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〔CLEAR! ジャーナル四天王(72)〕 腹部大動脈瘤の瘤径に応じた適切なサーベイランス間隔は?

この論文は腹部大動脈瘤のサーベイランス18論文を、1万5,471例の患者データを、瘤径はランダム効果モデル、破裂率は比例ハザード回帰を用いて統合解析したものである。 結果は、男性で瘤径3.0㎝では平均1.28㎜/年、5.0cmでは平均3.61mm /年拡大する。女性は4倍破裂率が高く、喫煙者と非糖尿病患者の拡大速度が大きいという文献より、解剖学的構造、性ホルモン、喫煙歴が関与した結果と推察される。男性4.5㎝の破裂率は女性5.5㎝と同等であり、女性の4.5~5.5㎝の自然経過を調べる必要がある。男性で破裂率を1%以下にするには3.0~3.9㎝で36ヵ月毎、4.0~4.4㎝では24ヵ月毎、4.5~5.4㎝では12ヵ月毎の超音波検査で十分であるという結論である。 各国のサーベイランス間隔は、英国が最短で3.0~3.4㎝は12ヵ月毎、4.5~5.4㎝で3ヵ月毎、米国が最長で3.0~3.4㎝は36ヵ月毎、3.5~4.4㎝は12ヵ月毎、4.5~5.4㎝は6ヵ月毎であり、米国より間隔が長くても良いということになる。日本では、最大横径>5cm、拡張速度5mm/6ヵ月、腹痛背部痛の症状、感染性動脈瘤に対して手術を行うことが多い(2011年大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインではエビデンスレベルC)。体格を考慮して欧米より0.5cm径が小さい5cmで手術としているがエビデンスはなく、サーベイランス間隔も前出の英国に類似して頻回であるのが現状である。 この研究の強みは、大規模データを1つの解析にまとめた点であるが、解釈上の問題点は破裂がすべて捉えられているか不明な点、また費用と心配によるQOL低下の評価が抜けている点である。今後、性別やリスクに応じた個別サーベイランス間隔の解明が待たれる。

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ブプロピオンで統合失調症患者の禁煙達成!?

 統合失調症患者では一般集団と比べて喫煙率が高く、喫煙関連の疾患の罹病率や死亡率が高い。一方で、喫煙率を低下させるために、どのような介入が効果的であるかは不明なままである。英国・Nottinghamshire Healthcare NHS TrustのDaniel T. Tsoi氏らによるシステマティックレビューの結果、ブプロピオンが精神状態への影響を及ぼすことなく禁煙達成率を高められることが示された。また、バレニクリンも禁煙達成率の改善が期待できるが、精神状態への有害な影響が除外できず、また、禁煙したら報酬を与えるといった強化随伴性(contingent reinforcement:CR)の介入は、短期的効果が期待できそうであった。その他にはエビデンスが確かな効果的な介入は見いだせなかったと報告している。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFO(いずれもサービス開始から2012年10月まで)とCochrane Tobacco Addiction Group Specialized Register(2012年11月)にて、禁煙または減煙に関する無作為化試験を検索した。統合失調症または統合失調感情障害を呈する成人患者について、あらゆる薬物・非薬物治療とプラセボまたはその他の治療を比較した試験を適格とし、2人の独立レビュワーが試験の適格性と質を評価してデータ抽出を行った。解析の評価項目は、禁煙達成(禁煙)、総喫煙量の減少(減煙)、あらゆる精神状態の変化とした。禁煙、減煙については、治療終了時と介入終了後6ヵ月時点のデータを抽出した。また同定義については最も厳格なものを用い、入手したデータは生化学的検証を行った。有害事象についてはあらゆる報告に注意を払い、また必要に応じてランダムエフェクトモデルも用いられた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、34試験(禁煙試験16件、減煙試験9件、再喫煙予防試験1件、喫煙についてのアウトカムが報告されていた他の目的での試験8件)が組み込まれた。・ブプロピオンとプラセボを比較した試験(7件)のメタ解析の結果、ブプロピオン治療後の禁煙率がプラセボより有意に高かった。 治療終了時の評価(7試験・340例) リスク比(RR):3.03、95%CI:1.69~5.42 6ヵ月後の評価(5試験・214例) RR:2.78、95%CI:1.02~7.58・また両群間に、陽性・陰性症状また抑うつ症状について有意差はみられなかった。・ブプロピオン群において、てんかん発作のような重大な副作用の報告はなかった。・バレニクリンもプラセボと比較して、治療後の喫煙率が有意に高かった。 治療終了時の評価(2試験・137例) RR:4.74、95%CI:1.34~16.71 6ヵ月後の評価(1試験のみで128例、CIもエビデンスに乏しい) RR:5.06、95%CI:0.67~38.24・精神症状に関してバレニクリン群とプラセボ群には、有意な差はみられなかったが、バレニクリン群の2人で希死念慮と自殺関連行動がみられた。・金銭(money)の強化随伴性(CR)を検討していた試験(2件)の解析の結果、禁煙率の上昇と喫煙量の低下の可能性があったが、これが長期に持続するかどうかは不明であった。・統合失調症患者に対する、その他の薬物治療(ニコチン補充療法など)や、禁煙・減煙支援のための心理社会的な介入の試験はほとんどなく、有用性についてのエビデンスは得られなかった。■「ブプロピオン」関連記事禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか

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地中海式食事療法、高リスク集団の心血管イベント1次予防に有用/NEJM

 地中海食(エネルギー制限はしない)とオリーブオイルまたはミックスナッツを組み合わせた食事療法が、心血管リスクの高い集団の心血管イベントの1次予防において相対リスクを約30%低減することが、スペイン・バルセロナ大学病院のRamon Estruch氏らの検討で明らかとなった。地中海食は、オリーブオイル、果物、ナッツ、野菜、シリアルの摂取量が多く、魚や鶏肉の摂取量は中等度、乳製品、赤身肉、加工肉、菓子類の摂取量は少ないことが特徴とされる。地中海式食事療法の遵守状況と心血管リスクは逆相関を示すことが、観察コホート試験や2次予防試験で確認されている。NEJM誌オンライン版2013年2月25日号掲載の報告。カロリー制限や運動の併用なしの食事療法の効果を評価 PREDIMED(Prevencion con Dieta Mediterranea)試験は、地中海式食事療法(MD)による心血管イベントの1次予防効果を検証する多施設共同無作為化試験。 対象は、年齢が男性55~80歳、女性60~80歳、登録時に心血管疾患を発症しておらず、2型糖尿病を有するか、あるいは喫煙、高血圧、高LDLコレステロール値、低HDLコレステロール値、過体重または肥満、早期冠動脈心疾患の家族歴のうち3つ以上を有する者とした。参加者は、MD+エキストラヴァージンオリーブオイル(EVOO)、MD+3種のナッツ(Nuts:ウォールナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ)、対照群(低脂肪食の説明)の3群に無作為に割り付けられた。 総カロリーの制限や身体活動の推奨は行われなかった。2つのMD群は、それぞれEVOO(約1L/週)またはNuts(計30g/日分)を無料で提供され、ベースライン時とその後は3ヵ月ごとに食事指導とMD遵守状況の評価を受けた。 1次エンドポイントは主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)の発症率とした。なお、中間解析の結果に基づき、フォローアップ期間中央値4.8年の時点で試験は中止された。1次エンドポイントのハザード比:MD+EVOO群0.70、MD+Nuts群0.72 2003年10月~2009年6月までに7,447人が登録され、MD+EVOO群に2,543人(平均年齢67.0歳、女性58.7%)、MD+Nuts群に2,454人(同:66.7歳、54.0%)、対照群には2,450人(同:67.3歳、59.7%)が割り付けられた。 1次エンドポイントは288人に発生した。そのうちMD+EVOO群が96人(3.8%)、MD+Nuts群が83人(3.4%)、対照群は109人(4.4%)で、1,000人年当たりの発生率はそれぞれ8.1(対照群との比較p=0.009、)、8.0(同p=0.02)、11.2であった。多変量調整済みハザード比(HR)は、対照群を基準とするとMD+EVOO群が0.70(p=0.01)、MD+Nuts群は0.72(p=0.03)だった。 主要心血管イベントのうち調整済みHRがMD群で有意に優れたのは脳卒中のみであった(MD+EVOO群:0.67、p=0.04、MD+Nuts群:0.54、p=0.006)。全死因死亡には有意な差を認めず、食事療法に関連する有害な影響もみられなかった。 著者は、「この結果は、高リスク集団の心血管イベント1次予防における地中海食のベネフィットを支持するもの」と結論している。

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禁煙法の段階的導入で、早産発生率が徐々に減少/BMJ

 ベルギーでは禁煙法が段階的に導入されたが、その結果、単胎児早産発生率も段階的に減少したことが明らかになったという。ベルギー・Hasselt大学のBianca Cox氏らが、2002~2011年の出生データを元に分析し明らかにしたもので、BMJ誌2013年2月14日号で発表した。受動喫煙が妊娠のアウトカムに悪影響を及ぼすことを示す試験結果は出てきているが、これまで禁煙法が同アウトカムに良い影響を及ぼすことを示した研究はほとんどなかった。職場、レストラン、バーへと段階的に禁煙法導入 ベルギーでは、2006年に公共の場所と職場で、2007年にレストランで、2010年には食事を提供するバーで、それぞれ禁煙法が施行された。Cox氏らは、2002~2011年にルーチンで集めた出生データについて、ロジスティック回帰分析を行い、禁煙法施行の各段階における、単胎児早産(在胎37週未満の出産)発生率を調べ、比較した。 試験の対象となった単胎児出産(在胎24~44週)60万6,877人で、そのうち自然分娩は44万8,520人だった。自然分娩のうち男児は51.4%、母親の出産年齢中央値は29.5歳、出生順位の中央値は2だった。 主要評価項目は、在胎37週未満の早産の発生割合だった。早産発生率は年率3%程度減少 分析の結果、自然早産発生率は禁煙法施行後徐々に減少し、2007年1月には同発生率は-3.13%(95%信頼区間:-4.37~-1.87、p<0.01)、2010年以降は年率-2.65%(同:-5.11~-0.13、p=0.04)と、有意に減少した。 自然早産以外のすべての早産についても同様な減少傾向がみられ、2007年1月には早産発生率は-3.18%(同:-5.38~-0.94、p<0.01)、2010年以降は年率-3.50(同:-6.35~-0.57、p=0.02)と、いずれも有意に減少した。 こうした減少傾向は、妊婦年齢、社会経済的状況、出生月、インフルエンザの流行などといった、個人的要因や出産時期による要因、人口全体の要因では、説明できなかった。なお、禁煙法施行前には、早産発生率の減少傾向は認められなかったという。

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乾癬の有病率、30年で2.5倍増

 北ノルウェー大学病院のK. Danielsen氏らによる同国内調査の結果、30年間で乾癬の有病率(自己申告に基づく)が2.5倍増大したことが明らかにされた。複数の西欧国で乾癬の有病率増大の徴候が報告されているが、これまで決定的な確証は示されていなかったという。著者は「今回の調査結果は、乾癬の有病率増大を真に示すものだろう。背景には生活習慣や環境要因の変化および疾患の認識が高まったことが考えられる」と報告している。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年2月1日号の掲載報告。 研究グループは、ノルウェー北部の5つの住民ベースサーベイTromso Study 2-6(1979~2008)を検討した。5つのサーベイのうち1つ以上で自己申告に基づく乾癬データが含まれていた。 断面調査、タイムラグ、長期のグラフィカルプロット法にて、乾癬有病率の傾向を調べた。さらに一般化線形回帰モデルにて観察された傾向を評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、1915~1979年に生まれた20~79歳の3万3,803例であり、合計6万9,539例の観察データを入手した。・自己申告の乾癬の生涯有病率は、1979~1980年の4.8%から、2007~2008年は11.4%に上昇していた。・グラフィカルプロット法にて、乾癬有病率は、すべての年齢群、出生コホート群で各サーベイ時に増大していることが示された。・本調査における乾癬オッズ比は、2007~2008年は1979~1980年の2.5倍であった(補正後オッズ比:2.53、95%CI:2.11~3.03)。・医師の診断を受けたと報告した人の有病率は、最終サーベイでは9.9%であった。・サブグループにおいて、乾癬は、BMI高値、就業時や休暇時の低い身体活動度、低い教育レベル、喫煙との関連が認められた。

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「岐阜県COPDストップ作戦」一丸となってCOPDに取り組む

大林 浩幸 ( おおばやし ひろゆき )氏岐阜県COPD対策協議会 本部長(東濃中央クリニック 院長)※所属・役職は2013年2月現在のものです。岐阜県におけるCOPDの現状大規模なCOPD疫学調査NICE Study*の結果によれば、COPD患者は40歳以上の8.6%、約530万人と推定されています。COPDによる死亡者数は年々増加しており2011年の死亡者数は16,639人です。このNICEstudyの有病率に岐阜県の人口を当てはめると、岐阜県のCOPD患者数は12万3070人と推定されます。一方、岐阜県の治療中のCOPD患者数を主要なCOPD治療薬の販売量から推定すると5,000人未満となり、推測患者数の1割にも満たないことがわかりました。すべての治療患者さんが対象ではないとしても、これはあまりにも少なすぎます。残りの10万人以上の方は潜在患者として、気づかれないままでいるか、他疾患の治療のみ受けている可能性もあるわけです。また、岐阜県のCOPD死亡者数は1997年から2009年までの12年間、全国平均を常に上回っています。このように岐阜県のCOPD治療は重要な課題を抱えていました。*NICE(Nippon COPD Epidemiology)study:2004年に順天堂大学医学部の福地氏らが報告した40歳以上の男女2,343名のデータによるCOPDの大規模な疫学調査研究COPD死亡率(人口10万人対)2009年画像を拡大するCOPD死亡率(人口10万人対)岐阜VS全国画像を拡大する手をかけなければいけない疾患COPD喘息には吸入ステロイドなどの治療薬があり、適切な治療で症状改善が可能ですが、COPDには進行を遅らせる治療しかありません。具体的には、禁煙、増悪防止のための感染予防(ワクチン)、日常管理といった基本と、その上で行われる気管支拡張薬、呼吸リハビリテーションなどがそれにあたります。この中の一つでも欠けると奏功しません。このように、COPDはさまざまな医療が必要となる“手をかけなければいけない疾患”だといえます。COPDの認知度の低さCOPDの認知度はきわめて低いものです。一般の方の半数以上はCOPDをご存じありませんし、知っていたとしても名前だけで、COPDがどういう疾患かわかる方はとても少ないです。息切れは年齢のせい、喫煙者だから多少の息切れは当たり前と考えているのですから、医療機関を受診をすることはありません。このように、COPDの認知の低さにより、自分がCOPDである事を知らずに過ごしている方が数多くいることになります。また、受診してもCOPDを理解していないと治療はうまくいきません。COPDの薬剤を吸入しながら喫煙しているケースなどは、その典型例といえます。肺機能検査の普及COPDの早期発見と診断には肺機能検査が必要です。しかし、プライマリ・ケア領域では機器がない、あるいは機器があっても使っていない状況であり、肺機能検査を実施しているのはほとんどが大病院です。つまり、COPD潜在患者のほとんどが医療機関未受診かプライマリ・ケア領域に潜んでいる可能性があります。高血圧などの循環器疾患、脂質異常症や糖尿病、消化器疾患などの疾患治療患者の何割かに隠れCOPDがいると思われます。COPDストップ作戦立ち上げこのような背景の中、岐阜県としては早急にCOPDへの対策を図る必要がありました。COPDは片道切符で、一旦悪化するとなかなか元に戻りません。ブレーキの始動が遅れると終着駅は在宅酸素になります。だからこそ、重症化する前にいかに早期発見・早期診断し、いかに禁煙、薬物治療、リハビリテーションという一連の治療を導入していくのかを考えなければなりません。また、これらの治療はバラバラでは意味をなさず、全県が同じレベルでこれらの治療がカバーできるよう足並み揃えて取り組む必要がありました。そこで平成23年度に岐阜県医師会と岐阜県で協議し、委託事業として県医師会がCOPD対策事業を始めることになりました。まず岐阜県医師会COPD対策協議会を立ち上げ、その下にCOPD対策本部を設置しました。そして岐阜県を5地区に分け、各地区に対策委員会を設置しました。地域医師会との連携がスムーズに行われるように、専門医と共に、地域医師会役員も地区委員に就任していただきました。そして私、大林が岐阜県COPD対策本部長に指名され、平成23年10月に全県一斉に「COPDストップ作戦」を立ち上げ開始しました。岐阜県5ブロック画像を拡大するCOPD対策協議会画像を拡大するCOPDストップ作戦の目的は、COPD死の減少です。活動の軸は、COPDの頭文字をとって、Care COPD(COPDの早期治療)、Omit COPD(COPD発症の最大原因である喫煙習慣の排除) 、Prevent COPD(COPD発症の原因であるタバコの害を啓発し、喫煙開始させない)、Discover COPD(COPDを早期から発見し、早期治療に結びつける)の4本としました。県医師会“COPDストップ作戦”の4つのコンセプト画像を拡大するCOPDストップ作戦 第1弾COPD教育講演会ストップ作戦の第1弾はCare COPDとして、COPD教育講演会を実施しました。COPDの適切な治療法の普及を目的とし、H23年10月〜12月に第1回、翌年のH24年10月〜12月に第2回を県内5地区すべてで行っています。H25年には第3回を実施の予定です。この講演会の特徴は、外部講師を招かず、地元の専門医に座長と講師をお願いしていることです。地域の核となる先生と地域の先生が顔の見える連携を築き、今後の病診連携に役立てることを意図しています。COPDストップ作戦第2弾 スパイロキャラバン第2弾はDiscover COPDとして、スパイロキャラバンを実施しました。COPDの早期発見・早期治療の最大の障壁は肺機能検査(スパイロメトリ―)の普及不足です。肺機能検査を体験していただき、より日常診療的な検査にしていただくことを目的として行っています。まず、岐阜県下の診療所等を対象に、各地区での説明会を行い、ボランティア参加で協力診療所を募りました。肺機能検査装置のない診療所には貸し出し、患者さんに無料で肺機能検査を実施していただくというものです。検査対象者は、COPD以外の疾患で受診中の、喫煙中または禁煙歴があり、労作性呼吸困難の訴えがある40歳以上の患者さんです。この方たちに書面で同意を得て肺機能検査を実施しました。第1回はH23年10月〜12月、第二回はH24年9月〜12月の期間に実施しています。第1回のスパイロキャラバンの結果、COPD疑いありの患者さんは、検査を行った方の30.9%でした。とくに、70歳代では半数、80歳代では6割が疑いありと非常に高い頻度でした。人数でいうと、計530例の潜在患者さんを参加51施設が引き出したことになります。また、肺年齢はII期以上から実年齢に比べ有意に下がっていることもわかりました。このスパイロキャラバンの結果は、県下において積極的にCOPDストップ作戦を展開すべき根拠を明らかにしたといえます。スパイロキャラバン実施結果画像を拡大する年齢別COPD(疑)存在率(%)画像を拡大するCOPDストップ作戦第3弾 禁煙指導セミナー第3弾はOmit COPDとして、プライマリ・ケアの医師、薬剤師を対象に県5地区すべてで禁煙治療法セミナーを開講しました。目的は禁煙治療ができる施設を増やし、禁煙治療をもっと市民に身近なものにすることと、県内の禁煙治療レベルの底上げです。COPDの進行を止める最も有効かつ根本的な治療法は禁煙です。ただし、禁煙指導は標準治療に則り正しく行わないと成果が上がりません。ところが、実際は施設によって禁煙指導のやり方に差があるなど多くの課題がありました。平成24年10月~12月に第1回を行いましたが、反響が大きく、各地域とも非常に多くの先生方に参加いただきました。今年は第2回を開催する予定です。COPDストップ作戦第4弾 吸入指導セミナー第4弾はCare COPDとして、吸入指導セミナーを薬剤師会との連携により実施していきたいと考えています。このセミナーは薬局の吸入指導技術の向上と、すべての薬局で同じ指導ができるようにすることが目的です。COPD治療薬の主軸は吸入薬です。しかし、吸入指導が不十分で、患者さんが誤った吸入方法を行ったり、有効に吸入できていないケースが多くみられます。吸入デバイスもメーカーごとに異なり、すべての薬剤・デバイスを網羅したセミナーが必要とされています。東濃地区では2009年から行っていますが、薬剤師の方は非常に熱心で、成果も上がっています。これから全県下に展開していきたいと思います。COPDストップ作戦の成果と今後スパイロキャラバンで新たに多くの潜在患者から引き出し、プライマリ・ケア領域に多くのCOPD患者さんが埋もれている可能性を示したことは、大きな成果といえます。また、この作戦を通し、医療者の意識の変化も感じられます。COPD患者さんを積極的にみられる先生方も増えるなどCOPDの意識が定着し始めてきたと思います。また、肺機能検査実施の意識が高まってきたと思います。スパイロキャラバンに2回とも参加したり、数多く肺機能検査を実施される熱心な先生も増えてきました。肺機能検査の重要性や簡単さが浸透し、第1回目のスパイロキャラバン開始後、肺機能検査装置の新規購入が増えたようです。禁煙指導セミナーについては非常に反響が強く、禁煙治療の標準化が県下で底上げされたと思います。とはいえ、一般市民へのCOPDの認知率向上は今後も必要ですし、Prevent COPDとして学校での禁煙教室も非常に重要です。さらに、病診連携の実現もありますので、これら4つのコンセプトを軸にCOPD作戦を今後も進めて行きたいと考えています。COPD治療は前述のとおり、しなければならないことが多いのですが、それだけのことを行わないと、患者さんに良い医療を十分に提供できたことにはなりません。しかし、個々の施設ごとで、十分に対応できるとは限りません。そこで、これまでのような局地戦でなく、県全体が力を合わせた総力戦で行うことで、患者さんが救われるのだと思います。

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呼吸器外科医からみたCOPD ~肺がん治療の重大なリスクファクターCOPD~

COPD罹患頻度COPDと肺がんは、双方とも喫煙との関連が高く、併存例も多くみられます。呼吸器外科では手術前のスパイロメトリーは必須検査であるため、実際の両者の併存状況もわかります。当施設は他施設に比べCOPD患者さんの比率が若干多いかも知れませんが、肺がん手術対象の患者の30%がCOPDを合併していることがわかりました。合併するCOPDの重症度はGOLD分類1(軽症)が半数、GOLD分類2(中等症)以上が半数というものでした。COPD患者の肺の状態COPD患者さんの肺は、そうでない方とは圧倒的な違いがあります。正常な肺は上葉、中葉、下葉とも同じ柔らかさ(コンプライアンス)を持ち、肺は均等に広がります。しかし、COPDの肺は、気腫状になり破壊された部分が極端に膨らんで正常な肺が潰されてしまうのです。正常な肺の気腔が狭くなってしまうと、換気不足により静脈血が動脈にそのまま還ってしまう肺内シャントに近い状態となり、VQミスマッチ(換気血流不均等)から低酸素血症にいたることもあります。手術の際も違いがわかります。COPD肺は破壊されているため、ステープラーで切っているときに針穴から空気漏れが起こることがあります。肺は弾力性のある臓器ですが、COPDでは肺の弾力性がなくなっているためステープラー操作によって組織が裂けてしまうわけです。こういう現象は、COPDを併存したほとんどの例でみられます。また手術時、肺を虚脱させる際にも違いがでます。CODPでは、吸気時は気道が広がり空気が入っていくものの、気道が狭窄しているため呼気時に気道が細くなると空気が出ていかないチェックバルブ現象が起きます。そのため、COPD肺では虚脱しようとしても気道が塞がって肺胞に残った空気がでていかず、潰れにくいのです。気管支のチェックバルブ現象画像を拡大するCOPD併存による弊害COPDの肺は喫煙により、組織の破壊と再生が繰り返されています。つまり、細胞分裂が非常に活発に行われているわけです。がんはDNAのミスマッチコピーですので、細胞分裂が多いほどがんが発生する率が高くなるため、COPD患者では肺がんの発症が多くなるのです。しかも、COPDに発生する肺がんはきわめてアグレッシブな低分化がんです。COPDと肺がん発症率Mannino DM, et al. Arch Intern Med. 2003;163:1475-1480.画像を拡大するCOPD患者では経年的に肺がんの発症数が上昇。この傾向は中等症から重症で顕著である呼吸器外科にとって手術のリスクファクターとしてCOPDほど重要なものはありません。COPDでダメージを受けた肺を切り取るという操作を加えること自体きわめて大きなリスクファクターですが、COPDの患者さんは術後合併症の発生率も非常に高いのです。たとえば、術後の難治性肺瘻(肺からの空気漏れ)の発生率はCOPD併存例で12%に対し非併存例では4%と4倍、肺炎発生率はCOPD併存例で6%に対し非併存例では1%と6倍も高くなります。また、術後QOLが悪くなり、これも大きな問題だといえます。また、前述の通り低分化がんで進行が速いため、通常であれば肺葉切除で済むケースでも、COPD併存例ではリンパ節への転移が進んで手術範囲が大きくなることも少なくありません。COPDと肺がん死亡率画像を拡大するCOPDでは手術の可否の判断も複雑です。肺がんの手術適応基準は術後残存呼吸機能FEV1が800cc以上というものですが、COPDでは術後の呼吸機能が想定以上に悪くなることがあります。たとえば、肺がん切除後にCOPD病変部分が残る場合、正常の肺部分が少なくなるため、術後呼吸機能は想定以上に悪くなり、患者さんによっては手術ができないということが起こります。逆にCOPD病変と肺がんが同部位だと、肺の良い部分を残して悪い部分をとることになるため呼吸機能が劇的に良くなります。このように、COPDでは呼吸機能だけでなく手術部位を考慮してから、手術の可否を判断しないと危険です。呼吸機能の悪さ、耐術性の乏しさ、アグレッシブな低分化がん、と肺がん治療にとってCOPDは三重の障害をもたらすのです。COPDでは、がん以外の併存症にも重要なものがあります。COPDの死因の第1位は呼吸不全ですが、第2位は循環器疾患です。つまり、重症化して呼吸不全になる前に心臓の合併症が問題になるわけです。肺が悪ければ心臓とくに右心系に負荷がかかるため、心筋梗塞や心不全が起こりやすくなります。そのため、COPDの治療をすることで、心臓合併症死を減らさなければいけないわけです。最悪のオーバーラップ…CPFECOPDと間質性肺炎は双方とも喫煙が原因であるためオーバーラップすることがあります。この病態は気腫合併肺線維症CPFE(Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema)とよばれ、近年注目されています。COPDの一部に存在し、典型的には上葉に気腫、下葉に間質性肺炎がある新しい疾患概念です。このポピュレーションは、低酸素血症が著明に起こり、非常に予後も悪く術後の合併症も多いのが特徴です。さらに厄介な事に、呼吸機能が正常であることが多いのです。気腫と線維化が相殺して呼吸機能(1秒率)が見かけ上、正常なのです。呼吸機能だけを指標に手術に踏み切ると、落とし穴にはまる事もあります。今後、この病態の研究は盛んに行われるでしょう。COPD患者180例における各表現型の比率画像を拡大するCPEEの死亡率画像を拡大するCOPD併存肺がん症例での臨床試験COPDは未診断の患者が多い疾患ですが、呼吸器外科では必ずスパイロメトリーを行うため潜在的なCOPD患者を把握できる確率は高いのです。それも手術可能な症例なので、内科でのCOPDよりも軽症の患者さんが多くおられます。COPDには、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)のUPLIFTなど大規模な研究が数多くあるものの、外科が主体となった研究はなく、呼吸器外科医が診る軽症例における、有用性や予後改善効果はわかっていません。さらに、手術適応ボーダーライン上の患者にチオトロピウムを投与することでFEV1が改善し手術可能となるか? また、それに長期的な意義があるのか? といったことも明らかにはなっていません。そのため、現在は当施設だけの小規模な試験ですが、多施設共同で300例を目標に術後合併症発生率をエンドポイントとした第3相試験を始めています。がんとCOPDのフォローアップを両輪で行う呼吸器外科の手術後、がん再発のフォローアップは通常10年程度ですが、COPD合併患者さんは術後もCOPDの状態であるため、生涯フォローアップが必要です。また、手術前はモチベーションがあるので治療薬を使ってくれるものの、症状がないため手術後薬物治療をやめてしまう患者さんも数多くいます。そのため、内科と連携を図り、がんとCOPDのフォローアップを両輪で行えるようなシステムが実現できると良いと思います。COPDもがんも世界的に増えていく疾患です。知識豊富な呼吸器内科の力をお借りし、今後は診療科を超えた連携対策を実施していく必要があると思います。

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エキスパートに聞く!「COPD」Q&A

認知症や寝たきり患者さんのCOPD診断の方法は?この場合、呼吸機能検査や胸部所見もとれませんので厳しい状態ではありますが、換気不全については呼気CO2アナライザーを用いて確認可能です。換気不全があると呼気中CO2濃度は上昇します。間質性肺疾患など拘束性換気障害ではこのような現象はみられませんので、呼気中CO2濃度の上昇は閉塞性障害がベースにあるという根拠になります。長い喫煙歴がありCOPDの肺所見もあるが、スパイロメトリーは正常な患者に対する対応法は?横隔膜の平低化などの画像所見がある方で、スパイロメトリーが正常だということはまずなく、何か異常があるものです。しかし、閉塞性換気障害が確認できない場合でも、咳や痰などの症状がある場合、旧分類ではステージ0とされ、将来COPDになる可能性が高いため、禁煙が推奨されています。また、こういった方たちの進行をいかにして防ぐかというのは今後の課題でもあります。呼吸器・循環器疾患の既往がなく非喫煙者であるものの、スパイロメトリーが異常な患者に対する対応法は?このケースではさまざまな要素が考えられます。閉塞性換気障害があることを想定すると、まず喘息の鑑別が必要です。また、非喫煙者であっても受動性喫煙についての情報をとることも重要です。さらに、胸郭の変形の確認や、日本人にはほとんどいませんがαアンチトリプシン欠損の除外も必要です。それから、もう1つ重要なことは、再検査によるデータの確認です。患者さんの努力依存性の検査ですから、適切に測定されて得られる結果かどうかの確認はぜひとも必要です。COPDと心不全合併症例における治療方針は?原則としてCOPDについてはCOPDの治療を行いますが、薬物療法とともに低酸素血症への酸素投与が重要です。COPDにより誘導される心不全は、基本的には右心不全であり、利尿薬が選択されます。拡張性心不全に準じて、利尿薬とともに利尿薬によるレニン-アンジオテンシン系の刺激作用を抑制するためにACE阻害薬やARBの併用が勧められています。不整脈などの症状が出たら、それに合わせた対応が必要となります。吸入ステロイドを導入するケースは?吸入ステロイド(以下:ICS)はCOPDそのものに対する有効性はあまり認められていません。しかし、急性増悪の頻度を減らすことが認められています。そのため、ICSは増悪を繰り返す際に安定を得るために投与するのが良いと考えられます。また、現在は長時間作用性β2刺激薬(以下:LABA)との配合剤もあり、選択肢が広がっています。LAMA、LABA/ LAMA配合薬、ICS/LABA配合薬の使い分けについて教えてくださいLAMAおよびLABA/LAMAについては、さまざまな有効性が証明されており、COPDの薬物療法のベースとして考えていただくべきだと思います。ICS/LABA配合薬 については、上記ICSの適応症例に準じて、適用を判断していくべきだと思います。また、テオフィリンのアドオンも良好な効果を示し、ガイドラインで推奨されているオーソドックスな方法であることを忘れてはいけないと思います。*ICS:吸入ステロイド、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬

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ACE阻害薬、末梢動脈疾患患者の間欠性跛行とQOLを改善/JAMA

 ACE阻害薬ラミプリル(本邦未承認)は、間欠性跛行のみられる末梢動脈疾患(PAD)患者の歩行能を有意に改善し、その結果として健康関連QOLの改善をもたらすことが、オーストラリア・Baker IDI心臓・糖尿病研究所のAnna A. Ahimastos氏らの検討で示された。PAD患者は欧州と北米で約2,700万人に上る。その約3分の2が歩行時疼痛(安静時には消失)による間欠性跛行を来し、身体の機能的障害やライフスタイルの制約を受けることになる。これまでに行われた薬物療法の臨床試験では、歩行距離の延長効果は12~60%だが、同氏らはパイロット試験でラミプリル の有効性を示唆するデータを得ているという。JAMA誌2013年2月6日号掲載の報告。歩行能、QOLをプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、間欠性跛行がみられるPAD患者の客観的な歩行能、歩行能に関する患者の印象、健康QOLに及ぼすラミプリルの効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。 対象は、2008年5月~2011年8月までにオーストラリアの3施設から登録されたPAD患者212例。これらの患者が、ラミプリル10mg/日を24週投与する群(106例、平均年齢65.5歳、男性82.1%、平均BMI 25.4kg/m2、糖尿病22.6%、高血圧48.1%、喫煙者36.8%)またはプラセボ群(106例、65.5歳、84.9%、25.7kg/m2、25.5%、51.9%、30.2%)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、標準的なトレッドミル運動負荷検査で測定した最長歩行時間および無痛歩行時間(跛行痛が発症するまでの時間)とした。歩行能については歩行障害調査票(Walking Impairment Questionnaire:WIQ)で、健康関連QOLはShort-Form 36 Health Survey(SF-36)で評価した。無痛歩行時間が77%改善、最長歩行時間は123%改善、精神面QOLへの影響なし 治療終了時(6ヵ月後)の平均無痛歩行時間は、ラミプリル群がプラセボ群よりも有意に75秒延長し(延長時間:ラミプリル 群88秒、プラセボ群14秒、p<0.001)、最長歩行時間は255秒長かった(同:277秒、23秒、p<0.001)。 WIQの距離スコア中央値はラミプリル群がプラセボ群よりも13.8点改善し[Hodges-Lehmann 95%信頼区間(CI):12.2~15.5]、WIQ速度スコアは13.3点(同:11.9~15.2)、WIQ階段上がりスコアは25.2点(同:25.1~29.4)有意に改善した(いずれもp<0.001)。 SF-36の身体面の総合スコア中央値は、ラミプリル群がプラセボ群に比べ8.2点有意に改善した(Hodges-Lehmann 95%CI:3.6~11.4、p=0.02)。ラミプリル群では、SF-36の精神面の総合スコア中央値への影響は認めなかった(同:-0.7~1.1、p=0.74)。 著者は、「間欠性跛行を呈するPAD患者において、ラミプリル24週投与により無痛歩行時間および最長歩行時間がプラセボに比べ有意に改善し、その結果としてSF-36スコアの身体機能の有意な改善が得られた」と結論している。なお、トレッドミルでの最長歩行時間の255秒の延長は実際の坂道歩行で184mの延長に相当する。また、無痛歩行時間の75秒の延長は77%の改善、最長歩行時間の255秒の延長は123%の改善であり、これは、これまでに同様の試験が行われた薬剤の効果を上回るものだという。

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石巻地域COPDネットワーク(ICON)の取り組み

喫煙に甘い地域特性とその対策石巻はCOPD、間質性肺炎、塵肺など重症の呼吸器疾患が多い地区です。タバコの購買量も多く、全国平均の1.5倍(2006年のデータ)でした。地域産業の影響もあります。石巻は漁業の街でもありますが、同時に喫煙に甘い地域でもありました。未成年の喫煙は大きな問題で、小学生高学年から中学生の時に吸い出し、高校生で常習喫煙となっている子どもも少なくありませんでした。さらに、公共施設での喫煙対策も立ち遅れており、2006年度のデータでは施設内完全禁煙率は55.4 %(宮城県平均73.9%)でした。このような問題の重大性を鑑み、地域の基幹病院として、2007年12月に石巻市や東松島市などの関係機関へ喫煙対策推進の要望書を提出しました。マスコミも巻き込み新聞などでアピールすることで要望は実現し、2008年4月から石巻市、東松島市の市立学校の敷地内禁煙と公共施設内禁煙などが始まりました。このほか、行政とともに市民医学講座などのイベント、小中学校、高校、大学での防煙教育を行いました。とくに、学校での防煙教室は今では年間20校程度に定着し、小中学生で有意な教育効果が認められるなど、子供たちの意識も確実に変わってきたといえます。学校での防煙教室の様子COPD dayの開催取り組みの一環として、一般市民に対するCOPD啓発イベント「石巻COPD day」を、宮城県、石巻市、石巻市医師会、GOLD、世界COPD Day日本委員会の後援を得て2006年より開始しました。このイベントは、震災のあった2011年を除き、本年まで最低年1回開催しています。お祭り会場、ショッピングセンター、病院などを会場とし、多い年には800名以上の参加者があります。この活動は、疾患啓発とともにCOPDの地域疫学調査の役割を担っています。COPD dayでは、参加市民全員に、質問票によるCOPDチェック(喫煙状態、COPD症状など)、COPDの認知調査、スパイロメトリー、COPD・禁煙のミニレクチャー、COPD疑いのある方には医師による医療相談などを行っています。COPD dayの疫学調査の結果、驚きの事実が明らかになりました。まず、喫煙率は男性41%、女性17%と高いものでした。なかでも20、30、40歳代の若い女性の喫煙率はそれぞれ32%、33%、39%と非常に高く、憂慮すべき事態でした。また、COPDの罹患も多く、スパイロメトリー検査による閉塞性障害は40歳代以上で13.4%(男性20%、女性6%)ということが明らかになりました。NICE study結果では40歳以上の8.6%ですので、タバコ購買量と同様これも全国の1.5倍という高いものでした。COPDの頻度画像を拡大する喫煙状況(2006年石巻COPD Dayでの調査)画像を拡大するICON立ち上げCOPDの罹患状態をそのままにしておくと、当地域での重症COPDは確実に増えてしまうと考えられました。しかし、石巻医療圏(石巻市、東松島市、女川町)は、呼吸器科医師が少ない地域で、人口22万人に対し、呼吸器内科医は当院(石巻赤十字病院)で4名、地域全体でも7名しかいません(2007年当時)。そこで、石巻COPDネットワーク「ICON(Ishinomaki COPD Network)」を2年間の準備を経て2009年10月に立ち上げました。これは石巻とその周辺においてCOPDの患者さんを、医師、看護師、リハビリ専門職、薬剤師、栄養士などが連携して支えるシステムで、ICONに登録したCOPD患者さんは登録医療機関で共通の治療を受けることができるというものです。COPDは糖尿病と同じように患者の自己管理が必須の疾患であり、医師だけでなく多くの医療従事者で診療・ケアにあたることが必要です。また、COPDは予防、早期発見、患者発掘が必要であるため、診療所との連携は不可欠だといえます。現在、基幹病院(石巻赤十字病院)、かかりつけ医、リハビリ病院、在宅医療、訪問看護、薬剤師会などの連携を始めています。医療機関の登録は60施設、うち診療所が49施設、病院が11施設です。東日本大震災で10施設ほど減りましたが(消失2件、廃業7件、脱退1件)、その後新たに7施設がICONに参加しています。登録患者数は299名です。ICONは、医療圏をはみ出し宮城県東北部の広い地域でCOPD連携し、医療資源の少なさをカバーしています。早期から在宅酸素療法も含め最重症の患者さんまでみており、基幹病院での定期的な教育と検査、増悪時の確実な入院も実現しています。さらに、吸入指導・禁煙指導での病薬連携も行っています。石巻赤十字病院ICONの活動COPD治療は、医師だけでは困難です。そのため、医師、看護師、薬剤師、療法士、栄養士という多職種でワーキンググループを作り、定期的に集まってアクションプランの作成、連携パス、教育プログラムなどを共同で作っています。ICON参加スタッフの教育も盛んで、定期的に講師を招いて講演会を実施しています。スタッフは非常に熱心で、講演会には多職種の医療従事者が100名前後集まります。テーマは広く、COPDの疾患理解、吸入指導、リハビリ、呼吸法、在宅酸素など医師以外の医療者も役立つ内容になっています。とくに吸入指導・禁煙指導については地域の保険薬局も積極的に参加していただけるようになり、効果も上がっています。ICON地域連携パスの作成ICON活動のひとつとして「ICON地域連携パス」を作成しました。専門医、プライマリケア医に加え看護師、薬剤師、療法士も加わって作っており、リハビリ、栄養・食事指導、訪問介護など広い範囲をカバーしたパスとなっています。ICON登録診療所の医師は、COPDが疑われる患者さんがいたら、基幹病院に紹介します。基幹病院に紹介された患者さんは検査を受け、COPDと診断された方はICONに登録され、治療導入や教育を受けます。その後、診療所に戻っていただきますが、診療所はICONパスに従って安定期治療を行います。その間、重症度や症状に応じて半年から1年ごとに基幹病院にて教育、COPDの状態チェック、併存症チェックが行われます。増悪時もICONパスに従い、診療所で初期診療を行い、必要と判断されれば基幹病院に紹介されます。入院が必要な場合は、必ず基幹病院(満床の場合はICON加盟の急性期病院)に入院させることを担保しています。増悪回復後は、診療所で引き続き外来治療を行う、必要ならばリハビリ病院で通院リハも行うという流れです。震災後はとくに、訪問看護ステーション、訪問診療医との連携が重要課題となっています。仮設住宅に移った後、身体活動性が低下したり、かかりつけ医が遠くなるなどの理由で医療機関の受診が減少した患者さんが多くなりました。COPDでは活動量の低下により増悪や死亡のリスクが増大することが知られており、継続的な治療や指導は重要なのです。この連携よって、病院は外来患者が減少し、増悪の入院治療や患者教育に専念できるようになり、看護師・薬剤師などメディカルスタッフ外来もできるようになりました。診療所は安定期治療と早期発見に専念でき、要入院の増悪患者さんをスムーズに基幹病院に送れるという安心感が得られるようになりました。患者さんは病・診連携により自分の病態に沿った適切な治療が受けられることとなり、お互いにメリットが共有されました。画像を拡大するICON COPDの地域連携パスICON外来前項で述べた定期的なICON登録患者さんのCOPDとその併存症の検査、ならびに自己管理項目の評価と再教育のために、「ICON外来」を行っています。石巻赤十字病院の健診センターで、患者さんの状態に応じて半年から1年ごとに予約診療されています。ここでは、低線量CTによる肺がんのスクリーニングと肺気腫病変の進行評価、肺機能、ADL(千住式)、 QOL(CAT)、6分間歩行などのCOPD関連のチェックだけでなく、心機能、糖尿病(HbA1c)、骨密度、うつ評価(HAD) 、認知機能(MMSE)など併存症の評価も行います。また、看護師による患者さんの疾患理解度の調査(LINQ*)とそれに基づく患者教育、薬剤師による吸入指導、療法士による呼吸リハビリテーション、栄養士による栄養指導も行っています。*LINQ : Lung Information Needs QuestionnaireCOPD患者が自身で管理・治療していくために必要としている情報量を測定する自己記入式質問票。疾患、自己管理、薬、禁煙、運動、栄養の6項目について、現在どの情報が不足しているのかを確認する画像を拡大するICON外来のプログラムICON手帳患者さん向けの「ICON手帳」も作成しました。これは患者さんが症状、運動量(万歩計歩数)、アクションプランなどを毎日記載していくものです。これにより患者さんは、客観的に症状の経過や運動量を確認することができます。また、ICON登録診療所を受診した際、この手帳をかかりつけ医に見せます。かかりつけ医は手帳の内容を確認し、治療介入することとなっています。医師が内容をチェックすることで、COPDの状態把握とともに増悪リスクも早期発見できる訳です。ICON手帳常に改良を続け、近々に改訂版がでる予定これらICON活動の結果はどのようなものでしょうか。当院に入院した増悪期患者さんの治療内容や転帰をみてみると、COPDの診断確定はICON登録施設からの紹介患者さんに多く、適切な治療の実施率もICON登録施設の方が高かったという結果が出ており、ICON活動が効果を現していることがわかりました。画像を拡大する禁煙を含む適切な安定期治療COPDの連携のノウハウCOPDには、GOLDや日本呼吸器学会COPDガイドラインなどの明確な指針があります。加えて、かかりつけ医、基幹病院、リハビリ病院などさまざまなスペシャリストが関与する循環型連携ですので、連携はやりやすいといえます。また、スタッフのモチベーションが上がります。教育は看護士、吸入指導は薬剤師、リハビリは療法士というように、それぞれの役割が必須かつ重要であるため張り合いがでるようです。また、潜在患者が多く、早期発見が容易で早期治療が効果的、診療所で定期的な治療されている疾患がCOPD併存症として多く存在するなど、連携は診療所にもメリットがあります。とはいえ、連携に対していくつかのコツはあると思います。私たちもICONの立ち上げにあたっては、先行してCOPD連携で成功していた前橋赤十字病院や草加市立病院の医師、看護師から連携立ち上げや運用のコツを学び、「石巻COPD Day」の結果報告会やわが国第一人者による複数回のCOPD講演会を開催するなど石巻地域におけるCOPD診療とその連携の重要性について医師の啓発を行いました。また、世話人の選出にあたっては、専門医・非専門医に加えて、看護師、療法士、薬剤師にその間口を広げています。さらに、さまざまな施策については、プレ運用を重ね時間をかけて作っていきました。COPDの連携では、地域特性に合わせた展開が重要だと思われます。石巻は呼吸器の医療資源が少ないため全面的な連携を行っていますが、増悪にポイントを絞った前橋の連携のように、東京や仙台などの都会でもそれぞれの連携方法があると思います。さらに、メディカルスタッフの役割が大きな疾患ですので、メディカルスタッフを信頼し、頼み、任せるという姿勢が重要だと思います。今後の課題60施設登録はあるものの、施設間の温度差はあります。ICON手帳のチェックなど診療所の介入が少ない患者さんは理解度が低く、再教育が必要になることも多く、医師の介入は重要です。いかにしてお忙しい診療所の先生方に介入していただくか、講演会参加の呼びかけ、かかりつけ医での待ち時間を利用した事務員、看護師による患者指導なども検討しています。なかなか進まない早期発見の対策も必要です。スパイロメトリー検査は医師だけでなく看護師への教育が重要であることから、希望する施設にはメーカーに教育に出向いてもらうなどの介入も検討しています。また、6秒量が測れる携帯型スパイロメトリーの活用も検討しています。この機器は診療点数がとれない反面、患者さんの金銭負担がなく医師も勧めやすいので、COPDが疑われる方にベッドサイドで手軽に使える呼吸機能検査にならないかと考えています。そして、現在IPAG質問表を用いていますが、もっと簡単な質問票を検討中です。看護師の指導に診療報酬がつかなかったり、COPD連携の診療報酬のメリットが多くないなど課題も多くあります。しかし、ICONではCOPDが疑われたら間違いを恐れず送っていただくようお願いしています。COPDでなくとも、間質性肺炎など重大な疾患や心臓疾患などが見つかることもあります。これからも、COPDの早期発見、早期介入が実現するよう間口を広げていきたいと思います。6秒量が測れる簡易スパイロメトリー写真は「ハイ・チェッカー」提供:宝通商株式会社

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危険・有害な飲酒、プライマリ・ケアで介入強度を高めても改善されず/BMJ

 危険・有害な飲酒(hazardous or harmful drinking)に対する簡易介入(brief intervention)の抑制効果は、その強度を高くしても改善されないことが、英国ニューカッスル大学のEileen Kaner氏らの検討で示された。WHOが行った国際試験では、プライマリ・ケアを日常的に受診する患者の約20~30%が危険・有害な飲酒者だという。アルコール摂取に対するプライマリ・ケア医による簡易介入(簡単な助言や心理カウンセリング)により、危険・有害な飲酒が有意に低減する可能性が指摘されているが、どの程度の介入が最適かは明らかにされていない。BMJ誌2013年1月26日号(オンライン版2013年1月9日号)掲載の報告。高強度の介入の有用性をクラスター無作為化試験で評価 SIPS(Screening and Intervention Programme for Sensible drinking)試験は、簡易介入の強度が高いほうが危険・有害な飲酒の低減効果は優れるとの仮説を検証するプラグマティックなクラスター無作為化対照比較。 2008年5月~2009年7月までに、イングランド北東部と南東部およびロンドン市のプライマリ・ケア施設を受診した18歳以上の3,562人のうち、2,991人(84.0%)が登録された。このうち900人(30.1%)が危険・有害な飲酒者と判定され、756人(84.0%)が簡易介入を受けた。 全体の平均年齢は44.5歳、男性が62.2%、白人が91.7%、喫煙者が34.2%だった。説明書(http://www.sips.iop.kcl.ac.uk/pil.php)のみの対照群、5分間の簡易な助言を受ける群、20分間のライフスタイルに関する簡易なカウンセリングを受ける群の3群に分けられた。 主要評価項目は、6ヵ月の介入後にアルコール使用障害特定テスト(alcohol use disorders identification test; AUDIT)で評価した自己申告による危険・有害な飲酒の状態とした。AUDITスコア<8点の場合に陰性(非危険・非有害な飲酒)と判定された。書面による結果のフィードバックが最適な抑制戦略の可能性も フォローアップ率は6ヵ月後が83%(644人)、12ヵ月後は79%(617例)であり、いずれの時点でもintention-to-treat(ITT)集団のAUDIT陰性率は3群間で同等であった。 6ヵ月後の対照群と比較したAUDIT陰性率のオッズ比は、5分簡易助言群が0.85[95%信頼区間(CI):0.52~1.39]、20分ライフスタイル簡易カウンセリング群は0.78(同:0.48~1.25)であった。per-protocol集団の解析でも同様の結果が得られ、3群間に有意な差は認めなかった。 12ヵ月後の対照群と比較したAUDIT陰性率のオッズ比は、5分簡易助言群が0.91(95%CI:0.53~1.56)、20分ライフスタイル簡易カウンセリング群は0.99(95%CI:0.60~1.62)だった。 著者は、「参加者全員にアウトカムがフィードバックされたが、それでも説明書のみの対照群に比べ、5分簡易助言群、20分ライフスタイル簡易カウンセリング群ともに危険・有害な飲酒の抑制効果は認められなかった」とし、「プライマリ・ケアにおける最適な危険・有害な飲酒の抑制戦略は、患者への書面による結果のフィードバックである可能性がある」と指摘している。

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喫煙女性の死亡率は非喫煙女性の約3倍、寿命は11年短い:Million Women Study/Lancet

 英国の中高年女性喫煙者の死亡原因の3分の2が喫煙に起因し、喫煙女性の死亡率は非喫煙女性の約3倍で、寿命は10年以上短いことが、英国・オックスフォード大学のKirstin Pirie氏らが実施したMillion Women Studyで示された。喫煙はいまだに予防可能な主要死因であり、英国や米国で1940年頃に生まれた女性は、成人以降の生涯を通じて多量の喫煙をした最初の世代である。それゆえ、21世紀のいまこそが、長期の喫煙や禁煙が英国人女性の死亡率に及ぼす影響を直接的に観察可能な時だという。Lancet誌2013年1月12日号(オンライン版2012年10月)掲載の報告。喫煙状況を郵送にて再調査 Million Women Studyの研究グループは、今回、1996~2001年に登録された約130万人の英国人女性を対象に、約3年または8年後の再調査を郵送にて行った。 国民死亡記録を調べ、全女性を2011年1月1日まで追跡した(平均12人年)。全参加者は登録時に現喫煙者か元喫煙者かを聞かれ、現喫煙者はたばこの本数を尋ねられた。 登録時または3年後の再調査時に元喫煙者と答えた者や、55歳になる前に喫煙を止めた女性は、禁煙開始時の年齢別に分類された。Cox比例ハザードモデルを用いて、喫煙者、元喫煙者(禁煙者)、生涯非喫煙者の調整済み相対リスクを算出し、比較した。1日10本未満でも死亡率は約2倍に、喫煙者の80歳以前死亡リスクは53% 既往症のある約10万人を除外した残り約120万人の誕生年の中央値は1943年、年齢中央値は55歳であった。追跡期間中に全体の6%(6万6,489人/118万652人)が死亡し、死亡時平均年齢は65歳だった。ベースライン時に20%(23万2,461人)が喫煙者、28%(32万8,417人)が元喫煙者で、残りの52%(61万9,774人)は生涯非喫煙者であった。 ベースライン時の喫煙者のうち8年後の再調査でその後喫煙を止めたと答えた者が44%(3万7,240人/8万5,256人)いたにもかかわらず、ベースライン時の喫煙者の生涯非喫煙者に対する12年死亡率の率比は2.76〔95%信頼区間(CI):2.71~2.81〕に達していた。 3年後の再調査時にまだ喫煙していた女性は死亡率が非喫煙者に比べ約3倍高かった(率比:2.97、95%CI:2.88~3.07)。ベースライン時に1日喫煙本数が10本未満の女性でさえ、12年死亡率は非喫煙者の約2倍だった(同:1.98、1.91~2.04)。 頻度の高い上位30位までの死因のうち23死因が、非喫煙者よりも喫煙者で有意に高頻度であり、率比は慢性肺疾患の35.3(95CI:29.2~42.5)が最も高く、肺がんの21.4(同:19.7~23.2)がそれに次いだ。喫煙者の死亡率の増分(非喫煙者との比較)は、主に肺がんなど喫煙に起因する可能性がある疾患によるものであった。 25~34歳および35~44歳で喫煙を恒久的に止めた元喫煙者の相対リスクは、全死因死亡がそれぞれ1.05(95%CI:1.00~1.11)、1.20(同:1.14~1.26)、肺がん死は1.84(同:1.45~2.34)、3.34(2.76~4.03)であった。すなわち、これら禁煙期間が長期にわたる元喫煙者では、ある程度の死亡率の増分が残存するものの、継続的な喫煙者の大きな増分に比べれば、25~34歳で禁煙した群の増分はそのわずか3%、35~44歳で禁煙した群は10%に過ぎなかった。 2010年の英国の全国死亡率を併せると、70歳にならずに死亡するリスクは喫煙者が24%、非喫煙者は9%(絶対差:15%)で、80歳前の死亡リスクはそれぞれ53%、22%(同:31%)であり、寿命は喫煙者が非喫煙者よりも11年短かった。 著者は、「英国の50歳代、60歳代、70歳代の喫煙女性の死亡の3分の2が喫煙によるもので、喫煙者は10年以上寿命が短かった」とまとめ、「40歳まで喫煙を続ければ、その後禁煙しても喫煙の有害性は実質的に残存し、40歳以降も喫煙を続けた場合は有害性は10倍以上になる。40歳前に禁煙すれば、喫煙を続けた場合の死亡率の増分の90%以上を回避でき、30歳以前の禁煙では実に増分の97%が消失する」と考察を加えている。

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検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

 抗てんかん薬は免疫グロブリンに影響を与えると言われている。ノルウェー・オスロ大学病院のS. Svalheim氏らは、レベチラセタム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどの抗てんかん薬がてんかん患者の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響を検討した。Acta neurologica Scandinavica誌2013年1月号の掲載報告。 被験者は、てんかん患者211例および対照80例(18~45歳の男女)であった。てんかん患者は抗てんかん薬単独による治療を最低6ヵ月施行されていた。治療薬の内訳はレベチラセタムが47例、カルバマゼピンが90例、ラモトリギンが74例であった。免疫グロブリンG (IgG)、IgG サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンM(IgM)の総濃度を測定し、患者群と対照群で比較した。なお、患者背景として喫煙、飲酒習慣、身体活動性の記録とともに、BMIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・ラモトリギンの治療を受けている男女、カルバマゼピンの治療を受けている男性において、IgG濃度およびIgG1濃度は有意に低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている女性において、IgG2濃度およびIgG4濃度はより低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている男性において、IgA濃度およびIgM濃度はより低値であった。・レベチラセタムの治療を受けている患者では、対照群との間で免疫グロブリン濃度に差はみられなかった。・以上の結果から、ラモトリギンおよびカルバマゼピンはてんかん患者の免疫グロブリン濃度を低下させることが示された。・本検討における対象患者が健康若年成人でなかったことを考えると、たとえば免疫不全症例などの特定の患者集団においては、抗てんかん薬が免疫グロブリン濃度に影響を及ぼしうることを特に認識しておく必要がある。そして、ラモトリギンやカルバマゼピンを服用中で感染症を繰り返しているような患者については、免疫グロブリン濃度を測定し、薬剤の変更を考慮すべきである。関連医療ニュース ・神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる? ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す

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Qスイッチレーザーのタトゥー除去成功、セッション15回で74.8%

 Pier Luca Bencini氏らは、Qスイッチレーザーのタトゥー除去のアウトカムと後遺症への影響について前向き観察コホート研究を行った。その結果、臨床効果を減じる因子として喫煙や色(黒と赤以外)などが関連していることを明らかにした。著者によると、本検討はQスイッチレーザーによる効果的なタトゥー除去のための予後因子を評価する初の研究であるという。Archives of Dermatology誌2012年12月号(オンライン版2012年9月17日号)の掲載報告。 本研究は、Qスイッチレーザーのタトゥー除去の治療方針と予後に影響を及ぼす因子について解析することを目的とし、イタリア・ミラノのレーザー治療センターで行われた。 被験者は全員、同一の施術者によって、Q-switched 1,064/532nm Nd:YAG laserまたはQ-switched 755-nm alexandrite laserにより除去手術を受けた。レーザーセッションのスケジュールは、6週間以上の間隔が空けられた。 主要評価項目は、治療の成功(タトゥー除去が一時的な皮膚表面の低色素や黒ずみを除く有害事象を伴うことなく行われた場合)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・1995年1月1日~2010年12月31日の間に397人の連続患者が登録された。そのうち352人(男性201人、女性151人、年齢中央値30歳)が解析に組み込まれた。・タトゥー除去に成功した患者の累積割合は、レーザーセッション10回後で47.2%(95%CI:41.8~52.5%)、15回後で74.8%(同:68.9~80.7%)であった。・治療の臨床効果の減少と関連していた因子として、喫煙、赤と黒以外の色がある場合、タトゥーが30cm2超、下肢にあるまたは36ヵ月以上前からのタトゥー、高い色密度、治療間隔が8週間未満、黒ずみの発現が認められた。・以上の結果から、著者は「タトゥー除去の治療プランでは、有効率に影響を及ぼす因子について考慮すべきである」と提言する。

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第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

 第二世代抗精神病薬(SGA)は2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。米国・ザッカーヒルサイド病院のPeter Manu氏らは、SGAであるクロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンについて、インスリン分泌への影響を検討した。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。 SGAは2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。SGAのインスリン分泌への独立した影響については、これまで動物モデルの試験においては示唆されていたが、臨床では実証されていなかった。研究グループは、SGA治療中の患者における負荷試験後インスリン分泌について評価することを目的に、単一施設で代謝評価を受けた連続する783例の成人精神疾患入院患者コホートのうち、520例の非糖尿病患者を対象とした試験を行った。インスリン分泌は、75gブドウ糖負荷試験後のベースライン、30分、60分、120分時点での記録を基に作成した曲線下面積[AUC(インスリン)]で評価し、インスリン分泌の独立予測因子について、サンプル全体で、または正常耐糖能(NGT)と糖尿病前症患者に分けて回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者520例の内訳は、クロザピンを服用する群が73例、オランザピン群190例、クエチアピン群91例、リスペリドン群166例であった。・負荷後AUC(インスリン)の独立予測因子は、AUC(グルコース)・腹囲・トリグリセリド値・低年齢(p<0.0001)、非喫煙(p=0.0012)、クロザピン治療(p=0.021)であった。・モデルが示すインスリン分泌バリアンスは、33.5%であった(p<0.0001)。・クロザピンの影響は、NGT群ではみられたが、糖尿病前症患者群では認められなかった。関連医療ニュース ・抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」 ・統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証! ・「糖尿病+うつ病」に対する抗うつ薬の有効性は“中程度”

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軍人スタディで判明、米国の心疾患対策で残された課題/JAMA

 2001~2011年間のイラク戦争で死亡した米国軍人の剖検からアテローム性動脈硬化症の有病率を調べた結果(8.5%)から、朝鮮戦争(77%)およびベトナム戦争(45%)当時よりも減少が示唆されたことが、米国・Uniformed Services University of the Health SciencesのBryant J. Webber氏らによる調査の結果、示された。米国では朝鮮・ベトナム戦争時の剖検結果から、虚血性心疾患が発症する20、30年前から冠動脈のアテローム性動脈硬化症が進行している可能性が示唆され、以来、軍人のみならず小児や若者をターゲットとした健康政策が実行されてきたという。その成果がみられるとしながらも著者は、「年齢別、心血管リスク因子別にみると、さらなる改善の目標は残っている」と報告した。JAMA誌2012年12月26日号掲載より。2001~2011年のイラク戦争死亡軍人の剖検記録を解析 研究グループは、米国軍人の冠動脈および大動脈アテローム性動脈硬化症の最近の有病率を調べることを目的とした縦断研究を行った。2001年10月~2011年8月の間、イラク戦争に出征して戦闘または不慮の事故で死亡した米国軍人について、2012年1月に入手できた心血管剖検記録からアテローム性動脈硬化症の有病率を調べ、人口統計学的特性や病歴について解析した。冠動脈硬化症の重症度分類は、朝鮮・ベトナム戦争時の研究データとの整合性を図るためデータを解析する前に、軽度(脂肪線条のみ)、中等度(血管内腔10~49%の狭窄が1以上)、重症(血管内腔50%以上の狭窄が1以上)の指標によって評価した。 主要評価項目は、年齢、性、自己申告の人種/民族、教育程度、職業、所属部隊、階級、入隊時のBMI、ICD-9準拠診断の心血管リスク因子でみた冠動脈および大動脈アテローム性動脈硬化症の有病率とした。冠動脈硬化症有病率、高年齢や脂質異常症、高血圧、肥満症の人のほうが有意に上昇 解析に組み込まれた剖検数は3,832例だった。平均年齢は25.9歳(範囲:18~59歳)、98.3%が男性であった。 結果、あらゆる冠動脈硬化症の有病率は8.5%(95%信頼区間:7.6~9.4)だった。重症の冠動脈硬化症は2.3%(同:1.8~2.7)、中等度は4.7%(同:4.0~5.3)、軽度は1.5%(同:1.1~1.9)だった。上記について朝鮮戦争時(解析300例)は、77%、15%、27%、35%、ベトナム戦争時(同105例)は、45%、5%(中等度、軽度は報告なし)だった。 アテローム性動脈硬化症有病者の平均年齢(SD)は30.5(8.1)歳と、非有病者の25.3(5.6)歳と比べて有意に年齢が高かった(p<0.001)。 また心血管リスク因子がなかった人の有病率は11.1%(95%信頼区間:10.1~12.1)であったが、脂質異常症を有していた人[有病率:50.0%(95%信頼区間:30.3~69.7)、年齢補正後有病率比:2.09(95%信頼区間:1.43~3.06)]、高血圧症を有していた人[同:43.6%(27.3~59.9)、1.88(1.34~2.65)]、肥満症の人[同:22.3(15.9~28.7)、1.47(1.10~1.96)]は有意に高かった。しかし、喫煙者のアテローム動脈硬化症の有病率は高くなかった[同:14.1%(8.0~20.2)、1.12(0.73~1.74)]。 著者は、「戦闘または不慮の事故で死亡した軍人の剖検において、アテローム硬化症の有病率は、年齢および心血管リスク因子による違いが明らかとなった」と結論し、軍人および民間人を問わずヘルスケアシステムによる幼少期から成人期までの継続した心血管リスク因子を減らす取り組みが求められるとまとめている。

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聖路加GENERAL 【Dr.石松の帰してはいけない患者症例】

1.「頭痛篇」2.「胸痛篇」 1.「頭痛篇」さまざまな症状で救急に来る患者さん。最も重要なのは、緊急性の判断です。緊急性の高い疾患を見逃して、帰してしまうようなことだけは避けなければなりません。問診、身体所見、必要な検査を迅速に行い、疾患の鑑別を行いますが、判断の難しいケース、ときには緊急性なしと判断されてしまう場合もあります。比較的よくみられる症例をとおして「帰してはいけない」緊急性が高い疾患の見分け方を解説します。【症例1】3カ月前から、バンドで締め付けるような頭痛が徐々に発生した55歳の女性。【症例2】会議中に突然頭痛が発症し、嘔吐を伴い痛みが持続している52歳女性。この2つの症例から緊急性の有無を見極めるには、まず"OPQRST"チェックを行います。その結果、2例目はとても危険度の高い症例であることがわかり、無事に治療を受けることができました。その極意をお伝えします。【症例3】ランニング中に頭痛と嘔気を催した34歳の男性。頭痛は改善せず6日間持続し、さらに増悪したため来院しました。まずは前回お伝えした"OPQRST"でチェックすると、「頭痛が6日間継続し、かなり激しい痛みにまで増悪した」ことから、危険な疾患が予測されました。しかし、身体所見をみると、ほとんど異常がみられません。どうやら、典型的なものではないようですが、どのようにアプローチするのでしょうか?【症例4】嘔吐、羞明、右半身筋力低下という随伴症状のある25歳女性。これは、もちろん片頭痛として帰すわけにはいきません。しかしCTとMRIを施行しましたが、異常な所見はありませんでした。この症例、どのように診断したのでしょうか?頭痛の診断に役に立つチェックリスト"OPQRST"について、さらに詳しく解説します。2.「胸痛篇」胸痛で救急対応といえば、ACSなど危険な疾患を迅速に鑑別しなければなりません。【症例1】一週間前から胸痛が断続的に続く79歳の女性。早速痛みのチェックリスト“OPQRST”でチェックすると、「ACSなどの危険な疾患はない」と判断されました。また血液、心電図、CXRを検査しても異常は認められません。さて、どんな診断がくだされるのでしょうか。【症例2】ビールを飲んで締め付けられるような胸痛を発症した50歳の男性。肥満、高血圧、不整脈、脂質異常、喫煙とリスクファクターがずらりと揃っています。前例のGERDにもあてはまりそうですが、まずはリスクの高いところから評価をしていきます。ところが、血液、心電図とも特にACSを疑う所見は出てきません。さて、危険な疾患がみつかりそうなこの患者にどのようにアプローチしたのでしょうか。聖路加GENERALでお伝えした、「狭心症3つの質問」などを交えて展開します。【症例3】仕事中に、突然胸が苦しくなり意識を失った54歳の男性。またもやACS ? しかし、血液検査でも心電図でも異常がみつかりません。次に局所症状があったことから、頭部CTを撮りましたが、こちらも異常所見はありませんでした。異常が見つかったのは胸部単純写真からでした。左第一弓が突出していることから、大動脈造影CTを撮影したところ、明らかな解離がみられました。【症例4】背部痛と嘔気のある56歳の女性。夜中に痛みを発症し、痛み止めを飲んでも効果がないため救急来院。身体所見では、既往の高血圧以外は特に異常はみられませんでした。このような場合はOPQRSTで病歴を再度チェック!その結果、先ほどと同じ大動脈解離も鑑別にあがります。さて、この背部痛はどうだったのでしょうか。

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聖路加GENERAL 【Dr.小林の消化器内科】

第1回「海外で ""生肉""は要注意?」第2回「黄疸は 急いで診断 よい治療」第3回「つっかえ感? まず内視鏡」第4回「先生、胸のあたりが痛むのですが・・・」 第1回「海外で ""生肉""は要注意 ? 」絶対に聞いておきたい4つのポイントや腹部診察のコツを紹介します。【CASE1:72歳女性 急性下痢】倦怠感や嘔気を感じ、徐々に腹痛と下痢も出始めた症状が持続したため外来を受診。急性下痢症の鑑別では、まず小腸型か大腸型かを見分けることが必要です。正しい鑑別のために、絶対に聞いておきたい4つのポイントを紹介します。また、病歴聴取の際は、最近の渡航歴や服薬歴、生肉などの十分加熱されていない食物を口にしていないかといった点についても注意します。これらのポイントに沿って診察を進めた結果、腸管出血性大腸炎と判明しました。さて、ここからどのように原因を探っていけばよいでしょうか。また、どのような場合に直腸診や便培養を行うのか、適切なフォローアップについても見ていきます。【CASE2:21歳女性 慢性下痢】1ヵ月前から下腹部痛、1日3〜4回の下痢が生じ、熱も出始めて外来を受診。発熱と体重減少があったことから、機能性ではなく器質的なものを疑いました。体重の変化など、鑑別で注意すべき病歴から診断の検索をしていきます。このケースでは、腹部診察で索状の腫瘤を触知したので、悪性腫瘍や炎症性腸疾患で壁肥大になっている可能性を疑い、血液検査をした結果、慢性下痢症ということになりました。ではそこからどのように診断を進めていけばよいでしょうか。慢性下痢症の特徴、どのような場合に内視鏡検査を行えばよいか、内視鏡検査で異常が見られなかった場合についても、次に行うべき検査を項目別に分かりやすくお伝えします。また、知っておきたい腹部診察のコツを紹介します。第2回「黄疸は 急いで診断 よい治療」外来でも出くわすことの多い黄疸について紹介します。【CASE1:40歳男性 倦怠感発熱と黄疸症状】1週間ほど前から熱や倦怠感を自覚していたが、市販薬を飲んで仕事をしていた。しかし、数日前から食欲が低下し、尿の濃染や眼球の黄染に気づいて外来を受診。黄疸は外見に出やすく患者自身も気づきやすい症状ですが、鑑別していく上で注意すべき病歴を細かく見ていきます。特に、問診では魚介類の生食の既往を聞くことが多いですが、生肉生食の既往についても、期間は1ヵ月以上と長期的に見ることが重要です。また、黄疸は特にウィルス感染も疑われる疾患ですので、ウィルス性肝炎や評価に役立つ検査方法について分かりやすく解説します。【CASE2:63歳男性 上腹部痛と黄疸症状】1ヵ月ほど前から上腹部の軽い痛みを感じながらも、市販の胃薬で様子をみていたが、最近眼球の黄染が出始め、便が灰白色になったため外来を受診。常用薬はありましたが、黄疸を誘発するようなものではなく、海外渡航歴もないため、ウィルス性肝炎の可能性はあまり考えられません。診察を進め、腹部でやや腫大した胆嚢が触知されましたが、痛みはないということで、急性ではなく別の症状を疑いました。そこで検査所見や腹部超音波検査を行うと、膵がんによる閉塞性黄疸だということがわかりました。発見が遅れると予後の悪い本疾患について、アメリカの例と比較したスクリーニング法や効果的な検査方法など、早期発見のポイントを紹介します。また、最新の治療方法とその成績についてお伝えします。第3回「つっかえ感? まず内視鏡」嚥下障害について、ポイントを押さえ、わかりやすく解説します。【CASE1:64歳男性 嚥下困難(固形物で)】食べ物のつかえ感と胸やけの症状が続いたため、外来を受診。持続する嚥下困難の症状があり、食道の炎症なども考えられるため、詳しく病歴を聞くことにしました。嚥下困難の問診のポイントとなる嚥下痛や体重減少があり、喫煙が1日に20本、飲酒も仕事上機会が多いということから、悪性疾患が疑われます。さらなる精査のため、内視鏡検査を行った結果、食道がんという診断に至りました。早期発見が治療の鍵となる食道がんを鑑別するための効果的な内視鏡検査・治療について最新の情報を紹介します。また、嚥下困難をきたす原因は多岐にわたるため、その鑑別方法について、ポイントを解説します。【CASE2:52歳女性 嚥下困難(液体でも)】数年前から食べ物のつっかえ感を自覚、固形物だけでなく液体でも症状が見られます。症状が持続し体重減少があるものの、既往歴はなく身体所見でも異常はありません。このようなケースで医療面接で聞いておくべきポイント、嚥下障害の非消化管疾患について詳しく紹介します。本症例では液体でも嚥下障害が見られるということで、機能的疾患を疑い内視鏡検査を行いましたが、腫瘤性病変は認められず、更なる精査として食道内圧測定を行った結果、アカラシアと診断しました。アカラシアは比較的まれな症例ですが、早期発見が重要な疾患です。アカラシアに関する効果的な検査、最新の治療方法を紹介します。第4回「先生、胸のあたりが痛むのですが・・・」患者が痛みを訴える部位とは異なる場所が原因ということもあります。腹痛の部位によってカテゴライズした鑑別診断について詳しく説明します。【CASE1:45歳男性 高血圧の既往のある心窩部痛】来院当日に心窩部痛を発症し来院。ACSが疑われたため、心電図をとったところ不整が見られましたが、フォローの心電図、トロポニンともに異常なかったことから別の原因が考えられます。血液検査でも白血球がわずかに増多していた他は異常なし。来院前に嘔吐や下痢があり、改善していないこと、急性発症という点、そして他の疾患の特徴にあてはまらないことから腹部CTを行った結果、腫脹した虫垂を認め、急性虫垂炎の診断に至りました。腹痛は日常診療で頻繁に遭遇する疾患ですが、原因が患者が痛みを訴える部位とは異なる関連痛もあり、その鑑別は多岐に渡ります。腹痛について分かりやすく、診察でつかえるポイントを詳しく紹介します。【CASE2:47歳女性 腹部膨満感を伴う心窩部痛】半年前から心窩部痛を自覚していた。最近になって腹部膨満感を感じるようになったため外来を受診 。しかし、食事との関連や体重減少もなく、検査でも異常ありません。そこで、鑑別診断として機能性ディスペプシアを疑いました。機能性疾患の診断に必要な器質的疾患の除外のために行う検査について、ポイントを押さえてわかりやすく紹介します。また、腹痛の部位によってカテゴライズした鑑別診断について詳しく説明します。最近のホットトピックでもあるヘリコバクター・ピロリについても、検査に役立つ注意事項など、最新の情報をお伝えします。

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聖路加GENERAL 【Dr.仁多の呼吸器内科】

第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」第3回「慢性の咳にはまずCXRから」第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」 第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」鑑別の難しい呼吸器疾患へのアプローチのポイントについて、役立つ情報が満載です。【CASE1:軽い咳と白色痰が続くために来院した65歳の男性】身体所見は特に問題ありません。しかし、よくよく聞いてみると、数年前から駅の階段を昇る時に息苦しさがあり、最近強くなってきたことがわかりました。また、この患者は40本/日の喫煙を45年間続けていました。労作時呼吸困難は、医師から尋ねないとわからないことが多いため、詳細な問診が重要なポイントになります。検査の結果、労作時呼吸困難の原因は重度のCOPDでした。他に考えられる労作時呼吸困難を引き起こす症例としては間質性肺炎があります。その診断方法、病期分類、治療について詳しく解説します。【CASE2:3ヶ月前から駅の階段を昇るときに息苦しさを感じ始め、増悪傾向の60歳女性】この方は、ペットとしてチンチラを飼っています。肺疾患の場合、ペット飼育歴や住環境を必ず確認します。診察の結果、聴診で両下肺野でfine cracklesを聴取しました。呼吸副雑音を聴取したときは、その音の性質とフェーズを確認することで、その原因をある程度絞り込むことができます。その方法について、詳しく解説します。そして、びまん性肺疾患の場合、症状がない場合でも専門医に送ることが勧められています。必要な検査を実施し、治療方針を立てて、協力しながら治療を進めることが重要です。この患者の場合も、検査の結果、意外なところに原因がありました !第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」気胸の鑑別、画像による診断、治療などについて詳しく解説します。【CASE1:突然刺されるような胸痛を訴えた42歳の男性】胸痛といえば、循環器疾患を思い浮かべますが、今回は呼吸器による胸痛の症例です。労作時に呼吸困難があったことから、胸部X線写真を撮った結果、気胸であることがわかりました。気胸は、つい見逃しがちな疾患といえますが、まずは、「胸痛の鑑別診断に必ず含める」ということを気を付けたいところです。若年に多いとされる自然気胸ですが、40代でも発症する例はあります。気胸には緊急性を要するものがあるため、この患者のように突然発症した場合は、まず救急車で搬送するのが原則です。【CASE2:3ヵ月前から慢性的に右胸痛を訴える58歳の女性】労作時呼吸困難を伴うため、胸膜炎などによる胸水が疑われます。単純エックス線写真を撮影したところ、右肺にかなりの胸水が貯留していることが確認されました。CTも撮影してよく確認してみると、胸水の貯留している右肺ではなく、比較的健康に見えた左肺にその原因につながる影が確認されました。胸痛の診断のポイントは、ずばり問診です。痛みの性状にくわえて、突然発症したか、持続するか断続的かなどの時相的な要素も重要なポイントになります。胸痛には、解離性大動脈瘤など、緊急性の高い疾患も含まれますので、しっかり問診をして鑑別することが重要です。これらのポイントについて、具体的にわかりやすく解説します。第3回「慢性の咳にはまずCXRから」慢性咳嗽についてポイントを詳しく解説します。【CASE1:15本/日の喫煙を40年間続けてきた62歳男性】咳嗽の出現をきっかけに救急室を受診し、気管支炎の疑いで抗菌薬を処方されましたが、改善しませんでした。その後、抗菌薬を変えたところ効果があったかにみえましたが、またすぐに咳嗽が再燃してしまいました。このように、長引く咳をみたときには、まず胸部単純写真(CXR)を撮ることが、診断のポイントになります。本症例では、CXRから結核を疑い、検査の結果結核と診断されました。初動が遅れることで結果的に治療が遅れ、感染の可能性が高まってしまいました。このような事例を防ぐためには、常に疑いをもち、問診の時点から結核を発症しやすい患者を見ぬくことがコツです。また、多剤併用が原則の治療についても、詳しく解説します。【CASE2:乳がん術後、化学療法中の65歳女性】数カ月前から乾性の咳が続くため、咳喘息の疑いで吸入ステロイド治療を開始しましたが、改善はあるものの軽快しません。胸部単純写真を撮影したところ、正面では問題がないように見えましたが、側面では、ちょうど心臓の裏側に隠れるように浸潤影が確認されました。咳の鑑別において重要なことは、まず腫瘍、結核などの器質的疾患を除外することです。そのためには、胸部単純写真は正面だけでなく、側面も撮ること、必要があればCTを撮って確認することが重要です。どのような場合にCTを撮ればよいのか、ポイントをお伝えします。また、遷延する咳の鑑別について詳しく解説します。第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」血痰の鑑別について、詳しく解説します。【CASE1:半年ほど前から、週に2〜3回、断続的に痰に血が混じるようになった77歳の女性】60歳ごろから検診などで胸部異常陰影を指摘されていましたが、経過観察となっていました。血痰をみると、まず結核、肺がん、気管支拡張症などを疑いますが、最初に考えなくてはいけないことは、「本当に血痰なのかどうか」です。もしかすると、口腔内の出血や、吐血の可能性もあります。この患者の場合は、以前より胸部異常陰影があることと、喫煙歴などから肺病変の疑いが強いと考え、検査をしたところ、非結核性抗酸菌症であることがわかりました。非結核性抗酸菌症においては、最終的な診断が出るまで、必ず結核の疑いを持つことが重要です。【CASE2:若い頃から気管支拡張症を指摘されていた66歳の女性】3日前から発熱、喀痰が増加し、近医で肺炎と診断されて、抗菌薬治療を開始していました。ところが、入院当日に持続する喀血があり、救急車で搬送。画像検査では、気管支拡張症と肺の病変が認められました。喀血において、最も重要なことは、その量です。出血の原因より、喀血による窒息のほうが重要な問題を引き起こすためです。本症例においても、大量の喀血とされる600ml/24hrを超えると思われる出血がありました。このような場合、まず気道確保が重要です。気管支鏡検査をしたところ、出血部位を下方にしても両側に血液が流れこむほどの出血があったため、気管支ブロッカーを使用して気道を確保しました。その後、原因とみられる気管支動脈をBAEによって塞栓しました。このように、大量喀血は緊急性の高い場合が多く、その検査の流れなどを詳しく解説します。

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聖路加GENERAL 【腎臓内科】

第1回「CKD」第2回「尿異常の検査方針」第3回「高カリウム血症」第4回「急性腎障害(AKI)」 第1回「CKD」健診で、腎機能低下を指摘され、精査を指示された65歳の女性。糖尿病で通院しているが、今まで腎臓については何も言われたことがありませんでした。検査の結果、Cr値がやや高めである以外は、特に異常はありません。しかし、このCr値を元に推算GFR推算式によってeGFRを求めてみると、意外に腎機能が低下しているらしいということがわかりました。放置すれば、約5年で人工透析という予測結果です。腎疾患の治療の目的は、まず腎機能の低下を抑えることです。腎機能は年齢とともに低下しますし、糖尿病患者では、健常な人の約10倍も低下の速度が高くなります。また、CKDは、腎臓のみならず心血管事故を起こす可能性もあります。特に欧米では、透析適応になるより、その前に心疾患で死亡する方が多いという報告もあります。まずは、自覚症状が少ないため見逃しがちなCKDについて、その診断方法と、適切な治療によって悪化を抑え、腎不全と心血管事故を防ぐための方法をお伝えします。第2回「尿異常の検査方針」健診で尿潜血と尿蛋白を指摘された28歳の男性。健診で見つかる血尿は、尿潜血反応によるもので、実際に血尿があるかどうかは顕微鏡による尿沈査検査によって確認します。実際、健診においては、3〜10%という高率で顕微鏡的血尿が見つかります。これら全員を泌尿器科に送るわけにもいきません。そこで、まず泌尿器悪性腫瘍を除外します。特に、40歳以上の男性、喫煙歴などはリスクファクターになりますので、さらに検査を進めます。そして、さらに尿蛋白も陽性だった場合、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎の可能性が高くなります。IgA腎症は、約30%が将来的に腎不全に至ると言われており、早期発見、早期対処が求められます。この他にも、血尿と尿蛋白が出るさまざまな例について解説します。また、尿蛋白を定量するための蛋白クレアチニン比の算出方法についても、具体的な事例を用いて解説します。第3回「高カリウム血症」数日前から感冒、発熱のある65歳の男性。知人からいただいたスイカを2個食べたところ、全身脱力、筋力低下が強まり歩行困難となって受診。実は、昔から腎臓によいとされているスイカは、豊富にカリウムを含んでおり、高カリウム血症の患者にとってはとても危険。それ以外にも、糖尿病性腎症、横紋筋融解症などの既往、ARB、Nsaidsなどの薬剤など、高カリウム血症に悪影響を及ぼす要因はさまざまです。高カリウム血症への対応において、最も重要なのは不整脈を起こさないということです。そのために、積極的に心電図を活用します。治療については、一時的に細胞内へカリウムを移動する方法、体外にカリウムを排泄する方法があります。程度に応じた治療法について、具体的に丁寧に解説します。第4回「急性腎障害(AKI)」痛風、高血圧の既往歴があり、全身倦怠感と嘔気を主訴に来院した55歳男性。血清クレアチニン値が高い場合、最初にやることは、それが慢性腎臓病(CKD)なのか、急性腎障害(AKI)なのかを鑑別することです。ところが、いつからCr値が上がったのか、なかなかわからないことが多いと思います。過去の健診のデータ、前医のカルテなどが入手できればよいですが、それも難しい場合は身体所見と病歴聴取から推測します。AKIの診察のポイントは、腎前性、腎性、腎後性に分けて考えることです。特に、腎前性と腎後性は重症化する場合がありますので、見逃してはいけません。他に気を付けなければならないものとして、造影剤腎症があります。腎機能が低下している患者に造影剤を使ってよいかどうか・・・。そんな現場の悩みにも、小松先生が丁寧に答えてくださいます。

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