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ソトラシブ、アジア人のKRAS G12C変異陽性肺がんに対する成績(CodeBreaK200)/日本臨床腫瘍学会

 既治療のKRAS G12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するソトラシブの第III相CodeBreaK 200試験におけるアジア人サブグループ解析を、九州大学の岡本 勇氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mg/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2 3週ごと(Dtx群:174例)Dtx群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・アジア人集団は37例(日本24例、韓国13例)、Soto群18例、Dtx群19例であった。・アジア人患者の年齢中央値はSoto群65.0歳、Dtx群68.0歳で、ほとんどが現および前喫煙者であった。・BICR評価のPFS中央値はSoto群8.3ヵ月、Dtx群5.6ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.18〜1.15)。・BICR評価のORRはSoto群 27.8%、Dtx群15.8%、病勢制御率はSoto群94.4%、Dtx群57.9%であった。・BICR評価による奏効に至るまでの期間はSoto群1.3ヵ月、Dtx群2.3ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はSoto群の44.4%、Dtx群の62.5%で発現した。・Soto群で頻度が高かったTRAEは下痢、悪心、肝機能障害(AST、ALT、ALP上昇)であった。

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日本の乳がんの特性・治療・予後の変化~NCD乳がん登録46万例のデータ

 日本における2004~16年の乳がんの特性・治療・生存の動向について、川崎医科大学の岩本 高行氏らがBreast Cancer誌2024年3月号に報告した。これは、NCD(National Clinical Database)乳がん登録の45万7,878例のデータ(追跡期間中央値5.6年)に基づく日本乳癌学会による予後レポートである。 2004~08年の症例と2013~16年の症例を比較した主な結果は以下のとおり。・治療開始年齢の中央値は、2004~08年では57歳、2013~16年では60歳と上昇した。・Stage0~IIの割合は74.5%から78.3%に増加した。・エストロゲン受容体陽性の割合は74.8%から77.9%、プロゲステロン受容体陽性の割合は60.5%から68.1%に増加した。・(術前)術後補助化学療法は、タキサン(T)またはT-シクロホスファミド(C)レジメンは2.4%から8.2%に増加したが、(フルオロウラシル(F))アドリアマイシン(A)C-T/(F)エピルビシン(E)C-Tは18.6%から15.2%、(F)AC/(F)ECレジメンは13.5%から5.0%に減少した。・術(前)後HER2療法に関しては、トラスツズマブの使用が4.6%から10.5%に増加した。・センチネルリンパ節生検の実施率は37.1%から60.7%に増加し、腋窩リンパ節郭清の実施率は54.5%から22.6%に減少した。・HER2陽性乳がん患者では無病生存期間と全生存期間の改善が認められたが、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、トリプルネガティブ乳がん患者では明らかな傾向は認められなかった。

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聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座(大学病院 腫瘍内科)【大学医局紹介~がん診療編】

砂川 優 氏(主任教授)梅本 久美子 氏(講師)小川 和起 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴治療薬開発だけではなく、支持療法、がん患者さんへの栄養介入、アプリケーションや遠隔診療を利用したがん診療など、多岐に渡るオリジナリティのある研究を行っています。当講座から、がん領域における新しいエビデンスを発信していきたいと考えています。地域のがん診療における医局の役割消化器がんを中心に外科・内科・放射線科などさまざまな科と連携し、最新のエビデンスに基づいた最適な治療を提供しています。当院はがんゲノム医療拠点病院でもあり、地域の病院と連携協力体制を作り、「ゲノム医療」にも力を入れております。また、新規薬剤のチャンスを提供できるよう、多くの臨床試験、治験を行っています。患者さん1人ひとりのニーズに応え、最適な治療を提供することを目指しています。医師の育成方針初期・後期研修を通じ、薬物療法の副作用マネジメントとして必要な内科学的知識を学んでいただきます。内科専門医を取得後に幅広い領域での薬物療法を経験し、がん薬物療法専門医の取得を目指します。内科専門医の取得と併行して大学院への進学や基礎研究を行うことも可能であり、海外留学も選択できます。基礎から臨床まで、さまざまな経験を通じて、がん治療のエキスパートとなれる医師の育成に取り組んでいます。症例カンファレンスの様子力を入れている治療/研究テーマ私は、胆膵がんを中心に診療、研究に力を入れています。研究の主なテーマは胆膵がんのゲノム解析や後方ラインでの治療開発であり、多くの多施設共同臨床試験に参加して、患者さんへより良い治療が提供できることを目指しています。当院では2023年に胆道・膵臓病センターを設立し、当科の他に消化器外科、消化器内科、代謝・内分泌内科、病理診断科、栄養科、リハビリテーション科、薬剤部が参加した症例検討会を毎週実施し、さまざまな視点から患者さん個々に合わせた治療を立案しています。各診療科が積極的に発言しコンセンサスを得て方針を決定していくスタイルは、自身の診療スキルを磨くうえでも大変役立っております。また、同センターでは、複数科をまたいだ臨床研究を現在計画中です。医局の雰囲気、魅力主任教授を筆頭に比較的若いスタッフで成り立っている講座です。年齢の近い先生が多く、診療や研究の相談がしやすい環境であると感じています。大学本院の講座というと堅苦しい雰囲気を想像しがちですが、われわれの講座は、一緒に仕事のしやすいスタッフ・秘書・研究補助員で成り立っており、魅力的な講座だと思います。医学生/初期研修医へのメッセージ腫瘍内科は専門性が高く、社会からも求められていて、各がん種で治療開発が望まれていますが、まだまだ成り手が少ない診療科です。診療と研究いずれもしっかり基礎から学びたい! という方に、ぜひ興味を持っていただけたら嬉しいです。診療科を超えてディスカッションを行う胆道・膵臓病センターのカンファレンスこれまでの経歴神奈川県内の高校を卒業した後、富山大学医学部へ入学しました。私は祖父をがんで亡くした経験から、抗がん剤の開発をしたいと考えていました。4年次の講義で腫瘍内科を知り、自分に合っている診療科だと思い、卒業と同時に、地元かつ腫瘍内科がある聖マリアンナ医科大学病院にて初期研修を行いました。やりたいことができる環境だと思い、聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座へ入局しました。同医局を選んだ理由腫瘍内科として確立していること、消化器内科とは独立して消化器がんを中心にさまざまな化学療法を盛んに行っていること、所属する医師のキャリアは多岐に渡っており、ロールモデルを探しやすいことなどから、聖マリアンナ医科大学の臨床腫瘍学講座を選びました。当講座では症例カンファレンスや医局会などを業務時間内で行い、働き方を重視していることも魅力の1つだと思います。学会で忙しい時期はありますが、やるときはやる、休むときは休むといったオンオフがしっかりしている良い環境だと思います。現在学んでいること腫瘍関連の多様な合併症・治療の副作用に対応するため、後期研修医として内科の診療科をローテーションして研修しています。また、さまざまながん種の化学療法、がん終末期医療など入院管理、上級医の化学療法外来を見学し、治療方法の選択、外来マネジメントの仕方を学んでいます。研究カンファレンスの様子聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座(大学病院 腫瘍内科)住所〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2丁目16番1号問い合わせ先oncology-mari@marianna-u.ac.jp医局ホームページ聖マリアンナ医科大学病院 腫瘍内科医局特設サイト医局特設サイト/医局員募集専門医取得実績のある学会日本内科学会 認定医、総合内科専門医日本癌治療認定医機構 癌治療認定医日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医研修プログラムの特徴(1)がん薬物療法専門医の取得と多彩な臨床経験がん薬物療法専門医の取得のためには、造血器・呼吸器・消化管・肝胆膵・乳房の5領域を含めたさまざまながん領域での症例経験が必須ですが、これらの症例について当院のみで経験が可能です。合併症を有する患者さんや治験候補となる患者さん等に対する抗がん剤治療を経験・勉強することにより、地域の中核病院やがんセンターなどで中心となって活躍できる腫瘍内科医を目指すことができます。当講座のスタッフの多くは、がん薬物療法指導医・専門医を取得しているため、専門医取得へ向けたアドバイス等の指導体制が充実しています。(2)学位取得初期研修終了後、どのタイミングでも大学院への進学ができ、学位を取得することが可能です。大学院に入学しない場合でも、論文によって学位を取得することが可能です。当講座のスタッフは、国際・国内学会にて多数の発表経験を有し、さまざまな論文を報告しています。学会発表から論文作成に至るまで指導体制が充実しています。(3)海外留学当講座のスタッフは海外(米国・南カルフォルニア大学等)への留学を経験しており、海外の腫瘍内科医との研究コラボレーションを行っています。海外留学を希望される先生には、留学先の紹介等のサポートを行っています。

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局所進行直腸がん術前治療におけるctDNA活用に期待/日本臨床腫瘍学会

 局所進行直腸がんの術前治療の決定において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の有用性が示唆された。 局所進行直腸がんでは手術後の再発が問題だったが、直腸間膜全切除(TME)手術や術前化学放射線療法 (CRT)によって局所再発のコントロールが実現した。近年では術前化学療法 (NAC)や、CRTに化学療法を追加するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、遠隔再発の抑制が報告されている。一方、すべての患者にTNTを行うべきか明確な基準はなく、一部の患者では過剰治療も懸念されている。 そのような中、術後再発予測因子としてctDNAの役割が期待されている。大阪大学の浜部 敦史氏らは、術前治療後ctDNAの状況が局所進行直腸がんの再発に影響するかを検討したCIRCULATE-Japan GALAXY trialの結果を、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 GALAXY trialには、術前治療(CRTまたはNAC)を実施したStageII~IIIの直腸腺がん患者が登録された。登録患者には診断時に全エクソームシークエンスを行い、 ベースライン、術前治療終了後、手術後にctDNA検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・2021年10月~2023年9月に200例が登録され、191例が解析対象となった。・術前治療の内容はCRT89例(46.6%)、NAC102例(53.4%)であった。・ベースラインctDNA陽性147例中、69例で術前治療後にctDNAが陰性化した (陰性化率 47%)。・術前治療別の陰性化率はCRT57%(40/70例)、NAC38%(29/77例)で、CRTで高い傾向だった。・術前治療後のctDNA陽性は、再発予測因子とされる手術後(4週後)のctDNA陽性と相関していた。・無病生存期間 (DFS)は、術前治療後ctDNA陽性症例に比べ陰性例で有意に良好であった (ハザード比:推定不能、Log-rank検定 p=0.0024) 今回の知見から、ctDNAが局所進行直腸がんにおける個別化術前治療のガイドになるのではないか、と浜部氏は期待感を示した。

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転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル追加データ(JCOG1611、GENERATE)/日本臨床腫瘍学会

 膵がん1次治療の最適レジメンを検討する国内第II/III相JCOG1611試験1)。2023年10月に欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析結果が発表されたが、2024年2月22~24日に開催された第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、本試験の追加データについてがん研有明病院 肝胆膵内科の尾阪 将人氏が発表した。<JCOG1611試験の概要>・対象:切除不能転移膵がん、PS0~1・試験群:【GnP群】nab-パクリタキセル+ゲムシタビン【mFOLFIRINOX群】オキサリプラチン、イリノテカン、l-ロイコボリン、フルオロウラシル【S-IROX群】オキサリプラチン、イリノテカン、S-1 ・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性 すでに発表されている発表されている結果は下記のとおり。・国内45施設から527例がGnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。・OS中央値はGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)だった。・PFS中央値はGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)だった。 mFOLFIRINOX群、S-IROX群がGnP群を上回る可能性が1%未満となったため、本試験は中止となっている。 今回発表された追加データは下記のとおり。・病状進行し、2次治療に進んだのはGnP群で59.7%、mFOLFIRINOX群で63.4%、S-IROX 群で62.5%、2次治療のほぼすべてが化学療法だった。・増悪後生存期間(Postprogression survival)中央値は、GnP群で7.0ヵ月、mFOLFIRINOX群で5.5ヵ月、S-IROX群で5.6ヵ月だった。・プラチナ製剤が奏効しやすいとされるBRCA1/2遺伝子変異陽性例を層別化したデータが発表された。BRCA陽性はGnP群で9例、mFOLFIRINOX群で7例、S-IROX群で7例だった。陽性例のOSは3群すべてで全体集団よりも長く、GnP群25.9ヵ月、mFOLFIRINOX群18.6ヵ月、S-IROX群33.2ヵ月だった。 発表後のディスカッションのテーマは、同じく転移膵がん1次治療として、GnPとNALIRIFOX(ナノリポソーム型イリノテカン、5FU、ロイコボリン、オキサリプラチン)を比較し、NALIRIFOXが有意なOSの改善を示す結果となったNAPOLI‐3試験2)と本試験の結果をどう解釈するのかが中心となった。 尾阪氏は「JCOG1611はもともとGnPに対するmFOLFIRINOXとS-IROXの優越性を検証するためにデザインされた試験であり、GnPが有意差をもってmFOLFIRINOX群を上回る今回の結果にはわれわれも驚いている。NALIRIFOXレジメンは今後日本でも承認が見込まれているが、GnPとNALIRIFOXを比較した日本人のデータはまだなく、どちらを優先して使うかは今後の重要な臨床課題となるだろう」とした。

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乳がん周術期ICI治療、最新情報を総括/日本臨床腫瘍学会

 近年、いくつかのがん種で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用した周術期治療が開発されている。乳がん領域では2022年9月、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブの術前・術後治療が承認されており、他のICIを用いた試験も実施されている。さらにHR+/HER2-乳がんに対する試験も進行中である。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「ICIで変わる、周術期治療」で、乳がんの周術期ICI治療の試験成績や進行中の試験などの最新情報を、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が紹介した。乳がん周術期ICI治療で現在承認されているのはペムブロリズマブのみ 近年、切除可能TNBCに対する治療は、術前化学療法を実施し、術後に病理学的に残存病変がある場合はカペシタビンとオラパリブ(BRCA変異がある場合)を投与することが標準治療となっている。そのような中、2022年9月、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せし術後にペムブロリズマブを投与する治療が、国際共同第III相KEYNOTE-522試験の結果を基に承認され、現在の標準治療となっている。KEYNOTE-522試験では、病理学的完全奏効(pCR)率、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善し、Stage、PD-L1発現、pCR/non-pCRにかかわらず有効であったことが示されている。一方、non-pCR症例では予後不良であったことから、新たな治療戦略が検討されている(後述)。 KEYNOTE-522試験については、ペムブロリズマブ群における5年EFS割合の改善が9%であることと、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)発現割合(術前薬物療法期)が13.0%ということが釣り合うのか、という議論がしばしば行われるが、尾崎氏は、TNBCの再発後の予後が約2年ということを考慮すると釣り合う、との理解だ。本試験では、ペムブロリズマブ群で薬物療法中止例が1割程度増えるが、手術実施割合の低下は1%未満である。これはirAEをしっかり管理することでほとんどの症例で手術可能であることを示しており、リスクベネフィットバランスを議論するうえで非常に重要なデータと考える、と尾崎氏は述べた。pCR症例の術後ペムブロリズマブは省略可能か?non-pCR症例の術後治療は? KEYNOTE-522試験では、術前化学療法+ペムブロリズマブでpCRが得られた症例は予後良好であることから、術後のペムブロリズマブは省略可能ではないかと考える医師が多い。この疑問を解決するために、現在、pCR症例にペムブロリズマブの投与と経過観察を比較するOptimICE-pCR試験が進行中である。 一方、non-pCR症例に対しては、ペムブロリズマブ単独で十分であると考える医師は少なく、従来使用されてきたカペシタビンやオラパリブ(BRCA変異がある場合)を逐次投与するという施設も増えているという。さらに、より有効な術後治療が検討されており、sacituzumab govitecan+ペムブロリズマブの効果を検討するASCENT-05/OptimICE-RD試験、datopotamab deruxtecan+デュルバルマブの効果を検討するTROPION-Breast03試験が進行中である。 また、ペムブロリズマブによる術前・術後治療後に再発した症例に対しては、西日本がん研究機構(WJOG)においてペムブロリズマブ+パクリタキセル+ベバシズマブの効果を検討するPRELUDE試験が計画中という。予後不良症例に対する新規治療戦略や、他のICIを用いた開発が進行中 TNBCの周術期ICI治療に現在承認されているのはペムブロリズマブのみだが、他の薬剤の試験も実施されている。 アテゾリズマブについては、術前・術後に投与したIMpassion031試験において、pCRの改善は認められたが、EFSは改善傾向がみられたものの統計学的に有意な改善が認められなかった。しかしながら、対照群がKEYNOTE-522試験と同様のGeparDouze/NSABP-B59試験が進行中であり、結果が注目される。 術前・術後の両方ではなく、どちらかのみICIを投与するレジメンも検討されている。術前のみの投与については、アテゾリズマブを用いたneoTRIP試験はnegativeだったが、デュルバルマブを用いたGeparNeuvo試験(第II相試験)において、pCRでは差がなかったもののEFSの改善が認められている。術後のみの投与については、アテゾリズマブを用いたAlexandra/IMpassion030試験ではEFSの改善が認められておらず、ペムブロリズマブを用いたSWOG1418/BR006試験は現在進行中である。尾崎氏は、これまでの成績からは術前・術後とも投与することが重要ではないかと考察している。HR+/HER2-乳がんに対する周術期ICI治療の開発 TNBCだけではなく、現在、他のサブタイプに対しても周術期ICI治療の開発試験が行われている。高リスクのHR+/HER2-乳がんに対して術前化学療法および術後内分泌療法へのICIの上乗せ効果を検討する試験として、ペムブロリズマブのKEYNOTE-756試験とニボルマブのCheckMate 7FL試験が進行中だが、どちらも有意なpCR率の改善が示されており、EFSの結果が期待される。 尾崎氏は、これらの開発状況を踏まえ、「乳がん領域においても、今後さらに周術期ICI治療が増えてくる」と期待を示し、講演を終えた。

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T-DXd中止後の乳がん治療、最も多いレジメンは?(EN-SEMBLE)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXd中止後に実施した治療レジメンの分布を調査したEN-SEMBLE試験の中間解析の結果、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことを、愛知県がんセンターの能澤 一樹氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 現在、T-DXdの後治療に関しては見解が割れており、間質性肺疾患などの有害事象や病勢進行によってT-DXdを中止した後の最適な治療の決定は喫緊の課題である。そこで、研究グループは、T-DXd中止後に使用される治療レジメンの分布とその有効性・安全性を検討するために多施設コホート研究を行った。今回は、中間解析としてT-DXd中止後の治療レジメンの分布に関するデータが発表された(データカットオフ:2023年5月31日)。 対象は、特定使用成績調査に登録し、切除不能または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの、2023年5月31日までに中止し、後治療を開始した患者であった。主要評価項目は、T-DXd中止後の治療レジメンの分布、無増悪生存期間、治療成功期間、後治療に切り替えるまでの期間、全生存期間、全奏効率などで、T-DXdを中止した理由別に評価される予定。 主な結果は以下のとおり。・解析には664例が組み込まれた。65歳未満は62.5%、年齢中央値は60.0歳(範囲 30~89歳)、女性が99.5%であった。・T-DXdの後治療で多かったのは、(1)トラスツズマブ+ペルツズマブ(204例[30.7%])、(2)トラスツズマブ(157例[23.6%])、(3)ラパチニブ(104例[15.7%])を含むレジメンであった。・(1)のトラスツズマブ+ペルツズマブを含むレジメン(30.7%)にさらに併用された治療は、化学療法が23.0%(エリブリン11.6%、ビノレルビン2.7%、ドセタキセル2.0%、パクリタキセル2.0%、カペシタビン1.5%、S-1 1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、レトロゾール0.9%、アナストロゾール0.5%など)で、併用薬なしは4.7%であった。・(2)のトラスツズマブを含むレジメン(23.6%)にさらに併用された治療は、化学療法が16.7%(エリブリン5.4%、ビノレルビン3.8%、S-1 2.0%、ゲムシタビン1.5%、カペシタビン1.4%、パクリタキセル1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、アナストロゾール0.8%、タモキシフェン0.5%など)で、併用薬なしは4.2%であった。・(3)のラパチニブを含むレジメン(15.7%)にさらに併用された薬剤は、カペシタビン13.6%、レトロゾール0.6%、アナストロゾール0.5%などで、併用薬なしは0.3%であった。・エリブリンが投与された130例(19.6%)のうち、併用が多かったのはHER2抗体薬17.3%(トラスツズマブ+ペルツズマブ11.6%、トラスツズマブ5.4%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+レトロゾール0.2%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+その他の薬剤0.2%)、ドセタキセル0.2%で、併用薬なしは2.1%であった。・ベバシズマブが投与された53例(8.0%)のうち、パクリタキセルが併用されたのは7.8%、nab-パクリタキセルが併用されたのは0.2%であった。・CDK4/6阻害薬が投与された19例(2.9%)のうち、アベマシクリブとの併用が多かったのはフルベストラント1.2%、アナストロゾール0.5%、エキセメスタン0.2%、レトロゾール0.5%、LH-RHアゴニスト0.2%、パクリタキセル0.2%であった。パルボシクリブとの併用が多かったのはレトロゾール0.5%、フルベストラント0.5%であった。・化学療法の有無別にみると、化学療法を含む後治療は484例(72.9%)であった。化学療法との併用で多かったのは、抗HER2療法53.3%、化学療法のみ9.8%、分子標的薬(抗HER2療法以外)8.1%、抗HER2療法+内分泌療法0.9%、抗HER2療法+その他の薬剤0.3%、抗HER2療法+分子標的薬(抗HER2療法以外)0.3%、免疫チェックポイント阻害薬0.2%であった。・化学療法を含まない後治療は180例(27.1%)であった。抗HER2療法のみが11.1%で最も多かったが、抗HER2療法+内分泌療法6.8%、内分泌療法のみ4.2%、分子標的薬(抗HER2療法以外)+内分泌療法3.0%、分子標的薬(抗HER2療法以外)のみ0.5%、抗HER2療法+分子標的治療(抗HER2療法以外)0.2%などもあった。 これらの結果より、能澤氏は「T-DXd中止後の乳がん治療において、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことが明らかになった。最終的な分析として、後治療のレジメンの有効性と安全性を調査する予定である。EN-SEMBLE試験の結果は、アンメット・メディカル・ニーズであるT-DXdの後治療の最適化に関する知見を提供できると考える」とまとめた。

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進行乳がんへのDato-DXd、アジア人でもPFS延長(TROPION-Breast01)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法の前治療歴のあるHR陽性(+)/HER2陰性(-)の手術不能または転移・再発乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験のアジア人サブグループ解析の結果、全体集団と同じく抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつ管理可能な安全性プロファイルで、治療薬の減量/中断が少なかったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)のPresidential Sessionで発表した。 TROPION-Breast01試験は、HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移・再発の乳がん患者を、Dato-DXdを受ける群と治験医師選択の化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を受ける群に1:1に無作為に割り付けたグローバル第III相試験である。全体集団において、Dato-DXd群では化学療法群よりも有意にPFSが延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は少なかったことが、2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告されている。今回は、東アジア(日本、中国、韓国、台湾)で登録された患者における有効性と安全性が解析された(データカットオフ:2023年7月17日)。 主な結果は以下のとおり。・全体集団732例のうち、273例(日本70例、中国83例、韓国82例、台湾38例)がアジア人サブグループとして解析された。Dato-DXd群は134例(年齢中央値:54歳[範囲 29~83歳]、化学療法群は139例(52歳[33~79歳])であった。・主要評価項目の1つである盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS中央値は、Dato-DXd群は5.6ヵ月(95%信頼区間:5.4~8.1)、化学療法群は4.5ヵ月(同:4.0~5.8)であり、Dato-DXd群で有意に改善した(ハザード比:0.69[同:0.51~0.94])。・フォローアップ期間中央値の10.1ヵ月時点では全生存期間(OS)のデータは未成熟であったが、6ヵ月OS率はDato-DXd群91.5%、化学療法群89.6%であった。・奏効率は、Dato-DXd群は32.8%であったのに対し、化学療法群は26.6%であった。・全GradeのTRAEはDato-DXd群の95.4%(うちGrade3以上は20.8%)、化学療法群の84.4%(同:52.6%)に発現した。TRAEにより中止/減量/中断に至ったのはDato-DXd群では3.1%/14.6%/26.2%、化学療法群では0.7%/32.6%/31.9%であった。両群ともに死亡はなかった。・Dato-DXd群に発現した主なTRAEは、悪心54.8%、口内炎37.7%、脱毛症23.8%、嘔吐22.3%、ドライアイ20.8%などであった。・間質性肺疾患は、Dato-DXd群では3.8%(うちGrade3以上は1.5%)に認められたが、化学療法群では認められなかった。 これらの結果より、鶴谷氏は「TROPION-Breast01試験のアジア人解析において、Dato-DXdは全体集団と同様に高い有効性と安全性を示した。減量/中断に至るTRAEは化学療法群よりもDato-DXd群のほうが少なかった」としたうえで、「本解析の結果は、Dato-DXdは内分泌療法に不適でHR+/HER2-の進行乳がんの東アジア人にとって新たな治療オプションとなる可能性を支持するものである」とまとめた。

389.

HR+/HER2-転移乳がんへのSG、Trop-2遺伝子発現別の効果とUGT1A1遺伝子多型での安全性(TROPiCS-02)/日本臨床腫瘍学会

 複数の治療歴のあるHR+/HER2-転移乳がん患者を対象に、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、探索的解析の最終解析(追跡期間12.8ヵ月)における無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の結果がASCO2023で報告されている。今回、それに加えて、探索的解析のTrop-2遺伝子(TACSTD2)発現の有無別のPFSとOS、さらにUGT1A1遺伝子多型における安全性について、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 UGT1A1遺伝子多型における安全性については、UGT1A1遺伝子多型がイリノテカン、パゾパニブ、スニチニブ、ニロチニブなどの抗がん剤と同様に、SGにおいてもグルクロン酸抱合の減少により好中球減少症、発熱性好中球減少症、貧血、下痢などの有害事象との関連が報告されていることから検討された。<TROPiCS-02試験の概要>・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後の内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの患者 543例・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)271例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性[探索的解析]最終解析におけるPFS・OS、TACSTD2発現の有無別のPFS・OS・ORR・CBR・DOR、UGT1A1遺伝子多型における安全性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値12.8ヵ月の最終解析におけるPFS中央値は、SGが5.5ヵ月、TPCが4.0ヵ月と引き続き改善を示した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.53~0.81、名目上のp=0.0001)。・OS中央値もSGが14.5ヵ月、TPCが11.2ヵ月と引き続き改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.65~0.95、名目上のp=0.0133)。事前規定されたサブグループ解析においても、おおむねSGでベネフィットがみられた。・TACSTD2発現別の効果について、中央値(10.5TPM)以上を高発現、中央値未満を低発現として検討したところ、TACSTD2発現にかかわらず、PFS中央値はSGがTPCより改善した(低発現:5.6ヵ月vs.2.8ヵ月、高発現:7.3ヵ月vs.5.6ヵ月)。また、OS中央値も同様に改善がみられた(低発現:14.2ヵ月vs.10.6ヵ月、高発現:14.4ヵ月vs.11.8ヵ月)。・SG群のうち、UGT1A1 *28/*28の患者は、*1/*28の患者または*1/*1(野生型)の患者に比べ、Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)の発現率が高く、好中球減少症(順に64%、57%、45%)、下痢(順に24%、13%、6%)であった。・TEAEはUGT1A1 *28/*28の患者は野生型の患者より好中球減少症と下痢の発現までの期間が短く、*1/*28の患者は野生型や*28/*28の患者より貧血の期間が長かった。 Rugo氏は「SGはTrop-2遺伝子の発現にかかわらず、PFS、OSを改善し、UGT1A1の遺伝子多型に関係なく、管理可能な安全性プロファイルを有していた」とまとめた。

390.

EGFR exon20挿入変異陽性NSCLC、amivantamab+化学療法の日本人データ(PAPILLON)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR exon20挿入変異は非小細胞肺がん(NSCLC)のEGFR変異のうち3番目に多く、12%を占めるという報告もある1)。しかし、既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬はEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCに対する効果が乏しい。そこで、EGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCを対象とした国際共同第III相無作為化比較試験(PAPILLON試験)において、EGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用の有用性が検証され、化学療法単独と比べて主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が報告された2)。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、小野 哲氏(静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科)がPAPILLON試験の日本人サブグループの結果を報告した。・試験デザイン:国際共同非盲検無作為化比較第III相試験・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLC患者・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab+化学療法群:153例[日本人:19例])・対照群:化学療法化学療法群:155例[日本人:15例])※・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、PFS2(2次治療開始後のPFS)、安全性など※:化学療法群は病勢進行時にamivantamab単剤療法へのクロスオーバーが許容された(全体集団の65例、日本人集団の11例がクロスオーバー)。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値はamivantamab+化学療法群15.6ヵ月、化学療法群20.1ヵ月であった。・日本人集団において、ベースライン時に脳転移を有していた患者の割合は、amivantamab+化学療法群21%(全体集団:23%)、化学療法群33%(同:23%)であった。・日本人集団におけるBICRに基づくPFS中央値は、amivantamab+化学療法群15.5ヵ月(全体集団:11.4ヵ月)、化学療法群5.6ヵ月(同:6.7ヵ月)であった(ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.09~0.53)。・日本人集団におけるORRはamivantamab+化学療法群72%(全体集団:73%)、化学療法群67%(同:47%)であった。 ・日本人集団におけるOS中央値は、amivantamab+化学療法群では未到達(全体集団:未到達)、化学療法群25.5ヵ月(同:24.4ヵ月)であった(HR:0.79、95%CI:0.17~3.62)。・日本人集団におけるPFS2中央値は、amivantamab+化学療法群18.6ヵ月(全体集団:未到達)、化学療法群13.9ヵ月(同:17.3ヵ月)であった(HR:0.44、95%CI:0.15~1.34)。・日本人集団における治療継続期間中央値は、amivantamab+化学療法群13.2ヵ月(全体集団:9.7ヵ月)、化学療法群5.1ヵ月(同:6.7ヵ月)であった。・日本人集団におけるGrade3以上の有害事象は、amivantamab+化学療法群90%(全体集団:75%)、化学療法群53%(同:54%)に発現し、全治療薬の中止に至った有害事象は、amivantamab+化学療法群11%(同:8%)に認められ、化学療法群では0例(同:8%)であった。・日本人集団における安全性プロファイルは全体集団と同様であり、安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。 本研究結果について、小野氏は「amivantamabと化学療法の併用は、有効性・安全性が日本人集団でも全体集団と同様であり、安全性に関する新たなシグナルも認められなかった。これらの結果は、未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLC患者において、本レジメンが新たな標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

391.

転移TN乳がんへのSG、日本人での有効性と安全性(ASCENT-J02)/日本臨床腫瘍学会

 日本人の既治療の転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するsacituzumab govitecan(SG)の第II相試験の結果について、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で国立がん研究センター東病院の内藤 陽一氏が発表した。国際第III相ASCENT試験におけるSGと同程度の効果が認められ、安全性についても既知の安全性プロファイルと同様であったという。 SGは転移TNBCを対象としたASCENT試験において、医師選択治療に対して無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、米国、欧州、中国、シンガポール、韓国で2ライン以上の治療歴のある転移TNBCに承認されている。ASCENT-J02試験は、日本人の進行固形がん患者を対象とした非盲検第I/II相試験で、今回、既治療の転移TNBC患者を対象とした第II相試験における有効性と安全性の結果が報告された。・対象:切除不能な局所進行または転移/再発TNBCで、転移後に2ライン以上の標準化学療法後に難治または再発した患者36例・方法:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静脈内投与・評価項目:[主要評価項目]独立判定委員会(IRC)評価による奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、治験責任医師によるORR、OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2023年5月12日で、追跡期間中央値は6.1ヵ月だった。・年齢中央値は50歳(範囲:29~73歳)、65歳未満が94%、ECOG PS0が72%、HER2低発現は41%だった。・主要評価項目であるIRCによるORRは25%(95%信頼区間[CI]:12.1~42.2、p=0.0077)で、ASCENT試験におけるORR 31%(95%CI:25.6~37.0)と同程度だった。また、TTR中央値は1.6ヵ月(範囲:1.2~3.0)、DOR中央値は6.2ヵ月(95%CI:3.1~未到達[NR])であった。・PFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.9~NR)で、ASCENT試験における4.8ヵ月(同:4.1~5.8)と同等だった。OS中央値は今回の解析時点ではNRだった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)が72%に認められ、重篤なTEAEは14%に認められた。そのうち最も多かったのは好中球減少症(58%)と白血球減少症(36%)であった。 本試験の結果、SGは25%のORRを示し、PFS、TTR、DORの中央値もASCENT試験と同程度だった。安全性についても既知の安全性プロファイルとおおむね一致し、有害事象は支持療法と用量調節で管理可能で、新たな安全性シグナルは報告されなかった。内藤氏は「これらの結果は、日本人の転移TNBC患者に新たな標準治療としてSGの使用を支持する」と結論した。

392.

ペムブロリズマブ+化学療法の胃がん1次治療、アジア人の成績(KEYNOTE-859)/日本臨床腫瘍学会

 ペムブロリズマブと化学療法の併用は、アジア人の胃がんの1次治療においてもグローバルと同様、良好な結果を示した。 切除不能または転移を有するHER2陰性胃・食道胃接合部腺がんの1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用を検討した第III相KEYNOTE-859試験のアジア人サブセット解析の結果を、神戸市立医療センター中央市民病院の安井 久晃氏が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 グローバルITT集団では、全生存期間(OS)中央値12.9ヵ月対11.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.78~0.87)、無増悪生存期間(PFS)6.9ヵ月対5.6ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.67~0.85)と、ペムブロリズマブ・化学療法併用群が化学療法群に対して優越性を示している(追跡期間中央値31.0ヵ月)。・対象:HER2陰性の局所進行切除不能または転移のある胃・食道胃接合部腺がん・試験群:ペムブロリズマブ(200mg)+化学療法(FPまたはCAPOX)3週ごと(ペムブロリズマブ・化学療法併用群)・対照群:プラセボ+化学療法(FPまたはCAPOX)3週ごと(化学療法群)・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]PFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 アジア人サブセットは525例で、ペムブロリズマブ・化学療法併用群は263例、化学療法群は262例であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は28.6ヵ月であった。・OS中央値はペムブロリズマブ・化学療法併用群17.3ヵ月、化学療法群13.0ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.58~0.87)であった。・PFS中央値はペムブロリズマブ・化学療法併用群8.4ヵ月、化学療法群5.8ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88)であった。・ORRはペムブロリズマブ・化学療法併用群61.2%、化学療法群48.9%であった。・DORはペムブロリズマブ・化学療法併用群10.0ヵ月、化学療法群6.6ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は59.9%、44.7%であった。 これらの結果は、ペムブロリズマブの化学療法併用をHER2陰性胃・胃食道部腺がん1次治療の選択肢として支持するものだとしている。

393.

新規抗体薬物複合体SG、既治療のNSCLCに対する第III相試験の結果(EVOKE-01)/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年1月22日、既治療の進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に関するsacituzumab govitecan(SG)の第III相EVOKE-01試験において、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成できなかったと発表した。 EVOKE-01試験はプラチナベース化学療法や免疫チェックポイント阻害薬でPDとなった進行または転移のあるNSCLCを対象に、SGとドセタキセルを比較した試験である。 結果、主要評価項目であるOSは、SG群において良好な傾向が認められたものの、統計学的有意には至らなかった。もっとも、試験集団の60%超を占める、抗PD-1/L1抗体に奏効しなかったサブグループでは、対照群に比べてSG群で3ヵ月以上のOS延長が認められたとしている。 今回のデータは今後開催される医学学会で発表される。また、ギリアドは同試験の結果について規制当局との議論を予定している。 SGのNSCLCに関する臨床開発プログラムは、EVOKE-01以外にペムブロリズマブとの併用による第II相EVOKE-02試験、PD-L1高発現例の1次治療に関する第III相EVOKE-03試験が進行中である。

394.

腎臓がん患者でのニボルマブの皮下注は点滴静注に劣らず

 治療歴を有する腎細胞がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の皮下注は、点滴静注と比べて薬物動態と奏効率について非劣性であることが、米ロズウェルパーク総合がんセンターのSaby George氏らが実施した臨床試験で示された。研究グループは、「この結果は、がん患者の時間と医療費の削減につながる可能性がある」と述べている。この研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿器がんシンポジウム(1月25~27日、米サンフランシスコ)で発表された。 George氏は、「ニボルマブの点滴静注は患者にとって大きな負担となる。ニボルマブを皮下注で投与できるのであれば、点滴椅子に1時間座っての治療が所要時間5分の注射で済むため、患者の治療体験は大幅に改善されるはずだ」と話す。 今回の試験では、ロズウェルパークを含む17カ国73カ所のがん治療センターで標準的な治療を受けた進行または転移性淡明細胞型腎細胞がん患者495人を、ヒトヒアルロニダーゼ配合のニボルマブを点滴静注で投与する群(247人、年齢中央値66歳)と皮下注で投与する群(248人、年齢中央値64歳)にランダムに割り付け、転帰を比較した。対象者は1〜2種類の標準的な化学療法をすでに受けていたが、免疫療法薬の使用は初めてだった。 その結果、ニボルマブの初回投与から28日目までの同薬の平均血中濃度と定常状態での同薬の最低血中濃度について、皮下注群は点滴静注群に対して非劣性であることが確認された(平均血中濃度:幾何平均比2.098、90%信頼区間2.001〜2.200、最低血中濃度:同1.774、1.633〜1.927)。また、盲検下独立中央判定委員会(BICR)が評価する客観的奏効率(ORR)は、皮下注群で24.2%、点滴静注群で18.2%であり、無増悪生存期間は前者で7.23カ月、後者で5.65カ月であった。 研究グループは、「ニボルマブは複数のがん種にわたって米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。そのため、今回、腎細胞がん患者に対して示された同薬の有効性は、他のがん治療にも適用できる可能性を示唆するものだ」との見方を示す。 一方George氏は、「これは患者にとっても医師にとっても画期的な成果だ。患者がニボルマブによる治療を容易に受けられるようになることは間違いない」とロズウェルパークのニュースリリースで述べている。同氏は、「ニボルマブの皮下注が可能になれば、クリニックでのニボルマブ投与が可能になり、患者を輸液センターに送る必要がなくなる。そうなれば、患者に薬剤が投与されるまでの時間も短縮されるだろう」と話す。また、クリニックでの投与が可能になれば、治療へのアクセスの問題も緩和されるため、都市部と地方のがん患者間の格差も縮小する可能性があると指摘している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

395.

CRT後のデュルバルマブ地固めは高齢NSCLCにも有用か?

 切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、PACIFIC試験で有用性が示され、標準治療となっている。しかし、高齢のNSCLC患者における有効性・安全性は明らかになっていない。そこで、韓国・慶北大学校のJi Eun Park氏らの研究グループは、70歳以上の高齢のNSCLC患者におけるCRT後のデュルバルマブ地固め療法の有用性を検討するため、後ろ向き研究を実施した。その結果、70歳以上のNSCLC患者でも有効性は同様であったが、有害事象は多い傾向にあった。本研究結果は、Clinical Lung Cancer誌オンライン版2024年2月16日号で報告された。 本研究は、CRT後のデュルバルマブ地固め療法を受けた切除不能なStageIIIのNSCLC患者286例を対象とした後ろ向き研究で、2017年9月~2022年9月の期間に実施した。対象患者を年齢(70歳未満、70歳以上)で2群に分類し、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・70歳未満群は166例(58.0%)、70歳以上群は120例(42.0%)であった。・PFS中央値は、70歳未満群が19.4ヵ月であったのに対し、70歳以上群は17.7ヵ月であり、有意差は認められなかった。・OS中央値は、70歳未満群が未到達であったのに対し、70歳以上群は35.7ヵ月であり、有意差は認められなかった。・70歳以上群において、ECOG PS0/1のサブグループはPFSが良好で、シスプラチンを用いたCRTを実施したサブグループはOSが良好であった。一方、男性はOSが不良であった。・デュルバルマブ地固め療法を完遂した患者の割合は、70歳未満群が39.2%であったのに対し、70歳以上群は27.5%であり、完遂率は70歳以上群が有意に低かった(p=0.040)。・治療関連有害事象、Grade3/4の有害事象、治療の完全中止、治療関連死は、いずれも70歳以上群で多かった。 本研究結果について、著者らは「デュルバルマブ地固め療法は、70歳以上の高齢患者において70歳未満の患者と同様の有効性を示した。しかし、70歳以上の高齢患者では有害事象が多かった。したがって、患者選択や化学療法の選択は慎重に行うべきであり、注意深い有害事象モニタリングが必要である」とまとめた。

396.

閉経後早期乳がんへの術前内分泌療法、フルベストラントvs.フルベストラント+AI vs.AI/JAMA Oncol

 エストロゲン受容体(ER)陽性/ERBB2陰性の閉経後進行乳がん患者において、アナストロゾールへのフルベストラントの追加が生存率を改善させたことが報告されているが、早期乳がんにおける試験は行われていない。米国・Washington University School of MedicineのCynthia X. Ma氏らは、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者における術前内分泌療法(NET)としてのフルベストラント単剤およびアナストロゾールとの併用療法が、アナストロゾール単剤療法に比べて優れるかどうかについて検討した第III相無作為化試験の結果を、JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。 本試験はStageII~III、ER-rich(Allred score:6~8または>66%)/ERBB2陰性の閉経後乳がん患者が対象。アナストロゾール群(A群)、フルベストラント群(F群)、アナストロゾール+フルベストラント群(A+F群)に無作為に割り付けられ、それぞれ術前6ヵ月間の投与を受けた。 主要評価項目は内分泌感受性疾病率(ESDR)。副次評価項目は4週間のNET後のKi-67スコアの変化率(4週目のKi-67抑制効果)とされた。Ki-67スコアは4週目、および必要に応じて12週目に評価され、いずれかの時点で10%を超えた場合、術前化学療法または即時手術に切り替えられた。 主な結果は以下のとおり。・2014年2月~2018年11月までに、1,362例の女性患者(平均[SD]年齢:65.0[8.2]歳)が登録された。・評価可能な1,298例において、ESDRはA群18.7%(95%信頼区間[CI]:15.1~22.7)、F群22.8%(95%CI:18.9~27.1)、A+F群20.5%(95%CI:16.8~24.6)であった。・A群と比較して、フルベストラントを含むレジメンはどちらもESDRまたは4週目のKi-67抑制効果を有意に改善しなかった。・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超えた割合は、A群25.1%、F群24.2%、およびA+F群15.7%であった。・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超え、術前化学療法に切り替えた後、病理学的完全奏効(pCR)は167例中8例、residual cancer burden(RCB)-Iは167例中8例で確認された(pCR/RCB-I率:15.0%、95%CI:9.9~21.3)。・ベースラインのPAM50サブタイプについてデータが得られた753例(58%)において、Luminal Aは394例、Luminal Bは304例、non-Luminalは55例であった。・Luminal Bにおいて、A+F群はA群と比較して4週目のKi-67抑制効果が高かった(中央値[IQR]:-90.4%[-95.2~-81.9] vs.-76.7%[-89.0~-55.6]、p<0.001)。この傾向はLuminal Aではみられなかった。・non-Luminalの36例(65.5%)では、4週目または12週目のKi-67スコアが10%を超えていた。 著者らは今回の結果を受けて、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者におけるNETとしての標準治療はアロマターゼ阻害薬で変更はないとしたうえで、探索的分析で明らかになったPAM50サブタイプによるNETへの反応の違いについてはさらなる検討が必要としている。

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切除不能肺がんに対する新アプローチ、小規模試験で有望な結果

 局所進行性で切除不能な非小細胞性肺がん(NSCLC)患者に対しては、標準的な化学療法に加え、高線量の放射線をがんに対してピンポイントで照射できる体幹部定位放射線治療(SABR、SBRTとも呼ばれる)を行うことで、患者の生存率向上が望める可能性のあることが、28人のNSCLC患者を対象にした初期段階の小規模試験で明らかになった。 研究論文の共著者である、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)放射線腫瘍学分野のBeth Neilsen氏は、「われわれが得た結果は、化学療法と、患者の腫瘍の位置や形状の治療による変化などを考慮して照射方法などを再検討しながら行うSABRの併用は、患者にとって有益なことを示すものだ」と述べている。詳細は、「JAMA Oncology」に1月11日掲載された。 Neilsen氏らによると、切除不能なNSCLC患者はこれまで、標準的な放射線治療(6週間で30回の照射)と化学療法の併用で治療されてきたが、その生存率は低かったという。同氏らは、低線量の放射線治療を何十回も行う代わりに、高線量の放射線治療を少ない回数で行う方が、腫瘍の根絶と再発防止につながるのではないかと考えた。SABRで鍵となるのが、生存率を向上させつつ健康な組織へのダメージを最小限に抑える理想的な線量を見つけることであった。 そこでNeilsen氏らは、医学的理由や患者の希望で腫瘍の切除が不能なステージIIおよびIIIのNSCLC患者28人(年齢中央値70歳、男性57%)を対象に、化学療法との併用で実施するSABRの線量をどれだけ安全に上げることができるかについての検討を行った。対象者は、化学療法とともに、放射線治療として4Gy/回を10回受けた後に、低線量(総線量25Gy;5Gy×5回照射、10人)、中線量(総線量30Gy;6Gy×5回照射、9人)、高線量(総線量35Gy;7Gy×5回照射、9人)でのSABRを受けた。追跡期間中央値は18.2カ月だった。 その結果、有害事象としてグレード3以上の急性または遅発性の非血液毒性がそれぞれ11%(3人)と7%(2人)の患者に生じたが、中線量群にグレード3以上の有害事象が生じた患者はいなかった。2人が死亡したが、いずれも高線量群の患者だった。2年間の局所制御率は、低線量群、中線量群、および高線量群の順に、74.1%、85.7%、および100.0%であった。また、2年間の全生存率は同順で、30.0%、76.2%、55.6%であった。 研究グループは、「2年間の腫瘍再発率に関しては高線量群が最も良好ではあったが、一方で、この群では副作用がより深刻だった」と述べている。これに対して、中線量群で生じた副作用は、主に疲労感、食道や肺の炎症による咽頭痛や咳などで、重篤な副作用が生じた患者はいなかったという。 研究グループは、本研究は対象者の数が少なかったため、より大規模な研究を実施して長期間の追跡を行う必要があると述べている。それでも、論文の上席著者である、UCLA放射線腫瘍学分野のMichael Steinberg氏は、「この研究が、がん関連死の主因である肺がんの治療を改善するために取り組まれている努力に貢献することは間違いない。SABRと化学療法の統合は、安全性、有効性、患者の転帰の改善という点で有望な新しいアプローチを提供するだけでなく、より効果的で個別化された治療への道も切り開かれることになる」と述べている。

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膵臓がんの治療ワクチン、初期段階の臨床試験で有望な結果

 膵臓の腫瘍は、その90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされるが、この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性が、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学准教授のShubham Pant氏らが実施した小規模な臨床試験で示された。現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。ELI-002 2Pを製造するElicio Therapeutics社の資金提供を受けて実施されたこの試験の詳細は、「Nature Medicine」に1月9日掲載された。 膵臓がんは自覚症状がないまま進行し早期発見が難しいことから、「サイレント・キラー」と呼ばれている。米国がん協会(ACS)によると、米国では推定で年間約6万4,000人が膵臓がんと診断され、約5万5,500人がそれによって死亡している。膵臓がんに対するファーストライン治療は手術だが、再発の可能性もある。ELI-002 2Pは、再発を予防するためにデザインされたワクチンで、免疫細胞のT細胞にKRAS変異を認識して破壊するように仕向ける。ELI-002 2Pは、患者ごとに製造することが可能だ。 今回の臨床試験は、KRAS遺伝子の変異がある膵臓がん患者20人と大腸がん患者5人の計25人(平均年齢61.0歳、女性60%)を対象に実施された。患者は、全例が腫瘍を摘出する手術を受けており、このうち7人は手術に加えて放射線治療も受けていた。Pant氏は、「膵臓がんの手術を受け化学療法を終えた患者でも、再発リスクは残る」と同がんセンターのニュースリリースで述べている。試験では、患者をコホート1〜5の5群に分け、ELI-002 2Pワクチン(0.1、0.5、2.5、5.0、10.0mg)を最大10回投与した。 その結果、ワクチンを投与された全患者の84%(21/25人)で期待されていたKRAS変異特異的T細胞反応が確認され、特に、投与量が5.0mgと10.0mgの群での割合は100%に達したことが明らかになった。腫瘍および腫瘍に関連するDNAの存在の指標となるバイオマーカーの低下も84%の患者で認められ、6人(膵臓がん患者と大腸がん患者が3人ずつ)では、バイオマーカークリアランスが確認された。患者全体での無再発生存期間は16.33カ月であったが、T細胞反応の変化量の中央値(ベースラインからの変化量が12.75倍)で二分して検討すると、中央値以上の患者では未達成であったのに対し、中央値未満の患者では4.01カ月であった。 副作用の発生率は、倦怠感が24%(6人)、注射部位反応が16%(4人)、筋肉痛が12%(3人)だったが、治療の中止や死亡に至るような重度の副作用は認められなかった。このことからPant氏は「ELI-002 2Pの安全性プロファイルは良好だった」と述べている。 Pant氏は「まだ初期段階の試験ではあるが、このワクチンによって多くの患者のがんの再発を防ぎ、生存期間を延長できる可能性があるという有望な結果が示された」と話す。同氏は、「膵臓がんは再発すると治癒に導くことが不可能であり、まさにアンメットニーズの存在する領域であるため、これらの結果の全てが素晴らしい」と喜びを表す。 ELI-002 2Pの第2相臨床試験は2024年後半に開始される予定だ。同試験ではさらに多くのKRAS変異を標的とすることになるとPant氏らは話している。

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「進行がんだから仕方がない」は使わない ~外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション~【Oncologyインタビュー】第45回

出演:関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座 勝島 詩恵氏「進行がんだから仕方がない」。がん医療の現場で何げなく使ってしまう言葉ではないだろうか。この言葉を考え直す時期が来ているようだ。外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション介入という新たな挑戦が始まっている。関西医科大学の勝島 詩恵氏に聞いた。進行がん患者治療の課題に立ち向かう外来通院がん患者は増加している。その反面、治療に適応するための対策は追いついていないという。外来通院ができるがん患者は、基本的に全身状態(PS)良好で身体機能が維持されているはずだが、実際は問題を抱えているケースが多い。外来通院が可能な状態であっても、進行がん患者である以上、薬物だけで治療は成立しない。患者の栄養状態、身体機能、精神面の安定があってこそ、より良いがん診療ができる。外来通院がん患者に対して、これから始まる、あるいは現在行っている治療に適合させるための介入(リハビリテーション)が必要だと考え、2020年、関西医科大学附属病院は「フレイル外来」を立ち上げた。多職種が連携した介入を実現大学病院などのハイボリュームセンターでは、連日100人を超える外来化学療法患者が受診する施設も珍しくない。そのため、主治医の診察から治療(点滴)開始まで、長い待ち時間が生じ、患者の大きな負担となっている。フレイル外来は、その待ち時間を有効利用する。患者は化学療法外来主治医の診療終了後、フレイル外来を受診する。化学療法レジメンに合わせて、月1~2回の通院が通常である。関西医科大学附属病院のフレイル外来では、腫瘍内科医(勝島氏)が診察を行い、患者の治療内容、副作用や経過などの理解を深める。それ以外にも、食欲不振や体重減少が強い患者には、栄養士への栄養指導の依頼や治療薬に関する主治医への相談を行う。介護保険申請を行っている患者や通院が困難となってきた患者には、デイケアや訪問リハビリテーションの紹介、精神的ケアや症状緩和が必要な患者には緩和ケア科と連携したサポートを行う。フレイル外来には、立ち上げからの3年間で360人の患者が紹介されている。外来の認知度と共に患者は増え、現在は月100人の患者がフレイル外来を受診する。呼吸器、消化器、乳腺などが主体であったが、最近は血液内科から造血幹細胞移植後の患者の紹介も多い。「外来の認知度が上がるにつれ、紹介が増えており、確実なニーズの増加を実感している」と勝島氏は述べる。病勢進行していなくても、半数以上が悪液質を合併していた勝島氏らは、フレイル外来を受診する進行再発肺がん患者の調査を実施した。定期的に外来通院にて化学療法を受ける肺癌患者は基本的にPS良好で、病勢もコントロールされているはずの外来患者だが、フレイル外来初診時、過半数(55.2%)が悪液質を合併していた1)。また、化学療法を受ける進行再発がん患者の悪液質は、低栄養状態、低身体活動が悪液質の臨床的特徴、もしくは、悪液質の特徴として独立した因子として抽出された。低身体活動については、10分以上続けて行う身体活動を評価する「IPAQ*」で評価できたが、従来のPSでは拾い上げられなかった1)。「医師が判断するPSは実際の活動量と乖離している可能性があるため、PSだけで判断すると危険」と勝島氏は言う。*IPAQ(International Physical Activity Questionnaire、国際標準化身体活動質問票):1週間における高強度および中等度の身体活動を行う日数および時間を質問する。治療成績向上、鍵は治療開始までの期間と悪液質の早期予防また、勝島らは、近年肺癌診療において、病期診断、病理診断に一定の時間を要し、その間に身体機能が落ちる患者がいることに着目して調査を行った。初診から治療開始までの期間が長いほど悪液質発症が高まる傾向が明らかになった。初診から治療開始までが45日以上の群では、治療開始までに悪液質発症が増加したが(初診時37%→治療開始時87%)、45日未満の群では増加しなかった(61%→61%)。悪液質の存在は化学療法の効果に悪影響を及ぼすことも示されている。悪液がない患者では、初回化学療法の病勢コントロール率(DCR)は100%、初回治療完遂率も100%であった。一方、悪液質がある患者での初回化学療法のDCRは66.7%、初回治療完遂率は58.7%と、有意差はないものの、悪液質がない患者よりも悪い傾向であった。しかし、悪液質の合併については、医療者も患者も危機意識は低い。勝島氏によれば、がんの確定診断を受けながら、治療開始までの待機期間にPSが悪化し、抗がん剤治療が受けられなくなってしまったケースも少なくないという。悪液質は決してがん終末期の病態ではなく、がん治療の早期にも現れ、抗がん剤治療に悪影響を及ぼす。迅速な診断と介入で、いかに悪液質がない状態で化学療法を実施できるかが、がん治療成功の鍵を握るといえる。これらの研究結果について勝島氏は、「多くの医療者が何となく気付いていたこと。少し全貌が明らかになった」と言う。がんリハビリテーションの質的なメリット進行再発がんリハビリテーションの真のエンドポイントは定まっていない。治療を行ったとしても最終的には病勢が進行する。そのため、体重や身体機能などの量的なエンドポイントは、いずれ達成できなくなってしまう。一方、フレイル外来通院患者の中には、病勢が進行しても受診を希望する患者も多い。そのため、進行再発がん患者へのリハビリテーションは、量的な効果だけでなく、質的な効果を持つのではないかという仮説を立てた。そして、フレイル外来通院患者に、リハビリテーションでの経験について、半構造化面接法によるインタビューを行った。その結果、がんリハビリテーションに取り組むことで、フレイル外来通院患者は「身体機能改善に対する期待感」「変化を客観的に把握できる安心感」「自分の存在意義の再確認」といったポジティブな経験をし、根治不能な進行がんとの付き合い方を見いだしていることがわかった2)。現時点でできることとはいえ、すべての施設で関西医科大学のような取り組みができるわけではない。そのような中、医療者ができることは何だろうか。まず、悪液質に対する危機意識を高めるべきだと勝島氏は強調する。また、医療者と共に患者の理解も重要だ。治療医の言葉は患者に大きな影響を与える。治療医から患者への「どれだけ動けて、痩せずに治療を受けられるか、で抗がん剤の効果も変わってくる」などの一言で、患者の理解も深まるという。多職種連携の最初の一石は医師しか投じられない。モチベーションが高い理学療法士や看護師は多いが、医師からの紹介がないと動くことはできないことも多い。勝島氏は「治療医から発信するがん悪液質診療を形作るべき」と述べる。前向き試験の取り組み前述の先行試験から、悪液質は初回治療前からでも存在し得ること、治療に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。勝島氏らは、次の段階として前向き試験を実施し、初回治療前からの運動・栄養療法が進行再発がんにおける悪液質の発症を抑制し、がん治療に良い効果を生み出すか否かを検証する予定である。今回の試験は治療前から介入するため、少なくとも化学療法の影響を受けない。交絡因子として化学療法の影響を受けないことから、がんリハビリテーションの効果をより純粋に評価できる可能性があるという。外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付ける現在は、患者も医療者も、治療中の体重減少や身体機能低下の重要性について認識不足で、介入も遅れがちである。実際、フレイル外来には、痩せきって身体機能が落ちてから紹介されるケースも少なくないという。早期からのリハビリテーションの重要性を医療者が認識することで、治療効果が乏しくなる前に介入できる。勝島氏は、「痩せて筋力もない患者が、化学療法という大きな剣を無理やり持たされている状況が悪液質。それに対し、早期から多職種が介入して、身体機能や栄養状態、精神面を維持してもらうことで、大きな剣をしっかり振りかざすことができる」とし、「われわれの研究によって、運動療法・栄養療法という低コストの介入が、進行がん治療に寄与することが証明できれば、最終的には外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付くかもしれない」と述べた。画像を拡大する画像を拡大する(ケアネット 細田 雅之)参考1)Katsushima U, et al. Jpn J Clin Oncol. 2024 Jan 11. [Epub ahead of print]2)勝島 詩恵ほか. Palliative Care Research.2022;17:127-134.

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ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する次世代治療薬repotrectinib(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんの約2%に認められるドライバー遺伝子変異である。現在、本邦でもROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対し、クリゾチニブおよびエヌトレクチニブが承認されている。「PROFILE 1001試験」においてROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対してクリゾチニブはORR 72%、PFS中央値19.2ヵ月、OS中央値51.4ヵ月という有効性を示した(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2014;371:1963-1971. , Shaw AT, et al. Ann Oncol. 2019;30:1121-1126.)。また同じくROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブ単剤療法を評価した「ALKA-372-001試験」と「STARTRK-1試験」「STARTRK-2試験」の3つの臨床試験の統合解析では、ORR 77%、PFS中央値19.0ヵ月という結果が示された。いずれも『肺癌診療ガイドライン2023年版』では推奨度「1C」という位置付けとなっている。 ただし、現在承認されているROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する治療薬は、耐性の出現や脳転移での再発の頻度が高いことが知られている。今回紹介するrepotrectinibはROS1のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)A/B/Cを選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である。repotrectinibは過去の臨床試験において、ROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する活性が示された次世代のROS1-TKIとされている。 今回行われた「TRIDENT-1試験」の第I相試験の結果に基づき、repotrectinibの推奨用量は160mg、1日1回を14日間投与後、15日目以降は160mg、1日2回投与とされた。ROS1-TKI未治療の拡大コホート1に含まれた71例では、奏効率79%、PFS中央値35.7ヵ月と高い効果が示された。また化学療法治療歴がなくROS1-TKIで1種類の治療歴のある56例の拡大コホート4でも、奏効率38%、PFS中央値9.0ヵ月と期待される結果が示された。ベースラインに脳転移がない症例における、頭蓋内の12ヵ月時点でのPFS率は拡大コホート1で91%、拡大コホート4で82%と高い効果が示された。また、第II相試験の用量で治療された426例のうち、頻度の高い有害事象はめまい、味覚障害、異常感覚であり、Grade3以上の有害事象は29%であったと報告された。治療中止に至った有害事象は3%となっている。 第III相試験が行われたわけではないので、純粋に比べることはできないが、この「TRIDENT-1試験」の結果からは次世代ROS1-TKIであるrepotrectinibは既存の治療薬と並べても、奏効率も無増悪生存期間も期待できることがわかる。とくに拡大コホート4で行われたROS1-TKIが1種類使用された症例群においても奏効率38%、PFS 9.0ヵ月というのは有望である。既存のROS1-TKIでも制御が難しい脳転移に対しても、高い頭蓋内PFS率が示されたことも心強い結果であり、早期の承認が望まれる。 ただ、本研究に使用されたROS1融合遺伝子の検索は「Guardant360 CDx」あるいは「GeneseeqLite circulating tumor DNA-based assays」に基づいている。本邦の医療機関では一般的に扱っていない検査キットであり、今後、このrepotrectinibが実臨床で活用されるためにはコンパニオン診断の問題が出てくるのであろう。

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