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子宮頸がん検出の最善のスクリーニングは?

子宮頸がん検出を目的としたスクリーニングテストについて、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査は細胞診よりも有益なのか、オランダ・Erasmus MC大学メディカルセンターのInge M C M de Kok氏らによるシミュレーション研究が行われた。費用対効果に着目して、女性の生涯での適切なスクリーニング回数についても検証された。病変部検出にHPV検査は細胞診よりも感受性が高いが特異度は低い。HPVスクリーニングについての既存の報告では、費用対効果の結果は千差万別で、de Kokらは、オランダモデルを各種条件が異なる欧州各国と適合させて検討した。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年3月5日号)掲載報告より。プライマリHPVスクリーニングかプライマリ細胞診かをシナリオ戦略に基づき検証研究グループは、欧州で1932~1992年に生まれたHPVワクチン非接種の女性を対象とし、オランダモデルに基づく費用対効果の解析を行った。ベース症例解析では、ミクロシミュレーションモデルで1,500通り以上のスクリーニング政策の費用対効果を調べた。その後、スクリーニング政策を異なる5つの想定シナリオ(子宮頸がんリスク、既往スクリーニング、検査特性関連の質、検査費用、HPV有病率について起こり得る可能性が異なるシナリオ)で比較した。主要評価項目は、HPV検査の感度とコストについての増分費用効果比(寿命獲得に要する費用)に関する最善のスクリーニング戦略とした。プライマリHPVスクリーニングが好ましいが、組織的に実施することが重要結果、想定シナリオのほとんどで、HPVスクリーニングは30歳以上ではプライマリ検査として好ましいとする結果だった。細胞診が好ましいとされたのは、低コストが好ましいとするシナリオの場合と、HPVの有病率が高く費用が高いHPV検査と合わせて行うとするシナリオの場合であった。Kok氏は、「欧州の国の多くは、子宮頸がんに対してプライマリ細胞診からプライマリHPVスクリーニングに考え方の切り替えるべきである」と結論。シミュレーションの結果から、重要なことはプライマリHPVスクリーニングを組織的に実施することで、それが低コストに結びつくとし、「HPVスクリーニングは、スクリーニングがよりよくコントロールされている状況で実施されなければならない」と結論している。

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成人への肺炎球菌ワクチン接種、23価よりも13価のほうが費用対効果が大きい

 成人への肺炎球菌ワクチン接種に関して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)との費用対効果について比較した結果、PCV13接種に高い費用対効果があることが報告された。ただし報告では、前提条件次第で逆転もあり得ることも示されている。米国・ピッツバーグ医科大学のKenneth J. Smith氏らが、50歳成人の仮定コホート群を対象として行った解析の結果で、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。同種の検討はこれまで行われていなかった。65歳でPCV13接種、2万8,900ドル/QALYとPPSV23接種より費用対効果が大きい 研究グループは、米国人50歳の仮定コホートを用いて、PCV13接種とPPSV23接種についての費用対効果についてシミュレーションを行った。 ワクチン戦略と推定される有効性については、デルフォイ専門家委員会によって呈された。乳幼児へのPCV13ワクチン接種による間接的な(集団免疫)効果は、PCV7で観察された効果に基づいて推定された。 モデル・パラメータのためのデータ・ソースには、疾病管理予防センター(CDC)Active Bacterial Coreサーベイランス、国立病院Discharge Survey、全国入院患者標本データと国民健康保険Interview Surveyが含まれていた。 主要アウトカムは、予防できた肺炎件数と、質で調整した生存年数(QALY)増加にかかる費用だった。 結果、現行推奨基準(例えば65歳時のワクチン接種、共存症がある場合はそれより低年齢でのワクチン接種)のPPSV23接種に代わってPCV13を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は、全く接種しない場合との比較で、2万8,900ドルで、PPSV23接種戦略(同3万4,600ドル)よりも費用対効果に優れていた。PCV13の非菌血性肺炎球菌肺炎への有効性など、前提を変えることで結果は逆転も また、50歳と65歳でPCV13を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は、PPSV23接種に代わってPCV13を接種した場合との比較で、4万5,100ドルだった。さらに、50歳と65歳でPCV13を接種した上で、75歳でPPSV23を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は49万6,000ドルだった。 Smith氏は、「費用対効果の絶対基準はないが、一般的にQALY獲得の介入コストが2万ドル未満なら採用エビデンスは強いとみなされ、2万~10万ドルなら中等度、10万ドル以上なら弱いとみなされている」と述べている。 一方こうした結果は、感受性解析でも強固であったが、前提となる、PCV13の非菌血性肺炎球菌性肺炎に対する有効性を下げたり、乳幼児へのワクチン接種による集団免疫効果を上げれば逆転した。その場合は、現行推奨されるPPSV23接種のほうが、費用対効果が高かった。

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無細胞百日咳を含む混合ワクチンの熱性痙攣リスク、てんかんリスクは?

ジフテリア・破傷風・無細胞百日咳/ポリオ/ヘモフィルスインフルエンザb型菌(DTaP-IPV-Hib)混合ワクチンの接種後リスクについて、接種当日の熱性痙攣のリスクが、3ヵ月齢での接種第1回目、5ヵ月齢での接種第2回目当日のリスクは4~6倍に増大することが報告された。しかし、絶対リスクは小さく、てんかんのリスクについては増大は認められなかった。デンマーク・Aarhus大学のYuelian Sun氏らが、約38万人の乳幼児について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。これまで、全細胞百日咳ワクチンは熱性痙攣リスクを増大することが知られていたが、無細胞百日咳ワクチンについての同リスクとの関連は明らかではなかった。ワクチン接種後の熱性痙攣リスクと初回接種後てんかんリスクを評価研究グループは、デンマークで2003年1月1日~2008年12月31日に生まれた37万8,834人を対象に、2009年末まで追跡調査を行った。主要アウトカムは、生後3ヵ月、5ヵ月、12ヵ月で接種されるDTaP-IPV-Hibワクチン接種後7日以内(0、1~3、4~7日)の熱性痙攣発症と、初回ワクチン接種後のてんかんの発症(ハザード比)についてであった。自己対照ケースシリーズ法(SCCS)を用いて、相対罹患率を割り出した。結果、被験者のうち、生後18ヵ月以内に熱性痙攣を発症したのは7,811人だった。そのうち初回ワクチン接種後7日以内に発症したのは17人(0.8人/10万人・日)、第2回接種後の同発症は32人(1.3人/10万人・日)、第3回接種後の同発症は201人(8.5人/10万人・日)だった。初回ワクチン接種当日の熱性痙攣リスクは6倍、第2回接種当日の同リスクは4倍に全体として、ワクチンの1~3回接種後7日以内の熱性痙攣発症リスクは、参照コホートと比べて有意な増大は認められなかった。しかし、初回ワクチン接種当日(ハザード比:6.02、95%信頼区間:2.86~12.65)、第2回接種当日(同:3.94、2.18~7.10)で同リスクは有意に増大することが認められた。ただし、第3回接種当日の同発症リスクの増大はみられなかった。SCCSによる分析結果も、同様だった。てんかんの発症については、7年間の追跡調査期間中、ワクチン非接種群で131人、ワクチン接種群で2,117人の発症が認められた。ワクチン接種後3~15ヵ月に、てんかんであると診断されたのは813人(1,000人・年当たり2.4)、その後に診断されたのは1,304人(同1.3)だった。接種群と非接種群との比較で、てんかん発症リスクは、ワクチン接種後3~15ヵ月では低く(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.50~0.79)、その後は同等だった(同:1.01、0.66~1.56)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ロタウイルスワクチン、腸重積罹患率を増大せず

乳幼児への5価ロタウイルス(RV5)ワクチン接種は、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率を増大しないことが報告された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のIrene M. Shui氏らが、米国のワクチン安全データリンク(VSD)に登録された、RV5接種を受けた乳幼児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。RV5ワクチン接種後の腸重積発症は、開発試験段階では報告されなかったが、承認後の国際的なトライアルで、特に1回目の接種後1週間以内の低レベルのリスク上昇の可能性が示唆されていた。約79万回のRV5接種について追跡調査研究グループは、2006年5月~2010年2月の間に、VSDに登録された、生後4~34週にRV5ワクチン接種を受けた乳幼児について、その後の腸重積罹患率について追跡調査を行った。主要アウトカムは、接種後1~7日、同1~30日間の、それぞれの腸重積罹患率だった。対照群として、RV5以外の推奨ワクチンを接種した乳幼児の同罹患率について比較した。試験期間中に被験者が受けたRV5ワクチン接種回数は、78万6,725回で、うち初回接種は30万9,844回だった。接種後7日、30日までのそれぞれの腸重積罹患率に増大なしその結果、RV5接種群で、非RV5接種群と比べ、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率の有意な増大は認められなかった。具体的には、接種後1~30日後の腸重積発症数は、RV5接種群で21人に対し、非RV5接種群の期待値は20.9人だった(標準化罹患比:1.01、95%信頼区間:0.62~1.54)。また初回接種後1~30日後の同発症数も、それぞれ7人と5.7人だった(同:1.23、同:0.5~2.54)。接種後1~7日後の腸重積発症数は、RV5接種群が4人に対し、非RV5接種群期待値は4.3人(同:0.92、同:0.25~2.36)、初回接種後はそれぞれ1人と0.8人(同:1.21、同:0.03~6.75)であり、いずれも有意差はなかった。なお、この初回接種後1~7日での発症に関する標準化罹患比の95%信頼区間上限値の6.75は、初回接種者6万5,287人につき1例の発症リスクを示すものだった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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慢性疾患を有する人への新型H1N1インフルエンザのワクチン効果

65歳未満の慢性疾患を有する人への新型H1N1インフルエンザのワクチン効果について、デンマーク国立血清研究所(Statens Serum Institu:SSI)のHanne-Dorthe Emborg氏らが、2009~2010シーズンに同ワクチン接種を受けたデンマーク住民を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。新型H1N1インフルエンザワクチンの疫学研究では、一般市民対象で70%以上の有効性があることが示されている。しかし、これまで基礎疾患を有する人の有効性については評価がされていなかった。BMJ誌2012年1月28日号(オンライン版2012年1月25日号)掲載報告より。デンマークの慢性疾患で罹患した約39万人のデータを調査Emborg氏らは、報告義務に基づき収集された、デンマークの新型H1N1インフルエンザの感染患者および入院患者のデータベースを基に、基礎疾患を有していた人のワクチン効果について評価を行った。具体的には2009年11月2日~2010年1月31日の間に、過去5年間に1つ以上の、インフルエンザ罹患後のリスクが増大すると予想される基礎疾患を有していた、65歳未満の38万8,069例(同国65歳未満人口の8.4%に相当)が対象となった。被験者のうち、基礎疾患が1つであった人が最も多く80.8%を占めた。主要評価項目は、新型H1N1インフルエンザの感染がラボ確認された、または入院が新型H1N1インフルエンザ感染であったとラボ確認された人で、年齢と基礎疾患について補正を行いワクチン効果を推定した。慢性疾患の数が多い人ほどワクチン接種率が高いが感染率も高いワクチン接種に関して、新型H1N1インフルエンザワクチンの接種は高年齢ほど高かった。また、どの年代も新型H1N1インフルエンザワクチンの接種率のほうが季節性ワクチンの接種率よりも高かったが、その差は若い年代(0~39歳)のほうが高かった。両ワクチンの接種率は、基礎疾患の数が多い人ほど高かった。一方で、基礎疾患の数が多い人のほうが、新型H1N1インフルエンザ感染が高いことも見受けられた。全体で、新型H1N1インフルエンザワクチン接種を1回以上受けた人は7万9,988例(20.6%)で、そのうちワクチン接種開始最初の週で接種を受けていたのは46%だった。2回目接種は大半が、2009年49週目以降とインフルエンザシーズン中盤以降に受けていた。感染は単回接種後1週間が最も増大し、感染に対するワクチン推定効果は-112%(95%信頼区間-187~-56%)だった。しかし14日以降では49%(同:10~71%)だった。なお、感染は若い年代ほど高かった。入院に対するワクチンの有効性も、接種後1週間が最も低く-258%(同:-464~-127%)だったが、14日以降では44%(同:-19~73%)だった。これら所見からEmborg氏は、「2009~2010シーズンは、ワクチン接種がシーズン後半になって行われていた。慢性疾患を有する人では、入院に対する有意なワクチン効果は認められなかったが、感染に対する予防効果は認められた」と述べ、「これら所見は、パンデミックワクチンの主要ターゲットは慢性疾患を有する人であること、およびワクチン効果は接種が遅くとも認められることを示すものである」と結論している。

1866.

重大な食品汚染物質PFCは、子どものワクチン接種効果を半減

重大な食品汚染物質であることが明らかとなっているペルフルオロ化合物(PFC)は、子どもの免疫力を低下することが明らかとなった。米国・ハーバード大学公衆衛生院のPhilippe Grandjean氏らが、約600人の子どもの血中PFC値とワクチン効果との関連について行った、前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、5歳時で同値が高い子どもは、7歳時のジフテリアや破傷風抗体レベルの低下するなどが認められたという。PFCは防水・防虫剤として食品包装材などに広く使われている。これまでの研究で、免疫応答が低下した齧歯目モデルの血中濃度と同レベルの血中濃度が米国人においても認められるが、PFC曝露の健康被害への影響については十分には解明されていなかった。JAMA誌2012年1月25日号掲載報告より。出生前後の血中PFC値と、5歳、7歳時の血中ワクチン抗体レベルとの関連を分析研究グループは、PFC曝露が幼児期のワクチン接種に対する免疫応答に影響するかを調べるため、1999~2001年にかけて、フェロー諸島で生まれた単胎児656例について追跡調査を行った。被験児の母親について妊娠32週時点で、および出生した被験児が5歳時に血中PFC値の測定をそれぞれ行った。被験児は全員、ジフテリアや破傷風などの予防接種を受けており、その血中ワクチン抗体レベルを5歳時、7歳時に調べ、PFC値との関連を分析した。被験児のうち587例が2008年まで追跡された。母親の血中PFOSレベルが2倍高い群では、5歳時のジフテリア抗体濃度は39%減少結果、PFCのうち最も血中レベルが高かったのは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)だった。この結果は、以前に報告された弁国での研究結果と同じだった。母親のPFCレベルと5歳児の抗体レベルとの逆相関が最も強かったのは、PFOSレベルで、母親の同値が2倍増大すると、子どもの5歳時のジフテリア抗体レベルは、39%減少(95%信頼区間:-55~-17)した。また、子どもの5歳時の主なPFCレベルが2倍増大すると、7歳時のジフテリア・破傷風の抗体レベルは49%(同:-67~-23)減少した。5歳時点で血中PFOS濃度と血中PFOA濃度が2倍増大すると、7歳時の抗体レベルが臨床的防御値である0.1 IU/mLを下回るオッズ比は、ジフテリアについては2.38(同:0.89~6.35)、破傷風については4.20(同:1.54~11.44)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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単純ヘルペスワクチン、HSV-1型とHSV-2型で有効性に違い

単純ヘルペスウイルス(HSV)ワクチンの有効性について、HSV-1型とHSV-2型への有効性に違いがあることが報告された。米国・セントルイス大学のRobert B. Belshe氏らが、両タイプ血清陰性の一般女性8,300例超を対象に、糖蛋白Dを含有するHSV-2サブユニットワクチンの有効性を検討した試験の結果で、HSV-1型の予防には効果が認められたが、HSV-2型の予防に対する有効性は認められなかったという。同ワクチンについての2つの先行研究(HSV抗体陽性と陰性の男女カップル対象、どちらが陽性かは問わない)では、抗体陰性の女性では、性器ヘルペス予防に関してタイプを問わず有効性が認められていた(HSV-1型73%、HSV-2型74%)。一方で、男性と、HSV-1型血清陽性の女性では有効性が認められていなかった。NEJM誌2012年1月5日号掲載報告より。HSV-1型とHSV-2型の抗体陰性女性対象に二重盲検試験を実施Belshe氏らは、米国40施設、カナダ10施設から登録した、HSV-1型とHSV-2型ともに抗体陰性だった18~30歳の女性8,323例を対象に、無作為化二重盲検有効性実地試験を行った。一部の被験者に対して、0、1、6ヵ月で、本試験HSVワクチン(HSV-2由来の糖蛋白D 20μgと、アジュバントとしてミョウバンと3-o脱アシル化モノホスホリル脂質Aを含む)を接種し、対照被験者には、A型肝炎予防ワクチンを720 ELISA(酵素免疫吸着検定法)単位で接種した。主要エンドポイントは、2ヵ月後(2回目接種の1ヵ月後)から20ヵ月後の間におけるHSV-1またはHSV-2いずれかによる性器ヘルペスの発症とした。HSV-2関連疾患・感染の予防には有効性認められずHSVワクチン接種群(3,798例)では、対照ワクチン群(3,076例)と比べて、局所反応のリスク増加が認められ、HSV-2に対するELISAおよび中和抗体を誘導した。全体として、HSVワクチンの有効性は認められなかった。性器ヘルペスに対する有効性は20%(95%信頼区間:-29~50)であった。しかし、HSV-1型の性器ヘルペスに対する有効性は58%(同:12~80)だった。感染に対する有効性(疾患発症の有無にかかわらず)は、HSV-1型に対しては35%(同:13~52)だった。しかしHSV-2型では-8%(同:-59~26)で有効性は観察されなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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乳幼児へのマラリアワクチンRTS,S/AS01、疾患発症および重症化とも予防に効果

世界のマラリア罹患者は年間約2億2,500万人、うち死亡は78万1,000人に上り、ほとんどがアフリカの小児だという。そのような公衆衛生上の脅威であるマラリアに対して開発されたワクチンRTS,S/AS01が、5~17ヵ月児の臨床症状発症を約半分に抑え、重症化を予防し得ることが、RTS,S Clinical Trials Partnershipらにより行われている第3相試験の結果、報告された。試験は、アフリカ7ヵ国・11施設共同で行われており、本報告は同試験初の報告で、NEJM誌2011年11月17日号(オンライン版2011年10月18日号)で発表された。アフリカ7ヵ国・11施設で1万5,460例を登録し検討研究グループは、2009年3月~2011年1月に、アフリカ7ヵ国・11施設で、生後6~12週児(6,573例)と生後5~17ヵ月児(8,923例)の2つの年齢カテゴリーの乳児合わせて1万5,460例を登録し、RTS,S/AS01または比較のための非マラリアワクチンを接種した。主要エンドポイントは、プロトコルに従って3回のワクチン接種をすべて受けた5~17ヵ月児6,000例について解析した、ワクチン接種後12ヵ月間の有効性(マラリアの臨床症状発症に対するワクチン効果)とした。また、2つの年齢カテゴリーの重症マラリアへのワクチン有効性の評価は、250例の小児が重症マラリアを発症した時点で行われた。初回接種後14ヵ月時点、ワクチン有効性は3回接種児で55.8%ワクチンの初回接種後14ヵ月時点で、5~17ヵ月児6,000例の臨床的マラリアエピソードの発生率は、RTS,S/AS01群は0.32件/人・年、対照群は0.55件/人・年で、ワクチン有効性は、intention-to-treat集団(ワクチン接種を最低1回接種児)では50.4%(95%信頼区間:45.8~54.6)、パープロトコル集団(同3回接種児)では55.8%(97.5%信頼区間:50.6~60.4)であった。重症マラリアに対するワクチンの有効性は、intention-to-treat集団45.1%(95%信頼区間:23.8~60.5)、パープロトコル集団47.3%(同:22.4~64.2)であった。両年齢カテゴリー群合わせての重症マラリアに対するワクチンの有効性は、平均追跡期間11ヵ月のパープロトコル集団で34.8%(同:16.2~49.2)であった。重篤な有害事象の発生頻度は、2つの試験群で同程度だった。なお5~17ヵ月児群において、RTS,S/AS01ワクチン接種後の全身性痙攣発作の割合は、1.04件/1,000回接種(95%信頼区間:0.62~1.64)だった。(武藤まき:医療ライター)

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インフルエンザワクチン、先生はいくらで接種しますか?

メドピアは21日、同社が運営する医師コミュニティサイト「MedPeer」(https://medpeer.jp/)にて実施した「今年インフルエンザワクチンをいくらで接種しますか?」の調査結果をまとめ、同サイト内で報告した。調査手法は、MedPeer会員(登録会員数:40,206名、2011年11月1日時点)である医師を対象とした「ポスティング調査」と呼ばれるオープン回答型のインターネットリサーチ。調査期間は、10月19日 ~25日の1週間。有効回答数は 327件。今回の調査対象は、小児科、小児外科の医師であった。「今年インフルエンザワクチンをいくらで接種しますか?」という問いに対して、30%の医師が「3000円~3500円未満」と回答した。「2500円から3000円未満」は20%、「2000円~2500円未満」が18%と続いた。全体的に、料金は「例年どおり」という声が多い「値上げした」というコメントもあった。1回目より2回目のほうが安く設定されていたり、大人と子供で異なっていたり、すべて一律料金にしていたり、医院によって設定基準はばらばらであった。また、「地域で統一している」という声がある一方で、医院によって料金が異なるせいか「料金の問い合わせが多くて困る」という声もみられた。また、予防接種のために病院を訪れる人が多くなるため、「料金をわざと高めに設定している」というコメントもあった。詳細はプレスリリースへhttps://medpeer.jp/posting_view_review?rid=20111121-1

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今年はどうなる?抗インフルエンザ薬

QLifeは18日、同社が行った調査『抗インフルエンザウイルス剤の処方動向調査2011』の結果を発表した。昨シーズンに抗インフルエンザイウルス剤を処方した全国の医師にアンケートを行い、内科・小児科を中心とする505人から回答を得た。今年のインフルエンザは、厚生労働省からワクチン供給予定量が当初見込みより下回ることが発表された直後に、例年よりも早い流行入りの可能性がマスコミによって報道されていた。2009~2010年の新型インフルエンザ(A/H1N1)発生以降、インフルエンザ情報に対して敏感になっている人も多いため、医師は、受診した患者や家族に対してインフルエンザの正しい対処法を説明することがより重要になっている。ところが、医師の間でも耐性ウイルスに関しては情報・認識が錯綜しているのが現状だ。「耐性ウイルスが市中で広く流行しているとお考えですか」との設問に対して、「流行している」「流行していない」の両回答が21%と拮抗した。また増殖性、病原性についても、「耐性ウイルスの方が強い」が18%と、「通常のウイルスの方が強い」回答12%を上回る結果となった。昨シーズンに処方した抗ウイルス剤の比率をきいたところ、タミフルが57%と最も多く、次いでイナビル20%、リレンザ19%、ラピアクタ2%の順であった。今後の処方意向に関しても「対成人」「対10歳未満」の両方でタミフルが最も多く、リレンザは対成人と対10歳未満とで大きく異なる結果となった。また、自由回答コメントのなかには「必要ないと思われる場合でも、薬を強く希望する人が増えた」という医師からの回答もあった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/2417.html

1871.

4価HPVワクチン、男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍予防に有効

男性との性交渉を持つ男性のHPV感染関連の肛門上皮内腫瘍に対する、4価HPVワクチンの有効性と安全性を検討した試験の結果、グレード2または3の腫瘍の発生率低下が認められ、安全性プロファイルも良好であり、肛門がんリスクの低下に役立つ可能性が示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJoel M. Palefsky氏らが、ワクチンに関する大規模無作為化試験に参加した男性との性交渉を持つ男性602例についてサブ解析を行った結果、報告した。肛門がんは男女ともに増えており、特に男性との性交渉を持つ男性で増大している。HPV-16、-18を主としたHPV感染によって引き起こされる肛門がんは、先行して高度な(グレード2または3)肛門上皮内腫瘍が認められることから、本検討が行われた。NEJM誌2011年10月27日号掲載より。602例対象に有効性と安全性を検討対象となった602例は、7ヵ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、クロアチア、ドイツ、スペイン、米国)から参加した16~26歳の男性との性交渉を持つ男性で、無作為に4価ワクチンを受ける群とプラセボを受ける群に割り付けられ36ヵ月間追跡された。主要な有効性評価項目は、HPVの4つのウイルスタイプ(6、11、16、18)感染に関連した肛門上皮内腫瘍または肛門がんの予防とした。有効性に関する解析はintention-to-treatと、per-protocol有効性集団(フォローアップを完遂した432例、71.8%)にて行われた。有害事象の発生率についても文書化された。4価ワクチンタイプのHPV肛門持続感染リスク、59.4%低下4価ワクチンの有効率は、intention-to-treatでは50.3%(95%信頼区間:25.7~67.2)、per-protocol集団では77.5%(同:39.6~93.3)であった。HPVのタイプを問わない場合の有効率は、intention-to-treatでは25.7%(95%信頼区間:-1.1~45.6)、per-protocol集団では54.9%(同:8.4~79.1)であった。肛門上皮内腫瘍の発生率は、100人・年当たり、intention-to-treatではプラセボ群17.5に対しワクチン群13.0であった。per-protocol集団ではプラセボ群8.9、ワクチン群4.0だった。4タイプのHPV感染関連のグレード2または3の肛門上皮内腫瘍の発生率は、intention-to-treatでは54.2%(同:18.0~75.3)減少、per-protocol集団では74.9%(同:8.8~95.4)減少した。4タイプのHPVの肛門への持続感染リスクは、intention-to-treatでは59.4%(同:43.0~71.4)低下、per-protocol集団では94.9%(同:80.4~99.4)低下した。ワクチン関連の重篤な有害事象は報告されなかった。(武藤まき:医療ライター)

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RSウイルスはなぜ脅威となるのか

 RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、生体外でも長時間の感染力を保つ。通常は鼻炎などの上気道炎の原因となるが、乳児や高齢者が感染すると、下気道炎を発症させることが問題 RSウイルスの潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされているが、咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2~3日続いた後、感染が下気道に及ぶ。細気管支が狭くなるに従い、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈するがあり、心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化し、喀痰の貯留により無気肺を起こしやすくなる。初期症状としては発熱が多くみられるが、入院時には38℃以下、もしくは消失していることが多い。 また、RSウイルス感染症は、乳幼児における肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるという報告もあるが、乳児期がRSウイルス感染症に罹患すると、喘鳴および喘息を発症するリスクが高くなることも報告されている。 2011年第1~39週のRSウイルス感染症患者累積報告数(38,041)における年齢群別割合をみると、0歳児42.1%(0~5ヵ月19.4%、6~11ヵ月22.6%)、1歳児32.6%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順となっており、1歳児以下が全報告数の約70%以上を、3歳児以下が全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わっていない(図)1)。 RSウイルス感染症は乳幼児において重症化しやすいが、そのなかでも早産児の入院率は正期産児よりも大幅に高いことが知られている。その原因の一つとして、早産児は正期産児に比べ肺の発達が不完全なため、下気道感染症を発症すると無気肺などが生じやすくなることが挙げられる。また、もう一つの原因として、早産児は気管支が狭いため、RSウイルス感染によって細気管支の気道上皮に炎症や浮腫が発生したり、気道分泌が亢進したりすると、気道狭窄に発展しやすいことが挙げられる。さらに、母親からの移行抗体の濃度が正期産児に比べて大きく下回るため、早産児のRSウイルスに対する中和抗体を含むIgGの濃度が正期産児より低いことも原因の一つとなる。 RSウイルス感染症には、いまだワクチンや有効な治療法がないが、現在、重症化を抑制する唯一の薬剤として、RSウイルスに対し特異的な中和活性を示すモノクローナル抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)が使用されている。その使用対象は以下のようになっている。1)在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児及び乳児 2)在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児及び乳児3)過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児及び幼児4)24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児及び幼児(パリビズマブ添付文書より)RSウイルス感染症には有効な治療法がなく、重症化した乳児に対しては酸素テントに収容するなどの対症療法を行うしかなく、乳幼児の感染予防は困難とされている。そのため、とくに重症化しやすい早産児に対しては、徹底した感染予防対策のほか、重症化の抑制も重要となる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第39週:通巻第13巻 第39号.

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MF59アジュバント不活化インフルエンザワクチン、乳幼児への有効性確認

新たなアジュバント製法によって開発された不活化インフルエンザワクチンについて、乳幼児に対する有効性が無作為化試験によって確認されたことが報告された。不活化インフルエンザワクチンは、乳幼児においては有効性が乏しいことが知られている。新たなアジュバントは水中油型乳剤のMF59で、成人用季節性インフルエンザに対する三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)のアジュバントとして1997年以降27ヵ国で利用接種が承認されている。乳幼児に対する有効性を検討した無作為化試験は、2ヵ国2シーズンにわたって行われた。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。アジュバントワクチン(ATIV)、非アジュバントワクチン(TIV)、対照群で無作為化試験乳幼児(生後6ヵ月以上72ヵ月未満)におけるMF59アジュバントの三価不活化インフルエンザワクチンの有効性に及ぼす影響について検討した試験は、2回のインフルエンザ流行期にわたり、2007~2008年シーズンにドイツ(654例)、2008~2009年シーズンにドイツ(2,104例)、フィンランド(1,949例)の、合計4,707例の健常児を対象に行われた。被験児は、MF59アジュバント添加ワクチン(ATIV)接種群、アジュバント非添加ワクチン(TIV)接種群、非インフルエンザワクチン接種(対照)群に無作為化され接種を受け、インフルエンザ様疾患に対する絶対効果と相対効果について評価された。インフルエンザ様疾患の確認はPCR法にて行われた。なお接種間隔・回数はいずれも、28日間隔の2回で行われ、またアジュバント用量は年齢(生後6~36ヵ月未満、36~72ヵ月未満)により調整がされた。インフルエンザ様疾患発症率、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%PCR法にて確認されたインフルエンザ様疾患の発症率は、2回の流行期を合わせて、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%であった。全インフルエンザ株110例中94例はワクチンと一致するH3N2ウイルスだった。それら(全インフルエンザ株)に対する絶対効果は、ATIV群86%(95%信頼区間:74~93)、TIV群43%(同:15~61)であり、ATIVのTIVに対する相対効果は75%(同:55~87)だった。対象年齢別にみた有効率は、ATIV群は、生後6~36ヵ月未満児群79%(同:55~90)、36~72ヵ月未満児群92%(同:77~97)であったが、TIV群はそれぞれ40%(同:-6~66)、45%(同:6~68)だった。抗体反応はATIVのほうが高く、その状態は181日目まで持続した。ATIVとTIVそれぞれの、全身反応・局所反応の発現率は、生後6~36ヵ月未満児群においては同程度であったが、36~72ヵ月未満児群では全身性イベントの頻度がATIV群では63%と、TIV群44%、対照群50%より高かった。重篤な有害事象は3群で同程度だった。(武藤まき:医療ライター)

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肺炎予防推進プロジェクト「シニアの備え」普及運動を開始 新大使に加賀まりこ氏

「肺炎予防推進プロジェクト」が9月14日、65歳以上のシニア層のライフスタイルの包括的なサポートを目指す「シニアの備え」普及運動のキックオフ記者発表会を開催した。また、肺炎予防大使には2009年の発足時から大使を務める中尾彬氏に続き、新たに加賀まりこ氏が就任した。2011年9月に発足した「肺炎予防推進プロジェクト」では、7つの賛同企業と団体が引き続き参画し、従来の肺炎予防啓発活動をさらに発展させ、シニアのライフスタイルの包括的なサポートを目指す「シニアの備え」普及運動を開始するという。特に今年度は、シニアの方々の声や実像に基づいて、食事、運動、趣味や生きがいなどの社会活動、そして予防医療の4つのテーマで「シニアの備え」を実践するための情報や様々なプログラムを提供していく予定とのこと。同プロジェクトでは2009年9月の発足時より、急性肺炎を患った経験を持つ俳優の中尾氏が大使となり65歳以上の肺炎予防の重要性と予防法の啓発活動を展開してきた。その後、肺炎球菌ワクチンの接種者数は約2倍に増加したという。しかし、全国平均の推定接種率はいまだ約11.8%と少ないのが現状だ。記者発表会当日は、同プロジェクト顧問である日本医科大学特任教授、日本医科大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏による「高齢者の肺炎予防」に関するレクチャーのほか、新肺炎予防大使に加賀まりこ氏を迎え、就任式も同時に行われた。また、大使3年目の中尾彬氏、新大使の加賀氏と、NPO法人シニアわーくすRyoma 21理事長の松本すみ子氏の3名による「シニアの備え」トークショーも開催された。トークショーでは、それぞれが自身の体験談を交えながら、65歳以上の方々が日々いきいきとアクティブに暮らすためにも、食事や運動に気を使うのと同じように予防医療を暮らしの中に取り入れていくなど、「シニアの備え」が重要であるという話で締めくくられた。同社は今回新たに「シニアの備え」の普及運動と意識調査、情報やプログラムの提供を開始するが、今後も継続して、テレビコマーシャル放映と新聞広告の全国展開、また、Webサイトによる情報提供 (http://www.haienyobo.com/)、ポスターの掲示・情報冊子の提供などの活動を行っていくという。「肺炎予防促進プロジェクト」サイトはこちらhttp://www.haienyobo.com/

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ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減

米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。導入2年で、1歳未満児の接種率は73%調査は、MarketScanデータベースを使って、5歳未満児のRV5接種率および下痢関連の医療利用について、2007年7月~2009年6月と2001年7月~2006年6月とを比較して行われた。また、未接種児の下痢関連の医療利用の割合について、2008年と2009年それぞれの1~6月期とワクチン導入前とを比較し、間接的なベネフィットについて推定評価した。そして下痢関連の入院の全米的な減少数、およびコストについて外挿法で推定した。2008年12月31日時点で、少なくとも1回接種済みの1歳未満児は73%、1歳児は64%、2~4歳児は8%であった。ロタウイルス感染症入院、導入前と比べて導入2年目75%減、3年目60%減各年の5歳未満児の1万人・年当たりの下痢関連入院は、2001~2006年(導入前)52件、2007~2008年35件、2008~2009年39例となっており、2001~2006年と比べて相対的に、2007~2008は33%減少(95%信頼区間:31~35)、2008~2009年は25%減少(同:23~27)していた。同じく、ロタウイルス感染症と特定された入院は各年、14例、4例、6例で、75%減少(同:72~77)、60%減少(同:58~63)となっていた。2007~2009年で、入院6万4,855件減、医療費2億7,800万ドル減2008年と2009年それぞれ1~6月期の、相対的減少の接種児vs.未接種児の比較は、以下のとおりだった。下痢入院:44%(同:33~53)vs. 58%(同:52~64)、ロタウイルス感染症と診断入院:89%(同:79~94)vs. 89%(同:84~93)、下痢で救急外来受診:37%(同:31~43)vs. 48%(同:44~51)、下痢で外来受診:9%(同:6~11)vs. 12%(同:10~15)。未接種児の間接的なベネフィットは、2007~2008年は認められたが2008~2009年には認められなかった。一方で、2007~2009年の間に米国全体で、入院が推定6万4,855件減少、医療費は2億7,800万ドル削減したと推定された。(武藤まき:医療ライター)

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インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。インドの都市部スラム街の小児373例を3年間追跡研究グループが対象としたのは、インド・Velloreの都市部のスラム街で生まれた小児で、出生後3年間、週2回往診して追跡した。追跡調査期間は2002年3月~2003年8月で、当初452例が登録され、追跡が完了したのは373例だった。調査は、便検体を2週間ごとに集め、酵素免疫測定(ELISA)法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でロタウイルス抗原を同定する検査が行われた。なお、下痢症状が認められる期間は2日ごとに便検体を集め検査が行われた。また、血清検体を6ヵ月ごとに採取し、セロコンバージョンの評価(IgG抗体価4倍上昇またはIgA抗体価3倍上昇と定義)が行われた。全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%結果、インドの都市部スラム街では、概して生まれて間もなくロタウイルスに感染している実態が明らかになった。生後6ヵ月までの感染率は56%だった。再感染率は高く、調査期間中の全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%だった。中等度~重度疾患に対する防御効果は、感染回数が増すごとに高まってはいたが、感染3回後も防御率は79%にとどまっていた。最もよくみられたウイルス株の遺伝子型はG1P[8](15.9%)で、G2P[4](13.6%)、G10P[11](8.7%)、G9P[8](7.2%)、G1P[4](4.4%)、G10P[4](1.7%)、G9P[4](1.5%)、G12P[6](1.1%)、G1P[6](0.6%)と続いた。同一タイプのウイルス株への初回、再感染リスクについて評価した結果、遺伝子型に基づく明らかな防御効果は認められなかった。これら結果を踏まえGladstone氏は最後に、「インドや同等の地域では、ロタウイルスワクチン戦略を見直すべきことを示す結果であった。投与量や回数を増加したり、ワクチン接種を早期に行う(たとえば新生児のうちの接種、あるいは母親への接種など)ことも考慮していく必要があるだろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alumワクチン療法の可能性

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alum(水酸化アルミニウム配合グルタミン酸脱炭酸酵素)ワクチン療法について、無作為化二重盲検試験の結果、治療目標としたインスリン分泌の低下を抑制しなかったことが報告された。カナダ・トロント大学小児疾患病院のDiane K Wherrett氏らによる。GADは、1型糖尿病の自己免疫反応の主要なターゲットであり、非肥満性の自己免疫性糖尿病モデルのマウス実験では、糖尿病を予防する可能性が示されていた。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月27日号)掲載報告より。診断100日未満3~45歳145例を対象に、接種後1年間のインスリン分泌能を調査試験は、アメリカとカナダ15施設から登録され適格基準を満たした、1型糖尿病との診断が100日未満の3~45歳145例を対象に行われた。被験者は無作為に、GAD-alum 20μgの3回接種群(48例)、同2回接種+alum 1回接種群(49例)、alum 3回接種群(48例)の3つの治療群に割り付けられ、インスリン分泌能が維持されるかを観察した。主要評価項目は、1年時点の血清Cペプチド値(4時間混合食負荷試験の2時間値)の相乗平均曲線下面積(AUC)とし(基線で年齢、性、ペプチド値で補正)、副次評価項目は、HbA1cとインスリン投与量の変化、安全性などを含んだ。接種スケジュールは、基線、4週間後、さらにその8週間後だった。無作為化はコンピュータにて行われ、患者および治験担当者には割り付け情報は知らされなかった。3回接種、2回接種、alum接種の3群間で有意差認められず、免疫療法研究は発展途上結果、1年時点の血清Cペプチド値の2時間AUCは、GAD-alum接種群は0.412nmol/L(95%信頼区間:0.349~0.478)、GAD-alum+alum接種群は0.382nmol/L(95%信頼区間:0.322~0.446)、alum接種群は0.413nmol/L(95%信頼区間:0.351~0.477)で3群間に有意差は認められなかった。同集団平均値比は、GAD-alum接種群vs. alum接種群は0.998(95%信頼区間:0.779~1.22、p=0.98)、GAD-alum+alum接種群vs. alum接種群は0.926(同:0.720~1.13、p=0.50)で、3群間で同等だった。HbA1cとインスリン投与量の変化、有害事象の発生頻度および重症度について、3群間で差は認められなかった。Wherrett氏は、「新規1型糖尿病患者を対象とする4~12週にわたるGAD-alumの2回または3回接種によるワクチン療法により、1年間のインスリン分泌低下を変化することはなかった」と結論。しかし、「免疫療法は非常に望ましく、動物モデルでは有効であったが、ヒトに関してはいまだ発展途上である」として、レビュアーから、投与量・ルート、有効な耐性誘導などさらなる研究が必要だろうとの指摘があったことや、免疫療法の研究を進展させるには免疫調整マーカーの開発が必要であること、また低用量の免疫調整薬投与を含む、GAD療法の併用療法への応用の可能性について言及している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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インフルエンザ A(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群との関連

インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連について、ヨーロッパ5ヵ国を対象とした症例対照研究の結果、発生リスクの増大は認められなかったことが報告された。ただしリスク上限が2.7倍以上も否定できないとしている。オランダ・エラスムス大学病院のJeanne Dieleman氏らが、BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年7月12日号)で発表した。インフルエンザワクチン接種とギランバレー症候群との関連は、1976年のアメリカでブタ由来インフルエンザA(H1N1)亜型A/NJ/76ワクチンで7倍に増大したことが知られる。その後の季節性インフルエンザワクチンではそこまでの増大は認められていないが、今回新たなワクチン接種が始まり、ヨーロッパでは増大に対する懸念が持ち上がっていたという。欧州5ヵ国でのワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連を調査多国籍症例対照研究は、デンマーク、フランス、オランダ、スウェーデン、イギリス、約5,000万人を対象に行われた。ギランバレー症候群およびその変異型のミラー・フィッシャー症候群が報告されたのは154例で、そのうち1人以上との対照群とのマッチング(年齢、性、インデックス日付、国)が成立した104例が研究対象となった。症例は、Brighton Collaborationによって分類された。主要評価項目は、ワクチン接種後のギランバレー症候群の推定リスク。症例、ワクチン接種については、研究対象国間でかなりのばらつきが認められ、最も共通して接種されたワクチンは、アジュバンドワクチン(PandemrixとFocetria)だった。関連は認められなかったが、2.7倍以上のリスク上昇の可能性は除外できない解析の結果、5ヵ国すべての補正前プール推定リスクは2.8(95%信頼区間:1.3~6.0)だった。しかし、インフルエンザ様疾患/上気道感染症と季節性インフルエンザで補正後は、インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種によるギランバレー症候群増大との関連は認められなかった(補正後オッズ比:1.0、95%信頼区間:0.3~2.7)。ただし95%信頼区間の示す値から、100万人当たり、ワクチン接種後6週間以内で、ギランバレー症候群1例の回避から最高3例発症までの変動があることが明らかになった。Dieleman氏は、「ギランバレー症候群の発生リスクは、インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種後に増大しない。しかし一方で、リスク上限が2.7倍あるいは100万人接種当たり3例を上回る可能性は除外できない」と結論。「パンデミックワクチンとギランバレー症候群との関連の評価では、共変量としてのインフルエンザ様疾患/上気道感染症と季節性インフルエンザ、そして接種後時間の影響についての説明が重要である」と述べている。

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イソニアジドの結核一次予防的投与、未発症、未感染を改善せず:南アフリカHIV曝露児対象試験

結核治療薬イソニアジド(商品名:イスコチンなど)の乳児への一次予防的投与について、南アフリカで行われた試験の結果、結核の未発症や未感染を改善しなかったことが報告された。試験対象児は、結核感染リスクの高いHIV感染児あるいは周産期にHIVに曝露された乳児で、いずれも生後30日までにBCGワクチンは摂取されていた。サハラ以南では結核が蔓延しており、特にHIV感染成人が多い地域での感染率の高さが問題となっており、イソニアジドによる結核予防戦略が提唱されているという。南アフリカ共和国・ヴィトヴァーテルスラント大学のShabir A. Madhi氏らは、イソニアジドは感染者からの感染が明らかな患児での治療効果は示されているが、サハラ以南のような結核感染リスクが高い環境下にいる乳児を対象とした試験は行われていないとして、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年7月7日号掲載報告より。イソニアジド群、プラセボ群に無作為化し96週投与、その後108週までの転帰を比較試験は、南アフリカ共和国3施設とボツワナ共和国1施設から、生後91~120日で、30日までにBCGワクチン接種を受けていた、HIV感染児548例とHIV非感染児804例を登録して行われた。被験児は無作為に、イソニアジド群(10~20mg/kg体重/日)か同用量のプラセボ群に割り付けられ、96週間投与を受けた。その後108週までの間の、HIV感染児については結核発症と死亡について、HIV非感染児については潜在性結核感染症、結核発症、死亡を主要転帰として検討された。なお、HIV感染児には試験中、抗レトロウイルス治療が行われた(98.9%に実行)。HIV感染児にとって結核は、抗レトロウイルス治療環境が整っても負荷が大きい疾病結果、HIV感染児群、HIV非感染児群ともに主要転帰についてイソニアジド群とプラセボ群とで有意差は認められず、HIV感染児群での結核発症と死亡の発生は、イソニアジド群52例(19.0%)、プラセボ群53例(19.3%)だった(P=0.93)。この結果は、抗レトロウイルス治療開始時期、結核の母子感染歴で補正後も同様であった(P=0.85)。HIV非感染児群では、潜在性結核感染症・結核発症・死亡の複合発生率が、イソニアジド群(39例、10%)と、プラセボ群(45例、11%)で有意差がなかった(P=0.44)。結核罹患率は、HIV感染児群は121例/1,000児・年(95%信頼区間:95~153)、一方HIV非感染児群では41例/1,000児・年(95%信頼区間:31~52)であった。安全性に関して、グレード3以上の臨床毒性あるいはラボ毒性は、イソニアジド群とプラセボ群とで有意差は認められなかった。Madhi氏は、「イソニアジドの一次予防としての投与が、BCGワクチンを受けたHIV感染児の結核未発病生存を、また同HIV非感染児の結核非感染生存を改善しなかった。HIV感染児にとって結核の疾病負荷は、抗レトロウイルス治療を受けられる環境が整っても高いままだった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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HPV 4価ワクチン導入で18歳未満女児の高度子宮頸部異形成が減少傾向に:オーストラリア

オーストラリア・ビクトリア州では、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する4価ワクチン(商品名:ガーダシル)導入後の18歳未満女児における高度子宮頸部異形成の発生率が、導入前に比べて減少する傾向にあることが、ビクトリア州細胞診サービス部のJulia M L Brotherton氏らの調査で示された。HPVに対する最初の予防的ワクチンが承認された2006年以降、4価ワクチンあるいは2価ワクチン(同:サーバリックス)の接種が、国の予防接種プログラムとして(28ヵ国以上)、または開発途上国でも地方レベルの寄付金(17ヵ国以上)によって実施されているという。オーストラリアでは、2007~2009年に12~26歳の全女性に対し4価ワクチンを用いたHPVワクチン接種プログラムが導入されている。Lancet誌2011年6月18日号掲載の報告。プログラム導入の前後で、頸部異常の傾向を比較研究グループは、オーストラリア・ビクトリア州居住の女性を対象に、ワクチン接種プログラム導入の前後における子宮頸部異常の傾向の変化について解析した。ビクトリア州子宮頸部細胞診レジストリー(VCCR)のデータを用いて、プログラム開始前(2003年1月1日~2007年3月31日)と開始後(2007年4月1日~2009年12月31日)の高度子宮頸部異形成(HGA、グレード2以上の子宮頸部上皮内新生物あるいは上皮内腺がん)と軽度子宮頸部異形成(LGA)について、5つの年齢層(<18歳、18~20歳、21~25歳、26~30歳、≧31歳)に分けて評価した。主要評価項目はHGAの発生率とし、フィッシャー正確確率検定を用いて2つの時期の比較を行い、ポアソン区分的回帰分析にて発生率の傾向を評価した。導入後3年以内のHGA発生率低下に関する最初の報告ワクチン接種プログラム導入後は、18歳未満の女児においてHGAの発生率が0.38%低下した。この低下の傾向性は徐々に増強し、ワクチン接種導入前の発生率と比べ傾向性に有意な差が認められた(発生率比:1.14、95%信頼区間:1.00~1.30、p=0.05)。LGAや18歳以上の女性ではこのような傾向はみられなかった。著者は、「これは、地域住民を対象としたHPVワクチン接種プログラム実施後3年以内のHGA発生率の減少に関する最初の報告である」とし、「この地域相関的観察研究がワクチン接種の普及に寄与することを確証し、ワクチン接種女性の検診への参加状況をモニターするには、ワクチン接種と検診の連携が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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