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血清尿酸値と認知症リスク~メタ解析

 中国医科大学のZhike Zhou氏らは、血清尿酸値(UA)と認知症およびそのサブタイプのリスクとの関連を調査するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年2月25日号の報告。 Embase、PubMed、Web of Scienceより、2020年7月までに公表された文献を検索した。標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出するため、変量効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究は23件(5,575例)であった。・全体として、認知症患者のUAレベルは、非認知症患者と比較し、低かった(SMD:-0.32、95%CI:-0.64~-0.01、p=0.04)。・認知症タイプのサブグループ解析では、UAとアルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連が認められたが、血管性認知症(VaD)との関連は認められなかった。 ●AD(SMD:-0.58、95%CI:-1.02~-0.15、p=0.009) ●PDD(SMD:-0.33、95%CI:-0.52~-0.14、p=0.001)・UAレベルの層別解析では、UA四分位1~2において認知症および神経変性サブタイプと負の相関が認められ(p<0.05)、UA四分位4と認知症に正の相関が認められた(p=0.028)。・交絡因子のメタ回帰分析では、認知症のリスク推定においてUAの影響が認められた因子は、年齢、BMI、糖尿病、高血圧、喫煙ではなく教育であった(p=0.003)。 著者らは「低UAレベル(292μmol/Lまたは4.91mg/dL)は、ADおよびPDDの潜在的なリスク因子である。認知症におけるUAレベルのメカニズムは、さらなる調査により明らかにする必要がある」としている。

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運動30分前のカフェインが脂肪を燃やす

 運動30分前のカフェイン摂取が最良の脂肪燃焼法かもしれない。これまでの研究で、カフェインが最大脂肪酸化率(MFO)と有酸素能力を増加させることが明らかになっているが、運動と組み合わせた効果は詳しくわかっていなかった。今回、スペイン・グラナダ大学のMauricio Ramirez-Maldonado氏らが、運動テスト中におけるMFOの日内変動に対するカフェイン摂取の影響を調査した結果、有酸素運動30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく運動中の脂肪酸化を増加させることを発見した。The Journal of the International Society of Sports Nutrition誌2021年1月7日号に掲載。 本研究は、プラセボ対照三重盲検クロスオーバー試験で、男性15例が参加した(平均年齢:32±7歳)。すべての被験者は次の条件に合致した(BMI:18.5~28、非喫煙者、運動によって悪化する持病がない、服薬していない、1日50mg未満のカフェイン消費、週3回以上の持久力トレーニングを最低2年間継続[自己報告]、カフェインアレルギーでない、前月に筋骨格系の損傷なし)。 7日間隔で4回の段階的な運動テストを実施、各テストの30分前に、無香料・無着色・無臭の粉末状無水カフェイン(グリーンコーヒー豆抽出物)またはプラセボ(純度100%の微結晶セルロース)のいずれか3mg/kgを250mLの水に溶解し、見分けがつかない状態で摂取した。調査は2019年6~11月の間で行われ、午前8~11時と午後5~8時に、サイクルエルゴメーターを用いた段階的なテストを一定の温度・湿度下で実施した。MFOと最大酸素摂取量(VO2max)を間接熱量測定法で測定し、MFOを誘発した運動強度(Fat max)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・被験者のクロノタイプは均一に分布していた(適度に朝型、適度に夜型、どちらでもない各5人)。・段階的運動テスト30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく、MFO、Fat max、VO2maxを増加させた。また、すべて午前よりも午後のほうが有意に高かった(すべてp<0.05)。・プラセボと比較して、カフェインは平均MFOを午前10.7%(0.28±0.10 vs.0.31±0.09g/min、p<0.001)、午後29.0%(0.31±0.09 vs.0.40±0.10g/min、p<0.001)増加させた。・また、カフェインは平均Fat maxを午前11.1%(36.9±14.4 vs.41.0±13.1、p=0.005)、午後13.1%(42.0±11.6 vs.47.5±10.8、p=0.008)増加させた。・さらに、カフェインは平均VO2maxを午前3.9%(43.7±7.8 vs.46.7±7.0mL/kg/min、p=0.012)、午後3.2%(45.4±8.0 vs.48.2±7.0mL/kg/min、p=0.001)増加させた。 研究者らは、「カフェイン摂取と午後の適度な運動の組み合わせは、継続的な有酸素運動により脂肪燃焼量を増やしたい人にとって最良のシナリオ。なお、高用量のカフェインが全身の脂肪酸化により大きな効果を誘発し、持久力のパフォーマンスをさらに改善するかどうかはまだ調査されていない」と結論している。

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認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。COVID-19重症化リスクとなる成人の病状リスト(アルファベット順)・がん・慢性腎臓病・慢性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(中等度~重度)、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺高血圧症など・認知症またはその他の神経学的疾患・糖尿病(1型または2型)・ダウン症・心臓病(心不全、冠状動脈疾患、心筋症、高血圧など)・HIV感染・免疫不全状態(免疫力の低下)・慢性肝疾患:アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、とくに肝硬変、肝線維化など・過体重と肥満:BMI>25(過体重)、BMI>30(肥満)、BMI>40(重度の肥満)・妊娠・鎌状赤血球症またはサラセミアなどの異常ヘモグロビン症・喫煙(現在または以前)・臓器または造血幹細胞の移植・脳卒中または脳血管障害・薬物依存症(アルコール、オピオイド、コカインの中毒など) CDCは、これらの病状がある人は、周りの人の協力を得ながら注意深く安全に管理することが重要だとし、「現在の処方・治療計画の継続」「(病状に対応できる)常温保存食品の用意」「病状悪化のトリガーを避ける」「ストレスへの対処」「異変があった場合の迅速な救急要請」などを呼び掛けている。

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若年者の肥満・高血圧、心不全発症リスクへの影響は?/BMJ

 若年者のほうが高齢者と比較して、心不全発症率および絶対リスクは低いが、リスクとの関連性が強く、修正可能な絶対リスクのリスクへの寄与が高いことが示された。シンガポール国立心臓センターのJasper Tromp氏らが、フラミンガム心臓研究などの参加者を対象としたプールコホート研究の結果、明らかにした。若年者のほうが高齢者と比べて心不全発症率が低いことは知られているが、年齢差を考慮したリスク因子との関連に関する研究はほとんど行われていなかった。先行研究では、電子健康記録を用いた研究で、心不全を含む12の心血管疾患発症と血圧上昇との相対リスク低下が認められたことや、心不全患者を対象とした研究で、若年患者(55歳以下)は肥満、男性、糖尿病既往者で多くみられることは報告されていた。今回の結果について研究グループは、「成人への生涯にわたる予防介入の重要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2021年3月23日号掲載の報告。一般集団を対象に心不全の年齢別リスク因子を評価 研究グループは、一般集団における心不全の年齢別リスク因子を評価するため、フラミンガム心臓研究、PREVEND(Prevention of Renal and Vascular End-stage Disease)研究、およびアテローム性動脈硬化症の多民族(MESA)研究を基にプール住民ベースコホート研究を行った。 被験者は心不全歴のない2万4,675例で、若年者(<55歳、1万1,599例)、中年者(55~64歳、5,587例)、前期高齢者(65~74歳、5,190例)、後期高齢者(75歳以上、2,299例)に層別化し、心不全の発症について評価した。被験者の平均年齢は56(SD 14)歳、男性47%であった。若年者のほうが発症の絶対リスクは低いが、リスク因子との関連が強い 追跡期間中央値12.7年において、心不全発症者は、若年者138/1万1,599例(1%)、中年者293/5,587例(5%)、前期高齢者538/5,190例(10%)、後期高齢者412/2,299例(18%)だった。駆出率が保持された心不全として分類されたのは、若年者では32%(44例)、後期高齢者では43%(179例)だった。 高血圧、糖尿病、現在喫煙、および心筋梗塞既往などのリスク因子は、高齢者と比較して、若年者のほうが相対リスクへの寄与が大きかった(すべての相互作用のp<0.05)。たとえば高血圧は、若年者の将来的心不全リスクを3倍(ハザード比[HR]:3.02、95%信頼区間[CI]:2.10~4.34、p<0.001)増大したのに対し、後期高齢者では1.4倍(1.43、1.13~1.81、p=0.003)の増大であった。 心不全発症の絶対リスクは、リスク因子の有無にかかわらず、高齢者より若年者のほうが低かった。 注目されたのは、既知のリスク因子が占める集団寄与リスクへの割合が、若年者のほうが高齢者より大きく(75% vs.53%)、モデルパフォーマンスは良好であったこと(C統計量0.79 vs.0.64)で、同様に、肥満(21% vs.13%)、高血圧(35% vs.23%)、糖尿病(14% vs.7%)、現在喫煙(32% vs.1%)の集団寄与リスクも、若年者のほうが高齢者と比較して大きかった。

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心血管リスク因子のないSTEMIは死亡リスクが高い/Lancet

 標準的な心血管リスク因子(SMuRFs:高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)のないST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は、少なくとも1つのSMuRFsを有する患者と比較して全死因死亡のリスクが有意に高く、とくに女性で顕著である。オーストラリア・Royal North Shore HospitalのGemma A. Figtree氏らが、スウェーデンの心疾患登録研究であるSWEDEHEART研究を用いた後ろ向き解析結果を報告した。心血管疾患の予防戦略はSMuRFsを標的とすることが重要であるが、SMuRFsのない心筋梗塞はまれではなく、SMuRFsを有していない患者の転帰についてはよく知られていなかった。著者は、「早期死亡リスクの上昇は、ガイドラインで示された治療を追加することで弱まる。今回得られた所見は、ベースラインでのリスク因子や性別にかかわらず、心筋梗塞発症直後のエビデンスに基づいた薬物療法の必要性を強調するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年3月9日号掲載の報告。STEMI患者約6万2千例を対象にSMuRFsの有無別で死亡率を解析 研究グループはSWEDEHEART研究のデータを用い、SMuRFsの有無にかかわらずSTEMI成人患者の臨床特性と転帰について、全体および性別ごとに解析した。冠動脈疾患の既往歴がある患者は除外された。 主要評価項目は、STEMI発症後30日以内の全死因死亡、副次評価項目は30日以内の心血管死、心不全および心筋梗塞であった。各評価項目は、退院まで、ならびに12年間の追跡終了時まで調査。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて院内死亡率を比較し、Cox比例ハザードモデルおよびカプランマイヤー法により長期転帰を比較した。 解析対象は、2005年1月1日~2018年5月25日の期間に登録されたSTEMI患者6万2,048例であった。このうち、診断を要するSMuRFsを認めなかったのは9,228例(14.9%)で、年齢中央値はSMuRFsあり群68歳(四分位範囲:59~78)、SMuRFsなし群69歳(60~78)であった。SMuRFsなしで30日死亡リスクは約1.5倍、とくに女性は一貫して死亡率が高い SMuRFsなし群はあり群と比較して、経皮的冠動脈インターベンション実施率は類似していたが(71.8% vs.71.3%)、退院時におけるスタチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬の投与率は有意に低かった。 発症後30日以内の全死因死亡リスクは、SMuRFsなし群で有意に高かった(ハザード比:1.47、95%信頼区間[CI]:1.37~1.57、p<0.0001)。30日以内の全死因死亡率が最も高かったのはSMuRFsがない女性(17.6%、381/2,164例)で、次いでSMuRFsあり女性(11.1%、2,032/1万8,220例)、SMuRFsなし男性(9.3%、660/7,064例)、SMuRFsあり男性(6.1%、2,117/3万4,600例)の順であった。 SMuRFsなし群における30日以内の全死因死亡リスクの上昇は、年齢、性別、左室駆出率、クレアチニン、血圧で補正後も有意であったが、退院時の薬物療法(ACEI/ARB、β遮断薬、スタチン)を組み込んだ場合は減弱した。 さらに、SMuRFsなし群はあり群と比較して、院内の全死因死亡率が有意に高かった(9.6% vs.6.5%、p<0.0001)。30日時点の心筋梗塞および心不全は、SMuRFsなし群で低かった。全死因死亡率は、男性では8年強、女性では追跡終了時である12年後まで、SMuRFsなし群が一貫して高いままであった。

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ドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース

 制吐薬ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、従来、妊婦禁忌とされてきた。しかし、つわりと知らずに服用し妊娠が判明した後に気付いて妊娠継続に悩む女性が少なくない。一方で、本剤は米国で発売されていないことから疫学研究も少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。今回、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と虎の門病院は、両施設が保有する1万3,599例もの妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを用いて、ドンペリドンの催奇形性を解析。その結果、妊娠初期に本剤を服用した例と、リスクがないことが明らかな薬のみを服用した例では、奇形発生率に有意な差は見られなかった。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月25日号に掲載。ドンペリドン曝露は乳児の主要な奇形のリスク増加と関連なし 本研究は、1988年4月~2017年12月までに、虎の門病院「妊娠と薬相談外来」または国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」に、妊娠中の薬物の安全性について相談した女性が含まれ、妊娠初期(4~13週)にドンペリドンを服用した妊婦519例(ドンペリドン群)と、対照薬を服用した妊婦1,673例(対照群)から生まれた乳児の奇形発生率を比較した。なお、ドンペリドンとメトクロプラミドの両方を使用した妊婦は研究から除外された。 対照薬としては、アセトアミノフェン、催奇形性リスクが増加しない抗ヒスタミン薬、H2ブロッカー、消化酵素製剤、ペニシリンやセファロスポリンなどの抗菌薬、および外用薬(点眼、軟膏・クリームなど)が含まれた。また、妊婦の制吐薬として一般的に使用されるメトクロプラミドを服用した妊婦241例(メトクロプラミド群)を参照群として定義した。 ドンペリドンによる乳児の奇形発生率について検討した主な結果は以下のとおり。・カウンセリング時の年齢中央値はすべての群で30歳であり、年齢分布も同等だった。飲酒または喫煙習慣のいずれにおいても、3群に大きな違いはなかった。・出産の結果はすべての登録者について集計され、生産の割合は、ドンペリドン群で94.0%(488例)、対照群で93.8%(1,570例)、メトクロプラミド群で94.2%(227例)だった。3群間で死産、流産または中絶の発生率に顕著な違いはなかった。・生産の単胎児における奇形発生率は、ドンペリドン群で2.9%(14/485例、95%信頼区間[CI]:1.6~4.8)、対照群で1.7%(27/1,554例、95%CI:1.1~2.5)、メトクロプラミド群では3.6%(8/224例、95%CI:1.6~6.9)で、有意な差は見られなかった。・飲酒量、喫煙、母体年齢、妊娠初期、施設、対照薬以外の併用薬使用を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、対照群とドンペリドン群の調整後オッズ比(OR)は1.86(95%CI:0.73~4.70、p=0.191)であり、奇形発生率に有意差は見られなかった。また、対照群とメトクロプラミド群の調整後ORは2.20(95%CI:0.69~6.98、p=0.183)と同様の結果だった。 研究者らは、「この観察コホート研究は、妊娠初期のドンペリドン曝露が乳児の主要な奇形のリスク増加と関連していないことを示した。これらの結果は、妊娠中にドンペリドンを服用した妊婦の不安を和らげるのに役立つ可能性がある」と結論している。

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飲酒と乳がんリスク~日本人16万人の解析

 欧米の研究から、飲酒が乳がんリスクを上昇させることが報告されている。しかし、日本人女性は欧米人女性より飲酒習慣が少なく、またアセトアルデヒドの代謝酵素の働きが弱い人が多いなど、飲酒関連の背景が欧米とは異なる。これまで日本人を対象とした大規模な研究は実施されていなかったが、今回、愛知県がんセンターや国立がん研究センターなどが共同で日本の8つの大規模コホート研究から約16 万人以上を統合したプール解析を行い、乳がんリスクと飲酒との関連を検討した。その結果、閉経前女性では飲酒により乳がん罹患リスクが上昇したことを愛知県がんセンターの岩瀬 まどか氏らが報告した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月26日号に掲載。 本研究には、国内の大規模コホート研究である多目的コホート研究(JPHC-I, JPHC-II)、JACC研究、大崎国保コホート研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、放影研寿命研究の8コホート研究が参加。それぞれのコホート研究で使用している飲酒習慣のアンケート調査結果から、飲酒習慣を頻度と量に分けて検討し、頻度は「現在非飲酒」「機会飲酒(週1日以下)」「ときどき(週1日以上4日以下)」「ほとんど毎日(週5日以上)」の4つ、量は1日飲酒量で「0g」「0~11.5g」「11.5~23g」「23g以上」の 4つのカテゴリーに分類した。年齢、地域、閉経状況、喫煙、BMI、初経年齢、出産数、女性ホルモン薬の使用、余暇の運動を調整後、非飲酒に対するその他の飲酒カテゴリーの乳がん罹患リスクを算出し、プール解析を行った。また乳がんの罹患は、閉経状態に基づき閉経前乳がんと閉経後乳がんに分け、それぞれに対する飲酒の影響を検討した。  主な結果は以下のとおり。・計15万8,164人の女性を平均14年追跡し、2,208例が新規に乳がんと診断された。・調査時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒頻度別では非飲酒者に対する最も頻度の高い飲酒者のハザード比(HR)は1.37(1.04~1.81)、飲酒量別では1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.74(1.25~2.43)であった。・診断時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒量別で1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.89(1.04~3.43)であった。・一方、調査時もしくは診断時での閉経状態に基づく閉経後乳がんでは、飲酒頻度、飲酒量ともに乳がんリスクとの有意な関連は認められなかった。 これらの結果から、日本人においても欧米での報告と同様に、閉経前乳がんでは飲酒が乳がんの罹患リスクを上昇させることが明らかとなった。一方、閉経後乳がんでは日本人では有意な関連が認められず、海外の結果と異なり閉経状態によって乖離がみられた。

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日本における産後のうつ症状と妊娠中の体重増加との関係

 産後のうつ症状(PPDS)と妊娠中の体重増加との関係については、依然として議論の余地が残っている。福島県立医科大学の山口 明子氏らは、産後1ヵ月のPPDSと妊娠中の体重増加との関係について、妊娠前のBMIに基づいて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年2月2日号の報告。 2011~14年に日本人女性8万927人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠前のBMIに基づき、対象者をG1(18.5kg/m2未満)、G2(18.5~20.0kg/m2)、G3(20.0~23.0kg/m2)、G4(23.0~25.0kg/m2)、G5(25kg/m2以上)の5グループに分類した。PPDSに関連する不十分または過剰な妊娠中の体重増加の潜在的なリスク因子を特定するため、母体年齢、教育、年間世帯収入、喫煙、出産歴、分娩方法、母乳の中止、精神的ストレス、妊娠中のエネルギー摂取量で調整した後、各グループに対して多重ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・G3の女性において、不十分な妊娠中の体重増加がPPDSのリスク因子であることが示唆された(調整オッズ比:1.24、95%CI:1.14~1.36)。・この結果は、内在的要因により変化は認められなかった。 著者らは「妊娠前のBMIが20.0~23.0kg/m2の女性では、妊娠中の不十分な体重増加がPPDSのリスク因子であるため、PPDSを早期に発見するためにも、妊娠中の体重をモニタリングすることが推奨される」としている。

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高齢者サルコペニアは死亡・要介護リスク増加、予備群は?/東京都健康長寿医療センター

 健康のバロメーターとして「筋肉」が注目される中で、高齢者におけるサルコペニアの予防・改善は、健康長寿を実現するためにも重要である。東京都健康長寿医療センター研究所・北村 明彦氏らの研究グループは、日本人の一般高齢者1,851人におけるサルコペニアの有病率、関連因子、死亡・要介護化リスクについて約6年間の追跡調査を行い、その結果をプレスリリースで発表した。75~79歳では男女ともに約2割、80歳以上では男性の約3割と女性の約半数がサルコペニアに該当し、サルコペニアになると死亡、要介護化のリスクがいずれも約2倍高まることが示された。Journal of Cachexia, Sarcopenia Muscle誌2021年2月号に掲載。 研究グループは、群馬県と埼玉県において、健康診査を受けた65歳以上の日本人計1,851人(女性50.5%、平均年齢72.0±5.9歳)を対象に、平均5.8年間(最大9.5年)の追跡研究を行った。サルコペニア診断基準(AWGS 2019)に基づき定義されたサルコペニアは、筋肉量の一定の減少(四肢骨格筋指数:男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満)に加えて、筋力・身体機能の一定の低下(握力低値:男性28kg未満、女性18kg未満、または歩行速度の低値:男女ともに毎秒1m未満)が認められた場合に「有り」と判定された。 主な結果は以下のとおり。・サルコペニアの有病率は、男性で11.5%(105/917例)、女性で16.7%(156/934例)だった。有病率は年齢とともに上昇し、75~79歳では男女ともに約22%、80歳以上では男性の32%、女性の48%がサルコペニアに該当していた。・サルコペニアの人はそうでない人に比べて、男性では「身体活動が少ない」「血液中のアルブミン濃度が低い」「喫煙者が多い」「最近1年以内の入院が多い」(いずれもp<0.05)、女性では「うつ症状が多い」(p<0.001)、「認知機能の低下が多い」(p=0.004)ことがわかった。・サルコペニアの人は、筋肉量、筋力ともに低下していない人に比べて、男女共に総死亡リスクが高かった(男性:ハザード比[HR]=2.0、95%CI:1.2~3.5/女性:HR=2.3、95%CI:1.1~4.9)。また、要介護発生リスクも高くなる可能性が明らかになった(男性:HR=1.6、95%CI:1.0~2.7/女性:HR=1.7、95%CI:1.1~2.7)。・サルコペニア予備群(筋肉量は少なくても筋力・身体機能が一定維持されている人、および筋力・身体機能が弱くても筋肉量が一定維持されている人)には、男性で29.7%(272/917例)、女性で31.6%(295/934例)が該当したが、総死亡リスク、要介護発生リスクは共に高くならなかった。 研究者らは、「サルコペニアの高齢者は、死亡および要介護発生のリスクが高く、いわゆる自立喪失の危険性が高いことが明らかとなった。したがって、サルコペニアを早期発見し、その進行を食い止めることは健康寿命の延伸に貢献すると考えられる」と結論している。

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妊娠28週時の母親の心血管状態が子供の心血管リスクと関連/JAMA

 妊娠28週時の母親の良好な心血管系の健康状態(CVH)は、その子供の10~14歳時のCVHが良好であることと関連することが、米国・ノースウェスタン大学のAmanda M. Perak氏らが実施した「HAPO Follow-Up試験」で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2021年2月16日号で報告された。妊娠は、母親のCVHを最適化し、子供の生涯にわたるCVHに影響を及ぼす重要な機会とされる。また、母体の劣悪な健康状態への胎内曝露は、たとえば心臓代謝調節遺伝子のエピジェネティックな修飾を介して、子供に継続的に心血管疾患(CVD)のリスクが高い状態をもたらす可能性があるという。9地域2,302組の母子のコホート研究 研究グループは、妊娠中の母親のCVHと子供のCVHの関連を評価する目的で、国際的なコホート研究を行った(米国ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健発達研究所[NICHD]などの助成による)。 Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome(HAPO)試験(2000年7月~2006年4月)と、HAPO Follow-Up試験(2013年2月~2016年12月)のデータを使用した。解析には、補助的なCVH研究として、HAPO Follow-Up試験の参加者の48%に相当する2,302組の母子が含まれた。 参加者は、米国(ベルフラワー、シカゴ、クリーブランド)、バルバドス(ブリッジタウン)、英国(マンチェスター、ベルファスト)、中国(香港)、タイ(バンコク)、カナダ(トロント)の9地域で登録された。 妊娠28週時の母親のCVHが、5つの評価基準(BMI、血圧、総コレステロール値、血糖値、喫煙)に基づいて評価された。個々の評価基準は、妊娠ガイドラインを用いて、「良好」「中間的」「不良」の3つに分類された。総CVHスコアは、「すべて良好」「中間的が1つ以上で不良がない」「不良が1つ」「不良が2つ以上」の4つに分類された。 主要アウトカムは、子供の10~14歳時のCVHとし、4つの評価基準(BMI、血圧、総コレステロール値、血糖値)で評価された。総CVHスコアは、母親と同様に分類された。母親のCVH分類の悪化とともに、子供の「すべて良好」の割合が低下 2,302組の母子の平均年齢は、母親が29.6(SD 2.7)歳、子供は11.3(1.1)歳であった。妊娠期間中の母親の平均CVHスコアは10点満点の8.6(1.4)点で、32.8%が「すべて良好」であったのに対し、6.0%は「不良が2つ以上」であった。子供の平均CVHスコアは8点満点の6.8(1.3)点で、37.3%が「すべて良好」、4.5%が「不良が2つ以上」だった。 母親のCVH分類が悪化するに従って、子供のCVH分類が「すべて良好」の割合が低くなった。すなわち、母親が「すべて良好」の子供が「すべて良好」の割合は42.2%であったが、母親が「不良が2つ以上」の子供が「すべて良好」の割合は30.7%に低下した。また、母親が「すべて良好」の子供が「不良が1つ」の割合は18.4%で、母親が「不良が2つ以上」の場合に子供が「不良が1つ」の割合は30.7%に増加し、母親が「すべて良好」の子供が「不良が2つ以上」の割合は2.6%で、母親が「不良が2つ以上」になると子供が「不良が2つ以上」の割合は10.2%に増加した。 補正済みのモデルでは、母親のCVH分類が「すべて良好」と比較して悪化するほど、子供のCVH分類が「不良が1つ」「不良が2つ以上」となる相対リスクが高かった。すなわち、母親のCVH分類が「すべて良好」の場合に比べ、母親が「不良が1つ」の子供が「不良が1つ」の相対リスクは1.66、母親が「不良が2つ以上」の子供が「不良が1つ」の相対リスクは2.02であり、母親が「不良が1つ」の子供が「不良が2つ以上」の相対リスクは3.32、母親が「不良が2つ以上」の子供が「不良が2つ以上」の相対リスクは7.82だった(これらの相対リスクはいずれも包括検定でp<0.001)。 一方、明確な出生因子(妊娠高血圧腎症など)で追加補正を行っても、これらの有意な関連は十分には説明できなかった。たとえば、拡大された出生因子で補正後の、母親の「不良が2つ以上」と子供の「不良が2つ以上」の関連の相対リスクは6.23(95%信頼区間[CI]:3.03~12.82)だった。 著者は、「われわれの知る限り、これは母親の妊娠中のCVHとその後の子供のCVHの関連を評価した初めての研究である」としている。

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がん臨床医は地方でこそ育つ! 長年の思いの転身と1年の成果【Oncologyインタビュー】第29回

2020年4月、肺がん診療を専門とする野上 尚之氏は長く務めた四国がんセンターを辞し、愛媛大学呼吸器内科の教授に着任した。新天地での挑戦を決意した背景には、医師になった時から抱えていた地域医療と後進育成への思いがあったという。エリア画像を拡大する―2020年、四国がんセンターから愛媛大学に移られました。転身の理由は?「地域医療をやらなければ」という長年の思いからです。私の生まれは岡山県の県北で、地方の医療事情の大変さを痛感して育ち、そこに関わりたいと思って医者になりました。しかし、卒業後は都市部の勤務が多く、地域医療への思いはいったん脇に置いてキャリアを積んできました。それが、2003年に愛媛県の四国がんセンターに赴任してから、地域医療の問題をなおさら痛感するようになったのです。そして、今治市医師会と愛媛大学の山口 修教授からのご支援があり、地域胸部疾患治療学講座を開講する機会を頂きました。―地域医療の問題とは、具体的にどんなものなのでしょうか?何より私の専門である呼吸器内科医が、全国的にも、愛媛県下でもあまりにも少ないのです。さらに県庁所在地である松山市に大病院と呼吸器内科専門医が集中し、東予と南予には数名しかいない状況でした。愛媛県は喫煙率が高く、肺気腫や肺がんなどの呼吸器疾患の患者さんが多いのですが、松山市外の患者さんは車で何時間もかけて専門医のいる病院へ通ってくるわけです。若い方は仕事を休み、高齢の方は付き添いも必要となり、あまりに負担が大きいと感じました。この地域に何とか呼吸器内科医を増やし、遠くから通院しなくても地域で呼吸器医療を完結させたい。50歳を超え、退職までの残された10年余りを長年の思いである地域医療と後進育成に使おうと思ったのです。良性呼吸器疾患や専門の胸部悪性腫瘍について、診断から治療・緩和ケアまでをサテライト施設である今治の地で完結するシステムをつくり、それを愛媛県下のほかの地域にも広げていく、という理想を持っています。―なぜ、愛媛県には呼吸器内科医が少ないのでしょうか?地方大学の共通の課題として、そもそも他府県出身の学生が多く、卒業後に地元に帰ってしまうという問題があります。また、地元の卒業生も県内外の都市部の医療機関に初期研修で出て、そのまま帰ってこないこともあります。これに加え、これまで呼吸器という領域が若い先生たちに人気がなかった、という点もあるでしょう。肺がんや重症肺炎、肺線維症など呼吸困難に苦しむ患者さんを診る機会が多かったり、かつての肺がんが非常に予後の悪いがんだったり…。そうした「苦しそうな患者さんを見るに忍びない」「自分がしてあげられることが少ない」「つらい死にたびたび立ち会わねばならない」といったイメージや一種の無力感から、専門として選んでもらいにくい、という面があったと思います。呼吸器内科・外科・腫瘍内科・放射線科による合同カンファレンス―呼吸器内科医を増やすため、具体的にどんなことをされているのでしょうか?私の役割は「“みこし”になること」だと思っています。あの大学にはあの先生がいてあんなことをやっているという、いわば看板・旗の役割です。「愛媛大学呼吸器内科ではこんなことをやっている」ということが目に見えないと興味を持ってもらえません。これまでも、愛媛大学呼吸器内科は、呼吸器内科医、いや内科医であれば皆が知っているだろう間質性肺炎のマーカーの開発など、立派な業績が多々あるのですが、奥ゆかしい性格ゆえ(笑)か、学内外であまりアピールしていませんでした。私は大した医者ではありませんが、機会あって四国がんセンターに長く務め、国際共同治験に関わった経験や全国の大学や施設の先生と共同研究をした経験があるので、そうしたことを発信し、呼吸器診療の可能性を学生や若い医師に伝え、この領域に明るい未来があることを知ってもらいたいのです。大学の授業では、肺がん診療を劇的に変えた免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の治験の裏話を紹介するなど、呼吸器診療の歴史や現在に興味を持ってもらえるよう工夫しています。もはや呼吸器内科の治療は無力ではないし、皆を待っている愛媛の患者さんがたくさんいる、ということをしっかり伝えようと思っています。―学生や若手医師の反応はいかがですか?今年(2021年)4月には、5人が呼吸器内科を選択し、入局してくれます。例年1~2人でゼロの時もあった、と聞いているので画期的ではないですか? きっとこれまでの呼吸器内科の先生方の熱意や努力がやっと若い先生たちに伝わりだしたのだ、と思います。実習時、肺がん患者さんに新しい薬剤を投与して劇的に症状が改善する経験をし、呼吸器診療に興味を持ってくれた学生もいます。「肺がん診療は嫌いでしたが、こんなに効いてびっくりです」と言われました。呼吸器疾患の半分は肺がんですから、勉強のしがいもあるでしょう。肺がんは治療の進歩が非常に速く、ここ20年ほどで診療方法も治療も、寿命さえも様変わりしました。そうした部分を的確に伝えれば興味を持ってくれる人がいる。まだ私が就任して1年弱ですが、やるべきことの方向は間違っていない、という手応えがあります。5人入局を10年続ければ、50人の呼吸器内科医が生まれます。夢みたいですが、それだけいれば、県内のあちこちに専門医を派遣し、どこでも呼吸器内科診療を完結できるようになるでしょう。それが今の私の大きな夢です。ポリクリ学生向けの座学講座の様子―若手医師が都市部を目指す理由として「地方では専門的な医療が学べない」という点があるのではないでしょうか。実は、呼吸器診療においては、「都会でないと学べない」といった新しい治療法や技術というものはなくなってきています。この点は他科の先生ともよく話をするのですが、呼吸器内科にかかわらず、すべての内科系の領域でそうした傾向です。がん診療に限っても、治験は日本中のどの施設でも参加できますし、本学には内視鏡技術に優れた先生もいます。肺がんは診療ガイドラインがしっかりできてきたので、遺伝子変異を特定してそれに合った薬を処方する、という基本診療の流れは、地方でもまったく問題なく行えます。よほど特殊な専門を目指すのでない限り、地方にいるハンデはないですし、むしろ都市部のがんセンターなどよりも、臨床に即した多様な症例を診られると思います。―若手医師にどんなキャリアパスを勧めているのでしょうか。まずは呼吸器疾患全般を診るスキルを身に付けるため、県内の呼吸器専門医のいる施設で研修をします。その後、希望に応じて専門性の高い施設にも行ってもらっています。気を付けているのは研修医や若い先生を孤立させないことです。必ず1施設に2人以上、指導環境の整った施設に派遣することがポイントだと思います。指導医も満足にいない施設に1人で派遣され、疲弊して辞めてしまう若手医師を今まで多く見てきました。「今困っているんだから、早く人を派遣してくれ!」と言われることもあるのですが(笑)、若手は派遣する施設と人数を集約し、チームで育てる。それも愛媛県全体で大切に育てる意識でいます。「人は城で、人は財産」という強い意識が、指導側の人間が少ない今だからこそ、大切だと思います。研修修了後は、個々人の希望に合わせた施設で専門性を磨いてほしいと思います。免疫学のこの先生、国立がん研究センターのこの先生に学びたい、といった希望があれば、私がつなぐこともできます。かつて大学が医局員を外部施設に出すことを嫌がる風潮もありましたが、もはや今はそんな時代ではないですよ。どんどん外に出てスキルアップし、いずれ学びを大学に還元してもらえればいいと思っています。第二内科に入局した先生たちと(前列左端は山口 修教授)―若手医師を引き付け、育てるポイントは何でしょうか?それがあるなら私が知りたいです(笑)。実際、島根大学の礒部 威教授に若手の勧誘と育成について聞きに行ったことがありますが、「こつなんてないよ」と笑われてしまいました。でも、礒部先生のお人柄と共に、同大には津端 由佳里先生という素晴らしい女性講師の方がいらして女性の入局者も多い。そうした若手の憧れとなるロールモデルの存在・育成がとても大切なのだろうと感じました。若手には目の前の診療技術を身に付けると同時に「3~5年先の未来も一緒に見よう」と言っています。具体的には国際共同治験に参加し、最新の治療や研究に関わる機会をつくっています。新型コロナの影響で勉強会や学会もオンライン化が進み、地方からの発信が容易になった面もあると思います。愛媛大では以前からオンラインで授業やカンファレンスを行っていますし、画像診断なども地域の施設とオンライン相談を行っています。―あらためて、呼吸器内科という専門の魅力とは?今では1年目が1人当直なんてあり得ないでしょうが、私の時代では普通でした。地方の病院で1人当直をしていた時、喘息の患者さんが救急車で来院し、チアノーゼを起こしていて本当に危ない状態でした。今でも普通に行われているステロイド点滴静注をしたところ、瞬く間に症状が改善したのです。「医師として人を助けることができた。1年目のこんな自分でも人の役に立てる」と実感した体験でした。喘息は吸入治療薬が進歩して重症な患者さんは減ってきているので、今であれば肺がん患者さんかもしれません。新しい治療が続々出て、以前なら助けられなかった患者さんを助けられるようになっています。若手もそうした劇的に変わる治療の最前線に立てる、未来の医療を変える一助になると実感できる。それがこの専門の魅力ではないでしょうか。

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化膿性汗腺炎〔HS:Hidradenitis suppurativa〕

1 疾患概要■ 定義化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa:HS)は臀部、腋窩、外陰部、乳房下部などに有痛性の皮下結節、穿掘性の皮下瘻孔、瘢痕を形成する慢性の炎症を繰り返す慢性炎症性再発性の毛包の消耗性皮膚疾患で難治性疾患である。アポクリン腺が豊富に存在する部位に好発する。Acne inversa (反転型ざ瘡)とも呼ばれている。集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とともに毛包閉塞性疾患の1型と考えられている。従来からの臀部慢性膿皮症は化膿性汗腺炎に含まれる。■ 疫学発症頻度は報告者によってさまざまであるが、欧米では0.1~4%で平均約1%程度と考えられている。わが国では大規模調査が行われていないので、明らかではないが、日本皮膚科学会研修施設を対象とした調査で100例1)、300例2)の報告がある。性差については欧米からの報告では男女比が1:3で女性に多く3)、わが国では男女比が3:1で男性に多い1,2)。好発年齢は20~30歳代に発症し、平均年齢は海外で36.8歳、わが国では40.1歳である1)。発症から正しい診断に至るまでの罹病期間は約7年である1,2)。好発部位は臀部、外陰部、腋窩に多い。男性では肛囲、臀部に多く、女性では腋窩、外陰部に多い1,2)。■ 病因明らかな病因は不明であるが、遺伝、毛包の閉塞、嚢腫形成などの病変に炎症が加わって起こる再発性の慢性の自己免疫性炎症性疾患である。遺伝的因子について、海外では家族性の場合が多く、約30~40%に家族歴があるが3,4)、わが国では2~3%と海外に比べて、非常に低い1,2,4)。家族性HSの場合、γ-セクレターゼの欠損が関連していると考えられている3,4)。TNFα、IL-1β、IFN-γ、IL-12、IL-23、IL-36などのTh1細胞とIL-17を産生するTh17細胞が化膿性汗腺炎の病変部で発現し、これらのサイトカインが重要な役割を演じていることが明らかになってきている3,4)。二次的に細菌感染を合併することもある。悪化因子として喫煙、肥満、耐糖能異常、内分泌因子、感染、機械的刺激などが関連している1,2,3,4)。合併する疾患として、毛包閉塞性疾患である集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎、毛巣洞がある1,4)。併存疾患として糖尿病、壊疽性膿皮症、自己炎症症候群、クローン病、外痔瘻、有棘細胞がんがある4)。■ 症状多くは単発性の疼痛を伴う深在性の皮下結節で始まる。皮下結節は増大、多発して、血性の排膿がみられる。皮疹は黒色面皰がかなり高率にみられる。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。隣接する瘻孔は皮下で交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成し,瘻孔の開口部より滲出液、血性膿、粥状物質などを排出し、悪臭を伴う(図1)。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。瘻孔が破裂し、真皮に角層などの異物が流出すると肉芽形成が起こり、肥厚性瘢痕、ケロイドを形成する(図1)。重症では蜂巣炎から敗血症を合併することもある。生活のQOLが著しく低下し、疼痛、うつ、性生活、Dermatology Life Quality Index(DLQI)も低下する。図1 化膿性汗腺炎の臨床所見画像を拡大する腋窩に皮下瘻孔、肥厚性瘢痕がみとめられる■ 分類重症度分類として、Hurleyのステージ分類が重症度の病期分類として最も用いられて3期に分類される。第I期 単発、あるいは多発する皮下膿瘍形成。皮下瘻孔、瘢痕はなし。第II期再発性の皮下膿瘍、皮下瘻孔、瘢痕。 単発あるいは多発性の孤立した複数の病巣。第III期広範なびまん性の交通した皮下瘻孔と皮下膿瘍。とされている。その他、修正Sartorius分類が用いられている。Sartoriusらは(1)罹患している解剖学的部位、(2)病巣の数とスコア、(3)2つの顕著な病巣間の最長距離、(4)すべての病巣は正常の皮膚から明確に離れているか否かという4項目について点数化する方法をHSの重症度として提唱している4)。治療の重症度スコアの評価指標として国際的HS重症度スコアリングシステム(IHS4)とHiSCR(Hidradenitis Suppurativa Clinical Response)がある。IHS4(International Hidradenitis Suppurativa Severity Score System)3)は炎症性結節、膿瘍、瘻孔・瘻管の数で評価される。中等度から重症の症例の鑑別、早期発見を可能にする。また、HiSCRと組み合わせて使いやすい。HiSCRは化膿性汗腺炎の薬物治療に対する“反応性”を数値化して指標で治療前後での12部位の炎症性結節、膿瘍、排膿性瘻孔の総数を比較する。HiSCRが達成されていれば、症状の進行が抑えられていると判定する。治療前の炎症性結節、膿瘍の合計が50%以上減少し、さらに膿瘍、排膿性瘻孔がそれぞれ増加していなければ、HiSCR達成となる。PGA(Physician Global Assessment)(医師総合評価)は薬物療法の臨床試験での効果判定に最も広く用いられている。■ 予後化膿性汗腺炎は慢性に経過し、治療に抵抗する疾患である。まれに有棘細胞がんを合併することもある。頻度は0.5~4.6%で男性に多く、臀部、会陰部の発症が多いとされている4)。化膿性汗腺炎の発症から平均25年を要するとされている4)。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)■ 確定診断化膿性汗腺炎の確定診断には以下の3項目を満たす必要がある。1)皮膚深層に生じる有痛性結節、膿瘍、瘻孔、および瘢痕などの典型的皮疹がみとめられる。2)複数の解剖学的部位に1個以上の皮疹がみとめられる。好発部位は腋窩、鼠径、会陰、臀部、乳房下部と乳房間の間擦部である。3)慢性に経過し、再発を繰り返す。再発は半年に2回以上が目安である。病理組織所見病初期は毛包漏斗部の角化異常より角栓形成がみられる。その後、好中球を主体として毛包周囲の炎症性細胞浸潤が起きる。毛包漏斗部の皮下瘻孔は次第に深部に進展し、皮膚面と平行に走り、隣接する皮下瘻孔と交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成する(図2)。炎症細胞浸潤が広範囲に及び、瘻孔壁が破裂すると、角質、細菌などの内容物が真皮に漏出して、異物肉芽腫が形成される。ときに遷延性の皮下瘻孔より有棘細胞がんが生じることがあるので、注意を要する。図2 化膿性汗腺炎の病理組織学的所見画像を拡大する一部、上皮をともなう皮下瘻孔がみとめられる(文献5より引用)。■ 鑑別診断表皮嚢腫:通常、単発で皮下瘻孔を形成しない。せつ:毛包性の膿疱がみられ、周囲の発赤、腫脹をともなう。よう:毛包性の多発性の膿疱がみられ、巨大な発赤をともなう結節を呈する。蜂巣炎、皮下膿瘍:発赤、腫脹、熱感、圧痛、皮下硬結をともなう。毛巣洞: 臀裂部正中に好発し、皮下瘻孔がみられる。皮下血腫:斑状出血をみとめ、穿刺にて凝固塊の排出をみとめる。クローン病による皮膚症状:肛門周囲に皮膚潰瘍をみとめ、皮下瘻孔を形成し、肛門との交通があることがある。■ 問診で聞くべきこと家族歴、喫煙、肥満、糖尿病の有無。■ 必要な検査とその所見採血(赤血球数、白血球数、白血球の分画、CRP、血沈、ASOなど)、尿検査を行う。蜂巣炎の合併の有無に必要である。 皮膚生検  有棘細胞がんの有無の確認に重要である。細菌検査  好気、嫌気培養も行う。蜂巣炎を合併している場合、細菌の感受性を検査して、抗菌剤の投与を行う。超音波エコー病巣の罹患範囲を把握し、手術範囲の確定に有用である。3 治療病初期には外用、内服の薬物療法が試みられる。局所的に再発を繰り返す場合は外科的治療の適応となる。病変部が広範囲に及ぶ場合には薬物療法の単独、あるいは外科的療法との併用が適している。薬物療法としては抗菌剤、レチノイド、生物学的製剤があるが、わが国において生物学的製剤で化膿性汗腺炎に保険適用があるのはアダリムマブだけである4)。■ 具体的な治療法抗菌剤の内服、外用、あるいは外科的治療と併用される。抗菌剤の外用は軽症の場合に有効であることがある。クリンダマイシン、フシジンレオ酸が用いられている4)。抗菌剤の内服は細菌培養で好気性菌と嫌気性菌が検出される場合が多いのでセフェム系、ペネム系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗薗剤が用いられる。ステロイド局所注射:一時的な急性期の炎症を抑えるのに有効である。デ・ルーフィング(天蓋除去):皮下瘻孔の屋根を取り除くことも有効である。局所の切開、排膿、生理食塩水による洗浄、タンポンガーゼによるドレナージも一時的に有効な処置である。 生物学的製剤としてアダリムマブが有効である。適応として既存の治療が無効なHurley stageII、IIIが対象となる。外科的治療:外科的治療は特に重症例に強く推奨される治療法である。病巣の範囲を正確に把握し,切除範囲を決めることが 重要である。CO2レーザーによる治癒も軽症~中等症に対して有効である。広範囲切除はHurleyの第III期が適応となる。切除範囲は病変部だけの限局した切除は十分でなく、周囲の皮膚を含めた広範囲な切除が必要である。有棘細胞がんが合併した場合は外科的切除が最優先される。■ その他の補助療法1)対症療法疼痛に対して、消炎鎮痛剤などの投与を行う。重複感染の管理を行う。生活指導:喫煙者は悪化因子である喫煙をやめる。肥満については減量、糖尿病があれば、原疾患の治療を行う。深在性の皮下瘻孔があり、入浴で悪化する場合、入浴を避け、シャワーにする。2)その他、治療の詳細については文献(4)を参照されたい。4 今後の展望今後、治験中の薬剤としてインフリキシマブ、IL-17阻害薬, IL-23阻害薬などがある。5 主たる診療科皮膚科、形成外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)皮膚の遺伝関連性希少 難治性疾患群の網羅的研究班1)Kurokawa I, et al. J Dermatol. 2015;42:747-749. 2)Hayama K, et al. J Dermatol. 2020;47:743-748.3)Zouboulis CC, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2015;29:619-644.4)葉山惟大、ほか. 日皮会誌.2021;131;1-28.5)Plewig G, et al. Plewig and Kligman’s Acne and TRosacea. Springer.2019;pp.473.公開履歴初回2021年2月26日

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cemiplimab単独療法、PD-L1≧50%進行NSCLCのOSとPFSを延長/Lancet

 未治療のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧50%の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、cemiplimab単剤療法はプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法と比較して、全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、1次治療の新たな選択肢となる可能性があることが、トルコ・バシケント大学のAhmet Sezer氏らが行った「EMPOWER-Lung 1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年2月13日号に掲載された。cemiplimabは、PD-1に直接的に作用する強力な完全ヒト・ヒンジ安定化IgG4モノクローナル抗体。根治的手術や根治的放射線治療が適応とならない転移を有する/局所進行皮膚有棘細胞がんの治療薬として米国などで承認されており、進行固形腫瘍では他のPD-1阻害薬と同程度の抗腫瘍活性と安全性プロファイルが確認されている。24ヵ国138施設の無作為化第III相試験 研究グループは、進行NSCLCの1次治療におけるcemiplimabの有用性を評価する目的で、国際的な非盲検無作為化対照比較第III相試験を実施した(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成による)。2017年6月~2020年2月の期間に、24ヵ国138施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的にStageIIIB/IIIC/IVのNSCLCと確定され、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。生涯非喫煙者は除外された。 被験者は、cemiplimab(350mg、3週ごと)またはプラチナ製剤ベース2剤併用化学療法薬の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法群の患者は、病勢進行後にcemiplimabへのクロスオーバーが許容された。 主要エンドポイントは、マスクされた独立審査委員会の評価によるOS期間およびPFS期間とし、intention-to-treat(ITT)集団および米国食品医薬品局(FDA)の要請で事前に規定されたPD-L1発現率≧50%の集団で評価された。有害事象の評価は、少なくとも1回の投与を受けたすべての患者で行われた。死亡リスクが43%低減、2年OS率は50% 710例(ITT集団)が登録され、cemiplimab群に356例(年齢中央値63歳、女性12%)、化学療法群には354例(64歳、17%)が割り付けられた。このうちPD-L1発現率≧50%の患者は563例で、cemiplimab群283例(63歳、12%)、化学療法群280例(64歳、18%)だった。化学療法群の病勢進行例は203例で、このうち150例(74%)がクロスオーバーとしてcemiplimabの投与を受けた。 PD-L1発現率≧50%の集団におけるOS期間中央値は、cemiplimab群が未到達(95%信頼区間[CI]:17.9~評価不能)、化学療法群は14.2ヵ月(11.2~17.5)であり、ハザード比(HR)は0.57(0.42~0.77)と、cemiplimab群で有意に良好であった(p=0.0002)。また、2年OS率は、cemiplimab群50%(36~63)、化学療法群27%(14~43)だった。 同集団のPFS期間中央値は、cemiplimab群が8.2ヵ月(95%CI:6.1~8.8)と、化学療法群の5.7ヵ月(4.5~6.2)に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.43~0.68、p<0.0001)。また、1年PFS率は、cemiplimab群41%(34~48)、化学療法群7%(4~12)だった。 同集団の客観的奏効率は、cemiplimab群が39%(111/283例、CR:6例[2%]、PR:105例[37%])、化学療法群は20%(57/280例、3例[1%]、54例[19%])であり(オッズ比[OR]:2.53、95%CI:1.74~3.69、p<0.0001)、奏効期間中央値はそれぞれ16.7ヵ月および6.0ヵ月であった。 一方、ITT集団でも、高いクロスオーバー率(74%)にもかかわらず、OS期間中央値(22.1ヵ月[95%CI:17.7~評価不能]vs.14.3ヵ月[11.7~19.2]、HR:0.68[95%CI:0.53~0.87]、p=0.0022)およびPFS期間中央値(6.2ヵ月[4.5~8.3]vs.5.6ヵ月[4.5~6.1]、0.59[0.49~0.72]、p<0.0001)は、いずれもcemiplimab群で有意に良好であった。 治験薬投与中に発現したGrade3/4の有害事象は、cemiplimab群が28%(98/355例)、化学療法群は39%(135/342例)で認められ、cemiplimab群では肺炎(16例[5%])、貧血(12例[3%])、低ナトリウム血症(9例[3%])の頻度が高く、化学療法群では貧血(56例[16%])、好中球減少(35例[10%])、血小板減少(28例[8%])が高頻度にみられた。 著者は、「探索的解析では、PD-L1発現の増加と良好な転帰に相関が認められ、有効性の腫瘍バイオマーカーとしてのPD-L1のエビデンスがもたらされた」としている。

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COVID-19の重症度、現在より過去の喫煙が関連か/日本疫学会

 喫煙者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクについては、海外から相反する結果が報告されている。また、過去喫煙者と現在喫煙者では重症化リスクが異なるとの報告もある。日本人COVID-19入院患者を対象に、喫煙歴と重症度の関連を検討した結果を、1月27~29日にオンライン開催された第31回日本疫学会学術総会で、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)が発表した。 解析に使われたのは、国立国際医療研究センターが中心となり日本全国の施設からCOVID-19入院症例を登録するレジストリ研究COVIREGI-JP1)のデータ。2021年1月12日時点で、872施設から2万4,017例が登録されている。このうち、日本国籍を有し、転院・転送例を除く20~89歳の患者1万853例が解析対象とされた。 重症度は入院中の治療等により0~5の6段階で定義された(重症度0:酸素投与なし、重症度1:非侵襲的な酸素投与、重症度2:ハイフロー・NIPPV、重症度3:侵襲的機械換気[ECMO以外]、重症度4:ECMO、重症度5:死亡[治療内容は問わず])。 主な結果は以下の通り。・解析対象患者の属性は、男性6,321例、女性4,532例。20代が2,091例と最も多く、50代(1,917例)、40代(1,729例)、30代(1,534例)と続く。・喫煙歴は、[男性]現在喫煙者:1,581例(28.8%)、過去喫煙者:1,717例(31.2%)、喫煙歴なし:2,198例(40.0%)[女性]現在喫煙者:574例(15.0%)、過去喫煙者:453例(11.8%)、喫煙歴なし:2,803例(73.2%)・重症度は、[男性]0:4,655例(73.6%)、1:1,186例(18.8%)、2:132例(2.1%)、3:100例(1.6%)、4:15例(0.2%)、5:233例(3.7%)[女性]0:3,783例(83.5%)、1:598例(13.2%)、2:40例(0.9%)、3:15例(0.3%)、4:0%、5:96例(2.1%)・男女ともに年齢が上がるほど重症化リスクが高い傾向がみられた。・年齢で調整後も、女性より男性で重症化リスクが高い傾向がみられた。・心血管疾患、COPD、糖尿病、肥満などの既報にて重症化との関連が指摘されている併存疾患を有する場合、併存疾患なしの場合と比較して重症化リスクが有意に増加していた。・男性では、とくに重症度1および4/5との比較において、過去の喫煙者で重症化リスクが高まる傾向がみられた(重症度0を対照群、喫煙歴なしを基準としたオッズ比):[重症度1(1,186例)]現在喫煙者:年齢調整後0.88(95%信頼区間:0.73~1.07)、年齢・併存疾患調整後0.84(0.69~1.03)過去喫煙者:年齢調整後1.28(1.09~1.52)、年齢・併存疾患調整後1.23(1.04~1.46)[重症度2(132例)]現在喫煙者:年齢調整後0.62(0.36~1.07)、年齢・併存疾患調整後0.60(0.35~1.04)過去喫煙者:年齢調整後1.14(0.76~1.71)、年齢・併存疾患調整後1.08(0.72~1.64)[重症度4/5(248例)]現在喫煙者:年齢調整後0.97(0.55~1.69)、年齢・併存疾患調整後0.88(0.48~1.62)過去喫煙者:年齢調整後1.61(1.11~2.33)、年齢・併存疾患調整後1.29(0.86~1.93)・女性では、男性でみられたような傾向はみられなかった。・現在喫煙者と比較して過去喫煙者のほうが、うっ血性心不全、脳血管障害、高血圧症、重症糖尿病などの併存疾患を有する割合が高かった。 これらの結果から、大曲氏は喫煙歴とCOVID-19重症化リスクについて、下記のように考察した:1.過去喫煙者は何らかの疾患に罹患したことで禁煙した可能性がある2.過去喫煙者は禁煙したものの、併存疾患により重症化リスクが高いのではないか3.現在喫煙者はまだこれらの疾患に罹患していないために、重症化リスクが上がらないのではないか4.現在の喫煙そのものは現在の重症化リスクとは直接関係しないが、他の疾患に罹患することで将来COVID-19に罹患した場合には重症化リスクが高まるのではないか また、女性では過去の喫煙と重症度との間に関連がみられなかったことについて、女性では全体として喫煙者が少なく、検出力が不足していた可能性を指摘した。

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前立腺がんの心血管・死亡リスク、経皮エストロゲンvs.LHRHa/Lancet

 進行前立腺がん患者において、エストラジオールの経皮投与(tE2)パッチによる治療と黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬(LHRHa)による治療で、心血管疾患または死亡の発生に差は示唆されなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRuth E. Langley氏らが、英国の52施設で実施した多施設共同無作為化第II/III相試験「Prostate Adenocarcinoma Transcutaneous Hormone trial:PATCH試験」における長期的な心血管追跡調査データを報告した。アンドロゲン抑制は前立腺がん治療の柱であるが、長期毒性が問題となる。tE2は肝初回通過効果を受けないため、経口エストラジオールでみられる心血管毒性や、LHRHaでみられるエストロゲン枯渇効果を避けられると考えられていた。Lancet誌2021年2月13日号掲載の報告。局所進行・転移のある前立腺がん患者1,694例を追跡 研究グループは、局所進行・転移のある前立腺がん患者1,694例を、LHRHa群またはtE2パッチ群のいずれかに、病期、年齢、喫煙状況、心血管疾患の家族歴などで層別化し無作為に割り付けた(2007年8月14日~2011年2月17日までは1対2、その後は1対1)。 LHRHaは各施設の診療に従って投与し、tE2パッチは100μg/24時間パッチ4枚を最初の4週間は週2回交換、4週後にテストステロンが去勢レベル(≦1.7nmol/L)に達した場合は3枚を週2回交換に減量した。 主要評価項目は、心血管疾患(心不全、急性冠症候群、血栓塞栓性脳卒中、および他の血栓塞栓性イベントなど)および死亡であった。tE2パッチとLHRHaで心血管転帰に有意差なし 2007年8月14日~2019年7月30日の期間に、計1,694例がLHRHa群(790例)またはtE2パッチ群(904例)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は3.9年(四分位範囲2.4~7.0年)であった。 1ヵ月および3ヵ月時点での去勢率は、LHRHa群でそれぞれ65%および93%、tE2パッチ群で83%および93%であった。 事前に定義された基準を満たす心血管イベントは、153例・計167イベントが報告された。致死的心血管イベントは、1,694例中26例(2%)に認められた(LHRHa群15例[2%]、tE2パッチ群11例[1%])。心血管イベントの初回発生までの期間は、治療間で差はなかった(検視報告書なしの突然死を含む場合のハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:0.80~1.53、p=0.54、検視報告書が確認された場合のみのHR:1.20、95%CI:0.86~1.68、p=0.29)。 tE2パッチ群での心血管イベント89件中30件(34%)が、tE2パッチを中断あるいはLHRHaへ変更後3ヵ月以降に発生した。主な有害事象(全グレード)は、女性化乳房(LHRHa群38% vs.tE2パッチ群86%、p<0.0001)、ホットフラッシュ(LHRHa群86% vs.tE2パッチ群35%、p<0.0001)であった。

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肺血栓塞栓症はCOPD増悪の原因と考えてよいか?(解説:山口佳寿博氏)-1355

 まず言葉の定義から考えていく。COPDの分野にあって、“急性増悪”という言葉が使用されなくなって久しい。現在では、単に“増悪(Exacerbation)”という言葉を使用する。さらに、増悪は“気道病変(炎症)の悪化を原因とする呼吸器症状の急性変化”と定義される(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) 2006以降)。GOLD 2003では、増悪は狭義のもの(一次性原因)と広義のもの(二次性原因)の2種類に分類されたが、GOLD 2006以降では、気道病変(炎症)の悪化を原因とする“狭義の増悪”を“増悪”と定義し、それ以外の原因に起因する“広義の増悪”は増悪ではなく“増悪の鑑別診断/修飾因子”として考慮することになった(肺炎、肺血栓塞栓症、気胸、胸部外傷、胸水、心不全/不整脈、麻薬/鎮静剤、β blocker。GOLD 2011以降では、麻薬/鎮静剤、β blockerが鑑別から除外)。増悪の定義が厳密化されたのは、増悪様症状を示した症例のうち80%以上が感染性(気道感染)、非感染性(環境汚染など)による気道炎症の悪化に起因し、それに対してSteroid、抗菌薬を中心とした基本的治療法が確立されたためである。その意味で、肺血栓塞栓症(PTE:Pulmonary thromboembolism)は増悪を惹起する原因ではなく、増悪の鑑別診断となる病態であることをまず理解していただきたい。 COPDとPTEの合併に関しては古くから多くの検討がなされ、COPD患者におけるPTEの合併率は、19%(Lesser BA, et al. Chest. 1992;102:17-22.)から23%(Shetty R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2008;26:35-40.)と報告されている。これらのPTE合併頻度は本邦の一般人口におけるPTEの発症頻度(剖検例での検討:無症候性の軽症を含め18~24%)とほぼ同等であり、COPD自体がPTE発症を助長しているわけではない。しかしながら、原因不明のCOPD増悪(一次性原因と二次性原因を含む)症例を解析した論文では、その3.3%(Rutschmann OT, et al. Thorax. 2007;62:121-125.)から25%(Tillie-Leblond I, et al. Ann Intern Med. 2006;144:390-396.)にPTEの合併を認めたと報告された。本論評で取り上げたCouturaudらの論文では、COPD増悪様症状を呈した症例の5.9%にPTEの合併を認めたと報告されている(Couturaud, et al. JAMA. 2021;325:59-68.)。これら3論文を合わせて考えると、増悪様症状を呈したCOPD患者のうち少なくとも10%前後に、二次性原因としてのPTEが合併しているものと考えなければならない。以上の解析結果は、安定期COPDはPTEの発生要因にはならないが、COPDの増悪様症状を呈した患者にあってはPTEに起因するものが少なからず含まれ、COPDの真の増悪(一次性増悪)の鑑別診断としてPTEは重要であることを示唆する。PTEの合併はCOPD患者のその後の生命予後を悪化させ、1年後の死亡率はPTE合併がなかったCOPD患者の1.94倍に達する(Carson JL, et al. Chest. 1996;110:1212-1219.)。 Couturaudらのものを含め現在までに報告された論文からは、COPDの真の増悪とPTEとの関連を明確には把握できない。COPDの増悪がPTEの危険因子となる、あるいは、逆にPTEの合併がCOPDの真の増悪をさらに悪化させるかどうかを判定するためには、増悪様症状を呈したCOPD患者を真の増悪(一次性原因)とそうでないもの(二次性原因)に分類し、各群でPTEの発症頻度を評価する必要がある。COPDの真の増悪は、一秒量(FEV1)関連の閉塞性換気指標の悪化、喀痰での好中球、好酸球の増加、喀痰中の微生物の変化などから簡単に判定できる。これらの変化は、PTEなどの二次性原因では認められないはずである。以上のような解析がなされれば、COPDの真の増悪とPTE発症の関係が正確に把握でき、COPDの真の増悪がPTE発症の危険因子として作用するか否かの問題に決着をつけることができる。今後、このような解析が世界的になされることを念願するものである。本邦のPTEガイドライン(cf. 10学会合同の『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症[静脈血栓塞栓症]予防ガイドライン』[2004])では、COPDの増悪がPTEの危険因子の1つとして記載されているが、この場合の増悪がいかなる意味で使用されているのか、再度議論される必要がある。

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魔の10分を制する【Dr. 中島の 新・徒然草】(361)

三百六十一の段 魔の10分を制する第3波のコロナ感染者数はピークを過ぎたとはいえ、すんなり下がってくれません。まだまだ油断大敵のようです。先週は、飲食店経営の患者さんからも苦しい状況を聞かされました。なにしろ客が来ないので、昼の弁当販売が主体だそうです。でも、売れるのは300円台の安いものばかり。儲けが出ないので経営が苦しく、奥さんとの喧嘩が絶えないそうです。中島「あの1日6万円の補助っていうのは、助けにならないんですか?」患者「期待しているんですけど、いつになったら頂けるのやら」時短協力金が支給されるまで何とか凌いでほしいですね。さて、話は変わって先日のこと。頭痛を主訴に、母親と共に受診したのは20代の女性です。中島「頭痛の原因について何か心当たりはありますか?」母親「筋トレをするようになってから頭が痛いと言い出したんですよ」中島「なんでまた急に筋トレなんかしようと思ったんですか」患者「もうちょっと痩せようと思って」中島「食事のほうも減らしたんですか?」患者「そうですね」念のため、身長と体重を聞いてみましょう。中島「身長は150センチくらいですか?」患者「そんなもんです」中島「体重は?」患者「そ、それは言えません」カルテには60何キロとか書いてあります。中島「急に体重が減ると、頭が痛くなる人が多いように思いますよ」患者&母親「本当ですか?」中島「原因はわかりませんが、そんな患者さんは沢山みてきました」一応、私なりの理屈はあるのですが、読者の皆様に馬鹿にされたくないので披露するのはやめておきます。中島「何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、少しずつ痩せるといいですよ」患者「どうやったらいいのですか?」中島「実は無理せずに痩せる方法があるんです」患者&母親「なになになに、教えて、教えてー!」患者さんのみならず、お母さんも身を乗り出してきました。中島「まず、食べるのを我慢するのではなく、食べ過ぎないようにするわけです」空腹なのに食べてはならない、というのはつらいですよね。そうではなく、つい食べ過ぎてしまうのを防ぐわけです。中島「そのためには『魔の10分』を制することです」患者&母親「魔の10分?」中島「そうです。人間、満腹になってから『腹一杯』と感じるまでに10分ほどのタイムラグがあるわけです」正確には10分だったかな、20分だったかな。でも、10分と断言した以上、このまま押し通します。中島「たとえば、夕食後に、まだ少し足りないな、と思ったとしましょう」患者&母親「ええ」中島「そこで時計を見るわけです。たとえば午後7時45分だったらですね、それから10分待つ」患者&母親「……」中島「午後7時55分になってもまだ物足りなかったら、何か追加で食べましょう」患者&母親「食べてもいいわけですね」中島「ええ。でもほとんどの場合、10分も待っているうちに満腹になってしまいます」患者&母親「ホントですか?」中島「本当です」私自身いつも心掛けていますが、10分もしたら食べること自体に興味がなくなってしまうんですね、不思議なことに。中島「この方法にはもう1つの効能があります」患者「ほかにもあるんですか」中島「いつのまにか胃が小さくなってしまうわけです」いつも食べ過ぎていたら知らないうちに胃が大きくなり、腹八分目だと胃が小さくなる、というのが私の考えです。胃が大きくなってしまうと、いつも空腹感に悩まされてしまいます。中島「あと、間食を減らすことですね。絶えず何か口にしているということはありませんか?」母親「あります、あります」患者「ついお菓子を食べてしまうんです」中島「魔の10分を制することも大切ですが、間食を控えることも大切です」母親「それ、わかっていてできないんですよ、この子は」患者「お母さんも食べているじゃないの!」患者&母親「どうしたらいいんですか?」中島「いい方法があります」患者&母親「教えて、教えてー!」私自身がやってみて効果があった方法を伝授しました。私の場合、よくあるのが、日曜日の自宅でケアネットの原稿を書きながら、ついヒョイパク、ヒョイパクとお菓子を食べてしまうことです。この必敗パターンにどう対抗するのか。中島「意志の力に頼ってはなりません。環境です、環境こそがポイントです」患者「どうも甘いものの誘惑に弱いんで」中島「大丈夫です。私がしているのは、ポテトチップスやチョコレートなどを別の部屋のクローゼットの棚に置いておくやり方です」患者「へっ?」中島「この方法は効果抜群です。何か口に入れたいと思っても、わざわざ寒い部屋にいってクローゼットを開けて棚の上に手をのばして1つだけとるわけですから、もう面倒で面倒で仕方ありません。すぐに間食を減らすことができます」母親「なーるほど」そういえば、似たようなことを思い出しました。アメリカ駐在で、たちまちタバコを止めることができた知人の話です。オフィスが75階にあったので、タバコを吸うためには毎回1階まで下りてビルの外に出なくてはならなかったとか。喫煙の誘惑も、エレベーターを使う手間に勝てなかったそうです。まさしく意志の力より環境の力。というわけで、大きなお腹を抱えながらも人様に偉そうな講釈をしてしまいました。ダイエット&エクササイズ、永遠の課題ですね。最後に1句立春の 寒き部屋に 菓子隠す

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第34回 数値で測定できないデータの標準偏差とは?【統計のそこが知りたい!】

第34回 数値で測定できないデータの標準偏差とは?ある薬剤の効果に関する試験を行った結果、得られたデータの散らばりの程度を数値で示すことができれば、その値を比較することによって薬剤を評価することができます。その散らばりの程度を示す数値のことを「標準偏差(standard deviation:SD)」と言います。標準偏差は平均値と比べて、「どれだけばらついているか?」「差が大きいか?」を求めた数値で、最小値がゼロ、データの「バラツキの程度」が大きいほど値は大きくなります。この標準偏差は、数量データで用いることが多いイメージですが、数値で測定できないデータ(カテゴリーデータ)でも算出できます。今回は、カテゴリーデータの標準偏差について解説します。■カテゴリーデータの標準偏差の公式データには、大きく分けて、数量データとカテゴリーデータがあります。・数量データ:数値として足したり引いたりできるデータ(例:血圧値、体温)・カテゴリーデータ:数値で測定できないデータ(例:喫煙の有無、性別)たとえば、問診票などの「喫煙あり、喫煙なし」の2値のカテゴリーデータは「1、0」データに変換することにより、下記の公式で標準偏差を求めることができます。 表1のデータは、ある問診票の「喫煙あり、喫煙なし」を調べたものです。このデータを喫煙あり:1、喫煙なし:0の「1、0」データに変換したときの分散と標準偏差を求めてみましょう。表1 問診表の喫煙の有無のデータ 喫煙している人の割合は、全体5人に対して3人なので、 3÷5=0.60.6を前述の公式に当てはめると 分散=0.6(1-0.6)=0.24 標準偏差=√0.24=0.49となります。ちなみに、公式を使わずに計算すると表2のように、データの平均値は0.6、分散は0.24になりました。表2 表による喫煙の有無の標準偏差の算出 標準偏差も計算すると0.49となり、公式を使用した場合と同じ計算結果になります。■カテゴリーデータに関する留意点上記の問題のように、「喫煙あり・喫煙なし」や「男・女」などで評価されたカテゴリーデータの基準を「名義尺度」と言います。大小関係はなく、お互いを比較する際に同じであるかどうかだけが重要となります。カテゴリーデータを評価する基準にはもう1つあり、それを「順序尺度」と言います。たとえば、治療満足度を患者さんに聞いて、「満足・やや満足・どちらともいえない・やや不満・不満」というように5段階で評価されたデータです。このような順序尺度は比較する際、同じであるかどうかに加えて、大小関係も有するデータとなります。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第1回 「標準偏差」と「標準誤差」の使い分けは「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション3 データのバラツキを調べる標準偏差

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GERDを増悪させる薬剤を徹底見直しして負のスパイラルから脱出【うまくいく!処方提案プラクティス】第32回

 今回は、胃食道逆流症(GERD)を悪化させる薬剤を中止することで症状を改善し、ポリファーマシーを解消した事例を紹介します。GERDは胸焼けや嚥下障害などの原因となるほか、嚥下性肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性咳嗽などの呼吸器疾患を発症・増悪させることもあるため、症状や発症時期を聴取して薬剤を整理することが重要です。患者情報70歳、女性(外来患者)基礎疾患発作性心房細動、慢性心不全、高血圧症、逆流性食道炎診察間隔循環器内科クリニックで月1回処方内容<循環器内科クリニック(かかりつけ医)>1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠2.5mg 1錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン徐放錠40mg 1錠 分1 朝食後(1ヵ月前から増量)5.エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後<内科クリニック>1.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前(2週間前に処方)2.テオフィリン徐放錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前(2週間前に処方)本症例のポイントこの患者さんは、なかなか胸焼けが治らないことを訴えて、半年前にGERDの診断を受けました。プロトンポンプ阻害薬による治療によって症状は改善したものの、最近はまた症状がぶり返しているとお悩みでした。患者さんの生活状況を聴取したところ、喫煙や飲酒はしておらず、高脂肪食なども5年前の心房細動の診断を機に気を付けて生活していました。心不全を併発していますが、体重は47.5kg程度の非肥満で増減もなく落ち着いていて、とくにGERD増悪の原因となる生活習慣や体型の問題は見当たりませんでした。さらに確認を進めると、最近の変化として、血圧が高めで推移したため1ヵ月前にニフェジピン徐放錠が20mgから40mgに増量になっていました。また、2週間前に咳症状のため、かかりつけの循環器内科クリニックとは別の内科クリニックを受診し、喘息様発作でモンテルカストとテオフィリンを処方されていました。GERDにおける食道内への胃酸の逆流は、嚥下運動と無関係に起こる一過性の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)弛緩や腹腔内圧上昇、低LES圧による食道防御機構の破綻などにより発生します1)。また、GERDを増悪させる要因として、Ca拮抗薬やテオフィリン、ニトロ化合物、抗コリン薬などのLES弛緩作用を有する薬剤、NSAIDsやビスホスホネート製剤、テトラサイクリン系抗菌薬、塩化カリウムなどの直接的に食道粘膜を障害する薬剤があります1,2)。Ca拮抗薬は平滑筋に直接作用してCaイオンの流れを抑制することで、LES圧を低下させるとも考えられています3)。上記のことより、1ヵ月前に増量したCa拮抗薬のニフェジピン徐放錠がGERD症状の再燃に影響しているのではないかと考えました。その食道への刺激によって乾性咳嗽が生じて他院を受診することになり、そこで処方されたテオフィリンによってさらにLESが弛緩してGERD症状が増悪するという負のスパイラルに陥っている可能性も考えました。かかりつけ医では他院で処方された薬剤の内容を把握している様子がなかったため、状況を整理して処方提案することにしました。処方提案と経過循環器内科クリニックの医師と面談し、別の内科クリニックから乾性咳嗽を主体とした症状のためモンテルカストとテオフィリンが処方されていることと、患者さんの胸焼けや咳嗽がニフェジピン増量に伴うLES弛緩により出現している可能性を伝えしました。医師より、ニフェジピン増量がきっかけとなってGERD症状から乾性咳嗽に進展した可能性が高いので、ニフェジピンを別の降圧薬に変更しようと回答をいただきました。そこで、ACE阻害薬は空咳の副作用の懸念があったため、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を提案し、医師よりニフェジピンをオルメサルタン40mgに変更する指示が出ました。また、現在は乾性咳嗽がないため、心房細動への悪影響を考慮してテオフィリンを一旦中止し、モンテルカストのみ残すことになりました。変更した内容で服用を続けて2週間後、フォローアップの電話で胸焼け症状は改善していることを聴取しました。その後の診察でモンテルカストも中止となり、患者さんは乾性咳嗽や胸焼け症状はなく生活しています。1)藤原 靖弘ほか. Medicina. 2005;42:104-106.2)日本消化器病学会編. 患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド. 2018.3)江頭かの子ほか. 週刊日本医事新報. 2014;4706:67.

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うつ症状が心血管疾患発症と関連/JAMA

 22コホート・参加者56万3,255例のデータを包含したプール解析において、ベースラインのうつ症状は心血管疾患(CVD)と関連していることを、英国・ケンブリッジ大学のEric L. Harshfield氏らEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)研究グループが明らかにした。ただし、症状レベルは大うつ病性障害を示す閾値よりも低く、関連の程度はわずかであった。これまで、うつ症状が独立してCVD発症と関連するかどうかは不明であった。JAMA誌2020年12月15日号掲載の報告。22コホート・56万3,255例のデータをプール解析 研究グループは、気分の落ち込みを含むうつ症状とCVD発生の関連を明らかにする目的で、Emerging Risk Factors Collaboration(21コホート・16万2,036例、ベースラインサーベイ期間:1960~2008年、最終フォローアップ:2020年3月)と、UK Biobank(40万1,219例、ベースラインサーベイ期間:2006~2010年、最終フォローアップ:2020年3月)の被験者データを基にプール解析を行った。適格被験者は、ベースラインでうつ症状を自己申告しており、CVD歴はなかった。 被験者のうつ症状は、検証済みの評価ツールを用いて記録。ERFC被験者のうつ病スコアは、Center for Epidemiological Studies Depression(CES-D)スケールをコホート全体に反映して調整したうえで評価が行われた(スコア範囲:0~60、16以上がうつ病性障害の可能性を示す)。UK Biobankでは、2-item Patient Health Questionnaire 2(PHQ-2、スコア範囲:0~6、3以上がうつ病性障害の可能性を示す)で記録された。 主要アウトカムは、致死的または非致死的の冠動脈疾患(CHD)、脳卒中、およびCVD(両者を併発)の発生であった。 年齢、性別、喫煙歴、糖尿病で補正後のCES-DまたはPHQ-2スコアの1-SD上昇当たりのハザード比(HR)を算出して評価した。うつスコア上昇に伴いCHD、脳卒中、CVDとも発生率増大 ERFC被験者16万2,036例(女性73%、ベースライン平均年齢:63歳[SD 9])では、CHD 5,078例、脳卒中3,932例の発生が記録された(追跡期間中央値:9.5年)。 CHD、脳卒中、およびCVDとの関連性は顕著な対数線形を示した。うつ病スコア1-SD上昇当たりのHRは、CHDが1.07(95%信頼区間[CI]:1.03~1.11)、脳卒中が1.05(1.01~1.10)、CVDが1.06(1.04~1.08)であった。CES-Dスコアの最高四分位(幾何平均スコア19)vs.最低四分位(同1)でみた1万人年当たりの発生率は、CHDイベントが36.3 vs.29.0、脳卒中イベントは28.0 vs.24.7、CVDイベントは62.8 vs.53.5であった。 UK Biobank被験者40万1,219例(女性55%、ベースライン平均年齢56歳[SD 8])では、CHD 4,607例、脳卒中3,253例の発生が記録された(追跡期間中央値:8.1年)。 うつ病スコア1-SD上昇当たりのHRは、CHDが1.11(95%CI:1.08~1.14)、脳卒中が1.10(1.06~1.14)、CVDが1.10(1.08~1.13)であった。PHQ-2スコアの4以上vs.0でみた1万人年当たりの発生率は、CHDイベントが20.9 vs.14.2、脳卒中イベントは15.3 vs.10.2、CVDイベントは36.2 vs.24.5であった。 HRの大きさと統計学的有意性は、追加リスク因子で補正後も実質的に変化はみられなかった。

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