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ワクチン接種2回目で多い副反応疑い、主な症状と発症時期は?/厚労省

 厚生労働省は3月26日、医療機関や製造販売業者からの副反応疑い報告状況、国内アナフィラキシー発生状況などについての検討会*を開催し、「新型コロナワクチン投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」の中間報告などを行った。それによるとファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを接種した場合、発熱、倦怠感、頭痛などの副反応が2回目に多くみられた。また、いずれの症状も接種当日~翌日に出現している場合が多かった。 報告によると、発熱の場合“1回目接種後の発熱(37.5℃以上)は3.3%であったのに対し、2回目は35.6%と高率だった。発熱する場合は翌日が多く、接種3日目には解熱した”とあり、また接種部位の疼痛は“1回目、2回目いずれでも90%超で、接種翌日が最も頻度が高く、接種3日後には軽快した”という。調査概要と結果詳細 この調査は伊藤 澄信氏(順天堂大学医学部臨床研究・治験センター)らによるワクチン接種者を対象とした前向き観察研究で、治験と同様の方法で1~2万人の安全性情報を収集し、厚労省の専門家会議を通じて国民に安全性情報を発信することを目的としている。 2月14日に特例承認となったファイザー製の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を2月17日から先行接種対象者に接種開始。2月25日に被接種者登録が終了、1万9,808例が1回目を接種しコホート調査に登録され、2回目接種者は1万7,579例だった。接種者の職種は医師17%、看護師47%、その他医療従事者36%(薬剤師・臨床検査技師・放射線技師は各3%、理学療法士2%ほか)。年代は20代:21%、30代:24%、40代:25%、50代:21%、60代以上:8.7%で、男性34%、女性66%だった。治療中疾患は高血圧が最も多く、次いで脂質異常症、糖尿病、気管支喘息の順に多かった。 症状の出現について、接種後8日目以降に回収した1回目接種1万9,035例(全体の96.1%) および2回目接種3,933例の健康観察日誌から調べた結果、1回目に比べると2回目接種では接種翌日に頭痛(約40%)、全身倦怠感(約60%)を自覚した。また、接種部位の疼痛については1回目、2回目ともに接種翌日時点で約90%の接種者が記録しており、これは2009年のH1N1pdmインフルエンザワクチンNHO 2万人調査での疼痛出現の割合(43.8%)と比較しても、頻度が明らかに高いことが示された。 主な症状と発症率は以下のとおり(1回目/2回目)。発熱(37.5℃以上):3.3%/35.6%発熱(38℃以上):0.9%/19.1%接種部位反応:92.9%/93.0%発赤:13.9%/16.0%疼痛:92.3%/91.9%腫脹:12.5%/16.9%硬結:10.6%/9.9%熱感:12.8%/16.6%かゆみ:7.9%/10.4%倦怠感:23.2%/67.3%頭痛:21.2%/49.0%*:第54回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、第14回薬事食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会合同開催(ケアネット 土井 舞子)患者説明用スライドはこちら『新型コロナワクチン副反応疑い症状』

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第51回 「コロナワクチン、選べるようにする!」、ワクチン担当大臣補佐官発言のおそまつ

「会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は所用があって中央道を使って長野県に住む大学の先輩宅に行ってきました。先輩はリタイア後、別荘地で暮らしているのですが、最近ワクチン接種を巡って不穏な動きがあると話していました。不穏な動きとは、知人の女性が属する地域のあるグループが「ワクチンは危険だから接種はやめましょう」という運動をしている、というのです。「とくに新聞も読んでないようだし、NHKニュースもちゃんと観ていない人たちで、インターネットで探した情報だけで理論武装しているんだよね。高齢者が多い地方だからこそ、ワクチン接種は必要なのに…」と、先輩は渋い表情でボヤいていました。さて、そんな話を聞いた翌28日の朝、友人宅でぼんやりテレビを見ていたら、興味深い放送がありました。フジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に出演した小林 史明ワクチン担当大臣補佐官が、国民がどの種類のワクチンを接種するか自ら選択できるようにする、という考えを示したのです。小林氏は「接種会場ごとに打つワクチン(の種類)を決めていく。それは公表されるので、会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」と説明。接種に関し「自身の理解や判断、事情で打ちたくない、打たないという判断をされる方もいると思う。そういう判断ができるような情報をしっかり提供して、選べる環境を作っていきたい」と語っていました。この発言を聞いて、「おいおい、こいつ大丈夫かよ」と思わず声が出てしまいました。まだまだ不透明なワクチン確保新型コロナウイルスワクチンについて、いよいよ高齢者の接種が4月12日から始まりますが、一般向け接種のスケジュールはまだ示されていません。日本政府は、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したmRNAワクチンを年内に1億4,400万回分(7,720万人分)の供給を受ける契約を結んでいるほか、英アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン 1億2,000万回分(6,000万人分、今年初頭から)、米モデルナ社のmRNAワクチン5,000万回分(2,500万人分、今年上半期と第3四半期の二期に分けて)の供給契約を結んでいます。ただ、これらはあくまで契約上の数字であり、確実に確保できるかどうかはわかりません。たとえば、先行して承認されたファイザーのワクチンは、6月までに約5,000万人分(1億回分)を輸入することが決まっています。しかし、欧州連合(EU)の輸出管理強化が長引いており、必要量の確保には不確定要素が残っています。アストラゼネカのワクチンは2月5日に承認申請。モデルナのワクチンも、日本での供給を請け負う武田薬品工業が3月5日に申請しています。いずれも順調にいけば5月にも承認される見込みですが、これもあくまでも順調にいけば、の話です。河野 太郎ワクチン担当大臣、「完全に勇み足」と撤回そんな中の「ワクチンは選べるようにする」発言。政府は高齢者と先月17日に始まった医療従事者の接種まではファイザー製のみを使うとしているため、小林氏の言う「選べる」のが仮に実現するとしたら、一般接種での運用、ということになるでしょう。……とここまで書いたら、この発言を撤回する旨のニュースが飛び込んできました。小林氏のボスにあたる河野 太郎ワクチン担当大臣が3月30日午前の記者会見で、新型コロナウイルスワクチン接種をめぐり、希望するワクチンを選択できるとした小林氏の28日の発言について「完全に勇み足だ。撤回しておわびする」と述べたのです。産経新聞等の報道によれば、河野大臣は「ワクチンを接種するかどうかを選択できるが、現在ワクチンはファイザー1社しか承認されていない」と説明。今後、英アストラゼネカ社、米モデルナ社の承認が予定されているとしつつも、「それをどのような形で接種していくか戦略を検討しているところで、まだ何も決まっていない」と語ったとのことです。また、河野大臣は加藤 勝信官房長官が3月29日の記者会見で国民が希望するワクチンを選択できるかどうかについて慎重に検討する考えを示したことに対して、「まだ何も決めてない。複数が流通することも決まってない」と述べたとのことです。各市町村に3種類の接種場所は非現実政府は1会場で使用するワクチンは1種類とする方針なので、仮に小林氏の発言を実行するとすれば、各市町村にファイザー製、アストラゼネカ製、モデルナ製の3種類のワクチンを配り、3種類の接種場所を用意させるということになりますが、どう考えてもそんな煩雑なオペレーションが可能とは思えず、小林氏は何を根拠に「選べるようにする」と語ったかは不明です。ちなみに、厚生労働省サイトの「新型コロナワクチンについてのQ&A」1)には「接種するワクチンは選べますか」という「Q」がありますが、その「A」は曖昧で、「接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種することになります。また、複数のワクチンが供給されている場合も、2回目の接種では、1回目に接種したワクチンを同じ種類のワクチンを接種する必要があります」と書かれているのみです。「ワクチンを選びたい人」は7割超ただ、「ワクチンを選びたい」というニーズは高いようです。フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」でも視聴者投票約2万7,000人の調査結果で74%が「ワクチンの種類を選べるなら選択したい」と回答した、と伝えていました。「日経メディカル」が昨年12月に医師6,830人に調査した結果でも、医師の55%が「選べた方がよい」と回答。この調査では製薬・バイオ業界の関係者50人にも聞いていますが、業界関係者の78%が「選べた方がよい」と回答していました。とは言え、一般の人がさまざまな報道や情報を基に、有効性や副反応のデータを勘案し、自らワクチンを選ぶことができるのでしょうか。また、選択(人気)に大きな偏りが出て、使われないワクチンが大量に出てしまったらどうするのでしょう。国際社会の中で、先進国と途上国との間のワクチン格差が問題になっている現状では、未使用廃棄は許されるものではありません。接種を行う人材さえ確保できていない市町村も仮に選べるようにする場合、最大の懸念は、市町村側の負担です。複数のワクチンが国内で使用できるようになれば、それぞれのワクチンの特性に応じた管理や接種体制が必要になります。そこまでの対応ができる市町村はごく少数に留まるでしょう。厚生労働省が3月19日に公表した調査結果によれば、65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスワクチン接種について、約2割の市区町村で「接種を担う医師を全く確保できていない」ことがわかっています。接種を行う人材さえ確保できていないのに、その接種をワクチンの種類に合わせ3パターンで運用するというのは、どう考えても現実的ではなかったのです。この「ワクチンを選べるようにする」発言。河野大臣の右腕として抜擢された小林氏(まだ37歳、NTTドコモ出身)の単なるテレビ用リップサービスであった可能性が高そうです。河野大臣からも相当お灸をすえられたことでしょう。それにしても、そんな軽はずみな発言をする人物を大臣補佐官に任命せざるを得ない自民党の人材不足に、「おいおい、この国大丈夫かよ…」と改めてつぶやいた、花見日和の日の午後でした。参考1)新型コロナワクチンについてのQ&A/厚生労働省

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新型コロナ、高齢者は再感染しやすい可能性/Lancet

 デンマークでは2020年2月~12月の期間に、毎週平均で国民の約10%がPCR検査を受けており、全体の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の再感染防御率は80%を超えたものの、65歳以上では50%未満と低く、これら高齢の既感染者へのワクチン接種が重要であることが、同国Statens Serum InstitutのChristian Holm Hansen氏らの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年3月17日号に掲載された。SARS-CoV-2への感染が、その後の再感染をどの程度まで防御するかはよくわかっていない。2020年、デンマークでは、大規模な無料PCR検査戦略の一環として、約400万人(人口の69%)が1,060万件の検査を受けたという。再感染防御効果を評価する観察研究 研究グループは2020年の全国的なPCR検査データを用いて、SARS-CoV-2への再感染に対する防御効果を評価する目的で、観察研究を実施した(特定の研究助成は受けていない)。 デンマーク微生物学データベース(Danish Microbiology Database)から2020年の個人レベルのデータを収集し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の第2波期間中(2020年9月1日~12月31日)の感染率を、第1波期間中(同年3月~5月)のPCR検査の陽性率および陰性率と比較した。主解析では、第1波と第2波の間に初めて検査で陽性となった集団や、第2波の前に死亡した集団は除外された。 また、代替的解析の手法を用いて、第2波だけでなく流行期全体を通じた再感染率の検討を実施。日付に関係なく、3ヵ月以上前に感染が確定された集団と確定されていない集団で、年間を通じた感染率を比較した。また、この代替コホート解析では、年齢層別、性別、感染後の経過期間別の違いを評価した。 潜在的な交絡因子を補正した率比(RR)を算出し、再感染防御率を1-補正後RRの式で推定した。性別、感染後の経過期間別の再感染防御率に差はない デンマークにおけるSARS-CoV-2のPCR検査の施行能力は、2月の最初の検査から年末にかけて、2020年を通じて急速に向上し、毎週平均、人口の約10%が検査を受けた。感染流行が急増した第1波期間中(6月以前)に、53万3,381人がPCR検査を受け、そのうち1万1,727人(2.20%)が陽性で、第2波の時期まで追跡された52万5,339人のうち、第1波期間中に陽性だったのは1万1,068人(2.11%)であった。 第1波期間中のPCR検査陽性者のうち、72人(0.65%、95%信頼区間[CI]:0.51~0.82)が第2波期間中に再び陽性であったのに対し、第1波で陰性の51万4,271人のうち、第2波で陽性となったのは1万6,819人(3.27%、3.22~3.32)で、補正後RRは0.195(95%CI:0.155~0.246)であり、感染後の推定再感染防御率は80.5%(95%CI:75.4~84.5)であった。代替コホート解析では、初回感染から90日以降の再感染防御率は、ほぼ同様の結果であった(補正後RR:0.212[95%CI:0.179~0.251]、再感染防御率:78.8%[95%CI:74.9~82.1])。 また、代替コホート解析では、年齢65歳以上の再感染防御率は47.1%(95%CI:24.7~62.8)と、他の年齢層(0~34歳82.7%、35~49歳80.1%、50~64歳81.3%)に比べて低かった(p<0.0001)。一方、性別(男性78.4%[95%CI:72.1~83.2]vs.女性79.1%[73.9~83.3])および感染後の経過期間別(3~6ヵ月79.3% vs.≧7ヵ月77.7%)の再感染防御率には有意な差はなかった。 著者は、「これらの知見は、人口のどの層にワクチンを接種すべきかの判断に有益な可能性があり、とくに自然の防御能が低下している高齢の人々においては、既感染者への接種を提唱するものである」としている。

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第53回 Pfizerワクチン接種者に待望の胚中心が認められた

Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2が引き出す新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体免疫はどうやら長続きすることを示す確かで息長い胚中心(germinal center)反応がマウスに続いて待望のヒト試験でも認められました1,2)。リンパ節に形成される胚中心は長く備わる抗体生成B細胞を生み出します。胚中心の暗領域(dark zone)ではそれぞれ独自の抗体を備えたB細胞が数多く作られ、明領域(light zone)で教官役のT細胞と手合わせして目当てのタンパク質の認識性能が検査されます。不合格のB細胞は暗領域に戻されて洗練されるか消され、合格したB細胞は不死化してメモリーB細胞かプラズマ細胞になって抗体が担う防御効果を数年あるいは長ければ何十年も発揮し続けます。胚中心反応はPfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種2回を済ませた12人のリンパ節検体の観察で明らかになりました。細針吸引で採取したリンパ節検体にはSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する胚中心B細胞が1回目接種の後に12人全員に認められました2)。2回目の接種後に胚中心B細胞の割合は上昇し、ほとんどの人で少なくとも7週間後まで高い水準を保ち、メモリーB細胞やプラズマ細胞の順調な生成が伺われました。胚中心反応が長いほど抗体生成B細胞はより徹底的な訓練を受けることができ、メモリーB細胞やプラズマ細胞へとより分化することができます。去年12月にImmunity誌に発表された報告3)によるとマウスへのSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の胚中心反応はタンパク質ワクチンを上回ります。非mRNAワクチンのヒトでの胚中心反応はまだ不明ですが、現状ではmRNAワクチンにどうやら分があるようです。mRNAワクチンに分がありそうなことは他にもあります。たとえば、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種者のリンパ節のスパイクタンパク質標的形質芽細胞の多くは血中を巡るIgG抗体を作るものでしたが、意外にも、大抵は感染した鼻や腸などの粘膜組織で作られるIgA抗体を作る形質芽細胞もかなり存在しました2)。それらIgA生成細胞は先立つ季節性コロナウイルスの上気道感染で備わったIgA生成メモリーB細胞を起源とするのかもしれません。mRNAワクチンが引き出すIgA生成細胞の効果がどれほどのものかはこれから調べる必要がありますが、おそらくはIgG抗体を上回る働きを担う粘膜組織に出向いて感染防御機能を担うのでしょう1)。また、興味深いことにスパイクタンパク質を標的とする胚中心B細胞のいくつかはSARS-CoV-2以外の風邪原因コロナウイルス(季節性ベータコロナウイルスOC43やHKU1)のスパイクタンパク質に反応しました2)。mRNAワクチンは新顔を生み出すだけでなく先立つ感染で備わった古参のメモリーB細胞を胚中心で再び訓練するように仕向ける働きもあるようです。mRNAワクチンがまさに期待通りの効果を担うことを示した今回の結果はどのコロナウイルスも抑制する抗体や防御するワクチンを見つける取り組みを助けるだろうとワシントン大学の免疫学者Ali Ellebedy氏は言っています1)。今回の研究を率いた同氏等はインフルエンザワクチン接種後の胚中心反応を数年前から調べ始めてその成果、血球凝集素に結合する胚中心B細胞の発見を天下の科学誌Natureに昨夏に報告4)しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種が始まる頃にはそれらではどうかを調べる準備ができていました1)。参考1)Pfizer Vaccine Induces Immune Structures Key to Lasting Immunity / TheScientist2)SARS-CoV-2 mRNA vaccines induce a robust germinal centre reaction in humans. Research Square. 09 Mar, 20213)Lederer K,et al, Immunity.2020 Dec 15;53:1281-1295.e5.4)Turner JS, Nature. 2020 Oct;586:127-132.

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ワクチン接種完了率の高い高齢者、重症者が大幅減/CDC

 新型コロナワクチン接種を世界でいち早く進めたイスラエルにおいて、ワクチン2回接種の完了者が多い70歳以上で、人工呼吸器を必要とする重症者数がワクチン接種開始前と比べて大幅に減ったことがわかった。米国疾病対策センター(CDC)が発行するMorbidity and Mortality Weekly Report3月5日号掲載の報告。 イスラエルではファイザー社製ワクチンを使用し、60歳以上、医療従事者、基礎疾患を持つ人を優先して接種するキャンペーンを展開。2021年2月9日までに計360万6,858人が初回接種を受け、そのうち222万3,176人(62%)が2回目の接種を完了した。年代別に見た2回目接種完了率は70歳以上、60〜69歳、50〜59歳、50歳未満で、それぞれ84.3%、69.0%、50.2%、9.9%だった。 COVID-19の重症判定を人工呼吸器の使用とし、2回接種の完了率が最も高い70歳以上(84.3%)と最も低い50歳未満(9.9%)との間で、人工呼吸器を必要とした患者数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2020年10月2日~2021年2月9日に、人工呼吸器を必要とした1日当たり患者数の中央値は、50歳未満で15(範囲:6~63)、70歳以上で84(範囲:45~127)だった。 ・2020年10月8日~12月30日において、70歳以上と50歳未満の人工呼吸器装着患者の比率の平均は5.8:1だった(99%信頼区間[CI]:5.5~6.1、範囲:4.2~8.5)。・2021年1月の最終週に、70歳以上の1日当たり人工呼吸器装着患者数が減少しはじめたが、50歳未満は依然として増加していた。・2021年2月9日時点での人工呼吸器装着患者の7日間移動平均数において、70代以上は109例、50歳未満は57.7例、両者の比率は1.9:1となり、70歳以上の比率は10月~12月時点から67%減となった。 レポートは、この結果は新型コロナワクチンには、COVID-19重症化予防効果もあることを示すものだとしている。

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第48回 GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省

<先週の動き>1.GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省2.オンライン資格確認システム、全額補助申請は今月まで3.DPC病院、稼働率80%以上を維持も予定外の再入院率は変化なし4.12日から始まる高齢者ワクチン、一部自治体では同時に一般人への接種も5.看護師の離職率、職員11.5%新卒8.6%と昨年比0.8%上昇6.死因究明等推進のために「死因究明等推進計画」の策定へ1.GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省田村厚生労働大臣は、23日の記者会見で、緊急事態宣言の解除後も新型コロナウイルス感染の再拡大が危惧されており、病床確保など一般医療と両立しつつ、「緊急対応策」を講じる準備が必要との考えを示した。厚労省は、都道府県に対して、5月までに最大患者数が今冬の2倍程度になる事態も想定した新たな感染者受け入れ計画を策定するよう通知を発する予定。全国自治体病院協議会の小熊会長は、「都道府県などと連携して病床の確保に努めるが、一般医療機能の逼迫にもつながりかねない」と懸念を25日の定例記者会見で明らかにしている。(参考)コロナ病床の確保計画、都道府県に見直し求める 厚労省(朝日新聞)さらなるコロナ病床確保に努めるが「一般医療機能の逼迫」懸念、重点医療機関等は2020年度黒字の可能性も―全自病・小熊会長(Gem Med)田村大臣会見概要 2021年3月23日(厚労省)資料 緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルス感染症への対応(新型コロナウイルス感染症対策本部)2.オンライン資格確認システム、全額補助申請は今月まで厚生労働省は、26日に開催された社会保障審議会・医療保険部会において、健康保険証の代わりにマイナンバーカードを用いたオンライン資格確認システムの運用開始を、半年間先送りにすることを決定した。これまでの試験運用において、健康保険組合が管理する情報が一部で不正確だったため、3月末の予定を延期し、当面は試行運用を続け、今年10月の本格運用を目指す。なお、医療機関などが今月末までに申し込めば、カードリーダーなどのシステム改修費について国費で全額補助されるが、4月以降の補助は減額される。21日時点での申し込み数は、病院で約5,000(60.4%)、薬局で約4万(66.5%)と報告されている。(参考)保険証利用の本格運用先送り マイナカード、トラブルで―厚労省(時事ドットコム)厚労省 オンライン資格確認の本格導入を「遅くとも10月まで」に延期 プレ運用は継続(ミクスOnline)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)3.DPC病院、稼働率80%以上を維持も予定外の再入院率は変化なし中央社会保険医療協議会・総会が24日に開催され、2019年度DPC導入の影響評価に係る「退院患者調査」の結果が報告された。平均在院日数は、大学病院本院で12.21日、DPC特定病院群、DPC標準病院群ではそれぞれ34日、11.76日といずれも過去5年で最短となっている。一方、病床利用率は、大学病院本院群82.3%、DPC特定病院群85.9%、DPC標準病院群81.0%といずれも80%以上を維持したが、DPC準備病院や出来高病院ではそれぞれ78.7%、75.5%と低迷している状況がうかがえる。また、計画外の再入院率ではいずれの病院群でも、3~4%と過去5年間で大きな変動はなく、在院日数短縮による影響は認められていない。(参考)資料 2019年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告(厚労省)病床利用率80%超の高水準を継続、DPC病院 中医協、平均在院日数の短縮続き(CBnewsマネジメント)4.来月開始の高齢者ワクチン、一部自治体では同時に一般人への接種も河野 太郎ワクチン担当相は、26日の記者会見において、4月12日に始まる高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種について、欧州の承認が前提となるが、GW明けの5月中旬に約490万人分を配送することを明らかにし、5月9日までに配送する330万人分と合わせ、計820万人分が各自治体に届くため、高齢者向けの接種が大型連休後に拡大することを発表した。また、1バイアルで6回分が接種できる特殊な注射器が使用可能となるのは5月中と明らかにした。なお、人口1,000人以下の一部の自治体や離島では、高齢者と同時に一般の人にも接種が行われる見通しを示した。(参考)注射器を“切り替え” 高齢者もワクチン1瓶で6回接種へ(TBS NEWS)ワクチン接種 人口少ない自治体など 高齢者に合わせ一般の人も(NHK)資料 高齢者向け接種を実施するための新型コロナワクチン等の配分について(厚労省 事務連絡令和3年3月26日)5.看護師の離職率、職員11.5%新卒8.6%と昨年比0.8%上昇日本看護協会が行った「2020年病院看護実態調査」の結果、昨年度、全国の医療機関に勤める看護職員の離職率は11.5%、新卒採用された看護師の離職率は8.6%と、それぞれ前年度より0.8%上昇したことをプレスリリースで明らかにした。また、今回初めて採用の困難さが報告されている看護補助者の採用・離職の状況などについて調査したところ、「研修の充実」「意見を吸い上げ」など採用・定着のための取り組みを行っているにもかかわらず、離職率は29.9%と著しく高いことが明らかとなった。今年春以降のワクチン接種に向けて、自治体では医師のほか看護人材の採用難に直面していることが報道でも明らかとなっており、医療現場のみならず介護サービスでも看護スタッフの採用などに影響が出そうだ。(参考)ニュースリリース「2020年 病院看護実態調査」結果(日本看護協会)看護職員の離職率増加 新型コロナ感染拡大が影響か(NHK)ワクチン集団接種、7割の自治体はぶっつけ本番? 2割は看護師確保見通せず 厚労省全市区町村調査(東京新聞)6.人材育成・設備強化など「死因究明等推進計画」の策定へ厚労省の死因究明等推進本部は、24日に「死因究明等推進計画検討会報告書」を発表した。わが国の制度は諸外国に比較すると十分ではないことや、犯罪行為により死亡したものを病死と判断する事例から死因究明体制の強化が求められてきたことを踏まえ、2020年7月から議論を重ねてきた内容を取りまとめたもの。施策として、死因究明等に係る人材の育成、教育および研究拠点、専門的な機関の全国的な整備などを求めている。この報告書をもとに、死因究明等推進本部では「死因究明等推進計画案」を決定し、政府に「死因究明等推進計画」の策定を働きかけることとなった。なお、都道府県ごとの大学の法医学教室における人員数を見ると、常勤医師数は全国で152人だが、中には常勤医師数1人のみで大学院生もいない大学もあるなど、法医学等死因究明に係る教育や研究拠点の整備に今後も国による支援が必要と考えられる。(参考)死因究明等推進計画検討会報告書の公表について(厚労省)資料 「死因究明等推進計画検討会報告書」(同)資料 「死因究明等の推進に関する参考資料」(同)

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AZ製コロナワクチン、米国第III相試験の主要解析で安全性・有効性を確認

 アストラゼネカ英国本社は3月25日発信のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンAZD1222の米国における第III相試験の主要解析において、安全性と有効性が確認されたと発表した。事前に規定された統計解析計画では、中間解析で少なくとも75例、主要解析で少なくとも150例の判定症例が必要であったが、両解析におけるワクチンの有効性は一致しており、結果に齟齬はなかった。 AZD1222を巡っては、日本を含む各国で臨床試験が進行中。このうち米国第III相試験(D8110C00001)は、健康な、もしくは医学的に安定した慢性疾患を有し、SARS-CoV-2やCOVID-19曝露のリスクが高い18歳以上の成人3万2,449 例の被験者を対象に、米国、ペルー、チリの88の治験施設で実施。本主要解析には、全被験者のうち190例の症候性COVID-19症例が含まれており、中間解析から49例増加していた。被験者はワクチン群とプラセボ群に2:1で無作為に割り付けられた。本試験の主要評価項目である症候性COVID-19 発症予防に対するワクチンの有効性は、4週間隔で2回接種後、15日以降において76%(信頼区間[CI]:68%~82%)だった。 また、すべての年齢集団における結果も同程度で、65歳以上におけるワクチンの有効性は85%(CI:8%~95%)だった。副次評価項目である重症・致死性な疾患、および入院予防に対する有効性は100%であった。本主要解析において、8例のCOVID-19重症化が見られたが、いずれもプラセボ群だった。ワクチンの忍容性は良好で、安全性上の懸念は特定されなかった。 アストラゼネカは、本主要解析を基に、今後数週間のうちに米国食品医薬品局(FDA)に対し、COVID-19 ワクチンとしての緊急使用許可申請を行う。

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BNT162b2(コミナティ筋注)のReal-World Settingにおける有効性と免疫回避変異ウイルスの発生など今後の課題(解説:山口佳寿博氏)-1367

 2021年3月20日現在、Pfizer社のBNT162b2ワクチンは米国FDA、欧州連合(EU)医薬品庁(EU-EMA)の製造承認に加えWHOによる使用正当性の承認(validation)を得ており、スイス、ニュージーランド、バーレーン、サウジアラビア、ブラジルの5ヵ国で完全使用が、英国、米国など37ヵ国(EUを含む)で緊急使用が承認されている(The New York Times 3/20, 2021)。本邦においても、2021年2月14日、厚生労働省は本ワクチンを特例承認し、2月中旬より医療従事者に対する接種が開始されている。BNT162b2の接種は人口923万人の小国イスラエルにおいて最も速く積極的に推し進められ、2020年12月20日から2021年2月6日までの間に60歳以上の高齢者の90%が1回目のワクチン接種を、80%が2回目のワクチン接種を終了した(Rossman H, et al. medRxiv. 2021;2021.02.08.21251325.)。本論評で取り上げた論文は、2020年12月20日から2021年2月1日までの間にワクチンを接種したイスラエルの成人596,681人と同数の非接種成人(対照)を対象としてワクチンの効果を検証したもので(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 24. [Epub ahead of print])、対象者数はイスラエル総人口の13%に相当する大規模解析である。この場合、知っておかなければならない事実として、当時のイスラエルに蔓延していたウイルスはD614G株から英国株に移行しつつあった時期であり、データ集積の最終時点では英国株が80%を占めるようになっていたことである。南アフリカ株、ブラジル株は検出されていなかった。すなわち、本研究はD614G株と英国株が混在する状況下でのBNT162b2の効果を検証したものと考えなければならない。 この1年間における新型コロナウイルスの変遷に関する詳細は他紙に譲るが(山口. 日本医事新報 5053:32-38, 2021)、2020年9月ごろまでは武漢原株から変異したD614G株が世界を席巻していた。9月以降、D614G株にさらなる変異が加わったN501Y株(英国株:B.1.1.7、南アフリカ株:B.1.351、ブラジル株:P.1)が世界の各地で検出されるようになった。とくに、12月以降はN501Y株の占める割合が上昇している。これら新たな3種類の変異株の中で南アフリカ株、ブラジル株は免疫回避変異を有し、武漢原株のS蛋白に関する遺伝子情報から作成された現行ワクチンの中和反応を著明に抑制する。一方、英国株は免疫回避変異を有さず、現行ワクチンの効果を有意に抑制することはない。世界各国で承認されつつある現行ワクチンの第III相試験は、2020年の夏から秋にかけて施行されたものであり、その時点で流布していた主たるウイルスはD614G株であった。すなわち、現行ワクチンの第III相試験はD614G株に対する効果を検証したものであることを忘れてはならない。 本研究にあっては、BNT162b2の第III相試験(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)の場合と異なり、発症予防効果(有症状で鼻咽頭液のPCR陽性者に対する予防効果)だけではなく感染予防効果(症状の有無にかかわらずPCR陽性者に対する予防効果)、重症化予防効果、入院予防効果、死亡予防効果を解析している。2回目のワクチンは95%の対象において1回目のワクチンより24日以内に接種された。ワクチン2回接種の効果は、第III相試験の場合と同様に2回目のワクチン接種後7日以上経過した時点で判定され、発症予防効率:94%、症状の有無にかかわらない全体的感染予防効率:92%、重症化予防効率:92%、入院予防効率:87%であった。発症予防効率を見る限り、第III相試験において得られた値(95%)と確実に一致、他の指標においても90%内外の予防効果を示しておりBNT162b2の高い臨床的有用性を示している。さらに、本研究の結果は、BNT162b2がD614G株だけではなく英国株に対しても有効な抑制作用を発揮することを示唆している。同様の結果は、アデノウイルス(Ad)をベクターするPfizer社のChAdOx1、Johnson & Johnson社のAd26.COV2.Sにおいても確認されている(Fontanet A, et al. Lancet. 2021; 397:952-954.)。これら2種類のAdワクチンは、D614G株、英国株に対しては有効な発症予防効果を示したが南アフリカ株に対する発症予防効果は明確に抑制されていた。 本研究にあって特記すべき事項は、BNT162b2の1回接種による効果が検証されていることである。1回接種の効果を1回目のワクチン接種後21~27日の期間で判定すると、発症予防効率:66%、症状の有無にかかわらない全体的感染予防効率:60%、重症化予防効率:80%、入院予防効率:78%、死亡予防効率:84%であった。発症予防効率を見る限り、単回接種のAdワクチンとして米国FDA、EU-EMA、WHOの承認を受けているJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果(66%)と同等である。すなわち、RNAワクチンであるBNT162b2も2回接種ではなく単回接種でも十分なる臨床的有効性を発揮するものと思慮され、パンデミックのワクチン不足が深刻なときにはワクチン接種計画を練り直し単回のBNT162b2接種を推し進めることも間違いではないはずである。 BNT162b2を中心としたワクチン接種が世界レベルで推し進められた場合、D614G株に対するワクチン疑似感染による集団免疫を獲得する地域/国が増加する(おそらく英国株に対しても集団免疫が確立されるものと予測される)。あるウイルスに対する集団免疫はその集団に属する人の40%以上が自然あるいは疑似感染した場合に確立される(山口. 日本医事新報 5026:26-31, 2020)。D614G株、英国株に対する集団免疫が確立されると、南アフリカ株、ブラジル株と同等、あるいは、それ以上の集団免疫を無効にする強力な免疫回避変異が形成される可能性がある。これは、ウイルスの環境適応であり、強固な集団免疫形成下でも自らの生存を維持するためのウイルスの自然発生的進化である。以上の内容を、ブラジル株、南アフリカ株の発生をもとに考えてみよう。ブラジルの大都市マナウスでは昨年の5月に感染ピークを有するD614G株に起因する重篤な1次波を経験した。その結果、住民の70%以上がD614G株に感染し、この地域においてD614G株に対して完全な集団免疫が確立された。マナウスでは、夏から秋にかけて感染増大もなく新型コロナはD614G株に対する集団免疫の結果として終息したと考えられた。しかしながら、2020年12月より再発を含むコロナ感染/入院患者数が急増しD614G株ではない新たな株による感染が強く疑われた。遺伝子検査の結果、新規変異株であるブラジル株が蔓延していることが判明した。ブラジル株は外来のウイルスではなくブラジル国内で自然発生した変異株である。ブラジル株には、免疫回避変異を認め、D614G株の自然/疑似感染に対して強い抵抗性を示す複数の変異が同定された。南アフリカにおいてもD614G株による重篤な1次波を経験した地域(東ケープタウン州)で免疫回避変異を有する新規の南アフリカ株(外来ではなく南アフリカ国内で発生)が検出され、12月初旬には南アフリカ全土において南アフリカ株がウイルスのほぼ100%を占めるようになった。以上のブラジル、南アフリカでの免疫回避変異を有するウイルスと同等の新規変異株がワクチン疑似感染によるD614G株に対する集団免疫が確立されてから数ヵ月前後で本邦でも発生する可能性がある。それ故、現行のワクチン接種をコロナ感染症制御の最終段階と考えるのではなく、それ以降の免疫回避変異を有する変異ウイルスの推移を十分なる警戒心を持って見守る必要があることを強調したい。

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J&Jの新型コロナワクチン、単回接種で速やかな免疫応答を誘導/JAMA

 Janssen Pharmaceuticalsが開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規ワクチン候補「Ad26.COV2.S」について、第I相試験の一部として米国マサチューセッツ州ボストンの単施設で実施された無作為化二重盲検比較試験において、Ad26.COV2.Sの単回接種により速やかに結合抗体および中和抗体が産生されるとともに、細胞性免疫応答が誘導されることが示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのKathryn E. Stephenson氏らが報告した。COVID-19パンデミックのコントロールには、安全で有効なワクチンの開発と導入が必要とされている。JAMA誌オンライン版2021年3月11日号掲載の報告。25例で、ワクチン2用量の免疫原性をプラセボと比較 研究グループは、Ad26.COV2.Sワクチンのヒトにおける免疫原性(SARS-CoV-2スパイク特異的液性および細胞性免疫応答の動態、強さ、表現型など)を評価する目的で、2020年7月29日~8月7日の期間に25例を登録し、Ad26.COV2.Sをウイルス粒子量5×1010/mL(低用量)、同1×1011/mL(高用量)、またはプラセボを、1回または2回(56日間隔)筋肉内投与する群に無作為に割り付けた。 液性免疫応答として接種後複数時点でのスパイク結合抗体および中和抗体、細胞性免疫応答としてT細胞反応(ELISPOTおよび細胞内サイトカイン染色法)を評価した。 本論では、中間解析として71日目までの追跡調査(2020年10月3日時点)に関する結果が報告されている。持続性に関する追跡調査は2年間継続される。単回接種後、結合抗体および中和抗体の速やかな産生と細胞性免疫応答が誘導 全25例(年齢中央値42歳[範囲:22~52]、女性52%、男性44%、区別なし4%)が71日時点の中間解析評価を受けた。 初回接種後8日までに、結合抗体はワクチン接種者の90%に、中和抗体は25%で検出された。57日目までに、両抗体は単回接種者の100%で検出された。 ワクチン接種者において、71日時点のスパイク特異的結合抗体の幾何平均抗体価は2,432~5,729、中和抗体の幾何平均抗体価は242~449であった。また、さまざまな抗体のサブクラス、Fc受容体結合能、抗ウイルス機能が誘発されたこと、CD4+およびCD8+ T細胞応答が誘導されたことも確認された。 現在、Ad26.COV2.Sの有効性を評価するため、2件の第III相試験が進行中である。

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異種アデノウイルス混在ワクチン(Gam-COVID-Vac, Sputnik V)の特性を読み解く (解説:山口佳寿博氏)-1366

 ロシアGamaleya研究所によって開発された遺伝子ワクチンはアデノウイルス(Ad)をベクター(輸送媒体)とし、そのDNAに新型コロナウイルスのS蛋白全長をコードする遺伝子情報を組み込んだ非自己増殖性ワクチン(Ad-vectored vaccine)の一種である。本ワクチンは“Gam-COVID-Vac”と命名されたが別名“Sputnik V”とも呼称される。“Sputnik”は1957年に旧ソ連が世界に先駆け打ち上げに成功した人工衛星の名前であり、ロシアのプーチン大統領は“Sputnik”という名称を用いることによって本ワクチンが新型コロナに対する世界初のワクチンであることを強調した。本ワクチンは2020年8月11日にロシアで承認、2021年3月18日現在、ロシアを含め世界53ヵ国で早期/緊急使用が承認されており、第III相試験を終了したワクチンの中で最も多くの国に導入されている(The New York Times 3/18, 2021)。しかしながら、現時点においてWHOはSputnik V使用に関する正当性(validation)を保証していない。さらに、欧州連合(EU)も製造を承認していない(現在、欧州医薬品庁(EMA)に製造認可を申請中とのこと)。ロシアはSputnik Vの医学的正当性(副反応を含む)の詳細を正式論文として発表する前からワクチン不足が深刻な貧困国、低開発国に対してワクチン外交を積極的に推進してきた。ワクチンの正当性が医学的に担保されていない段階でワクチン配布を政治的な具として利用するロシアの姿勢は医学的側面からは許容できるものではない。ロシアと同様の政治姿勢は中国においても認められるが、少なくとも中国の場合、中国製ワクチンに関する学問的内容を早期に正式論文として発表するという良識を有していた。 現在のところ、本ワクチンの本邦への導入は計画されていない。本ワクチンは臨床治験(第I~III相)の結果が正式論文として発表される前にロシア政府が承認したためワクチンの基礎的事項、臨床効果(副反応を含む)が不明確で世界の批判を浴びたことは記憶に新しい。しかしながら、2020年9月4日に第I/II相試験の結果(Logunov DY, et al. Lancet. 2020;396:887-897.)、次いで2021年2月2日に第III相試験の結果(Logunov DY, et al. Lancet. 2021;397:671-681.)が正式論文として発表され、ようやく本ワクチンの基礎的、臨床的意義が他の遺伝子ワクチンと同じレベルで議論できるようになった。 Sputnik VはAstraZeneca社のChAdOx1(ベクター:チンパンジーAd)、Johnson & Johnson社のAd26.COV2.S(ベクター:ヒトAd26型)など他のAd-vectored vaccineとは異なりpriming効果を得るための1回目ワクチン接種時にはヒトAd5型を、booster効果を得るための2回目ワクチン接種時にはヒトAd26型をベクターとして用いており、“異種Ad混在ワクチン(heterologous prime-boost COVID-19 vaccine)”と定義すべき特殊なワクチンである。ChAdOx1ならびにAd26.COV2.Sの基礎的研究で明らかにされたように、同種のAdを用いたワクチンでは1回目接種後にベクターであるAdに対して中和抗体が生体内で形成され、2回目ワクチン接種後には使用Adに対する中和抗体価がさらに上昇することが確認された(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.、Stephenson KE, et al. JAMA. 2021 Mar 11. [Epub ahead of print])。すなわち、同種AdワクチンではAdに対する中和抗体によって一部のAdウイルスが破壊され、とくに、2回目のワクチン接種時にS蛋白に対する遺伝子情報の生体導入効率が低下、液性/細胞性免疫に対するbooster効果の発現が抑制される(山口. 日本医事新報(J-CLEAR通信 124) 5053:32-38, 2021)。異種Ad混在ワクチンに用いられるAdに対する中和抗体の推移については報告されていないが、2回目接種時には1回目接種時とは異なるAdをベクターとして用いるので2回目のワクチン接種後のAdを介したS蛋白遺伝子情報の生体への導入効率は同種Adワクチンの場合ほど抑制されないものと推察される。すなわち、異種Ad混在ワクチンの新型コロナ感染症に対する予防効果は同種Adワクチンよりも高いことが期待される。 以上のような視点で異種Ad混在ワクチンであるSputnik Vの新型コロナ発症予防効果を見てみると、第III相試験(n=19,866)において2回目ワクチン接種(1回目ワクチン接種21日後)7日目以降の発症予防効果は91.1%、重症化予防効果は100%であった(Logunov DY, et al. Lancet. 2021;397:671-681.)。一方、チンパンジーAdをベクターとしたAstraZeneca社の同種AdワクチンChAdOx1の2回目ワクチン接種後14日以上経過した時点での新型コロナ発症予防効果は、第III相試験(n=23,848)に関する中間報告において標準量(SD量:5×1010 viral particles)をある一定期間(中央値で69日)空けて2回接種した場合に62.1%と報告された(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:99-111.)。しかしながら、その後の第III相試験に関する最終報告では、発症予防効果が1回目と2回目のワクチン接種間隔に依存して変化することが示され、ChAdOx1の発症予防効果は、6週間以内にワクチンを2回接種した場合に55.1%、12週間以上空けて2回接種した場合に81.3%と訂正された(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)。ChAdOx1に関して報告されたすべての発症予防効率値を考慮したとしても、新型コロナ発症予防効果は、同種AdワクチンChAdOx1に比べ異種Ad混在ワクチンSputnik Vのほうが高い。同種AdワクチンとしてJohnson & Johnson社のAd26.COV2.S(ベクター:ヒトAd26型)が存在するが、このワクチンは単回接種を目指したものであり2回接種を原則として開発が進められてきた異種Ad混在ワクチンSputnik Vとの比較は難しい。しかしながら、パンデミックという人類の緊急事態を鑑みたとき、Sputnik Vにおいても第III相試験の結果を再解析し、単回接種によってどの程度の新型コロナ発症予防効果を発揮するかを提示してもらいたい。 AstraZeneca社のChAdOx1 nCoV-19は本邦への導入が計画されている。しかしながら、前述した医学的解析結果を根拠として、2回接種のAdワクチンを本邦に導入するならばAstraZeneca社のChAdOx1ではなくロシア製の異種Ad混在ワクチンSputnik Vを導入すべきだと論評者は考えている。

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2回目のコロナワクチン、きつかった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(367)

三百六十七の段 2回目のコロナワクチン、きつかった!なんだかんだと言っているうちにもう春分。徐々に昼が長くなる季節、明るく前向きな日々を送りたいものです。さて、三百六十四の段にコロナワクチン接種の経験談を述べさせていただきました。その時は、金曜夕方の注射から24時間後くらいに急に寒気が発症。幸い土曜日だったので、布団に入っておとなしくしていました。日曜日の午後に寒気がなくなると共に復活。ちょうど注射から48時間後くらいのことです。今回は2回目のワクチン接種になるのですが、先に打った人からは色々な声が……俺は38度の熱が出た私は39度よ全身の関節痛と疲労感がありましたもう無理です。早退させてくださいなどなど。一方で、こういう話もありました。全然平気だったんだけど、ちゃんと薬が入ってたんかなひょっとして生食を打たれたのでは?結局、周囲の人たちの声を合わせると、何ともない人:2割発熱や倦怠感はあったけど休むほどではなかった人:6割仕事を休んだ人:2割まあ、N=10程度なので統計学的には意味がないのでしょうけど。で、いよいよ自分の2回目コロナワクチンの順番が回ってきました。前回と同じ要領で、だだっ広い講堂の中のブースで打ってもらいます。その後しばらくの観察時間。椅子に座って金曜日夕方の日差しを眺めます。普段は、病院で15分間も何もせずに座っているなどということはありません。忙中閑あり、とはこのことでしょうか。でも、2回目を打った、という意識が頭の中のどこかに残っていました。数時間後には発熱が来るかも、と思ったら気分が滅入ってきます。夜に予定していた若者の論文手直しは、週明けに変更しました。若者もワクチンを打った日だったせいか、先延ばしには大賛成。家で動けなくなったら大変だ、ということで帰宅途中のコンビニで買い物をしました。買ったのはアイスクリームとコカコーラ。夜中に急に「アイスクリームが食べた~い!」となった時に備えたわけです。で、「睡眠こそ正義」とばかりに家では早めに寝ました。翌朝4時頃、汗びっしょりで目が覚めました。ついに来た、ワクチンの副反応か!この時点では体温は36.6度。たいしたことはありません。「でも、俺の平熱は35度台だから心配だなあ」と、素人みたいなことを考えます。朝食までは普通に食べることができましたが、その後が大変。まずは頭痛。頭を動かすたびに響きます。続いて悪寒。あまりにも寒いので、朝風呂に入ってから寝ました。病院で仕事に追われている夢を見ながらふと目を覚ますと、昼過ぎです。体温を測ると38.1度!ついに来た、正真正銘の発熱。あらかじめ配付されていたカロナール(500mg)をのんで再び昼寝です。結局、寝たり起きたり、暑くなったり寒くなったりの繰り返し。その都度、掛布団をむしりとったり電気毛布の温度を上げたりしました。それやこれやで、土曜日は1日中寝ている羽目に。これが平日だったら、出勤しても書類1枚書けなかったことでしょう。ひたすら眠った翌朝、日曜日。スッと体が軽くなっており、こうして原稿を書くこともできております。結局、つらかったのは接種後12時間~36時間の間でした。日曜朝の体温は36度台、体重は2日前の1キロ減。体重減少は、主として脱水によるものですね、おそらく。ということで、これからワクチンを打つ人へのアドバイスです。ワクチン接種の翌日はできるだけ仕事を入れないようにしましょう調子の悪い間は体温調節が大切です、電気毛布などで凌ぎましょう経口摂取可能なものを手元に置いておきましょう、買い物には行けませんカロナールも持っておきましょう私のつらい経験が読者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。最後に1句彼岸来て ワクチン打って 引き籠る

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AZ製ワクチン、南アフリカ変異株への有効性みられず/NEJM

 2回投与の新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」(アストラゼネカ製ChAdOx1)は、南アフリカ共和国で最初に見つかったB.1.351変異型による、軽度~中等度の症候性COVID-19発症に対する有効性は認められないことが示された。同国・ウィットウォーターズランド大学のShabir A. Madhi氏らによる、約2,000例のHIV非感染者を対象に行った試験の結果で、NEJM誌オンライン版2021年3月16日号で発表された。HIV非感染の18~65歳を対象に試験 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンの安全性と有効性の評価は、さまざまな集団を対象に行うことが必要であり、南アフリカ共和国で最初に同定されたB.1.351変異型をはじめとする新たな変異型に対するワクチンの有効性についても、同様に調査が必要だとして本検討を行った。 同国在住でHIV非感染の18~65歳を対象に、多施設共同無作為化二重盲検試験を行い、「AZD1222」の安全性と有効性を検証。被験者を無作為に1対1の割合で2群に割り付け、一方にはワクチン(含有ウイルス粒子量5×1010)を、もう一方にはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム溶液)を、21~35日間隔でそれぞれ2回投与した。 被験者25例から2回投与後に血清サンプルを採取し、擬似ウイルスと生ウイルス中和試験を実施。変異前のD614G型ウイルスとB.1.351変異型に対する中和活性を測定した。 主要エンドポイントは、2回投与後14日超における、検査で確定した症候性COVID-19に対するワクチンの安全性と有効性とした。中和試験では変異株への抵抗性示す 2020年6月24日~11月9日に、HIV非感染成人2,026例(年齢中央値30歳)が登録され、1回以上のプラセボまたはワクチン投与を、それぞれ1,010例、1,011例が受けた。 血清サンプル評価では、擬似ウイルス、生ウイルス中和試験ともに、B.1.351変異型に対する抵抗性は、プラセボ群に比べワクチン群でより大きかった。 軽度~中等度の症候性COVID-19の発生例は、プラセボ群23/717例(3.2%)、ワクチン群19/750例(2.5%)で、有効性は21.9%(95%信頼区間[CI]:-49.9~59.8)だった。 症候性COVID-19を呈した42例のうち、B.1.351変異型は39例(92.9%)で、変異型に対するワクチンの有効性は10.4%(95%CI:-76.8~54.8)だった。 重篤な有害事象の発生は、両群間で均衡がとれていた。

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ChAdOx1 nCoV-19(AZ社)における1回接種の有効性と血栓形成を含む新たな展開 (解説:山口佳寿博氏)-1364

 AstraZeneca社のChAdOx1 nCoV-19(別名:AZD1222)は、チンパンジーアデノウイルス(Ad)をベクターとして用いた非自己増殖性の同種Adワクチンである(priming時とbooster時に同種のAdを使用)。ChAdOx1に関する第I~III相試験は、英国、ブラジル、南アフリカの3ヵ国で4つの試験が施行された(COV001:英国での第I/II相試験、COV002:英国での第II/III相試験、COV003:ブラジルでの第III相試験、COV005:南アフリカでの第I/II相試験)。それら4つの試験に関する総合的評価は中間解析(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:99-111.)と最終解析(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)の2つに分けて報告された。 ChAdOx1に関する治験には種々の問題点が存在し、中間報告時から多くの疑問が投げ掛けられていた。最大の問題点は、最も重要な英国でのCOV002試験において37%の対象者に対して、ワクチン初回接種時に正式プロトコールで定められたAdウイルスの標準量(SD:5×1010 viral particles)ではなく、その半量(LD:2.2×1010 viral particles)が接種されていたことである。これは、Adウイルス量の調整間違いの結果と報告されたが、治験の信頼性を著しく損なうものであった。2番目の問題点は、ワクチンの1回目接種と2回目接種の間隔が正式プロトコールでは28日と定められていたにもかかわらず、多くの症例で28日間隔が順守されていなかったことである。たとえば英国のCOV002試験において、SD/SD群(初回接種:SD量、2回目接種:SD量)では中央値69日間隔、LD/SD群(初回接種:LD量、2回目接種:SD量)では中央値84日間隔の接種であり、SD/SD群における53%の症例で12週以上の間隔を空けて2回目のワクチンが接種されていた。ワクチン接種の間隔が一定でなかったことから、発症予防効果がワクチン接種の間隔に依存するという興味深い副産物的知見が得られたが、臨床試験の面からは許容されるべき内容ではない。3番目の問題点は、LD/SD群の発症予防効果(90%)が正式プロトコールのSD/SD群の発症予防効果(62%)を明確に凌駕していたことである(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:99-111.)。この現象を科学的に説明することは困難である。ただ、ChAdOx1の治験にあっては、他のワクチンで採用された有症状感染を評価指標とした発症予防効果に加え、無症候性感染を含めた感染全体に対する予防効果も評価されたことは特記に値する。 ChAdOx1の正式プロトコールであるSD/SD群における最終解析から得られた重要な知見(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)は、(1)2回のワクチン接種間隔が12週以上の場合のS蛋白に対する中和抗体価(幾何学的平均)は、ワクチン接種間隔が6週以下の場合に比べ2倍以上高い。ただし、この現象は、55歳以下の若年/中年者において認められたもので56歳以上の高齢者では認められなかった。(2)その結果として、ワクチン接種間隔が12週以上の場合の発症予防効果(2回目ワクチン接種後14日以上経過した時点での判定)は、ワクチン接種間隔が6週以内の場合に比べ明らかに優っていた(12週以上で81.3% vs.6週以内で55.1%)。(3)無症候性感染に対する感染予防効果は、ワクチン接種間隔が6週以内の場合で-11.8%、12週以上の場合で22.8%であり共に有意な予防効果ではなかった。以上の結果より、ChAdOx1ワクチンの発症予防に関する最大の効果を得るためには、SD量のワクチンを12週間以上空けて接種すべきだと結論された。 ChAdOx1の治験では、LD/SD群、SD/SD群のすべてを対象として1回目のワクチン接種後22日目から90日目までの発症予防効果、無症候性感染予防効果が検討された(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)。1回目ワクチン接種の発症予防効果は76.0%(有効)、無症候性感染予防効果は-17.2%(非有効)であった。一方、LD/SD群、SD/SD群のすべてを対象とした2回接種の発症予防効果は66.7%(有効)、無症候性感染予防効果は22.2%(非有効)であった。すなわち、ChAdOx1の1回接種は2回接種の発症予防効果に比べ優勢であっても劣勢であることはなく、ChAdOx1の2回接種の必要性に対して本質的疑問を投げ掛けるものであった(山口. ジャ-ナル四天王-1352「遺伝子ワクチンの単回接種は新型コロナ・パンデミックの克服に有効か?」、山口. 日本医事新報(J-CLEAR通信124). 2021;5053:32-38.)。3月18日現在、ChAdOx1は2回接種の同種AdワクチンとしてEU医薬品庁(EMA)の製造承認、WHOの使用に関する正当性(Validation)承認を得ているが、米国FDAの製造承認は得られていない。米国FDA、EU-EMAならびにWHOの全機関の承認を得ている単回接種の同種AdワクチンとしてJohnson & Johnson社のAd26.COV2.S(ベクター:ヒトAd26型Ad)が存在するが、その発症予防効果は米国、中南米、南アフリカにおける治験の平均で66%と報告された(山口. 日本医事新報(J-CLEAR通信124).2021;5053:32-38.)。すなわち、ChAdOx1の1回接種の発症予防効果はAd26.COV2.Sよりも優れており、パンデミックという緊急事態を考慮した場合、ChAdOx1を2回接種ではなく単回接種ワクチンとして発展させることを考慮すべきではないだろうか? 2021年2月7日、南アフリカはChAdOx1の導入計画を中止した。これはChAdOx1の南アフリカ変異株に対する予防効果が低いためであった(Fontanet A, et al. Lancet. 2021;397:952-954.)。3月に入りChAdOx1の使用を一時中断する国が増加している。2021年3月11日以降、デンマーク、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダなど、欧州各国が相次いでChAdOx1の接種を一時中断すると発表した(The New York Times. March 18, 2021)。この原因は、ChAdOx1接種後に脳静脈血栓を含む全身の静脈血栓症が相次いで報告されたためである。2021年3月10日までにChAdOx1を接種した500万人にあって脳静脈血栓症による死亡者1人を含む30人に血栓症の発生が確認された。すなわち、ChAdOx1接種後の血栓症全体の発症頻度は6人/100万人、脳静脈血栓症の発症頻度は0.2人/100万人と推定された。重篤な脳静脈血栓症の一般人口における発症頻度は0.63人/100万人(ドイツ国立ワクチン研究機関ポール・エーリッヒ研究所)とされており、ChAdOx1接種後に観察された現時点での脳静脈血栓症の発症頻度は、一般人口における発症頻度を超過するものではなかった。このようなことから、2021年3月18日現在、EU-EMAはChAdOx1と血栓症との因果関係を否定し、欧州各国にChAdOx1の接種再開を呼びかけた。その提言を受け、ドイツ、フランス、イタリア、スペインはChAdOx1の接種を再開したが、ノルウェー、スウェーデンなど北欧諸国は一時中断を継続すると発表した。WHO、EU-EMAが示唆しているように、ChAdOx1接種後の静脈血栓の発症率は一般人口における血栓発症率を超過するものではない。しかしながら、米国CDCの副反応報告では、Pfizer社BNT162b2、Moderna社mRNA-1273の接種後(1,379万4,904回)に全身の静脈血栓発生を認めず(Gee J, et al. MMWR. 2021;70:283-288.)、ChAdOx1接種後のみに、頻度が低いものの血栓症が発生している事実は看過できない問題だと論評者は考えている。

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不確実さは不安を招き安心感は猫を招く、コロナワクチンからの考察【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第34回

第34回 不確実さは不安を招き安心感は猫を招く、コロナワクチンからの考察インドの昔話です。ある男が超能力を獲得しました。その能力とは、人を念じながら観察すると、その人が1年後に生きているか、死んでいるかがわかるのです。その男のもとには、病に悩む患者や、痩せ細った赤子を抱いた母親、年老いた母親を背負った息子などが、次々と訪れるようになりました。1年後に生きていると言われれば小躍りして帰っていきます。1年後に死んでいると言われれば納得して帰ります。その男は名医と呼ばれ、患者が絶えることがなかったと言います。かつての記憶を頼って紹介した昔話なので、インドではなくヒマラヤかもしれず、ストーリーも正確ではないかもしれません。小学生のころに学校図書館にあった本で読んだのでしょうか。妙に、心に残っている話です。皆さまは、この昔話をいかが思いますか。違和感を覚える人も、なるほど名医だと納得する人もいることでしょう。この男は本当に名医でしょうか。この男は、一切の医療行為をしていません。ただただ、1年後の生死を正確に伝えているだけです。しかし、予言をさずかった者は、その男を名医と崇めます。なぜでしょうか。不安がなくなるからではないでしょうか。不確実さは不安をまねきます。1年後の確実な情報が安堵を与えます。患者の立場からは、安心を与えてくれる人は名医なのです。医学が進歩した現在においても、人はやがて死ぬことが運命づけられています。哲学者ハイデッガーは彼の主著「存在と時間」の中で、人間は「死への存在」であるといっています。古来より、不老不死の秘薬を求めた権力者は多くいますが、現在まで生命を保っているものは、誰一人としていません。東京渋谷の横断歩道を渡る人々の100年、いや150年後を考えてみましょう。その時までには、全員が死んでいる可能性が高いです。これを自分が予言しても名医の称号は与えられません。なぜなら、それほど将来には皆が死んでいることへの不確実性は低いからです。不確実さが介入する余地のある、明日の命、1年後の命には不安が伴います。医学研究における統計学は不確実さを確率論で数値化しますが、不確実さを払拭するわけでありません。新型コロナウイルスは、その感染症としての怖さはもちろんですが、情報不足や経験のない状況への不安が問題を複雑にします。さらに、不安をあおることは人を惹きつけます。新型コロナ感染症にまつわる不安を掻き立てる報道は視聴率を稼ぎます。正しいコロナウイルスへの対応策や知識を伝えることは、危機感や恐怖を叫ぶマスコミに負けてしまいます。科学的な情報を理性的に解釈するには素養とエネルギーを必要とします。不安に身をゆだね、その矛先を他人への批判に転嫁することは容易です。この状況を打破するには安心を付与することが一番です。ワクチン接種により不安が少しでも解消することを期待します。ワクチンそのものが有効であるべきことは当然ですが、ワクチン接種が進むことで不安が払拭され社会が落ち着きを回復することを願うばかりです。安心感を与えることは人を惹きつけるのですから、猫も惹きつけることは間違いありません。猫に安心感を与えるコツがあります。猫は警戒心がとても強く、過度にかまわれるのがストレスとなります。適度な距離を保つことが懐かれる秘訣です。視線を外し、なるべく低い姿勢で静かに近づき、少し高めの声で話しかけると良いです。「お前なんかには興味はないのさ」という態度で接することが、猫を手なずけるポイントです。猫と遊んでいると幸せな安心感が湧いてきます。もしかすると日本中の人が猫を飼うと、コロナ騒動が収束に向かうかもしれません。猫バカも、ほどほどにして、これでおしまいにします。

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第50回 全国組織で動いたのは老健施設のみ。全老健、コロナ回復患者受け入れ表明の意味

緊急事態宣言解除、新味のない「5つの柱」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。首都圏1都3県の緊急事態宣言が3月21日をもって解除されました。飲食店については営業が21時まで伸びたことで、外食が多い私も少々ほっとしています。ただ、心配もあります。解除決定が正式報道される前日の17日夕刻、所用があって東京・上野に出かけたのですが、ガード下の飲み屋街は17時でほぼ満席でした。東京の飲み屋街の中でも、上野は昭和の雰囲気を残した居酒屋が特に集中するエリアです。店先にテーブルを置いた、いわゆるオープンカフェ的な居酒屋も多く、それはそれで安全そうですが、「平日17時でこの混みようか!」と正直驚きました。ちなみに、20時でほとんどのお店は閉店していましたが、「20時以降営業中」の一画もあって、入店を待つ長い行列(ほとんど若者)ができていました。これからお花見も始まります。「外で飲みたい!」という人々のパワーを鎮めるのは、実際問題として難しそうです。さて、緊急事態宣言解除に当たって、3月18日に菅 義偉総理大臣が記者会見を行いました。今後の対策として、安全で迅速なワクチン接種などの「5つの柱」が示されたのですが、残念ながらどれも新味がないものでした。本連載でも度々書いてきた「医療提供体制」については、「今回は、急速な感染拡大に十分に対応できず、各地でコロナ病床や医療スタッフが不足する事態となった。各都道府県において、今回のような感染の急拡大に対応できるように準備を進めている。コロナ病床、回復者を受け入れる病床、軽症用のホテル、自宅療養が役割を分担して、感染者を効果的に療養できる体制をつくる」と述べ、 5月中までに病床・宿泊療養施設確保計画を見直す方針を示したのみでした。同じ日、田村 憲久厚生労働大臣も「4月中にも再び感染拡大の可能性があるので都道府県と調整してほしいと指示している」と述べたに留まりました。1、2月にバタバタして、もう4月です。それなのにまだ、「進めている」「体制をつくる」「指示している」「5月中まで」とはいったいどういうことでしょう。第4波に対応できる医療提供体制になっているか?もっとも、厚生労働省は医療提供体制確保のための下準備は着々と進めてきてはいます。今年1月には、重症患者向けの病床を新たに確保した病院に対し1床あたり1,950万円、中等症以下の病床は900万円を補助する施策を講じました。続く2月には、コロナ患者の受け入れについて、高度な医療を提供できる大学病院や地域の基幹病院が重症患者を、都道府県から指定を受けた「重点医療機関」は中等症患者を受け入れるなど、病院の役割分担を進めるよう都道府県等に要請(第46回 第4波を見据えてか!? 厚労省が「大学病院に重症患者を受け入れさせよ」と都道府県に事務連絡)しました。同じ2月には、新型コロナウイルス感染症の退院基準の見直しも行い、発症からの感染可能期間などのエビデンスも提示しています(第47回 「発症10日したらもう他人に感染させない」エビデンス明示で、回復患者受け入れは進むか?)。つまり、重症患者の病床を確保し、軽快・回復した患者の退院先の整備には取り組んでいるのです。それでも「もう大丈夫」と言えないのは、重症病床の退院以降、患者が流れていく道筋をしっかり確保できていないからでしょう。日本医師会が中心となり、病院団体が集まって組織された「新型コロナウイルス感染症患者病床確保対策会議」については、「コロナ病床を拡充し退院基準の周知に努め、コロナから回復した方の受入病床の拡充も行った。新型コロナウイルス感染症と通常医療の両方を守る活動を着実に進めている」(3月18日の中川 俊男会長の定例会見での発言)とのことですが、実際に第4波が来たときに十分対応できる体制になっているかどうかは不明です。医療提供体制について一貫して手厳しい日本経済新聞は3月19日の朝刊で「コロナ病床増 進まず」という記事を掲載、「首都圏のコロナ対応病床は一般の病床全体のうち4.6%どまりだ。全国の病床数も宣言直前に比べれば7%増えたものの、第1波のさなかだった昨年5月に見込んだ数にも届いていない」として、「医療提供体制の抜本的立て直しが求められる」と書いています。全老健、会員施設の45.2%が受け入れ表明そんな中、全国レベルで実効性がありそうな動きがありました。全国老人保健施設協会(全老健)は3月12日に記者会見を開き、全国の老人保健施設の半数近くにあたる1,600余りの施設がコロナから回復した高齢の入院患者を受け入れる意向があると表明したのです。会見で同協会の平川 博之副会長(東京都老人保健施設協会 会長)は、病床逼迫が続いていた都内において、老健施設では新型コロナウイルス感染患者がスムーズに受け入れられない状況が起こっており、病院側から、「患者を受け入れても回復後の行き先がない」との訴えがあったと説明、「全老健としてこうした状況を打開すべく、会員施設に対して退院基準を満たした要介護高齢者の積極的な受け入れを要請した」と話しました。会見時の11日時点で会員施設の45.2%に当たる1,625施設が協力を表明しており、そのうち129施設ではすでにこうした患者を受け入れ、270人の高齢者が入所している、とのことです。「中間施設」の機能を発揮できる機会コロナ患者の“上流”から“下流”の流れの中で、“下流”の受け入れ先として全老健が手を挙げた意味はとても大きいと思います。もちろん、退院基準を満たした患者を介護保険施設で受け入れた場合に「退所前連携加算」(1日500単位、最大30日間)の算定が認められる、など経済的な理由もあるでしょう。しかし一方で、今こそまさに老健施設の本来の役割である「在宅復帰の機能」を発揮できる機会であると、全老健が純粋に判断したとも考えられます。約30年前の創設前後、老健施設は「中間施設」とも呼ばれていたように、病院と自宅の中間にあって高齢者の在宅復帰を目的とする施設です。医師が常駐し、リハビリ機能も充実しています。コロナでは、長期入院によって身体機能や認知機能が低下する患者は多く、回復患者にリハビリ機能は必須だと言えます。最近では介護医療院の制度化もあって、老健施設は高齢者施設としてのアイデンティティを模索していたとも言われます。ただ、看取り機能が重視される介護医療院では病床の回転は鈍く、コロナ受け入れは難しいと考えられます。そうした意味でも、老健施設はコロナ回復患者の受け入れ先としては最適の施設と言えるでしょう。高齢者施設はクラスター発生の危険性も高いと言われていますが、感染対策をしっかり行った上で、老健施設がコロナ回復患者の主要受け入れ先として機能していけば、軽症・中等度の患者を受け入れる一般病院も増えてくるのではないでしょうか。

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新型コロナワクチン、安全な筋注部位を新たに追加/日本プライマリ・ケア連合学会

 プライマリ・ケア連合学会と予防医療・健康増進委員会ワクチンチームが制作・監修を行った『新型コロナワクチンより安全な新しい筋注の方法 2021年3月版』が3月15日に公開された。本解説は、2月22日にYoutubeに公開され多くの反響を得た『新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ』(動画)に安全な接種部位を加筆修正したもの。 より安全と考えられる新たな接種部位として、「肩峰から下ろした垂線と前腋窩線の頂点・後腋窩線の頂点を結ぶ線の2つの線が交わる点」が推奨されている。ただし、従来からの接種部位(肩峰から3横指下)も選択肢として残されている。 筋肉注射の場合、手技が原因で末梢神経損傷およびSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)が生じる可能性もある。今回の新型コロナワクチン接種は日本人にあまり馴染みのなかった筋肉注射であったことから、このような事例に注意が必要である。この問題について、仲西 康顕氏(奈良県立医科大学整形外科・臨床研修センター)が指摘、指導のもと「安全な接種部位」に関する情報がアップデートされた。仲西氏が作成した筋肉注射手技マニュアルを参考に実際の注射時の様子がレクチャーされている。

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英国・EU規制当局がAZ製ワクチンのレビューを発表、ベネフィットがリスクを上回る

 接種後に血栓などの報告があり、一部の国で接種が中止されていたアストラゼネカ製COVID-19ワクチン(AZD1222、日本では承認申請中)について、2021年3月18日、英国医薬品・医療製品規制庁(The Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:MHRA)および欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)は、ベネフィットがリスクを上回ることを再確認した。同日、英国アストラゼネカ社が発表した。 MHRA・EMAの報告によると、ワクチン接種後の静脈血栓の発症率は、ワクチン接種を受けていない場合に想定される発症率を上回るという根拠はなく、接種のベネフィットがリスクを上回るとした。一方で、稀な血栓症である血小板の減少を伴う脳静脈洞血栓症(CVST)に関する5件の症例と関連する可能性は残され、ワクチンとの因果関係は確立されていないものの、さらなる分析に値する、としている。 世界保健機構(WHO)も、WHOワクチン安全性諮問委員会(GACVS)による安全性レビューを行い、ワクチンの投与後の深部静脈血栓症や肺塞栓症などの凝固状態の増加はなく、接種後に報告された血栓塞栓性イベントの発生率は自然発生の予想数と一致している、とした。また、CVSTなど血小板減少症と組み合わせた稀な血栓塞栓性イベントも報告されているものの、それらとワクチン接種の関係は不明だとした。 アストラゼネカのワクチンは英国では約1,100万回接種し、5例のCVSTが報告され、欧州全体では計2,000万回以上接種し、18例のCVSTが報告されていた。

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第52回 南ア変異株を取り入れたCOVID-19ワクチンはより心強い

南アフリカでの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症流行第二波で台頭した変異株(南ア変異株)B.1.351の感染はSARS-CoV-2の古参も新顔も手広く相手する抗体一揃いを生み出すようで、その配列を取り入れたワクチンはどうやらより頼りがいがあるようです。同国での去年9月初めまでの流行第一波の後の10月に見つかって瞬く間に広まった1)B.1.351は回復者血漿(convalescent plasma)やモノクローナル抗体を効き難くするかまったく効かなくする変異を有し、取り急ぎ認可されたワクチンの効果にも差し障るのではないかと懸念されました。その懸念は杞憂ではなく、AstraZenecaのSARS-CoV-2ワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)の試験ではB.1.351感染者の発症を防げませんでした2)。それに、Pfizer-BioNTechやModernaのワクチン接種者の血清(抗体)のB.1.351中和はかなり劣りました3)。その結果を踏まえてModernaはB.1.351の配列を取り入れたワクチンmRNA-1273.351を仕立てており、早くも今月前半には第II相試験でその投与が始まっています4)。mRNA-1273.351はB.1.351を含むSARS-CoV-2変異株も相手できるように免疫反応の幅を広げることを目指します。南アフリカの中心都市ヨハネスブルグのウィットウォータースランド大学の ペニー・ムーア(Penny Moore)氏のチームが今月11日にbiorxivに発表した報告5)によるとmRNA-1273.351はその狙い通りの効果をもたらしてくれそうです。ムーア氏等はB.1.351が免疫の網をかいくぐることなく強力な免疫反応を引き出しうると期待し6)、ケープタウンの病院にB.1.351感染で入院した89人の血清(抗体)のSARS-CoV-2代理ウイルス(pseudovirus)阻止効果を調べました。代理ウイルスはSARS-CoV-2スパイクタンパク質を使って細胞に感染するように加工したHIVです6)。結果はムーア氏等の期待に沿うもので、B.1.351感染者の抗体はB.1.351変異を有する代理ウイルスの阻止のみならずB.1.351台頭前の流行第一波の代理ウイルスやブラジルで見つかった変異株501Y.V3 (P.1)代理ウイルスも食い止めました5)。P.1もB.1.351と同様に手強く、抗体が効きにくいことが知られています。B.1.351も相手しうるワクチンの取り組みはModernaのみならずPfizer-BioNTechやその他のワクチン開発会社も進めています。それらのワクチンはおそらくより高性能であろうとムーア氏は言っています6)。変異株感染は総じてSARS-CoV-2を手広く相手する免疫反応を引き出すかというとそうではなさそうです。たとえば英国で見つかった変異株B.1.1.7感染で備わる抗体は南ア変異株や先立って流行したウイルスの面々の認識や抑制がより不得手です7)。南ア変異株B.1.351感染でSARS-CoV-2あれこれへの手広い免疫反応が備わる仕組みは不明で、これから調べる必要があります。もしかするとB.1.351は変異株の間で共通するスパイクタンパク質特徴を認識する抗体を引き出すのかもしれません6)。参考1)Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv. December 22, 20202)Madhi SA,et al, N Engl J Med.2021 Mar 16. [Epub ahead of print]3)Wang P, et al.Nature.2021 Mar 8. [Epub ahead of print]4)Moderna Announces First Participants Dosed in Study Evaluating COVID-19 Booster Vaccine Candidates / businesswire5)SARS-CoV-2 501Y.V2 (B.1.351) elicits cross-reactive neutralizing antibodies. bioRxiv. March 11, 20216)Rare COVID reactions might hold key to variant-proof vaccines / Nature7)Reduced antibody cross-reactivity following infection with B.1.1.7 than with parental SARS-CoV-2 strains. bioRxiv. March 01, 2021.

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mRNAワクチン、無症候性感染リスクも低下/大規模調査

 新型コロナウイルスワクチンは無症候性感染にも有効なのか。米国・メイヨークリニックのAaron J. Tande氏らによる大規模調査によって、ワクチン接種によって 無症候性の感染リスクも低下することがわかったという。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2021年3月10日号掲載の報告。 該当地域においてワクチン接種が始まった2020年12月17日から2021年2月8日の間に、処置/手術前にSARS-CoV-2検査を受けた無症状の患者(3万9,156例)の検査4万8,333件を対象として、後ろ向きコホート研究を実施した。 mRNAワクチン(ファイザーもしくはモデルナ社製)を1回以上接種した群(接種群)と、同じ期間内に接種しなかった群(未接種群)の間でSARS-CoV-2検査の陽性率を比較し、相対リスク(RR)を算出した。RRは混合効果log-binomial回帰を用いて、年齢、性別、人種/民族、病院と居住地の相対位置(医療アクセス)、地域の医療システム、反復検査について調整した。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は54.2(SD:19.7)歳で、2万5,364例(52.5%)が女性だった。接種群の検査数は3,006件(6.2%)、未接種群は4万5,327件(93.8%)だった。・接種群の初回接種から検査までの日数の中央値は16(四分位範囲:7~27)日だった。・接種群の検査3,006件中、陽性は42件(1.4%)、未接種群の検査4万5,327件中、陽性は1,436件(3.2%)だった(RR:0.44、95%CI:0.33~0.60、p<0.0001)。・接種群が未接種群と比較して調整後RRが低かった検査時期は、ワクチンの初回接種後11日以降2回目の接種前(RR:0.21、95%CI:0.12~0.37、p<0.0001)、および2回目の接種翌日以降(RR:0.20、95%CI:0.09~0.44、p<0.0001)だった。 研究者らは、mRNAワクチンは症候性の感染同様に無症候性感染のリスクも減らすことが裏付けられた、としている。

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