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慢性呼吸器疾患死が世界的に増加、死亡率は低下/BMJ

 1990~2017年の期間に、慢性呼吸器疾患による年間総死亡数は18%増加したが、年齢標準化死亡比は年間2.41%低下し、社会人口統計学的特性(SDI)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)、塵肺症、喘息による死亡率との間には負の相関がみられ、SDIが低い地域は疾病負担が多大であることが、中国・華中科技大学のXiaochen Li氏らによる195の国と地域のデータの解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年2月19日号に掲載された。慢性呼吸器疾患による死亡や健康損失に関するこれまでの研究は、限られたデータに基づいており、地域も限定的だという。GBD 2017のデータを系統的に分析 研究グループは、1990~2017年の世界195の国と地域の年齢別、性別の慢性呼吸器疾患による死亡と障害調整生命年(DALY)の経時的、空間的な傾向を評価する目的で、系統的な分析を行った(National Key R&D Program of Chinaなどの助成による)。 ベイズメタ回帰分析のツールであるDisMod-MR 2.1を用いて、「世界疾病負担研究(GBD)2017」のデータから、慢性呼吸器疾患の死亡率とDALYを推算した。ガウス分布による一般化線形モデルを用いて、年齢標準化死亡比の推定年間変化率を算出した。 死亡率とDALYは、社会人口統計学的特性(SDI)で層別化した。SDIは、国民1人当たりの所得と学歴、合計特殊出生率による複合指標であり、5つの段階(高、高中、中、低中、低)に分けた。スピアマンの順位相関係数を用いて、SDIと死亡率の関連の強度と傾向を評価した。また、曝露データから、慢性呼吸器疾患のリスク因子を解析した。喫煙、環境汚染、高BMIへの曝露の抑制が喫緊の課題 1990~2017年の慢性呼吸器疾患による年間DALYは、9,720万~1億1,230万にわたっていた。この間に、喘息や塵肺症ではDALYが改善したが、COPDや間質性肺疾患/肺サルコイドーシスでは悪化した。 慢性呼吸器疾患による年間総死亡数は、1990年の332万人(95%不確定区間[UI]:301万~343万)から、2017年には391万人(379万~404万)まで、18.0%増加した。 一方、同時期の慢性呼吸器疾患による年齢標準化死亡比は、平均で年間2.41%(95%UI:2.28~2.55)減少し、1990年と2017年の双方で男女間に大きな差が認められた。27年間で、年間年齢標準化死亡比は、COPDで2.36%(2.21~2.50)、塵肺症で2.56%(2.44~2.68)低下したのに対し、間質性肺疾患/肺サルコイドーシスは0.97%(0.92~1.03)増加した。 慢性呼吸器疾患による死亡数および年間死亡率の変動には、195の国と地域でかなり大きなばらつきが認められた。 27年間の死亡率とDALYの地域差、および改善の不均衡な分布の原因となる要因の評価では、SDIとCOPD、塵肺症、喘息による死亡の間に負の相関が認められた。低SDIの地域は、死亡率とDALYが最も高かった。 喫煙は、この間一貫してCOPDおよび喘息による死亡の主要なリスク因子であった。粒子状物質による環境汚染は、低SDI地域においてCOPDによる死亡の主要な寄与因子であった。2013年以降は、高BMIが喘息の最も重要なリスク因子となった。 著者は、「死亡率やDALYには、喫煙、環境汚染、高BMIなどのリスク因子が寄与していると推定され、これらへの曝露を抑制するために緊急の取り組みが必要である」としている。

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喫煙者の高い認知症リスク、禁煙3年で軽減~大崎コホート研究

 禁煙と認知症リスクの変化について米国のARIC研究の結果が報告されているが、今回、東北大学のYukai Lu氏らが、日本の前向き研究である大崎コホートにおける縦断的分析の結果を報告した。本研究では、3年以上禁煙した場合、認知症発症リスクは非喫煙者と同じレベルまで低下することが示唆された。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月15日号に掲載。 本研究の対象は65歳以上の日本人1万2,489人で、5.7年間追跡調査を実施した。2006年に喫煙状況およびその他の生活習慣の情報を質問票にて収集した。認知症発症に関するデータは、公的介護保険のデータベースから取得した。Cox比例ハザードモデルを使用し、認知症の多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,613人年の追跡調査の間に、認知症が1,110例(8.9%)に発症した。・現在喫煙者は非喫煙者に比べて認知症リスクが高かった(HR:1.46、95%CI:1.17~1.80)。・元喫煙者の認知症リスクは、禁煙2年以下では依然高かった(HR:1.39、95%CI:0.96~2.01)が、禁煙3年以上では喫煙による認知症リスクの増加が軽減された。禁煙年数ごとの多変量HR(95%CI)は、禁煙3~5年で1.03(0.70~1.53)、6~10年で1.04(0.74~1.45)、11~15年で1.19(0.84~1.69)、15年以上で0.92(0.73~1.15)だった。

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COVID-19への治療薬の考え方/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博)は、今般の新型コロナウイルス感染症の治療に関し、「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」を2月26日に公開した。 本指針は、現時点で収集されている知見より抗ウイルス薬に関するわが国における暫定的な指針を示すのが目的。そして、抗ウイルス薬の使用にあたっては、現在わが国ではCOVID-19に適応を有する薬剤は存在しないことを前提に、行うことのできる治療は、国内ですでに薬事承認されている薬剤を適応外使用することであり、使用では各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行うことになるとしている。抗ウイルス薬の対象と開始のタイミング 現時点では、患者の臨床経過の中における抗ウイルス薬を開始すべき時期は患者が低酸素血症を発症し、酸素投与が必要であることが必要条件。そのうえで次の4点を考慮する。1)おおむね50歳未満の患者では肺炎を発症しても自然経過の中で治癒する例が多いため、必ずしも抗ウイルス薬を投与せずとも経過を観察してよい。2)おおむね50歳以上の患者では重篤な呼吸不全を起こす可能性が高く、死亡率も高いため、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった段階で抗ウイルス薬の投与を検討する。3)糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態などのある患者においても上記2)に準じる。4)年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例では抗ウイルス薬の投与を検討する。抗ウイルス薬の選択 現時点でのわが国における入手可能性や有害事象などの観点より次の2剤を治療薬として提示。今後、臨床的有効性や有害事象などの知見の集積に伴い、COVID-19の治療のための抗ウイルス薬の選択肢や用法用量に関し新たな情報が得られる可能性が高い。●ロピナビル・リトナビル ロピナビルはHIV-1に対するプロテアーゼ阻害剤として有効性が認められ、シトクロームP450の阻害によりロピナビルの血中濃度を保つためリトナビルとの合剤として使用。・投与方法(用法・用量)1)ロピナビル・リトナビル(商品名:カレトラ配合錠):400mg/100mg経口12時間おき、10日間程度2)ロピナビル・リトナビル(同:カレトラ配合内用液):400mg/100mg(1回5mL)経口12時間おき、10日程度*上記は抗HIV薬としての承認用量であるが、高濃度のEC50を示す可能性があり、用量については有害事象のモニターと合わせ今後の検討が必要・投与時の注意点:(1)本剤の有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングは不明(2)使用開始前にはHIV感染の有無を確認し、陽性の場合には対応について専門家に相談(3)リトナビルによる薬剤相互作用があるため、併用薬に注意する(4)錠剤の内服困難者に内用液を使用する場合、アルコール過敏がないか確認する また、本指針には、国立国際医療研究センターでの本剤使用7症例の臨床経過(2020年2月21日まで)のほか、海外での臨床報告なども記載されている。●ファビピラビル 本剤は「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(但し,他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」に限定して承認。本剤のCOVID-19への使用実績は無い。・投与方法(用法・用量) ファビピラビル(同:アビガン)を3,600mg(1,800mgBID)(Day1)+1,600mg(800mgBID)(Day2以降)、最長14日間投与。・投与時の注意点:(1)本剤の有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングに関しては不明(2)以下の薬剤については、薬物相互作用の可能性があることから、本剤との併用には注意して使用する:1)ピラジナミド、2)レパグリニド、3)テオフィリン、4)ファムシクロビル、5)スリンダク(3)患者の状態によっては経口投与が極めて困難な場合も想定される。その場合は55°Cに加温した水を加えて試験薬懸濁液を調製する(簡易懸濁法)。被験者に経鼻胃管を挿入し、経鼻胃管が胃の中に入っていることを胸部X線検査で確認した後、ピストンを用いて懸濁液をゆっくりと注入する。その後、5mLの水で経鼻胃管を洗浄する(4)動物実験において、本剤は初期胚の致死および催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しない(5)妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認した上で、投与を開始する。また、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導する。なお、本剤の投与期間中に妊娠が疑われる場合には、直ちに投与を中止し、医師などに連絡するよう患者を指導する(6)本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導する。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせない(7)治療開始に先立ち、患者またはその家族などに有効性および危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始する(8)本剤の投与にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討する 指針では以上の他にも、「COVID-19に対する治療に使用できる可能性のある抗ウイルス薬にはレムデシビル、インターフェロン、クロロキンなどがあるが、それらの効果や併用効果に関しては今後の知見が待たれる」と期待を寄せている。

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医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)【新型タバコの基礎知識】第16回

第16回 医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)Key Pointsタバコ対策が不十分な日本では、電子タバコによるハーム・リダクションを検討する前に、紙巻タバコへの規制を強化すべき通常、商品から規制値を超えるホルムアルデヒドが検出されると、その商品は回収されることとなるが、タバコは回収されない特別扱い新型タバコも含めた「タバコの煙」全てを有害物質だと判定し、タバコ対策を進めていくことが必要今回は、まず(加熱式タバコではない)電子タバコに対する規制方策について紹介します。次に、現実社会におけるタバコや新型タバコの扱いについて検討し、新型タバコも含めたタバコの有害性についてどういう捉え方ができるのか、国際がん研究機関(IARC)の判断をみていき、新型タバコへの対処方法について考えてみたいと思います。※加熱式タバコと電子タバコの違いについては、第1回および第2回を参照ください(加熱式タバコを含まない)電子タバコに対する規制は今どうなっている?新型タバコといっても、加熱式タバコではない、電子タバコの規制については国際的に一致した見解が得られていないのが現状です。英国政府は電子タバコを医薬品として承認して、ハーム・リダクションの手段として積極的に活用する方針であるのに対して、米国では若年者における電子タバコの蔓延による悪影響が考慮され、規制が強化されてきています。こうした背景には、各国におけるタバコ対策の進捗状況の違いがあります。英国には、国際的にトップランナーとしてタバコ対策を進めてきた実績があります。タバコ1箱当たりのタバコ税が約900円と高く設定されており、飲食店やホテル等のサービス産業も含め、屋内を全面禁煙化することが罰則付きで法律により定められています。英国ではタバコ対策はかなり進められているが、それでもまだタバコを吸っている人に対してどうするか、という文脈で、電子タバコの禁煙効果に期待が集まっているわけです。しかし、電子タバコに禁煙させる効果があるとは証明されていません。また、電子タバコにも有害性がないわけではありません(第10回記事参照)。分かっていないことも多いのです。そのため、米国など多くの国で電子タバコへの規制強化が検討されています。タバコ対策が十分に進んでいない国であればあるほど、電子タバコがタバコ対策や社会に悪影響を与える可能性があると考えられます。英国と比べて、日本のタバコ対策はかなり不十分といえるでしょう。日本では、電子タバコによるハーム・リダクションを検討する前に、まず本丸である紙巻タバコへの規制を強化することが重要です。日本ではタバコは安すぎるし、屋内禁煙は徹底できておらず、脱タバコ・メディアキャンペーンはほぼ実施されていないのです。この現状では、ハーム・リダクションとして新型タバコを導入することよりも、これらのタバコ対策を進めることが優先されるものと考えられます。他の商品とタバコとで異なるアルデヒド検出への対応タバコからは5,000種類以上の化学物質、70種類以上の発がん性物質が放出されており、中でもタバコの煙から多量に検出されるホルムアルデヒドは、発がん性などのタバコの有害性を形づくる主要な有害物質の一つです。通常、商品から規制値を超えるホルムアルデヒドが検出されると、その商品は回収されることとなります(図)。規制値を下回るレベルであったとしても発生原因が調査され、健康被害に配慮した厳格な対応が取られ、回収されているのです。しかし、タバコの場合には、これとは全く異なった対応となっています。すべてのタバコ製品から規制値をはるかに上回るレベルのホルムアルデヒドが検出されており、日本だけでも年間10万人以上がタバコが原因で死亡しており、非常に多くの重篤な健康被害が発生していると分かっているものの、タバコは回収とはならないのです。画像を拡大するそれはなぜか。タバコだから、です。たばこ事業法などの法律の下、タバコは通常の商品ではなく、タバコとして扱われます。本来であれば(在るべき姿としては)、タバコは有害性が実証された段階で禁止されていてしかるべきものです。しかし、タバコの有害性が実証された1950~60年代には、タバコ利権が巨大過ぎて、タバコを禁止できませんでした。その後、世界のタバコ使用を減らすことができていればタバコ利権が弱まり、タバコを禁止する方向へと話を進められたかもしれません。しかし、現実には世界のタバコ消費量は近年拡大しており、タバコ産業の利権は1950~60年代当時よりもはるかに巨大なものとなっているのです。「タバコの煙」自体が有害物質と認定されているこのように歪められたタバコへの対応を改善してタバコのない社会を目指すために、次に示す考え方は参考にできるのではないでしょうか。国際がん研究機関(IARC)は、科学的根拠に基づき、「タバコの煙」自体を有害物質(発がん性物質)だと判定しています。この判定の根拠となったデータは、現実社会における人々の記録です。人々が「タバコの煙」を吸ったかどうか記録され、その人が追跡され、がんにかかったかどうかが調べられてきたのです。そのようなデータを沢山集め、科学的根拠に基づいて「タバコの煙には発がん性がある」と判定したのです。実は、これまでの50年以上にわたるタバコのリスク研究全部をもってしても、紙巻タバコの有害性の全容は分かっていません。途中のメカニズムには不明な点もありますが、タバコの煙を吸うと、肺がん、心筋梗塞や脳卒中などの病気になってしまうと分かっているのです。ここで重要な予防の観点は、途中のメカニズムがどうであろうと、とにかくタバコの煙を吸うのを防ぐことができれば、病気を防げるということです。人々をがんなどの病気から守るためにも、われわれは人々を「タバコの煙」からできるだけ遠ざけなければなりません。具体的には、禁煙支援を実施したり、受動喫煙を防止するために屋内を禁煙にしたり、学生にタバコの害を教えたり、社会的にタバコは許容できるものではないとの規範を広めたり、タバコを規制する法律を作ったりしていかなければならないのです。「タバコの煙」自体を有害物質だと判定し、タバコの害についての認識を共有したことが、世界的なタバコ対策の発展へとつながっているのです。新型タバコにはまだ長期間の記録がありません。新型タバコの研究は難しく、新型タバコによって病気になるリスクはしばらく解明されないかもしれません。しかし、第5回でみたように、新型タバコからは明らかに有害物質が出ています。新型タバコからも「タバコの煙(もしくはエアロゾル)」が出ているのです。その「タバコの煙(エアロゾル)」自体を、由来がどのタバコだろうとも、規制の対象であるとすべきだと考えられます。新型タバコに対してどのように規制していけばいいのか、これから最良の対応方法を模索していかなければならないと思います。第17回は、「禁煙をし続けるために本当に必要なこと(1)」です。

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日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

 日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020年1月29日号に掲載。 本研究では40~64歳の男性すべてを登録し、被験者数は、1958年628人、1977年539人、1982年602人、1989年752人、1999年402人、2009年329人、2018年160人であった。1958~89年は24時間思い出し法、1958~89年は食事摂取頻度調査票を用いて、食事摂取パターンを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日当たりの総エネルギー摂取量は、2,837kcal(1958年)から2,096kcal(2018年)に減少した。・炭水化物摂取量の全体に対する割合は84%から53%に著しく減少したが、脂肪摂取量の割合は5%から24%に大幅に増加した。・年齢調整後の平均コレステロール値は167.9mg/dLから209.4mg/dLに急激に上昇し、BMIも21.7から24.4に増加した。・喫煙率は69%から30%に減少した。・脳卒中およびがんによる死亡率は低下したが、心筋梗塞および突然死による死亡率は低いまま安定していた。

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米国2019-nCoV感染1例目、発熱・咳症状9日目に肺炎/NEJM

 中国・湖北省武漢市でアウトブレークが始まった新型コロナウイルス「2019-nCoV」は、瞬く間に拡大し複数の国で新たな感染例の確認が報告されている。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichelle L. Holshue氏らは、2020年1月20日に米国で確認された1例目の感染例について、疫学的および臨床的特徴の詳細をNEJM誌オンライン版2020年1月31日号で発表した。その所見から、「本症例で鍵となるのは、パブリックな注意喚起を見た後に患者が自発的に受診をしたこと、患者の武漢市への渡航歴を地域の医療提供者および郡・州・連邦の公衆衛生担当官が共有し、感染拡大の可能性を認識して、患者の迅速な隔離と検査および入院を許可したことだ」と述べ、「本症例は、急性症状を呈し受診したあらゆる患者について、臨床家が最近の渡航歴または病人との接触曝露歴を聞き出し、そして2019-nCoVのリスクがある患者を適切に識別し迅速に隔離して、さらなる感染を抑制する重要性を強調するものである」とまとめている。渡航歴を考慮し、ただちにクリニックからCDCへと報告が上がる 米国の2019-nCoV感染1例目は、1月19日にワシントン州スノホミッシュ郡の緊急ケアクリニックを受診した35歳男性。咳、主観的発熱の既往は4日間。クリニックに入ると待合室でマスクを着け、約20分待った後、診察室に入った。患者は、家族に会いに武漢市に行き15日に帰ってきたことを申し出、米国CDCの注意喚起を見て、自身の症状と渡航歴を鑑み受診したと話した。高トリグリセライド血症歴はあったが、健康な非喫煙者だった。 診察の結果、熱は37.2度、血圧134/87mmHg、心拍110回/分、酸素飽和度96%。ラ音を認めたため胸部X線検査を行ったが異常は認められなかった。迅速インフルエンザウイルス検査(A、B)の結果は陰性。鼻咽頭スワブ検体を採取し(あらゆる結果が48時間以内に判明する)、渡航歴を考慮してただちに郡・州の保健当局に通知。州当局は臨床担当医とともにCDCの緊急オペレーションセンターに通知した。患者が武漢海鮮卸売市場には行っておらず病人との接触もないと話したが、CDCは「persons under investigation」を基に要検査例と判断。ガイダンスに従い、鼻咽頭および口咽頭スワブ検体を収集。患者は退院したが家族とは隔離し郡保健所がモニタリングにあたった。 翌1月20日にリアルタイムPCR検査の結果、2019-nCoV陽性が確認された。患者は郡医療センターに隔離入院となった。入院時も入院後もバイタルはほぼ安定、しかし入院5日目に肺炎を呈す 患者は入院時、持続性乾性咳嗽と2日間の悪心および嘔吐の既往を認めたが、息切れ、胸痛の訴えはなく、バイタルサインは正常範囲を示していた。入院後、支持療法(悪心に対する2Lの生理食塩水とオンダンセトロン投与)を受けたが、入院2~5日目(疾患6~9日目)のバイタルサインはほとんどが安定していた。 入院2日目に腹部不快感と下痢症状を呈するが翌日に回復。入院3日目に胸部X線検査を行ったが、異常所見を認めなかった。しかし、入院5日目(疾患9日目)の夜から呼吸器症状に変化がみられ、胸部X線検査で左肺下葉に肺炎の所見を認めた。入院6日目に酸素吸入を開始、バンコマイシン、セフェピムの投与も開始。その日の胸部X線検査で両肺に陰影、ラ音を認める。担当医は他施設での報告例を参照し、7日目の夕方に治験中の抗ウイルス薬remdesivirの静脈投与を開始。有害事象は観察されなかった。同日夕方にバンコマイシン投与は中止、セフェピムは翌日に中止している。 入院8日目(疾患12日目)に患者の臨床症状は改善し、支持療法も中止となった。入院11日目の1月30日現在も入院は続いているが、熱は低下(36度台)し、重症度が低下した咳を除き、あらゆる症状が改善した。

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低線量ボリュームCT検診、肺がん死を抑制/NEJM

 肺がんのリスクが高い集団において、ボリュームCTによる検診を受けた集団は、これを受けなかった集団に比べ、10年間の肺がんによる死亡率が低下し、肺がんを示唆する検査結果に対しフォローアップ処置を行う割合も低いことが、オランダ・エラスムス医療センターのHarry J de Koning氏らが行った「NELSON試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。全米肺検診試験(NLST)は、低線量CTによる肺がん検診(年1回で3回)は従来の胸部X線に比べ、肺がん死亡率を20%低減したと報告している。一方、このような肺がん検診の死亡に関する有益性を示した無作為化試験のデータは限られているという。オランダとベルギーの地域住民ベース無作為化試験 研究グループは、低線量ボリュームCTを用いた検診により、高リスクの男性参加者の追跡期間10年時の肺がん死亡率を25%以上低下させることを目標に、地域住民ベースの無作為化対照比較試験を実施した(オランダ保健研究開発機構などの助成による)。 2003年と2005年に参加者登録が行われた。対象は、喫煙歴が1日15本以上を25年以上または1日10本以上を30年以上の現喫煙者または元喫煙者(禁煙から10年以内)であった。オランダとベルギーの4地域に居住する50~74歳の男性1万3,195例(主解析)と女性2,594例(サブグループ解析)が解析に含まれた。 参加者は、低線量ボリュームCTによる検診(ベースライン、1、3、5.5年)を受ける群または受けない群(対照群)に無作為に割り付けられた。 オランダとベルギーの全国レジストリと連携し、がんの診断と死亡の日付・原因に関するデータを入手した。判定委員会は、可能な場合に、肺がんが死亡の原因であることを確認した。2015年12月31日までに、すべての参加者が最短追跡期間10年に達した。女性のほうが利益が大きい可能性も 男性は、検診群が6,583例、対照群は6,612例であった。両群とも、年齢中央値は58歳(IQRは検診群55~63、対照群54~63)で、喫煙歴中央値は38.0 pack-years(IQRは両群とも29.7~49.5)だった。 男性では、合計2万2,600件のCT検査が行われ、平均検診受診率は90.0%(95%信頼区間[CI]:76.9~95.8)であった。9.2%(2,069/2万2,600件)で、検診検査アウトカムを決定する前に、体積倍加時間を算出するための再CT検査が行われた。最終的に、2.1%(467/2万2,600件)が陽性で、呼吸器科医による精密検査を受け、肺がん検出率は0.9%(203/2万2,600件)であった。また、陽性反応適中度は43.5%だった。 追跡期間10年時の肺がんの発生率は、検診群が1,000人年当たり5.58人(がん341個)、対照群は1,000人年当たり4.91人(がん304個)であった(率比:1.14、95%CI:0.97~1.33)。肺がんの59.0%(203/344個)が検診で検出され、12.8%(44/344個)は中間期がんであった。 10年間で、検診群の156例、対照群の206例が肺がんで死亡した。肺がん死亡率は、検診群が1,000人年当たり2.50、対照群は1,000人年当たり3.30であり(10年時の累積肺がん死亡率の率比:0.76、95%CI:0.61~0.94、p=0.01)、検診群で有意に低下した。8年および9年時の率比もほぼ同じで、検診群で有意に良好だった。 10年全死因死亡率は、検診群が1,000人年当たり13.93、対照群は13.76であった(率比:1.01、95%CI:0.92~1.11)。 一方、女性では、追跡期間10年の肺がん死亡率の率比は0.67(95%CI:0.38~1.14)であった。また、7年時の率比は0.46(0.21~0.96)、8年時は0.41(0.19~0.84)、9年時は0.52(0.28~0.94)であり、男性に比べ良好な傾向が認められた。 著者は、「ボリュームCT検診は、良好なアウトカムを損なわずに、偽陽性や不要な精密検査を減少させることが可能と考えられる」とまとめ、「女性は男性よりも利益が大きいと示唆されるが、本試験では女性は相対的に参加者が少ないサブグループであった。他のサブグループと共に、女性に関する研究を進める必要がある」と指摘している。

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日本人高齢男性における飲酒と認知機能との関係

 大量の飲酒は、認知機能障害のリスク因子として知られているが、適度な飲酒においても同様の影響が認められるかどうかは、よくわかっていない。これまでの観察研究では、とくに高齢者において、中程度の飲酒による認知機能への潜在的なベネフィットが報告されているが、アジア人ではこの影響が実証されていなかった。滋賀医科大学のAli Tanweer Siddiquee氏らは、認知障害のない日本人高齢男性を対象に、飲酒レベルと認知機能との関連について調査を行った。Alcohol誌オンライン版2020年1月7日号の報告。 飲酒と認知機能との関連を調査するため、進行中のプロスペクティブ人口ベース研究である滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の断面データを用いた。65歳以上の男性585人を対象に、週ごとのアルコール摂取量の情報を収集し、摂取量に応じて分類した。飲酒歴の分類は、元飲酒者、非常に軽度(14g/日未満)、軽度(14~23g/日)、中程度(24~46g/日)、重度(46g/日超)とした。認知機能の測定には、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・年齢、教育、BMI、喫煙、運動、高血圧、糖尿病、脂質異常症で調整したロジスティック回帰モデルでは、全体および領域特有の認知機能のCASIに、飲酒歴の有無による、有意な差が認められなかった。・元飲酒者は、非飲酒者と比較し、全体の認知機能(多変量調整平均CASIスコア:88.26±2.58 vs.90.16±2.21)および抽象化、判断の領域(多変量調整平均CASIスコア:8.61±0.57 vs.9.48±0.46)において、CASIスコアが有意に低かった。 著者らは「日本人高齢男性では、飲酒と認知機能との間に、有益または不利益な影響は認められなかった。しかし、元飲酒者の認知機能が低いことから、飲酒を中止した要因を特定するための今後の調査が必要である」としている。

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思春期のB群髄膜炎菌ワクチン接種、予防効果は?/NEJM

 オーストラリアの思春期児(15~18歳)に対するB群髄膜炎菌ワクチン4CMenBの接種は、B群を含む病原性髄膜炎菌の保菌に対して、識別可能な効果はないことが示された。オーストラリア・アデレード大学のHelen S. Marshall氏らが、237校の学生、約3万5,000例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。4CMenBは、侵襲性B群髄膜炎菌疾患を予防するとして承認された新規の組み換え型蛋白ベースのワクチンだが、伝播を予防する役割、さらには住民(集団)免疫効果があるのかについては明らかになっていなかった。NEJM誌2020年1月23日号掲載の報告。接種群と対照群の病原性髄膜炎菌の保菌率を比較 研究グループは2017年4月~6月に、サウスオーストラリアの学校237校で、10~12年生(15~18歳)の生徒を対象にクラスター無作為化試験を開始した。試験の対象を、学校単位で無作為に2群に分け、一方には4CMenBをベースラインで接種し(接種群)、もう一方の群にはベースラインから12ヵ月時点で接種した(対照群)。 主要アウトカムは、10および11年生の時点の病原性髄膜炎菌(A群、B群、C群、W群、X群、Y群のいずれか)の口腔咽頭保菌率とし、PorA(ポリン蛋白Aをコード)および病原性髄膜炎菌の遺伝子群のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査により同定した。副次アウトカムは、すべての病原性髄膜炎菌および各病原性遺伝子群の保菌率や感染などとした。また、ベースライン時に保菌のリスク因子を評価した。保菌率は同等、接種群2.55%、対照群2.52% 試験登録者は、10、11年生が合計2万4,269例、12年生が1万220例だった。 12ヵ月時点で、病原性髄膜炎菌の保菌率は、接種群2.55%(1万2,746例中326例)、対照群2.52%(1万1,523例中291例)で差はみられなかった(補正後オッズ比[OR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.80~1.31、p=0.85)。 副次アウトカムの保菌率についても、両群で有意差は認められなかった。 なお、ベースライン時の病原性髄膜炎菌保菌のリスク因子として、高学年であること(12年生の10年生に対する補正後OR:2.75、95%CI:2.03~3.73)、上気道感染症に罹患していること(補正後OR:1.35、95%CI:1.12~1.63)、喫煙(1.91、1.29~2.83)、水タバコ(1.82、1.30~2.54)、パブまたはクラブに通っていること(1.54、1.28~1.86)、濃厚キス(1.65、1.33~2.05)などが明らかになった。 ワクチンの安全性に関する懸念は特定されなかった。

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医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(1)【新型タバコの基礎知識】第15回

第15回 医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(1)Key Points改正健康増進法では、加熱式タバコは紙巻タバコとは異なる例外的な扱いとされている屋内全面禁煙が、受動喫煙防止対策における世界基準のルール屋内全面禁煙で禁止されるタバコには加熱式タバコも含まれるべきWHOも日本呼吸器学会も同様の見解を提示している今回は、全面施行を目前に控えた改正健康増進法での新型タバコの扱いから、社会全体としてどのように新型タバコに対処すればよいのかについてお伝えしたいと思います。4月全面施行! 改正健康増進法での加熱式タバコの位置付けは?新型タバコの登場はすでに社会に悪影響を与えています。2018年に成立し、2020年4月1日に全面施行される改正健康増進法では、加熱式タバコは紙巻タバコとは異なる例外的な扱いとされています。屋内は原則禁煙としながらも、加熱式タバコ専用の喫煙ルームでは、飲食などのサービスを提供することが例外的に認められているのです。屋内でのタバコを禁止するという政策には、単に受動喫煙を防ぐという目的だけではない意義があります。屋内からタバコをなくし、タバコは社会的に認められないというメッセージを届ける効果や、禁煙したい喫煙者がより吸いにくくなり、禁煙が促進される効果が期待されます。しかし、今回の法律のように加熱式タバコの分煙を認めてしまうと、「新型タバコは認められている」というメッセージとなって伝わる可能性もあるでしょう。タバコ会社はすでに全面禁煙となっている飲食店に対して、加熱式タバコを認めさせようと積極的なロビー活動を展開しています。加熱式タバコを特別扱いすることは、タバコ産業の思惑通りともいえます。リスクが分からないとき、どう捉えるか多くの先人たちがこれまでに実施してきたタバコ問題に関する研究の成果として、受動喫煙を防止するためには、例外なく屋内を全面禁煙にすることが最も有効だと分かっています。屋内全面禁煙が、受動喫煙防止対策における世界基準のルールなのです。受動喫煙防止のための法律や条例を成立させることができたこと自体は、すばらしいことだと思います。日本におけるタバコ対策の前進であり、まずはその意義を強調したいです。この法律や条例の成立に努力された方々に感謝します。しかし、この加熱式タバコに対する特別扱いについては賛成しかねます。まだ情報が少なかったためにそうするしかなかったとも解釈できますが、情報が十分にない事柄に対してどのように対処するべきなのでしょうか? 今回の法律では、「リスクが分からないので禁止できない」としてしまっています。ここでは予防原則により「リスクがないと分かるまでは禁止する」とするべきだろうと公衆衛生学の観点からは考えます。予防原則の考え方は、経済というよりも人を大切にする考え方だとも言えるのではないでしょうか。現在は経済的メリットが優先された状況だとも考えられるでしょう。加熱式タバコは、従来からの紙巻タバコと同様、有害物質・発がん性物質が発生する明らかに有害なタバコ製品です。さらなる研究は必要ですが、今ある情報からでも、加熱式タバコによる健康影響は決して小さくないと推測されます(第7回記事参照)。社会におけるルール・規制において、加熱式タバコを特別扱いするのではなく、紙巻タバコと同等にタバコとして扱うべきだと考えます。たばこ事業法では、はじめから加熱式タバコはタバコとして扱われているのです。屋内全面禁煙で禁止されるタバコには加熱式タバコも含まれるべきだと考えます。WHOや呼吸器学会の見解は?なにも筆者だけがこう主張しているわけではありません。世界保健機関(WHO)もこの考え方を支持しています。WHOの加熱式タバコに関する考え方をみてみましょう。2018年に公開されたWHOによる加熱式タバコの情報シート1)には、以下のように書かれています。加熱式タバコは従来のタバコより安全だろうか?現在、加熱式タバコが従来のタバコ製品よりも有害性が低いことを示す証拠はない。タバコ業界が資金提供する研究は、基準となる紙巻タバコと比較して、有害性物質への曝露が著しく減少していると主張している。しかし、現在のところ、これらの化学物質への曝露の減少がヒトにおけるリスクの減少につながることを示唆する証拠はない。WHOはどのように推奨するか?加熱式タバコを含む、すべての形態のタバコが有害である。もともとタバコは有毒であり、天然の形態でも多くの発がん性物質を含む。したがって、加熱式タバコは、タバコ規制条約に基づき、他のすべてのタバコ製品に適用される政策および規制措置の対象となるべきである。さらに、日本呼吸器学会の見解をみてみましょう。2017年10月に公開された日本呼吸器学会による、加熱式タバコや電子タバコに対する見解は次のとおりです。日本呼吸器学会は、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコについて以下のように考えます。1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来のタバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。このステートメントは、2019年12月11日に改訂され、日本呼吸器学会による更新された見解と提言が下記のとおり提示されています2)。見解1.加熱式タバコや電子タバコが産生するエアロゾルには有害成分が含まれており、健康への影響が不明のまま販売されていることは問題である。2.加熱式タバコの喫煙者や電子タバコの使用者の呼気には有害成分が含まれており、喫煙者・使用者だけでなく、他者にも健康被害を起こす可能性が高い。提言1.加熱式タバコや電子タバコが紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されない。2.加熱式タバコの喫煙や電子タバコの使用の際には紙巻タバコと同様な二次曝露対策が必要である。※「非燃焼・加熱式タバコ」という名称は、燃焼が全くないわけではないこともあり、「加熱式タバコ」と修正されている。こういった情報を参考にして、医療従事者のみなさん1人ひとりが正しい情報をもとに考えていただき、各職能団体や学会などでの大きな動きにつながっていけば、政治家・行政担当者の方々にも波及していき、今後のタバコ対策を改善し、社会をよりよい形に導いていっていただくことができるのではないかと考えます。第16回は、「医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)」です。1)世界保健機関.加熱式タバコ製品情報シート2)日本呼吸器学会.加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解と提言

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中年期の健康的な生活様式は平均余命にどう影響?/BMJ

 中年期の健康的な生活様式の順守は、主要慢性疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)のない平均余命を延長することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYanping Li氏らによる検討の結果、示された。これまで、修正可能な生活様式因子(喫煙、身体活動、アルコール摂取、体重、食事の質)が、平均余命および慢性疾患発症の両者に影響することは知られていた。しかし、複数の生活様式因子の組み合わせと、主要な疾患(糖尿病、心血管疾患、がんなど)のない平均余命との関わりについて、包括的に検討した研究はほとんどなかったという。BMJ誌2020年1月8日号掲載の報告。5個の様式の組み合わせと主要慢性疾患のない平均余命の関連を調査 研究グループは、米国で行われた前向きコホート研究「Nurses' Health Study」(1980~2014年、女性7万3,196人)と「Health Professionals Follow-Up Study」(1986~2014年、男性3万8,366人)の参加者データを分析し、健康的な生活様式が主要な慢性疾患のない平均余命とどのように関連するかを調べた。 「非喫煙」「BMI 18.5~24.9」「中強度~高強度(30分/日以上)の身体活動」「適度なアルコール摂取(女性5~15g/日、男性5~30g/日)」「食事の質のスコア(Alternate Healthy Eating Index:AHEI)が高い(各コホートで上位40%に属する)」の5個を「低リスク生活様式因子」と定め、その実践数別(0、1、2、3、4/5個)に、糖尿病、心血管疾患、がんのない平均余命年を算出して評価した。低リスク生活様式が多いほど平均余命は延長 女性227万411人年、男性93万201人年のフォローアップ中に、3万4,383人(女性2万1,344人、男性1万3,039人)の死亡が記録された。 低リスク生活様式因子の実践数が多い被験者は、マルチビタミンサプリメントおよびアスピリンの服用者が多い傾向がみられた。 50歳時点での総平均余命(慢性疾患の有無を問わず集計)は、低リスク生活様式因子が多いほど長く、女性は31.7年(0個)~41.1年(4/5個)、男性は31.3年(0個)~39.4年(4/5個)にわたっていた。 50歳時点での糖尿病、心血管疾患、がんのない平均余命は、女性においては低リスク生活様式因子の実践が0個の場合は23.7年(95%信頼区間[CI]:22.6~24.7)であったが、4/5個実践の場合は34.4年(33.1~35.5)であった。男性においては、実践が0個の場合は23.5年(22.3~24.7)であったが、4/5個実践の場合は31.1年(29.5~32.5)であった。 50歳時の総平均余命に対する慢性疾患のない平均余命の割合は、重度の現行男性喫煙者(紙巻きタバコ15本/日以上)や、肥満(BMI 30以上)の男性および女性で最も低く、いずれも75%以下であった。

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果物や野菜の摂取とうつ病との関連

 うつ病は、世界的に主要な精神疾患である。韓国における成人のうつ病有病率は、2006年5.6%、2011年6.7%、2013年10.3%と増加が認められる。韓国・建国大学校のSe-Young Ju氏らは、韓国人成人のうつ病の有病率と野菜や果物の摂取との関連を調査するため、韓国の全国データを用いて検討を行った。Journal of Health, Population, and Nutrition誌2019年12月3日号の報告。 2014年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)に参加した19歳以上の成人4,349人のデータを用いて検討を行った。うつ病の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。食物や栄養の摂取量は、24時間思い出し法を用いて評価した。食物摂取量は、18の食物グループに分類した。統計分析は、SPSS Ver.23.0を用いた。PHQ-9の項目の内的整合性を評価するため、クロンバックのα係数を用いた。うつ病のオッズ比は、複数の交絡因子で調整した後、ロジスティック回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者におけるうつ病有病率は、8.7~4.7%であり、野菜や果物の摂取量が増加するにつれ減少が認められた。・うつ病有病率は、野菜や果物の摂取量が増加するにつれ、男性で6.4%から2.5%へ、女性で11.4%から6.6%へ減少した。・野菜や果物の摂取量とうつ病有病率との間に逆相関が認められ、オッズ比は、交絡因子で調整せずとも逆相関を示した。・年齢、エネルギー摂取、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、外食の頻度、朝食、フードセキュリティーで調整した後、野菜や果物の摂取量が増加するほど、うつ病有病率が有意に低いことが示唆された。 著者らは「本研究は、韓国国民における野菜や果物の摂取とうつ病との関連を調査した最初の研究である。この関連についての根拠を明らかにするためには、さらなる疫学研究が必要である」としている。

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第18回 冬の救急では、これを忘れずに!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)冬の救急では一酸化炭素中毒を鑑別に!2)疑ったら血液ガスで評価し酸素投与を!3)心電図も忘れずにチェック!【症例】34歳男性。ベトナムからの留学生で、飲食店のバイト中に気分が悪くなり休んでいた。控え室で症状は改善傾向にあったため仕事を再開していたが、嘔気、頭痛を認め同僚が救急要請。テキスト●搬送時のバイタルサイン意識清明血圧124/75mmHg脈拍102回/分(整)呼吸22回/分SpO299%(RA)体温36.5℃瞳孔2.5/2.5mm+/+既往歴、内服薬:定期内服薬なし忘れた頃にやってくる一酸化炭素中毒(CO中毒)CO中毒は冬に多い中毒で、急性中毒死亡原因の第1位、自殺遂行手段の第2位です。一酸化炭素は不完全燃焼の結果発生し、酸素の240倍もヘモグロビンと結合しやすいのが特徴です。CO-Hbを形成し、Hbの酸素運搬能を障害するため、低酸素血症となり呼吸困難をはじめとしたさまざまな症状を引き起こします1)。ピットフォールとして、通常のパルスオキシメーターでは見逃され、SpO2は保たれているように表示されます(CO-Hbを測定できるものもあります)。一般的な症状は表のとおりです。息切れや呼吸困難以外に、頭痛、嘔吐、めまい、意識障害など多彩な症状で来院するため、頻度が高くなる冬場には、常に意識して病歴を聴取する癖を持っておくとよいでしょう。表 CO中毒の症状画像を拡大するCO中毒かな?と思ったら火災現場からの搬送など疑わしい場合には、酸素を投与しつつ、血液ガスを確認します。環境が改善されていれば、時間とともにCO-Hbの数値は低下するため、絶対的な指標にはなりませんが、上昇が認められる場合には有用な所見となります。成人の正常時は0.1~1.0%程度、喫煙者では6%以上となり、ヘビースモーカーの場合には15%前後まで上昇します。妊婦や胎児では生理的に増加することが知られています。一般的に、非喫煙者では3%を超える場合、喫煙者では10~15%を超える場合にはCO中毒と診断します2)。CO中毒を疑った場合には高流量酸素の開始です。通常の空気ではCOの半減期は300分程度ですが、高流量酸素マスクを使用すると90分、100%高圧酸素では30分とされています1)。高圧酸素は施行できる施設が限られるため、高流量酸素マスクを取りあえず開始すればOKです。血液ガスだけでなく心電図もチェックCO中毒で心筋虚血を認めることがあります。中等症以上の症例の30%程度に心電図やトロポニンの上昇を認めることがあり、非侵襲的な検査でもあるため、中等症以上の症状を認める場合には、心電図を確認し、異常がないかをみておくとよいでしょう。CO中毒は、遅発性脳症など曝露後1~2週間ごろから記憶障害や失認などの症状を認めることがあります。過度に心配する必要はありませんが、経過を見ることも大切であり、何より早期に疑い対応する必要があります。鑑別に挙がらず、再度同様の環境に曝露されることは避けなければなりません。CO中毒、その原因は?今回の症例のように、火の取り扱いに伴う環境の問題のみであれば、換気などで再発を防止すればよいですが、その背景に練炭自殺などの希死念慮が関与している場合には、そちらの介入を行う必要があります。冒頭で述べたように自殺遂行手段として頻度が高く、症状が軽いから大丈夫といって帰すのではなく、うつ病など患者背景を意識した対応を行いましょう。1)Clardy PF, et al : Carbon monoxide poisoning. Post TW(Ed), UpToDate, Waltham, MA[Online] Available at: https://www.uptodate.com/contents/carbon-monoxide-poisoning(Accessed on December 14, 2019.)2)Ernst A, et al. N Engl J Med. 1998;339:1603-1608.

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第36回 本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(後編)だいぶ遅くなりましたが、皆さま、新年明けましておめでとうございます。2018年8月末から隔週で続けていた本連載を2020年1月からは1回/月ペースでお届けすることになりました。引き続き“価値ある”レクチャーを展開していく所存ですので、今年も“ドキ心”をよろしくお願いします。さて、今回も 昨年に引き続き、下壁誘導(II、III、aVF)のQ波をどう考えるか、Dr.ヒロと一緒に心電図の“技巧的”な記録法を学びましょう。第35回と同じ症例を用いて解説し「異常Q波」のレクチャーを終えたいと思います。では張り切ってスタートです!症例提示48歳、男性。糖尿病にてDPP-4阻害剤を内服中。泌尿器科より以下のコンサルテーションがあった。『腎がんに対して全身麻酔下で左腎摘除術を予定しています。自覚症状はとくにありませんが、術前心電図にて異常が疑われましたので、ご高診下さい』174cm、78kg(BMI:25.6)。血圧123/72mmHg、脈拍58/分・整。喫煙:15~20本×約30年(現在も喫煙中)。術前検査として記録された心電図を示す(図1)。(図1)術前外来の心電図画像を拡大する【問題1】心エコーでは左室下壁領域の壁運動低下があった(第35回参照)。本症例の「陳旧性下壁梗塞」の有無について、Q波の局在、ST-T変化の合併以外に、心電図上の注目ポイントを述べよ。解答はこちら平常時と深吸気時記録の比較解説はこちら症例は前回と同じ、腎がんに対して摘除術が予定された中年男性です。“ニ・サン・エフ”のいわゆる下壁誘導に「異常Q波」ありと読むのでした。“周囲確認法”的にはST-T異常も伴わず、本人に問診しても強い胸痛イベントの記憶もないため、フェイクQ波だと思いたいところではあります。しかし、心エコーで局所壁運動異常、背景に糖尿病もあるため、「無症候性心筋虚血(梗塞)」の線も捨てきれないという悩ましい状況なわけです。あくまでも術前ですから、冠動脈CT、心臓MRI(CMR)や核医学(RI)などの“大砲検査”に無制限に時間をかければいいというものでもありません。あくまでも腎がんの手術をつつがなく終えてもらうことが当座の目標です。大がかりでコストもかさむ検査をする前に、実は“一手間”かけて心電図をとるだけで、下壁Q波が本物かニセモノかを見抜ける場合があるのです。“深呼吸でQ波が消える?”いつか、皆さんにこの“ドキ心”レクチャーで紹介しようと思っていた論文*1があります。イタリアからの報告で、既知の冠動脈疾患(CAD)がない50人(平均年齢68歳、男性54%)を対象としています。これらの男女は見た目“健康”ですが、複数の冠危険因子、脳梗塞や末梢動脈疾患(PAD)の既往があり、下壁誘導にQ波が見られるという条件で選出されています(II:18%、III:98%、aVF:100%)。ちなみに、海外ではこうした“下壁Q波”は、一般住民でも1%弱(0.8%)に認められるそうです*2。全例に心エコーとCMRを行い、下壁にガドリニウム(Gd)遅延造影が見られた時に“本物”の下壁梗塞と認定されました。と、ここまでは至極普通なのですが、この論文がすごいのは、以前からささやかれていた「ニセモノの下壁Q波は深呼吸で“消える”」という、いわば“都市伝説”レベルの話が検証されているのです! 皆さん、こんな話って聞いたことありますか?方法はとても簡単です。安静時と思いっきり息を吸った状態(deep inspiration)の2枚、心電図を記録します。深吸気時でも変わらずQ波なら、それこそ真の「異常Q波」と見なし、下壁梗塞のサインと考えるのです。ちなみにQ波が“消える”とは、完全に消失することではなく、診断基準(第33回)を満たさなくなるという意味とご理解ください。このシンプルなやり方に“アダ名”をつけるのが、Dr.ヒロの得意技(笑)。言いやすい“深呼吸法”と名付けました。“本物なQ波の確率を高める所見はあるか?”この研究、実際の結果はどうだったのでしょうか? CMRで本当に下壁梗塞が検出されたのは50人中10人(20%)でした。単純にQ波が3つの誘導中2つ以上、それもほとんどサンエフ(III、aVF)だけなら、 “打率”は2割と低いわけです。単純に下壁梗塞の有無で各種因子が比較されましたが、有意なものはありませんでした。「有意」(p<0.05)に届かなかったものの“おしい”感じだったのは、1)男性、2)II誘導にQ波あり、3)ST-T所見の合併ありの3つです。性別(男性)は確かに冠危険因子の一つですし、背景疾患も含めて意識したいところです。ただ、これは“決定打”にはなりません。残りの2つも大事です。その昔「II誘導にQ波があったら高率に下壁梗塞あり」と習った記憶がありますが、この論文では半数弱(40%)にとどまりました(「なし」の場合の13%より確かに高率でしたが)。もう一つのST-T所見の合併、これは「ST上昇」や「陰性T波」であることが多いです。以前取り上げた心筋梗塞の「定義」を述べた合意文書でも、「幅0.02~0.03秒」の“グレーゾーン”でも、「深さ≧1mm」かつ「同誘導で陰性T波」なら本物の可能性が高まると述べられています。常日頃から漏れのない判読を心がけている立場としては、Q波「だけ」で考えないのは当然で、“周囲確認法”として多面的に考えることで“打率”が向上すると思っています(有意にならなかったのは、サンプル数が少ないためでしょうか)。“深呼吸法の実力やいかに”さて、いよいよ“深呼吸法”のジャッジです。次の図2をご覧ください。(図2)“深呼吸法”の識別能力画像を拡大する図中の「IQWs」とは、「下壁Q波」(Inferior Q-waves)の意味で、「MI」は「心筋梗塞」(myocardial infarction)です。“深呼吸法”で異常Q波が「残った」10人中、本物が8人。 なんと“打率”が8割にアップしました。よく見かける2×2分割表を作成し、感度、特異度を求めるとそれぞれ80%、95%になるわけです。しかも、特筆すべきは心エコーでの局所壁運動異常(asynergy)は各50%、88%であったこと。あれっ? 深吸気した心電図のほうが心エコーより“優秀”ってこと?…そうなんです。もちろん、単純に感度・特異度の値だけで比較できるものではありませんが、論文中ではいくつかの検討が加えられ、最終的に「“深呼吸法”は心エコーよりも下壁梗塞の診断精度が良かった」というのが、本論文の結論です。どうです、皆さん! “柔よく剛を制す”ではないですが、心電図を活用することで心エコー以上の芸当ができるなんて気持ちいいですよね。“判官贔屓”(はんがんびいき)と言われそうですが(笑)。ここで下壁誘導のQ波についてまとめておきましょう。■下壁誘導Q波の“仕分け方”■心筋梗塞の既往(問診)、冠危険因子の確認は必須III誘導「のみ」なら問題なし(お隣ルール)II誘導のQ波、ST-T所見の有無も参考に(周囲確認法)深吸気で“消える”Q波はニセモノの可能性大(深呼吸法)“実際に深呼吸法やってみた”心電図に限りませんが、新しい事柄を知った時、すぐに“実践”してみることで、その知識は真に定着するというのがボクの信条の一つです。早速、症例Aと症例Bを用いて“深呼吸法”を試してみました。【症例A】68歳、男性。他院から転医。糖尿病、脂質異常症、高血圧症あり。既往に心筋梗塞あり。【症例B】63歳、男性。術前心電図異常で紹介。高血圧症あり。以前から階段・坂道で息切れあり。臨床背景からは、【症例A】は本物な感じがしますが、【症例B】は、にわかに判断は難しいような気がします。皆さんはどう思いますか? 実際に“深呼吸法”も含めて行った心電図の様子を示します(図3)。(図3)自験例で“深呼吸法”やってみた画像を拡大するまず、安静時の心電図を見てみましょう。【症例A】では、II誘導を含めて下壁誘導すべてにQ波がありますが、陰性T波の随伴はありません(a)。一方の【症例B】は、Q波はIII、aVF誘導のみですが(QS型)、III誘導に陰性T波ありという状況です(c)。さて、“深呼吸法”の結果はどうでしょうか。息を深く吸うことで、幅・深さともに若干おとなしくなることにご注目ください。しかも、「息こらえ」のためか筋電図ノイズが混入して見づらくなるという特徴がありますよ。【症例A】ではII、III、aVF誘導ともQ波が残るので、がぜん”本物”度が増します。一方の【症例B】はどうでしょう?…III誘導は「QS型」のままですが、aVF誘導ではQ波がほぼ消えて「qr型」となったではありませんか! こうなると、もはや“お隣ルール”に該当せず、III誘導のみの“問題がない”パターンであることが露呈しました。実際の“正解”をまとめます。【症例A】は50歳時に右冠動脈中間部を責任血管とする急性下壁梗塞の既往があり、一方の【症例B】では、心エコーはほぼ正常で冠動脈CTでも有意狭窄はありませんでした。何度か述べているように、心電図だけですべてを判断するのは危険ですし、【症例B】のように一定のリスク、胸部症状や本人希望などに沿った総合的な判断から冠動脈精査を行うことは決して悪くないです。ただ、“深呼吸法”は実ははじめから“大丈夫”の太鼓判を押してくれていたことになります。ウーン、改めてすごいな。“おわりに”話を冒頭の症例に戻します。この方は心エコーとRI検査で左室下壁に異常があり、 “深呼吸法”でもII、III、aVFそれぞれでQ波は顕在でした。この患者さんの冠動脈造影(CAG)の結果 (図4)を見ると、左冠動脈には狭窄はありませんでしたが、右冠動脈の中間部で完全閉塞(図中赤矢印)、いわゆる“CTO”(Chronic Total Occlusion)と呼ばれる「慢性閉塞性病変」でした(左冠動脈造影で側副血行路を介して右冠動脈末梢が造影されています[図中黄矢印])。つまり、今回の中年男性は“本物”の下壁梗塞だったのです。(図4)48歳・男性のCAG画像を拡大するところで話は変わりますが、皆さんは「ブルガダ心電図」*3をご存じでしょうか。多くの臨床検査技師さんは、V1~V3誘導で「ST上昇」を見たら、「第1肋間上」での記録も残してくれ、これはだいぶ浸透しています。そこで提案。「下壁、とくにIII・aVF誘導にQ波があったら“深吸気”時の記録を追加する」をルーチンにしませんか?…とまぁ、とかく“欲張り”なDr.ヒロなのでした。Take-home Message下壁誘導の「異常Q波」を見たら、本物かニセモノか考えよう!冠危険因子、既往歴、II誘導のQ波やST-T変化の随伴とともに深呼吸法が参考になるはず。*1Nanni S, et al. J Electrocardiol. 2016;49:46-54.*2Godsk P, et al. Europace. 2012;14:1012-1017.*3『遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版)』【古都のこと~智積院~】令和2年最初の『古都のこと』は、智積院(ちしゃくいん)から始めます。ここは「東山七条」と呼ばれるゾーンで、有名な三十三間堂や京都国立博物館のすぐ近くです。「あれっ、~寺じゃないの?」…そうなんです。ボクもそう思いました。正式名称は五百仏山根来寺(いおぶさん ねごろじ)智積院。一時退廃していた真言宗の「中興の祖」とされる興教大師が修行の場を根来山に移してから「学山」として栄え*1、室町時代後期(南北朝時代)に創建された学頭寺院の名称が「智積院」です。いわゆる「お坊さんの“学校”」なんですね。でも、これは和歌山県の話です。現在の東山の地に移ったのは、「根来衆」の“黒歴史”*2が関係しています。徳川家康から秀吉を祀る豊国神社と祥雲禅寺*3の地を拝領してからは、江戸時代以降「学問寺」としての位置を取り戻しました。さらに、明治時代の廃仏毀釈や根本道場(勧学院)・金堂*4の火難など不幸の歴史を辿りながら明治33年(1900年)に智山派総本山となった歴史を知ると、“学問”がつなぐ絆の強さに感動します。広大な敷地にボクは大学のキャンパスに漂う“自由”の気風をイメージし、既に離れた母校を懐かしみました。また、素敵な庭園とともに、敷地内にある宝物館には、国宝である長谷川等伯らによる障壁画『桜図』『楓図』(国宝)*5が拝める特典もありますよ。勧行体験のできる宿坊がリニューアル(2020年夏頃)したらまた来たいなぁと思うDr.ヒロなのでした。*1:弘法大師入定(高僧の死)後300年、荒廃した高野山に大伝法院(学問所で学徒の寮も兼ねた)を創建、宗派内の対立で同じ和歌山県内の根来山に修行の場を移し、教学「新義(真言宗)」を確立した。*2:いつしか“書物”を“火縄銃”に持ち替えた僧兵は種子島伝来の鉄砲を操ったという。天正13年(1585年)、豊臣秀吉による“根来攻め”により山内の堂塔が灰燼に帰し、当時の智積院住職であった玄宥(げんゆう)僧正が難を逃れたのが京都東山であった。*3:秀吉が夭逝した愛児鶴松(棄丸)の菩提を弔うため建立した。*4:宗祖弘法大師(空海)の生誕1200年の記念事業として昭和50年(1975年)に再建された。*5:中学・高校時代に誰しも一度や二度は図説で見たであろう“金ピカ”の障壁画に出会える。安土桃山時代らしい絢爛豪華さで、自分が想定したよりもスケールが大きくビックリ!

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電子タバコ関連の肺障害、酢酸ビタミンEが関与か/NEJM

 米国では現在、電子タバコまたはベイピング製品の使用に関連する肺障害(electronic-cigarette, or vaping, product use-associated lung injury:EVALI)が、全国規模で流行している。同国疾病予防管理センター(CDC)のBenjamin C. Blount氏らLung Injury Response Laboratory Working Groupは、EVALIの原因物質について調査し、酢酸ビタミンEが関連している可能性が高いと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月20日号に掲載された。2019年12月12日現在、米国の50州とワシントンD.C.、バージン諸島、プエルトリコで、2,400人以上のEVALI罹患者が確認されている。すでに25州とワシントンD.C.で52人が死亡し、罹患者の78%が35歳未満だという。症状は、呼吸器(95%)、全身(85%)、消化器(77%)が多く、数日から数週間をかけて緩徐に進行すると報告されているが、その原因物質は同定されていない。電子タバコ関連の肺障害患者51人と健常者99人で高優先度の毒性物質を評価 研究グループは、電子タバコ関連の肺障害に関連する毒性物質を同定する目的で、EVALI患者と健常者の気管支肺胞洗浄(BAL)液を調べた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、米国16州のEVALI患者51人と、2015年に開始され、現在も進行中の喫煙関連研究の参加者のうち、電子タバコまたはベイピング製品のみの使用者や、タバコを専用する喫煙者、これらの非使用者を含む健常者99人であった。 参加者から採取したBAL液を用い、同位体希釈質量分析法で優先度の高い毒性物質(酢酸ビタミンE、植物油、中鎖脂肪酸トリグリセライド油、ココナッツ油、石油蒸留物、希釈テルペン)の測定を行った。電子タバコ関連の肺障害患者の酢酸ビタミンE検出率:患者94% vs.健常者0% 2019年8月~12月の期間に、米国16州の電子タバコ関連の肺障害患者51人からBAL液が採取された。年齢中央値は23歳で、男性が69%を占めた。77%がテトラヒドロカンナビノール(THC)含有製品を、67%がニコチン含有製品を、51%はこれら双方を使用していた。51人のうち、25人はEVALI確定例、26人は疑い例であった。 健常者集団(99人)のBAL液は2016~19年に採取された。電子タバコ使用者は18人(年齢中央値27歳、男性67%)、喫煙者は29人(26歳、76%)、非使用者は52人(25歳、37%)であった。この集団のBAL液からは、6種の優先度の高い毒性物質は検出されなかった。 一方、電子タバコ関連の肺障害患者のBAL液からは、51人中48人(94%)で酢酸ビタミンEが検出された。1人からは、酢酸ビタミンEに加えココナッツ油が検出され、酢酸ビタミンEもTHCも検出されなかった1人からはリモネン(希釈テルペン)が検出された。これ以外の患者からは、酢酸ビタミンE以外の優先度の高い毒性物質は検出されなかった。 検査データがあり、製品の使用が報告されているEVALI患者50人中47人(94%)では、BAL液からTHCまたはその代謝産物が検出され、EVALI発症前90日以内でのベイピング用THC製品の使用が報告されていた。また、ニコチンまたはその代謝産物は、47人中30人(64%)のBAL液から検出された。 著者は、「酢酸ビタミンEが単独で、EVALI患者にみられる肺障害の直接的な原因となりうるかは、動物実験によって明らかとなる可能性がある」としている。

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日本人統合失調症患者における1年間の禁煙変化

 岡山県・たいようの丘ホスピタルの樋口 裕二氏らは、日本人の統合失調症患者の喫煙者における禁煙への意欲や行動に関するフォローアップ調査を実施した。BMC Psychiatry誌2019年11月21日号の報告。 参加者は、2016年4月1日時点で1年以上通院しており、過去6ヵ月以内に2回以上受診していた20~69歳の統合失調症外来患者。2016年にプールされた患者680例よりランダムに抽出した420例を対象にベースライン調査を行い、現在の喫煙状況や禁煙段階を含む喫煙行動に関して2017年までフォローアップ調査を実施した。禁煙段階の分布と変化、1年後の喫煙者および非喫煙者数、自然主義的な1年間の禁煙フォローアップによる禁煙率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン調査の回答者350例中、現喫煙者は113例、元喫煙者は68例であった。・現喫煙者113例中、104例(92.0%)が1年間フォローアップされた。禁煙に関心があった患者は79例(70.0%)であったが、ベースライン時に禁煙治療を受けた患者は7例のみであった。・フォローアップされた104例中、1年後に禁煙を達成していた患者は6例(5.8%)のみであった。・ベースライン時に6ヵ月以内に禁煙する意向を示した患者25例中、1年間禁煙を継続する意向を維持した患者は6例(24.0%)、禁煙の意向を維持できなかった患者は16例(64.0%)であった。 著者らは「統合失調症患者の喫煙者の多くは、禁煙に関心を持っているが、治療を受け、実際に禁煙できる患者はほとんどいないことが明らかとなった。統合失調症患者の喫煙者には禁煙治療のオプションを含め、適時の介入が必要とされる」としている。

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新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(3)【新型タバコの基礎知識】第14回

第14回 新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(3)Key Points加熱式タバコを吸っている人には、「加熱式タバコを吸っている理由」を聞くことから始める。タバコ問題に関する情報共有を進め、信頼関係を築いてから、加熱式タバコの害についても伝える(「加熱式タバコもダメ」だけではダメ!)。多くの人は、タバコに関する正しい理解を得るとともに禁煙することに意欲を持つようになります。今回は、「加熱式タバコにスイッチした人」や「紙巻タバコと加熱式タバコの両方を吸っている人」に対して医師や医療者はどう向き合って、どのように対応していけばよいのか、私が伝えたいと思っていることを書きます。もちろん完全な答えはありませんから、単なる1つの例ですが、参考にしていただければ幸いです。「加熱式タバコにスイッチした人へ伝えたいこと」なぜ加熱式タバコにスイッチしたのでしょうか?自分の健康のために紙巻タバコよりマシだと考えたからかもしれませんし、家族や同僚の受動喫煙を減らす目的かもしれません。もし、そうだとすると、紙巻タバコを止められたこと、本当によかったですね、とまずは伝えてほしいと思います。また、受動喫煙を減らそうと配慮して加熱式タバコに変えたのであれば、「配慮していただき本当にありがとうございます」と伝え、その気持ちを尊重したいです。日本では、こういった他人に配慮する気持ちや空気を読む国民性がうまく機能しています。タバコ対策にとっても、この国民性が対策を進める良い方向に働いているのではないでしょうか。加熱式タバコには、使用する本人に対して紙巻タバコとほとんど変わらない害があるのではないかと予測しています(第7回参照)。使用者自身が、この新しいタバコのリスクについてよく知ってほしいと思います。多くの人が現在考えているよりも、加熱式タバコには大きな健康リスクがあるかもしれません。こういった私の話を聞いて、「タバコ会社にだまされた」と言って怒っていた人もいました。客観的な事実を知ることがどうするべきか、どうしたいかを考えるために重要です。タバコ会社が伝えている情報ではなく、今の段階で客観的に分かっていることを十分に知ってもらって、これからも加熱式タバコを吸い続けるかどうか考えてほしいと思います。「紙巻タバコと加熱式タバコの両方を吸っている人に伝えたいこと」実は、加熱式タバコを吸っている人の多くが、紙巻タバコをやめられないままでいます。加熱式タバコを吸うようになったきっかけはさまざまですが、下記のような理由の人が多くいます:(1)禁煙しようと思って(2)紙巻タバコよりも害が少ないと思って(3)誰かと一緒にいるときは受動喫煙が減るようにと配慮してこういった害を減らそうという意図から新型タバコを吸っている人が多くいます。しかしその一方で、(4)タバコを吸いにくい場所でも吸うために、新型タバコを購入したという人もいます。(4)の理由で吸っている人は、どうしてもタバコをやめられないと諦めているのかもしれません。本人がやめる気にならなければ、当然やめることは難しくなります。こういった場合に私がいつも話すのは、「何かを少し伝えて、あなたがタバコをやめるようにできるとは全く考えていません。いつかタバコをやめたいと思ってもらえるように、タバコ問題に関する本人の理解や、環境の整備が進むように少しずつでも支援していきたいと思っています」ということです。タバコが値上げされたり、職場や家庭が禁煙化されるなどタバコを取り巻く環境を変えることができれば、タバコをやめる動機とできるかもしれません。すぐに行動を変えてもらうのは難しいと理解していますが、こういった人にぜひ伝えてほしいのは、ニコチン依存症についてです(第9回参照)。なぜなら、ニコチンへの依存をより強化してしまう行動をとっている状況だと言えるからです。繰り返しになりますが、ニコチン依存症は本当にこわい病気です。ニコチンは、うれしい気持ちや楽しい、おいしいといったことを感じなくさせて、幸せを奪っています。人は、タバコに関する正しい理解を得るとともに禁煙することに意欲を持つようになります。それを阻んでいる代表的要因がニコチン依存といえるでしょう。ニコチン依存等についても詳しく書かれた、禁煙するために役立つ良書*1が多くあります。本人に禁煙する意欲が出た場合には、ぜひこれらの本も参考にしていただければと思います。タバコについてしっかりと理解することで、禁煙の意欲が湧き、タバコを再び吸うことからも自分を守れるようになります。*1:川井治之『頑張らずにスッパリやめられる禁煙』サンマーク出版、磯村毅『「吸いたい気持ち」がスッキリ消える リセット禁煙』PHP文庫、アレン・カー『禁煙セラピー』KKロングセラーズ社、など前述の(1)~(3)の理由で加熱式タバコを吸っていて、紙巻タバコをやめられないという方に、最も理解してほしいことは、紙巻タバコは1日1本でも吸っていたら大きな健康被害が出てしまうということです。1本など少数であっても、長期間タバコを吸うということが非常に有害なのです。ですから、もし加熱式タバコの健康被害の程度が紙巻タバコよりも低いとしても、紙巻タバコを併用して吸っていると健康被害を減らせないものと予測されます。できれば、タバコは全部やめてほしいところですが、まずは紙巻タバコを完全にやめてほしいと思います。第15回は、「医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法」です。

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年1~2回の芸術活動が寿命に好影響/BMJ

 美術館やコンサートに行くといった受容的芸術活動(receptive arts engagement)は、高齢者の寿命に保護的作用をもたらす可能性が示された。同活動を1年に1~2回行う人は、まったく行わない人に比べて死亡リスクが約14%低く、2~3ヵ月に1回行う人では31%も低かったという。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDaisy Fancourt氏らが、50歳以上の住民6,710例を約14年間追跡したデータを解析して明らかにした。なお示された関連性について著者は、「芸術活動をする人としない人における認知レベル、メンタルヘルス、身体活動度の違いによって部分的に説明はできそうだが、それらの因子を補正したモデルでも関連性は維持されていた」と検証結果を報告し、今回の観察的試験では要因を仮定するには至らなかったと述べている。BMJ誌2019年12月18日号のクリスマス特集「EXPRESS YOURSELF」より。美術館やコンサートに行く「受容的芸術活動」頻度と死亡率を検証 研究グループは、地域で暮らす50歳以上を対象に行った「English Longitudinal Study of Ageing:ELSA」の被験者のうち、2004~05年にベースラインの質問に回答した6,710例を対象に前向きコホート試験を行い、被験者の自己報告による受容的芸術活動(美術館、アートギャラリー、展覧会、劇場、コンサートやオペラに行く)と死亡率との関連を調査した(死亡の最終データ取得は2018年3月)。 被験者のうち女性は53.6%、平均年齢は65.9歳(標準偏差:9.4)だった。死亡率との関連はNHSの中央レジスタデータを利用して評価した。年1~2回活動で死亡リスク14%低下、2~3ヵ月に1回は31%低下 平均追跡期間は12年2ヵ月で、最長は13.8年だった。その間に2,001例(29.8%)が死亡していた。死亡者は、女性よりも男性で多く、また高齢、独居、学歴がなく、現在無職で、財産・職業ステータスは低い傾向がみられた。さらに死亡率は、抑うつ症状が高く、視力・聴力が弱く、がん・肺疾患・心血管疾患と診断されていた人・その他慢性症状がある人、運動をあまりしない人、飲酒はきわめてまれな人、および喫煙をしていた人で高かった。また、認知レベルは低く、孤立しており、親密な友人がおらず、独居、無趣味、社会的活動への参加はまれ、地域のグループとの関わりがない人でも高かった。 死亡数は、受容的芸術的活動をまったく行わない人(1,762例)では837例(47.5%)だったのに対し、まれ(1年に1~2回)でも同活動を行っていた人(3,042例)は809例(26.6%)で、追跡期間中どの時点でも死亡リスクは約14%低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96)。 同活動を頻繁(2~3ヵ月に1回)に行っていた人(1,906例)の死亡は355例で、まったく行わない人に比べて死亡リスクは約31%低かった(HR:0.69、95%CI:0.59~0.80)。 同活動は、人口統計学的・社会経済的要因、健康関連・行動学的要因、社会的要因とは独立した要因であることが認められ、感度分析の結果、性別、社会経済学的状態、社会的要因による影響は受けないことが確認された。

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週7パック以上の納豆で骨粗鬆症性骨折リスクが半減?

 納豆摂取と骨密度との間の直接の関連は知られているが、骨粗鬆症性骨折との関連については報告されていない。今回、大阪医科大学/京都栄養医療専門学校の兒島 茜氏らの研究で、閉経後の日本人女性において習慣的な納豆摂取が骨密度とは関係なく骨粗鬆症性骨折のリスク低下と関連していることが示唆された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2019年12月11日号に掲載。 本研究は、納豆の習慣的な摂取と骨粗鬆症性骨折リスクとの関連を調査した前向きコホート研究。対象は、1996、1999、2002、2006年にJapanese Population-based Osteoporosis(JPOS)研究に登録され、ベースライン時に45歳以上であった閉経後日本人女性1,417人。登録時に、納豆、豆腐、その他の大豆製品の摂取について食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して調査した。骨折は1999年、2002年、2006年、2011/2012年の追跡調査で確認した。主要アウトカムは骨粗鬆症性骨折で、医師がレントゲン写真で診断した、強い外力によらない臨床的骨折とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1万7,699人年の追跡期間中(中央値15.2年)、172人の女性に骨粗鬆症性骨折が確認された。・年齢、股関節の骨密度年齢について調整後、納豆摂取量が週当たり1パック(約40 g)未満に対するHRは、1~6パックで0.72(95%CI:0.52~0.98)、7パック以上で0.51(95%CI:0.30~0.87)であった。・さらに、BMI、骨粗鬆症性骨折の既往、心筋梗塞または脳卒中の既往、糖尿病、現在の喫煙、飲酒、豆腐および他の大豆製品の摂取頻度、食事性カルシウム摂取について調整すると、1パック未満に対するHRは1~6パックで0.79(95%CI:0.56~1.10)、7パック以上で0.56(95%CI:0.32~0.99)となった。・豆腐や他の大豆製品の摂取頻度は、骨粗鬆症性骨折のリスクと関連がなかった。

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長期認知症リスクを予測するためのLIBRAスコア

 現在のところ認知症の根治的治療は解明されておらず、認知症研究の焦点は予防戦略にシフトしつつある。オランダ・マーストリヒト大学のKay Deckers氏らは、修正可能なリスク(冠動脈疾患、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、うつ病、肥満、喫煙、運動不足、腎疾患)および保護因子(低~中程度のアルコール摂取、認知活動、健康的な食事)の12種をスコア化したLIfestyle for BRAin Health(LIBRA)スコアを用いて、アポリポ蛋白E(APOE)の対立遺伝子ε4を基にした遺伝リスクが高いまたは低い人における、中年期および後期の認知症および軽度認知障害(MCI)の予測精度について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。 フィンランドのCardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia(CAIDE)集団ベース研究の参加者を対象に、中年期(1,024例)および後期(604例)2回のLIBRAスコア測定を30年後まで実施した。確立された基準に従い、認知症およびMCIの診断を行った。性別および教育を調整したモデルにおけるLIBRAスコアと認知症およびMCIリスクの関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・中年期の高LIBRAスコアは、30年後までの認知症(ハザード比[HR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.13~1.43)およびMCI(未調整HR:1.12、95%CI:1.03~1.22)の高リスクと関連が認められた。・後期の高LIBRAスコアは、MCI(HR:1.11、95%CI:1.00~1.25)の高リスクと関連が認められたが、認知症(HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)では認められなかった。・後期の高LIBRAスコアは、APOEε4ノンキャリアにおいて、認知症の高リスクと関連が認められた。 著者らは「認知症予防において、修正可能なリスクおよび保護因子の重要性が確認された」としている。

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