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急性白血病の発症時点でさまざまな眼科所見が観察される

 急性白血病の発症時点において、多彩な眼科所見が認められるとする、マンスーラ大学(エジプト)のDina N. Laimon氏らの論文が「Annals of Hematology」に7月10日掲載された。特に、網膜出血やロート斑が高頻度に認められるという。 白血病では、白血病細胞による眼組織の直接浸潤、血球減少や白血球増多などの血液学的異常、あるいは化学療法や免疫抑制療法により、眼球およびその付属器に多彩な所見が現れるが、そういった所見の出現率に関するデータは少ない。Laimon氏らは2022年1月~2023年2月に、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)と新規診断された患者の眼科所見の出現率を詳細に検討した。 解析対象患者数は222人で平均年齢が43.45±17.35歳、男性61.7%であり、AMLが144人(64.9%)、ALLが78人(35.1%)だった。研究登録以前から眼疾患のある患者は除外されている。 全体で96人(43.2%)に眼科所見が認められ、そのうち4人(1.8%)は視力を喪失していた。出現率の高い所見は網膜出血(19.8%)とロート斑(17.1%)であり、そのほかに、眼瞼腫脹(4.1%)、眼瞼の斑状出血(3.2%)、眼瞼下垂(1.8%)、兎眼(0.5%)、結膜下出血(5.9%)、結膜浮腫(0.9%)、網膜静脈のうっ血・蛇行(4.1%)、網膜前出血(3.2%)、硝子体出血(3.2%)、黄斑症(2.3%)、網膜浸潤(1.8%)、滲出性網膜剥離(1.8%)、軟性白斑(0.9%)、網膜静脈閉塞(0.5%)、乳頭浮腫(2.8%)、視神経乳頭浸潤(1.8%)、視神経乳頭蒼白(1.8%)、眼窩病変(3.2%)、眼球運動障害(1.4%)などが認められた。 AMLとALLを比較した場合、何らかの所見を有する割合はAMLの方が高く(50.0対30.8%〔P=0.028〕)、所見別に見ても、網膜出血(25.7対9.0%〔P=0.003〕)、ロート斑(20.8対10.3%〔P=0.046〕)の出現率に有意差があった。 眼科所見と血液学的パラメータとの関連を検討すると、網膜出血はヘモグロビン低値(P=0.021)や中枢神経浸潤発生率の低下(P=0.021)と関連しており、また予後リスクが中リスクまたは高リスクの患者が多かった(P=0.002)。眼瞼の斑状出血は中枢神経浸潤(P=0.045)と関連しており、網膜浸潤(P=0.006)や滲出性網膜剥離(P=0.001)は芽球割合が高いことと関連していた。その一方、眼瞼下垂は芽球割合の低さと関連していた(P=0.04)。 Laimon氏らは、「血液がん患者の眼病変の検出や管理において、眼科医と血液腫瘍医の協力が極めて重要である。また、これらの患者の予後、特に生命予後との関連を明らかにするため、より大規模なコホートでの研究が求められる」と述べている。

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第240回 ウイルス学者が自身の乳がんを手ずから精製したウイルスで治療

50歳の女性科学者が研究室で手ずから作ったウイルスで自身の乳がんを治療し、成功しました。クロアチアのザグレブ大学のBeata Halassy氏は2016年に乳がんと診断され、その2年後の2018年にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を再発します。さらに2020年にはかつて乳房切除したところの最初は小さかった漿液腫が直径2cmの固形腫瘍へと進展して、2回目の再発に直面しました1)。MRI/PET-CT検査で転移やリンパ節への移行は認められなかったものの、腫瘍は胸筋や皮膚に達していました。Halassy氏はその再発も手に余るTNBCであろうと覚悟し、がん細胞を死なせ、抗腫瘍免疫を促す腫瘍溶解性ウイルスに似たウイルスを腫瘍へ投与する治療をする、と彼女を診る腫瘍科医に告げました。腫瘍溶解性ウイルス治療(OVT)の経過を観察することを腫瘍科医は了承し、有害事象や腫瘍進展の際にOVTを止めて定番療法が始められるようにしました。OVTの臨床試験は進行した転移を有するがんをもっぱら対象としてきましが、転移前のがんを対象とする開発も始まっています。たとえば、転移前の乳がんのOVT込み術前治療を検討した第I/II相試験で奏効率向上効果が示唆されています2)。Halassy氏はOVTの専門家ではありませんが、ウイルスの培養や精製の経験はOVT治療の実行の自信となりました。Halassy氏はかつて研究で扱ったことがある2つのウイルスを順番に自身のがんに投与しました。その1つは小児ワクチン接種で安全なことが知られる麻疹ウイルス(MV)のエドモンストンザグレブ株です。もう1つは副作用といえばせいぜい軽いインフルエンザ様症状を引き起こすぐらいで、ヒトにほとんど無害な水疱性口内炎ウイルス(VSV)のインディアナ株です。MVは乳がんで豊富に発現する分子2つを足がかりにして細胞に侵入し、VSVはマウスでの検討で乳がん阻止効果が認められています。Halassy氏の共同研究者はHalassy氏が準備したそれらウイルスをHalassy氏の腫瘍に2ヵ月にわたって直接注射しました。幸いOVTはうまくいき、もとは2.47cm3だった腫瘍は0.91cm3へと大幅に縮小しました。硬すぎて注射針を刺すのが極めて困難だった腫瘍は、治療後にやわ(softer)になって容易に注射できるようになりました1)。また、侵襲していた胸筋や皮膚から離脱し、手術で取り除きやすくなりました。全身の副作用といえば発熱と寒気ぐらいで、深刻な副作用は認められませんでした。取り出した腫瘍を調べたところ、免疫細胞のリンパ球が腫瘍塊の45%を占めるほどにがっつり侵入しており、リンパ球と線維組織が豊富で腫瘍細胞が見当たらない部分もありました。そのような豊富な線維化は昔ながらの術前化学療法での完全寛解後にしばしば認められます。どうやらOVTは目当ての効果を発揮して免疫系の攻撃を導いたようです。取り出した腫瘍にHER2が認められたことからHalassy氏は手術後に抗HER2抗体トラスツズマブを1年間使用しました。そして手術後に再発なしで45ヵ月を過ごすことができています。数多のジャーナルが掲載拒否Halassy氏の手ずからのウイルス治療の報告は十数ものジャーナルに却下された後、今夏8月にようやくVaccines誌に掲載されました。Halassy氏の自己治療(self-experimentation)の掲載を拒否したジャーナルの倫理上の懸念は意外なことではないとの法と医学の専門家Jacob Sherkow氏の見解がNattureのニュースで紹介されています3)。掲載したら患者が定番の治療を拒んでHalassy氏のような治療を試すことを促してしまうかもしれないということが問題なのだとSherkow氏は言っています。一方、自己治療の経験が埋没しないようにする手立ても必要だとSherkow氏は考えています。Halassy氏もSherkow氏が指摘するような心配は心得ており、がんの最初の治療手段として腫瘍溶解性ウイルスを自己投与してはいけないと言っています1)。そもそも、実行には多大な科学的素養と技術を要する自身の治療を真似ようとする人はいないだろうとHalassy氏は踏んでいます。Halassy氏が望むのは、自身の経験ががんの術前治療でのOVTの使用を検討する正式な臨床試験が進展することです。いまやHalassy氏の経験から新たな道が生まれようとしています。この9月にHalassy氏は家畜のがんを腫瘍溶解性ウイルスで治療する取り組みへの資金を手に入れました3)。目指すものが自身の自己治療の経験によってまったく違うものになったとHalassy氏は言っています。参考1)Forcic D, et al. Vaccines (Basel). 2024;12:958. 2)Soliman H, et al. Clin Cancer Res. 2021;27:1012-1018.3)This scientist treated her own cancer with viruses she grew in the lab / Nature

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再発・転移子宮頸がんへのtisotumab vedotin、日本人でも有望な結果/日本癌治療学会

 再発・転移子宮頸がんに対する新規ADC・tisotumab vedotinは、担当医師の選択による化学療法と比較して全生存率を有意に改善したことが昨年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2023)で報告された。この国際共同第III相ランダム化非盲検試験innovaTV 301の日本人のサブグループの解析結果を、第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)において久留米大学の西尾 真氏が発表した。・対象:再発・転移子宮頸がん患者(化学療法+ベバシズマブ、抗PD-(L)1療法後に病勢進行)・試験群:tisotumab vedotin(2.0mg/kg、3週ごと:TV群)対照群:医師選択の化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド:CT群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・全体集団502例中、日本人は101例(TV群50例、CT群51例)だった。日本人サブグループは年齢中央値50歳、92%が転移、63%がベバシズマブ、9%が抗PD-(L)1療法を受けていた。2023年7月24日のデータカットオフ時点における追跡期間の中央値は13.7ヵ月だった。【OS】(中央値)全体:TV群11.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.8~14.9)、CT群9.5ヵ月(95%CI:7.9~10.7)日本人:TV群15.0ヵ月(95%CI:9.7~NE)、CT群8.5ヵ月(95%CI:6.8~10.6)(ハザード比)全体:0.70(95%CI:0.54~0.89)日本人:0.45(95%CI:0.27~0.77)【PFS】(中央値)全体:TV群4.2ヵ月(95%CI:4.0~4.4)、CT群2.9ヵ月(95%CI:2.6~3.1)日本人:TV群4.0ヵ月(95%CI:3.0~4.4)、CT群2.0ヵ月(95%CI:1.5~3.0)(ハザード比)全体:0.67(95%CI:0.54~0.82)日本人:0.63(95%CI:0.42~0.95)【ORR】全体:TV群17.8%、CT群5.2%日本人:TV群24%、CT群2%・日本人サブグループにおける主な治療関連有害事象は、TV群では結膜炎(47%[Grade3以上0%])、悪心(39%[0%])、末梢感覚神経障害(37%[2%])、CT群では悪心(42%[6%])、貧血(42%[21%])、好中球減少症(24%[20%])、好中球数減少(24%[12%])であった。 西野氏は「innovaTV 301試験の日本人サブグループの解析結果は全体集団と一致しており、TVはCTと比較してすべての評価項目で有意な改善をもたらし、安全性プロファイルも同等だった。TVは再発転移子宮頸がんの日本人患者において、化学療法後の次療法として有望だろう」とまとめた。 この結果を受け、tisotumab vedotinは2次または3次治療の再発または転移を有する子宮頸がんを適応として、日本における承認申請が行われている。

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多発性骨髄腫におけるCAR-T細胞の製造不良の要因/京都大学

 CAR-T細胞療法は、再発難治多発性骨髄腫の管理を大幅に改善した。しかしCAR-T細胞には、製造過程で一部に発生する細胞増殖不良による「製造不良」という問題がある。製造不良は治療の大きな遅れや、その間の病勢進行につながるため、治療計画に重大な影響を与える。製造不良の実態把握とリスク因子の同定が急務とされていた。 そのようななか、骨髄腫患者におけるCAR-T細胞製造不良リスクを特定するため、日本でide-cel(商品名:アベクマ)治療を受けた患者の全国コホート研究が実施された。対象はide-cel投与のための白血球アフェレーシスを受けた患者である。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は154例で、そのうち13例(8.4%)で製造不良が発生した。・製造不良例では成功例に比べ、診断時の17p欠失率が高く(38.5% vs.14.9%)、アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤治療が多く(53.8% vs.23.4%)、またアフェレーシス前の化学療法ライン数が多かった(中央値6 vs.5)。・製造不良例では成功例に比べ、ヘモグロビン値(8.6 vs.10.0g/dL)、血小板数(5.9 vs.13.8x104/μL)、CD4/CD8比(0.169 vs.0.474)が有意に低かった。・アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤使用は、血小板数とCD4/CD8比低下に関連していた。

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ペムブロリズマブのNSCLC周術期治療(KEYNOTE-671)は日本人でも有効/日本肺癌学会

 ペムブロリズマブの非小細胞肺がん(NSCLC)周術期治療(KEYNOTE-671)は米国、欧州に続き、本邦でも2024年8月28日にNSCLCにおける術前・術後補助療法の適応を取得している。この根拠となった第III相「KEYNOTE-671試験」における日本人集団の結果について、聖マリアンナ医科大学 呼吸器外科主任教授の佐治 久氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル(ペムブロリズマブ群:397例)対照群:プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル(プラセボ群:400例)評価項目:[主要評価項目]無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)[副次評価項目]病理学的奏効(mPR)、病理学的完全奏効(pCR)、有害事象など 追跡期間中央値36.6ヵ月の時点における全体集団のEFS中央値は、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月、プラセボ群では18.3ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.48~0.72)。OS中央値は、ペムブロリズマブ群では未到達、プラセボ群では52.4ヵ月であった(HR:0.72、95%CI:0.56~0.93、p=0.0052[片側])。 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・全体集団797例中、日本人は82例(10.3%)(ペムブロリズマブ群39例、プラセボ群43例)であった。手術に至った割合はペムブロリズマブ群85%(33例)、プラセボ群91%(39例)であり、全体集団(ペムブロリズマブ群82%、プラセボ群79%)より良好であった。・データカットオフ時点(2023年7月10日)におけるEFS中央値は、ペムブロリズマブ群では未到達、プラセボ群では32.8ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.33~1.19)。3年EFS率は、それぞれ66.1%、45.1%であった。・OS中央値は、両群ともに未到達であった(HR:0.87、95%CI:0.34~2.20)。3年OS率はペムブロリズマブ群では78.0%、プラセボ群では77.9%であった。・ペムブロリズマブ群のmPR率は28.2%(95%CI:15.0~44.9)、pCR率は12.8%(95%CI:4.3~27.4)、プラセボ群のmPR率は7.0%(95%CI:1.5~19.1)、pCR率は2.3%(95%CI:0.1~12.3)であり、ペムブロリズマブ群で良好であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ群59%(23例)、プラセボ群47%(20例)に認められ、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)およびインフュージョンリアクション(IRR)は、ペムブロリズマブ群で18%(7例)に認められた。両群ともに死亡に至ったTRAE、irAE、IRRは認められなかった。 佐治氏は、今回の有効性、安全性の結果はKEYNOTE-671試験の全体集団の結果と同等であるとし、「日本人におけるペムブロリズマブの術前・術後補助療法の使用を支持するものである」とまとめた。

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PIK3CA変異進行乳がん1次治療、inavolisib追加でPFS改善/NEJM

 PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がん患者の治療において、パルボシクリブ+フルベストラントにプラセボを加えた場合と比較して、パルボシクリブ+フルベストラントにPI3Kα阻害薬inavolisibを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長した一方で、一部の毒性作用の発生率が高いことが、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏らが実施した「INAVO120試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月31日号に掲載された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 INAVO120試験は、進行乳がんにおけるinavolisib追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年1月~2023年9月に28ヵ国で患者を登録した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がんの女性(閉経の前/中/後かは問わない)または男性で、術後補助内分泌療法中または終了後12ヵ月以内に再発した患者であった。 被験者を、1次治療としてinavolisib(9mg、1日1回、経口投与)とパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(inavolisib群)、またはプラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、担当医の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までの期間)であった。全生存率は有意差がない 325例を登録し、inavolisib群に161例、プラセボ群に164例を割り付けた。全体の年齢中央値は54.0歳(範囲:27~79)、319例(98.2%)が女性、195例(60.0%)が閉経後女性であり、167例(51.4%)が3つ以上の臓器に転移を、260例(80.0%)が内臓(肺、肝、脳、胸膜、腹膜)転移を有し、269例(82.8%)が過去に術前または術後補助化学療法を受けていた。追跡期間中央値は、inavolisib群21.3ヵ月、プラセボ群21.5ヵ月だった。 PFS中央値は、プラセボ群が7.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~9.3)であったのに対し、inavolisib群は15.0ヵ月(11.3~20.5)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.32~0.59、p<0.001)。また、感度分析として盲検下独立中央判定による無増悪生存期間の評価を行ったところ、結果は担当医判定と一致していた(0.50、0.36~0.68、p<0.001)。 一方、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月時の全生存率は、inavolisib群がそれぞれ97.3%、85.9%、73.7%、プラセボ群は89.9%、74.9%、67.5%であり、両群間に有意差を認めなかった。死亡のHR(inavolisib群vs.プラセボ群)は0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、事前に規定された有意差の境界値(p<0.0098)を満たさなかった。 客観的奏効率はinavolisib群が58.4%、プラセボ群は25.0%(群間差:33.4%ポイント、95%CI:23.3~43.5)、奏効期間中央値はそれぞれ18.4ヵ月および9.6ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.33~0.99)であった。重篤な有害事象inavolisib群24.1%、試験薬投与中止6.8% Grade3/4の有害事象は、inavolisib群が80.2%、プラセボ群は78.4%で発現した。このうちinavolisib群で多かったGrade3/4の有害事象として、高血糖(5.6% vs.0%)、口内炎/粘膜炎症(5.6% vs.0%)、下痢(3.7% vs.0%)を認め、Grade3/4の皮疹は両群とも観察されなかった。 重篤な有害事象はinavolisib群24.1%、プラセボ群10.5%、Grade5(致死性)の有害事象はそれぞれ3.7%および1.2%で発現し、有害事象による試験薬の投与中止は6.8%(inavolisib 6.2%、パルボシクリブ4.9%、フルベストラント3.1%)および0.6%(有害事象によるパルボシクリブ、フルベストラントの投与中止はない)で発現した。 著者は、「本研究では、これらの患者集団において、総投与量を用いたPI3Kα阻害薬(inavolisib)+CDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)+内分泌療法(フルベストラント)の併用療法は、PFSを大幅に改善した。一部の有害事象の発現率が高いものの安全性プロファイルは良好であったことから、この治療法は新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

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乳がん薬物療法の最新トピックス/日本癌治療学会

 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で企画されたシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」において、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が、乳がん薬物療法の最新トピックスとして、KEYNOTE-522レジメンの使いどころ、HER2ゼロ/低発現/超低発現の課題、新たなPI3K阻害薬inavolisibを取り上げ、講演した。高リスク早期TN乳がんへのKEYNOTE-522レジメンの使いどころ 切除可能トリプルネガティブ(TN)乳がんの標準治療としては、術前に化学療法を行い術後にカペシタビンやオラパリブを投与する治療があるが、KEYNOTE-522試験の結果から術前・術後にペムブロリズマブを使えるようになった。 KEYNOTE-522試験は、主にStageII/IIIのTN乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセル → AC/ECの術前・術後にペムブロリズマブを併用し、予後改善を検討した第III相試験である。本試験で、病理学的完全奏効(pCR)割合、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間の改善が認められ、現在、ペムブロリズマブ併用レジメンが標準治療となっている。また、サブグループ解析において、StageやPD-L1の発現、pCR/non-pCRにかかわらず一貫した有効性が示され、StageII/IIIに広く使用できる。一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)のリスクがある。術前治療においてGrade3以上のirAEが13%に認められており、5年EFSの9%のベネフィットとのバランスが議論になっているという。 今回、尾崎氏はKEYNOTE-522レジメンの日常診療におけるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち4つを取り上げ、自施設(がん研究会有明病院)の方針や考えを紹介した。CQ:T2N0M0 cStageIIAのような比較的リスクの低い症例に対しても使用すべきか?T2N0症例における5年EFSは10%の差があり、TN乳がんは再発すると予後が約2年であることから、使用するようにしている。CQ:ホルモン受容体が弱陽性(ER 1~9%)の症例に使用すべきか?KEYNOTE-522試験にはER 1~9%は含まれていないが、ER 1~9%はTN乳がんとして治療すべきという考えがあり、最近の論文ではThe Lancet Regional Health-Europe誌にもそのように記載されている。ESMO2024でER 1~9%に対するリアルワールドデータが報告され、pCR割合は75%とTN乳がんと同程度だった。がん研究会有明病院ではER 1~9%もTN乳がんと診断して使用している(必ずしも保険が適用されるとは限らないため、各施設での判断が必要)。CQ:アントラサイクリンパートでG-CSF製剤の予防投与をするか?KEYNOTE-522試験での発熱性好中球減少症の発現割合は18%と報告されている。がん研究会有明病院の青山 陽亮氏の発表では22.9%と報告されており(JSMO2024)、多くはアントラサイクリンパートで発現しているため、G-CSF製剤の1次予防投与を推奨している。CQ:術後の最適な治療法は?pCR/non-pCRにかかわらずペムブロリズマブの使用が標準治療になっているが、non-pCRの場合のカペシタビン、生殖細胞系列BRCA病的バリアントを有する場合のオラパリブも世界的に標準治療と位置付けられている。pCRの場合にペムブロリズマブを省略可能かどうかが世界中で議論されており、それを検討するためのOptimICE-pCR試験が2,000例規模で進行中である。また、non-pCRではより有効な治療選択肢が必要とされており、その1つとしてdatopotamab deruxtecan+デュルバルマブが検討されている(TROPION-Breast03試験)。また、周術期ペムブロリズマブ投与後の再発症例は非常に予後不良であることから、再発症例に対してペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブで比較する医師主導治験(WJOG16522B、PRELUDE試験)を開始予定である(治験調整事務局:尾崎氏)。HER2ゼロ/低発現/超低発現の区別は喫緊の課題 次に尾崎氏は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の適応に関連するHER2ゼロ/低発現/超低発現について取り上げた。 HR+HER2低発現/超低発現乳がんを対象としたDESTINY-Breast06試験において、T-DXdの有効性が示された。HER2超低発現の定義は、IHC0で10%以下の細胞に不完全な染色がある場合とされており、HER2-乳がんのうち20~25%とされている。この超低発現乳がんでも低発現乳がんと一貫した有効性が報告された。ESMO2024では、各施設でIHC0と判断された乳がんのうち、中央では24%がHER2低発現、40%が超低発現と判定されたとの報告があり、約6割がT-DXdのベネフィットが得られる可能性がある。T-DXdは今年8月、FDAからHER2低発現/超低発現の転移再発乳がん治療を対象として「画期的治療薬」として指定されており、日本でもすでに効能・効果追加の一部変更承認申請がなされていることから、尾崎氏は「HR+HER2ゼロとHER2低発現、超低発現の区別が喫緊の課題」と述べた。新規PI3K阻害薬inavolisibがFDA承認、日本における課題 尾崎氏は最後に、昨年末のサンアントニオ乳がんシンポジウム2023で初めて第III相INAVO120試験の主要評価項目である無増悪生存期間が発表され、そのわずか10ヵ月後の今年10月10日にFDAで承認されたPI3K阻害薬のinavolisibについて紹介した。 INAVO120試験は、術後内分泌療法中に再発もしくは終了後12ヵ月以内に再発し、PIK3CA変異があるHR+HER2-乳がんを対象とした試験で、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの3剤併用の有効性が示された。 現在、尾崎氏が考えるHR+HER2-乳がんに対する薬物療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を投与後、PIK3CA/AKT/PTEN変異の有無によって2次治療を選択、その後、ホルモン療法耐性、ホルモン感受性なし、visceral crisisの場合は抗体薬物複合体や化学療法、という流れである。inavolisibは再発診断時からPIK3CA変異を検出する必要があるため、尾崎氏は「米国では、再発1次治療としてinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの併用がすでに承認され標準治療となるため、将来もしinavolisibが日本でも開発され承認されれば、日本でも同様に再発時点で遺伝子検査にてPIK3CA変異を確認する必要がある」と課題を提示した。

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「大腸癌治療ガイドライン」、主な改訂ポイントを紹介/日本癌治療学会

 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)では「がん診療ガイドライン作成・改訂に関する問題点と対応について」と題したシンポジウムが開かれた。この中で今年7月に発行された「大腸癌治療ガイドライン2024年版」について、作成委員会委員長を務めた東京科学大学 消化管外科の絹笠 祐介氏が、本ガイドラインの狙いや主な改訂ポイントを紹介した。大腸癌治療ガイドライン2024年版の変更点:CQに推奨の合意度を記載 「大腸癌治療ガイドライン」は2005年に初版を発行、その後7回の改訂を重ね、今回は第8版で2年ぶりの改訂となる。前回は薬物療法に関連した部分改訂だったが、今回は全領域を改訂し、クリニカル・クエスチョン(CQ)も刷新した。 大腸癌治療ガイドラインの特徴は、一般病院の医師が診療を行う際の指標になることを目的としていることだ。実臨床で使いやすいものとするため、多くのガイドラインが準拠する「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」は参考に留め、エビデンスと推奨の不一致を許容する方針としている。実務で使いやすいよう「できるだけ薄くする」ことも目指しており、今版のCQの数は28と旧版から変えず、本文や資料も凝縮することで157頁とほかのがん関連ガイドラインと比べてコンパクトになっている。 また、大腸癌治療ガイドライン2024年版からの変更点としては、CQにおける推奨の合意度を記載して委員の意見の相違が見えるようにしたこと、集学的治療が進む大腸がん治療を鑑みて補助療法に関しては関連領域の委員が合同で原案作成、推奨度の決定を行う形式に変更したことがある。さらに作成期間中を通してパブリックコメントを募集し、内容に反映させる試みも行った。 大腸癌治療ガイドライン2024年版で新設されたCQは以下のとおり。CQ3 大腸癌に対するロボット支援手術は推奨されるか?1)ロボット支援手術は、直腸癌手術の選択肢の1つとして行うことを強く推奨する(推奨度1・エビデンスレベルB、合意率:74%)。 2)また、結腸癌手術の選択肢の1つとして行うことを弱く推奨する(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率96%)→ロボット手術が保険適用となったことを踏まえて新設。CQ9 周術期薬物療法の前にバイオマーカー検査は推奨されるか?1)RAS、BRAF、ミスマッチ修復機能欠損(MSIもしくはMMR-IHC)検査を行うことを弱く推奨する(推奨度2・エビデンスレベルB、合意率78%)2)Stage II/III大腸癌の術後についてはミスマッチ修復機能欠損検査を行うことを強く推奨する(推奨度1・エビデンスレベルA、合意率96%)→バイオマーカーによる予後予測の有用性に関する報告を踏まえ、初めて関連するCQを設定。CQ12 直腸癌に対するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)は推奨されるか?直腸癌に対するTNTは行わないことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率:70%)CQ13 直腸癌術前治療後cCR症例に対するNon-Operative Management (NOM)は推奨されるか?行わないことを弱く推奨する。(推奨度 2・エビデンスレベル C、合意率:39%)→欧米を中心に広がりを見せるTNT(=術前の集学的治療)、NOM(=非手術管理)についてのCQを新設。いずれも「行わないことを弱く推奨」となったが、NOMに関しては委員の意見の相違も見られた。CQ19 切除可能肝転移に対する術前化学療法は推奨されるか?切除可能な肝転移に対する術前化学療法は行わないことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率:91%)CQ20 肝転移巣切除後に対する術後補助化学療法は推奨されるか? 肝転移巣切除後に対して術後補助化学療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルB、合意率:87%)→これまで術前術後が一緒になっていたCQを分けて新設。CQ22 大腸癌の卵巣転移に対して卵巣切除は推奨されるか?1)根治切除可能な同時性および異時性卵巣転移に対しては、切除することを強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルB、合意率74%)2)卵巣転移および卵巣転移以外の切除不能遠隔転移を同時に有する場合、薬物療法を選択するが、卵巣転移の増大による自覚症状がある場合は、卵巣転移の姑息切除を行うことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率91%)CQ28 肛門管扁平上皮癌に対して化学放射線療法は推奨されるか?遠隔転移を認めない肛門管扁平上皮癌患者に対して、化学放射線療法を行うよう強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルA、合意率100%)→大腸癌研究会のプロジェクト研究から得られた新たなエビデンスを踏まえ、卵巣転移、肛門管扁平上皮癌に関するCQを新設。CQ25 切除不能大腸癌に対する導入薬物療法後の維持療法は推奨されるか?オキサリプラチン併用導入薬物療法開始後に、患者のQOLなどを考慮して、維持療法に移行することを推奨する。1)FOLFOXIRI+BEV後のフッ化ピリミジン+BEV(推奨度1・エビデンスレベルA、合意率100%)2)FOLFOX/CAPOX/SOX+BEV後のフッ化ピリミジン+BEV(推奨度2・エビデンスレベルA、合意率65%)3)FOLFOX+CET/PANI後の5-FU+/-LV+CET/PANI(推奨度2・エビデンスレベルB、合意率91%)大腸癌治療ガイドライン2024年版の変更点:高齢者の定義引き上げ このほか、大腸癌治療ガイドライン2024年版では新たなエビデンスが集積した周術期薬物療法に関連した項目が大きく改訂され、「高齢者の術後補助療法」に関するCQ8では「高齢者」の定義が旧版の70歳から80歳に引き上げられるなど、各項目の見直しを行った。 完成後にはガイドライン評価委員会に外部評価を依頼した。この委員会はガイドラインの質担保のため専門委員、外部委員を含めた委員が専用のツールを使って評価をするもので、この評価の結果も掲載されている。 絹笠氏は「外部評価において指摘された患者参加、費用対効果の記載などは今後の課題だ。またガイドラインの実臨床への影響の評価、フューチャーリサーチクエスチョンへの対応、委員構成、発刊間隔なども今後の検討事項だと考えている。ガイドラインではCQが注目されるが、大腸癌治療ガイドライン2024年版は長年記載されていたCQを本文に落とし込むなど、1冊全体を充実させる工夫をした。ぜひ、全体に目を通していただきたい」とした。

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TN乳がんに対する初のADCサシツズマブ ゴビテカン、有効性と注意すべき有害事象/ギリアド

 2024年9月24日、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がん(TNBC)の治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)サシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)が本邦で承認された。10月29日にギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催され、岩田 広治氏(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床研究戦略部)が「トリプルネガティブ乳がんに新薬の登場」と題した講演を行った。ESMOガイドラインでは転移TNBCの2次治療として位置付け 欧米では同患者に対するサシツズマブ ゴビテカンは約3年前に承認・使用されており、2021年のESMO Clinical Practice Guideline1)ではPD-L1陽性患者に対する免疫療法、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬、PD-L1およびgBRCA陰性患者に対する化学療法などの次治療として位置付けられている。 乳がん領域で承認されたADCとしてはトラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ)、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)に続き3剤目となるが標的となる抗体が異なり、TNBCに対しては初めて承認されたADCとなる。岩田氏は、「新しい作用機序の薬剤が使えるようになることは朗報。われわれはこの新しい武器を有効に使っていかなければならない」と話した。ASCENT試験とASCENT-J02試験のポイント 国際第III相ASCENT試験(日本不参加)では、2レジメン以上の化学療法歴のある(術前化学療法後12ヵ月以内に再発した場合は1レジメンで参加可能)転移TNBC患者(529例)を対象として、サシツズマブ ゴビテカンと主治医選択による化学療法の有効性が比較された。PD-L1陽性で免疫チェックポイント阻害薬治療歴のある患者が26~29%、gBRCA陽性でPARP阻害薬治療歴のある患者が7~8%含まれており、再発診断から登録までの中央値は約15ヵ月であった。 最終解析の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン群4.8ヵ月vs.化学療法群1.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.413、95%信頼区間[CI]:0.33~0.517)、全生存期間(OS)中央値は11.8ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.514、95%CI:0.422~0.625)となり、サシツズマブ ゴビテカン群における改善が示されている2)。奏効率(ORR)は35% vs.5%であり、岩田氏はこの結果について「2レジメン以上の治療歴のある患者さんに対し、大きな治療効果といえる」と話した。 日本で実施された第II相ASCENT-J02試験においても、サシツズマブ ゴビテカン投与患者(36例)におけるPFS中央値は5.6ヵ月、OS中央値はNR、ORRは25%で、ASCENT試験で報告された有効性との一貫性が示されている。注意を払うべき有害事象と今後の展望 岩田氏は、有害事象の中でとくに注意すべきものとして好中球減少症、下痢や悪心などの消化器症状、脱毛を挙げた。Grade3以上の好中球減少症はASCENT試験で34%、ASCENT-J02試験で58%、下痢はそれぞれ10%、8.3%に認められた。欧米では好中球減少症への対策として60~70%で予防的G-CSF投与が行われているといい、岩田氏は好中球減少症のマネジメントが課題となると指摘した。 現在、転移・再発TNBCの1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカンの有効性を評価する臨床試験がすでに進行中であるほか、同様の機序の薬剤の開発も進んでいる。岩田氏は今後はそれらの薬剤との組み合わせや使い分けが重要になってくるとして、講演を締めくくった。

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NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の有効性・安全性(LIGHT-NING第4回中間解析)/日本肺癌学会

 国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の結果に基づき、進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、ニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。2試験の有効性の成績は、少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第4回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者544例(有効性解析対象515例)試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:318例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:226例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は15.2ヵ月であった。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.8%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/5.9%/1.3%、扁平上皮がんが27.6%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.3%/34.9%/9.4%/9.4%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ12.3%、42.0%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。また、StageIV(一部切除不能StageIIIを含む)/再発の割合は、CM 9LA群が78.9%/21.1%、CM 227群が69.0%/31.0%であり、CM227群で再発の割合が高く、遠隔転移の割合が低かった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.6%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は91.9%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.2%、有害事象が42.8%であった。・OS中央値は、CM 9LA群が21.7ヵ月、CM 227群が18.8ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ67.4%、61.8%、2年OS率はそれぞれ47.3%、44.0%であった。いずれの群でもPD-L1の発現状況による明らかな差はみられなかった。・PFS中央値は、CM 9LA群が6.8ヵ月、CM 227群が6.3ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.9%、36.1%、2年PFS率はそれぞれ21.0%、23.2%であった。いずれの群でもPD-L1の発現状況による明らかな差はみられなかった。・進行・再発別にみたOSの解析では、CM 9LA群におけるOS中央値はStageIV集団が17.6ヵ月、再発集団が29.2ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.89)。同様に、CM 227群ではそれぞれ13.9ヵ月、27.8ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(同:0.65、0.39~0.96)。・進行・再発別にみたPFSの解析でも、CM 9LA群におけるPFS中央値はStageIV集団が5.6ヵ月、再発集団が11.1ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(HR:0.70、95%CI:0.49~0.98)。同様に、CM 227群ではそれぞれ5.3ヵ月、10.0ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(同:0.71、0.50~0.99)。・医師判定に基づく奏効率は、40.1%(CM 9LA群:41.9%、CM 227群:37.4%)であった。・Grade3/4のTRAEは43.9%(CM 9LA群:53.5%、CM 227群:30.5%)に発現した。・治療関連死は3.7%(CM 9LA群:4.1%[13例]、CM 227群:3.1%[7例])に認められた。 本結果について、山口氏は「有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、いずれの群もPD-L1発現状況によっても治療効果に大きな差はみられなかったが、再発の集団で良好な傾向にあった。安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、CheckMate 227試験と同様であった」とまとめた。

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高リスク網膜芽細胞腫の術後CEV療法、3サイクルvs.6サイクル/JAMA

 片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助療法において、6サイクルの化学療法(CEV:カルボプラチン+エトポシド+ビンクリスチン)に対して3サイクルのCEV療法は5年無病生存率が非劣性であり、6サイクルのほうが有害事象の頻度が高く、QOLスコアの低下が大きいことが、中国・中山大学のHuijing Ye氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月21日号に掲載された。中国の非盲検無作為化非劣性試験 本研究は、病理学的高リスク網膜芽細胞腫患者に対する術後CEV療法の有効性に関して、6サイクルに対する3サイクルの非劣性の検証を目的とする非盲検無作為化試験であり、2013年8月~2024年3月に中国の2つの主要な眼治療施設で患者を登録した(Sun Yat-Sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成を受けた)。 高リスクの病理学的特徴(高度な脈絡膜浸潤、視神経後方への進展、強膜浸潤)を有する片眼性の網膜芽細胞腫に対する摘出術を受けた患者187例(年齢中央値25ヵ月[四分位範囲[IQR]:20.0~37.0]、女児83例[44.4%])を対象とした。これらの患児を、術後CEV療法を3サイクル行う群(94例)またはこれを6サイクル行う群(93例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は5年無病生存率とし、非劣性マージンを12%に設定した。無病生存は、無作為化から、局所再発、領域再燃、遠隔転移、対側眼の網膜芽細胞腫、2次原発がん、全死因死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間と定義した。5年全生存率には差がない 全例が試験を完了し、追跡期間中央値は79.0ヵ月(IQR:65.5~102.5)であった。無病生存イベントは19例(3サイクル群9例[9.6%]、6サイクル群10例[10.8%])発生した。局所領域の治療失敗を7例(4例[4.3%]、3例[3.2%])、遠隔転移を15例(7例[7.4%]、8例[8.6%])に認めた。 主要評価項目の推定5年無病生存率は、3サイクル群が90.4%、6サイクル群は89.2%(群間差1.2%、95%信頼区間[CI]:-7.5~9.8)であり、非劣性基準を満たした(非劣性のp=0.003)。ハザード比(HR)は0.89(95%CI:0.36~2.20)だった(p=0.81)。 5年全生存率(3サイクル群91.5% vs.6サイクル群89.3%、HR:0.78[95%CI:0.31~1.98]、p=0.61)は両群間に差はなかった。2歳以上の111例における健康関連QOLの評価では、術後6ヵ月時の身体機能、精神的機能、社会生活機能の低下が、3サイクル群で少ない傾向がみられた。 また、総費用、直接費用、間接費用は、いずれも6サイクル群に比べ3サイクル群で有意に少なかった(それぞれ42.4%、41.2%、43.0%低い、すべてp<0.001)。Grade1/2の有害事象が有意に少ない 有害事象は、3サイクル群で93例中75例(80.6%)に282件、6サイクル群で93例中89例(95.7%)に681件発現した。Grade1/2の有害事象は3サイクル群で有意に少なかった(78.5% vs.95.7%、p<0.001)。治療関連死は両群とも認めなかった。 著者は、「3サイクルのCEV療法は、片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助化学療法として6サイクルCEVに代わる有効な治療法となる可能性がある」「3サイクルCEVは、治療期間の短縮に伴うQOLの向上や経済的負担の軽減に寄与すると考えられる」「本試験は非盲検デザインであり、非劣性マージンは12%と大きめに設定されているため、慎重な解釈が求められる」としている。

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胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法、承認後のリアルワールドデータ/日本癌治療学会

 進行再発胃がん1次治療に対するニボルマブ+化学療法は、CheckMate 649試験およびATTRACTION-4試験の結果に基づき、本邦では2021年11月に承認された。本レジメンの実臨床での有用性を検討する観察試験であるG-KNIGHTが行われ、第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)では、倉敷中央病院の仁科 慎一氏が本試験の2回目の解析結果を発表した。今回の解析は2023年11月までのデータに基づいて実施された。 主な結果は以下のとおり。・2021年11月~2023年6月に1次治療としてニボルマブ+化学療法を受けた切除不能・HER2陰性胃がん患者を対象に、日本全国23施設から539例が登録され、527例が解析対象となった。・追跡期間中央値は10.3ヵ月(SD 6.7~15.0)、年齢中央値は70.3歳(24~87)、65.5%が男性、90.9%がECOG PS 0または1であった。・ニボルマブと併用された化学療法は、SOX(74.6%)、CapeOX(6.8%)、FOLFOX(20.7%)であった。・PD-L1 CPS検査実施率は85.6%(453/529)であり、陽性のうち<1が19.7%、1~5が31.7%、≧5が47.9%であった。・奏効率(ORR)は65.6%(95%信頼区間[CI]:59.9~70.9)、病勢コントロール率(DCR)は93.0%(95%CI:89.5~95.6)であった。・ORRのサブグループ解析では、MSIステータス(MSI-H:88.9%、MSS:65.4%)、腹膜播種(なし:72.9%、あり:53.2%)などで差が見られた。・PD-L1 CPSはORRと関連していた(≧5:72.5%、1~5:61.7%、<1:55.6%)ものの、無増悪生存期間(PFS)とは関連していなかった。・PFS中央値は6.9ヵ月(95%CI:6.2~7.6)、全生存期間(OS)中央値は16.4ヵ月(95% CI:14.1~18.4)であった。・治療関連有害事象(TRAE)は481例(91.3%)で発生し、Grade3以上は213例(40.4%)、そのうち免疫関連有害事象は136例(25.8%)、Grade3以上は41例(7.8%)で認められた。 仁科氏は「追跡期間中央値10.3ヵ月の527例のデータに基づく2回目の中間解析により、実臨床におけるニボルマブ+化学療法の有効性と安全性に関する最新の見識が得られた。有効性、安全性とも既報と大きな相違点はなかった」とまとめた。

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レトロウイルス感染症-基礎研究・治療ストラテジーの最前線-/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が京都市で開催され、12日のPresidential Symposiumでは、Retrovirus infection and hematological diseasesに関し5つの講演が行われた。本プログラムでは、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発がんメカニズムや、ATLの大規模全ゲノム解析の結果など、ATLの新たな治療ストラテジーにつながる研究や、ATLの病態解明に関して世界に先行し治療開発にも大きく貢献してきた日本における、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連疾患の撲滅といった今後の課題、AIDS関連リンパ腫に対する細胞治療や抗体療法の検討、HIVリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法など、最新の話題が安永 純一朗氏(熊本大学大学院生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学)、片岡 圭亮氏(慶應義塾大学医学部 血液内科)、石塚 賢治氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 人間環境学講座 血液・膠原病内科学分野)、岡田 誠治氏(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野)、白川 康太郎氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)より報告された。ATLの発がんメカニズムに関与するHTLV-1 bZIP factor(HBZ)およびTax HTLV-1はATLの原因レトロウイルスであり、細胞間感染で感染を起こす。主にCD4陽性Tリンパ球に感染し、感染細胞クローンを増殖させる。HTLV-1がコードするがん遺伝子にはTaxおよびHBZ遺伝子が含まれ、Taxはプラス鎖にコードされ一過性に発現する。一方、HBZはマイナス鎖にコードされ恒常的に発現する。これらの遺伝子の作用により、感染細胞ががん化すると考えられる。HBZはATL細胞を増殖させ、HBZトランスジェニックマウスではT細胞リンパ腫や炎症が惹起される。また、HBZタンパクをコードするだけでなく、RNAとしての機能など多彩な機能を有している。HBZトランスジェニックマウスではHBZが制御性Tリンパ球(Treg)に関連するFoxp3、CCR4、TIGITなどの分子の発現を誘導、TGF-β/Smad経路を活性化してFoxp3発現を誘導し、この経路の活性化を介し、HTLV-1感染細胞をTreg様に変換し、HTLV-1感染細胞、ATL細胞の免疫形質を決定していると考えられる。 ATL症例の検討では、TGF-β活性化により、HBZタンパク質は転写因子Smad3などを介しATL細胞核内に局在し、がん細胞の増殖が促進される。HBZ核内局在はATL発症において重要であり、TGF-β/Smad経路はATL治療ストラテジーの標的になりうると考えられる。Taxはウイルスの複製やさまざまな経路の活性化因子であり、宿主免疫の主な標的であり、ATL細胞ではほぼ検出されない。ATL細胞株のMT-1はHTLV-1抗原を発現するが、MT-1細胞ではTaxの発現は一過性である。また細胞発現解析では、Tax発現が抗アポトーシス遺伝子の発現増加と関連し、細胞増殖の維持に重要であることが示された。ATL症例では約半数にTaxの転写産物が検出され、Taxの発がんへの関与が考えられる。発がんメカニズムに関与するHBZおよびTax遺伝子の多彩な機能の解析がATLの治療ストラテジーの開発につながると考えられる。ATLの全ゲノム解析―遺伝子異常に基づく病態がより明らかに ATLは、HTLV-1感染症に関連する急速進行性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)であり、ATL発症時に重要な役割を果たす遺伝子異常について、全エクソン解析や低深度全ゲノム解析など網羅的解析が行われてきた。しかし、構造異常やタンパク非コード領域における異常など、ATLのゲノム全体における遺伝子異常の解明は十分ではなかった。 今回実施された、ATL150例を対象とした大規模全ゲノム解析は、腫瘍検体における異常の検出力がこれまでの解析より高い高深度全ゲノム解析(WGS)である。タンパクコード領域および非コード領域における変異、構造異常(SV)、コピー数異常(CNA)を解析した結果、56個のドライバー遺伝子が同定され、56個中CICなど11個の新規ドライバー遺伝子があり、このうちCIC遺伝子はATL患者の33%が機能喪失型の異常を認め、CIC遺伝子の長いアイソフォームに特異的な異常(CIC-L異常)であり、ATLにおいて腫瘍抑制遺伝子として機能していた。さらに、CIC遺伝子とATN1遺伝子異常の間には相互排他性が見られ、CIC-ATXN1複合体はATL発症に重要な役割を果たすと考えられた。また、CIC-LノックアウトマウスではFoxp3陽性T細胞数が増加しており、CIC-LがT細胞の分化・増殖を制御するうえで選択的に作用すると考えられた。 また、ATL新規ドライバー遺伝子RELは、遺伝子後半が欠損する異常をATL患者の13%に認め、遺伝子の構造異常はATL同様、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でも高頻度に認められた。REL遺伝子の構造異常はREL発現上昇やNF-κB経路の活性化と関連し、腫瘍化を促進すると考えられた。 ATLにおけるタンパク非コード領域、とくにスプライス部位の変異の集積が免疫関連遺伝子を中心に繰り返し認められ、ATLのドライバーと考えられた。今回の解析で得られたドライバー遺伝子異常の情報をクラスタリングし、2つのグループに分子分類した結果、両群の臨床病型や予後が異なることが示された。全ゲノム解析研究はATLの新たな診断および治療薬の開発につながると考えられる。ATL治療の今後 ATLは、aggressive ATL(急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型)とindolent ATL(くすぶり型、予後不良因子を有さない慢性型)に分類され、それぞれ異なる治療戦略が取られる。aggressive ATLの標準治療(SOC)は多剤併用化学療法であり、VCAP-AMP-VECP(ビンクリスチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン―ドキソルビシン+ラニムスチン+プレドニゾロン―ビンデシン+エトポシド+カルボプラチン+プレドニゾロン)の導入により、最終的に生存期間中央値(MST)を1年以上に延長することが可能となった。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)はHTLV-1キャリアの高齢化に伴い、全身状態が良好な70歳未満の患者におけるSOCとして施行される。2012年以降、日本ではモガムリズマブ、レナリドミド、ブレンツキシマブ ベドチン、ツシジノスタット、バレメトスタットの5剤が新規導入され、初発例に対するモガムリズマブおよびブレンツキシマブ ベドチン+抗悪性腫瘍薬の併用や、再発・難治例に対する単剤療法として使用されている。indolent ATLに対しては日本では無治療経過観察であるが、海外では有症候の場合IFN-αとジドブジン(IFN/AZT)の併用が選択される。しかし、いずれもエビデンス不足であり、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は両群の治療効果を確認する第III相試験を進行中であり、結果は2026年に公表予定である。 日本の若年HTLV-1感染者は明らかに減少し、新規に診断されたATL患者は高齢化し、70歳以上と予測される。この動向は2011年から開始された母乳回避を推奨し、母子感染を抑止する全国的なプログラムによりさらに推進されると考えられる。今後は高齢ATL患者に対するより低毒性の治療法の確立と、全国プログラムの推進によるHTLV-1感染、およびATLなどHTLV-1関連疾患の撲滅が課題である。AIDS関連悪性リンパ腫の現状 リンパ腫はAIDSの初期症状であり、AIDS関連悪性リンパ腫はHIV感染により進展し、AIDS指標疾患として中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)および非ホジキンリンパ腫が含まれる。悪性腫瘍は多剤併用療法(cART)導入後もHIV感染者の生命を脅かす合併症であり、リンパ腫はHIV感染者の死因の最たるものである。HIV自体には腫瘍形成性はなく、悪性腫瘍の多くは腫瘍ウイルスの共感染によるものである。 エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)はAIDS関連リンパ腫の最も重要なリスクファクターであり、HIV感染による免疫不全、慢性炎症、加速老化、遺伝的安定性はリンパ腫形成を亢進すると考えられている。AIDS関連リンパ腫ではEBV潜伏感染が一般的に見られ、EBV感染はDLBCL発症と深く関連するが、予後不良な形質芽球性リンパ腫(PBL)、原発性滲出性リンパ腫(PEL)との関連は不明である。バーキットリンパ腫(BL)、およびPBLは最近増加している。BLおよびホジキンリンパ腫(HD)の治療成績と予後はおおむね良好である。 AIDS関連悪性リンパ腫の治療はこれまで抗腫瘍薬と、プロテアーゼインヒビター(PI)のCYP3A4代謝活性阻害による薬物相互作用の問題があった。近年、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)の導入によりCYP3A4阻害が抑えられ、AIDS関連悪性リンパ腫患者の予後は非AIDS患者と同等になっている。 高度免疫不全マウスにヒトPEL細胞を移植したPELマウスモデルでは、PELにアポトーシスが誘導された。AIDS関連リンパ腫に対する細胞療法や抗体療法の効果が期待される。リザーバー細胞を標的としたHIV根治療法 抗レトロウイルス療法(ART)により、HIVは検出不可能なレベルにまで減少できるが、ART中止数週間後に、HIVは潜伏感染細胞(リザーバー)から複製を開始する。HIV根治達成には、HIVリザーバーの体内からの排除が必要である。 HIV根治例は2009年以来、現在まで世界で7例のみである。全例が白血病など悪性腫瘍を発症し、同種造血幹細胞移植(SCT)を受け、数年はARTなしにウイルス血症のない状態を維持した。最初のHIV根治例はCCR5Δ32アレルに関してホモ接合型(homozygous)であるドナーからSCTを受けた症例であり、5例がこのSCTを受けた。 キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法はHIV感染症領域への応用が期待されている。そこで、アルパカを免疫して作製したVHH抗体をもとに、より高効率にHIVに対する中和活性を示す抗HIV-1 Env VHH抗体を開発した。新たなHIV感染症の治療として、CAR-T療法への応用などを試みている。 HIVリザーバー細胞を標的として排除するアプローチとして、latency reversal agents(LRA)によるshock and killが提唱され、HIV根治のためのLRA活性を有するさまざまな薬剤の研究、開発が進められている。HIV潜伏感染細胞モデル(JGL)を用いたCRISPRスクリーニングにより、4つの新規潜伏感染関連遺伝子、PHB2、HSPA9、PAICS、TIMM23が同定され、これら遺伝子のノックアウトによりHIV転写の活性化が誘導され、潜伏感染細胞中にウイルスタンパクの発現が認められた。また、PHB2、HSPA9、TIMM23のノックアウトにより、ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)が誘導された。Mitophagy activatorのウロリチンA(UA)およびその他のマイトファジー関連化学物質は、潜伏細胞実験モデルにおいてHIV転写を再活性することが示され、in vivoにおけるHIV再活性化の誘導についての臨床試験が検討されている。 ウイルス酵素をターゲットとする最近のART療法ではHIV根治は望めず、ウイルス産生が可能なリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法が求められている。 本プログラムでは、ATLやAIDS関連リンパ腫などの病態解明や治療法について最新の話題が報告され、今後の治療ストラテジーの開発につながることが期待される。

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大阪大学医学部 外科学講座消化器外科学【大学医局紹介~がん診療編】

土岐 祐一郎 氏(教授)江口 英利 氏(教授)富丸 慶人 氏(助教)三吉 範克 氏(助教)中本 蓮之助 氏(専攻医)古賀 千絢 氏(専攻医)講座の基本情報医局の特徴・基本理念大阪大学消化器外科講座は、2008年より主任教授2人で1つの教室を運営するという特殊な形態をとっています。その結果、全体で120人を超える大きな教室となりましたので、基本理念を作りみんなの心を1つにしています。ミッションは「病める人に寄り添い、託された命を守り切ることがメスを持つ我々の使命です」、そして行動指針が「技術と知識を磨き、現代医療の最後の砦になります」「新しい科学、新しい医療、新しい手術を創出します」「外科医の絆を大切にし、社会に貢献します」の3つです。この基本理念を忘れないように多様な人が集まる教室を目指してゆきます。学生と医局員の食事会を開催医局独自の取り組み・若手医師の育成方針消化器外科は、上部消化管、下部消化管、肝胆膵など広い領域の診療を担当する診療科で、これらの臓器はお互いに近接し連携して機能していますので、これらを総合的に理解し対応できることが求められます。大阪大学消化器外科講座では、多彩な消化器疾患の外科治療を総合的に理解できるよう、臓器の垣根なくカンファンレンスや合同手術を行う体制ができており、一方、日々進化する高度な専門的医療も実践できるよう、グループ編成を行って最先端医療を提供しています。がん診療では国指定の地域がん診療連携拠点病院として、また臓器移植では脳死肝移植、脳死膵移植の認定施設として本邦をリードしています。上述のような高度医療技術を身につけることも大切ですが、一方で外科基本手技とも言える虫垂炎や胆石症、ヘルニアや腸閉塞などに対する手術も消化器外科医師としてきわめて重要です。大阪大学消化器外科講座は、近畿圏の基幹病院(約50施設)との密な連携体制が誇りで、外科専門医の取得をめざす若手外科医の育成のための教育システムにとくに力を入れています。連携する病院の若手医師を対象としたハンズオンセミナーや症例検討会、手術手技のコンテストやビデオクリニックなどを頻繁に開催しています。そのような活動を通じて若手医師が集まってくれる医局となってきており、日本専門医機構の外科専攻医プログラムでは、7年連続で日本一の入局者数となっています。医局のレクリエーションとして行ったゴーカートレース医局の雰囲気・魅力大阪大学消化器外科講座は、あらゆる消化器外科疾患に対して専門性の高い医療を提供しておりますが、一方では皆でレクリエーション活動なども行い、和気あいあいとした雰囲気の教室です。医師間のコミュニケーションが活発で、知識や経験を共有し合える環境が整っている点も特徴です。また、それぞれの医師のライフ・ワーク・バランスも尊重し、医師の働き方改革への取り組みも積極的に行っています。医学生/初期研修医へのメッセージ多くの手術を含めた臨床のみならず、研究、留学などさまざまな経験ができますので、自分の可能性を確実に広げることができる医局です。どのようなキャリアプランであっても、一緒に考えてくれる先輩方や仲間がたくさんいます。皆さんと一緒に仕事ができることを楽しみにしていますので、ぜひ仲間に加わってください!医局説明会でのハンズオンの様子医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力私たちは、消化器がんに対する腹腔鏡手術やロボット手術などの低侵襲手術から拡大手術にも力を入れ、患者さんに優しい治療を目指しています。また、新規がん診断や薬物治療に関する基礎研究、再生医療、そしてAIを用いた解析やプログラミングにも注力し、次世代の医療技術の発展に貢献したいと考えています。医学生/初期研修医へのメッセージ医療は今、テクノロジーの進化により驚くべき変革が起きています。AIやロボット技術を駆使し、より精密で効果的な治療が可能になる時代です。皆さんが挑戦する新しいアイデアや発見が、未来の医療を形作る重要な一歩となります。未知の分野に果敢に挑み、自分だけのキャリアを切り拓いてください。一緒に、新しい時代の医療を創造していきましょう。学生向けロボット手術の操作シミュレーション実習入局した理由近畿大学医学部を卒業後、市中病院で2年間の初期研修を行いました。学生実習や研修医としての外科ローテーションを通じて、多くの手術症例に携わる機会があり、手術への興味がいっそう深まりました。また、周術期管理や手術技術の向上を通じて、患者の全身状態の改善に寄与できることに大きなやりがいを感じ、消化器外科への入局を決意しました。その後、市中病院で2年3ヵ月の消化器外科後期研修を経て大阪大学病院に戻り、病棟業務と大学院生としての日々の活動に従事しています。現在学んでいること大学病院では、高度進行がんに対する術前化学療法や放射線療法を含む集学的治療、ロボット支援手術、さらには肝・膵移植など、大学病院ならではの多様な症例を経験することができました。経験豊富な指導医のもとで、多くの症例を通じ、周術期管理や手術技術、知識の習得に励んでいます。食事会の様子消化器外科を選択した理由医学科5年の研究室配属プログラムで、消化器外科教室で2ヵ月間勉強させていただきました。実臨床では手術をして周術期管理をする傍らで、さまざまな学術的観点からがんについて研究をされている先生方の姿を目の当たりにし、「がん」と真っ向から向き合う姿勢に感銘を受けました。がんを診療する外科、という観点から産婦人科や泌尿器科などほかの外科も検討しましたが、他臓器とも密接に関連する消化器疾患自体の病態生理に興味があったため、消化器外科を選択しました。現在学んでいること現在は阪大病院で専攻医として学んでおります。大学病院では最新技術の導入はもちろん、臨床研究や治験も豊富で、市中病院では経験できないような症例が多く、がん診療への理解が深まるのを実感しています。また大阪大学は学術面でのサポートも手厚いので、学会などへも積極的に参加しています。日々の臨床だけでは得ることができない着眼点を吸収する良い機会になっていると思います。専攻医を対象とした真皮縫合コンテスト大阪大学大学院医学系研究科 外科系臨床医学専攻外科学講座消化器外科学住所〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2問い合わせ先ytomimaru@gesurg.med.osaka-u.ac.jptmakino@gesurg.med.osaka-u.ac.jp医局ホームページ大阪大学大学院医学系研究科 外科系臨床医学専攻外科学講座消化器外科学専門医取得実績のある学会日本外科学会日本消化器外科学会日本食道学会日本肝胆膵外科学会日本移植学会日本大腸肛門病学会日本消化器病学会日本内視鏡外科学会日本ロボット外科学会日本消化器内視鏡学会 など研修プログラムの特徴(1)高難度ながん手術をはじめ、臓器移植や再生医療などの最先端医療を実践でき、さらにはそれらの開発研究にも参加する機会があり、高度な医療技術や研究能力を得ることができます。(2)手術だけでなく内視鏡検査、化学療法など幅広い一般診療にも従事することができ、各種専門医の先生と一緒に高い技術と知識を習得できる実践的な研修を提供しています。(3)研修先や勤務先が大阪を中心とした関西エリアの主要な医療機関であり、通勤や生活面での負担が少ない環境で、充実した研修が受けられる点も大きな魅力です。

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第238回 妊娠はウイルス様配列を目覚めさせて胎児発育に必要な造血を促す

妊娠はウイルス様配列を目覚めさせて胎児発育に必要な造血を促す体内の赤ちゃんを育てるにはいつもに比べてかなり過分な血液が必要で、赤血球は妊娠9ヵ月の終わりまでにおよそ2割増しとなって胎児や胎児を養う胎盤の発達を支えます1)。その赤血球の増加にホルモンが寄与していますが、ヒトやその他の哺乳類が妊娠中に赤血球をどういう仕組みで増やすかはよくわかっていませんでした。先週24日にScienceに掲載された研究で、哺乳類ゲノムにいにしえより宿るウイルス様要素が妊娠で目覚め、免疫反応を誘発して血液生成を急増させるという思いがけない仕組みが判明しました2,3)。それらのウイルス様配列はトランスポゾンや動く遺伝子(jumping gene)としても知られます。トランスポゾンは自身をコピーしたり挿入したりしてゲノム内のあちこちに移入できる遺伝配列で、ヒトゲノムの実に半数近くを占めます。哺乳類の歴史のさまざまな時点でトランスポゾンのほとんどは不活性化しています。しかしいくつかは動き続けており、遺伝子に入り込んで形成される長い反復配列や変異はときに体を害します。トランスポゾンは悪さをするだけの存在ではなく、生理活性を担うことも示唆されています。たとえば、トランスポゾンの一種のレトロトランスポゾンは造血幹細胞(HSC)を助ける作用があるらしく、炎症反応を生み出すタンパク質MDA5の活性化を介して化学療法後のHSC再生を促す働きが先立つ研究で示唆されています4)。妊娠でのレトロトランスポゾンの働きを今回発見したチームははなからトランスポゾンにあたりをつけていたわけではありません1)。University of Texas Southwestern Medical Centerの幹細胞生物学者Sean Morrison氏とその研究チームは、妊娠中に増えるホルモン・エストロゲンが脾臓の幹細胞を増やして赤血球へと発達するのを促すことを示した先立つ取り組みをさらに突き詰めることで今回の発見を手にしました。研究チームはまず妊娠マウスとそうでないマウスの血液幹細胞の遺伝子発現を比較しました。その結果、幹細胞はレトロトランスポゾンの急増に応じて抗ウイルス免疫反応に携わるタンパク質を生み出すようになり、やがてそれら幹細胞は増え、一部は赤血球になりました。一方、主だった免疫遺伝子を欠くマウスは妊娠中の赤血球の大幅な増加を示しませんでした。また、レトロトランスポゾンが自身をコピーして挿入するのに使う酵素を阻止する逆転写酵素阻害薬を投与した場合でも妊娠中に赤血球は増えませんでした。研究はヒトに移り、妊婦11人の血液検体の幹細胞が解析されました。すると妊娠していない女性(3人)に比べてレトロトランスポゾン活性が高い傾向を示しました。HIV感染治療のために逆転写酵素阻害薬を使用している妊婦6人からの血液を調べたところヘモグロビン濃度が低下しており、全員が貧血になっていました。逆転写酵素阻害薬を使用しているHIV患者は妊娠中に貧血になりやすいことを示した先立つ試験報告5)と一致する結果であり、逆転写酵素阻害薬使用はレトロトランスポゾンがもたらす自然免疫経路の活性化を阻害することで妊婦の貧血を生じ易くするかもしれません。より多数の患者を募った試験で今後検討する必要があります。他の今後の課題として、妊娠がどういう仕組みでレトロトランスポゾンを目覚めさせるのかも調べる必要があります。レトロトランスポゾンを目覚めさせる妊娠以外の要因の研究も価値がありそうです。たとえば、細菌が皮膚細胞(ケラチノサイト)の内在性レトロウイルスを誘って創傷治癒を促す仕組みが示されており6)、組織損傷に伴って幹細胞のレトロトランスポゾンが活性化する仕組みがあるかもしれません。また、組織再生にレトロトランスポゾンが寄与している可能性もあるかもしれません。参考1)Pregnancy wakes up viruslike ‘jumping genes’ to help make extra blood / Science 2)Phan J, et al. Science. 2024 Oct 24. [Epub ahead of print]3)Children’s Research Institute at UT Southwestern scientists discover ancient viral DNA activates blood cell production during pregnancy, after bleeding / UT Southwestern 4)Clapes T, et al. Nat Cell Biol. 2021;23:704-717.5)Jacobson DL, et al. Am J Clin Nutr. 2021;113:1402-1410.6)Lima-Junior DS, et al. Cell. 2021;184:3794-3811.

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再発・転移子宮頸がん、化学療法+cadonilimabがPFS・OS改善/Lancet

 持続性、再発または転移を有する子宮頸がんの1次治療において、標準治療の化学療法単独と比較して、化学療法にPD-1とCTLA-4のシグナル伝達経路を同時に遮断する二重特異性抗体cadonilimabを追加すると、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・復旦大学上海がんセンターのXiaohua Wu氏らが実施した「COMPASSION-16試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年10月26日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 COMPASSION-16試験は、標準治療の化学療法へのcadonilimab追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年9月~2022年6月に中国の59施設で患者を登録した(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 年齢18~75歳、持続性、再発または転移(StageIVB)を有する子宮頸がんと診断され、根治的手術または同時化学放射線療法の適応がなく、病変に対する全身療法による前治療歴がなく、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)が0または1の患者を対象とした。 被験者を、cadonilimab(10mg/kg)またはプラセボを静脈内投与する群に1対1の割合で無作為化に割り付けた。全例に、ベバシズマブ(15mg/kg)の投与または非投与下に、化学療法(シスプラチン[50mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 4~5]+パクリタキセル[175mg/m2])を3週ごとに6サイクル施行し、引き続き3週ごとに最長2年間の維持療法を行った。 主要評価項目は2つで、最大の解析対象集団(FAS)におけるPFS(盲検下独立中央判定による)とOSとした。2年全生存率は、cadonilimab群62.2% vs.プラセボ群48.4% 445例の女性を登録し、222例をcadonilimab群に、223例をプラセボ群に割り付けた。ベースラインの全体の年齢中央値は56歳(四分位範囲:50~62)で、287例(64%)はECOG PSが1、370例(83%)は扁平上皮がん、215例(48%)は同時化学放射線療法による前治療歴あり、323例(73%)は転移性病変を有していた。ベバシズマブは、265例(60%)が使用していた。 追跡期間中央値17.9ヵ月の時点におけるPFS中央値は、プラセボ群が8.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.7~9.6)であったのに対し、cadonilimab群は12.7ヵ月(11.6~16.1)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.80、p<0.0001)。 追跡期間中央値25.6ヵ月時のOS中央値は、プラセボ群の22.8ヵ月(95%CI:17.6~29.0)に比べ、cadonilimab群は未到達(27.0~評価不能)であり有意に優れた(死亡のHR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.0011)。24ヵ月全生存率は、cadonilimab群62.2%(95%CI:55.2~68.5)、プラセボ群48.4%(41.1~55.4)だった。10%でGrade3以上の免疫関連有害事象 盲検下独立中央判定による客観的奏効(完全奏効+部分奏効)の割合はcadonilimab群で高く(83% vs.69%)、完全奏効の割合もcadonilimab群で高率(36% vs.23%)だったが、病勢コントロール率は両群で同程度であった(94% vs.92%)。また、奏効期間中央値はcadonilimab群で長く(13.2ヵ月 vs.8.2ヵ月)、奏効までの期間中央値は両群で同じ(1.5ヵ月 vs.1.5ヵ月)だった。 Grade3以上の試験治療下での有害事象は、cadonilimab群で85%、プラセボ群で80%に発現し、両群とも好中球数の減少(cadonilimab群41%、プラセボ群46%)、白血球数の減少(28%、36%)、貧血(17%、26%)の頻度が高かった。試験薬の投与中止に至った有害事象は、cadonilimab群28%、プラセボ群11%に、死亡に至った有害事象はそれぞれ5%(12例)および3%(7例)に発現し、このうち治療関連死は4%(9例)および3%(6例)だった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、cadonilimab群で82%、プラセボ群で79%に、Grade3以上の免疫関連有害事象はそれぞれ10%(22例)および<1%(2例)に発現した。 著者は、「これらの知見は、プラチナ製剤ベースの化学療法±ベバシズマブにcadonilimabを追加することで、PD-L1の陽性/陰性を問わず、またベバシズマブの投与が可能か否かにかかわらず、生存ベネフィットがもたらされる可能性を示唆する」「これまでの臨床試験は、参加者のほとんどが白人であるか、高所得地域で実施されたものであったが、本試験の結果はアジア人および中所得国におけるエビデンスを付加するものである」としている。

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局所進行子宮頸がん、導入化学療法+CRTがPFS・OS改善/Lancet

 局所進行子宮頸がん患者において、短期間導入化学療法後に化学放射線療法(CRT)を行うことで、CRTのみの場合と比較して無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に延長したことが、ブラジル、インド、イタリア、メキシコおよび英国の32施設で実施された無作為化第III相試験「INTERLACE試験」で示された。英国・University College Hospital NHS TrustのMary McCormack氏らINTERLACE investigatorsが報告した。局所進行子宮頸がんの標準治療はCRTであるが、再発する患者が依然として多く、転移がんにより死に至る。結果を踏まえて著者は、「この短期間導入化学療法レジメンと7日以内のCRTを現在の標準治療と考えるべきである」とまとめている。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。6週間のカルボプラチン+パクリタキセル導入化学療法後のCRT、PFSとOSを評価 研究グループは、18歳以上で新たに診断された局所進行子宮頸がん(FIGO進行期分類[2008年]のリンパ節転移を伴うIB1期、またはIB2期、IIA期、IIB期、IIIB期、IVA期)患者を、導入化学療法+CRT群(導入化学療法併用群)またはCRT単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、施設、病期、リンパ節転移の有無、3次元原体照射(3DCRT)vs.強度変調放射線治療(IMRT)、年齢、腫瘍径、組織型(扁平上皮がんvs.非扁平上皮がん)であった。 両群とも、CRTは、シスプラチン40mg/m2を週1回5週間静脈内投与と、外部放射線療法(EBRT)(45.0~50.4Gyを20~28分割)および小線源療法で総線量2Gy相当の78~86Gyを達成することとした。導入化学療法併用群では、カルボプラチンAUC2とパクリタキセル80mg/m2を週1回6週間静脈内投与し、7週目からCRTを行った。 主要評価項目は、ITT集団における治験担当医評価によるPFSならびにOSとし、全体の第1種の過誤確率を5%に制御するため階層的検定(固定順序法:PFS→OS)を行った。PFS、OSともに導入化学療法+CRTで有意に延長 2012年11月8日~2022年11月17日に、適格基準を満たした500例が無作為化された(導入化学療法併用群250例、CRT単独群250例)。患者背景は年齢中央値46歳、354例(71%)がIIB期、56例(11%)がIIIB期で、骨盤リンパ節転移ありが215例(43%)であった。 導入化学療法併用群では、230例(92%)が5サイクルの導入化学療法を完了した。導入化学療法終了からCRT開始までの期間の中央値は7日であった。CRTでシスプラチンの5サイクル投与を完了した患者は、導入化学療法併用群では212例(85%)、CRT単独群で224例(90%)であった。EBRTが実施された患者で小線源療法も受けた患者は、導入化学療法併用群で242例中238例、CRT単独群で231例中224例、計462例(92%)であり、放射線治療期間の中央値は両群とも45日であった。 追跡期間中央値67ヵ月時点で、5年PFS率は導入化学療法併用群で72%、CRT単独群で64%、PFSのハザード比(HR)は0.65(95%信頼区間[CI]:0.46~0.91、p=0.013)であり、導入化学療法併用群でPFSの有意な延長が認められた。また、5年全生存率は、導入化学療法併用群80%、CRT単独群72%、ハザード比は0.60(95%CI:0.40~0.91、p=0.015)で、導入化学療法併用によりCRT単独と比較して死亡のリスクが40%減少することが示された。 Grade3以上の有害事象は、導入化学療法併用群で250例中147例(59%)、CRT単独群で250例中120例(48%)が報告された。

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第235回 麻酔薬を巡る2つのトピック、アナペイン注供給不足と芸人にプロポフォール使用の配信番組で麻酔科学会大忙し(前編)

東京女子医大新学長に国際医療福祉大の山中寿教授こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。同窓会組織・至誠会と学校法人の不適切な資金支出や、寄付金を重視する推薦入試や人事のあり方などが問題視され、8月に前任理事長が解任された東京女子医大ですが、10月18日に理事会が開かれ、理事会の全理事と監事が辞任、新しい学長には国際医療福祉大の山中 寿教授(70)が選任されました。東京女子医大については、本連載でも「第226回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)『金銭に対する強い執着心』のワンマン理事長、『いずれ辞任するが、今ではない』と最後に抗うも解任」などで度々書いてきましたが、結局、経営陣は総入れ替えになりそうです。新しく学長に就任した山中氏はリウマチ学の権威で、1983年から東京女子医大に在籍、2003~18年には同大附属の膠原病リウマチ痛風センターなどで教授を務めていました。どういった経緯で山中氏が選ばれたのかは不明ですが、女子医大の内実をよく知り、かつ同大病院の名物センターの一つ、膠原病リウマチ痛風センターを切り盛りしていた実績が買われたのでしょう。山中氏は国際医療福祉大の教授であり、同大関連の医療法人財団順和会山王メディカルセンターの院長でもありました。国際医療福祉大が、厚生労働省官僚の主要“天下り先”であることを考えると、国、厚生労働省の意向も少なからず反映されたのかもしれません。70歳という年齢はやや行き過ぎている感は否めませんが、正常かつ公正な大学運営が行われることを期待したいと思います。供給不足が社会問題化していたアナペイン注に不足解消の兆しさて今回は麻酔薬を巡るトピックを2つ紹介します。まずは、6月以降限定出荷が続き、供給不足が社会問題化していた局所麻酔薬のアナペイン注(一般名:ロピバカイン塩酸塩水和物)ですが、不足解消の兆しが見えてきました。アナペイン注の供給不足については、10月2日付のNHKニュースでも大きく報じられました。同ニュースは、「国立がん研究センター中央病院では、がんの手術にアナペインを使っています。ところが出荷制限でことし6月ごろから減少し始め、8月になってからはほとんど入荷しなくなりました。このため臨床試験や大腸がんの手術に使用を限定しているということです」と報じ、さらに「産婦人科の中には出産の際に麻酔で陣痛を抑える無痛分べんに応じきれなくなることを心配する声も聞かれます」と、市中の産科での混乱も伝えていました。そのアナペイン注ですが、製造販売元のサンドは10月9日、「アナペイン注2mg/mL」について「10月8日、製造所追加の承認を取得いたしました」と、翌9日には「アナペイン注7.5mg/mL」について「10月9日、製造所追加の承認を取得いたしました」と発表しました。いずれも初回出荷に向けた最終確認、調整に入っているとのことです。なお、「アナペイン注10mg/mL」については製造所追加の承認取得の手続きを進めているとのことです。また、福岡 資麿厚生労働大臣は10月8日の閣議後会見で、「アナペイン注」の限定出荷が続いている現状を踏まえ、今年8月に薬事承認されたテルモの後発品が年内にも供給開始される見込みだと説明しました。海外生産のリスクを回避しようと国内生産に切り替えようとしたことが裏目にそもそもなぜ、アナペイン注は供給不足に陥ったのでしょうか。サンドは5月に出した「アナペイン注2mg/mL,7.5mg/mL,10mg/mL(10管、1バッグ)供給に関するお詫びとご案内」で、「製造委託先変更に伴う、逸脱による製造遅延が発生し、調査および品質・安全確保のために製造を停止しております」と理由を説明していました。NHKなどの報道によれば、製造を行っている関連会社が製造所を海外から国内に移そうとしたところ技術移転に時間がかかることが明らかになり、国内製造を延期せざるを得なくなったとのことです。海外で製造される医薬品が海外の工場などの事情で供給不足に陥った事例については、本連載でも「第74回 膵がん治療に欠かせないアブラキサン10月供給停止へ、学会、患者会が他工場製品の緊急承認要望」で取り上げました。このときは、米国の1工場の不具合により、進行膵がんの1次化学療法薬として使われるアブラキサンが供給停止となった問題を取り上げ、海外製造に依存するリスクについて書きました。しかし、今回のアナペイン注は、そうしたリスク回避のため国内生産に切り替えようとしたことが裏目に出たわけです。企業の経営戦略は間違ってはいないものの、詰めが甘かったということでしょう。「逸脱による製造遅延」の「逸脱」って?サンドの「お詫びとご案内」に出てくる「逸脱による製造遅延」の「逸脱」は日常あまり聞かない単語です。これは、「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(通称GMP省令)」で定めた製造手順から「逸脱」しており、製造工場が承認されなかったことを意味します。「アナペイン注2mg/mL」と「アナペイン注7.5mg/mL」については「逸脱」は解決され、製造所の承認も得たとのことなので、現場の医療機関はあとは出荷が軌道に乗るのを待てばいい、ということになります。なお、日本麻酔科学会は「長時間作用性局所麻酔薬が安定供給されるまでの対応について」1)という告知で、日本産科麻酔学会は「理事長メッセージ」2)で、アナペイン注が安定供給されるまでの対応策として、使用の優先順位を策定することやほかの鎮痛方法の検討などを推奨しています。もうしばらくは、学会の提言に従って麻酔薬を使うしかなさそうです。麻酔科学会が配信バラエティ番組で安易にプロポフォールが使われたことを強く非難ところで、日本麻酔科学会は「アナペイン注7.5mg/mL」の製造所追加の承認取得を同学会のサイトで会員に伝えた同じ10月16日、別件の興味深い理事長声明を出しています。「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」と題されたその声明3)は、「10月14日配信開始の番組において、 プロポフォールが内視鏡クリニックを舞台に使用され、何らかの外科的処置を必要としない人物を意図的に朦朧状態にするという内容が含まれていることを知り、深い憂慮を抱いております」として、配信されたバラエティ番組で芸能人に対して安易にプロポフォールが使われたことを強く非難してしています。調べてみると、麻酔科学会が問題視したのは、Amazon Prime Videoで10月14日から配信が始まった番組「KILLAH KUTS(キラーカッツ)」中の1エピソード、「EPISODE2 麻酔ダイイングメッセージ」でした(この項続く)。参考1)長時間作用性局所麻酔薬が安定供給されるまでの対応について/日本麻酔科学会2)理事長メッセージ/日本産科麻酔学会3)静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について/日本麻酔科学会

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膀胱がんの拡大リンパ郭清、周術期の合併症・死亡増(SWOG S1011)/NEJM

 膀胱全摘除術を受ける限局性筋層浸潤性膀胱がん患者において、拡大リンパ節郭清は標準的リンパ節郭清と比較して、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を延長しないばかりか、高率の周術期合併症および死亡の発生が認められた。米国・ベイラー医科大学医療センターのSeth P. Lerner氏らSWOG S1011 Trial Investigatorsが第III相多施設共同無作為化試験「SWOG S1011試験」の結果を報告した。NEJM誌2024年10月2日号掲載の報告。主要評価項目はDFS 研究グループは、臨床病期T2(筋層に限局)~T4a(隣接臓器に浸潤)、リンパ節転移は2個以下(N0、N1、N2)の限局性筋層浸潤性膀胱がん患者を、両側標準リンパ節郭清術(両側骨盤内のリンパ節郭清)または拡大リンパ節郭清術(総腸骨リンパ節、坐骨前リンパ節、仙骨前リンパ節の切除を含む)を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化は手術中に行われ、術前補助化学療法の内容、臨床病期(T2 vs.T3またはT4a)、Zubrod’s パフォーマンスステータススコア(0または1 vs.2[5ポイントスケールで評価、高スコアほど障害が重度であることを示す])で層別化した。 主要評価項目はDFSとし、OSおよび安全性も評価した。推定5年DFS率は56% vs.60% 2011年8月~2017年2月に658例が登録され、適格患者592例が拡大リンパ節郭清群(292例)または標準的リンパ節郭清群(300例)に無作為化された。被験者の大多数の病期がT2であり(各群71%)、組織学的サブタイプの混在が認められたのは13%。各群の被験者57%が術前補助化学療法既往であり、大多数(拡大リンパ節郭清群89%、標準的リンパ節郭清群86%)がシスプラチンベースの治療を受けていた。 手術は、米国とカナダの計27施設36人の外科医により行われた。 追跡期間中央値6.1年の時点で、再発または死亡は、拡大リンパ節郭清群で130例(45%)、標準的リンパ節郭清群で127例(42%)報告された。推定5年DFS率はそれぞれ56%、60%であった(再発または死亡のハザード比[HR]:1.10[95%信頼区間[CI]:0.86~1.40]、p=0.45)。 5年OS率は、拡大リンパ節郭清群59%、標準的リンパ節郭清群63%であった(死亡のHR:1.13[95%CI:0.88~1.45])。 Grade3~5の有害事象は、拡大リンパ節郭清群で157例(54%)、標準的リンパ節郭清群で132例(44%)発現した。術後90日以内の死亡は、それぞれ19例(7%)、7例(2%)であった。

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切除可能な胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性は?(解説:上村直実氏)

 日本における胃がん治療は、遠隔臓器やリンパ節への転移がなく、がんの深達度が粘膜層までの場合は内視鏡治療が適応であり、がんが粘膜下層以深に達しているときは通常、外科治療が選択され、手術後の病理組織学的検査の結果で必要に応じて薬物療法が追加されるのが一般的である。なお、術前検査で遠隔臓器への転移がある場合などの切除不能がんには化学療法などの治療法が検討される(日本胃癌学会編『胃癌治療ガイドライン 2021年7月改訂 第6版』)。 一方、欧米諸国における胃がん診療は、わが国と大きく異なっている。医療保険制度の違いから内視鏡検査の適応がまったく異なることから内視鏡的切除が可能な早期胃がんの発見は稀であり、胃がんといえば進行がんが大半を占めている。周術期化学療法や放射線療法に対する考え方も大きく異なっており、わが国のガイドラインでは推奨されていない切除可能な胃がんに対する術前化学療法が、欧米諸国では標準治療となっている。さらに術前・術後の放射線療法に関しては日本では話題にも上がらない治療方針であるが、北米では食道がんと同様に術後化学放射線療法が胃がんの標準治療となっている。さらに今回は、手術可能な食道胃接合部腺がんを含む胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性を検討した欧米10ヵ国の国際共同試験の結果が2024年9月のNEJM誌で報告された。 試験の結果、周術期化学療法に術前化学放射線療法を追加した場合、術後の病理組織学的検査による病理学的完全奏効率は有意に高率であったにもかかわらず、全生存期間および無増悪生存期間は改善せず、切除可能な食道胃接合部がんを含む胃がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割は否定的であると考察されている。 日本の消化器内科医や外科医にとっては、放射線治療による直接的な局所効果による術後の病理組織学的改善率が高い結果は当然と思われる。筆者らが「現時点では、切除可能な胃・食道胃接合部がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割はほとんどないが、今後、事後解析で術前化学放射線療法が有効な患者サブグループを特定できれば、将来の臨床試験のデザインに役立つと考えられる」とコメントしている点を考慮すると、この日本と欧米の胃がん診療に対する考え方の違いを理解し熟知しておくことは、国際会議の場において海外の研究者と討論する際に重要と思われる。

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