内の)知り合いに診てもらうことになるので受診を躊躇することがあります。」(40代,血液内科,大学病院)「バリウム検査がこんなにきついとは思っていなかった。」(30代以下,外科,大学病院)「肺がんが末期の状態で見つかった現役の医者がいた。」(50代,内科,診療所・クリニック)「疾病を発見するというよりも、安心のために受けるべきだと思う。患者の立場を経験できるのは貴重なこと」(40代,内科,一般病院)「やっぱり医師の言うことにはなかなか逆らいにくいというか、聞きたいことが聞きにくかったりする」(30代以下,整形外科,一般病院)「胃カメラはつらい」(50代,整形外科,一般病院)「糖尿病の母が血糖コントロールを悪くし、半年後の定期健診で膵癌が見つかり、それが死因となりました。受診をしなければいけませんが、こんな経験をしていても、自分は別と思ってしまうのですよね・・・。」(40代,内科,診療所・クリニック)「自分の専門科(の疾患)の時どうしたらいいかわからない。」(50代,外科,一般病院)「職場の義務で健康診断は毎回受けていますが、日常業務が多忙なため、精密検査が必要となってもなかなか平日昼間に受診するのは大変と思います。」(30代以下,呼吸器科,一般病院)「健康診断と保険診療を同時にできれば、健診受診率もあがるのではないかと思います。」(30代以下,産業医,診療所・クリニック)「入院患者になってみてわかったのは、何もなければそっとしておいて欲しいということだ。 遠くから暖かく見守ってもらえれば十分。元気な人(医療者含む)を相手にするのは結構疲れる。 医療とは単なるサービス業ではないと実感した。」(40代,内科,診療所・クリニック)「健康診断が学術的に有効と認められるものなのか、疑問に思うことがある。」(30代以下,循環器科,一般病院)「検診の有用性はほんとうにあるのだろうか? やるなら胃カメラやバリウム検査は必須にする必要があると思う」(30代以下,救急医療科,大学病院)「実際に患者になって、大学病院では患者を待たせるのが当たり前としているところに気づいた。」(30代以下,皮膚科,大学病院)「自分で確認できる部分は年一回はチェックしてますが、内視鏡など他院でしてもらわないとダメな検査はどうしても先送りにしてしまいます。自営業のつらいところです・・・」(40代,内科,診療所・クリニック)「常に早期発見を心がけて検診を受けていても、やはり漏れ落ちはある。症状が出てからでも早期受診することで軽症で済むことも自身で経験すると、患者に対する説明も説得力が増した。」(50代,放射線科,一般病院)「自分で検査してます。 内視鏡も自分自身で挿入して検査します。得意技です。」(50代,内科,診療所・クリニック)「気合で仕事する文化が根付いており、気軽に休めるほどの人員が確保されていないため、病気になってからでないと体のメンテナンスができない。」(30代以下,小児科,大学病院)「人間ドックを受診して、クレアチニンが高値であることが判明し、CKDであることがわかりました。クレアチニンが検査に導入されたから分かったことで、検査項目の見直しが必要であると思いました。」(60代以上,内科,一般病院)「胃カメラを初めて受けたが緊張した。」(30代以下,内科,診療所・クリニック)「常勤の頃は必ず受診していましたが、結婚して非常勤になるとなかなかチャンスがありません。 常勤ではない女性医師がもっと受診しやすくするシステムがあるといいと思います。」(30代以下,皮膚科,診療所・クリニック)「人間ドックを 日曜日や休日、または平日午後からも受けられる施設を増やしてほしい。」(40代,内科,診療所・クリニック)「1日人間ドックに入る時間的余裕がない」(30代以下,救急医療科,一般病院)「仕事が忙しくて体調を崩すが仕事のため受診できないという悪循環にはまります。」(30代以下,循環器科,一般病院)「人間ドックの項目に簡易スパイログラフィー(肺年齢)やBNP値を入れて、もっとハイリスク集団を効率よく抽出する努力をした方が良い。」(30代以下,外科,大学病院)「健康診断や人間ドックを受けていると全ての疾患が早期発見できると思っている人も多いようだが、それらで引っかかるのは一部の疾患だと考えてもらいたい。また、1年の間でも一気に進行する癌もあり、健康診断や人間ドックは有用ではあるが万能ではないことを周知してほしい。」(30代以下,その他,一般病院)「自分ばかりでなく家族が病気になり医療機関の世話になったときには、患者の気持ち、心配、不安を実感することができる」(60代以上,循環器科,大学病院)「職場で健診を受けられることはありがたいが、何か異常があった場合はすぐに院内に知れ渡ってしまいそうという不安もある」(30代以下,外科,一般病院)「入院中はいろんなスタッフが頻繁に入室してくるのでリラックスできなかった。」(40代,小児科,一般病院)「検診では心配している疾患(例えば前立腺など)を網羅していないため、受ける意欲を欠いた。」(60代以上,外科,一般)「病気になっても休暇が取りにくく、周囲に迷惑をかけるので、健康診断は必ず受けるようにしている。 勤務医の時は自分がいなくても代わりはいるが、開業すると休診にせざるを得ず、大変な思いをした。」(50代,形成外科,診療所・クリニック)「自分の専門領域の検査を受ける場合は緊張します。結果がわかると先が見えるから、こわい気がします。」(60代以上,脳神経外科,一般病院)「歯科への受診はついつい遅れがちになります。総合病院系で歯科のある所だとちょっと相談、とかもできますが、個人病院では歯科がないのがほとんどですし、仕事を休んでまで受診する程ではないとか、週末に改めて歯科医院に行くのも面倒だったりして受診が遅くなる事が多いです。」(50代,内科,介護老人保健施設)「医師が少ない科であるため、一人が倒れると膨大な業務が残りの医師にきて処置しきれないことがあった。」(60代以上,呼吸器科,一般病院)「十二指腸潰瘍で入院した時は、患者はなんと弱いものかと実感した」(50代,精神・神経科,診療所・クリニック)「知人が急な入院になったときに、診療所を仲間でバックアップしました。忙しくて、また代わりを頼んで診察を受ける時間がなかったとのことでした。」(50代,内科,診療所・クリニック)「客観的な判断が鈍るのか専門医への受診が遅れがち、特に65歳以上はその傾向が強い。 開業医は時に自費で薬剤を購入し、それでだましだましの治療をしているケースがある。」(50代,内科,診療所・クリニック)「血液検査などはしやすいが、昨年初めて大腸ファイバーをしてポリープが見つかった。出来れば人間ドックを毎年受け、胃カメラなども継続したいが、忙しく難しいのが現状です。」(30代以下,整形外科,一般病院)「自分の勤務する病院に受診希望の科があれば ふつうはそこを受診します。しかし大学の医局人事であちこちに勤務した経験上、自分の家族の受診も含めて、プライバシー・個人情報はほぼ守られないと感じています。現在の勤務先も、オーダリングシステムを使える立場の人ならだれでも、個人情報を入手でき、病名や処方など簡単にわかります。もっとアナログな点をいえば、“看護師の口に戸は立てられない”です。」(40代,小児科,一般病院)「全身倦怠感が強く、微熱が出た時に原因がわからず、呼吸器症状がほとんど無かったが胸部X線検査を行なって、肺炎になっていた時は驚いた。マイコプラズマ肺炎だったが、熱が低いわりに症状が強く出るのだなと解った。」(40代,内科,診療所・クリニック)「指を骨折したが、職員がどのように受診すればよいかわからず、ためらってしまったため受診が遅れてしまった」(30代以下,精神・神経科,大学病院)「先ごろ、入院しました。主治医をはじめスタッフの方々に大変よくしていただき、感謝の限りです。 自分も患者さんにとって、頼りがいがあり、感謝される医師でいなければいけないという気持ちを新たにしました。」(60代以上,整形外科,一般病院)「なかなか休暇をとって、人間ドックにかかれないのが悩み。 人間ドック休暇みたいな制度が有るといいんだけど。」(50代,内科,診療所・クリニック)「便潜血陽性のため、昨年初めて大腸ファイバー検査を受けた。結果は良性のポリープだったが、勇気がいることであった。」(50代,内科,診療所・クリニック)「健康は自己責任である。もっと早く受診すればよかったではなくて、そこまで健康に注意しなかった運命。といって検診をこまめに受ける人はただ単に責任転嫁したいだけ。病気というのはある程度遺伝子上で決められた運命です。治療を受けて長生きできるのも運命。受けられずに命が閉じるのも運命でしょう。」(30代以下,外科,大学病院)「単純レントゲン(肺)で異常を指摘され、CTを行うまで心配した。」(50代,整形外科,診療所・クリニック)「健康診断で引っかかっても、勤め先だと精密検査を受けにくい。」(40代,消化器科,一般病院)「患者には早期発見が大事という割に、自分は病気を見つけたくない矛盾があります。」(40代,泌尿器科,一般病院)「血圧が高め、少しぐらいなら、と放っておいたらかなりの高血圧に。自覚症状がないと甘く見がち」(50代,内科,一般病院)「医科のものは意識しているのですが、歯科が盲点でした。つい面倒で行かずにいたら、ある日突然歯がポロッと欠け、慌てて受診。既にかなり進行した齲歯でした。他にも齲歯多数とのことで、今も通院が続いています。」(40代,外科,一般病院)「胃カメラは想像以上に苦痛であった。」(50代,整形外科,一般病院)「入院して患者さんの気持ちが判ったので、応対に気をつけるようになった。」(60代以上,産婦人科,診療所・クリニック)「重度感染症で入院した際、食事の重要性と同室のいびきがこんなにも心身に影響するのかと実感しました。特に六人部屋、八人部屋というのは、本当に忍耐の日々でありました。入院設備は昭和の時代から全く変化がないように思えます。そろそろ、入院設備へも目を向けるべきかなと思います。」(40代,小児科,診療所・クリニック)「実際に健康診断がきっかけで癌が見つかったDrもいるので他人ごとではないと思ってます。」(40代,産婦人科,大学病院)「患者さんには偉そうに言うのに自分の健康管理は不十分。昨年目の手術をして、自己管理の大切さと医療者のありがたさを痛感した」(50代,小児科,大学病院)「症状から自己診断してしまい、結果的に回復が遅れた。受診に時間を要することが一番の理由」(60代以上,その他,一般)「評判のいい開業医のところへ特定健診に行って、細やかな診察や説明など、患者さんに人気のある理由を目の当たりにしたのは、医療人としても良い経験となった。 気軽にできる“患者体験“になるような気がする。」(40代,麻酔科,診療所・クリニック)「前立腺がん、右腎盂癌が検診で見つかった」(60代以上,内科,診療所・クリニック)「なかなか健康診断を受ける時間がない。知り合いの外科医はPSA測定をご自分で測定し、次第に上昇し、あり得ない数値になっても放置し、病状が進行して血尿が出て、初めて相談を受けました。」(60代以上,泌尿器科,診療所・クリニック)「健康なので患者さんの気持ちがわからないのではないかと心配です。」(30代以下,血液内科,大学病院)「過去に、業務に支障がない外傷で勤務していた所、気付かれてストップがかかったことがありました。医師不足のため代わりがいない状況では患者の診療が優先され、受診にはハードルが高く感じます。その分、職場健診は義務であり、権利と考え毎年受けています。」(50代,内科,一般病院)「開業していると急には休診にはできないので、なかなか他の医療機関を受診できない。自分の専門分野であれば自分自身で投薬(治療)せざるを得ない。」(40代,内科,診療所・クリニック)「外来や当直の時に、嘔吐下痢症だったり発熱してしんどかったときは、因果な商売だなぁと思いました。」(30代以下,神経内科,一般病院)「自分はまだ30代だが、同年代で生命に関わる患者を診察する機会も多いため、健康に気をつけるよう心掛けています。」(30代以下,産婦人科,一般病院)「患者になって以後、(身体より)仕事を優先することの愚かさを、実臨床の場で啓蒙するようになった」(50代,外科,一般病院)「まず自分で診断治療しようとしてしまう。こんな症状なんかで受診するのかとの思いから専門医に相談するのが遅れたり、あるいは他院で検査を受けるのが気恥ずかしかったりして受診が遅れる。」(40代,内科,診療所・クリニック)「健康診断は職場で強制的に受けさせられるから問題ないのですが、体調を崩したときも仕事を抜けて受診することが、病院で働いていても困難だと思うことが多いです。」(30代以下,麻酔科,一般病院)

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大腸3D-CT検査(CTC)vs. 内視鏡検査、CTCは内視鏡検査に代わりうる:SIGGAR/Lancet

 大腸がんの診断法として注目される大腸3D-CT検査(CT Colonography:CTC)について、大腸内視鏡検査との比較が、英国・Imperial College LondonのWendy Atkin氏らによる多施設共同無作為化試験SIGGARにて行われた。大腸内視鏡検査は大腸がんが疑われる症例を検討する診断法としてはゴールドスタンダードとなっている。一方で、CTCは、代替となりうる、より侵襲性の低い検査法であるが、検査後の診断確定のための追加の検査が必須となっている。しかしこのことが、CTCが内視鏡検査に代わりうる可能性を証明する重要な要素であるとして、実践されているCTC+追加検査と内視鏡単独検査の大腸がんまたは≧10mmポリープの診断精度について比較を行った。Lancet誌オンライン版2013年2月14日号掲載より。診断確定のための追加検査の割合を主要アウトカムに比較 SIGGARでは、臨床での症候性大腸がんの診断を想定し、2つの実践的な多施設共同無作為化試験(CTC vs. バリウム注腸、CTC vs. 内視鏡検査)が行われた。 Atkin氏らの試験では、大腸がんと大きめのポリープの検出能についてCTC+追加検査と内視鏡検査を比較することを目的とした。 試験は、英国内21病院から症候性の大腸がんが疑われる患者を集めて行われた。医師から大腸内視鏡検査が指示・紹介された55歳以上の患者1,610例を適格患者とし、コンピュータで無作為に2対1の割合(内視鏡群1,072例、CTC群538例)に割り付け検査結果を解析した。 主要アウトカムは、追加検査の割合とし、intention to treatにより評価した。CTC後の紹介率を低く抑えるためのガイドラインが必要か 解析には、了解が得られなかった30例を除外した、内視鏡群1,047例、CTC群533例が組み込まれた。 追加検査を受けたのは、CTC群160例(30.0%)に対し、内視鏡群は86例(8.2%)であった(相対リスク:3.65、95%信頼区間:2.87~4.65、p<0.0001)。 追加検査を受けたCTC群のうち半数以上は、<10mmポリープ(49例)や検査が不十分などの理由(28例)での実施であった。また、がんや≧10mmポリープの適中率は、CTC群(61%)は低かった(内視鏡群92%)。 試験コホート内での両群のがんや≧10mmポリープの検出能は、いずれも11%であった。 3年間のフォローアップ中の見逃し率は、CTC群は3.4%(29例のうち1例)であったが、内視鏡群はなかった(55例のうち)。 これらの結果からAtkin氏は、「CTC後の紹介率を低く抑えるためのガイドラインが必要である」と述べるとともに、「しかしながら、CTCはより多くの患者に対して内視鏡検査と同程度の感度を有する、より侵襲性の低い検査として内視鏡検査に代わりうる選択肢である」と結論した。

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インスリン療法中の2型糖尿病患者は厳格な大腸がんスクリーニングが必要

 2型糖尿病患者では、内因性高インスリン血症に起因する大腸腺腫および大腸がんのリスクが高い。外因性のインスリン療法はより高い大腸がん発生率と関連している。今回、ペンシルバニア大学のPatricia Wong氏らは、大腸内視鏡検査を実施した50~80歳の2型糖尿病患者における横断研究を行い、2型糖尿病患者における慢性的なインスリン療法が大腸腺腫のリスクを増加させ、また投与期間が長いほどオッズ比が増加したことを報告した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2012年8月9日号に掲載。 本研究では、内視鏡検査で腺腫を有していた患者をケース、腺腫のない患者をコントロールとし、オッズ比(OR)および関連する信頼区間(CI)は多変量ロジスティック回帰分析により計算された。 主な結果は以下のとおり。・インスリンを12ヵ月以上投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者(n=196)は、コントロールの患者と比較して、インスリン暴露によるオッズ比の有意な増加は認められなかった。しかし、インスリンを18ヵ月以上(OR 1.6、95%CI:1.1~2.5)、24ヵ月以上(OR 1.7、95%CI:1.1~2.6)、36ヵ月以上(OR 2.0、95%CI:1.2~3.4)投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者でインスリン曝露によるオッズ比が有意に増加した(トレンド検定p=0.05)。・病期が進行した腺腫を有する2型糖尿病患者の間で、インスリンの暴露における同様の傾向が見られた。・腺腫の位置については、インスリン療法の影響を受けなかった。 これらの結果から、著者らは、インスリン療法を受けている糖尿病患者は、より厳格な大腸がんスクリーニングが必要だろうと述べている。

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大腸内視鏡的ポリープ切除、大腸がん死亡を長期に予防

大腸腺腫性ポリープの内視鏡的切除は、長期的に大腸がんによる死亡を予防し得ることが示された。米国・マウントサイナイ医療センターのAnn G. Zauber氏らが、全米ポリープ研究(National Polyp Study;NPS)の被験者を23年にわたり前向きに追跡し、内視鏡的ポリープ切除が大腸がん死亡に与える長期的な影響について解析した結果による。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。NPS参加者を23年間前向きに追跡研究グループは、1980~1990年の間に、NPS参加医療施設で初回大腸内視鏡検査を受け、ポリープ(腺腫性と非腺腫性)が認められたすべての患者を解析の対象とした。死亡の確認と死因の判定はNational Death Indexに基づいて行われ、フォローアップは23年間に及んだ。解析は、腺腫性ポリープを除去した患者の大腸がん死亡率について、一般集団における大腸がん発生率に基づく期待死亡率[SEER(Surveillance Epidemiology and End Results)プログラムで推定]、および非腺腫性ポリープ患者(内部対照群)の観察から推定された大腸がん死亡率と比較した。内視鏡的ポリープ切除で大腸がん死亡率は53%低下本研究への参加期間中に腺腫を除去したのは2,602例で、そのうち中央値15.8年後に、1,246例は何らかの原因によって死亡しており、大腸がんで死亡したのは12例だった。一方、一般集団の大腸がんによる死亡は推定25.4で、大腸内視鏡的ポリープ切除による発生率ベースの標準化死亡指数は0.47(95%信頼区間:0.26~0.80)であり、死亡率の53%低下が示唆された。ポリープ切除後の当初10年間の大腸がん死亡率は、腺腫性ポリープ患者と非腺腫性ポリープ患者とで同程度だった(相対リスク:1.2、95%信頼区間:0.1~10.6)。(朝田哲明:医療ライター)

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大腸がんスクリーニングとしての内視鏡検査vs.FIT:中間報告

大腸がんは世界的にみると3番目に頻度の高いがんであり、2番目に主要ながん関連死の原因である。いくつかの研究で、大腸がんスクリーニングは、平均的リスク集団では効果的で費用対効果に優れていることが示され、スクリーニング戦略として推奨されるのは、検便検査と組織検査の2つのカテゴリーに集約されている。そうした中、スペイン・ウニベルシタリオ・デ・カナリア病院のEnrique Quintero氏らは、便免疫化学検査(FIT)が、他のスクリーニング戦略より有効でコストもかさまない可能性が示唆されたことを受け、内視鏡検査に非劣性であると仮定し無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。5万3,000例余りを10年間追跡研究グループは、症状のない50~69歳の成人を対象とした無作為化対照試験で、1回の大腸内視鏡検査を実施された被験者(2万6,703例)と、2年ごとにFITを実施された被験者(2万6,599例)について、10年後の大腸がんによる死亡を主要評価項目として比較を行った。本報告は中間報告で、基線スクリーニングの終了時点における参加率、診断所見、重大な合併症の発生率が示された。研究結果は、intention-to-screenを受けた集団とas-screenedを受けた集団それぞれの分析が示された。大腸がんの発見率は両群で同程度結果、参加率は、FIT群のほうが内視鏡群より高かった(34.2%対24.6%、P

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腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率や必要検査数、男女間で格差

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率は、同年齢層でみるといずれも男性で高率であり、検診で1人の疾病を検出するための必要検査数(NNS)も性別によって異なることが明らかにされた。オーストリア胃腸・肝臓学会のMonika Ferlitsch氏らが、約4万4,000人について行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率はいずれも男性が女性の約2倍研究グループは、2007~2010年に、全オーストリアの大腸内視鏡検査によるスクリーニング・プログラムを受けた4万4,350人について解析を行い、腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率とNNSについて、男女の年齢層別における格差を調べた。被験者は、女性が51.0%、年齢中央値は女性60.7歳、男性60.6歳だった。結果、腺腫が検出されたのは全体の19.7%(8,743人)、進行腺腫は6.3%(2,781人)、大腸がんは1.1%(491人)だった。NNSは、腺腫5.1、進行腺腫15.9、大腸がん90.9だった。男女別にみた、腺腫の有病率は男性24.9%、女性14.8%(補正前オッズ比:1.9、p<0.001)、進行線種は同8.0%、4.7%(同:1.8、p<0.001)、大腸がんは同1.5%、0.7%(同:2.1、p<0.001)であり、いずれも男性で高率だった。進行腺腫有病率と必要検査数、45~49歳男性と55~59歳女性で同等年齢別では、男性50~54歳の進行腺腫有病率は5.0%に対し、同年齢層の女性では2.9%と低く、必要検査数も男性20に対し女性34だった(いずれも補正後p=0.001)。一方で、同有病率について男性45~49歳(3.8%)と、それより高齢層の女性55~59歳(3.9%)とで同等であることが認められ、同年齢層比較では、必要検査数も同等だった(男性:26.1、女性26)(p=0.99)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

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低用量アスピリン、大腸がんリスクを長期に抑制

低用量アスピリン(75~300mg/日)の5年以上の服用により、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に有意に低下することが、イギリス・オックスフォード大学臨床神経学のPeter M Rothwell氏らの検討で明らかとなった。高用量アスピリン(≧500mg/日)は大腸がんの発症率を長期的に抑制することが示されているが、出血リスクが高いため予防に用いるには問題がある。一方、低用量アスピリンの長期的な大腸がんの抑制効果は明確ではないという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。5つの無作為化試験を20年間追跡後、個々の患者データをプール解析研究グループは、大腸がんの発症率および死亡率に及ぼすアスピリンの用量、投与期間、腫瘍の部位について検討を行った。5つの無作為化試験を解析の対象とした。すなわち、血管イベントの一次予防においてアスピリンと対照を比較した2つの無作為化試験(Thrombosis Prevention Trial、British Doctors Aspirin Trial)と、二次予防において同様の比較を行った2つの試験(Swedish Aspirin Low Dose Trial、UK-TIA Aspirin Trial)、さらにアスピリンの2種類の用量を比較した1つの試験(Dutch TIA Aspirin Trial)である。これらの試験を20年間追跡し、試験終了後に個々の患者データのプール解析を行って、アスピリンが大腸がんのリスクに及ぼす影響を評価した。低用量5年投与により、20年間の発症・死亡リスクが有意に低下4つの対照比較試験(平均治療期間6.0年)では、追跡期間中央値18.3年における大腸がんの発症率は2.8%(391/14,033例)であった。部位別には、アスピリンは、20年間で結腸がんの発症リスクを24%有意に低減し(発症率のハザード比:0.76、95%信頼区間:0.60~0.96、p=0.02)、死亡リスクを35%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.65、95%信頼区間:0.48~0.88、p=0.005)が、直腸がんについては有意な差を認めなかった(発症率のハザード比:0.90、95%信頼区間:0.63~1.30、p=0.58、死亡率のハザード比:0.80、95%信頼区間0.50~1.28、p=0.35)。結腸の部位別の解析では、アスピリンは近位結腸がんの発症リスクを55%有意に低減し(発症率のハザード比:0.45、95%信頼区間:0.28~0.74、p=0.001)、死亡リスクを66%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.34、0.18~0.66、p=0.001)が、遠位結腸がんについては有意差はみられず(発症率のハザード比:1.10、95%信頼区間:0.73~1.64、p=0.66、死亡率のハザード比:1.21、95%信頼区間0.66~2.24、p=0.54)、両部位間のリスクの差は有意であった(発症率の差:p=0.04、死亡率の差:p=0.01)。ところが、投与期間が5年以上の場合に限ると、遠位結腸がん(発症率のハザード比:0.35、95%信頼区間:0.20~0.63、p<0.0001、死亡率のハザード比:0.24、95%信頼区間0.11~0.52、p<0.0001)だけでなく、近位結腸がんでもリスク低減効果が認められた(発症率のハザード比:0.58、95%信頼区間:0.36~0.92、p=0.02、死亡率のハザード比:0.47、95%信頼区間0.26~0.87、p=0.01)。アスピリンの用量を75mg/日以上に増量しても、それ以上のベネフィットの上昇はみられず、75~300mg/日の5年投与による20年間の致死的な大腸がんリスクの絶対減少率は1.76%(95%信頼区間:0.61~2.91、p=0.001)であった。一方、Dutch TIA trialの長期追跡の結果では、致死的な大腸がんのリスクは283mg/日に比べ30mg/日で高い傾向が認められた(オッズ比:2.02、95%信頼区間0.70~6.05、p=0.15)。著者は、「アスピリン75mg/日以上を5年以上服用すると、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に抑制された。ベネフィットが最も大きかったのは、S状結腸鏡や大腸内視鏡によるスクリーニングの予防効果が低い近位結腸の腫瘍であった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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大腸内視鏡検査では、腺腫病変発見率が大切

大腸がんスクリーニングで内視鏡検査が広く行われているが、がんや腺腫様ポリープ(良性前悪性腫瘍または腺腫)の見落とし(低率だがわずかではない)に対する懸念は払拭されていない。ポーランド・Maria Sklodowska-Curie記念がんセンター・研究所のMichal F. Kaminski氏らは、有効なスクリーニングの鍵になると示唆されるが、妥当性について検証されていない腺腫病変の発見率と盲腸到達率について、評価を行った。結果、腺腫発見率が、大腸がんリスクの独立した予測因子であることが確認されたという。NEJM誌2010年5月13日号掲載より。内視鏡検査専門医186人が関わった45,026例のデータを評価Kaminski氏らは、内視鏡検査専門医は186人から、2000~2004年に大腸がんスクリーニングプログラムを受けた45,026例のデータを集め、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価を行った。スクリーニング実施時からその後の定期サーベイランス実施時の間に発見された大腸腺がんを「中間期がん」と定義し、スクリーニング時の腺腫発見率および盲腸到達率と、中間期がんリスクとの関連を評価した。腺腫発見率と中間期がんリスクに有意な関連確認被験者は平均年齢55.1歳、中央値52.1ヵ月追跡、総計18万8,788人・年のデータが解析された。同期間に確認された中間期がんは、42個だった。分析の結果、腺腫発見率と中間期がんリスクとの関連は、有意な関連が認められた(P=0.008)。一方、盲腸到達率と中間期がんリスクとの関連は、有意ではなかった(P=0.50)。腺腫発見率20%以上と比べて、各発見率のハザード比はそれぞれ、発見率15.0~19.9%は10.94(95%信頼区間:1.37~87.01)、11~14.9%は10.75(同:1.36~85.06)、11%未満は12.50(同:1.51~103.43)だった(すべてP=0.02)。(医療ライター:武藤まき)

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カプセル内視鏡、病変検出の力量は?

大腸ポリープと大腸がんの検出について、カプセル内視鏡と光学大腸内視鏡との比較検討が、ベルギーのブリュッセル自由大学Erasme大学病院胃腸病部門のAndre Van Gossum氏らによって行われた。カプセル内視鏡は、ほとんどの患者の大腸粘膜の検出を可能とするが、大腸内視鏡と比べて、病変検出の感度は劣ると報告している。NEJM誌2009年7月16日号より。光学大腸内視鏡とで、ポリープ・進行腺腫・がんの検出力を比較本研究は、大腸疾患が確認されている患者および疑われる患者を対象とした前向き多施設共同研究。患者は、検査前処置の後、大腸清浄度(不良、普通、良、優良)が4段階で評価された。また、ポリープ、進行腺腫、がんの病変検出に関して、カプセル内視鏡の感度と特異度を算出し検討された。感度は、6mm以上ポリープ64%、進行腺腫73%、大腸がん74%検討されたのは、328例(平均年齢58.6歳)だった。カプセル内視鏡は、飲み込んでから10時間以内に排出された。バッテリー切れになる前に92.8%が排出された。大腸内視鏡と比べ、カプセル内視鏡の6mm以上ポリープ検出の感度は、64%(95%信頼区間:59~72)、特異度は84%(同:81~87)であった。進行腺腫検出に関しては、感度73%(同:61~83)、特異度79%(同:77~81)だった。大腸がんに関しては、大腸内視鏡で検出した19例のうち、カプセル内視鏡で検出できたのは14例だった(感度74%、95%信頼区間:52~88)。カプセル内視鏡の病変検出感度は、清浄度が不良・普通の人に比べて、良・優良の人で高かった。軽症・中等症の有害事象が26例(7.9%)で報告され、大部分は検査試料に関係することだった。(武藤まき:医療ライター)

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CTコロノグラフィーによるハイリスク群への大腸がん検診、陰性適中率96.3%

コンピュータ断層(CT)コロノグラフィーによるハイリスク群に対する大腸がん検診について、その陰性適中率は96.3%と高いことがわかった。一方、陽性適中率は、61.9%だった。平均的大腸がんリスクの集団に対する、CTコロノグラフィーによるスクリーニングは認められてきているが、ハイリスク集団については、その精度について情報が不足していたという。イタリアInstitute for Cancer Research and TreatmentのDaniele Regge氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年6月17日号で発表した。6mm以上の腫瘍に関する感度85.3%、特異度87.8%Regge氏らは、2004~2007年にかけて、イタリア11ヵ所の医療機関で検査を受けた、計937人について分析を行った。被験者は、一親等に進行がんの家族歴、本人に大腸腺腫の病歴、または便潜血検査で陽性のいずれかの、ハイリスク集団だった。研究グル-プは被験者に対し、CTコロノグラフィーと大腸内視鏡検査の両方を、同じ日に行った。その結果、CTコロノグラフィーによる検診で、6mm以上の腫瘍を検出できたのは、177人中151人だった(感度85.3%、95%信頼区間:79.0~90.0)。逆に腫瘍のない人を陰性と正しく判断したのは、760人中667人だった(特異度87.8%、85.2~90.0)。便潜血検査陽性グループでは陰性適中率は84.9%と低率また、陽性適中率は61.9%(95%信頼区間:55.4~68.0)で、陰性適中率は96.3%(94.6~97.5)だった。ただし、ハイリスク群のうち便潜血検査で陽性だったグループについては、陰性適中率は84.9%(76.2~91.3)と有意に低率だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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世界10ヶ国の調査から40歳以上の健康上リスクの自覚が低い

バイエル薬品は、世界10ヶ国の40歳以上を対象にした調査により、多くの人が自分は健康上のリスクを冒した生活をしていないと考えているのに対し、実際の生活習慣ではリスクが高い行動が含まれており、認識との間に大きな差があることが明らかになったと発表した。調査はアルゼンチン、カナダ、中国、ドイツ、イタリア、日本、メキシコ、韓国、スペイン、および米国で実施。全体的に見ると、回答者の約半分以上が、自分は世界一の死因である心血管系疾患(CVD)などのリスクは冒していないと回答。しかし、回答者の約半分から4分の1の人はCVDリスクが高い状態にあった。また、ほとんどの国でCVDのリスクが高いと考えられる人のうち4分の1以上が、低用量アスピリンの予防効果について医師と相談したことがないと回答。さらに、各国の回答者の多くが、血圧値やコレステロール値のチェックには気を遣うにもかかわらず、50歳以降の定期的な乳房X線写真(マンモグラフィ)、前立腺癌検診、大腸内視鏡検査やその他の検査を怠ったり、高血圧症や脂質異常症で処方された薬の服用をしていなかった。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2008%2Fnews2008-09-29_1.html

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CTコロノグラフィの精度は大きな病変でも検出率90%

マルチスライスCTを使ったCTコロノグラフィ(CTC)は「仮想内視鏡」などと呼ばれ、内視鏡やバリウムの挿入が不要なため、結腸直腸癌のスクリーニングにおける新たな非侵襲性の選択肢として注目されている。しかしながら、平坦な早期癌や無症候性の小さな病変検出には精度に難があるのではと言われていたが、エビデンスデータを求めてメイヨー・クリニックのC. Daniel Johnson氏らが精度について調査を行っている。NEJM誌2008年9月18日号より。無症状の患者2,600例をスクリーニング15施設から50歳以上の無症状の参加者2,600例を集め試験が行われた。CTC撮像は、標準の腸管前処置(液体を使った腸内洗浄と炭酸ガス注入)を施し、16列以上のマルチスライスCTを用いて行った。CTCに習熟した放射線科医が、直径5mm以上の病変は全て報告。各センターで、確立した臨床プロトコルに従って光学式大腸内視鏡検査と病理組織検査を行い、それらを標準試料として用いた。主要エンドポイントは、内視鏡検査で検出され組織学的にも確かめられた大きな腺腫と腺癌(直径10mm以上)がCTCで検出されること。より小さな結腸直腸の病変(直径6~9mm)の検出についても評価を行った。10mm以上の病変の検出感度は90%完全なデータが得られたのは2,531例(97%)。大きな腺腫と癌に関する患者ごとの平均推定値(±SE)は、CTC感度0.90±0.03、特異度0.86±0.02、陽性的中率0.23±0.02、陰性的中率0.99±

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大腸内視鏡検査陰性なら再スクリーニングは5年後以降でよい

大腸内視鏡検査で陰性だった場合、再スクリーニングは5年後以降でよいことを支持する研究結果が、インディアナ医科大学の胃腸-肝臓学部門のThomas F. Imperiale氏らによって報告された。NEJM誌2008年9月18日号掲載より。腺腫なしだった1,256例の、5年後の所見を検討調査は、内視鏡検査の結果、腺腫が認められなかった被験者の、5年後の再スクリーニング時の所見を進展病巣によって分類し検討した。分類項は、ポリープ、過形成性ポリープ、直径1cm未満の管状腺腫、進行性腺腫(直径1cm以上の管状腺腫、もしくは絨毛状の組織学的特徴または高度形成異常を有するポリープ)、癌。基線で特定した内視鏡検査で腺腫なし被験者は2,436例。そのうち再スクリーニングまでの平均期間5.34±1.34年だった1,256例(51.6%)が検討された。この追跡群の基線における平均年齢は56.7歳、56.7%が男性。女性より男性のリスク高いが、癌0例、進行性線種もわずか追跡群で、再スクリーニングの結果、癌が見つかった人はいなかった(検出率の95%信頼区間:0~0.24%)。1個以上の腺腫が見つかったのは201例(16.0%)だった。進行性腺腫は16例(1.3%)で、計19個が見つかり、10例(52.6%)の病変部は左結腸曲の遠位部だった。進行性腺腫のリスクは、基線でポリープがなかった人と、基線で過形成性ポリープを有していた人との間に有意差はなかった[1.1%(12/1,057例)] vs. 2.0%(4/199例)、それぞれP = 0.30]。男性は女性よりも、腺腫(尿細管直径1cm未満、あるいは進行性)の有する率が高い傾向があり(相対リスク:1.88、95%信頼区間:1.42~2.51)、特に進行性腺腫の有する率は高い傾向が見られた(3.31、1.02~10.8)。Imperiale氏は、「最初の内視鏡検査時に結腸直腸で腫瘍形成のない人は、大腸癌の5年リスクは非常に低い。進行性腺腫のリスクは女性よりも男性のほうが高いが、全体として見れば低率である」と述べ、「我々の所見は、大腸内視鏡検査で異常が認められなかった被験者の再スクリーニングは、5年後以降でよいことを支持するものだ」と結論した。(武藤まき:医療ライター)

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非ポリープ型も大腸癌の罹患率は高い

結腸直腸癌(大腸癌)は米国における癌死亡原因の第2位を占める。米国ではこれまで、大腸癌はポリープ型腫瘍が時間とともに移行したものと考えられ、予防ではその発見と除去に集中してきた。そのため日本では指摘されていた非ポリープ型(平坦型と陥没型)腫瘍(NP-CRNs)の重要性を指摘するデータも限られていたが、米国カリフォルニア州のパロアルト病院のRoy M. Soetikno氏らが、米国でも非ポリープ型からの癌罹患率は高いとの調査結果を報告した。JAMA誌2008年3月5日号より。既往群で有病率が有意に高い米国でも非ポリープ型腫瘍が大腸癌に密接な関連があるとの仮説を立てたRoy M. Soetikno氏らは、日本の国立がんセンター東病院(千葉県柏市)で非ポリープ型腫瘍を鑑別する訓練を積み、帰国後、退役軍人を母集団としてその有病率を調べるとともに、大腸癌との関連を調べる横断研究を実施した。対象患者は2003年7月から2004年6月にかけて任意で大腸内視鏡検査を受けた1,819例(男性95%、白人79%、平均年齢64歳)。主要評価項目は腫瘍の内視鏡下の形状、出現部位、大きさ、組織構造、そして浸潤の深さとした。調査の結果、非ポリープ型腫瘍全体の有病率は9.35%(95%信頼区間:8.05%~10.78%、n=170)だった。スクリーニング群、本人または家族に大腸癌あるいは腫瘍の既往歴があるサーベイランス群、症状のある群それぞれの有病率は、5.84%(同4.13%~8.00%、n=36)、15.44%(同12.76%~18.44%、n=101)、6.01%(同4.17%~8.34%、n=33)で、既往歴のある群で有意に高かった。陥没型が最もハイリスク当該部位または粘膜下浸潤癌を伴う非ポリープ型腫瘍の全体有病率は0.82%(95%信頼区間:0.46%~1.36%、n=15)、スクリーニング群の有病率は0.32%(同0.04%~1.17%、n=2)だった。全体として、非ポリープ型腫瘍は大きさにかかわらず、ポリープ型より癌腫をより多く含んでいたとの結果も示されている(オッズ比9.78、95%信頼区間:3.93~24.4)。当該部位または粘膜下の浸潤癌を伴う非ポリープ型腫瘍陽性とサイズ(調整後)の関連は、スクリーニング群(同2.01、0.27~15.3)、調査群(同63.7、9.41~431)においても観察された。また、陥没型のタイプに最も高い危険性(33%)が確認された。癌腫を含む非ポリープ型腫瘍のサイズ(直径)は、ポリープ型と比べて小さかった。それぞれ平均直径15.9(10.2)mm対19.2(9.6)mm[( )はSD]。処置に要した時間は、これまでの対照群と比べて変化はなかった。報告は、退役軍人の患者群を対象とした今回の大腸内視鏡検査で、非ポリープ型腫瘍は比較的多い疾患であると同時に、大きさにかかわらず、ポリープ型腫瘍よりも癌腫との関連が強いと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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大腸癌検診でCT大腸検査と内視鏡検査ではどちらが有益か?

大腸癌検診および大腸癌予防の主要なターゲットである進行腫瘍の検出率を、CT大腸(CTC)検査と大腸内視鏡(OC)検査との並行スクリーニングプログラムで比較するという研究が、米国ウィスコンシン大学放射線科のDavid H. Kimらによって行われた。NEJM誌10月4日号掲載報告より。進行腫瘍の検出率と切除したポリープ総数を比較比較対象となったのは、初回CTC検査が行われた連続した成人3,163例(平均年齢58.1±7.8歳)と初回OC検査が行われた連続した成人3,120例(同57.0±7.2歳)。主要評価項目は、進行腫瘍(腺腫および癌腫)の検出率と切除したポリープ総数とされた。CTCで6mm以上のポリープが発見された患者に対してはOCポリープ切除術が勧められたが、1~2個と少数のポリープ(6~9mm)の場合には、オプションとしてCTCサーベイランスも提示された。一方、初回OC検査で見つかったポリープはすべて、診療指針やサイズに関係なく切除された。検出率に有意差なし、切除・合併症リスクを鑑みてまずはCTCを?CTC検査では123個の進行腫瘍が見つかり、そのうち14個が浸潤癌だった。OC検査では121個が見つかり、そのうち4個が浸潤癌だった。初回CTC検査によるOC紹介率は7.9%(246/3,120例)。進行腫瘍が確認されたのは、CTC群3.2%(100/3,120例)、OC群3.4%(107/3,163例)だった。これらには、CTC検査で6~9mmのポリープが発見され、切除をせずにサーベイランス中だった患者158例・193個は含まれていない。切除されたポリープ総数は、CTC群で561個、OC群で2,434個だった。またCTC群ではみられなかったが、OC群では7つの結腸穿孔が生じていた。Kim氏らは、「CTC検査およびOC検査の進行腫瘍の初回時検出率は同程度だったが、ポリープ切除術と合併症数はCTCスクリーニング群のほうが圧倒的に少なかった」点を強調しながら、「これらの所見は治療的なOCの前に、初回スクリーニングとしてCTCを行うことを支持するものだ」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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