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イラン産の新型コロナワクチン、有用性は?/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する不活化全ウイルス粒子ワクチンBIV1-CovIran(イラン・Shifa-Pharmed Industrial Group製)の2回接種は、有効率が症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して50.2%、重症化に対して70.5%、重篤化に対して83.1%であり、忍容性も良好で安全性への懸念はないことを、イラン・テヘラン医科大学のMinoo Mohraz氏らが多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果で報告した。BIV1-CovIranは、第I相および第II相試験において、安全で免疫原性のあるワクチン候補であることが示されていたが、症候性感染や重症化/重篤化あるいはCOVID-19による死亡に対する有効性は、これまで評価されていなかった。BMJ誌2023年9月21日号掲載の報告。2万例を対象に、有効性、安全性、免疫原性をプラセボと比較 研究グループは、イランの6都市(ブーシェフル、イスファハン、カラジ、マシュハド、シラーズおよびテヘラン)のワクチン接種センターにおいて、18~75歳の2万例をワクチン接種群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、5μg(0.5mL)を28日間隔で2回接種した。最初の接種は2021年5月16日(テヘラン)、最後の接種は2021年7月15日(イスファハン)であった。 主要アウトカムは、90日間の追跡調査期間におけるワクチンの有効性、安全性、探索的な免疫原性および試験期間中の変異株検出とした。有効率は症候性感染予防50.2%、重症化予防70.5%、重篤化予防83.1% 対象2万例のうち、ワクチン接種群は1万3,335例(66.7%)、プラセボ群は6,665例(33.3%)であり、平均年齢は38.3(標準偏差11.2)歳、女性が6,913例(34.6%)であった。 追跡調査期間(中央値83日)において、ワクチン接種群では症候性COVID-19が758例(5.9%)に認められ、144例(1.1%)が重症、7例(0.1%)が重篤であった。プラセボ群ではそれぞれ688例(10.7%)、221例(3.4%)、19例(0.3%)であった。 全体としてワクチンの有効率は、症候性COVID-19に対して50.2%(95%信頼区間[CI]:44.7~55.0)、重症COVID-19に対して70.5%(63.7~76.1)、重篤化に対して83.1%(61.2~93.5)であった。有効性解析対象集団において、プラセボ群で2例の死亡が報告されたが、ワクチン接種群で死亡の報告はなかった。 追跡調査中に有害事象が4万1,922件報告され、そのうち2万8,782件(68.7%)が副反応であった。副反応のうち1万9,363件(67.3%)がワクチン接種群でみられた。ほとんどの副反応は、軽度または中等度(Grade1または2)で自然軽快した。注射に関連した重篤な有害事象は確認されなかった。 SARS-CoV-2変異株陽性者は119例で、このうち106例(89.1%)がデルタ株陽性であった。

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第65回 男性へのHPVワクチンについに助成か

東京都がついに!Unsplashより使用ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて懐疑的な見解をいまだにSNSなどで耳にしますが、接種によって子宮頸がんの低減に効果的であることが徐々に認識されてきました。しかし、男性に対するHPVワクチン接種については「さすがにそれはいらんやろ」と思っている方が医療従事者でも数多く見受けられます。海外では男性のHPVワクチン接種率は高く、アメリカでは半数以上の男性が接種しています。HPVワクチンは、日本では9歳以上の女性のみが長らくその対象でしたが、2020年12月に4価HPVワクチンが9歳以上の男性へ適応となり、国内でも男性に対してHPVワクチンが接種できるようになっています。それでもまだまだ接種が少ない状況です。その足かせの1つに、全3回で5~6万円かかる費用的な問題もありました。東京都議会において、小池 百合子知事が「子宮頸がんの主たる原因となるHPVワクチンについて、女性だけでなく男性への接種が進むよう、行政への支援を検討する」という方針を示しました1)。いやー、これは歴史的な一歩です。男性に対するHPVワクチンのメリット男性へHPVワクチンを接種するメリットは、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんといったHPVが関連する悪性腫瘍のリスク低減につながること、尖圭コンジローマなどの性感染症の予防につながること、そして何より将来のパートナーの子宮頸がんのリスクを減らすことができることにあります。この中でも、中咽頭がんは軽視されがちな疾患で、HPV関連悪性腫瘍だけで見ると、子宮頸がんに匹敵する患者数となっています。失われる健康よりも、接種するメリットのほうが大きい疾患であることから、この流れがほかの自治体でも踏襲され、男性のHPVワクチンの助成が進めばよいなあと思っています。そのためには「子宮頸がんワクチン」という呼び方ではなく、「HPVワクチン」という形で啓発していく必要があるのですが、そのあたりの舵取りをうまくやらないと、なかなか接種率は上がらないかもしれません。参考文献・参考サイト1)小池知事 男性の「HPVワクチン」接種 費用補助も含め検討(NHK)

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ノーベル生理学・医学賞、mRNAワクチン開発のカリコ氏とワイスマン氏が受賞

 2023年のノーベル生理学・医学賞は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの開発を可能にしたヌクレオシド塩基修飾の発見に対して、カタリン・カリコ(Katalin Kariko)氏とドリュー・ワイスマン(Drew Weissman)氏に授与することを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のノーベル委員会が10月2日に発表した。カリコ氏とワイスマン氏の画期的な発見は、mRNAがヒトの免疫系にどのように相互作用するかという理解を根本的に変え、人類に対して最大の脅威の1つとなったCOVID-19パンデミックにおいて、前例のないワクチン開発に貢献した。授賞式は12月10日にストックホルム市庁舎にて開催される。 ノーベル委員会はプレスリリースにて、カリコ氏とワイスマン氏の業績を紹介している1)。以下に抜粋して紹介する。「mRNAワクチン」という有望なアイデア ヒトの細胞では、DNAにコードされた遺伝情報がmRNAに伝達され、これがタンパク質生産の鋳型として使われる。1980年代、細胞培養なしにmRNAを生産する効率的な方法が導入された。この決定的な一歩は、いくつかの分野における分子生物学的応用の発展を加速させた。mRNA技術をワクチンや治療に利用するアイデアも浮上したが、その前に障害が待ち構えていた。in vitroで転写されたmRNAは不安定で、送達が困難であると考えられていたため、mRNAを脂質ナノ粒子によってカプセル化する必要があった。さらに、in vitroで産生されたmRNAは炎症反応を引き起こした。そのため、臨床目的のmRNA技術開発に対する熱意は、当初は限られたものであった。 ハンガリー出身の生化学者であるカリコ氏は、このような障害にも挫けずに、mRNAを治療に利用する方法の開発に力を注いだ。同氏が米国・ペンシルベニア大学の助教授だった1990年代初頭、自身のプロジェクトの意義について研究資金提供者を説得するのが困難であったにもかかわらず、mRNAを治療薬として実用化するというビジョンに忠実であり続けた。ペンシルベニア大学の同僚であった免疫学者のワイスマン氏は、免疫監視とワクチン誘発免疫応答の活性化において重要な機能を持つ樹状細胞に興味を持っていた。新しいアイデアに刺激され共同研究が始まり、異なるタイプのRNAが免疫系とどのように相互作用するかに焦点を当てた。ブレークスルー カリコ氏とワイスマン氏は、樹状細胞がin vitroで転写されたmRNAを異物として認識し、活性化と炎症シグナル分子の放出につながることに気付いた。哺乳類細胞からのmRNAは同じ反応を起こさないため、in vitroで転写されたmRNAはなぜ異物として認識されるのか疑問に感じ、何らかの重要な特性が、異なるタイプのmRNAを区別しているに違いないと考えた。 RNAにはA、U、G、Cの4つの塩基があり、DNAのA、T、G、Cに対応している。カリコ氏とワイスマン氏は、哺乳類細胞のmRNAの塩基は頻繁に化学修飾されるが、in vitroで転写されたmRNAの塩基は化学修飾されないことを認めており、in vitroで転写されたRNAの塩基が変化していないことが、好ましくない炎症反応の説明になるのではないかと考えた。これを調べるため、研究チームは塩基に独自の化学修飾を施したさまざまな変異型mRNAを作製し、樹状細胞に投与した。結果は驚くべきもので、mRNAに塩基修飾を加えると、炎症反応はほとんど消失した。これは、細胞がどのようにしてさまざまな形のmRNAを認識し、それに反応するかという理解にパラダイム変化をもたらすものであった。カリコ氏とワイスマン氏は自らの発見がmRNAを治療に利用するうえで重大な意味を持つことを理解し、この画期的な結果は2005年に発表された2)。これはCOVID-19が流行する15年前であった。 カリコ氏とワイスマン氏が2008年3)と2010年4)に発表したさらなる研究で、塩基を修飾して作成したmRNAを送達すると、修飾していないmRNAに比べてタンパク質産生が著しく増加することを示した。この効果は、タンパク質産生を制御する酵素の活性化が抑制されたことによるものであった。カリコ氏とワイスマン氏は、塩基修飾が炎症反応を抑制し、タンパク質産生を増加させるという発見を通して、mRNAの臨床応用に至る重要な障害を取り除いた。mRNAワクチンの可能性 mRNA技術への関心が高まり始め、2010年にはいくつかの企業が開発に取り組んでいた。ジカウイルスや、SARS-CoV-2と関連が深いMERS-CoVに対するワクチンの開発が進められていた。COVID-19パンデミック発生後、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードする2つの塩基修飾mRNAワクチンが記録的なスピードで開発された。約95%の予防効果が報告され、両ワクチンとも2020年12月に承認された。 mRNAワクチンの驚くべき柔軟性と開発スピードは、この新たなプラットフォームをほかの感染症に対するワクチンにも利用する道をひらくものだ。将来的には、この技術は治療用タンパク質の送達や、ある種のがんの治療にも使用されるかもしれない。 SARS-CoV-2に対して、mRNAワクチンとは異なる方法論に基づくワクチンも急速に導入され、合わせて130億回以上のCOVID-19ワクチンが世界中で接種された。このワクチンによって何百万人もの命が救われ、さらに多くの人々の重症化を防ぐことができた。今年のノーベル賞受賞者たちは、mRNAにおける塩基修飾の重要性という根本的な発見を通じて、現代の最大の健康危機における変革的発展に大きく貢献した。 カタリン・カリコ氏は、1955年ハンガリーのソルノク生まれ。1982年にセゲド大学で博士号を取得後、1985年までセゲドにあるハンガリー科学アカデミーで博士研究員として勤務。その後渡米し、テンプル大学(フィラデルフィア)とUniformed Services University of the Health Sciences(USUHS)(ベセスダ)で博士研究員として勤務。1989年にペンシルベニア大学の助教授に任命され、2013年まで在籍。その後、BioNTech社副社長、後に上級副社長に就任。2021年よりセゲド大学教授、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部非常勤教授。 ドリュー・ワイスマン氏は1959年米国マサチューセッツ州レキシントン生まれ。1987年にボストン大学で医学博士号を取得。ハーバード大学医学部のベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで臨床研修を受け、米国国立衛生研究所(NIH)で博士研究員として研究。1997年、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部に研究グループを設立。The Roberts Family Professor(ワクチン研究)、ペンシルベニア大学RNAイノベーション研究所所長。

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英語で「気を付ける」は?【1分★医療英語】第100回

第100回 英語で「気を付ける」は?You may experience some mild side effects after getting vaccinated.(ワクチン接種後に軽い副反応があるかもしれません)You may experience some mild side effects after getting vaccinated.(ワクチン接種後に軽い副反応があるかもしれません)What symptoms should I watch out for?(どんな症状に気を付けるべきですか?)《例文1》Please watch out for your sodium intake.(塩分摂取量に気を付けてください)《例文2》Watch out for the slippery floor!(床が滑りやすいので気を付けて!)《解説》「気を付ける」「注意する」という一般的な表現は“watch out (for)”を使います。文字通り、「よく見て、観察する」というニュアンスです。“for”の後には人、モノ、事柄などが入り、さまざまな場面で使えます。“watch out!”(危ない! 注意して!)と、とっさに注意を促すときにも使います。また、ネガティブな内容だけでなく、“look for”と同じように、ポジティブな内容にも使えます。“She has been watching out for opportunities.”(彼女はチャンスを待ち望んでいます)といった表現です。医療現場で、患者さんに注意を促すことは多いと思いますので、そんな状況で使ってみてください。“Watch out for the situations!”講師紹介

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XBB.1.5対応コロナワクチン、新規剤形を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは9月29日付のプレスリリースにて、オミクロン株XBB.1.5系統対応新型コロナウイルス感染症(COVID-19)1価ワクチンの新規の剤形について、厚生労働省に承認申請したことを発表した。 今回申請した新規の剤形は以下のとおり。・12歳以上用:プレフィルドシリンジ製剤(希釈不要)・5~11歳用:1人用のバイアル製剤(希釈不要)・6ヵ月~4歳用:3人用のバイアル製剤(要希釈) また、12歳以上用の1人用バイアル製剤(希釈不要)については2023年9月1日に承認を取得している。 これらの製剤は2024年以降の接種に向けたものであり、2023年9月開始の予防接種法上の特例臨時接種において使用されることはない。

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第165回 新型コロナ後遺症、2ヵ月以上の後遺症に悩む成人の割合は1~2割/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ後遺症、2ヵ月以上の後遺症に悩む成人の割合は1~2割/厚労省2.コロナ禍でも診療所は増加の一方、産婦人科・小児科の標榜病院は減少/厚労省3.「幸齢社会実現会議」がスタート、認知症対策の強化を目指す/内閣府4.「マイナ保険証」利用率4ヵ月連続減少、窓口負担誤表示問題も浮上/厚労省5.せき止め・去痰薬の供給逼迫、医療機関に最小限の処方を求める/厚労省6.県立5病院で医師の違法残業続出、県が働き方改革のプロジェクトチームを設置/兵庫県1.新型コロナ後遺症、2ヵ月以上の後遺症に悩む成人の割合は1~2割/厚労省厚生労働省の研究班は新型コロナウイルスの後遺症に関する最新の調査結果を公表した。「COVID-19感染者の健康と回復に関するコホート研究」は東京都品川区、大阪府八尾市、北海道札幌市の住民を対象として実施されたもの。その結果、「何らかの罹患後症状を有した」と回答した割合は成人の方が小児より2~4倍高く、成人の約1~2割が2ヵ月以上の後遺症を経験していることが明らかとなった。とくに札幌市での後遺症経験率が最も高く23.4%となった。また、ワクチン接種者は非接種者に比べて、後遺症の発症率が約25~55%低いこともわかった。今後、研究班では、これらの結果について厚労省のウェブサイトに掲載し、診療の手引きに、今回の研究の知見、就業/就学との両立の観点を踏まえた診断書の見本などを盛り込む予定。また、米国の国立保健統計センターの調査によれば、新型コロナの後遺症を経験した米国成人は6.9%、子供は1.3%で、この数字は前回の調査と比較して低下している。その一方で、後遺症に悩む患者の数は依然として多く、米国では後遺症対策に約67億円の助成金を提供すると発表している。参考1)令和4年度 COVID-19感染者の健康と回復に関するコホートの主な結果(厚労省)2)新型コロナ19万人余調査 成人1~2割「後遺症」か 厚労省研究班(NHK)3)コロナ後遺症、目を向けて 5類移行、実態把握しづらく 世界で200超の症状(毎日新聞)4)コロナ後遺症、「成人の約7%が経験」 米推計(CNN)2.コロナ禍でも診療所は増加の一方、産婦人科・小児科の標榜病院は減少/厚労省厚生労働省は、令和4年医療施設(動態)調査・病院報告を発表し、2022年10月時点で、産婦人科や産科を標榜する全国の病院の数は1,271施設と32年連続で減少していることを明らかにした。このほか、小児科を標榜する一般病院も29年連続で減少し、2,485施設であった。全国の医療施設は前年比で697施設増の18万1,093施設となっており、一般病院の数は減少している一方で、診療所の増加が目立ち、この「乱立」の問題が改善されていないことが指摘されている。コロナの影響で医療提供体制の課題が浮き彫りになった中、施設やマンパワーの集約化が重要とされているが、診療所の増加は集約化の方針に反する動きとされている。有床診療所も減少が続き、2023年6月末には施設数が5,751施設にまで減少していることがわかっている。今後、人口減少と高齢者の増加とともに、産婦人科医や小児科医の確保や医療機関の再編など、地域にとって大きな課題となるとみられる。参考1)令和4年医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚労省)2)産婦人科・産科が最少更新 32年連続減、厚労省調査(東京新聞)3)病床数の多い高知県等では「多すぎる病床を埋めるために、在院日数を延伸」させていないか、検証が必要-厚労省(Gem Med)3.「幸齢社会実現会議」がスタート、認知症対策の強化を目指す/内閣府政府は9月27日、認知症対策の強化のための「認知症と向き合う『幸齢(こうれい)社会』実現会議」を首相官邸で開催した。会議には、認知症の当事者、家族、有識者が参加。政府はこの会議を通して「共生社会」の実現、治療薬の開発、社会環境の整備などの方針を議論し、年内に意見をまとめる方針。岸田文雄首相は、新たに承認されたアルツハイマー病の治療薬レカネマブ(商品名:レケンビ)を踏まえ、早期発見や治療のための医療体制構築を急ぐよう関係閣僚に指示。また、岸田首相は「安心して年を重ねることができる高齢社会作りを進める」との意向を強調した。厚生労働省のデータによれば、2025年には認知症患者は約700万人に達するとの予測があり、早急な対策が求められている。さらに、認知症の人やその家族の会の代表は、認知症を「自分事」として考える社会を求め、当事者や家族の実感を政策に反映させることの重要性を訴えた。同様に、日本認知症本人ワーキンググループの代表は、認知症の人たちが社会活動を続けられる環境を作ることの必要性を強調した。今後の認知症施策には、症状の進行を遅くする治療薬の開発、身寄りのない人のための環境整備、悩みや困りごとを共有する場の提供などが期待されている。参考1)認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議(首相官邸)2)岸田首相 アルツハイマー新薬承認を踏まえ 医療体制構築を指示(NHK)3)認知症対策で政府が「幸齢社会実現会議」 年内に意見とりまとめへ(朝日新聞)4.「マイナ保険証」利用率4ヵ月連続減少、窓口負担誤表示問題も浮上/厚労省厚生労働省は、9月29日に開催した社会保障審議会医療保険部会で、「マイナ保険証」の利用率が4ヵ月連続で減少し、8月時点で4.7%にとどまったことを明らかにした。健康保険証の廃止が2024年秋に迫る中、トラブルが続出しており、同省は危機感を募らせている。とくに、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に伴い、医療機関での窓口での医療費自己負担割合が誤表示される事例が全国で5,695件確認された。これらは、データ入力のミスやシステム上の問題が原因とされている。厚労省は、誤表示の再発防止のため、事務処理のマニュアルの見直しやシステムの改修を進めている。また、マイナ保険証の利用が進まない理由として、情報の紐付けの誤りやトラブル、利用メリットの認知不足などが関係しているとの認識が示された。参考1)オンライン資格確認等について(厚労省)2)「マイナ保険証」の利用率は5%弱 4カ月連続減少 厚労省は危機感(朝日新聞)3)マイナ保険証、利用率が下がり続けて5%割れ…「不安が払拭されていない証左」(東京新聞)4)“医療費負担割合の誤表示 全国で5700件近く確認” 厚生労働省(NHK)5.せき止め・去痰薬の供給逼迫、医療機関に最小限の処方を求める/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスならびにインフルエンザの感染拡大を受け、せき止め薬や痰を取り除く薬の供給が不足しているため、医療機関や薬局に対して、処方を最小限に抑え、鎮咳薬や去痰薬について過剰な発注を避けるよう9月29日に全国の自治体や医師会を通して通知を発出した。具体的には、患者への薬の処方日数を最も短くとどめること、そして、薬の入手が難しい場合には、系列店や地域間で連携し、過剰な発注を控えるよう指示されている。背景には、2020年末に始まった後発薬メーカーの不祥事や業務停止命令などが影響し、一部の薬の生産量が低下していることが挙げられる。現在、主なせき止め薬の生産量は、新型コロナ流行前と比較して約85%まで減少しており、去痰薬の供給も不安定な状態が続いている。厚労省は、状況の早急な改善は難しいとして、薬の供給不足に関する相談窓口を設けるとともに、引き続き適切な対応を求めることを強調している。参考1)鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(厚労省)2)せき止め薬足りない 処方「最小限に」 コロナで減産 厚労省が通知(朝日新聞)3)せき止めなど一部の薬 入手難しく“有効活用を” 厚労省が通知(NHK)4)せき止め薬・痰切り薬「必要最小限の処方を」…コロナやインフル感染拡大のたびに供給不足(読売新聞)6.県立5病院で医師の違法残業続出、県が働き方改革のプロジェクトチームを設置/兵庫県兵庫県立の5つの病院が医師に対して労使協定の上限を超える時間外労働をさせていた問題で、労働基準監督署から是正勧告を受けていることが明らかとなった。とくに、兵庫県災害医療センター(神戸市)では、2017年11月に勤務していた外科医師の残業時間が労使協定で定める月150時間を超える152時間だったことが確認された。さらに、神戸新聞社の情報公開請求により、西宮病院や尼崎総合医療センター、加古川医療センター、淡路医療センターなどの医師も労使協定を大幅に超える残業をしていたことが判明している。兵庫県では、甲南医療センターで26歳の専攻医が過労自殺した事件もあり、この問題を受け、斎藤元彦知事は医師の働き方改革に向けたプロジェクトチームを設置するよう指示。プロジェクトチームは時間外労働の要因を分析し、来年4月までに結果を取りまとめる予定である。参考1)県災害医療センター医師も違法残業 労基署の是正勧告は兵庫県立5病院に(神戸新聞)2)医師の働き方改革へ、兵庫県がプロジェクトチーム設置 県立5病院の違法残業、要因分析(同)3)県立病院医師の長時間労働 プロジェクトチームで改善策協議へ(NHK)

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新型コロナBA.2.86「ピロラ」、きわめて高い免疫回避能/東大医科研

 2023年9月時点、新型コロナウイルスの変異株は、オミクロン株XBB系統のEG.5.1が世界的に優勢となっている。それと並行して、XBB系統とは異なり、BA.2の子孫株のBA.2.86(通称:ピロラ)が8月中旬に世界の複数の地域で検出され、9月下旬時点で、主に南アフリカにおいて拡大し、英国やヨーロッパでも広がりつつある。ピロラは、BA.2と比較して、スパイクタンパク質に30ヵ所以上の変異が認められる。世界保健機構(WHO)は、ピロラを「監視下の変異株(VUM)」に指定した。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、ピロラの流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証し、その結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。ピロラは最も中和抗体に対する抵抗性を高めた変異株の1つ 本研究では、デンマークにおける2023年9月4日までのウイルスゲノム疫学調査情報が用いられた。同国ではEG.5.1を含む複数のXBB亜型が共存し、ピロラも複数検出されている。本疫学データを基に、ヒト集団内におけるピロラの実効再生産数を推定した。実効再生産数は、特定の状況下において、1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均で、本研究では変異株間の流行拡大能力の比較の指標として用いた。 未感染のワクチン接種者におけるウイルスの中和抗体回避能を評価するために、新型コロナワクチンを接種した人の血清(起源株対応1価ワクチン×3回/起源株対応1価ワクチン×4回/BA.1対応2価ワクチン追加接種/BA.4-5対応2価ワクチン追加接種)を用いて中和アッセイを行った。同じく、ブレークスルー感染者におけるウイルスの中和抗体回避能を評価するために、ワクチンを2回接種し2週間以上経過してXBBに感染した人の血清(XBBブレークスルー感染血清)を用いた。また、4種のモノクローナル抗体薬(ベブテロビマブ、ソトロビマブ、シルガビマブ、チキサゲビマブ)の効果を検証した。 ピロラの流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証した主な結果は以下のとおり。・ピロラの有効再生産数は、XBB.1.5よりも1.29倍高かった(95%ベイズ信頼区間[BCI]:1.17~1.47)。なお、利用可能なBA.2.86配列の数が少ないため、この推定にはかなりの不確実性があった。・ピロラの有効再生産数がEG.5.1の有効再生産数を上回る推定事後確率は0.901であり、今後ピロラが流行株の1つになる可能性が示された。・ピロラは、起源株、BA.1対応2価、BA.4-5対応2価のいずれのワクチン接種によって誘導される中和抗体に対してもきわめて強い抵抗性を示し、ワクチンの効果はほとんど認められなかった。抵抗性の強さはEG.5.1と同程度だった。・XBBブレークスルー感染血清を用いた中和アッセイでは、ピロラに対する50%中和力価は、EG.5.1に対するものよりも有意に(1.6倍)低かった。・ピロラの祖先株であるBA.2に対して中和活性が認められる4種類の抗体薬(ベブテロビマブ、ソトロビマブ、シルガビマブ、チキサゲビマブ)は、ピロラに対していずれも中和活性が認められなかった。 ピロラはこれまでの変異株の中で最も中和抗体に対する抵抗性を高めた変異株の1つであることが明らかになった。研究グループは本結果について、今後全世界に拡大していくことが懸念されており、さらに現状の抗体薬による感染防御の有効性も低いことが予想されるため、有効な感染対策を講じることが肝要だと述べている。

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フルチカゾン、コロナ軽~中等度の症状回復に効果なし/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者をフルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入薬で14日間治療しても、プラセボと比較して回復までの期間は短縮しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果で示された。米国・ミネソタ大学のDavid R. Boulware氏らが報告した。軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、症状消失までの期間短縮あるいは入院または死亡回避への吸入グルココルチコイドの有効性は不明であった。NEJM誌2023年9月21日号掲載の報告。持続的回復までの期間をフルチカゾンフランカルボン酸エステルvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた分散型臨床試験で、2021年6月11日に参加者の募集を開始し現在も継続中である。 研究グループは、2021年8月6日~2022年2月9日に米国の91施設において、登録前10日以内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認され、7日以内にCOVID-19の症状を2つ以上認めた30歳以上の外来患者を登録し、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群(1日1回200μg 14日間吸入)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、持続的回復までの期間とし、3日連続で症状がない場合の3日目と定義された。副次アウトカムは、28日目までの入院または死亡、28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合などであった。持続的回復までの期間に有意差なし 登録患者1,407例がフルチカゾンフランカルボン酸エステル群(715例)とプラセボ群(692例)に無作為化され、それぞれ656例および621例が解析対象集団となった。平均(±SD)年齢は47±12歳、39%が50歳以上で、女性63%、ワクチン2回以上接種65%、症状発現から試験薬投与までの期間の中央値は5日(四分位範囲[IQR]:4~7)であった。 持続的回復までの期間に、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群とプラセボ群の有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信用区間[CrI]:0.91~1.12、有効性[HRが>1と定義]の事後確率0.56)。 入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群で24例(3.7%)、プラセボ群で13例(2.1%)に認められた(HR:1.9、95%CrI:0.8~3.5)。各群で3例入院したが、死亡例はなかった。 有害事象の発現率は、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群2.0%(13/640例)、プラセボ群2.5%(16/605例)であり、両群とも低率であった。

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髄膜炎菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第16回

ワクチンで予防できる疾患髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、飛沫感染で伝播し、侵襲性感染症として、菌血症、髄膜炎を伴わない敗血症、髄膜炎、髄膜脳炎の4つの病型に分けられる。とくに重篤な侵襲性髄膜炎菌感染症は、髄液または血液などの無菌部位から検出され、2~10日間の潜伏期間の後、突発的に発症する。点状出血が眼球結膜や口腔粘膜、皮膚に認められ、出血斑が体幹や下肢に認められるという重篤な感染症を引き起こす。髄膜炎では、頭痛、発熱、痙攣、意識障害を来す。敗血症では発熱、悪寒、重症化すると汎発性血管内凝固症候群(DIC[ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群])に進展することがある。「髄膜炎菌性髄膜炎」は感染症法において5類感染症である。この菌は1887年にWeichselbaumによって、急性髄膜炎を発症した患者の髄液から初めて分離されている。菌は莢膜を有するグラム陰性の双球菌で、ヒト以外からは分離されず、自然界の条件では生存できない。患者のみならず、健常者の鼻咽頭からも分離されている(保菌者)。髄膜炎菌には、13以上の異なる種類(血清群)がある。このうち主にA群、B群、C群、Y群、W-135群の5種類が感染の原因となる。国内の2013年4月〜2017年10月までに届け出があった侵襲性髄膜炎菌感染症の160例の血清群では、Y群が1番多く、次にB群が多かった1)。わが国の侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)の好発年齢は、0~4歳の乳幼児と10代後半の思春期、40~70代前半に多く、男女比はほぼ3:2である。はっきりとした季節性は認めないが、11月~3月の報告数がやや多い。2013年以降の侵襲性髄膜炎菌感染症の致命率は15.0%(24/160)である1)。髄膜炎菌感染症は、人と人が近い距離で、長時間集まる場所で感染が広まりやすい。そのため、学生や職場の寮、クラブ活動での合宿など、狭い空間での共同生活で感染リスクが高まる。国内においては、高校の寮内での集団感染が報告されている。また、髄膜炎菌は、唾液を介して感染するため、食器類の共有、ペットボトルの回し飲み、キスなどで感染するリスクがある。海外では、アフリカ中部の「髄膜炎ベルト」と呼ばれる地域では髄膜炎菌感染症が流行し、米国、オーストラリア、英国、カナダなどの先進国でも散発的に患者が発生している。そのため、同地域へ渡航や留学する際は予防接種を求められることがある。ワクチンの概要髄膜炎菌による感染症は、診断に時間を要したり、急速に進展すると治療が遅れたりする可能性が高いため、ワクチンの接種によってあらかじめ予防しておくことが重要である。国内で承認されているワクチンは、不活化ワクチンである4価髄膜炎菌ワクチンのメンクアッドフィ(商品名)である(図)。髄膜炎菌の血清群A、C、W-135およびYに起因する侵襲性髄膜炎菌感染症を予防に用いる。画像を拡大する日常診療で役立つ接種ポイント髄膜炎菌に感染するリスクは、先述のように学生寮など共同生活を行っている場所や参加者の多い国際的な大会、会議など多くの人が集うイベント、イスラム教の聖地巡礼など、人が集うことである。国内の患者には海外渡航歴がないことも多く、国内でも感染する疾患であるとの認識が必要である。入学、入寮、合宿などの集団生活が始まる前の春休みや夏休みや髄膜炎菌が流行している地域への海外渡航・留学前は、とくに感染のリスクが高くなるため、そのような機会がある人には、疾患の説明とワクチンで予防できることを説明すると良い。●髄膜炎菌ワクチンをお勧めする人2)(1)髄膜炎流行地域へ渡航する人(2)学校の寮などで集団生活を送る人または送る予定の人(3)大勢の人の集まるところに行く予定の人(ユースのキャンプ、コンサート、スポーツ観戦など)(4)HIV、無脾症、補体機能不全などハイリスクな状態の人今後の課題・展望侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイクなどにより、米国、カナダ、オーストラリア、英国では、4価髄膜炎菌ワクチンが定期接種として導入されている。今後、人の移動と交流が活発になり、集団での活動が盛んになると、国内での感染者が増加することが予測される。上記の「髄膜炎菌ワクチンをお勧めする人」に当てはまる人は、感染の可能性があるため、ワクチンで予防していただきたい。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)1)国立感染症研究所 病原微生物検出情報 月報Vol.39,No.1(No.455)【2018年1月発行】侵襲性髄膜炎菌感染症 2013年4月~2017年10月2)こどもとおとなのワクチンサイト 髄膜炎菌ワクチン3)医薬品インタビューフォーム「メンクアッドフィ筋注」4)「メンクアッドフィ筋注」添付文書講師紹介

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第164回 新型コロナの医療体制、10月から大幅見直し/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナの医療体制、10月から大幅見直し/厚労省2.過労死ライン超える医師、労災未認定。兵庫4病院も違法残業で是正勧告/厚労省3.インフルエンザが異例の早期流行、ワクチン接種を推奨/厚労省4.電子カルテ情報共有サービス、健診結果や患者サマリーを統合して2024年度稼働へ/厚労省5.糖尿病の名称変更、新呼称「ダイアベティス」提案/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会6.国立がん研究センター元医長、医療機器をめぐる賄賂疑惑で逮捕/千葉1.新型コロナの医療体制、10月から大幅見直し/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスに関する複数の新たな方針を発表した。10月から専用病床の「病床確保料」が2割減少し、2024年3月までの適用が予定されている。また、新型コロナ治療薬の患者の自己負担割合について、9,000円を上限とすることが決定された。これまで全額公費であった治療薬について、一部自己負担が求められるようになる。入院医療費の補助は、最大2万円から最大1万円に減少する。医療機関の支援に関しても見直しが行われ、新型コロナの患者の受け入れのための「病床確保料」の支給が感染状況が一定の基準を超えるまで行われない方針となった。専門家は、医療機関の労力の大きさと、適切な支援策の必要性を指摘している。参考1)コロナ病床確保料、10月から2割減に 重点医療機関の補助区分を廃止、厚労省(CB news)2)新型コロナの患者支援 10月から見直し 治療薬の一部自己負担に(NHK)3)10月以降のコロナ感染症対応、「重点的・集中的な入院医療体制」確保目指し診療報酬特例や病床確保料などを縮減して継続(Gem Med)2.過労死ライン超える医師、労災未認定。兵庫4病院も違法残業で是正勧告/厚労省東京都内の大学病院に勤務していた50代の男性医師が、過労によるくも膜下出血で寝たきりの状態となり、労働基準監督署に労災申請を行ったが、宿日直許可を理由に宿直業務を労働時間から除外する扱いとされ、労災認定されなかったことが明らかとなった。男性は緩和医療科の唯一の臨床医として働いており、発症前の時間外労働は「過労死ライン」とされる月80時間を大きく超えていた。代理人弁護士の川人 博氏は、「宿直中に仕事をしていたことが事実であり、一切の労働時間を否定する事案は初めて。関係法令にも反している」と厳しく批判した。労基署は、宿直業務のうち、仮眠6時間を除く9時間15分を労働時間として認めたが、厚生労働省東京労働局の審査官は、宿直時間のすべてを労働時間から除外した。男性の妻は、「宿日直業務のすべてが『労働時間ではない』と否定されることは理解に苦しむ」と述べている。一方、兵庫県立の4病院が、労使協定に基づく上限を超える違法な時間外労働を医師にさせていたとして、労基署から是正勧告を受けたことも報じられた。勧告対象となった期間中に、月190時間の残業をしていた医師もいた。2024年度からは医師に時間外労働の規制が適用されるが、このような過労死の問題が続く中、改革の方向性やその取り組みが十分であるのかという疑問が浮上してきており、来年の4月以降も、過労死防止についてさらに議論が求められる。参考1)医療機関の宿日直許可申請に関する FAQ(全日本病院協会)2)医師の宿直を労働時間から除外、労災認められず 「ここまでやるか」(毎日新聞)3)病院で宿直中に死亡対応しても「労働時間ゼロ」 労災申請で国が判断(朝日新聞)4)医者の宿直、労働時間「ゼロ」扱いで労災認定されず 月100h超の残業でくも膜下出血発症…妻「理解に苦しむ」(弁護士ドットコムニュース)5)医師らに最大月190時間の違法残業させる 兵庫県立4病院 労基署が是正勧告(神戸新聞)3.インフルエンザが異例の早期流行、ワクチン接種を推奨/厚労省インフルエンザの感染拡大が全国で異例の早さで進行中であることが明らかとなった。厚生労働省のデータによれば、全国約5,000の医療機関からの報告で、1医療機関当たりの感染者数が前週の4.48人から7.03人へと急増した。とくに沖縄県では20.85人と最も多く、千葉、愛媛、佐賀と続く。首都圏でも東京都が11.37人と増加し、7都道府県で「注意報」の基準値10人を超えた。この背景には、14歳未満の若い世代での感染が目立ち、学級閉鎖や休校が増えている事情がある。一方、新型コロナウイルスの感染は前週比0.87倍と減少傾向にあるが、ピークを越えたかどうかは注視が必要との見解が出されている。厚労省は、インフルエンザについて「流行のピークが早まる可能性がある」とし、ワクチン接種の早期予約を呼びかけている。参考1)インフルエンザ、異例の早さで流行拡大…感染者数が前週比1・57倍(読売新聞)2)インフルエンザ、東京都内でも「流行注意報」 9月の発令は異例(朝日新聞)3)新型コロナとインフルエンザ 最新の感染状況(NHK)4.電子カルテ情報共有、健診結果や患者サマリーを統合して2024年度稼働へ/厚労省厚生労働省は、健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループを9月11日に開催し、電子カルテ情報の共有と活用に関して、新たな方針を明らかにした。2024年から稼働を開始する電子カルテ情報共有サービスでは、患者に「傷病名、検査、処方」の情報と「医師からの療養上の指導・計画」の情報をセット提供する予定となっており、患者自身がその情報を常時確認できるようにする見込み。また、厚労省側は電子カルテ情報共有サービスに新たに「健康診断結果報告書」を組み込み、特定の健診や高齢者健診、人間ドックの結果などの閲覧が可能になるよう提案を行なっており、今後のワーキンググループでの議論を通じて詳細が詰められる予定。今回新たに提案された「患者サマリー」には、外来受診の記録も含まれ、患者が自分の病態を理解しやすくなるよう整理される予定。このほか、救急医療現場で必要となる「医療情報」を全国で確認できる仕組みも検討されており、患者の緊急時の診療情報のアクセスに関するガイダンスやガイドラインの作成も提案されており、カルテ情報の共有化に向け、詳細を検討していく見込み。参考1)第18回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)2)電子カルテ情報共有サービスに健診結果の実装目指す サービス稼働時に 「患者サマリー」も、厚労省(CB news)3)患者に「傷病名、検査、処方」等情報と「医師からの療養上の指導・計画」情報をセット提供する新サービス―医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)5.糖尿病の名称変更、新呼称「ダイアベティス」提案/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病の新しい呼称として「ダイアベティス」とする提案を発表した。この提案は、糖尿病に関する誤解や偏見を解消するためのアドボカシー活動として去年より取り組みとして行ってきた一環。国内には現在約1,000万人の糖尿病患者が存在し、現行の病名には不正確な表現や不潔なイメージを持たれる問題があると指摘されてきた。この新しい呼称は、英語の病名に基づいており、学術的にも国際的にも受け入れられると期待されている。日本糖尿病協会が行ったアンケートによると、回答者の約9割が現行の病名に抵抗感や不快感を持っており、約8割が病名の変更を望んでいた。この新しい呼称「ダイアベティス」は、まず啓発活動などで使用され、将来的には正式な病名としての変更も検討されている。参考1)日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動(日本糖尿病協会)2)糖尿病の負のイメージ、払拭へ 新呼称案は「ダイアベティス」(朝日新聞)3)糖尿病の新たな呼称「ダイアベティス」とする案発表(NHK)6.国立がん研究センター元医長、医療機器をめぐる賄賂疑惑で逮捕/千葉国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の肝胆膵内科の元医長(47歳)が、医療機器の選定・使用に関連して賄賂を受け取ったとして警視庁に逮捕された。逮捕された医師は、同院で医長になって以降、手術で使用する「ステント」について、医療機器メーカー「ゼオンメディカル」社の製品を優先的に使用した見返りとして、2021年におよそ170万円の賄賂を受け取った疑い。また、ゼオン社の元社長、柳田 昇容疑者(67歳)も贈賄の疑いで逮捕された。国立がん研究センターは、この事件を受け、公式サイトを通じて謝罪。「誠に遺憾」とし、「厳正に対処する」との声明を発表した。警視庁は、メーカーが製品の安全性などを確認する市販後調査に協力する契約をこの医師と結び、ほかの医師の使用分も加算していた可能性があるとして、さらに詳しい実態を調べている。事件の背後に、医療機器メーカーと医師との不透明な取引が浮かび上っており、業界の信頼性が再び問われることとなる。参考1)当センターの元職員の逮捕について(国立がん研究センター)2)医療機器「1本使えば対価1万円」…選定や使用巡り170万円贈収賄容疑 がん研元医長と販売会社前社長逮捕(東京新聞)3)国立がん研究センター東病院元医長 収賄容疑で逮捕 警視庁(NHK)4)贈賄容疑のゼオンメディカル、ほかのがんセンター医師の機器使用分も元医長に「謝礼」(読売新聞)5)業者と癒着、後絶たず 高齢化で相次ぐ参入 競争激化が背景に(日経新聞)

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特定のワクチン接種でアルツハイマー病リスクが低下する可能性

 特定の成人用ワクチンには、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる効果があるようだ。帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、破傷風およびジフテリアの二種混合(Td)ワクチン、またはこれらに百日咳を加えた三種混合(Tdap)ワクチンを接種した人では、これらのワクチンを接種していない人と比べて、アルツハイマー病の発症リスクが25~30%低下していたことが、米テキサス大学健康科学センターのPaul Schulz氏らによる研究で明らかにされた。詳細は、「Journal of Alzheimer's Disease」に8月7日掲載された。 Schulz氏らは2022年に、インフルエンザワクチンを1回以上接種した成人では、同ワクチンを接種したことのない成人と比べてアルツハイマー病を発症するリスクが40%低下していたとする研究結果を報告していた。Schulz氏は、「今回の研究データから、その他にもいくつかの成人用ワクチンがアルツハイマー病発症リスクの低下に関連していることが明らかになった」と説明している。 今回の研究でSchulz氏らは、165万1,991人の患者の医療記録データを解析し、成人期の定期接種が推奨されている帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、Tdワクチン、Tdapワクチンを接種した人と未接種の人の間でのアルツハイマー病の発症率を比較した。患者は、2年間の振り返り期間には認知症がなく、8年間の追跡期間の開始時点で65歳以上だった。 その結果、追跡期間中にアルツハイマー病を発症した人の割合は、TdapまたはTd(以下、Tdap/Td)ワクチン接種者で7.2%(8,370人)、未接種者で10.2%(1万1,857人)であり、ワクチン接種者ではアルツハイマー病の発症リスクが30%低いことが示された(相対リスク0.70、95%信頼区間0.68〜0.72)。また、帯状疱疹ワクチンでは、ワクチン接種者の8.1%(1万6,106人)、未接種者の10.7%(2万1,273人)、肺炎球菌ワクチンでは、ワクチン接種者の7.92%(2万583人)、未接種者の10.9%(2万8,558人)が追跡期間中にアルツハイマー病を発症しており、ワクチン接種者では未接種者に比べてアルツハイマー病の発症リスクがそれぞれ25%(同0.75、0.73〜0.76)と27%(同0.73、0.71〜0.74)低下していた。 なお、研究グループによると、アルツハイマー病の新たな治療薬として注目されている3種類の抗アミロイド抗体を使用した場合、それら3剤がアルツハイマー病の進行を抑制させる効果は、それぞれ25%、27%、35%であるという。 Schulz氏は、「われわれや他の研究者らは、アルツハイマー病における脳細胞の機能低下をもたらすのは免疫システムであるとの仮説を提唱している。今回の研究結果は、ワクチン接種が免疫システムに、より全般的な影響を与え、アルツハイマー病の発症リスクを低下させることを示唆するものだ」とテキサス大学のニュースリリースで述べている。 論文の共著者で、米マサチューセッツ総合病院のAvram Bukhbinder氏は、「われわれは、ワクチン接種に関連したアルツハイマー病発症リスクの低下は、複数のメカニズムが組み合わさることでもたらされている可能性があるとの仮説を立てている」と話す。同氏は、「ワクチンは、免疫細胞によるアルツハイマー病に関わるタンパク質除去の効率を高めたり、それらのタンパク質に対する免疫反応を強化し、周囲の健康な脳細胞への『付随的損傷』を軽減したりすることで、その蓄積に対する免疫システムの反応を変化させる可能性がある」と説明。さらに、「当然ながら、これらのワクチンには帯状疱疹などの感染症に対する予防効果があるため、神経炎症の抑制効果も期待できる」と話している。 研究グループは、今回の研究により、成人用ワクチンの定期接種へのアクセスを確保することが患者にとっていかに重要であるかが明確に示されたと指摘している。

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第178回 コロナワクチン廃棄の件、政府が国民に伝えていないこと

報道する側にとって、データとは時に取り扱いが難しいものである。とくに、ある種の公表データの事実関係だけを淡々と伝えるのが良いのか、それとも解釈まで含めて伝えるほうが良いのかはケースバイケースであるが、まさにそう思う報道を目にしたばかりだ。それは今月20日から新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のオミクロン株XBB.1.5対応ワクチン接種の開始に伴い、廃棄される既存の新型コロナワクチンに関する読売新聞の報道である。数字だけを中心に事実関係だけを淡々と書くのは、それはそれで記事の手法としてはある種極めて真っ当なのだが、ことこの件に関してはもう少し解釈も伝えたほうが良いのではないかと考えている。とりわけ、この記事が引用掲載されたYahoo!ニュースのコメント欄やSNSで、かなりとんちんかんな指摘が散見されるのを目の当たりにし、よりその思いが強くなる。しかも、そうしたとんちんかんなコメントの中に、識者と言われる人たちも含まれているのを見ると、やや頭が痛い。少なくとも、見出しと記事本文で共に指摘を受けている「ワクチン1回当たりの購入単価の非公表」というのは、契約上の問題があるとはいえ、税金を投入し、大勢の国民に接種している以上、国としての説明責任を果たしているとは言えず、ただ廃棄見込み数量を示すのはやや誤解を招くのではないかと思う。まず、ファイザー製の武漢株対応1価ワクチンの廃棄数が約880万回という結果については、かなり上出来だったのではないかと思う。武漢株対応ワクチンについては、長らく打つ手がなかったパンデミックの抑え込みの目的がありながら、需要が読み切れず、全国民に2回接種しても余りある量を用意しなければならなかったという事情があるからだ。約880万回分は、大雑把に2回接種分ならば約440万人分、3回接種分ならば約293万人分であり、総人口の占める割合で言えばそれぞれ3.7%、2.4%である。もちろんこの数字には、これまでに有効期限を迎えて廃棄済みのものは含まれていないが、それを含めても10%前後ではないだろうか? 国単位で見れば、これ自体は過剰な廃棄とは言えないと個人的には考えている。一方、オミクロン株対応の2価ワクチンについて言えば、国が供給を受けたのはファイザー製が約1億2,510万回分、モデルナ製が約7,000万回分。こちらは1回接種であり、日本の総人口をやや超える回数となる。しかし、当時は重症化リスクのある人に対して武漢株対応1価ワクチンを応急的に3回目接種で使用したりなど、やや混乱状態にあり、これに加え1、2回目の接種率が思いのほか高かったこと、オミクロン株となってから急速に感染者が増加したことなどを考慮すれば、事前に接種率を読み切るのはやはり困難だったろう。その意味では日本の総人口を上回る供給量を確保しなければならなかったと考えるのが自然である。このうち廃棄見込みはファイザー製が約2,650万回分、モデルナ製が約5,150万回分と公表されている。前述の報道にもあるように供給量に対する廃棄量の割合は、ファイザー製が2割強、モデルナ製に至っては7割強となる。全般的に見れば、オミクロン株対応ワクチンの廃棄量が増えた原因は、度重なる追加接種やオミクロン株出現後のワクチンの感染・発症予防効果の低下で、新型コロナワクチンそのものへの飽きとも言うべき状況が生まれ、接種率が低下したことが大きな要因だろう。もっともファイザー製については、政府や厚生労働省にとっては想定内だったかもしれないが、モデルナ製については確かに廃棄割合が多過ぎる。この点はいくつかの理由が考えられる。モデルナ製ワクチンの廃棄割合が高い理由一つは副反応の問題である。1~2回目接種時からファイザー製よりモデルナ製のほうが副反応出現率は高いと報告され、とりわけ稀とは言え、若年者での心筋炎の副反応はモデルナ製のほうが明らかに頻度は高かった。このため一般人の間では1価ワクチンの段階からファイザー製に比べ、忌避されがちだった。加えて日本でのオミクロン株対応ワクチンの承認はやや“特殊”な経過を辿っている。日本では2022年9月12日に両社のオミクロン株BA.1対応ワクチンを承認したが、すでに当時は世界的に流行株の主流がBA.4/5に移行していた時期。米国食品医薬品局(FDA)は6月末時点で両社にBA.4/5対応ワクチンの製造を求める声明を発表しており、8月中には両社ともこの対応ワクチンの申請を行っていた。結局、アメリカに倣う形で両社とも2022年9月以降に、日本でもBA.4/5対応2価ワクチンの申請を行ったが、とりあえずBA.1対応2価ワクチンでの公費接種が9月20日に開始され、後に承認されたBA.4/5対応2価ワクチンに現場が切り替えていった。このためオミクロン株BA.1対応ワクチンについては廃棄予定ワクチンに一定程度含まれていたのではないかと思われる。また、アメリカではファイザーとモデルナは1日違いで承認申請を行ったが、日本ではモデルナがファイザーに半月遅れで申請を行っているため、これがさらにモデルナ製の廃棄割合の増加に拍車をかけたとみられる。その意味では、日本でのワクチン購入政策に批判的吟味を加えるならば、廃棄量そのものの多寡ではなく、なぜBA.4/5への切り替えが遅れたのか、アメリカでほぼ同時に申請していながら、日本ではなぜモデルナが半月遅れたか、そこに医薬品医療機器総合機構(PMDA)との齟齬がなかったかどうかを検証すべきだ。今回、オミクロン株XBB.1.5 対応1価ワクチンについて、厚労省はファイザー製2,000万回分、モデルナ製500万回分の追加購入で合意に至っており、すでに量的には慎重になっている。今後、この数字がどのくらいに収まっていくのか、これも注目点と言えるだろう。

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コロナブースター接種、インフルワクチン同時接種の影響は?

 新型コロナウイルス感染症ワクチンのブースター接種と季節性インフルエンザワクチンの同時接種の有効性を調査した前向きコホート研究の結果、コロナワクチン単独接種群と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種群では抗スパイクIgG抗体価は低い傾向にあったものの統計学的な有意差はなく、副反応リスクも同程度であったことを、イスラエル・Sheba Medical CenterのTal Gonen氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。 コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、単独で接種した場合と比較して有効性および安全性が劣らないという報告があることなどから現在は実施可能となっている。しかし、多くの報告はコロナワクチンの初回接種を評価したものであり、オミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチンのブースター接種でのデータは乏しい。そこで研究グループは、すでにコロナワクチンを接種している集団における反応原性および免疫原性を比較するために前向きコホート研究を行った。 対象は、Sheba Medical Center(イスラエルの大規模3次医療センター)に勤務する医療者で、2022-2023シーズン中のインフルエンザワクチン(アボット)とオミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチン(ファイザー/BioNTech)のどちらか、またはその両方を接種した。反応原性解析としてワクチン接種後の副反応の発現率(局所症状[疼痛、腫脹、発赤など]、全身症状[発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感など])とその持続期間、免疫原性解析として新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価を調べた。ワクチン接種は2022年9月に開始し、2023年1月までデータを収集した。 反応原性解析にはアンケートに回答した588人(コロナワクチン群85人[年齢中央値71歳、女性66%]、インフルワクチン群357人[55歳、79%]、同時接種群146人[61歳、55%])が含まれた。免疫原性解析には血清学的検査を受けた151人(コロナワクチン群74人[年齢中央値67歳、女性61%]、同時接種群77人[60歳、55%]が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種後の局所症状の発現率は、コロナワクチン群で49.4%(95%信頼区間[CI]:38.4~60.5)、インフルワクチン群で34.5%(29.5~39.6)、同時接種群で52.1%(43.6~60.4)であった。・全身症状は、コロナワクチン群で27.4%(95%CI:18.2~38.2)、インフルワクチン群で12.7%(9.5~16.7)、同時接種群で27.6%(20.5~35.6)に発現した。・コロナワクチン群と比較した場合の局所症状および全身症状発現のオッズ比は、インフルワクチン群はそれぞれ0.27(95%CI:0.15~0.47)および0.17(0.09~0.33)、同時接種群は1.02(0.57~1.82)および0.82(0.43~1.56)であった。・同時投与群の抗スパイクIgG抗体価は、コロナワクチン単独投与群の0.84(95%CI:0.69~1.04)倍と推定された。 これらの結果より、研究グループは「本研究の限界として、コロナに対する免疫原性のみを評価し、インフルエンザに対する免疫原性は評価しなかったことが挙げられる」としたうえで、「コロナワクチンの単独接種と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種は免疫反応の大幅な低下や有害事象の頻発とは関連しておらず、これらのワクチンの同時接種を支持するものである」とまとめた。

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乾癬の治療法を徹底解説!:日野皮フ科医院 院長 日野 亮介氏

このコンテンツでは、乾癬の治療法について解説していきます。日常診療のアップデートに、ぜひご活用ください。講師紹介多くの乾癬患者さんたちからは、「ずっと同じ薬ばっかりで良くならない」というお声を多く頂きます。乾癬の治療は塗り薬しかない、と思っておられる方も多いかもしれません。しかし、そうではありません。乾癬は治療に苦労する皮膚疾患でありますが、ここ10年ほどで大変多くの治療薬が出てきました。皮膚の症状は大半の方でコントロール可能になりました。今、患者さんの乾癬はどんな状態でしょうか?患者さんのライフスタイルに応じて、適切な治療方針を選ぶための参考にしていただけると幸いです。治療がうまくいかないとき、マンネリ化したときに、次の一手を考えるヒントになってくれると思っております。このページでは、乾癬について保険適用のある治療について解説しています。乾癬には尋常性乾癬、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬、滴状乾癬の5種類があります。薬によって適用が異なりますので、ご注意ください。1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬1-1.ステロイド外用薬ステロイド外用薬は皮膚疾患に幅広く使われていますが、もちろん乾癬にも有効です。今のところ、乾癬に一番多く使われているお薬です。多くの乾癬患者さんは、一度は塗ったことがあると思います。ステロイドは昔からある薬ですが、ここにも進歩があります。ステロイド外用薬の弱点は長期に使うと副作用が出てくる点なのですが、それを和らげるための手だてとしてシャンプーになっている薬が出ました。コムクロシャンプー(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)というもので、15分だけつける、という方法を用いて副作用を減らす工夫がなされています。また、シャンプーは薬を塗りにくい頭という場所の特性を生かした大変興味深い方法です。なお、ステロイドの飲み薬は乾癬には通常使用しません。長期的なステロイド外用薬の副作用を避けるためにも、ステロイド外用薬単体での長期的な治療は避ける必要があります。治療が長引いてきた場合は方法を見直しましょう。1-2.ビタミンD3外用薬乾癬患者さんの塗り薬で、一番大切なのはビタミンD3です。効果が出てくるまで時間がかかりますが、一度改善すると再発しにくいこと、長期間塗っても副作用が出にくいことが大切なポイントです。ただし、大量に塗ると血液中のカルシウムが増え過ぎて二日酔いのような症状(高カルシウム血症)が出る可能性がありますので、注意が必要です。皮膚の増殖を抑えるのが主な効き目ですが、IL-17という乾癬の皮膚症状に重要な役割を果たすタンパクを作りにくくすることにも役立ちます。1日2回塗ることが推奨されています。カルシポトリオール(商品名:ドボネックス):軟膏マキサカルシトール(商品名:オキサロール):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファハイ):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファ):軟膏、ローション、クリーム1-3.配合外用薬配合外用薬も、ここ10年の進歩の1つです。ステロイドとビタミンD3の2つを配合させた薬がデビューし、乾癬の治療に幅広く使われるようになりました。昔は、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を薬局で混ぜてもらって処方されることが多かったと思います。お薬の性質上、単純に混ぜるだけでは効果が落ちてしまいます。そのため、ステロイドとビタミンD3の両方を使いたい場合は、重ねて塗るか、両方とも特殊な製法で配合した塗り薬を使う必要があります。乾癬の塗り薬が効かない人は、まず混ぜた薬を使っていないか確認する必要があります。国内では、現在2種類の配合外用薬が使用可能です。カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(商品名:ドボベット):軟膏、ゲル、フォームゲル剤があるので頭皮の中に塗るのにも向いています。頭皮の中に塗る際は、意外にベタつくことに注意が必要です。また、フォーム剤もデビューしました。フォーム剤は塗りやすさから海外で多く使われているようです。上手に使わないと飛び散るので注意が必要です。マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(商品名:マーデュオックス):軟膏ページTOPへ2.経口薬2-1.アプレミラスト(商品名:オテズラ)PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素をブロックする薬です。頭痛、吐き気、下痢などの副作用が最初に出ることが多いので、お薬に体を慣らしていくためのスターターパックがあります。副作用は使っていくうちに慣れてくることが多いです。長期的に内服すると体重減少の副作用もあります。効果はゆっくり出てくるので、焦らず使用することが大切です。痒みや関節の痛みにも効果があります。注射薬のような劇的な効果ではないですが、症状が軽くなるので塗り薬を塗るのが面倒な方や小さなぶつぶつがたくさん出ている方には向いています。当院では小さなぶつぶつがたくさん出て塗りにくい方、頭のぶつぶつやかさぶたが治りにくい方、少し関節が痛い方、手足に分厚いかさぶたができて治りにくい方などに使っています。また、生物学的製剤の治療が終了した、もしくは何らかの理由で中断せざるを得なかった方にも使用できます。腎機能が低下している方は、半分の量で内服する必要があります。2-2.シクロスポリン(商品名:ネオーラル)乾癬が出てくるのに重要な働きをするT細胞の働きを抑える薬です。効果は比較的速やかで、量を多くすると生物学的製剤に近いくらいの効果を得ることもできます。ただし、血圧上昇などの副作用があることは注意が必要です。長期間内服すると、腎臓にダメージが起こります。海外のガイドラインでは1年程度の服用にとどめるように勧められています。これらの理由もあり、定期的な血液検査を必要としています。2-3.メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)リウマチではよく使われている薬ではありますが、乾癬でも最近保険適用になりました。リウマトレックスだけがジェネリックも含め乾癬に保険適用となっています。日本皮膚科学会の生物学的製剤使用承認施設でのみ乾癬に使用できます。妊娠計画の少なくとも3ヵ月前から男性、女性とも内服を中断しなければなりません。腎機能障害のある方には使用できません。副作用対策として葉酸製剤を内服することがあります。2-4.エトレチナート(商品名:チガソン)エトレチナートはビタミンA誘導体であり、免疫を落とさないことにより光線療法との併用が可能です。表皮細胞の異常増殖を抑えてくれることで効果を発揮します。唇が荒れる、手足の皮がむける、皮膚が薄くなるなどの副作用があります。催奇形性といって、お腹の赤ちゃんに奇形を起こす副作用が報告されています。そのため女性は服用中止後2年間、男性は半年間避妊することが必要になります。2-5.ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)乾癬性関節炎(関節症性乾癬)に適応があります。JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬という新しいメカニズムの治療薬です。もともと関節リウマチの治療薬として使用されていました。皮膚にも効果があります。15mg錠を1日1回内服します。帯状疱疹のリスクが高まることが知られていますので、この治療薬を検討されている方には事前に帯状疱疹ワクチンの接種を強くお勧めしています。深部静脈血栓症、肺塞栓症といった血栓のリスクが高まります。そのための注意が必要になります。また、生物学的製剤と同様に事前に結核の検査をする必要があります。2-6.デュークラバシチニブ(商品名:ソーティクツ)2022年11月デビューの内服薬です。既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。比較的副作用の少ない薬ですが、TYK2という分子をブロックするJAK阻害薬というジャンルに入っているため、日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設のみで投与可能となっています。成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。ページTOPへ3.光線療法治療の位置付けとしては、寛解導入、すなわち週2~3回程度の細かい間隔で照射し、ぶつぶつをできるだけ消失させるのを最初の目的としています。効果が出て皮膚症状が寛解したら間隔をのばしていく、ないしは中止します。ナローバンドUVBは発がん性が上昇するリスクは今のところ報告されていません。しかし、紫外線であるため、ダラダラと継続して無駄な照射をしないように気を付けることも大切です。ページTOPへ4.顆粒球吸着除去療法アダカラムという特殊な体外循環装置を使い、白血球の一部である、活性化した顆粒球を取り除く方法です。膿疱性乾癬に保険適用があります。薬剤の投与をしないため、妊娠中でも実施できます。ページTOPへ5.生物学的製剤乾癬の治療は、2010年に生物学的製剤が使えるようになってから劇的に変化しました。今までの治療で効果がなかった患者さんも、この薬の投与を開始してから皮膚や関節の症状と無縁の生活を送れるようになってきました。このように非常によく効く薬なのですが、大変高額です。そのため、高額療養費制度の理解や活用も大切になってきます。どんどん薬剤の開発が進み、10年で10種類以上のお薬が乾癬に対して使えるようになってきました。生物学的製剤が使えない方、注意が必要な方活動性の結核を含む重い感染症がある方は使用できませんので、事前にしっかりと検査を行い、必要な対処を行ってから投与する必要があります。また、悪性腫瘍のある方は投与禁忌ではありませんが、投与に当たっては(がん治療の)主治医としっかり相談・確認して慎重に進めなければなりません。現在、乾癬に使える生物学的製剤だけで、こんなにたくさんの種類があります(2023年9月現在)。画像を拡大する(各薬剤の電子添付文書を基にケアネット作成)5-1.TNF-α阻害薬TNF-αというタンパクをブロックする薬です。TNF-αは体のあちこちで作られ、乾癬を悪化させていきます。内臓脂肪からも作られます。メタボ気味の人は内臓脂肪からのTNF-αが増えてきます。すると、インスリン抵抗性といって血糖が上がりやすい状態になってしまうこともあります。これをブロックすることで、全身のさまざまな炎症を抑えてくれることも期待されています。また、関節炎にも効果が高いです。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の症状が進行すると骨びらんという骨へのダメージが来るのですが、TNF-α阻害薬は骨破壊を抑え、回復させてくれる効果が期待できます。インフリキシマブ(商品名:レミケード)唯一、これだけが点滴で投与する薬です。効果不十分時に増量ないし投与期間を短縮することが可能です。アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)2週間に1回皮下注射する薬です。効果不十分時に増量することが可能です。シリンジだけでなく、ペン型の注射器具があるため自己注射が簡単に行えます。セルトリズマブ ペゴル(商品名:シムジア)この薬剤は製法が特殊であり、胎盤をお薬が通過しにくいことがわかっています。そのため唯一、妊娠中でも使える生物学的製剤です。TNF-α阻害薬が使えない人うっ血性心不全のある方多発性硬化症などの脱髄性疾患をお持ちの方TNF-α阻害薬はどんな人に向いている?乾癬性関節炎(関節症性乾癬)で、とくに関節の症状が強い人メタボ気味の人炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の既往がある人体重が重い人インフリキシマブは体重1kg当たり5mgの量を投与します。体重がかなり重い方は十分な薬剤量を行きわたらせるためにインフリキシマブを選択することがあります。5-2.IL-23阻害薬IL-12/23 p40阻害薬のウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)が最初に出ました。IL-23はp40とp19というタンパクが合体しているものです。p40はIL-12という別のタンパクにも含まれている構造のため、IL-12/23 p40阻害薬は乾癬に関係のない細胞の働きも弱めてしまいます。そこで、ウステキヌマブ以降に出た次世代型のIL-23阻害薬は、p19をブロックすることでよりピンポイントな効き目を実現させています。すべての薬剤にある特長は、効果が持続しやすい、投与間隔が長いという点、副作用が少ないことです。ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)2011年から使用されている薬剤です。効果不十分な場合に増量できるのが特徴です。グセルクマブ(商品名:トレムフィア)掌蹠膿疱症にも適応があります。維持投与期は8週間に1回の投与を行います。リサンキズマブ(商品名:スキリージ)維持投与期は12週間に1回という長さが魅力です。チルドラキズマブ(商品名:イルミア)尋常性乾癬のみに適応があります。この薬剤も維持投与期は12週間に1回です。IL-23阻害薬はどんな人に向いている?治りにくい尋常性乾癬の方仕事が忙しくて通院が大変な方自分で注射を打つのが怖い方5-3.IL-17阻害薬IL-17とは乾癬を発症させるのに大変重要な役割を果たすタンパクです。IL-17にはIL-17AからFまでの6つのサブファミリーがあります。とくにIL-17ファミリーの中で乾癬の成り立ちに重要な役割を果たすタンパクが、IL-17AとIL-17Fです。治療効果が早く出ること、そして4種類の薬剤それぞれ非常に高い効果が得られることが特長です。セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブは維持投与期に自己注射をすることが可能です。セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)最初の1ヵ月に毎週注射をすることで効果を早く出せることが特長です。完全ヒト型抗体であり、中和抗体が出にくいのが特徴です。成人には300mgを投与しますが、状況により減量が可能です。生物学的製剤の中で唯一小児にも適応があります。通常、6歳以上の小児にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、体重50kg未満の患者には1回75mgを、体重50kg以上の患者には1回150mgを皮下投与します。なお、体重50kg以上の患者では、状態に応じて1回300mgを投与することができます。イキセキズマブ(商品名:トルツ)IL-17Aを阻害します。薬剤の特長として高い治療効果が早期から出てくることが多いです。効果がいまひとつだったり、安定しなかったりするとき、つまり使用開始後12週時点で効果不十分な場合には、投与期間を短縮することが可能です。乾癬の皮膚や関節症状が強い方、安定しない方に向いています。ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)この薬剤は、乾癬の治療薬ではIL-17の受容体であるIL-17RAをブロックする薬です。そのため、IL-17A、IL-17A/F、IL-17C、IL-17E、IL-17Fが受容体に結合するのをブロックすることができます。皮膚症状に対しては、かなり有効性が期待できる薬剤です。ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)IL-17A、IL-17Fをブロックできる薬剤です。尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)には適応がありません。今までの治療でうまくいかなかった人でも鋭い効果を出すことが期待されています。IL-17阻害薬が使えない方炎症性腸疾患のある方IL-17は腸管のバリア機能を保つために重要な役割を果たします。炎症性腸疾患のある方は、IL-17をブロックすることで悪化する可能性があります。真菌感染症のある方IL-17は真菌(カビ)の防御に大切な働きをします。そのため、これらの感染症がある方は、IL-17をブロックすることで悪化させてしまう可能性があります。IL-17阻害薬はどんな人に向いている?皮膚の症状がかなり重度な方自分で注射を打てる方素早い効果を期待している方5-4.IL-36受容体阻害薬スペソリマブ(商品名:スペビゴ)抗IL-36受容体抗体であるスペソリマブが主成分です。膿疱性乾癬における急性症状の改善、という適応で保険収載されました。投与開始1週後に有意な膿疱の減少、12週後には84.4%の患者で膿疱が消失という劇的な効果を呈することが知られています。ページTOPへまとめ乾癬の治療薬、治療法はたくさんあることがおわかりいただけたと思います。乾癬の治療に絶対の正解はありませんが、いろいろな治し方を知り、治療方針を決めていく参考になればと思っております。乾癬の治療薬は、まだたくさん開発されています。内服薬(RORγtインバースアゴニスト)、外用薬(アリル炭化水素受容体モジュレーター)などが治験中です。今後も多くの治療選択肢ができることで、乾癬患者さんたちの未来は明るくなっていくのではと期待しています。1)森田明理ほか. 乾癬の光線療法ガイドライン. 日皮会誌. 2016;126:1239-1262.2)佐伯秀久ほか. 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版). 日皮会誌. 2022;132:2271-2296.3)各薬剤の電子添付文書

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ワクチン2回以下、発熱・倦怠感が現れやすい―札幌市での調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種回数が多いほど感染時に全身症状が現れにくい一方で、咽頭痛や鼻汁などの上気道症状が現れやすいことなどが明らかになった。北海道大学医学研究院呼吸器内科の中久保祥氏らが、札幌市のCOVID-19療養判定システムなどのデータを解析した結果であり、詳細は「The Lancet Infectious Diseases」に6月30日掲載された。オミクロン株BA.2とBA.5の症状の特徴や、高齢者と非高齢者の違いも示されている。 この研究に用いられた札幌市のCOVID-19療養判定システムは2022年4月にスタートし、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性判定を受けた同市市民が登録して症状などを記録している。記録されている情報は、発症日、食事摂取状況、12種類(発熱、咳、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、頭痛、倦怠感、関節や筋肉の痛み、下痢、味覚・嗅覚異常など)の症状、年齢、性別、基礎疾患など。これらの情報と、感染者等情報把握・管理支援システム、ワクチン接種記録システムのデータを統合して解析が行われた。 解析対象は、2022年4月25日~9月25日にデータが記録されていた15万7,861人。主な特徴は、年齢が中央値33歳(四分位範囲17~47)、65歳以上6.9%、男性47.7%、BMI中央値21.1、BMI30以上4.3%、ワクチン未接種者38.0%、感染既往者3.7%など。また、オミクロンBA.2の感染者が21.8%、BA.5が78.2%を占めていた。重症化した(酸素投与と入院を要した)のは142人、30日以内の死亡は4人だった。 最も一般的な症状は咳(62.7%)であり、次いで咽頭痛(60.7%)、鼻汁(44.3%)、頭痛(42.1%)、38度以上の発熱(38.8%)、痰(36.1%)、関節や筋肉の痛み(29.1%)、食思不振(28.1%)などだった。BA.2流行期と比較してBA.5流行期には発熱や食思不振などの全身症状が多く、これはワクチン接種歴や基礎疾患などの影響を除外した解析でも同様だった。 ワクチン接種歴との関連では、3回以上接種した人は全身症状が現れにくく、反対に鼻汁や咽頭痛といった上気道症状が現れやすいことが分かった。またワクチン接種の影響は、接種日から日数が経過するに従い小さくなること、2回接種よりも3回接種の方がより強い影響が持続することも示された。 年齢との関連については、高齢者は若年者と比較して、全体的に症状が現れにくいものの、いったん発熱や倦怠感などの全身症状が出現すると、その後に重症化しやすくなる傾向が認められた。例えば、呼吸困難、発熱、食思不振、倦怠感という4症状がある場合、それらがない場合に比べて重症化のオッズ比は40.26(95%信頼区間14.60~110.98)に上った。一方で、咽頭痛や鼻汁が出現した高齢者は、その後の重症化リスクが低い傾向が見られた。例えば、咽頭痛と鼻汁の双方がある場合、その後の重症化のオッズ比は0.19(同0.08~0.45)だった。 著者らは、「これまでの研究から、SARS-CoV-2の武漢株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株では、感染時の症状が異なることが知られていたが、オミクロン株の亜株(BA.2とBA.5)の間でも、症状の特徴が異なることが明らかになった。また、ワクチン接種者では上気道症状が現れやすくなるという点も、今回初めて示された」と総括。さらに、「高齢者では上気道症状ではなく、全身症状が重症化の前兆と考えられるという知見は、今後の治療介入の判断に有用な情報となり得る」と付け加えている。

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コロナの症状、ワクチン回数による違い

新型コロナウイルス感染症の症状ワクチン接種2回以下と3回以上で現れやすい症状は?接種2回以下で現れやすい症状食事摂取量の低下38℃以上の発熱関節痛・筋肉痛強い倦怠感頭痛嗅覚・味覚障害下痢息苦しさ全身症状接種3回以上で現れやすい症状鼻汁咳咽頭痛痰上気道症状対象:2022年4月25日~9月25日(オミクロン株BA.2およびBA.5の流行期)に、札幌市で新型コロナウイルス感染症と診断され療養判定システムに登録された15万7,861人(年齢中央値33歳)方法:ワクチン接種回数2回以下と3回以上の群に分け、12の症状発現(発症5日以内)のオッズ比を計算Nakakubo S, et al. Lancet Infect Dis. 2023 Jun 30. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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血尿診断で内科医も知っておきたい4つのこと―血尿診断ガイドライン改訂

 『血尿診断ガイドライン』が10年ぶりに改訂された。改訂第3版となる本ガイドラインは、各専門医はもちろんのこと、一般内科医や研修医にもわかりやすいように原因疾患診断のための手順を詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示した。また、コロナ禍での作成ということもあり、最終章では「新型コロナワクチンと血尿」について触れている。今回、本ガイドライン改訂委員会の事務局を務めた小路 直氏(東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学)に、内科医が血尿時の問診や専門医への紹介を行ううえで注意すべきポイントなどを聞いた。成人の血尿診断アルゴリズム、尿沈渣検査がカギ 小路氏はまず、非糸球体性血尿の鑑別が進行速度の早い尿路上皮がんの早期発見につながることから、「一般内科医でも血尿を相談された場合などには尿沈渣検査をぜひ実施してほしい」と強調した。また、「非糸球体性血尿が検出されればその後は泌尿器科が対応し、糸球体性血尿が検出された場合には腎臓内科医が対応することになる。かかりつけ医受診の段階で、非糸球体性か糸球体性かを判断することで、患者が次の受診施設の選択で迷わずに済む」とも説明した。尿沈渣検査には遠心分離機が必要だが、それを所有するクリニックは多くはないため、外注に頼らざるを得ないのが現状だろう。もちろん、診療報酬点数(尿沈渣[鏡検法]27点)が算定できるため、尿路上皮がんの早期発見ならびに、紹介先の目星をつけるためにも「尿試験紙で血尿と判断された場合には、尿沈渣検査までは実施し、可能であれば尿細胞診や腹部超音波の実施もお願いしたい。ただし、尿細胞診は悪性度が強いがんでないと検出できないことには留意いただきたい」と話した。<内科医がおさえておきたい検査>・血液検査(血清クレアチニン異常高値)・尿沈渣検査   均一赤血球(非糸球体性血尿)   血尿に加え尿蛋白や細胞円柱/変形赤血球(糸球体性血尿)・尿細胞診 (悪性度の高い尿路上皮がんでないと検出ができないことに留意)・腹部超音波検査   尿路上皮がんや腎がんの検出感度は十分でないことに留意したうえで、適応を検討 なお、肉眼的血尿を呈する(または既往のある)患者で以下の場合には、腎臓内科への早期紹介が勧められるため、特筆すべき点としてフローチャートには赤字で示されている。・cola-like urine(コーラ色の褐色尿)・高度尿蛋白および/または進行性の腎機能低下・尿路感染症を疑う所見を欠く発熱・呼吸器症状や皮膚症状など他の全身症状・腎後性因子が否定される腎機能障害抗血小板薬や抗凝固薬服用が血尿を引き起こす可能性は低い 次に同氏は、よくある患者紹介の事例として“抗血小板薬や抗凝固薬服用患者が紹介されるケース”について言及した。本ガイドラインの「BQ12:抗血小板薬、抗凝固薬を服用している顕微鏡的血尿患者に対して通常の精査は必要か?」では、これらの薬剤を服用している患者において顕微鏡的血尿が認められた場合には、服用が原因であると判断することは困難であるため、これらの薬物を服用していない患者と同様に評価を行う必要があり、リスク分類に基づく精査を考慮する、と要約されている。これについて同氏は「抗血小板薬や抗凝固薬の“出血”という副作用が血尿を連想させやすいものの、種々の研究から鑑みても抗血栓薬に起因する血尿だと判断することは難しい。なお、この件は米国・泌尿器学会のガイドラインやリスク分類も参照している。ただし、専門医にとっては、膀胱鏡検査を実施する際のリスク因子になることはポイントで、念頭に置いておく必要がある」とコメントした。ご存じですか?ビタミンCによる偽陰性 「BQ3:血尿を診断するための採尿方法はどのようにすべきか?」において、採尿前の注意事項として(1)健診など尿試験紙でのスクリーニングではアスコルビン酸(ビタミンC)が存在すると偽陰性となることがあるため、アスコルビン酸を多く含む物の摂取を控える、と記載されている。これは健診時の常識のようだが、医療者によって注意事項として触れているか否かのバラつきがあるようだ。これについて、「結果が出た後に服用状況を確認する必要はないが、医療者としては尿試験紙に影響を及ぼす点は理解しておき、検査前の患者に対し、事前にビタミンCの服用で偽陰性になる点をインフォメーションしておく必要はあるだろう」とコメントした。コロナワクチン接種後の肉眼的血尿はIgA腎症のサインか このほか、専門医がおさえておくべきCQは以下のとおり。―――CQ1:蛋白尿を合併しない成人の顕微鏡的血尿患者において腎生検で同定される病態は何か?CQ2:顕微鏡的血尿の初回精査で異常を指摘されなかった患者に対して定期的経過観察は必要か?CQ3:成人の尿路上皮がん高リスク患者の診断においてCT urographyは推奨されるか?――― 最後に新型コロナワクチンと血尿との関係について、ワクチン接種後に腎炎が再発・再燃する症例が世界的に明らかになり、とくにIgA腎症の既往者では接種後の尿でコーラ色や紅茶色を認めるとの報告がある。これらの症例には1)全例がmRNAワクチン接種後、2)女性に多い、3)遷延する腎機能障害を認める症例はごく一部で大部分は一過性の尿所見増悪に留まる、という特徴があることが国内の調査1)や前向き観察研究からも明らかになってきている。しかし、ワクチン接種が腎症の発症を助長しているわけではなく、むしろ未診断の症例が顕在化した可能性が高いことから、同氏は泌尿器科医や一般内科医に向けて「ワクチン接種後に血尿を訴えた患者が来院した場合には、既往の確認のみならず、IgA腎症の存在を疑い、腎臓内科医への相談も視野に入れて診察に当たってほしい」と述べた。

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コロナ2価ワクチンの有効性持続期間

オミクロン株対応2価ワクチン、有効性の持続期間は感染に対する予防効果:接種2週間後で28.9%、15週間後で3.8%入院または死亡に対する予防効果:接種2週間後で67.4%、20週間後で38.4%100%90%感染に対する予防効果80%70%67.4%58.6%60%50%入院または死亡に対する予防効果47.5% 46.5%42.9%45.4%44.3%43.1%42.0%40.8%39.6%38.4%40%30%20%10%0%28.9% 28.8%26.8%22.7%18.3%13.7%15.7%0.0%0128.9%3.8%34567891011121314151617181920接種後の週数対象:米国の12歳以上の約630万人方法:2022年9月1日~2023年2月10日、オミクロン株対応2価ワクチンの接種者と非接種者※で、感染、入院または死亡に対する予防効果を評価※接種回数が1回少ない接種者(例:追加接種1回vs.初回シリーズのみ接種、追加接種2回vs.追加接種1回)出典:Lin DY, N Engl J Med. 2023;388:1818-1820.Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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新型コロナEG.5.1、伝播力と免疫回避能が増強/東大医科研

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、アジアや欧州、北米を中心に、オミクロン株EG.5系統(エリス)の感染が急増し、主流となっている。XBB系統(XBB.1.9.2)の子孫株であるEG.5系統は、世界保健機関(WHO)により、XBB.1.5、XBB.1.16と共に注目すべき変異株(VOI)に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、EG.5系統のEG.5.1のウイルス学的特徴を解析したところ、XBB.1.5に比べて1.2倍高い伝播力を示し、XBBの中和抗体に対して1.4倍高い抵抗性を示したことを明らかにした。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。 本研究では、オミクロン株EG.5.1のウイルス学的特性を、流行動態、感染性、免疫抵抗性などの観点から検証した。変異株間の流行拡大能力の比較の指標として、実効再生産数を用いた。実効再生産数とは、特定の状況下において1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均。また、ウイルスの感染性を評価するために、レンチウイルスベースの疑似ウイルスを製作して用いた。ウイルスの中和抗体回避能を調べるために、新型コロナワクチンを2回接種し2週間以上経過してXBBに感染した人の血清(XBB BTI血清)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・中国、韓国、米国、日本、シンガポール、カナダのウイルスゲノム疫学調査情報を基に、ヒト集団内におけるオミクロン株の実効再生産数を推定した。その結果、各国のデータで共通して、EG.5.1の実効再生産数は、XBB.1.5に比べて1.2倍程度高かった。・一方で、ウイルスの培養細胞における感染性を評価したところ、EG.5.1はXBB.1.5/1.9.2より有意に低い感染価を示した。※XBB.1.5とXBB.1.9.2のスパイクタンパク質は同一。・EG.5.1がXBB系統のブレークスルー感染によって誘導される中和抗体の抗ウイルス効果を回避するかどうかを調べるために、XBB BTI血清を用いて中和アッセイを行った。EG.5.1に対するXBB BTI血清の50%中和力価(NT50)は、親株のXBB.1.5/1.9.2に対するものより有意に(1.4倍)低く、免疫回避しやすいことが示された。・XBB.1.5/1.9.2、XBB.1.16、XBB.1.5/1.9.2+Q52Hに対するXBB BTI血清のNT50値は同等であった。しかし、XBB.1.5/1.9.2+F456Lに対するNT50値は、親株のXBB.1.5/1.9.2よりも有意に(1.9倍)低かった。このことから、EG.5.1のスパイクタンパク質に存在するF456L変異は免疫回避につながる重要な変異であることが示唆された。 研究チームは本結果に関するリリースにて、EG.5.1の流行拡大を回避するために有効な感染対策を講じることが肝要だと述べている。

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第62回 皆さんはXBB対応ワクチンを接種しますか?

XBB.1.5対応1価ワクチンの接種が開始Unsplashより使用9月20日からXBB.1.5対応1価ワクチンの接種が始まります。これまで年代別に接種条件が非常にわかりにくかったのですが、「初回接種」(5歳以上は1・2回目、4歳以下は1~3回目接種)を終えた人であれば、ほぼすべての年齢層がこのワクチン接種の対象です1)。マックスで接種している医療従事者は、おそらく次の接種は7回目になるかと思います(写真)。写真. 私の接種歴メディア関係の記事を書いていることもあって、周囲からよく「打ち過ぎじゃない?」と言われます。規定の回数で打ったほうが有効ということがわかっておりますし、そもそも「回数が多い=打ち過ぎ」というのは全然科学的でない気がします。新型コロナワクチンはよく「いたちごっこだ」と批判されますが、インフルエンザワクチンでさえも、流行株を年ごとに狙っているので、これもいたちごっこです。パンデミックは「いたちごっこ上等」で向き合わないといけません。医療従事者に対するワクチン私個人としては、病院職員がワクチン接種を受けることは、要は医療に対するモラルとかマナーの範疇だと捉えています。副反応で苦しい思いをしたので接種したくないというのであればやむを得ないと思いますが、自分自身が感染しても軽症で済むからという無責任な理由を宛てがうのは、ちょっとモヤモヤが残ります。ワクチン未接種で院内の患者さんにスプレッドするのは、避けたいところですね。私は国立病院機構に勤務しているのですが、機構全体のインフルエンザワクチンの接種率を調べた報告があります。2008年度で、87.3%という結果でした2)。インフルエンザワクチンに関するマインドはそこまで変わっていないので、このあたりに収れんするのかなと思っています。ただ、新型コロナワクチンについては、マックスで接種している医療従事者の割合はここまで高くないような印象です(調査したわけではありませんが…)。ケアネットのアンケート調査では、3回以上接種している医師は9割以上いるのですが、その後だんだんと接種しなくなっている人が増えている気がします。今後はおそらくインフルエンザワクチンと同じようなタイミングで年1回接種していくことになるでしょうが、XBB.1.5対応1価ワクチンは、同一ワクチンによるブースターというよりも変異ウイルス用に改変したアップデートワクチンなので、接種しておいたほうがよいと思います。私見です。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:新型コロナワクチン 令和5年秋開始接種についてのお知らせ(第2報)(2023年9月12日)※初回接種がまだの人も、9月20日以降はXBB.1.5対応ワクチンでの初回接種となります。2)国立病院機構臨床評価指標2009. 独立行政法人国立病院機構本部

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