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オミクロン株に対するブースター接種、高齢者での効果は?

 高齢はSARS-CoV-2感染において罹患率および死亡率の主要な危険因子である。そのため、高齢者にはCOVID-19ワクチンを優先して接種する戦略をとる国が多い。ワクチンのブースター接種によってオミクロン株の中和活性を引き出すことが示されているが、高齢者においてはどうか。高齢者へのブースター接種の即時および長期の効果を見た試験結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2022年2月28日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 ドイツ・ベルリンの開業医で募集された、年齢中央値82(範囲:76~96)歳の37例を対象に、SARS-CoV-2中和活性を縦断的に測定した。2021年1月15日に最初のワクチン接種が行われ、BNT162b2(ファイザー製)の2回目接種から10ヵ月後、ブースター接種から4.5ヵ月後までフォローアップされた。 2回目接種後から1ヵ月後(中央値26日、IQR:25~27)および5ヵ月後(中央値153日、151~154)のフォローアップ時に血清サンプルを採取し、50%阻害希釈(ID50)の幾何平均抗体価を求めた。 2回接種により、ほとんどの個体で検出可能なSARS-CoV-2の元となるWu01株およびデルタ中和活性が誘導された(Wu01株35/37例[95%]、デルタ株31/37例[84%])が、オミクロン株に対する活性は検出されないか、最小限だった。続く4ヵ月間でWu01株の中和抗体価は6分の1、デルタ株は7分の1になった。 全員が7ヵ月後(中央値209日[189~228])、ファイザー製ワクチンのブースター接種を受けた。・ブースター接種1ヵ月後(中央値23[21~29]日)の血清サンプルでは、Wu01株とデルタ株の中和抗体価は50倍以上増加し、オミクロン株も33/37例(89%)が強力な中和抗体を誘発した。・ブースター接種後3.5ヵ月(中央値106[86~125]日)で、中和抗体価はWu01株で2.7分の1、デルタ株で2.3分の1、オミクロン株で3分の1に低下した。一方で、Wu01株(36/37例[97%])、デルタ株(34例[92%])、オミクロン株(30例[81%])と、ほとんどが検出可能な中和抗体を維持していた。・ブースター接種後における中和抗体の推定半減期はWu01株で52日(95%CI:46~59)、デルタ株で64日(52~83)、オミクロン株で41日(34~52)だった。 著者らは「オミクロン株に特異的なワクチンがない場合、ブースター接種はワクチンの効果を回復するために重要であり、ブースター接種は高齢者の大部分において、オミクロン株に対する中和活性を効果的に引き出すことができた。本結果は、高齢者集団における今後のブースター接種の戦略の指針となるだろう」としている。

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免疫不全者へのコロナワクチン、3回で抗体陽転率上昇か~メタ解析/BMJ

 免疫不全患者(血液がん、固形がん、免疫性炎症性疾患、臓器移植、HIV)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種による抗体陽転率が免疫正常者と比較して低いが、1回目に比べると2回目接種後に改善され、3回目の接種は有効である可能性があることが、シンガポール国立大学のAinsley Ryan Yan Bin Lee氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月2日号で報告された。82件の前向き観察研究のメタ解析 研究グループは、免疫不全患者と免疫正常者においてCOVID-19ワクチンの有効性を比較する目的で、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 医学データベース(PubMed、Embase、Central Register of Controlled Trials、COVID-19 Open Research Dataset Challenge[CORD-19]、WHO COVID-19 databases)を用いて、2020年12月1日~2021年11月5日の期間に発表された試験が検索された。また、ClinicalTrials.govとWHO International Clinical Trials Registry Platformを検索して、2021年11月の時点で、これらのサイトに登録されているが未発表または進行中の試験が特定された。 対象は、免疫不全患者と免疫正常者でCOVID-19ワクチンの有効性を比較した前向き観察研究であった。 82件の研究がメタ解析に含まれた。このうち77件(94%)はmRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製])、16件(20%)はウイルスベクターワクチン(AZD1222[Oxford-AstraZeneca製])、4件(5%)は不活化全粒子ワクチン(CoronaVac[Sinovac Biotech製])を使用していた。バイアスのリスクは、63件の研究が「低」、19件の研究は「中」であった。臓器移植患者は2回目接種後も陽転率が著しく低い ワクチン1回目接種後の抗体陽転のリスク比が最も低かったのは臓器移植患者(リスク比[RR]:0.06[95%信頼区間[CI]:0.04~0.09]、I2=0%、絶対リスク:0.06[95%CI:0.04~0.08]、I2=0%、エビデンスの確実性:中)であり、これは免疫正常者(対照)と比較して抗体陽転率が約16分の1であることを意味する。 次にリスク比が低かったのは血液がん患者(RR:0.40[95%CI:0.32~0.50]I2=80%、絶対リスク:0.29[95%CI:0.20~0.40]、I2=89%、エビデンスの確実性:中)であり、次いで免疫性炎症性疾患患者(0.53[0.39~0.71]、I2=89%、0.29[0.11~0.58]、I2=97%、中)、固形がん患者(0.55[0.46~0.65]、I2=78%、0.44[0.36~0.53]、I2=84%、中)の順であった。また、HIV患者の抗体陽転率を報告した研究が1件あり、免疫正常者と比較して差は認められなかった(1.06[0.74~1.54]、低)。 一方、2回目接種後の抗体陽転率は、依然として臓器移植患者(リスク比:0.39[95%CI:0.32~0.46]、I2=92%、絶対リスク:0.35[95%CI:0.26~0.46]、I2=92%、エビデンスの確実性:中)で最も低く、免疫正常者の約3分の1にすぎなかったが、1回目接種後に比べると高かった。 次いで、1回目接種後と同様に、抗体陽転率は血液がん患者(リスク比:0.63[95%CI:0.57~0.69]、I2=88%、絶対リスク:0.62[95%CI:0.54~0.70]、I2=90%、エビデンスの確実性:低)、免疫性炎症性疾患患者(0.75[0.69~0.82]、I2=92%、0.77[0.66~0.85]、I2=93%、低)、固形がん患者(0.90[0.88~0.93]、I2=51%、0.89[0.86~0.91]、I2=49%、低)の順に高くなり、いずれも1回目接種後よりも改善されていた。HIV患者の抗体陽転率は免疫正常者と同程度だった(1.00[0.98~1.01]、I2=0%、0.97[0.83~1.00]、I2=89%、低)。 11件の研究の系統的レビューでは、mRNAワクチンの3回目の接種によって、固形がん、血液がん、免疫性炎症性疾患の患者のうち2回のワクチン接種に応答しなかった患者において抗体陽転率が改善されたが、臓器移植患者では大きなばらつきがみられ、HIV患者やmRNAワクチン以外のワクチンを接種した患者の研究は十分ではなかった。また、免疫不全患者は免疫正常者に比べ抗体価が低かった。 著者は、「免疫不全患者は免疫正常者に比べ、全般に低い抗体価で抗体陽転が起きており、抗体保有の適切性に関して懸念が高まる。このような患者の抗体保有を向上させるには、従来のmRNAワクチン2回接種レジメンに、3回目の接種を加えるなど、新たな方策が必要となるだろう」としている。

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第99回 厚労省のワクチン情報と併せて読みたい、お奨め情報源は?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の5~11歳の小児に対するワクチン接種が各地でスタートした。ご存じのようにこの年代の小児を対象とした新型コロナワクチン接種に関しては、現時点ではオミクロン株への効果に関するデータが不十分なことなどを理由に、予防接種法に基づく接種の「努力義務」は課せられていない。一方、今回の5~11歳の小児に対する接種開始とともに、SNS上ではワクチンに否定的な人たちの活動が活発化している。そんな最中、Twitterではある動画が話題になっている。一見すると店員と見間違うような服装をした女性が、とあるフードコートで新型コロナワクチンの危険性を訴えるビラを配布していた様子を撮影した動画だ。この件はすでに一部インターネットメディアでも報じられている。街角でビラを配られるのとは違い、店員を装えば店にいるお客さんも警戒心が薄れ、何の気なしに受け取るだろう。当事者たちが否定したとしても「錯覚商法」のような悪質さが漂う。また、一部の医療機関には、やはり小児への接種を行わないよう求めるビラが郵送されているとも聞く。かく言う私は小児接種に関してある週刊誌のコメント取材を受け、小児でも接種を推奨する向きのコメントをしたが、その記事がネット上で公開されると、Twitter上でわざわざ記事を引用しながら、こちらのアカウントに嫌味を飛ばしてくるツイートを数件ほど経験している。ちなみに私のコメントの趣旨は、(1)基礎疾患を有する/同居家族に基礎疾患を有する人がいる小児の接種は待ったなし、(2)この年代は他人との触れ合いが教育の大きな目的の一つであり、この点はリモートでは代用不可能、(3)幼稚園・保育園、小学校でクラスターによる休園・休校が相次いでいるが、成人でオミクロン株の感染・発症予防効果も一定程度認められているワクチンの接種は休園・休校のリスク低減のためには無駄ではない、などである。冒頭に紹介したように一部の行き過ぎた抗議活動がある現状とTwitter上で私をわざわざ探し出してメンションを飛ばしてくるような人の存在を考えれば、編集部のほうに直接抗議があってもおかしくはないだろう(こういう場合、編集者はこちらを気遣って実際に抗議があっても一切知らせないことが多い)。一方で対象の子供を持つ知人たちからは接種を考えるうえで私のコメントが参考になったという声をもらった。その中には子供に接種させるという人もいれば、それでもまだ見合わせたいという人もいる。大人で接種直後の発熱経験者が多く、それこそ副反応報告大会よろしく自身の体温計画像を付けた投稿がSNS上に散見されるような状況に加え、未成年では感染時も無症状・軽症で治癒する確率が成人と比べて高いことなど、子供への接種についてはいろいろ考えるところもあるだろう。そんな中に「厚生労働省のホームページの記述が分かりにくくて」という意見を耳にした。たまたま小児向けに厚生労働省がどのような情報を発信しているかは未確認だったため、覗いてみたが…一瞬にして「これはダメだ」と思ってしまった。まず、厚生労働省の新型コロナワクチンのページに行くと、3回目の追加接種、一般的な有効性・安全性、小児接種の項目に飛ぶ部分がほぼ似たようなデザインで並列となっている。民間ならばこうした時に、それぞれのシーンをイメージさせるような柔らかいイラストのアイコンなどを設置するだろう。この点の違いだけで先のページに進む人の数が変わってくることもしばしばだ。そしてこの厚労省設置の小児接種のタブをクリックして先に進むと、冒頭ページは接種の基本情報や手順を解説している。この点は中央官庁としては当然のことだろう。しかし、問題はここからだ。子供の接種に迷う親が一番気にするのは当然ながらワクチンの有効性と安全性、とりわけ後者である。ところがこれらの情報に飛ぶ部分が無機質に並べられているだけで、分かりにくく、さらに飛んだ先でも情報を無機質に羅列している。たとえば、副反応については発生頻度ごとに表にまとめている。これはこれで良いのだが、ある程度噛み砕いた解釈を文字で付記する必要がある。これまで大人の接種で多くの人が苦しんだ副反応は発熱である。この点で言うと小児の臨床試験で確認された発熱頻度は10%未満で大人と比べればかなり少ない。これは成人向けと比べて接種量が3分に1になっていることが影響していると思われる。にもかかわらず、そうした解説がまるでない。行政的には中立的に表記をしなければならないのかもしれないが、発熱頻度が成人と比べてかなり低いのは事実であり、その点は付記しても問題はないはずだ。そしてこの事実を知るだけでも安心する親は少なくないだろう。また、そもそも使用している用語が硬すぎる。たとえばQ&Aの「小児(5~11歳)の接種では、どのような効果がありますか。」では、「中和抗体価」「抗体応答率」「非劣性」など一般人には馴染みのない用語がポンポン飛び出す。後二者については直後のカッコ内で補足しているが、むしろ一般向けではこのカッコ内の解説文章を主文にし、中和抗体価などのなじみのない用語をカッコの中に入れるか、あるいは使わないという選択肢のほうが無難だ。官僚や医療従事者が思っている以上に一般人は見慣れない文字の並びには拒否反応を示すからだ。こうしたすべての点で優れているのが、最近有名になっている若手医師有志が作成した新型コロナワクチン情報サイト「こびナビ」である。今このサイトに飛べば分かるが、すでに冒頭から小児接種の解説ページに飛べるようにアイコンが設置されている。その中では前述の発熱の副反応頻度についても、わざわざ「大人の半分以下」と解釈がつけられている。実際、このサイトの取り組みは、厚生労働省が医療機関へのかかり方の改善につながる優れた取り組みを奨励し広く普及することを目的に開催している第3回「上手な医療のかかり方アワード」の最優秀賞をこの度受賞している。私自身このサイトは当初から非常に興味深く閲覧してきたし、「こびナビ」のメンバーとなっている医師たちがSNS上で行っている積極的な情報発信にも注目してきた。ただ、その反面こびナビに参加している医師たちは、今回の新型コロナワクチンを快く思わない多数の個人からの支離滅裂な言説やいわれのない誹謗中傷を投げつけられ、それに個人レベルで必死に対応している様子も私は目にしている。だからこそ厚生労働省が彼らのこうした取り組みを表彰したことは非常に望ましいことだと思う。一方で彼らこびナビの医師たちは、誤解に基づくとはいえ本来厚労省に投げつけられるはずの石を代わりに投げつけられ苦闘している。懸賞も結構だが、こびナビのような発信手法をもう少し自身の情報発信にも生かしてはどうだろうかと思わずにいられない。

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ワクチン導入前のコロナ感染者致死率、医療レベル以外の要因が存在?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン導入および変異株流行前の感染者致死率(IFR)は、190の国・地域によって30倍以上のばらつきがあることが、COVID-19 Forecasting TeamのReed J. D. Sorensen氏らが実施したCOVID-19総死亡と血清有病率調査の系統的解析の結果、示された。とくに医療システムが良好な国で年齢標準化IFRが高かったことは、医療能力以外の要因が重要であり、その要因として介護施設におけるアウトブレイクやCOVID-19を重症化させる併存疾患などが考えられた。また、ワクチン導入前にIFR推定値の中央値が8ヵ月間で33%減少しており、COVID-19に対する治療が時間の経過とともに改善されていることを示唆するものである。著者は、「ワクチン導入前のIFRを推定することは、COVID-19による死亡パターンの進行を説明する重要な基礎を提供するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年2月24日号掲載の報告。COVID-19総死亡と血清有病率の調査をマッチングしIFR解析を実施 研究グループは、ある集団におけるCOVID-19総死亡率と血清有病率調査のマッチングにより、年齢別および全年齢のIFRを推定した。COVID-19総死亡とは、COVID-19に直接起因する推定総死亡数を指す。血清有病率調査5,131件のうち、除外基準に該当した調査を除外し、全年齢調査2,073件および年齢別調査718件(年齢別観察研究3,012件)についてIFR解析を実施した。 血清有病率が年齢別に報告されている場合、階層ベイズモデルを用いてCOVID-19による総死亡を対応する年齢群に分割し、特定の場所に関する死亡報告の非線形年齢パターンを特徴づけた。推定IFRの年齢パターンに関するワクチンの影響を取り除くため、ワクチン導入後の血清有病率と死亡の年齢別観測値は除外した。 非線形メタ回帰モデルを用いて年齢別IFRを推定し、得られた年齢パターンを使用して、全年齢IFR観測値を全世界の年齢分布に標準化した。すべてのIFR観測値はベースラインおよび抗体検査感度で補正した後、年齢標準化IFRを時点、地理、および共変量の上位100セットの関数としてモデル化した。共変量には、7項目の臨床的予測因子(年齢標準化肥満有病率など)と、医療システムの性能の2つの尺度が組み込まれた。190の国・地域と11の国・地域の地方について、最終的なIFR推定値(全年齢および年齢標準化)を算出した。IFRは190の国・地域で30倍以上の差があるも、ワクチン導入前8ヵ月間で33%減少 ワクチン導入および変異株流行前の2020年4月15日から2021年1月1日におけるIFR推定値は、年齢、地域および時点によって不均一性が大きいことが認められた。 年齢別IFR推定値(95%不確定区間[UI])は、7歳が0.0023%(0.0015~0.0039)と最も低く、30歳0.0573%(0.0418~0.0870)、60歳1.0035%(0.7002~1.5727)、90歳20.3292%(14.6888~28.9754)と指数関数的に増加し、J字型を呈した。2020年7月15日時点のIFRが高かった国は、ポルトガル(2.085%)、モナコ(1.778%)、日本(1.750%)、スペイン(1.710%)、ギリシャ(1.637%)であった。 全年齢IFRは、190の国・地域の間で30倍以上のばらつきが認められた。2020年7月15日時点の年齢標準化IFRが高かった国は、ペルー(0.911%)、ポルトガル(0.850%)、オマーン(0.762%)、スペイン(0.751%)、メキシコ(0.717%)であった。 IFRが高い地方には、英国、米国の南部および東部の州のホットスポットも含まれていた。サハラ以南のアフリカとアジア諸国は一般的に、全年齢および年齢標準化IFRが低かった。人口年齢構成は、2020年7月15日時点におけるサンプル国39ヵ国のIFR推定値のロジットスケールの変動の74%を占めた。事後解析により、介護施設集団における高い感染率が、一部の地域における高いIFRを説明する可能性が示された。 すべての国・地域において、2020年4月15日時点から2021年1月1日時点の間で、IFR中央値は0.466%(四分位範囲:0.223~0.840)から0.314%(0.143~0.551)に低下した。

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5~17歳へのファイザー製ワクチン、オミクロン株への効果と持続期間は?/CDC

 ファイザー製の新型コロナワクチンについて、12〜17歳におけるデルタ株への2回接種の効果は認められているが、オミクロン株に対する効果や効果持続期間、5〜11歳における効果のデータは少ない。今回、米国・Kaiser Permanente Northern California Division of ResearchのNicola P. Klein氏らの調査から、本ワクチン2回接種により小児および青年のCOVID-19関連の救急部および緊急医療機関への受診を抑制することがわかった。しかしながら、オミクロン株優位の期間ではワクチンの効果は低く、接種後は経時的に低下していた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年3月4日号に掲載。 本研究では、2021年4月9日~2022年1月29日に米国10州において、COVID-19様疾患で救急部や緊急医療機関を受診した5~17歳の3万9,217例および入院した1,699例を調査し、case-control test-negative designを用いてワクチン効果(VE)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19関連の救急部や緊急医療機関への受診に対するVEは、5〜11歳では2回目接種後14〜67日で46%、12〜15歳および16〜17歳では2回目接種後14〜149日でそれぞれ83%および76%、150日以降はそれぞれ38%および46%だった。なお、16〜17歳では、3回目(ブースター)接種後7日以降にVEは86%に上昇した。・オミクロン株優位の期間におけるCOVID-19関連の救急部や緊急医療機関への受診に対するVEは、12~17歳においてデルタ株優位の期間よりも大幅に低く、2回目接種後150日以降は有意な効果はみられなかった。しかしながら、16~17歳で3回目(ブースター)接種後7日以降に81%に上昇した。・COVID-19関連入院に対するVEは、デルタ株以前/デルタ株/オミクロン株が優位な期間を含む調査した全期間で、5~11歳では2日目接種後14~67日で74%(95%信頼区間が広く、0をまたいでいる)、12~15歳および16~17歳では2日目接種後14~149日でそれぞれ92%および94%、150日以降はそれぞれ73%および88%であった。 今回の結果から、著者らは「対象となるすべての小児および青年は、推奨されるワクチン接種のアップデート(12~17歳におけるブースター接種を含む)を継続する必要がある」としている。

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コロナワクチンのブースター、オミクロン株に最も有効なのは?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1 nCoV-19」(AstraZeneca製)または「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の2回接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)による症候性疾患への防御効果は限定的である。BNT162b2または「mRNA-1273」(Moderna製)ワクチンによるブースター接種によって、ワクチン有効性は大幅に増大するが、時間の経過とともに減弱する。英国健康安全保障庁(UKHSA:U. K. Health Security Agency)のNick Andrews氏らが、オミクロン株感染者約89万人を対象にイングランドで行った診断陰性(test-negative)デザイン法(TND)による症例対照試験の結果を報告した。オミクロン変異株によるCOVID-19症例の急増によって、現行ワクチンの有効性に関する懸念が生じている中で本検討は行われた。NEJM誌オンライン版2022年3月2日号掲載の報告。ワクチン3種のプライマリ接種+3種ブースター接種の有効性を検証 研究グループは、オミクロン変異株とデルタ変異株による症候性疾患へのワクチン有効性を推定するため、イングランドで診断陰性症例対照試験を行った。ワクチン有効性は、BNT162b2、ChAdOx1 nCoV-19、またはmRNA-1273のそれぞれ2回接種後について算出し、また、BNT162b2、ChAdOx1 nCoV-19、mRNA-1273のいずれかのブースター接種後の有効性を検証した。対オミクロン変異株へのワクチン有効性は、対デルタ変異株より低下 2021年11月27日~2022年1月12日に、オミクロン変異株感染者88万6,774例とデルタ変異株感染者20万4,154例、および診断陰性症例対照試験の適格者計157万2,621例を特定した。 検証した全時点および2回のプライマリ接種と1回のブースター接種のワクチンの全組み合わせにおいて、ワクチン有効性は、対デルタ変異株が対オミクロン変異株より高かった。また、ChAdOx1 nCoV-19の2回プライマリ接種後20週では、オミクロン変異株に対するワクチン有効性はまったく認められなかった。BNT162b2を2回接種後2~4週では、同有効性は65.5%(95%信頼区間[CI]:63.9~67.0)だったが、25週以降では8.8%(7.0~10.5)に低下した。mRNA-1273ワクチン2回接種後2~4週でも、同有効性は75.1%(70.8~78.7)だったが、25週以降では14.9%(3.9~24.7)に低下した。 ChAdOx1 nCoV-19の2回プライマリ接種群において、BNT162b2ブースター接種後の2~4週には、ワクチン有効性は62.4%(95%CI:61.8~63.0)に上昇したが、10週以降では39.6%(38.0~41.1)に低下した。同群において、mRNA-1273ブースター接種では、2~4週後のワクチン有効性は70.1%(69.5~70.7)に上昇したが、5~9週以降では60.9%(59.7~62.1)に低下した。 BNT162b2の2回プライマリ接種群では、BNT162b2ブースター接種後の2~4週には、ワクチン有効性は67.2%(95%CI:66.5~67.8)に上昇したが、10週以降では45.7%(44.7~46.7)に低下した。同群において、mRNA-1273ブースター接種では、2~4週後のワクチン有効性は73.9%(73.1~74.6)に上昇したが、5~9週以降では64.4%(62.6~66.1)に低下した。 mRNA-1273の2回プライマリ接種群では、BNT162b2ブースター接種後の2~4週では、ワクチン有効性は64.9%(95%CI:62.3~67.3)、mRNA-1273ブースター接種後の2~4週では同66.3%(63.7~68.8)だった。5週以降については被験者数が不十分で検証結果は得られていない。

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第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚

「飲食店の規制を続ける効果が小さい」と「まん防」延期に反対の委員もこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」の適用期間が18都道府県で3月21日まで延長されました。延長地域のうち東京や大阪、神奈川など9都府県は病床使用率が5割以上で、重点措置の効果に改めて疑問符が投げかけられています。政府の基本的対処方針分科会では今回の重点措置延長に対し、行動経済学を専門とする大阪大学特任教授の大竹 文雄氏ら委員2人が反対したとの報道がありました。大竹氏はオミクロン型の重症化リスクの低さに加え、クラスターは高齢者施設や保育所で多発していると指摘し、飲食店の規制を続ける効果が小さいことなどを反対理由としたそうです。「まん防」はもはや行政が”やってる感”を出すための道具に過ぎないようです。感染拡大を抑え込み、収束に向かわせるには、ワクチンの3回目接種が必須と思われますが、3月7日に首相官邸ホームページで公表された3回目接種の完了率は全体で24.9%、65歳以上高齢者で61.0%と依然低いままです。国(と各自治体)はこの接種遅れをどう挽回するのか、これからの施策に注目したいと思います。さて今回は滋賀県大津市にある基幹病院、地方独立行政法人・市立大津市民病院(401床)で起きている外科系医師の大量退職事件について書いてみたいと思います。外科・消化器外科・乳腺外科の9人が退職へ同病院の大量退職が発覚したのは2月初旬でした。各紙報道によれば、今年2月、病院内で突然「大津市民病院 外科・消化器外科・乳腺外科で治療中の患者様へ」と題した文書が配布されました。3科の医師9人(常勤医8人、非常勤医1人)連名の文書には「退職しなければいけないこととなりました。当院院長・理事長・事務局長により決定された病院運営上の判断とのことです」と記されていました。9人はいずれも京都大学医学部の外科学教室から派遣されている医師でした。医師側はパワーハラスメントだと主張問題が表沙汰になったことを受け、病院側は2月15日に記者会見を開き、医師9人が3月末以降退職する意向を示している事実を認めるとともに、京大側から14日に「今後は医師を派遣しない」との連絡があったと説明しました。記者会見を受け、各紙が一斉にこの事実を報じました。毎日新聞等の報道によれは、昨年9月、経営陣が外科医側に外科の経営状況に関する相談をした際、経営改善の意思がみられなかったため、市立大津市民病院のトップである北脇 城理事長が「消化器外科は府立医大(京都府立医科大学)と交代するように」と発言。消化器外科と乳腺外科を兼任している医師もおり、医師らは「全員交代」と認識したとのことです。医師側はパワーハラスメントだと主張したものの、病院内部の検証ではパワハラとは認定されなかったとのことです。医師側は冒頭の文書を病院内で患者向けに配布し、2月7日には大津市医師会に対し、「2月2日から新規手術の紹介患者の受け入れを基本的に中止している」と連絡したとのことです。「収入実績が悪いことが問題の背景にある」と理事長15日の記者会見で北脇理事長は、「外科・消化器外科・乳腺外科の収入実績が悪いことが問題の背景にある」と説明したものの、「(府立医大の医師と)交代する事実もなく、パワハラではない」と弁明、「近隣の病院から医師を派遣してもらうよう依頼するとともに、京大側にも引き続き派遣を求めている。診療体制への影響を最小限に食い止めたい」と話したそうです。また、外部の弁護士による第三者委員会を立ち上げ、パワハラの有無の検証を始めていることも明らかにしました。京大派遣の脳神経外科5人も退職へ新規の外科手術の停止など、日常診療に大きな障害が生じている中、事態は好転どころか悪化に向かいました。2月18日付の各紙は脳神経外科の全医師5人が、4月以降に退職する意向を示していると報じました。朝日新聞等の報道では、この5人も京大から派遣されている医師で、取材を受けた医師の1人は北脇理事長から同科の業績が悪いとして「府立医大から来春、3人の医師を派遣してもらい、脳卒中科を設ける。今いる2人は退任してほしい」と告げられた、と語ったとのことです。京大側はこの件についても人事に関するパワハラが生じたと判断、医師の引き上げを決定したとのことです。この事態に対し病院側は、2月18日に北脇理事長と若林 直樹院長の連名で、「脳神経外科とは、計画を踏まえた対応強化について協議を行ってきており、人事を巡って病院幹部によるパワーハラスメント的な行為があったと主張されていることは遺憾」とのコメントを発表しています。なお、3月5日付の毎日新聞は、同病院の脳神経外科医が3日、病院職員に対し「やむなく退職する予定」とメールで伝え、今夏に退職する旨を明らかにしたと報じています。同紙によれば、脳神経外科医らは「実績が良好にもかかわらず、経営陣からスタッフ減員や任用拒否を迫られるなどのハラスメント的行為を受け、信頼関係が崩壊したことが原因」と伝えたそうです。これで、大津市民病院を辞めようとしている医師は、合計14人となります。大津市、滋賀県も困惑、今後の対応を検討へこの事件、地域の医療提供体制に混乱をもたらしていることから、独立行政法人の出資者である大津市のみならず、滋賀県も病院の今後の対応を注視しています。大津市の佐藤 健司市長は2月21日に開かれた通常会議の本会議冒頭で、「設置者として遺憾。こうした事態を招いた法人の責任は極めて重い。県に協力を要請するなど、設置者として対応に努める」と述べました。さらに、3月2日の市議会での代表質問では、設置者としての市の対応や姿勢をただす質問が相次ぎ、佐藤市長は診療への影響などに関する病院側からの報告を精査している段階とし「必要に応じ、さらなる対応を検討する」と答弁したとのことです。また、三日月 大造・滋賀県知事は2月25日の県議会一般質問で「病院や大津市、派遣元の大学と課題を共有し、対応を検討したい」と答弁しています。理事長は府立医大病院の病院長経験者人事に関してパワハラがあったのか、なかったのか。純粋に経営改善のために派遣元の医局を変えようとしたのか、別の理由があったのかは現時点では判然とせず、第三者委員会の判断待ちとなっています。そんな中、一つ気になったのは、医師派遣を止めると言っているのが京大の外科、脳神経外科であるのに対し、パワハラを告発された経営者側の北脇理事長、そしてナンバー2の若林院長がともに京都府立医科大学の出身者だという点です。北脇理事長は京都府立医大の産婦人科学教室の教授を2021年3月まで努め、2017〜2019年は京都府立医科大学附属病院の病院長も務めていました。現在は京都府立医科大学名誉教授でもあります。公表されている最近の事業報告などを見ると、大津市民病院自体の経営状況は決して良好とは言えませんが、2020年度については、「財務状況としては、医業収支はマイナス14億8,600万円と医業収益の落ち込みに より多額の損失となったが、国等の補助金等により、経常収支において20億5,800万円の経常利益を確保することができた」としています。コロナ対応もあり、2021年度も補助金等でおそらく相当の黒字計上になっていると思われます。外科や脳神経外科で喫緊の経営改善が必要だったかはわかりませんが、だからといって「派遣医局を京大から府立医大に単純に替えればいい」という考え方は相当強引に見えます。調べてみると、同病院では、2019年にも産婦人科医の大量退職が起こっており、同年6月以降、分娩の取り扱いは休止したままです。北脇理事長の専門は産婦人科ですが、理事長に赴任した2021年4月以降も分娩は再開されていません。「ジッツを経営状況のいい大規模病院に集約する」ことが大学医局のこれからの役割関西の医療界では、府立医大と京大医学部との仲の悪さは昔から有名です。お互いに「川向こう(鴨川の向こう岸)」と呼び合うと聞いたこともあります。歴史的には府立医大の前身(京都府立医学専門学校)のそのまた前身である京都府医学校の方が古く、京都帝国大学医科大学が設立された時には京都府医学校から医師を大量に引き抜いたという逸話もあるようです。そういった歴史的な背景もあり、京阪神では京大医学部よりも、府立医大のジッツ(関連病院)の方が圧倒的に多いと言われています。一般の人から見れば、京大は全国区、府立医大は地方区の医学部ですが、京阪神地域においては、府立医大はジッツなどの勢力において一目置かれる存在なのです。とは言うものの、今回の事件が、「母校である府立医大のジッツを増やしたかった」という、極めて昭和的な理由が背景にあるのだとしたら、それこそ税金を払っている大津市民はたまりません。そもそも人口減少が急速に進み、各地の病院の統廃合が喫緊の課題となっている中、ジッツを闇雲に増やすことは時代に逆行する行為だと言えます。医師の働き方改革も本格化する中、大学医局のこれからの役割は、「ジッツを経営状況のいい大規模病院に集約し、大人数のスタッフで大量の症例や手術を効率的にこなす体制を作ること」だからです。症例数も少なく若手医師のトレーニングにもならない病院からは医師を引き上げる、というのが、これからのトレンドなのです。そうした意味でも、大学医学部の教授が天下って、地方の公立・公的病院等の院長を名誉職的に務める、という時代は昭和・平成で終わったと言えるでしょう。もはや病院経営は、天下った元教授が片手間にできるような甘い仕事ではないのです。

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新型コロナワクチン4種、6ヵ月後までの有効性をメタ解析/Lancet

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への感染や、症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発現に対する4種のワクチンの有効率は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までの間に平均で約20~30%低下するが、重症化に対する有効率の低下は約9~10%と小さいことが、世界保健機関(WHO)のDaniel R. Feikin氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年2月21日号に掲載された。4種のワクチンの効能・効果を評価するメタ回帰分析 研究グループは、さまざまな臨床アウトカムに対するCOVID-19ワクチンの感染防御期間のエビデンスを系統的にレビューし、接種後の時間経過に伴うデルタ変異株に起因するワクチン突破型感染の割合の変動を評価する目的で、メタ回帰分析を行った(感染症流行対策イノベーション連合[CEPI]の助成を受けた)。 2021年6月17日~12月2日の期間に公表された査読済みまたは査読前の論文に関して、系統的レビューが行われた。対象は、COVID-19ワクチンの効能(efficacy)に関する無作為化対照比較試験と、COVID-19ワクチンの効果(effectiveness)に関する観察研究とされた。 ワクチンの完全接種を受けた集団における離散時間間隔での効能・効果について検討が行われ、事前に定義されたスクリーニング基準を満たした研究が、全文のレビューの対象とされた。 変量効果を用いたメタ回帰分析で、完全接種後1~6ヵ月のワクチンの効能・効果の平均変化量の推定が行われた。 310の論文が全文レビューの対象とされ、18の研究(いずれもオミクロン変異株の広範な感染拡大が始まる前に行われた)が解析に含まれた。7報が査読済み、10報は査読前の研究で、3報は無作為化対照比較試験、15報は導入後観察研究であり、米国の研究が8報、英国が2報、カナダ、フィンランド、イスラエル、カタール、スペイン、スウェーデンが各1報で、残りの2報は複数の国が参加した臨床試験だった。バイアスリスクの評価では、3試験が低、8試験が中、7試験は高であった。重症化への有効率は、約8割が6ヵ月後まで70%以上で維持 全体で、78件のワクチン別の効能・効果の評価が行われた(コミナティ[Pfizer-BioNTech]38件、mRNA-1273[Moderna]23件、Ad26.COV2.S[Janssen]9件、バキスゼブリア[AstraZeneca]8件)。 SARS-CoV-2感染に対するワクチンの効能・効果は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までに、全年齢層で平均21.0%ポイント(95%信頼区間[CI]:13.9~29.8、p<0.0001)低下し、高齢者(各試験の定義で50歳以上)では平均20.7%ポイント(10.2~36.6、p=0.0004)低下した。 症候性COVID-19におけるワクチンの効能・効果は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までに、全年齢層で平均24.9%ポイント(95%CI:13.4~41.6、p<0.0001)低下し、高齢者では32.0%ポイント(11.0~69.0、p=0.006)低下していた。 また、重症COVID-19では、ワクチンの効能・効果が同期間に、全年齢層で10.0%ポイント(95%CI:6.1~15.4、p<0.0001)、高齢者では9.5%ポイント(5.7~14.6、p<0.0001)、それぞれ低下したが、感染や症候性COVID-19の発現に対する効能・効果に比べると低下の幅が小さかった。COVID-19の重症化に対するワクチンの効能・効果は、全体の81%の患者が、接種後6ヵ月まで70%以上で維持されていた。 著者は、「ワクチンの効能・効果の低下は、試験のバイアスの影響を除外できないものの、少なくとも免疫力の低下が原因の可能性がある。COVID-19ワクチンの施策を更新するには、6ヵ月以降のワクチンの効能・効果の評価を行うことが重要であろう」としている。

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ロタウイルスワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第12回

ワクチンで予防できる疾患ロタウイルスは、乳幼児の急性胃腸炎を引き起こす代表的な病原体である。発熱と嘔吐から症状が始まり、水様性下痢を伴うようになる。ほとんどの場合は1週間程度で自然軽快するが、激しい嘔吐や下痢のために脱水症を起こし、点滴治療や入院が必要になる場合もある。5歳未満の急性胃腸炎の入院患者のうち、40〜50%はロタウイルスが原因である。また、脱水症の他にも、けいれん、腎不全、脳症などを起こすことがあり、5歳未満児の急性脳症の起因病原体としては、インフルエンザウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6に次いで3番目に多い1)。ロタウイルスは糞口(経口)感染により拡大するが、非常に感染力が強く、衛生状態に関係なく5歳までにほとんどすべての乳幼児が感染すると言われている。重症例は初感染時に起こりやすく、繰り返し感染することで徐々に軽症化するため、年長児以降では不顕性感染になることも多い。わが国でのロタウイルス胃腸炎は冬から春に多く報告されているが、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年以降はロタウイルスによる感染性胃腸炎の患者報告数は激減している(図)。図 定点あたり報告数画像を拡大する国立感染症研究所. 感染症発生動向調査2022年第3週より抜粋ロタウイルス感染症には抗ウイルス薬などの特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となる。また、感染力が非常に強いため、適切な感染対策を行っても完全に予防することが困難である。そのため、乳児へのワクチン接種によるロタウイルス感染予防および重症化予防が重要となる。ロタウイルスワクチンの概要わが国では、1価ロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス)および5価ロタウイルスワクチン(同:ロタテック)の2種類の経口生ワクチンが認可されている(表)。表 ロタウイルスワクチン接種スケジュール画像を拡大するカバーする血清型は異なるが、1価ワクチンは交差免疫により他の血清型にも効果を発揮するため、同等の有効性が認められている2)。ロタウイルスワクチンは、前述のようにロタウイルス胃腸炎が2回目以降は軽症化するという性質を応用したものであり、その効果は、胃腸炎感染予防74~87%、重症化予防85~98%と非常に高い3)。効果の持続期間も生後2~3年まで確認されている。また、国内においてもワクチン接種による5歳未満児の入院率減少の効果が報告されている4)。ワクチン接種後に易刺激性、下痢、嘔吐などの副反応が国内で報告されているが、いずれも数日以内に回復し、重篤なものはまれである。頻度は非常に低いが(2~10万人に1人3))、初回接種後に腸重積を起こすことがある。第一世代のロタウイルスワクチン(同:RotaShield)が導入された際に、腸重積発症頻度の増加が確認されたため販売中止となった。現在使用されているワクチンは、腸重積発症リスクがRotaShieldの1/5~1/10と低くワクチン接種のメリットがリスクをはるかに上回る4)が、注意深く観察する必要がある。接種のスケジュールロタウイルスワクチンの接種スケジュールを表に示す。1価ロタウイルスワクチンと5価ロタウイルスワクチンでは接種回数が異なるため注意が必要である。原則として同じ種類のワクチンでスケジュールを完遂することが望ましい。しかし、転居後にいずれか一方のワクチンしか実施されていないなどの理由により、原則によることができないやむを得ない事情があると当該市町村長が認めた場合には、他方のワクチンにて接種することが可能である(具体的な接種方法については定期接種実施要領を参照5))。また、月齢3ヵ月以降に腸重積の発症率が増加するため、ワクチンの初回接種はできるだけ早い時期に実施することが必要である。出生15週0日以降の初回接種については安全性が確立されていないため、出生14週6日までに初回接種を完了させることが望ましい。日常診療で役立つ接種ポイントロタウイルスワクチンは経口生ワクチンであり、接種後1週間程度は便中にウイルスが排出されるため、おむつ交換時の手洗いなどの感染対策について説明しておくと良い。また、接種後の吐き出しを避けるために、接種前後は授乳を控えるように説明する。少量でも飲み込んでいれば一定の効果があり、ロタウイルスワクチンは複数回接種することから、万が一吐き出した場合でも1回投与と考え、追加の投与は必要ない5)。ロタリックスについては添付文書上、任意接種としての再投与が可能となっているが推奨はされていない。重篤な副反応として腸重積の可能性についても事前に保護者などに説明しておく必要がある。接種後1週間以内に、激しく泣く、機嫌が良かったり悪かったりを繰り返す、嘔吐を繰り返す、血便が出るなどの症状があった場合には、必ず医療機関を受診するように伝えておく。今後の課題・展望ロタウイルスワクチンは非常に効果の高いワクチンであるが、わが国では長年任意接種のために接種率が上がらなかった。ようやく2020年10月より定期接種化され、今後のロタウイルス胃腸炎および合併症の減少が期待されるところである。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト予防接種Q&A1)国立感染症研究所. IASR. 2019;40:209-210.2)Jonesteller CL, et al. Clin Infect Dis. 2017;65:840-850.3)CDC. The Pink Book. Chapter19:Rotavirus. 4)国立感染症研究所. 日本におけるロタウイルスワクチンの効果. 2019;40:212-213.5)厚生労働省. 定期接種実施要領.講師紹介

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第102回 ファイザーCOVID-19ワクチンの5~11歳での感染予防効果、相次ぐ報告

小学生(5~11歳)ごろを含む小児の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの感染予防効果はかなり低いようで、オミクロン株優勢の昨今においては追加接種の出番が必要なようです。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株出現後の米国ニューヨーク州のデータを調べた査読前のmedrxiv掲載報告によると、5~11歳小児へのPfizer/BioNTechワクチンBNT162b2接種の感染(COVID-19)予防効果は接種が済んでから僅か1ヵ月ばかりで激減していました1,2)。先週末4日にMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)に発表された米国疾病管理センター(CDC)主催VISION Network試験の査読済み(reviewed)結果報告3)でもニューヨーク州データほどではないもののその年齢層の小児へのBNT162b2の効果の衰えは比較的早いらしいことが示唆されています。試験では救急や急診(emergency department and urgent care)を要した小児のCOVID-19とワクチン接種歴が検討され、5~11歳小児の2回目接種から2週後(14日後)~およそ2ヵ月後(67日後)のCOVID-19予防効果は46%でした。ニューヨーク州の試験では去年12月13日から今年1月2日までにBNT162b2接種済みの5~11歳小児の検討が含まれ、それら小児のSARS-CoV-2感染予防効果は接種が済んでから2週間(13日間)以内では65%だったのが約1ヵ月(28~34日)後には12%に低下していました(medrxiv報告1)のFigure 2)。より年長の12~17歳小児のBNT162b2接種の同期間の感染予防効果は76%と56%であり、5~11歳小児ほどは低下しませんでした。5~11歳小児への投与量はそれより年長の小児に比べて少ないことが効果の大方の消滅の原因かもしれないと著者は考えています。12~17歳小児への投与量は30μgで、5~11歳小児への投与量はその3分の1の10μgです。5~11歳小児のCOVID-19入院予防効果は感染予防の大方の消失とは対照的に比較的保たれました。オミクロン株検出が感染の19%であった去年12月13~19日の入院予防効果は100%、オミクロン株検出が感染のほぼ100%(99%超)を占めるようになった今年1月24~30日では48%でした。効果はおよそ半減したとはいえワクチンは重病を防いだ(was protective)と著者は判断しており、5~11歳小児への接種普及の取り組みを続けるべきと言っています。報告時点での米国のそれら幼い小児のワクチン接種率は4人に1人に満たない25%未満でした。同様にVISION Network試験でも5~11歳小児のBNT162b2接種の入院予防効果は感染予防効果よりどうやら高いと示唆されています。2回目接種から14~67日間のCOVID-19関連入院予防効果は74%でした。ただし、統計解析にデータは不十分でその95%信頼区間は0をまたぐ-35%~+95%であり、BNT162b2が5~11歳小児のCOVID-19関連入院をどれほど防ぐのかを更にデータを集めて検討する必要があります。加えて、5~11歳小児にワクチンをどう投与するかの検討も必要でしょう。感染予防効果は現状ではどうやら早く低下するようであり、工夫した投与方針を考えてその試験を実施すべきとニューヨーク州試験の著者は言っています1)。Pfizer/BioNTechはすでにその方向で事を進めています。去年12月の両社の発表4)によると、2歳以上5歳未満小児への両社のワクチン2回接種後1ヵ月間の免疫反応はワクチンの確かな効果が判明している青少年(16~25歳)の人のそれに残念ながら及ぶものではありませんでした。この結果を受けて両社は生後6ヵ月から5歳未満の小児を対象にした進行中の試験に3回目投与を含めることを決めています。3回目の用量は1回目と2回目と同量の3μgで、2回目から2ヵ月過ぎてから投与されます。3回目接種の検討が成功したら生後6ヵ月以上5歳未満小児への同ワクチン使用の米国FDAの取り急ぎの認可を今年前半に手にするのに必要なデータが揃うと両社は見込んでいます。その発表の際に両社は5~11歳の小児への3回目接種も検討することを明らかにしています。それら小児への3回目接種の用量もより幼い小児への投与がそうであるように1回目と2回目と同じ10μgです。参考1)Effectiveness of the BNT162b2 vaccine among children 5-11 and 12-17 years in New York after the Emergence of the Omicron Variant. medRxiv. February 28, 20222)Vaccine’s protection for kids dives / Science3)Klein NP, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 4; 71;352-358.4)Pfizer and BioNTech Provide Update on Ongoing Studies of COVID-19 Vaccine / Pfizer

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オミクロン株亜種BA.2、短期間で再感染の可能性/デンマーク国立血清研究所

 現在、世界で最も優勢になっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株は、変異の違いにより、いくつかの亜種に分類されている。日本ではBA.1と呼ばれる亜種が主流だが、BA.1より感染力が高いBA.2は「ステルスオミクロン」とも呼ばれ、英国や南アフリカ、ノルウェーなどで増加しており、日本国内でも感染が確認されている。デンマーク国立血清研究所は2月22日付のリリースで、BA.2の再感染に関する研究結果を発表した。同研究所が実施した全ゲノム解析の調査によると、まれではあるものの、オミクロン株のBA.1既感染者がBA.2に比較的短期間のうちに再感染し、とくにワクチン未接種の若年者に多く見られるという。オミクロン株は再感染までの期間が短い デンマークは、2月1日よりEU加盟国としては初めてコロナ関連の規制をほぼ全面的に解除しているが、同国では2022年初頭から、オミクロン株亜種BA.2の症例数が急激に増加し、2月中旬の段階では、BA.2が全体の88%を占めていることが確認されている。本研究は、査読前の論文のオンライン・アーカイブである「medRxiv」※2022年2月22日号1)にも掲載された。※今後、審査によっては論文内容が修正される場合あり 2021年11月21日~22年2月11日の間に、デンマークでは184万8,466例(デンマーク人口の32%)がPCR検査でSARS-CoV-2陽性と判定され、そのうち20~60日の期間中で2つの陽性検体があるものが1,739例確認された。全ゲノム解析に成功した263例中187例(71%)でオミクロン株亜種BA.2への再感染が確認された。このうち、140例(53%)がデルタ株からオミクロン株亜種BA.2への再感染、47例(18%)がBA.1からBA.2への再感染だった。 調査によると、デルタ株からオミクロン株亜種BA.2再感染140例の年齢中央値は16歳であり、95例(68%)がワクチン未接種だった。オミクロン株亜種BA.1からBA.2再感染47例の年齢中央値は15歳で、BA.1感染時に38歳以上の症例はなく、20歳以下が大多数で33例(70%)だった。ワクチン接種状況は、42例(89%)が未接種、3例(6%)が2回接種、2例(4%)が1回のみ接種だった。オミクロン株への再感染では、全体的に初感染と同程度の軽症であり、入院や死亡に至ることはなかったとしている。 研究期間中のSARS-CoV-2陽性者数が多いことから再感染率は低いと推定されるが、本研究によって、ワクチン接種による免疫の持続期間を継続的に評価する必要性を指摘している。また、最初の感染からオミクロン株亜種BA.2再感染まで期間が短いことから、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が定める、60日以上の間隔を空けて2回の陽性を検出するという再感染の定義についても再評価すべきとしている。

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塩野義ワクチン、追加接種試験中間報告でコミナティに非劣性

 2022年3月4日、塩野義製薬は開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019のPhase 2/3追加免疫比較試験の中間報告の結果速報に関する説明会を開催し、東京品川病院副院長兼治験開発・研究センター長 新海 正晴氏より、中間報告においてS-268019群のコミナティ群に対する非劣性が確認されたことが報告された。 Phase 2/3追加免疫比較試験は、コミナティ筋注2回接種後6ヵ月以上経過した20歳以上の成人を対象として、3回目の追加接種に関してコミナティに対する非劣性を検証する目的で実施された。試験デザインは無作為化、オブザーバーブラインド、実薬対照であり、統計学的仮説検定は次の条件で行われた。<統計学的仮説検定> コミナティ群に対するS-268019群の中和抗体価の幾何平均抗体価(GMT)比の95%信頼区間[CI]の下限値が0.67よりも大きい、かつ、コミナティ群に対するS-268019群の中和抗体価の抗体応答率の差の95%CIの下限値が-10%よりも大きい場合、コミナティに対する免疫原性の非劣性が検証されたとする。 参加者の患者背景はS-268019群 103例、コミナティ群 102例であり、主要評価項目はDay29のSARS-CoV-2中和抗体価のGMTおよび抗体応答率であった。 以下の結果より、中間報告における主要評価項目の達成が確認された。・Day29のSARS-CoV-2中和抗体価のGMTはS-268019群 126.42、コミナティ群 108.20(95%CI:0.96~1.42)であり、S-268019群のコミナティ群に対する非劣性が検証された。・Day29のSARS-CoV-2中和抗体価の抗体応答率はS-268019群 100.0%、コミナティ群 100.0%(95%CI:-5.8~5.8)であり、S-268019群のコミナティ群に対する非劣性が検証された。 また、オミクロン株を含む変異株に対して、S-268019群はコミナティ群と同等の中和抗体価を示した。安全性についてはS-268019群、コミナティ群ともにほとんどがGrade 1あるいは2であり、コミナティ群と比較して、S-268019は特定全身/局所副反応の発現率が同等以下であった。

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南アフリカ、オミクロン株流行前にIgG抗体陽性者が7割以上/NEJM

 南アフリカ共和国ハウテン州では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)B.1.1.529(オミクロン株)が優勢の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大前に、潜在的なSARS-CoV-2血清陽性が州全体に広がっていたことが確認され、オミクロン株感染増加とCOVID-19による入院や死亡は関連していないことが示されたという。南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のShabir A. Madhi氏らが、ハウテン州で実施した血清疫学調査の結果を報告した。オミクロン株は、2021年11月25日に世界で初めてハウテン州で確認され、オミクロン株が優勢となったCOVID-19第4波以前のハウテン州におけるSARS-CoV-2 IgGの血清陽性率に関するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2022年2月23日号掲載の報告。オミクロン株流行前の血清疫学調査を実施 研究グループは、2021年10月22日~12月9日の期間に、ハウテン州において血清疫学調査を実施した。対象世帯は、2020年11月~2021年1月に実施した前回の血清疫学調査時と同じ世帯とし、さらに、前回調査以降の転出や死亡等の可能性を考慮して前回と同じクラスターでのサンプリング対象世帯を10%増やした。 参加者から乾燥血液スポットを採取し、SARS-CoV-2スパイクタンパクとヌクレオカプシドタンパクに対するIgGについて検査した。 また、研究グループは、DATCOV(COVID-19による入院に関する積極的サーベイランスシステム)を含む南アフリカ共和国国立感染症研究所のデータベース等を用い、パンデミック開始から2022年1月12日までの患者数、入院、死亡、超過死亡を調査し、ハウテン州におけるCOVID-19の疫学的傾向について評価した。ワクチン非接種者でも68.4%がSARS-CoV-2血清陽性 検体を採取し分析された参加者は7,010例で、このうちCOVID-19のワクチン接種を受けていたのは1,319例(18.8%)であった。 SARS-CoV-2 IgGの血清陽性率は、全体で73.1%(95%信頼区間[CI]:72.0~74.1)であり、12歳未満の56.2%(52.6~59.7)から50歳以上の79.7%(77.6~81.5)の範囲にわたっていた。また、女性のほうが男性より(76.9% vs.67.9%)、ワクチン接種者のほうが非接種者より(93.1% vs.68.4%)、血清陽性率が高かった。 オミクロン株優勢のCOVID-19第4波では、第1~3波と比較して1日の患者数(人口10万人当たり)の増加が急激で、1ヵ月でピークに達した後、急速に減少していた。第4波の患者数(22万6,932例)は、第2波(18万2,564例)より多く、第3波(51万1,638例)より少ないが、第4波におけるCOVID-19による入院、死亡および超過死亡数は第3波以前より一貫して少なく、それぞれのピーク数も低かった。 すべての入院、死亡および超過死亡のうちCOVID-19が占める割合は、デルタ株が優勢の第3波では43.6%、49.3%および52.7%であったが、オミクロン株優勢の第4波ではそれぞれ11.2%、3.9%および3.3%だった。

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第98回 ワクチン接種率35%の国への侵攻、世界のコロナ感染状況も暗転か

年明け以降、緊迫度を高めていたウクライナ情勢だったが、2月24日、ついにロシアはウクライナへの全面的な軍事侵略を開始した。一応、私自身は国際紛争も取材範囲としている。たぶんコロナ禍でなければ、少なくとも隣国ポーランドあたりまでは向かっていたと思う。現在、ロシアはウクライナの東西南北のうち、国境を接していない西部以外の3方向から侵攻している。首都キーウ(ウクライナ語表記。キエフはロシア語読み)に近い真北の国境はロシアではなくベラルーシと接している。しかし、ベラルーシはヨーロッパ最後の独裁者と評され、28年にわたって国家元首に君臨するアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が近年対ロ接近路線を強めている。今回のロシア侵攻直前もベラルーシ・ウクライナ国境周辺でロシアと合同軍事演習を行っており、そのロシア軍がそのまま南下した格好だ。ロシア側が最初に持ち掛け、2月28日にベラルーシのホメリで開催された第1回停戦交渉にウクライナ側が当初応じなかったのも、ロシア寄りのベラルーシ領内での交渉は中立的に行われないと考えたからに他ならない。それでも最終的にウクライナ側が応じたのは「停戦交渉を拒否している」という理屈でロシアが攻撃継続の正当性を主張する可能性を案じたためだろう。そんなウクライナ、ロシアに関して危惧すべきことがある。まさにいま世界中で流行している新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大だ。まず、ウクライナは2月中旬にピークとなる3万8,000人超の感染者が発生。その後はピークアウトしているものの、今回のロシア軍の侵攻直前の2月21日でも1万3,000人超の感染者が報告されていた。ウクライナの総人口は4,370万人超なので、人口換算では日本で1日の新規感染者報告数が約4万人になっているのと同じことになる。現時点の日本の感染状況から見ればマシだが、ウクライナの国力や周辺環境から考えれば、実は深刻な数字だ。まず、現在のウクライナの新型コロナワクチン接種完了率は、Our World in Dataによるとわずか35.02%。全世界平均の55.69%からすれば惨憺たる数字だ。しかも、戦時下で新型コロナワクチンの接種を進めていられる環境ではなくなったと断言してよい。ただ、懸念すべきはそもそもウクライナでは過去に麻疹ワクチン接種者での接種後死亡などが報じられた影響で国民のワクチン不信が根強いと言われていることだ。実際、世界保健機関(WHO)・国連児童基金(UNICEF)の合同報告では2010年代半ばに麻疹をはじめとする各種ワクチンの接種率が50%を下回る事態となっている。そして実際、2018~2019年にかけては麻疹、2019年には風疹の大流行が起きている。しかも、医療インフラは極めてアンバランスな状況だ。やや古い数字になるが、2014年の世界銀行の公表データでは人口1,000人当たりの医師数は2.9人、病床数は7.46床。医師数でみると、日本よりは多いが経済開発協力機構(OECD)の加盟国などでの数字で見ると、どちらかというと数は少ないほうになる。にもかかわらず病床数は多い。ざっくりした見方をすれば、医師がてんてこ舞いで病床を回しているか、事実上の病床の相当数が実際に機能していないかのいずれかになる。国際通貨基金(IMF)が公表している1人当たりの国内総生産で、ウクライナが世界195カ国・地域中第126位の3,424.77ドルでヨーロッパ最貧国という窮状にあることを考えれば、後者の可能性のほうがやや高いと考えられる。そして現在の戦闘によりウクライナの非常事態省は、すでに「4,000人を超える民間人の死者発生」と発表している。戦傷者の実数は不明だが、おそらく相当数発生していると思われる。当然ながら現下の情勢では医療機関へのアクセスそのものが困難な地域も発生していることは想像に難くなく、アクセスが確保されている医療機関でも受け入れは戦傷者が優先されるはず。もはや新型コロナに気を払っている余裕はないだろうし、PCR検査なども十分に実施しているとは言い難いだろう。そして当然、病床も戦傷者から埋まっていくはずであり、地域や医療機関によっては新型コロナで重症化、あるいは重症化しそうな人が入院できない可能性もある。一方、国内では各所で国内避難民が発生し、地下などのシェルターで密になっているほか、安全に退避できる可能性がある南西部のポーランド、ルーマニア、スロバキア、ハンガリー、モルドバには大量の難民が流入している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、3月1日現在、これらの国に87万人超の難民が流入しているという。これに応じて各国は難民に関して新型コロナに関連した検疫措置を免除している。人道的な観点からやむを得ない措置だろう。これら難民が流入している各国の新型コロナの感染者発生状況は、いずれもピークアウトはしているものの、1日当たりの新規感染者報告数を日本の人口に換算すると、ポーランドが約3万人、ルーマニアが約2万7,000人、ハンガリーが約7万人、スロバキアが約19万人、モルドバが約12万人という規模になる。国によりかなりの差はあるが、スロバキア、モルドバは日本から考えれば尋常とは言えない感染状況である。各国ともそれでも覚悟の上で難民を受け入れているのだろう。そしてこれらの国でのワクチン接種完了率はポーランドが58.71%、ルーマニアが27.91%、ハンガリーが64.04%、スロバキアが50.39%、モルドバが13.14%とやはり心もとない。一方、ウクライナに軍事侵略しているロシアは日本より2,000万人ほど人口が多い中で、最新の新規感染者報告数は13万人超、ワクチン接種完了率は49.07%。どちらも褒められる数字ではない。また、報道を見ればわかるが、隣国に入国してきた難民の多くはマスクを着用していない。それどころか報じられているウクライナ国内の病院での戦傷者の治療場面では医療従事者ですらマスクを着用していない。もっともこの点はある種やむを得ないとも言える。紛争が起きる地域の多くはもともとが貧しいことがほとんどで、さらに戦闘の発生で物流も不安定になるため、十分な医療資器材がないなかで治療を行わなければならないことは日常的だ。実際、私は紛争地の医療機関での戦傷者治療場面に取材のため何度か立ち会ったことがあるが、医療従事者は手洗いする時間すらなく創傷対応に当たっていた。やむを得ないこととはいえ、今回のロシアのウクライナ軍事侵略は両国間での死傷者発生とともに、両国とその周辺国での感染拡大という極めて最悪の事態をもたらすかもしれない。近年まれにみる大義ない軍事侵略に対して、日本政府が各国と協調してロシアに強い制裁措置を行うのは、必要かつ当然のことである。また、岸田首相自ら記者会見で周辺各国への人道支援に1億ドルを提供することを明らかにした。その中にこの新型コロナ対策も念頭に置いて欲しいと思うのは欲張りだろうか? 念のために言っておくが、廃棄直前のアベノマスクをこれ幸いに支援物資に加えるようなお恥ずかしい真似はしないでもらいたい。

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新型コロナ既感染者、ワクチン接種1回で再感染を予防/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した患者は、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)を少なくとも1回接種することにより再感染のリスクが有意に低下することを、イスラエル・Clalit Health ServicesのAriel Hammerman氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析し、報告した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染リスクは、COVID-19から回復した患者では著明に減少するが、獲得免疫の持続期間は不明である。現在のガイドラインでは回復した患者へのワクチン接種が推奨されているが、このようなケースでのワクチンの有効性に関するデータは限られていた。NEJM誌オンライン版2022年2月16日号掲載の報告。ワクチン未接種・感染者約15万人、その後のワクチン接種有無での再感染を比較 研究グループは、イスラエル国民の約52%が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、ワクチン接種前にSARS-CoV-2に初感染し回復した(初感染から試験開始日の2021年3月1日時点で100日以上が経過していること)、16~110歳の会員を対象として、2021年3月1日~11月26日の間にBNT162b2 ワクチン接種を受けた人(接種群)と受けなかった人(非接種群)でのSARS-CoV-2再感染について検討した。 主要評価項目は、接種群と非接種群の再感染率の比較、副次評価項目はワクチン1回接種と2回接種の比較とした。再感染は、初感染から少なくとも100日後にPCR検査陽性と定義。時間依存共変量を用いるCox比例ハザード回帰モデルにより社会人口統計学的要因と併存疾患を補正し、ワクチン接種と再感染の関連を推定した。 解析対象は、適格基準を満たした14万9,032例であった。ワクチン有効性、16~64歳で82%、65歳以上で60%、1回接種と2回接種で差はなし 270日間の試験期間において、計14万9,032例中、接種群は8万3,356例(56%)、非接種群は6万5,676例であった。 再感染は、接種群で354例(10万人当たり2.46例/日)、非接種群で2,168例(10万人当たり10.21例/日)に発生。ワクチンの有効性は、16~64歳では82%(95%信頼区間[CI]:80~84)、65歳以上では60%(36~76)と推定された。 接種群8万3,356例のうち、1回接種は6万7,560例(81.0%)、2回接種は1万5,251例(18.3%)、3回接種が545例(0.7%)であった。2回接種に対する1回接種の再感染の補正後ハザード比は0.98(95%CI:0.64~1.50)であり、1回接種と2回接種でワクチンの有効性に有意差は認められなかった。

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第98回 増える病院へのサイバー攻撃、安全対策が急がれるも大幅赤字の現状

ウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁に対して、ロシアが報復として日本企業などにサイバー攻撃を仕掛けてくる恐れがあるため、政府は2月23日、企業や金融機関などにサイバーセキュリティ対策の強化を呼び掛けた。ウクライナでは1月以降、政府機関や銀行などがサイバー攻撃の標的になり、ロシア側の関与が指摘されていた。ただ、医療機関の多くは経営状況の厳しさから、サイバーセキュリティ対策の費用を確保することが難しく、十分な対策が行えない。医療は国の重要なインフラストラクチャーなので、サイバーセキュリティ対策の費用については国の支援が必要だ、との声が病院界から上がっている。日本では昨年11月以降、マルウェア(悪意のあるプログラム)の「Emotet(エモテット)」の感染が拡大している。攻撃者はWordやExcelファイルをメールに添付して大量に送付する「ばらまき攻撃」を仕掛けてくる。ファイルを開くと感染し、メールアカウントやパスワード、アドレス帳などの情報を抜き取られる。攻撃者は抜き取った情報を基にほかのユーザーへ感染メールを送信するため、取引先や顧客が巻き込まれる。最悪の場合、感染元は損害賠償請求や取引停止を受けたり、ブランドイメージが失墜したりする。医療機関では身代金要求型ウイルスの被害が増加中コロナ禍で、とりわけサイバー攻撃の被害を受けているのが医療サプライチェーンだ、とサイバーセキュリティの専門家は指摘する。攻撃者の狙いの1つは、コロナワクチンや治療薬などの研究成果を盗むスパイ目的の攻撃。2つ目は、「ランサムウェア」のような身代金要求型ウイルスを使った金銭目的の業務妨害だ。ランサムウェアは、感染したパソコンをロックしたり、ファイルを暗号化したりすることで使用不能にした後、元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求する不正プログラム。医療機関は身代金の支払いに応じやすい標的と見られており、日本でも2018年ごろから、被害報告が増加しており、コンピュータウイルスによる個人情報の流出とは比較にならない甚大な被害が生じている。4月から義務化されるサイバーセキュリティ対策直近では昨年10月末、徳島県西部のつるぎ町立半田病院がランサムウェア攻撃を受け、電子カルテなどの医療データがすべて暗号化されて利用できなくなった。新規患者や救急患者の受け入れを停止する事態に陥り、地域医療にも大きな影響を及ぼした。昨年末にシステムが全面復旧し、今年1月4日にすべての診療科で外来診療を再開。サイバー攻撃事件からの復旧に約2ヵ月も要した。このため、国はランサムウェア対策などを盛り込んだ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の改訂作業を進めている。医療を含む14重点分野は、4月からサイバーセキュリティ対策が義務化されることになる。医療現場はこのような事態をどう捉えているのか。四病院団体協議会(四病協)は2月16日の記者会見で、病院のサイバーセキュリティ対策に必要となる金額の試算を公表。500床以上の病院の場合、不足額は最大で1億3,000万円程度に上ると見込まれ、対策費が大幅に不足している状況が明らかになった。四病協の試算で病床規模別の不足額が明確に日本病院会の相澤 孝夫会長は「収支差益は診療報酬改定に伴い変動・低減していく病院にとって、サイバーセキュリティへの投資を『自助』で行い続けることは困難」として、「公助」、つまり国による公的補助金支給が不可欠との考えを示した。ほかの産業では、収益に占めるIT予算比率は平均約2%で、そのIT予算のうちセキュリティ関連費用は15%以上が計上されているという日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査報告」などを四病協は活用。これを第23回医療経済実態調査で得られた2020年度病床規模別損益に当てはめて、病院のセキュリティ関連費用を試算した。各病院が実際に充当しているセキュリティ費用の平均額の差を算出したところ、他産業と同様にIT予算の15%をセキュリティ対策に充てる場合、病床規模が100~199床で約400万円、200~299床で約1,100万円、300~499床で約2,100万円、500床以上で約5,600万円が不足しているという結果が出た。また、他産業と比べて病院の対策が遅れていることを考慮して、IT予算の30%をセキュリティ対策に充てる場合、不足額は100~199床で約1,200万円、200~299床で約2,600万円、300~499床で約5,000万円、500床以上で約1億3,000万円に膨らむ。はじめの数年は十分水準(IT予算の30%)の公的補助金の支給を受け、セキュリティ水準を底上げできたら、必要最低水準(IT予算の15%)の支給に変更していく段階的なアプローチを想定している。セキュリティ対策が不十分な中で医療のDX化を進めるリスク四病協はサイバーセキュリティ対策の委員会を設置、国の2022年度補正予算などでの支援費用の計上を目指して具体的な要望内容をまとめる方針だ。多くの病院では、コロナ禍以前からサイバーセキュリティ対策が遅れていたのに、コロナの収束が見えない中、さらに対策が取りにくくなっているのが実情だろう。それにもかかわらず、国は電子処方箋の導入など医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に前のめりになっている。しかし、医療DX以前にまず必要なのは、サイバーセキュリティ対策の公的補助なのではないだろうか。

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がん患者でのブースター接種後のオミクロン株への中和抗体、固形・血液腫瘍別/Lancet

 英国のがん患者の前向きコホートにおいて、新型コロナワクチン3回目接種前後のオミクロン株への中和抗体価を調べたところ、多くの患者が接種前には検出不可能だったが、接種後に検出可能な患者が大幅に増加したことが示された。そのうち固形腫瘍患者では3回目接種で90%の患者が抗体価の検出が可能だったが、血液腫瘍患者では検出可能が56%でB細胞除去療法を受けた症例や進行例の多くは検出不可能だったという。英国・The Francis Crick InstituteのAnnika Fendler氏らが、Lancet誌オンライン版2022年1月25日号のCORRESPONDENCEに報告した。 本研究の対象は、がん患者の前向き縦断コホートであるCAPTURE研究の参加者199例(固形腫瘍115例、血液腫瘍84例)。ファイザーのBNT162b2(33%)、アストラゼネカのChAdOx1(67%)のいずれかを2回接種後、全員が3回目としてBNT162b2を接種した。199例のうち179例(固形腫瘍115例中100例、血液腫瘍84例中79例)は3回目接種前のサンプルと合わせて評価した。2回目と3回目接種の間隔の中央値は176日(四分位範囲[IQR]:166~188)だった。199例中23例は2回目接種前に新型コロナ感染歴があったがオミクロン株の感染はなかった。デルタ株およびオミクロン株に対する中和抗体価は、3回目接種の11日前(IQR:0〜78)および23日後(19〜29)の中央値で評価した。中和抗体の評価は、抗体価の検出限界値の40を境界に検出不可能もしくは検出可能とした。 主な結果は以下のとおり。・オミクロン株への中和抗体価が検出可能な患者の割合は、固形腫瘍患者では3回目接種前37%から接種後90%、血液腫瘍患者では3回目接種前19%から接種後56%と増加した。・多変量ロジスティック回帰分析によると、3回目接種後のオミクロン株への中和抗体価の検出可能な患者は、固形腫瘍と血液腫瘍で差がみられた(血液腫瘍に対する固形腫瘍のオッズ比[OR]:7.51、95%CI:4.05~14.63、p<0.001)が、年齢、性別、1回目・2回目のワクチンの種類)には差がみられなかった。・血液腫瘍患者での多変量ロジスティック回帰分析では、12ヵ月以内の抗CD20モノクローナル抗体治療、および3回目接種から28日以内のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬治療が、オミクロン株への中和抗体価の検出不可能と有意に関連していた(OR:0.04、95%CI:0.003~0.21、p=0.0074)。・2回目接種後にデルタ株に感染した4例について評価したところ、感染前はオミクロン株やデルタ株への中和抗体価が検出不可能だったが、デルタ株感染後にオミクロン株およびデルタ株への中和抗体価が検出可能となったことから、2回接種とデルタ株感染でオミクロン株への免疫応答が誘導されたことが示唆された。

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5~11歳の新型コロナ重症度、インフルやRSウイルスと比較すると?

 新型コロナワクチン接種の対象が5~11歳に拡大されたが、この年代の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度は、同年代のインフルエンザやRSウイルス感染症と比較すると高いのか、低いのか。米国医療研究品質局(AHRQ)のWilliam Encinosa氏らは、米国の11州での入院患者データを用いて分析した横断研究の結果を、JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年2月21日号リサーチレターに報告した。 米国で5~11歳に対するファイザー社の新型コロナワクチンの緊急使用許可が出された2021年10月までに、この年齢層の小児でSARS-CoV-2感染と診断されたのは180万人、死亡者は143人で、入院は8,000人以上だった。本研究では米国内の11州1,333病院における、2021年第1四半期(1~3月)のCOVID-19、COVID-19による小児多系統炎症性症候群(MIS-C)、インフルエンザ、RSウイルス感染症による入院患者データを調査。COVID-19流行期には感染者が少なかったため、インフルエンザとRSウイルスについては10年間の平均的な感染者数であった2017年第1四半期のデータも用いられた。 心臓血管系、呼吸器系、神経系、血液系、腎臓系、胃腸系、筋骨格系の46の合併症のほか、入院日数や治療に要した費用についても調査された。両側検定におけるp値は、Stata/MP version 17(StataCorp)を使用して線形回帰分析から求められ、p値<0.05で有意と設定された。 主な結果は以下の通り。・計2,269例(平均[SD]年齢:7.6[2.0]歳、男児:56.0%)のデータが分析された。・343例のCOVID-19(MIS-Cなし)、379例のMIS-C、1,134例のインフルエンザ、413例のRSウイルス感染症による入院があり、10万人当たりの入院はそれぞれ5.1例、5.7例、17.0例、6.2例であった。・すべての感染症で入院中の死亡は稀であった。・COVID-19(MIS-Cなし)では神経系合併症が多く(9.6%[95%CI:6.5~12.8%]、p=0.03)、MIS-Cでは血液系(55.4%[50.4~60.4%]、p=0.001)、胃腸系(47.2%[42.2~52.3%]、p=0.001)、心血管系(29.8%[25.2~34.4%]、p=0.001)、および腎臓系(21.9%[17.7~26.1%]、p=0.001)の合併症が多くみられた。・RSウイルス感染症では呼吸器系合併症が多くみられた(75.8%[71.6~79.9%]、p=0.001)。・インフルエンザでは筋骨格系合併症が多くみられた(9.5%[7.8~11.2%]、p=0.001)。・MIS-Cでは、入院期間中央値(IQR)が最も長く(5[3~7]日)、費用の中央値は23,585ドルで、インフルエンザの場合(入院期間中央値:2[1~4]日、費用中央値:5,200ドル)と比べて長期かつ高額だった。・COVID-19感染とMIS-Cを合わせた総入院日数は,入院率が低い(10万人当たり10.8人 vs.17.0人)にもかかわらず,インフルエンザとほぼ同じ(4,384日vs.4,202日、p=0.65)であった。 著者らは、5~11歳の小児において、COVID-19入院1件に対してMIS-C入院1件であり、この知見は、MIS-Cがこれまで考えられていたほどCOVID-19の後遺症として稀ではない可能性を示唆すると考察。COVID-19の他の長期合併症も懸念され、MIS-Cの重症度はインフルエンザより低いものの、COVID-19感染とMIS-Cの複合による経済的・健康的負担は、過去のインフルエンザ流行時と同程度に高いとまとめている。

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オミクロン株臨床像の更新ほか、診療の手引き7.0版/厚労省

 2月28日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.0版」を公開し、全国の自治体に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.0版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・変異株について更新・国内と海外の発生状況を更新【2 臨床像】・(特にオミクロン株の知見に関して)臨床像を更新・重症化リスク因子を更新・ワクチンによる重症化予防効果を追加・国内小児例の臨床的特徴・重症度、小児における家庭内感染率を更新・小児多系統炎症性症候群(MISC)について更新 経過、小児重症COVID19 registryの報告を追加・更新・妊婦例の特徴について更新 日本産婦人科学会の調査を更新、新たな知見およびCOVIREGI JPの結果を追加【3 症例定義・診断・届出】・症例定義を更新、疑似症に関してを追記【4 重症度分類とマネジメント】・重症度別マネジメントのまとめにニルマトレビル/リトナビルを追加・重症につき 国内における体外式膜型人工肺(ECMO)データを更新 透析患者のデータを更新・新たなレベル分類と医療逼迫時の対応を追加【5 薬物療法】・抗ウイルス薬と中和抗体薬の併用について十分な知見がなく現時点で推奨されないことを記載・モルヌピラビルの脱カプセル・(簡易)懸濁投与に関して記載・ニルマトレビル/リトナビルについて追加 研究結果を追加:重症化リスクのある非入院患者において、28日目までの入院または死亡が低下(0.7% vs.6.5%) 投与方法・投与時の注意点・入手方法について記載・軽症・中等症患者を対象とした治療薬の主な臨床試験を更新・妊婦に対する薬物療法を更新(ニルマトレビル/リトナビルを追加)・国内で開発中の薬剤を整理 PF07321332は削除(ニルマトレビル/リトナビルが認可されたため)【6 院内感染対策】・医療従事者が濃厚接触者となった場合の考え方を更新・妊婦および新生児への対応を更新【7 退院基準・解除基準】・オミクロン株の無症状患者の療養解除基準を追加・早期退院の目安を追加

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