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デュロキセチン、がん化学療法薬による末梢神経障害に伴う疼痛を緩和/JAMA

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬デュロキセチン(商品名:サインバルタ)が、疼痛を伴う化学療法薬誘発性の末梢神経障害の軽減に有効なことが、米国・ミシガン大学のEllen M. Lavoie Smith氏らが実施したCALGB-170601試験で示された。タキサン系、プラチナ製剤、ビンカ・アルカロイド系、ボルテゾミブなどの化学療法薬により、がん患者の約20~40%に疼痛を伴う末梢神経障害が発現し、治療終了後も数ヵ月~数年にわたり持続する場合があるが、有効な治療法は確立されていない。同氏らは、第III相試験で疼痛を伴う糖尿病性神経障害に対する有効性が示されているデュロキセチンが、化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛の軽減にも有効ではないかと考えたという。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告。神経障害性疼痛の軽減効果をプラセボ対照クロスオーバー試験で評価 CALGB-170601試験は、化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛に対するデュロキセチンの効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第III相試験。 対象は、25歳以上、化学療法薬(パクリタキセル、オキサリプラチン、ドセタキセル、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、シスプラチン)によって誘発された末梢神経障害と診断され、治療終了後3ヵ月以上持続するGrade 1以上の神経障害性の疼痛(NCI-CTCAE ver3.0)を伴う患者とした。がん種や進行度は問わなかった。 これらの患者が、化学療法薬および疼痛リスクで層別化されたのち、デュロキセチン治療後にプラセボ投与に切り替える群(A群)またはプラセボ投与後にデュロキセチン治療に切り替える群(B群)に無作為に割り付けられた。両群とも5週の治療を行い、2週休薬後にクロスオーバーしてさらに5週の治療を行った。投与量は第1週が30mg/日、第2~5週は60mg/日とした。 疼痛の重症度の評価には、簡易的疼痛評価用紙短縮版(Brief Pain Inventory-Short Form)の疼痛スコアを用いた(疼痛なしを0とし、重症度を1~10で評価)。とくにオキサリプラチンによる疼痛に有効な可能性が 2008年4月~2011年3月までに220例(平均年齢59歳、女性63%、パクリタキセル40%、オキサリプラチン59%、乳がん38%、消化器がん56%)が登録され、A群に109例、B群には111例が割り付けられた。フォローアップは2012年7月まで行われた。 最初の5週の治療における疼痛スコアの低下は、デュロキセチン治療(A群)が平均1.06[95%信頼区間(CI):0.72~1.40]と、プラセボ(B群)の0.34(95%CI:0.01~0.66)に比べ有意に優れていた(p=0.003)。低下した疼痛スコアの両群間の差は0.73(95%CI:026~1.20)だった。 最初の5週の治療で疼痛が軽減したと答えた患者の割合は、デュロキセチン治療が59%と、プラセボの38%に比べ高かった。デュロキセチン治療の30%が疼痛は不変とし、10%は増大したと答えた。 クロスオーバー後の治療期間中の疼痛スコアの低下は、プラセボ(A群)が0.41(95%CI:0.06~0.89)、デュロキセチン治療(B群)は1.42(95%CI:0.97~1.87)であり、低下した疼痛スコアの差は1.01(95%CI:0.36~1.65)であった。 著者は、「デュロキセチン治療はプラセボに比べ、化学療法薬誘発性の末梢神経障害による疼痛の軽減効果が統計学的、臨床的に有意に良好であった」と結論し、「探索的解析では、デュロキセチンはタキサン系薬剤よりもオキサリプラチンによる末梢神経障害性疼痛に有効な可能性が示唆された」と述べている。

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SYNTAX中・高スコア患者の標準治療はCABGとすべき/Lancet

 左冠動脈主幹部病変および3枝病変を有する患者を対象として、冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を比較した無作為化試験「SYNTAX」の最終5年フォローアップの成績が、ドイツ・Herzzentrum Universitat LeipzigのFriedrich W Mohr氏らにより発表された。同試験についてはこれまで、1年時点(主要エンドポイントMACCEについてPCI群はCABG群に対して非劣性を達成せず)、3年時点(MACCEほか心筋梗塞発生、血行再建術がPCI群で有意に高い)の各成績が示されていた。今回の5年時点でも両群のイベント発生率の格差が認められたこと、とくに心筋梗塞発生、血行再建術がPCI群で有意に高いことなどが示された。研究グループは「SYNTAXスコアが中あるいは高の複雑病変患者の標準治療はCABGとすべきである」と結論し報告をまとめている。Lancet誌2013年2月23日号の掲載報告。3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変患者をCABGまたはPCIに無作為化 SYNTAX試験は、欧米85の施設で被験者を登録して行われたネステッド無作為化試験で、心臓外科医とインターベンション専門医の医療チームがスクリーニング時に、いずれの治療にも適合性があるとみなした患者は無作為に割り付け、どちらか一方のみが適切であると判断した患者についてはその治療群に割り付けた。 適格となった患者は無作為に1対1の割合で、第1世代パクリタキセル溶出性ステントによるPCIを受ける群またはCABGを受ける群に割り付けられた。PCIが適切と判断された患者はPCI群へ、CABGが適切と判断された患者はCABG群へ割り付けられた。 主要エンドポイントは、主要心臓・脳血管有害イベント(MACCE)であり、Mohr氏らはintention-to-treatをベースとしたKaplan-Meier解析で5年時点の成績を分析した。5年時点もMACCE、心筋梗塞、血行再建がPCI群で有意に高い 適格被験者は1,800例であり、CABG群に897例が、PCI群に903例が割り付けられたが、無作為化後CABG群50例、PCI群11例が試験参加の同意を取り下げた。ベースラインでの両群被験者の特性はほぼ同等であり、SYNTAXスコアはCABG群29.1(SD 11.4)、PCI群28.4(同11.5)だった。追跡1年目の抗血小板薬の服用はPCI群で高かったが、5年時点ではアスピリン服用者の割合について両群の有意差はなかった。ただし抗血小板併用療法を受けている患者はPCI群で高かった。 5年時点のKaplan-Meier解析によるMACCEは、CABG群26.9%、PCI群37.3%だった(p<0.0001)。 心筋梗塞(CABG群3.8% vs PCI群9.7%、p<0.0001)、血行再建(同13.7% vs 25.9%、p<0.0001)は、PCI群で有意に高かった。 全死因死亡(同11.4% vs 13.9%、p=0.10)、脳卒中(同3.7% vs 2.4%、p=0.09)については両群で有意な差はみられなかった。 SYNTAXスコア別に解析した結果、低スコア(0~22)群ではMACCEは、CABG群28.6%、PCI群32.1%と有意差はみられなかった(p=0.43)。 なお、左冠動脈主幹部病変の患者についても、5年時点のMACCEについて有意差はみられなかった(CABG群31.0%、PCI群36.9%、p=0.12)。 一方、SYNTAXスコアが中スコア(23~32)群、高スコア(≧33)群ではPCI群でMACCEの発生が有意に高かった。中スコア群の発生率はCABG群25.8%、PCI群36.0%(p=0.008)、高スコア群では26.8%、44.0%(p<0.0001)だった。 以上の結果を踏まえて著者は、「複雑な病変(SYNTAX中・高スコア)患者についてはCABGを引き続き標準治療とすべきである」と結論。また「病変部がそれほど複雑でない(SYNTAX低スコア)患者や左冠動脈主幹部病変の患者(SYNTAX低・中スコア)では、PCIは選択肢となりうる」と述べ、「複雑な多枝冠動脈疾患を有する患者については必ず、心臓外科医とインターベンション専門医の両者による考察と話し合いを行い、至適治療のコンセンサスを得るようにしなければならない」と提言している。

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消化管神経内分泌腫瘍〔GI-NET : gastrointestinal neuroendocrine tumor〕

1 疾患概要■ 概念・定義消化管神経内分泌腫瘍は原腸系組織に存在する神経内分泌細胞由来の腫瘍群(neuroendocrine tumor: NET)である。消化管NETは、悪性度が低いものから高いものまで多彩であるにもかかわらず、これまで消化管カルチノイドの呼称でひとまとめに扱われてきたが、2010年以降、生物学的悪性度を指標としたWHO分類に従って扱われるようになってきている。本稿では、WHO分類に従ったデータは乏しいため、以下、消化管カルチノイド腫瘍として報告されてきた知見を示す。■ 疫学わが国における消化管カルチノイド腫瘍の発生頻度は、直腸(39%)、胃(27%)、十二指腸(15%)の順である。欧米では、小腸、虫垂での発生頻度が高い。■ 病因消化管粘膜の腺底部に存在する内分泌細胞が腫瘍化し、粘膜下層を主座としながら腫瘤を形成するため、粘膜下腫瘍様の形態を呈する。■ 症状(1)無症状で発見されることが多い。(2)腫瘍増大による腹痛、腸閉塞、下血で発見されることもある。(3)生理活性物質(セロトニン、ヒスタミンなど)を産生する腫瘍の肝転移例では、カルチノイド症候群と呼ばれる皮膚紅潮、喘息様発作、下痢、右弁膜傷害の症状がみられることがある。■ 分類1)WHO分類腫瘍細胞の核分裂像や細胞増殖マーカー(Ki-67)の発現指数に基づいて表1のようにNET grade 1、NET grade 2、Neuroendocrine carcinoma(NEC)に分類される。2)TNM分類腫瘍の深達度(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)を評価し、腫瘍の進行度(病期)をI~IVの4段階に分類するもの。3)Rindi分類胃NETは他の消化管NETと比べ悪性度の低いものが多く、疾患背景や高ガストリン血症の有無でType I~IIIと低分化型内分泌細胞がんの4グループに分けるRindi分類が有用である(表2)。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後1)胃NETType I、Type IIの胃NETは、高ガストリン血症を伴わないType III胃NETに比べ転移率が低く(I:4.9%、II:30%、III:62.5%)、5年生存率(I:正常生命期待値、II:87%、III:79%)は、明らかに良好である。Type IVの胃NETは、WHO分類のNECに相当し、予後が悪い。2)その他の消化管NET胃以外の消化管NETでは、予後予測因子が明らかでない。腫瘍径が1cmを超えた場合、転移率が20%以上とする報告が多い。米国の報告では、5年生存率が局所限局で79.7%、近傍進展で50.6%、遠隔転移を有する症例で21.8%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)血液検査カルチノイド症候群を疑う場合は、血中セロトニン、尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の測定を行う。機能性NETの場合は、疑うホルモンの血清値の測定を行う。2)画像診断内視鏡検査では、黄白色調の表面平滑な粘膜下腫瘍として観察されることが多い。確定診断は生検による組織診断で行う。転移の有無は、腹部超音波、CT、MRIなどの検査で行う。内視鏡的切除を行う場合には、超音波内視鏡検査による腫瘍の深達度が有用である。3)病理特徴的な細胞像(好酸性微細顆粒状の細胞質、円形~卵円形の均一な小型核、細胞分裂はまれ)と胞巣形態を呈する。銀染色やクロモグラニン免疫染色が有用である。NETのグレード分類には細胞増殖マーカーKi67の免疫染色が行われる。4)その他欧米では血中クロモグラニンA値を腫瘍マーカーとして用い、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーを病変の検出に用いられているが、日本では未承認である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外科的または内視鏡的切除(1)胃NET高ガストリン血症を伴うtype I、IIの腫瘍は2cm未満の場合、まず内視鏡治療を試み、病理組織学的に細胞異型が強い腫瘍の残存や脈管浸潤を認める場合には、外科的切除を追加する。腫瘍が2cm以上あるいは個数が6個以上、あるいは腫瘍が固有筋層に浸潤している場合は、リンパ節郭清を含む外科的切除を行う。Type III、IVの腫瘍は胃がんに準じた外科切除を行う。(2)その他の消化管NET筋層浸潤を伴わない1cm以下の腫瘍では、内視鏡的切除か筋層を含む局所切除を行う。筋層浸潤を伴わない1~2cmの腫瘍では、広範な局所切除または所属リンパ節郭清を含む腸管の部分切除を行う。筋層浸潤を伴う腫瘍または2cm以上の腫瘍では、広範なリンパ節転移を含む根治的切除術を行う。2)化学療法5-FU、ドキソルビシン、ストレプトゾトシン、インターフェロン、シクロホスファミドが投与されるが有効性は低い。肝転移巣に対して肝動脈塞栓術が有効な場合がある。NECは、小細胞がんに準じてシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンが投与される(わが国ではすべて未承認)。3)カルチノイド症候群に対する治療ソマトスタチン誘導体であるオクトレオチド(商品名:サンドスタチン)は、NETからのセロトニンやヒスタミンの放出を抑制し、カルチノイド症候群でみられる症状(前述)を改善する。4 今後の展望消化管NETの解釈は、さまざまな分類によって取り扱われ混乱していたが、2010年に新しい WHO分類が提唱され、今後徐々にその分類に沿った治療成績や予後が明らかになり、データが整理されていくと思われる。治療の原則は、腫瘍の根治的切除と再発予防であるが、欧米で検討されているソマトスタチンアナログなど抗腫瘍効果が期待される新薬もNETの集約的治療に加わってくるかもしれない。5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療に関する情報サイトNET Links(一般向け、医療従事者むけのサイト)患者会情報しまうま倶楽部(患者・患者の家族の会)

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低悪性度非ホジキンリンパ腫の1次治療、B-RがR-CHOPよりも有用/Lancet

 ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法(B-R)は、低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の1次治療において、従来の標準治療であるシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(CHOP)+リツキシマブ(R-CHOP)併用療法よりも、有効性および安全性が優れることが、ドイツ・Justus Liebig大学病院のMathias J Rummel氏らStudy group indolent Lymphomas(StiL)の検討で示された。米国では、毎年、約6万6,000人が新規に非ホジキンリンパ腫と診断され、そのうち約40%が低悪性度リンパ腫、約3~10%がマントル細胞リンパ腫だという。現在、欧米における進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫および高齢マントル細胞リンパ腫の標準的な1次治療はリツキシマブと化学療法(ほとんどがCHOP)の併用療法だが、再発や難治性の病変にはB-R療法が有効なことが確認されている。Lancet誌オンライン版2013年2月20日号掲載の報告。B-RのR-CHOPに対する非劣性を無作為化試験で検証 研究グループは、低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に対するB-RのR-CHOPに対する非劣性を検証する多施設共同非盲検無作為化試験を実施した。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたStage III/IVの低悪性度非ホジキンリンパ腫またはマントル細胞リンパ腫で、PS(WHO)0~2の症例とした。これらの患者が、リンパ腫の組織学的サブタイプで層別化されたのち、ベンダムスチン(90mg/m2静注、第1、2日、4週毎)またはCHOP(シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2を第1日に投与、プレドニゾン100mg/日は第1~5日目に投与、3週毎)を投与する群に割り付けられ、最大6コースまで施行することとした。両群とも、第1日目にリツキシマブ375mg/m2が投与された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、per-protocol解析を行った。3年後のPFSの非劣性のマージンは10%とした(たとえば、R-CHOP群のPFSが50%の場合、B-R群が40%以上であれば非劣性と判定)。これにより、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.32を超えない場合に非劣性と判定された。PFS中央値のHR:0.58(95%CI:0.44~0.74)、脱毛:0% vs 100%、血液毒性:30% vs 68% 2003年9月1日~2008年8月31日までに、ドイツの81施設から549例が登録され、B-R群に274例が、R-CHO群には275例が割り付けられ、それぞれ261例(年齢中央値64歳、Stage IV 77%、マントル細胞リンパ腫18%)、253例(同:63歳、78%、19%)が評価可能であった。 フォローアップ期間中央値45ヵ月の時点で、PFS中央値はB-R群が69.5ヵ月(四分位範囲:26.1~未到達)、R-CHOP群は31.2ヵ月(同:15.2~65.7)であり、HRは0.58(95%CI:0.44~0.74、p<0.0001)であった。 耐用性もB-D群がR-CHOP群よりも良好だった。すなわち、3コース以上の治療を受けた患者のうち、脱毛はB-D群が0%であったのに対しR-CHOP群は100%(p<0.0001)であった。また、血液毒性がそれぞれ30%、68%(p<0.0001)、感染症が37%、50%(p=0.0025)、末梢神経障害が7%、29%(p<0.0001)、口内炎は6%、19%(p<0.0001)であった。紅斑性皮膚反応の頻度はB-R群のほうが高かった(16% vs 9%、p=0.024)。 著者は、「PFS中央値については、B-R群のR-CHOP群に対する非劣性とともに優位性も示され、耐用性もB-R群が良好であった。未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の1次治療では、R-CHOPよりもB-Rが好ましいと考えられる」と結論し、「今後は、B-R療法の有効例に対するRによる維持療法の有用性を評価する臨床試験を行う必要があるだろう」と指摘している。

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静注ブスルファンと全身放射線照射との造血幹細胞移植後の全生存率の比較の報告が“Best Abstracts”に選出される【2013 BMT Tandem Meetings】

 BMT Tandem Meetings(米国造血細胞移植学会/国際骨髄移植研究センター 合同学術集会)において、造血幹細胞移植前治療としての静注ブスルファンと全身放射線照射(TBI)の骨髄破壊的レジメンを比較した試験の結果が、オタワ大学(カナダ)のChristopher Bredeson氏により報告された。この試験は、本学会の全553演題の中から最も優れた6題を表彰する“Best Abstracts”セッションにおいて、15日に米国ユタ州ソルトレイク市で発表された。 造血幹細胞移植前治療として、経口ブスルファンに代わり静注剤を使用することにより、血中濃度の厳密なコントロールが可能となったが、その臨床効果を、TBIと比較した前向き研究は未施行であった。今回、静注ブスルファンとTBIの骨髄破壊的レジメンを比較した多施設共同前向きコホート試験の結果が報告された。この試験は、CIBMTR(Center for International Blood and Marrow Transplant Research)が中心になって施行した、初めての大規模前向きコホート試験である。 同試験の対象は、すべての病期(early、intermediateおよび advanced phase)における骨髄性血液腫瘍(急性骨髄性白血病AML、骨髄異形成症候群MDS、慢性骨髄性白血病CML)に対して初回同種造血幹細胞移植を施行した60歳以下の患者である。血縁もしくは非血縁をドナーとし、骨髄および末梢血幹細胞を使用した例を含み、臍帯血移植あるいはex vivo T細胞除去を施行した例は除いた。前治療として、静注ブスルファン(BU)群では、BU(>9mg/kg)+シクロホスファミド(Cy)またはフルダラビン(Flu)投与例、TBI群では、≧500 cGyの単回照射または ≧800 cGyの分割照射に加えCyまたはエトポシドを使用した例を対象とした。主目的は、全生存におけるBU群のTBI群に対する非劣性の検証である。 2009年3月から 2011年2月までに、北米を主とした120施設から1,483 例(BU: n=1,025、TBI: n=458)が適格例として登録された。両群間に大きな偏りは見られず、年齢、性別、Karnofsky Performance StatusおよびHCT-CIスコアは同様であった。移植片としては末梢血幹細胞が主に使用された(BU:77%、TBI:76%)。両群ともAMLが多く(BU:68%、TBI:78%)、MDS が続いた(BU:21%、TBI:10 %)。両群間において、原疾患の進行度およびHLA適合血縁ドナーの割合(BU:41%、TBI:39%)に偏りはみられなかった。BU群において、1日1回投与は42%, 1日4回投与は57%であり、Cy併用例、Flu併用例はそれぞれ59%、41%であった。 2年全生存率(95%CI)は、BU群が 56%(53~60%)、TBI群が48%(43~54%)であり、2年全生存率に統計学有意差が認められた[p=0.019]。病期別2年全生存率は、Early phase(BU:64%、TBI:51%[p=0.006])、Intermediate phase(BU:57%、TBI:56%[p=NS])、Advanced phase(BU:43%、TBI:38%[p=NS])であった。 全例1,483 例における移植関連死は、移植後100日において両群ともに7%であった。静脈閉塞症肝疾患(VOD)/ 類洞閉塞症候群(SOS)の出現頻度は、BU群が5%、TBI群が1%であった[p

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ATLAS - 10 v 5 years of adjuvant tamoxifen (TAM) in ER+ disease: Effects on outcome in the first and in the second decade after diagnosis

ATLAS - エストロゲン受容体陽性乳癌における術後タモキシフェン5年対10年の比較:診断後10年間およびさらにその後10年間の効果ATLASはAdjuvant Tamoxifen: Longer Against Shorterの略である。本試験の結果は発表と同時にLancet oncologyに論文掲載された。EBCTCGのメタアナリシスによれば、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)を服用する群とまったく使用しない群を比較したとき、服用終了5年以降も15年以上にわたって生存率の差が開き続けており(Lancet. 2012; 378: 771-784)、これをCarryover effectと表現している。本試験では約5年間タモキシフェンを服用した乳癌女性15,244例が、世界36の国あるいは地域から1996年~2005年の間に登録された。そのうちエストロゲン受容体陽性の6,846例(53%)を解析対象とし、受容体不明(4,800例、37%)、受容体陰性(1,248例、10%)は除外した。アジアおよび中東から25%が登録されていた。対象者の89%が閉経後であった。また19%で子宮摘出術が行われていた。10年継続群と5年中止群で、再発は617対711例(2p=0.002)、乳癌死は331対397例(2p=0.01)、全生存率は639対722例(2p=0.01)であった。期間毎にみたとき乳癌死のハザード比は5年から10年未満で0.97(95%CI:0.79~1.18)、10年以上で0.71(同0.58~0.88、p=0.0016)となっており、より長期間の観察で有意差がみられていた。つまりCarryover effectが認められている。解析時点で77%が診断後15年まで経過観察中であり、今後より差が開く可能性もある。タモキシフェン服用率は、割り付けから2年経過した時点で10年服用群84%、中止群80%と4%の差であった。15年での子宮内膜癌と肺塞栓症による死亡は10年服用群で0.2%の上昇がみられた。これは乳癌死亡が3%減少するのと比べて、非常に少ないと判断される。本試験の特徴はpragmatic trial(実際的な試験)と表現され、世界的規模であり、組み入れ基準がゆるく、シンプルな実施および経過観察であり,死亡率のわずかな差をみるために非常に大きな登録数であることである。一般的に行われてきた無作為化比較試験のような厳格な基準でないということは、裏返せば実際の臨床により即した試験であると言える。そういった意味から、この結果はわれわれの日常臨床にすぐに適応できるものであると考えられる。症例の89%が閉経後であり、実際ほとんどの方は、MA.17試験の結果よりタモキシフェン5年終了後には、レトロゾール(商品名:フェマーラ)へのスイッチが推奨される。閉経前は11%と少なくみえるが、それでも630例であり、サブセットアナリシスをみても、閉経前と閉経後でのばらつきはない。さらに“閉経後”の定義は記載されておらず、タモキシフェン服用中の判断はかなり慎重でなければならないことから、実際には閉経後と判断しにくい方は相当数いる可能性がある。そういった場合には、やはりタモキシフェンの継続が推奨されることになろう。また、薬剤変更することによる有害事象への不安がある場合などは、やはりタモキシフェン延長を考えてよいと思われる。ATLAS試験以外にaTTom試験があり、来年報告される予定とされているが、ほとんどがエストロゲン受容体不明で、規模も7,000例であることから有意差はより出にくい可能性がある。さらにEBCTCGのメタアナリシスの結果も来年報告される予定であり、その中にはATLAS、aTTom、NSABP B-14、Scottish trialなども含まれると思われるが、いわゆる“ごちゃまぜバイアス”にも注意して解釈していく必要があろう。現時点で、タモキシフェン10年服用をどのような患者さんに適応するのがよいだろうか。そもそも絶対リスク減少は非常に小さいことから、予後良好なグループ、たとえばリンパ節転移陰性、腫瘍径2cm以下、核グレード1といったような場合にはほとんど差が出ない可能性が高い。逆に再発高危険群では絶対リスク減少は大きくなると予想される。これらのことを患者さんと話し合いながら決めていくのが現実的であろう。レポート一覧

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Association between the 21-gene recurrence score (RS) and benefit from adjuvant paclitaxel (Pac) in node-positive (N+), ER-positive breast cancer patients (pts): Results from NSABP B-28

リンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性乳癌における21遺伝子再発スコア(RS)とパクリタキセルの追加効果との関連:NSABP B-28の結果からNSABP B-14/B-20、SWOG 9914およびTransATAC試験から、21遺伝子再発スコア(RS)分析はリンパ節転移陰性/陽性のエストロゲン受容体陽性乳癌における10年の遠隔転移および生存率を予測することが証明されている。また、NSABP B-14/B-20、SWOG 9914試験から化学療法の上乗せ効果を予測することも示されている。さらに、E2197試験から、内分泌療法と化学療法を行ったリンパ節転移0から3個陽性のホルモン受容体陽性乳癌の再発率と死亡率も予測する。本試験のプライマリーエンドポイントは、内分泌療法と化学療法を行ったリンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性乳癌の、局所再発の予後因子としてのRSの意義を評価することである。セカンダリーエンドポイントは、ACにパクリタキセル(PAC、商品名:タキソール)を追加する効果を予測する因子としてのRSの意義を評価することである。今回の報告はセカンダリーエンドポイントの評価であった。 NSABP B-28はリンパ節転移陽性の3,060例においてACとAC→PACを比較した試験である。ホルモン受容体陽性ではタモキシフェンを化学療法と同時に服用していた。乳房部分切除術を受けた患者は術後に放射線治療を実施し、乳房切除術後は行われなかった。5年の時点で、AC→PACはAC単独と比べてDFSでの年間ハザード比が、6.6%から5.5%に減少した(HR=0.83、95% CI:0.72~ 0.95、p=0.006)。エストロゲン受容体陽性乳癌2,007例では、5.2%から3.9%に減少した(HR=0.78、95% CI:0.63~0.91、p=0.003)。OSの改善は小さく統計学的に有意ではなかった(HR=0.93、95% CI:0.78~1.12、p=0.46)。本試験の適格基準は、組織マイクロアレイにてエストロゲン受容体陽性、タモキシフェンで治療され、21遺伝子再発スコア分析が可能であることである。観察期間の中央値は11.2年であった。1,065例が解析可能であり、AC(519例)、AC→PAC(546例)であった。年齢は50歳未満が46%対46%、リンパ節転移1~3個は68%対71%、腫瘍径は2.0cm以下が57%対50%(p

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Chemotherapy prolongs survival for isolated local or regional recurrence of breast cancer: The CALOR trial (Chemotherapy as Adjuvant for Locally Recurrent breast cancer; IBCSG 27-02, NSABP B-37, BIG 1-02)

化学療法は局所または領域リンパ節の単独再発に対して予後を延長する:CALOR試験乳癌における局所または領域リンパ節の単独再発(Isolated local or regional recurrence, ILRR)は、予後不良の予測因子である。しかしILRRに対する術後化学療法に関する前向き比較試験は過去30年間行われてこなかった。CALOR試験適格基準は、乳房内、胸壁、乳房切除創または皮膚、腋窩または胸骨傍リンパ節の初回再発であり、再発部位が病理学的に完全に切除され、鎖骨上リンパ節や遠隔再発が認められていないことである。原発性乳癌術後の化学療法の有無、ホルモン受容体、ILRRの部位で層別化し、再発巣切除後に化学療法の有無について無作為化比較試験を行った。化学療法後はホルモン受容体陽性については内分泌療法を行い、HER標的療法は選択可能とした。化学療法剤の種類は責任医師の選択としたが、3~6ヵ月で2剤以上使用することが推奨された。放射線治療は全例に40Gy以上が推奨された。プライマリーエンドポイントはDFS、セカンダリーエンドポイントはOSであり、ITT解析が行われた。最初に設定されたハザード比は0.74で、997例の登録と347例のDFSイベントが予想されたが、患者登録の割合が低く、より有効な化学療法が確立されてきたことから、2008年3月に修正され、ハザード比0.6でサンプルサイズが再設定され、265例に対して124のイベントが起こること(観察群の5年DFS 50%)が予想された。しかし2010年1月に試験がクローズされ、その時点で162例であり、中間解析は行われなかった。分析は少なくとも2.5年以上の経過観察を必要とした。国際的共同試験として行われ、BIG 89例、GEICAM 20例、BOOG 12例、NSABP 73例であった。ベースラインの背景は化学療法群と観察群で、化学療法歴58対68%、LRR時閉経後状態76対82%、年齢中央値56対56歳、再発部位は乳房55対53%、切開創/胸壁32対34%、領域リンパ節13対13%、再発創のエストロゲン受容体陽性66対62%、ILRRに対する治療は、放射線治療44対39%、内分泌療法(エストロゲン受容体陽性例)91対92%、HER2標的療法7対5%、化学療法は単独療法としてタキサン20%、カペシタビン11%、複合療法としてアンスラサイクリンベース48%、アンスラサイクリン+タキサンベース1%、タキサンベース16%であった。5年DFSは化学療法(CT)群69%、観察(no CT)群57%であり、 CT群で有意に予後良好であった(p=0.0455、 HR=0.59、95%CI:0.35~0.99)。エストロゲン受容体別にみると、陽性ではCT群70%、no CT群69%と差がなく(p=0.87、HR=0.94、95%CI:0.47~1.89)、陰性ではCT群67%、no CT群35%と有意差がみられた(p=0.007、HR=0.32、95%CI:0.14~0.73)。多変量解析ではエストロゲン受容体、再発部位、化学療法歴の有無、初回手術からの期間では差がなく、再発後の化学療法の有無でのみ有意差が認められた(p=0.01、HR=0.50)。5年OSでもCT群88%、no CT群76%であり、CT群で有意に予後良好であった(p=0.02、HR=0.41、95%CI:0.19~0.89)。多変量解析ではやはり再発後の化学療法の有無でのみ有意差が認められた(p=0.02、HR=0.37)。結論として、再発後の化学療法はDFSイベントを41%減少させ、死亡を59%減少させる。エストロゲン受容体陰性の再発においてより効果が高く、受容体陽性についてはより長期の経過観察が必要と考えられた。局所再発に対する全身化学療法の意義というクリニカルクエスチョンに対し、複数の国にまたがる臨床試験を施行し、局所再発時の治療について再考すべき話題を提供してくれたことの意義は大きい。従来は局所再発時の全身療法に対するエビデンスがないということで、全く行っていなかった施設もあったかと思う。それにしても、これだけ世界の臨床試験グループが集まっても患者登録が進まなかったのは、患者が試験への参加を望まなかったか、医師が組み入れをかなり選定した可能性があり、選択バイアスがかなり大きいのかもしれない。再発時の受容体の状況が異なっていれば、実際は再発ではなく新規原発かもしれないし、初発時に行われた化学療法のレジメンと再発時に行われたレジメンの違いについて言及されていないため、どのような状況においてどのような化学療法を用いることがよいのか、不明のままである。アンスラサイクリン+タキサンベースがわずか1%であったところをみると、初回化学療法と異なるレジメンが採用されたものと考える。したがって現時点では個人的な治療の選択には変更はない。個々の場面に応じて、有効かもしれない全身治療の選択を考えるのが妥当と考えている。以下に例を挙げてみる。StageIのルミナルタイプ乳癌で術後内分泌療法のみを行っていた、あるいはT1bN0M0のトリプルネガティブ乳癌で術後経過観察のみを行っていたとする。3年後胸壁に2cmの浸潤癌または腋窩リンパ節再発を来したとすれば、内分泌療法抵抗性であり、また局所再発の時点で化学療法の適応になったと考えることができる。初回術後CMF療法を行っていて、浸潤癌の局所再発を来した場合、ルミナルタイプであればCMFとACの治療効果に通常差がないので、化学療法を選択するとすればタキサンベースであろう。しかしHER2陽性やトリプルネガティブ乳癌であれば、そもそもCMFでは効果が不十分であった可能性もあり、アンスラサイクリンとタキサン(+/-トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン))を選択したい。StageIIのHer2陽性乳癌で、乳房部分切除術後にアンスラサイクリンおよびタキサン+トラスツズマブを行っていて、早期に局所再発した場合、術後補助療法として十分な治療を行ったうえでの再発であり、局所再発後にさらに別の化学療法とハーセプチンを上乗せすることは、過剰治療の可能性が高い。まずは局所治療を十分に行って、慎重な経過観察を行うことが妥当であろうと考えられる。ルミナルタイプでアンスラサイクリンとタキサンを行い、その後アロマターゼ阻害剤を服用している最中に局所再発した場合も、局所治療をまずはしっかり行って、経過観察を行っていくのがよいのではないかと思う。反対にタモキシフェン服用中の再発であれば、アロマターゼ阻害剤が予後を改善する可能性があり、局所再発後に内分泌療法の変更を考える余地がありうる。カペシタビンを行う根拠は非常に弱いと考えられ、11%に行われていたのはどのような意志決定があったのか知りたいところである。これらの考え方には異なった意見もあるかと思うが、心配だからなんとなく行うのではなく、前治療と後治療とのバランスや予後を改善しうるパワーを持ちうる治療であるのかを十分考慮して、過小または過剰治療にならないようチームで十分吟味して決めることが大切であろう。レポート一覧

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サン・アントニオ乳癌シンポジウム2012 〔会員聴講レポート〕

2012年12月4日から8日まで米国テキサス州サン・アントニオにて第35回サン・アントニオ乳癌シンポジウム2012が開催された。ケアネットでは、幅広く、実用的な情報をニュートラルに提供するため、ケアネット会員の現役ドクターによるシンポジウム聴講レポートを企画した。乳がん診療に携わる医療者の先生方に、現在そして今後の乳癌診療トレンドを紹介する。レポーター2012年第35回サン・アントニオ乳癌シンポジウムは、12月4日(火)から8日(土)の5日間の会期で行われた。ここ数年は会期中いつも寒くコートが必要であったが、今年はとても暖かく日中は半袖でも過ごせるくらいの陽気であり、とても過ごしやすい天候であった。会期後は急に寒くなったと聞いている。初日の午後は教育的なレクチャーがあり、実際の演題発表は2日目からであった。また最終日の午前中は学会内容の総括であった。ここでは、分子生物学的な話題を最新の報告をもとにわかりやすくまとめていたが、逆に臨床的な話題の要約としては物足りないものであった。時間的な制約があったからかもしれない。演題は非常に多彩であり、分子生物学的手法を用いた予後因子、効果予測因子の検討やさまざまな分子標的療法、癌幹細胞、マイクロRNAの話題なども多くみられた。ここでは臨床に関わるものからピックアップして報告したい。レポート一覧

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Meta-analysis Results from the Collaborative Trials in Neoadjuvant Breast Cancer (CTNeoBC)

術前化学療法を行った乳癌の共同試験からのメタアナリシスpCRはEFSやOSのような長期間の臨床的予後と関連している可能性があるが、意見が分かれているところである。本演題は無作為化比較試験における術前化学療法のメタアナリシスであり、 pCRの定義が明確で、すべての必要なデータがそろっている12の試験が選択された。GBG/AGO 7試験―6,377例、NSABP 2試験―3,171例、EORTC/BIG 1試験―1,856例、ITA 2試験―1,589例、計12,993名の解析である。pCRの定義は、ypT0ypN0:乳房/腋窩の浸潤部、非浸潤部すべてが消失、ypT0/TisN0:乳房/腋窩の浸潤部が消失、ypT0/Tis:乳房の浸潤部が消失とした。pCR対no pCRの割合は、ypT0ypN0:1,554(13%)対10,401(87%)、ypT0/TisN0:2,131(22%)対9,824(82%)、ypT0/Tis:2,599(22%)対9,356(78%)であった。ypT0/TisN0をpCRと定義したとき、 pCRとno pCRとでEFS、OSともに有意な差が認められた(HR=0.48、p

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The role of sentinel lymph node surgery in patients presenting with node positive breast cancer (T0-T4, N1-2) who receive neoadjuvant chemotherapy - results from the ACOSOG Z1071 trial

リンパ節転移陽性(T0-T4)で術前化学療法を受けた乳癌患者でのセンチネルリンパ節生検の役割―ACOSOG Z1071試験本研究の適格基準は、18歳以上、経過観察可能、cT0-4/N1-2/M0、細胞診またはコア針生検で腋窩リンパ節転移陽性、浸潤性乳癌、術前化学療法(NAC)終了後12ヵ月以内の手術、インフォームドコンセントであり、除外基準は妊娠期/授乳期、鎖骨上/鎖骨下/胸骨傍リンパ節転移疑い、同側腋窩手術の既往、センチネルリンパ節生検/化学療法前の腋窩リンパ節生検の既往、炎症性乳癌である。センチネルリンパ節生検として推奨される方法は少なくとも2個のリンパ節摘出、RIと青い色素の2つの標識の使用である。病理学的評価はHE染色を用い、0.2mmより大きいものをリンパ節転移陽性とした。主目的は、センチネルリンパ節を2個以上摘出したcN1の乳癌女性で、偽陰性率が10%未満であるか決定することである。10%の偽陰性率を選択した理由は、NACを行っていない早期乳癌でのセンチネルリンパ節生検の偽陰性率がNSABP B-31で9.8%であったこと、NACではNSABP-B-27で10.7%、21試験のメタアナリシスで12%であったことからである。136施設から756例が登録され、除外基準となった53例を除く701例を対象とした。腋窩郭清が完全に行われなかった1例、腋窩郭清でリンパ節が1つもなかった1例、センチネルリンパ節生検が行われなかった12例を除くと687例となり、さらにセンチネルリンパ節が同定できなかった50例を除くと、637例(cN1:603例、cN2:34例)となった。701例の患者背景は、年齢49(23~93)歳、人種は白人が80.6%、腋窩診断はコア針生検61.2%、細胞診38.8%、cT2が54.9%、おおよそのサブタイプはHER2+が30.1%、トリプルネガティブが24.1%、HR+/HER2-が45.4%であった。センチネルリンパ節同定率は92.7%(639/689例)であった。637例中リンパ節転移陰性となったものが255例(40%)、センチネルリンパ節転移陽性が326例、センチネルリンパ節転移陰性で腋窩郭清時陽性が59名であり、センチネルリンパ節は転移状況を91.2%で正確に同定できた。cT1かつセンチネルリンパ節2個以上の患者では偽陰性率は12.6%であった。色素のみ22.2%、RIのみ20.0%、RIと色素の両方を使用10.8%(p=0.046)、センチネルリンパ節2個21.1%、3個9.0%、4個6.7%、5個以上11.0%(p=0.004)であった。cT1でセンチネルリンパ節1個のみでは偽陰性率31.5%であった。cT1かつセンチネルリンパ節2個以上で、リンパ節内にクリップを挿入した患者では、センチネルリンパ節内にクリップがあった96例のうち54例で転移が残存しており、偽陰性率は7.4%であった。サマリーとしてリンパ節の状態を正確に判定できたのは91.2%、pCRは40.0%、cT1かつセンチネルリンパ節2個以上での偽陰性率12.6%(RIと色素の併用で10.8%、センチネルリンパ節3個以上で9.1%)であった。これらのデータから、リンパ節転移陽性乳癌におけるNAC後のセンチネルリンパ節生検はリンパ節転移の状況を検出するのに有用な方法であり、手技としてRIと色素の併用、2個以上の摘出が重要であると結論づけている。また、リンパ節の診断時にクリップを挿入することや、治療効果をみるためのセンチネルリンパ節の病理学的検索をするなどのさらなる工夫で、より精度が上がるかもしれないとも述べている。患者数も多く非常に重要な試験ではあるが、後付けでさまざまなサブ解析をしたデータで結論づけるのは無理がある。T1かつセンチネルリンパ節2個以上かつRIと色素の併用と患者選択しても偽陰性率10.8%であり、本研究から、リンパ節転移陽性乳癌における化学療法後のセンチネルリンパ節生検は有用であるとはとても言い難い。これに引き続いて、ドイツからもセンチネルリンパ節と術前化学療法の関係について報告があった。 レポート一覧

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Sentinel lymph node biopsy before or after neoadjuvant chemotherapy - final results from the prospective German, multiinstitutional SENTINA-trial

術前化学療法前後のセンチネルリンパ節生検―ドイツにおける多施設前向きSENTINA試験の最終結果本試験は4アームの多施設前向き試験であり、術前化学療法前後でのセンチネルリンパ節同定率、cN1からcN0になった患者での偽陰性率、同定率と偽陰性率に影響する因子を見出すことが目的である。試験デザインは、アームA:cN0→センチネルリンパ節生検でpN0→術前化学療法→郭清なし、アームB:cN0→センチネルリンパ節生検pN1→術前化学療法→センチネルリンパ節生検+腋窩郭清、アームC:cN1→術前化学療法でycN0→センチネルリンパ節生検+腋窩郭清、アームD:cN1→術前化学療法でycN1→腋窩郭清である。cNの状況は触診で転移の確定ができない場合、超音波検査にて腋窩転移陰性と判定ならcN0、不明瞭なら臨床的に決定、疑いならcN1とした。不明瞭か疑いなら細胞診かコア針生検を推奨した。センチネルリンパ節生検はRIを必須とし、色素はオプションとした。リンフォシンチグラフィを行い、注射部位は自由とし、リンパ節はパラフィン包埋し、少なくとも500μm毎に切片を作成し、免疫染色は施行しないこととした。103施設から1,737例ごとの患者が登録され、アームA:662例(64.8%)、アームB:360例(35.2%)、アームC :592例(82.8%)、アームD:123例(17.2%)であった。センチネルリンパ節の同定率はアームBでは60.8%であり、センチネルリンパ節生検を繰り返した場合同定率は非常に低かった。アームCの同定率は80.1%であり、多変量解析でみても影響を及ぼす特定の因子を同定できなかった。偽陰性率はアームBでは51.6%と非常に高く、アームCでも14.2%(95%CI : 9.9 ~19.4%)であり、多変量解析にてセンチネルリンパ節の個数(1対2個以上)が影響を及ぼす因子であった(OR=0.505、 0.306~0.833、 p=0.008)。これらの結果から、術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検の再試行は許容できないものであった。また術前化学療法でリンパ節転移部がダウンステージしても、化学療法前に行ったセンチネルリンパ節生検と比較して成績はよくないようである。先述の報告と比較して、こちらの方は解析に無理がなく、結論がより謙虚であった。現時点で、リンパ節転移陽性乳癌において術前化学療法にセンチネルリンパ節生検を行うことは、偽陰性率の面から推奨できない。ただし、いずれの試験においてもセンチネルリンパ節の個数が偽陰性率に影響しそうだということは言えそうなので、この要素を含めてもう少し異なった面から研究を進めることで、正確にリンパ節の状態を判断できる患者群を見出すことは可能かもしれない。レポート一覧

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Ki67 levels in pretherapeutic core biopsies as predictive and prognostic parameters in the neoadjuvant GeparTrio trial

術前化学療法GeparTrio試験における予後因子、治療予測因子としての治療前コア針生検でのKi67の数値Ki67は腫瘍の増殖を評価する免疫組織化学的マーカーで、ルミナルAとルミナルBを分類するための指標と考えられている。しかしKi67のカットオフ値は未だ意見が一致しておらず、Ki67に関して3つの疑問点がある。1)カットオフの定義、2)Ki67分析をどのように標準化できるか、3)自動イメージ分析システムの妥当性についてである。本演題では1)について報告している。GeparTrioの研究コホートとして、TACで化学療法を開始した2072例のうちコア針生検にてKi67評価を行った1166例が対象である。Ki67ベンタナ社自動染色装置を使ってMIB-1抗体で染色し、計200の細胞を計測した。本研究は後ろ向きであり、単施設での研究である。pCRを予測するKi67の値をみてみると、94のうち93のカットオフ値で有意差を認めた。同様にDFSでは94のうち48で、OSでは94のうち58で有意であった。これら3つのパラメーターを組み合わせたとき、Ki67の値は10%から45%で有意差があり、カットオフ値の最適化はできなかった。次に15%以下をKi67低、15.1-35%をKi67中間、35%より大きいものをKi67高として再検討してみると、3つのパラメーターともにp

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An international Ki67 reproducibility study

Ki67の再現に関する国際的な研究ASCOの腫瘍マーカーに関するガイドラインでは、どの増殖マーカーの使用も推奨されていないが、それは再現性が乏しく、臨床的な妥当性が不明であるからである。一方、J Natl Cancer Inst. 2011;103: 1656-1664 に掲載された論文「Assessment of Ki67 in Breast Cancer: Recommendation from the International Ki67 in Breast Cancer Working Group」では、解析前の設定、解析の設定、解釈とスコアリング、データの分析についての推奨が述べられている。本研究では、病理学者はKi67染色をどの程度再現性をもって確実に定量化できるか、という分析的妥当性を系統的に調べるため、観察者間および観察者自身のばらつきを同定することである。そのために、組織マイクロアレイスライドで各施設の方法で計測(第1相)→ウェブベースで補正後、標準的方法で計測(第2相)→針生検と組織全体の切片で計測、という順序で検討を行った。これにより期待される成果は、Ki67を評価するための解析の正当性、臨床的に意味のある方法の普及、そしてウェブベースの補正症例の標準的なセットの確立である。第1相は、十分な経験のある各施設での方法で、Ki67値が一致しているかを検討することである、そのため乳癌症例100例で3つの実験、1)観察者内でスコアリングを繰り返し評価、2)中央での染色で観察者間の評価、3)各施設での染色で施設間の評価を行った。施設はカナダ、フランス、英国、米国の大学、主要な癌センター、国際関連施設である。6施設で50症例を3回繰り返した結果、1)観察者内での一致率は非常によく、overall ICC(intraclass correlation coefficient、級内相関係数:連続データにおける信頼性を示すもの)=0.94(95%CI=0.93~0.97)であった。しかし2)中央での染色で、観察者間でのばらつきはかなりあり、overall ICC=0.71(95%CI=0.47~0.78)であった。Ki67のカットオフ値を仮に13.5%としたとき、32%の症例において、ある施設で低値であったのものが他の施設で高値と判定されていた。染色法もある程度のばらつきを生じさせたが、主な原因はスコアリングの方法であった。すなわち、どの領域をカウントするのか、浸潤癌だけをカウントしているか、どの程度茶色に染まった細胞を陽性と判定するか、である。第2相では標準化したスコアリング法をウェブベースで各施設に提供し、9つのトレーニングと9つのテストで補正を行った。結果として9の施設中4施設でテストに合格しなかった、この原因は染色性の弱い細胞に対する判定の違いからきていた。トレーニングの成功率としてはICC>0.9以上が基準として求められ、トレーニングにより測定法は改善したものの、統計学的には有意ではなかった(サンプルサイズによるものと思われる)。ウェブベースのトレーニングが成功すれば、次にコア針生検標本に適用し、臨床的有用性を確定し、臨床的に最もよいスコアリングの方法においてばらつきの範囲がどの程度みられるかが明確になるだろう。反対にもし失敗すれば、自動の画像プラットフォームとアルゴリズムが安定した結果をもたらすかテストすることになる。これらの失敗から、免疫染色によるKi67インデックスは、臨床でもリサーチでも妥当性の確認を行ってから活用されるべきである、と結んでいる。レポート一覧

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【日本癌治療学会2012】前立腺がん治療の過去と未来

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、市川智彦氏(千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学)は、「前立腺がん治療の過去と未来:外科的療法、ホルモン療法を中心に」と題して、前立腺がんの治療の歴史と現在の標準治療、今後の展望について、外科的治療と去勢抵抗性前立腺がんを中心に講演を行った。前立腺全摘除術の進歩 市川氏はまず、前立腺がんの外科的治療の歴史についてレビューした。限局性前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術は、1904年にHugh Hampton Youngが行った会陰式前立腺全摘除術に始まる。Youngはまた、1917年にThe Journal of Urologyを創刊し、1945年に没するまでEditor-in-Chiefを務めた。その後、1945年にTerence Millinが恥骨後式前立腺全摘除術を、1983年にはPatric Walshが神経温存前立腺全摘除術を行った。この術式による最初の患者の性機能は術後1年で回復し、25年後もQOLを維持、PSA値も検出不能なレベルであったと報告した(Walsh PC, et al. J Urol. 2007; 177: 1632-1635)。  この時期には、Gleason分類の提唱(1966年)、前立腺特異抗原(PSA)の精製(1979年)、超音波ガイド下前立腺生検(1988年)、FDAによるPSAスクリーニング検査の承認(1994年)などの前立腺がん治療に関連した重要な進歩があった。 1997年に腹腔鏡下前立腺全摘除術の初期経験が報告され、2000年にはGuillonneauにより術式もほぼ確立されたが(Guillonneau B and Vallancien G. J Urol. 2000; 163: 418-422)、そのテクニックの習得に時間がかかり、それほど広範な施設で普及はしなかった。2001年にはda Vinciシステムによるロボット支援前立腺全摘除術が報告され、その後10年を経て標準的な手技が確立された。日本でも2012年4月に保険適応となり加速的に普及しつつある。今後は一般病院への普及が期待される。 低リスクまたは中間リスクの限局性前立腺がんでは、前立腺全摘除術が標準治療として推奨されているが、今後は高リスク患者への手術適応の検討が課題である。一方、731例の限局性前立腺がん患者を、前立腺全摘除術群と待機療法群にランダム化割り付けし12年間以上追跡したPIVOT試験から(Wilt TJ, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 203-213)、前立腺全摘除術群では待機療法群と比べて全死亡と前立腺がん死を有意に減少できなかったため、低リスク患者では待機療法も検討すべきことを市川氏は指摘した。前立腺全摘除術による治療アウトカムを評価する方法としては、最近では、Survival(生存)のみならず、Continence(尿失禁)およびPotency(勃起障害)の評価を加えたSCP分類が提唱されている(Ficarra V, et al. Eur Urol. 2012; 61: 541-548)。去勢抵抗性前立腺がんの治療 前立腺がんのホルモン療法は、1941年にCharles B. Hugginsが去勢により前立腺がんが縮小することを発見したことに端を発する。Hugginsはその功績により、泌尿器科医として唯一ノーベル賞を受賞した。また、Andrew V. Schallyは性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LHRH)を単離し、その後、リュープロライド、ゴセレリンなどの薬剤の開発につながった。Schallyも1977年にノーベル賞を受賞した。これらの薬剤によるホルモン療法はめざましい効果をもたらすが、やがて前立腺がんはホルモン療法に抵抗性を示すようになるため、こうした去勢抵抗性前立腺がんの克服が現在の課題である。 抗アンドロゲン療法に対する抵抗性を獲得した腫瘍では、アンドロゲン受容体の活性化が認められ(Chen CD, et al. Nature Med. 2004; 10: 33-39)、テストステロン合成経路の亢進が指摘されている(Montgomery RB, et al. Cancer Res. 2008; 68: 4447-4454)。コレステロールからテストステロンを生成する際に重要な役割を果たす酵素CYP17A1の選択的阻害薬Abirateroneは、化学療法歴のないホルモン療法に抵抗性となった前立腺がん患者のPSAを低下させることからも(Attard G, et al. J Clin Oncol. 2008; 26: 4563-4571)、去勢抵抗性前立腺がんにおけるアンドロゲン受容体のシグナル伝達経路の活性化が裏付けられた。 2004年にドセタキセルがFDAより承認を受けてから、去勢抵抗性前立腺がんの治療は新しい時代を迎えつつある。1,195例のドセタキセルによる化学療法歴のある去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第III相試験では、プラセボ群の生存期間中央値10.9ヵ月に対して、Abiraterone群では14.8ヵ月と有意な生存期間延長効果が認められ(de Bono JS, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 1995-2005)、本薬剤はこのデータをもって2011年4月にFDAに承認された。有害事象としては、体液貯留や高血圧、低カリウム血症などが認められた。 MDV3100(Enzalutamide)は、化学療法歴のある去勢抵抗性前立腺がん患者1,199例を対象としたAFFIRM試験の結果、プラセボ群の生存期間中央値13.6ヵ月に対して、MDV3100群では18.4ヵ月(ハザード比0.63、p<0.001)と有意に生存期間の延長が示され、2012年8月にFDAから承認された。 市川氏は、去勢抵抗性前立腺がんの治療の今後の課題として、抗アンドロゲン療法に加え、化学療法や分子標的治療などの治療オプションの併用(逐次併用など)や支持療法による患者のQOLの維持などを挙げて講演を終えた。「他の演題はこちら」

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糖尿病患者の冠動脈病変、どのステントが最も有効か?

 冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性も良好なことが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らの検討で示された。糖尿病は経皮的冠動脈インターベンション施行後の転帰を増悪させることが知られている。長期的な有効性や安全性につき、現時点で使用可能な4つの薬剤溶出ステント同士あるいはベアメタルステントとの比較試験が数多く行われているが、どのステントが最も優れるかは明らかでないという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版2012年8月10日号)掲載の報告。糖尿病患者に対する各種ステントの有効性をメタ解析で評価研究グループは、糖尿病患者の冠動脈病変の治療における現行の薬剤溶出ステントおよびベアメタルステントの有効性と安全性を評価するために、混合治療比較法によるメタ解析を行った。PubMed、Embase、CENTRALを検索し、新規冠動脈病変を対象に4つの恒久的な薬剤溶出ポリマーステント(シロリムス、パクリタキセル、エベロリムス、ゾタロリムスの各溶出ステント)およびベアメタルステントを比較した無作為化臨床試験(2012年4月までに発表、糖尿病患者50例以上を含む)の論文を抽出した。有効性の主要評価項目は標的血管に対する血行再建術の施行とし、安全性の主要評価項目は死亡、心筋梗塞、ステント血栓症の発生とした。エベロリムス溶出ステントが最も有効かつ安全な可能性42試験(2万2,844人・年のフォローアップ)が解析の対象となった。いずれの薬剤溶出ステントも、ベアメタルステントに比べ標的血管血行再建術の施行率を有意に低減したが、各薬剤溶出ステントの有効性には差が認められた。すなわち、ベアメタルステントよりも、シロリムス溶出ステントは血管再建術施行率を62%(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.29~0.48)、パクリタキセル溶出ステントは53%(同:0.47、0.35~0.61)、エベロリムス溶出ステントは69%(同:0.31、0.19~0.47)、ゾタロリムス溶出ステントは37%(同:0.63、0.42~0.96)抑制した。エベロリムス溶出ステントの有効性が最も高い確率は87%であった。一方、糖尿病患者におけるResoluteゾタロリムス溶出ステントのデータは限定的だった。薬剤溶出ステントは、超遅発性血栓症を含む安全性についても、ベアメタルステントに比べリスクを増大させることはなく、良好だった。ステント血栓症に関する安全性がエベロリムス溶出ステントで最も高い確率は62%に達していた。著者は、「冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性が劣ることもなかった」と結論し、「エベロリムス溶出ステントが、有効性、安全性のいずれにおいても相対的に優れることが示唆された」としている。

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経口アンドロゲン受容体阻害剤XTANDI 米国で新発売

 アステラス製薬株式会社は14日、米国メディベーション社と共同で開発・商業化を進めているXTANDI(米国製品名、p-INN:エンザルタミド、開発コード:MDV3100)について、米国で発売したことを発表した。なお、XTANDIは専門薬局等を通じて提供されるとのこと。  米国食品医薬品局(FDA)は、2012年8月31日に、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺がんの効能・効果で、XTANDIを承認した。また、同社とメディベーション社は、処方された薬剤の入手および保険償還に関する患者へのサポートを目的とした、患者アクセス支援プログラム「XTANDI Access Services」を開始している。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/xtanditm.html

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乳房外パジェット病の治療体制確立を目指して がん・感染症センター都立駒込病院 皮膚科・皮膚腫瘍科 吉野 公二氏

日本、アジアに多く、欧米に少ない乳房外パジェット病 乳房外パジェット病は、東南アジア、特に日本や韓国に多く、欧米に少ない疾患です。多くのがんの場合、欧米で確立したエビデンスをもとに日本で治験を組む、あるいはそれを基に公知申請で治療薬を導入するという方法が今の世の流れです。しかしながら、乳房外パジェット病には欧米でのエビデンスはありません。つまり、公知申請はできない状況で、日本で一から治験を組まないと新しい治療体制が生まれてこないのです。 ところが、乳房外パジェット病は疾患数が少なく、市場の小ささが障害となり製薬会社としても新たに治験を組めません。また、医師主導治験も製薬会社からの薬剤供給が確立できず実現不可能です。もうひとつ、高度先進医療という方法がありますが、キードラッグであるドセタキセルはがん領域で十分な実績のある薬であり、新たな治療法を対象とする高度先進医療の適用とはなりません。日本発のデータで新しい治療体制を さまざまな検討を行った結果、実際の治療実績のデータを、日本から世界に向かって発信し、それを基にして公式な臨床研究や申請の実現を目指すことになりました。そのためには単独施設ではなく、多施設の臨床研究を行う必要があります。そこで、乳房外パジェット病の治療に携わる医師が主体となり「乳房外パジェット病研究会」を設立しました。臨床研究といっても保険適応外ですので、多施設の後ろ向き研究となります。その結果を、乳房外パジェット病研究会で論文化し、早ければ来年中にpublishするという方針です。 同研究では、抗がん剤だけにとどまらず、他の治療関連エビデンスも検討する予定です。そのひとつはステージ分類です。乳房外パジェット病には国際的なステージ分類がありません。今回の研究で、日本オリジナルのTNM分類を世界に向かって発信しようと計画しています。 また、センチネルリンパ節生検の有用性についても調べています。乳房外パジェット病では、センチネルリンパ節転移陰性例の予後は良く、5年生存率は100%です。リンパ節腫脹後にセンチネルリンパ節生検を実施した例と、事前にセンチネルリンパ節生検を実施した例とを比較することで、予後予測因子ならびに予後の改善に結びつくか有用性を確認したいと思っています。現在、乳房外パジェット病でのセンチネルリンパ節生検は保険未認可であり、結果次第では保険適応も視野に入れたいと思っています。 乳房外パジェット研究会は皮膚科だけの集まりでしたが、婦人科、泌尿器科、形成外科にも広げています。患部が陰部であることも多く、さまざまな診療科が関わるため、より幅広いデータを収集しようという試みです。乳房外パジェット病の治療報告は、世界的にみても1例のケースレポートがほとんどです。同研究では、現在ドセタキセルを使用した約20例を収集しており、すでにかなりのインパクトはあると思います。また乳房外パジェット病自体で最終的には400例近くのデータ収集を目指しています。世界的にも大きなインパクトを示すことになるでしょう。発見が遅れがちな乳房外パジェット病 乳房外パジェット病の患者さんは、皮膚科に行ったり、泌尿器科に行ったり、女性は婦人科に行ったりしています。陰部が痒いという症状から単なる湿疹と判断され、湿疹の薬を処方されたり、症状が改善せずドクターショッピングを繰り返すことも多いようです。 そのためか、医療機関を受診しているにもかかわらず、発見されるまで数年かかり、来院時にはすでにリンパ節転移があるケースも少なくありません。通常の湿疹だと思われるケースのなかには、わずかですが乳房外パジェット病も隠れています。早期発見すれば、ほとんどの症例は予後良好なので、ステロイドや抗真菌薬を使っても奏効しない例では、1ヵ月以内に皮膚生検を行うなど、乳房外パジェット病を念頭に置いて診療をしていただければと思います。

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