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50~64歳へのインフルエンザワクチン、4価遺伝子組換えvs.標準用量/NEJM

 50~64歳の成人において、高用量の遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチンは、鶏卵を用いた標準用量のワクチンに比べ、PCR検査で確認されたインフルエンザに対する防御効果が高いことが示された。米国・カイザーパーマネンテ・ワクチン研究センターのAmber Hsiao氏らが、163万例超を対象としたクラスター無作為化観察試験の結果を報告した。遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチンには鶏卵を用いた標準用量のワクチンの3倍量のヘマグルチニン蛋白が含まれており、遺伝子組み換え製剤は製造過程の抗原ドリフトに影響を受けにくい。65歳未満の成人におけるインフルエンザ関連アウトカムについて、遺伝子組み換えワクチンを標準用量のワクチンと比較した相対的有効性に関するデータが求められていた。NEJM誌2023年12月14日号掲載の報告。2018~19年、2019~20年のインフルエンザシーズンに試験 研究グループは、カイザーパーマネンテ・北カリフォルニアの傘下である施設を通じ、2018~19年と2019~20年のインフルエンザシーズン中に、高用量の遺伝子組み換えインフルエンザワクチン(商品名:Flublok Quadrivalent)、または標準用量インフルエンザワクチン(2種類中1種類)を、50~64歳の成人(主要年齢群)および18~49歳の成人に接種した。各施設は施設の規模で同等になるよう遺伝子組み換えワクチンから開始、標準用量ワクチンから開始のいずれかに無作為化され、2つのワクチン投与は各施設で1週間ごとに入れ替えた。 主要アウトカムは、PCR検査で確認されたインフルエンザ(AまたはB)だった。副次アウトカムは、インフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザ関連入院アウトカムとした。 Cox回帰分析を用いて、各アウトカムについて標準用量ワクチンと比較した遺伝子組み換えワクチンのハザード比(HR)を推定した。相対的なワクチン有効率は、1-HRで算出した。遺伝子組み換えワクチンの有意な防御効果を確認、ただし入院については同等 試験対象集団に包含されたのは、18~64歳のワクチン接種者163万328例であった。そのうち遺伝子組み換えワクチン群は63万2,962例、標準用量群は99万7,366例だった。 試験期間中にPCRで確認されたインフルエンザ症例は、遺伝子組み換えワクチン群1,386例、標準用量群2,435例だった。 50~64歳の参加者でインフルエンザ陽性が認められたのは、遺伝子組み換えワクチン群559例(2.00例/1,000例)、標準用量群925例(2.34例/1,000例)(相対的ワクチン有効率:15.3%、95%信頼区間[CI]:5.9~23.8、p=0.002)。同年齢群において、インフルエンザAに対する相対的ワクチン有効率は15.7%(95%CI:6.0~24.5、p=0.002)だった。 インフルエンザ関連入院に対する遺伝子組み換えワクチンの防御効果について、標準用量ワクチンと比べて有意差は認められなかった(相対的有効率15.9%、95%CI:-9.2~35.2、p=0.19)。

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第76回 海外で新型コロナJN.1が急増

もう来ないでほしい「波」Unsplashより使用日本で現在流行している新型コロナはオミクロン株のEG.5系統(通称エリス)であり、全体の6~7割くらいがこれです。現在インフルエンザの流行で陰に隠れていますが、水面下で感染が広がりつつあるのではないかという見解が増えてきました。懸念されるのは、諸外国で急激に増えているJN.1です(図)。画像を拡大する図. 世界の新型コロナウイルス変異株流行状況GISAIDに登録された各国からのゲノムデータ報告数と国別流行株(10月30日~11月30日)1)諸外国の感染状況アメリカでは12月中旬で1日約3万人の感染者数が報告されており、入院患者数もじわじわと増えてきている状況です。オミクロン株の変異株であるBA.2.86(通称ピロラ)が台頭していますが、ピロラからさらに派生したJN.1(BA.2.86.1.1)が急速に増えています。一応これもピロラの仲間になるわけですが、ややこしいのでJN.1と呼びます。たとえばオランダでは、現在JN.1が最も流行していますが、下水の新型コロナウイルス量が過去最高を記録しており、感染が相当広がっていることがわかります。そのほか、フランスやイタリアにおいても、JN.1が優勢になった直後に急激な入院増加が観察されています。イタリアはこの1年で最多水準の新型コロナ患者数を記録しています。JN.1は、感染性や免疫逃避能がこれまでの変異ウイルスの中で最も強力であることがわかっています(当然といえば当然なのですが)2)。肺炎が多くないのはこれまでのオミクロン株と同様ですが、数が多いと医療逼迫の懸念が生じます。日本もこの波に飲み込まれるのではないかと考えられます。実際、すぐ近くのシンガポールでは呼吸器系の入院のほとんどがJN.1で占められている状況で、マレーシアでも感染者数が倍増しています。ゆえに、同じ島国である日本が、EG.5系統の流行のみでこの冬を乗り切る可能性は低いと考えられます。JN.1は、XBB.1.5やEG.5系統の感染で成立した免疫や、XBB.1.5ワクチンによる免疫を逃避しやすいことから3)、しばらく人類は、このいたちごっこを続けないといけないのかもしれません。ごく軽症であればもう騒がなくてよいのですが、これまでと同じメカニズムで医療逼迫が起こるなら、インフルエンザと同じように警戒し続ける必要があります。参考文献・参考サイト1)東京都健康安全研究センター:世界の新型コロナウイルス変異株流行状況2)Kaku Y, et al. Virological characteristics of the SARS-CoV-2 JN.1 variant. bioRxiv preprint. 2023 Dec 9. 3)※WHOはXBB.1.5対応ワクチンでJN.1に対しても接種効果ありとコメントしているWHO:Initial Risk Evaluation of JN.1, 19 December 2023

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腎機能を考慮して帯状疱疹治療のリスク最小化を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第56回

 帯状疱疹治療はアメナメビルの登場により大きく変わりました。しかし、すべての患者さんがアメナメビル1択でよいわけではありません。既存の治療薬であっても腎機能を適切に評価することで安全に治療を行うことができます。ただし、過剰投与によるアシクロビル脳症や急性腎障害は重篤な副作用であることから、薬剤師のチェックが非常に重要です。患者情報75歳、女性(施設入居)体重40kg基礎疾患高血圧症、大動脈弁狭窄症、慢性心不全帯状疱疹ワクチン接種歴なし主訴腰部の疼痛と掻痒感直近の採血結果血清クレアチニン 0.75mg/dL処方内容1.バラシクロビル錠500mg 6錠 分3 毎食後 7日分2.ロキソプロフェン錠60mg 疼痛時 1回1錠 5回分3.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後4.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.カルベジロール錠10mg 1錠 分1 朝食後6.ダパグリフロジン錠10mg 1錠 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは慢性心不全を基礎疾患として、循環器系疾患の併用薬が複数あります。今回、帯状疱疹と診断され、バラシクロビルとロキソプロフェンが追加となりました。しかし、この患者さんは低体重であり、かつ腎機能が低下(CG式よりCcrを算出したところ推算CCr40.9mL/min)していることから、腎排泄型薬剤の投与量の補正が必要と考えました。表1 バラシクロビル添付文書画像を拡大する現在のバラシクロビルの処方量では、代謝産物の9-carboxymethoxymethylguanine(CMMG)の蓄積による精神神経系(アシクロビル脳症)の副作用の発症リスクが高くなる可能性があります1)。利尿薬を併用していることから、腎機能増悪の懸念もありました。さらに、疼痛コントロールで処方されているロキソプロフェンも腎機能の増悪につながるので、できる限り腎機能への負担を軽減した治療薬へ変更する必要があると考え、処方提案することにしました。処方提案と経過医師に電話で疑義照会を行いました。腎機能に合わせたバラシクロビルの推奨投与量は1,000mg/回を12時間ごとの投与であり、現在の処方量(1,000mg/回を毎食後)では排泄遅延によるアシクロビル脳症や腎機能障害が懸念されることを説明しました。また、ロキソプロフェンは腎機能に影響が少ないアセトアミノフェンへの変更についても提案しました。医師より、肝代謝のアメナメビル200mg 2錠 夕食後に変更するのはどうかと聞かれました。治療薬価(表2)に差があるため、今度は費用対効果の問題が生じることを伝えたところ、バラシクロビル1,000mg/回を12時間ごとに変更するという指示がありました。また、ロキソプロフェンはアセトアミノフェン300mgを疼痛時に2錠服用するように変更すると返答がありました。その後、発症4日目に電話でフォローアップしたところ、腰部の疼痛および掻痒感は改善していて、その後も意識障害や精神症状の出現はなく経過しています。表2 治療薬価(著者作成、2023年12月時点)画像を拡大する1)筒井美緒ほか. 2006. 富山大学医学会誌;17:33-36.

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mRNAベースのRSVワクチン、高齢者への有用性を確認/NEJM

 mRNAベースのRSウイルス(RSV)ワクチン「mRNA-1345」について、60歳以上の高齢者への単回接種はプラセボとの比較において、明白な安全性の懸念が生じることなく、RSV関連下気道疾患およびRSV関連急性呼吸器疾患の発生率を低下したことが示された。米国・ModernaのEleanor Wilson氏らが、第II-III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験(22ヵ国で実施、現在進行中)の結果を報告した。高齢者におけるRSV感染が重大な疾患と死亡を増加させていることが報告されている。mRNA-1345は、安定化させたRSV融合前F糖蛋白をコードするmRNAベースのRSVワクチンで、臨床研究中の新たなワクチンである。NEJM誌2023年12月14日号掲載の報告。プラセボ対照試験で、下気道疾患の予防の有効性を評価 研究グループは、60歳以上の高齢者を、mRNA-1345(50μg)またはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要エンドポイントは2つで、少なくとも2つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患の予防と、少なくとも3つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患の予防とした。重要な副次有効性エンドポイントは、RSV関連急性呼吸器疾患の予防とした。安全性も評価した。有効性82.4~83.7%、年齢や併存疾患で定義のサブグループ間も有効性は一致 2021年11月17日~2022年10月31日に、計3万5,541例が無作為化された(mRNA-1345ワクチン群1万7,793例、プラセボ群1万7,748例)。両群のベースライン特性はバランスが取れており、登録時の参加者の平均年齢は68.1歳、49.0%が女性、36.1%が非白人、34.5%がヒスパニック/ラテン系。1つ以上の併存疾患がある患者は29.3%、うっ血性心不全既往1.1%、COPD既往5.5%であった。21.9%が虚弱またはフレイルの状態であった。 追跡期間中央値は112日(範囲:1~379)。主要解析は、予想されたRSV関連下気道疾患症例の50%以上が発生した時点で行われた。 ワクチンの有効性は、少なくとも2つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患に対しては83.7%(95.88%信頼区間[CI]:66.0~92.2)であり、少なくとも3つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患に対しては82.4%(96.36%CI:34.8~95.3)であった。また、RSV関連急性呼吸器疾患に対するワクチンの有効性は68.4%(95%CI:50.9~79.7)だった。 防御効果は2つのRSVサブタイプ(AおよびB)いずれに対しても観察され、年齢および併存疾患で定義したサブグループ間でも概して一致していた。 mRNA-1345群ではプラセボ群よりも、局所副反応(58.7% vs.16.2%)、全身性副反応(47.7% vs.32.9%)の発現率が高かったが、ほとんどの副反応は軽度~中程度で、一過性のものだった。重篤な副反応の発現率は、各群とも2.8%であった。

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腎移植患者に対する帯状疱疹ワクチン接種の推奨/日本臨床腎移植学会

 日本臨床腎移植学会は、2023年11月7日付の「腎移植患者における帯状疱疹予防に関するお知らせ」にて、腎移植患者に対する帯状疱疹発症予防のための乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(商品名:シングリックス筋注用、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)の接種を積極的に検討するよう同学会の会員に向けて通達した。 米国疾病予防管理センター(CDC)の勧告や海外の最新のガイドラインにおいて、固形臓器移植患者に対するワクチンの接種は、原則、移植前に接種するよう推奨されており、移植前にワクチン接種が不可能な場合は、移植後少なくとも6~12ヵ月後に接種することが望ましいとされている1,2)。 2023年6月に本ワクチンの適応が「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者」へ拡大された。本ワクチンは、50歳以上を対象とした臨床試験において、2回の接種による帯状疱疹への高い予防効果と、約10年間にわたる予防効果の持続が確認されている3-5)。 接種対象者拡大の追加承認は、腎移植患者や自家造血幹細胞移植患者における臨床試験結果6,7)に基づいており、本ワクチンは不活化ワクチンのため生ワクチンが禁忌となる免疫抑制剤使用中の患者でも接種が可能とされる。現時点で、腎移植患者における帯状疱疹発症予防を検証したデータはないが、腎移植患者を対象とした臨床試験6)において免疫原性が確認されている。問題となる副反応や、拒絶反応を増加させる報告はない。また、同学会は通達の中で、自家造血幹細胞移植患者を対象とした臨床試験7)で検証された予防効果(約2年間の観察期間において68.2%)は、腎移植患者においても参考になりうるデータと考えている、としている。■参考文献・参考サイト1)CDC, Clinical Considerations for Use of Recombinant Zoster Vaccine (RZV, Shingrix) in Immunocompromised Adults Aged ≧19 Years. Last Reviewed: January 20, 2022.2)カナダ・アルバータ州予防接種方針|予防接種の特別な状況(2023年12月4日改訂)3)Lal H, et al. N Engl J Med. 2015;372:2087-2096.4)Cunningham AL, et al. N Engl J Med. 2016;375:1019-1032.5)Strezova A, et al. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac485.6)Vink P, et al. Clin Infect Dis. 2020;70:181-190.7)Bastidas A, et al. JAMA. 2019;322:123-133.

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日本人コロナ患者で見られる肥満パラドックス

 日本人では、肥満は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子ではない可能性を示唆するデータが報告された。肥満ではなく、むしろ低体重の場合に、COVID-19関連死のリスク上昇が認められるという。下関市立市民病院感染管理室の吉田順一氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Medical Sciences」に9月11日掲載された。 古くから「肥満は健康の敵」とされてきたが近年、高齢者や心血管疾患患者などでは、むしろ太っている人の方が予後は良いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる関連の存在が知られるようになってきた。COVID-19についても同様の関連が認められるとする報告がある。ただし、それを否定する報告もあり、このトピックに関する結論は得られていない。吉田氏らは2020年3月3日~2022年12月31日までの同院の入院COVID-19患者のデータを用いて、この点について検討した。 解析対象は1,105人でほぼ全員(99.3%)が日本人であり、半数(50.1%)が男性だった。主要評価項目は入院から29日以内の全死亡(あらゆる原因による死亡)とし、副次的評価項目として侵襲的呼吸管理(IRC)の施行を設定。年齢、性別、BMI、体表面積、ワクチン接種の有無、レムデシビル・デキサメタゾンの使用、化学療法施行、好中球/リンパ球比(NLR)などとの関連を解析した。なお、IRCは酸素マスクによる5L/分以上での酸素投与にもかかわらず、SpO2が93%未満の場合に施行されていた。また、年齢、BMI、NLRなどの連続変数は、ROC解析により予後予測のための最適な値を算出した上で、年齢は72.5歳、BMIは19.6、NLRは3.65をカットオフ値とした。 入院後29日目までに死亡が確認された患者は32人(2.9%)であり、COVID-19による死亡が20人、細菌性肺炎7人、心血管イベント3人、および敗血症性ショック、尿路感染症が各1人だった。年齢と性別の影響を調整後に、BMI別に死亡者数をプロットすると、死亡者数のピークはBMI11~15の範囲にあり、BMI22にも小さなピークが認められた。多変量解析から、死亡リスク低下に独立した関連のある因子として、BMI19.6超(P<0.001)とレムデシビルの使用(P=0.040)という2項目が特定された。反対に、年齢72.5歳超(P<0.001)、化学療法施行中(P=0.001)、NLR3.65超(P=0.001)は、死亡リスクの上昇と有意に関連していた。 IRCが施行されていたのは37人(3.3%)だった。年齢と性別の影響を調整後に、BMI別にIRC施行者数をプロットすると、BMI11~25の範囲で施行者数の増加が認められた。多変量解析から、IRC施行リスクの上昇と有意な関連のある因子として、年齢72.5歳超(P=0.031)、デキサメタゾンの使用(P=0.002)、NLR3.65超(P=0.048)が特定された。IRC施行リスクの低下と有意な関連のある因子は抽出されなかった。 著者らは、BMI19.6以下がCOVID-19患者の全死亡リスク増大に独立した関連があるという結果を基に、「日本人COVID-19患者で認められる肥満パラドックスは、BMI高値が保護的に働くというよりも、BMI低値の場合にハイリスクである結果として観察される現象ではないか」との考察を述べている。また、レムデシビルが死亡リスク低下の独立した関連因子である一方、デキサメタゾンがIRC施行リスク上昇の独立した関連因子であったことについては、「サイトカインストームに伴う呼吸不全にデキサメタゾンが使用された結果であり、同薬がIRC施行リスクを高めるわけではない」と解説している。

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BMIが高いとコロナワクチンの抗体応答が低い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが普及し、その効果に関してさまざまな報告がなされている。ワクチンと体型、とくにBMI高値の肥満の人にはどのように関係するのであろう。この疑問に対し、オーストラリア・クイーンズ大学化学・分子バイオサイエンス学部のMarcus Zw Tong氏らの研究グループは、COVID-19から回復した被験者から血液サンプルを採取し、ワクチン接種前後の抗体反応を測定・解析した。その結果、高いBMIがワクチンの抗体応答低下と関連することが示唆された。Clinical & Translational Immunology誌2023年12月3日号の報告。BMIの上昇がワクチンの体液性免疫応答の障害と関連 方法としてSARS-CoV-2感染から約3ヵ月後および13ヵ月後に回復した被験者から血液サンプルを採取(これらの対象者はSARS-CoV-2に曝露されておらず、また、その間にワクチン接種も受けていない)。そして、2回目のCOVID-19ワクチン接種後約5ヵ月経過した人(大多数はSARS-CoV-2感染歴なし)から血液サンプルを採取。SARS-CoV-2に対する体液性反応を測定し、BMIが25以上かそれ以下かでグループ分けし、結果を解析した。 主な結果は以下のとおり。・年齢および性差を考慮した場合、高いBMI(25以上)がSARS-CoV-2感染後のワクチン抗体応答の低下と関連することが示された。・感染後3ヵ月では、高いBMIはワクチン抗体価の低下と関連していた。・感染後13ヵ月では、高いBMIはワクチン抗体価の低下およびスパイク陽性B細胞の割合の低下と関連していた。・2次ワクチン接種後5ヵ月目では、BMI≧25とSARS-CoV-2に対する体液性免疫との間に有意な関連は認められなかった。 これらの結果を受けて、Tong氏らは「高いBMIはSARS-CoV-2感染に対する体液性免疫応答の障害と関連していることが示された。BMIが25以上の人における感染誘導性免疫の障害は、感染誘導性免疫に依存するのではなく、ワクチン接種のさらなる促進を示唆する」と結論付けている。

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第75回 今冬新型コロナは再び流行するのか?

インフルエンザの流行が爆発中Unsplashより使用新型コロナはどこにいったのかというくらい、インフルエンザの感染が流行しています。うちの子供の学校でも学級閉鎖が相次いでいます。しかし、何となく一山越えた感じがあって、そろそろ落ち着いてくれるんじゃないかと期待しています。画像を拡大する図. インフルエンザと新型コロナの定点医療機関当たりの患者数(人)(筆者作成)1、2)新型コロナは定点医療機関当たりの患者数が2.75人とじわじわと増えてきているような印象があって、もしかしてこれは…と警戒しています。アルファ株やデルタ株のときほど怖がらなくてもよいと思っていますが、ワクチン接種を続けている人もだんだんと減ってきていますから、実生活に与える感染のインパクトは、まだ大きいかもしれません。ママ友に聞くと、子供に至ってはインフルエンザワクチンだけで2回受診しないといけませんし、ここに新型コロナワクチンは無理というのが本音のようです。ワクチン接種の手間が大きいので、早く混合ワクチンが登場してほしいところです。もはや複数回感染は新型コロナでは当たり前のように起こっているので、「もうかかっても大したことない」と思われる方が多いですが、どうも複数回感染するほど後遺症リスクは高くなってくるという報告もあって3)、そんな単純な問題ではなさそうです。咽頭結膜熱、溶連菌感染症、マイコプラズマ、そして…さらに、国内では小児を中心に咽頭結膜熱、溶連菌感染症が流行しています。いずれも過去最多水準で推移しており、小児科は大忙しです。にしても、それほどコロナ禍の感染対策が小児の免疫に影響を与えたのかと驚くばかりです。韓国や中国ではさらにマイコプラズマが流行し、そしてイギリスでは百日咳の報告数が増えていると報道されています。いやー、そんなに病原微生物が流行ったら、困りますね。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:インフルエンザの発生状況2)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~3)Kostka K, et al. “The burden of post-acute COVID-19 symptoms in a multinational network cohort analysis.” Nat Commun. 2023;14:7449.

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うがいと鼻洗浄がコロナ感染による入院リスクを低減か

 新型コロナウイルスに感染した際には、生理食塩水でうがいと鼻洗浄(鼻うがい)をすることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクを低減できる可能性のあることが、小規模研究で明らかになった。米テキサス大学ヒューストン医療科学センター産婦人科・生殖科学分野教授のJimmy Espinoza氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表された。 この研究では、2020年から2022年の間に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が確認された58人(18〜65歳)を、低濃度(27人、平均年齢39歳)または高濃度(28人、同41歳)の生理食塩水でうがいと鼻洗浄をする群にランダムに割り付け、COVID-19の症状の発症頻度や持続期間、転帰(入院、集中治療室入室、機械的人工換気によるサポート、死亡)について比較を行った。対照者は、本試験期間中に新型コロナウイルスに感染した9,398人(平均年齢45歳)とした。生理食塩水は、8オンス(約237mL)のお湯に2.13gの塩を溶かした場合を低濃度、6gを溶かした場合を高濃度とし、対象者には1日4回、14日にわたってうがいと鼻洗浄を行ってもらった。対象者のうちの3人は追跡不能となった。 その結果、入院率は低濃度群で18.5%、高濃度群で21.4%であったのに対して対照群では58.8%であり、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄を行った群では濃度の高低にかかわらず、対照群よりも入院率が有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。それ以外の検討項目については、いずれの群でも対照群との間に有意な差は認められなかった。 Espinoza氏は、「われわれの目的は、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄が、新型コロナウイルス感染に伴う呼吸器症状の改善と関連するかどうかを確認することだった。検討の結果、高濃度または低濃度のいずれであっても生理食塩水でうがいと鼻洗浄を行った人では、対照群と比べてCOVID-19による入院率が低いことが明らかになった」と話す。その上で同氏は、「この生理食塩水によるうがいと鼻洗浄の効果に関する結果は、より大規模な試験で検証する必要がある。また、この方法が新型コロナウイルスのあらゆる株に有効であるかどうかについての検討も必要だ」と述べている。 ただしEspinoza氏は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄がワクチン接種や抗ウイルス薬に取って代わるものではないことを強調している。同氏は、「うがいや鼻洗浄は非常に単純な介入だが、われわれが臨床で行っている介入に取って代わるものではない。しかし、実施の容易さから、補完的な介入にはなるだろう。実際、塩は安価な上にどこででも入手可能だ」と話す。 一方、この研究には関与していない、米ノースショア大学病院の感染症専門医であるBruce Hirsch氏は、「生理食塩水によるうがいや鼻洗浄をCOVID-19の治療の一部とするには時期尚早だ」との見方を示す。同氏は、「ささいな介入ではあるが、私は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄を患者に勧めるのはもう少し様子を見てからにしたいと考えている」とコメントしている。

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生後6ヵ月~4歳へのコロナワクチン、救急受診・入院予防に40%有効/CDC

 米国では2022年6月より、新型コロナウイルスの起源株に対する1価mRNAワクチンが、生後6ヵ月~4歳児に推奨となった。米国疾病予防管理センター(CDC)は、2022年7月~2023年9月における乳幼児への新型コロナワクチンの有効性を評価したところ、ワクチン未接種と比較すると、2回以上のコロナワクチン接種は、救急外来受診と入院の予防に40%有効であることが認められた。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年12月1日号に掲載された。 生後6ヵ月~4歳への新型コロナワクチンは、2022年6月に起源株対応1価ワクチン、2022年12月~2023年4月にオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンが米国にて承認された。この年齢層におけるワクチン接種率は成人よりも著しく低く、2023年1月以降、幼児における新型コロナワクチンの1次接種完了の割合は米国で約5%となっている。なお、1次接種の回数は、ファイザー製では3回、モデルナ製では2回。 本研究では、7つの小児医療センターの急性呼吸器感染症(ARI)に関する集団ベースの前向きサーベイランスであるNew Vaccine Surveillance Network(NVSN)にて、2022年7月1日~2023年9月30日の期間に登録された6ヵ月~4歳の小児7,434例を対象とした。COVID-19によるARI患児の救急外来受診および入院を予防するワクチンの有効性(VE)を、ロジスティック回帰モデルを用いて推定し、ワクチン未接種者と1回または2回以上のワクチン接種を受けた者のオッズをSARS-CoV-2陽性患者とSARS-CoV-2陰性患者で比較した。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中、救急外来または病院で登録されたARIを有する6ヵ月~4歳児7,434例のうち、387例(5.0%、年齢中央値15ヵ月)がSARS-CoV-2検査で陽性となり、7,047例(95.0%、22ヵ月)が陰性となった。・SARS-CoV-2陽性群の140例(36.2%)でほかの呼吸器ウイルスが検出され、ライノウイルス/エンテロウイルス(RV/EV)がその約50%、RSウイルスが21.4%を占めていた。一方、SARS-CoV-2陽性群(7,047例)では、RV/EVが全体の36.7%、RSウイルスが17.1%を占めていた。・ARIを発症した乳幼児の85.8%が新型コロナワクチンを接種していなかった。1回接種者は3.8%、2回以上接種者は10.4%であった。・2回目接種率は地域差および人種差が大きかった。地域差は各施設で3.9~27.9%、白人で19.0%、黒人/アフリカ系で2.5%だった。・ワクチンを2回以上接種した小児は、未接種の小児よりも年齢が高かった(年齢中央値 2回以上接種:27ヵ月vs.未接種:21ヵ月)。・未接種者と比較した場合、ワクチンを2回以上接種した乳幼児のワクチンの有効性(VE)は、COVID-19関連の救急外来受診および入院の予防に対して40%(95%信頼区間[CI]:8~60)であり、最終接種からの間隔の中央値は93日(IQR:51~172)であった。・COVID-19関連の救急外来受診および入院の予防に対するワクチン1回接種の有効性は31%(95%CI:-27~62)であったが、95%CIにnull値が含まれていた。 著者は本結果について、ARIで救急受診または入院した乳幼児において、ワクチン2回以上の接種率は10.4%と低いものの、SARS-CoV-2陽性も5%と低い割合であり、この年齢層が過去に軽度のCOVID-19を経験するなど、免疫防御を有する可能性を示唆している。乳幼児へのワクチンは有効だが、ワクチン接種率と医療行為を受けたCOVID-19発生率が低いため、ワクチン効果の推定値の精度は制限されていると述べている。

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パクスロビド投与後のCOVID-19再発リスクは高い?

 抗ウイルス薬のパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防に有効ではあるが、その反面、再発リスクを著しく高める可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。パクスロビドを投与されたおよそ5人に1人で、そのようなウイルス学的なリバウンドが認められたという。米マサチューセッツ総合病院の感染症専門医であるMark Siedner氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に11月14日掲載された。 この研究では、新型コロナウイルス検査で陽性の判定を受けたCOVID-19患者127人を対象として、ウイルス学的リバウンドの発生率を、パクスロビドによる治療を受けた患者(72人、投与群)と受けていない患者(55人、非投与群)との間で比較した。新型コロナウイルスのウイルス学的リバウンドは、1)新型コロナウイルス検査で陰性の判定後に陽性の判定が出た場合、2)ウイルス量が前回の測定値から1.0 log10 copies/mL(1mL当たりのウイルスのコピー数が10個)以上増加し、4.0 log10 copies/mL(1mL当たりのウイルスのコピー数が10の4乗個)未満であったウイルス量が、検査で2回連続して4.0 log10 copies/mL以上になった場合、と定義された。 投与群には、非投与群に比べて平均年齢と新型コロナワクチン接種率が高く、免疫抑制状態にある人が多いという特徴が認められた。新型コロナウイルスのウイルス学的リバウンドは、投与群の20.8%、非投与群の1.8%で確認された(絶対差19.0%、95%信頼区間9.0〜29.0%、P=0.001)。多変量解析では、投与群のみウイルス学的リバウンドと有意に関連することが示された(調整オッズ比10.02、95%信頼区間1.13〜88.74、P=0.038)。また、ウイルス学的リバウンドの発生率は、パクスロビドによる治療開始時期が診断と同日(0日)の場合で29.3%、診断から1日後で16.7%、2日以上後で0%と、開始時期が早いほど高いことも判明した。さらに、リバウンドしなかった患者でのウイルス排出期間(中央値)は3日であったのに対し、リバウンドが生じた患者での排出期間は14日と長かった。 Siedner氏は、「われわれの研究から、パクスロビドを投与された人の20%以上でウイルス学的リバウンドという現象が認められ、この現象が予想よりもはるかに頻繁に生じていることが明らかになった。また、リバウンドが生じた人ではウイルスの排出期間も長かった。このことは、これらの人が、COVID-19から回復後もウイルスを伝播させる可能性のあることを示唆している」と述べている。 なお、これまでの臨床試験では、パクスロビドを投与された患者の中でウイルス学的リバウンドが生じたのは1〜2%であったことが報告されている。研究グループは、この数字の違いは、過去の臨床試験が2つの時点でしか患者を評価していないことに起因する可能性があるとの見方を示す。これに対して今回の研究では、新型コロナウイルス感染から治療を経てウイルス学的リバウンドが生じるまで、患者が注意深く観察された。論文の共著者である、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJonathan Li氏は、「われわれは、週に3回、時には数カ月にわたって患者をフォローアップし、自宅でのサンプル採取を行った。ウイルスRNAレベルとウイルス培養データの両方があることで、パクスロビドを使用した患者の経験をより包括的、かつ詳細にとらえることができた」と述べている。 ウイルス学的リバウンドのリスクがどの程度のものであれ、研究グループは、パクスロビドの有用性を支持している。Li氏は、「私にとって、パクスロビドがCOVID-19重症化リスクの高い患者に対する救命薬であることに変わりはない」と話す。同氏は、「この研究は重要な情報を提供するものではあるが、パクスロビドが入院や死亡の予防に優れた効果を発揮するという事実を変えるものではない。むしろ、パクスロビドを投与された患者に関する貴重な洞察を提供する結果であり、同薬の投与後の患者の転帰を予測するのに役立つ」と話している。

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第174回 2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXと人材確保が焦点に/厚労省

<先週の動き>1.2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXと人材確保が焦点に/厚労省2.1%の薬価引き下げで医療費抑制と処遇改善へ、製薬産業が犠牲に/厚労省3.健康保険証廃止、マイナ保険証への移行は予定通りの2024年秋か/政府4.特許切れの先発品を希望した患者の自己負担増、来年度から/厚労省5.急増する高齢者対策、2025年夏から介護保険利用料の2割負担を拡大へ/厚労省6.カテーテル治療後の死亡事例、さらに10例を追加調査へ/神戸徳洲会病院1.2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXと人材確保が焦点に/厚労省 厚生労働省は、12月8日に社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で「2024年度の診療報酬改定に関する基本方針案」を提示し、大筋で了承された。今回の改定の主な柱は、医療デジタルトランスフォーメーション(DX)、物価高騰を考慮した賃金上昇、人材確保、医師らの働き方改革であり、これらに取り組むとしている。改定の重点課題としては、人材確保と働き方改革の推進が挙げられ、医療従事者の賃上げを促す方向性が打ち出された。とくに「コメディカル」の賃金格差の解消と人材流出の防止を目指す。また、地域包括ケアシステムの推進や医療機能の分化・強化、連携の推進といった従来の取り組みも強化する。基本方針案では、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにデジタル化の遅延が明らかになったことを受け、マイナ保険証や電子カルテの活用による医療機能の強化を明記された。また、医療従事者の長時間労働といった厳しい勤務環境の改善も強調されている。医療部会では、医療従事者の処遇改善、医療DXの推進、高齢者の救急医療の充実などに関する意見が出されたほか、医療保険制度の持続可能性を向上させるために効率化・適正化も議論された。今後、この基本方針をもとに、来年度の当初予算案を閣僚間で最終調整する「大臣折衝」を経て、改定幅が年内に最終決定される。参考1)令和6年度診療報酬改定の基本方針(厚労省)2)診療報酬改定の基本方針案、大筋了承 社保審部会 医療DX、人材確保強化(産経新聞)3)24年度診療報酬改定の基本方針案を了承 社保審の2部会、重点課題は1つに(CB News)2. 1%の薬価引き下げで医療費抑制と処遇改善へ、製薬産業が犠牲に/厚労省厚生労働省は、2024年度の診療報酬改定において、医薬品の公定価格の「薬価」を市場取引価格に近付けるため、約1.0%程度の引き下げを検討している。この措置により、医療費の約4千億円が抑制され、国費1千億円程度の圧縮が見込まれている。さらに厚労省は医療従事者、とくに看護補助者らの賃上げを実施した医療機関に対して、報酬を加算する仕組みの導入を検討している。この賃上げの加算は、実績に応じて報酬を増やす仕組みであり、厚労省と財務省が対象職種や加算金額を協議している。診療報酬は、薬価部分と医師や医療従事者らの人件費に当たる「本体」部分から成り立っており、今後の本体部分の改定率が焦点となる。日本医師会は賃上げの実現に向けて増額を訴えているが、財務省は診療所の利益が多いとして引き下げを主張している。厚労省は、看護職員処遇改善評価料を超える幅広い職種の賃上げにつなげるための仕組みを中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会で検討する方針だが、具体的な処遇改善策は年明けに示される予定で、看護職員に限らず医療現場で働く全職種の賃上げが必要とされている。一方、わが国の製薬業界は、薬価の過度な抑圧により、構造的デフレ産業に陥るリスクが指摘されている。新薬開発の成功率が低く、とくにわが国の薬価制度では革新的な医薬品の価格が低く抑えられる傾向にあり、日本市場の魅力が失われたため、新薬の発売が米国や欧州市場よりも遅れる「ドラッグ・ラグ」や、まったく発売されない「ドラッグ・ロス」が問題となっている。今年4月、日本製薬工業協会(JPMA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)からなる日米欧製薬3団体は来年度の改定にあたって、薬価制度改革への提言を行い、患者の新薬へのアクセスを確保し、企業が次世代の治療法やワクチンに再投資できるようにするために、新薬を開発する企業のイノベーションを推進するような薬価制度への移行を求めていた。なお、今年の11月に開催された中医協の薬価専門部会では、ドラッグ・ロスに陥っている医薬品86品目のうち39品目が「わが国にはその病気に対する既存薬がない」と報告されていた。参考1)「薬価」1%引き下げを検討 診療報酬改定、賃上げで加算も(共同通信)2)薬価1%引き下げ検討 診療報酬、賃上げで加算も 6年度改定、厚労省(産経新聞)3)診療報酬の処遇改善策、年明けに具体案 中医協の分科会で枠組み検討へ(CB News)4)2024年度(令和6年度)薬価制度改革への提言(製薬協)5)「薬のないニッポン」 薬価抑圧が招いた危機(日経新聞)6)薬価下落、製薬業は「構造的デフレ」 制度見直し求め自民議連が提言(朝日新聞)3.健康保険証廃止、マイナ保険証への移行は予定通りの2024年秋か/政府政府は、現行の紙の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を明らかにしている。岸田 文雄首相が12日に開催予定の「マイナンバー情報総点検本部」で、予定通り2024年秋に廃止の方針を表明する見通しという報道があった。これに対して武見 敬三厚生労働大臣は、12月8日の記者会見で「決定した事実はない」と述べ、国民の不安を払拭する発言を行った。政府は、マイナンバーカードのトラブルを受けて総点検を行い、その結果を踏まえて最終判断を下す意向。政府関係者によると、マイナ保険証への移行には問題がないと判断されている。これまでデジタル庁の「マイナンバー情報総点検本部」による点検では、マイナ保険証や障害者手帳のひも付けに関する誤りが確認されたが、政府は再発防止策を整え、国民の理解を得る方針。来秋の保険証廃止後も、最長1年間は現行の保険証が利用でき、マイナ保険証を取得していない人には「資格確認書」が発行される予定。厚生労働省は「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて、マイナンバーカードの普及、さらに利活用推進を進めており、医療・介護の情報共有化に向けて「医療DXの推進に関する工程表」を公開している。医療・介護業界はさらに情報連携のためにIT投資を求められる見込み。参考1)医療DXについて(厚労省)2)医療DXの推進、マイナ保険証の利用及び電子処方箋の導入に関する状況について(同)3)健康保険証の廃止時期「方向性決定の事実ない」武見敬三厚労相(産経新聞)4)現行の健康保険証の廃止、予定通り来年秋…マイナ保険証への移行に問題なしと判断(読売新聞)5)保険証「来秋」廃止方針を維持 12日にも首相表明 政府(時事通信)4.特許切れの先発品を希望した患者の自己負担増、来年度から/厚労省厚生労働省は、12月8日に開かれた「社会保障審議会医療保険部会」で、2024年度中にも後発薬(ジェネリック医薬品)がある先発薬を希望した患者の窓口負担の金額を引き上げる方針を示した。具体的には、発売から5年以上経過した先発品を対象に、ジェネリック医薬品との価格差の一部を患者が全額自己負担する案が提案されている。たとえば、先発品が500円、ジェネリックが250円の場合、窓口負担が3割の患者では、現在150円を支払っているものが200円から250円に増える計算。厚労省は、後発薬との差額の4分の1(25%)を患者の負担に上乗せする案を中心に検討している。この方針により、国費で100~250億円の財政効果が見込まれ、創薬力強化や後発薬の安定供給策に活用される予定。また、医師が先発薬の処方を必要と判断した場合は対象外となる。病気によっては診療ガイドライン上で薬の変更が望ましくないものもあり、これらの状況には配慮されることになっている。この方針に対して、患者の追加負担に関するさまざまな意見が出されており、患者は負担増に敏感であるため、負担は広く薄くすることが望ましいとの声もある。また、薬局など現場での混乱を防ぐため、処方箋様式の見直しについても検討が進められている。参考1)第172回 社会保障審議会医療保険部会(厚労省)2)先発医薬品希望する患者 窓口負担引き上げの方針 厚労省(NHK)3)後発品のある先発薬利用、差額の一部自己負担 厚労省検討 来年度にも、25%程度(日経新聞)4)24年度予算編成作業本格化 長期収載品の選定療養 財政効果は「400億~1000億円」 自民党医療委(ミクスオンライン)5.急増する高齢者対策、2025年夏から介護保険利用料の2割負担を拡大へ/厚労省厚生労働省は、12月7日に「社会保障審議会介護保険部会」を開き、介護保険サービスの利用料について、2割負担の対象拡大を早ければ2025年8月から実施する方針を示した。現在、介護保険の利用者は1割負担が基本で、一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割負担となっている。政府が少子化対策の財源確保と社会保障制度の持続可能性を高めるために、負担割合の見直しを2024年度に実施する計画を立てていたが、システム改修や利用者への周知に時間が必要とされるため、実施時期が遅れることになった。厚労省では、2割負担の対象者を拡大するために、年収基準の引き下げなどを提案しているが、この提案に対して、介護サービスの利用控えや生活への影響を懸念する声が多く、審議会では慎重な判断を求める意見が出された。政府は、介護保険の制度改革は、保険制度を維持するために必要とされ、高齢者人口の増加と介護給付費の増大に対応するため不可欠であり、介護保険の1号被保険者(65歳以上)が支払う保険料の見直しや、介護医療院などの室料負担の変更も検討している。また、政府は、物価高によって生じている介護事業者の経営環境の悪化を踏まえ、介護報酬の引き上げと利用者負担の見直しを併せて議論を続け、来年度の介護報酬の改定幅を年末までに決める方針。参考1)介護保険利用料、2割負担拡大 来年度の導入を事実上断念 厚労省(朝日新聞)2)介護2割負担の範囲拡大、早ければ25年8月施行 年収基準引き下げで9類型提示、厚労省(CB News)3)介護2割負担拡大、年内決定へ 年収190万円以上で試算(日経新聞)4)第109回 社会保障審議会介護保険部会(厚労省)6.カテーテル治療後の死亡事例、さらに10例を追加調査へ/神戸徳洲会病院神戸徳洲会病院で、今年1月以降にカテーテル治療を受けた複数の患者が死亡した問題が今年の7月に発覚していたが、具体的な死亡事例の数は11件に上ることがわかった。一連の死亡事例は、循環器内科医によるカテーテル処置に関連しているとされ、神戸市保健所は今年8月に、病院の医療安全管理体制に問題があったとして行政指導を実施した。病院側は、これまで2件の死亡事例について国の医療事故調査制度に基づいて調査を進めていたが、新たに10件の死亡や合併症の事例が調査対象に追加された。病院のホームページによると、男性医師によるカテーテル処置150件のうち、11件が死亡例であったことを明らかにされた。現在、病院側は、死亡と処置の関連について外部の専門家を交えた検証を進めており、病院は当初の2例と新たな10例の結論は2024年3月末を目途に結論を出すとしている。カテーテル治療後の患者死亡を巡っては、今年の9月に被害者救済の弁護団が設立されており、民事訴訟など今後予想されている。参考1)【第2報】当院循環器内科におけるカテーテル治療・検査に関する経過報告について(神戸徳洲会病院)2)カテーテル手術で患者死亡、10件追加調査 神戸徳洲会病院(産経新聞)3)被害者支援へ弁護団を結成 神戸徳洲会病院の患者死亡(同)4)カテーテル治療後に複数死亡、神戸徳洲会病院が別の10例も調査 外部専門家ら、来年3月末をめどに結論(神戸新聞)

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ファイザーXBB.1.5対応コロナワクチン、流行中の各変異株に有効

 2023年9月に欧米諸国や日本で承認となったファイザーのオミクロン株XBB.1.5対応新型コロナワクチン(BNT162b2 XBB.1.5)の効果を検証するため、ドイツ・Hannover Medical SchoolのMetodi V Stankov氏らの研究チームは、ファイザーXBB.1.5対応コロナワクチン30μgを接種した医療従事者53人について、接種から8~10日後の免疫応答を解析した。その結果、すべてのファイザーXBB.1.5対応コロナワクチン接種者において抗スパイクIgG抗体が大幅に増加し、現在流行しているSARS-CoV-2の各系統に対する強力な中和反応が誘発されたことが示された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年11月20日号掲載の報告。ファイザーXBB.1.5対応ワクチン接種後に変異株の中和反応率が増加 本調査では、対象者の65人の医療従事者のうち、2023年9月にファイザーのオミクロン株XBB.1.5対応ワクチンを接種した53人について免疫応答をモニタリングし、接種から8~10日後を解析した。65人中43人(66%)が過去に4回以上のワクチン接種を受けており、19人(29%)がBA.4/5対応2価ワクチンの接種を受けていた。53人(82%)がSARS-CoV-2感染を経験していた。擬似ウイルス中和試験にて、SARS-CoV-2の8系統(起源株、B.1、BA.5、XBB.1.5、XBB.1.16、EG.5.1、XBB.2.3、BA.2.86)に対する中和反応を解析した。 ファイザーXBB.1.5対応コロナワクチンの効果を検証した主な結果は以下のとおり。・ファイザーXBB.1.5対応ワクチンの接種により、起源株へのIgG抗体は2~9倍、オミクロン株BA.1へのIgG抗体は3~6倍に有意に増加した(p<0.001)。・ファイザーXBB.1.5対応ワクチン接種後、受容体結合ドメインに結合するメモリーB細胞の総割合は、有意に増加した(平均頻度0.88%、p<0.0001)。全体として42.3%の増加がみられ、うち90.4%は交差反応性メモリーB細胞の増加によるものであった。・ファイザーXBB.1.5対応ワクチン接種前の中和反応率は、B.1で100%、BA.5で91%、XBB.1.5で55%、EG.5.1で43%、BA.2.86で77%であった。・ファイザーXBB.1.5対応ワクチン接種後、B.1の中和反応率は100%のままだったが、そのほかすべての変異株で中和反応率が増加した。とくに、XBB.1.5で44倍、XBB.1.16で32倍、EG.5.1で34倍、XBB.2.3で48倍、BA.2.86で17倍の増加を示した。・ファイザーXBB.1.5対応ワクチン接種前、IFN-γ陽性CD4T細胞およびCD8T細胞のスパイクタンパクに反応する頻度は比較的低かったが、接種後は、起源株およびXBB.1.5に対するIFN-γ陽性CD4T細胞の頻度が有意に増加した(p=0.026、p<0.0001)。XBB.1.5に反応するCD8T細胞でも有意な増加が認められた(p=0.0225)。TNF-αの有意な増加は認められなかった。・中和活性がワクチン接種後から次第に低下し、ウイルスが免疫逃避する可能性がある一方で、T細胞媒介の免疫反応はより持続的で強固だと考えられる。

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コロナ罹患後症状におけるワクチン有効性、3回接種で73%/BMJ

 感染前の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種と、罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC)の診断を受けるリスクの低下には強い関連性があることが、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLisa Lundberg-Morris氏らが、スウェーデン住民約59万例を対象に行った住民ベースコホート試験「Swedish Covid-19 Investigation for Future Insights-a Population Epidemiology Approach using Register Linkage:SCIFI-PEARLプロジェクト」の結果で示された。著者は「試験の結果は、PCCの集団的負荷を軽減するために、ワクチン接種の重要性を強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年11月22日号掲載の報告。ワクチンのPCC有効性、年齢、性別、合併症など補正して推定 COVID-19ワクチンの初回接種(2回)+ブースター接種の計3回の接種によるPCCへの有効性を調べる試験は、2020年12月~2022年2月にスウェーデンで最も大きな2地域(ストックホルム地域[県]、ヴェストラ イェータランド地域[県])で登録された18歳以上のCOVID-19患者58万9,722例を対象に行われた。 被験者について、初回感染から死亡、国外への移住、ワクチン接種、再感染、PCCの診断(ICD-10診断コードU09.9)のいずれかのイベントが発生するまで、またはコホート試験終了(2022年11月末)まで追跡した。感染前にCOVID-19ワクチン接種を1回以上受けた人は、ワクチン接種済みとみなした。 主要アウトカムは、PCCの臨床診断。PCCに対するワクチンの有効性は、年齢、性別、併存疾患(糖尿病、心血管疾患、呼吸器疾患、精神疾患)、2019年の医療サービス利用回数、社会経済的要因、感染時の優勢ウイルス変異で調整したCox回帰分析で推定した。ワクチン3回以上接種者のPCC有効性は73% COVID-19を発症して追跡期間中にPCCと診断されたのは、ワクチン接種者29万9,692例のうち1,201例(0.4%)だったのに対し、ワクチン未接種者29万30例では4,118例(1.4%)だった。 感染前のCOVID-19ワクチン1回以上接種者は、未接種者に比べ、PCC発症リスクが低かった(補正後ハザード比:0.42、95%信頼区間:0.38~0.46)。PCC発症予防に関するCOVID-19ワクチン有効性は58%だった。 感染前のワクチン接種者のうち、1回接種者は2万1,111例、2回接種者は20万5,650例、3回以上接種者は7万2,931例だった。PCCに対するワクチン有効性は、1回接種者21%、2回接種者59%、3回以上接種者73%だった。

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第190回 財務省調査に続き医療経済実態調査も診療所黒字の結果に、病院・診療所の「分断」をここまで広げてしまった張本人とは?

厚労省改定骨子案、「医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者」の賃上げの必要性を強調こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。厚生労働省は11月29日、2024年度診療報酬改定の基本方針の骨子案を社会保障審議会の医療部会と医療保険部会に示しました。両部会で出た意見を踏まえ、同省はまもなく年内にも基本方針案を提出する予定です。厚労省の骨子案では、24年度改定の基本的視点として次の4つが挙げられました。(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進(2)「ポスト2025」を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進と、医療DXを含む医療機能の分化・強化、連携の推進(3)安心・安全で質の高い医療の推進(4)効率化・適正化による医療保険制度の安定性・持続可能性の向上このうち、1)の「人材確保・働き方改革等の推進」が重点課題に位置付けられています。「医療分野では賃上げが他の産業に追い付いていない状況にある」として、「医療現場を支えている医療従事者の人材確保のための取組を進めることが急務」と指摘、「その際、特に医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者の賃金の平均は全産業平均を下回っており、また、このうち看護補助者については介護職員の平均よりも下回っていることに留意した対応が必要」としました。「医師、歯科医師、薬剤師及び看護師“以外”の医療従事者」の賃上げを特に強調した点は画期的だと言えます。世間では医療業界全体を高給と捉えがちですが、看護助手や放射線技師、理学療法士・作業療法士などの給与水準は決して高くはなく、それが人材不足にもつながっているからです。12月3日付の日本経済新聞朝刊は、「医療従事者の賃上げ促す」という記事で、厚労省と財務省が医師・看護師・薬剤師以外のコメディカルの賃上げに向けて調整に入ったと報じています。 医療経済実態調査においても「診療所が儲かっている」実態が明らかにというわけで、来年の診療報酬改定を巡っては、財務省と日本医師会をはじめとする医療関係団体とのバトルが日に日に激しさを増しています。その経緯は本連載の「第187回 診療報酬改定シリーズ本格化(前編)」、「第188回 同(後編)」でも詳しく書きました。11月24日には診療報酬の改定に合わせて2年に1度行われる医療経済実態調査の結果も公表され、さらに混迷の度合いが増しています。財務省の調査と同様、医療経済実態調査においても「診療所が儲かっている」実態が明らかになったためです。財務省調査では診療所の経常利益率2022年度8.8%で他産業を大きく上回る先に公表された財務省の数字をおさらいしておきましょう。11月1日の財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省が示したのは、全国38都道府県のおよそ2万2,000の医療法人における2020〜2022年度の経営状況を、財務局を活用して調査した結果です。病床を持たず診療所のみを運営する1万8,207の医療法人の平均の経常利益率は20年度3.0%、21年度7.4%、22年度8.8%と改善が目立っており、全産業3.4%、サービス産業3.1%を大きく上回る、としました。こうした実情を踏まえ、財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は、11月20日に2024年度の予算編成に向けた意見書(令和6年度予算の編成等に関する建議、通称「秋の建議」)をとりまとめ、鈴木 俊一財務相に提出しました。その中で診療報酬の改定については11月1日の主張と同様「本体マイナス改定」が適当だとし、とくに診療所に入る報酬単価を5.5%程度引き下げるよう求めました。医療経済実態調査では一般診療所の2022年度の利益率は8.3%の黒字一方、11月24日に公表された医療経済実態調査では、医療法人の一般診療所の2022年度の利益率は8.3%の黒字で、コロナ補助金を含めると9.7%の黒字でした(ちなみに個人の診療所の利益率は32.0%の黒字)。財務省が示した数字とほぼ同じ結果です。コロナ報酬特例やワクチン接種による収益が大きく影響したとみられています。かたや病院ですが、国公立を含む一般病院の2022年度の利益率は6.7%の赤字で、新型コロナ関連の補助金を含めてやっと1.4%の黒字でした。うち公立病院は19.9%の赤字でした。水道代、光熱費など物価の高騰が影響したとしています。2020年度についてもコロナ補助金を除くと6.9%の赤字となっていました。「収益が下がれば赤字施設の割合がさらに増え、地域の医療提供体制が維持できなくなる」と日医財務省の調査結果に対して、日本医師会の松本 吉郎会長は11月2日の記者会見で、「この3年間はコロナ禍の変動が顕著であり、とくにコロナ特例による上振れ分が含まれている。そもそもコロナ禍で一番落ち込みが厳しかった2020年をベースに比較すること自体がミスリードであり、儲かっているという印象を与える恣意的なものである」と反論しました。しかし、医療経済実態調査においても同様の結果が出てしまっては、政府も改定財源の配分について相応の考慮が必要になりそうです。なお、12月1日に開かれた中央社会保険医療協議会総会では、支払側と診療側が医療経済実態調査の結果に対する見解を示しています。m3.comなどの報道によれば、支払側(健康保険組合連合会理事の松本 真人氏)は「医療機関の経営は総じて堅調だ」と述べたのに対し、診療側(日本医師会常任理事の長島 公之氏)は「医療機関等はコロナ前と比較しても厳しい経営を強いられている。2024年度診療報酬改定が担う役割は非常に重要。さらに収益が下がることがあれば、赤字施設の割合がさらに増え、地域の医療提供体制が維持できなくなる。経営基盤が脆弱な診療所の倒産が相次ぐ恐れがある」と述べています。病院と診療所の利益率の違いこそが「分断」そのものでは?ところで、日本医師会の松本会長は、11月15日に四病院団体の幹部とともに合同記者会見に臨んだ際、「財務省による医療界を分断するような動きがある」と述べていますが、そもそも、現在の病院と診療所の利益率の大きな違いこそが「分断」そのものといえるのではないでしょうか。財政審分科会長代理の増田 寛也氏は、秋の建議公表後の11月20日の記者会見で「日本医師会と財務省の戦いだと矮小化して捉えられると本質を見誤る。足元の経営状況が良好な診療所の収益を守るのか、それとも勤労者の賃上げやそれに伴う生活を守るのかという大きな文脈の中で検討する必要がある」と語りました。診療報酬には国民が払った保険料と税金が入っています。診療報酬を上げるということは、そのまま国民に負担増を強いることでもあります。診療所院長の平均年俸は2,500〜3,000万円と言われていますが、国民に負担増を強いつつその年俸レベルを上げるというのはいかがなものでしょう。増田氏の指摘は正鵠を得たものと言えるでしょうか。病院を二の次に、中医協で診療所を最優先してきた日医診療所と病院の間になぜこのような「分断」が起きてしまっているのでしょうか。振り返ってみると、そもそも中医協の診療側委員に病院代表者が日医の推薦に関係なく入ることになったのが2007年と非常に遅かったことが多分に影響しているでしょう。今でこそ、日本医師会と病院団体は仲が良い関係と言われていますが、2007年以前は、中医協の診療側委員の病院代表者は日医の推薦がなければなれませんでした。つまり、それまでの中医協の診療側の意向は、日医(主として診療所経営者)の考えが最優先されていたのです。さらに言えば、そのもう一昔前は、公立・公的病院が会員病院に多かった日本病院会は日本医師会と仲が悪く、病院の診療報酬が割りを食っていた時代もありました。分断はそのころからじわりじわりと進み、今の利益率の大きな差に至っているわけです。医療関係団体は物価高騰と賃上げの動きを背景に、診療所、病院関係なく診療報酬の大幅引き上げを求めていますが、今こそ、長年の「分断」解消に向けて、診療所は下げ、病院は上げる、さらには医師・看護師・薬剤師以外のコメディカルを大幅に賃上げする、といった、“メリハリ”のついた改定が求められているのではないでしょうか。

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世界初のsa-mRNAコロナワクチンが国内承認/CSL・Meiji Seika

 CSL Seqirus社(オーストラリア、メルボルン)とMeiji Seika ファルマは、2023年11月28日に、自己増幅型メッセンジャーRNAワクチン(sa-mRNA、レプリコンワクチンとも呼ばれる)である「コスタイベ筋注用」(ARCT-154)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした成人の初回免疫および追加免疫における国内製造承認を取得した。CSL Seqirus社のファミリー企業のCSLベーリングが11月29日付のプレスリリースで発表した。本ワクチンは、世界で初めて承認を受けたsa-mRNAワクチンとなる。この次世代ワクチンは、日本ではMeiji Seika ファルマが商業化を行う。なお、今回承認を取得したのは新型コロナウイルスの従来株対応1価ワクチンで、現在の流行株とは異なるため供給されない。 標準的なmRNAワクチンは、免疫システムがCOVID-19を認識し、体内の細胞に特定のタンパク質を産生するよう指示し、免疫応答を刺激して、将来の感染を認識してこれと闘うための設計図を残すことによって感染症を予防するものだ。一方、本ワクチンで初めて用いられたsa-mRNAの特徴は、体内でmRNAのコピーを作ることにより、ワクチンに含まれるmRNAの相当量よりも多くのタンパク質を産生できることにある。この技術には、mRNAの量を大幅に抑えながら、細胞性免疫応答を増強して保護期間を延ばすことができる可能性があるという。 今回の承認は、ベトナムで被験者1万6千例を対象に実施した有効性試験やMeiji Seika ファルマが日本で実施した追加免疫試験を含め、ARCT-154を用いた複数の試験で有望な臨床データが得られたことに基づいている。18歳以上の被験者を対象に「コスタイベ筋注用」を評価した追加免疫試験では、既存のワクチンと比較して、sa-mRNAワクチンが起源株およびオミクロンBA.4/5変異株に対して強い免疫応答を起こすことが示された。また、「コスタイベ筋注用」では必要な用量は5μgで、既存のワクチンと比較して大幅に少なくなっている。 「コスタイベ筋注用」は、Arcturus Therapeutics社のワクチンプラットフォーム「LUNAR」を使用している。CSL Seqirus社は、インフルエンザおよびCOVID-19等の呼吸器ウイルス疾患に対する新規mRNAワクチンや、パンデミック対策の開発におけるArcturus Therapeutic社の独占的グローバルパートナー。 Meiji Seika ファルマとCSLはARCALIS, Inc.と協力し、福島県南相馬市の製造施設で、日本におけるsa-mRNAワクチンを一貫して製造できる体制を構築している。

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第一三共のXBB.1.5対応mRNAコロナワクチン、一変承認取得

 第一三共は11月28日付のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するオミクロン株XBB.1.5対応1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、追加免疫における製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。本ワクチンが特例臨時接種に使用されるワクチンとして位置付けられ次第、厚生労働省との供給合意に基づき、国産初のmRNAワクチンとして供給を開始し、2023年度中に140万回分を供給する予定。 厚労省が11月27日に公表した資料(一変承認前の情報)によると、本ワクチンは、既SARS-CoV-2ワクチンの初回免疫完了者(12歳以上)に対する、「追加免疫」として使用することができる。季節性インフルエンザワクチンの取扱いと同様に、冷蔵(2~8℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待される。外箱開封後は遮光して保存し、有効期間は7ヵ月となっている。 ダイチロナ筋注は、同社が開発した新規核酸送達技術を活用し、新型コロナウイルススパイク蛋白質の受容体結合領域(RBD)を標的としたCOVID-19に対するmRNAワクチンだ。本ワクチンの研究開発および生産体制整備は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施している。

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コロナワクチン、2024年度より65歳以上に年1回の定期接種へ/厚労省

 国内の新型コロナウイルスワクチン接種について、厚生労働省は11月22日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会と同分科会予防接種基本方針部会を開催し、2023年度末に「特例臨時接種」を終了し、2024年度以降は、65歳以上の高齢者を対象に「定期接種」として実施する方針を了承した。基礎疾患を有する60~64歳については重症化リスクも考慮し、重症化予防を目的とした接種を行う。65歳以上のコロナワクチン定期接種スケジュールは秋冬に毎年1回 2024年度以降の新型コロナワクチン接種については、個人の重症化予防により重症者を減らすことを目的とし、インフルエンザと同様の予防接種法のB類疾病に位置付けたうえで、法に基づく定期接種として65歳以上の高齢者等を対象に実施する。 65歳以上の高齢者を対象にした新型コロナワクチン定期接種のスケジュールは、秋冬に毎年1回となる。ワクチンに含むウイルス株は、流行の主流であるウイルスの状況やワクチンの有効性に関する科学的知見を踏まえて選択し、当面の間、毎年見直される。 なお、2024年度以降は、新型コロナワクチンはほかのワクチンと同様に一般流通が行われる見込みであり、65歳以上の定期接種の対象者以外であっても、任意接種として接種の機会を得ることができる。ワクチン価格は現時点で決まっていない。 本方針について分科会の委員らからは、特例臨時接種が終了し、自己負担が生じることについて、ワクチン価格がインフルエンザワクチンよりも高額になることが予想され、経済的負担を理由に接種できず、感染した際に重症化することを懸念する意見が上がった。接種を希望する者が安心して接種できるよう、国費等の支援による接種費用の負担軽減を訴えた。

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インフルエンザワクチン(2)ワクチンの種類【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q94

インフルエンザワクチン(2)ワクチンの種類Q94前回に続き、インフルエンザワクチンの話題をもう1つ本邦で認可されているインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンのみである。○か×か

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インフルエンザワクチン、鶏卵アレルギー患者は打っていい?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第13回

インフルエンザワクチン、鶏卵アレルギー患者は打っていい?講師国立病院機構 三重病院 長尾 みづほ 氏【今回の症例】3歳男児。重度の鶏卵アレルギーがあり、これまでインフルエンザワクチンを接種したことがない。今回、インフルエンザワクチンの接種について相談するために来院した。

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