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近隣の歩行環境が良いと肥満・糖尿病のリスクが低下/JAMA

 歩行環境に恵まれている都市近郊住民ほど過体重や肥満になる割合が低く、糖尿病の発症率も低いことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのMaria I. Creatore氏らが2001~12年のオンタリオ州南部の都市住民データを分析した結果で、JAMA誌2016年5月24・31日号で発表した。肥満および糖尿病の罹患率はここ10年で大きく上昇しているが、その傾向に歯止めをかける環境的要因の役割については明らかにされていない。著者らは、都市近郊の歩行環境が良好な住区では不良な住区と比べて、過体重、肥満、糖尿病の増大が緩やかであるかどうかを調べた。歩行環境指標で住区を5分類、過体重・肥満・糖尿病の有病率を比較 検討は、オンタリオ州南部の都市成人(30~64歳)に関する地方都市ヘルスケア年報(300万人/年)と、隔年Canadian Community Health Survey(5,500人/サーベイ)のデータ(2001~12年)を時系列分析して行われた。 範囲0~100の標準化スコアで、スコア高値ほど近隣歩行環境が良好であることを示す指標を用いて、都市近隣住区を最低位(第1五分位)群~最高位(第5五分位)群に分類して評価した。 主要評価項目は、過体重、肥満、糖尿病の年間有病率で、年齢、性別、住区の所得状況、民族性で補正した。 分析には、8,777例の都市近隣住区が含まれた。歩行環境指標の中央値は16.8で、第1五分位群は10.1、第5五分位群は35.2であった。住民特性は類似していたが、貧困度は、歩行環境指標が高値群のほうが低値群と比べて高かった。歩行環境指標が高い住区の有病率は有意に低い 2001年において、過体重/肥満の補正後有病率は、第5五分位群が第1五分位群と比べて有意に低く(43.3% vs.53.5%、p<0.001)、また2001年から2012年の間に、有病率は歩行環境不良住区では有意な上昇がみられた(絶対変化:第1五分位群5.4%、第2五分位群6.7%、第3五分位群9.2%)。一方、歩行環境指標が高い住区では過体重/肥満の有病率の有意な変化はみられなかった(同:第4五分位群2.8%、第5五分位群2.1%)。 2001年において、糖尿病の補正後有病率は、第5五分位群がその他の群と比べて有意に低かった。また、同有病率は、第5五分位群では1,000人当たり2001年7.7から2012年に6.2へと低下し(絶対変化:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.6~-0.4)、第4五分位群でも同8.7から7.6へ低下していた(同:-1.1、-2.2~-0.05)。対照的に、歩行環境不良住区では有意な変化がみられなかった(同:第1五分位群-0.65、第2五分位群-0.5、第3五分位群-0.9)。 いずれの評価時点でも、第1五分位群と比べて第5五分位群のほうが、徒歩、自転車利用、公共交通機関の利用率が有意に高く、車の利用率は有意に低かった。ただし、歩行環境が良好な住区でも、2001年と比べて2011年における日々の歩行や自転車利用の頻度は、わずかな増大にとどまっている。余暇の身体活動度、食事、喫煙パターンについては、歩行環境による違いはみられず(各アウトカムの第1五分位vs.第5五分位のp>0.05)、安定的に推移していた。 なお今回の結果について著者は、生態学的要因や、より歩行環境に優れた都市住区デザインと身体活動度増大との関連についてのエビデンスは不足しており、さらなる研究を行い、観察された関連が普遍的なものかを評価する必要があると指摘している。

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その灰皿、使用禁止です!

その灰皿、使用禁止です! いまや全席禁煙が当たり前の飛行機。しかし、航空法などの法令で、現在でもトイレなどに灰皿を設置することが義務付けられています。 その理由は、機内のトイレで隠れて喫煙した乗客が、火が消えていない吸い殻をトイレ内のゴミ箱に捨てたことが原因とみられる機内火災により多数の死者が出た事故※があったからです。※1973年に発生したヴァリグ・ブラジル航空820便墜落事故あっても使ってはいけません!!航空機の灰皿設置は、火災を避けるための苦肉の策。喫煙許可を意味するものではありません!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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COPDの基準を満たさない喫煙者は健康なのか?(解説:倉原 優 氏)-536

 COPDを診断する際、誰もが知っているように1秒率70%未満という呼吸機能検査上の診断基準がある1)。ただし、この診断は絶対ではない。COPDの診断基準を満たさない一般人でも、COPDと同じような臨床経過をたどる一群が存在する。たとえば、胸部CTで明らかに気腫肺があっても、10人に1人はGOLD基準あるいはATS/ERS基準(LLN)のいずれのCOPDの診断基準も満たさないという報告すらある2)。 つまり、未診断のCOPDだけでなく、診断基準という枠組みから漏れたCOPDのような患者(本当はCOPDと同じ病理学的変化が起こっているのに病的でないと判断されたCOPD予備軍)がいるのは間違いない※。 今回のWoodruff氏らの報告は、喫煙歴のある人と喫煙歴のない人に対してCATスコアおよびスパイロメトリーを実施した観察研究で、「COPDの診断基準を満たさないものの呼吸器症状がある人(CATスコア10点以上)は健康なのかどうか」を調べたものである。COPDの診断基準を満たさない、というのは具体的には1秒率が70%以上で努力性肺活量が正常下限値を上回るということである。GOLD I期の軽症例であっても呼吸器症状を呈さない患者がいる中で、非COPD例でも呼吸器症状を呈する人がいるという不可解な現状に一石を投じてくれる臨床試験だ。 その結果、喫煙歴を有する有症状の非COPDの人は、呼吸機能悪化率が無症状者や非喫煙者と比べて有意に高いことがわかった。また、有症状の喫煙者では活動制限が大きいことも明らかになった。つまり、間違いなく一般人の中にCOPD予備軍が存在するということである。 実臨床でもこうした患者をよく診る。COPDにマッチした強い呼吸器症状があるにもかかわらず、何度測定しても1秒率が70%を下回らないのだ。この研究でも多くの患者が気管支拡張薬を処方されていたが、日本のプライマリケアでも同様の結果になるかもしれない。こうした安易な吸入薬の処方が、「現場は至極柔軟に対応している」と評価されるべきなのか、「不適切な治療をしている」と非難されるものなのか、答えはまだない。 ※この研究に照らし合わせると、「smokers with preserved pulmonary function」という呼び方が妥当なのだろう。「COPD with preserved pulmonary function」のほうがわかりやすいかと思ったが、これだと用語自体が定義上矛盾してしまう。

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携帯灰皿では煙まで回収できない!

携帯灰皿では煙まで回収できない! 禁煙エリアで、携帯灰皿を利用して喫煙する人がいます。 携帯灰皿で吸い殻は回収できても、煙までは回収できません。 禁煙エリアは、受動喫煙を防止するための場所です。吸い殻だけの問題ではありません。携帯灰皿を使っても、禁煙エリアでは喫煙禁止!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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喫煙歴+呼吸器症状は呼吸機能悪化のリスク/NEJM

 呼吸機能保持が認められる現在・元喫煙者で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)診断基準を満たさなくとも呼吸器症状がある人は、ない人に比べ、呼吸機能が悪化する割合が高く、活動制限や気道疾患の所見がみられるという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPrescott G. Woodruff氏らが行った、2,736例を対象とした観察試験の結果、示された。COPDの診断は、気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーによる検査で1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)が0.70未満の場合とされている。しかし、この定義を満たさなくとも多くの喫煙者で呼吸器症状が認められており、研究グループはその臨床的意味について検討を行った。NEJM誌2016年5月12日号掲載の報告より。CATスコア10以上を呼吸器症状ありと定義 研究グループは、現在喫煙者および喫煙歴のある人(元喫煙者)と、喫煙歴のない人(非喫煙者;対照群)、合わせて2,736例を対象に観察試験を行った。COPD評価テスト(CAT、スコア0~40で評価)を実施して、スパイロメトリーによる検査で呼吸機能が保持されている人について、呼吸器症状がある人(CATスコアが10以上:有症状群)はない人(CATスコアが10未満;無症状群)と比べ、呼吸増悪のリスクが高いかどうかを検証した。 呼吸機能保持の定義は、気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが0.70以上で、FVCが正常下限値を上回る場合とした。また、有症状群と無症状群の、6分間歩行距離、肺機能、胸部の高分解能CT画像所見の違いの有無を調べた。呼吸機能保持の現在・元喫煙者の半数が呼吸器症状あり 追跡期間の中央値は、829日だった。その結果、呼吸機能が保持されている現在・元喫煙者の50%で、呼吸器症状が認められた。 平均年間呼吸機能悪化率は、有症状の現在・元喫煙者0.27(SD:0.67)、無症状の現在・過去喫煙者は0.08(同:0.31)であり、対照群の非喫煙者の0.03(同:0.21)と比べ、いずれも有意に高率だった(両比較においてp<0.001)。 また、有症状の現在・元喫煙者は、喘息既往の有無を問わず、無症状の現在・過去喫煙者に比べ、活動制限が大きく、FEV1、FVCや最大吸気量の値がわずかだが低く、高分解能CTで肺気腫は認めなかったが、気道壁肥厚がより大きかった。 有症状の現在・元喫煙者の42%が気管支拡張薬を、また23%が吸入ステロイド薬を使用していた。著者は「有症状の現在・元喫煙者はCOPD基準を満たしていなくとも、呼吸機能の悪化、活動制限、気道疾患の所見が認められた。また、エビデンスがないままに多様な呼吸器疾患薬物治療をすでに受けていた」とまとめている。

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心筋梗塞・脳梗塞の発症確率予測モデルを開発~JPHC研究

 わが国の多目的コホート(JPHC)研究から、研究開始時の健診成績・生活習慣からその後10年間の心筋梗塞および脳梗塞の発症確率予測モデルを開発した研究結果が発表された。健診結果から自分で心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを計算できるため、禁煙などの行動変化や生活習慣の変容を通した心血管疾患予防に役立つことが期待される。Circulation journal誌2016年5月25日号に掲載。 この研究では、JPHC研究コホートII(1993~94年のベースライン時に40~69歳であった1万5,672人)のデータを用いた。平均約16年の追跡期間中に観察された192例の心筋梗塞と552例の脳梗塞発症について、研究開始時の健診成績や生活習慣の組み合わせから、統計学的な方法でリスク予測に有用な変数を選択した。 その結果、性別、年齢、現在喫煙、降圧薬の有無、収縮期血圧、糖尿病の有無、HDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値の8つの変数が、心筋梗塞発症予測に必要十分な変数として選択された。また、これらの変数のうちnon-HDLコレステロール以外は、脳梗塞の発症予測に関係する変数として選択された。作成した予測モデルの性能は十分高く、日本人の一般集団に対して適用することも可能であることが確認された。詳細はこちらへ国立研究開発法人国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC study)

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閉経後の飲酒増による乳がんと心疾患リスク

 閉経後5年間で飲酒量が増加した女性は、変化のない女性と比べて、乳がんリスクが増加し冠動脈疾患リスクは減少する、という結果が前向きコホート研究で示された。BMJ誌2016年5月11日号に掲載。 南デンマーク大学のMarie K Dam氏らは、デンマークの2つの連続した試験(1993~98年、1999~2003年)におけるDiet, Cancer, and Health Studyに参加した閉経後女性2万1,523人を対象に、1993~2012年に前向きコホート試験を実施した。アルコール摂取量は参加者が記入したアンケートで調べた。主な評価項目は、11年の追跡期間における乳がんおよび冠動脈疾患の発症率、ならびに全死因死亡率。デンマークにおけるがん登録、退院登録、死亡原因登録、国民共通番号登録より情報を得た。また、Cox比例ハザードモデルを使用して、5年間のアルコール摂取量の変化に応じたハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・研究期間中、乳がんが1,054例、冠動脈疾患が1,750例に発症し、2,080例が死亡した。・3次スプラインを用いた5年間のアルコール摂取量変化の分析モデルにより、5年間にアルコール摂取量が増えた女性は摂取量が一定であった女性より、乳がんリスクは高く、冠動脈疾患リスクは低いことが示された。・エタノール12gを1杯とすると、たとえば、アルコール摂取量が週に7杯または14杯(1日当たり1杯または2杯に相当)増加した女性の場合、一定の摂取量だった女性に比べた乳がんのハザード比は、年齢・教育・BMI・喫煙・地中海式ダイエットのスコア・出産歴の有無・出生児数・ホルモン補充療法の調整後、それぞれ1.13(95%信頼区間:1.03~1.23)と1.29(同:1.07~1.55)であった。冠動脈疾患における上記のハザード比は、年齢・教育・BMI・地中海式ダイエットのスコア・喫煙・身体活動・高血圧・高コレステロール・糖尿病の調整後、それぞれ0.89(同:0.81~0.97)と0.78(同:0.64〜0.95)であった。・5年間でアルコール摂取量が減少した女性においては、乳がんや冠動脈疾患リスクとの有意な関連はみられなかった。・アルコール摂取量が「高摂取量」(週14杯以上)から増加した女性は、「高摂取量」で一定していた女性より死亡リスクが高かったことが、全死因死亡率の分析で示された。

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飲酒量と高血圧の関連、フラッシングと関係なし~NIPPON DATA2010

 高血圧における飲酒の影響はフラッシング反応の有無により異なる可能性があるが、確認されていない。今回、大規模コホートNIPPON DATA2010のデータを用いた研究で、日本人男性ではフラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧が正相関することを、東北大学の小暮 真奈氏らが報告した。Hypertension research誌オンライン版2016年5月12日号に掲載。 著者らは、日本人集団の代表的なサンプルにおいて飲酒量と高血圧との関係を、フラッシング反応に応じて調査した。NIPPON DATA2010のベースライン調査への参加を依頼された、2010年国民健康・栄養調査の参加者のデータを用いて、フラッシング反応に応じた飲酒量と高血圧との関係を検討した。年齢、BMI、喫煙状態、糖尿病の有無、脂質異常症の有無の調整後、多重ロジスティック回帰モデルを用いて横断的に統計解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・男性1,139人、女性1,263人のうち、それぞれ659人、463人が高血圧であった。・男性では、フラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧に正の相関がみられた(線形傾向のp<0.05)。この相関は、降圧薬使用の有無にかかわらず認められた。フラッシング反応による交互作用は認められなかった(交互作用のp=0.360)。・女性では、フラッシング反応が見られる人と見られない人で傾向が異なるが、フラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧との相関は有意ではなかった。

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BMIと死亡リスクの関係はJ字型:3,000万人以上のメタ解析/BMJ

 死亡リスクは肥満だけでなく過体重でも増大し、さらに痩せの場合も増加することが、ノルウェー・科学技術大学のDagfinn Aune氏らの検討で示された。痩せのリスク増加には、部分的に診断前疾患による交絡が影響している可能性があることもわかった。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年5月4日号に掲載された。高BMIは死亡リスクを増大させるが、最近のメタ解析(Flegal KM, et al. JAMA 2013; 309: 71-82)は、過体重では死亡リスクが低下し、リスクが増大するのはGrade 2(BMI≧35)の肥満に限られるとしている。しかし、この結果は、交絡因子としての喫煙や有病率の高い疾患、診断前疾患の影響を受け、多くの大規模コホート試験を除外したことによるバイアスの可能性があるという。230試験、3,023万人、死亡数374万人のメタ解析 研究グループは、BMIと全死因死亡リスクに関するコホート研究を系統的にレビューし、メタ解析を行った(Central Norway Regional Health Authority(RHA)などの助成による)。用量反応曲線の形状と最低値を明らかにし、交絡因子としての喫煙、疾患による体重減少、発症前疾患が結果に及ぼす影響について検討した。 2015年9月23日現在、PubMedおよびEmbaseのデータベースに登録された文献を検索した。BMIを3つ以上のカテゴリーに分類し、全死因死亡との関連のリスクの補正推定値(ハザード比[HR]またはリスク比[RR])を報告しているコホート研究を選出した。 ランダム効果モデルを用いてBMIが5単位増加した場合の死亡のサマリー相対リスクと95%信頼区間(CI)を算出し、fractional polynomialモデルで非線形関係の評価を行った。 230件のコホート研究に関する207編の公表論文が解析の対象となった。 非喫煙者の解析には53件のコホート研究(リスク推定値の報告は44件)の43編の公表論文(参加者:>997万6,077人、総死亡者数:>73万8,144人)が、全参加者の解析には228件のコホート研究(リスク推定値の報告は198件)の191編の公表論文(参加者:>3,023万3,329人、総死亡者数:>374万4,722人)が含まれた(アジアの試験はそれぞれ11、49件)。痩せの死亡リスク増加には診断前疾患による交絡が影響か フォローアップ期間は、非喫煙者が平均14.2年、中央値12年、範囲3.9~35年、全参加者はそれぞれ13.8年、12年、2~42年であった。 BMI 5単位増分の死亡のサマリー相対リスクは、非喫煙者が1.18(95%CI:1.15~1.21、I2=95%、44試験)、非喫煙健康成人(ベースライン時に健康であった非喫煙者)が1.21(1.18~1.25、93%、25試験)、フォローアップ期間が短い参加者を除外した非喫煙健康成人が1.27(1.21~1.33、89%、11試験)であり、全参加者は1.05(1.04~1.07、97%、198試験)であった。 非喫煙者ではJ字型曲線の用量反応関係が認められた(非線形性検定:p<0.001)。リスクが最も低かったのは、非喫煙者がBMI 23~24、非喫煙健康成人がBMI 22~23、フォローアップ期間が20年以上の非喫煙者はBMI 20~22だった。 これに対し、バイアスの可能性が高い解析や、フォローアップ期間が短い研究(5年未満、10年未満)、試験の質が中等度の研究では、BMIと死亡率の間にU字型の関係がみられた。 著者は、「過体重と肥満はいずれも全死因死亡のリスクを増大させる」と結論し、「痩せの死亡リスクの増加は、少なくとも部分的には、診断前の疾患による未処理の交絡に起因する可能性がある。元喫煙者、有病率の高い疾患や発症前疾患を有する集団、フォローアップ期間が短い集団を除外しないと、バイアスのため、結果がよりU字型曲線の関係に近づく可能性が示唆される」と指摘している。

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吸い殻を側溝に捨てるとどうなる?

吸い殻を側溝に捨てるとどうなる? 日本の下水は、生活排水などの汚水と雨水を合わせて処理してきましたが、1970年代以降に整備が進んだ下水道では、汚水と雨水を分けて回収。汚水だけを処理し、雨水はそのまま排水されます。 道路に捨てられた吸い殻は雨水管を通り、そのまま海に流れていきます。海に流れ出た吸い殻は波に押し戻され海岸に打ち上げられます。 海水浴場に落ちている吸い殻は、もしかしたら街の中で捨てられ、流れ着いたものかもしれません。安易なポイ捨ては、あなたの身の回りだけなくもっと大きな自然まで汚しているのです!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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1日1回のICS/LABA、心血管リスクのあるCOPDでの安全性は/Lancet

 心血管リスクを有する中等度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤のフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)(商品名:レルベア)1日1回吸入は、プラセボと比較し統計学的な有意差はなかったものの死亡や心血管系イベントの発現リスクを低下させ、忍容性は良好であった。英国・南マンチェスター大学病院のJorgen Vestbo氏らが、43ヵ国1,368施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験(Study to Understand Mortality and Morbidity:SUMMIT)の結果、報告した。COPD患者は心血管疾患(CVD)を併発することが多いが、こうした患者に対する治療方針の決定に関して、これまで十分なエビデンスがなかった。Lancet誌2016年4月30日号掲載の報告。心血管リスクを有する中等度COPD患者約1万6,500例で検証 SUMMIT試験の対象は、40~80歳、気管支拡張薬投与後の予測FEV150~70%、1秒率70%未満(FEV1/FVC<0.7)、喫煙歴(10pack/year以上)、修正MRC(mMRC)息切れスケールスコア2以上の、CVDの既往歴またはリスクを有するCOPD患者であった。FF 100㎍+VI 25㎍(FF/VI)群、FF 100㎍(FF)群、VI 25㎍(VI)群、プラセボ群の4群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、すべての治療群でエリプタ吸入器を用い1日1回吸入した。 主要評価項目は、全死因死亡、副次的評価項目は治療期間中のFEV1低下率および心血管複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、一過性脳虚血発作)であった。 2011年1月24日~2014年3月12日に1万6,590例が無作為化され、このうち試験薬を1回以上使用した1万6,568例が安全性解析対象集団に、またGCP違反の施設を除いた1万6,485例(FF/VI群4,121例、FF群4,135例、VI群4,118例、プラセボ群4,111例)が有効性解析対象集団となった。追跡期間は最長4年、投与期間は中央値1.8年であった。全死因死亡リスクはFF/VI群で12%低下するも、統計学的有意差はなし 試験期間中の全死亡リスクは、プラセボ群と比較しいずれの治療群も差はなかった。FF/VI群のHRは0.88(95%信頼区間[CI]:0.74~1.04)で相対リスク減少率は12%(p=0.137)、FF群のHRは0.91(同:0.77~1.08、p=0.284)、VI群のHRは0.96(同:0.81~1.14、p=0.655)であった。 FEV1低下率は、プラセボ群と比較しFF/VI群およびFF群で減少した(プラセボ群との差;FI/VI群:8mL/年[95%CI:1~15]、FF群:8mL/年[95%CI:1~14]、VI群:-2mL/年[95%CI:-8~5])。 心血管複合エンドポイントの発現リスクは、プラセボ群とほぼ同等であった(FF/VI群:HR 0.93[95%CI:0.75~1.14]、FF群:HR 0.90[95%CI:0.72~1.11]、VI群:0.99[95%CI:0.80~1.22])。 中等度~重度増悪の発現率は、すべての治療群でプラセボ群より減少した。 有害事象については、肺炎や心血管系有害事象の増加は認められなかった(肺炎の発現率:FF/VI群6%、FF群5%、VI群4%、プラセボ群5%/心血管系有害事象の発現率:FF/VI群18%、FF群17%、VI群17%、プラセボ群17%)。

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過去の大気汚染、死亡率に長期影響か

 過去の大気汚染への曝露経験は、数十年経ってからの死亡率とも関連していることが、英国・Small Area Health Statistics Unit(SAHSU)のAnna Hansell氏らにより報告された。Thorax誌2016年4月号の掲載報告。 大気汚染の短期的・中期的な死亡率に対する影響は知られているものの、10年以上の長期的な影響を検討した研究は少なく、さらに曝露状況を複数の時点で測定したものはごく限られている。1952年のロンドンスモッグ事件に象徴される重度の大気汚染を経験した英国では、1950年代から1990年代まで大気質モニタリングを実施している。著者らは、そのデータを用いて大気汚染がもたらす長期の死亡リスクを評価するため、38年にわたる前向きコホート研究を行った。 対象者はOffice for National Statistics(ONS)に登録された英国出身・在住の36万7,658人で、居住地域とその地域で測定された黒煙(BS)、SO2(1971、1981、1991年)、PM10(2001年)の大気中濃度とのマッチングを行った。アウトカムは事故死を除く全死因死亡率、心血管系および呼吸器系疾患による死亡率のオッズ比(OR)が用いられた。年齢、性別、個人と居住地域の社会経済レベル、地理的要因、喫煙によるリスクを調整したうえで、区分線形モデルによる濃度反応曲線を用いて大気汚染が死亡率へ与える影響を評価した。喫煙によるリスクは、地域レベルでの肺がん死亡の相対リスクが用いられた。 主な結果は以下のとおり。・曝露から数十年経過後も、BSおよびSO2への曝露と死亡率との間には関連がみられた。・1971年時点でのBSへの曝露が、2002~09年における全死因死亡率(OR:1.02、95%信頼区間[CI]:1.01~1.04)、ならびに呼吸器系疾患による死亡率(OR:1.05、95%CI:1.01~1.09)と有意に関連していた。・2001年時点でのPM10への曝露は、2002~09年における全アウトカムと関連しており、とくに呼吸器系疾患による死亡率との強い関連がみられた(OR:1.22、95%CI:1.04~1.44)。

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抗精神病薬ナイーブ統合失調症患者におけるプロラクチンレベルは

 ドパミンアンタゴニストの抗精神病薬の使用は、高プロラクチン血症と関連しているが、統合失調症および関連障害の抗精神病薬ナイーブ患者においてプロラクチン濃度の上昇がみられる。スペイン・オビエド大学のLeticia Gonzalez-Blanco氏らは、これら疾患の抗精神病薬ナイーブ患者におけるプロラクチンに関する研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2016年4月5日号の報告。 PubMed(Medline)、PsycInfo、Web of Scienceより、1950年以降の英語文献を検索した。統合失調症または関連障害の抗精神病薬ナイーブ患者および対照群の血中プロラクチンデータと男女それぞれの利用可能なデータを含む男性対象の研究7件(患者群:141例、対照群:191例)、女性対象の研究5件(患者群:67例、対照群:116例)が基準を満たした。データは、著者1名が論文から抽出し、独立した2名により検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・平均エフェクトサイズは、男性1.02(95%CI:0.77~1.26、p<0.001)、女性0.43(95%CI:0.11~0.76、p<0.01)であった。・年齢、喫煙、BMI、出版年、コルチゾールによるメタ回帰分析は、有意ではなかった。・Funnel plotを用いて評価したところ、出版バイアスの存在は示されなかった。 著者らは、「症例数が少なく限られた研究であったが、本メタ解析では、統合失調症および関連障害を有する抗精神病薬ナイーブ患者において、男女共にプロラクチンレベルが有意に上昇していることが示された。長期の高プロラクチン血症は、性機能不全や骨粗鬆症につながる可能性があり、抗精神病薬にはプロラクチン濃度をさらに上昇させるものもある」と結論付けた。抗精神病薬ナイーブ患者に対するドパミンアンタゴニストの抗精神病薬使用にあたっては、プロラクチンレベルに対し、とくに注意が必要であると考えられる。関連医療ニュース リスペリドン誘発性高プロラクチン血症への補助療法 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症、乳がんリスクとの関連は プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか

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バレニクリン、精神神経系リスク増大せず/Lancet

 禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)およびbupropionは、プラセボやニコチンパッチと比べ、精神神経系有害事象リスクの有意な増大は認められないことが示された。被験者に精神疾患の既往があっても同リスクは増大せず、また、バレニクリンはプラセボ、ニコチンパッチ、bupropionのいずれと比べても、禁煙達成率が高かった。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRobert M. Anthenelli氏らが、禁煙希望の喫煙者8,144例を対象に行った大規模臨床試験「EAGLES」(Evaluating Adverse Events in a Global Smoking Cessation Study)の結果、明らかにした。バレニクリンやbupropionの禁煙補助薬の精神神経系への安全性に関する懸念は払拭されていない。これまでに行われたニコチンパッチとの比較検討は間接的な試験であり、安全性、有効性に関する情報は精神疾患を有する患者に限られていた。Lancet誌オンライン版2016年4月22日号掲載の報告。不安症、うつ病、異常感など精神神経系リスクの発生率を比較 研究グループは、2011年11月~15年1月にかけて、16ヵ国、140ヵ所の医療機関を通じて、禁煙を希望する喫煙成人8,144例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。被験者を精神疾患歴のある群(4,116例)と非既往群(4,028例)に分け、そのうえで、それぞれを無作為に4群に分け、バレニクリン(1日2回、1回1mg)、bupropion(1日2回、1回150mg)と、そのコントロール群としてニコチンパッチ(1日21mgで開始し漸減)、プラセボを投与した。 主要エンドポイントは、不安症、うつ病、異常感など精神神経系有害事象の複合とした。また、主要有効性エンドポイントは、9~12週の生化学的に確認された禁煙とした。9~12週の禁煙、対プラセボのバレニクリンのオッズ比は3.61 結果、精神疾患の非既往患者では、主要複合エンドポイントの発生率は、バレニクリン群が1.3%、bupropion群が2.2%、ニコチンパッチ群が2.5%、プラセボ群が2.4%だった。バレニクリン群対プラセボ群、bupropion群対プラセボ群のリスク差は、それぞれ-1.28(95%信頼区間[CI]:-2.40~-0.15)、-0.08(同:-1.37~1.21)で、いずれも有意差はなかった。 精神疾患既往患者では、主要複合エンドポイントの発生率は、バレニクリン群が6.5%、bupropion群が6.7%、ニコチンパッチ群が5.2%、プラセボ群が4.9%だった。バレニクリン群対プラセボ群、bupropion群対プラセボ群のリスク差は、それぞれ1.59(95%CI:-0.42~3.59)、1.78(同:-0.24~3.81)であり、いずれも有意差はなかった。 9~12週の禁煙率については、バレニクリン群が、対プラセボ群、対ニコチンパッチ群、対bupropion群でみた場合、いずれも有意に高率で、オッズ比(OR)はそれぞれ、3.61(95%CI:3.07~4.24)、1.68(同:1.46~1.93)、1.75(同:1.52~2.01)だった(いずれもp<0.0001)。 また、対プラセボ群でみた場合、bupropion群(OR:2.07、95%CI:1.75~2.45)、ニコチンパッチ群(同:2.15、1.82~2.54)も禁煙率はそれぞれ有意に高率だった(いずれもp<0.0001)。 コホート全体で治療群単位でみた最も頻度の高い有害事象は、悪心(バレニクリン群25%)、不眠(bupropion群12%)、異常な夢(ニコチンパッチ群12%)、頭痛(プラセボ群10%)だった。治療群間の有効性は、コホート全体の解析でも違いはみられなかった。

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TIA後の心血管系イベントリスク、従来より低下/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)発症後の心血管系イベントリスクは先行研究報告よりも低いことを、フランス・Bichat HospitalのPierre Amarenco氏らTIAregistry.org研究グループが、21ヵ国4,789例の患者を対象とした国際多施設共同前向き観察試験の結果、明らかにした。1997~2003年に行われた研究では、TIAまたは軽症脳卒中の発症後3ヵ月間の脳卒中または急性冠症候群発症のリスクは12~20%と推定されていた。その後、TIA治療は大きく変化したが、最近の患者の予後やリスクスコアシステムの有用性については明らかになっていない。研究グループによるTIAregistry.orgプロジェクトは、脳卒中専門医が緊急性を評価するようになった現行医療体制下で治療を受けた、TIAまたは軽症脳卒中患者の最新のプロファイル、再発等のリスク因子、そしてアウトカムを明らかにするようデザインされた研究であった。NEJM誌2016年4月21日号掲載の報告。21ヵ国61施設で4,789例を登録し前向き観察研究 試験は、2009~11年に21ヵ国61施設で4,789例を登録して行われた。 試験参加施設はいずれも、TIAの緊急性評価を行う体制が整備されており、被験者は発症から7日以内のTIAまたは軽症脳卒中患者であった。 研究グループは、1年後の脳卒中リスク、および脳卒中・急性冠症候群・心血管系が原因の死亡の複合アウトカムのリスクを推定。また、脳卒中リスクを評価するABCD2スコア(範囲:0[最低リスク]~7[最高リスク])、脳画像所見、およびTIAまたは軽症脳卒中発症と、1年間の脳卒中再発リスクとの関連を調べた。発症後1年時点の複合心血管転帰の発生率6.2%、脳卒中は5.1% 解析には被験者4,583例が組み込まれた。平均年齢は66歳、男性が60.2%を占め、病歴は高血圧が70.0%、脂質異常症69.9%など、元喫煙者は24.6%、現在喫煙者は21.9%などであった。入院期間中央値は4日、発症後24時間以内に脳卒中専門医の評価を受けたのは3,593例(78.4%)であった。臨床的症状で最もよくみられたのは、筋力低下(55.0%)、言語の異常(48.3%)。また、ABCD2スコアについて、発症後24時間以内に脳卒中専門医による評価を受けた患者のほうが(4.7±1.5)、24時間後に評価を受けた患者(3.8±1.6)よりも有意に高かった(p<0.001)。 また全体で、患者の33.4%(1,476/4,422例)で急性期脳梗塞が、23.2%に頭蓋外・頭蓋内血管の50%以上の狭窄が1ヵ所以上、および10.4%(410/3,960例)に心房細動が認められた。 被験者の91.0%(4,200例)が中央値27.2ヵ月の追跡を受けた。Kaplan-Meier法で推定した1年時点の複合心血管アウトカムの発生率は6.2%(95%信頼区間[CI]:5.5~7.0)であった。同法推定による脳卒中発生率は2日時点1.5%、7日時点2.1%、30日時点2.8%、90日時点3.7%、365日時点5.1%であった。 多変量解析において、「脳画像検査で認められた複数の梗塞」「大動脈のアテローム硬化」「ABCD2スコア6~7」のそれぞれについて、脳卒中リスク2倍超との関連が認められた。 著者は、「今回得られた所見は、現在のTIAまたは軽症脳卒中を発症した患者の、心血管イベント再発リスクが反映されたものである。ABCD2スコアは良好なリスク予測因子であることが明らかになった。脳画像検査で認めた複数梗塞、および大動脈アテローム硬化性疾患も血管系イベント再発の強力な独立予測因子であることが判明した」と述べ、今回の結果は将来的な無作為化試験の試験デザインと解釈に役立つだろうとまとめている。

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HOPE3試験:あまり新規性のない結果?(解説:興梠 貴英 氏)-517

 HOPE3試験は、心血管疾患を持たないが中等度の心血管リスクを有する人間に対して、降圧治療およびLDLコレステロール低下治療を行うことで、イベントを減らすことができるのかをみた試験である。 登録基準が男性55歳以上、女性65歳以上のほかに、ウェストヒップ値高値、最近または現在の喫煙、HDL-C値低値、血糖障害、軽度腎障害、一親等の虚血性心疾患早期発症の家族歴のいずれか1つ以上を持つことで、高血圧や高脂血症は登録基準には入っていない。また、除外基準に「記録された臨床的に明らかな動脈硬化性心血管疾患」が入っているため、比較的リスクが低い(著者らは「中等度」と表現)集団を対象としている。 この集団に対して、カンデサルタン16mg + HCTZ 12.5mgもしくはプラセボ×ロスバスタチン10mgまたはプラセボの2×2、合計4群を比較したもので、(1)双方とも実薬 vs.双方ともプラセボ、(2)降圧薬 vs.プラセボ、(3)スタチン vs.プラセボの3つの論文が報告されている。 簡単に結果を要約すると(2)では有意差がつかず、(1)(3)で実薬群がプラセボ群に比較して有意にエンドポイントを低下させた、ということになる。また、低下率は(1)での29%に対して、(3)では24%と、降圧の効果は相対的に小さいことが読み取れる。さて、これらの結果からいえることは何だろうか。 実は、筆頭著者のYusuf氏は以前から、心血管疾患患者に対して、降圧薬、スタチン、低用量アスピリンはそれぞれ単独で2次予防効果があるので、それらの合剤(polypill)を一律に投与することでよりリスクが減らせるはずだという仮説を持っており、これまでにpolypillを用いた臨床試験を行ったり1)、WHOにそうした提案を行ったりしている2)。HOPE3試験は1次予防であるが、(1)の結果のみをみると、血圧、コレステロール双方低下させる(=降圧薬とスタチンの合剤を服用させる)ことで心血管リスクを低下させられる、という結論になるかもしれない。しかし、(2)(3)と考え合わせるとスタチンの効果が大きく、降圧薬は小さいか、または有意な効果がない、ということになるだろう。 ところで、低~中等度のリスクを持つ患者に対してスタチンが心血管リスクを低下させる、ということは、過去のスタチンランダム比較試験の結果をメタ解析した結果でもすでに報告されている3)。このメタ解析で興味深いのは、リスクの高低にかかわらず、スタチンによるLDL-C低下により同じくらいの割合でイベントリスクが低下することが示された一方、絶対リスクの低下量はもともと患者が持っているリスクが大きいほど大きく、小さいと低下量が大幅に小さくなることである。HOPE3試験でも絶対リスクの低下量は小さく、この結果をもって高脂血症を持つとは限らない、中等度リスク患者に対してスタチンを投与すべきか否かは、費用対効果を検討したうえで決める必要があるだろう。 また、本質的なことではないかもしれないが、3つの論文に共通して奇妙なのは主要エンドポイントのKaplan-Meier曲線が示されていないことである。

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酔いがさめたら、うちに帰ろう。(後編)【アルコール依存症】

今回のキーワード進化医学報酬系(ドパミン)問題飲酒(プレアルコホリズム)否認共依存心の居場所毒をもって毒を制すどうすればアルコール依存症は良いの?―治療の3つのポイント―これまで、「なぜアルコール依存症になるの?」「なぜアルコール依存症は『ある』の?」という疑問を解き明かしてきました。アルコール依存症は、単にアルコールだけの問題(嗜好の依存症)ではなく、アルコール摂取に至るその人の行動パターンの問題(行動の依存症)でもあり、さらにはその行動パターンを支えてしまう周りとの人間関係の問題(人間関係の依存症)でもあることが分かりました。それでは、この点を踏まえて、どうすればアルコール依存症は良いのでしょうか? ここから、安行の状況に照らし合わせながら、アルコールのコントロール、行動のコントロール、人間関係のコントロールの3つの要素に分けて整理してみましょう。 1)アルコールをコントロールする(1)生涯の断酒安行は、断酒中に「たかがビールだもんな」「大丈夫だよ、これ(1本)くらい」とつい飲んでしまいますが、飲酒が止まらなくなり、最終的には公園で泥酔しています。ここから分かることは、アルコールをコントロールするために必要なのは生涯の断酒です。飲酒量を制限する節酒や期間をもうける期限付きの断酒は無効です。よく聞く断酒の失敗は、アルコール依存症の人が数年間断酒を続けていて、あるお葬式でお酒を勧められた時、一杯だけと思って飲んだら、その後に飲酒が止まらなくなって、元通りになったという話です。これは、脳がアルコールの味(依存物質)をずっと覚えているからです。ちょうどしばらく禁煙してからまた喫煙しても、すぐに元の本数に戻るのと同じです。これは脳がニコチンの「味」をずっと覚えているからです。また、離れ離れになっていた親(愛着対象)と数年間ぶりに再開したら、かつての安心感や安全感がすぐに湧いてくる状態にも似ています。これは脳が一度固く結ばれた絆(愛着)の「味」を覚えているからです。つまり、断酒の基本は、「死ぬまで一滴も飲まない」ということです。(2)薬物療法―表3断酒の補助として、主に3つの種類の薬物療法があります。1つ目は、この映画でも登場する抗酒薬です。この薬は、あえてアルコールに弱い体質(ALDH欠損)になる薬です。つまり、この薬を飲んだ後に、アルコールを摂取すると、悪い二日酔いになります。そうして、飲酒が不快であることを体(脳)に新しく覚えさせて、飲酒行動を抑えるという荒治療です。そのため、この薬を飲もうとする患者に事前に忠告すべきなのは、この薬を飲んだ後に大量飲酒をした場合は、意識障害や劇症肝炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあることです。2つ目は、睡眠薬や抗不安薬などのベンゾジアゼピン系薬剤です。この薬は、アルコールと同じようにベンゾジアゼピン受容体に作用するので、アルコールの代わりになる薬です。ちょうど、禁煙療法に対して処方されるニコチン代替薬(ニコチン受容体作動薬)と同じ原理です。ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤は、アルコールと同じように、依存性があるので、用量用法を守るよう注意を促すことが必要です。3つ目は、2013年から新薬として注目されている抗渇望薬です。この薬は、アルコールによって過剰になった興奮系神経伝達物質のグルタミン酸を抑制します。つまり、お酒を欲しがる気持ち(渇望)を減らし、飲酒そのものを防ぐものです。ただし、効果は限定的のようで、あくまで補助薬であり特効薬ではありません。表3 アルコール依存症の薬物療法 抗酒剤(抗酒薬)抗不安薬、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)抗渇望薬例ノックビン(ジスルフィラム)シアナマイド(シアナミド)セルシン(ジアゼパム)ベンザリン(ニトラゼパム)レグテクト(アカンプロサート)特徴飲酒行動の抑制アルコールの代替薬飲酒欲求の抑制2)行動をコントロールする(1)認知行動療法安行は、入院して「やっちゃったよ。父さんの真似なんかしたくないのに」「どうしてこうなるんだろう」と自分に問いかけます。健康とお金と人間関係が「底」を突いた瞬間です。これは、「底突き体験」と呼ばれます。依存症の人は、失業、借金、離婚、大病などのどん底を味わうことで、もう頼るものや当てにするものがない現実をようやく思い知るのです。その時、「まだ大丈夫」(否認)ではなく「もう大丈夫じゃない」「何とかしなければ」という考えに至るのです(障害受容)。それを促すように、主治医から「そこまでお酒を飲み続けるようになった理由、自分で言えますか?」「良かったら、あなたの生い立ちを聞かせてきただけますか?」と聞かれます。「いろいろ反省しています」と良い子ぶると、「良い傾向ですね」「で、何、反省してるのかな?」と鋭く突っ込みます。退院間近には、それぞれの患者が、アルコール依存症になった自分の体験発表をしています。このように、自分を振り返ることで、飲酒に至る自分の行動パターンや人間関係のパターンについて、整理して、原因を探ります。そして、生涯の断酒を貫くための別の行動パターンや人間関係のパターンを身に付けていくことができるようになります(認知行動療法)。また昨今の新しい取り組みとして、動機付け面接法があります。これは、「変わるとしたらどうなりますか?」「そのメリットは?」「その経費(コスト)は?」などの質問を通して、変化についての話(チェンジ・トーク)をして、その意識や動機付けを高める技法です。否認や抵抗の根強い人に特に有効であることが分かっています。(2)行動療法病棟で、ある患者が「(禁止されている電話をかけるために)貸してくれよ、20円」と興奮して訴えると、看護師は「貸し借りはだめなの、決まりだから」と諭します。由紀と子どもたちが安行のお見舞いに病院へ訪れた時、「喫煙所内(面接室)に食べ物を持ち込まないこと」という張り紙を気にせずに、差し入れのお弁当を広げていました。それに気付いた看護師が「あれはまずいですよね」と注意しようとします。このように、行動のコントロールの基本は、「ちょっとだけ」ではなく「だめなものはだめ」という一貫した行動の枠組みを作ることです(行動療法)。それは、規則正しい食事や睡眠、規律正しい運動や人間関係など生活の全般に及びます。さらには、飲酒に至る行動パターンを徹底的に避けることです。安行は、アルコール成分が入った一口の奈良漬けから、最終的には連続飲酒に至りました。奈良漬けや洋菓子など少しでもアルコール成分があるものは引き金になるのでだめです。また、ノンアルコールビールも、味を思い出して(条件反射)、本物が飲みたくなりますので、だめです。さらには、例えばギョーザなどお酒のつまみとしていつもセットにしていたものも、お酒を連想させるので(条件反射)、だめです。疲れていらいらしている生活も、お酒で忘れたいと思いやすくなるのでだめです。つまり、できる限り、アルコールから遠ざかる生き方をするということです。断酒の基本は、「死ぬまで一滴も飲まないし、近付かない」ということです。 3)人間関係をコントロールする(1)集団療法病棟では、入院患者たちが自治会をつくり、自治会長をトップとして、食事係や書記係などの役職に就いています。1つの小さな社会です。そのメンバーの1人が、食事係として独りよがりなやり方をしてしまいます。すると、自治会長はそのメンバーに一方的にクビを言い渡たします。そのメンバーはそれに腹を立て、何でも箱(投書箱)に「会長がクビにした。プライドが傷付いた。責任とれ」という投書を入れ、看護師が立ち合う自治会ミーティングの議題に上げます。しかし、最終的には言い争いになり、挑発した安行は殴られてしまいます。このように、依存症の人は、安定した人間関係を築くのがうまくはなく、周りに依存的になるだけでなく、すぐにケンカ沙汰にもなりがちです。そんな人たちが集まって共同生活をする自治会は、まさに人間関係を学ぶ打ってつけの場になります(ソーシャルスキルトレーニング、SST)。その理由は3つあります。まず1つ目は、相手が健常者だと気を回すためトラブルが回避されがちですが、トラブルメーカー同士だとぶつかり合って、お互いのだめな部分が浮き彫りになりやすくなるからです。安行を殴ったメンバーは、周りから除け者にされ、懲りてしおらしくなっています(集団力動)。2つ目は、他のメンバーのダメなところを見ることで、自分のだめなところに気付きやすくなるからです。入院したばかりの患者が、看護師ともめている様子を見て、退院間近の患者たちが、かつての自分を見るようにニヤニヤしています。3つ目は、健常者や権威者(医師や看護師)よりも、自分と同じ境遇の人からの意見は受け入れやすいからです。安行も他の人の体験発表を聞いて、感銘を受けます。まさに、「中毒者」には「中毒者」が相手をする、「毒をもって毒を制す」ということです。また、入院の最終段階や退院後は、自助グループ(AA)に定期的に通所することが勧められます。最初は週2、3回のペースです。そこでの原則は「言いっぱなし、聞きっぱなし」です。これは、何を言っても受け入れ合うことで、お互いが支え合う仲間として「心の居場所」の役割を果たします。彼らは、寂しがり屋の傾向から独りではアルコールを止め続けることが難しいのです。しかし、自助グループで、自分が大切にされている、自分が必要とされているという感覚が得られることで、断酒を継続する大きなモチベーションになるのです。同時に、自助グループやの通所と医療機関への通院を定期的に行うことで、さきほど触れた行動の枠組みの強化にもつながります。さらに、数年以上断酒が継続できた人は、自助グループ関連のスタッフになることもあります。この意義は、アルコール依存症の治療の舞台裏に回ることで、自分自身にとってより治療的な意味合いを持つからです。(2)家族療法―表4安行は、最後に不幸にも末期がんを宣告され、余命が短いことを知ります。そして、ますます子どもたちといっしょにいたいと思うようになります。人生の期限を意識することも、先に触れた行動の枠組みの1つと言えます。そんな安行を見た由紀は、家族の一員として再び安行と同居することを許します。このように、本人が親となる家族(生殖家族)も、重要な「心の居場所」となります。注意したいのは、本人が子どもとなる家族(原家族)は、「心の居場所」として危ういということです。理由は2つあります。1つ目は、安行のように本人が親から「子ども扱い」されがちだからです。2つ目は、親は本人より先にいなくなるため、いつまでも「心の居場所」があるわけではないからです。また、本人が親となる家族でも、かつての由紀のようにパートナー(配偶者)が親のように世話を焼いて本人を「子ども扱い」している場合は危ういです。つまり、人間関係のコントロールのポイントは、本人が「子ども扱い」されない、つまり「大人扱い」されることです。そして、本人が誰かに支えられる側から誰かを支える側に回ることです。それは、特別な誰かのために生きることで、それが生きる原動力にもなります(アスピレーション)。これは、先ほど触れた自助グループのスタッフになることにも通じます。つまり、「心の居場所」とは、誰かに支えられるだけの「子ども扱い」される場でなく、誰かを支えるようにもなる「大人扱い」される場であるということです。本人を「大人扱い」できる機能的な家族(家族機能)とは、ほど良いまとまり具合(凝集性)、ほど良い母性と父性(家族役割)、ほど良い力関係の変化(世代交代)の3つが重要であると言われています。これらの知識や実践を学ぶために、医療機関が家族教室を開いたり、家族同士が集まり、家族会を開いたりしています(家族療法)。具体的に、家族が安行に対してすべきだった「大人扱い」を3つあげてみましょう。a. 周りが流されない―心理的な「大人扱い」1つ目は、問題飲酒(プレアルコホリズム)が続くなら、由紀はもっと早くに別居や離婚を言い渡すことです。これは、周りが流されないという心理的な「大人扱い」です。由紀は離婚するのが遅すぎました。由紀は、酔っ払って絡んでくる安行の相手を一生懸命にしています。由紀が我慢し過ぎた分、安行のアルコール依存症は進行してしまったと言えます。由紀は、おそらく「酒癖が悪いだけ」「酒を飲まなければ良い人」と言うでしょう。これは、アルコール依存症の人をお世話する家族が共通して言う言い回しです。しかし、これは、裏を返せば、酒を飲むなら「良い人」ではないわけですし、「酒癖が悪い」ことを知っていて酒を飲むなら、これまた「良い人」とは言えません。家族は、酔いが醒めた後の本人の平謝りに毎回流され、心理的距離を失っています。家族がすべきことは、絡み酒は無視する、暴力から逃げる、しらふの時の話し合い、暴言、暴力、近所迷惑などの問題が繰り返される場合に別居や離婚などの限界設定をすることです。そのタイミングは、友人や医療機関に相談しても良いでしょう。逆に、家族がすべきでないことは、おだて、説教、絡み酒の相手、暴力に立ち向かうなどです。つまり、問題行動は本人に任せて責任を取らせるのが基本です。 b. 周りが助けすぎない―経済的な「大人扱い」2つ目は、母親はアルコール依存症の安行を実家に引き取らないことです。これは、周りが助けすぎないという経済的な「大人扱い」です。安行の母親は、彼の離婚後に、彼を実家に引き取りました。こうして、彼は、働かなくても、衣食住が確保され、おまけに酒代までも確保されています。見方を変えれば、彼は母親に実家で飼い馴らされているとも言えます。これは、昨今に社会問題となっているひきこもりの問題に通じるものがあります。安行の母親は「かわいそう」「放っとけない」と言うでしょう。これも、アルコール依存症の人をお世話する家族が共通して言う言い回しです。しかし、この言い回しは、言い換えれば、「いつでも助けるわよ」という意味にもなります。もちろん、困った時に親が助けてくれるのはセーフティネットとしてはありがたいのですが、それはいざという時に限定されるべきです。安行の母親は助けすぎていて、心理的距離を失っています。家族がすべきことは、基本的には親と世帯分離をして生活が維持できる定期的な最低限の金銭援助の限界設定をする、金銭管理や生活維持などは本人に任せることです。その金額は、親の懐事情によりますが、生活保護の受給金レベルの生きるために最低限であることが望ましいです。なぜなら、お金が余分にあると、それだけ経済的な自立への動機付けが低まるからです。逆に、家族がすべきでないことは、実家暮らしの受け入れ、本人の要望に沿った金銭援助、借金の肩代わり、飲酒によるトラブルの尻拭いなどです。飲酒によるツケは本人が自分で支払うということを学ぶ必要があります。その人の先々のためを思えば、助けられる限度を先に示し、それ以上は「助けない」「何もしない」のも優しさです。つまり、生活設計は本人に任せて責任をとらせるということです。 c. 周りが手なずけない―身体的な「大人扱い」3つ目は、飲酒による体調不良に対して看病しないことです。これは、周りが手なずけないという身体的な「大人扱い」です。安行の母親も由紀も、安行の体調不良のたびに駆け付けています。そして、酔ってだらしない本人の身の周りのお世話をしすぎています。由紀も安行の母親も「何とかしなきゃ」と思っているでしょう。これも、アルコール依存症の人をお世話する家族が共通して言う言い回しです。もちろん、死にそうな時に救急車を呼ぶなどは必要なことですが、その後に付きっ切りで看病したり、手とり足とりお世話をしないことです。なぜなら、周りがやってあげすぎると本人は困らないので、状況が深刻だと気付かず、「まだ大丈夫」「何とかなる」「誰かが何とかしてくれる」との否認や依存の心理をますます強めてしまうからです。さらには、家族の「何とかしなきゃ」という支援の心理は、やがて「私が何とかしていれば本人も何とかなる」という支配の心理にすり替わっていきます。家族が、何事もなかったように取り繕い、本人の人生をコントロールしている感覚を味わおうとするのです。こうして、本人が「底突き」を味わうのが遅れてしまい、アルコール依存症を進めてしまうのです。特に安行の母親は、安行を手なずけようとして、心理的距離を失っています。家族がすべきことは、断酒をした方が良いと助言はしつつも最終的に飲酒するかは決めるのは本人に任せること、飲酒による体調不良への対応は最低限に止めることです。逆に、家族がすべきでないことは、付きっきりの看病、酒を隠す、欠勤の連絡、家族以外の周りへの取り繕いなど本人の自立を損ねるかかわり方です。ラストシーンで、由紀は「それ(原因)が分かったとしても誰に(飲酒を)止められたでしょうねえ」と言います。母親は「けっきょく私は何の役にも(立たなかった)」と言い、由紀は「同じです、私も」と同意します。家族は最終的に、自分たちではコントロールできないことに気付くのです。コントロールできる、つまりお酒を止められるのは本人だけということです。かかわり方のコツとして、家族は、相手をしているのは、自分の子ども(夫)でなく、お隣のお子さん(夫)であるというイメージを持つことです。子ども(夫)だと思うと心理的距離を失いがちですが、お隣のお子さん(夫)だと思えば、親切に接しつつもやり過ぎは良くないという視点が働くでしょう。つまり、良かれ悪かれ本人の生き方を尊重して、生活習慣などの健康維持は本人に任せて責任をとらせるということです。表4 アルコール依存症への周りのかかわり方 心理経済身体望ましくない流されやすい助けすぎる手なずけたがる例、おだてる、説教、絡み酒の相手、暴力への対抗例、実家暮らし、本人の要望に沿った金銭援助、借金の肩代わり、飲酒によるトラブルの尻拭い例、付きっきりの看病、酒を隠す、欠勤の連絡、家族以外の周りへの取り繕い本人に任せず責任を取らせない(子ども扱い)望ましい流されない助けすぎない手なずけない例、絡み酒の無視、暴力からの逃げ、しらふの時の話し合い、別居や離婚の限界設定例、世帯分離、援助の限界設定例、断酒の助言のみ、飲酒による体調不良への対応の限界設定本人に任せて責任を取らせる(大人扱い)アルコール依存症は本人のせい?病気のせい?由紀の知り合いの医師が由紀に「この病気(アルコール依存症)が他の病気と決定的に違う一番の特徴」「世の中の誰も本当には同情してくれないってことです」「場合によっては医者さえも」と言います。由紀も「みんな自業自得だと思っています」と言います。世の中では、アルコール依存症の人を「意志が弱い」「だらしない」と言う言葉だけで片付けてしまいがちです。しかし、これまで解き明かしてきたアルコール依存症の原因、存在理由、そして治療内容を知った時、アルコール依存症は、単に酒癖(行動のコントロール)の問題だけでなく、体質(生物学的感受性、アルコールのコントロール)の問題や共依存(人間関係のコントロール)の問題などが絡み合っていると理解できます。そして、「アルコール依存症は本人のせいか?または病気のせいか?」との問いへの答えも見えてきます。社会(司法)では、本人のせい(責任)であることが強調されます。これは、社会(司法)は秩序が目的だからです。病気とされて特別扱いされると、社会の秩序が成り立たなくなるからです。ただし、本人のせいで病気のせいじゃないとなると、治療介入が難しくなります。一方、医療では、病気のせい(責任)であることが強調されます。これは、医療は治療が目的だからです。また、アルコール依存症になった人を意志が弱いだけと片付けてしまうのは公平ではないからです。理由は、「意志が弱い」として、同じようにアルコールを摂取しても、体質(生物学的感受性)の違いによって、アルコール依存症になる人とならない人がいるからです。そして、アルコール依存症になった人にとっては、アルコールはコンビニやスーパーで手軽に手に入る「覚せい剤」になっているからです。ただし、病気として治療しつつも、本人の責任(自律性)も重要になってきます。なぜなら、病気のせいで本人のせいじゃないとなると、本人に責任逃れをする口実を与えてしまい、本人を「大人扱い」することができなくなるからです。以上を踏まえると、「意志が弱いから本人のせい」として切り捨てるのも「やめられない体質になったから病気のせい」として抱え込むのもどちらも望ましくないということです。つまり、答えは「アルコール依存症になるのは病気のせい(責任)であるが、治すのは本人のせい(責任)でもある」、言い換えれば、アルコール依存症の発症は本人の責任ではないが、アルコール依存症からの回復は本人の責任であるということです。アルコール依存症になったのはどうしようもないことです。大事なのは、そのなってしまったアルコール依存症とどう向き合うか、その後にどう生きるかということです。注意したいのは、「意志が弱い」「だらしない」などの価値判断は少なくとも医療関係者がするべきではないということです。なぜなら、医療の目的が患者を良くするということを踏まえると、価値判断は患者の自尊心を低くするだけで、マイナスにはなってもプラスにはならないからです。アルコール依存症はどうなっていくの?―グラフ2アルコール依存症に対しての世の中の否定的な味方も相まって、アルコール依存症の予後は不良です。実際にアルコール依存症で入院治療をして、退院後に断酒がどれだけ続けられるかという統計があります。それを見ると、2か月半で50%、1年で70%、2年で80%の人が再びお酒を飲んでいます。2年以上経過すると、もうお酒を飲むことはなくなります。つまり、少なくとも、2年以上の断酒の継続で回復(寛解持続)と言えます。お酒のことが気にならなくなるために、最低1年から2年はかかります。このように、生活習慣を変えるには時間がかかるというわけです。よって、断酒後、少なくとも半年は仕事をしないことが望ましいと言えます。断酒後1年の記念日は「バースデー」と呼ばれていますが、その時につい気が緩んでお酒を飲んでしまうという事態も起きます。そして、前に触れましたが、治癒して再び健康的にお酒が飲めるということはありません。生き方をコントロールする―表5アルコール依存症の人が酔っているのは、お酒だけでなく、行動でもあり、そして人間関係でもあり、つまりは生き方そのものでもあることが分かりました。そして、その治療とは、アルコールをコントロールするだけでなく、行動のコントロールや人間関係のコントロールでもあり、つまりは生き方のコントロールであると言えます。それは、偏った嗜好、偏った行動、偏った人間関係を見つめ直し、バランスの良い嗜好、バランスの良い行動、バランスの良い人間関係を身に付けていくことです。例えば、嗜好品で言えば、破滅的な飲酒から、まだマシな喫煙、コーヒー、スナック菓子、さらにはより健康的な美味しいご飯やグルメに切り替えていくことです。行動で言えば、不安定な仕事やケンカ腰から、より安定した仕事、趣味、スポーツ、そして人生の希望や目標を掲げることです。人間関係でいえば、不安定な依存の関係から「心の居場所」となる安定的な協調の関係を築くことです。前に触れた欲しがる心(嗜癖)のメカニズムを踏まえれば、生き方をコントロールするとは、近付いて欲しがろうとする「何か」をアルコール以外のものや行動や人間関係で占めることです。アルコール依存症の人はいつもお酒のことを考えています。頭がお酒という「毒」(依存対象)で占められています。よって、大事なのは、お酒ではない別のより健康的な「毒」(依存対象)に目を向け、その「毒」でバランスよく頭を占めることです。まさに、これも「毒をもって毒を制す」と言えます。こうして、お酒のことを考えなくても済む生き方をして、お酒からできるだけ遠ざかることです。断酒の基本は、「死ぬまで一滴も飲まないし、近付かなし、代わりに別のいろいろな何かにバランスよく近付く」ということです。言い換えれば、お酒はもはや飲むか飲まないかの問題ではなく、日々をどう振る舞うか、どう人間関係を築くかという本人の生き方の選択の問題でもあるということです。このような生き方のコントロールは、何もアルコール依存症の人たちだけの話でないです。私たちが人生につまずいたり行き詰っている時も、同じように何かの「毒」(依存対象)に心を奪われていることがあります。その「毒」(依存対象)とは、光景・音・臭いなどの記憶や感情、そして社会的意味付けによって味付けられ彩られた快感であるとも言えます。その快感のバランスとは、依存の豊かさ、人生の豊かさでもあります。つまり、私たちは、幸福感のバランスを見つめ直し、新たな夢や目標、人間関係を見いだし、それに近付く喜びを味わうことで、より良い生き方のコントロールができるのではないでしょうか?表5 アルコール依存症の治療 アルコールのコントロール行動のコントロール人間関係のコントロール例生涯の断酒薬物療法抗酒剤抗不安薬抗渇望薬認知行動療法障害受容行動療法規則正しい睡眠と食事規律正しい運動や人間関係集団療法ソーシャルスキルトレーニング自助グループ家族療法家族教室家族会 生き方のコントロール例飲酒↓喫煙、コーヒー、スナック菓子、美味しいご飯、グルメ不安定な仕事、ケンカ腰↓より安定した仕事、スポーツ、人生の希望や目標を掲げる不安定な依存の関係↓安定的な協調の関係1)鴨志田穣:酔いがさめたら、うちに帰ろう。講談社文庫、20102)斎藤学:アルコール依存症に関する12章、有斐閣新書、19863)ディヴィッド・J・リンデン:快感回路、河出文庫、20144)アンソニー・スティーブンズほか:進化精神医学、世論時報社、20115)長尾博:図表で学ぶアルコール依存症、星和書店、2005

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中等度リスク患者へのスタチン+降圧薬治療の効果は?/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中等度の患者に対し、ロスバスタチンと、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドを投与しコレステロール値と血圧値を下げることで、主要心血管イベントリスクは約3割減少することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのS. Yusuf氏らが、約1万3,000例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。ロスバスタチン+カンデサルタン/ヒドロクロロチアジドを投与し、イベント発生率を比較 研究グループは、21ヵ国228ヵ所の医療機関を通じて、55歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患の既往がなく、(1)ウエスト・ヒップ比が高い、(2)低HDLコレステロール値、(3)最近または現在喫煙、(4)糖代謝異常、(5)早期冠動脈疾患の家族歴、(6)軽度腎機能障害のいずれか1つ以上が認められる、1万2,705例を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。 同試験では、2×2要因デザインを用いて、カンデサルタン16mg/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日と、脂質低下薬ロスバスタチン10mg/日の効果を検証。本論文では、ロスバスタチン+カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド投与群(3,180例)と、同非投与群(3,168例)について、その効果を比較した。 主要複合アウトカムは2つあり、第1主要複合アウトカムは心血管疾患死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中、第2主要複合アウトカムは、第1主要複合アウトカムに心肺停止からの蘇生、心不全、血行再建術を加えたものだった。治療群でイベントリスクは0.71倍に 追跡期間中央値は、5.6年だった。試験期間中、治療群がプラセボ群に比べLDLコレステロール値低下幅は33.7mg/dL大きく、また収縮期血圧低下幅はプラセボ群に比べ治療群が6.2mmHg大きかった。 第1主要複合アウトカムの発生率は、プラセボ群が5.0%(157例)に対し、治療群が3.6%(113例)と、有意に低率だった(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.56~0.90、p=0.005)。 第2主要複合アウトカムの発生率も、プラセボ群5.9%(187例)に対し、治療群が4.3%(136例)と低率だった(同:0.72、同:0.57~0.89、p=0.003)。 有害事象発生率については、筋肉症状やめまいは治療群で高率だったものの、治療中断率は両群で同等だった。

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ビタミンC摂取で白内障が予防できる?

 核白内障は、老人性白内障の最も一般的な病型で、年齢のほかに喫煙、酸化ストレスおよび食物性抗酸化物質の摂取がその形成に関与している。英国のキングス・カレッジ・ロンドンのEkaterina Yonova-Doing氏らは、核白内障の進行における遺伝因子と微量栄養素の影響を調べる前向きコホート研究を行った。結果、10年間での遺伝率(遺伝因子の影響度合いの指標)は35%であり、環境要因の影響のほうが大きいことを明らかにした。とくに、食物中のビタミンCは白内障の進行を抑制するという。Ophthalmology誌オンライン版2016年3月15日号の掲載報告。ビタミンCは核白内障の進行に対して予防的効果がある 研究グループは、TwinsUKコホートの白人女性双生児2,054例を対象に、白内障と食事について断面調査を行った。また、このうち324例(一卵性双生児151例、二卵性双生児173例)は、白内障の進行についても追跡調査を行った。 核白内障は、Scheimpflug画像から得られた核密度の定量測定にて診断し、食事に関しては「欧州におけるがんと栄養に関する前向き調査(EPIC)食物摂取頻度調査票」を用いた。 構造方程式双生児モデリングを用いて最尤法により遺伝率を推定するとともに、線形および多項式回帰分析を用いて、核白内障の変化と微量栄養素との関連を評価した。追跡調査期間は平均9.4年、主要評価項目は核白内障の進行であった。 核白内障の変化と微量栄養素との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・最も適切なモデルにおいて、核白内障進行の遺伝率は35%と推定され、残りの65%は個々の環境要因が関与していることが示唆された。・食事中のビタミンCは、ベースライン時の核白内障および核白内障の進行のいずれに対しても予防的効果があることが認められた(それぞれβ=-0.0002、p=0.01およびβ=-0.001、p=0.03)。・マンガンおよび微量栄養素のサプリメント摂取は、ベースライン時の核白内障に対してのみ予防的効果がみられた(それぞれβ=-0.009、p=0.03およびβ=-0.03、p=0.01)。

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deferredステント留置はSTEMIの予後を改善するか/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において、ステント留置を即座には行わないdeferredステント留置と呼ばれるアプローチは、従来の即時的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に比べて、死亡や心不全、再発心筋梗塞、再血行再建術を抑制しないことが、デンマーク・ロスキレ病院のHenning Kelbaek氏らが行ったDANAMI 3-DEFER試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年4月3日号に掲載された。STEMI患者では、ステント留置を用いたPCIによって責任動脈病変の治療に成功しても、遺残血栓に起因する血栓塞栓症で予後が損なわれる可能性がある。これに対し、梗塞関連動脈の血流が安定した後に行われるdeferredまたはdelayedステント留置は、冠動脈の血流を保持し、血栓塞栓症のリスクを低減することで、臨床転帰の改善をもたらす可能性が示唆され、種々の臨床試験が行われている。deferredステント留置の有用性を無作為試験で評価 DANAMI 3-DEFER試験は、デンマークの4つのPCIセンターが参加する3つのDANAMI 3プログラムの1つで、STEMI患者においてdeferredステント留置と標準的PCIの臨床転帰を比較する非盲検無作為化対照比較試験(デンマーク科学技術革新庁などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛発症から12時間以内で、心電図の2つ以上の隣接する誘導で0.1mV以上のST上昇または新規の左脚ブロックの発現がみられる患者であった。 被験者は、deferredステント留置または即時的に標準的なプライマリPCIを施行する群に無作為に割り付けられた。プライマリPCIは薬剤溶出ステント留置が望ましいとされた。 deferred群では、病院到着時の冠動脈造影で梗塞関連動脈の血流が安定化する可能性がある場合は約48時間(最短でも24時間以上、この間にGP IIb/IIIa受容体拮抗薬などを4時間以上静脈内投与)後に再造影を行い、血流の安定化が確認されればステント留置を行わないこととした。 主要評価項目は、2年以内の全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞の再発、予定外の標的血管の血行再建術の複合エンドポイントとした。 2011年3月1日~14年2月28日までに1,215例が登録され、deferred群に603例、標準的PCI群には612例が割り付けられた。予定外の標的血管血行再建術はdeferred群で高頻度 年齢中央値はdeferred群が61歳、標準的PCI群は62歳、男性がそれぞれ76%、74%であった。糖尿病がそれぞれ9%、9%、高血圧が41%、41%、喫煙者が54%、51%、心筋梗塞の既往歴ありが6%、7%含まれた。多枝病変は41%、39%であった。 発症から施術までの期間中央値は両群とも168分であり、フォローアップ期間中央値は42ヵ月(四分位範囲:33~49)だった。 主要エンドポイントの発生率は、deferred群が17%(105/603例)、標準的PCI群は18%(109/612例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.75~1.29、p=0.92)。 主要エンドポイントの個々の項目のうち、全死因死亡(p=0.37)、心不全による入院(p=0.49)、非致死的心筋梗塞の再発(p=0.49)には差がなかったが、予定外の標的血管の血行再建術はdeferred群のほうが有意に多かった(HR:1.70、95%CI:1.04~2.92、p=0.0342)。 また、心臓死(p=0.58)、PCIによる標的血管の血行再建術(p=0.11)、冠動脈バイパス・グラフト術(CABG)による標的血管の血行再建術(p=0.15)にも差はみられなかった。18ヵ月時の左室駆出率は、deferred群がわずかに良好だった(54.8 vs.53.5%、p=0.0431) 手技関連の心筋梗塞、輸血または手術を要する出血、造影剤誘発性腎症、脳卒中を合わせた発生率は、deferred群が4%(27/603例)、標準的PCI群は5%(28/612例)であり、両群間に差を認めず、個々の項目にも差はなかった。 著者は、「現在、類似の3つの臨床試験(MIMI試験、INNOVATION試験、PRIMACY試験)が進行中であり、これらの試験の結果がSTEMIにおけるdeferredステント留置の概念にさらなる光を投げかける可能性がある」としている。

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