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認知症リスクに50歳での心血管健康度が関連/BMJ

 中年期に推奨される心血管健康スコア「ライフ シンプル7」の順守が、晩年における認知症リスク低下と関連していることが明らかにされた。「ライフ シンプル7」では、生活習慣や血糖値、血圧など7つの項目をスコア化し心血管リスクの指標としている。フランス・パリ大学のSeverine Sabia氏らが、約8,000例を約25年間追跡した、前向きコホート試験により明らかにし、BMJ誌2019年8月7日号で発表した。心血管健康スコアの値で3つに分類 研究グループは、ロンドンの公務員を対象に行われたWhitehall II試験(1985~88年に登録)の参加者で、50歳時点における心血管健康スコアのデータがあった7,899例を対象に前向き試験を行った。 心血管健康スコアは、4つの行動指標(喫煙、食事、身体活動、BMI)と3つの生物学的指標(空腹時血糖、血中コレステロール、血圧)を3ポイント尺度(0、1、2)でコード化し、7つの指標(スコア範囲:0~14)の合計から心血管健康が低い(0~6)、中程度(7~11)、最適(12~14)に分類した。 主要評価項目は、2017年までの認知症の発症、入院、精神医療サービスの利用、死亡であった。心血管健康スコア1ポイント増加で認知症リスク1割低減 追跡期間中央値24.7年の間に、347例の認知症が記録された。 心血管健康が低い群における認知症罹患率3.2/1,000人年(95%信頼区間[CI]:2.5~4.0)に対して、中程度群の同罹患率の絶対率差は-1.5/1,000人年(同:-2.3~-0.7)で、最適群の絶対率差は-1.9/1,000人年(同:-2.8~-1.1)だった。 心血管健康スコアの高値は、認知症リスク低下と関連が認められた(心血管健康スコア1ポイント増加当たりのハザード比[HR]:0.89[95%CI:0.85~0.95])。同様の関連は、行動および生物学的サブスケールにおいても認められた(それぞれHR:0.87[95%CI:0.81~0.93]、0.91[0.83~1.00])。 追跡期間中に心血管疾患を発症しなかった人についても、50歳時点での同スコアと認知症リスクとの関連について、同様の傾向が認められた(心血管健康スコア1ポイント増加当たりの認知症HR:0.89[0.84~0.95])。

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心房細動リスクが低いコーヒー摂取量~医師1万9千人の調査

 発作性心房細動患者ではコーヒー摂取が心房細動のトリガーとしてしばしば報告されているが、コーヒー摂取と心房細動リスクの関連を検討した前向き研究の結果は一貫していない。今回、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVijaykumar Bodar氏らが男性医師で調査したところ、1日1~3杯のコーヒー摂取で心房細動リスクが低いことが示唆された。Journal of the American Heart Association誌2019年8月6日号に掲載。心房細動のハザード比はコーヒー1杯/日が0.85 本研究は、Physicians' Health Study(1万8,960人)に参加した男性医師における前向き調査。コーヒー摂取量は自己申告による食事摂取頻度調査票により評価した。心房細動発症率は年次調査票により評価し、副次サンプルの診療記録により検証した。Cox比例ハザードモデルを用いて心房細動のハザード比と95%信頼区間(CI)を計算した。 コーヒー摂取と心房細動リスクの関連を検討した主な結果は以下のとおり。・平均年齢は66.1歳で、平均追跡期間9年の間に新たに2,098人に心房細動が発症した。・年齢・喫煙・飲酒・運動を調整した心房細動のハザード比(95%CI)は、コーヒー摂取がまれ/なしを基準として、コーヒー1杯/週以下が0.85(0.71~1.02)、2~4杯/週が1.07(0.88~1.30)、5~6杯/週が0.93(0.74~1.17)、1杯/日が0.85(0.74~0.98)、2~3杯/日が0.86(0.76~0.97)、4杯/日以上が0.96(0.80~1.14)であった(p for nonlinear trend=0.01)。・2次解析において、カフェイン摂取量の標準偏差(149mg)変化当たりの心房細動の多変量調整ハザード比(95%CI)は0.97(0.92~1.02)であった。

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第16回 ハザード比の信頼区間ってなに?【統計のそこが知りたい!】

第16回 ハザード比の信頼区間ってなに?「Cox比例ハザードモデルを用いた解析の結果、プラセボに対する製品Aのハザード比は0.8(95%CI:0.68~0.92、p<0.05)であった」。この場合、p値が5%を下回っているため、統計学的有意と判定しています。しかし、最近の臨床試験の論文では、このp値が5%未満(つまりp<0.05)という記載だけでは不十分とされ、もっと正確なp値(たとえばp=0.018)を記載することが求められています。さらに1980年代からは、主要な結果については、効果の大きさに関する95%信頼区間も示すよう義務付けられてきています。95%にした理由は、5%で有意とする検定に対応させているからであり、また、信頼区間をみれば、どの位の効果サイズかを見て取れるからです。■ハザード比の信頼区間信頼区間は“confidence interval”といい、頭文字をとって“CI”といいます。信頼度95%のハザード比の信頼区間を“95%CI”といいます。信頼区間は、あるデータが何万人(母集団)のモノ・人に当てはまるかどうかを分析するものです。100%に当てはまるのではなく、母集団の95%について当てはまるかどうかをみるものです。たとえば「ハザード比が0.8で、95%CIが0.7~0.9」という結果について解釈してみましょう。ハザード比の0.8ですが、別の患者さんを調べたら異なる値になるかもしれません。仮に別の患者さんを調べる臨床試験を100回行ったとすれば、95回は0.7~0.9に収まり、5回は外れるということです。前回(第15回)、ハザード比が「1」を下回れば、製品Aはプラセボに比べ死亡率を低下させる(延命効果がある)といえることを説明しました。ハザード比の95%CIは、100回中95回とほとんどが1を下回っているので、製品Aは延命効果があったと判断します。ハザード比の95%CIが0.9~1.1と1を挟んでいたとします。別の患者を調べたら、ハザード比が1を下回ることもあれば、上回ることもあるということです。1を下回れば効果あり、上回れば効果なしですので、延命効果があったかどうかわからないということになります。表に前回の事例におけるハザード比の95%CIを示します。表 ハザード比と信頼区間(95%CI)処方薬剤の95%CIは0.071~2.116で1を挟んでいるので、製品Aはプラセボに比べ延命効果があったといえません。喫煙の有無の95%CIは0.087~2.654で同じく1を挟んでいます。これにより、非喫煙喫煙に比べ死亡率を低下させるとはいえません。どちらも、この例題では症例数が少なく、両群の有意差はわからなかったといったほうがよいでしょう。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション7 信頼区間とは?セクション8 信頼区間による仮説検定

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加熱式タバコから有害物質は出ない?【新型タバコの基礎知識】第5回

第5回 加熱式タバコから有害物質は出ない?Key Points加熱式タバコから出る有害物質の量は、紙巻タバコと比べて、少ない物質もあるが、そうではない物質もある。加熱式タバコに含まれる有害物質の種類は、紙巻タバコと同様に多い。現在のところ、アイコスやプルーム・テックといった加熱式タバコ製品が今までのタバコ製品よりも害が少ないという証拠はありません。しかし、加熱式タバコから出る有害物質に関する学術論文が次々に発表されてきており、徐々に、加熱式タバコについて判断を下すための資料、科学的根拠、疫学データ等が集まってきています。まず、紙巻タバコの煙に含まれる有害物質について簡単に触れたいと思います。タバコの煙を専用の機械で分析すると、紙巻タバコの煙には、5,000種類以上の化学物質が含まれていることが分かります。そのうちの70種類は、発がん性があるとされている物質です。従来からの紙巻タバコに含まれる代表的な有害物質は、ニコチンや一酸化炭素、ベンゼン、ホルムアルデヒドといったものです。表1は、国際がん研究機関(IARC)や世界保健機関(WHO)がタバコに関して研究および調査すべきと指摘している、代表的な有害物質の一覧です。IARCグループとは、世界的に収集された科学的根拠に基づき発がん性の有無について判定した発がんリスク分類のことであり、グループ1とは十分な証拠があるため「ヒトに対して発がん性がある」と判定されていることを示します。グループ2Bは「ヒトに対する発がん性が疑われる」であり、グループ3は「ヒトに対する発がん性について分類することができない」を指します。WHO-9とは、WHOが2008年にタバコにおいて低減させるべき9つの有害物質として取り上げたものです。2012 年に米国食品医薬品局(FDA)は、タバコ製品やタバコの煙に含有され、害を引き起こす可能性があるとして、93種類の有害物質のリスト(FDAリスト)を発表し、タバコ会社に物質量を測定し報告するように求めました。リストの中のほとんどの物質で発がん性が認められ、呼吸器系や心血管系の障害、胎児の発育や脳の発達への障害を引き起こす物質も含まれています。画像を拡大するでは、加熱式タバコではこれらの有害物質の量はどうなっているのでしょうか?有力な情報源の1つとして、日本の保健医療科学院の欅田らの研究グループによる実験結果があります。基準となる紙巻タバコおよび、アイコス専用スティックから出る有害物質の量が、それぞれ調べられています(表2)。画像を拡大する紙巻タバコ1本あたり、ニコチンが2,100μg、一酸化炭素が33.0mg、ベンゼンが110μg、ホルムアルデヒドが41μg、タバコ特異的ニトロソアミンが 838.2ng、グリセロールが1,800μg、粒子状物質総量(タール)として34mg、出ていることが分かりました。一方、アイコス・スティック1本当たりでは、ニコチンが1,200μg、一酸化炭素が0.44mg、ベンゼンが0.66μg、ホルムアルデヒドが4.8μg、タバコ特異的ニトロソアミンが 70.0ng、グリセロールが4,000μg、粒子状物質総量としては39mg出ていると分かりました。ここでは、まずは、多くの種類の有害物質がアイコスからも検出された、という事実が重要だと考えます。次に、アイコス以外も含めた加熱式タバコと紙巻タバコの比較をみてみましょう。加熱式タバコに含まれる有害物質の量に関する報告は、しばらくの間、タバコ会社からの情報だけでしたが、2017年以降にはタバコ会社とは独立した研究機関から研究成果が報告されるようになってきました。表3は、これまでに報告された加熱式タバコと紙巻タバコに含まれる有害物質の量を比較した文献の結果一覧です。画像を拡大するここでは、8本の文献からの結果を横に並べています。一番左の文献を例として、表の見かたを説明します。Schallerらによる2016年の研究は、タバコ会社のフィリップモリス社の研究者が実施した研究であり、アイコスのレギュラースティック(表中のR.IQOS:メンソールではないもの)および3R4Fという名前の基準となる紙巻タバコのそれぞれから出る有害物質の量をHCI法という分析手法で測定し、基準となる紙巻タバコから出るそれぞれの有害物質の量を100%とした場合にアイコスのレギュラースティックから出る有害物質の量が何%に相当するのか、という値が%で表されています。たとえば、ベンゼンの量は1%未満であり、一酸化炭素は1%、ホルムアルデヒドは11%、ニコチンは73%、グリセロールが203%、粒子状物質総量が122%だったことを示します。100%より小さな値は加熱式タバコから出る物質の量の方が少ないこと、100%より大きな値は加熱式タバコから出る物質の量の方が多いことを表しています。研究機関の欄をみると、タバコ会社の研究が多くを占め、タバコ会社以外ではベルン大学や日本の保健医療科学院で研究が実施されたと分かります。タバコ会社は自社に都合のいい結果だけを報告する場合があり、データを読み解くうえで注意が必要になります。最も多く調べられたアイコス(R.IQOS)の結果について比べてみると、タバコ会社による結果と保健医療科学院での結果で大きな違いは認められません。ベルン大学の研究では他の研究とはやや異なる値が観察されていますが、分析方法の違いがその原因として考えられます。ベルン大学の研究だけ、異なる条件で研究が実施されていたためです。それぞれの化学物質の量(%)をみると、加熱式タバコでは紙巻タバコと比較して、1%未満~1%程度とかなり少ない物質(1,3-ブタジエン、ベンゼン、一酸化炭素など)、3~9%程度に減っている物質(アクロレイン、ベンゾ[a]ピレン、N-ニトロソノルニコチンなど)、10~100%未満と減っている物質(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、ニコチン)、100%前後で同量の物質(粒子状物質総量)、100%以上と増えている物質(水、グリセロール)があることがわかります。一律に有害物質が減少しているわけではないのです。“紙巻タバコと比べて有害物質が約90%低減されている”とのタバコ会社の宣伝文句のとおり、ベンゼンやアクロレインなどは確かに少ないと言えるでしょう(表2、表3)。しかし、ホルムアルデヒドやニコチンなど、そんなに減っていない物質もあることがわかります。さらには、プロピレングリコールやグリセロールなど、加熱式タバコの方がかなり多くなっている物質もあるのです。粒子状物質総量(タール)については、加熱式タバコには紙巻タバコとほぼ同じ量が含まれていました。ただし、ほぼタールが同じ量とは言っても、タールの内容がだいぶ違うことに注意が必要です。加熱式タバコではグリセロールがかなり多くを占めており、プルーム・テックではプロピレングリコールも多いという結果が出ています。このことが意味する健康被害については第7回の記事で説明する予定です。第6回は「加熱式タバコに含まれる未知の物質」です。

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低~中所得国の高血圧ケア、その継続性は?/Lancet

 低~中所得国(LMIC)では、高血圧ケアを継続中の患者が、どの段階でケアを受けなくなるかに関する全国調査のエビデンスが少ない。一方、この情報は、保健医療サービス介入の効果的な対象の設定や、高血圧ケアの改善の進展評価において重要だという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のPascal Geldsetzer氏らは、LMICにおける高血圧ケアの中断の現況を調査・評価し、Lancet誌オンライン版2019年7月18日号で報告した。44のLMICで4段階の高血圧ケアカスケードを評価 研究グループは、44ヵ国のLMICにおいて、ケアの過程(ケアの必要性から治療の成功まで)の個々の段階でその消失を評価することにより、4段階の高血圧ケアカスケード(血圧測定、高血圧の診断、治療、高血圧コントロール)の達成状況を、国別および集団別に検討する目的で、横断研究を実施した(Harvard McLennan Family Fundなどの助成による)。 最新のWHO Stepwise Approach to Surveillance(STEPS)などのデータセットを用いて、44のLMICにおける2005年以降の個人レベルの集団ベースのデータを収集し、統合した。国別および4地域別(中南米/カリブ海、欧州/地中海東岸、東南アジア/西太平洋、サハラ以南のアフリカ)に解析を行った。 高血圧は、血圧が140/90mmHg以上、または高血圧の薬物療法の報告があることとした。高血圧患者のケアカスケードとして、(1)かつて血圧測定を受けた、(2)高血圧と診断された、(3)高血圧で治療を受けた、(4)高血圧のコントロールが達成された者の割合を算出した。 これらの高血圧ケアカスケードを、年齢、性別、教育、世帯収入、BMI、喫煙状況、国、地域別に評価した。線形回帰モデルを用いて、各カスケードの段階別に、1人当たり国内総生産(GDP)に基づく国のパフォーマンスを推定することで、パフォーマンスが95%予測区間(prediction interval)の範囲外の国を同定した。血圧測定73.6%、診断39.2%、治療29.9%、コントロール10.3% 110万507例(年齢中央値39.5歳[範囲34.8~44.5]、女性割合中央値58.2%[53.2~62.5])が解析の対象となった。このうち19万2,441例(17.5%)が高血圧であった。 高血圧患者のうち、73.6%(95%信頼区間[CI]:72.9~74.3)が血圧測定を受けたことがあり、39.2%(38.2~40.3)が調査以前に高血圧と診断されており、29.9%(28.6~31.3)が治療を受け、10.3%(9.6~11.0)で高血圧のコントロールが達成されていた。 中南米/カリブ海地域は、4つのケアカスケードすべての割合が最も高く、サハラ以南のアフリカは4つすべてが最も低かった。高血圧コントロールの達成率が5%未満の国の割合は、サハラ以南のアフリカ地域が16ヵ国中10ヵ国(63%)であったのに対し、東南アジア/西太平洋地域は8ヵ国中3ヵ国(38%)、欧州/地中海東岸地域は10ヵ国中1ヵ国(10%)、中南米/カリブ海は10ヵ国中0ヵ国(0%)だった。 4つのすべてのケアカスケードの達成が、調査年の1人当たりGDPに基づく予測値を実質的に上回っていたのは、バングラデシュ、ブラジル、コスタリカ、エクアドル、キルギス、ペルーであった。これに対し、4つのカスケードがすべて予測値を有意に下回っていたのは、アルバニア、インドネシア、タンザニア、ウガンダ、南アフリカ共和国だった。 女性、年齢が高い、調査時に非喫煙、世帯収入が多いことは、単変量および多変量解析の双方で、4つのケアカスケードの達成と正の相関を示した。また、学歴が高いことは、多変量解析において4つのケアカスケードの達成との関連が認められた。 著者は、「今回の研究は、LMICにおける高血圧の保健医療の施策やサービスの計画および対象設定に関して、重要なエビデンスをもたらす」とし、「LMICの中には他のLMICに比べ実質的に高血圧ケアカスケードの達成が良好な国が存在する理由や、異なる環境でケアカスケードを最も効果的に改善する方策を知るには、さらなる研究が求められる」と指摘している。

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新型タバコで急性好酸球性肺炎になった人【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第144回

新型タバコで急性好酸球性肺炎になった人いらすとやより使用急性好酸球性肺炎(AEP)といえば、初めて喫煙をした若い男性が起こす強いアレルギー性肺炎で、末梢血や気管支肺胞洗浄液中の好酸球比率は数十%に及びます。全身性ステロイド投与によって著明に改善するので、予後は極めて良いです。呼吸器内科医としては、「初めての喫煙」というキーワードで必ず鑑別に挙げなければならない疾患です。基本的には燃焼式の紙巻きたばこによって起こるのですが、電子タバコや加熱式タバコでも起こりうるという症例が報告されています。Thota D, et al.Case report of electronic cigarettes possibly associated with eosinophilic pneumonitis in a previously healthy active-duty sailor.J Emerg Med. 2014;47:15-17.1例目はこれまで既往歴のない水兵さんです。電子タバコを吸った直後にAEPになり、ステロイドと抗菌薬で治療されました。海外の電子タバコは、日本では基本的に輸入以外では用いられず、加熱式タバコとは別物です。海外では、リキッドタイプのものが主流です。Arter ZL, et al.Acute eosinophilic pneumonia following electronic cigarette use.Respir Med Case Rep. 2019;27:100825.2例目は、電子たばこを吸い始めて2ヵ月目に呼吸不全で救急搬送された18歳女性です。ICUに入室するほどひどい状態でしたが、ステロイド投与してわずか6日目に退院したそうです。Kamada T, et al.Acute eosinophilic pneumonia following heat-not-burn cigarette smoking.Respirol Case Rep. 2016;4:e00190.3例目は、加熱式タバコによって起こった急性好酸球性肺炎の日本の症例報告です。加熱式タバコ開始から6ヵ月後に急性好酸球性肺炎を起こし、入院しました。加熱式タバコによる急性好酸球性肺炎は、実はこの症例が世界初の報告とされています。内因性に急性好酸球性肺炎を起こしやすい患者さんが、たまたま偶発的に新型タバコを始めた後に同疾患を発症したのかどうかは、疫学的研究を立案しないことにはわかりません。ですが呼吸器内科医としては、紙巻きタバコを止められないときの代替案として新型タバコを提示したくはないですね。

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アジアの非喫煙女性の肺腺がんの危険因子

 アジアの非喫煙女性において、結核が肺がん発生の危険因子であることを支持する研究結果が、米国・国立がん研究所のJason Y. Y. Wong氏らにより報告された。この研究は、Female Lung Cancer Consortium in Asiaにおける結核ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を用いて、結核への遺伝的な感受性が非喫煙者の肺腺がん発生に影響するかどうか調査したものである。Genomics誌オンライン版2019年7月12日号に掲載。 本研究では、5,512例の肺腺がん症例と6,277例のコントロールのGWASデータを使用し、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連をadaptive rank truncated product法によるパスウェイ解析を用いて評価した。なお、遺伝子セットは、以前の結核GWASでの遺伝的変異体と関連が知られている、もしくは示唆される31個の遺伝子から成る。続いて、以前の東アジアの結核GWASでの3つのゲノムワイドの有意な変異体を用いて、メンデルランダム化により結核と肺腺がんとの関連を評価した。 その結果、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連が認められた(p=0.016)。さらに、メンデルランダム化で、結核と肺腺がんとの関連が示された(OR:1.31、95%CI:1.03~1.66、p=0.027)。

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加熱式タバコが“有害性物質90%カット”となぜ言えるのか

 加熱式タバコの一部のパンフレットには、購入者に対し、健康被害が大幅に低下するような“誤解”を与える表現で売り出している製品がある。しかし、これらの広告は規制されていない。これは一体なぜなのか。このからくりについて、2019年6月20日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで飯田 真美氏(岐阜県総合医療センター 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会長)が解説。原 眞純氏(帝京大学医学部附属溝口病院 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会員)は「タバコと動脈硬化」として、古くも新しい話題について講演した。マイルド・ライトなタバコの小さな細工 タバコ煙は気体と粒子の混合物で、その中には5,300種類以上の化学物質、約70種類の発がん性物質(多環芳香族炭化水素など)が含まれる。燃焼式タバコにはマイルド・ライトなどと毒性の軽さをうたっている製品もあるが、タバコ葉1gに含まれるニコチンなどの実際量は、同系統の製品であればほぼ同じだという。ニコチン・タール量の国際的な測定法では、燃焼するタバコを機械で吸引し、その中のニコチン・タール含有量を測定する。旧来の製品にはフィルター部分に孔がないのに対し、マイルド・ライトなどの表記があるものにはフィルター根元に細かい小さな孔が空いているので、吸入時に外の空気が孔に入り込み、ニコチン・タール量が希釈される。その結果、測定量として小さい数値を箱に記載することができる。あたかもマイルド・ライトな燃焼式タバコを吸って健康を気遣っているようでも、「その人にとって必要なニコチン量が存在し、深く吸う、長く肺にためるなど、知らず知らずのうちに必要量を摂取している」と飯田氏は述べた。加熱式タバコの実際の有害物質含有量 『有害性物質、約90%オフ』と書いてあるパンフレットの詳細を見ると、実は「“有害物質約90~95%オフ”、“9つの有害性物質を紙巻きタバコに比べて大幅に削減”の表現は、本製品の健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」などの逃げ道が書かれているという。誇大広告と捉えかねない製品も、こんな一言でうまく規制から逃れているのである。 では、実際の有害物質含有量はどうなのか。同氏が示した加熱式タバコ(IQOS)と紙巻タバコの研究結果1)によると、IQOS1本あたりの有害物質の各成分量は、ホルムアルデヒド74%、アセトアルデヒド22%、ニコチン84%であった。一酸化炭素や二酸化炭素については、加熱式タバコにも少量含まれているが、燃焼していないため非常に少ない割合であった。 2019年5月、FDAは米国において加熱式タバコ(商品名:IQOS、フィリップモリス)の販売を許可。米国ではすでに新型タバコと呼ばれる種々の製品が販売されていたが、電気加熱式タバコ製品の販売許可はこれが初であった。これに対し、動脈硬化学会は「この承認は安全性を担保したものではない」と、前述の結果を踏まえてコメント。飯田氏も「加熱式タバコは、煙以外の何物でもない」と警告した。加熱式タバコでは有害な成分が呼出されている 過去15年間にオリンピックが開催された都市でのタバコ規制をみると、法律、州法、市条例によって全面禁煙が定められている。しかし、2020年にオリンピックを控えた日本において、屋内施設100%完全禁煙に対する整備は発展途上である。原氏は、兵庫県神戸市での受動喫煙防止条例施行前後における急性冠症候群の発生数に関するデータ2)を示し、「条例が施行される前後で発生患者数が年間895例から830例に減少した」と説明。また、「全世界の論文を分析したところ、禁煙に対する法律を規定する範囲(職場~レストラン~居酒屋・バー)が広くなるほど、受動喫煙率が低下し動脈硬化性疾患や呼吸器疾患が最大39%も減少した」とし、「動脈硬化性疾患の予防・治療には、受動喫煙を避けることが必須。正確な情報伝達・啓発が必要 」と訴えた。飯田氏は「自宅では紙巻きタバコ、外では加熱式タバコの両方を使用するデュアルユーザーも多く存在する。加熱式タバコであれば禁煙場所でも吸えると考えるユーザーも多いが、発がん性のある有害な成分が呼出されている」と、目に見えにくいリスクについても説明した。 日本はWHOタバコ規制枠組条約(FCTC)の締結国である。それにもかかわらず、完全禁煙はいまだ達成されていない。両氏はタバコ規制枠組条約に則った、日本での屋内完全禁煙の実現を強く求めた。

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認知症発症に生活様式と遺伝的リスクはどう関連?/JAMA

 認識機能障害および認知症のない高齢者において、好ましくない生活様式と高い遺伝的リスクの双方によって認知症リスクは増加し、同じ遺伝的リスクが高い集団であっても、生活様式が好ましい群はリスクが低いことが、英国・エクセター大学のIlianna Lourida氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年7月14日号に掲載された。遺伝的要因により認知症リスクは増加することが知られている。一方、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかは明らかになっていない。多遺伝子性リスクと健康的な生活様式で認知症リスクを評価 研究グループは、健康的な生活様式は遺伝的リスクとは無関係に認知症リスクを低減するか評価することを目的に、後ろ向きコホート研究を行った(英国・UK Biobankの助成による)。 英国の人口ベースのコホートであるUK Biobank(登録期間2006~10年)の参加者のうち、ベースライン時に認識機能障害および認知症のない60歳以上の欧州系の地域住民を対象とし、2016年または2017年まで追跡した。 アルツハイマー病と認知症に関連する一般的な遺伝的バリアントの負荷を表す多遺伝子性リスクスコアを構築し、五分位に基づき遺伝的リスクを3段階に分類した(低リスク:第1[最低]五分位、中リスク:第2~4五分位、高リスク:第5[最高]五分位)。 健康的な生活様式の重み付きスコアは、4つの十分に確立された認知症リスク因子からなる指標(非喫煙、定期的な身体活動、健康的な食事、中等度のアルコール摂取)に基づき3段階に分類した(好ましい:健康的な生活様式因子の数が3または4つ、中間的:同2つ、好ましくない:同0または1つ)。 主要アウトカムは、全原因による認知症の新規発症とし、病院の入院/死亡記録で確認した。遺伝的リスクを問わず、健康的な生活様式は認知症リスクを低減 19万6,383例(平均年齢64.1[SD 2.9]歳、女性52.7%)が解析に含まれた。観察人年は154万5,433人年(フォローアップ期間中央値8.0年[IQR:7.4~8.6])で、この間に1,769例が認知症を発症した。 生活様式は、「好ましい」が68.1%、「中間的」が23.6%、「好ましくない」が8.2%であった。遺伝的リスクは、高リスクが20%、中リスクが60%、低リスクが20%だった。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、1.23%(95%信頼区間[CI]:1.13~1.35)が認知症を発症し、これは低リスク集団の発症率0.63%(0.56~0.71)と比較して有意に高かった(補正後ハザード比[HR]:1.91、1.64~2.23、p<0.001)。また、中リスク集団も、低リスク集団に比べ認知症リスクが有意に高かった(1.37、1.20~1.58、p<0.001)。 生活様式が好ましくない参加者のうち、1.16%(95%CI:1.01~1.34)が認知症を発症し、好ましい集団の発症率0.82%(0.77~0.87)に比べ有意に高かった(補正後HR:1.35、1.15~1.58、p<0.001)。中間的集団も、好ましい集団に比し認知症リスクが有意に高かった(1.17、1.04~1.31、p<0.009)。遺伝的リスクが高い集団では生活様式が好ましい群は認知症リスクが低い 遺伝的リスクが高リスクかつ生活様式が好ましくない参加者のうち、1.78%(95%CI:1.38~2.28)が認知症を発症し、低リスクかつ生活様式が好ましい集団の発症率0.56%(0.48~0.66)に比べ有意に高かった(補正後HR:2.83、2.09~3.83、p<0.001)。また、重み付けされた健康的な生活様式スコアと、多遺伝子性リスクスコアには、有意な相互作用は認めなかった(p=0.99)。これは、生活様式因子と認知症の関連は、遺伝的リスクに基づいて実質的に変化しなかったことを示す。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、生活様式が好ましい集団の認知症発症率は1.13%(95%CI:1.01~1.26)であり、好ましくない集団の1.78%(95%CI:1.38~2.28)と比較して有意に低かった(0.68、0.51~0.90、p=0.008)。 著者は、「遺伝的リスクが高い集団では、生活様式が好ましい群は好ましくない群よりも認知症リスクが低いことが示された」とまとめ、「この集団の生活様式が好ましい群における認知症の絶対リスク低減率は0.65%であり、これは生活様式が原因の場合、10年間で遺伝的リスクが高い集団に属する生活様式が好ましくない121例を好ましい生活様式に改善することで、1例の認知症が予防可能であることを意味する」としている。■「アルコールと認知症」関連記事日本人高齢者におけるアルコール摂取と認知症

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前立腺がんに対する重粒子線治療の有益性に関するエビデンス/Lancet Oncol

 前立腺がんに対する重粒子(炭素イオン)線治療の有益性に関するエビデンスが日本発で発信された。量子科学技術研究開発機構(NIRS)のOsama Mohamad氏らによる検討の結果、限局性前立腺がんに対する重粒子線治療は、光子線治療よりも2次がんリスクが低いと思われる所見が示されたという。これまでに、絶対数は少ないが光子線治療は手術を受けた患者よりも2次がんリスクが高いことが示されていた。重粒子線治療は、理論的には光子線治療よりも2次がんの誘発リスクは低いが、世界的にオファーが少なく、入手できるデータも1994年以降のものと限定的であり臨床研究が進んでいなかった。著者は「結果の裏付けには長期に追跡した前向き評価が必要であるが、今回示されたデータは、通常治療後の全生存期間(OS)が長期と予想される患者、反対に不良なアウトカムを有する患者に対し、広く重粒子線治療を適用することを支持するものである」と述べている。Lancet Oncology誌2019年5月号掲載の報告。重粒子線治療は光子線治療や手術よりも2次がんのリスクが有意に低い 研究グループは、後ろ向き傾向スコア重み付けコホート研究にて、限局性前立腺がん患者の重粒子線治療後の2次がんリスクについて、光子線療法後または手術後患者と比較する検討を行った。 日本のNIRSにて、1995年6月27日~2012年7月10日に前立腺がんで重粒子線治療を受けた患者の記録をレビューすると共に、1994年1月1日~2012年12月31日に前立腺がんの診断および治療を受けた大阪府がん登録の患者の記録を抽出して評価した。組織学的に限局性前立腺がんと確認されており、少なくとも3ヵ月間フォローアップを受けていた患者(年齢制限なし)を適格とした。転移、リンパ節転移陽性、浸潤転移(T4ステージ)を認める患者、悪性腫瘍の既往がある、または同時性がんの患者、放射線療法または化学療法を受けたことがある患者は除外した。 多変量解析にて、重粒子線治療後の2次がんの予測因子を推定し、傾向スコア逆重み付け法にて後ろ向きに、限局性前立腺がん患者における重粒子線治療vs.光子線治療vs.手術後の2次がん発生率を比較した。 前立腺がんで重粒子線治療を受けた患者の記録をレビューした主な結果は以下のとおり。・NIRSで前立腺がんの重粒子線治療を受けた患者は1,580例であった。そのうち1,455例(92%)が試験の適格条件を満たした。・大阪府がん登録では前立腺がん患者3万8,594例が特定された。そのうち光子線療法を受けた1,983例(5%)と、手術を受けた5,948例(15%)を解析に包含した。・追跡期間中央値は、重粒子線治療群7.9年(5.9~10.0)、光子線治療群5.7年(4.5~6.4)、手術群6.0年(5.0~8.6)であった。・重粒子線治療群で2次がんが診断されたのは234例であった。一部の患者は複数の腫瘍を呈した。・多変量解析の結果、重粒子線治療群の2次がんの高リスク因子と関連していたのは、年齢(71~75歳vs.60歳以下のp=0.0021、75歳超vs.60歳以下のp=0.012)、喫煙(p=0.0005)であった。・傾向スコア重み付け解析の結果、重粒子線治療群は光子線治療群よりも2次がんのリスクが有意に低かった(HR:0.81、95%CI:0.66~0.99、p=0.038)。また、手術群と比べても有意に低かった(0.80、95%CI:0.68~0.95、p=0.0088)。・一方で、光子線治療群は手術群よりも、2次がんのリスクが有意に高かった(HR:1.18、95%CI:1.02~1.36、p=0.029)。

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新型タバコも禁煙外来でやめられる?【新型タバコの基礎知識】第4回

第4回 新型タバコも禁煙外来でやめられる?Key Points加熱式タバコをやめるために禁煙外来・禁煙治療を受けることは可能。CO測定値を記録する欄に、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばよい。喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコと同等に扱ってもよいと考えられる。新型タバコの登場によって、禁煙外来の現場でも混乱が起きているようです。禁煙外来では、受診者における前日から当日の喫煙状況を反映する指標として、「呼気一酸化炭素濃度検査」が実施されています。紙巻タバコに含まれる代表的な有害物質の1つが、一酸化炭素(CO)です。一酸化炭素は赤血球のヘモグロビンと結合し、CO-Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)となります。酸素もヘモグロビンと結合して全身に運ばれますが、一酸化炭素は酸素よりもヘモグロビンと結合しやすく、一酸化炭素があるとヘモグロビンと酸素の結合が妨げられ、酸欠状態が生じます。喫煙により息切れや虚血性心疾患が生じる原因の1つが、一酸化炭素なのです。ハンディタイプの測定器を使えば、簡単に呼気一酸化炭素濃度を測定でき、結果が即座に表示画面に数字で示されるので、禁煙の動機付けに役立ちます。また、呼気一酸化炭素濃度は半減期が3~5 時間と短く、禁煙後すぐに正常値に戻るので、禁煙を維持する励みとしても用いることができます。しかし、加熱式タバコを吸っているケースでは、呼気一酸化炭素濃度を測定してもその数値は上がりません。そのため、加熱式タバコを吸っている場合には、禁煙外来で禁煙治療を受けることができないとの誤解をしている医療者が多くいるようなのです。しかし、それは誤解です。加熱式タバコを吸っている場合に、加熱式タバコをやめるために禁煙治療を受けることは可能です。禁煙外来における保険診療は、ニコチン依存症に対する治療(ニコチン依存症管理料)です。加熱式タバコにも紙巻タバコとほぼ同等のニコチンが含まれており(第3回参照)、加熱式タバコを吸っている者もニコチン依存症であり、保険適用とすることが可能です。一酸化炭素測定値を記録する欄には、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばOKです。保険適用の条件に、「呼気一酸化炭素濃度の数値が高いこと」は含まれませんのでご心配なく。また、喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコの本数と同等に扱ってもよいものと考えられます(図)。ただしプルーム・テックの場合には、カプセルの個数を記録しておくとよいでしょう。JTはプルーム・テック用のタバコカプセル5個をタバコ20本相当としていますが、まだこれに関してのコンセンサスは得られていません。画像を拡大する保険適用上は問題がないとしても、喫煙量や喫煙状況を客観的に確認する方法として、加熱式タバコの場合には呼気一酸化炭素濃度検査が有効にはたらかないという問題が存在します。今後、呼気一酸化炭素濃度検査の代わりに、喫煙もしくは禁煙していることを確認するための簡便な方法を模索していく取り組みを進めていきたいと考えています。第5回は、「加熱式タバコから有害物質は出ない?」です。

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第15回 ハザード比は何を表しているか?【統計のそこが知りたい!】

第15回 ハザード比は何を表しているか?臨床試験で生存曲線の差を評価するときには、ハザード比がよく使用されます。今回は「ハザード比」を学習します。■ハザード比の解釈ハザード比は、説明変数が1単位増加するときのアウトカム発生までの時間が何倍かかるかを表します。ハザード比は「1」が基準となり、「1」の場合は説明変数の値が変化しても、アウトカム発生までの時間に変化はないことを意味し、「1」より大きい場合はリスクが高くなり、「1」より小さい場合はリスクが小さくなることを表しています。ハザード比が「1」を超えている場合は、「死亡や病状進行のリスクが対照群に比べて○○%高くなる」ということになります。逆に、ハザード比が「1」を超えていない場合は、「死亡や病状進行のリスクが対照群に比べて○○%低くなる」ということになります。■ハザード比を算出してみるそれでは、表1から目的変数(アウトカム)を「1:死亡、0:打ち切り」、説明変数を処方薬剤、喫煙の有無としてCox比例ハザードモデルを適用し、処方薬剤、喫煙の有無のハザード比を求めてみましょう。目的変数(アウトカム)は、死亡(再発)など危険要素を1、ほかを0とします。説明変数が2分類のカテゴリーデータの場合、死亡率が低いと仮定するほうを1、ほかを0とします。製品A、非喫煙を1としました。表1 事例の基礎データ■ハザード比の結果表2に関係式の回帰係数とハザード比を示します。関係式の回帰係数とハザード比ハザード比は、次式によって求められる値です。ハザード比=e回帰係数ただし、eは自然対数の底で、2.7183…です。【計算例】薬剤のハザード比=e-0.950=0.387Excelの関数=EXP(-0.950)Cox比例ハザードモデルを使って目的を解明する場合、危険度の高さを示す回帰係数でなく、ハザード比を用います。ハザード比から、説明変数がアウトカムに対して、どれくらい寄与しているかを調べることができます。たとえば説明変数が、「治療方法P、治療方法Q」の場合、ハザード比からアウトカム発生確率(死亡率)は、PはQに比べ何倍高いかを示せます。また、3年間の観察期間において、アウトカムが「1:死亡、0:打ち切り」のハザード比が「1.5」だったとします。この場合の解釈は、「治療方法Pは、Qに比べ、3年の間に死亡する度合いは1.5倍高い」となります。つまり治療方法Pは、Qに比べ、良くないということです。この例題のハザード比は「0.387」で「1」を下回りました。この場合の解釈は、「アウトカム発生確率(死亡率)は、製品Aがプラセボに比べ0.387倍高い」となります。つまり製品Aはプラセボに比べ、死亡率を61.3%(=1-0.387)減少させ、製品Aの延命効果はあったと解釈されるのです。喫煙の有無のハザード比は0.480なので、非喫煙喫煙に比べ死亡率を52.0%減少させたと解釈できます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション4 カプランマイヤー法の生存曲線を比較する第4回 ギモンを解決!一問一答質問8 Cox比例ハザードモデルとは?(その1)質問8(続き) Cox比例ハザードモデルとは?(その2)

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青少年の電子タバコと喫煙の増加、北米とイングランドで差/BMJ

 2017~18年の期間に、カナダと米国では青少年におけるベイピング(発生させた蒸気[vapor]を吸引する)電子タバコの使用が増加し、カナダでは可燃性タバコの喫煙も増加している一方、イングランドではこれらの使用に関してほとんど変化がないことが、カナダ・ウォータールー大学のDavid Hammond氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年6月20日号に掲載された。ベイピングは、可燃性タバコの煙を吸引するのと比べて、ニコチン送達の有害性が最も低くなるとされる。しかし、毒性物質の量や毒性の程度は低いが、長期曝露によりニコチン依存を引き起こす可能性や、呼吸器や心血管の健康リスクに影響を及ぼす可能性が示唆されている。北米では新世代のベイピング製品として、ニコチン塩を用いた「JUUL」のような高ニコチン濃度の製品が登場しているが、ニコチン塩製品への市場移行の影響はほとんど知られていない。2018年にはカナダでも規制緩和が進められ、ベイピング製品の市場開拓が進んでいるという。16~19歳の約2万4,000例について、オンライン反復横断調査 研究グループは、カナダ、イングランド、米国の青少年におけるベイピングと喫煙の使用状況の違いを評価する目的で、反復横断調査を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 カナダ(7,891例)、イングランド(7,897例)、米国(8,140例)の16~19歳を対象に、2017年7~8月と2018年8~9月の2回、オンラインによる調査を実施した。 ベイピングと喫煙の使用の有無、過去30日および1週間以内の使用、過去1ヵ月のうち15日以上の使用の割合について評価した。JUULおよび他の一般的なベイピング製品の検討も行った。規制緩和が進んだカナダと米国では、常習性も拡大 ベイピングの使用割合は、非喫煙者と試行的喫煙者(生涯の喫煙本数が100本未満)を含め、2017年と2018年ではカナダと米国で、過去30日(カナダ:8.4%→14.6%、米国:11.1%→16.2%)、過去1週間(5.2%→9.3%、6.4%→10.6%)、過去1ヵ月のうち15日以上(2.1%→3.6%、3.0%→5.2%)が、いずれも有意に増加した(すべてp<0.001)。イングランドでは、それぞれ8.7%→8.9%、4.6%→4.6%、2.0%→2.2%と、ほとんど変化しなかった。 喫煙の割合は、2017年と2018年ではカナダで、過去30日(10.7%→15.5%)、過去1週間(7.6%→11.9%)、過去1ヵ月のうち15日以上(4.8%→7.4%)のいずれもが有意に増加した(すべてp<0.001)。イングランドでわずかに増加が認められたが(それぞれ、15.6%→16.4%、9.8%→11.3%、5.0%→6.4%)、米国ではほぼ変化がなかった(それぞれ、11.0%→12.2%、8.5%→8.8%、4.6%→5.1%)。 ベイピングの使用者のうち、2017年に比べ2018年で、より常習的に使用するようになったと回答した者の割合は、カナダと米国では、過去30日(カナダ:28.8%→39.5%、米国:35.4%→48.1%)、過去1週間(17.6%→25.0%、20.4%→31.6%)、過去1ヵ月のうち15日以上(7.2%→9.7%、9.7%→15.4%)のいずれにおいても有意に増加した(すべてp<0.01)。一方、イングランドではいずれも増加はしたが有意ではなかった(それぞれ、25.8%→27.1%、13.7%→13.9%、5.9%→6.8%)。また、カナダでは喫煙についても、2018年で使用頻度が高くなったと回答した者の割合が、それぞれ有意に増加した(p<0.001、p<0.001、p=0.002)。 過去30日にベイピングを使用した集団におけるJUULの使用割合は、米国では2017年の9.4%から2018年には28.1%へと約3倍に増加し、2017年は0%だったカナダとイングランドでは、2018年にはそれぞれ10.3%および3.3%への増加であった。 著者は、「イングランドで変化が小さいのは、おそらく、欧州タバコ製品指令(Tobacco Products Directive:TPD)による市場制限とニコチン量の上限規制の結果と考えられる」とし、「急速に進展するベイピング市場およびニコチン塩ベースの製品の出現に対して、徹底した監視が必要である」と指摘している。

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加熱式タバコには、ニコチンは含まれない?【新型タバコの基礎知識】第3回

第3回 加熱式タバコには、ニコチンは含まれない?Key Points加熱式タバコには、紙巻タバコとほとんど変わらないレベルのニコチンが含まれている。紙巻タバコと同じように、加熱式タバコによってニコチン依存症が維持される。加熱式タバコは、従来からの紙巻タバコのようにタバコの葉に直接火をつけるのではなく、タバコの葉を加熱してニコチン等を含んだエアロゾルを発生させる方式のタバコです。ニコチンはタバコをやめられなくする依存性物質で、タバコを吸うとおよそ5分で血液中のニコチン濃度が最大になりますが、吸っていないとすぐに濃度は低下していきます(ニコチンの体内半減期は1~2 時間)。喫煙者はニコチン依存症となり、ニコチン濃度を維持するために断続的にタバコを吸うようになります。ニコチンは血管収縮などを介して循環器系疾患のリスクを高めるとともに、脳の発達に害を及ぼすことも知られています。加熱式タバコに含まれるニコチンの量は製品による違いがあり、紙巻タバコのニコチン量を100%とすると、プルーム・テックでは13%、グローでは23~27%、アイコスでは57~84%と報告されています(表)。製品による程度の違いはあるものの、すべての加熱式タバコにニコチンが含まれています。画像を拡大する加熱式タバコ(アイコス)を吸った場合に、体内のニコチン濃度がどうなるのか、図のとおり、フィリップモリス社による研究の結果が報告されています。縦軸がニコチンの血中濃度であり、横軸はタバコを吸ってからの時間が分を単位として示されています。グラフの形を見てください。加熱式タバコ(アイコス)と紙巻タバコで、ほとんど同じ形をしています。要するに、加熱式タバコ(アイコス)でも紙巻タバコと同じようにニコチンが体に吸収されるということです。これは、紙巻タバコと同じように、加熱式タバコ(アイコス)によってニコチン依存症が維持されるということを意味しています。画像を拡大するこのニコチン依存症がいかに恐ろしい病態なのかについては、拙著「新型タバコの本当のリスク」の第5章第4節で詳細に説明しておりますので、興味のある方はぜひご覧ください。 第4回は、「新型タバコも禁煙外来でやめられる?」です。1)Simonavicius E et al. Tob Control. 2018 Sep 4. [Epub ahead of print]2)Uchiyama S et al. Chem Res Toxicol. 2018;31:585-593.3)Bekki K et al. J UOEH. 2017;39:201-207.4)Picavet P et al. Nicotine Tob Res. 2016;18:557-563.

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国内初のICS/LAMA/LABAが1剤に配合されたCOPD治療薬「テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用」【下平博士のDIノート】第27回

国内初のICS/LAMA/LABAが1剤に配合されたCOPD治療薬「テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用」今回は、3成分配合の慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用)」を紹介します。本剤は、COPD患者の呼吸困難などの諸症状を1日1回の吸入で改善し、QOLの改善にも寄与することが期待されています。<効能・効果>本剤は、COPD(慢性気管支炎・肺気腫)における諸症状の緩解の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月22日より発売されています。なお、本剤の使用は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)および長時間作用性β2刺激薬(LABA)の併用が必要な場合に限られます。<用法・用量>通常、成人には本剤1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg、ウメクリジニウムとして62.5μgおよびビランテロールとして25μg)を1日1回投与します。<副作用>第III相国際共同試験(投与期間:52週)において、本剤が投与された総症例4,151例中485例(11.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告されています。主なものは、口腔カンジダ症101例(2.4%)、肺炎45例(1.1%)、発声障害26例(0.6%)でした(承認時)。重大な副作用としてアナフィラキシー反応(頻度不明)、肺炎(1.1%)、心房細動(0.1%)が認められています。なお、ICSを長期で使用した場合、肺炎のリスクが高まる懸念があるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.本剤は、気管支を拡張させる薬2種類と、炎症を抑える薬の計3種類が配合されているCOPDの治療薬です。2.1日1回の吸入で、持続的に気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善します。3.毎日なるべく同じ時間帯に吸入し、1日1回を超えて吸入しないようにしてください。4.声がれや感染症を予防するため、吸入後はうがいをしてください。5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れたらご連絡ください。6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療と共に禁煙を徹底し、継続しましょう。7.薬のカバーを開けると吸入の準備が完了し、カウンターが減ります。必要以上に開け閉めすると、必要回数が吸入できなくなるため、吸入時以外はカバーを開けないでください。<Shimo's eyes>本剤は、国内初の3成分(吸入ステロイド薬[ICS]、長時間作用性抗コリン薬[LAMA]、長時間作用性β2刺激薬[LABA])が配合されたCOPD治療薬です。『COPD診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]』において、安定期COPDの維持療法としては、気管支拡張薬のLAMA(あるいはLABA)を単剤で用い、効果不十分な場合はLAMA+LABAの併用が推奨されています。しかし、COPD患者の15~20%は喘息が合併していると見込まれており、その場合はICSを併用することとされています。なお、海外で報告されているGOLD2019レポートでは、LAMAもしくはLABAの単剤療法またはLAMA+LABAの併用療法を行っても増悪を繰り返す患者には、ICSの追加が有効な例もあるとされています。本剤は、COPD患者に対するLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用に注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。とくに、過量投与時には不整脈、心停止などの重篤な副作用が発現する恐れがあるため、服薬指導では吸入を忘れたときの対応などと併せて、1日に1回を超えて使用しないよう注意を促しましょう。COPD患者は、喫煙や加齢に伴う併存症に対する治療を行っていることが多く、安定期ではアドヒアランスが低下することがあります。COPDに加えて喘息の治療が必要な場合に、本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、症状の改善およびアドヒアランスの向上が期待できます。

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新型タバコ時代!電子タバコと加熱式タバコは何が違う?(2)【新型タバコの基礎知識】第2回

第2回 新型タバコ時代!電子タバコと加熱式タバコは何が違う?(2)Key Points加熱式タバコは、タバコの葉を加熱してニコチン等を含んだエアロゾルを発生させる。電子タバコはリキッドを加熱し、エアロゾルを発生させる。加熱式タバコには、アイコス、グロー、プルーム・テックといった商品があり、電子タバコには、500種類以上のブランドがある。加熱式タバコがタバコとして販売されている一方、日本ではニコチン入りの電子タバコは規制され、公には販売されていない。今回は、退屈に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、新型タバコ(加熱式タバコと電子タバコ)の構造や規制の状況についてお伝えします。なぜなら、新型タバコ問題について医療者の皆さんから患者さんなど一般の方々に伝えていってもらう上で、簡単にでも理解しておいてもらう必要がある情報だからです。加熱式タバコは、従来からの紙巻タバコのようにタバコの葉に直接火をつけるのではなく、タバコの葉を加熱してニコチン等を含んだエアロゾルを発生させる方式のタバコです。アイコス、グローおよびプルームエスでは、それぞれの専用電子デバイスにより、タバコの葉を含む専用のスティックを200~350℃に加熱し、ニコチン等を含む気体状のエアロゾルを発生させ、吸引します(図1-A)。一方、プルーム・テックでは、粉末状のタバコの葉を含む専用カプセル内に、グリセロールやプロピレングリコール等を含む液体(リキッド)を加熱して発生させたエアロゾルを通して、ニコチン等をエアロゾル経由で吸引する仕組みとなっています(図1-B)。プルーム・テックではタバコの葉がある部分での温度が30℃程度と低くなっており、この部分が低温であることが産生される有害物質量が少ないことと関連しています(※最近市場に登場したプルームエスは、アイコスやグローと同様のタイプであり、200度で加熱する仕様)。画像を拡大するそして電子タバコは、プルーム・テックとよく似た構造をしています。電子タバコでは、吸引器に専用の液体(リキッド)を入れ、コイルを巻いたヒーターで熱し、発生したエアロゾルを吸い込みます(図2)。この基本構造は共通で、電圧が調節可能であったり、リキッド容量の大小があったりなど、さまざまな電子タバコ製品が開発されています。リキッドには、ニコチンや果物などさまざまな香りの人工香料、グリセロール、プロピレングリコールなどが用いられます。画像を拡大する新型タバコの外観、代表的なブランド名の例および規制の状況を表にまとめて示します(表1)。ご覧の通り、形態・形状は製品によって大きく異なります。電子タバコには、紙巻タバコにしか見えない外観のもの(タバコ型)やペン型のほか、タンク型といったリキッド容量が多く、電圧を調整できるタイプのものもあります。表1では電子タバコのブランド名として12種を例示しただけですが、世界中には500種類以上の電子タバコブランドがあります。今回の記事から、世の中にどんな新型タバコ製品があるのか、概要を把握していただければと思います。第3回は「加熱式タバコには、ニコチンは含まれない?」です。画像を拡大する

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脳心血管病予防策は40歳からと心得るべき/脳心血管病協議会

 日本動脈硬化学会を含む16学会で作成した『脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019』が日本内科学会雑誌第108巻第5号において発表された。2015年に初版が発行されてから4年ぶりの改訂となる今回のリスク管理チャートには、日本動脈硬化学会を含む14学会における最新版のガイドラインが反映されている。この改訂にあたり、2019年5月26日、寺本 民生氏(帝京大学理事・臨床研究センター長)と神崎 恒一氏(杏林大学医学部高齢医学 教授)が主な改訂ポイントを講演した(脳心血管病協議会主催)。脳心血管病予防が今後はますます求められる  2018年12月、「健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が成立した。2015年度国民医療費1)は42兆円を超え、内訳を見ると循環器疾患に対する医療費は全体の19.9%(5兆9,818億円)、次いで、悪性新生物が13.7%(4兆1,257億円)を占めていた。近年では医療の発展に伴い、病態の発症から死亡に至るまでの期間が伸びているものの、平均寿命と健康寿命の差はまだ大きい。死亡までに介護が必要となった主たる原因も、認知症を上回り、脳血管疾患が1位にランクインしている2)。このように、そのほか問題視されている肥満、糖尿病、喫煙などの現状を踏まえると、今後ますます、脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの活用が求められるようになる。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの対象 厚生労働省による“人生100年時代構想”や高齢者のフレイル・介護問題を受け、今回の改訂でも高齢者の留意点が多く盛り込まれた。健康寿命を伸ばして要介護期間を短くする、つまり“不健康な期間”を短縮することがわれわれの使命、と考える両氏。神崎氏は、「65歳以上になってから努力するのではなく、中年期から努力することが健康寿命を延ばすためには必要。高齢者の場合は生活習慣病を管理しながら、多病に基づくポリファーマシーやサルコペニア/フレイルの発生にも注意する必要がある」とし、寺本氏は「高血圧などの危険因子を持たない段階での予防(0次予防)の患者に啓発することが重要」と、脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの対象者について言及。また、寺本氏は「定期的にチェックするために誕生日月に実施するのが有用。その旨を事前に患者に伝えておくと、患者自身も覚えている」と活用時期やその方法についてコメントした。脳心血管病リスクの管理状態の評価ツールとして活用可能 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、臨床現場で使用しやすいようにStep1~6までの順に従って診断・診療できるように設計されている。また、健康診断などで偶発的に脳心血管病リスクを指摘されて来院する患者を主な対象者とし、既に加療中の患者に対しても、管理状態の評価ツールとして活用可能になるようにも作成されている。 以下に脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート各Stepにおける留意点を示す。◆Step1:スクリーニングと専門医等への紹介の必要性の判断基準a~cに分類。aでは家族歴や脈拍について重視、bの場合は空腹時血糖の測定が必要になるため、空腹時での来院を求める必要がある。また、アルドステロン症の見落としが散見されるため、この段階でしっかりチェックする必要がある。cでは、各専門医への紹介の必要性がある対象者を明確にしている。また、慢性腎臓病(CKD)の記載方法が変更している。◆Step2:各リスク因子の診断と追加評価項目脳心血管病の各リスク因子の診断と追加評価項目は各学会のガイドラインに準拠。◆Step3:治療開始前に確認すべきリスク因子喫煙リスクがある患者での禁煙指導が重要で、1回/年の確認が鍵となる。また、個々の病態に応じた管理目標について高齢者について加味している点がポイント。◆Step4:リスクと個々の病態に応じた管理目標の設定改訂前はリスク層別にNIPPON DATA80を使用していたが、今回は「吹田スコア」の使用を推奨。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートには危険因子を用いた簡易版が載っているので、それを基にリスクスコアを算出することが可能。◆Step5:生活習慣の改善食事摂取量は、日本人の食事摂取基準を参考にし、これまでのkcal重視からBMI重視に変更。身体活動を患者と共有できるよう詳細に記述。◆Step6:薬物療法の紹介と留意点実際の薬物療法については各疾患のガイドラインに従い、導入前には生活習慣の改善を基盤に患者とのコンセンサスを得ることが重要。 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、5年に1回のタイミングで更新を目指しており、大きな改訂はできなくとも各学会で改訂事項が発表された際には、それらを脳心血管病協議会で話し合い、対策を講じるという。最後に寺本氏は「このような類いの包括的な管理チャートは海外では作成されておらず、世界に一歩先立った活動である」と締めくくった。■「日本人の食事摂取基準」関連記事日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

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超加工食品の高摂取で死亡リスク増大/BMJ

 超加工食品を1日4サービング以上摂取すると、死亡のハザードが相対的に62%増加し、1日1サービング増えるごとに死亡リスクが18%増加することが、スペイン・ナバラ大学のAnais Rico-Campa氏らの調査で示された。研究の成果はBMJ誌2019年5月29日号に掲載された。既報の成人を対象とした前向きコホート研究により、超加工食品の摂取は、がん、過敏性腸症候群、肥満、高血圧のハザードの上昇と関連することが知られている。約2万例を2年ごとに観察 研究グループは、超加工食品の摂取と全死因死亡の関連を評価する目的で、前向きコホート研究を行った(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成による)。 解析には、スペインの大学卒業生が登録されたSeguimiento Universidad de Navarra(SUN)の1999~2018年のデータを用いた。1999~2014年の期間に、20~91歳の1万9,899例を2年ごとにフォローアップした。食品と飲料の摂取状況を、NOVA分類による加工の程度で分類し、妥当性が確認された136項目の食品頻度質問票を用いて評価した。 主要アウトカムは、4段階の超加工食品の1日摂取量(低[<2サービング/日]、低~中[2~<3サービング/日]、中~高[3~≦4サービング/日]、高[>4サービング/日])で調整したエネルギー消費量と全死因死亡の関連とし、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。加工肉と砂糖入り飲料が最も多い 1万9,899例のうち、女性が1万2,113例、男性は7,786例で、ベースラインの全体の平均年齢は37.6(SD 12.3)歳、フォローアップ期間中央値は10.4年であった。観察人年20万432人年に、335例が死亡した(がん死164例、心血管死71例)。 超加工食品の平均1日摂取量は、低摂取群(4,975例)が1.4(SD 0.8)サービング、低~中摂取群(4,975例)が2.7(0.2)サービング、中~高摂取群(4,975例)が3.5(0.3)サービング、高摂取群(4,974例)は5.3(1.4)サービングであった。 高摂取群は平均BMI(23.8)が高かった。また、高摂取群は低摂取群と比較して、現喫煙者が多く、大学教育レベルが高く(大学院、博士号取得者が多い)、心血管疾患・がん・糖尿病・高血圧・高コレステロール血症・うつ病の家族歴を持つ者が多かった。 高摂取群は低摂取群に比べ、間食や1日3時間以上のテレビ視聴の割合が高く、1日のコンピュータ使用時間や昼寝の時間が長く(座位行動が多い傾向)、総脂肪摂取が多く、タンパク質や炭水化物の摂取は少なかった。高摂取群は他の群に比し、ファストフード、揚げ物、加工肉、砂糖入り飲料の摂取量が多く、野菜、果物、オリーブ油、アルコール飲料、総食物繊維の摂取量が少なかった。超加工食品の摂取量が多くなるほど、地中海食のアドヒアランス・スコア(0~9点、点数が高いほど伝統的地中海食へのアドヒアランスが高い)が低下した。 超加工食品のうち、最も多かったのは加工肉(15%、ハム、ソーセージ、チョリソ、サラミ、モルタデッラ、ハンバーガーを含む)と砂糖入り飲料(15%)で、次いで乳製品(12%、カスタード、アイスクリーム、ミルクシェイク、プチスイスを含む)、フレンチフライ(11%)、ペストリー(10%、マフィン、ドーナツ、クロワッサンや他の非手作りペストリー、菓子類を含む)、クッキー(8%、ビスケット、チョコレートクッキーを含む)の順であった。 超加工食品の高摂取群は低摂取群に比べ、全死因死亡のハザードが62%有意に高く(多変量で補正後のハザード比[HR]:1.62、95%信頼区間[CI]:1.13~2.33)、有意な用量反応関係が認められた(線形傾向のp=0.005)。がん死(1.22、0.70~2.12、p=0.42)および心血管死(2.16、0.92~5.06、p=0.11)には有意差はなかった。また、超加工食品が1サービング増えるごとに、全死因死亡が相対的に18%有意に増加した(補正後HR:1.18、95%CI:1.05~1.33)。 著者は、「超加工食品の摂取を抑制し、製品への課税や売買制限を目標とし、新鮮な最小限の加工食品(地中海食の重要な側面)の摂取を促進することは、世界の公衆衛生の改善において重要な健康施策の一環と考えるべきである」としている。

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新型タバコ時代!電子タバコと加熱式タバコは何が違う?(1)【新型タバコの基礎知識】第1回

第1回 新型タバコ時代!電子タバコと加熱式タバコは何が違う?(1)Key Points新型タバコとは、加熱式タバコと電子タバコのことを指す。加熱式タバコと電子タバコは別物だが、患者さんや一般の人は、加熱式タバコも電子タバコだと思っていることが多い。世界的には電子タバコはe-cigaretteであり、タバコではないものとして扱われる。英語論文を読む場合には要注意。タバコを吸うことは、肺がん、胃がん、大腸がんなどの多くのがん、心筋梗塞、脳卒中などの循環器疾患、COPDや糖尿病に加え、関節リウマチ、不妊や勃起不全など非常に多くの病態と関連することがわかっています。そしてタバコといえば、これまでずっとライターやマッチで火をつけて使う、紙巻タバコでした。本連載では、加熱式タバコと電子タバコを合わせて、新型タバコと呼びます。加熱式タバコは、海外ではheated tobacco productsと呼ばれ、日本語では加熱式タバコとなります。加熱式タバコという呼び名よりも、商品名であるアイコスやプルーム・テック、グローと言ったほうが伝わりやすいかもしれません。2014年にタバコ会社フィリップモリス・インターナショナルは世界に先駆けて、日本でアイコスの販売を開始しました。日本たばこ産業(JT)およびブリティッシュ・アメリカン・タバコは2016年からプルーム・テックおよびグローをそれぞれ販売開始しました。電子タバコは英語ではelectronic cigarettes(e-cigarettes)またはvapor(ベイパー)と呼ばれます。日本では、e-cigarettesに対する訳語として電子タバコという“タバコ”という表現を含む言葉が一般に使用されており、文字通り「電子タバコ」はタバコの一種だと考えている日本人が多いようです。私も日本の多くの人々と同様に、電子タバコはタバコの一種として扱えばよいのではないかと考えていますが、世界的にはその解釈は簡単には受け入れられないものと言えるでしょう(図)。画像を拡大する電子タバコの英語の名称(e-cigarettes)には、タバコ(tobacco)という文字は含まれていません。世界的には、英国などでは紙巻タバコに替えて電子タバコを使用することをハームリダクション*になるとして推奨している現状があるのです。いわゆるタバコは悪いものであるが、電子タバコ(e-cigarettes)は悪いものではなく、電子タバコ(e-cigarettes)はいわゆるタバコ製品ではない、とタバコ研究業界の権威者が主張しているのです。そのため、たとえば論文で電子タバコ(e-cigarettes)をタバコ製品として記述すると、「電子タバコはタバコではない」という指摘を受けることとなります。本連載では、加熱式タバコと電子タバコを合わせて新型タバコと呼びますが、世界的な英語論文ではこのようには定義されていません。新型タバコに関する英語論文や海外からの情報を読む場合には、ご注意ください。第2回では、「加熱式タバコと電子タバコの構造」についてお伝えします。*ハームリダクション:大きな害のある行動をそれよりも小さな害の行動に置き換えることで、害を完全にはなくせないが、少なくさせるという考え方。タバコ問題の場合、どうしてもタバコを止められない人に対して、代わりにニコチン入り電子タバコを吸ってもらえば、有害物質への曝露を減らせるのではないかという戦略。電子タバコがハームリダクションになるのかどうか、世界的に、専門家の間でも意見が割れている。

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