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解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内4位 日本消化器内視鏡学会による「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」〜リスク認知の共有はなるか?2012年7月に抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが発表になりました。これはある意味、今年度1番のトピックかも知れません。筆者のつたないブログ「心房細動な日々」でも常にアクセス数の1、2を誇る話題です。多学会共同の作成であること、各ステートメントのエビデンスレベルは低くコンセンサス重視であること、手技別の出血リスクと休薬による血栓塞栓リスクをそれぞれ層別化したことなど特徴は多々ありますが、何と言っても最大の注目は、「抗凝固薬1剤服用中であれば休薬しなくても生検可能」とした点です。これを遵守すれば、患者さんが2回内視鏡を施行されることもなく、また無根拠な休薬も避けることができます。しかしながら、実際には術者に依存する因子も大きいと予想され、一律な運用は問題があると思われます。むしろ、それまで一見「ツンデレ関係」とも思われた循環器内科医と消化器内科医との間でリスクの捉え方に関し、視野を共有する良い機会と捉えるべきです。1)藤本一眞ほか.日本消化器内視鏡学会雑誌. 2012;54:2075-2102.海外4位 カテーテルアブレーションに関する知の集積~注目すべきエビデンスが続々発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションは、日本も含めたどの国のガイドラインも「薬剤抵抗性」「抗不整脈薬投与下」といったように、薬が効かない場合の二番手の治療という制約のもとで推奨度Iがついています。これに対して「薬剤抵抗性ではない、抗不整脈薬を使っていない心房細動患者にいきなりカテーテルアブレーションを施行して良いか?」という問いに答えるべく設定されたのがMANTRA-AF試験1)です。発作性心房細動294例を、第一選択でカテーテルアブレーションを施行する群と抗不整脈薬群とに振り分け2年間追跡したところ、累積心房細動時間に差はありませんでした。この試験の対象は「70歳未満の基礎心疾患のない人」ですので結論を急ぐのは早急ですが、ある方向性が打ち出された感があります。一方、持続性心房細動が多く含まれる施設での長期成績2)や、1年以上持続する長期持続心房細動に対する成績3)も明らかとなり、予想された以上の成功率が報告されています。さらに、欧州では大規模な登録研究が行われ、発作性心房細動の第1セッション成功率が72%であるなどの成績が報告4)されました。日本でも日本不整脈学会のJ-CARAF登録研究の成績が公表されるなど、各国で知の集積が進んでいます。1)Cosedis Nielsen J, et al. N Engl J Med. 2012;367:1587-1595.2)Sorgente A, et al. Am J Cardiol. 2012;109:1179-1186.3)Tilz RR, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;60:1921-1929.4)Scharf C, et al. Europace 2012;14:1700-1707.