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石巻地域COPDネットワーク(ICON)の取り組み

喫煙に甘い地域特性とその対策石巻はCOPD、間質性肺炎、塵肺など重症の呼吸器疾患が多い地区です。タバコの購買量も多く、全国平均の1.5倍(2006年のデータ)でした。地域産業の影響もあります。石巻は漁業の街でもありますが、同時に喫煙に甘い地域でもありました。未成年の喫煙は大きな問題で、小学生高学年から中学生の時に吸い出し、高校生で常習喫煙となっている子どもも少なくありませんでした。さらに、公共施設での喫煙対策も立ち遅れており、2006年度のデータでは施設内完全禁煙率は55.4 %(宮城県平均73.9%)でした。このような問題の重大性を鑑み、地域の基幹病院として、2007年12月に石巻市や東松島市などの関係機関へ喫煙対策推進の要望書を提出しました。マスコミも巻き込み新聞などでアピールすることで要望は実現し、2008年4月から石巻市、東松島市の市立学校の敷地内禁煙と公共施設内禁煙などが始まりました。このほか、行政とともに市民医学講座などのイベント、小中学校、高校、大学での防煙教育を行いました。とくに、学校での防煙教室は今では年間20校程度に定着し、小中学生で有意な教育効果が認められるなど、子供たちの意識も確実に変わってきたといえます。学校での防煙教室の様子COPD dayの開催取り組みの一環として、一般市民に対するCOPD啓発イベント「石巻COPD day」を、宮城県、石巻市、石巻市医師会、GOLD、世界COPD Day日本委員会の後援を得て2006年より開始しました。このイベントは、震災のあった2011年を除き、本年まで最低年1回開催しています。お祭り会場、ショッピングセンター、病院などを会場とし、多い年には800名以上の参加者があります。この活動は、疾患啓発とともにCOPDの地域疫学調査の役割を担っています。COPD dayでは、参加市民全員に、質問票によるCOPDチェック(喫煙状態、COPD症状など)、COPDの認知調査、スパイロメトリー、COPD・禁煙のミニレクチャー、COPD疑いのある方には医師による医療相談などを行っています。COPD dayの疫学調査の結果、驚きの事実が明らかになりました。まず、喫煙率は男性41%、女性17%と高いものでした。なかでも20、30、40歳代の若い女性の喫煙率はそれぞれ32%、33%、39%と非常に高く、憂慮すべき事態でした。また、COPDの罹患も多く、スパイロメトリー検査による閉塞性障害は40歳代以上で13.4%(男性20%、女性6%)ということが明らかになりました。NICE study結果では40歳以上の8.6%ですので、タバコ購買量と同様これも全国の1.5倍という高いものでした。COPDの頻度画像を拡大する喫煙状況(2006年石巻COPD Dayでの調査)画像を拡大するICON立ち上げCOPDの罹患状態をそのままにしておくと、当地域での重症COPDは確実に増えてしまうと考えられました。しかし、石巻医療圏(石巻市、東松島市、女川町)は、呼吸器科医師が少ない地域で、人口22万人に対し、呼吸器内科医は当院(石巻赤十字病院)で4名、地域全体でも7名しかいません(2007年当時)。そこで、石巻COPDネットワーク「ICON(Ishinomaki COPD Network)」を2年間の準備を経て2009年10月に立ち上げました。これは石巻とその周辺においてCOPDの患者さんを、医師、看護師、リハビリ専門職、薬剤師、栄養士などが連携して支えるシステムで、ICONに登録したCOPD患者さんは登録医療機関で共通の治療を受けることができるというものです。COPDは糖尿病と同じように患者の自己管理が必須の疾患であり、医師だけでなく多くの医療従事者で診療・ケアにあたることが必要です。また、COPDは予防、早期発見、患者発掘が必要であるため、診療所との連携は不可欠だといえます。現在、基幹病院(石巻赤十字病院)、かかりつけ医、リハビリ病院、在宅医療、訪問看護、薬剤師会などの連携を始めています。医療機関の登録は60施設、うち診療所が49施設、病院が11施設です。東日本大震災で10施設ほど減りましたが(消失2件、廃業7件、脱退1件)、その後新たに7施設がICONに参加しています。登録患者数は299名です。ICONは、医療圏をはみ出し宮城県東北部の広い地域でCOPD連携し、医療資源の少なさをカバーしています。早期から在宅酸素療法も含め最重症の患者さんまでみており、基幹病院での定期的な教育と検査、増悪時の確実な入院も実現しています。さらに、吸入指導・禁煙指導での病薬連携も行っています。石巻赤十字病院ICONの活動COPD治療は、医師だけでは困難です。そのため、医師、看護師、薬剤師、療法士、栄養士という多職種でワーキンググループを作り、定期的に集まってアクションプランの作成、連携パス、教育プログラムなどを共同で作っています。ICON参加スタッフの教育も盛んで、定期的に講師を招いて講演会を実施しています。スタッフは非常に熱心で、講演会には多職種の医療従事者が100名前後集まります。テーマは広く、COPDの疾患理解、吸入指導、リハビリ、呼吸法、在宅酸素など医師以外の医療者も役立つ内容になっています。とくに吸入指導・禁煙指導については地域の保険薬局も積極的に参加していただけるようになり、効果も上がっています。ICON地域連携パスの作成ICON活動のひとつとして「ICON地域連携パス」を作成しました。専門医、プライマリケア医に加え看護師、薬剤師、療法士も加わって作っており、リハビリ、栄養・食事指導、訪問介護など広い範囲をカバーしたパスとなっています。ICON登録診療所の医師は、COPDが疑われる患者さんがいたら、基幹病院に紹介します。基幹病院に紹介された患者さんは検査を受け、COPDと診断された方はICONに登録され、治療導入や教育を受けます。その後、診療所に戻っていただきますが、診療所はICONパスに従って安定期治療を行います。その間、重症度や症状に応じて半年から1年ごとに基幹病院にて教育、COPDの状態チェック、併存症チェックが行われます。増悪時もICONパスに従い、診療所で初期診療を行い、必要と判断されれば基幹病院に紹介されます。入院が必要な場合は、必ず基幹病院(満床の場合はICON加盟の急性期病院)に入院させることを担保しています。増悪回復後は、診療所で引き続き外来治療を行う、必要ならばリハビリ病院で通院リハも行うという流れです。震災後はとくに、訪問看護ステーション、訪問診療医との連携が重要課題となっています。仮設住宅に移った後、身体活動性が低下したり、かかりつけ医が遠くなるなどの理由で医療機関の受診が減少した患者さんが多くなりました。COPDでは活動量の低下により増悪や死亡のリスクが増大することが知られており、継続的な治療や指導は重要なのです。この連携よって、病院は外来患者が減少し、増悪の入院治療や患者教育に専念できるようになり、看護師・薬剤師などメディカルスタッフ外来もできるようになりました。診療所は安定期治療と早期発見に専念でき、要入院の増悪患者さんをスムーズに基幹病院に送れるという安心感が得られるようになりました。患者さんは病・診連携により自分の病態に沿った適切な治療が受けられることとなり、お互いにメリットが共有されました。画像を拡大するICON COPDの地域連携パスICON外来前項で述べた定期的なICON登録患者さんのCOPDとその併存症の検査、ならびに自己管理項目の評価と再教育のために、「ICON外来」を行っています。石巻赤十字病院の健診センターで、患者さんの状態に応じて半年から1年ごとに予約診療されています。ここでは、低線量CTによる肺がんのスクリーニングと肺気腫病変の進行評価、肺機能、ADL(千住式)、 QOL(CAT)、6分間歩行などのCOPD関連のチェックだけでなく、心機能、糖尿病(HbA1c)、骨密度、うつ評価(HAD) 、認知機能(MMSE)など併存症の評価も行います。また、看護師による患者さんの疾患理解度の調査(LINQ*)とそれに基づく患者教育、薬剤師による吸入指導、療法士による呼吸リハビリテーション、栄養士による栄養指導も行っています。*LINQ : Lung Information Needs QuestionnaireCOPD患者が自身で管理・治療していくために必要としている情報量を測定する自己記入式質問票。疾患、自己管理、薬、禁煙、運動、栄養の6項目について、現在どの情報が不足しているのかを確認する画像を拡大するICON外来のプログラムICON手帳患者さん向けの「ICON手帳」も作成しました。これは患者さんが症状、運動量(万歩計歩数)、アクションプランなどを毎日記載していくものです。これにより患者さんは、客観的に症状の経過や運動量を確認することができます。また、ICON登録診療所を受診した際、この手帳をかかりつけ医に見せます。かかりつけ医は手帳の内容を確認し、治療介入することとなっています。医師が内容をチェックすることで、COPDの状態把握とともに増悪リスクも早期発見できる訳です。ICON手帳常に改良を続け、近々に改訂版がでる予定これらICON活動の結果はどのようなものでしょうか。当院に入院した増悪期患者さんの治療内容や転帰をみてみると、COPDの診断確定はICON登録施設からの紹介患者さんに多く、適切な治療の実施率もICON登録施設の方が高かったという結果が出ており、ICON活動が効果を現していることがわかりました。画像を拡大する禁煙を含む適切な安定期治療COPDの連携のノウハウCOPDには、GOLDや日本呼吸器学会COPDガイドラインなどの明確な指針があります。加えて、かかりつけ医、基幹病院、リハビリ病院などさまざまなスペシャリストが関与する循環型連携ですので、連携はやりやすいといえます。また、スタッフのモチベーションが上がります。教育は看護士、吸入指導は薬剤師、リハビリは療法士というように、それぞれの役割が必須かつ重要であるため張り合いがでるようです。また、潜在患者が多く、早期発見が容易で早期治療が効果的、診療所で定期的な治療されている疾患がCOPD併存症として多く存在するなど、連携は診療所にもメリットがあります。とはいえ、連携に対していくつかのコツはあると思います。私たちもICONの立ち上げにあたっては、先行してCOPD連携で成功していた前橋赤十字病院や草加市立病院の医師、看護師から連携立ち上げや運用のコツを学び、「石巻COPD Day」の結果報告会やわが国第一人者による複数回のCOPD講演会を開催するなど石巻地域におけるCOPD診療とその連携の重要性について医師の啓発を行いました。また、世話人の選出にあたっては、専門医・非専門医に加えて、看護師、療法士、薬剤師にその間口を広げています。さらに、さまざまな施策については、プレ運用を重ね時間をかけて作っていきました。COPDの連携では、地域特性に合わせた展開が重要だと思われます。石巻は呼吸器の医療資源が少ないため全面的な連携を行っていますが、増悪にポイントを絞った前橋の連携のように、東京や仙台などの都会でもそれぞれの連携方法があると思います。さらに、メディカルスタッフの役割が大きな疾患ですので、メディカルスタッフを信頼し、頼み、任せるという姿勢が重要だと思います。今後の課題60施設登録はあるものの、施設間の温度差はあります。ICON手帳のチェックなど診療所の介入が少ない患者さんは理解度が低く、再教育が必要になることも多く、医師の介入は重要です。いかにしてお忙しい診療所の先生方に介入していただくか、講演会参加の呼びかけ、かかりつけ医での待ち時間を利用した事務員、看護師による患者指導なども検討しています。なかなか進まない早期発見の対策も必要です。スパイロメトリー検査は医師だけでなく看護師への教育が重要であることから、希望する施設にはメーカーに教育に出向いてもらうなどの介入も検討しています。また、6秒量が測れる携帯型スパイロメトリーの活用も検討しています。この機器は診療点数がとれない反面、患者さんの金銭負担がなく医師も勧めやすいので、COPDが疑われる方にベッドサイドで手軽に使える呼吸機能検査にならないかと考えています。そして、現在IPAG質問表を用いていますが、もっと簡単な質問票を検討中です。看護師の指導に診療報酬がつかなかったり、COPD連携の診療報酬のメリットが多くないなど課題も多くあります。しかし、ICONではCOPDが疑われたら間違いを恐れず送っていただくようお願いしています。COPDでなくとも、間質性肺炎など重大な疾患や心臓疾患などが見つかることもあります。これからも、COPDの早期発見、早期介入が実現するよう間口を広げていきたいと思います。6秒量が測れる簡易スパイロメトリー写真は「ハイ・チェッカー」提供:宝通商株式会社

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危険・有害な飲酒、プライマリ・ケアで介入強度を高めても改善されず/BMJ

 危険・有害な飲酒(hazardous or harmful drinking)に対する簡易介入(brief intervention)の抑制効果は、その強度を高くしても改善されないことが、英国ニューカッスル大学のEileen Kaner氏らの検討で示された。WHOが行った国際試験では、プライマリ・ケアを日常的に受診する患者の約20~30%が危険・有害な飲酒者だという。アルコール摂取に対するプライマリ・ケア医による簡易介入(簡単な助言や心理カウンセリング)により、危険・有害な飲酒が有意に低減する可能性が指摘されているが、どの程度の介入が最適かは明らかにされていない。BMJ誌2013年1月26日号(オンライン版2013年1月9日号)掲載の報告。高強度の介入の有用性をクラスター無作為化試験で評価 SIPS(Screening and Intervention Programme for Sensible drinking)試験は、簡易介入の強度が高いほうが危険・有害な飲酒の低減効果は優れるとの仮説を検証するプラグマティックなクラスター無作為化対照比較。 2008年5月~2009年7月までに、イングランド北東部と南東部およびロンドン市のプライマリ・ケア施設を受診した18歳以上の3,562人のうち、2,991人(84.0%)が登録された。このうち900人(30.1%)が危険・有害な飲酒者と判定され、756人(84.0%)が簡易介入を受けた。 全体の平均年齢は44.5歳、男性が62.2%、白人が91.7%、喫煙者が34.2%だった。説明書(http://www.sips.iop.kcl.ac.uk/pil.php)のみの対照群、5分間の簡易な助言を受ける群、20分間のライフスタイルに関する簡易なカウンセリングを受ける群の3群に分けられた。 主要評価項目は、6ヵ月の介入後にアルコール使用障害特定テスト(alcohol use disorders identification test; AUDIT)で評価した自己申告による危険・有害な飲酒の状態とした。AUDITスコア<8点の場合に陰性(非危険・非有害な飲酒)と判定された。書面による結果のフィードバックが最適な抑制戦略の可能性も フォローアップ率は6ヵ月後が83%(644人)、12ヵ月後は79%(617例)であり、いずれの時点でもintention-to-treat(ITT)集団のAUDIT陰性率は3群間で同等であった。 6ヵ月後の対照群と比較したAUDIT陰性率のオッズ比は、5分簡易助言群が0.85[95%信頼区間(CI):0.52~1.39]、20分ライフスタイル簡易カウンセリング群は0.78(同:0.48~1.25)であった。per-protocol集団の解析でも同様の結果が得られ、3群間に有意な差は認めなかった。 12ヵ月後の対照群と比較したAUDIT陰性率のオッズ比は、5分簡易助言群が0.91(95%CI:0.53~1.56)、20分ライフスタイル簡易カウンセリング群は0.99(95%CI:0.60~1.62)だった。 著者は、「参加者全員にアウトカムがフィードバックされたが、それでも説明書のみの対照群に比べ、5分簡易助言群、20分ライフスタイル簡易カウンセリング群ともに危険・有害な飲酒の抑制効果は認められなかった」とし、「プライマリ・ケアにおける最適な危険・有害な飲酒の抑制戦略は、患者への書面による結果のフィードバックである可能性がある」と指摘している。

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喫煙女性の死亡率は非喫煙女性の約3倍、寿命は11年短い:Million Women Study/Lancet

 英国の中高年女性喫煙者の死亡原因の3分の2が喫煙に起因し、喫煙女性の死亡率は非喫煙女性の約3倍で、寿命は10年以上短いことが、英国・オックスフォード大学のKirstin Pirie氏らが実施したMillion Women Studyで示された。喫煙はいまだに予防可能な主要死因であり、英国や米国で1940年頃に生まれた女性は、成人以降の生涯を通じて多量の喫煙をした最初の世代である。それゆえ、21世紀のいまこそが、長期の喫煙や禁煙が英国人女性の死亡率に及ぼす影響を直接的に観察可能な時だという。Lancet誌2013年1月12日号(オンライン版2012年10月)掲載の報告。喫煙状況を郵送にて再調査 Million Women Studyの研究グループは、今回、1996~2001年に登録された約130万人の英国人女性を対象に、約3年または8年後の再調査を郵送にて行った。 国民死亡記録を調べ、全女性を2011年1月1日まで追跡した(平均12人年)。全参加者は登録時に現喫煙者か元喫煙者かを聞かれ、現喫煙者はたばこの本数を尋ねられた。 登録時または3年後の再調査時に元喫煙者と答えた者や、55歳になる前に喫煙を止めた女性は、禁煙開始時の年齢別に分類された。Cox比例ハザードモデルを用いて、喫煙者、元喫煙者(禁煙者)、生涯非喫煙者の調整済み相対リスクを算出し、比較した。1日10本未満でも死亡率は約2倍に、喫煙者の80歳以前死亡リスクは53% 既往症のある約10万人を除外した残り約120万人の誕生年の中央値は1943年、年齢中央値は55歳であった。追跡期間中に全体の6%(6万6,489人/118万652人)が死亡し、死亡時平均年齢は65歳だった。ベースライン時に20%(23万2,461人)が喫煙者、28%(32万8,417人)が元喫煙者で、残りの52%(61万9,774人)は生涯非喫煙者であった。 ベースライン時の喫煙者のうち8年後の再調査でその後喫煙を止めたと答えた者が44%(3万7,240人/8万5,256人)いたにもかかわらず、ベースライン時の喫煙者の生涯非喫煙者に対する12年死亡率の率比は2.76〔95%信頼区間(CI):2.71~2.81〕に達していた。 3年後の再調査時にまだ喫煙していた女性は死亡率が非喫煙者に比べ約3倍高かった(率比:2.97、95%CI:2.88~3.07)。ベースライン時に1日喫煙本数が10本未満の女性でさえ、12年死亡率は非喫煙者の約2倍だった(同:1.98、1.91~2.04)。 頻度の高い上位30位までの死因のうち23死因が、非喫煙者よりも喫煙者で有意に高頻度であり、率比は慢性肺疾患の35.3(95CI:29.2~42.5)が最も高く、肺がんの21.4(同:19.7~23.2)がそれに次いだ。喫煙者の死亡率の増分(非喫煙者との比較)は、主に肺がんなど喫煙に起因する可能性がある疾患によるものであった。 25~34歳および35~44歳で喫煙を恒久的に止めた元喫煙者の相対リスクは、全死因死亡がそれぞれ1.05(95%CI:1.00~1.11)、1.20(同:1.14~1.26)、肺がん死は1.84(同:1.45~2.34)、3.34(2.76~4.03)であった。すなわち、これら禁煙期間が長期にわたる元喫煙者では、ある程度の死亡率の増分が残存するものの、継続的な喫煙者の大きな増分に比べれば、25~34歳で禁煙した群の増分はそのわずか3%、35~44歳で禁煙した群は10%に過ぎなかった。 2010年の英国の全国死亡率を併せると、70歳にならずに死亡するリスクは喫煙者が24%、非喫煙者は9%(絶対差:15%)で、80歳前の死亡リスクはそれぞれ53%、22%(同:31%)であり、寿命は喫煙者が非喫煙者よりも11年短かった。 著者は、「英国の50歳代、60歳代、70歳代の喫煙女性の死亡の3分の2が喫煙によるもので、喫煙者は10年以上寿命が短かった」とまとめ、「40歳まで喫煙を続ければ、その後禁煙しても喫煙の有害性は実質的に残存し、40歳以降も喫煙を続けた場合は有害性は10倍以上になる。40歳前に禁煙すれば、喫煙を続けた場合の死亡率の増分の90%以上を回避でき、30歳以前の禁煙では実に増分の97%が消失する」と考察を加えている。

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検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

 抗てんかん薬は免疫グロブリンに影響を与えると言われている。ノルウェー・オスロ大学病院のS. Svalheim氏らは、レベチラセタム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどの抗てんかん薬がてんかん患者の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響を検討した。Acta neurologica Scandinavica誌2013年1月号の掲載報告。 被験者は、てんかん患者211例および対照80例(18~45歳の男女)であった。てんかん患者は抗てんかん薬単独による治療を最低6ヵ月施行されていた。治療薬の内訳はレベチラセタムが47例、カルバマゼピンが90例、ラモトリギンが74例であった。免疫グロブリンG (IgG)、IgG サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンM(IgM)の総濃度を測定し、患者群と対照群で比較した。なお、患者背景として喫煙、飲酒習慣、身体活動性の記録とともに、BMIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・ラモトリギンの治療を受けている男女、カルバマゼピンの治療を受けている男性において、IgG濃度およびIgG1濃度は有意に低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている女性において、IgG2濃度およびIgG4濃度はより低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている男性において、IgA濃度およびIgM濃度はより低値であった。・レベチラセタムの治療を受けている患者では、対照群との間で免疫グロブリン濃度に差はみられなかった。・以上の結果から、ラモトリギンおよびカルバマゼピンはてんかん患者の免疫グロブリン濃度を低下させることが示された。・本検討における対象患者が健康若年成人でなかったことを考えると、たとえば免疫不全症例などの特定の患者集団においては、抗てんかん薬が免疫グロブリン濃度に影響を及ぼしうることを特に認識しておく必要がある。そして、ラモトリギンやカルバマゼピンを服用中で感染症を繰り返しているような患者については、免疫グロブリン濃度を測定し、薬剤の変更を考慮すべきである。関連医療ニュース ・神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる? ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す

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Qスイッチレーザーのタトゥー除去成功、セッション15回で74.8%

 Pier Luca Bencini氏らは、Qスイッチレーザーのタトゥー除去のアウトカムと後遺症への影響について前向き観察コホート研究を行った。その結果、臨床効果を減じる因子として喫煙や色(黒と赤以外)などが関連していることを明らかにした。著者によると、本検討はQスイッチレーザーによる効果的なタトゥー除去のための予後因子を評価する初の研究であるという。Archives of Dermatology誌2012年12月号(オンライン版2012年9月17日号)の掲載報告。 本研究は、Qスイッチレーザーのタトゥー除去の治療方針と予後に影響を及ぼす因子について解析することを目的とし、イタリア・ミラノのレーザー治療センターで行われた。 被験者は全員、同一の施術者によって、Q-switched 1,064/532nm Nd:YAG laserまたはQ-switched 755-nm alexandrite laserにより除去手術を受けた。レーザーセッションのスケジュールは、6週間以上の間隔が空けられた。 主要評価項目は、治療の成功(タトゥー除去が一時的な皮膚表面の低色素や黒ずみを除く有害事象を伴うことなく行われた場合)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・1995年1月1日~2010年12月31日の間に397人の連続患者が登録された。そのうち352人(男性201人、女性151人、年齢中央値30歳)が解析に組み込まれた。・タトゥー除去に成功した患者の累積割合は、レーザーセッション10回後で47.2%(95%CI:41.8~52.5%)、15回後で74.8%(同:68.9~80.7%)であった。・治療の臨床効果の減少と関連していた因子として、喫煙、赤と黒以外の色がある場合、タトゥーが30cm2超、下肢にあるまたは36ヵ月以上前からのタトゥー、高い色密度、治療間隔が8週間未満、黒ずみの発現が認められた。・以上の結果から、著者は「タトゥー除去の治療プランでは、有効率に影響を及ぼす因子について考慮すべきである」と提言する。

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第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

 第二世代抗精神病薬(SGA)は2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。米国・ザッカーヒルサイド病院のPeter Manu氏らは、SGAであるクロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンについて、インスリン分泌への影響を検討した。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。 SGAは2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。SGAのインスリン分泌への独立した影響については、これまで動物モデルの試験においては示唆されていたが、臨床では実証されていなかった。研究グループは、SGA治療中の患者における負荷試験後インスリン分泌について評価することを目的に、単一施設で代謝評価を受けた連続する783例の成人精神疾患入院患者コホートのうち、520例の非糖尿病患者を対象とした試験を行った。インスリン分泌は、75gブドウ糖負荷試験後のベースライン、30分、60分、120分時点での記録を基に作成した曲線下面積[AUC(インスリン)]で評価し、インスリン分泌の独立予測因子について、サンプル全体で、または正常耐糖能(NGT)と糖尿病前症患者に分けて回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者520例の内訳は、クロザピンを服用する群が73例、オランザピン群190例、クエチアピン群91例、リスペリドン群166例であった。・負荷後AUC(インスリン)の独立予測因子は、AUC(グルコース)・腹囲・トリグリセリド値・低年齢(p<0.0001)、非喫煙(p=0.0012)、クロザピン治療(p=0.021)であった。・モデルが示すインスリン分泌バリアンスは、33.5%であった(p<0.0001)。・クロザピンの影響は、NGT群ではみられたが、糖尿病前症患者群では認められなかった。関連医療ニュース ・抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」 ・統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証! ・「糖尿病+うつ病」に対する抗うつ薬の有効性は“中程度”

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軍人スタディで判明、米国の心疾患対策で残された課題/JAMA

 2001~2011年間のイラク戦争で死亡した米国軍人の剖検からアテローム性動脈硬化症の有病率を調べた結果(8.5%)から、朝鮮戦争(77%)およびベトナム戦争(45%)当時よりも減少が示唆されたことが、米国・Uniformed Services University of the Health SciencesのBryant J. Webber氏らによる調査の結果、示された。米国では朝鮮・ベトナム戦争時の剖検結果から、虚血性心疾患が発症する20、30年前から冠動脈のアテローム性動脈硬化症が進行している可能性が示唆され、以来、軍人のみならず小児や若者をターゲットとした健康政策が実行されてきたという。その成果がみられるとしながらも著者は、「年齢別、心血管リスク因子別にみると、さらなる改善の目標は残っている」と報告した。JAMA誌2012年12月26日号掲載より。2001~2011年のイラク戦争死亡軍人の剖検記録を解析 研究グループは、米国軍人の冠動脈および大動脈アテローム性動脈硬化症の最近の有病率を調べることを目的とした縦断研究を行った。2001年10月~2011年8月の間、イラク戦争に出征して戦闘または不慮の事故で死亡した米国軍人について、2012年1月に入手できた心血管剖検記録からアテローム性動脈硬化症の有病率を調べ、人口統計学的特性や病歴について解析した。冠動脈硬化症の重症度分類は、朝鮮・ベトナム戦争時の研究データとの整合性を図るためデータを解析する前に、軽度(脂肪線条のみ)、中等度(血管内腔10~49%の狭窄が1以上)、重症(血管内腔50%以上の狭窄が1以上)の指標によって評価した。 主要評価項目は、年齢、性、自己申告の人種/民族、教育程度、職業、所属部隊、階級、入隊時のBMI、ICD-9準拠診断の心血管リスク因子でみた冠動脈および大動脈アテローム性動脈硬化症の有病率とした。冠動脈硬化症有病率、高年齢や脂質異常症、高血圧、肥満症の人のほうが有意に上昇 解析に組み込まれた剖検数は3,832例だった。平均年齢は25.9歳(範囲:18~59歳)、98.3%が男性であった。 結果、あらゆる冠動脈硬化症の有病率は8.5%(95%信頼区間:7.6~9.4)だった。重症の冠動脈硬化症は2.3%(同:1.8~2.7)、中等度は4.7%(同:4.0~5.3)、軽度は1.5%(同:1.1~1.9)だった。上記について朝鮮戦争時(解析300例)は、77%、15%、27%、35%、ベトナム戦争時(同105例)は、45%、5%(中等度、軽度は報告なし)だった。 アテローム性動脈硬化症有病者の平均年齢(SD)は30.5(8.1)歳と、非有病者の25.3(5.6)歳と比べて有意に年齢が高かった(p<0.001)。 また心血管リスク因子がなかった人の有病率は11.1%(95%信頼区間:10.1~12.1)であったが、脂質異常症を有していた人[有病率:50.0%(95%信頼区間:30.3~69.7)、年齢補正後有病率比:2.09(95%信頼区間:1.43~3.06)]、高血圧症を有していた人[同:43.6%(27.3~59.9)、1.88(1.34~2.65)]、肥満症の人[同:22.3(15.9~28.7)、1.47(1.10~1.96)]は有意に高かった。しかし、喫煙者のアテローム動脈硬化症の有病率は高くなかった[同:14.1%(8.0~20.2)、1.12(0.73~1.74)]。 著者は、「戦闘または不慮の事故で死亡した軍人の剖検において、アテローム硬化症の有病率は、年齢および心血管リスク因子による違いが明らかとなった」と結論し、軍人および民間人を問わずヘルスケアシステムによる幼少期から成人期までの継続した心血管リスク因子を減らす取り組みが求められるとまとめている。

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聖路加GENERAL 【Dr.石松の帰してはいけない患者症例】

1.「頭痛篇」2.「胸痛篇」 1.「頭痛篇」さまざまな症状で救急に来る患者さん。最も重要なのは、緊急性の判断です。緊急性の高い疾患を見逃して、帰してしまうようなことだけは避けなければなりません。問診、身体所見、必要な検査を迅速に行い、疾患の鑑別を行いますが、判断の難しいケース、ときには緊急性なしと判断されてしまう場合もあります。比較的よくみられる症例をとおして「帰してはいけない」緊急性が高い疾患の見分け方を解説します。【症例1】3カ月前から、バンドで締め付けるような頭痛が徐々に発生した55歳の女性。【症例2】会議中に突然頭痛が発症し、嘔吐を伴い痛みが持続している52歳女性。この2つの症例から緊急性の有無を見極めるには、まず"OPQRST"チェックを行います。その結果、2例目はとても危険度の高い症例であることがわかり、無事に治療を受けることができました。その極意をお伝えします。【症例3】ランニング中に頭痛と嘔気を催した34歳の男性。頭痛は改善せず6日間持続し、さらに増悪したため来院しました。まずは前回お伝えした"OPQRST"でチェックすると、「頭痛が6日間継続し、かなり激しい痛みにまで増悪した」ことから、危険な疾患が予測されました。しかし、身体所見をみると、ほとんど異常がみられません。どうやら、典型的なものではないようですが、どのようにアプローチするのでしょうか?【症例4】嘔吐、羞明、右半身筋力低下という随伴症状のある25歳女性。これは、もちろん片頭痛として帰すわけにはいきません。しかしCTとMRIを施行しましたが、異常な所見はありませんでした。この症例、どのように診断したのでしょうか?頭痛の診断に役に立つチェックリスト"OPQRST"について、さらに詳しく解説します。2.「胸痛篇」胸痛で救急対応といえば、ACSなど危険な疾患を迅速に鑑別しなければなりません。【症例1】一週間前から胸痛が断続的に続く79歳の女性。早速痛みのチェックリスト“OPQRST”でチェックすると、「ACSなどの危険な疾患はない」と判断されました。また血液、心電図、CXRを検査しても異常は認められません。さて、どんな診断がくだされるのでしょうか。【症例2】ビールを飲んで締め付けられるような胸痛を発症した50歳の男性。肥満、高血圧、不整脈、脂質異常、喫煙とリスクファクターがずらりと揃っています。前例のGERDにもあてはまりそうですが、まずはリスクの高いところから評価をしていきます。ところが、血液、心電図とも特にACSを疑う所見は出てきません。さて、危険な疾患がみつかりそうなこの患者にどのようにアプローチしたのでしょうか。聖路加GENERALでお伝えした、「狭心症3つの質問」などを交えて展開します。【症例3】仕事中に、突然胸が苦しくなり意識を失った54歳の男性。またもやACS ? しかし、血液検査でも心電図でも異常がみつかりません。次に局所症状があったことから、頭部CTを撮りましたが、こちらも異常所見はありませんでした。異常が見つかったのは胸部単純写真からでした。左第一弓が突出していることから、大動脈造影CTを撮影したところ、明らかな解離がみられました。【症例4】背部痛と嘔気のある56歳の女性。夜中に痛みを発症し、痛み止めを飲んでも効果がないため救急来院。身体所見では、既往の高血圧以外は特に異常はみられませんでした。このような場合はOPQRSTで病歴を再度チェック!その結果、先ほどと同じ大動脈解離も鑑別にあがります。さて、この背部痛はどうだったのでしょうか。

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聖路加GENERAL 【Dr.小林の消化器内科】

第1回「海外で ""生肉""は要注意?」第2回「黄疸は 急いで診断 よい治療」第3回「つっかえ感? まず内視鏡」第4回「先生、胸のあたりが痛むのですが・・・」 第1回「海外で ""生肉""は要注意 ? 」絶対に聞いておきたい4つのポイントや腹部診察のコツを紹介します。【CASE1:72歳女性 急性下痢】倦怠感や嘔気を感じ、徐々に腹痛と下痢も出始めた症状が持続したため外来を受診。急性下痢症の鑑別では、まず小腸型か大腸型かを見分けることが必要です。正しい鑑別のために、絶対に聞いておきたい4つのポイントを紹介します。また、病歴聴取の際は、最近の渡航歴や服薬歴、生肉などの十分加熱されていない食物を口にしていないかといった点についても注意します。これらのポイントに沿って診察を進めた結果、腸管出血性大腸炎と判明しました。さて、ここからどのように原因を探っていけばよいでしょうか。また、どのような場合に直腸診や便培養を行うのか、適切なフォローアップについても見ていきます。【CASE2:21歳女性 慢性下痢】1ヵ月前から下腹部痛、1日3〜4回の下痢が生じ、熱も出始めて外来を受診。発熱と体重減少があったことから、機能性ではなく器質的なものを疑いました。体重の変化など、鑑別で注意すべき病歴から診断の検索をしていきます。このケースでは、腹部診察で索状の腫瘤を触知したので、悪性腫瘍や炎症性腸疾患で壁肥大になっている可能性を疑い、血液検査をした結果、慢性下痢症ということになりました。ではそこからどのように診断を進めていけばよいでしょうか。慢性下痢症の特徴、どのような場合に内視鏡検査を行えばよいか、内視鏡検査で異常が見られなかった場合についても、次に行うべき検査を項目別に分かりやすくお伝えします。また、知っておきたい腹部診察のコツを紹介します。第2回「黄疸は 急いで診断 よい治療」外来でも出くわすことの多い黄疸について紹介します。【CASE1:40歳男性 倦怠感発熱と黄疸症状】1週間ほど前から熱や倦怠感を自覚していたが、市販薬を飲んで仕事をしていた。しかし、数日前から食欲が低下し、尿の濃染や眼球の黄染に気づいて外来を受診。黄疸は外見に出やすく患者自身も気づきやすい症状ですが、鑑別していく上で注意すべき病歴を細かく見ていきます。特に、問診では魚介類の生食の既往を聞くことが多いですが、生肉生食の既往についても、期間は1ヵ月以上と長期的に見ることが重要です。また、黄疸は特にウィルス感染も疑われる疾患ですので、ウィルス性肝炎や評価に役立つ検査方法について分かりやすく解説します。【CASE2:63歳男性 上腹部痛と黄疸症状】1ヵ月ほど前から上腹部の軽い痛みを感じながらも、市販の胃薬で様子をみていたが、最近眼球の黄染が出始め、便が灰白色になったため外来を受診。常用薬はありましたが、黄疸を誘発するようなものではなく、海外渡航歴もないため、ウィルス性肝炎の可能性はあまり考えられません。診察を進め、腹部でやや腫大した胆嚢が触知されましたが、痛みはないということで、急性ではなく別の症状を疑いました。そこで検査所見や腹部超音波検査を行うと、膵がんによる閉塞性黄疸だということがわかりました。発見が遅れると予後の悪い本疾患について、アメリカの例と比較したスクリーニング法や効果的な検査方法など、早期発見のポイントを紹介します。また、最新の治療方法とその成績についてお伝えします。第3回「つっかえ感? まず内視鏡」嚥下障害について、ポイントを押さえ、わかりやすく解説します。【CASE1:64歳男性 嚥下困難(固形物で)】食べ物のつかえ感と胸やけの症状が続いたため、外来を受診。持続する嚥下困難の症状があり、食道の炎症なども考えられるため、詳しく病歴を聞くことにしました。嚥下困難の問診のポイントとなる嚥下痛や体重減少があり、喫煙が1日に20本、飲酒も仕事上機会が多いということから、悪性疾患が疑われます。さらなる精査のため、内視鏡検査を行った結果、食道がんという診断に至りました。早期発見が治療の鍵となる食道がんを鑑別するための効果的な内視鏡検査・治療について最新の情報を紹介します。また、嚥下困難をきたす原因は多岐にわたるため、その鑑別方法について、ポイントを解説します。【CASE2:52歳女性 嚥下困難(液体でも)】数年前から食べ物のつっかえ感を自覚、固形物だけでなく液体でも症状が見られます。症状が持続し体重減少があるものの、既往歴はなく身体所見でも異常はありません。このようなケースで医療面接で聞いておくべきポイント、嚥下障害の非消化管疾患について詳しく紹介します。本症例では液体でも嚥下障害が見られるということで、機能的疾患を疑い内視鏡検査を行いましたが、腫瘤性病変は認められず、更なる精査として食道内圧測定を行った結果、アカラシアと診断しました。アカラシアは比較的まれな症例ですが、早期発見が重要な疾患です。アカラシアに関する効果的な検査、最新の治療方法を紹介します。第4回「先生、胸のあたりが痛むのですが・・・」患者が痛みを訴える部位とは異なる場所が原因ということもあります。腹痛の部位によってカテゴライズした鑑別診断について詳しく説明します。【CASE1:45歳男性 高血圧の既往のある心窩部痛】来院当日に心窩部痛を発症し来院。ACSが疑われたため、心電図をとったところ不整が見られましたが、フォローの心電図、トロポニンともに異常なかったことから別の原因が考えられます。血液検査でも白血球がわずかに増多していた他は異常なし。来院前に嘔吐や下痢があり、改善していないこと、急性発症という点、そして他の疾患の特徴にあてはまらないことから腹部CTを行った結果、腫脹した虫垂を認め、急性虫垂炎の診断に至りました。腹痛は日常診療で頻繁に遭遇する疾患ですが、原因が患者が痛みを訴える部位とは異なる関連痛もあり、その鑑別は多岐に渡ります。腹痛について分かりやすく、診察でつかえるポイントを詳しく紹介します。【CASE2:47歳女性 腹部膨満感を伴う心窩部痛】半年前から心窩部痛を自覚していた。最近になって腹部膨満感を感じるようになったため外来を受診 。しかし、食事との関連や体重減少もなく、検査でも異常ありません。そこで、鑑別診断として機能性ディスペプシアを疑いました。機能性疾患の診断に必要な器質的疾患の除外のために行う検査について、ポイントを押さえてわかりやすく紹介します。また、腹痛の部位によってカテゴライズした鑑別診断について詳しく説明します。最近のホットトピックでもあるヘリコバクター・ピロリについても、検査に役立つ注意事項など、最新の情報をお伝えします。

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聖路加GENERAL 【Dr.仁多の呼吸器内科】

第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」第3回「慢性の咳にはまずCXRから」第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」 第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」鑑別の難しい呼吸器疾患へのアプローチのポイントについて、役立つ情報が満載です。【CASE1:軽い咳と白色痰が続くために来院した65歳の男性】身体所見は特に問題ありません。しかし、よくよく聞いてみると、数年前から駅の階段を昇る時に息苦しさがあり、最近強くなってきたことがわかりました。また、この患者は40本/日の喫煙を45年間続けていました。労作時呼吸困難は、医師から尋ねないとわからないことが多いため、詳細な問診が重要なポイントになります。検査の結果、労作時呼吸困難の原因は重度のCOPDでした。他に考えられる労作時呼吸困難を引き起こす症例としては間質性肺炎があります。その診断方法、病期分類、治療について詳しく解説します。【CASE2:3ヶ月前から駅の階段を昇るときに息苦しさを感じ始め、増悪傾向の60歳女性】この方は、ペットとしてチンチラを飼っています。肺疾患の場合、ペット飼育歴や住環境を必ず確認します。診察の結果、聴診で両下肺野でfine cracklesを聴取しました。呼吸副雑音を聴取したときは、その音の性質とフェーズを確認することで、その原因をある程度絞り込むことができます。その方法について、詳しく解説します。そして、びまん性肺疾患の場合、症状がない場合でも専門医に送ることが勧められています。必要な検査を実施し、治療方針を立てて、協力しながら治療を進めることが重要です。この患者の場合も、検査の結果、意外なところに原因がありました !第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」気胸の鑑別、画像による診断、治療などについて詳しく解説します。【CASE1:突然刺されるような胸痛を訴えた42歳の男性】胸痛といえば、循環器疾患を思い浮かべますが、今回は呼吸器による胸痛の症例です。労作時に呼吸困難があったことから、胸部X線写真を撮った結果、気胸であることがわかりました。気胸は、つい見逃しがちな疾患といえますが、まずは、「胸痛の鑑別診断に必ず含める」ということを気を付けたいところです。若年に多いとされる自然気胸ですが、40代でも発症する例はあります。気胸には緊急性を要するものがあるため、この患者のように突然発症した場合は、まず救急車で搬送するのが原則です。【CASE2:3ヵ月前から慢性的に右胸痛を訴える58歳の女性】労作時呼吸困難を伴うため、胸膜炎などによる胸水が疑われます。単純エックス線写真を撮影したところ、右肺にかなりの胸水が貯留していることが確認されました。CTも撮影してよく確認してみると、胸水の貯留している右肺ではなく、比較的健康に見えた左肺にその原因につながる影が確認されました。胸痛の診断のポイントは、ずばり問診です。痛みの性状にくわえて、突然発症したか、持続するか断続的かなどの時相的な要素も重要なポイントになります。胸痛には、解離性大動脈瘤など、緊急性の高い疾患も含まれますので、しっかり問診をして鑑別することが重要です。これらのポイントについて、具体的にわかりやすく解説します。第3回「慢性の咳にはまずCXRから」慢性咳嗽についてポイントを詳しく解説します。【CASE1:15本/日の喫煙を40年間続けてきた62歳男性】咳嗽の出現をきっかけに救急室を受診し、気管支炎の疑いで抗菌薬を処方されましたが、改善しませんでした。その後、抗菌薬を変えたところ効果があったかにみえましたが、またすぐに咳嗽が再燃してしまいました。このように、長引く咳をみたときには、まず胸部単純写真(CXR)を撮ることが、診断のポイントになります。本症例では、CXRから結核を疑い、検査の結果結核と診断されました。初動が遅れることで結果的に治療が遅れ、感染の可能性が高まってしまいました。このような事例を防ぐためには、常に疑いをもち、問診の時点から結核を発症しやすい患者を見ぬくことがコツです。また、多剤併用が原則の治療についても、詳しく解説します。【CASE2:乳がん術後、化学療法中の65歳女性】数カ月前から乾性の咳が続くため、咳喘息の疑いで吸入ステロイド治療を開始しましたが、改善はあるものの軽快しません。胸部単純写真を撮影したところ、正面では問題がないように見えましたが、側面では、ちょうど心臓の裏側に隠れるように浸潤影が確認されました。咳の鑑別において重要なことは、まず腫瘍、結核などの器質的疾患を除外することです。そのためには、胸部単純写真は正面だけでなく、側面も撮ること、必要があればCTを撮って確認することが重要です。どのような場合にCTを撮ればよいのか、ポイントをお伝えします。また、遷延する咳の鑑別について詳しく解説します。第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」血痰の鑑別について、詳しく解説します。【CASE1:半年ほど前から、週に2〜3回、断続的に痰に血が混じるようになった77歳の女性】60歳ごろから検診などで胸部異常陰影を指摘されていましたが、経過観察となっていました。血痰をみると、まず結核、肺がん、気管支拡張症などを疑いますが、最初に考えなくてはいけないことは、「本当に血痰なのかどうか」です。もしかすると、口腔内の出血や、吐血の可能性もあります。この患者の場合は、以前より胸部異常陰影があることと、喫煙歴などから肺病変の疑いが強いと考え、検査をしたところ、非結核性抗酸菌症であることがわかりました。非結核性抗酸菌症においては、最終的な診断が出るまで、必ず結核の疑いを持つことが重要です。【CASE2:若い頃から気管支拡張症を指摘されていた66歳の女性】3日前から発熱、喀痰が増加し、近医で肺炎と診断されて、抗菌薬治療を開始していました。ところが、入院当日に持続する喀血があり、救急車で搬送。画像検査では、気管支拡張症と肺の病変が認められました。喀血において、最も重要なことは、その量です。出血の原因より、喀血による窒息のほうが重要な問題を引き起こすためです。本症例においても、大量の喀血とされる600ml/24hrを超えると思われる出血がありました。このような場合、まず気道確保が重要です。気管支鏡検査をしたところ、出血部位を下方にしても両側に血液が流れこむほどの出血があったため、気管支ブロッカーを使用して気道を確保しました。その後、原因とみられる気管支動脈をBAEによって塞栓しました。このように、大量喀血は緊急性の高い場合が多く、その検査の流れなどを詳しく解説します。

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聖路加GENERAL 【腎臓内科】

第1回「CKD」第2回「尿異常の検査方針」第3回「高カリウム血症」第4回「急性腎障害(AKI)」 第1回「CKD」健診で、腎機能低下を指摘され、精査を指示された65歳の女性。糖尿病で通院しているが、今まで腎臓については何も言われたことがありませんでした。検査の結果、Cr値がやや高めである以外は、特に異常はありません。しかし、このCr値を元に推算GFR推算式によってeGFRを求めてみると、意外に腎機能が低下しているらしいということがわかりました。放置すれば、約5年で人工透析という予測結果です。腎疾患の治療の目的は、まず腎機能の低下を抑えることです。腎機能は年齢とともに低下しますし、糖尿病患者では、健常な人の約10倍も低下の速度が高くなります。また、CKDは、腎臓のみならず心血管事故を起こす可能性もあります。特に欧米では、透析適応になるより、その前に心疾患で死亡する方が多いという報告もあります。まずは、自覚症状が少ないため見逃しがちなCKDについて、その診断方法と、適切な治療によって悪化を抑え、腎不全と心血管事故を防ぐための方法をお伝えします。第2回「尿異常の検査方針」健診で尿潜血と尿蛋白を指摘された28歳の男性。健診で見つかる血尿は、尿潜血反応によるもので、実際に血尿があるかどうかは顕微鏡による尿沈査検査によって確認します。実際、健診においては、3〜10%という高率で顕微鏡的血尿が見つかります。これら全員を泌尿器科に送るわけにもいきません。そこで、まず泌尿器悪性腫瘍を除外します。特に、40歳以上の男性、喫煙歴などはリスクファクターになりますので、さらに検査を進めます。そして、さらに尿蛋白も陽性だった場合、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎の可能性が高くなります。IgA腎症は、約30%が将来的に腎不全に至ると言われており、早期発見、早期対処が求められます。この他にも、血尿と尿蛋白が出るさまざまな例について解説します。また、尿蛋白を定量するための蛋白クレアチニン比の算出方法についても、具体的な事例を用いて解説します。第3回「高カリウム血症」数日前から感冒、発熱のある65歳の男性。知人からいただいたスイカを2個食べたところ、全身脱力、筋力低下が強まり歩行困難となって受診。実は、昔から腎臓によいとされているスイカは、豊富にカリウムを含んでおり、高カリウム血症の患者にとってはとても危険。それ以外にも、糖尿病性腎症、横紋筋融解症などの既往、ARB、Nsaidsなどの薬剤など、高カリウム血症に悪影響を及ぼす要因はさまざまです。高カリウム血症への対応において、最も重要なのは不整脈を起こさないということです。そのために、積極的に心電図を活用します。治療については、一時的に細胞内へカリウムを移動する方法、体外にカリウムを排泄する方法があります。程度に応じた治療法について、具体的に丁寧に解説します。第4回「急性腎障害(AKI)」痛風、高血圧の既往歴があり、全身倦怠感と嘔気を主訴に来院した55歳男性。血清クレアチニン値が高い場合、最初にやることは、それが慢性腎臓病(CKD)なのか、急性腎障害(AKI)なのかを鑑別することです。ところが、いつからCr値が上がったのか、なかなかわからないことが多いと思います。過去の健診のデータ、前医のカルテなどが入手できればよいですが、それも難しい場合は身体所見と病歴聴取から推測します。AKIの診察のポイントは、腎前性、腎性、腎後性に分けて考えることです。特に、腎前性と腎後性は重症化する場合がありますので、見逃してはいけません。他に気を付けなければならないものとして、造影剤腎症があります。腎機能が低下している患者に造影剤を使ってよいかどうか・・・。そんな現場の悩みにも、小松先生が丁寧に答えてくださいます。

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eGFR低値、高アルブミン尿の年齢別にみた転帰への影響:205万人メタ解析/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)の測定マーカーである推定糸球体濾過量(eGFR)とアルブミン尿の、年齢階層別にみた予後との関連について調べた結果、eGFR低値と高アルブミン尿は、年齢を問わず死亡および末期腎不全(ESRD)と独立した関連がみられることが、ノルウェー科学技術大学のStein I. Hallan氏らCKD-PC(CKDの予後に関する多施設共同研究)が約205万人の個人データをメタ解析した結果、報告した。ただしeGFR低値のリスクは高齢であるほど弱まるなど、高齢者では両値との関連について、絶対リスクは高いが相対リスクは低いことが示されたという。CKDは高齢の患者に多くみられるが、eGFR低値と高アルブミン尿のリスクについて、全年齢にわたるのかについては議論の的となっていた。JAMA誌2012年12月12日号掲載より。相対リスクと絶対リスクを解析 研究グループは、臨床的リスクがあるeGFRとアルブミン尿について、年齢階層別の影響(相互作用)の違いがあるのかを、相対リスクと絶対リスクを調べて評価した。アジア、オーストラリア地域、ヨーロッパ、南北アメリカ地域から、33コホート(一般集団または血管系疾患のハイリスク集団)および13コホート(CKD集団)の計205万1,244人の参加者データについて、個人レベルのメタ解析を行った。データは1972~2011年の間、平均追跡期間5.8年(範囲、0~31年間)にわたるものであった。 主要評価項目は、eGFRと蛋白尿各値の、死亡およびESRDのハザード比(HR)(性、人種、心血管疾患、糖尿病、収縮期血圧、コレステロール値、BMI、喫煙の有無について補正)とした。絶対リスクは、HRと平均罹患率から推計した全年齢層で、死亡およびESRDリスクと関連 結果、全年齢層で、死亡(11万2,325例)およびESRD(8,411例)のリスクは、eGFR低値とアルブミン尿高値で高かった。 一般・ハイリスク集団では、死亡に関するeGFR低値の相対リスクは、加齢に伴い減少することが認められた。たとえば、eGFR値45mL/分/1.73m2 対 80mL/分/1.73m2の補正後HRは年齢階層別に、18~54歳群3.50(95%CI:2.55~4.81)、55~64歳群2.21(同:2.02~2.41)、65~74歳群1.59(同:1.42~1.77)、75歳以上群1.35(同:1.23~1.48)であった(年齢相互作用のp<0.05)。 一方で、同年齢階層別にみた絶対リスク(1,000人・年当たり過剰死亡)は、それぞれ9.0(同:6.0~12.8)、12.2(同:10.3~14.3)、13.3(同:9.0~18.6)、27.2(同:13.5~45.5)で、高齢であるほど高かった。 高アルブミン尿に関しては、絶対リスクは高齢であるほど高かったが、相対リスクについては、年齢とともに低下をする確証は得られなかった。アルブミン/クレアチニン比300mg/g対10mg/gの1,000人・年当たり超過死亡は、それぞれ7.5(同:4.3~11.9)、12.2(同:7.9~17.6)、22.7(同:15.3~31.6)、34.3(同:19.5~52.4)であった。 CKD集団では、死亡に関する補正後相対リスクの、加齢に伴う減少はみられなかった。 全集団では、ESRDに関するeGFR低値、高アルブミン尿の、相対リスクと絶対リスクは、全年齢層でほとんど差はあまりなかった。

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中等度~重度のにきび、家族歴、BMI、食生活が影響?

 イタリアのAnna Di Landro氏らGISED Acne Study Groupは、にきびの原因には、遺伝的要因と環境的要因が関与している可能性があるとして、思春期および若年成人を対象に、それら要因と中等度~重度にきびリスクとの関係について調べた。その結果、家族歴とBMI、食事内容が中等度~重度にきびのリスクに影響を与えている可能性が示されたと報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2012年12月号の掲載報告。 GISED(Gruppo Italiano Studi Epidemiologici in Dermatologia)は、中等度~重度のにきびの新規診断症例に関して、家族歴、個人の習慣、食事性因子、月経歴の影響を評価するため、イタリアの皮膚科外来診療所で症例対照研究を行った。 症例は、中等度~重度のにきびと新規診断された患者205例で、対照被験者は、にきび以外で受診した、にきびがない(あるいは、あっても軽症の)患者358例であった。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度のにきびは、一等親血縁者でのにきび既往歴と強い関連が認められた(オッズ比:3.41、95%CI:2.31~5.05)。・リスクは、BMIが低い人では低下し、女性よりも男性で顕著な影響が認められた。・喫煙による関連は、みられなかった。・牛乳を週に3ポーション以上消費する人では、消費量が多いほどリスクが上昇した(オッズ比:1.78、95%CI:1.22~2.59)。・その関連は、全乳よりもスキムミルクでより特徴的であった。・魚の消費は、保護作用と関連していた(オッズ比:0.68、95%CI:0.47~0.99)。・月経変数と、にきびリスクとの関連はみられなかった。・本試験は、皮膚科学的対照被験者の選択において、また対照群の軽症患者の組み込みで一部オーバーマッチングの可能性があった。・以上の結果から、家族歴、BMI、食生活は、中等度~重度にきびのリスクに影響する可能性があった。環境および食事要因による影響について、さらに調査を行う必要がある。

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中年期の広範囲の慢性疼痛リスク、少年期の知能指数1SD低下につき1.26倍上昇

 精神的因子は、慢性疼痛に関わる因子の一つと考えられていることから、英国・サウサンプトン大学のCatharine R. Gale氏らは、中年期の慢性疼痛について、少年期の知能との関連について調査した。その結果、少年期知能指数が低値になるほど中年期の慢性疼痛リスクは上昇すること、そのリスク上昇は、BMIが高いほど、また社会経済的階層が低くなるほど有意であることが明らかになったという。Pain誌2012年12月号の掲載報告。 研究グループは、1958年英国生まれの人を登録した全国小児発達サーベイから、男女6,902人について、少年期の知能と、成人期の慢性疼痛リスクとの関連について調査した。 被験者は、11歳時に一般知能指数試験を受け、45歳時点で、広範囲の慢性疼痛について、米国リウマチ学会診断基準(ACR)に基づく評価が行われた。ログ二項式回帰を用いて、性および潜在的な交絡因子、媒介因子を補正しリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・ACR基準に基づく広範囲の慢性疼痛リスクは、知能指数が低下するほど段階的に上昇した(線形傾向p<0.0001)。・性補正後解析において、知能指数1SD低下に対する慢性疼痛のRRは1.26(95%CI:1.17~1.35)であった。・多変量後方段階的回帰解析において、少年期知能は、社会階級、教育達成レベル、BMI、喫煙状態、精神的ストレスとともに、慢性疼痛の独立した予測因子であり続けた(RR:1.10、95%CI:1.01~1.19)。・中年期の広範囲の慢性疼痛リスクに対する少年期知能の低さの影響は、BMIが高くなるほど、また社会経済的位置付けがより低くなるほど有意であった。・少年期に高い知能を有する男女はともに、成人期に慢性疼痛を報告する頻度は低いようである。

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Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ

第4話「このままでは早死にしますか!?」第5話「微妙な患者、危険な患者」第6話「現実的に考える!」 第4話「このままでは早死にしますか!?」【CASE】43歳女性 2年前の住民健診から高コレステロールを指摘され、食事運動療法を試みるも改善を見ず、不安を感じて来院。検査の結果、二次性の高コレステロール血症は否定され、単純な高コレステロール血症と診断された。T-Chol 281、TG 84、HDL 43。コレステロール値が高い=心筋梗塞などに罹る可能性が高いという話に、「では、私はわりと早死にするということですか?」と尋ねてくる患者さん。さて、どのように答えるべき?!"第5話「微妙な患者、危険な患者」【CASE1】総コレステロール値は280と高いけれども、それ以外のリスクはまったくないという患者さん。今回は、これまでの講義をふまえて、名郷先生ご自身が患者さんに説明している風景を披露します。 【CASE2】転勤に伴い、はじめて来院された患者さん。総コレステロール値は194と正常範囲内ながら、肥満、喫煙、心臓病の家族歴、糖尿病など、複数のリスク因子をもっています。とはいえ、ここ3年間は食事・運動療法に真剣に取り組んできたこともあってHbA1cは7.5未満の値で安定し、体調もすこぶる快調とのこと。少なくとも高脂血症の治療は必要なさそうに思われますが、実際はどうなのでしょうか?"第6話「現実的に考える!」【CASE】転勤に伴いはじめて来院。過去3年間、糖尿病を患っているが、薬嫌いのため、食事・運動療法に真剣に取り組んできた。その甲斐あって、体重は10kg減少し、HbA1cはかつて8.5だったのが、現在7.1前後で安定している。体調はすこぶる良い。ただし、現在でも肥満あり、高血圧あり、喫煙者である、父親を心筋梗塞で亡くしているなど、リスクは高い。T-Chol.194、TG 84、HDL 43。"

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Dr.箕輪の実戦救急指南

第1回「どうする?重症喘息発作」第2回「いきなり交通事故!頭真っ白?」第3回「慌てない!反応のない子ども」第4回「油断ならない!失神のあった患者」 第1回「どうする?重症喘息発作」待合室にて刻々と状態が悪くなっていく患者さん。素早い重症度判断から、後方病院への送りまでの一連の流れをお届け。また理学療法として定評のある胸郭外胸部圧迫法の実際や、ピークフローメーターでの評価方法をご覧戴きます。第2回「いきなり交通事故!頭真っ白?」予期せぬ交通事故の患者さんが診療所に運ばれてきたという場面を設定。気道、呼吸、循環管理のABCから、交通事故で最も多い「予防できる死亡」と言われている緊張性気胸を解除する方法、もうひとつは腹腔内の出血を簡単に診断する方法として、腹部超音波を使った評価方法を学びます。第3回「慌てない!反応のない子ども」子供が急変して、突然診療所に運び込まれてきたという設定。子供といっても6ヶ月の乳児。見れば反応なく、抱かれたままでぐったり。泣かず、顔色不良。呼吸は20回程度で弱い。診療所の医師にとって子供、特に赤ちゃんの急変はとても難しい課題です。今回は蘇生処置をステップ・バイ・ステップで紹介しますが、その中でも特に困難とされるのが、初期処置の要である輸液ルートの確保です。そこで、奥の手=骨髄輸液について詳しくお届けします。第4回「油断ならない!失神のあった患者」56歳男性。通勤途上の電車内で急に気分が悪くなり、失神。次の駅で下車しベンチで座って様子をみたところ、やや回復した様子。とりあえず帰宅後、かかりつけの診療所へ。高血圧、肥満、喫煙あり。果たしてこれは危険な徴候なのでしょうか?このようなケースでは緊急な処置が必要とは限りませんが、鑑別しなければならない疾患や、予後のことを考えて必ず施行すべき検査があります。これらのことを配慮しながら、正しい病歴聴取→診察→検査の流れを解説します。

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激辛!伊賀流心臓塾

第3回「後壁梗塞、疑わしきは罰せよ!?」第4回「これだけは知っておきたい!心不全」第5回「無症状で著明な左室肥大」 ※第1巻は、「激辛!伊賀流心臓塾(第1巻)≪増補改訂版≫」となります。第3回「後壁梗塞、疑わしきは罰せよ!?」【今回の症例】生来健康だったが、生まれて初めての胸痛が出現し、3時間継続。喫煙以外にこれといった危険因子はなく、バイタルサイン安定、肺音・心音異常なし。心電図は一見して異常なさそう。 決して珍しい症例ではなく、コモンに起こるケースだといえる今回の症例。さて、どうしますか?CT、胸部レントゲン、心エコー、トロポニンT、ニトログリセリン点滴、専門医へ転送…。いろいろ選択肢は考えられますが、果たしてどうするのが適切なのでしょうか? もし、あなたが非専門のプライマリ・ケア医なら、あるいは夜間当直中の病院勤務医ならどう対処されますか?達人がズバリお答えします。【今回の症例】生来健康だったが、生まれて初めて胸痛が出現し、冷や汗をともない3時間継続。喫煙以外にこれといった危険因子はなく、バイタルサイン安定、肺音・心音異常なし。心電図は一見して異常なさそう。第4回「これだけは知っておきたい!心不全」心不全の患者さんについて、循環器非専門医として、どこまで知っておかなければならないか、どのようにアプローチしていくのか、ということをお話していきます。【今回の症例】治療抵抗性の心不全を呈する72歳の女性。約1年ほど前から心不全との診断で、近くの病院に3回入院。今回も心不全で同じ病院に入院して、診断は「拡張型心筋症」と説明を受けていたが、いつもと違って利尿剤に対する反応が悪いために、大きな病院で診てもらうことで転入。血圧は90/70、心拍数95でレギュラー。内頚靜脈の怒張を認め、やや頻呼吸を呈している。2/6度の収縮期雑音が前胸部全体に聴取されギャロップリズムだった。両側下肺野でクラックルが聴取される。末梢はやや冷たいが動脈は全て触知した。心電図は洞調律でST,T変化を伴った左室肥大であった。 さて、ここで循環器非専門医として何をどう考え、どのように診断していくべきでしょうか? 2004年現在の医療レベルで改善できる疾患を見逃さないために何を念頭に置いて、どのように検査していくべきでしょうか?第5回「無症状で著明な左室肥大」心電図検診で異状を指摘された患者さんが、セカンドオピニオンを求めて来院されるケースはしばしばあることでしょう。ときには狭心症や肝不全などと診断され、日常生活を大きく制限されたり、すぐに薬物療法を施行されるケースもあるようです。しかし、実際は心電図で狭心症と言われること自体がおかしい、ということはすでに学ばれたとおりです。実は今回のような症例は日本人に多いとのことですが、一体どのように考え、どのようなアプローチをすべきでしょうか?【今回の症例】63歳男性。高血圧など既往歴なく無症状であったが、心電図検診で左室肥大を指摘され、狭心症を疑われた。血圧、心音、胸部X線は正常、心エコー図も正常とのレポートであった。

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蛋白尿も予防!やっぱり健康的な生活習慣は重要

 非喫煙、BMI 25kg/m2未満、適量以下の飲酒、定期的な運動、より良い食事パターン、といった健康的な生活習慣を送る人は、蛋白尿発現リスクが低いことが、新潟大学大学院 若杉三奈子氏らによる住民ベースのコホート研究の結果、明らかになった。著者らは、慢性腎臓病(CKD)予防には健康的な生活習慣が重要であると強調した。Hypertension Research誌オンライン版2012年11月22日付の報告。 これまで、健康的な生活習慣とCKDとの関連については、ほとんど知られていなかった。本研究では、CKD非罹患者を対象に、健康的な生活習慣の積み重ねが蛋白尿発現にもたらす効果について検討した。 本研究は、2008年時の新潟県佐渡島の特定健康診査・特定保健指導に参加した7,565人(40~79歳)のうち、CKDに罹患していない4,902人(男性2,015人、女性2,887人)を対象とした。リスクを低下させる生活習慣要因として(1)非喫煙者、(2)BMI 25kg/m2未満、(3)適量以下の飲酒、(4)定期的な運動、(5)より良い食事パターン、の5つを定義し、その合計数を健康的な生活習慣スコアとして算出した。ベースラインとなる2008年時の健康的な生活習慣スコアと2009年時の蛋白尿発現との関連について、ロジスティック解析を用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・蛋白尿は2.2%(男性3.2%、女性1.5%)で認められた。・健康的な生活習慣スコアが5の被験者は、スコア0~2の被験者に比べ、蛋白尿発現リスクが低かった(オッズ比:0.39、95%CI:0.16~0.94)。これは、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の罹患とは独立していた。・対象者の47%は、リスクを低下させる健康的な生活習慣に対してのアドヒアランスが欠如していると考えられる。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(37)〕 心血管疾患罹患リスクは年齢を問わず男性が高いことを確認

米国の代表的な追跡研究であるフラミンガム研究などの疫学データをもとに、年当たり90万人という膨大な米国住民のプール解析を実施し、心血管疾患発症に対する生涯リスクについて検討した貴重な成績である。 平均的な45歳のアメリカ人で、生涯にわたって心血管疾患を発症するリスクは男性で60.3%、女性では55.6%という。すべての世代において女性での心血管死発症率は男性より約5%低く、これは閉経までのエストロゲンによる動脈硬化予防効果が生涯にわたって影響するということだろうか。 55歳時に血圧が120/80mmHg未満で、喫煙歴と糖尿病の既往がなくとも、85歳までに心血管イベントを発症するリスクは男性40%、女性30%であるというのは意外な感がするが、肥満や遺伝歴などリスクとしてカウントされていない要素があるためかもしれない。またLDL-コレステロール値が考慮されていないこともあろうし、ストレスそのものが心血管疾患のリスクになっている可能性も否定できない。リスク因子が多くなるほど、生存期間が短くなるという結果は、従来フラミンガム研究が示してきたことと同じである。 実際には、生命予後は心血管疾患以外にも悪性腫瘍や感染症などによって大きく左右されるが、本報告は米国人での心血管イベント発症、生命予後とリスク因子の関連を検討した成績として意義がある。 しかし、本試験の結果をみると、生きていくかぎり血管は痛み、いずれは破綻するということを実感させられる。問題はいかに血管の破綻を先延ばしするかということである。

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検証!非定型抗精神病薬の神経保護作用

 Cedo Miljević氏らは、非定型抗精神病薬(アリピプラゾール、クロザピン、ジプラシドン、オランザピン、クエチアピン、セルチンドール、アミスルピリド)の神経保護に及ぼす影響を、in vitroにおけるヒト赤血球中の抗酸化防御酵素活性測定にて検討した。その結果、アリピプラゾールとクエチアピンは神経保護作用を有する可能性が示唆された。Human psychopharmacology誌オンライン版2012年11月5日号の報告。 23~39歳の非喫煙者健康男性15名の血液を使用した。採取された血液と薬剤は1時間、37℃にてインキュベーションした後、還元酵素であるCu/Zn-スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)、カタラーゼ(CAT)、セレン依存性グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン還元酵素活性を測定した。主な結果は以下のとおり。・SOD1活性は、対照群と比較し、アリピプラゾール群(p

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