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100回記念、「身近で下世話な話題」集こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。心配していたMLBの労使交渉が3月10日(現地時間)、やっと合意しました。短縮が決まっていたレギュラーシーズンは従来どおり162試合で行われ、開幕も4月7日に決まりました。その後日本人選手の交渉も急進展、鈴木 誠也選手はサンディエゴ・パドレス、菊池 雄星投手はトロント・ブルージェイズと合意したとの報道もありました。と、ほっとしていたら、MLB好きの大学時代の友人から「エンゼルスの開幕戦のチケットがあるのだが、行きませんか?」とのお誘いが。「神宮に行きませんか」くらいの軽いノリの文面でしたが、球場はカリフォルニア州アナハイムです。彼は昨秋、コロナ禍の中、日本からシアトルまで大谷 翔平選手のホームランをわざわざ観に行った強者です。一瞬心が動きましたが、本連載含めいくつかの原稿の締め切りもあり、泣く泣く断念しました。さて、この連載も100回を迎えました。大きな事件や、医療政策などを取り上げて、偉そうな意見を述べてきたのですが、知人からは「もっと身近で下世話な話題も読みたい」と言われることも度々でした。今回も、旭川医科大学をクビではなく辞任となった吉田 晃敏・前学長の一件か、所得税法違反罪で検察側から懲役1年を求刑された田中 英寿・日本大学前理事長のことでも書こうと思っていたのですが、100回記念ということで少し趣向を変え、最近私や知人が体験した“アカン”医療機関について、書いてみたいと思います。内容としては10年前にフジテレビ系列で放映された、ダウンタウン司会の「爆笑 大日本アカン警察」をイメージしていただければと思います。【その1】ワクチン接種の時間外接種費用上乗せを不正請求ワクチンの3回目接種が各地で進んでいますが、知人がツイッターに投稿した写真を見て、衝撃を受けました。知人は土曜日に近くのかかりつけの診療所に3回目接種のために訪れたそうです。接種時間は11時過ぎだったのですが、医療機関に提出した問診票をふと覗いたところ、下の段にある医療機関記入欄の「時間外」の欄にはなぜかチェックが…。そして手書きの文字で12時過ぎの時間が。知人は「何か変だな」と感じ、その部分を携帯で撮影、ツイッターに上げたわけです。これはワクチンの時間外の接種費用上乗せを狙ったものと推察されます。ワクチン接種を通常の診療時間外に行う場合は2,070円→2,800円と730円上乗せされます。休日の場合は、2,070円→4,200円と2,130円上乗せされます。「時間外」の欄のチェックは、看護師によってごく当たり前のように行われていたそうです。1人730円でも、100人分なら7万3,000円になります。休日も混ぜるとなると、相当な金額になります。日本医師会の肝いりで進められた個別接種ワクチンの個別接種は「第72回 今さら「手紙」で協力求める日医・中川会長、“野戦病院”提言も動かない会員たちにお手上げ?」でも書いたように、日本医師会の肝いりで強引に進められました。しかし、診療所を含めることによって、ワクチンの配送や管理、接種登録が煩雑になることや集団接種への人員が割けないなど、さまざまな問題も発生。結果として接種推進の妨げの一因ともなりました。結局、個別接種は診療所医師がコロナ禍で存在感を示しつつ、手軽に臨時収入を稼ぐ手段となったわけですが、今でも診療所でのワクチン接種には、接種促進を理由に業務内容の割に手厚い報酬が用意されています。週100回以上、週150回以上を続ける場合にも上乗せ“特典”があります。にもかかわらず、こんなセコい不正請求もしているとは……。通常のレセプトの審査よりチェックが甘いと見ての時間外請求だとしたら悪質です。こうした医療機関は多くはないとは思いますが、これは“アカン”ですね。【その2】「薬がないから処方箋は受け取れない」と応需義務違反の薬局次は私の家族の体験です。1ヵ月ほど前に、家族が国立系のある病院を受診しました。年数回、定期的に通っている病院です。受診を終え、電車に乗って自宅に帰り、いつも利用している近所の個人経営の薬局に処方箋を持っていったのですが、そこの男性薬剤師から、「この処方箋は薬がないから受け取れない」と拒否されてしまったのです。処方箋は、バルプロ酸(デパケン)錠90日分でした。後発品メーカーの自主回収については、約1年前に「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び『ゾロ』と呼ばれる日」で書きましたが、その後、日本ジェネリック製薬協会および各社の自主的な製造過程の点検が行われ、多くの薬剤で未だに供給不足が続いています。バルプロ酸についても、1社の徐放顆粒が供給停止となり、その後すべての剤形で先発品、後発医薬品ともに、出荷調整が続いているようです。「正当な理由」に当たらず明らかに薬剤師法21条違反家族は「ないのなら、在庫がある薬局を教えて下さい。薬剤師会などで、薬の在庫の情報共有とかはしていないのですか」と聞いたのですが、男性薬剤師は「そんなことしていない。処方箋を発行した病院に問い合わせてみてくれ」と、最後まで処方箋の受け取りを拒否しました。「薬がないから処方箋を受け取れない」というのはいただけません。薬剤師には処方箋の応需義務があります。薬剤師法21条の「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」に基づくものです。「正当な理由」については、薬局業務運営ガイドライン(厚生省薬務局長通知 平成5年4月30日 薬発第408号)に例が挙げられていますが、薬剤がなくて断っても「正当」とみなされるケースについては、「患者の症状等から早急に調剤薬を交付する必要があるが、医薬品の調達に時間を要する場合。但し、この場合は即時調剤可能な薬局を責任をもって紹介すること」と、他の薬局を紹介せよ、と明記されています。3月5日、日本薬剤師会は山本 信夫会長を次期会長に選びました。なんと5選目だそうです。会見では「医療の中で、薬剤師の担う責任の重さを実感させるとともに、処方医との連携体制をさらに強化しつつ、薬物治療に関する薬剤師・薬局業務の新たな可能性が示唆された」と語ったとのことですが、末端会員の薬局では今でもこんな応需義務違反が堂々と行われています。これは全く“アカン”ですね。ちなみに家族は、街の薬局を何軒か回って、やっと40日分だけ在庫がある薬局を見つけ、事なきを得ました。90日分が揃ったのは約1週間後でした。次回も、引き続き“アカン”医療機関を紹介します(この項続く)。