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IV期扁平上皮がんへの免疫療法+化学療法併用について(解説:小林英夫氏)-950

 肺がんの組織型は非小細胞がんが多くを占め、とりわけ扁平上皮がんと腺がんが中心となっている。1980年代までは扁平上皮がん、なかでも肺門型(中枢型)の扁平上皮がんが多かったが、その後徐々に腺がんが多数となり、扁平上皮がんを診療する機会が減少していた。ところが近年になり、以前の肺門型扁平上皮がんではなく、肺野末梢に発生する扁平上皮がんを経験する機会が増加してきている。なぜ再増加しているのか理由は定かではない。また、切除不能であるIV期の非小細胞肺がんの治療面では、2000年代以降になり遺伝子変異陽性の腺がんに対しチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的治療薬が急速に普及し、腺がんの標準治療は大きく変化してきた。一方で、IV期扁平上皮がん治療に有効な分子標的薬は導入できておらず、細胞障害性抗腫瘍薬または免疫チェックポイント阻害薬が現時点における治療の主役だが、まだまだ十分な効果は得られていない状況にある。 本論文は、非扁平上皮がんに対する治療としてプラチナ製剤を含む化学療法+ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が生存期間延長をもたらす可能性が示された既報を受けて、扁平上皮がんへの同併用療法の効果を検証した二重盲検無作為化第III相試験である。全例がカルボプラチンをベースにした化学療法を受け、その半数にペムブロリズマブ、残りの群はプラセボが投与され、両群が比較検討された。主要エンドポイントである全生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群15.9ヵ月がプラセボ群11.3ヵ月に比べ有意に延長した。無増悪生存期間中央値もペムブロリズマブ群が6.4ヵ月で、プラセボ群4.8ヵ月に比し良好であった。ペムブロリズマブ群がプラセボ群を上回ることはある程度予想された結果と考えられる。一方、投与薬剤が増えるため有害事象発現も重要課題で、有害事象による治療中止はペムブロリズマブ群が高かった(13.3 vs.6.4%)。治療関連死はそれぞれ3.6%、2.1%にみられた。 2018年ノーベル生理学・医学賞受賞により、がんの免疫療法、チェックポイント阻害薬がますます脚光を浴びている。かつて日本で話題になった丸山ワクチンのような免疫療法と現在の免疫チェックポイント阻害薬はまったく別の機序で作用しており、チェックポイント阻害薬が著効する症例も数多く報告されている。しかし同薬が万能薬ではないことも事実であり、今後、扁平上皮がん治療のキードラッグとしてどのような投与法が最適なのか、まさに研究が進行している。

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「がんだけ診ていればよい時代」は終わった?日本腫瘍循環器学会開催

 2018年11月3~4日、都内にて第1回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催され、盛んな議論が行われた。「がんだけ診ていればよい時代」は終わった 日本腫瘍循環器学会理事長の小室 一成氏は、理事長講演で以下のように述べた。 がんと心血管疾患の関係は以前からみられる。近年、がん治療の進歩が生存率も向上をもたらした。そこに、がん患者の増加が加わり、がんと心血管疾患の合併は増加している。さらに、抗がん剤など、がん治療の副作用は、心血管系合併症のリスクを高め、生命予後にも影響することから、がん患者・サバイバーに対する心血管系合併症管理の重要性が増している。実際、乳がん患者の死因は、2010年に、がんそのものによる死亡を抜き、心血管疾患が第1位である。 がん治療において重要な心血管系合併症の1つは心機能障害である。心機能障害を起こす抗がん剤は数多い。アドリアマイシンによる心筋症は予後が悪いことで知られている。また、免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎も、発症率は少ないが、いったん発症すると重篤である。もう1つの大きな問題は、がん関連血栓症(cancer associated thrombosis:CAT)として注目されている、血栓塞栓症である。がん患者では血液凝固系が活性化されているが、そこに、抗がん剤による血栓症や内皮細胞傷害のリスクが加わり、がん患者はさらに血栓塞栓症になりやすくなる。また、血栓塞栓症を合併したがん患者の予後は不良である。血栓塞栓症は、がん外来化学療法患者の死亡の10%を占め、死因の第2位となっている。 そのような中、海外では、90年代から、学会の設立、ガイドラインの発行など、さまざまな取り組みが始まっている。わが国では昨年(2017年)10月に日本腫瘍循環器学会が設立された。同学会では、がん患者・サバイバーのために、腫瘍と循環器の専門医が一緒に活動し、疫学・レジストリ研究、基礎研究・臨床研究の推進、診療指針(ガイドライン)の策定、医療体制の整備、教育研修に取り組んでいく。求められる腫瘍および循環器専門医のチームワーク 日本腫瘍循環器学会副理事長で第1回学術集会の会長である畠 清彦氏は、会長講演で以下のように述べた。 がん対策基本法が制定されて、どの地域でも標準治療が受けられるようになり、全体に底上げされて、今までになかったようなサポート体制が出来上がった。一方で、がん患者はどんどん高齢化し、心血管系合併症も増加している。しかし、がん専門施設での循環器内科医不足など、腫瘍循環器の分野は十分とは言えない。多くの薬が登場する中、心臓血管障害の問題があっても、その対策は各施設に任されている状況である。 また、最近の分子標的治療薬をはじめとする抗がん剤は、短期間の観察で承認される。長期的にどのような副作用が出るか報告が必要となる。心血管系の副作用を正確に報告するためにも、循環器と腫瘍の専門家が協調する必要がある。今後、さらに腫瘍専門医と循環器専門医のチームワークが求められるであろう。

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マクロファージ免疫CP阻害薬、再発・難治性リンパ腫に有望/NEJM

 中悪性度および低悪性度のリンパ腫の治療において、マクロファージ免疫チェックポイント阻害薬Hu5F9-G4(以下、5F9)は、リツキシマブとの併用で有望な抗腫瘍活性をもたらし、臨床的に安全に投与できることが、米国と英国の共同研究で示された。米国・スタンフォード大学のRanjana Advani氏らが、NEJM誌2018年11月1日号で報告した。5F9は、マクロファージ活性化抗CD47抗体であり、腫瘍細胞の貪食を誘導する。CD47は、ほぼすべてのがんで過剰発現している抗貪食作用(“do not eat me[私を食べないで]”)シグナルであり、マクロファージなどの食細胞からの免疫回避を引き起こす。5F9は、リツキシマブと相乗的に作用してマクロファージが介在する抗体依存性の細胞貪食を増強し、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞を除去するとされる。3+3デザインを用い3種の用量で漸増する第Ib相試験 研究グループは、再発または難治性の非ホジキンリンパ腫患者を対象に、5F9+リツキシマブの安全性と有効性を明らかにし、第II相試験の推奨用量の提示を目的とする第Ib相試験を行った(Forty Sevenと米国白血病・リンパ腫協会の助成による)。 対象は、CD20の発現がみられるB細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]または濾胞性リンパ腫)で、再発または2ライン以上の前治療歴のある難治性の患者であった。全身状態(ECOG PS)は0~2とした。3+3デザインを用いて、3種の用量にそれぞれ最少3例を登録した。用量制限毒性の評価は投与開始から28日まで行った。 5F9は、全例に初回用量1mg/kg体重を静脈内投与し、1週間後からの維持用量を10、20、30mg/kg(週1回)と増量した。リツキシマブは、1サイクル目は第2週から毎週375mg/m2体表面積を静脈内投与し、2~6サイクル目は毎月1回投与した。推奨維持用量は30mg/kg、36%で完全奏効 2016年11月~2017年10月の期間に、再発・難治性のDLBCL患者15例と、濾胞性リンパ腫患者7例の合計22例が登録された。5F9の維持用量別の症例数は、10mg/kgが3例、20mg/kgが6例、30mg/kgが13例となった。 全体の年齢中央値は、59歳(範囲:44~82)、男性が12例(55%)で、21例(95%)がECOG PS 0/1、4例(18%)が自家幹細胞移植を受けていた。前治療数中央値は4(範囲:2~10)であり、21例(95%)がリツキシマブ抵抗性で、14例(64%)は直近の治療レジメンに抵抗性であった。 治療期間中央値は22週(範囲:1.7~70.7、治療中の患者を含む)で、22例全例が2剤の投与を受けた。1例が、治療開始から約2週時に有害事象(特発性血小板減少性紫斑病)により投与中止となり、有効性の評価ができなかったが、非奏効例として解析に含まれた。3例が死亡し、全死因死亡率は14%だった。 有害事象は、主としてGrade1または2であった。頻度の高い有害事象は、悪寒、頭痛、貧血、およびinfusion-related reactionsであった。貧血(予測された標的作用)は、5F9の初回投与と維持投与を調節することで軽減された。 用量制限副作用は3例(20mg/kg群の1例[Grade3の肺塞栓症]、30mg/kg群の2例[Grade4の好中球減少、Grade3の特発性血小板減少性紫斑病])に認められたが、最大耐用量には到達せず、第II相試験の5F9の推奨用量は30mg/kgとした。 5F9の初回用量1mg/kgと維持用量30mg/kgにより、循環血中の白血球と赤血球のCD47受容体占有率はほぼ100%となった。 11例(50%)で客観的奏効(完全奏効+部分奏効)が得られ、8例(36%)で完全奏効が達成された。客観的奏効率と完全奏効率は、DLBCL患者でそれぞれ40%と33%、濾胞性リンパ腫患者では71%と43%であった。奏効までの期間中央値は1.7ヵ月(範囲:1.6~6.6)で、フォローアップ期間中央値がDLBCL患者6.2ヵ月、濾胞性リンパ腫患者8.1ヵ月の時点で、奏効例の91%(10/11例)で奏効が持続しており、奏効期間中央値には未到達だった。 著者は、「新たなマクロファージ活性化抗CD47抗体は、リツキシマブとの併用で安全に投与が可能であり、持続的な完全奏効をもたらすことが示された」としている。現在、第II相試験が進行中だという。

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免疫CP阻害薬、心血管障害スクリーニングの結果/腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の免疫関連有害事象(irAE)としての心血管障害は、報告数は少ないものの、発症すると重篤化する。しかし、真の発生頻度や種類、発生時期については明らかになっていない。国際医療福祉大学三田病院の古川 明日香氏らは、腫瘍循環器学会において、同院の腫瘍循環器外来におけるICI使用時における心血管障害イベントのスクリーニングの意義について発表した。 スクリーニングの検証は、Active Screening Protocolを作成して行われた。このProtocolは、ICI投与開始前に腫瘍循環器外来を予約。ベースライン(投与開始前)、投与開始後、定期的に、血液学的検査(CK、CK-MB、トロポニンI、BNP、D-dimerなど)、心電図、胸部レントゲン、心エコー検査のフォローアップを行うというもの。 対象は2018年10月31日までに同院でICIの投与を受けたがん患者。対象患者は、Passive Consultation群(ICI投与後、心血管障害出現時に同科紹介となったケース)と、Active Screening群(投与開始前からプロトコールに準じてモニタリングしたケース)に分けて評価された。評価項目は、イベント(症候性で循環器治療介入を要するもの)、心血管関連検査異常(循環器特異的治療介入を要しない検査値のみの異常のもの)であった。 主な結果は以下のとおり。・同院でICI投与を受けた症例は91例。そのうちPassive Consultation群は28例、Active Screening群は63例であった。・Passive Consultation群では、2例7.1%に致死的イベントを認めた。・Active Screening群では、27例42.9%に心血管関連検査異常を認めたが、致死的イベントは認めなかった。・検査異常出現までの日数は、平均30.4日と比較的早期の発現が多かった。・治療開始前の心血管疾患既往・合併の有無による心血管関連検査異常の発生に差は認めなかった。・重篤化した症例では、症状に出現に先行してCK上昇を認めており、CK上昇を放置すると、その後 心筋傷害が進行する可能性が示唆された。 Active Screeningにより、心血管関連検査異常を確認できた。また、CK上昇の早期発見と介入により、致死的イベントを回避できる可能性が示唆された。治療開始前の心血管疾患合併の有無にかかわらず、プロトコール化されたモニタリングが重要であると考えられる。

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免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第1回

第1回 免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が標準治療の一部となり、今後プラチナ併用療法との3~4剤併用がPD-L1発現レベルにかかわらず検討されるようになる。一方で、根治に導かれる対象はまだまだ少なく、増悪後の治療戦略は今後の検討課題である。前治療で有効性の高い薬剤の再投与はre-challengeと称され、小細胞肺がんにおけるプラチナ併用療法のre-challenge(Inoue A, Lung Cancer 2015)や遺伝子変異陽性例に対するチロシンキナーゼ阻害剤の再投与(Asahina H, Oncology 2010)が第II相試験レベルで行われてきた。ICIについて、先行する悪性黒色腫では単群第II相試験が複数報告され、初回治療と遜色のない効果のみならず安全性も忍容可能であることが報告されているものの、肺がんを含んだ報告はこれまでcase report(Hakozaki T, BMC Cancer 2018)が散見される程度であった。しかしながら2018年に入って徐々に新規の報告が増えてきており、今回その中から2報を取り上げる。1)Fujita K, et al. Retreatment with pembrolizumab in advanced non-small cell lung cancer patients previously treated with nivolumab: emerging reports of 12 cases.Cancer Chemotherapy and Pharmacology.2018;81:1105-1109.2)Bernard-Tessier A, et al. Outcomes of long-term responders to anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 when being rechallenged with the same anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 at progression.Eur J Cancer.2018;101:160-1641)について本邦から、12例の後方視的ケースシリーズニボルマブ(Nivo)既治療例に対するペムブロリズマブ(Pembro)の効果:ORR 8.3%と、やや期待外れではあるものの、約4割で病勢制御が得られている。2例が12ヵ月以上の長期奏効を呈しており、1例は前治療NivoでもPRが得られている一方、2例目は前治療Nivoの最良効果はPDであった。2)についてフランスから、ICI(PD-1/L1阻害剤)の第I相試験に参加した13例に同じICIを再投与したもの(プロトコール規定による前向き研究)。ORRは25%、PFS中央値は12ヵ月。1)、2)いずれも少数例の研究であり、これらをすぐさま実臨床に援用はできない。悪性黒色腫の報告も含めて、現時点では「再投与の安全性は問題なさそう」というのが最も明らかなことと思われる。今後、標準的な細胞障害性化学療法との比較試験が必要になってくると思われるが、下記のようないくつかの議論が必要である。どのような対象で再投与が有効なのか。有効例を対象にした2)の方が再投与の有効性は高いようにもみえるが、1)では初回不応例に再投与が有効性を示している。同じICIがよいのか、もしくはPD-1→PD-L1阻害剤のように変更したほうがよいのか。免疫関連有害事象(以下、irAE)を生じていても再投与は可能なのか。この点については、1)、2)とも詳細が不明である。ICIの再投与については国内外で臨床試験が進行中である(たとえばWJOG9616L:試験事務局 寺岡 俊輔@和歌山県立医科大学)。今後の情報集積が期待される。

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第66回 ノーベル生理学・医学賞の米国での反響と免疫CP阻害薬の致死的副作用【侍オンコロジスト奮闘記】

第66回:ノーベル生理学・医学賞の米国での反響と免疫CP阻害薬の致死的副作用キーワードノーベル生理学・医学賞免疫チェックポイント阻害薬Daniel Y,et al. Fatal Toxic Effects Associated With Immune Checkpoint Inhibitors.JAMA Oncol. 2018 Sep 13.[Epub ahead of print]

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免疫CP阻害薬の治療効果と便秘の関係

 近年、腸内細菌叢にある宿主免疫制御が報告され、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果との相関が注目されている。また、腸内細菌叢は排便習慣により変化することが報告されている。非小細胞肺がん(NSCLC)患者における便通異常と、ICIの治療効果の関連性について後ろ向きに検討した京都府立医科大学の研究結果が、片山 勇輝氏らにより第16回日本臨床腫瘍学会で報告された。 対象は京都府立医科大学附属病院でICI治療を行ったNSCLC40例。ICI投与前後1週間で3日以上の便秘もしくは緩下剤の内服歴を有する患者を便秘群と定義し、便秘群と非便秘群においてICIの治療効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療成功期間(TTF)中央値は便秘群で31.5日、非便秘群で204日と、便秘群で有意な短縮を示した(p=0.0032)。・病勢制御率(DCR)は便秘群で20.0%、非便秘群で78.8%と、便秘群で低い結果であった(p=0.00083)。・全生存期間(OS)は便秘群で79日、非便秘群で511日と、便秘群で有意な短縮を示した(p=0.0017)。 片山氏は、NSCLCのICIの治療効果や予後と患者の便通異常に有意な相関を認めた。このことは、ICI治療開始時の便通異常がICIの治療効果を予測しうる新たなバイオマーカーの1つである可能性を示した、としている。 以下、発表者 片山 勇輝氏(現在は京都鞍馬口医療センター)との一問一答この試験の実施背景として排便習慣に着目した理由はどのようなものですか? 2016~17年にかけて、悪性黒色腫において腸内細菌叢と免疫治療の効果についてのデータが発表されてきました。免疫チェックポイント阻害薬が奏効したメラノーマ患者では、腸内細菌叢が多様性に富んでいたという報告もあります。 一方、免疫チェックポイント阻害薬の使用機会が多いものの、肺がんでは、腸内細菌叢との関係は明らかではありません。ただ、腸内細菌叢の測定にコストがかかることもあり、まだ現実的ではありません。腸内細菌叢と排便習慣は関連性も示されていることから、簡便なマーカーとして排便習慣が使えないかと考え、このような研究を行いました。免疫チェックポイント阻害薬治療成功期間(TTF)全生存期間(OS)とも非便秘群で有意に長いという結果でしたが、これは臨床でどう考えるべきでしょうか。 従来、EGFR変異陽性例や、悪液質も含め全身状態の悪い例では免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいといわれていましたが、便秘もそういったマーカーの1つなのではないかと考えられます。非便秘、つまり排便良好は腸内細菌叢が良好だということでしょうか。 排便習慣といっても、カルテで回数を追跡したにとどまりますので、単純に非便秘イコール良好な腸内細菌叢の形成とはいえないと思います。今後の研究はどのようにお考えですか? 今回の研究は後ろ向きですが、今後は、前向きに排便習慣を確認しながら腸内細菌叢の関連も一緒に調査したいと考えています。ただ、がんではオピオイド誘発性の便秘になりがちですし、殺細胞性抗がん剤により腸内細菌叢も乱れますので、こういった交絡因子を除外することが必要だと思います。この点を明らかにためにも、今後のさらなる検討が必要だと思います。※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者の1次治療はプラチナ化学療法とエトポシドの併用だが、20年以上大きな進歩はみられておらず、全生存期間(OS)中央値は10ヵ月程度である。一方で、小細胞肺がんは腫瘍変異負荷が高いことから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されている。そこで、小細胞肺がんに対する、カルボプラチン・エトポシドへの免疫チェックポイント薬アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の追加効果を評価する第III相試験IMpower133が行われている。同試験の中間解析の結果がNEJM誌2018年9月25日号で発表された。アテゾリズマブ群のOSが有意に改善 IMpower133は、未治療のES-SCLC患者403例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第I/III相試験。・対象:全身治療未実施のES-SCLC患者(症状がない既治療のCNS病変を有する患者を含む)・試験薬:アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル・対照薬:プラセボ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル・評価項目:治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)およびOS 主な結果は以下のとおり。・201例がアテゾリズマブ群に、202例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は13.9ヵ月であった。・OSはアテゾリズマブ群12.3ヵ月、プラセボ群10.3ヵ月と、有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、p=0.007)。・1年OS率はアテゾリズマブ群52.7%、プラセボ群38.2%であった。・PFSはアテゾリズマブ群5.2ヵ月、プラセボ群4.3ヵ月と、有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.77、95%CI:0.62~0.96、p=0.02)。・サググループをみてもこのアテゾリズマブ群で良好な結果であった。・安全性プロファイルは、すでに個々の薬剤で報告されているものと同様であった。 ES-SCLC患者の1次治療において、カルボプラチン・エトポシドへのアテゾリズマブの追加はOSおよびPFSを有意に改善した。 なお、この試験結果は、同時に第19回世界肺癌学会(WCLC2018)で発表された。

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ノーベル賞受賞、がん治療を劇変させたPD-1とCTLA-4

 2018年のノーベル医学・生理学賞を、京都大学高等研究院特別教授の本庶 佑氏とMDアンダーソンがんセンター教授のJames P. Allison氏が共同受賞することが決まった。両氏はともにがんに対する免疫応答の制御に関連するタンパク質を発見し、がん免疫療法の近年の急速な進歩に寄与したことが受賞理由となっている。本稿では、ノーベル財団のプレスリリースから、2人の研究の足跡を紹介する。ほぼ同時期に、2つの発見 1992年、本庶氏ら京都大学の研究者が、T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子としてPD-1(Programmed cell death 1)を発見。その機能が明らかになるまでには時間を要したが、1998年、マウスによる実験でPD-1がT細胞のブレーキとして機能し、その働きを制御していることが明らかとなった。その後に続く同氏らおよび他の研究グループによる動物実験の結果、PD-1に結合してT細胞の活性化を抑制する PD-L1やPD-L2との結合をブロックする抗PD-1抗体が、がんとの戦いにおいて有望な戦略であることが示された。 2012年には、非小細胞肺がん(NSCLC)、悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)といった複数のがん腫における抗 PD-1抗体ニボルマブの臨床試験結果が発表され、その結果は全生存期間および奏効率の双方で臨床的に大きく改善するものであった。 一方、カリフォルニア大学バークレー校の研究所では、Allison氏が同じくT細胞のブレーキとして機能する細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を研究していた。彼は、CTLA-4の阻害がT細胞ブレーキを解除し、免疫細胞の抑制を解くことで、がん細胞を攻撃できる可能性があるのではないかと考えていた。 そして1994年の年末、マウスを使った最初の実験を行い、抗CTLA-4抗体による治療で、腫瘍を持つマウスが治癒することが確認された。当初、製薬業界の関心が向けられることはほとんどなかったが、間もなくして、いくつかの研究グループから有望な結果がもたらされるようになった。2010年には重要な臨床試験結果が発表され、悪性黒色腫の患者に対し、抗CTLA-4抗体イピリムマブが顕著な効果を示した。 PD-1とCTLA-4は同様にT細胞のブレーキとして機能するが、その作用機構は異なる。 がん治療を根本的に変えた 現在、多くのがん腫において多数の臨床試験が進行中であり、ニボルマブとイピリムマブ以外の新たな免疫チェックポイント阻害薬による治療法の開発も進んでいる。また、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法がさらに効果的である可能性も、悪性黒色腫に対する臨床試験によって示されている。 100年以上もの間、多くの研究者ががんとの闘いに免疫システムを結び付けようとしてきたものの、その臨床的進歩はほとんどみられなかった。しかし、2人の受賞者による発見の後、治療法の開発とその成果は劇的なものだった。免疫チェックポイント阻害薬による治療はがん治療に革命をもたらし、がんの管理方法を根本的に変えるものであった。■参考ノーベル財団プレスリリース■2つの発見に関する主要な論文Ishida Y. et al. EMBO J. 1992 Nov;11:3887~3895.Leach DR et al. Science. 1996 Mar 22;271:1734~1736.Kwon ED et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Jul 22;94:8099~8103.Nishimura H et al. Immunity. 1999 Aug;11:141~151.Freeman GJ et al. J Exp Med. 2000 Oct 2;192:1027~1034.Hodi FS et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Apr 15;100:4712~4717.Iwai Y et al. Int Immunol. 2005 Feb;17:133~144.

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進行肝細胞がんに対する多標的チロシンキナーゼ阻害薬療法(解説:中村郁夫氏)-903

 本論文は、既治療の進行肝細胞がん(HCC)症例に対する、cabozantinibの治療効果および安全性に関するランダム化・二重盲検・多施設で行われた第III相試験の結果の報告である。対象は、ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)による治療を受けた進行肝細胞がん症例で、さらに、少なくとも1回のHCCに対する全身的治療を受けた後に進行を呈した症例(HCCに対する全身的治療は2回まで)とした。707例を無作為に2対1に割り付けて、実薬群はcabozantinib(60mg/日)の内服を行い、経過をフォローした。結果として、全生存期間(OS)は、cabozantinib投与群10.2ヵ月、プラセボ群8.0ヵ月と有意な延長(p=0.005)を認めた。また、副次評価項目である、無増悪生存期間(PFS)は、cabozantinib投与群5.2ヵ月、プラセボ群1.9ヵ月と有意な延長(p<0.001)を認めた。しかし、一方で、Grade3/4の有害事象の頻度がcabozantinib投与群では68%であり、プラセボ群の36%と比較して頻度が2倍近いことも報告された。頻度の高い有害事象は、手足症候群、高血圧、肝機能障害、疲労、下痢などであった。 本邦における切除不能の進行肝細胞がん(HCC)に対する多標的チロシンキナーゼ阻害薬として、まず2009年5月にソラフェニブが承認された。次に、2017年6月にレゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)が承認され、続いて、2018年3月にレンバチニブ(同:レンビマ)が承認された。 ソラフェニブ治療後の進行HCC症例を対象とした治療法の研究報告として、すでに、レゴラフェニブ投与によりプラセボ群と比較して生存期間が有意に延長することが2016年にLancetに報告された。cabozantinibは、VEGFR、MET、AXLなどのチロシンキナーゼを阻害する多標的チロシンキナーゼ阻害薬の1つであり、本論文はレゴラフェニブに続いてのcabozantinibに関する報告である。 今後の進行HCCに対する治療において、多標的チロシンキナーゼ阻害薬を用いる際には、薬剤の合理的選択、さらにそれぞれの薬剤による有害事象に対する対応をしっかり見極めながら治療することが重要であると考える。 本年6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)では、多標的チロシンキナーゼ阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法に関しての報告が行われた。進行HCCに対する治療法は著しく進歩しており、今後の治療法開発の動向にも注目したい。

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ASCO2018レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介2018年度のASCOも例年と同様に、コーミックプレイス@シカゴにて開催された。消化器がんの中でも肝胆膵領域における注目演題についていくつか報告する。肝細胞がん肝細胞がんにおいて、最も注目された演題は、肝細胞がんにおける2次治療としてラムシルマブとプラセボを比較した第III相試験のREACH-2試験である。ラムシルマブは、以前にも肝細胞がんのソラフェニブ不応・不耐の症例を対象としてプラセボと比較した第III相試験を行い、主要評価項目である生存期間は達成しなかったが、AFPが400ng/mL以上の症例で良好な生存期間の延長が示され、今回、AFPが400ng/mL以上の症例を対象としたやり直しの第III相試験を行った。あまり例のない第III相試験であるが、今回は生存期間の有意な延長(生存期間の中央値:ラムシルマブ群8.5ヵ月 vs.プラセボ群7.3ヵ月、ハザード比0.710(95%CI:0.531~0.959)を認め、主要評価項目を達成した。しかも、全体で292例、ラムシルマブ群197例、プラセボ群97例と、比較的少ない患者数で、ポジティブな結果が得られている。また、生存期間のサブグループ解析を見ても、女性以外ではほぼラムシルマブで良好であり、ソラフェニブの2次治療として有用性が示された。無増悪生存期間もラムシルマブで有意に良好(中央値:2.8ヵ月 vs.1.6ヵ月、ハザード比0.452、95%CI:0.339~0.603、p<0.0001)であり、奏効割合もラムシルマブ群4.6%、プラセボ群1.1%と良好で、病勢制御割合もそれぞれ59.9%と38.9%であり、有意に良好であった。Grade3以上の有害事象はラムシルマブ群で高血圧を高率に認めたが(ラムシルマブ群10.7% vs.プラセボ群3.2%)、忍容性は良好であった。ラムシルマブは、肝細胞がんにおいてバイオマーカーでセレクトした患者を対象として、初めて延命効果を示した薬剤であり、また、マルチキナーゼ阻害薬以外の抗体薬である。そのほか、注目された演題としては、Poster Presentationではあるが、切除不能な肝細胞がんに対するVEGFR阻害薬と抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の併用療法で、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法である。ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法は、まだ23例と限られた対象での解析であるが、奏効割合(RECIST1.1)が65%と驚異的な成績が示されている。これまでの標準治療であるソラフェニブの奏効割合5~10%と比べると、約10倍の奏効割合である。また、全Gradeの有害事象も食欲減退33%、疲労33%、蛋白尿26%、高血圧21%と、他剤と比べて忍容性も良好であった。これらの有望な結果から、現在、肝細胞がんの初回化学療法例を対象として、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とソラフェニブを比較した第III相試験(NCT03434379)が進行中である。レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は、さまざまながん腫において有効性が期待され開発が進行中である。腎細胞がんではBreakthrough TherapyとしてFDAでも取り上げられており、肝細胞がんに対しても期待されて、第Ib試験が行われた。第I相パートにおいて、6例の患者で投与量規制毒性がないことを確認し、拡大コホートで、初回化学療法の患者24例に投与された。主な有害事象は食欲減退、高血圧であった。最良効果判定にて、増悪と判定された例はなく、ほとんどすべての症例で縮小傾向であった。また、多くの症例で、奏効が長期間続いており、いわゆる“durable response”も認められた。このように、これまでの標準治療であるソラフェニブでは、延命効果は得られるが、なかなか腫瘍縮小効果が得られないと言っていた時代から、約半数の症例で縮小が期待できる時代に突入した。今後の肝細胞がんの化学療法は、これらのVEGF阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が中心に開発が進んでいくことが予測されている。胆道がん進行胆道がんに対する1次化学療法のゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC)とゲムシタビン+S-1併用療法(GS)を比較した第III相試験(JCOG1113)がPoster Discussionで日本から報告された。生存期間(中央値)は、GC療法13.4ヵ月、GS療法15.1ヵ月(ハザード比0.945、95%CI:0.777~1.149、p=0.0459 非劣性)と非劣性が示され、胆道がんの初回化学療法の1つのoptionとして位置付けられた。そのほか、胆道がんの初回化学療法例を対象として、GC+ナブパクリタキセルとGC療法を比較する第III相試験がSWOGで進行中であり、今後の有望な併用療法として注目されていた。膵がん膵がん術後の補助療法として、modified FOLFIRINOXとGEMを比較した第III相試験、切除可能膵がんとBorderline resectable(切除可能境界)膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験、転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOXを増悪まで継続するか、FOLFIRINOX後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行するか、ゲムシタビンとFOLFIRIの逐次治療のどれが良いかを検討するランダム化第II相試験の3演題がOral Presentationとして報告された。術後補助療法としては、海外では、ゲムシタビンが標準治療として行われている。今回は、R0切除が行われた膵がん切除後の患者を対象として、modified FOLFIRINOX(イリノテカンの投与量を150mg/m2に減量したレジメン)とゲムシタビンを比較した第III相試験の結果が報告された。主要評価項目である無病生存期間(中央値)は、modified FOLFIRINOX群で21.6ヵ月、ゲムシタビン群で12.8ヵ月(ハザード比0.58、95%CI:0.46~0.73、p<0.0001)であり、有意に良好な結果が示された。また、生存期間(中央値)もmodified FOLFIRINOX群で54.4ヵ月とゲムシタビン群で35.0ヵ月(ハザード比0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)であり、有意に良好な結果であった。有害事象に関して、下痢、末梢神経障害、疲労、嘔吐、口内炎、手足症候群やG-CSFの使用率はmodified FOLFIRINOX群で高率に認められていたが、忍容性はあり、十分に管理可能であった。したがって、全身状態の良好な膵がん切除後の患者に対する補助療法として、modified FOLFIRINOXは標準治療として位置付けられるであろうと報告された。では、日本でも術後補助療法はmodified FOLFIRINOXが標準治療になるだろうか? 日本では、術後補助療法として、S-1とゲムシタビンを比較した第III相試験が行われており、S-1群で、有意に良好な無再発生存期間(中央値:S-1 22.9ヵ月、ゲムシタビン11.3ヵ月、ハザード比0.60、95%CI:0.47~0.76、p<0.0001)と生存期間(中央値:S-1 46.5ヵ月、ゲムシタビン25.5ヵ月、ハザード比0.57、95%CI:0.44~0.72、p<0.0001)が報告されている。S-1単剤でもmodified FOLFIRINOXと同様の成績が得られていること、有害事象はS-1が良好であることを考慮すると、日本において標準的な補助療法がmodified FOLFIRINOXにすぐに置き換わることはないと思われる。しかし、今後、切除不能膵がんにしか適応がないFOLFIRINOXを切除後の補助療法として使用できるように試みることは必要かもしれない。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験(PREOPANC)が報告された。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが約半数ずつ含まれるような対象に対して、まず切除を行い、術後補助化学療法としてゲムシタビン6サイクルを行う群(immediate surgery群)127例と、術前にゲムシタビンを2回投与後、ゲムシタビン併用放射線療法(ゲムシタビン1,000mg/m2にて3投1休、放射線36Gy/15 fraction)を行い、再度ゲムシタビンを2回投与して切除し、術後に補助化学療法としてゲムシタビンを4サイクル行う群(術前療法群)119例を比較した第III相試験である。切除割合は、それぞれ72%と60%であり、immediate surgery群でやや高率であったが、R0切除割合は、それぞれ31%と63%であり、術前療法群で有意に高率であった(p<0.001)。無病生存期間、遠隔転移再発までの期間、局所再発までの期間も、術前療法群で良好であった。生存期間はまだpreliminaryな結果ではあるが、それぞれ13.7ヵ月と17.1ヵ月であり、ハザード比0.74、p=0.074と術前療法群で良好な傾向が示されており、最終解析が期待される結果であった。ただし、本試験では、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが混在した試験であり、評価が難しい。Borderline resectable膵がんに対しては、すでに第II/III相試験の結果、術前治療の有用性も報告されているが(Jang JY, et al. Ann Surg. 2018;215-222.)、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性は明らかにされていない。今後、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんのそれぞれのコホートでの解析も行われると思われるが、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性に関して十分な回答が得られない可能性もある。転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOX 12サイクル後、経過観察する群(FOLFIRINOX群)、FOLFIRINOX 8サイクル後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行し、増悪時にFOLFIRINOXを再開する群(FOLFIRINOX/5-FU群)、ゲムシタビンとFOLFIRI3を2ヵ月ごとに交互に投与する群(FOLFIRI3/Gem群)のいずれが良いかを検討するランダム化第II相試験(PANOPTIMOX)がOral Presentationとして報告された。この試験のコンセプトは、大腸がんでのオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法が膵がんでも示すことができるかどうかを検討したものである。主要評価項目である6ヵ月の無増悪生存割合は、FOLFIRINOX群47.1%、FOLFIRINOX/5-FU群44.0%、FOLFIRI3/Gem群34.1%で、FOLFIRINOX群とFOLFIRINOX/5-FU群は同等であり、FOLFIRI3/Gem群は有効性が低いことが示された。また、Grade3~4の末梢神経障害は、FOLFIRINOX群で10.2%に対して、FOLFIRINOX/5-FU群で18.7%と高率であったが、結果的にFOLFIRINOX/5-FU群でオキサリプラチンの投与量が増え、治療強度が強くなったためと考察されている。進行膵がんの1次治療として、FOLFIRINOXによる導入化学療法を4ヵ月行い、5-FU+ロイコボリンの維持療法を行うことは、実施可能で有効な可能性が示され、今後、FOLFIRINOXとFOLFIRINOX+5-FU+ロイコボリンの維持療法を比較する第III相比較試験が必要であると結論付けられた。この試験の結果、FOLFIRINOXにおけるオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法は、今後、検討されるべき課題の1つだと思われた。膵神経内分泌腫瘍テモゾロマイドとカペシタビンの併用療法(CAPTEM)とテモゾロマイド単独(TEM)を比較したランダム化比較第II相試験が報告された。これまでに、CAPTEMは30~70%と非常に高い奏効割合が報告され、注目されてきたレジメンである。標準治療であるエベロリムスやスニチニブ以外の化学療法歴がなく、12ヵ月以内に進行が確認された切除不能膵神経内分泌腫瘍の患者142例が対象として行われた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)は、CAPTEM群22.7ヵ月、TEM群で14.4ヵ月、ハザード比0.58(95%CI:0.36~0.93)、p値も0.023と有意に良好であった。生存期間もCAPTEM群で有意に良好であった(中央値:CAPTEM群 未到達、TEM群38.0ヵ月、ハザード比0.41(95%CI:0.21~0.82、p=0.012)。この試験は、有望視されていたCAPTEM療法が、ランダム化比較試験において、無増悪生存期間の延長のみならず、生存期間の延長まで示されたものであり、今後、膵神経内分泌腫瘍の治療の重要な選択肢の1つとなるものと思われる。まとめASCO2018では、肝細胞がんの2次化学療法におけるラムシルマブ、膵がん切除後の補助療法としてのmodified FOLFIRINOXが、今後、標準治療として位置付けられてくることが予測される。また、そのほかにも有望な治療法の開発も進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいている。

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【JSMO2018みどころ】免疫療法とがんゲノム医療を中心に

 2018年7月19日(木)から3日間にわたって、第16回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、がん治療の最新動向と、今回のJSMOで注目すべき各領域のトピックが紹介された。本稿では、「がんゲノム医療」「がん免疫療法」の注目演題をセミナーでの演者のコメントとともに紹介する。 ■がんゲノム医療 西尾 和人氏(近畿大学医学部ゲノム生物学教室 教授)が登壇。「ゲノム医療の実装に向けた体制整備が急ピッチで進む中で、既存の枠組みを超えた取り組みが必要となる」と話し、本学術集会のメインテーマ“Beyond Borders -Nation, Organ, Profession-”をキーワードに注目演題を紹介した。[がんゲノム医療の注目演題]ASCO/JSMO合同シンポジウム「Precision medicine: current status and future perspectives」 日時:7月19日(木)14:30~16:00 場所:Room 9(神戸ポートピアホテル本館 B1F 偕楽)「ASCO PresidentによるAJS-1 では、“22%の奇跡は増えるか”がキーワード。続いてのAJS-2では、JCO Precision Oncologyのチーフエディターが次世代のリスク評価と治療へのアプローチについて講演予定」合同シンポジウム1「がんゲノム医療」(日本癌学会/日本癌治療学会/日本臨床腫瘍学会) 日時:7月19日(木)9:00~11:00 場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館 1F ポートピアホール)「次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析システムの規制(JS1-1)や、NCCパネル検査の実装(JS1-3)、NGS検査ガイダンスの整備と海外ガイダンスとの比較(JS1-5)など、本邦における実装に向けた各取り組みが紹介される」合同シンポジウム3 「Precision medicine時代におけるがん薬物療法と放射線療法:現状と今後の戦略」(日本放射線腫瘍学会/日本臨床腫瘍学会) 日時:7月19日(木)12:30~14:30 場所:Room 6(神戸国際展示場 2 号館 3F 3A会議室)「放射線治療におけるがんゲノム解析を用いたプレシジョンメディシン(JS3-5)は、ゲノム医療が治療モダリティを超えるかという点からも注目される」シンポジウム 11「リキッドバイオプシー」 日時:7月20日(金)8:30~10:30 場所:Room 2(神戸国際展示場 2 号館 1F コンベンションホール南)「低侵襲で繰り返しの検査が可能となれば、治療しながら同時進行で後治療を決めていくことが標準的になるかもしれない。Exosome(SY11-1)やCAPP seq(SY11-4)など、新しい技術の臨床応用に向けた研究が紹介される」「病理学(特別講演2)、大腸がん(IS4)、婦人科腫瘍(IS6)、肺がん(IS10)と各領域のセッションでもゲノム医療が取り上げられる」特別講演 2 日時:7月19日(木)12:30~14:10 場所:Room 11(神戸国際会議場 3F 国際会議室) SL2-1 病理診断における人工知能の可能性 SL2-2 医療におけるAIの可能性International Symposium 4「大腸癌のmolecular subtype と新規コンパニオン診断薬の可能性」 日時:7月20日(金)8:30~10:00 場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館 1F ポートピアホール)International Symposium 6「Future Perspectives of PARP inhibitor」 日時:7月20日(金)8:30~10:30 場所:Room 9(神戸ポートピアホテル本館 B1F 偕楽)International Symposium 10「Future perspectives of treatment for NSCLC」 日時:7月21日(土)11:00~12:30 場所:Room 8(神戸ポートピアホテル本館 B1F 偕楽)「“職種を超えた取り組み”という観点ではSY 4、ALL JAPANでの体制整備についてはSY 10で、遺伝性腫瘍の専門家とオンコロジストがどのように協業していくかについては、SY 29で議論される予定」シンポジウム 4「がんプロフェッショナル養成プランにおけるゲノム医療教育の推進」 日時:7月19日(木)14:30~16:00 場所:Room 3(神戸国際展示場 1 号館 2F Hall A)シンポジウム 10「日本におけるがんゲノム医療の展開」 日時:7月20日(金)14:50~16:50 場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館 1F ポートピアホール)シンポジウム 29「遺伝性がんへの取り組み」 日時:7月21日(土)10:30~12:30 場所:Room 9(神戸ポートピアホテル本館 B1F 偕楽)■がん免疫療法 田中 謙太郎氏(九州大学病院胸部疾患研究施設 助教)が登壇し、「2018年5月現在、抗PD-1抗体は6つのがん腫(悪性黒色腫、非小細胞肺がん、胃がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頚部がん)で、抗PD-L1抗体は2つのがん腫(非小細胞肺がん、メルケル細胞がん)で、抗CTLA-4抗体と抗CTLA-4抗体/抗PD-1抗体併用は悪性黒色腫で適応となっており、免疫チェックポイント阻害薬は、多がん腫におけるキードラックとしての地位を確立しつつある。新規併用療法の開発や治療戦略についての臓器別の講演のほか、副作用管理に関するシンポジウムに注目いただきたい」と話した。[がん免疫療法の注目演題]合同シンポジウム3 「Precision medicine時代におけるがん薬物療法と放射線療法:現状と今後の戦略」(日本放射線腫瘍学会/日本臨床腫瘍学会) 日時:7月19日(木)12:30~14:30 場所:Room 6(神戸国際展示場 2 号館 3F 3A会議室) JS3-1 局所進行非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤への期待 JS3-2 抗PD-1/PD-L1抗体治療と放射線治療の併用療法の確立を目指した生物学的研究「根治にむけた併用の可能性が、臨床試験結果と基礎的研究から論じられる予定」シンポジウム 23「免疫チェックポイント阻害剤の副作用とその対策」 日時:7月21日(土)14:40~16:40 場所:Room 2(神戸国際展示場 2 号館 1F コンベンションホール南)「免疫関連有害事象の管理について、最新の知見が紹介される」「腎がん(SY7-1)、悪性黒色腫(SY7-4)、頭頚部がん(ISY5-2)、悪性リンパ腫(SY15-1)、肺がん(ISY7-4)の各臓器ごとに、最適化された治療戦略についての講演が予定されている」シンポジウム7「メラノーマおよび腎癌に対する免疫療法および標的療法:治療戦略上の類似点と相違点」 日時:7月19日(木)14:30~16:00 場所:Room 6(神戸国際展示場 2 号館 3F 3A 会議室) SY7-1 腎がんに対する免疫治療:メラノーマとの相違点 SY7-4 進行期悪性黒色腫の全身療法:現状と今後の展開International Symposium 5「頭頸部がんに対する免疫療法」 日時:7月20日(金)8:30~10:30 場所:Room 5(神戸国際展示場 2 号館 2F 2A 会議室) ISY5-2 Current Status of Immune Check Point Inhibitor for Recurrent or Metastatic Head and Neck Cancerシンポジウム 15「造血器腫瘍に対する治療概念の進化」 日時:7月20日(金)8:30~10:30 場所:Room 6(神戸国際展示場 2 号館 3F 3A 会議室) SY15-1 悪性リンパ腫の治療:進歩と展望International Symposium 7「肺がん治療における免疫チェックポイント阻害剤の最新 UPDATE」 日時:7月21日(土)8:30~10:30 場所:Room 2(神戸国際展示場 2 号館 1F コンベンションホール南) ISY7-4 Driver Oncogene陽性肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の可能性【第16回日本臨床腫瘍学会学術集会】 会期:2018年7月19日(木)~21日(土) 会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場・神戸ポートピアホテル 会長:中西 洋一(九州大学胸部疾患研究施設 教授) テーマ:Beyond Borders -Nation, Organ, Profession-第16回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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ASCO2018レポート 肺がん-1

レポーター紹介2018 ASCO(American Society Clinical Oncology)Annual Meetingが、2018年6月1日~5日、米国・イリノイ州シカゴで開催された。第54回を数える今回の年次総会には、世界中からがん医療に関わる医師、看護師、薬剤師、患者、製薬企業などが多数参加しており、がんに関する幅広い研究成果や教育講演に接することができた。ここ数年、肺がん領域は毎年標準治療を変えるエビデンスが創出されているが、今年のASCOでもその勢いは続き、今年のガイドラインに掲載されうるエビデンスが多数報告された。免疫療法の到達点非小細胞肺がんの2次治療において、ニボルマブがドセタキセルに対して歴史的な勝利をおさめて3年ほどで、PD-L1高発現の患者集団の1次治療においてペムブロリズマブがプラチナ併用療法を凌駕することが示された。そして昨年末のESMO IO、今年に入ってからのAACR、そしてASCOと立て続けに、PD-L1の発現によらず、免疫チェックポイント阻害薬が1次治療を席巻するエビデンスが報告された。KEYNOTE-042PD-L1 TPS 1%以上の進行非小細胞肺がん患者を対象に、ペムブロリズマブとプラチナ併用療法を比較した第III相試験である。同様の患者集団に対しては、すでにニボルマブを用いたCheckMate 026試験が実施されており、ニボルマブは化学療法と同等であったが優越性を示すことはできなかった。KEYNOTE-042においてはそれに反して、hazard ratio 0.81(95%信頼区間:0.71~0.93)と統計学的にも有意に、ペムブロリズマブ単剤が化学療法に勝る結果が報告された。生存期間中央値では、ペムブロリズマブ群が16.7ヵ月、化学療法群が12.1ヵ月であった。CheckMate 026との違い、とくにニボルマブとペムブロリズマブの薬剤としての有効性の違いがあるのか、という点に注目が集まる結果である。試験の詳細を比較すると、KEYNOTE-042試験において、PD-L1 TPS 50%以上の患者集団の割合が高いこと、試験が免疫チェックポイント阻害薬未承認の国を中心として実施されているため、後治療でのクロスオーバーの割合が低いこと、などの点を考慮すると、薬剤の違いよりも他の相違点が結果に影響しているという考察がなされている。また、PD-L1 TPS 1~49%のサブセットにおいては、ペムブロリズマブの有効性は必ずしも化学療法よりも明らかに優れる結果ではなかったことから、化学療法実施不可の患者を除き、KEYNOTE-189で示された化学療法+ペムブロリズマブの選択が妥当とする見解が主流である。いずれにせよ、PD-L1陰性を除き、すべての非小細胞肺がん患者に対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の使用を支持する結果が得られたことに高い評価が集まった。Pembrolizumab(pembro)versus platinum-based chemotherapy(chemo)as first-line therapy for advanced/metastatic NSCLC with a PD-L1 tumor proportion score(TPS)≧1%:Open-label, phase 3 KEYNOTE-042 study.(Abstract No: LBA4)Gilberto LopesKEYNOTE-407AACRで非扁平上皮非小細胞肺がんに対して実施されたKEYNOTE-189試験の結果が報告され、PD-L1の発現によらずプラチナ併用療法+ペムブロリズマブが新たな標準治療となる方向性が示された。KEYNOTE-407試験は、扁平上皮非小細胞肺がんに対して、PD-L1の発現によらずプラチナ併用療法+ペムブロリズマブの有効性を検証した第III相試験である。559人の患者を登録した本試験の結果、Co-primary endpointのOSとPFSともにペムブロリズマブ併用群が有意に生存を延長するという結果が得られた。OSではhazard ratio 0.64(95%信頼区間:0.49~0.85)、PFSではhazard ratio 0.56(95%信頼区間:0.45~0.70)であった。サブセット解析ではPD-L1の発現割合が高いほど有効性が増す傾向が示されたものの、PD-L1の発現によらない全集団でのOS、PFSの優越性が認められていることの意義は大きく、扁平上皮非小細胞肺がんの新たな標準治療が創出された試験となった。Phase3study of carboplatin-paclitaxel/nab-paclitaxel(Chemo)with or without pembrolizumab(Pembro)for patients(Pts)with metastatic squamous(Sq)non-small cell lung cancer(NSCLC).(Abstract No: 105)Luis G. Paz-AresIMpower 131PD-L1阻害薬であるアテゾリズマブとプラチナ併用療法を用いた試験のうち、扁平上皮非小細胞肺がんを対象としたものがIMpower 131試験である。本試験はアテゾリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセルのArm A、アテゾリズマブ、カルボプラチン、アブラキサンのArm B、カルボプラチン、アブラキサンのコントロールとしてのArm Cを含む、3群のランダム化試験である。今回報告されたのは、その中でもArm BとArm Cの比較である。primary endpointであるPFSのhazard ratio 0.71(95%信頼区間:0.60~0.85)と、統計学的に有意な無増悪生存期間の延長が示された。一方、OSの中間解析も併せて報告されたがイベント数が不足しており、若干アテゾリズマブ群が良い傾向がみられたが、最終解析の結果を待つ必要がある結果であった。IMpower131: Primary PFS and safety analysis of a randomized phase III study of atezolizumab + carboplatin + paclitaxel or nab-paclitaxel vs carboplatin + nab-paclitaxel as 1L therapy in advanced squamous NSCLC.(Abstract No: LBA9000)Robert M. JotteCheckMate 227ニボルマブ、イピリムマブ併用療法、ニボルマブ、化学療法の併用療法、そして標準治療としての化学療法の3群のランダム化試験であるCheckMate 227試験からは、今回PD-L1陰性の進行非小細胞肺がん患者において化学療法と化学療法+ニボルマブを比較した解析結果が報告された。PFSのhazard ratioが0.74(95%信頼区間:0.58~0.94)と、ニボルマブと化学療法の併用によって、PD-L1陰性の患者集団においても無増悪生存期間が延長されるという結果が示されている。CheckMate 227試験に関しては、AACRにおいてTumor Mutation Burden(TMB)が高い患者集団におけるニボルマブ、イピリムマブ併用療法の良好な成績が報告されるなど、さまざまな解析が進行中である。最も重要な全集団におけるニボルマブ+化学療法の有効性に関する解析結果はまだ行われておらず、結果が待たれる。Nivolumab(Nivo)+platinum-doublet chemotherapy(Chemo)vs chemo as first-line(1L)treatment(Tx)for advanced non-small cell lung cancer(NSCLC)with<1% tumor PD-L1 expression:Results from CheckMate-227.(Abstract No: 9001)Hossein Borghaei

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ASCO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介本年度の米国臨床腫瘍学会年次総会が、2018年6月1日~5日まで例年どおり米国シカゴで開催された。消化器がん領域における注目演題についてレポートする。とくに胃がん領域においては、本邦より2人もの演者がoralで発表されており、日本人として大変誇らしく感じた。JACCRO GC-07 trial本邦の実臨床に最もインパクトがあった演題として、pStageIII胃がんにおけるドセタキセル+S-1(DS)併用療法のS-1療法に対する優越性が証明されたJACCRO GC-07 trialをまずは報告する。本邦では、pStageIII胃がんに対する術後補助化学療法として、S-1療法1年またはCapeOX療法6ヵ月を行うことが標準治療として位置付けられている。しかしながら、ACTS-GC試験のサブグループ解析では、手術単独群に対するS-1療法群の全生存期間におけるHR(ハザード比)がpStageIIIAで0.67、StageIIIBで0.86と報告されており、いずれも効果が不十分と考えられてきた。そこで、根治切除(胃切除+D2郭清)を行ったpStageIII胃腺がんを対象として、S-1療法に対するDS療法の優越性を検証したJACCRO GC-07 trialが行われた。主要評価項目は3年無再発生存(RFS)であり、S-1療法群の3年RFSを62%、HRを0.78とし、両側検定α=5%、検出力80%を確保するために、必要な症例数は1,100例と算出された。2回目の中間解析において(登録患者915例、イベント数216)、3年RFSがS-1療法群49.5%vs.DS療法群65.9%(HR=0.632、p=0.007)と、DS療法群で有意に良好であったことから、2017年9月に効果安全評価委員会において有効中止の勧告がなされた。登録された両群の患者背景には明らかな差が認められず、また明らかな交互作用は観察されなかった。再発部位は、リンパ節、腹膜、血行性転移いずれもDS療法群で少ない傾向であった。有害事象に関しては、白血球減少、好中球減少、発熱性好中球減少症がDS療法で多かったもののマネージメントは十分可能な範囲であった。演者らは、本試験の結果をもって、根治切除後のpStageIII胃がんに対して、DS療法は新たな術後補助療法の標準治療として推奨されると結論付けた。会場では、S-1療法群の成績が従来の本邦からの報告よりやや悪いことが指摘されていた。個人的には、本邦で行われた良質な第III相試験であること、昨年公表された欧州での第III相試験でFLOT療法(DTX+5FU+L-OHP)の有効性が示されていること、エビデンスレベルという点からも、術後DS療法は標準治療として位置付けられると考えられ、今後は実地臨床にも広く用いられることになるだろう。また、用量強度やOSのupdate解析などの報告にも注目したい。KEYNOTE-061試験現在、本邦では胃がん領域においても2017年9月から免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが実地臨床で用いられている。また、米国においては、ペムブロリズマブが既治療の胃がんに対してFDAで承認を受けている。本試験は、切除不能進行再発胃がん/食道胃接合部がんにおける2次化学療法として、ペムブロリズマブ療法とパクリタキセル療法をHead-to-Headで比較した第III相試験として実施された。当初は、PD-L1発現の有無にかかわらず患者が登録されたが、登録途中でPD-L1陽性(CPS≧1)のみを登録することに変更となった(CPS:combined positive score、PD-L1陽性の細胞数[腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ]/全生存細胞数×100)。主要評価項目は、PD-L1陽性例におけるOSとPFSとし、試験全体の片側α=0.025、OSにおける優越性を示すにはp<0.0135を達成する必要がある統計設計で実施された。登録された患者背景に両群で差は認めなかった。PD-L1陽性例における生存期間中央値(MST)は、ペムブロリズマブ療法9.1ヵ月vs.パクリタキセル療法8.3ヵ月、HR 0.82、片側p=0.042であり、両群で有意差はなかった。ただし、解析時点でペムブロリズマブ群では15例が投与継続(パクリタキセル群は0例)されており、実際に12ヵ月生存割合は39.8%vs.27.1%、18ヵ月生存割合は25.7%vs.14.8%とペムブロリズマブ群で長期生存例が多かった。PD-L1発現別の解析では、CPSが高いほどペムブロリズマブの効果が高まることが示された。また、MSI-High例(全体の5%)では、ペムブロリズマブ療法群でOS、奏効割合がともに良好であった(OSは未達、奏効割合46.7%)。主要評価項目であるPD-L1陽性例におけるOSにおいて、統計学的有意差は示せない結果となった。ただし、今後の進行胃がんの化学療法を考えるうえでは、非常に重要かつ示唆に富む結果が得られたと個人的に感じている。具体的には、先のATTRACTION-2試験(ニボルマブとプラセボを比較した、胃がんにおけるSalvage lineの第III相試験)では、PD-L1発現の有無ではニボルマブの効果予測は困難であったが、CPSというPD-L1陽性の定義を用いると免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ができるかもしれない点や、既報と同様にやはりMSI-Hでは胃がんであっても高い奏効割合、治療効果が示される点などである。ディスカッサントからも指摘があったように、今後は、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法や化学療法との併用療法などの結果が注目され、胃がん化学療法の進歩に期待したいところである。なお、本結果は発表同日にLancet誌に掲載され、インパクトあふれる発表であった。PRODIGE 24/CCTG PA.6試験膵がんの術後補助化学療法は、従来はゲムシタビン療法が標準治療として位置付けられていたが、近年、本邦で実施されたJASPAC-01試験の結果から本邦ではS-1療法が、欧米ではゲムシタビン+カペシタビン療法が確立された。また、遠隔転移を有する膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法(5-FU+LV+イリノテカン+L-OHP)が標準治療として用いられている。そこで、切除後膵がんに対する術後補助療法としてのゲムシタビン療法に対するFOLFIRINOX療法の優越性を検証する第III相試験が計画された。本試験で用いられているFOLFIRINOX療法は、毒性の点からmodified FOLFIRINOX療法(mFFX、5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン400mg/m2+イリノテカン180mg/m2+オキサリプラチン85mg/m2、2週ごと、12サイクル)が採用された。主要評価項目は無病生存(DFS)期間として、3年DFS率のHRを0.74、両側α=0.05、検出力80%として必要な症例数は490例と算出された。なお、開始後30例でGrade3以上の下痢を20%に認めたため、以降はイリノテカンの用量が150mg/m2に変更されている。2012年4月~2016年10月までに493例が登録され、2018年2月に効果安全評価委員会において早期結果公表が勧告されたため、今回、データが発表された。登録された患者背景では、リンパ管腫瘍塞栓のみ群間差を認めたがその他は両群に有意な差は認めなかった。DFS期間の中央値は、mFFX療法群21.6ヵ月、ゲムシタビン療法群12.8ヵ月、HR 0.58(p<0.0001)であり、mFFXで有意に良好であった。OSの中央値は、mFFX療法群54.4ヵ月、ゲムシタビン療法群35.0ヵ月、HR 0.64(p=0.003)であった。有害事象として、好中球減少、発熱性好中球減少に差はなかったが、mFFX療法群でG-SCF使用の割合が有意に高かった。また、非血液毒性として、下痢、末梢性感覚ニューロパチー、疲労、嘔吐、口内炎がmFFX群で有意に高かった。以上から、演者らは、mFFX療法は、毒性が増すものの、全身状態が良好な患者における欧米における標準治療と結論付けている。本邦で行われたという点においては、JASPAC-01試験の結果から、毒性の点から、S-1療法は本邦における標準治療としての位置付けは揺るがないだろう。しかしながら、JASPAC-01試験、本試験ともに大規模第III相試験から得られた結果という点では、同等のエビデンスとも考えられ、すでに転移性の膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法は実地診療で行われている。とくに、本試験のサブグループ解析では、mFFX療法でR1切除、N1切除の成績が良好であったことから、予後不良な症例にはmFFXは期待できるのかもしれない。

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がん免疫療法の効果に男女差はあるのか

 これまでに、免疫系の応答には男女差があるという報告があるが、性別が免疫チェックポイント阻害薬の有効性に及ぼす影響については、ほとんど知られていない。今回、イタリア・European Institute of OncologyのFabio Conforti氏らは、免疫チェックポイント阻害薬の、男女間における効果の不均一性を評価するために、システマティックレビューとメタ分析を行った。結果、免疫チェックポイント阻害薬は、悪性黒色腫および非小細胞肺がんなどの進行がん患者の全生存期間を延長するが、効果の大きさは性別に依存することが明らかになった。Lancet Oncology誌2018年6月号に掲載。 著者らは、PubMed、MEDLINE、Embase、およびScopusにおいて、データベース開始~2017年11月30日の間で、免疫チェックポイント阻害薬(PD-1またはCTLA-4阻害薬、もしくは両方)のランダム化比較試験を系統的に検索した。同様に、主要学会の議事録から抄録と発表をレビューした。そこから非ランダム化試験を除外し、英語論文のみで検討を行った。 検索で同定された7,133件の研究のうち、免疫チェックポイント阻害薬(イピリムマブ、tremelimumab、ニボルマブ、またはペムブロリズマブ)が投与され、患者の性別による全生存率を報告したランダム化比較試験は20件あった。全体で、進行がんまたは転移を有するがんの患者1万1,351例(男性7,646例:67%、女性3,705例:33%)が分析され、最も多いがん種は悪性黒色腫(3,632例:32%)および非小細胞肺がん(3,482例:31%)だった。 主な結果は以下のとおり。・男性において、免疫チェックポイント阻害薬群と、プラセボ群を比較して得られた全生存のハザード比は、0.72(95%CI:0.65~0.79)だった。・女性において、免疫チェックポイント阻害薬群と、プラセボ群を比較して得られた全生存のハザード比は、0.86(95%CI:0.79~0.93)だった。・免疫チェックポイント阻害薬による全生存期間の改善効果は、男性のほうが有意に高かった(p=0.0019)。 今回の結果より、著者らは、男性と女性で異なる免疫療法のアプローチを探るべきかもしれない、としている。

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食道がん3次治療、ペムブロリズマブの効果(KEYNOTE-180)/ASCO2018

 現在、進行および転移のある食道がんでは5-FU+シスプラチン併用療法を軸にした治療がスタンダードだが、多くの症例では2~3次治療で治療選択肢が尽き、一般的には予後が悪い固形がんと認識されている。 一方、食道がんでは免疫による攻撃を回避する分子PD-L1の発現が高頻度で認められるため、免疫チェックポイント阻害薬の有効性に注目が集まっている。 こうした中で進行および転移のある食道がんの3次治療として、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を用いた第II相試験であるKEYNOTE-180の結果を、Weill Cornell Medical CollegeのM.A.Shah氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 試験の対象となったのは、化学療法を2次治療以上まで行った進行および転移のある食道腺がん、食道扁平上皮がん、食道胃接合部領域がんの患者。登録された患者では、3週ごとにペムブロリズマブ200mgが投与された。 主要評価項目は全奏効率(ORR)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効持続期間(DOR)、安全性・忍容性とした。なお、登録した患者では治療前検体で、22C3抗体を用いた免疫組織染色でPD-L1発現を測定。腫瘍細胞CPS(Combined Positive Score;PD-L1で染色された細胞数)10%以上をPD-L1陽性と規定した。 試験には121例の患者が登録され、今回の結果は2017年9月18日をカットオフとした。登録患者の9%にあたる11例では、カットオフ日以降も治療が継続されている。追跡期間の中央値は5.8ヵ月で、登録患者の組織型別割合は扁平上皮がんが52%、腺がんが48%。CPS10%以上が48%、CPS10%未満が52%。登録前の治療歴は2次治療が85%で、3次治療以上は15%だった。 主要評価項目であるORRは10%(CR0%、PR10%)。組織型別のORRは扁平上皮がんが14%、腺がんが5%。PD-L1発現状況別のORRはPD-L1陽性が14%、PD-L1陰性が6%だった。 副次評価項目では全体のPFS中央値が2.0ヵ月(95%CI:1.9~2.1ヵ月)。組織型別のPFS中央値は扁平上皮がんが2.1ヵ月(同2.0~2.4ヵ月)、腺がんが1.9ヵ月(同1.8~2.0ヵ月)。PD-L1発現状況別のPFS中央値はPD-L1陽性が2.0ヵ月(同1.9~2.2ヵ月)、PD-L1陰性が2.0ヵ月(同1.9~2.1ヵ月)となった。 OS中央値は全体が5.8ヵ月(同4.5~7.2ヵ月)。組織型別のOS中央値は扁平上皮がんが6.8ヵ月(同5.4~8.9ヵ月)、腺がんが3.9ヵ月(同3.2~6.3ヵ月)。PD-L1発現状況別のOS中央値はPD-L1陽性が6.3ヵ月(同4.4~9.3ヵ月)、PD-L1陰性が5.4ヵ月(同3.9~6.3ヵ月)だった。なお、DORは未達成。 Grade3以上の有害事象の発現率は12%。有害事象全体として主なものは疲労感、発疹、皮膚掻痒、甲状腺機能低下症、下痢、肺臓炎。治療関連有害事象による死亡例が肺臓炎で1例認められた。 治療効果は組織型の違いやPD-L1発現状況にかかわらず認められており、Shah氏は「今回の結果からは、ペムブロリズマブは進行および転移のある食道がんの3次治療での重要な選択肢となる」との見解を示している。

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新たな抗PD-1抗体、進行皮膚扁平上皮がんに奏効/NEJM

 進行皮膚扁平上皮がん患者において、抗PD-1抗体cemiplimabは、約半数の患者に奏効し、有害事象は免疫チェックポイント阻害薬で一般的にみられるものと同じであった。米国・テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのMichael R. Migden氏らが、cemiplimabの有効性および安全性を検討した第I/II相臨床試験の結果を報告した。進行皮膚扁平上皮がんは、腫瘍の遺伝子変異量が高く疾患リスクは免疫抑制と強い関連があることから、免疫療法が奏効する可能性があり、cemiplimabの第I相用量漸増試験では、転移を有する皮膚扁平上皮がんに対する持続的かつ深い奏効が観察されていた。NEJM誌オンライン版2018年6月4日号掲載の報告。第I相および第II相試験を実施し、奏効率を評価 研究グループは2016年3月~2017年1月に、局所進行/転移を有する皮膚扁平上皮がん患者26例を対象に第I相拡大コホート試験を、2016年5月~2017年4月に、転移を有する皮膚扁平上皮がん患者59例を対象に第II相ピボタル試験を行った。両試験とも対象患者にcemiplimab 3mg/kgを2週間ごとに静脈内投与し、8週ごとに評価した。 第II相の主要評価項目は、独立中央判定委員会の評価による奏効率(intention-to-treat解析)であった。奏効率は第I相試験で50%、第II相試験で47% 第I相拡大コホート試験では、追跡期間中央値11.0ヵ月において、26例中13例で奏効が確認された(奏効率50%、95%信頼区間[CI]:30~70)。 第II相ピボタル試験では、追跡期間中央値7.9ヵ月において、59例中28例で奏効が確認された(奏効率47%、95%CI:34~61)。奏効例28例のうち、57%で奏効期間が6ヵ月を超え、82%で奏効が持続し、データカットオフ日までcemiplimabの投与が継続されていた。 第II相ピボタル試験においてみられた主な有害事象(発現率15%以上)は、下痢、倦怠感、悪心、便秘、発疹であった。7%の患者が有害事象により投与を中止した。 なお、免疫不全状態の患者における有効性は検証できていない。現在、局所進行皮膚扁平上皮がん患者を対象にした第II相試験が進行中である。

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Stage III 肺がん、化学放射線療法+免疫療法が期待される理由

 2018年5月25日、第11回アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー「肺がんの早期治療における免疫治療への期待」が開催された。山本 信之氏(和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科 教授)、髙山 浩一氏(京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授)が登壇し、Stage III切除不能非小細胞肺がん(NSCLC)治療における課題と免疫療法による可能性、およびこれまでほとんど明らかにされてこなかった、Stage III肺がん患者の心理的負担感をテーマに講演した。化学放射線療法と免疫療法の併用による可能性 はじめに山本氏は、NSCLC患者の約2割を占めるStage IIIの患者に対する治療では、根治を目指し、化学療法と根治的胸部放射線療法の併用が標準治療として推奨されていることを説明。第2世代レジメン(MVP)から、第3世代レジメン(カルボプラチン+パクリタキセル、シスプラチン+ドセタキセル等)へと新しい抗がん剤が登場しているものの、放射線と併用したときの生存期間延長という意味では、約20年間ほぼ治療の進歩がないことを指摘した。 一方、標準治療が化学療法のみとなるStage IVでは、分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害薬による治療の進歩が著しい。このうち分子標的治療薬については、「放射線との併用でベネフィットがある可能性はゼロではないが、薬剤性肺炎のリスクがあることから、大規模な臨床試験を実施してその効果を確かめることは難しい」と山本氏は語った。 そこで期待されるのが、免疫チェックポイント阻害薬だ。山本氏は、Stage IV肺がん患者対象の複数の試験で、腫瘍のPD-L1発現率が高いほど免疫チェックポイント阻害薬の奏効率が高いと確認されていること(KEYNOTE-0011)、CheckMate017/0572))、マウスによる実験段階ではあるが、放射線治療によりPD-L1発現が高まり、抗PD-L1抗体と放射線療法を併用すると、各単独療法よりも生存期間が延長すると示唆されていること3)から、「放射線療法が免疫療法の効果を高める可能性がある」と話した。 続いて山本氏は、放射線療法と免疫療法の併用により、放射線照射部位のみでなく、遠方の転移巣においても抗腫瘍免疫反応が活性化される“アブスコパル効果”について言及。悪性黒色腫に対する試験では、イピリムマブ+放射線療法によるアブスコパル効果が確認され、放射線を照射していない部位でも腫瘍縮小効果が確認されている4)という。免疫療法そのものの効果も、早期でより高い? 「腫瘍量が少ないほど免疫療法による治療効果が高いと示唆されていることも5)、Stage IIIでの免疫療法に期待ができる理由の1つ」と山本氏。より早期でより腫瘍量の少ない、手術適応の肺がん患者に対し、術前に免疫チェックポイント阻害薬を投与した結果、ほぼ全例で腫瘍縮小効果が確認されたデータ6)を紹介し、「早期の腫瘍量の少ない病変や微小転移に対し、免疫療法の効果はStage IVよりもさらに高いのではないかと期待される」と話した。心理的な不安感、進行期よりもStage IIIの患者でより強い傾向 続いて髙山氏は、インターネットによる患者調査の結果7)を基に、Stage III肺がん患者における心理的負担感について講演した。「進行期であるStage IVの患者さん対象の調査は行われてきたが、Stage IIIの患者さんの心理的負担感についてはほとんどわかっていなかった」と髙山氏。本調査では、心理的ストレスを数値化するための尺度として、HADS質問票を使用。この質問票は、不安7項目、抑うつ7項目の計14項目からなり、それぞれの状態を点数化して評価する。 調査の結果、化学放射線療法を受けた肺がん患者は、薬物療法を受けた肺がん患者と比較してHADSスコアが高くなる傾向がみられ、特に不安の度合いが高いことが確認された。なかでも、“だんだんと不安が大きくなっていくように感じた”という項目で化学放射線療法を受けた患者の負担感が高かったことに髙山氏は着目。「分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬が使われるStage IVよりも、従来の抗がん剤が使われるStage IIIの治療でより副作用による負担が大きい場合があること、また放射線療法後半における、食事摂取への影響などが背景にあるのではないか」と推察した。 さらに、「Stage IIIでは、初回治療後に無治療で経過観察をする期間が続く。いつ再発するかという不安を抱えながら、“何もしない”ことは大変なストレスだろう」と話し、「免疫療法を含め、このタイミングで何らかの治療の選択肢が生まれれば、心理面でも大きなプラスなのではないか。そしてもちろん、生存期間延長につながる治療法の登場が、病気と治療に直面する患者さんたちにとって、何よりの励みになると期待している」と結んだ。■参考1)Garon EB, et al. N Engl J Med.2015;372;2018-2028.2)Felip E, et al. ESMO 2017.3)Dovedi SJ, et al. Cancer Res.2014;74:5458-5468.4)Postow MA, et al. N Engl J Med.2012;366;925-931.5)Huang AC, et al. Nature.2017;545;60-65.6)Forde PM, et al. N Engl J Med. 2018;378;1976-1986.7)アストラゼネカ株式会社プレスリリース

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第57回

第57回:チェックポイント阻害薬に対する過剰期待とその対処キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.腎がんに対する免疫チェックポイント阻害薬について、Practice Changingになり得る(という)報告をしました。僕もかなり興奮してお伝えしたように、Complete Responseが9%にみられるということなんですけども、あくまでまだ9%なんですね。こういうふうに、医療者側は、High Expectation(非常に高い期待値)を持って使う、患者さん側のほうもテレビで、ニボルマブあるいはペムブロリズマブのコマーシャルが、どんどん流れてます(このように、非常に高い期待値を持っています)。もう2年前になると思うのですけれども、カーター元大統領が、ペムブロリズマブを使うことで、メラノーマの脳転移、肝転移の(ある)状況で、現在もがんがコントロールされていると。先週もテレビの記者会見に出ておられたみたいで、みんな「昨日カーター大統領でてたね」と、翌日には話題になっていました。そういうふうにして、医療者側も患者さん家族側も、非常に期待が高い中で、効かなかった時にどうすれば良いか、そういうことについてわれわれは準備ができてないのではないかと、あのJennifer Temel先生から、今回もJCOに警鐘を投げかける論文が出ています。うちのジャーナルクラブでも読みましたし、これ非常に面白かったので、緩和医療の同僚だとか、フェローあるいは看護師さんにも共有して、こういうことに僕らも配慮しなきゃ、という話をしたところです。お時間があればぜひ読んでみてください。自分もかなりHigh Expectationで、CRが9%と報告したしてしまったんですけども、そこら辺は自分をうまくコントロールしないといけないのかなと思います。でも実は先週、2例も非常に効いた症例があって、脳転移、肝転移、両側副腎転移、骨転移もある患者さんが、カルボプラチンとペメトレキセド、ペムブロリズマブの治療で…現在はペメトレキセドとペムブロリズマブのメンテナンスしてるんですけど…10ヵ月たった時点のペットCTで、画像上の病変はどこにも認められませんでした。脳転移のほうも全脳照射後なんですけど、病気の進行が見られないと。今までこういうことはみたことなかったので、放射線診断医のほうから、「ケイスケ、この人にどういう治療をしたんだ」というような、かなり興奮した電話がかかってきました。そういった、ExpectationとReality、このバランスをうまく使えるようになりたいと思います。Temel JS, et al. J Clin Oncol. Keeping Expectations in Check With Immune Checkpoint Inhibitors.2018 Jan 25.[Epub ahead of print]

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NSCLC 1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS延長:第III相試験/NEJM

 EGFR/ALK変異のない転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の未治療患者に対し、ペメトレキセド+プラチナ製剤ベースの標準化学療法にペムブロリズマブを追加することで、化学療法単独よりも、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長したことが示された。米国・ニューヨーク大学のLeena Gandhi氏らが、616例の患者を対象に行った第III相二重盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年4月16日号で発表した。変異を伴わない進行NSCLC治療の第1選択は、プラチナ製剤ベースの化学療法である。免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブは第2選択薬として承認されているが、PD-L1の発現が50%以上の患者では、化学療法に代わって第1選択とすることが認められている。化学療法へのペムブロリズマブの追加について第II相試験では、化学療法単独よりも有意に高い奏効率と、PFSの有意な延長が認められていた。化学療法+ペムブロリズマブ200mgをプラセボと比較 研究グループは、EGFR/ALK変異のない転移を有する非扁平上皮NSCLCの未治療患者616例を対象に検討を行った。 無作為に2対1に分け、ペメトレキセド+プラチナ製剤ベースの化学療法に加え、一方の群にはペムブロリズマブ200mgを、もう一方にはプラセボを、それぞれ3週ごと4サイクル投与し、その後ペムブロリズマブまたはプラセボとペメトレキセドによる維持療法を合計35サイクルとなるまで行った。 プラセボ群に割り付けられた被験者で病勢進行が認められた場合は、ペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーを行った。 主要エンドポイントはOSとPFSで、盲検化された独立画像中央判定によって評価された。12ヵ月時点の推定全生存率、ペムブロリズマブ併用群69.2%、プラセボ群49.4% 追跡期間の中央値は、10.5ヵ月だった。12ヵ月時点の推定全生存率は、化学療法+ペムブロリズマブ群69.2%(95%信頼区間[CI]:64.1~73.8)に対し、化学療法+プラセボ群は49.4%(同:42.1~56.2)だった(ペムブロリズマブ群の死亡に関するハザード比[HR]:0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.001)。 また、PD-L1陽性細胞の割合で分類したいずれのカテゴリーにおいても、全生存率の改善が認められた。 PFSの中央値は、プラセボ群4.9ヵ月(95%CI:4.7~5.5)だったのに対し、ペムブロリズマブ群は8.8ヵ月(95%CI:7.6~9.2)で、ペムブロリズマブ群の病勢進行または死亡に関するHRは0.52だった(同:0.43~0.64、p<0.001)。 Grade3以上の有害事象の発現頻度は、ペムブロリズマブ群67.2%、プラセボ群65.8%だった。

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