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抗凝固薬服用のまま可能な大腸ポリープ新治療法が有用~大阪国際がんセンター

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)の竹内洋司氏(消化管内科副部長)らの研究グループが、10mm未満の大腸ポリープに対し、電気を使わずにポリープを切除する「コールドスネアポリペクトミー」が、抗凝固薬を服用したままでも従来の治療法より出血が少なく、入院が不要で、治療時間が短いことを、多施設研究において世界で初めて証明した。この研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2019年6月16日号に掲載。 大腸ポリープの多くは、将来的に大腸がんの原因となり得るため、一般的に内視鏡切除が行われる。その際、通電して焼灼し、血液を凝固させながら切除する方法が従来は一般的であった。 近年、不整脈などの心臓疾患による血栓症を防ぐために、ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬を服用する患者が増加しているが、抗凝固薬を服用していると、ポリープ切除に伴う出血が増加する恐れがある。そのため、術前に服用を一時的に中止してヘパリンを点滴投与し、治療後に抗凝固薬を再開する「ヘパリン置換」が行われてきた。しかし、この処置は手順が煩雑であり、より簡便な方法が求められていた。 今回の研究では、抗凝固薬を服用し、10mm未満の大腸ポリープを有する患者182例が国内30施設から計184例が登録された。「ヘパリン置換+通電切除」群(90例)と、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群(92例)に無作為に割り付け、ポリープ切除から28日後に追跡調査を行い、各々の予後を検証した(2例が登録後に不参加)。主要評価項目は、ポリープ切除に関連した大出血の発生頻度であった。 その結果、「ヘパリン置換+通電切除」群では患者の12.0%で治療後に出血が見られたが(95%信頼区間[CI]:5.0~19.1)、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群では4.7%にとどまった(95%CI:0.2~9.2)。また、「ヘパリン置換+通電切除」群では5日程度の入院が必要で、ポリープの処置にも時間を要していたが、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群では、入院が不要で外来治療が可能であり、ポリープ切除にかかる平均処置時間は、約90秒から約60秒に短縮された。 今回の研究により、抗凝固薬を服用している患者の10mm未満の大腸ポリープであれば、服用を継続したままコールドスネアポリペクトミーによる切除のほうが治療後の経過が良いことがわかった。また本結果は、抗凝固薬を服用する患者だけでなく、服用しない患者とっても、コールドスネアポリペクトミーのメリットがあることを示すものである。

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内視鏡的大腸ポリープ切除術でS状結腸穿孔を来したケース

消化器最終判決判例時報 1656号117-129頁概要56歳男性、腹痛の精査目的で施行された注腸検査で、S状結腸に直径2cm大のポリープが発見された。患者の同意を得たうえで大腸内視鏡検査を施行し、問題のポリープを4回に分けてピースミールに切除した(病理結果はグループIII)。同日鎮痛薬と止血剤を処方されて帰宅したが、翌日になって腹痛、悪寒、吐き気、腹満感が出現し救急車で来院。腹部は板状硬であり、グリセリン浣腸を行ったが反応便はなく、腹部X線写真では大量の腹腔内遊離ガスが確認された。緊急開腹手術ではポリープ切除部位にピンホール大の穿孔がみつかった。詳細な経過患者情報既往症として2回にわたる膿胸手術歴のある56歳男性。時々腹痛があり、薬局で購入した漢方胃腸薬を服用していた経過1990年11月1日未明から継続していた腹痛を主訴として受診。急性胃腸炎もしくは便秘による腹痛と診断したが、がんの可能性を考慮して注腸検査を予定した。11月7日注腸検査でS状結腸に直径2cmの粗大結節状ポリープがみつかり、がん化している疑いもあるため、大腸内視鏡によりポリープを切除することを説明し、承諾を得た。11月9日13:15大腸内視鏡検査を施行し、S状結腸のポリープを4回に分けてピースミールに切除(病理結果はグループIII)。担当医師はジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)坐薬と止血剤を処方し、「大量の出血や坐薬を使っても軽減しない痛みがある時には来院するように」という説明とともに帰宅を指示した。検査後目の前がくらくらするためしばらく病院内で休息をとったのち、自転車を押して約50分後に帰宅した。11月10日通常通りの仕事に就く。15:00腹痛が出現し、吐き気、悪寒、腹満感も加わった。17:32救急車で来院。腹部は板状硬、グリセリン浣腸を行ったが反応便なし。さらに腹部X線写真を撮影したところ、腹部全体に及ぶほど大量の遊離腹腔ガスが確認され、ポリペクトミーをした部位の穿孔が強く疑われた。21:09緊急開腹手術開始。腹腔をあける際に電気メスの火花による小爆発あり。開腹すると腹膜翻転部より約15cmのS状結腸にピンホール大の穿孔があり、その周辺部は浮腫と電気焼灼による色調の変化がみられた。S状結腸の部分的切除と腹腔内洗浄を行い、ペンローズドレーンを2本留置して手術を終了した(結果的にがんはなし)。当事者の主張患者側(原告)の主張1.穿孔の原因担当医師の経験、技術が未熟なため腸管壁を深く傷つけ、手術のときかその翌日の浣腸時にS状結腸が穿孔した2.説明義務違反ポリープ切除術に際し、大腸内視鏡による検査の説明を受けただけで、ポリープ摘出術の説明までは受けておらず同意もしていない病院側(被告)の主張1.穿孔の原因ポリープ摘出術はスネアーに通電してポリープを焼灼するもので、局所の組織が比較的弱くなることは避けられず、腸内ガスの滞留しやすい患者の場合には実施個所に穿孔が生じることがあり得る。本件では開腹手術の際に電気メスの花火でガスの小爆発が生じたように慢性の便秘症であり、穿孔の原因は患者の素因によるものである2.説明義務違反大腸内視鏡検査でみつかったポリープはすべて摘出することが原則であり、検査実施前にもそのような説明は行った。大腸内視鏡の実施に同意していることはポリープ摘出手術にも同意していることを意味する裁判所の判断1. 穿孔の原因ポリープ摘出術の際の穿孔は、スネアーが深くかかりすぎて正常粘膜を巻き込んだ場合や、スネアーをかける位置が腸壁粘膜に近すぎる場合のように、術者の手技に密接に関連している。そして、手術後24時間以内に手術部位に穿孔が生じ腹膜炎を発症しているのであるから、穿孔はポリープ摘出手術に起因することは明らかである。2. 説明義務違反ポリペクトミーにあたっては、術中のみならず術後も穿孔の起こる危険性を十分認識し、当日患者を帰宅させる場合には、手術の内容、食事内容、生活上の注意をして万全の注意を払うべきである。にもかかわらず担当医師は出血や軽減しない痛みがある時には来院するように指示しただけであったため、患者は術後の患者としては危険な生活を送って穿孔を招来したものであるから、説明義務違反がある。原告側合計2,243万円の請求に対し、177万円の判決考察大腸内視鏡検査で発生する腸管穿孔は、はたしてやむを得ない不可抗力(=誰が担当しても不可避的に発生するもの)なのでしょうか、それとも術者の技術に大きく依存する人為的なものなのでしょうか。もちろん、ケースバイケースでその発生原因は異なるでしょうけれども、多くの場合は術者の技量に密接に関連したものであると思われるし、事実裁判例はもちろんのこと、訴訟にまでは発展せずに示談解決した場合でも医師が謝罪しているケースが圧倒的に多いため、もはや不可抗力という考え方には馴染まなくなってきていると思います。1. 大腸内視鏡挿入時に穿孔を来す場合近年はスコープの性能向上や術者の技量向上、そして、検査数の増加に伴って、多くのケースでは数分で盲腸まで挿入できるようになったと思います。ただし、頑固な便秘のケースや開腹手術の既往があるケースなどでは挿入に難渋することがあり、検査が長時間に及ぶと術者の集中力もとぎれがちで、患者さんの苦痛も増大してきます。このような状況になっても意地になって検査を続行すると、腸管に無理な力が加わって不幸にして穿孔に至るケースがあるように思います。とくに腸管の屈曲部で視野が十分に確保されず、ブラインドでスコープを進めざるを得ない場合などには穿孔の危険性が増大すると思います。このような時、途中で検査を中止するのは担当医にとってどちらかというと屈辱的なことにもなりうるし、もし挿入できなかった部位にがんがあったりすると検査することの意義が失われてしまうので、なんとか目的を達成しようとむきになる気持ちも十分に理解できます。しかし、ひとたび穿孔に至ると、その後の多くの時間を事後処理に当てなければならないのは明白ですので、挿入困難なケースではほかの医師に交代するか、もしくは途中で引き上げる勇気を持つのが大切ではないかと思います。2. ポリープ切除に伴う穿孔大腸の壁は意外に薄く、ちょっとしたことでも穿孔に至る可能性を秘めているのは周知のことだと思います。ポリープ切除時に穿孔に至る原因として、スネアーを深くかけすぎて筋層まで巻き込んだり、通電時間を長くし過ぎたり、視野が十分確保できない状況でポリープ切除を強行したりなど、術者が注意を払うことによって避けられる要素もかなりあると思います。このうちスネアーを筋層まで巻き込んだ場合には、まるで硬いゴムをカットするような感触になることがありますので、「おかしいな」と思ったら途中で通電を中止し、もう一度スネアーの位置が適切かどうか確認する必要があると思います。また裁判外のケースをみていると、意外に多いのがホットバイオプシーに伴う穿孔です。そのなかでもポリープ切除部位とは離れた部分の穿孔、つまり鉗子の位置をよく確認しないまま通電することによって、予期せぬところが過剰に通電され穿孔に至ることがありますので、やはり基本的な手技は忠実に守らなければなりません。このように、大腸内視鏡検査においてはなるべく穿孔を回避するよう慎重な態度で臨む必要があります。それでも不幸にして穿孔に至った場合には、きちんとその経過や理由を患者さんに説明したうえで謝意をあらわすべきではないでしょうか。一部の施設では、穿孔を経験した若い先生に対し先輩の医師から、「このようなことはよくあるよ、これで君もようやく一人前だな」とおそらく励ます意味の言葉をかけることがあるやに聞きます。しかし、患者側の立場では到底許容されない考え方だと思いますし、最近では「不可抗力」という判断が首肯されにくいのは前述したとおりです。日本消化器内視鏡学会偶発症委員会が発表した統計(日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol.42:308-313, 2000)大・小腸スコープ総検査数258万7,689件のうち、偶発症数1,047件、頻度にして0.04%その中で大腸スコープによる偶発症は935件■内訳穿孔568件(60.7%)出血192件(20.5%)死亡21件(頻度0.00081%:上部消化管スコープの2倍、側視型十二指腸スコープの1/10)このように大腸内視鏡に伴う偶発症は発生頻度からみればごくわずかではありますが、ひとたび遭遇するととても厄介な問題に発展する可能性がありますので、検査に際しては細心の注意が必要だと思います。消化器

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