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止まらない咳、でもどの検査にも異常がない!?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第16回

止まらない咳、でもどの検査にも異常がない!?講師獨協医科大学医学部 小児科学 助教 高柳 文貴 氏獨協医科大学医学部 小児科学 教授 吉原 重美 氏【今回の症例】14歳女子。長引く咳嗽を主訴に受診した。咳嗽は昼間に多く、夜間の睡眠中は咳嗽を認めない。胸部、副鼻腔レントゲン検査は異常なし。血液検査ではWBC、CRP、IgEの上昇は認めない。FeNO測定は10ppb。スパイログラム(呼吸機能検査)で肺活量、一秒率の低下は認めなかった。今までに、吸入ステロイド薬(ICS)の定期吸入、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬の定期内服などを行ったが効果はなし。同居の祖母との折り合いが悪いとの訴えあり。

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重症好酸球性喘息、ベンラリズマブでコントロール良好ならICSは削減可/Lancet

 ベンラリズマブでコントロール良好な重症好酸球性喘息患者では、毎日投与の吸入コルチコステロイド(ICS)を大幅に削減可能であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDavid J. Jackson氏らによる、第IV相の多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験「SHAMAL試験」の結果で示された。重症好酸球性喘息では、高用量のICSへの反応が不十分にもかかわらず、ICSの段階的強化がルーティンに行われている。生物学的製剤への反応が良好な患者では、ICSの用量低減が推奨されているが、これまで安全性を裏付けるエビデンスがほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2023年12月7日号掲載の報告。ICS/ホルモテロールの漸減vs.維持を評価 SHAMAL試験は4ヵ国22施設で行われ、適格患者は、重症好酸球性喘息で5項目喘息コントロール質問票(ACQ-5)のスコアが1.5未満、スクリーニング前にベンラリズマブの投与を3回以上受けていた18歳以上の患者であった。 研究グループは患者を、低減群と参照群に3対1の割合で無作為化した。低減群は、ベンラリズマブ30mgを8週に1回+ICS/ホルモテロールのMART療法について、中用量の維持投与([ICS 200μg+ホルモテロール6μgの2噴霧を1日2回]+頓用[ICS 200μg+ホルモテロール6μg])で開始したものを、低用量の維持投与(ICS/ホルモテロールの1噴霧を1日2回+頓用)、さらに発作時のみICS/ホルモテロール投与の頓用へと漸減した。参照群は、ベンラリズマブ30mgを8週に1回+高用量ICS/ホルモテロール(1噴霧でブデソニド400μg+ホルモテロール12μg)2噴霧1日2回+サルブタモールの発作時頓用が維持投与された。漸減期間は32週間で、その後16週間を維持期間とした。 主要エンドポイントは、32週時点までにICS/ホルモテロール用量が低減した患者の割合であった。主要アウトカムは、低減群で評価し、安全性解析は、試験治療群に無作為化された全患者を対象に評価した。32週時点で漸減群の92%が低減を達成、61%が頓用のみに 2019年11月12日~2023年2月16日に、208例がスクリーニングを受けrun-in periodに登録。このうち168例(81%)が、低減群(125例[74%])と参照群(43例[26%])に無作為化された。 全体で、110例(92%)が、ICS/ホルモテロール用量を低減した。そのうち中用量への低減までが18例(15%)、低用量への低減が20例(17%)で、72例(61%)が頓用のみへ低減した。 患者113例(96%)において、48週まで低減は継続した。低減群の114例(91%)は、漸減期間中に増悪の報告はされなかった。 有害事象の発生頻度は両群で同程度であり、低減群91例(73%)、参照群35例(83%)であった。重篤な有害事象は17例報告され、低減群12例(10%)、参照群5例(12%)であった。死亡は報告されなかった。

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抗ヒスタミン薬が無効の慢性特発性蕁麻疹、ligelizumabの効果は?/Lancet

 ヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1AH)による治療で、効果不十分な成人および青年期(12歳以上)の慢性特発性蕁麻疹(CSU)患者において、ligelizumabはプラセボに対する優越性を示したが、オマリズマブに対しては示さなかった。ドイツ・Urticaria Center of Reference and Excellence(UCARE)のMarcus Maurer氏らが、ligelizumabの有効性と安全性を評価した2つの第III相無作為化二重盲検比較試験「PEARL-1試験」および「PEARL-2試験」の結果を報告した。CSU患者の多くが、現在使用可能な治療ではその症状を完全に管理することができない。ligelizumabは、第IIb相用量設定試験ではH1AHで効果不十分なCSU患者において、蕁麻疹症状を改善することが報告されていた。Lancet誌オンライン版2023年11月23日号掲載の報告。2つの第III相試験で、ligelizumab 72mg、120mg、オマリズマブ300mgまたはプラセボに割り付け PEARL-1試験およびPEARL-2試験は、同一デザインの無作為化二重盲検実薬およびプラセボ対照並行群間比較試験で、46ヵ国347施設において実施された。 研究グループは、H1AHで効果不十分な中等度から重度の成人および青年期(12歳以上)のCSU患者を、ligelizumab 72mg、ligelizumab 120mg、オマリズマブ300mg、またはプラセボ群に3対3対3対1の割合で無作為に割り付け、4週間ごとに52週間投与した。プラセボ群では、24週目からligelizumab 120mgに切り替えた。 主要アウトカムは、12週時の週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)のベースラインからの変化量(CFB)で、試験薬を1回以上投与された成人患者を有効性解析対象集団として、無作為化された投与群に従って解析した。安全性は、試験薬を1回以上投与された青年期を含むすべての患者を安全性解析対象集団として、実際に投与された試験薬について評価した。ligelizumabの優越性、対プラセボでは示すも、対オマリズマブでは示されず 2018年10月17日~2021年10月26日に、2試験で合計2,057例が無作為に割り付けられた(ligelizumab 72mg群614例、ligelizumab 120mg群616例、オマリズマブ群618例、プラセボ群209例)。患者背景は、1,480例(72%)が女性、577例(28%)が男性で、両試験のベースラインでの平均UAS7は29.37~31.10であった。 12週時のUAS7のベースラインからの変化量(最小二乗平均値)のプラセボ群との差は、PEARL-1試験およびPEARL-2試験において、それぞれligelizumab 72mg群が-8.0(95%信頼区間[CI]:-10.6~-5.4)、-10.0(-12.6~-7.4)、ligelizumab120mg群が-8.0(-10.5~-5.4)、-11.1(-13.7~-8.5)であり、両試験においてligelizumab 72mg群および120mg群のプラセボ群に対する優越性が示された。 一方、12週時のUAS7のベースラインからの変化量(最小二乗平均値)のオマリズマブ群との差は、PEARL-1試験およびPEARL-2試験において、それぞれligelizumab 72mg群で0.7(95%CI:-1.2~2.5)、0.4(-1.4~2.2)、ligelizumab 120mg群で0.7(-1.1~2.5)、-0.7(-2.5~1.1)であり、ligelizumab 72mg群および120mg群のオマリズマブ群に対する優越性は示されなかった。 ligelizumab、オマリズマブのいずれも、新たな安全性シグナルは認められなかった。

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喘息治療で改善しない運動時の喘鳴・呼吸困難、診断に必要な検査は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第12回

喘息治療で改善しない運動時の喘鳴・呼吸困難、診断に必要な検査は?講師福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科 手塚 純一郎 氏【今回の症例】14歳の女性。これまで喘息と診断されたことはなく、陸上部で中距離走を行っている。部活動の練習にて、全力で走ると数分で急にゼーゼーして呼吸が苦しくなる。運動誘発喘息の診断により、吸入ステロイド薬(フルチカゾン換算で100μg)と長時間作用性β2刺激薬(サルメテロールキシナホ酸塩50μg)の合剤を1日2回吸入しているが、運動時の喘鳴を伴う呼吸困難が改善しない。喘鳴は吸気性で短時間作用性β2刺激薬(サルブタモール)を吸入しても良くならないが、運動を中止すると数分で改善する。

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実臨床における喘息コントロールに生物学的製剤は有効か?/AZ

 アストラゼネカ(AZ)は2023年10月20日付のプレスリリースにて、日本における重症喘息の前向き観察研究であるPROSPECT studyの1年時解析から、実臨床における生物学的製剤の喘息コントロール改善効果が示されたことを発表した。本研究結果を踏まえて「本邦の実臨床でコントロール不良の重症喘息患者に対して適切に生物学的製剤を開始することで、疾病負荷を軽減できることが示された」としている。 重症喘息は頻回な増悪を繰り返し、著しい呼吸機能の低下、生活の質の低下を余儀なくされる。さらに、社会経済的な負担も大きく、その医療費は非重症喘息と比べて高いことが報告されている。複数のガイドラインで、コントロール不良の重症喘息患者に対して生物学的製剤の使用が推奨されているが、日本の実臨床における生物学的製剤の使用実態とその有用性はこれまで示されていなかった。 PROSPECT studyは、高用量吸入ステロイド剤とその他の長期管理薬を使用してもコントロール不良の成人(20歳以上)重症喘息患者を対象とする、国内34施設にて実施された追跡調査期間2年間の前向き観察試験である。主要評価項目は、試験登録12週間以内に生物学的製剤を開始した群(127例)と開始しなかった群(162例)における2年後の気管支拡張薬吸入後のFEV1※1(Forced Expiratory Volume in one second)のベースラインからの変化量の差と設定された。 今回のリリースでは、1年時解析の結果が発表された。 生物学的製剤開始群と非開始群における気管支拡張薬投与後の変化は以下のとおりであった(いずれもベースラインのリスク因子で調整)。・FEV1のベースラインからの変化量の差は130mL、p=0.007・喘息増悪発生率比は0.46、p=0.012・ACQ-5スコア※2のベースラインからの変化量の差は-0.67、p<0.001 本研究のScientific Advisory Committee委員長である、日本喘息学会理事長であり近畿大学病院病院長の東田 有智氏は、コントロール不良の重症喘息患者における疾病負荷と、適切な生物学的製剤の使用が推奨されながらも限定的である導入実態を振り返り、「この結果が、コントロール不良の重症喘息患者への生物学的製剤導入の治療機会の均てん化の促進に寄与することを願う」とコメントしている。※1 FEV1:1秒量(努力肺活量の1秒量)※2 ACQ-5スコア:5種類の症状(「夜間覚醒」「起床時の症状」「日常生活の制限」「息切れ」「喘鳴」)に関する質問から構成される喘息コントロール状態を評価する指標

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味覚障害に耐えられない症例に対する処方は注意せよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ゲーファピキサント(商品名:リフヌア)は、選択的P2X3受容体拮抗薬である。P2X3受容体は気道に分布する迷走神経のC線維と呼ばれる求心性神経線維末端にあるATP依存性イオンチャネルである。C線維は炎症や化学物質に反応して活性化される。ATPは炎症により気道粘膜から放出され、シグナル伝達を介して咳嗽反応を惹起させる。ゲーファピキサントはP2X3受容体を介したATPシグナル伝達を遮断することにより、感覚神経の活性化や咳嗽の抑制効果が期待されている薬剤である。現在、慢性咳嗽の原因となりうる病歴・職業歴・環境要因・検査結果などを踏まえた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が続く場合、いわゆる難治性の慢性咳嗽に適応となっている。実臨床下では、慢性咳嗽の症例に一般的な鎮咳薬や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬が適切に使用されても改善が得られない場合に処方を検討する薬剤となっている。 2005年に亀井らにより咳嗽にP2X3が関与していることが示唆(Kamei J, et al. Eur J Pharmacol. 2005;528:158-161.)されて以来、ゲーファピキサントの開発が進んできた。国際共同第III相試験である「COUGH-1試験」では、治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例732例を対象に、ゲーファピキサント15mg 1日2回群、45mg 1日2回群、プラセボの3群が比較検討された(McGarvey LP, et al. Lancet. 2022;399:909-923.)。主要評価項目としては有効性として12週での24時間当たりの咳嗽頻度が評価された。732例のうち、気管支喘息は40.7%、胃食道逆流症が40.5%、アレルギー性鼻炎が19.7%含まれた。主要評価項目である咳嗽頻度はゲーファピキサント45mg群でベースラインに1時間当たり28.5回認めていたものが、12週時点で14.4回に減少。プラセボ群に対する相対減少率も-18.45%と有意差をもって咳嗽頻度を改善したとされた。また24週時点でも評価された「COUGH-2試験」でも同様の結果が示された。 今回取り上げたKum氏らのCOUGH-1, 2試験を含むメタ解析でも、ゲーファピキサント45mg群はプラセボ群と比較し、覚醒時の咳嗽頻度を17.6%減少させ、咳嗽の重症度や咳嗽に起因するQOLも、わずかではあるが改善させるとの結果であった。実臨床においても、呼吸器内科医が詳細に問診をとり、診察を行い、各医療機関でできる検査を組み合わせて適切な診断や治療を行っても残ってしまう難治性咳嗽の症例は時々見掛けることがある。そのような症例に対し、奥の手としてゲーファピキサントが選択されることがある。ただ、もちろん他の治療や環境因子に介入しても改善しなかったしつこい咳嗽に対する処方なので、他の鎮咳薬などの治療選択肢と比べて劇的な効果への期待は難しいことが多い。COUGH-1, 2試験では「治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例」が含まれているが、ゲーファピキサントがより効果的な症例は喘息なのか、COPDなのか、間質性肺炎なのか、はたまた他の慢性咳嗽の原因となりうる疾患なのか、そのあたりが今後の臨床試験で明らかになると、ゲーファピキサントの立ち位置がよりはっきりしてくるのだろう。 またCOUGH-1, 2試験の併合解析でも指摘されているが、味覚に関する有害事象が高いことが知られている。ゲーファピキサントの承認時資料によると、味覚に関連する有害事象の発現時期としては、中央値で2.0日、1週間以内に52.7%の方が味覚に関する異常を訴えるとされている。さらに気になるところは、有害事象の平均持続期間が200日以上と想像以上に長いことも指摘されている。Kum氏らの報告でも味覚関連有害事象が100人当たり32人増加するとされ、効果に比べて有害事象の懸念が考えられた。 ゲーファピキサントはあくまで症状に対する対症療法に位置付けられる薬剤であり、原疾患に対する薬剤ではない。実際の現場において、内科の短い診療時間で味覚に対するきめ細やかな対応は困難であることが予想されるため、できれば歯科/口腔外科や、看護スタッフ、薬剤師、栄養士などの介入があるとよいだろう。味覚に関する有害事象で困るようであれば、1日1回に減量する、一定期間薬剤を中止するなどの対応も必要となる。承認時資料によると、通常用量の1/3量のゲーファピキサント15mgでは味覚障害の有害事象の頻度は17.5%と報告されているので、投与量の減量は有効な手段の1つと考えられる。また、有害事象を起こしやすい、あるいは起こしにくい患者背景がわかると、処方を勧める1つのきっかけになると考える。 実臨床では、慢性咳嗽で一般的な治療で難治と考えられる症例に、ゲーファピキサントが考慮される。エビデンスのない領域であるが、肥満が問題となっている喘息症例で適切な治療を行っても咳嗽が残ってしまう症例に対し、ゲーファピキサントで咳嗽が抑えられ、食欲も制限されたら、もしかしたら喘息のコントロールも改善するかもしれない。ただし、味覚に関連する有害事象の発現で致命的になりうるような悪液質状態の肺がん症例や、るい痩が進んできているCOPDや間質性肺炎に対する慢性咳嗽に対しては、安易に処方することのないようにされたい。

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ICS/LABA使用喘息の40%超が効果不十分、咳嗽に注目を

 日本において2018年に実施された横断的調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の結果から、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬(ICS/LABA)に対するアドヒアランスが高い喘息患者であっても、そのうち約40%は、症状をコントロールできていないことが報告されている1)。そこで、長瀬 洋之氏(帝京大学医学部内科学講座 教授)らの研究グループは、ICS/LABAを適切に使用している喘息患者を対象として、喘息が健康関連QOLや労働生産性などに及ぼす影響を調べた。その結果、ICS/LABAで喘息コントロール不十分・不良の患者が45.2%存在し、コントロール良好の患者と比べて健康関連QOLが低下していた。また、咳嗽の重症度が健康関連QOLと相関していた。本研究結果は、Advances in Therapy誌オンライン版2023年9月12日号に掲載された。 ICS/LABAを4週間以上使用し、アドヒアランス良好であった20歳以上の喘息患者454例を対象に、インターネット調査を実施した。対象患者を喘息コントロールテスト(ACT)スコアに基づき、コントロール不十分・不良(19点以下)、コントロール良好(20点以上)に分類して評価した。主要評価項目はAsthma Health Questionnaire-33(AHQ-33)に基づく健康関連QOL(スコアが高いほど不良)であった。副次評価項目は日本語版レスター咳質問票(J-LCQ)に基づく咳嗽の重症度(スコアが高いほど良好)、Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire(WPAI)-asthmaに基づく労働生産性であった。 主な結果は以下のとおり。・ICS/LABAを使用している喘息患者の45.2%(205/452例)がコントロール不十分・不良であった。・健康関連QOLは、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて低かった(AHQ-33合計スコア:39.3点vs.11.5.点、p<0.0001)。喘息症状、喘息症状の増悪因子など、AHQ-33のすべてのドメインスコアがコントロール不十分・不良群で有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。・咳嗽の重症度は、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて高かった(J-LCQ合計スコア:15.2点vs.19.1点、p<0.0001)。J-LCQの身体面、精神面、社会面のいずれのドメインスコアもコントロール不十分・不良群が有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。・咳嗽の症状を有している患者の割合は、コントロール良好群が22.1%(55/249例)であったのに対し、コントロール不十分・不良群は63.9%(131/205例)であった。・J-LCQ合計スコアはAHQ-33合計スコアと強い相関が認められ(r=-0.8020)、咳嗽が健康関連QOLに大きな影響を及ぼすことが示唆された。・労働生産性に関して、アブセンティーズム、プレゼンティーズム、総労働損失、日常生活における活動障害のいずれの項目についても、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。 本研究結果について、著者らは「ICS/LABAに対するアドヒアランスが良好であったにもかかわらず、喘息コントロールが不十分・不良であった喘息患者は、喘息コントロールが良好であった喘息患者と比べて、症状の負荷が大きく、健康関連QOLと労働生産性が損なわれていた。咳嗽症状は大きな負荷であり、健康関連QOLの低下との相関も認められたことから、咳嗽は喘息患者の個別化治療戦略における重要なマーカーの1つである可能性が示された」とまとめた。

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標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」【下平博士のDIノート】第128回

標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」今回は、潰瘍性大腸炎治療薬「ブデソニド腸溶性徐放錠(商品名:コレチメント錠9mg、製造販売元:フェリング・ファーマ)」を紹介します。本剤は、標的部位の大腸にブデソニドが送達され、持続的に放出されるように設計されている1日1回服用の薬剤で、良好な治療効果や服薬アドヒアランスが期待されています。<効能・効果>活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与します。投与開始8週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないように留意します。<安全性>2~5%未満に認められた副作用として潰瘍性大腸炎増悪があります。2%未満の副作用は、乳房膿瘍、感染性腸炎、乳腺炎、口腔ヘルペス、不眠症、睡眠障害、腹部膨満、口唇炎、ざ瘡、湿疹、蛋白尿、月経障害、末梢性浮腫、白血球数増加、尿中白血球陽性が報告されています。<患者さんへの指導例>本剤は、大腸に送られて持続的に炎症を鎮める潰瘍性大腸炎活動期の薬です。服薬時にかまないでください。生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)を接種する際には医師に相談してください。疲れを残さないよう十分な睡眠と規則正しい生活が重要です。消化の悪い繊維質の多い食品や脂肪分の多い食品、香辛料などを避けて、腸に優しい食事を心がけましょう。<Shimo's eyes>潰瘍性大腸炎は、活動期には下痢や血便、腹痛、発熱などを伴い、寛解と再燃を繰り返す炎症性腸疾患であり、わが国では指定難病に指定されています。潰瘍性大腸炎の活動期には、軽症~中等症では5-アミノサリチル酸製剤が広く用いられ、効果不十分な場合や重症例にはステロイド薬などが投与されます。ステロイド抵抗例ではタクロリムスや生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害薬などが使用されます。本剤の特徴は、MMX(Multi-Matrix System)技術を用いた薬物送達システムにあり、pH応答性コーティングにより有効成分であるブデソニドを含むマルチマトリックスを潰瘍性大腸炎の標的部位である大腸で送達し、親水性基剤と親油性基剤がゲル化することでブデソニドを持続的かつ広範囲に放出させます。また、本剤の有効成分であるブデソニドはグルココルチコイド受容体親和性が高いステロイド薬であり、局所的に高い抗炎症活性を有する一方、肝初回通過効果によって糖質コルチコイド活性の低い代謝物となるため、経口投与によるバイオアベイラビリティが低いと考えられ、全身に曝露される糖質コルチコイド活性の軽減が期待されるアンテドラッグ型のステロイドとなります。本剤は1日1回投与の経口薬であることから、良好な服薬利便性や服薬アドヒアランスも期待でき、海外では2023年3月現在、75以上の国または地域で承認されています。なお、本成分を有効成分とする既存の潰瘍性大腸炎治療薬には、直腸~S状結腸に薬剤を送達するブデソニド注腸フォーム(商品名:レクタブル2mg注腸フォーム)がありますが、本剤は大腸全体が作用部位となる点に違いがあります。本剤の主な副作用として、潰瘍性大腸炎の増悪が2~5%未満で報告されています。本剤はほかの経口ステロイド薬と同様に、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、クッシング症候群、骨密度の減少、消化性潰瘍、糖尿病、白内障、緑内障、精神障害などの重篤な副作用に注意が必要です。本剤投与前に水痘または麻疹の既往歴や予防接種の有無を確認しましょう。製剤の特性を維持するために、本剤を分割したり、乳鉢で粉砕したりすることはできません。患者さんにもかんで服用しないように伝えましょう。潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢が増えることで、患者さんのQOL向上が期待されます。

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IgA腎症のメサンギウム領域に障害をもたらすIgA1は腸管由来が主体?(解説:浦信行氏)

 IgA腎症は糸球体メサンギウム領域を中心に、一部糸球体毛細血管係蹄にIgA1の有意な沈着を伴うメサンギウム増殖腎炎であり、最も頻度の高い原発性糸球体腎炎である。未治療で経過すると4割が末期腎不全に至る腎予後不良の疾患であり、病因解明に向けて多くの研究が行われているが、いまだにその病因の詳細は不明である。これまでは主に粘膜免疫異常がその病因候補として検討されてきた。 わが国では以前から上気道粘膜、とりわけ口蓋扁桃粘膜の関与が注目され、治療法として扁桃摘出+ステロイドパルス療法(扁摘パルス)が広範囲に行われ、その有効性が報告されている。早期介入では高率な寛解も一部の試験で報告されている。しかし欧米では扁摘パルスは必ずしも有効性は高くなく、ステロイドの副作用などの観点から推奨されていない。 欧米では、IgA腎症と炎症性腸疾患やセリアック病との合併例が多いことから、腸管における粘膜免疫異常が病因に関連する可能性が議論されてきた。Nefeconは、腸管作用型ステロイド薬のブデソニドが徐放されて腸管由来のIgA1の産生・放出を抑制する。今回のNefIgArd試験ではNefeconが著明な腎機能障害進行抑制作用を示した。また、eGFR低下が2.47mL/min/1.73m2にとどまっており、欧米における45歳以上の健康成人の年間のeGFRが約1mL/min/1.73m2であることから、とりわけ尿蛋白が1.5g/gCr未満の群では自然経過とほぼ変わりない。開始時eGFRでの層別解析でpoint of no remissionの解析や、地域差・人種差を考慮すると、アジア地区の解析もあればわが国にとってはより有益な情報となるであろう。有害事象に関しては、全身投与よりは頻度も程度も低値であろうが、ステロイドによると考えられるものがやはり主体である。

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IgA腎症、新規腸管作用型ステロイドが有効/Lancet

 IgA腎症患者において、ブデソニドの新規の腸管作用型経口剤であるNefeconは、9ヵ月間の治療でプラセボと比較し、臨床的に意義のあるeGFR低下および蛋白尿の持続的な減少をもたらし、忍容性も良好であった。米国・スタンフォード大学のRichard Lafayette氏らが、20ヵ国132施設で実施された2年間の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「NeflgArd試験」の結果を報告した。IgA腎症は、慢性免疫介在性腎疾患で腎不全の主な原因であり、発症機序には腸粘膜免疫システムが関与している。Nefeconは、ブデソニドが腸管で徐々に放出され腸粘膜で作用するようデザインされている。Lancet誌オンライン版2023年8月14日号掲載の報告。IgA腎症患者をNefecon群とプラセボ群に無作為化し9ヵ月間投与 研究グループは、2018年9月5日~2021年1月20日に、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬による最適な支持療法にもかかわらず、推算糸球体濾過量(eGFR)が35~90mL/分/1.73m2で、持続性蛋白尿(尿蛋白-クレアチニン比≧0.8g/gまたは尿蛋白≧1g/24時間)を呈する原発性IgA腎症成人患者(18歳以上)を、Nefecon群(16mg/日)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け9ヵ月間投与し、その後15ヵ月間(2週間の漸減期間を含む)を観察期間とした。最終追跡調査日は2023年2月6日である。 無作為化では、ベースラインの蛋白尿(<2または≧2g/24時間)、ベースラインのeGFR(<60または≧60mL/分/1.73m2)、および地域(アジア太平洋、欧州、北米、南米)を層別因子とした。また、全例に対して無作為化前の少なくとも3ヵ月間ならびに試験期間に、最適な支持療法が義務付けられた。 有効性の主要アウトカムは、2年間のeGFRの時間加重平均値とした。2年間の時間加重平均eGFR、Nefecon群で臨床的に意義のある改善 最大の解析対象集団は364例(各群182例)で、240例(66%)が男性、124例(34%)が女性、275例(76%)が白人であった。 2年間のeGFRの時間加重平均値の変化量は、Nefecon群-2.47mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-3.88~-1.02)、プラセボ群-7.52mL/分/1.73m2(-8.83~-6.18)、群間差は5.05mL/分/1.73m2(95%CI:3.24~7.38、p<0.0001)であり、プラセボ群に対してNefecon群で統計学的に有意な治療効果が認められた。 Nefeconで治療中の主な有害事象は、末梢性浮腫(31例[17%]vs.プラセボ群7例[4%])、高血圧症(22例[12%]vs.6例[3%])、筋痙攣(22例[12%]vs.7例[4%])、ざ瘡(20例[11%]vs.2例[1%])、頭痛(19例[10%]vs.14例[8%])であった。治療に関連した死亡例の報告はなかった。

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喘息の増悪発生に地域差/AZ

 アストラゼネカ(以下、AZ)は、喘息増悪の発生状況を地域別に検討した「Asthma heatmap研究」を実施し、喘息の増悪発生率に日本国内で地域差があることを初めて明らかにしたと発表した。本研究の結果を基に、地域の実情に即した喘息治療の適正化を目指した活動を実施していくとしている。 日本において、喘息に罹患している患者(小児を含む)は約800万人といわれている。喘息による死亡数は年々減少傾向にあり、2021年では1,038人と報告されている一方で、症状が残存する患者はいまだ残されており、患者の5~10%は従来の治療でコントロールできない重症喘息と推定されている。本研究では、複合アウトカム*で定義した喘息増悪が平均で100人年当たり39.87件生じており、その頻度に地域差があることが示された。都道府県別にみると、複合アウトカムに示された喘息増悪発生率は、最多の地域では最少の地域の6.7倍であった。*複合アウトカムの定義:入院、静注ステロイド、OCS(経口ステロイド:20mg以上/日の処方またはOCS10mg以上/日の増量)のすべて対象:基準日(2018年10月1日以前に喘息と診断され、かつ喘息関連薬を処方された最新の日)以前の1年間に4回以上ICS(吸入ステロイド)またはICS/LABAが処方されたICS継続投与喘息患者2万4,883例方法:保険データベースMedi-Scope(2016年10月1日~2019年12月31日までのデータ)を用いたレトロスペクティブコホート研究。フォローアップ期間(基準日以降の1年間)における地域別の喘息増悪発生率、およびベースライン期間(基準日以前の1年間)における患者背景因子と喘息増悪との関連を解析。 本研究結果から喘息増悪の地域差が明らかになったことを踏まえ、AZは日本呼吸器学会との共催、厚生労働省の後援の下、各地域で医師を対象とし、地域に根差した喘息増悪予防について検討するための講演会を順次実施している。講演会を地域別に行うことで、地域の特性に即した課題が医療関係者に共有され、治療の最適化や地域連携を通じての専門医への紹介等、地域の実情に根差した医療環境がより整うことを期待しているとし、今後、全国においてもオンラインにて全3回の講演会開催を予定している。AZは喘息領域において、適切な増悪予防と症状コントロールによって、患者が健康な人と変わらない生活を送ることを目指し、患者中心の医療へ今後も貢献していくとしている。

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第50回 「また接種券が届いたが接種すべき?」にどう答える

新型コロナワクチンの推奨が相次いで追補Pixabayより使用最近、「6回目の接種券が届いたんですけど…接種したほうがよいでしょうか?」と患者さんから質問を受けることが増えました。今日も外来だったのですが、10人以上に質問を受けました。これまでは、接種券が届いたら周囲に相談することなく接種していた患者さんのほうが多かったのですが、最近は「本当に接種し続ける意味があるのか」と疑問を持っている人が増え、躊躇しておられる印象です。そんな国民の逡巡を見越してか、日本感染症学会と日本小児科学会から相次いでワクチンに関する提言が追補されました。■日本感染症学会:「COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)」の公表に際して1)「わが国での流行はまだしばらく続くためワクチンの必要性に変わりはありません。COVID-19ワクチンが正しく理解され、安全性を慎重に検証しながら、接種がさらに進んでゆくことを願っています。」■日本小児科学会:小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)2)「国内小児に対するCOVID-19の脅威は依然として存在することから、これを予防する手段としてのワクチン接種については、日本小児科学会としての推奨は変わらず、生後6か月~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を推奨します。」新型コロナワクチンのエビデンスは驚異的なスピードで積み上げられていて、パンデミック初期の頃と比べると不明な点が減りました。患者さんを相手に診療をしていると、リスクとベネフィットを天秤にかける瞬間というのは何度か経験しますが、新型コロナワクチンについてはほぼエビデンスは明解を出しているので接種推奨の意見を持つ人のほうが多いはずですが、なぜか医療従事者でも接種しなくなった人が増えている現状があります。EBM副反応がしんどいというのは1つの理由です。「しんどい思いをしてまで接種する理由がない」というのはまっとうな理由ですし、私もそれに否定的な見解は持っていません。そのほかの理由として、「もういいや」といワクチン疲れしている人が増えていることです。ワクチン接種に懐疑的な報道やSNSのコメントがあるという理由で、「もう接種しなくていいと思う」と患者さんに持論を伝える医療従事者も次第に増えてきました。さすがに政府や学会が上記のような推奨を出しているさなか、それはまずいなと思います。私は対象の集団が多いほどエビデンスの威力は大きいと思っていて、たとえば喘息の初期治療にロイコトリエン受容体拮抗薬単剤を使うより吸入ステロイドを使うほうが患者さんのQOLは向上しますし、市中肺炎のエンピリック治療ではテトラサイクリン系抗菌薬よりもβラクタム系抗菌薬のほうがおそらく多くの人を救えます。普段の診療でわりとEBMを重視するのに、対象の集団が多いワクチンについてEBMを軽視するというのが、私にはよく理解できないです。まとめ繰り返しますが、個々でワクチンを接種しないと決めるのは個人の自由です。ただ、医療機関に勤務している人については通常の推奨度よりも高く、また基礎疾患のある患者さんに対しては学会も接種を推奨しているということは、納得できないとしても「医療従事者として理解しておく」必要があります。おそらく次第に接種間隔を空けていくことになるでしょうが、ひとまず9月以降はXBB対応ワクチンを接種することになります。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会:「COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)」の公表に際して2)日本小児科学会:小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)

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喘息既往、CT所見から判断すべき追加検査は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第2回

喘息既往、CT所見から判断すべき追加検査は?講師東海大学医学部 呼吸器内科学教授 浅野 浩一郎 氏【今回の症例】52歳の女性。35歳ごろに喘息を発症したが、中用量の吸入ステロイド薬治療でここ数年間の症状は安定していた。3ヵ月前から粘膿性喀痰を伴う咳嗽を自覚するようになった。撮影した胸部X線写真で、左下肺野の浸潤影を指摘された。発熱は認めない。末梢血白血球数9,000/μL(好中球48%、リンパ球18%、好酸球22%、単球12%)、血液生化学異常なし、CRP 1.38mg/dL、IgE 1,247 IU/mL。喀痰細菌培養陰性。胸部CTの所見を下に示す。追加で行うべき検査は何か?1.血清プロカルシトニン2.アスペルギルス・フミガーツスIgE3.鳥抗原IgG抗体4.MPO-ANCA

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喘息の症状悪化、次にすべきは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第1回

喘息の症状悪化、次にすべきは?講師富山赤十字病院 小児アレルギーセンター センター長 足立 雄一 氏【今回の症例】7歳の男児。1年ほど前から喘息のため、吸入ステロイド薬(フルチカゾン換算で50μgを1日2回吸入)で治療。半年以上良い状態が続いていたが、ここ2~3ヵ月は風邪をひくと咳込みが長引き、その都度、気管支拡張薬や去痰薬を内服していた。今回は、最近体育の授業で息苦しいことがある、と来院。吸入は朝晩続けている。どのように対応すればよいか?1.吸入ステロイド薬を増量する2.吸入ステロイド薬は増量せず、長時間作用性β2刺激薬との合剤に変更する3.吸入ステロイド薬は増量せず、ロイコトリエン受容体拮抗薬を追加する

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喘息診断で注目、タイプ2炎症バイオマーカーの手引き発刊/日本呼吸器学会

 タイプ2炎症は、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症である。気道・肺疾患と密接な関係にあり、診断や治療に直結する。とくに、生物学的製剤の治療選択や効果予測に重要な役割を果たすことから、近年注目を集めている。そのような背景から、「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」が2023年4月3日に発刊された1)。第63回日本呼吸器学会学術講演会において、本書の編集委員長を務めた松永 和人氏(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座 教授)が「タイプ2炎症バイオマーカーが切り拓く未来」と題し、主に「喘息の診断と管理効率の向上」「疾患修飾による喘息寛解の展望」について、解説した。タイプ2気道炎症は喘息の診断、管理に有用 喘息の補助診断には、血中好酸球数、呼気NO濃度(FeNO)、IgEが有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、血中好酸球数とFeNOについて、喘息の補助診断に関するカットオフ値が設定された1)。 血中好酸球数については、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が220cells/μLであったという報告2)、一般住民における75パーセンタイル値が210cells/μLであり、210cells/μL以上では喘息を有する割合が高かったという報告3)などがある。以上などから、喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は220cells/μL(喘息診断を支持)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 FeNOについては、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が20ppbであったという報告2)、本邦で喘息患者と非喘息患者を鑑別する際のカットオフ値が22ppb(感度91%、特異度84%)であったという報告4)などがある。ただし、FeNO値22ppbを適用すると非喘息患者の約15%もこの範囲に当てはまってしまう。そこで、FeNO値37ppbを適用すると特異度は99%となる4)。以上などから、吸入ステロイド薬(ICS)未使用の喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は22ppb(喘息の可能性が高い)、35ppb(喘息診断の目安)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 なお、血中好酸球数、FeNOを補助診断に用いる場合、いずれも最終的な喘息の診断は、治療による反応性、治療効果の再現性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する。 また、FeNOと血中好酸球数は喘息管理においても有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、喘息管理における解釈に関するカットオフ値も設定された1)。 ICSによる治療前後のFeNOの変化と気流制限、気道過敏性には相関があり、治療効果予測への有用性が指摘されている5)。ICS/長時間作用性β2刺激薬(LABA)による治療中はFeNOが低下し、治療を中止するとFeNOが上昇することが報告されているため、FeNOによる炎症モニタリングは、アドヒアランスやステロイド抵抗性の評価にも有用とされる6)。また、現在の治療ステップにかかわらず、増悪歴やリスク因子(症状、呼吸機能など)に加えて血中好酸球数とFeNOが高値の患者では将来の増悪リスクが高いことが近年報告されている7)。 以上から、喘息管理におけるFeNOのカットオフ値は20ppb、35ppbに設定され、血中好酸球数のカットオフ値は150cells/μL、300cells/μLに設定された。症状がなく、これらに基づくタイプ2炎症が低レベルであれば、抗炎症治療は適切と考えられ、抗炎症薬の減量が考慮可能である。一方、高レベルであれば症状がなくとも、服薬アドヒアランス・吸入手技の不良や、抗炎症薬の減量で症状が悪化する可能性がある。また、現在の治療でも症状が続いており炎症が高レベルであれば、増悪や呼吸機能低下のリスクが高いため、抗炎症治療の強化が考慮される1)。詳細は、手引きを参照されたい。タイプ2炎症への早期介入で疾患修飾・喘息寛解の達成へ タイプ2炎症と気道機能障害は喘息の治療可能な臨床特性(Treatable Traits)であることが、近年提唱されている8)。とくに、タイプ2炎症型の重症喘息では、タイプ2炎症が強いほど喘息が重症化するという知見も得られている。重症喘息はICS抵抗性であることが多いことから、さまざまな生物学的製剤が開発され、使用可能となっている。 同じく複数の生物学的製剤の適応がある関節リウマチの治療戦略では、Bio-free-remission(生物学的製剤での早期介入によりdeep remission[臨床的寛解、機能的寛解、免疫学的寛解のすべて]を達成し、生物学的製剤なし、もしくは投与間隔を長くする)が目指されており、エビデンスも集積されつつある。しかし、重症喘息では生物学的製剤の中止に関する臨床研究のエビデンスが乏しいのが現状である。したがって、松永氏らの研究グループは、まず生物学的製剤による「疾患活動性の抑制」を達成し、「deep remission」を達成した患者ではBio-free-remissionを目指せる可能性を提唱している9)。 松永氏らの研究グループは1年間の生物学的製剤の使用により、喘息の臨床的寛解が69%、deep remissionが32%で達成できたこと、deep remissionが達成された患者の特徴は、早期かつ呼吸機能が保たれている段階での生物学的製剤の使用であったことを2023年4月に報告している10)。そのため、松永氏は「バイオマーカーを活用しながら、呼吸機能が保たれている患者に対して早期に生物学的製剤を導入し、疾患修飾をかけてほしい」と強調した。タイプ2炎症バイオマーカーの手引きはバイオマーカーと疾患を網羅 「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」は、タイプ2炎症のバイオマーカーとそれに関連する疾患を網羅した1冊となっている。松永氏は「さまざまな気道・肺疾患の診断や治療方針の決定に直結するため、タイプ2炎症が注目されている。本書は、実臨床の具体的な状況において簡便に活用できる臨床指針を提供することで、タイプ2炎症評価の適正な普及につなげ、気道・肺疾患のさらなる管理効率の向上を目指して作成したため、ぜひ活用いただきたい」とまとめた。タイプ2炎症バイオマーカーの手引き編集:タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会定価:3,190円(税込)発行日:2023年4月20日A4変型判・120頁■参考文献1)タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会編集. タイプ2炎症バイオマーカーの手引き. 南江堂;20232)McGrath KW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012;185:612-619.3)Hartl S, et al. Eur Respir J 2020;55:1901874.4)Matsunaga K, et al. Allergol Int. 2011;60:331-337.5)Ichinose M, et al. Eur Respir J. 2000;15:248-253.6)Bardsley G, et al. Respir Res. 2018;19:133.7)Couillard S, et al. Thorax. 2022;77:199-202.8)Shaw DE, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:786-794.9)Hamada K, et al. J Asthma Allergy. 2021;14:1463-1471.10)Oishi K, et al. J Clin Med. 2023;12:2900.

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手持ち不足の薬剤の処方依頼前に継続の必要性を再検討【うまくいく!処方提案プラクティス】第53回

 今回は、手持ちの薬がなくなって服薬ができていなかった症例を紹介します。患者さんの希望で処方依頼をするシチュエーションは多々ありますが、状態によっては継続ではなく中止を提案することもあります。治療効果を意識して体調の変化を確認しましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患気管支喘息、慢性気管支炎、前立腺肥大症、高血圧症、緑内障、便秘症、アレルギー性鼻炎介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アジルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後2.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後3.ミラベグロン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.アンブロキソール徐放錠45mg 1錠 分1 朝食後5.ベポタスチン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後6.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.センノシド錠12mg 2錠 分1 就寝前9.ヒアルロン酸点眼液0.1% 1日3回 両眼10.タフルプロスト点眼液0.015% 1日1回 両眼本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から4日目に当薬局に訪問介入の依頼がありました。入居前は薬剤を自己管理していたようですが、過去の飲み忘れも含めて約1ヵ月半分の持参薬があり、用法ごとの残数もそろっていない状況でした(朝:42、昼:66、夕:58、就寝前:70日分)。気管支喘息の診断を受けていたとのことで、ブデソニド・ホルモテロールの空容器を持参していましたが、夜間は不安だからプロカテロール吸入薬も吸入したいので処方してもらいたいという患者さんからの依頼がありました。よくよく話を聞いてみると入居3週間前からブデソニド・ホルモテロールもプロカテロールも残薬がなくなっていて、手元にないと不安なので処方してほしいとのことでした。情報分析これまでの情報から私なりに分析してみました。まず、大量かつ不均等の持参薬から患者さんの服薬アドヒアランスは不良であることが想像できます。薬に対する依存度が強く、患者さんから医師にさまざまな薬を要望している様子もあったため、使用していた薬剤の種類と処方理由を明確にしておく必要があると考えました。なお、患者さんが要望している吸入薬はどちらも約1ヵ月間使用していませんでしたが、喘息発作などは起きていません。前医の診療情報書に目を通したところ、小児喘息や成人時期の喘息発作の経験はなかったものの、患者によると喘息の素因があるとのことで、感冒の際に希望があり処方しているという文面を確認することができました。患者さんはその後、長期間にわたって吸入薬を使用していました。基礎疾患にある気管支喘息の診断情報に疑問をもち、訪問診療医に相談することにしました。処方提案と経過患者さんとの初回面談から3日目に訪問診療医の初診があったため同行することにしました。診察前に、医師に初回面談時のやりとりを共有しました。入居前は服薬アドヒアランスが安定していなかったと考えられ、患者さんの希望から吸入薬が追加されている可能性があるものの、約1ヵ月間使用していなくても発作症状はないことなどを伝えました。医師からは、診察時に呼吸音や病状を確認し、診断の見直しをするという返答がありました。その結果、気管支喘息を積極的に疑う所見ではないので、このまま吸入薬をやめて様子をみようという判断になりました。その2週間後の診療でもその間の喘息発作は認められませんでした。患者さんからは、吸入の負担が減って精神的に楽になったと聞き、その後も状態が悪化することなく施設で穏やかに生活されています。

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第41回 乗り遅れるな「論文検索はもうAIの時代」

ChatGPTだけじゃないこの連載では何度かChatGPTについて取り上げてきました。この分野、1週間経つともう賞味期限切れを起こすほど進歩していて、私もちょっとついていけてないです。私はCareNetで興味深い医学論文を紹介する連載「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」を持っているので、普段からPubMedを使っているのですが、AIに論文を探させる手法が出てきました。ChatGPTは課金しないと現状の最新版を体験できない仕様となっていますが、今話題になっているのが「Consensus」です。これは、世界の論文を検索し、質問に対する回答をまとめて一文要約してくれます。そして回答を数値化してくれるなど、論文から得られる情報をかみ砕いて提供できる機能を持ったオープンAIとなっています。キャッチコピー通り、「Evidence-Based Answers, Faster」というのがコンセプトです。Googleアカウントがある人は、ウェブサイトから簡単にログインできるようになっているので、一度試してみてください。Consensus使い方は割と簡単で、質問のところにある程度closed questionを入力することが重要です。ただし、基本的にはYes/Noの質問に対応できるようになってます。画像を拡大する(画像:Consensusより)たとえば、これは「吸入ステロイドが骨粗鬆症を引き起こすか?」という質問を入力したものですが、「吸入ステロイドの長期使用は骨粗鬆症を誘発し骨折リスクを高めるとする研究もあるが、骨への影響は小さいか不明とする研究もあり、これで喘息をコントロールすれば骨粗鬆症を防ぐことさえある」という要約が返って来ました。参考にされた文献は5文献で、下にずらっとシステマティックレビューした結果が出てきます。画像を拡大する(画像:Consensusより)「inhaled」を「systemic」に変えると、全身性ステロイドの骨粗鬆症に対する回答が提示されます。「全身性ステロイドは、とくに長期投与や大量投与で骨粗鬆症を引き起こす可能性があることが示唆されるが、一方で、低用量や隔日投与ではそれほどリスクが高まらない可能性を示す研究結果もあります。」という回答に変わります。なるほど、有能なAIですね。ただ、あの有名論文がなんで掲載されていないんだよ、という事態はしばしばあり、本当に質の高い論文を引っ張ってきているのかちょっと疑問です。試しに重症市中肺炎に対するステロイドのことを聞いても、最近の有名な論文がヒットしませんでした。しかしまぁ、これが正しいAI検索のひな形でしょう。間違いありません。ここからさらに精度を上げていってほしいと思います。Perplexityもう一つ人気なのが、「Perplexity」です。ウェブクローリングした情報を要約する生成系AIです。出典ソースを明記して、時事性のあるテーマにも正しく回答してくれる点が魅力です。Perplexityはウェブ検索結果を分析できれば、たとえそれが架空の内容であっても回答可能ですが、ChatGPTはそのあたりが難しいという差はあるようです。対話型なのでPerplexityのほうが好まれていますが、個人的にはChatGPT4.0(有料版)もなかなかおすすめです。3.5とは全然違います。画像を拡大する(画像:Perplexityより)Mycobacterium szulgaiというまれな呼吸器感染症の治療はどうすればよいか?と聞いてみました。とくにエビデンスが集積されているわけではないのですが、しっかりと報告を引用して治療レジメンが紹介されています。こういうAIで生成された文を、論文を書くのに使っちゃダメということになっていますが、「参考程度に」AIを動かすというのは皆さん今後やっていくのではないでしょうか。果たしてわれわれ医療の世界ではどのAIが生き残っていくでしょうか。楽しみですね。

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

 日本全体で約1,000万人の潜在患者がいるとされる喘息。その約70%が何らかの症状を有し、喘息をコントロールできていないという。吸入ステロイド薬(ICS)の普及により、喘息による死亡(喘息死)は年々減少しているものの、2020年においても年間1,158人報告されているのが現状である。そこで、2020年に日本喘息学会が設立され、2021年には非専門医向けの喘息診療実践ガイドラインが発刊、2022年に改訂された。喘息診療実践ガイドライン発刊の経緯やポイントについて、日本喘息学会理事長の東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)に話を聞いた。喘息診療実践ガイドラインで2028年までに喘息死を0に 東田氏は、「均質な医療を提供することで、2028年までに喘息死を半減させる。できれば0にしたい」と語った。そのために「喘息の科学的知見に基づく情報提供をしたい」「非専門医の日常診療に役に立つガイドラインを作りたい」との思いから、喘息診療実践ガイドラインを作成したという。喘息診療実践ガイドラインは、新薬の登場などに合わせて、可能な限り毎年改訂を行う予定とのことである。喘息診療実践ガイドライン2022の問診チェックリスト活用を 従来のガイドラインでは、「喘息診断の目安」が記載されているものの、「診断基準」は明記されていない。また、喘息の診断には呼吸機能検査が必要とされているが、日常診療の場では難しい。そこで、喘息診療実践ガイドライン2022では、臨床現場で実際に活用できる診断アルゴリズムを作成している。ここで、重要となるのが「問診」である。東田氏らは、4千人超の喘息患者のデータをレトロスペクティブに解析した結果を基に、喘息患者の特徴を抽出した「問診チェックリスト」を作成し、喘息診療実践ガイドライン2022上に掲載している(p4、表2-1)。チェックリストは、大項目(喘鳴、咳嗽、喀痰などの喘息を疑う症状)と小項目(症状8項目、背景7項目の計15項目)からなり、「大項目+小項目(いずれか1つ)があれば喘息を疑う」とされている。 問診の結果、喘息を疑った場合には、「まず中用量のICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤(中用量ICS/LABA)を最低3日以上使ってほしい」という。「中用量ICS/LABAによる治療に反応し、治療開始前から喘鳴がある場合は喘息と診断して良い」とのことである。反応しない場合は、「他疾患も疑う必要があるため、迷わず専門医に紹介してほしい」と語った。喘息診療実践ガイドライン2022には喘息治療のフローを掲載 喘息診療実践ガイドライン2022の喘息治療のフローに基づくと、日常診療では診断もかねて基本的には中用量ICS/LABAで治療を開始し、それでも症状が残ってしまう場合には、症状に応じて次のステップを考える。咳・痰が続く、呼吸困難が残る、喫煙歴がある場合などは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)がある場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を追加する。LAMAを追加する場合は、「1デバイスで3成分を吸入できるICS/LABA/LAMAの3成分配合剤が登場しているため、こちらを使用してほしい」とのことだ。 また、治療効果が不十分の場合には、吸入薬をきちんと吸えていない可能性があるという。そのため、「まず、うまく吸えているかを確認してほしい。吸入指導の動画も用意しているので活用してほしい」と述べた。各種吸入デバイスの吸入指導用動画や「ホー吸入」という薬の通り道を広く保つ吸入法が、日本喘息学会HPに掲載されているので活用されたい。喘息診療実践ガイドライン2022に医療連携の可能な病院リスト 喘息治療においては、専門医との病診連携を積極的に活用してほしいという。たとえば、「中用量ICS/LABAにLAMAまたはLTRAを追加しても効果が得られない場合」「重症喘息に該当する喘息患者に遭遇した場合」「治療のステップダウンを検討しているが、呼吸機能検査ができない場合」などは検査を行う必要があるため、「専門医で治療導入や呼吸機能検査を実施し、その後はかかりつけ医の先生に診療いただくという病診連携も可能だ」と専門医との病診連携の重要性を強調した。専門医への紹介を考慮すべきタイミングについての詳細や専門医紹介時のひな型、医療連携の可能な病院のリストが喘息診療実践ガイドライン2022上に記載されているので活用されたい(p68~p71)。COVID-19流行期こそ喘息コントロールが重要 注目を集める喘息と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係については、「喘息をきちんとコントロールできていれば、COVID-19感染リスクが高いわけではないので、必要以上に怖がることはない。ただし、喘息のコントロールが悪いと、気道に炎症が起こり感染しやすくなってしまうので、喘息をコントロールすることが最も重要である」と喘息コントロールの重要性を強調した。『喘息診療実践ガイドライン2022』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:本文72頁発行:2022年7月作成:一般社団法人日本喘息学会発行:協和企画

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メポリズマブ、好酸球性喘息の小児患者で増悪を低減/Lancet

 都市部の低所得地域に居住する増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者において、インターロイキン-5(IL-5)に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブによる表現型指向の治療法は、以前に成人で観察された有効性に比べれば劣るものの、プラセボとの比較で喘息増悪の回数の有意な減少をもたらすことが、米国・ウィスコンシン大学医学公衆衛生大学院のDaniel J. Jackson氏ら国立アレルギー・感染病研究所(NIAID)Inner City Asthma Consortiumが実施した「MUPPITS-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月13日号に掲載された。米国の都市部9施設の無作為化プラセボ対照比較試験 MUPPITS-2試験は、増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者の治療における、ガイドラインに基づく治療へのメポリズマブの上乗せ効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、米国の都市部9ヵ所の医療センターが参加し、2017年11月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(米国NIAIDとGlaxoSmithKlineの助成を受けた)。 対象は、年齢6~17歳、社会経済的に恵まれない地域に住み、増悪を起こしやすい喘息(前年に2回以上の増悪と定義)を有し、血中好酸球数≧150個/μLの患者であった。 被験者は、ガイドラインに基づく治療に加え、メポリズマブ(6~11歳:40mg、12~17歳:100mg)またはプラセボを4週ごとに皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、52週の投薬が行われた。患者、担当医、アウトカムの測定値を収集する研究者は、割り付け情報を知らされなかった。 主要アウトカムは、intention-to-treat集団における、52週の投与期間に全身コルチコステロイドによる治療を受けた重度の喘息増悪の数(増悪率/人年)とされた。また、鼻洗浄検体を用いたトランスクリプトミクスによるモジュール解析により、治療効果のメカニズムの評価が行われた。高リスク小児で増悪を回避するための新たな標的を確認 9都市(ボストン、シカゴ、シンシナティ、ダラス、デンバー、デトロイト、ニューヨーク、セントルイス、ワシントンDC)から290例(intention-to-treat集団)が登録され、メポリズマブ群に146例、プラセボ群に144例が割り付けられた。248例が試験を完遂した。全体の年齢中央値は10.0歳(IQR:9.0~13.0)、女性が43%で、人種は黒人/アフリカ系米国人が70%、白人が11%、民族はヒスパニック/ラテン系が25%であった。 52週の試験期間中に発生した喘息増悪の平均回数(増悪率/人年)は、メポリズマブ群が0.96(95%信頼区間[CI]:0.78~1.17)と、プラセボ群の1.30(1.08~1.57)に比べ有意に少なかった(率比:0.73、95%CI:0.56~0.96、p=0.027)。 喘息の初回増悪までの期間は、両群間に差はみられなかった(ハザード比:0.86、95%CI:0.63~1.18、p=0.36)。また、事後解析では、プラセボ群で強力な季節性の増悪パターンが認められたが、このパターンはメポリズマブによって有意に変化し(p=0.0006)、とくに秋の増悪のピークが鈍化した(オッズ比:0.64、95%CI:0.42~0.98、p=0.041)。 試験期間中に発現または悪化した有害事象は、メポリズマブ群が146例中42例(29%)、プラセボ群は144例中16例(11%)で認められた。注射部位反応はそれぞれ19例(13%)および7例(5%)で、皮膚/皮下組織障害は10例(7%)および1例(<1%)で、消化器障害は7例(5%)および3例(2%)で発現した。アナフィラキシーが5件(メポリズマブ群3件、プラセボ群2件)発生したが、いずれも試験薬との関連はなかった。 気道トランスクリプトーム解析では、メポリズマブ群とプラセボ群における喘息増悪リスクの差の促進因子として、好酸球と上皮に関連する複数の炎症経路が同定された。 著者は、「メポリズマブによる補助的治療は喘息の増悪を抑制したが、これ以外の喘息のアウトカムには影響を及ぼさなかった」とまとめ、「気道トランスクリプトーム解析により、これらの高リスクの小児における増悪による疾病負担を正確かつ効果的に軽減する可能性のある新たな標的が確認された。また、臨床試験で十分な数の被験者がおらず、喘息への罹患や死亡のリスクが最も高い都市部の黒人およびヒスパニック系の小児において、生物学的製剤や他の介入への治療反応を評価することの重要性が明らかとなった」としている。

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