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第146回 テドロス氏、新型コロナ緊急事態宣言終了を発表/WHO

<先週の動き>1.テドロス氏、新型コロナ緊急事態宣言終了を発表/WHO2.第8次医療計画、医師偏在の解消のため医師確保計画を強化へ/厚労省3.健康保険法改正でかかりつけ医機能は強化されるか?/内閣府4.2024年診療報酬・介護報酬改定に向けた議論開始/厚労省5.医師偏在対策、新規開業希望者や金融機関にも外来医師偏在指標の明示へ/厚労省6.介護ロボットで介護サービスの生産性向上と人手不足解消を/厚労省1.テドロス氏、新型コロナ緊急事態宣言終了を発表/WHO世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、5月5日に「新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を終了する」と発表した。この宣言は、ワクチンの普及により死者数が大幅に減少したことに基づくもので、約3年3ヵ月の期間を経て終了となった。ただし、ワクチン接種などの感染対策を通じたウイルスとの共存が今後の課題とされており、専門家からは、緊急事態宣言の解除により各国の対策が緩む可能性や、新たな変異株の出現による感染者や死者の増加リスクに注意が必要との懸念も示されている。WHOはこれまでに計7回の緊急事態宣言を行っており、今回の終了宣言により世界中で新型コロナウイルスの位置付けは変わる。WHOの集計によれば、新型コロナによる死者数は5月初めの時点で700万人弱とされ、実際、少なく見積もっても2,000万人の死亡推定がなされるなど、今後もウイルスの変異や感染の動向に対する警戒が必要となる。(参考)WHOテドロス氏「悲劇繰り返さぬよう」 コロナ緊急事態宣言終了(毎日新聞)WHO、新型コロナ緊急事態の終了を宣言 テドロス事務局長が表明(朝日新聞)WHOの緊急事態宣言とは コロナ以外も、計7回(同)WHO、新型コロナ緊急事態宣言終了を発表 3年3カ月(日経新聞)2.第8次医療計画、医師偏在の解消のため医師確保計画を強化へ/厚労省厚生労働省は、2024年度から第8次医療計画が開始されことに先立ち「第8次医療計画等に関する検討会」を開催し、2022年12月に意見の取りまとめを行った。これを基に3月31日に「医師確保計画策定ガイドライン及び外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」に付随する「医師確保計画策定ガイドライン」と「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」を改定した。医療計画に「医師確保計画」が含まれているのは、医師の偏在により医療計画が進捗しないため、2019年度に医療計画に新たに「医師確保計画」として3次医療圏間および2次医療圏間の偏在是正による医師確保対策などを定め、2020年度から取り組みが行われてきた。しかし、2020年度以降も「医師偏在」が進行しているとして、第8次医療計画では「医師確保計画」をさらに強化し、厚生労働省では2036年までに医師偏在是正の達成を目指している。医師偏在格差の是正の取り組みについて、各都道府県が2次医療圏を、医師多数区域(医師偏在指標に照らし上位3分の1)、中間の区域、医師少数区域(同下位3分の1)に3区分に分類する。そして、上位の医師多数区域と中間区域について、医師偏在の助長を回避するため、目標医師数は、原則として、計画開始時の医師数を設定上限数として、格差是正のため、医師多数区域では、圏域外からの医師確保は行わず、逆に医師少数区域に医師を派遣するように求め、中間の区域では、圏域内に「医師少数スポット(限定的ながら医師が少ない地域)」がある場合は他の2次医療圏からの医師派遣を受ける、医師少数区域医師多数の区域(他の2次医療圏)から医師派遣などを受けるなどで、医師確保計画の効果の測定・評価を行っていく。今回の計画策定では、2024年4月に施行される「医師に対する時間外・休日労働時間の上限規制」を踏まえて、「医師の働き方改革」と「地域医療構想」「医師確保」の取り組みを一体的に推進することになる。(参考)医師確保計画策定ガイドライン~第8次(前期)~(厚労省)医師偏在指標について(同)医師確保計画の見直しに向けた意見のとりまとめ(同)第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ(同)2024年度から強力に「医師偏在解消」を推進!地域の「すべての開業医」に夜間・休日対応など要請-厚労省(Gem Med)3.健康保険法改正でかかりつけ医機能は強化されるか?/内閣府子育て支援策を含む「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」は、衆議院で賛成多数で可決され、現在参議院で審議が行われている。この法案は、全世代型社会保障構築会議のこれまでの議論を取りまとめ、昨年12月16日に全世代型社会保障構築会議報告書の形で内閣府に提出された内容を反映しており、岸田総理が異次元の少子化対策を打ち出したこども・子育て支援の拡充のほか、高齢者医療を全世代で公平に支え合うことを目的に高齢者医療制度の見直し、医療保険制度の基盤強化のほか、かかりつけ医機能の4つが含まれている。通常国会への同改正法案の提出後の2月24日に第13回全世代型社会保障構築会議が開催された。元厚生労働省の香取 照幸氏から「全世代型社会保障構築会議報告書の内容と法案との対比~報告書の内容はどこまで法案に反映されているか~」という資料が提出、議論された。この中で、かかりつけ医機能につき、かかりつけ医については「患者による選択」がコンセンサスであることが確認された。また、今回の法案の「かかりつけ医機能の定義」や「かかりつけ医機能報告の対象は慢性疾患を有する高齢者に限定」されていることが問題であり、かかりつけ医機能はネットワークで実装することやそのための医療情報基盤の整備については不明のままであるなど問題点を指摘した香取氏は、「今回の制度改正はあくまで『かかりつけ医機能が発揮される制度整備』の第一歩であるとして、引き続き必要な制度整備・政策遂行に尽力してほしい」と意見を述べた。今後、本法案の国会可決後に、厚生労働省は具体化に向け、各方面から意見を集め、令和7年4月にかりつけ医機能報告制度は創設される予定。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について(内閣府)第13回 全世代型社会保障構築会議(同)第13回 全世代型社会保障構築会議 議事録(同)全世代型社会保障構築会議報告書(同)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(医療法改正部分)について(同)4.2024年診療報酬・介護報酬改定に向けた議論開始/厚労省2年に1度の診療報酬改定と3年に1度の介護報酬改定が同時になる2024年春。同時改定に向けた議論が厚生労働省で始まっている。厚生労働省は、中央社会保険医療協議会と社会保障審議会・介護給付費分科会の主要メンバーを交えた令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会を今年の3月から開始している。3月15日に開催された第1回では、地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害福祉サービスの連携やリハビリテーション、要介護者などの高齢者に対応した急性期入院医療について話し合われた。この中で従来から求められてきた「医療・介護」の連携だけでなく、「医療・介護と障害福祉サービスとの連携」まで踏み込んだ形で議論が行われており、入院前からの情報連携や、医療や介護職とケアマネジャーとの情報提供の強化によりケアの継続性・連続性を担保する仕組みの強化が必要といった意見も出されている。また、4月19日に開催された第2回では、高齢者施設・障害者施設などにおける医療、認知症について話し合われ、急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきといった意見のほか、感染対策向上加算の合同カンファレンスに介護施設の参加を求める意見などが出されている。今後は5月に、「人生の最終段階における医療・介護や訪問看護など」をテーマに第3回が開催される予定。これらの意見を基に来年度の診療報酬改定、介護報酬改定に向けた具体的な政策が盛り込まれていくとみられる。2024年はほかにも医療介護総合確保方針、第8次医療計画、介護保険事業(支援)計画、医療保険制度改革などの医療と介護に関わる関連制度の一体改革にとって大きな節目であることから、今後の医療および介護サービスの提供体制の確保に向けさまざま視点から、大規模な改正が見込まれ、医療・介護現場において対応が求められる。(参考)令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第1回)令和5年3月15日(厚労省)令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第2回)令和5年4月19日(同)感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか-中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)(Gem Med)急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素-中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)(同)要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは-中医協・介護給付費分科会の意見交換(同)5.医師偏在対策、新規開業希望者や金融機関にも外来医師偏在指標の明示へ/厚労省厚生労働省は、3月31日に「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」を公表した。この中で診療所医師数が一定程度充足している地域について、外来医師偏在指標の値が全2次医療圏の中で上位33.3%に該当する2次医療圏を「外来医師多数区域」と設定し、新規開業希望者に対して外来医師の偏在の状況を理解した上で開業について判断を促すため、外来医師多数区域については都道府県のホームページに掲載するなど工夫をするほか、医療機関のマッピングのデータなども参考資料として提供する。また、これらのデータは資金調達を支援する金融機関や開業支援を行っている医薬品卸売販売業者、医療機器販売業者、薬局にもアクセスが可能となるようにする。さらに「外来医師多数区域」での新規開業希望者に対して、地域で不足する外来医療機能を担うことを求めるため、新規開業者の届出様式には、地域で不足する外来医療機能を担っていくことに合意する記載欄を設け、2次医療圏ごとに設けられる協議の場(地域医療構想調整会議などが想定されている)において合意の状況を確認する。また、新規開業希望者が求めに応じない場合には協議の場への出席を求めるとともに、協議結果などを住民などに対して公表することになる。この第8次(前期)外来医療計画に基づく、外来医師の偏在解消の取組みは2024年度から各都道府県で開始される見込み。(参考)外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(前期)~(厚労省)外来医師偏在指標(2019年)(同)外来医師偏在の解消に加え、「かかりつけ医機能の明確化、機能を発揮できる方策」の検討も進める-第8次医療計画検討会(1)(Gem Med)6.介護ロボットやICTの導入で介護サービスの生産性向上/厚労省厚生労働省は、4月27日に社会保障審議会・介護給付費分科会を開催し、テクノロジー活用などによる生産性向上の取り組みに係る効果検証について議論を行った。この中で、介護ロボットやICT機器、介護助手の導入により、「介護サービスの質を下げずに介護従事者の負担を軽減できる」という可能性の実証研究が示された。介護ニーズの増加と現役世代人口の減少により、介護従事者の人手不足が深刻化しており、介護サービス事業者からは人員配置基準の緩和を求める意見が上がってきているが、介護施設の規模なども考慮して、人員配置基準の緩和には慎重に検討する必要があるとした。厚生労働省は、今回の検証結果や議論を含めて、来年春の介護報酬改定の参考にするとみられる。(参考)第216回 社会保障審議会介護給付費分科会(厚労省)テクノロジー活用等による生産性向上の取組に係る効果検証について(同)介護施設での見守り機器など活用、効果実証 厚労省(CB news)介護ロボット・助手等導入で「質を下げずに介護従事者の負担軽減」が可能、人員配置基準緩和は慎重に-社保審・介護給付費分科会(2)(Gem Med)

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モルヌピラビル、高リスクコロナ患者の後遺症リスク低減/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に進行する危険因子を少なくとも1つ有する患者において、感染後5日以内のモルヌピラビル投与は無治療と比較し、ワクチン接種歴や感染歴にかかわらず、急性期以降の罹患後症状(いわゆる後遺症)(post-acute sequelae of SARS-CoV-2:PASC)のリスク低下と関連していた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、退役軍人医療データベースを用いたコホート研究で明らかにした。著者は、「COVID-19の重症化リスクが高い患者では、SARS-CoV-2感染後5日以内のモルヌピラビル投与がPASCのリスクを低下する有効なアプローチとなりうる」とまとめている。BMJ誌2023年4月25日号掲載の報告。検査陽性後30日以降の死亡、入院、PASCについて無治療と比較 研究グループは、退役軍人医療データベースを用い、2022年1月5日~2023年1月15日の間にSARS-CoV-2陽性と判定され、重症化リスク(年齢>60歳、BMI>30、がん、心血管疾患、慢性腎疾患、慢性肺疾患、糖尿病、免疫機能障害)を1つ以上有し、陽性判定後30日間生存していた患者のうち、陽性判定後5日以内にモルヌピラビルを投与された患者(モルヌピラビル群)1万1,472例と、陽性判定後30日以内にCOVID-19に対する抗ウイルス薬または抗体治療を受けなかった患者(無治療群)21万7,814例、合計22万9,286例を特定し解析した。 評価項目は、急性期以降の死亡、急性期以降の入院、および急性期以降の死亡または入院の複合である。また、事前に規定した13のPASC(虚血性心疾患発症、不整脈、深部静脈血栓症、肺塞栓症、疲労・倦怠感、肝疾患、急性腎障害、筋肉痛、糖尿病、神経認知障害、自律神経失調症、息切れ、咳)の発症リスクも検討した。すべての急性期以降のアウトカムは、最初のSARS-CoV-2陽性判定後30日から2023年2月15日(追跡調査終了日)まで調査した。 相対スケール(相対リスク[RR]またはハザード比[HR])および絶対スケール(180日後の絶対リスク減少)のリスクが推定された。陽性後5日以内での投与で、急性期以降の死亡、入院、PASCのリスク低下 無治療群と比較してモルヌピラビル群では、PASCのリスク低下(RR:0.86、95%信頼区間[CI]:0.83~0.89、180日後の絶対リスク低下:2.97%、95%CI:2.31~3.60)、急性期以降死亡のリスク低下(HR:0.62、95%CI:0.52~0.74、180日後の絶対リスク低下:0.87%、95%CI:0.62~1.13)、急性期以降入院のリスク低下(HR:0.86、95%CI:0.80~0.93、180日後の絶対リスク低下:1.32%、95%CI:0.72~1.92)が認められた。 モルヌピラビルは、13のPASCのうち、不整脈、肺塞栓症、深部静脈血栓症、疲労・倦怠感、肝疾患、急性腎障害、筋肉痛、神経認知障害の8つのリスク低下と関連していた。また、サブグループ解析の結果、COVID-19ワクチン未接種者、1回または2回のワクチン接種者、ブースター接種者、SARS-CoV-2初感染者および再感染者のいずれにおいても、モルヌピラビル群でPASCのリスク低下が示された。

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今後もマスクをする人は約4割/アイスタット

 2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが、2類から5類へ移行することで施策が大きく変わる。今後、一般市民は新型コロナウイルス感染症にどのように対応していくのか。マスクの着用は個人の自由になるが、はたしてどのように考えているのか。株式会社アイスタットは4月13日に「今後のマスク着用&コロナワクチン接種」に関するアンケートを行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の有職者300人が対象。調査概要形式 Webアンケート形式調査日 2023年4月13日回答者 セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している20歳~59歳・有職者の会員300人調査機関 株式会社アイスタットアンケート概要・現在、「脱マスク」の人は1割未満、「マスク依存」の人は4割近く。・気温・湿度が高い季節が到来しても「脱マスク」の人は1割未満。現在と変わらず。 その一方、「マスク依存」の人は約4割から約2割に減少。・他人がマスクをしていなことにイラっとする人は2割近く。・コロナワクチン接種を「受けたことがない人」は、マスクを「常につけている」が最多。・ワクチン接種が有料化になった場合、接種意向率は約2割。・コロナ予防対策率は約7割近く。ただし、同社前回調査(2020年11月)より12%減少。・現在のコロナ予防対策の第1位は「手洗い」、第2位は「マスク着用」、密対策は減少。・コロナ禍で定着した予防対策、今後も継続して欲しいものは「ワクチン無料化」が最多。・コロナに感染することが怖い人は4割、同社前回調査(2020年5月)の8割から半減。約4割の回答者が「マスクをはずせるシーンでもはずさない」と回答 質問1で「政府が示したマスクの着用が必要のない場面で、現在マスクをはずしているか」(単回答)を聞いたところ、「常につけている」「状況に応じて着脱しているが、はずす比率は以前と変わらない」が共に38.0%で最も多く、「状況に応じて着脱しているが、はずす比率の方が高い」が18.7%、「常にはずしている」が5.3%の順で多かった。回答者の属性別で「常につけている」と回答した人は、「20・30代」「女性」「四国・中国・九州地方・沖縄」に多かった。一方、「常にはずしている」と回答した人は、「20・30代」「男性」「関東地方」に多かった。 質問2で「政府が示したマスクの着用が必要のない場面で、今後マスクをはずすか」(単回答)を聞いたところ、「状況に応じて着脱するが、はずす比率は現在と変わらない」が36.3%、「状況に応じて着脱するが、はずす比率は現在より高い」が32.0%、「常につけている」が23.7%、「常にはずす」が8.0%の順で多かった。また、「現在」と「今後」の全体のマスク着用動向では、気温、湿度が高い季節が到来しても脱マスクの人は1割未満で、「現在」と変わらず低く、今後の熱中症のリスクが懸念される結果だった。 質問3で「他人がマスクをしていないことにイラっとするか」(単回答)を聞いたところ、「そう思わない」が49.7%、「どちらでもない」が31.3%、「そう思う」が19.0%の順で多かった。参考までに「そう思う」と回答した人の特徴を調べてみると、「現在、マスクを常につけている」「コロナワクチン4回目・5回目接種完了」「コロナに感染したことがある」を回答した人ほど多かった。 質問4で「コロナワクチン予防接種回数」(単回答)を聞いたところ、「4回目・5回目接種完了」と回答した人は4割、一方、何らかの理由でワクチン接種を途中で見送った「1回目・2回目・3回目接種完了」と回答した人は4割、「受けたことがない」と回答した人は2割だった。参考に「マスク着用状況」との関連で調べてみると、「4回目・5回目接種完了」と回答した人は「状況に応じて着脱」が最も多く、「受けたことがない」を回答した人は「常につけている」が最も多かった。 質問5で「今後のコロナワクチン予防接種意向」(単回答)を聞いたところ、「無料化なら状況をみて接種」が32.0%、「有料化、無料化に関わらず接種しない」が30.3%、「無料化なら必ず接種」が20.3%、「有料化でも状況をみて接種」が14.7%、「有料化でも必ず接種」が2.7%の順で多かった。今後も続けて欲しい施策の最多は「ワクチン接種の無料化」で43% 質問6で「新型コロナウイルス予防対策の実施」(単回答)を聞いたところ、「やや対策を実施している」が44.0%、「きちんと対策を実施している」が23.7%、「どちらでもない」が18.0%の順で多かった。「きちんと対策」「やや対策」を足し合わせた「実施している」の割合をみると67.7%となり、約7割近くの人が何らかの予防対策を実施していることが明らかとなった。 質問7で「現在、日常生活で注意して行っていること」(複数回答)を聞いたところ、「手洗い」が80.0%、「マスク着用」が71.3%、「アルコール・エタノール消毒の利用」「うがい」が共に52.3%と多かった。参考に過去の同社調査(2020年5月)と比較すると、今回はすべての内容で予防対策の実施割合が減少した。減少した対策の第1位は48%減の「不要な外出を控える」、第2位は31%減の「集会・イベントに参加しない」、第3位は29.3%減の「人混みを避ける・時差通勤」だった。 質問8で「コロナ禍予防対策で定着したもので、今後も継続して欲しいと思うもの」(複数回答)を聞いたところ、「ワクチン予防接種の希望者は無料化」が43%、「入店時のアルコール除菌」が32%、「マスク着用の推奨」が23.7%の順で多かった。参考に年代別では、20代で「テレワーク」「黙食」「リモート会議」が多く、40代で「正面・側面にアクリル板」「マスク着用の推奨」「ビュッフェの手袋」が多く、50代で「入店時のアルコール除菌」「コロナワクチン予防接種の希望者は無料化」「注文用のタブレット」「時差出勤」が多かった。 質問9で「(コロナ禍と日常生活で)自身があてはまるもの」(複数回答)を聞いたところ、「コロナに感染することが怖い・不安」が40.3%で最も多かった。過去の同社調査(2020年5月)と比較すると、「怖い」の割合が81%から40.3%と半減していた。

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第43回 重症コロナのステロイドパルス、正しかった?

呼吸不全が多発したアルファ株・デルタ株オミクロン株になってから、めっきり減った重症のCOVID-19。ちらほら当院にもまだ入院が続いていますが、軽症例がほとんどであり、中等症I・IIはおろか、重症例は非常にレアな疾患となってしまいました。新型コロナワクチン接種率が高いだけでなく、既感染率が高いこと、ウイルスが変異したことが病毒性に大きな影響を及ぼしているとされています。さて、私の勤務する大阪府ではアルファ株の第4波のときが最も呼吸不全例が多い状況で、入院してくる症例のほとんどが中等症IIというありさまでした。戦乱のようなコロナ禍では、当院では稼働病床60床のうち30床がARDSという状況で、悪化を待っていられないという症例にステロイドを多用していたのも事実です。酸素不要で入院したのに短期間で呼吸不全になるケースが本当に多く、ほかに有効な手がありませんでした。ステロイドパルス療法は正しかったかそんな重症COVID-19に対して本当にステロイドパルス療法はよかったのかどうか、大阪大学の社会医学講座公衆衛生学を中心としたグループによる、日本全国のCOVID-19入院患者約6万7,000例の医療データの分析結果が報告されました1)。私たちが苦労したアルファ株・デルタ株の時期も含まれています。結果、重症例におけるステロイドパルス療法(1日当たりのメチルプレドニゾロン500mg以上)は、低用量ステロイドやステロイド非使用例と比較すると、院内死亡リスク低下と関連していることが示されました。反面、比較的軽症患者に対するステロイドパルス療法は死亡リスクを増加してしまうということも本研究で明らかにされています。子細なデータをみると、メチルプレドニゾロン40mg/日でさえも死亡リスクの上昇に関連しているので、気管挿管を必要としない症例では全身性ステロイド投与はかなり慎重になったほうがよいということになります。ステロイドパルス療法というのは、諸外国ではメチルプレドニゾロン250mg/日程度を指すことが多いと思いますが2)、日本の場合1,000mg/日とかなり多い量を投与することがあります。ウイルス性肺炎でステロイド受容体を飽和する以上の用量が本当に必要なのかどうか、国内外でもう少し腹を割った議論が必要と考えています。参考文献・参考サイト1)Moromizato T, et al. Intravenous methylprednisolone pulse therapy and the risk of in-hospital mortality among acute COVID-19 patients: Nationwide clinical cohort study. Crit Care. 2023 Feb 8;27(1):53.2)Edalatifard M, et al. Intravenous methylprednisolone pulse as a treatment for hospitalised severe COVID-19 patients: results from a randomised controlled clinical trial. Eur Respir J. 2020 Dec 24;56(6):2002808.

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コロナワクチン接種スケジュールを簡略化、初回接種に2価を承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は4月18日付のリリースにて、モデルナおよびファイザーの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)2価mRNAワクチンの緊急使用許可(EUA)を修正し、より簡略化した接種スケジュールを発表した。これにより、ワクチン未接種者や生後6ヵ月以上の小児に対し、オミクロン株BA.4/BA.5対応2価ワクチンの初回接種の使用許可などが決定された。また、今回の修正に伴い、モデルナおよびファイザーの従来型の1価ワクチンは、米国での使用許可が取り消された。 発表の主な内容は以下のとおり。・1価ワクチンを接種済みで、まだ2価ワクチンを接種したことがない人のほとんどは、2価ワクチンを1回追加接種することができる。・すでに2価ワクチンを接種した人のほとんどが、次の接種を受ける資格がなくなる。今後の接種については、FDAが6月に開催する諮問会議にて2023年秋以降の接種方針を決定する予定。・2価ワクチンを1回接種した65歳以上の人は、最初の2価ワクチン接種から少なくとも4ヵ月後に1回の追加接種を受けることができる。・2価ワクチンを接種済みの特定の免疫不全者のほとんどは、2価ワクチンを接種してから少なくとも2ヵ月後に、2価ワクチンを1回追加接種できる。医療者の判断で、さらに追加接種することも可能。ただし、生後6ヵ月~4歳までの免疫不全者の場合、追加接種の適応は以前に接種したワクチンの種類によって異なる。・現在までワクチン未接種の人は、従来型の1価ワクチンを複数回接種するのではなく、2価ワクチンを1回接種することができる。・ワクチン未接種の生後6ヵ月~5歳の小児は、モデルナの2価ワクチン(生後6ヵ月~5歳用)を2回接種するか、ファイザーの2価ワクチン(生後6ヵ月~4歳用)を3回接種できる。5歳の小児は、モデルナの2価ワクチンを2回接種するか、ファイザーの2価ワクチンを1回接種できる。・1価ワクチンを1回、2回、または3回接種した生後6ヵ月~5歳の小児は、2価ワクチンを接種できるが、接種する回数はワクチンの種類や接種歴により異なる。

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日本におけるオミクロン対応2価ワクチンの有効性~多施設共同研究/感染症学会・化学療法学会

 2021年7月より新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価するために開始された多施設共同サーベイランス研究「VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2]」1)の最新の結果について、4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて、長崎大学の前田 遥氏が発表した。本結果により、国内の高齢者に対するオミクロン対応2価ワクチンの発症予防および入院予防の有効性が、国内の若年者および欧米のデータよりも高いことが示唆された。 本発表では、2022年9月末に国内で接種開始されたBA.1対応、および10月中旬に開始されたBA.4/5対応のモデルナ製またはファイザー製のオミクロン対応2価ワクチンの有効性について、2022年10月1日~2023年2月28日の期間における研究結果が報告された。オミクロン対応2価ワクチンの発症予防と入院予防に対する有効性をtest-negative designを用いた症例対照研究で評価した。発症予防の有効性については、全国10都府県15施設にて、新型コロナウイルス感染症を疑う症状で受診し、新型コロナウイルス検査を受けた16歳以上が対象となった。入院予防の有効性については、9都府県11施設にて、呼吸器感染症を疑う症状が2つ以上、または肺炎像を認め入院し、新型コロナウイルス検査を受けた16歳以上が対象となった。 主な結果は以下のとおり。【発症予防における有効性】・解析対象者は7,347例で、検査陽性3,304例、検査陰性4,043例。年齢中央値43歳(四分位範囲[IQR]:29~61)、男性3,410例(46.4%)、基礎疾患を有する人が1,969例(26.8%)であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種10.0%、従来型ワクチンのみ接種(2回以上)46.2%、オミクロン対応2価ワクチン接種(14日以上経過)9.8%であった。・発症予防における未接種者と比較した場合のオミクロン対応2価ワクチンの有効性は、16~64歳では54.7%(95%信頼区間[CI]:40.3~65.6)、65歳以上では75.2%(54.4~86.5)であった。・発症予防におけるオミクロン対応2価ワクチンの相対的な有効性は、16~64歳において、従来型ワクチンのみ接種者(接種後4~6ヵ月経過)と比較した場合は27.2%(95%CI:3.1~45.3)、従来型ワクチンのみ接種者(接種後7ヵ月以上経過)と比較した場合は36.1%(18.6~49.9)、65歳以上において従来型ワクチンのみ接種者と比較した場合は34.0%(0.3~56.3)であった。【入院予防における有効性】・解析対象者は1,017例で、検査陽性306例、検査陰性711例。年齢中央値82歳(IQR:73~89)、男性617例(60.7%)、基礎疾患を有する人が753例(74.0%)であった。解析対象者の約90%が65歳以上であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種11.9%、従来型ワクチンのみ接種(2回以上)30.1%、オミクロン対応2価ワクチン接種(14日以上経過)10.7%であった。・入院予防における未接種者と比較した場合のオミクロン対応2価ワクチン有効性は84.9%(95%CI:65.7~93.3)であった。・入院予防におけるオミクロン対応2価ワクチンの相対的な有効性は、従来型ワクチンのみ接種者(接種後4~6ヵ月経過)と比較した場合は50.4%(95%CI:-18.4~79.2)、従来型ワクチンのみ接種者(接種後7ヵ月以上経過)と比較した場合は57.4%(-3.3~82.4)であった。 前田氏は、本結果は米国や英国の報告と比較して、未接種者と比較したオミクロン対応2価ワクチンの有効性に関して、16~64歳の発症予防の有効性はほぼ同等であるが、高齢者の発症予防および入院予防の有効性はより高値であったとし、その要因として、国内の高齢者は、若者や欧米人よりも感染による抗体保有率が低いことが影響している可能性を指摘した。国内のデータは欧米と異なる可能性が示唆されるため、引き続き国内での検証が重要だとしている。

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新型コロナ5類移行、今後の対応5点を発表/厚労省

 厚生労働省は4月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、5月8日より、感染症法上の位置づけを「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に移行することを正式に決定したことを発表した。本決定は、国内におけるオミクロン株XBB.1.5系統やXBB.1.9系統の増加の動きはあるものの、重症度の上昇を示す知見は確認されていないことや、現時点での病床使用率や重症病床使用率は全国的に低い水準にあることが確認されたことに基づいている。5類移行により、これまでの法律に基づき行政が要請・関与する仕組みから、個人の選択を尊重し、国民の自主的な取り組みを基本とする対応に転換する。 今後の対応については、これまでに段階的に発表されたものも含め、以下の5点にまとめられた。(1)発生動向の把握 患者の発生動向の把握については、医療機関から法律に基づく届け出等の全数報告がなくなることに伴い、これまでのような感染者数や死亡者数等の毎日の公表はなくなる。位置づけ変更後は、感染症法に基づく定点医療機関による新規感染者数の報告が基本となり、前週月曜日から日曜日までの患者数を毎週金曜日に公表する。初回の公表は5月19日の予定。それまでの期間も途切れることなく発生動向を把握するため、G-MISを用いた新規入院者数や病床の状況等の把握・監視を継続する。これに加えて、血清疫学調査(抗体保有率調査)や下水サーベイランス研究等を含め、重層的な確認を行っていく。位置づけの変更により検疫法の適用は終了し、空港ではゲノムサーベイランスを継続していく。(2)医療提供体制 医療提供体制については、医療機関における感染対策の見直し、設備整備や個人防護具の確保への支援などによりこれまで対応してきた医療機関に引き続き対応を求めるとともに、新たな医療機関に参画を促す取り組みを重点的に進める。入院措置を原則とした行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応に移行していく。 都道府県より提出された9月末までの移行計画の集計によると、直近のオミクロン株の流行時における最大入院者数約5万3千人を踏まえ、約8,400施設の医療機関において最大で約5万8千人の入院患者の受け入れ体制を確認している。うち、確保病床を有する医療機関での重症/中等症IIの患者の受け入れは約2万3千人(最大約3万1千床)、軽症/中等症Iの患者では、受け入れ経験がある医療機関で約3万人、受け入れ経験がない医療機関で約4千人となっている。 入院調整については、行政による入院調整の対象を重症患者や医療機関間での調整が困難となった患者などとし、原則として医療機関間で調整を行うこととする。調整は医療機関間で共有するITシステムや、妊産婦や小児などのための既存の連携の仕組みを活用する。(3)新型コロナウイルス感染症の患者等への対応 感染症法に基づく入院措置・勧告、外出自粛要請といった私権制限がなくなる。これに伴い医療費や検査費用の1~3割が自己負担となる。位置づけ変更による急激な負担増を避ける観点から、入院医療費や新型コロナ治療薬の費用は期限を区切り軽減する(現時点では9月末まで)。入院医療費は原則2万円、新型コロナ治療薬は全額補助。受診相談機能や宿泊療養施設の一部は期限を区切り継続される。外出を控えるかどうかは、ウイルスの排出期間や外出を控えることが推奨される期間(発症後5日間)を参考に個人で判断する。(4)基本的な感染対策 マスクの着用をはじめとする基本的な感染対策については、個人や事業者の判断に委ねることを基本とする。入場時の検温やパーティションの設置なども政府として一律に求めることはせず、対策を行った場合の効果など情報提供を進めていく。感染対策の実施に当たっては、感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮して、改めて感染対策の検討をお願いする。(5)新型コロナワクチン 新型コロナワクチンについて、特例臨時接種として、引き続き自己負担なく接種を実施する。追加接種の対象となるすべての人を対象に9月を目途に接種を開始する予定だが、高齢者など重症化リスクの高い人には5月8日から接種を実施する。 なお、今後、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなど、科学的な前提が異なる状況になれば、ただちに対応を見直すとしている。 新型コロナの罹患後症状(いわゆる後遺症)については、オミクロン株については従来の株に比べ罹患後症状患者の割合は下がっているという研究結果も示されている一方、流行の規模は大きくなってきている。罹患後症状を診療している医療機関を4月28日までに各都道府県のウェブサイトに掲載するよう依頼し、厚労省で5月初頭に取りまとめて公表される予定。さらに5月8日から、これらの医療機関において罹患後症状の診療報酬上特例的な評価を設けるとしている。

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サル痘とは?(2023年4月更新版)

サル痘とは?2023年4月版出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘とは? オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症 1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めての感染が確認され、中央アフリカ~西アフリカにかけて流行している。 国内では感染症法上の4類感染症に指定されている。 2022年5月以降、従前のサル痘流行国への海外渡航歴のないサル痘患者が世界各地で報告されているが、2023年3月時点では全体の症例の報告数は減少傾向にある。 国内では2022年7月に1例目の患者が確認され、その後散発的に発生が報告されていたが、2023年に入り患者の報告数が増加している。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.感染経路は? アフリカに生息するリスなどの齧歯類をはじめ、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。 感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む)、患者と接近した対面での飛沫への長時間の曝露、患者が使用した寝具などとの接触などにより感染する。 皮疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告があるものの、実際に空気感染を起こした事例は確認されていない。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.発生状況は?<国内> 2022年7月25日に1例目の患者が報告された。 2023年以降、患者の発生が増加しており、2023年4月25日時点で120例が報告されている。<世界> 2022年5月以降の流行で8万6千人以上の感染例が報告されている(2023年3月24日時点)。 WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性であるが、小児や女性の感染も報告されている。※特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は人権の侵害につながります。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は? 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0~5日程度持続し、発熱1~3日後に発疹が出現する。 リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部に見られる。 皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。 多くの場合2~4週間持続し自然軽快するが、小児、曝露の程度・健康状態・合併症などにより、重症化することがある。 皮膚の2次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。 手掌や足底にも各皮疹が出現する。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(続き)2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、従来の報告とは異なる症状が指摘されている。 発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合がある。 病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合がある。 異なる段階の皮疹が同時に見られる場合がある。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q. 治療方法は? 対症療法(症状に応じた治療) 国内で承認された治療薬はない。 欧州では、特異的治療薬としてテコビリマットが承認されており、日本でも同薬を用いた特定臨床研究が実施されている。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予防法は? 天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があるとされている。 流行地では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが大切である。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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過去のSARS-CoV-2感染に伴う再感染に対する防御効果:系統的レビューとメタアナリシス(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、2022年9月31日まで(原文ママ)に報告されたプレプリントを含む、後ろ向きコホート研究、前向きコホート研究および検査陰性症例対照研究の中で、SARS-CoV-2罹患歴の有無によるCOVID-19感染のリスクを比較した研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行っている。 結果の要約は、「コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet」で紹介されているが、簡潔に研究結果をまとめると、「再感染や症候性再感染は、初期株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高い予防効果を示したが、オミクロンBA.1株では再感染や症候性再感染の予防効果が低かった。ただし、重症化予防効果については、既感染1年後までアルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロンBA.1株のいずれも維持していた」と筆者は論じている。 現在、SARS-CoV-2の主流株は世界でも本邦でも、オミクロン株であり、COVID-19患者が増加した際の対策を考える場合は、オミクロン株を対象に想定するべきであろう。 さて、医療現場の感覚としても、本研究結果のとおり、オミクロン株では、COVID-19に罹患してから数ヵ月で再感染するケースが増えたことを実感しているのではないだろうか。また、オミクロン株の1年以内の再感染患者で、高齢者などの余力が乏しい患者やワクチン未接種のリスク患者でなければ、重症化することがほとんどなくなったことも感覚と合致するのではないだろうか。 今後のCOVID-19再流行に備える場合に、本研究を参考にすることができる事項として、(1)新型コロナワクチンの追加接種タイミング、(2)抗ウイルス薬の投与判断、(3)病院や高齢者施設における感染対策があると考える。 1つ目の、新型コロナワクチンの接種タイミングについて考える。 直近の本邦における、COVID-19に対するワクチン接種は、「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論を踏まえた方針」を参考にすると、高齢者(65歳以上)、基礎疾患を有する者(5~64歳)、医療従事者・介護従事者等(5~64歳)を対象に5~8月以降の追加接種が議論されている(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001069231.pdf)。WHOの方針では、高優先集団である高齢者や高度な免疫不全のある若年者や医療従事者では4回目以降の追加ブースターは12ヵ月おき、超高齢者や重症化リスクのある高齢者、月齢6ヵ月以上の小児と中等度以上の免疫不全を伴う成人では6ヵ月おきでの定期接種を推奨している(WHO SAGE Roadmap for prioritizing uses of COVID-19 vaccines.https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Vaccines-SAGE-Roadmap,(参照2023-04-02).)。 新型コロナウイルスワクチンの効果は、感染予防効果や発症予防効果もあるが、オミクロン株流行以降はこれらに対するワクチンの効果も時間経過とともに低下し、重症化予防効果を期待して接種する面も大きいように思われる。本研究の結果を参考にすると、オミクロン株流行下におけるCOVID-19罹患後は、再感染時の重症化リスクは低下していると考えられる。本論文の筆者も指摘しているように、ワクチンのメリットと副反応のデメリットを勘案のうえ、COVID-19に罹患した場合、その患者のリスクの程度によってはワクチン接種をするタイミングを遅らせるという選択肢もでてくるのではないかと考える。 次に2つ目の抗ウイルス薬治療対象の判断について考える。 NIHガイドラインでは、軽症から中等症Iで治療薬の使用を優先させるべきリスク集団として3つの優先度を設けている(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints. https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/overview/prioritization-of-therapeutics/ Last Updated: December 1, 2022, (参照2023-04-02).)。このガイドラインでは、ワクチン接種の有無はリスク評価に用いられているが、COVID-19罹患歴はリスク評価に用いられていない。抗ウイルス薬のニルマトレルビル/リトナビルやモルヌピラビルは、重症化予防効果を期待して投与されているが、本研究を参考にすると、COVID-19罹患後は、1年近く重症化予防効果が低下することを期待できる。抗ウイルス薬の投与目的が、重症化予防効果である場合は、過去の感染歴の有無も抗ウイルス薬投与の判断時に参考としてよいかもしれない。 さて、上記の2つについては重症化リスク軽減の観点のみから議論を展開したが、COVID-19がインフルエンザなどの他のウイルス感染症と異なる点として後遺症や自己免疫疾患のリスク増加(Chang R, et al. EClinicalMedicine. 2023;56:101783.)といった問題がある。後遺症に関しては、オミクロン株になり、デルタ株より頻度は低下したものの(Antonelli M, et al. Lancet. 2022;399:2263-2264.)、生活に影響を与える後遺症のために通院を要する患者もいる。COVID-19後遺症は、ワクチンや(Tsampasian V, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])、抗ウイルス薬(Suran M. JAMA. 2022;328:2386.)(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])の効果も報告されている。現時点では、COVID-19罹患後後遺症を主目的にワクチン接種や抗ウイルス薬の投与はされていないと思うが、今後、COVID-19罹患後後遺症や免疫異常のハイリスク患者グループが特定され、ワクチンや抗ウイルス薬に伴う明らかなメリットが判明したり、薬剤の費用が安価になったりする場合は、重症化予防効果以外の目的で投与されることがあるかもしれない。 最後に、病院や高齢者施設における感染対策について考える。 かつては、COVID-19感染後、3ヵ月間は再感染しないと考えられていた時期があった。しかし、プレプリントではあるが、デンマークのグループから、オミクロン株であるBA.1やBA.2では1ヵ月以内でも再感染を起こしうることが報告された(Stegger M, et al. medRxiv. 2022 Feb 22.)。同時期頃から本邦でも、短期間で再燃を来す患者の診療をする機会がみられるようになったように感じている。PCR検査は、COVID-19の診断に有用な検査ではあるが、一度罹患すると、高齢者や幼児、細胞性免疫が低下している患者で、陰性化にしばらく時間がかかることがある。かつてのように、原則90日間は再感染しないと考えることができた場合は、罹患後90日以内の発熱、感冒様症状はCOVID-19以外を考えることができたが、短期間で再感染すると考える場合は、PCR検査だけではなく、患者の症状や行動歴、COVID-19接触歴などを把握し、他の鑑別疾患も考慮しながら総合的に判断する必要がでてくる。 今後、オミクロン株の再流行がみられた際には、2~3ヵ月以内に感染を起こしたからといって、安易にCOVID-19の再感染ではないだろうと考えるのは、病院や高齢者施設の感染管理としては避けたほうがよいだろう。 さて、本邦の第8波も落ち着いてきたが、今後はXBB.1.5を含めたXBB系統などの株が流行する可能性もあるだろう(CLEAR!ジャーナル四天王-1648「2022年11月以降の中国・北京における新型コロナウイルス流行株の特徴」)。米国(Vogel L. CMAJ. 2023;195:E127-E128.)やシンガポール(Ministry of Health,Shingapore. UPDATE ON COVID-19 SITUATION AND MEASURES TO PROTECT HEALTHCARE CAPACITY. 15 OCTOBER 2022.)でXBB.1.5が流行したころのデータからは、重症化リスクに大きな変化はなさそうだが、再感染を起こしやすい株であることが想定される。新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株となって、重症化リスクは低下したとはいえ、感染力はインフルエンザなどの呼吸器感染症よりも強く、また高齢者、免疫不全者を含めたハイリスク患者ではいまだに重症化しうる感染症であることも考えると、医療機関では、新型コロナウイルス感染症が院内で流行することがないよう、適切な感染対策を継続する必要がある。

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重症化リスクの高いコロナ患者、ニルマトレルビルで入院・死亡減/BMJ

 重症化リスクの高いSARS-CoV-2感染者へのニルマトレルビル投与は非投与と比較して、ワクチン非接種者・接種者、ブースター接種者、再感染者において、30日時点の入院または死亡のリスクが低下していたことが明らかにされた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを活用し、電子カルテを用いた無作為化ターゲット模倣試験(emulation of a randomized target trial)で明らかにした。ニルマトレルビルの有効性の検証は、オミクロン変異株が優勢となる前、ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者とSARS-CoV-2感染歴のない人々を対象に行われたものであった。BMJ誌2023年4月11日号掲載の報告。非投与と比較、検査陽性から30日以内の入院/死亡の発生を評価 検討は、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを用いて、2022年1月3日~11月30日に、COVID-19重症化リスク因子を1つ以上有するSARS-CoV-2感染陽性者25万6,288例を対象に行われた。このうち3万1,524例は、SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビル投与を受け、22万4,764例は同投与を受けなかった。 検討では、SARS-CoV-2検査陽性から30日以内の入院または死亡の複合アウトカムが評価された。 SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビルを開始した場合の有効性を非投与と比較して推定。有効性は、30日時点の入院または死亡リスクの低下とし、ワクチン接種を受けていない人、1回または2回接種を受けた人、ブースター接種を受けた人、およびSARS-CoV-2初回感染者または再感染者それぞれにおいて推定した。 評価では、逆確率加重法を用いてグループ間の個人・健康特性を平均化した。また、相対リスクと絶対リスクの低下を、30日時点の累積発生率から算出した。有効性は、加重Kaplan-Meier推定量で推算した。オミクロン変異株感染者でもリスク低下 ワクチン非接種者(7万6,763例:投与群5,338例、非投与群7万1,425例)において、非投与と比較したニルマトレルビル投与による30日時点の入院または死亡の相対リスクは、0.60(95%信頼区間[CI]:0.50~0.71)、絶対リスク低下は1.83%(95%CI:1.29~2.49)であった。 ワクチン1回または2回接種者(8万4,620例:投与群7,989例、非投与群7万6,631例)ではそれぞれ0.65(95%CI:0.57~0.74)、1.27%(95%CI:0.90~1.61)、ブースター接種者(9万4,905例:1万8,197例、7万6,708例)では0.64(0.58~0.71)、1.05%(0.85~1.27)、SARS-CoV-2初回感染(22万8,081例:2万6,350例、20万1,731例)では0.61(0.57~0.65)、1.36%(1.19~1.53)、再感染者(2万8,207例:5,174例、2万3,033例)では0.74(0.63~0.87)、0.79%(0.36~1.18)であった。 ニルマトレルビルと入院または死亡のリスク低下との関連は、65歳以下および65歳超の人々で、男性および女性、黒人および白人の参加者で、また、COVID-19重症化リスク因子が1~2、3~4、5以上の人々、そしてオミクロン変異株BA.1またはBA.2およびBA.5の優勢期の感染者で認められた。

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第156回 コロナで収益を得た製薬企業が次々と買収発表、思わずうなる戦略とは

国際的な製薬大手企業による企業買収が再び活発化している。3月13日に米・ファイザー社ががんの抗体薬物複合体(ADC)技術を有するシージェン社を約430億ドル(約5兆7,000億円)で買収すると発表。さらに4月16日には米・メルク社もベンチャーで自己免疫疾患治療薬を手がけるプロメテウス社を約108億ドル(約1兆4,500億円)で買収すると発表した。両社が現在抱える事情はほぼ似通っている。まず、共に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)パンデミックで特需を経験した。ファイザー社はご存じのように新型コロナワクチン(商品名:コミナティほか)、経口新型コロナ治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)の売上が伸長した。2022年の売上高は、前年比23%増収の1,003億3,000万ドル(約13兆4,400億円)と、前年に引き続き製薬企業で世界1位となっただけでなく、製薬企業史上初の1,000億ドルプレーヤーとなった。この売上高の6割弱はコロナワクチンと治療薬で占められている。一方の米・メルク社も2022年度売上高が前年比22%増収の592億8,300万ドル。前年からの増収分の44%は、新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)の売上伸長が占める。この両者のコロナ関連特需が今後急速にしぼんでいくことは確実である。実際、ファイザー社はすでに2023年通期で、コロナ関連売上高が約60%減少するとの予想を発表している。またメルク社のモルヌピラビルはニルマトレルビル/リトナビルに比べ、効果が劣ることが各種の研究で明らかにされつつあるため、治療選択肢としてのプライオリティは、今後、一層低下していくことは避けられない。さらに両社に共通するのがコロナ関連以外の主力品の特許権失効である。ファイザー社の場合、コロナ関連を除いた売上筆頭製品が抗凝固薬のアピキサバン(商品名:エリキュース)の約65億ドル(約8,700億円)。その特許権は2025~26年にかけて失効すると言われており、もう目前に迫っている。経口薬の場合、アメリカなどではジェネリック医薬品登場から半年程度で先発品市場の約7割がジェネリック医薬品に置き換わるのが一般的だ。ファイザー社にとって事態は深刻である。前述のシージェン社は現在ADC技術を利用したがん治療薬で年間20億ドル程度の売上があるため、これをファイザー社の巨大販路で売上を伸長させ、ファイザー社側としてはアピキサバンの特許権の失効に伴う急速な売上減の穴埋めにしようという腹積もりなのだろう。一方、メルク社の売上高の筆頭は、ご存じの免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の209億ドル(約2兆8,000億円)。実に現在のメルク社の総売上高の約3分の1を占める。そのペムブロリズマブのアメリカでの特許権失効見込みは2028年である。私が今回やや驚いたのはこのメルク社の買収決断である。まず、特許権の失効まではまだ5年はある。かつ、注射剤のペムブロリズマブは抗体医薬品であり、いわゆるバイオ医薬品のジェネリックは「バイオシミラー」と称されるが、経口の低分子薬に比べ、開発難易度も高い。確かにペムブロリズマブの特許権失効後は同薬のバイオシミラーが登場すると思われるが、現状はアメリカですらバイオシミラーの普及が進まず、先発品市場の20%程度しか市場を奪えていない。にもかかわらず、日本円にして1兆円を超える金額を使い、まだ市場投入製品がないプロメテウス社を買収するのは何ともすごい決断と言わざるを得ない。ただ、よくよく考えれば、この決断は一つひとつが頷けてしまう。まず、アメリカでは近年、バイオシミラーの浸透をより容易にする規制変更の動きがある。オール・オア・ナッシング的に急激な政策決定が進みやすいアメリカの特性を考えれば、今後、バイオシミラーが急速に浸透する可能性はある。また、もしペムブロリズマブの特許権失効時にバイオシミラーの市場侵食が現状の20%程度だったとしても、もともとの売上高が巨大過ぎるため、日本円換算で4,000億円ほどの売上喪失となり、メルク社はかなり打撃をこうむることになるのは確かである。その意味で、この段階から手を打つというのも方策としてはあり得る。とりわけ近年の新薬開発の所要期間、開発費、開発難易度が年々増していることを考えればなおさらだ。そしてプロメテウス社が現在開発中の新薬候補は、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に対する抗体医薬品。この領域は近年、市場拡大中である。この新薬候補の開発段階は現在第II相試験。今後順調に開発が進めば、3~5年後の2026~28年に上市となるはず。そうすると、ペムブロリズマブの特許権失効への備えとしては時期的にも間に合うだろう。さらにIBDのような自己免疫性疾患の抗体医薬品は、ほかの自己免疫性疾患への適応拡大が容易なことは、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)などの例を見れば明らか。つまりプロメテウス社は今後、全世界で数千億~1兆円規模の売上高を生み出す可能性を秘めているというわけだ。たしかに不確定要素はあるものの、現状からロジカルにさまざまな想定をすると1兆円の買収は十分割に合う可能性がある。すでに四半世紀近く製薬業界を眺めている自分も、一瞬、発表内容をぎょっとして受け止めたが、中身を考えるほど久々にうならされる買収発表だった。ただ、このニュースに接して、あえて残念と思うことがあるとするならば、それは日本の製薬企業の多くが、このような大胆かつ機動的な戦略が取れないことである。

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5月8日から何が変わる? コロナ5類化に向けた医療機関の対策まとめ

2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けられる。医療機関や医師は、どう対応すればいいのか。ケアネットでは「COVID-19 5類移行でどう変わる?」と題したCareNeTVライブを3月22日に配信した1)。講師の黒田 浩一氏(神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 副医長)が、制度の変更点、院内感染対策の工夫、早期診断・早期治療の重要性、発症早期の治療における薬剤の選択などについて解説した。臨床面における対応策を中心に、ポイントをまとめて紹介する(フル動画はこちらから[60分・CareNeTVプレミアムの登録要])。5月8日以降、医療体制における主な変更点1)医療提供体制【全体】入院措置を原則とした行政の関与を前提とする限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応へ。ほかの疾病同様に、入院可否を医療期間が判断し、医療機関同士での調整を基本とする。COVID-19診療に対応する医療機関の維持・拡大を強力に促す。「地域包括ケア病棟」も含めた幅広い医療機関での受け入れを促進する。病床稼働状況を地域の医療機関で共有するためのIT(例:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム:G-MIS)の活用を推進する。マスク着用は個人の判断に委ねられるが、医療機関・介護施設は「マスクの着用が効果的である場面」とされ、医療者は引き続きマスク着用が推奨される。事業者(病院・高齢者施設)が利用者にマスクの着用を求めることは許容される(新型コロナウイルス感染症対策本部方針より)。【個別事項】【外来】COVID-19(疑いを含む)を理由とした診療拒否は「正当な事由」に該当せず、応召義務違反となる(診療体制が整っていない場合は、他機関を紹介する必要がある)。【外来】現在約4.2万のCOVID-19対応医療機関を最大6.4万(インフルエンザ対応と同数)まで増やすことを目標とする。【入院】行政による入院措置・勧告がなくなる。【入院】全病院でのCOVID-19対応を目指しつつ、病院機能ごとの役割分担や、高齢者を中心とした地域包括ケア病棟での受け入れを推進する。2)診療報酬・病床確保料【外来】発熱外来標榜:250点→終了、COVID-19患者診療:950点→147点【在宅】緊急往診2,850点→950点など減額【入院】中等症~重症患者の入院:従前の半額、病床確保料:従前の半額など減額(2023年9月まで。10月以降の措置は今後検討される)3)患者に対する公費支援【外来医療費】2023年9月まで抗ウイルス薬は公費負担継続(10月以降の措置は今後検討される)【入院医療費】高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額検査費用の公費支援は終了相談窓口は継続、宿泊療養施設は終了医療機関が準備すべきこと1)院内感染対策の継続とレベル向上【基本】職員のワクチン接種(3回以上かつオミクロン対応2価ワクチン1回以上。医療従事者は2023年5~8月と9月以降に2価ワクチン接種が可能となる)施設内でのユニバーサルマスキング(症状にかかわらず全員がマスク着用)と適切な換気目の防護のルーティン化、手指衛生の徹底体調不良時にすぐに休める文化・制度の醸成スタッフの旅行・会食制限は不要。但し、職員の感染者・濃厚接触者増加のため病院機能を維持できなくなる可能性がある場合は期間を決めて検討体液・排泄物を浴びる可能性が低い場合(問診/診察/検温、環境整備、患者搬送)はガウン・手袋は不要【流行期に検討される追加の対策】ルーティンでN95マスクを使用大部屋にHEPAフィルターを設置2)診療体制の構築行政による入院調整がなくなるため、これまで以上に地域の病病連携・病診連携が重要となる。大規模な流行が起こった場合に、入院患者の受け入れ先が見つからない可能性があるため、早期診断・早期治療を可能とする外来診療体制の構築(重症化予防)、夜間も含めた施設連携医・往診医による診療の充実、行政機関による病床利用率共有システムの構築と入院・紹介ルールの明確化(円滑な医療機関の連携)、COVID-19入院対応可能な病院を増やすことが重要である。現在、保健所が行う療養中の患者の健康観察と受診調整も診断した医療機関が対応することになるため、医療機関の業務は増加する見込み。【外来】診察スペースの確保検査能力の確保(抗原/PCRの使い分けも医療機関ごとに検討)治療ガイドラインの作成電話/オンライン診療によるフォローアップの検討【入院】COVID-19対応可能な病床の適切な運用職員・COVID-19以外の理由で入院した患者がCOVID-19に感染していたとしても、院内感染伝播が起こりにくい感染対策の実施院内感染事例への対応(早期診断、早期隔離、早期治療の徹底)COVID-19治療薬の最新情報医療ひっ迫の原因となる救急搬送・入院症例・高次医療機関への搬送を減らすためには、ワクチン接種と並び、軽症・中等症Iの患者に対する早期診断・早期治療が非常に重要となる。患者の年齢、ワクチン接種回数、重症化リスク因子、免疫不全の有無などから薬物治療の必要性を判断し、ガイドライン、および現在の科学的証拠に基づいて、適切な抗ウイルス治療を選択する。現在軽症~中等症Iの患者で重症化リスクがある場合に適応となる、承認済の抗ウイルス薬は以下のとおり。なお、2023年4月時点では、軽症・中等症Iの患者に対する中和抗体薬・抗炎症薬の使用は推奨されていない。・ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビット、内服)発症5日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。重症化予防効果は非常に高い。呼吸不全、腎障害等の場合は使用できず、併用注意薬も多いものの、実際に使用できないケースは限られる。・レムデシビル(商品名:ベクルリー、点滴)発症7日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。ワクチン未接種者に対する重症化予防効果は非常に高いことが示されているが、ワクチン接種者への効果はほとんど検討されていない。3日間の点滴投与となり、入院が必要。・モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、内服)発症5日以内、18歳以上。重症化予防効果は上記2剤に劣るため、上記2剤が利用できない場合に使用する。・エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ、内服)発症3日以内、成人または12歳以上。妊婦または妊娠の可能性のある女性は禁忌。現時点ではワクチン接種者への重症化予防効果の有無やほかの薬剤との使い分けははっきりしていない。参考1)COVID-19 5類移行でどう変わる?/CareNeTV(※視聴はCareNeTVプレミアムへの登録が必要)(配信:2023年3月22日、再構成:ケアネット 杉崎 真名)

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添付文書改訂:フォシーガが左室駆出率にかかわらず使用可能に、アセトアミノフェンが疾患・症状の縛りなく使用可能に ほか【下平博士のDIノート】第119回

フォシーガ:左室駆出率にかかわらず使用可能に<対象薬剤>ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2023年1月<改訂項目>[削除]効能・効果に関連する注意左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。[追加]臨床成績左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果を追記。<Shimo's eyes>これまで、本剤は「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」とされていましたが、この記載は削除され、左室駆出率を問わず使用可能となりました。これは、左室駆出率が40%超の慢性心不全患者を対象に行われた国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果に基づいた変更です。なお、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)も、2022年4月に左室駆出率にかかわらず使用可能となっています。アセトアミノフェン:疾患や症状の縛りなく「鎮痛」で使用可能に<対象薬剤>アセトアミノフェン製剤(商品名:カロナールほか)<承認年月>2023年2月<改訂項目>[削除]効能・効果下記の疾患ならびに症状の鎮痛頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症[追加]効能・効果各種疾患および症状における鎮痛<Shimo's eyes>アセトアミノフェン製剤(カロナールほか)について、疾患や症状の縛りなく「鎮痛」の目的での使用が認められました。厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を踏まえた変更です。欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品がわが国では保険診療において使用できない「ドラッグラグ」解消の1つであり、効能または効果は疾患名の列挙ではなく「各種疾患および症状における鎮痛」とすることが適切とされました。シルガード9:2回接種が追加され、接種無料に<対象薬剤>組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)(商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ、製造販売元:MSD)<承認年月>2023年3月<改訂項目>[追加]用法・用量9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。[追加]用法・用量に関連する注意9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましい。なお、本剤の2回目の接種を初回接種から6ヵ月以上間隔を置いて実施できない場合、2回目の接種は初回接種から少なくとも5ヵ月以上間隔を置いて実施すること。2回目の接種が初回接種から5ヵ月後未満であった場合、3回目の接種を実施すること。この場合、3回目の接種は2回目の接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で3番目に発売されたHPVワクチンです。既存薬の1つである2価ワクチン(商品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の感染を、もう1つの既存薬である4価ワクチン(同:ガーダシル)は上記に加えて尖圭コンジローマなどの原因となる6型と11型の感染を予防します。本剤は、これら4つのHPV型に加えて、31型・33型・45型・52型・58型の感染も予防する9価のHPVワクチンです。本剤について、9歳以上15歳未満の女性に対する計2回接種の用法および用量を追加する一変承認が取得されました。これまでは計3回接種となっていましたが、接種回数が減ることで、ワクチン接種者や医療者の負担軽減が期待できます。また、既存の2価/4価ワクチンは定期接種の対象で、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費助成によって無料で接種を受けることができますが、これまで本剤は任意接種で自費での接種でした。2023年3月7日の厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で、小学校6年生~15歳未満までに対する9価HPVワクチンの2回接種も、4月1日から定期接種化することが決定され、自費から公費接種に移行する準備が進められます。エンハーツ:HER2低発現乳がんにも使用可能に<対象薬剤>トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ点滴静注用100mg、製造販売元:第一三共)<承認年月>2023年3月<追記項目>[追加]効能・効果化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能または再発乳癌<Shimo's eyes>HER2低発現乳がんを標的にしたわが国初の治療薬となります。HER2低発現乳がんとはHER2陰性乳がんの新たな下位分類で、細胞膜上にHER2タンパクがある程度発現しているものの、HER2陽性に分類するほどの量ではない乳がんのことを指し、再発・転移のある乳がんの約50%を占めるとされます。本剤はこれまで有効な治療選択肢のなかったHER2低発現乳がんに対する薬剤となります。化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づく申請となりました。この試験では、再発・転移のあるHER2低発現乳がん患者557例(494例はホルモン受容体[HR]陽性、63例人はHR陰性)が、3週間ごとにT-DXdを投与する群(373例)と、医師の選択した化学療法を受ける群(184例)にランダムに割り付けられました。その結果、エンハーツ投与群では、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)のいずれにも改善が認められました。PFSとOSの中央値は、T-DXd投与群で9.9ヵ月と23.4ヵ月、医師の選択した化学療法群で5.1ヵ月と16.8ヵ月でした。なお、本適応追加に関連して、ロシュ・ダイアグノスティックスのがん組織または細胞中のHER2タンパク検出に用いる組織検査用腫瘍マーカーキット「ベンタナultraView パスウェーHER2(4B5)」が3月3日に一変承認され、HER2低発現の乳がん患者を対象とした本剤のコンパニオン診断薬として使用できることになりました。

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医療者の無症候コロナ感染が増加、既感染の割合は?/順大

 本邦では、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されている。しかし、感染の既往を示す抗体の陽性率に関する研究は限られている。そこで順天堂大学では、医療者をはじめとした職員を対象として、2020年から年次健康診断時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査を実施している。2020年、2021年における抗N抗体※陽性率はそれぞれ0.34%、1.59%と低かったが、今回報告された2022年の調査結果では、17.7%に増加していた。また、抗N抗体陽性者のうち、約半数は感染の自覚がなかったことが明らかになった。本研究結果は、順天堂大学の金森 里英氏らによって、Scientific Reports誌2023年3月27日号で報告された。※ワクチンを接種した場合は抗S抗体が陽性となり、SARS-CoV-2に感染した場合は、抗N抗体と抗S抗体の両方が陽性になる。無症候コロナ感染が医療機関においても多く認められた 順天堂大学の年次健康診断(2022年7月17日~8月21日)を受診した3,788人(医師1,497人、看護師1,080人、検査技師182人、その他の医療従事者320人、事務職員542人、研究者157人、その他10人)を対象に、SARS-CoV-2抗体検査を実施した。 無症候コロナ感染を調査した主な結果は以下のとおり。・対象者3,788人の年齢(中央値)は36歳(範囲:20~86)で、女性が62.8%であった。ワクチン3回接種は89.3%であった。・2022年の年次健康診断時までに、357人がPCR検査に基づく新型コロナ感染歴を有していた。・2022年における抗N抗体陽性率は17.7%(669/3,788人)であった(2020年:0.34%、2021年:1.59%)。・抗N抗体陽性者669人のうち48.6%(325人)は、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴がなかった。また、抗N抗体陽性で、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある344人のうち、40人は無症候感染であった。・PCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある357人のうち、79.0%(282人)は2022年1月以降(東京でのオミクロン株の初確認後)に感染していた。 著者らは、「ワクチン接種率が高く、徹底した感染対策がとられている医療機関においても無症候コロナ感染が多く認められたことから、無症候感染率の高さが急速な感染拡大を引き起こす要因となっている可能性がある。医療現場での感染拡大を完全に抑制することは難しいかもしれないが、医療現場では定期的な検温、衛生管理、マスクなどの継続的な取り組みが必要になる」とまとめた。

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60歳以上への2価RSVワクチン、下気道・急性呼吸器疾患を予防/NEJM

 呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症に対する2価融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチンは、60歳以上の高齢者において、RSV関連下気道感染症およびRSV関連急性呼吸器疾患を予防し、安全性への明らかな懸念はないことが示された。米国・ロチェスター大学医療センターのEdward E. Walsh氏らが、日本を含む7ヵ国240施設が参加し行われた無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「RENOIR試験」の中間解析結果を報告した。RSV感染症は、高齢者に重大な疾患を引き起こすが、高齢者集団におけるRSVpreFワクチンの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年4月5日号掲載の報告。60歳以上の約3万5,000例を対象に、RSVpreFワクチンの有効性と安全性を評価 研究グループは2021年8月31日~2022年7月14日に、60歳以上の高齢者合計3万5,971例を、RSVpreFワクチン120μg(RSVサブグループ、RSV-AおよびRSV-B、各60μg)群(ワクチン群)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回筋肉内投与した。 主要エンドポイントは2つで、少なくとも2つまたは3つの兆候/症状(咳、喘鳴、喀痰、息切れ、頻呼吸など)が1日以上持続し、かつ症状発現後7日以内にRT-PCR検査でRSV感染が確認されたRSV関連下気道感染症(すなわち急性呼吸器疾患)に対するワクチンの有効性であった。副次エンドポイントは、RSV関連急性呼吸器疾患に対するワクチンの有効性とした。 中間解析(カットオフ日2022年7月14日)時点で、3万4,284例がRSVpreFワクチン(1万7,215例)またはプラセボ(1万7,069例)の接種を受けた。兆候/症状を伴うRSV関連下気道感染症の予防効果(ワクチンの有効率)は67~86% 少なくとも2つの兆候/症状を伴うRSV関連下気道感染症は、ワクチン群11例(1.19例/1,000人年)、プラセボ群33例(3.58例/1,000人年)に認められ、ワクチンの有効率は66.7%(96.66%信頼区間[CI]:28.8~85.8)であった。また、少なくとも3つの兆候/症状を伴う同疾患はそれぞれ2例(0.22例/1,000人年)および14例(1.52例/1,000人年)で確認され、ワクチンの有効率は85.7%(96.66%CI:32.0~98.7)であった。 RSV関連急性呼吸器疾患は、ワクチン群22例(2.83例/1,000人年)、プラセボ群58例(6.30例/1,000人年)に発生し、ワクチンの有効率は62.1%(95%CI:37.1~77.9)であった。 注射部位反応の発現率はワクチン群(12%)がプラセボ群(7%)より高かったが、全身性のイベント発現率は同程度であった(それぞれ27%、26%)。ワクチン接種後1ヵ月までに報告された有害事象の発現率は同程度で(それぞれ9.0%、8.5%)、治験担当医師によって接種に関連した有害事象と判断されたのはそれぞれ1.4%、1.0%であった。 重症または生命を脅かす有害事象は、ワクチン群0.5%、プラセボ群0.4%で報告された。データカットオフ日までに報告された重篤な有害事象は、各群2.3%であった。

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妊婦への2価RSVワクチン、乳児の重症下気道感染を予防/NEJM

 妊婦への2価RSV融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチン投与は、乳児において診察を要する重症の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連下気道感染症に対し予防効果があり、安全性への懸念は示されなかった。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBeate Kampmann氏らが、約7,400例の妊婦とその出生児を対象に行った第III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。これまで、同ワクチンの妊婦への投与の効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年4月5日号掲載の報告。18ヵ国で49歳以下の健康な妊婦を対象に試験 研究グループは18ヵ国で、妊娠24~36週、49歳以下の健康な妊婦を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に割り付け、一方には2価RSVpreFワクチン(120μg)を、もう一方にはプラセボをいずれも単回筋肉内投与した。 有効性の主要エンドポイントは2つで、生後90日、120日、150日、180日以内の乳児における、診察を要した重症RSV関連下気道感染症と、診察を要したRSV関連下気道感染症だった。 ワクチンの有効性を示す信頼区間(CI)下限値(90日以内が99.5%CI値、それ以降は97.58%CI値)は20%超と規定した。有害事象発生率は両群で同等 2020年6月17日~2022年10月2日に7,392例の妊婦が無作為化され、そのうち7,358例(RSVpreFワクチン群3,682例、プラセボ群3,676例)が接種および評価を受けた。乳児についてはRSVpreFワクチン群3,570例とプラセボ群3,558例が組み込まれた。 本論は事前規定の中間解析の結果を示すもので、主要エンドポイントの1つに関して、ワクチンの有効性を示す基準が満たされた。 生後90日以内の、診察を要した重症RSV関連下気道感染症は、RSVpreFワクチン群の乳児で6件、プラセボ群では33件だった(ワクチン有効性:81.8%、99.5%CI:40.6~96.3)。同様に生後180日以内では19件と62件だった(ワクチン有効性:69.4%、97.58%CI:44.3~84.1)。 一方で、診察を要したRSV関連下気道感染症については、生後90日以内でRSVpreFワクチン群の乳児24件、プラセボ群56件が報告され(ワクチン有効性:57.1%、99.5%CI:14.7~79.8)、統計学的な有効性を示す基準を満たさなかった。 安全性に関連する兆候は、妊婦および生後24ヵ月までの乳幼児ともに認められなかった。ワクチン投与1ヵ月以内または生後1ヵ月以内に発生した有害事象の発生率は、RSVpreFワクチン群(妊婦13.8%、乳児37.1%)とプラセボ群(13.1%、34.5%)で同程度だった。

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BA.4/5対応2価ワクチン、初回接種での使用を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは4月11日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2価ワクチン「コミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、生後6ヵ月~4歳における初回免疫と追加免疫、および5歳以上における初回免疫での使用を可能とするための承認事項の一部変更を厚生労働省に申請したことを発表した。 本剤は現在、国内において5歳以上の追加免疫での使用のみ承認されている。なお、米国においては、5歳以上の追加免疫での使用に加え、2022年12月8日に生後6ヵ月~4歳における初回免疫の3回目としての使用が、2023年3月15日には同年齢層における1回の追加免疫(初回免疫を1価ワクチンで3回接種完了した者が対象)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されている。

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第158回 胎児脳のコロナ感染 / コロナ入院患者死亡率は依然として高い

妊婦感染コロナの胎児脳への移行が初めて判明妊婦に感染した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の胎児の脳への移行とその害が、米国・マイアミ大学の研究者いわく初めて認められました1,2,3)。調べられたのはコロナに感染した妊婦から生まれ、生まれてすぐに発作を起こし、出産時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達の大幅な遅れを示した小児2例です。2例の出産時の鼻ぬぐい液のPCR検査ではSARS-CoV-2は検出されませんでした。しかし2例とも抗コロナ抗体を有しており、血液中の炎症指標が有意に上昇していました。母親2例の胎盤を調べたところSARS-CoV-2のタンパク質が認められ、生まれた小児の血液と同様に炎症指標の亢進が認められました。小児の1例は1歳を迎えて間もない生後13ヵ月で不慮の死を遂げました。その脳を免疫染色で調べたところSARS-CoV-2に感染していたことを示すタンパク質が脳全域で認められました。亡くなったその小児が生前そうであったようにもう1例の小児も出生時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達もかなり遅れました。1歳になっても寝返りを打ったり支えなしで座ったりすることができず、報告の時点でホスピスを利用していました。妊娠半ばに感染したSARS-CoV-2は胎児と胎盤、さらには胎児の脳に至って胎盤と胎児の両方に炎症反応を誘発しうることを今回の調査結果は示しています。そうして生じた炎症反応は生後間もないころを過ぎても続く脳損傷や進行性の神経不調とどうやら関連しそうです。今回報告された2例の小児はコロナ流行が始まって間もない2020年のデルタ株優勢のころに妊娠第2期で感染した母親から生まれました。母親の1例は肺炎や多臓器疾患で集中治療室(ICU)に入り、そこでSARS-CoV-2感染が判明します。胎児の経過はその後も正常でしたが、妊娠32週時点で帝王切開による出産を要しました。死後脳に感染の痕跡が認められたのはこの母親の子です。一方、もう1例の母親のコロナ感染は無症状で、妊娠39週に満期出産に至っています。それら2例の母親が感染したころはワクチンが普及した現在と状況が違っていますが、胎児の経過観察の目下の方針は不十分であると著者は言っています。胎児の脳がSARS-CoV-2による影響を受けるのであればなおさら慎重な様子見が必要です。それは今後の課題でもあり、脳の発達へのコロナ感染の長期の影響を検討しなければなりません。コロナ入院患者の死亡率はインフル入院患者より依然として高いコロナ流行最初の年のその入院患者の死亡率はインフルエンザによる入院患者より5倍近く高いことが米国での試験で示唆されています。さてウイルスそのもの、治療、集団免疫が様変わりした今はどうなっているのでしょうか?この秋冬の同国のコロナ入院患者のデータを調べたところ、幸いにも差は縮まっているもののインフルエンザ入院患者の死亡率を依然として上回っていました4,5,6)。調べられたのは2020年10月1日~2023年1月31日にコロナまたはインフルエンザの感染前後(感染判明の2日前~10日後)に入院した退役軍人のデータです。いわずもがな高齢男性を主とするそれら1万1,399例のうちコロナ入院患者8,996例の30日間の死亡率は約6%(5.97%)であり、インフルエンザ入院患者2,403例のその割合である約4%(3.75%)を1.6倍ほど上回りました。他のコロナ転帰の調査がおおむねそうであるようにワクチンの効果がその解析でも認められています。ワクチン非接種者に比べて接種済みのコロナ入院患者の死亡率は低く、追加接種(boosted)も受けていると死亡率はさらに低くて済んでいました。コロナによる死を防ぐワクチンの価値を今回の結果は裏付けています。参考1)Benny M, et al. Pediatrics. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]2)COVID caused brain damage in 2 infants infected during pregnancy -US study / Reuters3)SARS-CoV-2 Crosses Placenta and Infects Brains of Two Infants: 'This Is a First' / MedScape4)Xie Y, et al. JAMA. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]5)COVID-19 patients were more likely to die than flu patients this past flu season: study / NMC6)Covid Is Still Deadlier for Patients Than Flu / Bloomberg

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第154回 日本人の驚くべきマスク定着化ー新聞社の世論調査

先日、知人の墓参りとワーケーションを兼ねて京都に4日ほど滞在した。食事時と自分が会員となっているスポーツジムの系列店舗で運動する以外は、ほぼホテルの部屋で仕事をしていた。もっとも春先の京都にいながら観光ゼロというのも何なので、昼食時の帰りに1件ほど寺社・仏閣に立ち寄ったりもした。すでに京都市内はコロナ禍「明け」とも言える雰囲気で、市中心部の四条付近は外国人観光客でごった返していた。ぱっと見だが、白人系の人々は屋内外いずれもほぼノーマスク、対して日本人も含め見た目がアジア系の人々では屋外でもマスク着用率が明らかに高くなる印象だ。たまにアジア系の顔立ちでノーマスクの人たちを見かけるが、言葉を聞くとその多くは広東語、中国語などの非日本語である。それでもノーマスクの日本人は、少なくとも私が見る限り、東京などと比べると若年者を中心に明らかに多いと感じた。到着翌朝、ホテルのエレベーターに乗り込もうとし、先客の若い女性がノーマスクだった時は一瞬ぎょっとした。途中から乗り込んできたやはりノーマスクの男性2人は女性と顔見知りだったらしく、密閉空間のエレベーター内でそのままペチャクチャ話し始めた。会話の内容からすると、どうやら新入社員の研修中らしい。私はマスクをしていたものの、その間ずっとヒヤヒヤしていた。ところが慣れというのは怖いもので、3日も滞在していると、コンビニに行こうとしてホテルの部屋を出た際にマスクを忘れたことに気付いても、「短時間だし。ま、いいか」という感じになってしまう。すでにマスク着用が任意となった現時点での表現としては適切ではないかもしれないが、「こうやってなし崩し的にモラルハザードが起こる」と受け止めている。新聞社主催の世論調査から見えるマスク定着化そうした中で興味深い調査結果を目にした。読売新聞社が行った新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関する世論調査である。調査結果を報じた記事では「日本の社会は、全体として、新型コロナウイルスに、うまく対応できていると思いますか、思いませんか」との問いへの回答が、「思う」「どちらかといえば思う」合計で57%、「どちらかといえば思わない」「思わない」合計が41%となり、2021年から3年連続同様の調査を行った中で、初めて「思わない」よりも「思う」ほうが上回った点に主眼が置かれている。しかし、私が注目したのは調査結果内のマスク関連の回答である。まず、「新型コロナウイルスの感染を防ぐため、現在あなたが実践していることを、いくつでも選んでください」のトップが、「外出するときにマスクを着用する」の92%。さらに「あなたは、日常的にマスクを着用することを、つらいと感じますか、感じませんか」では、トップは「どちらかといえば感じない」が31%、次いで「感じない」が29%で、マスク着用に肯定的な層が6割を超えている。ちなみにこの設問で反対の立場である「感じる」が12%、「どちらかといえば感じる」が27%だった。ただし、この世論調査を読み解く際には2つの注意点がある。1つは調査の実施主体が読売新聞であることだ。新聞による無作為抽出世論調査の場合、回答者と新聞社の思想ベースが類似しがちになる。たとえば、保守的と分類されることが多い読売新聞の調査では、どうしても保守的な人が回答しがちになる。一方、リベラル傾向が強いと言われる朝日新聞社の読者に読売新聞社主催の調査が送付された際には回答拒否になる傾向が強まる。実際、今回のアンケートの回答を見ると、概して保守層に受け入れられやすいワクチン接種について、3回以上接種者は82%であり、現在の首相官邸が公開している総人口に占める3回ワクチン接種割合の68.6%と比べるとかなり高めだ。もう1つの注意点として、回答者の年齢層は50代以上が6割超を占めている。たとえば、調査で「あなたは、今後、自分が新型コロナウイルスに感染して重症になるのではないかという不安を、感じますか、感じませんか」では、「大いに感じる」「多少は感じる」の合計がやはり6割超である。その意味で今回明らかになったマスク信仰については、社会全体の傾向よりやや高めに出ていると解釈したほうが良いかもしれない。とは言っても、これだけの日本人にマスクが定着したという点には今回驚きを感じている。さて昨今の新型コロナの感染状況だが、すでに陽性者報告数は上昇トレンドに入り、第9波の到来が懸念されている。一部には早ければ5月下旬という説もある。現在、オミクロン株対応ワクチンの接種率は約45%と心もとないが、第8波でかなりの感染者が発生したことも考えると、今現在は事実上の「集団免疫」が成立している状況かもしれない。これに今回の世論調査でわかったマスク信仰の高さも考え合わせれば、もしかすると第9波は第8波を下回るのではないだろうか? もっともこれは個人的かつ希望的観測に過ぎない。ただ、間近に迫った新型コロナの感染症法上5類化で対応病床が減ると予想される中、その状態ですら医療側が対応可能なレベルかどうかは、かなり不透明ではないだろうか?

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コロナ感染率と死亡率、米国各州で異なる要因は?/Lancet

 米国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックへの対応に苦労したが、州別にみると一律ではなく、将来的なパンデミックの対策に活かせる点が見いだせたことを、米国・外交問題評議会(CFR)のThomas J. Bollyky氏らが、同国の公的データベースを用いた観察的分析の結果で報告した。著者は、「今回の調査結果は、将来の危機において、より良い健康アウトカムを促進するための臨床的および政治的介入の設計と目標に寄与するものとなるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年3月23日号掲載の報告。新型コロナ感染率・死亡率を州ごとに比較し、政策等との関連を検討 研究グループは、州間の感染率と死亡率のばらつき要因を特定し、現在および将来のパンデミックへの対応を改善するため、次の5つの重要な政策関連の課題を明らかにする検討を行った。(1)社会的、経済的、人種的な不平等がCOVID-19のアウトカムの州間のばらつきにどのように影響したか。(2)医療と公衆衛生のキャパシティが大きい州ほど、より良いアウトカムが得られたのか。(3)政治がアウトカムにどのように影響したか。(4)より多く、より長期に政策的な義務を課した州ほど、より良いアウトカムが得られたのか。(5)州での累積SARS-CoV-2感染と総COVD-19死の低下と、その州の経済的および教育的アウトカムとの間にトレードオフの関連はあるのかどうか。 検討では、保健指標評価研究所(IHME)のCOVID-19データベースより感染率および死亡率の推定値、商務省経済分析局のGDPデータ、連邦準備制度経済データの雇用率、国立教育統計センターの学生の標準テストの成績、国勢調査局の人種・民族に関するデータなど、米国の公的データベースから州別に抽出。COVID-19の影響緩和に成功した州の比較を容易にするため、感染率は人口密度で、死亡率は年齢および主要な併存疾患の有病率で標準化し、これらをパンデミック前の州の特性(教育水準、1人当たりの医療費など)、パンデミック中に州が採用した政策(マスク着用義務化、事業閉鎖など)、人口レベルの行動的反応(ワクチン接種、移動など)に回帰させた。州政府による感染防御の義務付けは感染率低下と、ワクチン接種率は死亡率低下と関連 2020年1月1日~2022年7月31日における標準化COVID-19累積死亡率は、米国内でばらつきがみられ(全国での死亡率は人口10万人当たり372例、95%不確定区間[UI]:364~379)、最低だったのはハワイ州(10万人当たり147例、95%UI:127~196)とニューハンプシャー州(10万人当たり215例、95%UI:183~271)で、最高はアリゾナ州(10万人当たり581例、95%UI:509~672)とワシントンDC(10万人当たり526例、95%UI:425~631)であった。 貧困率が低い、平均教育年数が長い、対人信頼感を示す人の割合が高いことは、感染率および死亡率の低下と関連していたが、黒人(非ヒスパニック系)またはヒスパニック系の割合が高い州は死亡率が高いことと関連していた。質の高い医療へのアクセスは、COVID-19による死亡とSARS-CoV-2感染の総数減少と関連していたが、州レベルでは、公的医療費や人口当たりの公衆衛生職員数の増加は関連していなかった。 州知事の所属政党はSARS-CoV-2感染率やCOVID-19死亡率の低下と関連していなかったが、COVID-19アウトカムの悪化は2020年共和党大統領候補に投票した州の有権者の割合と関連していた。 州政府による感染防御義務の採用は、マスク着用、移動度の低さ、およびワクチン接種率の高さと同様に感染率の低下と関連しており、ワクチン接種率は死亡率の低下と関連していた。 州のGDPと学生の読解力テストの成績は、州のCOVID-19政策対応、感染率、死亡率とは関連していなかった。しかし、雇用はレストランの閉鎖および感染率、死亡率の上昇と統計学的に有意に関連しており、雇用率が1ポイント上昇した州では、感染者が人口1万人当たり平均1,574例(95%UI:884~7,107)増加した。いくつかの政策的義務や感染防御行動は、小学4年生の数学のテストの点数低下と関連していたが、州レベルの学校閉鎖の推定値との関連性は確認されなかった。 結果を踏まえて著者は、「構造的不平等をできるだけなくして、ワクチン接種や対象を絞ったワクチン接種の義務化など科学的根拠に基づく介入策を展開し、社会全体でその適用を促進した州は、COVID-19死亡率を最小限に抑えるという点で最も優れた国に匹敵することができた」とまとめ、「COVID-19は、米国社会全体にすでに存在していた社会的、経済的および人種的な不平等の二極化と持続を拡大したが、次のパンデミックでは必ずしも同じ轍は踏まないだろう」と述べている。

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