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市中肺炎へのβラクタム系抗菌薬、単独療法でも有効/NEJM

 成人市中肺炎疑い患者へのβラクタム系抗菌薬単独療法は、マクロライド系抗菌薬との併用療法やフルオロキノロン系抗菌薬単独療法に比べ、90日死亡率に関して非劣性であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのDouwe F. Postma氏らが、3群で約2,300例の患者を対象に行った試験の結果、報告した。NEJM誌2015年4月2日号掲載の報告より。90日死亡率を非劣性マージン3%で検証 市中肺炎が疑われ入院した患者(ICU以外)に対する経験的抗菌薬治療の選択について、エビデンスが少ない。Postma氏らは、3つの経験的治療戦略について、クラスター無作為化クロスオーバー試験を行った。 βラクタム系抗菌薬単独療法、βラクタム系抗菌薬・マクロライド系抗菌薬併用療法、フルオロキノロン系抗菌薬単独療法を、それぞれ4ヵ月ごとに交代で実施し、90日死亡率を比較。両側90%信頼区間を用いて、非劣性マージンは3%としてβラクタム系抗菌薬単独療法の非劣性について検証した。90日死亡リスク、併用療法+1.9ポイント、フルオロキノロン単独療法は-0.6ポイント 被験者は、βラクタム戦略期間656例、βラクタム・マクロライド戦略期間739例、フルオロキノロン戦略期間888例で、各戦略の順守率はそれぞれ93.0%、88.0%、92.7%だった。被験者の年齢中央値は70歳だった。 結果、補正前90日死亡率は、それぞれ9.0%、11.1%、8.8%だった。 intention-to-treat分析の結果、死亡リスクはβラクタム戦略よりも、βラクタム・マクロライド戦略が1.9ポイント高く(90%信頼区間:-0.6~4.4%)、一方フルオロキノロン戦略は0.6ポイント低く(同:-2.8~1.9)、βラクタム戦略の非劣性が示された。 なお、入院期間の中央値はいずれの戦略でも6日で、経口投与開始までの期間の中央値は、フルオロキノロン戦略で3日、それ以外の戦略では4日だった。

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【医療ニュース トップ100】2014年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?

今年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心の高かった論文は何だったのでしょう? ここでは、アクセス数の多いものから100本を紹介します。 1位 日本男性の勃起硬度はアレと関連していた (2014/11/13) 2位 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学 (2014/1/7) 3位 子供はよく遊ばせておいたほうがよい (2014/3/28) 4位 思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet (2014/1/27) 5位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 6位 メロンでかゆくなる主要アレルゲンを確認 (2014/4/15) 7位 新たな輸液プロトコル、造影剤誘発急性腎障害の予防に有効/Lancet (2014/6/9) 8位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 9位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 10位 スタチンと糖尿病リスク増大の関連判明/Lancet (2014/10/9) 11位 スルピリドをいま一度評価する (2014/5/16) 12位 米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA (2014/4/16) 13位 インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet (2014/6/16) 14位 新規経口抗凝固薬4種vs.ワルファリン-心房細動患者のメタ解析-/Lancet (2013/12/25) 15位 アルコール依存症、薬物治療の減酒効果は?/JAMA (2014/5/29) 16位 SGLT2阻害薬「トホグリフロジン」の日本人への効果 (2014/2/28) 17位 大人のリンゴ病 4つの主要パターン (2014/7/29) 18位 脳動脈瘤、コイルvs. クリッピング、10年転帰/Lancet (2014/11/12) 19位 ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM (2014/9/8) 20位 アルツハイマーに有用な生薬はコレ (2014/11/14) 21位 塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM (2014/8/25) 22位 スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA (2014/4/14) 23位 食後血糖によい食事パターンは?(低脂肪vs低炭水化物vs地中海式) (2014/3/27) 24位 成人ADHDをどう見極める (2014/5/21) 25位 各種ダイエット法の減量効果/JAMA (2014/9/16) 26位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 27位 腰痛持ち女性、望ましい性交体位は? (2014/11/21) 28位 ロマンチックな恋愛は幸せか (2014/3/26) 29位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 30位 下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM (2014/10/10) 31位 せん妄管理における各抗精神病薬の違いは (2014/9/18) 32位 降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA (2014/9/11) 33位 深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ (2014/3/20) 34位 StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404) (2014/2/26) 35位 たった1つの質問で慢性腰痛患者のうつを評価できる (2014/2/21) 36位 スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ (2014/8/7) 37位 就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大 (2014/8/29) 38位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 39位 統合失調症患者の突然死、その主な原因は (2014/4/18) 40位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 41位 帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ (2014/5/26) 42位 慢性のかゆみ、治療改善に有用な因子とは? (2014/7/1) 43位 女性の顔の肝斑、なぜ起きる? (2014/5/8) 44位 DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet (2014/7/30) 45位 駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM (2014/4/23) 46位 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は (2014/10/30) 47位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 48位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 49位 世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見 (2014/10/17) 50位 円形脱毛症とビタミンDに深い関連あり (2014/4/10) 51位 不眠の薬物療法を減らすには (2014/7/23) 52位 オメプラゾールのメラニン阻害効果を確認 (2014/11/6) 53位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 54位 ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM (2014/10/15) 55位 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット (2014/3/17) 56位 COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か (2014/1/13) 57位 座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか (2014/5/12) 58位 PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet (2014/8/22) 59位 気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ (2014/3/17) 60位 血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet (2014/6/19) 61位 マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ (2014/2/21) 62位 機能性便秘へのプロバイオティクスの効果 (2014/8/14) 63位 超高齢の大腸がん患者に手術は有用か:国内での検討 (2014/2/14) 64位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 65位 乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet (2014/3/31) 66位 75歳以上でのマンモグラフィ検診は有効か (2014/8/11) 67位 大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA (2014/1/23) 68位 「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも (2014/5/13) 69位 食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ (2014/4/28) 70位 心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet (2014/9/19) 71位 薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet (2014/3/24) 72位 ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超 (2014/8/21) 73位 認知症にスタチンは有用か (2014/7/25) 74位 RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ (2014/11/20) 75位 腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet (2014/8/6) 76位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 77位 うつになったら、休むべきか働き続けるべきか (2014/9/16) 78位 英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ (2014/10/1) 79位 総胆管結石疑い 術前精査は必要?/JAMA (2014/7/21) 80位 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン (2014/10/8) 81位 前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ (2014/3/10) 82位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 83位 高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ (2014/6/16) 84位 乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet (2014/2/27) 85位 Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM (2014/8/28) 86位 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か (2014/8/15) 87位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 88位 肩こりは頚椎X線で“みえる”のか (2014/3/19) 89位 地中海式ダイエットと糖尿病予防 (2014/4/7) 90位 閉塞性睡眠時無呼吸、CPAP vs. 夜間酸素補給/NEJM (2014/6/26) 91位 揚げ物は肥満遺伝子を活性化する?/BMJ (2014/4/3) 92位 6.5時間未満の睡眠で糖尿病リスク上昇 (2014/9/4) 93位 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 (2014/3/14) 94位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 95位 肥満→腰痛のメカニズムの一部が明らかに (2014/8/8) 96位 低炭水化物食 vs 低脂肪食 (2014/8/7) 97位 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは (2014/3/21) 98位 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか (2014/7/2) 99位 血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet (2014/8/20) 100位 小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ (2014/8/21) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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マクロライドと心臓死リスクの関連/BMJ

 デンマーク住民を対象とした大規模コホート研究から、クラリスロマイシン使用と心臓死増大との有意な関連が、とくに女性の使用において見つかったことが、Statens Serum Institute社のHenrik Svanstrom氏らにより報告された。同リスクの増大は、ロキシスロマイシン使用ではみられなかったという。マクロライド系抗菌薬はQT間隔を延長するため、致死的不整脈リスクを増大する可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「今回の所見を臨床での意思決定に取り入れる前に、マクロライド系抗菌薬の広範投与について独立集団で確認を行うことが優先すべき課題である」と提言している。BMJ誌オンライン版2014年8月19日号掲載の報告より。クラリスロマイシン、ロキシスロマイシンについて心臓死との関連を評価 研究グループは、マクロライド系抗菌薬の心臓死リスク増大との関連について、クラリスロマイシンとロキシスロマイシンについて評価を行った。 1997~2011年の40~74歳のデンマーク成人コホートを対象とした。クラリスロマイシンによる7日間治療コースを受けた16万297例と、ロキシスロマイシンによる同治療を受けた58万8,988例、およびペニシリンVの同治療を受けた435万5,309例の計510万4,594例が解析に含まれた。 主要アウトカムは、ペニシリンVと比較したクラリスロマイシンおよびロキシスロマイシンと、心臓死リスクとの関連であった。サブグループ解析として、性別、年齢、リスクスコア、マクロライド系薬を代謝するCYP3A阻害薬併用の別による検討も行った。ロキシスロマイシンではリスク増大がみられず 観察された心臓死は285例だった。 ペニシリンV使用と比較して、クラリスロマイシン使用では有意な心臓死リスク増大がみられ(発生率は1,000人年当たり2.5例vs. 5.3例)、補正後率比は1.76(95%信頼区間[CI]:1.08~2.85)だった。一方、ロキシスロマイシン使用では有意な増大はみられなかった(発生率2.5例、補正後率比1.04、95%CI:0.72~1.51)。 また、クラリスロマイシン使用でみられたリスク増大は、女性で顕著であると断定できた(補正後率比:女性2.83、男性1.09)。 ペニシリンV使用との比較による、クラリスロマイシン使用とロキシスロマイシン使用の補正後リスク絶対差は、コース治療100万例につき心臓死がクラリスロマイシン37例(95%CI:4~90例)に対し、ロキシスロマイシン2例(同:-14~25例)だった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第11回

第11回:アジスロマイシン(AZM)とレボフロキサシン(LVFX)は死亡・不整脈リスクを増加する監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 臨床ではさまざまな抗菌薬が使われており、耐性菌の増加が指摘されています。それに加え、抗菌薬による副作用についても十分注意する必要があります。とくにマクロライド系抗生物質は、QT時間延長、torsades de pointes、および多形性心室頻拍を含む心臓不整脈リスクを増加させることが知られています1) 2) 3)。今回新たに発表された論文をご紹介します。 以下、本文 Annals of Family Medicine 3-4月号4)より1.目的AZMの使用はハイリスク患者の死亡リスク増大に関連があるが、若年~中年成人での関連ははっきりしない。食品医薬品安全庁(FDA)は「AZMにはLVFXに類似したリスクがある」という声明を含む公的な警鐘を行った。今回、AZMまたはLVFXを服用した場合、ABPCの服用と比較して心血管死および不整脈のリスクを増大するという仮説を検証するため、米国の退役軍人に後ろ向きコホート研究を実施した。2.方法1999年9月~2012年4月までの期間、退役軍人局で AMPC(AMPC/CVA含む)、AZM、またはLVFXを投与された米国退役軍人の外来患者をカルテから抽出。後ろ向きに調べたコホート研究。ABPC使用者は97万9,380例、AZM使用者は59万4,792例、LVFX使用者は20万1,798例。AZMはおおむね5日間、ABPCとLVFXはおおむね10日間以上投与された。3.結果既往歴、患者背景はほぼ同様であり、抗菌薬が投与されたのは耳鼻咽喉感染症、呼吸器感染症に多かったが、とくに泌尿生殖器感染症にはLVFXが使用されている傾向があった。ABPCを投与された患者と比較して、AZM投与の患者では内服開始1~5日間で死亡リスクが1.48倍(95%CI、1.05~2.09)、重症不整脈のリスクが1.77倍(95% CI、1.20~2.62)と有意にリスクが増大した。内服開始後6~10日間における統計学的有意差は認めなかった。同様にABPCを投与された患者と比較して、LVFX投与の患者は内服開始1~5日間で死亡リスクが2.49倍(95% CI、1.7~3.64)、深刻な不整脈のリスクが2.43倍(95% CI、1.56~3.79)と大きく、内服開始後6~10日間でも死亡リスク1.95倍(95% CI、 1.32~2.88)、不整脈リスクが1.75倍(95% CI、1.09~2.82)と有意差があった。4.結論ABPCと比較してAZMは内服開始1~5日間で統計学的に有意な死亡、不整脈の増加をもたらしたが、内服開始後6~10日では有意差がなかった。LVFXは10日間を通してリスクの増大があった。処方決定の際には抗菌薬のリスクと利益が十分考慮されるべきで、AZM、LVFX以外の抗菌薬の選択肢もありうる。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Mosholder AD et al. N Engl J Med. 2013; 368:1665-1668. 2) Svanström H et al. N Engl J Med. 2013; 368:1704-1712. 3) WA Ray et al. N Engl J Med. 2012; 366: 1881-1890. 4) GA Rao. et al. Ann Fam Med. 2014; 12: 121-127.

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高齢肺炎入院患者へのアジスロマイシン、心イベントへの影響は?/JAMA

 高齢の肺炎入院患者へのアジスロマイシン(商品名:ジスロマックほか)使用は他の抗菌薬使用と比較して、90日死亡を有意に低下することが明らかにされた。心筋梗塞リスクの増大はわずかであった。肺炎入院患者に対して診療ガイドラインでは、アジスロマイシンなどのマクロライド系との併用療法を第一選択療法として推奨している。しかし最近の研究において、アジスロマイシンが心血管イベントの増大と関連していることが示唆されていた。米国・VA North Texas Health Care SystemのEric M. Mortensen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で、JAMA誌2014年6月4日号掲載の報告より。65歳以上入院患者への使用vs. 非使用を後ろ向きに分析 研究グループは、肺炎入院患者におけるアジスロマイシン使用と、全死因死亡および心血管イベントの関連を明らかにするため、2002~2012年度にアジスロマイシンを処方されていた高齢肺炎入院患者と、その他のガイドラインに則した抗菌薬治療を受けていた患者とを比較した。 分析には、全米退役軍人(VA)省の全VA急性期治療病院に入院していた患者データが用いられた。65歳以上、肺炎で入院し、全米臨床診療ガイドラインに則した抗菌薬治療を受けていた患者を対象とした。 主要評価項目は、30日および90日時点の全死因死亡と、90日時点の不整脈、心不全、心筋梗塞、全心イベントの発生とした。傾向スコアマッチングを用い、条件付きロジスティック回帰分析で既知の交絡因子の影響を制御した。使用患者の90日死亡オッズ比は0.73 対象患者には118病院から7万3,690例が登録され、アジスロマイシン曝露患者3万1,863例と非曝露の適合患者3万1,863例が組み込まれた。適合群間の交絡因子について有意差はなかった。 分析の結果、90日死亡について、アジスロマイシン使用患者について有意な低下が認められた(曝露群17.4%vs. 非曝露群22.3%、オッズ比[OR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.70~0.76)。 一方で曝露群では、有意なオッズ比の増大が、心筋梗塞について認められた(5.1%vs. 4.4%、OR:1.17、95%CI:1.08~1.25)。しかし、全心イベント(43.0%vs. 42.7%、1.01、0.98~1.05)、不整脈(25.8%vs. 26.0%、0.99、0.95~1.02)、心不全(26.3%vs. 26.2%、1.01、0.97~1.04)についてはみられなかった。 結果について著者は、「肺炎入院患者に対するアジスロマイシン使用は、リスクよりも有益性が上回る」とまとめている。

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COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か

 1年間マクロライド系抗菌薬の長期療法を行うことでCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪リスクは減少するが、聴力の低下やマクロライド系耐性菌が増えるリスクもあることが米国・テンプル大学病院のFrederick L. Ramos氏らによって報告された。Current Opinion in Pulmonary Medicine誌オンライン版2013年12月28日の掲載報告。 COPDの増悪は有害事象と関連しているため、その予防は重要である。最近の研究からマクロライドの長期療法はCOPDの増悪リスクを減少させることがわかっている。そこで、COPDの増悪抑制に対するマクロライド系抗菌薬の長期療法の効果を検討した研究のうち、より質の高いエビデンスを選定し、再評価を行った。この再評価では、マクロライド系抗菌薬の長期療法と健康関連QOL、喀痰細菌、耐性状況、炎症性マーカー、肺機能、費用便益分析の観点からも検討を加えた。 通常の治療に加え、エリスロマイシンまたはアジスロマイシンが1年間投与されていた患者を対象とした2つの質の高い無作為化プラセボ対照試験では、COPDが増悪するまでの期間は長く、頻度も低いことがわかった。その一方で、これらの患者では聴力の低下が多く認められ、マクロライド系耐性菌も多いことがわかった。

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Dr.倉原の 喘息治療の不思議:テオフィリンとコーヒーの関係って?

はじめにテオフィリンは、1888年にドイツ人の生物学者であるアルブレヒト・コッセルが茶葉から気管支拡張作用のある物質を抽出したことから開発が始まりました。テオフィリン、アミノフィリンなどのキサンチン誘導体の作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害による細胞内cAMPの増加、アデノシン受容体拮抗作用、細胞内カルシウムイオン分布調節による気管支拡張作用、ヒストン脱アセチル化酵素を介した抗炎症作用などの説がありますが、いまだにそのすべては解明されていません。そんな難しいことはさておき、キサンチン誘導体は主に喘息に対して使用されます。慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対しても有効と考えられていますが、欧米諸国ではその効果に懐疑的である医師が多く、日本ほど汎用されていません。Town GI. Thorax. 2005 ;60:709.日本ではテオフィリンは主に長期管理薬として、アミノフィリンは主に発作時の点滴として使われているのが現状です。これらのうち、とくにテオフィリン徐放製剤の処方頻度が高いと思います。当院は他院から紹介される患者さんが多いため、閉塞性肺疾患の患者さんの3割程度はテオフィリン徐放製剤をすでに内服している印象があります。テオフィリンに構造が近いカフェインは、昔から喘息に効果的であると報告されています。Wikipediaによれば、1850年頃には認識されていたようです(大規模な臨床試験はありませんでした)。イギリスのヘンリー・ハイド・サルターが1860年に書いた『On Asthma : Its Pathology and Treatment』の中にコーヒーが気管支喘息に有効であるという記載があります。また、ある地域では小児喘息に対してコーヒーが多用されたという歴史もあるそうです。Sakula A. Thorax. 1985 ; 40: 887–888.私たち若手呼吸器科医にとっては、1980年代にCHEST誌に立て続けに報告された、コーヒーが喘息に対して有効であるという論文が有名です。Gong H Jr, et al. Chest. 1986 ;89:335-342.Pagano R, et al. Chest. 1988;94:386-389.ただ、実臨床で喘息患者さんとコーヒーの関連を意識する状況は皆無です。コーヒー好きにはキサンチン誘導体は禁忌?しかし、呼吸器科を勉強したことがある人ならば「コーヒーを飲んでいる患者さんには、キサンチン誘導体は投与しない方がよい」という格言を一度は聞いたことがあるはずです。これは「テオフィリン中毒」を惹起するからだといわれています。テオフィリンの血中濃度が20~30μg/mLを超え始めると、嘔吐、下痢、頻脈といった症状があらわれることがあります(急性と慢性の中毒で異なる動態を示すのですが詳しいことは割愛します)。重症のテオフィリン中毒になると、痙攣や致死的不整脈をきたすことがあります(図)。高齢者のテオフィリン中毒の場合、抑うつ症状と間違えられることがあるため、怪しいと思ったら必ずテオフィリンの血中濃度を測定してください。Robertson NJ. Ann Emerg Med. 1985;14:154-158.画像を拡大する図. テオフィリン血中濃度と中毒域ちなみに私は呼吸器内科医になってまだ5年しか経っていませんが、有症状のテオフィリン中毒は1例しか診たことがありません。かなりまれな病態だろうと思います。諸説ありますが、カフェインの致死量は約10g程度だろうと考えられています。コーヒー1杯には50 mg、多くて200 mgくらいのカフェインが含まれています。そのため、単純計算では濃いコーヒーならば50杯ほど服用すれば、致死的になりうるということになります。ただし、上記のGongらの報告によればかなり短時間で飲み干さないとダメそうです。どんぶり勘定ですが、1杯あたり30秒~1分くらいの速度で飲み続けると危険な感じがします。わんこそばではないので、そんなコーヒーを次々に飲み干す人はいないと思いますが……。テオフィリンを定期内服している患者さんでは、アミノフィリンの点滴投与量は調節しなければならないことは研修医にとっても重要なポイントです。また、喘息発作を起こす前後にコーヒーを大量に飲んだ患者さんの場合でも同様に、アミノフィリンの点滴は避けたほうがよさそうです。ただし、致死的なテオフィリンの急性中毒に陥るには、想定している血中濃度よりもかなり高いポイントに到達する必要があるのではないかという意見もあります。私自身キサンチン誘導体とカフェインの関連についてあまり気にしていなかったのですが、今年のJAMAから出版された「ビューポイント」を読んで、少し慎重になったほうがよいのかもしれないと感じました。5,000の司法解剖のうち、カフェイン血中濃度10μg/mLを超えるものが1%程度にみられたとのこと。これはカフェイン含有エナジードリンク(コーヒーよりもカフェイン濃度が多い)に対する警鐘なので、一概にコーヒーがよくないと論じているわけではありませんが。Sepkowitz KA. JAMA. 2013;309:243-244.おわりに循環器科医がジギタリスの投与に慎重になるのと同じように、呼吸器科医はキサンチン誘導体の投与に慎重な姿勢をとっています。それはひとえに治療域と中毒域が近接しているからにほかなりません。高齢や肥満の患者さん、マクロライド系・ニューキノロン系抗菌薬を内服している患者さんではテオフィリンの血中濃度が上昇することが知られているため、なおさら注意が必要です。カフェインが含まれている飲料には、コーヒーやエナジードリンク以外にも、緑茶や紅茶があります。もちろんお茶にはそこまで多くのカフェインは含まれていませんが、キサンチン誘導体とカフェインの関連については注意してもし過ぎることはありません。今後の報告に注目したいところです。

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予防的なマクロライド系抗菌薬の投与はCOPD増悪を抑制するのか?

 マクロライド系抗菌薬の予防的投与はCOPD増悪を抑制する有効なアプローチであることがマイアミ大学のElie Donath氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年6月11日号の掲載報告。 マクロライド系抗菌薬は抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用など、さまざまな特性を有しており、COPDの増悪抑制に対して独特な利点を有している。近年、マクロライド系抗菌薬の予防的投与がCOPD増悪のリスクを低減させるかに関する研究が注目を集めているが、これら最近の知見が先行研究の知見にどの程度当てはまるかについてはほとんどわかっていない。 本研究の目的は、呼吸器関連のメタアナリシスから、COPD増悪の抑制に対するマクロライド系抗菌薬の予防的投与がコンセンサスのとれるものかを評価することである。 EMBASE、コクラン、Medlineのデータベースから関連のあるランダム化比較試験を検索し、6件のランダム化試験を同定した。プライマリエンドポイントはCOPDの増悪発生率であり、セカンダリーエンドポイントは全死亡、入院率、有害事象、少なくとも1回以上のCOPD増悪を経験する可能性であった。 主な結果は以下のとおり。・プラセボと比較してマクロライド系抗生物質を投与した群では、COPD増悪の相対リスクが37%減少していた(RR:0.63、95%信頼区間[CI]: 0.45~0.87、p=0.005)。・入院の相対リスクは21%減少していた(RR: 0.79、95%信頼区間[CI]: 0.69~0.90、p=0.01)。・少なくとも1回以上の増悪を起こす相対リスクは68%減少していた(RR :0.34、95%信頼区間[CI]: 0.21~0.54、p=0.001)。・マクロライド系抗生物質を投与した群では、全死亡の減少傾向や有害事象の増加傾向が認められたが、統計学的な有意差はみられなかった。 なお、今回の研究において、有害事象報告に一貫性が欠けていた点やメタアナリシス間で臨床的、統計学的に不均一性があった点についても著者は言及している。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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非CF性気管支拡張症への長期低用量エリスロマイシン、急性増悪を抑制/JAMA

 オーストラリア・メーター成人病院のDavid J. Serisier氏らによる無作為化試験の結果、非嚢胞性線維症(non-CF)性気管支拡張症患者において、低用量エリスロマイシンの長期投与はプラセボと比較して、わずかではあるが有意に急性増悪を抑制することが報告された。一方で耐性菌の増大も確認された。これまでエリスロマイシンのようなマクロライド系抗菌薬は、non-CF気管支拡張症の臨床アウトカムを改善する可能性が示唆され、一方で耐性菌のリスクについて明らかではなかった。JAMA誌2013年3月27日号掲載の報告より。1日2回400mgを12ヵ月間投与しプラセボと比較 研究グループは、non-CF気管支拡張症で急性増悪を繰り返す患者に対する、12ヵ月間の低用量エリスロマイシン(商品名:エリスロシン)投与(1日2回400mg)について、臨床的有効性と抗菌薬耐性発生に関するコストを評価することを目的とした。 2008年10月~2011年12月の間に、大学病院およびその他医療機関の呼吸器専門医、また公共ラジオ広告を通じて被験者を募り、12ヵ月間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。被験者は、現在非喫煙で、試験参加前年に感染性の急性増悪を2回以上発症していたオーストラリア人患者を適格とした。 主要アウトカムは、事前規定のプロトコルに基づく肺の急性増悪(PDPEs)の患者ごとの年間平均発生率であった。副次アウトカムは、マクロライド耐性共生口腔連鎖球菌、肺機能などであった。耐性菌増大についても確認 679例がスクリーニングを受け、117例が無作為化され(プラセボ群58例、エリスロマイシン群59例)、107例が試験を完了した。 結果、エリスロマイシン群ではPDPEsの有意な抑制が、全体においても、事前規定したベースラインでの緑膿菌気道感染症サブグループにおいても認められた。全体では、各群の年間患者ごとの発生率はエリスロマイシン群平均1.29[95%信頼区間(CI):0.93~1.65]vs.プラセボ群1.97(同:1.45~2.48)であり、発生率比0.57(同:0.42~0.77)と有意差が認められた(p=0.003)。サブグループでは、両群差は平均1.32(95%CI:0.19~2.46)であった(p=0.02、相互作用検定試験の結果ではp=0.18)。 またエリスロマイシンはプラセボと比較して、24時間喀痰産生を減少し[群間差の中央値:4.3g、四分位範囲(IQR):1~7.8、p=0.01]、肺機能低下を減弱した(FEV1の気管支拡張薬投与後の変化の平均絶対差予測値:2.2%、95%CI:0.1~4.3、p=0.04)。 一方で、エリスロマイシン群では、マクロライド耐性共生口腔連鎖球菌保菌率の増大が認められた[平均変化値:27.7%(IQR:0.04~41.1)vs. 0.04%(同:-1.6~1.5)、格差:25.5%(IQR:15.0~33.7%)、p<0.001]。

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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の感染増悪を抑制/JAMA

 非嚢胞性線維症性(non-CF)の気管支拡張症の維持療法として、マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)の12ヵ月間毎日投与法が有用なことが、オランダ・アルクマール医療センターのJosje Altenburg氏らが実施したBAT試験で示された。気管支拡張症では、小~中径の気管支にX線画像上特徴的な病的拡張と粘膜肥厚を認め、気管支壁の構造的異常により下気道クリアランスが低下して慢性的な細菌感染や炎症を来すという悪循環を呈する。マクロライド系抗菌薬は嚢胞性線維症やびまん性汎細気管支炎に対する効果が示されているが、non-CF気管支拡張症にも有効な可能性が示唆されている。JAMA誌2013年3月27日号掲載の報告。マクロライド系抗菌薬維持療法の有効性を無作為化試験で評価 BAT(Bronchiectasis and Long-term Azithromycin Treatment)試験は、成人のnon-CF気管支拡張症に対するマクロライド系抗菌薬による維持療法の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 対象は、前年に下気道感染症に3回以上罹患し抗菌薬治療を受けた18歳以上のnon-CF気管支拡張症の外来患者とした。これらの患者が、アジスロマイシン250mg/日を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、12ヵ月の治療が行われた。 1次エンドポイントは12ヵ月の治療期間中に感染増悪を来した患者数とし、2次エンドポイントは肺機能、喀痰培養、炎症マーカー、有害事象、QOLなどであった。治療期間中の感染増悪率:46 vs 80% 2008年4月~2010年9月までにオランダの14施設から83例が登録され、アジスロマイシン群に43例(平均年齢59.9歳、女性63%)、プラセボ群には40例(64.6歳、65%)が割り付けられた。 治療終了時に感染増悪を認めた患者数中央値はアジスロマイシン群が0例、プラセボ群は2例であった(p<0.001)。治療期間中に1回以上の感染増悪を来した患者数中央値はアジスロマイシン群が20例(46%)、プラセボ群は32例(80%)であった[ハザード比(HR):0.29、95%信頼区間(CI):0.16~0.51]。 混合モデル解析では、予測値に対する1秒量の経時的な変化に両群間で差を認め、アジスロマイシン群では3ヵ月ごとに1.03%ずつ上昇したのに対し、プラセボ群は0.10%ずつ低下した(p=0.047)。 消化管の有害事象の発生率はアジスロマイシン群が40%と、プラセボ群の5%に比べ高頻度であり、腹痛の相対リスクが7.44(95%CI:0.97~56.88)、下痢の相対リスクは8.36(95%CI:1.10~63.15)であったが、治療の中止を要する患者はいなかった。 薬剤感受性試験では、アジスロマイシン群(20例)のマクロライド系抗菌薬耐性率は88%(53/60例)と、プラセボ群(22例)の26%(29/112例)に比べ有意に高かった(p<0.001)。 治療終了時のQOLはアジスロマイシン群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(p=0.046)。 著者は、「non-CF気管支拡張症の成人患者に対するアジスロマイシン12ヵ月投与はプラセボに比べ感染増悪率が良好であった」とまとめ、「感染増悪の抑制がQOLの改善をもたらした可能性があり、生存への良好な影響も期待されるが、薬剤耐性の影響を考慮する必要がある」と指摘している。

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ポンペ病〔Pompe Disease〕

1 疾患概要■ 定義ポンペ病(OMIM232300)は糖原病II型(GSD-II)であり、1932年ポンペにより報告された。ポンペ病はライソゾームに局在する酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の酵素欠損によりライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積する。■ 疫学遺伝形式として、常染色体劣性遺伝形式をとり、頻度は約4万人に1人といわれている。■ 病因ポンペ病では酸性α-グルコシダーゼの酵素欠損により、ほぼすべての臓器にグリコーゲンが蓄積する。肝臓、筋肉、心臓、消化器系の平滑筋、膀胱、腎臓、脾臓、血管、シュワン細胞などの細胞、組織に蓄積する。内耳の絨毛にも蓄積するために難聴も呈する。肥大型心筋症は、乳児型のポンペ病では特徴的な症状である。骨格筋の組織変化は、筋の種類、部位によりさまざまで、グリコーゲンの蓄積の程度、障害度は異なる。病初期は小さい空胞が認められ、徐々にリポフスチン、ミトコンドリア膜などが大量に蓄積し、オートファゴゾームが形成される。とくにfast-twitch type 2線維に多くみられる。組織の線維化に伴い、年齢と共に二次的な組織変化を認め、酵素治療しても不可逆的変化を来す。オートファゴゾーム内にグリコーゲンが大量に蓄積している。■ 症状ポンペ病の発症は、患者により異なり、0~60代までいずれの年齢にも発症する。臨床的には(1)乳児型、(2)遅発型(小児型、成人型)に分類される(表1)。画像を拡大する1)乳児型通常、患児は生後1.6~2ヵ月で哺乳力の低下、発育障害、呼吸障害、筋力低下などの症状を呈し、発症する。平均診断年齢は生後4~5ヵ月である(図1)。心肥大が病初期より著明であり(図2)、心エコー上心筋の肥大、心電図ではhigh voltage、short P-R intervalなどを呈する。年齢とともに運動発達の遅れが著明となり、頸定も難しく、寝返り、座位もできない。腱反射の低下、舌が大きく、肝臓も中等度に腫大している。酵素補充療法を施行しないと、通常は平均6~8.7ヵ月で死亡する。1歳を超えて生存する患者は少ない。画像を拡大する画像を拡大する2)遅発型患者の発症年齢は残存酵素活性により異なる。生後1歳頃から62歳まで報告されている。筋力低下、歩行障害、朝の頭痛、特徴的な上ずった言葉、顔面筋の萎縮、呼吸障害、ガワーズ徴候などが比較的初期症状である(図3)。主に骨格筋、呼吸筋、舌筋、横隔膜筋、四肢の筋がさまざまな程度で障害を受ける。心筋を障害するタイプは、小児型といわれる非定形型のタイプで障害する。患者は徐々に呼吸障害、構音障害、歩行障害が強くなり、人工呼吸器の装着、車いす状態となり、最後は呼吸障害、気胸、肺炎などを合併して死亡する。通常、発症年齢は27~36歳、診断年齢は34~41歳、人工呼吸器使用年齢は37~47歳、車いす使用年齢は平均41歳である。画像を拡大する■ 分類臨床的には、前述のように乳児型と遅発型(小児型、成人型)に分類される(表1)。■ 予後とくに乳児型では心筋、ならびに骨格筋など全身の組織に蓄積することにより、心肥大、筋力低下を来し、通常心不全を呈し2歳までには死亡する。遅発型では筋力低下に伴う歩行障害から呼吸筋麻痺を来し、人工呼吸器をつける状態で肺炎、気胸などを合併し、死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断としては、1)臨床的診断、2)病理学的診断、3)生化学的診断(酵素活性、バイオマーカーなど)、4)遺伝子診断などがある。1)臨床的診断(表2)特徴的な臨床症状のほか、乳児型では心電図、心エコー、血清CPKの高値を認める。遅発型でも筋力低下、血清CPK、アルドラーゼの高値を認める。心電図ではPR間隔の短縮、QRSの高電位などがみられる。筋CT、MRIは筋の萎縮、変性を評価するのに重要である。小児型、成人型では椎骨脳底動脈領域に動脈瘤を形成しやすい。画像を拡大する2)病理学的診断ポンペ病の病理学的診断は生検筋でのライソゾーム内でのグリコーゲンの蓄積に伴う空胞化で特徴づけられる。成人型ではあまり組織変化が顕著でない症例もある。乳児型では筋線維が大小不同、筋線維の崩壊、オートファジーの形成、ライソゾーム内に著明なグリコーゲンの蓄積、PAS陽性物質の蓄積が認められる。成人型でも軽度であるが、PAS陽性、酸性ホスファターゼ染色陽性である。電顕所見ではライソゾームが巨大化し、ミエリン様封入体の蓄積もみられる。筋原線維の断裂なども著明である。3)生化学的検査(1)酵素活性の測定酸性α-グルコシダーゼの活性は、人工基質である蛍光基質4- methylumbelliferone誘導体を用いて、患者乾燥濾紙血、あるいはリンパ球、皮膚線維芽細胞で測定して著明に低下する。確定診断として、リンパ球、皮膚線維芽細胞で測定する。患者の診断は比較的、酵素診断で可能であるが、正常者の中にはpseudodeficiencyもおり、正常値の20~40%の酵素活性を示す。日本人の頻度は多く、約50人に1人といわれ、遺伝子診断により患者と鑑別する。保因者は約50%の活性であり、pseudodeficiencyとの鑑別も重要である。出生前診断も可能である。(2)尿中のバイオマーカーの測定ポンペ病患者の尿では、オリゴサッカライドが排泄され、4糖を液体クロマトグラフィー、あるいはタンデムマスで測定する。4)遺伝子診断酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子は染色体の17q25.2-q25.3に局在する。GAA遺伝子は28kbでエクソンは20存在する。現在まで200以上の遺伝子変異が報告されている。最も多い変異は、乳児型あるいは成人型の一部でみられるc-32-13T>Gの遺伝子変異であり、欧米患者では約75%を占める。C1935C>Aは台湾に多く、cdel.525,delexon18変異はオランダなどのヨーローッパ諸国に多い。日本人ではc.1585_1589TC>GT、c1798C>Tが多くみられる変異として報告されている。pseudodeficiencyの遺伝子型としてはc1726G>A(p.G576S)、c2065 G>A (pE689K)が知られている。酵素活性は正常の20~40%程度を示す。頻度としては両者とも正常人の3~4%の頻度で見い出されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)最近、遺伝子工学により作成されたヒト型酵素アルグルコシダーゼα(商品名:マイオザイム)の酵素補充療法について、早期の治療による臨床症状の改善が報告されている。また、早期診断・治療のために新生児マス・スクリーニングの有用性が報告されている。ポンペ病の治療は、大きく分類して下記のような治療が挙げられる。1)対症療法●乳児型(1)心不全に対しての治療心筋の肥大、横隔膜の挙上などは呼吸障害の要因にもなる。心不全に対する強心薬、利尿薬などの投与、脱水に対する補液が必要。胸部X線、心エコーで病状をフォローする。(2)呼吸管理肺炎、細菌感染など起こしやすい。抗菌薬(マクロライド系)の投与、去痰薬の投与、排痰補助装置などのほか、必要に応じて酸素投与を行う。末期では人工呼吸器の装着をする。(3)嚥下障害に対する管理チューブ栄養などを行う。(4)リハビリテーション酵素補充療法とともに歩行訓練、四肢の運動などを補助する。(5)栄養管理嚥下できない患児に対しては、チューブ栄養、高蛋白食を基本として、高ビタミン、ミネラルを与える。●遅発型(1)呼吸管理初期のうちはタッピング、CPAP、人工呼吸管理など病状に応じて行う。呼吸状態を評価し、感染の予防、抗菌薬の投与、去痰薬の投与、CPAP、人工呼吸管理が必要。(2)嚥下障害の管理嚥下性肺炎の防止。(3)歩行障害に対しての管理歩行のためのリハビリ、装具の着装。(4)栄養管理高蛋白食、高ビタミン食、嚥下困難なときは刻み食、流動食。(5)感染症に対する管理感染症の管理、抗菌薬の投与。2)酵素補充療法酸性α-グルコシダーゼは、マンノース-6-リン酸あるいはIGF-IIレセプターを介して細胞内に効率良く取り込まれ、とくに肝臓、脾臓などの網内細胞に取り込まれる。しかし、心筋、あるいは骨格筋への取り込みは少ない。ポンペ病では、20mg/kgの高単位の酵素を投与することにより筋肉内に強制的に取り込みをさせている。早期治療した患者では著しい臨床症状の改善が認められている。Kishnaniは、乳児型ポンペ病(18例)において、52週の治療研究で95%の死亡率低下と侵襲的呼吸器装着を有意に低下させることができたと報告している。また、新生児マス・スクリーニングで発見され、生後1ヵ月以内に治療した患者では著明な成果が得られており、生存期間は、ほぼ正常な臨床経過を得ている。一方、遅発型の臨床試験では20mg/kg、2週間に1回の酵素補充療法により、6分間歩行ならびに呼吸機能の悪化を防ぐことができたと報告されている。ポンペ病の場合は、酵素に対する抗体産生により酵素治療に反応するgood responderあるいはpoor responderの症例が存在する。4 今後の展望1)シャペロン治療ファブリー病と同様にポンペ病患者の皮膚線維芽細胞レベルではN-butyldeoxynojirimycin(NB-DNJ)の添加により、一部の遺伝子変異のある患者で酸性α-グルコシダーゼ活性が50%以上、上昇する。しかし、いまだ臨床試験のレベルまでは達成していない。2)遺伝子治療レンチウイルスあるいはAAVベクターを用いてのin vivoポンペ病マウスでの遺伝子治療の成功例が報告されている。また、骨髄幹細胞へのex vivoでの遺伝子治療について、Lentiウイルスベクターを用いたポンペ病マウスへの治療に関しても報告されている。3)新生児スクリーニング乳児型のポンペ病では、とくに早期診断が治療と結びつき、重要と考えられる。台湾のChienらは20万6,088名の新生児を乾燥濾紙血を用いてマス・スクリーニングを行い、5名の患者を見出し、かつ生後1ヵ月以内に酵素補充療法を施行した結果、心拡大、筋に組織変化の改善を認め、いずれの症例も正常な発達ならびに呼吸障害を認めず、新生児スクリーニングの著明な成果を報告している。わが国でもパイロット的に新生児スクリーニングの開発が行われている。乳児型の早期診断、治療の重要性を示した貴重な成果と考えられる。5 主たる診療科小児科、神経内科、リハビリテーション科など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報日本ポンペ病研究会(医療従事者向け情報と一般利用者向けのまとまった情報)難病情報センター(医療従事者向け情報と一般利用者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポンペ病患者と家族の会1)Hirschhorn R, et al. Glycogen Storage Disease Type II: Acid-Alpha Glucosidase (Acid Maltase) Deficiency. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. NY: McGraw-Hill; 2001. p.3389-3420.2)Engel AG, et al. Neurology. 1973; 23: 95-106.3)Kishnani PS, et al. J Pediatr. 2006; 148: 671-676.4)衞藤義勝. ポンペ病(糖原病II型):診断と治療社.2009

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Dr.岩田の感染症アップグレード―抗菌薬シリーズ―

第4回「ST合剤とアミノグリコシドで腕を上げろ!」第5回「本当は危ない!ニューキノロンとマクロライド」特典映像「感染症Q&A」 第4回「ST合剤とアミノグリコシドで腕を上げろ!」ST合剤とアミノグリコシド・・・そう聞いてもあまりピンとこない方が多いかも知れません。確かにちょっとプロ向きの抗菌薬。どちらも副作用が多く、アミノグリコシドは血中濃度のモニターが必要です。しかし、少なくとも外来で無造作に出されているニューキノロンなどよりも重要な抗菌薬なのです。まずはこの二つがいかに有用な抗菌薬であるかを学んでください。そして、副作用など煩わしい面もありますが、その特徴的な“クセ”を掴んでしまえばそれほど怖いものではないことを知ってください。またこの二つの薬は、いかに感染症や抗菌薬について熟練しているかを計る手頃な試金石と言ってよいでしょう。是非、マスターして臨床力をアップグレードしてください !第5回「本当は危ない!ニューキノロンとマクロライド」タイトルを見て「えっ」と思った先生はご用心ください。例えばニューキノロン系のレボフロキサシンを、外来で熱のある患者さんに何のためらいもなく出していませんか?あるいは、慢性の咳患者に、マクロライド系のアジスロマイシンを“とりあえず”出していませんか? 実はこれらは全て間違った抗菌薬の使い方なのです。「おそらく現在使われているニューキノロンやマクロライドの8割くらいが間違った使われ方をされているんではないでしょうか」と岩田先生。副作用が少ないから、使い慣れているから、と言って漫然と薬を出してはいけません。 第5回ではニューキノロンとマクロライド、そして、マクロライドの親戚クリンダマイシンとテリスロマイシンの正しい使い方を明解に解説します。特典映像「感染症Q&A」番組に参加していただいた研修医の皆さんからの感染症についての質問に岩田先生が答える、一問一答形式のスペシャル番組。「肺炎を治療しても治らない」「偽膜性腸炎のマネジメントは?」「ドラッグフィーバーを考えるのはどんなとき?」「アミノグリコシドってやっぱり怖い」などなど、現場ならではの疑問に岩田先生が明解回答。明日からすぐに使える感染症マネージメントのノウハウを習得していただけるはずです。

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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の増悪を抑制:EMBRACE試験

 アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)は、嚢胞性線維症を原因としない気管支拡張症におけるイベントベースの増悪の予防治療として有効なことが、ニュージーランド・Middlemore病院(マヌカウ市)のConroy Wong氏らが実施したEMBRACE試験で示唆された。気管支拡張症は好中球性の気道炎症、慢性的な細菌感染、繰り返す肺の病態の増悪で特徴づけられ、大量の喀痰を伴う重篤な咳嗽や進行性の肺機能低下、QOL低下をきたし、死亡率の上昇をもたらす可能性がある。アジスロマイシンは抗炎症作用および免疫調節作用を有するマクロライド系抗菌薬で、嚢胞性線維症の病態の増悪を抑制することが示されている。Lancet誌2012年8月18日号掲載の報告。気管支拡張症に対する効果をプラセボ対照無作為化試験で評価EMBRACE(Effectiveness of Macrolides in patients with BRonchiectasis using Azithromycin to Control Exacerbations)試験は、非嚢胞性線維症に起因する気管支拡張症の治療において、アジスロマイシンは増悪率を低減して肺機能を増強し、健康関連QOLを改善するとの仮説の検証を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化試験。2008年2月12日~2009年10月15日までに、ニュージーランドの3施設に、抗菌薬治療を要する増悪の既往歴があり、高解像度CT検査で気管支拡張症と診断された18歳以上の患者が登録された。これらの患者が、アジスロマイシン500mgあるいはプラセボを週3日(月、水、金曜日)、6ヵ月間投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月の治療期間中のイベントベースの増悪率、気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)のベースラインからの変化、St George呼吸器質問票(SGRQ:0~100点で表し値が低いほど良好、4点以上の変化で臨床的に有意と判定)総スコアの変化の複合エンドポイントとした。増悪率が有意に改善、FEV1、SGRQ総スコアは改善せず141例が登録され、アジスロマイシン群に71例、プラセボ群には70例が割り付けられた。治療期間中の増悪率はアジスロマイシン群が0.59/人と、プラセボ群の1.57/人に比べ有意に改善した(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.26~0.54、p<0.0001)。拡張薬投与前FEV1は、アジスロマイシン群はベースラインから変化はなく、プラセボ群では0.04L低下したが、この差は有意ではなかった(群間差:0.04L、95%CI:-0.03~0.12、p=0.251)。さらに、SGRQ総スコアの変化についても、アジスロマイシン群は5.17点の低下、プラセボ群は1.92点の低下で、有意差は認めなかった(群間差:-3.25点、95%CI:-7.21~0.72、p=0.108)。著者は、「6ヵ月間のアジスロマイシン治療は、増悪率の低下に加え、初回増悪までの期間もプラセボ群に比し有意に延長し、これらの改善効果は治療終了後6ヵ月の時点でも継続していた。SGRQの症状関連項目の改善効果も確認された。それゆえ、アジスロマイシンは1回以上の増悪歴のある非嚢胞性線維症性気管支拡張症における増悪の予防治療の新たな選択肢である」と結論し、「長期治療の場合は、マクロライド系抗菌薬への耐性の発現を十分に考慮して患者を選択すべきである」と指摘している。

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抗菌薬と心血管死リスクとの関連

抗菌薬と心血管死リスクとの関連について、米国・ヴァンダービルト医科大学のWayne A. Ray氏らによる検討の結果、治療1~5日目において、マクロライド系のアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)使用患者は、ニューキノロン系のシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)より有意に増加したがレボフロキサシン(商品名:クラビットほか)とは有意差は認められなかったことが明らかにされた。Ray氏らは「5日間の治療中、アジスロマイシン服用者の心血管死亡の絶対数増加はわずかであるが、基線での心血管疾患リスクが高い患者では顕著に増加した」と結論している。NEJM誌2012年5月17日号掲載報告より。テネシー州のメディケイドコホートを対象に検討研究グループは、薬剤の心臓に与える短期的影響に関連した死亡リスクの上昇を検出するようデザインされた、テネシー州のメディケイドコホートを対象に調査を行った。コホートは、心血管系以外の重篤な疾患で入院した患者、および入院中-入院直後の人・時間を除外した1992~2006年の間のアジスロマイシン服用群34万7,795処方と、傾向スコアマッチングした対照群として、抗菌薬非服用群139万1,180例(対照期間中マッチング例)、ペニシリン系のアモキシシリン(商品名:サワシリンほか)服用群134万8,672処方、シプロフロキサシン服用群26万4,626処方とレボフロキサシン服用群19万3,906処方が含まれた。主要エンドポイントは、心血管死亡と全死因死亡とした。絶対数増加はわずか、心血管疾患リスクが最も高い群で顕著に増加結果、5日間の治療中、アジスロマイシン服用群は、抗菌薬非服用群と比べて、心血管死亡リスクの上昇(ハザード比:2.88、95%信頼区間:1.79~4.63、P<0.001)、全死因死亡リスクの上昇(同:1.85、1.25~2.75、P=0.002)が認められた。同一期間中に、アモキシシリン服用群の死亡リスクでは上昇が認められなかった。アモキシシリン群と比べてアジスロマイシン群は、心血管死亡(同:2.49、1.38~4.50、P=0.002)と全死因死亡(同:2.02、1.24~3.30、P=0.005)のリスク上昇が認められ、100万治療当たり心血管死は約47件増加すると推定された。一方で、心血管疾患リスクスコア別にみると、最も高い十分位群(スコア区分1~5、6~9、10のうちのスコア10該当群)での推定値が約245件増加と最も顕著であった。スコア1~9では9件増加、6~9では45件増加であった。(朝田哲明:医療ライター)

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プライマリ・ケア医の抗菌薬使用減に有効な多面的教育プログラムが開発

英国・カーディフ大学プライマリ・ケア部門教授のChristopher C Butler氏らは、プライマリ・ケアでの抗菌薬使用の減少を目的とした多面的教育プログラム「STAR」を開発、臨床実践ベースの無作為化対照試験の結果、その使用減少が認められ、その後の入院や再受診、コストの有意な増大は認められなかったことが報告された。プライマリ・ケアでの抗菌薬は、有益性がほとんどないことが立証されているにもかかわらず、過剰に処方され続け、患者は不必要な有害反応に曝露されており、耐性菌発生を招いていることが指摘されている。Butler氏らは、診断能力のトレーニングによって、抗菌薬処方を減らす可能性があるとしてプログラム開発を行った。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年2月2日号)掲載報告より。プログラム介入群と非介入群で無作為化試験Butler氏らが開発した教育プログラム「STAR(Stemming the Tide of Antibiotic Resistance)」は、多面的な内容(e-ラーニング、実際診療での経験学習と熟考を促す)で、局面に敏感となり(抗菌薬使用と耐性についてのデータに反応する)、以前に推奨されていた鑑別(使用について時間的な効率性を重視した診療戦略)を基本とする。その介入効果を検証するため、ウェールズと英国の68(GP)の診療所(患者約48万人のデータ)を対象に無作為化試験を行った。GPを、プログラムを受ける群(34ヵ所、介入群)と通常ケアを行う群(34ヵ所、対照群)に無作為化。無作為化前に試験への参加を了承していた医師は、介入群139人、対照群124人だった。解析は、68ヵ所全医師の診療データについて行われた。主要評価項目は、前年使用で補正後、介入後1年間の、全症例に対する抗菌薬使用件数(1,000診療・患者当たり)で、副次評価項目には、再受診、入院、費用などが含まれた。介入群の抗菌薬使用は年間4.2%減少結果、経口抗菌薬使用総計(1,000登録患者当たり)は、介入群で14.1件減った一方で、対照群は12.1件増加し、正味26.1件の差が生じていた。基線での使用について補正後、対照群と比較して介入群では、総経口抗菌薬使用の減少は年間4.2%(95%信頼区間:0.6~7.7)に上っていた(P=0.02)。使用減はペニシリナーゼ耐性ペニシリン(PRP)以外の全クラスの抗菌薬でみられ、個別にみると、フェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV、使用減:7.3%、95%信頼区間:0.4~13.7)とマクロライド系(同:7.7%、1.1~13.8)の減少が大きく有意であった。入院、再受診(7日以内の気道感染による)については介入群と対照群に有意差は認められなかった。プログラムにかかった平均費用は、2,923ポンド(4,572ドル)/診療所だった。一方で、対照群と比べた介入群の抗菌薬使用コスト減は、5.5%で、1つの平均的介入によって年間約830ポンドの削減効果に匹敵する。

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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mTOR阻害剤が腎細胞がんにもたらす可能性

2010年1月、mTOR阻害による抗悪性腫瘍剤としては日本初となる「エベロリムス(商品名:アフィニトール)」が承認を得た。ここでは、2月22日、アーバンネット大手町ビルにて開催された「mTOR阻害剤『アフィニトール』が腎細胞がん治療にもたらす可能性」と題するプレスセミナーをお届けする。帝京大学医学部泌尿器科学教室 主任教授 堀江重郎氏は、mTOR阻害剤の基礎から臨床治験まで広範にわたり講演した。<ノバルティス ファーマ株式会社主催> がん治療における新しい戦略無秩序な細胞増殖を繰り返すがんにおいて、その制御を失った細胞周期を停止させるのが従来の抗がん剤の作用機序であるが、さらに近年、がんそのものが自らを養う血管を新生させることから、そこをターゲットとする分子標的薬による治療が進んできている。そして新たにmTOR阻害剤など、無制限な細胞内の代謝もがん進行の要因となっている点に着目した治療戦略が、難治性がんへの福音となる可能性が強まってきた。mTORとは堀江氏はまず、mTORとその阻害剤について概説した。mTORとはマクロライド系抗生物質ラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞の分裂や成長、生存における調節因子である。その重要性を示唆する事実として、酵母からヒトにいたるまで95%以上相同な蛋白であるため、mammalian Target Of Rapamycin(=mTOR)と総称される。正常細胞においては、栄養素や成長因子、エネルギーといった「エサ」があると活性化し、エサのない状況ではいわば冬眠状態となっている。栄養素やその他増殖促進経路からのシグナル伝達を制御する役割から、糖尿病や生活習慣病への関与も報告されている。一方、mTOR阻害剤のアフィニトールやラパマイシンは、タクロリムスと同様の機序で免疫抑制効果を持つ。分子生物学的には、細胞周期をG1期で停止させることや、低酸素誘導因子(HIF※)の安定化および転写活性を抑制することが示されている。多くのがんでmTORシグナル伝達経路が調節不全を起こして常に活性化しており、mTOR阻害剤の抗腫瘍効果が臨床レベルでも検討されている。(※HIF:mTOR活性化や低酸素によって細胞内に蓄積し、血管新生や解糖系代謝を亢進させる。)昨年Natureで発表され話題となった、興味深い知見がある。ラパマイシン適量をマウスに投与したところ、加齢期であっても寿命延長効果が見られた。これはカロリー制限したサルの方が長寿命であったデータと同等と考えられる、と堀江氏は語った。また、がん患者を高カロリー摂取群とカロリー制限群に分けたところ、制限群の方が長生きしたという結果が複数出ており、これまでは切り離して考えられていた「がん」と「体内環境」の密接な関連に関心が寄せられている。がん細胞の代謝にも影響するmTOR阻害剤は、この流れに合致する薬剤といえる。 腎細胞がんわが国における腎がんの9割は腎細胞がんであり、好発年齢は50歳以降、男女比は約2:1である。年間で発症数は1万人を超えて増加傾向にあるとされ、約7千人が死亡する。寒冷地方に多く発症し、ビタミンD欠乏との関連が指摘されている。遺伝性にフォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)遺伝子が変異または欠失しているVHL症候群は120家系あり、遺伝性腎細胞がんを発症する割合は50%程度。根治的治療は手術で、StageⅣであってもなるべく切除した方が予後良好である。分子標的薬登場以前はサイトカイン療法しか薬物治療がなく、治療抵抗性のがんの一つである。 腎細胞がんとmTOR阻害剤堀江氏によると、腎細胞がん患者においてはmTORの上流蛋白Aktの過剰な活性化や、血中血管内皮増殖因子(VEGF)濃度の上昇が認められ、増殖シグナルが亢進している。加えて、mTORに至るシグナル経路を抑制する因子の変異・機能低下や、VHL遺伝子変異によるHIFの過剰産生が見られ、抑制シグナルの低下もある。正常ではVHLはがん抑制因子であってHIFを抑制しているが、腎がんの多くでは変異による不活化が起こっている。もともと腎臓は血管に富み、VHL変異で異常な血管が作られやすい。mTOR阻害剤は、このようにVHLが機能しない状況でもHIF合成を阻止する。また、VEGF-Aの産生も阻害し、結果として腫瘍細胞での血管新生を抑制する。このように、がん細胞の増殖抑制と血管新生阻害の抗腫瘍効果を併せ持つmTOR阻害剤のアフィニトールの、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(スニチニブまたはソラフェニブ)が無効となった進行性腎細胞がんを対象として有効性および安全性について検討した臨床試験がRECORD-1である。患者をBSC+アフィニトール群とBSC群に無作為割付した結果、アフィニトール群で無増悪生存期間が有意に延長し、抗腫瘍効果も示された。副作用発現は、対象患者が比較的PSが良好というバイアスはあるが、高グレードがあまり多くない印象があるとのことである。注意すべきものとして、アジア人に多い間質性肺疾患、免疫抑制による感染症、インシュリン抵抗性となるための高血糖、糖尿病の発症・増悪などが挙げられた。mTOR阻害剤の間質性肺疾患については、副腎皮質ホルモン剤への反応性が高いことが報告されている。堀江氏は、がんへの本質的なアプローチといえるmTOR阻害剤、アフィニトールが承認され、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後の進行性腎細胞がんの治療における期待が寄せられるとした。なおわが国では現在、乳がん、胃がん、悪性リンパ腫、膵内分泌腫瘍を対象とした、第Ⅲ相の国際共同治験に参加している。(ケアネット 板坂倫子)

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【書籍紹介】市中感染症診療の考え方と進め方-IDATEN感染症セミナー

日常診療で誰もが遭遇する市中感染症だが、医師は目の前の患者をどう診断し、治療していったらよいのか? 日本における臨床感染症診療と教育の普及・確立・発展を目的として設立された「IDATEN(日本感染症教育研究会)」メンバーが、そのプロセスをわかりやすく解説する。 主な内容第1章 市中感染症へのアプローチ  感染症診療の基本原則(青木 眞)  初期治療に反応しない場合の評価と治療のストラテジー(大野博司) 第2章 臨床でよく出遭う市中感染症のマネジメント  1.肺炎のマネジメント(岩渕千太郎)  2.細菌性髄膜炎のマネジメント(笹原鉄平)  3.皮膚・軟部組織感染症のマネジメント(大曲貴夫)  4.骨・関節・軟部組織感染症のマネジメント(岩田健太郎)  5.感染性心内膜炎のマネジメント(大曲貴夫)  6.胆道系感染症のマネジメント(矢野晴美)  7.急性下痢症のマネジメント(土井朝子)  8.尿路感染症のマネジメント(藤田崇宏)  9.急性腹症のマネジメント(岩田健太郎)  10.STI・骨盤内炎症性疾患のマネジメント(本郷偉元)  11.敗血症のマネジメント(大野博司)  12.急性咽頭炎・急性副鼻腔炎のマネジメント(上田晃弘)  13.深頸部感染症のマネジメント(具 芳明)  14.腹腔内感染症・腸管穿孔のマネジメント(大野博司) 第3章 臨床で重要な微生物  Introduction  グラム陽性球菌(山本舜悟)  グラム陰性桿菌(山本舜悟)  嫌気性菌(岩渕千太郎) 第4章 臨床で重要な抗菌薬  ペニシリン系抗菌薬(大野博司)  セフェム系抗菌薬(大野博司)  マクロライド系抗菌薬(大野博司)  キノロン系抗菌薬(大野博司)  判型 B5 頁 216 発行 2009年08月 定価 3,675円 (本体3,500円+税5%) ISBN978-4-260-00869-3  詳細はこちらへhttp://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=63002

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1回飲みきり型の経口抗菌薬 ジスロマックSRが4月新発売

ファイザー株式会社は、4月6日に15員環マクロライド系抗生物質製剤であるジスロマック(一般名:アジスロマイシン水和物)の新効能・新剤形・新用量医薬品として、経口懸濁液用徐放性製剤「ジスロマックSR成人用ドライシロップ2g」を発売すると発表した。ジスロマックSRは、耐性菌防止と服薬遵守の観点から、抗菌薬は十分量を使用し、短期間使用の実行を遂行することを目的に開発された1回飲みきり型の経口抗菌薬。咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、副鼻腔炎などの急性呼吸器感染症、淋菌・クラミジアによる性感染症をはじめ、皮膚感染症や歯性感染症など成人の急性感染症に広く適応を有する。今回新発売されるジスロマックSRは、海外では2005年6月以降、56ヵ国で承認されている。日本においては、2008年1月に厚生労働省へ承認申請を行い、2009年1月に製造販売承認を取得後、同年3月13日に薬価収載される予定とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2009/2009_03_12.html

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ジスロマックSRの製造販売承認を取得

ファイザー株式会社は21日、15員環マクロライド系抗生物質製剤であるジスロマック(一般名:アジスロマイシン)の新効能・新剤形・新用量として、経口懸濁液用の徐放性製剤「ジスロマックSR成人用ドライシロップ2g」の製造販売承認を取得したことを発表した。ジスロマックSRは、水で溶かして服用する1回飲みきり型の経口抗菌薬。咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、副鼻腔炎などの急性呼吸器感染症、淋菌・クラミジアによる性感染症をはじめ、皮膚感染症や歯性感染症など成人の急性感染症に広く適応を有する。同剤は、ジスロマックの現行製剤500mg(1日1回3日間投与)と比較して、投与後24時間のAUC(Area under the curve:薬物濃度-時間曲線下面積)は約3倍、最高血中濃度は約2倍と、投与初期により高い薬剤濃度が得られることにより、早い効果発現が期待できるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2009/2009_01_21_02.html

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