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思春期のB群髄膜炎菌ワクチン接種、予防効果は?/NEJM

 オーストラリアの思春期児(15~18歳)に対するB群髄膜炎菌ワクチン4CMenBの接種は、B群を含む病原性髄膜炎菌の保菌に対して、識別可能な効果はないことが示された。オーストラリア・アデレード大学のHelen S. Marshall氏らが、237校の学生、約3万5,000例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。4CMenBは、侵襲性B群髄膜炎菌疾患を予防するとして承認された新規の組み換え型蛋白ベースのワクチンだが、伝播を予防する役割、さらには住民(集団)免疫効果があるのかについては明らかになっていなかった。NEJM誌2020年1月23日号掲載の報告。接種群と対照群の病原性髄膜炎菌の保菌率を比較 研究グループは2017年4月~6月に、サウスオーストラリアの学校237校で、10~12年生(15~18歳)の生徒を対象にクラスター無作為化試験を開始した。試験の対象を、学校単位で無作為に2群に分け、一方には4CMenBをベースラインで接種し(接種群)、もう一方の群にはベースラインから12ヵ月時点で接種した(対照群)。 主要アウトカムは、10および11年生の時点の病原性髄膜炎菌(A群、B群、C群、W群、X群、Y群のいずれか)の口腔咽頭保菌率とし、PorA(ポリン蛋白Aをコード)および病原性髄膜炎菌の遺伝子群のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査により同定した。副次アウトカムは、すべての病原性髄膜炎菌および各病原性遺伝子群の保菌率や感染などとした。また、ベースライン時に保菌のリスク因子を評価した。保菌率は同等、接種群2.55%、対照群2.52% 試験登録者は、10、11年生が合計2万4,269例、12年生が1万220例だった。 12ヵ月時点で、病原性髄膜炎菌の保菌率は、接種群2.55%(1万2,746例中326例)、対照群2.52%(1万1,523例中291例)で差はみられなかった(補正後オッズ比[OR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.80~1.31、p=0.85)。 副次アウトカムの保菌率についても、両群で有意差は認められなかった。 なお、ベースライン時の病原性髄膜炎菌保菌のリスク因子として、高学年であること(12年生の10年生に対する補正後OR:2.75、95%CI:2.03~3.73)、上気道感染症に罹患していること(補正後OR:1.35、95%CI:1.12~1.63)、喫煙(1.91、1.29~2.83)、水タバコ(1.82、1.30~2.54)、パブまたはクラブに通っていること(1.54、1.28~1.86)、濃厚キス(1.65、1.33~2.05)などが明らかになった。 ワクチンの安全性に関する懸念は特定されなかった。

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医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(1)【新型タバコの基礎知識】第15回

第15回 医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(1)Key Points改正健康増進法では、加熱式タバコは紙巻タバコとは異なる例外的な扱いとされている屋内全面禁煙が、受動喫煙防止対策における世界基準のルール屋内全面禁煙で禁止されるタバコには加熱式タバコも含まれるべきWHOも日本呼吸器学会も同様の見解を提示している今回は、全面施行を目前に控えた改正健康増進法での新型タバコの扱いから、社会全体としてどのように新型タバコに対処すればよいのかについてお伝えしたいと思います。4月全面施行! 改正健康増進法での加熱式タバコの位置付けは?新型タバコの登場はすでに社会に悪影響を与えています。2018年に成立し、2020年4月1日に全面施行される改正健康増進法では、加熱式タバコは紙巻タバコとは異なる例外的な扱いとされています。屋内は原則禁煙としながらも、加熱式タバコ専用の喫煙ルームでは、飲食などのサービスを提供することが例外的に認められているのです。屋内でのタバコを禁止するという政策には、単に受動喫煙を防ぐという目的だけではない意義があります。屋内からタバコをなくし、タバコは社会的に認められないというメッセージを届ける効果や、禁煙したい喫煙者がより吸いにくくなり、禁煙が促進される効果が期待されます。しかし、今回の法律のように加熱式タバコの分煙を認めてしまうと、「新型タバコは認められている」というメッセージとなって伝わる可能性もあるでしょう。タバコ会社はすでに全面禁煙となっている飲食店に対して、加熱式タバコを認めさせようと積極的なロビー活動を展開しています。加熱式タバコを特別扱いすることは、タバコ産業の思惑通りともいえます。リスクが分からないとき、どう捉えるか多くの先人たちがこれまでに実施してきたタバコ問題に関する研究の成果として、受動喫煙を防止するためには、例外なく屋内を全面禁煙にすることが最も有効だと分かっています。屋内全面禁煙が、受動喫煙防止対策における世界基準のルールなのです。受動喫煙防止のための法律や条例を成立させることができたこと自体は、すばらしいことだと思います。日本におけるタバコ対策の前進であり、まずはその意義を強調したいです。この法律や条例の成立に努力された方々に感謝します。しかし、この加熱式タバコに対する特別扱いについては賛成しかねます。まだ情報が少なかったためにそうするしかなかったとも解釈できますが、情報が十分にない事柄に対してどのように対処するべきなのでしょうか? 今回の法律では、「リスクが分からないので禁止できない」としてしまっています。ここでは予防原則により「リスクがないと分かるまでは禁止する」とするべきだろうと公衆衛生学の観点からは考えます。予防原則の考え方は、経済というよりも人を大切にする考え方だとも言えるのではないでしょうか。現在は経済的メリットが優先された状況だとも考えられるでしょう。加熱式タバコは、従来からの紙巻タバコと同様、有害物質・発がん性物質が発生する明らかに有害なタバコ製品です。さらなる研究は必要ですが、今ある情報からでも、加熱式タバコによる健康影響は決して小さくないと推測されます(第7回記事参照)。社会におけるルール・規制において、加熱式タバコを特別扱いするのではなく、紙巻タバコと同等にタバコとして扱うべきだと考えます。たばこ事業法では、はじめから加熱式タバコはタバコとして扱われているのです。屋内全面禁煙で禁止されるタバコには加熱式タバコも含まれるべきだと考えます。WHOや呼吸器学会の見解は?なにも筆者だけがこう主張しているわけではありません。世界保健機関(WHO)もこの考え方を支持しています。WHOの加熱式タバコに関する考え方をみてみましょう。2018年に公開されたWHOによる加熱式タバコの情報シート1)には、以下のように書かれています。加熱式タバコは従来のタバコより安全だろうか?現在、加熱式タバコが従来のタバコ製品よりも有害性が低いことを示す証拠はない。タバコ業界が資金提供する研究は、基準となる紙巻タバコと比較して、有害性物質への曝露が著しく減少していると主張している。しかし、現在のところ、これらの化学物質への曝露の減少がヒトにおけるリスクの減少につながることを示唆する証拠はない。WHOはどのように推奨するか?加熱式タバコを含む、すべての形態のタバコが有害である。もともとタバコは有毒であり、天然の形態でも多くの発がん性物質を含む。したがって、加熱式タバコは、タバコ規制条約に基づき、他のすべてのタバコ製品に適用される政策および規制措置の対象となるべきである。さらに、日本呼吸器学会の見解をみてみましょう。2017年10月に公開された日本呼吸器学会による、加熱式タバコや電子タバコに対する見解は次のとおりです。日本呼吸器学会は、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコについて以下のように考えます。1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来のタバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。このステートメントは、2019年12月11日に改訂され、日本呼吸器学会による更新された見解と提言が下記のとおり提示されています2)。見解1.加熱式タバコや電子タバコが産生するエアロゾルには有害成分が含まれており、健康への影響が不明のまま販売されていることは問題である。2.加熱式タバコの喫煙者や電子タバコの使用者の呼気には有害成分が含まれており、喫煙者・使用者だけでなく、他者にも健康被害を起こす可能性が高い。提言1.加熱式タバコや電子タバコが紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されない。2.加熱式タバコの喫煙や電子タバコの使用の際には紙巻タバコと同様な二次曝露対策が必要である。※「非燃焼・加熱式タバコ」という名称は、燃焼が全くないわけではないこともあり、「加熱式タバコ」と修正されている。こういった情報を参考にして、医療従事者のみなさん1人ひとりが正しい情報をもとに考えていただき、各職能団体や学会などでの大きな動きにつながっていけば、政治家・行政担当者の方々にも波及していき、今後のタバコ対策を改善し、社会をよりよい形に導いていっていただくことができるのではないかと考えます。第16回は、「医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)」です。1)世界保健機関.加熱式タバコ製品情報シート2)日本呼吸器学会.加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解と提言

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中年期の健康的な生活様式は平均余命にどう影響?/BMJ

 中年期の健康的な生活様式の順守は、主要慢性疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)のない平均余命を延長することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYanping Li氏らによる検討の結果、示された。これまで、修正可能な生活様式因子(喫煙、身体活動、アルコール摂取、体重、食事の質)が、平均余命および慢性疾患発症の両者に影響することは知られていた。しかし、複数の生活様式因子の組み合わせと、主要な疾患(糖尿病、心血管疾患、がんなど)のない平均余命との関わりについて、包括的に検討した研究はほとんどなかったという。BMJ誌2020年1月8日号掲載の報告。5個の様式の組み合わせと主要慢性疾患のない平均余命の関連を調査 研究グループは、米国で行われた前向きコホート研究「Nurses' Health Study」(1980~2014年、女性7万3,196人)と「Health Professionals Follow-Up Study」(1986~2014年、男性3万8,366人)の参加者データを分析し、健康的な生活様式が主要な慢性疾患のない平均余命とどのように関連するかを調べた。 「非喫煙」「BMI 18.5~24.9」「中強度~高強度(30分/日以上)の身体活動」「適度なアルコール摂取(女性5~15g/日、男性5~30g/日)」「食事の質のスコア(Alternate Healthy Eating Index:AHEI)が高い(各コホートで上位40%に属する)」の5個を「低リスク生活様式因子」と定め、その実践数別(0、1、2、3、4/5個)に、糖尿病、心血管疾患、がんのない平均余命年を算出して評価した。低リスク生活様式が多いほど平均余命は延長 女性227万411人年、男性93万201人年のフォローアップ中に、3万4,383人(女性2万1,344人、男性1万3,039人)の死亡が記録された。 低リスク生活様式因子の実践数が多い被験者は、マルチビタミンサプリメントおよびアスピリンの服用者が多い傾向がみられた。 50歳時点での総平均余命(慢性疾患の有無を問わず集計)は、低リスク生活様式因子が多いほど長く、女性は31.7年(0個)~41.1年(4/5個)、男性は31.3年(0個)~39.4年(4/5個)にわたっていた。 50歳時点での糖尿病、心血管疾患、がんのない平均余命は、女性においては低リスク生活様式因子の実践が0個の場合は23.7年(95%信頼区間[CI]:22.6~24.7)であったが、4/5個実践の場合は34.4年(33.1~35.5)であった。男性においては、実践が0個の場合は23.5年(22.3~24.7)であったが、4/5個実践の場合は31.1年(29.5~32.5)であった。 50歳時の総平均余命に対する慢性疾患のない平均余命の割合は、重度の現行男性喫煙者(紙巻きタバコ15本/日以上)や、肥満(BMI 30以上)の男性および女性で最も低く、いずれも75%以下であった。

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果物や野菜の摂取とうつ病との関連

 うつ病は、世界的に主要な精神疾患である。韓国における成人のうつ病有病率は、2006年5.6%、2011年6.7%、2013年10.3%と増加が認められる。韓国・建国大学校のSe-Young Ju氏らは、韓国人成人のうつ病の有病率と野菜や果物の摂取との関連を調査するため、韓国の全国データを用いて検討を行った。Journal of Health, Population, and Nutrition誌2019年12月3日号の報告。 2014年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)に参加した19歳以上の成人4,349人のデータを用いて検討を行った。うつ病の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。食物や栄養の摂取量は、24時間思い出し法を用いて評価した。食物摂取量は、18の食物グループに分類した。統計分析は、SPSS Ver.23.0を用いた。PHQ-9の項目の内的整合性を評価するため、クロンバックのα係数を用いた。うつ病のオッズ比は、複数の交絡因子で調整した後、ロジスティック回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者におけるうつ病有病率は、8.7~4.7%であり、野菜や果物の摂取量が増加するにつれ減少が認められた。・うつ病有病率は、野菜や果物の摂取量が増加するにつれ、男性で6.4%から2.5%へ、女性で11.4%から6.6%へ減少した。・野菜や果物の摂取量とうつ病有病率との間に逆相関が認められ、オッズ比は、交絡因子で調整せずとも逆相関を示した。・年齢、エネルギー摂取、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、外食の頻度、朝食、フードセキュリティーで調整した後、野菜や果物の摂取量が増加するほど、うつ病有病率が有意に低いことが示唆された。 著者らは「本研究は、韓国国民における野菜や果物の摂取とうつ病との関連を調査した最初の研究である。この関連についての根拠を明らかにするためには、さらなる疫学研究が必要である」としている。

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第18回 冬の救急では、これを忘れずに!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)冬の救急では一酸化炭素中毒を鑑別に!2)疑ったら血液ガスで評価し酸素投与を!3)心電図も忘れずにチェック!【症例】34歳男性。ベトナムからの留学生で、飲食店のバイト中に気分が悪くなり休んでいた。控え室で症状は改善傾向にあったため仕事を再開していたが、嘔気、頭痛を認め同僚が救急要請。テキスト●搬送時のバイタルサイン意識清明血圧124/75mmHg脈拍102回/分(整)呼吸22回/分SpO299%(RA)体温36.5℃瞳孔2.5/2.5mm+/+既往歴、内服薬:定期内服薬なし忘れた頃にやってくる一酸化炭素中毒(CO中毒)CO中毒は冬に多い中毒で、急性中毒死亡原因の第1位、自殺遂行手段の第2位です。一酸化炭素は不完全燃焼の結果発生し、酸素の240倍もヘモグロビンと結合しやすいのが特徴です。CO-Hbを形成し、Hbの酸素運搬能を障害するため、低酸素血症となり呼吸困難をはじめとしたさまざまな症状を引き起こします1)。ピットフォールとして、通常のパルスオキシメーターでは見逃され、SpO2は保たれているように表示されます(CO-Hbを測定できるものもあります)。一般的な症状は表のとおりです。息切れや呼吸困難以外に、頭痛、嘔吐、めまい、意識障害など多彩な症状で来院するため、頻度が高くなる冬場には、常に意識して病歴を聴取する癖を持っておくとよいでしょう。表 CO中毒の症状画像を拡大するCO中毒かな?と思ったら火災現場からの搬送など疑わしい場合には、酸素を投与しつつ、血液ガスを確認します。環境が改善されていれば、時間とともにCO-Hbの数値は低下するため、絶対的な指標にはなりませんが、上昇が認められる場合には有用な所見となります。成人の正常時は0.1~1.0%程度、喫煙者では6%以上となり、ヘビースモーカーの場合には15%前後まで上昇します。妊婦や胎児では生理的に増加することが知られています。一般的に、非喫煙者では3%を超える場合、喫煙者では10~15%を超える場合にはCO中毒と診断します2)。CO中毒を疑った場合には高流量酸素の開始です。通常の空気ではCOの半減期は300分程度ですが、高流量酸素マスクを使用すると90分、100%高圧酸素では30分とされています1)。高圧酸素は施行できる施設が限られるため、高流量酸素マスクを取りあえず開始すればOKです。血液ガスだけでなく心電図もチェックCO中毒で心筋虚血を認めることがあります。中等症以上の症例の30%程度に心電図やトロポニンの上昇を認めることがあり、非侵襲的な検査でもあるため、中等症以上の症状を認める場合には、心電図を確認し、異常がないかをみておくとよいでしょう。CO中毒は、遅発性脳症など曝露後1~2週間ごろから記憶障害や失認などの症状を認めることがあります。過度に心配する必要はありませんが、経過を見ることも大切であり、何より早期に疑い対応する必要があります。鑑別に挙がらず、再度同様の環境に曝露されることは避けなければなりません。CO中毒、その原因は?今回の症例のように、火の取り扱いに伴う環境の問題のみであれば、換気などで再発を防止すればよいですが、その背景に練炭自殺などの希死念慮が関与している場合には、そちらの介入を行う必要があります。冒頭で述べたように自殺遂行手段として頻度が高く、症状が軽いから大丈夫といって帰すのではなく、うつ病など患者背景を意識した対応を行いましょう。1)Clardy PF, et al : Carbon monoxide poisoning. Post TW(Ed), UpToDate, Waltham, MA[Online] Available at: https://www.uptodate.com/contents/carbon-monoxide-poisoning(Accessed on December 14, 2019.)2)Ernst A, et al. N Engl J Med. 1998;339:1603-1608.

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第36回 本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(後編)だいぶ遅くなりましたが、皆さま、新年明けましておめでとうございます。2018年8月末から隔週で続けていた本連載を2020年1月からは1回/月ペースでお届けすることになりました。引き続き“価値ある”レクチャーを展開していく所存ですので、今年も“ドキ心”をよろしくお願いします。さて、今回も 昨年に引き続き、下壁誘導(II、III、aVF)のQ波をどう考えるか、Dr.ヒロと一緒に心電図の“技巧的”な記録法を学びましょう。第35回と同じ症例を用いて解説し「異常Q波」のレクチャーを終えたいと思います。では張り切ってスタートです!症例提示48歳、男性。糖尿病にてDPP-4阻害剤を内服中。泌尿器科より以下のコンサルテーションがあった。『腎がんに対して全身麻酔下で左腎摘除術を予定しています。自覚症状はとくにありませんが、術前心電図にて異常が疑われましたので、ご高診下さい』174cm、78kg(BMI:25.6)。血圧123/72mmHg、脈拍58/分・整。喫煙:15~20本×約30年(現在も喫煙中)。術前検査として記録された心電図を示す(図1)。(図1)術前外来の心電図画像を拡大する【問題1】心エコーでは左室下壁領域の壁運動低下があった(第35回参照)。本症例の「陳旧性下壁梗塞」の有無について、Q波の局在、ST-T変化の合併以外に、心電図上の注目ポイントを述べよ。解答はこちら平常時と深吸気時記録の比較解説はこちら症例は前回と同じ、腎がんに対して摘除術が予定された中年男性です。“ニ・サン・エフ”のいわゆる下壁誘導に「異常Q波」ありと読むのでした。“周囲確認法”的にはST-T異常も伴わず、本人に問診しても強い胸痛イベントの記憶もないため、フェイクQ波だと思いたいところではあります。しかし、心エコーで局所壁運動異常、背景に糖尿病もあるため、「無症候性心筋虚血(梗塞)」の線も捨てきれないという悩ましい状況なわけです。あくまでも術前ですから、冠動脈CT、心臓MRI(CMR)や核医学(RI)などの“大砲検査”に無制限に時間をかければいいというものでもありません。あくまでも腎がんの手術をつつがなく終えてもらうことが当座の目標です。大がかりでコストもかさむ検査をする前に、実は“一手間”かけて心電図をとるだけで、下壁Q波が本物かニセモノかを見抜ける場合があるのです。“深呼吸でQ波が消える?”いつか、皆さんにこの“ドキ心”レクチャーで紹介しようと思っていた論文*1があります。イタリアからの報告で、既知の冠動脈疾患(CAD)がない50人(平均年齢68歳、男性54%)を対象としています。これらの男女は見た目“健康”ですが、複数の冠危険因子、脳梗塞や末梢動脈疾患(PAD)の既往があり、下壁誘導にQ波が見られるという条件で選出されています(II:18%、III:98%、aVF:100%)。ちなみに、海外ではこうした“下壁Q波”は、一般住民でも1%弱(0.8%)に認められるそうです*2。全例に心エコーとCMRを行い、下壁にガドリニウム(Gd)遅延造影が見られた時に“本物”の下壁梗塞と認定されました。と、ここまでは至極普通なのですが、この論文がすごいのは、以前からささやかれていた「ニセモノの下壁Q波は深呼吸で“消える”」という、いわば“都市伝説”レベルの話が検証されているのです! 皆さん、こんな話って聞いたことありますか?方法はとても簡単です。安静時と思いっきり息を吸った状態(deep inspiration)の2枚、心電図を記録します。深吸気時でも変わらずQ波なら、それこそ真の「異常Q波」と見なし、下壁梗塞のサインと考えるのです。ちなみにQ波が“消える”とは、完全に消失することではなく、診断基準(第33回)を満たさなくなるという意味とご理解ください。このシンプルなやり方に“アダ名”をつけるのが、Dr.ヒロの得意技(笑)。言いやすい“深呼吸法”と名付けました。“本物なQ波の確率を高める所見はあるか?”この研究、実際の結果はどうだったのでしょうか? CMRで本当に下壁梗塞が検出されたのは50人中10人(20%)でした。単純にQ波が3つの誘導中2つ以上、それもほとんどサンエフ(III、aVF)だけなら、 “打率”は2割と低いわけです。単純に下壁梗塞の有無で各種因子が比較されましたが、有意なものはありませんでした。「有意」(p<0.05)に届かなかったものの“おしい”感じだったのは、1)男性、2)II誘導にQ波あり、3)ST-T所見の合併ありの3つです。性別(男性)は確かに冠危険因子の一つですし、背景疾患も含めて意識したいところです。ただ、これは“決定打”にはなりません。残りの2つも大事です。その昔「II誘導にQ波があったら高率に下壁梗塞あり」と習った記憶がありますが、この論文では半数弱(40%)にとどまりました(「なし」の場合の13%より確かに高率でしたが)。もう一つのST-T所見の合併、これは「ST上昇」や「陰性T波」であることが多いです。以前取り上げた心筋梗塞の「定義」を述べた合意文書でも、「幅0.02~0.03秒」の“グレーゾーン”でも、「深さ≧1mm」かつ「同誘導で陰性T波」なら本物の可能性が高まると述べられています。常日頃から漏れのない判読を心がけている立場としては、Q波「だけ」で考えないのは当然で、“周囲確認法”として多面的に考えることで“打率”が向上すると思っています(有意にならなかったのは、サンプル数が少ないためでしょうか)。“深呼吸法の実力やいかに”さて、いよいよ“深呼吸法”のジャッジです。次の図2をご覧ください。(図2)“深呼吸法”の識別能力画像を拡大する図中の「IQWs」とは、「下壁Q波」(Inferior Q-waves)の意味で、「MI」は「心筋梗塞」(myocardial infarction)です。“深呼吸法”で異常Q波が「残った」10人中、本物が8人。 なんと“打率”が8割にアップしました。よく見かける2×2分割表を作成し、感度、特異度を求めるとそれぞれ80%、95%になるわけです。しかも、特筆すべきは心エコーでの局所壁運動異常(asynergy)は各50%、88%であったこと。あれっ? 深吸気した心電図のほうが心エコーより“優秀”ってこと?…そうなんです。もちろん、単純に感度・特異度の値だけで比較できるものではありませんが、論文中ではいくつかの検討が加えられ、最終的に「“深呼吸法”は心エコーよりも下壁梗塞の診断精度が良かった」というのが、本論文の結論です。どうです、皆さん! “柔よく剛を制す”ではないですが、心電図を活用することで心エコー以上の芸当ができるなんて気持ちいいですよね。“判官贔屓”(はんがんびいき)と言われそうですが(笑)。ここで下壁誘導のQ波についてまとめておきましょう。■下壁誘導Q波の“仕分け方”■心筋梗塞の既往(問診)、冠危険因子の確認は必須III誘導「のみ」なら問題なし(お隣ルール)II誘導のQ波、ST-T所見の有無も参考に(周囲確認法)深吸気で“消える”Q波はニセモノの可能性大(深呼吸法)“実際に深呼吸法やってみた”心電図に限りませんが、新しい事柄を知った時、すぐに“実践”してみることで、その知識は真に定着するというのがボクの信条の一つです。早速、症例Aと症例Bを用いて“深呼吸法”を試してみました。【症例A】68歳、男性。他院から転医。糖尿病、脂質異常症、高血圧症あり。既往に心筋梗塞あり。【症例B】63歳、男性。術前心電図異常で紹介。高血圧症あり。以前から階段・坂道で息切れあり。臨床背景からは、【症例A】は本物な感じがしますが、【症例B】は、にわかに判断は難しいような気がします。皆さんはどう思いますか? 実際に“深呼吸法”も含めて行った心電図の様子を示します(図3)。(図3)自験例で“深呼吸法”やってみた画像を拡大するまず、安静時の心電図を見てみましょう。【症例A】では、II誘導を含めて下壁誘導すべてにQ波がありますが、陰性T波の随伴はありません(a)。一方の【症例B】は、Q波はIII、aVF誘導のみですが(QS型)、III誘導に陰性T波ありという状況です(c)。さて、“深呼吸法”の結果はどうでしょうか。息を深く吸うことで、幅・深さともに若干おとなしくなることにご注目ください。しかも、「息こらえ」のためか筋電図ノイズが混入して見づらくなるという特徴がありますよ。【症例A】ではII、III、aVF誘導ともQ波が残るので、がぜん”本物”度が増します。一方の【症例B】はどうでしょう?…III誘導は「QS型」のままですが、aVF誘導ではQ波がほぼ消えて「qr型」となったではありませんか! こうなると、もはや“お隣ルール”に該当せず、III誘導のみの“問題がない”パターンであることが露呈しました。実際の“正解”をまとめます。【症例A】は50歳時に右冠動脈中間部を責任血管とする急性下壁梗塞の既往があり、一方の【症例B】では、心エコーはほぼ正常で冠動脈CTでも有意狭窄はありませんでした。何度か述べているように、心電図だけですべてを判断するのは危険ですし、【症例B】のように一定のリスク、胸部症状や本人希望などに沿った総合的な判断から冠動脈精査を行うことは決して悪くないです。ただ、“深呼吸法”は実ははじめから“大丈夫”の太鼓判を押してくれていたことになります。ウーン、改めてすごいな。“おわりに”話を冒頭の症例に戻します。この方は心エコーとRI検査で左室下壁に異常があり、 “深呼吸法”でもII、III、aVFそれぞれでQ波は顕在でした。この患者さんの冠動脈造影(CAG)の結果 (図4)を見ると、左冠動脈には狭窄はありませんでしたが、右冠動脈の中間部で完全閉塞(図中赤矢印)、いわゆる“CTO”(Chronic Total Occlusion)と呼ばれる「慢性閉塞性病変」でした(左冠動脈造影で側副血行路を介して右冠動脈末梢が造影されています[図中黄矢印])。つまり、今回の中年男性は“本物”の下壁梗塞だったのです。(図4)48歳・男性のCAG画像を拡大するところで話は変わりますが、皆さんは「ブルガダ心電図」*3をご存じでしょうか。多くの臨床検査技師さんは、V1~V3誘導で「ST上昇」を見たら、「第1肋間上」での記録も残してくれ、これはだいぶ浸透しています。そこで提案。「下壁、とくにIII・aVF誘導にQ波があったら“深吸気”時の記録を追加する」をルーチンにしませんか?…とまぁ、とかく“欲張り”なDr.ヒロなのでした。Take-home Message下壁誘導の「異常Q波」を見たら、本物かニセモノか考えよう!冠危険因子、既往歴、II誘導のQ波やST-T変化の随伴とともに深呼吸法が参考になるはず。*1Nanni S, et al. J Electrocardiol. 2016;49:46-54.*2Godsk P, et al. Europace. 2012;14:1012-1017.*3『遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版)』【古都のこと~智積院~】令和2年最初の『古都のこと』は、智積院(ちしゃくいん)から始めます。ここは「東山七条」と呼ばれるゾーンで、有名な三十三間堂や京都国立博物館のすぐ近くです。「あれっ、~寺じゃないの?」…そうなんです。ボクもそう思いました。正式名称は五百仏山根来寺(いおぶさん ねごろじ)智積院。一時退廃していた真言宗の「中興の祖」とされる興教大師が修行の場を根来山に移してから「学山」として栄え*1、室町時代後期(南北朝時代)に創建された学頭寺院の名称が「智積院」です。いわゆる「お坊さんの“学校”」なんですね。でも、これは和歌山県の話です。現在の東山の地に移ったのは、「根来衆」の“黒歴史”*2が関係しています。徳川家康から秀吉を祀る豊国神社と祥雲禅寺*3の地を拝領してからは、江戸時代以降「学問寺」としての位置を取り戻しました。さらに、明治時代の廃仏毀釈や根本道場(勧学院)・金堂*4の火難など不幸の歴史を辿りながら明治33年(1900年)に智山派総本山となった歴史を知ると、“学問”がつなぐ絆の強さに感動します。広大な敷地にボクは大学のキャンパスに漂う“自由”の気風をイメージし、既に離れた母校を懐かしみました。また、素敵な庭園とともに、敷地内にある宝物館には、国宝である長谷川等伯らによる障壁画『桜図』『楓図』(国宝)*5が拝める特典もありますよ。勧行体験のできる宿坊がリニューアル(2020年夏頃)したらまた来たいなぁと思うDr.ヒロなのでした。*1:弘法大師入定(高僧の死)後300年、荒廃した高野山に大伝法院(学問所で学徒の寮も兼ねた)を創建、宗派内の対立で同じ和歌山県内の根来山に修行の場を移し、教学「新義(真言宗)」を確立した。*2:いつしか“書物”を“火縄銃”に持ち替えた僧兵は種子島伝来の鉄砲を操ったという。天正13年(1585年)、豊臣秀吉による“根来攻め”により山内の堂塔が灰燼に帰し、当時の智積院住職であった玄宥(げんゆう)僧正が難を逃れたのが京都東山であった。*3:秀吉が夭逝した愛児鶴松(棄丸)の菩提を弔うため建立した。*4:宗祖弘法大師(空海)の生誕1200年の記念事業として昭和50年(1975年)に再建された。*5:中学・高校時代に誰しも一度や二度は図説で見たであろう“金ピカ”の障壁画に出会える。安土桃山時代らしい絢爛豪華さで、自分が想定したよりもスケールが大きくビックリ!

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電子タバコ関連の肺障害、酢酸ビタミンEが関与か/NEJM

 米国では現在、電子タバコまたはベイピング製品の使用に関連する肺障害(electronic-cigarette, or vaping, product use-associated lung injury:EVALI)が、全国規模で流行している。同国疾病予防管理センター(CDC)のBenjamin C. Blount氏らLung Injury Response Laboratory Working Groupは、EVALIの原因物質について調査し、酢酸ビタミンEが関連している可能性が高いと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月20日号に掲載された。2019年12月12日現在、米国の50州とワシントンD.C.、バージン諸島、プエルトリコで、2,400人以上のEVALI罹患者が確認されている。すでに25州とワシントンD.C.で52人が死亡し、罹患者の78%が35歳未満だという。症状は、呼吸器(95%)、全身(85%)、消化器(77%)が多く、数日から数週間をかけて緩徐に進行すると報告されているが、その原因物質は同定されていない。電子タバコ関連の肺障害患者51人と健常者99人で高優先度の毒性物質を評価 研究グループは、電子タバコ関連の肺障害に関連する毒性物質を同定する目的で、EVALI患者と健常者の気管支肺胞洗浄(BAL)液を調べた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、米国16州のEVALI患者51人と、2015年に開始され、現在も進行中の喫煙関連研究の参加者のうち、電子タバコまたはベイピング製品のみの使用者や、タバコを専用する喫煙者、これらの非使用者を含む健常者99人であった。 参加者から採取したBAL液を用い、同位体希釈質量分析法で優先度の高い毒性物質(酢酸ビタミンE、植物油、中鎖脂肪酸トリグリセライド油、ココナッツ油、石油蒸留物、希釈テルペン)の測定を行った。電子タバコ関連の肺障害患者の酢酸ビタミンE検出率:患者94% vs.健常者0% 2019年8月~12月の期間に、米国16州の電子タバコ関連の肺障害患者51人からBAL液が採取された。年齢中央値は23歳で、男性が69%を占めた。77%がテトラヒドロカンナビノール(THC)含有製品を、67%がニコチン含有製品を、51%はこれら双方を使用していた。51人のうち、25人はEVALI確定例、26人は疑い例であった。 健常者集団(99人)のBAL液は2016~19年に採取された。電子タバコ使用者は18人(年齢中央値27歳、男性67%)、喫煙者は29人(26歳、76%)、非使用者は52人(25歳、37%)であった。この集団のBAL液からは、6種の優先度の高い毒性物質は検出されなかった。 一方、電子タバコ関連の肺障害患者のBAL液からは、51人中48人(94%)で酢酸ビタミンEが検出された。1人からは、酢酸ビタミンEに加えココナッツ油が検出され、酢酸ビタミンEもTHCも検出されなかった1人からはリモネン(希釈テルペン)が検出された。これ以外の患者からは、酢酸ビタミンE以外の優先度の高い毒性物質は検出されなかった。 検査データがあり、製品の使用が報告されているEVALI患者50人中47人(94%)では、BAL液からTHCまたはその代謝産物が検出され、EVALI発症前90日以内でのベイピング用THC製品の使用が報告されていた。また、ニコチンまたはその代謝産物は、47人中30人(64%)のBAL液から検出された。 著者は、「酢酸ビタミンEが単独で、EVALI患者にみられる肺障害の直接的な原因となりうるかは、動物実験によって明らかとなる可能性がある」としている。

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日本人統合失調症患者における1年間の禁煙変化

 岡山県・たいようの丘ホスピタルの樋口 裕二氏らは、日本人の統合失調症患者の喫煙者における禁煙への意欲や行動に関するフォローアップ調査を実施した。BMC Psychiatry誌2019年11月21日号の報告。 参加者は、2016年4月1日時点で1年以上通院しており、過去6ヵ月以内に2回以上受診していた20~69歳の統合失調症外来患者。2016年にプールされた患者680例よりランダムに抽出した420例を対象にベースライン調査を行い、現在の喫煙状況や禁煙段階を含む喫煙行動に関して2017年までフォローアップ調査を実施した。禁煙段階の分布と変化、1年後の喫煙者および非喫煙者数、自然主義的な1年間の禁煙フォローアップによる禁煙率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン調査の回答者350例中、現喫煙者は113例、元喫煙者は68例であった。・現喫煙者113例中、104例(92.0%)が1年間フォローアップされた。禁煙に関心があった患者は79例(70.0%)であったが、ベースライン時に禁煙治療を受けた患者は7例のみであった。・フォローアップされた104例中、1年後に禁煙を達成していた患者は6例(5.8%)のみであった。・ベースライン時に6ヵ月以内に禁煙する意向を示した患者25例中、1年間禁煙を継続する意向を維持した患者は6例(24.0%)、禁煙の意向を維持できなかった患者は16例(64.0%)であった。 著者らは「統合失調症患者の喫煙者の多くは、禁煙に関心を持っているが、治療を受け、実際に禁煙できる患者はほとんどいないことが明らかとなった。統合失調症患者の喫煙者には禁煙治療のオプションを含め、適時の介入が必要とされる」としている。

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新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(3)【新型タバコの基礎知識】第14回

第14回 新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(3)Key Points加熱式タバコを吸っている人には、「加熱式タバコを吸っている理由」を聞くことから始める。タバコ問題に関する情報共有を進め、信頼関係を築いてから、加熱式タバコの害についても伝える(「加熱式タバコもダメ」だけではダメ!)。多くの人は、タバコに関する正しい理解を得るとともに禁煙することに意欲を持つようになります。今回は、「加熱式タバコにスイッチした人」や「紙巻タバコと加熱式タバコの両方を吸っている人」に対して医師や医療者はどう向き合って、どのように対応していけばよいのか、私が伝えたいと思っていることを書きます。もちろん完全な答えはありませんから、単なる1つの例ですが、参考にしていただければ幸いです。「加熱式タバコにスイッチした人へ伝えたいこと」なぜ加熱式タバコにスイッチしたのでしょうか?自分の健康のために紙巻タバコよりマシだと考えたからかもしれませんし、家族や同僚の受動喫煙を減らす目的かもしれません。もし、そうだとすると、紙巻タバコを止められたこと、本当によかったですね、とまずは伝えてほしいと思います。また、受動喫煙を減らそうと配慮して加熱式タバコに変えたのであれば、「配慮していただき本当にありがとうございます」と伝え、その気持ちを尊重したいです。日本では、こういった他人に配慮する気持ちや空気を読む国民性がうまく機能しています。タバコ対策にとっても、この国民性が対策を進める良い方向に働いているのではないでしょうか。加熱式タバコには、使用する本人に対して紙巻タバコとほとんど変わらない害があるのではないかと予測しています(第7回参照)。使用者自身が、この新しいタバコのリスクについてよく知ってほしいと思います。多くの人が現在考えているよりも、加熱式タバコには大きな健康リスクがあるかもしれません。こういった私の話を聞いて、「タバコ会社にだまされた」と言って怒っていた人もいました。客観的な事実を知ることがどうするべきか、どうしたいかを考えるために重要です。タバコ会社が伝えている情報ではなく、今の段階で客観的に分かっていることを十分に知ってもらって、これからも加熱式タバコを吸い続けるかどうか考えてほしいと思います。「紙巻タバコと加熱式タバコの両方を吸っている人に伝えたいこと」実は、加熱式タバコを吸っている人の多くが、紙巻タバコをやめられないままでいます。加熱式タバコを吸うようになったきっかけはさまざまですが、下記のような理由の人が多くいます:(1)禁煙しようと思って(2)紙巻タバコよりも害が少ないと思って(3)誰かと一緒にいるときは受動喫煙が減るようにと配慮してこういった害を減らそうという意図から新型タバコを吸っている人が多くいます。しかしその一方で、(4)タバコを吸いにくい場所でも吸うために、新型タバコを購入したという人もいます。(4)の理由で吸っている人は、どうしてもタバコをやめられないと諦めているのかもしれません。本人がやめる気にならなければ、当然やめることは難しくなります。こういった場合に私がいつも話すのは、「何かを少し伝えて、あなたがタバコをやめるようにできるとは全く考えていません。いつかタバコをやめたいと思ってもらえるように、タバコ問題に関する本人の理解や、環境の整備が進むように少しずつでも支援していきたいと思っています」ということです。タバコが値上げされたり、職場や家庭が禁煙化されるなどタバコを取り巻く環境を変えることができれば、タバコをやめる動機とできるかもしれません。すぐに行動を変えてもらうのは難しいと理解していますが、こういった人にぜひ伝えてほしいのは、ニコチン依存症についてです(第9回参照)。なぜなら、ニコチンへの依存をより強化してしまう行動をとっている状況だと言えるからです。繰り返しになりますが、ニコチン依存症は本当にこわい病気です。ニコチンは、うれしい気持ちや楽しい、おいしいといったことを感じなくさせて、幸せを奪っています。人は、タバコに関する正しい理解を得るとともに禁煙することに意欲を持つようになります。それを阻んでいる代表的要因がニコチン依存といえるでしょう。ニコチン依存等についても詳しく書かれた、禁煙するために役立つ良書*1が多くあります。本人に禁煙する意欲が出た場合には、ぜひこれらの本も参考にしていただければと思います。タバコについてしっかりと理解することで、禁煙の意欲が湧き、タバコを再び吸うことからも自分を守れるようになります。*1:川井治之『頑張らずにスッパリやめられる禁煙』サンマーク出版、磯村毅『「吸いたい気持ち」がスッキリ消える リセット禁煙』PHP文庫、アレン・カー『禁煙セラピー』KKロングセラーズ社、など前述の(1)~(3)の理由で加熱式タバコを吸っていて、紙巻タバコをやめられないという方に、最も理解してほしいことは、紙巻タバコは1日1本でも吸っていたら大きな健康被害が出てしまうということです。1本など少数であっても、長期間タバコを吸うということが非常に有害なのです。ですから、もし加熱式タバコの健康被害の程度が紙巻タバコよりも低いとしても、紙巻タバコを併用して吸っていると健康被害を減らせないものと予測されます。できれば、タバコは全部やめてほしいところですが、まずは紙巻タバコを完全にやめてほしいと思います。第15回は、「医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法」です。

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年1~2回の芸術活動が寿命に好影響/BMJ

 美術館やコンサートに行くといった受容的芸術活動(receptive arts engagement)は、高齢者の寿命に保護的作用をもたらす可能性が示された。同活動を1年に1~2回行う人は、まったく行わない人に比べて死亡リスクが約14%低く、2~3ヵ月に1回行う人では31%も低かったという。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDaisy Fancourt氏らが、50歳以上の住民6,710例を約14年間追跡したデータを解析して明らかにした。なお示された関連性について著者は、「芸術活動をする人としない人における認知レベル、メンタルヘルス、身体活動度の違いによって部分的に説明はできそうだが、それらの因子を補正したモデルでも関連性は維持されていた」と検証結果を報告し、今回の観察的試験では要因を仮定するには至らなかったと述べている。BMJ誌2019年12月18日号のクリスマス特集「EXPRESS YOURSELF」より。美術館やコンサートに行く「受容的芸術活動」頻度と死亡率を検証 研究グループは、地域で暮らす50歳以上を対象に行った「English Longitudinal Study of Ageing:ELSA」の被験者のうち、2004~05年にベースラインの質問に回答した6,710例を対象に前向きコホート試験を行い、被験者の自己報告による受容的芸術活動(美術館、アートギャラリー、展覧会、劇場、コンサートやオペラに行く)と死亡率との関連を調査した(死亡の最終データ取得は2018年3月)。 被験者のうち女性は53.6%、平均年齢は65.9歳(標準偏差:9.4)だった。死亡率との関連はNHSの中央レジスタデータを利用して評価した。年1~2回活動で死亡リスク14%低下、2~3ヵ月に1回は31%低下 平均追跡期間は12年2ヵ月で、最長は13.8年だった。その間に2,001例(29.8%)が死亡していた。死亡者は、女性よりも男性で多く、また高齢、独居、学歴がなく、現在無職で、財産・職業ステータスは低い傾向がみられた。さらに死亡率は、抑うつ症状が高く、視力・聴力が弱く、がん・肺疾患・心血管疾患と診断されていた人・その他慢性症状がある人、運動をあまりしない人、飲酒はきわめてまれな人、および喫煙をしていた人で高かった。また、認知レベルは低く、孤立しており、親密な友人がおらず、独居、無趣味、社会的活動への参加はまれ、地域のグループとの関わりがない人でも高かった。 死亡数は、受容的芸術的活動をまったく行わない人(1,762例)では837例(47.5%)だったのに対し、まれ(1年に1~2回)でも同活動を行っていた人(3,042例)は809例(26.6%)で、追跡期間中どの時点でも死亡リスクは約14%低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96)。 同活動を頻繁(2~3ヵ月に1回)に行っていた人(1,906例)の死亡は355例で、まったく行わない人に比べて死亡リスクは約31%低かった(HR:0.69、95%CI:0.59~0.80)。 同活動は、人口統計学的・社会経済的要因、健康関連・行動学的要因、社会的要因とは独立した要因であることが認められ、感度分析の結果、性別、社会経済学的状態、社会的要因による影響は受けないことが確認された。

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週7パック以上の納豆で骨粗鬆症性骨折リスクが半減?

 納豆摂取と骨密度との間の直接の関連は知られているが、骨粗鬆症性骨折との関連については報告されていない。今回、大阪医科大学/京都栄養医療専門学校の兒島 茜氏らの研究で、閉経後の日本人女性において習慣的な納豆摂取が骨密度とは関係なく骨粗鬆症性骨折のリスク低下と関連していることが示唆された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2019年12月11日号に掲載。 本研究は、納豆の習慣的な摂取と骨粗鬆症性骨折リスクとの関連を調査した前向きコホート研究。対象は、1996、1999、2002、2006年にJapanese Population-based Osteoporosis(JPOS)研究に登録され、ベースライン時に45歳以上であった閉経後日本人女性1,417人。登録時に、納豆、豆腐、その他の大豆製品の摂取について食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して調査した。骨折は1999年、2002年、2006年、2011/2012年の追跡調査で確認した。主要アウトカムは骨粗鬆症性骨折で、医師がレントゲン写真で診断した、強い外力によらない臨床的骨折とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1万7,699人年の追跡期間中(中央値15.2年)、172人の女性に骨粗鬆症性骨折が確認された。・年齢、股関節の骨密度年齢について調整後、納豆摂取量が週当たり1パック(約40 g)未満に対するHRは、1~6パックで0.72(95%CI:0.52~0.98)、7パック以上で0.51(95%CI:0.30~0.87)であった。・さらに、BMI、骨粗鬆症性骨折の既往、心筋梗塞または脳卒中の既往、糖尿病、現在の喫煙、飲酒、豆腐および他の大豆製品の摂取頻度、食事性カルシウム摂取について調整すると、1パック未満に対するHRは1~6パックで0.79(95%CI:0.56~1.10)、7パック以上で0.56(95%CI:0.32~0.99)となった。・豆腐や他の大豆製品の摂取頻度は、骨粗鬆症性骨折のリスクと関連がなかった。

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長期認知症リスクを予測するためのLIBRAスコア

 現在のところ認知症の根治的治療は解明されておらず、認知症研究の焦点は予防戦略にシフトしつつある。オランダ・マーストリヒト大学のKay Deckers氏らは、修正可能なリスク(冠動脈疾患、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、うつ病、肥満、喫煙、運動不足、腎疾患)および保護因子(低~中程度のアルコール摂取、認知活動、健康的な食事)の12種をスコア化したLIfestyle for BRAin Health(LIBRA)スコアを用いて、アポリポ蛋白E(APOE)の対立遺伝子ε4を基にした遺伝リスクが高いまたは低い人における、中年期および後期の認知症および軽度認知障害(MCI)の予測精度について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。 フィンランドのCardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia(CAIDE)集団ベース研究の参加者を対象に、中年期(1,024例)および後期(604例)2回のLIBRAスコア測定を30年後まで実施した。確立された基準に従い、認知症およびMCIの診断を行った。性別および教育を調整したモデルにおけるLIBRAスコアと認知症およびMCIリスクの関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・中年期の高LIBRAスコアは、30年後までの認知症(ハザード比[HR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.13~1.43)およびMCI(未調整HR:1.12、95%CI:1.03~1.22)の高リスクと関連が認められた。・後期の高LIBRAスコアは、MCI(HR:1.11、95%CI:1.00~1.25)の高リスクと関連が認められたが、認知症(HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)では認められなかった。・後期の高LIBRAスコアは、APOEε4ノンキャリアにおいて、認知症の高リスクと関連が認められた。 著者らは「認知症予防において、修正可能なリスクおよび保護因子の重要性が確認された」としている。

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第35回 本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第35回:本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(前編)一般的に「異常Q波」=必ず「心筋梗塞」…と思われがちですが、100%ではなく、実際には“フェイク”Q波も存在します。今回は、なかでも頻度の高いニサンエフ(II、III、aVF)の下壁誘導で検証してみましょう。心電図を“技巧的”にとることで、霧がはれ、明瞭な視界が広がる体験をDr.ヒロがナビゲートします。2回シリーズの今回は前編で、今までのおさらいを兼ねた“伏線”的な内容です。では始めましょう。症例提示48歳、男性。糖尿病にてDPP-4阻害剤を内服中。泌尿器科より以下のコンサルテーションがあった。『腎がんに対して全身麻酔下で左腎摘除術を予定しています。自覚症状はとくにありませんが、術前心電図にて異常が疑われましたので、ご高診下さい』174cm、78kg(BMI:25.6)。血圧123/72mmHg、脈拍58/分・整。喫煙:15~20本×約30年(現在も喫煙中)。術前検査として記録された心電図を示す(図1)。(図1)術前外来の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図1)の自動診断は「下壁梗塞の可能性:III、aVF」となっている。これはどの所見によるものか?解答はこちら異常Q波解説はこちら今回は泌尿器科手術が予定された男性が題材です。術前検査としての心電図の考え方は過去に扱いましたね。年齢も若く、運動耐容能にも問題なさそうですが、糖尿病で中等度以上の手術リスク(腎摘除術)とくれば、一定の注意を払って眺めるべき心電図でしょう(第12回)。1問目は「自動診断」をいじるDr.ヒロ独特の問題です。あ、“性格悪い”って思わないでくださいね(笑)。さて、心電図(図1)をどう読みますか? 油断すると「心拍数54/分・洞調律…以上」と読んでしまいそうですが、キチンと眺めると「系統的判読」(第1回)での“クルッと”の“ク”のプロセスで引っかかりませんか?。アップデートした「異常Q波」の定義を思い出しましょう。“1ミリとお隣を思い出せ”古い心筋梗塞の“爪痕”を示唆する「異常Q波」は「V1~V3」と「それ以外」の誘導で考える、と第33回で扱いました。「V1~V3」は“存在”重視で、「それ以外」は幅と深さに着目した“1ミリの法則”でしたね。すると、心電図(図1)には、たしかにIII、aVF誘導に明らかな「異常Q波」があります。ただ、もう一つ紹介したDr.ヒロ独自の“お隣ルール”も忘れないで。“サンエフ”と来たら、そう、“ニ”ね。「下壁誘導」は“ニサンエフ”で1セットですから、II誘導も眺めてください。これが隣接誘導群の考え方です。II誘導のQ波は「深さ」が2mmくらいありますが、「幅」はどうでしょうか? もし見にくければ、拡大して眺めてみてください。たとえば2拍目。はじまりがオレンジ太線上にあり、1mmはありそうでしょ?診断基準は「幅≧0.03秒」つまり“1mm弱”で該当するので、これはアウトです。ですから、自動診断はサンエフだけでも、実際にはII、III、aVF誘導すべてに「異常Q波」があるというのが正確な読みになります。これは“偶然”や“こじつけ”じゃないんです。「III・aVF」にQ波があるから「II」もしっかり見るのは“必然”です。それと、慣れてきたらザーッとQ波を見渡す段階で「なんかII誘導、目立つなぁ~」という感性が芽生えてくるとボクは信じています。■心電図診断■洞調律(54/分)異常Q波(II、III、aVF)【問題2】この患者に「下壁梗塞」はあるか? また、それを調べるならどんな画像検査を追加するか?解答はこちら心エコー、心臓MRI、核医学(RI)検査など解説はこちら今回は泌尿器科の症例なので、非専門医の先生がこの心電図を見ると、きっと自動診断に目をやって、こう思うかもしれません。『えっ、心筋梗塞? どこが? IIIにもaVFにもST変化はないのになぁ…。循環器医に聞いてみよう』実はここが次回への“伏線”です。心電図を工夫して詳しく見ることで、ほかの画像検査にも決して劣らない深い洞察ができることについては次回お話ししましょう。多くの病院で比較的手軽に施行可能だという点では「心エコー」、普通はこの“一択”になるでしょうか。より病院規模が大きくなるにつれ、心臓MRIやRI検査、冠動脈CTなどでも精査できそうです。“「とりあえず心エコー」の危うさ”2問目では、この患者さんに「下壁梗塞」が本当にあるかを問うています。状況的には「急性」のものは考えにくいので、普通は「陳旧性」心筋梗塞があるかがポイントになるでしょう。年齢はやや若目ですが、糖尿病や喫煙歴(しかもcurrent smoker)もあるため、始めにすべきは、心筋梗塞の既往確認(問診)です。『◯◯さんは、昔、心筋梗塞になったことがありますか?』でも、ご本人の返事は“No”―このような状況を思い浮かべてください。心臓MRI(CMR)やRI検査は、検査可能な病院のほうが圧倒的に少なく、中小規模の病院であれば「心エコーを入れて終了」となりがちです。でも、心エコー室だっていつでもウェルカムではありませんし、それ以上に“とる人”(検査者)や“見る人”(診断医)の能力に大きく依存するという意味で「不確実性」の高い検査だと言えるかもしれません。コスト(保険点数:880点[平成30年度診療報酬])だってバカになりません。あ、ボクは別に心エコーの“アンチ”ではございませんので悪しからず。ちなみに、この方は下壁の限局性壁運動低下、いわゆるasynergyがあり、にわかに“本物”疑惑が浮上したのです。通常は深く考えず、冠動脈CTやRI、ないしMRIに進むかもしれませんが、ボクの得意ジャンルは「心電図レクチャー」です。こういう時に心電図を使ってどう考えていくのか、次回語ろうと思います。そうそう、前回紹介した“周囲確認法”を覚えていますか? ただ、今回は「ST-T変化」がないので、「いやいや、心筋梗塞はないよ」と思いたいですが…どうなるでしょうか。今年一年、皆さまのお世話になりました。よい新年をお迎えください!Take-home Message異常Q波=100%本物ではなく、フェイクQ波の可能性がある。「おかしな心電図→何でも心エコー」はやめよう!【古都のこと~城南宮~】城南宮(じょうなんぐう)は、伏見区にある「方除(ほうよけ)の大社」です。“鳴くよウグイス”の794年(延暦13年)、長岡京から平安遷都した際に創建されました*。当時から熊野詣の精進所となるなど、高貴な人々が方位の災厄からの無事を祈願した場所だったのだそう。さらに、平安時代後期には、白河上皇や鳥羽上皇が城南宮を取り囲むように離宮を造設して院政の拠点にしたほか、この離宮を中心に雅やかな宴や歌会などの王朝文化が花開いたと言われています。また、1868年(慶応4年)、倒幕をもくろむ薩摩藩の砲撃により鳥羽伏見の戦いの火ぶたが切られたのも、この場所です。また、城南宮は方除け・厄除けもさることながら、「車のお祓い」の神社としても有名で、京都市内でもブルーの“キラキラ”交通安全ステッカーを貼った車はひときわ目を引きます。古くは羅城門への「鳥羽の作り道」にはじまり、高速・幹線道路に姿を変えた今でも、城南宮には常に道行く人々の安全を見守ってきた“実績”があるのです。ほかに昭和の名造園家 中根金作(1917~1995)による「神苑-源氏物語花の庭-」も魅力的で、とくに春と秋はMustスポットだと個人的には思います。2020年の交通安全を祈願しに、愛車とともにお正月にもう一度行こうかなぁ。*:「平安城の南のお宮」の意。

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うつ病や統合失調症リスクに対する喫煙の影響

 統合失調症やうつ病の患者では、一般集団と比較し喫煙率が高い。英国・ブリストル大学のRobyn E. Wootton氏らは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)で特定された遺伝子変異を使用して、この因果関係を調べることのできるメンデルランダム化(MR)法を用いて検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。 統合失調症およびうつ病に対する喫煙の双方向の影響を調査するため、2つのサンプルにおけるMRを実施した。喫煙行動についてはGSCAN(GWAS and Sequencing Consortium of Alcohol and Nicotine use)コンソーシアムから喫煙開始のGWASを使用し、UK Biobankの46万2,690サンプルより生涯の喫煙行動に関する独自のGWASを実施した。肺がんなどのポジティブコントロールアウトカムを用いて検証した。統合失調症とうつ病には、PGC(Psychiatric Genomics Consortium)のGWASを使用した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙は、統合失調症(オッズ比[OR]:2.27、95%信頼区間[CI]:1.67~3.08、p<0.001)とうつ病(OR:1.99、95%CI:1.71~2.32、p<0.001)の両方のリスク因子であることが示唆された。・この結果は、生涯の喫煙喫煙開始の両方で、一貫して認められた。・うつ病に対する遺伝傾向が喫煙を増加させる可能性が示唆されたが(β=0.091、95%CI:0.027~0.155、p=0.005)、統合失調症では明らかではなく(β=0.022、95%CI:0.005~0.038、p=0.009)、喫煙開始に対する影響は非常に弱かった。 著者らは「喫煙と統合失調症やうつ病の関連性は、少なくとも部分的に、喫煙の因果効果であることが示唆された。このことは、メンタルヘルスに対する喫煙の有害な結果をさらに示すものである」としている。

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米国中高生にフレーバー電子タバコが蔓延/JAMA

 2019年の米国の高等学校(high school)および中学校(middle school)の生徒における電子タバコ使用者の割合は高く(それぞれ27.5%、10.5%)、特定の銘柄の電子タバコ使用者の多くがフレーバー電子タバコを使用(72.2%、59.2%)している実態が、米国食品医薬品局(FDA)タバコ製品センターのKaren A. Cullen氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019年11月5日号に掲載された。米国の青少年における電子タバコの使用率は、2011年から2018年に、実質的に増加しているという。青少年の電子タバコや他のタバコ製品の使用率の継続的な監視は、公衆衛生学上の施策や計画立案、規制の取り組みへの情報提供として重要とされる。第6~12学年1万9,018人の横断研究 研究グループは、2019年の米国の高等学校および中学校の生徒における電子タバコの使用状況(使用頻度、銘柄、フレーバー製品の使用など)を調査する目的で、横断研究を行った(FDAと米国疾病予防管理センター[CDC]の助成による)。 2019年度の全国青少年タバコ調査(National Youth Tobacco Survey)に参加した第6~12学年(高等学校:第9~12学年、中学校:第6~8学年)の米国人生徒1万9,018人を対象とした。調査期間は、2019年2月15日~5月24日。 参加者の自己申告に基づき、現在電子タバコを使用中(過去30日以内に1回以上使用)、頻回使用(過去30日間に20日以上)、現使用者が習慣的に使用している銘柄(JUUL、blu、Logic、MarkTen、NJOY、Vuse、その他、なし)、特定銘柄の使用者(他のタバコ製品は使用しない)におけるフレーバー電子タバコの使用の有無と、使用しているフレーバーの種類を調査した。使用率の推定値は複雑抽出デザイン(complex sampling design)で重み付けした。頻回(月に20日以上)使用者は160万人、毎日使用者は97万人 調査には、高等学校の生徒1万97人(平均年齢16.1[SD 3.0]歳、女性47.5%)と、中学校の生徒8,837人(12.7[2.8]歳、48.7%)が含まれた。学年別の参加者割合は全体として類似していた(範囲:第12学年12.9%~第7学年14.6%)。全体の回答率は66.3%だった。 2019年の電子タバコの現使用率の推定値は、高等学校生が27.5%(95%信頼区間[CI]:25.3~29.7)、中学校生は10.5%(9.4~11.8)であった。また、現使用者のうち、高等学校生の34.2%(31.2~37.3)、中学校生の18.0%(15.2~21.2)が頻回使用者であり、それぞれ63.6%(59.3~67.8)および65.4%(60.6~69.9)が特定の銘柄の電子タバコを使用していた。 現使用者のうち、高等学校生の59.1%(95%CI:54.8~63.2)、中学校生の54.1%(49.1~59.0)が、過去30日間にJUUL(ニコチン塩ベースの電子タバコ製品)を習慣的に使用しており、それぞれ13.8%(12.0~15.9)および16.8%(13.6~20.7)は、習慣的に使用している電子タバコの銘柄はないと回答した。 特定の銘柄の電子タバコの使用者のうち、高等学校生の72.2%(95%CI:69.1~75.1)、中学校生の59.2%(54.8~63.4)が、フレーバー電子タバコを使用しており、使用頻度の高いフレーバーは、果物(高等学校生66.1%[62.4~69.5]、中学校生67.7%[62.6~72.5])、メンソール/ミント(57.3%[53.3~61.3]、31.1%[25.6~37.2])、キャンディー/デザートなどの甘い物(34.9%[31.3~38.7]、38.3%[32.6~44.2])であった。 なお、過去30日間に、電子タバコ以外のタバコ製品を使用したと答えた生徒の割合は、高等学校生が5.8%(95%CI:4.6~7.3)、中学生は2.3%(1.8~2.9)であり、電子タバコと合わせると、それぞれ31.2%(29.1~33.5)および12.5%(11.2~13.9)が、何らかのタバコ製品を使用していた。 著者は、「これらのデータにより、2019年に米国の高等学校生410万人と中学校生120万人が電子タバコを使用したと推定される。このうち160万人が頻回使用者で、97万人は毎日使用しており、特定銘柄のフレーバー電子タバコの使用者は240万人と考えられる」としている。

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今、心血管系疾患2次予防に一石が投じられた(解説:野間重孝氏)-1154

 至適内科治療(optimal medical treatment:OMT)という言葉がある。冠動脈疾患は代表的な複合因子的な疾患である。喫煙、血圧、糖尿病、高脂血症等さまざまな因子が複合的に作用して疾病が形成される。こうした疾病に対しては、関係すると思われる諸因子を逐次徹底的にコントロールすることにより、疾病の1次・2次予防を図るやり方が考えられ、OMTと呼ばれた。冠動脈疾患に対しては大体90年代の半ばに確立されたといえる。冠動脈疾患に対するOMTの確立は、境界域の冠動脈疾患においては、場合により外科的治療や血管内治療の代替えとされるまでに発展した。一方、大変皮肉なことに、一旦OMTが確立した後はこれにプラスして何か新しい治療法を加えようとした研究は、ことごとくnegative studyに終わったといってよい。そんな中、今回のコルヒチンによる心血管系疾患の2次予防に関する成績は、研究法に対して多少の不満はあるものの、久しぶりに快音を響かせたヒットとなったのである。 動脈硬化が炎症と深い関係があるとする動脈硬化炎症説は、1976年にRossらが「障害に対する反応」仮説を提出したことに始まる(N Engl J Med. 1976;295:369-377., 420-425.、二部構成)。以後さまざまな仮説が提出された。この論文評は動脈硬化炎症説を解説することが目的ではないので深入りはしないが、近年は自然免疫の障害説なども提出され議論が続いているものの、結局決定的なメカニズムの解明には至っていない。これはちょうどレセプターの研究をしようとするならブロッカーが開発されなくてはならないのと同じことで、炎症のあるプロセスを強力かつ永続的にブロックするような薬剤が開発されなかったことが大きな理由だったと考えられる。 コルヒチンはイヌサフラン科のイヌサフラン(Colchicum autumnale)の種子や球根に含まれるアルカロイドで、単離されたのは1820年まで下るが(それでも十分昔!)、イヌサフランそのものはローマ時代から痛風の薬として使用されていた。主な作用として、細胞内微小管(microtubule)の形成阻害、細胞分裂の阻害のほかに、好中球の活動を強力に阻害することによる抗炎症作用が挙げられる。皮肉なことに、この辺にコルヒチンが動脈硬化の進展予防に何らかの作用を持つと考えられなかった理由がある。というのは、動脈硬化炎症説を考える人たちは単球やマクロファージ、免疫系細胞には注目するが、好中球には関心を示さなかったからだ。ちなみに好中球、多核球に対してこれだけ強力な抑制作用を持つ薬剤は、現在コルヒチン以外に知られていない。結局、今世紀に至るまでコルヒチンが心動脈硬化性疾患の進展予防に何らかの効果を持つとは誰も考えなかったのである。 しかし意外な方面から突破口が開かれる。ニューヨーク大学のリウマチ研究室の研究者たちが奇妙な事実に気付き報告したのだ。痛風患者に対してコルヒチンを使用していると心筋梗塞の有病率が低いというのである(Crittenden DB, et al. J Rheumatol. 2012;39:1458-1464.)。 この結果にいち早く注目したのがHeartCare Western AustraliaのNidorf SMらのグループだった。彼らは通常の治療に加え、コルヒチン錠を1日当たり0.5mg投与する治療群(282例、66歳、男性率89%)とコントロール群(250例、67歳、男性率89%)の計532例を中央値で3年間フォローアップした結果(主要アウトカムは、急性冠症候群、院外心停止、非心臓塞栓性虚血性脳卒中)、ハザード比(HR)は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.60)、NNT 11で2次予防が可能であるという驚くべき結果を得た(LoDoCo試験、Nidorf SM, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:404-410.)。この結果はケアネットにおいても2013年1月15日に報道されたが、残念ながらわが国ではあまり注目されなかった。この試験は登録数が少ないこと、PROBE法で検討されていることからあくまでpilot studyだったのだが、一部の関係者の注目を集めるには十分だった。 今回の研究はLoDoCo試験に注目したカナダ・モントリオール心臓研究所のグループが計画したものである。プロトコールはきわめてシンプルで、心筋梗塞後平均13.5日後の患者4,745例を、コルヒチン0.5mgを服用する群とプラセボを服用する群に二重盲検し、中央値22.6ヵ月の追跡を行ったのである(複合エンドポイント:心血管死、心停止による蘇生処置、心筋梗塞の再発、脳卒中、血行再建)。この結果、HR:0.77、95%CI:0.61~0.96でコルヒチン群が優れているとの結果が得られたのである。 ただし、この研究にまったく問題がなかったわけではない。複合エンドポイントのうち、心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞には両群で差がなく、差が出たのは脳卒中と血行再建術を要した緊急入院のみであったからだ。数字から見るならば、脳卒中で差がつかなければこの研究はかなり際どい結果になっていた可能性もあるのである。ここで問題なのは、冠動脈疾患と脳卒中ではその発生のメカニズムを同じ土俵で論じてよいか議論があることである。文頭でOMTを話題としたが、冠動脈疾患が典型的な複合因子的疾患であるのに対し、脳卒中は血圧のコントロールに対する依存度が大変に高く(つまり単因子的な色彩が強く)、その予防法も冠動脈疾患でいうOMTとはやや趣が異なるのである。 論文中のlimitationの項で、筆者らは4,745例という数が少ないのではないかと述べているが、統計的に不十分な数であるとは考えられない。むしろその後半で述べているように、対象患者を心筋梗塞罹患後の患者に限定したことにこそ問題があったのではないかと考える。冠動脈疾患の2次予防の検定をするならば、さまざまなレベルの有症状、無症状の冠動脈疾患患者から心筋梗塞罹患患者までもっと広い患者層から対象を集めるべきだったのではないだろうか。こういった心血管系疾患の予後に関する研究をするとき、どうしても複合エンドポイントを冠動脈関係イベントのみに絞るというわけにはいかず、脳卒中を入れざるを得ないことが避けられない弱点になる以上、患者層は冠動脈疾患患者からできるだけ広く集めるべきだったのではないかと考えるのである。それにしても平均年齢が60.6歳の患者集団としては、コルヒチンを飲む飲まないにかかわらず、脳卒中の発生率がやや高いように感じられることも気になる点ではあった。 一方、LoDoCo試験を行ったオーストラリアのグループは、その後コルヒチン投与が安全に行えることが確かめられた5,522例の安定狭心症を対象としてコルヒチン0.5mgによる二重盲検試験を行った。この結果は本年発表されたが( Nidorf SM, et al. Am Heart J. 2019;218:46-56. )、30%のendpoint reductionを報告している。もっともこのグループも複合エンドポイントにはpilot studyと同様に脳卒中を入れざるを得なかったが、今回論評している研究ほど脳卒中の結果が結果に影響は与えていない。やはり対象の選択の問題ではないだろうか。論文評としてはいささか穏やかでない言い方になるが、率直に言って、評者はこのグループの研究のほうを評価したいと感じている。 いずれにしても、これらの研究は今後臨床面だけでなく、動脈硬化炎症説の研究にも大きな影響を与えていくものと推察される。今までの研究方向に大きな軌道修正がかけられる可能性もある。研究者たちの奮起を期待するものである。臨床面では、コルヒチンは家族性地中海熱などの研究を通じて生涯安全に飲み続ける方法がすでに確立されており、かつ値段は1錠8円前後なのである。本邦でも早急に研究が進められることが望まれる。 冠動脈疾患の予後改善に関して、確かに今、一石が投じられたのである。

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飲酒・喫煙と家族性乳がんリスクの関連

 飲酒および喫煙は乳がんリスクの増加と関連しているが、家族性乳がんのリスクによってその関連性は変わるのだろうか。今回、米国コロンビア大学のNur Zeinomar氏らが検討したところ、適度な飲酒は、とくにエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの女性において乳がんリスクの増加と関連するが、それは家族性乳がんリスクが低いと予測される女性においてのみであることがわかった。また、家族性乳がんリスクが高く、飲酒する女性では、現在の喫煙が乳がんリスク増加と関連することが示された。Breast Cancer Research誌2019年11月28日号に掲載。 本研究は、Prospective Family Study Cohortを用いて、飲酒、喫煙、乳がんリスクの関連を評価した。多変量Cox比例ハザードモデルを使用して、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定し、家族性リスクプロファイル(familial risk profile:FRP)によって関連性が変わるかどうかを検討した。FRPは、家系ベースのアルゴリズムであるBreast Ovarian Analysis of Disease Incidence and Carrier Estimation Algorithm(BOADICEA)により予測される乳がんの1年発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.4年の間に、1万7,435人の女性のうち1,009人が乳がんを発症した。・喫煙または飲酒と乳がんリスクとの間に、全体として関連は認められなかった(非喫煙者に対する現在喫煙者のHR:1.02、95%CI:0.85~1.23、非常習飲酒者に対する週7杯以上の飲酒者のHR:1.10、95%CI:0.92~1.32)。・FRPの低い女性では、週7杯以上の飲酒者は非常習飲酒者に比べてER陽性乳がんのリスクが増加したが、FRPの高い女性では関連がなかった。例として、FRPの10パーセンタイル(5年BOADICEA:0.15%)の女性の推定HRは1.46(95%CI:1.07~1.99)だが、90パーセンタイル(5年BOADICEA:4.2%)の女性では関連がなかった(HR:1.07、95%CI:0.80~1.44)。・喫煙との関連はFRPによって変わらなかったが、飲酒する女性では喫煙状況についてFRPによる正の乗法的相互作用が認められた(相互作用のp=0.01)。ただし、非常習飲酒者については認められなかった。

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食物繊維とヨーグルト、肺がんの発症リスクを低下?/JAMA Oncol

 いわゆる善玉菌の栄養源である「プレバイオティクス」と、善玉菌を含む食品である「プロバイオティクス」の摂取は、いずれも有益なのか。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJae Jeong Yang氏らは、代表的な食品成分として、プレバイオティクスの「食物繊維」と、プロバイオティクスの「ヨーグルト」の摂取と肺がんリスクとの関連を調べた。欧米およびアジアで実施された前向きコホート研究10件のプール解析の結果、食物繊維とヨーグルトの摂取は、既知のリスク因子調整後および非喫煙者において、肺がんリスクの低下と関連することが示されたという。食物繊維もヨーグルトも、腸内微生物叢および代謝経路の調節を介してさまざまな健康上の有益性をもたらすことは知られているが、肺がんリスクとの関連についてはこれまで十分に検討されていなかった。結果について著者は、「プレバイオティクスとプロバイオティクスの肺がん発症に対する潜在的な予防機能を示すものであった」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年10月24日号掲載の報告。 研究グループは、欧米およびアジアで実施された前向きコホート研究10件、合計144万5,850例(成人)について、2017年11月~2019年2月にデータ解析を行った。 主要評価項目は、肺がん(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんの組織型に分類)の発症。食物繊維ならびにヨーグルトの摂取量は検証済みの調査票で測定し、参加者個々のデータを用いて食物繊維ならびにヨーグルトの摂取と肺がんリスクとの関連について、Cox回帰分析により各コホートで、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算するとともに、ランダム効果メタ分析により統合した。 主な結果は以下のとおり。・144万5,850例の内訳は、男性62万7,988例(平均年齢:57.9歳)、女性81万7,862例(54.8歳)であった。・追跡期間中央値8.6年における肺がんの発症記録は、1万8,822件であった。・食物繊維の摂取量が最低五分位群に対する最高五分位群のHRは0.83(95%CI:0.76~0.91)、ヨーグルトの摂取ゼロ群に対する同最高群のHRは0.81(95%CI:0.76~0.87)であった。・食物繊維またはヨーグルトの摂取と肺がんとの関連は、非喫煙者において顕著であり、性別、人種/民族および腫瘍組織型にかかわらず一貫して観察された。・食物繊維とヨーグルトの摂取を合わせて検討した場合、食物繊維もヨーグルトも摂取量が最も高い群では、食物繊維の摂取量が最も少なくヨーグルトをまったく摂取しない群に比べ、肺がんのリスクが30%以上低下し(全体のHRは0.67[95%CI:0.61~0.73]、非喫煙者のHRは0.69[95%CI:0.54~0.89])、潜在的な相乗効果が示唆された。

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統合失調症患者のインスリン抵抗性有病率とその特徴

 いくつかの研究において、統合失調症患者は、インスリン抵抗性リスクが高いことが示唆されている。中国・北京大学のChen Lin氏らは、中国人統合失調症入院患者におけるインスリン抵抗性の有病率および臨床的相関について調査を行った。Comprehensive Psychiatry誌オンライン版2019年11月7日号の報告。 対象は、統合失調症患者193例(男性:113例、女性:80例)。血漿グルコースおよび脂質レベルに関するデータを含む人口統計および臨床データを収集した。認知機能の評価には、Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status(RBANS)、精神症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。インスリン抵抗性を評価するHOMA-IRのカットオフ値は、1.7に設定した。 主な結果は以下のとおり。・インスリン抵抗性の有病率は、37.82%(73例)であった。・インスリン抵抗性患者は、そうでない患者と比較し、ウエスト/ヒップ比、BMI、空腹時血糖、トリグリセリド(TG)、LDLレベルが有意に高かった(各々p<0.05)。・バイナリロジスティック回帰分析では、喫煙、BMI、TG、LDLレベルが、インスリン抵抗性の有意な予測因子であった。・相関分析では、ウエスト/ヒップ比、BMI、LDLレベルが、インスリン抵抗性と有意に相関していることが示唆された(Bonferroni補正:p<0.05)。・多変量線形回帰分析では、BMIと空腹時血糖が、インスリン抵抗性と関連していることが示唆された。・異なる抗精神病薬を使用している患者間で、インスリン抵抗性に有意な差は認められなかった。 著者らは「中国人統合失調症患者では、インスリン抵抗性およびそのリスク因子を有する割合が高かった。統合失調症患者のインスリン抵抗性発生を防ぐためにも、BMIやウエスト周囲を減らし、タバコの本数を減らすための積極的な体重管理が不可欠である」としている。

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乳製品摂取量と死亡リスクとの関連は? /BMJ

 米国・ハーバード公衆衛生大学院のMing Ding氏らは、3件の前向きコホート研究において乳製品の摂取量と全死亡および死因別死亡との関連を検証し、乳製品の総摂取量と死亡リスクに逆相関は確認されず、乳製品の健康への影響は代用の類似食品に依存する可能性があることを報告した。また、「わずかだががん死亡率の上昇が、有意ではないものの乳製品摂取と関連がみられており、さらなる検証が必要である」とまとめている。これまで、乳製品摂取と2型糖尿病、心血管疾患、がんなどさまざまな健康アウトカムとの関連が広く検証されているが、多くの研究で明らかな有益性あるいは有害性は示されていない。さらに、前向きコホート研究での乳製品摂取と死亡との関連に関するエビデンスは限定的であった。BMJ誌2019年11月27日号掲載の報告。米国の大規模コホート研究3件(女性約17万人、男性約5万人)について解析 研究グループは、女性および男性における乳製品の摂取と全死亡および死因別死亡リスクとの関連を調べる目的で、米国で実施された3つの前向きコホート研究「Nurses' Health Study(NHS)」「Nurses' Health Study II(NHS II)」「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」を用い、ベースラインで心血管疾患およびがんを有していない女性16万8,153人と男性4万9,602人について解析した。 参加者は、乳製品の摂取について食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて、NHSでは1984年と1986年以降は4年ごとに、NHS IIおよびHPFSではそれぞれ1989年および1986年から4年ごとに調査を受けていた。 主要評価項目は、国民死亡記録(national death index)、州生命記録(state vital records)、または家族および郵送による報告によって2016年12月31日までに確認された死亡とした。 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、乳製品の摂取量と死亡リスクとの関連を解析した。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、食事パターン(代替健康食指数2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、閉経状態(女性のみ)、閉経後のホルモン剤使用(女性のみ)に関して補正を行い評価した。 解析は、各コホートで個別に実施した後、固定効果モデルを用いて統合・評価した。乳製品摂取量と死亡リスクに逆相関は認められず 追跡期間最大32年間で、心血管死1万2,143例、がん死1万5,120例を含む計5万1,438例の死亡が確認された。 多変量解析で統合した全死亡のハザード比(HR)は、乳製品摂取量が最低の第1群(平均0.8サービング/日)に対して、第2群(平均1.5サービング/日)で0.98(95%信頼区間[CI]:0.96~1.01)、第3群(平均2.0サービング/日)で1.00(0.97~1.03)、第4群(平均2.8サービング/日)で1.02(0.99~1.05)、最高の第5群(平均4.2サービング/日)で1.07(1.04~1.10)であった(傾向のp<0.001)。 心血管疾患死のHRは第1群に対して、第2群0.97(95%CI:0.91~1.03)、第3群0.97(0.92~1.03)、第4群0.96(0.90~1.02)、第5群は1.02(0.95~1.08)であった(傾向のp=0.49)。 がん死のHRは第1群に対して、第2群0.95(95%CI:0.90~1.00)、第3群1.00(0.94~1.05)、第4群1.04(0.98~1.09)、第5群は1.05(0.99~1.11)であった(傾向のp=0.003)。 乳製品の種類別では、全乳の摂取量増加は、全死亡(0.5サービング/日増えるごとのHR:1.11、95%CI:1.09~1.14、傾向のp<0.001)、心血管死(同1.09、95%CI:1.03~1.15、傾向のp=0.001)およびがん死(同1.11、95%CI:1.06~1.17、傾向のp<0.001)のリスク上昇と有意に関連していた。 代替食品の解析で、乳製品の代わりにナッツ、豆類、全粒穀物を摂取した場合は死亡リスク低下と関連していたが、赤身および加工肉の摂取は死亡リスク上昇と関連していた。

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