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クリゾチニブ、ALK陽性NSCLCの1次治療薬へ/NEJM

 治療歴のないALK遺伝子陽性非小細胞肺がん(以下、ALK陽性NSCLC)に対し、ALKチロシンキナーゼ阻害薬クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)は、標準的な化学療法よりも優れた有用性を持つことが、オーストラリア・メルボルンのPeter MacCallum Cancer CentreのBenjamin J Solomon氏らの研究で示された。 ALK陽性(ALK遺伝子の再配列)は、NSCLCの3~5%にみられ、若年者、非(軽度)喫煙者、腺がんに多くみられることが特徴である。一方、クリゾチニブはALK、ROS1、METを標的とするチロシンキナーゼ阻害薬である。すでにALK陽性NSCLCの2次治療に対する第III相試験(PROFILE 1007)では、単剤の化学療法に比べたクリゾチニブの有意な効果が示されている。しかしながら、同疾患の1次治療における標準化学療法(プラチナダブレット)との比較はなかった。NEJM誌2014年12月4日号掲載の報告より。オープンラベル無作為化試験で標準化学療法と比較 著者らは、進行性ALK陽性NSCLCの1次治療におけるクリゾチニブの有用性を標準化学療法と比較する、多施設国際オープンラベル無作為化比較第III相試験「PROFILE 1014」を開始した。対象は、全身療法治療歴のない進行性ALK陽性NSCLCであった。これらの患者は無作為にクリゾチニブ群(250mgx2/日投与)と標準的化学療法群(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC5~6)に割り付けられ、3週毎6サイクルの治療を受けた。病勢進行(PD)した化学療法群患者については、クリゾチニブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目は、放射線学的評価によるPFS(無増悪生存期間)であった。PFS中央値は10ヵ月以上に延長、肺がん症状、QOLも改善 2011年1月~2013年7月に343例が登録され、クリゾチニブ群172例、化学療法群171例に割り付けられた。両群間の患者背景に差はなく、被験者にはアジア人も含まれた(クリゾチニブ群45%、化学療法群47%)。PFS中央値は、クリゾチニブ群で10.9ヵ月と化学療法群の7.0ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.45、95%CI:0.35~0.60、p<0.001)。この傾向は、プラチナ製剤の種類、患者のPS、人種、脳転移の有無といったすべてのサブグループで同様であった。奏効率は、クリゾチニブ群で74%(95%CI:67~81)と化学療法群の45%(95%CI:37~53)に比べ有意に良好であった(p<0.001)。生存期間中央値は被験者の約7割がPFS評価時に追跡中であったことから、両群とも到達していない。1年生存率はクリゾチニブ群で84%(95%CI:77~89)、化学療法群では79%(95%CI:71~84)である。また、化学療法群の被験者の70%がクリゾチニブにクロスオーバーしている。 有害事象は、クリゾチニブへのクロスオーバーの影響で、両群の投与期間中央値に差がある状態で集計している(クリゾチニブ群10.9ヵ月、化学療法群4.1ヵ月)。両群の有害事象の大部分は、グレード1~2であった。クリゾチニブ群で多く報告された有害事象は、視覚障害(71%)、下痢(61%)、浮腫(49%)など。化学療法群で多く報告された有害事象は、疲労感(38%)、貧血(32%)、好中球減少(30%)などであった。2群間で同程度の発現率を示した事象は、嘔気(クリゾチニブ56%、化学療法59%)、食欲減退(クリゾチニブ30%、化学療法34%)などであった。グレード3~4のアミノトランスフェラーゼ上昇がクリゾチニブ群の14%(化学療法群では2%)に認められたものの、投薬中断または減量によって管理可能であった。グレード3~4の好中球減少症は、クリゾチニブ群11%、化学療法群15%で認められた。研究者の評価による治療関連死は認められていない。 患者のQOLは、クリゾチニブ群で有意に改善し(p<0.001)、患者の自己申告による肺がん症状(咳嗽、呼吸困難、胸痛など)もクリゾチニブ群で有意に減少している(p<0.001)。 著者は、「クリゾチニブの1次治療は、NSCLCの標準化学療法(ペメトレキセド+プラチナレジメン)に比べ、ALK陽性NSCLCのPFSを有意に改善した。この1次治療の成績は、既報の2次治療の成績よりも優れている。1次治療としてクリゾチニブを投与することでALK陽性NSCLC患者の治療ベネフィットを最大にできる可能性がある」と指摘している。

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低線量CT肺がん検診の費用対効果/NEJM

 低線量CTによる肺がん検診の増分費用対効果(ICER)について調べたところ、獲得生存年1年当たり5万2,000ドル、1QALY当たり8万1,000ドルと推定されることが示された。一方で、サブグループ分析や感度分析では、そのICERに大幅なばらつきが認められたという。米国・Geisel School of Medicine at DartmouthのWilliam C. Black氏らが、全米肺スクリーニング試験(NLST)のデータを基に検討し明らかにした。NLSTの結果からは、低線量CTによる肺がん検診は、胸部X線検診に比べて、肺がん死亡率を低下することが示されている。NEJM誌2014年11月6日号掲載の報告より。低線量CT肺がん検診、胸部X線肺がん検診、検診なしを比較 Black氏らはNLSTのデータから、低線量CTによる肺がん検診、胸部X線による肺がん検診、肺がん検診なしの3群について、生存年数、質調整生存年(QALY)、1人当たり費用、ICERのそれぞれについて、予測平均値を算定し評価を行った。 QALYについては、生存年は試験期間中の死亡数と試験終了時生存者の予測生存年を基に推定した。質調整値は、サブグループに対しQOL調査を行い推定した。費用は、医療サービス利用率やメディケアの償還額から割り出した。 また得られた結果については、年齢や性別、喫煙歴、肺がんリスクによるサブグループ分析や、数種類の仮定別の感度分析を行った。低線量CT肺がん検診、検診なしと比べ追加費用は1人1,631ドル 分析の結果、肺がん検診をしない場合と比べて低線量CT肺がん検診の、1人当たり追加費用は1,631ドル(95%信頼区間:1,557~1,709)であった。また、生存年を1人当たり0.0316年(同:0.0154~0.0478)、1人当たりQALYは0.0201年(同:0.0088~0.0314)それぞれ延長した。 ICERについては、獲得生存年1年当たり5万2,000ドル(同:3万4,000~10万6,000)、1QALY当たり8万1,000ドル(同:5万2,000~18万6,000)だった。ただしICERは、サブグループ分析や感度分析により、大幅なばらつきが認められた。

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肺がんの組織型の説明に

肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分けられます肺がんの分類(組織型)組織分類多く発生する場所はいや腺癌非小細胞肺がん肺野部扁平上皮癌大細胞癌小細胞肺がん小細胞癌はいもん特徴女性の肺がんで多い、症状が出にくい肺門部喫煙との関連が大きい肺野部増殖が速い肺門部喫煙との関連が大きい、転移しやすい独立行政法人国立がん研究センター がん情報サービスCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.非小細胞肺がん小細胞がんではない肺がんの総称で、肺がんの約80~85%を占めています。腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど、多くの異なる組織型があり、発生しやすい部位、進行形式と速度、症状などはそれぞれ異なります。いずれの場合も化学療法や放射線治療で効果が得られにくく、手術を中心とした治療が行われます。小細胞肺がん肺がんの約15~20%を占め、増殖が速く、脳・リンパ節・肝臓・副腎・骨などに転移しやすく悪性度の高いがんです。しかし、非小細胞肺がんよりも抗がん剤や放射線治療の効果が得られやすいと言われています。Copyright SCICUS K.K. All rights Reserved. @2003独立行政法人国立がん研究センターがん情報サービスCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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肺がん手術の合併症の説明に

手術の合併症と予防・対策の例合併症の例傷口やつなぎ合わせた場所(縫合部)に細感染 菌などによる感染が起こることがあります。予防と対策急激な寒気、発熱やだるさがあるときには、すぐに医師や看護師に伝えてください。必要に応じて血液検査と、抗生物質による感染予防・治療が行われます。手術の間、体の向きを長時間変えられなかった、あるいは痛みがあって動けなかっ無気肺 た、などのために、痰や滲出液で空気の通り道(気道、気管支)がふさがれ、肺がうまくふくらまなくなることがあります。息苦しさを感じたときは、すぐに医師や看護師に伝えてください。予防法としては、手術前に痰の出し方や呼吸法の練習をしておき、手術後は意識的に実践するようにするとよいでしょう。手術後の傷口から出血することがまれにあ出血 ります。医師や看護師が、体の表面の傷口や体の内部の出血の状態を、ドレーンからの滲出液の状態(色や量の変化など)などから確認しています。麻酔ガスや麻酔の影響で痰が増え、詰まりやすくなっていることや、手術の後は体の抵抗力が落ちていることもあって、肺炎を肺炎 起こすことがあります。喫煙していた人は痰の量が多くなることがあるため、特に注意が必要です。手術前に練習した痰の出し方で痰を出すように心掛けましょう。また、深呼吸をする、早くベッドから起き上がって体を動かすようにすることも大切です。※あまり神経質になることはありませんが、気になる症状があれば医師や看護師に伝えることが大切です。国立がん研究センター がん情報サービスCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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日本男性の勃起硬度はアレと関連していた

 日本人男性7,710人を対象としたWEBベースの断面全国調査において、1日2箱以上の喫煙、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病の既往は、勃起の硬さスケール(EHS: Erection Hardness Score)※の低さと有意な関連を認めることが、東邦大学の木村 将貴氏らによる研究で明らかになった。EHSは、加齢、性行為、性的自信、勃起不全(ED)関連のリスク因子などさまざまな要素と相関が認められた。また、EHSは、EDのモニタリングや治療において有益であり、男性とそのパートナーの性生活の質を改善するための貴重なツールとなりうると考えられる。Sexual medicine誌2013年12月号の報告。 勃起の硬さは、男性の性生活の質を測る要素の一つであり、EHSによって簡単に測定することができる。しかし、日本においては、EHSに関することや、EHSと老化、男性の性的行動、性的自信、リスク因子との関連についての報告は少ない。 そのため、本研究では、日本人におけるEHSと老化、性行動、性的自信、リスク因子との関連について、2009年3~5月にWEBベースの断面全国調査を行った。主要評価項目は、EHS、ライフスタイル因子、併存疾患、健康状態、性的自信、性行為の頻度、EDの治療に対する姿勢であった。 主な結果は以下のとおり。・男性7,710人(平均39.3±13.0歳)が調査に参加した。・ホスホジエステラーゼ5阻害薬を使用していたのは6,528人であった。・EHS 3以下は3,540人(54.2%)、2以下は1,196人(18.3%)であった。・EHS、性的満足、性行為の頻度の減少は、年齢依存性の有意な関連を認めた。・性的な自信は、EHSの高さと強い関連を認めただけでなく、より高齢のグループ、子孫の存在、健康に対する意識がより高いこと、性行為がより高頻度であることとも関連していた。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、年齢で調整後のEHS 2以下のリスク因子は、1日2箱以上の喫煙(オッズ比1.7)、メタボリックシンドローム(オッズ比1.4)、高血圧(オッズ比1.2)、糖尿病(オッズ比 1.4)の既往であった。 ※勃起の硬さスケール(EHS):患者自身がED を簡単にチェックできる評価スケール(EHSの結果だけではEDの診断はできない)グレード0:陰茎は大きくならない。グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。

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16歳までの自傷経験者、18歳でうつが2~4倍/BMJ

 16歳の時点で自傷行為を行ったことのある人は、その後にメンタルヘルス面の問題やアルコールなどの物質の有害使用、および自傷行為のリスク増大と関連していることが明らかにされた。こうした関連は、とくに自殺念慮がある自傷行為経験者で強かったという。英国・ブリストル大学のBecky Mars氏らが、4,799例を対象とした追跡試験の結果、報告したもので、これまで青少年期の自傷行為と長期の臨床的・社会的アウトカムとの関連については明らかにされていなかった。BMJ誌オンライン版2014年10月21日号掲載の報告より。1991~1992年出生コホートのうち16歳時アンケート回答者4,799例を追跡 Mars氏らは、英国住民ベース出生コホート試験「The Avon Longitudinal Study of Parents and Children」(ALSPAC)を基に、約1万4,000人の1991~1992年出生コホートを対象とした試験を行った。同コホートのうち、16歳時点で自傷行為に関する詳細な質問票に回答した4,799例について追跡試験を行った。 主要評価項目は、18歳時に行われたコンピュータによるClinical Interview Schedule Revised(CIS-R)を用いた、うつ病性障害や不安障害などのメンタルヘルス面での問題の有無。合わせて、アルコールや大麻、喫煙などの使用に関する自己申告による調査結果だった。さらに学業成績(16歳と19歳時)、仕事上の成果(19歳時)、自傷行為(21歳時)に関する評価も行った。自殺念慮があり自傷行為をした16歳、18歳でうつ状態が約4倍に 結果、16歳の時点で、自殺念慮の有無にかかわらず自傷行為を行った人は、将来的なメンタルヘルス面での問題、自傷行為、薬物乱用のリスクが増大した。 その中でも、自殺念慮があり自傷行為を行った人では、そうした関連がより強く認められた。具体的には、16歳の時点で自殺念慮がなく自傷行為を行った人の自傷行為のない人に対する、18歳時点でのうつ状態オッズ比は、2.21(95%信頼区間:1.55~3.15)だったのに対し、自殺念慮があり自傷行為を行った人は、3.94(同:2.67~5.83)だった。 また、自殺念慮あり自傷行為は、学業や仕事の成果の低さとも関連していることが認められた。 著者は、「所見は、青少年期の自傷行為者を早期に見いだし、治療を行うことの必要性を強調するものだった」とまとめている。

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2型糖尿病患者におけるエンパワーメントと治療意思決定支援ツール(decision aids)(解説:住谷 哲 氏)-271

高血糖、高血圧、高コレステロール血症、喫煙のすべてに介入する多因子介入治療(multifactorial approach)が2型糖尿病治療において重要であることは論を俟たない1)。 しかし、この治療が成功するか否かは、患者自身が治療の意義を理解し、多くの治療介入に積極的に参加することに依存している。われわれ医療従事者が患者と向き合うのは診察室におけるごく短時間のみであり、その他の時間はすべて患者の自己管理下にある。この患者の自己管理能力を向上させることで治療を成功に導こうとする考えがエンパワーメント(適切な日本語訳がない)である。 ここでの自己管理能力とは、医療従事者の指示に従うだけではなく、医療従事者との対話を通じて、治療法そのものを自己決定する(shared decision making)ことをも含む広い概念である。本論文は治療意思決定支援ツール(decision aids)が、2型糖尿病患者のエンパワーメントに及ぼす影響を検討したものである。 方法はオランダ北部の18のプライマリケアクリニックに通院中の344例の2型糖尿病患者を通常診療群と治療意思決定支援ツール提供群に無作為に振り分け、1次エンドポイントとしては、治療ゴール達成への意思決定およびゴール達成に対する患者のエンパワーメントの程度をエンパワーメントスコアにより評価した。2次エンドポイントは経過を通じての高血糖、高血圧、高脂血症およびアルブミン尿に対する処方強化および禁煙とした。治療意思決定支援ツールは4つの領域(血糖、血圧、コレステロール、喫煙)から構成されており、それぞれHbA1c<7.0%、収縮期血圧<140mmHg、LDLコレステロール<2.5mmol/L(100mg/dL)、禁煙がゴールに設定されていた。さらに個々の患者のリスクをUKPDS risk engine2)を用いて計算し、たとえば「あなたと同じ年齢、性別の2型糖尿病患者さん100人の中で、16人が今後5年間に心筋梗塞になり、84人は心筋梗塞になりません。しかし、現時点ではあなたが、そのどちらに属しているかはわれわれにはわかりません。」のような説明が提供された。 さらに、4つの領域のいずれがゴール未達成であるか、それに対する治療を受けることによるbenefit およびharm、さらに治療の有効性に関する不確実性についても説明された。探索的検討として、情報提供がパソコンの画面上で提供される群と印刷された紙媒体で提供される群、および詳細情報がすべて提供される群と簡略化された情報が提供される群が2x2要因デザインを用いて比較された。 結果は1次エンドポイントには両群に差を認めなかった。2次エンドポイントについても、紙媒体を用いた治療意思決定支援ツール提供群において高脂血症薬の投与が強化されたのみであった。これらの結果は、2型糖尿病患者に、通常の診療に加えて治療意思決定支援ツールを追加してもエンパワーメントには結びつかないこと示している。しかし、治療意思決定支援ツールによる介入を実際に受けたのが同ツール提供群の46%に過ぎず、結果の解釈には慎重を要する。 世界中で最も多数の患者からの相談を受けている医療従事者はGoogleである、と皮肉まじりにいわれるように医療においてインターネットは必要不可欠になりつつある。もし今回の検討で用いられた治療意思決定支援ツールが有効であったならば、インターネットを通じてすべての2型糖尿病患者に情報が提供され、われわれの日常診療も大きな影響を受けたかもしれない。その点で、今回の結果はわれわれの日常診療の継続に少しの安心感を与えるといえよう。 さらに、論文の主旨とは離れるが、欧米におけるエンパワーメントとわが国のそれとの違いが浮き彫りにされている点も注目してよい。わが国でのエンパワーメントは、「いかにして患者のやる気を引き出すか?」のように情緒的な点に比重が置かれており、具体的な治療目標(HbA1c<7.0%のような数値目標)と、それを達成することによるアウトカム改善のエビデンスとを医療従事者と患者との間で共有したうえでのshared decision makingが行われているとはいい難い状況にある。エンパワーメントもEBMから無縁ではないことを再認識する必要があるだろう。

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重症乾癬患者は血圧コントロールに注意

 高血圧患者において、乾癬罹患と血圧コントロールの不十分さは関連があり、その関連は乾癬の重症度が上がるほど増大することが、ペンシルベニア大学 医学大学院の竹下氏らにより報告された。 これまで、乾癬患者では高血圧症はよくみられたが、乾癬の重症度と血圧コントロールについては不明であった。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年10月15日掲載報告。調査の目的 高血圧と診断された患者において、乾癬の重症度と血圧コントロールの関連を明らかにするため調査を行った。 なお、コントロール不十分の高血圧症は、乾癬の評価を行った直近の記録において収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上と定義した。方法 英国の電子カルテの医療記録データベースであるThe Health Improvement Network(THIN)を用いて、人口ベースの前向き横断的研究。対象 THINに医療記録があり、健康アウトカムと乾癬イベントの前向きコホートに登録していて、乾癬を発症している25~64歳の高血圧患者1,322例を無作為に抽出した。乾癬の診断と重症度の判断は、かかりつけの開業医によって行われた。 対照群として、年齢、治療歴で適合させた乾癬の既往のない高血圧患者(1万1,977例)が抽出された。結果 コントロール不十分な高血圧と、罹患部位の面積で評価した乾癬の重症度には、明らかな関連がみられた。 この関連は年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒歴、合併症、高血圧治療薬・NSAIDsの服用による補正の有無に関わらず示された。・軽度乾癬患者の調整後オッズ比[aOR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.82~1.14・中等度乾癬患者のaOR:1.20、95%CI:0.99~1.45・重症乾癬患者のaOR:1.48、95%CI:1.08~2.04・それぞれp=0.01 なお、乾癬患者全体では血圧コントロール不十分は増えたものの、有意差は示されなかった(aOR:1.10、95%CI:0.98~1.24)。結論 高血圧患者が乾癬を罹患している場合、乾癬が重症となるほど血圧コントロールが不十分となりやすい。本調査の結果より、重症の乾癬患者では、より効果的な血圧コントロールが必要となることが示された。

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子宮移植による生児出産、世界初の成功例/Lancet

 先天的に無子宮の35歳の女性に、61歳の女性の子宮を移植し生児出産に成功したとの報告が、Lancet誌オンライン版2014年10月5日号に掲載された。報告を行ったのはスウェーデン・イェーテボリ大学のMats Brannstrom氏らのチームで、子宮移植後の生児出産としては初めての成功例だという。子宮移植は、無子宮または非機能性子宮に起因する絶対的な不妊の第一選の治療法で、これまでに世界で11件のヒト子宮移植が試みられている。ロキタンスキー症候群女性に閉経後女性の子宮を移植 子宮移植を受けたのは、ロキタンスキー症候群によるミュラー管無発生のため先天的に子宮を欠いた35歳の女性。移植術は、子宮を原因とする絶対的不妊の女性9例を対象とする臨床試験の一環として2013年、イェーテボリ市のSahlgrenska大学病院で行われた。 子宮のドナーは2度の経産歴(26および29歳時に経膣分娩)のある61歳の生存女性(非喫煙者、BMI 20、約7年前に閉経)で、レシピエントとは家族ぐるみの友人であった。 移植に先立って、レシピエントとパートナーによる体外受精が実施され、11個の受精卵(胚)が凍結保存された。 レシピエントとドナーは、移植術後、実質的に無事に回復した。レシピエントは、術後43日目に最初の月経に至り、その後は規則正しい周期(中央値32日、26~36日)で継続した。妊娠31週5日目、妊娠高血圧腎症にて帝王切開 レシピエントは、術後1年目に最初の胚移植(1個の受精卵)を受け妊娠した。免疫抑制薬3剤(タクロリムス、アザチオプリン、コルチコステロイド)の投与が開始され、妊娠期間を通じて継続投与された。子宮頸部生検で、3回の軽度拒絶反応(9日、2ヵ月28日、6ヵ月24日、すべて臨床症状なし)が認められたが、いずれもコルチコステロイド投与で回復した。 胎児発育パラメータ(大腿骨長、児頭大横径、腹部径、体重など)や、子宮動脈および臍帯動脈の血流は、妊娠期間を通じて正常であった。妊娠31週5日目、妊婦は妊娠高血圧腎症[血圧180/120mmHg、軽度頭痛、蛋白尿(尿中アルブミン18mg/L)、血小板数の低下(96×109/L)]を来し同病院産科に入院となった。 入院後10時間頃から陣痛回数が増加し始め、分娩監視装置(cardiotocography)で胎児心拍と陣痛の異常が認められた。その後、異常パターンが繰り返されたため、入院から16時間の時点で帝王切開を行った。 体重1,775g(在胎週数の正常体重)、アプガースコア正常(9、9、10点)の男児が誕生した。新生児の状態は良好で、光線治療のみでroom airにて管理が行われた。母親の状態も良好であり、血圧は自然に正常化しそれ以上の治療を必要としなかった。帝王切開後3日目に退院し、その後は外来通院でフォローアップを行っている。 著者は、「今回の初めての生児出産例は、子宮が原因の絶対的不妊の若い女性に対する治療としての、子宮移植の可能性を世界に向けて開くもの」とする一方で、「不妊治療としての子宮移植の有効性は確立されておらず、この女性も参加した進行中の臨床試験が光明を投じる可能性はあるが、医学的および心理学的なリスクがあることも事実である」と指摘している。

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統合失調症と利き手に関するメタ解析

 統合失調症は右利きでない例が多いことを特徴とするという概念は、統合失調症が異常な脳側性化により発症、そして遺伝的に関連しているという理論の基礎となっている。レビューおよびメタ解析により、統合失調症患者では右利きでない者が高率であることが報告されている。ただし、これらの結果は、性別の問題あるいは自己報告に基づく利き手に関する質問票に潜むバイアスによるものではないかとの指摘があった。 ノルウェー・ベルゲン大学のMarco Hirnstein氏らは、統合失調症では右利き以外の患者が多いという概念を検証するメタ解析を行った。その結果、性別および質問票にかかわらず、右利きではない患者が多かったことを報告した。結果を踏まえて著者は、「所見は真の意味で経験的な知見であり、統合失調症と脳側方化との遺伝的な関連を実際に反映している可能性がある」とまとめている。British Journal of Psychiatry誌2014年10月号の掲載報告。 研究グループは、性別を問わず右利きでない患者が高率にみられるのか、そして行動的評価における利き手が右利きではない頻度を明らかにすることを目的に、メタ解析を行った。電子データベースを用い、(a)統合失調症における男女別の右利き以外の頻度を対照と比較した研究、(b)統合失調症患者の利き手を行動的に評価した際の右利き以外の頻度(性別を問わず)を検討した研究、以上を検索した。  主な結果は以下のとおり。・女性におけるオッズ比(OR)は1.63(患者621例、対照3,747例)、男性におけるORは1.50(患者1,213例、対照3,800例)であった。1.0超の有意な差を認め、男女ともに対照と比べて右利き以外の例が多いことが示唆された。・さらに、行動的に利き手を評価した結果、ORは1.84(患者1,255例、対照6,260例)であり、統合失調症患者では右利き以外の例が多かった。・性別と行動的利き手評価を同時補正後も、右利き以外の例が多いという結果が確認された。・以上より、統合失調症患者において右利き以外が多いことは、性別の問題あるいは利き手質問票のバイアスによるものではないことが明らかとなった。関連医療ニュース 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 6分間歩行で統合失調症患者の身体評価 統合失調症患者を発症前に特定できるか:国立精神・神経医療研究センター  担当者へのご意見箱はこちら

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喫煙が低EPA/AA比と関連:日本の2型糖尿病患者

 喫煙は、50歳以上の日本人2型糖尿病患者において、EPA/AA比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)に影響を与える可能性があることが、自治医科大学の岡田 健太氏らによる研究で明らかになった。2型糖尿病患者に禁煙を促すことが、心血管疾患発症の抑制につながるかもしれない。Diabetology & metabolic syndrome誌2014年8月13日号の報告。 低EPA/AA比は、心血管疾患のリスク因子であると考えられている。また、喫煙は、高齢者においてもなお心血管疾患のリスク因子となる。そのため、本研究では、高齢の2型糖尿病患者において、EPA/AA比と喫煙状況との関連を調査した。 対象は、EPAやAAを含有する薬物治療を行っていない50歳以上の2型糖尿病188例(男性114例、女性74例/ 平均65.0±7.5歳)。喫煙状況、糖尿病の状態、EPAおよびAAを含む血液データの観点から検討した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙者は49例(男性43例、女性6例/ 平均62.4±7.3歳)、非喫煙者は139例(男性71例、女性68例/平均65.9±7.4歳)であった。・喫煙者は、高血圧、神経障害、HbA1c高値、HDLコレステロール低値の割合が、非喫煙者と比較して有意に高かった。・AA値、DHA値、EPA値は、喫煙者と非喫煙者で有意差は認められなかった。・喫煙者は非喫煙者と比較して、EPA/AA比が有意に低かった(平均0.29 vs 0.39、p<0.01)。この関連は多変数(年齢、性別、BMI、高血圧、HbA1c値、インスリン療法、合併症、脂質、スタチン治療)で調整後も有意なままであった。

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腰痛と脂質異常との関連、BMIが交絡

 これまでに横断研究によって腰痛の有病率と脂質異常との関連が示唆されているが、その因果関係は明らかになっていない。ノルウェー・オスロ大学病院のIngrid Heuch氏らは、地域住民を対象とした前向きコホート研究HUNT2およびHUNT3のデータを解析し、現時点で腰痛を有していない人が腰痛を発症するリスクと脂質異常との関係にはBMIが交絡していることを明らかにした。また、すでに腰痛を有している男性では、「HDLコレステロールの低値が痛みの強さに影響する可能性がある」と指摘している。PLoS One誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、総コレステロール、HDLコレステロールおよびトリグリセライド値と、腰痛との関連を検討することを目的に、HUNT2研究(1995~1997年)およびHUNT3研究(2006~2008年)のデータを用いて、試験開始時の腰痛の有無別に11年後の慢性腰痛の有無について解析した。 解析対象は30~69歳の成人で、試験開始時に腰痛を有していなかった女性1万151例/男性8,731例、腰痛を有していた女性3,902例/男性2,666例であった。 主な内容は以下のとおり。・試験開始時に腰痛のなかった女性は、年齢のみで補正した解析において、調査終了時の慢性腰痛のリスクとHDLコレステロール値が負の相関を、トリグリセライド値は正の相関を示した。・同関連性は、試験開始時の他の因子(学歴、就労状況、身体活動、喫煙、血圧、BMI)で補正後は、ほとんど認められなかった。相対リスク(RR)は、HDLコレステロール値1mmol/L当たり0.96(95%CI:0.85~1.07)、トリグリセライド値1単位当たり1.16(同:0.94~1.42)。・総コレステロール値は、腰痛と関連していなかった。・試験開始時に腰痛を有した女性と腰痛のない男性では、弱い関連性が観察された。・試験開始時に腰痛を有した男性は、すべての因子で補正した解析において、HDLコレステロール値と負の相関が認められた(RR:0.83、95%CI:0.72~0.95)。

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残業時間と高血圧は逆相関~日本の横断研究

 長時間労働は、心血管疾患リスクの増加と関連しているが高血圧との関係は不明である。J-ECOH(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health)スタディグループの今井 鉄平氏らは、日本の大規模企業研究データを使用して、残業と高血圧の関係を横断研究により検討した。その結果、残業時間と高血圧は逆相関することが示唆された。Chronobiology International誌オンライン版2014年9月17日号に掲載。 参加者は、健康診断データと自己報告の残業データがある4社の労働者5万2,365人。収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬服用者(もしくはその両方)を高血圧と定義した。ロジスティック回帰分析を用いて、残業時間によるカテゴリ(月間45時間未満、45~79時間、80~99時間、100時間以上)別に高血圧のオッズ比(年齢・性別・会社・喫煙状態・BMIを調整)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧の有病率は残業時間の増加に伴って減少する傾向があった(残業時間の少ないカテゴリから順に17.5%、12.0%、11.1%、9.1%)。・年齢、性別、会社の調整オッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1.00(基準)、0.81(0.75~0.86)、0.73(0.62~0.86)、0.58(0.44~0.76)であった(線形傾向のp<0.001)。・サブコホートにおいて、この逆相関は、他の潜在的な交絡因子を追加調整後も統計的に有意であった。

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56)禁煙しても体重を増やさない方法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師禁煙の準備の方は、いかがですか? 患者禁煙すると、体重が増えるのが心配で・・・ 医師確かに、そうですね。一般的に禁煙すると2~3㎏、体重が増えますからね。 患者やっぱりそうですか? 体重が増えると、糖尿病になるんじゃないかと思って・・・ 医師禁煙してから5年間くらいは、糖尿病リスクが高まります。10年くらい経つと、そのリスクはなくなります。 患者5年間ですか。体重が増えない方法や糖尿病にならないための注意点を教えてください。 医師わかりました。禁煙と食事制限を同時に行うと、禁煙に失敗する人が多いですから、運動療法を併用しましょう。 患者はい。わかりました。●ポイント禁煙指導とともに、体重増加予防のための運動療法を推奨します●資料喫煙自体は糖尿病発症リスクを高める(1.44倍)。禁煙後、男性では1.42倍、女性では 2.84倍と高まる(5年間、日本の報告)。英国での報告では10年ほど経つと、その差がなくなる。25本以上の喫煙(OR = 2.15)、糖尿病の家族歴(OR=1.51)がある人が禁煙後に糖尿病になりやすい。 1) 坂根直樹. Q&Aでわかる肥満と糖尿病. 2010; 9: 711-712. 2) Oba S, et al. PLoS One. 2012; 7: e17061.

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高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。 同じような考えが高血圧治療においてもいえることを実証したのが、このメタ解析である。 BPLTTCは、高血圧・高脂血症治療に関して、世界で最も信頼性の高いメタ解析を発表しているグループである。メタ解析で採用された臨床試験は、いずれも試験開始前に一次エンドポイント、二次エンドポイント、試験方法、症例数、解析方法など詳細に登録を行ったもののみを対象としており、そのエビデンスレベルは非常に高いことで知られている。 今回の報告は、高血圧治療効果についても、心血管合併症予防効果を絶対的リスク減少でみた場合、リスク因子を多く有している症例ほど有効性が大きいことを示している。 治療による有用性は相対的リスク減少で表される場合があるが、これはしばしば効果を誇大に表現することになる。たとえば、リスクの少ない症例100を対象とした場合、治療群の発症は1例、プラセボ群では2例とすると相対的リスク減少は50%(なんと半減!)になるが、絶対的リスク減少は100人中1例に過ぎない。NNT100、つまり100人治療してやっと1例の発症を予防できることになる。治療効果は絶対的リスク減少、あるいはNNT(Number Needed to Treat)で表すのが本当である。 本研究は11の臨床研究に参加した約5万2千例の対象症例を、プラセボ群のデータから予測された数式を用いて、11%未満の低リスク群、11~15%の軽度リスク群、15~21%の中等度リスク群、21%以上の高リスク群の4群に層別した。高リスク群は当然、喫煙率、心血管疾患既往、糖尿病、収縮期血圧のいずれもが他の群より高い。 その結果、5年間の心血管合併症発症は、相対的リスク減少でみた場合には4群間で差はなく、治療の有効性はどの群でも同じようにみえる。しかし、絶対的リスク減少でみると、高リスク群が最も高血圧治療薬による効果が大きく、ついで中等度、軽度、低リスクの順になっている。 この結果は、高血圧治療の開始基準あるいは降圧目標値の設定においても、血圧以外のリスク因子にも配慮した“トータルバスキュラーマネージメント”の考え方が重要であることを示している。当然ながら、高齢者はさまざまなリスク因子を併せもつ症例が多いことから、高リスク症例が多い。したがって、高齢者ほど厳格な高血圧治療が必要であることを意味しているのである。

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職場高血圧とは

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライドサラリーマンの3人に1人 が、「職場高血圧」!メモ「職場高血圧」は仮面高血圧の1種です。以下をすべて満たせば、その疑いが濃厚です。①検診時の血圧が正常値 ②BMIが25以上 ③喫煙する④両親や兄弟が高血圧 ⑤45歳以上監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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喫煙は高血圧・血管疾患のリスク

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド喫煙に伴う血圧の変化喫煙者 は喫煙収縮期血圧(mmHg)偽喫煙140130高血圧予備軍!1201101001本目メモ2本目3本目4本目喫煙習慣を有する健常者10例が一晩禁煙後、翌朝15分間隔で4本のタバコを吸った際の血圧の変化Groppelli A, et al. J Hypertens. 1992; 10: 495-499.喫煙時間が長いほど、血圧が高い時間帯が長くなります。それだけ血管への負担は大きくなり、動脈硬化などの血管病になるリスクが増します。タバコは、肺がんや食道がんだけでなく、血管病にも悪影響を及ぼします。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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【GET!ザ・トレンド】糖尿病とがんに関する総説

はじめに糖尿病により発がんおよびがん死のリスクが増加する可能性が、近年注目されている1)。また、糖尿病を有する患者ががんになると、生命予後、術後予後が不良であることが報告されている。本稿では両者の関連についてレビューする。糖尿病とがんの関連性糖尿病とがんは、食事、運動不足、喫煙、飲酒など、さまざまな生活要因を介して相互関連している(図1)が、さらに治療薬の関与も示唆されてきている。図1を拡大する糖尿病患者が世界的に急増していることから、糖尿病の予防だけでなく、がん予防対策、がん検診の有効性、さらには糖尿病治療薬に関する研究と診療での認識が重要となってきた。糖尿病では、心血管疾患による死亡が増加するが、がん死の多いわが国では、糖尿病においてもがんは死亡の主因である。そこで、日本でも、日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で国民および医療者に対するステートメントを発表している2)(表)。表を拡大する参考を拡大する疫学的エビデンス筆者らが行ったメタアナリシスによると、糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて、がんを発症するリスクが約1.2倍と有意に高値であった3)(図2)。図2を拡大するまた、この数値はがんによる死亡リスクについてもほぼ同様3)で、国内外で認められている。さらに、人種間、男女間の比較においても、いずれも糖尿病患者でよりがんのリスクが上昇する傾向を認め、さらにアジア人は非アジア人よりも上昇率が高いことが判明した4)。日本人においては、臓器別でみると、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの有意なリスク上昇と関連していた2)。糖尿病による発がん機序糖尿病とがんの関連性には、高インスリン血症、高血糖、肥満、炎症、糖尿病治療薬などさまざまな因子が複雑に関与している2)(図3)。図3を拡大する1)高インスリン血症2型糖尿病は、インスリン抵抗性と代償性高インスリン血症を特徴とする。さらに2型糖尿病患者では、肥満や運動不足が多く、高インスリン血症がさらに進行する。インスリンは、insulin-like growth factor-1(IGF-1)受容体を介してがんを誘発することが想定されおり、動物実験で証明されている。一方ヒトでは、1型糖尿病のがんリスクは2型糖尿病より低いものの、一般人との比較では結論に達していない。 なお、糖尿病患者での前立腺がんのリスクが低値であることには、以下の機序が想定されている。糖尿病患者では、性ホルモン結合グロブリンが低値であり、さらにインスリン抵抗性によりテストステロン産生が低下するためにテストステロン低下症が少なくない。 前立腺がんは、テストステロン依存性であるため、糖尿病患者では前立腺がんのリスクが低下する。ただし人種差があるため、日本人を含むアジア人ではこの傾向を認めていない(図2)。2)高血糖2型糖尿病のがん細胞増殖や転移は、高血糖で促進されることが報告されている。また、血糖値とがんリスクには正の相関があることも報告されている。さらに高血糖は、酸化ストレスを高め、それが発がんの第1段階であるDNA損傷を引き起こすことも提唱されている。インスリン分泌不全が2型糖尿病の特徴とされる日本人・韓国人でも私たちの分析でがんリスクの増加を認めたことは、この仮説に合致し、近年発表された前向き研究統合解析でも血糖値とがん死リスクの正の相関傾向が示されている5)。疫学データの限界疫学データではバイアスが少なからず伴い、計算で完全に調整することはできない。とくに、糖尿病の診断は自己申告であることが多いこと、糖尿病患者は通院しているためにがんを発見しやすいなどにより妥当性が低下する。糖尿病に伴うがんリスクは、過大評価されている可能性があり、若干割り引いて解釈することも重要である。参考文献1)Noto H, et al. J Diabetes Investig. 2013; 4: 225-232.2)糖尿病と癌に関する委員会. 糖尿病. 2013; 56: 374-390.3)Noto H, et al. Endocr Pract. 2011; 17: 616-628.4)Noto H, et al. J Diabetes Investig. 2012; 3: 24-33.5)Seshasai SR, et al. N Engl J Med.2011; 364: 829-841.

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野菜摂取増で肝細胞がんリスク低下

 野菜の摂取量を1日当たり100g増やすことで肝細胞がん(HCC)の発症リスクが8%低下することが、中国・浙江がん病院のYang Yang氏らのメタ解析によって明らかとなった。果物では同様の結果は認められなかった。著者らは、今回の知見について、検証アンケートや交絡因子を厳密にコントロールしたさらなる研究によって確認されるべきとしている。Gastroenterology誌オンライン版8月12日号掲載の報告。 これまで、野菜や果物の抗がん作用については広く調査されてきたが、野菜や果物の摂取量とHCC発症との関係については、定量化されていない。この関連性を明らかにするために、観察研究のメタ解析を行った。 1956年から2014年5月31日までに投稿された論文をPubMed、Web of Science、EMBASEを用いて検索し、適格な研究を同定した。ランダム効果モデルを用いて要約相対リスク(RRs)を算出し、用量反応解析により関連性を定量的に評価した。各研究間のばらつきは、コクランのQとI2統計量を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本メタ解析には、19件の研究に129万45例の参加者と3,912例のHCC患者が含まれていた。・野菜の低摂取群と比較した、野菜高摂取群のHCC要約RRは0.72(95%信頼区間[CI]:0.63~0.83)であった。また、1日当たりの野菜摂取量が100g増えるとリスクは8%低下した(要約RR 0.92、95%CI:0.88~0.95)。・サブグループ解析では、この逆相関の関連性が、肝炎の既往歴、飲酒、喫煙、エネルギー摂取量にかかわらず変化しないことが示された。・果物の低摂取群と比較し、果物高摂取群におけるHCCの要約RRは0.93(95%CI:0.80~1.09)であり、1日当たりの果物摂取量が100g増えることによる要約RRは0.99(95%CI:0.94~1.05)であった。

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