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家族性高コレステロール血症の基礎知識

 8月27日、日本動脈硬化学会は、疾患啓発を目的に「家族性高コレステロール血症」(以下「FH」と略す)に関するプレスセミナーを開催した。 FHは、単一遺伝子疾患であり、若年から冠動脈などの狭窄がみられ、循環器疾患を合併し、予後不良の疾患であるが、診療が放置されている例も多いという。 わが国では、世界的にみてFHの研究が進んでおり、社会啓発も広く行われている。今回のセミナーでは、成人と小児に分け、本症の概要と課題が解説された。意外に多いFHの患者数は50万人超 はじめに斯波 真理子氏(国立循環器病研究センター研究所 病態代謝部)を講師に迎え、成人FHについて疾患の概要、課題について説明が行われた。FHは大きくヘテロ結合体とホモ結合体に分類できる。 FHのヘテロ結合体は、LDL受容体遺伝子変異により起こり、200~500例に1例の頻度で患者が推定され、わが国では50万人以上とされている。生来LDL-C値が高い(230~500mg/dL)のが特徴で、40代(男性平均46.5歳、女性平均58.7歳)で冠動脈疾患などを発症し、患者の半数以上がこれが原因で死亡する。 診断では、(1)高LDL-C血症(未治療で180mg/dL以上)、(2)腱黄色腫あるいは皮膚結節性黄色腫、(3)FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内)の3項目中2項目が確認された場合にFHと診断する。 また、診断では、LDL-C値に加えて、臨床所見ではアキレス腱のX線画像が特徴的なこと(アキレス腱厚をエコーで測定することも有用)、角膜輪所見が若年からみられること、家族に高コレステロール血症や冠動脈疾患患者がみられることなど、詳細なポイントを説明するとともに、診断のコツとして「『目を見つめ よく聴き、話し 足触る』ことが大切」と同氏は強調した。 FH患者は、健康な人と比較すると、約15年~20年早く冠動脈疾患を発症することから、早期より厳格な脂質コントロールが必要となる。 本症の治療フローチャートでは、生活習慣改善・適正体重の指導と同時に脂質降下療法を開始し、LDL-C管理目標値を一次予防で100mg/dL未満あるいは治療前の50%未満(二次予防70mg/dL未満)にする。次に、スタチンの最大耐用量かつ/またはエゼチミブ併用し、効果が不十分であればPCSK9阻害薬エボロクマブかつ/またはレジンかつ/またはプロブコール、さらに効果が不十分であればLDL除去療法であるLDLアファレシスを行うとしている。医療者も社会も理解しておくべきFHの病態 次に指定難病であるホモ結合体について触れ、本症の患者数は100万例に1例以上と推定され、本症の所見としてコレステロール値が500~1,000mg/dL、著明な皮膚および腱黄色腫があると説明を行った。確定診断では、LDL受容体活性測定、LDL受容体遺伝子解析で診断される。 治療フローチャートでは、ヘテロ受容体と同じように生活習慣改善・適正体重の指導と同時に脂質降下療法を開始し、LDL-C管理目標値を一次予防で100mg/dL未満(二次予防70mg/dL未満)にする。次に、第1選択薬としてスタチンを速やかに最大耐用量まで増量し、つぎの段階ではエゼチミブ、PCSK9阻害薬エボロクマブ、MTP阻害薬ロミタピド、レジン、プロブコールの処方、または可及的速やかなるLDLアファレシスの実施が記載されている。ただ、ホモ結合体では、スタチンで細胞内コレステロール合成を阻害してもLDL受容体の発現を増加させることができず、薬剤治療が難しい疾患だという。その他、本症では冠動脈疾患に加え、大動脈弁疾患も好発するので、さらに注意する必要があると同氏は指摘する。 最後に同氏は「FHは、なるべく早く診断し、適切な治療を行うことで、確実に予後を良くすることができる。そのためには、本症を医療者だけでなく、社会もよく知る必要がある。とくにFHでPCSK9阻害薬の効果がみられない場合は、LDL受容体遺伝子解析を行いホモ接合体を見つける必要がある。しかし、このLDL受容体遺伝子解析が現在保険適応されていないなど課題も残されているので、学会としても厚生労働省などに働きかけを行っていく」と展望を語り、説明を終えた。小児の治療では成長も加味して指導が必要 続いて土橋 一重氏(山梨大学小児科、昭和大学小児科)が、次のように小児のFHについて解説を行った。 小児のヘテロ接合体の診断では、「(1)高LDL-C血症(未治療で140mg/dL以上、総コレステロール値が220mg/dL以上の場合はLDL-Cを測定する)、(2)FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内)の2項目でFHと診断する(小児の黄色腫所見はまれ)」と説明した。また、「小児では、血液検査が行われるケースが少なく、本症の発見になかなかつながらない。採血の機会があれば、脂質検査も併用して行い、早期発見につなげてほしい」と同氏は課題を指摘した。 治療では、確定診断後に早期に生活習慣指導を行い、LDL-C値低下を含めた動脈硬化リスクの低減に努め、効果不十分な場合は10歳を目安に薬物療法を開始する。 とくに生活習慣の改善は、今後の患児の成長も考慮に入れ、できるだけ早期に食事を含めた生活習慣について指導し、薬物療法開始後も指導は継続する必要がある。食事療法について、総摂取量は各年齢、体格に応じた量とし、エネルギー比率も考慮。具体的には、日本食を中心とし、野菜を十分に摂るようにする。また、適正体重を維持し、正しい食事習慣と同時に運動習慣もつける。そして、生涯にわたる禁煙と周囲の受動喫煙も防止することが必要としている。 薬物療法を考慮する基準として、10歳以上でLDL-C値180mg/dL以上が持続する場合とし、糖尿病、高血圧、家族歴などのリスクも考える。第1選択薬はスタチンであり、最小用量より開始し、肝機能、CK、血清脂質などをモニターし、成長、二次性徴についても観察する。 管理目標としては、LDL-C値140mg/dLとガイドラインでは記載されているが、とくにリスク因子がある場合は、しっかりと下げる必要があるとされているとレクチャーを行った。

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加熱式タバコの害をどう考えるか?【新型タバコの基礎知識】第7回

第7回 加熱式タバコの害をどう考えるか?Key Points加熱式タバコを吸うと、循環器疾患などの疾患罹患リスクがあり、そのリスクは紙巻タバコよりも低いとは言えない。米国では、アイコスを「リスク低減タバコ」としてではなく、「従来からのタバコ製品」の1つとして販売することを決定した。アイコスが血管内皮機能に悪影響を与えることが、米国カリフォルニア大学のグループによる、最近のラットによる研究で報告されました1)。アイコスのエアロゾルにさらされたラットの血管内皮機能は、紙巻タバコの煙にさらされたラットと同程度に低下していました。この研究では、ラットを(1)アイコスのエアロゾル、(2)紙巻タバコ(マルボロ)の煙、(3)清浄な空気のいずれかに曝露させたうえで、血流依存性血管拡張反応検査により血管内皮機能を評価しています。曝露は1回15秒間とし、5分間に10回行っています。その結果、血管内皮機能はアイコス群で58%、マルボロ群では57%低下しました。曝露を1回5秒間に減らしても同じ結果でした。アイコスのエアロゾルへの曝露は、マルボロの場合と同程度の血管内皮機能の低下をもたらすことが示されたのです。血管内皮機能の低下は動脈硬化をもたらし、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めると分かっています。循環器系におけるタバコの煙への反応は、人とラットでほとんど同じだと考えられており、もちろん検証は必要ですが、人でも同じことが起きるものと考えられています。加熱式タバコを吸っていると、紙巻タバコを吸っている人と同様に、循環器疾患リスクが高まる可能性があります。確かに、現状では加熱式タバコに関する情報は十分とは言えませんが、あまりに分かっていないと強調しすぎるのは、デメリットが大きいと考えます。現状、成人の10%以上が加熱式タバコを使用しており、非常に多くの人がその影響下にすでに置かれています。判断を先延ばしにしすぎるのはよくないでしょう。加熱式タバコの害を判断するうえで、役立つ情報は他にもあります。これまでに数多く実施されてきた紙巻タバコの害に関する研究です。吸っていない人と比べると、紙巻タバコを1日1本しか吸っていなくても、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な循環器疾患のリスクが有意に高まります。図1に示すように、タバコのリスクは吸う本数によって異なります。この図では、横軸が紙巻きタバコを吸う本数で、縦軸が心筋梗塞などの虚血性心疾患に罹るリスクの大きさを表しています。たいていの喫煙者は1日当たり20本のタバコを吸っています。1日20本吸う人の循環器疾患リスクは約1.8倍です。喫煙本数がその4分の1の、1日5本吸う人のリスクは約1.5倍です。1日5本吸う人のリスクは、1日20本吸う人のリスクの約63%(50÷80×100=62.5%)です。すなわち、喫煙本数を1日5本、4分の1にしても、循環器疾患リスクは1日20本吸う人のリスクの半分にもならないのです。喫煙本数を減らしても、循環器疾患リスクは高いと言えるでしょう。また、肺がんリスクの研究から、喫煙本数が多いことよりも、喫煙期間が長いことがよりリスクを高めると判定されています。喫煙本数を減らしたとしても喫煙期間が長ければ、肺がんにかかるリスクは大きいのです。現時点で得られる情報から総合的に考えて、加熱式タバコを吸っている人のリスクは、紙巻タバコよりも低いとは言えません。画像を拡大する米国の専門家たちも、同意見のようです。米国におけるルールに基づき、フィリップモリス社はアイコスを「リスク低減タバコ」として米国食品医薬品局(FDA)に申請しましたが認可されなかったという経緯があります。新たなタバコ製品についてはFDAの許可がないと販売できず、とくに健康へのリスクが少ない可能性などを謳う場合には、その科学的根拠や社会への負荷の減少について証明した上で申請することが、タバコ会社に求められています。そのため、フィリップモリス社が提出したアイコスに関する資料が詳細に検討されました。そして、2018年1月に実施されたFDAの諮問委員会では、フィリップモリス社の承認申請資料に対するFDA諮問委員会の委員らの見解(2018年1月24~25日)が示されました。フィリップモリス社が提出したアイコスに関する資料について、次の質問(Q)に対する委員9人の回答(Yes or No)は次の通りでした。Q1:紙巻タバコから、完全に加熱式タバコに切り替えれば、有害性物質への曝露は減らすことができるか?Yes - 8人 No - 1人 棄権 - 0人Q2:Q1でYesと回答した場合に、その曝露の減少により、疾病の罹患率や致死率が減ると考えられるか?Yes - 2人 No - 5人 棄権 - 1人Q3:紙巻タバコから、完全に加熱式タバコに切り替えれば、タバコ関連疾患のリスクを減らせるか?Yes - 0人 No - 8人  棄権 - 1人Q3への回答から分かるように、棄権した1人を除き、米国の専門家8人が、加熱式タバコに切り替えても、タバコ関連疾患に罹患するリスクを減らせない、と判定しました。こういった判定により、アイコスは「リスク低減タバコ」としては認められませんでした。しかし、2019年4月30日、米国でも加熱式タバコ・アイコスは「リスク低減タバコ」としてではなく、「従来からのタバコ製品」の1つとして販売されることが決定しました。この決定を受けて、加熱式タバコ問題への世界的な関心はさらに高まりつつあるといえるでしょう。第8回は「加熱式タバコによる受動喫煙の害は?」です。1)Nabavizadeh P, et al. Tob Control.2018; 27: s13-s9.

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低線量CT肺がんスクリーニング、毎年と隔年の比較/Eur J Cancer

 2011年、米国のNLST試験(National Lung Screening Trial)では、低線量CT(LDCT)スクリーニングによる前/現喫煙者における肺がん死亡率の低下が示された。また、イタリアのMulticentric Italian Lung Detection(MILD)試験では、長期のLDCTスクリーニングが、肺がん死亡率を39%減少させることを示している。イタリア・Istituto Nazionale Dei TumoriのPastorino氏らは、MILD試験をさらに毎年と隔年のスクリーニングに分け、スクリーニング強度が10年後の全死亡および肺がん特異的死亡にもたらす影響を評価した。European Journal of Cancer誌2019年9月号掲載の報告。 MILD試験は2005年に開始された無作為化比較試験で、対象は5年以内にがんの既往のない49~75歳の前/現喫煙者。主要評価項目は10年の全死亡率と肺がん特異的死亡率。副次評価項目は進行期肺がんおよび中間期がんの頻度。 主な結果は以下のとおり。・2005~2018年にかけて、前向きに登録した2,376名を、毎年スクリーニング群(n=1,190)と隔年スクリーニング群(n=1,186)に無作為に割り付けた。・スクリーニング期間中央値は6.2年、追跡は2万3,083人年であった。・隔年スクリーニング群では、毎年スクリーニング群と同等の10年全死亡率(HR:0.80、95%CI:0.57~1.12)と肺がん特異的死亡率(HR 1.10、95%CI 0.59~2.05)が示された。・LDCTの繰り返しは、隔年スクリーニングにより、全集団では38%、ベースラインLDCT陰性の被験者では44%減少した・Stage II~IVまたは中間がんの発生は隔年スクリーニング群で増加することはなかった。

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心血管リスク、禁煙後何年で低下するのか/JAMA

 ヘビースモーカー(20パック年以上喫煙)の心血管疾患(CVD)リスクは、禁煙後5年未満で、現喫煙者と比較して約4割減少するが、非喫煙者との比較では禁煙から5年以上を経過しても有意に高いままであることが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMeredith S. Duncan氏らが、フラミンガム心臓研究の被験者のデータを解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年8月20日号で発表した。禁煙後のCVDリスクの時間的経過は明らかになっていない。試算では元喫煙者のリスクは5年のみと考えられていた。フラミンガム心臓研究の被験者8,770例について解析 研究グループは、ベースラインでCVDがなかったフラミンガム心臓研究の被験者で、2015年までに前向きに追跡収集されたデータについて後ろ向きに解析した。被験者は、オリジナルコホート(1954~58年に行われ4回の診察を受けた)3,805例と、子孫コホート(1971~75年に行われ初回診察を受けた)4,965例の計8,770例だった。 自己申告による喫煙の有無、禁煙後の経過年数、喫煙中の累計パック年を調べ、CVD(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死と定義)との関連を検証した。主要解析は、両コホート複合(プールコホート)で行い、ヘビースモーカー(20パック年以上喫煙)について行った。禁煙5年未満で現喫煙者の約4割減に、一方で非喫煙者との比較では高いまま 被験者8,770例の平均年齢は42.2歳(SD 11.8)で、45%が男性だった。そのうち喫煙経験者は5,308例で、ベースラインの喫煙累計(パック年)の中央値は17.2(四分位範囲:7~30)だった。ヘビースモーカーは2,371例(追跡中に禁煙した元喫煙者406例[17%]、現喫煙者1,965例[83%])だった。 追跡期間中央値26.4年中の初回CVDイベント発生は2,435件だった(オリジナルコホート1,612件[うちヘビースモーカー665例]、子孫コホート823例[同430例])。 プールコホートにおいて、現喫煙者と比較して5年以内の禁煙者のCVD罹患率は有意に低かった。罹患率は現喫煙者11.56/1,000人年(95%信頼区間[CI]:10.30~12.98)に対し、禁煙5年未満者で6.94/1,000人年(同:5.61~8.59)だった(群間差:-4.51、95%CI:-5.90~-2.77、ハザード比[HR]:0.61、95%CI:0.49~0.76)。 一方で非喫煙者の同罹患率は5.09/1,000人年(95%CI:4.52~5.74)で、それと比較すると喫煙者のCVDリスクは、禁煙後10~15年で6.31/1,000人年(95%CI:4.93~8.09)になり、禁煙から10年以降でその関連が有意ではなくなったが、リスクとしては高いままであった(群間差:1.27[95%CI:-0.10~3.05]、HR:1.25[95%CI:0.98~1.60])。(8月29日 記事の一部を修正いたしました)

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喘息患者の3 人に1 人は救急経験あり

 アストラゼネカ株式会社は、気管支喘息患者を取り巻く現状や喘息治療の実態を明らかにすることを目的とした患者調査を全国3,000名の患者に実施し、その結果が公表された。 調査結果は今回発表の「喘息患者さんの予定外受診・救急受診・救急搬送の現状」編のほか、「喘息患者さんの通院・服薬の現状」編、「重症喘息患者さんの現状」編という3つのテーマで公開される。監修は東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)が担当した。●調査概要調査実施日:2019年4月15~26日実施方法:インターネット調査対象:全国の気管支喘息患者 3,000名(気管支喘息と診断されて直近1年以内に通院または入院の経験あり)性別:男性1,539名、女性1,461名発作で救急搬送されたことを主治医に伝える患者は半数 「気管支喘息の症状のコントロールについて」という問いでは、「症状がコントロールされた状態」と回答した患者が73.6%、「少し不十分」が24.1%、「まったくコントロールされていない」が2.2%と、おおむねコントロールできている患者が多数を占めた。 「現在の喘息治療で、喘息のない人と同じ日常生活を送れているか」という問いでは、「非常にそう思う」と回答した患者が20.8%、「どちらかというとそう思う」が48.8%、「どちらともいえない」が16.3%、「どちらかというとそうは思わない」が10.9%、「まったくそう思わない」が3.2%と、約7割の患者が健康な人と同じ日常生活を送っていると回答した。 「気管支喘息のために予定外受診、救急受診、入院などを経験した頻度はどれくらいか」という問いでは、「月1回以上」と回答した患者が12.3%、「月1回未満~年1回以上」が26.2%、「ここ1年はない」が61.5%だった。約6割の患者が急変した状況の診療がないと回答した。地域別でみると九州・沖縄地方(19.7%)、中部地方(12.1%)、四国地方(12.0%)で「月1回以上」と回答した患者が多かった。 「これまでに、気管支喘息の発作で救急搬送されたり、救急受診をしたことがあるか」という問いでは、「ある」と回答した患者が34.6%、「ない」が65.4%だった。地方別では、九州・沖縄地方(40.3%)、近畿地方(37.2%)、四国地方(36.1%)の順で多かった。 救急受診・救急搬送経験者(n=1,038)に「主治医に救急受診したことを伝えたか」という問いでは、「はい」と回答した患者が53.7%、「いいえ」が27.4%、「わからない」が18.9%だった。 「医師から説明を受けて、気管支喘息の悪化に関連しているものは何か」という問いでは、「好酸球の増加」(76.5%)、「ダニなどのアレルゲン」(62.5%)、「喫煙」(59.8%)、「妊娠」(58.3%)、「過去の重篤な発作」および「鼻炎・副鼻腔炎」(52.1%)の順で多かった。さらなる医師と患者のコミュニケーションの進展が治療のカギ これらの調査を踏まえ監修の東田 有智氏は「今回の調査結果から、6割に上る患者が、自分の症状はコントロールされている、あるいは、喘息の無い人と同じ日常生活を送れている、と感じていながら、ガイドラインで『コントロール不十分』『コントロール不良』と定義される状態にあると考えられることが示された。さらに、患者の3人に1人が喘息発作で救急搬送や救急受診などを経験している実態も明らかとなったほか、救急搬送を経験した患者の半数は主治医にその旨を伝えていた。そのほか、自分の症状悪化の要因が『好酸球の増加』であると、医師から説明を受けて認識している人が7割に上るなど、患者と主治医との間のコミュニケーションの現状もわかった。引き続き患者と主治医とがコミュニケーションを取り、患者がそれぞれの症状にあった治療に出会い、健康な人と変わらない日常生活を送ることを願う」とコメントを寄せている。

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加熱式タバコに含まれる未知の物質【新型タバコの基礎知識】第6回

第6回 加熱式タバコに含まれる未知の物質Key Points加熱式タバコには、タバコ会社の報告よりも実際には多くの化学物質が含まれている。これらの化学物質の有害性はデータが不十分で、未知なものが多い。第5回では、加熱式タバコからも紙巻タバコと同じぐらい多くの種類の有害物質が出ているということをご紹介しました。しかし、これらも加熱式タバコに含まれる有害物質の中の、一部に過ぎません。2012年に米国食品医薬品局(FDA)は、タバコ製品から出る93種類の有害物質を指定し、これらについては調査・報告することをタバコ会社に求めました。しかし、フィリップモリス社が米国でアイコスを申請*1した際に報告した化学物質は58種類で、ここにはFDAが求めた有害物質93種類のうちの40種類しか含まれなかったという事実があります*2。このとき報告されなかった53種類のうちの50種は、発がん性物質でした1)。実は、フィリップモリス社はこの米国での申請過程における補足資料で、113種類の化学物質が測定されたという結果を一度は報告していました(前述の58種類のうちの56種類の他に、それ以外の57種類が報告されていた)。同社は、報告した58種類のうちの9種の有害物質ではアイコスの方が量が少なかったことを根拠にして、“紙巻タバコと比べて有害物質が約90%低減している”と宣伝・広告しており、この9種類以外の物質量については言及していないのです。補足資料で報告されたものの、その後同社が報告しなかった57種類の化学物質について、その含有量をみると、実は、1種類を除く56種類の化学物質で、アイコスから紙巻タバコよりも多くの量が検出されていました。22物質では3倍以上になっており、7物質では10倍以上になっていたのです。これらの化学物質の有害性はデータが不十分で未知なものが多いのが現状です。しかし、それらの物質そのもの、そして複合的に作用することによる毒性が、アイコス全体の有害性を構成する主成分となる可能性もあります。

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認知症リスクに50歳での心血管健康度が関連/BMJ

 中年期に推奨される心血管健康スコア「ライフ シンプル7」の順守が、晩年における認知症リスク低下と関連していることが明らかにされた。「ライフ シンプル7」では、生活習慣や血糖値、血圧など7つの項目をスコア化し心血管リスクの指標としている。フランス・パリ大学のSeverine Sabia氏らが、約8,000例を約25年間追跡した、前向きコホート試験により明らかにし、BMJ誌2019年8月7日号で発表した。心血管健康スコアの値で3つに分類 研究グループは、ロンドンの公務員を対象に行われたWhitehall II試験(1985~88年に登録)の参加者で、50歳時点における心血管健康スコアのデータがあった7,899例を対象に前向き試験を行った。 心血管健康スコアは、4つの行動指標(喫煙、食事、身体活動、BMI)と3つの生物学的指標(空腹時血糖、血中コレステロール、血圧)を3ポイント尺度(0、1、2)でコード化し、7つの指標(スコア範囲:0~14)の合計から心血管健康が低い(0~6)、中程度(7~11)、最適(12~14)に分類した。 主要評価項目は、2017年までの認知症の発症、入院、精神医療サービスの利用、死亡であった。心血管健康スコア1ポイント増加で認知症リスク1割低減 追跡期間中央値24.7年の間に、347例の認知症が記録された。 心血管健康が低い群における認知症罹患率3.2/1,000人年(95%信頼区間[CI]:2.5~4.0)に対して、中程度群の同罹患率の絶対率差は-1.5/1,000人年(同:-2.3~-0.7)で、最適群の絶対率差は-1.9/1,000人年(同:-2.8~-1.1)だった。 心血管健康スコアの高値は、認知症リスク低下と関連が認められた(心血管健康スコア1ポイント増加当たりのハザード比[HR]:0.89[95%CI:0.85~0.95])。同様の関連は、行動および生物学的サブスケールにおいても認められた(それぞれHR:0.87[95%CI:0.81~0.93]、0.91[0.83~1.00])。 追跡期間中に心血管疾患を発症しなかった人についても、50歳時点での同スコアと認知症リスクとの関連について、同様の傾向が認められた(心血管健康スコア1ポイント増加当たりの認知症HR:0.89[0.84~0.95])。

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心房細動リスクが低いコーヒー摂取量~医師1万9千人の調査

 発作性心房細動患者ではコーヒー摂取が心房細動のトリガーとしてしばしば報告されているが、コーヒー摂取と心房細動リスクの関連を検討した前向き研究の結果は一貫していない。今回、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVijaykumar Bodar氏らが男性医師で調査したところ、1日1~3杯のコーヒー摂取で心房細動リスクが低いことが示唆された。Journal of the American Heart Association誌2019年8月6日号に掲載。心房細動のハザード比はコーヒー1杯/日が0.85 本研究は、Physicians' Health Study(1万8,960人)に参加した男性医師における前向き調査。コーヒー摂取量は自己申告による食事摂取頻度調査票により評価した。心房細動発症率は年次調査票により評価し、副次サンプルの診療記録により検証した。Cox比例ハザードモデルを用いて心房細動のハザード比と95%信頼区間(CI)を計算した。 コーヒー摂取と心房細動リスクの関連を検討した主な結果は以下のとおり。・平均年齢は66.1歳で、平均追跡期間9年の間に新たに2,098人に心房細動が発症した。・年齢・喫煙・飲酒・運動を調整した心房細動のハザード比(95%CI)は、コーヒー摂取がまれ/なしを基準として、コーヒー1杯/週以下が0.85(0.71~1.02)、2~4杯/週が1.07(0.88~1.30)、5~6杯/週が0.93(0.74~1.17)、1杯/日が0.85(0.74~0.98)、2~3杯/日が0.86(0.76~0.97)、4杯/日以上が0.96(0.80~1.14)であった(p for nonlinear trend=0.01)。・2次解析において、カフェイン摂取量の標準偏差(149mg)変化当たりの心房細動の多変量調整ハザード比(95%CI)は0.97(0.92~1.02)であった。

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第16回 ハザード比の信頼区間ってなに?【統計のそこが知りたい!】

第16回 ハザード比の信頼区間ってなに?「Cox比例ハザードモデルを用いた解析の結果、プラセボに対する製品Aのハザード比は0.8(95%CI:0.68~0.92、p<0.05)であった」。この場合、p値が5%を下回っているため、統計学的有意と判定しています。しかし、最近の臨床試験の論文では、このp値が5%未満(つまりp<0.05)という記載だけでは不十分とされ、もっと正確なp値(たとえばp=0.018)を記載することが求められています。さらに1980年代からは、主要な結果については、効果の大きさに関する95%信頼区間も示すよう義務付けられてきています。95%にした理由は、5%で有意とする検定に対応させているからであり、また、信頼区間をみれば、どの位の効果サイズかを見て取れるからです。■ハザード比の信頼区間信頼区間は“confidence interval”といい、頭文字をとって“CI”といいます。信頼度95%のハザード比の信頼区間を“95%CI”といいます。信頼区間は、あるデータが何万人(母集団)のモノ・人に当てはまるかどうかを分析するものです。100%に当てはまるのではなく、母集団の95%について当てはまるかどうかをみるものです。たとえば「ハザード比が0.8で、95%CIが0.7~0.9」という結果について解釈してみましょう。ハザード比の0.8ですが、別の患者さんを調べたら異なる値になるかもしれません。仮に別の患者さんを調べる臨床試験を100回行ったとすれば、95回は0.7~0.9に収まり、5回は外れるということです。前回(第15回)、ハザード比が「1」を下回れば、製品Aはプラセボに比べ死亡率を低下させる(延命効果がある)といえることを説明しました。ハザード比の95%CIは、100回中95回とほとんどが1を下回っているので、製品Aは延命効果があったと判断します。ハザード比の95%CIが0.9~1.1と1を挟んでいたとします。別の患者を調べたら、ハザード比が1を下回ることもあれば、上回ることもあるということです。1を下回れば効果あり、上回れば効果なしですので、延命効果があったかどうかわからないということになります。表に前回の事例におけるハザード比の95%CIを示します。表 ハザード比と信頼区間(95%CI)処方薬剤の95%CIは0.071~2.116で1を挟んでいるので、製品Aはプラセボに比べ延命効果があったといえません。喫煙の有無の95%CIは0.087~2.654で同じく1を挟んでいます。これにより、非喫煙喫煙に比べ死亡率を低下させるとはいえません。どちらも、この例題では症例数が少なく、両群の有意差はわからなかったといったほうがよいでしょう。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション7 信頼区間とは?セクション8 信頼区間による仮説検定

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加熱式タバコから有害物質は出ない?【新型タバコの基礎知識】第5回

第5回 加熱式タバコから有害物質は出ない?Key Points加熱式タバコから出る有害物質の量は、紙巻タバコと比べて、少ない物質もあるが、そうではない物質もある。加熱式タバコに含まれる有害物質の種類は、紙巻タバコと同様に多い。現在のところ、アイコスやプルーム・テックといった加熱式タバコ製品が今までのタバコ製品よりも害が少ないという証拠はありません。しかし、加熱式タバコから出る有害物質に関する学術論文が次々に発表されてきており、徐々に、加熱式タバコについて判断を下すための資料、科学的根拠、疫学データ等が集まってきています。まず、紙巻タバコの煙に含まれる有害物質について簡単に触れたいと思います。タバコの煙を専用の機械で分析すると、紙巻タバコの煙には、5,000種類以上の化学物質が含まれていることが分かります。そのうちの70種類は、発がん性があるとされている物質です。従来からの紙巻タバコに含まれる代表的な有害物質は、ニコチンや一酸化炭素、ベンゼン、ホルムアルデヒドといったものです。表1は、国際がん研究機関(IARC)や世界保健機関(WHO)がタバコに関して研究および調査すべきと指摘している、代表的な有害物質の一覧です。IARCグループとは、世界的に収集された科学的根拠に基づき発がん性の有無について判定した発がんリスク分類のことであり、グループ1とは十分な証拠があるため「ヒトに対して発がん性がある」と判定されていることを示します。グループ2Bは「ヒトに対する発がん性が疑われる」であり、グループ3は「ヒトに対する発がん性について分類することができない」を指します。WHO-9とは、WHOが2008年にタバコにおいて低減させるべき9つの有害物質として取り上げたものです。2012 年に米国食品医薬品局(FDA)は、タバコ製品やタバコの煙に含有され、害を引き起こす可能性があるとして、93種類の有害物質のリスト(FDAリスト)を発表し、タバコ会社に物質量を測定し報告するように求めました。リストの中のほとんどの物質で発がん性が認められ、呼吸器系や心血管系の障害、胎児の発育や脳の発達への障害を引き起こす物質も含まれています。画像を拡大するでは、加熱式タバコではこれらの有害物質の量はどうなっているのでしょうか?有力な情報源の1つとして、日本の保健医療科学院の欅田らの研究グループによる実験結果があります。基準となる紙巻タバコおよび、アイコス専用スティックから出る有害物質の量が、それぞれ調べられています(表2)。画像を拡大する紙巻タバコ1本あたり、ニコチンが2,100μg、一酸化炭素が33.0mg、ベンゼンが110μg、ホルムアルデヒドが41μg、タバコ特異的ニトロソアミンが 838.2ng、グリセロールが1,800μg、粒子状物質総量(タール)として34mg、出ていることが分かりました。一方、アイコス・スティック1本当たりでは、ニコチンが1,200μg、一酸化炭素が0.44mg、ベンゼンが0.66μg、ホルムアルデヒドが4.8μg、タバコ特異的ニトロソアミンが 70.0ng、グリセロールが4,000μg、粒子状物質総量としては39mg出ていると分かりました。ここでは、まずは、多くの種類の有害物質がアイコスからも検出された、という事実が重要だと考えます。次に、アイコス以外も含めた加熱式タバコと紙巻タバコの比較をみてみましょう。加熱式タバコに含まれる有害物質の量に関する報告は、しばらくの間、タバコ会社からの情報だけでしたが、2017年以降にはタバコ会社とは独立した研究機関から研究成果が報告されるようになってきました。表3は、これまでに報告された加熱式タバコと紙巻タバコに含まれる有害物質の量を比較した文献の結果一覧です。画像を拡大するここでは、8本の文献からの結果を横に並べています。一番左の文献を例として、表の見かたを説明します。Schallerらによる2016年の研究は、タバコ会社のフィリップモリス社の研究者が実施した研究であり、アイコスのレギュラースティック(表中のR.IQOS:メンソールではないもの)および3R4Fという名前の基準となる紙巻タバコのそれぞれから出る有害物質の量をHCI法という分析手法で測定し、基準となる紙巻タバコから出るそれぞれの有害物質の量を100%とした場合にアイコスのレギュラースティックから出る有害物質の量が何%に相当するのか、という値が%で表されています。たとえば、ベンゼンの量は1%未満であり、一酸化炭素は1%、ホルムアルデヒドは11%、ニコチンは73%、グリセロールが203%、粒子状物質総量が122%だったことを示します。100%より小さな値は加熱式タバコから出る物質の量の方が少ないこと、100%より大きな値は加熱式タバコから出る物質の量の方が多いことを表しています。研究機関の欄をみると、タバコ会社の研究が多くを占め、タバコ会社以外ではベルン大学や日本の保健医療科学院で研究が実施されたと分かります。タバコ会社は自社に都合のいい結果だけを報告する場合があり、データを読み解くうえで注意が必要になります。最も多く調べられたアイコス(R.IQOS)の結果について比べてみると、タバコ会社による結果と保健医療科学院での結果で大きな違いは認められません。ベルン大学の研究では他の研究とはやや異なる値が観察されていますが、分析方法の違いがその原因として考えられます。ベルン大学の研究だけ、異なる条件で研究が実施されていたためです。それぞれの化学物質の量(%)をみると、加熱式タバコでは紙巻タバコと比較して、1%未満~1%程度とかなり少ない物質(1,3-ブタジエン、ベンゼン、一酸化炭素など)、3~9%程度に減っている物質(アクロレイン、ベンゾ[a]ピレン、N-ニトロソノルニコチンなど)、10~100%未満と減っている物質(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、ニコチン)、100%前後で同量の物質(粒子状物質総量)、100%以上と増えている物質(水、グリセロール)があることがわかります。一律に有害物質が減少しているわけではないのです。“紙巻タバコと比べて有害物質が約90%低減されている”とのタバコ会社の宣伝文句のとおり、ベンゼンやアクロレインなどは確かに少ないと言えるでしょう(表2、表3)。しかし、ホルムアルデヒドやニコチンなど、そんなに減っていない物質もあることがわかります。さらには、プロピレングリコールやグリセロールなど、加熱式タバコの方がかなり多くなっている物質もあるのです。粒子状物質総量(タール)については、加熱式タバコには紙巻タバコとほぼ同じ量が含まれていました。ただし、ほぼタールが同じ量とは言っても、タールの内容がだいぶ違うことに注意が必要です。加熱式タバコではグリセロールがかなり多くを占めており、プルーム・テックではプロピレングリコールも多いという結果が出ています。このことが意味する健康被害については第7回の記事で説明する予定です。第6回は「加熱式タバコに含まれる未知の物質」です。

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低~中所得国の高血圧ケア、その継続性は?/Lancet

 低~中所得国(LMIC)では、高血圧ケアを継続中の患者が、どの段階でケアを受けなくなるかに関する全国調査のエビデンスが少ない。一方、この情報は、保健医療サービス介入の効果的な対象の設定や、高血圧ケアの改善の進展評価において重要だという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のPascal Geldsetzer氏らは、LMICにおける高血圧ケアの中断の現況を調査・評価し、Lancet誌オンライン版2019年7月18日号で報告した。44のLMICで4段階の高血圧ケアカスケードを評価 研究グループは、44ヵ国のLMICにおいて、ケアの過程(ケアの必要性から治療の成功まで)の個々の段階でその消失を評価することにより、4段階の高血圧ケアカスケード(血圧測定、高血圧の診断、治療、高血圧コントロール)の達成状況を、国別および集団別に検討する目的で、横断研究を実施した(Harvard McLennan Family Fundなどの助成による)。 最新のWHO Stepwise Approach to Surveillance(STEPS)などのデータセットを用いて、44のLMICにおける2005年以降の個人レベルの集団ベースのデータを収集し、統合した。国別および4地域別(中南米/カリブ海、欧州/地中海東岸、東南アジア/西太平洋、サハラ以南のアフリカ)に解析を行った。 高血圧は、血圧が140/90mmHg以上、または高血圧の薬物療法の報告があることとした。高血圧患者のケアカスケードとして、(1)かつて血圧測定を受けた、(2)高血圧と診断された、(3)高血圧で治療を受けた、(4)高血圧のコントロールが達成された者の割合を算出した。 これらの高血圧ケアカスケードを、年齢、性別、教育、世帯収入、BMI、喫煙状況、国、地域別に評価した。線形回帰モデルを用いて、各カスケードの段階別に、1人当たり国内総生産(GDP)に基づく国のパフォーマンスを推定することで、パフォーマンスが95%予測区間(prediction interval)の範囲外の国を同定した。血圧測定73.6%、診断39.2%、治療29.9%、コントロール10.3% 110万507例(年齢中央値39.5歳[範囲34.8~44.5]、女性割合中央値58.2%[53.2~62.5])が解析の対象となった。このうち19万2,441例(17.5%)が高血圧であった。 高血圧患者のうち、73.6%(95%信頼区間[CI]:72.9~74.3)が血圧測定を受けたことがあり、39.2%(38.2~40.3)が調査以前に高血圧と診断されており、29.9%(28.6~31.3)が治療を受け、10.3%(9.6~11.0)で高血圧のコントロールが達成されていた。 中南米/カリブ海地域は、4つのケアカスケードすべての割合が最も高く、サハラ以南のアフリカは4つすべてが最も低かった。高血圧コントロールの達成率が5%未満の国の割合は、サハラ以南のアフリカ地域が16ヵ国中10ヵ国(63%)であったのに対し、東南アジア/西太平洋地域は8ヵ国中3ヵ国(38%)、欧州/地中海東岸地域は10ヵ国中1ヵ国(10%)、中南米/カリブ海は10ヵ国中0ヵ国(0%)だった。 4つのすべてのケアカスケードの達成が、調査年の1人当たりGDPに基づく予測値を実質的に上回っていたのは、バングラデシュ、ブラジル、コスタリカ、エクアドル、キルギス、ペルーであった。これに対し、4つのカスケードがすべて予測値を有意に下回っていたのは、アルバニア、インドネシア、タンザニア、ウガンダ、南アフリカ共和国だった。 女性、年齢が高い、調査時に非喫煙、世帯収入が多いことは、単変量および多変量解析の双方で、4つのケアカスケードの達成と正の相関を示した。また、学歴が高いことは、多変量解析において4つのケアカスケードの達成との関連が認められた。 著者は、「今回の研究は、LMICにおける高血圧の保健医療の施策やサービスの計画および対象設定に関して、重要なエビデンスをもたらす」とし、「LMICの中には他のLMICに比べ実質的に高血圧ケアカスケードの達成が良好な国が存在する理由や、異なる環境でケアカスケードを最も効果的に改善する方策を知るには、さらなる研究が求められる」と指摘している。

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新型タバコで急性好酸球性肺炎になった人【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第144回

新型タバコで急性好酸球性肺炎になった人いらすとやより使用急性好酸球性肺炎(AEP)といえば、初めて喫煙をした若い男性が起こす強いアレルギー性肺炎で、末梢血や気管支肺胞洗浄液中の好酸球比率は数十%に及びます。全身性ステロイド投与によって著明に改善するので、予後は極めて良いです。呼吸器内科医としては、「初めての喫煙」というキーワードで必ず鑑別に挙げなければならない疾患です。基本的には燃焼式の紙巻きたばこによって起こるのですが、電子タバコや加熱式タバコでも起こりうるという症例が報告されています。Thota D, et al.Case report of electronic cigarettes possibly associated with eosinophilic pneumonitis in a previously healthy active-duty sailor.J Emerg Med. 2014;47:15-17.1例目はこれまで既往歴のない水兵さんです。電子タバコを吸った直後にAEPになり、ステロイドと抗菌薬で治療されました。海外の電子タバコは、日本では基本的に輸入以外では用いられず、加熱式タバコとは別物です。海外では、リキッドタイプのものが主流です。Arter ZL, et al.Acute eosinophilic pneumonia following electronic cigarette use.Respir Med Case Rep. 2019;27:100825.2例目は、電子たばこを吸い始めて2ヵ月目に呼吸不全で救急搬送された18歳女性です。ICUに入室するほどひどい状態でしたが、ステロイド投与してわずか6日目に退院したそうです。Kamada T, et al.Acute eosinophilic pneumonia following heat-not-burn cigarette smoking.Respirol Case Rep. 2016;4:e00190.3例目は、加熱式タバコによって起こった急性好酸球性肺炎の日本の症例報告です。加熱式タバコ開始から6ヵ月後に急性好酸球性肺炎を起こし、入院しました。加熱式タバコによる急性好酸球性肺炎は、実はこの症例が世界初の報告とされています。内因性に急性好酸球性肺炎を起こしやすい患者さんが、たまたま偶発的に新型タバコを始めた後に同疾患を発症したのかどうかは、疫学的研究を立案しないことにはわかりません。ですが呼吸器内科医としては、紙巻きタバコを止められないときの代替案として新型タバコを提示したくはないですね。

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アジアの非喫煙女性の肺腺がんの危険因子

 アジアの非喫煙女性において、結核が肺がん発生の危険因子であることを支持する研究結果が、米国・国立がん研究所のJason Y. Y. Wong氏らにより報告された。この研究は、Female Lung Cancer Consortium in Asiaにおける結核ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を用いて、結核への遺伝的な感受性が非喫煙者の肺腺がん発生に影響するかどうか調査したものである。Genomics誌オンライン版2019年7月12日号に掲載。 本研究では、5,512例の肺腺がん症例と6,277例のコントロールのGWASデータを使用し、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連をadaptive rank truncated product法によるパスウェイ解析を用いて評価した。なお、遺伝子セットは、以前の結核GWASでの遺伝的変異体と関連が知られている、もしくは示唆される31個の遺伝子から成る。続いて、以前の東アジアの結核GWASでの3つのゲノムワイドの有意な変異体を用いて、メンデルランダム化により結核と肺腺がんとの関連を評価した。 その結果、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連が認められた(p=0.016)。さらに、メンデルランダム化で、結核と肺腺がんとの関連が示された(OR:1.31、95%CI:1.03~1.66、p=0.027)。

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加熱式タバコが“有害性物質90%カット”となぜ言えるのか

 加熱式タバコの一部のパンフレットには、購入者に対し、健康被害が大幅に低下するような“誤解”を与える表現で売り出している製品がある。しかし、これらの広告は規制されていない。これは一体なぜなのか。このからくりについて、2019年6月20日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで飯田 真美氏(岐阜県総合医療センター 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会長)が解説。原 眞純氏(帝京大学医学部附属溝口病院 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会員)は「タバコと動脈硬化」として、古くも新しい話題について講演した。マイルド・ライトなタバコの小さな細工 タバコ煙は気体と粒子の混合物で、その中には5,300種類以上の化学物質、約70種類の発がん性物質(多環芳香族炭化水素など)が含まれる。燃焼式タバコにはマイルド・ライトなどと毒性の軽さをうたっている製品もあるが、タバコ葉1gに含まれるニコチンなどの実際量は、同系統の製品であればほぼ同じだという。ニコチン・タール量の国際的な測定法では、燃焼するタバコを機械で吸引し、その中のニコチン・タール含有量を測定する。旧来の製品にはフィルター部分に孔がないのに対し、マイルド・ライトなどの表記があるものにはフィルター根元に細かい小さな孔が空いているので、吸入時に外の空気が孔に入り込み、ニコチン・タール量が希釈される。その結果、測定量として小さい数値を箱に記載することができる。あたかもマイルド・ライトな燃焼式タバコを吸って健康を気遣っているようでも、「その人にとって必要なニコチン量が存在し、深く吸う、長く肺にためるなど、知らず知らずのうちに必要量を摂取している」と飯田氏は述べた。加熱式タバコの実際の有害物質含有量 『有害性物質、約90%オフ』と書いてあるパンフレットの詳細を見ると、実は「“有害物質約90~95%オフ”、“9つの有害性物質を紙巻きタバコに比べて大幅に削減”の表現は、本製品の健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」などの逃げ道が書かれているという。誇大広告と捉えかねない製品も、こんな一言でうまく規制から逃れているのである。 では、実際の有害物質含有量はどうなのか。同氏が示した加熱式タバコ(IQOS)と紙巻タバコの研究結果1)によると、IQOS1本あたりの有害物質の各成分量は、ホルムアルデヒド74%、アセトアルデヒド22%、ニコチン84%であった。一酸化炭素や二酸化炭素については、加熱式タバコにも少量含まれているが、燃焼していないため非常に少ない割合であった。 2019年5月、FDAは米国において加熱式タバコ(商品名:IQOS、フィリップモリス)の販売を許可。米国ではすでに新型タバコと呼ばれる種々の製品が販売されていたが、電気加熱式タバコ製品の販売許可はこれが初であった。これに対し、動脈硬化学会は「この承認は安全性を担保したものではない」と、前述の結果を踏まえてコメント。飯田氏も「加熱式タバコは、煙以外の何物でもない」と警告した。加熱式タバコでは有害な成分が呼出されている 過去15年間にオリンピックが開催された都市でのタバコ規制をみると、法律、州法、市条例によって全面禁煙が定められている。しかし、2020年にオリンピックを控えた日本において、屋内施設100%完全禁煙に対する整備は発展途上である。原氏は、兵庫県神戸市での受動喫煙防止条例施行前後における急性冠症候群の発生数に関するデータ2)を示し、「条例が施行される前後で発生患者数が年間895例から830例に減少した」と説明。また、「全世界の論文を分析したところ、禁煙に対する法律を規定する範囲(職場~レストラン~居酒屋・バー)が広くなるほど、受動喫煙率が低下し動脈硬化性疾患や呼吸器疾患が最大39%も減少した」とし、「動脈硬化性疾患の予防・治療には、受動喫煙を避けることが必須。正確な情報伝達・啓発が必要 」と訴えた。飯田氏は「自宅では紙巻きタバコ、外では加熱式タバコの両方を使用するデュアルユーザーも多く存在する。加熱式タバコであれば禁煙場所でも吸えると考えるユーザーも多いが、発がん性のある有害な成分が呼出されている」と、目に見えにくいリスクについても説明した。 日本はWHOタバコ規制枠組条約(FCTC)の締結国である。それにもかかわらず、完全禁煙はいまだ達成されていない。両氏はタバコ規制枠組条約に則った、日本での屋内完全禁煙の実現を強く求めた。

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認知症発症に生活様式と遺伝的リスクはどう関連?/JAMA

 認識機能障害および認知症のない高齢者において、好ましくない生活様式と高い遺伝的リスクの双方によって認知症リスクは増加し、同じ遺伝的リスクが高い集団であっても、生活様式が好ましい群はリスクが低いことが、英国・エクセター大学のIlianna Lourida氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年7月14日号に掲載された。遺伝的要因により認知症リスクは増加することが知られている。一方、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかは明らかになっていない。多遺伝子性リスクと健康的な生活様式で認知症リスクを評価 研究グループは、健康的な生活様式は遺伝的リスクとは無関係に認知症リスクを低減するか評価することを目的に、後ろ向きコホート研究を行った(英国・UK Biobankの助成による)。 英国の人口ベースのコホートであるUK Biobank(登録期間2006~10年)の参加者のうち、ベースライン時に認識機能障害および認知症のない60歳以上の欧州系の地域住民を対象とし、2016年または2017年まで追跡した。 アルツハイマー病と認知症に関連する一般的な遺伝的バリアントの負荷を表す多遺伝子性リスクスコアを構築し、五分位に基づき遺伝的リスクを3段階に分類した(低リスク:第1[最低]五分位、中リスク:第2~4五分位、高リスク:第5[最高]五分位)。 健康的な生活様式の重み付きスコアは、4つの十分に確立された認知症リスク因子からなる指標(非喫煙、定期的な身体活動、健康的な食事、中等度のアルコール摂取)に基づき3段階に分類した(好ましい:健康的な生活様式因子の数が3または4つ、中間的:同2つ、好ましくない:同0または1つ)。 主要アウトカムは、全原因による認知症の新規発症とし、病院の入院/死亡記録で確認した。遺伝的リスクを問わず、健康的な生活様式は認知症リスクを低減 19万6,383例(平均年齢64.1[SD 2.9]歳、女性52.7%)が解析に含まれた。観察人年は154万5,433人年(フォローアップ期間中央値8.0年[IQR:7.4~8.6])で、この間に1,769例が認知症を発症した。 生活様式は、「好ましい」が68.1%、「中間的」が23.6%、「好ましくない」が8.2%であった。遺伝的リスクは、高リスクが20%、中リスクが60%、低リスクが20%だった。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、1.23%(95%信頼区間[CI]:1.13~1.35)が認知症を発症し、これは低リスク集団の発症率0.63%(0.56~0.71)と比較して有意に高かった(補正後ハザード比[HR]:1.91、1.64~2.23、p<0.001)。また、中リスク集団も、低リスク集団に比べ認知症リスクが有意に高かった(1.37、1.20~1.58、p<0.001)。 生活様式が好ましくない参加者のうち、1.16%(95%CI:1.01~1.34)が認知症を発症し、好ましい集団の発症率0.82%(0.77~0.87)に比べ有意に高かった(補正後HR:1.35、1.15~1.58、p<0.001)。中間的集団も、好ましい集団に比し認知症リスクが有意に高かった(1.17、1.04~1.31、p<0.009)。遺伝的リスクが高い集団では生活様式が好ましい群は認知症リスクが低い 遺伝的リスクが高リスクかつ生活様式が好ましくない参加者のうち、1.78%(95%CI:1.38~2.28)が認知症を発症し、低リスクかつ生活様式が好ましい集団の発症率0.56%(0.48~0.66)に比べ有意に高かった(補正後HR:2.83、2.09~3.83、p<0.001)。また、重み付けされた健康的な生活様式スコアと、多遺伝子性リスクスコアには、有意な相互作用は認めなかった(p=0.99)。これは、生活様式因子と認知症の関連は、遺伝的リスクに基づいて実質的に変化しなかったことを示す。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、生活様式が好ましい集団の認知症発症率は1.13%(95%CI:1.01~1.26)であり、好ましくない集団の1.78%(95%CI:1.38~2.28)と比較して有意に低かった(0.68、0.51~0.90、p=0.008)。 著者は、「遺伝的リスクが高い集団では、生活様式が好ましい群は好ましくない群よりも認知症リスクが低いことが示された」とまとめ、「この集団の生活様式が好ましい群における認知症の絶対リスク低減率は0.65%であり、これは生活様式が原因の場合、10年間で遺伝的リスクが高い集団に属する生活様式が好ましくない121例を好ましい生活様式に改善することで、1例の認知症が予防可能であることを意味する」としている。■「アルコールと認知症」関連記事日本人高齢者におけるアルコール摂取と認知症

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前立腺がんに対する重粒子線治療の有益性に関するエビデンス/Lancet Oncol

 前立腺がんに対する重粒子(炭素イオン)線治療の有益性に関するエビデンスが日本発で発信された。量子科学技術研究開発機構(NIRS)のOsama Mohamad氏らによる検討の結果、限局性前立腺がんに対する重粒子線治療は、光子線治療よりも2次がんリスクが低いと思われる所見が示されたという。これまでに、絶対数は少ないが光子線治療は手術を受けた患者よりも2次がんリスクが高いことが示されていた。重粒子線治療は、理論的には光子線治療よりも2次がんの誘発リスクは低いが、世界的にオファーが少なく、入手できるデータも1994年以降のものと限定的であり臨床研究が進んでいなかった。著者は「結果の裏付けには長期に追跡した前向き評価が必要であるが、今回示されたデータは、通常治療後の全生存期間(OS)が長期と予想される患者、反対に不良なアウトカムを有する患者に対し、広く重粒子線治療を適用することを支持するものである」と述べている。Lancet Oncology誌2019年5月号掲載の報告。重粒子線治療は光子線治療や手術よりも2次がんのリスクが有意に低い 研究グループは、後ろ向き傾向スコア重み付けコホート研究にて、限局性前立腺がん患者の重粒子線治療後の2次がんリスクについて、光子線療法後または手術後患者と比較する検討を行った。 日本のNIRSにて、1995年6月27日~2012年7月10日に前立腺がんで重粒子線治療を受けた患者の記録をレビューすると共に、1994年1月1日~2012年12月31日に前立腺がんの診断および治療を受けた大阪府がん登録の患者の記録を抽出して評価した。組織学的に限局性前立腺がんと確認されており、少なくとも3ヵ月間フォローアップを受けていた患者(年齢制限なし)を適格とした。転移、リンパ節転移陽性、浸潤転移(T4ステージ)を認める患者、悪性腫瘍の既往がある、または同時性がんの患者、放射線療法または化学療法を受けたことがある患者は除外した。 多変量解析にて、重粒子線治療後の2次がんの予測因子を推定し、傾向スコア逆重み付け法にて後ろ向きに、限局性前立腺がん患者における重粒子線治療vs.光子線治療vs.手術後の2次がん発生率を比較した。 前立腺がんで重粒子線治療を受けた患者の記録をレビューした主な結果は以下のとおり。・NIRSで前立腺がんの重粒子線治療を受けた患者は1,580例であった。そのうち1,455例(92%)が試験の適格条件を満たした。・大阪府がん登録では前立腺がん患者3万8,594例が特定された。そのうち光子線療法を受けた1,983例(5%)と、手術を受けた5,948例(15%)を解析に包含した。・追跡期間中央値は、重粒子線治療群7.9年(5.9~10.0)、光子線治療群5.7年(4.5~6.4)、手術群6.0年(5.0~8.6)であった。・重粒子線治療群で2次がんが診断されたのは234例であった。一部の患者は複数の腫瘍を呈した。・多変量解析の結果、重粒子線治療群の2次がんの高リスク因子と関連していたのは、年齢(71~75歳vs.60歳以下のp=0.0021、75歳超vs.60歳以下のp=0.012)、喫煙(p=0.0005)であった。・傾向スコア重み付け解析の結果、重粒子線治療群は光子線治療群よりも2次がんのリスクが有意に低かった(HR:0.81、95%CI:0.66~0.99、p=0.038)。また、手術群と比べても有意に低かった(0.80、95%CI:0.68~0.95、p=0.0088)。・一方で、光子線治療群は手術群よりも、2次がんのリスクが有意に高かった(HR:1.18、95%CI:1.02~1.36、p=0.029)。

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新型タバコも禁煙外来でやめられる?【新型タバコの基礎知識】第4回

第4回 新型タバコも禁煙外来でやめられる?Key Points加熱式タバコをやめるために禁煙外来・禁煙治療を受けることは可能。CO測定値を記録する欄に、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばよい。喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコと同等に扱ってもよいと考えられる。新型タバコの登場によって、禁煙外来の現場でも混乱が起きているようです。禁煙外来では、受診者における前日から当日の喫煙状況を反映する指標として、「呼気一酸化炭素濃度検査」が実施されています。紙巻タバコに含まれる代表的な有害物質の1つが、一酸化炭素(CO)です。一酸化炭素は赤血球のヘモグロビンと結合し、CO-Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)となります。酸素もヘモグロビンと結合して全身に運ばれますが、一酸化炭素は酸素よりもヘモグロビンと結合しやすく、一酸化炭素があるとヘモグロビンと酸素の結合が妨げられ、酸欠状態が生じます。喫煙により息切れや虚血性心疾患が生じる原因の1つが、一酸化炭素なのです。ハンディタイプの測定器を使えば、簡単に呼気一酸化炭素濃度を測定でき、結果が即座に表示画面に数字で示されるので、禁煙の動機付けに役立ちます。また、呼気一酸化炭素濃度は半減期が3~5 時間と短く、禁煙後すぐに正常値に戻るので、禁煙を維持する励みとしても用いることができます。しかし、加熱式タバコを吸っているケースでは、呼気一酸化炭素濃度を測定してもその数値は上がりません。そのため、加熱式タバコを吸っている場合には、禁煙外来で禁煙治療を受けることができないとの誤解をしている医療者が多くいるようなのです。しかし、それは誤解です。加熱式タバコを吸っている場合に、加熱式タバコをやめるために禁煙治療を受けることは可能です。禁煙外来における保険診療は、ニコチン依存症に対する治療(ニコチン依存症管理料)です。加熱式タバコにも紙巻タバコとほぼ同等のニコチンが含まれており(第3回参照)、加熱式タバコを吸っている者もニコチン依存症であり、保険適用とすることが可能です。一酸化炭素測定値を記録する欄には、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばOKです。保険適用の条件に、「呼気一酸化炭素濃度の数値が高いこと」は含まれませんのでご心配なく。また、喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコの本数と同等に扱ってもよいものと考えられます(図)。ただしプルーム・テックの場合には、カプセルの個数を記録しておくとよいでしょう。JTはプルーム・テック用のタバコカプセル5個をタバコ20本相当としていますが、まだこれに関してのコンセンサスは得られていません。画像を拡大する保険適用上は問題がないとしても、喫煙量や喫煙状況を客観的に確認する方法として、加熱式タバコの場合には呼気一酸化炭素濃度検査が有効にはたらかないという問題が存在します。今後、呼気一酸化炭素濃度検査の代わりに、喫煙もしくは禁煙していることを確認するための簡便な方法を模索していく取り組みを進めていきたいと考えています。第5回は、「加熱式タバコから有害物質は出ない?」です。

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第15回 ハザード比は何を表しているか?【統計のそこが知りたい!】

第15回 ハザード比は何を表しているか?臨床試験で生存曲線の差を評価するときには、ハザード比がよく使用されます。今回は「ハザード比」を学習します。■ハザード比の解釈ハザード比は、説明変数が1単位増加するときのアウトカム発生までの時間が何倍かかるかを表します。ハザード比は「1」が基準となり、「1」の場合は説明変数の値が変化しても、アウトカム発生までの時間に変化はないことを意味し、「1」より大きい場合はリスクが高くなり、「1」より小さい場合はリスクが小さくなることを表しています。ハザード比が「1」を超えている場合は、「死亡や病状進行のリスクが対照群に比べて○○%高くなる」ということになります。逆に、ハザード比が「1」を超えていない場合は、「死亡や病状進行のリスクが対照群に比べて○○%低くなる」ということになります。■ハザード比を算出してみるそれでは、表1から目的変数(アウトカム)を「1:死亡、0:打ち切り」、説明変数を処方薬剤、喫煙の有無としてCox比例ハザードモデルを適用し、処方薬剤、喫煙の有無のハザード比を求めてみましょう。目的変数(アウトカム)は、死亡(再発)など危険要素を1、ほかを0とします。説明変数が2分類のカテゴリーデータの場合、死亡率が低いと仮定するほうを1、ほかを0とします。製品A、非喫煙を1としました。表1 事例の基礎データ■ハザード比の結果表2に関係式の回帰係数とハザード比を示します。関係式の回帰係数とハザード比ハザード比は、次式によって求められる値です。ハザード比=e回帰係数ただし、eは自然対数の底で、2.7183…です。【計算例】薬剤のハザード比=e-0.950=0.387Excelの関数=EXP(-0.950)Cox比例ハザードモデルを使って目的を解明する場合、危険度の高さを示す回帰係数でなく、ハザード比を用います。ハザード比から、説明変数がアウトカムに対して、どれくらい寄与しているかを調べることができます。たとえば説明変数が、「治療方法P、治療方法Q」の場合、ハザード比からアウトカム発生確率(死亡率)は、PはQに比べ何倍高いかを示せます。また、3年間の観察期間において、アウトカムが「1:死亡、0:打ち切り」のハザード比が「1.5」だったとします。この場合の解釈は、「治療方法Pは、Qに比べ、3年の間に死亡する度合いは1.5倍高い」となります。つまり治療方法Pは、Qに比べ、良くないということです。この例題のハザード比は「0.387」で「1」を下回りました。この場合の解釈は、「アウトカム発生確率(死亡率)は、製品Aがプラセボに比べ0.387倍高い」となります。つまり製品Aはプラセボに比べ、死亡率を61.3%(=1-0.387)減少させ、製品Aの延命効果はあったと解釈されるのです。喫煙の有無のハザード比は0.480なので、非喫煙喫煙に比べ死亡率を52.0%減少させたと解釈できます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション4 カプランマイヤー法の生存曲線を比較する第4回 ギモンを解決!一問一答質問8 Cox比例ハザードモデルとは?(その1)質問8(続き) Cox比例ハザードモデルとは?(その2)

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青少年の電子タバコと喫煙の増加、北米とイングランドで差/BMJ

 2017~18年の期間に、カナダと米国では青少年におけるベイピング(発生させた蒸気[vapor]を吸引する)電子タバコの使用が増加し、カナダでは可燃性タバコの喫煙も増加している一方、イングランドではこれらの使用に関してほとんど変化がないことが、カナダ・ウォータールー大学のDavid Hammond氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年6月20日号に掲載された。ベイピングは、可燃性タバコの煙を吸引するのと比べて、ニコチン送達の有害性が最も低くなるとされる。しかし、毒性物質の量や毒性の程度は低いが、長期曝露によりニコチン依存を引き起こす可能性や、呼吸器や心血管の健康リスクに影響を及ぼす可能性が示唆されている。北米では新世代のベイピング製品として、ニコチン塩を用いた「JUUL」のような高ニコチン濃度の製品が登場しているが、ニコチン塩製品への市場移行の影響はほとんど知られていない。2018年にはカナダでも規制緩和が進められ、ベイピング製品の市場開拓が進んでいるという。16~19歳の約2万4,000例について、オンライン反復横断調査 研究グループは、カナダ、イングランド、米国の青少年におけるベイピングと喫煙の使用状況の違いを評価する目的で、反復横断調査を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 カナダ(7,891例)、イングランド(7,897例)、米国(8,140例)の16~19歳を対象に、2017年7~8月と2018年8~9月の2回、オンラインによる調査を実施した。 ベイピングと喫煙の使用の有無、過去30日および1週間以内の使用、過去1ヵ月のうち15日以上の使用の割合について評価した。JUULおよび他の一般的なベイピング製品の検討も行った。規制緩和が進んだカナダと米国では、常習性も拡大 ベイピングの使用割合は、非喫煙者と試行的喫煙者(生涯の喫煙本数が100本未満)を含め、2017年と2018年ではカナダと米国で、過去30日(カナダ:8.4%→14.6%、米国:11.1%→16.2%)、過去1週間(5.2%→9.3%、6.4%→10.6%)、過去1ヵ月のうち15日以上(2.1%→3.6%、3.0%→5.2%)が、いずれも有意に増加した(すべてp<0.001)。イングランドでは、それぞれ8.7%→8.9%、4.6%→4.6%、2.0%→2.2%と、ほとんど変化しなかった。 喫煙の割合は、2017年と2018年ではカナダで、過去30日(10.7%→15.5%)、過去1週間(7.6%→11.9%)、過去1ヵ月のうち15日以上(4.8%→7.4%)のいずれもが有意に増加した(すべてp<0.001)。イングランドでわずかに増加が認められたが(それぞれ、15.6%→16.4%、9.8%→11.3%、5.0%→6.4%)、米国ではほぼ変化がなかった(それぞれ、11.0%→12.2%、8.5%→8.8%、4.6%→5.1%)。 ベイピングの使用者のうち、2017年に比べ2018年で、より常習的に使用するようになったと回答した者の割合は、カナダと米国では、過去30日(カナダ:28.8%→39.5%、米国:35.4%→48.1%)、過去1週間(17.6%→25.0%、20.4%→31.6%)、過去1ヵ月のうち15日以上(7.2%→9.7%、9.7%→15.4%)のいずれにおいても有意に増加した(すべてp<0.01)。一方、イングランドではいずれも増加はしたが有意ではなかった(それぞれ、25.8%→27.1%、13.7%→13.9%、5.9%→6.8%)。また、カナダでは喫煙についても、2018年で使用頻度が高くなったと回答した者の割合が、それぞれ有意に増加した(p<0.001、p<0.001、p=0.002)。 過去30日にベイピングを使用した集団におけるJUULの使用割合は、米国では2017年の9.4%から2018年には28.1%へと約3倍に増加し、2017年は0%だったカナダとイングランドでは、2018年にはそれぞれ10.3%および3.3%への増加であった。 著者は、「イングランドで変化が小さいのは、おそらく、欧州タバコ製品指令(Tobacco Products Directive:TPD)による市場制限とニコチン量の上限規制の結果と考えられる」とし、「急速に進展するベイピング市場およびニコチン塩ベースの製品の出現に対して、徹底した監視が必要である」と指摘している。

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加熱式タバコには、ニコチンは含まれない?【新型タバコの基礎知識】第3回

第3回 加熱式タバコには、ニコチンは含まれない?Key Points加熱式タバコには、紙巻タバコとほとんど変わらないレベルのニコチンが含まれている。紙巻タバコと同じように、加熱式タバコによってニコチン依存症が維持される。加熱式タバコは、従来からの紙巻タバコのようにタバコの葉に直接火をつけるのではなく、タバコの葉を加熱してニコチン等を含んだエアロゾルを発生させる方式のタバコです。ニコチンはタバコをやめられなくする依存性物質で、タバコを吸うとおよそ5分で血液中のニコチン濃度が最大になりますが、吸っていないとすぐに濃度は低下していきます(ニコチンの体内半減期は1~2 時間)。喫煙者はニコチン依存症となり、ニコチン濃度を維持するために断続的にタバコを吸うようになります。ニコチンは血管収縮などを介して循環器系疾患のリスクを高めるとともに、脳の発達に害を及ぼすことも知られています。加熱式タバコに含まれるニコチンの量は製品による違いがあり、紙巻タバコのニコチン量を100%とすると、プルーム・テックでは13%、グローでは23~27%、アイコスでは57~84%と報告されています(表)。製品による程度の違いはあるものの、すべての加熱式タバコにニコチンが含まれています。画像を拡大する加熱式タバコ(アイコス)を吸った場合に、体内のニコチン濃度がどうなるのか、図のとおり、フィリップモリス社による研究の結果が報告されています。縦軸がニコチンの血中濃度であり、横軸はタバコを吸ってからの時間が分を単位として示されています。グラフの形を見てください。加熱式タバコ(アイコス)と紙巻タバコで、ほとんど同じ形をしています。要するに、加熱式タバコ(アイコス)でも紙巻タバコと同じようにニコチンが体に吸収されるということです。これは、紙巻タバコと同じように、加熱式タバコ(アイコス)によってニコチン依存症が維持されるということを意味しています。画像を拡大するこのニコチン依存症がいかに恐ろしい病態なのかについては、拙著「新型タバコの本当のリスク」の第5章第4節で詳細に説明しておりますので、興味のある方はぜひご覧ください。 第4回は、「新型タバコも禁煙外来でやめられる?」です。1)Simonavicius E et al. Tob Control. 2018 Sep 4. [Epub ahead of print]2)Uchiyama S et al. Chem Res Toxicol. 2018;31:585-593.3)Bekki K et al. J UOEH. 2017;39:201-207.4)Picavet P et al. Nicotine Tob Res. 2016;18:557-563.

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