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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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肺がん根治手術患者の心理と術後補助化学療法実施に関する因子/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、過去10年以内に肺がんの根治手術を受けたStage II~IIIの肺がん患者(以下、患者)131名を対象に、手術前後に抱く不安や心情を理解するとともに、患者が術後補助化学療法の実施を検討する際に何を重視し、影響を受けるかを把握することを目的に、WEBアンケート調査を実施した。 調査結果から、患者の治療選択における情報入手先として医師が80%を占めており、術後補助化学療法実施の意思決定は、患者が医師からの説明をどのように受け止めたかに大きく左右されることが明らかとなった。また、患者は根治手術を受けたとしても再発の可能性があることを理解しており、手術前後から術後補助化学療法実施時にいたるいずれの過程においても、再発の可能性に不安を感じていた。患者の70%が術後補助化学療法に対して、たとえ再発時期を遅らせるだけになったとしても、「再発を避けるためにやれることはやっておきたい」という考えを持っていることも明らかとなり、再発までの期間の延長が、治癒への期待や個人的な人生のイベント達成、再発後の新たな治療法への期待などにつながっていることが考えられた。同調査を監修した広島大学 腫瘍外科の岡田守人氏は、患者の多くは、生存を長くすることに加えて、無再発期間を重要視していることがわかった。患者の希望を理解したうえで、医師を中心とした多職種連携チームで患者さんをサポートすることがとても重要であると述べている。調査概要・調査期間:2020年10月9日~11月19日・調査対象:肺がんの根治手術を10年以内に受けたStage II~IIIの患者:合計131例・調査方法:Webアンケート調査主な調査結果<医師とのコミュニケーションと患者の意思決定>・根治手術を受けた肺がん患者が、がんと診断された後に治療選択を判断する際の情報入手先は、医師からの説明が80%であった。・医師からの説明は、手術前後、術後補助療法実施時のいずれにおいても、その時点での病状や治療などの短期的な項目に関する割合が70%以上と高く、生活への影響、再発の可能性といったやや長期的な項目の割合は前述の項目と比べると少し低かった。一方、患者は短期的とやや長期的のいずれの項目も詳しく説明を聞きたいと考えていた。<患者の手術前後の心理>・患者は、手術前後、術後補助化学療法実施中いずれも、再発の可能性(83.1%、77.2%、71.9%)と今後の生活(63.4%、60.4%、60%)に不安を感じていた。術後補助化学療法実施時においては、77.3%が副作用に対する不安を感じていた。<術後補助化学療法に対する患者の考え>・「術後補助化学療法によって、再発の割合を下げることができなくても再発の時期を年単位で遅らせる可能性がある」とした場合、「術後補助化学療法を受ける」に共感した患者は70%、「術後補助化学療法を受けない」に共感した患者は30%であった。・「術後補助化学療法を受ける」に対する共感部分は、“やれることはやっておきたい”が100%、“再発による生活・気持ちへの影響”が94%であった。また、“抗がん剤の副作用”は93%が許容していた。・「術後補助化学療法を受けない」に対する共感部分は、“抗がん剤の副作用による生活・気持ちへの影響”が83%、“手術だけで治る可能性/術後補助化学療法によらず再発する可能性”が90%、“抗がん剤は再発してからでよい”が80%であった。

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新型コロナで肺がん新規患者の受診減少、8,000人以上が診療機会喪失か/日本肺癌学会

 COVID-19の感染拡大により、がん検診およびがん診療の制限は、重大な懸念事項となってきた。日本肺癌学会では、COVID-19が肺がん診療におよぼした影響を見るために、第2波が収まりつつあ った2020年10月末、原発性肺がんと診断され初回治療を受けた患者数を2019年1~10月と2020年1~10月で比較検討した。アンケート対象は、日本肺癌学会の評議員が所属する施設およびがん拠点病院である。 主な結果は以下のとおり。・2020年1~10月の肺がん新規患者数は、前年同月と比べ6.6%減少していた(2019年1万9,878例、2020年1万8,562例)。・治療方法別の影響をみると、手術実施症例の減少は6.0%、薬物療法症例の減少は8.6%と双方とも減少していたが、例外的に免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用のみ増加(10.5%)していた。・新型コロナ治療が多い施設ほど、肺がん新規患者が減少していた(新型コロナ治療患者数0~5名の施設:-4.6%、6~50例の施設:-4.2%、51~100例施設:-8.3%、101例以上の施設:-8.6%)。・施設形態別にみると、減少は公立病院が最も顕著で14.3%。大学病院6.3%、がん専門病院6.6%、国立病院7.8%であった。・月別にみると、非常事態宣言が出された2020年4月以降、前年同月を下回っていた。 原発性肺がんの年間罹患数は約13万人。6.6%の減少から推定すると、約8,600人の新規患者が診療機会を逸したと考察される。

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新規抗体薬物複合体SG、転移TN乳がんに有効/NEJM

 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、新規の抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)は化学療法単剤と比較して、無増悪生存(PFS)期間および全生存(OS)期間を有意に延長した。ただし、骨髄抑制と下痢の発現頻度は、SGのほうが高かった。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAditya Bardia氏らが、7ヵ国88施設で実施した無作為化評価者盲検第III相試験「ASCENT試験」の結果を報告した。SGは、乳がんの多くに発現しているヒト栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)を標的とするsacituzumabを、イリノテカンの活性代謝物SN-38(トポイソメラーゼI阻害薬)と独自の加水分解性リンカーを介して結合させた抗Trop-2 ADCで、これまで第I/II相試験で転移のある上皮がんにおける有効性、安全性が評価され、第III相試験実施を後押しする結果が得られていた。NEJM誌2021年4月22日号掲載の報告。転移を有するTN乳がん患者で脳転移はない468例、SGと化学療法単剤を比較 研究グループは、2ライン以上の化学療法歴がある再発/難治性の転移を有するTN乳がん患者を、SG群(10mg/kgを21日サイクルのday1、8に点滴投与)、または化学療法群(主治医選択によりエリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビンのいずれか単剤を投与)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、脳転移のない患者におけるPFS(盲検化中央判定)で、副次評価項目は、OS、PFS(治験責任医師判定)、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。 2017年11月~2019年9月に529例を登録。このうち、脳転移のない患者は468例(SG群235例、化学療法単剤群233例)で、年齢中央値は54歳、全例にタキサン使用歴があった。PFSはSG群5.6ヵ月、化学療法単剤群1.7ヵ月、OSはそれぞれ12.1ヵ月、6.7ヵ月 PFS期間中央値は、SG群5.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.3~6.3、イベント166件)、化学療法単剤群1.7ヵ月(1.5~2.6、150件)であった(病勢増悪または死亡のハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.32~0.52、p<0.001)。 OS期間中央値は、SG群12.1ヵ月(95%CI:10.7~14.0)、化学療法単剤群6.7ヵ月(5.8~7.7)であった(死亡のHR:0.48、95%CI:0.38~0.59、p<0.001)。ORRは、SG群35%、化学療法単剤群5%であった。 Grade3以上の主な治療関連有害事象は、好中球減少症(SG群51%、化学療法単剤群33%)、白血球減少症(10%、5%)、下痢(10%、1%未満)、貧血(8%、5%)、発熱性好中球減少症(6%、2%)であった。有害事象による死亡は各群3例報告されたが、SG投与に関連した死亡は認められなかった。

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NSCLC1次治療、ペムブロリズマブ単剤の5年追跡結果(KEYNOTE-024)/JCO

 未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)単剤と化学療法を比較した第III相KEYNOTE-024試験の5年追跡結果が発表された。・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例)・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例)・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・無作為化からデータカットオフ(2020年6月1日)までの期間中央値は59.9ヵ月であった。・化学療法群からペムブロリズマブ群へのクロスオーバーは66.0%であった。・OS中央値はペムブロリズマブ群26.3ヵ月、化学療法群は13.4ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81)。・5年OS率は、ペンブロリズマブ群で31.9%、化学療法群で16.3%であった。・長期治療曝露による毒性の増加は示されなかった。

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「ハーセプチン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第50回

第50回 「ハーセプチン」の名称の由来は?販売名ハ-セプチン®注射用60 ハ-セプチン®注射用150一般名(和名[命名法])トラスツズマブ(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果○HER2過剰発現が確認された乳癌○HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌用法及び用量HER2過剰発現が確認された乳癌にはA法又はB法を使用する。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でB法を使用する。A法:通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。B法:通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には8mg/kg(体重)を、2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。警告内容とその理由1.本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。2.心不全等の重篤な心障害があらわれ、死亡に至った例も報告されているので、必ず本剤投与開始前には、患者の心機能を確認すること。また、本剤投与中は適宜心機能検査(心エコー等)を行い患者の状態(左室駆出率[LVEF]の変動を含む)を十分に観察すること。特に以下の患者については、心機能検査(心エコー等)を頻回に行うこと。アントラサイクリン系薬剤を投与中の患者又はその前治療歴のある患者胸部へ放射線を照射中の患者心不全症状のある患者冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)の患者又はその既往歴のある患者高血圧症の患者又はその既往歴のある患者3.本剤投与中又は本剤投与開始後24時間以内に多くあらわれるInfusion reactionのうち、アナフィラキシー、肺障害等の重篤な副作用(気管支痙攣、重度の血圧低下、急性呼吸促迫症候群等)が発現し死亡に至った例が報告されている。これらの副作用は、特に安静時呼吸困難(肺転移、循環器疾患等による)のある患者又はその既往歴のある患者において重篤化しやすいので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年5月5日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年8月改訂(第24版)医薬品インタビューフォーム「ハ-セプチン®注射用60・ハ-セプチン®注射用150」2)PULS CHUGAI:製品・安全性

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ALK陽性肺がん、第2世代ALK-TKI後のロルラチニブの頭蓋内・外有効性/Ann Oncol

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)は中枢神経系への転移が多い。それはALK-TKIの出現で予後が著しく改善した現在でも依然として問題である。 第3世代ALK/ROS1-TKIのロルラチニブは脳内移行が高く、ALK陽性のNSCLCに対して良好な抗腫瘍活性を示す。第2世代ALK-TKIで進行したALK陽性NSCLCにおけるロルラチニブの全体的、頭蓋内、頭蓋外の有効性を評価した第II相試験の結果が発表された。 この進行中の第II相試験(NCT01970865)では、第2世代ALK-TKI±化学療法の治療歴を有するALK陽性進行NSCLC患者が、治療歴別に拡大コホート(EXP)に登録された。・対象:第2世代ALK-TKI±化学療法の治療歴を有するALK陽性進行NSCLC・介入:ロルラチニブ100mg/日 3週ごと 進行または忍容できない毒性が発現するまで投与・評価項目:独立中央放射線委員会(ICR)評価の頭蓋内(IC-ORR)、頭蓋外(EC-ORR)および全奏効率(ORR)・拡大コホート:  第2世代ALK-TKI ±化学療法歴1回(EXP3B)  第2世代ALK-TKI ±化学療法歴2回(EXP4)  第2世代ALK-TKI ±化学療法歴3回(EXP5) 主な結果は以下のとおり。・EXP3B~5の患者139例のうち、EXP3Bは28例、EXP4は65例、EXP5は46例であった。・EXP3B~5のORRは39.6%、IC-ORRは56.1%、EC-ORRは36.7%であった。・EXP3B~5の奏効期間中央値(DoR)は9.6ヵ月であった。IC-DoRは12.4ヵ月、EC-DoRは9.7ヵ月であった・EXP3B~5の無増悪生存期間中央値は6.6ヵ月、全生存期間中央値は20.7ヵ月であった。・EXP3BのORRは42.9%、IC-ORRは66.7%、EC-ORRは32.1%であった。・EXP4およびEXP5のORRは38.7%、IC-ORRは54.2%、EC-ORRは37.8%であった。 ロルラチニブは、第2世代のALK-TKI治療後の集団において、臨床的に意味のある頭蓋内および頭蓋外抗腫瘍活性を示した。

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レンバチニブ+ペムブロリズマブ、子宮体がんに国内申請

 エーザイとMDSは、2021年4月23日、マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、日本において進行性子宮体がんに係る適応追加を申請したと発表。 この申請は、プラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がん(日本においては子宮体がん)を対象とした臨床第III相試験(309/KEYNOTE-775試験)の結果に基づいたもの。この試験結果は、2021年3月に開催された米国婦人科腫瘍学会(SGO)で発表された。 同試験において、レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)、副次評価項目である奏効率(ORR)について、治験医師選択化学療法(ドキソルビシンまたはパクリタキセル)に対して統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目および副次評価項目を達成した。なお、同併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されているものと同様であった。 レンバチニブとペムブロリズマブは、子宮体がんを予定される効能又は効果として、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されており、この申請は優先審査の対象となる。 子宮体がんの罹患者数は、2020年には世界で41万7,000人以上と推定され、約9万7,000人が亡くなったとされている。日本では2020年に1万7,000人以上が新たに罹患し、3,000人以上が亡くなったと推定される。子宮内膜がんは、子宮体がんの9割以上を占める。予後は悪く、転移のある子宮内膜がんの5年生存率は17%である。

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全身性アミロイドーシス〔amyloidosis〕

1 疾患概要アミロイドーシスとは、通常は可溶性である蛋白質が、さまざまな要因により不溶性の線維状構造物であるアミロイドヘと変性し、諸臓器に沈着することで種々の機能障害を来す疾患群である1)。全身の諸臓器にアミロイド沈着が起こり臓器障害を引き起こす全身性アミロイドーシス、1つの臓器に限局してアミロイド沈着を起こす限局性アミロイドーシスに分類されるが、これまで42のアミロイド前駆蛋白質が明らかになっている(表)。表 主なアミロイドーシスの分類画像を拡大する(Buxbaum JN, et al. Amyloid. 2022;29:213-219.より引用作成)その中で患者数も多く、治療できる疾患は以下の通りである。ALアミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー([familial amyloid polyneuropathy:FAP]、ATTRv)、老人性全身性アミロイドーシス(ATTRwt)は厚生労働省に難病指定されている。1)ALアミロイドーシス異常形質細胞が単クローン性に増殖し、その産物である免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)がアミロイドを形成する。まれに重鎖(H鎖)が前駆蛋白質となるAHアミロイドーシスもある。2)ATTRvアミロイドーシス遺伝的に変異を起こしたトランスサイレチン(transthyretin:TTR)が前駆蛋白となり末梢神経、自律神経系、心、腎、消化管、眼などの臓器に沈着する常染色体顕性遺伝形式のアミロイドーシスを言う。3)AAアミロイドーシス関節リウマチ(RA)など慢性炎症に続発し、血清アミロイドA蛋白が原因蛋白質となる。4)ATTRwtアミロイドーシスTTRが前駆蛋白となり、70歳代以降に発症しやすく、主に心臓や運動器に疾患を来す。5)透析アミロイドーシス長期の透析に伴いβ2ミクログロブリンが前駆蛋白となり、 手根管や運動器に沈着する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)アミロイド蛋白質の沈着臓器は、心臓、腎臓、消化管、神経、眼、運動器など多臓器にわたり、臨床症状は多彩である。初期にはALアミロイドーシスでは全身倦怠感、体重減少、浮腫、貧血などの非特異的症状があるが他の病型では特徴的な症状がない。経過中にうっ血他心不全、蛋白尿、吸収不良症候群、末梢神経障害、起立性低血圧、手根管症候群、肝腫大、巨舌、皮下出血などを呈する。1)心アミロイドーシス超音波エコーや心電図、MRI、血清NT-proBNPなどでスクリーニングができるが、ピロリン酸心筋シンチを行うと90%以上の感度でATTRvやATTRwt症例では陽性になることが明らかになっている。本症は最も生命予後を左右する。2)末梢神経障害ATTRvやATTRwtアミロイドーシス、ALアミロイドーシスなどで認められるが、皮膚パンチ生検、神経伝導速度、SudoScanなどで小径線維の障害を証明することが重要である。3)腎アミロイドーシスしばしばネフローゼ症候群を呈し、蛋白尿や浮腫、 低アルブミン血症を呈する。胸水や心嚢液貯留をみることもある。4)消化管胃および十二指腸に沈着しやすい。交替性下痢便秘が起こり吸収不良症候群や下痢がみられる。血管周囲へのアミロイドの沈着が起こり 消化管出血が起こることもある。■ 診断全身性アミロイドーシスの診断には、 少なくとも2臓器にわたる病変を認めることが重要であり、限局性アミロイドーシスと鑑別する必要がある。確定診断は病理検査が必要で、アミロイドーシス全般のスクリーニングとしては腹壁脂肪生検が広く行われている。低侵襲性で簡便であるが、ATTRv以外では感度が低いため、複数の臓器(消化管[とくに胃・十二指腸]、口唇、皮膚、唾液腺、歯肉生検など)での生検を行いコンゴレッド染色で陽性を確認する必要がある。その後、前駆蛋白を免疫組織染色で決定し(決定できないときは質量分析装置を使用する)、各種検査により病変臓器の範囲を決定し、治療の方針を決めていく。ALアミロイドーシスではM蛋白の検出には、血清・尿の電気泳動が行われてきたが、遊離軽鎖(free light chain:FLC)が保険適用となり感度が98%と高いことから、広く行われるようになっている。アミロイドーシスでは疾患特異的なマーカーがないので、既存の疾患に該当しない場合、まず本症を疑うことが重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)ALアミロイドーシスボルテゾミブ、サリドマイドなどの化学療法薬も用いられるが、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+シクロフォスファミド+デキサメタゾン(DCyBorD)療法が保険適用となっている。2)ATTRvアミロイドーシス(1)肝移植アミロイド原因蛋白質である異型TTRの95%以上が肝臓で産生されることから、1990年以来、世界各国で肝移植が試みられてきたが治療薬剤の登場と共に行われなくなった。(2)薬剤療法TTRの四量体を安定化させアミロイド沈着を防ぐdiflunisal(外国購入で使われている)、タファミジス(商品名:ビンダケル)が使用可能になり、ニューロパチー、心機能悪化が抑制されている。また、RNAi治療薬パチシランナトリウムを改良し3ヵ月に1回の皮下注射製剤、ブトリシラン(同:アムヴトラ)が開発され、ニューロパチーには改善効果が認められている(海外ではすでに心アミロイドーシスにも使用されている)。(3)眼科的治療緑内障や硝子体混濁に関しては手術を行う。3)ATTRwtアミロイドーシスタファミジスが心不全の改善効果を示し、死亡率を抑制することが明らかになっている。siRNA TTR製剤もATTRvに伴う心不全に対し改善効果があることが明らかになっている。4)AAアミロイドーシス本症を引き起こす原疾患はRAが大多数であるため、リウマチ治療薬が結果として本症の治療になる。抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(同:アクテムラ)投与によりアミロイド沈着が完全に消失したとする報告もある。5)透析アミロイドーシス透析膜の改良により発症頻度が低下している。透析にアミロイド吸着カラム(リクセル)を用いることがある。6)その他の対症療法心アミロイドーシスは利尿薬による対症療法が中心となる。ジギタリスやカルシウム拮抗薬はアミロイド線維と結合し感受性が高まるため、中毒のリスクや血行動態悪化の危険があるので、注意が必要である。腎アミロイドーシス蛋白尿の減少にACE阻害薬が有効であることもある。末期の腎不全に関しては腹膜透析、血液透析を行う。腎移植は腎以外のアミロイドの沈着がない場合に考慮する。消化管アミロイドーシスでは下痢に注意が必要である。低栄養状態の患者には十分な栄養を経口、経静脈的に補給する。4 今後の展望ALアミロイドーシスでは、ミエローマ細胞に対する治療薬の開発が進んでいる。ATTRvアミロイドーシスではgene silencing治療に加え、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集治療がPhase studyIIに入っている。AAアミロイドーシスは原因疾患としては最も多いRAの生物製剤治療が進み、今後さらに患者数は減っていくものと思われる。透析アミロイドーシスは透析膜の改良によりさらに患者数が減少している。ALアミロイドーシスとATTRvの組織沈着アミロイドをターゲットとした抗体治療の開発が進みPhase studyに入っている。5 主たる診療科ALアミロイドーシスは血液内科、ATTRvアミロイドーシスは神経内科、循環器内科、消化器内科、整形外科、ATTRwtアミロイドーシスは循環器内科、神経内科、整形外科、AAアミロイドーシスはリウマチ科、透析アミロイドーシスは腎臓内科などの診療科が、これまで主に診療にあたってきたが、アミロイドーシス全体の啓発活動が活発化し、横断的な診療が行われるようになった。心アミロイドーシスを来すのはAL 、ATTRv、ATTRwt アミロイドーシスなどで高率にみられる。どの全身性アミロイドーシスも腎にアミロイド沈着がみられるので腎臓内科の関与が必要である。また、ATTRvアミロイドーシスにおいては眼アミロイドーシスを呈するため、眼科の関与が必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「アミロイドーシス調査研究班」(厚生労働省)ホームページ(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報道しるべの会(FAP患者家族会)(患者とその家族および支援者の会)1)植田光晴 編集、安東由喜雄 監修. 21世紀の疾患:神経関連アミロイドーシス. 2020;医学と看護社.2)Kastritis E, et al. N Engl J Med. 2021;385:46-58.3)Ando Y, et al. Amyloid. 2022;29:143-155.4)Frederick L. et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:2872-2891.5)Buxbaum JN, et al. Amyloid. 2022;29:213-219.公開履歴初回2021年4月28日更新2024年6月21日

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CLLに対するアカラブルチニブ、初回治療でも有効性示す

 2021年3月、再発・難治の慢性リンパ性白血病(CLL)に対して国内承認された選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)について、CLL初回治療においても有効性が認められたという。オハイオ州立大学のJohn C Byrd氏らの研究によるもので、Blood誌2021年3月30日号オンライン版に掲載された。 CLLは白血病の中で、リンパ系幹細胞が比較的時間をかけてがん化するものを指す。日本においては10万人あたり0.2人(2008年調査)と比較的稀な疾患だ。現在、CLL初回治療として承認されたBTK阻害薬にイブルチニブがあるが、アカラブルチニブとは有害事象の出現の特性が異なるとされ、アカラブルチニブが承認されれば治療の選択肢が広がることとなる。 本試験は、単群第I/II相臨床試験(ACE-CL-001)であり、未治療で化学療法不適のCLL患者99例が登録された。患者の年齢中央値は64歳、Rai分類ステージIII~IV期が47%だった。アカラブルチニブ200mgを1日1回、または100mgを1日2回、進行または忍容性がなくなるまで経口投与した。 主な結果は以下のとおり。・99例中57例(62%)は免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異(IGHV)陰性、12例(18%)はTP53遺伝子異常があった。・追跡期間中央値53ヵ月時点で85例が治療を継続しており、14例の中止理由は有害事象(AE)6例、病状進行3例などだった。・全奏効率は97%(部分奏効90%、完全奏効7%)で、すべての予後不良サブグループでも同様の結果が得られた。・100mg投与でBTK占有率が改善されたため、全患者が100mgに移行した。・重篤な AE は38 例(38%)で報告され、中止となった6例の内訳は二次原発がん(4例)と感染症(2例)だった。Grade3以上のイベントは、感染症(15%)、高血圧(11%)、出血性イベント(3%)、心房細動(2%)などだった。 著者らは、本試験におけるアカラブルチニブの持続的な有効性と長期的な安全性は、症状のある未治療のCLL患者の臨床管理におけるアカラブルチニブの使用を支持するものである、としている。

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小児高悪性度神経膠腫への遺伝子組み換えヘルペスウイルスG207、第I相試験結果/NEJM

 小児の再発/進行性高悪性度神経膠腫(HGG)患者において、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)G207の腫瘍内投与単独または放射線療法併用は、忍容性が良好であることが認められた。米国・アラバマ大学バーミングハム校のGregory K. Friedman氏らが、第I相試験の結果を報告した。再発/進行性HGGの小児/青年の予後は不良で、これまでの報告では全生存(OS)期間中央値はわずか5.6ヵ月とされている。G207は、HSV-1を用いた遺伝子組み換え腫瘍溶解性ウイルスで、成人HGG患者の第I相試験で腫瘍内投与と単回放射線照射併用の安全性が確認され、前臨床試験において小児脳腫瘍モデルはG207による腫瘍溶解に高い感受性があることが示されていた。小児HGGは、腫瘍浸潤リンパ球がほとんどない免疫学的に“silent”または“cold”tumorであるが、著者は「G207により、免疫学的に“cold”tumorが“hot”tumorに変わった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年4月10日号掲載の報告。4つのコホート(107PFU±5Gy、108PFU±5Gy)でG207の安全性を評価 本試験の対象は、3~18歳で手術、放射線療法または化学療法後に進行した、生検で確認された直径1.0cm以上のテント上悪性脳腫瘍患者である。3+3デザインを用いた4つのコホート(107PFU、108PFU、107PFU+5Gy、108PFU+5Gy)が設定された。 腫瘍内カテーテルを定位的に最大4本留置し、翌日、107PFUまたは108PFUのG207を6時間かけて点滴した。コホート3および4では、G207投与後24時間以内に放射線(5Gy)を照射した。 唾液、結膜、血液からのG207排出を培養およびPCR法により評価し、治療前および治療後の組織検体を用い免疫組織学的に腫瘍浸潤リンパ球を調べた。用量制限毒性作用・重篤な有害事象は認められず 計12例(男性6例、女性6例、年齢範囲7~18歳)にG207が投与された(各コホート3例)。G207投与後30日以内の有害事象は、主に嘔吐、発熱、下痢、疲労、血小板減少、頭痛などであった。治験責任医師評価によるG207に起因する用量制限毒性作用または重篤な有害事象は、認められなかった。G207に関連している可能性のあるGrade1の有害事象は20件であった。G207の排出は認められなかった。 11例で放射線学的、神経病理学的または臨床的効果が認められた。OS中央値は12.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.0~16.4)であり、4例はG207投与後18ヵ月以上生存していた(2020年6月5日現在)。G207投与により、腫瘍浸潤リンパ球数が著しく増加することが示された。(2021年4月28日 記事内容を一部修正いたしました)

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ファイザー製ワクチン、免疫チェックポイント阻害薬投与がん患者での安全性

 全身薬物療法で治療後もしくは治療中のがん患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高いため、ワクチン接種の優先度が高いグループと見なされる。しかし、がん患者におけるワクチンの安全性および有効性データはない。また、一部の専門家から、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与患者において、ワクチンで免疫関連有害事象を誘発または増強する可能性が指摘されている。今回、イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのBarliz Waissengrin氏らは、ICIで治療されたがん患者におけるファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)の安全性について調査した。Lancet Oncology誌オンライン版2021年4月1日号に掲載。 Tel Aviv Sourasky Medical CenterおよびBnei-Zion Medical Centerでは、積極的治療を受けているがん患者すべてに対し、病期、PS、余命に関係なくワクチン接種を推奨した(SARS-CoV-2感染歴のある患者、感染している患者、免疫関連有害事象が制御されていない患者は除外)。本調査では、この2施設において、ICIで治療された患者におけるBNT162b2mRNAワクチンの有害事象を対照群(性別および生まれ年をマッチさせた健康成人)と比較した。2021年1月11日~2月25日に、ICIで治療されていたがん患者170例のうち、副反応を恐れて接種を拒否した33例を除いた137例が初回のワクチン接種を受け、うち134例が2回目のワクチン接種を受けた。ワクチンは1日目と21日目に標準用量で接種し、アンケートは電話で行った。 主な結果は以下のとおり。・初回投与後に3例が死亡し、うちCOVID-19による死亡が1例、がんの進行による死亡が2例だった。初回投与後に最も多かった有害事象は注射部位の痛みで、134例中28例(21%)にみられた。全身性では倦怠感(4%)、頭痛(2%)、筋肉痛(2%)、悪寒(1%)などがみられた。・2回目の投与後の観察期間中に、134例中4例(3%)が入院した(がん関連の合併症3例、発熱1例)が、全例が治療後に退院した。初回より2回目のほうが、全身性および局所性の有害事象が多く観察された。主な有害事象は、局所性では注射部位の痛み(63%)、局所発疹(2%)、局所腫脹(9%)で、全身性では筋肉痛(34%)、倦怠感(34%)、頭痛(16%)、発熱(10%)、悪寒(10%)、消化器合併症(10%)、インフルエンザ様症状(2%)で、入院または特別な介入は必要な例はなかった。・がん治療はICIのみが116例(87%)、ICIと化学療法の併用が18例(13%)だったが、全身性の有害事象はどちらも同程度だった。免疫関連有害事象の新規発現、既存の免疫関連有害事象の悪化はみられなかった。・筋肉痛はがん患者で有意に多かったが、それ以外はがん患者群と対照群で類似していた。両群ともワクチン接種後に免疫関連筋炎はみられなかった。・ワクチン接種前に免疫関連有害事象を報告していた患者(54%)と報告しなかった患者で、2回目接種後に全身性の有害事象を報告した患者数に有意な差はなかった(p=0.94)。過去に免疫関連有害事象を経験した患者でもワクチン関連有害事象は軽度で、入院や治療中止に至らなかった。 著者らは、「これらのデータは、ICIで治療されたがん患者におけるBNT162b2 mRNAワクチンの短期的な安全性を示唆している」としている。

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FDA、ニボルマブ+化学療法による胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がんの1次治療を承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年4月16日、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用療法で、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、PD-L1発現率にかかわらず、進行または転移のある胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの1次治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)に承認されたことを発表した。 この承認は、未治療の進行または転移を有する胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの患者を対象として、ニボルマブとmFOLFOX6またはCapeOXの併用療法を、化学療法(mFOLFOX6またはCapeOX)と比較評価した第III相CheckMate-649試験の結果に基づいたもの。 この試験において、ニボルマブと化学療法の併用療法は、化学療法と比較して、全生存期間(OS)に対して全無作為化患者(HR:0.80、95%CI:0.71~0.90、p=0.0002)およびPD-L1 CPS≧5の患者(HR:0.71、95%CI:0.61~0.83、p<0.0001)の両方において、良好な延長を示した。全患者の探索的解析における1年OS率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で55%、化学療法群で48%であった。また、無増悪生存期間(PFS)も有意に低減した(PD-L1 CPS≧5:PFS HR 0.68、p<0.0001)。

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再発非ホジキンリンパ腫にcopanlisib+リツキシマブが有効/Lancet Oncol

 再発した非ホジキンリンパ腫患者を対象に、PI3K阻害薬であるcopanlisibとリツキシマブの併用療法の有効性と安全性を評価したCHRONOS-3試験の結果が、Lancet Oncology誌4月10日号オンライン版に掲載された。 CHRONOS-3は、世界186施設で行われた多施設共同、二重盲検、無作為化第III相試験。対象はPS2以下、1年以上無増悪かつ無治療、または化学療法不適の場合は6ヵ月以上無治療の成人再発非ホジキンリンパ腫患者で、copanlisib+リツキシマブ群とプラセボ+リツキシマブ群に無作為で割り付けられた。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)だった。 主な結果は以下のとおり。・2015年8月3日~2019年12月17日の間に458例が適格となり、copanlisib+リツキシマブ群(copanlisib群)307例、プラセボ+リツキシマブ群(プラセボ群)151例に割り付けられた。・追跡期間中央値は19.2カ月(IQR:7.4~28.8)だった。・copanlisib群のPFS中央値は21.5ヵ月(95%CI:17.8~33.0)で、プラセボ群の13.8ヵ月(10.2~17.5、HR:0.52[0.39~0.69]、p

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ニボルマブ+化学療法の肺がん術前補助療法、pCRを改善(CheckMate-816)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年4月10日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)と化学療法を3サイクル投与する併用療法が、化学療法と比較して、切除可能なStage1b〜3aの非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法として、病理学的完全奏効(pCR)を有意に改善したと発表。 これは、切除可能なNSCLC患者の術前補助療法として、ニボルマブ(またはイピリムマブ)と化学療法の併用を化学療法単独と比較した第III相CheckMate-816試験の結果で、米国がん学会(AACR 2021)で発表されたもの(抄録番号:#5218)。 同試験におけるpCR率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群では24%、化学療法群では2.2%であった(OR:13.94、99% CI:3.49〜55.75、p<0.0001)。ニボルマブと化学療法の併用療法の忍容性は良好であり、PD-L1発現レベル、組織型または病期にかかわらず一貫したpCRの改善を示した。

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Onco-Cardiology(腫瘍循環器学)とは【見落とさない!がんの心毒性】第1回

はじめに生活習慣の欧米化や高齢化に伴い本邦の疾病構造は大きく変化し、がんの増加と共にがんに循環器疾患を合併する患者さんが増加しています。世界的にもがん治療の進歩に伴う新しい抗がん剤の登場により循環器合併症(心毒性)の頻度が高くなり、がんと循環器の両者を診療する腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)が注目されるようになりました。このような中、2000年に米国MDアンダーソンがんセンター循環器内科にOnco-Cardiology 外来が、本邦では2011年に大阪府立成人病センターにおいて腫瘍循環器外来を開始しました。当時、subspeciality化が進む医療現場においてニッチな学際領域であったOnco-Cardiologyは、がん治療専門施設や大学病院の循環器内科の腫瘍循環器外来として開設されました。それから約10年の歳月を経て、2020年末に日本腫瘍循環器学会の編集により「腫瘍循環器診療ハンドブック」1)が作成され、がん診療の現場での腫瘍循環器診療の標準化が始まろうとしています。しかしながら、すべてのがん診療の現場において対応するには未だ腫瘍循環器医の数は十分ではなく、がん治療の複雑化と長期化に伴う新たな心毒性の出現やがんサバイバーの増加に伴う晩期心毒性の出現など、Onco-Cardiologyにおいて新たな課題が生まれてきています。本連載は、「腫瘍循環器学:Onco-Cardiology」を初めて耳にされる方や、がん診療を行っておられる腫瘍専門医や循環器専門医の皆様で実際に心毒性のコントロールに困っておられる先生を対象に、現在第一線で腫瘍循環器診療を行っているエキスパートらが知っておいていただきたい事項の解説、具体的な症例を提示しながらOnco-Cardiologyの最新情報を紹介します。なお、本企画を連載するメンバーは、それぞれが異なった規模の医療施設において実際にOnco-Cardiologyの診療・研究を行っています。Onco-Cardiologyをできるだけ多くの読者の皆様に知っていただき、理解いただくためにも、それぞれの経験を元に最新情報を交えながらOnco-Cardiologyを紹介してまいります。掲載の都合上、不足部分については「腫瘍循環器診療ハンドブック(日本腫瘍循環器学会編集)」をお手元に置いて連載を読んでいただければ、より理解が深いものになると期待いたしております。腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)とは従来、がんと循環器はお互いに離れた関係にあり、1970年代アントラサイクリン系抗がん剤の投与による心筋症が報告されたものの両者が触れ合う機会は決して多くありませんでした。しかしながら、21世紀を迎え分子標的薬が登場しHER2阻害薬(トラスツズマブ)心筋症などの新しい機序の心毒性が登場するようになると、循環器専門医ががん診療に介入する機会は急激に増加するようになります。(図1)に示すように新たな心毒性が出現するごとに腫瘍循環器に関連した論文数は増え、2010年以降には急速な増加を認めています2)3)。とくに血管新生阻害薬や新たな標的に対する薬剤の登場により、心筋毒性が中心であった心毒性は高血圧症や動脈・静脈血栓塞栓症などの血管毒性や不整脈関連毒性(QTc延長、心房細動、心室性頻拍症ほか)など多彩な病態を呈するようになり、循環器専門医による診療が不可欠です。さらに、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)では、腫瘍循環器医のみならず内分泌内科専門医、神経内科専門医など複数の診療科が共同で診療する必要のあるような複雑な合併症を示す症例も多く認められます。(図1)腫瘍循環器学関連の論文数と循環器合併症(心毒性)の推移画像を拡大するがん診療における心血管リスクの変化がん診療は発がん前の時点から始まり、急性期がん治療期、がんの回復・寛解期、そしてがん治療が終了した後と、それぞれのステージに合わせて腫瘍専門医によるがん治療が行われます。その間、(図2)に示すように心血管リスクはがん発症前~がん治療中に出現する急性期心毒性、治療開始後から1年程度で認める慢性期心毒性、そしてがん治療が終了し数年から10年以上が経過し潜在的に進行する晩期心毒性と、各ステージにおいて、がん種のみならず患者の病態や治療内容により大きく変化しています4)。(図2)がん診療における心血管リスクと腫瘍循環器診療画像を拡大する腫瘍循環器医は、腫瘍専門医の依頼によりそれぞれのステージに合わせ診療を行い、がん治療前に患者が有する心血管リスクを層別化することでがん治療による心毒性の発症を予測します。さらに、治療前から有する生活習慣病などのリスク因子を適正化することでがん治療のリスクを軽減し、がん治療が開始した後は心毒性の早期発見、早期治療を行います。従って、急性期心毒性への対応は、腫瘍専門医を中心として外来化学療法室、薬剤師などの多くのメディカルスタッフと連携し、あくまでがん治療の継続を第一の目標としてがん患者の安全性を確保すると共にがん治療の適正化を目指します。その一方で、がん治療が終わったがんサバイバーに出現する晩期心毒性に対する対応は、長期的にわたる循環器疾患モニタリングによる継続的な循環器ケア(continuum of cardiovascular care)が必要となります。本邦ではこのがんサバイバーがすでに500万人以上とされ、現在も急速に増加しているため、腫瘍循環器外来のみならず一般の循環器外来でも診療の機会が増えています。すでにがん治療が終了したがんサバイバーにとって、晩期心毒性への対応は急性期がん治療を専門とする医療機関のみでは困難な場合が多く、腫瘍循環器医、かかりつけ医(総合内科医)、薬剤師などを含めた長期間にわたる医療連携が必要となっています。実際の医療現場では晩期合併症に対する医療リソースは決して十分ではなく、日々進歩するがん診療において今後の大きな課題となっています5)。今後の方向性がんと循環器における関係は、2017年の日本腫瘍循環器学会設立を機に、国や学会レベルでも学際領域の連携が進み、基礎・臨床・疫学研究への支援が加速しています。前述の「腫瘍循環器診療ハンドブック」により腫瘍循環器外来における基本的な治療指針が示されたことで、今まで触れることのなかった多くの医療者にもOnco-Cardiologyがより身近なものとなっています。今後、多くのエビデンスが集積されることで本邦独自の腫瘍循環器関連診療ガイドラインが作成され、がん患者へより良い治療が提供できることが期待されています。1)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック.メジカルビュー社. 2020.2)Barac A, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;65:2739-2746.3)Herrmann J, et al. Nat Rev Cardiol. 2020;17:474-502.4)Okura Y, et al. Cir J 2019;83:2191-2202.5)向井幹夫. 医学のあゆみ 2020; 273:483-488.講師紹介

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StageIII大腸がん、FOLFOXへのセレコキシブ追加は?/JAMA

 StageIIIの大腸がん患者において、標準的な術後化学療法FOLFOXに、3年間のCOX-2阻害薬セレコキシブを追加してもプラセボとの比較において、無病生存(DFS)期間の改善について有意差は示されなかった。米国・Dana-Farber/Partners CancerCareのJeffrey A. Meyerhardt氏らが2,526例の患者を対象に行った無作為化試験「CALGB/SWOG 80702試験」の結果を報告した。これまでにアスピリンやCOX-2阻害薬は、大腸ポリープ・がんのリスク低下と関連していることが観察研究や無作為化試験で示されているが、転移のない大腸がんの治療におけるセレコキシブの効果は明らかになっていなかった。JAMA誌2021年4月6日号掲載の報告。FOLFOX 3ヵ月または6ヵ月に、セレコキシブvs.プラセボ追加 CALGB/SWOG(Cancer and Leukemia Group B(Alliance)/Southwest Oncology Group)80702は、米国およびカナダの654の地域・大学医療センターを通じ2×2要因デザイン法を用いて行われた第III相試験で、StageIII大腸がん患者の術後化学療法FOLFOX(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン)へのセレコキシブ追加がDFSを改善するかどうかを検討した。 2010年6月~2015年11月に計2,526例のStageIII大腸がん患者が登録され、2020年8月10日までフォローアップを受けた。 被験者は、術後化学療法としてFOLFOX(2週ごと)を3ヵ月または6ヵ月に加えて、セレコキシブ(400mgを1日1回経口、1,263例)またはプラセボ(1,261例)の投与を受けるよう無作為に割り付けられた。 主要評価項目はDFSで、無作為化から再発または全死因死亡で評価した。副次評価項目は、全生存(OS)、有害事象、心血管特異的イベントなどであった。3年DFS率、5年OS率に有意差なし、 無作為化を受けた2,526例は、平均年齢61.0(SD 11)歳、女性1,134例(44.9%)で、2,524例が主要解析に包含された。アドヒアランス(セレコキシブまたはプラセボを2.75年超投与、もしくは再発、死亡、容認できない有害事象の発現まで治療を継続と定義)は、セレコキシブ追加群70.8%、プラセボ群69.9%であった。 追跡期間中央値6年間で再発または死亡は、セレコキシブ追加群337例、プラセボ群363例であった。3年DFS率は、セレコキシブ追加群76.3%、プラセボ群73.4%で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.76~1.03、p=0.12)。また、DFSへのセレコキシブの治療効果は、FOLFOXの割り付け投与期間にかかわらず同等であった(相互作用のp=0.61)。 5年OS率は、セレコキシブ追加群84.3%、プラセボ群81.6%であった(死亡に関するHR:0.86、95%CI:0.72~1.04、p=0.13)。 FOLFOX投与期間中の高血圧症(あらゆる重症度)の発症率は、セレコキシブ追加群14.6%、プラセボ群10.9%であり(p=0.01)、FOLFOX投与後にクレアチニン値がグレード2以上上昇したのは、セレコキシブ追加群1.7%、プラセボ群0.5%であった(p=0.01)。

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食道扁平上皮がん1次治療、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブが生存ベネフィット示す(CheckMate-648)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年4月8日、切除不能な進行または転移のある食道扁平上皮がん(ESCC)患者を対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法を評価した第III相CheckMate-648試験の肯定的なトップラインの結果を発表した。 同試験の中間解析において、ニボルマブと化学療法の併用療法は、主要評価項目であるPD-L1陽性患者の全生存期間(OS)および副次評価項目である全無作為化患者集団でのOSで統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるベネフィットを示した。加えて、PD-L1陽性患者での盲検下独立中央判定(BICR)評価による無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意かつ臨床的に意義ある改善を示した。 ニボルマブとイピリムマブの併用療法も、PD-L1陽性患者でのOSおよび全無作為化患者集団でのOSで統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を達成した。しかし、PD-L1陽性患者でのBICRの評価によるPFSの改善は達成しなかった。 同社は、CheckMate-648試験のデータの評価を完了させ、今後の学会で結果を発表するとともに、規制当局と共有する予定だとしている。

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2番目のKRAS G12C阻害薬adagrasib、非小細胞肺がんに有益性示す(KRYSTAL-1)/ELCC2021

 2つ目となるKRAS G12C阻害薬adagrasibの進行非小細胞肺がん(NSCLC)における試結果が、2021年3月25日、欧州肺癌学会(ELCC VIrtual2021)で発表された。  KRYSTAL-1は、KRAS G12C変異陽性の進行または転移のあるNSCLC79例を対象に、adagrasibを評価したマルチコホート第I/II相試験。 結果、患者の92%が化学療法およびPD-(L)1阻害薬の治療歴を有していた。有効性評価対象51例の45%がadagrasib治療により部分奏効(PR)を示し、26例(51%)が安定(SD)となった。 この試験結果は、もう1つのKRAS G12C阻害薬sortorasibの本年(2021年)世界肺がん学会での結果に匹敵するものだとしている。

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早期肺がん、アテゾリズマブの補助療法が主要評価項目を達成(IMpower010)/Genentech

 RocheグループのGenentechは、2021年3月21日、アテゾリズマブをベストサポーティブケア(BSC)と比較する第III相IMpower010試験の中間分析において、主要評価項目の無病生存期間(DFS)を達成したと発表。 IMpower010は、Stage IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、外科的切除とシスプラチンベースの補助療法(最大4サイクル)後のアジュバントにおけるアテゾリズマブの有効性と安全性をBSCと比較した国際第III非盲検試験。無作為割り付けは1,005例が対象となった。主要評価項目は、PD-L1陽性のStage II~IIIA、無作為化集団のStage II~IIIA、ITT集団のStage II~IIIAにおける、治験担当医判定のDFS。主な副次評価項目は、全体集団、ITT集団のStage IB~IIIAの全生存期間など。 この試験で、アテゾリズマブは手術および化学療法後の補助療法として、Stage II~IIIAのNSCLCにおいて統計学的に有意なDFSの改善を示した。DFSの改善は、PD-L1陽性集団で顕著であった。 Genentechは、IMpower010試験の結果を、今後の医学学会で発表し、米国食品医薬品局や欧州医薬品庁など世界の保健当局に提出するとしている。

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