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重症好酸球性喘息、ベンラリズマブでコントロール良好ならICSは削減可/Lancet

 ベンラリズマブでコントロール良好な重症好酸球性喘息患者では、毎日投与の吸入コルチコステロイド(ICS)を大幅に削減可能であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDavid J. Jackson氏らによる、第IV相の多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験「SHAMAL試験」の結果で示された。重症好酸球性喘息では、高用量のICSへの反応が不十分にもかかわらず、ICSの段階的強化がルーティンに行われている。生物学的製剤への反応が良好な患者では、ICSの用量低減が推奨されているが、これまで安全性を裏付けるエビデンスがほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2023年12月7日号掲載の報告。ICS/ホルモテロールの漸減vs.維持を評価 SHAMAL試験は4ヵ国22施設で行われ、適格患者は、重症好酸球性喘息で5項目喘息コントロール質問票(ACQ-5)のスコアが1.5未満、スクリーニング前にベンラリズマブの投与を3回以上受けていた18歳以上の患者であった。 研究グループは患者を、低減群と参照群に3対1の割合で無作為化した。低減群は、ベンラリズマブ30mgを8週に1回+ICS/ホルモテロールのMART療法について、中用量の維持投与([ICS 200μg+ホルモテロール6μgの2噴霧を1日2回]+頓用[ICS 200μg+ホルモテロール6μg])で開始したものを、低用量の維持投与(ICS/ホルモテロールの1噴霧を1日2回+頓用)、さらに発作時のみICS/ホルモテロール投与の頓用へと漸減した。参照群は、ベンラリズマブ30mgを8週に1回+高用量ICS/ホルモテロール(1噴霧でブデソニド400μg+ホルモテロール12μg)2噴霧1日2回+サルブタモールの発作時頓用が維持投与された。漸減期間は32週間で、その後16週間を維持期間とした。 主要エンドポイントは、32週時点までにICS/ホルモテロール用量が低減した患者の割合であった。主要アウトカムは、低減群で評価し、安全性解析は、試験治療群に無作為化された全患者を対象に評価した。32週時点で漸減群の92%が低減を達成、61%が頓用のみに 2019年11月12日~2023年2月16日に、208例がスクリーニングを受けrun-in periodに登録。このうち168例(81%)が、低減群(125例[74%])と参照群(43例[26%])に無作為化された。 全体で、110例(92%)が、ICS/ホルモテロール用量を低減した。そのうち中用量への低減までが18例(15%)、低用量への低減が20例(17%)で、72例(61%)が頓用のみへ低減した。 患者113例(96%)において、48週まで低減は継続した。低減群の114例(91%)は、漸減期間中に増悪の報告はされなかった。 有害事象の発生頻度は両群で同程度であり、低減群91例(73%)、参照群35例(83%)であった。重篤な有害事象は17例報告され、低減群12例(10%)、参照群5例(12%)であった。死亡は報告されなかった。

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手持ち不足の薬剤の処方依頼前に継続の必要性を再検討【うまくいく!処方提案プラクティス】第53回

 今回は、手持ちの薬がなくなって服薬ができていなかった症例を紹介します。患者さんの希望で処方依頼をするシチュエーションは多々ありますが、状態によっては継続ではなく中止を提案することもあります。治療効果を意識して体調の変化を確認しましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患気管支喘息、慢性気管支炎、前立腺肥大症、高血圧症、緑内障、便秘症、アレルギー性鼻炎介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アジルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後2.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後3.ミラベグロン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.アンブロキソール徐放錠45mg 1錠 分1 朝食後5.ベポタスチン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後6.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.センノシド錠12mg 2錠 分1 就寝前9.ヒアルロン酸点眼液0.1% 1日3回 両眼10.タフルプロスト点眼液0.015% 1日1回 両眼本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から4日目に当薬局に訪問介入の依頼がありました。入居前は薬剤を自己管理していたようですが、過去の飲み忘れも含めて約1ヵ月半分の持参薬があり、用法ごとの残数もそろっていない状況でした(朝:42、昼:66、夕:58、就寝前:70日分)。気管支喘息の診断を受けていたとのことで、ブデソニド・ホルモテロールの空容器を持参していましたが、夜間は不安だからプロカテロール吸入薬も吸入したいので処方してもらいたいという患者さんからの依頼がありました。よくよく話を聞いてみると入居3週間前からブデソニド・ホルモテロールもプロカテロールも残薬がなくなっていて、手元にないと不安なので処方してほしいとのことでした。情報分析これまでの情報から私なりに分析してみました。まず、大量かつ不均等の持参薬から患者さんの服薬アドヒアランスは不良であることが想像できます。薬に対する依存度が強く、患者さんから医師にさまざまな薬を要望している様子もあったため、使用していた薬剤の種類と処方理由を明確にしておく必要があると考えました。なお、患者さんが要望している吸入薬はどちらも約1ヵ月間使用していませんでしたが、喘息発作などは起きていません。前医の診療情報書に目を通したところ、小児喘息や成人時期の喘息発作の経験はなかったものの、患者によると喘息の素因があるとのことで、感冒の際に希望があり処方しているという文面を確認することができました。患者さんはその後、長期間にわたって吸入薬を使用していました。基礎疾患にある気管支喘息の診断情報に疑問をもち、訪問診療医に相談することにしました。処方提案と経過患者さんとの初回面談から3日目に訪問診療医の初診があったため同行することにしました。診察前に、医師に初回面談時のやりとりを共有しました。入居前は服薬アドヒアランスが安定していなかったと考えられ、患者さんの希望から吸入薬が追加されている可能性があるものの、約1ヵ月間使用していなくても発作症状はないことなどを伝えました。医師からは、診察時に呼吸音や病状を確認し、診断の見直しをするという返答がありました。その結果、気管支喘息を積極的に疑う所見ではないので、このまま吸入薬をやめて様子をみようという判断になりました。その2週間後の診療でもその間の喘息発作は認められませんでした。患者さんからは、吸入の負担が減って精神的に楽になったと聞き、その後も状態が悪化することなく施設で穏やかに生活されています。

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非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

 日本全体で約1,000万人の潜在患者がいるとされる喘息。その約70%が何らかの症状を有し、喘息をコントロールできていないという。吸入ステロイド薬(ICS)の普及により、喘息による死亡(喘息死)は年々減少しているものの、2020年においても年間1,158人報告されているのが現状である。そこで、2020年に日本喘息学会が設立され、2021年には非専門医向けの喘息診療実践ガイドラインが発刊、2022年に改訂された。喘息診療実践ガイドライン発刊の経緯やポイントについて、日本喘息学会理事長の東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)に話を聞いた。喘息診療実践ガイドラインで2028年までに喘息死を0に 東田氏は、「均質な医療を提供することで、2028年までに喘息死を半減させる。できれば0にしたい」と語った。そのために「喘息の科学的知見に基づく情報提供をしたい」「非専門医の日常診療に役に立つガイドラインを作りたい」との思いから、喘息診療実践ガイドラインを作成したという。喘息診療実践ガイドラインは、新薬の登場などに合わせて、可能な限り毎年改訂を行う予定とのことである。喘息診療実践ガイドライン2022の問診チェックリスト活用を 従来のガイドラインでは、「喘息診断の目安」が記載されているものの、「診断基準」は明記されていない。また、喘息の診断には呼吸機能検査が必要とされているが、日常診療の場では難しい。そこで、喘息診療実践ガイドライン2022では、臨床現場で実際に活用できる診断アルゴリズムを作成している。ここで、重要となるのが「問診」である。東田氏らは、4千人超の喘息患者のデータをレトロスペクティブに解析した結果を基に、喘息患者の特徴を抽出した「問診チェックリスト」を作成し、喘息診療実践ガイドライン2022上に掲載している(p4、表2-1)。チェックリストは、大項目(喘鳴、咳嗽、喀痰などの喘息を疑う症状)と小項目(症状8項目、背景7項目の計15項目)からなり、「大項目+小項目(いずれか1つ)があれば喘息を疑う」とされている。 問診の結果、喘息を疑った場合には、「まず中用量のICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤(中用量ICS/LABA)を最低3日以上使ってほしい」という。「中用量ICS/LABAによる治療に反応し、治療開始前から喘鳴がある場合は喘息と診断して良い」とのことである。反応しない場合は、「他疾患も疑う必要があるため、迷わず専門医に紹介してほしい」と語った。喘息診療実践ガイドライン2022には喘息治療のフローを掲載 喘息診療実践ガイドライン2022の喘息治療のフローに基づくと、日常診療では診断もかねて基本的には中用量ICS/LABAで治療を開始し、それでも症状が残ってしまう場合には、症状に応じて次のステップを考える。咳・痰が続く、呼吸困難が残る、喫煙歴がある場合などは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)がある場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を追加する。LAMAを追加する場合は、「1デバイスで3成分を吸入できるICS/LABA/LAMAの3成分配合剤が登場しているため、こちらを使用してほしい」とのことだ。 また、治療効果が不十分の場合には、吸入薬をきちんと吸えていない可能性があるという。そのため、「まず、うまく吸えているかを確認してほしい。吸入指導の動画も用意しているので活用してほしい」と述べた。各種吸入デバイスの吸入指導用動画や「ホー吸入」という薬の通り道を広く保つ吸入法が、日本喘息学会HPに掲載されているので活用されたい。喘息診療実践ガイドライン2022に医療連携の可能な病院リスト 喘息治療においては、専門医との病診連携を積極的に活用してほしいという。たとえば、「中用量ICS/LABAにLAMAまたはLTRAを追加しても効果が得られない場合」「重症喘息に該当する喘息患者に遭遇した場合」「治療のステップダウンを検討しているが、呼吸機能検査ができない場合」などは検査を行う必要があるため、「専門医で治療導入や呼吸機能検査を実施し、その後はかかりつけ医の先生に診療いただくという病診連携も可能だ」と専門医との病診連携の重要性を強調した。専門医への紹介を考慮すべきタイミングについての詳細や専門医紹介時のひな型、医療連携の可能な病院のリストが喘息診療実践ガイドライン2022上に記載されているので活用されたい(p68~p71)。COVID-19流行期こそ喘息コントロールが重要 注目を集める喘息と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係については、「喘息をきちんとコントロールできていれば、COVID-19感染リスクが高いわけではないので、必要以上に怖がることはない。ただし、喘息のコントロールが悪いと、気道に炎症が起こり感染しやすくなってしまうので、喘息をコントロールすることが最も重要である」と喘息コントロールの重要性を強調した。『喘息診療実践ガイドライン2022』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:本文72頁発行:2022年7月作成:一般社団法人日本喘息学会発行:協和企画

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喘息吸入薬が効かない原因を突き止めデバイスを変更【うまくいく!処方提案プラクティス】第35回

 今回は、喘息患者さんの吸入デバイスの変更についてです。吸入指導では吸入デバイスの使い方に注力しがちですが、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)とドライパウダー吸入器(DPI)の特徴をしっかりと把握し、患者さんの状態変化に応じてデバイス自体を見直すことも重要です。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患気管支喘息、うつ病、高血圧症、逆流性食道炎、過活動膀胱介護度要介護2服薬管理施設スタッフが管理処方内容1.アミトリプチリン塩酸塩錠10mg 1錠 分1 就寝前2.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前3.ビラスチン錠20mg 1錠 分1 就寝前4.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 就寝前5.ミラベグロン錠50mg 1錠 分1 就寝前6.ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬 1回1吸入 1日2回 朝夕本症例のポイントある日、介護施設職員から、患者さんが吸入薬を頻回に使用しているが一向に症状が良くならないと相談がありました。状況を確認したところ、ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬(タービュヘイラー)を定期的に朝夕吸入しても、しばらくすると喘息発作が出現し、頓用吸入してもあまり効果がないことから、最高量の1日8吸入を吸入する日が続いていました。そこで、施設を訪問して吸入の様子を確認してみましたが、吸入手技や操作自体に大きな問題はありませんでした。しかし、吸入時の吸気をデモ機で確認したところ、強く深く吸入するところで苦しそうにしていて、吸気速度が十分ではありませんでした。これでは追加吸入しても十分な治療効果は得られず、いたずらに吸入回数が消費されてしまうだけです。そこで、患者さんの問題点と対応策について下記のようにまとめました。【問題点】この数日、ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬を追加吸入しているが喘息発作は改善しない。吸入前の薬剤残量カウンターの確認や回転グリップを半時計回りで止まるまで回すなどの基本操作は問題なし。吸入時に口角の隙間はなく、上部・下部の吸気口を手や口でふさいでしまうこともない。吸入前の深呼吸が浅く、吸気速度が十分ではない。吸入後の息止めのタイミングが難しい。【対応策】吸気速度が十分でないことから、気流制限に対応したpMDI製剤への変更を検討。薬剤ボンベのアルミ缶底部を強く押すことができない可能性があるため、スペーサーを装着する。デバイス切り替え後はゆっくり深い吸入を意識するように服薬指導する必要がある。処方提案と経過上記のことから、pMDI製剤であるフルチカゾンプロピオン酸エステル・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬(エアゾール)への変更を提案することにしましたが、情報量も多く、文書での提案が困難であると判断し、医師の訪問診療に同行して直接相談することにしました。同行時に、現状のDPI製剤と変更提案するpMDI製剤の吸入練習器を持参して、患者さんにそれぞれを操作・吸入してもらいました。実際にDPI製剤では吸気速度が十分に保たれておらず、pMDI製剤であれば問題ないことが確認でき、患者さんからもpMDI製剤であれば吸入時に力まなくて済むのが良いと好評でした。そこで、効率的な吸入を行うためにスペーサーを装着して、フルチカゾンプロピオン酸エステル・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入薬へ変更することを提案し、承認をいただきました。pMDI製剤導入当日に介護職員にも立ち会っていただき、練習器を用いながら吸入基本操作や吸入時の注意点のデモを行い、理解を深めました。スペーサーを装着したことで吸気同調の課題も解決し、変更の翌日から夜間の発作も改善しました。現在は、スペーサーがなくても吸気同調が可能となり、過剰使用や突発発作もなく経過しています。大林浩幸. メカニズムから見る 吸入デバイスのピットホール. 日経BP;2016.

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)への3剤配合吸入薬治療について(解説:小林英夫氏)-1255

 呼吸機能検査において1秒率低下を呈する病態は閉塞性換気障害と分類され、COPD(慢性閉塞性肺疾患)はその中心的疾患で、吸入薬による気道拡張が治療の基本であることはすでに常識となっている。その吸入療法にどのような薬剤が望ましいのか、短時間作用型抗コリン薬(SAMA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、短時間作用型β2刺激薬(SABA)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)などが登場している。さらに、COPDの一種として気管支喘息要素を合併している病態(ACO)が注目されてからは吸入ステロイド薬(ICS)が追加される場合もある。そして、これら薬剤を個別に使用するより合剤とすることで一層の効果を得ようと配合薬開発も昨今の流れである。 本論文はICS+LABA+LAMAの3剤配合薬(本邦商品名ビレーズトリ)でICS含有量が異なった2タイプ薬、LABA+LAMA 2剤配合薬、ICS+LABA 2剤配合薬、の4群でのCOPD治療効果を検証している。当然とはいえ、研究スポンサーは発売元の製薬会社である。結論を簡略化すると、3剤配合吸入薬は2用量のいずれでも、2剤配合吸入薬に比べCOPD増悪頻度を有意に改善したとなっている。登録例数8,500超と大規模臨床研究で、喘息要素を交じるACO例の存在が記載されていないものの、症例背景の好酸球数や気道可逆性試験から推測すると30%程度がACOのようである。 複数の単剤を別途吸入するよりも配合薬とすることで、服薬アドヒアランス向上と治療効果上昇が期待される。2019年以降、3剤配合吸入薬として本邦ではテリルジー、ビレーズトリがCOPDの適応で上梓され、1日換算薬価は300円弱と3剤を別途処方するよりも低額になっている。また2020年8月頃にエナジアが気管支喘息の適応で販売予定である。各製剤の吸入装置や吸入回数は異なり、優劣も不明である。治療選択肢の増加は個人的には歓迎だが、配合剤では症例に応じた細やかな用量調整は難しく、ビレーズトリも本邦では1種類(欧米のICS半量タイプ)のみの販売である。

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COPDへの3剤配合吸入薬、ICS半量でも有効/NEJM

 中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、ブデソニド標準用量または半量によるブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール3剤配合吸入薬(ブデソニド半量の3剤配合吸入薬は本邦未承認)はいずれも、グリコピロニウム/ホルモテロールまたはブデソニド/ホルモテロールの2剤配合吸入薬と比較し、中等度~重度のCOPD増悪頻度を抑制したことが示された。ドイツ・LungenClinic GrosshansdorfのKlaus F. Rabe氏らが、26ヵ国で実施した52週間の第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of Triple Therapy in Obstructive Lung Disease trial:ETHOS試験」の結果を報告した。COPDに対する固定用量の吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)3剤併用療法は、これまで1つの用量のICSでのみ検討されており、低用量ICSでの検討が不足していた。NEJM誌オンライン版2020年6月24日号掲載の報告。ICS標準用量/半量による3剤配合の有効性を2剤配合と比較 研究グループは、過去1年間に1回以上の増悪を認めた中等症~最重症のCOPD患者8,588例を、ブデソニド320μg/日+グリコピロレート(グリコピロニウム臭化物として18μg/日、以下、グリコピロニウム)+ホルモテロール(ホルモテロールフマル酸塩水和物9.6μg/日)(ブデソニド標準用量3剤配合群)、ブデソニド160μg/日+グリコピロニウム+ホルモテロール(ブデソニド半量3剤配合群)、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群、またはブデソニド(320μg/日)/ホルモテロール2剤配合群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日2回52週間吸入投与した。 主要評価項目は、52週間における中等度~重度増悪(中等度増悪:3日以上の全身性ステロイドまたは抗生物質の投与、重度増悪:入院または死亡)の年率(推定平均回数/患者/年)であった。標準用量・半量とも3剤配合吸入薬は、2剤配合吸入薬に比べ増悪頻度を有意に改善 無作為割り付けから治験薬投与中止までの間にデータが得られた8,509例(修正intention-to-treat:mITT集団)を主要評価項目の解析対象集団とした。 中等度~重度の増悪頻度は、ブデソニド標準用量3剤配合群(2,137例)が1.08回/患者/年、ブデソニド半量3剤配合群(2,121例)が1.07回/患者/年、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(2,120例)は1.42回/患者/年、ブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(2,131例)は1.24回/患者/年であった。 ブデソニド標準用量3剤配合群は、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(24%減少、率比:0.76、95%信頼区間[CI]:0.69~0.83、p<0.001)、およびブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(13%減少、0.87、0.79~0.95、p=0.003)と比較して増悪頻度が有意に減少した。ブデソニド半量3剤配合群も同様に、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(25%減少、0.75、0.69~0.83、p<0.001)、およびブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(14%減少、0.86、0.79~0.95、p=0.002)と比較して、増悪頻度が有意に減少した。 有害事象の発現頻度は治療群間で類似していた(範囲:61.7~64.5%)。独立評価委員会で確定された肺炎の発現頻度は、ブデソニドを用いた治療群で3.5~4.5%、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群で2.3%であった。

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ビレーズトリ:待望のICS/LAMA/LABA 3剤合剤が登場

吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)の3剤合剤である慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬ビレーズトリが、世界に先駆けて日本で承認された。COPDによる死亡が増加する中で、ビレーズトリは救世主となるのか。注目の薬剤にスポットを当てる。COPDの病態に合わせたデバイス、エアロスフィアLAMA/LABAの合剤の登場、ICS/LABA製剤のCOPDへの適応拡大など、ここ数年で選択肢が広がったCOPD治療だが、増悪を繰り返す患者は依然として多い。その中でも治療が継続できない患者が目立つのは大きな課題だ。とくに、服薬アドヒアランスの低さが目立っており、「タバコは継続できるのに治療を継続できない」という患者もいる。そのような状況で、LAMA、LABAの2剤の気管支拡張薬と、抗炎症作用のあるICSとの合剤であるビレーズトリが登場した。これまで2つのデバイスを持ち運び、扱う必要があった患者において、ビレーズトリを用いることで1つのデバイスでコントロールが可能になり、持ち運びや吸入手技の習得といった側面からアドヒアランスの改善につながる可能性ある。また、ビレーズトリは「エアロスフィア」と呼ばれる、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)を使用している、いわゆるエアゾール製剤である。この「エアロスフィア」はCOPD患者が吸入しやすい、病態に合わせたデバイスとなっている。COPDは高齢の患者が多数を占め、呼吸機能が低下している場合も多い。そのためビレーズトリには、吸入時に吸気量をあまり必要とせず、吸入の容易なpMDIが採用されている。また、薬剤を運ぶ担体は、肺全体に薬剤を届けるのに至適な大きさである粒子径(約3μm)となっている。このように3剤合剤である点とデバイスが特徴的なビレーズトリだが、薬理学的にも大きな特長がある。服薬アドヒアランス向上も可能か。患者が実感できる効果の高さと効果発現の速さビレーズトリの有効性と安全性が、第III相国際共同試験であるKRONOS試験において検討された。この試験では、中等症から最重症のCOPD患者1,899例を対象に、ビレーズトリと、LAMA/LABAの2剤配合剤であるビベスピ、シムビコートおよびPT009(ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩の配合剤)において、有効性、安全性が比較されている。ビレーズトリは、呼吸機能改善に関する主要評価項目9項目中の8項目を達成したうえ、ビベスピとの比較で、増悪の発現率を52%有意に低下させた。ガイドラインでもCOPD治療における増悪抑制の重要性が強調されているため、ビレーズトリの増悪抑制効果は非常に重要な特長といえるだろう。また投与1日目における効果発現までの時間は、吸入後5分と非常に速い効果発現が示された。効果発現が速いという特長は、薬剤を吸入する患者も実感しやすいものであるので、アドヒアランス向上につながると考えられる。ビレーズトリによるCOPD治療の将来展望ビレーズトリは、簡便な服薬と、高い効果と速い効果発現によって、これまで治療が進まなかったCOPD患者の服薬アドヒアランスを向上させ、治療を継続させられる可能性を持った薬剤である。COPDは診断・治療においても、他の呼吸器疾患との鑑別が難しいなどの課題があるが、ビレーズトリを用いた簡便で、かつ効果の高い治療法が登場した今、呼吸器非専門のかかりつけ医でCOPDの診断・治療が可能になれば、COPDの死亡者数増加に歯止めをかけられるのではないだろうか。

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COPDの3成分配合吸入エアゾール薬「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」【下平博士のDIノート】第37回

COPDの3成分配合吸入エアゾール薬「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」今回は、COPD治療薬「ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物製剤(商品名:ビレーズトリエアロスフィア56吸入)」を紹介します。本剤は、吸入薬を複数使用してもコントロールが不十分なCOPD患者に対し、治療効果とアドヒアランス双方の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入抗コリン薬および長時間作用性吸入β2刺激薬の併用が必要な場合)の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年9月4日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320μg、グリコピロニウムとして14.4μg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6μg)を1日2回吸入投与します。<副作用>第III相試験(KRONOS試験、PT010007試験、PT010008試験)の併合成績において、本剤が投与された639例のうち、臨床検査値異常を含む副作用が126例(19.7%)において認められました。主な副作用は、発声障害(3.1%)、筋痙縮、口腔カンジダ症(各1.4%)、上気道感染(1.3%)などでした。なお、重大な副作用として、心房細動(0.2%)、重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善するCOPDの治療薬です。2.1日2回、1回2吸入を、毎日なるべく同じ時間帯に、よく振ってから吸入してください。3.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず数回うがいをしてください。4.吸入器の小窓には、20きざみでおおよその残り回数が示されています。小窓の中央に「0」が表示され、それ以上進まなくなったら使用を中止して、新しいものに交換してください。開封するときは、キャップを外し、よく振って1度空噴霧する、という一連の操作を4回繰り返してください。5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療とともに禁煙を徹底しましょう。7.週1回、本体から薬剤の入った缶と吸入口のキャップを外してプラスチック部分(アクチュエーター)をぬるま湯で洗浄し、洗った後はよく乾かしてください。<Shimo's eyes>本剤は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の3成分が配合されたCOPD治療薬です。3成分配合のCOPD治療薬として、フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ)に続く2剤目となります。COPDの15~20%は喘息が合併していると見込まれているため、LAMAやLABAなどの気管支拡張薬だけでは症状のコントロールが難しい患者さんが少なくありません。本剤は、ICS/LABAやLAMA/LABAで治療していても症状が残存している患者さん、時折抗菌薬や経口ステロイド薬が必要となる患者さんなどで切り替えて使用することが想定されます。本剤はLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用には注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。本剤は、デバイスに世界で初めて「エアロスフィア」というpMDI(加圧噴霧式定量吸入器)が採用され、薬剤送達技術を駆使して調製された多孔性粒子が3種の薬剤を肺の末梢まで届けることが期待されています。pMDIなので、吸気力が低下している場合でも少ない負荷で吸入できますが、ボンベを押す力が弱い患者さんには吸入補助器具(プッシュサポーター)、ボンベを押すタイミングと吸入の同調が難しい患者さんにはスペーサー(エアロチャンバープラスなど)の使用を勧めましょう。COPD患者さんは、喫煙や加齢に伴う併存疾患の治療を並行していることが多く、アドヒアランスを向上させて治療を継続させることが重要です。COPD治療に、本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、患者さんの負担を増やさずに症状の改善およびアドヒアランスの向上を目指すことができるでしょう。

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成人気管支喘息の重度悪化予防療法について(解説:小林英夫氏)-1118

 今回指定された論文は、成人気管支喘息発作時の治療法によって重症増悪予防効果に優劣があるかどうかを検討したものである。登録885例の軽症・中等症では、発作時にブデソニド/ホルモテロール配合薬の頓用吸入群が、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用吸入群に比べて、重度喘息増悪の予防効果に優れると報告している。 本CLEAR! ジャーナル四天王では、845(2018年4月30日掲載)、1060(2019年6月11日掲載)、に続き3回目のSMART(single maintenance and reliever therapy)療法関連へのコメントとなる。SMARTに関しては上記845内で解説しているが、当初は否定的な意見があったものの約10年間の経験により、その非劣性効果はほぼ定まってきた。論文によって対象群やアウトカムなどの差異はあるが、ブデソニド/ホルモテロール(商品名:シムビコート)の有用性が支持されている。そして吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬合剤は喘息治療への安全性においても問題がないことは2018年の他論文でも確認され(Busse WW, et al. N Engl J Med. 2018;378:2497-2505.)、現行標準治療の一つとなっている。注意すべき点として喘息発作時への保険適用はシムビコートだけであること、海外と異なり小児喘息への適応はないこと、が挙げられる。本論文により格段の新知見が得られたわけではなく従来の再確認との印象が強い。筆者としては、治療に難渋する気管支喘息を念頭において表現型(フェノタイプ)を意識したさらなる臨床研究を期待したい。なお、これまで発作時に追加吸入可能な製剤は独占的であったが、発売から9年目を迎え本邦3社からジェネリック医薬品「ブデホル」が登場予定である。

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成人軽症~中等症喘息の発作治療、ICS/LABA vs.SABA/Lancet

 軽症~中等症の成人喘息患者の治療では、症状緩和のためのブデソニド/ホルモテロール配合薬の頓用は、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用に比べ、重度喘息増悪の予防効果が優れることが、ニュージーランド・Medical Research Institute of New ZealandのJo Hardy氏らが行ったPRACTICAL試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月23日号に掲載された。軽症の成人喘息患者では、発作時の単剤治療としての吸入コルチコステロイド(ICS)と即効性長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬は、短時間作用性β2刺激薬(SABA)による発作時治療に比べ、重度増悪の抑制効果が高いと報告されている。ICS/LABAとSABAの有用性を比較する無作為化試験 本研究は、ニュージーランドの15施設が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験であり、ブデソニド/ホルモテロール配合薬よる発作時治療と、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン(SABA)頓用の併用治療の有用性を比較する目的で実施された(ニュージーランド保健研究会議[HRC]の助成による)。 対象は、年齢18~75歳、患者が自己申告し、医師により喘息と診断され、割り付け前の12週間に発作時SABA治療単独、または発作時SABA治療+低~中用量の吸入コルチコステロイドによる維持療法を行っていた患者であった。 被験者は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬(1噴霧中にそれぞれ200μgおよび6μgを含有、症状緩和のために必要時に1吸入)による治療を行うICS/LABA群、またはブデソニド(1噴霧中に200μg含有、1回1吸入、1日2回)+テルブタリン(1噴霧中に250μg含有、症状緩和のために必要時に2吸入)による治療を行うSABA群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。患者は、割り付け時と4、16、28、40、52週時に受診した。 主要アウトカムは、intention to treat集団における患者1例当たりの重度増悪の年間発生とした。重度増悪は、喘息による3日間以上の全身性コルチコステロイドの使用、もしくは全身性コルチコステロイドを要する喘息による入院または救急診療部への受診と定義された。ICS/LABA群の重度増悪が31%減少、症状は同等でステロイド減量 2016年5月4日~2017年12月22日の期間に885例が登録され、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群に437例(平均年齢43.3[SD 15.2]歳、女性56%)が、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群には448例(42.8[16.7]歳、54%)が割り付けられた。 1例当たりの重度増悪の年間発生は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群がブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群に比べ、31%有意に低かった(絶対発生率:0.119 vs.0.172、相対値:0.69、95%信頼区間[CI]:0.48~1.00、p=0.049)。 重度増悪の初発までの期間は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群が、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群よりも長かった(HR:0.60、95%CI:0.40~0.91、p=0.015)。また、中等度~重度増悪の初発までの期間も、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群のほうが長かった(0.59、0.41~0.84、p=0.004)。 治療失敗による投与中止の割合は、両群間に差はみられなかった(ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群9例、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群11例、相対リスク:0.84、95%CI:0.35~2.00、p=0.69)。また、five-question version of the Asthma Control Questionnaire(ACQ-5、前週の喘息症状に関する5つの質問への回答で、0[障害なし]~6[最大の障害]点に分類)のスコアにも、すべての評価時点で両群間に差はなかった(平均差:0.06、-0.005~0.12、p=0.07)。 ブデソニドの平均1日用量は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群のほうが少なかった(差:-126.5μg/日、95%CI:-171.0~-81.9、p<0.001)。 1件以上の有害事象を発現した患者は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用群が385例(88%)、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用群は371例(83%)であった。最も頻度の高い有害事象は、両群とも鼻咽頭炎だった(154例[35%]、144例[32%])。 著者は「これらの知見は、吸入コルチコステロイド/ホルモテロール配合薬による発作時治療は、軽症喘息患者への低用量吸入コルチコステロイド毎日投与の代替レジメンであるとする2019 Global Initiative for Asthma(GINA)の推奨を支持するものである」としている。

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成人の「軽症」気管支喘息における増悪予防治療について(解説:小林英夫氏)-1060

 成人気管支喘息の治療は重症度による差異はあるものの、大まかには、吸入ステロイド薬を維持療法の基本薬とし、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)を用いている。本論文は成人軽症喘息の増悪予防療法について3群を比較検討し、ブデソニド+ホルモテロール合剤の頓用が吸入ステロイド維持療法に劣らないとしたものである。 これまで維持療法が導入されていない軽症症例を、発作時のみSABA吸入頓用群、吸入ステロイド維持療法+発作時SABA頓用、発作時にブデソニド+ホルモテロール合剤の頓用、の3群化している。初めの2群は一般的な治療であり、3つ目の群を評価することが本試験の目的となっている。なお、喘息発作時に合剤を追加吸入する治療としてSMART(single maintenance and reliever therapy)療法が報告されているが、この療法は維持療法として合剤を使用したうえにさらに上乗せする治療で、本試験の第3群とは別個の概念である。 本試験の結論として、「軽症」成人喘息においては、喘息発作時の合剤頓用が吸入ステロイド維持療法と同等以上に増悪発生と重症増悪を管理できるとしている。結論に大きな異論はないように感ずる。また、患者は毎日の定期吸入療法よりも必要時のみの合剤頓用に簡便性を感じるかもしれない。それでは、日常の治療選択肢として合剤頓用が望ましいであろうか。今後、合剤頓用が喘息治療のガイドラインに組み込まれる可能性はあろうが、筆者は当面は積極的な導入は見合わせるつもりである。本結論を支持する追加論文の必要性もある。そして患者本人の判断に重きを置く治療法への不安が残る。SABAも合剤も、本人判断による頓用が過剰吸入や喘息の過小評価につながった経験は決して少なくない。頓用療法では自覚症状のみではなくピークフロー測定の導入がより重要になると感じる。30年近く前にSABA頓用の有害性が報告された歴史も踏まえ、もうしばらくはデータの蓄積を待ってもよいのではないだろうか。

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軽症喘息の増悪予防、SABA vs.ブデソニド+ホルモテロール頓用/NEJM

 軽症喘息の成人患者では、ブデソニド+ホルモテロールの頓用はalbuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)頓用に比べ喘息増悪の予防に優れることが、ニュージーランド・Medical Research Institute of New ZealandのRichard Beasley氏らが行った「Novel START試験」で示された。研究の詳細はNEJM誌2019年5月23日号に掲載された。これまでの二重盲検プラセボ対照比較試験で、ブデソニド+ホルモテロール頓用は、短時間作用性β2刺激薬(SABA)の頓用に比べ、重度の喘息増悪のリスクが低く、ブデソニド維持療法+SABA頓用とほぼ同じと報告されていた。3群で年間喘息増悪発生率を比較 本研究は、ニュージーランド、英国、イタリア、オーストラリアの16施設が参加した52週間の非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年3月~2017年8月に患者登録が行われた(AstraZenecaなどの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、登録前の3ヵ月間に単独の喘息治療としてSABAを使用し、患者報告で2回以上のSABA使用があるが、直近4週間の1日平均使用回数が2回以下の喘息患者であった。 被験者は、次の3つの群の1つに無作為に割り付けられた。(1)albuterol群:加圧噴霧式定量吸入器で、1回100μgを2吸入、発作時に頓用、(2)ブデソニド維持療法群:ブデソニド(タービュヘイラーで1吸入200μgを1日2回)+albuterol頓用、(3)ブデソニド+ホルモテロール群:タービュヘイラーで、ブデソニド200μgとホルモテロール6μg(1吸入)を頓用。薬剤の使用量の測定には、吸入器の電子モニタリングを用いた。 主要アウトカムは、喘息増悪の年間発生率であった。重度の喘息増悪の回数も有意に少ない 668例が登録され、albuterol群に223例(平均年齢35.8±14.0歳、女性50.7%)、ブデソニド維持療法群に225例(34.9±14.3歳、57.3%)、ブデソニド+ホルモテロール群には220例(36±14.1歳、55.5%)が割り付けられた。 ベースラインの過去1週間のACQ-5(0~6点、点数が高いほど喘息コントロールが不良)の平均値は1.1点(軽症喘息)で、患者の7.3%で過去1年間に重度の喘息増悪がみられ、54%で過去4週間のSABA使用が週2回以下であった。 ブデソニド+ホルモテロール群の年間喘息増悪発生率は、albuterol群よりも有意に低く(絶対的発生率:0.195 vs.0.400、相対的発生率:0.49、95%信頼区間[CI]:0.33~0.72、p<0.001)、ブデソニド維持療法群とは発生率に有意差はなかった(絶対的発生率:ブデソニド+ホルモテロール群0.195 vs.ブデソニド維持療法群0.175、相対的発生率:1.12、95%CI:0.70~1.79、p=0.65)。 重度の喘息増悪の回数は、ブデソニド+ホルモテロール群がalbuterol群(9回 vs.23回、相対リスク:0.40、95%CI:0.18~0.86)およびブデソニド維持療法群(9回 vs.21回、0.44、0.20~0.96)に比べ、有意に少なかった。 吸入ブデソニドの平均(±SD)使用量は、ブデソニド+ホルモテロール群が107±109μg/日、ブデソニド維持療法群は222±113μg/日であった。 有害事象の発生率と種類は、先行試験および実臨床での使用報告と一致していた。最も頻度の高い有害事象は、3群とも上気道感染症で、次いで鼻咽頭炎、喘息の順だった。 著者は、「この知見は、患者が喘息の増悪に気付いた状況で、吸入グルココルチコイドを気管支拡張薬との併用で頓用することで、患者が緊急治療を求めるほどに増悪が重症化するリスクを低減する可能性を示唆する」とし、「ブデソニド維持療法は、喘息症状のコントロールに優れるため、増悪よりもむしろ症状を最大の苦痛とする患者にとって価値があると考えられる」と指摘している。

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【GET!ザ・トレンド】吸入指導をクラウドで管理 地域連携で喘息死ゼロへ

1990年代後半から、喘息死は減少を続けていたが、昨年増加に転じた。原因の詳細は不明だが、吸入薬を正確に使用できていない可能性が指摘されている。喘息死ゼロへ向けた取り組みと最新の医薬連携システムについて、目的と意義を大林 浩幸氏に聞いた。無駄をなくした医療で患者の健康を守る大林氏が院長を務める東濃中央クリニック(岐阜県瑞浪市)では、呼吸器内科、アレルギー科、消化器内科、老年内科、リハビリテーション科を標榜診療科とし、地域の住人から頼られる病院として献身的に診療を行っている。同氏は、「精度の高い診断と厳選された少数の薬による『的を射抜く』治療を心掛けており、患者さんを薬漬けにしないことで、患者さんの満足度の向上と医療経済の貢献を目指している」と診療への心意気を語った。アカデミー設立により、吸入指導から地域医療連携を進める体制づくり同氏は、薬剤師の知識の均てん化と指導力の底上げを目的に、薬剤師を主体として、2013年に一般社団法人 吸入療法アカデミーを設立した。吸入薬は喘息治療のfirst lineに位置付けられているが、吸入薬にはそれぞれ専用のデバイスがあり、正しい吸入ができていない実態に現場では多く直面するという。いかに優れた薬剤であっても、患者自身が適切に吸入できなければ、期待する治療効果は得られない。そのため、このアカデミーでは、各地域の薬剤師会と協力し、すべての吸入薬・デバイスに対し、的確な吸入指導ができる薬剤師の養成を行い、地域内のどの薬局に処方箋が持ち込まれても、均一で良質な患者吸入指導ができる体制整備を目指した活動を展開している。同氏は、吸入デバイスの誤操作をピットホールと呼び、「ピットホールの原因の多くは、加齢現象、癖、個性(利き手)、性格、生活スタイルなど患者さん側に起因するもの」と述べる。適切な吸入薬の効果を得るため、これらを医療者側でクローズアップさせる必要がある。また、同氏は「患者さんが正しく操作できるところではなく、できないことを見るのが大切。医療者側が、陥りやすいピットホールを学習・共有しておくことで、患者さんの吸入状況が医師にも伝わりやすくなり、地域医療連携にもつながる」と強調する。基盤ができたところで、吸入カルテシステムの開発同氏は、吸入療法アカデミーにおいて、吸入指導における医療連携クラウド(吸入カルテシステム)の開発を、權 寧博氏(日本大学医学部内科学系 呼吸器内科学分野 教授)らのシステムを基盤に進めてきた。このクラウドサービスは、日本大学工学部電気工学科の「戸田研究室」が協力し、医療者の利便性も盛り込み開発された。iOS・Android端末、PCなどがあればどこでも対応でき、従来の紙・FAXによるやり取りでの不便さが解消され、即時対応が可能という大きなメリットがある。セキュリティについても考慮されており、患者情報は診察券・カルテ番号で照合、識別するため、第三者に個人が特定される危険を防いでいる。システムの流れは、吸収指導が必要な患者に吸入薬が処方されたとき、クラウドに登録された医師が、本システムで吸入指導の依頼書を作成する。処方箋などで指導依頼を受けた薬剤師は、指定されたIDでアクセスすることで、指導前に患者情報を医師と共有することができる。指導を終えた薬剤師は、フィードバックとして報告書を作成する。医師・薬剤師が、吸入指導時の問題点、指導後の経過や患者の生活面、性格面についてなどを即時的に共有できるため、患者個人に寄り添った継続的な指導が期待される。また、病棟などの看護師が吸入指導を行う場面も考慮し、本システムには看護師の枠も設けられている。システムの概要スライドを拡大するスライドを拡大するシステムの流れ(システムは現在改訂中)1.医師が吸入薬の処方時に、吸入指導依頼書を作成する。依頼書はすべてクリック選択で作成することができる。下部には同意書が付いており、その場で患者の同意を確認する。2.吸入指導依頼書を受け取った薬剤師・看護師は、システムにログインして依頼内容を確認し、吸入指導を行う。3.吸入指導を行った薬剤師・看護師は、吸入指導の結果と医師への伝言(画面上部)(画面下部)などをシステム上で報告(クリックのみで報告書の作成も可能)する。特記事項があれば、記入することもできる。4.医師は、リアルタイムで報告書を確認し、次回の診察・処方に役立てることができる。※リンクで画面イメージをご確認いただけます大林氏の喘息死ゼロへ向けた取り組み

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軽症喘息へのSMART療法 vs.ブデソニド維持療法/NEJM

 軽症喘息患者に対する52週間の治療において、ブデソニド・ホルモテロール配合剤(商品名:シムビコート)の頓用はブデソニド維持療法(1日2回投与)と比較し、重症喘息増悪の発生という点では非劣性が認められたが、症状の改善は劣っていた。ただし、ブデソニド・ホルモテロール頓用患者では吸入ステロイド薬(ICS)の使用量がブデソニド維持療法患者の約4分の1であった。南アフリカ・ケープタウン大学のEric D. Bateman氏らが、軽症喘息患者を対象とした多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「Symbicort Given as Needed in Mild Asthma 2(SYGMA2)」試験の結果を報告した。軽症喘息患者は、発作時に短時間作用性β2刺激薬(SABA)の吸入を用いることが多く、ICS維持療法のアドヒアランスは不良である。即効性吸入β2刺激薬+ICSの頓用は、こうした患者の症状改善や増悪リスクに対する新たな治療法となる可能性があった。NEJM誌2018年5月17日号掲載の報告。25ヵ国354施設の軽症喘息患者約4,200例で重症増悪発生率を評価 研究グループは、2014年11月~2017年8月に、日常的なICS定期投与の適応がある12歳以上の軽症喘息患者4,215例を、ブデソニド・ホルモテロール頓用群(プラセボ1日2回投与+ブデソニド・ホルモテロール[ブデソニド200μg、ホルモテロール6μg]頓用)(2,089例)と、ブデソニド維持療法群(ブデソニド200μg1日2回投与+テルブタリン0.5mg頓用)(2,087例)に無作為に割り付け、52週間治療を行った。 主要評価項目は、重症喘息増悪の年間発生率で、ブデソニド・ホルモテロール頓用群のブデソニド維持療法群に対する非劣性マージンは1.2と規定した。副次評価項目として、喘息症状に関し、5項目の喘息管理質問票(Asthma Control Questionnaire-5:ACQ-5、0点[障害なし]~6点[最大の障害])で評価した。重症増悪発生率は非劣性、症状コントロールは劣性 重症増悪の年間発生率は、ブデソニド・ホルモテロール頓用群0.11(95%信頼区間[CI]:0.10~0.13)、ブデソニド維持療法群0.12(95%CI 0.10~0.14)であり、ブデソニド・ホルモテロール頓用群は重症増悪という点ではブデソニド維持療法に対して非劣性であることが認められた(率比:0.97、95%信頼上限1.16)。 ICSの1日使用量の中央値は、ブデソニド・ホルモテロール頓用群(66μg)が、ブデソニド維持療法群(267μg)よりも低値であった。初回増悪までの期間は、両群で類似していた(ハザード比:0.96、95%CI:0.78~1.17)。ACQ-5のベースラインからの改善は、ブデソニド維持療法のほうが優れていた(群間差:0.11、95%CI:0.07~0.15)。

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軽症喘息へのSMART療法は有益か/NEJM

 軽症喘息患者に対し、ブデソニド・ホルモテロール配合剤(商品名:シムビコート)の頓用は、テルブタリン頓用に比べ、喘息コントールおよび増悪リスクの軽減に優れることが示された。一方、ブデソニド維持療法(ブデソニド+テルブタリン頓用)に対しては、電子ダイアリーの週評価でみた喘息コントロールは劣性であることが示され、増悪リスクの軽減は同程度だった。増悪の頻度は、ブデソニドを含む2療法が、テルブタリンよりも低下した。また結果として、ブデソニド・ホルモテロール頓用群がブデソニド維持療法群よりも、グルココルチコイドの曝露が大幅に少なかった。カナダ・マックマスター大学のPaul M. O’Byrne氏らが、3,849例を対象に行った、52週の二重盲検無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年5月17日号で発表した。52週間追跡し、電子ダイアリーによる喘息コントロール良好の週の割合を比較 研究グループは、軽症喘息患者において、吸入ステロイド+短時間作用性β2刺激薬の頓用が、従来治療戦略に代わりうる可能性を検討した。 被験者は、12歳以上の軽症喘息患者3,849例。同グループは被験者を無作為に、テルブタリン群(プラセボ[2回/日]+テルブタリン[0.5mg、頓用])、ブデソニド・ホルモテロール群(プラセボ[2回/日]+ブデソニド・ホルモテロール配合剤[ブデソニド200μg+ホルモテロール6μg、頓用])、ブデソニド維持療法群(ブデソニド[200μg、2回/日]+テルブタリン[0.5mg、頓用])の3群に分け、いずれかを投与した。 試験の主要目的は、喘息症状スコアなどに関する電子ダイアリーを基に、喘息コントロールが良好だった週の割合について、ブデソニド・ホルモテロール頓用のテルブタリン頓用に対する優越性を検証することだった。コントロール良好、LABA/ICS群34.4%、SABA群31.1%、ICS+SABA群44.4% 被験者のうち3,836例(テルブタリン群1,277例、ブデソニド・ホルモテロール群1,277例、ブデソニド維持療法群1,282例)について、全解析と安全性データ分析を行った。 喘息コントロールが良好だった週の割合をみると、テルブタリン群31.1%に対し、ブデソニド・ホルモテロール群は34.4%と、その優越性が示された(オッズ比[OR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.00~1.30、p=0.046)。一方で、ブデソニド維持療法群の同割合は44.4%と、ブデソニド・ホルモテロール群の劣性が示された(OR:0.64、同:0.57~0.73)。 また重度増悪の年間発生頻度は、テルブタリン群が0.20、ブデソニド・ホルモテロール群が0.07、ブデソニド維持療法群が0.09だった。率比は、ブデソニド・ホルモテロール群対テルブタリン群が0.36、ブデソニド・ホルモテロール群対ブデソニド維持療法群が0.83だった。 なお、ブデソニド・ホルモテロール群の1日ステロイド定量噴霧吸入量の中央値は57μgで、ブデソニド維持療法群340μgの17%にとどまった。

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持続型気管支喘息におけるSMART療法について(解説:小林英夫 氏)-845

 本論文のSMART(single maintenance and reliever therapy)とは、吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)の合剤を、定期治療にも喘息発作時の一時的対応のいずれにも用いる治療戦略の意で、すでに知られた略語である。なお、SMARTをSymbicort maintenance and reliever therapyの略とする記載もある。これはシムビコートに含まれるホルモテロールが、LABAではあるが即効性と用量依存性気管支拡張作用を有することから提唱されたもので、本邦では1日最大12吸入が保険適応を得ている。さて、喘息発作時の対応として短時間作用性β2刺激薬(SABA)を追加吸入することが標準治療となって久しい。SMARTの長所は、喘息発作時に日常管理薬1剤で対応可能なため、SABAを追加する対応と比してより簡便という点が挙げられる。簡便ではあっても効果はどうなのかという点を本論文は検証しており、SMART療法群で喘息増悪リスクが低かったと報告している。 従来から取り上げられているが、SMARTの欠点には患者が自由に薬剤の増減ができると誤認し、過剰増量、自己減量、喘息悪化でないときにも吸入してしまうといった注意点があり、導入時には十分な説明が必須である。筆者が同療法を導入する際には、自覚症状のみではなくピークフロー値も測定し、安定時の80%以上に回復しなければ早々に外来受診するよう指導している。また、日本で販売されているICS+LABA合剤ではシムビコート以外はSMART療法に適さないことにも注意しておきたい。 JAMA同一号には同一著者らからもう1つ喘息関連論文が掲載されている。そちらは長時間作用性抗コリン薬(LAMA)吸入の役割をメタ解析し、ICS単剤よりLAMA追加で喘息増悪リスクが低下すること、またICS+LABA吸入群と比しICS+LABA+LAMA吸入群はさらなる増悪低下を示さなかったと結論している。両論文に関してJAMA同号にeditorialが掲載されており、LABAとLAMAの位置付けと研究方法の問題点が解説されている。

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持続型喘息、SMARTで増悪リスク低下/JAMA

 持続型喘息患者においてSMART(single maintenance and reliever therapy)は、吸入ステロイド薬(ICS)(長時間作用性β2刺激薬[LABA]併用の有無を問わない)による長期管理療法と、発作時に短時間作用性β2刺激薬(SABA)を用いる治療法と比べて、増悪のリスクが低いことが示された。米国・コネティカット大学薬学校のDiana M. Sobieraj氏らが、16の無作為化試験についてメタ解析を行い明らかにした。ただし、4~11歳の患児に関するエビデンスは限定的であったという。SMARTは、長期管理薬+発作治療薬としてICSとLABAを組み合わせた治療法で、持続型喘息患者にとって最適な維持療法となる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2018年3月19日号掲載の報告。系統的レビューとメタ解析で検討 研究グループは、MEDLINE via OVID、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cochrane Database of Systematic Reviewsのデータベースを用いて、持続型喘息患者におけるSMARTの有効性の系統的レビューとメタ解析を行った。各データベースの開設~2016年8月(最終アップデートは2017年11月28日)に、5歳以上の持続型喘息患者を対象として、SMART vs.ICS(LABA併用あり/なし)による長期管理療法+SABAの発作治療を評価した、無作為化試験または観察試験を検索した。 2人のレビュワーが試験を選択し、ランダム効果モデルを用いて、リスク比(RR)、リスク差(RD)、平均差をそれぞれ95%信頼区間(CI)とともに算出。レビュワーそれぞれが、引用文献スクリーニング、データの抽象化、リスク評価およびエビデンスの強さの等級付けを行った。 主要評価項目は、喘息の増悪。12歳以上では、SMARTの喘息増悪リスクの低下が認められる 解析には16件の無作為化試験(患者計2万2,748例)を包含。そのうち15件が、SMART としてブデソニド・ホルモテロール配合剤を評価したものであった。 12歳以上の患者集団(2万2,524例、平均年齢42歳、女性65%)で、SMART群は、同用量ICS+LABAの長期管理療法群と比較して、喘息の増悪リスクが低かった(RR:0.68[95%CI:0.58~0.80]、RD:-6.4%[-10.2~-2.6])。また、高用量ICS+LABAの長期管理療法群との比較においても、喘息の増悪リスクが低かった(RR:0.77[0.60~0.98]、RD:-2.8%[-5.2~-0.3])。 同様の結果は、SMART群をICS単独の長期管理療法群と比較した場合にも認められた。 4~11歳の患者集団(341例、年齢中央値8歳[範囲:4~11]、女児31%)では、SMART群は、高用量ICSの長期管理療法群との比較において(RR:0.55[0.32~0.94]、RD:-12.0%[-22.5~-1.5])、または、同用量ICS+LABAの長期管理療法群との比較において(RR:0.38[0.23~0.63]、RD:-23.2%[-33.6~-12.1])、喘息の増悪リスクが低いことが認められた。

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エキスパートに聞く!「喘息治療の最新事情(成人編)」Q&A Part2

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。成人気管支喘息について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。嗄声への対処法について教えてください。嗄声は吸入ステロイド薬による喉頭への影響で起こる副作用です。嗄声に対して、うがいは重要ですので吸入のタイミングは、うがいがしやすい洗顔時がよいかと思います。しかしながら、うがいによって喉頭に到達した吸入ステロイド薬が必ずしも除去できるわけではありませんので、その点は念頭に置いていただければと思います。また、食事の直前に吸入することで、喉頭に付着している薬剤が食物とともに胃に送られ、嗄声が軽減されることもありますので、試してみる価値はあるかと思います。製剤的な観点からいうと、一般にエアロゾル製剤は嗄声を来しにくいといえます。なかでもプロドラックのシクレソニド(商品名:オルベスコ)は嗄声の影響が少ないとされていますので、お試しになるのもよいと思います。今後、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)が喘息の適応を取得すると聞いていますが、難治性喘息における効果や使用方法について教えてください。LAMAの知見はそれほど多くありませんが、吸入ステロイド薬でコントロール不十分な症例における上乗せ効果がLABAと同等であることが、最近報告されています。従来、喘息の適応がなかったため、吸入ステロイド薬にまずLAMAを上乗せするということはありませんでしたが、今後、知見が集積し、保険適用も通れば、そのような治療も行われるでしょう。これまでLAMAは、喘息ではβ2刺激薬に比べて効果が弱いと理解されており、LAMAがLABAと比較して同等であるかについてはさらに検討する必要があります。また、COPDを合併する喘息や、LABAで頻脈や振戦などの副作用が出るような患者さんにはLAMAの選択がよいと思います。さらに、喀痰細胞を使った研究で好酸球が少なく、好中球が多い患者さんにはLAMAの有効性が高いという報告もあるので、この点も今後使い分けのポイントになる可能性があります。

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日誌からスマートフォンへ「チェンジ!喘息」患者さんアプリ 一人一人の患者さんの自分に合った治療をサポート

2012年10月、アストラゼネカ株式会社とアステラス製薬株式会社は、喘息患者を対象にした無料アプリ「チェンジ喘息!アプリ」の提供を開始した。そこで、当アプリ開発に携わったアストラゼネカ株式会社プライマリケア事業部 太田篤氏に、開発の背景とその狙いについて聞いた。喘息治療の問題点を解決するために喘息治療の問題点は二つ。治療アドヒアランスと医師・患者間のコミュニケーションである。この二つの問題点のサポートを目的にアステラスと共同でアプリを開発したという。本邦の喘息の治療アドヒアランスは、1年間継続受診率30%程度と低い。多くの患者さんは症状が良くなると治療が終了したと判断し、服用を中断してしまう。その間、気道炎症は悪化し、症状の増悪を招き、最悪の場合は喘息死にいたる。また、医師・患者間のコミュニケーションについても、患者さん自身の状況が医師に上手く伝えられないなど医師と患者さんの間にギャップが存在することが明らかになっている。アラート機能が改善する治療アドヒアランス向上主なアプリ機能お薬服用入力機能(アラート機能付き)喘息状態入力機能グラフ機能ソーシャルネットワーク機能喘息の長期管理には継続的な服薬が重要であることはいうまでもない、しかし、忙しい日常生活の中、服薬を忘れてしまうことも少なくない。そこで、確実な服薬をサポートするため、毎日決まった時間に服用タイミングを知らせるアラート機能を付けた。また、服薬時間が異なる複数の薬剤を服用するというケースも少なくないが、このアラートは薬剤ごとに設定できる。喘息手帳は家に置いたままだが、常に持ち歩くというスマートフォンの特性を生かした実用的な機能である。薬剤の服用時間を設定できるアラート機能薬剤ごとに時間設定することも医師・患者間コミュニケーションを改善するグラフ機能適切な喘息治療のためには、服薬状況と喘息症状が医師と患者さんの間で共有されなければならない。しかし、患者さんは医師を前にすると自分の状態を上手く伝えられない傾向がある。そのため、服薬状況と喘息症状が経時的にグラフ化される機能を付けた。服薬状況は“はい”か“いいえ”で入力(薬剤ごとの入力も可能)。喘息状態とその時の気分を入力は、選択ボタンをクリックするだけで、データが自動的にグラフ化される。簡便で誰でも使える設計である。診察時に患者さんがこの情報を医師に見せることで、服薬状況とその際の状態が客観的な情報として共有される。また、グラフを見せることが患者さんにとって話しやすい環境を作る効果もあるようだ。その日の体調や喘息状態のコメントを入力コメントはグラフ化されて見ることができ、アバターを通した発言として共有化される入力情報のグラフ表示喘息の変動性をカバーする機能喘息は変動性疾患であり、毎日服薬していても、気候の変化など何らかの増悪要因に晒されると、急激に悪くなることがある。そのため、アプリには毎日の天気予報が出る。また、花粉飛散状況や湿度などから割り出される喘息指数も表示される。症状の変化を予測することは困難だが、このように予め情報を知ることができると対処方法はまったく異なってくるという。天気予報と喘息指数が表示される患者さん同士で情報共有し治療モチベーション向上もう一つの機能として、このアプリを使っている患者さん達の状態や服薬状況が参照できるソーシャルネットワーク機能がある。同じ環境にいる人たちと情報を共有することで使用を継続できるようになる。また、患者さんは絶えず自分の境遇を理解して欲しいと願っている。ほかの患者さんが頑張っている様子を見たり、体験を共有することで、連帯感が得られ、治療へのモチベーション向上も期待できる。喘息の状態と治療薬服用状況を共有できる喘息の継続教育もサポート近年、喘息治療における患者さん教育の重要性が訴えられている。このアプリをダウンロードすると、アストラゼネカ社とアステラス社が運営する喘息患者向け情報サイト「チェンジ!喘息」へも容易にアクセスできる。アプリを使うことで継続的な喘息教育もサポートされる訳である。ITが喘息の長期管理を進化させる最後に今後の展開について聞いた。今回のアプリでは、従来にはなかった“患者さんからのメッセージ発信”の第一歩を作ったが、急速な進化を遂げているソーシャルネットワーク機能の活用は今後も様々な方向で考えたいという。同アプリは10月の公開後から多くのダウンロードがあり、医師からも「困っていた継続服薬に役立つ」といった声が寄せられるなど好評だという。口頭での情報交換から喘息日誌に、そして今デジタルへと情報媒体の変化が起こっている。ITの進化が喘息長期管理に及ぼす影響は今後も加速してくであろう。

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