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TN乳がんの免疫チェックポイント阻害薬によるOS延長(解説:下村昭彦氏)

 2022年7月21日のNew England Journal of Medicine誌にKEYNOTE(KN)-355試験の全生存期間(OS)についての結果が公表された。すでにCPS(combined positive score)が10以上のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回化学療法に対するペムブロリズマブの上乗せが、無増悪生存期間(PFS)を延長することは発表され、国内でも標準治療として実施されている(Cortes J, et al. Lancet. 2020;396:1817-1828.)。 KN-355試験ではCPS 10以上のグループにおけるOSが9.7ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.50~0.88)と統計学的有意にペムブロリズマブ群で良好であった。一方、ITT集団やCPS 1以上のグループではその差を検出できなかった。 KN-355試験では併用化学療法のパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンが選択可能であったが、併用化学療法ごとのサブグループ解析のハザード比はパクリタキセルで最も顕著(28.6 vs.8.5ヵ月、HR:0.34、95%CI:0.16~0.72)、ゲムシタビン+カルボプラチンではその差がはっきりとは示されていなかった(19.1 vs.16.2ヵ月、HR:0.88、95%CI:0.61~1.25)。薬剤ごとに差が見られる理由は明確ではないが、パクリタキセル+プラセボ群のOSが極端に悪いこと、ゲムシタビン+カルボプラチン群には無病期間(DFI)が12ヵ月未満の症例が多く入ったことが原因として考察される。 現在TNBCでは2種類の免疫チェックポイント阻害薬が使用されているが、OSの延長を統計学的に証明したのはKN-355試験が初である。もうひとつの免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとはPD-L1の評価方法が異なること、併用化学療法が異なること(アテゾリズマブはアルブミン結合パクリタキセルの併用のみ)であり、有効性の結果を考慮しながら、両方の方法でPD-L1を評価し、投与スケジュールなども加味して治療方針を決定していくことが重要であろう。

202.

dMMR大腸がん術前療法としてニボルマブとイピリムマブの併用が有用な可能性(NICHE-2)/ESMO2022

 DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の大腸がんに対する術前療法としてのニボルマブ・イピリムマブ併用療法の有用性が、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMyriam Chalabi氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 2020年にNICHE-1試験において両剤併用の術前療法としての有用性は報告されている。今回は同様にオランダ国内で実施されたNICHE-2試験の結果も統合しての解析結果発表である。・対象:他臓器転移のないdMMR大腸がん(T3以上またはN+)(112例)・試験群:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを1回投与、その2週間後にニボルマブ3mg/kgを1回投与初回投薬から6週以内に手術を施行・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性、3年無病生存率(DFS)[副次評価項目]病理学的効果、ctDNA解析など病理学的奏効率(pRR:原発巣の残存腫瘍が50%以下)、主要病理学的奏効率(mPR:原発巣の残存腫瘍が10%以下)、病理学的完全奏効率(pCR:原発巣とリンパ節の両方共に残存腫瘍が0%) 主な結果は以下のとおり。・NICHE-1試験からの32例とNICHE-2試験からの80験の全症例が安全性解析の対象となり、5例が除かれた107例が有効性判定に用いられた。・症例背景は、年齢中央値が60歳、病期分類は高リスクIII期が74%であった。高リスクの内訳はT4aが35%、T4bが28%、N2が62%、T4かつN2だったのが48%だった。・免疫関連性有害事象については61%の症例に認められ、Grade3以上の事象は膵臓機能障害、肝炎、筋炎、皮膚障害などで4%に発現した。・全症例で中央値5.4週間以内にR0切除術が施行された。・各奏効率はpRRが99%、mPRが95%、pCRは67%と高率であった。とくにリンチ症候群症例ではpCRが78%であった。・14例で術後化学療法が追加され、追跡期間中央値13.1ヵ月時点で、1例も再発の報告は無かった。 演者は「dMMR大腸がんに対する術前の免疫チェックポイント阻害薬の使用は、今後の標準治療となる可能性を示した」と結んだ。

203.

肝細胞がん1次治療 レンバチニブ+ペムブロリズマブの成績(LEAP-002)/ESMO2022

 切除不能な肝細胞がん(aHCC)に対する1次治療としてのレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法は、レンバチニブ単独に比べ、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)ともに統計学的な有意差は認められなかった。 日本も参加した国際共同の二重盲検第III相LEAP-002試験の解析結果である。米国・カリフォルニア大学のRichard S. Finn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:前治療歴を持たない切除不能なaHCC症例・試験群:ペムブロリズマブ3週ごと+レンバチニブを連日投与(Pem群:395例)・対照群:プラセボ3週ごと+レンバチニブを連日投与(Len群:399例)ペムブロリズマブとプラセボは最大35サイクルまで・評価項目:[主要評価項目]OS、独立評価委員会判定によるPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・最終解析のデータカットオフ(2022年6月)での観察期間中央値は32.1ヵ月であった。・両群の患者背景に偏りはなく、ウィルス性病因が約6割、肝外病変ありが約6割、BCLC病期分類のBが約2割であった。・OS中央値は、Pem群21.2ヵ月、Len群19.0ヵ月、ハザード比(HR)は0.840(95%信頼区間[CI]:0.780~0.997)、p=0.0227であったが、事前に規定されたOSのp=0.0185を超えることはできなかった。24ヵ月OS率はPem群が43.7%、Len群が40.0%だった。・中間解析時のPFS中央値は、Pem群8.2ヵ月、Len群8.0ヵ月、HRは0.867(95%CI:0.734~1.024)、p=0.0466と、こちらも事前規定のp=0.002を超えることはなかった。・最終解析時点のPFSのHRは0.834で、1年PFS率はPem群34.1%、Len群29.3%、2年PFS率は16.7%と9.3%であった。・ORRはPem群26.1%、Len群17.5%、DoR中央値は、Pem群16.6ヵ月、Len群10.4ヵ月であった。・両剤併用による新たな安全性シグナルは報告されなかった。Grade3/4の有害事象はPem群で61.5%、Len群で56.7%に発現した。有害事象により投薬を中止した割合は18.0%と10.6%であった。・ステロイドが投与された免疫原性の有害事象症例は、Pem群で9.6%、Len群で1.8%であった。・試験の後治療として免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けた割合は、Pem群で14.4%、Len群で22.8%であった。

204.

ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022

 KRAS G12C変異陽性の既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、ソトラシブがドセタキセルよりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa L. Johnson氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 ソトラシブの有効性は単群試験のCodeBreaK100で示されていたが、今回発表されたのは、日本も参加した国際共同無作為化比較第III相試験CodeBreaK 200試験の主解析の結果である。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mgx1/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2を3週ごと(DTX群:174例)DTX群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・試験は2020年6月から開始されたが、2021年2月にプロトコール修正が行われ、登録症例数が650例から330例へと変更になり、DTX群のSoto群へのクロスオーバー投与も認められた。・DTX群からSoto群へのクロスオーバー率は26.4%で、DTX治療の後治療として別のKRAS阻害薬の投与を受けた割合は7.5%であった。・両群の年齢中央値は64.0歳、脳転移の既往有りが約34%、前治療歴は2ライン以上が55%であった。・データカットオフ時(2022年8月)のPFS中央値はSoto群が5.6ヵ月、DTX群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)、p=0.002と有意にSoto群が良好であった。1年PFS率は、Soto群24.8%、DTX群10.1%だった。・ORRはSoto群が28.1%、DTX群が13.2%、p<0.001とSoto群が有意に高かった。腫瘍縮小効果があった割合は、それぞれ80.4%と62.8%であった。・DoR中央値はSoto群8.6ヵ月、DTX群は6.8ヵ月で、奏効までの期間中央値は、それぞれ1.4ヵ月と2.8ヵ月であった。・症例数が大幅に減ったこととクロスオーバー投与が許容されたことで、OSにおける両群間の差は検出されなかった。OS中央値は10.6ヵ月と11.3ヵ月、HRは1.01(95%CI:0.77~1.33)であった。・Grade3以上の有害事象は、Soto群で33.1%、DTX群で40.4%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ10.7%と22.5%であった。・Soto群で多く認められたGrade3以上の有害事象は、下痢、肝機能障害で、DTX群で多く認められたものは、倦怠感、貧血、脱毛、好中球減少(発熱性好中球減少症含む)などであった。・患者報告アウトカムは、Soto群で良好であり、がん関連の身体症状悪化までの期間もSoto群の方がDTX群よりも長かった。

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TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:T1c~T3、TILs≧5%のTN乳がん患者 31例・試験群:ニボルマブ群(NIVO群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル 16例ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル+イピリムマブ(1mg/kg)×1サイクル 15例※両群ともにTIL5~10%:5例、TIL11~49%:5例、TIL≧50%:5例※両群ともに4週間後患者は術前化学療法あるいは手術を受ける・評価項目:[主要評価項目]4週間後のCD8+T細胞および/またはIFN-γ発現の2倍変化で定義される免疫活性化[副次評価項目]安全性、放射線学的反応(RECIST1.1)、トランスレーショナル解析※Simonの2段階デザインにより、30%の患者で免疫活性が確認された場合、コホートの拡大が可能となる。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はNIVO群48歳、NIVO+IPI群50歳。grade3腫瘍が93.8%、73.3%。BRCA1/2変異有が18.8%、20.0%だった。無作為化されていないため、NIVO群ではN0が81.3%と最も多かったのに対し、NIVO+IPI群ではN1が60.0%と最も多かった。・4週間後の放射線学的部分奏効(PR)は7/31例(23%)で認められ、うちNIVO群3例(19%)、NIVO+IPI群4例(27%)であった。また、7例のうち3例はTIL≧50%、4例はTIL11~49%だった。・主要評価項目である4週間後の免疫活性化はNIVO群8例(53.3%)、NIVO+IPI群9例(60.0%)でみられ、コホート拡大基準(30%)を満たした。・PRを示した患者ではベースライン時点のIFN-γ発現量が多かった(p=0.014)。・ベースライン時点のCD8+T細胞レベルは奏効と相関しなかったが、空間解析により、CD8+T細胞が腫瘍細胞により隣接していることが奏効と強く関連していることが明らかになった(p=0.0014)。・ベースライン時点では全体の83%の患者でctDNA陽性が確認されたが、4週間後のctDNAクリアランスは24%の患者で確認された。・安全性については、Grade3以上の有害事象はNIVO群1例(6%、甲状腺機能亢進症)、NIVO+IPI群1例(7%、糖尿病)のみであった。 Kok氏らは、TILsを有するTN乳がん患者の多くが、わずか4週間のICI投与で免疫活性の上昇を示し、臨床効果が得られたことから、TN乳がん患者に対する術前化学療法なしのICI投与の可能性が示唆されたと結論付けている。そのうえで同氏は今後の展望として、NIVO群vs. NIVO+IPI群のシングルセル解析や、TIL>50%・N0の患者群における6週間のニボルマブ+イピリムマブ投与後手術を行った場合のpCR率の評価が必要とした。

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深掘りしてみよう!ベバシズマブ併用化学療法【見落とさない!がんの心毒性】第14回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》63歳男性。1年前に大腸がん(臨床病期III期)を発症し、横行結腸切除術と術後化学療法を受けた。高血圧と下肢深部静脈血栓症(以下VTE)を合併しており、オルメサルタンとエドキサバンを服用している。最近になり、咳・息切れが現れ、精査したところ肺腺がんと診断された。胸水、肝転移および微少な脳転移があり、臨床病期IVB期であった。大血管浸潤や中枢気道への露頭病変は認められなかった。ドライバー遺伝子変異は陰性で、PD-L1 TPS 1%であった。血痰や神経症状はなく、Performance statusは0であった。一次治療として、中心静脈ポートを留置した上で、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+パクリタキセル+カルボプラチン療法(IMpower150レジメン)を行う方針とした。【問題】本症例のベバシズマブ投与に関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選んでください。a. 肺腺がんの適応はない。b. 脳転移があり禁忌である。c. 治療中のVTEがあり禁忌である。d. 投与後は高血圧の悪化に注意する。e. 中心静脈ポートの留置は禁忌である。最新の『肺癌診療ガイドライン2021年度版』において、プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを併用した治療を行うよう提案されています(CQ74 推奨の強さ: 2、エビデンスの強さ: A)。メタアナリシスでは、プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを追加することでPFSやOSの延長が認められています12,13)。本症例で紹介したIMpower150レジメンは、化学療法未治療の非小細胞肺がん患者の、とくにEGFR遺伝子変異や肝転移を有する症例において良好な成績をおさめています14)。近年の研究15)において、VEGFには免疫系への関与が示唆されており、抗VEGF薬による免疫活性化と血管正常化による遊走促進といった機序により、免疫チェックポイント阻害薬との併用(複合免疫療法)においても重要な位置付けとなってきました。一方、本稿でも紹介した通り、ベバシズマブには薬理作用に準じた特徴的な副作用が存在するため、リスクベネフィットを十分考慮した上で投与を検討すべきと思われ、投与後については徹底した副作用モニタリングが必要となります。(謝辞)本文の作成に際し、新潟県立がんセンター新潟病院・呼吸器内科 三浦 理氏に監修いただきました。1)Johnson DH, et al. J Clin Oncol. 2004;22:2184-2191.2)Sandler AB, et al. J Clin Oncol. 2009;27:1405-1412.3)Socinski MA, et al. J Clin Oncol. 2009;27:5255-5261.4)Srivastava G, et al. J Thorac Oncol. 2009;4:333-337.5)Hurwitz HI, et al. J Clin Oncol. 2011;29:1757-1764.6)Zaborowska-Szmit M, et al. J Clin Med. 2020;9:1268.7)Nalluri SR, et al. JAMA. 2008;300:2277-2285.8)Yan LZ, et al. J Oncol Pharm Pract. 2018;24:209-217.9)Dahlberg SE, et al. J Clin Oncol. 2010;28:949-954.10)Zawacki WJ, et al. J Vasc Interv Radiol. 2009;20:624-627.11)吉野 真樹ほか.日本病院薬剤師会雑誌. 2012;48:307-311.12)Lima AB, et al .PLoS One. 2011;6:e22681.13)Soria JC, et al. Ann Oncol. 2013;24:20-30.14)Socinski MA, et al. N Engl J Med. 2018;378:2288-2301.15)Manegold C, et al. J Thorac Oncol. 2017;12:194-207.講師紹介

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ICI耐性の非小細胞肺がんに対するラムシルマブ+ペムブロリズマブの2次治療(Lung-MAP S1800A)/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)耐性となった進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療が有望な成績を示した。 進行NSCLCにおけるICI耐性後の2次治療は化学療法だけであり、今もなお大きなアンメットニーズが残っている。一方、ICIとVEGF阻害薬の併用は、複数のがん種で有望な結果が得られている。ドライバー変異のないICI耐性NSCLCの2次治療に、ICIであるペムブロリズマブとVEGF阻害薬であるラムシルマブの併用を化学療法と比較したLung-MAP S1800Aが行われた。結果は米国臨床がん学会年次集会(ASCO2022)で発表され、同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。・対象:1ライン以上のPD-1/L1治療+プラチナベース化学療法(後治療または併用)を受け病勢進行したバイオマーカーの適合がないStage IVまたは再発NSCLC(ICI開始後84日以上かつ最終治療から1年以内に進行した症例)・試験薬群:ラムシルマブ+ペムブロリズマブ(RP群)3週ごと35サイクルまで投与 69例・対照薬群:治験担当医が選択した標準化学治療(ドセタキセル±ラムシルマブ、ゲムシタビン、メトレキセド、SOC群)67例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間、治験医師評価の無増悪生存期間(PFS)、毒性など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はRP群で14.5か月、SOC群で11.6か月であり、RP群で有意に改善された(ハザード比[HR]0.69、80%信頼区間[CI]:0.51〜0.92、片側p=0.05)。・ほとんどのサブグループでRP群のOS改善が示された。・PFS中央値はRP群で4.5ヵ月、SOC群で5.2ヵ月であった(HR:0.86、80%CI:0.66〜1.14、片側p=0.25)・ORRはRP群で22%、SOC群で 28%であった(片側p=0.19)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、RP群の42%、SOC群の60%で発現した。 ICIと化学療法による治療で進行したNSCLC患者に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療は従来のSOCと比較して、OSの有意な改善が示され、安全性は両剤の既知の毒性と一致していた。

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ASCO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介2022年のASCOは久しぶりの現地開催とWeb開催のハイブリッド形式で実施された。肺がん領域については昨年にも増して大きな話題に乏しく、Phase I試験のExpansion、Phase II試験、さらにはサブセット解析などが主体で、PivotalなPhase IIIの公表はあってもNegativeという状況であった。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。SKYSCRAPER-02試験ASCO2022の肺がん領域において、Positiveであれば肺がんだけでなく臓器横断的に大きなインパクトを残したであろう試験がSKYSCRAPER-02試験である。残念ながらProgression-free survival(PFS)、Overall survival(OS)ともにNegativeであったこの試験は、進展型小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブというIMpower133試験で確立された標準治療に、tiragolumab(抗TIGIT抗体)を上乗せすることの優越性を検証するために実施された。TIGIT(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)はT細胞やNK細胞に発現する免疫チェックポイント分子である。tiragolumabは非小細胞肺がんを対象に実施された無作為化Phase II試験であるCITYSCAPE試験の結果、PD-L1高発現の患者集団においてアテゾリズマブに対する上乗せが示され、大きな期待を集めていた。SKYSCRAPER-01試験では進行非小細胞肺がんPD-L1高発現群において、SKYSCRAPER-03試験では切除不能III期非小細胞肺がんの化学放射線療法後の地固め療法として、そして進展型小細胞肺がんにおいてはSKYSCRAPER-02試験が実施されている。その中で最も早く結果が公表されたSKYSCRAPER-02試験は、前述のとおりPFS、OSともにカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブに対する上乗せを示すことができなかった。さらに、ASCO直前にSKYSCRAPER-01試験においても、PFSが統計学的にNegativeであり、OSの結果は追跡中というプレスリリースが発行され、大きな話題となった。SKYSCRAPER-01試験についても、PFSはNumerical improvementを示しているとされており、OSの結果は追跡中、さらにSKYSCRAPER-03試験は結果を待っている状態であり、今後の報告が待たれる。CITYSCAPE試験の成功以降、多数の薬剤が同時に開発される状況となった抗TIGIT抗体についても、今後、他の領域、他の薬剤の結果を含め注目したい。PD-L1高発現群に対するFDAのPooled analysis2021年前半にESMO virtual plenaryにおいて、Flatiron社の技術を用いた電子カルテデータの解析に基づき、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO-only)と、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法(Chemo-IO)が、PD-L1高発現の集団において有効性に大きな違いがないことが報告され大きく注目された。今年のASCOにおいては、FDAがこれまでの臨床試験のデータのPooled analysis結果をまとめ、ASCO2022の進行肺がんOralセッションの1番目という栄誉を得た。Chemo-IOとしては、KEYNOTE-021試験、KEYNOTE-189試験、KEYNOTE-407試験、IMpower150試験、IMpower130試験、CheckMate9LA試験が、IO-onlyとしては、CheckMate026試験、KEYNOTE-024試験、KEYNOTE-042試験、IMpower110試験、CheckMate227試験、EMPOWER-Lung 1試験が対象となっている。これらの試験に登録された9,000例以上の患者から、PD-L1 50%以上のChemo-IO 455例、IO-only 1,298例が解析対象となっている。OSはIO-onlyで20.9ヵ月、Chemo-IOで25.0ヵ月、Hazard ratio(HR)は0.82(95%信頼区間[CI]:0.62~1.08)であり、わずかにChemo-IOで良いものの信頼区間は1をまたいでいるという結果であった。とくに、年齢別のサブセットで異なる傾向を認め、65歳以下ではChemo-IOが良好な傾向があるのに対して、75歳以上ではIO-onlyが良好であった。確かにPost-hocの解析であり、限界も多いものの、PD-L1高発現の集団において、IO-onlyの治療戦略の重要性が再度示される結果であった。ニボルマブ+イピリムマブに関連したフォローアップデータPoster発表ではあったものの、CheckMate227試験の5年アップデートの結果が公表された。抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法の、進行非小細胞肺がんにおけるベンチマークとなる報告である。今回の報告では、PD-L1 1%以上と、1%未満に大別した成績が報告されている。1%以上においては、5年OS割合が24%、5年PFS割合が12%であった。1%未満においては、5年OS割合が19%、5年PFS割合が10%であり、従来指摘されてきたように、PD-L1の発現によらず、ほぼ同等の成績が5年のデータとしても確認された。PD-L1 1%以上のKEYNOTE-042試験においては、5年OS割合が16.6%、5年PFS割合が6.9%とすでに報告されている。異なる試験の結果であり直接比較は難しいものの、ニボルマブ+イピリムマブの併用により長期生存にプラスに働く可能性があることが示唆される結果といえる。今回PD-L1高発現群でのサブセット解析の結果は示されていないため、KEYNOTE-024試験との比較や、KEYNOTE-598試験などで検証されているPD-L1高発現の部分については、新たな情報がなく、今後追加の発表が期待される。さらに、同じくPosterであるが、CheckMate9LA試験については3年のアップデート結果が報告された。PD-L1の発現によらない全体集団において、化学療法2サイクル+ニボルマブ+イピリムマブは、3年OS割合27%、3年PFS割合13%を示した。この傾向はPD-L1の発現によらず維持されており、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の特徴が表れている。CheckMate9LA試験についても今後5年のフォローアップデータなどが待たれるものの、おおむねCheckMate227試験を踏襲する傾向であった。ただ、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で実施されているJCOG2007(NIPPON)試験において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ群の安全性の問題により登録が中断されており、実施に際しては免疫関連の有害事象を中心とした安全管理に留意が必要である(JCOG2007[NIPPON試験]における重篤な有害事象発生について)。周術期治療の話題切除可能非小細胞肺がんに対して、初めてニボルマブによる術前治療を実施した試験がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたことを記憶されている方も多いと思われる。ASCO2022では、この試験の5年フォローアップデータがPosterセッションではあるものの報告されている。20例の対象患者全体において、5年のOS割合が80%、無再発生存割合が60%であり、ニボルマブによる術前治療によりMPR(Major pathologic response、切除検体でViable tumorが10%以下)を達成した9例の患者のうち、8例(89%)が5年無再発生存しているという良好な結果であった。確かに非常に限られた症例での報告ではあるものの、現在実施中、フォローアップ中のさまざまな周術期免疫チェックポイント阻害薬の試験の結果を先取りする内容として確認しておきたい。最近の試験としては、CheckMate816試験について、術前ニボルマブ+化学療法後の病理学的奏効に基づく、EFS(Event-free survival)のサブセット解析の結果が報告されている。本試験はすでにAACR2022において、EFSにおいて術前化学療法に対してニボルマブを上乗せする意義が証明されたとする報告が行われている。AACRでの発表においても、pCR(pathologic complete response)を達成した患者において、ニボルマブの有無にかかわらず明らかにEFSが良いという結果、すなわちpCRが術前治療後の患者にとって明確な予後因子であることが報告されている。今回の報告ではその点をさらに解析し、pCRやMPRだけでなく、70%以上、20%以上などのさまざまなカットオフで評価しており、おおむね病理学的奏効の深さとEFSの良さが相関することが示された。ESMOが主導する、ESMO Virtual plenaryシリーズは、通常開催の学会とは独立して、重要演題を速報的に公開する方法として徐々にその地位を固めつつある。今年のESMO Virtual plenaryにおける肺がん領域の話題は、完全切除後の非小細胞肺がんにおいて、術後補助療法としてペムブロリズマブの意義を検証する、Phase III試験であるEORTC-1416-LCG/ETOP 8-15(PEARLS/KEYNOTE-091)試験であった。本試験においては、何よりもPD-L1高発現の集団においてペムブロリズマブの優越性が示されなかった点が話題となり、今後さまざまな観点からの解析結果が待たれる状態である。ASCO2022においてはサブグループ解析が報告され、割付調整因子に含まれていた術後プラチナ併用療法の有無において実施群のほうで明らかにペムブロリズマブの追加が良い傾向を認め、探索的な結果ながらも術後プラチナ併用療法としてカルボプラチン+パクリタキセルを実施した場合にペムブロリズマブの追加の効果が乏しいことが示されている。本試験については今後もさまざまな追加解析が実施されると思われ、それらの結果からIMpower010試験のアテゾリズマブと合わせて、周術期免疫療法の理解が深まることを期待している。

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ASCO2022 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介ここ2年ほど、ASCOでは、「高齢者総合的機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が続けて発表され、老年腫瘍の領域を大いに盛り上げた。今年のASCOでは、老年腫瘍に関するpivotal studyは少なかったものの、その数および質は高まっているように思えた。その中から、老年腫瘍の観点から興味深い研究を抜粋して紹介する。PS:2または70歳以上の進行非小細胞肺がんに対するカルボプラチン併用療法とニボルマブ+イピリムマブのランダム化比較第III相試験(Energy-GFPC 06-2015: #90111))今回のASCOにて、CheckMate-227の長期フォローアップの結果が公表された2)。具体的には、PD-L1陽性の進行非小細胞肺がんに対してニボルマブ+イピリムマブを投与された集団は化学療法と比較して長期生存が認められた(5年OS:24%vs.14%)。しかし、CheckMate-227の対象集団はPS:0~1であり、75歳以上の高齢者は10%程度しか登録されていないため、いわゆる脆弱な集団において、ニボルマブ+イピリムマブが有用なのかはわかっていない。実は、セカンドライン以降のニボルマブにおいても同様のクリニカルクエスチョンがあり、欧州における承認条件として実施されたCheckMate-171という、PS:2および70歳以上の高齢者進行非小細胞肺がんを対象とした単群試験が行われており、2020年にEuropean Journal of Cancerにその結果が掲載されている(いずれの集団においてもニボルマブの忍容性が示された)3)。PS:2および70歳以上の高齢者のみを対象としているのは、いわゆる「脆弱な集団」でもニボルマブが有用か否か評価したかったようである。前置きが長くなってしまったが、今回のASCOにて、CheckMate-171のクリニカルクエスチョンと同様に、PS:2および70歳以上の高齢者を対象として、カルボプラチン併用療法とニボルマブ+イピリムマブの有効性を評価するランダム化比較試験の結果が発表された。主な適格規準は、IV期または術後再発の非小細胞肺がん、「70歳以上かつPS:0~1」または「年齢不問かつPS:2」、治療歴なし、driver mutationなしなど。登録した患者は、標準治療群(化学療法群)および試験治療群(ニボルマブ+イピリムマブ群)に1対1で割り付けられた。Primary endpointを全生存期間(overall survival:OS)として、化学療法群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ群が優越性を示すことができるかを検証するデザインであった。当初、予定登録患者数は242例であったが、PS:2の集団の予後が不良であったため、効果安全評価委員会の勧告にて登録が途中で中止されている。217例が登録され、不適格例1例を除く216例が解析対象となった。結果、化学療法群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ群の生存曲線は上回っていたものの、ハザード比[HR]は0.85(95%信頼区間[CI]:0.62~1.16、p=0.2978)と優越性を示すことはできなかった。サブグループ解析において、「年齢不問かつPS:2」では化学療法群が有効な傾向であり、「70歳以上かつPS:0~1」ではニボルマブ+イピリムマブ群の方が有効な傾向にあった。セカンドライン以降のニボルマブの有用性を評価したCheckMate-171でも、「年齢不問かつPS:2」と比較して「70歳以上かつPS:0~1」はOSが良好(MST:5.2ヵ月vs.10.0ヵ月)であり、「75歳以上かつPS:0~1」の集団にいたってはMSTが11.2ヵ月と最も良好であった。臨床試験に登録する高齢者は一般的な高齢者よりも元気である可能性はあるとはいえ、本試験においてもCheckMate-171と同様の傾向がみられたことから、やはり「PS:2」と「暦年齢で規定された高齢者」を1つの集団とするのは無理があるのかもしれない。日常診療と同じように、「脆弱な集団」は暦年齢以外で規定する必要がありそうである。70歳以上の乳がん患者に対する術後補助化学療法のランダム化比較試験(ASTER 70s trial: #5004))HER2陽性の高齢者乳がん患者に対する術後補助化学療法については、本邦で実施されたランダム化比較試験の結果が2020年のJCOに掲載されている(試験治療群であるトラスツズマブ+化学療法は、標準治療群であるトラスツズマブ単剤と比較して全生存期間において非劣性を示せなかった)5)。今回、フランスの臨床研究グループが、ER陽性、HER2陰性の高齢者乳がん患者に対する術後補助化学療法の有用性を評価するランダム化比較試験の結果を公表した。結果だけみるとnegative studyではあるが、本試験は高齢がん患者を対象とする臨床試験デザインとしてはモデルになりうると考えるため、ここで紹介する。主な適格規準は、70歳以上の乳がん術後患者、ER陽性、HER2陰性、術後補助化学療法を検討されているなど。遺伝子発現解析としてGenomic Grade Index(GGI)を用いられており、再発リスクが高いとされる集団(GGIがhighまたはequivocal)はランダム化比較試験に登録、再発リスクが低いとされる集団(GGIがlow)は前向き観察研究に登録された。ランダム化比較試験に登録した患者は、標準治療群(エストロゲン単独療法)と試験治療群(化学療法4コース後にエストロゲン単独療法)に1対1に割り付けられた。割付調整因子は、pN、施設、G8(高齢者における脆弱性のスクリーニングツール)。Primary endpointをOSとして、標準治療群と比較して、試験治療群の優越性を検証するデザインであった。Secondary endpointsは、乳がん特異的生存期間や無浸潤疾患生存期間などの一般的なものに加えて、健康関連QOL(QLQ C-30、ELD-14)、費用対効果などであった。前向き観察研究に登録した患者は、ET療法を5年以上実施することとしていた。1,089例の患者がランダム化比較試験に登録され、880例の患者が前向き観察研究に登録された(今回の発表では前向き観察研究の結果は示されなかった)。患者背景として、IADL(手段的日常生活動作)、Mini-Mental State Examination(認知機能)、Charlson Comorbidity Index(併存症)、Lee Index(推定余命)、G8などは両群で大きな差はなかった。結果、標準治療群に対して試験治療群はOSにおいて優越性を示すことができなかった(HR:0.79[95%CI:0.60~1.03、p=0.08])。Grade3以上の有害事象は試験治療群で明らかに多く、治療関連死亡は、標準治療群で1名、試験治療群で3名であった。本試験は、高齢がん患者を対象とする臨床試験のデザインとして興味深い。まず、割付調整因子にG8が含まれている。G8は8つの質問で患者自身の脆弱性を評価するツールであり、14点以下は脆弱の疑いがあると判断される。多くのがん種で、G8は高齢がん患者の予後因子であることが知られているが、G8を割付調整因子にしている高齢者試験は少ない。これは、他に有用な予後因子があるためG8を割付調整因子としていない場合もあるだろうが、G8を日常診療で使用していないため、これを割付調整因子とすることに抵抗がある場合もあるだろう。フランスは老年腫瘍学先進国であり、高齢者機能評価を日常的に行っているため、これを割付調整因子にすることに抵抗がなかった可能性がある。次に、背景因子として、G8、IADL(手段的日常生活動作)、Charlson Comorbidity Index(併存症)、居住状況、Lee Index(推定余命)、ポリファーマシーの有無、Mini-Mental State Examination(認知機能)などを評価している。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は前4者を高齢者研究では実施することを推奨しているが6)、本試験ではさらに項目を追加している。データを収集することの負担とメリットのバランスは重要だが、フランスでは高齢者機能評価が日常的に行われているため、これらを収集することが過大な負担にならなかった可能性がある。最後に、健康関連QOLとして、高齢がん患者に特異的なEORTC ELD-14を評価している。EORTC ELD-14自体は14の質問に回答するのみだが、EORTC C-30とともに回答する必要があるため、合計44の質問に回答しなくてはならない。これを3ヵ月ごとに回答するというのは患者にとって負担であり、回答割合が低くなる可能性がある。また、これら全てに回答できる集団が果たして一般の高齢者を代表できるのかという疑問もある。とはいえ、高齢がん患者にとってはOSだけでなく健康関連QOLも重要であるため、データの回収割合なども含めて、今後の結果公表が待たれる。PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬単剤と免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の有効性に関するpooled analysis(#90007))進行非小細胞肺がんの1次治療において、化学療法(chemo群)、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO単剤群)、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法(Chemo-IO群)を比較したランダム化比較試験のうち、PD-L1≧50%の集団のみを抜き出して解析したpooled analysisが公表された。ただし、FDAで承認されている薬剤に関する試験のみが対象である。PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者3,189例が解析対象とされた(chemo群:1,436例、IO単剤群:455例、Chemo-IO群:1,298例)。今回の発表では、IO単剤群とChemo-IO群を比較した結果が示された。OSの中央値は、Chemo-IO群で25.0ヵ月、IO単剤群で20.9ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.62~1.08)、PFSの中央値は、9.6ヵ月vs.7.1ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.55~0.87)であった。サブグループ解析において、75歳以上の集団のOSおよびPFSはIO単剤群で良好な傾向であった。対象試験が限定されていること、また、あくまでpooled analysisなのでOSで統計学的な有意差が出なかったことから、この試験の結果をもってIO単剤が標準治療になることはないと考えている。それよりも、老年腫瘍学的には、75歳以上のデータが公表されたことに意義がある。多くの論文では、65歳以上/未満のサブグループ解析しか掲載されてないため、70歳以上や75歳以上の、日常診療で困っている集団に対するデータが乏しいのである。今回、75歳以上の集団でIO単剤群が良好な傾向であった。しかし、75歳以上の集団は185例で1割程度と少ないため、この結果の解釈は注意が必要である。とはいえ、少しでもChemo-IOに不安を覚えるような脆弱な高齢者にIO単剤を勧める根拠にはなりそうである。参考1)Randomized phase III study of nivolumab and ipilimumab versus carboplatin-based doublet in first-line treatment of PS 2 or elderly (≧70 years) patients with advanced non-small cell lung cancer (Energy-GFPC 06-2015 study).2)Five-year survival outcomes with nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) versus chemotherapy (chemo) as first-line (1L) treatment for metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC): Results from CheckMate 227.3)Felip E, Ardizzoni A, Ciuleanu T, Cobo M, Laktionov K, Szilasi M, et al. CheckMate 171: A phase 2 trial of nivolumab in patients with previously treated advanced squamous non-small cell lung cancer, including ECOG PS 2 and elderly populations. European journal of cancer (Oxford, England : 1990). 2020;127:160-72.4)Final results from a phase III randomized clinical trial of adjuvant endocrine therapy ± chemotherapy in women ≧70 years old with ER+ HER2- breast cancer and a high genomic grade index: The Unicancer ASTER 70s trial.5)Sawaki M, Taira N, Uemura Y, Saito T, Baba S, Kobayashi K, et al. Randomized Controlled Trial of Trastuzumab With or Without Chemotherapy for HER2-Positive Early Breast Cancer in Older Patients. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2020:Jco20001846)JCOG高齢者研究委員会 推奨高齢者機能評価ツール7)Outcomes of anti–PD-(L)1 therapy with or without chemotherapy (chemo) for first-line (1L) treatment of advanced non–small cell lung cancer (NSCLC) with PD-L1 score ≥ 50%: FDA pooled analysis.

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抗体-薬物複合免疫賦活薬(iADC)の創製で戦略的提携/アステラス・Sutro

 アステラスは2022年06月28日、Sutro Biopharma, Inc.(Sutro)と、抗体-薬物複合免疫賦活薬(immunostimulatory Antibody-Drug Conjugates、iADC)の共同研究・開発に関する全世界における戦略的提携およびライセンスに関する契約を締結した。 Sutroの抗体-薬物複合技術と、アステラス製薬のがん領域におけるグローバルな研究開発ケイパビリティを組み合わせ、次世代モダリティiADCの治療薬創製を目指す。 免疫チェックポイント阻害薬を含む主要ながん免疫療法の課題は、免疫細胞が浸潤しづらいがん微小環境にある非炎症性腫瘍に対して効果を得にくいことである。 今回の戦略的提携では、既存の治療法が有効でない患者に治療薬を届けるため、非炎症性腫瘍に効果的かつ効率的にアプローチできる可能性があると考えられる次世代モダリティのiADCの創製に取り組む。免疫を活性化する免疫賦活剤に加え、免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を誘導する抗がん剤を抗体に結合させたiADCは、より強力な抗がん作用を発揮する可能性を有する。 この提携により、アステラスとSutroは、3つの異なる標的に対するiADCの創製を加速する、としている。

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ASCO2022 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介はじめに2022年6月3日~7日に、2022 ASCO Annual Meetingが開催された。世の中は徐々に渡航を緩和しつつあるが、残念ながら今年も日本からvirtualでの参加になってしまった。今年も消化管がん分野において標準治療を変える発表が複数報告されたが、その中でもとくに重要と考える発表をここで報告する。食道がん・胃がん昨年の2021 ASCO Annual Meetingでは、食道がん・胃がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性を検証する大規模臨床試験の結果が複数報告されたが、今年は大きな結果の報告は乏しかった。一方でClaudin18.2(CLDN18.2)に対するchimeric antigen receptor(CAR)T細胞の安全性・有効性の報告など、今後の治療開発につながる報告が行われており、これらを中心に報告を行う。CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy(CT041)Claudinは4つの膜貫通ドメインと2つの細胞外ループを持つ分子量23kDの小さな4回膜貫通タンパク質であり、隣り合う細胞の両側から細胞接着部位に集積し、タイトジャンクションの細胞膜密着構造と膜内のストランド構造を形成している。Claudin18.2は、胃腸腺がんの80%、膵臓がん、胆管がん、卵巣がん、肺がんでは60%と複数のがんで高発現しているとされている。抗Claudin18.2抗体薬であるzolbetuximab(IMAB362)が無作為化第II相試験(FAST試験)で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を認めており、現在国際共同第III相試験であるSPOTLITE試験が進行中である。CAR T細胞療法では、患者からT細胞を採取し、遺伝子医療の技術を用いてCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なタンパク質を作り出すことができるようT細胞を改変する。そして厳重な品質管理の下で増幅し、リンパ球除去化学療法の後に患者に投与を行う。CT041(CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy)は免疫染色でCLDN18.2陽性(2+/3+を≧40%の腫瘍細胞で認める)の前治療歴のある進行胃がん症例に対して行われた第Ib/II相試験である。報告の時点で14例の症例が登録され、最も多いGrade3以上の有害事象はlymphodepletionに伴うリンパ球減少であったが、Dose limited toxicities(DLTs)となるものは存在しなかった。Cytokine release syndromeも認められたが、多くの症例はGrade1~2であり、許容されるものであった。有効性では奏効率(ORR)が57.1%、病勢制御率(DCR)が78.6%、PFS中央値が5.6ヵ月、全生存期間(OS)中央値が10.8ヵ月と、全例2つ以上の前治療を受けていることを考えると非常に有望な結果であり、現在第II相パートが進行中である。大腸がん今年のASCOにおける大腸がん分野の最大のトピックは、本邦から報告された切除不能・転移性大腸がんに対して、最適な1次治療を前向きに検証する第III相試験である、PARADIGM試験である。そのほか、StageII結腸がんの術後補助化学療法実施の要否を、血漿循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて前向きに検証する無作為化第II相試験であるDYNAMIC試験と、米国のMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)が行ったミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体の有効性の報告が、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。今回はこれらの結果を報告する。PARADIGM試験切除不能転移再発大腸がんに対する1次治療の標準はFOLFOX/FOLFIRI等の化学療法と、抗EGFR抗体もしくはVEGF抗体であるベバシズマブの併用であり、生存期間中央値がおおよそ30ヵ月と報告されている。過去に行われた6つの無作為化試験の統合解析では、RAS野生型かつ左側大腸がん(下行結腸・S状結腸・直腸)症例には抗EGFR抗体薬の併用が、RAS変異型もしくはRAS野生型かつ右側大腸がん(盲腸・上行結腸・横行結腸)症例にはベバシズマブの併用が有意に優れていることが示されていたが1)、前向きの検証試験の報告は行われていなかった。PARADIGM試験は、周術期のオキサリプラチン(フッ化ピリミジン単剤は許容)を含む前治療のない切除不能転移再発大腸がんを対象に、mFOLFOX6+パニツムマブ(Pmab群)とmFOLFOX6+ベバシズマブ(Bmab群)を1対1に無作為化割り付けした第III相試験である。主要評価項目は左側大腸がん症例における全生存期間(OS)であり、それが有意であれば全症例で全生存期間を解析する計画であった。合計802例(Pmab群400例、Bmab群402例)が有効性の解析対象であり、そのうち左側大腸がん症例が312例、292例であった。左側大腸がん症例における、OS中央値はPmab群で37.9ヵ月、Bmab群で34.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、p=0.03)と有意にPmab群が優れていたが、生存曲線は24ヵ月あたりまでほぼ重なっており、それ以降Pmab群が上回る結果であった。全症例におけるOS中央値はPmab群36.2ヵ月、Bmab群31.3ヵ月(HR:0.84、p=0.03)とPmab群が有意に優れた結果であった。また右側大腸がん症例の解析では、OS中央値がPmab群で20.2ヵ月、Bmab群で23.2ヵ月(HR:1.09)と治療成績に大きな差はないが、Pmab群のメリットが乏しく、過去の無作為化試験の統合解析と同様の結果であった。PFSは、左側大腸がん症例においてPmab群が中央値で13.7ヵ月、Bmab群が13.2ヵ月(HR:0.98)、全症例において中央値で12.9ヵ月、12.0ヵ月(1.01)と両群で差を認めない結果であった。一方、ORRは左側大腸がん症例においてPmab群が80.2%、Bmab群が68.6%、全症例において74.9%、67.3%であり、Depth of Response(DoR)もPmab群で優れていた。FIRE-3試験2)などと同様にORR、DoRの改善が結果的にOSの改善につながった可能性が考察できる。2次治療以降の化学療法実施割合も両群で差を認めなかった。これまでESMOガイドラインや本邦のガイドラインは、RAS野生型左側大腸がん症例は化学療法+抗EGFR抗体薬を推奨し、NCCNのガイドラインは前向き試験のデータがないことから化学療法+抗EGFR抗体薬、化学療法+ベバシズマブを併記していた。PARADIGM試験の結果でRAS野生型左側大腸がん症例には化学療法+抗EGFR抗体薬が第1選択であることが前向きに検証されたことで、切除不能転移再発大腸がんの1次治療における標準治療がようやく整理されたことになる。DYNAMIC試験StageII結腸がんは手術のみで80%治癒する対象であり、現在の臨床では臨床病理学的にhigh risk(T4、低分化がん、脈管侵襲など)とされる症例のみに術後補助化学療法が行われている。一方、治癒切除後のctDNA陽性症例はその後80%以上再発するとされており、この対象に対する術後補助化学療法の意義も臨床試験では証明されていない。DYNAMIC試験は治癒切除が行われたStageII症例を対象に、術後4週と7週にctDNAの検査を行い、ctDNA陽性であれば術後補助化学療法をctDNA陰性であれば経過観察を行う試験治療群と、臨床病理学的特徴によって術後補助化学療法の実施を決める標準治療群に2対1に無作為化割り付けを行う第II相試験である3)。主要評価項目は2年無再発生存(RFS)率である。合計455例が無作為化され、解析対象は試験治療群で294例、標準治療群で153例であった。両群ともにhigh riskの症例が40%であったが、実際に術後補助化学療法が行われた症例が試験治療群で15%、標準治療群で28%(p=0.0017)と試験治療群で有意に少なく、オキサリプラチンbasedの術後補助化学療法を行った症例の割合が試験治療群で62%、標準治療群で10%(p<0.0001)と試験治療群で有意に高い結果であった。これは、試験治療群で術後再発のリスクがより高い症例に、より強力な化学療法が実施されたことを意味している。最も再発リスクが高いとされるT4症例でも試験治療群で術後補助化学療法の実施が少なく、ctDNA陽性が従来の臨床病理学的な再発リスクとは独立している可能性が示唆された。主要評価項目である2年RFS率は、試験治療群で93.5%、標準治療群で92.4%と両群の差は+1.1%(95%CI:-4.1~6.2%)と信頼区間の下限が事前に設定した-8.5%を下回っており、試験治療群の非劣性が確認された。サブグループ解析では、T4症例における試験治療群の再発が少ない(HR:1.88)結果であった。試験治療群におけるctDNA陽性・陰性症例の比較では、2年RFS率がctDNA陽性群で86.4%、陰性群で94.7%(HR:1.83)と差が認められた一方で、ctDNAと臨床病理学的なhigh risk/low riskを組み合わせると、ctDNA陰性かつlow riskとctDNA陽性でHRが3.69、ctDNAとT stageを組み合わせると、ctDNA陰性かつT3とctDNA陽性でHRが2.62と、ctDNAと従来の臨床病理学的なriskを組み合わせることでさらに精度の高い再発予測が可能である可能性が示された。本試験により、StageII症例においてctDNA陽性・陰性によって術後補助化学療法の実施を決めることにより、術後補助化学療法の対象を減らしても治療成績が劣らないことが示された。一方でctDNA陽性症例に術後補助化学療法を行う意義、ctDNA陰性に術後補助化学療法を行わない意義はまだ検証されておらず、今後の前向き試験による検証結果が待たれる。ミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性切除不能転移再発のdMMR/MSI-H大腸がんに対して抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブがすでに1次治療の第1選択として確立しており4)、いくつかの少数例の検討では切除可能なdMMR/MSI-H大腸がんにも抗PD-1抗体薬の有効性が報告されている5)。局所進行直腸がんに対する標準治療は化学療法、放射線療法、手術の併用であるが、術後の直腸機能の低下が大きな問題であり、化学療法、放射線療法で完全奏効(cCR)に至った症例には、手術を行わず経過を見ていくWatch and Wait(W&W)が普及しつつある。dMMR/MSI-H直腸がんは直腸がんの5~10%(本邦の報告では2%程度)に認められる、まれな対象であるが、今回MSKCCが行っているStageII/IIIのdMMR/MSI-H直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性を見る第II相試験の結果が、試験の途中で報告された。試験治療として抗PD-1抗体薬であるdostarlimabを6ヵ月行った後に、画像と内視鏡でcCRと判定された症例にはW&Wを行い、遺残が認められた症例には化学放射線療法を実施し、それでも遺残がある症例には救済手術を行う計画であった。目標症例数は30例であったが、14例まで登録が行われ、全例が6ヵ月のdostarlimabでcCRと判定された。観察期間中央値は6.8ヵ月と短いが、現時点で再増大を認める症例は認めなかった6)。長期的な観察を行わなければPD-1抗体薬のみで治癒に至るかの結論は出ないが、臓器横断的にdMMR/MSI-H固形がんに検討すべき画期的な結果であり、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。おわりに食道がん、胃がん、dMMR/MSI-H大腸がんの1次治療におけるICIの有効性が大規模臨床試験で検証され、標準治療としてすでに実臨床に組み込まれている。今後は、周術期治療における有効性の検証結果が報告されてくるものと思われ、またDYNAMIC試験のようなctDNAを用いた術後再発モニタリングは、大腸がんのみならず固形がん全般で主流になってくるものと考える。また、胃がんのような固形がんに対してCAR T細胞療法の有効性が示されるなど次の治療開発が進捗する兆しが認められ、今後の報告に期待したい。1)Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729.2)Heinemann V, et al. Lancet Oncol. 2014;15:1065-1075.3)Tie J, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 4. [Epub ahead of print]4)Andre T, et al. N Engl J Med. 2020;383:2207-2218.5)Chalabi M, et al. Nat Med. 2020;26:566-576.6)Cercek A, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 5. [Epub ahead of print]

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NSCLC1次治療でのLAG-3タンパク+ペムブロリズマブの効果(TACTI-002)/ASCO2022

 LAG-3タンパクeftilagimod alpha(efti)とペムブロリズマブとの併用は、PD-L1の発現状態にかかわらず非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療に有効である可能性が示された。スペイン・Vall d’Hebron Institute of OncologyのEnriqueta Felip氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 eftiは、MHCクラスII分子のサブセットに結合して抗原提示細胞(APC)の活性化とCD8T細胞の活性化を仲介する可溶性LAG-3タンパクで、抗PD-1抗体薬とは異なる免疫チェックポイント阻害薬として注目されている。eftiの併用によるAPCの刺激とT細胞の活性化は、抗PD-1抗体薬の単独療法よりも強い抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。そこで、NSCLC患者を対象にeftiとペムブロリズマブとの併用効果について評価する第II相試験(TACTI-002)が現在進行している。今回は、同試験におけるPD-L1の発現状態を問わないコホート集団の結果から、両薬剤の併用効果について評価した。・対象:PD-L1 の発現状態を問わない進行 NSCLC患者(114例)・方法:efti 30mg 2週ごと+ペムブロリズマブ200mg 3週ごと8サイクル→両剤を3週ごと9サイクル→ペムブロリズマブ3週ごと16サイクル・評価項目: [主要評価項目]iRECISTに基づく奏効率(ORR) [副次評価項目]RECIST v1.1に基づくORR、病勢コントロール率(DCR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は67歳、男性74%、95%喫煙歴あり、PD-L1陽性率(TPS)1%未満は32.5%、1~49%が35.1%、70%超が27.2%であった。・iRECISTに基づくORRは38.6%であった。すべてのPD-L1サブグループで効果がみられ、TPS 50%以上のORRは52.6%であった。・RECIST v1.1に基づくORRは37.7%で、DCRは71.9%であった。・11例(9.6%)の患者が有害事象のために治療を中止していた。

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抗PD-1抗体sintilimab+化学療法のNSCLC術前補助療法、2サイクル対3サイクル/ASCO2022

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、抗PD-L1抗体薬sintilimabと化学療法による術前補助療法は、2サイクルよりも3サイクルでより高い病理学的奏効(MPR)率を示し、サブタイプ別ではとくに扁平上皮がんで良好なMPR率が得られた。無作為化単施設2群第II相比較試験の結果として、中国Zhejiang大学のFuming Qiu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用による術前補助療法は、切除可能なNSCLC患者に対して有望な治療選択肢となっている。しかし、術前補助療法の最適な期間は明らかではなく、臨床試験では2~4サイクルで実施されていることが多い。 一方、sintilimab単剤の術前投与は良好なMPR率が報告されている。同試験では、切除可能なNSCLC患者を対象に、sintilimabと化学療法による術前補助療法の効果を2サイクルと3サイクルで比較した。・対象:未治療のStageIB~IIIA NSCLC患者(ECOG PS 0~1)60例・治療法:手術前にsintilimab+化学療法(扁平上皮がんカルボプラチン+nab-パクリタキセル、非扁平上皮がん:カルボプラチン+ペメトレキセド)3週間ごとに2サイクル行う群と3サイクル行う群に無作為に割り付け。術前補助療法終了から4週間以内に手術を施行・評価項目:[主要評価項目]MPR[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は64.5歳、StageIB~IIBが46.7%でIIIAが53.3%、PD-L1(TPS)は1%未満が48.3%、1%以上が51.7%であった。・MPR率は3サイクル群41.4%、2サイクル群に26.9%で、3サイクル群で傾向を示した(p=0.260)。pCR率はそれぞれ24.1%、19.2%であった(p=0.660)。・ORRは3サイクル群55.2%、2サイクル群50.0%であった(p=0.701)。・組織形別にみると、非扁平上皮がんに比べて扁平上皮がんでMPR率が有意に高かった(51.6% vs.12.5%、p=0.002)。・扁平上皮がんにおけるMPR率は3サイクル群60.0%、2サイクル群43.8%であった(p=0.366)。・両群間ともに安全性に問題はなく、高い忍容性が示された。

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ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がん、PD-1阻害薬単独で治癒?/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんは、PD-1阻害薬のみの治療で治癒する可能性が高いことが、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏らが行った、前向き第II相試験の結果、示された。局所進行直腸がんは、術前化学療法と放射線療法、その後の手術療法が標準治療となっているが、ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんでは、標準的な化学療法では十分な奏効を得られないことが示されていた。一方で、転移を有する患者および治療抵抗性の患者における免疫チェックポイント阻害薬のみの客観的奏効率は33~55%と、第一選択薬として非常に有効であることが報告されており、研究グループはこれらの知見に基づき、PD-1阻害薬の単剤投与が、ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がんに有益であるとの仮説を立て、dostarlimabによる術前化学療法の奏効率を調べる試験を行った。NEJM誌オンライン版2022年6月5日号掲載の報告。dostarlimabを単独投与しCRを評価 試験は、ミスマッチ修復機能欠損を有するStageIIまたはIIIの直腸腺がんの患者を対象とし、抗PD-1モノクローナル抗体dostarlimab単剤を3週ごと6ヵ月間(9サイクル)投与した。 患者は本治療後に、標準化学放射線療法と手術療法が行われたが、dostarlimab療法で臨床的完全奏効(cCR)を示した患者には、その後の治療は行われなかった。 主要評価項目は、dostarlimab療法後12ヵ月の持続的cCR、または化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab療法後の病理学的CR、および化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab術前療法の全奏効(OR)であった。治療完遂12例全例でCRを示し、フォローアップ25ヵ月時点で進行/再発例なし 計16例の患者が登録された。年齢中央値は54歳(範囲:26~78)、女性62%、臨床Stageは15例がIII、腫瘍StageはT3が9例(56%)、T4が3例(19%)で、腫瘍遺伝子変異量は37.9~103.0/Mb(平均60.0)と高値であった。 このうち12例がdostarlimab療法を完遂し、少なくとも6ヵ月時点のフォローアップを受けた。 全12例がCRを示し(100%、95%信頼区間[CI]:74~100)、MRI、18F-FDG PET、内視鏡評価、直腸指診または生検で、腫瘍は認められなかった。 本報告時点で、化学放射線療法または手術を受けた患者はおらず、追跡期間中(範囲:6~25ヵ月)に進行または再発が報告された症例はなかった。 Grade3以上の有害事象の報告はなかった。 なお、今回の試験の結果を踏まえて著者は、「さらなる追跡を行い、奏効の期間を評価する必要がある」と述べている。

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HR+/HER2-乳がんへの術前ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾール、安全性データを発表(CheckMate 7A8)/ESMO BREAST 2022

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がん患者に対する術前療法としての、ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾールの3剤併用は、主に肝毒性による安全性上の懸念から組み入れが停止され、無作為化試験には進まないことが報告された。前臨床試験では免疫チェックポイント阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果の可能性が示唆されていた。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で第Ib/II相CheckMate 7A8試験の安全性確認期間における安全性データおよび予備的有効性データを報告した。[CheckMate 7A8試験]・対象:新たにHR+/HER2−乳がんと診断された閉経後女性あるいは男性(腫瘍径≧2cm、ECOG PS 0~1)・試験群1(9例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル・試験群2(12例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ100mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル・評価項目:[主要評価項目]用量制限毒性(DLT:治療開始後最初の4週間に発生した治療に起因する有害事象)[副次評価項目]安全性、病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・主なGrade≧3の治療関連AE(TRAE)は、試験群1ではALT上昇(33.3%)、AST上昇(33.3%)、好中球減少症(22.2%)、白血球数減少(22.2%)、試験群2では好中球数減少(41.7%)、好中球減少症(16.7%)だった。両群で治療関連の死亡は報告されていない。・DLTは、試験群1では9例中2例で報告され(22.2%)、1例は肝炎、もう1例は発熱性好中球減少症だった。試験群2では報告されていない。・両群の全21例中9例で毒性により治療が中止された。6例(29%)はGrade≧3の肝臓のAE(ALT上昇とAST上昇:2例、ALT上昇:1例、トランスアミナーゼ上昇:2例、高トランスアミナーゼ血症:1例)、Grade≧3の発疹とGrade2の免疫介在性肺障害、Grade1の肺臓炎、Grade3の発熱性好中球減少症が1例ずつだった。・pCRが得られたのは試験群2の1例で、全体としてpCR率は4.8%。CRは1例、PRは14例で、放射線画像評価によるORRは、71.4%だった。 Tolaney氏は、今回の結果と文献上の他データに基づくと、抗PD-1薬とCDK4/6阻害薬の併用は、肝毒性および肺毒性のリスク増加のため、安全な使用は難しい可能性があるとまとめている。

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免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?【見落とさない!がんの心毒性】第11回

がん治療は大きく進歩しており、がんの生物学的特性が明らかになるにつれ、疾患の臓器特性を超えた臓器横断的治療が開発され承認されるようになりました。今回は前回の予告通り、臓器横断的治療における心毒性についてのアンケート結果をお示しいたします。ここでは、免疫チェックポイント阻害薬と放射線療法に焦点を当てます。さらに、がんゲノム医療の進歩により遺伝子変異の解析が進み、それに伴い開発されたTRK阻害薬(NTRK(neurotrophic receptor tyrosine kinase)融合遺伝子陽性固形がんに投与される)による心毒性や、同じ薬剤でも投与される臓器別に異なる副作用が発生するなど新たな問題が出現しているようです。これからのがん治療は、ゲノム関連も含めた病院全体を巻き込んだ臓器横断的な診療科の協力が必要となっています。免疫チェックポイント阻害薬における心毒性第9回、第10回でお届けしてきた読者アンケートからも見えてきたのは、多くの読者においてやはり免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による心毒性の影響に関心があることでした。このICIに関する点については第5回「免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?」(塩山 渉氏、筆者)で解説しました。ICIは臓器横断的に発症する悪性腫瘍に適応が拡大することで、がん治療に大きな変化をもたらしました。その一方で、全身に及ぶ免疫関連副作用(irAE)が大きな問題となっています。irAEに対応するためには、腫瘍科医のみならず、免疫専門医、内分泌内科医、神経内科医、循環器科医、さらには呼吸器内科医や皮膚科医など幅広い医療スタッフの参加が必要です。irAE症例によっては救急治療医の参加も必要ですね!がん免疫療法において、ICI療法の中心は血管新生阻害薬や放射線療法を併用する複合免疫療法へ移行しており、心毒性においてirAEに併用療法による副作用が加わりその管理がより複雑化しています。しかし複合免疫療法は、がん免疫における血管新生阻害因子の作用が解明したことから生み出されており、血管・がん・免疫に共通点があるところなどは腫瘍循環器医として非常に興味深く感じています。放射線関連心血管合併症(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)第7回では「進化する放射性治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは」(志賀 太郎氏)について解説しました。免疫療法と同様に臓器横断的に用いられる放射線治療は、その有効性から使用頻度が急速に増加している反面、やはりRACDが大きな問題となりつつあります。とくに遅発性に出現することから、その病態や対応に関して多くの腫瘍科医や循環器科医に十分理解されているとは言えない病態でした。このような背景の元で2021年9月に開催された第4回日本腫瘍循環器学会学術集会で、このRACDに関するシンポジウムが日本心血管インターベンション治療学会との共催で開催され、とても好評でした。今後は、放射線治療医の先生方が主体となり日本放射線腫瘍学会でも日本腫瘍循環器学会との共催プログラムの開催が決定しています。課題としては、放射線治療後晩期障害に対するフォローアップ診療の構築が成されていない点でしょうか。学会間交流をきっかけに異業種間連携の拡がりを期待し、将来的には連携網の発達により実地医家への連携発展を期待します。また、実地医家の方との連携が深まる事で、放射線治療後晩期障害のすくい上げに繋がる「放射線治療後の遠隔期・長期的フォローアップ」の仕組み作りに結び付く事を期待します。循環器医(心血管インターベンション専門医)における放射線障害と放射線治療医の放射線障害の概念は微妙に異なっていたようです。さらに、がん治療において放射線療法は腫瘍科医ではなく放射線治療医が行うことから、両者の間にも微妙な隙間があったかもしれません。その一方で、小児・AYA世代がんサバイバーにおける放射線化学療法による晩期合併症は、心毒性のみならず内分泌毒性、神経毒性、そして二次発生がんなど多くの問題点を有しています。今後は、腫瘍循環器医は急性期・慢性期そして晩期心毒性などを通じて腫瘍科医、放射線治療科、そして小児科の間をつなぐ役割を果たすことが期待されています。今回のアンケート結果(前編、中編含む)でご紹介した内容以外にもたくさんのご意見をいただき誠にありがとうございました。紙面の関係から一部のご紹介となりました。がんと循環器における関係は、2017年の日本腫瘍循環器学会設立を機に、国や学会レベルでも学際領域の連携が進み、基礎・臨床・疫学研究への支援が加速しています。今回の企画により、今まで触れることのなかった多くの皆さまにおかれましてOnco-Cardiology(腫瘍循環器学)が身近なものになりましたら幸いです。第二部では、症例編として症例クイズ形式にて臨床で難渋した例など興味ある事柄について解説していく予定です。臨床の現場で毎日がん診療を行っている私どもにとって、総論だけでは語りつくせないたくさんの事柄やさまざまな問題点がございます。そして、同じく第一線で診療をなさっておられる読者の皆さまはさらに多くの疑問をお持ちなのではないでしょうか。読者の皆さまの声、リクエストは以下よりお待ちしております。講師紹介

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NSCLCの術前補助療法、ニボルマブ追加でEFS延長(CheckMate-816)/NEJM

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法において、PD-1免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブと化学療法の併用療法は化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に延長し、病理学的完全奏効の割合は有意に高率であり、ニボルマブ追加による有害事象や手術の実行可能性の妨げとなる事象の増加は認められないことが、米国・ジョンズホプキンス大学KimmelがんセンターのPatrick M. Forde氏らが実施した「CheckMate-816試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年4月11日号で報告された。14ヵ国の無作為化第III相試験 本研究は、NSCLCの術前補助療法における、化学療法へのニボルマブ追加の有用性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、東アジアの4ヵ国(中国、日本、韓国、台湾)を含む世界14ヵ国の施設が参加し、2017年3月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(米国Bristol Myers Squibbの助成を受けた)。 対象は、Stage IB(腫瘍径≧4cm)~IIIAの切除可能NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第7版の病期判定基準に準拠)で、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(0~4点、点数が高いほど身体機能の障害度が高い)のスコアが0または1で、がんに対する治療歴のない成人患者であった。 被験者は、根治手術を受ける前に、ニボルマブ(360mg)+プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法、またはプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法のみの投与を、3週(1サイクル)ごとに3サイクル施行する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。手術は、術前補助療法終了から6週間以内に行われ、術後補助療法は化学療法、放射線療法あるいはこれら双方を最大4サイクル実施してよいこととされた。 主要エンドポイントは、無イベント生存期間(病勢進行、再発、死亡までの期間)と病理学的完全奏効(切除肺とリンパ節に生存かつ増殖可能な腫瘍細胞が存在しない)とされた。根治手術施行率:83.2% vs.75.4% 358例が登録され、ニボルマブ併用群に179例(年齢中央値64歳、女性28.5%、アジア人47.5%)、化学療法単独群に179例(65歳、29.1%、51.4%)が割り付けられた。術前補助療法を完遂した患者の割合は、ニボルマブ併用群が93.8%、化学療法単独群は84.7%、術後の補助化学療法はそれぞれ11.9%および22.2%、後治療は21.2%および43.6%が受けた。 最も短い追跡期間が21ヵ月の時点で、無イベント生存期間中央値はニボルマブ併用群が31.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.2~未到達)と、化学療法単独群の20.8ヵ月(95%CI:14.0~26.7)に比べ有意に長かった(ハザード比[HR]:0.63、97.38%CI:0.43~0.91、p=0.005)。1年無イベント生存率はそれぞれ76.1%および63.4%、2年無イベント生存率は63.8%および45.3%であった。 また、病理学的完全奏効の割合は、ニボルマブ併用群が24.0%(95%CI:18.0~31.0)であり、化学療法単独群の2.2%(0.6~5.6)よりも有意に高かった(オッズ比[OR]:13.94、99%CI:3.49~55.75、p<0.001)。 無イベント生存期間と病理学的完全奏効の結果は、ほとんどのサブグループが化学療法単独群よりもニボルマブ併用群で良好であった。 根治手術は、ニボルマブ併用群が83.2%、化学療法単独群は75.4%で行われた。R0切除(遺残腫瘍なし)は、根治手術例のそれぞれ83.2%および77.8%で達成された。 一方、事前に規定された1回目の中間解析では、両群とも全生存期間中央値には到達せず、統計学的有意性の判定基準(p<0.0033)は満たされなかった(HR:0.57、99.67%CI:0.30~1.07、p=0.008)。 Grade 3/4の治療関連有害事象は、ニボルマブ併用群が33.5%、化学療法単独群は36.9%で発現した。治療中止の原因となった全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ10.2%および9.7%で認められた。全体として免疫介在性有害事象の発生頻度は低く、多くがGrade1/2であり、ニボルマブ併用群で最も頻度が高かったのは皮疹(8.5%)だった。 手術関連有害事象(手術合併症)は、ニボルマブ併用群が41.6%(うちGrade3/4は11.4%)、化学療法単独群は46.7%(同14.8%)で認められた。Grade5の手術関連有害事象(発症後24時間以内に死亡)はニボルマブ併用群で2例(肺塞栓症、大動脈破裂)にみられたが、いずれも試験薬との関連はないと考えられた。 本試験の結果に基づき、米国では、ニボルマブとプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法の併用が、切除可能(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)NSCLCの成人患者の術前補助療法として承認された。

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心毒性リスク、どんな薬剤に注意している?―アンケート結果(中編)【見落とさない!がんの心毒性】第10回

今回は、腫瘍科医の皆さまへ心毒性に関し注意している(困っている)薬剤について、がん種別にご紹介いたします。しかし、腫瘍科医の皆さま以上にお困りなのは循環器科医の皆さまではないでしょうか。日々進歩し増加する抗がん剤において、それぞれ異なる機序により出現する心毒性へ対応するための情報を集めて整理することは、循環器科医にとって最も頭の痛い問題の一つとなっているからです。さらに、最近のトピックとして臓器横断的な治療薬の登場が挙げられます。これらの心毒性へ対応するためには、ゲノム関連も含め複数の関連する科の協力と参加が必要となっています(こちらは、次回[後編]でご紹介する予定です)。CareNet.comにて行ったアンケートの結果画像を拡大する(表1)上記を基に向井氏が作成画像を拡大する心毒性は、多くのがん治療、そしてほとんどの抗がん剤で出現すると言っても過言ではありません。(表2)に主ながん治療に伴う循環器合併症[心毒性]を示します。(表2)主ながん治療に伴う循環器合併症[心毒性]画像を拡大するこの結果では、読者の皆さまが注意している薬剤として、“細胞障害性抗がん剤”が第一に挙げられています。使用頻度から言ってもやはりという結果で、前編のアントラサイクリン系抗がん剤に加え、シクロフォスファミド、タキサン系、プラチナ製剤などは重要な薬剤ですが、これらの心毒性のエビデンスはすでに確立しており、多くのガイドラインにも記載されています。ところが、実臨床での対応は決して十分とは言えない状況のようです。次に、分子標的薬、多標的チロシンキナーゼ阻害薬による頻度が高くなっています。第4回VEGFR -TKIの心毒性(草場 仁志氏・森山 祥平氏)で解説した血管新生阻害薬が心毒性の中心的存在となっています。血管新生阻害薬の心毒性には、用量依存性と時間依存性が認められており、一旦出現すると急速に進展し重篤化することが多いため、その対応には、腫瘍科医のみならず循環器科医の早期からの参加が必要と考えられています。(表3)血管新生阻害薬の投与用量/時間による血管毒性の変化画像を拡大するこのように分子標的薬は、細胞障害性抗がん剤による従来の化学療法とは大きく異なる心毒性、とくに血管毒性、腎毒性などが出現しやすく、腫瘍科医の皆さまが手強い合併症を多く経験する傾向にあるのが特徴です。また、近年開発された分子標的薬において不整脈毒性を認める薬剤が増加しています。中でもQT延長に伴う致死的不整脈や心房細動などの重篤な不整脈の管理には循環器科医の協力が必須となっています。しかしながら、これらの新しい標的に対する薬剤での心毒性発症の機序には不明な点が多く、その対応に苦慮することが少なくありません。さらに、循環器疾患に大きく影響する糖尿病などを含む代謝毒性は、免疫チェックポイント阻害薬の内分泌系irAEに加えmTOR阻害薬やPI3K阻害薬など代謝系に作用する抗がん剤を投与する際に、脂質異常症などと合わせて注意が必要です。その他、第6回新治療が心臓にやさしいとは限らない(大倉 裕二氏)で解説したように、がん治療では多種多様の薬剤が併用投与されており、支持療法に用いられる薬剤も含めそれぞれ心毒性が存在しており、添付文書に記載してある「警告」に対しては十分な注意が必要です。QT時間は心電図により容易に反復した計測が可能であり、古くから心毒性の有無を判断する指標として、CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events、有害事象共通用語規準)にも用いられてまいりました。しかし、実臨床で実際のQT時間延長の意義、QTc時間(心拍数補正)などについて、不安を抱えていらっしゃる腫瘍科医はどのくらいおられるでしょうか。この点を正しく理解いただき不安を払拭してもらうためにも、ぜひとも第二部(症例編)で取り上げ解説したいと思います。講師紹介

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がん治療中の薬剤性間質性肺疾患、診断・治療における専門家の推奨/JCO

 抗がん剤は薬剤性間質性肺疾患の主な原因であり、原因薬剤としてブレオマイシン、エベロリムス、エルロチニブ、トラスツズマブ デルクステカン、免疫チェックポイント阻害薬などが挙げられる。薬剤性間質性肺疾患の特定と管理は難しく、抗がん剤によって引き起こされる間質性肺疾患の診断と治療に関する具体的なガイドラインは現在存在しない。今回、イタリア・IOV-Istituto Oncologico Veneto IRCCSのPierfranco Conte氏らの学際的グループが、公表文献と臨床専門知識に基づいて、がん患者の薬剤性間質性肺疾患の診断と治療における推奨事項を作成した。ESMO Open誌2022年2月23日号に掲載。 主な推奨事項は以下のとおりで、薬剤性間質性肺疾患の診断・治療における多職種連携の重要性を強調している。・診断手順の重要な要素は、身体検査と丁寧な病歴聴取、バイタルサイン(とくに呼吸数と動脈血酸素飽和度)の測定、関連のある臨床検査、スパイロメーターと一酸化炭素肺拡散能による呼吸機能検査、CT/画像診断である。・薬剤性間質性肺疾患の臨床症状やX線画像は、肺炎や間質性肺疾患と類似していることが多いため、感染性の原因を除外または確認するための微生物検査や血清学的検査を含む鑑別診断が重要である。・ほとんどの場合、薬剤性間質性肺疾患の治療には、抗がん剤の投与中止と短期ステロイド投与が必要である。薬剤性間質性肺疾患の再活性化を防ぐためにステロイドをゆっくり漸減する必要がある。・Grade3~4の薬剤性間質性肺疾患の患者は入院が必要で、多くの場合、酸素吸入と非侵襲的人工呼吸が必要である。侵襲的人工呼吸については、がんの予後を考慮して決定する必要がある。

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KRAS G12C変異陽性肺がんの新しい治療選択肢、ソトラシブ/日本臨床腫瘍学会

 2022年、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する2次治療の新たな選択肢として承認されたソトラシブについて、日本臨床腫瘍学会メディカルセミナーにて、愛知県がんセンターの藤原 豊氏が解説した。 肺がん、とくに肺腺がんには多くの遺伝子変異がある。今回ソトラシブが適応となるKRAS G12C変異は日本における扁平上皮非小細胞肺がんの4.1%程度であり、男性、喫煙者に多いことがわかっている。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する従来の初回標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん剤の併用である。しかし、KRAS変異陽性の場合、陰性に比べて細胞障害性抗がん剤の効果が乏しく、とくに2次治療での効果は限定的であり、新しい治療選択肢が望まれていた。KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験成績 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験、CodeBreaK100試験の概要は以下の通り。・対象:KRAS G12C変異陽性進行非小細胞肺がんで抗PD-1/PD-L1免疫治療および/またはプラチナ製剤を含む化学治療の前治療歴があり(前治療数は3つ以下)、RECIST1.1に基づく測定可能病変を有し、ESOG PS 0、1・方法:ソトラシブ960mgを1日1回経口投与(増悪、治療不耐性、同意撤回などまで投与を継続)・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、奏効までの期間(TTR)、安全性 患者背景は男女同等、アジアからは19名が参加している。前治療で化学療法、免疫療法を受けていた割合はどちらも9割を超えていた。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験主な結果は以下の通り。・主要評価項目であるORRは37.1%(95%信頼区間:28.6~46.2)であり、副次評価項目のDCRは80.6%(95%信頼区間:72.6~87.2)であった。DORの中央値は11.1ヵ月(95%信頼区間:6.9~NE)。・安全性については、全Gradeの副作用が69.8%、Grade3が19.8%、Grade4が0.8%であった。多く見られた副作用は下痢、悪心、ALT・AST増加などであった。KRAS G12C変異陽性肺がんの2次治療はどう変わるか 肺がん診療ガイドラインでは2021年の段階で、すでにソトラシブがKRAS G12C変異陽性に2次治療以降でソトラシブ単剤療法を推奨すると記載されている。 藤原氏は今後の治療戦略について、「1次治療開始時にKRAS G12C遺伝子変異検査を実施し、結果を把握しておけば、2次治療が必要になった場合にすぐにソトラシブを使えると考えている。初回の検査でKRAS G12C変異を確認しておくことが重要」と述べた。

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