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CKDの高齢心房細動患者への抗凝固薬投与は?/BMJ

 慢性腎臓病(CKD)があり心房細動を呈した高齢者への抗凝固薬の投与で、虚血性脳卒中や脳・消化管出血リスクはおよそ2.5倍増大し、一方で全死因死亡リスクは約2割低減することが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのShankar Kumar氏らが、約273万人分の患者データベースを基に、傾向スコア適合住民ベースの後ろ向きコホート試験を行い明らかにした。現状では、透析不要のCKDで心房細動を呈した高齢患者について、信頼性の高い臨床ガイドラインや無作為化比較試験はないという。同研究グループは今回の逆説的な結果を受けて、「こうした患者を対象にした、適切な規模の無作為化試験の実施が急務である」と提言している。BMJ誌2018年2月14日号掲載の報告。CKDで心房細動の診断を受けた約7,000例を調査 研究グループは2006年1月~2016年12月にかけて、イングランドとウェールズの110ヵ所の一般診療所に通院する約273万人分を収載する、The Royal College of General Practitioners Research and Surveillance Centreのデータベースを基に検討を行った。このうち、推定糸球体濾過量(eGFR)が50mL/分/1.73m2未満のCKDで、新たに心房細動の診断を受けた、65歳以上の6,977例を対象にコホート試験を行った。 心房細動の診断後60日以内の抗凝固薬の処方と、虚血性脳卒中、脳・消化管出血、全死因死亡率の関連について評価した。抗凝固薬処方で死亡リスクは0.82倍に 心房細動の診断を受けた6,977例のうち、診断後60日以内に抗凝固薬を処方されたのは2,434例、処方されなかったのは4,543例だった。傾向スコアマッチングを行った2,434組について、中央値506日間追跡した。 抗凝固薬を処方された患者において、虚血性脳卒中の補正前発生率は4.6/100人年、脳・消化管出血は同1.2/100人年だった。これに対して、非処方の患者では、それぞれ1.5/100人年、0.4/100人年だった。 虚血性脳卒中発生に関する、抗凝固薬処方患者と非処方患者を比較したハザード比は2.60(95%信頼区間[CI]:2.00~3.38)、脳・消化管出血の同ハザード比は2.42(同:1.44~4.05)と、処方患者における増大が認められた。一方で、全死因死亡に関する同ハザード比は0.82(同:0.74~0.91)と、処方患者で低かった。

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NOACで頭蓋内出血は少なくなる?(解説:後藤信哉氏)-810

 各種NOACの第III相ランダム化比較試験にて、INR 2-3を標的としたワルファリン群に比較してNOAC群にて頭蓋内出血が少ないとされても、筆者の心には響かなかった。INR 1.9であればワルファリンを増量し、INR 2.9であってもワルファリンを減量しないような治療は、自らの日常診療と大きく乖離していたためである。また、NOAC登場前の観察研究にて、日本も世界もワルファリン使用時の頭蓋内出血発現率は0.2%程度とされていたので、その3倍も頭蓋内出血が起こることを示した第III相試験のメッセージは「INR 2-3を標的としたワルファリン治療は頭蓋内出血を増やす」のみであった。 米国には各種registryがある。本研究はAHAが主導するGet With The Guidelines-Strokeのデータベースを用いた。第一著者はDuke大学に留学している日本人である。データベースはしっかり構築されており、Duke大学の解析チームのデータ解析は信頼できる。後ろ向きの解析であるためN Engl J Med, Circulationには届かない。JAMAではデータベースの大きさと質、トピックの重要性が重視されたと考える。 頭蓋内出血にて入院した141,311例の対象症例のうち、15%弱は抗凝固薬使用中の症例であった。抗凝固薬使用中の症例のほうが高齢で、心房細動の合併も多かった。しかし、これらのリスク因子を補正しても、院内死亡率は抗凝固療法使用歴のある患者で高かった。ワルファリン使用歴の長い私はINR 2-3を標的としたワルファリン治療をしたことがない。多くの症例はINR 1.7前後で2を超える症例も少ない。ワルファリン群に比較してNOAC群のほうが、院内死亡率が低いとしているが、私のように低いINRにコントロールしている場合はNOACと差がない。 4つのNOACの開発試験に強く寄与して、また実臨床においてNOACが広く使用されていく現状を観察して、一貫して自らの中で変化しなかったNOACの評価は「NOACは頭蓋内出血を増加させる」「INR 2-3を標的としたワルファリン治療では容認できない重篤な出血リスクをもたらす」の2つであった。抗凝固療法は、重篤な出血リスクを増やす怖い介入である。禁煙して運動習慣をつけ、各種リスク因子を補正して総合的に脳卒中、血栓塞栓イベントを減らす努力を継続すべきである。

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脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

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心臓手術時の左心耳閉鎖が血栓塞栓症リスクを低下/JAMA

 心房細動(AF)を有する高齢患者において、心臓手術と外科的左心耳閉鎖(surgical left atrial appendage occlusion:S-LAAO)の併施により、非併施と比べ3年後の血栓塞栓症による再入院リスクが低下することが示唆された。米国・デューク大学のDaniel J. Friedman氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。左心耳は、AF患者における血栓形成の鍵を握っており、心臓手術時に閉鎖または除去されることがある。S-LAAO併施で血栓塞栓症のリスクが低下するかについて、これまでエビデンスに限りがあった。JAMA誌2018年1月23/30日号掲載の報告。心房細動患者の心臓手術における外科的左心耳閉鎖の併施と非併施を比較 研究グループは、Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgery Database(2011~12年)を用い、メディケア受給者の後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、S-LAAOを併施または併施せずに心臓手術(冠動脈バイパス術[CABG]、僧帽弁手術±CABG、大動脈弁術±CABG)を受けた65歳以上のAF患者である(追跡調査:2014年12月31日まで)。 主要評価項目は、術後3年時までの血栓塞栓症(脳卒中、一過性脳虚血発作、全身性塞栓症)による再入院。副次評価項目は、出血性脳卒中、全死因死亡、および血栓塞栓症・出血性脳卒中・全死因死亡の複合エンドポイントなどで、いずれもメディケア請求データで確認し、S-LAAO併施例と非併施例について比較した。外科的左心耳閉鎖で血栓塞栓症による再入院率が低下 心臓手術が行われたAF患者は1万524例(平均年齢76歳、女性39%、CHA2DS2-VASCスコアの中央値で、このうちS-LAAO併施は3,892例(37%)であった。 追跡期間中央値2.6年において、全体で血栓塞栓症が5.4%、出血性脳卒中が0.9%に発生し、全死因死亡率は21.5%、複合エンドポイント発現率は25.7%であった。 S-LAAO併施例は、非併施例と比較して血栓塞栓症(4.2% vs.6.2%)、全死因死亡(17.3%vs.23.9%)、複合エンドポイント(20.5% vs.28.7%)(いずれも補正前)の発現が少なかったが、出血性脳卒中については差がなかった(0.9% vs.0.9%)。逆確率重み付け法で補正しても、S-LAAO併施は血栓塞栓症(部分分布ハザード比[SHR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.81、p<0.001)、全死因死亡(HR:0.88、95%CI:0.79~0.97、p=0.001)、複合エンドポイント(HR:0.84、95%CI:0.53~1.32、p=0.44)の有意な減少と関連していたが、出血性脳卒中との関連はなかった。 抗凝固療法なしで退院した患者群においても、S-LAAO併施は非併施と比較して血栓塞栓症の減少を認めたが(補正前発現率:4.2% vs.6.0%、補正後SHR:0.26、95%CI:0.17~0.40、p<0.001)、抗凝固療法ありで退院した患者群において差はなかった(補正前発現率:4.1% vs.6.3%、補正後SHR:0.88、95%CI:0.56~1.39、p=0.59)。

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深部静脈血栓症、カテーテル血栓溶解療法併用の効果(解説:中澤達氏)-802

 急性近位深部静脈血栓症の患者692例を、抗凝固療法単独と抗凝固療法+薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、カテーテル血栓溶解療法)に無作為に割り付けて追跡した。 フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生について、両群間で有意差はなかった。(カテーテル血栓溶解療法群47%、抗凝固療法単独群48%、p=0.56)。一方で、カテーテル血栓溶解療法群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、カテーテル血栓溶解療法群18%に対し、抗凝固療法単独群は24%であった(p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群よりカテーテル血栓溶解療法群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法にカテーテル血栓溶解療法を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが示された。血栓後症候群は静脈弁破壊と内皮細胞障害で生じると考えられる。CaVenT研究では、カテーテル血栓溶解療法の有益性が示されたが、本研究では有益性はなく出血性イベントが増加した。 静脈弁破壊と内皮細胞障害が生じない内に血栓がなくなれば、血栓後症候群は発症しないであろう。 従って、効果は近位深部静脈血栓症発症から治療開始までの時間に依存していると思う。本研究の対象は、"急性"近位深部静脈血栓症と一括りにしている多施設研究であることが有益性を証明できなかった一因であろう。

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出血と血栓:原病が重ければバランスも難しい(解説:後藤信哉氏)-793

 自分の身の周りにもがん死が多いので、がんは特筆に重要な疾患である。日本人は幸いにして静脈血栓塞栓症が少ない。静脈血栓塞栓症を契機にがんが見つかることも多い。本論文の対象であるCancer Associated Thrombosis (CAT)は日本ではとくに重要である。がん細胞が血栓性の組織因子を産生する場合、がん組織が血管を圧迫して血流うっ滞が起こった場合など、血栓にはがんと直結する理由がある。CATでは、血栓の原因となるがんの因子の除去が第一に重要である。 抗凝固薬により血栓の再発予防はできるかもしれないが、出血は増える。本論文は、抗凝固薬が出血合併症を増やして血栓を減らす治療であることを再確認した。ヘパリンであろうがNOACであろうが、抗凝固とされる以上、効果に応じた副作用は避け難い。原病が重篤であるほど出血と血栓のバランスは難しい。血栓症を予防するが、血小板、凝固系に影響を与えない薬物のような新規の発想が必要である。

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心房細動患者の脳卒中予防に対するDOACのメタ解析/BMJ

 心房細動(AF)患者に対する直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の脳卒中予防効果について、英国・ブリストル大学のJose A. Lopez-Lopez氏らがネットワークメタ解析による有効性、安全性および費用対効果の解析を行い、BMJ誌2017年11月28日号で発表した。解析の結果、DOACはクラスとしてワルファリンよりも、AF患者の脳卒中および死亡リスクを抑制し、国際標準比(INR)2.0~3.0維持用量での大出血および頭蓋内出血に関してより安全であり、数種のDOACはコスト高にもかかわらずネットベネフィットが認められることが示された。予想される増分純便益(incremental net benefit:INB)は、アピキサバン5mgを1日2回投与が最も高く、次いでリバーロキサバン20mgを1日1回、エドキサバン60mgを1日1回、ダビガトラン150mgを1日2回であったという。ネットワークメタ解析で23試験を包含し有効性、安全性、費用対効果を解析 検討は、Medline、PreMedline、Embase、The Cochrane Libraryをデータソースとし、AF患者の脳卒中予防効果に対するDOAC、ビタミンK拮抗薬または抗血小板薬の使用を評価した、公表されている無作為化試験をシステマティックレビュー検索して行われた。 検索により、患者9万4,656例が関与した23試験が適格基準を満たし、解析に組み込まれた。このうち、INR 2.0~3.0目標達成用量についてDOACとワルファリンを比較検討していたのは13試験であった。また、解析に包含された介入法は27種あった。 被験者は、平均年齢70.0歳、男性63.3%、BMI値28.0、脳卒中既往20.2%(いずれも中央値)などであった。また、ワルファリン群の治療期間中に占めたTTR(time in therapeutic range)の割合は、中央値63.8%(範囲:45.1~83.0)であった。大半のアウトカムでアピキサバン5mgの1日2回投与が最高位にランク 有効性と安全性に関する解析の結果、ワルファリンと比較して脳卒中または全身性塞栓症リスクを抑制したのは、アピキサバン5mgを1日2回(オッズ比[OR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.66~0.94)、ダビガトラン150mgを1日2回(0.65、0.52~0.81)、エドキサバン60mgを1日1回(0.86、0.74~1.01)、リバーロキサバン20mgを1日1回(0.88、0.74~1.03)であった。DOAC間における比較では、ダビガトラン150mgを1日2回よりも、エドキサバン60mgを1日1回(1.33、1.02~1.75)、リバーロキサバン20mgを1日1回(1.35、1.03~1.78)が、脳卒中または全身性塞栓症リスクが高いとのエビデンスが認められた。 全死因死亡リスクは、ワルファリンと比較して、すべてのDOACで抑制効果が認められた。 大出血リスクは、ワルファリンと比較して、アピキサバン5mgを1日2回(0.71、0.61~0.81)、ダビガトラン110mgを1日2回(0.80、0.69~0.93)、エドキサバン30mgを1日1回(0.46、0.40~0.54)、エドキサバン60mgを1日1回(0.78、0.69~0.90)で低かった。頭蓋内出血リスクは、ほとんどのDOACでワルファリンよりも大幅に低かった(ORの範囲:0.31~0.65)。一方で消化管出血リスクがワルファリンよりも高いDOACが一部で認められた(ダビガトラン150mgを1日2回のOR:1.52[95%CI:1.20~1.91]、エドキサバン60mgを1日1回のOR:1.22[1.01~1.49]など)。 アピキサバン5mgを1日2回は、大半のアウトカムについて最高位にランクしており、ワルファリンとの比較によるINBは7,533ポンドで、費用対効果も最も認められた(その他投与群のINBは、ダビガトラン150mgを1日2回が6,365ポンド、リバーロキサバン20mgを1日1回が5,279ポンド、エドキサバン60mgを1日1回が5,212ポンド)。 著者は、「ネットワークメタ解析はDOACの直接比較の試験を不要なものとし、AF患者における脳卒中予防に関する選択肢を知らしめてくれるものである」と述べ、「作用機序が類似するDOACの中で、アピキサバンの常用量が最も有効かつ安全であり、費用対効果があると思われた」とまとめるとともに、「さらなる長期データで安全性に関する洞察を深め、DOACからベネフィットを得られない患者を特定し、各DOACの中和薬を開発することが重要である」と指摘している。

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がん患者のVTE治療、エドキサバンはダルテパリンに非劣性/NEJM

 がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)の治療で、経口エドキサバン(商品名:リクシアナ)はダルテパリン皮下注に対し、VTEの再発または大出血の複合アウトカムについて非劣性であることが、米国・オクラホマ大学健康科学センターのGary E.Raskob氏らが1,050例の患者を対象に行った非盲検無作為化非劣性試験の結果、示された。なおアウトカムを個別にみると、エドキサバン群でVTEの再発は低率だったが、大出血は高率だった。がん関連VTEの標準治療は低分子ヘパリンである。経口抗凝固薬が治療に果たす役割はこれまで明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2017年12月12日号掲載の報告。投与後12ヵ月間のVTE再発または大出血リスクを比較 研究グループは、急性症候性または無症候性VTEを呈するがん患者1,050例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方には低分子ヘパリンを5日以上投与し、その後経口エドキサバン(1日60mg)を投与した(エドキサバン群)。もう一方の群には、ダルテパリン1日200 IU/kgを1ヵ月皮下投与し、その後1日150 IU/kgを投与した(ダルテパリン群)。治療期間は、最短6ヵ月、最長12ヵ月とした。 主要アウトカムは、12ヵ月間のVTE再発または大出血の複合とした。主要アウトカム発生率、エドキサバン群12.8%、ダルテパリン群は13.5% 無作為化を行った1,050例のうち1,046例を包含した修正intention-to-treatで解析を行った。 主要アウトカムのイベント発生率は、エドキサバン群12.8%(522例中67例)、ダルテパリン群は13.5%(524例中71例)と、エドキサバンの非劣性が示された(ハザード比:0.97、95%信頼区間[CI]:0.70~1.36、非劣性のp=0.006、優越性のp=0.87)。 VTEの再発は、エドキサバン群41例(7.9%)、ダルテパリン群59例(11.3%)で発生した(リスク差:-3.4%、95%CI:-7.0~0.2)。また、大出血は、それぞれ36例(6.9%)、21例(4.0%)で認められた(リスク差:2.9%、同:0.1~5.6)。■「リクシアナ」関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢

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深部静脈血栓症、薬理機械的血栓溶解併用は有益か/NEJM

 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法に薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、薬理機械的血栓溶解療法)を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが、米国・セントルイス・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らによる無作為化試験の結果で示された。近位深部静脈血栓症を発症した患者は、抗凝固療法を行っても血栓後症候群を呈する頻度が高い。研究グループは、薬理機械的血栓溶解療法は血栓を速やかに除去し、血栓後症候群のリスクを低減すると仮定し検証試験を行った。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。抗凝固療法単独群と比較し、血栓後症候群の発生を評価 試験は、急性近位深部静脈血栓症の患者692例を対象とし、抗凝固療法単独(対照群)または抗凝固療法+薬理機械的血栓溶解療法(ステント併用ありまたはなしで、カテーテルまたはデバイスを介して遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータを送達し、血栓を吸引または破砕する)に無作為に割り付けて追跡した。 主要アウトカムは、フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生であった。血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは増大 主要アウトカムの発生について、両群間で有意差はなかった。発生率は、薬理機械的血栓溶解療法併用群47%、対照群48%であった(リスク比[RR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.82~1.11、p=0.56)。一方で、薬理機械的血栓溶解療法併用群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、RR:6.18[95%CI:0.78~49.2]、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、薬理機械的血栓溶解療法併用群18%に対し、対照群は24%であった(RR:0.73、95%CI:0.54~0.98、p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群より薬理機械的血栓溶解療法併用群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

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WATCHMAN留置後の血栓症の特徴を調査

 左心耳は非弁膜症性心房細動患者における血栓塞栓症の主要な発生源と考えられ、経皮的に左心耳を閉鎖することが、長期の抗凝固療法に代わる治療として使用される頻度が増えている。米国においては、WATCHMANが米国食品医薬局(FDA)が承認した唯一の左心耳閉鎖デバイスである。しかし一方で、WATCHMAN留置後、残存するデバイス周囲からの閉鎖漏れや予期できないデバイス関連血栓が懸念されている。Cedar-Sinai 医療センターのShunsuke Kubo氏、Saibal Kar氏ら研究グループは、心房細動患者におけるWATCHMANに関連した血栓形成の特徴や、その影響を調べた。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月号に掲載。心房細動患者119例が対象、デバイス関連血栓症の発生率は3.4% 本研究では、2006~14年に連続してWATCHMANの植込みを受けた心房細動患者119例を対象とした。植込み後の経食道エコー(TEE)は、45日後、6ヵ月後、12ヵ月後に実施された。TEEで同定されたデバイス関連血栓の発生率、特徴と臨床経過が評価された。フォローアップのTEEにより、デバイス上に形成された血栓が4例(3.4%)に同定された。血栓が見つかった患者はいずれも慢性心房細動を有しており、血栓のない患者における慢性心房細動の有病率(40%)よりも高かった。また、血栓を有する患者においては、留置されたデバイスのサイズが大きかった(29.3±3.8mm vs. 25.7±3.2mm)。血栓を有するすべての症例で、研究のプロトコールで求められる抗凝固もしくは抗血小板療法が中断されていた。ワルファリンおよびアスピリンによる治療再開後、全症例で血栓の完全な消失がTEEにより確認された。全症例において、ワルファリンは6ヵ月で中止されたが、血栓の再発は認められなかった。フォローアップ期間の平均は1,456±546日で、血栓を有する患者における死亡、脳梗塞、全身の血栓症は認められなかった。短期間のワルファリン療法がデバイス関連血栓症に有効 本研究では、心房細動の頻度、デバイスのサイズ、抗凝固・抗血小板療法が、WATCHMAN留置後に生じるデバイス関連血栓に関与しうることがわかった。また、短期間のワルファリン療法はデバイス関連血栓症に有効であることが示され、その後の再発も認められなかった。■参考Incidence, Characteristics, and Clinical Course of Device-Related Thrombus After Watchman Left Atrial Appendage Occlusion Device Implantation in Atrial Fibrillation Patients(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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DOACエドキサバン、がんの血栓症で低分子ヘパリンに非劣性

 第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は2017年12月13日同社のニュースリリースで、抗凝固薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)による、がん合併静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象としたHokusai-VTE CANCER試験の結果において、エドキサバンが標準治療薬である低分子量ヘパリンのダルテパリン(国内未承認)に対して有効性および安全性に係わる主要評価項目において非劣性を達成したと発表。 本試験の結果は、米国ジョージア州アトランタで開催した第59回米国血液学会(ASH)年次総会のlate breaking sessionで発表されると共に、New England Journal of Medicineにオンライン掲載された。  Hokusai-VTE CANCER試験は、欧米を中心とする海外13ヵ国において、がんを合併したVTE患者1,050名を対象に、1日1回経口投与のエドキサバンまたは1日1回皮下注射のダルテパリンを12ヵ月間投与し、両剤の有効性(VTEの再発)および安全性(重大な出血)を比較したもの。  本試験の主要評価項目(VTEの再発および重大な出血の複合発現率)において、エドキサバン群は12.8%(522名中67名)、ダルテパリン群は13.5%(524名中71名)、リスク差(エドキサバン群の発現率-ダルテパリン群の発現率)は-0.7%となり、エドキサバンのダルテパリンに対する非劣性が検証された。リスク差(-0.7%)の内訳は、VTEの再発のリスク差は-3.4%、重大な出血のリスク差は2.9%であった。特に重篤度の高い重大な出血(重篤度カテゴリー3~4)の発現数はエドキサバン群で12名、ダルテパリン群で12名であった。 VTEは、がん患者において2番目に多い死亡原因となっている。現在、がんを合併したVTE患者の欧米における治療ガイドラインは、標準治療として低分子量ヘパリン(皮下注射)の6ヵ月以上の投与を推奨しているが、服薬アドヒアランス上の未充足ニーズがある。■関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢DOAC時代のVTE診療の国内大規模研究、再発リスクの層別化評価と出血リスク評価の重要性が明らかに/日本循環器学会

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抗血栓治療でPPAPは成立するか?(解説:香坂俊氏)-777

 動脈系血栓予防(冠動脈疾患など)に最適とされている薬剤はアスピリンである。静脈系血栓予防(深部静脈血栓や心房細動など)には長らくワルファリンが用いられてきた。では、冠動脈疾患に心房細動が合併したりして、その2つを一度に行わなければならないときはどうするか? 数年前までは何も考えずこの2剤を併用してきた。2016年の流行語にPPAP(PEN-PINAPPLE-APPLE-PEN:ペンパイナッポーアッポーペン)というものがあったが、まさに・動脈系血栓予防にはASPIRIN・静脈系血栓予防にはWARFARIN・それをくっつけASPIRIN-WARFARIN-APPLE-PENといった塩梅である(苦しいですが、年の瀬なので許してください)。 しかし冠動脈疾患の治療にステントが使われるようになると、インターベンション治療(PCI)を行った患者にはアスピリンに2剤目の抗血小板薬(クロピドグレルやプラスグレル)をかぶせなければならなくなった。いわゆるDAPT(Dual AntiPlatelet Therapy:抗血小板2剤併用療法)である。すると、例えばステント治療を行った心房細動患者にはDAPTに加えさらにワルファリンを投与することになり「ちょっと多いかもな」ということになる。これが杞憂でないことはWOESTという医師主導の臨床試験で立証され、3剤で行くよりもアスピリンを抜いた2剤(クロピドグレル+ワルファリン)のほうが出血イベントが半分程度になることがわかった(DOI)。 その後、ワルファリンの代替薬としてNOAC(Non-Vitamin K Oral Anticoagulant:非ビタミンK経口抗凝固薬)が使われる時代になり、メーカーがこうした臨床試験に協力してくれるようになった。そうした流れの中で初代NOACであるダビガトランを用いて行われたのがRE-DUAL PCI試験である(これより前にリバーロキサバンでPIONNEER AF-PCI試験が行われており[DOI、さらにアピキサバンでもAUGUSTUS試験が現在行われている)。 結果の詳細は別記事(CareNet該当記事参照)に譲るが、・ダビガトラン 150mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ダビガトラン 110mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ワルファリン+DAPT(3剤併用) の3群で比較され、WOESTとほぼ同様の結果が得られている。 掲載誌のEditorialにはこれまでの3つの試験(WOEST、PIONNEER、RE-DUAL)のメタ解析が掲載されているが、出血イベントに関する安全性はもちろんのこと(OR:0.49、95%CI:0.34~0.72)、2剤のほうが虚血イベント抑制に関しても有利でありそうだ(OR:0.80、95%CI:0.58~1.09)という結果が示されている。これは、出血に伴い血栓傾向が強まることを考え合わせると(以下の3つのメカニズムによる)首肯できる結果である。(1)抗血小板薬や抗凝固薬の中止を余儀なくされる(2)出血そのものが炎症反応を惹起する(3)輸血や止血手技でも同様に炎症反応が惹起される 昨今、効果に差を見出すのではなく(Efficacy Trial)、安全性やQOLの確保に重点をおいた減算型の臨床試験が多く行われているが、RE-DUALもその好例といえる(3剤から2剤に引いても安全ですよということを明示)。今後おそらくこの領域では、安易な足し算の発想(PPAP式?)で3剤併用が行われることは【圧倒的】に少なくなることが予想される。

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出血こそが問題なのだ:減量のメリット(解説:後藤信哉氏)-775

 欧米では動脈硬化の初期症状として、冠動脈疾患が出現することが多い。アジア人では脳血管疾患が多いが、脳血管疾患は梗塞と出血の境界線が明確でないので抗血栓薬の開発は困難である。出血合併症の多い抗凝固薬が、血栓イベントの既往のない非弁膜症性心房細動に使用されているのは筆者には奇異であるが、ランダム化比較試験のエンドポイントとされた脳卒中と臨床家が恐れる心原性脳塞栓を混同させたマーケット戦略、巨大企業による徹底した情報管理の勝利であった。しかし、第III相試験にて示されたDOACによる年率3%の重篤な出血合併症は実臨床においても事実であろうから、特許切れまで企業が情報管理を継続できるか否かには疑問も残る。 一度、血栓性の心筋梗塞、脳梗塞を発症した症例の2次予防であれば、出血合併症の多いDOACにもチャンスはある。出血と梗塞の境界が微妙な脳梗塞を除いて、心筋梗塞後の症例に限局すれば、重篤な出血イベント年率0.2%、血栓イベント抑制効果25%のアスピリンの標準治療には多少抗血栓薬を追加する余地がある。心房細動例に使用する用量よりもはるかに少ない2.5mg×2/日のリバーロキサバンによる、重篤な出血の増加は年率1%であった。過去に血栓イベントの既往のない心房細動症例に使用されている、15(20)mg/日による3%に比較すればはるかに少ない。アスピリンにごく微量のリバーロキサバンを追加すれば、心房細動のときに用いるほどではないが重篤な出血が増加する。しかし、増加した出血と同じ程度の年間1%程度の血栓イベントの低下効果は期待できる。 抗Xa薬の臨床開発において、筆者は抗Xa薬には用量依存性の重篤な出血がないかもしれないと考えて各企業に協力した。第III相試験を主導している途中で、並行していた第II相試験が抗Xa薬でも用量依存性の出血を起こすことを示して、筆者の期待は急速に萎んだ。心房細動であろうと、心筋梗塞であろうと、1%の血栓イベントを予防するための用量では1%の重篤な出血合併症が、3%の血栓イベントを予防するためには3%の重篤な出血合併症が起こるDOACの価値を見いだすことは難しい。売れているから企業には危機感が少ないかもしれないが、将来に向けて出血しない薬効標的を探す努力が必要である。

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人工弁選択のLabyrinth(解説:今中 和人氏)-774

 人工弁選択は、要するに抗凝固合併症の可能性と劣化・再手術の可能性の選択である。古いテーマゆえ膨大な論文があるが、生体弁の改良をはじめ多くのconfounding factorで見解は一定せず、2014年にAHA/ACCが「大動脈弁置換(AVR)65歳、僧帽弁置換(MVR)70歳」とのガイドラインを発行した後も未決着の感が強い。本論文はカリフォルニア州の142施設が18年間に初回の単弁置換をした症例の追跡調査で、個々のデータは、とくに日本胸部外科学会の全国集計と比較すると興味深い。 たとえばこの期間にAVRは130%に増加、MVRは65%への減少だが、日本はAVRが450%と激増した一方、MVRは90%と微減に留まっている(ちなみに僧帽弁形成は370%に激増)。また、生体弁の比率は米国でもAVRで12%→52%、MVRで17%→54%と著増しているが、日本はもっと極端で、AVRは11%→81%、MVRで9%→57%と、日本人の残念な気質が端的に表れている(しかもすべて輸入品!)。というのも再AVRの30日死亡率は7.1%、再MVRは14.0%とかなり高い。日本の統計は、僧帽弁については交連切開の術後を大量に含むので参考にならないが、再AVRは30日死亡5.4%、在院死亡9.4%と、本論文と大差ない由々しき数字であり、再弁置換は極力避けたい事態だからである。「TAVRがあるさ」と楽観していてよいだろうか? 結果のほうは、50歳未満の生体弁MVRの30日死亡率が高かったこと以外は凡庸(若い人は機械弁、年配者は生体弁)なのだが、実にモヤモヤ感が残る。最も目立つのは年齢区分で、AVRは45~54歳と55~64歳の2群、MVRは40~49歳、50~69歳、70~79歳の3群で検討しているが、区分の食い違いに結局は根拠がなく、65歳以上のAVRの検討がない点も言及がない。COIは明示されていないが、これでは何らかの恣意を感じずにはおれない。 さらに、より本質的なのは、研究の限界ではあろうが、15年という経過観察期間である。観察期間の中央値は機械弁では8年前後だが、生体弁は実は4~5年で、15年時点のpatient at riskが4%未満の群もある。これを「ありがちなこと」と容認するとしても、グラフをよく見ると、10年過ぎあたりから多くの群で両者の生存曲線はじわっと乖離しはじめている。昨今の生体弁は、10年ほどはかなり成績が良いがそれ以降に不具合が増えるので、観察期間が延びれば大差がつく可能性が高い。ところが55~64歳の10年後は65~74歳、15年後でも70~79歳で、日本人だと男性の平均寿命にも満たないのに、この論文の結論だけをうのみにすると、高齢の再手術(TAVRを含む)患者が大量生産されかねない。当然、成績は上記よりさらに悪い。それでよいだろうか? ガイドラインにも言及したい。日本独自のRCTが乏しく、同じ参考文献に基づくせいで、日本のガイドラインは欧米のコピーに近い。しかし2015年の日本の平均寿命は83.7歳、米国79.3歳と5年近く、女性に限定すれば5年以上も日本のほうが長寿なのに、人工弁選択の推奨年齢が米国と同じでよいだろうか? エビデンスとは言えないが、寿命差を加味するよう付記すべきではないか?(さらには5年以上違う性差についても) 治療方針は最終的には患者さんの自己決定ではあるが、その自己決定はわれわれ医療者の説明に大幅に依存している。われわれは周到に学び、賢明に判断し、親身に助言する必要がある。

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ワルファリン使用者、がん罹患率が2割低い

 ノルウェーの50歳以上の大規模コホート研究において、ワルファリンを服用している人はがん罹患率が低いことが報告された。ワルファリンはがんモデルにおいて、AXL受容体チロシンキナーゼによる腫瘍形成を阻害し、抗凝固レベルに達しない用量で抗腫瘍免疫応答を増強するが、本研究で臨床でも抗がん作用を有する可能性が示唆された。著者のノルウェー・ベルゲン大学のGry S. Haaland氏らは「この結果は、抗凝固が必要な患者の薬剤選択に重要な意味を持つだろう」と述べている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年11月6日号に掲載。 この集団ベースのコホート研究は、ノルウェー全国レジストリとノルウェー処方データベース、ノルウェーがんレジストリを組み合わせて行われた。コホートは、2006年1月1日~2012年12月31日にノルウェーに居住していた、1924年1月1日~1954年12月31日に生まれたすべての人々(125万6,725人)から成る。このコホートをワルファリンの使用者と非使用者に分け、ワルファリン使用とがん罹患率の関連を検討した。また、心房細動または心房粗動に対してワルファリンを使用しているサブグループにおいても解析した。データは2004年1月1日~2012年12月31日に収集、2016年10月15日~2017年1月31日に解析した。ワルファリン使用は処方が6ヵ月以上、処方の開始からがんの診断までが2年以上の場合とした。主要アウトカムは、7年の観察期間(2006年1月1日~2012年12月31日)におけるすべてのがんの診断とした。 主な結果は以下のとおり。・125万6,725人のうち、男性が60万7,350人(48.3%)、女性が64万9,375人(51.7%)、がん患者が13万2,687人(10.6%)、ワルファリン使用者が9万2,942人(7.4%)、非使用者が116万3,783(92.6%)であった。・ワルファリン使用者は、平均年齢(SD)が70.2(8.2)歳で非使用者の63.9(8.6)歳より高く、また非使用者では女性が多い(61万3,803 [52.7%])のに比べて、使用者は男性が多かった(5万7,370人 [61.7%])。・ワルファリン使用者では非使用者と比較して、年齢・性別で調整された罹患率比(IRR)が、がん全体(0.84、95%CI:0.82~0.86)および頻度の高いがん種(肺がん:0.80[95%CI:0.75~0.86]、前立腺がん:0.69 [同:0.65~0.72]、乳がん:0.90 [同:0.82~1.00])で有意に低かった。結腸がんでは有意な効果は認められなかった(0.99、95%CI:0.93~1.06)。・心房細動または心房粗動患者のサブグループ解析では、がん全体(0.62、95%CI:0.59~0.65)および高頻度にみられるがん(肺がん:0.39 [95%CI:0.33~0.46、乳がん:0.72 [95%CI:0.59~0.87]、結腸がん:0.71 [95%CI:0.63~0.81]で、調整IRRが有意に低かった。

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