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高血圧:脳心血管疾患の危険因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q5

高血圧:脳心血管疾患の危険因子Q5血圧レベル以外の脳心血管疾患の危険因子として、高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)で新たに追記されたのは次のうちどれか?男性喫煙アルコール多飲メタボリックシンドローム不眠症

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精神科入院患者へのベンゾジアゼピン使用に対するCOVID-19の影響

 オーストラリア・Cumberland HospitalのNancy Zaki氏らは、COVID-19が急性期精神医学においてベンゾジアゼピンの使用増加に影響を及ぼすかについて、検討を行った。Australasian Psychiatry誌オンライン版2022年2月10日号の報告。 2019~20年の2年間にわたり、2つの急性期精神科入院患者ユニットにおけるベンゾジアゼピン使用率を評価した。同時期における経口アトルバスタチン使用率を比較対象として使用した。 主な結果は以下のとおり。・2020年の総入院患者数は減少したものの、2020年4月~12月のベンゾジアゼピン使用量は、2019年の同時期と比較し、有意な増加が認められた。・パンデミックの制限が緩和された後、使用量はさらにピークを迎えていた。これは、救急でのメンタルヘルス症状および急性期精神科入院の割合の高さによるものであると考えられる。・COVID-19による退院制限も、喫煙のさらなる制限につながっていた。 著者らは「COVID-19パンデミックにより、ベンゾジアゼピン使用は増加した。パンデミックが急性の精神医学的症状に及ぼす影響を理解するためには、より多くの研究が求められる」としている。

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KRAS G12C変異陽性肺がんの新しい治療選択肢、ソトラシブ/日本臨床腫瘍学会

 2022年、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する2次治療の新たな選択肢として承認されたソトラシブについて、日本臨床腫瘍学会メディカルセミナーにて、愛知県がんセンターの藤原 豊氏が解説した。 肺がん、とくに肺腺がんには多くの遺伝子変異がある。今回ソトラシブが適応となるKRAS G12C変異は日本における扁平上皮非小細胞肺がんの4.1%程度であり、男性、喫煙者に多いことがわかっている。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する従来の初回標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん剤の併用である。しかし、KRAS変異陽性の場合、陰性に比べて細胞障害性抗がん剤の効果が乏しく、とくに2次治療での効果は限定的であり、新しい治療選択肢が望まれていた。KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験成績 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験、CodeBreaK100試験の概要は以下の通り。・対象:KRAS G12C変異陽性進行非小細胞肺がんで抗PD-1/PD-L1免疫治療および/またはプラチナ製剤を含む化学治療の前治療歴があり(前治療数は3つ以下)、RECIST1.1に基づく測定可能病変を有し、ESOG PS 0、1・方法:ソトラシブ960mgを1日1回経口投与(増悪、治療不耐性、同意撤回などまで投与を継続)・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、奏効までの期間(TTR)、安全性 患者背景は男女同等、アジアからは19名が参加している。前治療で化学療法、免疫療法を受けていた割合はどちらも9割を超えていた。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験主な結果は以下の通り。・主要評価項目であるORRは37.1%(95%信頼区間:28.6~46.2)であり、副次評価項目のDCRは80.6%(95%信頼区間:72.6~87.2)であった。DORの中央値は11.1ヵ月(95%信頼区間:6.9~NE)。・安全性については、全Gradeの副作用が69.8%、Grade3が19.8%、Grade4が0.8%であった。多く見られた副作用は下痢、悪心、ALT・AST増加などであった。KRAS G12C変異陽性肺がんの2次治療はどう変わるか 肺がん診療ガイドラインでは2021年の段階で、すでにソトラシブがKRAS G12C変異陽性に2次治療以降でソトラシブ単剤療法を推奨すると記載されている。 藤原氏は今後の治療戦略について、「1次治療開始時にKRAS G12C遺伝子変異検査を実施し、結果を把握しておけば、2次治療が必要になった場合にすぐにソトラシブを使えると考えている。初回の検査でKRAS G12C変異を確認しておくことが重要」と述べた。

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国内オミクロン株感染者139例の臨床的特徴/感染研

 国立感染症研究所は、国内におけるオミクロン株の疫学的・臨床的特徴を迅速に把握することを目的として、検疫および国内にて初期に探知されたオミクロン株症例について、積極的疫学調査を行った。18日、第5報として収集されたすべての結果が報告された。【対象症例】 2021年11月29日~2022年1月12日までに本調査の協力医療機関に入院し診療を行った新型コロナウイルス感染者の中から、ゲノム解析によりオミクロン株感染が確定した139例。【調査方法】 退院後に調査票を用いて、基本情報、渡航情報、ワクチン接種歴、基礎疾患、入院時のバイタルサイン・臨床症状、入院期間中に観察された臨床症状、合併症、入院中の治療、入院経過・退院時転帰などの情報を収集し、疫学的記述を行った。【主な結果】・調査対象139例の内訳は、男性91例(65.5%)、女性48例(34.5%)であり、年齢の中央値は33歳(0-81)。20~50代が7割を占め、10代以下が2割、60代以上は1割だった。・BMIの中央値(四分位範囲)は22.3kg/m2(19.1-25.3)で、33例(23.7%)に喫煙歴、73例(52.5%)に飲酒歴を認めた。・5例(3.6%)に過去のSARS-CoV-2感染歴が認められた。発症から入院までの期間の中央値(四分位範囲)は3日(2-4)であった。・ワクチン接種歴は3回が3例(2.2%)、2回が86例(61.9%)、1回が4例(2.9%)、接種なしが46例(33.1%)。未接種者(1回接種・接種なし)50例は10歳未満が32%と多くを占めた。・何らかの基礎疾患を有した症例は30例(21.6%)であり、高血圧(12.2%)、脂質異常症(7.9%)、肥満(4.3%)の頻度が高かった。・入院時の体温、脈拍数、呼吸数の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8℃(36.5-37.2)、86回/分(77-98)、18回/分(16-20)だった。酸素飽和度の中央値(範囲)は98%(95-100)で、1例が酸素2L/分の投与を必要とした(基礎疾患を有する80代のワクチン未接種者)。・入院時、106例(76.3%)が何らかの症状を認めていた一方、無症状者は33例(23.7%)で、うち5例が入院後に何らかの症状を認めた。・COVID-19診断による入院時の主な症状は、咳嗽(46.0%)、咽頭痛(33.8%)、37.5℃以上の発熱(30.9%)、鼻汁(18.0%)で、味覚障害・嗅覚障害はそれぞれ1例(0.7%)に認められた。・入院時、139例中124例が胸部X線検査もしくはCT検査を受け、7例(5.6%)に肺炎像を認めた(X線:3/108例、CT:5/45例)。血液検査所見は概ね正常範囲内だった。・139例中26例(18.7%)にCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われ、113例(81.3%)が対症療法のみであった。ICUでの加療や、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用といった重症治療を受けた者は認めなかった。・全入院期間の中央値(四分位範囲)は11日(9-14)で、細菌性肺炎や急性呼吸切迫症候群(ARDS)の合併例は認めなかった。・発症から退院までの期間に観察された主な症状は、咳嗽(56.8%)、37.5℃以上の発熱(56.1%)、咽頭痛(41.7%)、鼻汁(32.4%)、味覚障害(7.2%)、嗅覚障害(5.8%)だった。・28例(20.1%)が退院まで無症状で経過し、133例(95.7%)が自宅退院した。残りのうち4例(2.9%)は医療機関へ転院し、2例(1.4%)が医療機関以外の施設へ入所した。・ワクチン接種者、未接種者ともに死亡例は認めなかった。 なお、本調査結果はワクチン接種者と未接種者の比較を目的としたものではない。

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片頭痛に対するアルコール、コーヒー、喫煙の影響

 アルコール、コーヒーの摂取および喫煙が片頭痛の発症リスク因子であるかを評価するため、スウェーデン・カロリンスカ研究所のShuai Yuan氏らは、メンデルランダム化研究を実施した。Pain誌2022年2月1日号の報告。 大規模ゲノムワイド関連解析におけるP<5×10-8の潜在的なリスク因子に関連する独立した一塩基多型を操作変数として用いた。選択した一塩基多型と片頭痛との関連についてのサマリーレベルのデータを、FinnGenコンソーシアム(片頭痛患者:6,687例、対照群:14万4,780例)およびUKバイオバンク研究(片頭痛患者:1,072例、対照群:36万122例)のデータより抽出した。FinnGenおよびUKバイオバンクのコホートより得られた推定値は、固定効果メタ解析を用いて組み合わせた。 主な結果は以下のとおり。・遺伝的に予測されたアルコール摂取、コーヒー摂取、喫煙開始との関連性を示すエビデンスが認められた。【アルコール摂取】オッズ比(OR):0.54/1週間当たりの対数変換アルコール飲料のSD増加、95%信頼区間[CI]:0.35~0.82、p=0.004【コーヒー摂取】OR:0.56/コーヒー摂取量50%増加、95%CI:0.45~0.70、p<0.001【喫煙開始】OR:1.15/喫煙開始の1SD増加、95%CI:1.01~1.31、p=0.038・多変数メンデルランダム化解析での相互調整を含む感度分析においても、これらの関連性は変わらなかった。・メンデルの逆ランダム化解析では、片頭痛に対する遺伝的な影響は、アルコール摂取と逆相関が認められたが、コーヒー摂取および喫煙開始との関連は認められなかった。 著者らは「片頭痛に対する適度なコーヒー摂取の保護的影響と喫煙の有害な影響を示唆する遺伝的証拠が発見された。アルコール摂取と片頭痛リスクとの逆相関は、因果関係の逆転が影響している可能性がある」としている。

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小声の患者さん、実は“ふるえ”が潜んでる!?【Dr.山中の攻める!問診3step】第11回

第11回 小声の患者さん、実は“ふるえ”が潜んでる!?―Key Point―安静時の振戦はパーキンソン病でみられる両上肢を前方に挙上するときに観察される姿勢時振戦は本態性振戦で起こる治療可能なふるえを見逃さない症例:75歳 男性主訴)右手がふるえる現病歴)3年前から両手のふるえを自覚するようになった。1年前から次第に手のふるえがひどくなっている。2週間前、役所で書類にサインを求められたが、手がふるえて字がうまく書けなかった。既往歴)高血圧症薬剤歴)アムロジピン生活歴)焼酎1合を週に2回、喫煙なし身体所見)体温:36.7℃ 血圧:128/62mmHg 脈拍:86回/分 呼吸回数:16回/分 SpO2:96%(室内気)安静時振戦なし。両上肢を前方に挙上させると両手に振戦を認める。自分の名前を書かせると、右手に振戦が出現し字が大きく乱れる。経過)パーキンソン症候群を疑う症状と身体所見なし。本体性振戦と診断しプロプラノロールを処方した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!病的振戦では本態性振戦が最も多く、次にパーキンソン病が多い書字やコップを使用して飲水する時に起こる運動時振戦は、日常生活に支障をきたすリチウム、バルプロ酸Na、テオフィリン、カフェイン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などは薬剤性振戦を起こす1)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】振戦を分類する2)(1)安静時振戦安静時にみられる。左右差が見られることが多い。動作により振戦は消失する。姿勢保持後、10秒くらいして振戦が再出現することがある(re-emergent tremor)。暗算負荷などの精神的緊張で増悪する。パーキンソン病、パーキンソン症候群が代表疾患(2)動作時振戦(a)姿勢時振戦両上肢を前方に挙上するときに観察される。重力に抗した姿勢で出現しやすい。代表疾患は本態性振戦、生理的振戦、甲状腺機能亢進症で、薬剤性やアルコール離脱などが原因で生じることもある。(b)運動時振戦書字やコップで水を飲む時に起こる。日常生活に支障をきたす。本態性振戦、小脳疾患、脳血管障害で起こる(c)企図振戦 目標に近づくほど振戦が増大する。小脳障害、多発性硬化症、ウィルソン病でみられる*本態性振戦とパーキンソン病の患者ビデオ(Stanford Medicine 25)【STEP3-1】本態性振戦とパーキンソン病の特徴的症状があるかを確かめる2)病的な振戦では本態性振戦(有病率:2.5~10%)とパーキンソン病(有病率:0.1%)が多い。画像を拡大するパーキンソン病の安静時振戦は逆N字型(またはN字型)に進行する。たとえば、右手→右足→左手→左足(下図参照)(図)パーキンソン病では無動、固縮(歯車現象、鉛管様固縮)を認める。非運動症状(レム睡眠行動異常、うつ症状、嗅覚低下、倦怠感、起立性低血圧)がある3)本態性振戦は小脳失調を合併することがある本態性振戦からパーキンソン病に進展するケースもある【STEP3-2】ほかの鑑別診断を考える徐々に発症するときは生理的振戦、本態性振戦を考える●生理的振戦緊張すると姿勢時振戦を起こす。低振幅、高振動数。カフェイン、β刺激薬で悪化●ジストニア特定の姿勢や動作で誘発される。書痙●心因性振戦突然発症する。気をそらせると消失●二次性振戦甲状腺機能亢進症、低血糖、尿毒症、薬剤(リチウム、バルプロ酸Na、テオフィリン、カフェイン、SSRI)、中毒(マンガン、鉛、水銀)●アルコールやベンゾジアゼピンの離脱症状としても振戦が起こる【治療】ストレスを軽減させる生活指導振戦のため書字が困難なら、できるだけ太いペンを使用する本態性振戦にはアロチノロール、プロプラノロール(商品名:インデラル)、プリミドンを処方するパーキンソン病には抗コリン薬が有効なことがあるが、幻覚や認知機能障害が出現する場合があるMRガイド下集束超音波治療(FUS)<参考文献>1)Elias WJ, et al. JAMA. 2014;311:948-954. 2)望月秀樹. 日本内科学会雑誌. 2017;107: 464-468.3)Kalia LV, et al. Lancet. 2015;386:896-912.

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多疾患罹患、中年期の発症で認知症リスク増加 /BMJ

 多疾患罹患(multimorbidity)は、高年期よりも中年期の発症で認知症との関連が強く、併存する慢性疾患の数が多いほど認知症のリスクが高くなることが、フランス・パリ大学のCeline Ben Hassen氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年2月2日号で報告された。Whitehall II研究のデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、中年期および高年期の多疾患罹患と、認知症の新規発症との関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。 解析には、進行中のWhitehall II研究のデータが用いられた。Whitehall II研究には、ベースライン時(1985~88年)に35~55歳のロンドン市の公務員が登録され、約4~5年ごとにフォローアップの調査が行われている。 主要アウトカムは、1985~2019年におけるフォローアップ時の新規発症の認知症とされた。原因別Cox比例ハザード回帰を用い、死亡の競合リスクを考慮したうえで、全体、55歳、60歳、65歳、70歳の時点での多疾患罹患とその後の認知症との関連が評価された。55歳時の多疾患罹患で、認知症リスクが2.44倍に 1万95例が解析に含まれた。多疾患罹患(13の慢性疾患のうち2つ以上)の有病率は、55歳時が6.6%(655/9,937例)、70歳時は31.7%(2,464/7,783例)であった。フォローアップ期間中央値31.7年の時点で、639例(平均年齢49.9[SD 4.9]歳、男性58.5%)が新規の認知症に罹患した。 認知症罹患者で最も頻度の高い慢性疾患は高血圧症(77.9%)で、次いで冠動脈疾患(27.7%)、抑うつ(27.2%)、糖尿病(24.7%)の順であった。がんを除く12の慢性疾患は、認知症罹患と関連が認められた。 社会人口学的因子と健康行動(喫煙、身体活動、飲酒、果物/野菜摂取)で補正すると、慢性疾患がないまたは1つの集団と比較して、55歳時の多疾患罹患はその後の認知症のリスクと関連が認められた(1,000人年当たりの罹患率の差:1.56、95%信頼区間[CI]:0.62~2.77、ハザード比[HR]:2.44、95%CI:1.82~3.26)。 この関連性は、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って徐々に弱くなった。たとえば、55歳以前に多疾患罹患を発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は3.86(95%CI:1.80~6.52)であった(HR:2.46、95%CI:1.80~3.36)のに対し、60~65歳時に発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は1.85(95%CI:0.64~3.39)であった(HR:1.51、1.16~1.97)。 70歳時の多疾患罹患の状態の解析では、多疾患罹患の発症年齢が5歳若くなるごとに、認知症リスクは18%ずつ高くなった(HR:1.18、95%CI:1.04~1.34)。 また、55歳時に3つ以上の慢性疾患を有する多疾患罹患の場合は、1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は5.22(95%CI:1.14~11.95)であった(HR:4.96、95%CI:2.54~9.67)。一方で70歳時の同様の解析では、1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は4.49(95%CI:2.33~7.19)であり(HR:1.65、95%CI:1.25~2.18)、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って関連性が徐々に弱くなった。 著者は、「多疾患罹患は発症年齢の若年化が進んでいるため、初発の慢性疾患を有する集団における多疾患罹患の予防が重要である」としている。

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コロナ感染の抑制、政府・対人信頼度と関連/Lancet

 パンデミックの発生以来、各国の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)死亡率は大きく変動している。それらの変動の要因を検証したところ、パンデミックへの事前対策指標の高低とは関連が認められなかった一方で、政府への信頼度や対人信頼度が高いこと、また政府内の汚職が少ないことが、同感染率の低下と関連していたことを、米国・ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のJoseph L. Dieleman氏らCOVID-19 National Preparedness Collaboratorsが、177の国と地域のデータを基に検証し明らかにした。本検討は、将来のパンデミックへのより効果的な準備と対応のために不可欠な取り組みを明らかにする目的で行われたものだが、著者は、「今回の結果は、主要な修正可能なリスクに関する健康増進は、個々人が公衆衛生ガイダンスに抱く信頼を高めるようなリスクコミュニーケションやコミュニティ戦略へ、より大きな投資をすることで、死亡抑制に結びつくことを示唆するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年2月1日号掲載の報告。12のパンデミック事前準備指標、7つの医療体制能力指標などとの関連を検証 研究グループは177の国と地域および181の行政区画について、IHMEモデリング・データベースを基に、SARS-CoV-2感染率とCOVID-19死亡率を抽出し、累積感染率や感染致死率(IFR)を予測し、環境要因、人口統計学的要因、生物学的要因、経済学的要因について標準化し検証した。 感染率については、季節環境(肺炎のリスク比で測定)、人口密度、1人当たり国内総生産(GDP)、標高100m未満の居住人口割合、その他のβコロナウイルス曝露の代理変数を因子として盛り込んだ。 IFRについては、人口年齢分布、平均BMI値、大気汚染曝露、喫煙率、他のβコロナウイルス曝露の代理変数、人口密度、慢性閉塞性肺疾患(COPD)・がんの年齢標準化罹患率、1人当たりGDPを因子とした。 これらを、間接年齢標準化および多変量線形モデルを用いて標準化。標準化全国累積感染率とIFRについて線形回帰を用いて、12のパンデミック事前対策指標、7つの医療提供体制能力指標、その他10項目の人口統計学的・社会的・政治的状況との関連を検証した。 さらに、SARS-CoV-2感染率に影響を与える可能性のある重要な要因の経路を調べるため、対人信頼度、政府への信頼度や汚職の状況、人々の移動パターンの変化やCOVID-19ワクチン接種率との関連性についても検証した。デンマークレベルの対人信頼度に改善されれば世界の感染率は40.3%減少 2020年1月1日~2021年9月30日の、SARS-CoV-2累積感染率の変動の主な要因は、標高100m未満の居住人口割合(変動の5.4%[95%不確定区間[UI]:4.0~7.9])、1人当たりGDP(4.2%[1.8~6.6])、季節変化に起因する感染の割合(2.1%[1.7~2.7])だった。国別の累積感染率の変動については、その大部分が説明不能だった。 同期間のCOVID-19のIFRの変動に関する主な要因は、国の年齢構成(変動の46.7%[95%UI:18.4~67.6])、1人当たりGDP(3.1%[0.3~8.6])、国平均BMI(1.1%[0.2~2.6])だった。国別のIFR変動の44.4%(29.2~61.7)は、説明不能だった。 国の医療保障の目安となるパンデミック事前対策指標については、標準化感染率やIFRとの関連は認められなかった。 一方、政府への信頼度や対人信頼度、政府の汚職が少ないことと、低い標準化感染率について、強い統計的に有意な関連が認められた。これらの因子は、COVID-19ワクチンが広く普及する中~高所得国において、高いワクチン接種率とも関連していた。また、汚職が少ないことは移動の減少とも関連していた。  こうしたモデルの関連性に因果関係があると仮定した場合、すべての国の政府への信頼度または対人信頼度が、デンマークのレベル(全体の75パーセンタイルに相当)に達すれば、世界の感染率は、政府への信頼度の改善により12.9%(95%UI:5.7~17.8)、対人信頼度の改善では40.3%(24.3~51.4)、それぞれ減少できると予測された。同様に、すべての国のBMIが全体の25パーセンタイルに該当するよう抑制されれば、世界の標準化IFRは11.1%減少するとも予測された。

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トファシチニブ、心血管リスクの高いRA患者での安全性を検討/NEJM

 心血管リスクの高い関節リウマチ患者において、トファシチニブ5mgまたは10mgの1日2回投与は腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬と比較し、主要有害心血管イベント(MACE)および悪性腫瘍の発現率が高く、非劣性基準を満たさなかった。米国・メイヨー・クリニックのSteven R. Ytterberg氏らが30ヵ国323施設で実施した、無作為化非盲検非劣性第IIIb-IV相安全性評価試験「ORAL Surveillance試験」の結果、明らかとなった。日和見感染症、帯状疱疹および非黒色腫皮膚がんの発現率もトファシチニブ群が高率であることが示された。NEJM誌2022年1月27日号掲載の報告。トファシチニブ2用量の安全性をTNF阻害薬と比較 研究グループは、2014年3月~2020年7月に、メトトレキサート治療を受けているにもかかわらず活動性の関節リウマチであり、心血管リスク因子(現喫煙者、高血圧、HDLコレステロール値40mg/dL未満、糖尿病、早発性冠動脈疾患の家族歴、関節リウマチの関節外病変、冠動脈疾患の既往歴)を1つ以上有する50歳以上の患者を、トファシチニブ5mgの1日2回投与群、同10mgの1日2回投与群、TNF阻害薬投与群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。TNF阻害薬の投与は、米国、プエルトリコ、カナダを含む北米ではアダリムマブ40mgを2週間ごと、それ以外の地域ではエタネルセプト50mgを週1回とした。 主要評価項目は、外部委員会判定によるMACEおよび悪性腫瘍(非黒色腫皮膚がんを除く)。TNF阻害薬群と比較して、トファシチニブ2用量統合群のハザード比の両側95%信頼区間(CI)の上限が1.8未満の場合、トファシチニブの非劣性を示すものとした。MACE、悪性腫瘍のいずれもトファシチニブで発現リスクが高い 解析対象は、トファシチニブ5mg群1,455例、トファシチニブ10mg群1,456例、TNF阻害薬群1,451例であった。 追跡期間中央値4.0年において、MACEおよび悪性腫瘍の発現率は、トファシチニブ統合群でそれぞれ3.4%(98例)、4.2%(122例)、TNF阻害薬群で2.5%(37例)、2.9%(42例)であり、トファシチニブ統合群で高率だった。ハザード比は、MACEが1.33(95%CI:0.91~1.94)、悪性腫瘍が1.48(95%CI:1.04~2.09)で、いずれもトファシチニブの非劣性は示されなかった。 また、日和見感染症(帯状疱疹、結核を含む)、すべての帯状疱疹(非重篤および重篤)、および非黒色腫皮膚がんの発現率も、TNF阻害薬群よりトファシチニブ5mg群および10mg群で高かった。 有効性は3群で同等であり、2ヵ月目から認められた改善は試験終了まで持続した。

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新型コロナ、スーパースプレッダーとなりうる人の特徴/東京医科歯科大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、すべての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者がとくに感染を広げていくことが知られる。東京医科歯科大学の藤原 武男氏らによるRT-PCR検査によるウイルスコピー数を用いたCOVID-19入院患者の後ろ向き解析の結果、3つ以上の疾患の既往歴および、糖尿病、関節リウマチ、脳卒中の既往がスーパースプレッダーのリスク因子となることが示唆された。Journal of Infection誌オンライン版2021年12月30日号にレターとして掲載の報告より。 2020年3月~2021年6月に、中等症から重症のCOVID-19で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも1回以上RT-PCR検査が行われた患者が解析対象とされた。入院患者の電子カルテの情報を基に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・がん・慢性腎不全・脳卒中・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーといった基礎疾患の有無とウイルスコピー数について関連が調査された。 主な結果は以下の通り。・計379例が適格となり、解析対象とされた。年齢中央値は59歳で、約33%が女性だった。・PCRテスト回数の中央値は2(1~26)回。複数回PCRテストを実施した患者の90%以上で、ウイルス量は1回目または2回目でその個人の最大値を示した。・約59%に基礎疾患があり、約21%に3つ以上の基礎疾患があった。・基礎疾患について詳細は、高血圧症が38.5%、糖尿病が21.6%、がんが18.7%、脂質異常症が18.5%、呼吸器疾患が10.8%、心疾患が9.0%、高尿酸血症が7.7%、慢性腎臓病が6.6%、脳卒中が5.0%、関節リウマチが2.1%だった。・1人を除きワクチンは未接種だった。・性別、年齢、喫煙状況について調整後の多変量回帰分析の結果、上記基礎疾患を3つ以上重複して有する患者では、基礎疾患のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍(95%信頼区間[CI]:5.5~1380.1)高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・また、関節リウマチ患者では1659.6倍(95%CI:1.4~2041737.9)、脳卒中患者では234.4倍(95%CI:2.2~25704.0)倍、糖尿病患者では17.8倍(95%CI:1.4~ 223.9)ウイルスコピー数が高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・入院時の血液検査結果における血小板数とCRPレベルの低さも、ウイルスコピー数の多さと関連していた。 著者らは、軽症患者が解析に含まれていない点、変異株による影響が不明な点等の本研究の限界を挙げたうえで、基礎疾患の有無や検査値などの入院時に得られる情報に基づき、スーパースプレッダーとなる可能性の高い患者に対しては、とくに感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示されたとまとめている。

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コロナ疑似症患者の扱いは?感染状況に応じた外来診療の考え方/厚労省

 オミクロン株への急速な置き換わりが進み、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が急拡大する中、一部地域ではすでに発熱外来の電話がつながらない、予約が取れないといった状況が生じている。そのような状況を鑑み、厚生労働省では1月24日に事務連絡1)を発出。「診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合」および「外来医療のひっ迫が想定される場合」に分けて、自治体(都道府県又は保健所設置市)の判断で行うことができる対応について示した。診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合 上記に該当する場合には、自治体の判断で、以下(1)~(3)の対応を行うことが可能。(1)発熱等の症状がある場合でも、重症化リスクが低いと考えられる方(※1)については、医療機関の受診前に、抗原定性検査キット(※2)等で自ら検査していただいた上で受診することを呼びかけること。この場合に、医師の判断で、受診時に再度の検査を行うことなく、本人が提示する検査結果を用いて確定診断を行って差し支えない。 ただし、本人が希望する場合には検査前でも医療機関への受診は可能であることや、症状が重い場合や急変時等には速やかに医療機関を受診するよう、併せて呼びかけること。また、重症化リスクが高い方については、これまでどおり医療機関を受診していただき、適切な医療が受けられるようにすること。※1:たとえば、40歳未満で危険因子(基礎疾患・肥満等(注))を持たない、ワクチン2回接種済みの方を対象とすることが考えられる。臨床データ等を踏まえ、自治体において対象を変更することは差し支えない。(注)「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.1版」において、新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち重症化しやすいのは、基礎疾患等のある方として慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満のある方、喫煙、一部の妊娠後期の方があげられている。※2:抗原定性検査キットを用いる場合、検査結果が陰性であっても、症状が継続する場合等は医療機関を受診することや、検査結果が陽性の場合は、受診時に医師に提示できるよう、スマートフォン等を用いて画像として保存しておく等検査結果が分かるものを手元に残しておくことを併せて呼びかけるとともに、(2)の電話診療・オンライン診療をできるだけ活用すること。 抗原定性検査キットについては、有症状者が対象となりうることを踏まえ、下記を参考に自治体において対応をお願いする。なお、事業者等への委託を行う場合は、行政検査として、配布に当たって生じる委託料を感染症予防事業費負担金の対象とすることが可能である。・自治体等から有症状者に抗原定性検査キットを事前に配付する・医療機関で対象者に検査キットのみを配布する・事業者等に委託して「抗原定性検査キットセンター」等を設置して、当該センターで検査キットを配布する・自治体の庁舎等に検査キット配布窓口を設置して、検査キットを配布する この他、従前より、本人が薬局から購入し自宅に備え付けているものや自治体等から配布されたものがあれば、それを活用することが考えられるところ、地域の状況を踏まえた対応をしていただきたい。(2)地域の診療・検査医療機関以外の医療機関の協力も得て、電話診療・オンライン診療の遠隔診療を積極的に活用すること。 (3)同居家族などの感染者の濃厚接触者が有症状となった場合には、医師の判断により検査を行わなくとも、臨床症状で診断すること(※3)。 こうした場合でも、経口薬など治療薬の投与が必要となる場合等は、医師の判断で検査を行うことが可能であること。※3:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」)第12条第1項に基づく医師の届出に当たっては、疑似症患者として届け出ること。また、疑似症患者の場合には、入院を要すると認められる場合に限り当該届出を行うこととされているが、本対応を行う場合には、入院以外の場合であっても、届出をお願いすること。この場合、「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(令和3年11月30日付け(令和4年1月24日一部改正)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡2))Vの取扱いに従って届け出ること。外来医療のひっ迫が想定される場合 地域において外来医療のひっ迫が想定される場合には、自治体の判断で、以下の対応を行うことが可能。・症状が軽く重症化リスクが低いと考えられる方について、自らが検査した結果を、行政が設置し医師を配置する健康フォローアップセンターに連絡し、医療機関の受診を待つことなく健康観察(※)を受けること。※ITを活用した双方向による健康観察を行うことを想定(症状が悪化した場合、患者が入力した情報からその状況をシステム上で把握)。さらに、体調悪化時には必ず繋がる連絡先を伝えること。また、この場合、同センター等の医師が感染症法第12条第1項に基づく届出を行うこととなる。

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咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例【Dr.山中の攻める!問診3step】第10回

第10回 咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例―Key Point―咳は重大な疾患の一つの症状であることがある詳細な問診、咳の持続時間、胸部レントゲン所見から原因疾患を絞り込むことができる慢性咳に対するアプローチを習得しておくと、患者満足度があがる症例:45歳 男性主訴)発熱、咳、発疹現病歴)3週間前、タイのバンコクに出張した。2週間前から発熱あり。10日前に帰国した。1週間前から姿勢を変えると咳がでる。38℃以上の発熱が続くため紹介受診となった。既往歴)とくになし薬剤歴)なし身体所見)体温:38.9℃ 血圧:132/75mmHg 脈拍:88回/分 呼吸回数:18回/分 SpO2:94%(室内気)上背部/上胸部/顔面/頭部/手に皮疹あり(Gottron徴候、機械工の手、ショールサインあり)検査所見)CK:924 IU/L(基準値62~287)経過)胸部CT検査で両側の間質性肺炎ありCK上昇、筋電図所見、皮膚生検、Gottron徴候、機械工の手、ショールサインから皮膚筋炎1)と診断された筋力低下がほとんど見られなかったので、amyopathic dermatomyositis(筋無症候性皮膚筋炎)と考えられるこのタイプには、急性発症し間質性肺炎が急速に進行し予後が悪いことがある2)本症例ではステロイドと免疫抑制剤による治療を行ったが、呼吸症状が急速に悪化し救命することができなかった◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!急性の咳(<3週間)では致死的疾患を除外することが重要である亜急性期(3~8週間)の咳は気道感染後の気道過敏または後鼻漏が原因であることが多い慢性咳(>8週間)で最も頻度が高い原因は咳喘息である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】緊急性のある疾患かどうか考えよう咳を伴う緊急性のある疾患心筋梗塞、肺塞栓、肺炎後の心不全悪化重症感染症(重症肺炎、敗血症)気管支喘息の重積肺塞栓症COPD (慢性閉塞性肺疾患)の増悪間質性肺炎咳が急性発症ならば、心血管系のイベントが起こったかをまず考える心筋梗塞や肺塞栓症、肺炎は心不全を悪化させる心筋梗塞や狭心症の既往、糖尿病、高血圧、喫煙、脂質異常症、男性、年齢が虚血性心疾患のリスクとなる3つのグループ(高齢、糖尿病、女性)に属する患者の心筋梗塞は非典型的な症状(息切れ、倦怠感、食欲低下、嘔気/嘔吐、不眠、顎痛)で来院する肺塞栓症のリスクは整形外科や外科手術後、ピル内服、長時間の座位である呼吸器疾患(気管支喘息、COPD、間質性肺炎、結核)の既往に注意するACE阻害薬は20%の患者で内服1~2週間後に咳を起こす【STEP3-1】鑑別診断:胸部レントゲン所見と咳の期間で行う胸部レントゲン写真で肺がん、結核、間質性肺炎を確認する亜急性咳嗽(3~8週間)の原因の多くはウイルスやマイコプラズマによる気道感染である細菌性副鼻腔炎では良くなった症状が再び悪化する(二峰性の経過)。顔面痛、後鼻漏、前かがみでの頭痛増悪を確認する百日咳:咳により誘発される嘔吐とスタッカートレプリーゼが特徴的である2)【STEP3-2】鑑別診断3):慢性咳か否か8週間以上続く慢性咳の原因は咳喘息、上気道咳症候群(後鼻漏症候群)、逆流性食道炎、ACE阻害薬、喫煙が多い上記のいくつかの疾患が合併していることもある咳喘息が慢性咳の原因として最も多い。冷気の吸入、運動、長時間の会話で咳が誘発される。ほかのアレルギー疾患、今までも風邪をひくと咳が長引くことがなかったかどうかを確認する非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB:non-asthmatic eosinophilic bronchitis)が慢性咳の原因として注目されている3)上気道咳症候群では鼻汁が刺激になって咳が起こる。鼻咽頭粘膜の敷石状所見や後鼻漏に注意する夜間に増悪する咳なら、上気道咳症候群、逆流性食道炎、心不全を考える【治療】咳に有効な薬は少ないハチミツが有効とのエビデンスがある4)咳喘息:吸入ステロイド+気管支拡張薬上気道咳症候群:アレルギー性鼻炎が原因なら点鼻ステロイド、アレルギー以外の原因なら第一世代抗ヒスタミン薬3)逆流性食道炎:プロトンポンプ阻害薬<参考文献・資料>1)Mukae H, et al. Chest. 2009;136:1341-1347.2)Rutledge RK, et al. N Engl J Med. 2012;366:e39.3)ACP. MKSAP19. General Internal Medicine. 2021. p19-21.4)Abuelgasim H, et al. BMJ Evid Based Med. 2021;26:57-64.

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日本におけるコミュニティレベルの学力と認知症リスク

 コミュニティレベルの学力と認知症リスクとの関連は、あまり知られていない。浜松医科大学の高杉 友氏らは、認知症発症リスクに対し、コミュニティレベルでの低学歴の割合が影響を及ぼすかについて、検討を行った。また、都市部と非都市部における潜在的な関連性の違いについても、併せて検討した。BMC Geriatrics誌2021年11月23日号の報告。 日本老年学的評価研究(JAGES)より、2010~12年にベースラインデータを収集し、6年間のプロスペクティブコホートを実施した研究のデータを分析した。対象は、7県16市町村のコニュニティ346ヵ所の身体的および認知機能的な問題を有していない65歳以上の高齢者5万1,186人(男性:2万3,785人、女性:2万7,401人)。認知症発症率は、日本の介護保険制度から入手したデータを用いて評価した。教育年数を9年以下と10年以上に分類し、個々の学力レベルをコミュニティレベルの独立変数として集計した。共変量は、まず年齢および性別を用い(モデル1)、次いで収入、居住年数、疾患、アルコール、喫煙、社会的孤立、人口密集度を追加した(モデル2)。欠落データに対する対処として、複数の代入を行った。コミュニティおよび個人における2つのレベルでの生存分析を実施し、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の認知症の累積発症率は、10.6%であった。・教育年数が9年以下であった平均割合、40.8%(範囲:5.1~87.3%)であった。・コミュニティレベルでの低学力は、認知症発症率の上昇と有意な関連が認められた(HR:1.04、95%CI:1.01~1.07)。・個人の教育年数と共変量で調整した後、低学歴による認知症リスクの上昇は10ポイントと推定された。・非都市部では有意な関連性が認められたが(HR:1.07、95%CI:1.02~1.13)、都市部では認められなかった(HR:1.03、95%CI:0.99~1.06)。 著者らは「コミュニティレベルでの学歴の低さは、そうでない地域と比較し、高齢者の認知症発症リスクが高く、非都市部では有意な関連が認められた。そのため、認知症予防の観点から、とくに都市部以外の地域において青年期の教育を確保することは、極めて重要な課題であると考えられる」としている。

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第94回 喫煙者はより孤立して孤独になっていく

英国イングランドを代表する50歳以上の8,780人を12年間追跡したところ喫煙者は齢を重ねるほどに非喫煙者に比べてより社会的に孤立して孤独になっていました1,2)。孤立して孤独な人ほど喫煙することが先立つ試験で示されていますが、今回の試験は喫煙のせいで孤立や孤独の度合いがどうやら深まっていくことを初めて明らかにしました1)。喫煙は社交の助けになるとの主張を今回の結果は支持していません。むしろその逆で、非喫煙者に比べて喫煙者は家族や友人との交流をより失っていき、近所付き合いや趣味がより乏しくなり、一人で住むことが多くなります。そのような傾向は年齢、性別、貧困や社会的地位を考慮しても認められました。推移を追った今回の観察試験では喫煙と孤立や孤独の関連の原因を突き止めることはできていませんが、喫煙で身体が傷むことで出不精になってしまうことがその一因かもしれません。喫煙は息切れ、肺や心臓などの病気を生じやすくし、その結果社交が途絶えがちなる恐れがあります。または、喫煙で生じ易くなる不安やうつなどの精神の不調が人との関わりを減らしているとも考えられます。あるいは、喫煙者の友人もまた喫煙者であることが多く、ゆえに早く死んでしまって寂しくなっていくのかもしれません。社会が喫煙を相容れなくなりつつあること、とくに間接喫煙の害を減らすための禁煙の決まりが広がっているなどの環境要因の寄与もありそうです。今後の試験で喫煙が孤立/孤独を招く原因を調べる必要がありますが、ともあれ喫煙が社交を促すという考えはおよそ正しくないようです2)。すでに判明している身体への数々の悪影響に加えて喫煙が気の持ちようや社会生活も害しうることを示唆した今回の試験結果が新年に際して禁煙を誓う人のそのいっそうの動機づけとなることを研究者は望んでいます1)。参考1)New findings suggest smoking increases social isolation and loneliness / Imperial College London2)Philip KE, et al.Lancet Reg Health Eur. 2022 Jan 2. [Epub ahead of print]

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心血管疾患2次予防にインフルエンザワクチンは必要か

 急性冠症候群の治療期間中における早期のインフルエンザワクチン接種によって、12ヵ月後の心血管イベント転帰改善が示唆された。本研究は、スウェーデン・Orebro UniversityのOle Frobert氏らにより欧州心臓病学会(ESC 2021)にて報告された。Circulation誌2021年11月2日号に掲載。 実施された国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験(IAMI trial)は、2016年10月1日~20年3月1日の4シーズンに8ヵ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ラトビア、英国、チェコ、バングラデシュ、オーストラリア)30施設で参加者を登録。急性心筋梗塞(MI)または高リスクの冠動脈疾患患者を対象に、入院から72時間以内にインフルエンザワクチンまたはプラセボを接種する群に1:1でランダムに割り付けた。 なお、過去12ヵ月間にインフルエンザワクチン接種を受けた者、入院したシーズン中にワクチン接種を受ける意思がある者は除外された。 主な結果は以下のとおり。・試験には2,571例が参加し、ワクチン群1,272例、プラセボ群1,260例に割り付けられた。 ・登録患者の平均年齢は59.9±11.2歳で、女性18.2%、男性81.8%だった。また喫煙者が35.5%含まれ、21.1%が糖尿病を合併していた。両群に有意な差はなかった。・参加者のうち、1,348例(54.5%)がST上昇型心筋梗塞、1,119例(45.2%)が非ST上昇型心筋梗塞、8例(0.3%)が安定冠動脈疾患で入院していた。・主要評価項目である12ヵ月後の全死亡、MI、ステント血栓症の複合発生率は、プラセボ群7.2%(91例)に対し、ワクチン群では5.3%(67例)と有意にリスクが低下した。(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.52~0.99、P=0.040)。・それぞれの発生率について、全死亡はワクチン群2.9%(37例)vs.プラセボ群4.9%(61例)、心血管死はそれぞれ2.7%(34例)vs. 4.5%(56例)で、いずれのリスクもワクチン群で有意に低下した(全死亡のHR:0.59、95%CI:0.39~0.89、p=0.010/心血管死のHR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.014)。・MIの発生率はワクチン群2.0%(25例)vs.プラセボ群2.4%(29例)で両群に有意な差はなかった(HR:0.86、95%CI:0.50~1.46、p=0.57)。 この結果により、研究者らは心血管疾患患者における毎年の季節性インフルエンザワクチン接種の重要性を強調している。 なお、本試験は登録患者4,400例を目標にしていたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で、目標の58%が登録された時点(2020年4月7日)でデータ安全監視委員会(DSMB)により早期中止された。

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統合失調症の死亡率と関連するリスク因子

 統合失調症患者の死亡率に関連する因子を調査するため、トルコ・コジャエリ大学のHilmi Yasar氏らは、10年間のフォローアップ調査を実施した。Turk Psikiyatri Dergisi誌2021年秋号の報告。 2004~08年に大学病院の精神科を受診し、外来および/または入院にて治療を受けた統合失調症患者の記録を検索し、2018年末までの生存率を算出した。その結果は、同一期間の一般集団におけるすべての原因による死亡率と比較した。また、統合失調症患者の死亡率に影響を及ぼすリスク因子についても調査した。統合失調症の平均寿命は男性66.6歳、女性77.6歳と差が認められた 統合失調症の死亡率に関連する因子を調査した主な結果は以下のとおり。・登録された統合失調症患者626例のうち506例を本検討に含めた。・統合失調症患者の10年間の死亡率は10.6%、死亡時の平均年齢は53.1歳であった。・統合失調症患者の全体的な平均寿命は73.4歳であり、男性66.6歳、女性77.6歳と差が認められた。また、喫煙者の平均寿命は64.7歳、非喫煙者は76.5歳であった。・統合失調症患者の全体的な標準化死亡比(SMR)は3.7、男性3.9、女性3.3であった。・統合失調症患者の死亡に関連するリスク因子は、高齢、男性、喫煙者、無職、早期発症であった。 著者らは「統合失調症患者の死亡リスクに対し、喫煙は重大なリスク因子である。禁煙プログラムを優先し、患者が参加できるリハビリテーションサービスを支援することにより、死亡リスク減少が期待できるであろう」としている。

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未診断のCOPDを放置しないで!早期診断・治療に質問票の活用も

 先日、アストラゼネカが「世界COPDデー(11月17日)」にセミナーを開催した。室 繁郎氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座 教授)が、要介護の前段階“フレイル”の予防という視点から、COPDの早期診断・治療の重要性についての講演を行った。つづいて、山村 吉由氏(奈良県広陵町町長)が自治体として2014年度から取り組んでいるCOPD対策事業について講演した。また、セミナーの後半では、3年前にTV番組でCOPDの診断を受けた経験のある松嶋 尚美氏をゲストとして、トークセッションが設けられた。COPDによる死亡者は気管支喘息の約14倍 室氏は、はじめに正常肺組織の電子顕微鏡写真を示し、長期の喫煙が正常な肺にどのように影響を及ぼすのかを図示。COPDに生じる肺気腫や慢性気管支炎・細気管支病変などの病態を説明した。正常肺では、肺胞隔壁は弾性繊維を豊富に含み、吸気において肺は横隔膜筋の収縮により主に頭尾方向に伸長し、呼気では肺自身の弾性収縮力により呼気位に戻る。しかし、COPDでは肺の弾力性が失われており、呼気の気道の虚脱も生じるため、「頑張るほど息が吐けない(胸郭内圧が上昇すると気道虚脱を招いて呼出に時間が掛かる)」状態になるという。 また、COPDに罹患すると肺がん、心不全、心筋梗塞・狭心症、高血圧症、骨粗しょう症、糖尿病、不整脈、消化性潰瘍、胃食道逆流症、うつ病などが併存するリスクが上昇することがガイドラインに記載されている。2020年の人口動態統計では、わが国のCOPDによる死亡者数は1万6,125例で、気管支喘息による死亡者の約14倍だった。とくに男性では死亡原因の第10位となっている。 NICE studyで調査された日本のCOPD有病率は、日本人の全人口あたりでは8.6%だが、喫煙歴(過去も含む)のある高齢者を対象としたデータでは、60歳で15~20%、70歳を超えると35~45%がCOPDという報告もある。高齢喫煙者の5人に1人以上がCOPDを発症する一方で、GOLD日本委員会が一般人を対象に実施したCOPD認知度把握調査によると、COPDを「知らない」と答える人は7割を超えている。室氏は「COPDは、主に喫煙によって引き起こされるありふれた疾患であるにも関わらず、(一般社会や患者さんに)あまり認知されていない」と警鐘を鳴らした。COPDもフレイルも進行させないことが重要 続いて、室氏は「COPDは早期診断・早期治療が重要で、放置しておくと“フレイル”に陥ることも考えられるため、社会課題として取り組まなければいけない疾患だ」と説明。COPD患者の呼吸機能(FEV1)の経年低下は、病早期に最も大きいことをグラフで示した。なお、軽症のうちであれば、禁煙することで呼吸機能が回復する余地があるという。COPDの発症年齢の中央値は現喫煙者で55歳、過去喫煙者で65歳という疫学調査データもあるので、日本が長寿社会であることを踏まえると、早めにやめるほど健康上のメリットが大きい。 COPDによる呼吸機能障害は、身体活動性の低下や疲れやすさにつながり、ゆくゆくは筋肉の質・量の低下、栄養障害による体重減少を引き起こすなど、フレイルとの親和性が非常に高く、その進展をくい止めなければならない。室氏は、COPDやフレイルの簡易的なスクリーニングに「COPD-Q」「COPD-PS」「簡易フレイル・インデックス」など、診察室でも使える質問票の活用を勧めた。 COPDの受診勧奨を自治体として行っている山村町長は、「ハイリスクの方と治療中断者を特定し、受診勧奨のはがきを対象者に送付することで、受診率を上げることができた」と、実際の対策事例を紹介。 講演を聞いた松嶋氏は、診断後も本数は減ったものの喫煙は続いており、治療も受けていないことを明かした。「フレイルという言葉を今回初めて知ったので、COPDの治療を早く行うことが大事だと思いました。子供もいて、将来寝たきりになると困るので、すぐに受診します」と語った。また、その場でセルフチェックを行い、COPD-PSで5点だったことを踏まえ、「喫煙経験のある方はぜひ自分でチェックして、COPDの可能性がある場合は受診しましょう!」と呼び掛けた。

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新型コロナ感染のがん患者の15%に後遺症、生存率にも影響

 がん患者がCOVID-19に感染した場合の後遺症の有病率、生存率への影響、回復後の治療再開と変更のパターンを調べた研究結果が、2021年11月3日のThe Lancet Oncology誌に掲載された。 本研究は、固形がんまたは血液がんの既往歴があり、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認された18歳以上の患者を登録する欧州のレトロスペクティブ試験で、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の35施設で患者が登録された。2020年2月27日~2021年2月14日にSARS-CoV-2感染と診断され、2021年3月1日時点でレジストリに登録された患者を解析対象とした。 COVID-19による後遺症の有病率を記録し、それらの発症に関連する因子とCOVID-19後の生存率との関連を検討した。また、COVID-19診断後4週間以内に治療を受けた患者の全身性抗がん剤治療の再開についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・2,795例が登録され、2,634例が解析対象となった。1,557例のCOVID-19生存者が、がん診断から中央値22.1ヵ月(IQR:8.4~57.8)、COVID-19診断から44(28~329)日後に再評価を受けた。なお、COVID-19ワクチンを少なくとも1回接種していたのは178例(7%)に過ぎず、そのすべてがCOVID-19回復後の接種であった。・234例(15.0%)がCOVID-19による後遺症を報告し、その中には呼吸器症状(116例[49.6%])と残存疲労感(96例[41.0%])が含まれていた。後遺症は、男性(対女性:p=0.041)、65歳以上(対その他の年齢層:p=0.048)、2つ以上の併存疾患(対1つまたはなし:p=0.0006)、喫煙歴あり(対喫煙歴なし:p=0.0004)に多く認められた。後遺症は、COVID-19による入院(p

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