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重度母体合併症、その後の出産減少と関連/JAMA

 最初の出産で重度の母体合併症(SMM)を発症した女性はその後の出産の可能性が低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のEleni Tsamantioti氏らによるコホート研究の結果において示された。SMMを経験した女性は健康問題が長く続く可能性があり、SMMと将来の妊娠の可能性との関連性は不明であった。著者は、「SMMの既往歴がある女性には、適切な生殖カウンセリングと出産前ケアの強化が非常に重要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年11月25日号掲載の報告。スウェーデンの初産女性約105万人を対象に解析 研究グループは、スウェーデンの出生登録(Medical Birth Register)および患者登録(National Patient Register)のデータを用い、コホート研究を実施した。 対象は、1999年1月1日~2021年12月31日の間の初産女性104万6,974例で、初産時の妊娠22週から出産後42日以内のSMMを特定するとともに、出産後43日目から2回目の出産に至った妊娠の最終月経初日まで、または死亡、移住あるいは2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。 SMMは、次の14種類からなる複合イベントと定義した。(1)重症妊娠高血圧腎症、HELLP(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)症候群、子癇、(2)重症出血、(3)手術合併症、(4)子宮全摘、(5)敗血症、(6)肺塞栓症・産科的塞栓症、播種性血管内凝固症候群、ショック、(7)心合併症、(8)急性腎不全、透析、(9)重度の子宮破裂、(10)脳血管障害、(11)妊娠中・分娩時・産褥期の麻酔合併症、(12)重度の精神疾患、(13)人工呼吸、(14)その他(重症鎌状赤血球貧血症、急性および亜急性肝不全、急性呼吸促迫症候群、てんかん重積状態を含む)。 主要アウトカムは、2回目の出産(生児出産または在胎22週以降の胎児死亡と定義される死産)とし、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、初産時SMMと2回目出産率またはその期間との関連について解析した。初産時SMM発症女性は発症しなかった女性より2回目出産率が低い 解析対象104万6,974例中、初産時にSMMが認められた女性は3万6,790例(3.5%)であった。初産時SMMを発症した女性は発症しなかった女性と比較して、2回目出産率が低かった(1,000人年当たり136.6 vs.182.4)。 母体の特性を補正後も、初産時のSMMは調査期間中の2回目出産率の低下と関連しており(補正後ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.87~0.89)、とくに初産時の重度子宮破裂(0.48、0.27~0.85)、心合併症(0.49、0.41~0.58)、脳血管障害(0.60、0.50~0.73)、および重度精神疾患(0.48、0.44~0.53)で顕著であった。 同胞分析の結果、これらの関連性は家族性交絡の影響を受けていないことが示された。

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新たな筋萎縮性側索硬化症治療薬「ロゼバラミン筋注用25mg」【最新!DI情報】第28回

新たな筋萎縮性側索硬化症治療薬「ロゼバラミン筋注用25mg」今回は、筋萎縮性側索硬化症用剤「メコバラミン(商品名:ロゼバラミン筋注用25mg、製造販売元:エーザイ)」を紹介します。本剤は、治療薬が限られている筋萎縮性側索硬化症の新たな選択肢として、運動機能の低下抑制が期待されています。<効能・効果>筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得し、11月20日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回、週2回、筋肉内に注射します。本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師または医師の直接の監督の下で行います。在宅自己注射は、医師がその妥当性を慎重に検討し、患者またはその家族が適切に使用可能と判断した場合にのみ適用されます。<安全性>重大な副作用には、アナフィラキシー(頻度不明)があります。本剤の臨床試験ではアナフィラキシーの副作用報告はありませんでしたが、低用量メコバラミン製剤でアナフィラキシーが報告されています。その他の副作用は、白血球数増加、注射部位反応(いずれも1%以上)、発疹、頭痛(いずれも1%未満)、発熱感、発汗(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.筋委縮性側索硬化症(ALS)の進行によって生じる運動機能の低下を抑制する薬です。2.1日1回、週2回、筋肉内に注射します。3.注射は、医療関係者や医師の指導を受けた上で、患者本人またはご家族が行うことができます。4.在宅自己注射のために処方された薬剤の入ったバイアルは、処方された際に入っていた外箱や遮光した箱に入れた状態で保管してください。5.自己判断で使用を中止したり、量を加減したりせず、医師の指示に従ってください。<ここがポイント!>筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンが変性する進行性の難治性神経変性疾患です。症状は一般的に四肢の筋力低下から始まり、構音障害(発音困難)や嚥下障害が生じます。発症から2〜4年で呼吸筋麻痺による呼吸不全に進行し、人工呼吸器の装着で延命が可能ですが最終的には死に至ります。治療薬としては、ALSの機能障害の進行を抑制するリルゾールやエダラボンが使用されていますが、現在のところ確立された根治療法はありません。メコバラミンは、活性型ビタミンB12の一種であり、末梢神経障害やビタミンB12欠乏症による巨赤芽球性貧血の治療薬として使用されてきました。一方、以前より高用量のメコバラミンがALS患者に対し有効である可能性が示唆されていました。このため、エーザイはALS患者を対象に治験を実施し、2015年5月に新薬承認申請を行いましたが、追加試験が必要と判断されて2016年3月に申請を取り下げました。その後、医師主導治験として実施された高用量メコバラミンのALS患者に対する第III相試験において、高用量メコバラミンの有効性、安全性および忍容性が確認されたことから、再度承認申請が行われました。ALSに対するメコバラミンの作用機序の詳細は解明されていませんが、ホモシステイン誘発細胞死の抑制によるものと考えられています。孤発性または家族性ALS患者を対象とした医師主導の国内第III相試験(国内763試験)において、主要評価項目であるベースラインから治療期16週目までの日本語版改訂ALS Functional Rating Scale(ALSFRS-R)の合計点数の変化量は、プラセボ群が-4.6、本剤50mg群が-2.7でした。群間差(本剤50mg群-プラセボ群)は2.0(95%信頼区間:0.4~3.5、p=0.012)であり、本剤50mg群のプラセボに対する優越性が検証されました。

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第236回 麻酔薬を巡る2つのトピック(後編) プロポフォール使用の配信番組で麻酔科学会声明、芸人への検査は麻酔不要の「経鼻内視鏡」の不可解

石破首相の知見は要職を降りてから「アップデートされていない」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。自民党、衆院選で大敗しちゃいましたね。テレビに映る石破 茂首相の虚ろな目を見て、せっかくチャンスをもらったのに、総裁選前に自信満々で話していた自身の主張を次々反古にするなど、迷走するリーダーの姿を国民に見せてしまったことも大きな敗因ではないかと感じました。石破首相が誕生した直後、10月5日付の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」は「イシバノミクスはあるか」というタイトルで、今後の経済施策について予想するとともに、石破首相の欠点を鋭く突いていました。同記事は、石破首相が主導する経済政策「イシバノミクス」はないと断言、その理由を「党内非主流派に長く身を置」き、「首相の知見が要職を降りてから『アップデートされていない』ためだ、と霞が関の官僚はみている」と書いています。自ら得意と公言する安保政策(アジア版NATO構想など)ですら非現実的なのに、専門ではない経済・金融政策で新しい施策を打ち出せるわけがない、というわけです。実際、石破首相は、社会保障政策についても深く語ることはなく、やはり「アップデートされていない」感(言い換えれば勉強不足)を強く感じます。今回の総選挙で、紙の健康保険証存続を公約に挙げる立憲民主党が大躍進したことで、社会保障政策の最重要課題の一つである医療DX推進にも暗雲が垂れこめそうです。石破首相(あるいは新首相?)にはその点はぜひアップデートし、自らの頭の中身をDXしていただきたいと思います。配信されたバラエティ番組を麻酔科学会が強く非難さて今回も前回に引き続き、麻酔薬のトピックを取り上げます。日本麻酔科学会が「アナペイン注 7.5mg/mL」の製造所追加の承認取得をホームページで会員に伝えた同じ10月16日、同学会は別件で興味深い理事長声明を出しました。「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」1)と題されたその声明は、「10月14日配信開始の番組において、内視鏡クリニックを舞台にプロポフォールが使用され、何らかの外科的処置を必要としない人物を意図的に朦朧状態にするという内容が含まれていることを知り、深い憂慮を抱いております」と、配信されたバラエティ番組で芸能人に対して安易にプロポフォールが使われたことを強く非難しました。このトピックについては、ケアネットの「ニュース批評」、「現場から木曜日」でも倉原 優氏が「第119回 『エンタメ番組でプロポフォール静注』を観た感想」でプロポフォールの内視鏡時の使用の問題点について言及、「日本麻酔科学会が書いているように『麻酔薬をいたずらに使用する行為は、極めて不適切』の一言に尽きます」と書かれていますが、私も実際に配信番組を観て“あること”に気付いたので、若干の補足コメントをしてみたいと思います。「地上波では放送できない企画」をテーマに芸人らが過激な企画に出演まず、経緯を簡単におさらいしておきます。麻酔科学会が問題視したのは、Amazonプライム・ビデオで10月14日から配信が始まった「KILLAH KUTS(キラーカッツ)」という番組の中の1エピソード、「EPISODE2 麻酔ダイイングメッセージ」です。同番組は、「水曜日のダウンタウン」の演出担当として知られる藤井 健太郎氏が手掛け、「地上波では放送できない企画」をテーマに、芸人らが過激な企画に挑むのが売りだそうです。このエピソードでは、「死ぬ瞬間の薄れゆく意識を、麻酔を使えば再現できる」として、みなみかわ、お見送り芸人しんいち、ラランド、モグライダーといった人気芸人らが、被害者役と刑事役に分かれ、病院を訪れた被害者役が院内で事件に巻き込まれ、殺されてしまう、という設定のコントを演じます。被害者役が殺されると、その瞬間、医師が麻酔薬の投与を開始。意識が薄れるなか、被害者役はメモに犯人の情報を残し(いわゆるダイイングメッセージですね)、後から来た刑事役がそれを読んで推理するという設定です。番組を観てみると、被害者役の芸人たち(どちらかというとボケ役が担当)は麻酔薬の投与直後からメモを書き始めるのですが、ほとんどの芸人が犯人の情報を正確に記述することができず、ほどなくして眠りに落ちていました。「麻酔を行う」必然的な理由、エクスキューズを一応は用意制作側も、何らかの非難が起こること(あるいは炎上すること)を想定していたのでしょう。健常人に「麻酔を行う」必然的な理由、エクスキューズを一応は用意していました。番組冒頭でまず、「当番組における麻酔の投与は胃カメラ検査を目的とし、医師による監修のもと安全性に配慮した上で通常の検査で行われる方法と同様に実施しております」というテロップが流れます。さらに番組内では「今回使用するのは、人間ドッグなどで用いられ、注入開始からおよそ1分ほどで意識を失う麻酔。ちなみに、ダイイングメッセージのくだりを終えた後は、実際に胃カメラ検査を実施。あくまで今回のロケは、検査のついでにロケを行わせていただきました」というナレーションも入っています。さらに司会の伊集院 光には番組内で、「あくまで胃カメラ検査をするついでに、麻酔がかかるならこういうこともやってみよう(ということ)。麻酔を悪ふざけとか遊びに使うなんてありえない」とも言わせています。学会は「厳格なガイドラインに従って静脈麻酔薬を適切に管理し、いかなる場合にも不適切な使用を避けるよう強く要請」10月17日付「Smart FLASH」の報道によれば、このエピソードは当初は7日から配信予定でしたが、6日にはAmazonプライム・ビデオの公式Xにて「諸事情により配信日が延期となりました」と発表、ようやく14日に配信されたとのことです。しかし、冒頭で書いたように日本麻酔科学会は配信からわずか2日後の10月16日、理事長名で「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」と題する声明を出しました。麻酔科学会は、マイケル・ジャクソンの死亡事故も例に挙げながら、「プロポフォールをはじめとする静脈麻酔薬は、本来、手術や検査時の鎮静を目的に、医師の厳重な管理のもとで使用されるものです。特に、これらの薬剤は呼吸抑制のリスクを伴うため、必ず人工呼吸管理が可能な環境で使用される必要があります。(中略)適切な医療管理が行われない場合、生命に危険を及ぼす可能性があります。したがって、このような麻酔薬をいたずらに使用する行為は、極めて不適切であり、日本麻酔科学会として断じて容認できるものではありません」と強く非難、「麻酔科医ならびに関連する医療従事者には、厳格なガイドラインに従って静脈麻酔薬を適切に管理し、いかなる場合にも不適切な使用を避けるよう強く要請いたします」としています。内視鏡検査時のプロポフォール使用については安全性に疑問も配信番組では「麻酔薬」と言っているのみで「プロポフォール」という単語は出てこないので、番組内の麻酔薬がプロポフォールであると麻酔科学会がどう確定したかは不明です。ひょっとしたら、協力した埼玉市の医療機関(実名で出てきます)に問い合わせたのかもしれません。プロポフォールは、手術時の全身麻酔や術後管理時の鎮静効果が高いことなどメリットも多く、使いやすい麻酔薬との評価がある一方で、ベンゾジアゼピン系薬剤よりも舌が落ち込んだり、血圧が低下したりするような作用が強く、管理は比較的難しいとされています。また、ICUの小児への使用に関連して、2014年に東京女子医大で重大な事故も起こっています(「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」参照)。そうしたことも、麻酔科学会が配信番組をあえて非難した理由の一つかもしれません。実際、倉原氏が指摘しているように、内視鏡検査時のプロポフォール使用はなかなか難しい問題もあるようです。日本麻酔科学会の「内視鏡治療における鎮静に関するガイドライン」ではその使用が認められている一方で、「プロポフォールによる鎮静が内視鏡室で非麻酔科医によって安全に行えるかどうかは、日本の医療現場や教育体制、現行の医療制度では明言できない」と記載されているとのことです。倉原氏は、「欧米と比較して非麻酔科医によるプロポフォール使用の教育システムが整っていないという指摘があります」と書かれています。使われていた内視鏡は経鼻内視鏡、プロポフォールによる静脈麻酔は必要だったのか?もう1点、この配信番組を観て驚いたのは、使われていた内視鏡が経鼻内視鏡だった点です。最初の“被害者”であるモグライダーのともしげに麻酔がかけられた後、経鼻内視鏡が挿入される場面があります(ほかの“被害者”ではその場面はなし)。咽頭反射が起こらないため通常の内視鏡検査よりも格段にラクな検査です。多くの医療機関で麻酔薬なしか、リドカインによる鼻腔麻酔などで行われている経鼻内視鏡の検査を行うのであれば、そもそもプロポフォールによる静脈麻酔は必要がなかったはずです。番組で伊集院 光は「麻酔を悪ふざけとか遊びに使うなんてありえない」と語っていますが、内視鏡検査が「経鼻」であったことだけでも、「悪ふざけとか遊び」であったと言えるのではないでしょうか。プロポフォールを打たれた芸人たちは、厳重な安全管理の下で麻酔をされたとは言え、不要、あるいは過剰とも言える医療を施されたわけで、その意味では本当の“被害者”だったわけです。それにしても、一番の問題は、この番組がコントとして全然面白くなかったことです。テレビ局のコンプライアンスが厳しくなり、地上波のバラエティ番組では作りたいものが作れない、と芸人がボヤいたりしています。「KILLAH KUTS」も「地上波では放送できない企画」がテーマだそうです。しかし、「コンプライアンスを守らない=過激=面白い」とはなりません。番組視聴のためにわざわざ入会したAmazonプライムの会費を返して欲しいとすら思った一件でした。参考1)静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について/日本麻酔科学会

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人工呼吸器離脱のための最適なスクリーニング頻度と手法は?/JAMA

 侵襲的人工呼吸器を24時間以上装着した重症成人患者において、自発呼吸トライアル(SBT)のスクリーニングの頻度(1日1回vs.より頻回)および手法(pressure support[PS]SBT vs.TピースSBT)は、抜管成功までの期間に影響を及ぼさないことが示された。一方で、プロトコール化された頻回なスクリーニング+PS SBTは、初回の抜管成功までの期間を延長するという予期せぬ統計学的に有意な交互作用が確認されたという。カナダ・トロント大学のKaren E. A. Burns氏らCanadian Critical Care Trials Groupが無作為化試験の結果を報告した。人工呼吸器から離脱するためのSBTの最適なスクリーニング頻度と手法は、明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年10月9日号掲載の報告。スクリーニングの頻度と手法の違いによる抜管成功までの期間への影響を評価 研究グループは、SBTのスクリーニングの頻度(1日1回vs.より頻回)と手法(PS SBT[PS:>0~8cm H2O、PEEP:>0~5cm H2O]vs.TピースSBT)の抜管成功までの期間への影響を比較する2×2要因デザイン無作為化試験を行った。 被験者は、侵襲的人工呼吸器を24時間以上装着した、自発呼吸開始や人工呼吸器作動が可能な、吸入酸素濃度(FiO2)≦70%またはPEEP≦12cm H2Oの重症成人患者で、2018年1月~2022年2月に北米23ヵ所の集中治療室(ICU)で登録が行われた。最終追跡日は2022年10月18日。プロトコール化されたスクリーニング(1日1回vs.より頻回)を受け、持続的な30~120分のPS SBTまたはTピースSBTを受ける基準を満たした患者を早期に特定するため、被験者は早期に登録された。 主要アウトカムは、抜管成功(自発呼吸を開始し、抜管後48時間以上持続)とした。頻度や手法による統計学的な有意差は認められず 797例が無作為化された(1日1回のスクリーニング+PS SBT群198例、1日1回のスクリーニング+TピースSBT群204例、頻回なスクリーニング+PS SBT群195例、頻回なスクリーニング+TピースSBT群200例)。平均年齢は62.4(SD 18.4)歳、男性472例(59.2%)だった。 スクリーニングの頻度(ハザード比[HR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.76~1.03]、p=0.12)あるいはSBT手法(1.06[0.91~1.23]、p=0.45)によって、抜管成功に統計学的な有意差は認められなかった。 抜管成功までの期間中央値は、1日1回のスクリーニング+PS SBT群2.0日(95%CI:1.7~2.7)、1日1回のスクリーニング+TピースSBT群3.1日(2.7~4.8)、頻回なスクリーニング+PS SBT群3.9日(2.9~4.7)、頻回なスクリーニング+TピースSBT群2.9日(2.0~3.1)であった。 スクリーニング頻度とSBT法の間には予期せぬ交互作用が認められ、ペアワイズ比較によって、頻回なスクリーニング(vs. 1日1回のスクリーニング)+PS SBTは抜管成功までの期間を延長することが明らかになった(HR:0.70[95%CI:0.50~0.96]、p=0.02)。しかし、1日1回のスクリーニング+PS SBT(vs.TピースSBT)は、抜管成功までの期間を短縮しなかった(1.30[0.98~1.70]、p=0.08)。

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第213回 医療機関に迫る変化と課題、コロナ後の医療構造再編

経営悪化の先にあるもの2024年も残り3ヵ月となり、今春(令和6年度)の診療報酬改定の影響がみえてきました。多くの入院医療機関では、病床稼働率の低下に苦慮しているところが増えているのではないでしょうか?当院でも、近隣の病院でも同様の悩みがあり、コロナ前には一時的な病床稼働率の低下が、冬場に回復する傾向がみられましたが、現在は深刻な影響が続いています。従来の「医師不足」や「看護師不足」による医療崩壊とは異なるものが、新しい形で医療機関に迫っているようです。患者不足の原因まず、医療機関側に原因があると考えられます。今春の診療報酬改定により、急性期一般病床1(旧7:1病床)の平均在院日数が18日以内から16日以内に短縮されました。さらに、医療・看護必要度の見直しも影響しています。急性期病床における「重症度、医療・看護必要度」の評価が変更され、B項目が算定から外れたことや、A項目の「救急搬送後の入院」が、従来の5日から2日に短縮されたことで、急性期病床が絞り込まれました。これにより、軽症患者の早期退院や転院が求められ、結果として入院患者数が減少しています。患者側の原因としては、受療動向の変化が挙げられます。軽度の発熱や呼吸困難で来院した高齢患者は、以前であれば「精査目的」で入院することが一般的でした。しかし、コロナ禍を経て、多くの高齢者は「病院は快適な場所ではなく、長く滞在したい場所ではない」と感じるようになりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、面会制限や認知症の進行、ADLの低下を経験したことから、病院での不必要な入院を避ける傾向が強まっています。その結果、軽症の肺炎や心不全であっても、入院を希望せず、外来通院での治療を選ぶ患者が増加しています。また、訪問診療の急速な普及も要因の1つです。現在、わが国で訪問診療を受けている患者さんは100万人を超えています(在宅患者が100万人を突破、診療報酬も月1,000億円に[日経メディカル])。とくに重症の末期がん患者などが、在宅での療養を選ぶケースが増えています。地域によっては、人工呼吸器管理が必要な患者でも、訪問診療やサービス付き高齢者住宅では看取り対応が可能となっています。これまで、末期がん患者は症状が悪化すれば入院していましたが、現在は訪問診療や介護サービスを活用して在宅療養を続けるケースが多くなり、入院患者はより治療に特化した重症患者に限られている傾向があります。訪問診療や訪問看護の認知度向上により、急性期医療機関の役割が変わり、外来受診や訪問診療で療養を続ける患者が増加しています。このため、急性期医療機関への入院は難度の高い手術や高額な治療材料を用いたケースに限られるようになり、ADLの低下や嚥下困難など治癒が難しい症例は積極的に院外に移す傾向が強まっています。コロナ禍によって定期受診の間隔が広がったこと、後期高齢者の増加に伴い、大病院への通院や入院患者数の減少傾向が顕著です。2025年の地域医療構想に向けて政府は病床削減に取り組んでいたのが(病床数を最大20万削減 25年政府目標、30万人を自宅に[日経新聞])功を奏したとも言えますが、医療の構造変化のスピードがCOVID-19で早まったため、2025年までに実現を目指していた「地域医療構想」の必要病床数以上に医療ニーズが減少してしまい、大部分の医療機関で患者不足に見舞われたというのが真実の姿ではないでしょうか。今後の展望政府は、後期高齢者の増加と労働人口の減少に向けて、2040年を見据えた「新たな地域医療構想等に関する検討会」を立ち上げ、対策を検討しています。とくに75歳以上の高齢者に対する医療・介護の提供体制が今後の課題です。85歳以上の高齢者に対しては、積極的な手術や高度な医療を控える傾向がみられます。心臓手術の件数も減少し、代わりに低侵襲手術が増加しています。今後も内視鏡やロボット手術などの技術革新により、外来手術が増加し、入院期間が短縮されるものと予想されます。全国に整備されたICUやHCU病床も、コロナ禍以降の稼働率低下が問題となっていますが、今後は外来手術センターの設立や回復期への早期転院によって、必要な病床数がさらに減少し、病床再編が求められるでしょう。中小規模の病院では、従来の急性期医療にこだわらず、地域包括医療病棟などへの転換が進むと考えられます。また、政府が進める医療と介護の連携強化が重要となり、病院間の情報共有をデジタル化することで業務効率化が求められます。一般の開業医にとっても、今後、高齢者の歩行能力が低下してしまうと在宅での生活や通院が困難となり、さらに人口の高齢化が進んでいる場合、外来患者数の減少が進むため、新しい患者の獲得のためには、訪問診療の提供や施設などとの連携が必要になると思われます。参考1)在宅患者が100万人を突破、診療報酬も月1,000億円に(日経メディカル)2)自宅でのみとり急増 緊急事態宣言境に、終末期医療も 受診控え、面会制限影響か・慈恵医大など(時事通信)3)増える「老衰」「在宅みとり」人生の最期どう迎えるか(NHK)4)病床数を最大20万削減 25年政府目標、30万人を自宅に(日経新聞)5)新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)

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GNEミオパチー〔GNE myopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義GNEミオパチーは、常染色体潜性遺伝形式をとる進行性の筋疾患である。主に遠位筋から障害されるため、遠位型ミオパチーに分類される。筋病理所見では、縁取り空胞(図1)が特徴的に認められる。図1 GNEミオパチー患者でみられる縁取り空胞を伴う筋線維(mGT染色)画像を拡大する1981年にわが国で「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacuoles:DMRV)」として最初に報告された。同じ頃、欧米では「遺伝性封入体ミオパチー(hereditary inclusion body myopathy:hIBM)」として報告された。2001年にはGNE遺伝子の変異が原因であることを特定され、「GNEミオパチー」という名称に統一された。■ 疫学わが国には約400人の患者がいると推定されるまれな疾患である。本症は世界的にも珍しいが、日本人、中東のペルシャ系ユダヤ人、インド人、中国人、北アイルランド人、ブルガリアのロマ人など、特定の民族や地域で高頻度の遺伝子変異(創始者バリアント)がみつかっており、これらの集団で患者が多くみられる。■ 病因GNE遺伝子の変異(アロステリック部位以外)が原因であり、9割以上がミスセンス変異である。GNE遺伝子は、シアル酸生合成経路の律速酵素であるウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ(GNE/MNK)をコードしている。GNE遺伝子変異によりこれらの酵素活性が低下し、シアル酸の産生が減少する。これにより、組織中の糖タンパク質や糖脂質の低シアル化を引き起こされ、筋力が低下すると考えられる(図2)。図2 GNE遺伝子変異によるシアル酸生合成の低下画像を拡大する■ 症状平均発症年齢は28歳で、多くの患者は20~30歳代で発症する。ただし、一部若年発症例や高齢発症例も存在し、国内の患者登録データによれば、発症年齢は12~62歳にわたる。初期症状としては、歩き方の変化やつまずき易さ、スリッパが履けないなどの症状が多くみられる。中殿筋や内転筋の筋力低下による腰椎前彎や股関節外転、前脛骨筋の筋力低下による下垂足が特徴的な歩容として現れる。病気の進行に伴い、下腿全体、手指、頸部前屈の筋力が低下し、その後上肢全体や体幹の筋力も低下する。大腿四頭筋の筋力は長期間よく保たれ、歩行不能となってからも膝を伸なす力が保たれることが特徴的である。疾患の進行速度は患者によってさまざまであるが、全体としては、発症年齢が若いほど進行が速い傾向がある。たとえば、10歳代で発症した患者の歩行喪失までの平均期間は9年、20歳代では15年、30歳代では27年と報告されている。わが国の患者の9割は、p.D207Vとp.V603Lという2つの創始者変異のいずれかまたは両方を有している。p.D207V保有例は比較的軽症であり、p.V603L保有例はやや重症の臨床経過をたどる傾向がある。たとえば、p.V603Lのホモ接合体では平均10年で歩行能力を失うのに対し、p.D207V/p.V603L複合ヘテロ接合体では発症から20年経過しても90%以上が歩行可能であると推定されている。p.D207Vホモ接合例はこれまで数例しかみつかっておらず、大半が無症状のまま生涯を終えるのではないかと推定されている。また、歩行喪失してから呼吸機能が低下する例がみられるため、呼吸機能の定期的な評価が重要である。とくにp.V603Lホモ接合体の患者では呼吸機能障害のリスクが高く、一方でp.D207V/p.V603L複合ヘテロ接合体ではほとんどみられない。近年の研究では、GNEミオパチー患者において血小板減少症や睡眠時無呼吸症候群の合併が一般集団より高頻度で報告されている。血小板減少症の機序として、血小板膜はシアル酸に富んでいるが、患者の血小板は脱シアリル化した糖鎖を発現しており、肝臓で除去されるためと考えられている。睡眠時無呼吸症候群については、その病態メカニズムはまだ解明されていない。妊娠・出産に関しては、GNEミオパチー患者でもおおむね良好な経過をたどることが報告されている。しかし、切迫流産のリスクがやや高く、約2割の患者が出産後に筋力低下の進行を自覚している。また、出産後1年以内に発症した例も報告されており、出産が病気の進行に影響を与える可能性も示唆されている。ただし、育児による身体的負担の増加が症状の自覚を促した可能性もあり、さらなる研究が必要である。■ 予後呼吸機能障害も比較的軽症で、重症例でも夜間の非侵襲的人工呼吸のみで維持できる例がほとんどであり、その他、明らかな心機能障害や嚥下障害の合併はみられず、生命予後は良好と考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)GNE遺伝子にホモ接合型または複合ヘテロ接合型変異があり、臨床的特徴が一致する場合、もしくは筋生検所見で縁取り空胞を伴う筋線維を認めた場合、診断が確定する。遺伝子診断がついていない例に関しては、通常の遺伝学的診断では検出できない変異を有する可能性があることから、臨床的特徴および筋生検所見の両方が本症と一致した場合はGNEミオパチー疑い例とする。■ 各種検査所見(1)血液検査クレアチンキナーゼ(CK)上昇が症状の自覚がない時点から観察され、2,500IU/L以下の軽度高値を示すことが多い。筋肉の萎縮に伴い低下し、歩行喪失後はむしろ低値となる。(2)針筋電図筋原性変化を示す。ただし、随意収縮では一見神経原性を思わせる高振幅の運動単位がみられることがある。(3)骨格筋画像中殿筋・大腿屈筋群の脂肪置換が著明な一方、大腿四頭筋が保たれる。体幹では肩甲下筋が早期から脂肪置換される。(4)筋生検縁取り空胞を伴う大小不同の萎縮筋線維が特徴的である(図1)。筋線維内のβアミロイド沈着、ユビキチン陽性封入体、p62陽性凝集体、リン酸化タウなどの所見も認めるが、通常強い炎症反応は伴わない。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ シアル酸補充療法(シアル酸徐放錠承認、ManNAc/シアリル乳糖海外治験実施中)モデルマウスへの実験で、シアル酸の経口投与が発症前から行われると発症が予防され、発症後からの投与でも筋症状が改善することが明らかになった。この結果を受け、シアル酸補充療法の臨床試験が各国で実施された。まず、シアル酸は速やかに尿中に排泄されるため、その効果を持続させるために徐放錠が開発された。シアル酸徐放錠の第III相国際共同治験では有意な差が得られず、海外では開発が中止されたが、同様の臨床試験デザインで実施された国内第II/III相試験では上肢筋力の維持が確認された。その結果、2024年3月、アセノイラミン酸(商品名:アセノベル徐放錠500mg)がわが国で承認され、GNEミオパチーに対する世界初の承認薬となった。また、海外ではシアル酸代謝産物のManNAcやシアリル乳糖の臨床試験が行われており、筋力低下や筋の脂肪置換に対する一定の効果が認められ、今後の臨床応用が期待されている。■ 抗酸化剤(モデルマウスで効果実証)モデルマウスへの実験で、低シアリル化により活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)の産生が増加すること、シアリル化が改善することでROSやプロテインS-ニトロシル化が減少すること、さらには抗酸化剤であるN-アセチルシステインをモデルマウスに経口投与することで筋萎縮が改善することが報告され、酸化ストレスの軽減が治療ターゲットとなりうることが明らかになった。■ 遺伝子治療(研究中)本症は、1種類の遺伝子の変異により発症する単一遺伝子疾患であり、遺伝子治療による治癒が期待されている。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター8型を用いたモデルマウスへの治療では、シアル酸の増加が確認されており、その有効性が期待されている。しかし、本症の患者の約半数がAAV中和抗体を持っているとの報告があり、その場合、AAVベクターの治療効果が得られない可能性が懸念されている。さらに、本症の標的臓器が全身の骨格筋という広範囲にわたるため、遺伝子治療においては染色体への遺伝子挿入のリスクや増殖性ウイルスの出現の可能性を最大限に減らす工夫が必要である。このため、低用量で骨格筋特異的なベクターの開発が試みられている。4 今後の展望GNEミオパチーの治療において、重要な進展があった。先述のシアル酸徐放錠であるアセノイラミン酸が世界初の治療薬として承認され、これにより早期診断・治療介入の重要性が高まっている。しかし、この治療薬の効果は十分とは言えず、より効果的な治療法の開発が進められている。具体的には、より効果的なシアル酸補充療法の研究に加え、抗酸化薬や遺伝子治療などのシアル酸補充療法以外のアプローチも試みられている。これらの新しい治療法の開発により、GNEミオパチー患者のためのさらなる治療法選択肢が増えることが期待されている。また、GNEミオパチーの患者レポジトリを用いた実態調査研究により、本症の理解が深まってきた。今後は、長期的な経過の解明や合併症の病態メカニズムの解明が期待されている。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 遠位型ミオパチー(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本神経学会 GNEミオパチー 診療の手引き(医療従事者向けのまとまった情報)国内レジストリ 神経筋疾患患者登録Remudy(GNEミオパチー)(医療従事者向けのまとまった情報。国内患者登録サイトおよび最新情報のニュースレター)患者会情報遠位型ミオパチー患者会(患者とその家族及び支援者の会)遠位型ミオパチーガイドブック(2018年8月刊行)(患者会が作成したガイドブック)1)難治性疾患等政策研究事業 希少難治性筋疾患に関する調査研究班編集. GNEミオパチー診療の手引き.2)Yoshioka W, et al. J Neurol. 2024;271:4453-4461.3)Yoshioka W, et al. Curr Opin Neurol. 2022;35:629-636.4)Suzuki N, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2024:jnnp-2024-333853.5)Yoshioka W, et al. Sci Rep. 2022;12:21806.公開履歴初回2024年10月10日

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釣った魚を食べて救急搬送、何の中毒?【これって「食」中毒?】第5回

今回の症例年齢・性別47歳・男性患者情報特記すべき既往歴や生活歴はない。東京湾内で遊漁船に乗ってカワハギ釣りをしていたところ、たまたま皮に針掛かりして釣れた魚(写真1)を持ち帰った。カワハギと一緒に肉と肝(写真2)を取り出し、薄造りや肝和えなどにして19時頃に食べた。20時頃より口唇および舌のしびれ感が生じた。次第にしびれ感が全身に広がり、身体に力が入らず起き上がることも困難となった。さらに、呼吸困難も出現したところを21時半頃に帰宅した妻が発見して救急要請した。21時45分に救急隊が現場到着した際の呼吸は微弱で、著しいチアノーゼを認めたため、バッグバルブマスクにより換気(酸素6L/分)され、22時10分に救急センターに搬送された。画像を拡大する初診時は呼吸停止、バッグバルブマスク換気下でSpO2 99%、血圧162/92mmHg、心拍数124bpm(整)、瞳孔:左右6.0mm(同大)、対光反射(-)、体温36.4℃であった。呼名および疼痛にまったく反応せず、全身の筋肉は弛緩し、腱反射は消失していた。また、眼球は固定していた。直ちに気管挿管および人工呼吸器管理が施行された。検査値・画像所見頭部CTおよび血液検査では、軽度の乳酸アシドーシス以外の異常所見を認めなかった。問題

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高用量タンパク質投与、人工呼吸器装着患者には無益/Lancet

 人工呼吸器を要する重症患者への高用量タンパク質投与は標準量タンパク質投与と比較して、健康関連QOLを悪化させ、集中治療室(ICU)入室後180日間の機能的アウトカムを改善しなかった。オランダ・マーストリヒト大学のJulia L. M. Bels氏らPRECISe study teamが、同国とベルギーで実施した「PRECISe試験」の結果を報告した。先行研究で、重症患者へのタンパク質投与量の増加が、筋萎縮を緩和し長期的アウトカムを改善する可能性が示されていた。Lancet誌オンライン版2024年8月17日号掲載の報告。高用量(2.0g/kg/日)vs.標準量(同1.3g/kg/日)の無作為化試験 PRECISe試験は、オランダの5病院とベルギーの5病院で行われた研究者主導の多施設共同並行群間二重盲検無作為化比較試験である。機械的人工呼吸器を装着した重症患者への経腸栄養によるタンパク質投与について、高用量(すわなち1日当たり2.0g/kg)が標準量(同1.3g/kg)と比較して、健康関連QOLと機能的アウトカムを改善するかどうかを評価した。試験組み入れ基準は、ICU入室後24時間以内に侵襲的人工呼吸器による管理を開始し、同装着期間が3日以上と予想されることとした。除外基準は、経腸栄養禁忌、瀕死状態、BMI値18未満、透析不要コードの腎不全、または肝性脳症であった。 患者は双方向ウェブ応答システムを介して、2つの試験群に対応した4つの無作為化ラベルの1つ(すなわち各群2つの無作為化ラベルを有する標準または高タンパク質群)に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。無作為化には置換ブロック法が用いられ、ブロックサイズは8および12で試験施設ごとに層別化した。参加者、ケア提供者、研究者、アウトカム評価者、データ分析者、独立データ安全性監視委員会はすべて割り付けについて盲検化された。 患者は、1.3kcal/mLおよび0.06g/mLのタンパク質(標準タンパク質)または1.3kcal/mLおよび0.10g/mLのタンパク質(高タンパク質)を含む経腸栄養剤を投与された。本試験の栄養介入は、患者のICU入室中で経腸栄養が必要とされた期間(最長90日)に限定された。 主要アウトカムは、無作為化後30日、90日、180日時点でのEuroQoL 5-Dimension 5-level(EQ-5D-5L)健康効用値(health utility score)で、ベースラインのEQ-5D-5L健康効用値で補正し評価した。180日間の試験期間中、高タンパク質でEQ-5D-5L健康効用値が低い 2020年11月19日~2023年4月14日に935例が無作為化された。うち335例(35.8%)が女性、600例(64.2%)が男性で、465例(49.7%)が標準タンパク質群に、470例(50.3%)が高タンパク質群に割り付けられた。 標準タンパク質群の430/465例(92.5%)と、高タンパク質群の419/470例(89.1%)が、主要アウトカムの評価を受けた。 主要アウトカムである無作為化後180日間のEQ-5D-5L健康効用値(30日、90日、180日時点で評価)は、高タンパク質群の患者が標準タンパク質群の患者より低く、平均群間差は-0.05(95%信頼区間[CI]:-0.10~-0.01、p=0.031)であった。 安全性アウトカムに関して、全フォローアップ期間中の死亡確率は標準タンパク質群0.38(SE 0.02)、高タンパク質群0.42(SE 0.02)であった(ハザード比:1.14、95%CI:0.92~1.40、p=0.22)。 高タンパク質群の患者では、消化管不耐性症状の発生頻度が高かった(オッズ比:1.76、95%CI:1.06~2.92、p=0.030)。その他の有害事象の発現頻度は群間で差がなかった。

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第228回 ウイルス感染の運命の鍵を握る脂肪酸生成酵素を同定

ウイルス感染の運命の鍵を握る脂肪酸生成酵素を同定2013年に中国で初めて確認された鳥インフルエンザのヒト感染で、およそ35%が命を落としています。その感染で死ぬ人とそうでない人の運命の差はどのようにして生じるのか?オーストラリアのPeter Doherty Institute for Infection and Immunityと世界各地の16の研究所のチームの取り組みで、OLAHという名の意外な酵素遺伝子がその運命の分かれ道の鍵を握ると示唆されました1-3)。OLAHはオレイン酸などの脂肪酸生成に携わるオレオイル-アシル-キャリアタンパク質加水分解酵素の遺伝子です。何らかの病気の免疫や経過に寄与するOLAHの役割を調べた研究はかつてありませんでした。そんな意外な遺伝子にたどり着いた今回の研究の手始めに、チームは鳥インフルエンザA(H7N9)感染で死んだ4例の血液を解析しました。先立つ成果から予想されたとおり、サイトカイン過剰がもたらす炎症の高まりが認められました。遺伝子発現を調べたところOLAHを含む10種の発現が上がるか下がっていました。OLAHの発現は感染の初期から死に至るまでずっと高く、感染するも死なずに済んだ4例に比べて約82倍も上回っていました。OLAHの発現上昇は鳥インフルエンザA(H7N9)感染に限らず他のウイルス感染でも生じるようです。入院して人工呼吸に至った季節性インフルエンザ患者3例のOLAH mRNAは健康な人をだいぶ上回りました。米国のいくつかの小児病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者群の最重症例でもOLAHの発現が高まっていました。テネシー州の同じく小児病院の23例の血液を解析したところ、より重症の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染とOLAHが多いことが関連しました。続くマウスの検討でOLAHが感染の重症化を促すことが示されました。検討の結果、OLAH遺伝子を省いたマウスは致死量のインフルエンザウイルスを被っても生き残れましたが、対照群の野生型マウスはそうはいかず約半数が死にました。OLAH欠損マウスのインフルエンザ感染の病状が軽いことは、免疫細胞の1つであるマクロファージでの脂肪滴形成の抑制のおかげのようです。今回の研究によるとマクロファージでのOLAH発現はウイルス感染に伴う脂肪滴形成を促し、果てはサイトカイン生成を増やします。一方、脂肪滴形成を阻害するとマクロファージでのウイルス感染が減りました。さらに突き詰めると、OLAHの酵素反応の主産物であるオレイン酸がマクロファージでのウイルス複製を促します。マウスにオレイン酸を与えたところマクロファージでのインフルエンザウイルス複製が増え、炎症反応が促進しました。また、COVID-19患者73例を調べたところ、入院した35例のオレイン酸は外来治療で済んだ患者38例に比べて過剰でした。いまや研究者はオレイン酸過剰の呼吸器感染症患者の治療に使いうるOLAH阻害化合物作りに取り組んでいます4)。また、OLAHの量を測定し、最終的には重症度を予測しうる診断検査も開発したいと考えています。参考1)Jia X, et al. Cell. 2024 Aug 6. [Epub ahead of print] 2)Scientists discover gene linked to the severity of respiratory viral infections / Peter Doherty Institute for Infection and Immunity3)Study reveals oleoyl-ACP-hydrolase underpins lethal respiratory viral disease / St. Jude Children’s Research Hospital4)An unexpected gene may help determine whether you survive flu or COVID-19 / Science

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ニルセビマブ、乳児のRSV感染症入院リスクを83%減少/NEJM

 実臨床において、長時間作用型の抗RSVヒトモノクローナル抗体であるニルセビマブは、RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)関連細気管支炎による入院リスクの低下に有効であることが示された。フランス・Paris Cite UniversityのZein Assad氏らが、生後12ヵ月未満の乳児を対象とした多施設共同前向きマッチング症例対照研究「Effectiveness of Nirsevimab against RSV-Associated Bronchiolitis Requiring Hospitalization in Children:ENVIE研究」の結果を報告した。RSVは細気管支炎の主な原因であり、世界中で毎年300万例が入院している。ニルセビマブ承認後の、実臨床におけるRSV関連細気管支炎に対する有効性については不明であった。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。前向きマッチング症例対照研究でニルセビマブの有効性を検証 フランスでは2023~24年のRSウイルス感染症シーズンに向けて、2023年2月6日以降に同国で生まれたすべての小児にニルセビマブ単回投与を無料で行うことが推奨され、このニルセビマブプログラムは2023年9月15日にフランス都市圏で開始された。 研究グループは、2023年10月15日~12月10日に、PCR法でRSVが検出されたRSV関連細気管支炎のために入院した乳児を症例群、RSV感染とは関係のない症状で同じ病院を受診した乳児を対照群として、年齢、病院受診日、試験施設を2対1の割合でマッチさせ、交絡因子を調整した多変量条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、ニルセビマブのRSV関連細気管支炎による入院に対する有効性を算出した。いくつかの感度解析も実施した。 解析対象は1,035例で、症例群690例(年齢中央値:3.1ヵ月[四分位範囲[IQR]:1.8~5.3)、対照群345例(3.4ヵ月[1.6~5.6])であった。このうち、症例群60例(8.7%)、対照群97例(28.1%)にニルセビマブ投与歴があった。入院リスクを83.0%減少、重症化リスクを67.2~69.6%減少 RSV関連細気管支炎による入院に対するニルセビマブの調整推定有効率は83.0%(95%信頼区間[CI]:73.4~89.2)であった。すべての感度解析で、主要解析と同様の結果が得られた。 小児集中治療室(NICU)入室を要するRSV関連細気管支炎に対するニルセビマブの有効率は69.6%(95%CI:42.9~83.8)(症例群14.0%[27/193例]vs.対照群32.2%[47/146例])、人工呼吸器を必要とするRSV関連細気管支炎に対する有効率は67.2%(95%CI:38.6~82.5)(症例群14.3%[27/189例]vs.対照群30.5%[46/151例])であった。 著者は本研究の限界として、観察症例対照試験であるため因果関係についての結論を導き出すことはできないこと、対照群ではRSVのPCR検査が実施されていないこと、さらに対照群は小児救急外来を受診した患者であったが症例群は入院患者であったこと、ニルセビマブの有効性が国内プログラム開始後の非常に早い段階で評価されたことなどを挙げている。

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肺炎診療GL改訂~NHCAPとHAPを再び分け、ウイルス性肺炎を追加/日本呼吸器学会

 2024年4月に『成人肺炎診療ガイドライン2024』1)が発刊された。2017年版では、肺炎のカテゴリー分類を「市中肺炎(CAP)」と「院内肺炎(HAP)/医療介護関連肺炎(NHCAP)」の2つに分類したが、今回の改訂では、再び「CAP」「NHCAP」「HAP」の3つに分類された。その背景としては、NHCAPとHAPは耐性菌のリスク因子が異なるため、NHCAPとHAPを1群にすると同じエンピリック治療が推奨され、NHCAPに不要な広域抗菌治療が行われやすくなることが挙げられた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を経て、ウイルス性肺炎の項目が設定された。第64回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドライン関するセッションが開催され、進藤 有一郎氏(名古屋大学医学部附属病院 呼吸器内科)がNHCAPとHAPの診断・治療のポイントや薬剤耐性(AMR)対策の取り組みについて解説した。また、ウイルス性肺炎に関して宮下 修行氏(関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科)が解説した。NHCAPとHAPは耐性菌のリスク因子が異なる NHCAPとHAPは「敗血症性ショックの有無の判断」「重症度の判断(NHCAPはA-DROPスコア、HAPはI-ROADスコアで評価)」「耐性菌リスクの判断」を行い、治療薬を決定していくという点は共通している。しかし、耐性菌のリスク因子は異なる。進藤氏は、「この違いをしっかりと認識してほしい」と語った。なお、それぞれの耐性菌リスク因子は以下のとおり。NHCAP:経腸栄養、免疫抑制状態、過去90日以内の抗菌薬使用歴、過去90日以内の入院歴、過去1年以内の耐性菌検出歴、低アルブミン血症、挿管による人工呼吸管理を要する(≒診断時に重度の呼吸不全がある)HAP:活動性の低下や歩行不能、慢性腎臓病(透析を含む)、過去90日以内の抗菌薬使用歴、ICUでの発症、敗血症/敗血症性ショック HAPでは、「重症度が低く、耐性菌リスクが低い(リスク因子が1つ以下)場合」は狭域抗菌治療、「重症度が高い、または耐性菌リスクが高い(リスク因子が2つ以上)場合」には広域抗菌治療を行う。NHCAPでは、外来の場合はCAPに準じた外来治療を行う。また、入院の場合も非重症で耐性菌リスク因子が2つ以下であれば、CAPと類似した狭域抗菌治療を行い、重症で耐性菌リスク因子が1つ以上あるか非重症で耐性菌リスク因子が3つ以上であれば広域抗菌治療を行うという流れとなった(詳細は本ガイドラインp.54図3、p.64図3を参照されたい)。不要な広域抗菌薬の使用は依然として多い 進藤氏は、名古屋大学などの14施設で実施した肺炎患者を対象とした前向き観察研究(J-CAPTAIN study)の結果を紹介した。本研究では、CAP患者をNon-COVID-19肺炎とCOVID-19肺炎に分けて検討した。その結果、Non-COVID-19肺炎患者(1,802例)の10%にCAP抗菌薬耐性菌(β-ラクタム系薬、マクロライド系薬、フルオロキノロン系薬のすべてに低感受性と定義)が検出された。CAP抗菌薬耐性菌のリスク因子としては、過去1年以内の耐性菌検出歴、気管支拡張を来す慢性肺疾患、経腸栄養、ADL不良、呼吸不全(PaO2/FiO2≦200)が挙げられた。これらの項目は本ガイドラインのシステマティックレビューの結果と類似していたと進藤氏は語った。 また、本研究においてNon-COVID-19肺炎患者では、CAP抗菌薬耐性菌の検出がなかった患者の29.2%に広域抗菌薬が使用されていたことを紹介した。AMR対策としては、このような患者における広域抗菌薬の使用を減らしていくことが重要となると進藤氏は指摘する。CAP抗菌薬耐性菌のリスク因子が0個であった患者は、Non-COVID-19肺炎の61.2%を占め、そのうち21.8%で広域抗菌薬が使用されていた結果から、進藤氏は「AMR対策上、耐性菌リスクのない症例では広域抗菌薬の使用を控えることが重要である」と強調した。ウイルス性肺炎は想定以上に多い? 2018~20年に九州の14施設で実施された観察研究では、CAP患者の23.3%にウイルスが検出されており2)、肺炎へのウイルスの関与が注目されている。そこで、宮下氏は本ガイドラインに新たに追加されたウイルス性肺炎について、その位置付けを紹介した。 CAPは、(1)CAPとNHCAPの鑑別→(2)敗血症の有無・重症度の判断(治療場所の決定)→(3)微生物学的検査→(4)マイコプラズマ肺炎・レジオネラ肺炎の推定→(5)抗菌薬の選択といった流れで診療が行われる。この流れに合わせて、ウイルス性肺炎の特徴を考察した。 COVID-19肺炎患者の1年後の身体機能をみると、CAPと比較してNHCAPで予後が不良である3)。したがって、宮下氏は「CAPとNHCAPでは予後がまったく異なるため、治療方針を大きく変えるべきであると考える」と述べた。 本ガイドラインでは、重症度の評価をもとに治療場所を決定するが、CAPで用いられるA-DROPスコアによる評価がCOVID-19肺炎においても有用であった。ただし、COVID-19(デルタ株以前)ではA-DROPスコア1点(中等症、外来治療が可能)であっても、R(呼吸状態)の項目が1点の場合は疾患進行のリスクが高いという研究結果4,5)を紹介し、注意を促した。 前版で細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に用いられていた鑑別表は、細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の鑑別表(本ガイドラインp.32表4)に改められた。実際に、この鑑別表を非定型肺炎であるCOVID-19肺炎に当てはめると診断の感度は不十分であり、マイコプラズマ肺炎と細菌性肺炎の鑑別に用いるのが適切と考えられた。また、今回のガイドラインではレジオネラ診断予測スコアが掲載された(本ガイドラインp.33表5)。この診断スコアを用いた場合、COVID-19はいずれの株でもレジオネラ肺炎との鑑別が可能であった。 最後に、宮下氏はオミクロン株の流行後にCOVID-19肺炎において誤嚥性肺炎が増加し、誤嚥性肺炎を発症した患者の退院後の顕著な身体機能低下が認められていることに触れ、「早期診断・早期治療が重要であり、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンに加えて新型コロナワクチンによる予防も重要であると考えている」とまとめた。

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ベイフォータス、新生児および乳幼児のRSウイルス発症抑制・予防にて製造販売承認取得/AZ

 アストラゼネカとサノフィは2024年3月27日付のプレスリリースにて、長時間作用型モノクローナル抗体であるベイフォータス(一般名:ニルセビマブ[遺伝子組換え])が「生後初回または2回目のRS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制」ならびに「生後初回のRSウイルス感染流行期の前出以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を適応として、3月26日に日本における製造販売承認を取得したことを発表した。 ニルセビマブは、重症化リスクの高い早産児、特定の疾患を有する新生児、乳幼児におけるRSウイルス感染による下気道疾患(LRTD)の発症抑制に加え、世界で初めて健康な新生児または乳児をRSウイルスから守るために承認された予防を効能・効果とする薬剤である。今回の承認は、ニルセビマブの3つの主要な後期臨床試験に基づく。すべての臨床評価項目において、ニルセビマブの単回投与は一般的なRSウイルス感染流行期間とされる5ヵ月間にわたり、RSウイルス感染によるLRTDに対して一貫した有効性を示した。 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 小児科学 主任教授の森内 浩幸氏は、「2歳までにほぼすべての子供が罹患し、その数十%は細気管支炎や肺炎を起こします。流行すると小児病棟はこの病気の患児が増加し場合によっては酸素が投与され、人工呼吸器装着や集中治療管理が必要なことも経験します。RSウイルスはずっと昔からいて、毎年多くの子供たちを苦しめてきました。元々健康な子を含むすべての乳児がこのウイルス、RSウイルスのリスクに曝されています。幸いRSウイルス感染症の重症化を防ぐ手段が登場し、小児科医にとって朗報です」と述べている。<製品概要>販売名:ベイフォータス筋注50mgシリンジ、ベイフォータス筋注100mgシリンジ一般名:ニルセビマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:1. 生後初回又は2回目のRSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児及び幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制2. 生後初回のRSウイルス感染流行期の1. 以外のすべての新生児及び乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防用法及び用量:生後初回のRSウイルス感染流行期には、通常、体重5kg未満の新生児及び乳児は50mg、体重5kg以上の新生児及び乳児は100mgを1回、筋肉内注射する。生後2回目のRSウイルス感染流行期には、通常、200mgを1回、筋肉内注射する。製造販売承認年月日:2024年3月26日 製造販売元:アストラゼネカ株式会社販売元:サノフィ株式会社

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第206回  ALS女性患者嘱託殺人裁判が改めて問う、積極的安楽死が日本で認められるための条件

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンが始まりました。米国MLBでは、ロサンゼルス・ドジャースの大谷 翔平選手の元通訳、水谷 一平氏の違法賭博問題はまだ収束の兆しが見えず、大谷選手にも疑惑の目が向けられているようです。セントルイス・カージナルスとの開幕4連戦も打率2割6分9厘、ホームランなしと湿った成績で、賭博問題が少なからず影響している気もしました。私はといえば、金曜日の神宮球場のNPB開幕戦、東京ヤクルトスワローズ対中日ドラゴンズを観戦に行ってきました。昨シーズン、“令和の米騒動”で話題となったドラゴンズの視察です。巨人から移籍した中田翔選手のホームランは見ごたえがあったのですが、若手中心の野手陣の守備がひどく(とくにクリスチャン・ロドリゲス内野手)、今年もAクラス入りは厳しいのではと感じた次第です。さて、今回は、判決から少々時間が経ってしまいましたが、ALSの女性患者に対する嘱託殺人罪や別の殺人罪に問われた医師、大久保 愉一被告(45)の裁判員裁判の判決公判が3月5日にありましたので、判決文の内容を紹介しつつ、この事件について改めて書いてみたいと思います。判決で川上 宏裁判長は、嘱託殺人について、「被告人は、医師でありながら、被害者とのSNS上での短いやり取りのみでその嘱託に応じ、診察や意思確認もろくにできないわずか15分程度の面会で軽々しく殺害に及んでいる。130万円の報酬の受領を持って行動に移していることも併せて考慮すれば、被告人が、真に被害者を思って犯行に及んだとは考え難く、利益を求めた犯行であったといわざるを得ない。(中略)被告人の生命軽視の姿勢は顕著であり、強い避難に値する」として、懲役18年(求刑懲役23年)を言い渡しました。大久保被告は共犯者である山本 直樹被告(46)とその母と共謀し山本被告の父親を殺害したとする殺人罪にも問われていましたが、この判決で共犯が認められました。なお、大久保被告の弁護側は3月18日、懲役18年とした京都地裁判決を不服として控訴しました。「死を望む女性患者の自己決定権を保障する憲法13条に違反する」と弁護側は主張ALSの女性患者の嘱託殺人については、本連載でも何度か取り上げてきました。事件発覚当初の2020年8月には、「第17回 安楽死? 京都ALS患者嘱託殺人事件をどう考えるか(前編)」、「第18回 同(後編)」で、日本における積極的安楽死の罪の根拠となっている1991年に起きた「東海大学安楽死事件」と 1998年に起きた「川崎協同病院事件」について振り返り、ある有識者の「(この事件は)安楽死議論の対象にもならない」というコメントを紹介しつつ、「果たして本当にそうでしょうか。少なくとも、医療関係者も目を逸らしてきた、積極的安楽死についての議論を再開するきっかけにはなると思うのですが、どうでしょう」と問い掛けました。そして裁判が始まった直後の今年1月には、「第195回 ALS患者嘱託殺人、主犯とされる医師の裁判員裁判始まる、被告は『願いをかなえるためにやった』と証言」において、「嘱託殺人罪の適用を『死を望む女性患者の自己決定権を保障する憲法13条に違反する』とする弁護側の主張が、どこまで通るのかが裁判のポイントになりそうです」と書きました。13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は「個人が生存していることが前提」大久保被告が憲法13条に違反することを根拠に無罪を訴えていたことに対し、川上裁判長は、同条に書かれている生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は、「個人が生存していることが前提であると解釈されることなどからすれば、たとえ恐怖や苦痛に直面している状況であったとしても、憲法13条から直ちに『自らの死を援助してくれる医療従事者がいる場合に、その医療従事者が刑事罰から免れるように求める権利』などが導き出されるものではない。したがって、憲法13条違反を直接的な理由・根拠として本件に嘱託殺人罪を適用しないとの結論を採用することはできない」と断じました。患者の症状の判断や、本人や家族等への説明や意思確認など詳細な手順を明示今回の事件、起こった当初は「安楽死議論の対象にもならない」との批判もありましたが、京都地裁判決では、嘱託殺人罪を問わない要件を細かく明示しており、その点では議論が半歩くらいは進んだ、と言えるでしょう。判決では、「死期が間近に迫り、耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいる患者や、本件の被害者のように、現代の医学では病状の進行を止めることができず、迫り来る死や、自立的な意思伝達手段の喪失のおそれに直面して日々恐怖に怯えたり、絶望したりしつつも、身体的な自由がきかないことで自殺することもままならないような患者」の存在について言及、そうした患者からの嘱託についても例外なく嘱託殺人罪を当てはめてしまえば、患者らの嘱託に応えようとする医療従事者は現れず、患者らに耐え難い苦痛や恐怖・絶望を強いることになり酷であるとして、「可罰的違法性がないとして嘱託殺人罪に問うことが相当ではないと評価される事案の存在はあり得る」としました。しかし、そのためには、少なくとも、「(1)上記のような状況下にある患者らに対し、その病状による苦痛等の除去・緩和のために他に取るべき手段がなく、かつ、患者が自らの置かれた状況を正しく認識した上で、自らの命を絶つことを真摯に希望するような場合に、(2)医療従事者が、1)医学的に行うべき治療や検査等を尽くし、他の医師等の意見等も徴して、患者の症状をそれまでの経過等も踏まえて診察し、死期が迫るなど現在の医学では改善不可能な症状があること、それによる苦痛等の除去・緩和のために他に取るべき手段がないことなどを慎重に判断し、2)その診察・判断を基に、患者に対して、患者の現在の症状や予後を含めた今後の見込み、取り得る選択肢の有無等について可能な限り説明を尽くし、それらについての正しい認識に基づいた患者の意思を確認するほか、患者の意思をよく知る近親者や関係者等の意見も参考に、患者の意思の真摯性及びその変更の可能性の有無を慎重に見極めた上で、3)患者自身の依頼を受けて、苦痛の少ない医学的に相当な方法を用い、4)事後検証可能なように、それら一連の過程を記録化することなどが最低限必要であるというべきである」――としました。1991年「東海大学安楽死事件」で横浜地裁判決が示した積極的安楽死が許容されるための4要件「安楽死」については、回復が見込めない患者の死期を医師が薬剤を使用するなどして早める「積極的安楽死」と、終末期の患者の人工呼吸器や人工栄養などを中止する「消極的安楽死」の2つの概念があります。前者の「積極的安楽死」は、現在の日本においては今回の裁判のように、嘱託殺人罪や殺人罪などに問われることになります。積極的安楽死の罪の根拠となっているのは、1991年に起きた「東海大学安楽死事件」と 1998年に起きた「川崎協同病院事件」です。東海大学安楽死事件では、家族の要望を受けて末期がんの患者に塩化カリウムを投与し、患者を死に至らしめた医師が殺人罪に問われました。1995年、横浜地裁は、被告人を有罪(懲役2年執行猶予2年)とする判決を下しました(控訴せず確定)。患者自身による死を望む意思表示がなかったことから、罪名は嘱託殺人罪ではなく、殺人罪になりました。この判決では、医師による積極的安楽死が例外的に許容されるための要件として、1)患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと4)生命の短縮を承諾する患者の意思表示が明示されていることという4つの要件が提示されました。フランスは「死への積極的援助」を導入する法案を発表今回の京都地裁判決は、日本において積極的安楽死が認められる要件をさらに詳細に定めたとも言えるでしょう。「東海大学安楽死事件」の横浜地裁判決で示された積極的安楽死が例外的に認められる4要件に加えて、医療従事者が具体的にどのような手順を踏むべきかをより具体的に示したからです。もっとも、患者の症状の判断や、本人や家族等への説明や意思確認など、相当厳格かつ慎重な手順を踏まなければならず、実際の臨床の現場で実行に移されるかどうかは未知数です。ALS女性患者嘱託殺人裁判の判決が出た1週間後の3月12日、共同通信は「フランスのマクロン大統領は3月11日までに、終末期患者に厳格な条件の下で致死量の薬の投与を認める『死への積極的援助』を導入する法案を発表した」と報じました。自身で死を決断できる能力があり、短期・中期的に死の恐れがある重病に冒され、苦痛を和らげることができない成人に限って安楽死を認めるという法案です。5月から議会で審議するとしています。報道によれば、フランスでは2016年に終末期患者の意識を低下させる鎮静薬投与を医師に認める法律が成立したものの、オランダなどで認められた患者の意思により医師が薬物などで死に導く安楽死や、スイスで認められているような医師が処方した薬物を患者が自ら使用する自殺ほう助はまだ禁じられています。今回の「死への積極的援助」を導入する法案はそうした現状を打破するためのものと言えそうです。オランダ、スイス、そしてフランスなどの安楽死容認に向けての動きが、今後、日本における積極的安楽死の議論にどう影響してくるかが注目されます。

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院外心停止患者への市民による心肺蘇生、AED使用で生存が2倍以上に/日本循環器学会

 院外心停止(OHCA)患者の予後を改善するためには、市民による質の高い心肺蘇生法(CPR)と自動体外式除細動器(AED)の即時使用率をさらに高める必要がある。総務省消防庁は、1994年に市民を対象としたCPRの認定講習会を全国で開始し、2019年には受講者が年間約200万人に及び、認定者数は増加傾向にある。しかし、市民のCPR普及率やOHCA患者の生存率に及ぼす影響については十分に検討されていなかった。そのため、虎の門病院の山口 徹雄氏らの研究グループは、市民介入によるCPRと、患者の1ヵ月後の転帰との関連を評価した。本結果は、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、山口氏が発表した。なお本研究はResuscitation誌2024年2月号に掲載された1)。 本研究では、総務省消防庁が2005年より開始した国内のOHCAレジストリであるAll Japan Utstein Registry Dataを用いた。2005~20年に登録されたOHCA患者35万8,025例から、市民が居合わせた心室細動または無脈性心室頻拍の初期リズムがショック適応の患者7万3,387例を抽出し、心肺蘇生講習会認定者数と全国の市民によるCPR実施率との関連をポアソン分布とコクラン・アーミテージ検定による傾向検定により解析した。市民が実施したCPRを、胸骨圧迫のみ、胸骨圧迫と人工呼吸、胸骨圧迫と人工呼吸とAEDの使用で分類し、転帰との関連について多変量混合ロジスティック回帰分析を用いて評価した。主要評価項目は1ヵ月後の神経学的に良好な生存、副次評価項目は病院到着前の蘇生と1ヵ月後の生存とした。 主な結果は以下のとおり。・CPR講座の累積認定者数は、2005年の993万327人から直線的に増加し、2020年には3,493万8,322人であった(年間増加率:1.03、p<0.001)。これは15歳以上の日本人の32.3%を占める。・OHCA患者は、2005年では1万7,414例(年齢中央値 75歳[IQR 64~84])だったが、2020年には2万4,291例(80歳[IQR 70~87])に増加、高齢化していた。・居合わせた市民(バイスタンダー)による心肺停止患者へのCPR実施率は、2005年の40.63%から2020年には56.79%へと一貫して増加していた(傾向のp<0.001)。・2005~20年の初期リズムがショック適応のOHCA患者7万3,387例のうち、CPRを受けたのは4万1,678例(56.8%)であった。・CPRを受けた患者4万1,678例のうち、胸骨圧迫は98.28%、人工呼吸は22.81%、AEDの使用は8.41%の症例に施行された。・臨床転帰について市民によるCPR実施(CRP+)群とCPRを実施しなかった(CRP-)群を比較すると、以下のすべてにおいてCPR+群のほうが転帰が良好であった。 -神経学的に良好な1ヵ月後の生存率は、CPR+群:25.54% vs.CPR-群:15.5%(p<0.001)。 -1ヵ月後の生存率は、35.30% vs.26.47%(p<0.001)。 -1ヵ月後の生存者のうち神経学的に良好な者の比率は、72.36% vs.58.74%(p<0.001)。 -病院到着前の蘇生率は、35.42% vs.27.01%(p<0.001)。・市民のCPRのエンゲージメントが高いほど、患者の神経学的に良好な1ヵ月後の生存率が高いことが示された。CRP+群のエンゲージメント分類別に、CRP-群と比較した転帰は以下のとおり。 -胸骨圧迫のみ オッズ比(OR):1.24(95%信頼区間[CI]:1.02~1.51、p=0.029)。 -胸骨圧迫+人工呼吸 OR:1.33(95%CI:1.08~1.62、p=0.006)。 -胸骨圧迫+AED OR:2.27(95%CI:1.83~2.83、p<0.001)。 -胸骨圧迫+人工呼吸+AED OR:2.15(95%CI:1.70~2.73、p<0.001)。 本研究により、CPRの市民への普及率は着実に増加しており、OHCA患者に対して市民のCPR実施はCPRをしなかった場合と比較して、患者の1ヵ月後転帰を有意に改善していたことが示された。山口氏は発表の最後に、CPR教育が普及しているデンマークと日本を比較し、日本では市民によるCPR実施率57%、全OHCA患者の1ヵ月後の生存率9.7%に対して、デンマークでは市民によるCPR実施率77%で、全OHCA患者の1ヵ月後の生存率が16%に及ぶことを挙げ、日本でさらにCPR実施率を上げるためには、デンマークのように学校でのCPR講習の義務化、および自動車運転免許更新でのCPR講習の義務化が効果的ではないかと指摘した。また、8.4%に留まっているAED使用率を上げるには、AEDの設置場所や使用法を確認するためのスマートフォン用アプリ2,3)の使用や、諸外国で使用されているドローンを用いたAEDの配送システムの導入を推奨した。

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第187回 医療事故の報告件数が増加傾向、分娩を含む手術が最多/医療安全調査機構

<先週の動き>1.医療事故の報告件数が増加傾向、分娩を含む手術が最多/医療安全調査機構2.マダニ感染症SFTS、ヒトからヒトへの感染、国内で初めて報告/国立感染症研究所3.看護師国家試験、合格率87.8%と4年ぶりに低下/厚労省4.不整脈手術中の医療過誤、福岡高裁が九州医療センターに約2億円の賠償命令5.同一の執刀医による肝臓がん手術後の3人の死亡事故を公表/東海中央病院6.コロナ補助金8,500万円を不正受給した病院に返還命令/福岡県1.医療事故の報告件数が増加傾向、分娩を含む手術が最多/医療安全調査機構日本医療安全調査機構は、医療事故調査・支援センターの2023年の年報を発表した。対象期間は2023年1月1日~12月31日。この期間に報告された医療事故件数は361件と前年より2割ほど増えた。新型コロナウイルス感染拡大時は、医療事故発生報告件数の減少が認められたが、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、医療事故発生報告件数に増加傾向がみられた。2015年10月の医療事故調査制度開始以来、2023年末までに2,909件の医療事故が報告され、その87.3%で院内調査が完了していた。年報によると、1施設当たりの医療事故発生報告件数が最も多かったのは「900床以上」(1床当たり0.53件)で、ついで多かったのが「600~699床」(1床当たり0.44件)と病床規模が大きな病院ほど1床当たりの事故件数が多い傾向が認められた。また、人口100万人当たりで最多の医療事故報告数を記録したのは宮崎県であり、医療事故の起因としては依然として「分娩を含む手術」が最も多くを占めていた。医療事故報告から院内調査結果報告までの期間は平均458.5日に短縮していた。センターへの調査依頼は遺族から21件、医療機関から7件であり、センターへの相談件数はコロナ禍前の水準を超える2,076件だった。これらのデータは、医療事故の正確な報告と透明性の向上、再発防止策の重要性を浮き彫りにしているだけでなく、医療施設での安全対策強化への取り組みがますます求められており、医療事故報告数が多いことが必ずしも医療安全に問題があるわけではなく、正しく報告する文化の醸成が重要であることが示されている。参考1)『2023年 年報』について(日本医療安全調査機構)2)医療事故調査・支援センター 2023年 年報(同)3)医療事故調査・支援センター 2023年 数値版(同)4)人口100万人あたり医療事故報告件数の最多は2023年も宮崎県、手術・分娩に起因する医療事故が依然多い!-日本医療安全調査機構(Gem Med)2.マダニ感染症SFTS、ヒトからヒトへの感染、国内で初めて報告/国立感染症研究所マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」のヒトからヒトへの感染例が国内で初めて確認されたことが、国立感染症研究所によって明らかにされた。2023年4月、90代男性患者がSFTSと診断された後、患者を担当した20代の男性医師が、患者の死後に行った処置により感染。医師は処置時にマスクや手袋を着用していたが、ゴーグルはしておらず、11日後に38℃の発熱などSFTSの症状が現れた。患者と医師のウイルス遺伝子が同一と判断され、これが国内初のヒトからヒトへの感染例と認定された。医師の症状は現在軽快している。これまで、SFTSのヒトからヒトへの感染は中国や韓国で報告されていたが、わが国での確認はこれが初めて。SFTSは、主にマダニに刺されて感染する感染症で、発熱や腹痛などを引き起こし、重症化すると死亡することもある。国立感染症研究所と厚生労働省は、医療従事者に対して患者の血液や体液に触れる可能性がある際の感染予防対策の徹底を改めて呼びかけている。参考1)本邦で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群のヒト-ヒト感染症例(国立感染症研究所)2)マダニの媒介による感染症SFTS ヒトからヒトへ感染 国内初確認(NHK)3)マダニ感染症、国内初の人から人への感染確認…患者を処置した医師に症状(読売新聞) 3.看護師国家試験、合格率87.8%と4年ぶりに低下/厚労省厚生労働省は、第113回看護師国家試験の結果を発表した。これによると今年の合格率は87.8%で、4年ぶりに9割を下回ったことが明らかとなった。2月11日に実施された看護師国家試験は、6万3,301人が受験し、そのうち5万5,557人が合格した。新卒者の合格率は93.2%となり、新卒者の合格者数は5万3,903人だった。一方で、経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の合格者は17人(受験者294人)だった。助産師および保健師の国家試験においても、助産師は98.8%、保健師は95.7%といずれも新卒者の合格率が高くなっていた。今回の結果は、国の医療人材育成の現状を示すと同時に、外国人看護師候補者に対する支援の必要性を改めて浮き彫りにしている。参考1)第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表(厚労省)2)看護師国家試験2024、新卒合格率は93.2%(リセマム)3)看護師国家試験、合格率87.8% 4年ぶりに9割を下回る(CB news)4)看護師国試、外国人候補者は17人合格(MEDIFAX)4.不整脈手術中の医療過誤、福岡高裁が九州医療センターに約2億円の賠償命令カテーテルアブレーション手術中の医療過誤をめぐる医療訴訟で、福岡高等裁判所は九州医療センター(福岡市)に約2億円の賠償命令を命じた。福岡県内の60代男性が不整脈の手術中に心停止し、その際の蘇生措置の遅延により低酸素脳症による意識障害の後遺症を負ったとして、約2億円の損害賠償を求めていた。1審では医療ミスを認めず訴えを退けたが、福岡高裁は控訴審判決で医師の過失を認め、1審判決を変更し約1億8,600万円の賠償を命じた。判決によると、男性は平成26年11月にカテーテルアブレーション治療中に心停止が発生し、医師らによる胸骨圧迫の蘇生措置の開始が遅れたため、約4分50秒間、脳への血流が停止状態にあったことが、男性の重い後遺症と因果関係があるとされた。この過失と後遺症の間の因果関係を認め、1審とは逆に男性側の訴えを認めた。男性の妻は医師の過失が認められたことに対して安堵のコメントを表明するとともに、病院には再発防止に努めるよう要望している。国立病院機構九州医療センターは判決文を精査した上で今後の対応を検討するとしている。参考1)心臓手術後寝たきり状態、国立病院機構に1億8,600万円賠償命令…請求棄却の1審判決を変更(読売新聞)2)手術中の医療過誤認める、国立病院機構に約2億円賠償命令「蘇生措置の開始に遅れ」(産経新聞)3)九州医療センターの過失認め 約2億円賠償命じる 福岡高裁(NHK) 5.同一の執刀医による肝臓がん手術後の3人の死亡事故を公表/東海中央病院岐阜県の東海中央病院(岐阜県各務原市)は、2016~2022年にかけて、同一の外科医が行った肝臓がんの手術により患者3人が死亡した医療事故を公表した。病院によると肝臓がんの手術中に大量出血が発生し、患者はいずれも出血性ショックで死亡した。執刀していた外科医は2023年6月に依願退職している。病院側は医療事故調査委員会の調査結果をもとに報告書をまとめ、医療事故調査・支援センターに再発防止策を含め報告した。報道によれば、病院側は3件のうち2件を医療事故と認めていなかったが、岐阜県の行政指導を受けて全件を医療事故として認定した。病院は、外部委員を含む調査委員会を設置し、再発防止策を公表した。これによると、施設内で対応可能な手術症例の明確化、術前・術後カンファレンス実施体制の構築、病院幹部への再教育などが含まれている。病院は患者の遺族に対して説明を行い、事故調査の結果を真摯に受け止め、医療の安全確保と再発防止に努めると表明した。参考1)当院で発生した医療事故について(東海中央病院)2)東海中央病院 患者3人が死亡する医療事故公表 岐阜 各務原(NHK)3)同じ外科医の手術中に患者3人死亡 各務原の東海中央病院で医療事故、肝切除の手術(中日新聞)4)同じ医師の手術で死亡事故3件、がん患者が肝切除で大量出血…2件は「事故でない」判断覆す(読売新聞)6.コロナ補助金8,500万円を不正受給した病院に返還命令/福岡県「飯塚みつき病院」(福岡県飯塚市)が、新型コロナウイルスに関連する補助金を不正に受給した問題で、福岡県から8,500万円余りの返還命令が出された。この補助金は、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れるための病床確保や設備整備を支援する目的で提供されていたが、同病院は実際には患者受け入れのための体制が整っていないにも関わらず、不正に補助金を申請していたことが判明した。2022年9月~2023年9月にかけての不正申請により、約7,600万円がすでに交付されており、さらに加算金約900万円の支払いが求められている。会計検査院と県の実地検査で、病院が必要な看護師を配置していないことや、補助金申請に際して虚偽の申請書を作成していたことが明らかになった。とくに、病院では2022年度、新型コロナの患者を1人も受け入れておらず、感染症対策として必要な病棟工事や人工呼吸器の購入などに関する証拠もみつからなかったと報告されている。さらに、病院は今年2月、職員が大量に退職し、診療継続が困難な状況に陥っているため、高齢者を中心とした入院患者は、他の病院への転院を余儀なくされている。福岡県は、この問題を重要視し、不正行為を行ったと判断し、返還命令を出した。病院側は、不正申請の経緯について「前任者に聞かないとわからない」と説明しており、県は県警に情報を提供している。福岡県は、このような悪質な不正行為を許すことはできないとして、他の医療機関に対しても同様の不正がないか調査を進めることにしている。参考1)コロナ病床の補助金8,500万円不正受給…福岡県飯塚市の病院、22年度の患者受け入れゼロ(読売新聞)2)飯塚市の病院 県の新型コロナ補助金8,500万円余を不正申請(NHK)3)新型コロナウイルス感染症対策事業の不正行為の対応について (福岡県)

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歯磨きは入院患者の肺炎リスクを低下させる

 院内肺炎(hospital acquired pneumonia;HAP)は入院患者に発生する肺の感染症で、死亡率の上昇や入院期間の延長、医療費の増大などを招く恐れがある。しかし、毎日、歯を磨くことでHAP発症リスクを低減できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。集中治療室(ICU)入室患者では、歯磨きにより死亡リスクが有意に低下する傾向も示された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院内科のMichael Klompas氏と米ハーバード大学医学大学院Population Medicine分野のSelina Ehrenzeller氏によるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に12月18日掲載された。 Klompas氏は、「歯磨きが死亡リスク低下に対して驚くほど効果的なことが示唆された」と述べ、「病院での予防医学において、このような安価なのに高い効果を見込める方法は珍しい。今回の研究結果は、新しい機器や薬剤ではなく、歯磨きのような簡単なことが患者の転帰に大きな違いをもたらす可能性があることを示唆するものだ」との考えを示している。 Klompas氏らは、毎日の歯磨きが入院患者のHAP罹患やその他の患者転帰に与える影響を検討するために、総計1万742人の対象者(ICU入室患者2,033人、ICU非入室患者8,709人)から成る15件のランダム化比較試験を抽出。ICU以外の患者を対象にしたクラスターランダム化試験を有効なサンプルサイズに削減し、最終的に2,786人の患者を対象にメタアナリシスを行った。 その結果、毎日歯を磨いた患者ではHAP発症リスクが有意に低下し(リスク比0.67、95%信頼区間0.56〜0.81)、またICU入室患者では、歯を磨くことで死亡リスクも有意に低下することが明らかになった(同0.81、0.69〜0.95)。人工呼吸器装着の有無で分けて歯磨きによるHAP発症リスクの低下を見ると、人工呼吸器装着患者ではリスク低下は有意だったが(同0.68、0.57〜0.82)、非装着患者では有意ではなかった(同0.32、0.05〜2.02)。さらに、ICU入室患者では、歯磨きを行った患者では、歯磨きを行わなかった患者と比べて、人工呼吸器装着期間(平均差−1.24日、95%信頼区間−2.42〜−0.06)とICU入室期間(同−1.78、−2.85〜−0.70)が有意に短縮していた。 研究グループは、「肺炎は、口腔内の細菌が気道に吸い込まれて肺に感染することで発症する。フレイル状態にある患者や免疫力が低下している患者は、入院中に肺炎を発症するリスクが特に高まる。歯を毎日磨くことで口腔内の細菌量が減少し、肺炎の発症リスクが低下する可能性がある」と述べている。 また、研究グループは、「今回のレビューで対象とした研究のほとんどがICUで人工呼吸器を装着している患者を対象としていたものの、歯磨きの肺炎予防効果は他の入院患者にも当てはまるはずだ」との考えを示している。 Klompas氏は、「本研究で得られた知見は、入院患者に歯磨きを含む口腔衛生をルーチンで実施することの重要性を強調するものだ。われわれの研究が、入院患者が毎日確実に歯を磨くようにするための政策やプログラムのきっかけになることを願っている。患者が自分で歯を磨けない場合は、患者のケアチームのメンバーがサポートすると良いだろう」と話している。

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既往帝王切開、多面的介入で周産期合併症が減少/Lancet

 帝王切開分娩歴が1回の女性において、分娩方法の選択を支援しベストプラクティスを促進する多面的な介入により、帝王切開分娩や子宮破裂の発生率が増加することなく、主要な周産期合併症および妊産婦合併症の罹患率が有意に減少した。カナダ・ラヴァル大学のNils Chaillet氏らが、多施設共同クラスター無作為化非盲検比較試験「PRISMA試験」の結果を報告した。帝王切開分娩歴のある女性は、次の妊娠で難しい選択に直面し、再度帝王切開分娩を行うにしても経膣分娩を試みるにしても、いずれも母体および周産期合併症のリスクがあった。Lancet誌2024年1月6日号掲載の報告。意思決定支援やベストプラクティスなどの介入群vs.非介入(対照)群 研究グループはカナダ・ケベック州の公立病院40施設を、1年間のベースライン期間後にブロック無作為化法により医療レベル(地域病院、基幹病院、3次病院)で層別化して介入群と非介入(対照)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群には、帝王切開分娩歴のある女性の分娩期ケアに対するベストプラクティスに関する研修や臨床ツール(陣痛モニタリングの臨床アルゴリズムと改良パルトグラフ、分娩方法に関する意思決定支援ツール)の提供を行い、ベストプラクティスの実施、経膣分娩の可能性や超音波検査による子宮破裂リスクの推定などを実施することとした。対照群は介入なしとした。実施期間は5~8ヵ月で、介入期間は2年であった。 主要アウトカムは、死亡を含む主要周産期合併症(分娩時または新生児死亡、Apgarスコア5分値4未満、代謝性アシドーシス、重症外傷、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、痙攣発作、侵襲的人工呼吸、重大な呼吸器疾患、壊死性腸炎、低酸素性虚血性脳症、新生児敗血症、昇圧剤を要する低血圧)の複合リスクとし、帝王切開分娩歴が1回のみで、参加施設で出産し、新生児の在胎週数が24週以上、出生時体重500g以上の単胎妊娠の女性を解析対象とした。介入群で主要周産期合併症、母体の主要合併症が有意に減少 2016年4月1日~2019年12月13日に分娩した適格女性は、2万1,281例であった(介入群1万514例、対照群1万767例)。追跡不能例はなかった。 主要周産期合併症罹患率は、対照群ではベースライン期間の3.1%(110/3,507例)から介入期間は4.3%(309/7,260例)に増加したが、介入群では4.0%(141/3,542例)から3.8%(265/6,972例)に減少し、介入群において対照群と比較しベースライン期間から介入期間の主要周産期合併症罹患率の有意な減少が認められた(補正後オッズ比[OR]:0.72[95%信頼区間[CI]:0.52~0.99]、p=0.042、補正後絶対群間リスク差:-1.2%[95%CI:-2.0~-0.1])。介入の効果は、病院の医療レベルにかかわらず同等であった(交互作用のp=0.27)。 母体の主要合併症(妊産婦死亡、子宮摘出、血栓塞栓症、4日以上のICU入室、急性肺水腫、心原性ショック、敗血症、内臓損傷、子宮破裂)の罹患率も、対照群と比較して介入群で有意に減少した(補正後OR:0.54、95%CI:0.33~0.89、p=0.016)。 軽度の周産期合併症および母体合併症の罹患率、帝王切開分娩率、子宮破裂率については、両群間で有意差は確認されなかった。

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2023年、読んでよかった!「この医学書」/会員医師アンケート

2023年も多くの医学書が刊行されました。CareNet.comでは、会員医師1,000人(内科、循環器科、呼吸器科、消化器科、精神科/心療内科・各200人)に、「今年読んでよかった医学書」についてアンケートを実施しました(今年刊行された本に限らず、今年読んだ本であればOK)。アンケートでは「ご自身の専門分野でよかった本」「専門分野以外でよかった本」を1冊ずつ、理由も添えて挙げてもらいました。本記事では、複数の医師から名前の挙がった書籍を、お薦めコメントと共に紹介します(アンケート実施日:12月5日)。ぜひ、年末年始の読書の参考にしてください。内科幅広いテーマの書籍が「専門分野」として挙げられた内科。『今日の治療薬』(南江堂)、『ハリソン内科学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)、『当直医マニュアル』(医歯薬出版)といった「ド定番」のほか、糖尿病治療に関する書籍と「日本内科学会雑誌」を挙げる人が目立ちました。『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版』(金城 光代ほか[編]、医学書院、2023年)内科外来のトップマニュアルが6年ぶりの改訂。内科医以外からも多くの推薦がありました。●推薦コメント「外来診療に役立った」「疾患別に緊急性や重症度などを考えさせるように導く内容となっていて面白い」『胃炎の京都分類 改訂第3版』(春間 賢[監修]、日本メディカルセンター、2023年)多くの画像で胃炎を解説する定番書の改訂第3版。●推薦コメント「慢性胃炎に対する内視鏡的・肉眼的考察により、これまでの慢性胃炎の概念を体系化した書物」「臨床に生かせる」『内科学 第12版』(矢崎 義雄・小室 一成[編]、朝倉書店、2022年)初版は1977年、病態生理を中心に内科的疾患の最新の知見を集大成した改訂12版。●推薦コメント「鉄板です」「ザ・定番と思われるため」循環器科内科医からも多くの推薦があった『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』のほか、個別テーマでは心電図、PCIを扱った書籍が多く挙げられました。『循環とは何か? 虜になる循環の生理学』(中村 謙介[著]、三輪書店、2020年)難解な循環の生理学を、深くかつわかりやすく解説。●推薦コメント「面白い」「知識の整理になった」『PCIで使い倒す IVUS徹底活用術 改訂第2版』(本江 純子[編]、メジカルビュー社、2020年)「もっとこうしたらIVUSをより有効に活用できる」という手順・方法などを、実例と共に解説。●推薦コメント「IVUSの基本的な読影やトラブルシューティングなど、理論的にわかりやすかった」「説明がわかりやすく、実践的」『心不全治療薬の考え方,使い方 改訂2版』(齋藤 秀輝ほか[編]、中外医学社、2023年)心不全治療薬の整理のほか、使い分けや未知の事柄も追記した実践的な書の改訂版。●推薦コメント「いつも参考にしています」「心不全治療薬の“革命”を経て…、U40新世代が作り上げるバイブル」呼吸器科「間質性肺炎」「肺がん」「喘息」「気管支鏡」「人工呼吸」「咳」など、「専門」とする書籍テーマのバリエーションが多様だった呼吸器科。回答者によってさまざまな疾患に対応していることが垣間見える結果となりました。『ポケット呼吸器診療2023』(倉原 優[著]、シーニュ、2023年)CareNet.comの連載でもおなじみの倉原氏による定番の一冊の最新版。●推薦コメント「毎年非常に詳しく書かれているから」「ガイドラインや最新の治療薬のアップデートを記憶するのに役立つ」「呼吸器診療のtipsがコンパクトにまとめられている」『誤嚥性肺炎の主治医力』(飛野 和則[監修]、吉松 由貴[著]、南山堂、2021年)飯塚病院 呼吸器内科の著者らによる誤嚥性肺炎診療の実践書。●推薦コメント「気を付けるポイントを再認識した」「読みやすく、わかりやすかった」『抗菌薬の考え方,使い方 ver.5』(岩田 健太郎[著]、中外医学社、2022年)未曽有のコロナ禍を経て、新たに刊行された改訂版。●推薦コメント「大学の授業で習うべき重要な内容」「基本的な抗菌薬の知識を臨床の面から解説してある」「普段何気なく使用している抗菌薬の使用方法を見直すきっかけになった」消化器科内科医からも多く挙げられた『胃炎の京都分類 改訂第3版』のほか、医学誌「胃と腸」や『胃と腸アトラス』を「基本知識、専門知識がよくわかる」「読影の参考になる」「症例問題集が面白く勉強になる」と推薦する声が目立ちました。『専門医のための消化器病学 第3版』(下瀬川 徹ほか[監修]、医学書院、2021年)消化器専門医が知っておきたい最新知見を各領域のエキスパートが解説。●推薦コメント「内容が新しくてよい」「専門医として知っておくべき内容がまとめてあり、わかりやすい」「網羅的に消化器病の知識が記されており、教科書兼辞書として重宝している」『カール先生の大腸内視鏡挿入術 第2版』(軽部 友明[著]、日本医事新報社、2020年)内視鏡手技をテーマとした書籍が多いなか、内視鏡挿入のテクニックを動画付きで解説した本書を挙げる人が目立ちました。●推薦コメント「図が豊富」「基本的な内容が理解できた」「わかりやすく、新しい発見があった」『患者背景とサイトカインプロファイルから導く IBD治療薬 処方の最適解』(杉本 健[著]、南江堂、2023年)炎症性腸疾患(IBD)の治療薬について、著者独自の観点から患者ごとの最適解の考え方を提供。●推薦コメント「目から鱗でした」「わかりやすく、的確な具体例もある」精神科/心療内科他科と比較して同じ本を選択した回答者が多く、刊行から時間が経過した本も多く選ばれる傾向がありました。『精神診療プラチナマニュアル 第2版』(松崎 朝樹[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2020年)精神診療に必要かつ不可欠な内容をハンディサイズに収載。●推薦コメント「ノイヘレン(新人)時代にこういった入門書があればよかった。今でも復習に役立つ」「内容がわかりやすくまとまっている」「最新の話題が記載されている」『[新版]精神科治療の覚書』(中井 久夫[著]、日本評論社、2014年)「医者ができる最大の処方は希望である」。精神科医のみならず、すべての臨床医に向けられた基本の書。●推薦コメント「読みやすい」「改めて読み直してみて、初心を思い出せた」『カプラン臨床精神医学テキスト 第3版』(井上 令一[著・監修]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2016年)DSM-5準拠、高評と信頼を得た最高峰のテキストの改訂版。●推薦コメント「精神科医が学ぶことがおおむね網羅されている」「DSM-5に準じ体系化されていて、たくさんの疾患が網羅されている」「精神科専門医試験もここから多く出ていた」専門も専門外も!「信頼のシリーズ」アンケートの設問では「事典やガイドライン、医学雑誌以外の本を推薦ください」と条件を付けたものの、医師にとって最も身近であるこれらの書籍や、医学生・研修医、非専門医、コメディカルを対象とした定番シリーズを挙げる方も多くいました。「極論で語る」シリーズ(丸善出版)●推薦コメント「循環器疾患についてメカニズムと対応方法をわかりやすく解説してくれる」(『極論で語る循環器内科』/循環器科)、「体液コントロールにおける腎臓の視点を取り入れることができる」(『極論で語る腎臓内科』/循環器科)「病気がみえる」シリーズ(メディックメディア)●推薦コメント「看護学校の講師をしていますが、初心に返ることができた」(循環器科)、「基礎の確認になった」(循環器科)「レジデントのための」シリーズ(日本医事新報社)●推薦コメント「内科診療の疑問をEBMの側面でまとめてくれている」(『レジデントのための 内科診断の道標』/精神科)、「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(『レジデントのための これだけ輸液』/呼吸器科)どの科も必須「このテーマ」新型コロナウイルス感染症が収まり切らないなか、「専門外」の良書としてどの科の医師からも名前が挙がった本には、感染症をテーマとするものが多数ありました。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』(青木 眞[著]、医学書院、2020年)初版から20年。読み継がれてきた「感染症診療のバイブル」の最新版。●推薦コメント「抗菌薬の選択に参考となる」(呼吸器科)『感染症プラチナマニュアル Ver.8 2023-2024』(岡 秀昭[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2023年)2015年初版、ベストセラー「感染症診療マニュアル」の改訂第8版。●推薦コメント「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(呼吸器科)キラリと光る「新定番」絶対数としてはさほど多くないものの、最近刊行された注目の書籍が、複数の科の医師から「専門外の好著」として名前が挙がりました。『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(松田 光弘[著]、医学書院、2022年)皮膚科疾患のロジックが身に付く、フローチャートを用いた解説が好評の一冊。●推薦コメント「皮膚科が苦手だったが、まさに目からウロコ」(内科)、「皮疹を診る際の皮膚科医の思考過程がよくわかる」(内科)、「他科の医師でも皮疹診療についての基本がわかる」(呼吸器科)『世界一わかりやすい 筋肉のつながり図鑑』(きまた りょう[著]、KADOKAWA、2023年)100点以上のオールカラーイラストで筋肉のつながり・仕組みを平易に解説した一般書のベストセラー。●推薦コメント「筋肉の解剖学的特徴がわかりやすい」(内科)、「イラストがよい、わかりやすい」(消化器科)『心電図ハンター 心電図×非循環器医』(増井 伸高[著]、中外医学社、2016年)非循環器医をターゲットに、即座に判断できない微妙な症例を集め、心電図判読のコツを紹介。●推薦コメント「実際の臨床の場面を想定した形での判断基準などがわかりやすい」(内科)、「知りたいことがコンパクトにまとめてある」(呼吸器科)こんな本も! 医師ならではの一冊医学書以外でも、医師ならではの視点から、熱のこもったコメントと共に寄せられた本がありました。『蘭学事始』(杉田 玄白[著]、緒方 富雄[校註]、岩波文庫、1959年)江戸後期、杉田 玄白が著した蘭学創始期の回想録。●推薦コメント「印象に残った」(呼吸器科)『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(大竹 文雄・平井 啓[編著]、東洋経済新報社、2018年)●推薦コメント「インフォームドコンセントからSDMになり、なんとなく感じていた違和感が、行動経済学的な考え方によりすっきりした」(消化器科)『嫌われる勇気』(岸見 一郎・古賀 史健[著]、ダイヤモンド社、2013年)アドラー心理学を解説する、100万部突破のベストセラー。●推薦コメント「承認欲求に気付くことができた」(循環器科)『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』(中村 佑子[著]、医学書院、2023年)●推薦コメント「一体ヤングケアラーとは誰なのか。世界をどのように感受していて、具体的に何に困っているのか。取材はドキメンタリーを読むようだ」(消化器科)

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重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。ECMO施行48時間未満の重症ARDS患者を無作為化、60日以内のECMO離脱成功を比較 研究グループは2021年3月3日~12月7日に、ICUにてVV-ECMO施行開始から48時間未満の18歳以上75歳未満の重症ARDS患者を、腹臥位ECMO群または仰臥位ECMO群に1対1の割合に無作為に割り付けた。 腹臥位ECMO群では、腹臥位療法の早期中止基準を満たさない限り、最初の4日間に16時間の腹臥位を少なくとも4回行い、仰臥位ECMO群ではECMO施行中の腹臥位を60日目まで禁止した。 主要アウトカムは、無作為化後60日以内のECMO離脱成功までの期間。離脱成功は、ECMO中止後30日間、ECMOまたは肺移植を受けず生存した場合と定義した。副次アウトカムは、無作為化後90日時点の全死亡、ECMOおよび人工呼吸器非装着期間、ICU在室および入院期間などであった。また、有害事象(無作為化後7日間の褥瘡を含む)および重篤な有害事象についても評価した。腹臥位療法と仰臥位療法で、主要アウトカムおよび副次アウトカムに有意差なし 適格性を評価された250例のうち170例が無作為化され(腹臥位ECMO群86例、仰臥位ECMO群84例)、全例が追跡調査を完了した。 170例の年齢中央値は51歳(四分位範囲[IQR]:43~59)、女性は60例(35%)。170例中159例(94%)は、ARDSの主な原因が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎であった。ECMO開始前に164例(96%)が腹臥位で、呼吸器系コンプライアンス中央値は15.0mL/cm H2O(IQR:10.7~20.6)であった。 無作為化後60日以内にECMO離脱に成功した患者は、腹臥位ECMO群86例中38例(44%)、仰臥位ECMO群84例中37例(44%)であった(群間リスク差:0.1%[95%信頼区間[CI]:-14.9~15.2]、部分分布ハザード比:1.11[95%CI:0.71~1.75]、p=0.64)。 また、無作為化後90日以内に腹臥位ECMO群で44例(51%)、仰臥位ECMO群で40例(48%)が死亡し(絶対群間リスク差:2.4%、95%CI:-13.9~18.6、p=0.62)、90日以内のECMO装着期間(日数)の平均値はそれぞれ27.51および32.19(絶対群間差:-4.9、95%CI:-11.2~1.5、p=0.13)であり、すべての副次アウトカムで両群間に有意差はなかった。 重篤な有害事象については、心停止の発生率は腹臥位ECMO群より仰臥位ECMO群で有意に高かったが(3.5% vs.13.1%、絶対群間リスク差:-9.6%[95%CI:-19.0~-0.2]、相対リスク:0.27[95%CI:0.08~0.92]、p=0.05)、それ以外の重篤な有害事象の発現率は両群で同等であり、両群とも不測のECMO脱血管、予定外の抜管および重度の喀血の発生は認められなかった。

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外傷患者への人工呼吸器の深呼吸機能は有効か/JAMA

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスク因子を有し、人工呼吸器による管理を受けている外傷患者では、通常ケア単独と比較して、通常ケアに人工呼吸器による深呼吸を追加しても、28日目まで人工呼吸器不要日数は増加しないが、死亡率は改善したとの結果が、米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らが実施した「SiVent試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年11月28日号で報告された。米国15施設の実践的な無作為化試験 SiVent試験は、米国の15の外傷治療施設が参加した実践的な無作為化試験であり、2016年4月~2022年9月の期間に患者の無作為化を行った(Department of Defense Peer-Reviewed Medical Research Program Clinical Trial Awardの助成を受けた)。 年齢18歳以上、人工呼吸器の使用時間が24時間未満の外傷患者で、ARDS発症の5つのリスク因子のうち1つ以上を有し、今後の人工呼吸器の使用時間が24時間以上、生存期間が48時間以上と予測される患者524例(平均年齢43.9[SD 19.2]歳、男性75.2%)を登録し、通常ケア+人工呼吸器による深呼吸を行う群(深呼吸群)に261例、通常ケアのみを行う群(通常ケア群)に263例を無作為に割り付けた。 深呼吸群では、人工呼吸器により6分ごとにプラトー圧35cmH2O(BMI値>35の患者は40cmH2O)の深呼吸を導入し、通常ケア群では、医師が患者の希望に応じて治療を行うこととした。 主要アウトカムは、人工呼吸器不要日数(VFD)とし、28日目までの、侵襲的換気の再導入がなく、呼吸補助なしの日数と定義した。副次アウトカムは、28日目までの全死因死亡などであった。抜管成功までの期間は深呼吸群で短い 28日目までのVFD中央値は、深呼吸群が18.4日(四分位範囲[IQR]:7.0~25.2)、通常ケア群は16.1日(1.1~24.4)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.08)。VFDの補正前平均群間差は1.9日(95%信頼区間[CI]:0.1~3.6)、事前に規定された補正後平均群間差は1.4日(95%CI:-0.2~3.0)だった。 抜管成功までの期間は深呼吸群のほうが短かった(部分分布ハザード比[HR]:1.21、95%CI:1.00~1.47、p=0.05)。 また、28日死亡率は、通常ケア群が17.6%(46/261例)であったのに対し、深呼吸群は11.6%(30/259例)と良好であった(オッズ比[OR]:0.61、95%CI:0.37~1.00、p=0.05)。死亡の補正前HRは0.64(95%CI:0.41~1.02、p=0.06)、同補正後HRは0.70(0.43~1.15、p=0.16)だった。非致死性の重篤な有害事象の頻度はほぼ同じ ICU非入室日数中央値は、深呼吸群が13.7日(IQR:2.0~20.6)、通常ケア群は11.9日(0~20.0)であった(p=0.10)。 合併症の発生率には、両群間に差を認めなかった。また、非致死性の重篤な有害事象の割合は、深呼吸群で30.9%(80/259例)、通常ケア群で30.7%(80/261例)と両群で同程度であったが、深呼吸群で低血圧(2.7%[7例]vs.0%)が多くみられた。 著者は、「死亡率が低下し、合併症が増加しなかったことなどから、人工呼吸器による深呼吸の導入は忍容性が高く、臨床アウトカムを改善する可能性があることを示唆する」と指摘し、「深呼吸と死亡率低下を結び付けるメカニズムは推測しかできない」としている。

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