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新型コロナ、異種ワクチン接種の有益性を確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの異種接種について、1回目接種がアデノウイルスベクターワクチンのChAdOx1 nCoV-19(ChAd、AstraZeneca製)またはmRNAワクチンのBNT162b2(BNT、Pfizer-BioNTech製)いずれの場合も、2回目接種がmRNAワクチンのmRNA-1273(m1273、Moderna製)の場合は、一過性の反応原性を増大することが示された。遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンのNVX-CoV2373(NVX、Novavax製)は、BNTのプライム接種群で非劣性が示されなかった。英国・オックスフォード大学のArabella S. V. Stuart氏らによる無作為化試験の結果で、「複数のワクチンが、BNTまたはChAdでプライミング後の免疫完了に適していた。今回の結果は、異種ワクチンによる接種スケジュールを支持するもので、ワクチン接種の迅速なグローバル展開を促進することになるだろう」と述べている。Lancet誌2022年1月1日号掲載の報告。ChAd、BNT、m1273、NVXによる混合プライミングスケジュールを検討 研究グループは、同一スケジュールで異なるCOVID-19ワクチンを柔軟に用いることが、迅速な展開を促進するために重要であるとの認識から、ChAd、BNT、m1273、NVXを組み込んだ混合プライミングスケジュールについて検討した単盲検無作為化非劣性試験「Com-COV2試験」を実施した。 試験は、ChAdまたはBNTの単回接種を地域で受けた50歳以上を対象とし、各接種群内で3群(試験全体では計6群)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、同一ワクチン、m1273またはNVXの2回目接種(初回接種後8~12週に)を行った。 主要エンドポイントは、異種vs.同種スケジュールのELISA法で測定した血清SARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度の幾何平均比(GMR)で、2回目接種後28日時点で評価。GMRの片側98.75%信頼区間[CI]値が0.63超を非劣性と定義した。 主要解析は、ベースラインで血清陰性であったper-protocol集団で実施。安全性解析は、試験ワクチンの接種を受けた全被験者を対象に行われた。GMRは、ChAd/m1273群10.2、BNT/m1273群1.3 2021年4月19日~5月14日に、イングランドの9地点で、ChAd(540例、女性47%)またはBNT(532例、女性40%)の単回接種を受けた計1,072例が無作為化を受けた。ChAd群の異種ワクチンによる2回目接種までの期間中央値は9.4週間(範囲:4.7~12.0)、BNT群は同9.6週間(8.0~12.0)であった。 ChAd群では、2回目接種から28日後の幾何平均抗体濃度(GMC)は、ChAd/m1273群2万114 ELISA laboratory units[ELU]/ mL(95%CI:1万8,160~2万2,279)、ChAd/NVX群は5,597 ELU/mL(4,756~6,586)で、いずれもChAd/ChAd群(1,971 ELU/mL[1,718~2,262]に対して非劣性が認められた。ChAd/ChAd群と比較したGMRは、ChAd/m1273群10.2(片側98.75%CI:8.4~∞)、ChAd/NVX群2.8(2.2~∞)であった。 BNT群では、BNT/BNT群(GMC:1万6,929 ELU/mL[95%CI:1万5,025~1万9,075])に対する非劣性は、BNT/m1273群(2万2,978 ELU/mL[2万597~2万5,636])では示されたが、BNT/NVX群(8,874 ELU/mL[7,391~1万654])では示されなかった。BNT/BNT群と比較したGMRは、BNT/m1273群は1.3(片側98.75%CI:1.1~∞)、BNT/NVX群は0.5(0.4~∞)であった。ただし、NVX群もワクチン接種後28日のGMCは18倍の上昇が認められた。 重篤な有害事象は15件報告されたが、いずれも免疫獲得とは関連していないとみなされた。

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コロナワクチン副反応、もっとも影響する因子は?

 カルフォルニア大学のAlexis L Beatty氏らは新型コロナワクチン接種後に参加者が報告した副反応に関連する可能性のある因子を評価した。ワクチンを商品ごとで比較することで、その要因が、フルドーズのワクチン接種、ワクチン商品名、年齢の若さ、女性、新型コロナウイルス既感染であることが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号で掲載の報告。 研究者らは、本研究をオンライン上で実施。対象者は2020年3月26日~2021年5月19日に新型コロナワクチンを1回以上接種し、スマートフォンまたはインターネットにアクセスできる18歳以上で、参加者は健康状態(新型コロナ関連のイベント含む)に対する毎日、毎週、毎月の調査を完了した。 参加者から報告された副反応とその重症度を多変量ロジスティック回帰モデルで解析し、候補因子には、年齢、性別、人種、民族性、主観的な社会的地位、新型コロナ感染歴、持病の有無、薬物の使用、ワクチン接種量、およびワクチン商品名が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万9,586例の年齢中央値(IQR)は54歳(38~66歳)で、そのうち1万3,420例(68.8%)は女性だった。・アレルギー反応またはアナフィラキシーは、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)を1回接種した8,680例のうち26例(0.3%)で、ファイザー製またはモデルナ製を2回接種またはJ&J製(JNJ-78436735)を1回接種した1万1,141例のうち27例(0.2%)で報告された。・副反応に関連する最も強い因子はワクチンの投与量(ファイザー製かモデルナ製2回接種、またはJ&J製1回接種vs.ファイザー製かモデルナ製1回接種)で、オッズ比[OR]は3.10(95%信頼区間[CI]:2.89~3.34、p

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第84回 相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?

2022年となりました、本年もよろしくお願いします。<先週の動き>1.相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?2.オミクロン株も診療の手引きに追記、原則入院見直しへ3.融資未返済で倒産の医療法人、コロナ協力金で回収/大阪市4.サイバー攻撃から電子カルテ復旧、通常の外来診療再開へ/半田病院5.医療機器メーカー納入汚職で講師にも有罪判決/三重大1.相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?政府は、正月明けのコロナ感染者数の急激な増加、相次ぐオミクロン株の感染例に対して、都府県での無料検査や濃厚接触者に対する宿泊施設への待機要請などを実施し、対応を進めている。東京都は、4日までにオミクロン株感染が確認された55例のうち、およそ7割はワクチンを2回以上接種していたと公表した。岸田総理大臣は、3日に関係閣僚会合を開催し、翌日の年頭記者会見において、医療提供体制のフル稼働や、医療従事者・高齢者を対象とした3回目接種の前倒し、治療薬の普及などの措置を機動的に講じると語った。SNSでは、3回目ワクチンの進捗状況に医師からの不安の声も見られる。広がるオミクロン株の市中感染に危機感を持ち、対応していかなければならない。(参考)コロナワクチンの3回目接種、政府が高齢者に前倒し実施へ 気になる副反応は?オミクロン株への効果は?(東京新聞)東京都 オミクロン株感染者 約7割はワクチン2回接種済み(NHK)岸田首相、コロナ対策「臨機応変に」指示 関係閣僚会合(毎日新聞)2.オミクロン株も診療の手引きに追記、原則入院見直しへ厚労大臣は5日の記者会見で、コロナ感染者急増のため、病床の逼迫が予想される地域では原則全員入院の対応を自宅療養などに切り替えることを認めると発表した。年始に沖縄県、山口県の米軍キャンプなどをきっかけに急増した感染者に対して、まん延防止等重点措置が申請され、政府はこれを認める方針だ。最新の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.1版」では、オミクロン株や経口治療薬モルヌプラビルについて追記されている。(参考)宿泊・自宅療養可能に、厚労省 オミクロン株の拡大地域で(中日新聞)オミクロン株 感染急拡大の地域で自宅療養認める通知 厚労相(NHK)B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて(厚労省)3.融資未返済で倒産の医療法人、コロナ協力金で回収/大阪市医療法人 友愛会が大阪市から無担保で融資を受け、約2億円を返済しないまま昨夏に経営破綻したため、市は交付予定だったコロナ受け入れ協力金を未返済分の回収目的にて相殺していたことを明らかにした。法人は相殺は不当だとして、市に1億8,000万円の支払いを求めている。融資は、友愛会の元理事長が運営していた社会福祉法人が特別養護老人ホームを建設するために5億1,000万円、さらに病院との複合施設であったため、整備費用として4億9,000万円を貸し付けており、昨年10月時点で、利息を含めて約2億円が未返済となっていた。(参考)大阪市、コロナ協力金で融資回収 医療法人「不当」と1.8億円求め提訴(産経新聞)大阪市の融資未返済で倒産 医療法人にコロナ協力金「支給せず」(毎日新聞)4.サイバー攻撃から電子カルテ復旧、通常の外来診療再開へ/半田病院昨年電子カルテにサイバー攻撃を受けた徳島県つるぎ町の半田病院は、システムの復旧を終え、4日からすべての診療を再開したことを発表した。同院は昨年10月末、データ暗号化によるランサムウェア(身代金ウイルス)によって、電子カルテ約8万5,000人のデータが使用不能となったため、新規患者の外来診療を停止していた。報道によれば、国内の電子カルテシステムを標的としたランサムウェア被害は、2016年以降少なくとも11病院で発生しており、厚労省は安全管理に関するガイドラインを今年度中に改定する見込み。医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針では、電子カルテのバックアップデータを病院のネットワークから切り離して保管することを明記し、各医療機関に対策を求める。(参考)サイバー攻撃受けた町立病院 すべての診療再開 徳島 つるぎ町(NHK)「身代金」ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も(読売新聞)病院サイバー対策、カルテデータ「独立保管」…厚労省が新たな指針策定へ(同)5.医療機器メーカー納入汚職で講師にも有罪判決/三重大津地方裁判所は、三重大学への医療機器納入をめぐる贈収賄事件で、12月28日の公判にて、元講師に対して懲役1年、執行猶予3年(求刑:懲役1年2ヵ月)を言い渡した。すでに汚職やカルテ改ざん事件で起訴されている元上司・臨床麻酔部の元教授の指示の下、医療機器メーカーの担当者に対して寄付金を要求し、機器選定に大きな影響を与えるようなメールを送るなどとして、共謀共同正犯が成立するとされた。(参考)三重大病院元講師に有罪 医療機器納入汚職―津地裁(時事通信)三重大元講師に有罪判決 医療機器納入めぐる汚職事件で津地裁(ミクスオンライン)

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コロナのワクチンキャンペーンに効果はある?米国での反響は…

 国内でも若年層へ新型コロナワクチン接種を浸透させるため、いくつかの自治体が接種促進のためのキャンペーンを打ち出していた。その先駆けである米国ではインセンティブとして宝くじを配布し接種の向上を試みていたが、実際のところそれが有効かどうかは不明である。そこで、米・ドレクセル大学のBinod Acharya氏らは、宝くじなどのインセンティブがワクチン接種の増加に寄与するのかを調べるための横断的研究を行った。その結果、宝くじプログラムは新型コロナワクチン接種へのためらいを減らすことに関連していると示唆された。ただし、その成功は州によって異なる可能性があるという。JAMA Network Open誌2021年12月1日号掲載の報告。 本研究には、ワクチン宝くじプログラムを実施している11州(取り扱い群)とプログラム未実施28州(対照群)に対し、家庭パルス調査(HPS)と州ごとの1日あたりのワクチン接種率を基に『新型コロナワクチンを接種しましたか?』という質問を行い、それに回答した成人40万3,714人のデータを使用した。差分の差分法(DID)では、HPSの質問反応を使用し、取り扱い群と対照群の間でワクチン接種率の変化を比較した。一方、拡張された合成コントロール(ASC:augmented synthetic control)法では、取り扱い群の毎日の新たなワクチン接種率を、対照群のドナープールから構築され合成して重みづけされた対照群と比較した。データは2021年3月17日~7月5日までのものが分析された。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢±SDは52.7±15.7歳だった。・女性は23万9,563例 (加重パーセンテージ:51.6%)、黒人3万1,746例(同:11.9%)、ヒスパニック系3万9,709例(同:18.2%)、白人33万4,034例(同:76.4%)がHPSのワクチン接種状況に関する質問に回答した。・HPSに回答した8万949人(同:28.1%)はワクチン接種をしていなかった。・両方法でプールされた分析によると、宝くじプログラムがワクチン接種の増加と関連していることが示された。・ASCによる分析では、宝くじプログラムが0.208 log points(95%信頼区間[CI]:0.004~0.412)の増加に関連していることが明らかになった。これは1日あたり新しくワクチン接種率が平均23.12%増加することを意味する。・州独自の分析によると、どちらの方法でも宝くじプログラムが役立つことが示唆され、オハイオ州では0.09 log points(p

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第90回 第6波のまん防・緊急事態宣言を否定する人に、聞いてみたいよ、その根拠

もはや第6波到来なのか。1月5日、全国では2,638人もの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)検査陽性者が報告された。2021年の年末最終週あたりから徐々に増え始めていた陽性者はわずか1週間で6倍以上に膨れ上がった。この増加は正月休み明けの検査件数の急増などによる形式的増加も影響していると思われる。しかし、昨年12月中はPCR検査数に大きな変動があるわけではないのに下旬以降徐々に陽性者が増加していることを考えると、デルタ株より感染力が3~4倍といわれるオミクロン株の登場で局面は変わりつつあることがうかがえる。しかし、テレビやネットを見ていると、オミクロン株での重症化率が低いことをフックとした、とんちんかんな解説や意見があまりにも多いことに呆れてしまう。あるテレビ番組では厚生労働省の元医系技官が「増えたから感染を抑えるなんて2年前と同じ馬鹿げた事は、絶対にやってはいけない」と声高に言っていた姿にはもはや失笑を禁じ得なかった。確かに南アフリカ国立感染症研究所からの査読前論文を見ると、対デルタ株比でのオミクロン株の重症化リスクは0.3倍。同様の報告はほかにもある。だが、単純な算数の問題として、感染者がデルタ株による第5波の3倍に増えてしまったならば、この医療側にとって好都合なオミクロン株の特性はチャラになってしまう。また、裾野として広がった軽症、無症状感染者をほぼ全員自宅療養とするにしても社会全体が抱える負荷は莫大なものだ。一部には、ならば新型コロナの感染症法上の取り扱いを指定感染症としての2類相当を5類にすれば良いではないかという意見もあるが、そもそも致死率がいまだインフルエンザなどと比べれば高く、対抗手段も揃いつつあるとはいえまだまだ「帯に短し襷に長し」という現状を考えれば、こうした意見の具体化はまだ時期早尚だろう。ワクチンは有力な手段ではあるものの、それのみで感染・発症を完全には防げず、かつ現時点で国内のワクチン接種率が約8割に達しようとする中、結局、感染者増加という蛇口の元栓を締めるには個人レベルでは手洗い、マスク、三密回避という基本的感染対策の徹底化、公的施策としてはブースター接種の迅速化と感染拡大阻止に向けた行動抑制対策という限られた選択肢しかない。その意味で沖縄県、広島県、山口県の3県で新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」の適用がほぼ確実になったことはやむを得ない措置と言えるだろう。しかし、ネット上では首都・東京都などで同様の対策、あるいは一歩進んで緊急事態宣言まで進むことへの警戒感や倦えん感からなのか、先ほどの厚労省の元医系技官以外でも、いわゆる識者と呼ばれる人から「オミクロン株は重症化率が低いのだから」とか「今現在の重症者は少ないのだから」などの論理で強い措置をすべきではないという意見が散見される。重症者数は感染者発生から1週間後に見えてくる後発指標。少なくともオミクロン株での重症化率の低さや国内のワクチン接種率の高さゆえに理論上はかなり低値に抑えられるのではと思われるものの、あと1週間後の「答え合わせ」で万が一予想を超えてしまった場合は取り返しのつかないことになるのは、医療従事者の中では百も承知のことだろう。また、重症者数が後発指標であることは報道でも繰り返し伝えられてきた。こうした現実を目の当たりにすると、パンデミックから丸2年が経過した今、改めて当たり前になっていると思い込んでいた情報を再整理して繰り返し伝える必要性を認識している。とはいえ正直個人的にもそうした作業に倦えん感がないとは言えない。何とも気が重い年明けになってしまったようだ。

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COVID everywhere【臨床留学通信 from NY】番外編7

COVID everywhere昨年の大晦日、残念ながら運悪く(くじを引いたわけでもありませんが)24時間当直となり、空いた時間ができたため、本稿を備忘録的に書いています。ニューヨークでは、クリスマスを終えた週から、COVIDによる入院がぐんと増え、院内は再びコロナ患者だらけ。現場には緊張感が走っています。米国の陽性患者は、1日当たり58万人(本稿を執筆した2021年末時点)、人口2,000万人のニューヨーク州は、1日で7万人が陽性になっており、まだまだ増えそうです。日本の人口で換算すると40万人ほどに相当する数です。実際に日本で40万人が陽性になったらパニックになりそうですね。現在ICUで働いていないので、正確なワクチンとの兼ね合いと重症度は不明ですが、今回のオミクロン株は拡大が早く、印象としては単独の呼吸不全よりも心筋梗塞、心不全、COPD等の合併症を伴って来院する人が多い気がします(ワクチン未接種の人が呼吸不全になる可能性が高いのは、ほぼ間違いありません)。日本で流行り始めたら、1週間程度でパンデミックになるのではと懸念します。Booster接種はリスクの高い人優先でしょうが、この状況を鑑みるとリスクに関係なくすぐに必要だと考えます。というのも、3回目接種済みの同僚たちもやはりコロナにかかってしまっているのです。CDCは、無症候のコロナ陽性の隔離期間を従来の10日から5日に短縮し、これはmedical workerが互いの穴を埋める期間が少なく済むのでありがたいのですが、本当に良いのかどうかはよくわかりません。文末のグラフは、私が勤務する病院系列MHS(Montefiore Health System)の入院患者ですが、急峻に増加しているのがわかると思います。デルタ株は、ほとんど流行りませんでしたが、オミクロン株は昨年1月の第2波(グラフ中央)をも超える勢いなのではないかとも思います。なお、グラフの最初の第1波はひどいもので、病棟の8割がコロナ患者に占拠されている状態でした。日本の大学病院で1,000床、800人以上が酸素を必要とするコロナ患者、というのはちょっと想像し難いと思いますが、まさに阿鼻叫喚の様相でした。私もいつ罹患するかわからない状況ですが、コロナを併発した心筋梗塞、心肺停止など待ったなしの人もおり、我が身に迫る危機を実感する日々です。

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モルヌピラビル使用の注意点は?コロナ薬物治療の考え方第11版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第11版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、先般特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に関する記載が追加された。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。【4. 抗ウイルス薬等の選択】(1)抗ウイルス薬としてレムデシビル、モルヌピラビルなど、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブなど、(2)免疫調整薬・免疫抑制薬としてデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブについて記載を追加。【モルヌピラビル】の項目を追加・機序 モルヌピラビルは、リボヌクレオシドアナログ。SARS-CoV-2におけるRNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、ウイルスRNAの配列に変異を導入、ウイルスの増殖を阻害する。・海外での臨床報告 日本国内の3施設を含む20ヵ国、107施設で実施した多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験。重症化リスクのある非重症COVID-19患者(目標症例数1,550例)の外来治療を対象。発症5日以内の治療開始で偽薬群(699名)の重症化が68名(9.7%)に対し、治療群(709名)では48名(6.8%)と、相対的リスクが30%減少。また、死亡例は治療群で1名(0.1%)に対して、プラセボ群では9名(1.3%)と治療群で少なかった。・投与方法(用法・用量) 通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。[投与時の注意点]1)臨床試験における主な投与知見を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。2)本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていることなどを踏まえ、重症化リスク因子を有する者(例:61歳以上、活動性のがん、慢性腎臓病、糖尿病など)が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。3)重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者(中等症II以上)に対する有効性は確立していない。4)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は臨床試験で除外されているため、ブレイクスルー感染での重症化予防等の有効性を裏付けるデータは得られていない。6)妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、授乳婦については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。・入手方法 本剤は、現状、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼により、無償譲渡。 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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新型コロナ感染リスク、ワクチン未接種者は接種者の4倍!?

 米国の大手ドラッグストアであるCVSヘルスに所属するYing Tabak氏らは、新型コロナ感染に対するワクチン有効性を推定するにあたり、時間経過による変化がみられるのかなどを評価するため、診断陰性例コントロール試験を実施。その結果、ワクチン未接種者はワクチン接種者よりも感染リスクが最大で4倍も高いことが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号のリサーチレターに掲載された。 本研究は全米の新型コロナ検査のデータベースを使用し、2021年5月1日~8月7日の期間にドラッグストアのPCR検査で症候性の新型コロナ感染症が確認されたの特有の患者発生率を評価した。新型コロナ関連の症状(CDCの定義に準拠)、ワクチン接種状況、時期、投与回数について、鼻咽頭スワブを収集する前にスクリーニング質問票に自己報告してもらった。分析には、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、およびJNJ-78436735(J&J製)のワクチンを使用した。また、米国での昨年7~8月のデルタ変異株の流行を考慮して、最後のワクチン接種からの経時的な症候性新型コロナ感染に対し、ワクチン接種の有効性を検査実施者の年齢、地域、暦月で調整して推定した。 主な結果は以下のとおり。・全米4,094ヵ所で検査を受けた18歳以上の症候性患者は123万7,097例だった。そのうち女性は73万2,850例(59.2%)、男性は50万3,303例(40.7%)、性別不明は944例(0.1%)だった。・年齢中央値(IQR)は37歳(28~51)だった。・民族の割合はアジア人が8万8,178例(7.1%)、黒人/アフリカ系アメリカ人が16万8,639(13.6%)、ヒスパニック系が22万1,521例(17.9%)、白人が 66万1,459例(53.5%)だった。また、アラスカ先住民、アメリカインディアン、太平洋諸島民、詳細不明として識別された人は9万7,300例(7.9%)だった。・計64万5,604例(52.2%)はワクチン未接種たった。・ワクチン接種者59万1,493例(47.8%)のうち、33万5,341例(27.1%)がファイザー製を、20万7,250例(16.8%)がモデルナ製を、4万8,902例(4.0%)がJ&J製を接種していた。・ワクチンの接種状況は、新型コロナの感染低下と関連していた。・mRNAワクチン(ファイザー製/モデルナ製)を接種した人は、観察時間のすべての時点で発生率が最も低く、ワクチン未接種者で最も高かった。・ワクチン未接種者の感染リスクについて、各ワクチンを接種した人と比較したところ、モデルナ製よりも412%、ファイザー製よりも287%、J&J製よりも159%も高かった。・研究期間中に観察された発生率は、ワクチン未接種者では24.8%だった。各接種者での割合はJ&J製が15.6%、ファイザー製が8.6%、モデルナ製が6.0%だった。・ワクチン未接種者の新型コロナ感染リスクの大きさは、米国でのデルタ変異の有病率の増加と並行して7月と8月にさらに増加したが、ワクチン接種完了者に限定した場合の傾向は、ほぼ横ばいだった。・多変量解析の結果、mRNAワクチンを2回完了した人の調整済みの推定されるワクチン有効性は、2週間後にピークに達し、モデルナ製では96.3%(95%信頼区間[CI]:95.6~96.9)、ファイザー製は92.4%(同:91.7~93.1)だった。・また、有効性は徐々に低下し、接種2~3ヵ月時点において、モデルナ製は86.8%(同:86.2~87.4)、ファイザー製は78.6%(同:78.0~79.2)であり、6ヵ月時点では、モデルナ製が74.2%(同:71.6~76.6)、ファイザー製が66%(同:64.2~68.0)と低下した。・一方、J&J製は接種2週間時点でも有効性は50%超だった。 研究者らは、「本結果は全米における最大の新型コロナ検査のデータセットであり、また、ほかの研究結果1)などと一致している」としている。

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モルヌピラビル、新型コロナの入院・死亡リスクを低減/NEJM

 重症化リスクがあるワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者について、モルヌピラビルによる早期治療(発症後5日以内に開始)は、入院または死亡リスクを低減することが、コロンビア・IMAT OncomedicaのAngelica Jayk Bernal氏らによる第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で示された。試験は約1,400例を対象に行われ、29日間の入院または死亡の発生リスクは中間解析で-6.8ポイント差、全解析で-3.0ポイント差であったという。モルヌピラビルはSARS-CoV-2に対し活性を示す、経口小分子抗ウイルスプロドラッグである。NEJM誌オンライン版2021年12月16日号掲載の報告。発症後5日以内に治療開始、800mgを1日2回、5日間投与 研究グループは、検査によりCOVID-19が確認され、重症化リスクが少なくとも1つあるワクチン未接種の軽症~中等症の成人患者を対象に、症状発症後5日以内に開始したモルヌピラビルによる治療の有効性と完全性を検証した。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはモルヌピラビル800mgを1日2回5日間投与し、もう一方にはプラセボを投与した。 主要有効性エンドポイントは、29日時点での入院または死亡の発生。主要安全性エンドポイントは、有害事象の発現頻度とした。 目標登録患者数1,550例の50%が29日間の追跡を受けた時点で、事前に規定した中間解析を行った。対プラセボの入院/死亡リスク、中間解析で-6.8ポイント差 被験者1,433例が無作為化を受け、716例がモルヌピラビル群に、717例がプラセボ群に割り付けられた。両群のベースライン特性は、性別の偏り(女性がモルヌピラビル群のほうが多く、中間解析では7.6ポイント差、全解析では4.7ポイント差)を除けば類似していた。 中間解析(15ヵ国78地点で775例が登録)では、モルヌピラビル群の優越性が示された。29日間のあらゆる入院または死亡のリスクは、モルヌピラビル群(385例中28例、7.3%)がプラセボ群(377例中53例、14.1%)よりも有意に低下した(群間差:-6.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-11.3~-2.4、p=0.001)。 無作為化を受けた全被験者を対象とした解析でも、29日間の入院または死亡の発生率は、プラセボ群(699例中68例、9.7%)よりも、モルヌピラビル群(709例中48例、6.8%)が低率だった(群間差:-3.0ポイント、95%CI:-5.9~-0.1)。 サブグループ解析は全体解析とほぼ一貫した結果だったが、SARS-CoV-2感染既往者や、ベースラインウイルス量が低値の感染者、糖尿病患者などでは、推定群間差がプラセボ群で良好だった。 29日間の死亡は、プラセボ群9例、モルヌピラビル群1例だった。有害事象の発生率は、それぞれ33.0%(701例中231例)、30.4%(710例中216例)だった。

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第90回 新型コロナウイルスはヒトに感染することで弱体化する?国立遺伝研の研究で考えた「ヒト-ウイルス」生態系

デルタ株はワクチン接種によってではなく、ヒトに感染したことで収束かこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年始年末は大学の先輩の住む長野県原村の別荘を訪ねた後、中央線で実家のある愛知に帰り、正月明け、大学時代の友人が住む浜松で新幹線を途中下車、一杯飲んで帰って来ました。原村と実家は例年以上に厳寒で、寒さが苦手な私にはとても堪えました。さて、浜松の友人は、同じ大学の理学部で生物学を学んだ生物学者(専門は発生学)です。卒業後米国に留学し、長年ニワトリの足の発生を研究、15年ほど前に日本に帰ってきました。浜松駅前の焼鳥屋で雑談する中、昨年夏のコロナのデルタ株による感染拡大が突然収束した理由について興味深い話をしてくれました。曰く、「変異株が次々現れても、流行は必ずピークを迎え、収束していくのが不思議だと思っていたが、秋頃、国立遺伝研究所の発表で『デルタ株はゲノムの変異を修復する酵素の変化が起こり、修復能力が低下して死滅し、収束したのでは』という説が報道されていた。マスクなどの感染予防やワクチン接種ではなく、むしろヒトに感染することで弱体化した、という説だが、説得力もあってなるほどと思ったよ」。というわけで、今回は、誰もデルタ株収束の理由を明快に説明してくれませんので、この説について少し考えてみたいと思います(年末にあった、アデュカヌマブ未承認や診療報酬改定率のニュースはまた別の機会に)。ゲノムのエラーを修復する「nsp14」に関わる遺伝子が変化、修復不全に帰京してからニュースを調べてみると、この研究に関する報道を見つけました。それは、国立遺伝学研究所と新潟大のチームが2021年10月に開かれた日本人類遺伝学会で発表した研究成果です。ウイルスは増殖する際にゲノムを複製しますが、時々ミスが起きてエラーが生じます。このエラーが積み重なると、やがて増殖できなくなります。このエラーを修復するのが「nsp14」と呼ばれる酵素で、これが正常に働けばエラーは修復されて増殖は続き、感染の流行も続く、というわけです。10月31日付の中日新聞等の報道によれば、国立遺伝学研究所と新潟大の研究チームは国内で検出した新型コロナのゲノムデータを分析しました。その結果、第5波では、nsp14の酵素活性に関わる遺伝子が変化したウイルスの割合が感染拡大とともに増え、ピークの前から収束までの間は、感染者のほぼすべてを占めていた、とのことです。2020年秋から21年3月頃まで続いた第3波でも、同様の傾向が確認できたそうです。さらに、nsp14の遺伝子が変化したウイルスではエラーの修復が不十分となるため、新型コロナウイルスのゲノムの変異が通常の10〜20倍あったそうです。研究チームは、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC:apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like」という酵素がnsp14の遺伝子を変化させた、と推測しています。ヒトの身体の中にウイルスが侵入すると、危険信号ともいえるサイトカインというタンパク質が放出されます。このサイトカインによって誘導される酵素の一つがAPOBECです。APOBECが侵入してきたウイルスのnsp14の遺伝子に変化をもたらし、ゲノム複製時のエラーの修復が不十分となってウイルス増殖を阻害したのではないか、というのが研究チームの仮説です。なお、日本人をはじめとしたアジア・オセアニアにAPOBECの活性が強い人が多いそうです。友人は最後に、「RNAウイルスであるコロナウイルスは大型のウイルスで、そのRNAポリメラーゼは“高性能”なポリメラーゼ。“高性能”とは、複製のミスがあればそれを修復する酵素活性を含んでいる、ということ。だから、あまり突然変異は起こらない。この仮説のように、修復の酵素活性に関係するnsp14の変化で修復ができなくなれば、ウイルスのゲノム情報は複製の度にボロボロに壊れていき、最後には増殖できなくなる。感染が拡大しても3〜4ヵ月で収束するのはそのせいかもね。ただ、現場の医師があまりこの仮説に食いついていないのが気になる。ひょっとしたら内容をきちんと理解できていない可能性もある」と話していました。カンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動この仮説は、動物生態学(アニマル・エコロジー)の立場からも、とても理解しやすいと思います。すべての生物は適当な環境下にあれば絶えず数を増やす方向に働きます。しかし、繁殖能力をフルに発揮すれば、たちまち数が増え過ぎて“人口爆発”を起こします。そんな時、生き残った個体を殺すような「外力」が働き、今度は数が減少に転じます。ここで言う「外力」とは、食糧不足であったり、外敵の登場であったり、個体同士の争いであったりとさまざまで、各要素の消長によって個体の数のバランスが保たれていく、というのが生態学の一つのセオリーです。ちなみに、昔の生態学の教科書には、カナダの森林に住むカンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動のグラフが必ず載っています。カンジキウサギが増えると、それを食べるオオヤマネコが増え、それに伴いカンジキウサギが減る。カンジキウサギが減れば、エサが減るのでオオヤマネコが減る……、というグラフで、その変動は約10年周期で繰り返されるそうです。今改めて見てみると、そのグラフの振幅の波は、さながらコロナの患者数の波のようでもあります。「ヒト-ウイルス」生態系がうまく働けば……ウイルスは厳密には生物とは言えず、動物生態学のセオリーが当てはまるかどうかはわかりませんが、仮にヒトもウイルスもそうした生態系の中に組み込まれた要素である、と考えれば、コロナの感染爆発の突然の収束にも納得がいきます。コロナウイルスはヒトに感染し健康上の害を及ぼしますが、逆にヒトは感染することによってコロナウイルスに対して増殖を抑制するような遺伝子的な「外力」を与えているわけです。人類全体としては、感染を避けるのではなく、むしろどんどん感染することでウイルスを弱らせることができるのだとしたら、それこそ“エコ”なことではないでしょうか。なにしろ、無用なモノや技術を使わないで済むのですから。マスクや手洗いといった目先の物理的な感染防御策や、ワクチンといった薬物(科学技術)による防御策ではなく、「ヒト-ウイルス」という何億年もかけて築き上げられてきた生態系のシステムによって、新型コロナウイルスは自然と弱毒化や増殖不能に向かうかもしれない……。久しぶりに旧友と会ったおかげで、そんな楽観論が頭の中をぐるぐる廻り、昨年よりもお酒が美味しく飲めた年始でした。

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モデルナ製とファイザー製、それぞれの心筋炎・心膜炎リスク因子/BMJ

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnders Husby氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種と心筋炎/心膜炎との関連を調査する目的で、デンマーク住民を対象にコホート研究を行った。その結果、ワクチン未接種者と比較して、mRNA-1273(Moderna製)ワクチンは心筋炎/心膜炎の有意なリスク増加と関連しており、とくに12~39歳でリスクが高いこと、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)ワクチンは女性においてのみ有意なリスク増加が認められたことが示された。ただし、絶対発症率は若年層でも低いことから、著者は「今回の知見の解釈には、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の利点を考慮すべきであり、少数のサブグループ内でのワクチン接種後の心筋炎/心膜炎のリスクを評価するには、より大規模な国際的研究が必要である」と述べている。BMJ誌2021年12月16日号掲載の報告。デンマークの12歳以上の住民約493万人について解析 研究グループは、デンマークの予防接種登録(Danish Vaccination Register)、患者登録(Danish National Patient Register)、および市民登録システム(Danish Civil Registration System)を用い、2017年1月1日~2020年10月1日のデンマーク居住者で12歳以上の493万1,775人の全個人について、2020年10月1日または12歳の誕生日(いずれか遅いほう)から、移住、死亡、イベントまたは2021年10月5日まで追跡調査した。血液検査値はRegister of Laboratory Results for Research、PCR検査結果はDanish Microbiology Databaseから情報を得た。 主要評価項目のイベントは、24時間以上の入院を要するトロポニン値上昇が認められた心筋炎/心膜炎の診断とした。ワクチン接種前の追跡期間と、1回目および2回目のワクチン接種後28日間の追跡期間を比較し、年齢を基礎タイムスケールとしたCox比例ハザードを用い、性別、併存疾患、その他の交絡因子で補正したハザード比(HR)を推定した。 なお、研究対象のワクチンは、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)およびmRNA-1273(Moderna製)とした。絶対発症率は低い 追跡調査期間中に269例が心筋炎/心膜炎を発症した。108例(40%)が12~39歳、196例(73%)が男性であった。 BNT162b2ワクチンを接種した348万2,295例においては、接種日から28日以内に48例が心筋炎/心膜炎を発症し、未接種者と比較した補正後HRは1.34(95%信頼区間[CI]:0.90~2.00)、接種後28日以内の絶対発症率(10万人当たり)は1.4(95%CI:1.0~1.8)であった。女性および男性別の補正後HRはそれぞれ3.73(95%CI:1.82~7.65)、0.82(0.50~1.34)、絶対発症率はそれぞれ1.3(95%CI:0.8~1.9)、1.5(1.0~2.2)であった。12~39歳の補正後HRは1.48(95%CI:0.74~2.98)、絶対発症率は1.6(95%CI:1.0~2.6)であった。 mRNA-1273ワクチンを接種した49万8,814例においては、接種日から28日以内に21例が心筋炎/心膜炎を発症し、補正後HRは3.92(95%CI:2.30~6.68)、絶対発症率は4.2(2.6~6.4)であった。女性および男性別の補正後HRは、それぞれ6.33(95%CI:2.11~18.96)、3.22(1.75~5.93)、絶対発症率はそれぞれ2.0(95%CI:0.7~4.8)、6.3(3.6~10.2)であった。12~39歳の補正後HRは5.24(95%CI:2.47~11.12)、絶対発症率は5.7(95%CI:3.3~9.3)であった。

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アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第89回

アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「アブロシチニブ(商品名:サイバインコ錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、全身療法が可能な経口剤であり、既存治療で効果不十分な中等症~重症のアトピー性皮膚炎の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎(AD)の適応で、2021年9月27日に承認され、同年12月13日に発売されました。なお、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間施行しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与します。患者の状態に応じて200mgを1日1回投与することもできます。なお、中等度の腎機能障害(30≦eGFR<60)では50mgまたは100mgを1日1回投与し、重度の腎機能障害(eGFR<30)では50mgを1日1回経口投与します。本剤投与時も保湿外用薬は継続使用し、病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。なお、投与開始から12週までに治療反応が得られない場合は中止を考慮します。<安全性>AD患者を対象に本剤を投与した臨床試験の併合解析において、発現頻度2%以上の臨床検査値異常を含む有害事象が確認されたのは3,128例中2,294例でした。主な副作用は、上咽頭炎、悪心、アトピー性皮膚炎、上気道感染、ざ瘡、筋骨格系および結合組織障害などでした。なお、重大な副作用として感染症(単純ヘルペス[3.2%]、帯状疱疹[1.6%]、肺炎[0.2%])、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症[0.1%未満]、深部静脈血栓症[0.1%未満])、血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(ヘモグロビン減少[0.9%]、貧血[0.6%])、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少症(0.4%)、間質性肺炎(0.1%)、肝機能障害、消化管穿孔(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、皮膚バリア機能を低下させたり、アレルギー炎症を悪化させたりするJAKという酵素の産生を抑えることで、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。2.本剤には免疫を抑制させる作用があるため、発熱や倦怠感、皮膚の感染症、咳が続く、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの感染症の症状に注意し、気になる症状が現れた場合は、すみやかにご相談ください。3.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。4.(女性に対して)この薬を服用中、および服用中止後一定期間は適切な避妊をしてください。5.これまで使用していた保湿薬は続けて使用してください。<Shimo's eyes>近年、ADの新しい治療薬が次々と発売されており、難治例における治療が大きく変化しつつあります。本剤と同じ経口JAK阻害薬のほかにも、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤や外用JAK阻害薬などがすでに発売されています。本剤は、ADの適応を得た経口JAK阻害薬として、バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)、ウパダシチニブ水和物(同:リンヴォック錠)に続く3剤目となります。また、12歳以上のアトピー性皮膚炎患者に使用できる製剤としてはウパダシチニブに続いて2剤目となります。相互作用については、フルコナゾール、フルボキサミンなどの強力なCYP2C19阻害薬、あるいはリファンピシンのような強力なCYP2C19および CYP2C9誘導薬との併用に注意が必要です。これらの薬剤と併用する場合、可能な限りこれらの薬剤をほかの類薬に変更する、または休薬するなどの対応を考慮します。経口JAK阻害薬は、肺炎、敗血症、ウイルス感染などによる重篤な感染症や結核の顕在化および悪化への注意が警告に記載されています。生ワクチンの接種は控え、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化にも注意する必要があります。調剤時の注意に関しては、抗うつ薬/慢性疼痛治療薬デュロキセチン(商品名:サインバルタカプセル)と販売名が類似していることから、取り違え防止案内が発出されています。薬剤の登録名や調剤棚の表示などを工夫して、取り違えを防ぎましょう。本剤は、米国においてブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)の指定を受け、優先審査品目に指定されています。参考1)PMDA 添付文書 サイバインコ錠50mg/サイバインコ錠100mg/サイバインコ錠200mg

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HPVワクチン、イングランドで子宮頸がんをほぼ根絶か/Lancet

 イングランドでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの全国的な接種プログラムの導入により、子宮頸がんおよび前がん病変とされるGrade3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生が大幅に減少し、とくに12~13歳時に接種を受けた女性で顕著な抑制効果が認められ、1995年9月1日以降に出生した女性ではHPV関連子宮頸がんの根絶にほぼ成功した可能性があることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMilena Falcaro氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2021年12月4日号で報告された。イングランドの2価ワクチンの観察研究 研究グループは、イングランドの住民ベースのがん登録データを用いて、2価HPVワクチンを用いた予防接種プログラムが子宮頸がんおよびCIN3の発生に及ぼした、早期の影響の定量化を目的に観察研究を行った(Cancer Research UKの助成を受けた)。 イングランドでは、2008年9月1日、12~13歳の女児に2価HPVワクチン接種プログラムが導入され、2008~10年にかけて14~18歳の女子に対し、年齢差による遅れを取り戻すためのプログラムが提供された。 本研究では、年齢-時代-コホート(APC)ポワソンモデルの拡張版を用いて、HPVワクチン接種の対象とならなかったコホートとの比較で、ワクチン接種コホートにおける子宮頸がんの相対リスクが推定された。ワクチン接種コホートは、接種時の学年と全国的な接種の普及状況を考慮して、3つのコホート(ワクチン接種時の学年が12~13年生、10~11年生、8年生のコホートで、24.5歳時に最初のがんスクリーニングへの参加を勧められた女性)で解析が行われた。 2021年1月26日に、住民ベースのがん登録からデータが抽出され、イングランドに居住する20~64歳の女性の、2006年1月1日~2019年6月30日の期間における子宮頸がんおよびCIN3の診断について評価が行われた。また、交絡因子に対してさまざまな補正を行った3つのモデルを用いて解析が行われ、結果が比較された。接種年齢12~13歳の25歳時の低下率:がん87%、CIN3 97% 調査期間中に2万7,946例が子宮頸がんと、31万8,058例がCIN3と診断された。ワクチン接種を受けた20~30歳未満の女性の総追跡期間1,370万年のデータが解析に含まれた。 ワクチン非接種コホートと比較した接種年齢別の子宮頸がん発生率の推定相対低下率は、16~18歳(12~13年生)のコホートが34%(95%信頼区間[CI]:25~41)、14~16歳(10~11年生)が62%(52~71)、12~13歳(8年生)は87%(72~94)であり、接種年齢が低いほど低下率が大きかった。 また、CIN3のリスク低下率も、接種年齢16~18歳のコホートが39%(95%CI:36~41)、同14~16歳が75%(72~77)、同12~13歳は97%(96~98)と、接種年齢が低いほど低下率が大きかった。これらの結果は、すべてのモデルでほぼ同様だった。 一方、2019年6月30日の時点で、イングランドのワクチン接種コホートにおける発生件数は、子宮頸がんが予測よりも448件(95%CI:339~556)少なく、CIN3は予測に比べ1万7,235件(1万5,919~1万8,552)減少していた。 著者は、「これらの結果は、2価HPVワクチンによる子宮頸がん予防に関する初めての直接的なエビデンスであり、英国のプログラム全体の効果を評価するには時期尚早であるが、HPVワクチン接種の利点に関する理解と認識を深めることに貢献するだろう」とまとめ、「12~13歳の女児への広範なHPVワクチン接種により、25歳(観察データの範囲)までに子宮頸がんと前がん病変がほぼ根絶されることが示された。HPVワクチン接種の対象となる女性には、より若い世代に利益をもたらし続けるために、何歳であっても(理想的には最初に接種を勧められた時に)接種を受けるよう推奨すべきである」と指摘している。

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精神疾患患者のCOVID-19感染による入院、死亡リスク

 統合失調症、双極性障害、うつ病を含む重度の精神疾患を有する人は、身体的健康においても、一般集団と比較し、大きな格差を抱えている。この格差の程度は明らかとなっていないが、新たなエビデンスでは、重度の精神疾患患者はCOVID-19による感染や死亡リスクが高いことが示唆されている。英国・マンチェスター大学のLamiece Hassan氏らは、UKバイオバンクのコホート研究データを用いて、重度の精神疾患患者におけるCOVID-19関連の感染、入院、死亡率を調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年12月7日号の報告。 UKバイオバンクから抽出した44万7,296例(統合失調症:1,925例、双極性障害:1,483例、うつ病:4万1,448例、重度の精神疾患でない対照群:40万2,440例)を対象とし、医療および死亡に関する記録とリンクさせた。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、診断とCOVID-19関連アウトカムとの違いを調査した。また、社会人口統計学的要因および併存疾患で調整した場合においても検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・調整前の分析では、重度の精神疾患患者は、対照群と比較しCOVID-19関連の死亡リスクのオッズ比が高かった。また、重度の精神疾患患者は、COVID-19関連の感染、入院リスクも高かった。【死亡リスクのオッズ比(OR)】 ●統合失調症:4.84(95%信頼区間[CI]:3.00~7.34) ●双極性障害:3.76(95%CI:2.00~6.35) ●うつ病:1.99(95%CI:1.69~2.33)【感染リスクのOR】 ●統合失調症:1.61(95%CI:1.32~1.96) ●双極性障害:1.48(95%CI:1.16~1.85) ●うつ病:1.47(95%CI:1.40~1.54)【入院リスクのOR】 ●統合失調症:3.47(95%CI:2.47~4.72) ●双極性障害:3.31(95%CI:2.22~4.73) ●うつ病:2.08(95%CI:1.89~2.29)・調整後の分析では、死亡リスクと入院リスクのORは、重度の精神疾患患者において有意に高いままであったが、感染リスクのORは、うつ病のみ有意に高いままであった。 著者らは「統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患患者では、COVID-19関連の感染、入院、死亡リスクが上昇することが示唆された。この違いが既存の人口統計学的要因や併存疾患によって説明できるのは、一部分であった。そのため、重度の精神疾患患者に対しては、優先的にワクチン接種や予防措置を講じる必要がある」としている。

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2021年、がん専門医に読まれた記事は?「Doctors’Picks」ランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)は、2021年にがん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。がん横断的なトピックスやCOVID-19とがんに関連する記事のほか、米国腫瘍学会(ASCO)関連の話題が多くランクインしている。【1位】おーちゃん先生のASCO2021肺がん領域・オーラルセッション/Doctors'Picks 6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)。4,500を超える演題から注目すべきものをエキスパート医師がピックアップして紹介。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が「CheckMate-9LA試験の2年アップデート」「IMpower130、IMpower132、IMpower150 の免疫関連の有害事象を分析」などを選定した。【2位】がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開/CareNet.com 3月末、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。【3位】ASCO 乳がん 注目演題まとめ(1)オーラル/周術期/Doctors'Picks ASCO注目演題、乳がん分野は寺田 満雄氏(名古屋市立大学)が全オーラル演題をチェックしたうえで注目すべき10演題を選定、サマリーと共に紹介した。【4位】リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査が国内で初承認/日経メディカル 3月、中外製薬は血液検体を用いて固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングを行う検査「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」の承認獲得を発表。リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査は国内初承認となる。進行固形がん患者を対象に、血液中の循環腫瘍 DNA(ctDNA)を用いて324個のがん関連遺伝子を解析する。【5位】免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象…メカニズムと緩和戦略/Nature Reviews Drug Discovery チェックポイント阻害薬(ICI)治療に関連した免疫関連有害事象(irAE)の発生と、発生を予測するバイオマーカーを特定し、発症を抑制するメカニズムを解説する論文がNature Reviews Drug Discovery誌に掲載された。6~10位は以下のとおり。【6位】ASCO 消化器がん 注目演題まとめ/Doctors'Picks【7位】固形がん患者における新型コロナワクチン接種後の抗体価/Annals of Oncology【8位】がん免疫療法患者に対するCOVID-19ワクチン接種/SITC【9位】IMpower150試験、EGFR陽性・肝/脳メタ解析の最終報告/Journal of Thoracic Oncology【10位】「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用を了承/中医協

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ノババックスワクチン、安全性と有効性を確認/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのNVX-CoV2373(Novavax製)は、COVID-19の予防に関して安全かつ有効であることを、米国・NovavaxのLisa M. Dunkle氏らが、米国およびメキシコで行われた第III相無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。NVX-CoV2373は、英国と南アフリカで行われた第IIb・III相の試験において臨床的効果が示されていたが、北米ではまだ検討が行われていなかった。NVX-CoV2373は、サポニンベースのアジュバントを添加した遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンで、冷蔵保管(2~8℃)が可能であることから、世界的なワクチン不足に資するワクチンと目されている。NEJM誌オンライン版2021年12月15日号掲載の報告。2021年上旬、米国とメキシコで18歳以上を対象にプラセボ対照無作為化試験 NVX-CoV2373の有効性と安全性を評価する試験は、2021年上旬に、米国113ヵ所、メキシコ6ヵ所の医療拠点で被験者を募り行われた。被験者は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染していない18歳以上の成人(健康または慢性疾患症状が安定している有病者を含む)。 被験者は2対1の割合で無作為に2群に割り付けられ、NVX-CoV2373の2回接種またはプラセボを21日間隔で接種を受けた。 試験の主要目的は、2回接種後7日以降に発症がRT-PCR法で確認されたCOVID-19に対するワクチンの有効性を評価することであった。また、中等症~重症化に対する有効性およびさまざまな変異株への有効性も評価した。有効性は90.4%、中等症~重症化の予防効果は100% 2020年12月27日~2021年2月18日に2万9,949例が無作為化を受け、合計2万9,582例(年齢中央値47歳、65歳以上12.6%)がワクチンの1回以上の接種を受けた(NVX-CoV2373群1万9,714例、プラセボ群9,868例)。 2021年4月19日(約3ヵ月間)まで追跡を受けた有効性に関するper-protocol解析集団2万5,452例において、検査で確認されたCOVID-19の症例は、77例であった。内訳はNVX-CoV2373群14例(1,000人年当たり3.3例[95%信頼区間[CI]:1.6~6.9])、プラセボ群63例(同34.0例[20.7~55.9])であり、ワクチンの有効性は90.4%(95%CI:82.9~94.6、p<0.001)であった。 中等症例は10例、重症例は4例で、全例がプラセボ接種者で認められたものであり、中等症~重症化に対するワクチンの有効性は100%(95%CI:87.0~100)であった。 ゲノム解析で特定されたウイルスの大半(48/61例、79%)が、懸念または注視されている変異株で、なかでも最も多くを占めたのはB.1.1.7(アルファ株)であった(懸念変異株35のうち31、89%)。これら懸念または注視される変異株に対するワクチンの有効性は、92.6%(95%CI:83.6~96.7)であった。 反応原性は、ほとんどが軽度~中等度で一過性のものだった。発現頻度は、NVX-CoV2373群のほうがプラセボ群よりも高く、1回目接種後よりも2回目接種後に多く認められた。

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第92回 英国でもオミクロン株入院リスクが低いと判明

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染者の入院リスクはデルタ株感染者に比べて20~25%低いとの英国データ解析結果(Report 50)を同国の大学Imperial College Londonが先週22日水曜日に発表しました1,2)。その入院の定義はPCR検査でのSARS-CoV-2感染(COVID-19)が判明してから14日以内の事故/救急科(Accident and Emergency department;A&E)受診を含む来院記録があることです1)。オミクロン株感染者の1泊以上の入院リスクはより小さく、デルタ株感染者を40~45%下回りました。今月中旬16日の報告(Report 49)の段階ではオミクロン株感染者の入院全般(hospitalisation attendance)や症状のデルタ株との差は認められていませんでした3)。オミクロン株感染者の入院リスクがデルタ株感染者に比べてより低いことは英国政府の保健安全保障庁(UKHSA)の解析でも示されています4)。UKHSAの報告によると今月20日までのイングランドのオミクロン株感染者数は5万6,066人で、そのうち132人が病院で治療(admitted or transferred from emergency department)を受けました。14人がオミクロン株感染判明から28日以内に死亡しました。UKHSAの報告でのオミクロン株感染者の入院リスクはImperial College Londonの解析結果よりどうやらさらに小さく、デルタ株感染者より62%(95%信頼区間では50~70%)低いことが示されました。オミクロン株感染者は救急も含む入院(emergency department attendance or admission)にも至りにくく、デルタ株感染者より38%(95%信頼区間では31~45%)少ないという結果も得られています。オミクロン株感染者の入院リスクが他の変異株感染者に比べて低いらしいことは好ましい兆候だがひとまずの結果であって更なる検討が必要だとUKHSAの長Jenny Harries氏は言っています5)。オミクロン株感染がどうやら軽症らしいのはワクチン接種の普及または先立つ感染で備わった免疫のおかげかもしれません。またはウイルス自体の変化が軽症で済むようにさせている可能性もあります6)。参考1)Report 50 - Hospitalisation risk for Omicron cases in England / Imperial College London2)Some reduction in hospitalisation for Omicron v Delta in England: early analysis / Imperial College London3)Report 49 - Growth, population distribution and immune escape of Omicron in England. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis / Imperial College London4)SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England / UKHSA5)UKHSA publishes updated Omicron hospitalisation and vaccine efficacy analysis / UK Health Security Agency (UKHSA) 6)Omicron cases at much lower risk of hospital admission, UK says / Reuters

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心血管疾患2次予防にインフルエンザワクチンは必要か

 急性冠症候群の治療期間中における早期のインフルエンザワクチン接種によって、12ヵ月後の心血管イベント転帰改善が示唆された。本研究は、スウェーデン・Orebro UniversityのOle Frobert氏らにより欧州心臓病学会(ESC 2021)にて報告された。Circulation誌2021年11月2日号に掲載。 実施された国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験(IAMI trial)は、2016年10月1日~20年3月1日の4シーズンに8ヵ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ラトビア、英国、チェコ、バングラデシュ、オーストラリア)30施設で参加者を登録。急性心筋梗塞(MI)または高リスクの冠動脈疾患患者を対象に、入院から72時間以内にインフルエンザワクチンまたはプラセボを接種する群に1:1でランダムに割り付けた。 なお、過去12ヵ月間にインフルエンザワクチン接種を受けた者、入院したシーズン中にワクチン接種を受ける意思がある者は除外された。 主な結果は以下のとおり。・試験には2,571例が参加し、ワクチン群1,272例、プラセボ群1,260例に割り付けられた。 ・登録患者の平均年齢は59.9±11.2歳で、女性18.2%、男性81.8%だった。また喫煙者が35.5%含まれ、21.1%が糖尿病を合併していた。両群に有意な差はなかった。・参加者のうち、1,348例(54.5%)がST上昇型心筋梗塞、1,119例(45.2%)が非ST上昇型心筋梗塞、8例(0.3%)が安定冠動脈疾患で入院していた。・主要評価項目である12ヵ月後の全死亡、MI、ステント血栓症の複合発生率は、プラセボ群7.2%(91例)に対し、ワクチン群では5.3%(67例)と有意にリスクが低下した。(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.52~0.99、P=0.040)。・それぞれの発生率について、全死亡はワクチン群2.9%(37例)vs.プラセボ群4.9%(61例)、心血管死はそれぞれ2.7%(34例)vs. 4.5%(56例)で、いずれのリスクもワクチン群で有意に低下した(全死亡のHR:0.59、95%CI:0.39~0.89、p=0.010/心血管死のHR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.014)。・MIの発生率はワクチン群2.0%(25例)vs.プラセボ群2.4%(29例)で両群に有意な差はなかった(HR:0.86、95%CI:0.50~1.46、p=0.57)。 この結果により、研究者らは心血管疾患患者における毎年の季節性インフルエンザワクチン接種の重要性を強調している。 なお、本試験は登録患者4,400例を目標にしていたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で、目標の58%が登録された時点(2020年4月7日)でデータ安全監視委員会(DSMB)により早期中止された。

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第83回 診療報酬、人件費増も全体マイナス、医療費は1.35%減

<先週の動き>1.診療報酬、人件費増も全体マイナス、医療費は1.35%減2.ノババックス製ワクチン、WHOが緊急使用許可3.来年度からリフィル処方箋導入へ、具体的ルール策定に進む4.研修医の募集枠、定員上限をさらに縮小へ/厚労省5.後発品医薬品メーカーの相次ぐ不祥事、改善を求める声1.診療報酬、人件費増も全体マイナス、医療費は1.35%減22日、厚生労働大臣と財務相の閣僚折衝が行われた。来年度の診療報酬の改定率は、医師・看護師などの人件費を見込んで本体部分を0.43%増、薬価改定率を医療費ベースで1.35%減とすることで合意した。国費削減額は1,600億円程度。全体では0.94%のマイナスとなった。中川 俊男日本医師会長はこれを受け、「厳しい国家財政の中、必ずしも満足するものではないが、プラス改定となったことについて率直に評価する」と定例記者会見で語った。(参考)令和4年度診療報酬改定率の決定を受けて―中川俊男会長定例記者会見(日医)診療報酬0.94%下げ 医師人件費はプラス―国費1320億円削減・22年度改定(時事通信)資料 診療報酬改定について(厚労省)2.ノババックス製ワクチン、WHOが緊急使用許可世界保健機関(WHO)は21日、米・ノババックス製新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。緊急使用が認められたワクチンは10例目。なお、同ワクチンで製造パートナーであるインド・セラム インスティチュート オブ インディアが製造するものは先立って17日に承認されている。本剤は「組み換えタンパクワクチン」に分類され、英国や米国などで行われた試験によると、有効性は90%で、WHOは18歳以上を対象に3~4週間あけて2回の接種を勧めている。冷蔵保管可能なこともあり、COVAXを通じた途上国などへの分配加速につながることが期待されている。(参考)ノババックス製のワクチン、WHOが承認…日本では武田薬品が申請中(読売新聞)WHO 米ノババックス社製ワクチンを緊急使用リストに追加(NHK)3.来年度からリフィル処方箋導入へ、具体的ルール策定に進む厚労省は22日に中医協の総会を開催し、2022年度の診療報酬改定で、一定期間内に一回分の処方箋を繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入を決めた。これは、今年の6月に閣議決定された骨太方針2021で「症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」とされていたもの。厚労省は本方針を踏まえ、「分割調剤の指示、分割調剤に係る処方箋様式の在り方」を論点として提示していた。今後、詳細についてはさらに検討し、来年4月以降の導入に向けて具体的な方針が示される見込み。(参考)処方箋の反復利用可能に 22年度から―診療報酬改定(時事通信)処方箋の反復利用導入へ 政府、医療費の膨張抑制(日経新聞)資料 経済財政運営と改革の基本方針2021(内閣府)4.研修医の募集枠、定員上限をさらに縮小へ/厚労省厚労省は、22日に第2回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催した。これまでは国が過去の受け入れ実績などによって研修医の募集枠設定を行っていたが、地域の必要数と募集定員数との乖離が指摘されたため、昨年度に定員の設定権限を都道府県へ移譲している。臨床研修が必修化されて以降、研修医の募集定員が研修希望者の1.3倍を超える規模まで拡大したため、2010年度からは募集定員について上限を設定しているが、近年は縮小の動きがある。2020年度には約1.1倍であり、今後2025年度には約1.05倍まで縮小させる見込み。(参考)資料 都道府県による令和4年度の臨床研修病院の募集定員設定について(厚労省)資料 令和3年度都道府県別募集定員上限について(同)5.後発品医薬品メーカーの相次ぐ不祥事、改善を求める声厚労省は、22日に医薬品等行政評価・監視委員会を開催し、今年はじめに発覚した小林化工の事件をきっかけに相次ぐ後発品メーカーの行政処分について触れた。承認書で規定された内容と異なる方法で製造・出荷するなど薬機法違反により業務停止、業務改善などの処分により、数多くの後発品に欠品が生じている状況を鑑み、無通告立ち入り検査の実施などを行い、適切な品質管理体制を確保し再発防止を図ることを求めた。(参考)資料 後発医薬品等の製造管理及び品質管理について(厚労省)ジェネリック医薬品が相次ぐ欠品 持病の薬が値上げも…背景に何が?(NHK)

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モデルナワクチン2回接種、変異株ごとの有効性/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンmRNA-1273(Moderna製)の2回接種は、デルタ変異株、ミュー変異株を含む新たに出現した変異株に対して有効性を示し、とくにCOVID-19による入院に対して高い効果が認められることが、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア(KPSC、統合型ヘルスケアシスム)のKatia J. Bruxvoort氏らにより報告された。KPSCメンバーの接種者を対象としたtest negativeケースコントロール試験の結果で、これまでmRNA-1273ワクチンの特異的変異株に対する有効性を検討した試験はほとんどなく、今回の試験を行ったという。mRNAベースのCOVID-19ワクチンについてはデルタ変異株への有効性が低く、保護効果の減弱が報告されていた。BMJ誌2021年12月15日号掲載の報告。変異株ごとに感染および入院への有効性を評価 研究グループは、2021年3月1日~7月27日に、全ゲノムシークエンスによるSARS-CoV-2陽性検査または陰性検査を受けた成人KPSCメンバーを対象に、mRNA-1273ワクチンのSARS-CoV-2感染に対する有効性を調べ、また接種後の時間経過によるデルタ変異株への有効性を評価した。対象は、検体採取の14日以上前にmRNA-1273ワクチン2回または1回の接種者と、COVID-19ワクチン非接種者とした。 アウトカムにはSARS-CoV-2感染およびCOVID-19による入院を含み、事前規定の各変異株の解析では、年齢、性別、人種/民族、検体採取日で検査陽性例と検査陰性例を1対5の割合でマッチングし、交絡因子を補正したうえで、条件付きロジスティック回帰を用いて症例vs.対照のワクチン接種のオッズ比を算出。ワクチンの有効性は、(1-オッズ比)×100%として算出した。デルタ変異株感染への2回接種の有効性は86.7% 試験には、検査陽性8,153例(症例)が包含された。7,442例(91.3%)がワクチン非接種者で、112例(1.4%)は1回接種者であり、2回接種者は599例(7.3%)であった。また、全ゲノムシークエンスが有効であった検査陽性者は5,186例(63.6%)だった。 5,186例について変異株別にみると、デルタ変異株陽性は2,042例(39.4%)、アルファ変異株1,436例(27.7%)、イプシロン変異株590例(11.4%)、ガンマ変異株357例(6.9%)、イオタ変異株115例(2.2%)、ミュー変異株71例(1.4%)、その他575例(11.1%)であった。2回接種者では、デルタ変異株の陽性が大部分を占めていた(85.0%)。また、2回接種者では、COVID-19による入院(1.8%)はほとんどみられず、院内での死亡(0.0%)はなかった。 2回接種のワクチン有効性は、デルタ変異株の感染に対しては86.7%(95%信頼区間[CI]:84.3~88.7)、アルファ変異株に対しては98.4%(96.9~99.1)、ミュー変異株に対しては90.4%(73.9~96.5)、その他の識別された変異株に対しては96~98%であった。また、非識別の変異株(つまり、シークエンスに失敗した検体)に対しては79.9%(76.9~82.5)であった。 デルタ変異株による入院へのワクチン有効性は97.5%(95%CI:92.7~99.2)だった。デルタ変異株感染へのワクチンの有効性は、ワクチン接種後14~60日で94.1%(90.5~96.3)だったが、ワクチン接種後151~180日で80.0%(70.2~86.6)に低下していた。なお、デルタ以外の変異株では、有効性の減弱はそれほど顕著ではなかった。 デルタ変異株感染へのワクチン有効性は、65歳以上は75.2%(95%CI:59.6~84.8)で、18~64歳の87.9%(85.5~89.9)と比べて低かった。 また、デルタ変異株感染への1回接種のワクチン有効性は、77.0%(95%CI:60.7~86.5)だった。

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