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世界初!「WEB版」気分変動アンケート、その後の臨床に有益

 WEBベースで行う気分変動調査(Mood Swings Questionnaire:MSQ)など自己診断双極性障害スクリーニングの尺度は、高い認容性を有し、良好なアウトカムに結びつくことが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のParker氏らが、WEB自己スクリーニング尺度の臨床への有用性を検討する公式では初となる試験の結果、報告した。Acta Psychiatr Scand誌オンライン版2012年10月5日号の掲載報告。 WEBベースのMSQを完了し双極性障害の可能性があると判定された人が、そのテストを有用だと判断したか、またその後に優れた臨床経過を有したかどうかを検討した。被験者のベースライン時とフォローアップ3ヵ月時点のデータを解析した。主な結果は以下のとおり。・MSQによるスクリーニングで「陽性」であった665例を対象とした。・MSQに対しては、有益である(informative)、有効である(validating)、または動機づけとなる(motivating)との回答がみられ、満足度は高かった。・被験者が双極性障害との診断を受けたのは、最初のうつ病エピソードから平均12年後であった。・大半が、正確な診断を求めたかどうかにかかわらず自己マネジメント戦略を実行した。・被験者を、スクリーニング後にとった行動の程度により3群に分け解析した。その結果、積極的な行動をとった人、診断確認を行った人は、試験期間中に、抑うつ症状、QOL、全体的な身体機能の改善が認められ、最もよい臨床経過をたどった。関連医療ニュース ・100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は… ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用 ・特定の抗うつ薬使用で脳内ヘモグロビン濃度が増加!:名古屋大学

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ボラパクサール、心筋梗塞既往例で上乗せ効果、出血リスクは増大

 心筋梗塞の既往歴のある患者の2次予防において、標準的な抗血栓療法にボラパクサール(国内未承認)を追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制する一方で、中等度~重度の出血のリスクを増大させることが、米国・ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のBenjamin M Scirica氏らが行ったTRA 2°P-TIMI 50試験のサブグループ解析で示された。プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗薬であるボラパクサールは、トロンビンによって誘導されるヒト血小板表面上のPAR-1の活性化に対し拮抗作用を発揮することで、血小板の活性化を阻害する新規の抗血小板薬。心筋梗塞の既往歴を有する安定期の患者の長期的な2次予防におけるボラパクサールの上乗せ効果は不明だという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。標準治療への上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価TRA 2°P-TIMI 50(Thrombin Receptor Antagonist in Secondary Prevention of Atherothrombotic Ischemic Events)試験は、アテローム血栓症(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患)の既往歴のある患者における標準治療へのボラパクサールの上乗せ効果を検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験。今回は、あらかじめ規定されたサブグループとして、心筋梗塞の既往歴(登録前2週~12ヵ月に発症)のある患者の解析を行った。2007年9月~2009年11月まで患者の登録を行い、標準治療(アスピリン、チエノピリジン系薬剤)に加えボラパクサール 2.5mg/日を投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。患者、治療医と医療スタッフ、アウトカムの評価者、解析担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発現とし、intention-to-treat解析を行った。イベントの発生状況はKaplan-Meier法で解析し、群間の比較にはCox比例ハザードモデルを用いた。心血管死、心筋梗塞、脳卒中の推定3年発生率:8.1% vs 9.7%全登録患者2万6,449例のうち心筋梗塞の既往歴を有する患者は1万7,779例で、ボラパクサール群に8,898例(年齢中央値59歳、75歳以上8%、女性21%、アスピリン98%、チエノピリジン系薬剤78%)、プラセボ群には8,881例(同:59歳、8%、20%、98%、78%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は2.5年だった。心血管死、心筋梗塞、脳卒中を発症した患者はボラパクサール群が610例で、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は8.1%と、プラセボ群の750例、推定3年発生率9.7%に比べ有意に低頻度であった[ハザード比(HR):0.80、95%信頼区間(CI):0.72~0.89、p<0.0001]。中等度~重度の出血をきたした患者は、ボラパクサール群が241例で、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は3.4%と、プラセボ群の151例、2.1%よりも有意に頻度が高かった(HR:1.61、95%CI:1.31~1.97、p<0.0001)。頭蓋内出血は、ボラパクサール群では43例にみられ、推定3年発生率は0.6%、プラセボ群は28例、0.4%で、両群間に有意な差はなかった(p=0.076)。その他の重篤な有害事象の発現状況は両群間で同等だった。著者は、「心筋梗塞の既往歴のある患者において、アスピリンを含む標準的な抗血栓療法にボラパクサールを追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制するが、中等度~重度の出血のリスクを増大させる」と結論し、「総合的な臨床ベネフィットはボラパクサール群が良好であり、とくに出血リスクの背景因子の少ない患者ではより良好な予後の改善が達成された」と指摘している。

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アピキサバンのリスク・ベネフィットバランスは?

 すでにアピキサバンは、AVERROES試験により、心房細動患者に対し、アスピリンよりも脳卒中発症を減少させることが明らかになっている。この度、出血パターンや出血リスクを明らかにすることを目的としたAVERROES試験のサブ解析が発表された。その結果、アピキサバンは、アスピリンに比べ、ベースの脳卒中リスクによらず、リスクとベネフィットのバランスにおいて期待できることが明らかとなった。Flaker GC氏らによる報告(Stroke誌オンライン版2012年10月2日号掲載)。AVERROES試験は、脳卒中のリスクを1つ以上有し、ワルファリン不適格である心房細動患者5,599例を対象とした、アピキサバンとアスピリンとの無作為化比較試験である。脳卒中・全身性塞栓症の発症を評価項目とした。今回の解析対象となる出血イベントは、大出血または臨床的に影響のある非大出血の初発とされた。主な結果は以下のとおり。・出血イベントは、アピキサバン群で4.5%/年、アスピリン群で3.8%/年(アピキサバンのHR: 1.18、 95% CI: 0.92~1.51、 p=0.19)であった。・出血部位は両群間で、差異を認めなかった。・共通の出血リスクファクターは、50%超の非調査時におけるアスピリン使用、日常または時折の鼻出血であった。・両群ともに、脳卒中と出血の発生率は、より高いCHADS2スコアで増加した。・アピキサバンはアスピリンと比較し、CHADS2スコアによらず、出血の相対リスクは同程度であり(P interaction 0.21)、脳卒中の相対リスクは減少する傾向があった(P interaction 0.37)。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(29)〕 抗血栓薬やスタチン薬時代においてβ遮断薬の有用性は証明されず

心筋梗塞後の症例に対するβ遮断薬処方は、すでに標準治療として定着している。これは多数のエビデンスに基づいているが、その多くはすでに10年以上以前のものである。はたして、今日のようにPCIが一般的になり、かつスタチン薬や抗血小板薬治療などが普及した今日においてもなお、β遮断薬の有用性はあるのであろうか。またβ遮断薬は、冠動脈疾患症例や高リスク症例に対しても有用と思われがちだが、その有用性は必ずしも証明されている訳ではない。それが本論文におけるメタ解析のアンチテーゼである。 たしかに上記の問題点は臨床上非常に重要であり、興味のあるところである。 本研究は、国際的な観察研究REACH登録での後ろ向き解析である。その結果は予想に反して、心筋梗塞後症例、心筋梗塞を有しない冠動脈疾患および高リスク症例のいずれにおいても、β遮断薬治療群の心血管系予後は非使用群と差がないことを示した。 この結果は、以下のような見方ができる。つまり、現代では一般的になった抗血栓薬や高脂血症治療の普及が大きくイベント発症を抑制し、また、降圧薬も広く普及したためにβ遮断薬の相対的有用性は減少したということである。 ただし、本試験には大きなリミテーションがあることも事実である。後ろ向き解析において、さまざまな交絡因子の影響を調整する、近年頻用されるPropensity scoreという手法が用いられているが、β遮断薬の種類や用量、そしてその既往など、調整しきれない部分も存在していることも考慮する必要があるだろう。また、対象となった症例の年齢層が70歳という高齢者であることも、β遮断薬の効果を発揮させにくくしている要因であるかもしれない。 よって、本試験の結果をもって実臨床に応用するには時期尚早であり、冠動脈疾患に対するβ遮断薬の適応は、個々の病態をみながら判断するべきである。

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100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺、とくに若者で

 英国・Hergest UnitのHealy D氏らは、統合失調症および関連する精神病の死亡動向について、20世紀初頭と直近とを比較するコホート研究(1875~1924年コホートvs.1994~2010年コホート)を行った。その結果、死亡率は4倍に増大しており、最大の死因は自殺であることなどが明らかとなった。筆者は、「死亡率は大幅に増大した。しかしながら特定領域については介入が可能であり、解析データは、早期介入が、統合失調症患者に標準的な寿命を与える可能性があることを示している」とまとめた。BMJ誌オンライン版2012年10月8日号の掲載報告。 2つの疫学的な完全データが入手できる患者コホートを対象とした。コホートの患者は、北ウェールズのメンタルヘルスサービスに関するフォローアップデータが、1年以上、最長10年間存在した。これらのデータを用いて、統合失調症および関連精神病患者の生存率と標準化した死亡率を算出した。 第1コホートは、北ウェールズのデンビー精神病院に、1875~1924年に入院した統合失調症および関連精神病患者3,168例(患者症例ノートの記録からデータを収集)であった。第2コホートは、北西ウェールズ地区総合病院精神科に、1994~2010年に入院(統合失調症および関連精神病による初回入院)した患者355例であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症および関連する精神病による標準化された死亡率は、第1コホートと比べて第2コホートは4倍であった。・第1コホートでは75%、第2コホートでは90%の10年生存の可能性を認めた。・自殺は第2コホートの最も頻度の高い死因であった(SMR 35)。一方で、第1コホートでは、最も頻度の高い死因は結核であった(SMR 9)。・第2コホートのデータでは、高齢者の死亡は心血管系の原因により、若者の死亡は自殺が原因であった。関連医療ニュース ・自殺リスクの危険因子の検証、年齢別のうつ症状との関係は? ・自殺予防に期待!知っておきたいメンタルヘルスプログラム ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

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検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用について、米国・ボストン大学医療センターのNadkarni A氏らが最新の文献レビューを行い、「特定の症例では、服用する向精神薬によって抗凝固療法を変更しなければならない可能性がある」ことを報告した。承認される向精神薬が増加し、ワルファリン療法を受けている患者が同時服用する可能性が増えている。しかし、ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用に関する直近の文献レビューは10年以上前のものしかなかった。Pharmacotherapy誌2012年10月号の報告。 ワルファリンは肝代謝を受けタンパク質との結合が高く、そのためとくに薬物相互作用を受けやすい。加えて、投与される患者は出血や血栓性合併症のリスクがあるなど他の治療と比べて狭い領域をターゲットにしている。そこで、ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用について記述された文献のシステマティックレビュー(MEDLINEを使用)は、チトクロームP450代謝システムと蛋白結合を介して伝達される相互作用に焦点を合て検証した。主な結果は以下のとおり。・ワルファリンと向精神薬の間には重大な相互作用があるが、過小評価されている傾向が示唆された。・これらの相互作用は、安全性と服薬コンプライアンスの両方に対して顕著な影響を及ぼしていた。・ワルファリン療法を受けている患者に特定の向精神薬が投与開始もしくは中止されるとき、あるいは向精神薬の安定投与を受けている患者にワルファリン療法が導入されるとき、臨床医は患者の国際標準比(INR)をモニタリングする必要がある。・ワルファリンとの併用でINRが増大する特定のリスクを引き起こす向精神薬は、フルオキセチン、フルボキサミン、クエチアピン、バルプロ酸などであった。・ワルファリンとの併用でINRを有意に減少させる可能性がある向精神薬としては、トラゾドン、セイヨウオトギリソウ、カルバマゼピンなどがあった。・タバコ成分中の多環芳香族炭素(polycyclic aromatic carbons)もINRを有意に減少させる可能性があった(ただし、ニコチン自体がニコチン置換療法のように、ワルファリン抗凝固効果を変化させることは知られていない)。関連医療ニュース ・抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は? ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は? ・ドネペジル「新たな抗血管新生治療」の選択肢となりうるか?

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STEMI患者の死亡率低下、背景にプライマリPCI実施の増大

 フランス・パリ大学のEtienne Puymirat氏らは、フランスにおける1995~2010年のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の死亡について調査した結果、STEMI患者の全心血管死は減少しており、その要因として、60歳未満の女性STEMI患者の増加、その他人口動態的特徴の変化および再灌流療法および推奨薬物療法の増加が挙げられたと報告した。本調査は、近年のSTEMI患者の死亡低下と、その主な改善要因として再灌流療法の実施が報告されていることを受けて行われた。JAMA誌2012年9月12日号掲載報告より。15年間のSTEMI患者生存改善の要因を調査調査は、15年間のSTEMI患者生存改善の背景要因としての、再灌流療法関連の可能性について評価を目的とした。各1ヵ月間、4期(1995年、2000年、2005年、2010年)にわたって・フランス国内から登録したSTEMI患者(集中治療室または冠動脈疾患集中治療病棟に入院)6,707例を対象とした。主要評価項目は、粗30日死亡率の経年変化。2010年の人口特性で標準化した死亡率についても評価した。15年間でプライマリPCIは11.9%→60.8%に結果、患者の平均年齢は66.2(SD 14.0)歳から63.3(14.5)歳まで低下していた。併せて、心血管イベント歴と共存症歴も低下していた。患者は若年化が認められ、とくに60歳未満の女性(11.8%→25.5%)、現喫煙者(37.3%→73.1%)、肥満(17.6%→27.1%)が増加していた。発症から入院までの時間は、発症から初回救急コールまでの時間が短縮したことで早まっており、集中治療室の利用も増えていた。再灌流療法はプライマリPCIの大幅な増加(11.9%→60.8%)によって、49.4%から74.7%に増加していた。推奨薬物療法(とくに低用量ヘパリンとスタチン)の早期適用も増加していた。粗30日死亡率は、13.7%(95%信頼区間:12.0~15.4)から4.4%(同:3.5~5.4)まで減少していた。一方、標準化死亡率は11.3%(同:9.5~13.2)から4.4%(同:3.5~5.4)まで減少した。多変量解析の結果、1995年から2010年の死亡率低下は、臨床特性に加えて初期の集団リスクスコアおよび再灌流療法利用について補正後も一貫して認められた。1995年に対する2010年の死亡オッズ比は0.39(95%信頼区間:0.29~0.53、p<0.001)であった。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!

非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う心原性塞栓による脳梗塞は、中大脳動脈などの主要動脈の急性閉塞による発症が多いため、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に比べて梗塞範囲が大きく、救命された場合でも後遺症による著しいADLの低下を招きやすい。周術期の肺血栓塞栓症同様に、予防が重要である。心房細動患者の脳梗塞発症率は、発作性、持続性の病型による差はなく同等であるが、併存疾患や年齢によって梗塞リスクが異なり、リスク定量化の試みがなされている。2010年のESC心房細動管理ガイドラインから、従来のCHADS2スコアの欠点(低リスク例の層別化が不十分)が改善されたCHA2DS2-VAScスコアが採用されている。CHA2DS2-VASCスコアは、0 pointでは脳梗塞発症率が0%で、CHADS2スコアよりも低リスクを判別できて、抗凝固療法を必要としない例を効率よく除外できる。 ワルファリンは、きわめて有用・有効な抗凝固薬であるが、安全治療域が狭く、至適投与量の個人差が大きいうえ、多くの食品、薬物と相互作用があるなどの欠点を持っている。ワルファリンコントロールに繊細なコントロールが要求される理由のひとつとして、アジア人では、白人に比べて頭蓋内出血の頻度が約4倍高い(Shen AY, et al. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 309-315.)ことがあげられる。ESCガイドライン2010では、出血リスクの評価としてHAS-BLEDスコア(Pisters R, et al. Chest. 2010; 138: 1093-1100.)を用いている。 本研究の結果、CKDを合併したNVAFは、梗塞リスクのみならず、出血リスクも高い特徴があることが明らかになった。従来の評価法のうち、HAS-BLEDスコアには腎機能が含有されるが(A)、CHA2DS2-VAScスコアには含有されていない。本研究の詳細を検討すると、CKD合併NVAFでは、梗塞リスクに対する高血圧(H)、心不全(C)、血管疾患(V)、糖尿病(D)の寄与が有意ではなかった(原著Table 3参照)。本邦でダビガトランの市販後に、腎機能低下患者で致死的な出血合併症を認めたことは記憶に新しい。個々の医師がCKDに高い関心を持つとともに、NVAFに対する抗凝固療法の安全性・有効性をさらに高める、より普遍的なリスク評価法の開発が必要であろう。

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抗凝固療法下の抗血小板療法DAPTよりもクロピドグレル単剤が出血リスクが低い:WOEST試験

心房細動(AF)など、抗凝固療法が必要な患者にステント留置を行う場合、抗血小板療法はアスピリン・クロピドグレル併用(DAPT)よりもクロピドグレル単剤のほうが、心血管系イベントを増加させることなく出血性合併症を有意に抑制することを、WOEST (What is Optimal antiplatelet and anticoagulant therapy in patients with oralanticoagulation and coronary stenting) 試験が明らかにした。この点を検討した初の無作為化試験である。8月28日の「ホットラインIII」セッションにて、聖アントニオ病院(オランダ)のWillem Dewilde氏が報告した。WOEST試験の対象は、抗凝固療法を1年以上継続し、無作為化後すぐに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が予定されていた18歳以上の563例である。重篤な出血既往例は除外されている。平均年齢は70歳、約8割が男性だった。抗凝固療法を必要とする疾患の70%近くをAFが占めた。また抗凝固薬は7割がワルファリンだった。PCIの内訳は、薬物溶出ステントDES(ベアメタルステント [BMS]との併用含む )が70%弱、BMS単独が30%となっていた。これら563例は抗凝固療法を継続のうえ、DAPT群(284例)とクロピドグレル単剤群(279例)に無作為に割り付けられた。DAPT群ではアスピリン80mg/日+クロピドグレル75mg/日、クロピドグレル単剤群では75mg/日を服用した。抗血小板薬の服用期間は、BMS留置例では最低1ヵ月間(最大でも1年間)、DES留置例では最低1年間とした。その結果、一次評価項目である「1年間の全TIMI出血」は、DAPT群:44.9%に対しクロピドグレル単剤群では19.5%と有意に低値となっていた(ハザード比:0.36、95%信頼区間:0.26~0.50;p

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心房細動例においてワルファリンを上回るアピキサバンの有用性──、腎機能低下例でも維持される;ARISTOTLEサブ解析

新規Xa阻害薬アピキサバンは心房細動(AF)例において、腎機能の高低にかかわらず「脳卒中・全身性塞栓症」をワルファリンよりも抑制し、ワルファリンと比較した「大出血」リスクは、腎機能が低下するほど減少する可能性が示された。28日の「クリニカルトライアル&レジストリー・アップデートIII」セッションにて、J.W.ゲーテ大学(ドイツ)のStefan H. Hohnloser氏が、大規模試験ARISTOTLEのサブ解析として報告した。ARISTOTLE試験の対象は、脳卒中リスク因子を有する心房細動患者18,201例である。「血清クレアチニン(Cr)値>2.5mg/dL」あるいは「クレアチニン・クリアランス<25mL/分」の腎機能低下例は除外されている。これら18,201例は アピキサバン群(9,120例)とワルファリン群(9,081例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。アピキサバンの用量は5.0mg×2/日を基本としたが、「血清クレアチニン(Cr)値≧1.5mg/dL+他危険因子」などの出血高リスク例では、2.5mg×2/日に減量した。ワルファリン群の目標INRは、一律「2~3」である。今回の解析では、腎機能の高低別にアピキサバンの有効性と安全性が評価された。腎機能の評価には推算糸球体濾過率(eGFR)を用い、「50 (mL/分/1.73m2)以下」、「50~80 (mL/分/1.73m2)」、「80 (mL/分/1.73m2)超」の3群に分けて比較した。まず有効性として、一次評価項目である「脳卒中・全身性塞栓症」リスクを検討した。全例での検討ではワルファリン群に比べ相対的に21%、アピキサバン群で有意な減少が認められたイベントである。その結果、Cockroft-Gault式、CKD-EPI式、シスタチンCから推算したいずれのeGFRで評価しても、腎機能の高低はアピキサバンによる「脳卒中・全身性塞栓症」作用に有意な影響を及ぼしていなかった。「総死亡」で検討しても同様だった。一方、安全性については、腎機能低下例でアピキサバンがより優れる可能性が示された。Cockroft-Gault式、CKD-EPI式いずれのeGFRで評価しても、アピキサバン群における「大出血」リスクはeGFRが低値となるほど、ワルファリン群に比べ減少する有意な傾向が認められた。そこでCockroft-Gault式、CKD-EPI式で求めた「eGFR」と「大出血リスク」をそれぞれ連続変数としてプロットしてみると、いずれのeGFRも、低下に伴う大出血リスクの増加傾向は、アピキサバン群に比べワルファリン群で有意に大きかった。ただし、シスタチンCから推算したeGFRの高低は、アピキサバン群における大出血リスクに有意な影響を与えなかった。アピキサバン群ではeGFRの高低にかかわらず一貫して、ワルファリン群に比べ有意なリスク減少が観察された。Hohnloser氏は「腎機能の低下したAF例に対し、アピキサバンはワルファリンよりも有効かつ安全かもしれない」と結んだ。関連リンク

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CKDを有する心房細動患者では脳卒中・全身性血栓塞栓症・出血リスクが高い

 デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院のJonas Bjerring Olesen氏らが13万人強のデンマークナショナルレジストリデータを解析した結果、心房細動患者において、慢性腎臓病(CKD)は、脳卒中、全身性血栓塞栓症、出血のリスクを増大することが明らかにされた。また、CKD患者では、ワルファリン治療、アスピリン治療は出血リスクを増大するが、脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクはワルファリン治療によって低下が認められることも報告された。心房細動およびCKDは、脳卒中や全身性血栓塞栓症リスクを増大することが知られている。しかし、これらのリスクや抗血栓治療の影響について、両疾患を有する患者ではこれまで十分に調査されていなかった。NEJM誌2012年8月16日号掲載報告より。デンマーク13万人強のレジストリデータを解析解析は、1997~2008年に非弁膜症性心房細動と診断された入院歴のある全患者を特定し、脳卒中、全身性血栓塞栓症、出血のリスクと、非末期CKDとの関連、および末期CKD(腎代替療法を要するなど)との関連について、時間依存性Cox回帰分析を用いて推定した。また、ワルファリン治療、アスピリン治療の影響、あるいは両治療の影響について、CKDを有する患者と腎疾患を有さない患者とで比較した。解析対象は13万2,372例で、そのうち非末期CKD患者は3,587例(2.7%)、末期CKD患者は901例(0.7%)だった。非腎疾患患者と比較しリスクは1.49~2.70倍非腎疾患患者との比較で、非末期CKD患者は、脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクが有意に増大した(ハザード比:1.49、95%信頼区間:1.38~1.59、p<0.001)。腎代替療法を必要とした患者も同様に増大した。(同:1.83、1.57~2.14、p<0.001)。脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクは、両群(非末期CKD患者、腎代替療法患者)でワルファリン療法受けていた人では有意に低下したが、アスピリン療法を受けていた人では低下しなかった。出血リスクについても、非末期CKD患者(ハザード比:2.24、p<0.001)、腎代替療法患者(同:2.70、p<0.001)で増大が認められ、ワルファリン、アスピリンあるいは両治療を受けている場合はさらに出血リスクの上昇が認められた。

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3つの新規経口抗凝固薬、術後血栓塞栓症の予防に有効だが出血傾向も

3つの新規経口抗凝固薬リバーロキサバン*1、ダビガトラン*2、アピキサバンは、従来の標準治療であるエノキサパリンに比べ、全般的に術後の静脈血栓塞栓症の予防効果が高いが出血リスクも上昇傾向にあることが、スペイン医薬品・医療機器機構(マドリッド市)のAntonio Gomez-Outes氏らの検討で明らかとなった。欧米では、これら3つの新規薬剤は、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療として承認されているが、主要な臨床試験が標準治療では通常行われない下肢の静脈造影所見で評価され、出血の定義が試験によって異なるなどの理由で、臨床アウトカムや相対的な効果、安全性は明確ではないという。また、3剤を直接比較した最新の試験は行われていない。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月14日号)掲載の報告。術後の静脈血栓塞栓症の予防効果をメタ解析で評価研究グループは、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療における新規経口抗凝固薬リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンの臨床アウトカムを評価するために、エノキサパリンとの直接比較試験の系統的レビューおよびメタ解析を実施し、3剤の間接的な比較も行った。データベース(2011年4月現在のMedlineとCENTRAL)、臨床試験登録、学会記録集、規制機関のウェブサイトを検索し、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療における3つの新規抗凝固薬とエノキサパリンを比較した無作為化対照比較試験の論文を選出した。2名の研究者が別個にデータを抽出した。ランダム効果モデルを用いたメタ解析で、症候性静脈血栓塞栓症、臨床的に問題となる出血、死亡、複合エンドポイント(症候性静脈血栓塞栓症、大出血、死亡)の相対リスク(RR)を評価した。3剤に有効性と安全性の差はない16試験(3万8,747例)が解析の対象となった。症候性静脈血栓塞栓症のリスクは、エノキサパリンに比べリバーロキサバンは有意に低かった(RR:0.48、95%信頼区間[CI]:0.31~0.75、p=0.001)が、ダビガトラン(同:0.71、0.23~2.12、p=0.54)とアピキサバン(同:0.82、0.41~1.64、p=0.57)は低い傾向はみられたものの有意差はなかった。臨床的に問題となる出血のリスクは、エノキサパリンに比しリバーロキサバンは有意に高く(RR:1.25、95%CI:1.05~1.49、p=0.01)、ダビガトランは同等で(同:1.12、0.94~1.35、p=0.21)、アピキサバンは有意に低かった(同:0.82、0.69~0.98、p=0.03)。複合エンドポイントは、直接的および間接的な比較のいずれにおいても差はなかった。著者は、「新規の経口抗凝固薬は、エノキサパリンに比べ全般的に静脈血栓塞栓症の予防効果が高かったが、出血リスクも高い傾向がみられた。3つの新規薬剤の有効性と安全性に差は認めなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター) *1商品名:イグザレルト。本邦では人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症発症抑制については未適応。*2商品名:プラザキサ。本邦では人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症発症抑制については未適応。

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ワルファリン服用の急性虚血性脳卒中へのt-PA、症候性頭蓋内出血リスク増大みられず

組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法を行った急性虚血性脳卒中患者の症候性頭蓋内出血リスクについて、ワルファリン服用中の患者のリスクは非服用患者と比べて増大しないことが示された。その他のt-PA合併症や院内死亡率についても、ワルファリン服用による増加は認められなかった。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、約2万4,000人の急性虚血性脳卒中患者について行った観察試験の結果で、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。t-PA静注療法患者について、ワルファリン服用有無で出血リスク増大との関連を分析最近のガイドラインでは、ワルファリン治療中の患者へのt-PA静注は、国際標準比(INR)1.7以下の患者への投与が推奨されているが、ワルファリン服用中の患者に関するt-PA静注療法の安全性に関するデータはほとんどない。そこで研究グループは、ワルファリン服用中患者と非服用患者とを比較する目的で、2009年4月~2011年6月の間に1,203病院で登録されたAHA Get With The Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)レジストリの患者データから、急性虚血性脳卒中を発症した国際標準比(INR)が1.7以下の人で、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)を静注した2万3,437人について観察試験を行った。被験者のワルファリンの服用歴の有無と、症候性頭蓋内出血の発症リスクとの関連を分析した。被験者のうちワルファリン服用中だったのは1,802人(7.7%)で、INR中央値は1.20(四分位範囲:1.07~1.40)だった。ワルファリンを服用していた人は、そうでない人に比べ、高齢で、共存症が多く、脳卒中の程度も重度だった。症候性頭蓋内出血、重度全身性出血、t-PA合併症などいずれも発症率は同等症候性頭蓋内出血の補正前発症率は、ワルファリン服用群が5.7%と、ワルファリン非服用群の4.6%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。しかし、試験開始時点における臨床的因子で補正後は、両群の同発症率に有意差は認められなかった(補正後オッズ比:1.01、95%信頼区間:0.82~1.25)。 ワルファリン服用群と非服用群では、重度全身性出血率(補正後オッズ比:0.78、同:0.49~1.24)、t-PA合併症率(同:1.09、同:0.93~1.29)、院内死亡率(同:0.94、同:0.79~1.13)のいずれも有意な差は認められなかった。INR 1.7以下のワルファリン服用患者への血栓溶解療法は、症候性頭蓋内出血リスクと統計的に有意な関連は認められなかった(補正後オッズ比:INR 0.1増大につき1.10、95%信頼区間:1.00~1.20、P=0.06)。 (當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」

座長 清原 祥夫氏 (静岡がんセンター 皮膚科)中川 秀己氏(東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座)ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果についてはいまだ賛否両論がある。現在までにいくつかの臨床試験の結果が報告されており、システマティックレビューとメタ分析が行われた。ここでは、主にチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状の特徴と対処法、抗体医薬使用時の注意すべき副作用について前編、後編に分けてレポートする。皮膚科医とチロシンキナーゼ阻害薬・抗体医薬の関わりとは?本教育講演では、まず、自治医科大学皮膚科学教室 大槻マミ太郎氏が分子標的薬の概要について講演を行った。初めに、大槻氏は、今後、シェアを確実に伸ばしていく薬剤として低分子のチロシンキナーゼ阻害薬や高分子の抗体医薬などを挙げ、これらの薬剤がターゲットを絞り込む分子特異的治療の両輪となっていると述べた。キナーゼ阻害薬は主に抗がん剤として用いられており、皮膚科領域でも、悪性黒色腫などに対する開発に期待が高まっている一方、現時点では、その副作用として高頻度に発現する皮膚症状とその対処法に注目が集まっている。また、抗体医薬は免疫疾患のQOL改善に貢献度が高く、皮膚科では乾癬治療薬としてTNFαやIL-12、IL-23を標的とした生物学的製剤に期待が寄せられているが、ほかの適応疾患における使用により、乾癬型の薬疹の発現が報告されており、その対処も議論されている。このことを踏まえ、乾癬の治療に関しては、新しい分子標的薬は標的がピンポイントであるため、副作用も絞り込まれると期待されているが、特定の経路のみ抑制すると別の経路が活性化される可能性があり、未知なる「逆説的副作用」が生じる可能性がある。一方で、シクロスポリンなど作用点は多岐にわたるがさまざまな経路を幅広く抑制しうる薬剤は、副作用も経験的に熟知されており、古典的であるがゆえに、使い勝手の良い薬剤ともいえる、と大槻氏は述べた。EGFR阻害薬の皮膚症状と対処法:主にざ瘡様発疹について滋賀医科大学皮膚科学講座 藤本徳毅氏はEGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬による皮膚症状と対処法について、考察を述べた。EGFR阻害薬には、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ(同:タルセバ)などのチロシンキナーゼ阻害薬と、セツキシマブ(同:アービタックス)やパニツムマブ(同:ベクティビックス)などのモノクローナル抗体があり、非小細胞肺がんや大腸がん、膵がんなどに使用されている。これらの薬剤は、EGFRシグナルを阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制し、原疾患への効果を発揮する。一方でEGFRは正常皮膚の表皮基底細胞や外毛根鞘細胞などにも発現することがわかっており、EGFR阻害により、活性化EGFRが減少し、ケラチノサイトの角化異常、角質の菲薄化、角栓の形成が亢進することで高頻度で皮膚障害が生じると言われている。EGFR阻害薬の皮膚症状としては、主にざ瘡様発疹や乾皮症、爪囲炎などが多く、稀なものとしては脱毛性病変などが挙げられる。これら皮膚症状は、重症度が高いほど、原疾患に対するEGFR阻害薬の有効性が高い、つまり生存期間が長いことが示されており、治療効果をはかる指標となる可能性も示唆されている。ざ瘡様発疹の対処法とは?続いて、それぞれの皮膚障害の特徴や対処法について言及した。ざ瘡様発疹はEGFR阻害薬投与後、数日で発現し、4~6週でピークを迎え、6~8週で軽快するケースが多い。また、顔面や体幹に好発し、掻痒や疼痛を伴うが面疱は認められず、大半が無菌性であると言われている。藤本氏は、ざ瘡様発疹は高頻度に発現することがわかっているが、チロシンキナーゼ阻害薬よりもモノクローナル抗体のほうが重症な皮疹が出る印象がある、とつけ加えた。重症度については、日本臨床腫瘍研究グループによって公表されている「有害事象共通用語規準ver4.0 日本語訳JCOG版」(CTCAE v4.0 - JCOG)を用いるのが一般的である。ここでは、体表面積と社会的要素を中心に5段階のGradeに分類されている。ほかにも、各製品の適正使用ガイド等に、掻痒、疼痛の有無によるGradeの目安や発疹出現時の用量調節の基準などが掲載されており、参考にできるとした。対処法については、基本的に、皮膚症状による薬剤の休薬や減量は避けたいとしながら、確立していないものの経験的に実施されているいくつかの治療法について紹介した。ざ瘡様発疹の場合、炎症性ざ瘡の治療に準じて、外用抗菌薬が用いられる。また、局所療法の1つとして、ステロイド外用薬が使用されており、藤本氏は、顔面については、Grade2の場合はstrong class、Grade3でvery strong classを使用すると述べた。しかし、これまでの国内外の文献を見てみると、その評価は一定していないことにも触れ、ステロイド外用薬は即効性はあるが、上手に使いこなすことが重要であると強調した。さらに、Grade2以上または細菌感染合併例には、テトラサイクリン系抗菌薬内服(とくにミノサイクリン)が有効であることも述べた。ミノサイクリンに関しては、海外から、「6週間程度の服用を推奨する」、「皮膚症状の予防効果がある」などの報告がある一方で、「そのエビデンスレベルは不明」とする報告もあるとした。ほかにも、免疫抑制剤の外用薬を使用し、有効性が認められた報告やアダパレンゲルについても言及したが、いずれも一定の評価は得られていないとした。その他の副作用への対処法は?乾皮症は4~35%程度の発現頻度であり、EGFR阻害薬投与後、1~2ヵ月で症状が発現することが多い。治療としては、まずはヘパリン類似物質やワセリン、尿素製剤外用などによって保湿を行い、効果が得られない場合は、ステロイド外用薬を併用する。この症状に関しては、保湿による予防が重要である、と述べた。また、爪囲炎は6~12%程度の発現頻度であり、薬剤投与後2~4ヵ月くらいから見られる症状である。基本的には、浸出液が見られる場合、洗浄、クーリング、テーピング、保湿剤等による処置を行うが、発赤や腫脹が見られる場合には、初期から、very strong~strong classのステロイド外用薬を積極的に用いることが重要である。そのほか、細菌感染合併例には短期間のミノサイクリン内服、さらに外科的処置として部分抜爪や人口爪も考慮されるとした。毛髪異常に関しては、薬剤投与開始後2、3ヵ月で見られることが多いが、頻度は不明であり、中にはまつ毛や眉毛が伸びる症例も見られる。基本的には、EGFR阻害薬を中止しないことには改善しないが、患者さんからの訴えも多くはないため、中止・休薬するケースは少ないと述べた。このようなEGFR阻害薬による皮膚症状では、予防が重要であると言われている。スキンケアの指導は、清潔、保湿、刺激からの保護を基本とし、たとえば、「保湿剤はこすらずに、手のひらでおさえて塗る(スタンプ式塗布)」「外出時は日焼け止めを使用する」「爪は長く伸ばしてまっすぐ切る」などこまめな指導が必要となってくる。藤本氏は、これらスキンケアの方法を患者にわかりやすく説明し、薬剤の写真が入った説明書を配布するなどして、皮膚症状が出ても患者があわてずにすむように指導を行うことも重要である強調し、講演を締めくくった。

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特発性静脈血栓塞栓症の再発予防にアスピリン投与は臨床的ベネフィットあり

誘因が認められない非誘発性静脈血栓塞栓症を発症した患者に対し、アスピリン投与は、出血リスクを明らかに増大することなく再発リスクを有意に減らすことが報告された。イタリア・ペルージャ大学のCecilia Becattini氏らが行った無作為化試験の結果による。非誘発性静脈血栓塞栓症患者では、経口抗凝固療法中止後2年以内に再発する人が約20%を占め、抗凝固療法を延長することで再発は予防し得るものの、出血リスクが増大することが報告されていた。一方アスピリンの再発予防へのベネフィットについては、明らかになっていなかった。NEJM誌2012年5月24日号掲載報告より。403例をアスピリン群100mg/日とプラセボに割り付け2年間投与追跡Becattini氏らは、2004年5月~2010年8月の間に初発の特発性静脈血栓塞栓症を発症し6~18ヵ月の経口抗凝固療法を完了した403例を対象に多施設共同研修者主導二重盲検無作為化試験を行った。205例はアスピリン群(100mg/日)に、197例はプラセボ群に割り付けられ、2年間治療が行われた(1例はプラセボ群に無作為化後、治療開始前に死亡となった)。試験治療期間はオプションで延長可能とした。主要有効性アウトカムは、静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムを大出血とした。アスピリン群の再発は約半減と有意に減少試験期間中央値24.6ヵ月の間に、アスピリン群205例のうち28例が、プラセボ群197例のうち43例で静脈血栓塞栓症の再発が認められた。年間発症率はアスピリン群6.6%、プラセボ群11.2%で、ハザード比は0.58(95%信頼区間:0.36~0.93、P=0.02)であった。投与期間中央値23.9ヵ月の間の再発は、アスピリン群23例、プラセボ群39であった。年間発症率はそれぞれ5.9%、11.0%で、ハザード比は0.55(95%信頼区間:0.33~0.92、P=0.02)であった。各群それぞれ1例の大出血事例があった。有害事象は両群で同程度であった。

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医師やケースマネジャーへの教育で、ACSのエビデンスに基づく治療実施率が増大

ブラジルの公立病院で、急性冠症候群(ACS)の治療に関し、医師向けの教育資料やケースマネジャーの訓練といった質改善プログラムの介入を行うことで、エビデンスに基づく治療を受ける患者の割合は、有意に増大することが明らかにされた。ブラジル・Research Institute HCorのOta’vio Berwanger氏らが行った、BRIDGE-ACS(Brazilian Intervention to Increase Evidence Usage in Acute Coronary Syndromes)試験の結果で、JAMA誌2012年5月16日号で発表した。先行研究から、ACSの患者は、特に低・中所得国の医療現場でエビデンスに基づく治療を受けていない現状が明らかになっていた。医師向け教育資料やリマインダー、処理手順などで介入研究グループは、ブラジル34ヵ所の公立病院を通じたクラスター無作為化試験で、ACSの患者1,150人について、2011年3月15日~11月2日に調査を開始し、2012年1月まで追跡した。試験対象病院を無作為に2群に分け、一方に対しては、医師向けの教育資料、リマインダー、アルゴリズム(治療手順)、ケースマネジャーの訓練などを行い、エビデンスに基づく治療の実施を促した。もう一方のコントロール群は通常ケアが行われた。主要エンドポイントは、来院24時間以内にエビデンスに基づく治療(アスピリンやクロピドグレル、抗凝固薬、スタチンの投与など)を受けた適格患者の割合とした。被験者の平均年齢は62歳(標準偏差:13)、うち男性は68.6%、ST上昇型心筋梗塞は40%、非ST上昇型心筋梗塞は35.6%、不安定狭心症は23.6%だった。エビデンスに基づく治療、介入群で約7割、コントロール群で5割結果、24時間以内にエビデンスに基づく治療を受けた人の割合は、コントロール群が49.5%に対し、介入群が67.9%と高率だった(母集団平均オッズ比:2.64、95%信頼区間:1.28~5.45、p=0.01)。また、エビデンスに基づく治療を、24時間以内と、退院時にも受けた人の割合は、コントロール群が31.9%に対し、介入群は50.9%と高率だった(母集団平均オッズ比:2.49、同:1.08~5.74、p=0.03)。全体の複合遵守スコアは、コントロール群が81.4%に対し介入群は89%と、平均格差は8.6%(同:2.2~15.0)だった。院内心血管イベント率は、介入群5.5%に対しコントロール群7.0%(同:0.72、0.36~1.43)、30日時点の全死因死亡率は、7.0%対8.4%(同:0.79、0.46~1.34)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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第34回 日本血栓止血学会学術集会のご案内 会長の内山氏より

2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会が行われます。会長の内山真一郎氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会を会長として主催致します。本学会のテーマは「血栓症への挑戦」です。血栓症は世界の死因の3割を占める人類最大の疾患です。私は日本人に最も多い血栓症である脳卒中を専門としていることから、このようなテーマを選びました。脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈疾患といった動脈血栓症や、深部静脈血栓症や肺塞栓症といった静脈血栓症は、死亡や身体障害の主要な原因となっていることから社会的な関心も高く、このようなテーマを本学会で取り上げることは国民のニーズに答える意味でも意義が大きいと考えます。血栓症はあらゆる臓器の障害を生じることから、極めて多岐にわたる診療科が関与しており、学際的な疾患病態であるといえます。平成23年3月11日、我が国は未曽有の大震災に見舞われ、多くの人命が失われました。この東日本大震災では、震災後に血栓症による心血管死も多く発生したことが報じられています。そこで、本学術集会では、特別企画として「震災関連死と血栓症」について取り上げました。抗血栓薬は長い間、アスピリン、ワルファリン、へパリンの時代が続きましたが、近年、分子標的薬が次々と開発され、新規抗血栓薬が臨床現場でも使用されるようになり、抗血栓療法は新時代を迎えています。また、血管内治療も新たなデバイスが次々と開発され、著しい進歩がみられます。本学術集会では、基礎と臨床のクロストークによる活発な議論が展開され、日本発の多くのトランスレーショナルリサーチが芽生えるような契機となればと願っています。特別講演として、ミシガン大学のHassouna先生には抗リン脂質抗体症候群について、ボストン大学のHylek先生には新規抗凝固薬について、京都大学の江藤浩之先生にはiPS細胞研究の血栓止血領域への応用について講演をしていただきます。また、会長要望シンポジウムとして「脳動脈再開通療法の進歩」と題して、脳梗塞急性期治療に大変革をもたらそうとしている血管内治療を取り上げました。さらに、多くの教育講演、関連学会との合同シンポジウム、SPCシンポジウム、共催シンポジウムが予定されています。会場となるハイアットリージェンシー東京は、東京のどこからもアクセスが便利な新宿駅に近く、新宿駅周辺には無数のショップやレストランがあり、歓楽街の歌舞伎町も至近距離であり、学会と同時に国際都市東京のエンターテインメントも存分にお楽しみいただければと存じます。皆様の御来場を心よりお待ちしております。 第34回日本血栓止血学会学術集会会長 内山 真一郎東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授

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ワルファリン投与終了後のアスピリン投与で静脈血栓塞栓症の再発は予防可能か?

Becattini氏らWARFASA研究グループは24日、抗凝固療法を中止した、誘因のない静脈血栓塞栓症患者に対するアスピリン投与により、再発リスクが低下することをNEJM誌に発表した。アスピリンの投与による重大な出血のリスクに明らかな上昇は認められなかった。約 20%の静脈血栓塞栓症患者は、経口抗凝固療法を中止後 2 年以内に再発すると言われている。抗凝固療法の投与期間延長によって再発予防は可能だが、出血リスクが伴う。WARFASA研究グループは多施設二重盲検試験にてアスピリンによる静脈血栓塞栓症の再発予防のベネフィットを検証した。誘因のない初発の静脈血栓塞栓症に対し、 6~18 ヵ月間の経口抗凝固療法を終了した患者が、アスピリン 100 mg/日とプラセボが投与される群に無作為に割り付けられた。主要有効性評価項目は静脈血栓塞栓症の再発、主要安全性評価項目は重大な出血。主な結果は下記のとおり。1. 試験期間中(中央値:24.6 ヵ月)、 静脈血栓塞栓症が再発した患者は、  アスピリン群 205 例中 28 例(6.6%/年)、プラセボ群 197 例中 43 例(11.2%/年)。  ハザード比 0.58(95%信頼区間:0.36~0.93)。2. 治療期間中(中央値: 23.9 ヵ月)、 アスピリン群 23 例(5.9%/年)、 プラセボ群 39 例(11.0%/年)で再発が認められた。 ハザード比 0.55(95%信頼区間:0.33~0.92)3. 各群 1 例に重大な出血が発現。有害事象は両群で同様。 (ケアネット 藤原 健次)

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高齢心房細動患者、脳卒中発症リスクは女性が男性より高い

65歳以上の心房細動患者の脳卒中リスクについて男女差を調べた結果、女性が男性に比べて高いことが明らかにされた。カナダ・McGill University Health CenterのMeytal Avgil Tsadok氏らが、心房細動で入院した高齢者7万人超について行った地域住民ベースのコホート試験の結果で、JAMA誌2012年5月9日号で発表した。女性が男性より高齢、CHADS2スコアも高値同研究グループは1998~2007年にかけて、カナダのケベック州で、心房細動で入院した65歳以上の男性3万9,398人、女性4万4,115人についてコホート試験を行い、ワルファリンの服用傾向や脳卒中発症リスクの男女差について比較した。入院時の年齢中央値は、男性が77.2歳に対し、女性は80.2歳と高齢だった。CHADS2スコア平均値も、男性が1.74(SD:1.13)に対し女性は1.99(同:1.10)と高かった(p<0.001)。共存症やCHADS2スコア補正後の脳卒中発症リスク、女性が男性の1.14倍退院後30日時点で、ワルファリンを処方されていた割合は、男性が58.2%に対し、女性は60.6%だった。多変量解析の結果、女性は男性に比べ、より多くのワルファリンを処方されていた(オッズ比:1.07、95%信頼区間:1.04~1.11、p<0.001)。男女ともに、ワルファリンのアドヒアランスは高かった。脳卒中発症率についてみると、補正前では、男性が1.61/100人・年(同:1.54~1.69)に対し、女性のほうが2.02/100人・年(同:1.95~2.10)と高かった(p<0.001)。男女間の差は、主に75歳以上の患者が占める割合によるものだった。試験開始時の共存症やCHADS2スコアの各項目、ワルファリン治療について補正後も、多変量コックス回帰分析の結果で女性の脳卒中リスクは男性より高かった(補正後ハザード比:1.14、同:1.07~1.22、p<0.001)。結果を踏まえてTsadok氏は、「臨床家は、高齢の女性心房細動で脳卒中リスクが高いことを意識しなければならず、男女の脳卒中予防が同等となるように新たな治療戦略を適用していかなければならない」と述べている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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妊娠中と産後の女性、DVTスクリーニングに単回の圧迫超音波検査が有効

深部静脈血栓症(DVT)が疑われる妊娠中および出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は、安全で合理的なスクリーニング法であることが示された。同スクリーニングで陰性でありながら、後にDVTの診断を受けた人の割合は1.1%と低かったという。フランス・Cavale Blanche大学のGregoire Le Gal氏らが、妊娠中・出産後の女性200人超について行った前向き試験で明らかにしたもので、BMJ誌2012年5月5日号(オンライン版2012年4月24日号)で発表した。妊娠はDVTのリスク因子であることが知られているが、一方で妊婦はDVTでなくても、それと似た症状を発症することが少なくないことも知られている。フランスとスイスの18ヵ所で210人を検査し追跡同研究グループは、フランスとスイスの18カ所の血管治療専門医療機関で、DVTが疑われた妊娠中または産後の女性226人について、単回の圧迫超音波検査によるDVTスクリーニングを行い、その後のDVT発症の有無について追跡した。被験者のうち16人は、主に肺血栓塞栓症の疑いにより、除外された。残った210人の、年齢中央値は33歳(四分位範囲:28~37)、妊娠中の女性は167人、出産後の女性は43人だった。当初DVT診断を受けなかった177人のうち、2人がDVT発症被験者のうち、圧迫超音波検査などでDVTの診断を受けたのは22人(10.5%)だった。また、同検査結果が陰性だった人のうち10人は、標準用量の抗凝固療法を行った。DVTの診断を受けず、また十分な抗凝固療法を行わなかった177人について、3ヵ月間追跡調査を行った。追跡期間中にDVTの診断を受けたのは、2人(1.1%、95%信頼区間:0.3~4.0)だった。同割合は、これまでに妊娠していない患者について行った静脈造影法によるDVTスクリーニングで、陰性でありながら後にDVTの診断を受けた割合と同等だった。研究グループは、「妊娠中または出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は安全で有効なDVTスクリーニングである」と結論付けた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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