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緑豊かな住環境は骨粗鬆症リスクを下げる

 樹木など植物が茂った場所の近くに住んでいると、骨が丈夫になる可能性のあることが、平均12年間の追跡データに基づく新たな研究で示唆された。中南大学(中国)のZhengxiao Ouyang氏らによるこの研究では、衛星画像で緑地が確認された場所の近くに住んでいる人では、それ以外の場所に住んでいる人に比べて骨密度が高い傾向があることが示されたのだ。研究グループは、「住宅地の植生が骨密度の上昇や骨粗鬆症リスクの低下に関連していることを示す初のエビデンスが得られた」と述べている。詳細は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月5日掲載された。 この研究には、UKバイオバンクのデータベースから収集された39万1,298人の英国人(平均年齢56.2歳、女性53.0%)の生活習慣と健康状態に関する追跡データが用いられた。UKバイオバンクには、各参加者の骨密度と骨粗鬆症の遺伝リスクに関するデータのほか、食事や喫煙習慣、収入、運動量などのさまざまなデータが記録されている。 Ouyang氏らは、衛星画像に基づき各参加者の居住地域の「緑化度」の指標となる正規化植生指数(Normalized Difference Vegetation Index;NDVI)を算出した。また、別のデータを用いて各地域の大気汚染レベルも調べた。 平均11.77年(中央値12.07年)に及ぶ追跡期間中に9,307人が骨粗鬆症を発症していた。解析の結果、居住地から300mの範囲のNDVIの四分位範囲(IQR)が増加するごとに、居住者の推定骨密度が増加し、骨粗鬆症の有病率が6%、発症リスクが5%低下することが示された。また、居住地域の緑化度が高まるほど骨粗鬆症リスクが低下する可能性が示唆された。 さらに、緑地と骨粗鬆症リスクの関連の媒介因子は、NO2(窒素酸化物)とPM2.5(微小粒子状物質)であることも示された。大気汚染にさらされると、酸化ストレスや炎症、ホルモンバランスの乱れが引き起こされ、これらが骨粗鬆症リスクを高め得ることが複数の研究で示唆されている。こうしたことから研究グループは、最も緑化度の高い地域に住む人では、木や植物が大気中の汚染物質を除去する天然のフィルターとして機能するため、大気汚染によるリスクも低くなるのではないかとの見方を示している。 Ouyang氏らは、「この研究により、骨粗鬆症の発症を予防する上で緑地が有用である可能性についての貴重な知見が得られた。効果的な予防戦略の開発において都市の緑化が重要であることを明示する結果だ」と述べ、大気汚染の軽減が骨に対する緑地の有益性の鍵を握っている可能性があるとの考えを示している。

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4月9日 子宮頸がんを予防する日【今日は何の日?】

【4月9日 子宮頸がんを予防する日】〔由来〕「し(4)きゅう(9)」(子宮)の語呂合わせから、「子宮頸がん」予防の啓発活動を行っている「子宮頸がんを考える市民の会」(東京)が制定。この日を中心に「子宮頸がん」についてのセミナーなどを開催している。関連コンテンツHPVワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】日本のワクチン史を変えた煉獄さん【Dr.倉原の“俺の本棚”】子宮頸がんも喫煙で増える?!【患者説明用スライド】高リスク局所進行子宮頸がん、ペムブロリズマブ追加でPFS改善/Lancet低リスク子宮頸がん、単純子宮全摘が標準治療に非劣性/NEJM

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CKDへの適応が追加されたエンパグリフロジンへの期待/ベーリンガーインゲルハイム・リリー

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)に、2024年2月、慢性腎臓病(CKD)の適応が追加された。この適応追加に関連して日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、3月29日に都内でプレスセミナーを共同開催した。セミナーでは、CKDの概要、エンパグリフロジンのCKDに対するEMPA-KIDNEY試験の結果などについて講演が行われた。CKDの早期発見、早期介入で透析を回避 はじめに「慢性腎臓病のアンメットニーズと最新治療」をテーマに岡田 浩一氏(埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授)が講演を行った。 腎炎、糖尿病、高血圧、加齢など腎疾患の原因はさまざまあるが、終末期では末期腎不全となり透析へと進展する。この腎臓疾患の原因となる病気の発症から終末期までを含めてCKDとするが、CKDの診療には次の定義がある。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(とくに蛋白尿)(2)GFR<60mL/分/1.73m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続した場合にCKDと診断 また、重症度分類として18区分でヒートマップ化したものがあり、個々の患者の病態に応じ早期に治療介入することが必要だという。 最近の研究では、心血管死へのCKDの影響も解明されつつあり、厚生労働省の調査班の研究では、喫煙、糖尿病、高血圧、CKDが心血管死の主要因子とされ、とくにCKDの頻度は高血圧44.3%に次いで高く20.4%、人口寄与危険割合も高血圧26.5%に次いで10.4%と2番目に高いリスクであると説明した。また、わが国のCKD患者は、2005年時に推定1,328万人から2015年には推定1,480万人に増加しており、そのうち2022年時点で透析患者は約35万人、年間で約1.63兆円の医療費が推計されている。この対策に厚生労働省は、腎疾患対策検討会などを設置し、「2028年までに新規透析導入患者数を3万5千人以下に減少させる(10年で10%以上減少)」などの目標を示し、さまざまな調査と対策を打ち出している。 CKDの治療では、減塩や蛋白質制限などの食事療法、禁煙などの生活習慣改善のほか、RA系阻害薬を中心とした降圧療法、スタチンを用いた脂質異常症の治療など個々の患者の病態に合わせた多彩な治療が行われている。先述の対策委員会の中間報告では、診療ガイドラインの推奨6項目以上を達成すると予後が良好となりCKDの進展抑制が可能との報告もあり、「個別治療を1つでも多く達成することが重要」と岡田氏は指摘する。また、CKD患者への集学的治療は、患者のeGFRの低下を有意に遅らせる可能性があり、初期段階を含めて原疾患に関係なく有効である可能性があると示唆され、とくにステージ3〜5の患者には集学的治療が推奨されるという研究結果も説明した1)。 今後の課題として、わが国の新規透析導入患者は、2020年をピークに減少傾向にあるが、高齢男性では依然として増加傾向にあること、主な透析導入の原因として、第1位に糖尿病、第2位に高血圧・加齢、第3位に慢性腎炎が報告されている(日本透析医学会「わが国の慢性透療法の現況」[2022年12月31日現在])ことに触れ、第3位の慢性腎炎の疾患の1つである腎硬化症に焦点を当て解説を行った。腎硬化症は、蛋白尿を伴わず、進行も遅いためになかなか治療対象として認知されておらず、また、現在は根治療法がなく、診療エビデンスも少ないと今後解決すべきアンメットニーズであると説明した。 岡田氏は最後に「CKDは早期発見と介入が何よりも重要であり、eGFR>30である間に、かかりつけ医から専門医への紹介を推進することが大切」と語り講演を終えた。糖尿病の有無にかかわらずCKD患者の心血管死リスクを低下させる 次に「慢性腎臓病に対する新しい治療選択肢としてジャディアンスが登場した意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、エンパグリフロジンのCKDへの適応追加の意義や臨床試験の内容について説明を行った。 糖尿病などの代謝性疾患、心血管疾患、CKDは相互に関連し、どこか1つのサイクルが壊れただけでも負のスパイラルとなり、身体にさまざまな障害を引き起こすことが知られている。 2014年に糖尿病治療薬として承認されたSGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、当初から心臓、腎臓への保護作用の可能性が期待され、2021年には慢性腎不全に追加承認が、本年にはCKDへ追加承認がされた。その追加承認のベースとなった臨床試験がEMPA-KIDNEY試験である。 EMPA-KIDNEY試験は、8ヵ国で行われた第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、目的は「CKD患者にエンパグリフロジンが腎疾患の進行または心血管死のリスクを減少させるかを検討すること」、対象範囲は糖尿病ではない患者、低蛋白尿を呈する患者を含む、腎疾患進行リスクを有する幅広いCKD患者である。 EMPA-KIDNEY試験の概要は以下の通り。〔試験デザインとアウトカムなど〕・腎疾患進行リスクのあるCKD患者6,609例(うち9%が日本人)を、エンパグリフロジン10mg/日+標準治療(3,304例)とプラセボ+標準治療(3,305例)に割り付けた。・主要評価項目:心血管死または腎疾患の進行・副次評価項目:心不全による初回入院または心血管死までの期間など・患者背景は糖尿病患者と非糖尿病患者が半々だった。・eGFR<30mL/分/1.73m2の低下例も組み入れたほか、微量アルブミン尿患者も組み入れた。〔主な結果〕・主要評価項目では2.5年の追跡期間で腎臓病進行または心血管死の初回発現について、エンパグリフロジン群で432例(13.1%)、プラセボ群で558例(16.9%)だった(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.64~0.82、p<0.001)ことから初回発現までの期間が有意に抑制された2)。・ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間のeGFRスロープ(年間変化率)は、プラセボ群の-2.92に対してエンパグリフロジン群が-2.16で、その差は0.75だった。・2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期のeGFRスロープは、プラセボ群の-2.75に対してエンパグリフロジン群が-1.37で、その差は1.37だった。・安全性については、有害事象発現率はエンパグリフロジン群で43.9%、プラセボ群で46.1%であり、エンパグリフロジン群では骨折、急性腎障害、高カリウム血症などが報告されたが重篤なものはなかった。 門脇氏は、本試験の特徴について、「蛋白尿が正常な患者を初めて組み入れたCKDを対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験であること」、「幅広いeGFR値のCKD患者に対し、糖尿病罹患の有無にかかわらず、腎疾患の進行または心血管死の発現リスクの有意な低下を示したこと」、「有害事象発現率がプラセボよりも低かった」とまとめ、レクチャーを終えた。 今後、微量アルブミン尿患者などを含め、幅広く使用される可能性があり、CKDへの有効な治療手段となることが期待されている。

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シスプラチン投与後の重篤AKI、簡易リスクスコアを開発/BMJ

 シスプラチン静脈内投与後の重篤な急性腎障害(CP-AKI)を予測する、新たなリスクスコアが開発された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShruti Gupta氏らによる検討で、投与患者から容易に取得できる9つの共変量を用いた簡易リスクスコアが、従来モデルと比べて、死亡と強く関連する重篤なCP-AKIのリスクを高精度に予測可能であることが検証できたという。BMJ誌2024年3月27日号掲載の報告。CP-AKI定義は14日以内の血清クレアチニン値2倍以上、腎代替療法の実施 研究グループは、全米6ヵ所の主要ながんセンターを通じて、2006~22年に初回シスプラチン静脈内投与を受けた18歳以上の成人患者を対象に、重篤なCP-AKI発症に関する予測モデルの開発とその評価を行った。 主要アウトカムはCP-AKIで、初回シスプラチン静脈内投与から14日以内に血清クレアチニン値が2倍以上に増加、または腎代替療法の実施と定義した。CP-AKIの独立予測因子については、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて特定し、それを基に予測モデルを開発コホートにより作成、外部検証コホートで精度を確認した。 主要モデルでは、連続変数は制限付き3次スプラインを用いて検証した。主要モデルのオッズ比をリスクポイントに変換し、簡易リスクモデルを作成。最終的に多変量Coxモデルを用いて、CP-AKI重症度と90日生存率の関連を調べた。モデルのC統計量は0.75、従来より高い識別能 合計2万4,717例の成人被験者が対象に含まれた。開発コホートは1万1,766例(年齢中央値59歳、四分位範囲[IQR]:50~67)、検証コホートは1万2,951例(60歳、50~67)だった。CP-AKI発症率は、開発コホート5.2%(608例)、検証コホート3.3%(421例)だった。 開発コホートから得られたCP-AKIの独立予測因子は、年齢、高血圧、糖尿病、血清クレアチニン値、ヘモグロビン値、白血球数、血小板数、血清アルブミン値、血清マグネシウム値、シスプラチン投与量だった。 9つの共変量(年齢、高血圧、糖尿病、現在/元喫煙者、ヘモグロビン値、白血球数、血清アルブミン値、血清マグネシウム値、シスプラチン投与量)からなる簡易リスクスコアは、開発コホートと検証コホートの両者で、CP-AKIリスクを予測することが示された。最低リスクカテゴリーの患者と比べた最高リスクカテゴリーの患者のCP-AKI発症オッズは、開発コホートで24.00倍(95%信頼区間[CI]:13.49~42.78)、検証コホートで17.87倍(10.56~29.60)だった。 主要モデルのC統計量は0.75であり、これまでに発表されたモデルの0.60~0.68に比べ高く、CP-AKI発症の識別が優れていた(それぞれの比較でDeLong P<0.001)。また、CP-AKI重症度が高いほど90日生存率が低い傾向が一貫して認められた(ステージ3のCP-AKI vs.CP-AKIなしの補正後ハザード比:4.63、95%CI:3.56~6.02)。

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「自閉傾向」が高い妊婦ほど、早産などのリスク上昇

 日本全国における8万7,687人の妊婦を対象とする大規模な研究が行われ、自己申告による「自閉傾向」が高いほど、早産や在胎不当過小(small for gestational age;SGA)などのリスクが高いことが明らかとなった。特に、極早産のリスク上昇が顕著だったという。国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの細澤麻里子氏らによる研究結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に1月23日掲載された。 「自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)」は一定のスペクトラム(幅)を持つ神経発達障害であり、ASDの診断に至らなくても、一般の集団において「自閉傾向」のある人は連続的に分布しているとされる。ASDは社会的コミュニケーションの障害、限定された行動の繰り返しなどを特徴とするが、自閉傾向の高い人もASDと診断された人と同様に、社会的・心理的な困難を伴うことが報告されている。また過去の研究では、ASDと妊娠・出産の転帰不良との関連についても示されている。 そこで著者らは、一般の集団における妊婦の自閉傾向と出産の転帰との関連を検討するため、2011年1月~2014年3月に「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した人を対象とするコホート研究を行った。自閉傾向は、妊娠中期・後期に自己申告による「自閉症スペクトラム指数日本語版」(AQ-J-10)で評価した。AQ-J-10は得点が高いほど自閉傾向が高く、7点以上は「臨床域」として、より詳細な評価が必要であることを示す。出産の転帰は、早産およびSGAを診療録より収集した。 8万7,687人(平均年齢31.2±5.0歳)のデータを解析した結果、AQ-J-10の平均点は2.8±1.7であり、AQ-J-10が7点以上の臨床域に該当する人は2,350人(2.7%)だった。ASDと診断を受けていた人は、わずかに18人(0.02%)のみだった。 また、自閉傾向が高い人ほど、早産(妊娠37週未満)、中等度・後期早産(32~36週)、極早産(32週未満)、SGAのリスクが高まることが明らかとなった。具体的には、対象者の背景(出産時の年齢、教育レベル、初産か経産か、妊娠中の喫煙、妊娠前のBMI、既往歴、出生児の性別)や妊娠合併症(妊娠高血圧症、妊娠糖尿病)による影響を調整して解析すると、AQ-J-10の点数が1標準偏差高くなるごとに、早産のリスクは1.06(95%信頼区間1.03~1.09)、中・後期早産は同1.05(1.01~1.08)、極早産は同1.16(1.06~1.26)、SGAは同1.04(1.01~1.06)を示した。さらに、AQ-J-10が7点未満の人と比較すると、7点以上の臨床域の女性における早産のリスクが16%、中・後期早産のリスクが12%、極早産のリスクが49%、SGAのリスクが11%、それぞれ高くなった。 以上から著者らは、「ASDの診断の有無によらず、一般の集団における妊婦の自閉傾向が高いことは、出産の転帰不良、特に極早産のリスク上昇と関連していた」と結論。この背景として、妊娠中の心理的ストレスの影響や食事などの生活習慣の影響、支援やケアへのアクセスの影響などを指摘する。その上で、自閉傾向が高い妊婦、特に自閉傾向が臨床域の得点を示す妊婦に対して、「妊娠中から適切な支援を提供することが必要だ」と述べている。

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第188回 専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省

<先週の動き>1.専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省2.駆け込み「宿日直許可」で、分娩医療は守れるか/産婦人科医会3.教育水準が命を左右する? 学歴の差で死亡率が上昇/国立がんセンター4.広がる紅麹サプリメントによる健康被害、問われる安全性/小林製薬5.勤務実態なしの事務職に2,000万円、特別背任容疑で捜索/東京女子医大6.過重労働で医師がくも膜下出血に、労災認定を求めて国を提訴/東京1.専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省厚生労働省は、医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会を3月25日に開催し、専門医の資格広告に関する新たな方針を定めた。これにより、2029年度末からは、日本専門医機構が認定する19の基本領域の専門医資格に限り広告が可能となり、現在59の学会が認定する56の専門医資格のうち、基本領域と重なる16の学会認定専門医の広告ができなくなる。ただし、2028年度末までにこれらの資格を取得または更新した医師は、認定・更新から5年間広告が認められる。また、基本領域の研修中に始めることができる15領域のサブスペシャリティー(サブスペ)の専門医資格については、研修制度の整備基準や認定・更新基準、専門医の名称が整ったものから個別に広告が認められることになる。これに対して、連動研修を行わないサブスペの12領域については、新たな判断基準を設定し、それをクリアすることを条件に広告を認める。厚労省は、広告に関する判断基準として「わかりやすさ」「質の担保」「社会的・学術的意義」の3点を挙げ、専門医の名称と提供する医療の内容が広く普及していること、ほかの専門医との区別が明確であることなどを条件に設定した。また、専門医資格の広告が大病院志向を促すことなく、国民へのわかりやすさを重視する方針を示している。この方針は、国民へのわかりやすい情報提供と医療の質の担保を目的とし、医療現場における専門医資格の乱立と混乱を防ぎつつ、患者・国民の健康と生命を守ることを意図している。この方針変更は、医療機能情報提供制度の全国統一システムの運用開始や医療広告規制におけるウェブサイトなどの事例解説書のバージョンアップと同時に議論され、医療機関選択における国民の誤解を防ぎつつ、適切な情報が提供されることが期待されている。参考1)専門医に関する広告について(厚労省)2)学会認定16の専門医、29年度から広告不可に 専門医機構の基本領域に一本化(CB news)3)日本外科学会認定の「外科専門医」などの広告は2028年度で終了、「機構専門医」への移行を急げ-医療機能情報提供制度等分科会[1](Gem Med)2.駆け込み「宿日直許可」で、分娩医療は守れるか/産婦人科医会日本産婦人科医会が行った調査によると、分娩を扱う全国の病院947施設のうち、半数を超える479施設が夜間宿直や休日の日直を休息とみなし、労働時間として計上しない「宿日直許可」を労働基準監督署から取得している、または申請中であることが明らかになった。この宿日直許可により、実際には医師が夜間や休日に頻繁に診察や緊急手術を行い、妊婦の経過観察に当たるなど、休息とは言えない激務にも関わらず、残業時間としての計上が避けられている。医師の「当直」勤務は月平均7.9回、1回当たり16時間として、年間約1,500時間の労働になるが、これを労働時間とみなさなければ、残業時間は年平均230時間となり、規制上限の960時間を下回る。こうした宿日直許可の乱用は、4月から始まる残業規制と医師の働き方改革の実効性に疑問を投げかけている。とくに病院側は、残業規制による業務への支障を避けるため、また医師の派遣元の大学病院などから敬遠される恐れがあるために、このような「苦肉の策」を取ったとみられる。しかし、実際の医師の労働環境は、十分な睡眠を取ることができず、夜間も救急車の受け入れや外来患者の対応に追われるなど、非常に過酷な現状が続いている。この宿日直許可の乱用は、医師の過労自殺や医療安全の脅威を招く可能性があり、医療界における長時間労働の問題と医師を労働者として適切に扱う必要性を改めて浮き彫りにしている。医療需要の高まりと医師数不足が続く中、医師の働き方改革が名ばかりに終わらず、実効性を伴う改革が求められている。参考1)持続可能な周産期医療体制の実現に向けて~産婦人科医療資源と医師の働き方改革の影響について~(日本産婦人科医会)2)分娩病院の半数、夜間宿直・休日日直を「休息」扱い 労働時間とせず 産婦人科医団体調査(産経新聞)3)医師の働き方改革は名ばかりか…労基署の「宿日直許可」が残業規制の抜け道に(中日新聞)3.教育水準が命を左右する? 学歴差で死亡率が上昇/国立がんセンター国立がん研究センターによる最新の研究が、教育水準とがんの死亡率の間に顕著な関連性を明らかにした。この研究は、日本国内で初めて学歴別の全死因による死亡率を推計し、その結果を公表したもの。約800万人の人口データと33万人の死亡データを基に、教育水準が低い人々(とくに中学卒業で終えた者)は、より高い教育を受けた人々と比較し死亡率が約1.4倍高いことが判明した。この格差は、脳血管疾患、肺がん、虚血性心疾患、胃がんといった特定の死因でとくに顕著だった。一方で、乳がんに関しては、より高い教育水準を持つ女性で死亡率が高く、これは出産歴の少なさと関連していると考えられている。研究チームは、教育歴と死亡率の関係が直接的なものではなく、喫煙やがん検診の受診率の低さなど、生活習慣や環境要因によるものであると指摘している。また、わが国での教育水準による健康格差は、欧米諸国と比較して小さいものの、社会全体としてはがん検診の受診率を向上させるなど、健康格差を縮小するための対策が必要であると述べている。参考1)Educational inequalities in all-cause and cause-specific mortality in Japan: national census-linked mortality data for 2010-15(International Journal of Epidemiology)2)平均寿命前後までの死亡率、学歴で差 国立がんセンター(日経新聞)3)学歴別死亡率、中卒は大卒以上の1.4倍 「喫煙など影響」- がんセンター初推計(時事通信)4)「死亡率、中卒は1.4倍」 大卒以上と比較 国立がん研究センター(毎日新聞)5)教育期間の短い人は死亡率高い傾向 喫煙率など影響か 研究班が推計(朝日新聞)4.広がる紅麹サプリメントによる健康被害、問われる安全性/小林製薬小林製薬(大阪市)の機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」の摂取後に健康被害が発生している問題で、腎機能障害や急性腎障害の発症が確認されている。摂取者の114人が入院したほか、5例の死亡症例も報告され、厚生労働省と大阪府は原因究明を同社に求めている。このサプリメントの原料に含まれる紅麹には、青カビが生み出すプベルル酸が含まれていたとの指摘がされており、この成分が健康被害の原因である可能性が高いとされ、具体的な影響や摂取によるリスクについての検証が急がれている。摂取した患者の中には、症状の改善後にサプリメントの再摂取によって再び健康被害を受けた事例も報告されている。この問題は、同社以外に原料として紅麹を購入し使用していた他の企業や製品にも影響を及ぼしており、同社は製造プロセスの見直しや、健康被害を受けた消費者への対応に追われている。さらに、この問題は、機能性表示食品の制度見直しを求める声を高めており、政府はこの問題を受けてコールセンターや省庁間連携室の設置を予定している。参考1)小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について(厚労省)2)小林製薬「紅麹コレステヘルプ」における腎障害に関しまして(日本腎臓学会)3)小林製薬 紅麹問題「プベルル酸」健康被害の製品ロットで確認(NHK)4)腎機能に異常の患者3人「共通点は紅麹」 医師は小林製薬に報告した(朝日新聞)5)小林製薬「紅麹」サプリ、摂取の再開後に再入院…治療の医師「サプリ含有物質が原因の可能性高い」(読売新聞)6)倦怠感、尿の異常…紅麹サプリを摂取 男性が訴える体の異変(毎日新聞)5.勤務実態なしの事務職に2,000万円、特別背任容疑で捜索/東京女子医大東京女子医科大学(東京都新宿区)およびその同窓会組織「至誠会」に関連する一連の不正給与支給疑惑について、警視庁が特別背任の容疑で捜索を行った事件。この事件では、勤務実態のない元職員に約2,000万円の給与が不正に支払われた疑いが浮上している。報道によると、この元職員は2020年5月~2022年3月まで別のコンサルティング会社からも給与を受け取っていたと報じられている。至誠会は、岩本 絹子理事長が代表理事を務めていた時期に、この不正が行われたとみられ、元事務長との共謀が疑われている。この問題は、東京女子医科大学および至誠会による不透明な資金支出をめぐり、一部の卒業生らが岩本理事長を背任容疑で警視庁に刑事告発し、2023年3月に受理されていた。東京女子医科大学は、1900年に東京女醫學校を母体として設立され、長年にわたり女性医学教育の先駆者として知られてきた。しかし、近年では大学病院での医療事故や経営悪化が報じられるなど、栄光に影を落とす出来事が続いていた。この事件に関する捜査は、岩本理事長および元職員らによる資金の不正流用や背任の可能性に焦点を当てているとともに、大学の経営統括部の業務が外部のコンサルティング会社に委託された背景や、その過程での資金の流れも問題の核心に迫る重要なポイントとなっている。参考1)本学関係者の皆様へ(東京女子医科大学)2)同窓会から不正給与2,000万円支出か、東京女子医大(日経新聞)3)東京女子医大 勤務実態ない職員 給与約2,000万円不正支給か(NHK)4)東京女子医科大と岩本絹子理事長宅など一斉捜索、理事長側近に不正給与2,000万円支払いか(読売新聞)5)名門に捜査のメス 医療事故続き再建担った理事長 東京女子医大捜索(朝日新聞)6.過重労働で医師がくも膜下出血に、労災認定を求めて国を提訴/東京2018年11月、過重労働の末にくも膜下出血を発症し、寝たきり状態となった50代の男性医師が、労災認定を求めて国を提訴することが判明した。男性医師は、都内の大学病院で緩和医療科に勤務しており、発症前6ヵ月間の時間外労働は、月に4日程度の宿直を含むと毎月126~188時間に上っていた。これは、過労死ラインとされる月80時間を大幅に超えるものであった。しかし、三田労働基準監督署および厚生労働省の労働保険審査会は、宿直を労働時間としてほぼ認めず、労災申請を棄却した。審査では、宿直中の患者対応やカルテ作成など、わずかな時間のみが労働時間として認められ、その結果、発症前3ヵ月の時間外労働は月50時間前後と評価された。男性医師側はこの決定に対し、宿直中も高いストレス下での業務に従事していたと主張し、労働時間の過小認定の問題点と時間外労働の上限規制の形骸化に警鐘を鳴らすため訴訟を提起する構えをみせている。参考1)くも膜下出血で寝たきりの医師 労災認定を求め国を提訴へ(毎日新聞)2)医師の宿直を労働時間から除外、労災認められず 「ここまでやるか」(同)3)医者の宿直、労働時間「ゼロ」扱いで労災認定されず 月100h超の残業でくも膜下出血発症…妻「理解に苦しむ」(弁護士ドットコム)

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日本人の口腔/咽頭がんの10年全死亡率、飲酒量による違いは?

 飲酒と口腔/咽頭がんの予後との関連については先行研究が少なく、そのほとんどが欧州の研究で5年までの全生存を調査しているもので、結果が一致していない。今回、日本における口腔/咽頭がん患者における飲酒と10年全死亡率の関連を大阪国際がんセンターがん対策センターの小山 史穂子氏らが評価した。その結果、多量飲酒者(エタノール46g/日以上摂取)では非飲酒者と比較して死亡リスクが1.36倍、女性では2.52倍になることが示唆された。Cancer Epidemiology誌2024年4月号に掲載。 本研究は、1975~2010年に診断され、院内がん登録で特定された2,626例の口腔がんおよび咽頭がん患者を対象に、最長10年間追跡調査した。対象者をアルコール摂取量により、非飲酒者、元飲酒者、軽度飲酒者(エタノール23g※/日以下)、中程度飲酒者(23~46g/日)、多量飲酒者(46g/日超)の5群に分け評価した。飲酒と10年全死亡率との関連は、性別、年齢、原発部位、病期、多発がんの数、手術、放射線療法、化学療法、喫煙状況、診断年について調整後、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。※エタノール23g:日本酒1合(180mL)、ビール大瓶1本(633mL) 主な結果は以下のとおり。・非飲酒者に比べ、元飲酒者(ハザード比[HR]:1.59、95%信頼区間[CI]:1.28~1.96)および多量飲酒者(HR:1.36、95%CI:1.14~1.62)の死亡リスクは有意に高かった。・多量飲酒者は男性(HR:1.35、95%CI:1.10~1.65)、女性(HR:2.52、95%CI:1.41~4.49)とも非飲酒者より死亡リスクが有意に高かった。

188.

がん罹患数が著増、がん死は減少~英国の25年/BMJ

 英国の年齢35~69歳の集団では、1993~2018年の25年間にがん罹患数が大きく増加したのに対し、がんによる死亡率は減少しており、この減少にはがんの予防(喫煙防止策、禁煙プログラムなど)と早期発見(検診プログラムなど)の成功とともに、診断検査の改善やより有効性の高い治療法の開発が寄与している可能性があることが、英国・Cancer Research UKのJon Shelton氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年3月13日号に掲載された。23部位のがんの後ろ向き調査 研究グループは、1993~2018年の英国の年齢35~69歳の集団における、23の部位のがんの診断数および死亡数を後ろ向きに調査した(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、国家統計局、ウェールズ公衆衛生局、スコットランド公衆衛生局、Northern Ireland Cancer Registry、イングランド国民保健サービスなどのデータを用いた。 主要アウトカムは、がんの年齢調整罹患率と年齢調整死亡率の経時的変化とした。前立腺がんと乳がんが増加、ほかは安定的に推移 35~69歳の年齢層におけるがん罹患数は、男性では1993年の5万5,014例から2018年には8万6,297例へと57%増加し、女性では6万187例から8万8,970例へと48%増加しており、年齢調整罹患率は男女とも年平均で0.8%上昇していた。 この罹患数の増加は、主に前立腺がん(男性)と乳がん(女性)の増加によるものだった。これら2つの部位を除けば、他のすべてのがんを合わせた年齢調整罹患率は比較的安定的に推移していた。 肺や喉頭など多くの部位のがんの罹患率が低下しており、これは英国全体の喫煙率の低下に牽引されている可能性が高いと推察された。一方、子宮や腎臓などのがんの罹患率の増加を認めたが、これは過体重/肥満などのリスク因子の保有率が上昇した結果と考えられた。 また、罹患数の少ない一般的でないがんの傾向については、たとえば悪性黒色腫(年齢調整年間変化率:男性4.15%、女性3.48%)、肝がん(4.68%、3.87%)、口腔がん(3.37%、3.29%)、腎がん(2.65%、2.87%)などの罹患率の増加が顕著であった。男女とも胃がん死が著明に減少 25年間のがんによる死亡数は、男性では1993年の3万2,878例から2018年には2万6,322例へと20%減少し、女性では2万8,516例から2万3,719例へと17%減少しており、年齢調整死亡率はすべてのがんを合わせて、男性で37%(年平均で-2.0%)低下し、女性で33%(-1.6%)低下していた。 死亡率が最も低下したのは、男性では胃がん(年齢調整年間変化率:-5.13%)、中皮腫(-4.17%)、膀胱がん(-3.24%)であり、女性では胃がん(-4.23%)、子宮頸がん(-3.58%)、非ホジキンリンパ腫(-3.24%)だった。罹患率と死亡率の変化の多くは、変化の大きさが比較的小さい場合でも統計学的に有意であった。 著者は、「喫煙以外のリスク因子の増加が、罹患数の少ない特定のがんの罹患率増加の原因と考えられる」「組織的な集団検診プログラムは、がん罹患率の増加をもたらしたが、英国全体のがん死亡率の減少にも寄与した可能性がある」「この解析の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を含めて、がんの罹患率およびアウトカムの今後10年間の評価基準となるだろう」としている。

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肉を避ければいびきをかきにくくなる?

 植物性食品中心の健康的な食事スタイルの人は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のリスクが低いことを示唆するデータが報告された。フリンダース大学(オーストラリア)のYohannes Melaku氏らの研究によるもので、詳細は「ERJ Open Research」に2月20日掲載された。 OSAは睡眠中に気道がふさがれて呼吸が止まることを繰り返す病気。睡眠が浅くなりやすく、また呼吸が止まる前後に大きないびきをかくことが多い。さらに、高血圧や2型糖尿病、脳卒中、心臓病のリスクとも関連することが知られている。このOSAは肥満に伴いやすい病気のため、摂取エネルギー量との関連がこれまでに研究されてきている。それに対してMelaku氏らは、食事の質とOSAリスクとの関連に焦点を当て、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた横断研究を行った。 解析対象は2005~2018年の4回のNHANES参加者のうち、データ欠落のない1万4,210人。24時間思い出し法により把握された食品摂取状況を基に、4種類の指標を用いて食事スタイルを評価し、OSAリスクとの関連を検討した。OSAリスクは、年齢、性別、BMI、血圧、いびき、疲労感などをスコア化する「STOP-BANG」という評価ツールで判定した。解析に際しては、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒・運動習慣、睡眠時間、心血管疾患・がん・糖尿病の既往、人種、婚姻状況、教育歴、収入などの影響を調整した。 解析の結果、四つの食事スタイル指標のうち三つで、OSAリスクとの有意な関連が見つかった。まず、植物性食品ベースの指標(PDI)のスコアの四分位で4群に分けると、スコアの高い群ほどOSAリスクが低いという負の関連が認められた(傾向性P=0.008)。健康的な植物性食品(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、豆類など)の摂取量が多いことを表す指標(hPDI)との関連も同様の結果だった(傾向性P=0.042)。 一方、非健康的な植物性食品(精製穀物、ジャガイモ、および糖分や塩分など)の摂取量が多いことを表す指標(uPDI)は、OSAリスクと正の関連が観察された(傾向性P=0.016)。ベジタリアン食らしさを表す指標(PVDI)についてはOSAリスクとの関連が非有意だった。 各指標の第1四分位群と第4四分位群を比較した場合、PDIでは第4四分位群でOSAリスクが19%低い可能性が示された〔オッズ比(OR)0.81(95%信頼区間0.66~1.00)〕。反対にuPDIについては第4四分位群で、22%リスクが高い可能性が示された〔OR1.22(同1.00~1.49)〕。 次に、性別に解析を行うと、hPDIとの関連は男性・女性ともに非有意となった。また男性はuPDIとの関連も非有意となり、PDIとの負の関連のみ有意だった。女性ではPDIとの関連が非有意となり、uPDIとの正の関連のみ有意だった。 本研究で示された食事スタイルとOSAリスクの関連のメカニズムについて、Melaku氏は「詳細は不明」としつつも、「健康的な植物性食品ベースの食事は、炎症や肥満を軽減したり、筋肉の緊張を抑制したりする可能性があり、それらを介してOSAリスクを低下させるのかもしれない」と述べている。また、食事スタイル指標とOSAリスクとの関連が男性と女性で部分的に異なっていた点に着目し、「OSAの治療では性差への留意が重要。栄養介入の際には、指導内容を性別に合わせて変更する必要がありそうだ」と述べている。

190.

高齢NSCLC患者へのICI、化学療法の併用を検討すべき患者は?

 PD-L1高発現(TPS≧50%)の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、PD-1またはPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、ICIと化学療法の併用療法は標準治療の1つとなっている。しかし、高齢者におけるエビデンスは限られており、ICI単剤療法とICIと化学療法の併用療法のどちらが適切であるかは明らかになっていない。そこで、70歳以上のPD-L1高発現の進行NSCLC患者を対象とした多施設共同後ろ向き研究において、ICI単剤療法とICIと化学療法の併用療法が比較された。その結果、ECOG PS0または非扁平上皮がんの集団では、ICIと化学療法の併用療法が全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善した。本研究結果は、京都府立医科大学の武井 翔太氏らによってFrontiers in Immunology誌2024年2月23日号で報告された。 本研究は、70歳以上でECOG PS0/1のPD-L1高発現の進行NSCLC患者のうち、初回治療でICI単剤療法による治療を受けた患者131例(単剤群)およびICIと化学療法の併用療法による治療を受けた68例(併用群)を対象とした。傾向スコアマッチングにより背景因子を調整し、両群のOSとPFSを比較した。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、単剤群が25.2ヵ月であったのに対し、併用群が42.2ヵ月であったが有意差は認められなかった(p=0.116)。・PFS中央値は、単剤群が10.9ヵ月、併用群が11.8ヵ月であり、有意差は認められなかった(p=0.231)。・単剤群のサブグループ解析において、喫煙歴のない患者はOSが有意に短かった(ハザード比[HR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.16~0.78、p=0.010)。・併用群のサブグループ解析において、ECOG PS1の患者(HR:3.84、95%CI:1.44~10.20、p=0.007)、扁平上皮がんの患者(同:0.17、0.06~0.44、p<0.001)はOSが有意に短かった。・ECOG PS0の集団におけるOS中央値は、単剤群が26.1ヵ月であったのに対し併用群は未到達であり、併用群が有意に長かった(p=0.0031)。同様にPFS中央値は単剤群が6.5ヵ月であったのに対し併用群は21.7ヵ月であり、併用群が有意に長かった(p=0.0436)。・非扁平上皮がんの集団におけるOS中央値は、単剤群が23.8ヵ月であったのに対し併用群は未到達であり、併用群が有意に長かった(p=0.0038)。同様にPFS中央値は単剤群が10.9ヵ月であったのに対し併用群は17.3ヵ月であり、併用群が有意に長かった(p=0.0383)。 本研究結果について、著者らは「PD-L1高発現の高齢NSCLC患者の治療選択時には、ECOG PSと組織型を考慮すべきである」とまとめた。

191.

タバコを吸いたくなくなる食べ物は、果物や乳製品

 喫煙の欲求は、特定の食べ物や飲み物と関連する。新たな研究により、紙巻きタバコ・加熱式タバコ喫煙者において、摂取するとタバコを吸いたくなる飲食品は、ビールなどのアルコール飲料、コーヒー、脂肪の多い食品などであることが判明した。反対に、タバコを吸いたくなくなる飲食品は果物や乳製品であり、喫煙者では非喫煙者と比べて、果物や乳製品の摂取量が有意に少なかったという。京都女子大学家政学部食物栄養学科の三好希帆氏、宮脇尚志氏らによるこの研究は、「Tobacco Induced Diseases」に1月5日に掲載された。 タバコの健康リスクや依存性は広く指摘されている。喫煙の欲求は摂取する食品と密接に関連しているが、欲求を効果的にコントロールする栄養学的な方法は確立されていない。また、日本で最近広まった加熱式タバコについては、まだ研究が少ない状況である。そこで著者らは、紙巻きタバコや加熱式タバコの喫煙者に対し、喫煙の欲求に関連する食品や味、調理方法などを横断的に調査した。 この研究は、非喫煙者178人、紙巻きタバコ喫煙者242人、加熱式タバコ喫煙者237人の計657人(40〜69歳)を対象に行われた。対象者のうち男性は322人(年齢中央値53歳)、女性は335人(同52歳)だった。習慣的な食事の調査として、「簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)」を用い、一般的な58種類の食品の摂取量を推定。喫煙者には、「摂取するとタバコを吸いたくなるか否か、どちらでもないか」を、各食品・味(甘い、苦い、辛いなど9種)・調味料(砂糖、塩、酢など7種)・調理方法(揚げる、炒める、煮るなど7種)・料理のカテゴリー(和食、中華、西洋、韓国料理)のそれぞれについて尋ねた。 その結果、摂取すると最もタバコを吸いたくなる飲食品はビール(78%)であり、アルコール飲料の多くが上位に位置した。また、ブラックコーヒー(65.6%)、焼き肉(44%)、ラーメン(33.3%)なども上位だった。最もタバコを吸いたくなる味、調味料、調理方法、料理のカテゴリーは、それぞれ油脂味(33.3%)、ソース(13%)、揚げ物(30.9%)、中華料理(42.9%)だった。反対に、摂取するとタバコを吸いたくなくなる飲食品は、果物や乳製品が上位に位置した。 非喫煙者と比較すると、喫煙者の方がアルコール飲料の摂取量(中央値)は有意に多かった(非喫煙者10.3、紙巻きタバコ喫煙者76.6、加熱式タバコ喫煙者39.4mL/1,000kcal/日)。一方、喫煙者の摂取量(中央値)が有意に少なかったのは、乳製品(同順に76.3、48.2、57.6g/日)および果物(同順に46.4、22.2、31.4g/1,000kcal/日)であり、喫煙欲求と関連する飲食品とその摂取量には関連があることが明らかになった。 さらに著者らは、加熱式タバコと紙巻きタバコ喫煙者では、喫煙欲求と関連する飲食品は異なるのかを検討している。「摂取するとタバコが吸いたくなる」と答えた人の割合を比較した結果、ラーメン(加熱式タバコ喫煙者38.4%対紙巻きタバコ喫煙者28.5%)、焼き肉(48.9対39.3%)、辛味(35.6%対23.3%)、油脂味(38.4%対28.5%)などの刺激の強い食品、油脂の多い食品は、紙巻きタバコ喫煙者よりも加熱式タバコ喫煙者の方が強く喫煙欲求と関連していた。調味料や味、調理方法、料理のカテゴリーの中にも有意差が見られるものがあったが、紙巻きタバコ喫煙者の方が割合が高いものはなかった。 以上から著者らは、「特定の食品やアルコールなどの飲み物、果物、乳製品は喫煙の欲求と関連している」と結論。果物や乳製品などについては、これらの食品に含まれる有機酸が唾液のpHに影響し、ニコチンの吸収を低下させる可能性があるため、喫煙者で摂取量が少ない可能性があると説明している。加熱式タバコと紙巻タバコで喫煙の欲求に違いが見られたことに関しては、ニコチンのレベルや味覚への影響の違いを可能性として挙げた上で、「さらなる研究が必要だ」としている。

192.

認知症リスクと喫煙に対する歯の喪失の影響~JAGESコホート研究

 歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。 65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者は3万2,986人(平均年齢:72.6±5.4歳、男性の割合:48.4%)。・フォローアップ期間中の認知症発症率は、2.11/100人年であった。・歯の喪失は、喫煙歴ありおよび現在の喫煙と認知症発症率との関係と有意に関連していた。・喫煙歴ありおよび現在喫煙者は、非喫煙者と比較し、残存歯数が少ないNIEは、HRが1.03(95%CI:1.02~1.05)、媒介比率が18.0%であった。 著者らは「歯の喪失は、喫煙歴や現在の喫煙と高齢者の認知症リスク増加との関連を強く媒介することが示唆された」としている。

193.

酒で顔が赤くなる人は、コロナ感染リスクが低い?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、日本は欧米などと比較して人口当たりの感染率・死亡率が低かったことが報告されている1,2)。この要因としては、手洗いやマスクなどの感染予防策が奏効した、日本の高い衛生・医療水準によるものなどの要因が考えられているが、アジア人に多い遺伝子型も一因となっている可能性があるとの報告がなされた。佐賀大学医学部 社会医学講座の高島 賢氏らによって国内で行われた本研究の結果は、Environmental Health and Preventive Medicine誌に2024年3月5日掲載された。 日本人をはじめとした東アジア人には、アルコールを分解するアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の活性が弱く、飲酒時に顔が赤くなる特性を持つ人(rs671変異体)が多い。研究者らは、遺伝子型と新型コロナウイルス感染の防御効果の関連を検証するため、rs671変異体の代替マーカーとして飲酒後の皮膚紅潮現象を用い、後ろ向きに解析した。調査はWebツールを使って2023年8月7~27日に行われ、参加者は感染歴、居住地、喫煙・飲酒歴、既往症などの質問に回答した。 主な結果は以下のとおり。・計807例(女性367例、男性440例)から有効回答を得た。362例が非紅潮群、445例が紅潮群だった。・2019年12月~23年5月の42ヵ月間の観察期間全体で、非紅潮群は40.6%、紅潮群は35.7%がCOVID-19に感染した。年齢、性別、居住地等で調整後、初感染までの時間は紅潮群のほうが遅い傾向があった(p=0.057)。・COVID-19による入院例は、非紅潮群は2.5%、紅潮群は0.5%であった。COVID-19感染および関連した入院リスクは、紅潮群で低かった(p=0.03および<0.01)。・日本人の多くがCOVID-19ワクチンの2回接種を終える前である2021年8月31日までの21ヵ月間では、紅潮群の非紅潮群に対するCOVID-19感染のハザード比は0.21(95%信頼区間:0.10~0.46)と推定された。 研究者らは、「本研究は、飲酒後の皮膚紅潮現象とCOVID-19の感染および入院のリスク低下との関連を示唆しており、rs671変異体が防御因子であることを示唆している。本研究は感染制御に貴重な情報を提供するとともに、東アジア人特有の体質の多様性を理解する一助となる」としている。

194.

禁煙後の体重増加は将来の高血圧発症と関連する可能性

 禁煙後の体重増加は血圧の上昇につながり、将来の高血圧発症と関連する可能性があることが、鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学の二宮雄一氏らの研究グループによる研究から明らかになった。日本人の一般集団を対象に分析した結果、禁煙した群では、喫煙を継続した群と比べて体重がより増加し、血圧値も上昇することが分かったという。詳細は「Hypertension Research」に1月5日掲載された。 禁煙は、慢性疾患リスクの低減や寿命の延伸、QOLの向上など健康面にさまざまなメリットをもたらす。一方で、禁煙後には体重や肥満度が増加することが知られており、禁煙意欲を低下させる要因の一つとなっている。また、禁煙後の体重増加が引き起こす健康への悪影響については、これまで心血管疾患や2型糖尿病に焦点を当てた研究が多く、高血圧との関連は明らかになっていない。そこで、二宮氏らは、禁煙後の体重増加とその後の高血圧発症の関連を検討するため、後ろ向き研究を実施した。 2005年から2019年の間に、鹿児島厚生連病院健康管理センターで年1回の健康診断を受診した成人男女23万4,596人のうち、禁煙6年後のデータを入手し得た856人を対象に分析した。禁煙後の体重増加と高血圧発症の関連以外にも、禁煙1年後および6年後の血圧値と降圧薬処方率の変化を評価。また、傾向スコアでマッチングした禁煙群(856人)と喫煙継続群(854人)の体重と血圧値を比較した。さらに、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)に影響を与える因子を特定するため、重回帰分析を行った。 禁煙1年後の体重増加の中央値(1.8kg)を基に、体重増加が1.8kg以上だった群(high weight gain:HWG群、428人)と1.8kg未満だった群(low weight gain:LWG群、428人)に分けて分析した(平均年齢:HWG群46.5歳、LWG群45.2歳、男性の割合:それぞれ93%、90%)。その結果、HWG群とLWG群のベースライン時の体重は同程度だったが、LWG群に比べてHWG群では禁煙1年後および6年後の体重が有意に増加した(ベースライン→禁煙1年後→6年後の平均体重:HWG群64.9±10.5kg→68.9±10.6kg→69.2±10.9kg、LWG群66.3±10.7kg→66.1±10.5kg→66.8±10.9kg)。 また、禁煙から6年後の降圧薬の処方率にはHWG群とLWG群で有意な差はなかったが、ベースラインから6年後のSBP値およびDBP値の変化には有意差が認められた(SBP:HWG群10.3±13.8mmHg、LWG群6.2±12.8mmHg、P<0.001、DBP:HWG群6.0±9.3mmHg、LWG群3.1±9.7mmHg、P<0.001)。重回帰分析の結果、SBP値の変化は年齢と大幅な体重増加の影響を受けたのに対し、DBP値の変化は大幅な体重増加の影響のみを受けていた。さらに、禁煙群と喫煙継続群の比較では、禁煙群の方が体重の増加幅が有意に大きく、6年間のSBP値とDBP値の変化も大きかった。 以上から、同氏らは「禁煙後の体重増加は、その後の血圧上昇をもたらす可能性があり、禁煙を希望する人には減量指導を行うことが有効だ」と結論。その上で、「禁煙を勧める際には、禁煙による健康へのベネフィットは、禁煙後の体重増加による悪影響を上回ることを強調すべきだ。また、診療ガイドラインでは、禁煙後の体重管理療法の時期や期間について言及する必要があるだろう」と述べている。

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ED治療薬がアルツハイマー病を予防?

 勃起障害(ED)治療薬が、アルツハイマー病(AD)のリスクを押し下げる可能性を示唆するデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のRuth Brauer氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に2月7日掲載された。ただし同氏らは、この研究は因果関係を証明可能なデザインで行われておらず、さらなる研究が必要な段階であることを強調している。 シルデナフィル(商品名はバイアグラ)、バルデナフィル(同レビトラ)、タダラフィル(同シアリス)というED治療薬は、作用機序から「ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)」と呼ばれる。これらのPDE5iには血管を拡張する作用があり、また血液脳関門(脳に異物が入り込まないようにするための仕組み)を通過することができ、動物実験では神経保護作用のあることが示されている。ただし、ヒトの認知機能との関連のエビデンスは少ない。Brauer氏らは、EDと診断された40歳以上の男性26万9,725人(平均年齢58.5±10.0歳)の医療記録を解析し、ヒトの認知機能に対するPDE5iの影響を検討した。なお、ベースライン時点で認知機能の低下が認められた患者は、この研究の対象から除外されている。 中央値5.1年(四分位範囲2.9~8.9)の追跡期間中に1,119人が新たにADと診断されていた。PDE5iの処方の有無で二分すると、処方されていた群では14万8,338人のうち749人がADを発症し、1万人年当たりの発症率は8.1(95%信頼区間7.5~8.7)だった。一方、PDE5iが処方されていなかった群は12万1,387人のうち370人がADを発症し、1万人年当たりの発症率は9.7(同8.7~10.7)だった。AD発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、喫煙・飲酒習慣、基礎疾患など)を調整後、PDE5iが処方されていた群は処方されていなかった群に比べて、AD発症リスクが18%低いことが明らかになった〔HR0.82(95%信頼区間0.72~0.93)〕。 この結果についてBrauer氏は、「示された結果をほかの対象で確認し、PDE5iが認知機能に及ぼす潜在的なメリットとそのメカニズムの理解を深める必要がある」と述べている。また、「この結果が女性にも当てはまるのかどうかの確認も欠かせず、それには男性と女性の双方が参加する無作為化比較試験の実施が求められ、さらには最適な投与量の検討も必要になる」とのことだ。 この研究のみでは、PDE5iがADのリスクを抑制すると結論付けることはできない。しかしBrauer氏は、今回の研究結果がAD関連研究の興味深い方向性を示していると考えている。同氏は、「ADの初期段階にある人々に対して、ADの原因とされる脳内のアミロイド斑を薬剤で除去するという、新しい治療法が行われるようになりつつある。しかし、ADの発症を予防することのできる方法の確立が、喫緊の課題となっている。われわれの研究を臨床に生かすにはさらなる研究が必要ではあるものの、心強い知見と言えるのではないか」と語っている。

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ドライアイは歯周病と有意に関連

 ドライアイは一般的な眼疾患であり、コンタクトレンズの使用や加齢のほか、自己免疫疾患などによっても生じる。今回、日本人成人を対象とする大規模な研究が行われ、ドライアイの診断を受けたことがある人ほど、歯周病の罹患率が高いことが明らかとなった。新潟大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野の小川祐司氏らによる研究であり、詳細は「BMC Oral Health」に1月8日掲載された。 歯周病は世界的に罹患率が高く、日本人が歯を失う原因の第1位となっている。歯周病の人は口内細菌により長期の全身炎症が生じることから、全身疾患のリスクが上昇する可能性がある。一方、ドライアイについても、炎症との関連を指摘する研究が報告されている。これまでの研究から、ドライアイと歯周病の関連が示唆されるものの、エビデンスは限られ、日本人における知見は不足している。 そこで著者らは、「魚沼コホート研究」の2012~2014年におけるベースラインデータを用いて、新潟県の南魚沼市と魚沼市に居住する40歳以上の日本人成人を対象に、ドライアイと歯周病の関連を検討した。データは質問紙を用いて収集され、社会人口学的要因(年齢、性別、BMI、同居者数)、喫煙・飲酒習慣、歯周病の診断歴(歯科医師の診断)、歯や口の状態(残存歯数、咀嚼能力)、ドライアイの診断歴(医師の診断)、主観的な眼症状(乾燥感、異物感)が調査された。 解析対象は3万6,488人(平均年齢63.3歳、男性47.4%)だった。歯周病の診断歴がある人の割合は39.3%であり、男性では42.1%(1万7,302人中7,278人)、女性では36.8%(1万9,186人中7,067人)と有意な男女差が認められた。ドライアイの診断歴がある人の割合は、男性では6.7%(1,163人)、女性では7.1%(1,354人)で、有意差はなかった。 ドライアイの診断歴や眼症状、歯周病の診断歴がある人の割合を比較すると、男性の場合、眼の乾燥感または異物感のある人では、これらの眼症状がない人と比べて、歯周病の診断歴がある人の割合が有意に高かった。一方、女性では、これらの眼症状は歯周病の診断歴とは関連していなかった。反対に女性では、ドライアイの診断歴がある人ほど、歯周病の診断歴がある人の割合が有意に高かった。 歯周病の診断歴と関連する要因を多変量ロジスティック回帰で分析した結果、ドライアイの診断歴が有意な関連因子であることが判明した。そのオッズ比は、社会人口学的要因の影響のみを調整すると1.13(95%信頼区間1.04~1.23)、喫煙・飲酒習慣を加えて調整すると1.13(同1.03~1.23)、さらに歯や口の状態を加えて調整すると1.12(同1.03~1.22)だった。 以上から著者らは、因果関係は確立していないとした上で、「ドライアイの診断歴や眼症状があることと、歯周病の発症が関連する可能性が高いことが示唆された」と結論。ドライアイと歯周病の関連のメカニズムに関しては、さらなる研究が必要だという。また、予防や管理には、「適切な口腔衛生の習慣、総合的な健康の維持、ライフスタイルの意識的な選択などの、多面的なアプローチ」を推奨している。

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喫煙による咽頭がんリスク、非喫煙者の9倍に

 飲酒、喫煙ががん罹患リスクと関連するとの報告は多いが、頭頸部がんと飲酒、喫煙、食習慣との関連をみた研究結果が発表された。米国・ワシントン大学のDaniel P. Lander氏らによる本研究の結果は、JAMA Otolaryngology誌オンライン版2024年2月8日号に掲載された。 本研究は、前立腺がん、肺がん、大腸がんおよび卵巣がん検診に関する臨床試験参加者のコホート解析だった。参加者は55~74歳、1993年11月~2001年7月に全米10施設で募集された。頭頸部がんを発症した参加者は、喫煙、飲酒、食習慣解析のため、人口統計学および頭頸部がん家族歴に加え、喫煙状況および喫煙期間に基づいて対照群とマッチングされた。データ解析は2023年1~11月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・計13万9,926例(女性51%、平均年齢62.6[SD 5.4]歳)が解析の対象となった。追跡期間中央値12.1(四分位範囲[IQR]:10.3~13.6)年に571例が頭頸部がんを発症した。・喫煙に関連した頭頸部がんのリスクはがんの部位が肺に近いほど増加し、リスクが最大だったのは喉頭がんだった(現在喫煙者の非喫煙者と比較したハザード比[HR]:9.36、95%信頼区間[CI]:5.78~15.15)。・飲酒と食習慣の解析には、喫煙解析例のうち9万4,466例が含まれ、追跡期間中央値12.2(IQR:10.5~13.6)年で264例が頭頸部がんを発症した。・頭頸部がんリスクは大量飲酒で増加(HR:1.85、95%CI:1.44~2.38)した一方で、全粒穀物の摂取(1オンス/日、HR:0.78、95%CI:0.64~0.94)、果物の摂取(1カップ/日、HR:0.90、95%CI:0.82~0.98)、Healthy Eating Index 2015でスコア化した健康的な食事の摂取(10ポイント、HR:0.87、95%CI:0.78~0.98)で減少した。 研究者らは「喫煙に関連する頭頸部がんのリスクは、肺に近い部位ほど大きくなった。大量飲酒はより大きな頭頸部がんのリスクと関連したが、健康的な食事はリスクの緩やかな低下と関連した」とした。

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電子タバコは本来の目的を逸脱せず禁煙目的に限定して代替タバコ(禁煙補助剤)として使用、盲目的に長期使用するのは時期尚早で危険!―(解説:島田俊夫氏)

 広義の電子タバコは、加熱式タバコと狭義の電子タバコの総称です。わが国の特徴は加熱式タバコ使用者が多い。 “電子タバコ”は元来タバコがやめられない、いわゆる紙巻きタバコ中毒患者用の代替タバコ(禁煙補助剤)として開発。その本来の目的を逸脱して使用する傾向に、懸念を抱かざるを得ません。 タバコメーカーの広告情報から毒性が低いと信じ込んでいる喫煙者が、電子タバコを文字どおり安全だと疑うこともなく飛びつくのは危険です。 目下のところ、毒性を含む安全性確認のためのエビデンスが乏しいと考えるのが妥当ではないでしょうか。 このように毒性を含む安全性に十分なエビデンスのない状況下で、紙巻きタバコよりも電子タバコの毒性が少なく、安全だと決めつけるのは危険極まりない行為だと思います1,2)。 紙巻きタバコはスバリ言えば、“百害あって一利なし”です。電子タバコも同様に有害です。禁煙目的に限り、短期のみ使用するのが正しい使い方だと思います。最近、スイス・ベルン大学のReto Auer氏らがスイス国内の5施設で実施した無作為非盲検比較試験の結果を、電子タバコに関連する論文としてNEJM誌2024年2月15日号に掲載されたので私見をコメントします。 本研究をごく簡単に解説します。 広告により、1日5本以上の喫煙を12ヵ月以上継続し、登録後3ヵ月以内に禁煙を希望する18歳以上の成人を募集し、基準を満たしたボランティアを1:1の比率でランダムに介入群(622例:標準禁煙カウンセリング+電子タバコと電子タバコ用リキッド[無料]、オプションでニコチン代替療法[有料])と対照群(624例:標準禁煙カウンセリング+ニコチン代替療法を含むあらゆる目的で使用できるクーポンの配布)に割り当てた。・生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続率は介入群28.9% vs.対照群16.3%(95%CI:8.0〜17.2)、粗相対リスク1.77(95%CI:1.43〜2.20)ともに有意であった。・6ヵ月後の受診前7日間にタバコを使用しなかったと自己申告した参加者の割合は、介入群59.6%、対照群38.5%であった。一方でニコチン(タバコ、ニコチン入り電子タバコ、ニコチン代替療法)の使用を全面的にやめた参加者割合は、介入群20.1%、対照群33.7%であった。・重篤な有害事象は介入群:25例(4.0%)、対照群:31例(5.0%)で有意差なく、有害事象は介入群:272例(43.7%)、対照群:229例(36.7%)とむしろ介入群で有意に高かった。 結論としては、日常5本以上のタバコを吸う18歳以上の禁煙希望者に、標準的禁煙カウンセリングに無料で電子タバコを追加提供することで、禁煙カウンセリング単独によるフォローアップと比較し、禁煙率が増加したが重篤な有害事象は両群で差がなく、介入群でむしろ電子タバコの利用率、有害事象が有意に増加した。電子タバコの安全性が保証されていない現況では、禁煙率の改善を素直に喜べる結果として受け入れられない(電子タバコ中毒を増加させている恐れがある)。 電子タバコは確固たる安全性保証のない限り、安易に代替タバコとして使うべきでないと考える。

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非ウイルス性肝疾患による死亡リスクは女性の方が高い

 飲酒やメタボリックシンドローム(MetS)が関与して生じる肝臓の病気は、男性に比べて女性は少ないものの、それによる死亡率は男性よりも女性の方が高いことが報告された。青島大学医学院付属医院(中国)のHongwei Ji氏、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のSusan Cheng氏が、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した結果であり、「Journal of Hepatology」2月号にレターとして掲載された。 肝臓の病気の原因のうち、C型肝炎などのウイルスによるものは治療が進歩して患者数が減少している一方で、MetSなどの代謝性疾患に伴う脂肪性肝疾患「MASLD」やアルコール関連の肝疾患「ALD」、および代謝性疾患とアルコール双方の影響による肝疾患「MetALD」と呼ばれる肝疾患が増加している。Cheng氏は、それらの肝疾患の有病率と死亡率の実態を性別に検討した。 1988~1994年のNHANES参加者から、20歳未満および解析に必要なデータのない人を除外し、1万7人(平均年齢42±15歳、女性50.3%)を解析対象とした。各疾患の定義は、MASLDについては心臓代謝疾患のリスク因子があること、ALDは飲酒量がアルコール換算で男性420g/週超、女性350g/週超、MetALDは同順に210~420g/週、140~350g/週であり、画像検査で脂肪肝が確認されたものとした。 各疾患の患者数は、MASLDが1,461人、ALDが105人、MetALDが225人だった。これらの有病率を性別に見ると大きな性差が認められ、3タイプの疾患の全て、男性の有病率の方が高かった。具体的には、男性ではMASLD、ALD、MetALDの順に18.5%、1.7%、3.2%であるのに対し、女性は10.3%、0.3%、1.2%だった(すべてP<0.001)。一方、死亡リスクについては以下のように、女性の方が高い傾向にあった。 中央値26.7年の追跡で、2,495人の死亡が記録されており、年齢やBMI、人種、喫煙習慣、収縮期血圧、脂質異常症、糖尿病、降圧薬・血糖降下薬・脂質低下薬の処方、世帯収入などを調整後の死亡ハザード比を性別に検討。すると、MetALDに関しては女性でのみ有意なリスク上昇が確認された〔男性1.00(95%信頼区間0.79~1.28)、女性1.83(同1.29~2.57)。ALDは男性・女性ともに有意なリスク上昇が確認されたが〔男性1.89(1.42~2.51)、女性3.49(1.86~6.52)〕、女性のリスクの方が高い傾向にあった(P=0.080)。MASLDは男性・女性ともに有意なリスク上昇は観察されなかった。 MetALDの「Met」とは「代謝性の」という意味の「metabolic」の略であり、肝臓への脂肪の蓄積を引き起こす可能性がある代謝性の問題、つまり肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症を指している。研究グループでは、「これらのリスク因子のいずれかが該当する女性は、飲酒には特に注意が必要」と述べ、その理由を「飲酒と代謝の問題が組み合わさると、肝臓に脂肪がより蓄積しやすくなるからだ」と解説している。 しかし、なぜ女性の肝臓がこれらの変化に対して、男性よりも脆弱であるのかはまだ明らかにされていない。Cheng氏らは現在、その理由の解明と、そのようなリスクの抑制につながる介入方法の確立に向けて、新たな研究を計画している。

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RSウイルスの疾病負担、早産児で長期的に増大/Lancet

 早産児は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連疾患の負担が過度に大きく、乳幼児のRSVによる入院の25%が早産児であり、とくに早期早産児で入院のリスクが高く、この状態は生後2年目までは続くことが、中国・南京医科大学のXin Wang氏らRespiratory Virus Global Epidemiology Networkが実施したRESCEU研究で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月14日号に掲載された。2歳未満の早産児の疾患負担をメタ解析で評価 研究グループは、在胎週数37週未満で出生した乳幼児におけるRSV関連の重症急性下気道感染症(ALRI)の世界的な疾病負担とリスク因子の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を行った(EU Innovative Medicines Initiative Respiratory Syncytial Virus Consortium in Europeの助成を受けた)。 1995年1月1日~2021年12月31日に発表された研究の集計データと、Respiratory Virus Global Epidemiology Networkが共有する呼吸器感染症に関する個々の患者データを用いて、早産で出生した2歳未満の乳幼児の地域におけるRSV関連ALRIの発生率、入院率、院内死亡率、および全死亡率を推定した。在胎週数32週未満を早期早産、32~<37週を後期早産とした。2019年のALRI 165万件、入院53万3,000件 47件の論文と、共同研究者の提供による個々の患者データを含む17件の研究を解析の対象とした。 2019年には、世界の早産児において、生後0~<12ヵ月にRSV関連ALRIエピソードが165万件(95%不確実性範囲[UR]:135万~199万)発生したと推定され、このうち154万件(93%)が開発途上国であった。 同様に、RSV関連入院は53万3,000件(95%UR:38万5,000~73万)で、このうち49万3,000件(92%)が開発途上国、RSV関連院内死亡は3,050件(95%UR:1,080~8,620)で、2,700件(88.5%)が開発途上国で発生した。また、RSVに起因する死亡が早産児で2万6,760件(95%UR:1万1,190~4万6,240)発生しており、これは全乳幼児のRSV死の40%(17~65)に相当した。早期早産児でALRIの発生率と入院率が高い 早期早産児では、RSV関連ALRIの発生率と入院率が、すべての在胎週数で出生した乳幼児と比較して有意に高かった(年齢別、アウトカム別の率比[RR]の範囲は1.69~3.87)。また、生後2年目(12~<24ヵ月)には、早期早産児は全乳幼児と比較して、RSV関連ALRIの発生率は同程度であったが、入院率は有意に高かった(RR:2.26、95%UR:1.27~3.98)。 後期早産児におけるRSV関連ALRIの発生率は、1歳未満の全乳幼児と同程度であったが、生後6ヵ月までのRSV関連ALRIによる入院率は後期早産児で高かった(RR:1.93、95%UR:1.11~3.26)。院内死亡率は同程度 全体として、すべての在胎週数の乳幼児におけるRSV関連ALRIによる入院の25%(95%UR:16~37)を早産児が占めた。早産児におけるRSV関連ALRIによる院内死亡率は全乳幼児と同程度であった。 RSV関連ALRIの発生との関連を認めた因子は、主に周産期および社会人口統計学的な特性(母親の妊娠中の喫煙、5歳未満の子供が2人以上いる家庭、多胎児)であった(オッズ比[OR]の範囲は1.68~1.80)。また、入院を要する感染による重篤なアウトカムとの関連を認めた因子は、主に先天性心疾患、気管切開、気管支肺異形成症、慢性肺疾患、ダウン症候群などの基礎疾患だった(ORの範囲は1.40~4.23)。 著者は、「これらの知見は、早産児および乳幼児におけるRSVの予防と臨床管理の戦略を最適化するための重要なエビデンスとなる」としている。

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