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第34回 日本血栓止血学会学術集会のご案内 会長の内山氏より

2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会が行われます。会長の内山真一郎氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会を会長として主催致します。本学会のテーマは「血栓症への挑戦」です。血栓症は世界の死因の3割を占める人類最大の疾患です。私は日本人に最も多い血栓症である脳卒中を専門としていることから、このようなテーマを選びました。脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈疾患といった動脈血栓症や、深部静脈血栓症や肺塞栓症といった静脈血栓症は、死亡や身体障害の主要な原因となっていることから社会的な関心も高く、このようなテーマを本学会で取り上げることは国民のニーズに答える意味でも意義が大きいと考えます。血栓症はあらゆる臓器の障害を生じることから、極めて多岐にわたる診療科が関与しており、学際的な疾患病態であるといえます。平成23年3月11日、我が国は未曽有の大震災に見舞われ、多くの人命が失われました。この東日本大震災では、震災後に血栓症による心血管死も多く発生したことが報じられています。そこで、本学術集会では、特別企画として「震災関連死と血栓症」について取り上げました。抗血栓薬は長い間、アスピリン、ワルファリン、へパリンの時代が続きましたが、近年、分子標的薬が次々と開発され、新規抗血栓薬が臨床現場でも使用されるようになり、抗血栓療法は新時代を迎えています。また、血管内治療も新たなデバイスが次々と開発され、著しい進歩がみられます。本学術集会では、基礎と臨床のクロストークによる活発な議論が展開され、日本発の多くのトランスレーショナルリサーチが芽生えるような契機となればと願っています。特別講演として、ミシガン大学のHassouna先生には抗リン脂質抗体症候群について、ボストン大学のHylek先生には新規抗凝固薬について、京都大学の江藤浩之先生にはiPS細胞研究の血栓止血領域への応用について講演をしていただきます。また、会長要望シンポジウムとして「脳動脈再開通療法の進歩」と題して、脳梗塞急性期治療に大変革をもたらそうとしている血管内治療を取り上げました。さらに、多くの教育講演、関連学会との合同シンポジウム、SPCシンポジウム、共催シンポジウムが予定されています。会場となるハイアットリージェンシー東京は、東京のどこからもアクセスが便利な新宿駅に近く、新宿駅周辺には無数のショップやレストランがあり、歓楽街の歌舞伎町も至近距離であり、学会と同時に国際都市東京のエンターテインメントも存分にお楽しみいただければと存じます。皆様の御来場を心よりお待ちしております。 第34回日本血栓止血学会学術集会会長 内山 真一郎東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授

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ワルファリン投与終了後のアスピリン投与で静脈血栓塞栓症の再発は予防可能か?

Becattini氏らWARFASA研究グループは24日、抗凝固療法を中止した、誘因のない静脈血栓塞栓症患者に対するアスピリン投与により、再発リスクが低下することをNEJM誌に発表した。アスピリンの投与による重大な出血のリスクに明らかな上昇は認められなかった。約 20%の静脈血栓塞栓症患者は、経口抗凝固療法を中止後 2 年以内に再発すると言われている。抗凝固療法の投与期間延長によって再発予防は可能だが、出血リスクが伴う。WARFASA研究グループは多施設二重盲検試験にてアスピリンによる静脈血栓塞栓症の再発予防のベネフィットを検証した。誘因のない初発の静脈血栓塞栓症に対し、 6~18 ヵ月間の経口抗凝固療法を終了した患者が、アスピリン 100 mg/日とプラセボが投与される群に無作為に割り付けられた。主要有効性評価項目は静脈血栓塞栓症の再発、主要安全性評価項目は重大な出血。主な結果は下記のとおり。1. 試験期間中(中央値:24.6 ヵ月)、 静脈血栓塞栓症が再発した患者は、  アスピリン群 205 例中 28 例(6.6%/年)、プラセボ群 197 例中 43 例(11.2%/年)。  ハザード比 0.58(95%信頼区間:0.36~0.93)。2. 治療期間中(中央値: 23.9 ヵ月)、 アスピリン群 23 例(5.9%/年)、 プラセボ群 39 例(11.0%/年)で再発が認められた。 ハザード比 0.55(95%信頼区間:0.33~0.92)3. 各群 1 例に重大な出血が発現。有害事象は両群で同様。 (ケアネット 藤原 健次)

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高齢心房細動患者、脳卒中発症リスクは女性が男性より高い

65歳以上の心房細動患者の脳卒中リスクについて男女差を調べた結果、女性が男性に比べて高いことが明らかにされた。カナダ・McGill University Health CenterのMeytal Avgil Tsadok氏らが、心房細動で入院した高齢者7万人超について行った地域住民ベースのコホート試験の結果で、JAMA誌2012年5月9日号で発表した。女性が男性より高齢、CHADS2スコアも高値同研究グループは1998~2007年にかけて、カナダのケベック州で、心房細動で入院した65歳以上の男性3万9,398人、女性4万4,115人についてコホート試験を行い、ワルファリンの服用傾向や脳卒中発症リスクの男女差について比較した。入院時の年齢中央値は、男性が77.2歳に対し、女性は80.2歳と高齢だった。CHADS2スコア平均値も、男性が1.74(SD:1.13)に対し女性は1.99(同:1.10)と高かった(p<0.001)。共存症やCHADS2スコア補正後の脳卒中発症リスク、女性が男性の1.14倍退院後30日時点で、ワルファリンを処方されていた割合は、男性が58.2%に対し、女性は60.6%だった。多変量解析の結果、女性は男性に比べ、より多くのワルファリンを処方されていた(オッズ比:1.07、95%信頼区間:1.04~1.11、p<0.001)。男女ともに、ワルファリンのアドヒアランスは高かった。脳卒中発症率についてみると、補正前では、男性が1.61/100人・年(同:1.54~1.69)に対し、女性のほうが2.02/100人・年(同:1.95~2.10)と高かった(p<0.001)。男女間の差は、主に75歳以上の患者が占める割合によるものだった。試験開始時の共存症やCHADS2スコアの各項目、ワルファリン治療について補正後も、多変量コックス回帰分析の結果で女性の脳卒中リスクは男性より高かった(補正後ハザード比:1.14、同:1.07~1.22、p<0.001)。結果を踏まえてTsadok氏は、「臨床家は、高齢の女性心房細動で脳卒中リスクが高いことを意識しなければならず、男女の脳卒中予防が同等となるように新たな治療戦略を適用していかなければならない」と述べている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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妊娠中と産後の女性、DVTスクリーニングに単回の圧迫超音波検査が有効

深部静脈血栓症(DVT)が疑われる妊娠中および出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は、安全で合理的なスクリーニング法であることが示された。同スクリーニングで陰性でありながら、後にDVTの診断を受けた人の割合は1.1%と低かったという。フランス・Cavale Blanche大学のGregoire Le Gal氏らが、妊娠中・出産後の女性200人超について行った前向き試験で明らかにしたもので、BMJ誌2012年5月5日号(オンライン版2012年4月24日号)で発表した。妊娠はDVTのリスク因子であることが知られているが、一方で妊婦はDVTでなくても、それと似た症状を発症することが少なくないことも知られている。フランスとスイスの18ヵ所で210人を検査し追跡同研究グループは、フランスとスイスの18カ所の血管治療専門医療機関で、DVTが疑われた妊娠中または産後の女性226人について、単回の圧迫超音波検査によるDVTスクリーニングを行い、その後のDVT発症の有無について追跡した。被験者のうち16人は、主に肺血栓塞栓症の疑いにより、除外された。残った210人の、年齢中央値は33歳(四分位範囲:28~37)、妊娠中の女性は167人、出産後の女性は43人だった。当初DVT診断を受けなかった177人のうち、2人がDVT発症被験者のうち、圧迫超音波検査などでDVTの診断を受けたのは22人(10.5%)だった。また、同検査結果が陰性だった人のうち10人は、標準用量の抗凝固療法を行った。DVTの診断を受けず、また十分な抗凝固療法を行わなかった177人について、3ヵ月間追跡調査を行った。追跡期間中にDVTの診断を受けたのは、2人(1.1%、95%信頼区間:0.3~4.0)だった。同割合は、これまでに妊娠していない患者について行った静脈造影法によるDVTスクリーニングで、陰性でありながら後にDVTの診断を受けた割合と同等だった。研究グループは、「妊娠中または出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は安全で有効なDVTスクリーニングである」と結論付けた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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洞調律の心不全患者にはワルファリンとアスピリンのどちらを投与すべきか?(5月2日掲載NEJMオンライン速報版より)

心不全では洞調律であっても、血栓塞栓イベントリスクが高く、ワルファリンやアスピリンが投与されることは少なくない。WARCEF(Warfarin vs. Aspirin in Reduced Cardiac Ejection Fraction)試験の結果、ワルファリンはアスピリンに比べ、虚血性脳卒中の発症リスクを軽減するものの、出血の発症リスクを増大させ、洞調律の心不全患者に対してワルファリン、またはアスピリンのどちらを投与すべきかという疑問に対する決定的なエビデンスは依然存在せず、個々の患者によって考慮すべきであることが、5月2日NEJM誌オンライン速報版に発表された。ワルファリン vs アスピリン:死亡・脳卒中抑制に差なしWARCEF試験に参加した、洞調律の左室駆出率が低下した心不全2,305例が、ワルファリンまたはアスピリンが投与される治療群に無作為に割り付けられた。ワルファリンはINRが2.0-3.5の範囲に収まるよう用量が調整された。患者は平均3.5年間追跡され、追跡期間内の虚血性脳卒中、脳出血、死亡のいずれかの発現を主要評価項目として2つの治療の優劣が比較された。主な結果は下記のとおり。1. 主要評価項目(虚血性脳卒中、脳出血、死亡)の発現に、  両治療間で有意な差は認められなかった。  ● ワルファリン群:7.47/100患者・年  ● アスピリン群:7.93/100患者・年  ハザード比:0.93(95%信頼区間:0.79-1.10、P=0.40)2. 時間が経過するに連れ、ワルファリン群で良好となり、  追跡4年目ではわずかではあるが、有意にワルファリンが  アスピリンを有意に上回った(P=0.046)。3. 虚血性脳卒中の発現リスクは、ワルファリン群はアスピリン群に比べ  有意に少なかった。  ● ワルファリン群:0.72/100患者・年  ● アスピリン群:1.36/100患者・年  ハザード比:0.52(95%信頼区間:0.33-0.82、P=0.005)4. 大出血の発現リスクは、ワルファリン群はアスピリン群に比べ  有意に多かった(P

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抗血栓薬を服薬している脳卒中における至適血圧レベルは?

抗血栓薬を服薬している一過性脳虚血発作または脳卒中既往例において、降圧治療によって頭蓋内出血が有意に減少し、頭蓋内出血の発症は治療中の収縮期血圧レベルが低いほど少ないことが、4月24日にStroke誌オンライン速報版に発表された。この研究結果は国立循環器病研究センター 有馬久富氏らによってまとめられた。抗血栓薬服薬脳卒中既往例⇒血圧が最も低い群で頭蓋内出血発症リスクが最少ACE阻害薬による降圧療法が脳卒中の二次予防に有用かを検証したプラセボ対照二重盲検無作為化比較試験Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study(PROGRESS)に登録された一過性脳虚血発作または脳卒中既往例6,105例のうち、抗血栓薬を服薬していた患者における頭蓋内出血および頭蓋外出血の発症リスクが分析された。主な結果は下記のとおり。1. ベースライン時、4,876例(80%)の患者が抗血栓薬を服薬していた  (アスピリン3,632例、他の抗血小板薬1,021例、抗凝固薬566例)。2. 平均3.9年間の観察期間中、119例の頭蓋内出血、123例の頭蓋外出血が  認められた。3. 抗血栓薬服薬例において降圧療法によって頭蓋内出血は有意に低下。  ○降圧治療群では8.9/4.0mmHg降圧し、頭蓋内出血のリスクを    46%(95%信頼区間:7%-69%)抑制した。  ○プラセボ群では9.3/3.8mmHg降圧し、頭蓋内出血のリスクを    70%(95%信頼区間:39%-85%)抑制した。4. 抗血栓薬服薬例における頭蓋外出血(主に消化管出血)は、  血圧レベルとは関係がなかった。5. 抗血栓薬服薬例において、治療中の収縮期血圧レベルが最も低かった群  (中央値113mmHg)で、頭蓋内出血の発症が少なかった。

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虚血性脳卒中を発症抑制する経口抗凝固剤「イグザレルト錠」発売

バイエル薬品は18日、選択的直接作用型第Xa因子阻害剤(抗凝固剤)「イグザレルト錠10mg/15mg」(一般名:リバーロキサバン)の販売を開始したと発表した。イグザレルトは、独バイエル ヘルスケア社で創製された薬剤で、血液凝固に関して重要な役割を担う第Xa因子を選択的かつ直接的に阻害し、抗凝固効果を発揮する。日本人向けの投与量設定(1日1回15mg、中等度の腎機能障害がある場合は1日1回10mg)に基づく日本のエビデンスであるJ-ROCKET AF試験と、海外で行われたROCKET AF試験の結果から、1日1回1錠の経口投与により非弁膜症性心房細動患者における安全性と虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制効果が確認されたという。また、同剤は投与量調節のための凝固モニタリングが不要で、食物や薬物との相互作用が少ないとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp//scripts/pages/jp/press_release/press_detail.php?file_path=2012%2Fnews2012-04-18-b.html

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肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。4,832例をリバーロキサバン対標準療法に無作為化研究グループによる無作為化薬剤名表示イベント主導型非劣性試験は、深部静脈血栓症の有無にかかわらず、急性症候性肺塞栓症を呈した4,832例を、リバーロキサバン投与群(1日2回15mgを3週間、その後は1日1回20mg)と、標準療法群(エノキサパリン投与後、用量調整ビタミンK拮抗薬を投与)に無作為に割り付け、3、6、12ヵ月時点で比較した。主要有効性アウトカムは、症候性静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムは、重大出血または重大ではないが臨床的に意義のある出血とした。イベント発生率、有害事象とも標準療法を上回る結果結果、リバーロキサバン群は、主要な有効性アウトカムにおいて標準療法群に対し非劣性(非劣性マージン2.0、P=0.003)で、イベント発生率はリバーロキサバン群の50件(2.1%)に対し、標準療法群は44件(1.8%)だった(ハザード比:1.12、95%信頼区間:0.75~1.68)。主要安全性アウトカムは、リバーロキサバン群10.3%に対し標準療法群11.4%の患者に認められた(同:0.90、0.76~1.07、P=0.23)。重大出血は、リバーロキサバン群26例(1.1%)、標準療法群52例(2.2%)で観察された(同:0.49、0.31~0.79、P=0.003)。他の有害事象の発生率は両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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イグザレルト 肺塞栓症治療と深部静脈血栓症、PE再発抑制の適応症に関し、欧州連合の製造販売承認を申請

独バイエル ヘルスケア社は12日、経口抗凝固剤イグザレルト(リバーロキサバン)を成人における肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)の治療、ならびに深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)およびPEの再発抑制の適応症で、欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)に製造販売承認申請を行ったと発表した。リバーロキサバンは、静脈・動脈血栓症の主要な領域の大部分で、すでに承認されている。今回の承認申請は、グローバル第III相臨床試験 EINSTEIN-PEのデータに基づき行われた。試験結果は、今年3月に米国心臓病学会(ACC:American College of Cardiology)第61回年次学術集会で発表され、同時にニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(10.156/NEJMoa1113572)に掲載された。EINSTEIN-PE試験は、リバーロキサバン15mg1日2回を3週間投与した後、20mg 1日1回投与する経口単剤療法と、エノキサパリンを皮下注射した上で、その後、ビタミンK拮抗剤を投与する既存の標準治療法を比較したもの。同試験に参加した急性症候性PE患者4,833人は、3、6または12ヵ月の治療を受けたという。リバーロキサバンは、主要評価項目である症候性DVTと非致死性・致死性PEの複合からなる再発性症候性VTEの減少に関し、既存の標準治療法に少なくとも劣らない有効性を示したとのこと。全体的な出血事象発現頻度は治療グループ間で同程度であったが、重要なことは、リバーロキサバンは重大な出血事象の発現頻度が有意に低かったことだ。EINSTEIN-PE試験は、約1万人の静脈血栓症の治療に関し、リバーロキサバンの安全性と有効性を評価したグローバルEINSTEINプログラムの第III相臨床試験3試験のうちの一つ。ほかの2試験(EINSTEIN-DVT試験とEINSTEIN-EXT試験)は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに一緒に掲載された(10.1056/NEJMoa1007903)。イグザレルトは、2011年12月9日に、成人における急性DVT発症後の治療、ならびに再発性DVTおよびPE発症抑制の適応症に関し、欧州委員会から製造販売承認に関する承認を取得している。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp//scripts/pages/jp/press_release/press_detail.php?file_path=2012%2Fnews2012-04-13.html

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「ACC/AHA末梢動脈疾患診療ガイドライン2011」改訂のポイント

米国心臓病学会財団(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、2005年に策定した末梢動脈疾患(PAD)の診療ガイドラインを見直し、2011改訂版を公表した。5年間で集積されたエビデンスを基に下記についての見直しが図られ、患者管理と予防の新たな臨床判断の指標とすることを促している。足関節上腕血圧比(ABI)、足趾腕血圧比(TBI)検査にかかる勧告見直し禁煙指導に関する勧告見直し抗血小板療法に関する勧告見直し重症肢虚血に対する勧告見直し腹部大動脈瘤に対する勧告見直しガイドライン2011の特徴は、下肢PAD予防と早期発見の重要性がさらに強調されたことである。まず、PADの過少診断を防ぐため、足関節上腕血圧比(ABI)実施対象患者の見直しが行われた。具体的には、2005年版では、対象者のひとつに「70歳以上」があったが、2011年版では、「65歳以上」に改訂された(クラスI、エビデンスレベルB)。その上で、ABI値について、正常値は1.0~1.4、異常値は0.9以下とし、0.91~0.99は境界値と明確に定義した(クラスI、エビデンスレベルB)。また、治療においては、禁煙指導と抗血小板薬に対する変更があった。禁煙指導については、下肢PAD患者に対する心血管イベントの抑制効果のエビデンスは乏しかったものの、医師の介入による禁煙率の上昇という点を評価し、プライマリ・ケア医による積極的な禁煙プログラムの推奨強化を図っている(表1)。薬物療法については、アスピリンおよびクロピドグレルのクラスIとしての位置づけに変更はなかったが、文言の明確化が図られた。新たな推奨項目として、クラスIIaとIIbが加えられた(表2)。重症肢虚血や腹部大動脈瘤に対する、手術とバルーン血管形成術のアウトカムについては、その一方の優位性を示す長期試験結果がないため、患者の個別の状態に応じ、最も適切な動脈瘤修復の方法を選択すべきであるとされた。なお今回の改定では、腎・腸間膜動脈疾患については、新たなエビデンスが乏しいため、同分野における見直しは行われなかった。表1 禁煙指導に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.喫煙者または喫煙歴のある患者は、毎回の診察時にタバコ使用に関する現状について問診を受けるべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.(喫煙者の)患者には、禁煙のために、薬物療法や(または)禁煙プログラムへの紹介を含む禁煙のための計画策定やカウンセリングを行うべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>3.下肢PADの患者で、タバコや他の種類のタバコを使用する人は、診察を受けるすべての医師から禁煙を勧められ、行動療法や薬物療法の提供を受けるべきである。(エビデンスレベルC)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをBからCに変更>4.患者に禁忌や他のやむにやまれぬ臨床適応がない限り、バレニクリン、ブプロピオン、ニコチン置換療法のうち、1つ以上の薬物療法を提供するべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>表2 抗血小板薬と抗血栓薬に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.抗血小板療法は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する。(エビデンスレベルA)<以前の勧告の変更。文言を明確化>2.アスピリン(一般的には75~325mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する、安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをAからBに変更>3.クロピドグレル(75mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や虚血性脳卒中、血管死リスクを減少するための、アスピリンの代替となる安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化>●クラスIIa1.抗血小板療法は、ABIが0.90以下の無症候性の人に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少させる可能性がある。(エビデンスレベルC)<新たな勧告>●クラスIIb1.ABIが0.91~0.99の、ボーダーラインの無症候性の人に対する抗血小板療法が、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する効果があるかどうかについては、まだ立証されていない。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.アスピリンとクロピドグレルの併用は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人で、出血リスクの増大がなく、既知の心血管リスクの高い人を含む、症候性アテローム性下肢PAD患者に対して、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクの減少を目的に考慮しても良い。(エビデンスレベルB)<新たな勧告>●クラスIII(利益なし)1.アテローム性下肢PADの患者に対し、有害心血管虚血イベントのリスク減少を目的に、ワルファリンを抗血小板療法へ追加投与することは、利益がなく、大出血リスクの増大のために、潜在的に有害となる。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。エビデンスレベルをCからBに変更>参照Rooke TW, et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for theManagement of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline):a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart AssociationTask Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 2020-2045.

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がん化学療法中の患者へのsemuloparin、血栓塞栓症イベントを低下

がん化学療法を受けている患者に対するsemuloparinの投与は、重大出血の顕著な増加なく、血栓塞栓症イベント発生率を低下することが明らかにされた。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが、47ヵ国395施設から3,212例を対象とした多施設共同無作為化二重盲検試験の結果による。がん化学療法を受けている患者は、静脈血栓塞栓症のリスクが高いことが知られる。これまで、抗血栓薬の予防処置の臨床上の有益性が支持された試験データは限定的なものだった。NEJM誌2012年2月16日号掲載報告より。静脈血栓塞栓症予防と出血を判定研究グループは、がん化学療法を受けている患者の静脈血栓塞栓症予防について、超低分子量ヘパリンsemuloparinの有効性と安全性を評価することを目的に試験を行った。転移性または局所進行性の固形腫瘍に対する化学療法を受ける患者を、semuloparinを1日1回20mg皮下投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り付け、化学療法のレジメン変更となるまで投与が行われた。主要有効性アウトカムは、あらゆる症候性深部静脈血栓症、あらゆる非致死性肺塞栓症、静脈血栓塞栓症に関連した死亡の複合とした。主要安全性アウトカムは、臨床的意義のある出血(重大および重大でない)とした。血栓塞栓症イベントの発生率を抑え得る治療期間の中央値は3.5ヵ月だった。静脈血栓塞栓症は、プラセボ投与群1,604例のうち55例(3.4%)で発生(リスク比:0.36、95%信頼区間:0.21~0.60、P<0.001)したのと比較して、semuloparin投与群では1,608例のうち20例(1.2%)だった。がんの原発部位、ステージ、ベースラインの静脈血栓塞栓症リスクで定義されたサブグループにおいても、一貫した有効性が認められた。臨床的意義のある出血の発生率は、semuloparin群2.8%、プラセボ群2.0%だった(リスク比:1.40、95%信頼区間:0.89~2.21)。大出血は、semuloparin投与群1,589例中19例(1.2%)、プラセボ投与群は1,583例中18例(1.1%)だった(同:1.05、0.55~1.99)。その他の有害事象の発生率はすべて両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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経口抗凝固療法の自己モニタリング、血栓塞栓イベントを低減

患者自身が検査や用量の調整を行う自己モニタリングによる経口抗凝固療法は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢であることが、英国・オックスフォード大学のCarl Heneghan氏らの検討で示された。ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を受ける患者は増加し続けているが、治療域が狭いため目標とする国際標準化比(INR)を維持するには頻回の検査や適切な用量の調整などを要するという問題がある。自己モニタリングは、その有効性を示す優れたエビデンスがあるものの、臨床導入には相反する見解がみられるという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年12月1日号)掲載の報告。自己モニタリングの意義を検証するメタ解析研究グループは、経口抗凝固薬の患者自身による自己モニタリング(自己検査[検査は患者が行い用量は医師が決める]または自己管理[検査、用量調整とも患者が行う])の意義を検証するために、自己モニタリングと医師によるモニタリングの有効性を比較した無作為化試験のメタ解析を行った。Ovid versions of Embase(1980~2009年)とMedline(1966~2009年)を検索し、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで検索結果を調整した。UK National Research Register and Trials Centralなどで未出版の試験も検索した。抽出された全試験の著者と連絡を取り、死亡までの期間、初回大出血、初回血栓塞栓イベントに関する個々の患者データの提供を求めた。機械弁置換や心房細動の患者についても解析した。年齢別、対照群のケアのタイプ(抗凝固療法専門施設とプライマリ・ケア施設)、自己検査と自己管理、性別について、事前に規定されたサブグループ解析を行った。変量効果モデルで統合ハザード比(HR)を算出した。 血栓塞栓イベントが半減、特に55歳未満と機械弁置換患者で高い効果1992~2006年に患者登録がなされ、2000~2010年に発表された11試験(6,417例、1万2,800人・年)が解析の対象となった。全体の平均年齢は65.0歳(17~94歳)、女性が22%、心房細動患者は53%、機械弁置換患者は35.0%であった。血栓塞栓イベントは、医師によるモニタリング群に比べ自己モニタリング群で有意に減少した(HR:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.85)が、大出血(同:0.88、0.74~1.06)と死亡率(同:0.82、0.62~1.09)は両群間に差はみられなかった。特に、55歳未満の患者(HR:0.33、95%CI:0.17~0.66)と機械弁置換患者(同:0.52、0.35~0.77)で血栓塞栓イベントの抑制効果が高かった。85歳以上の患者(99例)では、自己モニタリングによる合併症の増加はみられず、死亡率は有意に低下した(同:0.44、0.20~0.98)。著者は、「経口抗凝固療法の自己検査および自己管理は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢である」と結論し、「自己管理の選択肢は、適切な医療支援による保護の元で患者に提供すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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DVTに対するカテーテル血栓溶解療法、血栓後症候群を抑制

腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症(DVT)の治療では、低分子量ヘパリンワルファリンによる標準的な抗凝固療法に血栓溶解薬を用いたカテーテル血栓溶解療法(CDT)を併用すると、標準治療単独に比べ血栓後症候群(PTS)の発生率や開存率が有意に改善することが、ノルウェー・オスロ大学病院のTone Enden氏が行ったCaVenT試験で示された。DVTに対する従来の抗凝固療法は、血栓の拡大や再発の予防には有効だが、血栓そのものは溶解させず、多くの患者がPTSを発症するという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月13日号)掲載の報告。カテーテル血栓溶解療法の併用効果を評価する無作為化対照比較試験CaVenT(Catheter-directed Venous Thrombolysis)試験の研究グループは、血栓溶解薬t-PA(アルテプラーゼ)を用いたCDTのPTS抑制効果を評価する非盲検無作為化対照比較試験を実施した。ノルウェー南東部地域の20施設から、腸骨大腿静脈の初回DVTの症状発症後21日以内の18~75歳の患者が登録された。これらの患者が、標準治療のみを行う群あるいは標準治療+CDTを施行する群に無作為化に割り付けられた。両群とも、24ヵ月間の弾性ストッキング(クラスII)の着用が指導された。標準治療は、国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標に、低分子量ヘパリン(ダルテパリン、エノキサパリン)とワルファリンを投与後にワルファリンを単独投与した。CDT群は、低分子量ヘパリンを単独投与し、CDTの8時間前までには投与を中止してCDTを行い、CDT終了1時間後からINR 2.0~3.0を目標に低分子量ヘパリンワルファリンを投与した。CDTは超音波ガイド下に膝窩静脈からカテーテルを挿入し、血栓部位にアルテプラーゼを最長で96時間投与した(最大用量:20mg/24時間)。24ヵ月後のVillaltaスコアによるPTSの発生率および6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率の評価を行った。24ヵ月PTS発生率:55.6% vs. 41.1%、6ヵ月開存率:47.4% vs. 65.9%2006年1月~2009年12月までに209例が登録され、標準治療単独群に108例が、CDT群には101例が割り付けられた。24ヵ月のフォローアップ終了時に、189例[90%、標準治療単独群99例(平均年齢50.0歳、女性38%)、CDT群90例(同:53.3歳、36%)]から臨床データが得られた。24ヵ月の時点におけるPTSの発生率は、標準治療単独群の55.6%(55例)に対しCDT群は41.1%(37例)と有意に低下した(p=0.047)。PTS発生の絶対リスク減少率は14.4%、PTSの発生を1例抑制するのに要する治療数(NNT)は7であった。6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率は、標準治療単独群の47.4%(45例)に比べCDT群は65.9%(58例)と有意に改善した(p=0.012)。CDT関連の出血が20例でみられ、そのうち3例が大出血で、5例は臨床的に意義のある出血だった。著者は、「重度の近位DVTのうち出血リスクが低い患者にはCDTの追加を考慮すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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静脈血栓塞栓症予防に対するapixaban対エノキサパリン

うっ血性心不全、急性呼吸不全、急性関節リウマチなど内科疾患で入院した患者に対し、退院後も静脈血栓塞栓症の予防を目的にapixaban投与を延長して行っても、入院中のみに行うエノキサパリン(商品名:クレキサン)投与と比べて優位性は示されなかったことが報告された。apixaban投与群では、重大出血イベントがエノキサパリン投与群よりも有意に認められたという。米国・ブリガム&ウイメンズ病院のSamuel Z. Goldhaber氏らADOPT試験グループが行った二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)で発表された。apixabanの30日間経口投与群と、入院中エノキサパリン皮下注投与群とを比較本試験は、急性内科疾患で入院した患者について、退院後も静脈血栓症予防のための治療を行うことの有効性と安全性について、apixabanを退院後も延長して投与する長期投与コース群が、エノキサパリンを入院中のみ投与する短期投与コース群と比べて優れていると仮定して行われた。被験者適格は、うっ血性心不全や呼吸不全、その他の内科疾患で緊急入院となった患者で、3日以上の入院が予定され、静脈血栓塞栓症リスク因子(75歳以上、静脈血栓症で6週間以上の抗凝固療法の既往、がん、BMI 30以上など)を1つ以上有した6,528例だった。被験者は無作為に、apixaban 2.5mgを1日2回30日間(入院期間含む)経口投与する群と、入院6~14日にエノキサパリン40mgを1日1回皮下注投与する群に割り付けられた。apixaban長期投与コースの優位性示されず主要有効性アウトカム(30日時点の以下の発生複合:静脈血栓塞栓症関連死、肺塞栓症、症候性の深部静脈血栓症、30日目に計画的に実施された両側圧迫超音波検査で無症候性の近位下肢深部静脈血栓症を検出)は、4,495例(apixaban群2,211例、エノキサパリン群2,284例)について評価された。そのうち、apixaban群での発生は2.71%(60例)、エノキサパリン群では3.06%(70例)で、apixaban群の相対リスクは0.87(95%信頼区間:0.62~1.23、P=0.44)だった。一方、主要安全性アウトカム(出血イベント発生)について、30日までの重大出血イベント発生は、apixaban群0.47%(15/3,184例)、エノキサパリン群0.19%(6/3,217例)で、apixaban群の相対リスクは2.58(同:1.02~7.24、P=0.04)だった。(武藤まき:医療ライター)

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EC-ICバイパス術、2年再発性同側性虚血性脳卒中のリスクを低下せず

症候性アテローム動脈硬化性内頸動脈閉塞(AICAO)で同側性脳虚血の認められる人に対し、抗血栓療法に加えて頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス術を行っても、2年長期の再発性同側性虚血性脳卒中のリスク減少にはつながらないことが示された。米国・ノースカロライナ大学のWilliam J. Powers氏らが、約200人を対象に行った無作為化非盲検試験の結果で、JAMA誌2011年11月9日号で発表した。AICAOで同側性脳虚血の195人を、2年間追跡研究グループは、2002~2010年にかけて、米国とカナダの計49ヵ所の医療センターまたは計18ヵ所のPETセンターにて試験を行った。大半は大学病院の付属施設だった。被験者は195人で、動脈造影によってAICAOが確認され、120日以内に頭部片側症状があり、PETによる同側性脳酸素摂取率増加から血行動態的脳虚血が認められた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(97人)にはEC-ICバイパス術を実施し(手術群)、もう一方の群(98人)は同術を実施しなかった(非手術群)。被験者は全員、抗血栓療法とリスク因子への介入が行われた。主要エンドポイントは、手術群が(1)術後30日間の全脳卒中または死亡、(2)無作為化後2年以内の同側性虚血性脳卒中だった。非手術群または手術群にいながら手術を受けなかった人は、(1)無作為化後30日間の全脳卒中または死亡、(2)無作為化後2年以内の同側性虚血性脳卒中だった。手術群で主要エンドポイント発生率に有意差なく、試験は早期終了結果、本試験は手術による有益性が認められなかったため、早期に中止となった。試験開始2年後までの主要エンドポイント発生率は、手術群21.0%(95%信頼区間:12.8~29.2、20件)に対し、非手術群22.7%(同:13.9~31.6、20件)で、両群発生率に格差は認められなかった(発生率格差:1.7ポイント、95%信頼区間:-10.4~13.8、p=0.78)。なお、30日後同側性虚血性脳卒中の発生率は、手術群が14.4%に対し非手術群は2.0%と、発生率格差は12.4ポイント(同:4.9~19.9)に上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。高用量と低用量の費用対効果を検討 研究グループは、非弁膜症性心房細動患者におけるダビガトラン110mgまたは150mg(1日2回)と、ワルファリンの有益性を評価し、ダビガトランの費用対効果ついて検討を行った。 離散的事象シミュレーションモデルにRE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験で得られた知見を外挿して、定量的な経済的解析を行った。脳卒中リスクが中~高で、ベースラインのCHADS2[うっ血性心不全(CHF)、高血圧(HT)、年齢(Age)75歳以上、糖尿病(DM)、脳卒中(Stroke)/一過性脳虚血発作の既往でスコア化して脳塞栓症リスクを低、中、高に分類]の平均スコアが2.1の5万人の患者を想定し、シミュレーションを実施した。主要評価項目は、質調整生存年(QALY)およびQALY当たりの増分コストとした。INRの管理が良好な施設では費用対効果が低い ワルファリンに比べ、ダビガトランはnet benefitが0.094増加し、QALYは0.146延長した。高用量ダビガトラン(150mg×2回/日)のnet benefitは、ワルファリンに比べ94%増加し、低用量ダビガトラン(110mg×2回/日)よりも76%増加した。経済的解析では、ワルファリンとの比較における高用量ダビガトランの費用対効果比は低用量よりも優れ、延長したQALY当たりの費用は高用量の2万3,082ポンド(約2万6,700ユーロ、3万5,800ドルに相当)に対し、低用量は4万3,074ポンドと高価であった。また、ベースラインのCHADS2スコアが3以上の患者で高用量の費用対効果が優れた。 一方、国際標準化比(INR、検体と標準正常血漿のプロトロンビン時間の比)が良好にコントロールされている施設では、高用量ダビガトランによって延長したQALY当たりの費用は4万2,386ポンドに達し、費用対効果が低かった。 著者は、「ダビガトランは、ワルファリンに比べbenefitとharmのバランスが優れるとの知見を支持する結果が得られた」と結論し、「臨床的にも経済的にも、高用量よりも低用量のほうが高い利益をもたらすサブグループは認めなかった。高用量ダビガトランは、脳卒中リスクの高い患者やINRのコントロールが比較的不良な場合に費用対効果が優れる」と指摘している。

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チョコレート高摂取による心血管代謝障害の抑制効果が明らかに

チョコレートの摂取量と心血管代謝障害(cardiometabolic disorder)の発生リスクには実質的な関連が認められることが、英国・ケンブリッジ大学のAdriana Buitrago-Lopez氏らの検討で示された。WHOによれば2030年までに約2,360万人が心血管疾患で死亡するとされ、現在、世界の成人の約5分の1が、糖尿病や心血管疾患の増加をもたらすメタボリック症候群に罹患しているとの研究結果もある。近年、心血管代謝障害が世界的に増加しているが、その多くは予防可能と考えられており、ココアやチョコレートは降圧、抗炎症、抗動脈硬化、抗血栓作用を有することが示唆されている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月29日号)掲載の報告。心血管代謝障害の発生リスクに及ぼす影響をメタ解析で評価研究グループは、チョコレートの摂取と心血管代謝障害のリスクの関連を評価するために、無作為化対照比較試験および観察試験の系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。2010年10月までに発表された文献のデータベース(Medline、Embase、Cochrane Library、PubMed、CINAHL、IPA、Web of Science、Scopus、Pascal)を検索し、関連論文の文献リストを参照した。抽出された論文の著者に電子メールで連絡をとった。主要評価項目は、心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)、糖尿病、メタボリック症候群を含む心血管代謝障害とした。メタ解析では、チョコレートの摂取量が最も多い群と少ない群を比較することで、心血管代謝障害の発生リスクを評価した。最大摂取量群で、心血管疾患リスクが37%、脳卒中リスクが29%低下選択基準を満たした7試験(11万4,009人)のうち6つがコホート試験(日本の1試験[Oba S、et al. Br J Nutr 2010;103:453-9]を含む)、1つは横断的試験であり、無作為化試験は含まれなかった。これらの研究には、チョコレート摂取量の測定法、試験方法、アウトカムの評価法に大きな差異が認められた。5つの試験では、チョコレート摂取量が多いほど心血管代謝障害のリスクが低下していた。摂取量が最も多い群では、最も少ない群に比べ心血管疾患リスクが37%低下(相対リスク:0.63、95%信頼区間:0.44~0.90)し、脳卒中リスクが29%低下(同:0.71、0.52~0.98)した。心不全の抑制効果はみられなかった(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.61~1.48)。日本の試験では、男性で糖尿病の抑制効果が認められた(男性:ハザード比0.65、95%信頼区間0.43~0.97、女性: 同0.73、0.48~1.93)。著者は、「観察試験のエビデンスに基づけば、チョコレートの摂取量と心血管代謝障害のリスク低下には実質的な関連が認められた」と結論し、「チョコレート摂取のベネフィットを確定するには、さらなる検討が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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慢性腰椎神経根症へのステロイドまたは生理食塩水注射は推奨できない

慢性の腰椎神経根症に対する仙骨部硬膜外ステロイドまたは生理食塩水注射は「推奨されない」と結論する多施設盲検無作為化試験の結果が報告された。ノルウェー・北ノルウェー大学病院リハビリテーション部門のTrond Iversen氏らによる。腰椎神経根症への硬膜外ステロイド注射は1953年来の治療法だが、長期有効性のエビデンスは乏しかった。それにもかかわらず、例えば米国では1994年から2001年に10万患者当たり553例から2,055例へと使用が増加、英国では2002~2003年の最も頻度の高い脊椎注射処置の1つとなっていた。本試験では、同注射の有効性について、短期(6週)、中期(12週)、長期(52週)の評価が行われた。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。シャム群、生理食塩水注射群、ステロイド注射群に無作為化し短中長期に評価試験は、ノルウェーの5つの病院付属外来クリニックにて被験者を募り行われた。被験者は無作為に、0.9%生理食塩水2mLの皮下シャム注射群、0.9%生理食塩水30mLの仙骨部硬膜外注射群、0.9%生理食塩水29mL中にトリアムシノロンアセトニド(商品名:ケナコルト)40mgの仙骨部硬膜外注射群の3群に割り付けられ追跡評価された。主要評価項目は、オスウェトリー障害指数スコア(oswestry disability index scores)とし、副次評価項目は、ヨーロッパQOL尺度、腰痛と下肢痛の視覚アナログスケールスコアとした。2005年10月~2009年2月の間に461例の患者(>12週の腰椎神経根症を呈する)が登録されたが、328例は評価から除外された。馬尾症候群、重度の麻痺、痛みが激しい、脊髄注射または手術の既往、奇形、妊娠、母乳育児中、ワルファリン治療中、NSAID治療中、BMI>30、精神状態が不安定、重症の共存症といった理由からであった。また、試験結果の適切な評価のためには、各群に41例の被験者を含む必要があったが、試験に適格であった133例のうち17例は、無作為化の前に症状改善が認められ割り付けができず解析は116例(皮下シャム注射群40例、生理食塩水注射群39例、ステロイド注射群37例)にて行われた。3群ともに症状改善、統計的・臨床的な差は認められず結果、介入後3群ともに症状の改善が認められ、統計的および臨床的格差は認められなかった。シャム群のオスウェトリー障害指数は、基線補正後、6週時点で-4.7(95%信頼区間:-0.6~-8.8)、12週時点で-11.4(同:-6.3~-14.5)、52週時点で-14.3(同:-10.0~-18.7)とそれぞれ低下が推定された。生理食塩水注射群の各時点の同指数は、シャム群と比較して6週時点は-0.5(同:-6.3~5.4)、12週時点は1.4(同:-4.5~7.2)、52週時点は-1.9(同:-8.0~4.3)だった。ステロイド注射群は、それぞれ-2.9(同:-8.7~3.0)、4.0(同:-1.9~9.9)、1.9(同:-4.2~8.0)となっていた。下肢痛、腰痛、または病気により休薬した期間で補正後も、この傾向は変わらなかった。

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心房細動患者に対するapixaban vs. ワルファリン

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症のイベント抑制効果について検討された「ARISTOTLE」試験の結果、新規経口直接Xa阻害薬apixabanはワルファリンと比較して、同イベント発生を約2割低下し、予防に優れることが明らかにされた。大出血発生については約3割低く、全死因死亡率は約1割低かった。ワルファリンに代表されるビタミン拮抗薬は、心房細動患者の脳卒中の予防に高い効果を示すが、一方でいくつかの限界もあることが知られる。apixabanについては、これまでにアスピリンとの比較で、同等の集団において脳卒中リスクを抑制したことが示されていた。米国・デューク大学医療センターのChristopher B. Granger氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年8月28日号)掲載報告より。18,201例を対象とした国際多施設共同無作為化二重盲検試験ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)試験は、39ヵ国1,034施設から登録された1つ以上の脳卒中リスクを有する心房細動患者18,201例を対象に行われた、国際多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は無作為に、apixaban投与群(5mgを1日2回)かワルファリン投与群(目標INR:2.0~3.0)に割り付けられ、中央値1.8年の間追跡された。主要アウトカムは、脳梗塞、脳出血、全身性塞栓症のいずれかの発生とされた。試験は非劣性を検討するようデザインされ、副次評価において主要アウトカムに関する優位性、大出血や全死因死亡に関する優位性が検討された。主要アウトカム発生について、apixaban群の非劣性、優位性が認められる結果、主要アウトカムの発生は、apixaban群1.27%/年、ワルファリン群1.60%/年、ハザード比0.79(95%信頼区間:0.66~0.95)で、apixaban群の非劣性(p<0.001)、優位性(p=0.01)が認められた。大出血の発生は、apixaban群2.13%/年、ワルファリン群3.09%/年、ハザード比0.69(同:0.60~0.80)で、apixaban群の優位性が認められた(p<0.001)。全死因死亡についても、apixaban群3.52%/年、ワルファリン群3.94%/年、ハザード比0.89(同:0.80~0.99)で、apixaban群の優位性が認められた(p=0.047)。また、脳出血の発生は、apixaban投与群0.24%/年に対し、ワルファリン群0.47%/年(ハザード比:0.51、95%CI:0.35~0.75、p<0.001)、脳梗塞または病型不明の脳卒中発生については、apixaban群0.97%/年、ワルファリン群1.05%/年(ハザード比:0.92、95%CI:0.74~1.13、p=0.42)であった。(朝田哲明:医療ライター)

920.

心房細動患者の脳卒中、全身性塞栓症予防に、rivaroxabanはワルファリンに対して非劣性

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症予防に関して、経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanはワルファリンに対して非劣性であることが明らかにされた。重大出血のリスクについては両者間に有意差はなく、頭蓋内および致死的出血の頻度はrivaroxabanのほうが少なかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのManesh R. Patel氏らROCKET AF治験グループによる二重盲検無作為化試験の結果、報告した。NEJM誌2011年9月8日号(オンライン版2011年8月10日号)掲載報告より。脳卒中リスクの高い非弁膜症性心房細動患者1万4,264例を対象に試験は、脳卒中リスクの高い非弁膜症性心房細動患者1万4,264例を、rivaroxaban投与群(20mg/日)または用量調整(目標INR:2.0~3.0)したワルファリン投与群に無作為に割り付け行われた。主要エンドポイントは、脳卒中または全身性塞栓症の発生であった。主要解析はper-protocol、as-treatedで、rivaroxabanのワルファリンに対する非劣性を検討するようデザインされ解析が行われた。rivaroxabanの非劣性と頭蓋内・致死的出血の抑制を確認主要解析の結果、主要エンドポイント発生は、rivaroxaban群188例(1.7%/年)、ワルファリン群241例(2.2%/年)で、rivaroxaban群の非劣性が認められた(rivaroxaban群のハザード比:0.79、95%信頼区間:0.66~0.96、非劣性に関するP<0.001)。intention-to-treat解析では、主要エンドポイント発生は、rivaroxaban群269例(2.1%/年)、ワルファリン群306例(2.4%/年)であった(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.74~1.03、非劣性に関するP<0.001、優越性に関するP=0.12)。重大出血または重大ではないが臨床的意義のある出血は、rivaroxaban群で1,475例(14.9%/年)、ワルファリン群で1,449例(14.5%/年)発生した(ハザード比:1.03、95%信頼区間:0.96~1.11、P=0.44)。頭蓋内出血(0.5%対0.7%、P=0.02)と致死的出血(0.2%対0.5%、P=0.003)は、rivaroxaban群のほうが有意に少なかった。(朝田哲明:医療ライター)

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