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新型コロナ、第4波の大阪は「これまでとは別世界」~呼吸器科医・倉原優氏の緊急寄稿(2)

 「新型コロナウイルスの感染状況は第4波に入った」。変異株を含め、全国的に感染者が再び急増している現状について、識者らは相次いで明言した。なかでも、1日の新規感染者数が1,000人超を記録している大阪府はとりわけ深刻だ。渦中の医療現場は今、どうなっているのか。CareNet.com連載執筆者の倉原 優氏(近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)が緊急寄稿でその詳細を明らかにした。大阪府コロナ第4波の現状 以前、大阪府コロナ第3波についての現状をお伝えしましたが1)、あれからいったん落ち着いたものの、現在第4波が到来しています。大阪府は1日の新規感染者数が過去最大規模になっており、医療現場は災害級に混乱しています。第3波と異なるのは、(1)年齢層(2)重症度(3)速度です。(1)年齢層 大阪府フォローアップセンターから入院要請のあるCOVID-19患者さんの年齢が、15歳ほど下押しされています。当院に入院した第1波~3波までの平均年齢(±標準偏差)は68(±17)歳、第4波の平均年齢は53(±19)歳です。直近のデータで、感染者が40代未満である割合が5割弱と引き続き高く、若い世代を中心に感染が広がっていることがわかります。(2)重症度 この第4波、来院して最初に撮影した胸部画像検査で背筋がゾっとすることが多くなりました。糖尿病コントロールが不良で高度肥満があり、SpO2が90%未満の場合、ある程度の覚悟を持って診療に当たることができますが、そこまでの基礎疾患がなく、SpO2が92~93%程度であるにもかかわらず、「エッ!」と声を上げてしまうほど両肺のすべての葉に肺炎が見られるケースが増えています。このパンデミックで、自分より年下のARDSを経験するなんて思いもしませんでした。基本的に中等症IIがメインで、中等症Iならホっとするくらいです。(3)速度 大阪府は、保健所および入院フォローアップセンターが連携して入院病床の管理を行っており、どの病院に入院してもらうかはフォローアップセンターの少数精鋭部隊が担っています(図1)。 第3波の時点で重症病床を約230床確保していましたが、第4波に入る前はかなり病床数を減らしていました。第3波の後半で、すでに重症病床が約60床埋まっている状態がスタートだったため、第4波で軽症中等症病床が埋まるより先に重症病床がパンクしてしまいました。 そのため、緊急増床に踏み切った大阪府の施策は間に合わず、あっという間に第4波の確保病床を超えてしまい、軽症中等症病床で挿管・人工呼吸管理のCOVID-19患者さんを診療する状態になってしまいました。当院でもすでにそういった患者さんが発生しており、重症病床が増えない限り、これが常態化するかもしれません。 「N501Y変異株」の症例が増えているのは確かですが、この病床逼迫の最たる原因なのかはわかりません。緊急事態宣言が緩和され、卒業・入学シーズンで人出が増えた影響もあり、相加相乗的に作用した可能性はあります。ただ、大阪府新型コロナウイルス対策本部会議の公開資料によると、この病床逼迫速度は第3波の約3倍とされており2)、きわめて想定外の事態であったことは間違いありません。また、「N501Y変異株」陽性者の発症から重症化までの日数は従来株よりも約1日早いとされており(表)、これが先述の状況に拍車をかけたのかもしれません。第4波を乗り越えたとしても… 第4波のCOVID-19、第3波までと実はまったく別の疾患なのではないかというくらい、ARDSの頻度が高いです。大阪に続いて東京にも第4波が到来する可能性は十分にあります。 とはいえ、ゴールデンウイークに向けて徐々に減ってくることに期待したいものです。4月5日からの「まん延防止等重点措置」が始まって2週間後にあたる4月19日以降、新規陽性者数が減ってくれば第4波は落ち着くかもしれません(図2)。 しかしながら、第4波を乗り越えたとしても遅滞なくワクチン施策が進まなければ、また7月頃に第5波がやってくる可能性はあります。そうなれば、オリンピック開催時期と完全に被ってしまうことになるでしょう。多方面へのシビアな調整が必要になるため、オリンピックを中止あるいは延期するという選択肢はないのだと思いますが、ハンマー・アンド・ダンスで時間稼ぎをするにも現場の疲弊は限界を迎えつつあり、もはやワクチンに希望を託すしかなさそうです。【倉原 優氏プロフィール】2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て、08年より現職。CareNet.comでは、「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」「Dr.倉原の“俺の本棚”」連載掲載中。

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ワクチン接種完了率の高い高齢者、重症者が大幅減/CDC

 新型コロナワクチン接種を世界でいち早く進めたイスラエルにおいて、ワクチン2回接種の完了者が多い70歳以上で、人工呼吸器を必要とする重症者数がワクチン接種開始前と比べて大幅に減ったことがわかった。米国疾病対策センター(CDC)が発行するMorbidity and Mortality Weekly Report3月5日号掲載の報告。 イスラエルではファイザー社製ワクチンを使用し、60歳以上、医療従事者、基礎疾患を持つ人を優先して接種するキャンペーンを展開。2021年2月9日までに計360万6,858人が初回接種を受け、そのうち222万3,176人(62%)が2回目の接種を完了した。年代別に見た2回目接種完了率は70歳以上、60〜69歳、50〜59歳、50歳未満で、それぞれ84.3%、69.0%、50.2%、9.9%だった。 COVID-19の重症判定を人工呼吸器の使用とし、2回接種の完了率が最も高い70歳以上(84.3%)と最も低い50歳未満(9.9%)との間で、人工呼吸器を必要とした患者数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2020年10月2日~2021年2月9日に、人工呼吸器を必要とした1日当たり患者数の中央値は、50歳未満で15(範囲:6~63)、70歳以上で84(範囲:45~127)だった。 ・2020年10月8日~12月30日において、70歳以上と50歳未満の人工呼吸器装着患者の比率の平均は5.8:1だった(99%信頼区間[CI]:5.5~6.1、範囲:4.2~8.5)。・2021年1月の最終週に、70歳以上の1日当たり人工呼吸器装着患者数が減少しはじめたが、50歳未満は依然として増加していた。・2021年2月9日時点での人工呼吸器装着患者の7日間移動平均数において、70代以上は109例、50歳未満は57.7例、両者の比率は1.9:1となり、70歳以上の比率は10月~12月時点から67%減となった。 レポートは、この結果は新型コロナワクチンには、COVID-19重症化予防効果もあることを示すものだとしている。

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米国コロナ治療の今:重症コロナ患者へ実施する緩和医療とは【臨床留学通信 from NY】第18回

第18回:米国コロナ治療の今:重症コロナ患者へ実施する緩和医療とはコロナの最大の関心事は、いまワクチンにあると思います。日本でも医療従事者への接種が始まりましたが、こちらアメリカでは2月25日現時点で6,500万人ほどが1回目の接種をしているようです。しかしながら、米国の総患者数はおよそ人口の10%に相当する2,800万人。そして、ついに50万人の死亡が確認されています。ニューヨーク州は、2,000万人ほどの人口で一時期は1日の新規患者数が2万人にのぼる日もありましたが、現在は1万人以下に減っています。しかし、わたしが所属するMount Sinai Beth Israelでは、残念ながらまだコロナの患者さんの数が減っている気配を感じません。マンハッタン郊外にあたるクイーンズ地区やブルックリン地区にはMount Sinaiの関連病院があり、そこで収容できなかった患者さんがひっきりなしに転院搬送されてきます。日本では、大学病院と大学関連病院といっても経営母体が一緒であることはあまりないと思いますが、Mount Sinai Health SystemにはMount Sinai Hospitalという大学病院を中心に6つほどの病院を有しており、グループ間の転院搬送も専用の救急車でスムーズに行われます。病院としても利益をある程度求めなければならず、グループ間での転院搬送であれば問題はないという考えだと思います。電子カルテも統一されているため、受け入れる側も先方のカルテが閲覧できるため、二重の検査は不要で合理的です。そのようなシステムのため、レジデントがグループ内の病院で、2週間単位で研修を受けるということも可能です。さて、このところコロナ治療の最前線にいることが多かったのですが、緩和医療という日本ではあまり馴染みのない科のローテートをすることになりました。緩和というと、日本では主にがん患者さんに対する医療という意味が強いと思いますが、米国ではそれに限らず、集中治療をいくら施しても回復が難しい場合に、患者さんのcomfortを中心に行うことがあります。実は、そのようなケースが、コロナ患者さんで非常にたくさんおり、患者家族とのやりとりを経て、場合によってはpalliative extubationといって、人工呼吸器がないと生きていけない患者さんの気管内チューブを抜くことがあります。そのような、尊厳死と捉えられてもおかしくないような医療行為には賛否両論があると思いますが、国が違えば考えも違う、法律も違う(米国内でも、州ごとに仕組みが異なります)ということなんだと思います。Column3月21日(日)20時~(日本時間)zoomでウェブセミナーを行います。テーマは「米国循環器グループで行う戦略的メタアナリシス」です。ウェブセミナー「米国循環器グループで行う戦略的メタアナリシス」もしよければ覗いてみてください。

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COVID-19への回復期患者血漿による治療、アウトカム改善効果なし/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に対する、回復期患者血漿による治療は、プラセボまたは標準的治療と比べて全死因死亡や入院期間、人工呼吸器の使用といった臨床アウトカムのあらゆる有益性と関連しない。スイス・バーゼル大学のPerrine Janiaud氏らが、これまでに発表された10試験についてメタ解析を行い明らかにした。エビデンスの確実性は、全死因死亡については低~中程度で、その他のアウトカムについては低いものだったという。JAMA誌オンライン版2021年2月26日号掲載の報告。ピアレビュー前・後のRCTを対象にメタ解析 研究グループは、ピアレビュー、出版前あるいはプレスリリースされた無作為化試験(RCT)で、回復期患者血漿による治療vs.プラセボまたは標準的治療の臨床アウトカムを評価する検討を行った。 PubMed、Cochrane COVID-19試験レジストリ、LOVE(Living Overview of Evidence)を2021年1月29日時点で検索し、システマティック・レビューを実施。COVID-19の疑いまたは確定診断を受けた患者を対象に、回復期患者血漿による治療とプラセボまたは標準的治療を比較したRCTを特定しメタ解析を行った。 主要解析はピアレビュー済みのRCTのみを対象に行い、2次解析は、出版前やプレスリリースを含む、公表されたあらゆる試験結果を対象に行った。 主要アウトカムは、全死因死亡、入院期間、臨床的改善、臨床的増悪、人工呼吸器の使用、重篤な有害事象だった。レビュー済み4試験とレビュー前6試験を対象に分析 解析には、ピアレビュー済みの4つのRCT(被験者総数1,060例)と、ピアレビュー前の6つのRCT(被験者総数1万722例)が含まれた。 ピアレビュー済み4 RCTの解析において、回復期患者血漿による治療の、全死因死亡に関する要約リスク比(RR)は0.93(95%信頼区間[CI]:0.63~1.38)、絶対リスク差は-1.21%(95%CI:-5.29~2.88)で、データの不正確性によりエビデンスの確実性は低かった。 ピアレビュー前の6 RCTを含めた10 RCTの解析において、全死因死亡に関する要約RRは1.02(95%CI:0.92~1.12)で、非公表データを包含したエビデンスの確実性は中程度だった。 また、ピアレビュー済み4 RCTにおいて、入院期間に関する要約ハザード比は1.17(95%CI:0.07~20.34)、人工呼吸器の使用の要約RRは0.76(0.20~2.87)であり(絶対リスク差-2.56%[95%CI:-13.16~8.05])、両アウトカムに関するデータの不正確性によりエビデンスの確実性は低かった。 臨床的改善、臨床的増悪、重篤な有害事象に関するデータは限定的で、有意差はなかった。

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第47回 「発症10日したらもう他人に感染させない」エビデンス明示で、回復患者受け入れは進むか?

全国医学部長病院長会議がコロナ重症症例診療で見解こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。春本番、プロ野球のキャンプも日米で本番を迎えています。春の沖縄キャンプ地巡りが大好きな知人がいて、ある時、スポーツニュースを観ていたらバックネット裏にスカウトのように陣取る姿が映り、驚いたことがあります。今年のキャンプは無観客なので、そういった楽しみや驚きもなく、寂しいものです。そんな中、景気のいい話もあります。2月25日、東北楽天ゴールデンイーグルスは田中将大投手に特化したファンクラブの申し込みを同日開始したところ、10人限定の年会費180万円のコースが14分で完売した、と発表しました。また、1,000人限定の1万8,000円のコースも4時間余りで完売したそうです。楽天ファンでもない私でも1万8,000円なら安い、と思いエントリーしようと考えたくらいです。ことほど左様に私を含めた誰もがスポーツ観戦など外に出かけたくうずうずしている今日このごろですが、首都圏以外の6府県の緊急事態宣言が28日で解除されました。各府県は飲食店への営業時間の短縮要請などを徐々に緩和するとのことですが、暖かさに誘われ、飲み会も増えていきそうです。英国型の変異株は実行再生産数を0.4〜0.7引き上げるとの報告もあります。第4波到来の可能性は割と高いのでは、と思いますが、皆さんいかがでしょう。少々状況が落ち着いてきた中、全国医学部長病院長会議は2月24日、「新型コロナウイルス重症症例診療を担う医療施設に関する見解」を、会長の湯澤 由紀夫氏(藤田医科大学病院 院長)と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関わる課題対応委員会委員長の瀬戸 泰之氏(東京大学医学部附属病院 院長)の連名で公表しました。前回、「第46回 第4波を見据えてか!? 厚労省が『大学病院に重症患者を受け入れさせよ』と都道府県に事務連絡」では、大学病院、中でも国立大学病院の動きが鈍い、と書きましたが、全国医学部長病院長会議が自ら、今後の大学病院の役割について対外的に見解を公表したのは大きな意味がある、と言えるでしょう。「今こそ重症症例の診療体制の整備に取り組むべき」見解では、「今後、また未曾有の感染症が襲ってくるときに備えるためにも、わが国の緊急時医療体制の構築を再考する絶好の機会ととらえている。このような重症症例診療を行いうる医療体制の構築に相応の時間を要するのは自明であり、平時よりの備えが肝要である」として、今こそ重症症例の診療体制の整備に取り組むべきだと訴えました。具体的には、コロナの重症者の治療は「高度かつ統制のとれたチームワークのもと治療を行なわなければならない」として、「重症症例の診療は大学病院、救命救急センターなど、従来より高度な集中治療を行ってきた医療施設が中心的に担うべき」としました。一方で、大学病院や救命救急センターなどでは、「新型コロナウイルス感染症の重症患者への診療」と共に「新型コロナウイルス感染症以外の高度医療」を提供しなければならならず、「通常診療の維持を前提とした新型コロナウィルス重症症例診療に必要な医療体制確保について、実態ニーズを踏まえたものとなるよう検討いただきたい」としています。その上で、「新型コロナウィルス重症治療は これまでにない総合的かつ統合的な加療であり、通常の重症肺炎診療とは異なるものでもあり、施行するにあたり相応の診療報酬が病院運営上必須である」と、報酬上の手当も国に求めました。端的に言えば、「コロナの重症者には通常診療と並行して取り組むが、相応のお手当はお願いします」ということのようです。「後方病床あるなら大学病院も頑張る」私自身がとくに重要だと思ったのは、後半の連携に関するくだりです。見解では、「円滑な重症症例病床運用のためには、重症症例を診る施設がその治療に集中するため、軽快ないしは改善した場合の後方病床確保も重要な課題となる」と指摘、「特に、重症から回復した高齢者が退院基準を満たしても、そのまま自宅退院できることはまれであり、後方病床に移送できなければ重症病床の活用に支障が生じる。医療状況が逼迫している折、そのような医療提供体制の役割分担を推進することは医療効率化のためにも極めて重要」と、回復した患者の受け入れる後方病床の整備を強く求めています。「後方病床を整備してくれるなら、大学病院も頑張るよ」とも読めるのですが、確かに回復した患者の引き受け手がなく、いつまでも大学病院に入院させていては、新規入院を受け入れることができないわけで、その体制をつくっておくことは重要です。ちなみに、見解では、後方病床の確保を“下り”の流れと表現しています。退院基準の見直し案と感染可能期間のエビデンス明示ちょうど第3波が収まり、比較的余裕が出てきた今こそ、それぞれの地域において後方病床の役割を果たす病院をきちんと決めておくべきです。ただ、地域のよっては、「コロナ回復患者引き受けます」と手を挙げる病院はまだまだ多くはないようです。“流れ”づくりの主役となるべきは、日本医師会、四病院団体協議会、全国自治体病院協議会によってつくられた「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」だと思うのですが、これについては前回書いたので今回は触れません。実は、先々週にも回復患者引き受けに関連した動きがありました。厚生労働省は2月18日の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(座長:脇田 隆字・国立感染症研究所所長)の第24回会合に対し、新型コロナウイルス感染症の退院基準の見直し案を提示、あわせて発症からの感染可能期間などのエビデンスも提示したのです。退院基準見直し案では、有症状者については人工呼吸器等による治療の有無別に分け、治療を行った場合には発症日から15日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合に退院可能とするが、「発症日から20日間経過するまでの間は、適切な管理を行う」などの条件を付けました。他方、人工呼吸器等治療を行わない場合(軽症・中等症)については現行通り(1.発症日から10日間経過し、かつ症状軽快72時間経過した場合に退院可能とする。2.症状軽快後24時間経過した後、24時間以上間隔をあけ 2回のPCR検査又は抗原定量検査で陰性を確認できれば、退院可能とする)としました。軽症・中等症は「現行通り」でも大丈夫な理由・エビデンスについては、「軽症・中等症において、感染性のあるウイルス粒子の分離報告は 10 日目以降では稀であり、これら の症例において、症状が消失してからも長期的にウイルス RNA が検出される例からの二次感染を認める報告は現時点では見つからなかった」とし、「退院後のPCR 再陽性例における感染性や、再陽性例からの二次感染を認める報告も現時点では見つからなかった」としています。医療機関だけでなく一般にもアピールすべきでは要するに、「発症日から10日したらもう他人に感染させない」「症状軽快後、PCR陽性が続く場合も他人に感染させない」というわけです。厚労省としては、この見直し案とエビデンスによって、一般病院や介護施設での回復患者の受け入れが進み、重症病床の回転が良くなることを期待しているわけですが、本当に地域でそうした“流れ”が普通に構築されることを期待したいと思います。ところで、なぜこの事実(エビデンス)を、医療機関だけでなく一般にももっと広く、強くアピールしないのでしょう。何かまた、「国民があらぬ誤解する」とでも国は考えているのでしょうか(新型コロナウイルス感染症は発症の数日前から感染力が高まることを、国は昨年の感染拡大当初、国民に知らせるのをためらっていた、と聞いています)。少々、謎です。このエビデンスがしっかり世の中に浸透すれば、それこそ報酬さえ手厚くすれば後方病院は回復患者受け入れに手を挙げるでしょうし、問題となっている職場における理不尽な感染者差別(復職後に陰性証明を要求されたり、在宅勤務を強制されたり人が出ているそうです)なども減ると思うのですが…。

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新型コロナ、医療者の転帰不良リスクはあるか?

 医療従事者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染リスクが高いが、感染後の転帰不良リスクはあるのか。北米の医療者127例を対象として後ろ向き観察コホート研究の結果が発表された。JAMA Network Open誌2021年1月28日号掲載の報告。 2020年4月15日~6月5日までに北米の36施設で確認された、1,992例のCOVID-19成人患者が対象に含まれた。データ解析は2020年9月10日~10月1日に行われ、患者のベースライン時の特性、併存疾患、症状、治療法および転帰に関するデータが収集された。 主要評価項目は人工呼吸器の利用または死亡の複合エンドポイントだった。 主な結果は以下のとおり。・解析されたのは1,790例で、内訳は医療従事者127例と非医療従事者1,663例だった。3:1の傾向スコアマッチングが行われ、122例の医療従事者と366例の非医療従事者がマッチングされた。・女性は医療従事者で71例(58.2%)、非医療従事者で214例(58.5%)、平均年齢(SD)は医療従事者で52(13)歳、非医療従事者で57(17)歳だった。・複合エンドポイントについて、両者の間に有意差はなかった(補正後オッズ比:0.60、95%信頼区間:0.34~1.04)。・医療従事者は集中治療室への入院を必要とする可能性が低く(0.56、0.34~0.92)、7日以上の入院を必要とする可能性も低かった(0.53、0.34~0.83)。・人工呼吸器の利用(0.66、0.37~1.17)、死亡(0.47、0.18~1.27)、昇圧薬の利用(0.68、0.37~1.24)についても、両者の間に有意差はなかった。

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第49回 米国FDAの大忙しの週末~ネアンデルタール人から授かったCOVID-19防御

米国FDAはこの週末大忙しだったに違いなく、25日木曜日にはPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)予防ワクチン接種施設を増やしうる保管方法を許可し、25日と翌日26日には稀な病気2つの新薬と運動選手の脳を守る首輪を承認し、27日土曜日には大方の予想通りJohnson & Johnson(J&J)のCOVID-19ワクチンを取り急ぎ許可しました。25日に報告された興味深い研究成果、ネアンデルタール人から授かったと思しきCOVID-19防御因子の発見も併せて紹介します。COVID-19ワクチンをいっそう推進溶解前の冷凍状態のPfizerワクチンの保管温度はこれまで超低温の零下80~60℃とされてきましたが、より一般的な冷凍庫の温度である零下25~15℃で最大2週間保管することが許可されました1,2)。また、零下25~15℃での保管後に一回のみ零下80~60℃に戻すことが可能です。超低温冷凍庫をわざわざ購入する負担が減ってワクチンを扱える場所が増えるだろうとFDAの審査部門(Center for Biologics Evaluation and Research)長Peter Marks氏は言っています1)。Pfizerワクチンと違って受け取り後に冷凍不要のJ&JのCOVID-19ワクチンは26日金曜日の諮問委員会での満場一致の賛成の翌日27日土曜日に18歳以上の成人への使用が早々と取り急ぎ認可されました3)。J&Jのワクチンバイアルの針刺し前の保管温度は2~8℃であり、冷凍してはならず、最大12時間は9~25℃で保管可能です4)。J&Jは接種1回のそのワクチン2,000万人超への投与分を今月末までに出荷できる見込みです5)。また、今年前半には米国人口の約3分の1相当の1億人への投与分が出荷される予定です。稀な病気の新薬FDAは25日に稀な病気・デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬Amondys 45(casimersen)、翌日26日には世界での診断数150人未満の超稀な病気・モリブデン補因子欠損症(MoCD)A型の治療薬Nulibry(fosdenopterin)を承認しました。Amondys 45は筋肉細胞に必要なタンパク質ジストロフィンをエクソン45スキッピングという作用機序を介して増やします。その作用が通用する変異を有するDMD患者への同剤使用が承認されました6)。DMD患者のおよそ8%がその変異を有します。MoCD A型は男児3,600人あたりおよそ1人に生じるDMDよりさらに稀で、世界で確認されている患者数は150人未満です。Nulibry(fosdenopterin)はFDAが承認した初のMoCD A型治療薬となりました7)。10万人あたり0.24~0.29人の発生率と推定されるMoCD A型患者は遺伝子変異のせいでcPMP(環状ピラノプテリン一リン酸)という分子が作れません7,8)。Nulibry はcPMPを供給することで尿中の神経毒Sスルホシステインを減らします。Nulibryの生存改善効果が13人への投与で示されています。それらの患者の84%は3年間生存し、非投与群18人のその割合は55%でした。MoCD A型の患者数は診断数より多いらしく、米国と欧州(EU)で毎年22~26人が診断されないままと推定されています9)。運動選手の脳を守る”首輪”運動選手の頭部の衝撃から脳を守る首輪Q-Collarは26日に米国FDAに承認されました10)。頭部が衝撃を受けると頭蓋内で脳が揺れて神経が捻れたり切れたりして脳が傷みます。首にはめたQ-Collarは頸静脈を圧迫することで頭蓋内の血液量を増やして脳をより固定させ、衝撃を受けてもグラグラと揺れないようにします。米国の13歳以上のフットボールチーム員284人が参加した試験などでQ-Collarの効果や安全性が示されています。その試験でQ-Collarを使用した139人の脳のMRI写真を調べたところおよそ8割(77%)107人の神経信号伝達領域(白質)は無事でした。一方、非使用群145人では逆にほとんどの73%(106/145人)に有意な変化が認められ、Q-Collarの脳保護効果が示唆されました。Q-Collar使用に伴う有意な有害事象は認められませんでした。ネアンデルタール人から授かったらしいCOVID-19防御COVID-19患者最大1万4,134人と対照群最大128万人を調べたところ、RNAウイルスに対する自然免疫の一部を担うオリゴアデニル酸シンセターゼ(OAS)の一つ・OAS1の血中量が多いこととCOVID-19になり難いことやたとえCOVID-19になっても入院、人工呼吸器使用、死に至り難いことが示されました11,12)。さらに504人の経過を調べたところ血漿OAS1量が多いことは後にCOVID-19になり難いことやCOVID-19による入院や重病に至り難いことと関連しました。OAS1はいくつかの種類(アイソフォーム)があります。興味深いことに、数万年前にネアンデルタール人と交わったときに受け継いだp46というアイソフォームがどうやらCOVID-19防御作用を担うと示唆されました。幸いなことにOAS1を増やす前臨床段階の化合物13)が存在するのでそれらを最適化してCOVID-19への効果を臨床試験で調べうると著者は言っています。参考1)Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Allows More Flexible Storage, Transportation Conditions for Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine / PRNewswire2)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) / FDA3)FDA Issues Emergency Use Authorization for Third COVID-19 Vaccine / PRNewswire4)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE JANSSEN COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) / FDA5)Johnson & Johnson COVID-19 Vaccine Authorized by U.S. FDA For Emergency Use / PRNewswire6)FDA Approves Targeted Treatment for Rare Duchenne Muscular Dystrophy Mutation / PRNewswire7)FDA Approves First Treatment for Molybdenum Cofactor Deficiency Type A / PRNewswire8)Nulibry PRESCRIBING INFORMATION9)BridgeBio Pharma and Affiliate Origin Biosciences Announce FDA Approval of NULIBRYTM (fosdenopterin), the First and Only Approved Therapy to Reduce the Risk of Mortality in Patients with MoCD Type A / GLOBE NEWSWIRE10)FDA Authorizes Marketing of Novel Device to Help Protect Athletes' Brains During Head Impacts / PRNewswire11)Zhou S,et al.Nat Med. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print]12)Discovery: Neanderthal-derived protein may reduce the severity of COVID-19 / EurekAlert13)Wood ER, et al. J Biol Chem. 2015 Aug 7;290:19681-96.

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COVID-19重症化防止に抗がん剤ベバシズマブが有効である可能性

 重症のCOVID-19患者に抗がん剤ベバシズマブを投与することで、死亡率が低下し、回復が早まる可能性があることが、イタリアと中国で行われた小規模な試験によって明らかになった。Nature Communication誌2月5日オンライン版掲載の報告。 シングルアームの本試験は、2020年2月15日~4月5日に中国とイタリアの2施設において26例の成人患者が登録され、28日間のフォローアップが行われた。COVD-19感染はPCR検査で判定され、重症度は呼吸数が30回/分以上、安静時の酸素飽和度が93%以上、動脈酸素分圧/吸入酸素濃度(PaO2/FiO2)が100mm~300mmHg、胸部画像のびまん性肺炎によって判断した。適格となった参加者には標準治療に加え、100mLの生理食塩水に溶解したベバシズマブ(500mg)を90分以内に単回投与し、投与後1日目と7日目のデータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の年齢中央値は62歳、20人(77%)が男性だった。症状発現から入院までの期間中央値は10日、入院からベバシズマブ投与までの期間中央値は7日だった。・ベバシズマブ投与群はPaO2/FiO2が著しく改善し、28日目までに24例(92%)が酸素吸入が不要となり、17例(65%)が退院した。悪化例や死亡例はなかった。・発熱のあった14例のうち、13例(93%)が投与から72時間以内に正常化した。・ベースライン時に人工呼吸器を装着していた6例すべてがフォローアップ期間内に装着を停止し、うち4例は退院した。 ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体であり、VEGFタンパク質を選択的に阻害することで血管形成を阻害し、がん細胞の成長に必要な栄養が供給されるのを妨げる。著者らは、「重症COVID-19患者の多くはVEGFレベルの上昇、肺水腫、肺組織の血管病変など、マーカーに関連する症状があるため、ベバシズマブが重症化防止に有効である可能性があるとの仮説を立てた」としつつ、有効性を実証するためには大規模なランダム化比較試験が必要としている。

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中等~重症COVID-19に高用量ビタミンD3単回投与は有益か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、高用量のビタミンD3単回投与はプラセボと比較し、在院日数を有意に減少させることはないことが示された。ブラジル・サンパウロ大学医学部のIgor H. Murai氏らが、ブラジル・サンパウロの2施設で実施した無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。COVID-19に対するビタミンD3補給の有効性はこれまで不明であったが、結果を受けて著者は、「中等症~重症COVID-19患者の治療として高用量ビタミンD3の使用は支持されないことが示された」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年2月17日号掲載の報告。中等症~重症のCOVID-19入院患者でビタミンD3の有効性をプラセボと比較 研究グループは、2020年6月2日~8月27日の期間に中等症~重症COVID-19入院患者240例を登録し、ビタミンD3投与群(20万IU単回経口投与)(120例)またはプラセボ群(120例)に無作為に割り付け、2020年10月7日まで追跡した。 主要評価項目は在院日数(無作為化から退院までの期間と定義)、事前に設定した副次評価項目は在院死亡、集中治療室(ICU)への入室、人工呼吸器を必要とした患者の割合および人工呼吸器装着期間、血清25-ヒドロキシビタミンD値、総カルシウム濃度、クレアチニン、C反応性蛋白(CRP)などであった。両群で在院日数に有意差なし 無作為化された患者240例のうち、237例が主要解析に組み込まれた。解析対象患者の平均(±SD)年齢は56.2±14.4歳、女性が104例(43.9%)、ベースラインの平均(±SD)25-ヒドロキシビタミンD値は20.9±9.2ng/mLであった。 在院日数は中央値で、ビタミンD3群7.0日(四分位範囲[IQR]:4.0~10.0日)、プラセボ群7.0日(IQR:5.0~13.0日)で、両群間で差はなかった(log-rank検定p=0.59、退院の補正前ハザード比:1.07[95%信頼区間[CI]:0.82~1.39]、p=0.62)。 また、ビタミンD3群とプラセボ群との間で、在院死亡率(7.6% vs.5.1%、群間差:2.5%[95%CI:-4.1~9.2]、p=0.43)、ICU入室率(16.0% vs.21.2%、群間差:-5.2%[95%CI:-15.1~4.7]、p=0.30)、人工呼吸器装着率(7.6% vs.14.4%、群間差:-6.8%[95%CI:-15.1~1.2]、p=0.09)で有意差は確認されなかった。血清25-ヒドロキシビタミンD値は、ビタミンD3群においてプラセボ群より有意に増加した(44.4ng/mL vs.19.8ng/mL、群間差:24.1ng/mL[95%CI:19.5~28.7]、p<0.001)。 有害事象は確認されなかったが、介入と関連した嘔吐がみられた。

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第43回 麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?

<先週の動き>1.麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?2.発症から15日など、新型コロナ重症者の退院基準を新設/厚労省3.4月から非医療機関を対象に看護師の日雇い派遣が可能に4.高齢者へのワクチン接種開始、予定よりやや遅れる見込み5.コロナ禍での医師の働き方改革の進捗を報告/日医1.麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?三重大学医学部付属病院において、2017年に麻酔科医が4件の手術をかけ持ちする「並列麻酔」を行い、手術中に患者1人が死亡する医療事故が発生していたことが発覚した。並列麻酔は、医療事故のリスクが高まることなどを理由に、日本麻酔科学会が原則的に禁止している。同院の医療事故調査委員会は、並列麻酔が患者の死亡につながった遠因である可能性を言及し、今年に入ってから並列麻酔は一切行っていないとしているが、2020年までは20%前後の手術で並列麻酔が行われていたことを明らかにしている。三重大学では、臨床麻酔部の元教授らが、不正な診療報酬請求による詐欺の疑いで逮捕され、昨年から麻酔科医の退職が相次いでおり、人手の足りない手術を他病院で実施するなどで対応している。今後、再発防止策を立案するとともに、信用回復と人員確保が最優先となるだろう。(参考)【三重】三重大「並列麻酔」約1〜2割で(NHK)資格医学部附属病院における不正事案について(三重大学)2.発症から15日など、新型コロナ重症者の退院基準を新設/厚労省厚生労働省は、18日に開催された専門家会議で、新型コロナウイルスの重症者について、軽症者らとは別の退院基準を設けることを決定した。これは、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な重症者は、他人に感染させる期間が長いと考えられるため。これまでの退院基準は、重症度にかかわらず、発症後10日間が経過し、かつ症状が軽快しており、72時間以上経過した者についてはPCR検査を実施せずに退院が可能であったが、今後は重症者に限って、発症から15日が必要だとした。近く、都道府県に通知する見込み。政府は、退院基準を満たした高齢の入院患者を介護施設が受け入れた場合、1日当たり5,000円相当の介護報酬を最大30日間加算することを決めている。全国老人保健施設協会によると、都内では36施設が、新型コロナ退院患者の受け入れ態勢をすでに整えているという。(参考)コロナ重症者の退院基準 発症から15日に 厚労省(朝日新聞)コロナ 退院基準満たした高齢患者 受け入れ施設に介護報酬加算(NHK)3.4月から非医療機関を対象に看護師の日雇い派遣が可能に厚労省は、非医療機関(老人ホームや介護施設、保育所など社会福祉施設)において、看護師らが日雇いで働けるように政令改正を決めた。これは新型コロナ流行に伴い、介護施設や障害者施設での看護師ニーズが高まる中、現状では原則禁止されている看護師らの日雇い派遣についての規制を緩和し、今年の4月以降認める方向で検討している。介護施設では、看護師の人員確保などの課題に直面しており、規制緩和によって、子育てや介護のため常勤していない「潜在看護師」の短時間労働が可能となる。なお、新型コロナウイルスワクチン接種などについては、医療行為であり、医療機関への派遣についても今回の改正対象とはならない。表:保健師・助産師・看護師・准看護師と労働者派遣の法規制(2021年2月21日時点の改正見込み)画像を拡大する(参考)看護師の日雇い派遣4月以降容認へ 厚生労働省(NHK)看護師、介護施設に日雇い派遣可能に 4月から(日本経済新聞)4.高齢者へのワクチン接種開始、予定よりやや遅れる見込み21日にNHK報道番組に出演した河野 太郎規制改革担当相は、高齢者への新型コロナウイルスのワクチン接種開始について、4月はワクチンの輸入量が比較的限られるため、接種への実施が一部後ろ倒しになることを明らかにし、今週中には新たな接種計画をまとめると発表した。また同氏は、新型コロナウイルスワクチン接種について、当初は370万人程度と推計していた医療従事者が、100万人程度増えるとの見通しを明らかにしており、3月から開始される医療従事者の2回目の接種と並行して高齢者向けの接種が開始する見込みであることも併せて言及している。(参考)高齢者ら接種「週内に大枠」 企業にワクチン休暇要請も 河野氏(時事通信)ワクチン接種、遅れる可能性 河野氏言及、供給が限定的(朝日新聞)ワクチン医療従事者接種「100万人くらい増加」 河野氏 高齢者、4月開始は変更なし(日経新聞)5.コロナ禍での医師の働き方改革の進捗を報告/日医日本医師会は、17日に開催された定例記者会見で、医師の働き方改革の進捗について、松本 吉郎常任理事が報告した。医師の働き方改革については、昨年12月に厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が中間取りまとめを行い、今年2月に医療法等の改正法案が閣議決定され、2024年度からの医師の働き方の新制度施行からの制度の開始に向けた準備が進んでいる。今回、現場からの質問や意見の多い、(1)医療機関がおこなうべきこと、(2)2024年度からの医師の働き方の新制度施行、(3)2024年度の新制度施行に向けて取り組むこと、(4)コロナ禍と医師の働き方、(5)宿日直の許可、(6)医師の副業・兼業の取り扱い、(7)大学病院における働き方、(8)医師の働き方制度理解といった8項目についてそれぞれ説明を行った。今後、さらに医師の働き方改革を進める上でのポイントが記されており、2024年度を前に大学病院をはじめ医療機関が取り組む課題は大きいと考えられる。(参考)医師の働き方改革の進捗状況について(日医)資料 医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ(厚労省)

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アジスロマイシン、COVID-19入院患者への効果は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、アジスロマイシンによる治療は生存期間および臨床転帰(侵襲的人工呼吸器装着または死亡)を改善しなかったことが、無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。アジスロマイシンは免疫調節作用を有していることから、COVID-19に対する治療として提案されてきたが、これまでの無作為化試験では、COVID-19の治療におけるマクロライド系抗菌薬の臨床的有益性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19入院患者に対するアジスロマイシンの使用は、明らかに抗菌薬の適応である患者に制限されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年2月2日号掲載の報告。通常治療単独群とアジスロマイシン併用群で28日死亡率などを比較 RECOVERY(Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)試験は、英国の病院176施設で進行中の無作為化非盲検対照アダプティブプラットフォーム比較試験である。研究グループは、適格基準を満たし同意が得られたCOVID-19入院患者を、通常治療群または通常治療+アジスロマイシン(500mg 1日1回経口/静脈投与)群(以下、アジスロマイシン群)のいずれかに、ウェブシステムを用いて2対1の割合で無作為に割り付けた。投与は、10日間または退院まで(あるいはRECOVERY試験の他の治療群に割り付けられるまで)行われた。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無作為化から28日間の全死因死亡率であった。なお、患者と各病院の医療スタッフは治療の割り付けに関して盲検化されていないが、本試験に関わる他のすべての関係者は、臨床転帰に関するデータについて盲検化された。28日死亡率、生存退院までの期間、28日以内の生存退院率に有意差なし 2020年4月7日~11月27日に、RECOVERY試験の登録患者1万6,442例中、9,433例(57%)が適格基準を満たし、7,763例がアジスロマイシン群および通常治療群に無作為に割り付けられた(それぞれ2,582例および5,181例)。患者の平均(±SD)年齢は65.3±15.7歳で、約3分の1(2,944例、38%)が女性であった。 全体で無作為化から28日以内に、アジスロマイシン群で561例(22%)、通常治療群で1,162例(22%)が死亡した(率比:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.07、p=0.50)。生存退院までの期間中央値は、アジスロマイシン群10日(IQR:5~>28)、通常治療群11日(IQR:5~>28)で、28日以内の生存退院率はアジスロマイシン群69%(1,788/2,582例)、通常治療群68%(3,525/5,181例)で(率比:1.04、95%CI:0.98~1.10、p=0.19)、いずれも両群間で有意差は確認されなかった。 ベースラインで侵襲的人工呼吸管理を受けていない患者で、侵襲的人工呼吸管理または死亡に至った割合も有意差はなかった(リスク比:0.95、95%CI:0.87~1.03、p=0.24)。 なお、著者は、本無作為化試験は非盲検試験であり、ウイルス量や炎症の程度、非マクロライド系抗菌薬の使用などに関する情報、ならびに放射線学的または生理学的な転帰に関する情報が不明であることを研究の限界として挙げている。

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第44回 女子医大プロポフォール事件、阪大・国循論文不正事件に新展開

コロナ禍でも事件は動くこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、前回は旭川医大のドタバタについて書きましたが、もっと大きな“老害”舌禍事件がオリンピック・パラリンピック絡みで起きました。報道等によると、森 喜朗氏に引導を渡せる人がいないとのこと。一国民としてはやれやれ、としか言いようがないですね。さて、旭川医科大学で病院長解任が起きた同じ週に、昨年この連載で取り上げたいくつかの事件が新展開を迎えていましたので、今回はそのフォローをしておきたいと思います。女子医大プロポフォール事件、麻酔医2人在宅起訴2014年2月、東京女子医科大学病院に入院中の2歳の男児が術後に死亡した事件で、東京地検は1月26日、ICUで術後管理にあたった麻酔科医2人を業務上過失致死罪で在宅起訴しました。起訴されたのは同病院の中央集中治療部の副運営部長だった61歳の准教授と、同じく後期研修医だった39歳の医師です。起訴状によると2人は、2014年2月18~21日、首の腫瘍を取り除く手術を受け人工呼吸器をつけていた男児に対して鎮静剤プロポフォールを投与した際、心電図に異常がみられるなど容体に変化があったにもかかわらず投与を中止せず、男児を急性循環不全で死亡させた、とされています。この事件については、本連載の「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」で詳しく取り上げました。事故当時、プロポフォールはICUで人工呼吸器をつけた子供への投与は添付文書上「禁忌」でしたが、厚生労働省は「禁忌はあくまで原則」との見解を示しており、警視庁はプロポフォールの投与自体は過失とはせず、安全管理を怠ったことに焦点をあて、昨年10月21日に書類送検に踏み切りました。この時、起訴を求める「厳重処分」の意見も全員に付けられました。事件から7年、やっと公判へ書類送検されたのは麻酔科医6人でしたが、在宅起訴に至ったのは上記の2人で、残りの4人は関与の度合いなどを考慮した結果、起訴猶予となりました。事故が起こったのが2014年2月。遺族は同年5月に業務上過失致死罪に当たるとして被害届を提出、翌2015年2月には麻酔科医ら5人を傷害致死罪で刑事告訴しています。警視庁が書類送検したのは事件から6年以上経った2020年10月で、事件から実に7年を迎えようという2021年1月末に在宅起訴となったわけです。1月26日のNHKニュースは死亡した男児の母親のコメントを報じました。それは次のようなものです。「6人全員を起訴してほしかったという思いはありますが、このうちの2人が起訴されたことは大きな一歩であり、ようやく一筋の光が差してきたように感じます。裁判では、息子の容体を適切に管理しなかった理由を含めて当時何があったのか、真摯に、自分のことばで話してほしい」。これからやっと公判が始まります。東京女子医大病院は最近、コロナ対応で頑張る姿が報道されていますが、特定機能病院の再承認にはまだまだ時間がかかりそうです。大阪大・国循論文不正事件、臨床試験の根拠となった有名論文も不正認定次は大阪大学と国立循環器病研究センターの論文不正事件です。2020年8月に大阪大学医学部附属病院に以前所属し、国循で室長も務めていた医師が2013~16年に発表した肺がん治療などに関する論文5本に捏造や改ざんが認定された問題で、調査委員会は1月30日、別の論文2本にも捏造と改ざんの不正があったと発表しました。大阪大はこのうち1本を根拠に実施していた臨床研究の中止を決めました。この事件については、本連載の「第22回 大阪大論文不正事件の“ナゾ” NHKスペシャル「人体」でも取り上げられた臨床研究の行方は?」で詳しく書きました。2010年8月の段階では、捏造・改ざんがあったとされる5本の論文のうち、調査委員会が、社会的影響がとくに大きいと考えたのは、肺がんの手術の際に心不全の治療に用いられる「hANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)」 を使うと合併症が抑えられる、とした2013年の論文でした。この後の2015年、同医師はhANPを投与した患者群で肺がんの再発が有意に少ないことをプロスペクティブな検討で発見した論文を筆頭筆者として発表しました1)。一連の研究成果をもとに、がんの転移を防ぐ作用を期待して、大規模な臨床研究(「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP投与の多施設共同ランダム化第II相比較試験(JANP study)」)がスタートしました。この臨床研究は将来の実用化も目指して、保険診療が一部使える「先進医療」の制度を利用していました。全国10施設で実施され、患者335人が参加。うち160人にhANPが投与されました。既に参加者の募集もhANPの投与も終わり、観察期間中でした。有名論文でも捏造と改ざん今回新たに捏造と改ざんの不正があったと発表されたのは、この2015年の論文と、2017年にOncotarget誌に掲載された論文の計2本。調査委員会の調べでは、動物実験のデータが書き直されており、正しいデータで計算し直すと肺がんの転移や再発を防げる根拠にはならなかったとのことです。調査委員会は筆者の同医師が不正に関与したと指摘し、国立循環器病センターの名誉研究所長も不正には関与していないものの、著者としての責任があるとしました。前回も書きましたが、2015年の、hANPが肺がんの転移や再発が有意に少ないことを明らかにした論文は研究者に与えられるさまざまな賞を受賞しており、2017年にNHKで放送されたNHKスペシャル「人体」の中でも「世界初!心臓からの“メッセージ”で『がん転移予防』」として、JANP studyが始まったことも含め、大きく取り上げています。この論文不正は、2017年12月、大阪大と国循に、同医師が筆頭著者または責任著者として発表した21本の論文に「ねつ造や改ざんが認められる」とする申し立てが届いたことがきっかけで発覚しました。「先進医療」が認められたことで後戻りできず前回のこの連載では、2015年の有名論文は申し立てに入っていないことがナゾだと書きましたが、結局、この論文にも捏造・改ざんがあったわけです。また、30日の調査委員会の記者会見では、2015年の有名論文には2018年8月に大量の訂正が出されていたことも明らかにされました。2月4日付の朝日新聞によると、調査委員長の仲野 徹・阪大教授は「先進医療が関係なかったらあっさり(撤回を)決断できたかもしれない」と話したとのことです。2018年の大量訂正にもかかわらず論文を撤回できなかったのは、厳しい審査を経て臨床試験が先進医療制度を利用できるようになったことが影響した、というわけです。この流れから見えて来るのは、画期的な研究成果を基に、大規模臨床研究が計画され、しかもそれが「先進医療」という仕組みで実施されたことで、簡単には後戻りできなくなってしまった研究者や組織の姿です。hANP投与を受けた160人に重大な健康被害は確認されていないとのことですが、いずれにせよ、臨床研究に対する信頼が大きく損なわれたことは間違いありません。報道等によれば、大阪大学は今後、臨床研究に関わる研究で不正疑惑が出た場合、調査委員会等による確定前でも研究中止等の対応ができるようにする、とのことです。さてもう一つ、三重大病院臨床麻酔部事件でも新展開があったのですが、ちょっと長くなり過ぎたので回を改めたいと思います。参考1)Nojiri T et al, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2015 Mar 31;112;4086-91.

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パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療・その2【臨床留学通信 from NY】第17回

第17回:パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療・その2前回でも書きましたが、レジデントのローテーションで、12月上旬から中旬にコロナの第2波がニューヨークにやってきたタイミングでICU勤務をしました。そこでは、4月のパンデミック時と何も変わっていない、コロナという病気で重症化してしまうと本当に打つべき手がないということを実感しました。レムデシビルは軽症であれば効くのかもしれませんが、重症になってしまうとウイルスそのものより全身の炎症がメインであり、もはや効かない印象です1)。当院はECMOがないため、必要があれば他院への転院となりますが、100%酸素の人工呼吸器設定で酸素飽和度が80%辺りになると、残るは腹臥位に変えるかどうかくらいですが、医療従事者数人がかりでコロナ患者の体位を変えるのは本当に大変です。有効性ははっきりしないものの、どうしようもない低酸素の人に対し一酸化窒素を使うこともあります2)。RCTでは当初否定的でしたが、回復期血漿療法は継続して使用しており、最近になってNEJMに有効性を証明した論文が発表されました3、4)。トリシズマブに関しては、ネガティブスタディが出たこともあって第1波のころと異なりこの冬は下火となっていましたが5)、Mount Sinaiから人工呼吸器治療を受けていない患者であれば人工呼吸器もしくは死亡を回避する可能性が高いというデータが発表された6)ため、プラクティスが再び変わるかもしれません。サンクスギビング後の第2波は、2020年末にかけて一気に増えることはありませんでしたが、病院としてはクリスマス後や年始の増加に備え、いつでもICUを増やせる体制で臨みました。そんな訳で、レジデントとして最後のクリスマスと年末年始は、ICUで休みなしの勤務となりました。勤務は朝7時から夜7時半までをロングコール、朝7時から夕方4時前後までをショートコール、夜間7時から朝7時半~9時までをナイトフロートと呼び、それらをレジデント4人によるシフトで回し、計16人のICU患者をカバーしました。シフト制とはいえ、例えばロングコールをした後、24時間の休憩後にナイトフロートを3~4日連続勤務し、24時間弱の休憩を挟んで昼間のシフトに戻ったりするので、体力的にかなりつらく、ナイトフロート中は実質寝られません。卒後1年目のインターンが患者の約半分ずつを担当し、私はレジデントとして彼らを管理・監督をします。Physician AssistantたちもICU管理のために専門的に教育されてはいますが、慣れ・不慣れの程度が人によって異なるため、彼らを監督しなければいけないこともあります。日中はアテンディングと呼ばれる指導医の人が1人ずつ回診していくのですが、朝8時過ぎから昼の12時、場合によっては13~14時近くまで行ったうえ、患者1例ずつディスカッションをして治療方針を決めていきます。1症例ごとプレゼンテーションするのはインターンの役目ですが、それをうまくできるようにサポートする必要があります。どうしても重症な症例が多いので時間が掛かり、その合間にも容赦なくICU入院者が来るため、そこをいかにまとめるかがレジデントの仕事となります。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32827627/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33347987/3)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2033700?query=featured_home4)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33232588/5)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa20288366)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2030340?query=featured_homeColumn画像を拡大する私はICU配属だったこともあり、医療従事者の中でも比較的早い1月7日に2回目のワクチンを接種しました。さらにわれわれの施設では、1月11日から高齢者や教職員、交通機関の職員に対してもワクチン接種を開始したのですが、供給不足となってしまって一時中止しています。一刻も早くパンデミックからの収束を願います。写真は、昨年末に撮影したロックフェラーセンターのクリスマスツリーです。今年は“密”を避けるため、遠目からの観賞となりました。

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COVID-19入院患者、ACEI/ARB継続は転帰に影響しない/JAMA

 入院前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の投与を受けていた軽度~中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者では、これらの薬剤を中止した患者と継続した患者とで、30日後の平均生存・退院日数に有意な差はないことが、米国・デューク大学臨床研究所のRenato D. Lopes氏らが実施した「BRACE CORONA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年1月19日号で報告された。アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、COVID-19の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の機能的な受容体である。また、RAAS阻害薬(ACEI、ARB)は、ACE2をアップレギュレートすることが、前臨床試験で確認されている。そのためCOVID-19患者におけるACEI、ARBの安全性に対する懸念が高まっているが、これらの薬剤が軽度~中等度のCOVID-19入院患者の臨床転帰に及ぼす影響(改善、中間的、悪化)は知られていないという。ブラジルの29施設が参加した無作為化試験 本研究は、軽度~中等度のCOVID-19入院患者において、ACEIまたはARBの中止と継続で、30日までの生存・退院日数に違いがあるかを検証する無作為化試験であり、2020年4月9日~6月26日の期間にブラジルの29の施設で患者登録が行われた。最終フォローアップ日は2020年7月26日であった。 対象は、年齢18歳以上、軽度~中等度のCOVID-19と診断され、入院前にACEIまたはARBの投与を受けていた入院患者であった。被験者は、ACEI/ARBを中止する群、またはこれを継続する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化から30日までの期間における生存・退院日数(入院日数と、死亡からフォローアップ終了までの日数の合計を、30日から差し引いた日数)とした。副次アウトカムには、全死亡、心血管死、COVID-19の進行などが含まれた。全死亡、心血管死、COVID-19の進行にも差はない 659例が登録され、ACEI/ARB中止群に334例、継続群には325例が割り付けられた。100%が試験を完了した。全体の年齢中央値は55.1歳(IQR:46.1~65.0)、このうち14.7%が70歳以上で、40.4%が女性であり、52.2%が肥満、100%が高血圧、1.4%が心不全であった。無作為化前に中央値で5年間(IQR:3~8)、16.7%がACEI、83.3%がARBの投与を受けていた。β遮断薬は14.6%、利尿薬は31.3%、カルシウム拮抗薬は18.4%で投与されていた。 入院時に最も頻度が高かった症状は、咳、発熱、息切れであった。発症から入院までの期間中央値は6日(IQR:4~9)で、27.2%の患者が酸素飽和度(室内気)94%未満であった。入院時のCOVID-19の臨床的重症度は、57.1%が軽度、42.9%は中等度だった。 30日までの生存・退院日数の平均値は、中止群が21.9(SD 8)日、継続群は22.9(7.1)日であり、平均値の比は0.95(95%信頼区間[CI]:0.90~1.01)と、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.09)。また、30日時の生存・退院の割合は、中止群91.9%、継続群94.8%であり、生存・退院日数が0日の割合は、それぞれ7.5%および4.6%だった。 全死亡(中止群2.7% vs.継続群2.8%、オッズ比[OR]:0.97、95%CI:0.38~2.52)、心血管死(0.6% vs.0.3%、1.95、0.19~42.12)、COVID-19の進行(38.3% vs.32.3%、1.30、0.95~1.80)についても、両群間に有意な差はみられなかった。 最も頻度が高い有害事象は、侵襲的人工呼吸器を要する呼吸不全(中止群9.6% vs.継続群7.7%)、昇圧薬を要するショック(8.4% vs.7.1%)、急性心筋梗塞(7.5% vs.4.6%)、心不全の新規発症または悪化(4.2% vs.4.9%)、血液透析を要する急性腎不全(3.3% vs.2.8%)であった。 著者は、「これらの知見は、軽度~中等度のCOVID-19入院患者では、ACEI/ARBの適応がある場合に、これらの薬剤をルーチンに中止するアプローチを支持しない」としている。

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1回接種のコロナワクチンの有効率66%/J&J

 米国ジョンソン・エンド・ジョンソンは、現地時間の1月29日に第III相ENSEMBLE臨床試験から得られたトップライン有効性・安全性データを発表し、同社の医薬部門であるヤンセンで開発中のCOVID-19単回投与ワクチン候補(以下「ワクチン候補」という)が、すべての主要評価項目および主な副次評価項目を満たしたと発表した。 第III相ENSEMBLE試験は、18歳以上の成人を対象に、1回接種ワクチンの安全性と有効性をプラセボと比較して評価するために設計された無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験。被験者の45%が女性、55%が男性であり、参加者の41%は、重症化するリスク増加に関連する併存疾患を有していた(肥満が28.5%、2型糖尿病が7.3%、高血圧が10.3%、HIVが2.8%)。 このトップラインにおける有効性および安全性のデータは、43,783例の被験者(468例のCOVID-19症候性症例を含む)で行われ、この試験では本ワクチン候補が中等症から重症のCOVID-19感染症を予防する有効性と安全性を評価するよう設計され、ワクチン1回接種後14日以降と28日以降の評価を2つの主要評価項目(コプライマリ・エンドポイント)として設定した。 新興ウイルス変異株への感染例を含むさまざまな地域の被験者で、本ワクチン候補による接種後28日以降の中等症から重症のCOVID-19感染症の予防効果は、全体で66%だった。また、その予防効果は、接種後14日という早い段階で確認された。中等症から重症のCOVID-19感染症の予防率は、ワクチン接種後28日以降では、米国で72%、ラテンアメリカで66%、南アフリカで57%だった。重症例を予防し、2~8℃で安定保存もできる このワクチン候補は、1回接種後28日以降の、全試験対象地域の全成人被験者(18歳以上)において、重症疾患への予防効果が85%だった。重症疾患に対する有効性は経時的に増加し、49日目以降は、ワクチン接種者において重症例は報告されなかったま。また、本ワクチン候補は、COVID-19感染症による入院および死亡に対して、ワクチン接種後28日以降に被験者の全員に予防効果を示した。医学的介入を要するCOVID-19の症例(入院、集中治療室(ICU)入室、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)使用)に対するワクチンの明らかな効果が認められ、1回接種後28日以降で、本ワクチン候補の接種を受けた被験者に、そのような症例は報告されなかった。 なお、本ワクチン候補は標準的なワクチン流通手段に対応し、承認された場合、ワクチン候補は-20℃で2年間安定保存可能と想定され、少なくとも3ヵ月間は2~8℃で安定保存することができる。 同社では「できる限り多くの人に簡便で効果的な解決策を生み出し、パンデミックの終息にむけて最大限に貢献したい」と目標を語っている。

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COVID-19の回復期血漿療法、高力価vs.低力価/NEJM

 人工呼吸器未装着の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、抗SARS-CoV-2 IgG抗体価が高い血漿の投与は低力価の血漿の投与と比較して、死亡リスクが低下することが明らかとなった。米国・メイヨー・クリニックのMichael J. Joyner氏らが、全米レジストリのCOVID-19回復期血漿拡大アクセスプログラムに参加した患者データを後ろ向きに解析し報告した。回復期血漿療法は、COVID-19から回復した患者の血漿に、SARS-CoV-2への治療用抗体が存在し、その血漿をレシピエントに投与可能であるという推定の下で、COVID-19の治療法として広く利用されている。しかし、高力価血漿が低力価血漿よりも死亡リスク低下と関連するかについては不明であった。NEJM誌オンライン版2021年1月13日号掲載の報告。全米レジストリ登録患者約3,000例を後ろ向きに解析 研究グループは、全米レジストリベースの後ろ向き研究で、回復期血漿の投与を受けたCOVID-19入院患者の抗SARS-CoV-2 IgG抗体価を測定し、抗体価と血漿投与後30日以内の死亡との関連を解析した。 解析には、2020年7月4日まで、またはプログラムの当初3ヵ月間に登録され、投与された血漿の抗SARS-CoV-2抗体価のデータと30日死亡に関するデータが利用可能であった3,082例(全米680の急性期施設から登録)が組み込まれた。 抗SARS-CoV-2 IgG抗体価は、シグナル/カットオフ値(S/CO)が<4.62を低力価、4.62~18.45を中力価、>18.45を高力価とした。高力価血漿群が低力価血漿群より30日死亡リスク34%低下 解析対象3,082例は、男性61%、黒人23%、ヒスパニック系37%、70歳未満が69%であり、3分の2が侵襲的人工呼吸器装着前に血漿投与を受けていた。登録施設当たりの患者数中央値は2例(IQR:1~6)。低力価群(561例)、中力価群(2,006例)、高力価群(515例)の3群間の、人口統計学的特性、COVID-19との関連リスク因子、COVID-19の治療薬の併用使用は概して似通っていた。 血漿投与後30日以内の死亡は、高力価群で515例中115例(22.3%)、中力価群で2,006例中549例(27.4%)、低力価群で561例中166例(29.6%)に発生した。 抗SARS-CoV-2抗体価とCOVID-19による死亡リスクとの関連は、人工呼吸器の装着の有無で異なっていた。低力価群に対する高力価群の30日死亡リスク低下は、血漿投与前に人工呼吸器を装着していなかった患者で確認され(相対リスク[RR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.48~0.91)、人工呼吸器を装着していた患者では死亡リスクへの影響は認められなかった(RR:1.02、95%CI:0.78~1.32)。

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第41回 難病患者とのコミュニケーションで重要な2つのこと

前回紹介した、難病患者支援などを行っているNPO法人Smile and Hope(千葉県八千代市)主催の「心のケアシンポジウム〜今こそ生きる意味を問う〜」では、医療・福祉現場のコミュニケーションの在り方もトピックの1つとなった。東京都立神経病院リハビリテーション科の作業療法士である本間 武蔵氏は、「難病コミュニケーション」をテーマに臨床経験から得られた視点を話した。本間氏は、ALSなど神経難病患者の日常生活支援を行うなかで、あらかじめ録音・保存した声をパソコンで再現するソフトウエア「マイボイス」や、意思伝達ソフトウエア「ハーティーラダー」などを活用し、気管切開で声を失った患者の意思伝達のサポートに取り組んでいる。難病コミュニケーションは手段と心本間氏はまず、神経難病のコミュニケーションについて「コミュニケーション手段」と「心のコミュニケーション」を2つの柱として挙げた。ALSは、症状が進行すると運動障害や構音障害、呼吸障害などが現れる。そのため、残存運動機能に合わせたコミュニケーションツールを選択する必要がある。たとえば、パソコンやタブレット、スマートフォンを使ったワンスイッチ操作による文字入力や、視線やまばたきによって透明文字盤を指し示すコミュニケーションなどだ。ただ、本間氏は「日常生活のコミュニケーションは、装置や用具に頼らない手段が重要。複雑な装置や特殊な用具がなくても、コミュニケーションはできる」と述べる。また、装置や用具を使うにしても、できるだけシンプルな仕組みで簡単に使えるものであることに加え、同時に複数の手段を使いこなすことが重要と指摘。究極のコミュニケーション手段として、相手が患者の口の形を読み取る「口文字盤」や、太田氏が開発した、瞳の動きだけで言葉を伝える「Wアイクロストーク」を挙げ、「人の読み取り能力は、高性能なセンサーよりも優れている」と述べた。心のコミュニケーションについては、「周囲が患者さんに声掛けしたり関心を寄せたりすることが重要」とし、具体的には「患者さんからの意思表示が読み取れなかったとしても、やりとりに関心や共感を添えることや、それまでの会話や関わりを基に、推測で理解することもコミュニケーションになる」と述べた。本間氏は、心のコミュニケーションにおける大切なポイントとして、「心をここに置く」「コンディションが良い状態で臨む」の2つを挙げる。前者は、置かれた状況で充分とはいえなくても相手に集中する意識感覚を持つことで、スケジュールのなかの一場面とは全く違った関わりになるという。後者については、患者が示す文字盤を読み取ることだけにとらわれない余裕が生まれ、イメージが湧くなど、自身でも心の会話ができていると感じられるという。コミュニケーション意欲減退は、人生への諦めに前回、ALSを発症した医師の太田 守武氏が、多くの困難を感じた中でも「最大の壁」と称したのが情動制止困難であった。普段は抑えることができる感情が抑えられなくなり、極端な表現により周囲との関係がうまくいかなくなることもあるのが特徴だ。しかしこれも症状の1つであり、本人も苦しんでいるという理解が大切だと本間氏は強調した。また、病初期から進行期において、本人は発した言葉が相手に通じていると思っているのに、実際には聞き取ってもらえていないという齟齬が生じたり、形が崩れた文字が読み取れず、理解してもらえなかったりすることで孤独感が次第に募る。こうなると、コミュニケーションへの意欲だけでなく、この先の人生まで諦めてしまう可能性があり、全経過の中で最大の危機である。一方で、視線透明文字盤や意思伝達装置などに落ち着いて取り組む患者の多くは、胃瘻や気管切開、人工呼吸器により身体や生活が楽になり、安定しているからこそ積極的なコミュニケーションが可能になっているという側面もあるという。ただ、心のコミュニケーションは病初期の段階から必要だと本間氏は指摘する。「コミュニケーション手段が成り立たなくなったから、心でコミュニケーションするというのは間違っている。患者さんは1人ひとり異なるので、パターン化せず、想像力を働かせて患者さんの意思を正しく読み取ることが大切」と指摘。「患者さんは、日常の些細な事をきっかけに『生きていける』と思ったり『死にたい』という気持ちになったりしている。それだけに、心のコミュニケーションは患者さんとの共同作業として向き合っていきたい」と締めくくった。難病患者や重度障がい者を巡っては、悲惨な事件が起きている一方、ALS患者の舩後 靖彦氏が国政史上初の参議院議員となるなど、世間の耳目を集めている。医療者として、一個人として、どのようなコミュニケーションができるだろうか。改めて考えてみたい。

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COVID-19、重症患者で皮膚粘膜疾患が顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の皮膚症状に関する報告が寄せられた。これまで皮膚粘膜疾患とCOVID-19の臨床経過との関連についての情報は限定的であったが、米国・Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのSergey Rekhtman氏らが、COVID-19入院成人患者296例における発疹症状と関連する臨床経過との関連を調べた結果、同患者で明らかな皮膚粘膜疾患のパターンが認められ、皮膚粘膜疾患があるとより重症の臨床経過をたどる可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月24日号掲載の報告。COVID-19入院成人患者296例のうち35例が少なくとも1つの疾患関連の発疹 研究グループは2020年5月11日~6月15日に、HMO組織Northwell Health傘下の2つの3次医療機能病院で前向きコホート研究を行い、COVID-19入院成人患者における、皮膚粘膜疾患の有病率を推算し、形態学的パターンを特徴付け、臨床経過との関連を描出した。ただし本検討では、皮膚生検は行われていない。 COVID-19入院成人患者の発疹症状と臨床経過との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・COVID-19入院成人患者296例のうち、35例(11.8%)が少なくとも1つの疾患関連の発疹を呈した。・形態学的パターンとして、潰瘍(13/35例、37.1%)、紫斑(9/35例、25.7%)、壊死(5/35例、14.3%)、非特異的紅斑(4/35例、11.4%)、麻疹様発疹(4/35例、11.4%)、紫斑様病変(4/35例、11.4%)、小水疱(1/35例、2.9%)などが認められた。・解剖学的部位特異性も認められ、潰瘍(13例)は顔・口唇または舌に、紫斑病変(9例)は四肢に、壊死(5例)は爪先に認められた。・皮膚粘膜症状を有する患者は有さない患者と比較して、人工呼吸器使用(61% vs.30%)、昇圧薬使用(77% vs.33%)、透析導入(31% vs.9%)、血栓症あり(17% vs.11%)、院内死亡(34% vs.12%)において、より割合が高かった。・皮膚粘膜疾患を有する患者は、人工呼吸器使用率が有意に高率であった(補正後有病率比[PR]:1.98、95%信頼区間[CI]:1.37~2.86、p<0.001)。・その他のアウトカムに関する差異は、共変量補正後は減弱し、統計的有意性は認められなかった。

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パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療【臨床留学通信 from NY】第16回

第16回:パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療ご存じの通り、こちら米国ニューヨークは2020年4月に最もひどいパンデミックの中心地となりました。痛い目に逢った教訓から、人々はマスクを着け、ソーシャルディスタンスを保とうと努めていました。欧米においては、もともと日常的にマスクを着ける文化はないため、マスクを着けていること自体に抵抗があるようなのですが、第2波への恐れもあり、ニューヨークの人々は米国の他の州よりもマスクをきちんと着けていた印象です。ところが、9月下旬より学校が再開され、レストランも外ではなく店内での食事が許可されました。さらに、11月下旬のサンクスギビングの週で人々の動きが活発となり、12月上~中旬に新型コロナ第2波が急にやって来ました。人々の行動変化に加え、われわれの以前のデータが示す通り、寒さも関係していると見られます1)。私は、レジデントとしてさまざまな部署をローテートしている最中ですが、12月中旬よりICUに配属され、最前線でコロナ治療に当たりました。16床がほぼ満床、そのうち半分弱がコロナ患者で占められています。残念ながら亡くなる人も多いのですが、空いたベッドには容赦なくすぐに次の患者が入ってくるという状況です。また、医療崩壊が起きていたと見られるクイーンズ地区やブルックリン地区など、マンハッタンの外側の地域からも挿管された患者さんの転院搬送が多く、何とか捌いているという印象です。4月は当初の5倍までベッド数を増やしたICUですが、いまは2~3倍というところに抑えてられています。しかしながら通常のICUではないため、看護師の配置等はどうしても少なめになってしまうのが実情です。治療法は依然、第1波のころからほとんど進歩はなく、抗凝固療法、ステロイドをベースに人工呼吸器管理をするというものです。また、どれほど意味があるのかは不明ですが、酸素化が悪い場合は腹臥位にして無気肺の改善を図ります。やはり、ひとたび人工呼吸器に乗ってしまうと死亡率は非常に高く、われわれの施設のデータから報告されたICUでの死亡率は55%でした2)。サンクスギビングが感染契機となった人もおり、未然に防ぐこともできただけに、とても残念です。サンクスギビングが長らく文化として根付き、家族で集う大事な時だといっても、生命のリスクを追うほどものとは考えられません。抗凝固療法に関しては、Mount Sinai groupから出された観察研究のデータで肯定的な結果3)であったため、わたしの勤務病院でも使用していましたが、すべての人に経験的に使うというのは否定的になりつつあり4)、Dダイマーの数値を基に、経験的に調整している程度です。ステロイドもメタ解析で効果が期待されています5)が、もはや人工呼吸器が必要なほど肺が損傷すると、目に見えて効果を感じることができず6)、われわれのデータが示している通り、長期化すると真菌感染が全面に出てきています。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32762336/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32720702/3)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32860872/4)https://www.hematology.org/covid-19/covid-19-and-pulmonary-embolism5)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32876694/6)https://www.jstage.jst.go.jp/article/yoken/advpub/0/advpub_JJID.2020.884/_articleColumn画像を拡大する最前線でレジデントは働いているわけですが、2020年12月14日より、米国ではワクチンの使用が許可され、医療従事者を優先に投与が始まりました。私もICU勤務であることから、他の人より若干早い12月17日にPfizer/BioNTech社のワクチンを受け、今年1月8日に2回目を接種しました。とくにアレルギー等の副反応はなく、筋注なので上腕の筋肉痛が2~3日ありましたが、それもインフルエンザワクチンと同程度でした。

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第40回 ALSの医師が問う重度障がい者の「生きる意味」

京都で2019年に起きた筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の嘱託殺人事件には医師が関与し、神奈川県相模原市で2016年に起きた障がい者施設殺傷事件では、元職員の被告が「(知的障がい者は)生きる意味がない」と述べ、社会に衝撃を与えた。難病患者や震災被災者への支援などを行っているNPO法人Smile and Hope(千葉県八千代市)はこのほど、「心のケアシンポジウム」を開き、重度障がいを抱えながら生きる意味について、改めて問い掛けた。同法人理事長の太田 守武氏は、訪問診療医として働いていたが、2011年にALSを発症。2014年に確定診断された。一時は死ぬことしか考えられなかったというが、周囲の人々に励まされ、同じように苦しむ人たちのために活動することを決意した。以後、無料健康相談や震災被災者支援、講演などの活動を展開。2017年からは、難病患者の心のケアを行うことを目的としたシンポジウムを開いている。第4回となる今回のテーマは、「今こそ生きる意味を問う」とした。医療関係者らの励ましで人工呼吸器に踏み切る国内におけるALS患者は約1万人で、人工呼吸器の装着率は2〜3割。延命できるとはいえ、声を失うことに加え、家族に迷惑を掛けるからという理由で装着しない患者もいるという。しかし太田氏は、パソコンで声を再現できるマイボイスを使い、「私は装着して良かった。人生を楽しんでいるから」と話す。そんな太田氏だが、生きる希望を持てたからと言って順風満帆だった訳ではなかった。死を考え続けた時期を“第1の壁”だとすれば、“第2の壁”は胃瘻造設時だったと振り返る。症状は足から始まり、ゆっくり進行したため油断があったという。マスク内部の人工呼吸器を使い、「まだ大丈夫」と思っていたが、呼吸機能が落ちた上、食事を摂るのも困難になり、体重が約10kgも落ちてしまった。胃瘻の手術自体は簡単と言われるが、呼吸機能が落ちる中での手術は「とても恐怖だった」という。結果的に手術は成功、胃瘻から栄養を摂れるようになり、体重も元に戻った。しかし、依然として呼吸機能は低下したまま。脈拍は1分間に130回以上が当たり前、時には160回を超えることもあり、太田氏は「遂に年貢の納め時が来た」と思ったという。この時期に“第3の壁”が立ちはだかった。呼吸苦はとても辛く、人工呼吸器を装着すれば楽になれることは、医師である自身が十分わかっていることであった。それでも「これ以上の苦しみを味わいたくない」とマイナス思考に陥り、手術を目前に翻意しかけたが、周囲の励ましで思い直し、手術を受けて人工呼吸器を装着。脈拍は1分間に70回程度にまで落ち着いた。「情動制止困難」が乗り越えるべき最大の壁に“第4の壁”は「とてつもなく大きかった」と太田氏。2018年、第2回心のケアシンポジウムの開催や東日本大震災の被災地支援の準備で忙しい日々が続く中、太田氏はNPOの仲間たちに強く当たるようになった。被災地支援の後に前述の手術を控え、声を失うことに対する恐怖心があった。感情のコントロールが利かない状態は術後も続き、怒りが募ればいつまでも収まらず、感動すれば涙が止まらない状態になった。この「情動制止困難」こそが、太田氏にとって乗り越えなければならない最大の壁だったという。さらに太田氏の場合、怒りで感情が高まると全身の痒みが生じ、症状がおさまるまで数時間掛かった。毎日この繰り返しで体力は奪われ、寝ているか痒みと格闘しているかだったという当時の日々を「まさに地獄だった」と振り返る。この状況を脱するために太田氏行ったのは、頭の中を空にして“無の境地”を目指す訓練だった。考える時は、家族や仲間との楽しい思い出を頭に浮かべ、怒りの感情を出さないように努めたという。患者になって“真の医師”に近付けた太田氏は「訪問診療医として何人ものALS患者を診療し、看取りもしてきたが、自分が発症してみて、何もわかっていなかったことに気付いた。いったんは死を望んだ自分が、再び生きる希望を持てたことで、真の医師に近付けた」と振り返る。そして、「4つの壁を乗り越えることができたのは、家族や仲間の支えがあったから。生きる意味は皆さんから教えていただいた。たとえ死を望んでいても人は変われる。ALSや重度障がいがあっても一緒に生きる意味を考えていくので、どうか相談してほしい」と訴えた。太田氏によると、医療福祉従事者であってもALS患者が在宅で暮らせることを知る人は多くない上、情動制止困難についてもほとんど知られていないのが実情だという。さらなる啓発と、行政の助成制度の充実を望みたい。

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