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「正しいからではなく自分がどう生きたいか」あるHBOC患者の選択

第6回日本HBOCコンソーシアム学術総会 市民公開講座で、患者の立場から講演を行った冨田 多香音氏に、HBOCとの向き合い方について話を伺った。 まず家族歴などの背景と乳がん診断までのプロセスについて教えてください。父方の祖母と妹が40代で乳がんを発症しており、また乳がん発症後に家族歴を調べる過程でわかったことですが、父の従妹2人が30代と40代で乳がんを、父方の叔母が50代で卵管がんを発症していました。乳がん検診は毎年受けていましたが、2011年、47歳の時に右胸のハリと右脇の違和感を覚えて、クリニックを受診したところ、5cmの腫瘍が見つかり、リンパ節にも転移していました。サブタイプ分類はトリプルネガティブでした。妹が乳がんを発症した際に家族性腫瘍を疑われていたので、漠然と自分も乳がんになるかもしれないと思っていましたが、妹の発症から1年も経たないうちに、しかも毎年検診を受けていたのにもかかわらず、発見された時にはすでに5cmもの大きさになっていたことにショックを受けました。その後、どのようなプロセスで遺伝性乳がん卵巣がん症候群(以下HBOC)と向き合っていかれたのでしょうか?まず、聖路加国際病院で半年間の術前化学療法を受けました。治療当初は抗がん剤の有効性や副作用、そして治療と仕事の両立などで頭がいっぱいで、HBOCや遺伝カウンセリングについて説明はありましたが、そこまで考える余裕はありませんでした。化学療法終了後、術式決定の参考になるかもしれないからと主治医から再度勧められたため、遺伝カウンセリングを受けることにしました。カウンセリング前に自分でもHBOCについて勉強しようとたくさんの本を読みあさりましたが、どの本にも情報が少なく、リスク低減手術に関しては、判で押したように「日本では一般的ではない」と書かれているのみでした。ここで、私は「本はダメだ。インターネットなら何か出ているかもしれない」と思い、インターネットで調べました。すると、ようやく2つの有用な情報が見つかりました。1つ目はNCCN ガイドラインでした。医療者ではない私には、どこを読めば良いかわからなかったため、ガイドラインをすべて読みました。そして、その中に「BRCA遺伝子変異陽性の場合にはリスク低減手術を検討すべき」という記述を見つけました。そして2つ目はHBOC患者であるアメリカ人女性の手記です。そこには遺伝子検査から治療、リスク低減手術までの過程が詳しく書かれていました。アメリカでは10年も前からリスク低減手術が行われているのに、なぜ日本ではほとんど行われていないのか、不思議に思った覚えがあります。遺伝カウンセリングを受けてよかったことは何でしょうか?正しい情報を得られたことはもちろんですが、最もよかったことは将来への希望を得られたことです。遺伝カウンセリングを受けるまでは、費用が高いことやそのメリットがわからなかったので、遺伝子検査を受けようとは思っていませんでした。しかし、カウンセリングの中で、BRCA遺伝子変異陽性の場合には重点的にフォローを受けられること、現在治験中の薬剤があること、リスク低減手術は乳がんの手術と同時に受けられることがわかり、カウンセリング室から出るときには、すでに遺伝子検査を受けることを決めていました。遺伝子検査の結果から、すぐにリスク低減手術を受けることを決断できましたか?検査結果が出る前から、陽性の場合には卵巣・卵管のリスク低減手術は受けようと決めていました。なぜなら36歳で卵巣のう腫の手術を受けたとき、がんのマーカーの値が非常に高く卵巣がんが疑われたことがあり、卵巣がんの怖さを知っていたからです。一方、対側の乳房切除については、とても迷いました。ただ、時間的猶予はそれほどなく、手術日がすでに決まっていたため、遺伝子検査から結果が出るまでの約1週間で決断する必要がありました。これまでの人生の決断と同様に、メリットとデメリットを紙に書き出して整理してみたものの、頭の中でぐるぐる回って自力では決断することができなかったため、友人にたくさん話を聞いてもらいました。また、形成外科の先生に乳房再建について相談した際に「片方だけ再建するよりも両方再建するほうが仕上がりがきれいになる」と言われ、それまで見た目のことまで意識が向いていなかったため、目から鱗が落ちました。最後まで自分の中でひっかかっていたのは、まだ病気になっていない部分を切除することが倫理的にどうなのかという点でしたが、自分の好きなように決めていいのだなと、先生の言葉で肩の力が抜けた気がしました。最終的には、元気に過ごせる時間をできるだけ長く維持したいという気持ちが大きく、右側の乳がん切除手術の際に、対側の乳房と卵巣・卵管も予防的に切除することにしました。遺伝子検査の結果は、予想どおり陽性でしたが、「やっぱり」という気持ちが大きく、悲しいという気持ちは湧いてきませんでした。むしろがんの原因がわかってすっきりしたことを覚えています。乳がん告知を受けてから現在までを振り返っていかがですか?HBOCの情報に触れ、遺伝カウンセリングを受ける機会に恵まれ、すべての偶然が重なって今の自分があります。適切な病院選びを始め、それぞれのポイントで1つでも違う選択をしていたらここにいることはないと思います。適切なタイミングで適切なアドバイスをしてくださった医師および医療関係者、そして私の話を根気強く聞いてくれた家族、友人に感謝しています。私がHBOCと診断された頃と比較すると、日本でもHBOCを診療する施設が増え、入手できる情報も増えてきました。ただ、実際にリスク低減手術を受けた当事者の経験が聞ける機会はほとんどないようです。そのため、BRCA遺伝子変異陽性の方から「リスク低減手術を受けてどうだったのか?」と相談や質問を多く受けます。そのような方々のために自分の経験をお話しすることで、少しでも不安を軽減できたらと思っています。最後にHBOCを診療する先生へメッセージをお願いします。私自身、正しい情報から自分の状況を客観的に把握でき、将来への希望を持つことができたので、遺伝カウンセリングを受けて本当によかったと感じています。ただ、患者さんは目先の治療のことで頭がいっぱいで、遺伝について考える余裕がないことも多いと思います。ですので、患者さんの気持ちの余裕があるタイミングで、複数回にわたってカウンセリングを勧めていただければ幸いです。また、カウンセリングを受けやすい態勢も重要だと思います。HBOCは一生付き合っていかなければならない疾患なので、患者さんが望むときに客観的な情報が得られる窓口があると、多くの患者さんに安心感を与えられるのではないでしょうか。【インタビューを終えて】HBOCという疾患を抱えつつも、現実を受け止め、力強く前向きに生きる姿に勇気付けられた。今後、医療技術の発展に伴い遺伝医療を受ける患者さんが増えていくことが予想されるが、日本ではまだ遺伝医療に対する理解が十分であるとは言えない。科学的な知識を踏まえつつ、患者さん一人ひとりの価値観を最大限尊重し、その価値観に沿った意思決定が行えるよう手助けをすることが重要であると、今回のインタビューを通じて感じた。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第51回

第51回:予後を正確に知るとQOLが下がる? …コミュニケーションの話キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちらこんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。最近うちの科の抄読会で話題になったのはJournal of Clinical Oncology…JCOですね。あのTemelさん、2010年に、New England Journal of Medicineに、Massachusetts General Hospitalで行われたRandomized Trialで、早期から緩和ケアが介入したほうが、QOLが上がるだけではなく予後も2~3ヵ月、StageIVの肺がん患者で伸びたといって、ずいぶん話題になったんですけど…その筆頭著者のJennifer Temel先生が書いた「予後を正確に知った患者さんのほうが、QOLが下がる」という、少し衝撃的な論文がJCOに出ていました。たとえばStageIVの患者さんに僕らはよく、「残念ながら、がんの状況はNon Curable…治癒をゴールした状況ではありません。ただ、がんはコントロールできるかもしれないし、抗がん剤を使うことで症状を防いだり(症状が)出てくるのを遅らせ、QOLを維持することができる可能性が高いので治療しましょう」という説明をするんですけども。そのNon Curable Cancer、「自分のがんが治るわけではない」ということがわかった患者さんのほうが、QOLのスコアは下がると(いうことです)。今まで多くの緩和医療のStudyでは、予後を告知したり、そういう話題に対してしっかりと向き合うことは必ずしもQOLには影響しない、むしろ準備ができて悪いことはない、という感じの論調が多かったんですけども。今回のStudyでは、QOLのスコアが少し低く出たと報告されていました。正確に自分のがんの状態を理解するというのは…「正確に」とは何を意味するのか…本当に難しいですよね。肺がんについて、統計学的な数値をわかることが正確に理解したことになるのか? そうではないですよね。1人の患者さんはそれぞれ違うので、統計学的なことを知っても、ご本人がそれに当てはまるかどうかというのは、まったく別の話なので。そういう意味では問題提起というか、議論のネタになる良い論文だったと思います。興味があれば、読んでいただくと非常に参考になると思います。あと、フェローに「これは絶対必読だからベッドタイムリーディングで読みなさい」ってみんなに勝手に送りつけたんですけれども、ASCOのコミュニケーションガイドラインが出ました。「こういう家族がいたらどのように説明するか」「こういう患者さんがいたら、家族がいたら、どうサポートするのが良いのか」、本当によく書かれています。細かいところまで配慮してrecommendationを入れているのだなと、編集委員の方の苦労が伝わってくるような、非常に良いガイドラインだと個人的には思います。これもチャンスがあれば読んでいただけると非常に良いと思います。僕はフェローに「絶対読め」と言いましたけど。コミュニケーション能力については僕も興味があり、今度ワークショップに参加することになりました。Atul Gawandeというハーバード大学の外科医がいるのですが…皆さんも本を読まれたことあるかもしれないですが、『Being Mortal』という本を出されていて日本語訳にもなっているんですけども…彼は医療の質を上げるようなシンクタンク(?)そういう組織のトップになっていて、コミュニケーションだけではなく、チェックリストを作ることで、いかにComplicationを減らす…『Complications』という題の本を出しているんですね…手術のエラーとか、あるいは医療のミスをどうやったらコントロールできるのか、ということに興味を持たれている外科医です。非常に暖かい人で、何年か前の緩和ケアの学会で、『Being Mortal』が出たときに、本にサインしてもらうために並んだ記憶があります。彼が今やっているプロジェクトの1つ、SICG(Serious Illness Conversation Guide)では、重篤な病状の患者さんあるいは家族と、どのようにコミュニケーションを取るのが良いのかということについて、いろいろと模索をしています。そのSerious Illness Conversation Guideのワークショップに、科を代表して数人の同僚と一緒に参加します。そこでは、どういうシナリオを使って、フェローにあるいはレジデントにコミュニケーションの大切さを伝えるか、ということについて研修を積んでくる予定です。この話もぜひ(次回以降お話し)できたらと思うので、がんばって吸収してきます。Jennifer S. Temel JS, et al.Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer.N Engl J Med. 2010;363:733-742.Nipp RD, et al. Coping and Prognostic Awareness in Patients With Advanced Cancer.J Clin Oncol.2017 ;35:2551-2557. Gilligan T, et al.Patient-Clinician Communication: American Society of Clinical Oncology Consensus Guideline.J Clin Oncol.2017;35:3618-3632. Atul Gawande著 Being MortalAtul Gawande著 ComplicationAtul Gawande著 The Checklist Manifesto: How To Get Things RightThe Conversation Project

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【JSMO2017見どころ】緩和・支持療法

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。 このうち、「緩和・支持療法」については西森 久和氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科 助教)が登壇した。以下、西森氏のコメントと注目演題を紹介する。【西森 久和氏コメント】 緩和・支持療法とは、がんに伴うさまざまな苦痛や症状、抗がん薬の副作用などを和らげるための治療である。がんを告知された患者さんは、がんに伴う痛みだけでなく、精神的にも不安やいらだちを感じ、社会的にも仕事を継続できなくなるなどの問題を抱えており、医療者は「苦痛」を全人的に捉えたうえで、サポートをしていく必要がある。がん対策基本法での緩和ケアの推進により、よりよい緩和医療が提供されるようになってきているが、いまだ不十分な点も多いのが現状といえる。本学会では、最新の緩和ケアに関するトピックスに加え、現状を直視したうえでよりよい方向性を見出すためのシンポジウムを数多く準備している。 医学の進歩により、さまざまな抗がん薬が開発され、それに伴う副作用も多様化している。一般的な抗がん薬による治療のイメージは、吐き気や嘔吐がつらい、脱毛など美容上の問題がある、などネガティブなものが多いかと思われるが、新しい制吐薬の開発など支持療法の分野も進歩しており、より効果的な抗がん薬をより安全に、やさしく患者さんに投与できる時代になってきている。本学会では支持療法に関しても、エビデンスに基づき患者さんの生活の質を保つことのできる情報を多く提供する予定である。 また、会期中神戸国際会議場では「患者・家族向けプログラム~いつでも、何処でも、最適のがん医療を受けるために~」が開催され、その模様がJunko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)でライブ中継される。各日午後には、両会場で相互交流を図る患者発のプログラムが予定されており、医療者にとっても「患者目線」を知ることができる機会となっている。 【注目演題】合同シンポジウム(日本緩和医療学会 / 日本臨床腫瘍学会)「緩和ケアに関わるガイドラインの変更と解説」日時:7月28日(金)10:20~12:20場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)セミプレナリーセッション「「予後2年」の望ましい伝え方:どのようながん患者がどのような台詞を好むか?」日時:7月29日(土)8:20~10:20場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)シンポジウム「症状スクリーニングと緩和治療―早期からの緩和ケアを目指して―」日時:7月27日(木)14:50~16:30 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―論拠に基づいた実践を目指して」日時:7月28日(金)8:20~10:20場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―人材を養成する体制から在り方を問う」日時:7月28日(金)10:20~12:20 場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)「Whole Person Care 〜 Care for cancer patients 〜」日時:7月28日(金)17:00~18:30 場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)「チームで取り組む分子標的薬の副作用マネジメント 患者へベネフィットをもたらす支持療法」日時:7月29日(土)10:20~12:20 場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「外来がんリハビリテーション エビデンス&プラクティス」日時:7月29日(土)15:00~17:00場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)ワークショップ「緩和ケア病棟転院時の患者・家族の見捨てられ感について~安心して転院できますか」日時:7月27日(木)9:20~11:00 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)「がん治療中の患者の decision making のサポート―がん治療する?しない?―」日時:7月27日(木)13:00~14:40 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)教育講演「がん患者とのコミュニケーション」日時:7月27日(木)14:00~14:30場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「緩和ケアにおける EBM」日時:7月29日(土)9:20~9:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん化学療法後のB型肝炎ウイルス再活性化のリスクとその対策」日時:7月29日(土)9:50~10:20 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん連携における在宅支持療法」日時:7月29日(土)10:20~10:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がんのリハビリテーション」日時:7月29日(土)10:50~11:20 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん患者の家族へのサポート」日時:7月29日(土)11:20~11:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科 特任教授)■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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第2回 患者の理解を妨げている要因【患者コミュニケーション塾】

なぜあなたの話は患者に伝わらないのか?情報化の時代を迎えた1990年代半ば、いわゆる「がん告知」が当たり前になり、今では余命も含めてすべての情報を患者に伝える時代へと変化しました。患者は病状や治療法について詳しい説明を受け、その内容を理解する努力をしたうえで、どのような治療を受けるかを選ばなければなりません。しかし、「患者」と一言にいっても全員を一括りにできるわけではなく、元々持っている情報や知識、理解力などは人によってさまざまです。「誰でも一律に理解、選択ができるわけではない」ということを踏まえて、医師をはじめとする医療者の皆さんには、患者が理解するためのサポートをしていただきたいと思っています。では、医療現場でよくみられる、患者の理解を妨げている要因とは何なのでしょうか。以前からよく挙げられる患者の苦情として、「最近の先生はパソコンばかり見て、患者の目を見ない」というものがあります。電話相談でも「私は担当医の真正面の顔を見たことがないので、横顔しか知りません」という声が届いたこともあるくらいです。私はこの苦情を医師の態度に対する不満だとずっと考えていました。ところがある高齢の方から「高齢になると耳から入ってきた言葉が頭の中で繫がるのに時間がかかる。それなのに、あらぬ方向(パソコン)を見て説明されると、自分の問題だという認識すらできず、理解のスタートラインにすら立てない」という話を聞いたのです。きちんと目を見て話してくれないというのは、単に態度への不満というだけではなく、理解を妨げている要因の1つなのだと教えられました。長時間かけて説明すればよいのかまた、最近は病状の説明や治療方針を決定する際に、1時間以上の長時間をかけて説明してくれる医師も増えています。しかし、患者はシビアな病状であることを聞いたり、ショックを受けたりすると、途中で頭の中が真っ白になってしまい、いくら医師が一生懸命説明しても、内容がまったく頭に入って来なくなってしまうのです。即結論を出さなくてもよい状況であれば、たとえば話を2回に分けて、最初は概要を10分ほどで伝え、患者が精神的に落ち着いたところで、後日残りの50分かけてじっくりと細かい説明をする、といった工夫をすることで、より理解が深まることもあると思います。医師と患者には情報の非対称性があるばかりでなく、一般的な日本語に対してもイメージの乖離が起こりがちです。それだけに、できるだけ早い段階で情報の共有を図っていないと理解には至りません。この点については次回で詳しくお伝えしようと思います。また、説明の際、わかりやすくたとえ話をして下さる医師がいます。本当にわかりやすいたとえ話は助けになりますが、マニアックと思えるようなたとえ話をしてしまうと逆効果になってしまうこともあるので注意が必要です。“うなずき”は理解の証拠とは限らない一方、患者の側の問題として、理解できていないのにうなずいてしまう方が結構多くいます。「高齢だから理解できないと思われたくない」「何だかよくわからないけれど、うなずいていないと前へ進まない」という思いからうなずいている患者が少なからずいます。それだけに、うなずいただけで「理解しているんだ」と受け止めるのは危険だと私は思っています。患者が本当に理解したかどうか確認するために、どのように理解したのか、患者自身に言語化してもらうなどといった理解度の確認は不可欠なのではないでしょうか。

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若年性認知症の診断、どうあるべき―医師、患者の観点から

 高齢化と結び付けて考えられるのが“常識”となっている認知症。はたして本当にそうなのだろうか。先月、都内で日本イーライリリー株式会社がプレスセミナーを開催し、専門医による認知症の診断や治療をめぐる現状と課題についての講演と、若年性認知症の診断を受けた当事者が、診断を取り巻く環境や自身の体験について語るディスカッションが行われた。 登壇した日本認知症予防学会理事長の浦上 克哉氏(鳥取大学医学部 保健学科生体制御学講座・環境保健学分野教授)は講演の中で、「認知症は早期発見が非常に重要。とくに正常から認知症に至る手前の移行状態である軽度認知障害の段階で、いかに効果的に介入できるかがポイントである」と述べた。認知症は“ありふれた疾患” 今や65歳以上の4人に1人が認知症およびその予備軍と推計されている本国。具体的には、462万人(推計値)が認知症とみられ、その半数以上が未診断状態というのが現状であり、講演に立った浦上氏は「認知症はこれだけの数の予備軍が見込まれる点で、“ありふれた疾患”といえる。早期発見はもとより、いかに早期の治療とケアに結び付けていくかが重要である」と強調した。 ただ、認知症の臨床像はきわめて複雑であり、認知症の原因となる疾患は100近くあるうえ、変性疾患(アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)や脳血管性認知症などの鑑別の難しさがある。また認知症症状を来しても、甲状腺機能低下症やうつ病、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などは、早期発見により治療が見込める場合があるので、より慎重な診断が求められる。45歳で診断、「それでも生きていく」 講演に続いて行われたディスカッションでは、自ら若年性認知症の診断を受け、日本認知症ワーキンググループ共同代表や若年性認知症問題にとりくむ会・クローバー副理事長を務める藤田 和子氏が浦上氏と対談した。藤田氏は浦上氏が外来で担当する患者の1人である。 藤田氏は、45歳のときに若年性アルツハイマー病と診断された。看護師の経験や、自らが診断を受ける以前には認知症の義母の介護も経験していたため、ある程度の知識はあったものの、当時の年齢と認知症は結び付かなかったという。ただ、自分でやったことを忘れたり(朝、子供を学校に送り出したことを覚えていないなど)、それまで普通にできていたことがもたもたと時間がかかるようになったりするなど「明らかに健康な45歳が起こすことじゃない」日常の違和感を自覚したのが病院を訪れるきっかけになった。そして告知されたのが先の病名である。 藤田氏は、「苦しみの原因がわかり、ほっとした。病名の告知による不安や悲しみはもちろんあったが、それを上回るものを得られた」と当時を振り返った。一方、担当医として浦上氏にたどり着くまでには紆余曲折があり、なかには診断ができても治らないという思い込みが医師側にあり、つらい診療も経験したという。 診断から9年。社会と積極的に関わり、当事者として認知症を取り巻く環境や制度の改善を国に働きかける活動を続けている一方、当たり前と思われがちな家事を毎日こなすことは「日々、立ち向かっている感覚」だという。藤田氏は、「認知症になったとしても、それでも私たちは生きていかなければならない。診断によってすべての人生が終わるわけではなく、その後も豊かな人生はあるのだと知ってほしい」と切実な思いを訴えた。そのうえで、「まずは、異変に気付いた本人自身が病院へ行くことをためらわないでほしい。そして医療者側には認知症に対する思い込みを捨て、適切な臨床診断を行っていただけることを望んでいる」と述べた。診断の精度向上が期待されるアミロイドPET検査 本セミナーでは、認知症の早期診断の精度向上が期待される新技術「アミロイドPET検査」について、千田 道雄氏(公益財団法人先端医療振興財団 先端医療センター研究所 副所長・分子イメージング研究グループリーダー)による解説も行われた。 アルツハイマー病患者の脳には、アミロイドベータプラーク(老人斑)が沈着している。アミロイドPET検査では、このアミロイドベータに付着する放射性薬剤を注射してPETカメラで放射性同位元素の分布を撮影し、画像診断を行う。がん治療の領域ではすでにPET検査は用いられているが、認知症診断においても臨床症状や発症年齢が非定型的な認知症疑いの患者に対する診断への有用性が期待されているという。 PET検査をめぐっては放射線被曝が懸念されるところだが、千田氏によると、本検査による実効線量は、投与されたPET薬剤による内部被曝と、付随するX線CTによる外部被曝(PET/CT装置の場合)とを合わせて、約6ミリシーベルト程度であり、病院で扱う放射線検査では中程度とのことである。

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パブコメ募集「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」

 日本老年精神医学会(理事長:新井 平伊氏、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学 教授)は6月8日、都内で開いたプレスセミナーにおいて、「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」の改訂に当たり、2回目のパブリックコメントの募集を行うと発表した。コメントは学会ホームページ上で受け付けており、募集期間は6月13日午後~27日(最終日は17時まで)となっている。 今回、第2版として改訂される本ガイドラインは、2015(平成27)年度厚生労働科学特別研究事業として、日本老年精神医学会のほか、日本認知症学会、日本神経精神薬理学会、日本神経治療学会、日本認知症ケア学会、日本神経学会の会員で構成する研究班が作成したもの。2012年に初版が作成されたが、先の研究事業において、かかりつけ医500人に対して行った調査によると、本ガイドラインを参考にしている医師は約10%にとどまっていた。さらに、薬剤の使用に当たって、患者家族に同意を得ている医師は28%と低い数字であることも明らかになった。これを受けて今回は、実臨床でBPSDに対して使用される向精神薬について、その有効性と副作用について明確に記載するなどの改訂が中心となった。 第2版の作成に当たっては、改訂事項を盛り込んだドラフトに対して今年4~5月に関係6学会のホームページでパブリックコメントを募集。2回目となる今回のパブリックコメントでは、その際に寄せられた約90件の質問やコメント、それに対する研究班の見解を掲示版方式で公開し、さらなるコメントを募集する。 このたびのガイドライン改訂について、研究班の班長を務めた新井氏は、「興奮性BPSDに対しては、抗精神病薬を使わざるを得ない場合もあるが、これまでに日本人の研究データはなく、EBMだけでは片付けられない問題もある。こうした中、実臨床でかかりつけ医が抗精神病薬を処方する際の医療安全面におけるよりどころとなるような、安全性の高いガイドラインを作成したい」と述べた。パブリックコメントの募集告知はこちら

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肺がん患者に分子標的治療を説明する工夫

 2016年3月16日都内にて、「薬剤耐性獲得後の治療を決定する遺伝子検査の重要性~医師は患者にどのように説明するか~」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。肺がん治療は、分子標的薬や免疫療法の出現で大きく進歩している。患者さんにも科学的に高度な内容を理解いただき、納得のうえで治療を受けてもらうための工夫が求められている。演者である岡本 勇氏 (九州大学病院呼吸器科 診療准教授)は、分子標的薬による治療例を中心に、患者説明における工夫の一端を紹介するとともに、次世代の薬への期待を述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。遠隔転移例には予後告知まで 肺がん死亡数は年間7万人以上と、実に1時間に6~8人が命を落とす計算だ。これは、診断時点で3分の2もの症例に遠隔転移があることに起因する。それにもかかわらず、告知について国内でのコンセンサスはとれていない。同じ病院であっても、診療科や先生により異なるのが実情だ。「病名告知」「病期告知」までされていても、「予後告知」が行われていないケースもある。 もちろん、「その患者さんが何年生きられるか」はわからないが、臨床データから「同じ病気の方はこのくらい生きられる」ことは伝えられる。とくに遠隔転移がある患者さんには、告知をもとに適切な治療法を決定いただくことが重要だ。 ただし、抗がん剤治療患者における平均生存期間は1年~1年半と短く、生活の質を維持したうえで生存期間を伸ばすことが、長く求められてきた。EGFR遺伝子変異のある患者さんへの説明 分子標的治療薬の登場は生存期間を延長させた。たとえばEGFR遺伝子変異例へのEGFR-TKI投与による平均生存期間は2年~2年半である。1年以上寿命が伸びることは患者さんにとって大きな進歩といえる。 EGFR遺伝子変異のある患者さんに、治療法を紹介する手順を紹介する。 まず、患者自身のがん細胞にEGFR遺伝子変異が起こっていることを伝える。そして、ご家族に、EGFRの変異は遺伝するものではない、ということを話す。家族と共に説明を聞くケースが多いためである。また、EGFR-TKIの効果は「治療を受けた患者さんの10人中6~8人で、がんが小さくなります。効果の出ている期間はさまざまですが半年くらいで効果が無くなる方もおられますし、1年2年と続けられる方もおられます」といった形で伝えると同時に、EGFR-TKI全般にみられる間質性肺炎の副作用にも触れたうえで、最終的に患者自身に服用の有無を決断してもらう。 多くの場合、EGFR-TKIによる治療は奏効する。しかし、1年間真面目に服用したとしても、効かなくなることは多い。ところが近々、第3世代EGFR-TKIが登場し、状況は変わろうとしている。第3世代EGFR-TKIへの期待 EGFR-TKIの耐性例の約半数ではT790M耐性変異がみられることがわかっている。このT790M変異に効果を示すのが、現在開発中の第3世代EGFR-TKIである。 第3世代EGFR-TKIの使用にあたっては、耐性遺伝子の確定診断が必須であり、その手段には再生検が用いられる。再生検は患者さんの一時的な肉体的負担を伴うものの、T790M変異有無を確認することで、第3世代EGFR-TKIという新たな治療選択肢を提供できるメリットは大きく、その選択が可能な時代となったことは喜ばしい。 患者さんの腫瘍が大きくなった時に「今後の最良の治療方法を検討するために、もう一度、腫瘍細胞を採取して遺伝子検査をやってみましょう」と、提案できる日も近づいている。

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脳卒中後の超急性期リハは本当に有効か/Lancet

 脳卒中後24時間以内に開始する超急性期リハビリテーション(very early mobilization)は、介入量が多いほど、また早期であるほど3ヵ月後の良好なアウトカムのオッズ比減少と関連していることが報告された。オーストラリア・メルボルン大学のJulie Bernhardt氏らAVERT試験研究グループが、2,104例の患者について行った無作為化試験の結果、明らかにした。著者は「世界中のガイドラインで脳卒中後の早期リハが推奨されているが、われわれの検討結果は現行のガイドラインを改善して臨床に反映すべきであることを示すものであった。ただし臨床的な勧告は、さらなる用量反応関連の分析を行い告知するべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年4月16日号掲載の報告。5ヵ国56ユニットで無作為化試験、3ヵ月時点の良好アウトカム患者割合を評価 AVERT試験は、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、英国の5ヵ国56の急性期脳卒中ユニットで行われた並行群間単盲検無作為化試験で、被験者は18歳以上で、初発または再発の脳梗塞または脳出血患者であった。 生理学的基準を満たした患者を、webベースのコンピュータ生成ブロック無作為化法(ブロックサイズは6)で2群に割り付けた。一方の群は、通常の脳卒中ユニットケアのみを受け、もう一方の群には、通常ケアに加えて超急性期リハビリテーションの介入が行われた。 被験者には、遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)治療が許可され、無作為化では試験地、脳卒中の重症度による層別化も行われた。なお、患者、アウトカム評価者、試験およびデータ管理に関与した研究者には治療割り付けは知らされなかった。 主要アウトカムは、脳卒中後3ヵ月時点の良好なアウトカム(修正Rankinスケール0~2で定義)で、原則intention-to-treat解析にて評価した。通常ケア群と比べて有意に低くオッズ比0.73、死亡は1.34倍 2006年7月18日~2014年10月16日の間に、2,104例の患者を超急性期リハ群(1,054例)または通常ケア群(1,050例)に無作為に割り付けた。3ヵ月時のフォローアップ評価には2,083例(99%)が含まれた。 超急性期リハ群のうち965例(92%)が24時間以内にリハを開始していたが、通常ケア群は623例(59%)であった。 良好アウトカムを有した患者は、超急性期リハ群のほうが通常ケア群よりも有意に少なかった(480例[46%]vs. 525例[50%]、補正後オッズ比[OR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59~0.90、p=0.004)。 死亡例は、超急性期リハ群88例(8%)に対し、通常ケア群72例(7%)であった(OR:1.34、95%CI:0.93~1.93、p=0.113)。 非致死的な重篤有害イベントの発現は、超急性期リハ群201例(19%)、通常ケア群208例(20%)であった。

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肺がん患者と医療者の乖離を埋める―WJOG

 「患者さんのためのガイドブック よくわかる肺がんQ&A(第4版)」(編集:NPO法人西日本がん研究機構、以下WJOG)の発行を記念して、「肺がんの最新治療に関するセミナー~分子標的薬の登場で肺癌治療は大きく変わった~」が2014年11月28日、都内にて行われた。当日は、中川和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 教授)、本書の編集を行った澤 祥幸氏(岐阜市民病院 がん診療局長)が講演した。 中川氏の講演では、肺がん診療の最新情報が紹介された。講演の中で、中川氏は次のように述べた。肺がんの治療は最近の20~30年で大きく進歩している。とくに2002年のEGFR–TKIゲフィチニブの登場以降、ALK阻害薬、第2世代EGFR-TKIが次々に登場している。今後も第3世代EGFR-TKI、PD-1やPD-L1など新たな免疫療法なども治療選択肢として加わってくると考えられ、肺がん治療は大きく変化していくことが予想される、と述べた。また、このように新たな臨床試験が数多く出てくる中、EBMや診療ガイドラインを踏まえ、肺がんについての正しい情報を研究者から一般社会に伝えることが重要であるとも述べた。 続いて、澤 祥幸氏が、肺がん患者の疑問とその対応に関して次のように述べた。がん患者は告知の際、医療者に対し自分自身の不安を解決するため希望的回答を期待している。しかし、がんであるという事実は最悪の知らせである。将来への見通しを根底から否定的に変えてしまうため、冷静な状態ではいられない。担当医にしてみれば、しっかり説明したのに理解してもらえない。一方、患者も家族も真剣に説明を聞いていたはずなのに覚えていないという事態に陥る。また、希望的回答への期待を裏切られたことが医療者への不信を招き、診療への否認行動をとるなど、その後のトラブルにつながることもある。さらに、悪い知らせを聞いた後、一部の患者は適応障害やうつ病に陥る。がん患者の自殺率は健康人の4倍との報告もあり、これも大きな問題である。 がんと診断された後、がん患者・家族はどのような情報を求めているのか? 肺がんの種類・進行度、標準治療といった情報を伝えようとする医療者とは乖離があるようだ。WJOGはその乖離を明らかにするため、各地で開催する市民講座の際、患者・家族の疑問や質問を収集した。その結果、患者の疑問・質問の上位は、「もっといい病院・医者は?」「抗がん剤治療が不安」「補完代替医療、免疫療法」「術後の痛み」「がん告知の問題」などであった。実際にサプリメントや高額な民間療法に頼る患者、治療拒否により手遅れになる患者、医療費控除制度を知らず経済的不安から治療を拒否するケースも少なくないと、澤氏は言う。 「よくわかる肺がんQ&A(第4版)」は、このように収集した疑問・質問をまとめる形で、本年(2014年)11月7日に発行された。Q&A は119項目からなり、医師向けのガイドラインにはない、補完代替医療の説明、不安・衝撃へのアドバイス、医療費といった項目も含まれる。今版は市民の要望に応え、書店でも購入可能である。価格帯も市民が気軽に買えるよう2,200円(+税)に設定。今後はwebフリーダウンロードの予定もある。amazon リンク:「患者さんのためのガイドブック-よくわかる肺がんQ&A(編集;西日本がん研究機構-WJOG)」はこちら。

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結婚できない男【空気を読まない】[改訂版]

今回のキーワードこだわり(想像力の障害)発達障害(自閉症スペクトラム障害)共感性職人気質パターン認識構造化「なんで空気を読まないの?」みなさんがかかわる患者さんやいっしょに仕事をするスタッフたちの中で、「なんで空気を読まないの?」と思わず驚きの声を上げそうになったことはありませんか? 世の中にはいろんな人がいます。できることなら誰とでもうまくやっていきたいですよね。でも、うまくいかなくなった時、どう考えたらいいのでしょうか? どうしたらいいのでしょうか?今回、2006年に放映されたドラマ「結婚できない男」を取り上げます。これは、今までにない異色の恋愛ドラマで、みなさんの中にも覚えている人が多いかと思います。婚活が社会現象となって久しく、結婚したくてもなかなかできない男女が増えた今の世の中を絶妙に映し出しています。主人公はなぜ結婚できないのでしょうか? 世の中はなぜ結婚しづらくなったのでしょうか? これらの疑問も踏まえて、これからストーリーを追って見ていきましょう。空気を読まない主人公の信介は、ルックス良く、建築家として成功し、経済的にも恵まれている39歳の独身男性です。高身長、高学歴、高収入で一時もてはやされた3高も満たしています。一見して女性を引き付けるものを持ってはいます。しかし、出会った女性はことごとく彼にうんざりし、すぐに彼の元を去っていきます。なぜでしょうか?いくつか分かりやすいシーンがあります。信介がパーティ会場で初対面の女性に接するシーンが印象的です。雨でずぶ濡れの地味な上着で登場します。部下の英治に営業をするよう頼まれていたのにもかかわらず、「(営業の相手は)キッチンの重要性を理解していない。議論にならん」と言い放ちます。女性から建築家になった理由を聞かれると、「神のお告げがありまして」と分かりにくい冗談を言います。すかさず「今のギャグです」と英治にフォローされて、何とか場が保たれています。自分の好きな映画の話を一方的に始める信介に対して、女性は苦し紛れに「そのうち見ます」と言うと、信介は「そのうちなんて言って、見たやつはいませんよ」と返します。女性は、何とか場を和ませようとして「このスパゲティおいしいですよ」と差し出すと、信介は「ちょっと冷めてる」「これちょっと細いから、厳密にはスパゲッティーニ、つまりあなたはほんとは『スパゲッティーニおいしいよ』と僕に言うべきなんです」と答えるのです。最終的に、女性はうんざりして逃げてしまいますが、信介は英治に「構わん」と言い放ちます。このように、信介は、相手の話も聞かず、一方的に話し、思ったことをそのまま口走り、うんちくをこね、そしてこりないのです。別のシーンでは、マンションの隣人であるみちるがお金に困り、水商売をやり始めた姿を見て、何とか助けたい思いからお金を貸そうとします。信介は「困ってんの見たくないから」と言いつつ、受け取るのにとまどっている彼女を見て「客も我慢している」「もっと若くて女子大生みたいなのがいいのに」ともっともらしく言い放ってしまいます。また、バスツアー参加では、バスガイドの話に割り込み、より詳しいうんちくを得意がって披露し、バスガイドを泣かせてしまいます。年下の女性とのデートの時に相手が水族館で「魚、大好き」と言うと、信介は「魚より肉が好きだな」と答えます。長年の仕事パートナー沢崎がヘッドハントされるシーンでは、引き留めようとして出た信介の言葉は「便利で都合のいいやつはお前しかいない」との本音でした。急に近付いたり、顔を近づけて話すなどの特徴もあります。どうやら、彼には「空気が読めない」「空気を読まない」という言葉が当てはまりそうです。こだわりでは、なぜ信介は「空気を読まない」のでしょうか?さらに、別のシーンをいくつか見てみましょう。人生ゲームに凝っていて1人で復刻版の人生ゲームをやります。お好み焼きはマニュアル通りに作らないと気が済みません。模型のプラモデルの部品が1つ足りないだけでもう1セット購入します。そして、花は大嫌いで、視界に入るだけでも体調を悪くしてしまいます。猫背でぎこちない歩き方も相変わらずです。これらは、全て彼の「こだわり」と言えます。さらに、「空気を読まない」のも彼のこだわりの裏返しであり、延長であると言えそうです。つまり、彼はこだわりがとても強いのです。そして、メンタルヘルスの現場では、このような「こだわり」があまりにも強過ぎて、日常生活や社会生活がうまくいかない場合、ある障害が浮かび上がってきます。それは、発達障害(自閉症スペクトラム障害)です。ただ、信介にこの診断が下り、治療が必要というほどでは全くありません。そのわけは、メンタルヘルスにおける診断や治療は、あくまで本人や周りがひどく困ってしまうことが大前提だからです。ただ、その人を取り巻く環境や周りとの相性によって困り具合が変わるので、線引きが難しいことがよくあります。ここで言えることは、信介には発達障害の傾向があり、困ってしまいやすいということです。そして、信介や周りの人が、この傾向と上手に付き合っていくためのヒントをみなさんといっしょに考えることができるのではないかということです。想像力―「硬さ」「狭さ」「独特さ」強いこだわりは、発達障害の要素の1つである想像力の「硬さ」「狭さ」「独特さ」です(想像力の障害)。つまり、想像力に柔軟性がなく、しかも想像力の広がりが狭いために、相手が何を思っているか、何を感じているかを想像すること(心の理論)にとても鈍感なのです。だからこそ、自分のことばかり考えてしまい、結果的に、対人関係においては、「空気を読まない」「不器用」な人になってしまいます。しかし、こだわりは、裏を返せば、自分にとって何が特別か悟っている「ひたむきさ」「一途さ」「才能」でもあります。実際に、信介は、自分の興味のある建築という仕事においては、とことん追求し、良い仕事をしており、「一芸」に秀でています。つまり、こだわりには二面性があるのです。その人の良さでもあり、その人らしさ、個性とも言えます。表:こだわりの二面性マイナス面プラス面こだわり融通が利かない空気を読まない(読めない)頑固、偏屈、無愛想ひたむき、一途ブレない、流されない正直、真面目、勤勉、律儀図太い、一芸に秀でるなぜ信介のような人は今の世の中で目立つのか?それでは、なぜ信介のような人は、今の世の中で目立つようになったのでしょうか? その答えは、コミュニケーション能力、つまりは気回しが求められる社会構造に変化してしまったからです。かつての士農工商の封建社会では、身分制度により仕事も結婚相手も生まれる前からほぼ決められていました。農業や工業などの製造業が主流で、この社会において求められる価値観は、「正直」「真面目」「勤勉」「律儀」です。分かりやすいイメージとしては、頑固で人付き合いは悪いけど腕は良い職人です。この職人気質は、まさに建築家の信介に当てはまります。この価値観はこだわりの特性と相性が良いのです。多少の「偏屈」は問題にされず目立たなかったのです。この特性を持った人々がその能力を発揮し、その時代に活躍しました。しかし、その後、時代は大きく変わりました。産業革命、情報革命を経て、サービス業中心の世の中になってきました。情報化し複雑化したコミュニケーション重視の新しい社会の仕組みの中、かつてなくコミュニケーション能力、「空気を読む」という気回しの能力が求められる時代に変わってきたのです。信介のような人たちは本来の居場所、行き場である製造業の仕事からあぶれてしまい、サービス業に流れていきました。しかし、こだわりは受け入れられず、ただその「偏屈さ」が目立つ結果となったのでした。実際に、建築の営業をするパートナーの沢崎が不在の時に、信介は彼女に代わって営業を全うすることはできませんでした。逆に言えば、その特性を見抜いて、向いている職種を見出すこともできます。対人的な職種は、対象が人の心そのもので「生もの」であるため、常に空気を読んで、臨機応変に動かなければならないので、信介には負担が大きいです。一方、対物的な職種は、空気を読むことそのものを対象にしないため、決められた手順通りに取り組むことができるので、才能や技術のある信介のような人には合っています。表:こだわりタイプと気回しタイプがそれぞれ向いている職種 こだわりタイプ(職人気質)気回しタイプ(商人器質)モデル信介部下の英治ライバル建築家の金田職種対物的な職種対人的な職種例一般職製造業、職人専門職(研究者、学者)、事務職サービス業(営業、接客、窓口)管理職医療職急性疾患、救命救急、手術室慢性疾患、精神疾患、リハビリテーション今の世の中の結婚に求められるものは?ヒロインとして登場する女医の夏美は、ある種の強さを持った現代的な女性で、ドラマの中で彼女が見合い結婚に嫌気が差し、恋愛結婚に憧れるのも納得がいきます。そんな夏美の診察室に、信介は、「胃がシクシクと・・・」と言い、しょっちゅう訪れます。彼は、夏美の感情の変化を読み取ることができず、たびたび怒らせてしまいます。と同時に、実は、彼はストレス性の胃炎になるくらい自分自身の感情の変化にも気付きにくいのです。端的に言うと、相手の心だけでなく、自分の心を察するのも鈍いのです。そして、自分がストレスを抱え込んでいることに気付かず、無理をしてしまいやすいです。やがて、彼は夏美に好意を寄せていきますが、その自分自身の気持ちに気付かず、噛み合わないもどかしさが私たちにも伝わってきます。実は、今の社会の仕組みは結婚にも影響を与えています。情報化され自由化された新しい恋愛結婚のシステムでは、選択肢、判断基準が増え個々人の違いが重視されるようになりました。そこで特に求められるのは相手の気持ちを推し量ること、つまりは気回しや思いやりです(共感性)。部下の英治やホスト風のライバル建築家の金田は、信介とは対照的に人当たりのいいキャラとして描かれており、信介の特性を際立たせています。逆に、ドラマでみちるを狙うストーカーが登場しましたが、相手の気持ちを全く考えない一方的な恋愛であるストーカー行為は、まさにこだわりの負の産物と言えます。信介のような人はどうすればいいのか?信介のような人たちはどうすればいいのでしょうか? それは、本人がパターン認識をして学習することです。信介は、何が悪いか分からないけれどパターン認識をして彼なりに周りとうまくやって行こうとする姿勢が見受けられます。例えば、信介に皮肉を言われたと思った夏美は激怒し立ち去るシーンがありますが、わけが分からず追いかけた信介は悪気なく尋ねます。「悪いんでしょ?」と。しかし、夏美が許してくれないので「すみません」ととりあえず謝っています。何が悪かったのかのフィードバックがなければ、同じ過ちを繰り返していきますが、ストーリーが進むにつれて、信介は夏美に「また、説教ですか?」と言いながらも、夏美の「説教」に耳を傾けていくようになっていき、いつの間にか惹かれていきます。周りの人たちはどうすればいいのか?周りの人たちはどうすればいいのでしょうか? 実は、その答えはドラマの中に散りばめられています。ドラマの回を重ねて見るうちに私たちは気付かされます。それは、、本人に悪気がないことを周りが理解することです。これは、信介のような人たちを理解する上でとても大切なことです。ドラマで夏美が言います。「言い方とかムカつくけど、悪い人ではないと思う」「心で思っていることと表に出すことが違っている場合が多い」と。彼の個性ゆえに独特の言い回しをしてしまい本心がうまく相手に伝わらないことが多いのです。時には、信介の一生懸命さやもどかしさが私たちにも伝わってきます。現に、頼まれれば、命懸けでベランダをつたい、慣れない犬の世話をし、迷子の犬探しに必死に協力します。出会って間もない女性の新しい恋人のフリをすることを承諾します。みちるのボディガードを務め、ストーカーを撃退します。もともとお金の貸し借りをしたことがなかったのに、困っているみちるに自らお金を貸そうともしました。秘密を漏らすなと言われたら絶対に漏らしません。これは信介の良さであり、さきほどの「正直」「真面目」「勤勉」「律儀」などの二面性を併せ持っていることが理解できます。「俺は自分の気持ちに正直でいたいから」という信介の言葉がそれを裏付けています。信介の良き理解者である沢崎は、その特性を見抜きうまく手なずけ仕事をやらせていました。実直であるがゆえに乗せられやすい面も見えてきます。時には、「今の(信介の発言)を翻訳すると」などと沢崎はフォローも入れます。周りが汲み取るその人らしさまた、夏美は沢崎のアドバイスを受けながら、ちょっとずつ信介を理解していきます。ある時、結婚相手に理想ばかり追い求めるみちるに「男性に求めるものは?」と聞かれて、夏美は答えます。「その人が何を考えているかちゃんと理解できること」と。発想の転換です。求めるのは、相手にではなく自分であることを悟るのです。夏美の成長ぶりが伺えます。その後、夏美はあえて信介のテレビ出演でカットされた発言の話を引き出し聞いてあげるなどして、「説教」だけではない支持的なかかわりを通して信介に歩み寄ります。そして、最後には信介に告白します。「(今までの)私たちの会話ってキャッチボールじゃなくてドッジボールばっかりだった気がします」「(これから)私はキャッチボールがしてみたいです、あなたと」と。その告白を受けて、後日、信介は夏美の診察室に訪れます。「キャッチボールしようと思って」と。関わる相手がキャッチボールできるうまい球をまず投げてあげることが大事であることも描かれています。また、信介が通うコンビニの女性店員でさえ、対応を変えてきます。いつもレジで「スプーン要りますか?」「ポイントカードありますか?」と聞くと、信介は間髪入れずに無愛想に「要りません」「ありません」と言うので、やがて「スプーン要りませんし、ポイントカードもありませんよね。」と聞くようになります。コミュニケーションのコツラストシーンで、夏美を家に誘いたい信介は、誘いの言葉を素直に言い出せず、逆に夏美に「もしかしてうちに来いって言ってますか」と言い当てられてしまい、いつもの口癖で「あなたがどうしてもとおっしゃるなら」と言ってしまいます。うわての夏美は、「あなたがどうしてもって言うなら」と切り返します。すると、最後についに、いつもはあまのじゃくな信介が素直に答えます。「じゃあ来てください。どうしても」と。このシーンは、夏美のかかわりにより信介が少しずつ変わってきていることを窺わせます。と同時に、夏美の信介へのかかわりが大きく変わったことも描かれています。とてもほのぼのとするエンディングです。もちろん、トレンディドラマにありがちなハッピーエンドではなく、これからの2人の関係も波乱に満ちたものを予感させます。実際に、主人公に共感し、自分と重ね合わせてハッとした未婚男性の視聴者はいるのではないでしょうか? 反面教師としても主人公の視点を通して、自分のあり方、生き方を客観的に見つめ直すことができます。もちろん、周りの人たちにとっても、信介のような人たちへの理解が深まり、コミュニケーションのコツが分かってきます。そのコツとは、細かく具体的で丁寧な指示を出して(視覚化)、レールを敷いて枠組みを作り(構造化)、一つ一つのパターン認識やパターン学習を手助けしてあげることなのです。また、こだわりが強ければ、急な予定の変更(新奇場面)にストレスを感じやすくなります。その対策として、予定の変更をあらかじめ伝えることも肝心です(予定告知)。ドラマはセラピーの効果このドラマは、信介のような人たちが信介を自分と重ね合わせ、同時に彼らの周りの人たちが信介をその人に重ね合わせ、どうしたらいいかを気付かせてくれるセラピーの役割を果たしています。社会が信介のような人たちの特性をもっと知り、その個性的で良い面を高く買ってあげて、口下手でコミュニケーションが苦手な面は大目に見て微笑ましく見守ってあげることができたら、世の中はきっと彼らにとっても私たちにとっても、もっと居心地の良い場所になるのではないでしょうか。今、世の中に求められているのは、彼らを理解し、彼らと「キャッチボール」をして、お互いに少しずつ成長していけるような、より心の広いコミュニケーション社会なのではないでしょうか?1)尾崎将也:結婚できない男、扶桑社、20062)吉田友子:高機能自閉症・アスペルガー症候群、「その子らしさ」を生かす子育て、中央法規出版、2009

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第27回 出生前診断の伝達ミスの悲劇 その時メディアは!?

■今回のテーマのポイント1.児の死亡慰謝料を請求するために「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」が争われることとなった2.本判決は、羊水検査結果の誤報告により先天性異常を有する子どもの出生に対し、心の準備やその養育環境の準備をする機会を奪われたことに問題があったとしている3.メディアと医療、司法との相互理解も重要である■事件のサマリ原告子どもの母親X1および父親X2被告A病院争点説明義務違反結果原告勝訴、それぞれに500万円ずつ(合計1,000万円)の損害賠償事件の概要41歳女性(X1)。平成23年2月、X1は妊娠したことからA診療所を受診しました。同年3月15日、超音波検査を行ったところ、NT (nuchal translucency: 胎児の首の後ろの皮下の黒く抜けて見える部分)の肥厚が認められたことから、児の先天異常を疑い、主治医Aより羊水検査の説明がなされました。X1は自身が高齢であることも考慮して、4月14日(妊娠17週)、羊水検査を受けることにしました。X1の検査結果報告書には、分析所見として「染色体異常が認められました。また、9番染色体に逆位を検出しました。これは表現型とは無関係な正常変異と考えます」と記載され、その後ろに21番染色体が3本存在し、胎児がダウン症児であることを示す分析図が添付されていました。しかし、A医師は、上記報告書を通読しなかったため、X1に対し、「羊水検査の結果はダウン症に関して陰性である。また、9番染色体は逆位を検出したがこれは正常変異といって丸顔、角顔といった個人差の特徴の範囲であるから何も心配はいらない」と伝えました。なお、その時点でX1は妊娠20週でした。X1は、その後の検診では、A医師より胎児が小さめではあるが正常範囲であり、とくに問題はないと伝えられていました。ところが、9月1日の検診の際、A医師より羊水過少があり、胎児が弱っていることから他院に転院し、出産するよう勧められました。X1は、同日B病院に救急搬送され、同病院にて緊急帝王切開術が行われました。出生した児の呼吸機能は十分ではなく、自力排便もできない状態であったため、B病院の医師が、A診療所のカルテを確認したところ、児がダウン症であることを示す羊水検査結果が見つかったことから、同医師よりX1および夫であるX2に対し、その旨が伝えられました。児は、ダウン症児の約10%で見られる一過性骨髄異常増殖症(TAM)を合併し、その後、TAMに伴う播種性血管内凝固症候群を併発し、最終的には肝不全により、同年12月16日に死亡しました。これに対し、X1およびX2は、A医師が、検査結果報告を誤って伝えたために原告X1は中絶の機会を奪われてダウン症児を出産し、同児は出生後短期間のうちにダウン症に伴うさまざまな疾患を原因として死亡するに至ったと主張して、被告Aらに対し、不法行為ないし診療契約の債務不履行に基づき、約3,500万円の損害が発生したとして、支払いを求める訴訟を提起しました。事件の判決●争点1(被告らの注意義務違反行為と児に関する損害との間の相当因果関係の有無)について羊水検査は、胎児の染色体異常の有無等を確定的に判断することを目的として行われるものであり、その検査結果が判明する時点で人工妊娠中絶が可能となる時期に実施され、また、羊水検査の結果、胎児に染色体異常があると判断された場合には、母体保護法所定の人工妊娠中絶許容要件を弾力的に解釈することなどにより、少なからず人工妊娠中絶が行われている社会的な実態があることが認められる。しかし、羊水検査の結果から胎児がダウン症である可能性が高いことが判明した場合に人工妊娠中絶を行うか、あるいは人工妊娠中絶をせずに同児を出産するかの判断が、親となるべき者の社会的・経済的環境、家族の状況、家族計画等の諸般の事情を前提としつつも、倫理的道徳的煩悶を伴う極めて困難な決断であることは、事柄の性質上明らかというべきである。すなわち、この問題は、極めて高度に個人的な事情や価値観を踏まえた決断に関わるものであって、傾向等による検討にはなじまないといえる。そうすると、少なからず人工妊娠中絶が行われている社会的な実態があるとしても、このことから当然に、羊水検査結果の誤報告と児の出生との間の相当因果関係の存在を肯定することはできない。原告らは、本人尋問時には、それぞれ羊水検査の結果に異常があった場合には妊娠継続をあきらめようと考えていた旨供述している。しかし、他方で、証拠によれば、原告らは、羊水検査は人工妊娠中絶のためだけに行われるものではなく、両親がその結果を知った上で最も良いと思われる選択をするための検査であると捉えていること、そして、原告らは、羊水検査を受ける前、胎児に染色体異常があった場合を想定し、育てていけるのかどうかについて経済面を含めた家庭事情を考慮して話し合ったが、簡単に結論には至らなかったことが認められ、原告らにおいても羊水検査の結果に異常があった場合に直ちに人工妊娠中絶を選択するとまでは考えていなかったと理解される。羊水検査により胎児がダウン症である可能性が高いことが判明した場合において人工妊娠中絶を行うか出産するかの判断は 極めて高度に個人的な事情や価値観を踏まえた決断に関わるものであること、原告らにとってもその決断は容易なものではなかったと理解されることを踏まえると、法的判断としては、被告らの注意義務違反行為がなければ原告らが人工妊娠中絶を選択し児が出生しなかったと評価することはできないというほかない。結局、被告らの注意義務違反行為と児の出生との間に、相当因果関係があるということはできない。●争点2(原告らの損害額)について原告らの選択や準備の機会を奪われたことなどによる慰謝料 それぞれ500万円原告らは、生まれてくる子どもに先天性異常があるかどうかを調べることを主目的として羊水検査を受けたのであり、子どもの両親である原告らにとって、生まれてくる子どもが健常児であるかどうかは、今後の家族設計をする上で最大の関心事である。また、被告らが、羊水検査の結果を正確に告知していれば、原告らは、中絶を選択するか、又は中絶しないことを選択した場合には、先天性異常を有する子どもの出生に対する心の準備やその養育環境の準備などもできたはずである。原告らは、被告Aの羊水検査結果の誤報告により、このような機会を奪われたといえる。そして、前提事実に加え、証拠によれば、原告らは、児が出生した当初、児の状態が被告の検査結果と大きく異なるものであったため、現状を受入れることができず、児の養育についても考えることができない状態であったこと、このような状態にあったにもかかわらず、我が子として生を受けた児が重篤な症状に苦しみ、遂には死亡するという事実経過に向き合うことを余儀なくされたことが認められる。原告らは、被告の診断により一度は胎児に先天性異常がないものと信じていたところ、児の出生直後に初めて児がダウン症児であることを知ったばかりか、重篤な症状に苦しみ短期間のうちに死亡する姿を目の当たりにしたのであり、原告らが受けた精神的衝撃は非常に大きなものであったと考えられる。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(函館地判平成26年6月5日)ポイント解説●なぜ「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」が争われたのか今回は、最近世間を騒がせた羊水検査の事案を紹介します。筆者もマスコミ報道で本事件を知りました(表1)。■表1 医院側は争う姿勢 出生前診断説明ミス訴訟(共同通信社 13/07/05)北海道函館市の産婦人科医院で2011年、出生前診断の結果を誤って説明され、出産するか人工妊娠中絶をするかの選択権を奪われたなどとして、赤ちゃんの両親が医院を経営する医療法人と院長に1千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が4日、函館地裁であり、医院側は争う姿勢を示した。医院は「Aクリニック」で、訴状によると、胎児の染色体異常を調べる羊水検査でダウン症の陽性反応が出ていたが、院長が母親に「陰性だった」と伝えた。生まれた赤ちゃんはダウン症と診断され、生後3カ月半で死亡した。医院側は説明ミスを認める一方、両親側が侵害されたと主張する「出産するか人工妊娠中絶をするかの選択権」については「権利の存在を認めるべきかどうかが、まず大問題。存在を認める前提での議論には到底同意できない」などと訴えた。報道で目を引いたのは、「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」が法律上保護されるかを争っているとした点です。わが国の法律上、(業務上堕胎及び同致死傷)「刑法第214条 医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する」とあるように、人工妊娠中絶は、たとえ医師が行ったとしても、原則として違法とされています。例外的に人工妊娠中絶が許容されるのは、母体保護法に定められた要件を満たした場合のみであり、その要件に遺伝子異常であることは記されていません。 (医師の認定による人工妊娠中絶)「母体保護法第14条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」したがって、遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶をすることは法律上認められていませんので、「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」も当然に認められないと考えられます。ではなぜ、このような訴訟が起きたのでしょうか。そもそも本事案は、医療機関側のミスが明白であり、通常、示談で終了する事案です。実際、本事案においてY診療所は、ミスを認めて児のB病院での入院費用を支払っており、それに加え見舞金として50万円、香典として10万円を支払っています。本事案において両者に争いが生まれたのは、損害との間の因果関係です。すなわち、医師が誤って報告した結果、どのような損害が発生したか(表2)ということが争われたのです。■表2 原告らが主張する損害およびその価額ア X1の入通院慰謝料 31万1,800円イ 原告らの中絶の機会を奪われたことなどによる慰謝料それぞれ500万円ウ 原告らが相続した児の傷害慰謝料 165万4,500円エ 原告らが相続した児の死亡慰謝料 2,000万円オ 弁護士費用 316万1,630円カ 損害合計額(上記アからオまでの合計額から、被告らの債務不履行ないし不法行為がなければ実施していたはずの人工妊娠中絶費用である35万円を控除したもの)3,477万7,930円児は、ダウン症の合併症により死亡したのであり、医師の誤報告によって死亡したわけではありません。したがって、普通に考えると医師の誤報告と児の死亡との間に因果関係はないということになります。そこで原告は、「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」を間に挟むことで、「誤報告により人工妊娠中絶ができなくなり、その結果、児が出生し、合併症により死亡した」としたのです。●裁判所の判断と判決文の記載の難しさ本判決を受けての報道記事は下記のような記載でした(表3)。一読すると、裁判所は「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」を認めたかのように読めます。■表3 出生前診断誤って告知、賠償命令 医院側に1千万円 函館地裁(2014/06/05 共同通信)北海道函館市の産婦人科医院「Aクリニック」で2011年、院長が胎児の出生前診断結果を誤って説明し、両親が人工中絶の選択権を奪われたなどとして、医院を経営する医療法人と院長に計3千477万円の損害賠償を求めた訴訟で、函館地裁(鈴木尚久裁判長)は5日、医院側に計1千万円の賠償を命じた。判決理由で鈴木裁判長は「正確に結果を告知していれば中絶を選択するか、中絶を選択しない場合、心の準備や養育環境の準備ができた。誤った告知で両親はこうした機会を奪われた」と指摘した。しかし、本判決を読めばわかるとおり、積極的に「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」を認めたわけではなく、現在のわが国の母体保護法の運用として、「経済的理由」を弾力的に解釈しているという現実を尊重し、正面から「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」を否定することをしなかっただけなのです。2000年代前半に生じた司法の厳格な判断により、萎縮医療が生じたことは記憶に新しいところです。本事案においても、裁判所は、判決において「遺伝子異常であることを理由として人工妊娠中絶を選択する権利」を否定してしまうことの影響を考慮し、このような判決文になったものと考えられます。本判決は、このような配慮のもと書かれたものと考えられますが、残念ながら報道では誤解を生じかねないような切り取られ方になってしまいました。医療と司法の相互理解も重要ですが、それに加え、メディアと医療、司法との相互理解も重要であるといえます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)函館地判平成26年6月5日

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第26回 前立腺がんの告知は、本人だけじゃダメなのか!?

■今回のテーマのポイント1.泌尿器科疾患で1番訴訟が多い疾患は腎不全であり、2番目に多い疾患は前立腺がんである2.患者本人に説明をした場合には、その上、家族に対してまで説明する法的義務はない3.しかし、紛争予防の観点から、可能な限り家族に対しても説明することが求められる■事件のサマリ原告患者Xの家族被告Y病院争点説明義務違反結果原告敗訴事件の概要76歳男性(X)。Xは、平成10年9月11日、頻尿や腰痛を訴え、Yクリニックを受診しました。直腸診の結果およびPSAが386.0ng/mLであったことから、Xは、前立腺がんと診断されました。Xは、前立腺がんが進行性のものであり、予後が良くないこと、生検などのさらなる検査および専門医による検査および治療を受けるべきであることなどの説明を受けたのをはじめ、治療方法として内分泌療法があること、その際に使用されるクロルマジノン(商品名: プロスタール)などの薬剤については勃起障害などの副作用が見られることについて説明されました。また、その後も複数回にわたり、適宜の時期に病状を説明され、検査および治療のために泌尿器科専門医のいる総合病院への転院を勧められました。ところがXは、勃起障害を避けたかったことなどから、前立腺がんに対するさらなる検査や転院、および治療を繰り返し拒否しました。その結果、対処的にタムスロミン(同: ハルナール)やプロスタール®Lを投与していましたが、徐々に増悪してきたため、同年12月16日からは、前記の処方に加え、リュープロレリン(同: リュープリン)の投与を開始しました。その後も、Xの病態は徐々に増悪し、平成13年6月19日には、Yクリニックに入院することとなりました。このころから、Xには不穏、認知症の症状が出現するようになりました。Xの病態が改善しないことから、7月6日、Z病院泌尿器科へ転院しました。転院時のXのPSA値は1,420 であり、Xが見当識障害のため自身が前立腺がんで治療中であることを伝えなかったことから、Z病院の医師は、Xの家族に対し「どうしてこんなになるまで放っておいたのか」と叱責しました。Z病院の医師は、Xを進行性の前立腺がんおよび骨転移と診断し、前立腺がんに対する手術適応はないと診断しました。Xは、同年8月18日に再びYクリニックに転院し、同クリニックにおいて入院治療を続けていましたが、同年9月19日に死亡しました。これに対し、Xの遺族は、X本人に対し病状の説明がなされていなかった、また、家族に対して説明がなされていなかったなどとして、Yクリニックに対し、990万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決●近親者への告知義務について患者の疾患について、どのような治療を受けるかを決定するのは、患者本人である。医師が患者に対し治療法等の説明をしなければならないとされているのも、治療法の選択をする前提として患者が自己の病状等を理解する必要があるからである。そして、医師が患者本人に対する説明義務を果たし、その結果、患者が自己に対する治療法を選択したのであれば、医師はその選択を尊重すべきであり、かつそれに従って治療を行えば医師としての法的義務を果たしたといえる。このことは、仮にその治療法が疾患に対する最適な方法ではないとしても、変わりはないのである。そうだとすれば、医師は、患者本人に対し適切な説明をしたのであれば、更に近親者へ告知する必要はないと考えるのが相当である。そして、本件についてみれば、被告は、Xに対し前立腺癌であることを告知し治療法等を説明していたのであるから、更に原告らに対し、Xが癌であることを告知する法的義務はないと考える。この点原告らは、患者が治療を拒否しているような場合には、患者に対して癌を告知している場合でも、更に患者の家族への告知をすべきであると主張する。しかし、上記のとおり、疾患についての治療法等の選択は、最終的には患者自身の判断に委ねるべきであり、患者の家族に対して癌を告知したことにより、家族らが患者を説得した結果、患者の気持ちが変わることがないとはいえないとしても、そのことから直ちに家族に対して癌を告知すべき法的な義務が生じるとまではいえない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(名古屋地判平成19年6月14日判タ1266号271頁)ポイント解説●泌尿器科疾患の訴訟の現状今回は、泌尿器科疾患です。泌尿器科疾患で最も訴訟が多いのは腎不全で、2番目に多い疾患が前立腺がんとなっています(表1)。前立腺がん自体、進行が緩徐であること、治療方法が進歩したことなどから他のがんと比べ生命予後が良く、その結果、訴訟になり難いものと考えられます。腎不全については、第22回で解説させていただきましたので、今回は、前立腺がんをテーマとしたいと思います。数が少ないこともありますが、前立腺がんに関する訴訟において疾患に特徴的な争点というものは認められません(表2)。このような傾向の中で、今回紹介した事例には、長期間外来治療を継続した結果、最終的に認知症のためか見当識障害が生じたこと、高齢者においても勃起機能障害は治療を受けるか否かについて、心理的障害となるといった前立腺がんに特徴的ともいえる論点が見受けられました。高齢者に対し、長期間の治療を行っていると、認知症を含め見当識障害が出現することは生じ得ます。本件では、患者から伝えられなかったとはいえ、転院先のZ病院の医師が「どうしてこんなになるまで放っておいたのか」と家族を叱責したことが、紛争化を引き起こした原因の1つと思われます。前医がいないと誤認していた事例であり、Z病院の医師に悪気がないことは理解できるのですが、家族に対する発言には、やはり注意が必要といえます。また、残された遺族にとって、患者ががんであるにもかかわらず、勃起機能障害の副作用を恐れて治療を拒否していたという事実は受け入れがたいものです。本件においても、原告である遺族は訴えの中で、「平成10年12月16日以降のYクリニックの診療録には、Xが処方のみで帰宅したとか、転院を拒否したとか、不定期的な来院であったとか、勃起機能への執着があったなど、およそがんを告知された患者とは思えない行動が記されており、不自然な行動と評価せざるを得ない」とした上で、「Xに対し前立腺がんの告知及び治療法や転院等について説明を行っていなかった」と主張しています。後にも解説しますが、家族に対する説明は、可能な限り行うことが紛争化を防ぐために必要と考えられます。●説明義務の客体第9回において解説した通り、説明義務は、わが国の判例・通説によると、診療契約の付随的義務として認められるとされています。したがって、原則的には、契約の一方当事者である患者本人がその客体となり、家族は契約関係外の第三者ということになります。判例においても「緊急に治療する必要があり、患者本人の判断を求める時間的余裕がない場合や、患者本人に説明してその同意を求めることが相当でない場合など特段の事情が存する場合でない限り、医師が患者本人以外の者の代諾に基づいて治療を行うことは許されないというべきである」(東京地判平成13年3月21日判時1770号109頁)とし、家族に対し説明し、承諾を得たとしても、本人への説明、承諾がなければ違法であるとしています。その一方で、同回で紹介した事例のように、「医師は、診療契約上の義務として、患者に対し診断結果、治療方針等の説明義務を負担する。そして、患者が末期的疾患にり患し余命が限られている旨の診断をした医師が患者本人にはその旨を告知すべきではないと判断した場合には、患者本人やその家族にとってのその診断結果の重大性に照らすと、当該医師は、診療契約に付随する義務として、少なくとも、患者の家族等のうち連絡が容易な者に対しては接触し、同人又は同人を介して更に接触できた家族等に対する告知の適否を検討し、告知が適当であると判断できたときには、その診断結果等を説明すべき義務を負うものといわなければならない」(最判平成14年9月24日民集207号175頁)とする判例もあり、混迷を極めています。このような状況の中、本判決は出されており、かつ、説明義務の客体について、一定の方向を示すものとなっています。すなわち、「医師は、患者本人に対し適切な説明をしたのであれば、更に近親者へ告知する必要はないと考えるのが相当である」とした上で、末期がんなどにより余命が限られている場合であっても、「疾患についての治療法等の選択は、最終的には患者自身の判断に委ねるべきであり、患者の家族に対してがんを告知したことにより、家族らが患者を説得した結果、患者の気持ちが変わることがないとはいえないとしても、そのことから直ちに家族に対してがんを告知すべき法的な義務が生じるとまではいえない」としたことです。すなわち、本判決を踏まえ、前記判決を整理すると(図)のようになります。本判決により、説明義務の客体についてはある程度の整理が得られたものと思われます。ただし、本事例のように患者が死亡してしまったり、認知症などで意思疎通が困難となると、遺族は、診療中どのような説明がなされていたか知らない結果、無用な争いが生まれてしまう危険があります。したがって、法的義務としては、患者に説明すれば、家族に対し説明する必要はないのですが、紛争予防の観点からは、可能な限り家族に対しても説明することが望ましいということになります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)名古屋地判平成19年6月14日判タ1266号271頁東京地判平成13年3月21日判時1770号109頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判平成14年9月24日民集207号175頁

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肝硬変患者の経過観察を十分に行わず肝細胞がんを発見できなかったケース

消化器最終判決判例タイムズ 783号180-190頁概要12年以上にわたって開業医のもとに通院し、糖尿病、肝硬変などの治療を受けていた55歳の男性。ここ1年近く、特段の訴えや所見もないために肝機能検査および腫瘍マーカーのチェックはしていなかった。ところが久しぶりに施行した肝機能検査・腫瘍マーカーが異常高値を示し、CT検査を受けたところ肝左葉全体を埋め尽くす肝細胞がんが発見された。急遽入院治療を受けたが、異常に気づいてから3ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報55歳男性経過1973年 糖尿病にて総合病院に45日間入院。9月3日当該診療所初診。診断は糖尿病、肝不全。1982年5月26日全身倦怠感、体重減少(61→51kg)を主訴に総合病院外来受診。6月1日精査治療目的で入院となり、肝シンチ、腹部エコー、上部消化管造影、血液検査、尿検査などの結果、糖尿病、胆石症、肝硬変、慢性膵炎と診断された。7月10日肝臓の腹腔鏡検査を予定したが、度々無断外出したり、窃盗容疑で逮捕されるなどの問題があり、強制退院となった。9月6日診療所の通院を月1~4回の割合で再開。その間ほぼ継続してキシリトール(商品名:キシリット)、肝庇護薬グリチルリチン・グリシン・システイン(同:ケベラS)、ビタミン複合剤(同:ネオラミン3B)、ビタミンB12などの点滴とフルスルチアミン(同:アリナミンF)、血糖降下薬ゴンダフォン®、ビタミンB12(同:メチコバール、バンコミン)などの投薬を続ける。食事指導(お酒飲んだら命ないで)や生活指導を実施。ただし、肝細胞がんと診断されるまでのカルテには、検査指示および処方の記載のみで、診察内容(腹水の有無、肝臓触知の結果など)の記載はほとんどなく、1982年9月6日から1986年2月19日までの3年5ヵ月にわたって腹部超音波、腹部CT、肝シンチなどの検査は1回も実施せず。1982年~1984年肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)、AFP測定を不定期に行う。1984年9月4日AFP(-):異常高値となるまでの最終検査。1985年 高血糖(379-473)、貧血(Hb 10.5)がみられたが、特段治療せず。1986年2月15日γ-GTP 414と高値を示したため、肝細胞がんをはじめて疑う。2月19日1年5ヵ月ぶりで行ったAFP測定にて638と異常高値のため、総合病院にCT撮影を依頼。腹水があり、肝左葉はほぼ全体が肝細胞がんに置き変わっていた。門脈左枝から本幹に腫瘍血栓があり、予後は非常に不良であるとの所見であった。2月21日家族に対し、「肝細胞がんに罹患しており、長くもっても7ヵ月、早ければ3ヵ月の余命である」ことを告知し、同日以降、抗がん剤であるリフリール®やウロキナーゼを点滴で投与した。2月25日当該診療所を離れ総合病院に入院し、肝細胞がんの治療を受けた。5月17日肝硬変症を原因とする肝細胞がんにより死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.早期発見義務違反1982年9月6日から肝硬変の診断のもとに通院を再開し、肝細胞がん併発の危険性が大きかったのに、1986年2月まで長期間検査をしなかった2.説明義務違反1986年に手遅れとなるまで、肝臓の障害について説明せず、適切な治療を受ける機会を喪失させた3.全身状態管理義務違反1985年中の出血を疑わせる兆候や高血糖状態があったのに、これらを看過したこのような義務違反がなければ、死亡することはなかったか、仮に死を免れなかったとしても少なくとも5年間の延命の可能性があった。病院側(被告)の主張過重な仕事と不規則な生活を続け、入院勧告にも応じなかったことが問題である。1985年中に肝細胞がんを発見できたとしても、もはや切除は不可能であったから、死亡は不可避であった。裁判所の判断説明義務違反医師は肝硬変に罹患していたことを説明し、安静を指示していたことが認められるため、その違反はないとした。全身状態管理違反血糖値の変化は生活の乱れによる可能性も高く、必ずしも投薬によって対処しなければならない状況にあったか否かは明らかではないし、出血の点についても、肝硬変の悪化にどのような影響を与えたのか不明であるため、その違反があるとは認められない。早期発見義務肝硬変があり肝細胞がんに移行する可能性の高い症例では、平均的開業医として6ヵ月に1回程度は肝機能検査、AFP検査、腹部超音波検査を実施するべきであったのに、これを怠った早期発見義務違反がある。しかし、肝細胞がんが半年早く発見され、その時点でとりうる治療手段が講じられたとしても、生存可能期間は1~2年程度であったため、医師が検査を怠ったことと死亡との間には因果関係はない。つまり、検査義務違反がなく早期に肝細胞がんに対する治療が実施されていれば、実際の死期よりもさらに相当期間、生命を保持し得たものと推認することができるため、延命利益が侵害されたと判断された。1,000万円の請求に対し、240万円の支払命令考察今回のケースでは、12年以上にわたってある開業医のところへ定期的に通院していた患者さんが、必要な検査が行われず肝細胞がんの発見が遅れたために、「延命利益を侵害された」と判断されました。今までの裁判では、医師の注意義務違反と患者との死亡との因果関係があるような場合に損害賠償(医療過誤)として支払いが命じられていましたが、最近になって、死亡に対して明確に因果関係がないと判断されても、医師の注意義務違反が原因で延命が侵害されたことを理由として、慰謝料という形で医師に支払いを命じるケースが増加しています。本件でも、「平均的開業医」として当然行うべき種々の検査を実施しなかったことによって、肝細胞がんの発見が遅れたことは認めたものの、肝細胞がんという病気の性質上、根治は難しいと判断され、たとえきちんと検査を実施していても死亡は避けられなかったと判断しています。つまり、適切な時期に適切な検査を定期的に実施し、患者の容態を把握しているかという点が問題視されました。肝細胞がんは年々増加してきており、臓器別死亡数でみると男性で第3位、女性で第4位となっています。なかでも肝細胞がんの約93%が肝炎ウイルス(HCV抗体陽性、HBs抗原陽性)を成因としています。また、原発性肝がんの剖検例611例中、84%が肝硬変症を合併していたという報告もあり、肝硬変患者を外来で経過観察する時には、肝細胞がんの発症を常に念頭におきながら、診察、検査を進めなくてはいけません。消化器

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末期がんの患者に告知を行わず過誤と判断されたケース

癌・腫瘍最終判決判例時報 1679号40-45頁概要約4年前から総合病院循環器外来に通院していた77歳男性が、前胸部痛を主訴に撮影した胸部X線写真で多発性の肺腫瘍を指摘された。諸検査の結果、担当医師(非常勤の呼吸器科医師)の診断は末期がん(原発は不明)で手術や化学療法の適応はないと判断した。患者本人には末期がんであることを告知しない方針をとり、家族を連れてくるように依頼したが実現しなかった。その後前胸部痛が悪化し、納得のいく説明をしない主治医に不信感を抱いた患者は約5ヵ月後に大学病院を受診、そこではじめて末期がんと告知された。詳細な経過患者情報4年前から虚血性心疾患、期外収縮、脳動脈硬化症などの診断で、総合病院循環器外来に通院していた77歳男性。病弱の妻と二人暮らしであり、いつも一人で通院していた経過1989年4月19日胸部X線写真では異常なし。1990年2月16日体重減少に対し腫瘍マーカーなどを検査したが異常なし。6月8日約1ヵ月前から続く左乳頭部の痛みを申告したが、他覚的異常所見なし。10月26日胸部X線写真で右肺野にcoin lesion、左下肺野にも小さな結節が数個と胸水を示唆する所見が認められたため院内の呼吸器内科に紹介。11月17日呼吸器専門の非常勤医師(毎週土曜日担当)が診察し、胸部CTスキャン、腫瘍マーカーなどの検査結果から扁平上皮がんあるいは重複がんではないかと考えた。気管支鏡検査は確定診断という点では有用だが、転移性、多発性の肺腫瘍で手術や化学療法の適応はないと判断し、治療には直接結びつかない気管支鏡は不要と判断した。(この時患者本人にはがんの告知せず)12月8日胸部X線写真では変化なし。12月29日前胸部痛あり。カルテには末期がんであろうと記載し、鎮痛薬(チアプロフェン〔商品名:スルガム〕)を処方。(患者本人にはがんの告知せず)1991年1月19日鎮痛薬による治療続行。患者本人から、「肺の病気はどうですか」と質問されたが、末期がんであることの告知は不適切と考え、「胸部の病気は進行している」と答えた。この時点で非常勤医師は家族への告知を考え電話連絡をしたが、家族は不在であった。そして、カルテには「転移病変につき患者の家族に何らかの説明が必要」と記載し、通院時に家族を連れてくるように勧めたが、家族関係の詳細を把握することはなかった。その後非常勤の主治医は病院を退職。2月9日別の医師を受診し鎮痛薬スルガム®の処方を受ける。前胸部痛は治まっていると申告。3月2日胸の痛みを訴えたため、スルガム®と湿布を処方。以後この病院の受診なし。結局本人および家族へはがんであることの告知は行われなかった。3月5日胸の痛みが増強したため大学病院整形外科を受診。3月11日内科を紹介され、ここではじめて末期がんであることが告知された。当事者の主張患者側(原告)の主張治療上の選択の余地がない末期がんであっても、真実の病名を知ることによって充実した余命を送ることができたのに、告知が約5ヵ月も遅れたことによって適切な治療および生活を決定できる状況を奪われた。家族にとっても肉親として接する貴重な日々を送れたはずなのに、精一杯の看護と治療を受ける機会を失い、大きな悔悟と精神的衝撃を被った。病院側(被告)の主張延命および治癒が望めない末期がんの患者およびその家族に対して、がん告知をするべきか否かは医師の広範な裁量に委ねられていて、がん告知をしなかったからといってただちに不法行為になるわけではない。裁判所の判断医師としてはがん告知の適否、告知時期、告知方法などを選択するために、できる限り患者に関する諸事情についての情報を得るよう努力する義務がある。本件では患者本人が通院治療中にがん告知を強く希望したわけではないので、本人にがん告知しなかったことは裁量の範囲内であった。しかし、家族に関する情報収集や家族との接触の努力を怠り、漫然と家族にがん告知をしなかった。その結果、患者本人が家族から手厚いケアを受けたり、より充実した日々をより多く送る可能性を奪われたことになるので、期待権侵害によって被った精神的損害を賠償するべきである。原告側合計1,600万円の請求に対し、120万円の賠償判決考察悪性腫瘍を疑う患者の場合には、外来診察である程度の絞り込みを行い、さらに検査目的の入院を指示してがんの病期分類、治療方針などを検討したのち、患者およびその家族からインフォームドコンセントを得るといった手順を踏むことになると思います。このように当初の診断過程に入院をはさむことによって、担当医師と患者、および家族とのコミュニケーションがはかれ、十分な信頼関係を構築できることが多いと思います。ところが本件では、通常であれば入院精査を行うべき状況であったと思われますが、末期がんのため治療に直接結びつかない侵襲的な検査(気管支鏡検査)は不要と判断したこと病弱な妻との二人暮らしのため入院は難しいという申告があったこと(ムンテラ対象となる長男や長女はいたものの、外来でそこまでは聞き出さなかった)担当したのが週1回外来担当の非常勤医師であったことなどの複数の要因が重なった結果、肝心な病状説明(がんの告知)が患者本人のみならず、その家族へも一切行われないまま他院へ転院することになりました。このような事態は通常の診療では考えられないことではないか、という感想を持たれる先生も多いと思いますが、昨今の総合病院のように専門分化が進んだ結果、病院内の横断的なコミュニケーションが絶対的に不足しているような状況では、けっして他人事とはいえないと思います。とくに、毎週1回の専門外来を担当する非常勤医師を雇用している施設では、遠慮(尊重?)しあう面もあって常勤医師との連携が十分にはかられず、ミスコミュニケーションにつながる危険性が常にあるように思います。今回の担当医師(非常勤呼吸器内科医)は、「家族に電話してみたけれども不在だったので、病状説明ができなかった」「転移病変につき患者の家族に何らかの説明が必要、とカルテに記載しておいたので、あとは常勤医師がやってくれるものと思っていた」と主張していますので、当時の状況からすればやむを得ないことであった、担当医師はまじめに診察していたようなので気の毒である、という見方もできると思います。ところが、家族へ連絡したことについてはカルテに一切記載しなかったため、いくら裁判で「私はきちんと連絡を取ろうとしました」と証言しても説得力不足は否めません。病院を辞める際のカルテ記載にしても、「次回来院時必ず家族へ末期がんであることを説明してください」というような申し送り内容ではなく、常勤医師に会って直接伝えたものでもありませんでした。そのためあとを引き継いだ常勤医師にしても、誰が主治医であるのか不明確な状況でしかも今までの経緯が不明であれば、あえてがん告知をすることはないと思います。そして、このような診療内容が、「がんという重大な病気にかかった患者さんを誠意を持って担当していないのではないか」、という裁判官の心証形成に大きく影響したということです。結局のところ、今回の担当医師は非常勤という身分もあってか、責任を持って患者さんを担当するという姿勢に欠けていたように思います。この場合の責任とはどのようなことか、家族が電話にでるまで延々と電話をかけ続けなければならないのか、家族を連れてくるように明言したのに連れてこないのは患者の勝手ではないか、というご意見も十分にあろうかと思います。しかし、ひとたび末期がんという重大な病気に直面した患者自身やその家族の立場に立ってみると、いくらやむを得なかったといっても真の病名がまったく告げられることなく5ヵ月も外来に通い続けたのは、到底納得できないことではないかと思います。本件のようなミスコミュニケーション予防の手段として考えられるのは、外来通院患者であっても入院患者と同じように主治医を明確にすることだと思います。もし本件でも、4年来通院していた循環器担当医師が主治医としてきちんとコミットしていれば、非常勤の呼吸器科医師がなかなか果たすことのできなかった家族とのコミュニケーションを円滑に進めることができたかもしれません。ちなみに、今回の呼吸器内科非常勤医師はその後末期がんを告知された大学病院の常勤スタッフでした。もしがん告知を行った大学病院の担当医師が問診を十分に行って、前医の総合病院(それも関連施設)で行われた診断・治療に少しでも気を遣っていれば、このような結果にならずにすんだ可能性があると思います。すなわちここでも横断的なコミュニケーションが不十分であったことを強く示唆していると思います。癌・腫瘍

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Mother(中編)【母性と愛着】

母性と愛着みなさんは、仕事や日常での生活で「誰かに見守られたい」「誰かとつながっていたい」と思うことはありませんか?この感覚の根っこの心理は愛着です。そして、この愛着を育むのは母性です。今回も、前回に引き続き、2010年に放映されたドラマ「Mother」を取り上げます。そして、母性と愛着をテーマに、見守り合うこと、つながること、つまり絆について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。あらすじ主人公の奈緒は、30歳代半ばまで恋人も作らず、北海道の大学でひたすら渡り鳥の研究に励んでいました。そんな折に、研究室が閉鎖され、仕方なく一時的に地域の小学校に勤めます。そこで1年生の担任教師を任され、怜南に出会うのです。そして、怜南が虐待されていることを知ります。最初は見て見ぬふりの奈緒でしたが、怜南が虐待されて死にそうになっているところを助けたことで、全てをなげうって怜南を守ることを決意し、怜南を「誘拐」します。そして、継美(つぐみ)と名付け、渡り鳥のように逃避行をするのです。実のところ、奈緒をそこまで駆り立てたのは、奈緒自身がもともと「捨てられた子」だったからです。その後に、奈緒が奈緒の実母に出会うことで、奈緒はなぜ捨てられたのかという衝撃の真実を私たちは目の当たりにして、母性とは何かを考えさせられます。奈緒の母性―喜び奈緒は、怜南の母の虐待によって死にかけていた怜南を偶然に救いました。その時、以前から自分が入るための「赤ちゃんポスト」を怜南が探していることを奈緒は知り、心を打たれます。そして、怜南が飛んでいる渡り鳥に「怜南も連れてって~!」と叫んだ時、今まで眠っていた奈緒の母性に火が着いてしまったのです。奈緒は、大学の研究員に戻れるというキャリアを捨てて、そして、たとえ捕まって「牢屋」に入れられるとしても、「私、あなたのお母さんになろうと思う」と思い立ちます。その後、奈緒は「人のために何かしたことなんてなかったから」「子どもが大きくなる」「ただそんな当たり前のことが嬉しかった」と語ります。また、奈緒は、追いかけてやってきた継美(怜南)の実の母に告げます。「あの子はあなたから生まれた子どもです」「あなたに育てられた優しい女の子です」「ホントのお母さんの温もりの中で育つことがあの子の幸せなら」「あの子をお返しします」「あなたがまだあの子に思いがあって、まだあの子を愛して心からあの子を抱き締めるなら」「私は喜んで罰を受けます」「道木怜南さんの幸せを願います」と。母性とは、母の子どもの幸せを一番に願う喜びなのです。施設の母(桃子さん)の母性―安全基地奈緒と継美(怜南)は、逃避行の途中、栃木のある児童養護施設を訪ねることになります。そこは、かつて奈緒が捨てられた5歳から里親に拾われる7歳までの2年間を過ごした場所でした。その施設の母である桃子さんは、「ここで育った子どもたちには故郷がない」「ここで育った子どもたちにとってはここが故郷で、私が親代わりだ」と言っていました。施設、そして桃子さんは、心の拠りどころとなる存在や場所としての役割を果たそうとしていたのです(安全基地)。それは、困った時に逃げられる場所、困った時に必ずそばにいてくれる人です。しかし、奈緒が訪ねた時、施設にいたのは、年老いて認知症になった桃子さんだけでした。そして、桃子さんが高齢者介護施設に引き取られる日が迫っていました。桃子さんは、最初、奈緒のことが分かりませんでした。しかし、最後には、「奈緒ちゃんがお母さんになった」と繰り返し言い、心の底から喜びます。かつて幼い奈緒が「子どもがかわいそうだから」「生まれるのがかわいそうだから」「絶対にお母さんにはならないの」と言ったことを桃子さんは覚えていたのでした。桃子さんは、認知症になりながらも、奈緒の幸せを一番に思っていたのです。育ての母(藤子)の母性―決意その後に、奈緒が身を寄せたのは、育ての母(藤子)の元、つまり現在の東京の実家です。藤子は、2人の実の子たちと分け隔てなく、むしろ奈緒を一番に気遣っています。そこには、藤子なりの決意があったのです。かつて幼い奈緒が、閉ざした心を開きかけた時、藤子は決意します。「世界中でこの子の母親は私1人なんだって」「たとえ奈緒の心の中の母親が誰であろうと」と。このように、育ての母であることは、母性という本能だけでなく、意識する、決意するという理性によっても、親子の関係を強める必要があります。例えば、それは、藤子が「甘えることは恥ずかしいことじゃないの」「愛された記憶があるから甘えられるんだもん」と奈緒に諭すようなブレない心です。実の母(葉菜)の母性―本能奈緒は、継美(怜南)を連れて東京に戻ってきた時、偶然にも、奈緒の実の母である葉菜に、30年ぶりに見つけられます。その時から、葉菜は、奈緒に正体がばれないように「うっかりさん」として継美に近付いていきます。やがて、葉菜は、継美が北海道で行方不明になった怜南という子であること、つまり奈緒の子ではないことを知ってしまいます。しかし、継美(怜南)に「うっかりさん、あなたの味方ですよ」「あなたのお母さんを信じてる人」「ウソつきでも信じるのが味方よ」と告げます。さらに、その後に葉菜は、自分が実の母であることを奈緒に気付かれ、激しく拒絶されます。それでも、奈緒や継美を助けようとします。奈緒が、真相を追いかける雑誌記者(藤吉)に金銭を揺すられた時は、葉菜は嫌がられても自分の貯金を全額、無理やり奈緒に渡そうとします。また、継美(怜奈)の母が追いかけてきたことを知った葉菜は、奈緒と継美に「あなたたちは私が守ります」と力強く言い、自分の家にかくまいます。奈緒と継美と葉菜の3人で遊園地に行った時のことです。奈緒は「(かつて遊園地でいっしょに楽しんだ後に自分を捨てたのにまた楽しんでいて)ズルイなあ」とつぶやきます。すると葉菜は「ウフフ、そうズルイの」「楽しんでるの」とほほ笑み、言い訳などせず、奈緒の気持ちをそのまま受け止めます(受容)。また、葉菜は奈緒に「一番大事なものだけ選ぶの。大事なものは継美ちゃん」と言い、非合法的に2人の戸籍を入手しようともします。そして、「大丈夫、きっとうまくいく」と安心させます(保証)。藤子(奈緒の育ての親)が、実の子どもたちを守るために苦渋の選択で、理性的に奈緒の戸籍を外そうとしていたのとは対照的です。このように、母性とは、どんな時でもどんな場所でも自分の子どもを許し、存在そのものを肯定する心理です(無条件の愛情)。もはや理性や理屈ではありません。ラストシーンでは、葉菜の真実が明かされます。その時、私たちは、葉菜が奈緒を捨てなければならなかった本当の理由、そして葉菜が自分の人生をなげうってでも十字架を背負ってでも奈緒を守る、ただただ奈緒の幸せを願う、そして自分が犠牲になることに喜びさえ感じる葉菜の究極の母性を目の当たりにします(自己犠牲)。それは、本能であり、突き動かされる「欲望」でもあったのです。母性の心理の源は?これまで、奈緒、施設の母(桃子さん)、育ての親(藤子)、そして実の母(葉菜)のそれぞれの母性を見てきました。母性には、喜び、安全基地の役割、決意、無条件の愛情、自己犠牲の本能など様々な心理があることも分かってきました。このドラマのキープレーヤーとして登場する雑誌記者(藤吉)は、葉菜(奈緒の実の母)の真実を追い求める中、葉菜がかつてある事件を起こしていた事実に辿り着きます。そして、葉菜の友人であり、かつて葉菜を取り調べた元刑事から、「人間には男と女と、それにもう1種類、母親というのがいる」「これは我々(男性)には分からんよ」と聞かされます。そして、「聖母」という母性に辿り着きます。それほど母性とは、独特なものであると言えます。タイトルの「Mother」の「t」が十字架のように浮き彫りになって教会の鐘が鳴る毎回のオープニングクレジットは、とても象徴的です。それでは、なぜ母性はこのような心理になるのでしょうか?そもそもなぜ母性はあるのでしょうか?その答えは、母性とは私たち哺乳類などの動物が、進化の過程で手に入れた生理的なシステムだからです。哺乳させる、つまり乳を与えるという授乳の行為は、自分の栄養を与えるという自己犠牲の上に成り立っています。そこから、身の危険を冒してでも、子どものためにエサを取ってくる行為に発展していきます。そして、人間においても、母が子どものことに全神経を傾けて過ごし(母性的没頭)、子どもが生き延びるためにその子にありったけのものを与えます。これは、命をつなぐために不可欠な生物学的な営みです。このような行為を動機付ける心理が母性です。そこに見返りはありません。「そうしたいからしている」という欲求なのです。哺乳類が誕生した太古の昔から、この「子どもを守りたい」と思う種ほど生き残り、より多くの子孫を残す結果となりました。そして、この心理がより働く遺伝子が現在の私たち、とくに女性に引き継がれています。母性と愛着―親と子どもを結ぶ絆奈緒は、葉菜が自分の実の母だとは知らずに語ります。「無償の愛ってどう思います?」「親は子に無償の愛を捧げるって」「あれ、私、逆だと思うんです」「小さな子どもが親に向ける愛が無償の愛だと思います」「子どもは何があっても、たとえ殺されそうになっても捨てられても親のことを愛してる」「何があっても」「だから親も絶対に子どもを離しちゃいけないはずなんです」と。また、奈緒は、押しかけてきた継美(怜南)の実の母にはこう訴えます。「親が見ているから、子どもは生きていけるんじゃないでしょうか」「目を背けたら、そこで子どもは死んでしまう」「子どもは親を憎めない生き物だから」と。さらに、その後に奈緒は、実の母と知った葉菜に言います。「(継美が)あなたに愛されていること」「何のためらいもなく感じられてるんだと思います」「子どもを守ることは、ご飯を作ったり食べたり、ゆっくり眠ったり、笑ったり遊んだり」「(子どもが)愛されてると実感すること」と。このように、母から子どもへの母性と子どもから母への愛着によって結ばれる絆は、もともとそのままあるものではありません。母の母性と子の愛着がお互いを求め合って、固く太く育まれていくものです(相互作用)。この絆が土台となり、やがて大人になった時に、他人との新しい絆を作っていくことができるようになります。そして、やがてその子どもがさらにその子どもの子どもに対して母性を注ぐことができるようになるのです。こうして、命は引き継がれていくのです。愛着ホルモン―オキシトシン継美(怜南)は、一時期、奈緒の実家に落ち着きます。その時、部屋で奈緒に「大事、大事」とささやかれ、髪を撫でられて、心地良さそうです。また、葉菜(奈緒の実の母)は理髪店を営んでいたこともあり、奈緒に髪を切ってあげることで、奈緒は幼い時にも同じように葉菜に髪を切ってもらっていたこと、そして思い出せなかった葉菜の顔を思い出します。これは、ちょうど私たちと遺伝的に近いチンパンジーやサルが毛づくろいをして、体が触れ合うことで親近感や社会性を増す場面と似ています。このように心や体が触れ合い絆を育む時、脳内では、オキシトシンなどの神経伝達物質が活性化していることが分かっています。つまり、愛着形成とオキシトシンの分泌や受容体の増加は、密接な関係があります。もともとオキシトシンは脳内のホルモンで、出産の時の子宮の収縮やその後の乳汁の分泌を促します。しかし、それだけではなく、抱っこや愛撫などの肌の触れ合い(スキンシップ)によっても、母子ともに分泌が促されるのです。オキシトシンは、母性の心理の原動力となるものです。と同時に、子どもの愛着の心理の原動力ともなっているのです。つまり、母性や愛着の心理は、オキシトシンなどの神経伝達物質によって、生物学的に裏付けられていると言えます。絆の土台作りの締め切り日―愛着形成の臨界期―グラフ奈緒は5歳の時に捨てられており、継美(怜南)は4、5歳の時から継美(怜南)の実の母やその恋人から虐待を受け続けています。しかし、奈緒は継美への母性を発揮することができて、継美は奈緒への新たな愛着を発揮することができました。奈緒も継美も、かつて絆壊し(脱愛着)が起きているのに、どうしてまた新たな絆作りができたのでしょうか?その理由は、奈緒は5歳の時まで実の親(葉菜)によって大切に育てられていたからです。そして、継美(怜南)は4、5歳の時まで継美(怜南)の実の母によって一生懸命に育てられていたからです。また、継美(怜南)は、子守り(ベビーシッター)をしてくれる愛情深い近所の人(克子おばさん)によってかわいがってもらっていたからです。母性が注がれることによって育まれる愛着の心理(能力)は、その基礎を育む期間に期限があります(臨界期)。つまり、絆の土台作りには、締め切り日がすでにあるということです。それは、まさに乳児期、厳密には生後1年半(長くて2年)までということが分かっています。ラストシーンの奈緒から継美(怜南)への手紙の中で、「(渡り)鳥たちは星座を道しるべにするのです」「それをヒナの頃に覚えるのです」「ヒナの頃に見た星の位置が(渡り)鳥たちの生きる上での道しるべとなるのです」とあります。これと同じように、この臨界期は遺伝的に決まっているのです。オキシトシンのパワー(1)精神的に安定する力この臨界期のオキシトシンの活性化によって高められる心理(能力)は、愛着だけでなく、人間的な共感性や安心感、そして知性であることが科学的に裏付けられてきています。昔からのことわざである「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものです。数え年を差し引けば、「三つ子」は生後1年から2年であり、愛着形成の臨界期にほぼ一致します。厳密には、この心理を左右するのは、オキシトシンだけでなくバソプレシン(オキシトシンと同じ下垂体後葉のホルモン)の分泌や受容体がどれほど働いているかということも分かってきています(オキシトシン・バソプレシン・システム)。さらに、この2つのホルモンは、快感や学習に関する脳の領域を刺激することも判明しています。つまり、この心理は、それ自体が快感であり(ドパミン・システム)、安心であり(セロトニン・システム)、さらに知性を高め、精神的に安定する力を強めます(レジリエンス)。逆に言えば、親の多忙やネグレクト(育児放棄)によって、2歳までに母性が子どもに十分に注がれていないと、その後にどうなるでしょうか?愛着ホルモン(オキシトシンやバソプレシン)が活性化しないので、共感性や信頼感が育まれにくく、情緒が不安定になりやすくなります(反応性愛着障害、情緒不安定性パーソナリティ障害)。また、連鎖的に安心ホルモン(セロトニン)が活性化しないので、不安やうつになりやすくなります(不安障害、うつ病)。そして、快感ホルモン(ドパミン)が活性化されないので、いつも欲求不満で、その満たされない心を別の何かで満たそうとして、食べ物、お酒、ギャンブル、薬物にはまりやすくなります(摂食障害、依存症)。さらに、学習ホルモン(ドパミン)が活性化しないので、知的な遅れや発達の偏りにも影響を与えるリスクが高まります(知的障害、発達障害)。このように、乳児期の母性の不足は、様々な精神障害を引き起こすリスクを高め、精神的にとても脆く弱くなってしまうのです(脆弱性)。「すきなものノート」―愛着対象の代わり怜南(継美)は、奈緒に出会った時にあるものを見せます。そして、「私の宝物」「好きなものノート」「好きなものを書くの」「嫌いなものを書いちゃだめだよ」「嫌いなもののことを考えちゃだめなの」と言います。怜南が実の母やその恋人から虐待を受け続ける中、怜南の愛着は大きく揺らいでいました。そんな中、見いだされたのがこの「すきなものノート」、つまり愛着の相手(対象)の代わりです。本来、愛着の対象が代わるのは、母性により十分な愛着が育まれた上で、愛着の対象が広がり移っていくことです(移行対象)。しかし、怜南の場合は、実の母の虐待により愛着が壊されたことで(脱愛着)、代わりの愛着の対象を見いだしています。この「すきなものノート」は、大切にできるものを持とうと怜南なりに何とか自分の心のバランスを保とうとして生まれたものだったのです。オキシトシンのパワー(2)誰かを大切に思える力葉菜(奈緒の実の母)は、実は自分が白血病で命の期限が迫っていることを隠していました。そんな葉菜の主治医が「目の前に死を実感してあんなに元気な人、初めて見ました」と奈緒に打ち明けます。奈緒は葉菜に「(こんなにしてくれるのは)罪滅ぼしですか?」と問いかけると、葉菜は穏やかに答えます。「今が幸せだからよ」「幸せって誰かを大切に思えることでしょ」「自分の命より大切なものが他にできる」「こんな幸せなことある?」と。そして、告知された余命の期限を過ぎても生き生きと生き続けるのです。葉菜は、30年前に奈緒を連れて警察に追われていた時の気持ちを奈緒に打ち明けます。「何をやってもうまくいかなくてね」「心細くて怖かった」「でもね、内緒なんだけどね」「あなた(奈緒)と逃げるの楽しかった」と。たとえどんな困難でも、わが子を守るために必死だったからこそ、その恐怖は喜びに変わるのです。亡くなる直前も、「ラムネのビー玉、どうやって入れてるのかしらね」と継美(怜南)の質問を気にかけて幸せそうです。そして、葉菜の死に際の走馬灯を通して、葉菜が一生をかけて守ろうとした真実を私たちは知ることになります。このように、「誰かを大切に思えること」の源の心理は母性です。この心理から、ライフパートナーや家族や親戚との絆(家族愛)、近所や地域との絆(郷土愛)へと「大切に思える」対象が次々と広がっていきます。これらの心理も、オキシトシンの活性化に支えられています。例えば、結婚式の誓いの言葉の瞬間には、オキシトシンの分泌が高まっていることが分かっています。つまり、オキシトシンは、母子の体のつながりの温かさだけでなく、人と人の心のつながりの温かさを求める働き(欲求)があります(求温欲求)。オキシトシンは、愛着ホルモンであるというだけでなく、人と人とをつなげる信頼ホルモン、献身ホルモン、そして絆ホルモンであるとも言えます。そして、この心理の高まりによって、私たちは恐怖や困難を前向きに感じるようになります(レジリエンス)。葉菜と同じように奈緒も、継美(怜南)を守り気にかけることで成長し強くなっています。奈緒は20歳の継美(怜南)への手紙に「あなたの母になったから、私も最後の最後に(1度自分を捨てた)母を愛することができた」「あなたと出会って良かった」「あなたの母になれて良かった」「あなたと過ごした季節」「あなたの母であった季節」「それが私にとって今の全てであり」「そして(大人になった)あなたと再びいつか出会う季節」「それは私にとってこれから開ける宝箱なのです」と感謝します。子どもを養うことは、自分の心が養われることでもあるのです。つまり、「誰かを大切に思えること」は、負担ではなく、原動力なのです。さらに、最近の研究で、オキシトシンの活性化は、ストレスへの耐性など精神的な健康を高めるだけでなく、葉菜が長生きをしたように免疫力などの身体的な健康を高めることも分かってきています。つながり(絆)の心理の人種差―遺伝的傾向愛着の心理は、つながり(絆)の心理の土台であることが分かってきました。この心理の過敏さ(過敏性)には人種差があるでしょうか?答えは、あります。最近の遺伝子の研究によって、人種差があることが判明しています。欧米人の子どもに比べて、日本人などのアジア人の子どもは、愛着に敏感な遺伝子をより多く持っています。欧米人の遺伝子は愛着に敏感なタイプが3分の1、鈍感なタイプが3分の2です。それに対して、アジア人は敏感タイプが3分の2、鈍感タイプが3分の1です。ちょうど割合が逆転しています。つまり、欧米人は愛着に鈍感なので、母性が不足した環境で育っても充足した環境で育ってもあまり影響を受けずにドライに育ちます。一方、アジア人は愛着に敏感なので、母性が不足した環境で育つと大きく影響を受け、精神的に不安定になり、傷付きやすくなります。逆に、母性がより充足した環境で育つと、やはり大きく影響を受け、精神的により安定し、つながり(絆)の心理が高まり、よりウェットに育つということです。以上から言えることは、そもそも遺伝的傾向の違いがあるため、欧米で当たり前に行われている早期の自立や甘えを許さない子育ての方法をそのまま安易に日本で真似することは危ういということです。日本人の生活スタイルが欧米化しつつあります。だからこそ、よりつながりを意識した子育てや人間関係のあり方を見つめ直す必要があります。集団主義の源は?―3つの仮説それでは、そもそもなぜアジア人と欧米人でこの割合の違いが起きているのでしょうか?言い換えれば、なぜアジア人はつながりに過敏な遺伝子を多く持っているのでしょか?3つの仮説が考えられます。1つ目は、人類大移動のために必要な遺伝子だったという仮説です。6万年前に私たち人類の祖先たちは、生まれたアフリカの大地を出て、世界に広がっていきました。その時、ヨーロッパに比べてさらに遠いアジアの地に辿り着くためにはより協力する、つまりつながり(愛着)の心理を敏感に持つ必要がありました。その遺伝子を持つ祖先がより生き残り、現在の私たちアジア人、特にアフリカから比較的に遠い日本人により多く受け継がれている可能性が考えられます。なお、アメリカ人の多くは、もともとヨーロッパからの移民なので、遺伝的にはヨーロッパ人と同じと考えます。2つ目は、過酷な風土に居つくために必要な遺伝子だったという仮説です。特に日本は、地震、津波、台風、火山などの不安定な風土であるため、人々は絶えず絆を意識して助け合いました。また、島国で国土が狭いため、隣人に気遣いを忘れないようにしました。つまり、つながり(愛着)の心理を敏感に持つ必要がありました。その遺伝子を持つ人が、子孫を残す結婚相手としてより選ばれたと言うことです。3つ目は、つながりに過敏な遺伝子は多数派になることで強化されていったという仮説です。大移動が終わり、過酷な風土に適応した後も、文化として根付いていき、多数派になりました。つまり、文化的な価値観として、この遺伝子を持つ人が結婚相手としてより選ばれ、子孫を残し続けてきたと言えます。従来から、欧米人は個人主義的で甘えを許さないドライな民族で、アジア人、特に日本人は集団主義的で甘えを許すウェットな民族であると言われてきました。この違いは、単なる文化(環境因子)によるだけでなく、遺伝的傾向(個体因子)にもより、さらにはこの2つ要因がお互い絡み合った結果(相互作用)によると言えます。特別な誰かに大切にされた記憶―愛着の選択性奈緒が捕まった時のエピソードでは、継美(怜南)は児童養護センターに入り、他の子どもたちと楽しそうにしています。しかし、執行猶予が付いて解放された奈緒に、継美は電話をかけ続けます。そして、「お母さん、いつ迎えに来るの?」「もう1回、誘拐して」と涙を流して言うのです。本当のところ、心は満たされていないのでした。愛着という絆は、必ずしも相手が、実の母である必要はなく、育ての母でも良くて、祖母でも良くて、母性的にかかわることができる父でも良いのです。大事なのは、子どもと絆を結ぶ相手が特別な誰かであるということです。特別な誰かに母性を注がれること、つまり愛されることです(愛着の選択性)。これは、イスラエルの農業共同体キブツでの実験的な試みの失敗が裏付けています。そこでは、乳幼児を交代制で集団的に育児して、育児する母と育児される子が同じにならないようにしました。その後、そこで成長した多くの子が、愛着や発達の問題を多く認め、精神的に脆く弱くなってしまったのです。渡り鳥の道しるべ―絆奈緒は病床の葉菜(奈緒の実の母)に「もう分かっているの」「離れていても」「今までずっと母でいてくれたこと」「だから今度はあなたの娘にさせて」と打ち明けます。奈緒と葉菜が、30年の時を経てつながりを確認し合った瞬間です。奈緒は、渡り鳥として最後は実の母の元に戻ることができました。奈緒は、自分が「牢屋」に入ってでも、継美(怜南)を守ろうとしました。そんな奈緒は、継美にとって特別な存在です。奈緒は警察に捕まった時、継美に「覚えてて」「お母さんの手だよ」「継美の手、ずっと握ってるからね」と伝えます。また、最後のお別れの時、「離れてても継美のお母さん」「ずっと継美のお母さん」「そしたら(大人になったら)また会える日が来る」「お母さん、ずっと見てるから」と言います。奈緒から20歳の継美への手紙には「幼い頃に手を取り合って歩いた思い出があれば、それはいつか道しるべとなって私たちを導き、巡り合う」と記されます。特別な誰かが身を犠牲にして守ってくれた、大切にしてくれたという確かな記憶、そして自分の幸せを心から願い続ける誰かがいるという実感が、子どもにとっては心の拠りどころや支え(安全基地)、つまり絆となっていくのです。それはまさに、渡り鳥の「道しるべ」です。そして、やがてその子どもが大人になった時、自分が新しい特別な誰かの心の拠りどころや支えになり、新しい「道しるべ」をつくっていくのです。1)愛着崩壊:岡田尊司、角川選書、20122)進化と人間行動:長谷川眞理子、長谷川寿一、放送大学教材、20073)人類大移動:印東道子、朝日新聞出版、2012

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「リハビリテーション専門職のための学びと働き方セミナー」開催のご案内

 ベネッセMCMは、2014年1月19日(日)に「リハビリテーション専門職のための学びと働き方セミナー」を開催する。シリーズ第1回目は、業務に活かせる神経系治療学の最新知見の紹介や、リハビリテーション専門職が活躍できる多様な職場や働き方についてのパネルディスカッションを予定している。【セミナー概要】■開催日時2014年1月19日(日) 13:00~15:30(開場12:30) ※15:30~17:00の間で無料転職相談を実施■会場新宿NSビル 3階会議室3‐I ※新宿駅より徒歩7分 (定員:40名)■第一部「PT・OTのための神経系治療学の最新知見 ※60分」講師:植草学園大学教授 松田 雅弘(まつだ ただみつ)氏脳の時代といわれる21世紀、脳の仕組みが徐々に解明され、神経系の治療概念・手法も大きく転換してきています。脳・神経の仕組みを知ることで、今起こっている動きや変化がなぜ生じていたのかを気づけるようになります。ヒトの動きから脳を探るための最新知見に触れていきます。■第二部「リハビリテーション専門職の多様な働き方(パネルディスカッション) ※60分」ファシリテーター:東京工科大学教授 小松 泰喜(こまつ たいき)氏現役リハビリテーション専門職の皆さまをお招きし「働き方」をテーマとしたパネルディスカッションを行います。テーマは「この道を目指した理由」「今の働き方に対する考え、やりがい、悩み」「今後の可能性、職域、キャリアパス」など、職場選びの参考になるお話を伺います。■参加費無料 ※要事前申し込み■主催株式会社ベネッセMCM■対象リハビリテーション専門職に従事されている方■お申し込みこちらのページからお申し込みください。■株式会社ベネッセMCMについて進研ゼミ・こどもちゃれんじでおなじみのベネッセグループの人材サービス会社です。理学療法士・看護師・介護職に特化した人材サービス事業を行っております。今後もセミナー・研修を実施し、医療・介護分野の皆さまのキャリアアップを支援してまいります。<本件に関するお問合せ先>株式会社ベネッセMCM 濱中(ハマナカ)電話番号:03-5766-9845(代表) メールアドレス:t-hamanaka@benesse-mcm.jp<会社概要>株式会社ベネッセMCM設立:2002年8月代表者:西川 久仁子資本金:8000万円従業員数:49名会社URL:http://www.benesse-mcm.jp/告知ページ:http://www.benesse-mcm.jp/seminar/schedule/schedule_20140119.html所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル2階関連会社:・株式会社ベネッセコーポレーション「進研ゼミ・進研模試」の教育事業 、「たまごクラブ・ひよこクラブ・サンキュ!」などの出版事業・株式会社ベネッセスタイルケア入居介護サービス事業(高齢者向けホームの運営)在宅介護サービス事業など・ベルリッツ・ジャパン株式会社120年以上の実績を有する世界最高の語学教育事業会社

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利用規約

附属規定:ポイントプログラム規定附属規定:eディテーリング規定附属規定:希少疾患プロジェクト規定附属規定:eリサーチ規定附属規定:ケアネットキャリアサービス規定附属規定:Web講演会サービス規定附属規定:CareNet医学教育規定附属規定:アップ(up)システム規定附属規定:Doctors’Picks規定CareNet.com(ケアネット・ドットコム)会員規約ケアネットは会員制の臨床医学教育メディアを運営する企業です。医師をはじめとする医療者の会員が、臨床の現場で最善の意思決定が行えるように医学・医薬に関するエビデンス、知識・経験等の情報を発信し、会員間の共有を促すことがケアネットの理念です。日常診療に役立つ信頼性の高いコンテンツを継続して提供するために、会員による有料コンテンツの購入料と合わせて、スポンサー企業による広告やリサーチに基づく収入が充てられます。つきましては、会員への優良な情報の提供を継続するため、任意ではありますが、会員の皆さまには広告視聴やアンケート回答などへのご協力をお願いしております。またスポンサーの広告等の視聴に際しては、個人情報保護義務を順守する契約を結んだスポンサー企業との間で会員の一部情報を共有することがございます。ケアネットはひとえに会員の皆さまに役立つ存在を志向し、誠実にメディア運営を行う所存です。会員の皆さまのご理解とご協力を平にお願い申し上げます。第1条(CareNet.comサービス)「CareNet.comサービス」とは、株式会社ケアネット(当社グループ企業を含み、以下総称して「ケアネット」といいます。)が運営する各種サービスをいいます。第2条(適用範囲)本規約は、CareNet.comサービスの利用に関し、必要な事項を定めるものです。本規約の附属規定は、本規約の一部を構成します。本規約と附属規定が異なる場合は、附属規定が優先するものとします。第3条(会員登録)1)「会員」とは、本規約ならびに附属規定を承諾の上、ケアネット所定の手続で会員登録を行い、ケアネットが会員として承諾した方をいいます。会員はCareNet.comサービスの全部または一部を利用する資格を持ちます。その利用範囲は、ケアネットが定めることができます。2)会員は、原則として日本国の免許を所持する医療従事者およびケアネットが認める医療関係者であり、医師(獣医師を除きます。ケアネットが確認できる場合のみ医師として登録することができます。)、歯科医師、薬剤師その他の医学・薬学・医療関係の個人に限ります。ただし、ケアネットが特に認める場合はこの限りでありません。3)会員は、会員識別用の固有の文字列(以下「ID」といいます。)を持ち、1人につき1つのIDのみを取得できるものとし、重複登録はできません。4)会員は、会員登録申込時に電子メールアドレスの登録を行います。ただし、複数の会員が同じ電子メールアドレスを登録することはできません。5)会員登録を行った方は、ケアネットが当該登録の諾否を通知するまでの間、特定の範囲においてCareNet.comサービスを利用することができます。(以下、会員登録承諾前の利用者を「仮会員」といいます。)ただし、仮会員は、ケアネットが会員登録を承諾しない場合に異議を申立てることはできません。6)CareNet.comの会員となった時点で、ケアネットが提供するCareNet.comに付随する各種サービスも同時に利用することができ、附属規定に定める「ケアネットポイントプログラム」にも参加するものとします。第4条(届出)会員は、電子メールアドレス、その他ケアネットに届出ている内容に変更が生じた場合には、速やかにケアネットに届出るものとします。第5条(登録情報の変更等) 1)ケアネットは、会員登録時に申告した職種の資格を確認できなかった場合、職種情報を変更することができるものとします。2)公知・公用の情報もしくは公正に取得した情報により、届出のあった登録情報に変更が生じたこと、または誤りがあったことが判明したときは、ケアネットは、当該情報を変更し、または修正することができるものとします。第6条(電子メールアドレス、ID、パスワード) 1)会員は、ケアネットが指定する形式に基づき、自由にIDおよびパスワードを指定することができます。ただし、既に使用されているIDは、使用することができません。その場合、ケアネットが別途IDおよびパスワードを指定するものとします。2)会員は、電子メールアドレスならびにIDおよびパスワード(以下「ID等」といいます。)の管理責任を負うものとし、管理不十分から生じた会員または第三者に発生した損害に関して、ケアネットは一切責任を負わないものとします。3)会員は、ID等を第三者に提供、貸与、譲渡することはできません。4)会員は、ID等が第三者に使用されていることが判明した場合には、直ちにパスワードの変更等の必要な手続を取り、速やかにケアネットにその旨を連絡し、ケアネットの指示に従うものとします。第7条(電子メール配信サービス)1)ケアネットは会員に対し、有益と思われる情報を、あらかじめ会員がケアネットに届出た電子メールアドレス宛に送信します。2)ケアネットから送信される電子メールは、会員の登録情報に基づいて作成されることがあり、第三者が閲覧できない情報が含まれている場合があります。ケアネットから送信されるあらゆる電子メールの内容を第三者に転送ならびに公開したことにより被る会員への不利益、損害に関して、ケアネットは一切責任を負わないものとします。3)会員は、ケアネットからの電子メールを受信するための環境を整備し保持する努力をするものとします。第8条(サービス内容等の変更・中断・廃止)1)ケアネットは、会員への事前の通知なくして、CareNet.comサービスの内容の全部または一部の変更、追加をすることができ、また、あらかじめ会員に通知することにより、サービスの全部または一部を廃止することができるものとします。2)ケアネットは、CareNet.comサービスを提供するために使用する電子計算機その他の機器およびソフトウェア(以下「サービス用設備」といいます。)の保守・点検もしくは修理のために必要がある場合、通信回線やサービス用設備に異常が生じた場合、あらかじめ会員に通知することなく、CareNet.comサービスの全部または一部の提供を中断することができるものとします。3)ケアネットは、CareNet.comサービスの一環として企画・運営されているポイントプログラムにおいて、交換対象商品(サービス、電子マネーギフト等を含みます)の内容、交換方法、ポイント換算に関する事項等について、あらかじめ会員に通知することなく、随時変更することができるものとします。第9条(通知方法)ケアネットから会員への通知は、あらかじめ会員がケアネットに届出た電子メールアドレス宛のメールまたはCareNet.com上への表示により行います。第10条(個人情報の取扱い)ケアネットは、CareNet.comサービスを通じて取得した会員の個人情報を、「個人情報保護方針」および「個人情報保護規定」(https://www.carenet.com/info/personal.html)に従い適切に扱います。なお、会員は個人情報保護規定を承諾したものとします。第11条(著作権等)1)会員は、CareNet.comサービスを通じて提供されるいかなる情報も、権利者の許諾を得ることなく、著作権法で定める会員個人の私的使用の範囲外の使用をすることはできません。また、第三者に使用させたり公開させたりすることもできません。2)前項に違反して他の会員もしくは第三者に対して損害を与えた場合、会員は、自己の費用と責任で紛争を解決するものとし、ケアネットに何らの迷惑または損害を与えないものとします。第12条(禁止事項)会員は、理由のいかんを問わず、以下に掲げる行為をしてはなりません。1)他の会員、第三者またはケアネットの著作権その他の権利を侵害する行為2)他の会員、第三者またはケアネットの財産、信用、名誉、プライバシーを侵害する行為3)ケアネットのサービス用設備の正常な動作を妨げ、またはサービス用設備もしくはデータを破壊、損壊する行為4)コンピュータウイルス等有害なコンピュータプログラム等を CareNet.comサービスを通じまたはこれに関連して使用、または配布する行為5)選挙期間中であるか否かを問わず、公職選挙法に定める選挙運動またはこれに類似する行為6)公序良俗に反する行為7)1から6までに相当するデータまたはサイト等へリンクを張る行為8)他の会員のID等を不正に利用して、CareNet.comサービスを利用する行為9)ケアネットの事前の承諾なくして、CareNet.comサービスを自己または第三者の営利活動もしくはその準備を目的として利用する行為10)その他、法令に違反する行為およびケアネットが不適切と判断する行為第13条(退会)会員は、ケアネットカスタマーセンター(問い合わせフォーム )に申出ることにより、CareNet.comの退会手続を行うことができます。ただし、本人確認のため、以下の情報の提供が必要となる場合があります。1)ご登録の氏名(フルネーム)2)ID3)ご登録の電子メールアドレス4)ご登録の勤務先名5)ご登録の電話番号第14条(会員資格の取消し)会員が、次の各号のいずれかに該当する場合には、ケアネットは、何らの通知なく直ちに会員資格を取消すことができるものとします。1)ケアネットへの届出内容が虚偽であったとき2)ケアネットが重複登録を確認したとき3)会員が、第12条に定める行為をしたとき4)会員が、医療従事者または医療関係者の資格を喪失したとき5)会員が一般の支払いを停止し、または差押え、仮差押え、仮処分の申立てを受けたとき6)最終ログインから1年以上を経過した場合7)その他、本規約または附属規定に違反したとき8)その他、ケアネットが会員として不適切と判断したとき第15条(サービスの終了)会員がCareNet.comの会員資格を喪失した場合は、会員に対するCareNet.comサービスの全てが同時に終了するものとします。第16条(免責事項)1)ケアネットは、CareNet.comサービスにおいて提供される情報(リンク先の情報を含みます。)についてその完全性、正確性、確実性、有用性等のいかなる保証も行いません。また、医薬品医療機器等法等関係法規等の厳守性等、および業界規制等の順守性等いかなる保証も行いません。2)CareNet.comサービスの提供、遅滞、変更、中止もしくは廃止、およびCareNet.comサービスを通じて登録、提供される情報等の流失もしくは消失等、またはその他CareNet.comサービスに関連して発生した会員の損害について、ケアネットは会員に対し、本規約にて明示的に定める以外一切責任を負いません。第17条(規約の変更)ケアネットは、会員に通知することにより、本規約および附属規定を変更できるものとします。第18条(準拠法、管轄裁判所)本規約および附属規定に関する準拠法は、日本法とします。ケアネットと会員との間で、CareNet.comサービスに関して紛議が生じた場合の第一審の専属管轄裁判所は東京地方裁判所とします。2000年04月25日 策定2000年09月25日 改定2001年03月17日 改定2001年07月01日 改定2004年03月29日 改定2004年07月01日 改定2004年12月01日 改定2007年11月01日 改定2008年06月16日 改定2011年01月13日 改定2013年11月25日 改定2014年08月07日 改定2018年03月01日 改定2021年02月01日 改定2024年03月11日 改定附属規定:ポイントプログラム規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(規約の目的)本規定は、ケアネットが運営するCareNet.comサービスおよびその他サービスにおいて提供されるポイントプログラムの、会員利用条件および付与条件を規定するものです。第2条(付与条件)ケアネットは、各規定を承認し、各規定に違反すること無く、ポイント付与のための所定作業を行った会員、または「up(アップ)システム規定」所定の条件を満たした会員に対して、自己の判断によりポイントを付与します。ただし、ポイント付与にあたり作業を行うため、実際にポイントが付与されるまでに数日を要することがあります。ポイントの第三者への譲渡はできません。なお、ポイント付与後であっても、会員が各規定に違反した場合は、ポイントを剥奪できるものとします。また、ケアネットは損害の賠償を会員に求める場合があります。第3条(ポイントの特典・便益・交換)ケアネットは、会員より労務もしくは情報の提供を受けた場合の対価として、または学習増進の支援として、ポイントを付与します。会員は、所定の手続きを行うことにより、当該ポイントを各種ギフト・電子マネー等に変換することができます。また、ケアネットが提携する企業や団体における支払いや寄付等、または「CareNeTV利用規約」に定める支払い等に充当することができます。第4条(ポイントプログラムの対象)ポイントプログラムで獲得できるポイントについては、別途ポイント付与の条件およびポイント数を明示するものとします。第5条(ポイント数の告知)会員は、専用ページにて、所持するポイント数の確認を行うことができます。ポイントプログラムの下で与えられるポイントまたはこれにより受ける特典・便益は、税法上、所得税等の課税対象となるケースがあり、確定申告を要する場合があります。詳しくは税務署にお問い合わせください。第6条(有効期間)以下のいずれかに該当する場合、ポイントは失効します。1)ポイントの最終付与日から2年を経過した場合2)会員が会員資格を失った場合第7条(ポイントプログラムの変更・廃止)1)ケアネットは、会員への事前の通知なくして、ポイントプログラムの内容の全部または一部の変更、追加をすることができ、また、あらかじめ会員に通知することにより、ポイントプログラムの全部または一部を廃止することができるものとします。ただし、この場合は廃止までに相当な交換可能期間を設けるものとします。2)ケアネットは、ポイント交換対象商品(サービス、クーポン等を含む)の内容、交換方法、ポイント換算に関する事項等について、随時変更することができるものとします。2007年11月01日 策定2009年07月16日 改定2010年06月27日 改定2013年12月26日 改定2014年08月07日 改定2016年04月01日 改定2017年08月14日 改定2020年04月01日 改定2020年07月01日 改定2020年10月15日 改定2021年11月01日 改定附属規定:eディテーリング規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(サービス)1)「eディテーリング」とは、Webページの閲覧、または電子メールの配信・受発信により、情報提供者となる医療・福祉・保健等の分野に属する企業と会員に対して、無料で特定の情報(以下「eディテーリングコンテンツ」といいます。)を提供し、または情報交換の場を提供するサービスをいいます。会員のeディテーリングの利用については、本規定の他、CareNet.com利用規約が適用されるものとします。2)ケアネットは、新着のeディテーリングコンテンツを中心に視聴・閲覧を推奨する期間(以下「おすすめ期間」といいます。)を設定するものとします。おすすめ期間中のeディテーリングコンテンツは、当該Webページの一覧または推奨コンテンツのショートカットメニューに優先的に表示されます。3)会員が、おすすめ期間中に対象となるeディテーリングコンテンツを視聴完了した場合、または付属するアンケートへ回答した場合、学習機会の増進指標「アップ」を獲得できることがあります。なお、アップの獲得に関する事項は、「アップ(up)システム規定」に定めるとおりとします。4)ケアネットは、公開期間が定められているものを除き、おすすめ期間終了後、eディテーリングコンテンツを所定のアーカイブに収納します。第2条(スポンサー企業への情報開示)ケアネットは、会員がeディテーリングを閲覧し、またはeディテーリング上でアンケートに回答した場合、eディテーリングのスポンサー企業(以下「スポンサー企業」といいます。)に対し、会員の氏名・勤務先・勤務先所在地・診療科・医療資格・識別コード・回答したアンケートの全ての内容を開示いたします。なお、当該開示の方法は、eメールによる電子データの送信、およびスポンサー企業のみがアクセス権を有する専用サイト上における電子データの提供によるものとします。上記の情報は、スポンサー企業における情報提供活動およびその他マーケティング活動の目的で利用されます。また、当該スポンサー企業が共同プロモーションを行う企業がある場合には、共同プロモーション先企業にも上記の情報を開示することができるものとします。第3条(免責事項)1)ケアネットは、利用者に対して、スポンサー企業の提供するサービスおよび情報に対して、いかなる保証も行いません。2)利用者とスポンサー企業との間に紛争が生じた場合、当事者間の責任と費用において解決するものとし、ケアネットは、一切関与しません。利用者とスポンサー企業との間の紛争に起因してケアネットが損害を被った場合、ケアネットは係る損害の賠償を利用者に求める場合があります。2014年08月07日 策定2015年07月16日 改定2017年08月14日 改定2022年02月01日 改定附属規定:希少疾患プロジェクト規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(サービス)「希少疾患プロジェクト」とは、Webページの閲覧、または電子メールの配信・受発信により、情報提供者となる医療・福祉・保健等の分野に属する企業と会員に対して、無料で特定の情報を提供し、または交換する場を提供するものです。会員の希少疾患プロジェクトの利用については、本規定の他、CareNet.com利用規約が適用されるものとします。第2条(スポンサー企業への情報開示)1)ケアネットは、会員が希少疾患プロジェクトを閲覧し、または希少疾患プロジェクト上でアンケートに回答した場合、スポンサー企業に対し、会員の氏名・勤務先・勤務先所在地・診療科・医療資格・回答したアンケートの全ての内容を開示いたします。なお、当該開示の方法は、eメールによる電子データの送信、およびスポンサー企業のみがアクセス権を有する専用サイト上における電子データの提供によるものとします。2)上記の情報は、スポンサー企業における情報提供活動およびその他マーケティング活動の目的で利用されます。また、当該スポンサー企業に共同プロモーションを行う企業がある場合には、共同プロモーション先企業にも上記の情報を開示することができるものとします。第3条(免責事項)1)ケアネットは、利用者に対して、スポンサー企業の提供するサービスおよび情報に対して、いかなる保証も行いません。2)利用者とスポンサー企業との間に紛争が生じた場合、当事者間の責任と費用において解決するものとし、ケアネットは、一切関与しません。利用者とスポンサー企業との間の紛争に起因してケアネットが損害を被った場合、ケアネットは係る損害の賠償を利用者に求める場合があります。2014年08月07日 策定2015年07月16日 改定附属規定:eリサーチ規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(サービス)eリサーチとは、ケアネットがCareNet.comの会員に対してインターネットを介して行うリサーチサービスです。ケアネットおよびケアネットの提携会社(以下「提携会社」といいます。)が、アンケート調査などを希望する企業および団体(以下「顧客」といいます。)または、自社のために行うものです。ケアネットおよび提携会社は、アンケートの内容により、会員の中から自由に選択し、その選択された会員に対して、アンケートの依頼を行えるものとし、いかなる場合であっても選択の理由等は会員に通知しません。第2条(会員の秘密保持義務)会員は、アンケート調査において知り得た当該アンケート調査の概要または内容などアンケート調査に係る一切の情報について、これに回答したか否かを問わず、また第三者に開示または漏洩および当該アンケート調査への回答以外の目的に使用してはならないものとします。この会員の秘密保持義務は、会員資格を喪失した後も引き続き有効に存続するものとします。第3条(禁止事項)会員は、理由の如何を問わず、以下に掲げる行為をしてはなりません。1)虚偽および不正な回答2)依頼を受けた会員がメールの転送等により、他の会員に回答を促す行為第4条(権利の帰属)会員は、本サービスを利用しeリサーチに対して回答したすべての情報(以下、「回答情報」といいます。)の著作権その他一切の権利を、ケアネットおよび提携会社に譲渡するものとし、ケアネットおよび提携会社は、その回答情報を自由に選択、修正および編集することができるものとします。会員は、回答情報に係る著作者人格権をケアネットおよび提携会社に対して行使しないものとします。ケアネットおよび提携会社は、回答情報を利用し、また匿名化した上で、会員の承諾なく第三者に開示または提供することができるものとします。前項にかかわらず、会員が個別に同意した場合には、ケアネットおよび提携会社はアンケートに対して会員が行った回答を匿名化しないまま顧客に提供することができます。ケアネットもしくは顧客またはこれらの者に指定された者は、回答情報を利用し、または会員の承諾を得ることなく第三者に対して開示・提供することができるものとします。会員は、本項に基づくケアネットおよび提携会社による著作物の利用について、著作者人格権を行使しないものとします。2014年08月07日 策定附属規定:ケアネットキャリアサービス規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(サービス)「ケアネットキャリアサービス」(以下「本サービス」といいます。)とは、ケアネットが、CareNet.com利用規約第3条に定める資格を有する会員を対象に、転職および臨時職(アルバイト)を紹介するサービスです。会員が自身の個人情報を含む職務経歴や、転職・臨時職(アルバイト)に関する希望条件をケアネットにあらかじめ登録することにより、ケアネットおよび/または本サービス提携企業・医療機関(以下「提携企業等」といいます。)より、希望条件に沿った情報を無料で受け取ることができます。第2条(本規約の適用範囲)本附属規定は会員が本サービスを利用する際に適用されるものとします。本附属規定に定めがない事項に関しては、「CareNet.com利用規約」が適用されるものとします。本附属規定と「CareNet.com利用規約」に齟齬がある場合には、本附属規定が優先されるものとします。第3条(会員の秘密保持義務)会員は、本サービスにおいて知り得た、求人情報の概要を含めた一切の情報について、応募したか否かを問わず、第三者に開示または漏洩をしてはならないものとします。この秘密保持義務は、会員資格を喪失した後も引き続き有効に存続するものとします。第4条(禁止事項)会員は、理由の如何を問わず、以下に掲げる行為をしてはなりません。1)虚偽および不正な情報の登録2)本サービスを通じて入手した情報を第三者に漏洩、販売する等、本人の求職以外の用途に使用する行為3)団体および個人を誹謗中傷する行為4)法令または公序良俗に反する行為第5条(会員の責任)会員は、自己の責任にもとづき本サービスを利用し、本サービスの利用に関する一切の責任を負うものとします。会員が本サービスの利用に際して提供した情報に起因し、または関連して生じる提携企業等その他第三者からの請求・クレーム等の紛争については、当事者間の責任と費用において解決するものとし、ケアネットは、一切関与しません。係る紛争につき、ケアネットが費用を負担し、または損害賠償等の支払いをした場合には、会員は、ケアネットに対し当該費用および損害賠償等に相当する金額を支払うものとします。第6条(ケアネットの責任)ケアネットは、故意または重大な過失のない限り、本サービスに関し利用者に生じた金銭的損失、精神的苦痛、時間的損害等の不利益につき、一切の責任を負いません。なお、ケアネットが責任を負う場合であっても、会員が被った直接かつ現実に生じた通常損害の限度で賠償する義務を負うものとします。ケアネットは、企業情報等の第三者の情報、求人情報、広告その他の第三者により提供される情報に対し、内容の正確性、有用性等について何ら保証せず、また、本サービスは、必ず転職の成功または臨時職(アルバイト)が見つかることを保証するものではありません。第7条(サービス内容の変更)ケアネットは、本サービスの運営を良好に保つため、会員の承諾を得ることなく、ケアネットが適当と判断する方法でユーザに事前に通知することにより、本サービスの内容を変更することができるものとします。第8条(登録情報等の取扱い)1)ケアネットは、会員が本サービスに応募した場合、提携企業等に対し、会員から応募時に取得した全ての情報を開示します。ケアネットおよび提携企業等は、応募情報を本サービスの提供および、その他ご連絡の目的のみに使用します。ただし、個人を特定する情報および会員が提供を望まないことを明示した情報を削除したうえで、上記以外の目的で使用することがあります。2)ケアネットは、会員が自ら登録した情報又は求人情報を提供する医療機関もしくは企業等(以下「医療機関等」といいます。)による評価に関する情報を、医療機関等に提供することができるものとし、会員はこれに同意したものとします。3)前項のほか、ケアネットは、会員がケアネットに対し本サービスにおいて提供した情報(会員がケアネットのコンサルタントとの面談等において提供した情報を含みます。)を、個人を特定する情報および会員が提供を望まないことを明示した情報を削除したうえで、医療機関等に提供することができるものとし、会員はこれに同意したものとします。*「個人を特定する情報」とは、氏名、住所、電話番号、電子メールアドレス等の個人を特定することが可能な情報および、複数の情報を組み合わせることで個人を特定することが可能な情報をいいます。具体的には、住所を利用する際には都道府県名と地方名までは「個人を特定することができない情報」として取り扱います。又、年齢そのものは、複数の情報を組み合わせることで「個人を特定する情報」とみなし、5~10歳きざみの年齢層を「個人を特定することができない情報」として取り扱います。第9条(サービス利用契約上の地位の譲渡等)1)ケアネットは、本サービスにかかる事業を、子会社・株式会社ケアネットワークスデザインに譲渡した場合には、当該事業譲渡に伴い本サービス利用契約上の地位、本附属規定に基づく権利および義務ならびに会員の登録事項その他の情報を株式会社ケアネットワークスデザインに譲渡することができるものとし、会員は、かかる譲渡につきあらかじめ同意したものとします。なお、本項に定める事業譲渡には、通常の事業譲渡のみならず、会社分割その他事業が移転するあらゆる場合を含むものとします。2)ケアネットは、本サービスにかかる事業を株式会社ケアネットワークスデザインと共同で運営することができるものとし、その場合には、本附属規定が株式会社ケアネットワークスデザインにも適用されます。2014年08月07日 策定2016年02月05日 改定2021年02月01日 改定2021年02月05日 改定2021年08月01日 改定附属規定:Web講演会サービス規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(サービス)「Web講演会サービス」とは、Web講演会サービス開催企業(以下「開催企業」といいます。)が自己の取り扱う製品に関して開催する講演会(以下、個々の講演会を「Web講演会」といいます)を配信するサービスです。第2条(開催企業への情報開示)ケアネットは、会員が予約、或いは視聴したWeb講演会の開催企業に対し、会員の氏名・勤務先・勤務先所在地・診療科・医療資格・識別コード・回答したアンケートの全ての内容を開示します。なお、当該開示の方法は、eメールによる電子データの送信、および開催企業のみがアクセス権を有する専用サイト上における電子データの提供によるものとします。これらの開示情報は、開催企業における情報提供活動およびその他マーケティング活動の目的で利用されます。また、当該開催企業が共同プロモーションを行う企業がある場合には、共同プロモーション先企業にも上記の情報を開示することがあります。第3条(免責事項)1)ケアネットは、会員に対して、開催企業の提供するサービスおよび情報に対して、いかなる保証も行いません。2)会員と開催企業との間に紛争が生じた場合、当事者間の責任と費用において解決するものとし、ケアネットは、一切関与しません。会員と開催企業との間の紛争に起因してケアネットが損害を被った場合、ケアネットは係る損害の賠償を会員に求める場合があります。3)以下いずれかの原因で、Web講演会の視聴困難および遅延が生じた場合の損失、または情報の欠陥、誤送信があった場合の損失について、ケアネットは一切の責任を負いません。a.機器および回線の障害またはスペック不足b.会員または第三者の妨害c.天災地変等の非常事態その他の不可抗力の発生d.その他の瑕疵による障害2014年08月07日 策定2015年07月16日 改定2016年10月01日 改定2022年02月01日 改定附属規定:CareNet医学教育規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(目的)本規定は、ケアネットが運営する会員制臨床医学メディア「CareNet医学教育」(以下「CareNet医学教育」といいます。)の利用に関し、必要な事項を定めるものです。会員のCareNet医学教育の利用については、本規定の他、CareNet.com利用規約が適用されるものとします。第2条(サービス等)1)「本サービス」とは、ケアネットが、医療従事者の生涯学習を支援・促進し、医療サービスの向上に貢献することを目的に、CareNet医学教育を通じて医学学習プログラムその他医学・医療に関連するプログラムを配信するサービスをいいます。2)「プログラム等」とは、本サービスにおいて配信・掲載される、医学学習プログラムおよびCareNet医学教育プログラムの全部または一部をいいます。3)ケアネットは、本サービス内の情報(リンク先の情報は除きます。)について医学的妥当性および中立性の確保に努め、運営します。4)ケアネットは、新着のプログラム等を中心に視聴・閲覧を推奨する期間(以下「おすすめ期間」といいます。)を設定するものとします。おすすめ期間中のプログラム等は、当該Webページの一覧または推奨コンテンツのショートカットメニューに優先的に表示されます。5)会員が、おすすめ期間中に対象となるプログラム等を視聴完了した場合、または付属するアンケート等へ回答した場合、学習機会の増進指標「アップ」を獲得できることがあります。なお、アップの獲得に関する事項は、「アップ(up)システム規定」に定めるとおりとします。6)ケアネットは、公開期間が定められているものを除き、おすすめ期間終了後、プログラム等を所定のアーカイブに収納します。第3条(協賛企業への情報開示)1)ケアネットは、会員が、協賛企業の提供によるプログラム等を視聴し、またはプログラム上でアンケート等に回答した場合、その視聴した事実および会員の氏名・勤務先・勤務先所在地・診療科・医療資格・識別コード・その他、回答したアンケート等の全ての内容(以下総称して「視聴情報」といいます。)を、当該協賛企業に開示する場合があります。なお、当該開示の方法は、eメールによる電子データの送信、および協賛企業のみがアクセス権を有する専用サイト上における電子データの提供によるものとします。2)視聴情報は、協賛企業における情報提供活動およびその他マーケティング活動の目的で利用されることがあります。また、当該協賛企業が共同プロモーションを行う企業がある場合には、共同プロモーション先企業にも上記の情報を開示することができるものとします。第4条(免責事項)1)ケアネットは、利用者に対して、協賛企業の提供するサービスおよび情報に対して、いかなる保証も行いません。2)利用者と協賛企業との間に紛争が生じた場合、当事者間の責任と費用において解決するものとし、ケアネットは、一切関与しません。利用者と協賛企業との間の紛争に起因してケアネットが損害を被った場合、ケアネットは係る損害の賠償を利用者に求める場合があります。2016年07月01日 策定2023年06月01日 改定附属規定:アップ(up)システム規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(定義)「アップ(up)システム」とは、会員が、CareNet.comを通じた学習機会の増進指標「アップ」(以下「アップ」といいます。)を獲得するシステムをいいます。ケアネットは、会員のアップ獲得を通じて、CareNet.comサービスの向上に努め、より会員の学習に資する情報提供を行います。第2条(アップ獲得条件等)1)会員は、CareNet.comサービスを利用し、学習および知識・経験等の情報を収集したとき、アップを獲得します。なお、アップ獲得までには数日を要することがあります。2)アップは第三者に譲渡することはできません。3)アップの獲得後において、会員が各規定に違反した場合は、獲得したアップが無効とされることがあります。第3条(アップ獲得対象)会員が以下のいずれかの学習活動を行った場合、アップを獲得できる場合があります。なお、アップを付与する条件および付与数については、ケアネットが設定するものとします。1)CareNet.comサービスの視聴2)CareNet.comサービスの視聴完了3)ケアネットが実施するアンケートへの回答4)その他ケアネットが定める所定の活動を行った場合第4条(特典)獲得したアップが一定数に達した場合、ケアネットは、学習の意欲豊かな会員に対する支援として、ポイントの付与や、CareNeTVの優先視聴権等、様々な特典を提供します。なお、ポイントに関する規定は「ポイントプログラム規定」に定めるとおりとします。第5条(有効期間)以下のいずれかに該当する場合、アップは失効します。1)アップの最終獲得日から2年を経過した場合2)会員が会員資格を失った場合第6条(アップシステムの変更・廃止)1)ケアネットは、会員への事前の通知なくして、アップシステムの内容の全部または一部の変更、追加をすることができ、また、あらかじめ会員に通知することにより、アップシステムの全部または一部を廃止することができるものとします。ただし、この場合は廃止までに相当な期間を設けるものとします。2)ケアネットは、アップ獲得条件、アップ獲得対象、ポイントの付与その他アップシステムに関する事項を随時変更できるものとします。2017年08月14日 策定2020年07月01日 改定附属規定:Doctors’Picks規定ケアネットは、本附属規定に定める各サービスを利用いただく皆さまに、CareNet.com利用規約および本附属規定にご同意いただいたものとみなします。第1条(サービス)1)「Doctors’Picks」(以下「本サービス」といいます。)とは、会員が、他の会員への情報提供または他の会員との情報共有の目的で、ケアネットまたは第三者が提供するニュース、雑誌、文献、動画その他の情報等(以下「ニュース等」といいます。)を選択し、当該ニュース等に対するコメント(以下「コメント」といいます。)と共に投稿できるサービスをいいます。2)会員は、医学的妥当性および中立性に配慮し、ニュース等を選択するものとします。3)コメントの所有権および知的財産権その他一切の権利(著作権法第27条および第28条の権利を含みます。)は、当該コメントを投稿した会員に帰属します。但し、会員は、ケアネットおよび他の会員が、コメントの全部または一部を使用、複製、翻訳、翻案等し、利用することを許諾するものとします。4)会員は、本サービスに投稿したコメントが、次の各号のいずれかに該当しないことを保証するものとします。(1)第三者が保有する所有権および知的財産権その他一切の権利(著作権法第27条および第28条の権利を含みます。)を侵害するもの(2)第三者の信用、名誉、プライバシーを侵害するもの(3)法令または公序良俗に反するもの5)ケアネットは、投稿されたコメントが前項に違反する場合、本サービスの趣旨・目的と関連がない場合、その他ケアネットが不適切と判断した場合には、当該コメントを修正または削除できるものとし、更に、当該コメントに係る訂正記事またはコメントを投稿できるものとします。第2条(免責事項)1)ケアネットは、ニュース等およびコメントの完全性、正確性、確実性、有用性等を保証するものではありません。2)会員が、本サービスの利用を通じ、他の会員または第三者に対して損害を与えた場合、自己の費用と責任で紛争を解決するものとし、ケアネットに何等の迷惑または損害を与えないものとします。2018年06月01日 策定

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ポイントサービス規約

(趣旨) 本ポイントサービス規約(以下「本規約」といいます。)は、株式会社ケアネット(以下「ケアネット」といいます。)がCareNet.com(ケアネット・ドットコム)で企画・運営するサービスで提供するポイントサービス(以下「本サービス」といいます。)において、本サービスを受けるための条件及び本サービスにより提供される特典の内容を定めるものです。なお、本規約の用語及び本規約に定めのない事項については、CareNet.com利用規約(以下「利用規約」といいます。)に準ずるものとします。第1条(ポイント付与対象者) ポイントの付与対象者は、CareNet.comの「会員」とします。第2条(ポイント付与条件)ケアネットは、会員が次に定めるポイント付与対象サービスを利用した場合に、各サービスに対応するポイントを付与するものとします。ポイント付与対象サービス付与ポイントケアネットが実施する調査事業に対するアンケートへの回答アンケート毎にケアネットで設定ケアネットが実施するキャンペーンへの参加キャンペーン毎にケアネットで設定第3条(ポイントの管理) 1.ケアネットは、会員に対して、ケアネット所定の方法により、会員が獲得したポイント数、会員が使用したポイント数及びポイント数の残高を告知するものとします。2.会員は、前項のポイント数に疑義がある場合いは、ただちにケアネットに連絡し、その内容を説明するものとします。ただし、ポイント数に関する最終的な決定は、ケアネットが行うものとし、会員はこれに従うものとします。第4条(ポイントの交換) 1.会員は、保有ポイントを使用し、ケアネットがケアネットポイント交換サイトで掲載する商品、サービスまたはクーポン等(以下総称して「商品」といいます。)と交換することができます。2.ケアネットは、ポイントの交換の対象となる商品を制限し、またはポイントの使用に条件を付す場合があります。3. 会員は、ポイントの交換時に、ケアネット所定の方法により、商品の送付先を届け出るものとします。なお、商品の送付先は日本国内に限られるものとします。4.商品の送付先について、会員本人以外の第三者の宛先を届け出る場合、会員は、予め当該第三者に対して、ケアネットから本サービスにより商品が送付される場合がある旨の了承を得るものとします。5.会員は、ポイントの交換にあたり、本規約のほか、本サービスに関するご利用ガイドの定めに従うものとします。第5条(有効期限)保有ポイントの有効期限は、最終ポイント付与日から2年後の応答日月の月末までとします。ただし、第6条乃至第8条で定める場合を除くものとします。第6条(ポイントの無効)会員が不正な手段を用いてポイントを取得した場合(本人以外の者によってポイントが取得された場合、重複登録によってポイントが取得された場合等)、当該ポイントは無効とします。第7条(ポイントの消滅)1.会員が利用規約第7条(会員資格の取消)に定める事項に該当した場合、ポイントは消滅するものとします。2.ケアネットが次の各号に該当した場合には、ポイントは消滅するものとします。(1)民事再生手続、会社更生手続、特別清算又は破産開始の申立てをしたとき(2)解散若しくは営業の全部又はケアネット・ドットコムの運営を第三者に譲渡したとき3.前各項に該当した際に既に実施されたポイントの交換については、ケアネットにより取り消される場合があります。第8条(自主退会) 会員が利用規約第6条(退会)に基づき自主退会をした場合は、ポイントは消滅するものとします。第9条(注意事項) 1.ポイントは、他の会員に譲渡することはできません。2.ポイントは、ケアネットが定める交換方法以外には使用できず、ケアネットは如何なる場合にもポイントの買い取り等は行いません。3.会員が不正な手段を用いて取得したポイントにより商品を取得した場合、ケアネットは当該会員に対して損害賠償を請求できるものとします。4.ポイントの取得、ポイントの交換に伴い、税金や付帯費用が発生する場合には、会員がこれらを負担するものとします。以上平成19年11月1日  施行平成21年7月16日  改定平成22年6月27日  改定平成25年12月26日  改定

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早期胃がん術後の抗がん剤副作用で死亡したケース

癌・腫瘍最終判決判例タイムズ 1008号192-204頁概要53歳女性、胃内視鏡検査で胃体部大弯に4~5cmの表層拡大型早期胃がん(IIc + III型)がみつかり、生検では印環細胞がんであった。胃2/3切除およびリンパ節切除が行われ、術後に補助化学療法(テガフール・ウラシル(商品名:UFT)、マイトマイシン(同:MMC)、フルオロウラシル(同:5-FU))が追加された。ところが、5-FU®静注直後から高度の骨髄抑制を生じ、術後3ヵ月(化学療法後2ヵ月)で死亡した。詳細な経過患者情報とくに既往症のない53歳女性経過1992年3月6日背中の痛みを主訴に個人病院を受診。3月18日胃透視検査で胃体部大弯に陥凹性病変がみつかる。4月1日胃内視鏡検査にて、4~5cmに及ぶIIc + III型陥凹性病変が確認され、生検でGroup V印環細胞がんであることがわかり、本人にがんであることを告知の上、手術が予定された。4月17日胃2/3切除およびリンパ節切除術施行。術中所見では漿膜面にがん組織(のちに潰瘍瘢痕を誤認したものと判断された)が露出していて、第2群リンパ節にまで転移が及んでいたため、担当医師らはステージIIIと判断した。4月24日病理検査結果では、リンパ節転移なしと判定。4月30日病理検査結果では、早期胃がんIIc + III、進達度m、印環細胞が増生し、Ul III-IVの潰瘍があり、その周辺にがん細胞があるものの粘膜内にとどまっていた。5月8日病理検査結果では前回と同一で進行がんではないとの報告。ただしその範囲は広く、進達度のみを考慮した胃がん取り扱い規約では早期がんとなるものの、すでに転移が起こっていることもあり得ることが示唆された。5月16日術後経過に問題はなく退院。5月20日白血球数3,800、担当医師らは術後の補助化学療法をすることにし、抗がん剤UFT®の内服を開始(7月2日までの6週間投与)。6月4日白血球数3,900、抗がん剤MMC® 4mg投与(6月25日まで1週間おきに4回投与)。6月18日白血球数3,400。6月29日抗がん剤5-FU® 1,250mg点滴静注。6月30日抗がん剤5-FU® 1,250mg点滴静注。7月1日白血球数2,900。7月3日白血球数2,400、身体中の激痛が生じ再入院。7月4日白血球数2,200、下痢がひどくなり、全身状態悪化。7月6日白血球数1,000、血小板数68,000。7月7日白血球数700、血小板数39,000、大学病院に転院。7月8日一時呼吸停止。血小板低下が著しく、輸血を頻回に施行。7月18日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.リンパ節転移のないmがん(粘膜内がん)に補助化学療法を行った過失診療当時(1992年)の知見をもってしても、表層拡大型IIc + III早期胃がん、ステージI、リンパ節、腹膜、肝臓などのへの転移がなく外科的治癒切除を行った症例に、抗がん剤を投与したのは担当医師の明らかな過失である。しかも、白血球数が低下したり、下痢がみられた状態で抗がん剤5-FU®を投与するのは禁忌であった2.説明義務違反印環細胞がん、表層拡大型胃がんについての例外的危険を強調し、抗がん剤を受け入れざるを得ない方向に誘導した。そして、あえて危険を伴っても補助化学療法を受けるか否かを選択できるような説明義務があったにもかかわらず、これを怠った3.医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務を怠った病院側(被告)の主張1.リンパ節転移のないmがんに補助化学療法を行った過失術中所見ではがん組織が漿膜面まで明らかにでており、第2群のリンパ節に転移を認めるのでステージIIIであった。病理組織では摘出リンパ節に転移の所見がなく、肝臓などに肉眼的転移所見がみられなかったが、それで転移がなかったとはいえない。本件のような表層拡大型早期胃がんはほかの胃がんに比べて予後が悪く、しかも原発病巣が印環細胞がんという生物学的悪性度のもっとも強いがんであるので、再発防止目的の術後補助化学療法は許されることである。白血球数は抗がん剤の副作用以外によっても減少するので、白血球数のみを根拠に抗がん剤投与の適否を評価するべきではない2.説明義務違反手術で摘出したリンパ節に転移がなく、進達度が粘膜内ではあるが、この結果は絶対的なものではない。しかも原発病巣が生物学的悪性度のもっとも強い印環細胞がんであり、慎重に対処する必要があるので、副作用があるが抗がん剤を投与するかどうか決定するように説明し、患者の同意を得たので説明義務違反はない3.医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務1980年以降に早期胃がんに対して補助化学療法を行わないとの考えが確立したが、担当医師ががん専門病院に勤務していたのは1970~1980年であり、この当時は抗がん剤の効果をみるために早期胃がんに対しても術後補助化学療法治療試験が盛んに行われていた。したがって、早期胃がんに対して補助化学療法を行わないとの考えを開業医レベルの担当医師に要求するのは無理である裁判所の判断1. リンパ節転移のないmがんに補助化学療法を行った過失担当医師らは肉眼所見でがん組織が漿膜面まで露出していたとするが、これは潰瘍性瘢痕をがんと誤認したものである。また、第2群のリンパ節に転移を認めるステージIIIであったと主張するが、数回にわたって行われた病理検査でがんが認められなかったことを優先するべきであるので、本件は進行がんではない。したがって、そもそも早期がんには不必要かつ有害な抗がん剤を投与したうえに、下痢や白血球減少状態などの副作用がみられている状況下では禁忌とされている5-FU®を、常識では考えられないほど大量投与(通常300~500mgのところを1,250mg)をしたのは、医師として当然の義務を尽くしていないばかりか、抗がん剤の副作用に対する考慮の姿勢がみじんも存在しない。2. 説明義務違反説明義務違反に触れるまでもなく、担当医師に治療行為上の重大な過失があったことは明らかである。3. 医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務を怠った。担当医師はがん専門病院に勤務していた頃の知見に依拠して弁解に終始しているが、がん治療の方法は日進月歩であり、ある知見もその後の研究や医学的実践において妥当でないものとして否定されることもあるので、胃がんの治療にあたる以上最新の知見の修得に努めるべきである。原告側合計6,733万円の請求を全額認定考察この判例から得られる教訓は、医師として患者さんの治療を担当する以上、常に最新の医学知識を吸収して最良の医療を提供しなければならないということだと思います。いいかえると、最近ようやく臨床の現場に浸透しつつあるEBM(evidence based medicine)の考え方が、医療過誤かどうかを判定する際の基準となる可能性が高いということです。裁判所は、以下の知見はいずれも一般的な医学文献等に掲載されている事項であると判断しました。(1)mがんの再発率はきわめて低いこと(2)抗がん剤は胃がんに対して腫瘍縮小効果はあっても治療効果は認められないこと(3)印環細胞がん・表層拡大型胃がん、潰瘍型胃がんであることは再発のリスクとは関係ないこと(4)抗がん剤には白血球減少をはじめとした重篤な副作用があること(5)抗がん剤は下痢の症状が出現している患者に対して投与するべきでないことこれらの一つ一つは、よく勉強されている先生方にとっては常識的なことではないかと思いますが、医学論文や学会、症例検討会などから疎遠になってしまうと、なかなか得がたい情報でもあると思います。今回の担当医師らは、術中所見からステージIIIの進行がんと判断しましたが、病理組織検査では「転移はないmがんである」と再三にわたって報告が来ました。にもかかわらず、「今までの経験」とか「直感」をもとに、「見た目は転移していそうだから、がんを治療する以上は徹底的に叩こう」と考えて早期がんに対し補助化学療法を行ったのも部分的には理解できます。しかし、われわれの先輩医師たちがたくさんの症例をもとに築き上げたevidenceを無視してまで、独自の治療を展開するのは大きな問題でしょう。ことに、最近では医師に対する世間の評価がますます厳しくなっています。そもそも、総務庁の発行している産業分類ではわれわれ医師は「サービス業」に分類され、医療行為は患者と医療従事者のあいだで取り交わす「サービスの取引」と定義されています。とすると、本件では「自分ががんの研修を行った10~20年前までは早期胃がんに対しても補助化学療法を行っていたので、早期胃がんに補助化学療法を行わないとする最新の知見を要求されても困る」と主張したのは、「患者に対し10~20年前のまちがったサービスしか提供できない」ことと同義であり、このような考え方は利用者(患者)側からみて、とうてい受容できないものと思われます。また、「がんを治療する以上は徹底的に叩こう」ということで5-FU®を通常の2倍以上(通常300~500mgのところを1,250mg)も使用しました。これほど大量の抗がん剤を一気に投与すれば、骨髄抑制などの副作用が出現してもまったく不思議ではなく、とても「知らなかった」ではすまされません。判決文でも、「常識では考えられないほど抗がん剤を大量投与をしたのは、抗がん剤の副作用に対する考慮の姿勢がみじんも存在しない」と厳しく批判されました。「医師には生涯教育が必要だ」、という声は至るところで耳にしますが、今回の事例はまさにそのことを示していると思います。日々遭遇する臨床上の問題についても、一つの考え方にこだわって「これしかない」ときめつけずに、ほかの先生に意見を求めたり、文献検索をしなければならないと痛感させられるような事例でした。癌・腫瘍

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「プライマリケア医が診るがん」アンケート結果(2)

対象ケアネット会員の医師(内科・総合内科)625名方法インターネット調査実施期間2013年7月11日~7月18日Q日常診療において問題のあった、がん患者さんとのエピソードをお聞かせください。ずっと他の病気でみていて、がんが見つかったとき、もっと早期に発見できなかったのかと後悔する。 だから、検診は必ず受けるように指示してます(勤務医、50代)在宅療養を行っているので、エンドステイジの方が多く、痛みなく安らかな最期を迎えさせてあげたいと思っています。精神的な苦痛への対処。(開業医、50代)在宅での看取り。特に出血時などの対応(開業医、50代)訪問診療を担当しています。在宅での看取りで紹介される事がありますが、退院時の家族の意思が不安定にもかかわらず、退院後の経過をしっかり説明しないのか、呼吸苦に驚いて病院へ逆戻りすることがしばしばです。(開業医、60代)告知の是非。前医(急性期病院)で告知されていて、その後の対応は紹介された病院であることも多く困ることもある。(勤務医、50代)保険診療では必要な薬剤価格が高くて使用できないこと。今は治療だけではなく家族関係や経済面も大変な人が多くて気苦労が絶えない。(勤務医、50代)前医より予後等の説明を受けていない、あるいは理解していない。 オピオイド使用を頑として拒否 (勤務医、40代)前医での告知が不十分であった場合、緩和治療目的で紹介となると転院してからトラブルになる。 (勤務医、40代)入院患者の家族が、病院の方針に疑問を感じて相談に来ることがある(開業医、50代)他院に通院しているが、疼痛などコントロール不十分で当院を訪れるケース。紹介状もなく、原疾患の詳しい病状もわからない中での対応となる。また、当院への受診を、もともとの先生に言いにくい、言いたくない、というケースもしばしばある。(開業医、40代)複数の病院に診療を受けていた患者がいたこと。(開業医、50代)治療効果がない場合など精神的ケアが重要(勤務医、60代)高齢、認知症がひどい。 本人と家族の治療方針(希望)が異なるとき(勤務医、40代)

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