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GLP-1受容体作動薬、脱毛症リスクは高いか/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の潜在的な有害作用として、脱毛(脱毛症)が市販後調査により報告されている。米国・ペンシルベニア大学のHuilin Tang氏らは、2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬の使用はSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬と比較して、臨床的に記録された脱毛症、とくに非瘢痕性脱毛症のリスク上昇と関連することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月22日号に掲載された。脱毛症リスクを標的試験エミュレーションで評価 研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の脱毛症リスクを評価する目的で標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 データの収集には、ペンシルベニア大学健康システム(Penn Medicine)の電子健康記録を用いた。対象は、年齢18歳以上、2019年1月~2024年9月に新たにGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の投与を開始した2型糖尿病患者であった。 主要評価項目は、新規発症の脱毛症およびその亜型とした。sIPTW調整後の発生率が高い GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の比較では、それぞれ1万2,004例(平均年齢58.1歳、女性55.5%)および1万5,221例(平均年齢64.5歳、女性38.1%)の新規投与開始例を、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の比較では、それぞれ1万1,964例(平均年齢58.0歳、女性55.5%)および1万1,233例(平均年齢66.9歳、女性48.1%)を登録した。 安定化逆確率重み付け(sIPTW)で調整後の脱毛症の発生率は、SGLT2阻害薬群(平均追跡期間2.36年)が5.04/1,000人年であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.39年)は6.91/1,000人年と高い値を示した(ハザード比[HR]:1.37、95%信頼区間[CI]:1.08~1.73)。 同様に、DPP-4阻害薬群(平均追跡期間2.95年)のsIPTW調整後の脱毛症発生率が3.89/1,000人年であったのに比べ、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.91年)は6.53/1,000人年であり、より高率だった(HR:1.68、95%CI:1.28~2.20)。円形・アンドロゲン性などとの関連はない 脱毛症の亜型別の解析では、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性は非瘢痕性脱毛症に特有のものだった。SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群と比較したGLP-1受容体作動薬群における非瘢痕性脱毛症のハザード比は、それぞれ1.53(95%CI:1.18~1.97)および1.72(95%CI:1.28~2.31)であった。一方、GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群に比べ、円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、瘢痕性脱毛症の発生率が高かったが、いずれも有意な関連は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、GLP-1受容体作動薬による治療を検討する際の共有意思決定に役立つ可能性があり、今後の研究において皮膚科関連アウトカムの評価をさらに進める必要性を強調するものである」としている。 また、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性の基盤となる最も可能性の高いメカニズムとして、治療による体重減少およびカロリー摂取量の減少を挙げ、「これが生理的ストレスや微量栄養素(鉄、亜鉛、ビオチンなど)の欠乏を招き、毛髪の成長サイクルを乱す可能性がある」とし、「すなわち、脱毛は薬剤の直接的な作用というよりは、代謝性変化による下流の影響を反映している可能性が示唆される」と指摘する。 さらに、「最も頻度の高い亜型である非瘢痕性脱毛症は、急速な体重減少と関連することが多く、通常は可逆的である。この事実は、患者を安心させ、治療継続を支援する一助となりうる」と指摘している。

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プロピオン酸血症〔PA:Propionic acidemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義生体内で生じる各種の不揮発酸が代謝障害によって蓄積し、代謝性アシドーシスを主徴とする各種の症状・異常所見を呈する疾患群を「有機酸代謝異常症」と総称する。主な疾患は、分枝鎖アミノ酸の代謝経路上に多く、中でもプロピオン酸血症(Propionic acidemia:PA)は最も代表的なものである。本疾患では、3-ヒドロキシプロピオン酸、メチルクエン酸などの短鎖カルボン酸が体液中に蓄積し、典型的には重篤な代謝性アシドーシスを主徴とする急性脳症様の症状で発症するほか、各種臓器に慢性進行性の病的変化をもたらす。■ 疫学新生児マススクリーニング試験研究(1997~2012年、被検者数195万人)による国内での罹患頻度は約45,000人に1人と、高頻度に発見された。ただし、これには後述する「最軽症型」が多く含まれ、典型的な症状を示す患者の頻度は約40万人に1人と推計されている。■ 病因(図)バリン・イソロイシン代謝経路上の酵素「プロピオニオニル-CoAカルボキシラーゼ(PCC)」の活性低下に起因する、常染色体劣性遺伝性疾患(OMIM#606054)である。PCCはミトコンドリア基質に発現しており、αサブユニットとβサブユニットからなる多量体である。各サブユニットは、それぞれPCCA遺伝子(MIM*232000、局在13q32.3)とPCCB遺伝子(MIM*232050、局在3q22.3)にコードされている。図 プロピオン酸血症に関連する代謝経路画像を拡大する■ 症状典型的には新生児期から乳児期にかけて、重度の代謝性アシドーシスと高アンモニア血症が出現し、哺乳不良、嘔吐、呼吸障害、筋緊張低下などから、けいれんや嗜眠~昏睡など急性脳症の症状へ進展する。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患が契機となることが多い。コントロール困難例では、経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。1)中枢神経障害急性代謝不全の後遺症として、もしくは代謝異常が慢性的に中枢神経系に及ぼす影響によって、全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多い。急性増悪を契機に、あるいは明らかな誘因なく、両側大脳基底核病変(梗塞様病変)を生じて不随意運動が出現することもある。2)心臓病変急性代謝不全による発症歴の有無に関わらず、心筋症や不整脈を併発しうる。心筋症は拡張型の報告が多いが、肥大型の報告もある。不整脈はQT延長が本疾患に特徴的である。3)その他汎血球減少、免疫不全、視神経萎縮、感音性難聴、膵炎などが報告されている。■ 分類1)発症前型新生児マススクリーニングで発見される無症状例を指す。そのうち多数を占めるPCCB p.Y435C変異のホモ接合体は、特段の症状を発症しないと目されており、「最軽症型」と呼ばれる。2)急性発症型呼吸障害、多呼吸、意識障害などで急性に発症し、代謝性アシドーシス、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、高乳酸血症などの検査異常を呈する症例を指す。3)慢性進行型乳幼児期からの食思不振、反復性嘔吐などが認められ、身体発育や精神運動発達に遅延が現れる症例を指すが、経過中に急性症状を呈しうる。■ 予後新生児期発症の重症例は、急性期死亡ないし重篤な障害を遺すことが少なくない。遅発例も急性発症時の症状が軽いとは限らず、治療が遅れれば後遺症の危険が高くなる。また、急性代謝不全の有無に関わらず、心筋症、QT延長などの心臓合併症が出現・進行する可能性があり、特に心筋症は慢性期死亡の主要な原因に挙げられている。一方、新生児マススクリーニングで発見された87例(最長20歳まで)の予後調査では、患者の大半が少なくとも1アレルにPCCB p.Y435C変異を有しており、疾患との関連が明らかな症状の回答はなかった。したがって、この群の予後は総じて良好と思われるが、より長期的な評価(特に心臓への影響)には、さらに経過観察を続ける必要がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)一般血液・尿検査急性期には、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスをはじめ、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、汎血球減少などが認められる。高乳酸血症や血清アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)、クレアチニンキナーゼの上昇を伴うことも多い。2)タンデム質量分析法(タンデムマス、MS/MS)による血中アシルカルニチン分析プロピオニルカルニチン(C3)の増加を認め、アセチルカルニチン(C2)との比(C3/C2)の上昇を伴う。これはメチルマロン酸血症と共通の所見であり、鑑別には尿中有機酸分析が必要である。C3/C2の上昇を伴わない場合は、異化亢進状態(=アセチルCoA増加)に伴う非特異的変化と考えられる。3)ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC/MS)による尿中有機酸分析診断確定に最も重要な検査で、3-ヒドロキシプロピオン酸・プロピオニルグリシン・メチルクエン酸の排泄が増加する。メチルマロン酸血症との鑑別には、メチルマロン酸の排泄増加が伴わないことを確認する。4)PCC酵素活性測定白血球や皮膚線維芽細胞の破砕液を粗酵素源として測定可能であり、低下していれば確定所見となるが、実施しているのは一部の研究機関に限られる。5)遺伝子解析PCCA、PCCBのいずれにも病因となる変異が報告されている。遺伝学的検査料の算定対象である。※ 2)、3)は「先天性代謝異常症検査」として保険診療項目に収載されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性代謝不全の治療タンパク摂取を中止し、輸液にて80kcal/kg/日以上を確保する。有機酸の排泄促進に静注用L-カルニチンを投与する。未診断の段階では、ビタミンB12反応性メチルマロン酸血症の可能性に対するヒドロキソコバラミン(商品名:フレスミンS)またはシアノコバラミン(同:同名、ビタミンB12ほか)の投与をはじめ、チアミン(同:塩酸チアミン、メタボリンほか)、リボフラビン(同:強力ビスラーゼ、ハイボンほか)、ビオチン(同:同名)などの各種水溶性ビタミン剤も投与しておく。高アンモニア血症を認める場合は、安息香酸ナトリウムやカルグルミン酸を投与する。速やかに改善しない場合は、持続血液透析(CHD)または持続血液透析濾過(CHDF)を開始するか、実施可能施設へ転送する。■ 亜急性期〜慢性期の治療急性期所見の改善を評価しつつ、治療開始から24~36時間以内にアミノ酸輸液を開始する。経口摂取・経管栄養が可能になれば、母乳や育児用調製粉乳などへ変更し、自然タンパク摂取量を漸増する。必要エネルギーおよびタンパク量の不足分は、イソロイシン・バリン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去粉乳(同:雪印S-22)で補う。薬物療法としては、L-カルニチン補充を続けるほか、腸内細菌によるプロピオン酸産生の抑制にメトロニダゾールやラクツロースを投与する。■ 肝移植・腎移植早期発症の重症例を中心に生体肝移植の実施例が増えている。食欲改善、食事療法緩和、救急受診・入院の大幅な減少などの効果が認められているが、移植後に急性代謝不全や中枢神経病変の進行などを認めた事例の報告もある。4 今後の展望新生児マススクリーニングによる発症前診断・治療開始による発症予防と予後改善が期待されているが、「最軽症型」が多発する一方で、最重症例の発症にはスクリーニングが間に合わないなど、その効果・有用性には限界も看取されている。また、臨床像が類似する尿素サイクル異常症では、肝移植によって根治的効果を得られるが、本疾患では中枢神経障害などに対する効果は十分ではない。これらの課題を克服する新規治療法としては、遺伝子治療の実用化が期待される。5 主たる診療科小児科・新生児科が診療に当たるが、急性期の治療は、先天代謝異常症専門医の下、小児の血液浄化療法に豊富な経験を有する医療機関で実施することが望ましい。成人期に移行した患者については、症状・病変に応じて内分泌代謝内科、神経内科、循環器内科などで対応しながら、小児科が並診する形が考えられる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本先天代謝異常学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本マススクリーニング学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)タンデムマス・スクリーニング普及協会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)先天代謝異常症患者登録制度JaSMIn(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)島根大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)福井大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会「ひだまりたんぽぽ」(患者とその家族および支援者の会)1)日本先天代謝異常学会編集. 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン. 診断と治療社;2019.2)山口清次編集. よくわかる新生児マススクリーニングガイドブック. 診断と治療社; 2019.公開履歴初回2020年03月02日

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亜鉛不足が脱毛の原因に!50歳以上は要注意

 亜鉛は1,000の酵素反応、2万以上の転写反応に必要な必須微量元素であり、発生、分化、増殖といった幅広い生体活動に関与する。しかし、その役割の多くは明らかされていない。2019年7月13~14日、日本men’s health医学会のスポンサードシンポジウム3において、小川 陽一氏(山梨大学皮膚科学部内講師)が「亜鉛と皮膚疾患」について講演した(ノーベルファーマ株式会社共催)。亜鉛が欠乏すると脱毛などの症状が出現 亜鉛はすべての生物に不可欠であり、継続的に欠乏すると死に至る。必須微量元素としての生体内含有量は鉄に次いで2番目に多く、体内で常時2~3gに維持されている。しかし、「亜鉛欠乏患者は発展途上国を中心に世界で13億人も存在し、全世界人口の17%に相当する」と小川氏はコメント。亜鉛が欠乏すると、味覚異常をはじめ、皮膚炎や口内炎のほか、脱毛や傷が治りにくいなどの症状が出現する。また、亜鉛濃度は日内変動と加齢変化を起こすことから、後者により50歳以上で潜在的な亜鉛欠乏に陥っている可能性が高い1)。欠乏の可能性がある場合は、亜鉛欠乏症の診断基準に該当すれば治療が必要となる。 2017年3月、酢酸亜鉛水和物製剤(商品名:ノベルジン錠)が低亜鉛血症治療剤としての効能追加一部変更承認を取得した。これまで治療に難渋していた例についても「既存薬と比較し、この製剤は血清亜鉛濃度が早く上昇する」と有用性について解説した。難渋する皮膚炎や脱毛は亜鉛欠乏かも 亜鉛不足による皮膚疾患として、ペラグラやビオチン欠乏症などが挙げられるが、同氏は「一次刺激性接触性皮膚炎」と「脱毛」それぞれに着目した研究結果を報告。はじめに、前者の研究結果として、亜鉛トランスポーターの遺伝子ZIP4の異常による疾患、腸性肢端性皮膚炎(AE)を提示。AE表皮ではランゲルハンス細胞が消失していることを踏まえ、亜鉛欠乏モデルマウスの実験において、AEは外界物質との接触が頻繁に起きる部位に分布していることを仮説立て、ヒト亜鉛欠乏性皮膚炎の本態が“一次刺激性接触性皮膚炎”であることを立証した。さらに、このモデルマウス実験より、亜鉛が継続的に欠乏することでAE患者の表皮内ランゲルハンス細胞が消失し、炎症が増強することも明らかにした。このことから、肛門周囲や陰部、口や眼の周辺など刺激物質にさらされる部位が頑固な皮膚炎の場合、「真菌感染症の否定を行ったうえで亜鉛欠乏を疑う」など、臨床応用時のポイントを説明した。 また、亜鉛欠乏マウスの実験により、亜鉛欠乏による脱毛は、真皮乳頭が萎縮し毛包幹細胞が減少することで毛周期・再生の異常をきたすことが原因であることを明らかにし、この臨床応用として、11歳女児の症例を報告。脱毛の原因として、トリコチロマニア(抜毛癖)や膠原病、甲状腺機能低下症などを否定し、亜鉛濃度が69 μg/dLであったことから酢酸亜鉛水和物製剤を開始した結果、良好な結果が得られた。 最後に同氏は「亜鉛欠乏は思っているよりもcommonな疾患・状態である。血清亜鉛が80 μg/dL以下であれば酢酸亜鉛水和物製剤の投与を推奨する。また、採血のタイミングは早朝空腹時の測定が望ましいが、朝ごはんを食べたとしても午前中に採血できれば問題ない」と述べた。

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乾癬のようにみえて違う難治性皮膚疾患の掌蹠膿疱症

 2018年11月2日、ヤンセンファーマ株式会社は、都内において難治性皮膚疾患である「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」に関するプレスセミナーを開催した。セミナーでは、国内に患者が13万人ともいわれる本症の概要、疫学、治療法について説明が行われた。なお、同社では、既存の乾癬治療薬グセルクマブ(商品名:トレムフィア)の掌蹠膿疱症への適応追加につき、厚生労働省薬事・食品衛生審議会に11月8日に報告を行っている。掌蹠膿疱症は乾癬とは区別される慢性皮膚疾患 「掌蹠膿疱症」をテーマに村上 正基氏(愛媛大学大学院医学系研究科分子機能領域 皮膚科学 准教授)を講師に迎え、本症の概要についてレクチャーが行われた。 掌蹠膿疱症は、手掌や足底に生じる無菌性の膿胞を主徴とする慢性皮膚疾患であり、乾癬とは区別され、わが国では1958年よりこの疾患概念で診療が行われている(海外では膿疱性乾癬の限局型と捉えられ、世界的なコンセンサスは現在も得られていない)。 疫学情報として、男性よりもやや女性に多く、男女ともに30~50歳代で好発し、地域差はなく、特徴として女性患者の約9割、患者全体では約8割が喫煙者であるという。全国で約13万人の患者がいると推定されている。 掌蹠膿疱症の原因としては、病巣感染(歯周病、扁桃炎、中耳炎など)、喫煙、TNF-α阻害薬などの誘因が挙げられているが、明確な機序はわかっていない。患者の訴えでは、身体が疲労し、免疫力が落ちている状態のときに発症または悪化するという声も多い。 皮膚病変では、手掌や足底に最初に小水疱が生じ、膿疱に変化する。その後、周囲の皮膚にも紅斑、鱗屑がみられるようになり、紅斑落屑局面が混じった状態になる。周期的に良悪を繰り返し、痒み、ひび割れ、痛みを生じさせる。夏季に悪化することが多く、患者では落屑などから外見への精神的負担が大きいため、社会生活が阻害される例もある。また、足底などに症状が出た場合、歩行が困難となりQOLにも多大な影響を及ぼすケースもある。経過中に肘や膝、足背などに乾癬様皮疹を生じる掌蹠外病変も散見され、爪病変を伴うこともある。そのほか合併症では、胸鎖肋関節痛や甲状腺疾患、糖尿病、IgA腎症を伴うこともある。乾癬と間違いやすい掌蹠膿疱症の診断の手掛かりは多数 掌蹠膿疱症の診断では、視診による手掌や足底の水疱・膿疱の所見確認を行う。ダーモスコープによる診断では、水疱と膿疱が混在し、水疱の中央に小膿疱のあるpseudo-vesicleがみられる。掌蹠膿疱症は一見、乾癬とよく似ているが、皮疹を拡大すると、肉眼的に観察されにくい小膿疱も確認でき、この点で区別できるという。また、臨床検査所見では、特異的な指標となるものはないが、そのため除外診断で役立つ。鑑別疾患では、足白癬、汗疱、膿疱性乾癬などの疾患との鑑別が必要とされる。 掌蹠膿疱症の治療では、発症や悪化因子が明確な場合、根治を目指して病巣感染の治療などを行う。皮疹に対しては、外用薬が基本となる。 外用薬による治療では、手掌や足底の水疱・膿疱へステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬を併用する(軽症では活性型ビタミンD3外用薬単独)。治療中は2~4週に1回はフォローアップし、もし皮膚への刺激感が認容できない場合は中止する。内服薬ではレチノイドが処方されるが、催奇形性があるので処方では注意が必要。また、中波長紫外線療法では、外用薬の効果が限られる場合に行われ、ナローバンドUVBやエキシマを使用し、週1~3回行われる。以上が現在保険適用とされている治療となる。 これら以外にも抗アレルギー薬、抗菌薬、コルヒチン、生物学的製剤などの処方による掌蹠膿疱症の治療もあるが、いずれも保険適用外の治療となる。そのほか、ビオチン療法が提唱されているが、エビデンスがなく推奨はされていない。 入院適応はまれではあるが、合併症の関節症状がQOLに影響している場合、感染病巣として慢性扁桃炎が疑われ、この摘出手術を受ける場合などは入院となる。 最後に同氏は掌蹠膿疱症治療のアルゴリズムを示し、「悪化因子として扁桃炎や歯性病巣は重要。同じく骨・関節症状の有無もきちんと診断し、ケースによってはCTやMRI検査によりVASスコアによる痛みの評価も患者にとっては必要となる。治療ではこの20年近く新しい治療薬が開発されていないこともあり、患者の容態によっては保険適用外と断ったうえで、別の治療薬で苦痛を除くことも必要だ」と語り、レクチャーを終えた。

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ヒスタミンは皮膚バリア機能を障害する? 顆粒層や角質層が50%減少

 ヒスタミンは、表皮ケラチノサイト分化を抑制し、皮膚バリア機能を障害するという新たなメカニズムが、ドイツ・ハノーバー医科大学のM. Gschwandtner氏らが行ったヒト皮膚モデルを用いた検討により示唆された。ケラチノサイト分化や皮膚バリアの障害は、アトピー性皮膚炎のような炎症性皮膚疾患の重大な特徴である。研究グループは、マスト細胞とその主要なメディエーターであるヒスタミンが炎症を起こした皮膚細胞に豊富に認められることから、それらが病因に関与している可能性について検討した。Allergy誌2013年1月号(オンライン版2012年11月15日号)の掲載報告。 研究グループは、ヒトの主要ケラチノサイトを、ヒスタミンの有無別による分化の促進状態下で、またヒスタミン受容体作動薬と拮抗薬による分化の促進状態下で培養した。そのうえで、分化に関連する遺伝子および表皮接合タンパク質の発現を、リアルタイムPCR、ウエスタンブロット、免疫蛍光検査ラベリングにより定量化した。 ヒトの皮膚モデルのバリア機能については、ビオチンをトレーサー分子として調べた。 主な結果は以下のとおり。・ヒトケラチノサイト培養組織および器官型皮膚モデルへのヒスタミン追加により、分化関連タンパク質ケラチン1/10、フィラグリン、ロリクリンの発現が、80~95%低下した。・さらに、皮膚モデルへのヒスタミンの追加により、50%の顆粒層の減少、および表皮と角質層の希薄化がみられた。・ヒスタミン受容体H1R作動薬2-pyridylethylamineのケラチノサイト分化の抑制は、ヒスタミンと匹敵するものであった。・同様に、ヒスタミン受容体H1R拮抗薬セチリジンは、ヒスタミンの作用を実質的に排除した。・タイトジャンクションタンパク質(TJP)のzona occludens-1、occludin、claudin-1、claudin-4)、およびデスモソーム結合タンパク質のcorneodesmosin、desmoglein-1はともに、ヒスタミンによって減少した。・トレーサー分子のビオチンは、ヒスタミンの発現が大きかった培養皮膚バリアのタイトジャンクションを容易に通過した。しかし、無処置のコントロール部分では完全に遮断された。

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