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禁煙は「徐々に」でなく「一気に」の裏付け/JAMA

 喫煙者において、タバコのニコチン含有量を即時に減らすほうが、緩徐に減らすよりも、喫煙毒性曝露バイオマーカー値の低下は一貫して有意に大きいことが明らかにされた。また、緩徐に減量した場合とニコチン含有量を減量しなかった場合の同マーカー値には、有意差がなかった。米国・ミネソタ大学のDorothy K. Hatsukami氏らによる二重盲検無作為化並行群間比較試験の結果で、JAMA誌2018年9月4日号で発表された。米国内で販売されているすべてのタバコについて、ニコチン含有量を最小限または中毒性のないレベルにまで減量するための最適な時間的アプローチは、これまで検証されていなかったという。3つの毒性曝露バイオマーカー値で、減量効果を評価 研究グループは、毒性曝露バイオマーカーを用いて、ニコチン含有量を極度低値に低下することの即時vs.緩徐の有効性を検討し、また通常量維持の場合と比較した。試験は全米10地点で、2週間のベースライン喫煙期間に続いて、20週間の介入を行った。 2014年7月~2016年9月に、30日以内に禁煙する意思がなく毎日喫煙しているボランティア被験者を集めて、次の3群に割り付けて追跡した。(1)タバコのニコチン含有量を0.4mg/gへと即時に減量(即時低下群)、(2)5ヵ月かけて15.5mg/gから0.4mg/gへと徐々に減量(緩徐低下群)、(3)15.5mg/g量を維持(対照群)。最終フォローアップは2017年3月であった。 主要評価項目は3つで、呼気一酸化炭素(CO)、尿中3-HPMA(アクロレイン代謝物)、尿中PheT(多環芳香族炭化水素)の喫煙毒性曝露バイオマーカー値。介入20週の間の、濃度-時間曲線下面積(AUC)を算出して評価した。緩徐群と維持群には有意差みられず 1,250例(平均年齢45歳、女性549例[44%])が無作為化を受け、958例(77%)が試験を完了した。 即時低下群は緩徐低下群と比べて、CO値は有意に低値であった(平均値:16.17 vs.20.06ppm、補正後平均群間差[MD]:-4.06[95%信頼区間[CI]:-4.89~-3.23]、p<0.0055)。3-HPMA(クレアチニン幾何平均[GM]値:6.05 vs.7.26nmol/mg、補正後GM比[RGM]:0.83[95%CI:0.77~0.88]、p<0.0055)、PheT(同:2.06 vs.2.16pmol/mg、0.88[0.83~0.93]、p<0.0055)についても同様であった。 また、即時低下群は対照群との比較においても、3つのマーカー値が有意に低値であった。平均CO値は16.17 vs.19.68ppm(補正後MD:-3.38[95%CI:-4.40~-2.36]、p<0.0055)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は6.05 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.81[95%CI:0.75~0.88]、p<0.0055)、PheT(同)は2.06 vs.2.41pmol/mg(0.86[0.81~0.92]、p<0.0055)であった。 緩徐低下群vs.対照群では、3つのマーカー値とも有意な差はみられなかった。平均CO値は20.06 vs.19.68ppm(補正後MD:0.68[95%CI:-0.31~1.67)、p=0.18)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は7.26 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.98[95%CI:0.91~1.06]、p=0.64)、PheT(同)は2.16 vs.2.41pmol/mg(0.98[0.92~1.04]、p=0.52)であった。

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英国女性で腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは無駄(解説:中澤達氏)-918

 英国において、女性に対するAAAスクリーニングプログラムは、男性と同様のデザインでは、費用対効果が得られそうもないという。 スクリーニング介入の費用対効果は、その国の手技料・償還価格に依存している。そして、罹患率、手術成功率にも依存する。さらに、費用対効果も検討時期においてのみ有効である。なぜなら英国の手技料・償還価格も改定されるし、罹患率も低下し、AAA手術に使用するデバイス(ステントグラフトや人工血管)も進化し成績が向上し価格も低下するかもしれない。 一般的に、罹患率が低い、または治療費用が低額である疾患のスクリーニング介入は、医療費総額の低減にはつながりにくい。AAAの場合、女性は男性に比較して罹患率が低く、手術は高額ではあるが破裂緊急手術と定時手術のコスト差が少ない(ICU滞在期間と輸血は高額であるが、使用デバイスは変わらない)ことが原因であろう。 スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究でも、AAAスクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが明らかにされていた。これには喫煙の減少によりAAA罹患率低下が関連していた1)。 気になるのが、女性のための修正オプション(70歳時にスクリーニング、AAA診断は大動脈径2.5cm、手術検討は同5.0cmとする)のときの55%にも及ぶ過剰診断率である。過剰診断とは、死亡や合併症リスクを増大した手術が回避可能であるにもかかわらず行われたということだ。普段の診療においても、加齢によるリスク増加に対する不安と瘤を持っているという精神的負担により、手術適応より小さい時期に手術を希望される患者さんもいらっしゃるので、実感としては批判できない。 未病を見つけ指摘してしまうと治療に関連したリスクを上昇させるということは、精神科領域で以前に話題となったdisease mongering(病気の売り込み行為)を想起させられた。

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第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

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第5回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?(協力メンバー12名、複数回答)Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)・・・11名Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)・・・10名Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)・・・9名Moraxella catarrhalis(モラクセラ・カタラーリス)・・・6名Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)・・・5名Legionella 属(レジオネラ属)・・・2名Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)・・・2名細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性 奥村雪男オーグメンチン®配合錠が選択されていることから、S. pneumoniae、 H.influenzae(BLPAR※1を含む)、M. catarrhalis。クラリスロマイシンが選択されていることから、M.pneumoniae、 Legionella 属、 C. pneumoniae。市中肺炎であり原因菌が同定されていないため、細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性を考え、原因菌として主要な6つの病原体を全てカバーしていると考えます。点滴を行った時点では細菌性肺炎が強く疑われていたようですが、出張となるので非定型肺炎であった場合でも対応できるようにマクロライドが追加され、このような処方になったと考えます。肺炎の重症度は、「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)では、A-DROPシステム<表1>のスコアが0→外来治療、1~2→外来または入院、3→入院治療、4~5→ICU入院としているので、入院が望ましいが外来でも可とのことから、1~2に該当する中等度肺炎と予想されます。※1 BLPAR:β-lactamase-positive ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)非定型肺炎の鑑別診断も参考に 荒川隆之一般成人の市中肺炎なので、細菌性肺炎としてはS. pneumoniaeやH. influenzae、 M. catarrhalis、非定型肺炎としてはM. pneumoniaeやC. pneumoniae、Legionella 属などを想定します。「成人市中肺炎診療ガイドライン」の細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別<表2>を参照すると、この患者さんの場合、1~5の5項目中1、2、5を満たすと考えれば、非定型肺炎を疑う必要もあります。結核菌の可能性も 中西剛明外来なので市中肺炎の3 大原因菌( S. pneumoniae、 H. influenzae、 M.pneumoniae)の中から絞り込みます。尿検査をしているので、S. pneumoniaeの可能性は低い(尿中肺炎球菌抗原で原因菌の絞り込みが可能)、血液検査でマイコプラズマ抗体の検査が可能なこと、1週間点滴に通うようにと提案されている(M. pneumoniaeに感受性のある点滴はミノサイクリンくらいしか外来治療では使えない)ことから、H. influenzaeを疑います。それも、耐性菌の可能性を念頭に、BLPAR/BLNAR※2の線が濃厚です。処方日数が3日なのは、原因菌の特定が完全ではないこと、感受性試験の結果を見て薬剤を変更する余地を残していることが考えられます。加えて、結核の除外診断はついていないと予想できます。もし医師が結核の可能性がないと判断していれば、BLPAR/BLNARに対してレボフロキサシン単剤で処方2)していたでしょう。なお、結核疑いのままレボフロキサシンなどのキノロン系薬単剤で治療を開始することは、「結核診療ガイドライン」3)では禁忌事項に記載されています。※2 BLNAR:β-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)複数の原因菌が混合している可能性も 柏木紀久喀痰検査が行われず、血液検査、尿検査を行った上での処方なので、細菌性肺炎か非定型肺炎か明らかでなかったか、または混合感染の可能性も考えますが、セフトリアキソンの点滴を行っているので原因菌不明の細菌性肺炎を主に想定していると考えます。Q2 抗菌薬について、患者さんに確認することは?併用薬と抗菌薬での副作用歴 中堅薬剤師併用薬と、今まで抗菌薬で副作用がなかったか。アレルギーと抗菌薬服用による下痢の経験 柏木紀久ペニシリンアレルギーと、抗菌薬の服用で下痢になったことがあるか。再受診と毎食後に服用可能か ふな33日後の再受診についてどのように指示されているか。食欲・嘔気の有無、食事は規則的か=毎食後で飲めるか。検査結果、既往歴、抗菌薬使用歴 佐々木康弘検査結果について確認したいです。Legionella属、M. pneumoniae、S. pneumoniaeの検査結果は抗菌薬選択に大きく影響します。既往歴や抗菌薬使用歴も確認したいです。気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既往歴があれば、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)も想定した抗菌薬治療が必要ですし、抗菌薬治療していて増悪している場合はニューキノロン系薬剤の使用も考慮します。インフルエンザウイルスへの先行感染 奥村雪男受診時期が冬季であれば、インフルエンザウイルスへの先行感染が無かったか確認したいです。その場合は原因菌としてS. aureusを想定する必要があります。ただ、メチシリン感受性S. aureusであれば、オーグメンチン®配合錠で治療可能と考えます。職業や活動範囲などの情報収集 JITHURYOU患者インタビューの質を上げて、できるだけ多くの情報を得られるよう努めます。喫煙習慣、職業温泉や湖や沼などに最近行ってないか?(Legionella属鑑別)家族など周囲に咳が強く出ている人がいないか?(患者の年齢だと10~20代の子供がいる可能性があり、その年代は比較的M. pneumoniaeが多いとされている)鳥との接触はあるか?(オウム病鑑別)併用している抗菌薬の確認のため、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法を受けているか、COPDなどの呼吸器系基礎疾患があるか(マクロライド長期療法を受けている可能性を考慮)後編では、本症例の患者さんに何を伝える、疑義照会をする/しない 理由を聞きます。1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.[PharmaTribune 2015年12月号掲載]

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7つの生活習慣、心血管にも認知機能にも好影響/JAMA

 フランス・ボルドー大学のCecilia Samieri氏らは、米国心臓協会(AHA)が推奨する7つの生活習慣(ライフ シンプル7)を用いて定義した心血管の健康レベルと、高齢者の認知症および認知機能低下のリスクとの関連性を検証する65歳以上の地域住民を対象としたコホート研究(The Three-City[3C] Study:3C研究)において、ライフ シンプル7の実行項目数の多さと心血管健康スコア高値は、認知症リスクおよび認知機能低下率の低さと関連していることを明らかにした。著者は、「認知機能低下や認知症と関連するリスク因子を予防するため、心血管の健康増進が望まれる」とまとめている。これまで、心血管の健康レベルと認知症リスクとの関連に関するエビデンスは限られていた。JAMA誌2018年8月21日号掲載の報告。65歳以上対象に、心血管健康レベルと認知症/認知機能との関連を評価3C研究は、フランスのボルドー、ディジョンおよびモンペリエの3都市で行われた。対象は、ベースラインで心血管疾患または認知症の既往がなく、1999年1月~2016年7月に、神経心理学検査と認知症発症の系統的検出を複数回受けた65歳以上の高齢者(最終追跡日は2016年7月26日)。 心血管健康レベルについて、推奨される最適水準でのライフ シンプル7(非喫煙、BMI<25、運動習慣あり、魚を週2回以上および野菜や果物を1日3回以上摂取、コレステロール値<200mg/dL[未治療]、空腹時血糖<100mg/dL[未治療]、血圧<120/80mmHg[未治療]:スコア範囲は0~7)の実行項目数と、心血管健康スコア(範囲:0~14点、7項目の測定レベルで不良[0]、中程度[1]、最適[2])で評価した。 主要評価項目は、専門委員会によって確認された認知症発症、ならびに全認知機能の複合スコアの変化(4つの認知機能検査のzスコアの平均値として計算、母集団平均と等しい場合を0、平均より1SD高値を+1、1SD低値を-1と表記)とした。心血管健康レベルが高いと、認知症発症リスクが低く認知機能低下が少ない 解析対象は6,626例(平均年齢73.7歳、女性4,200例[63.4%])で、ベースラインでライフ シンプル7の実行項目数が0~2は2,412例(36.5%)、3~4が3,781例(57.1%)、5~7が433例(6.5%)であった。 平均追跡期間8.5年(範囲:0.6~16.6)において、745例が認知症を発症した。ライフ シンプル7の実行項目数が0~1の場合の100人年当たり認知症発症率は1.76であったのに対し、2項目の場合の認知症発症率絶対差は100人年当たり-0.26(95%信頼区間[CI]:-0.48~-0.04)、3項目で-0.59(95%CI:-0.80~-0.38)、4項目で-0.43(95%CI:-0.65~-0.21)、5項目で-0.93(95%CI:-1.18~-0.68)、6~7項目で-0.96(95%CI:-1.37~-0.56)であった。 多変量モデル解析の結果、認知症発症のハザード比は、ライフ シンプル7の1項目追加当たり0.90(95%CI:0.84~0.97)、全認知機能スコアの1点増加当たり0.92(95%CI:0.89~0.96)であった。また、全認知機能スコアはライフ シンプル7の実行項目数が1追加ごとに、ベースラインで0.031(95%CI:0.009~0.053)、6年時で0.068(95%CI:0.045~0.092)、12年時で0.072(95%CI:0.042~0.102)高かった。〔9月3日 記事の一部を修正いたしました〕

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禁煙後の体重増加、死亡リスクへの影響は?/NEJM

 禁煙後の体重増加が、禁煙によるベネフィットを減弱させるかは不明とされる。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYang Hu氏らは、3つのコホート研究のデータを解析し、体重増加は短期的な2型糖尿病のリスクを増大させるものの、禁煙による心血管イベントや死亡の抑制効果には影響しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2018年8月16日号に掲載された。禁煙により主要な慢性疾患のリスクが軽減し、余命の延長がもたらされるが、顕著な体重増加を来す場合があり、食欲の増進やエネルギー消費の低下に起因する可能性が指摘されている。体重増加は、禁煙の意欲を失わせ、心血管代謝疾患や早期死亡のリスクが増加することで、禁煙の健康ベネフィットが減弱する可能性が示唆されている。禁煙後6年の体重増加の、糖尿病、死亡リスクへの影響を評価 研究グループは、禁煙後の体重の変化に伴う疾患や死亡のリスクの推移を検討した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 米国の男女を含む3つのコホート研究(Nurses' Health Study[NHS]、NHS II、Health Professionals Follow-up Study[HPFS])から、禁煙の報告のある参加者を同定し、喫煙状況と体重の変化を前向きに調査した。 被験者は、喫煙、禁煙(禁煙期間が2~6年)、長期禁煙(禁煙期間が6年超)、一過性禁煙、生涯非喫煙に分けられた。今回は、禁煙後6年間の体重の変化に焦点を当て、禁煙群を体重増加なし(不変および減少)、0.1~5.0kgの増加、5.1~10.0kgの増加、>10.0kgの増加に分類した。禁煙後の体重の変化の程度別に、2型糖尿病、心血管死、全死因死亡のリスクを評価した。体重増加がない禁煙者は、長期に死亡リスクが低下 ベースラインの喫煙群および4つの禁煙群の平均年齢は52.2~56.1歳、平均BMIは23.4~26.4であった。平均フォローアップ期間は19.6年で、この間に1万2,384例が2型糖尿病を発症し、2万3,867例が死亡(心血管死5,492例を含む)した。 全体の2型糖尿病のリスクは、禁煙群が喫煙群に比べ高かった(ハザード比[HR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.12~1.32)。2型糖尿病のリスクは禁煙後5~7年時にピークに達し、その後は徐々に低下した。この一時的なリスクの増加は、体重増加の程度と比例し、体重増加のない禁煙者ではリスクは増加しなかった(交互作用:p<0.001)。禁煙後6年間で2型糖尿病リスクは68.4%増加した。 これに対し、禁煙群では、禁煙後の体重の変化の程度にかかわらず、一時的な死亡リスクの増加は認めなかった。喫煙群と比較した心血管死のHRは、体重増加のない禁煙者が0.69(95%CI:0.54~0.88)、体重増加が0.1~5.0kgの禁煙者が0.47(0.35~0.63)、5.1~10.0kgの禁煙者が0.25(0.15~0.42)、>10.0kgの禁煙者が0.33(0.18~0.60)であり、長期禁煙者は0.50(0.46~0.55)だった。 喫煙群と比較した全死因死亡のHRには、心血管死とほぼ同様の関連が認められ、それぞれ0.81(95%CI:0.73~0.90)、0.52(0.46~0.59)、0.46(0.38~0.55)、0.50(0.40~0.63)、0.57(0.54~0.59)であった。 心血管死のリスクは、禁煙後持続的に低下し、10~15年後に最低値に達した後、緩徐に増加したが、喫煙者のレベルに到達することはなかった。このような関連のパターンが、体重が増加したすべての禁煙者にみられたが、体重が増加しなかった禁煙者は10~15年以降もリスクが低下し続け、その後、上昇傾向をみせずにプラトーに達した。 全死因死亡のリスクは、禁煙後5~7年まで単調に減少し、その後プラトーに達した。このパターンは、体重が増加したすべての禁煙者にみられたが、体重が増加しなかった禁煙者は、禁煙以降、直線的にリスクが低下した。 著者は、「以前の複数の研究で、禁煙後の2型糖尿病リスクの短期的な上昇を示唆する結果が示されており、今回の研究結果はこれらの知見と一致する」としている。

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潰瘍性大腸炎〔UC : ulcerative colitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義潰瘍性大腸炎は、クローン病とともに炎症性腸疾患の1つで、主に粘膜および粘膜下層を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。■ 疫学欧米に多く、白人とくにユダヤ系での発症が多いとされる。日本を含めた東アジアでも増加の一途をたどっている。難病であることから、わが国では指定難病に指定されており、患者数は20万人以上とされ、さらに毎年1万人程度増加している。性差はみられず、発症年齢は10代後半~30代に多く、25~29歳にピークがみられる。■ 病因発症原因はいまだ不明であるが、研究は飛躍的に進み、これまでの免疫学的な研究をはじめ、近年「genome-wide association study(GWAS)」により160以上の疾患関連遺伝子が特定され、また発症に関連する腸内細菌についても多くのことがわかり始めている。遺伝的素因、環境因子を背景に腸内細菌の影響の存在のうえで免疫異常を来し、腸管での免疫寛容が破綻することで慢性腸炎を誘導する。潰瘍性大腸炎ではクローン病とは対照的に、喫煙者の発症リスクは低い。発症自体とストレスの関連性は立証されていない。■ 症状主症状は粘血便(40%)、下痢(40%)、腹痛(30%)で、発熱や出血に伴う貧血もみられる。合併症は長期経過例での発がん、腸管外合併症として原発性硬化性胆管炎、仙腸関節炎や強直性脊椎炎などの関節炎、結節性紅斑や壊疽性膿皮症などの皮膚病変などがある。また、重症例では血栓傾向を認め、静脈血栓症のリスクがある。■ 分類治療法を選択するうえで、病期・病型(病変の広がり)・重症度を分類することが重要である。活動期か寛解期か、活動期であれば重症度(軽症〔63%〕・中等症〔28%〕・重症〔3%〕)(表1)および内視鏡所見(軽度・中等度・強度)(図1)はどうか、そして病型(直腸炎型〔22%〕、左側大腸炎型〔27%〕、全大腸炎型〔38%〕、右側あるいは区域性大腸炎)によっては局所製剤の適応を考慮することとなる。そのほか、臨床経過により再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型に分類される。難治性潰瘍性大腸炎の定義は、厳格なステロイド療法にありながらステロイド抵抗例あるいはステロイド依存例、またステロイド以外の厳密な内科治療下にありながら、再燃を繰り返すか慢性持続型を呈するものとされる。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後治療介入の影響があるため、潰瘍性大腸炎の自然史は不明な点が多いが、炎症性腸疾患の自然治癒率は10%とされる。また、長期経過において50%は病状が安定していく。全大腸切除率は、欧米のコホート研究では発症1年で10%、2年目で4%、以降1年ごとに1%増加し、わが国では10年後の累積手術率は15%、とくに全大腸炎型では40%と高率である。死亡率についてはメタ解析によると、標準化死亡率は1.1で一般と差がない。炎症型発がんに起因する大腸がんの発生は、発症8年で1.6%、20年で8%、30年で18%と増加し、全大腸炎型に多いが、治療の進歩により近年では発がん率が減少しているとする報告もある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断において最も重要なのが、病歴の聴取である。慢性の下痢・粘血便で潰瘍性大腸炎を疑い、病歴や細菌検査などで腸結核やアメーバ性大腸炎を含めた感染性腸炎・放射線照射性大腸炎・薬剤性大腸炎・虚血性大腸炎などを除外する。次に大腸内視鏡検査を行い、特徴的な病変を確認し生検を併用する。内視鏡所見では、直腸から連続する全周性・びまん性の活動性炎症を認め、粘膜浮腫による血管透見消失から細顆粒状粘膜、膿性粘液が付着し、易出血性、びらん・潰瘍形成、広範な粘膜の脱落と炎症の強度が上がる。病理組織検査では、慢性炎症の所見があるかないかで炎症性腸疾患か否か判別し、そうであれば潰瘍性大腸炎かクローン病かを検討する。これらの所見で総合的に判断するが、クローン病や腸型ベーチェットの鑑別も重要である。診断の確定は診断基準(表2)に照らし合わせて行う(図2)。画像を拡大する画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は、寛解導入療法とその後の寛解維持療法の双方を考えながら選択していく。厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)の潰瘍性大腸炎治療指針を示す(表3)。寛解導入療法は、臨床的重症度と病型によって選択される(図3)。重症例や全身状態が不良な中等症では、入院のうえ、全身管理を行いながら治療をする。近年、重症例や難治例に対しタクロリムス(商品名:プログラフ)やインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)、ゴリムマブ(同:シンポニー)(図4)、さらには2018年にトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ベドリズマブ(同:エンタイビオ)と新たな治療の選択肢が増えたが、効果不十分な場合に次々と別の治療法を試すのには慎重であるべきで、外科治療のタイミングを誤らないようにすることが重要である。画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.重症例やステロイド抵抗例・依存例つまり難治例において、タクロリムスやインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、シクロスポリン、トファシチニブ、ベドリズマブを使用する際は、専門施設での施行が望ましい。ステロイド、抗TNFα抗体や免疫調節薬を使用する際は、肝臓学会のガイドラインに沿ってHBV再活性化に対するサーベイランスが必要である。また、入院中の絶食は治療効果に影響しないばかりでなく栄養状態の悪化を招き、回復の遅延や術後合併症のリスクとなるため、大量出血や高度な腹痛などの超急性期以外は安易に選択するべきではない。維持治療においては、十分量を長期に使用することが重要で、いずれの維持治療においても薬剤中止後1年で50%が再燃するため、特段の事情がない限りは中止するべきではない。また、再燃の最大のリスクは、服薬アドヒアランスの低下であり、十分な服薬指導と定期的な確認が重要である。1)5アミノサリチル酸(5-ASA)製剤サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンほか)、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール、リアルダ)が、わが国で使用できる5-ASA製剤である。炎症性腸疾患治療の基準薬であり、50~80%の寛解導入効果がある。また、寛解維持にも優れ、十分量を長期に使用することが重要である。4g/日以上の高用量導入が可能になり、ステロイドの投与を避けられる症例が増えた。まれに導入後・増量後に発熱・下痢を来すことがあるので5-ASAアレルギーを疑い、5-ASAでの維持が困難な場合は、後述の免疫調節薬にて維持治療を行うことになる。分割投与よりも1回または2回での投与のほうが、服薬アドヒアランスのみならず効果としても優れる可能性があり、2g/日では分1投与が認められている。また、リアルダは4.8g/日の1回投与製剤であり、より高用量の投与ができかつアドヒアランスの面でも有用である。直腸病変や遠位大腸病変には局所製剤の単独ないし併用が有用である。2)ステロイド寛解導入療法として中心的な薬剤であり、十分量の5-ASA製剤で効果不十分 な場合はステロイドの全身投与を行う。短期的には84%で有効である。しかし、離脱率は50%のみで、30%は手術、20%はステロイド依存となっていた。中等症では30~40mg経口投与を行い、1~2週間で効果判定を行う。重症潰瘍性大腸炎においては、ステロイド1~1.5mg/kgの静注療法を行うことで、約半数で寛解導入が可能である。さらに増量したとしても効果の増強は認めず副作用の危険のみが増すことが知られている。ステロイドが無効または効果不十分な場合は、ステロイド抵抗例として難治例の治療を行うことになる。維持療法としてのエビデンスはなく、寛解導入後は3~4ヵ月を目安に漸減・中止し、5-ASA製剤等での寛解維持療法へ移行する。漸減中の再燃または中止後早期の再燃を認める場合は、ステロイド依存例として免疫調節薬での寛解維持療法を行うことが望ましい。坐剤や注腸といった局所製剤は5ASA製剤が第1選択とされるが、ブデソニド注腸フォーム剤(同:レクタブル注腸フォーム)は他の注腸製剤より忍容性が高く、またブデソニドであるためステロイドによる副作用も軽減できるとされる。3)免疫調節薬アザチオプリン〔AZA〕(同:イムラン、アザニン)、メルカプトプリン〔6-MP〕(同:ロイケリン/保険適用外)。効果発現に1~3ヵ月を要するため、急速な寛解導入には向かず、主に寛解維持治療に使用する。約60%の良好な寛解維持率を認め、ステロイド減量効果も明らかとなっておりステロイド依存例の寛解維持治療に重要である。不耐症例があるため、導入初期は短期間でのモニタリングが必要である。適正投与量は個体によって異なるため、少量から開始し、WBC 3,000~4,000/μL程度への減少を目安にAZA 2~2.5mg/kg、6-MP 1~1.5mg/kgを目処に増量を試みる。感染症のリスクは、ステロイドに比較すると低い。4)タクロリムス(同:プログラフ)化合物としてはまったく異なるが、シクロスポリンと同様にカルシニューリン阻害剤として作用し、IL-2やIFN-γなどのサイトカイン産生を抑制する。わが国で開発された薬剤で、中等症~重症の潰瘍性大腸炎においてRCT(無作為化比較試験)で68%と高い改善率が認められた。添付文書の導入法では、目標血中トラフに到達するのに比較的長期間を要するため、専門施設を中心に速やかに上昇させる工夫がなされている。食前や絶食下での経口投与、高用量導入、また一部施設では持続静注によって急速に血中濃度を上昇させ、速やかな効果発現を得ている。寛解維持効果も示唆されているが、原則として3ヵ月を目安に中止するため、寛解導入後は免疫調節薬での寛解維持が望ましい。5)シクロスポリン(同:サンディシュン、ネオーラル / 保険適用外)タクロリムス同様カルシニューリン阻害剤として作用する。シクロスポリン持続静注は、ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎に対し有効率は70~80%と高いが、長期成績は3年後の手術率50%、7年後88%と不良で、シクロスポリンで寛解導入した場合は、寛解維持に免疫調節薬が必要である。タクロリムスと異なり腸管からの吸収が安定しないため、経口投与での血中濃度の維持が困難であり、シクロスポリンでの寛解維持はできない。6)抗TNFα抗体製剤(インフリキシマブ〔レミケード®〕、アダリムマブ〔ヒュミラ®〕、ゴリムマブ〔シンポニー®〕)寛解導入および寛解維持に用いる。大規模なRCTの結果、抗TNFα抗体であるインフリキシマブがクローン病、関節リウマチなどに続き、認可された。既存治療抵抗性の中等症~重症潰瘍性大腸炎に対し、導入8週で69%の有効率、38.8%の寛解導入率を認め、30週で34%の寛解維持効果を示した。クローン病と同様に5mg/kgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。潰瘍性大腸炎においては、効果減弱の際の倍量投与は認められていない。また、2013年6月ヒト抗体のアダリムマブが、潰瘍性大腸炎にも認可され、初回は160mg、2週後に80mg、以降は2週毎に40mgの皮下注射を行うが、これは自己注射が可能である。さらに2017年3月に4週間毎の皮下注射製剤であるヒト抗体のゴリムマブが適用追加となった。いずれの薬剤も導入前に胸部単純X線検査(必要に応じて胸部CT検査)、ツ反、IFN-γ遊離試験(IFN-γ release assay 〔IGRA〕: クオンティフェロン、TSPOTなど)で結核の感染を否定する必要がある。7)JAK阻害薬(トファシチニブ〔同:ゼルヤンツ〕)寛解導入および寛解維持に用いる。シグナル伝達分子をターゲットとした経口JAK阻害薬である。低分子化合物で、抗体製剤ではないため抗薬物抗体の産生による効果減弱は回避でき、また製造コストの抑制も可能である。既存治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に対する第3相試験において、8週で約60%の改善率と18%の寛解導入率という有効性が示され、2018年5月に潰瘍性大腸炎に対して適用拡大となった。寛解維持率は、寛解導入試験で有効性を示した症例で52週の時点で34~40%の症例で寛解維持が得られた。なお、抗TNFα抗体製剤未使用例では寛解導入率25%で無効・効果減弱・不耐例では12%で、寛解維持率はそれぞれ5mg1日2回で27%、41%、10mg1日2回で37%、45%であった。投与法は1回10mgを1日2回、8週間投与し、効果不十分な場合はさらに8週間投与が可能である。寛解維持療法としては1回5mgを1日2回投与だが10mgを1日2回に増量することができる。なお、治験ではアジア人の比較的高齢者においてヘルペス感染症の発症が多く、注意が必要である。8) 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ〔同:エンタイビオ〕)炎症細胞の腸管へのホーミングを阻害することで、炎症を抑制する。潰瘍性大腸炎に対する第3相試験であるGEMINI 1で47%の改善率と17%の寛解導入効果、52週において40~45%の寛解維持効果が示され、2014年に欧米で承認・発売となった。わが国においても臨床試験が行われ、2018年7月に承認された。300mgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。腸管選択性が高いため、全身の免疫への影響が低いと考えられており、安全性に期待されている。薬理機序上効果発現はやや遅い印象があるが、寛解維持率が高く寛解維持療法における新たな選択肢として期待される。9)血球成分除去療法わが国で開発された白血球除去療法は、ステロイド抵抗例・依存例で保険適用とされ、使用されている。高用量のステロイドを要するような症例では、白血球除去療法を併用することで、より高い効果が期待でき副作用も少ないことが報告されている。しかし、海外での質の高いエビデンスは少ない。10)外科治療大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、重症・劇症で内科治療抵抗例、大腸がんおよびhigh grade dysplasia合併例では摘出手術の絶対的手術適応である。相対的手術適応例は、内科治療では寛解維持困難でQOLが保てない、または薬剤不耐などの難治例、内科治療抵抗性の壊疽性膿皮症など腸管外合併症例、狭窄や瘻孔、low grade dysplasiaなどの大腸合併症例である。術式は、大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IAA)や大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)が標準術式である。術後に回腸嚢炎を合併することがある。多くの報告で術後のQOLを評価しているが、いずれも術後数年でのQOLは良好である。4 今後の展望現在、創薬業界では生物製剤をはじめ分子標的薬が花盛りであり、炎症性腸疾患の分野も同様である。インフリキシマブが口火を切った炎症性サイトカインをターゲットとした抗体製剤や、接着分子をターゲットとし病原性リンパ球の腸管へのホーミングを阻害し動態制御を行うことで腸炎を抑制する薬剤、また造血幹細胞移植などが注目されている。新薬の許認可において、これまでいわゆるドラッグ・ラグがあり、有効な薬剤が欧米で使用可能でも、わが国で認可されるのが数年先となるようなことも少なくなかった。しかし近年、炎症性腸疾患の分野においては、多くが国際共同治験となり、ドラッグ・ラグは解消される方向へ向かっている。クローン病でも多くの治験が行われているが、潰瘍性大腸炎に対する今後の展開について述べる。現在臨床試験中あるいは終了している薬剤は、以下のようなものがある。炎症性サイトカインを標的とした薬剤としてJAK阻害薬が開発されている。承認されたトファシチニブに引き続いてJAK1選択性を高めた第二世代のJAK阻害薬であるフィルゴチニブやウパダシチニブなどが開発中である。クローン病において承認された抗IL12/23 p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)は、潰瘍性大腸炎においても臨床試験が進んでおり、また抗IL23 p19抗体であるリサンキツマブやミリキツマブなども臨床試験が進んでいる。腸炎惹起性リンパ球の動態制御を目的とした薬剤も多数開発されている。抗α4β7インテグリン抗体であるベドリズマブに続き、AJM300は、わが国で開発された経口低分子化合物でα4インテグリンを阻害する。102例の潰瘍性大腸炎を対象とした第2相試験で、8週後の有効率62.7%、寛解率23.5%と有意に有効性を示した。低分子化合物であるため低コストで生産でき、抗体製剤のように免疫原性や効果減弱といったリスクを回避できる可能性がある。現在第3相試験中である。皮下注射製剤の抗MAdCAM抗体であるPF-00547659は、消化管組織中に発現するMAdCAMに結合し、インテグリンとの結合を阻害する。潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TURANDOTで、12週の寛解率24%と有意な結果が報告された。S1Pおよびその受容体の1つであるS1P1受容体は、リンパ球の二次リンパ組織からの移出に必須の分子であるが、S1P受容体アゴニストはS1P1受容体を強力かつ長期に内在化させることで、リンパ球の動態制御を行い、炎症を抑制する。S1P1およびS1P5受容体に作用するRPC1063が、潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TOUCHSTONEにおいて、8週で16.4%の寛解率、58.2%の有効率を示し、現在第3相試験へと移行している。その他、ブデソニドは、ステロイドの全身性の副作用の軽減を目的に、肝臓で速やかに代謝されるようデザインされた局所作用型のステロイドであり、欧米では一般に使用されているが、前述のようにわが国でもクローン病に対する経口薬に続き、本症で経肛門投与のフォーム薬が承認・発売された。また近年、腸内細菌研究の急速な進歩によってプロバイオティクスも再度注目されている。さらに、c.difficile関連腸炎において高い有効性を示し、欧米で認可された糞便微生物移植も炎症性腸疾患への応用が試みられているが、まだ有効性や投与法などに関する十分な大規模データは不足しているのが現状である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 潰瘍性大腸炎(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けの研究情報)CCFA - Crohn's and Colitis Foundation of America(米国のIBD団体のサイト:一般利用者向けと医療従事者向けの情報)ECCO - European Crohn's and Colitis Organisation(欧州のIBD団体のサイト:医療従事者向けの研究・診療情報)東京医科歯科大学 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター(一般利用者向けの情報)厚生労働省 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報、最新の診断指針・治療指針が公開されている。会員登録をすると「一目でわかるIBD」の閲覧やe-learningも可能)患者会情報IBDネットワーク(IBD患者と家族向けの情報)1)「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.2)日本消化器病学会.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂; 2016.3)渡辺守 編. IBD(炎症性腸疾患)を究める. メジカルビュー社; 2011.4)炎症性腸疾患(第2版)-病因解明と診断・治療の最新知見. 日本臨牀社;2018.公開履歴初回2013年07月04日更新2018年08月28日

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世界61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインの調査

 英国・ノッティンガム大学のKapka Nilan氏らは、世界保健機関(WHO)のタバコ規制枠組み条約(FCTC)第14条およびそのガイドラインに従って、各国のタバコ依存症治療ガイドライン内容を評価し、その内容と国の所得水準との関連性について評価を行った。Addiction誌2018年8月号の報告。 本研究は、2016年3月~7月にオンライン調査にて実施された横断研究。対象国は、以前の調査においてガイドライン策定を表明していた、またはこれまで調査されていなかった77ヵ国(FCTC締約国:68ヵ国、署名国6ヵ国、非締約国:3ヵ国)。ガイドラインの内容、主要な提言、執筆、普及に関する9項目のアンケートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・63ヵ国(82%)から回答が得られた。そのうち、61ヵ国はガイドラインを有していた。・大半は、医師(93%)、プライマリケア(92%)、看護師(75%)のためのものであった。・すべてにおいて短時間支援(brief advice)が推奨されており、主な内容は、医療記録に喫煙歴を記録(82%)、ニコチン置換療法(98%)、クイットライン(電話での無料禁煙相談)(61%)、テキストメッセージ(31%)、専門医の集中的な支援(87%)、医療従事者による喫煙しないことの重要性の強い主張(54%)であった。・普及戦略は57%でしか認められず、62%は5年以上更新歴がなかった。・高所得国と比較し、高中所得国のガイドラインでは、クイットラインが推奨される傾向が低く(OR=0.15、95%CI:0.04~0.61)、低中所得国では、専門医の集中的な支援が推奨される傾向が低かった(OR=0.01、95%CI:0.00~0.20)。・ガイドラインの更新は、国の所得水準と正の相関が認められた(p=0.027)。 著者らは「2016年に評価された61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインのほとんどは、WHO FCTC第14条に則っており、国の所得水準による有意差は認められなかった。しかし、ガイドラインの更新、優れた執筆者の起用、普及戦略の推進において、改善が必要である」としている。■関連記事禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか青年期の喫煙、電子タバコ使用開始とADHD症状との関連

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2型糖尿病の死亡リスクは高くない?/NEJM

 5つのリスク因子が、ガイドラインで定められた目標値の範囲内にある2型糖尿病患者は、死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスクが一般人口とほとんど変わらず過剰ではないことが、スウェーデン・イエーテボリ大学のAidin Rawshani氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年8月16日号に掲載された。2型糖尿病患者は、死亡や心血管アウトカムのリスクが一般人口に比べ2~4倍高いとされる。この2型糖尿病に関連する過剰なリスクが、現行のエビデンスに基づく治療や複数のリスク因子の修正によって、どの程度軽減し、あるいは消失する可能性があるのかは不明であった。目標値範囲外のリスク因子数とアウトカムの関連を評価 研究グループは、2型糖尿病患者における死亡および心血管イベントの過剰リスクが低減あるいは消失するかを検討するコホート研究を行った(スウェーデン地方自治体協議会[SALAR]などの助成による)。 1998年1月1日~2012年12月31日の期間に、スウェーデンの全国糖尿病登録(Swedish National Diabetes Register)の2型糖尿病患者27万1,174例(糖尿病群)と、年齢、性別、地域(県)をマッチさせた非糖尿病の地域住民135万5,870例(対照群)を解析に含めた。 年齢別(≧80、≧65~<80、≧55~<65、<55歳)および5つのリスク因子(糖化ヘモグロビン値の上昇[≧7.0%]、LDLコレステロール値の上昇[≧97mg/dL]、アルブミン尿[微量・顕性アルブミン尿]、喫煙[試験登録時]、血圧の上昇[≧140/80mmHg])の有無別に解析を行った。 Cox回帰を用いて、目標値の範囲外のリスク因子の数と関連する4つのアウトカム(死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院)の過剰リスクを評価した。また、種々のリスク因子と心血管アウトカムとの関連も検討した。若年患者はリスク増分が大きい、死亡の最強予測因子は喫煙 フォローアップ期間中央値は5.7年で、この間に17万5,345例が死亡した。ベースライン時に5つのリスク因子の完全なデータが得られた2型糖尿病患者は9万6,673例(35.6%)であった。両群とも平均年齢は60.58歳で、女性が49.4%だった。 糖尿病群は対照群に比べ、目標値の範囲外のリスク因子の数が0から5つへと増加するに従って、4つのアウトカムのハザード比(HR)が段階的に上昇した。糖尿病に関連する死亡および心血管イベントのリスクの増分は、加齢に伴って段階的に減少し、<55歳の集団が最も大きく、≧80歳の集団が最も小さかった。また、急性心筋梗塞のHRは、目標値範囲外のリスク因子が1つもない≧80歳の患者が、対照群に比べ最も低かった(HR:0.72、95%信頼区間[CI]:0.49~1.07)。 5つのリスク因子がすべて目標値の範囲内の糖尿病患者は、対照群との比較における全死因死亡HRが1.06(95%CI:1.00~1.12)であり、わずかにリスクが高い傾向がみられたが、急性心筋梗塞のHRは0.84(95%CI:0.75~0.93)とむしろリスクは低く、脳卒中のHRは0.95(95%CI:0.84~1.07)と有意差を認めなかった。一方、目標値の範囲外のリスク因子がない糖尿病群の心不全による入院のリスクは、対照群よりも有意に高かった(HR:1.45、95%CI:1.34~1.57)。 死亡の最も強い予測因子は喫煙であり、次いで身体活動、婚姻状況、糖化ヘモグロビン値、スタチンの使用の順であった。同様に、急性心筋梗塞の予測因子は、糖化ヘモグロビン値、収縮期血圧、LDLコレステロール値、身体活動、喫煙の順で、脳卒中は糖化ヘモグロビン値、収縮期血圧、糖尿病罹患期間、身体活動、心房細動の順、心不全による入院は心房細動、BMI、身体活動、推定糸球体濾過量、糖化ヘモグロビン値の順だった。 著者は、「理論上、5つのリスク因子を目標値の範囲内に保持すれば、急性心筋梗塞の過剰リスクは消失するが、心不全による入院のリスクは実質的に過剰なまま残る」とまとめ、「若年患者では、目標値の範囲外のリスク因子の数が多いほど、有害な心血管アウトカムの相対的リスクが増大したことから、より積極的な治療が利益をもたらす可能性が示唆される」と指摘している。

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日米における心血管代謝疾患のBMIカットオフ値

 日本人と米国人を対象とした横断研究から、日米とも高BMIが高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症の有病率増加と関連すること、有病率が増加するBMIカットオフ値は日本人のほうが有意に低いことを、虎の門病院の桑原 政成氏らが報告した。米国における過体重/肥満の定義が日本では適用できない可能性が示唆される。Nutrients誌2018年8月3日号に掲載。 本研究は、聖路加国際病院における18~85歳の日本人成人9万47例と、米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)における成人1万4,734例での横断研究。BMIごとの高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症の有病率を日米で比較した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率は米国のほうが有意に高く、高尿酸血症の有病率は日米で差がなかった。・年齢、性別、喫煙や飲酒習慣、慢性腎臓病、その他の心血管リスク因子の調整後、日米とも、高BMIは高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症の独立した危険因子であった・これらの心血管代謝リスク因子の有病率が増加したBMIカットオフ値は、米国が日本より有意に高かった(高血圧症:27 vs.23、糖尿病:29 vs.23、脂質異常症:26 vs.22、高尿酸血症:27 vs.23)。

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広範囲ゲノムシーケンスは進行NSCLCに生存ベネフィットをもたらすか/JAMA

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、広範ゲノムシークエンシングは一部の患者の選択すべき治療情報とダイレクトに関連していたが、良好な生存との独立した関連は認められなかった。米国・オハイオ州立大学のCarolyn J. Presley氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で、JAMA誌2018年8月7日号で発表された。進行NSCLC患者には、広範ゲノムシークエンシングが頻繁に用いられている。しかし、コミュニティ設定における同患者の、広範ゲノムシークエンシングと治療選択あるいは生存との関連性については、ほとんど知られていなかった。EGFR変異/ALK再構成の定期検査群と比較 研究グループは、全米を対象とするFlatiron Health Databaseを用いて、2011年1月1日~2016年7月31日に医療記録で確認された進行NSCLCで、191のがん治療のうち1つの治療を受けたことがある患者を特定し、広範ゲノムシークエンシングを受けている群と、EGFR変異とALK再構成またはALK再構成のみの定期検査を受けている(対照)群の臨床的アウトカムを比較した。 対象患者は、StageIIIB/IVまたは切除不能な非扁平上皮NSCLCで、少なくとも1ラインの抗腫瘍治療を受けていた。 広範ゲノムシークエンシングには、第3選択治療までに30以上の遺伝子を調べるあらゆるマルチ遺伝子シークエンシングアッセイを含んだ。 主要評価項目は、第1選択治療開始から12ヵ月間の死亡率および全生存率とした。治療選択との関連はみられるが、生存との関連は認められず 特定された進行NSCLC患者は5,688例(年齢中央値67歳[四分位範囲:41~85]、白人63.6%、喫煙歴あり80%)で、広範囲ゲノムシークエンシング群は875例(15.4%)、対照群は4,813例(84.6%)であった。 広範囲ゲノムシークエンシング群の患者において、4.5%が検査結果に基づいたターゲット治療を、9.8%が定期的なEGFR/ALKターゲット治療を受けていた。85.1%は非ターゲット治療を受けていた。 12ヵ月時点の補正前死亡率は、広範囲ゲノムシークエンシング群49.2%、対照群35.9%であった。操作変数解析の結果、予測死亡率は広範囲ゲノムシークエンシング群41.1%、対照群44.4%であり、広範囲ゲノムシークエンシングと12ヵ月死亡には有意な関連性は認められなかった(群間差:-3.6、95%信頼区間[CI]:-18.4~11.1、p=0.63)。同様の結果が、傾向スコア適合生存解析でも示された(42.0% vs.45.1%、ハザード比[HR]:0.92、95%CI:0.73~1.11、p=0.40)。非適合コホートでも同様であった(HR:0.69、95%CI:0.62~0.77、log-rank検定のp<0.001)。

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新COPDガイドラインの要点と日本人データ

 2018年7月、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、COPDラウンドセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「COPDガイドラインの改訂と日本人データの重要性」をテーマに、一ノ瀬 正和氏(東北大学大学院医学系研究科 呼吸器内科学分野 教授)による講演が行われた。COPDは息苦しさから、身体活動性の低下につながる COPDは、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の略語で、以前は慢性気管支炎、肺気腫などと呼ばれていた疾患の総称である。喫煙や微粒子への長期曝露により、気管支に炎症が起こり、気道の狭窄・肺胞壁の破壊(気腫化)・痰などの分泌物増加などが起こる。日本人の場合、90%以上が喫煙によって発症するため、早くても40代、平均50~70代の高齢者で顕在化するという。 COPD患者は、呼吸に圧力が必要で、労作による息切れや運動による低酸素血症を生じる。その息苦しさによる身体活動の不活発化が問題であると一ノ瀬氏は強調した。治療が遅れることで、動脈硬化症、虚血性心疾患、骨粗相症などといった併存症の発症・悪化につながる恐れもある。COPDの認知度を上げて、早期治療を目指す わが国のタバコ消費量は、1980年代から減少傾向にあるが、これまでの喫煙者数や人口構造の高齢化から、COPD患者は今後も増加すると推測できる。一ノ瀬氏は、COPDの認知度の低さを指摘し、「無理にCOPDと呼ばず、慢性気管支炎や肺気腫でもいいので、主に喫煙が原因となるこの病気を多くの人に知ってほしい。目標は、平成34年までに国民の認知度80%を達成すること」と願いを語った。COPDによる負のスパイラル(労作時息切れ→身体活動低下→運動耐容能低下→骨格筋の廃用)は、QOLの著しい低下を招くため、気管支拡張薬による早期治療が望まれる。ガイドラインで示された、COPD治療における3つの要点 ガイドラインの改訂で、大きく変更になった点は3つある。1つ目は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)が、長時間作用性β2刺激薬(LABA)より推奨されたことだ。LAMAとLABAの気管支拡張効果は同等だが、LAMAのほうが、粘膜分泌抑制効果により痰が改善されることなどから、増悪率が下がるという報告1-2)がある。 2つ目は、LAMAとLABAを併用することで、非常に強力な気管支拡張作用が得られるというエビデンス3)が示されたこと、3つ目は、ステロイド吸入薬(ICS)の推奨患者の変更である。1990年代以降に、重症COPDで増悪を繰り返す症例でICSがCOPD増悪を抑制するという報告4)がされたが、2014年のWISDOM試験で、LAMA/LABA併用患者をICS継続群とICS段階的中止群に分けて1年間検証した結果、ICSの有無にかかわらず、増悪の発生率は変わらない可能性が示唆された5)。よって、ICSは喘息病態を合併している場合に併用可能という記載になった。 一ノ瀬氏は、治療の順序付けについて、「LAMAもLABAも単剤で十分に効果が出る。副作用が出た場合、原因が特定しづらくなるので、最初は単剤で開始し、その後併用に移行することが望ましい」と述べた。COPD治療は身体活動性の改善が鍵 最後に日本人のエビデンスについて紹介された。海外のCOPD患者と比較すると、わが国の患者集団は、男性が圧倒的に多いこと、高齢でBMIが低いこと、現喫煙者は少なく、症状の訴えが少ないことなど、異なる点が多くあることから、日本人データの重要性を示した。 一ノ瀬氏は、同社が行ったTONADO試験、DYNAGITO試験、VESUTO試験などの結果で、LAMA単剤(商品名:スピリーバレスピマット)、LAMA/LABA配合剤(同:スピオルトレスピマット)により、呼吸機能のみならず、身体活動性の改善をもたらす傾向が得られたことを例に挙げた。これに関して、「患者バックグラウンドの差異によるものかもしれないが、日本人のほうが薬剤の有効性が高く、配合剤によるメリットも大きい可能性がある」と語り、「今後も検討を続けるが、吸入薬で呼吸機能が改善されても、身体活動などが変化しなければ併存症や予後に対する好影響は少ない。医師は、患者さんの生活変容に関しても指導していく必要がある」と述べ、講演を締めくくった。■参考文献1)Vogelmeier C, et al. N Engl J Med. 2011;364:1093-1103.2)Decramer ML, et al. Lancet Respir Med. 2013;1:524-533.3)Beeh KM, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2015;32:53-59.4)Sin DD, et al. JAMA. 2003;290:2301-2312.5)Magnussen H, et al. N Engl J Med. 2014;371:1285-1294.■参考ベーリンガープラス COPDガイドラインポイント解説

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第5回 10年以上余命が延びる5つの健康習慣【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 服薬指導をしていると、生活習慣改善の効果に懐疑的、もしくは諦めている患者さんに出会うことがあるのではないでしょうか。そのような患者さんでも、ある5つの生活習慣を実践すると、それをまったく行わないときよりも10年以上余命が延びる、と言われたら試してみたくならないでしょうか。今回は、健康的な生活が余命に大きな影響を及ぼすことがわかった2つの大規模調査の結果を体系的にまとめた論文を紹介します。Impact of Healthy Lifestyle Factors on Life Expectancies in the US Population.Li Y, et al. Circulation. 2018 Apr 30. [Epub ahead of print]2つの大規模調査とは、女性看護師を対象に慢性疾患のリスクファクターを検証しているNurses’ Health Study(1980~2014年、n=7万8,865)と、栄養的要素が男性医療者の健康に与える影響を検討したHealth Professionals Follow-up Study(1986~2014年、n=4万4,354)です。両研究におけるアンケート調査はなんと現在も進行しています(参考1、2)。いずれも重要かつ知っておくべき研究でしょう。今回紹介する論文は、この2つの研究の合計約12万3,000例の30~75歳を分析しています。両研究は組み入れ対象者の面で相互補完的な関係にあり、それらをまとめて分析した本研究も貴重な結論を導き出しています。解析項目は、健康上低リスク生活習慣者と高リスク生活習慣者でどれだけ死亡率に差が出るかです。組み入れ対象が医療専門職であることと、そのうちの多くは白人であることから、外的妥当性の評価には注意が必要です。本研究では、健康リスクを低減させる要素として、下記の5つを定義しました。1.健康的な食事をしている「健康的な食事」の定義付けとして、AHEI(Alternate Healthy Eating Index)を用いた評価がなされています。これは野菜、果物、ナッツ、全粒穀物、多価不飽和脂肪酸および長鎖オメガ3系脂肪酸の摂取が多く、赤身肉、加工肉、甘味料入り飲料、トランス脂肪酸、精製粉の摂取が少ないとスコアが良くなる指標です。研究では、AHEIスコアが各研究の上位40%に入った参加者は、健康的な食事を取っていると定義されました。2.喫煙しない3.少なくとも1日当たり30分の中等度または活発な運動を行っている4.適度な量のアルコール摂取(女性で5~15g/日、男性で5~30g/日)5.BMIが18.5~24.9kg/m2、すなわち低体重または肥満ではない各項目に当てはまれば1点、当てはまらなければ0点とし、5項目の合計点によって、対象者は5段階にスコア分けされました。また、これらの習慣が米国人口にどれほど共通しているかを評価するために、NHANES(米国国民健康栄養調査)で2013~14年に収集された情報を利用しています。死亡原因については、国家記録と家族報告書を用いて確認され、米国疾病対策予防センター(CDC)のWONDERデータベースを用いて検討を行っています。それらを踏まえ、最終的には調査対象者の行動パターンがどのように寿命、がんや心血管疾患による死亡リスクに影響を与えるか分析されました。アンケート調査である以上、主観的であり、個々の習慣が余命に及ぼす影響を特定することも困難になるわけですが、研究開始時の年齢、性別、民族性、閉経有無、マルチビタミンや定期的なアスピリン摂取またはホルモン補充療法の有無、糖尿病心臓発作またはがんの家族歴などの変数を用いて多変量解析が行われています。重要な関連要因の影響を考慮に入れて適切な措置をとったこと、サンプルサイズの大きさ、フォローアップ期間の長さ、複数時点での生活習慣とBMI評価があることはこの研究の強みといえるでしょう。最低リスク群では最高リスク群よりも、女性14.0年、男性12.2年余命が長い研究期間中に、4万2,167例の参加者が死亡しています。そのうち、がん患者数は1万3,953例、心血管疾患患者数は1万689例でした。5つの習慣のいずれもが、単独で全死因死亡またはがんないし心血管死亡のリスクを低減させる傾向がありました。最も不健康なスコア0の参加者と比較して、最も健康的なスコア5の参加者を多変量調整した結果は、全死因死亡が74%減少(ハザード比:0.26、95%信頼区間:0.22~0.31)、がんによる死亡が65%減少(ハザード比:0.35、95%信頼区間:0.27~0.45)、心血管疾患死亡が82%減少(ハザード比:0.18、95%信頼区間:0.12~0.26)でした。また、スコア5以外の参加者と比較して、スコア5の参加者では、全死因死亡が60.7%(95%信頼区間:53.6~66.7)、がんによる死亡が51.7%(95%信頼区間:37.1~62.9)、心血管疾患による死亡が71.7%(95%信頼区間:58.1~81.0)減少しています。一般的な米国人口がこれら5つの習慣を取り入れた場合の50歳時点での平均余命は、女性で43.1年(95%信頼区間:41.3~44.9)、男性で37.6年(95%信頼区間:35.8~39.4)でした。これは、そのいずれも取り入れない場合と比較して、女性で14.0年(95%信頼区間:11.8~16.2)、男性で12.2年(95%信頼区間:10.1~14.2)余命が延びている計算になり、大きなインパクトです。現実的に健康リスクを低減させる要素の5つすべてを一度に取り入れることが難しいのであれば、それぞれの習慣がリスク低減に寄与しているため、どれか1つの習慣だけを提案するアプローチもよいでしょう。大きな結果がもたらされることがわかっていれば、小さな習慣から徐々に取り入れて維持していくモチベーションも湧くのではないでしょうか。1)Li Y, et al. Circulation. 2018 Apr 30. [Epub ahead of print]参考1)Nurses’ Health Study2)Health Professionals Follow-up Study

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地中海食は乾癬の重症化を遅らせる?

 乾癬は、慢性炎症性疾患である。地中海食(MEDI-LITE)は慢性炎症を軽減し、メタボリックシンドロームおよび心血管イベントのリスクに対し有益である。これに伴い、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のCeline Phan氏らは、乾癬の発症や重症度にMEDI-LITEが強く影響することを仮説立てた。その検証の結果、重症乾癬患者では地中海食に対する順守度が低いことが明らかになった。著者は、「今回の結果は、地中海食が乾癬の進行を遅らせる可能性があるという仮説を支持するものである。この知見が確認されれば、中等症~重症乾癬の日常管理にMEDI-LITEの順守を組み込むべきである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年7月25日号掲載の報告。 研究グループは、2009年5月にフランスで開始されたウェブでのアンケートによる観察コホート研究NutriNet-Santeプログラム(現在も進行中)を利用した。また、本究は、NutriNet-Santeプログラムの枠組み内で行われ、2017年4~6月の間に収集・分析されたデータを使用した。 検証済みのオンライン自己記入アンケートにより乾癬患者を特定し、「重症乾癬」「非重症乾癬」「乾癬なし(非乾癬)」と、病態を重症度別に分類した。プログラムへの参加から最初の2年間の食事摂取量(アルコールを含む)に関するデータを収集して、MEDI-LITEスコア(まったく順守していない[0]~最大限順守[18])を算出した。潜在的な交絡因子(年齢、性別、身体活動、BMI、喫煙、心疾患罹病歴)についても記録された。 多項ロジスティック回帰分析を用い、非乾癬者と比較した重症乾癬または非重症乾癬患者のリスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・NutriNet-Santeプログラムの参加者15万8,361例中、乾癬に関するアンケートの回答が得られたのは3万5,735例(23%)であった。・回答者の平均年齢±SDは47.5±14.0歳で、2万7,220例(76%)が女性であった。・回答者のうち、3,557例(10%)が乾癬に罹患していると回答した。・そのうち、重症乾癬は878例(24.7%)だった。また、299例(8.4%)はコホートに参加し2年以上経過の後に発症した。・交絡因子補正後に、MEDI-LITEスコアと重症乾癬への罹患の間に有意な逆相関が認められた。 ●MEDI-LITEスコアの第2三分位群(スコア8~9)のオッズ比(OR):0.71(95%信頼区間[CI]:0.55~0.92) ●同スコアの第3三分位群(スコア10~18)のOR:0.78(95%CI:0.59~1.01)

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1日1回服用のMAO-B阻害パーキンソン病治療薬「アジレクト錠1mg/0.5mg」【下平博士のDIノート】第6回

1日1回服用のMAO-B阻害パーキンソン病治療薬「アジレクト錠1mg/0.5mg」今回は、「ラサギリンメシル酸塩錠(商品名:アジレクト錠1mg/0.5mg)」を紹介します。本剤は、セレギリン(商品名:エフピーOD錠)に続く2剤目の選択的モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬です。セレギリンと同様に、レボドパ含有製剤併用の有無にかかわらず使用できますが、アンフェタミン骨格を有さないため、覚せい剤原料の規制を受けないなど薬剤管理上のメリットがあります。<効能・効果>パーキンソン病の適応で、2018年3月23日に承認され、2018年6月11日より販売されています。本剤は、MAO-Bと非可逆的に結合することで、脳内のドパミンの分解を抑制し、シナプス間隙中のドパミン濃度を高めることにより、パーキンソン病の症状を緩和します。<用法・用量>通常、成人にはラサギリンとして1mgを1日1回経口投与します。肝臓に軽度の障害がある患者、低体重の患者、高齢の患者では、副作用が発現する可能性があるため、低用量での投与を考慮します。セレギリン塩酸塩、トラマドール塩酸塩、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRIなどと併用すると、相加・相乗作用などによって、重篤な副作用発現の恐れがあるため併用禁忌となっています。<承認>2018年3月時点で50以上の国または地域で承認されています。<副作用>国内臨床試験において、696例中346例(49.7%)に臨床検査値の異常を含む副作用が認められています。主な副作用は、ジスキネジア(8.0%)、転倒(3.7%)、鼻咽頭炎(3.2%)でした(承認時)。重大な副作用として起立性低血圧、傾眠、突発的睡眠、幻覚、衝動制御障害、セロトニン症候群、悪性症候群が報告されています。本剤は、レボドパ含有製剤と併用されることもありますが、海外臨床試験における併用時の副作用は544例中299例(55.0%)と頻度が高まるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.本剤は脳内でドパミンの分解を抑えることで脳内のドパミン濃度を増加させ、パーキンソン病の症状を改善します。2.めまい、立ちくらみ、ふらつきなどの症状が現れたらお知らせください。3.眠気、前兆のない急な眠り込みが現れることがありますので、服用中は自動車の運転や機械の操作、高い所での作業など危険を伴う作業はしないでください。4.レボドパ含有製剤と併用することで、副作用が強まることがあります。意志に反して舌や口が動いたり、体が動いたりする症状(ジスキネジア)が現れた場合にはすぐに連絡してください。5.喫煙や、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含有する健康食品を摂取すると、本剤の作用が弱まることがあるので控えてください。6.チーズ、ビール、赤ワインなど、チラミンを多く含む飲食物の摂取により、血圧上昇が報告されているため摂取は控えてください。<Shimo's eyes>本剤は、すでに海外ではパーキンソン病治療の中心的な薬剤の1つとして幅広く使用されており、医療上の必要性が高い薬剤として「未承認薬・適応外薬の要望」が日本神経学会より出されていました。「パーキンソン病診療ガイドライン2018」(日本神経学会監修)において、「早期パーキンソン病患者に対する運動症状改善効果は、セレギリンとラサギリンで差はないが、オフ時間の短縮にはラサギリンより高いエビデンスがある」と記載されており、患者さんのQOL改善が期待されます。覚せい剤原料の規制を受けると、厳重な保管管理のほか、廃棄の際は保健所職員(覚せい剤監視員)の立ち会いが必要であったり、1錠でも紛失した際は「覚せい剤原料事故届」の提出が必要であったりするなど、管理や手続きが煩雑でした。本剤は覚せい剤原料に指定されておらず、流通上の規制を受けないため、大変取り扱いが簡便です。薬力学的相互作用については、併用薬との相加・相乗作用によるセロトニン症候群などへの注意が必要です。また、薬物動態学的相互作用については、本剤はCYP1A2で代謝されますので、喫煙によるCYP1A2の誘導などに注意する必要があります。患者さんの併用薬や生活習慣に気を配り、適切な服薬指導ができるようにしましょう。■参考日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン2018

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腹部大動脈瘤スクリーニングは無益、では健診が有効な疾患は何か?(解説:中澤達氏)-894

 スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究で、腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが明らかにされた。スウェーデン人男性のAAA死亡率(65~74歳男性10万人当たり)は、2000年初期は36例であったが、2015年には10例に減少していた。死亡率の減少は全国的にみられ、AAAスクリーニング実施の有無に関係していなかった。今回の検討で、減少した要因の大半は他の因子によるもので、おそらくは喫煙の減少によることが示唆された。 AAAスクリーニングを受けた男性が回避可能なAAA死亡は、1万人当たり2例であった。また、待機的手術のリスク増大や、過剰診断の恐れとの関連が認められ、死亡や罹患リスクを増大した回避可能な手術がそのうちの19例に行われていたという。ベネフィットは小さく、有益性と有害性のバランスは非常に悪く、スクリーニングの正当性に対する疑念を深める結果であった。 これが真実であるとすると、スクリーニングは行うべきでなく偶然指摘されたAAAを治療することのみが死亡率低下に寄与することになる。10万人当たり10例の死亡という希少で、生活習慣病予防で死亡率も低下傾向の疾患であることが原因であろう。 同様なことが内科系の慢性疾患にも日本の誇る職場健診で生じている可能性がある。つまり、予防が徹底されその疾患の有病率が低下している局面では、早期発見し治療を開始しても生存率に影響がないどころか、投薬の副作用のみが起こるということだ。この点もぜひビッグデータで解明してもらいたい。

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第4回 GERDを発症・増悪させにくいCa拮抗薬は?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 胃酸などの胃の内容物が食道に逆流して生じる胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease:GERD)の原因の1つに、「下部食道括約筋(Lower esophageal sphincter:LES)」の機能低下があります。LESは胃と食道のつなぎ目にあり、胃酸の逆流を防ぐ筋肉ですが、加齢に伴う機能低下だけでなく、嗜好品や生活習慣および薬剤によっても緩まることがあります。GERDは頻度の高い疾患ですので、これらの悪化要因を把握しておくと服薬指導にとても有用です。MSDマニュアルには、下記の記載があります。「逆流をもたらす要因として、体重増加、脂肪食、カフェイン含有飲料、炭酸飲料、アルコール、喫煙、薬物がある。LES圧を低下させる薬物には、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、プロゲステロン、硝酸薬がある」(参考文献1)より引用)実際、アムロジピンの服用開始後にGERDの症状が悪化したと訴え、医師からの指示でアムロジピンを中止したところ症状が改善した患者さんに、私も会ったことがあります。その件の因果関係は不明ですが、今回はCa拮抗薬とGERDの関連について検討した後ろ向きコホート研究を紹介します。Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.対象となったのは、虚血性心疾患や硝酸薬の使用歴がなく、Ca拮抗薬を使用していた高血圧患者で、GERDの既往の有無および、Ca拮抗薬服用前と服用後でGERD症状に変化があったかどうかについてアンケート調査を行っています。15軒の薬局(地域薬局14軒、病院薬局1軒)から371例が登録され、平均年齢64歳、女性51.2%、男性48.8%でした。信頼度が高い方法というわけではありませんが、地域の薬局で研究を行うには現実的な方法ではないでしょうか。Ca拮抗薬服用前後におけるGERD症状の変化は下表のとおりです。画像を拡大するCa拮抗薬服用前からすでにGERDの症状がある130例中59例(45.4%)で、Ca拮抗薬服用により症状の悪化がみられています。症状の悪化の頻度がもっとも高かった薬剤がアムロジピン(61.3%、p<0.0001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(12.5%)という結果でした。Ca拮抗薬服用前にGERD症状がなかった241例においては、85例(35.3%)がCa拮抗薬服用によりGERDを発症しており、もっとも頻度が高かったのがベラパミル(39.1%、p=0.001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(30.7%)という結果でした。ニフェジピンの増悪リスクはジルチアゼムの4.22倍発症・増悪リスクがもっとも低かったジルチアゼムを基準とした場合の、GERD症状の増悪頻度のオッズ比は下表のとおりです。ニフェジピンやアムロジピンにおいて有意にGERDが増加しています。二フェジピンやアムロジピンの添付文書を参照すると、嘔気・嘔吐や腹部不快感、腹部膨満などGERDに類する副作用症状の記載はありますが、明示的にGERDの記載があるわけではないため見落としに注意が必要です。交絡因子を調整しきれる研究ではないため解釈に注意が必要ですが、血管平滑筋を緩めるCa拮抗薬がLESまで緩めてしまう可能性があることは、患者さんの症状を聞き取る際に頭の片隅に入れておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 胃食道逆流症(GERD)(2018年7月16日参照)2)Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.

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統合失調症患者における自殺のリスク因子に関するメタ解析

 統合失調症患者の自殺に関連する生涯リスクは、自殺で5%、自殺企図では25~50%といわれている。米国・テキサス大学健康科学センター ヒューストン校のRyan Michael Cassidy氏らは、統合失調症患者の自殺率に関連するリスク因子を明らかにするため、メタ解析を実施した。Schizophrenia bulletin誌2018年6月6日号の報告。 PubMed、Web of Science、EMBASEより検索を行い、参考文献リストについても併せて検索を行った。自殺念慮または自殺企図を有する統合失調症患者、自殺していない患者との比較を報告した研究を選択基準とした。また、補足分析としてコホート研究のメタ解析も行った。 主な結果は以下のとおり。・分析対象として、96研究、8万488例が抽出された。・自殺念慮を有する統合失調症患者では、抑うつ症状が重く(p<0.0001)、PANSS総スコアが高く(p<0.0001)、精神科入院回数が多かった(p<0.0001)。・自殺企図との関連に最も一致した変数は、以下であった。 ●飲酒歴(p=0.0001) ●精神医学的疾患の家族歴(p<0.0001) ●身体合併症(p<0.0001) ●うつ病歴(p<0.0001) ●自殺の家族歴(p<0.0001) ●薬物使用歴(p=0.0024) ●喫煙歴(p=0.0034) ●白人(p=0.0022) ●抑うつ症状(p<0.0001)・最初の2項目(飲酒歴、精神医学的疾患の家族歴)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。・自殺との関連に最も一致した変数は、以下であった。 ●男性(p=0.0005) ●自殺企図歴(p<0.0001) ●若年(p=0.0266) ●高い知能指数(p<0.0001) ●治療アドヒアランスの不良(p<0.0001) ●絶望状態(p<0.0001)・最初の3項目(男性、自殺企図歴、若年)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。 著者らは「本調査結果は、将来の自殺の予防戦略において役立つであろう。今後の研究では、多変量予測分析法を用いて上記の因子を組み合わせることで、統合失調症における自殺率を客観的に層別化することが可能となるであろう」としている。■関連記事日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか日本成人の自殺予防に有効なスクリーニング介入:青森県立保健大

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切除後NSCLCの再発および生存に対する体細胞変異の影響(JME)/ASCO2018

 次世代シークエンス(NGS)により、手術後の非小細胞肺がん(NSCLC)における体細胞変異を検討した、本邦の多施設前向き肺がん分子疫学研究JME(Japan Molecular Epidemiology for lung cancer)。副次評価項目である、体細胞変異と無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)との関係について、近畿中央胸部疾患センター 田宮 朗裕氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会ASCO2018で発表した。 研究対象はStage I~IIIBのNSCLC。2012年7月~2013年12月までに43施設から集められた876の外科的切除標本で、48のがん関連遺伝子と5つのがん関連遺伝子増幅が評価された。追跡期間中央値は48.4ヵ月。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は70歳。男性が876例中419例。・病期はStage Iが 618例でもっとも多く、II、III、IV はそれぞれ131例、104例、23例であった。・2つ以上の体細胞変異を有する患者は876例中146例であった。・術後化学療法は876例中309例に実施された。・RFSの予後因子は、変異数(0または1つ対2つ以上、HR:0.609、p<0.0105)、年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.641、p=0.0008)、性別(男性対女性、HR:1.460、p=0.0381)、病理病期([Stage I対II、HR:0.332、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.157、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.486、p<0.0001])であった。・OSの予後因子は年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.590、p=0.0025)、アジュバント化学療法の施行(なし対あり、HR:2.029、p=0.0001)、EGFR変異(陰性対陽性、HR:2.223、p<0.0006)、病理病期([Stage I対II、HR:0.408、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.151、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.371、p<0.0001])であった。 RFSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢、変異数。OSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢とともに、EGFR変異陽性、アジュバント化学療法施行であった。とくに病期はRFS、OSの双方に影響が大きく、肺がんの進行度合いは、遺伝子変異以上に予後に影響を及ぼすことが明になった。筆頭著者である田宮 朗裕氏との1問1答【この研究を実施した背景は?】 JME研究は、喫煙者と非喫煙者のdriver mutationを含む体細胞変異との相関をみている試験ですが、今回はその中で遺伝子変異が予後に対して、どう影響するかを調べたものです。【結果についてコメントいただけますか】 体細胞変異が多いほど予後も悪いのではないかという想定していました。RFSについては、想定通り、体細胞変異が多いほど予後不良でしたが、OSについては想定通りの結果にはなりませんでした。その1つの理由としては、EGFR-TKIの有効性が高いことから、EGFR変異陽性患者の予後が良好であったことが影響していると考えられます。また、術後化学療法の有無が大きく予後に影響したことも想定外でした。【今回の研究の成果についてコメントいただけますか】 早期肺がんの発がんに関係する研究は従来後ろ向きのものが多かったのですが、今回は前向きで解析しています。今回の前向き研究で、体細胞変異と予後の関係を多変量で解析できたこと、そして術後確定病理と予後の関係が前向きに証明されたことは意義があると思います。■参考ASCO2018 AbstractJME研究(JCO)※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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