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非定型抗精神病薬との併用、相互作用に関するレビュー

 統合失調症や双極性障害の治療では抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬、抗てんかん薬などさまざまな薬剤が用いられることも少なくない。米国・マーサー大学のWilliam Klugh Kennedy氏らは、第二世代抗精神病薬(SGA)について、臨床において重要となる薬物相互作用を明らかにすることを目的に文献レビューを行った。その結果、SGAには臨床において重大な薬物相互作用の可能性を増大するさまざまな因子があることを報告し、臨床医はそれらについて十分に認識すべきであると述べている。CNS Drugs誌オンライン版2013年10月30日号の掲載報告。 本レビューは、SGAが統合失調症、双極性障害およびその他精神病において主軸の治療となってきたこと、また抗うつ薬、抗てんかん薬と共に用いられる頻度が高く、さまざまな薬物動態学的、薬力学的およびファーマシューティカルのメカニズムにより薬物相互作用が起きる可能性が知られていることなどを踏まえて行われた。 主な知見は以下のとおり。・各SGAの薬物動態学的プロファイル(とくに第1相、第2相試験の代謝について)は、有意な薬物相互作用の可能性を示唆するものである。・薬力学的相互作用は、薬剤が類似のレセプター部位活性を有する時に引き起こされ、付加的あるいは拮抗的な効果を、薬物血中濃度を変化させることなくもたらす可能性があった。さらに、薬物相互作用のトランスポーターが漸増を続け、薬物動態学的および薬力学的相互作用を生じる可能性があった。・ファーマシューティカルな相互作用は、薬物の吸収前に配合禁忌薬物が摂取された場合に生じる。・多くのSGAの薬物血中濃度は、近似の範囲値であった。薬物相互作用は、これら薬剤の濃度が著しく増減した場合に、有害事象や臨床的有効性を低下させる可能性があった。・SGAの最も重大な臨床的薬物相互作用は、シトクロムP450(CYP)システムで起きていた。そしてSGAの薬物相互作用のほぼすべては、創薬、プレ臨床の開発の段階で、既知のCYP発現誘導または抑制因子を用いた標準化されたin vivoまたはin vitroの試験において特定されていた。・治療薬モニタリングプログラム後は、臨床試験と症例報告において、しばしば、さらなる重大な薬物相互作用を特定する方法が報告されている。・複数薬物間の相互作用があるSGAの中には、SSRIとの併用により重大な薬物相互作用が生じる可能性があった。・カルバマゼピンやバルプロ酸のような抗てんかん作用のある気分安定薬や、フェノバルビタールやフェニトインのようなその他の抗てんかん薬は、SGAの血中濃度を減少する可能性があった。・プロテアーゼ阻害薬やフルオロキノロン系のような抗菌薬も同様に重要であった。・用量依存性と時間依存性は、SGAの薬物相互作用に影響する、さらに2つの重大な因子であった。・喫煙をする精神疾患患者の頻度は非常に高いが、喫煙はCYP1A2発現を誘導する可能性があり、それによりSGAの血中濃度を低下する可能性がある。・ジプラシドン、ルラシドン(いずれも国内未承認)は、薬物吸収を促進するため食事と共に摂取することが推奨されている。そうしないと、バイオアベイラビリティが低下する可能性がある。・以上を踏まえて著者は、「臨床医は、SGAの臨床で重大な薬物相互作用を増大する可能性のあるさまざまな因子について認識しておかなくてはならない。そして、最大な効果をもたらし、有害事象は最小限とするよう患者を十分にモニタリングする必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証 抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学

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マンモグラフィで健康女性の死亡リスクを予測できる!?

 乳腺が高密度な組織(dense)は乳がんの危険因子である。一方、乳がんリスクの評価以外での、マンモグラフィ画像の予後予測的な価値はほとんど知られていない。米国・国立加齢研究所のRachel A Murphy氏らは、乳がんではない女性において、dense領域・非dense領域・全乳房領域・%dense(乳房中のdense領域の割合)について、全死因死亡リスクとの関連を前向きに検討した。その結果、dense領域や%denseが大きいことが死亡率低下に関連することを報告した。PLoS One誌2013年10月25日号に掲載。 著者らは、乳がん検診プログラム「Breast Cancer Detection Demonstration Project」より、当初健康であった女性4,245人において、スクリーニングマンモグラムからプラニメーター測定値を用いてdense領域と全乳房領域を評価した。乳房におけるdense領域の割合を%dense、全乳房領域とdense領域との差を非dense領域(脂肪組織)とした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間28.2年の間に1,361人が死亡した。・年齢調整モデルでは、非dense領域あるいは全乳房領域が大きいことが死亡リスク増加と関連し(各々HR:1.17、95%CI:1.10~1.24 / HR:1.13、95%CI:1.06~1.19、SD毎)、dense領域あるいは%denseが大きいことが死亡リスク低下と関連していた(各々 HR:0.91、95%CI:0.86~0.95 / HR:0.87、95%CI:0.83~0.92、SD毎)。・これらの関連性は、人種、教育、マンモグラムの種類(X線あるいはゼログラム)、喫煙状況、糖尿病や心疾患による調整で減少しなかった。・BMIで追加調整するとこれらの関連性はすべて減少したが、dense領域(HR:0.94、95%CI:0.89~0.99、SD毎)および%dense(HR:0.93、95%CI:0.87~0.98、SD毎)については、統計的に有意のままであった。

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わが国のHIVの現状 ~抗HIV療法関連の骨粗鬆症、腎機能障害、代謝性疾患が問題に~

約30年前は死に至る病と言われていたHIV感染症。現在は、定期的な受診と適切な服薬継続により長期にわたり日常生活を続けることが可能になり、慢性疾患と考えられるようになりつつある。しかしながら、日本では感染者が増加傾向にあり、新たに抗HIV療法に関連した代謝性疾患などが問題となっている。このたび、途上国のエイズ対策を支援する『世界エイズ・結核・マラリア対策基金』の支持を決定する技術審査委員の1人である、しらかば診療所 院長の井戸田 一朗氏が、ヤンセンファーマHIV/AIDSメディアセミナー(2013年10月29日開催)でHIVの現状や課題を紹介した。性感染症にかかるとHIVにかかりやすい井戸田氏のクリニックは、セクシャル・マイノリティ(同性愛者、バイセクシャル、トランスジェンダーなど)を主な対象として2007年に東京都新宿区に開院した。現在、同クリニックには約400人のHIV陽性者が定期的に通院しているという。井戸田氏が性感染症にかかった男性にHIV検査を勧めて検査した結果(自分で希望した人は除外)、淋菌感染症患者では20%、梅毒患者では13%、尖圭コンジローマ患者では26%がHIV陽性であった。井戸田氏は、「性感染症、とくに淋菌感染症、梅毒、尖圭コンジローマにかかった人は、HIV感染症も検査することが大切」と強調した。男性間の性的接触による感染が増加わが国の性感染症の報告数は全体的に減少傾向にあるが、新規HIV感染者とAIDS患者数は年々増加している。その内訳をみると、異性間性的接触による感染はほとんど変化がないのに比べて、男性間性的接触による感染の増加は著しく、2011年では全体の64%を占めていた。人口当たりのHIV陽性累積数は、都道府県別では、東京、大阪、茨城、長野、山梨の順で多く、HIV感染者とAIDS患者の6割が関東に集中している。男性間性的接触をする男性(MSM:men who have sex with men)の割合については、2005年度国勢調査における対象地域(関東、東海、近畿、九州)の男性では、性交渉の相手が同性のみ、もしくは両性である割合が2.0%(95%CI:1.32~2.66%)と報告されている。井戸田氏は、MSMにおけるHIVや性感染症の流行の背景として、解剖学的差異、性交渉の様式、ハッテン場・インターネットでの出会い、薬物(アルコール含む)、心理的要因を挙げた。HIV陽性者の予後と今後の課題HIV陽性者の予後は、抗HIV療法の登場により、20歳時の平均余命が36.1歳(1996~1999年)から49.4歳(2003~2005年)に延長した。また、抗HIV療法の登場により、カポジ肉腫や非ホジキンリンパ腫などのエイズ関連悪性腫瘍が減少する一方で、非エイズ関連悪性腫瘍(肛門がん、ホジキンリンパ腫、肝がん、皮膚がん、肺がん、頭頸部がん)が増加してきている。HIV陽性者においては脳心血管イベントの発生率が上昇する。禁煙によりそのリスクを下げることができるが、井戸田氏によると、同院を訪れるHIV陽性MSMでは喫煙者が多く52%に喫煙歴があったという。また、最近、抗HIV療法に関連した骨粗鬆症、腎機能障害、代謝性疾患(脂質異常症、糖尿病)が問題となっている。井戸田氏は、HIVに直接関係のないこれらの疾患について、「それぞれの分野の先生に診てもらえるとHIV陽性者や拠点病院にとって大きな支えになる」と各領域の医師からの協力を期待した。(ケアネット 金沢 浩子)

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成人市中肺炎のリスクとなるライフスタイル・基礎疾患は?

 市中肺炎は、成人、とくに高齢者において高い罹患率および死亡率をもたらす。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Torres氏らは、PubMedの構造化検索により、欧州における成人市中肺炎発症率の最新データとライフスタイルや市中肺炎の危険因子に関するデータを同定し、成人市中肺炎のリスク増加と喫煙などのライフスタイル因子や基礎疾患との関連を検討した。Thorax誌2013年11月号に掲載報告。市中肺炎のリスク増加に関連したライフスタイルの因子は? 主な結果は以下のとおり。・成人市中肺炎全体の年間発症率は、1,000人年当たり1.07~1.2、人口1,000人当たり1.54~1.7であり、年齢の上昇とともに増加した(65歳以上で1,000人年あたり14)。・男性のほうが、女性、慢性呼吸器疾患患者、HIV感染症患者より、市中肺炎発症率が高かった。・市中肺炎のリスク増加に関連したライフスタイルの因子は、喫煙、過度の飲酒、低体重、子どもや歯科衛生状態が悪い人々との定期的な接触であった。・合併症(慢性呼吸器疾患、慢性心血管疾患、脳血管疾患、パーキンソン病、てんかん、認知症、嚥下障害、HIV、慢性腎疾患、慢性肝疾患)が存在すると、市中肺炎リスクが2~4倍増加した。

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「咳だけ」、「痰だけ」のCOPDは死亡率が増加しない可能性も

 軽症から中等症のCOPD患者において、咳と痰の両方があると死亡リスクが高まることが、ジョンズ・ホプキンス大学のNirupama Putcha氏らにより報告された。また、これら2つの症状がある場合、呼吸器疾患による死亡も多くなることもわかった。Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease誌オンライン版2013年10月15日の掲載報告。 COPD患者において咳と痰は一般的な症状である。過去の研究では、これらの症状と全死亡や肺機能との関係については意見が分かれていた。そこでCOPD患者における咳や痰が全死亡や呼吸機能にどのような影響を与えるのか検証した。 対象は肺健康調査のデータから、軽症から中等症の気流制限が認められた5,887人の喫煙者とした。各症状群(咳のみ、痰のみ、咳と痰の両方)のベースラインと、12.5年間の全死亡と呼吸機能の経年変化との関係を調べた。平均年齢は48.5(±6.8)歳で、63%が男性、4%がアフリカ系のアメリカ人であった。「咳のみ」群は17%、「痰のみ」群は12%、「咳と痰の両方」群は31%であった。 主な結果は以下のとおり。 ・「咳のみ」群、「痰のみ」群では、全死亡との関連は認められなかった。・「咳と痰の両方」群では、年齢、性別、人種、5年間の喫煙状況、pack yearを指標とした喫煙歴、無作為化グループ間、予測1秒率のベースラインでの補正後も、全死亡のリスク上昇が認められた(ハザード比:1.27、95% Cl:1.02~1.59) 。・「咳と痰の両方」群は、これらの症状がない群に比べ、呼吸器疾患による死亡が多いことがわかった。・「咳と痰の両方」群はFEV1(一秒量)のベースラインより48mL低かったが(95% Cl:-90~-6)、「咳のみ」群および「痰のみ」群では、ベースラインとの差は認められなかった。 今回の研究結果は、有害事象が起こるリスクがより高いCOPD患者の集団を見極める一助となるであろう。

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喫煙や肥満は膀胱がん再発の危険因子

 膀胱がんは再発が多く、再発率を減少させるために危険因子を特定することが必要である。米国ダートマス大学のAsaf Wyszynski氏らが、膀胱がん患者の喫煙習慣とBMI、長期予後を調査した結果、とくに喫煙者においては肥満が膀胱がん再発の危険因子であることが示唆された。Cancer誌オンライン版2013年10月10日号に掲載。 米国ニューハンプシャー州の膀胱がん患者726例の人口ベースの研究において、喫煙習慣およびBMIについて、膀胱がんの再発との関連性を調べるために診断時に調査し、筋層非浸潤性尿路上皮がんと診断された患者の長期予後を追跡した。再発までの期間は多変量Cox回帰モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙者は再発までの期間が短かった(喫煙継続者のハザード比[HR]=1.51、95%信頼区間[CI]:1.08~2.13)。・診断時の過体重(BMI>24.9kg/m2)は強力な独立因子ではなかった(HR=1.33、95%CI:0.94~1.89)。しかし、喫煙継続者の場合、過体重者は正常体重者に比べて再発リスクが2倍以上と高かった(HR=2.67、95%CI:1.14~6.28)。

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抗血小板薬、喫煙者で効果大/BMJ

 抗血小板薬服用患者において、喫煙者と非喫煙者では、心血管イベントの予防効果が異なることが、システマティックレビューとメタ解析による間接比較の結果、明らかにされた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバードメディカルスクールのJoshua J Gagne氏らが報告した。本検討は、急性冠症候群患者へのクロピドグレル(商品名:ブラピックス)+アスピリン治療が、主要複合アウトカム(心血管死・心筋梗塞・脳卒中)のリスクを15%抑制したという無作為化試験の報告に端を発する。同報告のサブグループ解析から、リスク抑制の効果は喫煙者に限られるのではないかという疑問が持ち上がり話題となっていた。BMJ誌オンライン版2013年9月17日号掲載の報告より。クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルの有効性を喫煙者vs. 非喫煙者で検討 本検討は喫煙状態が、心血管イベント予防に関する抗血小板薬の有効性と関連しているかどうかを評価することを目的とした。 Medline(1966年~)、Embase(1974年~)、主要な心臓病学会録、Cumulative Index to Nursing and Allied Health(CINAHL)、CAB Abstracts、Google Scholarのデータベースをソースとして文献検索を行った。適格とした試験は、クロピドグレル、プラスグレル(国内承認申請中)またはチカグレロル(国内未承認)について、喫煙者と非喫煙者間の臨床アウトカムを検討した無作為化試験であった。データの抽出(各試験の患者集団情報、治療法と用量、臨床アウトカムの定義、追跡期間、喫煙サブグループの定義および被験者数、推定効果、95%信頼区間[CI]など)は著者2名で行った。クロピドグレルの臨床効果、喫煙者25%に対し非喫煙者8% 適格となった無作為化試験は9本で、このうち6本がクロピドグレルについて評価していたものであった。内訳は、クロピドグレルvs.アスピリンの比較試験が1本、クロピドグレル+アスピリンvs.アスピリンが4本、クロピドグレルの倍量投与vs. 標準量投与が1本で、被験者数は計7万4,489例、そのうち喫煙者は2万1,717例(29%)であった。 これら試験の解析の結果、喫煙者においてクロピドグレルは、主要複合アウトカムを25%抑制したことが示された(相対リスク:0.75、95%CI:0.67~0.83)。一方、非喫煙者では、クロピドグレルの抑制効果は8%であった(同:0.92、0.87~0.98)。 また、残りの適格であった無作為化試験3本のうち、2本はプラスグレル+アスピリンvs. クロピドグレル+アスピリン、1本はチカグレロル+アスピリンvs. クロピドグレル+アスピリンを検討したものであった。 これら試験の解析の結果、喫煙者において、クロピドグレルと比較した相対リスクは、プラスグレルは0.71(95%CI:0.61~0.82)、チカグレロルは0.83(同:0.68~1.00)と、クロピドグレルよりもさらに抑制効果が大きいことが判明した。一方、非喫煙者では、それぞれの相対リスクは0.92(0.83~1.01)と0.89(0.79~1.00)であった。 結果を踏まえて著者は、「抗血小板薬の無作為化試験において報告されている、クロピドグレルの心血管死・心筋梗塞・脳卒中を抑制するという臨床的効果は、主として喫煙者に認められるもので、非喫煙者ではベネフィットは少しであることが認められた」と報告し、「抗血小板薬のリスクベネフィットについて、喫煙者と非喫煙者で異なることを考慮する必要があるかもしれない」と述べている。

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脂質低下薬が乳がんの再発・死亡リスクへ及ぼす影響~前向きコホート研究

 脂質低下薬は心血管疾患予防に使用され、なかでもスタチンは最もよく使用される。前臨床および観察研究により、スタチンの乳がん患者における予後改善の可能性が示されている。 ドイツがん研究センターのStefan Nickels氏らは、乳がん患者の大規模コホートにより、再発および死亡リスクにおける脂質低下薬の影響を調査した。その結果、これまでのスタチン使用による予後改善を示す研究報告とは矛盾しないが、脂質低下薬との関連をサポートする明確なエビデンスは示されなかったと報告した。PLoS One誌2013年9月25日号に掲載。 著者らは、2001年~2005年に診断された50歳以上の乳がん患者の大規模な前向きコホートであるドイツのMARIEplus研究のデータを分析した。 全死亡率、乳がんによる死亡率、乳がん以外での死亡率については、ステージI~IVの浸潤性乳がんの3,189例を、また再発リスクについては、ステージI~IIIの乳がん3,024例を採用した。採用時における自己申告での脂質低下薬使用との関連について、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。研究地域、腫瘍グレード、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態で層別化し、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、転移、更年期障害のホルモン補充療法、がんの発見方法、放射線療法、喫煙で調整し分析した。死亡率の解析では心血管疾患、糖尿病、BMIについて追加補正した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値の5.3年の間に、ステージI~IV患者3,189例のうち404例が死亡し、うち286例が乳がんによる死亡であった。・自己申告による脂質低下薬使用は、乳がん以外での死亡率の増加(ハザード比[HR]:1.49、95%信頼区間[CI]:0.88~2.52)と全死亡率の増加(HR:1.21、95%CI:0.87~1.69)に、有意ではないが関連していた。一方、乳がんによる死亡率との関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.67~1.60)。・ステージI~IIIの乳がんにおいては、追跡期間中央値の5.4年の間に387例が再発した。・脂質低下薬の使用は、再発(HR:0.83、95%CI:0.54~1.24)と乳がんによる死亡(HR:0.89、95%CI:0.52~1.49)のリスク減少に、有意ではないが関連していた。

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うつ病患者への禁煙治療、症状悪化の懸念は

 喫煙者の多くにうつ病がみられる。米国のRobert M. Anthenelli氏らは、うつ病を有する喫煙者に対し禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)を使用した際の、禁煙率および気分・不安レベルの変化について検討を行った。Annals of internal medicine誌2013年9月13日号の掲載報告。 本試験は、第4相多施設共同無作為化二重盲検並行群間試験。対象は、8ヵ国38医療機関の、大うつ病に対する治療中または治療歴があり、現在、心血管イベントを認めない成人喫煙者525例であった。抗うつ薬の使用とベースライン時のうつ病重症度で層別化した被検者を、1ブロック4例にランダム化し、バレニクリン1mgを1日2回またはプラセボを12週間投与し、40週間無治療としてフォローアップした。主要アウトカムは、9~12週の一酸化炭素確認による持続的な禁煙率(CAR)とした。また、無治療フォローアップ期間中のCAR、気分、不安、自殺企図または自殺行為の状況についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・バレニクリン群の68.4%、プラセボ群の66.5%が試験を完了した。・バレニクリン群はプラセボ群と比較して、9~12週のCAR(35.9%vs. 15.6%、オッズ比[OR]:3.35、95%CI:2.16~5.21、p<0.001)、9~24週のCAR(25.0%vs. 12.3%、OR:2.53、95%CI:1.56~4.10、p<0.001)、および9~52週のCAR(20.3%vs. 10.4%、OR:2.36、95%CI:1.40~3.98、p=0.001)が高かった。・自殺企図または自殺行為の状況に2群間で差はなく、各群ともうつまたは不安の悪化はみられなかった。・最も高頻度に発現した有害事象は悪心であった(バレニクリン群27.0%、プラセボ群10.4%)。・無治療期間に、バレニクリン群の2例が死亡した。・本試験では、いくつかのデータが欠落しており、件数が低いイベントに関しては群間差の検出力が低かった。また、うつ病に対し未治療の喫煙者、精神疾患発症例、または気分安定薬および抗精神病薬の投与例を除外していた点でも試験に限界があった。・以上を踏まえて、著者は「うつ病を有する喫煙者に対し、バレニクリンはうつ病や不安を悪化させることなく禁煙率の向上に寄与することが示された」と結論した。関連医療ニュース うつ病の既往歴がある患者に対する禁煙治療は難しい?! 統合失調症の症状悪化に関連?「喫煙」「肥満」の影響 ブプロピオンで統合失調症患者の禁煙達成!?

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2型糖尿病のCVD予測に、6つのマーカーが有用

2型糖尿病における心血管疾患(CVD)予測因子として、NT-ProBNPを含む6つのバイオマーカーが有用であることが示唆された。関連のあったバイオマーカーは、NT-ProBNP、アポCIII(ApoCIII)、可溶性-RAGE(sRAGE)、高感度トロポニンT、IL-6およびIL-15の6つであった。演者のHelen C. Looker氏は、今回の結果についてIL-15が予測因子となることは新たな発見であり、ApoCIIIとsRAGEにおけるCVD発症との逆相関の関連についても、さらなる研究が必要であると語った。これまでに、2型糖尿病におけるCVD予測因子に有用とされるバイオマーカーは複数報告されている。そこで、CVD予測因子として有用なバイオマーカーを検索するため、5つのコホート研究の調査が実施された。本調査は、SUMMIT(SUrrogate markers for Micro- and Macrovascular hard endpoints for Innovative diabetes Tools)研究の一環である。対象となったコホート研究は、Go-DARTS(n=1,204)、スカニア糖尿病レジストリ(n=666)、MONICA/KORA(n=308)、IMPROVE(n=94)およびストックホルム研究(n=46)である。候補バイオマーカーとしては、糖尿病患者、非糖尿病患者を問わず、これまでの研究でCVDとの関連が報告された42のマーカーが選択された。年齢、性別、糖尿病罹患期間、BMI、血圧、HbA1c、トリグリセリド、LDL-C、HDL-C、eGFR、喫煙、薬物治療(降圧剤、アスピリン、脂質異常症治療薬およびインスリン使用を含む)を共変量として解析が行われた。主な結果は以下のとおり。2型糖尿病におけるCVD予測因子として、6つのバイオマーカー(NT-ProBNP、ApoCIII、sRAGE、高感度トロポニンT、IL-6、IL-15)が強い関連を認めた。●NT-ProBNP(OR = 1.74、95%CI:1.51~2.02)●ApoCIII(OR = 0.81、95%CI:0.73~0.91)●sRAGE(OR = 0.86、95%CI:0.78~0.96)●高感度トロポニンT(OR = 1.28、95%CI:1.12~1.47)●IL-6(OR = 1.19、95%CI:1.07~1.33)●IL-15(OR = 1.16、95%CI:1.05~1.28)NT-proBNPおよび高感度トロポニンTが2型糖尿病におけるCVD発症に関連していることが明らかになった。IL-6は一般的なCVD予測因子としても知られているが、2型糖尿病患者においても同じくCVD予測因子となることが本調査で確認された。IL-15と2型糖尿病におけるCVD発症の関連性が、今回新たに報告された。ApoCIIIとsRAGEにおいてCVD発症と逆相関の関連が示唆された。Looker氏は「2型糖尿病患者におけるCVD予測因子となるマーカーが、今後の研究によって、さらに明確化されることを願っている」と講演を終えた。

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PCIを病院到着から90分以内に施行することで院内死亡率は改善したか?/NEJM

 米国では2005年~2009年の4年間で、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の、病院到着から経皮的冠動脈インターベンション(PCI)開始までの時間(door-to-balloon time)が16分短縮し、90分以内PCI開始率は23.4ポイント上昇した。しかし、院内死亡率は0.1ポイントの低下でほとんど変化していないことが、ミシガン大学のDaniel S. Menees氏らの調査で判明した。現行のACC/AHAガイドラインでは、STEMI患者に対し病院到着から90分以内のプライマリPCI施行開始を強く推奨(Class I)している。door-to-balloon timeは医療施設の評価指標とされ、地域および国による医療の質向上戦略の中心に位置づけられるが、実際にdoor-to-balloon timeの改善が死亡率の低下に結びついているかは、これまで検証されていなかったという。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告。約9万7,000人の患者データを解析 研究グループは、プライマリPCI施行STEMI患者におけるdoor-to-balloon timeの短縮と院内死亡率の変化の関連を明らかにするために、米国のレジストリ・データに基づく解析を行った。 2005年7月~2009年6月までに、515のCathPCIレジストリ参加施設から登録された、プライマリPCI施行STEMI患者9万6,738例のデータを用い、4年間の各年度別解析を行った。 全体の平均年齢は60.8歳、女性が28.0%であった。高血圧が61.0%、糖尿病が18.8%、脂質異常症が59.2%、喫煙が43.3%、慢性肺疾患が11.4%、心筋梗塞の既往が18.5%に認められた。また、PCI歴ありが20.5%、CABG歴ありが5.6%で、平均入院期間は4.3日であった。 血栓除去術が20.5%、ステント留置術が89.3%で行われ、アプローチは大腿動脈が98.5%、橈骨動脈は0.8%であった。標的冠動脈は左主幹動脈が3.0%、左前下行枝が55.4%、左回旋枝が33.0%、右冠動脈は59.7%だった。高リスク群の予後も改善せず 解析の結果、door-to-balloon time中央値は、初年度(2005年7月~2006年6月)の83分から、最終年度(2008年7月~2009年6月)には67分へと有意に低下した(p<0.001)。同様に、door-to-balloon time90分以内の患者の割合は、初年度の59.7%から最終年度には81.3%まで有意に増加した(p<0.001)。 しかし、このようなdoor-to-balloon timeの改善にもかかわらず、全体的な未補正院内死亡率には有意な変化は認めず(初年度:4.8%、最終年度:4.7%、傾向検定p=0.43)、リスク補正院内死亡率(同:5.0%、4.7%、p=0.34)および未補正30日死亡率(同:9.7%、9.8%、p=0.64)にも有意な変化はなかった。 高リスクのサブグループである75歳以上(1万5,121例)、前壁梗塞(1万8,709例)、心原性ショック合併(9,535例)の患者においても、同様にdoor-to-balloon timeは有意に短縮したが、全体の院内死亡率に変化はみられなかった(75歳以上:初年度12.5%、最終年度11.1%、p=0.19/前壁梗塞:7.2%、6.9%、p=0.79/心原性ショック合併:27.4%、27.2%、p=0.60)。 著者は、「STEMI患者の院内死亡率を改善するには、door-to-balloon time以外の戦略が必要である」とし、「医療施設の評価指標や一般向けの報告にdoor-to-balloon timeを使用することには疑問が生じる」と指摘している。

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起床から喫煙までの時間が短いほど肺がんリスク高:愛知県がんセンター

 喫煙は肺がんの主な原因である。一方、ニコチン依存の明確な指標である、起床から最初の喫煙までの時間(TTFC:time to first cigarette)と肺がんとの関連性について利用可能な情報はほとんどない。愛知県がんセンター研究所の伊藤 秀美氏らは、ケースコントロール研究によって、TTFCによって示されるニコチン依存が肺がんリスク増加に関連することを報告した。Annals of Oncology誌オンライン版2013年9月6日号に掲載。 著者らは、2001年から2005年に初めて愛知県がんセンター中央病院を受診した肺がんのケース1,572例と、がんではないコントロール1,572例を対象にケースコントロール研究を行った。潜在的な交絡因子の調整後、ロジスティック回帰モデルを用いて、TTFCによるオッズ比と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・TTFCは肺がんリスクと逆相関し、この関連は肺がんの組織型を問わず同様であった。・喫煙経験者におけるすべての肺がんについて、関連する共変量に加えて喫煙量と喫煙期間も考慮して検討したところ、TTFCが60分超の場合と比較した調整オッズ比は、31~60分で1.08(95%CI:0.73~1.61)、6~30分で1.40(0.98~2.01)、5分以下で1.86(1.28~2.71)であった(傾向のp<0.001)。・組織型によって、統計的にわずかに有意な異質性がみられた(異質性のp=0.002)。

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さすがに4剤を1つの配合剤にすると服薬継続率も良くなるだろう/JAMA

 心血管疾患(CVD)またはその高リスクを有する患者への降圧・脂質低下・抗血小板薬の固定用量配合剤投与(fixed-dose combinations:FDC)治療戦略は通常ケアと比較して、アドヒアランスを有意に改善すること、血圧と脂質の臨床値の改善は有意だがわずかであったことが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSimon Thom氏らによる無作為化試験「UMPIRE」の結果、示された。CVD患者の大半は、推奨薬物療法が長続きしない。FDCによるアドヒアランス改善効果はその他領域で報告されており、心血管系FDCについてはこれまで、プラセボあるいは未治療と比較した短期効果の検討は行われていた。JAMA誌2013年9月4日号掲載の報告より。FDC治療と通常ケアを比較、アドヒアランスと重大リスク因子の改善を評価 UMPIRE試験は、インドおよび欧州で2010年7月~2011年7月にCVD既往またはそのリスクを有する患者2,004例を登録して行われた非盲検無作為化エンドポイント盲検化試験であった。 試験は、長期アドヒアランスの改善についてFDC(アスピリン、スタチン、降圧薬2剤)と通常ケアを比較することを目的とし、治療の改善および2つの重大なCVDリスク因子(収縮期血圧[SBP]、LDLコレステロール[LDL-C])について評価した。 被験者は、無作為に1,002例が(1)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+アテノロール50mg、または(2)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgのいずれかのFDC群に割り付けられ、残る1,002例は通常ケア群に割り付けられた。 主要評価項目は、自己申告に基づく治療アドヒアランスと、SBPとLDL-Cのベースラインからの変化とした。アドヒアランスは有意に改善、SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善 被験者2,004例のベースライン時の平均血圧値は137/78mmHg、LDL-C値91.5mg/dLで、抗血小板薬、スタチン薬、2剤以上の降圧薬を服用していたのは1,233例(61.5%)だった。 追跡調査は、2012年7月に終了し、平均追跡期間は15ヵ月(範囲:12~18ヵ月)であった。 結果、FDC群は通常ケア群と比較して有意にアドヒアランスが改善した(86%対65%、相対リスク[RR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.26~1.41、p<0.001)。また、試験終了時のSBPの低下(-2.6mmHg、95%CI:-4.0~-1.1mmHg、p<0.001)、LDL-Cの低下(-4.2mg/dL、95%CI:-6.6~-1.9mg/dL、p<0.001)も、わずかだが有意にFDC群のほうが低下していた。 事前に定義したサブグループ(アドヒアランス、性、糖尿病、喫煙の有無別など)でも効果は一致しており、ベースラインでのアドヒアランスが低い患者ほどベネフィットが大きいというエビデンスが得られた。このベースラインでアドヒアランスが低かった患者727例(36%)の試験終了時のアドヒアランスの改善は、FDC群77%対通常ケア群23%で(RR:3.35、95%CI:2.74~4.09、相互作用のp<0.001)、SBPの低下は-4.9mmHg(95%CI:-7.3~-2.6mmHg、相互作用のp=0.01)、LDL-Cの低下は-6.7mg/dL(95%CI:-10.5~-2.8mg/dL、相互作用のp=0.11)だった。 重大有害イベントまたは心血管イベントの発生に有意差はみられなかった。FDC群50例(5%)、通常ケア群35例(3.5%)、RR:1.45(95%CI:0.94~2.24、p=0.09)。 以上を踏まえて著者は、「CVDまたはその高リスクを有する患者において、血圧、コレステロール、血小板コントロールのためのFDC治療戦略は通常ケアと比較して、15ヵ月時点のアドヒアランスを有意に改善した。SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善であった」と結論している。

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電子タバコは禁煙達成に本当に有効なのか/Lancet

 2004年に発売された「ニコチン入り電子タバコ」は、数百万人の愛煙家がいるとされ、やめるために吸っている人も多く(英国では禁煙に取り組む人の27%が利用)、10年以内にその売上高は一般的なタバコを凌駕するのではと言われるほど急増しているという。しかし、喫煙コントロールにおける電子タバコの位置づけには議論の余地があり、信頼性の高いデータも不足しているのが現状である。そこでニュージーランド・オークランド大学のChristopher Bullen氏らは、ニコチン入り電子タバコの有効性と安全性について評価するプラグマティックな無作為化対照優越性試験を行った。Lancet誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告より。6ヵ月時点の禁煙継続を評価 研究グループは、禁煙セッションにおいて、ニコチン入り電子タバコは、ニコチンパッチおよびプラセボ(ニコチンなし電子タバコ)よりも禁煙補助剤として有効であり、有害イベントリスクも増大しないと仮定して検討を行った。 試験は2011年9月6日~2013年7月5日に、オークランドにおいて、18歳以上の禁煙希望者を対象に行われた。被験者は、コンピュータブロック無作為化にて、電子タバコ(16mgニコチン入り)群、ニコチンパッチ(21mg/日)群、プラセボ(ニコチンなし電子タバコ)群の3群に、4対4対1の割合で割り付けられた[人種(マオリ、パシフィック、非マオリ・パシフィック)、性(男、女)、ニコチン依存度(FTNDテストで>5、≦5)により9ブロックに層別化されて割り付けられた]。各補助剤の使用は、被験者が喫煙をやめると選択した日の1週間前から始め、選択日から12週間後まで使用した。また被験者には、行動を後押しするボランティアによる電話カウンセリングの支援が行われた。 主要アウトカムは、6ヵ月時点の生化学検査(呼気NO値<10ppm)に基づく禁煙の継続であった。評価はintention to treat(ITT)解析にて行われた。電子タバコの有効性はわずか、さらなる研究が必要 1,293例が試験適格の評価を受け、657例が無作為化され(電子タバコ群289例、パッチ群295例、プラセボ群73例)、ITT解析に組み込まれた。 結果、6ヵ月時点で禁煙していた人は、電子タバコ群7.3%(21/289例)、パッチ群5.8%(17/295例)、プラセボ群4.1%(3/73例)であった。 事後解析にて行った有効性に関する非劣性試験(リスク差限界値5%)の結果、電子タバコ群とパッチ群のリスク差は1.51(95%信頼区間[CI]:-2.49~5.51)、電子タバコ群とプラセボ群の同差は3.16(同:-2.29~8.61)で統計的有意差は認められなかった。 なお試験の結果について著者らは「禁煙達成率が推定値(20%)よりもかなり低かった。そのため電子タバコの優位性を検討するには統計的検出力が不十分であった」と述べている。推定値に近かったのは7日間禁煙達成率(過去7日間禁煙できていた人の割合)で、相対リスクは電子タバコを支持する差を示したが、6ヵ月時点で有意差は示されなかった。また、被験者の大半は期間中央値50日以内に再喫煙に至っていた。群別では、電子タバコ群は同35日、パッチ群同14日、プラセボ群同12日だった。 有害イベントの発生は、電子タバコ群137例、パッチ群119例、プラセボ群36例で有意差は特定できず、有害イベントと各試験補助剤との関連エビデンスは見いだせなかった。 以上を踏まえて著者は、「禁煙補助剤として、ニコチン入り・なしを問わず電子タバコの有効性はわずかであった。禁煙達成率はニコチンパッチと同程度であった。有害イベントは少なかった」と結論した。そのうえで「喫煙コントロールにおける電子タバコの位置づけは不確定であり、個人および集団レベルでの有用性と有害性を明白に確立するためのさらなる研究が急務である」とまとめている。

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喫煙に対する感受性がバイオマーカーでわかる可能性:日本人男性における検討

 血清鉄(sFe)の値は喫煙に対する感受性のバイオマーカーとなりうることが山形大学の柴田 陽光氏らにより報告された。PLoS One誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙習慣のある高齢者では一般的な疾患である。しかし、タバコ煙の曝露期間に応じて呼吸機能が低下する、喫煙に対する感受性の高い人々がいる一方で、呼吸機能が低下しない高齢者もいる。しかしながら、これまで、こうした喫煙に対して感受性のない人々に関する研究はあまりなかった。 本研究では、喫煙しているにもかかわらず、肺の健康状態が維持されている人々を識別するバイオマーカーを同定することを目的とした。 2004年~2006年に山形県高畠町で定期健康診断を受けた3,257人を対象に、血液のサンプリングとスパイロメトリーを実施した。このうち、(1)年齢が70歳以上(2)ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上(3)喫煙歴が30年以上、の3つに該当する117人の喫煙者を対象とした。喫煙感受性なしの定義はFEV1(1秒量)/FVC(努力性肺活量)≧0.7かつFEV1%predicted(1秒量対予測値)≧80とした。 主な結果は以下のとおり。・喫煙感受性のないグループは感受性のあるグループに比べ、ベースラインの血清鉄(sFe)の値が高かった。・男性では、血清鉄(sFe)の値が低いとFEV1/FVCも低かった。・男性では、呼吸機能の測定値と血清鉄(sFe)の値の間に明らかな関連が認められた。・多重線形回帰分析においても、他の臨床的な因子とは独立して、血清鉄(sFe)が呼吸機能の値の予測因子となることが明らかとなった。・血清鉄の値はFEV1の低下に対する予測因子にもなっていた。

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女性にも薬剤溶出ステントは有効か?/Lancet

 冠動脈疾患の男性患者だけでなく女性患者においても、薬剤溶出ステント(DES)はベアメタルステント(BMS)に比べ有効性と安全性が優れることが、スイス・ベルン大学病院のGiulio G Stefanini氏らの検討で確認された。冠動脈疾患の治療におけるDESの安全性と有効性はさまざまな無作為化試験で検討されているが、登録患者に占める女性の割合が約25%と低いため、女性におけるDESの有用性を評価する十分なパワーを有する単一の試験はないという。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告。日本人女性患者を含む26試験の統合解析 研究グループは、女性におけるDESの有用性を評価するために、2000~2013年に実施された26件のDESに関する無作為化試験に参加した女性のデータを収集し、統合解析を行った。解析には、日本のRESET試験(3,197例、女性23%、2012年)が含まれた。 BMS、旧世代DES[シロリムス溶出ステント(Cypher)、パクリタキセル溶出ステント(Taxus)]、新世代DES[エベロリムス溶出ステント(Xience、Promus)、ゾタロリムス溶出ステント(Endeavor、Resolute)、バイオリムス溶出ステント(Biomatrix、Nobori)、シロリムス溶出ステント(Yukon)]の3群に分けてアウトカムを解析した。 安全性の主要評価項目は、死亡と心筋梗塞の複合エンドポイントとし、副次評価項目は、ステント血栓症(疑い例を含む)であった。有効性の主要評価項目は標的病変再血行再建術の施行とした。死亡/心筋梗塞:12.8 vs 10.9 vs 9.2%、ステント血栓症:1.3 vs 2.1 vs 1.1% 26試験に参加した4万3,904例のうち女性は1万1,557例(26.3%)で、BMS留置例が1,108例(9.6%)、旧世代DES留置例が4,171例(36.1%)、新世代DES留置例は6,278例(54.3%)であった。 全体の平均年齢は67.1歳で、BMI 28.1、糖尿病31.2%、高血圧75.6%、高コレステロール血症67.6%、喫煙者26.7%、冠動脈疾患家族歴39.5%、心筋梗塞の既往19.0%、PCI施行歴20.6%、CABG施行歴5.0%、多枝病変28.8%であった。平均フォローアップ期間は2.9年だった。 留置後3年時の安全性の複合エンドポイントの累積発生率は、BMS留置例が12.8%(132例)、旧世代DES留置例が10.9%(421例)、新世代DES群は9.2%(496例)であった(全体:p=0.001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.01)。ステント血栓症の発症率は、BMS留置例が1.3%(13例)、旧世代DES留置例が2.1%(79例)、新世代DES群は1.1%(66例)だった(同:p=0.01、p=0.002)。 3年時の標的病変再血行再建術の施行率は、BMS留置例が18.6%(197例)、旧世代DES留置例が7.8%(294例)、新世代DES群は6.3%(330例)であり、DESの使用により有意に低下した(全体:p<0.0001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.005)。これらの結果は、多変量解析にてベースラインの患者背景で調整しても変わらなかった。 著者は、「女性患者では、BMS留置例に比べDES留置例で長期的な有効性と安全性が優れ、新世代DESは旧世代DESに比べ良好な安全性を示した」と結論し、「新世代DESは女性患者における経皮的冠動脈再建術の標準治療とみなされる」と指摘している。

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第18回 手技よりも術後管理のミスに力点をおく裁判所

■今回のテーマのポイント1.消化器疾患の訴訟では、大腸がんが2番目に多い疾患であり、縫合不全の事例が最も多く争われている2.裁判所は、縫合不全について手技上の過失を認めることには、慎重である3.その一方で、術後管理の不備については、厳しく判断しようとしているので注意が必要である事件の概要患者X(49歳)は、平成14年11月、健康診断にて大腸ポリープを指摘されたことから、近医を受診したところ、大腸腫瘍(S状結腸)および胆嚢結石と診断されました。Xは、平成15年5月9日、腹腔鏡下胆嚢摘出術および大腸腫瘍摘出術目的にてY病院に入院しました。同月12日、まず腹腔鏡下で胆嚢を摘出し、ペンローズドレーンを留置し、創縫合を行った後、左下腹部を切開し、S状結腸を摘出して、Gambee縫合にて結腸の吻合を行い、ペンローズドレーンを留置しました。術後3日間は順調に経過しましたが、術後4日目の16日に食事を開始したところ、夜より発熱(39.1度)を認め、翌日の採血では白血球数、CRP値の上昇が認められました。しかし、ドレーンからの排液は漿液性であり、腹痛も吻合部とは逆の右腹部であったことから、絶食の上、抗菌薬投与にて保存的に経過を追うこととなりました。ところが、23日になってもXの発熱、白血球増多、CRP値の上昇は改善せず、腹部CT上、腹腔内膿瘍が疑われたことから、縫合不全を考え再手術が行われることとなりました。開腹した結果、結腸の吻合分前壁に2ヵ所の小穴が認められたことから、縫合不全による腹膜炎と診断されました。Xは、人工肛門を設置され、10月7日にY病院を退院し、その後、同年11月20日に人工肛門閉鎖・再建術のため入院加療することとなりました。これに対し、Xは、不適切な手技により縫合不全となったこと、および、術後の管理に不備があったことを理由に、Y病院に対し、約2億2100万円の損害賠償を請求しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者X(49歳)は、平成14年11月、健康診断にて大腸ポリープを指摘されたことから、近医を受診したところ、大腸腫瘍(S状結腸)および胆嚢結石と診断されました。Xは、平成15年5月9日、腹腔鏡下胆嚢摘出術および大腸腫瘍摘出術目的にてY病院に入院しました。なお、Xは1日40本の喫煙をしており、本件手術前に医師より禁煙を指示されましたが、それに従わず喫煙を続けていました。同月12日、A、B、C、D4名の医師により手術が行われました。まず、最もベテランのA医師が腹腔鏡下で胆嚢を摘出し、ペンローズドレーンを留置し、創縫合を行った後、最も若いC医師が左下腹部を切開し、S状結腸を摘出して、Gambee縫合にて結腸の吻合を行い、ペンローズドレーンを留置しました。本件手術に要した時間は、3時間13分でした。術後3日間は順調に経過しましたが、術後4日目の16日に食事を開始したところ、夜より発熱(39.1度)を認め、翌日の採血では白血球数、CRP値の上昇が認められました。しかし、ドレーンからの排液は漿液性であり、腹痛も吻合部とは逆の右腹部であったこと、16日午後3時頃、Xが陰部の疼痛、排尿時痛、および排尿困難を訴えたことからバルーンカテーテルによる尿道損傷、前立腺炎の可能性も考えられたため、絶食の上、抗菌薬投与にて保存的に経過を追うこととなりました。18日には、ドレーン抜去部のガーゼに膿が付着していたことから、腹部CT検査を行ったところ、「直腸膀胱窩から右傍結腸溝にかけて被包化された滲出液を認め、辺縁は淡く濃染し、内部に一部空胞陰影を認めます。腹腔内膿瘍が疑われます。周囲脂肪織の炎症性変化は目立ちません。腹壁下に空胞陰影と内部に滲出液がみられ、術後変化と思われます。腹水、有意なリンパ節腫大は指摘できません」との所見が得られました。縫合不全の可能性は否定できないものの、滲出液が吻合部の左腹部ではなく右腹部にあること、腹痛も左腹部ではなく右腹部であったことから、急性虫垂炎をはじめとする炎症性腸疾患をも疑って治療をするのが相当であると判断し、抗菌薬を変更の上、なお保存的治療が選択されました。ところが、23日になってもXの発熱、白血球増多、CRP値の上昇は改善せず、腹部CT上、腹腔内膿瘍が疑われたことから、縫合不全を考え再手術が行われることとなりました。開腹した結果、結腸の吻合分前壁に2ヵ所の小穴が認められたことから、縫合不全による腹膜炎と診断されました。Xは、人工肛門を設置され、10月7日にY病院を退院し、その後、同年11月20日に人工肛門閉鎖・再建術のため入院加療することとなりました。事件の判決上記認定事実によれば、本件手術におけるS状結腸摘出後の吻合部位において縫合不全が発生したことが認められる。もっとも、上記認定のとおり、吻合手技は縫合不全の発生原因となりうるが、それ以外にも縫合不全の発生原因となるものがあるから、縫合不全が起こったことをもって、直ちに吻合手技に過失があったということはできない。そして、上記認定のとおり、縫合不全を防ぐためには、縫合に際し、適式な術式を選択し、縫合が細かすぎたり結紮が強すぎたりして血行を悪くしないこと、吻合部に緊張をかけないことが必要であるとされていることを考慮すると、債務不履行に該当する吻合手技上の過誤があるというためには、選択した術式が誤りであるとか、縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたと認められる場合に限られると解するのが相当である。・・・・・・・(中略)・・・・・・・原告らは、C医師は経験の浅い医師であったから縫合不全は縫合手技に起因すると考えられると主張する。B医師のGambee縫合の経験数は不明であるが、上記認定のとおり、本件手術にはD医師が助手として立ち会っているところ、B医師はC医師の先輩であり、被告病院において年間200例程度行われる大腸の手術に関与しているのであるから、C医師の吻合手技に、縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたといった問題があったにもかかわらず、B医師がそのまま手術を終了させるとは考え難い。また、上記認定のとおり、手術後3日以内に発生した縫合不全については縫合の不備が疑われて再手術が検討されるところ、上記前提事実のとおり、本件手術後3日目である平成15年5月15日までの間に特に異常は窺えなかったところである。これらを考慮すると、原告ら主張の事情をもって吻合技術に問題があったと推認することはできないというべきである。以上のとおり、本件手術は、縫合不全が発生しやすい大腸(S状結腸)を対象とするものであったこと、原告は喫煙者であり、縫合不全の危険因子がないとはいえず、縫合手技以外の原因により縫合不全が発生した可能性が十分あること、C医師による吻合の方法が不適切であったことを裏付ける具体的な事情や証拠はないことを考慮すると、原告に生じた縫合不全がC医師の不適切な吻合操作によるものであると認めることはできないというべきである。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(名古屋地判平成20年2月21日)ポイント解説今回は、各論の2回目として、消化器疾患を紹介します。消化器疾患で最も訴訟が多い疾患は、第15回で紹介した肝細胞がんです。そして、2番目に多いのが、今回紹介する大腸がんです。大腸がんの訴訟において、最も多く争われるのが縫合不全(表)です。ご存じのとおり、縫合不全は、代表的な手術合併症であり、手術を行う限り一定の確率で不可避的に発生します。しかし、非医療者からみると、医療行為によって生じていることは明らかであり、かつ、縫合という素人目には簡単に思える行為であることから訴訟となりやすい類型となっています。しかし、最近の裁判所は、合併症に対する理解が進んできており、本判決のように、単に縫合不全があったことのみをもって過失があるとするような判断はせず、「縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えた」などの具体的な縫合手技に著しく問題があった場合にのみ、手技上の過失があるとしています(表に示した判例においても、手技上の過失を認めた判例は一つもありません)。したがって、現在、手術ビデオなどで手技上の欠陥が一見して明白であるような場合を除き、訴訟において縫合不全が手技ミスによって生じたとする主張が争点となることは少なくなってきています。その代わりといってはなんですが、術後の管理については、厳しく争われる傾向にあります。本事案でも、17日に発熱、白血球増多、CRP値が上昇した際、および18日に腹部CTをとった際に速やかに縫合不全と診断して、ドレーン排液の細菌培養および外科的ドレナージを行うべきであったとして争われました(本件においては術後管理の過失は認められませんでしたが、〔表〕の原告勝訴事例のすべてで術後管理の不備が認められています)。医療行為は行為として不完全性を有します。そして、医療は日々進歩していきます。医学・医療の進歩は、医療者が個々に経験した症例を学会・論文などを介して集約化、情報共有し、それを再検討することで生まれます。しかし、医療行為によって生じた不利益な結果が過失として訴訟の対象(日本では刑事訴追の対象にもなるため萎縮効果が特に強い)となると、医師は恐ろしくて発表することができなくなります。実際に、1999年以降、わが国における合併症に関する症例報告は急速に減少しました。目の前の患者の救済は十分に考えられるべきですが、その過失判断を厳格にすることで達成することは、医学・医療の進歩を阻害し、その結果、多数の国民・患者の適切な治療機会を奪うこととなります。司法と医療の相互理解を深め、典型的な合併症については裁判による責任追及ではなく、医学・医療の進歩にゆだねることが望ましいと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。名古屋地判平成20年2月21日

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喘息マネジメントの穴埋めるチオトロピウム(ERS2013)

 2013年9月7~12日、スペインのバルセロナで行われたERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、標題テーマが議論された。 簡便な評価ツールや新たな薬剤の登場などにもかかわらず、コントロール不良の喘息(Uncontrolled asthma)の頻度は50%以上といまだ高い1)。デンマークUniversity of Southern DenmarkのSoren Pedersen氏は、「10年前と比較するとわずかに改善しているものの、依然として状況は変わらない。また、これは多くの国で同じ状況である」と述べた。同氏はまた「このようなケースでは、吸入ステロイド(以下ICS)や吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤(以下ICS/LABA)を吸入していてもコントロール不良であり、これを補う薬物療法として現在の選択肢以外にも有効な手段が望まれる」と述べた。 そのような中、新たな治療選択肢として、COPD治療薬として広く用いられている抗コリン薬チオトロピウム(商品名:スピリーバ2.5μレスピマット)の喘息に対する有効性が注目されている。チオトロピウムの喘息への使用については、重症例のICS/LABAや軽症・中等症例でのICSへのアドオンなど、いくつかの試験でその有効性が示されてきた2)3)。なかでもICS/LABAコントロール不良の重症持続型喘息でのチオトロピウムの有効性を示す大規模二重盲検試験PrimoTinATMの結果が昨年(2012年)発表されているが4)(http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31588)、今回のERSでは、中用量のICSでコントロールが得られない中等症持続型喘息に対する第3相試験Mezzo-TinATMの結果が、オランダUniversity of GroningenのHuib Kerstjens氏から発表された。 MezzoTinA-asthma 試験は、チオトロピウムレスピマット5μg群(以下チオトロピウム5μg群)、チオトロピウムレスピマット2.5μg群(以下チオトロピウム2.5μg群)、それにLABAであるサルメテロール(商品名:セレベント)50μg(50μgx2回/日投与)群を合わせた3つのActive treatment群とプラセボ群間で行われた。試験はダブルブラインド、ダブルダミーの並行群間比較で、中用量ICSの維持療法を継続しながら、24週にわたり各群の薬剤を追加投与し、その後3週間フォローアップするというものだ。プライマリエンドポイントは呼吸機能改善評価として24週後のピークFEV1*、同時期のトラフFEV1、そして臨床的評価として同時期のACQ*(asthma controlled questionnaire:喘息管理質問表)スコアの改善で、Trial1および2の2つの試験結果から解析されている。 患者条件は ・中等量ICS(ブデソニド換算400~800mg)単独、またはICS/LABAの使用にもかかわらずコントロール不良の中等症持続型喘息(LABAは試験期間中は中止) ・年齢18歳~75歳の男女 ・非喫煙者または過去に喫煙歴(10pack-years以下)がある非喫煙者 ・サルブタモール(短時間作用性β2刺激薬)400mg投与前の%FEV1*60%~90% ・気道可逆性(サルブタモール400mg投与後のFEV1の改善)12%以上かつ200mL以上など。試験期間中のロイコトリエン受容体拮抗薬、去痰剤、抗アレルギー薬などの使用は許可された。呼吸器疾患、心血管疾患を含む喘息以外の明らかな併存症のあるもの、試験開始前に内服ステロイド治療を受けた患者は除外された。 試験患者数は、Trial1 1,070例、Trial2 1,030例の総計2,100例。4群間の患者バックグラウンドは同様で、平均年齢43.1歳、平均ACQスコア2.18、気道可逆性22.4%、1秒率*(FEV1/FVC)65.8%、罹病期間は21.8年と長期にわたっていた。使用薬剤は、ICS以外ではLABAが60%と最も多く、その他はロイコトリエン受容体拮抗薬が10%、テオフィリンが4%であった。 試験結果は、 ・24週後のピークFEV1:チオトロピウム5μg群247mL、同2.5μg群285mL、サルメテロール群258mL、プラセボ群62mL。プラセボからの増加はそれぞれ、185mL、223mL、196mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・24週後のトラフFEV1:チオトロピウム5μg群119mL、同2.5μg群152mL、サルメテロール群87mL、プラセボ群 -27mL。プラセボからの増加はそれぞれ、146mL、182mL、114mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・ACQスコアの改善:ACQレスポンダー(ACQスコア0.5点以上改善)の割合は、チオトロピウム5μg群64.3%、同2.5μg群64.5%、サルメテロール群66.5%、プラセボ群 57.7%。対プラセボORはそれぞれ1.32、1.33、1.46で、p値はそれぞれ0.035、0.031、0.039といずれの群ともプラセボに比べ有意に改善していた。 ・有害事象発現率は、チオトロピウム5μg群57.3%、同2.5μg群58.2%、サルメテロール群54.3%、プラセボ群59.1%。重篤な有害事象の発現はそれぞれ2.1%、2.3%、2.0%、2.7%と各群ともプラセボと同等であった。 Kerstjens氏は、「チオトロピウムについてのわれわれの疑問は、喘息に対する効果は重症持続型に限られるか?LABAとの効果比較は?などであった。今回の試験で、チオトロピウムレスピマットは、プラセボと比較し、両用量ともピークFEV1、トラフFEV1を有意に増加させ、ACQレスポンダーを有意に増加させていた。この結果から、チオトロピウムレスピマットは、ICS/LABAおよび高用量ICSの適応である重症持続型だけではなく、中等量ICS単独の適応である中等症持続型喘息への追加投与も効果的であることが示された。また、以前の試験結果と同じく、われわれの試験データでもチオトロピウムレスピマットの効果はサルメテロールと同等であることが示された。今回の試験結果は、チオトロピウムの追加投与によって、ガイドラインに則った治療をしても症状が改善しない多くの喘息患者にとって、意義ある結果だといえる」と述べた。※チオトロピウムの効能・効果は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に基づく諸症状の緩解」であり、気管支喘息は承認外ですのでご注意ください。*FEV1:最大努力呼気の際に呼出開始から最初の1秒で呼出される肺気量。ピークFEV1は薬剤投与後、最も呼吸機能が上がった時点での数値、トラフFEV1は最も呼吸機能の下がった時点での数値。*ACQ:喘息管理質問表スコアasthma control questionnaire。7つの質問から構成され、0~6点の7段階で評価される(0をトータルコントロール、0.75未満をウェルコントロール)。治療後に1.5以上上昇した場合を“著明改善”、1.0以上を“中等度改善”、0.5以上を“やや改善”と定義した。スコアが大きいほど重症となる。*1秒率(FEV1/FVC):FEV1と努力肺活量(FVC)の比率。閉塞性喚気障害の診断指標。FEV1/FVC<70%が閉塞性喚気障害の基準となる。*%FEV:FEV1実測値/FEV1予測値(FEV1予測値=性別、身長、年齢から算出)1) Demoly P et al. Eur Respir Rev. 2012;21:66-74.2) Perters SP et al. N Engl J Med. 2010;363:1715-1725.3) Kerstjens HA et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;128:308-314.4) Kerstjens HA et al. N Engl J Med. 2012;367:1198-1207.

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禁煙補助具としての電子タバコの実力

 9月8日ERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、初めての電子タバコとニコチンパッチの比較試験の結果が、ニュージーランド・オークランド大学のChris Bullen氏より発表された。 Bullen氏の研究チームは、657人の禁煙を希望する喫煙者を登録し、3つのグループに分けた。グループは13週電子タバコ(ニコチン含量16mg)を与えられた292人、13週ニコチンパッチを提供された292人、プラセボの電子タバコ(ニコチン含量 0)を提供された73人である。試験は13週、上記の禁煙補助具を用い、さらに3ヵ月間追跡した6ヵ月後の試験期間終了時に、参加者が禁煙を継続している否かを評価した。 結果、参加者の5.7%は禁煙を完遂していた。3つのグループの中でもっとも成功割合が高かったのは電子タバコで7.3%であった。ついで、ニコチンパッチグループは5.8%、プラセボグループは4.1%と続いた。また、電子タバコのグループは、禁煙に成功しなかった場合でも、57%の参加者においてタバコ消費量が減少した(ニコチンパッチグループ41%)。 Bullen氏は、「この試験は、電子タバコを禁煙補助具として評価する大きな基準となる。しかし、電子タバコの有効性や長期効果については不明な点も多く、今後はより大規模で長期間の試験の必要性に迫られている」と述べた。

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