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50~69歳の若年者大動脈弁置換における人工弁は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢か?(解説:許 俊鋭 氏)-269

日本循環器学会ガイドライン1)では、血栓塞栓の危険因子を持たない65歳以上の大動脈弁人工弁置換患者に対して生体弁の使用が推奨されている(クラス1)。逆にこれまで60歳以下の若年者に対する生体弁の使用は、ワーファリンコントロールが禁忌症例や妊娠・出産を希望する女性に適応が限定されてきた。 本論文では、ニューヨーク州在住の50~69歳の若年者大動脈弁置換症例を対象に生体弁と機械弁治療成績を後ろ向きに比較し、15年生存および脳卒中については両群間で有意差がなく、再手術率は高かったものの大出血合併率は生体弁症例で低いことから、50~69歳の若年者大動脈弁置換における人工弁は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢であると結論している。すなわち再手術率と大出血合併率をtrade-offの関係とみなし、治療成績が同等であるがゆえに、生体弁を若年者大動脈弁置換症例に使用することを推奨すると結論しているのである。 しかし、この論文の主張がそのまま日本の患者さんに当てはまるかどうかは十分検討する必要がある。一番大きな問題は、本論文でも指摘されているように15年再手術累積発生率は生体弁群が有意に高率(12.1% vs. 6.9%)とされる点である。 生体弁再手術の大部分は人工弁の構造的劣化に起因するものと考えられるが、論文には再手術要因については記載されていない。日本循環器学会ガイドラインでまとめられた構造的劣化に関する集計(表1)では、60歳未満の生体弁構造的劣化発生率(100%-非発生率)は24.6~45.6%であり、65歳未満では20.6~65.3%であった。若年者ほど構造的劣化発生率は高くなり、生体弁構造的劣化期間は12~20年程度推定される1)。 もちろん近年、再人工弁置換手術成績の向上には目覚ましいものがある2)。しかし、2005~2008年の日本心臓血管データベース機構のデータ分析3)では高齢者ほど初回大動脈弁単弁置換手術でも手術死亡率および合併症率は高い(表2)。 また、少し古いデータではあるが、再人工弁置換手術の手術死亡率は高齢者ほど著しく高くなる(表3)という報告4),5) もあり、高齢になっての再人工弁置換手術は回避できるに越したことはない。 高齢化が著しい日本で、50歳台の若年者に生体弁人工弁置換を行う場合、1回以上の再手術を前提として考える必要があり、生涯を通じての手術リスクならびに医療経済から見て妥当かどうか十分検討する必要があろう。 また、本論文では大出血合併率(6.6% vs. 13.0%)は生体弁患者で低い結果が出ているが、国民皆保険下にある日本のような長期にわたる人工弁置換後の綿密なワーファリンコントロールが米国で実施可能かどうかなど医療を取り巻く社会環境も大出血合併率に大きな影響を与えている可能性があり、十分に配慮しなければならない。 今後、さらに耐久性のよい生体弁の開発が期待されると同時に、On-X弁のように機械弁の標準レベル(PT-INR 2.0~3.0)よりも軽いレベル(PT-INR 1.5~2.0)のワーファリンコントロールでよいとされる抗血栓性に優れた機械弁の開発により、大出血合併症の問題も解決される可能性が高い。

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急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏)-267

急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。 これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。メタ解析は、フォローアップ期間や登録患者が均一でないなど解釈には限界があるが、この検討は4万5,000症例という最大規模で、アウトカムはガイドラインに則り有症状の静脈血栓症再発と出血合併症であるので、ある程度は真実であると考えられる。有効性が最も小さいのはUFH+ビタミンK拮抗薬であったが、皮肉なことに臨床では重症肺梗塞には一般的に用いられている。 すでに「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」では、新規抗凝固薬が第一選択となった。とくにCHADS2 1点では推奨がダビガトラン、アピキサバンでワルファリンは考慮可となっている。新規抗凝固薬はワルファリンの約20倍の薬価であるため、今後はcost-effectivenessかつ、採血や食事制限から解放されるという患者満足度の検討も必要であろう。●cost-saving=健康アウトカムが改善されるだけでなく、医療費抑制効果もある医療サービス●cost-effective=お金はかかる(医療費抑制効果はない)が、それと比較して得られる健康メリットが大きい医療サービス●cost-ineffective=お金がかかり、それにより得られる健康メリットが小さい医療サービス

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抗血栓薬服用患者への消化器内視鏡診療

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療の際、抗血栓薬を継続するか休薬するか、迷われたことはないだろうか?血栓塞栓症の予防効果のエビデンス集積に伴い、抗血栓薬の臨床使用が増加している現在。出血リスクである消化器内視鏡を抗血栓薬服用患者に行う際、どう対応すればよいのか?2012年に改訂された日本消化器内視鏡学会ガイドラインの内容とともに近年のエビデンスを踏まえ解説する。チャプター(順次公開)1.消化器内視鏡診療の歴史2.消化器内視鏡診療における出血リスクと血栓症リスクの考察3.2012年日本消化器内視鏡学会ガイドライン

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ワルファリン管理に対するPT-INR迅速検査の重要性が高まる

本邦では、心原性脳塞栓症をはじめとする脳塞栓症が増加している。それとともに、抗凝固薬の使用機会は増加している。抗凝固薬の中でもワルファリンは長年にわたり臨床で使われ、脳塞栓症の発症リスク減少のエビデンスを有する基本薬である。反面、その出血リスクなどから過小使用が問題となっており、ワルファリンのモニタリング指標であるPT-INRを至適治療域内へコントロールしなければならない。今回は、PT-INRを診療現場で簡便に測定できるPOCT(Point Of Care Testing)機器コアグチェックを用いた迅速測定の有用性について、製造元および販売元であるロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、エーディア株式会社に聞いた。そこには、単なる検査に留まらないメリットがあった。PT-INRの測定環境と高まるニーズ2013年12月、日本循環器学会より「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」が発表された。新ガイドラインでは、NOAC(Non vitamin K antagonist Oral Anticoagulants)を新たに追加し、CHADS2スコアに応じて推奨度とエビデンスが示されている。CHADS2スコア2点以上の場合は、ワルファリンが推奨されている。これらの患者は、塞栓リスク、出血リスクともに高いといわれ、きめ細かな服薬調整が必要となる。日本循環器学会や日本血栓止血学会も、ワルファリンを有効かつ安全に使うため、モニタリング指標PT-INRの測定を推奨しており、その重要性はますます高まっていくと考えられる。通常、院内に検査室を持たないクリニック等では、PT-INRを外注検査で測定しているケースが多い。外注検査の場合、検査結果が得られるまでに時間がかかる。そのため検査結果のフィードバックのために、患者に再来院させるという負担を強いることもある。簡単、短時間、どこでも測れるPT-INRそのようななか、コアグチェックは2007年PT-INRをその場で測定できるPOCT機器として発売された。一般医療機器としては、XSとXSプラスの2種類が承認されている。いずれの機種も、メモリー機能を備えており(XSで300件、XSプラスで2,000件)、患者の経時的な測定数値を確認することができる。また、電池での使用が可能なため、さまざまな状況や場所で使用できる。一般医療機器としては、コアグチェックXSとコアグチェックXSプラスがある。ほかに植込型補助人工心臓(非拍動流型)装着患者の血液凝固能自己測定用にXSパーソナルがある。(写真提供:ロシュ・ダイアグノスティック株式会社、エーディア株式会社)測定方法はいたって簡単である。専用のテストストリップを機器に挿入し、10μLの血液を滴下するだけでPT-INRを測定できる。検査結果は開始から約1分で得ることができる。操作は、専用のテストストリップを挿入、血液(10μL)をテストストリップに滴下すると、自動的に測定が始まる。検査結果は開始から約1分で得られる。コアグチェックは、キャリブレーションの手間がなく、試薬有効期限警告などエラー防止機能も備わっている。また、院内検査、外注検査との良好な相関が得られており、正確性についても高い評価を受けている。コアグチェックXS測定手技を動画で紹介7’05”(動画提供:エーディア株式会社)PT-INR迅速測定がもたらすメリットワルファリンの効果には、個人差があるといわれ、食事、併用薬、体調変化、生活状況でも変動する。たとえば外注検査の場合、検査結果が得られるまでに時間がかかるため、出血傾向などのリスクがあっても、速やかな投与量の調整が難しい。コアグチェックを用いたPOCTにより、受診時に適切な指示を出すことが可能となり、より厳密で質の高いワルファリン管理が期待できる。実際にコアグチェックを使用している医師はどう感じているのだろうか。使用者の意見には、“使いやすい”、“その場で結果がみられて便利”など、好評なものが多いようだ。また、電池使用でどこでも測定可能なので、最近では訪問診療で用いるケースも増えているという。さらに、医師が前回値と現在値を確認の上、診察してくれることで、患者のワルファリン服用への理解が深まり、アドヒアランスも向上するといった恩恵もあるという。アドヒアランス不良は重大な問題であり、そういう観点からも大きなメリットがあるようだ。加えて、その場で測定し結果を説明してくれることで、患者の医師への評判があがるケースもみられる。コアグチェック導入によりワルファリン管理が向上した実際に外来診療でコアグチェックを活用することにより、PT-INR管理が向上したエビデンスが報告されている1)。この試験は、大阪府内の外来クリニック8施設を対象に、POCT導入前後のTTR(Time in Therapeutic Range:治療域内時間)をレトロスペクティブに比較検討したものである。その結果、TTRは、導入前の51.9%から69.3%へと改善された。内訳をみると、INR治療域を上回った時間はPOCT導入前後で同程度、INR治療域を下回った時間はPOCT導入後有意に改善された。つまり、出血イベントの危険性を増やすことなく、血栓イベントの予防効果の改善が示された。画像を拡大する画像を拡大するPOCT導入後のTTRは、導入前に比べ有意に改善(51.9% vs. 69.3%, p

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心房細動患者PCI後の抗凝固療法と 抗血栓療法併用の現状と問題点

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。PCI後のステントでは血小板を主体とする動脈血栓、心房細動による血栓塞栓症では静脈血栓をケアする。では心房細動合併患者のPCI後はどうすべきか?永年にわたり議論を呼ぶこの話題について、本年9月の欧州心臓病学会(ESC2014)での発表内容を含め最新の情報を北里大学 循環器内科学 教授 阿古 潤哉氏がレビューする。 チャプター(順次公開)1.Af患者PCI後の血栓症2.Triple therapyは必要か?3.ワルファリンはどこまで効かせる?4.NOACは?5.BMS vs DES?6.1年後はOACのみか、OAC+APTか?

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アリスミアのツボ 第3回

Q7症状のない上室・心室期外収縮は、どの程度まで経過観察すべきでしょうか。心機能が正常ならば経過観察しない、という考え方ではどうでしょうか。私は基本的に心機能が正常である限り、期外収縮の経過観察をしていません。これには異論や反論があるかもしれません。心房期外収縮の場合「心房期外収縮の頻発は、放置するとやがて無症状の心房細動に発展してしまうのではないか?」という不安。これはそのとおりだと思います。しかし、問題はその発生確率だと思うのです。一見健康者で、心房期外収縮頻発が見られた例での心房細動の発生確率は、年間約1.5%とされています。これをどう見るか……人によって異なるかもしれません。心房期外収縮例をすべて経過観察しようとするのは、間違いではないのですが効率性に劣る気がします。これを行うための外来診療の時間があれば、もっと有意義な(もっと重篤な疾患をもつ患者のケアに)使えばよいのではないでしょうか。もちろん例外があります。心原性脳梗塞のようだけれども心房細動が見つかっていない患者、心房細動がひとたびもし生じてしまえば脳梗塞のリスクがきわめて高いという患者では、心房期外収縮の頻発を経過観察する価値が高まるでしょう。ただし、これらの患者の経過観察としての適切な方法はまだ誰も知りません。心室期外収縮の場合「心室期外収縮の頻発は、やがて心機能低下を引き起こしてしまうのではないか?」という不安。これもその可能性はあると思います。ただし、どのような発生確率が見込めるのかという確かな数字がない以上、そして基本的に予後はよいという情報がある以上、効率性という意味で経過観察の価値が低いと感じてしまうのです。脳梗塞とは異なり、心機能低下はirreversibleではありません。健康診断をきちんと受けることを指導する、というような経過観察でもよいのではないでしょうか。Q8発作性心房細動に対する抗不整脈薬の用い方について教えてください。安全性重視という考え方で、患者の意向次第で減量や中止も随時可能専門家の現場での用い方「抗不整脈薬の使い方がわからない。ガイドラインや教科書と、循環器内科医の実臨床での使い方がかなり違う気がする」というご意見もありました。抗不整脈薬は諸刃の剣と言われることから、どうしても経験則が幅を利かせているのが実情です。ESCの心房細動ガイドラインで書かれていることESCの心房細動ガイドラインにはこの抗不整脈薬の使い方の原則が書かれているので、それを引用しておきましょう。1)抗不整脈薬治療は症状を軽減する目的で行うものである2)抗不整脈薬で洞調律を維持する効果は“modest”である3)抗不整脈薬治療は心房細動の再発をなくすものでなく、減らすことで臨床的には成功と考えるべきだろう4)1つの抗不整脈薬が効果のない場合、他の抗不整脈薬が効果を示すことがあるかもしれない5)抗不整脈薬による新たな不整脈の出現、心外性副作用はしばしば生じる6)抗不整脈薬の選別は効果よりもまず安全性を指針とすべきである私の使い方私の臨床現場での用い方はこれを基本にしています。たとえば、抗不整脈薬をいつ始めて、いつ中止するのかについての一定の見解はないのですが、患者が心房細動の症状で困っている時に開始し(1参照)、その際あらかじめ発作が完全に消失するものではないことを伝え(2、3参照)、症状が軽くなればいつでも薬物の減量をトライし、症状に困らなくなればいつでも中止をトライする(6参照)、ということを基本にしています。もちろん、減量や中止によって患者が困るようになれば、また再開することはたびたびです(むしろ、そのほうが多いかもしれません)。ただ、これを行うことで患者が薬物の効果を実感してくれることもアドヒアランスを高めると思っています。Q9NOACをどのように開始すべきでしょうか?ワルファリン時代とまったく異なる抗凝固療法のやり方を会得する必要がありますワルファリン時代に染みついた慣習心房細動の脳卒中予防には抗凝固療法が必要です。抗凝固療法の仕方…これについては、あまりにもワルファリンを使用してきた歴史が長く、ワルファリン時代のやり方が身に染みついてしまっていることを私自身が痛感しました。そこで、ワルファリン時代とは異なるNOACによる抗凝固療法の私のやり方をまとめておきます。1)心房細動初診患者では(脳卒中の一次予防ならば)その日のうちに抗凝固療法を始めない。ワルファリン時代は初診患者で脳卒中予防の説明をして、ワルファリン1.5~2mg/dayをその日から開始していました。しかし、NOACでは危なっかしくてできないですね。初診日は、脳卒中に関する啓蒙、年齢、体重の把握、血清Cr、Hbの採血をするだけにしています。クリアチニンクリアランスを把握してから抗凝固療法はするものと考え、次の外来から(つまりクレアチニンクリアランスが手に入ってから)NOACを処方します。次回の外来までに脳卒中になってしまうのでは……と不安に思う方がおられるかもしれませんが、所詮ワルファリン時代も初診時に処方する少量のワルファリン量ではそもそも効いていませんでした。NOACを初診日に処方すると禁忌症例に処方してしまう可能性があり、こちらのほうが危険でしょう。また、貧血のある患者にNOACを処方するのも危険です。今まさに、じわじわとどこからか出血しているのかもしれないからです。2)2週間以内の出血に関する問診とHbのチェックを忘れないワルファリン時代はゆっくりと抗凝固がなされ、しかもPT-INRによる処方量決定のためたびたび外来受診が行われるので、出血のケアは自然になされやすい環境にありました。しかし、長期処方が可能なNOACは大出血直前の気付きの機会を減らしています。そこで、私は、NOAC処方時には必ず2週間以内に受診してもらい、皮下出血、タール便の有無を聞き、必ずHbをチェックすることにしています。2週間でHbが明らかに減少していれば、どこからか出血していることになるからです。逆にHb値に変化がなければ安心できます。3)バイオマーカーはどうする?ワルファリン時代のPT-INRというモニタリングはなくなりました。では何もチェックしていないかというと、私は、ダビガトランではaPTT、リバーロキサバンとアピキサバンではPTをチェックしています。固定用量の薬物では必ず効きすぎの患者が、わずかといえども存在しているからです。ただし、これはモニタリングではありません。処方後2週間以内の外来で、Hbと一緒にバイオマーカーを一度採血するのです。バイオマーカーについては「あまり見かけないほど高い値である」ことがなければ、それで良しとしています。その後の採血ですが、クレアチニンクリアランスを高齢者では年に4回程度、若年者では年に1、2回チェックしますが、それと同時にこれらのバイオマーカーもチェックしています。NOACのバイオマーカーはモニタリングではなく、あくまでもチェックにすぎないのです。

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血栓症の病態と抗血栓薬の基礎

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。新たな抗血小板薬および抗凝固薬が続々と登場している近年。これらを有効に活用するためには、血栓症の病態とそれに対応する薬剤のメカニズムを把握する必要がある。今回は止血のメカニズムから抗血栓薬の基本までを血液のスペシャリスト北里大学 医学部 血液内科学 宮崎浩二氏が解説する。チャプター(順次公開)1.止血のメカニズム2.病的血栓症3.動・静脈血栓のちがい4.抗血栓薬の基本覚えておくと便利な抗血栓薬(PDF) :宮崎浩二氏監修

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エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part2

CareNet.comでは特集「内科医のための血栓症エッセンス」を配信するにあたって、会員の先生方から血栓症診療に関する質問を募集しました。その中から、脳梗塞に対する質問に対し、北里大学 西山和利先生に回答いただきました。今回は、"かくれ脳梗塞"に抗血小板薬を使うべき?緊急を要する場合の見極めと対処法は?、高齢患者の内服コンプライアンスを改善するには?についての質問です。俗に使われている言葉で「かくれ脳梗塞」がありますが、かかる病態に抗血栓療法として、抗血小板薬を使う必要性(エビデンスではなく、病理学的な意味)を御教授ください。俗に言う「かくれ脳梗塞」とは、側脳室周囲に無症候性に多発するラクナ梗塞のことかと思います。これを想定して回答いたしますと、ラクナ梗塞に対する抗血栓療法の適応はあります。保険適応としてもラクナ梗塞には抗血小板薬は適応ありとなっていますし、治療ガイドラインでも同様です。ですので、「かくれ脳梗塞」が有症候性であれば、治療の適応があるわけです。脳梗塞の直接的な症状である片麻痺や構音障害などがなくても、「かくれ脳梗塞」に伴う認知症やパーキンソン症候群などがある場合は、ある意味で有症候性と考えられますので、治療の対象と考えるべきです。しかしながら、全くの無症候性の「かくれ脳梗塞」の場合に治療の適応があるかどうかはcontroversialです。年齢相応の「かくれ脳梗塞」の場合に、敢えて抗血小板薬を使用すべきかどうかについては明確な推奨はありません。日本人では抗血小板薬、特にアスピリン、による脳出血の合併が多いので、軽度の「かくれ脳梗塞」では無用なアスピリンの使用は避けるべきです。ラクナ梗塞型の「かくれ脳梗塞」は高血圧に基づく脳梗塞が多いわけですので、抗血小板薬投与ではなく、むしろ厳格な高血圧の治療を最初に行うべきであると考えられます。年齢相応を超えるような「かくれ脳梗塞」がある場合には、厳格な降圧療法などを行ったうえで、それでも「かくれ脳梗塞」が増加する場合には、抗血小板薬の使用を検討すべきでしょう。その場合、日本人ではアスピリンは脳出血や頭蓋内出血の合併が欧米よりもはるかに多いことが知られていますが、シロスタゾールやクロピドグレルはこうした出血性合併症が少ないというデータがあります。薬剤を選択する上での参考になるかも知れません。緊急を要する場合の見極めと対処法は?脳梗塞は、新規発症の場合は常に緊急の対応を要します。なぜなら、血管が閉塞して生じる脳梗塞では、血管再開通を得て完治をめざすには、発症からの数時間がカギであるからです。ではどのように脳卒中急性期と診断するかですが、急に生じた次のような症状は脳梗塞や脳卒中の可能性があるので、すぐに対応が必要であると考えていただきます。片麻痺(片側半身の運動麻痺)片側の感覚障害、構音障害(話しにくさ)運動失調発症から4.5時間以内であれば、rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)(アルテプラーゼ)静注療法による脳梗塞への超急性期治療が可能かもしれません。また最近ではカテーテルを用いた血栓回収治療などの血管内治療も普及しつつあります。こうした超急性期の治療が奏功すれば、脳梗塞の症状は劇的に改善します。ですので、発症後の時間が浅い脳梗塞症例では緊急で専門医療機関を受診させる必要があります。rt-PA静注療法に関しては、医療機関に到着してから治療開始までに行う検査などに1時間程度かかることが一般的です。発症後4.5時間を経過してしまうと、rt-PA静注療法の効果が減じるだけでなく、治療に伴う脳出血などの合併症の率が跳ね上がります。ですので、発症後4.5時間以内に治療開始というのが本邦でのルールであり、そのためには急性期医療機関に発症後3.5時間以内に到着できるかどうかが治療適応判定の目安になります。睡眠中に発症した脳梗塞など、いつ脳梗塞を発症したのか判然としないの症例もいます。そのような場合には、最後にその患者さんが元気だったことが確認できている時間(これを最終未発症時間と呼びます)をもって発症時間と計算するルールになっています。たとえば、目が覚めた時に片麻痺になっていた症例であれば、睡眠前に元気だったことが確認されている時間をもって発症時間と推定するわけです。高齢患者の内服コンプライアンスを改善するにはどのようにしたらよいのか?高齢者における内服のコンプライアンス不良、これは抗凝固薬に限らず、大きな課題です。若年者や中年までの患者さんでの内服コンプライアンス不良は、仕事や家事が忙しいといった理由が多いようです。ですので、内服回数を少なくしたり、内服しやすい時間帯に内服できるような工夫をしたり、出先でも内服できるような剤型にしたり、ということが大切です。一方、高齢患者での内服コンプライアンスは上記の事項以外にも、認知症のために内服を忘れる、といった理由もあるようです。これに対しては介護者が内服忘れが生じないように協力することが必要ですし、医療機関への受診頻度を上げて、適切に内服しているかどうかの確認をかかりつけ医がまめに行っていくことも重要でしょう。もちろん、高齢患者においても、内服回数が少なくてすむように工夫する、合剤を利用して錠数を減らす、といったことはコンプライアンスの改善につながると考えられます。

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脳梗塞のフォローはここを押さえて ~Neurologistからのメッセージ~

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。虚血性疾患といえば心臓疾患が注目されがちであるが、日本人では心筋梗塞よりも脳梗塞が圧倒的に多い。その発症率は米国人の3~4倍であることは意外と知られていない。今回は、分類から二次予防の抗血栓療法まで、脳梗塞の基本情報を同領域のスペシャリスト北里大学 神経内科学 教授 西山 和利氏がレクチャーする。チャプター(順次公開)1.脳梗塞の疫学2.脳梗塞再発の危険因子とは3.心原性脳塞栓症の二次予防4.非心原性脳梗塞の二次予防5.人種差と抗血栓療法

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エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part1

CareNet.comでは特集「内科医のための血栓症エッセンス」を配信するにあたって、会員の先生方から血栓症診療に関する質問を募集しました。その中から、脳梗塞に対する質問に対し、北里大学 西山和利先生に回答いただきました。今回は、一般内科初診で血栓症を疑うべき注意すべき訴え、アテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞の境界、アスピリンは心原性血栓症に対しては効果が弱い?について回答いただきます。一般内科初診で血栓症を疑うべき注意すべき訴えとして、どういったものがありますか?脳血栓症、即ち脳梗塞、を疑うべき注意点というご質問を拝聴しました。次のような症状が出現している場合に、脳梗塞を疑いましょう。片側半身の運動麻痺片側半身の感覚障害話にくさ(構音障害や失語)運動失調また脳梗塞の特徴は、症状が急性に発症するということです。ですので、上記のような症状が突然に出現したと患者さんが訴える場合には、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を疑い、専門医療機関を受診させる必要があります。専門医療機関としては、神経内科、脳神経外科、脳卒中科などを標榜している病院が望ましい受診先と考えられます。一方で、一般医家の先生にも誤解があるのが、めまいや頭痛を訴える患者で脳梗塞を考えるべきかどうかです。即ち、めまいという症状は、それ単独では脳梗塞の症状とは考えません。運動失調や構音障害などを合併する眩暈は脳梗塞の可能性がありますが、めまい単独の場合は耳鼻科疾患である可能性が高く、眩暈だけを生じる脳梗塞というものは稀と考えられています。また、頭痛も脳梗塞の症状としては頻度の低い症状です。頭痛を呈する脳血管障害はくも膜下出血や脳出血ですが、脳梗塞では頭痛を呈するものは、動脈解離に起因する脳梗塞など稀な病態ですし、動脈解離を伴う脳梗塞であっても頭痛だけ単独で生じることということは稀です。よって、頭痛や眩暈だけの患者では脳梗塞を積極的に疑う必要はありません。脳梗塞はアテローム性動脈硬化ですが、ラクナ梗塞との明確な境界はあるのですか?非心原性脳梗塞にはラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞があります。この二つはいずれも動脈硬化に伴う脳梗塞ですが、病態には明確な違いがあります。ラクナ梗塞は、脳実質をつらぬくように走行する穿通枝と呼ばれる細い動脈の閉塞で生じる脳梗塞です。ラクナ梗塞は閉塞する動脈が細いために、頭部MRI画像などの画像検査では直径15㎜以下のサイズとして検出されます。一方、アテローム血栓脳梗塞は、主幹動脈の狭窄や閉塞によって生じる脳梗塞であり、脳梗塞が生じる部位が穿通枝ではありません。脳梗塞巣は主幹動脈の走行にそって広範囲にわたり、脳梗塞のサイズもラクナ梗塞よりも大きくなることが多いです。このように脳梗塞の出現する部位、梗塞のサイズによって、ラクナとアテロームは区別することが可能です。またMRA(magnetic resonance imaging angiography)や脳血管撮影などで脳の主幹動脈の狭窄度を調べることで、ラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞を区別することができます。即ちラクナ梗塞では主幹動脈に狭窄が乏しいわけですが(穿通枝は血管撮影でも描出は困難)、アテローム血栓性脳梗塞では主幹動脈に狭窄が存在しているわけです。アスピリンは心原性血栓症に対しては効果が弱いのでしょうか?昨今の大規模研究の結果では、アスピリンは心原性脳塞栓の予防に関しては効果が弱いというよりも、効果がないというのが真実に近いと考えられています。大規模研究では、アスピリン投与群でもプラセボ群よりも脳梗塞発症率は減じているように見えます。が、これは対象症例が心原性脳塞栓以外の脳梗塞、即ちラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞を発症することもあり、アスピリンはこのような非心原性脳梗塞の部分に対しての予防効果があるため、一見するとアスピリンが心原性脳塞栓の予防においても一定の効果があるようにみえるだけです。最近の知見では、アスピリンは心房細動に起因する心原性脳塞栓症を予防する効果はないと考えるのが妥当なようです。そのため、心房細動に対する最近の治療ガイドラインでは、抗血栓療法の中からアスピリンは削除されて、抗凝固療法のみが推奨されるようになっています。

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VTEの8つの治療戦略を比較/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。VTE再発と重大出血を主要アウトカムにネットワークメタ解析 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった。 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。統計的有意差はないが、リバーロキサバン、アピキサバンが低リスク 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。

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原因不明の脳梗塞患者に潜む心房細動(解説:高月 誠司 氏)-247

 脳梗塞症例のうち20~40%は、適切な診断評価を行っても原因が不明とされ、これをCryptogenic stroke(原因不明の脳梗塞)という。心房細動による心原性脳梗塞は再発の頻度が高く、しかも重篤な症状を残すことが多い。初回脳梗塞発作時に適切に心房細動と診断し適切な抗血栓療法を行えば、患者の予後を改善する可能性がある。しかし発作性心房細動症例では脳梗塞発症時に洞調律に戻っていると、その診断に苦慮することがある。 本研究は55歳以上で心房細動と診断されたことがない、6ヵ月以内に原因不明の脳梗塞、一過性脳虚血発作を起こした症例を対象に、24時間ホルター心電図検査を施行する群(コントロール群)と30日間のループ式イベントレコーダーを施行する群(インターベンション群)に無作為に割り付け、30秒以上持続する心房細動の有無を比較した(EMBRACE試験1))。このイベントレコーダーは着用型で胸部に乾燥型の電極付きのベルトを巻き付け、イベント発生時最長2.5分の心電図を記録するものである。結果的に90日以内に30秒以上の心房細動はインターベンション群で280人中45人(16.1%)、コントロール群で277人中9人(3.2%)で検出(p<0.001)。2.5分以上持続する心房細動に関してはインターベンション群で284人中28人(9.9%)、コントロール群で277人中7人(2.5%)で検出された(p<0.001)。経口抗凝固薬による治療はインターベンション群で280人中52人(18.6%)、コントロール群で279人中31人(11.1%)に行われ、インターベンション群で有意に多かった。 New England Journal誌の同号には同じように原因不明の脳梗塞症例を対象にした植込み式ループレコーダーとホルター心電図による半年間の心房細動検出率を比較した研究(Crystal AF試験)が掲載されている2)。結果はループレコーダー群で221人中19人(8.9%)、ホルター群で220人中3人(1.4%)と有意にループレコーダー群で高かった。数値的にはCrystal AF試験の植込み型ループレコーダーよりも、EMBRACE試験で使用された着用型レコーダーのほうが心房細動の検出率が高い。これはEMBRACE試験の対象患者が72.5±8.5歳で、Crystal AF試験の対象患者の61.6±11.4歳より高齢であるということに主として起因するが、着用型レコーダーの実用性も十分に示されたと考えてよいだろう。 この研究は短時間の心房細動と脳梗塞の発症との因果関係を明らかにしたわけではなく、また結果的に抗凝固薬の使用が患者の予後改善に結び付くのかという点も明らかではない。ただし3ヵ月間の長期的なモニタリングは、原因不明の脳梗塞患者の潜在的な心房細動の診断に有用であることは明確に示された。今後の原因不明の脳梗塞患者のマネジメントに一石を投じる研究である。

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PT-INR値とイベントの関係

ワルファリンは、医師の指導に従いきちんと服薬することが必要です。(100人・年)302520事故比PT-INR分布と脳梗塞・大出血大梗塞小梗塞大出血151050ワルファリンは、PT-INR1.6~2.6でコントロールされた時、脳卒中になりにくい。~1.591.60~1.99 2.00~2.592.60~PT-INRYasaka M, et al. Intern Med. 2001; 40: 1183-1188.Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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