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モデルナ製ワクチンの副反応、ファイザー製との違いは?/JAMA

 モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン(mRNA-1273)が日本でも特例承認され、大規模接種会場を中心に接種が始まる。商品名はCOVID-19ワクチンモデルナ筋注。既存株に対するワクチン有効率は約94%*でファイザー社ワクチン(BNT162b2mRNA、有効率:95%)とほぼ同等だが、副反応疑い症状の発症率についてはどうだろうかー。 今回、米国疾病予防管理センター(CDC)のCOVID-19レスポンスチームに所属するJohanna Chapin-Bardales氏らは、「BNT162b2mRNA」と「mRNA-1273」の接種者からの局所的・全身性の症状に関する報告の詳細を明らかにした。 その結果、両ワクチンともに接種部位の痛み、倦怠感、頭痛が多かった。また、いずれも副反応報告は2回目接種後のほうが多く、とくにmRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAと比べ、悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)、接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)を多く報告していた。JAMA誌2021年4月5日号オンライン版に掲載の報告。 この報告は、2020年12月14日~2021年2月28日の期間、v-safe**登録者が各ワクチン接種後0~7日目にv-safeへ自己申告した局所的および全身性の症状を収集したもの。2021年2月21日までに4,600万人以上が新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンを1回以上接種し、計364万3,918例がv-safeに登録されていた。登録者は1回目のワクチン接種後7日以内に1回以上の毎日の健康調査を完了し、そのうち192万872例は2回目のワクチン接種も受け、接種後7日以内に1回以上の健康調査を完了した。 主な結果は以下のとおり。・BNT162b2mRNAワクチンは1回目に165万9,724例、2回目に97万1,375例が接種し、mRNA-1273ワクチンは1回目に198万4,194例、2回目に94万9,497例が接種した。・v-safe登録者のほとんどは、ワクチン接種後0〜7日目に局所的な症状(接種1回目:70.0%、接種2回目:75.2%)または全身性の症状(同:50.0%、同:69.4%)を報告した。・両ワクチンの報告を合算した場合、1回目の接種後に最も報告されたのは、接種部位の疼痛(67.8%)、倦怠感(30.9%)、頭痛(25.9%)、および筋肉痛(19.4%)だった。・両ワクチンともに、2回目接種後に増えた報告は、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、関節痛だった。・mRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAワクチンと比較して、反応原性の割合が高いと報告され、2回目接種でその差は顕著に現れた[悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)]。・65歳以上の登録者は局所反応、全身性の反応いずれにおいてもあまり報告していなかった。・v-safe登録者による症状発現の報告割合は、ワクチン接種後1日目で最も高く、7日目までに著しく減少した。 研究者らは「いずれのワクチンにも局所反応および全身性の反応が予想され、大半は一過性のものだが、それらの経験が被接種者の認識に最も直接的な影響を与える可能性がある。そのため、臨床医はワクチン被接種者に具体的な副反応症状を伝えるとともに、副反応症状がとくに2回目接種当日~翌日に出現しやすいこと、また、症状は短期間で解消することを助言する必要がある」とも結論づけている。* 感染歴がない被験者では94.1%、感染歴を問わない被験者では93.6%1)** v-safeとは、 CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。患者説明用スライドはこちら『ファイザー社とモデルナ社のワクチン副反応比較』

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第58回 防衛省の逆ギレは誰のため?ワクチン接種センターの予約システム不備の件

高齢者に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)のワクチン優先接種が本格化している。1日100万回接種で7月末までに高齢者への接種を完了させると菅 義偉首相が宣言したこともあり、防衛省が運営する大規模接種センターも東京、大阪に設置されることになった。ところが、その大規模接種センターの予約システムが穴だらけということが朝日新聞出版の雑誌「AERA」のwebニュースサイト「AERA.dot」で報じられ、その取材手法を巡って岸 信夫防衛大臣と報じたメディア側とのつばぜり合いがまた報じられるという泥仕合になっている。同じような検証は毎日新聞、日経XTECHも報じている。まず、予約システムでは、ホームページにアクセスした後、対象の高齢者に送付されている接種券に記載の市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)、接種希望者の生年月日を入力後、接種希望日時を選ぶ画面で空きがある日時を予約する。報道によると、この市町村コード、接種券番号、生年月日を架空の数字を入力しても予約が成立するという。この問題が報じられると岸大臣はTwitter上で次のようにつぶやいた。「自衛隊大規模接種センター予約の報道について。今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です」さてこの件、医療従事者の方々の中では「メディアはけしからん!」という声も少なくないと聞く。私の見解を言うと、ポジショントークと言われてしまいかねないが、ほぼ問題ないと思っている。もし私自身が同じような情報を得たら同じように入力して検証し、その通りならば報道したと思う。AERA.dotの記事を読めば分かるが、今回の記事の発端は防衛省関係者からの内部告発、つまり内部で今回の問題に懸念を持った人がいたということだ。私も報道の世界に27年いて思うことだが、内部告発が行われる場合、大概は内部での意見具申が無視される、あるいは告発者がしがらみなどで意見具申がしにくい立場にあるなどの事情からやむにやまれず外部を頼ってくる場合がほとんどである。「そもそも内部告発者が愉快犯や怨恨で情報提供している可能性もあるだろう」と言う指摘もある。その可能性は常にある。ただ、さすがにわれわれも馬鹿ではない。例え短時間であっても情報提供者のバックグラウンドは可能な限りチェックする。さらに怨恨のケースは提供してくる情報につじつまが合わないことも多く、裏取りの過程でもおのずとその辺の状況は明らかになる。また、多少怨恨が背後にあったとしても、提供された情報で明らかになった問題点が多くの人に不利益をもたらす可能性が高いならば、それは慎重に裏取りをしたうえで報じることになる。さて話を今回の一件に戻そう。まず架空の予約を入れたことは問題なのか? 少なくともほかの手段で事実検証が代替できなければ、この手法は選択肢の1つである。ただ、それを実行するか否かのカギを握るのは、予約キャンセルの可否である。キャンセルが可能であるならば、システムや現場に与える負荷はほぼ無視できるので、入力による検証作業が岸大臣の言うところの「不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為」には当たらないと考える。また、この件で「わざわざ予約をしてなくとも、防衛省やシステム開発会社に情報提供者の言うことの真偽を問い合わせすれば代替できるではないか」という意見もあるかもしれない。この意見は一見すると論理的に聞こえるものの、実は物事の本質を見失う可能性がある。そもそも内部にシステムの脆弱性を認識した人がいながら、このシステムがリリースされてしまう組織体制が本質的に問題なのである。その組織に対してこちらが検証結果も持たずに取材をかければ相手側は不適切な隠ぺいに走る恐れがある。ちなみに、この報道について防衛省に抗議された朝日新聞出版の見解が公開されている。これを読むと、検証の上で防衛省に見解を問い合わせたものの回答はなかった旨が記載されている。防衛省はこの段階で事実を公表し、システムを一時停止するなどの措置が取れたはずである。経験上、こうした反応の場合は決定的な証拠を提示しない限り、隠ぺいが行われる可能性がある。にもかかわらず上述の岸大臣のツイートである。このツイートは直訳すれば、「お前らは気にくわない」の逆ギレに過ぎない。ちなみにこのシステムの穴に関して岸大臣はこのようなツイートもしている。「本センターの予約システムで、不正な手段による虚偽予約を完全に防止する為には、全市長区町村が管理する接種券番号を含む個人情報を予め防衛省が把握し、予約番号と照合する必要があり、実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断いたしました」さてこれは個人情報に関してはそうかもしれない。しかし、6桁の市町村コードすら適当な数字の入力でよかったことの言い訳としては苦しい。そして事の真相についてはこんな記事も出ている。結局のところ非常に大雑把で掛け声だけの「1日100万回接種」の無理がたたったということである。そして今回の報道、まさに大規模接種のスタート前で本当に良かったと思う。一部にはワクチン接種前の関係者の努力に水を差したという指摘もあるが、もしこれが本格的にスタートしてから実際に悪意を持った入力が大量に行われていたらどうなるのか? そちらのほうが想像するだけでぞっとする。幸いにして大規模接種会場で使うモデルナのワクチンは、ファイザーのコミナティと違って解凍から有効期間が30日あるので、ニセの予約を大量に入れられても大量廃棄に至る可能性は低いだろう。しかし、虚偽予約があれば現場のマンパワーはかなり疲弊する。いずれにせよ今回は不幸中の幸いだったというべきだ。それでも中には防衛省とのやり取りも含め全部修正が済んでから報道すればという御仁もいるかもしれない。しかし、それは「万引きした人はモノを基に戻すか、お金を払えば無罪」という論理と同じだ。さて、そうはいってもちょっとだけAERA.dotには物申したいところがある。上述の記事を読めばわかるが、この記事ではこの穴だらけのシステムの運営会社の経営顧問が菅首相の盟友で、自民党の小泉 純一郎政権時の特命大臣を務めた竹中 平蔵氏であることに言及している。まあ、私もメディアの側にいるのでこの手の補足情報の記述に理解を示さないわけではないが、なくても良い情報かとも思う。この辺で「色」がついて、逆に変に嫌味っぽく受け取られかねないのだ。まあ、もっとも今回の報道で指摘されたことは事実無根のことではないことや、岸大臣があくまで権力者という前提に立てば大臣のツイートのほうがはるかに大人げない。そしてそのツイートをわざわざ引用して次のようにツイートしたのが、岸大臣の実兄・安倍 晋三元首相である。「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」日本歴代最長政権を司った元首相のツイートとしてはかなり粗雑で品性に欠けると私には映ってしまうのだが。まあ、遡って考えればご両人のツイートも、安倍元首相の政治姿勢に厳しい目を向け続けた、朝日新聞、毎日新聞への恨み節がにじんで見えるといううがった見方も成り立つかもしれない。もちろんこうした見方はある種、私個人のバイアスともいえる。ただ、同時にこの一件に関して「メディアはけしからん」と思った方は、実はメディアの好き嫌いというバイアスが混入している可能性はある。というのも両社ともメディアとしては一般人から好き嫌いが分かれやすいからである。もちろんそのスタンスは自由だが、この件で「メディアはけしからん」と公言するならば、「朝日、毎日はけしからん」のバイアスが混じってないか否かはご自身で検証してみる必要はあるだろう。

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ファイザー製ワクチン、感染報告率の低下は接種後何日から?/感染研

 ファイザー製の新型コロナワクチンBNT162b2は、国内では2021年2月14日に薬事承認され、2月17日から医療従事者を対象とした先行接種が開始となった。国立感染症研究所は、先のワクチンの臨床的効果を迅速に評価するため、既存のサーベイランスデータを用いた仮想コホートを構成し、1回目接種後のCOVID-19報告率の変化を検討した(追跡期間は2021年4月30日まで)。その結果、報告率は1回目接種日から12日前後を境に低下する傾向がみられ、接種後0~13日の報告率と比較すると、14~20日で0.42倍、21~27日で0.39倍、28日以降で0.14倍であった。イスラエルで行われた先行研究では、1回目接種後から2回目接種までの期間のCOVID-19報告の抑制効果(VE)は46~60%と報告されており、本結果はそれと同等である可能性があるという。 本研究では、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)のデータを用いて分析を行った。V-SYSのワクチン接種実績記録からワクチン被接種者の仮想コホートを構成し、HER-SYSのワクチン接種歴が記録されたCOVID-19患者のデータを、1回目のワクチン接種日と都道府県に基づいて突合した。 解析対象は、医療従事者への先行接種が開始された2021年2月17日から高齢者への接種開始前の4月11日までの期間に、新型コロナワクチンを少なくとも1回接種した医療従事者とした。主要評価項目は、報告されたCOVID-19症例の診断日で、副次評価項目は報告時有症状例の診断日と報告時無症状例の診断日。 主な結果は以下の通り。・観察期間中、医療従事者110万1,698人に対し1回目の新型コロナワクチン接種が実施され、このうち4月30日時点で2回目の接種終了者は104万2,998人(94.7%)だった。・4月30日までにHER-SYSに登録され、少なくとも1回のワクチン接種歴が記録されているCOVID-19症例は282例だった。・発症日がワクチン接種前だった1例を除く281例中、ワクチン接種後28日以内に診断された症例は256例(91.1%)だった。症例は、女性および20~40歳代が約7割を占めていた。・2回目の接種後に診断された症例は全体の16.7%で、このうち報告時無症状例が占める割合は40.7%、1回目接種後に診断された症例に占める報告時無症状例の割合(20.0%)より高い傾向にあった。・COVID-19報告率は、接種後0~13日が1.26/10万人日、14~20日が0.53/10万人日、21~27日が0.49 /10万人日、28日以降が0.18/10万人日だった。・接種後0~13日の報告率と比較した報告率比は、14~20日が0.42倍(95%CI:0.30~0.59)、21~27日が0.39倍(95%CI:0.27~0.56)、28日以降が0.14倍(95%CI:0.09~0.21)だった。報告時有症状例に比べ、報告時無症状例の報告率は全期間において低かった。

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Novavax製ワクチン、南ア変異株に効果/NEJM

 米国・Novavax製の遺伝子組み換えSARS-CoV-2ナノ粒子ワクチン「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性者において、より高い効果が認められた。NVX-CoV2373接種後の感染例の多くは、南アフリカ(B.1.351)変異株が原因であった。NovavaxのVivek Shinde氏らが、南アフリカで実施したNVX-CoV2373ワクチンの無作為化プラセボ対照第IIa/b相試験の結果を報告した。SARS-CoV-2変異株の出現が、COVID-19感染制御の進展を脅かしている。NVX-CoV2373ワクチンは、健康成人を対象とした第I/II相試験において安全性が確認されるとともに、強力な中和抗体産生と抗原特異的多機能CD4陽性T細胞反応との関連が示されていた。NEJM誌2021年5月5日号掲載の報告。南アフリカでHIV陽性/陰性の6,324例を対象にNVX-CoV2373ワクチンを評価 研究グループは、18~84歳のHIV陰性成人、および18~64歳の医学的に安定しているHIV陽性者を、NVX-CoV2373ワクチン(組み換えスパイクタンパク質5μg+Matrix-M1アジュバント50μg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ2回接種した。接種するスタッフのみ割り付けを知っており、他の研究スタッフおよび参加者は盲検化されていた。 主要評価項目は、安全性、ならびにベースラインSARS-CoV-2血清陰性者における2回目接種後7日以上経過時点の検査で確認された症候性COVID-19発症に関する有効性とした。 6,324例がスクリーニングを受け、このうち4,387例が少なくとも1回の接種を受けた(ワクチン群2,199例、プラセボ群2,188例)。平均年齢は32.0歳で、65歳以上の高齢者は4.2%、男性が57%であった。また、抗スパイクIgG抗体の評価により、ベースラインで30.2%がSARS-CoV-2血清陽性であった。ワクチンの有効率は全体で約50%、HIV陰性者で60% 2回の接種を受けベースラインで血清陰性であった有効性解析対象集団(per-protocol集団)は2,684例(HIV陰性94%、HIV陽性6%)で、ワクチン群1,357例中15例、プラセボ群1,327例中29例において軽症~中等症のCOVID-19が発症した。 全体でのワクチン有効率は49.4%(95%信頼区間[CI]:6.1~72.8)、HIV陰性者におけるワクチン有効率は60.1%(95%CI:19.9~80.1)であった。 COVID-19を発症した44例のうち全ゲノムシークエンス解析が可能であった41例において、38例(92.7%)でB.1.351変異が確認された。B.1.351に対するワクチンの有効性(事後解析)は、HIV陰性者(ワクチン群11例、プラセボ群22例)において51.0%(95%CI:-0.6~76.2)であった。 初期の局所/全身の反応原性イベントは、ワクチン群で高頻度であったが、重篤な有害事象は両群においてまれであった。

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YouTube中毒を克服する【Dr. 中島の 新・徒然草】(375)

三百七十五の段 YouTube中毒を克服する5月半ばにして梅雨入りしてしまいました。雨さえ降っていなければ涼しく過ごしやすい天気です。降ったら降ったで人流が減り、コロナ対策になりますね。大阪のコロナ新規感染者数も、ついにピークアウトした感があります。7日間平均の最大は4月20日の1,150人でしたが、5月18日には641人にまで減りました。緊急事態宣言下とはいえ人も車も多く、いつもの風景にしか見えません。しかし、数字が改善しているので緊急事態宣言にも効果があったと思われます。今回の宣言に効果のあった理由は何でしょうか?人々を3つのグループに分けると考えやすいと思います。第1のグループは緊急事態宣言の有無にかかわらず、常に自粛している人たち。医療従事者なんかは大部分がこのグループですね。コロナの恐ろしさを目の当たりにしつつ、自宅と職場の往復で毎日が過ぎていきます。第2のグループは緊急事態宣言によって行動の変わる人。多くの一般の方がこのグループではないでしょうか。そして第3のグループは緊急事態宣言を無視して濃厚接触を繰り返している人。酒を飲んで大騒ぎしたり、カラオケしたり。この人たちの行動は目立ちますが、数としては少ないのだと思います。で、コロナを抑え込むためには、大多数を占める第2グループの行動が鍵になります。つまり、緊急事態宣言があれば自粛するが、なければ自粛しない人たち。この人たちが常時慎重な行動をすれば、徐々にコロナの新規感染者数が減るはずです。そうすれば都道府県がわざわざ飲食業に自粛要請する必要もありません。皆が1人で行って、1人で静かに食べる。単にそれだけのことです。アルコールを飲みたければ家で飲む。何も難しいことはありません。そうやって時間稼ぎをしている間にワクチンが行き渡れば、自然にコロナは収束するはず。簡単なことだと思うのですが……。ところでタイトルにした YouTube の話。何回も述べていますが、私は2015年の春から自宅にテレビがありません。なので、リオ五輪も平昌五輪も知らない間に終わってしまいました。平昌なんか、いまだにヒラマサと呼びそうになります。ピョンチャンですよね、確か。テレビがなければ時間が沢山できるはずでした。ところがそこに現れたのが YouTube。好きなチャンネルをいつでも何度でも見ることができます。中毒性が高く、考えようによってはテレビより危険。休みの日なんか、気がつけば動物ビデオをずっと見てしまいます。ハイエナとライオンの戦いとか、チーターの子育てとか。一体、人生の何の役に立つのか?自分で自分にツッコミを入れずにはおれません。こりゃ駄目だ!というわけで YouTube を長時間見ない方策を考えました。まずは YouTube の危険性を認識する次に YouTube に代わるものを探すそして心穏やかな毎日を過ごすこれらの中で一番大切なのは YouTube の代替物を探すことですね。今、試しているのはキンドル(電子出版)の英語小説。決して難しい小説を読むわけではありません。700語以内とか1,000語以内とか、限られた語彙で書かれた平易な英語小説です。色々なシリーズがありますが、私は Oxford Bookworms Library を読み始めました。易しいほうから、Starter、Stage 1……と続いて、Stage 6 まで全部で7段階。まずは Stage 2 の "Dead Man's Island" を読んでみました。英検では準2級~2級相当とされています。小さな島に住む大金持ちの男性の話ですが、これがなかなか面白い。辞書をひくことなく最後まで読めました。難しい単語を使わずにここまで表現できるのか、と感心させられます。次に Stage 3 の "Skyjack!"搭乗していた飛行機が過激派に乗っ取られる話です。英検では2級相当ですが、これも辞書要らず。2~3語ほど「ん?」と思った単語はありますが、文脈から容易に意味を推測できました。ストーリーも手に汗を握るものでお勧めです。そして Stage 4(英検2級~準1級相当)の "The Thirty-Nine Steps"国家間の戦争を仕掛けようと暗躍する人たちの話です。まだ途中ですが、辞書を使ったのは1回か2回、読むのに苦労はありません。Bookworms のシリーズは、イギリスを中心にヨーロッパを舞台とした小説が多いようです。登場人物が容赦なく殺されてしまうのがイギリスらしさかも。さて、英語小説を読むことのいいところは、罪悪感のなさです。知らないうちに何時間も経っていたとしても、何ら恥じることはありません。むしろ、「英語の小説に夢中になる俺、スゲエ!」と思ってしまうくらいです。また、寝るときにスマホで読もうとすると3分以内に眠りにつけます。これ以上の睡眠薬は、この世に存在しないでしょう。というわけで英語小説を使って YouTube 中毒からの脱出を図っております。なんか読書に夢中だった子供時代を思い出してしまいました。もし YouTube に毒されている読者がおられましたら、是非やってみてください。最後に1句ユーチューブ はまるな危険 距離を置け

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第58回 世界との比較で見えてきた日本のコロナ対策の課題と対応

新型コロナウイルス感染症を巡っては、検査やワクチン接種が遅々として進まず、治療においても病床数が不足している日本。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏が4月24日、「これまでのコロナ対策を問う」と題した講演会において問題点の指摘と提言を行った。以下、講演の概要を紹介する。季節性の“風邪コロナ”の動向にも注視を緊急事態宣言後の新規感染者数の増加に対し、「リバウンド」という言い方がされるが、世界で感染者数が増加しているということは、日本固有以外の理由がある。それは変異株の拡大と季節性の変動の影響だ。前者については改めて説明の必要はないが、後者については新型コロナ流行を予測する上で重要だ。コロナは元々、風邪のウイルスで、新型コロナが流行する以前から4種のウイルスが世界で流行を繰り返してきた。このような“風邪コロナ”は夏と冬の年2回流行することから、新型コロナも夏に流行する可能性がある。しかし日本の場合、現在の状況では今夏はおろか、今冬であっても国民の大半がワクチン接種を完遂するのは無理だろう。G7の中では、英国と米国において感染者数が激減している。英国については、昨夏の日本の第2波までは、感染者数の急増により「世界の負け組」と呼ばれたが、年末年始頃から減少に転じた。また、米国は死亡者数の急増から第2次世界大戦末の様相とまで言われた。両国はなぜ感染者数の減少に成功したのか、そしてその他の欧州諸国がなぜうまくいっていないのかを分析すべきだ。ワクチン接種数5割超で集団免疫を獲得日本に関しては、やり方次第で緊急事態宣言は必要なかったと考える。各国の人口10万人当たりのワクチン接種率(4月13日現在、1回目接種)のデータによると、英米両国の接種率は約6割。対する日本は1.3%。英米の感染者数の減少傾向を見ると、集団免疫を獲得していることがうかがえる。このことが示すのは、接種率が5割を超えれば感染者数を抑えられるということだ。ただし、速やかな接種でなければいけない。ちなみに、接種率1位はチリで約65%。しかし、同国の感染者数は急増した。ワクチンの主な購入先は中国のメーカーだ。中国製は不活化ワクチンで、有効性は5〜7割。これに対し、米国のファイザー製やモデルナ製はmRNAワクチンで、有効性は約9割だ。後者は世界初のワクチンで、接種後何が起きるかわからないからと、当初は中国製ワクチンが求められていたが、チリの状況が明らかになってから潮目が変わった。菅 義偉首相が4月、5,000万回分のワクチンの追加供給をファイザーと合意した頃、中国は1億回分を輸入した。習 近平・国家主席は自国のワクチンを危ないと思ったのか。一方、ファイザー製は短期的な有効性や安全性が明らかになりつつある。「特例承認」制度を早期に生かせなかった日本日本の接種率が低い理由に、接種開始の遅れがある。主要先進国では昨年12月に始まったが、日本は今年2月からだ。田村 憲久・厚生労働大臣は、安全性チェックのため治験が必要だと言ったが、ファイザー製ワクチンの治験にヨーロッパで参加した国はドイツのみで、多くが自国での治験にこだわらなかった。形だけのブリッジ試験を実行した日本とは危機意識が違うと言えよう。日本は緊急事態と言っても平時の対応だ。医薬品医療機器等法に基づく特例承認という制度があって、治験せずとも承認できるのに、政治判断をしなかった。問題を指摘された菅首相の答弁は、「法改正が必要」との苦しい説明だった。ワクチンを確保したら、あとは打つだけ。欧米では医学生や看護学生、軍人でも接種できる。日本も規制を緩和して打ち手を増やさなければいけない。日本は経済的に大きなダメージを受けている。2020年のGDPは、前年比で-5.1ポイント、アジア圏域では中ぐらいだが、東アジアの中では最下位だ。一方、ヨーロッパで感染対策を緩めたスウェーデンでは、ロックダウン措置をしなかった結果、死亡者数が増えた。2020年のGDPは前年比‐4.2ポイント。高齢者層の経済活動自粛などが要因として考えられる。国際標準とは真逆の日本の対応策日本のコロナ施策における最大の問題点は、PCR検査を抑制したことだ。G20における10万人当たりのPCR検査数(2020年12月9日前後の数字)を見ると、トップは米国で約6万5,000件。翻って、日本は14位で5,000件以下だ。世界のコロナ対策が大きく動いたのは、昨年8月。リードした米国では、新学期が始まるタイミングだった。学校では対面でないと教育効率が下がったり、教員の雇用に影響したりする。週2回の検査により陽性者が早期に発見できるという研究結果を根拠に、実行することにした。日本も東京五輪・パラリンピックの選手や関係者は週2回検査(その後、毎日に変更)するというが、子ども達に週2回検査しようとはしない。ダブルスタンダードになっている。OECD加盟国と中国の10万人当たりのCOVID-19関係論文数(2020年12月28日現在)を見ると、トップはスイスで、日本は34位。「イソジンでうがいをすれば感染を防げる」「PCR検査を増やせば医療が崩壊する」「マスク会食をしましょう」などという言説が行政トップから発せられるのが日本なのだ。実際は逆で、検査をして陰性の人はマスクを外して外食しましょう、これが国際標準であるということは明白だ。大学病院での受け入れ増に必要な感染症改正欧米と比べて患者数が少ない日本で医療が逼迫するのは、コロナ感染者の受け入れ病床数が少ないからだが、とくに問題なのは、大学病院が少数の感染者しか受け入れられない点だ。それはコロナが感染症法に規定されている法定感染症で、受け入れ病院として大学病院は認定されていないからだ。言うまでもなく、コロナは「総力戦」。科学的かつ合理的でなければならない。

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無症候性新型コロナ感染、ワクチン完了で発生率86%減/JAMA

 イスラエル・テルアビブの3次医療センター(1ヵ所)に勤務する医療従事者について、新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の接種完了者は非接種者と比べて、2回目接種後7日超の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染の発生率が有意に減少したことを、同国Tel Aviv Sourasky Medical CenterのYoel Angel氏らが報告した。なお、結果は観察デザインに基づく調査のため限定的だとしている。症候性SARS-CoV-2感染へのBNT162b2ワクチンの有効性については、無作為化試験で推定値が示されているが、無症候性SARS-CoV-2感染への効果については不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月6日号掲載の報告。接種完了を、2回目接種後7日超と定義 研究グループは、2020年12月20日~2021年2月25日に、テルアビブの3次医療センターに勤務する医療従事者について行われた鼻咽頭スワブによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果から、症候性および無症候性SARS-CoV-2感染者に関するデータを集めて分析した。ロジスティック回帰法にて、ワクチン接種完了群と非接種群の感染を、発生率比(IRR)を求めて比較した。被験者の居住地やPCR検査回数によって補正を行った。 ワクチン接種歴は、職場の健康データベースから入手し、接種完了は2回目接種後7日超が経過していることと定義した。 主要アウトカムは、ワクチン接種完了群vs.非接種群の症候性および無症候性SARS-CoV-2に関する補正後IRRであった。副次評価項目は、ワクチン1回接種群(1回目接種後7~28日)に関するIRR、ワクチン接種完了21日超群に関するIRRなどだった。無症候性SARS-CoV-2、ワクチン接種完了群で86%減 被験者の医療従事者は6,710例で、平均年齢は44.3(SD 12.5)歳、女性は4,465例(66.5%)だった。追跡期間の中央値は63日で、BNT162b2ワクチンの1回以上接種者は5,953例(88.7%)、2回接種者は5,517例(82.2%)、非接種者は757例(11.3%)だった。ワクチン接種者はより高年齢(平均年齢:接種者44.8歳、非接種者40.7歳)で、男性の割合が高かった(それぞれ、31.4%、17.7%)。 症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群8例、非接種群38例で発生した。感染の発生率はそれぞれ、4.7件/10万人日、149.8件/10万人日で、補正後IRRは0.03(95%信頼区間[CI]:0.01~0.06)だった。また、無症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群19例、非接種群17例で、それぞれ発生率は11.3件/10万人日、67.0件/10万人日、補正後IRRは0.14(95%CI:0.07~0.31)だった。 傾向スコア感度分析を行っても、結果に質的変化はなかった。

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ワクチン接種にまつわるさまざまな疑問【コロナ時代の認知症診療】第3回

副作用と副反応、改めて知るそのちがい医療関係者として私は4月の中旬に、2回目のコロナワクチン予防接種を終えた。注射の痛みはこれまでの注射経験の中で最も痛くないものであった。けれども2回とも翌日、注射の刺入点付近を中心に腫れぼったさを自覚した。また2回目は発熱こそなかったものの、翌日はけだるさが続き頭の回転も冴えなかった。「若い人なら3分の2の人に37.5度以上の発熱があるが、高齢になるほどさほどでもない」と言われる典型例だったのだろう。ところでこのような症状は普通なら副作用と言われるはずなのに、どうしてワクチン接種では副反応と呼ばれるのかを注射の後で知った。ワクチンによる健康被害の多くは、免疫反応そのものによって起きるから、こう呼ばれるのだそうだ。インフルワクチンも未経験の高齢者が意外に多い世界の先進国におけるワクチン接種率が日本はとても低いという声がある。一般国民はもとより5月1日時点の新聞記事によると医療関係者における2回目の接種終了率はまだ2割ほどに過ぎないとの報告もある。こうした中で、私の外来でも接種に関する質問がかなり出てきた。ポイントは、まず接種せねばならないものかという質問。次にどんな人はやってはいけないかという質問である。さらにイギリス型など新型コロナウイルスの変異株にもこのワクチンは効くのかという質問もある。とくに最初の問いは多いので、「インフルエンザ予防注射は打っていますか?」と尋ねると、したことはないと答える人が結構多い。そこで高齢者におけるインフルエンザ予防接種の摂取率を調べてみた。その結果、4~7割とする厚労省による報告1)を知り、その少なさに驚いた。ワクチンによる「集団免疫」への希望の声がある。もちろん多くの人は自分がかかりたくないから接種するのである。一方で人口の3分の2が免疫を獲得すれば、パンデミックを食い止め地域社会や国全体を守れるという「集団免疫」の考えがある。その信憑性を疑う声もあるが、これを実現するにはインフルエンザの予防接種でいうところの、これまでの最高くらいの接種率が必要である。けれどもこれは容易ではないだろう。私の知る範囲では、恐らく接種しないだろうと思われる人が少なくない。科学的判断というよりもむしろ本人の信念による気がする。次に接種の絶対禁忌は、各医師会がガイドラインを市民向けに示している:(1)1回目の新型コロナワクチン接種でアナフィラキシーなど重度のアレルギー反応がでた方(2)本ワクチンの成分であるポリエチレングリコール(PEG)にアレルギーのある方である。なおよくありそうな、接種当日37.5℃以上の発熱がある方については、「今は接種できないが、タイミングをずらせば接種可能」とされている。投げかけられるさまざまな疑問にどう答える?次に変異株に対する効果も含めてどれくらい有効だろうか? まず「そもそも変異とは何か?」。これは今の時代、いまさら聞けない質問かもしれない。「ウイルスの遺伝子コピーの写し間違えで、元とは違ったタンパク質からなる生物ができること」と答えても難しいだろう。そこでウイルスのもとになる遺伝子における「伝達ゲーム」のようなものだと言っている。つまりどんどん間違いが広がっていって最初の話とは全く別の話が出来上がるようなものという説明である。さてどこまで効くかだが、これまでの生ワクチンなどと違って、今度のRNAワクチンには、効果が期待されるようだ。インフルエンザのように毎年変異し、全く生物学的に異なるものであれば確かに効果は期待しにくいだろう。そうではなくコロナの場合、新型コロナウイルスの中での変異なので、期待できるのではないかと考えられている。筆者自身は変異株が今では大多数のイギリスにおける疫学的結果が最も大切かと思う。ヨーロッパでワクチン接種率が最も高いイギリスでは、4月30日の段階で、1度でもワクチンを接種した人の割合は約50%だ。1日あたりの感染者は、1月には約6万8,000人だったものが、3ヵ月後には2,000人程度まで急激に減少した2)。まさに集団免疫による効果が出つつあるのだろう。なお、予防接種の持続効果については、少なくとも半年間はあると言われる。つまり半年間くらいは、抗体が血液中に存在するとされるが、それ以上にもつか否かについてまだエビデンスはないようだ。このような多くの質問が臨床の場ではしばしば投げかけられる。筆者自身はNew England Journal of MedicineのFrequently Asked Questionsにあるコロナワクチンに関する特集3)が信頼できると感じている。参考文献・参考情報1)厚生労働省「2020/21シーズンのインフルエンザワクチンの供給について」2)ワクチン接種50%のイギリス 感染が激減3)NEJM — Covid-19 Vaccine Frequently Asked Questions (FAQ)

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第58回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる?“家庭医構想”というパンドラの匣(前編)

2日連続の社説で“大胆”な提言を行った日経新聞こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週の個人的なビッグニュースは大谷 翔平投手の13号ホームラン、ではなく、MLBのタンパベイ・レイズをクビになった筒香 嘉智選手を、ロサンゼルス・ドジャースが5月15日(現地時間)に獲得したことです(同じくロサンゼルス・エンジェルスをクビになったアルバート・プホルズ選手も獲得)。レイズは5月11日、筒香選手がメジャー出場の前提となるロースター40人枠から外し、戦力外としていました。2年契約最終年の今季は26試合出場し、打率.167、0本塁打、5打点と打撃が振るわなかったことが原因とされています。最近はほぼ代打要員で、ベンチの隅っこにおとなしく座っている姿が印象に残っています。米紙などは「(レイズが筒香と契約したのは)前例のないほどの大失敗」「今後、日本の球団に所属する日本人野手のポスティング移籍に悪影響を及ぼす」と酷評。日本のネット上でも、「投手の球速がパ・リーグより遅いセ・リーグにいて、かつ狭い横浜球場でしかホームランを量産できなかった筒香が活躍できるわけがなかった」などと、厳しい意見が飛んでいました。3Aで鍛え直すか、日本に戻って来るか、その動向が注目されていましたが、なんとドジャースがトレードで獲得するとは…。故障者が復帰するまでのつなぎとの話もありますが、他球団でクビになった2選手を、昨年世界一のドジャースがどう使っていくのか注目されます。さて、北海道、岡山、広島の3道県にも、16日から今月31日までの期間、緊急事態宣言が発出されました。「まん延防止等重点措置」については群馬、石川、熊本の3県が追加されました。北海道、岡山、広島については、政府の諮問案になかったものを、専門家でつくる分科会でより強い措置が必要だという意見が相次ぎ変更された、とのことです。ワクチン接種も各地でドタバタが続き、医療提供体制の逼迫も深刻さを増しています。今回は、少し古い話になりますが、そんな日本の医療提供体制に対し、5月の連休中、社説を2日も連続して使って“大胆”な提言を行った日本経済新聞の報道と、その中で取り上げられた「家庭医」について書いてみたいと思います。「非常時には医療機関の『経営の自由』を制限せよ」日本経済新聞は、5月4日、5日と連続で、「医療提供体制を問い直す」という社説を掲載しました。通常、社説は1日2テーマないし1テーマで、連続して同じテーマが掲載されることはありません。ゴールデンウィークで話題がなかったという事情もあるとは思いますが、極めて異例なことです。同紙は5月1日、2日の朝刊でも、「コロナ医療の病巣 機能不全の実相」という連載記事を掲載、コロナを診療拒否する医療機関の現状や、非常時における民間病院の「経営の自由」の問題点を指摘しています。社説はその総まとめ、という位置づけのように感じました。社説の内容は、ある筋の人が読めば相当カチンと来るだろう“刺激的”なものでした。5月4日の社説「医療体制を問い直す(上) 非常時の病床確保に強力な措置を」では、「新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の医療提供体制のもろさを浮き彫りにした」として、「今後の人口減少社会で医療の質を維持するためにも、日本の医療体制に早急にメスを入れる必要がある」と提言、「小規模に分散した医療資源でコロナ病床を増やすには、医療機関の役割分担を徹底するしかない」と、日経がこれまで主張してきた論を改めて強く主張しています。その上で、大規模病院、中規模以下病院、療養型病院や高齢者施設の役割を明示、「非常時には医療機関の『経営の自由』を制限し、強制力を持って医療機関に病床を確保させることができる仕組みを早急に整えるべき」として、経営を医療機関の自由に任せている現状は「非常事態に対応できない致命的な欠陥」と断じています。「患者はまず家庭医にかかるのを原則」とせよ続く5月5日の社説「医療体制を問い直す(下) 初期診療をこなす家庭医を増やせ」では、その矛先は診療所の開業医(つまり日本医師会)にも向けられました。「世界に冠たる」と言われて来た国民皆保険が「幻想にすぎなかった現実をあぶり出したのがコロナ禍である」、「人口あたりの病床数は格段に多いにもかかわらず、治療体制のゆき詰まりが露見した」と厳しく批判。その上で、「医療の主役である患者第一を貫きつつ、効果が高くコストが低い医療体制に向けた再構築のカギを握るのは、欧州などで一般化している家庭医制度の普及である」と主張、どの病院・診療所にもかかれる「フリーアクセス」制度が大病院志向を生む要因にもなっているとして、「患者はまず家庭医にかかるのを原則」とせよ、と論じています。さらに「患者はGPと呼ばれる資格を持つ家庭医に登録し、病院ではなく登録GPにかかるのを基本とする」 という英国のNHS(National Hearth Service)の家庭医制度を紹介。「日本は一般に、開業医に比べ勤務医の労働環境が過酷」として、「働き方改革を推し進めるためにも大学医学部は家庭医養成を急いでほしい」としています。日本医師会ではタブーだった「家庭医」私自身は日経のこの社説、全体として正論だと思いました。実際、コロナ対応に積極的でない民間病院の存在や、コロナ診療における診療開業医の存在感のなさは、これまで医療提供体制に疎かった一般の人ですら認識、批判するまでになっています。それにしても、「医療機関の経営の自由制限」「フリーアクセスの問題点指摘」「家庭医制度の普及」と、日本医師会がカチン(一昔前なら激怒)と来そうなキーワードをわざわざ用いて、日本の医療提供体制に大胆に“物申し”た姿勢はあっぱれと言えるでしょう。私がとくに驚いたのは「家庭医」という言葉を使っていたことです。「家庭医」は、日本医師会にとって40年近くもタブーとされてきた言葉です。総合医、総合診療医、あるいはかかりつけ医という差し障りのない言葉ではなく、「家庭医」という言葉を敢えて使っていたとしたら、それは相当挑戦的、かつ挑発的なことです。患者登録制と人頭払いを嫌った日本医師会「家庭医」は、日本医師会の中では使ってはいけないタブーの言葉となった原因は、今から36年も前に繰り広げられた「家庭医論争」にあります。1985年から87年にかけて、地域の診療所開業医の新しい機能・役割として家庭医の制度化が議論され、「家庭医論争」が巻き起こりました。厚生省(当時)は「家庭医懇談会小委員会」を設け、地域における家庭医の必要性、家庭医療学確立の重要性などが議論されました。しかし、日本医師会は「家庭医の制度化は開業医療に対する国家統制だ」という論陣を張り猛反対、最終的に制度化は見送られ、家庭医構想そのものも葬り去られました。この時も、NHSの家庭医(GP)制度が一つのモデルとして紹介されました。しかし、GPは患者登録制で報酬体系も人頭払い主体であったため、「フリーアクセス」「自由開業」「出来高払い」を金科玉条のごとく堅持することで存在意義を保ってきた日本医師会の逆鱗に触れたわけです。以降、「家庭医」という言葉を、日本医師会の幹部が建設的な意味合いで使うことはなくなりました。2018年から新しい専門医制度において総合診療専門医が位置づけられましたが、その議論の過程でも「家庭医」という言葉はほとんど使われていません。「出席した人は全取っ替えしないとダメです」と長嶋氏が、しかし、新型コロナ感染症の感染拡大によって、「フリーアクセス」や「自由開業」、そして日経新聞の言う「自由な経営」が、非常時における効率的な医療提供体制の構築に大きな足かせになっていることが明白になってきました。さらに、日本医師会が推し進めてきた「かかりつけ医」(第29回 オンライン診療恒久化の流れに「かかりつけ医」しか打ち出せない日医の限界を参照)も、このコロナ禍でたいした機能を発揮していないことは誰の眼にも明らかです。病院の機能再編に加え、「家庭医」や「かかりつけ医」の再定義や制度化は、正真正銘待ったなしの状況になってきたと言えるでしょう。そんな中、ここに来て、家庭医、かかりつけ医の制度化を改めて進めようという動きが出てきました。財政制度等審議会・財政制度分科会や経済財政諮問会議などでの提言・議論がそれです。折しも、政治資金パーティ出席で日本医師会の中川 俊男会長は国民の信頼を大きく損ない、「出席した人は全取っ替えしないとダメです。今後この人の言うことを聞きますか?」(5月16日に放映されたフジテレビ系の情報番組「ワイドナショー」でのタレントの長嶋 一茂氏の発言)という声すら出ています。パーティがあった翌日(4月21日)、中川氏は日本医師会の定例記者会見で「3度目の緊急事態宣言は不可避の状況」との見解を示し、早急に厳しい制限を伴った緊急事態宣言の発令を政府に要望していました。医療体制逼迫を訴えるのとは裏腹に、自分だけ政治家パーティに出席(つまり医師会の利益のための活動を最優先)していたという事実は、日本医師会にとって(自分たちが考える以上の)相当大きなダメージとなるでしょう。ひょっとしたら、封印されていた“家庭医構想”というパンドラの匣(日本医師会にとっての)が再び開くことになるかもしれません(この項続く)。

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

 筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。 本論文ではデンマークとノルウェーにてChAdOx1-Sワクチン接種を受けた28万1,264例を対象とした。北欧諸国は医療データベースの確立された国である。2021年2月9日~3月11日に接種を受けた18~65歳の症例の動脈・静脈血栓イベントの発現率を、デンマークの2016~18年、ノルウェーの2018~19年のワクチン接種を受けていない18~65歳と比較した。ワクチン接種後28日以内のイベントに着目した。心筋梗塞などの動脈血栓イベントについてはChAdOx1-S接種後でも増加を認めなかった。静脈血栓イベントはコントロールの人口10万人当たり30人に比較して、ChAdOx1-S接種後は59人と多かった。標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)であった。ワクチン接種の全体に比較すれば静脈血栓イベントを発症した絶対数は多くはない。しかし、18~65歳の健常人では少数の副作用でも許せないというヒトもいるだろう。新型コロナウイルス感染の血栓症の特徴を示しているのか、一般にはほとんど発症しない脳静脈洞血栓が7例に発症している。 本研究では血栓イベントのみでなく凝固異常、出血イベントにも注目している。血小板減少が起こる症例は17例とコントロールの6人よりも多い。原因が解明されない場合が多い。気道出血もワクチン後は35例、コントロールは16例とワクチン後に多かった。新型コロナウイルス感染による血栓形成、凝固異常の原因には不明の部分がある。本研究はChAdOx1-Sワクチン接種後、静脈血栓、脳静脈洞血栓が少数ながら北欧の2つの国の歴史的対照群よりは多いことを示唆した。ワクチン接種により地域の感染拡大速度低減、医療崩壊リスクを低減できると期待できる。圧倒的少数例ではあるが、静脈血栓、静脈洞血栓などが増えることを示唆した本論文を読んで、各国の規制当局、個人はどう考えるだろうか? 個人にとっての正解は常に不明である。科学は客観的数値を与えてくれるが、常に限界が伴う。結果を公表し、公表された結果からみんなが考え、今の時点での最適解を個人なり、国なりに考えざるを得ない。 読者の皆さん、この結果を読んで自分はChAdOx1-Sを受けたいと思うかどうか? 自分が厚生労働省の専門官として政府として、このワクチンを日本国にて承認して使用するかどうか? 自分がワクチンを選択できる自治体の長であったら、自らの自治体にて本ワクチンを接種するか否か? 各々どのような論理にて周囲を説得するか? この機会に自分なりの考えをまとめてみるとよい。

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東京五輪での医師ボランティア募集、8割が否定的/会員アンケート結果

 コロナ禍で医療崩壊が叫ばれ東京オリンピック・パラリンピックの開催自体が危ぶまれる中、同競技大会組織委員会が日本スポーツ協会公認のスポーツドクターからボランティア約200人を募集していたことが明らかとなった(募集は5月14日で締切、応募総数は393人)。この募集に対して、当事者となる医師たちはどのような心境だろうかー。スポーツドクターの資格有無を問わず、8割超が「応募しない」と回答 本アンケートは、スポーツドクターの有資格者が多い診療科(整形外科、救急科、リハビリテーション科)かつ競技会場となる9都道県(北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)在住のケアネット会員医師を対象に実施[5月7日(金)~12日(水)]。ボランティアへの応募意向をはじめ、参加時に心配な点や募集に対して感じたことなどを伺った。 本ボランティアの活動期間は3日間程度でも可能、1回当たりの活動時間は約9時間(休憩含む)であるが、応募希望について、Q2で『東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、日本スポーツ協会公認のスポーツドクターを対象に医師200人程度をボランティアとして募集していますが、応募を考えていますか?』と質問したところ、スポーツドクターの資格有無を問わず、全回答者の86%(215人)が「応募しない」と回答。主な理由を以下に抜粋した。 「現在の社会情勢を考慮していないと考える(30代、200床以上)」 「明らかにコロナ対応を意味しているのに、スポーツドクター募集に違和感。開催の是非で未だに揉めている大会に参加したくない(40代、100~199床)」 「ワクチン接種の医師が足りないと言っていながら、医師募集とは矛盾している気がする(50代、200床以上)」 「付け焼き刃的。非現実的(60代、100~199床)」 また、今回のように専門職をボランティア募集しておきながら大会組織委員には日当が出ることに疑問を感じている医師も一定数いた。 このほか、スポーツドクターの資格を持ち、実際に応募したという医師からも、今回のオリンピック開催については、「コロナにリソースを傾けるべき時に、逆のことをしていると思う(30代、200床以上)」などの否定的な声もみられた。一番の不安要素は「自身の出勤制限」だが、日当があれば参加する? Q3『もしボランティアに参加した場合、心配な点はありますか?』では、「自身の出勤制限」「施設内の医師不足」「給与/売上」の順で回答が多かった。また、Q4『Q2で「応募しない」と回答した方に伺います。どのような条件なら応募しますか?』では、多数が「日当があれば」と回答、多くが「10万円以上」を希望していた。国内のスポーツドクター数は約6,400名 日本スポーツ協会の定めるスポーツドクターの受講条件は、「受講開始年度の4月1日時点で日本国の医師免許取得後4年を経過(受講開始年度の4年前の4月1日以前に取得)し、当協会または当協会加盟(準加盟)団体から推薦され、当協会が認めた者」で、現在のスポーツドクター登録数は6,420名(令和2年10月1日現在)である。登録者の専門診療科は整形外科をはじめ、救急科、リハビリテーション科、形成外科、リウマチ科などで、今回応募した約390名はこの登録者の6.1%にあたる。また、スポーツ医に該当する資格はこのほかにも、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定の健康スポーツ医などがある。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『東京五輪の医師ボランティア募集、どう考える?』

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第54回 予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用

<先週の動き>1.予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用2.高齢者ワクチンの7月終了見込みは全国で85.6%、首都圏に遅れ3.検査キットを病院・介護施設に800万回分無償配布/厚労省4.介護保険料が20年で倍加、全国平均が月額6,000円台に5.ドラッグラグ再燃に懸念、薬価引き下げ制度の見直しを/中医協6.オリンピックの開催中止を求める声明/全国医師ユニオン1.予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用河野 太郎規制改革担当相は、13日の参議院内閣委員会において、厚労省で現在審査中の米・モデルナ並びに英・アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、5月下旬には承認される見通しを明らかにした。さらに、東京都と大阪府に開設された大規模接種会場では、モデルナのワクチンを使用すると説明。モデルナワクチンも2回接種が必要で、接種間隔は4週間。予防効果はファイザー製95%に対して、ほぼ同等の94%とされる。なお、イギリスのオックスフォード大学の研究者らによって、ファイザー製ワクチンとアストラゼネカ製のワクチンを併用すると有害な副反応が増えることが発表されており、今後、接種に際しては注意が必要だ。(参考)モデルナ製ワクチンの有効性、ファイザーと遜色なく 大規模接種で使用(日本経済新聞)ワクチン併用で副反応増加、重症化はせず 英国治験の暫定結果(産経新聞)2.高齢者ワクチンの7月終了見込みは全国で85.6%、首都圏に遅れ総務省と厚労省は、12日に各市区町村における高齢者ワクチン接種の終了見込みを発表した。政府が目標とする7月末までに終了する見込みだと回答した自治体は85.6%で、全国の高齢者人口に占める割合は84.5%。この中で、岩手・新潟・富山・石川・福井・岐阜・京都・兵庫・奈良・和歌山・鳥取・島根・山口・徳島・愛媛・長崎・大分の17府県では、7月末までにすべての市町村で接種が終了する見込み。一方、東京都67.7%、埼玉県73%、千葉県66.7%、神奈川県84.8%と首都圏で遅れが目立ち、最も低かったのは秋田県で56%に留まった。これに対して、菅総理は「1日も早く接種できるように取り組みたい」として、7月末までの接種完了に向けた自治体への支援を強化することを明らかにした。ワクチン接種をめぐっては、当初は供給量が問題とされたが、現時点では人員不足が課題となっており、厚労省は医療人材向けの求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」で人材募集を支援するなど取り組みを強化している。(参考)高齢者コロナワクチン接種、7月末終了見込みは85.6% 総務省・厚労省が取りまとめ公表(CBnewsマネジメント)資料 高齢者に対する新型コロナワクチン接種について(厚労省)医師・看護師・医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」(同)3.検査キットを病院・介護施設に800万回分無償配布/厚労省政府は、14日に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部において、感染が急速に拡大している地域で、医療提供体制のひっ迫も見られることなどから、N501Y変異株スクリーニング検査の実施や、変異株などの全国的な監視体制を継続することを明らかにした。また、厚労省は同日に「新型コロナウイルス感染症の検査体制整備に関する計画」を発表した。PCR・抗原検査を1日最大77.2万件程度まで充実させるため、コロナウイルス抗原キットを病院や介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどに800万回分を配布し、検査体制の拡充を図る。(参考)PCR・抗原検査、緊急時は1日77万件の分析可能に(読売新聞)厚労省、抗原検査キット配布を「可能な限り早く進める」 介護施設など対象(JOINT)資料 新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 5月14日変更(新型コロナウイルス感染症対策本部)4.介護保険料が20年で倍加、全国平均が月額6,000円台に厚労省は14日、介護保険料が今年度より改定され、全国平均が月額6,000円を超えたことを公表した。高齢化とともに介護保険料は年々上昇しており、介護保険制度が発足した2000年度の平均支払額2,911円と比べると2倍以上になっている。現在、65歳以上で介護や支援が必要と認定された人は667万人で、65歳以上の保険者に対する割合は18.7%だが、今後2025年には20.5%、2040年には22.8%と介護費用の増大が推測される。政府は、全世代型社会保障改革について討議を進めており、介護については、保険者の努力支援制度の強化と介護インセンティブ交付金の強化を行うなど、持続可能性の高い介護提供体制の構築を目指している。(参考)介護保険料2.5%上昇 65歳以上で初の6000円超え(日経新聞)資料 第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について(厚労省)5.ドラッグラグ再燃に懸念、薬価引き下げ制度の見直しを/中医協厚労省は、12日に中央社会保険医療協議会薬価専門部会と総会を開催し、2022年度の薬価制度改革に向け製薬団体から意見を聴取した。日本製薬団体連合会からは、新薬の特許期間に市場実勢価格に応じた薬価引き下げが行われており、研究開発投資の削減と競争力低下、日本市場の魅力低下によりドラッグラグが再燃する懸念を挙げ、特許期間中の新薬について薬価を維持する新薬創出等加算の見直しや、薬価引き下げに用いられる市場拡大再算定ルールの見直しを求めた。総会では、年間販売額が350億円を超え、承認時に予測していた基準年間販売額2倍超の要件を満たしたテセントリク、ビンダケルなど医薬品10品目に対し市場拡大再算定を行い、8月1日からの薬価引き下げを了承した。(参考)特許期間中の薬価維持を‐製薬協など新薬加算見直し要望(薬事日報)中医協総会 テセントリク、ビンダケルなど5成分 市場拡大再算定適用で薬価引下げへ(ミクスonline)6.オリンピックの開催中止を求める声明/全国医師ユニオン13日、勤務医らで作る労働組合が東京オリンピック・パラリンピックの中止を訴え、国に要請書を提出した。新型コロナウイルス感染拡大が十分にコントロールされていない中開催することで、新たな変異株の脅威に晒されるなどの懸念を表明した。全国医師ユニオン代表の植山 直人医師は会見で「選手にはつらい話だが、大会中止は誰かが言い出さなければならない。医療従事者は声を上げることが求められていると思うので、あえて要請を行った」と語った。(参考)「東京五輪・パラ中止を」勤務医の組合が国に要請書(NHK)医師ユニオンが五輪中止を要請「新たな変異株生む恐れ」(朝日新聞)要請書 危険な変異株ウイルスを拡散し新たな変異株を生みだす危険性が高い東京オリンピックの開催中止を強く求める(全国医師ユニオン)

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか?:Ad26.COV2.S(Janssen)の場合(解説:後藤信哉氏)-1390

 新型コロナウイルス禍の克服の鍵の1つがワクチンである。人類は科学技術の英知を結集して驚くべき速さにて新型コロナウイルスに対するワクチンを複数開発した。予後の悪い疾病に対する治療と異なり、健常人に接種するワクチンには高い安全性が要求される。有効かつ安全なワクチンの開発には一般に長い年月がかかる。複雑精妙な人体の調節系は完全に理解されていない。薬剤であれ、ワクチンであれ、投与後の反応を個別予測する演繹的方法は確立されていない。拡大する新型コロナウイルス感染、感染すれば致死率は2%に至るとされる。人類全体として見ればワクチンによる免疫の獲得は感染の拡大速度を減少させ、医療崩壊を防ぐ効果を期待できる。現在も感染の第4波が拡大し、地域によっては医療崩壊にひんしている日本では感染拡大速度を減少させるワクチンを急速に拡大させたい。集団としての視点から日本国内のワクチン接種に反対するヒトは少ないと思う。しかし、予防介入、治療介入には副作用がある。安全性の高いワクチンであっても、ワクチン接種直後に心筋梗塞、脳梗塞などを偶然発症する場合もある。副作用なのか、偶発症なのか、個別のイベントにおける判断は難しい。 今回JAMA誌に掲載されたのはAd26.COV2.Sワクチン接種後、6~15日にて60歳以下の症例に発症した12例の脳静脈洞血栓症の報告である。脳静脈洞血栓とは聞き慣れない名前である。もともと中年女性に多いとされるが、ワクチン接種の6~15日に起こればワクチン接種と関係がありそうである。ワクチン接種と無関係の偶発症と、ワクチンによる副作用の弁別は困難である。本論文に報告された症例は12例と多くはないが、ワクチン接種との関係性が示唆される。まず、一般社会における静脈洞血栓が少ない。さらに、この12例のうち11例に免疫的血栓症であるヘパリン惹起血小板減少・血栓症の抗体が陽性と報告されている。ヘパリン惹起血小板減少・血栓症も治療困難な疾患である。実際、60歳以下の症例であっても3例が死亡、3例にICU入院が必要となった。 本論文では個別の症例の情報を多く記載している。ワクチンがよいとか悪いとかの結論でもない。ワクチン接種と関連しそうな特殊な血栓症があるので、本質を追求しようと結論している。 繰り返すが人体は複雑精妙な調節系である。筆者はワクチン接種により新型コロナウイルス感染拡大速度の低減に期待している。しかし、人体への介入に対する結果の予測は困難である。個別にはワクチン接種により不可逆的疾病が惹起される個人がいるかもしれない。ワクチン接種による人類全体の長期的反応も未知である。一見不都合に見える結果も公表し、少数ではなく、多数の意見にてベストを見いだそうとする米国の姿勢は筆者には好ましく思える。皆さんはどう思うだろうか?

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ファイザー社ワクチン、無症候性感染も予防か/Lancet

 2020年12月から英国において、ファイザー(BNT162b2mRNA)およびアストラゼネカ(ChAdOx1nCOV-19)の新型コロナウイルスワクチン接種が急速に進められている。今回、SIREN Study Groupに所属するオックスフォード大学のVictoria Jane Hall氏らは、両ワクチンの適用範囲に関する因子を特定することを目的に、無症状で定期的な検査を受けている医療従事者を対象者としてBNT162b2mRNAのワクチン効果を記録した。その結果、BNT162b2mRNAワクチンが症状の有無にかかわらず生産年齢人口の感染を予防できることを明らかにした。また、今回の対象者は変異株B1.1.7流行時にワクチン接種されており、この変異株に対しても有効性を示していた。Lancet誌2021年4月23日号掲載の報告。 SIREN Studyは、英国の公立病院で働くスタッフ(18歳以上)を対象とした前向きコホート研究。参加者は陽性群(抗体陽性または感染歴あり[過去の抗体検査またはPCR検査で陽性])と陰性群(過去の抗体検査またはPCR検査で陰性)のいずれかに割り当てられた。ベースライン時点の危険因子は登録時に収集、臨床経過は2週間ごとに収集された。ワクチン接種の有無は全国予防接種管理システムとアンケートを紐付けて収集した。参加者は隔週で PCR検査と毎月の抗体検査を受け、SIREN以外のすべての検査(症状を有する人の検査を含む)も受けた。フォローアップ期間は2020年12月7日~2021年2月5日だった。 主要評価項目は、ワクチン接種を受けた参加者のワクチン接種範囲の分析結果とPCR検査によるワクチンの有効性の確認だった。 主な結果は以下のとおり。・2万3,324例がこの分析の選択基準を満たし、英国の104サイトに登録された。・参加者の年齢中央値は46.1歳(IQR:36.0~54.1)で、1万9,692例(84%)が女性だった。・分析開始時に8,203例(35%)が陽性群に、1万5,121例(65%)が陰性群に割り当てられた。・総追跡期間は丸2ヵ月で110万6,905人日(ワクチン接種:39万6,318、ワクチン未接種:71万587)だった。・2021年2月5日時点のワクチン接種率は89%、そのうちの94%がBNT162b2ワクチンを接種していた。・ワクチン接種率の低さは、既感染、性別、年齢、民族性、職業、 Index of Multiple Deprivation(IMD:イギリスの各地域の相対的豊かさをデータに基づき数値化した指数)のスコアに関連していた。・フォローアップ中、ワクチン未接種の参加者で977例の新規感染があった(感染発生密度:14例/1万人日あたり)。・ワクチン接種済みの参加者は、最初の投与から21日以上経過の後に新規感染が71例(発生率:8例/1万人日あたり)発生、2回目の投与から7日後に9例が感染(感染発生密度:4例/1万人日あたり)した。・ワクチン未接種の参加者では、543例(56%)が典型的な新型コロナ症状を示し、140例(14%)は無症状もしくはPCR検査14日前の時点で無症状だった。一方で、ワクチン接種済みの参加者では29例(36%)は典型的なCOVID-19症状を示し、15例(19%)が無症状だった。・本研究対象集団において、BNT162b2ワクチンの初回投与から21日後では70%(95%信頼区間[CI]:55~85)、2回の投与では7日後に85%(95%CI:74~96)のワクチン有効性を示した。

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第57回 ワクチンの優先接種を強要する人、廃棄対策員に廻ればいいのに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)のワクチン接種が徐々に本格化している。医療従事者を除く一般国民で最も優先順位が高い接種対象者である高齢者(約3,600万人)への接種がゴールデンウイーク明けから始まった。一個人としても実家で暮らす80代の両親が5月10日に1回目の接種を終え、ほっとしているところだ。そんな最中、嫌なニュースが飛び込んできた。「何とかならないのか」愛知県西尾市の副市長、スギ薬局創業者夫妻の新型コロナワクチン予約枠の優先確保を指示(東京新聞)ドラッグストア業界で売上高国内トップ10に入るスギ薬局創業者で、そのホールディングスカンパニーであるスギHDの会長夫妻の秘書が、夫妻が優先的にワクチン接種できるよう地元の愛知県西尾市に再三要請。最終的に副市長と健康福祉部長が通常の予約申し込み電話とはまったく別に、健康福祉部健康課に電話をすることで予約が成立する便宜を図っていたことが発覚したというものだ。前述の第一報でスギHD広報室は「市に問い合わせは何度かしたが、便宜を図ってもらうよう依頼したことは一切ない」とコメントしていたが、その後の西尾市による記者会見の内容、またスギHDが公表したお詫びコメントを合わせて考えれば、第一報でのスギHD広報室のコメントは虚偽となる。記者目線で見ると、お詫びコメントも非常に往生際の悪いものとなっている。明らかに便宜供与を要求しているにも関わらず、最後まで「問い合わせ」という言葉で誤魔化しているからだ。ちなみにやや口酸っぱく言うと、医療関係の上場企業の中でもこうした往生際の悪さは製薬企業以外ではよく見かける。要は上場企業としての情報開示や危機管理の経験が浅いため、外向き発信(対外的謝罪)であるはずなのに内向き発信(会社防衛・社内への忖度)の姿勢が露骨に滲んでしまうのである。さて今回の一件、正直本当に厄介なことをしてくれたものだと思っている。今後のワクチン接種を推進していく際のイレギュラー時の対応に少なからぬ影響を及ぼしてしまうと個人的には危惧している。そもそも今回のワクチン接種がこれほど注目を集め、さらに現場からさまざまな混乱が伝えられるのには訳がある。医療従事者の皆さんには釈迦に説法だが、第一に必要性が非常に高いにもかかわらず現時点では供給量が限定的なことが挙げられる。が、それ以上にこのワクチンの保管管理が非常に面倒なことが混乱に拍車をかけている。当初の保管管理温度は-70℃前後とされた。もはやホッキョクグマですら生存可能かどうかわからないのではないかと思える温度であり、現在では-20℃前後に緩和されたとはいえ、それでも通常の医療機関で保管管理が容易なものではない。また、1バイアル当たりの接種可能回数は半端な6回(注射器によっては5回)。解凍後の冷蔵保存期間は5日間で再冷凍は不可。接種の準備のため生理食塩水で希釈後は室温では6時間しかもたない。つまるところ、この特性ゆえに何らかの予定変更や接種予定者の体調不良で直前のキャンセルなどが発生すれば、せっかく用意したワクチンが無駄になる可能性が少なからずあるのだ。しかも、現在の優先接種対象である高齢者の場合、若年者と比べれば突発的な体調不良が発生する蓋然性は高い。とにもかくにも、ワクチンの無駄を発生させることなく接種するのは相当大変なことである。すでに予定していた接種のキャンセルなどで余ったワクチンを廃棄した事例も報じられている。そして、こうした場合の対応についてワクチン接種担当を務める河野 太郎・内閣府特命担当大臣は4月13日の記者会見で次のように発言している。「それから、昨日、高齢者の接種の中で、余ったワクチンが若干ではありますが廃棄されることがあったようでございます。余ったワクチンが廃棄されないようにということはお願いしてまいりまして、できれば接種券を持っている高齢者がいれば打っていただき、接種券がなくても年齢的に対象になる方がいれば打っていただき、高齢者がいらっしゃらなければそれ以外の方という、できればそういう順番で対応していただきたいと思っております。他市・他県の方でも一向に構いません。まったく制約はございませんので、ワクチンが破棄されないように現場対応でしっかりと打っていただきたいとお願いをしたいと思います。また、接種券がなくて打った場合には、しっかりと記録をしておいていただきたいと思います。」これに関しては記者会見での質疑応答でも次のようなやり取りがある。質問ワクチンの廃棄に関してなんですが。接種券を持っている人がいればその辺りということなんですが、それはどういうことを想定しているのか。要は近くにいる人に役所が電話して呼び寄せろということなのか、たまたまその辺を接種券を持って歩いている奇特な人を探してくださいということなのか、もう少しわかりやすくイメージできることを教えてください。回答もう現場対応で結構です。質問ワクチンの廃棄に関して、他市・他県の方にも誰にでも現場判断で打って構わないということだったんですが、これは高齢者で接種券を持っている方であれば他市・他県の方でもという意味なのか。それとも、極端に言えば、医療従事者でもないし高齢者でもないという若い方がいて、それでも本当に余っていたらワクチンの廃棄を回避するという観点から希望者は誰にでも打って、現場判断で構わないということですか。回答それで結構です。優先順位から言えば、医療従事者ですとか高齢者、高齢者の中でも接種券を持っている方がいればその方を優先していただきたいと思っておりますが、若い方でもそこで予診をやっていただいて、打って問題ないということであれば打っていただいて、どなたに打ったかしっかり記録すると。ですから、身分証をしっかり確認していただくということは必要になるのかもしれませんけれども、廃棄せずにきちんと対応していただきたいと思います。地方自治体の関係者からすれば「丸投げ」と言えるかもしれないが、いずれにせよ読めば分かる通り、非常時は「無駄にするくらいならば、身分確認の上で誰に接種しても良い」ということなのだ。ただ、規則に従って業務を遂行することが何事でも基本のお役所の担当者はこうした時の柔軟な対応が苦手だ。それに加え今回のスギHD会長夫妻の接種順位割り込み事例のようなケースが明るみに出ると、局面が異なることにもかかわらず、不測の事態でワクチンが余っても公平性の担保について過剰に気を使うプレッシャーがこれまで以上に働く可能性が否定できない。結果、(1)ワクチンが急遽余った→(2)接種券を持つ接種待機高齢者を探せ→(3)基礎疾患を有する人を探せ、という経過をたどり、せっかく河野大臣が「余ったら誰に打っても良い」と公言してくれているのに、タイムオーバーあるいは過剰な懸念でワクチンが廃棄となる可能性がある。ここで原点に戻って考えたい。そもそも今回のワクチン接種は、多くの人に免疫を獲得してもらうことで少しでも早く社会機能を回復するために血税が投入され、全員が無料で接種できる。ただ、現時点では供給量に限りがあることや、マンパワーに基づく接種回数の限界もあるため、便宜上優先接種順位が設定されているに過ぎないと言っても過言ではない。総合的に考えれば、優先順位の順守よりも廃棄を防ぐことのほうがプライオリティーが高いのは明らかである。現在のヒトと新型コロナウイルスの戦いは、まさに囲碁の戦いのようなもの。囲碁では自分が持つ白・黒いずれかの碁石で、相手の碁並べ(連絡網)を分断しながら、自分側の碁並べをつないで相手が入れない自分の陣地を数多く作ることが勝利へとつながる。これをより具体的に例えるならば、ワクチン接種者という白い碁石でつながった陣地が増えれば、ウイルスの伝播と言う黒い碁石の繋がりは切断され、白い碁石の勝利が近づく。白い碁石がつながった陣地が増えることは、集団免疫の獲得に例えられるだろう。とにかく誰であれ接種者を増やすことは、接種者本人だけでなく、非接種者も守られることを意味し、それだけ集団免疫に向かって一歩前進することになる。だからこそ、廃棄が発生する非常時なら、接種を行う自治体担当者や医療従事者の家族やそれらの人とたまたま連絡が付きやすい知人を呼び寄せるなど誰でもいいから接種すべきだ。そのほうが明らかに公益に適っている。とにかく接種を担当する医療従事者や自治体関係者にはそのことを肝に銘じてほしいと思う。もっとも、こうした非常時の対応はどんなに理論武装してもあれこれ言う人はいる。だからこそ、非常時ではない正規の機会が均等に保証されるべき接種予約段階で、冒頭のような残念なケースが発生したことの影響は少なくないと感じてしまうのだ。いずれにせよ非常時にたまたま接種できる人に接種することを医療従事者も自治体関係者も臆する必要はないし、たまたま繰り上がりで接種を受けた人もコソコソする必要はない。その意味でも社会全体として幸運にして接種順位が繰り上がった人が堂々と「たまたま打てたよ」と言え、周囲も「良かったね」と言ってあげられる社会であってほしいと思う。

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AZ製ワクチン、血栓症の絶対リスクは?/BMJ

 Oxford-AstraZeneca製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1-S」の接種を受けた人では、脳静脈血栓症を含む静脈血栓塞栓症の発生がわずかに増加することが確認された。他の安全性については、血小板減少症/凝固異常と出血イベントの発生がわずかに高かったが、ワクチン接種を受けた人のサーベイランスが強化された影響のためか、大部分は安心してよい結果であったという。デンマーク・南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らが、同国とノルウェーで実施したコホート研究の結果を報告した。自発的な有害事象の報告や臨床のケースシリーズにおいて、ChAdOx1-S接種後数日から数週間以内に血小板減少症、出血、動脈/静脈血栓症が発生したことが確認されているが、これらの発生について一般集団での自然発生に基づく予想より過剰かどうかは不明であった。BMJ誌2021年5月5日号掲載の報告。デンマークとノルウェーで初回ワクチン接種者約28万人について、一般集団と比較 研究グループは、2021年2月9日~3月11日にChAdOx1-Sの初回接種を受けた18~65歳の全員(ワクチン接種コホート)と、デンマーク(2016~18年)およびノルウェー(2018~19年)の一般集団を比較コホートとして検討した。 デンマークおよびノルウェーにおける全国患者登録(すべての病院をカバー)からデータを抽出。主要評価項目は、ワクチン接種後28日までに観察された動脈イベント、静脈血栓塞栓症、血小板減少症/凝固異常および出血イベントの発生で、両国の一般集団における年齢別および性別特異的自然発生率に基づく期待数と比較した。 ワクチン接種コホートには、デンマークからの14万8,792例(年齢中央値:45歳、女性80%)と、ノルウェーからの13万2,472例(44歳、78%)の計28万1,264例が含まれた。静脈血栓塞栓症の過剰発生は、ワクチン接種10万人当たり11人 ワクチン接種コホート28万1,264例において、動脈イベントの標準化罹患率比は0.97(95%信頼区間[CI]:0.77~1.20)であった。 静脈血栓塞栓症は、ワクチン接種コホートで59件観察されたのに対し、一般集団の発生率に基づく期待数は30件であり、標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)、ワクチン接種10万回当たりの過剰イベント数は11件(95%CI:5.6~17.0)であった。 脳静脈血栓症の発生も期待数より高く、標準化罹患率比は20.25(95%CI:8.14~41.73)で、ワクチン接種10万回当たりの過剰イベント数は2.5件であった。血小板減少症/凝固異常の標準化罹患率比は1.52(0.97~2.25)、出血イベントは1.23(0.97~1.55)であった。死亡は、ワクチン接種コホートで15例確認されたが、予測数は44例であった。 結果を踏まえて著者は、「ChAdOx1-S初回接種後28日間において、静脈血栓塞栓症発生増大のエビデンスは示されたが、絶対リスクは小さかった。示された絶対リスクについては、ワクチンの有効性が実証されていることや、特定の国の一般化には限定的な研究結果であることを考慮して解釈すべきであろう」とまとめている。

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ファイザー製ワクチン、2回接種で種々の変異株に有効か?/横浜市立大

 横浜市立大学の山中 竹春氏(学術院医学群 臨床統計学)らの研究チームは、ファイザー製新型コロナウイルスワクチンが、従来株のほか流行中のさまざまな変異株に対しても中和抗体の産生を誘導し、液性免疫の観点から効果が期待できることを明らかにした。この研究成果について、同研究者らは5月12日の記者会見で報告した。なお、本研究成果はプレプリント段階であり、今後、学術雑誌に投稿される見込み。 本研究は、日本人のワクチン接種者111例(未感染:105例、既感染6例)を対象に、ファイザー製ワクチンの有効性を中和抗体(液性免疫)の保有率という観点から調査。独自の迅速抗体測定システム『hiVNT 新型コロナ変異株パネル』1)を活用して、従来株(D614G)および変異株7種(英国株:B.1.1.7、南アフリカ株:B.1.351、ブラジル株:P.1、インド株:B.1.617、カルフォルニア株:B.1.429、ニューヨーク株:B.1.526、由来不明株:R.1)の計8株に対する中和抗体を測定した。この株の選定理由はCDC(米国疾病予防管理センター)が注意すべき変異株として公表していることに基づく。 今回利用した『hiVNT』システムは、複数の変異株をとりそろえて(パネル化)、それらに対する中和抗体を一括して評価するもの。元来の方法では中和抗体測定に長時間(通常72時間~1週間)を要するが、このシステムが開発されたことで、3時間で測定可能になった。 主な結果は以下のとおり。・評価対象の未感染105例の平均年齢は42歳だった(範囲:24~67歳)。・未感染者でワクチンを2回接種した人のうち、99%の人が従来株に対して中和抗体を保 有していた。また、流行中のN501Y変異を有する3つのウイルス株(英国、南アフリカ、ブラジルで初めて確認された株)に対しても、90〜94%の人が中和抗体を有していた(従来株[1回目接種後の陽性割合:57%、2回目接種後の陽性割合:99%]、英国株[同:18%、同:94%]、南アフリカ株[同:21%、同:90%]、ブラジル株[同:16%、同:94%]、カルフォルニア株[同:39%、同:97%]、ニューヨーク株[同:55%、同:98%]、由来不明株[同:34%、同:97%])。 ・現在懸念されているインド由来の株に対しても、中和抗体の陽性率が低下するような傾向は見られなかった(同:37%、同:97%)。・未感染者において、計8株すべてが中和抗体陽性であった人は、全体の89%(93/105)だった。・中和抗体の上がり方については個人差が見られた。とくに1回接種のみでは、変異株に 対して中和抗体が産生されない人が一定数存在した。・既感染者は1回目の接種後すぐに十分な量の中和抗体が産生される可能性があるが、追加データによる検証が必要である。 今後も変異株のさらなる出現が予想される。そのため、新たな変異株が登場した際に、それらに対する中和抗体の保有状況を集団レベルですみやかに調べ、既存ワクチンの有効性を評価できる手法が求められる。研究者らは「本研究で使用した中和抗体の迅速測定システム『hiVNT』を社会実装に繋げられるよう、さらなるデータの蓄積を進める予定」とコメントした。

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大阪コロナ風景【Dr. 中島の 新・徒然草】(374)

三百七十四の段 大阪コロナ風景大阪ではコロナの新規感染者数が増えたり減ったり。でも、体感的にはどんどん状況が悪化しています。医療者の悲壮感と外来患者さんの悠長さとのギャップが悲しい!大阪の今の状態をランダムに報告いたします。(いろいろ差し障りのないよう、多少の設定変更あり)その1:老健施設長のA先生A先生「昨日の発熱外来なんか、10人中7人がPCR陽性でした」中島「えっ。先生のところは老健じゃなかったですか?」A先生「併設しているクリニックで発熱外来もやっているんですよ」中島「そりゃ大変ですね」A先生「以前はほとんど陽性が出なかったんでPPEも適当でしたけどね」中島「ウチも以前は滅多に陽性がありませんでした」A先生「今はもう完全武装で診察しています。危ないですから」10人中7人とは、あんまりですね。とはいえ、道を歩いている人の7割が陽性だというわけではなく、発熱や何らかの症状があって受診した人の7割が陽性だったという話です。その2:クリニックのB先生との世間話B先生「ウチの患者さん、もう中等症でも入院待ちの人が多いです」中島「先生は在宅もやっているんですか」B先生「ええ。重症化させないことが大事なんでね」中島「在宅の段階で介入するわけですね」B先生「酸素の手配をしつつ、コルヒチンとステロイド投与をしています」中島「コルヒチンって効くんですか?」B先生「エビデンスが固まるまで待つわけにいかないでしょう」中島「確かにそうですね」B先生「フサンを使っている先生もいるそうですよ」中島「フサン……って、家で点滴を?」B先生「経口の類似薬があるそうなんです」中島「皆さんいろいろ考えるもんですねえ」入院待機の間にもそれぞれに工夫しているのは立派です。その3:道でバッタリ出くわした某病院の看護師さん看護師「あら、中島先生!」中島「ありゃりゃ、何年ぶりかなあ」看護師「私、4月から兵庫県の〇〇病院勤務なんです」中島「コロナ対応はしているわけ?」看護師「中等症対応だったんですけど」中島「皆まで言うな! 重症化しても転送先がないので、なし崩し的に重症コロナ病棟ができてしまったんでしょ」看護師「そうなんですよ」中島「逆のパターンもあるそうよ。重症を治療して中等症に持っていっても転送先がないので、自分ところで中等症病棟を作ったという話」看護師「やっぱり!」中島「コロナ対応のお医者さんも、もう専門は関係なしよね」看護師「でも経営的にはコロナ対応のほうがいいと聞きましたけど」中島「兵庫県も?実は大阪府でもコロナ対応すると一気に黒字化するみたい」看護師「そうだったんですか」中島「あんまり長話するわけにもいかないのでこの辺で。じゃあ気をつけてね」看護師「先生も」地域によるのかもしれませんが、コロナ診療には少なからぬ加算が付きます。その4:同僚のC先生とのヒソヒソ話C先生「〇〇病院でクラスターが出たそうですよ」中島「あそこはコロナ対応していなかったんじゃ?」C先生「最近コロナ病棟を作ったんですけどね、今回の院内クラスターで一気に埋まってしまったようです」中島「あらま」C先生「スタッフにも陽性者が複数出たんですけど、全員ワクチン未接種だったそうです」中島「接種が間に合わなかったのかなあ」C先生「悲しいですね」はからずもワクチンの効果が証明されてしまいました。その5:開業医のD先生との久しぶりの会話D先生「この前、先生に相談させていただいたE先生のことですけど」中島「『僕、死ぬんですかね』って言っておられた先生ですよね。入院先が見つかったってところまでは聞きましたけど」D先生「そのあと重症化して挿管されたんですよ」中島「えええ!ダメじゃん、それ」(泣)D先生「でも、ついに抜管されたそうなんです。昨日メールが来ました」中島「よかったあ。もう他人事とは思えません、僕には!」D先生「明日は我が身です。お互い、気をつけましょう」中島「そうですね」話の流れからバッド・エンドかと心配しましたが、回復できて良かったですね。読者の皆様に私の経験談が少しでもお役に立てば幸いです。それはそうと、前々回に「動物園からヒョウが逃げ出した」というフェイクニュースを流したら人流が減るんじゃないかという提案をしたら、中国では本当に子供のヒョウが3頭、サファリパークから逃げ出したそうです。2頭は捕獲されましたが、1頭がまだ逃げたままなのだとか。パニックが起こることを心配してサファリパークはこのことを公表していませんでした。ひどい話ですね。子供とはいえ映像では結構大きなヒョウでした。一方、日本では横浜市のアパートから全長3.5メートルのアミメニシキヘビが逃走したというニュースが話題になっています。「怖くて外を歩けないじゃないか!」と、飼い主が近所の人に怒られていました。逃げたのは飼育している中で2番目に大きなヘビだそうです。ということは、もっとデカいのが家にいるということですかね。最後に1句ヒョウ逃げて フェイクが ホンマになってもた

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