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英語で「便秘」は?【1分★医療英語】第60回

第60回 英語で「便秘」は?My son recently has stomach pain.(うちの息子は、最近お腹が痛いと言っています)Is he constipated?(便秘気味ですか?)《例文1》Do you have any medications for constipation?(便秘に効く薬はありますか?)《例文2》How long have you been constipated?(どのくらいの期間、便秘なのですか?)《解説》今回は「便秘」にフォーカスを当てたいと思います。便秘を主訴とする、または腹痛の背景に便秘がある患者さんは頻繁に遭遇しますよね。便秘は“constipation”(コンスティペイション)で表すことができます。たとえば、「私は便秘気味です」であれば“I am constipated.”もしくは“I have constipation.”で表現することができます。どちらも正解ですが、前者のほうがよく聞く印象です。医療者同士での会話でも同様に“This patient is constipated.”と使ったり、“This constipated patient is~”のように形容詞として使ったりします。ちなみに、便秘には“obstipation”(アーブスティペイション)という言葉もあり、これは“severe form of constipation”、つまり「かなりひどい便秘症状」の際に時々用いられます。医療現場で使う「排便」という表現には、“bowel movement”が使われます。使い方としては、“Do you have any bowel movements yesterday?”(昨日排便はありましたか?)や、“How many bowel movements do you have per day?”(1日に何回排便しますか)といったように使用されます。小児領域に関しては、“poop”という表現がお子さんに伝わりやすいので、親が外来に来た際に、“She has not pooped for three days.”(うちの娘は3日間うんちが出ていません)と説明したり、医療者も“Do you poop every day?”(うんちは毎日出ていますか?)と聞いたりします。ただし、日本語の「うんち」のトーンなので、幼い子ども相手の使用に留めておくほうが無難でしょう。医療現場で大人の患者さんに使うと少しびっくりされるかもしれません。医療現場でたびたび遭遇する「便秘・排便」の表現を使いこなせるようになりましょう!講師紹介

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世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」【下平博士のDIノート】第111回

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」今回は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド注射液(商品名:マンジャロ皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、GIPとGLP-1の2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であり、選択的かつ長時間にわたる血糖値の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgを4週間皮下投与した後、維持用量である週1回5mgに増量します。患者の状態に応じて適宜増減し、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔を空けて2.5mgずつ増量することができます。最大用量は週1回15mgです。<安全性>日本人および外国人2型糖尿病患者を対象とした国際共同第III相試験、日本人2型糖尿病患者を対象とした国内第III相試験の本剤5mg投与群において、副作用は544例中232例(42.6%)で報告されています。主なものは、悪心60例(11.0%)、下痢48例(8.8%)、食欲減退46例(8.5%)、便秘44例(8.1%)などでした。なお、重大な副作用として、低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、GIP/GLP-1受容体作動薬と呼ばれる2型糖尿病の治療薬です。血糖値が高くなるとインスリンの分泌を促進し、またインスリンを効きやすくすることで血糖値を下げます。2.週1回、同じ曜日に投与してください。オートインジェクター型注入器は1回使い切りです。3.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う作業を行う際は注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。4.悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退が強い場合はご相談ください。5.嘔吐を伴う激しい腹痛が現れた場合は使用を中止し、速やかに受診してください。6.冷蔵庫内などで光が当たらないように保管してください。凍結は避けて、もし凍結した場合は使用しないでください。室温で保管する場合は、外箱から出さずに保管し、21日以内に使用してください。30℃を超える場所では保管しないでください。<Shimo's eyes>本剤は、39個のアミノ酸を含む合成ペプチドであり、単一分子でグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の双方に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPとGLP-1はいずれも食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、血糖が高い場合には膵臓におけるインスリン分泌を促進するとともに、食欲減退や満腹感亢進による体重増加の抑制作用が期待されています。なお、米国では2022年5月に「成人2型糖尿病治療における血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法」として承認を取得しているので、わが国よりも早期のステージでの使用が想定されます。注入器のアテオスは、既存のトルリシティにも使用されているオートインジェクターで、1回使い切りのキットです。注射針付きのシリンジがあらかじめ装填されており、空打ちをすることなく、ボタンを押すだけで自動的に投与することができます。医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんやご家族は本剤の自己注射が可能です。国内の実薬対照二重盲検比較試験(SURPASS J-mono試験)では、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与52週時までの平均変化量について、デュラグルチド0.75mg(商品名:トルリシティ)に対する本剤5mg、10mg、15mgの優越性が認められました。また、非盲検長期安全性試験(SURPASS J-combo試験)では、本剤5mg、10mg、15mgを経口血糖降下薬単剤と併用し、安全性および有効性が確認されました。主な副作用として、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退などの消化器症状が報告されており、投与開始時の用量の漸増は、胃腸障害リスクの回避・軽減を目的としています。用量依存的な体重減少も認められているため、過度の体重減少にも注意する必要があります。投与開始時のBody Mass Index(BMI)が23kg/m2未満の患者での有効性および安全性は検討されていません。なお、本剤とDPP-4阻害薬はいずれもGLP-1受容体およびGIP受容体を介した血糖降下作用を有しています。両剤を併用した際の臨床試験成績はないため、併用処方の場合には疑義照会が必要です。

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低用量徐放性モルヒネ、COPD患者の慢性息切れを改善せず/JAMA

 重度の慢性的な息切れを伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、低用量徐放性モルヒネの毎日の使用はプラセボと比較して、治療開始から1週間後までで、最も重度な息切れに有意な改善は認められず、1日の平均歩数にも有意な変化はなかったことが、スウェーデン・ランド大学のMagnus Ekstrom氏らが実施した「BEAMS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年11月22・29日合併号に掲載された。オーストラリアの無作為化プラセボ対照比較試験 BEAMS試験は、オーストラリアの20施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2016年9月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、COPDと診断され、呼吸器内科医によって確定された根本的な原因に対する至適な治療を行っても重度の慢性的息切れ(修正MRC息切れスケールのスコア3または4[「平坦な道を約100ヤード〈91.4m〉または数分歩くと息切れのため立ち止まる」「息切れがひどくて家から出られない」「衣服の着替えをする時にも息切れがする」])がみられる患者であった。 被験者は、徐放性モルヒネ8mg/日、同16mg/日、プラセボを1週間経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、ベースラインの受診時に手首にアクチグラフ装置が装着された。さらに、2週目と3週目にも、それぞれ徐放性モルヒネを1週目の用量に加えて8mg/日またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、3週目にはモルヒネ8mg/日、同16mg/日、同24mg/日、同32mg/日、プラセボを投与する5つの群に分けられた。 主要アウトカムは、プラセボと比較した徐放性モルヒネ投与例における、患者報告による最も重度な息切れの強度の変化とされ、ベースライン(-3~-1日目)と投与開始1週目(5~7日目)の平均スコアを用いた数値スケール(0[なし]~10[最も悪いまたは最も強い])で評価した。副次アウトカムには、アクチグラフを用いた1日の歩数の変化が含まれ、ベースライン(-1日目)と3週目(19~21日目)の平均歩数が比較された。漸増された4つの用量で、平均1日歩数に差はない 156例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:67~78]、女性48%)が主解析に含まれ、モルヒネ8mg群に55例、同16mg群に51例、プラセボ群に50例が割り付けられた。138例(48例、43例、47例)が1週目の投与を完了した。修正MRC息切れスケールのスコア3が121例(78%)、スコア4は35例(22%)だった。 1週目における最も重度な息切れの強度の変化は、モルヒネ8mg群とプラセボ群で有意な差はなく(平均群間差:-0.3、95%信頼区間[CI]:-0.9~0.4)、同16mg群とプラセボ群の間にも差は認められなかった(-0.3、-1.0~0.4)。 3週目における平均1日歩数の変化は、モルヒネ8mg群とプラセボ群(平均群間差:-1,453歩、95%CI:-3,310~405)、同16mg群とプラセボ群(-1,312歩、-3,220~596)、同24mg群とプラセボ群(-692歩、-2,553~1,170)、同32mg群とプラセボ群(-1,924歩、-4万7,699~921)のいずれにも有意な差はみられなかった。 治療関連有害事象は、1週目にモルヒネ8mg群の64%、同16mg群の78%、プラセボ群の48%で発現し、多くが一般的なモルヒネ関連有害事象(便秘、疲労、めまい、吐き気、嘔吐など)であった。有害事象による投与中止は、それぞれ2例、5例、0例で認められた。入院や死亡を含む重篤な治療関連有害事象は、全用量のモルヒネ群が139例中46例(33%、85件)、プラセボ群は17例中2例(12%、2件)でみられた。 著者は、「今後は、モルヒネは特定のCOPD患者に息切れの軽減をもたらすか、より高用量のモルヒネによって利益を得る患者は存在するかを検討する研究や、重度の息切れにおける短時間作用型オピオイドの役割を明らかにするための研究が必要である」としている。

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1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」【下平博士のDIノート】第110回

1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」今回は、骨粗鬆症治療薬「アバロパラチド酢酸塩注射剤(商品名:オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg、帝人ファーマ)」を紹介します。本剤は、骨吸収作用に対して骨形成作用がより優位な新規の骨形成促進薬であり、1日1回の皮下投与により、骨量の増加と骨折の抑制が期待されています。<効能・効果>本剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の適応で、2022年8月31日に製造販売承認を取得しました。なお、オスタバロ皮下注3mgが2021年3月に同様の適応で製造販売承認されていますが、3mg製剤は28日投与の製剤であり、新薬の14日処方制限への対応が必要であったため現時点での薬価収載は見送られています。<用法・用量>通常、成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射します。本剤の投与期間は18ヵ月間までです。なお、本剤は使用開始前も開始後も冷蔵庫で保管します。<安全性>国内および海外の第III相試験を統合した結果、臨床検査値異常を含む副作用は962例中357例(37.1%)で報告されました。主な副作用は、高カルシウム尿症81例(8.4%)、浮動性めまい55例(5.7%)、悪心52例(5.4%)、頭痛34例(3.5%)、動悸33例(3.4%)などでした。重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、骨形成を促進して骨量を増やすことで、骨折を予防します。2.投与後30分程度はできる限り安静にして、高所での作業、自動車の運転など危険が伴う作業に従事する場合は注意してください。3.投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗などが生じた場合には、症状が治まるまで座ったり横になったりしてください。4.悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は受診してください。5.(妊娠可能な女性に対して)本剤の投与期間中は避妊してください。<Shimo's eyes>骨粗鬆症に伴う骨折は、日常生活動作やQOLの低下、生命予後の悪化につながるため、初回骨折の予防に加え、すでに骨折が生じた場合は次の骨折を予防して、骨折の連鎖を起こさないための治療が重要です。本剤はヒト副甲状腺ホルモン関連蛋白質(hPTHrP)のアミノ酸配列の一部を改変したアナログ製剤で、骨代謝に関わるPTH1型受容体のRG型を選択的に刺激するため、骨量の増加と骨折抑制が期待できます。既存の副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)としては、テリパラチド(遺伝子組換え)(商品名:フォルテオ皮下注キット)、テリパラチド酢酸塩(同:テリボン皮下注用、テリボン皮下注オートインジェクター)などが発売されています。また、抗体薬としては、抗ランクル抗体のデノスマブ(遺伝子組換え)(同:プラリア皮下注)、抗スクレロスチン抗体のロモソズマブ(遺伝子組換え)(同:イベニティ皮下注)が発売されており、超高齢社会に対応すべく効果の高い骨粗鬆症治療が近年続々と登場しています。本剤は、海外における骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆患者を対象とした海外第III相試験(BA058-05-003試験、ACTIVE試験)において、プラセボに比べて投与18ヵ月の新規椎体骨折の発生率が低く、最初の非椎体骨折の発生までの期間が有意に延長されました。また、本剤投与終了後のアレンドロネートによる継続治療により、プラセボ投与終了後のアレンドロネート治療群と比較して、ACTIVE試験の開始から投与後25ヵ月および43ヵ月までの新規椎体骨折発生率が有意に低く、最初の非椎体骨発生までの期間に有意な延長が認められました(BA058-05-005試験、ACTIVE延長試験)。本剤の電動式注入器(オスタバロインジェクター)は、製剤カートリッジを14日ごとに交換するよう設計されていて、液晶画面には操作手順、投与履歴、累計投与回数が表示されるとともに、カートリッジの交換や冷所保管忘れの通知機能なども備えられています。診察では、インジェクターに記録された投与履歴や累積回数を確認することができます。なお、本剤の使用にあたっては、インジェクターのほかに製剤カートリッジ、A型専用注射針、消毒用アルコール綿が別途必要となるので、処方の確認が必要です。安全面では、活性型ビタミンD製剤との併用は、血清カルシウム値が上昇する恐れがあるため避けることが望ましいとされています。本剤投与直後から数時間後にかけて、一過性の急激な血圧低下が現れることがあるので注意が必要です。また、一過性の血清カルシウム値上昇がみられることもあり、悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は速やかに診察を受けるように患者さんに指導しましょう。

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映画「心のカルテ」(前編)【なんでやせ過ぎるの? なんで食べ吐きは止められないの?(摂食障害)】Part 1

今回のキーワード少食タイプ過食タイプ食べ吐き(自己誘発性嘔吐)空腹中枢と満腹中枢行動依存ダイエット文化皆さんは、体型を気にしますか? やせるために食事制限をしてジムに通っていますか? 今の世の中では、やせていることに価値がとても置かれていますよね。一方で、明らかにやせ過ぎている「拒食症」の人たちがいます。また、食べ吐きが止められない「過食症」の人たちもいます。なぜなんでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、Netflixのオリジナル映画「心のカルテ」を取り上げます。このドラマを通して、精神医学の視点だけでなく、生物学の視点からも、摂食障害の原因に迫ります。症状は?主人公は、20歳のエレン。極端な食事制限をして、異常にやせています。それを見かねた家族の強い勧めで、彼女はグループホームに入ります。そして、同じ摂食障害のメンバー6人との共同生活をするなかで、自分を見つめ直すようになるのです。まず、エレンをはじめとするグループホームのメンバーたちを通して、摂食障害を「少食タイプ」と「過食タイプ」の大きく2つに分けて、それぞれの特徴を詳しくご紹介しましょう。(1)少食タイプ1つは、少食タイプです。エレンやグループホームのメンバーのパールのように、単純に食べる量を制限する、あまり食べないことでやせ過ぎることです。この正式な病名は、神経性やせ症の制限型です。その症状として、まず当然ながら著しい低体重が挙げられます。エレンがグループホームで体重測定をするシーン。具体的な数値は描かれていませんが、彼女が「さすがにやばい」と漏らし、スタッフがかなり心配していることから、危険な数値であることがうかがえます。実際の診断基準(ICD-11)では、BMIが18.5未満で異常とされ、BMIが14未満で危険とされています。ちなみに、エレンは長らく生理がなく(無月経)、毛深くなっていました(産毛密生)。これらは、電解質、ホルモン、代謝の異常も含め、低体重からの栄養不足に伴う体の変化です。パールは、あまりにもやせてしまったため、鼻からチューブで栄養剤を流し入れる対応(経鼻栄養)が行われていました。そして、その後にエレンから摂取カロリーを明かされたために、動揺していました。これは、太る(体重が増える)ことに強い恐怖を感じる肥満恐怖であり、裏を返せばやせ願望です。エレンは、義母から撮られた自分の全身写真を見せつけられて「きれいだと思う?」と聞かれて、「いいえ」と素っ気なく答えます。そして、「じゃあどうする?」と聞かれても、何も答えません。診察するベッカム先生には「私は不健康だとは思わない」「だってやせてるほうが健康だって言うでしょ」と言います。頭では異常であるとうすうすわかっていても、深刻には受け止めていないのです。これは、ボディイメージの障害であり、病識欠如(否認)です。エレンは、ただでさえ栄養不足で体力がないのに、ベッドの上で隠れて腹筋運動を繰り返します。いわゆる「ダイエットハイ」「拒食ハイ」と呼ばれる過活動です。また、すべての食べ物のカロリーを瞬時に言い当てて、妹(異母妹)から「カロリーの鬼だね」と驚かれます。やせることへのとらわれ(強迫)もみられます。グループホームの唯一の男性メンバーであるルークと中華レストランに行った時、エレンは、食事を噛むだけで飲み込まずに吐き出していました。これは、チューイングと呼ばれます。(2)過食タイプもう1つは過食タイプです。これは、さらに3つのタイプに分けることができます。a. 食べ吐きしてやせ過ぎるタイプこの正式な病名は、神経性やせ症の排出型です。グループホームのメンバーのミーガンは、妊娠が判明したのにもかかわらず、つい食べ吐きを再開してしまい、流産するのでした。ルークについては、食べ吐きの様子が描かれておらず、はっきりとは言えないのですが、もともとバレエダンサーであり、食事をおいしそうに食べている様子から、このタイプであると思われます。食べ吐きによって、胃液中の電解質であるカリウムが不足していきます。すると、低カリウム血症による不整脈のリスクが高まります。驚くべきことに、このタイプの死亡率が20%前後であり、実は精神障害の中で最も高い数値です1)。厳密には、排出型は、食べ吐き(自己誘発性嘔吐)に加えて、下剤浣腸や利尿薬などの医薬品の使用も含んだ排出行動がある場合を指します。なお、いわゆる「拒食症」とは、先ほどの少食タイプ(神経性やせ症の制限型)とこの過食タイプ(神経性やせ症の排出型)を合わせた俗称です。b. 食べ吐きしてやせ過ぎないタイプこの正式な病名は、神経性過食症です。グループホームのメンバーのトレイシーは「アイスクリームはすぐに吐けるわ。胃液だけになるまでね」「あなたも下剤使ってる?」と話しています。グループホームのメンバーのアナは、ベッドの下に自分の食べ残しを隠し持っていました。これは、ため込みと呼ばれます。そのほかに、どうせ吐いてお金がもったいないからとの理由で、食べ物の万引きをしたり(盗食)、周りに大量に食べているところを見られたくないとの理由で隠れて食べる隠れ食いなどがあります。c. 食べ吐きせずに太るタイプこの正式な病名は、むちゃ食い症です。グループホームのメンバーのケンドラは「私も吐けたらいいんだけど、とにかく食べるだけ」と話しています。彼女はとても大柄です。そして、ピーナツバターを大瓶の容器からそのまま食べていました。なお、食べ吐きしてやせ過ぎないタイプ(神経性過食症)は、食べるのと同じくらい吐くようになると、食べ吐きしてやせ過ぎるタイプ(神経性やせ症の排出型)に移行します。また、食べ吐きせずに太るタイプ(むちゃ食い症)は、食べ吐きができるようになると、食べ吐きしてやせ過ぎないタイプ(神経性過食症)、さらには食べ吐きしてやせ過ぎるタイプ(神経性やせ症の排出型)に移行します。このように、過食タイプは、オーバーラップすることがわかります。また、少食タイプのエレンとパールは病気の自覚(病識)があまりないのに対して、過食タイプであるそのほかのメンバーは病識があるため、治療に前向きです。次のページへ >>

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オピオイドの嘔気、制吐薬は必須?【非専門医のための緩和ケアTips】第38回

第38回 オピオイドの嘔気、制吐薬は必須?オピオイドの副作用といえば「便秘」と「嘔気」ですね。内服を開始した当初は眠気が強い方もいます。今回は副作用のうち、嘔気について考えていきましょう。今日の質問高齢の肺がん患者さんが通院していて、骨転移の痛みに対して医療用麻薬を使用しています。医療用麻薬は1ヵ月前から内服を始め、痛みは和らいでいるようです。制吐薬を飲み続けているのですが、いつまで続ければいいのでしょうか?「オピオイドを内服開始する時には、必ず制吐薬を処方しましょう!」これは私が緩和ケアの仕事を始めた10年以上前によく言われていたことです。医療用麻薬という名前だけで不安を感じる方がいるのに、飲んでみたら痛みは和らいだけど吐き気がする…。こんなことがあると、「もうこんな怖い薬は飲みたくないです」と言われてしまいます。また吐き気ってつらいのですよね。そういった意味でも、制吐薬は重要な併用薬として見なされていました。しかし近年、この「オピオイド開始の際に予防的に制吐薬を内服する」というプラクティスは見直されつつあります。その背景には、高齢患者が増え、制吐薬による副作用への懸念が高まったことがあります。制吐薬の多くが抗ドパミン作用を持ち、代表的な副作用は錐体外路症状です。錐体外路症状としてはアカシジア(静座不能症)などが有名です。一方、オピオイド服用に伴う嘔気は、便秘と異なり、すべての患者さんに生じるわけではありません。またオピオイドの投与開始後1~2週間で軽減することも知られています。このような嘔気に対し、錐体外路症状の懸念のある制吐薬を全員に投与するのか? という議論が生じてきたのです。今回の質問のように、医師が気付いて「もうこの制吐薬はやめてもいいのでは?」と考えられればよいのですが、気付くと何ヵ月も不要と思われる制吐薬を内服し続けていたといったケースも見聞きします。今回の質問のケースでも、嘔気がないのであれば制吐薬は中止して問題ありません。医療用麻薬を処方する際、すべての患者さんにルーチンで制吐薬を処方するのではなく、「個別に必要性を判断すること」「長期投与にならないように注意すること」が重要になっているのです。では、どんな患者さんには制吐薬を処方すべきなのでしょうか。私のやり方としては、医療用麻薬に対する心配が強いこうした方には「吐き気が出てもクスリが手元にあると安心ですよね」と言葉を添えて処方するケースが多いです。嘔気が生じやすい病態腸閉塞を繰り返している患者さんなどは、「最初の1週間だけ内服しましょう」といって制吐薬を処方することがあります。一方、入院患者さんの場合は、嘔気が出ても迅速に対応できるので、制吐薬の処方は控えるケースが多くなります。「個別性に配慮した緩和ケア」としては、各医師の腕の見せどころかもしれません。皆さんはどうされているでしょうか?今回のTips今回のTipsオピオイドと併用する制吐薬の処方は、適応を考えて個別に判断しましょう。

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10月7日 おなかを大切にする日【今日は何の日?】

【10月7日 おなかを大切にする日】〔由来〕気温が下がることでお腹が冷えて腸のぜん動運動が鈍くなったり、寒暖差による自律神経の乱れから便秘など腸の不調が出やすいこの時期に、腸活への関心を高めてもらいお腹の調子を良くして健康な毎日を送ってもらおうと、ビオフェルミン製薬株式会社が「重10要なおな07か」の語呂合わせから制定。関連コンテンツその腹痛、重症?【救急診療の基礎知識】腹痛患者、波があれば“管”を疑おう!【Dr.山中の攻める!問診3step】下痢症状から急性胃腸炎を診断、ゴミ箱診断を防ぐには?【Dr.山中の攻める!問診3step】お腹が痛いときの症状チェック【患者説明用スライド】新薬・エビデンス続々、心理的ケアの認知高まる―『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020』

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ペムブロリズマブ、高リスク早期TN乳がんへの術前・術後療法に適応拡大/MSD

 MSD株式会社は2022年9月26日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法」の効能または効果で、国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。 今回の承認は、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの周術期の乳がん患者1,174例(日本人76例を含む)を対象とし、術前薬物療法としてのペムブロリズマブと化学療法との併用療法、および術後薬物療法としてのペムブロリズマブ単独療法の有効性と安全性を、術前薬物療法としてのプラセボと化学療法との併用療法、および術後薬物療法としてのプラセボ投与を対照として評価した国際共同第III相試験(KEYNOTE-522試験)の結果に基づいている。 本試験において、術前のペムブロリズマブと化学療法との併用療法および術後のペムブロリズマブ単独投与は、術前のプラセボと化学療法との併用療法および術後のプラセボ投与と比較して主要評価項目の1つである無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.48~0.82、p=0.00031)。安全性については、安全性解析対象例783例中774例(98.9%)(日本人45例中45例を含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、悪心495例(63.2%)、脱毛症471例(60.2%)、貧血429例(54.8%)、好中球減少症367例(46.9%)、疲労330例(42.1%)、下痢238例(30.4%)、ALT増加204例(26.1%)、嘔吐200例(25.5%)、無力症198例(25.3%)、発疹196例(25.0%)、便秘188例(24.0%)、好中球数減少185例(23.6%)、AST増加157例(20.1%)だった。 <製品概要>・販売名:キイトルーダ点滴静注100mg・一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)・効能・効果:ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法・用法・用量:通常、成人にはペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として1回200mgを3週間間隔または1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する。投与回数は、3週間間隔投与の場合、術前薬物療法は8回まで、術後薬物療法は9回まで、6週間間隔投与の場合、術前薬物療法は4回まで、術後薬物療法は5回までとする。・承認取得日:2022年9月26日

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第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)

コロナ終息とエリザベス女王国葬こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。WHOのテドロス事務局長は9月14日の記者会見で、新型コロナウイルスの世界全体の死者数が、先週、2020年3月以来の低い水準になったと指摘、「世界的な感染拡大を終わらせるのにこれほど有利な状況になったことはない。まだ到達していないが、終わりが視野に入ってきた」と述べたそうです。同日、厚生労働省の新型コロナウイルス対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」も、全国的に新規感染者数の減少が続いている、との分析を公表しました。世界的に流行が終息に向かっていることは、米国MLBの中継や、英国エリザベス女王の国葬の様子を見ても実感することができます。国葬もそうでしたし、女王の国葬に先立つウエストミンスター宮殿での公開安置の行列でも、マスクをしている人はほとんどいませんでした(デビット・ベッカム氏も!)。その点、日本人は真面目というか、融通が効かないというか、街中の屋外では、皆、まだマスクをしています。こうした、お上の言うことに真面目に従い、世間体(周囲)を気にする他人任せな点が、日本でセルフメディケーションがなかなか進まない一因なのかもしれません。アマゾンの処方薬ネット販売の背景さて前回は、米アマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)が日本で処方薬のネット販売に乗り出すことになった、というニュースについて書きました(「第126回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(前編)」参照)。アマゾンの処方薬ネット販売進出の背景にあるのは、オンライン診療、オンライン服薬指導の普及・定着と、来年から始まる予定の電子処方箋の運用です。電子処方箋が運用されれば、処方箋のやりとりだけでなく、処方薬の流通についても徹底した効率化が求められるようになります。近い将来やってくるであろう調剤・配送集中化の時代を見据え、アマゾンとしてはまずは同社の服薬指導のシステムを普及させることで、地域の薬局をネットワーク化しておきたいというのが、その大きな狙いとみられます。こうした動きに対し、日本保険薬局協会の首藤 正一会長(アインホールディングス代表取締役専務)は記者会見で、「リアル店舗やかかりつけ薬剤師の存在感を高めることで、アマゾンに対抗する」といった趣旨のコメントをしたそうです。その記事を読んで、私は首をかしげてしまいました。世の中で「かかりつけ薬剤師」は「かかりつけ医師」よりももっと曖昧な存在です。そんなものに力を入れることで、果たして巨大アマゾンに対抗できるのでしょうか。そんなことを考えていたら、アマゾン報道の1週間ほど前に利用した都内の零売(れいばい)薬局のことを思い出しました。大都市圏で増える零売薬局零売薬局はコロナ禍で医療機関の受診控えが起こったことなどを背景に、東京都内をはじめ、大都市圏で急増しています。「処方箋なしで病院の薬が買える」などのキャッチフレーズで、新宿、渋谷、池袋など、特に若者が多く集まる街で増えている印象です。その動きは地方にも及んでいます。東海テレビ(愛知県)は7月29日の放送で、名古屋で初めての零売薬局、「セルフケア薬局」が繁華街である地下鉄名城線栄駅・南改札すぐのところにオープンした、と報じています。「セルフケア薬局」は、東京に本拠を構える零売薬局チェーンで、東京、神奈川のほか、大阪、京都などでも店舗を展開しています。厚労省が零売を公式に認めたのは2005年そもそも零売とは、医療用医薬品を、処方箋なしに容器から取り出して顧客の必要量だけ販売することをいいます。「零」は「ゼロ」を意味する漢字ですが、「少ない」「わずか」と言う意味もあります。つまり零売とは「少数や少量に小分けして売ること」という意味なのです。厚生労働省が処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売、すなわち零売を公式に認めたのは、2005年とそんなに昔のことではありません。それ以前は法令上での明確な規定がなく、一部薬局では医療用医薬品の販売が行われていました。厚労省が零売を容認するきっかけとなったのが2005年4月の薬事法改正です。医薬品分類を現在の分類に刷新するとともに「処方箋医薬品以外」の医療用医薬品の薬局での販売を条件付きで認める通知を発出しました。同年3月30日の厚生労働省から発出された「処方せん医薬品等の取扱いについて」(薬食発第0330016号厚生労働省医薬食品局長通知)は、「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」は、「処方せんに基づく薬剤の交付を原則」とするものであるが、「一般用医薬品」の販売による対応を考慮したにもかかわらず、「やむを得ず販売せざるを得ない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行った上で」、薬剤師が患者に対面販売できるとしました。なお、零売に当たっては、1)必要最小限の数量に限定、2)調剤室での保管と分割、3)販売記録の作成、4)薬歴管理の実施、5)薬剤師による対面販売――の順守も求められることになりました(本通知の内容は現在、2014年3月18日付薬食発0318第4号厚生労働省医薬食品局長通知「薬局医薬品の取扱いについて」に引き継がれています)。医療用医薬品約1万5,000 種類のうち半数は処方箋なしでの零売可能2005年4月施行の改正薬事法は、処方箋医薬品の零売を防ごうとしたのも目的の一つでした。それまでの「要指示医薬品」と、全ての注射剤、麻薬、向精神薬など、医療用医薬の約半分以上が新たに「処方箋医薬品」に分類されたわけですが、逆に使用経験が豊富だったり副作用リスクが少なかったりなど、比較的安全性が高い残りの医薬品が「処方箋医薬品以外の医薬品」に分類され、零売可能となったわけです。現在、日本で使われる医療用医薬品は約1万5,000種類あり、このうち半分の約7,500 種類は処方箋なしでの零売が認められています。鎮痛剤、抗アレルギー薬、胃腸薬、便秘薬、ステロイド塗布剤、水虫薬など、コモンディジーズの薬剤が中心で、抗生剤や注射剤はありません。また、比較的新しい、薬効が強めの薬剤も含まれません(H2ブロッカーはあるがPPIはない等)。ついでだからとリンデロンVG軟膏5mgも買ってしまうさて、9月初旬に私が利用したのは、都内のとある零売薬局です。いつも通っている整形外科の診療所でいつもの鎮痛剤と湿布薬を処方してもらうつもりだったのですが、外来で2時間近く待つ時間的余裕がなく、仕方なしに山手線の某駅近くにある零売薬局を利用することにしたのです。店内に入ると女性の薬剤師がカウンターに座るよう促しました。こちらの症状や、欲しい薬剤をヒアリングし、パソコンの画面を見せながら推奨する薬剤を勧めるという流れです。私は整形外科で処方してくれている鎮痛剤のエトドラク錠200mgと、ジクロフェナクテープ30mgを希望しました。しかし、「いずれも処方箋医薬品以外の医薬品ですが、当店では扱っていません」とのことで、同種のロキソプロフェンNa錠60mgとロコアテープを勧められ、それらを購入することにしました。また、雑談(!)の中で、二日酔いの薬やビタミン剤、虫刺されの薬などの話も出たので、ついでだからとリンデロンVG軟膏5mgも買ってしまいました。リンデロンVGは、山登りや沢登りでの虫刺されにてきめんに効く薬ですが、ステロイドの含有量が多いこともあって普通の薬局・薬店では買えません。「前は調剤薬局にいたが、今の仕事のほうが面白い」と、なんだかんだで薬剤師と20分近く会話をして、約4,000円の買い物をしてしまいました。薬局を出てから、今までかかってきた整形外科でも、その門前にある調剤薬局でも、鎮痛剤や湿布薬についてここまで詳しく説明を聞いたことがなかったことに気付きました。エトドラク錠と、ジクロフェナクテープがなかったのは、単にこの薬局が仕入れる薬剤リストに入っていないためか、あるいは薬効や副作用などから自主的に販売していなためかはわかりませんが、少なくとも代替薬を勧める薬剤師の説明は理には適っていました。症状を自分で聞いて、薬を選択するアドバイスをし、客の人となりを見て他の薬剤も勧めるには、それなりの知識とコミュニケーション力が要るでしょう。私を担当した薬剤師は最後に、「前は調剤薬局で働いていたが、今の仕事のほうが面白い」と話していました。零売薬局の不適切事例に厚労相が注意喚起の通知というのが私の零売薬局体験なのですが、調べてみるとコロナ禍で急増した零売薬局の中には、不適切事例も相次いでいるようです。厚労省は2022年8月5日、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の薬局での販売の不適切な販売事例について、都道府県などに再周知を促す通知「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売方法等の再周知について」(薬生発0805第23号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)を発出、不適切な事例について指導を徹底するよう求めています1)。前述したように2005年の通知、それを引き継いだ2014年の通知で、零売は「一般用医薬品の販売等による対応を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売等を行わざるを得ない場合」に例外的な販売が認められていますが、そうした“考慮”をすることなく販売されている事例を、「不適切」として注意喚起したわけです。私自身のケースも考えてみればそうでした。今回の通知ではまた、「同様の効能・効果を有する一般用医薬品等がある場合は、まずはそれらを販売すること」、「在庫がない場合は他店舗の紹介などによる対応を優先すること」され、さらに販売に当たっての遵守事項として「反復継続的に医薬品を漫然と販売等することは、医薬品を不必要に使用する恐れがあり不適切」とも改めて明示されました。さらに、広告やホームページなどで次のような表現を用いて処方箋医薬品以外の医療用医薬品の購入を消費者等に促すことは不適切ともされました。「処方箋がなくても買える」「病院や診療所に行かなくても買える」 「忙しくて時間がないため病院に行けない人へ」 「時間の節約になる」 「医療用医薬品をいつでも購入できる」 「病院にかかるより値段が安くて済む」…。コモンディジーズならば医療機関の受診をはしょれるこの通知は増える零売薬局への強烈な牽制と考えられます。実は厚労省は同様の指摘を2021年に一般社団法人日本零売薬局協会に対して行っており、同協会は12月、「厚生労働省からのご指摘について」という文書を会員に対して配布、広告表現等について注意するよう促しています2)。私自身は、ここまで零売に足かせをはめる必要はないと思います。医療保険が使えず、現状極めてアナログなシステムと言えますが、少なくともコモンディジーズならば医療機関の受診をはしょれます。患者は勝手知ったる薬を手早く入手できますし、国の医療費削減にも寄与します。一方、薬剤師も医師の処方にただ従って調剤するのではなく、自らの判断で薬剤を選ばなければならないので、説明も責任をもって行うようになるかもしれません。プリントされた薬剤情報提供書を機械的に渡すだけの調剤薬局の薬剤師とは異なる職能も求められ、仕事としての面白味も増しそうです。日本の薬局や処方箋調剤が抱える“欠点”DXの最先端であるアマゾンとアナログの極みとも言える零売薬局。日本の薬局や処方箋調剤が抱える“欠点”に対するアンチテーゼという意味でも共通点があります。その“欠点”とは服薬指導です。処方薬の場合、現状、すべてのケースで服薬指導を行わないと、処方薬を患者に渡すことはできません。もし、患者の希望によって、あるいは一部の薬剤においてそのプロセスをはしょることができれば、電子処方箋の運用はもっとスムーズなものになるはずです。患者はオンライン診療を受けるだけで(オンライン服薬指導を受けなくても)、薬剤が手元に届くことになるからです。一方、リアルでアナログな薬局である零売薬局ですが、そこで行われている服薬指導のほうが薬剤師は熱心だし、責任をもってやっている、というのも皮肉な話です。OTC販売では構築できなかった新しい「患者-薬剤師関係」が生まれる可能性もあります。何より、零売は医療機関を受診しない(保険診療ではない)ことで、医療費の削減につながります。国が言う、セルフメディケーション推進の流れにも合っているわけで、風邪や下痢などのコモンディジーズや患者自身も十分に理解している疾患に限っては、零売は「規制」よりも「推進」があるべき形だと考えられます。10月にも岸田 文雄首相を本部長とする「医療DX推進本部」がいよいよ発足します。現状の仕組みをすべてシステムの中に落とし込もうとするのではなく、服薬指導や医療機関受診といった現在のプロセスの中のはしょれる部分を大胆にはしょった上で、新たにシステムを組み直すほうが真のDXになると思いますが、皆さんいかがでしょう。ドラゴンクエストの世界のような、エリザベス女王の国葬をテレビ中継で観ながら、そんなことを考えていた雨の週末でした。参考1)処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売方法等の再周知について/厚生労働省2)厚生労働省からのご指摘について/一般社団法人日本零売薬局協会

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知っておきたい新しいオピオイド(1)タペンタドール【非専門医のための緩和ケアTips】第35回

第35回 知っておきたい新しいオピオイド(1)タペンタドール私が緩和ケアの仕事を始めた頃と比べ、臨床で活用できるオピオイドが増えています。今回は、国内承認が比較的最近で、使ったことのある方がまだ少ないと思われる「タペンタドール」についてお話しします。今日の質問「オピオイドといえばモルヒネ」という時代からすると、さまざまなオピオイドの選択肢が増えたことは良いのですが、使い分けがよくわかりません。先日、がん拠点病院から紹介されてきた患者さんは、タペンタドールというオピオイドを内服していました。どういった特徴のある薬剤なのでしょうか?タペンタドール(商品名:タペンタ)は、2014年に保険承認されました。緩和ケアを専門とする医療者には広く知られるようになった一方で、プライマリ・ケア領域では、まだ使用経験のない先生も多いでしょう。タペンタドールは「強オピオイド」に位置付けられる薬剤です。日本では徐放製剤のみが発売されており、適応は各種がんにおける中等度から高度の疼痛です。タペンタドールは薬理学的にはユニークな特徴があります。腎機能障害があっても使用ができ、便秘が少ないとされています。このあたりはモルヒネと比較して、好んで使用される特徴でしょう。オピオイドはμオピオイド受容体を介した鎮痛効果が中心ですが、タペンタドールはSNRI様作用も有しています。SNRIと聞いて抗うつ薬を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。緩和ケア領域では抗うつ薬を神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬として用います。タペンタドールはこの鎮痛補助役としての作用も有する、ユニークなオピオイドなのです。より薬理学的なポイントとしては、「CYP2D6」という酵素活性に影響を受けない代謝経路になっていることが挙げられます。これは他薬剤との併用の際に大切です。併用薬剤によっては代謝酵素に影響を及ぼし、作用が減弱したり逆に予想よりも強く出たり、といった相互作用が生じるのです。さらなる特徴は、オピオイドの濫用防止の加工がしてあることです。粉砕できないように加工されており、水に溶かすとネバネバのゼリー状になります。よって、経管投与ができません。注射薬もないので、内服が難しくなりそうな患者の場合は、早めに別のオピオイドに変更するマネジメントが必要になります。私がタペンタドールが最も適すると感じるのは、頭頸部がんの難治性がん疼痛の患者、抗真菌薬のような相互作用に注意が必要な薬剤をよく使う血液腫瘍の患者さんなどです。もちろん、こうした患者さんは内服が難しい状況にもなりやすいのでその見極めも必要です。そうした意味では、少し“上級者向け”のオピオイドといえるかもしれません。今回のTips今回のTipsタペンタドールはユニークな特性を持つ、少し“上級者向け”のオピオイド。

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患者さんの訴えには耳を傾けよう【Dr. 中島の 新・徒然草】(441)

四百四十一の段 患者さんの訴えには耳を傾けよう急に涼しくなりましたね。まだ8月が終わったばかりというのにもう秋です。さて、最近、考えさせられる症例があったので紹介したいと思います。その女性は70代。数ヵ月前に転倒して頭を打ちました。以来、物が覚えられなくなったとのこと。それだけでなく、疲れやすくなって1日のうちの大半寝ているとか、便秘になって困るとか。そのような不定愁訴的なことをおっしゃっていました。あまりにも便のことばかり言うので、「ウンコの事はウンコの病院で言うこと」と当時のカルテに私は書いています。で、その後に何度か脳外科外来を受診しているのですが、その都度、いろいろな訴えをされるわけです。ふらつきがある。耳鳴りがする。物忘れがあるのでメモをするが、そのメモを失くす。電話の内容も直後に忘れてしまうので、かけ直して確認する。薬を飲み忘れる等々。同伴の息子さんに尋ねてみると、「確かに母に質問しても意図したことと違う答えが返ってくることが多いです」とのこと。さらに、訴えは続きます。股関節が痛い、足趾が腫れる、耳鳴りがする、ふらつきがある、道に迷う、手が痛い、先生(中島のこと)の名前を思い出せない、家事に時間がかかる、髪の毛が抜けて仕方ない、等々。4年ほど前に当院の循環器内科にかかっているのですが、「その他の愁訴については近医受診を」とカルテに書いてあります。やっぱり循環器内科の先生も、この人の訴えに苦しめられていたのか、とちょっと安心しました。ん?4年ほど前にということは、症状と頭を打ったのは無関係かな、もしかして。ずっと前からいろいろな愁訴があったのでしょうか?物忘れがある、便秘がひどい、髪の毛が抜ける、疲れやすいって。それひょっとして甲状腺機能低下症じゃないですか。で、慌てて血液検査の結果を確認してみました。FT4 1.06ng/dL(1.10~1.80)TSH 4.43μIU/mL(0.27~4.20)括弧内は当院の基準値です。FT4もTSHも、それぞれ基準値をわずかに外れています。これをもって異常といっていいのか?でも、症状からはまさしく甲状腺機能低下症。「頭を打ってから」というご本人の申告に惑わされていました。で、本来なら内分泌の専門家に診察を依頼するところでしょう。でも、自らの恥ずかしい事は、人にバレないうちに何とかしたいというのが人情というもの。それで私は処方しましたよ、レボチロキシンを。その後、まだ次の診察日は来ていないので、私の処方が効果あったのかはわかりません。が、別の疾患で眼科に入院していて、看護記録に「ふらつかなくなった」「理解良好」とあったので、もしかしてうまくいっているのかも。というわけで、不定愁訴などと決めつけずに、虚心坦懐に患者の訴えに耳を傾けるべし、というお話でした。初診で患者さんに偉そうに言ってしまって、今思えば恥ずかしい限り。でも、確かに本人は頭打ってから調子悪いって言ってたんですけどね。ということで最後に1句秋風に 思い出したり 謙虚さを

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アドヒアランス改善による意識障害が生じたため薬剤を徹底見直し【うまくいく!処方提案プラクティス】第50回

 今回は、服薬アドヒアランスが改善したら治療効果が過剰に現れて意識障害を起こした事例を紹介します。薬剤師のさまざまな工夫や手法によってアドヒアランスが改善することは喜ばしいことですが、急激な変化が生じることもあるため、あらかじめ変化を予測して治療計画を立てておくことが重要です。患者情報88歳、男性(自宅で妻と2人暮らし)基礎疾患陳旧性脳梗塞(発症様式不明)、認知症、糖尿病、高血圧症 服薬管理妻身体所見身長161.5cm、体重54.7kg介入前の検査所見HbA1c 7.0、HDL 47mg/dL、LDL 83mg/dL、AST 19、ALT 23、Scr 1.03mg/dL、推算CCr 38.5mL/min処方内容1.チクロピジン錠100mg 2錠 分2 朝夕食後2.アログリプチン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.カンデサルタン錠12mg 1錠 分1 昼食後4.ニフェジピン徐放(24時間持続)錠20mg 2錠 分2 朝夕食後5.グリメピリド錠1mg 1錠 分1 朝食後6.ボグリボースOD錠0.2mg 3錠 分3 毎食直前本症例のポイントこの患者さんの服薬管理は奥様が行っていましたが、PTPシートのままの管理で、かつ、服薬タイミングが複数回あることから飲み忘れが多かったため、訪問医の紹介で薬局が在宅訪問することになりました。訪問介入前の血圧は140〜160/80〜100と高めを推移していました。初回訪問時に飲み忘れや残薬を確認したところ、食直前や昼・夜の薬がとくに服用できておらず、少なくとも3ヵ月分の余剰があることがわかりました。そこで、奥様と医師に一包化管理の承認を取り、その日から始めることになりました。訪問介入開始後のフォローアップでは、血圧が110~120/60~70、心拍数が70台となりました。しかし、1ヵ月が経過したころに奥様より「夫の話のつじつまが合わない。そわそわしていて顔色も悪い。食事は元気がないこともあって、これまでの30~40%程度しか食べない。昼以降はうとうと寝ていることが多い。最近怒りっぽくなって常にイライラしている」と相談がありました。その日のバイタルを確認すると、血圧が170/100と高く、心拍数も95と頻脈になっていました。上腕は汗ばんでいて、衣服も汗で湿っているような感じがしました。また、最近になって便秘が出現し、お腹が張って不機嫌なのではないかという話も聴取しました。これらの追加情報から、下記のことを考察しました。(1)低血糖出現の可能性症状やその発現タイミングから、服薬アドヒアランスが改善して、これまで飲めていなかった薬の治療効果よりも副作用が強く現れたのではないかと考えました。一番懸念したことは、元々腎機能も悪く、HbA1cが高齢者の目標値の下限である7.01)であったことから、SU薬のグリメピリド錠が過度に作用して低血糖に陥っている可能性です。低血糖によるカテコラミン分泌上昇から、頻呼吸はないものの血圧上昇や頻脈、焦燥感、興奮、日中活動低下(ブドウ糖低下)に至っている恐れもあります2)。(2)食事量低下とボグリボースによる便秘発現の可能性便秘の発現については、低血糖によって食事量が低下したことで腸管蠕動が低下した可能性と、α-グルコシダーゼ阻害薬のボグリボース錠の服薬徹底により代表的な副作用でもある便秘が生じた可能性を考えました。(3)現状の服薬管理に合わせた薬剤の選定・見直しの必要性一包化管理を開始してから服薬アドヒアランスが安定しているため、服薬タイミングをシンプルに整理して、治療負担となっている薬剤の中止・減量を提案する必要があると考えました。とくに1日3回の食直前薬であるボグリボース錠は本人の服薬負担だけでなく、奥様の介護負担増加にも繋ります。血圧推移も安定してきたことから、降圧薬を減らすことも可能と考えました。処方提案と経過医師に電話で状況を報告したところ、臨時往診することになりました。診療中に医師より「低血糖症状が出現しているため治療薬を調整しようと思うが、考えがあれば教えてください」と聞かれたため、上記1~2より、グリメピリド錠は低血糖を起こしてることから中止、また便秘に影響している懸念からボグリボース錠の中止も提案しました。医師からは、今回採血もしているので次回の訪問診療まで経口血糖降下薬はすべて中止する旨の返答がありました。また、今回のことをきっかけにチクロピジン錠はクロピドグレル錠50mg 1錠 朝食後に変更となりました。昼のカンデサルタン錠は中止となり、ニフェジピン24時間持続徐放錠は40mg 1錠 朝食後に変更となりました。1週間後のフォローアップでは、食事量は50%程度であるものの活気が出てきていて、血圧は120~130/70~80台で推移していました。血色不良やイライラしていた様子、日中の傾眠もなく、デイサービスの利用ができるところまで回復しました。臨時往診時の採血結果では、HbA1cは5.5、空腹時血糖は60台まで低下していましたが、その後のHbA1cは6.0台で留まっており、経口血糖降下薬は再開せずに生活しています。1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2022-2023.文光堂;2018.2)岸田直樹著・監修. 薬学管理に活かす臨床推論.日経BP;2019.

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レビー小体型認知症の初期症状~MEMENTO研究

 主観的認知障害(SCI)と軽度認知障害(MCI)は、レビー小体型認知症(DLB)の初期症状として知られている。フランス・ストラスブール大学病院のFrederic Blanc氏らは、ベースライン時にDLBの初期症状としてSCIおよびMCIを有する患者とそうでない患者の比較を行った。その結果、DLBの初期症状を有する患者では認知が遅く、行動障害、自律神経症状、羞明が多く認められ、脳MRIにおける後頭葉、前頭葉、嗅球の関与は、症状や既知の神経病理学的特徴と一致していたことが報告された。Alzheimer's Research & Therapy誌2022年7月19日号の報告。 MEMENTO研究は、診療所、神経心理学、生物学および脳画像のデータによるSCIおよびMCIを有する患者を調査したフランスの全国的研究である。本研究の参加者のうちLewy sub-studyに含まれる892例について、DLB症状に注目するよう設計した。初期症状の可能性があるDLB(pro DLB)の診断は、DLBの4つの臨床的な中核症状の特徴のうち2つの基準のカットオフ値を用いて行った。pro DLB群と、中核症状のない患者(NS群)および中核症状が1つの患者(1S群)との比較を行った。包括的な認知バッテリー、行動に関するアンケート、自律神経・神経系の症状、3D MRI脳容積測定、CSF、FDG PET、アミロイドPETの検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・pro DLB群は148例(16.6%)であった。・pro DLB群は、NS群と比較し、処理速度がより遅いMCIの特徴を有しており(59.8%)、うつ、不安、無気力、便秘、鼻漏、シェーグレン症候群、羞明が認められる割合が高かった。・pro DLB群は、NS群と比較し、CSF(交絡因子調整後、有意ではない)および、前頭葉、後頭葉、嗅溝を含む脳MRI拡散画像(FDR補正済み)において、リン酸化タウ蛋白(p-tau)低値が認められた。・認知症への進展については、3群間で同様であった(フォローアップ中央値:2.6年)。

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高齢統合失調症患者における第2世代抗精神病薬と下剤使用との関係

 台湾・Kaohsiung Municipal Kai-Syuan Psychiatric HospitalのChing-Hua Lin氏らは、2つの大規模公立精神科病院を退院した時点で第2世代抗精神病薬(SGA)治療を受けていた高齢統合失調症患者を対象に、下剤の併用に関する要因を調査した。その結果、SGAで治療中の高齢統合失調症患者では、下剤使用率が高いことが報告された。著者らは、臨床的に重度の便秘の場合、可能であれば便秘リスクの低いSGAへの切り替えや気分安定薬の使用中止などを検討する必要があるとしている。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年7月10日号の報告。 対象は、2006~19年に退院の時点でSGA単剤療法を受けていた高齢統合失調症患者。退院時の定期的な下剤使用に関連する因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。退院時の下剤使用率に有意な時間的傾向があるかを評価するため、コクラン・アーミテージ傾向検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした対象患者2,591例のうち、1,727例を分析に含めた。・1,727例中732例(42.4%)で下剤が併用されていた。・下剤使用の増加と関連が認められた因子は、女性、気分安定薬の使用、糖尿病の合併であった。・SGA別では、クロザピンが最も下剤使用率が高く、次いでゾテピン、クエチアピン、オランザピン、リスペリドンであった。・amisulpride、アリピプラゾール、パリペリドン、スルピリドの下剤使用率は、リスペリドンと同程度であった。・時期別の下剤使用率は、2006年30.8%、2019年46.6%であり、経時的な増加が認められた(z=4.83、p<0.001)。

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驚きの暑中見舞い【Dr. 中島の 新・徒然草】(436)

四百三十六の段 驚きの暑中見舞い先日、患者さんから頂いた暑中見舞い。思いがけないことが書かれており、読むにつれ数ヵ月前のやりとりを思い出しました。そもそもは小さな未破裂脳動脈瘤で、数年来フォローしていた方です。1年に1回の画像検査、幸いなことに動脈瘤自体は大きくなることもありませんでした。でも、その間に息子さんが大学に受かったり、ご両親が病気になったり。それはもう、いろいろな事が彼女に起こりました。そして今年の3月、遠く南の島に引っ越すということで、私のフォローも終わりになりました。患者「脳とは関係ないのですが、ちょっと健診結果をみてもらっていいですか?」中島「ええ」患者「便潜血で引っ掛かって要精密検査になったのですが、本当に必要でしょうか?」たいした事はありませんよ、と言ってもらいたかったのでしょう。中島「すぐに消化器内科受診の手配をしましょう」患者「でも、もう引っ越しが迫っているので無理です」中島「じゃあ、引っ越しした先で必ず内視鏡検査をやってください」「いつになく強い口調で言われた」と葉書にはありました。自分では覚えていないのですが。患者「あの、何があるのでしょうか?」中島「大腸がんがあります」患者「ええっ」中島「今なら間に合いますが、放置したら手遅れになります」患者「そんな!」中島「だから引っ越し先で大変ですが、とにかく精密検査をお願いします」患者「……」あまり「ああかもしれない、こうかもしれない」という話をしても仕方がありません。また、この状況で悪性疾患が潜んでいる率についても、私自身の知識はゼロです。中島「今回のアドバイスが、この何年間かで最も大切なものです。お願いですから検査を受けてください」患者「わかりました」もし引っ越しがなかったら、そのまま院内で消化器内科に紹介して終わりだったのですが。そうできなかったのが歯がゆかったです。で、その事はすっかり忘れていました。今回頂いた暑中見舞いによれば……慣れない土地で医療機関を探して嫌々受診した引っ越し疲れと下剤でヘロヘロになりながら、内視鏡検査を受けたなんと、本当に大腸がんが見つかって治療した!「きれいに取れたので、術後の抗がん剤治療は不要」という説明を受けた実際に治療をした先生と同じくらい、私のほうも感謝されていそうな文面でした。ところで私は「がんがあります」と断言してしまいましたが、実際はどんな確率なのでしょうか?ちょっと調べてみると、便潜血陽性者のうちの2~3%に大腸がんが見つかるのだとか。これを多いと感じるか少ないと感じるかは、人それぞれでしょう。ともあれ、この方の場合は断言して良かったということになります。患者さんの背中を押すのも、我々医師の務めなのかもしれません。最後に1句驚きの 暑中見舞いは 南から

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国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」【下平博士のDIノート】第101回

国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」今回は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬「フィネレノン(商品名:ケレンディア錠10mg/20mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、わが国初の2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の進行を防ぐMR拮抗薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月2日に発売されています。なお、原則としてACE阻害薬またはARBが投与されている患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはフィネレノンとして20mgを1日1回経口投与します。ただし、eGFRが60mL/min/1.73m2未満の場合は10mgから投与を開始し、血清カリウム値・eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量します。なお、血清カリウム値が4.8mEq/L以下の場合は、投与量が10mgでもeGFRが前回の測定から30%を超えて低下していない限り20mgに増量します。一方、血清カリウム値が5.5mEq/L超える場合は投与を中止し、中止後に5.0mEq/Lを下回った場合には、10mgから投与を再開することができます。<安全性>2つの国際共同第III相試験(FIGARO-DKDおよびFIDELIO-DKD)では、安全性解析対象6,510例中1,206例(18.5%)において、臨床検査値異常を含む副作用が報告されました。主な副作用は、高カリウム血症496例(7.6%)、低血圧92例(1.4%)、血中カリウム増加85例(1.3%)、血中クレアチニン増加69例(1.1%)、糸球体ろ過率減少67例(1.0%)などでした。また、重大な副作用として、高カリウム血症(8.8%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬と呼ばれ、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者における心臓や腎臓の機能低下を防ぎます。2.血圧が下がることにより、めまいやふらつきが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意してください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数あります。服用している薬剤や健康食品、サプリメントがあれば報告してください。4.グレープフルーツやグレープフルーツジュースは、薬の効果を強めてしまう恐れがあるため、摂取を避けてください。5.この薬の服用により、血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合はすぐに相談してください。また、カリウムの摂り過ぎや脱水、便秘には注意してください。6.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>近年、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が心腎保護作用の点から注目されています。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)、エプレレノン(同:セララ錠)、エサキセレノン(同:ミネブロ)が発売されています。スピロノラクトンは女性化乳房などの副作用の課題があり、比較的それらの副作用が少ないエプレレノンも、中等度以上の腎機能障害患者(Ccr:50mL/min未満)や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。一方で、エサキセレノンは本剤と同様にステロイド骨格を持たないという特徴がありますが、適応は高血圧症のみとなっています。2つの臨床試験では、CKDステージが軽度~比較的進行した糖尿病性腎症の患者さんに、ACE阻害薬・ARBによる既存の治療を行った上で本剤を投与した結果、主要評価項目である心血管複合エンドポイントの発現リスクは13%、腎複合エンドポイントの発現リスクは18%、プラセボ群に比べ有意に低下させました。こういった結果をもたらした国内で初めてのMR拮抗薬であり、2型糖尿病合併CKDの適応を持つ唯一のMR拮抗薬です。相互作用で注意すべき点として、本剤は主にCYP3A4により代謝されるため、強力なCYP3A4阻害作用を持つ薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を投与中の患者さんには禁忌となっています。また、併用注意の薬剤も多数あるので、併用薬はサプリメント等を含め、細やかに聞き取りましょう。MR拮抗薬といえば血清カリウム値上昇に注意が必要ですが、本剤はACE阻害薬あるいはARBとの併用が原則となっていることから、血清カリウム値のモニタリングが必須となります。対象患者の腎機能について、eGFRが60mL/min/1.73m2未満では投与量に制限があります。また、eGFRが25mL/min/1.73m2未満の場合は、本剤投与によりeGFRが低下することがあるため、リスクとベネフィットを考慮し投与の適否を慎重に判断することとされています。なお、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(同:フォシーガ)が2021年8月にCKDの適応を取得し、カナグリフロジン(同:カナグル)も、2022年6月に本剤と同じ2型糖尿病を合併するCKDに対する適応を取得しています。参考1)PMDA 添付文書 ケレンディア錠10mg/ケレンディア錠20mg

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術後オピオイド、退院後の疼痛への有効性は?/Lancet

 手術後の退院時におけるオピオイドの処方は、オピオイドを使用しない鎮痛レジメンと比較して、退院後の疼痛の強度を軽減しない可能性が高く、嘔吐などの有害事象の有意な増加をもたらすことが、カナダ・マギル大学のJulio F. Fiore Jr氏らの調査で示された。研究の詳細はLancet誌2022年6月18日号に掲載された。退院後の疼痛強度、有害事象をメタ解析で評価 研究グループは、退院時のオピオイド処方が自己申告による疼痛の強度や有害事象にどの程度の影響を及ぼすかを評価する目的で、無作為化臨床試験の系統的レビューとメタ解析を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 1990年1月1日~2021年7月8日の期間にデータベース(MEDLINE、Embase、the Cochrane Library、Scopus、AMED、Biosis、CINAHL)に登録された文献が検索された。 対象は、Physiological and Operative Severity Score for the Enumeration of Mortality and Morbidity(POSSUM)の定義(小手術、中手術、大手術、複雑な大手術)に基づく手術手技を受けた後に退院した年齢15歳以上の患者において、オピオイドを用いた鎮痛とこれを使用しない鎮痛を比較した複数回投与の無作為化対照比較試験とされた。 主要アウトカムは、退院後1日目における自己申告による疼痛強度(0~10cmの視覚アナログ尺度[VAS]で標準化)と、30日以内の嘔吐とされた。変量効果によるメタ解析が行われ、エビデンスの確実性が評価された。不満足度、再受診などには影響がない 47件の試験(合計6,607例、女性59%、平均年齢の範囲21~63歳)が解析の対象となり、36件が退院後1日目の疼痛強度の評価を、12件が手術後の嘔吐のリスクの評価を行っていた。25件(53%)は北米、11件(23%)は欧州の試験であり、30件(64%)は待機的な小手術(63%が歯科)、17件(36%)は中手術(47%が整形外科、29%が一般外科)の試験であった。企業による資金提供を受けた試験が10件(21%)含まれた。フォローアップ期間中央値は7日(IQR:4.25~10.0)だった。 オピオイドの処方は非オピオイド鎮痛薬に比べて、退院後1日目の疼痛を軽減しなかった(加重平均差:0.01cm、95%信頼区間[CI]:-0.26~0.27、エビデンスの確実性:中程度)。この95%CI値は、最小重要差(MID:患者が重要と認識する最小のスコアの変化で、VASの10cmのうち1cmの変化に相当)の閾値の範囲内であり、オピオイドが手術後の疼痛緩和に及ぼす効果が臨床的に意義のある可能性はほとんどないと示唆された。1日目以外の手術後の経過日においても、オピオイドによる疼痛緩和効果は認められなかった。 また、オピオイドの処方は、嘔吐のリスクを増大させた(発生率:10.9% vs.1.3%、相対リスク:4.50、95%CI:1.93~10.51、エビデンスの確実性:高い)。さらに、オピオイド処方により、有害事象全体のリスクが有意に増加(相対リスク:1.78、95%CI:1.20~2.66、エビデンスの確実性:低い)するとともに、吐き気(2.37、1.59~3.55、高い)、便秘(1.63、1.04~2.57、高い)、めまい(2.22、1.20~4.08、高い)、眠気(1.57、1.02~2.42、中程度)のリスクも増加した。 一方、オピオイドの処方は、そのほかのアウトカム(疼痛管理の不満足度、患者転帰[有害事象または治療無効による試験中止]、医療の再利用[再受診]、そう痒、頭痛、錯乱、下痢など)には影響しなかった。 著者は、「これらのエビデンスは、待機的な小手術(歯科、手の処置など)や中手術(低侵襲の整形外科手術、一般外科手術など)を中心とする試験に依拠しており、このような外科的処置ではオピオイドを使用しない鎮痛薬の処方を考慮してよいことが示唆される。また、大手術(肺、腸、肝臓の切除など)または複雑な大手術(胸腹部手術、多臓器切除など)を受け、退院時にオピオイドを含まない鎮痛薬が処方された患者について検討した試験はなく、データの多くがバイアスのリスクが高い試験から得られたものであった。これらの限界を考慮すると、この分野の研究の質を向上させ、領域を広げることがきわめて重要である」としている。

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I型SMAに対するエブリスディ:3年間の新たな成績

 第63回日本神経学会学術大会にて、症候性I型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児を対象にエブリスディの有効性および安全性を検討した、FIREFIS試験の3年間の新たな成績が発表された。 SMAは、脊髄の運動神経細胞が選択的に障害されることによって、体幹や手足の近位部優位の筋力低下や筋萎縮などの症状が現れる。新生児~乳児期(生後0~6ヵ月)に発症するI型は重症型で、一人で坐位を保つことができず、無治療の場合は、1歳までに呼吸筋の筋力低下による呼吸不全の症状をきたす。また、治療をせず、人工呼吸器の管理を行わない状態では、90%以上が2歳までに死亡する。 今回発表されたFIREFISH試験は、I型SMAの乳児(登録時点で月齢1~7ヵ月)を対象にエブリスディの有効性と安全性を評価している。試験は用量設定パートと用量設定パートで選択された用量の安全性有効性評価パートの2パートで構成されている。プールされた母集団には承認用量を3年以上投与した乳児が含まれている。今回の長期成績は、非盲検継続投与期間1年間の成績を含む、3年間の成績である。エブリスディを投与した乳児のうち推定91%が3年後に生存していた。また、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition)の粗大運動スケールの評価で、エブリスディを投与した評価可能な乳児48名のうち32名で、24ヵ月目以降、支えなしで座位を少なくとも5秒間保持する能力を乳児が維持していた。さらに、4名が新たにその能力を獲得した。嚥下能力に関しても、エブリスディを投与した乳児のほとんどが、36ヵ月目まで経口摂取と嚥下の能力を維持していた。 主な有害事象は、発熱(60%)、上気道感染(57%)、肺炎(43%)、便秘(26%)、鼻咽頭炎(24%)、下痢(21%)、鼻炎(19%)、嘔吐(19%)および咳嗽(17%)。主な重篤な有害事象は、肺炎(36%)、呼吸窮迫(10%)、ウイルス性肺炎(9%)、急性呼吸不全(5%)および呼吸不全(5%)であった。肺炎を含む有害事象の発現および重篤な有害事象の発現は経時的に低下し、12ヵ月の投与期間毎に約50%ずつ減少し、投与開始1年目から3年目の間に78%減少していた。全体として、有害事象および重篤な有害事象は基礎疾患を反映したものであり、休薬や投与中止に至った薬剤関連の有害事象は認められなかった。 今後の展開について、FIREFISH試験の5年間の追跡と並行して、リアルワールドデータを集める臨床研究も立ち上がっている。

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モビコール配合内用剤HD新発売、モビコール配合内用剤LDとの違いは?

 EAファーマ、エーザイ、持田製薬は2022年5月20日、慢性便秘症治療薬「モビコール配合内用剤HD」(以下、モビコールHD)を新発売したことを発表した。 モビコールHDは、慢性便秘症治療薬「モビコール配合内用剤LD」(以下、モビコールLD)の2倍量が1包に包装されている高用量製剤だ。そのためモビコールLDを2包単位で使用する患者にとって、アルミ袋の開封操作の手間や経済的負担の軽減、廃棄物の削減が期待できる。 モビコールLDおよびモビコールHD(両規格あわせて以下、本剤)は、2歳以上の小児、成人で使用可能である。モビコールLDおよびモビコールHDの主成分のポリエチレングリコール(マクロゴール4000)が浸透圧効果により腸管内の水分量を増加させ、その結果、便中水分量が増加することで便が軟化、便容積が増大する。それにより、生理的に大腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発化し、排便が促される。また、モビコールLDおよびモビコールHDは水に溶解して服用するため、適切な硬さの便がみられるまで適宜増減が可能なことも特徴だ。 便秘症は、若年層では女性に多く、高齢者では男女ともに罹患比率が高い疾患である。また小児においてはとくに重症化しやすいといわれている。排便回数の減少に加えて、残便感、硬便などの症状が認められ、慢性化することで多くの患者はQOL(生活の質)の低下に悩まされている。EAファーマ、エーザイ、持田製薬は、既存の慢性便秘症治療薬「グーフィス錠5mg」およびモビコールLDに加え、新規格のモビコールHDを販売することで、多様な病態背景を持つ慢性便秘症に対する治療選択肢を広げ、患者やその家族、医療従事者のニーズの充足とベネフィット向上に貢献していく、としている。モビコール配合内用剤LD モビコール配合内用剤HD 製品概要・製品名:モビコール配合内用剤LD、モビコール配合内用剤HD・成分名:マクロゴール4000、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム・効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)・用法・用量:本剤は、水で溶解して経口投与する。 通常、2歳以上7歳未満の幼児には初回用量としてモビコール配合内用剤LD(以下LD)1包を1日1回経口投与する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量としてLD 4包またはモビコール配合内用剤HD(以下HD)2包まで(1回量としてLD 2包またはHD 1包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 1包までとする。 通常、7歳以上12歳未満の小児には初回用量としてLD 2包またはHD 1包を1日1回経口投与する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量としてLD 4包またはHD 2包まで(1回量としてLD 2包またはHD 1包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 1包までとする。 通常、成人および12歳以上の小児には初回用量としてLD 2包またはHD 1包を1日1回経口投与する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量としてLD 6包またはHD 3包まで(1回量としてLD 4包またはHD 2包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 2包またはHD 1包までとする。 ※増量は2日以上の間隔をあけて行うこと・包装:100包・承認年月日:モビコール配合内用剤LD 2018年9月21日       モビコール配合内用剤HD 2021年1月25日・薬価基準収載日:モビコール配合内用剤LD 2018年11月20日         モビコール配合内用剤HD 2021年11月25日・薬価:モビコール配合内用剤LD 1包 75.30円    モビコール配合内用剤HD 1包 131.60円・発売日:モビコール配合内用剤LD 2018年11月29日     モビコール配合内用剤HD 2022年5月20日・製造販売元:EAファーマ株式会社・EAファーマ株式会社とのプロモーション提携:エーザイ株式会社・販売:持田製薬株式会社

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lenacapavir、多剤耐性HIV-1感染症でウイルス量が著しく減少か?/NEJM

 多剤耐性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染症の治療において、画期的新薬(first-in-class)である長時間作用型HIV-1カプシド機能阻害薬lenacapavirはプラセボと比較して、ウイルス量のベースラインからの減少幅が格段に大きく、重篤な有害事象や有害事象による投与中止は認められないため、有望な治療選択肢となる可能性があることが、米国・ニューヨーク・プレスビテリアン・クイーンズ病院のSorana Segal-Maurer氏らが実施した「CAPELLA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年5月12日号に掲載された。11ヵ国42施設の進行中の第III相試験 CAPELLAは進行中の第III相試験で、日本を含む11ヵ国の42施設が参加し、2019年11月~2021年1月の期間に参加者の登録が行われた(米国Gilead Sciencesの助成を受けた)。 対象は、年齢12歳以上、スクリーニング前の少なくとも8週間にわたり薬物療法の失敗(HIV-1 RNA量≧400コピー/mL)が継続し、抗レトロウイルス薬の4つの主要クラス(ヌクレオシド系逆転写阻害薬、非ヌクレオシド系逆転写阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬)のうち少なくとも3剤の投与を受け、このうち2剤以上に耐性となった患者とされた。 被験者は、スクリーニング時からコホート選択の受診時までの血漿中HIV-1 RNA量の変化によって、次の2つのコホートに分けられた。 コホート1(無作為化コホート)では、この期間のウイルス量の減少が0.5 log10コピー/mL未満(治療に反応せずウイルス血症が持続)でコホート選択受診時のHIV-1 RNA量が400コピー/mL以上の患者が、失敗した基礎治療に加え、lenacapavir(1日と2日目に600mg、8日目に300mg)を14日間で経口投与する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた(機能的単剤療法期)。15日以降は、維持期(52週まで)として、最適化された基礎治療とともに、lenacapavir群はlenacapavirの皮下投与が6ヵ月に1回施行され、プラセボ群はlenacapavirの経口投与ののち、皮下投与が行われた。 コホート2(非無作為化コホート)では、同期間のウイルス量の減少が0.5 log10コピー/mL以上(ウイルス血症が軽減)またはコホート選択受診時のHIV-1 RNA量が400コピー/mL未満、あるいはこれら双方の患者が、非盲検下に、全例が最適化された基礎治療とともに、1~14日にlenacapavirの経口投与を受け、その後は同薬の皮下投与が6ヵ月に1回行われた。 主要エンドポイントは、コホート1における15日までにウイルス量が0.5 log10コピー/mL以上減少した患者の割合で、主な副次的エンドポイントは26週の時点でウイルス量が50コピー/mL未満の患者の割合とされた。主要エンドポイント:88% vs.17% 72例(年齢中央値52歳[範囲:23~78]、女性25%、ウイルス量中央値4.5 log10コピー/mL[範囲:1.3~5.7])が登録され、2つのコホートに36例ずつが割り付けられ、コホート1ではlenacapavir群が24例、プラセボ群は12例であった。全体の47%が、抗レトロウイルス薬の4つの主要クラスのすべてに耐性だった。 コホート1の機能的単剤療法期に、ウイルス量が0.5 log10コピー/mL以上減少した患者の割合は、lenacapavir群が88%(21/24例)と、プラセボ群の17%(2/12例)に比べ有意に良好であった(絶対群間差:71ポイント、95%信頼区間[CI]:35~90、p<0.001)。また、15日時のウイルス量の、ベースラインからの変化の最小二乗平均(±SD)は、lenacapavir群が-2.10±0.15 log10コピー/mLであったのに対し、プラセボ群は0.07±0.22 log10コピー/mLと、大きな差が認められた(最小二乗平均群間差:-2.17、95%CI:-2.74~-1.59、p<0.001)。 26週時にウイルス量が50コピー/mL未満の患者の割合は、コホート1が81%(29/36例)、コホート2は83%(30/36例)であり、この間にCD4陽性細胞数が、最小二乗平均でそれぞれ75/mm3および104/mm3増加した。この割合は、両コホートを合わせて、女性(女性94%、男性78%)、50歳未満(50歳未満89%、50歳以上77%)、ベースラインのウイルス量が10万コピー/mL以下の患者(10万コピー/mL以下86%、10万コピー/mL超64%)で高かった。 維持期に、感受性の低下を伴うlenacapavir関連のカプシドの配列置換が8例(コホート1:4例[lenacapavir群1例、プラセボ群3例]、コホート2:4例)で発現し、このうち6例はM66I置換であった。また、lenacapavir耐性となった8例中4例は、lenacapavir投与中にHIV-1 RNA量が再び50コピー/mL未満に減少し、再び減少しなかった4例のうち2例はウイルス血症が持続し、1例は10週時に死亡し、1例は4週時に投与中止となった。 コホート1の機能的単剤療法期に、少なくとも1件の有害事象が発現した患者は、lenacapavir群が38%、プラセボ群は25%であった。この期間に、両群とも重篤な有害事象やGrade3以上の有害事象は観察されず、有害事象による投与中止も認められなかった。両コホートの統合解析では、7例で重篤な有害事象がみられたが、いずれもlenacapavirとの関連は確認されなかった。 lenacapavir関連の注射部位反応は、全体の45例(62%)で認められ、このうち腫脹が31%、疼痛が31%、紅斑が25%、結節形成が24%であった。これ以外の有害事象で頻度が高かったのは、悪心(12%)、便秘(11%)、下痢(11%)、腹部膨満(10%)だった。 著者は、「この試験は症例数が少なく、追跡期間も短いという限界があるが、多剤耐性HIV-1感染症では新たな治療選択肢が求められていることから、長期データの評価を行うために本試験は現在も進行中である」としており、未治療例を対象とする試験や高リスク例に対する予防治療の試験も進められているという。

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