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デュルバルマブ+化学療法±オラパリブの日本人子宮体がんに対する成績(DUO-E)/日本婦人科腫瘍学会

 進行子宮体がんに対してデュルバルマブを含む治療と標準化学療法を比較する第III相試験DUO-Eの日本人サブセット解析が、第66回日本婦人科腫瘍学会学術大会で久留米大学の西尾 真氏により発表された。 DUO-E試験では、進行再発子宮体がん1次治療のITT集団において、化学療法・デュルバルマブ併用+デュルバルマブ維持療法群および、同併用+デュルバルマブ・オラパリブ維持療法群共に、化学療法と比べ無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が報告されている。対化学療法群におけるハザード比(HR)はそれぞれ0.71(95%信頼区間[CI]:0.57〜0.89、p=0.003)、0.55(95%CI:0.43〜0.69、p<0.0001)であった。・対象:未治療の進行StageIII/IV(FIGO2009)または再発子宮体がん・試験群1: 化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)+デュルバルマブ→デュルバルマブ(TC+D群)・試験群2:TC+デュルバルマブ→デュルバルマブ+オラパリブ(TC+D+O群)・対照群:TC→プラセボ(TC群)・評価項目:[主要評価項目]治験責任医判定によるPFS(TC+D群vs.TC群、TC+D+O群vs.TC群)[副次評価項目]全生存期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・日本人サブセットは88例(TC群32例、TC+D群30例、TC+D+O群26例)であった。・日本人サブセットはITT集団に比べPS良好例、初発例、StageIV例が多く、放射線治療歴が少なかった。・日本人患者のPFS中央値はTC群9.5ヵ月、TC+D群9.9ヵ月(対TC群HR:0.61、95%CI:0.32〜1.12)、TC+D+O群15.1ヵ月(対TC群HR:0.44、95%CI:0.22〜0.85)で、ITT集団と一貫した傾向であった。・安全性プロファイルはITT集団と一貫していた。・Grade3以上の有害事象発現はTC群の19.0%、TC+D群の10.0%、TC+D+O群の45.0%であった。 DUO-E試験の結果から、日本人の子宮体がんにおいて、化学療法+デュルバルマブおよびその後のデュルバルマブ±オラパリブが新たな治療選択肢となり得る、と西尾氏は述べた。

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monarchEとPOTENTの適格性の有無と予後の関連/日本乳癌学会

 再発高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法として、アベマシクリブおよびS-1がそれぞれmonarchE試験およびPOTENT試験の結果を基に保険適用となっている。しかしその投与対象は一部が重複しており、またPOTENT試験の適格基準はStage I~IIIBと幅広い。名古屋市立大学の磯谷 彩夏氏らはmonarchE試験およびPOTENT試験の適格/不適格症例ごとの予後を検討することを目的に、単施設の後ろ向き解析を実施。結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究では、1981〜2023年に名古屋市立大学病院で根治的手術を実施したStage I~IIICのHR陽性HER2陰性乳がん2,197例の診療録を後ろ向きに解析した。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。S-1、CDK4/6阻害薬、PARP阻害薬のいずれかの投与歴のある患者98例が除外され、本研究に適格とされた患者2,099例のうち、両試験適格群は275例、monarchE試験(コホート1)のみ適格群は64例、POTENT試験のみ適格群は810例、両試験不適格群は950例であった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢(平均56.7歳)、性別(99.6%が女性)、閉経状況(49.6%が閉経後)に各群で大きなばらつきはなかった。化学療法歴はmonarchEのみ適格群(82.8%)および両試験適格群(74.5%)で高く、再発についてもmonarchEのみ適格群(65.6%)で高い傾向がみられた。・観察期間中央値28.5年における全体集団の5年DFSは88.79%、10年DFSは78.71%であった。・各群の5年DFSは、monarchEのみ適格群59.8%、両試験適格群75.0%、POTENT試験のみ適格群89.8%、両試験不適格群94.8%であり、monarchE適格患者は有意に予後不良であった(log-rank検定のp<0.0001)。・POTENTのみ適格の患者の予後は、POTENT不適格の患者と比較するとリンパ節転移の有無によらず不良であり、とくにリンパ節転移陽性の場合は晩期再発も多くみられ、S-1の上乗せはより妥当と考えられた。・POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者における予後因子を単変量解析で検討した結果、Gradeが高いほどまた腫瘍径が大きいほど予後不良であることが明らかになった。・POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者において、Gradeと腫瘍径別に予後を検討した結果、Grade2では腫瘍径2cm以上3cm未満と比較して3cm以上では有意に予後不良(p=0.001)であった一方、2cm未満と比較して2cm以上3cm未満では有意な差はみられなかった(p=0.51)。またGrade3では腫瘍径2cm未満で比較的予後良好な傾向がみられた。・そこで、POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者において、Grade2かつ腫瘍径2cm以上3cm未満およびGrade3かつ腫瘍径2cm未満の患者(予後検討群)を、その他のPOTENT適格患者と比較した結果、予後検討群で有意に予後良好であった(p=0.007)。 磯谷氏は、後ろ向き研究であること、1980年代の症例が含まれていることなどの本研究の限界を挙げたうえで、monarchE適格患者にはアベマシクリブの投与が妥当であり、POTENT試験の適格患者のうち、Grade2かつ2cm以上3cm未満およびGrade3かつ2cm未満の患者は比較的予後が良好であり、S-1の上乗せ効果は限定的である可能性が示唆されたとまとめた。一方で、予後良好患者においてもS-1の上乗せ効果を否定できないため、今後はS-1投与患者における予後調査が必要としている。

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HER2+乳がんに対する周術期至適治療を検討/日本乳癌学会

 HER2+乳がんの周術期治療選択において、Stage Iやリンパ節転移陰性のStage II(T2N0)でのレジメン選択や術前化学療法の適応は施設間で考え方に違いがある。今回、船橋市立医療センターの松崎 弘志氏らは、これらのStageに対する至適な治療法を明らかにするため、手術を実施したHER2+乳がんについて後ろ向きに評価し、第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究は、1994年4月~2021年11月に手術を実施したHER2+乳がん350例を対象とし、Stage別の治療法と無再発生存率(RFS)の関係、Stage Iにおける腫瘍径およびトラスツズマブ追加の有無とRFS 、Stage IIAにおけるT2N0とT1N1の相違、T2N0例におけるペルツズマブ追加とRFSについて、後ろ向きに検討した。 主な結果は以下のとおり。■Stage別の治療法と5年RFSの関係・全Stage(350例)において、トラスツズマブありが84.5%、なしが63.6%とトラスツズマブで有意な予後改善を認めた。・Stage I(113例)では、無治療が78.6%と低く、トラスツズマブのみは90%、化学療法のみは90.9%と高く、化学療法+トラスツズマブでは再発例はなかった。・Stage II(172例)では、化学療法のみでは62.6%と不良であったが、トラスツズマブのみで79.4%、化学療法+トラスツズマブで89.1%であった。・Stage III(65例)では、化学療法+トラスツズマブでも55.6%と予後不良だった。■Stage Iにおける腫瘍径およびトラスツズマブ追加の有無とRFS・腫瘍径別では、T1c(63例) が95.2%と最も高く、T1b(19例) 94.7%、T1mi (17例)92.3%で、T1a は14例と少ないものの局所も含めた再発が4例あり、77.1%と低かった。・Stage I全体でトラスツズマブ投与の有無別では、トラスツズマブなしが85.0%に対し、ありが98.6%と有意な改善がみられ、化学療法の有無にかかわらず投与症例での再発は1例のみだった。■Stage IIAにおけるT2N0とT1N1の相違、T2N0例におけるペルツズマブ追加とRFS・T2N0(96例)が87.2%、T1N1(21例)が68.2%と、T1N1で予後不良な傾向がみられた。・T2N0で化学療法+トラスツズマブを投与した症例において、ペルツズマブありが88.9%、なしが93.5%と明らかな差はみられなかったが、ペルツズマブ投与群では再発がなかった(検討症例の時期から、ペルツズマブ投与は12例にとどまっており、観察期間も短かった)。 松崎氏は、「T1ではトラスツズマブを投与した73例中、再発は1例のみであり、予後改善のための術前化学療法の意義は少ない。一方、トラスツズマブなしではT1a以下の腫瘍径でも再発を認め、投与すべき」と述べ、「T1bおよびT1cは、化学療法+トラスツズマブの適応だが、ペルツズマブ追加の必要性には乏しく、APT試験の結果を合わせ、アントラサイクリン省略も考慮される」と考察した。一方、「Stage IIAでは化学療法+トラスツズマブ投与でも一定数の再発を認め、ペルツズマブが必須、さらには術前化学療法(レスポンスガイド)による予後向上を目指すべきで、T2N0においてもこれらは同様と考える」と述べた。

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コロナ変異株KP.3のウイルス学的特徴、他株との比較/感染症学会・化学療法学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第11波が到来したか――。厚生労働省が7月19日時点に発表した「新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移」によると、都道府県別では、沖縄、九州、四国を中心に、定点当たりの報告数が第10波のピークを上回る地域が続出している1)。全国の定点当たりの報告数は11.18となり、昨年同期(第9波)の11.04を超えた2)。また、東京都が同日に発表したゲノム解析による変異株サーベイランスによると、7月18日時点では、全体の87%をKP.3(JN.1系統)が占めている3)。KP.2やJN.1を合わせると、JN.1系統が98.7%となっている。 東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤 佳氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan(The Genotype to Phenotype Japan)」は、感染拡大中のKP.3、および近縁のLB.1と KP.2.3の流行動態や免疫抵抗性等のウイルス学的特性について調査した。その結果、これらの親系統のJN.1と比べ、自然感染やワクチン接種により誘導された中和抗体に対して高い逃避能や、高い伝播力(実効再生産数)を有することが判明した4)。6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて結果を発表した。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年6月27日号に掲載された。 本研究ではJN.1より派生したKP.3、LB.1、KP.2.3の流行拡大のリスク、およびウイルス学的特性を明らかにするため、ウイルスゲノム疫学調査情報を基に、ヒト集団内における各変異株の実効再生産数を推定し、次に、培養細胞におけるウイルスの感染性を評価した。また、SARS-CoV-2感染によって誘導される中和抗体や、XBB.1.5対応ワクチンによって誘導される中和抗体に対しての抵抗性も検証した。 主な結果は以下のとおり。・2024年5月時点のカナダ、英国、米国のウイルスゲノム疫学調査情報を基にした調査において、KP.3の実効再生産数は、親系統のJN.1よりも1.2倍高いことが認められた。さらに、LB.1、KP.2.3は、KP.2とKP.3よりも高かった。・培養細胞におけるウイルスの感染性について、KP.2とKP.3はJN.1よりも低い感染性を示した。一方、LB.1とKP.2.3は、JN.1と同等の感染性を示した。・これまでの流行株(XBB.1.5、EG.5.1、HK.3、JN.1)の既感染もしくはブレークスルー感染血清を用いた中和アッセイでは、LB.1とKP.2.3に対する50%中和力価(NT50)は、JN.1に対するものよりも有意に(LB.1:2.2~3.3倍、KP.2.3:2.0~2.9倍)低かった。さらに、KP.2に対するものよりも(LB.1:1.6~1.9倍、KP.2.3:1.4~1.7倍)低かった。・KP.3はすべての回復期血清サンプルに対してJN.1よりも高い中和抵抗性(1.6~2.2倍)を示したが、KP.3とKP.2の間に有意差は認められなかった。・コロナ未感染のXBB.1.5対応ワクチン血清サンプルは、JN.1系統(JN.1、KP.2、KP.3、LB.1、KP.2.3)に対するNT50は非常に低かった。・XBB自然感染後のXBB.1.5対応ワクチン血清サンプルにおいて、KP.3、LB.1、KP.2.3に対するNT50は、JN.1に対するものよりも有意に(2.1~2.8倍)低く、さらにKP.2に対するものよりも(1.4~2.0倍)低かった。 本研究の結果、JN.1から派生したKP.2、KP.3、LB.1、KP.2.3は、JN.1と比較して免疫逃避能と実効再生産数が増加し、その中でも、LB.1とKP.2.3は、KP.2やKP.3よりも高い感染性とより強力な免疫逃避能を保持することが明らかとなった。G2P-Japanについて 佐藤氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan」では、所属機関を超えて研究者が共同で研究を行っている。2021年より、新たな懸念すべき変異株出現の超早期にウイルス学的性状について検証し、その成果は主要な医科学誌に断続的に掲載され、世界的に注目されている。佐藤氏は、次のパンデミックに備えるためにも、「G2P-Japan」としての研究活動を継続し、若手研究者の育成や啓蒙することの重要性を訴えた。ウイルス研究に関して、従来のin vivoやin vitroでの解析に加え、疫学や全世界的な流行動態の推定といったマクロの視点から、迅速に変異の影響を理解するためのタンパク質構造解析といったミクロの視点まで、多角的かつ統合的に理解することが必要であるとし、佐藤氏が創設した「システムウイルス学」という新たな研究分野によって解決していきたいと語った。第2回新型コロナウイルス研究集会を開催 新型コロナに関する最新の知見を共有するため、佐藤氏が大会長を務める「第2回新型コロナウイルス研究集会」が8月2~4日に東京・品川にて開催される5)。2023年に開催された第1回はウイルス学に関する基礎研究にフォーカスしたものだったが、第2回研究集会では、疫学、臨床医学、免疫学、ウイルス学と領域を拡大し、各分野で活躍する研究者が登壇する。 開催概要は以下のとおり。第2回新型コロナウイルス研究集会開催日時:2024年8月2日(金)〜4日(日)会場:東京コンファレンスセンター品川[現地開催]2024年8月2日(金)〜4日(日)[オンデマンド]2024年9月2日(月)正午〜9月30日(月)正午 ※予定[参加登録締切]2024年9月30日(月)大会長:佐藤 佳参加登録など詳細は公式ウェブサイトまで。

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乳がん領域におけるがん遺伝子パネル検査後の治療到達割合(C-CATデータ)/日本乳癌学会

 2019年のがん遺伝子パネル検査の保険適用から5年が経過したが、治療到達割合の低さ、二次的所見の提供のあり方、人材育成や体制整備、高額な検査費用などの課題が指摘されている。京都府立医科大学の森田 翠氏らは、とくに臨床医として現場で感じる課題として「治療到達割合の低さ」に着目。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録されたデータを用いて日本人乳がん患者における遺伝子変異の頻度、エビデンスレベルの高い実施可能な治療への到達割合などを解析し、結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究では、2019年6月~2023年12月のC-CATデータ“Breast”3,900例から葉状腫瘍、血管肉腫などを除いた“Breast Cancer”3,776例を対象とした。臨床医が求める薬剤到達割合の基準を、・既存のコンパニオン診断では治療に結び付いていないこと・がん遺伝子パネル検査で初めて治療に結び付くもの・日本のPMDA承認薬であることと定義し、さらに基準1(乳がんを対象とした第III相試験が施行されているという従来の基準)と基準2(臓器横断的承認で、第I/II相試験も可とする新しい基準)を設定した。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値56歳、40~50代が54.8%を占め、すでにコンパニオン診断によりgBRCA1陽性と診断されていた症例が2.5%、gBRCA2陽性が4.3%であった。パネル検査はFoundationOne CDxが72.3%、FoundationOne Liquid CDxが16.7%、OncoGuide NCCオンコパネルシステムが10.6%で使用されていた。・検出された遺伝子変異はTP53が58.1%と最も多く、PIK3CAが36.0%、MYCが18.7%、CCNDIが15.0%、GATA3が13.8%と続いた。・検出頻度上位100の遺伝子変異について2024年の最新状況に基づき薬剤到達割合をシミュレーションした結果、PIK3CAの変異(検出頻度:36.0%)は基準1、2ともに19.0%(推奨される薬剤:カピバセルチブ+フルベストラント)、ERBB2の増幅(13.7%)はHER2陰性乳がんにおいて基準1、2ともに3.4%(抗HER2薬)、PTENの変異と欠失(13.4%)は基準1、2ともに5.0%(カピバセルチブ+フルベストラント)、AKT1の変異(7.9%)は基準1、2ともに3.4%(カピバセルチブ+フルベストラント)、NTRK1の遺伝子融合(2.6%)は基準2のみで0.05%(エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ)、BRAFV600E(1.4%)は基準2のみで0.21%(ダブラフェニブ+トラメチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ)であった。・全体として、基準1を満たしたのは28.4%で、うち3.4%はHER2陰性乳がんにおけるERBB2増幅に対する抗HER2薬の適応、25.0%はAKT経路(PIK3CA/AKT1/PTEN)の遺伝子異常に対するカピバセルチブの適応であった。基準2を満たしたのは37.9%で、基準1からの増加分のうち9.2%はTMB-H、MSI-Hに対するペムブロリズマブの適応、0.3%はBRAF V600E、NTRK fusionsに対する各薬剤の適応であった。・PMDA非承認薬については、企業あるいは医師主導の治験に結び付いた症例は、C-CATデータから検出しうる範囲内で、全体で25例(0.7%)であった。・AKT経路の遺伝子変異を有する症例は全体で944例(25%)、ER陽性HER2陰性乳がんでは最大で50.9%を占めた。3遺伝子の包含関係については、重複する症例もあるが、PIK3CAが719例、AKT1が129例、PTENが190例であった。 森田氏は、HER2陰性乳がんにおけるERBB2増幅について、術前化学療法後にHER2が陽転化した割合が同じく3.4%であった過去の報告1)に触れ、偽陰性であった可能性を指摘。またAKT経路の遺伝子異常に対するカピバセルチブの適応については、FoundationOneをCDxで使用する際に現状では臨床現場で課題があること、働き方改革の観点からは、CGP検査の前倒しよりも3因子に限った小パネル検査を開発することを提案。TMB-H、MSI-Hに対するペムブロリズマブ、BRAF V600E、NTRK fusionsに対する各薬剤の適応については臓器横断的承認であり、承認の根拠となった臨床試験に乳がん症例が含まれておらず、臨床医が自信を持ってこれらの薬剤を使えるかというと疑問が残ると考察した。したがって、現状ではCGP検査による薬剤到達割合は、臨床医の実感どおり非常に低いことが本研究により示された。乳がん診療におけるがんゲノム医療の現状は、現場の負担と患者の期待が大きいことに比して薬剤への到達割合に課題が山積しているとし、今後は臨床医を対象に定期的に広くアンケート調査を実施することなどで、現場の状況を反映していくことも必要ではないかとして講演を締めくくった。

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局所進行食道がんに対する術前補助療法として3剤併用化学療法が標準治療となるか?(解説:上村直実氏)

 日本の臨床現場における食道扁平上皮がんは、発見される時期により予後が大きく異なる疾患である。内視鏡検査によりStage0やIの早期段階で発見されると、外科的手術や化学放射線治療ではなく侵襲の少ない内視鏡的切除により完治する可能性が高い疾患であるが、一方、StageII以上の進行がんになると、化学療法や放射線療法および外科的手術を含む集学的治療を行っても予後が悪い疾患となる。したがって、進行がんの予後に関しては外科的手術に先立つ術前治療の有効性が重要となっている。 今回、術前治療としてわが国の標準治療である2剤併用化学療法(A群、CF療法:フルオロウラシル+シスプラチン)と欧米における標準治療である2剤併用化学療法+放射線療法(B群、CF+RT療法)およびC群として3剤併用化学療法(DCF療法:フルオロウラシル+シスプラチン+ドセタキセル)を加えた3群の有用性と安全性を比較検証するオープンラベルの多施設共同臨床試験(RCT)が施行された結果、C群の3年生存率がA群やB群と比較して統計学的に有意に延長することが2024年6月のLancet誌に掲載された。なお、3年後に生存している患者の割合は、A群が62.6%、B群が68.3%に対して、C群が72.1%であった。 本研究の対象患者はStageIII、すなわち、がんが食道外に進展してリンパ節に転移を認める場合や周囲臓器に進展しているが転移を認めない症例であり、最近の疫学調査によると現在の5年生存率35%程度の改善が期待できる。この結果、進行食道扁平上皮がんに対する術前補助治療に関するガイドラインにおいて、標準治療とされている2剤併用化学療法+放射線治療に代わって3剤併用療法が新たな標準治療となるものと思われる。 今回の臨床研究は国立がん研究センター(NCC)のJCOGが主導して行われたものであるが、世界の食道がん診療ガイドラインに影響を与える大きなインパクトを有するものであり、がん治療に関して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)療法や臓器温存療法の分野においても、わが国からのさらなるエビデンスの創出が期待できる。 さいごに、本研究をはじめとしてがんに対する臨床試験の対象症例は20歳から75歳の患者に限定されているが、高齢化が著しい実臨床からみると75歳以上の高齢者を含めた検討が必要と思われる。

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オミクロン対応2価コロナワクチン、半年後の予防効果は?/感染症学会・化学療法学会

 第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会が、6月27~29日に神戸国際会議場および神戸国際展示場にて開催された。本学会では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新知見も多数報告された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2021年7月から国内での新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価することを目的としてVERSUS研究1)を開始しており、これまで断続的にその成果を報告している。今回は、2023年4月1日~11月30日の期間(XBB系統/EG.5.1流行期)における、オミクロン株BA.1およびBA.4-5対応2価ワクチンの有効性についての結果を発表した。本結果によると、2価ワクチンの入院予防効果について、接種から半年後でも高い有効性が持続することなどが明らかとなった。 本研究では、コロナワクチンの発症予防の有効性および入院予防の有効性を評価している。発症予防については、全国9都県15施設でCOVID-19を疑う症状で医療機関を受診した16歳以上を対象とした。入院予防については、全国10都府県12施設で呼吸器感染症を疑う症状が2つ以上ある、または新たに出現した肺炎像を認め、医療機関に入院した60歳以上を対象に調査を行った。検査陰性デザイン(test-negative design:TND)を用いた症例対照研究で、ワクチン未接種と比較した2価ワクチン接種の有効性(回数によらない)を推定している。ワクチン接種歴不明、ワクチンの種類不明の場合(起源株対応の従来型のワクチンか2価ワクチンか不明の場合)は解析から除外した。 主な結果は以下のとおり。【発症予防の有効性】・全体で7,494例が解析対象となった。年齢中央値44歳(四分位範囲[IQR]:28~63)、男性45.2%、基礎疾患のある人27.5%。・コロナワクチンの接種歴は、ワクチン接種なし13.1%、起源株対応の従来型ワクチンのみ接種41.6%、オミクロン株BA.1/BA.4-5対応2価ワクチン接種45.2%であった。・16~64歳での2価ワクチンの発症予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では22.9%(95%信頼区間[CI]:-4.8~43.2)、91~180日では32.3%(7.7~50.4)、181日以上では2.9%(-21.5~22.5)となり、接種から半年間の有効性の低下が顕著であった。・65歳以上での2価ワクチンの発症予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では40.8%(95%CI:6.1~62.7)、91~180日では52.2%(21.7~70.8)、181日以上では40.8%(3.8~63.5)であった。【入院予防の有効性】・60歳以上の1,170例が解析対象となった。年齢中央値83歳(IQR:75~89)、男性57.1%、高齢者施設入居者29.7%、基礎疾患のある人76.5%。・コロナワクチンの接種歴は、ワクチン接種なし16.3%、起源株対応の従来型ワクチンのみ接種22.9%、オミクロン株対応2価ワクチン接種60.8%であった。・2価ワクチンの入院予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では59.6%(95%CI:31.2~76.2)、91~180日では69.4%(45.6~82.8)、181日以上では55.3%(19.1~75.3)であった。入院時呼吸不全あり、CURB-65で判断した重症度で入院時の重症度が中等症以上、入院時肺炎ありといったより重症の場合でも、ワクチンの有効性は全入院予防の有効性と比較して同等かそれ以上であった。 本研究により、オミクロン対応2価コロナワクチンの有効性について、発症予防はとくに若年者において低い値であったが、サンプルサイズは限られるものの、入院予防は接種から半年後も高い有効性が保たれていることが認められた。前田氏は、「ただし、より長期的に評価すると、接種から時間が経つにつれ効果は下がってくる可能性があるため、追加接種の必要性を考えるためにも継続して評価が必要である」と見解を示し、「新型コロナワクチン政策や流行株は各国で異なるため、国内におけるワクチンの有効性を評価することは、国内のワクチン政策を考慮する際にとくに重要であり、現在使用されているXBB.1.5対応ワクチンなどについても、今後も継続して評価をしていく」と語った。

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運動が化学療法による末梢神経障害の回避に有効か

 化学療法を受ける患者の多くが発症する化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の回避に運動が有効である可能性が、新たな研究で示唆された。この研究では、運動をしなかった患者でCIPNを発症した者は、運動をした患者の約2倍に上ることが示されたという。バーゼル大学(スイス)のFiona Streckmann氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に7月1日掲載された。 研究グループによると、化学療法を受ける患者の70〜90%は、痛みやバランス感覚の問題、しびれ、熱感、ピリピリ感やチクチク感などのCIPNの症状を訴え、半数の患者は、がんの治療後もこのような症状が持続するという。 今回の研究では、オキサリプラチン、またはビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬による化学療法を受ける158人のがん患者(平均年齢49.1歳、男性58.9%)を対象にランダム化比較試験を実施し、感覚運動トレーニング(sensorimotor training;SMT)と全身振動刺激(whole-body vibration;WBV)トレーニングがCIPNの発症や症状の低減に有効であるかどうかが検討された。対象者は、SMTを受ける群(55人)、WBVトレーニングを受ける群(53人)、および、運動は行わずに通常のケアのみを受ける群(対照群、50人)にランダムに割り付けられた。介入群(SMT群とWBV群)は、1回当たり15〜30分間のトレーニングセッションを週に2回、化学療法が終了するまで受けた。 ITT解析の結果、CIPNの発症率は、対照群で70.6%であったのに対し、SMT群では30.0%、WBVトレーニング群では41.2%であり、対照群に比べて介入群では有意に低いことが明らかになった。この結果は、介入に75%を超えて参加した者のみを対象にしたPPS解析ではさらに顕著であった(対照群73.3%、SMT群28.6%、WBVトレーニング群37.5%)。また、2種類の介入のうち、より効果が高かったのはSMTで、SMT群では対照群よりも、開眼/閉眼で両足立ちでのバランスコントロール、片足立ち、振動感覚、触覚、下肢の筋力の改善、および痛みと熱感の軽減の程度が大きく、化学療法の投与量削減を受けた患者が少なく、死亡率も低かった。 Streckmann氏は、「CIPNは、患者に必要な化学療法サイクルの計画通りの実施不可や、化学療法に含まれる神経毒性薬剤の投与量の削減、治療の中止など、臨床治療に直接的な影響を与える」と話す。同氏によると、現時点でCIPNの予防や回復に有効な薬剤は見つかっていない。それにもかかわらず、米国の医師は毎年、CIPNの治療に患者1人当たり推定1万7,000ドル(1ドル160円換算で272万円)を費やしているという。同氏は、「これに対し、運動は効果的である上に安価だ」と述べる。 Streckmann氏らは、支持療法としてがん治療に運動を取り入れるためのガイドラインを病院向けに作成中であるとしている。また、ドイツとスイスの6つの小児病院で、化学療法を受けている小児の末梢神経障害に対する運動の予防効果を確かめる研究が進行中であるという。

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名古屋大学医学部 化学療法学(附属病院化学療法部)【大学医局紹介~がん診療編】

安藤 雄一 氏(教授)満間 綾子 氏(病院講師)近藤 千晶 氏(病院助教)宮井 雄基 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴化学療法部では、腫瘍内科の診療とともに、外来化学療法室の運用、がんゲノム医療外来、診療科横断的なカンファレンスやコンサルテーション対応、化学療法レジメンの整備、緩和ケアチームの活動、がん診療連携拠点病院の事業、そしてがん薬物療法の実践的な教育などに取り組んでいます。いずれも日頃からの各診療科や部門との連携によって、初めて実践できるものです。専用病床では、新規抗がん薬の治験や稀ながんや重篤な合併症をもつ患者さんの診療を行っています。名大病院は「臨床研究中核病院」、「がんゲノム医療中核拠点病院」に選定されており、それらの関連事業においても化学療法部は重要な役割を果たしています。昨年度から開始されている文部科学省「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン(がんプロ)」では、がん医療を担う大学院生や専門医療人材の養成に取り組んでいます。毎朝行われる多職種カンファレンス同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力外来化学療法室では、小児から高齢者まで外来で抗がん薬の点滴投与を受けるすべての患者さんに対応しています。殺細胞性抗がん薬はもちろん、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など臓器横断的に使用されるレジメンが増える中で、多彩な副作用をうまくコントロールすることが求められています。担当医だけでなく、今までがん医療と関連が少なかった分野の専門医や多職種との連携、地域との連携など院内外でのチーム医療が重要です。腫瘍内科学のオンザジョブトレーニングを通して科学的で適切ながん薬物療法を実践できる環境です。外来化学療法室での処置医局の雰囲気、魅力医局では大学院生から医員、教員まで、多様なバックグラウンドをお互いに尊重しながらそれぞれの特色を活かした診療や学術活動を行っています。今後のキャリアパスを考える上で、ロールモデルを見つけることもできますし、迷いが生じた時にはさまざまな経験に基づいたアドバイスを得ることが可能です。これまでの経歴大学卒業後、市中病院で初期研修を行いました。研修終了後の進路として腫瘍に加え、アレルギー、感染など多様な分野が含まれるという理由で呼吸器内科を選択しました。各分野の疾患の診療を通じて難治である進行肺がんの化学療法、中でも分子標的薬に興味を持ち、がん薬物療法専門医を取得するとともに、大学院で学びました。このような経歴もあって、現在はがん種横断的にがんゲノム医療に関わり、化学療法部での仕事・診療とともに名大病院のがん遺伝子パネル検査とエキスパートパネルの運営を行っています。今後のキャリアプランがんの性質を知り、がん患者さんの化学薬物療法の選択肢を広げるためのがんゲノム医療は、2019年の保険診療開始から常に状況が変化しています。がんゲノム医療を多くの患者さんに届け、また名大病院内や地域のがんゲノム医療の普及のための活動、研究を続けたいと考えています。これまでの経歴初期研修を終えたのち、大学院入学とともに入局しました。基礎と臨床の両方を学ぶため、横断的ながん薬物療法の臨床経験を積みながらがん薬物療法専門医を取得する一方で、腫瘍病理学でがんの間質に多く存在するがん関連線維芽細胞に注目し、これらが免疫治療の効果にどう影響するかについての基礎研究にも励んでいます。現在学んでいること治療法の最新動向の把握や有害事象への対応法だけでなく、腫瘍学以外の分野も含めて幅広い知識を日頃から学んでいます。最近は、定量的解析手法の習得に注力しています。具体的には、大規模オミクスデータを解析する手法や高度な統計手法を学び、実際に臨床データや実験データの高精度な解析に応用しています。今後のキャリアプラン海外留学など異なる文化圏での仕事や、他分野の研究者と接することで、視野を広げたいと考えています。この過程で目標が変わる可能性もありますが、現時点では、まだ治療法が少ない、あるいは治療薬開発への機運が乏しい、稀な悪性腫瘍の治療実績の改善に貢献できる医師・医学研究者となることを目指しています。名古屋大学医学部 化学療法学(附属病院化学療法部)住所〒466-8560 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65問い合わせ先chemo-sec@med.nagoya-u.ac.jp医局ホームページ名古屋大学医学部附属病院化学療法部専門医取得実績のある学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本人類遺伝学会日本内科学会 など研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な臨床腫瘍学のトレーニングが可能(2)がん薬物療法学、緩和ケア、ゲノム医療、トランスレーショナルリサーチなど多様な領域の研修・研究が可能名古屋大学医学部附属病院化学療法部【動画】

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食道がんの術前化学療法前のZn濃度、早期再発に影響

 国立がん研究センター中央病院の久保 祐人氏らは、術前化学療法を受ける食道がん患者において、術前の血清亜鉛(Zn)低値が食道がんの早期再発に悪影響を及ぼすことを明らかにし、術前にZnが欠乏している食道がん患者にはZn補給を行う必要があることを示唆した。Annals of Gastroenterological Surgery誌2024年7月号掲載の報告。 本研究では、2017年8月~2021年2月に術前化学療法後に完全切除(R0切除)が施行された食道がん患者185例を対象に、術前の血清Zn値と臨床転帰の関係を遡及調査した。 主な結果は以下のとおり・対象患者は術前の血清Zn濃度の平均に基づき、低Zn群(64μg/dL未満)と高Zn群(64μg/dL以上)に分けられた。・低Zn群では全生存期間(OS)が有意に短く、低Zn群と高Zn群の2年OS率は76.2% vs.83.3%(p=0.044)だった。・ノンレスポンダー(Grade1a以下)の低Znは、無再発生存期間(RFS)の短縮と有意に関連し、低Zn群と高Zn群の術後2年RFS率は39.6% vs.64.1%(p=0.032)であった。・多変量解析の結果、術前栄養指標のうちBMIと血清Zn濃度の低さが、ノンレスポンダーのRFS悪化の独立した危険因子であることが明らかになった。・レスポンダーと比較し、ノンレスポンダーには男性とパフォーマンスステータス1以上が有意に多く、レスポンダーでは血清Zn濃度に差はなかった。 研究者らは「術前血清Zn濃度は食道がん手術後の早期再発の予測マーカーとして役立つ可能性がある」としている。

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tisotumab vedotin、再発子宮頸がんの2次・3次治療に有効/NEJM

 再発子宮頸がんの2次または3次治療において、化学療法と比較してtisotumab vedotin(組織因子を標的とするモノクローナル抗体と微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンEの抗体薬物複合体)は、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現はないことが、ベルギー・Universitaire Ziekenhuizen LeuvenのIgnace Vergote氏らが実施した「innovaTV 301/ENGOT-cx12/GOG-3057試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年7月4日号で報告された。27ヵ国168施設の無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む27ヵ国168施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、前治療後に病勢が進行した再発子宮頸がん患者におけるtisotumab vedotinの有効性と安全性の評価を目的に行われた(GenmabとSeagenの助成を受けた)。 再発または転移を有する子宮頸がんと診断され、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusのスコアが0または1の患者502例(年齢中央値50歳[範囲:26~80]、前治療ライン数は1が61.4%、2が38.4%)を登録した。 tisotumab vedotin単剤(2.0mg/kg体重、3週ごと)の静脈内投与を受ける群に253例、担当医が選択した化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセドのいずれか)を受ける群に249例を無作為に割り付けた。奏効率も有意に優れる 前治療薬として、全体の63.9%がベバシズマブの投与を、27.5%が抗PD-1または抗PD-L1抗体製剤の投与を受けていた。 主要評価項目であるOS中央値は、化学療法群が9.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.9~10.7)であったのに対し、tisotumab vedotin群は11.5ヵ月(9.8~14.9)と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.54~0.89、両側p=0.004)。 12ヵ月時のOS率は、tisotumab vedotin群が48.7%(95%CI:41.0~55.8)、化学療法群は35.3%(28.0~42.7)であった。 PFS中央値は、化学療法群が2.9ヵ月(95%CI:2.6~3.1)であったのに比べ、tisotumab vedotin群は4.2ヵ月(4.0~4.4)と有意に優れた(HR:0.67、95%CI:0.54~0.82、両側p<0.001)。 また、確定された奏効の割合は、化学療法群の5.2%と比較して、tisotumab vedotin群は17.8%と有意に高率だった(オッズ比:4.0、95%CI:2.1~7.6、両側p<0.001)。毒性による投与中止は14.8% 初回投与の1日目から最終投与後30日までに有害事象が1件以上発現した患者の割合は、tisotumab vedotin群が98.4%、化学療法群は99.2%であり、Grade3以上の有害事象は、それぞれ52.0%および62.3%で発現した。tisotumab vedotin群では、14.8%の患者が毒性により投与を中止した。 とくに注目すべき有害事象では、眼イベントがtisotumab vedotin群で52.8%、化学療法群で6.3%に発現し、このうちGrade3以上はそれぞれ4.0%および0%であった。また、末梢神経障害イベントはそれぞれ38.4%および4.2%、Grade3以上は5.6%および0.4%に、出血イベントは42.0%および14.2%、Grade3以上は2.4%および2.9%に発現した。 著者は、「これらのデータを総合すると、tisotumab vedotinは、再発子宮頸がん患者の治療において化学療法よりも優先される2次または3次治療の選択肢となる可能性が示唆される」としている。

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ASCO2024 レポート 乳がん

レポーター紹介2024年5月31日~6月4日まで5日間にわたり、ASCO2024がハイブリッド形式で開催された。昨年も人が戻ってきている感じはあったが、会場の雰囲気はコロナ流行前と変わりなくなっていた。一方、日本からの参加者は若干少なかったように思われる。これは航空運賃の高騰に加えて、円安の影響が大きいと思われる(今回私が行ったときは1ドル160円!! 奮発した150ドルのステーキがなんと24,000円に…。来年は費用面で行けない可能性も出てきました…)。さて、本題に戻ると、今回のASCOのテーマは“The Art and Science of Cancer Care:From Comfort to Cure”であった。乳がんの演題は日本の臨床に大きなインパクトを与えるものが大きく、とくにPlenary sessionの前に1演題のためだけに独立して行われたセッションで発表されたDESTINY-Breast06試験は早朝7:30のセッションにもかかわらず、満席であった。日本からは乳がんのオーラルが2演題あり、日本の実力も垣間見ることとなった。本稿では、日本からの演題も含めて5題を概説する。DESTINY-Breast06試験トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)は日本で開発が開始され、現在グローバルで最も使われている抗体薬物複合体(ADC)の1つと言っても過言ではない。乳がんではHER2陽性乳がんで開発され、現在はHER2低発現乳がんにおける2次化学療法としてのエビデンスに基づいて適応拡大されている。20年近く乳がんの世界で用いられてきたサブタイプの概念を大きく変えることになった薬剤である。T-DXdのHER2低発現乳がんの1次化学療法としての有効性を検証したのがDESTINY-Breast06(DB-06)試験である。この試験では、ホルモン受容体陽性HER2低発現の乳がんにおいて、T-DXdの主治医選択化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)における優越性が検証された。この試験のもう1つの大きな特徴は、HER2超低発現(ultra-low)の乳がんに対する有効性についても探索的に検討したことである。HER2超低発現とは、これまで免疫組織化学染色においてHER2 0と診断されてきた腫瘍のうち、わずかでもHER2染色があるものを指す。本試験では866例(うちHER2低発現713例、超低発現が152例)の患者がT-DXdと主治医選択治療(TPC)に1:1に割り付けられた。主要評価項目はHER2低発現におけるPFSで13.2ヵ月 vs. 8.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.51~0.74、p<0.0001)とT-DXd群の優越性が示された。ITT集団においても同様の傾向であった。HER2超低発現の集団については探索的項目であるが、PFSは13.2ヵ月 vs.8.3ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.50~1.21)とHER2低発現の集団と遜色ない結果であった。一方、全生存期間(OS)についてはHER2低発現でHR:0.83、HER2超低発現でHR:0.75であり、いずれも有意差はつかなかった。有害事象は既知のとおりであるが、薬剤性肺障害(ILD)はany gradeで11.3%であった。2次化学療法の試験であるDESTINY-Breast 04試験ではOSの優越性も示されているため、OSの優越性が示されていない状況で毒性の強い薬剤をより早いラインで使うかどうかは議論が必要であろう。また、HER2超低発現の病理評価の標準化についても課題が残される。postMONARCH試験こちらも待望の試験である。日本国内で使えるCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブのbeyond PD(progressive disease)を証明した初の試験である。これまでMAINTAIN試験で(phase2ではあるが)、CDK4/6阻害薬の治療後のribociclibの有効性が示されていたが、ribociclibは日本国内では未承認なため、エビデンスを活用することができなかった。postMONARCH試験では、転移乳がん、もしくは術後治療としてホルモン療法(転移乳がんはAI剤)とCDK4/6阻害薬を使用後にPDもしくは再発となった368例の患者を対象に、フルベストラント+アベマシクリブ/プラセボに1:1に割り付けられた。術後CDK4/6阻害薬後の再発が適格となっていたが残念ながら全体で2例のみであり、プラクティスへの参考にはならなかった。前治療のCDK4/6阻害薬はパルボシクリブが60%と最も多く、ついでribociclibで、アベマシクリブは両群とも8%含まれた。主要評価項目は主治医判断のPFSで、6.0ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.73、95%CI :0.57~0.95、p=0.02)とアベマシクリブ群で良好であった。盲検化PFSが副次評価項目に設定されていたが、面白いことに12.9ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.55、95%CI:0.39~0.77、p=0.0004)と主治医判断よりも良い結果となった。有害事象はこれまでの臨床試験と変わりはなかった。この試験の結果をもって、自信を持ってホルモン療法の2次治療としてフルベストラント+アベマシクリブを実施できるようになったと言える。JBCRG-06/EMERALD試験さて、日本からの試験も紹介する。研究代表者である神奈川県立がんセンターの山下 年成先生が口演された。本試験はHER2陽性転移乳がんの初回治療として、標準治療であるトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(HPT)療法に対して、トラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン療法が非劣性であることを証明した。446例の患者が登録され、1:1に割り付けられた。ホルモン受容体は60%が陽性であり、PSは80%以上が0であった。初発StageIVが60%を占めていた。主要評価項目のPFSはHPT群12.9ヵ月 vs.エリブリン群14.0ヵ月(HR:0.95、95%CI:0.76~1.19、p=0.6817)で非劣性マージンの1.33を下回り、エリブリン群の非劣性が示された。化学療法併用期間の中央値はエリブリン群が28.1週、HPT群は約20週であり、エリブリン群で長かった。OSもHR:1.09(95%CI:0.76~1.58、p=0.7258)と両群間の差を認めなかった。毒性については末梢神経障害がエリブリン群で61.2% vs. HPT群で52.8%(G3に限ると9.8% vs.4.1%)と、エリブリン群で多かった。治療期間が長いことの影響があると思われるが、less toxic newと言ってよいかどうかは悩ましいところである。HER2陽性乳がんにおけるエリブリン併用療法は1つの標準治療になったと言えるが、実臨床での使用はタキサンアレルギーの症例などに限られるかもしれない。ER低発現乳がんにおける術後ホルモン療法こちらはデータベースを使った後ろ向き研究であり臨床試験ではないが、実臨床の疑問に重要なものであるため取り上げる。米国のがんデータベースからStageI~IIIでER 1~10%の症例を抽出し、術後ホルモン療法の実施率と予後を検討したものである。データベースから7,018例の対象症例が抽出され、42%の症例が術後ホルモン療法を省略されていた。ホルモン療法実施群と非実施群におけるOSは3年OSが92.3% vs.89.1%であり、HR:1.25、95%CI:1.05~1.48、p=0.01と実施群で良い傾向にあった。後ろ向き研究ではあるが、ER低発現であっても術後ホルモン療法に意義がある可能性が提示されたことは、今後の術後治療の選択にとって重要な情報である。PRO-DUCE試験最後に日本からのもう1つの口演であるPRO-DUCE試験を紹介する。これは治療薬の臨床試験ではなく、ePROが患者のQOLに影響するかを検証した試験である。関西医科大学の木川 雄一郎先生によって発表された。本試験はT-DXdによる治療を受ける患者を対象として、ePRO+SpO2/体温の介入が通常ケアと比較してQOLに影響するかを比較した。主要評価項目はベースラインから治療開始24週後のEORTC QLQ-C30を用いたglobal health scoreの変化であり、ePRO群では-2.4、通常ケア群では-10.4であり、両群間の差は8.0(90%CI:0.2~15.8、p=0.091)と統計学的に有意にePRO群で良好であった。その他の項目では倦怠感はePRO群で良好であったが、悪心/嘔吐は両群間の差は認めなかった。この研究は日本から乳がんにおいてePROが有効であることを示した初の試験である。ePROは世界的にも必須のものとなっており、今後の発展が期待される。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、amivantamab+lazertinibがPFS延長/NEJM

 未治療の上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、標準治療であるオシメルチニブ(第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬[TKI])と比較して、amivantamab(EGFRと間葉上皮転換因子[MET]を標的とする二重特異性抗体)+lazertinib(活性化EGFR変異とT790M変異を標的とする第3世代EGFR-TKI)の併用療法は、無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性のデータは既報の第I、II相試験と一致することが、韓国・延世大学校医科大学のByoung C. Cho氏らMARIPOSA Investigatorsが実施した「MARIPOSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月26日号に掲載された。実薬対照の国際的な無作為化第III相試験 MARIPOSA試験は、amivantamab+lazertinib併用療法の有効性と安全性の評価を目的とする日本を含む国際的な無作為化第III相試験であり、2020年11月~2022年5月に参加者の無作為化を行った(Janssen Research and Developmentの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、未治療の局所進行または転移を有するEGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失またはL858R)NSCLC患者1,074例を登録し、amivantamab+lazertinib群(非盲検)に429例(年齢中央値64歳、女性64%)、オシメルチニブ群(盲検)に429例(63歳、59%)、lazertinib群(盲検)に216例を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、オシメルチニブ群との比較におけるamivantamab+lazertinib群のPFSとし、盲検下独立中央判定による評価が行われた。中間解析でのOSは評価不能 全体の追跡期間中央値は22.0ヵ月で、投与期間中央値はamivantamab+lazertinib群18.5ヵ月、オシメルチニブ群18.0ヵ月であった。 PFS中央値は、オシメルチニブ群が16.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.8~18.5)であったのに対し、amivantamab+lazertinib群は23.7ヵ月(19.1~27.7)と有意に長かった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.58~0.85、p<0.001)。lazertinib群のPFS中央値は18.5ヵ月(95%CI:14.8~20.1)だった。 また、奏効率は、amivantamab+lazertinib群が86%(95%CI:83~89)、オシメルチニブ群は85%(81~88)であった。奏効期間中央値は、それぞれ25.8ヵ月(95%CI:20.1~評価不能)および16.8ヵ月(14.8~18.5)だった。 一方、予定された中間解析における全生存期間(OS)中央値は両群とも未到達であり、死亡のHRは0.80(95%CI:0.61~1.05)であった。EGFR阻害関連の有害事象が多い 主な有害事象はEGFR阻害関連の毒性作用であり、爪囲炎がamivantamab+lazertinib群の68%、オシメルチニブ群の28%で、皮疹がそれぞれ62%および31%で発現した。注入に伴う反応(infusion-related reaction)は、amivantamab+lazertinib群の63%に認め、その大部分はサイクル1の1日目に発生した。 Grade3以上の有害事象は、amivantamab+lazertinib群が75%、オシメルチニブ群が43%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ49%および33%で発現した。治療関連有害事象によるすべての試験薬の投与中止は、amivantamab+lazertinib群が10%、オシメルチニブ群は3%に認め、死亡の原因となった有害事象はそれぞれ34例(8%)および31例(7%)で発現した。 著者は、「amivantamabをlazertinibと併用する科学的根拠は、オシメルチニブに対する腫瘍の耐性機序への積極的な対処法となることであった。この併用療法には、化学療法を後の治療ラインに温存できるという利点もある」と述べ、また「治療関連有害事象によるすべての試験薬の投与中止の頻度は低く、ほとんどの患者が治療を継続できることが示唆された」としている。

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ASCO2024 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介昨今、ASCOで老年腫瘍に関する重要な臨床研究の結果が発表されるようになった。高齢がん患者を対象とする臨床研究の枠組みとしては、(1)高齢がん患者を対象とした治療開発(特定の治療の有用性を検証)に関する臨床試験、(2)特定の因子、とくに高齢者機能評価が予後因子になるか否かを評価する臨床研究、(3)「高齢者機能評価+脆弱性に対するサポート」の有用性を評価する臨床試験に大別されるだろう。ASCO2024では、それぞれの枠組みの中で、日常診療の参考になる臨床研究が多数発表されていた。その中から、興味深い研究を紹介する。転移性膵がんを患う「脆弱な」高齢者を対象としたランダム化比較試験(GIANT study: #40031))近年、高齢者という集団は不均一であり、暦年齢だけで治療方針を決めるべきではない、という認識が浸透しつつあるように思う。とくに欧州では、高齢者という集団を全身状態の良いほうから順番に、fit、vulnerable、frailに分類するという考え方が提唱されている。すなわち、“fit”は、積極的ながん治療の恩恵を受けられるような全身状態の良い患者、“frail”はベストサポーティブケアの適応となるような全身状態の悪い患者、“vulnerable”は、その中間に位置することが提唱されている2)。しかし、それぞれの分類の線引きは定まっておらず、がん種ごと、病態ごとに定義が異なっているのが現状である。米国のECOG-ACRINグループが実施したGIANT試験は、“vulnerable”な高齢者を独自に定義し、GEM+nab-PTX vs.5FU/LV+nal-IRIの有用性を比較したランダム化比較第II相試験である。70歳以上、転移性膵管腺がんを有する、ECOG-PS:0~2かつ高齢者機能評価(生活機能、併存症、認知機能、暦年齢、老年症候群[転倒、失禁])の結果で“vulnerable”な高齢者と判断された患者が本試験に登録された(表1)。登録患者は、ゲムシタビン(1,000mg/m2)とナブパクリタキセル(125mg/m2)を14日ごとに投与するA群および5-フルオロウラシル(2,400mg/m2)、ロイコボリン(400mg/m2)、リポソームイリノテカン(50mg/m2)を14日ごとに投与するB群に無作為に割り付けられた。Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは、無増悪生存期間、奏効割合、有害事象などであった。A群の生存期間中央値を7.7ヵ月、B群を10.7ヵ月(HR:0.72)、片側α:0.10、検出力80%とした場合、予定登録患者数は184例であった。本試験は想定よりも予後が悪すぎたため、第1回目の中間解析で無効中止となった。92施設から176例の患者が登録され、年齢中央値は両群とも77歳。登録はしたものの治療を開始できなかった患者はA群で10.2%、B群で14.8%、1~3コースしか治療ができなかった患者はA群で34.2%、B群で42.7%であった。全生存期間は、A群で4.7ヵ月、B群で4.4ヵ月(HR:1.12、0.76~1.66、p=0.72)であり、無増悪生存期間はA群3.0ヵ月、B群2.4ヵ月であった。Grade3以上の有害事象発生割合は、A群45.6%、B群58.7%であった。残念ながら早期中止となってしまったが、“vulnerable”な高齢者を対象として治療開発を試みた意欲的な試験である。高齢者機能評価を用いて高齢者を分類するという手法を用いた臨床試験は過去にも複数存在3)するが、このタイプの臨床試験では試験結果がnegativeになった場合、「試験治療が適切なのか」という問題以外にも、「そもそも高齢者機能評価を用いた分類方法が適切なのか」という問題がつきまとう。本試験の場合、両群で治療強度を弱め過ぎたのかもしれないという問題と、本試験で定義した“vulnerable”という分類方法が適切ではなかったのではないかという問題が生じる。治療が開始できなかった患者や治療期間が極端に短かった患者が多かったことを踏まえると、本試験で定義した“vulnerable”の大部分が本当は“frail”なのではないかという疑問を持ってしまう。患者の大多数は、認知機能障害(46%)、暦年齢が80歳以上(36%)、併存疾患(31.4%)により“vulnerable”と判断されており、これらの患者は、より慎重に化学療法を実施、またはベストサポーティブケアを提案してもよいのかもしれない。一方、サブグループ解析では、75歳以上と75歳未満の集団の生存曲線に大きな違いはなかったため、やはり暦年齢だけで治療方法を決めるのは避けるべきなのだろう。本試験は早期中止となり、また“vulnerable”な高齢者を定義することの難しさを改めて知ることになったが、このような意欲的な試験のデータが蓄積されていくことで、より適切な集団を設定することができ、その集団に適切な治療を提供できるようになると考えている。画像を拡大する日本発の高齢者機能評価+介入のランダム化比較試験の副次的解析(NEJ041/CS-Lung001: #15024))“vulnerable”な高齢者をどう定義するのか、という議論は以前からある。生理的予備能が乏しい高齢者が全身化学療法などで重篤な有害事象が生じると全身状態が悪化することが予想されるため、重篤な有害事象が生じうる集団を“vulnerable”な高齢者とするという考え方もある。化学療法の毒性を予測するツールで有名なものとして、米国の高齢がん研究グループ(Cancer and Aging Research Group:CARG)が作成したChemo Toxicity Calculator(以下、CARGスコア)がある。CARGスコアは簡単な11項目(年齢、がんの種類、予定されている化学療法の投与量、予定されている化学療法の薬剤数、ヘモグロビン、クレアチニンクリアランス、聴力、転倒、服薬管理、身体活動、社会活動)を評価するだけでGrade3以上の有害事象の出現頻度を予測できるとされている5,6)。CARGスコアは米国では妥当性が検証されており、また正式な手順で翻訳されたCARGスコア日本語版があるため日本でも使用しやすいツールである(当該URLのlanguageをJapaneseにすれば日本語になる)7)。しかし、日本人での有用性が評価されていないこと、また分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などは予測式を作成する際の対象集団に含まれていなかったことから、その使用には注意が必要であるとされていた。今回、日本発の高齢者機能評価+介入のランダム化比較試験の副次的解析の中で、日本人におけるCARGスコアの有用性が評価された。NEJ041/CS-Lung001は、非小細胞肺がんを患う75歳以上の患者を対象とした、高齢者機能評価+介入の患者満足度における有用性を評価したクラスターランダム化比較試験であり、主たる解析の結果はASCO2023で報告された。1,021例が登録され、そのうち911例がCARGスコアで評価された。CARGスコアは19点満点であり、0~5点を「低い」、6~9点を「中間」、10~19点を「高い」とした場合、米国のデータでは、それぞれのカテゴリーとGrade3以上の有害事象の発生割合に関連がみられたため、CARGスコアは重篤な有害事象を予測できるという結論に至ったが、今回の日本人データではそれらに関連がみられなかった。また、CARGスコアの対象外とされていた分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を受けている集団でもCARGスコアの有用性を評価したものの、いずれもCARGスコアのカテゴリーと重篤な有害事象に明らかな関連はみられなかった。欧米のKey opinion leaderが提唱しているツールをそのまま日本に流用することなく、日本人データで妥当性を検証し、日本人でのCARGスコアの有用性をきちんと否定するという重要な研究である。CARGスコアの日本語版はCARGのホームページに掲載してもらっているのだが、日本人でも毒性を予測できるか否かの評価がされていなかったため、研究目的以外でのCARGスコアの使用は推奨してこなかった。今回、副次的解析ではあるものの、日本人ではCARGスコアの有用性が示せなかったことは、臨床上重要である。ただし、欧米でもCARGスコアは絶対的なツールではない。実際、「全がん種」を対象として生まれたCARGスコアでは予測精度が低いという理由で、「乳がん」に特化した予測ツールCARG-BC(Breast Cancer)が作成されている8)。このように、それぞれのがん種、人種に特化した予測ツールが望まれており、今後、日本独自の毒性予測ツールが求められる。『高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療』モデルの費用対効果分析(#15099))欧米の老年腫瘍ガイドラインでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)を実施するのは当然であり、「高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」、いわゆるGeriatric Assessment and Management (GAM)の実施までもが推奨されるようになった。これは、世界中で「高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の有用性を検証するランダム化比較試験が公表されたためである。ただ、それぞれの試験におけるGAMの診療モデルはまったく異なるため、どの診療モデルが最適なのかはわかっていない。このため今回、GAMの有用性を検証したpivotal study 4試験のデータを基に、費用対効果分析が行われた(表2)。これらの試験のGAMモデルを概説すると、(1)The 5C試験は「老年医学の訓練を受けたチームによる電話を用いてフォローアップするモデル」10)、(2)GAIN試験は「老年医学の訓練を受けたチームによる脆弱な部分をサポートする方法を提示するモデル」11)、(3) GAP70+試験は「老年医学の訓練を受けたチームがいない状態でのGA実施および脆弱な部分をサポートする方法を提示するモデル」12)、(4)INTEGERATE試験は「適宜、老年科医にコンサルトしながら診療を行うモデル」13)である。本試験はカナダの研究者が実施したため、カナダの医療費をベースとして、さまざまなシナリオの下でそれぞれの試験における12ヵ月以内の、がん薬物療法に伴う費用、有害事象に伴う費用、入院/救急外来受診に伴う費用、GAM実施に伴う費用を推定し、質調整生存年(Quality-adjusted life years:QALY)当たりの医療費および増分純金銭便益(incremental monetary benefit、INMB)を計算した(INMB=[λ*ΔQALY]-ΔCosts、閾値は50,000ドル)。患者当たりの平均QALYはGAM群で0.577~0.662、通常診療群(GAMを実施しない通常診療)で0.606~0.665、平均総費用は、GAM群で3万1,234~3万9,432ドル、通常診療群で2万9,261~4万1,756ドルであった。がん薬物療法の費用は総費用の46~66%を占めていた。INTEGERATE試験およびGAP70+試験では、INMBが3,975ドルおよび1,383ドルと正の値だったが、GAIN試験、The 5C試験では、INMBの値がそれぞれ-3,492ドル、-2,125ドルと負の値であった。INTEGERATE試験の診療モデル(適宜、老年科医にコンサルトしながら診療を行うモデル)は最も高価なモデルであったが、入院の減少(GAM群での入院/救急外来受診割合:26.6%、通常診療群:40.2%)により費用対効果が良好になったと考察されている。結果の解釈には慎重になる必要がある研究である。すなわち、12ヵ月のみのデータであること、カナダの医療費を基に計算されたものであること、入院/救急外来受診のしやすさは環境によって変わりうることなど、多くのlimitationがある。しかし、それぞれの診療モデルの一長一短は推察できるため、どの診療モデルが自施設に適していそうかの考察には使えると考えている。欧米の老年腫瘍ガイドラインがGAMを推奨しており、また日本老年医学会が発刊した『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』でも悪性腫瘍を患う患者に高齢者総合機能評価(ほぼGAMと同じ意味)は推奨しているが、これらガイドラインはGAMを推奨しているにもかかわらず、具体的にどのようなモデルを用いればよいかは提示していない。日本では現状、がん治療に携わる老年科医が少ないため、「老年医学の訓練を受けたチームがいない状態でのGA実施および脆弱な部分をサポートする方法を提示するモデル」、すなわちGAP70+モデルが費用対効果の意味でも適しているのかもしれない。しかし、将来的には老年科医と協働して高齢がん患者の診療を進めてゆける環境がつくられることを祈っている。画像を拡大する参考1)Dotan E, et al. A randomized phase II study of gemcitabine and nab-paclitaxel compared with 5-fluorouracil, leucovorin, and liposomal irinotecan in older patients with treatment-naive metastatic pancreatic cancer (GIANT): ECOG-ACRIN EA2186.J Clin Oncol.2024;42:s4002)Ferrat E, et al. Performance of Four Frailty Classifications in Older Patients With Cancer: Prospective Elderly Cancer Patients Cohort Study. J Clin Oncol. 2017;35:766-777.3)Corre R, et al. Use of a Comprehensive Geriatric Assessment for the Management of Elderly Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer: The Phase III Randomized ESOGIA-GFPC-GECP 08-02 Study. J Clin Oncol. 2016;34:1476-1483.4)Furuya N, et al. Geriatric assessment in older patients with non-small cell lung cancer: Insights from a cluster-randomized, phase III trial―ENSURE-GA study (NEJ041/CS-Lung001).J Clin Oncol.2024.42:s15025)Hurria A, et al. Predicting chemotherapy toxicity in older adults with cancer: a prospective multicenter study. J Clin Oncol. 2011;29:3457-3465.6)Hurria A, et al. Validation of a Prediction Tool for Chemotherapy Toxicity in Older Adults With Cancer. J Clin Oncol. 2016;34:2366-2371.7)Cancer and Aging Research Group, Chemo-Toxicity Calculator.8)Magnuson A, et al. Development and Valida39tion of a Risk Tool for Predicting Severe Toxicity in Older Adults Receiving Chemotherapy for Early-Stage Breast Cancer. J Clin Oncol. 2021;39:608-618.9)Selai A, et al.Cost-utility of geriatric assessment (GA) in older adults with cancer: A model-based economic evaluation of four randomized controlled trials (RCTs). J Clin Oncol.2024;42.16:s150910)Puts M , et al. Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study. 2021. J Geriatr Oncol. 2021;12:s40.11)Li D, et al. Geriatric Assessment-Driven Intervention (GAIN) on Chemotherapy-Related Toxic Effects in Older Adults With Cancer: A Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol.2021;7:e214158.12)Mohile SG, et al. et al. Evaluation of geriatric assessment and management on the toxic effects of cancer treatment (GAP70+): a cluster-randomised study. Lance. 2021;398:1894-904.13)Soo WK, et al. Integrated Geriatric Assessment and Treatment Effectiveness (INTEGERATE) in older people with cancer starting systemic anticancer treatment in Australia: a multicentre, open-label, randomised controlled trial.Lancet Healthy Longev. 2022;3:e617-e627.

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新たながん治療で高まる医療者全体の教育ニーズ ゾルベツキシマブで勉強会/WJOG

 新たながん治療の登場は新たな有害事象(AE)との遭遇とも言える。認定NPO法人西日本がん研究機構(WJOG)では、継続的に全医療者を対象とした学習機会を設けている。7月には2024年5月に承認されたゾルベツキシマブを速やかに臨床現場に導入するためのグループワークを実施する。WJOG教育広報委員会副委員長で恵佑会札幌病院腫瘍内科の川上 賢太郎氏に聞いた。新薬の登場は未経験の有害事象との出合い 川上氏は、「分子標的薬の登場で、消化器がん領域では従来の殺細胞性抗がん剤では経験のないAEを経験した」と言う。 2010年大腸がんのKRAS検査が保険適用となり抗EGFR抗体が臨床で使われるようになる。その際、皮膚障害などの新たなAEに遭遇する。皮膚の乾燥、発疹、爪囲炎など消化器科医にとっては「まったく経験したことのない有害事象」だったと振り返る。 近年、消化器がん領域に免疫チェックポイント薬(ICI)が保険適用となる。ICIもまた、消化器科医にとって未知のAEをもたらした。「ICIはメラノーマや肺がんが先行していたので、皮膚科医や肺がん治療医などから使用経験を共有してもらい対応していた」。しかし、「実際に他人ごとから自分ごとになったときに『さあ、どうしよう?』となる。結局自分たちで経験してみないとわからないことも多々ある」と川上氏。医療者全体で対応する 有害事象の対応は医師だけではカバーできない。事前にわかっていれば化学療法委員会やレジメン審査委員会などで看護師、薬剤師など多職種からなるチームで対応策を練る。導入後から対処する場合は、知識や対応経験のあるスタッフによる院内講習会、対応マニュアルなどを作成するが、これは医師だけでは難しい。 また、外来あるいは入院後、患者が帰宅してから起こる有害事象への対応も看護師、薬剤師の協力が必要だ。 川上氏によれば「単純なカルテ記載では拾いきれない事象を拾い上げる」ことが重要である。そのためにも医療者全体で知識を持合い共有する場は欠かせない。消化器がん領域、話題の新薬ゾルベツキシマブでの勉強会を実施 そのような中、WJOGは職種横断的な若手医療者向けセミナーを企画している。2024年7月に取り上げるのが、新規治療薬として注目される抗CLDN18.2抗体ゾルベツキシマブだ。 2024年5月に承認されたゾルベツキシマブは、CLDN18.2陽性切除不能胃がんに対し化学療法併用で有効性を示す。CLDN18.2は多くのがん細胞表面で発現し、幅広いがんターゲットとしても期待される一方、正常の胃粘膜にも発現する。 その影響か、ゾルベツキシマブでは悪心・嘔吐の発現が多い。実際、Pivotal試験であるSPOTLIGHT試験、GLOW試験の2つの第III相試験におけるゾルベツキシマブの悪心・嘔吐発現(全Grade)はそれぞれ89.2%、81.9%と高い。ゾルベツキシマブの悪心・嘔吐の発現は早く、薬剤投与中に起こることもあるという。日本癌治療学会も「ゾルベツキシマブ併用一次化学療法における制吐療法」としてガイドライン速報を出している。 「制吐療法の発達・普及により近年は殺細胞性抗がん剤の悪心・嘔吐はコントロールできているが、ゾルベツキシマブについては従来の方法ではコントロールできない可能性もある」と川上氏は言う。 同セミナーでは対面式のグループワークも含め、「新規治療導入時に解決すべき課題」「多職種で出来る工夫」などを議論する。WJOG2024年多職種の若手で考えるプロジェクト 第2回若手医療従事者向けセミナー多職種で学ぶ!胃がん診療-新規治療導入時のポイント:ゾルベツキシマブ導入について考えよう日時:2024年7月27日(土)場所:東京、品川TKPカンファレンスセンター WJOGイベント参加募集ページ

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局所進行上咽頭がんの1次治療、sintilimab併用は有益か/Lancet

 局所進行の上咽頭がんの1次治療として、化学放射線療法へのsintilimab上乗せは、無イベント生存(EFS)率を改善し、有害事象の発現が増加したが管理可能な範囲のものであったことが、中国・中山大学がんセンターのXu Liu氏らによる第III相多施設共同非盲検並行群間無作為化試験「CONTIUUM試験」で示された。再発または転移のある上咽頭がんでは、抗PD-1療法+化学療法が1次治療として推奨されているが、局所進行の上咽頭がんにおけるPD-1阻害薬の有益性については明らかになっていなかった。Lancet誌2024年6月22日号掲載の報告。中国9病院で無作為化試験、標準化学放射線療法vs.化学放射線療法+sintilimab CONTIUUM試験は、18~65歳の成人で新規に診断された転移のないStageIII~IVaの局所進行上咽頭がん患者(T3-4N0、T3N1は除外)を対象とし、中国の9病院で実施された。 被験者は4ブロック法を用いて無作為に1対1の割合で割り付けられ、ゲムシタビン+シスプラチンの導入化学療法後に、シスプラチン+放射線療法(標準治療)を、または標準治療とsintilimab 200mg静脈内投与3週ごとを12サイクル(放射線療法の導入前3サイクル、併用療法3サイクル、補助療法6サイクル)受けた。 主要評価項目は、ITT集団におけるEFS(無作為化から局所再発または遠隔再発、全死因死亡のいずれかが認められるまでの期間)。副次評価項目は、有害事象などであった。EFSの層別ハザード比0.59 2018年12月21日~2020年3月31日に、患者425例が登録され、sintilimab群(210例)または標準治療群(215例)に無作為化された。 追跡期間中央値41.9ヵ月(四分位範囲[IQR]:38.0~44.8)、主要データカットオフ(2023年2月28日)時点で389例が生存しており、366例(94%)が36ヵ月以上の追跡調査を受けた。sintilimab群は標準治療群と比較してEFS率が高かった(36ヵ月EFS率86%[95%信頼区間[CI]:81~90]vs.76%[70~81]、層別ハザード比[HR]:0.59[95%CI:0.38~0.92]、p=0.019)。 Grade3~4の有害事象は、sintilimab群で155例(74%)、標準治療群では140例(65%)に発現した。最も多くみられたのは、口内炎(68例[33%]、64例[30%])、白血球減少症(54例[26%]、48例[22%])、好中球減少症(50例[24%]、46例[21%])であった。死亡は、sintilimab群2例(1%)(いずれも免疫関連と考えられる)、標準治療群1例(<1%)。sintilimab群では、Grade3~4の免疫関連有害事象が20例(10%)に発現した。 これらの結果を踏まえて著者は、「本治療法が、高リスクの局所進行上咽頭がん患者に対する標準レジメンと見なすことができるかどうかを判断するには、より長期の追跡調査が必要である」とまとめている。

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、QOLの評価(KEYNOTE-522)

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への術前・術後のペムブロリズマブ追加を検討したKEYNOTE-522試験で、主要評価項目の病理学的完全奏効と無イベント生存期間の有意な改善はすでに報告されている。今回、副次評価項目の患者報告アウトカムにおいてペムブロリズマブ追加による実質的な差は認められなかったことを、シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏らがJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2024年6月24日号で報告した。 本試験の対象は、治療歴のない高リスク早期TNBC患者で、術前にペムブロリズマブ(3週ごと)+パクリタキセル+カルボプラチンを4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン(またはエピルビシン)を4サイクル、術後にペムブロリズマブを最長9サイクル投与する群と、術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与する群に2対1に無作為に割り付けられた。事前に規定された副次評価項目のEORTC QLQ-C30およびQLQ-BR23について、ベースライン(術前、術後の1サイクル目の1日目)から、完遂率/コンプライアンス率60%/80%以上であった最後の週までの変化の最小二乗平均の群間差を縦断モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・完遂率/コンプライアンス率が60%/80%以上の最後の週は、術前では21週、術後では24週であった。・術前では、ベースラインから21週目までの変化の最小二乗平均の群間差(ペムブロリズマブ+化学療法[762例]vs.プラセボ+化学療法[383例])は、GHS/QOLが-1.04(95%信頼区間[CI]:-3.46~1.38)、情緒機能が-0.69(同:-3.13~1.75)、身体機能が-2.85(同:-5.11~-0.60)であった。・術後では、ベースラインから24週目までの変化の最小二乗平均の群間差(ペムブロリズマブ[539例]vs.プラセボ[308例])は、GHS/QOLが-0.41(95%CI:-2.60~1.77)、情緒機能が-0.60(同:-2.99~1.79)、身体機能が-1.57(同:-3.36~0.21)であった。

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再発/転移上咽頭がんの1次治療、nab-TPC vs.GC/BMJ

 再発または転移のある上咽頭がんの1次治療において、nab-パクリタキセル+シスプラチン+カペシタビン(nab-TPC)療法はゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法と比較し優れた抗腫瘍効果と良好な安全性プロファイルを示したことを、中国・中山大学がんセンターのGuo-Ying Liu氏らが中国の4施設で実施した第III相無作為化非盲検比較試験の結果で報告した。著者は、「nab-TPC療法は再発または転移のある上咽頭がんに対する1次治療の標準治療と考えるべきであるが、全生存期間(OS)に対する有益性の確認には、より長期間の追跡調査が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年6月19日号掲載の報告。主要評価項目はIRC評価によるPFS 研究グループは2019年9月~2022年8月に、18歳以上で全身性の化学療法による治療歴がない、ECOG PSが0または1の再発または転移のある上咽頭がん患者81例を、nab-TPC群(41例)およびGC群(40例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 nab-TPC群では、1サイクルを3週間としてnab-パクリタキセル200g/m2を1日目に、シスプラチン60mg/m2を1日目、カペシタビン1000mg/m2 1日2回を1~14日目に、最大6サイクル投与し、その後はカペシタビンによる維持療法を病勢進行、許容できない毒性あるいは同意撤回まで最大2年間行った。 GC群では、1サイクルを3週間としてゲムシタビン1g/m2を1日目および8日目に、シスプラチン80mg/m2を1日目に、最大6サイクル投与し、その後はベストサポーティブケアを行った。 主要評価項目は、ITT集団における独立審査委員会(IRC)評価による無増悪生存期間(PFS、無作為化からRECIST v1.1に基づく病勢進行または死亡までの期間)、副次評価項目はOS、奏効率(ORR)および安全性であった。最新解析において、PFSは11.9ヵ月vs.7.6ヵ月、ORRは83% vs.63% 事前に規定された中間解析(2022年10月31日)の結果、追跡期間中央値15.8ヵ月において、IRC評価によるPFS中央値はnab-TPC群11.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.7~12.9)、GC群7.7カ月(6.5~9.0)であり、nab-TPC群で有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.25~0.73、p=0.002)。このことから、独立データモニタリング委員会により試験の早期中止が決定された。 2023年6月3日の最新解析では、IRC評価によるPFS中央値はnab-TPC群11.9ヵ月(95%CI:10.0~13.8)、GC群7.6ヵ月(6.6~8.7)であった(HR:0.39、95%CI:0.24~0.65、p<0.001)。 OSについては、データが未成熟であった。ORRはnab-TPC群83%(34/41例)、GC群63%(25/40例)であり(p=0.05)、奏効期間はそれぞれ10.8ヵ月、6.9ヵ月であった(p=0.009)。 Grade3または4の治療関連有害事象はnab-TPC群よりGC群で高く、主なものは白血球減少症がそれぞれ10%(4/41例)vs.33%(13/40例)(p=0.02)、好中球減少症15%(6/41例)vs.40%(16/40例)(p=0.01)、貧血2%(1/41例)vs.20%(8/40例)(p=0.01)であった。両群とも治療に関連した死亡は報告されなかった。

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ASCO2024 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、1964年の創立以来「がんが予防または治癒されすべてのサバイバーが健康である世界」というビジョンを掲げ活動してきた、がん治療研究のための学会であり、世界各国に5万人近くの会員を有する。年1回の総会は、世界のがん研究者が注目する研究成果が発表される機会であり、2024年は5月31日から6月4日まで米国イリノイ州のシカゴで行われた。COVID-19のまん延があった2020~22年にかけてon-line参加のシステムが整い、現地参加と何ら変わりなく学会参加が可能となったため、今年はon-lineでの参加を選択した。泌尿器科腫瘍の演題は、Oral Abstract Session 18(前立腺9、腎5、膀胱4)、Rapid Oral Abstract Session 18(前立腺8、腎4、膀胱4、陰茎1、副腎1)、Poster Session 112で構成されていた。ASCOはPractice Changingな重要演題をPlenary Sessionとして5演題選出するが、今年は泌尿器カテゴリーからは選出されなかった。Practice Changingな演題ではなかったが、新しい見地を与えてくれる演題が多数あり、ディスカッションは盛り上がっていた。今回はその中から4演題を取り上げ報告する。Oral Abstract Session 腎/膀胱4508 淡明細胞腎がん1次治療のアベルマブ+アキシチニブ、PFSを延長(JAVELIN Renal 101試験)Avelumab + axitinib vs sunitinib in patients (pts) with advanced renal cell carcinoma (aRCC): Final overall survival (OS) analysis from the JAVELIN Renal 101 phase 3 trial.Robert J. Motzer, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NYJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 4508)JAVELIN Renal 101試験は、転移性淡明細胞腎がんにおける1次治療としてアベルマブ+アキシチニブ(AVE+AXI)をスニチニブ(SUN)と比較するランダム化第III相試験であり、無増悪生存期間(PFS)の延長が示され、すでに報告されている。この転移性腎細胞がんにおける1次治療の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の組み合わせは、そのほかにもペムブロリズマブ+レンバチニブ、ニボルマブ+カボザンチニブ、ペムブロリズマブ+アキシチニブがあり、いずれも全生存期間(OS)の延長が報告されているだけに、このAVE+AXIのOS結果も注目されていた。この報告は、フォローアップ期間最小値68ヵ月における最終解析である。プライマリ・エンドポイントは2つ設定され、PD-L1陽性の転移性腎細胞がんにおける中央判定によるPFSとOSである。全体集団における解析はセカンダリ・エンドポイントに設定されていた。PD-L1陽性集団のOS中央値は、SUN 36.2ヵ月、AVE+AXI 43.2ヵ月、ハザード比 (HR):0.86(95%信頼区間[CI]:0.701~1.057、p=0.0755)であり、ネガティブな結果であった。全体集団でのOS中央値は、SUN 38.9ヵ月、AVE+AXI 44.8ヵ月、HR:0.88(95%CI:0.749~1.039、p=0.0669)であり、こちらも有意差なしの結果となった。全体集団のOSのサブグループ解析では、とくに効果不良を示唆する群はないが、IMDCリスク分類のPoorリスクにおいてはSUNとの差は開く傾向(HR:0.63、95%CI:0.43~0.92)があった。有害事象(AE)に関し、Grade3以上の重篤なAEはSUN群61.5%とAVE+AXI群66.8%であったが、AVE+AXIにおける免疫関連有害事象(irAE)は全体で50.7%、重篤なものは14.7%であった。この結果により、ICI+TKI療法のすべての治療成績がそろったことになる。ICI単剤においては、抗Programmed death(PD)-1抗体か抗PD-ligand(L)1かの違いによる影響があるかどうか確かな証拠はないが、抗PD-1抗体のみがOS延長を証明できたことになる。またTKI単剤の比較において、VEGFR(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor)を強く阻害しつつ耐性化にも対応できる新世代のTKIであるカボザンチニブとレンバチニブのレジメンがより良い治療成績を示した。試験間における患者背景の差はあるものの、薬効の違いもICI+TKI療法の効果に影響しているのではないかと感じる。とはいえ、目の前の患者にICI+ICI療法かICI+TKI療法か、いずれを選択するのがベストかの問いに答えられる臨床試験は行われておらず、PFSやOSだけでなく奏効割合や病勢増悪割合、合併症、治療環境なども加味し、患者との話し合いの下で決定していく現状は今後も変わらないだろう。Oral Abstract Session 前立腺/陰茎/精巣LBA5000 去勢抵抗性前立腺がんのカバジタキセル+アビラテロン併用療法はPFSを延長(CHAARTED2試験)Cabazitaxel with abiraterone versus abiraterone alone randomized trial for extensive disease following docetaxel: The CHAARTED2 trial of the ECOG-ACRIN Cancer Research Group (EA8153). Christos Kyriakopoulos, University of Wisconsin Carbone Cancer Center, Madison, WIJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 17; abstr LBA5000)CHAARTED試験は、転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)におけるアンドロゲン除去療法(ADT)に加えUpfrontにドセタキセル(DTX)を6サイクル行うことでOS延長が証明された重要な試験であった。これにより、DTXがアンドロゲン耐性クローンも含め初期に量を減らすことに寄与する、という仮説が立証されたと考えられている。CHAARTED2試験は、初回にDTXが行われた患者に対し、アンドロゲン受容体(AR)阻害薬に加えカバジタキセル(CBZ)をさらに加えることで、AR阻害薬の効果が延長するかを検討するランダム化比較第II相試験であった。3サイクル以上のDTX治療歴があるmCRPC患者を、アビラテロン(ABI)1,000mg+プレドニゾロン(PSL)10mg群とABI+PSLに加えCBZ 25mg/m2 3週ごとを6サイクルまで行う群に1:1でランダム化した。プライマリ・エンドポイントはPFS延長(HR:0.67、α=0.10、β=0.10)と設定された。患者背景は、Gleason score 8~10が83%、High-volumeが76%含まれる集団であり、両群にバランスよく割り付けられていた。PFS中央値は、ABI+PSL群で9.9ヵ月、ABI+PSL+CBZ群で14.9ヵ月、HR:0.73(80%CI:0.59~0.90、p=0.049)と有意差を認めた。セカンダリ・エンドポイントのOSは、HR0.93であり、今回の検討ではアンダーパワーではあるが有意差を認めなかった。AEでは、重篤なものは26.7%と42.2%であり、ABI+PSL+CBZ群で多く報告された。Kyriakopoulos氏は、CBZ追加によるOS延長は認められなかったものの、PFSやPSA(Prostate Specific Antigen)増悪までの期間の延長は認められたことから仮説は証明できたことを報告した。とはいえ、現在のmCSPCの初期治療は3剤併用療法(AR阻害薬+DTX+ADT)であることから、日常診療に与える影響は限られると結んだ。Rapid Oral Abstract Session 前立腺/陰茎/精巣5009 陰茎がん1次治療のペムブロリズマブ併用化学療法(HERCULES試験)A phase II trial of pembrolizumab plus platinum-based chemotherapy as first-line systemic therapy in advanced penile cancer: HERCULES (LACOG 0218) trial.Fernando Cotait Maluf, Hospital Beneficencia Portuguesa de Sao Paulo and Hospital Israelita Albert Einstein; LACOG (Latin American Cooperative Oncology Group), Sao Paulo, BrazilJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 5009)希少がんである進行陰茎がんにおける1次治療の免疫療法追加のエビデンスが報告された。陰茎がんの発生は、アフリカやアジア、中南米などの低所得国に多いことが知られているが、ブラジルで行われた単群第II相試験の結果である。陰茎がんの標準治療として無治療と比較したランダム化試験はないが、プラチナ併用レジメンを基本としている。NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインによると、preferred regimenとして3剤併用のTIP療法(パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン)、other recommended regimenとしてFP療法(5FU+シスプラチン)が提示されている。TIP療法はFP療法と比べると、奏効割合が40%程度と高いが、AEの割合も高く忍容性は問題となることが多い。Maluf氏らは、初発の転移性陰茎がん患者に対し、シスプラチン70mg/m2あるいはカルボプラチンAUC 5 day1と5FU 1,000mg/m2 day1~4に加えペムブロリズマブ200mgを3週間ごとに6サイクル実施後、ペムブロリズマブのみを維持療法として34サイクル実施するレジメンの治療成績を報告した。プライマリ・エンドポイントは奏効割合であり、統計設定は奏効割合期待値40%、閾値20%、両側α=0.1、β=0.215として33症例が必要であると計画された。患者37例が登録され、年齢中央値56歳、白人40.5%が含まれていた。奏効割合は39.4%(95%CI:22.9~57.9%)でありポジティブな結果であった。PFS中央値は5.4ヵ月(95%CI:2.7~7.2)、OS中央値は9.6ヵ月(95%CI:6.4~13.2)であった。サブグループ解析では、TMB(Tumor Mutational Burden)高値(≧10)と低値(<10)の奏効割合は75%と36.4%、HPV-16陽性と陰性では55.6%と35%であり、PD-L1陽性、陰性による一定の傾向はなかった。AEは全Gradeで91.9%、Grade3以上で51.4%であり、治療関連死はなかった。このHERCULES試験により、ペムブロリズマブ+FP療法は転移性陰茎がんの新たな治療オプションとなった、と報告された。日本においてこのレジメンは保険承認が得られず適用は困難だが、陰茎がんが希少がんであることを考慮すると、診断時より遺伝子パネル検査を行うことでICI使用の機会を逃さないよう注意を払う必要がある。Rapid Oral Abstract Session 腎/膀胱4510 尿膜管がん1次治療のmFOLFINOX療法(ULTMA試験)A multicenter phase II study of modified FOLFIRINOX for first-line treatment for advanced urachal cancer (ULTMA; KCSG GU20-03).Jae-Lyun Lee, Asan Medical Center, University of Ulsan College of Medicine, Seoul, South KoreaJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 4510)希少がんの重要なエビデンスとして、膀胱尿膜管がんの単群第II相試験の結果も注目すべき演題の1つである。尿膜管がんは膀胱がんのうち1%未満の発生割合で、標準治療が確立していないがんであるが、病理組織の特徴は消化器がんに類似することから、5FU系、プラチナ系薬剤での治療が適用されることが多く、その有効性が報告されている。Lee氏らは、modified FOLFIRINOXレジメン(オキサリプラチン85mg/m2 day1、イリノテカン150mg/m2 day1、ロイコボリン400mg/m2 day1、5FU 2,400mg day1をそれぞれ2時間、1.5時間、2時間、46時間かけて静注)に、支持療法としてペグフィルグラスチム6mg皮下注を3日目、予防的抗菌薬として少なくとも最初の2サイクルはレボフロキサシン750mgを4~7日目に内服し、2週間を1サイクルとして最大12サイクルまで継続する治療プロトコールを開発し、その治療成績を報告した。プライマリ・エンドポイントは奏効割合であり、期待値35%、閾値17%、α=0.05、β=0.2に設定された。2021年4月~2023年11月の2年7ヵ月間に韓国の5施設で実施した試験であった。患者背景は、年齢中央値50歳(28~68)、PSは0/1がそれぞれ3/18例であった。奏効割合は61.9%(95%CI:41.1~82.7)であり、病勢増悪例は0例であった。PFS中央値は9.3ヵ月(95%CI:6.7~11.9)、OS中央値は19.7ヵ月(95%CI:14.3~25.1)であった。安全性では、Grade 3以上の重篤なものは、貧血2例、好中球減少1例、血小板減少1例、嘔気1例、下痢1例であったが、Grade2の発生は、血小板減少3例、嘔気8例、嘔吐2例、下痢1例、口内炎3例、倦怠感6例、末梢神経障害5例であった。発熱性好中球減少症や治療関連死は認めなかった。演者らは、mFOLFIRINOX療法は膀胱尿膜管がんの新たな治療選択肢として考慮されるべきであると締めくくった。尿膜管がんでも大腸がんと同様に、triplet therapyがdoublet therapyより数値上高い奏効割合を示すことができた試験であったのは、生物学的特性が類似していることを反映すると思われる。また、毒性の強いレジメンに安全性を高める工夫が最大限盛り込まれたプロトコールになっていることで、今回の良い結果を生んだと思われた。この試験の患者背景で特徴的なのは、患者の年齢が若いことと、PS不良例は含まれていないことも重要なポイントである。

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ASCO2024 レポート 肺がん

レポーター紹介2024年のASCOはほぼ現地開催となり、同時にWebでのライブ配信等も充実した、ポストコロナを完全に印象付ける形で実施された。ASCO Lung、Lung ASCOと呼ばれるほど肺がんに関しては当たり年であり、早期緩和ケアをVirtualで実施するか対面で実施するか比較したREACH PC、EGFR遺伝子変異陽性III期非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後のオシメルチニブの意義を検証したLAURA、限局型小細胞肺がんにおいて化学放射線療法後のデュルバルマブの意義を検証したADRIATICの3試験がPlenaryで採択される等、注目演題がめじろ押しであった。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。REACH PC試験2010年のASCOでTemelらが、肺がん患者に対する早期緩和ケア介入が、QOLのみならず生存期間を延長したという驚きの発表を行って以来、早期緩和ケアは肺がん治療のスタンダードとして認識されてきた。ただし、その実施に際しては、医療アクセスの問題、さらに近年はCOVID-19が障壁となっている現状が存在する。そこで、同じグループが実施したのが、進行非小細胞肺がん患者1,250例を対象として、従来の対面の早期緩和ケアを毎月実施することと、VirtualのVideo Visitsによる早期緩和ケアを毎月実施することの、patient-reported measuresへの影響を検証したREACH PC試験をである。米国を中心に実施された本試験は、FACT-Lと呼ばれるQOL指標を主要評価項目として、対面とVideo Visitsが同等であることを検証した。両群で対人、Video Visitsはおおむね遵守されており、双方が併用されていないことも確認されている。結果は明快であり、24週時点で両群のFACT-L指標は同等であることが示され、Video Visitsも早期緩和ケアにおける選択枝の1つであると位置付けられた。今回はまだ初回報告であることから、今後さらなる追加解析の結果が公表される見込みではあるものの、すべての早期緩和ケアをVideo Visitsにすることが妥当ということではなく、どういった場合にVideo Visitsがより有用かについて検討することが必要と、演者も結論付けていた。さらに、米国を中心に実施されたことから、医療環境、医療アクセス、地理的な条件等が大きく異なるわが国ならびに世界各地で同様の結論が得られるのか、解決すべき課題は少なくない。ただ、virtualとrealを併用したコミュニケーションの在り方が今後減少する可能性は乏しく、むしろvirtualをいかに実臨床に活用していくかを検討しよう、というASCOの意図をplenaryセッションでの採択という結果から読み取ることができる。LAURA試験EGFR遺伝子変異陽性の切除不能III期非小細胞肺がんに対して、根治的化学放射線療法後にオシメルチニブを増悪もしくは許容できない毒性が出現するまで続けることで、プラセボ群に対して無増悪生存期間(PFS)における優越性を検証した第III相試験がLAURA試験である。割付調整因子として、根治的放射線治療の同時vs.逐次、IIIA 期vs.IIIB/C期、中国vs.中国以外、が設定されている。216例の患者が2:1でオシメルチニブ群により多く割り付けられた。副次的評価項目として全生存期間(OS)、脳転移無増悪生存期間、安全性等が設定されている。PFSはハザード比0.16、95%信頼区間0.10~0.24で、オシメルチニブを追加することでPFSが有意に延長(39.1ヵ月vs.5.6ヵ月)するという結果であった。24ヵ月時点のPFSの点推定値はオシメルチニブ群で65%、プラセボ群で13%であり、50%以上の上乗せを認めている。とくに、プラセボ群のPFSはEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんと同様の状況であることが強調されていた。プラセボ群では68%に新規病変(増悪)を認めており、29%が脳転移であり、オシメルチニブ群の8%と明白な違いを示していた。同時に発表されたOSは、36ヵ月以降でややオシメルチニブ群が良好な傾向を示しているものの、ハザード比0.81で大きな違いはなかった。プラセボ群で81%がオシメルチニブにクロスオーバーしていることも同時に報告されている。両群でOSイベントが20%程度であることから、まだ未成熟なデータとはいえ、今後追加報告が行われる見込みである。NEJM誌に同時掲載され、会場では大きな拍手が沸き起こった。ADAURA試験よりも、一段階進行しているが、同様に根治を目指すことができる病態において、チロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブの有効性が示されるという、既視感のあるデータであった。ADAURAとの最も大きな違いは、Post-ADAURAともいえる状況で、チロシンキナーゼ阻害薬による地固め療法に対する意見が(現時点では)それほど強く沸き起こっていないところである。確かに、オシメルチニブを増悪もしくは許容できない毒性を認めるまで継続するという治療法は、ディスカッサントもその課題を指摘していた。(1)ADAURA(オシメルチニブ3年)においても、より長いほうがよいのでは、との議論がすでにある状況、(2)ADAURAよりも進行した病状であること、(3)プラセボ群のPFSが進行肺がんを思わせる状況であり進行期同様の治療(増悪まで)が許容されうる!?等の諸点が、ADAURAの結果を初めて見た際とは大きく異なる。ただ、このプラセボ群の成績は、これまでEGFR遺伝子変異陽性III期非小細胞肺がんに対して根治的化学放射線療法を実施した研究結果と比べても悪い印象であり、その点は検証の必要性がありそうである。本試験結果から同対象にオシメルチニブが適応拡大される可能性は高く、実臨床で使用可能となった段階で、最適な対象患者選定、さらには至適使用期間等についてわれわれが検討していく必要があると考えている。ADRIATIC試験臨床病期I~III期、限局型小細胞肺がんを対象として、根治的化学放射線療法後のデュルバルマブ(1,500mg固定用量、4週おき、最大24ヵ月)による地固め療法を、プラセボと比較する第III相試験がADRIATIC試験である。730例が登録され、デュルバルマブ群に264例、プラセボ群に266例、デュルバルマブ+トレメリムマブ群に200例が割り付けられた。今回はデュルバルマブ群とプラセボ群に関する解析が実施され、デュルバルマブ+トレメリムマブ群については次回以降に解析が行われる。割付調整因子は、臨床病期I/II vs.III期、PCIの有無が設定されている。主要評価項目はデュルバルマブとプラセボの比較におけるOSとPFSのCo-primaryとされ、デュルバルマブ+トレメリムマブにおけるOS、PFSはKey secondary endpointと位置付けられている。統計学的設定としては、5%のα(両側検定)を、OSに4.5%、PFSに0.5%使用し、それぞれで優越性が示されればαをリサイクルする予定が設定されている。PFS、OSともに優越性が示され、非の打ちどころのない結果が示された。PFSのハザード比は0.76、95%信頼区間0.61~0.95と有意に試験治療群が良好であり、24ヵ月時点のPFS点推定値は試験治療群で46.2%、プラセボ群で43.2%であった。OSのハザード比は0.73、95%信頼区間0.57~0.93と有意に試験治療群が良好であり、36ヵ月時点のOS点推定値は試験治療群で56.5%、プラセボ群で47.6%であった。IMpower133、CASPIANの両試験により、進展型小細胞肺がんの初回治療に導入された免疫チェックポイント阻害薬が、いよいよ限局型小細胞肺がんの標準治療にも導入され、その有効性は進展型よりも限局型においてより大きい結果であった。同様の傾向は、非小細胞肺がんや、それ以外のがん腫においても繰り返し示されており、Late lineよりもFirst line、進行期よりも早期において免疫チェックポイント阻害薬の意義が大きいことに再現性がある。切除可能小細胞肺がんにおける周術期治療への免疫チェックポイント阻害薬の展開が期待されるところではあるものの、これまで同集団に対して第III相試験を実施し完遂できたのはJCOG1205/1206試験のほかはほぼ存在せず、わが国で小細胞肺がんに対する周術期免疫チェックポイント阻害薬の治療開発が何かしらの形で行われることに期待したい。EVOKE-01試験sacituzumab govitecanは、TROP2を標的とし、ペイロードとしてSN-38をDAR 7.6で搭載した抗体薬物複合体(ADC)である。近年大きな話題となっているADCにおいて、非小細胞肺がんにおいてはTROP2を標的としたDato-DXdが先行しており、昨年のESMOで発表されたTROPION-Lung 01試験においてドセタキセルに対して、とくに非扁平上皮非小細胞肺がんにおいてPFSの優越性を示している。今回、ほぼ同様のセッティングである、進行非小細胞肺がんの2次治療において、sacituzumab govitecanとドセタキセルを比較した第III相試験がEVOKE-01試験である。603例が1:1で登録され、割付調整因子は、扁平上皮がんvs.非扁平上皮がん、前治療での免疫チェックポイント阻害薬がCR/PR vs.SD/PD、ドライバー遺伝子変異(AGA)の有無、が設定された。主要評価項目としてはOSが設定され、PFSが副次評価項目とされた。PFSのハザード比は0.92、95%信頼区間0.71~1.11でドセタキセルに対する優越性は示せなかった。さらに、OSにおいてもハザード比は0.84、95%信頼区間0.68~1.04とsacituzumab govitecanが良い傾向にはあるものの、統計学的な優越性は示せなかった。同じTROP2を標的としたADCによる、ドセタキセルをコントロールとした第III相試験において、TROPION-Lung 01試験とは異なる結果となったことは意外ではあるものの、両試験ともにOSにおいて明白な優越性が示せなかった点は共通している。TROP2は、肺がんを含め多くのがん腫で高頻度に発現していることが報告されていることからADCの良い標的と考えられてきたが、実際の臨床試験で示される有効性はその発現割合とは異なっており、前治療等による蛋白発現への影響が示唆されている。Dato-DXdを用いて、TROP2蛋白発現だけでなくマルチオミックス解析を付加した臨床試験の結果がGustave Roussyでも報告されており、ADCにおいても治療前の標的蛋白の評価の重要性が示唆されている。周術期治療アップデート・追加解析周術期治療に関してもいくつかのアップデート、追加解析の報告が行われている。日本においても1年ほど前に承認された、術前ニボルマブ+化学療法の有効性を評価したCheckMate 816試験の4年アップデート解析が報告された。無イベント生存期間(EFS)は3年時点で53%、4年時点で49%の点推定値が報告され、48ヵ月以降はプラトーに達しているかのような生存曲線であり、引き続き良好な成績であった。OSについても同時にアップデートが報告され、3年時点で77%、4年時点で71%と、コントロール群に比べ明確に良好であるものの、もともとの統計設定でOSの優越性を評価する基準が厳しく、統計学的には優越性を示すことができていない。術前のみのCheckMate 816試験は周術期免疫チェックポイント阻害薬の試験ではむしろマイノリティであり、同じ企業が実施したCheckMate 77T試験を含め、他の試験はほぼ術後免疫チェックポイント阻害薬も実施する試験治療を採用している。CheckMate 77T試験からは、N2リンパ節転移のSingle vs.Multipleで、周術期免疫チェックポイント阻害薬の意義が異なるかを検討したサブグループ解析が報告され、結果としてはMultiple N2であっても周術期ニボルマブの意義は十分に存在するというものであった。N2リンパ節のSingle/Multipleに関する解析が企業治験で実施されることの意義は大きい。Multiple N2でも周術期免疫チェックポイント阻害薬の意義は明白であり、R0切除を目指すことができると判断されている状況であれば、Multiple N2であっても切除を前提とした周術期免疫チェックポイント阻害薬が選択肢となりうることが示された。ADAURA試験からは、ctDNAを用いたMRD解析の結果が報告されている。RaDaRと呼ばれるTissue-InformedのMRD解析が用いられており、MRD解析の意義が示されている。ただ、MRD解析においてポイントとなるランドマーク時点(術後アジュバント前)の解析結果というよりは、モニタリング相におけるMRD陽性から画像診断上の再発までの解析に主眼が置かれており、今後の追加解析に期待したい。抗体医薬品の進歩近年の抗体医薬品の進歩は目を見張るものがある。現時点でその中心はADCだが、今後はBispecific抗体、BiTE等がそこに加わり、より多様な展開を示すことが期待されている。抗体製剤に比較的共通する特徴としてInfusion-related reaction(IRR)があり、その対処を目指した試験がPALOMA-3試験である。amivantamabは開発当初からIRRが課題とされており、IV投与よりも皮下注射のほうがIRRの頻度を低減させられることはすでに知られていた。PALOMA-3試験は、amivantamabとlazertinibの併用療法において、amivantamabのIVと皮下注射の有効性と安全性、薬物動態を評価した第III相試験である。主要評価項目は薬物動態における同等性とされ、副次評価項目に奏効割合、PFS等が設定されている。主要評価項目である薬物動態では同等の結果が得られ、IRRの頻度において、IVが66%に対して皮下注射では13%であり、明らかにIRRの頻度を抑制することが可能となった。皮膚毒性等については同等であった。さらに、PFSのハザード比が0.84、95%信頼区間0.64~1.10であり、OSのハザード比は0.62、95%信頼区間0.42~0.92と、いずれも皮下注射で良好という結果であり、安全性、有効性ともに皮下注射を支持する結果であった。また、血管内皮増殖因子(VEGF)と、抗PD-1抗体のBispecific抗体であるivonescimabを用いたHARMONi-A試験の結果も報告された。EGFR-TKI後に増悪したEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんを対象に、プラチナ併用化学療法とivonescimabもしくはプラセボを併用する第III相試験である。PFSのハザード比は0.46、95%信頼区間0.34~0.62、OSのハザード比は0.72、95%信頼区間0.48~1.09と、PFSでは統計学的に有意に、OSにおいても併用療法がより予後を改善させる傾向が示された。前出のamivantamabだけでなく、血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法もすでに検討されている領域に、新たな選択肢が投入される形となった。今後も複数の選択肢が開発されていく見込みであり、EGFR-TKI耐性化後の治療選択は引き続き注目を集めることになりそうである。さいごに冒頭で紹介したように、肺がんの注目演題が多数報告されたASCOは、近年の治療開発の状況を縮図のように示した学会であった。周術期や根治的な病態における免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の役割、ADC、Bispecific抗体、BiTE等抗体医薬品の治療開発等が注目を集めている。さらに、EGFR-TKI耐性化後、EGFR遺伝子変異陽性初回治療、ALK初回治療、周術期治療等、同一の領域にさまざまな選択肢が展開される状況となることも明白であり、続々と実臨床に投入される治療法から、患者ごとに最適な選択肢をどのように検討し、提案し、相談するかが問われる時代が訪れようとしている。

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