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HER2+乳がんへの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブ追加、N-でベネフィットのある患者は?(APHINITY)

 APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験で、HER2陽性乳がん患者全体とリンパ節転移のある患者で無浸潤疾患生存(iDFS)が大幅に改善することが報告されている。今回、米国・ダナファーバーがん研究所のRichard D. Gelber氏らは、リンパ節転移陰性(N-)でペルツズマブ追加によるベネフィットが得られるサブグループ、リンパ節転移陽性(N+)でde-escalationを考慮すべきサブグループについて検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2022年3月18日号に掲載。 著者らは、STEPP(subpopulation treatment effect pattern plot:サブグループ別治療効果パターンプロット)を用いて、臨床的複合リスクスコア、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合、HER2コピー数(FISH)によるサブグループについて、全体およびリンパ節転移の有無別に、6年iDFS率のカプラン-マイヤー差(ペルツズマブ群-プラセボ群:Δ±SE)を推定した。 その結果、6年iDFS率の絶対増加の平均は、患者全体で2.8±0.9、N+患者で4.5±1.2、N-患者で0.1±1.1だった。増加が最大だったのは、臨床的複合リスクが中等度(全体:5.3±1.9、N+:6.9±2.3、N-:4.0±3.0)、TILの割合が最大(全体:6.3±1.7、N+:7.4±2.4、N-:3.2±1.7)、HER2コピー数が中等度(全体:2.8±1.9、N+:7.4±2.5、N-:-1.3±1.9)の患者だったが、サブグループ別治療効果の異なったパターンを示す明らかなエビデンスはなかった。 今回の検討では、N-におけるSTEPPでペルツズマブ追加によって明らかにベネフィットがあるサブグループを特定できず、N+におけるSTEPPでde-escalationが妥当なサブグループを特定できなかった。臨床的複合リスクスコアよりTILの割合のほうが、ペルツズマブの治療効果を予測できるようであった。

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閉経後進行乳がんの1次治療、ribociclib追加でOS延長(MONALEESA-2)/NEJM

 ホルモン受容体陽性HER2陰性の閉経後進行乳がん女性の1次治療において、CDK4/6阻害薬ribociclibとアロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法はプラセボ+レトロゾールと比較して、全生存期間が約1年延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められないことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのGabriel N. Hortobagyi氏らが実施した「MONALEESA-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年3月10日号に掲載された。国際的な第III相試験の全生存最終解析 本研究は、2014年1月~2015年3月の期間に参加者の登録が行われた国際的な無作為化第III相試験であり、今回は、主な副次エンドポイントである全生存期間の、プロトコールで規定された最終解析の結果が公表された(Novartisの助成を受けた)。 本試験の主要エンドポイントである担当医評価による無増悪生存期間中央値は、先行解析によりribociclib+レトロゾールで優れることが、すでに報告されている(25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.46~0.70、p<0.001)。 この試験の対象は、局所病変が確認され、ホルモン受容体が陽性で、HER2陰性の再発または転移を有する乳がんの閉経後女性で、進行病変に対する全身療法を受けていない患者であった。 被験者は、ribociclib(600mg、1日1回、経口投与)を、1サイクル28日として21日連続投与後7日間休薬する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、レトロゾール(2.5mg、1日1回、経口投与)の連日投与を受けた。ribociclibまたはプラセボの投与、データ解析、アウトカム評価を行ったすべての研究者および患者には、割り付け情報が知らされなかった。 全生存は層別化log-rank検定で評価され、死亡が400例に達した時点でKaplan-Meier法を用いて要約された。無増悪生存と全生存の解析には、結果の妥当性を確保するために、階層的検定法が用いられた。死亡リスクが24%低減 668例が登録され、ribociclib群に334例、プラセボ群に334例が割り付けられた。全体の追跡期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)で、治療期間中央値はribociclib群が20.2ヵ月(四分位範囲:7.4~45.1)、プラセボ群は14.1ヵ月(7.1~28.9)であった。データカットオフ日(2021年6月10日)の時点で、ribociclib群181例(54.2%)、プラセボ群219例(65.6%)が死亡した。 ribociclib群はプラセボ群に比べ、全生存の利益が有意に大きかった。すなわち、全生存期間中央値はribociclib群の63.9ヵ月(95%CI:52.4~71.0)に対し、プラセボ群は51.4ヵ月(47.2~59.7)であり(HR:0.76、95%CI:0.63~0.93、両側検定のp=0.008)、12.5ヵ月の差がみられた。 ribociclibによる全生存の利益は、治療開始後約20ヵ月から認められ、その後は持続的に大きくなった。5年全生存率はribociclib群が52.3%(95%CI:46.5~57.7)、プラセボ群は43.9%(95%CI:38.3~49.4)であり、6年全生存率はそれぞれ44.2%(95%CI:38.5~49.8)および32.0%(95%CI:26.8~37.3)だった。 後治療は、ribociclib群の304例中267例(87.8%)、プラセボ群の317例中286例(90.2%)が受けた。後治療として、初回化学療法を受けるまでの期間中央値は、ribociclib群が50.6ヵ月、プラセボ群は38.9ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.91)、無化学療法生存期間中央値はそれぞれ39.9ヵ月および30.1ヵ月であった(0.74、0.62~0.89)。 有害事象プロファイルは既報の結果と一致しており、新たな安全性シグナルは観察されなかった。Grade3/4のとくに注目すべき有害事象のうち、最も頻度の高かったのは好中球減少であり、ribociclib群63.8%、プラセボ群1.2%で発現した。また、ribociclib群では、Grade3の間質性肺疾患または肺臓炎が2例(0.6%)で認められたが、間質性肺疾患または肺臓炎に関連するGrade4の有害事象や死亡はみられなかった。 著者は、「これまでにMONALEESA試験で得られた知見と今回の結果を合わせると、ribociclibによる全生存の利益は、ホルモン療法の有無、治療ライン数、閉経の状態にかかわらず、一致して認められることが示された」としている。

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腎不全患者の腎移植は特定の背景因子の違いに大きく影響されることなく、透析継続例の生命予後に勝る(解説:浦信行氏)

 BMJ誌に掲載された本論文のメタ解析の結果は大方の予想どおり、腎移植例の生命予後が透析継続例に勝るとの結論であり、そのハザード比(HR)は0.45ときわめて高いものであった。このような報告は従来も数多くあったが、比較的最近の2011年に発表されたシステマティックレビューは192万2,300例の解析であり、本研究より多数例の報告である。しかし、従来のものは対象の透析例が移植待機例以外も含んでおり、本来移植非適応の症例を含んでおり、対象の選択バイアスを含むものである。したがって本研究の症例の選択バイアスを除去した意義は大きい。 ところで、48の報告のうち11件が有意性を認めない層が特定されたと報告しているが、その11の報告の内容には一貫性がない。たとえば年齢層であるが、報告によって65~70歳、70歳以上、基礎疾患は糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症もしくは遺伝性疾患、糖尿病性腎症、また基礎疾患ではないがCOPD合併例など、まったく一定の傾向がない。移植後各時期の生命予後に関しては、術後3ヵ月目までは、手術そのものの影響や、化学療法開始時のリスク、麻酔のリスクなどでむしろ悪いが、その後は一貫して移植例の予後は良い。 メタアナリシスでは18の研究を対象としているが、地域性に関しては、南米の報告は研究が2報のみで統計学的な有意差はなかったが、他の地域との成績の有意差もなかった。また、生体腎移植と死体腎移植との成績の差はなく、60歳未満と60歳以上との差もなかったとのことである。腎移植も透析も技術的進歩は目覚ましいものがあるが、西暦2000年以前と以後を比較しても、やはり同様に腎移植例優位の結果であった。 やはり、腎移植希望例に対する移植腎の、確保、供給の困難性が最大の障害である。

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早期TN乳がん、術前PEM+化学療法と術後PEMでEFS改善(解説:下村昭彦氏)

 2月10日のNew England Journal of Medicine誌に、早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることの効果を検証したKEYNOTE-522(KN522)試験の無イベント生存(EFS)の結果が報告された。ペムブロリズマブの上乗せによって病理学的完全奏効(pCR)率が改善することはすでに報告されていたが(Schmid P, et al. N Engl J Med. 2020;382:810-821.)、長期的な予後の改善が期待できるかどうかは、実臨床で広く使われるようになるかに大きく影響する。 結果は報告のとおりであり、ペムブロリズマブ上乗せによるEFSの改善が示され、統計学的有意差は示されなかったものの全生存(OS)についてもペムブロリズマブ群で良好な結果であった。術前化学療法の効果ごとの成績は、pCRを達成した群でnon-pCRよりも予後が圧倒的に良く、pCR群ではペムブロリズマブの有無による大きなEFSの差は認められなかったものの、non-pCR群では統計学的な有意差をもってペムブロリズマブ群でEFSが良好であった。KN522試験では術後9コースのペムブロリズマブ投与が規定されており、この試験結果をもって、術前化学療法へのペムブロリズマブ上乗せと、術後ペムブロリズマブ療法が標準治療となった。 一方、この試験結果はいくつかの新たな臨床的課題を私たちに突き付ける。ひとつは、pCR群における術後ペムブロリズマブ療法の意義である。EFSにおいて統計学的有意差はついておらず、またペムブロリズマブを含む免疫チェックポイント阻害剤は不可逆な甲状腺機能低下症など、患者の生活の質(QOL)に直結する有害事象がそれなりの頻度で発生する(Balibegloo M, et al. Int Immunopharmacol. 2021;96:107796.)。pCRを達成できた場合に術後ペムブロリズマブ療法を省略することが可能かどうか、臨床試験による確認が必要であろう。 もうひとつはnon-pCRの際の術後治療である。CREATE-X試験では、術前化学療法を実施したHER2陰性乳がんでnon-pCRの場合に術後治療としてカペシタビンを追加することの意義が示された(Masuda N, et al. N Engl J Med. 2017;376:2147-2159.)。日本では術後治療としての保険適用はないが、臨床では広く使用されている。また、OlympiA試験ではBRCA1/2生殖細胞系列の変異がある際に術後治療としてオラパリブを実施することの意義が示され、TNBCでnon-pCRだった症例も含まれている(Tutt ANJ, et al. N Engl J Med. 2021;384:2394-2405.)。したがって、術前化学療法を行ってnon-pCRだったTNBCの術後治療としての選択肢は、カペシタビン、オラパリブ(BRCA1/2変異あり)に、ペムブロリズマブが加わったことになる。これらのいずれを選択すべきかという疑問は今後解決していくべき課題のひとつである。さらには、カペシタビン+ペムブロリズマブ、オラパリブ+ペムブロリズマブについてはすでに安全性のデータが存在する。併用することでよりEFSを改善することができるのか、あるいはBRCA1/2変異のないTNBCに対してもオラパリブ+ペムブロリズマブは有効であるのか等、議論すべき話題は尽きない。

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日本人がん患者の心血管疾患、発生しやすいがん種などが明らかに/日本循環器学会

 近年、がん患者の生存率向上により治療の副作用の1つである心毒性が問題視されている。ところが、アジア圏のなかでもとくに日本国内のそのような研究報告が乏しい。今回、村田 峻輔氏(国立循環器病センター予防医学・疫学情報部)らが、国内がん生存者における心血管疾患の全国的な発生率に関する後ろ向きコホート研究を行い、不整脈、心不全(HF)、および急性冠症候群(ASC)の100人年当たりの発生率(IR)は、それぞれ2.26、2.08、0.54 で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高いことが明らかになった。本結果は2022年3月11~13日に開催された第86回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies2で報告された。 本研究では、がん患者の心血管疾患発症に関し「HBCR(Hospital-based cancer registry)を用いてがん患者における心血管疾患の発生状況を説明する」「年齢・性別による発症頻度の違いを比較」「がん患者の心不全予防調査」の3つを目的として、対象者を1年間追跡して各心血管疾患の年間発生率を調査した。2014~2015年のDPCデータから対象のがん患者(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)の心血管疾患発生状況を、HBCRデータからがん種、病期、1次治療に関する情報を抽出し、不整脈、HF、ASC、脳梗塞(CI)、脳出血(ICH)、静脈血栓塞栓症(VTE)の6つの発生率を調査した。各心血管疾患について、全がん患者、がん種別、年齢・性別のサブグループで100人年当たりのIRと95%信頼区間を算出した。また、各がん種で各心血管疾患のIRを比較、HF発生に対する潜在的な予測因子を調べるためにロジスティクス回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象者は、2014~15年にがん診療連携拠点病院495施設でがん(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)と診断された者から外来のみまたは18歳未満の患者を除外した54万1,956例だった。・患者の構成は、乳がんと子宮頸がん患者では若年者が多く、いずれも1次治療には外科的治療の選択が多かった。一方、肝臓がんと肺がんはいずれも40%超が1次治療として化学療法を実施していた。・不整脈、HF、およびACSの100人年当たりのIRは、それぞれ2.26、2.08、0.54で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高かった。これは年齢・性別で比較しても明らかであった。・不整脈とHF、ACSの発生率を年齢・性別でみると、高齢者かつ男性で多かった。・がん種ごとにIRをみたところ、肺がん、肝臓がん、結腸がん、そして胃がん患者では不整脈の頻度が高かった。・肺がんと肝臓がん患者ではHFのIRも高く、化学療法や外科的治療が関連していた。その予測因子として、肺がんのオッズ比(OR)は、病期stage2で1.23(95 %信頼区間[CI]:1.08~1.40、p=0.001)、stage3で1.26(同:1.13~1.41、p

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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNSCLC1次治療、アジア人でも有用(CheckMate9LA)

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の無作為化第III相CheckMate9LA試験の日本人含むアジア人サブセット解析の結果がInternational Journal of Clinical Oncology誌に発表された。アジア人患者においても全集団と同様に、同レジメンの有用性が示されている。CheckMate9LA試験ではアジア人患者においても全集団と同様に有用性を示した[CheckMate9LA試験]・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 CheckMate9LA試験の主な結果は以下のとおり。・アジア人患者の割り付けは、NIVO+IPI+Chemo群28例、Chemo群30例であった。・追跡期間は12.7ヵ月であった。・OS中央値は、NIVO+IPI+Chemo群では未到達、Chemo群13.3ヵ月であった(HR:0.47、95%CI:0.24〜0.92)。・ORRはニNIVO+IPI+Chemo群では57%、Chemo群では23%であった・Grade3/4の有害事象はNIVO+IPI+Chemo群の57%、Chemo群の50%で発現した。 CheckMate9LA試験でニボルマブ+イピリムマブ+化学療法レジメンはアジア人患者においても全集団と同様に有用性を示した。筆者は、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法レジメンはアジア人サブセットにおいても有効性を改善し、安全性についても管理可能であり、アジア人の進行NSCLC患者の1次治療への使用を支持するものだと述べている。

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ニボルマブ+化学療法の食道扁平上皮がん1次治療、CHMPで推奨/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月25日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行、再発または転移のある食道扁平上皮がん(ESCC)成人患者の1次治療薬として、ニボルマブとフルオロピリミジン系およびプラチナ系薬剤を含む化学療法の併用療法の承認を推奨したことを発表した。 今回のCHMPの肯定的な見解は、第III相CheckMate-648試験の中間解析の結果に基づいている。同試験で、ニボルマブと化学療法の併用療法は化学療法と比較して、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行、再発または転移のあるESCC患者において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)のベネフィットを示した(OS中央値:15.4ヵ月 vs.9.1ヵ月、ハザード比:0.54、99.5%信頼区間:0.37~0.80、p<0.001)。

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ナノリポソーム型イリノテカン、膵がん2次治療の新しい選択肢/日本臨床腫瘍学会

 膵がん治療においては、1次治療でゲムシタビンを含む化学療法を行った場合、2次治療の選択肢はFOLFIRINOX療法もしくはS-1単独療法の2つが選択肢であった。 昨年、イリノテカンをリポソームのナノ粒子に封入したオニバイドが発売されたことで、膵がんの2次治療に新しい選択肢が加わった。長期間新薬の承認がなかった膵臓がん領域における新規治療薬の実力は? 日本臨床腫瘍学会メディカルセミナーにおいて、国立がん研究センター東病院の今岡 大氏がオニバイドの海外第III相試験であるNAPOLI-1試験について解説した。 NAPOLI-1試験ではゲムシタビンを含む化学療法後に増悪した遠隔転移を有する膵がん患者417例を対象に、オニバイド+5-FU/LV群と5-FU/LV群を比較した。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は治験担当医指標化に基づく無増悪生存期間(PFS)などであった。 主な結果は以下のとおりである。 OS中央値はオニバイド+5-FU/LV群で6.1ヵ月、5-FU/LV群で4.2ヵ月であり、オニバイド+5-FU/LV群で有意な延長が検証された。[ハザード比0.67(95%CI:0.49~0.92)] また、PFS中央値はオニバイド+5-FU/LV群で3.1ヵ月、5-FU/LV群で1.5ヵ月であり、PFSにおいてもオニバイド+5-FU/LV群で有意な延長が検証されている。[ハザード比0.56(95%CI:0.41~.75)]待望の新治療、気を付ける点は? 医療従事者だけでなく患者からのニーズも高かった新しい治療選択肢であるオニバイドであるが、適切な副作用マネジメントが必要である。 NAPOLI-1試験での副作用は5-FU/LV群で134例中93例、69.4%に対してオニバイド+5-FU/LV群では117例中107例、91.5%に認められている。オニバイド+5-FU/LV群での主な副作用は下痢、悪心、嘔吐であった。 Grade3以上の有害事象はオニバイド+5-FU/LV群で117例中90例、76.9%で認められ、主なGrade3以上の有害事象は好中球減少症や疲労、下痢などであった。 対応について、適切な支持療法を行うとともに、患者の状態を見極めて適宜オニバイドの減量を考慮する。その際の投与量について添付文書に記載されており、それらを参考に投与量を決定できる点もイリノテカンとの違いだと今岡氏は述べている。

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日本人再発・進行子宮頸がん患者に対するtisotumab vedotinの効果~innovaTV206試験~/日本臨床腫瘍学会

 子宮頸がんは子宮がんの約7割程度を占めるがんであり、日本国内では、毎年約1万人の女性が罹患し、約3,000人が死亡している。2000年以降、患者数も死亡率も増加しており、新しい治療薬の登場が待たれていた。 tisotumab vedotinは子宮頸がん細胞に発現するタンパク質である組織因子を標的とした、抗体薬物複合体(ADC)である。化学療法による治療中または治療後に病勢進行がみられる再発または転移性子宮頸がんを適応として、2021年に米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認を取得している。 今回、日本人再発・進行子宮頸がん患者を対象としたinnovaTV206試験の結果が、国立がん研究センター中央病院の米盛 勧氏より発表された。注目のADC、その効果は?~innovaTV206試験~ innovaTV206試験の概要は以下の通り。・対象:標準治療中、または標準治療後に進行した、もしくは1~2つの前治療を行った日本人再発・進行子宮頸がん患者17例・方法:腫瘍の進行、許容できない毒性、または何らかの理由で患者が離脱するまで、推奨される第II相試験で推奨された用量(tisotumab vedotin 2.0mg/kg)を投与・目的:安全性と忍容性、薬物動態と免疫原性、日本人の再発・進行子宮頸がん患者における抗腫瘍活性の評価 年齢の中央値は47.0歳、1次治療でベバシズマブの治療を受けていた患者は47.1%であった。 結果は以下の通りである。・奏効率(ORR)は29.4%(95%信頼区間:10.3~56.0)、病勢コントロール率(DCR)は70.6%(95%信頼区間:44.0~89.7)、奏効持続期間(DOR)は中央値で7.1ヵ月であった。・安全性については治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)が全例で見られた。Grade3以上のTEAEでtisotumab vedotinが関連している副作用は52.9%であった。多く見られたTEAEは貧血、吐き気、脱毛症などであった。今回の試験から示されたこと 米盛氏はこれらの結果から、tisotumab vedotinの安全性プロファイルは管理可能であり、臨床的に意義のある結果が示された、と述べた。 今回発表されたinnnovaTV206の結果は、欧州・米国で行われたinnnovaTV204試験の結果とも一致しており、現在進行中の第III相試験、innnovaTV301試験の結果が待たれる。

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ニボルマブ+化学療法の非小細胞肺がんネオアジュバント、FDAが承認/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2022年3月4日、切除可能非小細胞肺がん(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)成人患者に対する、プラチナダブレット化学療法+ニボルマブ(3週間ごとに3サイクル)のネオアジュバント療法について、米国食品医薬品局(FDA)が承認したと発表した。承認条件にPD-L1の状態は問われていない。 今回の承認は、非小細胞肺がんに対する免疫治療薬ベースのネオアジュバントで初めての肯定的な結果を出した、第III相CheckMate-816試験に基づいたもの。 CheckMate-816試験の主要評価項目は、無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効(pCR)などである。中間解析におけるEFS中央値は、ニボルマブ+化学療法群で31.6ヵ月、化学療法群は20.8ヵ月で、ニボルマブ+化学療法群が統計学的に有意な改善を示した(ハザード比[HR] 0.63、95%信頼区間[CI]:0.45〜0.87、p=0.0052) 。また、pCRはニボルマブ+化学療法群の24%に対し、化学療法群は2.2%であった(p<0.0001)。OSのHRは0.57(95%CI:0.38〜0.87)とニボルマブ+化学療法群で良好だが、統計学的有意差は示していない。 同試験のEFSの解析結果は、2022年4月に開催されるAACR2022で発表される。

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ニボルマブ+イピリムマブの食道扁平上皮がん1次治療、CHMPで推奨/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月25日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行・再発または転移のある食道扁平上皮がん(ESCC)の成人患者の1次治療薬として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法の承認を推奨したことを発表した。 この肯定的な見解は、第III相CheckMate-648試験の中間解析に基づくもの。同試験で、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、フルオロピリミジン系およびプラチナ系薬剤を含む化学療法と比較して、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行、再発または転移性ESCC患者において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)のベネフィットを示した(OSの中央値:13.7ヵ月 vs .9.1ヵ月、ハザード比:0.64、98.6%信頼区間:0.46~0.90、p=0.001)。 ニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告された試験のものと一貫していた。

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ウェーバー・クリスチャン病〔WCD:Weber-Christian disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義WeberおよびChristianにより、再発性、非化膿性、有熱性の急性脂肪織炎として、今から90年ほど前に提唱されたまれな疾患で、女性に多い。他にも、“relapsing febrile nonsuppurative nodular panniculitis”という同義語がある。しかし、その後検査法が進歩し、以前ウェーバー・クリスチャン病として診断された中には悪性リンパ腫や深在性エリテマトーデス、α1-アンチトリプシン欠損症による脂肪織炎などを数多く含んでいたことが徐々に明らかになってくるにつれ、次第にこの病名は使われなくなってきている。1988年、Whiteらは、ウェーバー・クリスチャン病として報告された過去の報告30例を詳細に検討し、12例は結節性紅斑、6例は血栓性静脈炎で、他には外傷性脂肪織炎、細胞貪食組織球性脂肪織炎、皮下脂肪織炎様リンパ腫、白血病の皮下浸潤であったとしている1)。また、別の総説でも、かつてウェーバー・クリスチャン病として報告された疾患の多くは、バザン硬結性紅斑や膵疾患に伴う脂肪織炎であったとしている2)。いまだにこの病名での報告が散見されるが、その理由の1つに、安易にこの病名を使ってしまうことが挙げられる。さまざまな原因で起こる症候群と理解されるので、現在では「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」とし、本症を独立疾患とみなさない立場の方が多い。■ 疫学上記の理由から明確な患者数などは統計的にとられておらず不明である。■ 病因現在も不明である。■ 症状元々の概念によると、全身症状を伴い、四肢、体幹に皮下結節や板状の硬結を多発性に呈し、皮膚表面の発赤、熱感、圧痛を伴うこともあり、時に潰瘍化する。再発を繰り返した結果、色素沈着や萎縮性の陥凹を残して瘢痕治癒する。■ 予後原因となる疾患により予後はわかれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査・診断末梢血中の炎症反応の上昇がみられるが、特異的なものはない。病理組織像は、非特異的な脂肪織炎、とくに急性期は脂肪小葉性脂肪織炎(lobular panniculitis)で、時間の経過とともに組織球、泡沫細胞が出現し、脂肪肉芽腫の像を呈し、その後線維化もみられる。血管炎を伴わない。■ 鑑別診断1)皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫下肢に好発し、結節性紅斑に似た臨床像(表面は発赤を伴う皮下硬結)を呈する。組織像は皮下脂肪織にCD8陽性T細胞が脂肪細胞を取り囲むように浸潤し(rimming)、核破砕物を貪食したマクロファージ(bean-bag cell)を認める。また、出血傾向や汎血球減少、肝脾腫などを伴う致死的なウェーバー・クリスチャン病は、“cytophagic histiocytic panniculitis”として報告されたが3)、その大部分は現在、皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫であると考えられている。2)深在性エリテマトーデス皮下脂肪織を炎症の主座とし、脂肪融解により臨床的に陥凹を来す。組織は、皮下脂肪織にリンパ球、組織球の浸潤、細小血管の閉塞、間質へのムチン沈着、晩期には石灰化もみられる。3)結節性紅斑下肢に好発する皮下硬結で、生検の時期によって組織像が異なる。晩期は脂肪肉芽腫もみられる。他にも、スウィート病、ベーチェット病、膵疾患、薬剤性のものなどを除外する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)抗生剤内服は無効で、副腎皮質ステロイドの内服を主体に、反応が乏しい場合はステロイドパルスや免疫抑制剤なども考慮する。悪性リンパ腫に対しては化学療法を施行する。4 今後の展望ウェーバー・クリスチャン病という病名を使う際には上述のことを良く理解し、他疾患を確実に除外することを忘れてはならない。「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」という診断名に満足せず、その原因をさらに特異的に探究していく姿勢を怠ってはならない。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」(医療従事者向けのまとまった情報)1)White JW, et al. J Am Acad Dermatol. 1998;39:56-62.2)Requena L, et al. J Am Acad Dermatol. 2001;45:325-361.3)Winkelmann RK, et al. Arch Intern Med. 1980;140:1460-1463.公開履歴初回2022年3月4日

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ニボルマブ+化学療法による非小細胞肺がん術前補助療法がFDA優先審査対象に/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月28日、米国食品医薬品局(FDA)が、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前補助療法として、化学療法との併用療法によるニボルマブの生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理し、優先審査対象に指定したことを発表した。 今回の申請は、第III相試験であるCheckMate-816試験の結果に基づいたもの。同験では、術前に投与した際、ニボルマブと化学療法の併用療法群は、化学療法単独群と比較して、病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。 また、ニボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、これまでにNSCLC試験で報告されているものと一貫していた。 CheckMate-816試験の結果は、以前に2021年米国がん学会(pCRデータ)および2021年米国臨床腫瘍学会(外科的予後)年次総会で発表されている。

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胆道がんの術後補助化学療法にS-1が有用(JCOG1202)/日本臨床腫瘍学会

 S-1による術後補助化学療法は胃がん、膵がんにおいて有用性が示され、日本における標準療法となっている。このS-1術後補助化学療法が胆道がんにおいても有用であるかを見たJCOG1202試験の結果を、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で戸高 明子氏(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)が発表した。胆道がんに対してS-1術後補助化学療法が標準治療になる[JCOG1202:ASCOT試験]・対象:根治切除術が行われた胆道がん患者(PS0~1)・試験群:手術単独群と術後補助化学療法群(S-1を40mg/m2、1日2回、4週内服し2週休薬を1コースとして計4コース)に1対1で無作為に割り付け・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無再発生存期間(RFS)、完了率、安全性 S-1術後補助化学療法が胆道がんにおいても有用であるかを見たJCOG1202試験の主な結果は以下のとおり。・2013年9月~2018年6月に国内38施設から440例が登録され、手術単独群に222例、術後補助化学療法群に218例が組み入れられた。・主要評価項目の3年生存割合は、手術単独群67.6(61.0~73.3)%に対し、術後補助化学療法群は77.1(70.9~82.1)%、ハザード比 0.694(95%信頼区間:0.514~0.935、p=0.008)であり、術後補助化学療法群の優位性が示された。全サブグループで同様の結果となった。・副次評価項目のRFSは、手術単独群50.9(44.1~57.2)%に対し、術後補助化学療法群は62.4(55.6~68.4)%、ハザード比 0.797(0.613~1.035)であり、術後補助化学療法群の優位性は示されなかった。・術後補助化学療法群の完了率は72.5%、有害事象としては軽度の骨髄抑制、下痢、疲労、食欲不振、皮疹などが多く認められたが、Grade3以上は1~3%程度であり、認容性は良好であった。 戸高氏は「本結果によって、根治切除術を受けた胆道がんに対し、S-1による術後補助化学療法が標準治療になると考えられる。有効性が示されなかったRFSにおいても生存曲線の差異は認められ、長期追跡が必要だ。根治切除後も再発リスクが高い胆道がんにおいて、術後補助化学療法の有用性が立証されたのは大きな一歩であり、S-1は日本で既に多くのがん種に広く用いられており、提供体制もスムーズだろう」とした。

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KRAS G12C変異陽性肺がんの新しい治療選択肢、ソトラシブ/日本臨床腫瘍学会

 2022年、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する2次治療の新たな選択肢として承認されたソトラシブについて、日本臨床腫瘍学会メディカルセミナーにて、愛知県がんセンターの藤原 豊氏が解説した。 肺がん、とくに肺腺がんには多くの遺伝子変異がある。今回ソトラシブが適応となるKRAS G12C変異は日本における扁平上皮非小細胞肺がんの4.1%程度であり、男性、喫煙者に多いことがわかっている。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する従来の初回標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん剤の併用である。しかし、KRAS変異陽性の場合、陰性に比べて細胞障害性抗がん剤の効果が乏しく、とくに2次治療での効果は限定的であり、新しい治療選択肢が望まれていた。KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験成績 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験、CodeBreaK100試験の概要は以下の通り。・対象:KRAS G12C変異陽性進行非小細胞肺がんで抗PD-1/PD-L1免疫治療および/またはプラチナ製剤を含む化学治療の前治療歴があり(前治療数は3つ以下)、RECIST1.1に基づく測定可能病変を有し、ESOG PS 0、1・方法:ソトラシブ960mgを1日1回経口投与(増悪、治療不耐性、同意撤回などまで投与を継続)・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、奏効までの期間(TTR)、安全性 患者背景は男女同等、アジアからは19名が参加している。前治療で化学療法、免疫療法を受けていた割合はどちらも9割を超えていた。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験主な結果は以下の通り。・主要評価項目であるORRは37.1%(95%信頼区間:28.6~46.2)であり、副次評価項目のDCRは80.6%(95%信頼区間:72.6~87.2)であった。DORの中央値は11.1ヵ月(95%信頼区間:6.9~NE)。・安全性については、全Gradeの副作用が69.8%、Grade3が19.8%、Grade4が0.8%であった。多く見られた副作用は下痢、悪心、ALT・AST増加などであった。KRAS G12C変異陽性肺がんの2次治療はどう変わるか 肺がん診療ガイドラインでは2021年の段階で、すでにソトラシブがKRAS G12C変異陽性に2次治療以降でソトラシブ単剤療法を推奨すると記載されている。 藤原氏は今後の治療戦略について、「1次治療開始時にKRAS G12C遺伝子変異検査を実施し、結果を把握しておけば、2次治療が必要になった場合にすぐにソトラシブを使えると考えている。初回の検査でKRAS G12C変異を確認しておくことが重要」と述べた。

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食道扁平上皮がん、術前の3剤併用化学療法でOS延長(JCOG1109)/日本臨床腫瘍学会

 切除可能局所進行食道がんの術前療法は、日本では5-FU+シスプラチン(CF療法)が標準療法だが、欧米においては化学放射線療法が標準となっている。日本と海外は術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていたが、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、食道がん術前治療でも有望な成績が報告されている。JCOG1109試験が食道扁平上皮がんの術前DCF療法の有用性を世界で初めて示唆 これを受け、切除可能な局所進行扁平上皮食道がん患者を対象に、術前療法としてCF療法、DCF療法、CF療法+放射線療法(CF-RT)の3群を比較したJCOG1109試験が行われ、その結果を第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で加藤 健氏(国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科)が発表した。[JCOG1109試験]・対象:治療歴のない切除可能局所進行食道がん患者(PS0~1)・試験群:以下の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付けCF群:シスプラチン+5-FU(3週ごと2コース)DCF群:ドセタキセル+シスプラチン+5-FU(3週ごと3コース)CF-RT群:シスプラチン+5-FU+放射線(4週毎2コース)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率、安全性など 切除可能局所進行扁平上皮食道がんの術前療法としてCF療法、DCF療法、CF療法+放射線療法を比較したJCOG1109試験の主な結果は以下のとおり。・2012年12月~2018年7月に日本の44施設から601例が登録され、CF群:199例、DCF群:202例、CF+RT群:200例に無作為に割り付けられた。・3年生存割合は、CF群62.6%(95%信頼区間:55.5~68.9%)に対しDCF群72.1%(95%信頼区:65.4~77.8%)と10%近く高く、ハザード比0.68(95%信頼区間:0.50~0.92、p=0.006)とDCF群の優越性が示された。また、CF+RT群の3年生存割合は68%(61.3~74.3%)で、CF群との比較においてハザード比0.84(0.63~1.12、p=0.12)と、CF+RT群の優越性は示されなかった。・有害事象については、Grade3以上の発熱性好中球減少がDCF群で16.3%とやや多かったが、支持療法を適切に行うことで対応可能な範囲だった。また周術期合併症発生割合については明らかな違いは見られなかった。 加藤氏はJCOG1109試験の結果は「1月に開催された米国臨床腫瘍学会消化器シンポジウム(ASCO-GI)で発表され、今後の食道扁平上皮がんに対する術前DCF療法の有用性を世界で初めて示した試験となった。今後同対象に対する新たな標準治療になると考えられる」とした。さらに免疫チェックポイント阻害薬を術前DCF療法に併用する研究(JCOG1804E)が進行中だという。

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Stage I 非小細胞肺がん 再発高リスク群では補助化学療法が有効/Ann Thorac Surg

 わが国の肺癌診療ガイドラインでは2cmを超えるStage IA/BおよびIIA(TNM病期分類8版)の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するテガフール・ウラシルの術後補助療法は推奨または提案、という位置づけである。 広島大学の津谷康大氏らによる、再発高リスクのStage I(TNM8版)完全切除NSCLCに対する補助化学療法の有効性を評価した試験結果がThe Annals of Thoracic Surgery誌に発表された。 同試験では、肺葉切除術を受けたStage I NSCLC1,278例のデータを前向きに収集し、分析した。再発リスク因子は、無再発生存率(RFS)のCox比例ハザードモデルを基に規定し、補助化学療法実施患者と非実施患者の生存率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・RFSリスク因子としては、年齢70歳超、浸潤径2cm超、リンパ管侵襲、血管侵襲、臓側胸膜浸潤が同定された。・高リスク群(641例)においては、5年RFS(補助化学療法実施群81.4%対非実施群73.8%)、5年OS(補助化学療法実施群92.7%対非実施群73.8%)、とRFS、OSともに補助化学療法実施群で有意に長かった(5年RFS p=0.023、5年OS p<0.0001)。・低リスク群(637例)においては、補助化学療法実施群と非実施群の5年RFSは差はなかった(補助化学療法実施群98.1%対非実施群95.7%、p=0.30)。 補助化学療法は、病理学的T1c/T2a、リンパ節/血管侵襲など、高再発リスクを有するStage I NSCLC患者において、生存を改善する可能性が示唆される。

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不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から【見落とさない!がんの心毒性】第9回

本連載では、がん治療時におさえておくべき心毒性・心血管リスクとその対策について、4名のエキスパートを迎え、2021年4月より第1回~第8回まで総説編として現在のがん治療における心毒性トピックを解説してきました。近年の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など新しいがん治療薬が開発される中で、心血管系合併症(心毒性)に対して診療を行う腫瘍循環器学は、今後ますます注目される領域です。今年の春より実際の心毒性症例に基づく症例問題を掲載する予定ですが、その前に、肺がん、乳がん、消化器がん、造血器腫瘍、放射線の治療に携わるCareNet.com会員医師(計1,051名)を対象に行った『心毒性に対するアンケート』(実施期間:2021年8〜9月)の結果をご紹介しながら、実臨床で苦慮されている点をあぶり出していきたいと思います。(表1)CareNet.comにて行ったアンケートの結果画像を拡大する(表2)上記を基に向井氏が作成画像を拡大するがん治療における心毒性は心不全、虚血性心疾患、高血圧症、不整脈、血栓塞栓症に分類されますが、実臨床で腫瘍医の先生方がお困りの疾患はやはり、第一位は心不全、第二位は血栓塞栓症でした。実際に腫瘍循環器外来に院内から紹介される疾患も同様の結果ではないでしょうか。心不全については、第2回アントラサイクリン心筋症(筆者:大倉 裕二氏)、第3回HER2阻害薬の心毒性(筆者:志賀 太郎氏)がそれぞれの心筋症の特徴やその対応の詳細な解説をしています。今、上記の表の結果を踏まえ、少し振り返ってみましょう。アントラサイクリン心筋症ではやはり、「3回予防できる」という言葉が強く印象に残りました。現在さらに新しいがん治療において心不全を呈する可能性の高い治療も増加しており、腫瘍循環器領域において治療に関する新たなエビデンスが確立することが期待されていますさらに、第二位の血栓塞栓症は、第8回がんと血栓症(草場 仁志氏)で解説しました。がん関連血栓症はがんの増殖・転移と深い関係があり、がん診療の各ステージにおいて最も頻度が高く、常に頭に置く必要のある代表的な心毒性です。過去の研究から胃がんと膵臓がんは血栓塞栓症の高リスク因子と報告されているが、アンケートの結果から、実地診療でも消化器領域と肝胆膵領域で血栓塞栓症への関心が高いことがうかがわれました。2018年にがん関連血栓症の中で、静脈血栓塞栓症に対して直接経口抗凝固薬のエビデンスが確立され、抗凝固療法は大きく変化しています。その一方で、動脈血栓塞栓症に対するエビデンスは未だ不足しており治療に関しても未だ不明な点が少なくありません。(図1)は、外来化学療法中の死亡原因を示しています。第一位はがんの進展によるものですが、第二位はがん関連血栓塞栓症でした。そして、抗凝固療法における出血の合併症など腫瘍循環器医が対応すべき多くの問題が残っています。(図1)画像を拡大する1)Khorana AA, et al. J Thromb Heamost. 2007;5:632-634.講師紹介

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HR+HER2-転移・再発乳がん、ベバシズマブ+パクリタキセル導入療法後に内分泌療法+カペシタビン維持療法の戦略で長期のOSを確認/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2 陰性(HER2-)転移・再発乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法の有効性を検討した国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR1214)において、内分泌療法+カペシタビン併用維持療法が内分泌療法単独に比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことがすでに報告されている。今回、この治療戦略の全生存期間(OS)への影響を評価するために、本試験を事後解析した結果について、大阪大学の吉波 哲大氏が第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。[KBCSG-TR1214試験]・対象:HR+HER2-の遠隔転移があるか手術適応とならない再発乳がん(PS 0または1)で、転移・再発がんへの化学療法歴が1レジメン以下の患者・方法:導入化学療法としてベバシズマブ+パクリタキセルを4~6サイクル実施し、病勢進行を認めなかった90例を、維持療法として内分泌療法+カペシタビン(EC群)または内分泌療法(E群)に無作為に割り付けた。維持療法で病勢進行した場合は、ベバシズマブ+パクリタキセル再導入療法を実施した。・評価項目:[主要評価項目]維持療法のPFS[副次評価項目]無作為化からのTime to failure of strategy(TFS)、導入療法からの全生存期間(OS)、再導入療法からのPFSなど 事前に計画された解析には無作為化に至らなかった26例は含まれておらず、今回は、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法を開始した116例(E群46例、EC群44例、非無作為化26例)のデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・116例全例におけるOS中央値は34.5ヵ月(95%CI:28.0~43.2)だった。・主に病勢進行のため無作為化されなかった26例におけるOS中央値は15.7ヵ月(95%CI:7.75~30.8)で、E群34.9ヵ月(同:23.3~NA)、EC群43.8ヵ月(同:33.7~NA)より短い傾向があった。・本治療を1次治療で受けた102例のOS中央値は36.0ヵ月(95%CI:29.2~46.2)、2次治療で受けた14例では25.7ヵ月(同:17.6~37.5)だった。 本解析から、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後に維持療法を実施する治療戦略により、導入化学療法での病勢進行例を含めても長期のOSが達成されることが示された。

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リキッドバイオプシーによる術後再発リスク評価(COSMOS-CRC-01)/日本臨床腫瘍学会

 2021年に国内で初めて、リキッドバイオプシーを用いた固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングが保険承認された。現在、リキッドバイオプシーを用いた血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を解析し術後の微小残存腫瘍(MRD)を検出することで術後の再発リスクを評価するというCOSMOS試験が進行中だ。 MRD測定は造血器腫瘍分野における予後予測に広く使われており、固形がんにおける予後予測にも使えるのではないかと検討されていた。COSMOS試験は国立がん研究センターを中心としたがん臨床研究の基盤であるSCRUM-Japanのプロジェクトの1つであり、大腸がん、胃がん、膵がん、肝臓がん、メラノーマ患者を対象としている。 2022年2月に行われた第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)では中村 能章氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科)が大腸がん患者を対象としたCOSMOS-CRC-01試験の中間解析結果を発表した。[COSMOS-CRC-01試験]・対象:切除可能なステージ0~IIIの大腸がん患者・術前、術後28日、3ヵ月ごと術後1年、6ヵ月ごと術後2~5年間測定・Guardant Reveal(未承認)を用いてゲノム異常とエピゲノム異常を同時解析 主な結果は以下のとおり。・2020年1月~2021年4月に501例が登録され、そのうちステージIIまたはIIIの根治切除を受けた93例を解析した(追跡期間中央値:15.6ヵ月)。年齢中央値70(34~88)歳、61%が男性、ステージIIとIIIがほぼ同数であった。・術前ctDNA解析が成功した89例のうち、11例(12%)にゲノム異常、11例(12%)にエピゲノム異常、53例(60%)に両方の異常が認められ、計75例(84%)がctDNA陽性と判定された。・術後28日時点のctDNA解析は93例全例で成功し、2例(2%)にゲノム異常、14例(15%)にエピゲノム異常、7例(8%)に両方の異常が認められ、計23例(25%)でctDNA陽性となった。・ゲノム解析においては、APC、BRAF、CTNNB1、KRAS、PIK3CA、TP53といった大腸がんにおいて重要な遺伝子変異が認められ、これら遺伝子変異の腫瘍分画(血中に遊離しているセルフリーDNA全体におけるctDNAの割合)の最低値は0.03%、またエピゲノム異常の腫瘍分画の最低値は0.006%だった。・今回のデータカットオフ日(2021年11月30日)時点で、93例中12例に再発が認められ、うち6例(50%)では術後28日時点でctDNAが陽性だった。また再発した12例のうち、術後2回以上の血液解析が行われた11例では、うち10例(91%)が術後いずれかの時点でctDNAが陽性だった。・術後ctDNAが陽性となった時点から再発までの期間の平均値は6.6ヵ月だった。・術後28日時点でのctDNA陰性例の1年無病生存期間(DFS)が93%だったのに対し、陽性例は同83%だった。 中村氏は「今回の結果は、血液のゲノム・エピゲノム解析が、補完的に術後MRDを検出することを示した。追跡期間が短く、対象者も少ないために今回の結果は限定的であるが、組織採取を必要としないリキッド検査の利点は大きく、6ヵ月前という早い時期に再発を予測でき、リスクの高低によって術後の化学療法を変更できる可能性もある。今後のさらなる追跡によって本検査の有用性を明らかにしたい」としている。

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