371.
無作為化試験様の解析で帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難いことが関連おのずと無作為化試験のようになった英国・ウェールズの2集団の比較で帯状疱疹ワクチンzostavax接種と認知症が生じ難いことの関連が示されました1)。同地では2013年9月1日からzostavaxの接種が始まりました。zostavaxは80歳までの人にどうやらより有効とのことで、1933年9月2日以降に生まれた80歳未満の人が接種の対象となり、1933年9月2日より前に生まれた人は対象外でした。その日を挟む1925~42年生まれの約30万人(29万6,603人)の電子診療情報が解析され、zostavax接種対象の人はそうでない人に比べて認知症の発現率が8.5%低いことが示されました。接種対象者のうち実際に接種したのは半数ほどであることを踏まえた解析結果によるとワクチン接種は認知症発現率の約20%(19.9%)低下をもたらしました。生まれが1933年9月2日以降かその前かで区切った2集団の誕生日以外の全般的な違いといえばzostavax接種対象かそうでないかのみであり、その2集団はおのずから無作為化試験のような集団となっています。とはいえあくまでも診療録の解析結果であり、その効果の確証には試験が必要です。より新しい帯状疱疹ワクチンの試験がいくつか進行中で、それらの被験者の認知機能を検査してみたらどうだろうと著者は言っています2)。アミノ酸・タウリン補給でマウスの寿命が伸び、中年サルの体調が改善真核生物の世界で最も豊富なアミノ酸の1つであるタウリンはイカやタコそれに貝類などに多く含まれ、多くの栄養ドリンクやエナジードリンクの成分としても知られ、サプリメントとしても販売されています。ヒトにとってタウリンは準必須アミノ酸で、合成できるものの発達に十分な量を作ることができない幼いころには体外から取り込まねばなりません3)。幼いころのタウリン不足は老化関連疾患と関連する骨格筋、眼、中枢神経系(CNS)機能障害を引き起こします。そのタウリンの体内の巡りが老化に伴って減ることがマウス、サル、さらにはヒトで認められ、タウリンの体内の巡りを増やすことでマウスの健康で生きられる期間や寿命が伸び、中年サルの体調が改善しました4,5,6,7)。マウスやサルで認められたようなタウリンの健康増進効果がヒトでも期待しうることも英国の試験の記録の解析で示唆されました。解析されたのは英国・ノーフォーク州でのEPIC-Norfolk試験の被験者1万人超(1万1,966人)の記録で、血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多いことはより痩身であることを示す体型指標と関連しました。また、2型糖尿病の有病率が低いこと、糖濃度が低いこと、炎症指標であるC反応性タンパク質(CRP)が少ないことなどとも関連し、タウリン欠乏のヒトの老化への寄与に見合う結果が得られています。アスリートやそうでない人を募って実施した試験で運動が血中のタウリンやタウリン関連代謝物を増やしうることも確認され、運動の健康向上効果のいくらかにタウリンやタウリン関連代謝物が寄与しているという予想に沿う結果も得られています。しかし早まってタウリンを補給するのは得策ではありません。ヒトがタウリンを補給することで健康が改善するかどうかや寿命が伸びるかどうかはわかっておらず、店頭で売られているタウリン含有サプリメントを健康維持や老化を遅らせることを目当てに早まって服用すべきでないと著者は言っています7)。タウリンの健康や寿命への効果は無作為化試験で検証しなければなりません5)。参考1)Causal evidence that herpes zoster vaccination prevents a proportion of dementia cases, May 25 2023. medRxiv.2)Does shingles vaccination cut dementia risk? Large study hints at a link / Nature3)MCGAUNN J, et al. Science. 2023;1010:380.4)SINGH P, et al. Science. 1012;380:eabn9257.5)Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life / Columbia University6)Amino acid in energy drinks makes mice live longer and healthier / Science7)Taurine supplement makes animals live longer - what it means for people is unclear / Nature