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地中海食で女性の全死亡リスクが23%低下

 地中海式ダイエットを遵守している女性は全死亡リスク、がんや心血管疾患による死亡リスクが低く、この関連にはホモシステインなどの低分子代謝物質の多寡が寄与していることが明らかにされた。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のSamia Mora氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月31日掲載された。 地中海式ダイエットは、植物性食品(ナッツ、種子、果物、野菜、全粒穀物、豆類)を中心に、魚、鶏肉、乳製品、卵などのタンパク源とアルコールを適度に取り、油脂類はオリーブオイルから摂取し、赤肉、加工食品、菓子などは控えるという食事スタイル。既に多くの研究によって、地中海式ダイエットが健康リスクの抑制に有用であることが示されているが、全死亡リスクに関する長期間の追跡データは限られている。また、地中海食がどのように健康リスクを抑制するのかというメカニズムの理解はまだ不足している。これらの疑問点を明らかにするためMora氏らは、同院と米ハーバード大学により女性医療従事者対象に行われている疫学研究(Women's Health Study;WHS)のデータを用いた解析を行った。 解析対象はWHS参加者のうちデータ欠落などのない2万5,315人(平均年齢54.6±7.1歳、白人94.9%)。地中海式ダイエットの遵守状況は、131項目の質問から成る食物摂取頻度調査票の回答を基に0~9点の範囲にスコア化し、0~3点の群(39.0%)を低遵守、4~5点の群(36.3%)を中遵守、6~9点の群(24.7%)を高遵守と判定した。対象全体のスコアの中央値は4.0(四分位範囲3.0~5.0)だった。24.7±4.8年の追跡期間中に、心血管死935人、がん死1,531人を含む3,879人が死亡していた。 年齢と摂取エネルギー量、および、WHSの初期段階で実施された介入に用いた薬剤の影響を調整後、低遵守群を基準とする全死亡リスクは中遵守群〔ハザード比(HR)0.84(95%信頼区間0.78~0.90)〕、高遵守群〔HR0.77(同0.70~0.84)〕ともに有意に低く、遵守率が高いほど全死亡リスクが低いという関連が認められた(傾向性P<0.001)。また、高遵守群では心血管死〔HR0.86(0.69~0.99)、傾向性P=0.033〕、がん死〔HR0.80(0.69~0.92)、傾向性P=0.002〕のリスク低下も認められた。調整因子に喫煙・飲酒・運動習慣、閉経前/後、ホルモン補充療法の施行を追加すると関連性はやや弱くなったが、全死亡リスクについては引き続き有意な関連があった〔中遵守群がHR0.92(同0.85~0.99)、高遵守群はHR0.89(0.82~0.98)、傾向性P=0.001〕。 次に、地中海式ダイエットと全死亡リスク低下の関連に対する各種バイオマーカーの寄与度を検討。その結果、低分子代謝物質(ホモシステインやアラニンなど)と炎症マーカーの寄与が大きく、それぞれの寄与割合は14.8%、13.0%と計算された。その他の寄与因子としては、トリグリセライドが豊富なリポ蛋白(寄与割合は10.2%)、BMI(同10.2%)、インスリン抵抗性(7.4%)などが抽出された。 この結果についてMora氏は、「われわれの研究結果は、長生きをしたい女性は食生活に気をつける必要があることを示している」と話している。

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AIを用いた血液検査で肺がんを早期発見

 人工知能(AI)により、血液中のセルフリーDNA(cfDNA)と呼ばれるDNA断片のパターンに基づいて肺がんリスクのある人を特定できることが、新たな研究で示された。論文の共著者で、米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのVictor Velculescu氏は、「われわれは、医師の診察室で実施可能な簡便な血液検査を手に入れた。この検査により、CT検査で確認すべき肺がんの潜在的な兆候が認められるかどうかが分かる」と話している。研究の詳細は、「Cancer Discovery」に6月3日掲載された。 世界保健機関(WHO)によると、肺がんは世界で最も死亡率の高いがんである。肺がんリスクの高い人では、CTによる肺がん検診を毎年受けることで、まだ治療可能な段階の早期がんを発見でき、がんによる死亡を防ぐことが可能になる。米国予防医療専門委員会(USPSTF)は、喫煙歴がある50〜80歳の人に対し、肺がん検診を年に1回受けることを推奨しているが、実際に毎年、検診を受けているのはそのうちの6〜10%であるという。Velculescu氏は人々が検診を敬遠する理由として、予約から受診までにかかる時間の長さと低線量CT検査での放射線被曝を挙げている。 こうした肺がん検診へのハードルを下げるためにVelculescu氏らはこの5年間、AIを用いて肺がん患者に特徴的なcfDNAを検出する血液検査の開発に取り組んできた。この検査法(cfDNAフラグメントームアッセイ)は、正常細胞とがん細胞との間に見られるDNAの折り畳まれ方の違いを利用している。研究グループの説明によると、正常細胞のDNAは、巻き上げられた毛糸玉のように整然と折り畳まれているのに対し、がん細胞のDNAの折り畳まれ方はより乱雑であり、細胞死に伴い血液中に放出されるがん患者のcfDNAは、がんのない人のcfDNAより混沌としていて不規則な傾向があるのだという。 Velculescu氏らは、576人の肺がん患者および非肺がん患者の血液サンプルを用いてAIソフトウェアを訓練し、血液中の特定のcfDNA断片化パターンを識別できるようにした。その後、382人のがん患者および非がん患者の血液サンプルを用いて、この検査の肺がん識別能を検証した。その結果、この検査の陰性的中率は99.8%と非常に高いことが明らかになった。これは、肺がんの可能性があるのに見逃されてしまう人が1,000人中わずか2であることを意味する。 さらに、コンピューターシミュレーションを用いて、この血液検査により肺がん検診の受診率が5年以内に50%にまで向上した場合にどうなるのかをシミュレートした。その結果、検出される肺がんの数が4倍になり、早期に発見されるがんの割合は約10%増加し、これにより、5年間で約1万4,000人のがんによる死亡を防ぐことができると推定された。 Velculescu氏は、「この検査は安価で、非常に大規模に実施することが可能だ。この検査により肺がん検診がもっと身近になり、より多くの人が検診を受けるようになると、われわれは信じている。それにより、早期に発見され治療される肺がんも増えるだろう」とジョンズ・ホプキンス大学のニュースリリースの中で述べている。 この血液検査はすでに試験室で使用可能である。研究グループは、肺がん検診に使用するために米食品医薬品局(FDA)の承認を求める予定であるとしている。

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初回禁煙治療をバレニクリンまたは併用ニコチン代替療法で行い失敗した場合の有効な次の手だて(初期治療薬剤の用量アップ?)(解説:島田俊夫氏)

 タバコは「百害あって一利なし」といわれています。この言葉は耳にたこができるほど聞いているけれど禁煙成功率は相変わらず低い1,2)。喫煙は自分のみならず他人をも巻き込む悪習です。元気で長生きしたければ病気になるリスクを減らすことが最善の策です。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らが、二重盲検ランダム割り付けによる6週間の禁煙初期治療に失敗した対象者を継続/増量/切り替えの3群にランダムに再割り付けを行った治療継続6週後の研究成果を、JAMA誌オンライン版2024年5月2日号に報告しました。これまで初期治療失敗者を継続し、再治療目的の割り付けにより治療効果を検証した研究はごく少なくコメントします。研究概略参加者(Paticipants) 2015年6月〜2019年10月にテキサス州ヒューストン地域の禁煙志願者490例(適用基準:18~75歳、1日5本以上喫煙、呼気CO濃度6ppm以上)をメディア広告により募集し、ランダムにバレニクリン群(V群)、併用ニコチン置換療法群(CN群)に割り付けた。介入および研究デザイン初期治療 V群(バレニクリン2mg/日+Placebo CNRT)かCN群(CNRT[21mg-Patch+2mg-lozenges]+Placeboバレニクリン)のいずれかにランダム割り付けした(1相)。初期治療禁煙成功群はV群、CN群ともにそのまま継続、禁煙失敗例は6週後に再ランダム割り付けした(2相)。初期治療失敗群は両群ともそれぞれ増量V群(3mgバレニクリン+Placebo CNRT)、継続V群(2mgバレニクリン+Placebo CNRT)、切り替えV群(V→CN)(CNRT[21mg pactch+2mg lozenges]+Placeboバレニクリン)、CN群:継続CN群(CNRT[21mg pactch+2mg lozenges]+Placeboバレニクリン)、増量CN群(CNRT[two 21mg patches+2mg lozenges]+Placeboバレニクリン)、切り替えCN群(CN→V)(2mgバレニクリン+Placebo CNRT)に割り付けた。再評価V群 現状継続群、増量群、切り替え群(CN群)CN群 現状継続群、増量群、切り替え群(V群)とくに初回禁煙治療失敗後の治療による禁煙率の改善評価 12週の治療終了時の7日禁煙率:自己申告による7日禁煙と生化学的に検証した呼気CO濃度6ppm未満で評価。その結果、V群の失敗例では用量増加群で現状継続群との比較で禁煙率の改善を認め、CN群の失敗例では用量増加群と切り替え群で禁煙率の改善を認めた。コメント 代表的な現行のV療法、CN療法によるRCTデザインによる1相の6週間での治療効果を評価後、禁煙失敗例(2相)に対してランダムに再割り付け後に、治療法を現行継続、増量、切り替えに変更して禁煙成功率の改善状況を分析しました。両群いずれにおいても用量を増加すれば改善することが判明しましたが、CN群ではV群への切り替えで効果が確認されたが逆は真ならずで、V群をCN群に切り替えても効果はありませんでした。 今回の研究から、副作用の心配も多少ありますが、治療開始時の用量設定をもう少し高用量にすることが禁煙率アップにつながることを示唆しています。 初回治療が失敗でも諦めず、用量増加により禁煙率の改善が期待できることを確認した意義は大きく、禁煙を望む者に勇気を与える結果ではないでしょうか。

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第101回 桂ざこばさん逝去、喘息とCOPDのオーバーラップの治療は

エイコ呼吸器内科領域で「エイコ」と呼ばれる病態があります。人の名前ではなく、「ACO(asthma and COPD overlap)」のことを指します。桂ざこばさんが、この病態に罹患しておられ、先日逝去されたと報道されました。ACOの患者さんは、呼吸器内科以外では診療されていないかもしれませんが、調べると結構多い病態です。ACOは、喘息になりやすい2型炎症の素因に加えて、喫煙者に多いCOPDが加わることで、1秒量・1秒率がガクンと下がる病態です。典型的には「成人持ち越し喘息・アトピー素因がある喫煙者」という患者像になります。喘息であるにもかかわらず、胸部CTにおいて気腫肺を確認することでも疑うことが可能です。日本と海外の齟齬日本呼吸器学会では、ACOの日本語表記を「喘息とCOPDのオーバーラップ」として、2018年と2023年に診断と治療の手引きを刊行しています1)。しかしながら、単一疾患概念(single disease entity)として、実は議論の余地があります。喘息の国際ガイドラインGINA20242)では、「基本的に喘息は喘息として対応し、COPDはCOPDとして対応する」というsingle disease entityとしての確立には否定的です。同様に、COPDの国際ガイドラインGOLD20243)においても、「もはやACOという表記は行わない」と明記されています。ですので、国際的にもACOという病態は「喘息とCOPDの足し算」と認識されており、この病名自体はもしかして消えゆく運命にあるのかもしれません。とはいえ、軽視してよいかというとそういうわけではなく。あくまで学術的な定義は不要ということであって、2型糖尿病+肥満、高血圧症+慢性腎臓病などのように、合併した場合には警戒度を上げて対応すべきです。吸入薬はどれを選択するか?ACOの治療は、喘息の吸入薬とCOPDの吸入薬で同時に治療することが肝要になります。重症の場合は、吸入ステロイド(ICS)/吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)/吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)合剤のトリプル吸入療法が適用され、それに満たない場合には喘息主体の場合ICS/LABA合剤、COPD主体の場合ICS+LAMAが選択されます。ただ、ICS/LAMAという合剤が存在しないため、COPD寄りのACOではICS+LAMAで両者を分けて処方することがガイドライン上想定されています。しかしながら、吸入薬とは服薬アドヒアランスが高いこと前提にある世界です。そのため、ICSとLAMAを別々に処方することは実臨床ではほぼなく、ICS/LABAで押すか、ICS/LABA/LAMAのトリプル吸入製剤を処方するかのどちらかになります。どちらの病名も適用して治療に当たるため、トリプル吸入製剤についてはどの製剤も保険適用上使用可能となります(表1)。画像を拡大する表1. トリプル吸入製剤参考文献・参考サイト1)喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版作成委員会. 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版. 2023年.2)2024 GINA Main Report Global Strategy for Asthma Management and Prevention.3)Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2024 Report.

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進展型小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法へのベバシズマブ上乗せの有用性は?(BEAT-SC)/ASCO2024

 進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療の1つに、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド(ACE療法)がある。非小細胞肺がんでは、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法は、アテゾリズマブ+化学療法と比較して優れた治療効果を有し、アテゾリズマブとベバシズマブには相乗効果があることが示されている1)。そこで、ED-SCLC患者を対象に、ACE療法へのベバシズマブ上乗せ効果を検討する「BEAT-SC試験」が、日本および中国で実施された。本試験において、ベバシズマブ上乗せにより無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したが、全生存期間(OS)の改善はみられなかった。大江 裕一郎氏(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、本試験の結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のED-SCLC患者333例・試験群(ACE+ベバシズマブ群):ACE療法(アテゾリズマブ+カルボプラチン/シスプラチン+エトポシド)+ベバシズマブを3週ごと4サイクル→アテゾリズマブ+ベバシズマブを3週ごと 167例(日本人66例)・対照群(ACE+プラセボ群):ACE療法+プラセボを3週ごと4サイクル→アテゾリズマブ+プラセボを3週ごと 166例(日本人75例)・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、治験担当医師評価に基づく奏効割合(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など・解析計画:PFSとOSは階層的に検定し、PFSが有意に改善した場合にOSの解析を実施することとした。OSについては3回の中間解析が予定され、今回は第1回中間解析の結果が報告された。・層別化因子:性別、ECOG PS、プラチナ製剤の種類(カルボプラチン/シスプラチン) 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群で同等であったが、過去の試験と比較して喫煙歴のない患者や脳転移を有する患者が多く、シスプラチンを用いる患者が少なかった。・主要評価項目の治験担当医師評価に基づくPFSの中央値は、ACE+ベバシズマブ群5.7ヵ月、ACE+プラセボ群4.4ヵ月であり、ACE+ベバシズマブ群がACE+プラセボ群と比較して有意に改善した(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54~0.90、p=0.0060)。・事前に規定したPFSのサブグループ解析では、現喫煙者のサブグループを除いてACE+ベバシズマブ群が良好な傾向にあった。・OSのデータは未成熟であったが、OS中央値はACE+ベバシズマブ群13.0ヵ月、ACE+プラセボ群16.6ヵ月であった(HR:1.22、95%CI:0.89~1.67、p=0.2212)。・ORRはACE+ベバシズマブ群81.9%、ACE+プラセボ群73.3%であった。DOR中央値はそれぞれ4.3ヵ月、4.0ヵ月であった。・治療関連有害事象の内訳は両群で同等であったが、蛋白尿と高血圧はACE+ベバシズマブ群に多く発現した。治療中止に至った有害事象は、ACE+ベバシズマブ群20.5%、ACE+プラセボ群16.5%に発現した。 大江氏は、本結果について「ACE+ベバシズマブ群はACE+プラセボ群と比較してPFSを有意に改善し、主要評価項目を達成した。OSは本解析時点では未成熟であり、ACE療法へのベバシズマブ上乗せによる改善はみられなかった。ACE療法へのベバシズマブ上乗せの忍容性はおおむね良好であり、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった」とまとめた。なお、OSについては、解析が継続される予定となっている。■関連記事ABCP療法、肺がん肝転移例に良好な結果(IMpower150)/ASCO2019

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女性では短時間睡眠がNAFLD発症と関連

 女性では、短時間睡眠が非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)の危険因子であるとの研究結果が発表された。日本人を対象とする縦断研究として、福島県立医科大学医学部消化器内科学講座の高橋敦史氏らが行った研究であり、「Internal Medicine」に4月23日掲載された。 NAFLDの発症や進行には不健康な生活習慣が関連しており、食習慣や運動などの身体活動に関するエビデンスは確立されている。一方で、睡眠時間とNAFLDのリスクとの関連については研究結果が一致せず、明らかになっていない。 そこで著者らは、2013年5月~2018年12月に福島県で2回以上の健診を受けた日本人を対象に縦断研究を実施。対象者は、1回目の健診時に33~86歳で、NAFLDを発症しておらず、B型肝炎抗原検査とC型肝炎抗体検査が陰性だった1,862人。そのうち男性は533人(年齢中央値65歳)、女性は1,329人(同64歳)だった。ピッツバーグ睡眠質問票を用いて睡眠時間を評価し、6時間未満、6~7時間未満、7~8時間未満、8時間以上に分類した。NAFLDは腹部超音波検査で評価した。 追跡期間の中央値は男性が39カ月、女性が47カ月であり、全体で483人(25.9%)がNAFLDを発症した。そのうち男性は159人(29.8%)、女性は324人(24.4%)だった。 NAFLD未発症のベースライン時点の生活習慣要因について、NAFLD発症者と非発症者で比較すると、男女ともに、NAFLD発症者は現在喫煙者の割合が有意に高かった。男性では、NAFLD発症者の方が、睡眠薬を使用している人、間食習慣のある人、朝食抜きの人の割合が有意に高く、運動習慣のある人の割合が有意に低かった。女性では、早食い人の割合がNAFLD発症者で有意に高かった。 同様に睡眠時間を比較したところ、女性では、NAFLD発症者の方が非発症者と比べて、6時間未満の人の割合が有意に高かった(23.8%対17.8%)。一方、男性では有意な差は見られなかった。女性について睡眠時間ごとに検討すると、6時間未満の人は7~8時間未満の人と比べて、NAFLD発症者の割合が有意に高かった(30.1%対21.2%)。 次に、睡眠時間とNAFLD発症との関連について、影響を及ぼし得る要因(年齢、性別、BMI、血圧、睡眠薬の使用、喫煙・運動・食事などの生活習慣、AST、ALT、γ-GTP、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、尿酸、HbA1c)を統計学的に調整した上で、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。その結果、睡眠時間が7~8時間未満の女性と比較して、6時間未満の女性におけるNAFLD発症のハザード比は1.55(95%信頼区間1.09~2.20)だった。すなわち女性では、短時間睡眠がNAFLDの独立した危険因子であることが明らかとなった。 著者らは今回の結果に関連して、女性の方が男性と比べて不眠症の有病率が高いことを挙げ、「将来のNAFLDの発症を予防するためには、十分な睡眠時間が必要だ」と述べている。また、糖尿病や肥満などの代謝異常を持つ脂肪肝として、MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)の概念が提唱されていることに言及し、さらなる研究の必要性を指摘している。

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古代人にも動脈硬化、ミイラの調査で判明

 心臓病といえば現代生活の副産物だと思われがちだ。しかし、4,000年以上に及ぶ7つの異なる文化圏の成人のミイラのCT画像を調査した結果、3分の1以上のミイラに動脈硬化の痕跡が見つかり、心臓病が何世紀にもわたって人類を苦しめてきた疾患であることが明らかになった。米セントルークス・ミッドアメリカ心臓研究所のRandall Thompson氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に5月28日掲載された。 この研究では、世界中の成人のミイラのCT画像データを用いて、動脈硬化の有無を調べた。動脈硬化は、動脈と予測される場所にカルシウムの沈着が見られる場合を「ほぼ確実な動脈硬化」、識別可能な動脈の壁にカルシウムの沈着が見られる場合を「確実な動脈硬化」と見なした。調査対象のミイラは、古代エジプト人(161体)、低地の古代ペルー人(54体)、ボリビア高地の古代アンデス人(3体)、19世紀のアリューシャン列島のアレウト族(4体)、16世紀のグリーンランドのイヌイット(4体)、古代プエブロ族(5体)、中世のゴビ砂漠の牧畜民(4体)の7つの文化圏に由来するものに、19世紀のアフリカ系米国人(1体)とオーストラリアの先住民(1体)も加えた計237体であった。これらのミイラの死亡時の平均年齢は40±11.6歳で、58.6%(139体)が男性だった。 調査の結果、全ての文化圏に属する89体(37.6%)のミイラで「確実な動脈硬化」、または「ほぼ確実な動脈硬化」が確認されることが明らかになった。動脈硬化が認められる場所を多い順に並べると、大動脈(51体、21.5%)、腸骨-大腿動脈(49体、20.7%)、膝窩-脛骨動脈(38体、16%)、頸動脈(33体、14%)、冠動脈(9体、0.4%)であった。一方、男性と女性の間(38.1%対38.5%、P=0.36)や、エジプト人と非エジプト人(上流階級に属さない者が多い)との間(39.1%対38.5%、P=0.48)には、動脈硬化が見つかったミイラの割合に有意な差は認められなかった。 Thompson氏は、「古いものでは紀元前2,500年以前に遡る全ての時代、全ての文化圏のミイラにおいて、男女ともに、上流階級の人物であるか否かにかかわりなく、動脈硬化が認められた」とし、「これは、動脈硬化が現代の生活習慣により引き起こされる症状ではないという、われわれが以前の研究で得た知見をさらに裏付ける結果だ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生まれつき動脈硬化のリスクがあることを示している」との見方を示している。またThompson氏は、「この研究は、喫煙、座位で過ごすことの多い生活、栄養バランスの悪い食事などの現代人の抱える心血管系のリスク因子が、加齢による自然なリスク増加に上乗せする形で動脈硬化の程度と影響を増大させる可能性があることを示している。だからこそ、コントロール可能なリスク因子をきちんとコントロールすることが重要なのだ」と話している。

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糖尿病合併症リスクは男性の方が高い

 男性の糖尿病患者は女性患者よりも合併症のリスクが高いことを示すデータが報告された。研究者らは、男性が女性に比べて自分自身を大切にしないことが一因ではないかと推測している。シドニー大学(オーストラリア)のAlice Gibson氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Epidemiology & Community Health」に5月16日掲載された。 糖尿病の有病率自体には男性と女性とで顕著な差はないが、合併症の罹患率は性別によって異なる可能性があり、特に心血管疾患(CVD)については男性の方がハイリスクであることが知られている。ただし、細小血管合併症のリスク差に関するエビデンスは多くない。Gibson氏らは、オーストラリアの45歳以上の地域住民を対象にした前向きコホート研究のデータを用いて、この点を検討した。 この研究では、参加登録時点で糖尿病を有していた45歳以上の成人2万5,713人(男性57%)を17万7,851人年追跡。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、BMI、野菜・果物の摂取量、喫煙・運動習慣、教育歴、保険の種類、糖尿病の家族歴、心血管疾患の既往歴、高血圧・高コレステロール血症の治療歴など)を調整したCox比例ハザードモデルにより合併症のリスクを解析した。その結果、以下のような性差が観察された。 CVDの罹患率は男性が1,000人年当たり43、女性が30で、女性に対する男性のハザード比(HR)は1.51(95%信頼区間1.43~1.59)、腎臓の合併症の罹患率は男性36、女性26でHR1.55(同1.47~1.64)、下肢の合併症は男性25、女性18でHR1.47(1.38~1.57)であり、いずれも男性が有意にハイリスクだった。 一方、眼の合併症に関しては罹患率が男性52、女性53でありHR0.94(0.89~0.98)と、女性の方がハイリスクだった。ただしこれは主に、白内障手術の施行が男性患者で少ないことの影響によるものであって〔HR0.90(0.86~0.95)〕、糖尿病網膜症のリスクは男性の方が有意に高かった〔HR1.14(1.03~1.26)〕。なお、糖尿病罹病期間(10年未満か以上か)は、合併症リスクに性差があるという本研究の結果に、実質的な影響を及ぼしていなかった。 糖尿病合併症のリスクが性別により異なる一つの理由として研究者らは、「健康リスクを抑えるためにライフスタイルを変えたり、検査を受けたり、必要な薬剤の使用を遵守する割合が、男性は女性よりも低いことが関係しているのではないか」と推測している。ただし、合併症のリスクそのものは、女性だからといって低いものではないことも、本研究の結果は示している。著者らは、「糖尿病の合併症、特にCVDや腎臓、下肢の合併症のリスクは男性の方が高いが、そのリスク自体は男女ともに高いと言える」と結論付けた上で、「糖尿病罹病期間にかかわらず男性は合併症ハイリスクであるものの、性別を問わず、糖尿病診断直後からの合併症スクリーニングと予防のための治療戦略が必要とされる」と総括している。

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くも膜下出血の発症リスクが上がる/下がる薬は?

 オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJos P. Kanning氏らは、動脈瘤によるくも膜下出血(aSAH:aneurysmal subarachnoid hemorrhage)の発症リスクを下げるとされる処方薬として、5剤(リシノプリル[商品名:ロンゲスほか]、アムロジピン[同:アムロジンほか]、シンバスタチン[同:リポバスほか]、メトホルミン[同:メトグルコほか]、タムスロシン[同:ハルナールほか])を明らかにした。一方で、aSAHの発症に関連している可能性がある薬剤についても示唆した。Neurology誌オンライン版2024年6月25日号掲載の報告。 研究者らは、処方薬とaSAH発症リスクとの関連性を体系的に調査するため、drug-wide association study(DWAS)を実施。Secure Anonymised Information Linkage(SAIL)データバンクの1982年1月1日以前に生まれた患者を研究対象とし、ICD-9およびICD-10を用いて2000~20年までの全aSAH症例を抽出した。さらに、各症例を年齢、性別で9つの対照群と無作為にマッチングさせ、さらに症例と対照の観察期間を比較できるようデータベースへの登録年を基にマッチングさせた。本研究集団の2%超に処方された薬剤を調査し、インデックス日(aSAH発生)前で、処方に関連する曝露期間を重複しないように3つ定義付けした(現在:インデックス日から3ヵ月以内、最近:インデックス日から3〜12ヵ月、過去:インデックス日から12ヵ月より前)。また、年齢、性別のほか、交絡因子の調整のためaSAHと薬物曝露に関連するであろう変数として、既知のaSAHリスク因子(喫煙状況、高血圧の有無、飲酒、BMI)についてコントロールし、インデックス日以前の1年間のヘルスケアの利用(かかりつけ医への来院数など)も評価した。 主な結果は以下のとおり。・aSAH群4,879例(平均年齢±SD:61.4±15.4歳、女性:61.2%)と対照群4万3,911例を照合した。・aSAH症例群は対照群よりもかかりつけ医の受診回数が多く(平均受診回数:23回vs.19回)、インデックス日以前の喫煙率(37% vs.21%)や高血圧症の既往(42% vs.37%)も高かった。・本研究中に特定された2,023種類の薬剤のうち、205種類(10.1%)が共通して処方されていた。・二項ロジスティック回帰分析でボンフェローニ補正を用いたところ、現在服用中でaSAH発症リスクが低下した薬剤は、リシノプリル(オッズ比[OR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.44~0.90)、アムロジピン(OR:0.82、95%CI:0.65~1.04)であった。ただし、両者とも服用が「最近」の場合には、aSAH発症リスクが上昇(リシノプリルのOR:1.30[95%CI:0.61~2.78]、アムロジピンのOR:1.61[95%CI:1.04~2.48])し、リシノプリルとアムロジピンで同様の傾向が見られた。・シンバスタチン(OR:0.78、95%CI:0.64~0.96)、メトホルミン(OR:0.58、95%CI:0.43~0.78)、タムスロシン(OR:0.55、95%CI:0.32~0.93)を現在服用中の場合でも、aSAH発症リスクの低下が認められた。・対照的に、ワルファリン(商品名:ワーファリンほか、OR:1.35、95%CI:1.02~1.79)、ベンラファキシン(同:イフェクサー、OR:1.67、95%CI:1.01~2.75)、プロクロルペラジン(同:ノバミン、OR:2.15、95%CI:1.45~3.18)、Co-codamol*(OR:1.31、95%CI:1.10~1.56)を現在服用中の場合、aSAH発症リスクの増加が認められた。*アセトアミノフェン・コデインリン酸塩、国内未承認

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禁煙を拒む患者に試すアプローチ法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者中性脂肪が高い原因は、タバコかもしれませんね。(Relevance:関連性)タバコは中性脂肪にも悪さをするんですね。そうですね。新型コロナの重症化とも関連していますしね。(Risks:危険性)えっ、そうなんですか!?(驚いた顔)ですが、すぐに禁煙できれば、体にさまざまな良い変化が現れますよ!(Rewards:効果)へぇー、そしたら血圧も下がりますかね。画 いわみせいじそうですね。ところで、禁煙するに当たって何か懸念されるようなことはありますか?(Roadblocks:懸念)意志が弱くて、続ける自信がなくて…。なるほど。意志が弱い方でも禁煙に成功する方法がありますよ!色々な方法があるので、また次回説明しますね。(Repetition:繰り返す)はい。わかりました。(うれしそうな顔)ポイント5Rアプローチは、か行(関連性、危険性、繰り返す、懸念、効果)で覚えておくと便利です。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)表.禁煙に無関心な喫煙者に対する5Rアプローチ5R内容Relevance(か:関連性)なぜ禁煙が必要かを患者に関連付けるRisks(き:危険性)喫煙の危険性を説明するRepetition(く:繰り返す)動機付けを繰り返すRoadblocks(け:懸念)禁煙への懸念を取り除くRewards(こ:効果)禁煙で得られる効果を確認する参考:川根博司, 工藤翔二, ほか編. 南江堂. 禁煙指導の実際. 呼吸器疾患 最新の治療 2007-2009. 2007:464-466.Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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うつ病と心血管疾患発症の関連、女性でより顕著

 日本人400万人以上のデータを用いて、うつ病と心血管疾患(CVD)の関連を男女別に検討する研究が行われた。その結果、男女とも、うつ病の既往はCVD発症と有意に関連し、この関連は女性の方が強いことが明らかとなった。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らによる研究であり、「JACC: Asia」2024年4月号に掲載された。 うつ病は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などのCVD発症リスク上昇と関連することが示されている。うつ病がCVD発症に及ぼす影響について、性別による違いを調べる研究はこれまでにも行われているものの、その明確なエビデンスは得られていない。 そこで著者らは、日本の外来・入院医療のレセプト情報データベース(JMDC Claims Database)より、2005年1月~2022年5月における健診データが利用でき、18~75歳の人のうちCVDや腎不全の既往のある人などを除いた412万5,720人(年齢中央値44歳、男性57%)を対象とする後方視的コホート研究を行った。初回健診以前にうつ病と診断されていた人を、うつ病の既往ありと定義した。CVDには心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動を含め、これらの複合を主要評価項目として男女別に解析した。 対象者のうち、うつ病の既往のあった人は男性が9万9,739人(4.2%)、女性が7万8,358人(4.5%)だった。平均追跡期間1,288±1,001日(最短1日~最長5,534日)において、CVDは男性で11万9,084件(1万人年当たり発症率140.1)、女性で6万1,797件(同111.0)発症した。 うつ病とCVD発症との関連について、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足の影響を統計学的に調整して解析した結果、うつ病の既往のCVD発症に対するハザード比は、男性で1.39(95%信頼区間1.35~1.42)、女性では1.64(同1.59~1.70)であり、男女ともに有意な関連が認められた。この関連には性別の影響が認められ、女性の方が男性と比べて関連が強いことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。また、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動のそれぞれとうつ病との関連、および性別の影響を解析した場合も、同様の結果が得られた(全て交互作用P<0.05)。 さらに、サブグループ解析として50歳以上と50歳未満に分けて検討した結果と、肥満の有無で分けて検討した結果のいずれにおいても、うつ病の既往とCVD発症との関連は、女性の方が強いことが明らかとなった。また、複数の感度分析を行った結果も一貫していた。 今回の研究により、うつ病とその後のCVD発症の関連は、女性の方がより顕著であることが示された。著者らは、考えられるメカニズムの一つとして、妊娠や閉経など、ホルモンが変化する重要な時期にうつ病を経験しやすいため、女性では心血管系への影響がより大きくなる可能性があると説明。一方で、男女差が生じるメカニズムの完全な解明には、さらなる研究が必要だとしている。著者らは、「うつ病とCVDの関連についての性差をよりよく理解し、うつ病の男性と女性のそれぞれに最適なケアを提供することで、心血管系の健康につながる可能性がある」と述べている。

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世界の平均寿命、2050年までに4年以上の延長を予測/Lancet

 今後30年間に世界の平均寿命(出生時平均余命)は男性では5年近く、女性で4年以上延長することが予測されるとの最新の分析結果を、世界疾病負担研究(GBD)の研究者らが、「The Lancet」5月18日号に発表した。こうした平均寿命の延長は、一般的に平均寿命が短い国々で顕著だという。研究グループは、「このような変化は、心臓病や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に加え、感染症や出産、栄養に関連するさまざまな健康問題の予防と発見、治療の改善をもたらした公衆衛生対策によるところが大きい」と説明している。 米ワシントン大学保健指標・評価研究所(IHME)所長のChristopher Murray氏らは、204の国と地域、21のGBD地域、7つのスーパーリージョン(GBDが疫学的類似性と地理的近接性に基づき設定した地域区分)、および世界全体の2022年から2050年までの原因別死亡率、損失生存年数(YLL)、障害生存年数(YLD)、障害調整生存年数(DALY)、平均寿命、および健康寿命(HALE)を予測した。 その結果、世界全体で平均寿命は2022年から2050年にかけて73.6歳から78.2歳へ延びると予測された。男女別に見ると、男性では71.1歳から76.0歳へ4.9年の増加、女性では76.2歳から80.5歳へ4.2歳の増加であった。また、同期間に健康な状態で生きる年数(HALE)は、男性では62.6歳から66.0歳へ、女性では64.7歳から67.5歳へ延びると予測された。さらに、全体的な平均寿命の延長に加え、地域間の平均寿命の格差が縮小することも予測された。Murray氏はこの点について、「サブサハラ(サハラ砂漠以南)のアフリカ地域で最大の平均寿命の延長が予測されており、高所得地域と低所得地域の間の健康格差が縮小傾向にあることを示している」とIHMEのニュースリリースの中で説明している。 一方で、平均寿命に影響を与える疾患に変化が起きていることも明らかになった。今後、平均寿命の長さには、感染症よりも心臓病や糖尿病、がん、肺疾患などの慢性疾患が与える影響の方が強まることが予測されたのだ。そのため、肥満や高血圧、偏った食事、運動不足、喫煙などのリスク因子が次世代の病気や寿命に最も大きな影響を与えることになる。 Murray氏は、「これらの増加しつつある代謝や食事のリスク因子、特に高血糖や高BMI、高血圧などの行動要因および生活習慣要因に関連するリスク因子に先手を打つことは、世界の人々の健康の未来に影響を与える絶好の機会となる」と話す。 なお、米国立保健統計センター(NCHS)の最近の報告書によれば、米国における平均寿命は2021年から2022年までの1年間に76.4歳から77.5歳に延びた。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、米国で平均寿命が延びたのはこの年が初めてだが、パンデミック前の平均寿命である78.8歳を下回った状態が続いているとNCHSは指摘している。

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東日本大震災による住宅被害や精神的ダメージと修正可能な認知症リスクとの関連

 東北大学の千葉 一平氏らは、地域住民の高齢者における、東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージと認知症の修正可能なリスク因子との関連を評価する目的で横断的研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2024年5月3日号の報告。 対象は、地域住民の高齢者2万9,039人(平均年齢:69.1±2.9歳、女性の割合:55.5%)。東日本大震災後の災害関連被害(住宅全壊または半壊)および精神的ダメージ(心的外傷後ストレス反応[PTSR])を、自己申告式アンケートを用いて収集し評価した。修正可能なリスク因子には、うつ病、社会的孤立、身体不活動、喫煙、糖尿病を含んだ。災害関連被害と修正可能なリスク因子との関連を評価するため、社会人口統計学的変数と健康状態変数を調整した後、最小二乗法および修正ポアソン回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・震災による住宅の全壊は2,704人(10.0%)、PTSRは855人(3.2%)で認められた。・修正可能なリスク因子の数は、住宅全壊者(β=0.23、95%信頼区間[CI]:0.19~0.27)およびPTSR者(β=0.60、95%CI:0.53~0.67)で有意に多かった。・住宅全壊者は、修正可能なリスク因子のうち、うつ病と身体的不活動の割合が高かった。・PTSR者は、修正可能なリスク因子のすべての分野で割合が有意に高かった。 著者らは「東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージは、認知症のリスク因子増加と関連していることが示唆された。認知症リスク軽減については、とくに災害で住宅被害や精神的ダメージを経験した高齢の被災者に対し、修正可能なリスク因子のさまざまな側面に応じた多元的な支援が求められる」としている。

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混合型脂質異常症へのRNA干渉薬zodasiran、TGを有意に低下/NEJM

 肝臓におけるアンジオポエチン様3(ANGPTL3)の合成と分泌を阻害する低分子干渉(si)RNA薬のzodasiranは、混合型脂質異常症患者において、プラセボと比較し24週時のトリグリセライド(TG)値を有意に低下させたことが示された。米国・Mount Sinai Fuster Heart HospitalのRobert S. Rosenson氏らARCHES-2 Trial Teamが、4ヵ国25施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験「ARCHES-2試験」の結果を報告した。ANGPTL3は、リポ蛋白および血管内皮リパーゼを阻害することで、TGに富むレムナントリポ蛋白の肝臓への取り込みを阻害する。ANGPTL3遺伝子の機能喪失型変異保有者は非保有者と比較し、TG、LDLコレステロール、HDLコレステロール、non-HDLコレステロールの値が低く、アテローム動脈硬化性心血管疾患のリスクが低いことが知られていた。NEJM誌オンライン版2024年5月29日号掲載の報告。第IIb相無作為化プラセボ対照比較試験で有効性と安全性を評価 研究グループは、2021年6月28日~2022年8月31日に、混合型脂質異常症(空腹時TG値150~499mg/dL、かつLDLコレステロール値70mg/dL以上またはnon-HDLコレステロール値100mg/dL以上)の成人患者を、zodasiran群(50mg、100mg、200mgの各用量群)またはプラセボ群に3対1の割合で無作為に割り付け、1日目および12週目に皮下投与して36週目まで追跡した。 主要エンドポイントは24週時における空腹時血漿中TG値のベースラインからの変化率で、各zodasiran群とプラセボ群の平均値の差を、反復測定共分散分析(ANCOVA)を用いて比較した。副次エンドポイントは、空腹時血漿中TG値の36週時までの変化率、空腹時non-HDLコレステロール、アポリポ蛋白B(APOB)、LDLコレステロール、ANGPTL3、HDLコレステロールの各値のベースラインから24週時および36週時までの変化率であった。TG値が有意に減少、non-HDL-C、APOB、LDL-Cも改善 計204例が無作為化され、191例(94%)が二重盲検投与期を完遂した。204例の患者背景は、平均年齢61歳、平均BMIは33、喫煙者が20%、慢性腎臓病を有している患者が8%、冠動脈疾患10年リスク>20%の患者が14%であった。 24週時において、プラセボ群と比較しzodasiran群で用量依存的な空腹時血漿中TG値の低下が認められた。ベースラインからの変化率のzodasiran群とプラセボ群の最小二乗平均差(%ポイントで評価)は、50mg群で-51%ポイント、100mg群で-57%ポイント、200mg群で-63%ポイント(すべての比較でp<0.001)であった。この差は36週時も維持されており、ベースラインからの変化率のプラセボ群との差はそれぞれ-34%ポイント、-38%ポイント、-51%ポイントであった。 また、24週時にANGPTL3値の用量依存的な低下も観察され(ベースラインからの変化率のプラセボ群との差:50mg群-54%ポイント、100mg群-70%ポイント、200mg群-74%ポイント)、これはTG値と強い相関が認められた(ピアソン相関係数0.69)。 その他の副次エンドポイントの24週時におけるベースラインからの変化率のプラセボ群との差は、non-HDLコレステロール値が50mg群-29%ポイント、100mg群-29%ポイント、200mg群-36%ポイント、APOB値がそれぞれ-19%ポイント、-15%ポイント、-22%ポイント、LDLコレステロール値がそれぞれ-16%ポイント、-14%ポイント、-20%ポイントであった。 全有害事象、ならびに治験担当医師が試験薬と関連があると判定した有害事象の発現率はzodasiran群とプラセボ群で類似していた(それぞれ65~81% vs.67%、18~26% vs.18%)。zodasiran 200mg群では、糖尿病既往歴のある患者において糖化ヘモグロビン値の一時的な上昇が認められた。

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禁煙のためのアプローチ法を伝授(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師今、禁煙のほうはいかがですか?(Ask:尋ねる)まだ、始められていません…。(申し訳なさそうな顔)なるほど。食事や運動にも気を付けておられますし、あと禁煙が達成できたら最高ですね!(Advice:忠告)患者 そうなんですが、なかなか…。医師 本当のところはどうですか? 次回の受診日までに、画 いわみせいじタバコをやめる気持ちはどのくらいありますか?(Assess:つもりを評価)患者 そうですね、…半々ですかね。医師 それはよかったです。ニコチンパッチや飲み薬など禁煙補助薬もありますし、禁煙成功に向けてお手伝いしますよ!(Assist:手伝う)患者 ありがとうございます。医師 それでは次回、禁煙の開始日を決めましょう。それまでに、心の準備をお願いできますか?(Arrange:取り決める)患者 はい。わかりました。(うれしそうな顔)ポイント5Aアプローチは、た行(尋ねる、忠告、つもりを評価、手伝う、取り決める)で覚えておくと便利ですよ。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)表.一般的な禁煙の5Aアプローチ5A内容Ask(た:尋ねる)あらゆる機会に患者の喫煙状況を尋ねるAdvice(ち:忠告)すべての喫煙者に禁煙するよう忠告するAssess(つ:つもりを評価)禁煙するつもりがあるかを確かめる(意思の確認)Assist(て:手伝う)禁煙するのを手伝うArrange(と:取り決める)禁煙外来への相談日や禁煙開始日を取り決める参考:川根博司, 工藤翔二, ほか編. 南江堂. 禁煙指導の実際. 呼吸器疾患 最新の治療 2007-2009. 2007:464-466.Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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症例発見法によるCOPD・喘息の早期診断、医療利用の低減に/NEJM

 未診断の慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の成人を特定するための症例発見法(case-finding method)によって呼吸器専門医の指示による治療を受けた患者は、通常治療の患者と比較して、その後の呼吸器疾患による医療利用が少なくなることが、カナダ・オタワ大学のShawn D. Aaron氏らUCAP Investigatorsが実施した「UCAP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月19日号に掲載された。カナダ17施設の無作為化対照比較試験 研究グループは、未診断のCOPDまたは喘息を有する患者では、症例発見法を用いた早期の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療利用が低減し、健康アウトカムが改善するかを検証する目的で無作為化対照比較試験を実施し、2017年6月~2023年1月にカナダの17施設で参加者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 症例発見法により、肺疾患の診断を受けていないが呼吸器症状を呈する成人を特定した。被験者を、ガイドラインに基づく治療を開始するよう指示された呼吸器専門医と喘息/COPD指導員による評価を受ける群(介入群)、またはプライマリケア医による通常治療を受ける群(通常治療群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、呼吸器疾患に対する参加者の自主的な医療利用の年間発生率とした。SGRQ、CAT、FEV1も良好 受診した3万8,353例中595例で未診断のCOPDまたは喘息を発見し、このうち508例を無作為化の対象とした。253例が介入群(平均年齢63.4[SD 13.4]歳、男性64%)、255例が通常治療群(62.8[13.6]歳、58%)に割り付けられた。 主要アウトカムのイベントの年間発生率は、通常治療群に比べ介入群で有意に低かった(0.53件vs.1.12件/人年、発生率比:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.001)。 St. George Respiratory Questionnaire(SGRQ、0~100点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した疾患特異的QOLは、通常治療群ではベースラインから6.8点低下したのに対し、介入群では10.2点の低下と良好であった(群間差:-3.5点、95%CI:-6.0~-0.9)。 COPD評価テスト(CAT、0~40点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した症状負担は、通常治療群ではベースラインから2.6点低下したのに比べ、介入群では3.8点低下し良好であった(群間差:-1.3点、95%CI:-2.4~-0.1)。 また、1秒量(FEV1)は、通常治療群ではベースラインから22mL増加したのに対し、介入群では119mLの増加であった(群間差:94mL、95%CI:50~138)。有害事象は両群で同程度 有害事象の発生は両群で同程度であり、介入群では21例に24件、通常治療群では14例に16件発生した。めまいや失神(スパイロメトリー検査による)、筋肉のけいれん(処方された呼吸器疾患治療薬による可能性がある)に関連するものが多かった。入院に至る重篤な有害事象は、介入群で5件、通常治療群で7件報告された。12ヵ月の追跡期間中に、介入群で2例(心停止、肺がん)、通常治療群で2例(心停止、肝不全)の死亡が発生した。 著者は、「この症例発見法は、多くの医療システムに導入可能であり、未診断のCOPDまたは喘息患者における診断と治療の改善に寄与する可能性がある」としている。

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女性は日常的な飲酒でHDLコレステロールが低下?

 大規模な保健医療データを用いて、40~64歳の日本人女性の習慣的な飲酒とHDLコレステロール(HDL-C)の関連を検討する研究が行われた。その結果、飲酒量が中等量以上の女性では、HDL-C値が10年間で有意に低下していることが明らかとなった。日本女子大学家政学部食物学科 臨床医学・代謝内科学研究室の関根愛莉氏らによる研究結果であり、「Cureus」に3月4日掲載された。 HDL-Cは善玉コレステロールと呼ばれ、HDL-Cが低いことはメタボリックシンドロームの診断基準の1つである。一方で、HDL-Cが極端に高いことは、心血管疾患による死亡に関連することも報告されている。適度な飲酒を行うことでHDL-Cが上昇することを示す研究もあるが、飲酒の影響は、性別や年齢、飲酒期間などにより異なる可能性がある。国内外の研究では、男性のみ、あるいは両性を合わせた研究がほとんどであり、女性の習慣的な飲酒とHDL-Cとの長期的な関連については不明な点が多い。 そこで著者らは、厚生労働省の「レセプト情報・特定健診等情報データベース」のうち、関東1都6県で特定健診を受けた40~64歳の女性のデータを用いて後方視的コホート研究を行い、ベースライン(2008年度)から10年後(2018年度)の血清HDL-C値の変化と、飲酒量や飲酒頻度などとの関連を評価した。1回あたりの飲酒量(エタノール量換算)で、少量(23g/日未満)、中等量(23~45g/日)、多量(46g/日以上)に分類した。なお、エタノール量23gは、ビールの中瓶1本(500mL)やワインのグラス2杯(240mL)に相当する。 対象期間中に飲酒量・飲酒頻度が大きく変化した人や、ベースラインのHDL-Cが基準値(50~90mg/dL)から外れていた人、最初の2年間または最後の2年間にHDL-Cが10%以上変化した人などを除く、9万53人を解析対象とした。 ベースラインの飲酒量は、少量の人の割合が74.2%、中等量が21.5%、多量が4.3%だった。10年後のHDL-C値について、10mg/dL以上低下した人の割合は11.3%、10%以上の低下は17.9%であり、10mg/dL以上の上昇は17.3%、10%以上の上昇は25.6%だった。 次に、影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、BMI、生活・運動習慣、脂質異常症に対する薬物療法、脂質・糖代謝などの血液検査値)やベースラインのHDL-Cを統計的に調整して、HDL-C低下と飲酒量の関連を解析した。その結果、中等量以上の飲酒は10年後のHDL-C低下と有意に関連することが明らかとなり、10mg/dL以上の低下に対するオッズ比(少量の飲酒と比較)は、中等量が1.15(95%信頼区間1.08~1.22)、多量が1.23(同1.10~1.39)で、10%以上の低下では同順に1.09(同1.04~1.15)、1.23(同1.11~1.36)だった。今回の検討では、飲酒頻度については、HDL-C低下との関連は認められなかった。 さらに、人工知能(AI)を用いて、HDL-C低下(10mg/dL以上)に対する正の寄与因子を検討した。その結果、影響の大きい順に、ベースラインのHDL-C高値(77mg/dL以上)、LDL-C高値(133mg/dL以上)、BMI高値(23.1kg/m2以上)、脂質異常症に対する薬物療法、トリグリセライド高値(70mg/dL以上)、年齢44~64歳、喫煙と続き、飲酒量はその次の8番目の因子であることが判明した。 以上の結果から著者らは、「日本人の中高年女性における中等量以上の習慣的な飲酒は、10年後のHDL-Cを有意に低下させる可能性が示されたが、HDL-Cの有意な上昇は引き起こさなかった」と結論。一方、日本人の中高年男性を対象とした結果では、中等量以上の飲酒はHDL-Cの低下と同時にHDL-Cの上昇とも関連していたことから、飲酒量とHDL-C低下に関連するメカニズムやその性差については、さらなる研究が必要だとしている。

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デュピルマブ追加で、COPDの増悪が減少、肺機能改善/NEJM

 血中好酸球数の増加に基づく2型炎症を呈する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の治療において、標準治療へのヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの上乗せはプラセボと比較して、COPD増悪の年間発生率を有意に減少させ、肺機能の改善をもたらすことが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のSurya P. Bhatt氏らNOTUS Study Investigatorsが実施した「NOTUS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月20日号に掲載された。29ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 NOTUS試験は、29ヵ国329施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年7月~2023年5月に参加者の無作為化を行った(サノフィとリジェネロン・ファーマシューティカルズの助成を受けた)。 年齢40~85歳、10pack-years以上の喫煙歴のある現または元喫煙者で、2型炎症(血中好酸球数300/μL以上)を呈する中等症または重症のCOPD患者935例を登録し、デュピルマブ300mgを2週ごとに皮下投与する群に470例、プラセボ群に465例を無作為に割り付けた。全例が基礎治療として標準的な吸入薬の投与を受けた。 全体の平均(±SD)年齢は65.0(±8.3)歳、67.6%が男性で、29.5%が現喫煙者、98.8%が3種の吸入薬(糖質コルチコイド+長時間作用型抗コリン薬[LAMA]+長時間作用型β2刺激薬[LABA])による基礎治療を受けていた。ベースラインの血中好酸球数の平均値は407±336/μLだった。12週、52週までの1秒量も良好、SGRQスコアには差がない 52週の試験期間におけるCOPDの中等度または重度増悪の年間発生率(主要エンドポイント)は、プラセボ群が1.30(95%信頼区間[CI]:1.05~1.60)であったのに対し、デュピルマブ群は0.86(0.70~1.06)であり、プラセボ群に対する率比は0.66(95%CI:0.54~0.82)とデュピルマブ群で有意に優れた(p<0.001)。 気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV1)のベースラインから12週までの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が0.057L(95%CI:0.023~0.091)増加したのに対し、デュピルマブ群は0.139L(0.105~0.173)の増加であり、両群の最小二乗平均差は0.082L(95%CI:0.040~0.124)とデュピルマブ群で有意に良好であった(p<0.001)。52週までの変化量も、デュピルマブ群で有意に優れた(最小二乗平均差:0.062L、95%CI:0.011~0.113、p=0.02)。 一方、ベースラインから52週までのSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(0~100点、点数が低いほどQOLが良好)の変化には、両群間に有意な差を認めなかった。安全性プロファイルは確立されたものと一致 有害事象の発現率は両群で同程度であり(デュピルマブ群66.7%、プラセボ群65.9%)、デュピルマブの安全性プロファイルは確立されたものと一致していた。最も頻度の高かった有害事象は、新型コロナウイルス感染症(9.4% vs.8.2%)、鼻咽頭炎(6.2% vs.5.2%)、頭痛(7.5% vs.6.5%)、COPD(4.9% vs.7.8%)であった。重篤な有害事象は、それぞれ13.0%および15.9%、死亡の原因となった有害事象は2.6%および1.5%で認めた。 著者は、「これらの結果は、COPD患者のサブグループの病理生物学的な疾患メカニズムにおける2型炎症の役割と、この別個のCOPDエンドタイプの治療におけるデュピルマブの役割をさらに強固なものにする」と述べ、「本試験と先行研究であるBOREAS試験の知見を統合すると、COPDの治療における、2型炎症の促進因子としてのIL-4とIL-13を標的とすることの重要性が浮き彫りとなった」としている。

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喫煙歴があっても食習慣次第で肺気腫リスクが低下

 現喫煙者や元喫煙者など、肺気腫のリスクが高い人であっても、植物性食品中心の食習慣によって、その罹患リスクが抑制される可能性を示唆するデータが報告された。米ネブラスカ大学医療センターのMariah Jackson氏らの研究によるもので、詳細は「Chronic Obstructive Pulmonary Diseases : Journal of the COPD Foundation」3月発行号に掲載された。 肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一種で、血液中の二酸化炭素と酸素の交換が行われる肺胞の構造が破壊されて、呼吸機能が不可逆的に低下する病気。原因は主に喫煙であり、肺気腫の進行抑制には禁煙が必須だが、禁煙治療の成功率は高いとは言えない。一方で、植物性食品中心の食習慣が、呼吸器疾患の病状に対して潜在的な保護効果をもたらす可能性が報告されている。Jackson氏らはこのような背景の下、食習慣と肺気腫リスクの関連の有無を検討した。 この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスクを探索する目的で実施された、米国での多施設共同前向きコホート研究(CARDIA研究)のデータを用いた二次分析として行われた。CARDIA研究の参加者は18~30歳で、30年間追跡されている。研究参加者5,515人から、追跡開始後20年目までに、自己申告に基づく喫煙習慣(現喫煙または元喫煙)が確認されなかった人や、食習慣に関する調査に回答していなかった人などを除外し、1,351人(平均年齢25.5±3.5歳、女性58.4%)を解析対象とした。 追跡開始25年目に行ったCT検査で、175人(13.0%)に肺気腫が確認された。食習慣の質を評価するスコア(APDQS)の五分位に基づき、植物性食品中心の食習慣らしさで全体を5群に分類して肺気腫の罹患者率を比較すると、スコアの第5五分位群(最も植物性食品中心の食習慣である上位20%)は4.5%であるのに対して、第1五分位群(最も植物性食品中心の食習慣でない下位20%)は25.4%だった。 肺気腫の罹患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、累積喫煙量、摂取エネルギー量、教育歴など)を調整後、第5五分位群は第1五分位群に比べて肺気腫罹患のオッズ比(OR)が56%低かった〔OR0.44(95%信頼区間0.19~0.99)、傾向性P=0.008〕。また、APDQSスコアが1標準偏差高いごとにオッズ比は34%低下していた。つまり、食事に占める野菜や果物の割合が高いほど、肺気腫のリスクは低かった。 Jackson氏は、「われわれの研究結果は、食習慣と喘息の罹患リスクとの関連を示した先行研究の結果と一致している。喫煙歴のある人の慢性肺疾患リスクを抑制しようとする場合、食事などの修正可能な因子が極めて重要なポイントとなる」と話している。また同氏は、「食習慣を健康的なものに改善することが、慢性肺疾患に罹患しながらも禁煙が困難な状況にある人の一助となるのではないか。さらなる研究が必要ではあるが、将来的には公衆衛生関連のガイドラインなどで、特に子どもや若年者に対する食事の推奨事項として、これらの情報を提供できる可能性がある」と付け加えている。

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禁煙の初期治療失敗、治療別の次の一手は?/JAMA

 バレニクリンによる初期治療(6週間)で禁煙できなかった場合は増量が、ニコチン置換療法(CNRT)による初期治療で禁煙できなかった場合は増量またはバレニクリンへの切り替えが、禁煙率を改善する実行可能な救済戦略となりうることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らが、逐次多段階無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。喫煙者のほとんどが最初の試みでは禁煙を達成できないが、これまで初期治療失敗後の治療の選択肢を検証した研究はほとんどなかった。JAMA誌オンライン版2024年5月2日号掲載の報告。6週間の初期治療失敗者を、継続vs.増量vs.切り替えの3群に再割り付け 研究グループは、2015年6月~2019年10月にテキサス州ヒューストン地域でメディア広告を用いて参加者(18~75歳、1日5本以上喫煙、呼気CO濃度6ppm以上)を募集し、バレニクリン群またはCNRT群に無作為に割り付けた。 バレニクリン群は標準用量(0.5mg/日から開始し漸増、8日目から2mg/日)、CNRT群はニコチンパッチ21mg+トローチ2mgをそれぞれ第1期として6週間投与した。その後、7~12週目を第2期として、6週時に呼気CO濃度で過去7日間の禁煙が確認された参加者は第1期の治療を継続し、非禁煙者は継続群(両群とも第1期と同じ用量)、増量群(第1期バレニクリン群3mg/日、CNRT群パッチ42mg+トローチ2mg)、切り替え群(第1期バレニクリン群はCNRT、第1期CNRT群はバレニクリン標準用量)の3群に再割り付けして6週間投与した。 主要アウトカムは、12週時の禁煙率(自己報告による過去7日間の禁煙かつ呼気CO濃度6ppm未満)であった。 計490例の参加者が無作為化された(バレニクリン群245例、CNRT群245例)。ベースラインの参加者の背景は、女性210例(43%)、非ヒスパニック系白人287例(58%)、平均年齢48.1歳、1日平均喫煙本数20本であった。バレニクリンは増量、CNRTは増量またはバレニクリンへの切り替えが良好 CNRT群245例では、第1期禁煙成功者が54例、非禁煙者が191例で、非禁煙者のうち第2期の再無作為化へ参加したのは151例(継続50例、増量50例、バレニクリンへの切り替え51例)、再無作為化へ参加せず第1期の治療を継続したのは40例であった。 第1期CNRT群の非禁煙者191例の12週時の禁煙率は、継続群(合計90例)8%(95%信用区間[CrI]:6~10)、増量群14%(10~18)、バレニクリンへの切り替え群14%(10~18)で、増量または切り替えのいずれも初期治療の継続より有効である事後確率は99%以上であった(絶対リスク群間差[RD]:6%、95%CrI:6~11)。 一方、バレニクリン群245例では、第1期禁煙成功者が88例、非禁煙者が157例で、非禁煙者のうち第2期の再無作為化へ参加したのは122例(継続42例、増量39例、CNRTへの切り替え41例)、再無作為化に参加せず第1期の治療を継続したのは35例であった。 第1期バレニクリン群の非禁煙者157例の12週時の禁煙率は、継続群(合計77例)3%(95%CrI:1~4)、増量群20%(16~26)、CNRTへの切り替え群0%で、初期用量でのバレニクリン継続は増量より悪化する事後確率99%以上(絶対RD:-3%、95%CrI:-4~-1)、有効である事後確率99%以上(絶対RD:18%、95%CrI:13~24)であった。 副次アウトカムである6ヵ月時の継続禁煙率は、CNRT増量およびバレニクリン増量の場合に、それぞれの初期治療継続より有益であることが示された。

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