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VTEの8つの治療戦略を比較/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。VTE再発と重大出血を主要アウトカムにネットワークメタ解析 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった。 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。統計的有意差はないが、リバーロキサバン、アピキサバンが低リスク 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。

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原因不明の脳梗塞患者に潜む心房細動(解説:高月 誠司 氏)-247

 脳梗塞症例のうち20~40%は、適切な診断評価を行っても原因が不明とされ、これをCryptogenic stroke(原因不明の脳梗塞)という。心房細動による心原性脳梗塞は再発の頻度が高く、しかも重篤な症状を残すことが多い。初回脳梗塞発作時に適切に心房細動と診断し適切な抗血栓療法を行えば、患者の予後を改善する可能性がある。しかし発作性心房細動症例では脳梗塞発症時に洞調律に戻っていると、その診断に苦慮することがある。 本研究は55歳以上で心房細動と診断されたことがない、6ヵ月以内に原因不明の脳梗塞、一過性脳虚血発作を起こした症例を対象に、24時間ホルター心電図検査を施行する群(コントロール群)と30日間のループ式イベントレコーダーを施行する群(インターベンション群)に無作為に割り付け、30秒以上持続する心房細動の有無を比較した(EMBRACE試験1))。このイベントレコーダーは着用型で胸部に乾燥型の電極付きのベルトを巻き付け、イベント発生時最長2.5分の心電図を記録するものである。結果的に90日以内に30秒以上の心房細動はインターベンション群で280人中45人(16.1%)、コントロール群で277人中9人(3.2%)で検出(p<0.001)。2.5分以上持続する心房細動に関してはインターベンション群で284人中28人(9.9%)、コントロール群で277人中7人(2.5%)で検出された(p<0.001)。経口抗凝固薬による治療はインターベンション群で280人中52人(18.6%)、コントロール群で279人中31人(11.1%)に行われ、インターベンション群で有意に多かった。 New England Journal誌の同号には同じように原因不明の脳梗塞症例を対象にした植込み式ループレコーダーとホルター心電図による半年間の心房細動検出率を比較した研究(Crystal AF試験)が掲載されている2)。結果はループレコーダー群で221人中19人(8.9%)、ホルター群で220人中3人(1.4%)と有意にループレコーダー群で高かった。数値的にはCrystal AF試験の植込み型ループレコーダーよりも、EMBRACE試験で使用された着用型レコーダーのほうが心房細動の検出率が高い。これはEMBRACE試験の対象患者が72.5±8.5歳で、Crystal AF試験の対象患者の61.6±11.4歳より高齢であるということに主として起因するが、着用型レコーダーの実用性も十分に示されたと考えてよいだろう。 この研究は短時間の心房細動と脳梗塞の発症との因果関係を明らかにしたわけではなく、また結果的に抗凝固薬の使用が患者の予後改善に結び付くのかという点も明らかではない。ただし3ヵ月間の長期的なモニタリングは、原因不明の脳梗塞患者の潜在的な心房細動の診断に有用であることは明確に示された。今後の原因不明の脳梗塞患者のマネジメントに一石を投じる研究である。

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PT-INR値とイベントの関係

ワルファリンは、医師の指導に従いきちんと服薬することが必要です。(100人・年)302520事故比PT-INR分布と脳梗塞・大出血大梗塞小梗塞大出血151050ワルファリンは、PT-INR1.6~2.6でコントロールされた時、脳卒中になりにくい。~1.591.60~1.99 2.00~2.592.60~PT-INRYasaka M, et al. Intern Med. 2001; 40: 1183-1188.Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用 そのエビデンスと各種ガイドラインにおける位置づけ

田中 知明 氏千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 千葉大学医学部附属病院糖尿病・内分泌代謝内科はじめにグリーンランドや千葉県下でのエイコサペンタエン酸(EPA)の有効性を明らかにした疫学調査をきっかけに、わが国では魚油をエチルエステル化した高純度EPA製剤が開発され、1990年には「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」、1994年には「高脂血症」に対する医療用医薬品として臨床の現場に登場した。さらに、欧州、米国などで「高トリグリセライド血症」の効能・効果を有する医薬品として承認されていた高濃度オメガ3製剤(主成分としてEPA・DHAを含有)も2013年に国内で承認され、日常臨床に広く普及しつつある。これらオメガ3製剤の臨床応用におけるエビデンスとしては、高純度EPA製剤の冠動脈疾患に対する発症予防効果を検証した日本人対象の大規模臨床試験JELIS1)に加えて、Circulation、Lancetに報告されたイタリアのGISSI-Prevenzione Trial、GISSI-HF Trialなど、多くのエビデンスが蓄積されている。そこで、本稿ではオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用の骨格となる重要な大規模臨床試験とそのメタ解析におけるエビデンスを解説し、EPA製剤の各種ガイドラインにおける位置づけについて概説する。EPA製剤が推奨される各種ガイドライン本邦においてEPAに関してその臨床的有用性が明記されている各ガイドラインについて、表にまとめる。これまでの大規模臨床試験のエビデンス基づき、現在では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』、『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』、『脳卒中治療ガイドライン2009』の4種類のガイドラインに医療医薬品としての有用性が推奨グレードとともに記載されている。以下に具体的内容とエビデンスグレードを記す。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』の第7章「治療法 B 薬物療法におけるステートメント」として、「高リスクの高LDL-C(low density lipoprotein cholesterol)血症においては、スタチン投与に加えてEPAの投与を考慮する」とされている。推奨レベルIIa、エビデンスレベルAである。『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』の「Ⅲ. 各疾患における抗凝固・抗血小板療法 11 心血管疾患高リスク症例の一次予防」においては、「高リスクの脂質異常症におけるエイコサペント酸エチル投与の考慮」が記載され、クラス1のエビデンスレベルとして推奨されている。『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』における「II. 薬物療法 3 脂質異常症改善薬」の項目では、「2. 高LDLコレステロール血症にはスタチンに加え高純度EPA製剤も考慮する」と記載され、エビデンスグレードはBである。『脳卒中治療ガイドライン2009』における「Ⅱ. 脳梗塞・TIA 4-1. 脳梗塞再発予防 (3)脂質異常症」の項目の中で、「3. 低用量スタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、EPA製剤の併用が脳卒中再発予防に有用である」と記載されている。エビデンスグレードはBである。高濃度オメガ3製剤(EPA+DHA)に関しては、欧州(ノルウェー)では1994年に、アメリカでは2004年に使用されるようになっていたが、日本では2013年から使われるようになった。したがって、国内では高純度EPA製剤が主流であった過去の経緯から、各ガイドラインにおける記載は高純度EPA製剤のみなのが現状である。海外ガイドラインにおけるオメガ3系脂肪酸の臨床的位置づけとして、欧州・米国ではEPA・DHA製剤が中心であり、脂質異常症の管理および心不全の治療ガイドラインにおいて推奨されている(推奨レベルIIb、エビデンスレベルB)。今後、本邦においてもエビデンスのさらなる蓄積とガイドラインにおける位置づけが新たに追加されることが期待される。表 各種ガイドラインにおける脂質異常症治療薬の記載画像を拡大するJELISの概要と1次予防・2次予防サブ解析JELISは、日本人を対象に実臨床に近い条件の下で実施された前向き大規模臨床試験であり、各ガイドライン記載の根拠となる重要なエビデンスである1)。JELISは、日本人の脂質異常症患者(総コレステロール250mg/dl以上)において40~75歳の男性と、閉経後~75歳の女性18,645人(冠動脈疾患の1次予防14,981例、2次予防3,664例)を対象としている。プラバスタチン10mg/日またはシンバスタチン5mg/日を基本として、1.8gの高純度EPA製剤の投与群と非投与群を無作為に割り付けて、5年間の追跡調査し、主要冠動脈イベント(致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、心臓突然死、心血管再建術、新規狭心症の発症、不安定狭心症)について検討を行った試験である。その結果、主要冠動脈イベントを19%低下させ、EPA投与群では対象群に比べ虚血性心疾患の発症リスク比(95% CI)が0.81(0.68-0.96)であり、非致死性では0.81(0.68-0.96)と有意であった(本誌p.23図を参照)。興味深いことに、血清脂質変化を検討すると、EPA群と対象群においてLDLコレステロールの変化率に有意差を認めなかった。このことから、高純度EPA製剤の心血管イベント抑制効果は、LDLコレステロール値以外による機序が大きいと考えられている。<JELIS 1次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がない1次予防サブ解析(14,981例)では、主要冠動脈イベントの発生はEPA投与群で18%減少するものの、有意差を認めなかった。肥満・高TG (triglyceride)血症・低HDL(high density lipoprotein)血症・糖尿病・高血圧を、冠動脈イベントリスク因子としてそれらの重積と冠動脈イベント発生を検討した結果、対照群/EPA群の両者において発症率の上昇を認め、EPA群で抑制している傾向が見られた2)。また、登録時のTG値とHDL値の組み合わせで4群に分けて、冠動脈イベント発症リスクを比較検討した結果、高TG/低HDL-C血症群ではTG/HDL-C正常群に比較して、冠動脈イベント発生リスクはEPA投与群で53%もの低下を示し、高リスク群での抗動脈硬化作用による心血管イベントの発症抑制が期待されている1, 2)。<JELIS 2次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がある患者(3,664例)の2次予防サブ解析では、EPA投与群で23%のイベント発症抑制効果を認めた3)。インターベンション施行症例や心筋梗塞既往症例においても、EPA投与群でそれぞれ35%、27%のイベント発症の抑制を認めた3)。これらの結果は、高純度EPA製剤の投与はインターベンション施行例や心筋梗塞既往例の2次予防薬としての有用性を示している。血漿EPAとアラキドン酸(AA)の比の変化を観察すると、試験開始時に両群共にEPA/AA比は0.6であったのに対して、EPA投与群では1年後に1.3まで上昇していた3)。試験終了時のEPA/AA比と冠動脈イベント再発の関連性を解析した結果、EPA/AA比が高いほど、イベント発生の相対リスクが低下していることが明らかとなった。<JELIS脳卒中サブ解析>JELIS試験においては、2次評価項目として脳卒中(脳血栓、脳塞栓、判別不能の脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血)の発症が検討された。患者背景として、脳卒中の既往はEPA群で485例(5%)であり、対照群で457例(5%)に認められ、その内訳は閉塞性脳血管障害がそれぞれ74%、75%で、両群間に有意差を認めなかった4)。脳卒中の1次予防に関しては、対照群およびEPA投与群ともに、脳卒中発症頻度が低かったため、両群間に明らかな差を認めなかった。実際、対照群における脳卒中累積発症率が5年間で1.3%ととても低値であったことが大きな要因と考えられている。また、JELIS以外に国内で施行された冠動脈疾患や脳卒中の既往のない高コレステロール患者を対象としたMEGA試験では、プラバスタチンの投与で有意に発症を抑制したことが報告されている。つまり、JELISにおけるスタチン投与の背景がすでに脳卒中発症をかなり予防していたことが推察され、EPAの有用性を否定するものではない結果といえよう。脳卒中既往歴のある2次予防については、EPA投与群において20%の有意な脳卒中発症抑制効果(発症リスク比0.80、95% CI:0.64-0.997)が認められた4)。この脳卒中発症抑制に関しては、number to treat(NNT=疫学の指標の1つで、エンドポイントに到達する患者を1人減らすために何人の患者の治療を必要とするかを表したもの)は27であった。興味深いことに、同時期に欧米で施行されたSPARCL試験5)では、アトルバスタチンの5年間の投与による脳卒中2次予防効果のNNTは46であり、高用量スタチンより優れた結果を示唆するものであった。単純比較はできないが、EPA製剤(スタチン併用)の脳卒中2次予防効果における臨床的有用性を示すと考えられている。登録時のHDL-C値と脳卒中発症の関係を解析した結果、対照群ではHDL-C値が低いことに相関して脳卒中再発率が有意に増加するが、EPA投与群ではHDL-C値と独立して脳卒中再発予防効果を認めた。また臨床的なポイントとして、JELISにおける脳卒中の疾患別検討では、EPA効果がより高い群として脳梗塞、特に脳血栓症の抑制が明らかであった。またEPA服薬良好群では、36%の顕著な再発低下(5年間のNNTは16)を示した6)。EPAの特徴の1つである血小板凝集抑制作用を介したアテローム血栓予防効果が大きな役割を果たしている可能性が高い。GISSI-Prevenzione Trial7)と海外のエビデンスイタリアで行われたGISSI-Prevenzione Trialは、急性心筋梗塞発症後3か月以内の高リスク患者11,324症例を対象とした2次予防試験であり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸1g/日のカプセルと抗酸化作用を持つビタミンE 300mg/日を内服する群を、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のみ内服する群、ビタミンEのみ内服する群、両方内服する群、両方内服しない群に分けて3.5年間介入し検討を行った試験である7)。その結果、オメガ3系多価不飽和脂肪酸を内服している群は対象群に比べ、全死亡の相対リスク(95% CI)が0.80(0.67-0.94)と低下を認め、特に突然死においては0.55(0.40-0.76)と大きく抑制され、突然死においては治療開始後早期の120日ですでに有意な相対リスクの低下(0.47(0.22-0.99)、p=0.048)が認められた(本誌p.24図を参照)7)。また、心不全患者を対象に行ったGISSI-HF Trialでも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与は、有意に心血管イベントの発症を抑制した8)。コホート試験である13試験を用いて、魚摂取・魚食頻度と冠動脈疾患による死亡率との関連について検討した結果(222,364症例のメタ解析)、魚摂取は冠動脈疾患による死亡率を有意に低下させることが明らかとなった9)。さらに、脂質低下療法に関する97ランダム化大規模臨床試験のメタ解析の結果から、スタチンとオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤は、心臓死および総死亡のイベントリスクを低下させることが示された10)。これらのエビデンスから、ハイリスクの脂質異常患者に対してスタチンにEPA製剤を加えることで、さらなる心血管イベント抑制効果が期待できると考えられる。おわりに高純度EPA製剤は、心血管イベントおよび脳血管イベントの1次予防・2次予防戦略を考えるうえで重要な薬剤であることはいうまでもない。大規模臨床試験のエビデンスをベースとした各ガイドラインを見てわかるように、脂質異常症のゴールデンスタンダードであるスタチンに加えて、EPA製剤の併用効果が証明され、臨床的意義づけが確立している。JELISによる日本人のエビデンスに裏づけされた内科的戦略の1つとして、心血管・脳血管イベントのハイリスク症例やスタチン投与による脂質管理下でもイベント発生を抑制できない症例に対して、積極的な使用が推奨される。またEPA・DHA製剤についても、ようやく国内で使用することができるようになった。日本人のエビデンスはまだ十分ではなく、ガイドラインにおける位置づけは現時点では明確ではないが、欧米におけるエビデンスと使用経験から本邦でも十分に期待できるものと思われる。EPA製剤との違いや臨床的使い分けなど、今後のさらなるエビデンスの蓄積が必要であろう。文献1)Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007; 369: 1090-1098.2)Saito Y et al. Effect of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2008; 200: 135-140.3)Matsuzaki M et al. Incremental effect of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in statin-treated patients with coronary artery disease. Circ J 2009; 73: 1283-1290.4)Tanaka K et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients : subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008; 39: 2052-2058.5)Amarenco P et al. High-dose atrovastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med 2006; 355: 549-559.6)田中耕太郎ほか. 高コレステロール血症患者の脳卒中発症に対するEPAの効果-JELISサブ解析結果. 脳卒中2007; 29: 762-766.7)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell'Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.8)Gissi HFI et al. Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2008; 372: 1223-1230.9)He K et al. Accumulated evidence on fish oil consumption and coronary heart disease mortality : a meta-analysis of cohort studies. Circulation 2004; 109: 2705-2711.10)Studer M et al. Effect of different antilipidemic agents and diets on mortality : a systematic review. Arch Intern Med 2005; 165: 725-730.

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PCI予定での抗凝固療法、ヘパリン vs ビバリルジン/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行予定患者への抗凝固療法について、ヘパリンベースと比べてビバリルジン(国内未承認)ベースのレジメンは、心筋梗塞およびステント血栓症のリスクを増大するが、出血リスクは低下することが、メタ解析の結果、示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMatthew A Cavender氏らが報告した。ただし出血リスクの低下は、糖蛋白IIb/IIIa阻害薬(GPI)併用の有無によって大きく変化し、使用が想定される試験や予定されていた試験を解析対象に含んだ分析では、同リスクの低下についてレジメン間に有意差はみられなかったという。ビバリルジンは、PCI施行患者においてヘパリンに代わりうる選択肢とされている。Lancet誌2014年8月16日号掲載の報告より。16試験、3万3,958例のデータをメタ解析 研究グループは、虚血性および出血アウトカムに関し、それぞれをベースとした抗凝固療法の有効性を明らかにするメタ解析を行った。 Medline、Cochrane Libraryほか関連学会抄録を検索し(2014年4月9日時点)、PCI予定患者についてビバリルジンvs. ヘパリンベース療法を比較検討した無作為化試験を特定し分析した。 主要有効性エンドポイントは、30日時点での主要有害心イベント(MACE)発生率とした。副次有効性エンドポイントは、死亡、心筋梗塞、虚血による血行再建術、ステント血栓症などだった。ランダムエフェクトモデルを用いて、プールリスク比および95%信頼区間[CI]を算出し評価した。 検索により解析には16試験、3万3,958例のデータを組み込んだ。そのうちMACE発生は2,422例、重大出血発生は1,406例で認められた。ビバリルジン群でMACEリスク増大、大出血リスクは低下もGPI併用に依存 結果、MACEリスクの増大は、ビバリルジンベース療法がヘパリンベース療法よりも有意に認められた(リスク比:1.09、95%CI:1.01~1.17、p=0.0204)。リスクの上昇は、主に心筋梗塞の増大によるもので(同:1.12、1.03~1.23)、また虚血による血行再建術による影響も認められた(同:1.16、0.997~1.34)。死亡への影響はみられなかった(同:0.99、0.82~1.18)。 ビバリルジンベース療法では、ステント血栓症リスクの増大も認められた(リスク比1.38、95%CI:1.09~1.74、p=0.0074)。主にST上昇型心筋梗塞の急性例での増大がリスクの増大に影響していた(同:4.27、2.28~8.00、p<0.0001)。 なおビバリルジンベース療法では大出血リスクが、全体解析では有意な低下がみられた(リスク比:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。しかしGPI併用の有無による変動が大きく(p<0.0001)、併用使用がヘパリンベース療法群のみで優勢に認められた場合は有意な低下がみられたが(同:0.53、0.47~0.61、p<0.0001)、両療法群での使用が想定される試験(同:0.78、0.51~1.19、p=0.25)、予定されていた試験(同:1.07、0.87~1.31、p=0.53)を組み込んだ分析では、いずれも有意な低下はみられなかった。

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸の作用機序 動脈硬化抑制の多面的作用を考える

佐田 政隆 氏徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部はじめにオメガ3系多価不飽和脂肪酸が動脈硬化性疾患の罹病率、死亡率を低下させることは、疫学ならびに前向き臨床研究で明らかとなった。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸がいかにして動脈硬化を予防するかについても、さまざまな研究が行われてきた。本稿では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の多面的な薬理作用に関して、特に動脈硬化予防の観点から概説したい。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による心血管イベント抑制オメガ3系多価不飽和脂肪酸が動脈硬化を抑制する機序については、さまざまな研究が行われてきた。急性心筋梗塞の発症原因として、軽度な狭窄しかきたさない動脈硬化病変の破裂やびらんに起因する急性血栓性閉塞が注目されている。破綻した病変では、脂質コアの増大、被膜の菲薄化、平滑筋細胞数の減少、凝固能の亢進、コラーゲン含有量の減少、炎症細胞浸潤、タンパク分解酵素の発現亢進、プラーク内血管新生などが認められる。最近の分子生物学的研究から、オメガ3系脂肪酸が血管内皮細胞、炎症細胞、血小板に対して多面的作用を及ぼし、病変形成とプラークの不安定化を抑制して、プラーク破綻ならびにそれに引き続いて生ずる血栓性閉塞を予防している機序が解明されてきている。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による内皮機能の改善オメガ3系多価不飽和脂肪酸の血管内皮機能改善効果は広く知られている。血管内皮細胞は、血管壁の管腔側を覆う一層の細胞群である。かつては単なる血液と血管壁との境界として考えられていたが、その後、多彩な生理的な機能を有することが明らかにされた。その代表的な機能には、抗血栓作用、血管透過性の制御、さらに血管緊張度や内腔径の調節作用がある。血管内皮細胞は、一酸化窒素(NO)をはじめとする血管拡張物質やエンドセリンなどの血管収縮物質を分泌し、血管の恒常性維持に大きな役割を果たす。生活習慣病は、この内皮機能を障害することによって動脈硬化発症の契機になると考えられている。各種の動脈硬化危険因子は、血管機能を障害することが知られている。現在、いろいろな血管機能検査が開発されてきているが、その中でも、血管内皮機能検査は動脈硬化性の早期の変化を検出するのに有用である。冠動脈疾患患者を対象にして、オメガ3系多価不飽和脂肪酸6週間投与の前後に前腕血流を測定した臨床研究が報告されている。オメガ3系多価不飽和脂肪酸の長期投与により前腕血流の増加がみられ、この効果は、L-NMMAを用いて一酸化窒素合成酵素(NOS)を阻害することでキャンセルされた。EPAの長期投与により内皮機能が改善し、NO産生が亢進したと考えられる1)。オメガ3系不飽和脂肪酸が内皮機能を改善する機序に関しては、内皮型NO合成酵素(eNOS)のタンパクレベルならびに活性が増加することが報告されている(本誌p.14図を参照)2)。また、培養内皮細胞を用いた検討では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によってeNOSが細胞膜のカベオラから解離し、細胞質に移行することでCa2+非依存性に活性化され、NO産生を亢進させると報告されている3)。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による抗血小板作用プラークが破綻して血栓性閉塞が生ずると急性心筋梗塞が発症する。オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、この血栓形成の足場となる血小板凝集を抑制することにより血栓形成を抑制し、心血管イベントの発生抑制に寄与すると考えられる。Ex vivoにおいて、コラーゲンならびにADPによって誘発される血小板凝集をオメガ3系脂肪酸は抑制する。オメガ3系多価不飽和脂肪酸単独でも血小板凝集能を抑制するが、クロピドグレルなどのチエノピリジン系薬剤に対する上乗せ効果も認められている。注目すべきことには、オメガ3系不飽和脂肪酸は、単独投与ならびにチエノピリジン系薬剤との併用において、出血時間を延長させることがなかったと報告されている。出血の危険性を増加させることなく、血小板凝集を抑制することができることになり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸は臨床的に大変有用であると考えられる。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による抗血小板作用の機序としては、トロンボキサンA2 (TXA2)の産生抑制が報告されている。血小板内でオメガ6系多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸からTXA2が生成され、血小板内のCa2+濃度が上昇することで凝集することが知られている。アスピリンの抗血小板作用は、TXA2の産生に関与するシクロオキシゲナーゼ(COX)を抑制することによる。オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、アラキドン酸と競合することでTXA2の産生を減少させ、抗血小板機能を発揮すると考えられている。オメガ3系脂肪酸による抗炎症作用オメガ3系多価不飽和脂肪酸が、マクロファージの内皮細胞への接着やローリングを抑制し、抗炎症作用を有することは広く知られている4)。その分子機序としては、VCAM-1、ICAM-1、E-selectinなどの接着因子4)やIL-1、IL-8などのケモカインの発現を低下させることが報告されている。近年、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の抗炎症効果の機序としては、いろいろな分子機構が報告されている。オメガ6系多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸は、炎症惹起物質として知られるTXA2や、ロイコトリエンB4(LTB4)などの脂質メディエーターに変換される。一方、オメガ3系多価不飽和脂肪酸からは、TXA2の代わりにTXA3、LTB4の代わりにLTB5が産生される。TXA3やLTB5は、生理活性をほとんど有さないことが報告されている。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸からは、抗血小板作用、血管拡張作用を有するプロスタサイクリン(PGI)2の代わりにPGI3が生成されるが、PGI3はPGI2と同等の生理活性作用を有している(図)。また最近では、脂肪酸代謝物の包括的メタボローム解析から、オメガ3系不飽和脂肪酸由来の、新しい抗炎症性脂質メディエーターも同定されている。オメガ3系不飽和脂肪酸に、チトクロームP450あるいはメチル化されたCOX-2が作用することで生成される18R-HEPEに、5-リポキシゲナーゼが働くとレゾルビンEが生成する5)。レゾルビンEは強力な抗炎症作用を発揮する5)。オメガ3系多価不飽和脂肪酸からは、この他にもレゾルビンDやプロテクチンDなどの抗炎症性の生理活性物質が生成される。これらの物質は急性炎症の収束への関与が示唆されており、オメガ3系不飽和脂肪酸の多彩な動脈硬化抑制作用に関与している可能性が示唆されている。Peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)αは、炎症のさまざまなシグナル伝達との相互作用により炎症反応を調節している核内受容体であるが、EPAは血管内皮細胞やマクロファージのPPARαの発現や活性を強めているという報告がある6)。野生型のマウスでは、EPAが血管内皮においてNF-κBの活性を抑制したが、PPARα欠損マウスではこの現象は認められなかったという7)。さらに最近では、各種脂肪酸が細胞膜表面の受容体のリガンドとして特異的に作用することも報告されている。GPR120では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)を含む長鎖脂肪酸がアゴニストとして作用し、腸管細胞からインクレチンの1つであるglucagon-like peptide(GLP)-1の分泌を促すことが報告されている8)。GLP-1は膵臓からグルカゴンの分泌を抑制し、インスリンの分泌を促進して血糖値の上昇を抑制するほか、心血管系などにさまざまな生理作用を持つことで、最近特に注目されている。また、マクロファージや脂肪細胞におけるGPR120の新たな作用が報告され、オメガ3系脂肪酸による抗炎症作用機序の一端が明らかになった9)。マクロファージ細胞株RAW264.7にもGPR120の発現が認められ、GPRアゴニスト(GW9508)、あるいはDHAによる刺激をしたところ、lipopolysaccharide(LPS)依存性の炎症性サイトカイン分泌が有意に抑制された9)。この作用機序として、GPR120に結合するβ-arrestin-2を介するシグナルが、LPS受容体TLR4による炎症性シグナルを阻害することが報告されている。GPR120欠損マウスの腹腔内脂肪組織から単離した間質性血管分画では、野生型と比較して、オメガ3系多価不飽和脂肪酸による炎症性サイトカイン分泌抑制作用が著しく減弱していた。生体内でも同様のことが起こっており、炎症性マクロファージの活性抑制作用によって、インスリン抵抗性改善につながることが示唆された9)。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によって、脂肪細胞からアディポネクチンの分泌が増加するという報告もある10)。アディポネクチンには、抗炎症作用やインスリン感受性改善作用が報告されており、オメガ3系多価不飽和脂肪酸による血中アディポネクチン上昇も、生体における抗炎症効果に反映しているのかもしれない。図 プロスタノイドの代謝経路細胞膜からアラキドン酸が切り出され、プロスタノイドと総称される、プロスタグランジンやロイコトリエンといった生理活性物質が生成される。オメガ3系不飽和脂肪酸は、TXA2の代わりに活性の少ないTXA3、LTB4の代わりにLTB5に変換される。血管拡張作用や抗炎症効果を持つPGI2の代わりにPGI3が作成されるが、PGI3はPGI2と同等の強い活性を有している。画像を拡大する抗動脈硬化作用われわれは高純度EPAが動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損マウスならびにLDL受容体欠損マウスで、動脈硬化の進展を抑制することを報告した4)。高純度EPAの投与により大動脈壁の動脈硬化領域が減少し(本誌p.18図3を参照)、プラークの質が変化した。プラークの不安定性を規定する重要な因子の1つは、プラークの表面を覆う線維性被膜の厚さであり、線維性被膜の菲薄化がプラークの破綻につながる。線維性被膜は、EPA群で対照群に比べ有意に肥厚し、マクロファージの浸潤はEPA群で対照群に比べ有意に低下した。またSirius-red染色では、対照群に比べてEPA群では動脈硬化病変のコラーゲン含有量が有意に増加し、プラークの安定化に寄与していることが示された(本誌p.18図4を参照)。その機序として、EPAを前投与した細胞では、VCAM-1、ICAM-1などの接着因子の発現が抑制された。また、プラークの不安定化に寄与すると考えられるマクロファージからのMMP-2、MMP-9の発現はオメガ3系不飽和脂肪酸によって抑制された4)。さらに、ヒトの頸動脈プラークの内膜切除標本を組織学的に解析した研究でも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与によって、動脈病変が安定化することが示されている11, 12)。おわりにオメガ3系多価不飽和脂肪酸は、このように多岐にわたって心血管系に望ましい効果をもたらす。スタチンやレニン・アンジオテンシン系抑制薬の2次予防、1次予防効果は確立しているが、その抑制効果には限界があり、現在“残余リスク”として問題になっており、適切な追加治療法を見いだす必要がある。今後は、血中LDL濃度、HbA1c、血圧などと並んで血中オメガ3系多価不飽和脂肪酸濃度が測定されて、低い人には有効な補充療法が行われる時代が到来するかもしれない。食品から補充しなくても、高純度製剤が医薬品として処方されることは大変ありがたい。オメガ3系不飽和脂肪酸の薬理作用をよく理解して、必要な症例に有効な処方がなされ、イベント抑制につながることが期待される。文献1)Tagawa H et al. Long-term treatment with eicosapentaenoic acid augments both nitric oxide-mediated and non-nitric oxide-mediated endothelium-dependent forearm vasodilatation in patients with coronary artery disease. J Cardiovasc Pharmacol 1999; 33: 633-640.2)Chen J et al. Omega-3 fatty acids prevent pressure overload-induced cardiac fibrosis through activation of cyclic gmp/protein kinase g signaling in cardiac fibroblasts. Circulation 2011;123: 584-593.3)Omura M et al. Eicosapentaenoic acid (epa)induces ca(2+)-independent activation and translocation of endothelial nitric oxide synthase and endothelium-dependent vasorelaxation. FEBS Lett 2001; 487: 361-366.4)Matsumoto M et al. Orally administered eicosapentaenoic acid reduces and stabilizes atherosclerotic lesions in apoe-deficient mice.Atherosclerosis 2008; 197: 524-533.5)Arita M et al. Stereochemical assignment,antiinflammatory properties, and receptor for the omega-3 lipid mediator resolvin e1. J Exp Med 2005; 201: 713-722.6)Michaud SE, Renier G. Direct regulatory effect of fatty acids on macrophage lipoprotein lipase:Potential role of ppars. Diabetes 2001; 50: 660-666.7)Mishra A et al. Oxidized omega-3 fatty acids inhibit nf-kappab activation via a pparalphadependent pathway. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2004; 24: 1621-1627.8)Hirasawa A et al. Free fatty acids regulate gut incretin glucagon-like peptide-1 secretion through gpr120. Nat Med 2005; 11: 90-94.9)Oh DY et al. Gpr120 is an omega-3 fatty acid receptor mediating potent anti-inflammatory and insulin-sensitizing effects. Cell 2010; 142: 687-698.10)Itoh M et al. Increased adiponectin secretion by highly purified eicosapentaenoic acid in rodent models of obesity and human obese subjects.Arterioscler Thromb Vasc Biol 2007; 27: 1918-1925.11)Cawood AL et al. Eicosapentaenoic acid (epa)from highly concentrated n-3 fatty acid ethyl esters is incorporated into advanced atherosclerotic plaques and higher plaque epa is associated with decreased plaque inflammation and increased stability. Atherosclerosis 2010;212: 252-259.12)Thies F et al. Association of n-3 polyunsaturated fatty acids with stability of atherosclerotic plaques: A randomised controlled trial. Lancet 2003; 361: 477-485.

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アリスミアのツボ 第1回

Q1不整脈に対する治療が必要か否かの線引きは何をもって判断するのでしょうか?治療の要否は心電図所見ではないことを肝に銘じましょう。治療の要否は患者の全体像によって決まるのです。「木を見て森を見ず」不整脈の診断は心電図でなされます。だからこそ、次のような誤解が生じやすくなります…心電図が読めないから不整脈は嫌い、心電図が正常でなければすべて病気、心電図が読めれば治療の要否がわかる、などです。しかし、今の時代、治療の要否をたった一つの(しかもたった一瞬の)検査結果だけで決定できる病気があるでしょうか。私は不整脈のコンサルトを受けることはよくありますが、心電図1枚だけで治療の要否や治療法がわかることはまずありません。そう、まず必要なことは、この不整脈に対する(あるいは心電図に対する)誤解を解くことだと思います。不整脈治療を心電図だけで行おうとすると、そのほとんどが「木を見て森を見ず」になりがちです。患者のイメージでは、なにをもって治療の要否を判断するのでしょう。私が不整脈の心電図に関するコンサルトを受けた時には、「何歳?性別は?今、症状あるの?心不全はなさそう?その他に合併症はない?」と心電図以外の質問攻めをします。これらの質問に対する答えがなければ、患者のイメージがつかめないからです。不整脈の治療の要否を判断するには、心電図より患者全体のイメージが何よりも重要です。で、具体的にはどうするの?…と言われそうですが、「線引き」ができる場合とできない場合があることを知っておきましょう。不整脈に限らず、治療の要否を簡単に線引きできる疾患はそう多くはないのです。90歳の悪性腫瘍はどのように治療しますか?そんな簡単には線引きはできないかもしれませんが、患者の全体像を知っていれば医師としての判断はしやすくなるでしょう。不整脈もこれと似ています。治療の要否決定は、デジタルではなくアナログで考えましょう。言葉にすれば、「現在の血行動態がやばい場合あるいは症状で困っている場合、ほうっておくと将来何か不幸が訪れると考えた場合」、これが不整脈治療の必要な場合です。さらに詳しい話はおいおいしていきたいと思います。Q2期外収縮の最新の薬物治療について知りたいのですが…期外収縮の治療は1990年代以降大きく進歩していません。この課題、卒業してもよさそうです。そもそも治療する?私が研修医をしていた1980年代、期外収縮は治療するものと習ってきました。心電図異常=病気という考え方に基づくものです。まったく理論的根拠がなかったのかというと、そうでもなくて、陳旧性心筋梗塞患者に限れば心室期外収縮が多ければ多いほどその後の予後が悪いということが知られていました。しかし、この事実をすべての患者に当てはめてしまうのは困りものですね。実際、虚血性心疾患や心不全がない患者では、心室期外収縮の有無によって、その後の予後に違いがないことが判明しています。ほうっておいても将来何も不幸が訪れないとわかっていて、何を目的に治療するのでしょう。たぶん、心電図所見から心室期外収縮が消えて、医者も患者も気分がよいという美容形成的な意味はあるかもしれませんが…。常識的に考えてみましょう。ここに心電図がないものとして、健康なイメージを有する人の脈をとったらたまたま1拍抜けていた…これだけですぐに治療しなきゃと考える人は少ないはずです。治療したらその効果はどう判断する?現在、期外収縮は相手にしないというのが基本的な考え方です。それでも、治療せざるを得ない場合があります。そう、現在の血行動態に問題なくても、将来不幸な出来事がなくても、患者の訴えが強くて困っているのに、「何もしない」というのは医学的には正しくても、人間としてつらいですね。そんな時、私はまず「教育」という治療をしています。患者さんは、「不整脈がありますね」と言われるだけで大きな不安を感じるものです。この精神的ストレスが期外収縮を増加させてしまいそうです。だから、まず「安心」をもたらすことが一番の治療だと思っています。それでもダメな場合はあります。その時は、β遮断薬、Ca拮抗薬、いわゆるI群抗不整脈薬の何でもいいと思っています。とりあえず、効きそうな薬を…です。しかし、私が選んでも、他の先生が選んでも、きっと患者さんにとっては変わりがないでしょう。それというのも、効果判定の手段がないからです。ホルター心電図の期外収縮数ほど再現性のない検査はありません。患者も医師も気楽に考えよう期外収縮は治療しない、どうしてもしなければならない時は患者の不快感がある場合に限られるとなると、効果判定は患者の不快感しかありません。だったら、もっと治療自体は気楽に考えればよいと思います。私は、始めた治療薬で患者の不快感がなくなればすぐに中止するようにしています。逆も真なりで、つらいなら飲み続けてもよいとも言っています。治療した時もう一つの重要なことは、抗不整脈薬をだらだら漫然と服用させないことです。目的を達したかどうかで、自由にオン・オフしてよいのです。Q3心房細動で抗凝固薬が絶対必要な症例とそうでない症例の見極めはどのようにするのでしょうか?CHADS2スコアで判断しますが、自分の感性も加味しています。CHADS2スコアとCHA2DS2-VAScスコア抗凝固療法の適応判断に用いるツールとして、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアがあまりにも有名ですね。心房細動患者の脳梗塞リスクである、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞の既往をリスクとして考えるCHADS2スコア、さらに動脈硬化性疾患、65-75歳、女性をリスクとして加味するCHA2DS2-VAScスコア、両者ともに便利なスコアですが、用いる人が使いやすいものを使えばよいと思います。どちらを使おうが、全くこれらを使わないで医師の感性だけで対処するよりずっとましだからです。ちなみに国内外のガイドラインを見ると、「65歳未満で何のリスクも持たない例」は抗血栓薬自体が不要、「CHADS2スコア2点以上」は絶対必要という点で一致しています。抗凝固薬の適応判断は単純なのだろうか?では、日常臨床ではそんなに簡単に見極めができるのでしょうか。文章で書くとわかってしまった気になるのですが、リスクとされる心不全、高血圧、糖尿病の有無はどのようにして決めるのでしょう。きちんと線引きができますか?年齢はそもそも連続的なのに、65とか75とか勝手に区切っていいものなのでしょうか?あるいはCHADS2スコア6点満点は絶対的に抗凝固薬の適応なのですが、患者に会ってみればあまりにもfragileでこれでも抗凝固療法が必要なのかと頭をかしげたくなる…これも日常臨床では必発です。アナログ判断は死なず結局、Q1と同じようなところに行きついてしまうのが医療なのでしょう。というか、それがあるからこそ、医師が必要なのです。基本は守りつつ、医師の感性、患者の感性も同じように重要だ…という感覚で心房細動の脳梗塞予防をしているのが私の実情です。私の基本は、「65歳未満で何のリスクも持たない例」以外はすべて抗凝固療法の適応ですが、年齢、高血圧については患者によってかなり斟酌の度合いが異なります。糖尿病の有無判断も、糖尿病の薬物治療をしているかどうかで決めています。fragileであれば、医学判断より家族判断を優先させます。こんなことはどの教科書にも書いてなくて根拠もないのですが、逆にそれはいけないと否定する根拠もなく、だからこそ自分が患者の全体像から感じる感性でアナログ的に加味して斟酌してもいいものと思っているのです。

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消化管・頭蓋内出血リスクの新たな予測法/BMJ

 英国・ノッティンガム大学パーク大学キャンパスのJulia Hippisley-Cox氏らが開発した出血リスク予測のアルゴリズム「QBleed」は、抗凝固薬の使用・非使用患者の上部消化管出血および頭蓋内出血の絶対リスク予測に有用であることが報告された。著者は、「このアルゴリズムをプライマリ・ケアで用いるため、臨床アウトカムと費用対効果についてさらなる検討を行う必要がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告より。オープンコホート研究にて、アルゴリズムを開発・検証 研究グループは、プライマリ・ケアの成人患者(21~99歳)で抗凝固薬の使用・非使用患者について、上部消化管出血および頭蓋内出血の絶対リスクを予測するアルゴリズム「QBleed」の開発、検証作業を行った。 オープンコホート研究にて、2008年1月1日~2013年10月1日の5年間の試験期間中、一般開業医(GP)からルーチンに収集したデータを、入院エピソード統計データおよび死亡率データと結び付けて検討した。具体的に、アルゴリズム開発には、全英QResearchデータベースに関与している565人のGPから、同検証には、さらに別の188人のGPからのデータを用いて分析。試験に協力した全753人のGPは、病院エピソード統計と死亡率データを患者個人レベルで結び付けるデータを有していた。 エンドポイントは、死亡率データまたは入院データの両方とリンクした消化管出血と頭蓋内出血の記録であった。開発には1,640万人年、検証には490万人年が参加 開発コホートには、患者440万人、総計1,640万人年が参加した。追跡期間中に、上部消化管出血を呈した患者は2万1,641例、頭蓋内出血を呈した患者は9,040例だった。 検証コホートには、140万人、総計490万人年が参加した。追跡期間中に、上部消化管出血を呈した患者は6,600例、頭蓋内出血を呈した患者は2,820例だった。 検討では、Townsend階層スコアが不明な患者、試験エントリー前180日間に抗凝固薬処方を受けていた患者は除外した。 リスク因子の候補変数は、コホートへのエントリー前にGPのコンピュータシステムに記録した。因子は、パーソナル変数(年齢、性別、Townsend階層スコア、人種)、ライフスタイル変数(喫煙、飲酒)、慢性疾患、処方薬、臨床変数(BMI、収縮期血圧)、ラボ検査結果(ヘモグロビン、血小板)などだった。試験エントリー前には出血既往についても記録した。女性上位10%の高リスク群の予測の感度は上部消化管出血38%、頭蓋内出血51% QBleedアルゴリズムには最終的に21の変数が組み込まれた。これを検証コホートへ適用した結果、女性において、上部消化管出血のバラツキの40%を、また頭蓋内出血のバラツキの58%を、識別することができた。これはD統計値ではそれぞれ1.67、2.42に相当するもので、ROC曲線の統計的価値は0.77、0.86を示した。 女性の上位10%の高リスク群における感度は、上部消化管出血については38%、頭蓋内出血については51%だった。男性についても同程度であった。

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分娩前の低分子量ヘパリン、合併症を抑制せず/Lancet

 血栓性素因を有するため合併症のリスクが高い妊婦に対する低分子量ヘパリン・ダルテパリンの分娩前予防投与は、これらの合併症の発生を抑制しないことが、カナダ・オタワ大学のMarc A Rodger氏らが行ったTIPPS試験で示された。血栓性素因は妊婦によくみられる病態で、妊娠関連静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを増大させ、胎盤介在性妊娠合併症(重症妊娠高血圧腎症、在胎週数に比し小さい新生児、胎盤早期剥離)のリスクをも増加させる可能性がある。低分子量ヘパリンは胎盤を通過せず、大出血やヘパリン起因性の血小板減少、骨粗鬆症のリスクが低いとされるが、皮下注射の手間や費用などの問題がある。Lancet誌オンライン版2014年7月25日号掲載の報告。ダルテパリンの有用性を無作為化試験で評価 TIPPS試験は、血栓性素因を有し、妊娠合併症のリスクが高い妊婦に対するダルテパリン予防投与によるVTEおよび胎盤介在性妊娠合併症のリスクの抑制効果を検討する非盲検無作為化試験。 参加者は、分娩前に予防的にダルテパリンを投与(自己注射)する群または非投与群(対照群)に無作為に割り付けられた。ダルテパリンは、妊娠期間20週までは5,000 IU/日を1日1回投与し、その後は最短でも妊娠期間37週まで5,000 IU/日を1日2回投与した。 治療割り付け情報は患者と試験関係者にはマスクされなかったが、アウトカムの審査担当者にはマスクされた。主要評価項目は、重症または早期発症の妊娠高血圧腎症、在胎週数に比し小さい新生児(出生時体重<10パーセンタイル)、妊娠喪失、VTEの複合アウトカムとした。小出血リスクは増大 試験期間は2000年2月28日~2012年9月14日で、5ヵ国(カナダ、オーストラリア、米国、英国、フランス)の3次医療機関36施設が参加した。このうち21施設から292例が登録され、適格基準を満たさなかった3例を除く289例(intention-to-treat集団、ダルテパリン投与群:146例、非投与群:143例)が解析の対象となった。 全体の平均年齢は31.8歳、割り付け時の平均妊娠期間は11.9週、平均妊娠回数は2.2回、平均分娩回数は1.0回であり、妊娠合併症歴を有する妊婦は61%(176/289例)であった。実際に治療が行われた患者は284例(on-treatment集団、ダルテパリン投与群:143例、非投与群:141例)だった。 intention-to-treat集団およびon-treatment集団のいずれにおいても、ダルテパリンは主要複合アウトカムの発生を抑制しなかった。 すなわち、intention-to-treat集団における主要複合アウトカムの発生率は、ダルテパリン投与群が17.1%(25/146例)、非投与群は18.9%(27/143例)であり、両群のリスク差は-1.8%(95%信頼区間[CI]:-10.6~7.1%)と有意な差は認めなかった。on-treatment集団では、それぞれ19.6%(28/143例)、17.0%(24/141例)で、リスク差は2.6%(95%CI:-6.4~11.6%)であり、有意差はなかった。 安全性解析(on-treatment集団)では、大出血(ISTH基準)の発生率は両群間に差はなかった(2.1%[3/143例]vs. 1.4%[2/141例]、リスク差:0.7%、95%CI:−2.4~3.7%、p=1.0)が、小出血(大出血以外の出血)はダルテパリン投与群で多く認められた(19.6%[28/143例]vs. 9.2%[13/141例]、リスク差:10.4%、95%CI:2.3~18.4%、p=0.01)。 著者は、「分娩前のダルテパリンの予防投与は、血栓性素因を有するため、VTE、妊娠喪失、胎盤介在性妊娠合併症のリスクが高い妊婦においてこれらの合併症の発生を抑制せず、小出血のリスクを増大させた」とまとめ、「これらの知見は、既報の質の高いエビデンスと一致する」と指摘している。

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Vol. 2 No. 3 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するカテーテルインターベンションの現状と展望 バルーン肺動脈形成術は肺動脈血栓内膜摘除術の代替療法となりうるか?

川上 崇史 氏慶應義塾大学病院循環器内科はじめに慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)とは、器質化血栓により広範囲の肺動脈が狭窄または閉塞した結果、肺高血圧症を合併した状態である。早期に適切な治療がなされない場合、予後不良であり、心不全から死に至るといわれている1)。当初Riedelらは、CTEPHの予後は、平均肺動脈圧が30mmHg、40mmHg、50mmHg以上と段階的に上昇するにつれて、5年生存率は50%、30%、10%へ低下すると報告した2)。現在、各種肺血管拡張剤が発達しており、上記より良好な成績であるとは思われるが、効果は限定的である。また、中枢型CTEPHに対しては、肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)が根治術として確立されている3)。しかし、末梢型CTEPHに対する成績は中枢型CTEPHと比較して劣っており、末梢型のためにPEA適応外となる症例も少なからず存在する。2000年代半ばより、本邦において、薬物療法で十分な治療効果が得られず、PEA適応外である症例に対して、バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)が試みられ、有効性が報告された。以下、本邦から治療効果と安全性が確立したBPAについて概説する。BPAについて最初に複数例のCTEPHに対するBPAの有効性を報告したのは、2001年のFeinsteinらである4)。Feinsteinらは、末梢型や並存疾患によりPEA適応外である18例のCTEPHに対して、平均2.6セッションのBPAを施行し、平均36か月間、経過観察した。BPA後、平均肺動脈圧の有意な低下(43→33.7mmHg)とNYHA分類の改善(3.3→1.8)、6分間歩行距離の改善(191→454m)を認めたが、PEAと同様の合併症である再灌流性肺水腫が18例中11例(61.1%)に発症し、人工呼吸器管理が3例(16.6%)、BPA関連死が1例(5.6%)という成績であった。当時の旧式のバルーンカテーテルや0.035インチガイドワイヤーを用いて行われたBPAの初期報告は、上記のように有効性を認めたわけであるが、外科的根治術であるPEAの有効性には及ばなかった。当時、UCSDのJamiesonらのPEA周術期死亡率は4.4%であり、術後の平均肺動脈圧は、中枢型CTEPHで46から28mmHg、末梢型CTEPHで47から32mmHgまで改善することができた3)。このため、米国ではBPAはPEAに劣ると結論づけられた。当時、CTEPHの治療選択肢には、PEAと薬物療法があり、PEAの適応症例であれば、十分な改善を得ることができたが、PEA適応外の症例を薬物療法で治療してもあまり改善は得られなかった。結果として、年齢、並存疾患(全身麻酔ができない)、末梢型CTEPHなどでPEAが実施できない症例が割と多いこと、末梢病変の存在によりPEA後の残存肺高血圧症が10%程度あることが問題として残った。このような背景において、2000年代半ばより、本邦の施設でPEA適応外である重症CTEPHに対して、BPAが施行されるようになり、いくつかの報告がされた5-7)。なかでも、岡山医療センターのMizoguchi、Matsubaraらの報告は、68名のCTEPH患者に対して255セッションのBPAを施行し、最大7年間、経過観察している。結果、BPA後に平均肺動脈圧、肺血管抵抗の低下(各々45.4→24mmHg、942→327dyne sec/cm5)、心係数の増加(CI 2.2→3.2L/min/m2)、6分間歩行距離の延長(296→368m)、BNPの有意な改善(330→35pg/mL)を認めた。酸素投与量も減量(oxygen inhalation 3.0→1.3)することができ、68名中、26名の患者(38%)で在宅酸素療法を離脱することができた。また、96%の患者がWHO分類ⅠまたはⅡまで改善することができた。周術期死亡率は1.5%であり、再灌流性肺障害(再灌流性肺水腫と同義)を含めた呼吸器関連合併症を認めたが、症例経験の増加に伴い、合併症は有意に低下すると報告している。以上、2010年以降の本邦からの報告において、改良されたBPAは、Feinsteinらの初期のBPAと比べて、安全性・有効性ともに著しく改善したといえる。改善した理由としては、バルーンカテーテルの発達、0.014インチガイドワイヤーの使用、画像診断デバイス(IVUSなど)の積極的な使用などがあると思われる。手技の流れについては次項で述べる。BPAの実際術前、右心カテーテル検査・肺動脈造影を必ず行い、個々の患者における肺高血圧症の重症度と肺動脈病変の形態評価を行う。検査結果より、右房圧が高ければ、利尿剤を調節し、心拍出量が低値(CI 2.0L/min以下)であれば、術前からドブタミンの投与を行う。抗凝固療法については前日からワルファリンカリウムを中止している。重症例で軽度の肺出血が致死的となる可能性がある場合、コントロールしやすいヘパリンへ置換する方法もあると考える。ワルファリンは他剤との併用により容易に効果が増強するので、PT-INRの頻回の測定を要する。また、われわれはエポプロステノールを使用していない。理由はCTEPHにおいて肺動脈圧の低下作用が軽微であること、中心静脈カテーテル留置など手技が煩雑であること、抗凝集作用により出血を助長する可能性があると考えているからである。次に実際のBPA手技について述べる。手技は施設間でやや異なっていると思われる。しかし、0.014インチガイドワイヤーの使用、肺動脈主幹部へのロングシース挿入、積極的な画像診断デバイスの使用などは各施設である程度、共通していると思われる。以下、われわれの施設の手法を述べる。アプローチ部位の第1選択は、右内頸静脈である(図1)。理由はガイディングカテーテルのバックアップや操作性がよいことである。また、術後のスワンガンツカテーテル留置が迅速にできることも利点である。内頸静脈が使用できない場合は、大腿静脈アプローチを考慮する。まず、エコーガイド下に9Fr 8.5cmシース(スワンガンツカテーテル留置用シース)を右内頸静脈に挿入する。内頸静脈アプローチとはいえ、稀に気胸を合併することがある。気胸はBPA後の必要時にNPPVが使用できなくなるなど、術後管理を困難にするため、必ず避けねばならない。このため、われわれは100%、エコーガイド下穿刺を実践している。図1 右内頸静脈アプローチ画像を拡大する次に6Fr 55cmまたは70cmロングシースを9Frシース内へ挿入する。6Frロングシースの先端をJ型またはPigtail型にシェイピングし、0.035インチラジフォーカスガイドワイヤーに乗せて、治療対象となる左右肺動脈の近位部へ進める。その後、6Frロングシース内へ6Frガイディングカテーテルを入れ、治療標的となる肺動脈病変へエンゲージする。ガイディングカテーテルの選択には術者の好みもあると思うが、われわれは岡山医療センターと同様、柔らかい材質のMulti-purposeカテーテルを第1選択とすることが多い。その他、治療標的血管により、AL1カテーテルやJR4カテーテルを適宜、選択する。稀であるが、完全閉塞病変に対して、材質の固いガイディングカテーテルを使用することがある。ガイディングカテーテルのエンゲージ後、正面、左前斜位60度の2方向で選択造影を行い、0.014インチガイドワイヤーをバルーンかマイクロカテーテルサポート下に肺動脈病変を通過させる。肺動脈病変に対するワイヤリングは、PCIやEVTと違うと感じる術者が多い。これは、肺動脈の解剖が3次元的に多彩であること(細かい分岐が多い)、肺動脈は脆弱で破綻しやすいこと、肺動脈病変が他の動脈硬化病変と大きく異なること、呼吸変動の存在などに起因すると思われる。特にBPAにおいて、呼吸変動をコントロールすることはとても重要である。呼吸変動を上手に利用すれば、ガイドワイヤー通過の助けになるが、上手にコントロールできなければ、ガイドワイヤーによる肺血管障害(肺出血)が容易に起こると思われる。当院では、肺血管障害を最小限にするため、ガイドワイヤーの通過後、可能な限り、先端荷重の軽いコイルタイプのガイドワイヤーへ交換している。ガイドワイヤー通過後は、血管内超音波(IVUS)または光干渉断層法(OCT)で病変性状・範囲・血管径などを評価し、病変型に準じて、血管径の50~80%程度のサイズのバルーンカテーテルで拡張していく。なお、平均肺動脈圧40mmHg以上または心拍出量2.0L/min以下の症例の場合は、岡山医療センターの手法に倣って、上記より20%程度減じたバルーンサイズを選択している。なお、CTEPHの肺動脈病変は再狭窄することはほぼなく、バルーンサイズを減じても大きな問題になることはない。しかし、複数回治療後に平均肺動脈圧が低下した症例の場合は、適切なサイズのバルーンカテーテルで拡張することがさらなる改善のために必要である。次に術後管理について述べる。BPA後は原則として、スワンガンツカテーテルを留置し、集中治療室管理としている。また、術後、再灌流性肺障害の有無や程度を確認するために必ず胸部単純CTを施行する。これらは、術後の再灌流性肺障害の有無、重症度の評価をするために行っている。経過がよければ、翌日午前中に集中治療室から一般病室へ戻ることができ、午後には歩行可能となる。当院での104セッションのBPAにおいては、1セッションのみで3日間の集中治療室管理を要したが、残り103セッションの集中治療室の滞在期間は1日であった。なお、最近、NPPV装着は必須としていないが、常にスタンバイしておく必要がある。NPPV適応となるのは、コントロール困難な喀血・血痰、重度の酸素化不良例などである。以下に当院の症例を示す。症 例54歳、女性主 訴労作時呼吸困難既往歴特になし家族歴特になし現病歴2011年11月、労作時呼吸困難(WHO分類Ⅱ)を認めた。2012年1月、労作時呼吸困難が悪化したため(WHO分類Ⅲ)、近医を受診し、急性肺塞栓症の診断で緊急入院となった。抗凝固療法を行い、外来で経過観察していたが、2012年9月、労作時呼吸困難が再増悪したため(WHO分類Ⅲ)、同医を受診。心エコー図で肺高血圧症を指摘され、CTEPHと診断された。2012年11月、精査加療目的で当院を紹介受診した。右心カテーテル:右房圧9、肺動脈圧73/23/m41、心拍出量1.8、肺血管抵抗1156肺動脈造影:図2入院後経過タダラフィル20mg/日を内服開始したが、肺動脈圧66/24/m39、心拍出量1.8、肺血管抵抗967と有意な改善は認めなかった。本人・家族と相談し、BPAの方針となった。1回目BPA:左A9、A102回目BPA:右A6、A8、A103回目BPA:右A1、A2、A3、A4、A54回目BPA:左A1+2、A85回目BPA:左A4、A56回目BPA:右A1、A3、A6、A7、A8、A9治療後計6回のBPAで計20病変を治療後、症状は消失した(WHO分類Ⅰ)。また、右心カテーテルでは肺動脈圧34/11/m19、心拍出量3.1、肺血管抵抗316と著明な改善を認めた。図2 肺動脈造影画像を拡大するBPAの現状と今後の適応過去の報告において、FeinsteinらはBPA適応を末梢型CTEPHや併存疾患により全身麻酔が困難なPEA適応外のCTEPHとしてきた。これらは、本邦からの報告でも同様である。しかし、近年、BPAは有効性に加えて、安全性も大きく向上しており、当院では適応範囲を拡大して、以下をBPAの適応としている。中枢型CTEPH(原則としてinoperable)末梢型CTEPH高齢重篤な併存疾患を有するCTEPHPEA後の残存PH軽度から中等度のCTEPH上記の重篤な併存疾患とは、全身麻酔ができない症例のことであると考える。また、BPAの普及により、最も恩恵を受けたのは、PEA後の残存PHと軽度から中等度のCTEPH症例であろう。PEA後の残存PHに対して再度、PEAを行うのは実際、高リスクであり、BPAはよい選択肢である。また、軽度から中等度のCTEPHは、従来、薬物療法で経過観察されていた患者群であるが、これらの症例に対して、BPAを行うことによりさらにQOLが向上し、薬物療法の減量、在宅酸素療法の減量・中止が可能となることをしばしば経験する。以上より、カテーテル治療であるBPAは低侵襲であり、PEAより適応範囲が広いと思われる。しかし、BPAに適した症例、PEAに適した症例があり、個々の患者でよく検討することが重要である。CTEPHには、血管造影上、いくつかの特徴的な病変があることが報告されている8)。当院で治療した計476病変を検討した結果、病変により、BPAの手技成功率が異なることが確認された(図3)。当然であるが、カテーテル手術のため、閉塞病変の方が狭窄病変より治療が難しく、再灌流性肺障害を含めた合併症発生率も高率である。しかし、BPAで閉塞病変を開存させることにより、著しく血行動態や酸素化の改善を経験することが多々あり、個人的には、閉塞病変は可能な限り開存させるべきであると考える。図3 各種病変と手技成功率画像を拡大する一方、用手的に器質化血栓を摘除するPEAは、BPAと比べて、閉塞病変の治療が容易にできるかもしれない。また、器質化血栓が多量である場合、器質化血栓をバルーンで壁に圧着させるBPAより、完全に摘除するPEAの方が理にかなっているかもしれない。しかし、PEAでは到達が困難である肺動脈枝が存在することも事実である。いずれにしても、BPA、PEAの双方とも一長一短があり、適応決定に際しては、外科医・カテーテル治療医の両者で話し合うことが望ましいと考えられる。まとめ以上、近年、本邦で発展を遂げたインターベンションであるBPAについて概説した。従来、CTEPHに対する根治術はPEAだけであったため、BPAの発展は、CTEPH患者にとって大きな福音であると思われる。現在、経験のある施設で再灌流性肺障害を低減させる試みがなされ、合併症発症率は確実に減少している。しかし、安全性を重視するあまり、治療効果を減じるようでは、本末転倒といわざるをえない。低い合併症発生率と高い治療効果の双方を合わせもったBPAでなければならない。CTEPHの第一の治療ゴールは、平均肺動脈圧30mmHg以下を達成することである。これにより、CTEPH患者の予後を改善することができる。そして、第二の治療ゴールは、さらなる平均肺動脈圧の低下を目指して(20mmHg以下)、QOLの向上や酸素投与量の減量・中止、薬物療法の減量などを達成することである(図4)。われわれは可能な限り、平均肺動脈圧の低下を目指す「lower is better」を目標として、日々、CTEPHを治療している。また、BPAは本邦が世界をリードしている分野であり、今後、本邦から多くの知見が報告されなければならないと考える。図4 治療のゴール画像を拡大する最後にわれわれも発展途上であり、今後、多くの施設とBPAの発展について協力していければと思っている。文献1)Piazza G et al. Chronic thromboembolic pulmonary hypertension. New Engl J Med 2011;364: 351-360.2)Riedel M et al. Long term follow-up of patients with pulmonary thromboembolism: late prognosis and evolution of hemodynamic and respiratory data. Chest 1982; 81: 151-158.3)Thistlethwaite PA et al. Operative classification of thromboembolic disease determines outcome after pulmonary endarterectomy. J Thorac Cardiovasc Surg 2002; 124: 1203-1211.4)Feinstein JA et al. Balloon pulmonary angioplasty for treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circulation 2001; 103:10-13.5)Sugimura K et al. Percutaneous transluminal pulmonary angioplasty markedly improves pulmonary hemodynamics and long-term prognosis in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ J 2012; 76: 485-488.6)Kataoka M et al. Percutaneous transluminal pulmonary angioplasty for the treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 756-762.7)Mizoguchi H et al. Refined balloon pulmonary angioplasty for inoperable patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 748-755.8)Auger WR et al. Chronic major-vessel thromboembolic pulmonary artery obstruction:appearance at angiography. Radiology 1992;182: 393-398.

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原因不明の脳卒中後の心房細動検出、携帯型心電図で5倍以上改善/NEJM

 原因不明の脳卒中後の心房細動検出について、30日イベントレコーダー付き携帯型心電計によるモニタリングが、従来の24時間ホルター心電図によるモニタリングより有効であることが示された。検出率は5倍以上有意に改善し、抗凝固療法の施行率はほぼ2倍上昇したという。カナダ・トロント大学のDavid J. Gladstone氏らが、前向き無作為化比較試験を行い報告した。NEJM誌2014年6月26日号掲載の報告より。原因不明の脳梗塞またはTIA発症患者を2群に分け評価 試験は、6ヵ月以内に原因不明の脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)を発症した、心房細動歴のない55歳以上の患者572例を対象に行われた。なおTIA発症の被験者は、24時間心電図など標準的な検査を行ったが、その原因は不明だった患者を適格とした。 被験者を無作為に2群に分け、一方の群(280例)には、非侵襲的な30日イベントレコーダー付き携帯型心電計による心電図モニタリングを、もう一方の対照群(277例)には、従来の24時間ホルター心電図検査によるモニタリングを行った。 主要評価項目は、試験開始後90日以内に新たに検出された30秒以上持続する心房細動だった。副次評価項目には、2.5分以上持続する心房細動や、90日時点における抗凝固療法の有無などが含まれた。30秒以上の心房細動検出率、携帯型心電図群はホルター心電図群より約13%上昇 結果、30秒以上持続する心房細動の検出は、携帯型心電図群は280例中45例(16.1%)であったのに対し、対照群では277例中9例(3.2%)の検出にとどまった(絶対差:12.9ポイント、95%信頼区間[CI]:8.0~17.6、p<0.001)。1例検出に必要なスクリーニング患者数は8例だった。 また、副次評価項目の2.5分以上持続する心房細動については、携帯型心電図群では284例中28例(9.9%)に認められたのに対し、対照群では277例中7例(2.5%)であった(同:7.4ポイント、3.4~11.3、p<0.001)。 試験開始後90日までに経口抗凝固薬の処方を受けた人は、対照群で279例中31例(11.1%)だったのに対し、携帯型心電図群は280例中52例(18.6%)と有意に高率だった(絶対差:7.5ポイント、同:1.6~13.3、p=0.01)。

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肺塞栓症への血栓溶解療法、全死因死亡は減少、大出血は増大/JAMA

 肺塞栓症に対する血栓溶解療法について、全死因死亡は減少するが、大出血および頭蓋内出血(ICH)は増大することが、メタ解析の結果、明らかにされた。米国・マウントサイナイヘルスシステムの聖ルーク-ルーズベルトがん病院のSaurav Chatterjee氏らが、16試験2,115例のデータを分析し報告した。一部の肺塞栓症患者に対して血栓溶解療法は有益である可能性が示されていたが、これまで行われた従来抗凝固療法と比較した生存の改善に関する解析は、統計的検出力が不十分で関連性は確認されていなかった。JAMA誌2014年6月18日号掲載の報告より。16試験2,115例について血栓溶解療法vs. 抗凝固療法を評価 研究グループは、急性肺塞栓症患者を対象に、抗凝固療法と比較した血栓溶解療法の死亡率における有益性および出血リスクを調べた。被験者には、中リスクの肺塞栓症(右室不全を有するが血行動態安定)患者も対象に含めた。 血栓溶解療法と抗凝固療法を比較した無作為化試験を適格条件に、PubMed、Cochrane Library、EMBASE、EBSCO、Web of Science、CINAHLの各データベースを検索(各発刊~2014年4月10日まで)。16試験2,115例を特定した。そのうち8試験1,775例は中リスク肺塞栓症(血行動態安定で右室不全を有する)患者だった。 2名のレビュワーがそれぞれ試験データから患者数、患者特性、追跡期間、アウトカムのデータを抽出し検討した。 主要アウトカムは、全死因死亡と大出血で、副次アウトカムは、肺塞栓症再発およびICHのリスクとした。固定効果モデルを用いて、Peto法によりオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求め関連を評価した。血栓溶解療法、全死因死亡は減少、大出血は増大 結果、血栓溶解療法は、全死因死亡を有意に減少した。血栓溶解療法群の全死因死亡率は2.17%(23/1,061例)、抗凝固療法群は3.89%(41/1,054例)で、ORは0.53(95%CI:0.32~0.88)、治療必要数(NNT)は59例であった。 一方で大出血リスクは、血栓溶解療法群での有意な上昇が認められた。同群の大出血発生率は9.24%(98/1,061例)、抗凝固療法群は3.42%(36/1,054例)で、ORは2.73(95%CI:1.91~3.91)、有害必要数(NNH)は18例だった。ただし大出血リスクは、65歳以下の患者では有意な増大はみられなかった(OR:1.25、95%CI:0.50~3.14)。 また、血栓溶解療法群ではICH増大との有意な関連が認められた。発生率は1.46%(15/1,024例)vs. 0.19%(2/1,019例)、ORは4.63(95%CI:1.78~12.04)、NNHは78例だった。 肺塞栓症の再発は、血栓溶解療法群において有意な減少が認められた。1.17%(12/1,024例)vs. 3.04%(31/1,019例)、ORは0.40(95%CI:0.22~0.74)、NNTは54例だった。 中リスク肺塞栓患者の分析においても、全死因死亡は減少(OR:0.48、95%CI:0.25~0.92)、一方で大出血イベントについては増大が認められた(同:3.19、2.07~4.92)。 なお著者は今回の結果について、右室不全を有さない血行動態安定の肺塞栓症患者には適用できない可能性があるとしている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第9回

第9回:外来で出会う潜在性の消化管出血へのアプローチをどのように行うか? 外来診療の中で、採血を行った際に鉄欠乏性貧血を偶然発見する、大腸がんのスクリーニング検査で便潜血検査を行うと陽性であった、といったことはしばしば経験することだと思います。しかし、出血源を正しく評価するためにどのようにアプローチしていくかは、検査の侵襲性の問題もあり、頭を悩ませることも時にはあるかと思います。原因の検索のために確立された評価法を確認することで、このよくある問題に対する診療の一助となれば幸いです。 以下、 American Family Physician 2013年3月15日号1)より潜在性消化管出血1.概要潜在性消化管出血とは、明らかな出血は認められないが便潜血検査が陽性である消化管出血、または便潜血検査の結果に限らず鉄欠乏性貧血を認めている消化管出血と定義される。消化管出血の段階的な評価は確立されており、上下部内視鏡で消化管出血が診断つく人は48~71%に上る。繰り返し上下部の内視鏡で精査されて、見逃されていた病変が見つかる人は、出血が再発する患者の中で35%程度いる。もし上下部内視鏡で診断がつかない場合はカプセル内視鏡を行うことで、病変の診断率は61~74%に及ぶ。便潜血検査が陽性でも、詳細な評価を行わずして、低用量アスピリンや抗凝固薬が原因であるとしてはならない。2.病因上部消化管から小腸にかけての出血が鉄欠乏性貧血の原因となることが多い。 上部消化管(頻度:29~56%)食道炎、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸潰瘍、血管拡張、胃がん、胃前庭部毛細血管拡張症 大腸病変(頻度:20~30%)大腸ポリープ、大腸がん、血管拡張症、腸炎 上下部消化管の同時性の出血(1~17%) 出血源不明(29~52%)年齢での出血の原因としての頻度は、 40歳以下小腸腫瘤(最も原因として多い)、Celiac病、クローン病 40歳以上血管拡張、NSAIDsが最もcommon まれな原因感染(鈎虫)、長距離走(⇒内臓の血流が増加し、相対的に腸管の虚血が起こると考えられている)3.病歴と身体診察消化管出血、手術の既往または病因の聴取が重要な診断の手掛かりとなる。体重減少は、悪性腫瘍を示唆し、アスピリンや他のNSAIDs使用者の腹痛は、潰瘍性の粘膜障害を示唆する。抗凝固剤や、抗血小板剤は出血を引き起こす可能性がある。消化管出血の家族歴では遺伝性出血性血管拡張(唇、舌、手掌に血管拡張)、青色ゴム母斑症候群(Blue rubber bleb nevus syndrome:BRBNS 皮膚・腸管・軟部組織の静脈奇形)を示唆するかもしれない。胃のバイパス術は鉄吸収不良を引き起こす。肝疾患の既往や肝の出血斑は門脈圧亢進性胃症・腸症を示唆している。その他の有用な身体所見として、ヘルペス状皮膚炎(celiac病)、結節紅斑(クローン病)、委縮した舌とスプーン上の爪(Plummer-Vinson症候群)、過伸展した関節と眼球と歯の奇形(Ehlers-Danlos症候群)、口唇の斑点(Peutz-Jeghers症候群)などが挙げられる。4.診断的検査診断法の選択・流れは臨床的に疑う疾患の種類と随伴症状によって決められる。上部消化管出血(Vater乳頭近位部までの出血)は上部消化管内視鏡により診断が可能である。小腸近位部の出血はダブルバルーン内視鏡で診断が行える。小腸の中~遠位部の出血はカプセル内視鏡、バルーン内視鏡とCT検査で診断が可能である。下部消化管 (大腸出血)は下部消化管内視鏡で診断を行う。術中に行う内視鏡検査は前述した方法でもなお出血源が特定できず、出血が再発している患者に対しての選択肢として考えられる。5.評価方法・便潜血検査陽性で鉄欠乏性貧血を認めない場合アメリカ消化器病学会では段階的な評価を提唱している。 ・便潜血検査が陽性有無に限らず、鉄欠乏性貧血を認める場合男性と閉経後女性では消化管より出血していると想定できる。閉経前女性であれば月経による出血の可能性も考慮する。しかしながら、この集団においてはがんも含む大腸、上部消化管の病変の報告もある。 すべての患者において腸管外の出血(鼻出血、血尿、産科的出血)の評価は行わなければならない。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Bull-Henry K, et al. Am Fam Physician. 2013; 87:430-436.

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