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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第2位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内2位 第2、第3の新規経口抗凝固薬の発売~プライマリ・ケアへのさらなる普及はなるか2011年のダビガトラン(商品名:プラザキサ)に続き、新規抗凝固薬として2012年5月にリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)が上市されました。同薬は初のXa因子阻害薬であり、1日1回投与である点、日本独自の臨床試験を経て他国にはない用量設定がなされている点、代謝や半減期の点などで先行のダビガトランとの間に性格の違いがあります。また12月には第3の新規抗凝固薬アピキサバン(商品名:エリキュース)が製造承認されました。同薬もXa因子阻害薬であり、腎排泄率が低い点やARISTOTLE試験での優れた成績などが特徴です。このように抗凝固薬は、さらに選択肢が広がってきたわけですが、反面、使い分けをどうするか、それぞれの薬剤でのモニタリングや使用上の注意点、出血リスクへの対処法など習熟すべき知識は増える一方です。プライマリ・ケアの現場では、いまだに腎機能等の評価なく漫然と新規抗凝固薬が投与されているケースがあるように思われます。選択肢が増えるにつれ、ますます使うべきケース、使ってはならないケースなどに関する知識の共有が不可欠になると思われます。海外2位 心房細動の早期診断ツールの開発が進む~unmet needsに答えられるか?抗凝固薬の重要性はうるさいほど喧伝されていますが、一方、心房細動には無症候性のものが10~25%も存在すると言われており、その中にはCHADS2スコアの高い人も含まれているはずです。また、脳卒中の4分の1は原因のわからない、いわゆる“cryptogenic”strokeであり、その多くは事前に診断されていない心房細動からの心原性脳塞栓と推測されます。よって、抗凝固療法早期開始、そして心原性脳塞栓の発症抑制につなげるための無症候性心房細動の早期診断の必要性から、いくつかの診断ツールに関するエビデンスが、今年度次々に出されました。ひとつめは、30日程度装着し、イベント発生時にのみ記録されるイベントトリガー型のホルター心電計です。今年の国際脳卒中学会でEMBRACE試験の結果が公表され、通常のホルター心電図に比べて検出率が高いことが報告されました。2つ目は、日本の現場でも頻用されている携帯型心電計です。症状のないときでも1日2回、30日程度記録し続けることの有用性が示されました。3つ目はカテーテルアブレーション後の再発同定などに使われる植込み型のループレコーダーです。皮下植込み型で侵襲を伴いますが、検出率は非常に高いです。これらのツールを使わずとも、プライマリ・ケア医として強力な武器があります。そう、「脈を取る」ことです。前述したようにESCガイドラインでもその重要性が改めて強調されています。さて、そうして苦労して無症候性心房細動を見つけたとき、最後に残った問題は、まったく症状のない患者さんと抗凝固療法の合意をどう形成するかという難題です。今後このようなツールが開発されればされるほど、コミュニケーションの重要性が増していきます。1)Prevalence of unknown atrial fibrillation in patients with risk factors. Europace (2012)doi: 10.1093/europace/eus366

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募集した質問にエキスパートが答える!心房細動診療 Q&A (Part.1)

今回は、4つの質問に回答します。「高齢者への抗凝固療法」「抜歯、手術、消化器内視鏡時の抗凝固療法」「新規抗凝固薬の違い、使い分け」「新規抗凝固薬のモニタリング」新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け方法について教えてください。確かに大変気になるところです。新規抗凝固薬は超高齢社会に突入した日本において、今後ニーズが高くなる薬剤でしょう。新規抗凝固薬はいずれもワルファリンを対照薬とした臨床試験によって、その効果と副作用が明らかになりました。しかしながら、この3つの新規抗凝固薬は、機序や内服回数が異なるうえ、いずれも異なる臨床背景を持つ症例を対象に臨床試験が行われています。いわば「土俵」が違うのです。このため、3剤の使い分けの指針はありません。下記に示す表1に従って禁忌症例に注意し、腎機能によって投与量を選択するとともに、薬剤特有の副作用に注意してください。たとえば、ダビガトランに特有の副作用はディスペプシアです。コップ一杯の水とともに内服するようにし、それでもディスペプシアの症状が出る場合は、プロトンポンプ阻害薬や消化管運動賦活剤(イトプリド塩酸塩、商品名:ガナトンなど)などが有効であるとも聞きます。表1.新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け画像を拡大するなおアピキサバンは、「80歳以上、血清クレアチニン(Cr)1.5 mg/dL以上、体重60kg以下」のうち2項目以上に該当する場合は低用量(1回2.5㎎を1日2回)とするよう記載があります。新規抗凝固薬はまだ十分な使用経験がないので、出血事象が危惧されるような高齢者、低体重者、腎機能低下者、抗血小板薬併用者を避け、このような因子が複数ある場合にはワルファリンを使用するべきと思います。心不全などで利尿剤を服用している場合は腎機能が大きく変動することがあります。まず、安全性の高い症例への投与経験を積んで持ち寄ることが重要と思います。新規抗凝固薬のコントロール指標、検査の間隔、薬剤量調節方法について教えてください。表1に一般の病院や医院で測定可能な出血モニター指標をまとめました。凝固線溶系マーカーの基準値は試薬によって異なるため、外注の場合は同一ラボに依頼すべきでしょう。検査の間隔についてのエビデンスは少ないようです。ただし、少なくともワルファリンのように毎月測定する必要はありません。腎機能が保たれている場合には年に1~2回の採血で良いのではないでしょうか。高齢者や利尿剤を内服している場合には、腎機能の悪化によって新規抗凝固薬の効果が高まることも予想されるため、もう少し頻回に調べるべきでしょう。ダビガトランはaPTTでモニターします。心臓血管研究所の報告ではaPTT値は個人差が大きく、低用量(220mg/日)であっても、~70秒に延長する症例もあるようです。多くの症例では、内服2~3時間後の血中濃度ピーク時に測定すると45~50秒位となり、トラフ時は~40秒となるようです。内服開始1週間以内にピーク時を狙って1度は測定し、aPTT高値例では減量やワルファリンへの切り替えを検討するべきでしょう。リバーロキサバンのモニターはPT-INRで行います。内服2~3時間後位のピーク時のPT-INRは~2が多いようですが、中には2.5を超えることもあります。PT-INRが2を常時超えるとなると出血事象が増加すると思いますので、その際には減量かワルファリンへの切り替えが良いと思います。アピキサバンも理論的にはPT-INRが指標になりますが、リバーロキサバンと比べてPT-INRはあまり上がらないようです。まずは、安全性の高い症例に投与してその経験を持ち寄り、日本人のエビデンスをつくることが重要と思います。高齢者への抗凝固療法について薬剤選択や投与量の注意点、決定方法について教えてください。また、何歳まで抗凝固療法を行うべきか(効果はあるか)? 逆に、何歳で抗凝固療法をやめるべきでしょうか? 教えてください。大変悩ましい問題です。ワルファリンは、Net clinical benefitの考えで計算すると、若年者より高齢者の方が塞栓症の予防効果が高く算出されます。しかしながら、超高齢者に継続投与するのが現実的かどうか、症例ごとの判断が必要でしょう。私の外来でワルファリンを処方している最高齢者は88歳の発作性心房細動の男性で、CHADS2スコア2点です。この方は78歳時に前医によってワルファリンが開始され、その後も続けています。ADLは保たれ、内服薬の自己管理は完璧で、幸いこれまで出血事故は経験していません。対照的な症例として、3ヵ月前にワルファリンを中止した75歳の女性がいます(CHADS2スコア2点)。この方は70歳時にワルファリンが開始されましたが、2年間に3度の出血事故を起こしたために中止しました。老老介護のため内服管理が困難で、決められた錠数が守れなかったり、転倒して眼窩出血を起こしたりしたほか、感冒や感染で抗炎症剤や抗生剤を長期連用して消化管出血と鼻出血で来院したなど、を経験しました。逆説的ですが、出血の既往は大出血の危険因子です。何らかの出血事象を経験した症例は、その後も出血を繰り返す確率が上がります。高齢者に抗凝固療法を開始する場合には(個人的には私は80歳が1つのラインかと思っていますが・・・)、全身状態やADL、認知症の有無などを総合的に判断し、家族を含めた話し合いを行うべきでしょう。抜歯、消化器内視鏡検査時や外科的手術施行時に、抗凝固療法はどのようにするべきでしょうか? 教えてください。外科的処置の侵襲度と患者さんのCHADS2スコア、とくに塞栓症既往の有無などを勘案しなければいけません。抜歯の際にワルファリンを中止すると1%の確率で塞栓症を発症するとされます。このため、ワルファリンは中止しない、あるいは若干の減量で対処し、PT-INRが2未満となったことを確認して抜歯していただくとよいと思います。もちろん、日頃のPT-INR値が1.6位と低い場合にはそのまま抜歯が可能でしょう。しかし、地域によっては歯科医院の数に限りがあり、ワルファリンを中止しないと治療は行わないとする先生もあると聞いています。その際には、ワルファリンを中止したらとくに脱水に留意するとともに、止血が確認できたら速やかにワルファリンを(中止前の錠数で)再開するなどの処置をとってください。CHADS2スコアが高い場合には、紹介入院の下で処置をお願いすることも考えてください。ビガトランの場合は、薬剤半減期が短いので治療の1日前に中止すれば血中濃度が下がりますが、腎機能が低下している場合には2日前に中止することが推奨されます(図1)。しかしながら、塞栓症リスクの高い場合は、1日完全にやめてしまうことに不安を感じます。そのような場合には、血中濃度が下がっている時間帯に治療を行うとよいでしょう。朝食後の内服を中止し午前中に抜歯し、就寝直前に1回内服する。あるいは朝食後に内服した場合は、午後の遅い時間帯に抜歯し、就寝直前に2回目を内服する、などの方法により止血困難な時間帯を避けられるのではないかと考えます。リバーロキサバンの場合は、内視鏡による生検や内視鏡下での観血的処置を実施する場合には、処置当日のみ中止し、その翌日より再開するとよいとされます(図2)(手技終了後に出血のないことを確認し、さらに後出血の危険がないと考えられる時点で速やかに再開する)。2012年(平成24年)7月に日本消化器内視鏡学会から、「抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドラン」が刊行されました。抗血栓薬を継続して使用することによる消化管出血だけでなく、休薬による血栓塞栓症発症にも配慮されています。ただし、消化管出血に対する緊急内視鏡には適応されません。下記に抗凝固薬服用者の治療の流れを示します(図3、4)。内視鏡検査の侵襲度に応じて「休薬なし」から「ヘパリン置換」まで変わります。PT-INRが治療域越えの場合には治療域に入ったことを確認してから検査とするようご配慮ください。また施設によっても対処が変わるかと思います。科をまたいだ連携が必要でしょう。他に抗血小板薬を用いる場合も掲載されておりますが、紙面の都合上割愛致しました。図1.手術等を行う場合の中止手順画像を拡大する図2.抜歯等の侵襲的処置を行う場合の対応画像を拡大する図3.フローチャート画像を拡大する図4.出血危険度による消化器内視鏡の分類画像を拡大する

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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第3位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内3位 ダビガトランの使用法に関する知の集積が進む〜このまま安住してよいのか?ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は発売から2年近くが経過し、現場での使用経験がある程度蓄積されてきたように思われます。とくに日本では、心臓血管研究所からaPTTがモニタリング(チェック)に有効であるとの論文1)が発表され、施設基準上限の2倍を超えない範囲での使用が浸透されつつあります。またRE-LY試験のサブ解析が数多く発表されるようになり、とくにアジア人を対象としたRE-LY ASIA試験2)では、アジア人のダビガトランによる消化管出血は少ないことが報告されています。このように比較的安全に使用できるようになってきたダビガトランですが、aPTTよりもより施設間のばらつきが少なく、血中濃度との相関がよい指標の登場が望まれます。またダビガトランが使用できない腎機能低下例、高齢者などにおいて、むしろワルファリンのありがたみを実感する場面も多くなりました。抗凝固薬の世界は、ワルファリンの使い方を知って初めて新規抗凝固薬も使いこなすことができる、いわゆる温故知新であると同時に「温新知故」というべき状況でもあると思われます。1)Suzuki S,et al.. Circ J. 2012;76:755-757.2)Hori M, et al. Efficacy and safety of dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation: Analysis in Asian population in RE-LY trial. Presented at the 2nd Asia Pacific Stroke Conference, 11 September 2012.海外3位 WOEST試験~トリプルテラピーは避けられるか?抗凝固薬服用中の心房細動患者さんにPCIを施行することになった。あるいは薬剤溶出ステント後、抗血小板薬2剤服用中の方が心房細動になった。このようなケースが年々増えていますが、抗凝固薬+抗血小板薬2剤併用のいわゆるトリプルテラピーは出血合併症が多く、現場での悩みの種でした。「抗血小板薬1剤だけのダブルテラピーでもよいのでは?」といった臨床上の疑問に答えるべくデザインされたWOEST試験1)の結果が最近発表されました。トリプルテラピーの方がクロピドグレルとの併用であるダブルテラピーより出血合併症は有意に多く、塞栓症は同等という結果でした。薬剤溶出ステントに特化したものではなく、オープンラベル試験であるなどの制約はありますが、今後ガイドラインなどに影響を与える試験として注目したいと思います。1)Dewilde WJ, et al. Lancet. 2013 Feb 12. [Epub ahead of print]

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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第4位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内4位 日本消化器内視鏡学会による「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」〜リスク認知の共有はなるか?2012年7月に抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが発表になりました。これはある意味、今年度1番のトピックかも知れません。筆者のつたないブログ「心房細動な日々」でも常にアクセス数の1、2を誇る話題です。多学会共同の作成であること、各ステートメントのエビデンスレベルは低くコンセンサス重視であること、手技別の出血リスクと休薬による血栓塞栓リスクをそれぞれ層別化したことなど特徴は多々ありますが、何と言っても最大の注目は、「抗凝固薬1剤服用中であれば休薬しなくても生検可能」とした点です。これを遵守すれば、患者さんが2回内視鏡を施行されることもなく、また無根拠な休薬も避けることができます。しかしながら、実際には術者に依存する因子も大きいと予想され、一律な運用は問題があると思われます。むしろ、それまで一見「ツンデレ関係」とも思われた循環器内科医と消化器内科医との間でリスクの捉え方に関し、視野を共有する良い機会と捉えるべきです。1)藤本一眞ほか.日本消化器内視鏡学会雑誌. 2012;54:2075-2102.海外4位 カテーテルアブレーションに関する知の集積~注目すべきエビデンスが続々発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションは、日本も含めたどの国のガイドラインも「薬剤抵抗性」「抗不整脈薬投与下」といったように、薬が効かない場合の二番手の治療という制約のもとで推奨度Iがついています。これに対して「薬剤抵抗性ではない、抗不整脈薬を使っていない心房細動患者にいきなりカテーテルアブレーションを施行して良いか?」という問いに答えるべく設定されたのがMANTRA-AF試験1)です。発作性心房細動294例を、第一選択でカテーテルアブレーションを施行する群と抗不整脈薬群とに振り分け2年間追跡したところ、累積心房細動時間に差はありませんでした。この試験の対象は「70歳未満の基礎心疾患のない人」ですので結論を急ぐのは早急ですが、ある方向性が打ち出された感があります。一方、持続性心房細動が多く含まれる施設での長期成績2)や、1年以上持続する長期持続心房細動に対する成績3)も明らかとなり、予想された以上の成功率が報告されています。さらに、欧州では大規模な登録研究が行われ、発作性心房細動の第1セッション成功率が72%であるなどの成績が報告4)されました。日本でも日本不整脈学会のJ-CARAF登録研究の成績が公表されるなど、各国で知の集積が進んでいます。1)Cosedis Nielsen J, et al. N Engl J Med. 2012;367:1587-1595.2)Sorgente A, et al. Am J Cardiol. 2012;109:1179-1186.3)Tilz RR, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;60:1921-1929.4)Scharf C, et al. Europace 2012;14:1700-1707.

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ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告実薬対照非劣性試験とプラセボ対照優位性試験の統合的解析 RE-MEDY試験は、初期治療終了後のVTE延長治療におけるダビガトラン(150mg、1日2回)のワルファリンに対する非劣性を検証する実薬対照試験であり、RE-SONATE試験はダビガトラン(150mg、1日2回)のプラセボに対する優位性を評価するプラセボ対照試験。 両試験ともに、対象は年齢18歳以上、症候性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)と診断され、標準的抗凝固薬による初期治療を終了した症例とした。 RE-MEDY試験では、有効性のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が2.85を超えない場合、および18ヵ月後のVTE再発のリスク差が2.8ポイント以内の場合に非劣性と判定した。ACSのリスクにも留意すべき RE-MEDY試験には、2006年7月~2010年7月までに33ヵ国265施設から2,856例が登録され、ダビガトラン群に1,430例(平均年齢55.4歳、女性39.1%)、ワルファリン群には1,426例(同:53.9歳、38.9%)が割り付けられた。また、RE-SONATE試験には、2007年11月~2010年9月までに21ヵ国147施設から1,343例が登録され、ダビガトラン群に681例(平均年齢56.1歳、女性44.1%)、プラセボ群には662例(同:55.5歳、45.0%)が割り付けられた。 RE-MEDY試験では、VTE再発率はダビガトラン群が1.8%(26例)と、ワルファリン群の1.3%(18例)に対し非劣性であった(HR:1.44、95%CI:0.78~2.64、非劣性検定:p=0.01、リスク差:0.38ポイント、95%CI:-0.50~1.25、非劣性検定:p<0.001)。 大出血の頻度はダビガトラン群が0.9%(13例)と、ワルファリン群の1.8%(25例)に比べほぼ半減したものの有意な差はなかった(HR:0.52、95%CI:0.27~1.02、p=0.06)。一方、大出血または臨床的に重要な出血の頻度はダビガトラン群で有意に減少した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。急性冠症候群(ACS)がダビガトラン群の0.9%(13例)にみられ、ワルファリン群の0.2%(3例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.02)。 RE-SONATE試験のVTE再発率はダビガトラン群が0.4%(3例)と、プラセボ群の5.6%(37例)に比べ有意に良好であった(HR:0.08、95%CI:0.02~0.25、p<0.001)。大出血の発生率はそれぞれ0.3%(2例)、0%であったが、大出血または臨床的に重大な出血の発生率は5.3%(36例)、1.8%(12例)とダビガトラン群で有意に高値を示した(HR:2.92、95%CI:1.52~5.60、p=0.001)。ACSは両群に1例ずつ認められた。 著者は、2つの試験の結果を踏まえ、「ダビガトランによる抗凝固療法はVTEの延長治療として有効である。大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高かった」とまとめている。

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アピキサバン、VTEの抗凝固療法の延長治療として有用/NEJM

 経口第Xa因子阻害薬アピキサバン(商品名:エリキュース)による抗凝固療法の延長治療は、大出血の発生率を上昇することなく静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを低減することが、イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らによるAMPLIFY-EXT試験で示された。深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)などのVTEは、心疾患や脳卒中後の血管関連死の原因として3番目に頻度が高いという。欧米のガイドラインは3ヵ月以上の抗凝固療法を推奨しているが、標準治療であるワルファリンは、出血リスクのほかモニタリングや食事制限などの問題で治療の継続が難しくなることが多く、延長治療の決定には困難が伴う。アピキサバンは固定用量レジメンでの投与が可能で、モニタリングも不要なため、VTEの延長治療の選択肢となる可能性があった。NEJM誌2013年2月21日号(オンライン版2012年12月8日号)掲載の報告。2つの用量の有効性と安全性をプラセボ対照試験で評価 AMPLIFY-EXT試験は、VTEに対する抗凝固療法の延長治療としてのアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 対象は、年齢18歳以上、症候性のDVTまたはPEの診断で標準的な6~12ヵ月の抗凝固療法を完遂したが、抗凝固療法の継続・中止の判断が臨床的に困難な症例とした。 これらの患者が、アピキサバンの治療用量(5mg、1日2回)、血栓予防用量(2.5mg、1日2回)またはプラセボを与する群のいずれかに無作為に割り付けられ、12ヵ月の治療が行われた。VTE再発/全死因死亡:プラセボ群11.6%、2.5mg群3.8%、5mg群4.2% 2008年5月~2011年7月までに28ヵ国328施設から2,482例(ITT集団)が登録され、アピキサバン2.5mg群に840例(平均年齢56.6歳、男性58.0%、DVT 64.8%)、5mg群に813例(同:56.4歳、57.7%、64.8%)、プラセボ群には829例(同:57.1歳、56.5%、66.5%)が割り付けられた。 有効性に関する主要評価項目である症候性VTEの再発または全死因死亡の発生率は、プラセボ群の11.6%(96例)に比べ2.5mg群は3.8%[32例、相対リスク(RR):0.33、95%信頼区間(CI):0.22~0.48、差:7.8ポイント、95%CI:5.5~10.3、p<0.001]、5mg群は4.2%(34例、0.36、0.25~0.53、7.4、4.8~10.0、p<0.001)であり、いずれも有意な差が認められた。 有効性の副次的評価項目である症候性VTEの再発またはVTE関連死の発生率は、プラセボ群の8.8%(73例)に対し2.5mg群が1.7%(14例、RR:0.19、95%CI:0.11~0.33、差:7.2ポイント、95%CI:5.0~9.3、p<0.001)、5mg群も1.7%(14例、0.20、0.11~0.34、7.0、4.9~9.1、p<0.001)と、両群とも有意に優れた。 安全性の主要評価項目である大出血の発生率は、プラセボ群の0.5%(4例)、2.5mg群の0.2%(2例)、5mg群の0.1%(1例)に認められ、大量ではないものの臨床的に重要な出血は、それぞれ2.3%(19例)、3.0%(25例)、4.2%(34例)にみられた。全死因死亡は、プラセボ群の1.7%に比べ2.5mg群は0.8%、5mg群は0.5%だった。 著者は、「アピキサバンの治療用量または血栓予防用量を用いた抗凝固療法の延長治療により、VTEの再発リスクが抑制され、大出血の発生率は上昇しなかった」と結論し、「今後、より長期の治療のリスクとベネフィットを評価する臨床試験を行う必要がある。アピキサバン群で動脈血栓イベントの低下が観察されたことから、VTEの持続的な血栓リスクには動脈血栓も関与している可能性がある」と指摘している。

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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第5位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内5位 J-RHYTHM Registryの結果が明らかに~70歳未満でもINRは低めで良いのか?わが国における抗凝固療法の最大の観察研究であるJ-RHYTHM Registryの結果が、第29回日本心電学会学術集会で口頭発表されました1)。同研究の対象は外来通院中の心房細動連続症例で、2009年1月~7月に全国の基幹病院などから7,937例が登録されました。ワルファリン投与が行われたのは6,932例(87%)で、INR 1.6~2.59でコントロールされていた症例が66%を占めています。イベント発生直近のINRレベル別に2年間のイベント発生率を検討すると、INR 1.6未満では血栓性イベントが、INR 2.6以上では出血性イベントが有意に高率に認められ、両イベントを合わせた発生率は、INR 1.6~2.59で有意に低率であり、この結果は、70歳未満例、70歳以上例いずれにおいても同様に認められたとのことです。このことは、70歳未満であってもINRの管理目標値を1.6〜2.6に設定することの妥当性をある程度示唆する所見です。本格的な検証には前向き試験が必要ですが、これは専門医ならずともほとんど医師が納得の結果ではないでしょうか?なぜならリアルワールドではかなりの医師が、若年者においてもこのように低めのINR管理をしていることは、周知の事実だからです。ガイドラインを守らなかったという点では公然の秘密とも言えたのかもしれません。この発表で、その秘密が秘密でなくなった感があります。1)小谷英太郎ほか.心電図 2012;32:S5-72.海外5位 左心耳閉鎖デバイスに関する無作為化試験~日本で普及するのか?左心耳というのは内胸動脈とともに「神様が心臓に残した2つのいたずら」の一つで、目立った役割がなく、そればかりか血栓形成の場であり、人類にとって迷惑な構造物と思われています。これをカテーテルを用いて閉鎖してしまうデバイスが過去10年間でいくつか開発されてきてはいたものの、エビデンスとしては不十分でした。本年(2013年)1月のCirculation誌に非弁膜症性心房細動に対するワルファリン単独投与との無作為割付試験(PROTECT AF)1)が報告され、やや方向性が見えて来ました。CHADS2スコア1点以上の707人を対象に2.3年追跡したところ、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死に差はなく、安全性においても有意差はありませんでした。ただし重篤な合併症も報告されており、実用化にあたってはデバイスの改良、植え込み技術の習得など課題は少なくない段階と思われます。何より、侵襲的治療の普及しにくい日本で今後どのような展開があるのか、注目すべき段階に来ていることは間違いありません。1)Reddy VY, et al. Circulation.2013;127:720-729. Epub 2013 Jan 16.

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(60)〕 The WOEST study:長期間抗凝固療法を受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンは不要でクロピドグレルのみの併用で良い

PCIを施行する際には、血栓症を予防するためにアスピリンとチエノピリジン系の抗血小板薬を併用することが標準とされてきた。 一方、65歳以上の年齢層の8%に非弁膜症性の心房細動が発症することが知られている。心房細動の治療は、心原性血栓による脳塞栓症と心房細動性頻拍症の持続による心不全の予防が基本であり、抗凝固薬とβ遮断薬の併用が標準治療とされている。抗凝固薬を服用中の患者にPCIを行う際の抗血小板薬の組み合わせは、臨床上きわめて重要な問題である。 本研究は、ベルギーとオランダの15の施設で抗凝固療法を受けている573人の患者をクロピドグレルとアスピリンの3剤併用群とクロピドグレルだけの2剤併用群に無作為に割り付けた。試験期間は3年で主要評価項目はPCI後1年以内の出血の合併症である。 PCI後1年のデータが得られた症例数は、2剤併用群で279例(98.2%)、3剤併用群で284例(98.3%)であった。出血の合併症の頻度は2剤併用群で54例(19.4%)で、3剤併用群の126例(44.4%)よりも有意(p<0.0001)に低かった。また、多発性出血と輸血の頻度についても、2剤併用群は3剤併用群よりも有意(p=0.011)に低いことが示され、また血栓症の増加もなかった。 以上の結果から、抗凝固療法を長期にわたって受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンを併用せずにクロピドグレルのみを抗凝固薬と併用することが効果は同等で安全性に優れているという、臨床上きわめて有用な薬の使い方が示唆された。

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抗凝固薬服用PCI患者にはクロピドグレル単独追加が出血リスクを有意に減少/Lancet

 経口抗凝固薬を服用中で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要とされる患者には、アスピリンやクロピドグレル(商品名:プラビックス)の抗血小板薬療法が推奨されている。その場合3剤併用療法は深刻な出血リスクを招くが、オランダ・Twee Steden HospitalのWillem J M Dewilde氏らの研究グループは、クロピドグレル単独と、クロピドグレル+アスピリンを併用した場合の有効性および安全性を調べる非盲検無作為化比較対照試験を行った。その結果、クロピドグレル単独追加群では出血性合併症が有意に減少し、血栓性イベントが増加しなかったことを報告した。Lancet誌オンライン版2013年2月13日号より。PCI後1年以内の全出血イベントの発生を評価 研究グループは、ベルギーとオランダの15施設で非盲検多施設無作為化比較対照試験を行った。期間は2008年11月~2011年11月の間で、経口抗凝固薬を服用中でPCIを受けた成人患者(18~80歳)を無作為に、クロピドグレル単独(抗凝固療法と合わせて2剤併用)またはクロピドグレル+アスピリン(3剤併用療法)のいずれかに割り付け追跡した。 主要アウトカムは、PCI後1年以内の全出血イベントとし、intention to treat解析にて評価した。クロピドグレル単独群は出血イベントが有意に減少 573例の患者が登録され、そのうち1年間のデータが得られたのは、2剤併用療法群284例中279例(98.2%)、3剤併用療法群289例中284例(98.3%)だった。平均年齢はそれぞれ70.3(SD 7.0)歳、69.5(同8.0)歳であった。 出血エピソードは、2剤併用療法群が54例(19.4%)、3剤併用療法群は126例(44.4%)で認められた[ハザード比(HR):0.36、95%信頼区間(CI):0.26~0.50、p<0.0001]。 多発性の出血イベントは、3剤併用療法群34例(12.0%)であったのに対し、2剤併用療法群では6例(2.2%)だった。 1単位以上の輸血を必要とした患者は、3剤併用療法群27例(9.5%)であったが、2剤併用療法群では11例(3.9%)だった(Kaplan-Meier解析によるオッズ比:0.39、95%CI:0.17~0.84、p=0.011)。 結果を踏まえて著者は、「経口抗凝固薬服用中でPCIを受けた患者には、クロピドグレル+経口抗凝固薬による治療が出血性合併症の有意に低いリスクと関連していた」と結論。「試験は小規模であったが、アスピリンを控えたことによる血栓イベントリスク増大のエビデンスは見いだすことができなかった」とも述べている。

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バレンタインデーの前に知っておきたい「チョコレートが体に良い5つの理由」

 日本のチョコレートの年間消費量の2割程度がこの日に消費されるというバレンタインデー。近年、チョコレートが健康に良いことを裏付ける研究結果が発表されているため、バレンタインデーのこの機会に少しまとめてみた。研究者らは、チョコレートのカカオに多く含まれるフラバノールによる抗酸化、抗凝固、抗炎症作用などが心血管疾患に良い効果をもたらしているのではないかと考えているようだ。1. 毎日少量のダークチョコレート摂取で血圧が低下1) ダークチョコレートによる降圧効果が小規模な無作為化比較試験により示された(2007年JAMA誌掲載)。この試験では高血圧前症または高血圧症(第I度)44例に、ダークチョコレートを毎日6.3g(30kcal)、もしくはホワイトチョコレートを摂取させた。その結果、18週間で、ダークチョコレート摂取群の収縮期血圧が平均2.9mmHg、拡張期血圧も1.9mmHg下がった(p<0.001)。体重、血漿中の脂質、ブドウ糖、8-isoprostaneのレベルに変化はなかった。高血圧有病率は86%から68%まで減少した。一方、ホワイトチョコレート摂取群では血圧、血漿中マーカーとも変化は見られなかった。2. チョコレートの消費量が多い人ほど心血管疾患リスクが低い2) チョコレート消費量と心血管疾患リスクに関するメタアナリシスの結果が2011年のBMJ誌に発表されている。この研究では2010年10月までに発表された文献のデータベースを検索し、選択基準を満たした7試験(11万4,009人)をメタアナリシスの対象としている。この解析の結果、チョコレートの消費量が最も多い群は最も少ない群に比べて、全心血管疾患リスクが37%低下(相対リスク:0.63、95%信頼区間:0.44~0.90)し、脳卒中リスクが29%低下した(同:0.71、0.52~0.98)。しかし、心不全の抑制効果はみられなかった(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.61~1.48)。3. チョコレートを多く食べる男性で脳卒中リスクが17%低下3) スウェーデンのコホート研究によると、チョコレートの消費量が多い男性では脳卒中のリスクが17%低かったという(2012年Neurology誌掲載)。この研究では男性のチョコレート消費量と脳卒中リスクについて49~75歳のスウェーデン人男性3万7,103人を約10年間追跡した。その結果、チョコレートの消費量が最も多いグループ(中央値62.9g/週)は、最も少ないグループ(中央値0g/週)と比べて脳卒中のリスクが17%低下していた。 脳卒中既往例では再発率が19%低下 上記のスウェーデンのコホート研究を含む、5件の研究より脳卒中既往例に絞り込んだメタ解析を実施したところ、チョコレートの摂取量が最も多い被験者の脳卒中リスクはまったく食べない被験者より19%低かった。この解析結果より、著者はチョコレート摂取量50g/週につき脳卒中リスクが約14%低下したと試算している。4. チョコレート摂取頻度高いほどBMI低い4) チョコレートを頻繁に摂取する人ほどBMIが低い傾向にあることが2012年のArch Intern Med誌に発表されている。研究者らは心血管疾患、糖尿病、高LDL-C血症の既往のない男女(20-85歳)を対象に、チョコレートの摂取頻度とBMIとの関連を検討。週当たりのチョコレート摂取回数とBMIなどのデータが得られた972例を解析対象とした。その結果、年齢・性調整後、チョコレート摂取頻度が高い者ほどBMIが低い傾向にあった。5. チョコレートを多く食べる男性で糖尿病リスクが35%低下5) 岐阜県高山市におけるコホート研究によると、チョコレートの摂取頻度が1週間に1回以上の男性は糖尿病発症リスクが35%低下していた(ハザード比0.65、95%信頼区間0.43~0.97)。女性では糖尿病発症リスクの有意な低下は認められなかった(同0.73、0.48~1.13)。この結果は2010年のBritish Journal of Nutrition誌に発表されている。[番外編] チョコレートをたくさん食べる国ほどノーベル賞の受賞者も多い? 米国コロンビア大学のMesserli氏は、日本を含む世界22ヵ国の国民1人当たりのチョコレート消費量と、人口1,000万人当たりのノーベル賞受賞者数の相関関係を解析し、その結果が2012年のNEJM誌に発表されている。この解析結果によると、チョコレートの消費量とノーベル賞受賞者の数の間には、有意で強力な線形相関が認められた(相関係数r=0.791、p<0.0001)。チョコレート摂取量とノーベル賞受賞者の数がいずれも最高だったのはスイス。日本はチョコレートの消費量、ノーベル賞の受賞者数のいずれも22ヵ国中、中国に続いて低かった。(Messerli FH. N Engl J Med. 2012; 367: 1562-1564.)関連記事毎日少量のチョコレート摂取で血圧が低下(ジャーナル四天王)チョコレート高摂取による心血管代謝障害の抑制効果が明らかに(ジャーナル四天王)脳卒中予防でチョコレート好きに朗報

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(39)〕 新しいからよいと言えるか?:新規経口抗凝固薬による静脈血栓塞栓症治療

一般論として、1つの臨床的仮説に対する検証が1回の「無作為化二重盲検試験」により行われるよりも、世界各地にて複数の「無作為化二重盲検試験」が多数施行され、その結果をメタ解析する方法のほうが、臨床的仮説の検証法としては質が高いと言える。少なくとも、1つの無作為化比較試験にて証明された仮説が、他の試験により否定されなければ、その仮説が正しい可能性が高いと結論できる。 本メタ解析にて検証された臨床的仮説は何であろうか? 主論文中に明確に仮説が示されず、読者が読みながら設定される仮説を考える研究はよくない。本研究ではリバーロキサバン、アピキサバン、ダビガトランなどの複数の新規経口抗凝固薬とワルファリンの急性静脈血栓症予防、治療試験をメタ解析している。複数の新規経口抗凝固薬を包括し、従来の標準治療であるワルファリンと比較したのかと思わせる部分もあるが、新規経口抗凝固薬間の差異を論じている部分もある。 筆者の推測であるが、この論文は1つの臨床的仮説をメタ解析により明確に証明しようとの意図のもとに書かれたのではなく、数多くの臨床試験の結果を集積して、その中から仮説を生み出そうとして作成された論文に見える。一般的な意味の1つの臨床的仮説を「軸」としたわれわれが通常理解しているメタ解析ではなく、新規経口抗凝固薬の試験がたくさん行われたので、その試験の結果をたくさん集めて何が見えるかを考えよう、とのスタンスで施行されたメタ解析なのであろう。このような解析は「メタ解析」というより多数の試験の「集合解析」とも呼ぶべきである。 試された仮説が明確でない。したがって、結論も明確ではない。それでも、ワルファリンとの比較において、「新規経口抗凝固薬」が必ずしも優れているわけではないことを示している。個別の試験では新規経口抗凝固薬が、ワルファリンに勝る有効性を示した試験もあった。しかし、複数の試験の結果を「集合」させて解析すると新規経口抗凝固薬の優位性は明確ではない。新薬の価格が著しく高いことを考えると、ワルファリンから新規経口抗凝固薬への標準治療の転換は急性静脈血栓症でも起こらないだろうな、と思わせる試験結果であった。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(38)〕 大規模臨床試験結果の比較が臨床家に与えるインパクトとは?

心房細動の脳卒中・塞栓症予防に関して、続々と開発された新規抗凝固薬は臨床に大きなインパクトを与えている。日本ではワルファリンの処方率までもが増加しており、医療社会において抗凝固薬全体に関する啓蒙活動が広がったというべきであろう。このようにインパクトを与えたRE-LY、ROCKET-AF、ARISTOTLE試験の結果を直接比較したのが本論文である。 新しい抗凝固薬の中でどれが一番優れているかを知りたくなるのは人の常だが・・・私が読んで知ったことは、「大雑把に3つの薬はそれほど変わらない」、「直接比較試験がなされていない現状ではわからない」ということだけだった。 それでも本論文は、「統計学的に一所懸命比較してもせいぜいこの程度のことしかわからなかった」ということを知るだけでも十分な情報を与えているかもしれない。そもそも、3つの試験では患者の登録基準も異なれば、禁止併用薬も異なれば、試験方法自体も異なる。この異同を全く無視して、統計学的に比較したところで、それほど有意義な情報が得られるとは考えにくい。 医学・統計・医療をすべて結合し、かつ臨床家に有意義な情報を求める道は厳しい。本論文はこの中でも統計が突出した論文といえよう。

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静脈血栓塞栓症に対する4つの新規経口抗凝固薬vs.従来薬/BMJ

 ビタミンK拮抗薬と比較して、新規経口抗凝固薬は急性静脈血栓塞栓症の再発リスクは同程度であり、全死因死亡も同程度であるが、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)については出血リスクを減少することが、カナダ・マギル大学のBenjamin D Fox氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。BMJ誌2012年11月24日号(オンライン版2012年11月13日号)掲載より。リバーロキサバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、アピキサバンvs.ビタミンK拮抗薬 研究グループは、新規経口抗凝固薬[リバーロキサバン、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、キシメラガトラン(開発中止)、アピキサバン(同:エリキュース)]について、急性静脈血栓塞栓症における有効性を批判的にレビューすることを目的とした。 試験選択基準は、ビタミンK拮抗薬との比較による無作為化試験とし、2012年4月時点におけるMedline、Embase、Cochrane Libraryをデータソースとして文献の検索と、関連研究の手動検索および専門家への聞き取りを行った。 解析では、イベント再発、重大出血、全死因死亡をアウトカムとした。有効性と安全性について9試験を組み込みレビューとメタ解析 選択基準を満たした9試験を組み込み、有効性については1万6,701例、安全性については1万6,611例のデータに基づき評価を行った。有効性と安全性のデータは、各経口抗凝固薬で階層化した。 結果、静脈血栓塞栓症の再発率は、すべての新規薬と従来薬(ビタミンK拮抗薬)との間で有意な差はみられなかった。・リバーロキサバン(4試験) 相対リスク(RR):0.85、95%信頼区間(CI):0.55~1.31・ダビガトラン(2試験) RR:1.09、95%CI:0.76~1.57・キシメラガトラン(2試験) RR:1.06、0.62~1.80・アピキサバン(1試験) RR:0.98、0.20~4.79 リバーロキサバンは従来薬よりも重大出血を抑制したが、他の新規抗凝固薬は抑制しなかった。・リバーロキサバン RR:0.57、95%CI:0.39~0.84・ダビガトラン RR:0.76、95%CI:0.49~1.18・キシメラガトラン RR:0.54、0.28~1.03・アピキサバン RR:2.95、0.12~71.82 全死因死亡率は、すべての新規薬と従来薬との間で有意な差はみられなかった。・リバーロキサバン RR:0.96、95%CI:0.72~1.27・ダビガトラン RR:1.00、95%CI:0.67~1.50・キシメラガトラン RR:0.67、0.42~1.08・アピキサバン RR:6.89、0.36~132.06 リバーロキサバンとダビガトランの補正後間接比較の結果は、静脈血栓症(0.78、0.49~1.24)、重大出血(0.75、0.41~1.34)、全死因死亡(0.96、0.59~1.58)いずれのエンドポイントについても、どちらがその他の薬よりも優るのかというエビデンスは得られなかった。 Fox氏は、「大規模な対照無作為化試験の必要性は残されたままである」とまとめている。

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特発性VTE初発患者に対する再発予防のための低用量アスピリン投与/NEJM

 オーストラリア・Prince of Wales HospitalのTimothy A. Brighton氏らが、800人超について行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果、特発性静脈血栓塞栓症(VTE)の初発患者に対し、抗凝固療法後に低用量アスピリン療法を行っても、再発リスクがプラセボと比較して有意に低下しなかったことが報告された。一方で心血管イベント発生リスクについては、およそ3分の2低下し、研究グループは「正味の臨床的改善は示された」と結論した。特発性VTEを発症した人は、抗凝固療法終了後にVTE再発リスクが増大することが知られ、再発予防にアスピリンが有効である可能性があった。NEJM誌2012年11月22日号(オンライン版2012年11月4日号)掲載より。VTE再発率、プラセボ群が年率6.5%、アスピリン群が同4.8% 研究グループは、2003年5月~2011年8月に、特発性VTEの初回発症後、抗凝固療法を終了した822人を無作為に2群に分け、一方にはアスピリン(100mg/日)を、もう一方にはプラセボを投与し、最長4年間追跡した。主要アウトカムは、VTEの再発率だった。 被験者の平均年齢は54~55歳、男性は54~55%だった。追跡期間の中央値は、37.2ヵ月だった。 追跡期間中のVTE再発は、プラセボ群が411人中73人(年率6.5%)、アスピリン群が411人中57人(年率4.8%)と、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.52~1.05、p=0.09)。VTEの再発含む心血管疾患イベント発生リスク、アスピリン投与で約3分の2に 一方、事前に規定した2次複合アウトカムである、VTEの再発、心筋梗塞、脳卒中、心血管死のいずれかの発症率については、プラセボ群が年率8.0%に対し、アスピリン群が年率5.2%と、同リスクは約3分の2に低下した(ハザード比:0.66、同:0.48~0.92、p=0.01)。 また、もう一つの複合アウトカムで、VTEの再発、心筋梗塞、脳卒中、重大出血、総死亡のいずれかの発生率も、プラセボ群が年率9.0%に対し、アスピリン群が年率6.0%と、およそ3分の2に低下した(ハザード比:0.67、同:0.49~0.91、p=0.01)。 重大出血または臨床的重大出血の発症率や、重度有害事象の発生率は、両群で有意差はなかった。

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心房細動の脳卒中予防について新規抗凝固薬3剤を間接比較/BMJ

 心房細動患者の脳卒中予防について、新規抗凝固薬の間接的な比較解析が、デンマーク・Aalborg UniversityのLars Hvilsted Rasmussen氏らによって行われた。検討されたのは、アピキサバンとダビガトラン(商品名:プラザキサ)またはリバーロキサバン(同:イグザレルト)との比較、リバーロキサバンとダビガトランの比較についてで、相互間の相対的な有効性と安全性について、主として2次予防に焦点を当てて解析が行われた。BMJ誌2012年11月17日号(オンライン版2012年11月5日号)掲載より。2次予防について、3剤間に有効性と大半の安全性に有意差みられず 研究グループは、2012年6月までにアップされたMedline and Centralや臨床試験レジスターなどをデータソースとして、心房細動の脳卒中予防についてリバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンとワルファリンとを比較した無作為化対照試験を選んだ。 解析は、アピキサバンとダビガトラン(110mgを1日2回投与または150mgを1日2回投与の2つの投与量)の比較試験と、リバーロキサバンとダビガトラン(同2投与量)の比較試験について行い、2次予防コホートの解析を行ったのち、1次予防コホートについても同様に解析を行った。 結果、2次予防(脳卒中既往)群について、アピキサバンとダビガトラン(2投与量)との比較では、有効性および安全性のエンドポイントについて有意差が認められたのは、アピキサバンとダビガトラン150mgとの比較での心筋梗塞(ハザード比:0.39、95%信頼区間:0.16~0.95)に関してのみであった。 アピキサバンあるいはダビガトラン150mgとリバーロキサバンについて、有効性と大半の安全性のエンドポイントに有意差は認められなかった。 ダビガトラン110mgとリバーロキサバンとの比較では、ダビガトラン110mgで出血性脳卒中(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.03~0.66)、血管系による死亡(同:0.64、0.42~0.99)、大出血(同:0.68、0.47~0.99)、頭蓋内出血(同:0.27、0.10~0.73)が少なかった。1次予防は多少の差があるが、直接比較の無作為化試験で確認すべき 1次予防(脳卒中既往なし)群については、アピキサバンがダビガトラン110mgよりも身体障害あるいは致死的脳卒中の発生に関しては優れていた(同:0.53、0.36~0.97)。 またダビガトラン150mgとの比較では、アピキサバンのほうが脳卒中の発生が多かったが(同:1.45、1.01~2.08)、大出血(同:0.75、0.60~0.94)、消化管出血(同:0.61、0.42~0.89)、その他出血(同:0.74、0.58~0.94)は少なかった。 リバーロキサバンとの比較では、ダビガトラン110mgのほうが心筋梗塞イベントの発生が多かった。 ダビガトラン150mgとリバーロキサバンの主要有効性と安全性には有意差はみられなかった。 アピキサバンとリバーロキサバンとの有効性についても有意差はみられなかったが、アピキサバンはリバーロキサバンよりも大出血が少なかった(同:0.61、0.48~0.78)。 これら結果を踏まえて著者は、「アピキサバン、リバーロキサバン、ダビガトランの主要有効性エンドポイントは概して同程度であったが、出血性脳卒中、血管系による死亡、大出血、頭蓋内出血のエンドポイントについて、リバーロキサバンよりもダビガトラン(1日2回110mg)のほうが低かった。また1次予防については3剤間で有効性および出血に関して多少の差異が認められた」とまとめたうえで、「これらの結果は、仮説を生み出したに過ぎず、直接比較の無作為化試験で確認すべきである」と結論している。

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抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大

 抗精神病薬は、自律神経失調症を引き起こす要因と考えられており、統合失調症患者の潜在的な致死的不整脈を予測すると報告されている。しかしながら、抗精神病薬や他の向精神薬の用量依存的な効果が自律神経系(ANS)の活動に及ぼす影響に関しては、依然として不明なままである。横浜市立大学 岩本 洋子氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬と他の臨床的因子の用量依存効果がANSの活性に及ぼす影響について検討した。その結果、著者らは「統合失調症患者の心血管系に関連する有害事象を避けるためには、抗精神病薬の投与量を最適化する必要がある」としている。BMC psychiatry誌オンライン版2012年11月14日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者211例および健常者44例。各々における抗精神病薬による治療や、さまざまな臨床的要因を調査した。ANS活性は心拍変動(HRV)パワースペクトル解析を用いて評価した。患者群は抗精神病薬の投与量により3つのサブグループに分けて評価し、サブグループ間のHRVを比較した。主な結果は以下のとおり。・患者群では、対照群と比較し、HRVの低域と高域成分の有意な減少が認められた。・抗精神病薬の高用量投与群では、中用量投与群よりも有意に低いHRVが認められ、低用量投与群と比較するとさらに低いHRVが認められた。・HRVと抗精神病薬の投与量との有意な関連が認められた(重回帰分析)。・HRVは、年齢、性別、BMI、罹病期間、他の向精神薬の投与量との関連は認められなかった。関連医療ニュース ・100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増! ・統合失調症における長期転帰の予測因子は? ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

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