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TAVR後の心房細動へのエドキサバン、日本人での解析(ENVISAGE-TAVI AF)/日本循環器学会

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)成功後の心房細動患者に対するエドキサバンとビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を比較したENVISAGE-TAVI AF試験の日本人サブ解析の結果、臨床アウトカムにおけるエドキサバンとビタミンK拮抗薬の違いはごくわずかだったことを、帝京大学の渡邊 雄介氏が第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)のLate Breaking Clinical Trialsで報告した。 ENVISAGE-TAVI AF試験は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化比較試験。TAVR成功後の心房細動患者においてエドキサバン(60mg/日もしくは30mg/日)とビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を最大3年間比較した。有効性に関する主要アウトカムは有害臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性塞栓イベント、人工弁血栓症、大出血)の複合、安全性に関する主要アウトカムは大出血だった。全体集団ではエドキサバン群がビタミンK拮抗薬群に対し非劣性を示すこと、および大出血発生率が高いことが報告されているが、わが国ではTAVRを受ける患者は小柄な女性が多く、抗血栓療法による出血リスクに影響する可能性がある。そこで、日本人においても全体の結果と一致するか評価するべくサブ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は159例(エドキサバン群82例、ビタミンK拮抗薬群77例)で、エドキサバン群とビタミンK拮抗薬群における平均年齢は84.3±4.7歳と83.4±4.0歳、体重は53.8±10.1kgと53.1±10.3kg、BMIは22.1±3.4と22.3±3.2、投与量を減量した患者の割合は85.4%と85.7%であった。・有害臨床イベントの累積発生率は日本人集団のほうが全体集団より低かった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するハザード比(HR)は、全体集団が1.05(95%CI:0.85~1.31)、日本人集団が0.85(同:0.38~1.90)と同様だった。・大出血の累積発生率は全体集団と日本人集団で同程度だった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するHRは、全体で1.41(95%CI:1.03~1.91)、日本人集団で1.17(同:0.45~3.05)と日本人集団で若干低かった。・消化管の大出血は、全体集団ではエドキサバン群で多かったが(5.4%/人年vs.2.7%/人年、HR:2.03、95%CI:1.28~3.22)、日本人集団ではエドキサバン群3例(2.8%/人年)、ビタミンK拮抗薬群4例(4.1%/人年)だった。 これらの結果から、渡邊氏は「エドキサバンがTAVR施行後の日本人心房細動患者に対するビタミンK拮抗薬の代替治療となりうることが示唆される」とまとめた。

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学問的に新しい知見はあるのか?(解説:野間重孝氏)

 WellsスコアはWells PSにより2007年にまとめられた深部静脈血栓症のスクリーニングスコアで(Wells PS, et al. JAMA. 2006;295:199-207.)、これと血中D-ダイマー値を組み合わせることにより相当程度確実に深部静脈血栓症のスクリーニングを行うことができる。この有用性は2014年にオランダのGreersing GJらのメタ解析により確かめられた。これは以前ジャーナル四天王でも取り上げられたので、ご覧になった方も多いのではないかと思う(「深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ」)。少し注意を要するとするのは、Wellsスコアの項目については施設により一部改変されている場合があること、判定法には2段階法と3段階法があることであるが、本論文ではWellsスコア原法の3段階解釈+D-ダイマー値という最もオーソドックスな方法を採用している。今回の研究は、その方法により安全に深部静脈血栓症のスクリーニングが可能であること、かつそれにより下肢静脈エコー検査の施行率を47%減らすことができることを前向き試験で示したものである。 下肢静脈血栓症の頻度はアジアでは、台湾で行われた調査で人口10万人当たり16.5人であったのに対し、欧米では多くの地域で100人を超え、200人に迫る地域も珍しくない。わが国の発生頻度については正確な数字が提出されていないが、担がん患者や寝たきり老人、長期臥床者、ある種の術後患者などを除く、危険因子を持たない者での発生ということになると、いわゆるエコノミー症候群が問題にされる程度でしかない。わが国ではWellsスコアといってもあまり利用したことがない医師が多いのではないかと思われるが、これだけ発生頻度が異なれば、それは当たり前といえるかもしれない。本論文では入院患者、抗凝固療法中の患者、妊婦、肺塞栓症疑いの患者が除外されていることを限界としているが、深部静脈血栓症のスクリーニング法研究でこうした危険因子・修飾因子を持った患者を除外するのは当然だと考えられる。ここで妊婦が問題にされていることを意外に思われた方もいらっしゃると思うが、欧米では妊婦の死因の第1位が肺塞栓症なのである。これに対して、わが国では命に関わらない程度のものまで含めても、塞栓症は1,000例に1例程度の頻度にとどまっている。 同時に、わが国と欧米における臨床検査に対する考え方の違いやその理由も考えられなければならないだろう。わが国ではスクリーニングの段階でスコアリングを用いている医師そのものが少ないのではないかと思うが、それとは別に、多くの現場医師たちは下肢静脈エコーの簡易チェックや、場合によって(造影まで含めて)CT検査などを行うことをためらわないのではないかと思う。これは医療に対する考え方、疾病の頻度によるものだろうが、医師が自分の身を守るという側面もあることは忘れられてはならない。そう考えれば発生頻度の高い欧米において、有名誌にこうした論文が掲載されることは、現場の医師たちを守る意味も持っているとも考えられよう。ただし、こうした際に必ず付け加えているのだが、現場の医師たちの行動パターンの決定因子として医療保険制度の問題を無視することができない。わが国のように医療保険制度の充実した国においてはある程度over-examinationになったとしても、経済的に許容されるのに対し、そうでない国では時として社会的指弾の対象になりかねないからである。 この研究はあらためてWellsスコア+血中D-ダイマー値の組み合わせによるスクリーニングの確実性・安全性を示したものではあるが、上述したGreersing GJらのメタ解に、とくに新しい知見を加えたものとは思われない。確かに大規模な前向き研究をすることには常に一定の意義があるが、すでにある程度の確度をもって結論の出ている問題について実施することの意義はどれだけあるのだろうか。この研究が積極的に付け加えた知見は、47%の下肢静脈エコー検査を安全に省略できるという一点だったといえる。多忙をきわめる医療現場において診察効率、経済効率が上がることは重要なことではあるが、(上述した議論とはやや矛盾するが)こうした有名誌に掲載されるだけの価値のある研究であるかには疑問がある。 このところの傾向として、純粋学問的に新しい知見を付け加えるというよりも、診断効率や経済効率を主題にした論文が有名誌に採用されるケースが目立つ。評者などはこうした傾向に首をかしげるものなのであるが、これは決して以前基礎研究者であった者の偏見というわけではないと思うのだが、いかがだろうか。

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脳梗塞の血管内治療、アスピリン・未分画ヘパリンは益より害?/Lancet

 虚血性脳卒中への血管内治療において、周術期のアスピリンまたは未分画ヘパリン投与はいずれも、症候性頭蓋内出血リスクを増大し、機能的アウトカムの有益な効果に関するエビデンスはないことが、オランダ・Erasmus MC University Medical CenterのWouter van der Steen氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。アスピリンおよび未分画ヘパリンは、脳卒中の血管内治療において、再灌流とアウトカムを改善するためにしばしば使用される。しかし、その適応に関する効果とリスクは明らかではなかった。Lancet誌オンライン版2022年2月28日号掲載の報告。オランダ15施設で非盲検無作為化試験 虚血性脳卒中患者の血管内治療中に投与を開始した静脈内アスピリンまたは未分画ヘパリンもしくは両薬の安全性と有効性を評価するため、研究グループは2018年1月22日~2021年1月27日にかけて、オランダ15ヵ所の医療センターを通じて、非盲検多施設共同無作為化比較試験を2×3要因デザインにて実施した。登録被験者は、発症から6時間以内で血管内治療が可能だった前方循環系の主幹脳動脈閉塞による虚血性脳卒中の18歳以上患者。適格基準はNIH脳卒中スケール(NIHSS)スコアが2以上で、CTまたはMRIで頭蓋内出血患者は除外した。 Webベースの無作為化法にてブロック化と登録施設の層別化を行い、被験者を無作為に1対1の割合で周術期静脈内アスピリン(300mgボーラス)投与群またはアスピリン非投与群に割り付け、また1対1対1の割合で未分画ヘパリン中等量(5,000 IUボーラス、その後1,250 IU/時を6時間)投与群、同低量(5,000 IUボーラス、その後500 IU/時を6時間)投与群、未分画ヘパリン非投与群に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコアとした。安全性に関する主要アウトカムは、症候性頭蓋内出血。解析はintention to treatベースで行い、治療効果は、ベースライン予後因子で補正後のオッズ比(OR)または共通(common)ORとした。アスピリン群、未分画ヘパリン群ともmRSスコアは悪化傾向 被験者数は663例で、同意を得た人または同意前に死亡した628例(95%)を、修正ITT解析の対象とした。2021年2月4日時点で、データの非盲検化と解析の結果、試験運営委員会は新たな被験者の組み入れを停止し、試験は安全性への懸念から中止となった。 症候性頭蓋内出血のリスクは、非アスピリン群(7%、23/318例)よりもアスピリン投与への割付群(14%、43/310例)で高率だった(補正後OR:1.95、95%信頼区間[CI]:1.13~3.35)。同様に、非未分画ヘパリン群(7%、22/296例)よりも未分画ヘパリン投与への割付群(13%、44/332例)でリスクが高かった(1.98、1.14~3.46)。 有意差は示されなかったが、mRSスコアを悪化させる傾向が、アスピリン群(共通OR:0.91、95%CI:0.69~1.21)と未分画ヘパリン群(0.81、0.61~1.08)のいずれにおいても認められた。

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抗凝固薬の使用は十分に慎重に!(解説:後藤信哉氏)

 DOACは出血合併症が少ないと喧伝される。しかし、心房細動の脳卒中予防をワルファリンと比較した4つのDOAC開発試験では、いずれも年間2~3%に重篤な出血合併症を惹起している。対照群がPT-INR 2-3を標的としたワルファリン療法であったこと、PT-INRの計測が精度の低いPOC deviceであったこと、実臨床で多用される0.5mgの錠剤が必ずしも供与されなかったこと、などの各種条件の結果、DOAC群の出血合併症リスクはワルファリン群よりも低かった。しかし、DOACは決して出血合併症の少ない薬剤ではない。年率2~3%の重篤な出血イベントはむしろ副作用の多い薬剤ともいえる。 実臨床ではワルファリンよりもDOACは使いやすい。とくに、ワルファリンの薬効が数日以上遷延するのに対してDOACの薬効は数時間にて消失する。脳卒中リスクのある心房細動症例は高齢、リスク因子が重畳し、近未来のイベントリスクが高い。イベントは悪性腫瘍かもしれず、出血かもしれず、また脳卒中かもしれない。脳卒中は血栓イベントであるが、長期予後改善のためには血栓溶解療法が有用である。血栓溶解療法を施行すれば出血イベントリスクは増加する。血栓イベントとしての脳卒中を発症しても、DOACを中止すれば血栓溶解療法による出血リスク増加を回避できる可能性がある。実際に、本研究は後ろ向きの観察研究ではあるが抗凝固薬としてのDOACを使用していた症例でも、血栓溶解療法による重篤な出血イベント発症リスクは抗凝固薬非使用例と差がないことを示している。 個別の症例の病態に応じて抗凝固活性を速やかに調節できることはDOACの優れた特性の1つである。正確に、科学的に論じればDOACにはそれなりの価値があると筆者は考える。

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不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から【見落とさない!がんの心毒性】第9回

本連載では、がん治療時におさえておくべき心毒性・心血管リスクとその対策について、4名のエキスパートを迎え、2021年4月より第1回~第8回まで総説編として現在のがん治療における心毒性トピックを解説してきました。近年の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など新しいがん治療薬が開発される中で、心血管系合併症(心毒性)に対して診療を行う腫瘍循環器学は、今後ますます注目される領域です。今年の春より実際の心毒性症例に基づく症例問題を掲載する予定ですが、その前に、肺がん、乳がん、消化器がん、造血器腫瘍、放射線の治療に携わるCareNet.com会員医師(計1,051名)を対象に行った『心毒性に対するアンケート』(実施期間:2021年8〜9月)の結果をご紹介しながら、実臨床で苦慮されている点をあぶり出していきたいと思います。(表1)CareNet.comにて行ったアンケートの結果画像を拡大する(表2)上記を基に向井氏が作成画像を拡大するがん治療における心毒性は心不全、虚血性心疾患、高血圧症、不整脈、血栓塞栓症に分類されますが、実臨床で腫瘍医の先生方がお困りの疾患はやはり、第一位は心不全、第二位は血栓塞栓症でした。実際に腫瘍循環器外来に院内から紹介される疾患も同様の結果ではないでしょうか。心不全については、第2回アントラサイクリン心筋症(筆者:大倉 裕二氏)、第3回HER2阻害薬の心毒性(筆者:志賀 太郎氏)がそれぞれの心筋症の特徴やその対応の詳細な解説をしています。今、上記の表の結果を踏まえ、少し振り返ってみましょう。アントラサイクリン心筋症ではやはり、「3回予防できる」という言葉が強く印象に残りました。現在さらに新しいがん治療において心不全を呈する可能性の高い治療も増加しており、腫瘍循環器領域において治療に関する新たなエビデンスが確立することが期待されていますさらに、第二位の血栓塞栓症は、第8回がんと血栓症(草場 仁志氏)で解説しました。がん関連血栓症はがんの増殖・転移と深い関係があり、がん診療の各ステージにおいて最も頻度が高く、常に頭に置く必要のある代表的な心毒性です。過去の研究から胃がんと膵臓がんは血栓塞栓症の高リスク因子と報告されているが、アンケートの結果から、実地診療でも消化器領域と肝胆膵領域で血栓塞栓症への関心が高いことがうかがわれました。2018年にがん関連血栓症の中で、静脈血栓塞栓症に対して直接経口抗凝固薬のエビデンスが確立され、抗凝固療法は大きく変化しています。その一方で、動脈血栓塞栓症に対するエビデンスは未だ不足しており治療に関しても未だ不明な点が少なくありません。(図1)は、外来化学療法中の死亡原因を示しています。第一位はがんの進展によるものですが、第二位はがん関連血栓塞栓症でした。そして、抗凝固療法における出血の合併症など腫瘍循環器医が対応すべき多くの問題が残っています。(図1)画像を拡大する1)Khorana AA, et al. J Thromb Heamost. 2007;5:632-634.講師紹介

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検査前確率+DダイマーでDVT診断向上/BMJ

 深部静脈血栓症(DVT)の診断において、検査前臨床的確率とDダイマーを組み合わせた戦略は、超音波検査の実施回数を減少させつつDVTのリスクが低い患者群を特定できることが、カナダ・マックマスター大学のClive Kearon氏らが実施した前向き試験「Designer D-Dimer Deep vein thrombosis(4D)試験」で示された。これまでのコホート研究で、検査前臨床的確率が低いまたはWellsスコアが低くDダイマー陰性の患者はDVTを除外できることの安全性が示唆されていた。BMJ誌2022年2月15日号掲載の報告。低確率+1,000ng/mL未満、中確率+500ng/mL未満はDVTを除外 研究グループは、カナダの大学病院10施設の救急診療部または外来を受診した、DVTの症状または兆候を有する患者を前向きに登録し、3ヵ月間追跡した。 登録時、Wellsスコアを用いてDVT検査前臨床的確率を低確率(スコア:-2~0)、中確率(1、2)、高確率(3以上)に分類するとともにDダイマーを測定し、低確率でDダイマー1,000ng/mL未満、または中確率でDダイマー500ng/mL未満の患者は追加検査なしでDVTを除外できると判断。その他のすべての患者には超音波検査を実施した。最初の超音波検査が陰性で、低~中確率かつDダイマー>3,000ng/mLまたは高確率かつDダイマー>1,500ng/mLの患者には、1週間後に再度超音波検査を行った。超音波検査でDVTが認められた患者には、抗凝固療法を実施した。 主要評価項目は、3ヵ月時の症候性静脈血栓塞栓症とした。4D診断アルゴリズムで、超音波検査の必要性がほぼ半減 2014年4月~2020年3月の期間に1,508例の登録と解析が行われた。1,508例中173例(11.5%)が今回の4D診断アルゴリズムによりDVTと診断された(168例は来院日の超音波検査で、5例は1週間後の再検査で確認)。DVTと診断されず抗凝固療法を受けなかった1,275例のうち、8例(0.6%、95%信頼区間[CI]:0.3~1.2)が、追跡期間中に静脈血栓塞栓症を発症した。 従来のDVT診断戦略と比較すると、今回のアルゴリズムでは超音波検査の平均回数が患者1例当たり1.36回から0.72回に減少し、差は-0.64回(95%CI:-0.68~-0.60)で、相対的な47%の減少に相当した。 なお著者は、入院患者、抗凝固療法中の患者、妊婦、肺塞栓症疑いの患者などが除外されていることなどを研究の限界として挙げている。

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急性期脳梗塞へのアルテプラーゼ、発症前NOAC服用でもリスク増大なし/JAMA

 アルテプラーゼ静注治療を受けた急性虚血性脳卒中患者において、発症前7日以内の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)服用者の頭蓋内出血リスクは、抗凝固薬非服用者と比べて大きく増大しないことが示された。米国・デューク大学のWayneho Kam氏らが、16万例超の患者を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果を報告した。現行のガイドラインでは、急性虚血性脳卒中発症前にNOACを服用していた場合、原則的にはアルテプラーゼ静注を使用しないよう勧告されている。JAMA誌オンライン版2022年2月10日号掲載の報告。米国内1,752ヵ所の医療機関、約16万3,000例を対象に試験 研究グループは2015年4月~2020年3月に、脳卒中診療の質改善プログラム「Get With The Guidelines-Stroke」(GWTG-Stroke)に登録する米国内1,752ヵ所の医療機関で、急性虚血性脳卒中発症後4.5時間以内にアルテプラーゼ静注治療を受けた16万3,038例を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。 被験者は、脳卒中発症前のNOAC服用者、抗凝固薬の非服用者であった。補完的に、抗凝固薬服用中に急性虚血性脳卒中や頭蓋内出血を発症した患者レジストリ「Addressing Real-world Anticoagulant Management Issues in Stroke」(ARAMIS)のデータも活用。脳卒中発症前NOAC服用患者への、アルテプラーゼ静注治療の安全性と機能性アウトカムについて、抗凝固薬の非服用者と比較した。 主要アウトカムは、アルテプラーゼ静注後36時間以内の症候性頭蓋内出血の発生だった。副次アウトカムは、院内死亡を含む安全性に関する4項目と、自宅への退院率を含む退院時に評価した機能性アウトカム7項目だった。症候性頭蓋内出血の発生率、NOAC服用群3.7%、抗凝固薬非服用群3.2% 被験者16万3,038例の年齢中央値は70歳(IQR:59~81)、女性は49.1%だった。このうち、脳卒中発症前のNOAC服用者(NOAC服用群)は2,207例(1.4%)、抗凝固薬の非服用者(非服用群)は16万831例(98.6%)だった。 NOAC服用群の年齢中央値は75歳(IQR:64~82)で、非服用群(同70歳、58~81)よりも高齢で、心血管系の併存疾患の罹患率が高く、脳卒中の程度もより重症だった(NIH脳卒中スケールの中央値、NOAC服用群:10[IQR:5~17]vs.非服用群:7[4~14])。 症候性頭蓋内出血の補正前発生率は、NOAC服用群3.7%(95%信頼区間[CI]:2.9~4.5)、非服用群3.2%(3.1~3.3)だった。ベースラインの臨床要因で補正後の症候性頭蓋内出血の発生リスクは、両群で同等だった(補正後オッズ比[OR]:0.88[95%CI:0.70~1.10]、補正後群間リスク差[RD]:-0.51%[95%CI:-1.36~0.34)。 副次アウトカムの安全性に関する項目は、院内死亡率(NOAC服用群6.3% vs.非服用群4.9%、補正後OR:0.84[95%CI:0.69~1.01]、補正後RD:-1.20%[-2.39~-0])を含めいずれも有意差はなかった。 機能性アウトカムについては、自宅への補正後退院率(NOAC服用群53.6% vs.非服用群45.9%、補正後OR:1.17[95%CI:1.06~1.29]、補正後RD:3.84%[1.46~6.22])など、7項目中4項目でNOAC服用群がより良好だった。

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「災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー」ホームページで公開中/日本静脈学会

 新型コロナウイルス感染症はほかの感染症と比較して血栓リスクが高いことは知られている。今回、日本静脈学会はこのコロナ第6波を受け、コロナ×血栓症に関する内容を多くの医療者に発信したいと、昨年11月10日(水)と12月7日(火)にクローズド開催した『災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー』の編集動画を本ホームページへ公開した。 本学会は「日頃COVID-19治療に従事している医療従事者の皆さんのVTE対応への指標の一つとなるよう」思いを込めてセミナーを企画しており、本講演会については医師のみならず誰でも視聴可能だ。災害としてのCOVID-19と血栓症(前編)1『COVID-19患者で注意すべき血栓症・静脈血栓塞栓症とは?』 山下 侑吾氏(京都大学医学部附属病院 循環器内科)2『日本でもCOVID-19患者のVTE発症は多いのか?』 西本 裕二氏(兵庫県立尼崎総合医療センター 循環器内科)3『COVID-19:血栓症の診療指針と抗凝固療法の実際』 谷地 繊氏(JCHO東京新宿メディカルセンター 循環器内科)災害としてのCOVID-19と血栓症(後編)4『災害時VTEから考える自宅・宿泊療養患者さんのVTEの危険性』 岩田 英理子氏(JCHO南海医療センター心臓血管外科)5『静脈血栓症予防の理学療法 下肢運動と予防用弾性ストッキングの着用法』 杉山 悟氏(広島逓信病院)コメンテーター: 山本 尚人氏(浜松医療センター 血管外科) 佐戸川 弘之氏(福島県立医科大学附属病院 心臓血管外科) 福田 幾夫氏(吹田徳洲会病院 心臓血管センター長) 相川 志都氏(筑波メディカルセンター病院 心臓血管外科)

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第89回 経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?

<先週の動き>1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?厚生労働省は10日、米・ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を特例承認した。日本国内では軽症者向けの経口薬としてモルヌピラビルに次ぐ2剤目となるが、作用機序は異なり、本剤は12歳以上で使用可能。臨床試験において、重症化リスクのある患者に投与した場合、非投与群に比べて入院・死亡リスクが88%減少したと報告されている。発症後5日以内の使用が推奨され、オミクロン株への効果も期待される。パキロビッドパックには5シートのPTP包装が含まれ、1シートに朝・夕服用分としてニルマトレルビル錠150mgが4錠(1回2錠)およびリトナビル錠100mgが2錠(1回1錠)で構成されている。2剤のうち、ニルマトレルビルはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬であり、HIV治療薬としても使用されるリトナビルはSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示さないが、ニルマトレルビルのCYP3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を維持させる。リトナビルは各薬物代謝酵素やトランスポーターの強力な阻害作用を有するため、パキロビッドパックでは降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬など38成分と食品1つ(セイヨウオトギリソウ)が併用禁忌とされる。しかし、注意すべき薬剤はこれにとどまらず、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しており、当面の参考になるだろう。なお、今月27日までは全国約2,000医療機関での院内処方を原則として提供され、その間で適正使用の推進に向けた情報収集が行われる見込み。配分を希望する対象の医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録し、同センターを通じて配分依頼を行う必要がある。(参考)新型コロナウイルス治療薬の特例承認について(厚労省)厚労省 ファイザーの経口新型コロナ治療薬パキロビッドを特例承認 段階的に医療現場に提供(ミクスonline)ファイザー新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに今年度の診療報酬改定について、処方箋を3回まで繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入が決定した。高血圧や糖尿病などの慢性疾患において、症状が安定した患者が継続服用している場合に対応して、医師の診療なしで薬の受け取りが可能となる。一方で、投与量に限度がある湿布薬や向精神薬などは対象外となる。なお、今回の改定では湿布の処方上限が70枚から63枚に引き下げられた。また、紹介状を持たずに大学病院などを受診した患者に対する特別負担徴収の拡大についても、初診の場合は現在の5,000円から7,000円に、再診の場合は2,500円から3,000円にそれぞれ引き上げる方針となった。実施は10月1日から。対象となる医療機関は、これまでと同様に大学病院などの特定機能病院に加えて、地域医療支援病院のうち200床以上の病院も徴収の対象となる。わが国は国際的に見ても外来受診回数が多いとされるが、高度医療を担う外来にかかりつけ医を持たない患者が受診するのを抑制するとともに、来年度から開始される外来機能報告制度を用いて基幹病院を明確化し、機能分化を促進するのが狙いと考えられる。(参考)リフィルは1回29日以内で処方箋料の減算なし(日経ドラッグインフォメーション)大病院、紹介状なしなら初診7000円 診療報酬改定(日経新聞)外来機能報告制度 高度な外来を担う基幹病院を明確化し機能分化を促進(Beyond Health)3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2022年度診療報酬改定の答申が行われ、焦点の1つだったオンライン診療の初診料は251点と、特例的対応の214点から対面診療の水準との中間程度まで引き上げられた。同様に、電話など情報通信機器を用いた再診料・外来診療料はいずれも73点とされた。これに伴い、現行のオンライン診療料(月1回71点)は廃止となる。通常診療の初再診料は据え置きとなった。これに対して、日本医師会の中川会長は「対面診療を提供できる体制を有すること」「患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他医療機関と連携して対応できる体制を有すること」が堅持されたことに言及。オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視していくとするとともに、患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には、期中であっても、すみやかに診療報酬要件の見直しを要請する考えを示した。(参考)オンライン初診料、4月から値上げへ 厚労省「診療報酬」見直し案(朝日新聞)オンライン診療に係る診療報酬について(日本医師会)中医協・22年度診療報酬改定を答申 オンライン診療で患者の受診機会増に期待 営利追及への懸念も(ミクスonline)4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁視覚障害者の就労先を保護するために、健常者向けの「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設を認めないとする厚労省の規制について、違憲性を争った訴訟の上告審の判決で、最高裁第2小法廷は7日に、視覚障害者の「自立と社会経済活動への参加を促す積極的な意義がある」として合憲であるとした。視覚障害者の団体は判決後、記者会見において「あん摩マッサージ指圧師の職は自立した社会参加の命綱。それを残すような判断が示されたことに大きな意味がある」と話した。厚労省の統計では、2020年末のあん摩マッサージ指圧師は約11万8,000人、うち視覚障害者は約2万6,000人となっている。(参考)指圧師養成、新設規制は「合憲」 最高裁初判断(日経新聞)指圧師 養成施設の設置規制 最高裁「憲法違反とはいえない」(NHK)5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ厚労省は10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、5~11歳の小児に対する新型コロナワクチン接種について議論を行い、ファイザー製ワクチンは一定の有効性が期待できるとしながらも、最終的に「努力義務」を課さない方針を正式に決めた。小児に対するファイザー製ワクチンの接種について、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUではすべての小児に対して接種を推奨している。わが国では予防接種法上の「臨時接種」に位置付けられ、小児用ワクチンは21日から各自治体に配布される。一方で、以前から努力義務の適応外とされていた妊婦への接種については、有効性や安全性のデータが確認され、妊娠後期に感染すると早産率が高くなったり、重症化リスクが高いとする報告もあることから、新たに努力義務の適用となった。(参考)新型コロナワクチンの接種について(厚労省)小児は努力義務適用外 コロナワクチン、妊婦は対象に―厚労省(時事通信)5~11歳の接種「努力義務の対象外」了承 厚労省分科会(毎日新聞)

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静脈血栓塞栓症と避難所生活【ママに聞いてみよう(6)】

ママに聞いてみよう(6)静脈血栓塞栓症と避難所生活講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説大地震などの災害時や旅行の際などに問題となる静脈血栓塞栓症。避難所生活では血栓リスクが高まるからといって、「抗血栓薬を使用していた人はすぐに服用を再開すべき」と安易に考えてはいけない、と美智子先生は注意を促します。

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非重症コロナ入院患者の心肺支持療法離脱に有用な治療法は?/JAMA

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の治療において、治療量のヘパリンにP2Y12阻害薬を上乗せしても、ヘパリン単独療法と比較して21日以内の心肺支持療法離脱日数(organ support-free days)は増加しなかった。米国・NYU Grossman School of MedicineのJeffrey S. Berger氏らが、ブラジル、イタリア、スペイン、米国の病院60施設で実施した非盲検並行群間比較ベイズ流適応型無作為化試験「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines 4 Acute:ACTIV-4a」の結果を報告した。非重症のCOVID-19入院患者に対するヘパリン療法は、マルチプラットフォーム無作為化比較試験で生存日数や心肺支持療法離脱日数を増加することが示されたものの、患者の24%が死亡または集中治療を必要としたことから、この集団における追加治療が検討されていた。JAMA誌2022年1月18日号掲載の報告。ヘパリン+P2Y12阻害薬またはヘパリン単独に無作為化 研究グループは、2021年2月26日~6月19日の期間に、COVID-19で入院後72時間以内の患者で集中治療室(ICU)への入室は不要の非重症患者562例を、治療量のヘパリン+P2Y12阻害薬併用群(P2Y12阻害薬群、293例)、または治療量のヘパリン単独群(標準治療群、269例)に1対1の割合で無作為に割り付け、14日間または退院のいずれか早い日まで投与した。P2Y12阻害薬としてはチカグレロルが推奨されたが、クロピドグレルやプラスグレルの使用も認められた。90日間の最終追跡日は、2021年9月15日であった。 主要評価項目は、21日間における心肺支持療法離脱日数で、院内死亡(-1)と退院まで生存した患者については21日目までに呼吸/心臓系の心肺支持療法を受けなかった日数(範囲:-1~21日、スコアが高いほど心肺支持療法が少なくアウトカム良好を示す)を組み合わせた順序尺度で評価した。安全性の主要評価項目は、国際血栓止血学会により定義された28日までの大出血とした。ヘパリン+P2Y12阻害薬で、心肺支持療法離脱日数は改善せず、大出血リスクは3倍 無作為化された全562例(平均年齢52.7歳[SD 13.5]、女性41.5%)が試験を完遂し、87%が1日目に治療量のヘパリン投与を受けた。P2Y12阻害薬群では、63%がチカグレロル、37%がクロピドグレルを投与された。 心肺支持療法離脱日数の中央値は、P2Y12阻害薬群で21日(IQR:20~21)、標準治療群で21日(IQR:21~21)であった(補正後オッズ比[OR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.55~1.25、無益性の事後確率[オッズ比<1.2と定義]=96%)。死亡または心肺支持療法を必要とした患者の割合は、P2Y12阻害薬群(75例、26%)が標準治療群(58例、22%)より高かった(補正後ハザード比[HR]:1.19、95%CI:0.84~1.68、p=0.34)。 大出血は、P2Y12阻害薬群6例(2.0%)、標準治療群2例(0.7%)に認められた(補正後OR:3.31、95%CI:0.64~17.2、p=0.15)。

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若年者の再発VTEへの抗凝固療法、6週が3ヵ月に非劣性/JAMA

 21歳未満の若い誘発性静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、6週の抗凝固療法は3ヵ月の同療法に対して、再発VTEリスクと出血リスクとのトレードオフに基づく非劣性基準を満たしたことが、米国・Johns Hopkins All Children's HospitalのNeil A. Goldenberg氏らによる無作為化試験「Kids-DOTT試験」で示された。VTEに対する抗凝固療法について、21歳未満の患者における至適な治療期間は不明であった。JAMA誌2022年1月11日号掲載の報告。5ヵ国42施設で417例を対象に無作為化試験 試験は、21歳未満の誘発性VTE患者に対する抗凝固療法について、6週投与は従来法の3ヵ月投与に非劣性であるとの仮説を検証するため、2008~21年に、5ヵ国42医療施設で登録された417例を対象に行われた(主要エンドポイントの最終受診評価は2021年1月)。主な除外条件は重度の抗凝固因子欠乏症またはVTE既往で、持続性の抗リン脂質抗体がなく、診断後6週時の再画像診断で血栓が解消または完全な閉塞は認められない患者を無作為化に2群に割り付け、6週(207例)または3ヵ月(210例)の抗凝固療法を行った。 主要有効性および安全性の評価は、治療割付盲検下の1年以内に、発生が中央で判定された症候性の再発VTEと臨床的に問題となる出血イベントであった。 主要解析はper-protocol集団における非劣性の評価で、非劣性の定義には、症候性再発VTEの絶対増加0%と臨床的に問題となる出血イベントの絶対リスク低下4%など、二変量のトレードオフが組み込まれた(二変量非劣性境界曲線の3つのポイント中の1ポイントとした)。主要有効性アウトカム1年累積発生率、6週群0.66%、3ヵ月群0.70% 無作為化された417例において、297例(年齢中央値8.3歳[範囲:0.04~20.9]、女性49%)が、主要per-protocol解析の基準を満たした。Kaplan-Meier法により、主要有効性アウトカムの1年累積発生率は、6週抗凝固療法群0.66%(95%信頼区間[CI]:0~1.95)、3ヵ月抗凝固療法群0.70%(0~2.07)だった。 両群の再発VTEおよび臨床的に問題となる出血イベントの絶対リスク差に基づき、非劣性が実証された。 有害事象の発生は、6週抗凝固療法群26%、3ヵ月抗凝固療法群32%で、最も頻度の高かった有害事象は発熱(それぞれ1.9%、3.4%)であった。

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ICU入室COVID-19患者にアトルバスタチンは有効か?/BMJ

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、アトルバスタチンによる治療はプラセボと比較し、安全性は確認されたが、静脈/動脈血栓症、体外式膜型人工肺(ECMO)使用および全死亡の複合エンドポイントの有意な減少は認められなかった。イラン・Rajaie Cardiovascular Medical and Research CentreのBehnood Bikdeli氏らINSPIRATION-S試験グループが、同国11施設で実施した2×2要因デザインの無作為化比較試験の結果を報告した。BMJ誌2022年1月7日号掲載の報告。アトルバスタチン群290例、プラセボ群297例を比較 INSPIRATION-S(Intermediate vs Standard-Dose Prophylactic Anticoagulation in Critically-ill Patients With COVID-19:An Open Label Randomised Controlled Trial [INSPIRATION] -statin)試験は、ICUに入室した18歳以上のCOVID-19患者をアトルバスタチン(20mg 1日1回経口投与)群とプラセボ群に無作為に割り付け、退院状況にかかわらず無作為化後30日間投与し行われた。 有効性の主要評価項目は、30日以内の静脈/動脈血栓症、ECMO使用および全死亡の複合とした。事前に規定した安全性の評価項目は、肝酵素値の基準値上限3倍以上の患者の割合、臨床的に診断された心筋症などであった。有効性および安全性の評価は、治療の割り付けについて盲検化された臨床イベント委員会が行った。 2020年7月29日~2021年4月4日に、605例が無作為化された(アトルバスタチン群303例、プラセボ群302例)。なお、605例中343例は、先行して行われた、予防的抗凝固療法としてのヘパリン(エノキサパリン)の中等量と標準量を比較するINSPIRATION試験にも無作為化されており、262例はINSPIRATION試験終了後に無作為化された。 INSPIRATION-S試験の主要解析対象集団は605例中、適格基準を満たしていなかった14例と試験薬が投与されなかった4例を除く587例(アトルバスタチン群290例、プラセボ群297例)で、患者背景は年齢中央値57歳(四分位範囲:45~68)、女性256例(44%)であった。静脈/動脈血栓症・ECMO使用・全死亡の複合エンドポイントに両群で有意差なし 主要評価項目のイベントは、アトルバスタチン群で95例(33%)、プラセボ群で108例(36%)に認められた(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.58~1.21)。死亡は、アトルバスタチン群90例(31%)、プラセボ群103例(35%)であった(OR:0.84、95%CI:0.58~1.22)。静脈血栓塞栓症の発現率は、アトルバスタチン群2%(6例)、プラセボ群3%(9例)であった(OR:0.71、95%CI:0.24~2.06)。 心筋症は両群とも確認されなかったが、肝酵素値上昇はアトルバスタチン群で5例(2%)とプラセボ群で6例(2%)に認められた(OR:0.85、95%CI:0.25~2.81)。 なお、著者は「全体のイベント発生率が予想より低値であったため、臨床的に重要な治療効果を排除することはできない」とまとめている。

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新型コロナウイルス感染におけるDOACの意味:ランダム化比較試験か観察研究か?(解説:後藤信哉氏)

 観察研究にて、新型コロナウイルス感染による入院中の血栓イベント予防におけるDOACの価値は限定的とされた。血栓イベントリスクは退院後も高いと想定される。退院後の低分子ヘパリンの継続の根拠も確立されていない。本研究ではVTE risk 2~3以上、あるはD-dimer 500以上の症例を対象として抗凝固療法なしと1日10mgのrivaroxabanを比較するオープンラベルのランダム化比較試験である。退院後の抗凝固薬として標準治療は確立されていない。しかし、無治療と10mg rivaroxabanの比較試験の施行根拠を明確に説明することも難しい。本研究はブラジルの14の施設にて施行された。 一般的にランダム化比較試験は仮説検証試験として施行される。本研究は1国の、比較的少数(n=320)の仮説を生み出す研究である。血栓イベントリスクの高い症例が選択されているが、抗血栓薬なしの症例群でも退院後35日以内の血栓イベント発現率は9%(160例中15例)であった。この値には価値があると思う。今まで真剣に考えていなかったが、新型コロナウイルス感染の症例では退院後も油断はできない。血栓イベントリスクを評価して適切な対応が必要である。 さて、本試験では10mg/日のrivaroxabanと比較された。rivaroxaban群の血栓イベントは3%(159例中3例)と対象群よりも低かった。両群の出血イベントには差がなかった。 本研究成果を見て皆さんはどう考えるだろうか? ランダム化比較試験であるため実験的研究である。研究に必要な費用はrivaroxabanメーカーであるBayer社が負担している。オープンラベルの本研究の成果により新型コロナウイルスによる入院後の血栓リスクの高い症例の血栓イベント予防の適応にてrivaroxabanを承認するのは難しいと思われる。 ランダム化比較試験は標準治療の転換に用いられる。標準治療の転換を目指すランダム化比較試験でもボランティアは自らリスクをとって参加することになる。試験の結果に応じて次世代の標準治療が転換される。医師・患者のみならず企業、規制当局も国際共同ランダム化比較試験による科学的根拠が標準治療の転換に必要と考えている。筆者は、本研究はランダム化比較試験とするよりも新型コロナウイルス感染後の血栓イベントリスクの高い症例の観察研究でよかったと思う。観察研究では企業の資金を得られなかったかもしれない。前向き国際共同観察研究にて、新型コロナウイルス感染後の血栓イベントリスクの高い症例の血栓イベントが10%程度あることを確認し、その後に薬剤介入の効果を検証するランダム化比較試験ができればよかった。本研究には価値はあるが、筆者は被験者にはなりたくないと思ってしまう研究であった。

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高齢AF患者、リバーロキサバンvs.アピキサバン/JAMA

 65歳以上の心房細動患者に対し、リバーロキサバンはアピキサバンに比べて、主要な虚血性または出血性イベントリスクを有意に増大することが、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが米国のメディケア加入者約58万例について行った後ろ向きコホート試験の結果、示された。リバーロキサバンとアピキサバンは、心房細動患者の虚血性脳卒中予防のために最も頻繁に処方される経口抗凝固薬だが、有効性の比較については不明であった。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。脳卒中、全身性塞栓症、脳内出血、その他頭蓋内出血などの発生を両群で比較 研究グループは、65歳以上のメディケア加入者のコンピュータ登録および医療費請求の情報を用いて、後ろ向きコホート試験を行った。2013年1月~2018年11月に、心房細動でリバーロキサバンまたはアピキサバンの治療を開始した総計58万1,451例を、2018年11月30日まで最長4年間追跡した。 主要アウトカムは、主要な虚血性イベント(脳卒中、全身性塞栓症)と出血性イベント(脳内出血、その他頭蓋内出血、致死的頭蓋外出血)の複合とした。副次アウトカムは、非致死的頭蓋外出血と総死亡(追跡期間中の致死的虚血性/出血性イベントまたはその他の原因による死亡)だった。 発生率、ハザード比(HR)および率差(RD)を、ベースラインの併存疾患について傾向スコアの逆数を重み付けした解析法(IPTW)で補正して算出し比較検討した。低用量服用者でも、リバーロキサバン群で主要アウトカム発生1.3倍 被験者の平均年齢は77.0歳、女性は50.2%、リバーロキサバンまたはアピキサバンの低用量服用者は23.1%で、延べ追跡期間は47万4,605人年だった(追跡期間中央値:174日[IQR:62~397])。 補正後主要アウトカム発生率は、リバーロキサバン群の16.1件/1,000人年に対し、アピキサバン群は13.4件/1,000人年と低率だった(RD:2.7[95%信頼区間[CI]:1.9~3.5]、HR:1.18[1.12~1.24])。 また、リバーロキサバン群はアピキサバン群よりも、主要虚血性イベント(8.6 vs.7.6件/1,000人年、RD:1.1[95%CI:0.5~1.7]、HR:1.12[95%CI:1.04~1.20])、主要出血性イベント(7.5 vs.5.9件/1,000人年、RD:1.6[1.1~2.1]、HR:1.26[1.16~1.36])の発生率がいずれも高率だった。致死的頭蓋外出血は1.4 vs.1.0件/1,000人年(RD:0.4[0.2~0.7]、HR:1.41[1.18~1.70])だった。 非致死的頭蓋外出血(39.7 vs.18.5/1,000人年、RD:21.1[95%CI:20.0~22.3]、HR:2.07[95%CI:1.99~2.15])、致死的虚血性/出血性イベント(4.5 vs.3.3/1,000人年、RD:1.2[0.8~1.6]、HR:1.34[1.21~1.48])、総死亡(44.2 vs.41.0/1,000人年、RD:3.1[1.8~4.5]、HR:1.06[1.02~1.09])のいずれの発生率も、リバーロキサバン群がアピキサバン群に比べ高率だった。 なお、低用量服用者(27.4 vs.21.0/1,000人年、RD:6.4[95%CI:4.1~8.7]、HR:1.28[1.16~1.40])と標準用量服用者(13.2 vs.11.4/1,000人年、RD:1.8[1.0~2.6]、HR:1.13[1.06~1.21])を別にみた場合も、主要アウトカム発生はリバーロキサバン群がアピキサバン群に比べ高率だった。

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COVID-19退院後の血栓イベント予防に、抗凝固療法が有用/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した高リスク患者において、退院後のリバーロキサバン10mg/日投与は抗凝固療法を行わない場合と比較し35日後の臨床アウトカムを改善することが、無作為化非盲検試験「MICHELLE試験」で示された。ブラジル・Science Valley Research InstituteのEduardo Ramacciotti氏らが報告した。COVID-19で入院した患者は、退院後に血栓イベントのリスクがあるが、この集団における血栓予防の効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2021年12月15日号掲載の報告。退院時にリバーロキサバン10mg/日投与と抗凝固療法なしに無作為化、35日間追跡 研究グループは、ブラジルの14施設において、COVID-19により入院し、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高い患者(VTE予防のための国際登録「IMPROVE」のVTEスコア≧4、または2~3でDダイマー>500ng/mL)を、退院時にリバーロキサバン10mg/日を投与する群(リバーロキサバン群)と抗凝固療法を行わない群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、35日目における症候性または致死性VTE、両側下肢静脈超音波検査およびCT肺血管造影による無症候性VTE、症候性動脈血栓塞栓症、および心血管死の複合とし、盲検下で判定した。安全性の主要評価項目は大出血。いずれもintention-to-treat解析を行った。リバーロキサバン群で血栓イベントリスクが67%低下 2020年10月8日~2021年6月29日の間に997例がスクリーニングされ、このうち適格基準を満たした320例が登録され、リバーロキサバン群(160例、50%)または対照群(160例、50%)に無作為に割り付けられた。 全例、入院中は標準用量のヘパリンによる血栓予防を行った。165例(52%)は入院中に集中治療室に入室しており、197例(62%)はIMPROVEのVTEスコアが2~3のDダイマー高値例、121例(38%)は同スコア≧4であった。2例(各群1例)は、同意を撤回したため追跡調査ができず、解析から除外された。 有効性主要評価項目の複合イベントは、リバーロキサバン群で159例中5例(3%)、対照群で159例中15例(9%)に発生し、相対リスクは0.33(95%信頼区間[CI]:0.12~0.90、p=0.0293)であった。 両群とも大出血は認められなかった。リバーロキサバン群で2例(1%)にアレルギー反応が報告された。

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肺塞栓除外、YEARS基準+D-ダイマー年齢補正カットオフ値が有効/JAMA

 肺塞栓症の疑いで救急部門に搬送され、肺塞栓症除外基準(PERCルール)で除外できなかった患者について、YEARS基準とD-ダイマー年齢補正カットオフ値を組み合わせた診断戦略は、従来のD-ダイマー年齢補正カットオフ値のみによる診断戦略と比べて非劣性であることが、フランス・ソルボンヌ大学のYonathan Freund氏らが1,414例を対象に行った無作為化試験で示された。YEARS基準+D-ダイマー診断群では、胸部画像撮影実施率も約9%低減し、救急部門入院期間は短縮したという。これまで非コントロール試験では、YEARS基準とさまざまなD-ダイマーのカットオフ値を組み合わせた診断戦略が、安全に肺塞栓症を除外できることが示されていた。JAMA誌2021年12月7日号掲載の報告。肺塞栓をYEARS基準とD-ダイマー年齢補正カットオフ値で除外 研究グループは2019年10月~2020年6月にかけて、フランスとスペインの18ヵ所の救急部門で、肺塞栓症の臨床的リスクは低いもののPERCルールで除外できなかった患者、または肺塞栓症の主観的な中等度の臨床リスクが認められた患者の合計1,414例を対象に、クラスター無作為化クロスオーバー非劣性試験を行った。追跡は、2020年10月まで行った。 各試験センターで、無作為に介入期間とコントロール期間の順序が決められた。介入期間に、YEARS基準に該当せずD-ダイマー値が1,000ng/mL未満、またはYEARS基準1以上に該当しD-ダイマー値が年齢補正カットオフ値(50歳未満は500ng/mL、50歳以上は年齢×10ng/mL)未満の患者について、胸部画像なしで肺塞栓症を除外した(726例)。 コントロール期間では、D-ダイマー値が年齢補正カットオフ値未満の場合に、胸部画像なしで肺塞栓症を除外した(688例)。 主要エンドポイントは、3ヵ月時点の静脈血栓塞栓症(VTE)の発生率で、非劣性マージンは1.35%とした。副次エンドポイントは8項目で、いずれも3ヵ月時点で評価した胸部画像撮影、救急部門入院期間、入院、非適応抗凝固療法、全死因死亡、あらゆる再入院などだった。肺塞栓除外のYEARS基準とD-ダイマー年齢補正カットオフ値の組み合わせは有効 被験者数1,414例(平均年齢55歳、女性58%)のうち、1,217例(86%)を対象にper-protocol解析が行われた。 試験期間中に、救急部門で肺塞栓症の診断を受けたのは100例(7.1%)だった。3ヵ月時点で、VTE発症は介入群1例(0.15%、95%信頼区間[CI]:0.0~0.86)に対し、コントロール群5例(0.80%、0.26~1.86)で、介入群の非劣性が示された(補正後群間差:-0.64%、片側97.5%CI:-∞~0.21)。 解析を行った6項目の副次エンドポイントのうち有意差が認められたのは、胸部画像撮影の実施率(介入群30.4% vs.コントロール群40.0%、補正後群間差:-8.7%[95%CI:-13.8~-3.5])、救急部門入院期間の中央値(6時間[IQR:4~8]vs.6時間[5~9]、補正後群間差:-1.6時間[95%CI:-2.3~-0.9])の2項目のみだった。

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広い範囲で有効なアスピリンでもCOVID-19には効かないみたい(解説:後藤信哉氏)

 アスピリンには抗炎症効果がある。また、アスピリンは心筋梗塞などの血栓イベント予防効果もある。COVID-19はウイルス感染なので炎症が起こる。COVID-19では血栓症も増える。抗炎症効果、抗血栓効果のあるアスピリンはCOVID-19の予後改善効果があると期待された。 話は変わるが筆者はOxford大学と密接に共同研究している数少ない日本の研究者であると思う。Oxford大学は多くのカレッジからなる。臨床研究を主導するのはNuffield Department of Population Health(旧称 Clinical Trial Service Unit:CTSU)である。彼らの臨床医学における実証的ポリシーは揺るがない。バイアスをなくすために大規模ランダム化比較試験により臨床的仮説を徹底的に検証する。COVID-19 pandemicと同時に、少しでも効きそうな治療法についてランダム化比較試験を行うRECOVERY試験を開始した。本研究を主導したMartin Landray教授は筆者の長年の共同研究相手である。RECOVERY試験は次々と成果を生み出している。本年のエリザベス女王の誕生日にLandray教授はRECOVERY試験の貢献により女王陛下のknightに任命され、Sir. Martin Landray教授になった。臨床医学の貢献に対してSirの称号と名誉を与える英国の対応は日本でも真似できるかもしれない。 COVID-19の症例でもアスピリンは28日間の観察期間における血栓性イベントを5.3%から4.6%に減少させ、重篤な出血イベントを1.0%から1.6%に増加させた。つまり、簡易なランダム化比較試験でもアスピリン群ではしっかり薬剤を服用していたと想定される。しかし、死亡率には差がなかった。経過中の人工呼吸器の装着にも差がなかった。カプランマイヤーカーブを見ると、わずかにアスピリン群の予後が良いようにも見える。しかし、14,892例のランダム化比較試験では、アスピリンによる予後改善効果は否定されてしまった。 COVID-19は本当に厄介な病気である。

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DOAC時代の終わりの始まり(解説:後藤信哉氏)

 製薬企業というのは戦略的な情報企業だと思う。経口Xa阻害薬アピキサバン、リバーロキサバンが世界で毎年1兆円以上売れている。現状をつくるために、製薬企業はきわめて巧みな情報統制を行った。非弁膜症性心房細動は、心不全、突然死などのリスクのマーカーである。しかし、「非弁膜症性心房細動=脳血栓塞栓症」と徹底的に宣伝した。確かに、心房細動症例に脳卒中が多いことはFramingham研究が示した事実である。しかし、脳血栓塞栓症が多いことは誰も示していない。部分的に真実を入れた広報はプロパガンダの初歩である。将来を見越してしっかりとストーリーをつくった能力には敬服する。 筆者は経口Xa阻害薬など(DOAC)の開発を主導したが、途中で限界が明確に見えてしまった。しかし、企業は第III相試験の結果を徹底的に使ってDOACを広報した。心房細動の脳卒中予防試験は4種のDOACにとっておおむね成功であった。成功の最大の鍵は対照群をPT-INR 2-3のワルファリン治療としたところにあった。実臨床ではPT-INR 2程度を標的としていた医師が多かったのではないだろうか? PT-INR 2-3を過去の標準治療とする明確な根拠はなかった。PT-INRが高くなれば頭蓋内出血、出血性脳卒中が増える。DOAC開発試験の有効性エンドポイントは脳卒中であったため、出血性脳卒中は有効性エンドポイントとなる。まったくの嘘ではない。部分的な真実を入れたプロパガンダはワルファリン群との比較でも成功であった。 ランダム化比較試験を実行していないと気付かないが、DOAC開発試験のワルファリン群のPT-INRは通常の臨床と同じ方法で計測されたわけではない。医師も患者も、ワルファリン服用なのか、DOAC服用なのかわからない。そこで、ベッドサイドで採血して、割り付け番号を入れるとワルファリン群ではPT-INRが、DOAC群では嘘の値が出るPOC装置が使われた。POCによる計測は検査室と同じではない。さまざまにワルファリン群に制限をかけてようやくDOACの認可・承認に至った。 特許期間には膨大な利潤がある。DOAC開発企業・株主は大きなメリットを得た。しかし、特許は喪失する。低分子化合物なので原価数十円に近いジェネリック品に置き換わる。利潤が年間兆円規模となると次が苦しい。血液凝固第XI因子は出血を惹起しない抗凝固標的として以前から注目されていた。Xa阻害薬が売れている間は、XI阻害薬への期待などを企業は話せない(自らのXa阻害薬の欠点:出血リスクを自ら認めることになるので…)。しかし、Xa阻害薬の特許が切れたら、スムーズに次につながる新薬が欲しい。 AXIOMATIC-TKR試験の結果は、経口薬milvexianに血栓イベント抑制効果があること、効果に用量依存性がありそうなこと、重篤な出血リスクは増えなそうことを示唆した。 製薬企業はDOACからXI阻害薬へのスムーズな転換への論理を示せるだろうか? 本研究は第III相試験の用量決定には役立つと想定される。DOACの開発ではワルファリンのPT-INRの恣意的な調節により、一種、人工的な差を出すことに成功した。今後第III相に進むとすれば、市場規模の大きな血栓症ではDOACとの比較試験が必要となる。DOACに勝る有効性、安全性を第III相試験で示しても、マーケットでの競争は安価なDOACのジェネリック品となる。世界の俊英を集めた巨大製薬企業のブレインたちは、次世代の巨大な利潤に向けたmilvexianの絵を描けるだろうか? 筆者は、新薬の価格を著しく釣り上げて特許期間内のみ巨額の利潤を得る現在のモデル自体の転換が必要と考えている。さまざまな意味で期待を持たせる論文であった。

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新規経口抗凝固薬milvexianが術後VTE予防に有効/NEJM

 新規経口第XIa因子阻害薬milvexianは、人工膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症予防に有効であり、出血のリスクは低いことが示された。カナダ・マックマスター大学のJeffrey I. Weitz氏らが、エノキサパリンと比較するアダプティブデザインの第II相無作為化並行群間比較試験「AXIOMATIC-TKR試験」の結果を報告した。静脈および動脈血栓塞栓症の予防と治療において、第XIa因子阻害薬は従来の抗凝固薬より効果的で出血も少ない可能性が示されていた。著者は、「milvexianの有効性と安全性については、さらなる研究が必要である」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年11月15日号掲載の報告。milvexian 1日2回投与4用量、1日1回投与3用量vs.エノキサパリン 研究グループは、待機的人工膝関節置換術を受ける50歳以上の患者1,242例を、術後にmilvexian 25mg/50mg/100mg/200mgを1日2回投与、または25mg/50mg/200mgを1日1回投与、またはエノキサパリン40mgを1日1回投与する7群のいずれかに無作為に割り付けた(非盲検)。 有効性の主要評価項目は静脈血栓塞栓症(無症候性深部静脈血栓症、確定診断された症候性静脈血栓塞栓症、全死因死亡の複合)で、安全性の主要評価項目は出血とした。25~200mg 1日2回投与は、エノキサパリンよりVTEの発生が有意に低い 静脈血栓塞栓症は、エノキサパリン群54/252例(21%)に対して、milvexianの1日2回投与集団では25mg群27/129例(21%)、50mg群14/124例(11%)、100mg群12/134例(9%)、200mg群10/131例(8%)で発生した。milvexianの1日1回投与集団では25mg群7/28例(25%)、50mg群30/127例(24%)、200mg群8/123例(7%)であった。 milvexian 1日2回投与集団では有意な用量反応性が認められ、同集団の静脈血栓塞栓症の発生率は12%(63/518例)で、事前に設定した基準値である30%より有意に低かった(片側p<0.001)。 すべての出血(重症度を問わない)の発生は、milvexian群38/923例(4%)、エノキサパリン群12/296例(4%)であった。大出血または臨床的に重要な非大出血はそれぞれ1%および2%に認められ、重篤な有害事象はそれぞれ2%および4%報告された。

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