サイト内検索|page:23

検索結果 合計:649件 表示位置:441 - 460

442.

患者・家族とのトラブル、どう解決すべき!? 2017年“モンスターペイシェント”事情

“モンスターペイシェント”という言葉が使われるようになって久しいですが、診療で対応した患者やその家族とのトラブルや事件は後を絶ちません。「モンスター化させないことが大切」とは言うものの、実際皆さんどのように対応していますか? 医師1,000人から聞いたその実態と、対応策とは…。結果概要2人に1人以上が暴言や暴力、“通常の域を超え、診察に著しい影響を及ぼすレベル”の要求やクレーム経験あり全体では55.1%の医師が「経験がある」と回答した。2013年にケアネットが行った同調査では67.1%であったのと比較してやや減少したものの、依然として2人に1人以上が何らかの経験があることがわかった。経験の頻度は、1年に1度以下が最も多かったが、「月に1度」以上の人があわせて11.5%にのぼり、わずかではあるが「週に2~3度以上」(1.3%)と答えた人も。暴言、ネットへの誹謗中傷の書き込み、なかには立件レベルの事案も内容としては、「スタッフの対応が気に食わないなどのクレーム」が最も多く(47.2%)、「自分を優先した診療ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く」(33.4%)、「治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張」(30.3%)、「不要な投薬・過剰な投薬を要求」(23.6%)などが続いた。とくに悪質なケースとしては、「『訴える』『殺す』『暴力団関係者を連れてくる』『マスコミに流す』などと脅迫」(18.3%)や、「自身やスタッフに暴力を振るう」(15.1%)などがあり、「看護師の首を跡が残るくらい絞めた」「病室で拳銃を発砲」といったエピソードも寄せられた。3割超で対応マニュアル・ガイドライン整備。現場では警察OBが活躍、悪質なケースでは110番通報も患者やその家族とトラブルになった場合の最終的な対応として、およそ3人に1人が「以後の診察を拒否した」と回答。以下、「他の医師と担当を交代」(18.7%)「転院させた」(17.8%)などが続いた。一方、「とくに対応はしなかった」人は33.4%にのぼり、全選択肢の中で最も多い回答だった。「なるべく話を妨げずに聞き、嵐が去るのを待つ」など、ひたすら傾聴するというコメントも少なくなかったが、「カルテに詳細を記録する」「ICレコーダーは必須」などの証拠保全策、「すぐに対応部署に介入してもらう」「警察への通報を躊躇してはいけない」などの回避策も挙がった。また、「警察OBを雇用している」との回答は14.0%で、対応を一任できる安心感があるとのコメントが多かった。このほか、ネットの掲示板への誹謗中傷の書き込みや、患者のストーカー化など、精神的負担を強いられるエピソードも複数見られた。設問詳細診療で関わった患者・家族とのトラブルが発端となった事件が後を絶ちません。医療現場では今、何が起こっているのでしょうか。そこで、患者・家族からの暴言や暴力、通常の域を超えた要求やクレームにまつわる経験や対応について、皆さんが日常診療の中で遭遇した実例や対応策を、ぜひお聞かせください。Q1.患者・家族から暴言・暴力、その他“通常の域を超えている、診察に著しく影響を及ぼすレベル”の行動や要求、クレームを受けたことがありますかあるないQ2.(Q1で「ある」と回答した方のみ)その頻度について最も近いものをお答え下さい週に2~3度以上週に1度半月に1度月に1度2~3ヵ月に1度半年に1度1年に1度それ以下Q3.(Q1で「ある」と回答した方のみ)その内容について当てはまるものをすべてお答え下さい(複数回答可)自分を優先した診察ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く「空いている」などの理由で、時間外・夜間診療を繰り返す診察を受けずに投薬のみ要求不要な投薬・過剰な投薬を要求治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張検査・診察・食事・内服等を拒否入院を強要退院を拒否治療費・入院費を払わない「スタッフの対応が気に食わない」などのクレーム事実と異なることを吹聴(SNSへの書き込みなども含む)土下座など度を越した謝罪を要求「訴える」「殺す」「暴力団関係者を連れてくる」「マスコミに流す」などと脅迫自身やスタッフに暴力を振るうQ4.(Q1で「ある」と回答した方のみ)上記の患者・家族への対応で、ご経験があるものをお答え下さい(複数回答可)他の医師と担当を交代転院させた以後の診察を拒否弁護士・司法書士等に相談警察に相談警察に通報、出動を要請した患者の対応に参って体調を崩した退職したとくに対応はしなかったQ5.院内で設けられている対応策について当てはまるものをお答え下さい(複数回答可)対応マニュアルやガイドラインがある対策システムがある防犯・対策セミナーや訓練を実施している院内で事例を共有している対応担当者を決めている担当部署を設置している警察OBを雇用している弁護士・司法書士に相談する体制をとっている「警察官立寄所」のステッカー・看板等を掲示しているICレコーダー・カメラ等を設置しているとくに対応策をとっていないQ6.コメントをお願いします(具体的なエピソードや解決方法、対策ノウハウ、院内体制など何でも結構です)コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)エピソード夫が暴力団関係者であると脅され、患者に有利になるよう診断書を書くことを強要された(50代、整形外科)。ほか、診断書の内容についてのクレーム・過度の要求2件。入院中に無断外出しアルコールを飲んだうえ、暴言をはかれた。スタッフの協力によって解決したが、そのために使った時間と体力、精神力は大きなものだった(30代、神経内科)。ほか、無断外出によるトラブル2件。酔っ払い相手で困った経験がある。殴られ、刑事事件とした(40代、消化器内科)。ほか、直接暴力を受けたというコメント2件。救急外来での対応に不満を持ち、いったん帰宅して包丁を持って来院した患者がおり、以来救急外来に監視カメラが設置された(50代、麻酔科)。ほか、救急・夜間診療でのトラブル5件。ミュンヒハウゼン症候群の患者への対応に苦慮。精神神経科医や臨床心理士のサポートが不足している病院が少なくないように感じる(50代、内科)。ほか、精神疾患や認知症患者への対応についてのコメント7件。生活保護受給者が、売買目的で不必要な薬を大量に要求してくることが毎日のようにある(50代、泌尿器科)。ほか、生活保護受給者に関するトラブル4件。治療が家族の見立て通りに進まないことへの苦言から、威嚇行為に発展したことがある(30代、膠原病・リウマチ科)。ほか、家族への対応でのトラブル7件。患者にストーカー状態でつきまとわれ、病棟まで追いかけてこられた(30代、皮膚科)。ほか、ストーカーまがいのトラブル1件。ネット上の口コミで辛辣な書き込みをされて困っている(50代、内科)。ほか、ネット上での誹謗中傷1件。対策<複数での対応>問題がありそうな患者に対応するときは医師以外に看護師、事務スタッフを横に置き、必ずメモを取り、カルテにも記載する(60代、産婦人科)。基本的には別のスタッフが対応したり、複数で対応することで鎮静化することが多い(50代、循環器内科)。ほか、複数での対応が有効というコメント46件。<情報共有・専任部署の設置>上位の責任者を決めておくことは必須(50代、神経内科)。ほか、上司・院長などへの報告システムが重要とのコメント12件。日ごろから問題に発展しそうな事例についての情報共有と対策検討が不可欠(40代、精神科)。ほか、情報共有が重要というコメント34件。専任の医療安全部看護師が対応する(40代、内科)。ほか、クレーム対応部署等専任者・部署の設置39件。医療安全カンファレンスを定期的に開催している(20代、臨床研修医)。ほか、研修会等の開催5件。院内放送で、職員が集まるシステムになっている(50代、糖尿病・代謝・内分泌内科)、ほか、院内放送の活用5件。<接遇・態度>理不尽な要求は対応できないとはっきり伝え、以後は警察等を通すように言う(50代、内科)。ほか、毅然とした態度が重要というコメント23件。できるだけ入院や手術治療前に対応する(40代、消化器外科)。ほか、早め早めの対応が重要というコメント7件。患者が興奮している時は、なるべく刺激するようなことを言わない(60代、リハビリテーション科)、なるべく話しを妨げずに聞いて落ち着くのを待つ(50代、皮膚科)。ほか、まずは傾聴・丁寧な姿勢で臨むというコメント30件。<記録・録音>目の前でICレコーダーで記録を取っていることを見せている(40代、腎臓内科)。ほか、ICレコーダーが有効とのコメント3件。言葉を選んで話し、カルテに詳細に記録を残す。カルテ開示を念頭に置き、冷静に記載する(50代、皮膚科)。ほか、カルテへの詳細記録が有効とのコメント6件。<マニュアル・ガイドライン>マニュアルを各部署に配布し、理不尽な要求には応じないよう徹底している(50代、消化器内科)。ほか、マニュアルについてのコメント21件。<弁護士・警察・警備会社>トラブルが起こりそうな場合は、弁護士に連絡する体制をとっている(40代、消化器内科)。ほか、弁護士への相談体制が重要とのコメント5件。病院が警察OBと契約し、暴力事例への不安が軽減された(50代、循環器内科)。ほか、警察OBの雇用・常駐が有効とのコメント15件。違法な行為があればすぐに通報する(40代、小児科)。ほか、躊躇せず、すばやい通報が重要とのコメント6件。警備会社の自動通報システムが有効(60代、精神科)。ほか、民間警備会社の活用4件。

443.

人工膝関節全置換術後の入院リハビリは必要か/JAMA

 人工膝関節全置換術(TKA)後に入院リハビリテーションを行っても、最初から在宅プログラムを開始した場合に比べ、26週後のモビリティは改善しないことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMark A Buhagiar氏らが実施したHIHO試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月14日号に掲載された。入院プログラムなどの形式化されたリハビリテーションプログラムは、TKAを受けた患者の至適な回復法と見なされることが多いが、外来や自宅でのプログラムとの比較は行われていないという。観察群を含む無作為化試験でモビリティを評価 HIHO試験は、TKAを受けた患者を対象に、10日間の入院リハビリテーションを行った後、監視型在宅ベースプログラムを開始するアプローチが、監視型在宅ベースプログラム単独と比較して、モビリティ、身体機能、QOLを改善するかを検証する非無作為化観察群を含む無作為化臨床試験である(HCF Research Foundationなどの助成による)。 2012年7月~2015年12月に、オーストラリア、シドニー市の2つの大規模な関節形成術専門施設でTKAを受けた骨関節炎患者165例が無作為割り付けの対象となり、入院+在宅群に81例、在宅単独群には84例が割り付けられた。観察群(自分の意思で監視型在宅ベースプログラムを選択した患者)には87例が含まれた。 主要評価項目は、術後26週時の6分間歩行試験に基づくモビリティとした。副次評価項目には、患者報告による疼痛、身体機能の尺度である膝関節疾患患者評価尺度(Oxford Knee Score:OKS、0~48点、点数が高いほど良好、臨床的に意義のある最小変化量:5点)、QOLの評価尺度であるEQ-5Dの視覚アナログスケール(EQ-5D VAS、0~100点、点数が高いほど良好、臨床的に意義のある最小変化量:23点)などが含まれた。6分間歩行試験:402.7 vs.403.7 vs.389.0m 無作為割り付けされた患者165例(ITT集団)のベースラインの平均年齢は66.9(SD 8.4)歳、女性が68%を占めた。平均BMIは34.7(SD 7)であった。主要評価項目のデータが得られたのは、入院+在宅群が79例(98%)、在宅単独群は80例(95%)だった。 26週時の6分間歩行試験は、入院+在宅群が402.7m、在宅単独群は403.7mであり、有意な差は認めなかった(平均差:-1.01、95%信頼区間[CI]:-25.56~23.55)。 26週時のOKSは、入院+在宅群が36.9点、在宅単独群は34.8点(平均差:2.06、95%CI:-0.59~4.71)、EQ-5D VASはそれぞれ78.8点、80.2点(平均差:-1.41、95%CI:-6.42~3.60)であり、いずれも有意な差はなかった。他の副次評価項目も、両群で同等だった。 また、観察群の6分間歩行距離は389.0mであり、在宅単独群との間に有意な差はなかった(平均差:-17.00、95%CI:-41.27~7.28)。副次評価項目も同様の結果であった。 合併症のデータにも、入院+在宅群と在宅単独群に差はなく、無作為割り付け患者で最も頻度の高い有害事象は麻酔下の処置を要する関節のこわばり(stiffness)であった(入院+在宅群:4.9%、在宅単独群:3.6%)。 事後解析では、患者評価による満足度が入院+在宅群で有意に高かった(p=0.004)が、職場復帰までの期間に有意な差はなかった(入院+在宅群:7.57週、在宅単独群:7.80週、平均差:-0.23、95%CI:-3.76~3.30)。 著者は、「優越性を示す知見が得られなかったため、費用対効果の解析は行わなかったが、最近のエビデンスでは、TKA後に入院リハビリテーションを行うと費用対効果は低下することが示唆されている」としている。

444.

VR(仮想現実)はパーキンソン病のリハビリに有効か【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第87回

VR(仮想現実)はパーキンソン病のリハビリに有効か 足成より使用 バーチャルリアリティ(VR)システムPlayStation VRが登場し、ハマっている医師も多いかもしれません。バイオハザード7が発売されたので、私もぜひとも欲しいところですが、子供が家にいるので、お父さんはなかなかゲームなんてできません。さて、医療にVRを利用しようという試みは、すでに複数の研究グループによって検証されていますが、とくに脳卒中や神経疾患のリハビリテーションの分野で盛んです。 Dockx K, et al.Virtual reality for rehabilitation in Parkinson's disease.Cochrane Database Syst Rev. 2016;12:CD010760.昨年末にコクランからパーキンソン病のリハビリテーションにVRが応用できるかどうかを検討したシステマティックレビューが発表されました。VRが歩行や平衡に有意な影響を与えるかどうかを調べたものです。そのほか、運動機能、ADL、QOL、認知機能など複数の項目を調べました。とはいっても、PlayStation VRのようなタイプのVRとは限りません。論文で「virtual reality」と記載されたランダム化比較試験すべてを対象にしています。8研究・263例のパーキンソン病の症例が対象となりました。いずれもサンプルサイズは小さい研究で、エビデンスの質も低いと言わざるを得ないものばかりでした。VRは主に理学療法と比較され、歩幅・重複歩長(step and stride length)に関して中等度の改善をもたらしました(標準化平均差[SMD]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.30~1.08[3試験106例])。また、歩行(gait)については理学療法と同様の効果をもたらしました(SMD:0.20、95%CI:-0.14~0.55[4試験129例])。平衡(SMD:0.34、95%CI:-0.04~0.71[5試験155例])、QOL(平均差:3.73単位、95%CI:-2.16~9.61[4試験106例])についても、VRは理学療法と同等の効果でした。VRを利用したことによる有害事象は報告されませんでした。エビデンスの質は低いものの、歩幅・重複歩長の改善が見込める可能性を残してはいます。ただ現時点で、通常の理学療法ではなくVRを用いなければならないほどの説得力はなさそうです。インデックスページへ戻る

445.

東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】

今回のキーワード発達心理学アイデンティティ親密性ミラクル・クエスチョンタイムマシン・クエスチョンリソーススケーリングみなさんは、「あの時ああだったら」「もっとこうしてれば」と思うことはありますか? このように「~たら」「~れば」と後悔することはよくありますよね。これが、「タラレバ」です。ただこの「タラレバ」は否定的な意味合いだけでしょうか? このプラス面はないでしょうか?それが、ブリーフセラピーです。今回は、ブリーフセラピーをテーマに、ドラマ「東京タラレバ娘」を取り上げます。主人公の倫子は30歳の売れない脚本家。高校時代からの親友でネイリストの香と居酒屋の看板娘の小雪といっしょに、 まめに女子会を開き、「~したら」「~すれば」と好き勝手に言い合いながら酒を飲むのが一番の楽しみです。3人とも長らく彼氏がいない中、今年こそはと奮起して、それぞれの幸せを手に入れようとするラブコメディーです。彼女たちは、恋愛に行き詰まっています。その原因を、発達心理学のライフステージをキーワードにして、解き明かします。そして、その解決策を、ブリーフセラピーに当てはめて探っていきましょう。倫子たちのライフステージは?倫子は脚本家として独立し、香はネイリストとして開業し、小雪は居酒屋の跡取りとして、3人ともそれぞれの自分の道を決めて、突き進んでいます。そんな3人は、小雪の居酒屋で「今日も朝まで女子会だー」「8年前の告白を受けてたら」「早坂さん(倫子の同僚)と付き合ってれば」と毎回騒いでいます。ある時、隣の席にたまたま座っていた常連の金髪男のKEYに「そうやって一生、女同士でタラレバつまみに酒飲んでろよ」と言われ、3人ともショックを受けてしまいます。その後、倫子は、一時期うまく行かず、脚本家の道をあきらめようとするシーン。たまたま倫子が携わった町おこしの短編ドラマの脚本で、町の良さを届けたいという町の人たちの熱心な思いに刺激を受け、「この町が私を見つけてくれた」「私はここにいる」「ここに来れば自分らしさが見えてくる」というセリフを役者に言わせます。倫子自身が自分らしさを再確認します。3人とも「自分とはどういう人か?」「自分が生きていくために何をするのか?」という自分らしさがはっきり分かっています。これは、発達心理学では、アイデンティティ(自己同一性)がすでに確立されていると言えます。また、3人は、このアイデンティティの維持のために頻繁に集まって、それぞれの仕事の愚痴や恋愛話で毎回盛り上がります。同性同年代の仲間(ギャング集団)の関係が10年以上続いています。ここで、人生をいくつかの段階に分けてみましょう。これをライフステージ(発達段階)と言います(グラフ1)。それぞれのステージにはそれぞれの発達課題があります。倫子たちは、立派に思春期の発達課題であるアイデンティティの確立をクリアしています。問題なのは、次の成人早期のライフステージの発達課題の前で足踏みをしていることです。つまり、倫子たちは30歳にもなっても、心は思春期のままだということです。それをKEYに言い当てられてしまったのでした。それでは、次のライフステージの発達課題とは何でしょうか?倫子たちの次の発達課題は?倫子がバーテンダーの奥田と交際するエピソード。奥田は、イケメンで高身長の上に人柄もよく相手としては申し分ないです。にもかかわらず、倫子は、だんだん疲れてきて、「やっぱ独りの方が楽」「自分のことだけ考えてたらいいじゃん」と香と小雪に打ち明けます。なぜなのでしょうか?ドラマでは、「独りに慣れすぎ(ていたから)」と香に突っ込まれています。もっと正確に言えば、倫子は、異性との心理的距離の縮め方が分からなくなっていたのです。そして、孤独を選ぼうとしています。これは、成人早期のライフステージに上がれない場合の状態です(グラフ1)。そうなると、さらにその先のライフステージに上がるのがますます難しくなっていきます。ここで分かることは、倫子の次の発達課題は、お互いの価値観(アイデンティティ)を尊重し合って、パートナーとの一体感を抱くこと、つまり親密さです。これは、「いい男と結婚して幸せになる」という倫子の本来の目的に当てはまります。ところが、倫子は、焦るあまりに、幸せになるという中身よりも、結婚するという形を優先させてしまっています。その心理によって、「嫌われたくない」という思いから、相手にどう見られるかということばかりに目が行き、受け身になり、緊張や不安ばかり募らせています。逆に、相手をどう見るか、どうして行きたいかという働きかけによる楽しさや心地良さがありません。親密さを実感していれば、自分がどう見られるかを気にすることが減り、むしろその方が楽になるということに倫子は気付いていません。一方、奥田も課題があります。奥田の好みのマニアックな映画を倫子が楽しんでいないことを奥田は察していません。倫子を脚本家に導いたアメリカのドラマ「セックスアンドザシティ」を「登場人物が恋愛しか考えてない話って、テーマが見えない」と否定します。そして、「倫子さんもこの(自分の好きなフランス映画の女優)髪型にしたらどう?」「絶対に似合うよ。この髪型にしてくれたらうれしいんだけどなあ」と言います。たまりかねた倫子から「もし私が映画好きじゃなくても、付き合おうって言ってくれてました?」と聞かれて、奥田は「もし嫌いでも、いっしょに見ているうちにきっと好きになってくれると思うから」と言い切ります。表面的には穏やかですが、実は一方的で、相手を自分好みの女性にしようとしている点で独りよがりです。奥田は、自分のアイデンティティへのこだわりが強すぎて、倫子のアイデンティティを受け入れようとはしていません。また、セカンド女になっている香や不倫女になっている小雪は、「違う人間同士、そのままでうまくいくわけじゃないんだから、寄せて行かないと」と倫子に説きます。彼女たちなりの親密さがうかがえますが、自分が相手にとって一番ではなく、フェアな関係ではない点で、その親密さには危うさがあります。実際に、香の彼氏の涼は、「(本命の)彼女も好きだけど、香も好き」と無邪気に言い、わがままです。小雪の不倫相手の丸井は、産後クライシスの妻との関係について「気が重いことばっかりでさ」「こうやって小雪さんと話したり、おいしいもの食べてる時の方がずっと楽しくてよっぽど幸せを感じちゃう」と小雪に漏らしています。彼は、困難を前にして親密さをいっしょに守るべき妻から小雪に一時的に逃げ込んで、甘えているだけです。さらに、倫子の同僚のADのマミにも課題があります。マミはもともと独特で奇抜なファッションセンスがあります。これがマミのアイデンティティです。ところが、付き合う男性の好みに合わせて、ファッションもヘアスタイルもあっさり変えています。一見いじらしいですが、よくよく考えると、相手のアイデンティティを優先させ、自分がありません。自分を押し殺しています。だからこそ、マミの交際は毎回ふわふわとして長続きしないのです。親密さを育むには、倫子のように我慢ばかりするのでもなく、奥田のように一方的になるのでもなく、香や小雪のようにアンフェアになるのでもなく、涼のようにわがままになるのでもなく、丸井のように単に甘えるのでもなく、麻美のように言いなりになるのでもないということです。婚活とは、単に理想の相手を見つけることだと思われがちです。しかし、実際はそれだけではなく、お互いがお互いの理想となれるように、この親密さを育むメンタリティも必要であるということです。倫子たちはどうすれば良いの?それでは、倫子たちはどうすれば良いのでしょうか?その答えを、倫子たちの女子会トークから探り、ブリーフセラピーという心理療法の手法に当てはめてみましょう。ブリーフセラピーとは、できるだけブリーフに(短い時間で)、困りごとを解決するセラピーです。セラピーがブリーフであることで、効率・効果やインパクトなどの満足度に重きを置くのが特徴です。これは、心療内科や精神科だけでなく、禁煙外来やリハビリテーションなどの他の科にも、そして、学校教育、新人研修、育児などにも、幅広く使うことができます。ここから、大きく3つのステップに分けて、考えてみましょう。(1)タラレバ話1つ目のステップは、タラレバ話をすることです。これは、すでに倫子たちが日々やっていることですが、注意点があります。それは、ネガティブな過去ではなく、ポジティブな未来に限ることです。そうすれば、タラレバ話は、後悔ではなく、現実的な野望としてプラスに働きます。そして、うまく行っている自分をイメージアップさせることです。そのための具体的なやり方が3つあります。a. 奇跡の自分を描く倫子たちが「今まで通り仕事がんばって、女磨きも抜かりなくしてたら、もっといい男現れるよ」「今よりダイエットしてきれいになったら」「もっともっといい男が現れる」などとも話しているシーンが参考になります。1つ目は、うまく行かない自分ではなく、うまく行く自分、そしてあえて奇跡の自分を具体的に思い描くことです。これは、ブリーフセラピーのミラクル・クエスチョンに当てはまります。例えば、「もしも今晩、眠っている間に奇跡が起きたら。その奇跡とは、いい男ともう付き合っていること。そしたら、明日の朝に目覚めてから、まずどんな違いに気付く?」「どんな1日になる?」などのようにです。すると、倫子はこう考えるでしょう。「朝、目が覚めると、もう起きてる彼氏が微笑んでる」「鏡に映る自分は生き生きしている」「朝ご飯をおいしくいっしょに食べる」「休日に公園に遊びにいってはしゃいでいる」「いっしょに好きなお笑い番組を見る」などなどわくわくすることばかりです。このように、想像をすることは、それ自体で、その気を高めています。これは、想像力とやる気に関係する脳内の物質(ドパミン)が活性化するからです。受け身ではなく、自分から何かしようとする積極的な心のあり方を引き出します。それが次の行動のエネルギーになっていきます。b. うまく行っている未来の自分を見る奥田と別れた倫子は「10年後の私の声が聞こえる気がする」「彼を追いかけて、あの手をつかんで。じゃないと、10年後も独りで寂しくて後悔することになるって」と言います。香から「(奥田さんは傷つけたけど)他は誰にも迷惑をかけてないんだからさ」と言われて、倫子は「迷惑かけてるかも。未来の私に」「ごめ~ん!未来の私!」と叫び、沈んでいきます。これは、うまく行っていない未来の自分を想像していますので、避けた方が良いです。2つ目は、うまく行っていない未来ではなく、うまく行っている未来の自分を具体的に見ることです。これは、ミラクル・クエスチョンの変法であるタイムマシン・クエスチョンに当てはまります。ミラクル・クエスチョンとの違いは、いつの未来かという時間の設定ができる点です。3か月後でも良いですし、10年後でも良いです。例えば、「もしもタイムマシンに乗って、2020年(3年後)の東京オリンピックの時の自分を見に行ったら。自分はどんな夫と子どもと過ごしている?」などのにようにです。すると、倫子はこう考えるでしょう。「朝、目が覚めた自分の隣りには夫と子どもがまだ眠っている」「作った朝ご飯をおいしく食べてくれる」「午前中に脚本の仕事がはかどる」「午後に自分の子どもと香と小雪と彼女たちの子どもたちといっしょにオリンピックの観戦をして盛り上がる」などなどわくわくすることばかりです。このように、うまく行かないことに目を向けて、負のスパイラルに陥るのなら、徹底的にうまく行くことに目を向けることで、その気を高めることができます。c. うまく行っている未来の自分と話す早坂さん(倫子の同僚)に未練を残す倫子は「もしタイムマシンがあったら」「あの日に戻って22歳の私に伝えたい」と言います。そして、想像上の22歳の自分に向かって「私は8年後の未来から来たあなた・・・このバカタレ小娘が!」と自分をぶん殴るシーンがあります。倫子は、過去の自分と話をしています。3つ目は、うまく行かなかった過去の自分ではなく、うまく行っている未来の自分と話をすることです。これは、タイムマシン・クエスチョンとマインドフルネス(認知行動療法)の併用に当てはまります。例えば、「2020年の倫子さん、どうしたらあなたのようになれる?」と尋ねることです。すると、今度は2020年の倫子になりきって、「2017年の倫子よ、まずは・・・」と前向きな話が膨らんでいくでしょう。このように、自分自身から距離を置いて、自分をポジティブに見つめ直すことができます。これは、ちょうどドラマでたびたび登場する倫子の幻覚のタラとレバとの会話にも似ています。タラとレバは、「おまえは大馬鹿者だ」「いい加減に目を覚ませ!」などと毎回ののしり、倫子を追い込んでいますが、彼らはもう1人(2人?)の倫子の心の叫びと言っても良いでしょう。このように、誰かからの説教などで言われたことではなく、自分で思い付いたことは、受け入れやすく、その気を高めることができます。これは、スポーツ選手のいわゆる「イメージ・トレーニング」に通じるものがあります。(2)フォロー倫子たちは「大丈夫だよ」と慰め合います。そして、お互いの良いところを励まし合っています。幻覚のタラから「仕事がうまく行けば恋愛もうまく行くタラ」と言われて、倫子は元気を取り戻しています。2つ目のステップは、フォローすることです。ここでの注意点は、付き合う相手の悪さや自分の弱みではなく、自分の強みや周りで使えるものです。そうすれば、フォロー話は、男の悪口や傷のなめ合いではなく、自分の持っている武器の再確認というプラスに働きます。これは、ブリーフセラピーのリソースに当てはまります。例えば、「自分の知識、経験、能力、好み、キャラで生かせることは?」「自分の売りは?」「周りで利用できることは?」「今までにうまくいったやり方は?」などと整理することです。(3)とりあえず行動倫子たちは、お互いに「とりあえず、どうしたら良い?」と尋ね合うシーンがたびたびあります。3つ目のステップは、とりあえず行動をすることです。ここで注意点は、「何となく」「できるだけ」「いつか」のような抽象的で大きく無期限の行動ではなく、「これを」「これだけ」「この日までに」のような具体的で小さく期限付きの行動を積み重ねることです。そうすれば、とりあえず話は、現実逃避ではなく、戦略としてプラスに働きます。これは、ブリーフセラピーのスケーリングに当てはまります。これを、3つの要素の例をそれぞれあげて、説明しましょう。a. 具体的に例えば、倫子は奥田と結ばれるために、とりあえず「嫌われない」ようにしました。これは「~しない」という心理の罠です。これで受け身になってしまい、けっきょく我慢の限界が来てしまいました。そうではなくて、「嫌われない」という抽象的な行動の代わりに、具体的に何をするかです。例えば、それはいっしょに楽しめる映画を探すことです。b. 小さく例えば、倫子たちは、結婚相手をいきなり求めています。かなりハードルが高いです。そうではなくて、最終的に結婚相手を見つけるために、越えられそうな小さなハードルをまず設定することです。例えば、それは、友人の紹介で異性と知り合いになることです。その後に、その人と合コンをしたり、さらにその人から別の異性を紹介してもらい、男友達を増やすことです。c. 期限付き例えば、倫子たちは「3年後の東京オリンピックまでに結婚して子どもがほしい」と言っています。これは年単位の話です。そうではなくて、年単位の目標のために、週単位の期限でできる行動を設定することです。例えば、結婚相談所に入会して、1週間に最低1人とデートすることです。表1 倫子たちの女子会トークに当てはまるブリーフセラピー「女子」か「女性」か?小雪の居酒屋の常連客たちが倫子たちを見て、「女子ってのはいくつくらいまでのことを言うんだろね?」「さあなあ、学生さんぐらいまでじゃねえのか」と話しています。倫子たちは、まさに次のライフステージの発達課題である親密さを育むために、タラレバ話で野望を持ち、フォローし合って武器を探し、とりあえず行動を積み重ねて戦略を立てることで、積極的に恋愛の場数を踏んでいます。そうすることで、彼女たちは自分の夢だけ見る「女子」ではなく、周りの現実も見る「女性」であると自覚できるのではないでしょうか? そして、その時、「女子」であるか「女性」であるかは、年齢でも周りの評価でもなく、自分自身のメンタリティによるものであることに気付くのではないでしょうか?1)東村アキコ:東京タラレバ娘1巻~7巻、講談社、2011-20162)鈴木忠ほか:生涯発達心理学、有斐閣アルマ、20163)森俊夫、黒澤幸子:解決志向ブリーフセラピー、ほんの森出版、2002

446.

脳卒中後の慢性期失語、集中的言語療法が有効/Lancet

 70歳以下の脳卒中患者の慢性期失語症の治療において、3週間の集中的言語療法は、言語コミュニケーション能力を改善することが、ドイツ・ミュンスター大学のCaterina Breitenstein氏らが行ったFCET2EC試験で示された。失語症の治療ガイドラインでは、脳卒中発症後6ヵ月以降も症状が持続する場合は集中的言語療法が推奨されているが、治療効果を検証した無作為化対照比較試験は少ないという。Lancet誌オンライン版2017年2月27日号掲載の報告。従来の言語療法と比較する無作為化試験 FCET2EC試験は、年齢18~70歳、虚血性または出血性脳卒中の発症後6ヵ月以上持続する慢性期失語症(アーヘン失語症検査[AAT]で判定)がみられる患者を対象に、集中的言語療法の日常的な言語コミュニケーション能力の改善効果を評価する多施設共同無作為化対照比較試験(ドイツ連邦教育研究省などの助成による)。 被験者は、通常治療下に、3週間以上の集中的言語療法(≧10時間/週)を行う群(介入群)または同様の治療を3週間遅れて開始する群(対照群)に無作為に割り付けられた。言語療法は、研究グループが作成したマニュアルに従って、専門のセラピストが個別の患者およびグループで行った。対照群は、待機中の3週間、従来の言語療法を受けた。 主要評価項目は、日常的な言語コミュニケーション能力(Amsterdam-Nijmegen Everyday Language Test[ANELT]A-scaleで判定)のベースラインから治療終了時までの変化とした。解析には、1日以上の治療を受けた全患者が含まれた。 2012年4月1日~2014年5月31日に、ドイツの19の入院/外来リハビリテーション施設で156例が登録され、両群に78例ずつが割り付けられた。言語能力、患者知覚QOLも改善 ベースラインの平均年齢は、介入群が53.5(SD 9.0)歳、対照群は52.9(SD 10.2)歳、女性がそれぞれ59%、69%を占めた。脳卒中の重症度(修正Rankinスケール[mRS])は、両群とも2(2~3)、脳卒中発症後の経過期間中央値は介入群が43.0ヵ月(IQR:16.0~68.3)、対照群は27.0ヵ月(13.0~48.8)であり、虚血性脳卒中がそれぞれ58%、72%だった。 言語療法は、全体で3~10週間行われ(期間中央値:介入群4.8週[IQR:3.0~5.6]、対照群4.0週[3.0~5.0])、このうち3週間の集中的言語療法は22.5~49.0時間実施された(期間中央値:介入群31.0時間[30.0~34.5]、対照群32.0時間[30.0~34.6])。対照群は、待機中の3週間、従来の言語療法を0~22.5時間受けた。それぞれ92%、94%の患者が、6ヵ月時に言語療法を継続していた(1.0時間[IQR:0.6~1.7]/週)。 言語コミュニケーション能力は、介入群ではベースラインに比べ3週間の集中的言語療法により有意に改善した(ANELT Aスコアの平均差:2.61[SD 4.94]点、95%信頼区間[CI]:1.49~3.72、p<0.0001)のに対し、対照群(従来言語療法期間)では3週後に有意な効果はみられず(-0.03[SD 4.04]点、-0.94~0.88、p=0.95)、両群間に有意な差が認められた(p=0.0004、効果量[Cohen’s d]:0.58)。また、対照群も、3週間の集中的言語療法後に、介入群と同様の言語コミュニケーション能力の改善効果が得られた。 全体で、ベースラインから3週間の集中的言語療法終了時までにANELT Aスコアが3点以上改善した患者は44%(69/156例)であり、同様の期間に3点以上低下(増悪)した患者は10%(16/156例)だけだった。 また、3週間の集中的言語療法により、言語能力(Sprachsystematisches APhasieScreening[SAPS]:音韻、語彙、統語法、言語理解、言語産出)の総合スコア(p<0.0001、Cohen’s d:0.73)および患者知覚QOL(Stroke and Aphasia Quality of Life Scale-39[SAQOL-39]:身体機能、コミュニケーション、心理社会、活力)の総合スコア(p=0.0365、Cohen’s d:0.27)が有意に改善された。 有害事象は、集中治療中の介入群が6%(5例:風邪1例、消化管または心臓の症状3例、治療開始前の脳卒中の再発1例)、待機中および集中治療中の対照群は3%(2例:自動車事故1例、風邪1例)に認められ、割り付け前に脳卒中の再発が1例にみられたが、いずれも試験への参加とは関連がなかった。 著者は、「有益な治療効果を得るための最小限の治療強度を調査し、反復介入期間以降も治療効果が持続するかを検証するために、さらなる研究を要する」としている。

447.

高齢者のロービジョンケアへのリハビリ併用効果

 視覚機能が低下したロービジョン(LV)高齢者を対象に、基本的なデバイス使用のLVケア介入と、そこにリハビリテーションを併用する介入(LVR)の有用性を、無作為化臨床試験で比較検討した結果が報告された。結果は、LVRの有効性が顕著だったのは最良矯正遠見視力(BCDVA)が20/63~20/200の患者においてのみであることが示されたという。米国・エドワード退役軍人病院のJoan A. Stelmack氏らが明らかにしたもので、著者は、「多くを占める視覚障害が軽度のLV患者は、基礎的なLVケアで十分のようだ」とまとめている。JAMA Ophthalmologyオンライン版2016年12月15日号掲載の報告。 研究グループは2010年9月27日~2014年7月31日に、黄斑疾患を有しBCDVAが20/50~20/200の退役軍人323例(男性97.2%、平均[±標準偏差]80±10.5歳)を対象に無作為化臨床試験を行った。偏心視および環境改良についての指導や自宅での実践を含めたリハビリテーションとともにLVデバイスを使用するLVR群と、リハビリテーションなしでLVデバイスを用いた介入を行う基礎的LV群に被験者を無作為化し、介入前後に評価者盲検にて電話によるアンケート調査を行った。 評価項目は、退役軍人ロービジョン視覚機能調査票(VA LV VFQ-48)の回答から推定した視覚機能(総合および4つの機能ドメイン)の4ヵ月後におけるベースラインからの変化量、ならびにMNREADを用いた最大読書速度、臨界文字サイズ、読書能力に関する介入終了時におけるベースラインからの変化であった。視覚機能はロジット(対数オッズ)を算出し評価した(0.14ロジットの変化は、視力の1列の変化に相当する)。 主な結果は以下のとおり。・基礎的LVは、視覚機能の改善に有効であることが示された。・基礎的LVとの比較で、LVRの有意な機能改善は、移動を除く各機能ドメインで示された。両群差は、読字能力0.34ロジット(95%信頼区間[CI]:0.0005~0.69、p=0.05)、視覚情報処理0.27ロジット(0.01~0.53、p=0.04)、視覚運動能力0.37ロジット(0.08~0.66、p=0.01)、総合0.27ロジット(0.06~0.49、p=0.01)であった。・また、LVRは、読書能力(群間差:-0.11 logMAR、95%CI:-0.15~-0.07、p<0.001)、最大読書速度(平均増加21.0字/分、95%CI:6.4~35.5、p=0.005)を有意に改善することが認められたが、臨界文字サイズについての改善はみられなかった。・層別解析において、BCDVAが20/63~20/200の患者は、LVR群のほうがLV群と比較して、読字能力、視覚運動能力および総合の視覚機能の改善が大きかった(それぞれ群間差は、0.56ロジット、0.40ロジット、0.34ロジット)。しかし、BCDVAが20/50~20/63の患者は、LVR群とLV群で有意な差はなかった。

448.

45歳から考える運動器のライフプラン

 11月29日、ロコモ チャレンジ!推進協議会主催のイベント、第3回ロコモサロンが、都内において開催された。イベントでは、ロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」)の普及の道程を振り返るとともに、国をはじめとする行政の取り組み、同会に所属している組織のロコモへの取り組み事例などが報告された。気が付かないうちに進む運動器の衰え はじめに同会の委員長である大江隆史氏(NTT東日本関東病院 手術部長/整形外科主任医長)が、「ロコモ提唱から9年の軌跡と今後の展望」と題して講演を行った。 2007年にロコモが提唱されて以来、ロコモチェック、ロコモ度テスト、さらに多くの疫学研究がなされるとともに、広報活動にも力を入れてきたことを振り返った。また、2010年には日本整形外科学会の外部委託事業としてロコモ チャレンジ!推進協議会が設立され、ロコモアドバイスドクター、ロコモメイトの新設など新たな取り組みを実施、全国の市町村への支援も報告された。 ロコモの認知度については、2012年の調査開始時点で17.3%だったものが、本年2016年には47.3%へと推移。とくに70歳以上の女性では74.1%の認知度なのに対し、20~29歳の女性(31.1%)、40~49歳の男性(35.5%)のように青壮・中年層での認知度が低いことが課題だと報告された。 今後10年の展望として、さらに啓発活動を実施するとともに、ロコモ度テストの年齢・性別の参考値の策定、高齢者の運動療法の評価へのロコモ度テストの導入、高齢者の健康に関するほかの概念(たとえばフレイル、サルコペニア)との整理、長寿化への対応などを見据え取り組んでいくという。 最後に大江氏は、「運動器障害は知らないうちに進行する障害である。たとえば平均寿命が90歳まで延びるとしたら、折り返し年齢の45歳ころから運動器のライフプランを考え、骨粗鬆症など運動器疾患への治療はもちろん、柔軟性低下、姿勢変化、筋力低下などにも早期に介入することで、運動器の健康を保つことが大切。その指標にロコモチャレンジを活用してもらいたい」と希望を述べた。3つの政策で健康長寿国を目指す仕組みづくり ヘルスケア産業の創出を支援する経済産業省の富原早夏氏(同省商務情報政策局ヘルスケア産業課統括補佐)が、生涯現役社会を目指すための3つの大きな政策を説明した。 同省では、高齢者が仕事をリタイヤしても社会参画する将来を見据え、とくに疾患進展防止サービスを推進することで、健康寿命の延長を目指すとしている。そのために、公的保険以外の疾病予防・健康管理サービスの活用や新産業の創出を支援していくという。 政策の1つ目は「健康経営」(健康保持・増進への取り組みが将来収益を高める投資と考え、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること)を推進することで、職域の健康管理を通じ、企業価値を高める施策(たとえば自治体による企業表彰、低利融資などのインセンティブ)を講じるとしている。  2つ目は、IoTを活用した大規模な健康情報データリンクで、それらを健康の維持に役立てる。たとえば登録者の歩数・活動量、身長、体重、血圧などを収集・分析することで、今後の行動変容のエビデンスとし、健康政策に役立てることなどが計画される。 3つ目は、地域の高齢者の多様なニーズに応え、適切なサービスを行うため医療機関に加え、それを補完する機能をもつサービスを創出していく。具体的には、公的保険外サービスで健康への気づき事業(受診勧奨)の創設や健康維持のフィットネスサービスの充実を目指すものである。そのために、関係する産業協議会の設置などを行い、地域ぐるみで切れ目のない、健康サービスの提供ができる仕組みづくりを展開していく。 最後に富原氏は、「こうしたサービスのビジネスパッケージ化を経済産業省として、支援していく」と今後の展望を述べた。進む企業の健康への取り組み 後半では、ロコモ!チャレンジ推進協議会の協賛企業・団体から取り組み事例が紹介された。 JFEスチール株式会社では、過去に転倒災害と運動器疾患が多かったことから、社内で「安全体力®」機能テストを実施し、リスク回避に役立てているほか、宮崎市では、地元の宮崎大学と協力し、ロコモ健診やロコモメイト養成講座による啓発・広報活動を行っているという。そのほか、アルケア株式会社では、大磯町(神奈川県)と連携した取り組みで、ロコモ健診・指導をした結果、疾病予防へどれだけ貢献したか医療経済の側面から効果を示した。また、日本シグマックス株式会社は、中国へのロコモ概念の普及事業を紹介した。参考サイト【特集】骨粗鬆症

449.

日常生活で行いたいこと

【骨粗鬆症】【日常の注意事項 やりましょう】普段の生活でやった方がいいことは、何ですか●1日15分程度、腕に直射日光を当てるだけで体内でビタミンDが作られます。●女性も日焼けなどあまり気にせず、普段の生活の中で、毎日、陽に当りましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

450.

日常生活で止めたいこと

【骨粗鬆症】【日常の注意事項 やめましょう】普段の生活で止めた方がいいことは、何ですか■飲酒⇒過度の飲酒は内臓を悪くするだけでなく、多尿によりカルシウムを体外に排出してしまいます。■喫煙⇒カルシウムの吸収を悪くするばかりでなく、女性では骨量低下の原因となります。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

451.

線条体黒質変性症〔SND: striatonigral degeneration〕

1 疾患概要■ 概念・定義線条体黒質変性症(striatonigral degeneration: SND)は、歴史的には1961年、1964年にAdamsらによる記載が最初とされる1)。現在は多系統萎縮症(multiple system atrophy: MSA)の中でパーキンソン症状を主徴とする病型とされている。したがって臨床的にはMSA-P(MSA with predominant parkinsonism)とほぼ同義と考えてよい。病理学的には主として黒質一線条体系の神経細胞脱落とグリア増生、オリゴデンドロサイト内にα-シヌクレイン(α-synuclein)陽性のグリア細胞質内封入体(glial cytoplasmic inclusion: GCI)が見られる(図1)。なお、MSA-C(MSA with predominant cerebellar ataxia)とMSA-Pは病因や治療などに共通した部分が多いので、「オリーブ橋小脳萎縮症」の項目も合わせて参照して頂きたい。画像を拡大する■ 疫学平成26年度のMSA患者数は、全国で1万3,000人弱であるが、そのうち約30%がMSA-Pであると考えられている。欧米では、この比率が逆転し、MSA-PのほうがMSA-Cよりも多い2,3)。このことは神経病理学的にも裏付けられており、英国人MSA患者では被殻、淡蒼球の病変の頻度が日本人MSA患者より有意に高い一方で、橋の病変の頻度は日本人MSA患者で有意に高いことが知られている4)。■ 病因いまだ十分には解明されていない。α-シヌクレイン陽性GCIの存在からMSAはパーキンソン病やレビー小体型認知症とともにα-synucleinopathyと総称されるが、MSAにおいてα-シヌクレインの異常が第一義的な意義を持つかどうかは不明である。ただ、α-シヌクレイン遺伝子多型がMSAの易罹患性要因であること5)やα-シヌクレイン過剰発現マウスモデルではMSA類似の病理所見が再現されること6,7)などα-シヌクレインがMSAの病態に深く関与することは疑う余地がない。MSAはほとんどが孤発性であるが、ごくまれに家系内に複数の発症者(同胞発症)が見られることがある。このようなMSA多発家系の大規模ゲノム解析から、COQ2遺伝子の機能障害性変異がMSAの発症に関連することが報告されている8)。COQ2はミトコンドリア電子伝達系において電子の運搬に関わるコエンザイムQ10の合成に関わる酵素である。このことから一部のMSAの発症の要因として、ミトコンドリアにおけるATP合成の低下、活性酸素種の除去能低下が関与する可能性が示唆されている。■ 症状MSA-Pの発症はMSA-Cと有意差はなく、50歳代が多い2,3,9,10)。通常、パーキンソン症状が前景に出て、かつ経過を通して病像の中核を成す。GilmanのMSA診断基準(ほぼ確実例)でも示されているように自律神経症状(排尿障害、起立性低血圧、便秘、陰萎など)は必発である11)。加えて小脳失調症状、錐体路症状を種々の程度に伴う。MSA-Pのパーキンソン症状は、基本的にパーキンソン病で見られるのと同じであるが、レボドパ薬に対する反応が不良で進行が速い。また、通常、パーキンソン病に特徴的な丸薬丸め運動様の安静時振戦は見られず、動作性振戦が多い。また、パーキンソン病に比べて体幹動揺が強く転倒しやすいとされる12)。パーキンソン病と同様に、パーキンソニズムの程度にはしばしば左右非対称が見られる。小脳症状は体幹失調と失調性構音障害が主体となり、四肢の失調や眼球運動異常は少ない13)。後述するようにMSA-Pでは比較的早期から姿勢異常や嚥下障害を伴うことも特徴である。なお、MSAの臨床的な重症度の評価尺度として、UMSARS(unified MSA rating scale)が汎用されている。■ 予後国内外の多数例のMSA患者の検討によれば、発症からの生存期間(中央値)はおよそ9~10年と推察される3,9)。The European MSA Study Groupの報告では、MSAの予後不良を予測させる因子として、評価時点でのパーキンソン症状と神経因性膀胱の存在を指摘している3)。この結果はMSA-CよりもMSA-Pのほうが予後不良であることを示唆するが、日本人患者の多数例の検討では、両者の生存期間には有意な差はなかったとされている9)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)GilmanらのMSA診断基準(ほぼ確実例)は別稿の「オリーブ橋小脳萎縮症」で示したとおりである。MSA-P疑い例を示唆する所見として、運動症状発現から3年以内の姿勢保持障害、5年以内の嚥下障害が付加的に記載されている11)。診断に際しては、これらの臨床所見に加えて、頭部画像診断が重要である(図2)。MRIでは被殻外側部の線状高信号(hyperintense lateral putaminal rim)が、パーキンソン症状に対応する病変とされる。画像を拡大する57歳女性(probable MSA-P、発症から約1年)の頭部MRI(A、B)。臨床的には左優位のパーキンソニズム、起立性低血圧、過活動性膀胱、便秘を認めた。MRIでは右優位に被殻外側の線状の高信号(hyperintense lateral putaminal rim)が見られ(A; 矢印)、被殻の萎縮も右優位である(B; 矢印)。A:T2強調像、B:FLAIR像68歳女性(probable MSA-P、発症から約7年)の頭部MRI(C~F)。臨床的には寡動、右優位の筋固縮が目立ち、ほぼ臥床状態で自力での起立・歩行は不可、発語・嚥下困難も見られた。T2強調像(C)にて淡い橋十字サイン(hot cross bun sign)が見られる。また、両側被殻の鉄沈着はT2強調像(D)、T2*像(E)、磁化率強調像(SWI)(F)の順に明瞭となっている。MSA-Pの場合、鑑別上、最も問題になるのは、パーキンソン病、あるいは進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などのパーキンソン症候群である。GilmanらはMSAを示唆する特徴として表のような症状・所見(red flags)を挙げているが11)、これらはMSA-Pとパーキンソン病を鑑別するには有用とされる。表 MSAを支持する特徴(red flags)と支持しない特徴11)■ 支持する特徴(red flags)口顔面ジストニア過度の頸部前屈高度の脊柱前屈・側屈手足の拘縮吸気性のため息高度の発声障害高度の構音障害新たに出現した、あるいは増強したいびき手足の冷感病的笑い、あるいは病的泣きジャーク様、ミオクローヌス様の姿勢時・動作時振戦■ 支持しない特徴古典的な丸薬丸め様の安静時振戦臨床的に明らかな末梢神経障害幻覚(非薬剤性)75歳以上の発症小脳失調、あるいはパーキンソニズムの家族歴認知症(DSM-IVに基づく)多発性硬化症を示唆する白質病変上記では認知症はMSAを“支持しない特徴”とされるが、近年は明らかな認知症を伴ったMSA症例が報告されている14,15)。パーキンソン病とMSAを含む他のパーキンソン症候群の鑑別に123I-meta-iodobenzylguanidine(123I-MIBG)心筋シンチグラフィーの有用性が示されている16)。一般にMSA-Pではパーキンソン病やレビー小体型認知症ほど心筋への集積低下が顕著ではない。10の研究論文のメタ解析によれば、123I-MIBGによりパーキンソン病とMSA(MSA-P、MSA-C両方を含む)は感度90.2%、特異度81.9%で鑑別可能とされている16)。一方、Kikuchiらは、とくに初期のパーキンソン病とMSA-Pでは123I-MIBG心筋シンチでの鑑別は難しいこと、においスティックによる嗅覚検査が両者の鑑別に有用であることを示している17)。ドパミントランスポーター(DAT)スキャンでは、両側被殻の集積低下を示すが(しばしば左右差が見られる)、パーキンソン病との鑑別は困難である。また、Wangらは、MRIの磁化率強調像(susceptibility weighted image: SWI)による被殻の鉄含量の評価はMSA-Pとパーキンソン病の鑑別に有用であることを指摘している18)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)有効な原因療法は確立されていない。MSA-Cと同様に、個々の患者の病状に応じた対症療法が基本となる。対症療法としては、薬物治療と非薬物治療に大別される。レボドパ薬に多少反応を示すことがあるので、とくに病初期には十分な抗パーキンソン病薬治療を試みる。■ 薬物治療1)小脳失調症状プロチレリン酒石酸塩水和物(商品名: ヒルトニン注射液)や、タルチレリン水和物(同:セレジスト)が使用される。2)自律神経症状主な治療対象は排尿障害(神経因性膀胱)、起立性低血圧、便秘などである。MSAの神経因性膀胱では排出障害(低活動型)による尿勢低下、残尿、尿閉、溢流性尿失禁、および蓄尿障害(過活動型)による頻尿、切迫性尿失禁のいずれもが見られる。排出障害に対する基本薬は、α1受容体遮断薬であるウラピジル(同: エブランチル)やコリン作動薬であるベタネコール塩化物(同: ベサコリン)などである。蓄尿障害に対しては、抗コリン薬が第1選択である。抗コリン薬としてはプロピベリン塩酸塩(同:バップフォー)、オキシブチニン塩酸塩(同:ポラキス)、コハク酸ソリフェナシン(同:ベシケア)などがある。起立性低血圧には、ドロキシドパ(同:ドプス)やアメジニウムメチル硫酸塩(同:リズミック)などが使用される。3)パーキンソン症状パーキンソン病に準じてレボドパ薬やドパミンアゴニストなどが使用される。4)錐体路症状痙縮が強い症例では、抗痙縮薬が適応となる。エペリゾン塩酸塩(同:ミオナール)、チザニジン塩酸塩(同:テルネリン)、バクロフェン(同:リオレサール、ギャバロン)などである。■ 非薬物治療患者の病期や重症度に応じたリハビリテーションが推奨される(リハビリテーションについては、後述の「SCD・MSAネット」の「リハビリのツボ」を参照)。上気道閉塞による呼吸障害に対して、気管切開や非侵襲的陽圧換気療法が施行される。ただし、非侵襲的陽圧換気療法によりfloppy epiglottisが出現し(喉頭蓋が咽頭後壁に倒れ込む)、上気道閉塞がかえって増悪することがあるため注意が必要である19)。さらにMSAの呼吸障害は中枢性(呼吸中枢の障害)の場合があるので、治療法の選択においては、病態を十分に見極める必要がある。4 今後の展望選択的セロトニン再取り込み阻害薬である塩酸セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)やパロキセチン塩酸塩水和物(同:パキシル)、抗結核薬リファンピシン、抗菌薬ミノサイクリン、モノアミンオキシダーゼ阻害薬ラサジリン、ノルアドレナリン前駆体ドロキシドパ、免疫グロブリン静注療法、あるいは自己骨髄由来の間葉系幹細胞移植など、さまざまな治療手段の有効性が培養細胞レベル、あるいはモデル動物レベルにおいて示唆され、実際に一部はMSA患者を対象にした臨床試験が行われている20,21)。これらのうちリファンピシン、ラサジリン、リチウムについては、MSA患者での有用性が証明されなかった21)。また、MSA多発家系におけるCOQ2変異の同定、さらにはCOQ2変異ホモ接合患者の剖検脳におけるコエンザイムQ10含量の著減を受けて、MSA患者に対する治療として、コエンザイムQ10大量投与療法に期待が寄せられている。5 主たる診療科神経内科、泌尿器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 線条体黒質変性症SCD・MSAネット 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症の総合情報サイト(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会(患者とその家族の会)1)高橋昭. 東女医大誌.1993;63:108-115.2)Köllensperger M, et al. Mov Disord.2010;25:2604-2612.3)Wenning GK, et al. Lancet Neurol.2013;12:264-274.4)Ozawa T, et al. J Parkinsons Dis.2012;2:7-18.5)Scholz SW, et al. Ann Neurol.2009;65:610-614.6)Yazawa I, et al. Neuron.2005;45:847-859.7)Shults CW et al. J Neurosci.2005;25:10689-10699.8)Multiple-System Atrophy Research Collaboration. New Engl J Med.2013;369:233-244.9)Watanabe H, et al. Brain.2002;125:1070-1083.10)Yabe I, et al. J Neurol Sci.2006;249:115-121.11)Gilman S, et al. Neurology.2008;71:670-676.12)Wüllner U, et al. J Neural Transm.2007;114:1161-1165.13)Anderson T, et al. Mov Disord.2008;23:977-984.14)Kawai Y, et al. Neurology. 2008;70:1390-1396.15)Kitayama M, et al. Eur J Neurol.2009:16:589-594.16)Orimo S, et al. Parkinson Relat Disord.2012;18:494-500.17)Kikuchi A, et al. Parkinson Relat Disord.2011;17:698-700.18)Wang Y, et al. Am J Neuroradiol.2012;33:266-273.19)磯崎英治. 神経進歩.2006;50:409-419.20)Palma JA, et al. Clin Auton Res.2015;25:37-45.21)Poewe W, et al. Mov Disord.2015;30:1528-1538.公開履歴初回2015年04月23日更新2016年11月01日

452.

骨粗鬆症の治療終了はいつ?

【骨粗鬆症治療開始】骨折が治ったら、治療は終了ですか治骨次す粗はわ鬆よ症!を次へスタート【骨粗鬆症】かもた骨しうみ折ら大たも?丈い治夫ねっ。●骨折の治療終了は、骨粗鬆症のゴールではありません。●骨折が治ったら、次は骨粗鬆症の治療のスタートです!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

453.

骨粗鬆症の診療はいつ受ける

【骨粗鬆症】【定期診断】骨粗鬆症の上手な診断の受け方を、教えてください●女性は閉経したら定期的に検査をしましょう。●自治体などの節目検診(40、50、55、60、65、70歳)を賢く利用しましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

454.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第31回

第31回:膝の痛みにおける非外科的治療監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 人口の高齢化に伴い、整形外科領域で保存的治療(非外科的治療)を行っている方を多く見かけます。また、プライマリケア医が遭遇する頻度の高い疾患・症候群としてかぜ症候群、胃腸炎などと並んで「痛み・関節炎症状」が挙げられており1)、今後ますます外来で関節痛、関節炎に対する保存的治療の重要性が増すことが予想されます。今回の記事では、膝の痛みの原因として「変形性膝関節症」「膝蓋大腿疼痛症候群」「半月板・腱・靱帯の損傷」が取り上げられ、それぞれの非外科的治療について解説されていますので、ご紹介します。 以下、American Family Physician 2015年11月15日号2) より1.変形性膝関節症理学療法・運動療法:非外科的治療の基礎であり、ストレッチ、筋力強化(大腿四頭筋訓練)、運動プログラムが効果的である。また、BMI25以上の患者には減量が推奨され、有酸素運動とストレッチを組み合わせるとさらに効果的とされている。自宅で行う運動療法は専門家によるものと同様の効果がある。薬物療法:アセトアミノフェンとNSAIDsが第1選択と考えられている。無作為化試験ではアセトアミノフェンは投与量に関係なくイブプロフェンと同程度に効果的であることが示され、さらに5つのRCTの系統的なレビューでは、アセトアミノフェンは、その効果と副作用がNSAIDsより少ないことから、第1選択薬として考慮すべきとされている。NSAIDsは長期に使用すべきでないが、短期間ならプラセボより効果があるとしている。ビタミンD、グルコサミン・コンドロイチンサプリメントについては、疼痛に対する効果が証明されていない。関節内注射:関節内ステロイド注射について、コクランレビューでは、疼痛緩和の効果は1~2週間のみとしている。アメリカ整形外科学会ではステロイド関節内注射を推奨しておらず、使用するとしても3か月に1回以上投与するべきではないとしている。ヒアルロン酸注射(viscosupplementation)については、2012年の質の高いシステマティックレビューでは、プラセボと比較して何ら臨床的な効果は示されなかったと結論されている。※いずれの場合も、人工関節のある患者には感染のリスクとなるため、関節穿刺は避けるべきである。装具療法:矯正装具 (足底板やサポーター)の使用が害を及ぼすというエビデンスはなく、変形性関節症を含めた膝の慢性的な摩耗による症状に対して、有用なオプションといえる。2.膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS;Patellofemoral pain syndrome)理学療法・運動療法:筋力トレーニングとストレッチが第1選択の治療になる。テーピングはコクランレビューでは疼痛に顕著な効果がないとしているが、最近のメタ分析では早期のテーピングが疼痛を改善するという報告もある。経皮的電気刺激やバイオフィードバック、カイロプラクティックを支持するエビデンスはない。薬物療法:疼痛に対してNSAIDsの短期間投与が効果的だという限られたデータしかない。装具療法:理学療法併用の有無にかかわらず疼痛緩和に効果的である。しかし、膝蓋矯正装具の効果を臨床的に裏付けるエビデンスはなく、患者への有益性を裏付けるデータもないことに留意する。3.半月板、腱、靱帯の損傷理学療法・運動療法:第1選択の治療である。退行性の半月板損傷や変性は、変形性関節症の原因となる。ロッキングやキャッチングがあれば整形外科医に紹介する。薬物療法:NSAIDsは短期の疼痛緩和に有用だが、治療の効果はまだはっきりしていない。関節内注射:大腿四頭筋や膝蓋腱など、体重のかかる腱へのステロイド注射は避けるべきだが、保存的治療で効果がない場合は、腸脛靭帯摩擦症候群(ランナー膝)の患者へのステロイド投与は許容される治療法である。慢性膝蓋腱障害と変形性関節症の疼痛と機能をわずかに改善させたという報告がある。装具療法:短期間の使用は靭帯断裂や膝蓋骨骨折といった外傷の直後であれば膝の保護に役立つ。一度あるいは二度の内側側副靱帯損傷には、装具使用に加え、経口鎮痛薬と早期からの理学療法が効果的である。一般的に装具療法は、腸脛靭帯摩擦症候群(ランナー膝)または膝蓋下腱障害といった膝の使い過ぎに使用される。前十字靱帯部分損傷には、急性期に装具を使用すれば保存的治療に効果があるかもしれないが、完全断裂は専門医に紹介する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 田中勝巳ほか. プライマリ・ケア. 2007;30:344-351. 2) Jones BQ, et al. Am Fam Physician. 2015;92:875-883.

455.

具体的なロコモの内容とは

【骨粗鬆症】【ロコモティブシンドローム】どんなことがあればロコモか、教えてください■ロコモの診断は次の7つです。1)片脚立ちで靴下がはけない2)家の中でつまずく、すべったりする3)階段をあがるのに、手すりが必要4)家のやや重い仕事が困難である5)ペットボトル1本程度の買い物をして持ち帰るのが困難である6)15分くらい続けて歩くことができない7)横断歩道を青信号で渡りきれない上の7つの中で、1つでも当てはまるものがあれば、要注意です。お医者さんに相談を!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

456.

医師への苦情の第1位は説明不足!? 患者が求めるコミュニケーションとは

 患者の意思決定支援はどうあるべきかを患者視点から検討する「第2回SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)フォーラム2016『患者視点から考えるヘルスコミュニケーション』」1)が8月25日都内で開催され、3人の患者団体の代表2)3)4)が講演した。 同フォーラムを主催した厚生労働行政推進調査事業費補助金「診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究」班の代表である中山 健夫氏(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 教授)は、診療ガイドラインは、最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで、「患者と医療者の意思決定を支援する文書」であるという定義を紹介し、とくに不確実性の高い治療選択においてSDMが重要であることを強調した。他の職種より医師への不満が断トツに多い理由とその改善策とは 全国の患者からの電話相談事業を実施している認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML2)理事長の山口 育子氏によると、医師への不満は、例年相談内容の上位に入っており、全体の約25%を占めることが紹介された。これは看護師や薬剤師など他の医療職種に対する不満と比べて突出して多いという。 山口氏は「ヘルスコミュニケーション改善のカギは“チーム医療”である」と考えている。患者は希望や意向を医師には正直に言いにくい、ということがしばしば見受けられるため、多様な職種が関わる中での患者の意思決定支援が望ましいことを説明した。 また、相談内容を分析した結果、医師への不満の背景として、患者や家族が、薬の情報、リハビリテーション、日常生活の疑問、転院に関する問題など医療に関するあらゆる情報や支援などすべてを医師に期待する傾向があるため、このように不満が医師に集中する結果になっていると考えている。医療機関において、チーム医療体制は定着しつつあるが、患者に看護師や薬剤師の役割・専門性について質問しても答えに窮する現状があるという。医師以外の医療職種が何のために存在しているのか、患者に説明される機会はほとんどないため、ぜひそれぞれの医療職種の役割・専門性について患者に伝えてほしいと訴えた。医師への苦情第1位は説明不足!? 原因は“日本版”インフォームドコンセント 医師に対する不満や苦情の内容で最も多いのが、非常に基本的な情報に関して「説明を受けていない」というもの。そのような相談受けた際に、山口氏は、本当に説明がなかったのかどうか必ず丁寧に患者に確認するようにしている。すると、実際には手術や化学療法など大きな決断が必要となる場面では、「1時間ほど説明があった」などと判明することがよくあるそうだ。 この食い違いの原因として考えられるのは、インフォームドコンセントが日本では単に「説明すること」に重きが置かれている点である。治療に関する意思決定が必要な際に多くの場合、患者は専門的な説明を、長い時間にわたり口頭で聞き続けるが、その内容すべてを記憶しておくことは困難である。実際にそのとき話を聞いていたとしても、理解ができていないと、後から「聞いていない」という訴えになってしまうのだ。高齢の患者が増加し、患者自身が説明を理解することが困難なケースも珍しくない中で、どのように必要な情報を共有するかは大きな課題であり、支援ツールの活用などが求められる。医師から患者に「メモを取ってもよい」と伝えて 患者は医師に対する遠慮や自身のプライドなどから、理解していなくてもうなずくことがしばしばあるという。よって、「うなずいたから理解している」と思うのは危険であり、患者自身に言語化してもらい、理解を確認することが大切である。また、口頭による説明には限界があるため、理解の補助として、メモや治療に関する資料などの活用も期待される。とくに、患者はメモを取ることが「医療者に対して失礼では」「やっかいな患者と思われるのでは」などと心配し、控えることがあるため、ぜひ医療者から「メモを取ってもよい」ことを患者に伝えてほしいと山口氏は述べた。インフォームドコンセント、なぜこのタイミング? 潰瘍性大腸炎患者の参加者からは、手術の具体的な説明が手術前日であったことに対する不満が紹介された。手術の前日は非常に緊張していたため、説明内容をほぼ理解できなかったという。「医療提供者側にもさまざまな事情はあると思うが、もっと前に説明してくれれば落ち着いて聞くことができ、理解できたと思う」と同参加者は述べた。 これを受けて登壇者の認定NPO法人 健康と病の語り ディペックス・ジャパン3)理事・事務局長の佐藤 りか氏は、同団体が運営する患者体験談データベースではこのような患者自身の医療・健康にまつわる体験動画が閲覧できるため、ぜひ多くの医療者にも活用してほしいと述べた。(ケアネット 後町 陽子)参考資料1)第2回SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)フォーラム2016(PDF)2)認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)3)認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン4)日本患者会情報センター

457.

バーチャル映像を見ながらのトレッドミルで転倒が減少/Lancet

 トレッドミルにバーチャルリアリティ(VR)を組み合わせた介入が高齢者の転倒リスク防止に有用であることを、イスラエル・テルアビブ大学のAnat Mirelman氏らが、トレッドミル単独と比較した無作為化比較試験の結果、報告した。転倒リスクは、加齢に伴う運動機能と認知機能低下の進展に伴い増大する。これまでに多くの転倒予防の介入が提案されているが、運動・認知の両機能をターゲットとした統合的アプローチのものはなかった。Lancet誌オンライン版2016年8月11日号掲載の報告。トレッドミル単独と比較、6週間介入後6ヵ月間の転倒発生を評価 研究グループは、安全に歩行するための認識的側面と機動性の両者をターゲットとした、トレッドミルトレーニングと非没入型VRを組み合わせた介入が、トレッドミルトレーニング単独よりも転倒が減少すると仮定し検証試験を行った。 5ヵ国(ベルギー、イスラエル、イタリア、オランダ、英国)の5つの臨床施設で実施。60~90歳、転倒の高リスク(試験前の半年間で2回以上の転倒あり)、および多様な運動的および認識的側面を有する被験者を集めて、コンピュータ無作為化法で2群に割り付けた。そのうち一方にはトレッドミル+VR介入を、もう一方にはトレッドミルのみ介入を、いずれも週3回、6週間行った。1セッションは約45分で、患者個々の能力に合わせて構造化された介入が行われた。割り付けでは患者特性(原因不明の転倒歴あり、軽度認知障害、パーキンソン病)と性別のサブグループに、試験施設ごとにも層別化。グループ割り付けは介入に関わらない第3者によって行われた。 VRシステムは、モーションキャプチャーカメラとコンピュータシミュレーション映像から成り、被験者はモーションキャプチャーカメラを装着してトレッドミル歩行を、眼前の大型画面に映し出された映像を見ながら行う。とくに高齢者の転倒リスク軽減を目的に、障壁、複数の経路、また継続的な歩行調整を要する気を逸らせるものといった実在するチャレンジグなものが投影された。 主要アウトカムは、介入終了後6ヵ月間の転倒発生率。評価は修正intention-to-treat集団で行った。組み合わせ群の単独群に対する転倒発生率比は0.58 2013年1月6日~2015年4月3日の間に、302例がトレッドミル+VRの組み合わせ群(154例)、トレッドミル単独群(148例)に無作為に割り付けられた。事前規定の修正intention-to-treat解析には、282例(93%、組み合わせ群146例、単独群136例)のデータが包含された。両群被験者の特性は類似しており、年齢中央値は74.0歳と73.0歳、男性67%と62%、教育年数中央値は両群13.0年、MMSEスコア(30点満点)中央値28.0と28.5、処方薬数中央値5.0と6.0などであった。 介入前の転倒発生率は、両群で類似しており、6ヵ月間で組み合わせ群10.7(SD 35.6)回、単独群11.9(39.5)回であった。 しかし介入後6ヵ月間は、組み合わせ群の発生が6.00(95%信頼区間[CI]:4.36~8.25)回と有意に減少した(介入前比較のp<0.0001)。一方、単独群の発生は8.27(5.55~12.31)回と有意には減少しなかった(同p=0.49)。 介入後6ヵ月間の両群の転倒発生率を比較したところ、組み合わせ群のほうが有意に低率であった(発生率比:0.58、95%CI:0.36~0.96、p=0.033)。 サブグループでみると、原因不明の転倒歴あり群(組み合わせ群57例、単独群52例)の介入後6ヵ月間の転倒発生は5.10 vs.0.89回(p=0.10)、軽度認知障害群(23例、20例)では2.35 vs.1.28回(p=0.99)、パーキンソン病群(66例、64例)は8.06 vs.16.48回(p=0.01)であった。 安全性の評価は治療割付がされた全患者を対象に行われた。介入関連の有害事象について報告はなかった。

458.

ロコモって何ですか?

【骨粗鬆症】【ロコモティブシンドローム】ロコモティブシンドロームについて、教えてください骨や筋肉が弱くなる寝たきりや要介護状態になる転んで簡単に骨折●ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、骨粗鬆症などで運動機能が弱くなり、介護が必要となったり、寝たきりになる可能性が高い状態のことです。●日ごろから体調を確認し、運動を行うようにしましょう。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

459.

第1回 日本がんサポーティブケア学会学術集会【開催のご案内】

 一般社団法人 日本がんサポーティブケア学会は、2016年9月3日(土)~4日(日)に「第1回 日本がんサポーティブケア学会学術集会」を開催する。テーマは「副作用を制するものはがん治療を制する 医はいたわりの心から始まる~学と術と道~」。多職種・多領域の参加者のもと、がん治療の副作用マネジメントのみならず、原病や治療の合併症、後遺症、サイコオンコロジー、リハビリテーション、がんサバイバー・就労支援など、多方面にわたる演題が発表される予定となっている。【会期】2016年9月3日(土)~4日(日)【会場】東京慈恵会医科大学 大学1号館東京都港区西新橋3丁目25番8号※詳細は「交通案内」「会場案内」をご参照ください。http://jascc.jp/jascc2016_congress/access.html【テーマ】副作用を制するものは、がん治療を制する医はいたわりの心から始まる~学と術と道~【会長】東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科教授 相羽 惠介氏【参加方法】参加登録は当日のみとなります。受付にて参加費をお支払いのうえ、参加証(領収書兼)をお受け取りください。【参加費】会員:5,000円非会員:7,000円学生:1,000円※学生の方は学生証をご提示ください。※お支払いは現金のみとなります。クレジットカードでのお支払いはできませんのでご了承ください。【お問い合わせ】日本がんサポーティブケア学会 運営事務局株式会社 インタープラン・コーポレーション(担当:笠原・星野)〒150-0046 東京都渋谷区松濤1丁目28番4号(Tel:03-5489-4910/Fax:03-3461-8181)【主催】一般社団法人 日本がんサポーティブケア学会http://jascc.jp/index.html「第1回 日本がんサポーティブケア学会学術集会」詳細はこちら。

460.

第32回 精神科領域の巡回看視義務の範囲は?

■今回のテーマのポイント1.精神科疾患で1番訴訟が多いのは統合失調症、次いでうつ病であり、ともに約1/3を占めている2.統合失調症に関する訴訟では、巡回・看視義務が主として争われている3.統合失調に関する訴訟は、器質的疾患に関する訴訟と比し、原告勝訴率が低いことが特徴である■事件のサマリ原告患者Xの遺族被告Y病院争点不当拘束、診療の不措置、注意義務違反などによる死亡の損害賠償責任結果原告敗訴事件の概要36歳女性(X)。平成7年5月頃より、幻聴、独語、空笑などが出現したため、Y病院に入院し、以後も、情動不安定で興奮状態になることがあり、平成13年までの間に計6回入院して治療を受けていました。平成15年10月14日、被告病院を受診した際、急に暴れだして錯乱状態に陥ったことから、医療保護入院となり、保護室において身体拘束を実施されて治療を受けることとなりました。Xは点滴加療を受けていたものの、状態は不安定で、興奮も見られたことから、Xに対する身体拘束は継続されていました。身体拘束中、Xに対しては、看護師による約30分おきの巡回が行われていました。同月26日午前1時30分ころに行われた巡回時には、特に異常は認められなかったのですが、午前1時52分ころに看護師が巡回した際、Xは心肺停止の状態で発見されました。直ちに蘇生措置がとられ、救急病院への転送がなされましたが、結局、1度も心拍が再開することなく、午前2時55分に死亡が確認されました。これに対しXの遺族は、不必要な身体拘束をしたこと、肺動脈血栓塞栓症に対する予防措置をとるべきであったこと、および、巡回観察義務違反などを理由にY病院に対し、8,425万円の損害賠償請求をしました。事件の判決「約30分おきに臨床的観察等を実施すべき義務の違反」について原告らは、被告病院の担当医師又は担当看護師において、Xに対し、約30分おきに臨床的観察等をすべき義務があったのに、これを怠り、25日午後8時ころのA医師による回診以降、臨床的観察を実施しなかった旨主張する。しかし、上記認定事実によれば、本件において、上記回診以降も約30分おきに臨床的観察は実施され、26日の午前0時30分ころ、午前1時ころ及び午前1時30分ころの観察では異常は発見されず、午前1時52分ころの観察で異常が発見されたと認められるから、約30分おきの臨床的観察が法的に義務づけられるとしても、被告病院の担当の医師又は看護師においてその義務に違反したとはいえない。なお、Xは呼吸停止状態で発見されたこと、別紙知見によれば、呼吸停止後に人工呼吸を開始した時間が2分後だと約90パーセントの救命率があるが、3分後だと75パーセント、5分後だと25パーセント、8分後にはほとんどゼロとなるとされていることを踏まえると、本件において30分おきの観察によってXの異常を救命可能な段階で発見できたと認めるに足りる証拠はないというべきであり、そうすると、30分おきの観察とXの救命との間に相当因果関係を認めることはできない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(東京地判平成18年8月31日)ポイント解説■精神科疾患の訴訟の現状今回は精神科疾患です。精神科疾患で最も訴訟が多いのは、統合失調症、次いでうつ病となっており、2疾患ともに約1/3を占めています。また、その後は境界性人格障害、アルコール依存症などと続いています(表1)。画像を拡大する精神科疾患に関する訴訟の特徴として、患者が疾患により希死念慮や自殺企図を抱き、その結果、入院・外来治療中に自殺したといったケースが多く見られること、そして、平均年齢が若いことから請求額および認容額が高額となることが挙げられます。その一方で、被害妄想や好訴妄想といった疾患自身の症状から訴訟に到ることがあるため、代理人を介さない本人訴訟の割合が高く、その結果、原告勝訴率が低くなっています(表2)。画像を拡大する■統合失調症に関する訴訟統合失調症に関する訴訟において最も多く争点となるのは、巡回・看視義務であり、次いで、薬剤の説明義務、救命措置、救急搬送と続いています(表3)。統合失調症に関する訴訟では、その多くで入院患者が自殺ないし突然死したことを受けて生じているため、これらの争点が多くなっているのです。画像を拡大するしかし、巡回監視義務違反が争われた11事例中、義務違反が認められた事例は3件ありますが、平成14年以降は、1度も巡回看視義務違反は認められていません。それは、そもそも本判決において示されているように、いくら定期的に巡回看視を行ったとしても、それによって自殺や突然死を回避することができないためです。巡回看視義務が争われる類型の1つに「転倒、転落」がありますが、転倒、転落に関する判決においても、「過失があると認められるためには、過失として主張される行為を怠らねば結果を回避することができた可能性(結果回避可能性)が認められることが必要であるところ、転倒はその性質上突発的に発生するものであり、転倒のおそれのある者に常時付き添う以外にこれを防ぐことはできないことからすると、被控訴人の動静を把握できないという上記職員らの行為がなければ本件事故を回避できたものと認めることはできない。(中略)…よって、職員らに、被控訴人の動静の把握を怠ったことを内容とする過失があったということはできない」(福岡高判平成24年12月18日)と本判決と同様の論理構成によって棄却する判断がなされています。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成18年8月31日福岡高判平成24年12月18日:この判例については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

検索結果 合計:649件 表示位置:441 - 460