サイト内検索|page:8

検索結果 合計:679件 表示位置:141 - 160

141.

KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。1歳未満児を対象に、導入療法後ブリナツモマブを4週間投与 研究グループは、2018年7月~2021年7月に9ヵ国12施設にて、新たにKMT2A-r ALLと診断された1歳未満の乳児30例を登録し、Interfant-06試験で用いた導入療法を1ヵ月行った後、1コースのブリナツモマブ(体表面積1m2当たり15μg/日、4週間持続注入)を追加し、その後、Interfant-06プロトコールに従ってプロトコールIB(シクロホスファミド、シタラビン、メルカプトプリン)、MARMA(高用量シタラビン、高用量メトトレキサート、メルカプトプリン、アスパラギナーゼ)、OCTADAD(ビンクリスチン、デキサメタゾン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシン、thioguanine、シタラビン、シクロホスファミド)、および維持療法(メルカプトプリン、メトトレキサート)を連続して行った。 主要評価項目は、臨床的に意義のある毒性(ブリナツモマブに起因する可能性のある、または確実に起因する毒性、およびブリナツモマブ投与中止または死亡に至った毒性と定義)、副次評価項目は微小残存病変(MRD)反応を含む抗白血病活性などであった。有害事象について評価し、有害事象のデータはブリナツモマブ注入開始から次のプロトコールIBの開始まで収集した。アウトカムに関するデータは、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較した。ブリナツモマブ投与終了時93%がMRD陰性または低値、2年全生存率は93.3% 追跡調査期間中央値は26.3ヵ月(範囲:3.9~48.2)で、30例全例がブリナツモマブ4週間投与を完了した。 主要評価項目の毒性イベントは発現しなかった。重篤な有害事象は9例に10件報告された(発熱4件、感染症4件、高血圧1件、嘔吐1件)。毒性プロファイルは、より年齢の高い患者で報告されたものと類似していた。 ブリナツモマブ投与終了時、30例中28例(93%)がMRD陰性(16例)またはMRD低値(<5×10-4、正常細胞1万個当たり白血病細胞5個未満)であった。化学療法を継続した全例が、その後の治療期間中にMRD陰性となった。 2年無病生存率は81.6%(95%信頼区間[CI]:60.8~92.0)、2年全生存率は93.3%(95%CI:75.9~98.3)であった。Interfant-06試験のヒストリカルコントロール(本試験の適格基準を満たし、導入療法終了時のMRDに関するデータが得られた214例)における2年無病生存率および2年全生存率は、49.4%(95%CI:42.5~56.0)および65.8%(95%CI:58.9~71.8)であった。

142.

早期乳がん、アントラサイクリン+タキサン併用が最も有効~メタ解析/Lancet

 乳がんの再発と死亡の減少にはアントラサイクリン系+タキサン系併用療法が最も有効であり、とくにアントラサイクリン系+タキサン系の累積投与量が多いレジメンで最大の効果を得られることが、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が行ったメタ解析で明らかにされた。早期乳がんに対するアントラサイクリン系+タキサン系併用療法は、化学療法を行わない場合と比較して生存を著明に改善するが、アントラサイクリン系薬剤の短期および長期の副作用に対する懸念から、アントラサイクリン系薬剤を含まないタキサン系レジメンの使用が増加しており、有効性が損なわれる可能性があった。 著者は、「示された結果は、臨床診療やガイドラインにおける最近のトレンドである非アントラサイクリン系化学療法、とくにドセタキセル+シクロホスファミドの4サイクルなどの短期レジメンに対して挑戦的である」と述べ、「本検討は、関連するほぼすべての臨床試験のデータをまとめており、個々の治療の決定、臨床ガイドライン、および将来の臨床試験のデザインに役立つ確かなエビデンスを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2023年4月15日号掲載の報告。アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価した無作為化試験86件が対象 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、学会抄録を含むデータベースを用いて、アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価したあらゆる言語の無作為化試験86件を特定(最終検索は2022年9月)。タキサン系レジメンとアントラサイクリン系レジメンを比較した無作為化試験の患者個人レベルのメタ解析を行い、本研究グループによる前回のメタ解析を更新するとともに、6つの関連比較に関して解析した。術後または術前補助療法の臨床試験は、2012年1月1日以前に開始されたものであれば対象とした。 主要アウトカムは、浸潤性乳がんの再発(遠隔、局所、対側乳房の新規原発)、乳がん死、再発を伴わない死亡、全死亡とし、log-rank解析により初回イベント率比(RR)と信頼区間(CI)を算出した。アントラサイクリン系+タキサン系同時併用が最も再発率が低い アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンとアントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンを比較した28件の臨床試験を特定し、23件を適格とした。そのうち15件について、計1万8,103例の女性の個人データが提供された。この15件すべてにおいて、アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンは、アントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンより、再発率が平均14%低かった(RR:0.86、95%CI:0.79~0.93、p=0.0004)。非乳がん死は増加しなかったが、治療を受けた女性700例当たり1例に急性骨髄性白血病の発症が認められた。 再発率が最も低かったのは、ドセタキセル+シクロホスファミドにアントラサイクリン系の同時併用と、同量のドセタキセル+シクロホスファミドを比較した場合であった(10年再発リスク:12.3% vs.21.0%、リスク差:8.7%[95%CI:4.5~12.9]、RR:0.58[95%CI:0.47~0.73]、p<0.0001)。このグループにおける10年乳がん死亡率は4.2%減少した(95%CI:0.4~8.1、p=0.0034)。 アントラサイクリン系+タキサン系の順次投与は、ドセタキセル+シクロホスファミドと比較して、再発リスクの有意な低下は認められなかった(RR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.30)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンを比較した臨床試験については、44件の適格試験を特定し、このうち35件について計5万2,976例の女性の個人データが提供された。 アントラサイクリン系レジメンへのタキサン系薬剤の上乗せは、タキサン系薬剤を含まないアントラサイクリン系レジメン(アントラサイクリン系薬剤の累積投与量が同じ)と比較した場合は再発を有意に抑制したが(RR:0.87、95%CI:0.82~0.93、p<0.0001、1万1,167例)、対照群の非タキサン系薬剤の累積投与量をタキサン系薬剤の2倍量にした場合と比較すると再発率の有意な低下は認められなかった(RR:0.96、95%CI:0.90~1.03、p=0.27、1万4,620例)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンの直接比較では、累積投与量が多く、投与強度が高いレジメンがより効果的であることが示された。アントラサイクリン系+タキサン系併用療法の再発抑制効果は、エストロゲン受容体陽性集団とエストロゲン受容体陰性集団で同様であり、年齢、リンパ節転移状態、腫瘍のサイズまたはグレードによって差は認められなかった。

143.

静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針【見落とさない!がんの心毒性】第20回

※本症例は、患者さんのプライバシーへの配慮と、臨床経過の円滑な理解を進めるため、一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別50代・女性受診までの経過子宮頸がんに対する化学放射線療法後、無再発で経過していたが、5年目のCT検査にて右腸骨静脈の下大静脈合流部から右下腿までの広範囲な静脈血栓症と静脈周囲の炎症所見があり(図1)、深部静脈血栓塞栓症と血栓性静脈炎の合併として、当科に診療依頼があった。血栓性静脈炎が出現するまでは、日常生活になんら支障がない日常生活動作(ADL)であった。(図1)造影CT検査【既往症】子宮頸がん3B期当院にて5年前に全骨盤外照射 50Gy+CDDP 35mg/m2/week× 6回、両側内腸骨リンパ節および傍大動脈リンパ節領域10Gy、その後、エトポシド25mg/day 内服3週間、休薬1週間を合計21cycle追加し、当科初診時までの5年間無再発。当科初診時、右下肢広範囲の発赤腫脹を認め、血液検査ではD-dimer 7.4μg/mL、抗カルジオリピン抗体は陰性であった。下肢全体の腫脹と疼痛は強かったが、CT検査にて肺動脈血栓塞栓症は認めず、抗凝固療法を開始して1ヵ月ほどでD-dimerが0.8μg/mLと正常化し下肢腫脹も改善した。4ヵ月後にD-dimerの再上昇傾向を認め下肢腫脹が再燃したが、CT検査では、明らかな子宮頸がんの再発や転移を認めず、大腿静脈血栓はほぼ消失したものの、腸骨静脈血栓が残存している状態であった。他院循環器病院へ薬剤抵抗性のDVT後遺症として血管内治療も含めてセカンドオピニオンしたところ、現行の治療継続指示であった。6ヵ月後に軽度の貧血、断続的な発熱と炎症反応高値が出現したため、精査目的に当科入院となった。【入院時所見】WBC 5,900/μL、Hb 8.2g/dL、CRP 14mg/dL、BNP 113.8pg/mL、D-dimer 5.5μg/mL、SCC抗原 0.3ng/mL、新CYFRA 1.0ng/mL、CEA < 0.5ng/mL、心電図は洞調律、III・aVF・V2-3誘導にてT波異常。感染性心内膜炎のスクリーニングとして血液培養を提出し、心臓超音波検査を施行したところ、右室心尖部に可動性の乏しい26×42mmの腫瘤像を認めた(図2)。(図2)心臓超音波検査【入院後経過】貧血に対しては上下部内視鏡検査を予定した。入院時の心エコー検査にて、半年前には認めなかった右室内腫瘤を認め、CT検査では明らかな感染源や、明らかな子宮頸がんの局所再発や主要な他臓器転移も認めなかったものの、右室内に腫瘤が疑われた。また、右腸骨静脈と右肺動脈に造影欠損像を認めた。心臓MRI検査では、右室腫瘤像を認めるが、その腫瘤の質的診断は出来なかった。冠動脈カテーテル検査では、右冠動脈からの栄養血管を認めたが、病理学的な検査は行えなかった。PET-CT検査は、当時の当院では撮影困難であった。【問題】右室腫瘤の精査加療方針として、最も適切と判断した選択肢はどれか。a.不明熱と炎症反応高値を認めるため、感染性疣贅として抗生剤治療を4~6週間施行し、その治療反応性をみてから治療方針を再検討する。b.静脈血栓塞栓症の治療中の肺動脈血栓症の出現があるため、抗凝固療法を2ヵ月施行しその治療反応性をみてから治療方針を再検討する。c.原発性心臓腫瘍の中では発生確率が高い良性腫瘍を疑うが、可動性が乏しいため3ヵ月後に再検する。d.原発性心臓腫瘍や転移性心臓腫瘍、感染性疣贅、血栓などの診断がつかないが、何かしらの悪性腫瘍の可能性があるため、がん薬物治療を開始する。e.明らかな他臓器転移がない状態で診断がつかず肺動脈塞栓症を伴う粗大な心腔内腫瘤であり、開胸右室生検、ならびに右室腫瘤摘出術を施行する。悪性の(原発性、転移性)心臓腫瘍は稀な疾患だが、腫瘍が増大傾向を示す場合などは重要な鑑別疾患である。がんの既往歴の問診や心臓超音波、CT、MRIなどの画像検査、血栓塞栓症合併などのアセスメントは診断の補助となるが、組織学的検査による確定診断が最も重要である。本例のように、外科的切除も含めた心臓腫瘍の診断・治療について、循環器内科、心臓外科、腫瘍内科、放射線科による連携が必要である。1)北原 康行ほか. 呼吸と循環. 2016;64:889-903.2)Butany J, et al. Can J Cardiol. 2005;21:675-680.3)Lam KY, et al. Arch Pathol Lab Med. 1993;117:1027-1031.4)Amano J, et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2013;61:435-447.5)Silvestri F, et al. G Ital Cardiol. 1997;27:1252-1255.6)Klatt EC, et al. Cancer. 1990;65:1456-1459.【謝辞】本文作成にあたり、丸山 雄二氏(日本医科大学付属病院心臓血管外科准教授)、金政 佑典氏(都立駒込病院腫瘍内科医長)、向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科部長)、大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院循環器内科部長)、草場 仁志氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)、志賀 太郎氏(がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科部長)にご指導とご監修いただきました。ここに深く感謝申し上げます。講師紹介

144.

術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。 主な結果は以下のとおり。・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。・新たな安全性シグナルは観察されなかった。・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

145.

MMR正常を含む進行・再発子宮体がん、dostarlimab追加でPFS延長(RUBY)/NEJM

 原発性の進行または再発子宮体がんの治療において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬dostarlimabの併用は、標準化学療法単独と比較して、2年後の無増悪生存率が有意に高く、安全性プロファイルは個々の薬剤の既知のものと全般的に一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMansoor R. Mirza氏らが実施した「RUBY試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号で報告された。19ヵ国113施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 RUBY試験は、19ヵ国113施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月18日~2021年2月23日に患者のスクリーニングが行われた(GSKの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、原発性のStageIII/IVまたは初回再発の子宮体がんの患者が、カルボプラチン+パクリタキセルによる標準化学療法に加え、dostarlimab(500mg)またはプラセボを3週ごとに6サイクル静脈内投与した後、dostarlimab(1,000mg)またはプラセボを単独で6週ごとに最長3年間投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、担当医判定(RECIST ver1.1に基づく)による無増悪生存と、全生存であった。全生存率も、dMMR-MSI-H集団、全患者集団の双方で良好 494例が登録され、dostarlimab群に245例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:41~81])、プラセボ群に249例(65歳[28~85])が割り付けられた。118例(23.9%)がミスマッチ修復機能欠損型(dMMR)の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の腫瘍であり、dostarlimab群に53例(61歳[45~81])、プラセボ群に65例(66歳[39~85])が含まれた。 dMMR-MSI-H集団では、24ヵ月の時点における推定無増悪生存率は、dostarlimab群が61.4%(95%信頼区間[CI]:46.3~73.4)と、プラセボ群の15.7%(7.2~27.0)に比べ有意に優れた(ハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.50、p<0.001)。 全患者集団における24ヵ月時の推定無増悪生存率は、dostarlimab群が36.1%(95%CI:29.3~42.9)であり、プラセボ群の18.1%(13.0~23.9)よりも有意に良好だった(HR:0.64、95%CI:0.51~0.80、p<0.001)。 また、dMMR-MSI-H集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が83.3%(95%CI:66.8~92.0)、プラセボ群は58.7%(43.4~71.2)であり、dostarlimab群で優れた(HR:0.30、95%CI:0.13~0.70)。 全患者集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が71.3%(95%CI:64.5~77.1)、プラセボ群は56.0%(48.9~62.5)と、dostarlimab群で高かった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.87、p=0.0021)が、中止基準の有意水準(p=0.00177)は満たさなかった。 試験期間中に発現または悪化した有害事象のうち最も頻度が高かったのは、悪心(dostarlimab群53.9%、プラセボ群45.9%)、脱毛(53.5%、50.0%)、倦怠感(51.9%、54.5%)であった。Grade3以上の有害事象(70.5%、59.8%)、重篤な有害事象(37.8%、27.6%)の頻度は、プラセボ群よりもdostarlimab群で約10ポイント高かった。 著者は、「MMRとMSIの状態の検査は、子宮体がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の使用の可能性について、予後因子と効果予測因子の双方で考慮されるため重要であり、本研究では、dMMR-MSI-H集団においてdostarlimab群で良好な無増悪生存率が得られた」と指摘している。

146.

進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ追加でMMRによらずPFS延長(NRG-GY018)/NEJM

 進行または再発子宮体がん患者において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの併用療法は、標準化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、有害事象の発現状況は両群とも予想どおりであったことが、米国・カリフォルニア大学のRamez N. Eskander氏らが実施した「NRG-GY018試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号に掲載された。dMMRとpMMRで層別化した無作為化プラセボ対照試験 NRG-GY018試験は、4ヵ国(米国、カナダ、日本、韓国)の395施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月~2022年12月に患者の登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、測定可能なStageIII/IVA、または測定可能病変の有無を問わずStageIVBあるいは再発病変を有し、新規に診断された子宮体がん患者が、標準化学療法であるパクリタキセル+カルボプラチンに加え、ペムブロリズマブまたはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。なお、前回化学療法からの期間が12ヵ月以上の場合は組み入れ可能とした。 ペムブロリズマブとプラセボは、化学療法と併用で3週ごとに6サイクルを静脈内投与したのち、維持療法として単剤で6週ごとに最大14サイクルが投与された。被験者は、ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)とミスマッチ修復機能正常(pMMR)の2つのコホートに層別化された。 主要評価項目は、2つのMMRコホートにおけるPFSとされた。中間解析は、dMMRコホートで少なくとも84件の死亡または進行のイベントが発生、およびpMMRコホートで少なくとも196件のイベントが発生した後に行うことが計画された。dMMRコホートでの無増悪生存率:74% vs.38% 816例が登録され、このうち225例がdMMRコホート、591例がpMMRコホートであり、有効性の解析には、それぞれ225例(ペムブロリズマブ群112例、プラセボ群113例)、588例(293例、295例)が含まれた。年齢中央値はdMMRコホートが66歳、pMMRコホートは65.5歳であり、前治療として化学療法を受けた患者がそれぞれ5.8%、25.3%、放射線治療が42.7%、39.6%、手術が90.2%、86.1%であった。 dMMRコホートでは、追跡期間中央値12ヵ月時点でのPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達(95%信頼区間[CI]:30.6~未到達)、プラセボ群は7.6ヵ月(6.4~9.9)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった。Kaplan-Meier法により推定した無増悪生存率は、それぞれ74%、38%であり、病勢進行または死亡のリスクは、ペムブロリズマブ群がプラセボ群より70%低かった(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.19~0.48、p<0.001)。 同様に、pMMRコホートの追跡期間中央値7.9ヵ月時点のPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が13.1ヵ月(95%CI:10.5~18.8)、プラセボ群は8.7ヵ月(8.4~10.7)と、有意な差が認められた(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。 有害事象の発現状況は、ペムブロリズマブ群、プラセボ群とも予想どおりであった。dMMRコホートでは、ペムブロリズマブ群98.2%、プラセボ群99.1%で有害事象が発現し、pMMRコホートではそれぞれ93.5%、93.4%で認められた。Grade3以上の有害事象は、dMMRコホートではペムブロリズマブ群63.3%、プラセボ群47.2%、pMMRコホートではそれぞれ55.1%、45.3%で発現した。 注目すべき有害事象(インフュージョンリアクション、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、大腸炎、肺臓炎など)は、dMMRコホートではペムブロリズマブ群38.5%、プラセボ群26.4%、pMMRコホートではそれぞれ33.3%、19.7%で発現し、Grade3以上はdMMRコホートではペムブロリズマブ群8.3%、プラセボ群5.7%、pMMRコホートではそれぞれ3.6%、2.6%でみられた。 著者は、「これらのデータは、進行・再発子宮体がん患者の1次治療への免疫療法の導入が、MMRの状態や組織学的所見にかかわらず、腫瘍学的アウトカムの改善につながることを示唆するものである」としている。

147.

初回化学療法反応後の維持療法としてのCDK4/6阻害薬の有用性/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が、有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことを、大阪国際がんセンターの藤澤 文絵氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。 MBC乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法として、内分泌療法(+カペシタビンあるいはベバシズマブ併用)の有用性が国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR12141)、BOOSTER試験2))で報告されている。しかし、内分泌療法+CDK4/6阻害薬併用維持療法の有効性と安全性に関するデータは十分ではない。そこで、藤澤氏らはMBC患者における初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法+CDK4/6阻害薬の安全性と有効性を調査した。 本研究はパルボシクリブ(2017年12月)およびアベマシクリブ(2018年11月)が承認されてから2021年10月末までに、初回化学療法反応後の維持療法としてCDK4/6阻害薬が投与された症例を対象として、患者の背景、安全性、CDK4/6阻害薬の有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CDK4/6阻害薬を投与された179例のうち、初回化学療法の治療効果がSD以上を得られていた26例を対象に解析が行われた。そのうち、初回化学療法でCR/PR/長期SDを得られた状態を維持したまま内分泌療法+CDK4/6阻害薬に変更になったのは12例(安定中切替群)、腫瘍マーカーの上昇または画像検査による若干の病勢進行がみられた後に内分泌療法+CDK4/6阻害薬に変更になったのは14例(増悪傾向切替群)であった。・安定中切替群と増悪傾向切替群の年齢中央値は65歳 vs.61.5歳、閉経後が10例 vs.7例、StageIVがそれぞれ5例、内臓転移あり9例 vs.13例であった。・治療成功期間(TTF)中央値は、全患者で8.6ヵ月(95%信頼区間:3.7~29.9)、安定中切替群で22.1ヵ月(3.6~NA)、増悪傾向切替群で7.2ヵ月(2.5~12.6)であった。・全生存期間(OS)中央値は、全患者で26.7ヵ月(17.8~NA)、安定中切替群で39.3ヵ月(17.8~NA)、増悪傾向切替群で18.3ヵ月(11.8~26.7)であった。・安定傾向切替群と増悪傾向切替群でみられたGrade3/4の有害事象は、好中球減少6例(50.0%) vs.6例(42.9%)、下痢1例(8.3%) vs.0例、AST/ALT上昇1例(8.3%) vs.1例(7.4%)で、安全性プロファイルは以前の報告と同様であった。 これらの結果より、藤澤氏は「MBC患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法は有望な効果が示されたが、有用性を検証するにはさらに多くの症例と前向き臨床試験が必要である」とまとめた。

148.

リブタヨは進行または再発の子宮頸がんに対する初の単剤療法/サノフィ

 サノフィは3月30日付のプレスリリースで、「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸癌」を効能または効果として、リブタヨ点滴静注350mg(一般名:セミプリマブ、以下「リブタヨ」)の販売を同日より開始したことを発表した。リブタヨ群は化学療法群と比較して死亡リスクが31%低減 子宮頸がんは、世界では女性のがん死因の第4位に当たり、35~44歳での診断が最も多い疾患である。大部分はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を原因とし、約80%を扁平上皮がん(子宮頸部の外部を覆う細胞から発生)、残る患者の多くを腺がん(子宮頸部の内部にある腺細胞から発生)が占めている。進行または再発の子宮頸がんの治療選択肢は限られており、世界で毎年約57万人の女性が子宮頸がんと診断されていることから、新たな治療法の登場が望まれていた。 リブタヨは、T細胞の表面にある免疫チェックポイント受容体PD-1を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体である。リブタヨは、2次治療の子宮頸がん患者が対象の第III相試験において、全生存期間の改善を単剤投与で初めて立証し、子宮頸がんの2次治療の前向き比較試験においても、全生存期間が改善された初めての薬剤である。 リブタヨの進行性子宮頸がんにおける無作為化試験である国際共同第III相試験(EMPOWER Cervical-1試験)は、再発・転移性の扁平上皮がんまたは腺がんで2次治療の女性患者(年齢中央値:51歳)を対象に実施された。患者は無作為化され、リブタヨ単剤投与群(350mgを3週間ごとに投与)または広く使われている化学療法(イリノテカン、トポテカン、ペメトレキセド、ビノレルビンまたはゲムシタビン※)から治験責任医師が選択する薬剤を投与する群のいずれかに割り付けられた。※ペメトレキセド、ビノレルビン、ゲムシタビンは国内で子宮頸がんの適応はない。 本試験の結果、リブタヨ群(304例)では化学療法群(304例)と比較して、死亡リスクが31%低減し、全生存期間は有意に延長した。全体集団における全生存期間の中央値は、リブタヨ群で12.0ヵ月、化学療法群で8.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p<0.001)。 安全性は、治験薬の投与を1回以上受けた患者を対象に、リブタヨ群300例(投与期間の中央値:15週間、範囲:1~101週間)、化学療法群290例(10週間、1~82週間)で評価した。治験薬との因果関係が否定できない有害事象は、リブタヨ群で56.7%、化学療法群で81.4%に認められた。リブタヨ群における、発現割合5%以上の主な副作用は、疲労(10.7%)、悪心(9.3%)、貧血(7.3%)、無力症(7.3%)、食欲減退(7.3%)、下痢(6.7%)、甲状腺機能低下症(6.0%)、嘔吐(5.7%)、関節痛(5.7%)、発疹(5.0%)およびそう痒症(5.0%)であった。なお、リブタヨの新たな安全性シグナルは認められなかった。 リブタヨは、サノフィとRegeneronとのグローバル提携契約の下で共同開発された製品である。2022年7月1日現在、Regeneronはリブタヨの開発およびマーケティングをグローバルレベルで担っており、日本では、Regeneronに代わってサノフィがリブタヨを販売する。サノフィとRegeneronは、「引き続き子宮頸がんの日本人患者に希望を届けられるよう鋭意努力し、患者とその家族や医療関係者へさらなる貢献をしていく」としている。

149.

DEEPER試験の追加調査でm-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。DEEPER試験では、すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。 2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、DEEPER試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。DEEPER試験の追加調査でRAS/BRAF野生型+左側原発が最も効果的 DEEPER試験は2015年7月〜2019年6月に359例の患者が登録され、179例がセツキシマブ群(C群)、180例がベバシズマブ群(B群)に割り付けられた。対象者はmFOLFOXIRI(5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン 200mg/m2+イリノテカン 150mg/m2+オキサリプラチン 85mg/m2)に加え、セツキシマブ:初回400mg/m2で以降は毎週250mg/m2もしくはベバシズマブ:隔週で5mg/kgを投与された。 DEEPER試験の評価対象患者は321例(年齢中央値65歳、PS0~1:90.5%、原発:左84%/右16%)、C群159例、B群162例であった。主要評価項目のDpRの中央値はC群で57.4%(範囲:-15.0~100%)に対して、B群で46.0%(-0.6〜100%)であり、C群が有意に高かった(p=0.0010)。原発腫瘍の部位別では、左側ではC群60.3% vs.B群46.1%(p=0.0007)、右側では50.0% vs.41.2%(p=0.4663)であり、左側でとくにC群のDpRが高い傾向が示された。しかし、DEEPER試験の副次評価項目評価項目であるETS(Early Tumor Shrinkage)、ORR、R0切除率においては、両レジメン間で有意差はみられなかった。 今回は新たに生存に関するDEEPER試験の結果および追加で調査を行ったBRAF変異の結果などについて発表された。 DEEPER試験における最終登録から3年後の主な解析結果は以下のとおり。・DEEPER試験の321例中167例でBRAFに関する情報が得られ、セツキシマブの効果が期待できないとされるBRAF V600E変異は14例で認められた。・RAS/BRAF野生型が判明した症例は153例、内訳はC群72例、B群81例であった。この症例群をRAS野生型、RAS野生型+左側原発、RAS/BRAF野生型、RAS/BRAF野生型+左側原発と対象を絞り込むにつれ、有効性が高くなった。最も効果的であったRAS/BRAF野生型+左側原発131例では、DpRはC群63.6% vs.B群47.8%、p=0.0003、R0切除率は32.8% vs.20.0%、p=0.096であった。・さらに注目される生存に関する解析ではPFS、OSともにC群がB群より統計学的に有意に良好な傾向であった(PFS中央値:15.3ヵ月 vs.11.7ヵ月、ハザード比(HR):0.68、p=0.036、OS中央値:53.6ヵ月 vs.40.2ヵ月、HR:0.54、p=0.02)。・毒性は許容範囲内であり、Grade3以上の特徴的な有害事象としてはC群ではざ瘡(13.1%)、低マグネシウム血症(4%)、B群では高血圧(33.5%)、蛋白尿(3.4%)などであった。 辻氏は「m-FOLFOXIRI+セツキシマブは、RAS/BRAF野生型かつ左側原発の大腸がんにおける薬物療法の魅力的なオプションとなり得る」とした。また、質疑応答中にDpRを主要評価項目とした理由と聞かれ、「当初はOSを検討していたが、早期に結果を得られ、かつ生存期間の代用マーカーとして注目されていたDpRに着目した。DEEPER試験の結果も両者の関連を示すものだ」と説明した。

150.

HER2低発現乳がんへのT-DXd、アジア人集団でも有効性・安全性を確認(DESTINY-Breast04)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、T-DXd群では全体集団と同様にアジア人集団でも有意に無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長し、管理可能な安全性プロファイルであったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。 ASCO2022のプレナリーセッションで、HER2低発現のMBC患者に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告されており、T-DXd群ではTPC群と比較してPFSおよびOSを有意に延長し、安全性プロファイルも管理可能であったことが示された。一方、HER2陽性のMBC患者を対象としたDESTINY-Breast03試験のアジア人サブグループ解析では、アジア人においてもT-Dxdの有用性が示され安全性プロファイルも全体集団と一致していたものの、日本人集団においては全体集団およびアジア人集団と比較して薬剤性肺障害(ILD)の報告が多い傾向がみられていた。[DESTINY-Breast04試験]・対象:1~2ラインの化学療法歴があり、HER2低発現(IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-)のMBC患者557例(うちアジアの国または地域からの登録は213例[38%])。・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択 184例・評価項目:[主要評価項目]HR+患者の盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]全患者のBICRによるPFS、HR+患者および全患者のOSなど 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。・2022年1月11日までに557例が無作為化され、うち213例(38%)がアジアからの参加者であった(日本85例、中国62例、韓国57例、台湾9例)。・アジア人集団における追跡期間中央値は、T-DXd群16.8ヵ月、TPC群15.4ヵ月であった(全体集団はそれぞれ16.1ヵ月、13.5ヵ月)。・アジア人集団のベースライン時の患者特性は両群でバランスがとれていた(括弧内は全体集団)。 -T-DXd群:年齢中央値56.6歳(57.5歳)、IHCスコア1+が61.2%(57.4%)、IHCスコア2+かつISH-が38.8%(42.6%)、HR+が87.1%(89.3%)、HR-が12.9%(10.7%)、中枢神経系転移あり10.2%(6.4%)、肝転移あり68.0%(71.3%)、肺転移あり36.1%(32.2%) -TPC群:年齢中央値55.3歳(55.9歳)、IHCスコア1+が57.6%(58.2%)、IHCスコア2+かつISH-が42.4%(41.8%)、HR+が91.0%(90.2%)、HR-が9.1%(9.8%)、中枢神経系転移あり4.5%(4.3%)、肝転移あり59.1%(66.8%)、肺転移あり36.4%(34.2%)・主要評価項目であるHR+患者のPFS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群10.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.4~14.7) vs.TPC群5.3ヵ月(4.2~6.8)、ハザード比[HR]:0.41(0.28~0.58)であった(全体集団では10.1ヵ月[9.5~11.5] vs.5.4ヵ月[4.4~7.1]、HR:0.51[0.40~0.64]、p<0.0001)。・全患者(HR+およびHR-)のPFS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群10.9ヵ月(95%CI:9.0~13.8) vs.TPC群4.6ヵ月(2.8~6.4)、HR:0.38(0.27~0.53)であった(全体集団では9.9ヵ月(9.0~11.3) vs.5.1ヵ月[4.2~6.8]、HR:0.50[0.40~0.63]、p<0.0001)。・HR+患者のOS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群NE(95%CI:20.8~NE) vs.TPC群19.9ヵ月(16.7~NE)、HR:0.69(0.42~1.11)であった(全体集団では23.9ヵ月[20.8~24.8] vs.17.5ヵ月[15.2~22.4]、HR:0.64[0.48~0.86]、p=0.0028)。・全患者(HR+およびHR-)のOS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群NE(95%CI:21.7~NE) vs.TPC群19.9ヵ月(15.7~NE)、HR:0.61(0.39~0.95)であった(全体集団では23.4ヵ月[20.0~24.8] vs.16.8ヵ月[14.5~20.0]、HR:0.64[0.49~0.84]、p=0.0010)。・T-Dxd群の治療中に発現したGrade3以上の有害事象は、全体集団で52.6%、アジア人集団で59.2%であった。アジア人集団で多かったものは、好中球減少症16.3%、貧血12.9%、白血球減少症11.6%などであった(全体集団ではそれぞれ13.7%、8.1%、6.5%)。・T-Dxd群におけるILDは、全体集団で45例(12.1%)、アジア人集団で21例(14.3%)、日本人集団で15例(26.8%)報告された。アジア人集団においてはGrade4/5の報告はなく、日本人集団においてはGrade3以上の報告はなかった。 これらの結果より、鶴谷氏は「HER2低発現の乳がん患者を対象としたDESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、全体集団と同様にT-DXd群ではTPC群と比較して臨床的に意義のあるPFSおよびOSの延長が認められた」としたうえで、安全性については「両群の安全性プロファイルも全体集団と一致していた。ILDはアジア人集団ではGrade4/5の報告はなかったものの、日本人集団では頻度が高い傾向にあり、注意深いモニタリングが必要」とまとめた。

151.

転移性去勢抵抗性前立腺がんでPARP阻害薬rucaparibは有効(解説:宮嶋哲氏)

 rucaparibはポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であり、第II相試験ではBRCA遺伝子変異を伴う転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者で高い活性を示した。本研究は、BRCA1、BRCA2、またはATM変異を伴うmCRPC患者において、第2世代アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療後に病勢進行を認めた患者に対して、rucaparib、もしくはドセタキセルまたは第2世代ARPIを2:1で割り付けたランダム化第III相試験(TRITON3試験)である。主要評価項目は画像評価によるPFSである。 スクリーニングを受けた4,855例のうち、270例がrucaparib投与群、135例が対照群に割り付けられた。各群でのBRCA変異症例は201例、101例に認められた。62ヵ月時点でのPFSは、BRCA変異サブグループ解析でrucaparib投与群11.2ヵ月、対照群6.4ヵ月であり(ハザード比[HR]:0.50)、ITTグループ解析では各々10.2ヵ月、6.4ヵ月であり(HR:0.61)いずれの解析でもrucaparibはPFSを延長した。一方、ATM変異患者での探索的サブグループ解析では、両群間に有意差を認めなかった。副作用に関しては、rucaparibは疲労感、嘔気、貧血を呈しやすいが、症状が重篤な場合は投与中断、または投与減量で対処するのが妥当と考えられた。 現在、BRCA変異を伴うmCRPC患者において使用可能なPARP阻害薬はオラパリブのみであるが、加えてrucaparibが有効な治療選択肢になりうる可能性が示唆された。ただし、OSに関する報告は未着であり、本試験の今後の推移に注目したい。また、本試験は単剤療法による解析であり、今後は他薬剤との併用効果に期待したい。

152.

化学療法、女性は午後に受けると効果が高い

 体内時計機能を勘案し、投薬時間を調節するクロノセラピー(時間治療)の考え方は以前より提唱されており、大腸がんなどにおいて一定の効果が報告されている1)。しかし、その後の試験に一貫性がないため、日常臨床を変えるには至っていない。今回、造血器腫瘍の成人患者におけるクロノセラピーの効果を検討した、韓国科学技術院のDae Wook Kim氏らによる研究結果がJCI Insight誌2022年12月号に掲載された。 研究者らは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者を2つのコホートに分け、午前または午後に化学療法を行った。DLBCLを対象としたのは、1)リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン(R-CHOP療法)が唯一の治療選択肢であるために交絡因子が無視でき、治療結果はほとんど免疫化学療法の有効性と毒性に依存する、2)患者の3割が再発しており、より優れた治療戦術が必要、3)ヒトまたは動物実験においてシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンの忍容性および抗腫瘍効果に概日変化があるとの報告がある、などの理由による。 2015年1月~2017年8月の間にソウル大学病院およびソウル大学盆唐病院の化学療法センターでR-CHOP療法を受けた成人337例を対象とし、午前または午後にR-CHOP療法を行った。その後、治療終了時に完全寛解を達成した生存コホート129例を対象に有害事象の解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ECOG performance-status(PS)、R-IPIスコア、診断時年齢中央値(61歳[四分位範囲:27~77])に群間差はなかった。全例がPS<2の比較的良好な状態に分類され、約半数がStageIII~IVで、その構成も各群同様であった。・無増悪生存期間(PFS)は、女性患者において、午前投与群は午後投与群に比べ有意に短かった(ハザード比[HR]:0.357、p=0.033)。女性患者において、午前投与群は午後投与群に比べ病勢進行の頻度が高かった(33.3% vs.13.9%、p=0.040)。・同様に、女性患者において、午前投与群では午後投与群より多くの死亡が認められた(19.6% vs.2.8%、p=0.020)。最も一般的な死因は病勢進行であった。その結果、午前投与群は午後投与群と比較して全生存期間(OS)が短かった(HR:0.141、p=0.032)。・午前群の女性患者では、投与量が減少した(シクロホスファミド10%、p=0.002、ドキソルビシン8%、p=0.002、リツキシマブ7%、p=0.003)。これは主に感染症と好中球減少症に起因するもので、午前群は午後群と比較して、感染症(16.7% vs.2.4%)と発熱性好中球減少症(20.8% vs.9.8%)の発生率が高かった。 研究者らは「クロノセラピーの効果に性差があることは、循環白血球と好中球の日内変動が男性より女性のほうが大きいことで説明できる」としている。

153.

リンパ節転移のないHER2陽性乳がん、術後PTX+トラスツズマブでの10年生存率/Lancet Oncol

 リンパ節転移のないHER2陽性(HER2+)乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の長期アウトカムを調査した非盲検単群第II相試験の10年間の解析結果について、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏らがLancet Oncology誌2023年3月号で報告した。著者らはこの結果から、「腫瘍サイズが小さくリンパ節転移のないHER2+乳がんの術後補助療法の標準治療として、パクリタキセル+トラスツズマブが妥当である」としている。HER2陽性乳がんに対する術後補助療法で10年全生存率が94.3% 本試験は、米国13都市16施設から、腫瘍の大きさが3cm以下でリンパ節転移のない18歳以上のHER2+乳がんでPS 0~1の患者を対象とした。適格患者には、パクリタキセル(80mg/m2)+トラスツズマブ(負荷量4mg/kg、維持量2mg/kg)の静脈内投与を12週、その後トラスツズマブ(毎週2mg/kgもしくは3週ごとに6mg/kg)を40週投与した。主要評価項目は3年無浸潤疾患生存(iDFS)率で、今回はプロトコールで規定された治療を受けた患者すべてを対象とした10年生存率と、HER2DXゲノムツールを用いた探索的解析の結果を報告した。 HER2陽性乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の10年生存率などを調査した主な結果は以下のとおり。・2007年10月29日~2010年9月3日に登録されたHER2陽性乳がん患者410例中406例がパクリタキセル+トラスツズマブの術後補助療法を受けた。・登録時の平均年齢は55歳(標準偏差:10.5)、406例中女性が405例(99.8%)、白人が350例(86.2%)、ホルモン受容体陽性が272例(67.0%)だった。・追跡期間中央値10.8年(四分位範囲:7.1~11.4)で、解析集団406例においてiDFSイベントが31例に観察され、局所同側再発6例(19.4%)、新規の対側乳がん9例(29.0%)、遠隔再発6例(19.4%)、死亡10例(32.3%)であった。・10年無浸潤疾患生存率は91.3%(95%信頼区間[CI]:88.3~94.4)、10年無再発率は96.3%(95%CI:94.3~98.3)、10年全生存率は94.3%(95%CI:91.8~96.8)、10年乳がん特異的生存率は98.8%(95%CI:97.6~100)であった。・HER2DXリスクスコアは、無浸潤疾患生存率(10単位増加当たりのハザード比[HR]:1.24、95%CI:1.00~1.52、p=0.047) および無再発期間(HR:1.45、95%CI:1.09~1.93、p=0.011)と有意に関連していた。

154.

BRCA/ATM遺伝子変異陽性の転移を有する前立腺がん、rucaparibが有効/NEJM

 第2世代アンドロゲン受容体経路遮断薬(ARPI)による治療後に増悪した、BRCAまたはATM遺伝子変異陽性の転移性前立腺がんの治療において、ポリ(アデノシン二リン酸[ADP]リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬rucaparibは、医師が選択した対照薬と比較して、画像所見に基づく無増悪生存期間が有意に長く、BRCA変異陽性例で最大の効果が認められたが、ATM変異陽性例では両群で同程度であったことが、フランス・パリサクレー大学のKarim Fizazi氏らが実施した「TRITON3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年2月23日号で報告された。12ヵ国143施設の無作為化第III相試験 TRITON3は、12ヵ国143施設で実施された非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2017年2月~2022年2月の期間に参加者のプレスクリーニングまたはスクリーニングが行われた(Clovis Oncologyの助成を受けた)。 対象は、BRCA1、BRCA2、ATM遺伝子のいずれかに変異が認められ、第2世代ARPI(酢酸アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドなど)による治療後に増悪した転移のある去勢抵抗性前立腺がんの患者であった。 被験者は、rucaparib(600mg、1日2回、経口)または医師が選択した対照薬(ドセタキセルまたは第2世代ARPI[酢酸アビラテロンまたはエンザルタミド])の投与を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値であり、独立判定による評価が行われた。ATM変異陽性例では有効性が限定的 405例(intention-to-treat集団)が登録され、270例(年齢中央値70歳[範囲:45~90]、BRCA変異陽性 201例、ATM変異陽性 69例)がrucaparib群、135例(71歳[47~92]、101例、34例)は対照群に割り付けられた。対照群では、75例(56%)がドセタキセル、28例(21%)が酢酸アビラテロン、32例(24%)はエンザルタミドの投与を受けた。 62ヵ月の時点で、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値は、BRCA変異陽性のサブグループ(rucaparib群11.2ヵ月vs.対照群6.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.36~0.69)およびintention-to-treat集団(10.2ヵ月vs.6.4ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.47~0.80)の双方で、rucaparib群が対照群よりも長かった(いずれもp<0.001)。 一方、ATM変異陽性のサブグループの探索的解析では、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値はrucaparib群が8.1ヵ月、対照群は6.8ヵ月であった(HR:0.95、95%CI:0.59~1.52)。 客観的奏効率は、BRCA変異陽性のサブグループではrucaparib群が45%、対照群は17%で、intention-to-treat集団ではそれぞれ35%、16%であり、ATM変異陽性のサブグループでは0%、14%だった。 最も頻度の高かった有害事象は、rucaparib群では倦怠感(61%)、悪心(50%)、貧血/ヘモグロビン低下(47%)であり、対照群では倦怠感(63%)、下痢(28%)、ニューロパチー(28%)であった。最も頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、rucaparib群では貧血/ヘモグロビン低下(24%)、好中球減少症/好中球数減少(7%)、倦怠感(7%)であり、対照群では倦怠感(9%)、好中球減少症/好中球数減少(8%)だった。 投与中止の原因となった有害事象は、rucaparib群が15%、対照群は22%で発現した。有害事象による死亡は、それぞれ5例(2%)、3例(2%)で認められたが、試験薬に関連したものはなかった。 著者は、「本試験では、BRCA1変異を有する患者数がBRCA2変異を有する患者数よりも少なかったため、BRCA1変異陽性例での治療効果は確定的ではなかった。また、第2世代ARPIの反復使用はわずかな活性しか示さなかった。これらの知見は、先行研究の結果と一致していた」としている。

155.

ダロルタミド、転移を有する前立腺がんに適応追加/バイエル

 バイエル薬品は2023年2月24日、経口アンドロゲン受容体阻害薬(ARi)であるダロルタミド(商品名:ニュベクオ)について、遠隔転移を有する前立腺がんへの適応追加承認を取得した。ダロルタミドを加えた併用療法が死亡リスクを有意に32.5%低減 今回のダロルタミドの承認は、遠隔転移を有する前立腺がん患者を対象とした第III相ARASENS試験の良好な結果に基づくもの。同試験では、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することが示された。これらの結果は、NEJM誌2022年3月24日号に掲載された。 ダロルタミドは転移のあるホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の適応に対して複数の国や地域において申請中である(米国では承認済み)。同剤は、mHSPCを対象とした第III相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺がんの術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第III相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺がんを対象とした他の試験でも検討が進められている。 ダロルタミドは、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん患者(nmCRPC)の治療薬として、米国、欧州連合(EU)、日本および中国を含めた世界の80以上の地域で承認されている。

156.

扁平上皮非小細胞肺がん、ペムブロリズマブ+化学療法1次治療5年アップデート(KEYNOTE-407)/JCO

 転移を有する扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ+化学療法による1次治療の第III相試験KEYNOTE-407の5年追跡結果が発表された。持続的な有効性と安全性が報告されている。KEYNOTE-407の5年アップデートでOSはより改善対象:転移を有する未治療の扁平上皮NSCLC試験薬群:ペムブロリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル/nab-パクリタキセル(3週間ごと4サイクル)→ペムブロリズマブ35サイクルまで(n=278)対照薬群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル/nab-パクリタキセル(3週間ごと4サイクル)→プラセボ35サイクルまで(n=281)・評価項目[主要評価項目]:盲検独立中央審査(BICR)評価の全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]:BICR評価の客観的奏効率、奏効期間、安全性など KEYNOTE-407の5年アップデートの主な結果は以下のとおり。・無作為化からデータベースのカットオフまでの期間中央値は、56.9ヵ月であった。・OSは、プラセボ+化学療法群に比べ、ペムブロリズマブ+化学療法群でより改善された(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.59~0.85)。5年OS率はそれぞれ、18.4%と9.7%であった。・PFSは、プラセボ+化学療法群に比べ、ペムブロリズマブ+化学療法群でより改善された(HR:0.62、95%CI:0.52〜0.7)。5年PFS率はそれぞれ、10.8%と3.5%であった。・OSおよびPFSのHRは、PD-L1レベル(TPS)を問わず、ペムブロリズマブ+化学療法群で良好であった。・毒性は管理可能であった。・ペムブロリズマブ35サイクル投与を完了した55例の客観的奏効率は90.9%、35サイクル完了後の3年(無作為割付後からは約5年)OS率は69.5%であった。

157.

ソトラシブ、KRASG12C変異陽性NSCLCのPFSを延長/Lancet

 既治療のKRASG12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、KRASG12C阻害薬ソトラシブは標準治療であるドセタキセルと比較して、無増悪生存期間(PFS)を延長し、安全性プロファイルも優れることが、オランダがん研究所のAdrianus Johannes de Langen氏らが実施した「CodeBreaK 200試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2023年2月7日号で報告された。22ヵ国148施設の実薬対照第III相試験 CodeBreaK 200試験は、日本を含む22ヵ国148施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2020年6月~2021年4月の期間に患者の登録が行われた(Amgenの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、KRASG12C変異を有する進行NSCLCで、プラチナ製剤を用いた化学療法か、PD-1またはPD-L1阻害薬による前治療後に病勢が進行した患者であった。 被験者は、ソトラシブ(960mg、1日1回、経口)またはドセタキセル(75mg/m2、3週ごと、静脈内)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目はPFSであり、盲検下の独立した中央判定によりintention-to-treat解析が行われた。 345例が登録され、ソトラシブ群に171例(年齢中央値64.0歳[範囲:32~88]、男性63.7%、脳転移の既往34%)、ドセタキセル群に174例(64.0歳[35~87]、54.6%、35%)が割り付けられた。それぞれ169例(99%)、151例(87%)が少なくとも1回の試験薬の投与を受けた。ドセタキセル群のうち、最終的に59例(34%)がKRASG12C阻害薬を投与された(ソトラシブ群へのクロスオーバーが46例、試験薬中止後の後治療としての投与が13例)。全奏効率、奏効期間、QOLも良好 全体の追跡期間中央値は17.7ヵ月(四分位範囲[IQR]:16.4~20.1)で、治療期間中央値はソトラシブ群が19.9週(範囲:0.4~101.3)、ドセタキセル群は12.0週(3.0~101.0)であった。 PFS中央値は、ドセタキセル群の4.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.0~5.7)に比べ、ソトラシブ群は5.6ヵ月(4.3~7.8)と、統計学的に有意に長かった(ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.0017)。1年PFS率はソトラシブ群が24.8%、ドセタキセル群は10.1%だった。 全奏効率は、ドセタキセル群13.2%に比し、ソトラシブ群28.1%であり、有意な差が認められた(群間差:14.8%、95%CI:6.4~23.1、p<0.001)。奏効までの期間はソトラシブ群で短く(1.4ヵ月vs.2.8ヵ月)、奏効期間はソトラシブ群で長かった(8.6ヵ月vs.6.8ヵ月)。全生存(OS)率は両群間に差がなく(HR:1.01、95%CI:0.77~1.33、p=0.53)、OS中央値はソトラシブ群が10.6ヵ月、ドセタキセル群は11.3ヵ月だった。 ソトラシブ群は忍容性も良好で、ドセタキセル群に比べGrade3以上の有害事象(56例[33%]vs.61例[40%])および重篤な治療関連有害事象(18例[11%]vs.34例[23%])の割合が低かった。 最も頻度の高いGrade3以上の治療関連有害事象は、ソトラシブ群が下痢(20例[12%])、ALT値上昇(13例[8%])、AST値上昇(9例[5%])であり、ドセタキセル群は好中球数減少(13例[9%])、倦怠感(9例[6%])、発熱性好中球数減少(8例[5%])であった。患者報告アウトカム(QOL[全般的健康、身体機能]、症状[呼吸困難、咳嗽、胸痛])は、全般にソトラシブ群で良好だった。 著者は、「これらの知見は、ソトラシブが、予後不良でアンメットニーズの高いこの患者集団における新たな治療選択肢となることを示すものである」としている。

158.

第20回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2023

 2023年2月16日、日本臨床腫瘍学会はプレスセミナーを開催し、会長の馬場 英司氏(九州大学)らが、第20回学術集会(2023年3月16~18日)の注目演題などを発表した。 今回のテーマは「Cancer, Science and Life」で、科学に基づいた知⾒ががん医療の進歩を支え、患者さんが満⾜できる⽣活、実りある⼈⽣を送る助けになることを目的とする。演題数は1,084であり、うち海外演題数は289と過去2番⽬の多さになる。プレジデンシャルセッション プレジデンシャルセッションでは発表者の他に、国内外の専門家がディスカッサントとして研究成果の意義を解説する。演題は学術企画委員会が厳正に審査を行い、全分野より合計19演題が選定された。<呼吸器>2023年3月16日(木)15:10〜17:101.既治療の進行・再発非小細胞肺癌に対するニボルマブ(NIV)対NIV+ドセタキセルのランダム化比較第II/III相試験:TORG1630 古屋 直樹氏(聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科)2.First Report of Cohort3 and Mature Survival Data From the U31402-A-U102 Study of HER3-DXd in EGFR-Mutated NSCLC  林 秀敏氏(近畿大学医学部腫瘍内科)3.完全切除されたII-IIIA期の非扁平上皮非小細胞肺癌に対するPEM/CDDPとVNR/CDDPを比較する第III相試験:JIPANG最終解析 山崎 宏司氏(国立病院機構九州医療センター呼吸器外科)4.Adjuvant osimertinib in resected EGFR-mutated stageII-IIIA NSCLC:ADAURA Japan subgroup analysis 釼持 広知氏(静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科)5.Sotorasib versus Docetaxel for Previously Treated Non-Small Cell Lung Cancer with KRAS G12C Mutation:CodeBreaK 200 Phase3 Study 岡本 勇氏(九州大学大学院医学研究院呼吸器内科学)<その他がん>2023年3月17日(金)8:20〜10:201.MOMENTUM:Phase3 Study of Momelotinib vs Danazol in Symptomatic and Anemic Myelofibrosis Patients post-JAK Inhibition Jun Kawashima氏(Sierra Oncology, a GSK company, San Mateo, CA, USA)2.Brexucabtagene Autoleucel in Relapsed/Refractory Mantle Cell Lymphoma(R/R MCL) in ZUMA-2:Durable Responder Analysis  Javier Munoz氏(Banner MD Anderson Cancer Center, Gilbert, AZ, USA)3.Pembrolizumab+chemoradiation therapy for locally advanced head and neck squamous cell carcinoma(HNSCC):KEYNOTE-412 田原 信氏(国立がん研究センター東病院頭頸部内科)4.APOBEC signature and the immunotherapy response in pan-cancer Ya-Hsuan Chang氏(Institute of Statistical Science, Academia Sinica, Taipei, Taiwan)5.FGFR2融合/再構成遺伝子を有する肝内胆管がん患者に対するFutibatinibの第2相試験:FOENIX-CCA2試験の日本人サブグループ解析結果 森実 千種氏(国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科)<乳腺>2023年3月17日(金)16:25〜18:051.Overall survival results from the phase3 TROPiCS-02 study of sacituzumab govitecan vs chemotherapy in HR+/HER2-mBC Hope Rugo氏(Department of Medicine, University of California-San Francisco, Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center, San Francisco, CA, USA)2.HER2低発現の手術不能又は再発乳癌患者を対象にT-DXdと医師選択治療を比較したDESTINY-Breast04試験のアジアサブグループ解析 鶴谷 純司氏(昭和大学先端がん治療研究所)3.T-DM1による治療歴のあるHER2陽性切除不能及び/又は転移性乳癌患者を対象にT-DXdと医師選択治療を比較する第III相試験(DESTINY-Breast02) 高野 利実氏(がん研究会有明病院乳腺内科)4.Phase1/2 Study of HER3-DXd in HER3-Expressing Metastatic Breast Cancer:Subgroup Analysis by HER2 Expression 岩田 広治氏(愛知県がんセンター乳腺科部)<消化器>2023年3月18日(土)9:45〜11:451.切除不能局所進行食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法後のアテゾリズマブの有効性・安全性をみる第II相試験:EPOC1802 陳 勁松氏(がん研究会有明病院消化器化学療法科)2.PD-1 blockade as curative intent therapy in mismatch repair deficient locally advanced rectal cancer Andrea Cercek氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, USA)3.RAS野生型切除不能進行再発大腸癌に対するm-FOLFOXIRI+cetuximab vs. bevacizumabの生存解析:DEEPER試験(JACCRO CC-13) 辻 晃仁氏(⾹川⼤学医学部臨床腫瘍学講座)4.PARADIGM試験における早期腫瘍縮小割合および最大腫瘍縮小割合に関する検討 室 圭氏(愛知県がんセンター薬物療法部)5.Efficacy and safety of fruquintinib in Japanese patients with refractory metastatic colorectal cancer from FRESCO-2  小谷 大輔氏(国立がん研究センター東病院消化管内科) また、プレスセミナーでは、他の注目演題として下記が紹介された。がん免疫療法ガイドライン 下井 ⾠徳氏(国⽴がん研究センター中央病院)によるがん免疫に関するレクチャーの後、3月発刊予定の「がん免疫療法ガイドライン第3版」のアウトラインが紹介された。昨今注目されているがん免疫療法において、医療者へ適切な情報を提供するためのがん種横断的な治療ガイドラインの改訂版である。学術大会では委員会企画として、第3版改訂のポイント、新しいがん免疫療法、がんワクチン療法と免疫細胞療法のエビデンスが解説される。委員会企画4(ガイドライン委員会2)第1部:がん免疫療法ガイドライン改訂第3版の概要3⽉16⽇(⽊)15:50〜17:20(第1部 15:50〜16:35)がんゲノム医療 田村 研治氏(島根大学医学部附属病院)によって、がん治療におけるゲノム医療の流れや課題などが紹介された。学術大会では、マルチコンパニオン検査とCGP検査の使い分けについて解説した上で、近未来の「がんゲノム医療」はどうあるべきかを専門医が討論する。解決すべき問題の例として「コンパニオン診断薬として承認されている遺伝子異常と、ゲノムプロファイリング検査としての遺伝子異常を同じ遺伝子パネルで検査すべきか?区別すべきか?」などが挙げられた。シンポジウム8遺伝子異常特異的かつ臓器横断的な薬剤の適正使用、遺伝子パネルの在り方とは?3月16日(木)8:30〜10:00患者支援の最前線 佐々木 治一郎氏(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター)によって、わが国におけるがん患者支援の現状が紹介された。より総合的ながん患者支援が求められる中、支援活動の質の担保や最低限のルールの確立などのための教育研修が必要となっている。学術大会では、国、学会、NPOの演者ががん患者支援者への教育研修について発表・議論される。会長企画シンポジウム4患者支援者の教育研修:我が国における現状と課題3月16日(木)14:00〜15:30デジタル化が進めるがん医療 佐竹 晃太氏(日本赤十字医療センター)によって、治療用アプリとヘルスケアアプリとの違い、実臨床における活用方法、国内における開発状況などが紹介された。治療用アプリの活用により、重篤な有害事象の減少、QOLの改善、生存期間の改善などが期待されている。学術大会では、新しい治療アプローチの昨今の動向や、臨床導入する上での潜在的課題について議論される。シンポジウム4将来展望:予防・治療を目的としたモバイルアプリの開発3月16日(木)15:50~17:20

159.

転移を有する乳がんでタキサン再投与が有効な患者は?

 推奨される抗がん剤をすべて投与された転移乳がん患者において、全身状態が良好であるにもかかわらず病勢進行に苦しむ患者は少なくない。この状況で、タキサンなどの忍容性の高い抗がん剤の再投与が選択肢の1つになる場合がある。そこで、フランス・Centre Georges Francois Leclerc Cancer CenterのManon Reda氏らは、タキサン投与歴のある転移乳がん患者におけるタキサン再投与の有用性について検討した。その結果、とくにタキサンが乳がん経過の早期に効果を示した場合や病勢進行以外の理由で中止された場合に、タキサン再投与が現実的方法として支持された。Breast誌オンライン版2023年2月4日号に掲載。 本研究では、フランスのがんセンターの地域データベースから、2008~21年に転移を有するER+/HER2-またはトリプルネガティブ乳がんの診断・治療を受けた756例を後ろ向きに調べた。そのうち58例(7.8%)がタキサンを再投与されていた。臨床的特徴、奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を評価し、タキサン再投与を受けなかった患者と比較した。なお、以前のタキサン治療におけるPFSをPFS1、タキサン再投与におけるPFSをPFS2とし、PFS2/PFS1が1.3を超えた場合に治療ベネフィットがあるとした。 主な結果は以下のとおり。・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、有意に年齢が低く、全身状態も良好で、多くの治療を受けていた。・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、投与1回目の反応が良好で、病勢進行以外の理由による中止割合が高かった。・タキサン再投与群における客観的奏効率は27.6%、クリニカルベネフィット率は46.6%、PFS中央値は5.7ヵ月、OS中央値は11.6ヵ月だった。・タキサン再投与群のうち55.2%においてPFS2/PFS1比が1.3を超えた。

160.

TN乳がんへの術前CBDCA+PTXにアテゾリズマブ追加でpCR改善/第II相試験

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法として、アントラサイクリンを含まないカルボプラチン(CBDCA)+パクリタキセル(PTX)にアテゾリズマブの追加を評価する無作為化第II相試験において、病理学的完全奏効(pCR)率の有意な増加が示された。米国・ワシントン大学のFoluso O. Ademuyiwa氏らが、NPJ Breast Cancer誌2022年12月30日号に報告。 これまで、転移を有するPD-L1陽性TNBCを対象としたIMpassion130試験ではnab-PTXへのアテゾリズマブ追加による無増悪生存期間と全生存期間の改善、また早期TNBCを対象としたIMpassion031試験ではアテゾリズマブとアントラサイクリンおよびタキサンをベースとした術前化学療法によるpCR改善が報告されている。 本試験では、StageII/IIIのTNBC 67例(年齢中央値:52歳、範囲:25~78歳)をArm A(CBDCA+PTX)22例、Arm B(CBDCA+PTX+アテゾリズマブ)45例に無作為に割り付け、アテゾリズマブ追加でpCR率および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合が増加するかどうかを、修正ITT集団(評価可能で1回以上併用療法を受けた全患者)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・修正ITT集団において、pCR率はArm Aで18.8%(95%信頼区間[CI]:4.0~45.6)、Arm Bで55.6%(同:40.0~70.4)だった(群差の推定値:36.8%、95%CI:8.5~56.6、p=0.018)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、Arm Aで62.5%、Arm Bで57.8%に発現した。・TILの割合は、ベースラインから第1サイクルまで、Arm A(平均±SD:0.6%±21.0%)およびArm B(同:5.7%±15.8%)ともわずかに増加した。・TILの割合の中央値は、pCR例(24.8%)で非pCR例(14.2%)より高かった(p=0.02)。 本試験において、術前化学療法のみよりアテゾリズマブ追加でpCR率が有意に高かった。著者らは「非アントラサイクリンベースの化学療法+免疫療法は、早期TNBC治療の代替オプションとなる可能性がある」としている。

検索結果 合計:679件 表示位置:141 - 160